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1954-04-30 第19回国会 衆議院 地方行政委員会 第54号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月三十日(金曜日)     午前十一時二十四分開議  出席委員    委員長 中井 一夫君    理事 加藤 精三君 理事 佐藤 親弘君    理事 灘尾 弘吉君 理事 吉田 重延君    理事 鈴木 幹雄君 理事 門司  亮君       生田 宏一君    尾関 義一君       熊谷 憲一君    濱地 文平君       山本 友一君    床次 徳二君       藤田 義光君    阿部 五郎君       北山 愛郎君    大石ヨシエ君       中井徳次郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣 小坂善太郎君  出席政府委員         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         国家地方警察本         部次長     谷口  寛君         国家地方警察本         部警視長         (総務部長)  柴田 達夫君         国家地方警察本         部警視長         (刑事部長)  中川 黄治君         自治政務次官  青木  正君  委員外出席者         専  門  員 石松  昇君         専  門  員 長橋 茂輿君     ――――――――――――― 四月二十八日  日本国における国際連合軍隊地位に関する  協定実施に伴う地方税法臨時特例に関する  法律案内閣提出第一六八号) 同日  警察法改正反対に関する請願外三件(赤松勇君  紹介)(第四六二八号)  都市警察存岡に関する請願只野直三郎君紹  介)(第四六一、九号)  瑛拳違反連座制強化に関する請願青木花魁  紹介)(第四六六五号)  同(大上司紹介)(第四七一五号)  同(原健一、一郎君紹介)(第四七一六号)  同(佐々木盛雄紹介)(第四七一七号)  田野倉区及び小形山百区の都留市合併反対に関  する請願平野力三紹介)(第四六六六号)  同(大石ヨシエ紹介)(第四七一八号)  クリーニング業に対する地方税軽減に関する請  願(越智茂紹介)(第四六八九君)  町村合併促進法の一部改正に関する請願(船田  中君紹介)(第四六九〇号)  地方公務員停年制実制反対に関する請願(大  石ヨシエ紹介)(第四七十四号)  莞爾施設ダム用地市町村償却資産税に関する  請願大石ヨシエ紹介)(第四七百三号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会会議に付した事件  連合審査会開会に関する件  日本国における国際連合軍隊地位に関する  協定実施に伴う地方税法臨時特例に関する  法律案内閣提出第一六八号)  警察法案内閣提出第三一号)  警察法施行に伴う関係法令整理に関する法  律案内閣提出第三二号)     ―――――――――――――
  2. 中井一夫

    中井委員長 これより会議を開きます。  去る二十八日本委員会に付託されました日本国における国際連合軍隊地位に関する協定実施に伴う地方税法臨時特例に関する法律案議題とし、その提案理由説明を聴取いたします。青木自治庁政務次官
  3. 青木正

    青木(正)政府委員 ただいま上程されました日本国における国際連合軍隊地位に関する協定実施に伴う地方税法臨時特例に関する法律案につきまして、その提案理由及び内答の概略を御説明申し上げます。  すでに御承知のごとく、日本国における国際連合軍隊地位に関する協定が締結せられましたのに伴い、その実施の円滑を確保いたしますため、国際連合軍隊等に対する地方税法適用につきまして特例を設ける必要がありますので、ここに本法律案を提出し、御審議をお願いすることといたしたのであります。  以下、法律案内容につきまして簡単に御説明申し上げます。  まず概括的に申し上げまして、国際連合軍隊等に対する地方税法適用につきましては、日米行政協定実施に伴う地方税法臨時特例法における合衆国軍隊等に対する地方税法特例の例によることにいたしたのであります。  その一は、国際連合軍隊日本国においてする不動産取得に対しては、不動産取得税を、国際連合軍隊の所有する自動車自転車荷車及び固定資産に対しては、自動車税掛軸車荷車税及び固定資産税を、その使用する電気及びガスに対しては、電気ガス税をそれぞれ課さないことといたしております。  その二は、国際連合軍隊軍人軍属及びこれらの家族国際連合軍隊の公認し、かつ、規制する軍人用販売機関等施設において遊興飲食する場合においては、その飲食の行為に対しては、遊興飲食税を、これらの人々が使用する電気及びガスのうち派遣国がその料金を支払うべきものに対しては、電気ガス税を、また、これらの人人が国際連合軍隊に勤務するごとによつて得る所得のみを有する場合においては、道府県民税及び市町村民税を、それぞれ課さないこととしております。  その三は、軍人用販売機関等国際連合軍隊軍人軍属及びこれらの家族の利用に供するためのみに行う事業に対しては、事業税を、国際連合軍隊の使用する施設内においてする不動産取得に対しては、不動産取得税を、それぞれ課さないことといたしております。  最後国際連合軍隊軍人軍属等が個人として所有する自動車または自転車に対する自動車税及び自転車荷車税は、証紙によつて徴収することとし、納税の便宜をはかるとともに、あわせて徴税の確保を期することといたしたのであります。  以上が本法律案提案理由及び内容概略であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことを希望する次第でございます。
  4. 中井一夫

    中井委員長 ただいま政府より提案説明を聴取いたしました本案に対する質疑は後日適当な機会に行うことといたします。
  5. 中井一夫

    中井委員長 これより警察法案及び警察法施行に伴う関係法令整理に関する法律案の両案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。両案に対する逐条質疑は、前会におきましては第一章総則について行つたのでありますが、まだ質疑が残つておるようでありますから、第一章総則について質疑をお進め願います。北山君。
  6. 北山愛郎

    北山委員 それでは第一章につきまして二、三簡単にお尋ねをいたします。  最初に、第一条に「公共の安全と秩序維持するため、」と書いてあります。この公共秩序維持するということは、この警察法の各条項にそういう文句が使われておるわけでありますが、この秩序というものの意味でございますが、これは言うまでもなく、平和な平静安寧事態の保持というような厳格な意味に解すべきではないかと思うのでありまして、いわゆる一定の社会経済秩序というような意味の、たとえば現在の制度は資本主義経済社会秩序となつておるわけでありますが、そういう特定の段階におけるこの一般社会経済秩序を守る、こういう意味に解されてはならない。そうではなくて、平静安寧事態を守るのだ、これが警察任務である、かように解すのが当然だと思うのでありますが、その点について御説明をいただきたい。
  7. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 ただいまの公共秩序維持するという趣旨は、北山委員の御意見通り考えます。
  8. 北山愛郎

    北山委員 今の問題はさよう考えるのが当然だと思うのでありますが、たとえば共産東党の場合におきましても、共産主義そのもの秩序のためには直接に警察の対象としては関係がない。ただそれがいわゆる暴力的な破壊的な方法でもつて動ごうとする場合にのみ関係があるのであつて警察任務としては共産主義そのものを押えるのではない、かように解してよろしいのでございましようか。
  9. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 共産主義公共秩序関係につきましても、北山委員の御意見通りでありまして、私といたしましてもたびたびその御意見のようにあらゆる機会に御答弁申し上げておる次第でございます。
  10. 北山愛郎

    北山委員 それからやはり第一条の中に「警察管理運営という言葉がございます。この管理運営についてはその他の各条にも「管理運営」という言葉がございますが、これは逐条説明のときにも若干触れられております。第一条にある管理運営という言葉は各条を貫いて同じ意味で使われておるのであるか、あるいは第一条における管理運営という意味と、その他の条項においては多少はその意味が違うのか。管理といえば内部的なコントロールである、運営というのは執行活動の面であるというふうな説明があつたのでありますが、第一条の管理運営という意味はその他の各条を貫くものであるか、その点御説明願いたい。
  11. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 管理運営意味につきましても御意見通りでありまして、本法案中各所に使つておりますのも同様の趣旨でございます。
  12. 北山愛郎

    北山委員 前にもどるようでありますが、秩序ということであります。おそらく公共の安全と秩序を守るという警察の目的からしまして、当面する情勢に応じて、新しい警察法提案をされたというふうに了解しておるのでありますが、政府といたしましては現在の日本国内における公共秩序というものは、いい方向に向つておると思うか、あるいは悪い方向に向つておると思うか、その点を伺いたい。
  13. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 日本公共秩序という面から考えますと、一口に通常治安情勢というような言葉表現いたしておりますが、終戦後の国民のいます。しかし今日の国際間に置かれました日本地位日本経済状況、これも国際関係と緊密に影響を持つのでありますが、それらを考えます場合に、今後もさらにさらに秩序状況がよくなることを念願いたすのでしりますが、しかし必すしもこのようになるかどうか、これらは一般国際状況国内状況とも関係いたしますので、将来のことにつきましてははつきりと断言はいたしかねるのでございます。今日までといたしましては大体良好な状況に向いつつあるものと申し上げられると思います。
  14. 北山愛郎

    北山委員 ただいまの答弁を要約いたしますと、日本の現在の秩序というものがさらに悪い方向に向うという経済上の変動が起るかもしれない、そこに一つ社会不安が起り、そこから秩序維持が困難になつて来る、その他の点につきましては、秩序は良好になりつつあるように思う、こういう御答弁のようであります。それでさらに秩序に関してお尋ねしますが、本年の初め以来問題となつております例の政、財界の汚職あるいは疑獄というような問題、要するに政界の腐敗というものが国民の前にある程度明らかにされておるようであります。これが国民民心に悪い影響を及ばすことは明らかだと思うのでありますが、このために公共秩序が悪くなるのではないか、かように政府側として、あるいは警察担当者としてお考えになつておるか、どうか、あるいはこの汚職疑獄というものの民心に及ぼす影響を何らかの形で御調査なさつていらつしやるかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  15. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 いろいろな汚職問題が何といいますか漠然と流布されておりますよりは、検察庁が真剣に今捜査をいたしておるという状態から、国民検察庁を信頼しております今日におきましては、この汚職がほんとうに解明され、その結果によりまして今後こういつた風潮が是正せられるであろう、かような期待を持つておるのではなかろうかと考えております。
  16. 北山愛郎

    北山委員 どちらかといえば経済的な変動であるとか、政界の問題であるとか、そういうことから社会不安というものが起り、公共秩序の危険が増大して来るのでありますが、それを警察権力によつて押えるということがはたして可能であるか、あるいは適当であるか、これについての国務当局の見解を承りたい。
  17. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 各種の政治経済状況から参りまする、そういつた秩序に対する国民の不安というものは、警察権力だけで押えられるものではございません。この本来のものをよくして行くということが肝要であると思いますが、しかしこの間に秩序を乱すような事柄が甚つて参りますれば、警察といたしましてはやはりどこまでも秩序維持するように専念しなければならないものと考えております。
  18. 北山愛郎

    北山委員 この問題はあの二重橋事件などの例をとつてみましても、あの問題が将来改善をされ、ああいうことがないようにするという処置は、もちろん警察のやり力を改善することもあるでありましようが、結局あの二重橋の修理であるとか、あるいは設備を改善するとかいうことが並行して行われなければならぬという実例をもつてしましても、これは警察権力によつて、こういうふうにいろいろな原因で起るところの公共秩序の危険というものを押えることは適当でないということは、政府としても十分お考えを願わなければならぬ点だと考えるのでありますけれども、この点はその他の経済政策なりあるいは社会政策なり、そういうものが並行して行われなければ、ともすれば警察権力にのみ秩序維持をまかせる、あるいはそれに依存するというようなことになつて行くということを、特に強く警告を申し上げたいのであります。  次に第三条でありますが、第三条は宣誓の問題、この宣誓の中に「日本国憲法及び法律を擁護し、」と書いてあります。従つて警察職員憲法の第九条あるいは前文で明示しております軍備の放棄と関連しまして、職員が再軍備反対というような思想を持ち、それを論議するというようなことは、これは憲法に矛盾したいばかりでなく、日本憲法を擁護することになろうかと思いますが、警察職員がもしさような行動をやつた場合には、この宣誓にかなうものと考えてよろしいかどうか。これは念のためにお伺いしておきます。
  19. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 ただいまの再軍備問題とかいうような問題につきましては、警察官といたしましても思想の自由はございまするし、また言論の自由もございます。従つてそれぞれの意見を表明することは何らさしつかえはございません。ただ再軍備問題のみに限りませんが、政治的に熱狂いたしまして、特殊の主張を通すために政治的な運動になるというような事柄になりますると、これは警察官本分に反すると思います。再軍備問題のみではございません。一般政治的行動というものにつきまして、警察官本分としておのずから守られるべき限度が存在するわけでございます。
  20. 北山愛郎

    北山委員 警察官本分と言うのですが、それは言うまでもなく地方公務員法なりあるいはこの警察法なりに掲げてある政治活動制限という、その制限の範囲内においてはもちろん許されるというふうに、当然これは解釈されると思うのでございます。  最後に、この条文の問題ではございませんが念のためにお伺いしておきたいのです。齋藤国警長官は四月十三日の都道府県議長会会合に臨みまして、この警察法審議についての説明の際に、府県警察本部長なりあるいは警察庁長官任免権とか、あるいは大都市警察というような問題について、根本的な修正を加えるということは、絶対に応じられないというような意味のことを言つたと報道されておるのでありますが、そういうようなことをその会合においてお話なつたかどうか、これをお伺いします。
  21. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 都道府県議長会議の際に、警察法国会審議状況及び重要なポイントについて話をしてもらいたいという点がございましたから、今問題になつておりますのは大都市の問題と、それから府県警察長任免権の問題が一番重要な問題として論議せられておると考えるということで、これらにつきまして政府の原案の、何ゆえ任免権はかようにしたか、何ゆえ大都市を認めないで府県一本にしたかという理由を簡略に申し上げたのであります。
  22. 北山愛郎

    北山委員 そうしますと、ただいまお話を申し上げたような根本的な修正を加えることには絶対に応じられないというようなことは、お話にならなかつたのでございますか。
  23. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私はそういう会合で、絶対に応じられるとか応じられたいとか言う立場ではございません。さような用語は使つておらないつもりでございます。
  24. 中井一夫

  25. 門司亮

    門司委員 私は最初大臣に一応はつきり聞いておきたいと思います。そのことは、今月十四日の当委員会において、改進党の鈴木さんの質問に答えて齋藤国警長官はこういう答弁をいたしております。又いわゆる警察法で定めでおりまするあの警察権能、これは本来国の統治権に基く作用でありまして、国と地方両者の利害に関係を持つものであります。」それからさらに同日の答弁、「御質問の御要旨を取違えたかもしれませんが、立法論としてできるのじやないか。統治権に基くような警察は、府県警察にしても、そうでない行政警察に属するようなものは、立法論として市町村に持たしてもいいじやないか。」こういうことを言われております。第一段のいわゆる警察権能というものは、本来国の統治権に基く作用だと言つておりますが、一体日本の国の統治権というものはどこに所属しているのか、大臣はこの齋藤君の答弁をそのまま承認されるかどうかということを、私はこの機会にまず聞いておきたいと思います。
  26. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 国が統治作用を行うということは、統治権という言葉を使う使わないは別として、これは一般に認識されることであると思います。同じ意味主権であるとか国権であるとかいうような言葉が用いられるのでありますが、旧憲法の場合は統治権というのは天皇に属するものでありますが、新憲法では統治権という語を用いておりません。従つて統治権という言葉が何か非常に旧憲法的な思想のように門司委員に響いたそのための御質問であるかと思いますが、主権または国権と称しまして、国民主権が存するものとしているのが、これが言うまでもなく新憲法理念でございます。従つて国民統治権の源泉である、こういうことなんです。統治権という言葉を使いませんでも、国がある以上統治作用というものは当然にある。その統治作用国民渕源する。これが主権国民にある、こういう表現なつた。こういうことだと思います。
  27. 門司亮

    門司委員 今大臣はまことに巧妙な答弁をされましたが、もし大臣の言うように、旧憲法における統治権、あるいは通称統治権という言葉の使われておりますのは、いわゆる統治権者と被統治権者とある場合に統治権という言葉が出て参るのであります。従つて今日の日本憲法には主権在民ということが明確に書かれて、統治権という言葉が出ておりません。今の大臣言葉で言うならば、やはり国の統治権国民にあるというようなことが当然憲法に出て来なければならぬ。今日統治権という言葉を使つておりますのは、たとえば占領統治であるとか、あるいは委任統治であるとかいう言葉国際的に使われております。この場合はいずれも統治する者と統治な受ける者との関連性がここに生まれて参つております。いわゆるその国の国民がその国の統治権がなくて、他に持つて行かれている場合にのみ、そういう言葉が今日国際的に使われております。従来の日本の国の統治権というものは、先ほどお話にあつたように、天皇がこれを持つてつた、いわゆる天皇の大権というものは何ものにも優先しておつた。ある場合においては憲法にもこれが優先するという形がとられた。旧憲法時代にはこういう言葉はある程度当てはまるかと思うが、現行主権在民になつております場合において、国の統治権作用というような言葉は、一体正しい民主主義言葉であるかどうか。この第一条には、民主主義理念に基いて、こう書いてある 一体民主主義理念とは何であるか。もし大臣の先ほどのような、主権国民にあるから、従つて統治権というものの作用はやはりそういう意味から来るのだというようなあいまいな答弁だとするならば、この場合、警察行政というものはやはりその主権を持つておる国民に由来するものである。国民に由来するということになつて参りますならば、それは旧警察法前文に書いてあるのが、やはりそういうことが当てはまるのではないか、こういうように私は解釈する。だからこの統治権という問題について今の答弁だけでは、私はこの警察法全体を見て非常におかしく考える。齋藤君の言つておりますように、主権が従来的にある、統治権者というものがいかにもほかにもるかのような表現犬わしておる場合には、こういう国家警察的のものが一応考えられる。しかし今の大臣の御答弁のように、国民にその主権があるといたしますならば、統治権というような言葉は、当然使えない言葉である。どこまでも社会秩序維持するということで事は足りているのじやないか。統治権という言葉は、明らかに統治権者と被統治権者の間における言葉だと私は考えるが、大臣はその点をどうお考えになりますか。
  28. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 民主主義理念というものは、言うまでもなく民主主義立場を根本とする考え方でありまして、憲法にいうところの、国政が国民に由来し、国民の信託によつて行われるべきものであるということでございますが、このことは、何も統治権というものはない、統治作用というものはないということではないのであります。国民統治権渕源である、そういう考え方でありますから、国民自身統治権の正体とする、こういうことなのであります。今のお話のように、統治権という言葉を使えば、一方に統治者と被統治者というものがあるということを前提にするというふうにお考えになりますが、現行憲法におきましては、国民みずからが統治者なのであります。統治権渕源でありますから、統治権という言葉は決してあなたのおつしやるような意味というふうに考えることはない。そういう考え方は少し行き過ぎといいますか、事を歪曲する考え方のように私どもには受けとれる。現に学者でも、田上穣治氏のごとき有数な憲法学者は、統治権という言葉を使つております。
  29. 門司亮

    門司委員 統治権というものの解釈は、やはり統治権といつております以上は、統治権君と被統治権者が当然なければならないと私は考える。ただそれは言葉のあやその他で、国民全体が統治権を持つておるのだという解釈をするとすれば、あるいはできないこともないかもしれない。国民全体が持つておるのだ、従つてそうなつて参りますならば、警察権作用というものは国民に由来するものでなければならないということになつて参りますと、結局民衆警察でなければならないという理念が私は出て来ると思う。いわゆる行政府であります政府が一切の警察権を握らなければ責任の所在が明確にならないから、握るのだというものの考え方ちようど齋藤君の言葉のように、統治権作用だから、これは政府が握るべきだという考え方は、古い思想のもとに考えればそういうことが考えられる。齋藤君の言葉をそのままとつて警察法を見れば、なるほどその通りだとよくわかる。ところが、国民の連帯的の責任において国の統治はやるのだという考え方から来ると、この警察法は少しおかしいと私は思う。どう考えても考えられない。それで一応統治権の問題を聞いたのでありますが、なお一言統治権の問題で聞いておきたいと思いますことは、国権最高機関国会であります。従つて日本における最高機関というものは国会でなければならないことは当然であります。従つて現行警察法におきましても、警察行政に対しましては、最高機関できめた公安委員会が大体主に当るようにこしらえてある。何ゆえ行政府であります政府大臣をこの委員長にしなければならないか。もし国民主権があつて国民に全体の統合的の責任の上に統治権があるとするならば、国権最高機関である国会の選定した公安委員会がこれを運営管理するということが当然でなければならない。何ゆえ一体総理大臣が任命する大臣がこの中に加わつていなければならないか、この点私は明確にならない。この点についてもう一度大臣から御答弁を願いたい。
  30. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 統治権という言葉は先ほどの答弁において尽きていると思いますし、また質問もその点についてはお触れにならないようですが、もう一度申し上げておきます。  統治権というものは、これは国が存在する以上、あるのであります。その統治権の上体がだれであるか、客体がだれであるか、こういうことだと思います。旧憲法下においては、国民統治権の客体であつたわけでありますが、新憲法下においては、国民そのものが統治権の主体である。だから統治権という言葉があるからといつて、非常に――何といいますか、専制政治的なものか意図しているような物の考え方は、これは当らぬと私は思います。田上教授のお話も聞きました。ここに我妻教授の新法律学辞典がございますが、ここにも統治権というものがございまして、統治権とは「国民及び国土を支配する権利。固有・不可分の権利で、国家概念の要素と説かれる。主権と呼ばれることもある。」こういうふうに書いてございます。ですから、統治権という言葉を現在使うことは誤りであるというような御議論は私は無用であると思うのであります。  さらに国務大臣委員長になるのは何ゆえかということでありますが、しはしば申し上げたのでございますが、それこそ民主主義理念に基きまして、内閣というものは、国民の選びましたものをさらに国会において選挙してつくられる。その内閣が行政権々行使するのでありますが、これは政府国会に対して責任を負う。国会に対して責任を負う以上、国務大臣が行政委員会委員長になることは少しも矛盾はない。のみならず、私はむしろよい意味において、国務大臣が国家公安委員会委員長であつてお互いに始終接触することによりまして、その間に意思の疏通がはかられる。しかも国務大臣は、ことに表決権を持たない、採決権だけある、こうした関係でございます。大臣というものは国民から遊離したもののような、あるいは先ほど統治者であるようなお話がございましたが、新憲法下におきましては私どもはそういう考えは持つておりません。大臣みずからが国民の代表である、こういう気持でおります。
  31. 門司亮

    門司委員 そうなつて参りますと、内閣の構成論から問題になつて参りますが、内閣の構成は、必ずしも国民の選んた国会議員が大臣になるわけでありません。その三分の一は、国民の選んだ国会議員でない人が内閣総理大臣の自由に任命されることになつております。国会は内閣総理大臣は選ぶのでありますが、内閣総理大臣の権限に属しております、三分の一までは一般の人でよいという人に対しては、これは国民も信頼しておらない。国会の承認というものは得られておらない。認証官であることに間違いない。そういう議論をして参りますと、だんだん議論が発展して参りまして、今の大臣の御答弁の、内閣は国会責任を負うものであるということには間違いがない。しかし私が申し上げておりますのは、国民国権の総合的な権利があるとするならば、いわゆる統治権というものがそこにあるという解釈を一応して参りますならば、これは当然国民相互の責任において警察制度というものが設けられなければならぬ。このことは現行警察法前文には明確に書いてある。いわゆる社会と個人の責任の自覚の上において治安を維持するものであると書いてある。従つて私は今の大臣の御答弁からいたしますならば、現行警察法前文のそういう文字を使わないで、ただ民主的理念を基調とするという文字だけをここに使つておりますることは非常に不可解である。ほんとうに大臣がそういうお考えであるとするなら、国の統治権というものについてはもう少し国民の関与する― いわゆる国会が選びました行政委員会ができておる。しかもこれは何も行政府である政府に直属しないものでも何でもない。内閣総理大臣の所轄のもとにあるということが明確に書かれておる。ここにも私は現行警察法でちよつともさしつかえないように考えるが、もう一度聞いておきますことは、統治権に基く作用であるという一つの考え方であります。それから警察作用という言葉をよく使つておりますし、統治権作用という言葉を使つておりまするが、国の統治権というものは、何も警察制度だけが統治権に腐するものではございませんで、統治権に属するものはそのほかにたくさんある。そのほかの行政委員会というようなものについては、今日別段大して問題を起しておらない。ただ大臣の行政委員会委員長をやつておるものがないではありませんが、ことに警察制度におきましては、先ほど来申し上げておりますように、現行警察法で明らかに国民主権者である、従つて国の秩序維持するためには社会と個人の責任の自覚の上においてこれを遂行するということを明確に害いておりまする以上は、やはりこういう主権といいますか統治権というような言葉自身は非常に古いものの考え方である。この言葉から来る警察の制度に統合されるものであるというように考えないわけには行かない。そこでもう一、二聞いておきたいと思いますことは、民主的の理念というその言葉であります。民主的理念というのは一体警察というか現行警察法前文のすべてをここに表わしておるものであるかどうか、その点の説明をいま一度聞いておきたい。
  32. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 民主的理念ということにつきましては、先ほども申し上げましたから省略いたしますが、要しまするにこの前文にうたつてございまするそのことを第一条に目的として掲げたのでございます。なせ前文というものをやめたかといいますると、わが国の法体系上前文というのがありますのは、きわめて異例のことでございまして、国民の親しみやすい法規とするためには、この方がよかろうということで実質的には何らの差異はないのでございます。
  33. 門司亮

    門司委員 この警察法総則全体と現行警察法総則を見て参りますと、大体同じことが書いてある。現行警察法の第一条と第二条が大体今度の第二条にあてはまる。二つが一つに統合されております。それから第三条は現行警察法と大体同じようなことが書いてある。ところが第一条の目的というところに、今の御答弁のようだとするならば、「民主的理念を基調とする警察管理運営を保障し」というように書いて参りますと、現行警察法前文そのままがこの第一条に入れらるべきではないかと考えるのですが、何ゆえにこういうふうに字句をかえて来たのか。この点私は非常におかしいと思う。総則全体を読んでみると、現行法の前文から第三条までと、今度の総則の第一条から第三条までは、ほとんどかわりはないように考えられるのですが、何ゆえにこういう新しい問題になるような字句をここに書かなければならないのか、この点もう一つ御説明願いたい。
  34. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 第一条の趣旨は、前文とまつたくかわりのないことは、大臣からもしばしば申し上げておる通りでございますが、しからはなぜ前文そのままを第一条に持つて来なかつたか、前文を置かないにしても、前文の文句をそのまま第一条に持つて来なかつたかという御質問でございますが、御承知のようにこの警察法は向うから示されまして、これを翻訳することについて一言半句もかえてはならないというきついお達しのもとに翻訳されたわけですが、この前文をよく読んでみますと、日本の文章といたしましては非常にわかりにくくて、普通の法律に表わす場合にはあまり適しないのではないか。これをほんとうに日本的に書き改めれば第一条のようになるのではないかというので、これはずいぶん法制局とも苦労をしてつくつたのでございますが、そういうようなわけでございます。別に他に意図はございません。     〔委員長退席、佐藤(親)委員長代理着席〕
  35. 門司亮

    門司委員 それは齋藤君、非常に詭弁だと思うのです。苦労したというのは、この前文にあります「国民のために人聞の自由の理想を保障する日本国憲法の精神に従い、又、地方自治の兵義を推進する観点から、」ということが、おそらく問題であろうと思う。また「国会は、秩序維持し、法令の執行を強化し、」とも書いてあります。これが前文には書けなかつた。私は苦労されたというのはそこだと思う。これが自治警察であるのか、国家警察であるのか明確になつておらない。もし前文通りに地方自治を推進するためというような文字を書くということになつて参りますと、これはこういう警察法案は書けないはずである。従つて答弁を願いたいと思いますことは、前文と同じだというなら、一体地方自治の推進ということは、今提案されております警察法では、どこで地方自治の推進をされようとするのか。この点をもう一つお聞かせ願いたいと思います。
  36. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 この点は府県警察についてたびたび申し上げておりまするように、現在は国家地方警察の面におきましては、全然自治的色彩はございません。それを都市警察と一緒にいたしまして府県の自治警察という面を表わしたのであります。都市の面から見ますると同じ自治警察でありましても、今度は国に従属する点がございまするが、国家地方警察の面から見ますると、自治の方が非常に推進されたという形になるわけでありますが、警察全体といたしまして自治というものを非常に尊重して取入れておるのであります。
  37. 門司亮

    門司委員 自治を尊重なさるというなら、それならもう一ぺんもとにもどりますが、先ほどの御答弁のように国の統治権に基くものであるという考え方から来る。さらに警察制度はその統治権作用であるということになつて参りますと、従来の警察行政というものは、国の統治権に属するものだというように解釈してよろしうございますか。
  38. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 今日の警察法も、今御審議を願つておりまする警察法案も、この点には何らかわりはございません。
  39. 門司亮

    門司委員 そうだといたしまするならば、この警察法は明らかに国の統治権に属する警察権作用であるということになつて参りますと、府県自治警察といつても、これは機関委任の形であると解釈してよろしゆうございますか。
  40. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 団体委任だと考えております。
  41. 門司亮

    門司委員 私は大体団体委任だとは考えられないのであります。少くとも今のお話のように、統治権はむろん国民全体の総合的責任の上において国にあるというように一応考え、そうして警察権はその統治権の一つの作用であるということになれば、明らかに国家事務であるというように解釈することが私は正しいと思う。従つてこれを府県警察にするということは、一応機関委任の形でなければならないのであります。私は少くともこれが団体委任の形ではないというように解釈する。どういうことで齋藤君はそういうことを言うのか、従つて本部長は国家公務員であり、さらに警視正までが国家公務員であります。明らかにこれは機関委任の形以外に私には考えられない。団体委任の形ではないと考えられる。
  42. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 機関委任でありまするならば、その機関の組織の構成等につきましては、すべて法律あるいはそれに基く政令で行わるべきものであろうと考えるのでありますが、府県警察につきましては、先般も申し上げましたように、国で留保いたしておりまするもの以外は一切府県の条例にまかせまして、府県の自主的な考えのもとで、その府県警察の組織も府県の自由な意思できめていただく、かようにいたしておるのであります。この点が機関委任と団体委任の相違であろうと考えております。
  43. 門司亮

    門司委員 今齋藤君は条例にまかせると言つておりますが、府県の条例にまかせるものは一体何であるか。府県の条例にまかせる範囲というものは、おそらくきわあて少くして、そして枝葉末節のことである。しかも警察制度の最高機関である本部長及び警視正というようなものが国家公務員であることは間違いはない。それらの諸君は地方の条例では左右はされません。同時に警察の制度というものは、この警察法を読んでみまするならば、――これは次の五条で議論すべきものであると思いまするが、五条をずつと読んで参りまするならば、明らかに警察職員の任用その他についてもやはり国がさしずをするようになつておる。府県は単に費用を負担する関係から、平つたく言えば、公安条例程度のものはあるいは府県にまかせられるかもしれないが、それ以上のことは私はなかなか府県の条例だけでは簡単にやれないと思う。同時に先ほどから申し上げておりますように、岡が命令した国家公務員であつても、これが機関委任でないと言えるかどうか。しかもそれは明らかに首脳部である。警察行政を握つておる首脳部が国家公務員であつて、これが機関として入つている以上は、川らかに機関委任に間違いはないと思う。これが団体委任ということで行つて、真に現行警察法前文と同じ意味だというのなら、私は地方にすべてが委譲さるべきであると思う。それなら一応団体委任の形で私は受取ることができる。これを団体委任であるとは私はどうしても受取れない。もう少しはつきり団体委任と機関委任の形を示しておいてもらいたい。
  44. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 これが団体委任でありますことは、法律の体裁から見ましても、先ほど申しましたように、府県警察の組織あるいは人事管理等につきまして、すべて府県の条例にまかせておるのであります。必要な最小限度は法律で規定している面がありますが、しかし原則は府県の条例にまかせておるのでありまして、ただいま仰せになりました公安条例のごときは、これは組織とは関係ございませんで、別の系統に関する条例でございまするが、この組織に関するものといたしましては、府県警察をいかに組織するか、府県警察本部の部課の組織をどうするか、署をどこにどういうぐあいに置くか、あるいは人事、給与その他はすべて府県の条例であるわけであります。警察の事務は府県に団体委任をいたしまして、国の官吏は、府県の委任事務となつた、国体に委任されたその事務を執行するために、地方の職員として入るというわけでありまして、府県機関に仕事をやらせるというのではないのでございます。
  45. 門司亮

    門司委員 今の御答弁でございますが、私は少くとも先ほどから申し上げておりますように、県がこれを行うというように言われておりますが、警察の所在地をどうするとかこうするとかいうことが一つの組織の上に必要であることは間違いないのでありますが、それよりも重要なことはいわゆる人事の管理であります。人事の管理は、人事権というものを国家公務員である本部長が握つていることは間違いがないと思う。これ以上のことは警察の通常の組織の構成である。私は警察の組織の構成の最も重大なことはやはり人事権でなければならないと考えられるのであります。それは何度も申し上げておりますので申し上げませんが、警察自体人事権というものが一番重大な問題であるからである。従つて提案されておりまするこの警察法の一条の中には「警察管理運営を保障し、」という文字を使つておりまするが、現行警察法には「この法律において行政管理とは」あるいは「この法律において運常管理とは」ということでそれが一応明確に規定されている。そして人事管理あるいは運営管理というものが法律の文面にはつきり現われて来ている。ところが今度の新警察法にはそのことがただ「管理運営」という文字しか使つていない。ここに私はごまかしがあると思う。齋藤君の言うようにはつきりしておるなら、なぜこの問題をもう少しはつきりしないか。人事管理というものをだれがやるのか。府県の人事管理というものは国家公務員がやることは間違いがない。だからもし一応団体に委任しておるというのならば、これは明らかに一つの機関そのままが委任されているのである。府県が自由に警察制度というものを法律の範囲内でこしらえることはできないのである。人事権を持つているわけではないのである。国の出先機関であるということには間違いがないのである。これはどうしても私は今の齋藤君の答弁だけでは承認することはできません。しかしこれも押問答しておつてもしようがありませんから、次に聞いておきたいと思いますことは、さつき申し上げましたように、「警察管理運営を保障し」と書いてありまするが、一体この法律で言つております「管理運営」というものは一体何をさしておるのか、この点をひとつ明瞭にしておいていたたきたい。
  46. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 第一条におきまして、「管理運営」という言葉を使つておるのでございます。これは逐条説明のときにも申し上げたのでありますが、警察管理とは、警察に対しまするところの一つの機能を内面的に見まして、これを内面的にコントロールするというように申し上げました。現行法の前文に例をとりますならば、警察権というものの主体が国民に属する、国民に属する民主的権威の組織を確立する、こういう気持でございます。それから運営の力は外部に対しまするところの警察活動を意味するようなふうに使つておるのであります。現行法の前文におきましても、警察運営を民主化する、運営自体、働き自体を民主化するという精神が現われておるのであります。それで先ほどお尋ねがございました現行法の方には、第二条に行政管理運営管理というふにわけておりますが、これは行政についても管理運営についても管理、つまりその作用について管理の面をさらに二つにわけまして、行政的な作用運営的な作用にわけているのでありまして、この法案管理運営現行法の行政管理運営管理の区別とは違うつもりでございます。
  47. 門司亮

    門司委員 私も違うのたと思うからその説明を聞きたいのです。どういうふうに違いますか。
  48. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 この法案の中におきまして、この管理運営がどういうところに現われているかというお尋ねで、あるかと思うのであります。  第一の場合にはただ見方といたしまして、機能自体を内部的に見るか、あるいは外部に対する働きの上から見るかという違いでございますので、その両方の精神はいろいろな形になつて、この法案の各所に現われるわけでございます。府県警察に一本化しておるというようなことにつきましても、公安委員会管理下にあるということは、あくまで民主的な理念を悲調として警察管理なり運営なりが、国民を代表する公安委員会によつて行われる、こういうところに最も強く現われていると思うのであります。  それから府県警察の性格につきましても数々のお尋ねがあるのでございますが、しばしば御答弁がありましたように、できるだけ自主的な性格を与えることによりまして、予算その他の審議を通じて、県議会を通じて府県民から公正なる批判を受ける、こういうことにつきましても、民主的な理念を基調とする警察管理運営を保障するという重要な点であろうかと存ずるのであります。
  49. 門司亮

    門司委員 今の答弁ですが、現在提案されておりますこの管理運営答弁には私は当らないと思うのです。私の聞いておりますのは、この管理運営は行政管理も含まれる、さらに現行法に運営管理という二つの言葉が入つておると私は思つておる。現行法にははつきりそう書いてある。従つてもしそうだといたしますならば、行政管理の中にかりに人事権が含まれるとするならば、府県公安委員会が人事権を持たなければならない。ところが警察の一番の長であります本部長あるいは警視正までの人事権を持たぬ。住民の批判だとかなんとか言つておりますけれども上から出て来るのですから批判は何もできやしない。悪いとかいいとかいう批評はできるかもしれませんが、しかしこれは管理権ではない。完全なる管理権というものは罷免権、任命権を持たなければなりません。従つて提案されておる一条等に書いてある管理運営と、現行法の行政管理あるいは運営管理を二つにわけておることは非常に意味が違つておると思う。今明らかに運営管理が、あるいは行政管理がこれに相当するものではないという御答弁があつたが、その通りであるとするならば、もう少し詳しく聞かないと、私どもにはさつき申しましたような疑いが出て来る。行政管理がある場合については、府県住民の民主的な批判あるいは監視の描くところだというような御答弁が今ありましたけれども、実際上の人事権というものは上の方の人事権が下にないのであつて、しかも国家公務員である諸君がすべての人事権を握つているのである。私は必ずしも住民の批判とかなんとかいう言葉は当らぬと思う。従つて現行法の運営管理と行政管理は非常に大きな開きがあるのではないかと思う。今の御答弁では私どもは承知できません。もう少しはつきり言つてくたさい。
  50. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 新警察法案におきましては、行政管理運営管理とは使いわけをしておりません。すべてこれは行政、運営両方とも管理という面から見た場合には管理という言葉で表わしておるのでありまして、現行警察法ではたとえば国家地方警察においては、府県の公安委員は運営管理はやるけれども行政管理はやらない、こういうようになつておりますけれども、今度の警察法では行政管理運営管理もすべてやりますから、従つて警察管理という言葉で表わしておるのであります。区別する必要を認めなかつたからであります。この管理の中には人事管理も当然入つておる。そこで任免権を中央が持つということは、それだけ非民主的になつたじやないかという御意見であろうと私は思うのであります。この国家地方警察の面におきましては、現在はすべて国家公務員で国の任命に属し、人事管理につきましては府県の公安委員はもちろんのこと、府県市町村も何ら干与ができなかつたのでありますが、これが警察長及び警視正以上の者につきましては、なるほど中央の任命にはなりますが、しかし府県公安委員会も懲戒罷免の勧告の権限も持ち、また府県警察本部長が自分の部下を任免する際にも公安委員会意見を聞かなければならない。また任免だけでなしに、給与その他一切の人事管理の点につきましては中央に法律によつて留保されておる以外はすべて府県にまかして行く、すなわち公安委員会管理の権限になつておるのであります。その面においては人事管理につきましては国家地方警察の面から見ますと、今までよりも非常に民主的になつて来た、こういうわけであります。一切合財今日の自治体警察と同様の扱いに府県警察をいたします、ならば、その面からは非常に地方分権的ということは言われますが、しかし警察の性質上国に若干留保をする必要のあるものはこの法案において留保をせざるを得ないということを建前にいたしておるのでございます。
  51. 門司亮

    門司委員 大体政府の意図が一条関係さらに二条の関係が、やや明確になつて来たのでありますが、警察制度自身について私は齋藤長官の方がどういう警察の制度でなければうまく行かないということについてはよく知つていると思う。今齋藤君は国家地方警察については運営管理はやるが、行政管理をやらない、こう言つておりますが、警察の制度というものはこれを今のような制度にするか、あるいはこれを一本にしようとすれば、結局今政府提案しておりますようなこういうぬえ的な、国家警察ともつかなければ自治警察ともつかないぬえ的なものにしなければ警察行政というものが日本においては非常に困難であるということは、齋藤君自身がよく知つていると思う。もしこれができなくて府県単位の完全なる自治体警察になれば、これはアメリカのFBIというようなものをこしらえなければ警察の完全行政は行われない。これがいいか悪いかということは、日本の国では考えられるが、いわゆる国家の犯罪というか、あるいは国みずからが広汎な犯罪その他に対しては、これを即時取締るだけの力はどうしても持たなければならぬ。そうするならば、国の中央の警察にやはり、牛足というものが必要になつて来る。だから問題になりますのは、現行警察制度はその点を一応調和をいたしております。そうして自治警察の持てる範囲には自治警察を持たせる。そうして警察の目的というものは自治警察をどこまでも中心として民主警察にする。なお経済的にあるいは能率的に持ち得ない地方に対しては、犯罪その他もある関係からこれを国家地方警察という一つの制度のもとに行わしておるのである。従つてそこの調和がここでとれておるのである。自治の本旨というものがここにも少しばかりところどころに書いてあるようでありますが、憲法の九十二条にいう自治の本旨というのは、市町村をその基調とするということは大体学者の一定した意見であり、今日だれも疑わない一つのまとまつた意見であるということには間違いないと思う。従つて現行警察法ではこれを民主警察にするにはその市町村を主体とする市町村自治警察というものが、一応の警察のあり方では正しいのである。しかしそれを先ほどから申し上げましたように、能率的にも経済的にも維持することのできない部面がたくさん出て来るのである。もしも国家的犯罪その他を取締ることのための行政の責任が内閣にあるとすれば、やはり内閣総理大臣の所轄のともに行政委員会を組織して、その行政委員会運営管理のもとに、あるいは行政管理のもとに国家地方警察というものを置くことがいいということが、私は現行法の建前であると思う。このことは、日本の今日の民主主義理念としたとここに書いてあるが、まつたく民主主議を理念とした警察制度の現われだと考えておる。しかるにそれを変更いたして参りまして、国の統治権作用警察制度であるからというような変なりくつをくつつけて、そうしてこれが国家警察ともつかなければ、自治警察ともつかない――今齋藤君はいろいろ中されておりますけれども、実際の運営が、人事管理というものが上に握られておつて一体正しい運営管理、行政管理というものができるかどうか、これは他人が押しつけて来た  私はここで強くは申し上げませんが、一応定めた人間について、しかもそれの罷免権も任命権も持たない者が、ただ単に勧告することができるという条文があるからといつて、それだけで住民の監視という言葉は当てはまらないと思う。「ここに「民主的理念」という言葉と、さらにこれから発展して参ります前段の「公共の安全と秩序維持するため、」と、こう書いてある。従つて私が今度聞こうと思いますことは、「公共の安全と秩序維持するため、」ということと、現行地方自治法の二条の三項との関連性であります。この関連性一体どうお考えになつておるのか、一応説明をしておいていただきたいと思います。
  52. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 地方自治法の二条と、警察法のこの公共の安全、秩序維持との関係はどう考えるべきかというお尋ねでございますが、私は文字の趣旨は大してかわらぬであろ)と存じます。警察法に用いておりますのは、この警察はこういう目的及びこういう責務を持つた警察官というものべ公共の安全、秩序維持するという立て方でございます。地方自治法にありますのは、これはもつと広く、自治体の公共事務をも含めて、住民の秩序、安全の保持をはかる責務があるというように書かれてあるのであります。しからば地方自治法の第二条たけで、警察組織が法律に基かずにかつてにつくれるかというと、そうではないのであります。警察法に言う警察を持つためには、警察法というもので規定されなければたらない、かように考えておるのであります。
  53. 門司亮

    門司委員 今の答弁ではちよつとおかしいのです。警察法を持つか持たぬかということは、新しい法律できめられることはわかり切つておるのである。従つてわれわれが考えおりますのは、この地方自治法の第二条の三項を完全に遂行するというためには、やはり警察法もこれに合せれば、現行警察法のように、地方の自治体が警察を持つて行くという能度が一応正しいのではないかというようにわれわれには考えられるのである。広い意味だといつておりますが、広い意味であることには間違いはないのでありまして、いわゆる今日の行政警察の面というのは主としてやはり地方の自治体の長の持つております権限等に非常に密接な関係を持つておりまして、市長あるいは町村長の持つておる権限というものと、行政警察の範囲というものは、ほとんど似通つた範囲にできておるのであります。従つて警察制度自身も、私どもから考えるならば、これは当然地方の自治警察、いわゆる市町村を中心とした自治警察が正しいというように一応考えざるを得ないのであります。今の齋藤君の答弁ではどうもその点が私には納得が行かないのであります。  それから同時にこの問題で私がもう一つ第一条の観点から総合的に一応聞いておきたいと思いますことは、今申し上げましたように、公共の安全と秩序維持することのためには、やはり自治法にも書いてありますように、これは法律で義務づけられた地方自治体の一つの仕事であるということには間違いがないのであります。従つてその中に含まれる警察制度というものについては、その運営の面、いわゆる外部の面に対しましても多少国家的の色彩を持つものがあり、地方の自治体にもこれをそのまま適用するかどうかということについては、多少の問題が残るでありましようが、少くともこの自治法の観点から申し上げて参りますならば、この警察法というもの自体は、やはりここの前文にも書かれており、また「地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保を図るとともに、地方公共団体の健全な発達を保障することを目的とする。」ということが現行地方自治法第一条の後段に書いてありますが、そういうことが自治法第一条の後段に書かれるということは、この範囲には広汎な警察行政というものも含まれているのじやないか、そして第二条三項はそれを受けて立つている一つの条文ではないか、こういうように私は解釈する。従つて今日の地方自治法の観点から申し上げて参りまするならば、この第一条はあくまでも現行警察法前文をそのままここに趣旨として書くことが、どう考えても正しい書き方であるというように私は解釈するのであるが、当局はこの自治法の第一条の後段に書かれておりますものと、この新しい警察法の第一条との関連性についてどうお考えになるか、その点をもう一応聞いておきたいと思います。
  54. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 市町村警察を持たないということになつた場合に、地方自治法第一条後段の目的を著しく阻害して、この第一条違反になるじやないかという御趣旨であろうと思うのでありますが、政府といたしましてはさようには考えておりません。もししかりといたしますならば、今日の五千以下の町村は、この第一条によつて健然な発達を保障されないし、この総則市町村のみならず、府県にも通じた総則でございまして、従つてこれは当然に市町村警察維持するということを前提にし、もしそれでなければこの総則趣旨と自治法第一条の趣旨を著しく不満足なものにする、かようには考えておらないのでございます。
  55. 門司亮

    門司委員 それは齋藤君の答弁だから私はこれ以上追究しませんが、齋藤君はよくわかつていると思う。さつき申し上げましたように、警察法の本旨というものはあくまでもこの自治法というものの上に立つたものの考え方があると思う。従つて自治警察を中心として考えている。五千以下の町村のような、能率的にも、あるいは経済的にも維持することの事実上困難であるものにむりに警察を持たせるということは、これは警察を主管しておる齋藤君の意見としてはどうか。へりくつといつては悪いかもしれませんが、あまりりくつに走り過ぎやしないか。警察法審議する場合におきましては、警察法のよつて来る原因と、さらに警察法のよりよき運営をすることのためにはどういう制度が必要であるかということを考えなければならぬ。従つて基本的にはこういうものであつて運営の面でそれがよろしきを得ないとすれば、それはやはり除かれなければならないということは、法律をつかさどるものは当然考えて上がるべきものだと思います。何も規定がそうたからといつても、一応の基本的な理念というものははつきりすべきだと思う。そういうところに持つて行かないから、今のように府県警察と称しておきながら、ただ単に国家公務員が一切の警察官まで任命するというような権限を持たせなければならないというりくつはどこにも成り立たぬと私は思います。従つて私の聞いておるのは、一条の規定においてこの現行警察法前文を入れておるといつておりなから、実際は現行警察法前文趣旨が入つておらない。現行警察法前文は私がさつき読みましたように「地方自治の真義を推進する観点から、」こう書いてある。いわゆる「真義を推進する」と書いてある。この精神が第一条にはまつたく没却されておるから私は聞いておるのである。私はそれならもう一言」の第一条についてのみ聞きたいと思いますが、この第一条の規定によつて現行警察法でいう地方自治の真義を推進することができますか。
  56. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 府県の自治の推進というものには非常に役立つであろう、かように考えておるのでございます。
  57. 門司亮

    門司委員 府県の自治の真義といいますか、私はその点はおかしいと思うのです。さつきから申し上げておりまするように、憲法九十二条に言う「地方自治の本旨」とは、市町村は基礎的団体であるということは間違いないと思う。そうすれば現行警察法でいう「自治の真義」というものは地方の市町村をさしたものだということは私は妥当だと考える。府県現行警察法において自治体になつておるから、従つてどつちでもいいのだという答弁は私は当らないと思う。こういう答弁は私はなかなか了承するわけに参りません。少くともこの現行警察法前文が一条に織り込まれておるとするならば―この警察法の重大な点はここにもあるのであつて、いわゆる国民のために人間の自由を保障する日本国憲法の精神に従い、また「地方自治の真義を推進する観点から、国会は、秩序維持し、法令の執行を強化し、個人と社会責任の自覚を通じて人間の尊厳を最高度に確保し、個人の権利と自由を保護するために、国民に属する民主的権威の組場織を確立する目的を以て、ここにこの警察法を制定する。」こう書いてある。     〔佐藤(親)委員長代理退席、委員長着席〕 従つて現行警察法はあくまでもこの日本国憲法の精神に従つて地方自治の真義を推進するという観点からということに間違いはないのである。この前文が先ほどからの答弁にありますように、第一条に入れてあるとするならば、当然地方自治の真義を推進するということになれは、地方の市町村を主体とした警察法のあり方でなければ、前文がこのまま織り込んであるものとは言えないと思う。だから私はいろいろ聞いておるのです。もう一度お聞きしておきますが、前文と同じであるとするならば、地方自治の真義とは一体何であるか大臣に聞いておきたいと思います。
  58. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほど民主的理念は何かということでお答えをしたのでありますが、民主主義立場とする根本的な物の考え方におきまして、やはり国民の基本的な人権が保障されると同時に、また地方自治の尊重という観念を包括するものであります。警察統治権のところでもお話申し上げましたように、国民のために国民にかわつて警察行政を行う、こういうことでございますからして、地方自治の本義は民主的理念ということをもつて、地方自治の理念を尊重するという考え方は含まれておるものと考えております。
  59. 中井一夫

    中井委員長 この程度で午前中の審議は休憩に入りたいと思いますが、この際各委員にお諮りいたしたいことがあります。すなわち連合審査会開会に関する件についてであります。御承知の通り人事委員会より警察法案につきまして連合審査会を開会いたしたき旨の申出がありますので、同委員会と連合審査会を開くことに御異議はありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  60. 中井一夫

    中井委員長 なおこの際申し上げますが、本案につきましては、すでに法務委員会とも連合審査会を開くことに決定されておりますので、開会する場合は法務及び人事の両委員会と同時に開くことにいたしたいと思いますが、その日時につきましては委員長協議をいたしました結果、来る五月六日午前一時半より開会することに決定いたしましたから、ぜひ御出席御審議をいただきたいと存じます。右御報告申し上げます。
  61. 灘尾弘吉

    灘尾委員 ちよつと希望を申しげたいと思いますが、だんだん会期も切迫して参りましたので、ただいまお諮りになりました連合審査会もとよりけつこうでございますが、会期の関係もございますので、本日の審議については極力お進めを願うこととし、また連合審査会の済みました後、時間的余裕がございましたら、できるだけ本委員会審議をお進め願いたいと思いますので、この点お諮りを願いたいと思います。
  62. 中井一夫

    中井委員長 灘尾君の御発言ごもつともと存じます。ぜひそういたしたいと存じますから、各位におかれましても特別御勉強を願います。  それでは午後二時まで休憩いたします。     午後零時四十八分休憩      ――――◇―――――     午後二時五十八分開議
  63. 中井一夫

    中井委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  警察法案及び警察法関係法案を一括議題とし、午前の会議に引続き第一章総則についての質疑を行います。門司君。
  64. 門司亮

    門司委員 午前中に第一条については一応ただしておきましたので、同僚各位の御注意もございますので、この際第二条に一応移つておきたいと思いますが、この第二条に総括的で一応聞いておきたいと思いますことは、現行警察法の二条の中には、ここに新しい警察法に示されておりますもの以外に「逮捕状、勾留状の執行その他の裁判所、裁判官又は検察官の命ずる事務で法律をもつて定めるもの」いわゆる刑事訴訟法、刑法等に関係した条文がここに書かれておるのでありますが、新しい警察法にはそういうことが書かれておりません。これは一体どういう理由でこれをお書きにならなかつたのか、その点を聞かせておいていただきたいと思います。
  65. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 ただいま門司さんの御指摘の現行法の第二条の六号、「逮捕状、勾留状の執行その他」云々の規定を削除したのはどういうわけか、これは現行法におきましても、警察の責務の範囲に当りますものは、現行法の第二条でございませんで、第一条の規定するところでございます。第一条は「国民の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の捜査、被疑者の逮捕及び公安の維持に当ることを以てその責務とする。」とあります。今度の百法案の第二条第一項におきましては、現行法の第一条第一項にあたります責務の範囲を掲げたのでございます。従いまして、その点におきまして現行法の第一条第一項と、法案の第一条第一項を対比してごらんをいただきたい。しからば第二条の六号をどうして削つたかという問題がございますが、先ほど長官からもお答えいたしましたように、今度の法案におきましては、あえて行政管理運営管理の区別をする必要はないという考え方に立つておりますので、行政管理運営管理についてのこまかい区別はやつておらないわけであります。現行法の第二条の運営管理の範囲におきまして掲げられている各号の事項が、ちようどまた現行法の第一条第一項の事項と大体似たようなことでございまして、ただ交通の取締りとか、六号の今御指摘になりましたような事項は、責務という中には掲げてないわけであります。法案の第二条は責務一般を示すものでございますので、特にこまかいものまでは規定をしなかつたという意味であります、ことに交通の取締り等は代表的なことでございますので、現行法の第一条には載せてございませんが、今度の法案の第二条には入れましたけれども、六号の「法律をもつて定めるもの」、特に他の法律によつて定めて、それを警察官が義務として執行するというようなことは、法律の定めがあれば当然しなければならぬことであると存じますので、あえてこの責務の範囲としては規定をいたさなかつた。こういう事柄がないという意味ではないわけでございます。そういう意味でありますので、御了承いただきたいと思います。
  66. 門司亮

    門司委員 今の御答弁でございますが、警察官の職務の執行、いわゆる責務の中には、現行法で当然そういうものがございます。同時に刑事訴訟法等の検察官との関係においては、御存じのように検察官は警察官の罷免を要求する権利を持つております。従つて警察官が検察官の罷免の要求をする権利を持つております以上は、やはりこれは重大なる警察官の責務に所属するものであつて、単にほかの法律できめておるからいいというような筋合いではないと思う。ここに書かれております範囲は、他の法律によつてそれを云々されておるものは警察官自身の責務ではなくて、しいられるというと語弊があるかもしれませんが、他の法律からの規定によつておのずから責務ができるのであるから、警察官の責務とはおのずから別であるという解沢のように私は聞いたのであります。この解釈は行き過ぎであるか、あるいは行き足らざるものであるかであつて、一方において検察官等はそういう罷免の要求をするようなある程度の命令権を持つておりますし、また裁判官等の命ずる単なる被疑者の逮捕でなくて、逮捕状の執行も当然警察官の責務であり、これを拒否するわけには行かないのだというふうに考えて参りますと、勢いこの責務の中にはこれが入れられるべきであるか、そして、警察官の責務というものを、やはりできるだけはつきりさせておくということが、警察行政の上にはいいのではないかと考えるのであります。今の答弁だけでは私は満足するわけに参りませんから、そういう場合には、警察官の責務に属するのか、属しないのか、この点をもう少しはつきり聞いておきたいと思います。
  67. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 御指摘になりました現行法の六号のようなことは、警察官の責務の中に入らないのだという意味では決してございませんので、そういうことをその通り具体的にここに例示しなかつたということでございます。第二条の字句について申し上げますならば、交通の取締りというところまでは例としてあげまして、「その他公共の安全と秩序維持に当ることをもつてその責務とする。」ということで、これらの事項も広い意味においての公共の安全と秩序維持、その他の中に入るものとして読んでおるわけでございます。そのほかにおきましても、警察官の責務の中には、それぞれの法律によりまして、あるいは火薬の取締り、危険物の取締りといつたようなことにつきまして、警察官の責務を与えているようなこともあるのでございます。それ以上に六号の事項はさらに重要な事項だから入れるべきだというお考えだと思います。これはお考えとしてはごもつともなことだと存じますが、例示が非常に長くなりますので、大体大綱的な、現行法の一条にありますようなことを例示いたしまして、今御指摘の事項は、特にその事柄をそのままに網羅して例示をいたさなかつたわけでございます。警察官の当然の責務の中に入るものであるということにおいてはお話通りだと思います。
  68. 門司亮

    門司委員 さらにその次にありまする現行法の経済事犯の問題であります。今火薬の問題がちよつと出て参りましたが、火薬の取締りは、なるほど現場においてはいろいろ警察官の仕事もあるわけであります。火薬の取締り、火薬の許可等は、警察の使用許可その他の手続の問題が出て参りますが、実際の火薬に対する取締りは、決して警察が主管してやつておるわけではございません。これはほかの官庁でやつておる。あるいは麻薬の取締りにいたしましても、一応ほかの官庁の所管事項になつておることに間違いはない。それらの執行に当つては、警察官が取締る一般の犯罪として、この中に包含されておることにも間違いない。しかしその問題と、今私が申し上げましたような検察庁あるいは裁判所関係というようなものとは、全然別個なものであつて、麻薬の取締りあるいは火薬の取締り等は、それを所管しておる所管省でこれを行つておる。犯罪があるならば、警察官がやはり取締るという形を示して来ておりますが、私はそういうものではなくて、やはりさつきから申し上げておりますような、六号に掲げてあるような事項は、例示しておくべきである、また例示しておかなければ、警察官の責務の遂行の上にはさしつかえがあるのじやないかと考える。従つて三項に書いてあります経済事犯は、現行警察法にはこれを含むと書いております。これは食管法違反の問題が出て参りますので、農林省所管の違反事項になる。従つて犯罪になつた場合に、警察がこれを取締る規定になつておりますので、こういうふうに羅列するならば、やはり警察官の責務の中にこれを当然入れておくべきではないかというように考えるのでありますが、この経済事犯に対する案件を除かれた理由をもう一回お聞きしておきたい。
  69. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 ただいまお話のありました経済法令に関する違反といつたようなものは、現行法の二条の最後におきまして、「この法律にいう犯罪とは経済法令に関する違反を含むものであり、且つ、これに限定せられるものではない。」ということを入れてあるのでございます。これは現行法におきましても念のための規定でございまして、各号に掲げてございますように、犯罪の予防、鎮圧とかあるいは犯罪の捜査及び被疑者の逮捕とかいう、犯罪という文字を使つておるのでございます。この犯罪は今の経済法令に関する違反が入つておるのだということを、念押し的に規定したものでございます。つまり私どもはこの念押しの規定は、ただ犯罪と申しますといわゆる自然犯と申しますか、刑事犯と申しますか、そういう本来犯罪として認められるものでありますが、法定犯と申しますか、行政犯と申しますか、いわゆる法律に基きまして、一つの違反行為をきめまして、この違反行為も犯罪である、こういう行政犯も入るのである、その代表的なものとして、特にこの当時におきましては、経済法令違反は非常に重要な事項でございましたので、そういう本来の自然犯的な犯罪ではないけれども、経済の諸般の法令につくつておるような経済法令の違反は入るのだ、しかしこれに限定せられるものではない。つまりほかの法令違反についても入つておるのだということを念を押したものであるかと思うのであります。普通犯罪と申しますれば、ただいま申し上げましたような両方の犯罪が入るということは、大体各種の法令において当然のことに理解せられておりますので、今回は特に犯罪の予防、鎮圧、捜査、こういうことが掲げてございますので、この犯罪はこういうものを含むのだとか、それに限らないのだというようなことは省略をいたしたというだけのつもりでございます。
  70. 門司亮

    門司委員 それから次に聞いておきたいと思いますことは、この第一項の「その他公共の安全と秩序維持に当ることをもつてその責務とする。こう書いてあります。そして第二項に「警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであつて、」こう書いてあります。従つて今私が聞いておりますものは、ここに「厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであつて、」ということを書いておいて、そして今私が指摘いたしましたようなものは、すべて今の御答弁の筆法から行けは、「その他公共の安全と秩序維持に当ることをもつて」ということに該当する、こう解釈した方がいいと思います。そうなつて参りますと、この一項と二項との関連性をもう少し明確にしておいていただきませんと――「厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであつて、」こう書いてある。ここには明らかに前項の範囲というものが限られておるということが書いてある。ところがその前項を見てみますと「その他公共の安全と秩序維持に当る」というようなことで、今の御答弁では、いろいろあろうがそれは省略したということでありますが、そうすると、この2の厳格にこの範囲にという言葉が少し当てはまらぬようになりはしないか、厳格にこれを規定するなら、前の事例はやはりできるだけ明確に書いておくことが法令の体裁から行けば正しいのじやないか、もしそうしておきませんと、この「厳格に」という文中が非常にルーズになつて来て、法律ではやかましいことを書いておるが、第一項には「その他公共の」というようなことで、みんなぼやかすというと語弊があるかもしれませんが、今のような当然あげられるべきような事例があげられていない。従つて法律の完璧を期するということは言えないと思う。だからここにお伺いしておきたいと思いますことは、「その他公共の安全と秩序維持に当るしというのは一体どういうこと々点旅しておるのか、はつきり示しておいていただかなければならないと思いますので、この範囲をぜひお聞かせ願いたいと思います。
  71. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 一項の関係から、厳格に限定をするということから詳しく書いておいた方がいいのじやないかというお説は、非常にごもつともなお説であると存じます。しかし現行法の第一条におきましても同様の二項があるのでございまして、警察の活動が厳格に前項の責務の範囲に限らるべきものである、そしてその第二項の責務の範囲といたしましては、この法案よりもさらに簡単に犯罪の捜査、被疑者の逮捕、公安の維持ということだけが書いてあるのでございます。そういうようなことからいたしまして、省略したというよりは例示として掲げることを省いたのでございまして、「その他公共の安全と秩序維持」ということで主要な事項を例示いたしまして、これを厳格に限定するということで、警察の責務の範囲のあり方を示すものとしては大体はつきりするのではないかと思うのであります。  さらに「公共の安全と秩序維持」とはどういうものかというお樽ねでございますが、これは大体公共の安全と秩序維持ということで、法律によりまして、また法律と同等の価値のある安全、秩序という公の社会通念があるわけでございます。その範囲を警察の責務は一歩も出てはならない、こういう意味におきまして、まず大体におきまして厳格にその範囲を出ないということで、警察の責務のあり方といたしましては明瞭ではなかろうかと存ずるのであります。
  72. 門司亮

    門司委員 今の答弁でありますが、現行警察法の第一条と、今示されております警察法の第二条とはおのずからその趣が非常に違つておるのであります。なるほど現行警察法の第一条には、「警察は、国民の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の捜査、被疑者の逮捕及び公安の維持に当ることを以てその責務とする。」と書いてある。次に「警察の活動は厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであつて、いやしくも日本国憲法の保障する個人の自由及び権利の干渉にわたる等その権能を濫用するごととなつてはならない。」こう書いてあります。そしてその次に、さきに申し上げましたように、第二条によつていわゆる行政管理運営管理との区別を、一応ここに書いておるのであります。従つて現行警察法は私はこれでよろしいと思いますが、少くとも今提案されております警察法は、これとはその組立て方が全然違つておるのであります。警察の責務の冒頭に掲げてありますものは、個人という文字を使つておるのであります。私は少くとも現行警察法にのつとつてこれをこしらえたというならば、やはりここは国民の生命、身体及び財産ということになつて参りますならば一応もののわかりはするのでありますが、ここが「個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、」ということになつて参りますと、やはり事例をここにあげておきませんと往々にして私は間違いができるのではないかと思う。この点はただ国民と個人という文字のように考えられて参りますが、法律自体から申しますと、私は広い意味解釈に立つべきであると思う。従つて今示されております警察法の一条の最後に書いてある「いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる」ここは個人でけつこうだと私は思いますが、冒頭は総括的に、今のような御説明で、現行警察法の第一条にもこれだけしか書いてないからというなら、私はここは個人という言葉でなくて、やはり国民という言葉が使われるべきであると思う。それなら現行法の第一条の意味と同じようなものだということが言えると私は思うのでありまして、しかもいろいろな字句の解釈上から、現行法には決して今お話のようにまつたく同じようなことは書いてないのでありまして、「犯罪の捜査、被疑者の逮捕及び公安の維持としか書いてない。こちらは第二条の箇条書きにしたものがここに受けてありまして、そして「その他公共の安全と秩序維持」と、こういうふうになつております。私は全然同じ意味として解釈すべきものではないと考えておるのでありまして、これは警察の責務がもう少しはつきり書かれておりませんと、今のような御答弁だけではどうしても納得するわけには参りません。従つて今の御答弁がありましたから聞いておきますが、「警察は、個人の生命、」という言葉をどうして「国民の生命、財産」というふうに直さなかつたか、私はそう直した方が法律の体裁としては非常に意味が広くなつていいのじやないかと考えるのでありますが、この点についてのお考えがありましたらお伺いをしておきたいと思います。
  73. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 御指摘の国民を個人にかえました点でございますが、これは国民というような場合に使います例もあつてよいのであつて、どうしてもこれは個人に直さなければならないというほどの強い意味でもないと思つたのでありますが、国民ということを厳密に解しますと、警察というものは外国人とか、あるいは国難のない人といつたようなものの生命、身体、財産は保護しないのか、そういうような疑いも受けるということもおそれまして、「個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、」というようにした方がよかろうということがいたしましたのですが、この個人の大部分が国民であるということは当然でございます。また国民といたしておきましても、しからば法人の財産は一体保護しないのか、こういう問題は起り得るわけです。そこの書き方はまあ国民でも個人でもそう違いはないと思いますが、外国人も入るのだということを言つた方が広かろうということで個人に直しました。法人の財産というようなものも現在もそういうふうに解釈いたしておりますように、当然これに準じて保護されるのだ、こういう考え方をいたしたものであります。
  74. 門司亮

    門司委員 私はこの個人と国民の問題を、そう固執して言う必要もないかと考えるのでありますが、しかし今のような御答弁だけではどうも感心するわけに参りません。外国人に対してはおのずから別の法律でちやんとやるようにできておるのであつて、それから法人は法人としてまたほかに当然道が開けて来る、さつきから申し上げておりますように、一応警察の責務は国民を対象とした責務であり、さらに後段に書いてありますように、「日本国憲法の保障する個の」ということもその次に入れておるのでありまして、従つて法律としては一応国民全体を指さし、さらにその中をわけて言うならば、憲法で保障しております個人の権利及び自由の干渉にわたつてはならなということの力が、私は先ほどから申し上げておりますように法律としては一貫性をなしておるのである。同時に現行警察法を制定いたします場合においても、国自体というものはやはり国民によつて形づくられておるごとに間違いはないのであります。従つてこういう総則的の法律の場合には、私どもは、ここはやはり国民の生命財産と言つた方がこの法律には適合するものであるというように考えておりますので、今申し上げたのでありますが、そうでなくてもいいのだという御答弁なら、私はそれ以上ここで追究する必要はないと考えます。ただわれわれがおそれて参りますのは、少くとも警察の責務として書かれております以上は、法律上の解釈から申し上げましても、国家国民というものが一つの責務の対象になるものであつて、なおそれと同時に個人の自由並びに権利というものの干渉にわたつてはならない、これは国を形づくつております以上は、いろいろ国家権力で、ある程度の個人の自由なりあるいは個人の権利などを束縛する場合がないわけじやございません。従つてここには国民という文字を使うべきだ、こう私は実は考えおてるわけであります。  それからその次に聞いておきたいと思いますことは、この法律の中の二条にあります「不偏不党且つ公平中正を旨とし、」ということが三条にも書かれてあつて総則の中に一箇所書かれておる。一体警察の責務の中にこういう文字をどうして入れければならなかつたかということです。私は警察自身のあり方というものは、「不偏不党且つ公平中正を旨とし、」なんということ言わなくとも、憲法で定めております個人の権利及び自由というものの干渉にわたつてはならない、あるいは国民の生命財産あるいは身体の保護に任ずるということになつて参りますと、この警察の責務として特に不偏不党中正なんという言葉を入れること自体がおかしいと思う。こういうものを一体どうして入れなければならぬ場のですか、これを入れなければならなかつたという理由をひとつ聞かしておいていただきたいと思います。
  75. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 まことにごもつともな御意見でございまして、この法律の中は「不偏中党且つ公平申正なんということは、なくてもこれは当然なことでございますが、しかし警察が政治化してはいけない、一党一派に偏してはいけないということをやはり強く要望せられますので、先般大臣からお述べになりましたような趣旨で、国民の方々がそういう要望を非常に強くしておられるということをここに現わしておけば、警察官が今後職務を執行する場合でも、警察法最初のところにこれが出ておるというので、国民の期待にさらに沿い得るのじやないかという考でありますので、法律論といたしましては、なくてもさしつかえないのは御意見通りであります。
  76. 門司亮

    門司委員 今の国警長官の答弁でありますけれども、不偏不党かつ公平中正でなければならぬという国民の声が起つておるのは新しい警察法が出て来てからですよ。新しいこういう政党警察にまぎらわしいようなものを出して来たからそういう声が出て来ておるのであつて、今まで警察の中正を保ち得なかつた事例があるのでありますか。かつて日本警察が政党に利用されたり、あるいは思想警察なつたりして非常に危険があつたのであります。従つてそれらのものを除去するために現行警察法ができた。大体現行警察法で公平中正が保たれていることは齋藤君自身が一番よく知つておると私は思う。その後これが問題になつて来たのは、こういう政党警察にひとしいような警察法を出してからで、これではどうも警察が政党警察になりはしないか、あるいは思想警察になりはしないか、こういう危険性があると世間で騒がれているのであつて現行警察法のもとではそういう危険性があるという声は、私は何も聞いていない。むしろ現行警察法の方が公平中正がはつきり保たれておると思う。これを入れなければ警察の責務の遂行ができないほど、一体この警察法自身は怪しいのですか。この点をひとつはつきりしておいていただきたい。
  77. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 これを入れなければ、この警察法の成立と申しますか、あるいはこの警察法運営に非常に困るのかというお尋ねは、さようなことはございません。ただあつた方がなおよかろうという程度でありまして、なくてもさしつかえない、特に支障があるとは考えません。
  78. 門司亮

    門司委員 特に支障がない、あつてもなくてもいいのだというのなら、こというまぎらわしい、人に疑いを受けるようなものは私はない方がいいと思う。それと同時に、私はこういう文字を二箇所にわたつて――しかも総則の中に一箇所書いてあるのならいいが、二箇所も書いてある、これを入れなければならないほどこの警察法というものは怪しいものであつて、ややともすればこれがどうも不偏不党でなくて片留るのではないか、そこでこれを厳重に取締つておこう、これは警察の取締法ではないかと考えるほどおかしいのであります。少くとも今の国警長官の答弁のように、なくてもいいのだというなら、こういうまぎらわしい、人に疑いを受けるような字句はお使いにならぬ方がいいと思うが、しかし法律をお書きになつた人も多少良心があつたと見えて、この辺にこのくらいのことを書いておかぬと、どうも警察が一党一派に偏する危険性があるんだというようなお考えで書かれたのではないかというなら、良心的にこういう文字は削られた方かいいと思う。同時にこれはさつきの公安委員会のところに関連して、この文字をどうして使わなければばならなかつたかということについて、公安委員会制度のところでもう少し開こうと思いますので、ここではこの程度に一応おいておきますが、こういう文字についてはどうも感心ができない。それからちよつと話はあともどりするようでありますが、できればこの機会に「その他公共の安全と秩序維持に当ることをもつてその責務とする。」という、この字句を、もう少し例をあげてここでひとつきめておいてもらいたい。そうしませんと法律施行にあたつて、「厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであつて、」ということで厳格に限つておるにもかかわらず、これが責務の範囲を逸脱するような危険性が、実際上の執行において出て来はしないか、こう考えられるのであります。従つてできるだけここは、こういう「その他公共の安全と秩序維持」ということについては例示をしておいていただきたいと思いますから、法律の上ではこれが例示されなくても、この機会に、会議録だけにはひとつ残しておいていただきたい。そうして法律のできたときの警察の責務であり、前項の責務とはこの範囲であるということが、もう少し明瞭になりますように、個々の事例をこの機会にあげておいていただきたいと考えております。
  79. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 「公共の安全と秩序維持」と申しますのは、先ほどからお述べになつておられました逮捕状、勾留状の執行、その他裁判所、裁判官または検察官の命ずる事務で法律をもつて定めるもの、こういつたようなものとか、あるいは風俗常業の取締りとか、大体そういつたようなものでありまして、たとえばまた天災地変等で非常に国民が心理的に動揺を来し、あるいは場合によつては逃げまどうというような場合に、これを誘導いたしますとか、非常に混雑している場合に――交通取締り等の中に入るかもわかりませんが、道路その他の場所でないところにおけるそういつた取締りというようなことに事柄が入るのでありまして、それらは警察官等職務執行法でいろいろ予定しておりますような事柄に含まれる。かように考へるのでございます。
  80. 門司亮

    門司委員 それでは次の第三条についてお聞きしたい。三条については昨日も開かれておりますので、そうやかましく言うほどのこともないと思いますが、ここにもやはりさつき申し上げましたような「不偏不党且つ公平中正」ということが書いてある。これについては前段で、あつてもなくてもいいというお話でありました。あつてもなくてもいいのなら、その程度のものでいいかもしれません。しかし問題になつて参りますのは、警察官だけではございません。日本憲法には、内閣を初め国家公務員あるいはすべての公務員は憲法並びに法律の擁護者であると同時にこれを守らなければならないということがはつきり書いてある。これは宣誓するとかしないとかいうことでなくて、憲法を守らなければならないということは公務員の当然の責務であつて、特に警察官であるからこれを守らなければならないという意味には私は受取れない。従つてこの宣誓趣旨というのは、後段にあります「不備不党且つ公平中正にその職務を遂行する旨の服務の宣誓」を行わなければならない、ここだけと解釈することがいいと思う。前段の「日本国憲法及び法律を擁議し、」ということは、公務員である限り、憲法にそういうふうに規定しておりますので、内閣を初めこれを守らなければならぬと思う。問題になりますのは、この宣誓の範囲であり、あるいは宣誓の条文であります。これはいずれ政令か何かできめられると考えますし、あるいは政令でなくても、宣誓文というものはおそらく規則か何かできめられると思いますが、もしそこに腹案等がございますならば、ひとつこの機会にお示しを願つておきたいと思います。
  81. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 宣誓内容は、先般この委員におきまして、現在国家地方警察基本規程で定めているものを読み上げましたが、他の自治体警察におきましても、大体同じものを宣誓の文句にいたしております。大体これを踏襲いたしいと考えております。
  82. 門司亮

    門司委員 そうすると、その上官、いわゆる任命権者に対して、宣誓するのですか。
  83. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 さようでございます。
  84. 門司亮

    門司委員 そういたしますと、府県警察官府県公安委員会にあらずして、府県の隊長に宣誓するのですか。
  85. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 公務員法にはさようになつておりますから、御意見通りだと思います。
  86. 門司亮

    門司委員 宣誓の仕方でありますが、警視正以下は地方公務員であります。地方公務員が国家公務員に宣誓するのですか。
  87. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 さようでございます。しかしその場合、国家公務員でありますけれども、地方の府県職員でございます。
  88. 中井一夫

    中井委員長 今のところをもうちよつとはつきり言つてください。
  89. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 国家公務員でありますが、国に対してというのではなくて、府県の行政機関に属する府県公安委員会管理下において法律府県警察事務を執行するものという性格でございまして、これは国に対して宣誓するということにはならないのでございます。
  90. 門司亮

    門司委員 どうも私はその点わからぬのですが、これはいずれ人事委員会等の問題になるかもしれません。宣誓の仕方は、地方公務員である警視正以下の諸君が、国家公務員である隊長、いわゆる任命権者に宣誓をすることになつて参りますと、自治警察とは言えなくなつて来る。それはただ名前だけが地方公務員であつて、実体は国家公務員に宣誓することになつて参りますと、自治体に対して宣誓するという範囲を逸脱すると私は思う。ただ国家公務員であるが地方警察のと言われますけれども、それは少しおかしいと思う。少くとも国家公務員であることに間違いがないのであつて、その国家公務員に地方公務員宣誓することになれば、私は明らかに地方自治体の警察とは言えないと思う。はつきりと国の警察宣誓することでありまして、地方の自治体に対する宣誓ではないと私は思う。こういうことでは、警察官宣誓は、地方の公務員であるからといつて、地方の公共団体の長であり、あるいは地方の公共団体の責任者に宣誓するのではなくて、国家公務員に宣誓することになれば、宣誓に対して地方は責任をなかなか負えなくなつて来はしないか。また警察官も地方の公務員としてその責任を追及される必要もなくなつて来はしないかという疑問が起るのでありますか、今齋藤君の答弁では、ここがあいまいでありまして、国家公務員であることに間違いがないんだが、しかし地方の警察のというようなことを言われるのでありますけれども、しかしその中には国家犯罪的の仕事もございますしするので、この点はいずれに宣誓するのか、それを明確にしておきませんと、地方公務員であり、国家公務員であると言われながら、実体の責任は地方の自治体には負わなくてもいいんだということになつて来るとたいへんだと思います。その点をもう少し明確に教えておいていただきたいと思います。
  91. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 府県警察本部長は、国家公務員でありますけれども、これが国の機関として仕事をするのではなくて、府県機関として府県警察事務を執行するものでございます。その点を御了解いただきたい。従いまして府県機関に対して、その府県警察本部長が任命をした職員宣誓をする、こういうことになります。決して国の機関として府県警察本部長は職務を執行するのではございません。
  92. 門司亮

    門司委員 問題はそこなんですよ。政府といいますか、説明者はこれは地方の警察官だ、こう言われておりますが、国家公務員であることには間違いはない、国家公務員に間違いのない者が、どうして一体地方の警察官と言えるかどうかということであります。これは法律でそうきめてあるのだからそれはいいのだと御解釈になればこれは別ですけれども、筋を通そうとすれば、やはり宣誓をするのは少くとも任命権者である者に宣誓するということが当然である。といたしまするならば、地方の公務員であるとするなら、やはりこれは府県公安委員会なり何なりが私は責任を負うという筋を通すべきである、そうして府県公安委員会府県の本部隊長を任命して、そうして任命権者である府県公安委員会に対して宣誓するというならはこれは筋が通る、しかし府県公安委員会は任命権を持つておらない、また罷免の勧告権くらいしか持つておらない、相談をするだけであつて、その相談をされたからといつて、何も意見を必ず聞かなければならないという規定も何もないのであつて、相談をするということだけである、こうなつて参りますと、宣誓をするといたしましても、どうも地方公務員であるという感じが、警察官には非常に薄くなりはしないか、実際の宣誓を国家公務員にするということになつて参りますので、その点を私は非常に憂えるのであります。あなた方がお考えになつておりまするように、簡単にこれは行かない、従つてもう少しく、さつきの御答弁以外に私は答弁のしようがないかと思いますけれども、宣誓の相手方というものが任命権者である県の隊長でありますか、本部長でありますかに宣誓をするというこの行き方だけでは、さつき私が申しましたように、警察官自身が自分たちは地方公務員であるが、しかしこの宣誓は国家公務員である本部長にするのである、従つてこの本部長は国につながるものであるということになつて参りまするならば、やはり国に宣誓するの、であつて地方の自治体に宣誓するものではないという観念を非常に強く持つと思う。また私はその通りだと思う。だからこの宣誓をどこにするかということについては、私は今の齋藤長官の答弁たけでは納得をするわけには参りませんから、ひとつもう少しわれわれの納得のできるように、ほんとうに地方の公務員として仕事をすることのできるような宣誓の方法をひとつ私は考えてもらいたいと思う。もしそういう考え方があるならば、この機会に一応お考えを聞かしておいていただきたい。
  93. 北山愛郎

    北山委員 関連して。ただいまの宜誓のことに対する答弁の中に、警視正以下というか、警視正の下の警察官地方公務員であるそういう警察職員というものは、任命権者である者に宣誓をするということを答弁されたようでありますが、これは任命権者に対して宣誓するということは、一体何できまつておるのですか、地方公務員宣誓については条例できめるということになつているだけであつて、あるいは国家公務員については人事院規則でもつて宣誓のやり方をきめるのですが、必ずしも任命権者に対して宣誓をするということはきまつておらないのじやないかと思うのですが、何かそれには根拠があるのですか。
  94. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 ちよつと私は用語が不十分であつたかと思いますが、任命権者の面前で宣誓をするということであります。それでだれに宣誓をするのかと、今門司委員から詳しく御意見が述べられまして、私よくわかつたのでありますが、これは公務員法にも、地方公務員法にもだれにとは書いてございませんが、その趣旨は公務員として国民全般に、国民に対して、ということであろうと思います。ただ規則に任命権者の面前にとありましたので、私は簡単に任命権者にと申しましたが、任命権者の面前でやるのでありまして、宣誓の相手は法律にありませんが、国民全体にと、こういうことであります。
  95. 中井一夫

    中井委員長 門司君御了解になりましたか。
  96. 門司亮

    門司委員 どうも今のこのことがあるから私はさつき一番最初に申し上げましたように、地方公務員であり国家公務員ば当然憲法にきめておりまする通りこの憲法及び法律を守らなければならない、だから何もここに事あらためて宣誓の必要があるのかないのか、宣誓の必要があるのはこの前段のいわゆる一条、二条に書いてあります警察の責務を遂行することのために、特に警察官としての宣誓が必要であるということに考えられる、そこでこの相手方は一体だれに宣誓をするのかということになつて参りますと、今の齋藤君の答弁では任命権者の面前でと、こう言われておりますが、むろん任命権者の面前であるに間違いない、従つて宣誓をする者は任命されると同時にその宣誓を任命権者を通じてあるいは国民にするんだというように解釈をされるかもしれない、しかし少くとも常識から考えておりますならば、この宣誓はやはり任命権者にするのである。もしこの宣誓に違反した場合には、その任命権者がこれを処分するのであります。私は任命権者を通じて国民にこれを宣誓するのであつて、決して任命権者をさしおいて国民宣誓するものではないという解釈は正しいと思う。従つて少くともこの場合は、任命権者に向つて一応宣誓するんたという解釈でなければ――今の齋藤君の答弁はまん中を抜いたような気がしてぐあいが悪いのですが、そうしますとさつき申し上げたように宣誓をさせようとするならば、これは国家公務員である地方公務員責任者がこの宣誓をさすべきである、またその責任者が自分を通じて国民宣誓をされるという形がここに私は現われて来なけれ、はならぬと思う。その関係がどうも私には今までの答弁ではわからぬのでありまして、任命権者は明らかに国家公務員であることに間通いはないのであります。この国家公務員の任命権者と、地方自治体の責任を持つておりまする長いわゆる地方公務員であります限りにおいては、地方の県の場合は知事である。市の場合は市長である。これの外にあります行政委員会としての、あるいは公安委員会というものが当然これを代表すべきものであると考えるんだが、どう考えてもこの宣誓の相手が府県の隊長であるということになれば、私は地方公務員としての取扱いが少ししにくくなりはしないかというように考えられる。これは今のように私は聞いておるのであります。これにはどうしてもこの法律の建前から行けば任命権君ではありませんが、しかし運営をするのはやはり地方の公安委員会考えられる、従つてこの場合は、単に任命権者でなくて公安委員会に対しても私は宣誓をさせるということの方が、あるいは適当ではないかというように考えられる、そういたしませんと、地方公務員としての資格は全然なくなつてしまう、そうして命令から任命権すべてが地方に移つてしまつて、地方はただ費用だけ負担すればよいという、こういう形が露骨に現われて来やしないかと考えられるから、この宣誓のところでお聞きをしておるのでありますが、そういうお考え一体今の政府におありになるかどうか、単に国家の公務員に宣誓させるのではなくて、自治体の運営管理をする者も、なおこの宣誓の対象というと、語弊があるかもしれませんが、一応相手方にするようなことが考えられないかどうか。
  97. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 お説のように任命権者またはその任命権者の定める上級職員の面前で、それらの人を通じて国民宣誓をするということであろうと存ずるのでありまして、その趣旨はもし宣誓趣旨に反するならば、公務員として不適格として罷免されてもけつこうでございますという趣旨が入つておるものだと考えるのであります。従いまして、任命権者の面前でということになつておると思いますが、門司委員の御意見の点にもごもつともな点もあるようにも考えられます。これは人事院の規定によりまして宣誓の方式がきまつておりますから、人事院とも御意見のある点を伝えましてよく協議いたしたいと存じます。
  98. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 関連質問。私も質問はなるべくやめておこうと思つたのですが、先ほども第二条の第二項で門司さんの不備不党かつ公平中正というような文句はいいじやないかというふうな質問に対して、それでもいいんだというふうな御答弁があつたと思うのですが、私はどうもそういうふうに、その人の質問によつて答弁をあちこちされては、実際困ると思うのです。二条の三項はこの法案の目玉だと思うのです。そういうことでもつてこの総則を簡単に行きますと、あとのこともありますし、法律の執行の面を考えまして――私は門司さんと同じ党でありますし、根本的には立場はわかつておるのです。門司さんの聞き方が違うだけの話でありますが、そういうふうな答弁では困る。やはりこの点ははつきりといたしておいてもらいたい。それから先に進みたいと思います。
  99. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私がお答えいたしておりますように不偏不党、公平中正というものがあつた万がなおよろしい、かように考えまして本案をつくつておるのでありますが、しかしこんなものがなくても当然じやないかとおつしやれば、それはそれで一応ごもつともであります。なくてもそうでなければならぬということを申し上げておるわけであります。
  100. 床次徳二

    ○床次委員 総則質問を終るにあたりまして大臣に伺いたいのですが、この第一条は従来の現行法の前文とはとんど同じような趣旨であるというふうな御答弁を伺つておるのでありますが、しかし実質におきましては非常に大きな差があると思う。すなわち現行法におきましては、機構そのものも民主的な機構を持ちまして、能率と一方その機構によつて個人の権利自由を保護し得るような保障を講じながら調整がせられておるのでございますが、今回の政府の原案によりますと、民主的理念を基調とするところの警察管理運営ということはあるのでありますが、これは精神の問題でありまして、制度そのものはきわめて能率的に改められておると思うのです。この点も重要な変化であると思うのでありますが、こういうふうな大きな警察制度の変化というものが、国民に対してはたしていかような影響を与えるかという点について、大臣はいかようにお考えになつておるか伺いたい。  現在民主化に対する逆コースというようなことがいろいろと言われておりますが、わが国の民主政治にきわめて影響の深いところの警察制度におきまして、かかる変革が行われるということは、わが国の民主政治にどういう影響を与えるか、国民がこれに対していかように考えるか。まだ十分徹底しないところの民主主義精神と申しますか、これがこの警察法改正によつて相当阻止せられるのではないかということをおそれるのでありまして、この影響に対しまして大臣はいかように考えておられるか。またこの制度がかわつたということに対ししまして、国民に対してどういうふうな理解了解を求める努力をされるか、この機会に伺つておきたい。  なおきわめて大事なことは警察官自体の心構えの問題、これ自体も十分に徹底させないと不測の災いを残すのではないかと思うのであります。  なおこの点に関してつけ加えますと、先日来数日にわたりまして第一条の話がありまして、警察の能率ということな非常に強調せられておるのであります。あらゆる行政機構におきましても、その機能は当然能率的に遂行せらるべきものであると思つております。ここに特に能率的にという字が入つておるのでありますが、あまりに能率に気をとられますと民主的な理念を基調とする警察管理運営さえも犠牲にされるおそれがあるのではないかということを私は懸念するのであります。この点本来の警察趣旨に十分に合い得るごとく、能率のために警察の本来の精神を犠牲にすることなきよう十分な配意が必要であろうと思うのであります。この点に関しましても大臣の御意見を伺いたいのであります。
  101. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お答えを申し上げます。現行法の前文に掲げるところのものを、わが国の法律の体裁に沿いましてこれを廃止して第一条に掲げた、従つてそれの意図するところは同様であるということは申し上げました通りでありますが、ここに第一条でごらんいただけますように、「民主的理念を基調とする警察管理運営を保障し」会々とございまして、「且つ、能率的にその任務を遂行するに足る警察の組織を定めることを目的とする。」というのでございまして、警察管理運営を民主的理念を基調としてやつて行くのに足る警察組織を定めることを目的とする、こういう考え方でございます。すなわち制度的に機構的な面からも、私どもとしては警察を民主的に管理せしめるために中央、地方に公安委員会制度を置いてこれを枢軸として管理運営して行く、こういう考え方であるのでございまして、何らこれによりまして、非常に能率の面のみを強調して、民主的な運営についての配意を意るという気持はないわけでございます。しかし制度がかわりましたにつきましては、特に第二条におきまして訓示的な規定もございますように不偏不党かつ公平中正を旨とし、個人の権利及び自由の干渉にわたるようなことはいやしくもないように、民主的警察の育成に今後とも十分努めたいと考えております。
  102. 床次徳二

    ○床次委員 ただいま大臣の御答弁によりまして、制度がかわつてもそれほど根本的な変革はないようにお考えになつておられるようでありますが、この点は私は大臣といささか意見を異にするのでありまして、今後各条を検討してみますれば、その点が明らかになつて来るのではないか。大臣がお考えになつておる以上に、制度の変革が著しい影響を与えるものであると私は憂慮しておるのであります。この点意見の相違のようでございますから、この程度にとどめておきます。  それから第二条についてお尋ねしておきたいのでありますが、第二条は警察の本来の責務を掲げたものでありまして、この点門司委員から御質問があつていろいろ字句の問題がありましたが、この第二条の責務に関しまして今後国家公安委員会、都道府県警察等がそれぞれ分担するのでありまして、この点いずれ次会において御答弁を願わなければなりませんが、第二条の配分に関しまして、第五条の国家警察庁がいかなる程度においてこれを行うかという点、それから国家警察庁の内部部局が所管する範囲、並びに都道府県警察は、これは第二条全体に対して所管するのたと思いますが、その三者の比較――これははなはだ形式的な話でありますが、これを比較表にしてそれぞれの責任分担を明らかにしていただきたいと思います。これは第二章以下の論議においてすぐに必要でありますので、比較表の形にして出していただきたい。なおこれは本庁の内部部局のみならず、他の管区警察局につきましても同様だと思うのでありますが、それを一覧表としていただきますと、都道府県警察の権限、同時にこれに対する国家公安委員会の権限もはつきりすると思うのでありまして、第二章以下の審議に便宜でありますから、これを比較表にしてお願いしたいと思います。
  103. 中井一夫

    中井委員長 床次さんの今の御要求ですが、比較表というのは国警と都道府県警察との職務権限の比較ですか。
  104. 床次徳二

    ○床次委員 この点は第二条に対する第五条の国家公安委員会の事務管理の範囲内と、同時にこれに関連いたしまして国警の内部部局が第十九条以下にそれぞれできておりまして、内部部局がそれぞれの事務を掌理しております。その掌理事務との関係を明らかにしていただきたい。同時に管区警察局が設置せられておりまして、警察局が所掌いたします範囲が一応視定されておりますが、この関係を明らかにしていただきたい。同時に都道府県警察並びに都通府県会安委員会管理する範囲でありますが、これは第二条そのものであろうと思うのであります。この関係をひとつ比較表にしていただきたいと思うのでありまして、一応条文の上では書いてあるのでありますが、条文に書き表わされていない部分が相当残つていると思うのであります。できるだけこの点は詳細にお願いいたしたい。なお特に私がこれをお伺いいたしますのは――内部部局の所管事務におきましては、非常にこれは不明瞭な点があるのであります。当然国家公安委員会あるいは警察庁において所管しないであろうと思われるものまで、内部部局では所管するかのようにも表現せられておるのでありまして、この疑いを解消するために、ただいまのような一覧表を要望したいと思います。
  105. 中井一夫

    中井委員長 御要求の資料に関する内容はおわかりになりましたか。
  106. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 しいて図解のようなものをいたせとおつしやればいたしますが、都道府県警察におきましては、この第二条の警察の責務に所属いたしますること全部をやるのであります。国の警察庁におきましては、第五条に明示せられてある事項に限りまして、都道府県が事務を処理いたします基準を定めたり、あるいは擾乱等の場合には指揮をいたしたり、あるいは連絡調整をいたすというのでありまして、管区警察局は、この警察庁の権限を分掌いたす、かようになつておるのでございまして、警察庁の内部部局は第五条に明記せられてあります事柄を各部で分掌する、かように相なります。そういたしますと、ある権限について都道府県においては全然ないのだというものは、皇宮警察を除いてはほかに全然ありません。さようなわけでございますが、それでも図表なんかにいたした方がよろしゆうございましようか。
  107. 床次徳二

    ○床次委員 ただいま長官のお話のように、都道府県に欠けております権限は、皇宮警察に関する事項であろうと思うのです。しかし逆に都道府県公安委員会が掌理いたしておりまする第二条の責務と申しますか、これを、第五条の国家公安委員会は、そのうちの限定せられた範囲内にしか持つていないと第五条第一項にあるのであります。しかし第五条第一項には、「国の公安に係る警察運営」という字がまず書いてある。従つて国の公安に関する以外のものは、当然都値府県警察に残つているのであろうと思います。さらに次に「警察教養、警察通信、犯罪鑑識、犯罪統計及び警察装備に関する事項を統轄し、」と書いてある。そこで統轄せられましたもの以外は当然都道府県警察に残つているべきであると思います。それから統轄の内容そのものについても御説明願いたいのでありますが、統轄の内容以外のものが都道府県に残つているべきであろう。なお「警察行政に関する調整を行うことを任務とする。」とありますが、警察行政に関する調整は、国家公安委員会で行いますが、調整以外のものは当然都道府県に残つている。残余の分は確かに都道府県国家公安委員会の有します所掌事務以外のもので、あるはずであります。しかしこれはいかように表現できるか、第九条で制限せられておるようでありますが、実際においては第五条が第二条と重複するところまで実施せられるのではないかという点が憂えられるのであります。都道府県といたしましても、都道府県公安委員会の権限というものをはつきり認識することが必要だと思う。その点第五条と第二条との間の相違というものを明らかにしたい。これを明らかにするためには二条から五条を引けば当然差がある。確かにその通りでありますが、いかようなものが残るかということを明瞭にしていただきたいと思うのであります。
  108. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 二条から五条を引いた場合には、警察庁から何らの干渉も受けないでやるというものが残るということになるわけでございます。第五条で警察庁あるいは国家公安委員会の権限になつております事柄につきましても、同様に都道府県はその権限がある。その権限を行使するについて、中央から指揮をせられる、あるいは基準を示ささる、あるいは調整をされる、こういうことでありますから何が残るということはちよつと図表に表わしがたいのじやないかと考えます。調整をせられなければ当然そのまま都道府県がやる。これは大事なことだから調整をするということになれば、その調整に従わなければならないということになるのであります。
  109. 床次徳二

    ○床次委員 ただいまのお言葉によりまして、従来の自治体警察と国家地方警察との場合と著しい相違があるということがおわかになると思うのです。この点が先ほど質問いたしました第一条等における警察管理運営に関する機構、方式等が非常にかわつて来ておるということの立証であろうと思うのであります。さらにこの問題につきましては、第二章に入りまして、第五条をもう少し詳細に検討するときにあるいは論ずるのが適当でなかろうかと思つて、御説明がなければ一応この程度にしておきます。
  110. 中井一夫

    中井委員長 それでは第二章国家公安委員会、すなわち第四条ないし第十四条までを議題といたします。北山君。
  111. 北山愛郎

    北山委員 それでは第二章の各条につきまして御質問いたします。  まず最初に第四条の国家公安委員会というものが「内閣総理大臣の所轄の下に、」こう書いてあるわけでありますが、この所轄は従来のような弱い意味で、内閣総理大臣のところに所属するのだという程度のものであつて、総理大臣としては指揮監督権はもちろんないというふうな御説明でございましたが、この点をもう少し詳しくお話を願いたいのであります。特に今度は国家公安委員長は国務大臣が兼ねるということになりましたので、内閣と国家公安委員会との関係につきましてはやはり詳しくはつきりとしておきたい、こういう意味からあらためてこの点をお尋ねいたします。
  112. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 この所轄という文字の意味につきましては現行法と全然かわりはございません。ただいまお述べになりました通りでございます。そこでこの新しい警察法令体を通じて総理大臣あるいは内閣と国家公安委員会との関係は、従前とどの程度かわつておるかということを明かにするようにという御質問でありますが、その点におきましては、ただいまお述べになりましたように国家公安委員会に国務大臣委員長として置くという点と、それから警察庁長官及び警視総監の任免につきまして、総理大臣が国家公安委員会意見を聞くとなりました関係で、政府あるいは総理大臣の権限がふえたわけであります。それから非常事態の場合の総理の権限、緊急事態の処理、これは前と同様でございます。それから総理大臣の公安維持上必要なる指示権というものは、今度の法案ではなくしております。それだけの相違でございます。
  113. 北山愛郎

    北山委員 これはこの前も問題になつたのですが、国家公安委員長を兼ねておる国務大臣は、内閣の中でどういう地位を占めるのであるか。警察の主任大臣は今度の法案におきましても内閣総理大臣である。そうしますと、その主任大臣である総理大臣の補佐役をやる任務にあるのであるか。これは当然そのように解されるのでありますが、従来のいわゆる国警担当大臣というような地位で、主任大臣である総理大臣の補佐をする。これがこの国家公安委員長である国務大臣の閣内における地位である、かように考えるのですが、それでよろしゆうございますか。
  114. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 総理大臣の所轄の権限と申しますか、権限と申しますかに属する事柄を、現在の担当大臣が事実上担当をしておられるますが、この新警察法が成立をいたしましても、その内容は同様であろうと存じます。従いまして総理大臣の所轄の権限を代行せられる担当国務大臣とこの公安委員長は同一の方がなられるであろう、かように考えます。
  115. 北山愛郎

    北山委員 そうすると、要するに内閣と国家公安委員会関係は、ただいまお話のような点と同時に、国務大臣が兼任することによつて両者の連絡がよくなるという程度であつて、今度の法案におきまして内閣の、あるいは総理大臣の国家公安委員会に対する権限は広がるものではない、この点ははつきりとしておきたいのですが、そうでございますか。
  116. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 その点はまさしくおつしやいます通りでありまして、総理大臣の権限は、任免権を除きましては全然広まりません。それからむしろ公安維持上必要なる指示というものがなくなりましたので、その点では総理大臣の権限は狭まつておると思います。
  117. 北山愛郎

    北山委員 委員会の内部の仕事のやり方でございますが、これは逐条説明の場合に会議機関である、一切の委員会の仕事は委員の会議でもつてきまるのだ、委員長はこの会議を主宰するというのが任務である、かような説明があつたわけでありますが、そのように了解してよろしゆうございますか。
  118. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 御意見通りでございます。     〔委員長退席、佐藤(親)委員長代理着席〕
  119. 北山愛郎

    北山委員 その会議というのは一体との範囲に仕事が及ぶのであるか、これは一番大事な点であると思うのです。たとえばその次の第五条の第二項の「警察庁を管理する。」、しかもその管理するという内容には、警察庁を指揮監督するということも含まれておるのだということでございました。そうしますと、そういうふうな管理の範囲というものは、必ずしも限定されてない。個々の具体的なことを命令するわけではないけれども、しかし包括的には指揮監督も必ずしも制限されておるというわけではないのでありますからして、すべてのこの第五条の中に書いてあるいろいろな事項につきましては、公安委員会は権限があるわけです。その事項を一体どういうふうに合議体によつて、運用して行くかということが、公安委員会の比重をはかる場合に一番大事な点でありますが、それはどのように運営されるということを想定しておるか。従来の国家公安委員会の仕事のやり方なども非常に参考になると思いますが、どういうふうに運営されて行くかという点についてのお考えを聞きたいのであります。
  120. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 合議によつて意思を決定するいう建前になつておりますので、公安委員個々の人の御意見で一方指揮監督されるということはないわけであります。従いまして公安委員会として意思を決定されるという場合には、必ず多数決できめられるということになるわけであります。そこで警察庁を管理する仕方でございますが、これはここに掲げてありますような事柄について大綱を定める場合、方針をきめる場合、あるいは重要な事柄につきましては、個々に意思を決定される場合もあろうと思うのであります。大体そういうわけであります。警察庁長官がこれは大事な事柄であると思う場合には、たとえばある方針につきまして今度はこういう方針で臨みたいと思うかということをお伺いを立てる。そうして御審議の上でその方針がよかろう、その方針はいかぬから、こうこう変更しろというような運営をされるのでございます。
  121. 北山愛郎

    北山委員 この点は非常に問題があると思いますので、現在までの国家公安委員会がどういうふうに運営されて来ておるかという実態を、やはりわれわれとしては知らなければならぬと思うのであります。そのためにいろいろな資料をお出し願つたわけでありますが、さらにこれは本案の審議の初めから要望されている点でありますけれども、国家公安委員長に当委員会に出席していただいて、現在の公安委員会運営がどういうふうに行われておるかというような点について、われわれとしては委員長に聞きたいのであります。この点はひとつ委員長は、国家公安委員長の出席を求めるように措置をしていただきたい。これをお願いしておきます。
  122. 佐藤親弘

    ○佐藤(親)委員長代理 委員長からお答えいたしておきます。御趣旨はごもつともでありますので、後ほど理事会を開いて相談いたし決定することにいたします。
  123. 北山愛郎

    北山委員 次に第五条の「国の公安に係る警察運営」という点でありますが、この「国の公安に係る警察運営」とは一体どういうものであるか、これを具体的に説明していたたきたいと思います。
  124. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 「左に掲げる事案で国の公安に係るものについての警察運営に関すること。」のイ、ロに明記しておりますように、大規模な災害の場合あるいは地方の静穏を害するおそれのある騒乱、必ずしも騒擾罪という罪名に触れなくても、それにひとしいような大きな集団暴力事件というような場合に、必要に応じましてそれの鎮圧あるいは全体的な捜査態勢の整え方というようなものについて指揮監督をするわけでございます。この場合におきましても個々の事件の、だれを逮捕するとか、だれを捜査するという指揮監督は、この中には含んでおらないのでございます。
  125. 北山愛郎

    北山委員 逐条説明を読んで見ますと、「国の公安に係る警察運営」というところで、第五条の第二項三号に掲げるイ、ロの場合以外に、現行法六十一条の二のいれゆる内閣総理大臣が特に必要があると認める場合における指示権の場合は、公安維持上必要な事項という中には、ただいまお話の今度の法案にあるイ、ロの場合以外に、「国の利害に係り、又は国内全般に関係若しくは影響のある事案」についても、やはり国の公安にかかわるという関係の中に入る。こういうふうな御説明があるようでありますが、そういうふうに解釈していいのでございますか。
  126. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 ただいまお述べになりました「国の利害に係り、又は国内全般に関係若しくは影響のある事案」につきましては、現行法においては総理大臣が指示をすることができるということになつておりますし、先年の警察法案の中には、この場合においても中央から国の公安にかかるものとして指揮監督ができるように立案をいたしておりましたが、今度の警察法案につきましてはその点は削除をいたしまして、これはいろいろ拡張解釈をされるおそれが多分にあるという結論に達しまして、この点を削除いたしました。従いまして現在の総理の指示権から比べますれば、その点は今度は狭まつたのでございます。
  127. 北山愛郎

    北山委員 今度は狭まつたというお話でございますが、逐条説明の中には、今お話のような「国の利害に係り、又は国内全般に関係若しくは影響のある事案」についての処理は、必ずしも第三号その他に掲げるイ、ロの場合ではないほかの部分について、たとえば第六号の警察教養に関する指揮監督、あるいは警察職員の活動の基準を示すことによつての統制、あるいは十二号の一般的な警察行政に関する調整というような条項でもつて、一応これは削除はしても、同じような効果が発揮できる。今の削除したというのは、任務の中から権限の部分を除いたのではなくて、ほかの条項で間に合うのだから削除したのだ、こういう逐条説明をなさつておるのです。(「ひつかけるな」と呼ぶ者あり)そうするとこの第五条の二項の中には、今削除したと称せられる「国の利害に係り、又は国内全般に関係若しくは影響のある事案」に関する調整なり、あるいは統制というようなこともやり得る、こういうふうな説明のようでありますが、それでさしつかえありませんか。
  128. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 これを削除いたしましたのは、他の条項で十分まかない得るから削除したというのではありませんで、他の条項でまかない得る限度においてする方がよろしい、それを越えて、直接運営自身の個々の内容について指揮監督することは、先ほど申しました行き過ぎになるおそれがあるから、他の条項の範囲においてがまんすべきである、かような結論に達したということでございます。
  129. 北山愛郎

    北山委員 今ほかの委員からもひつかけるのではないかというお話がございましたが、ひつかけるわけではなく、説明の中にそう書いてあるのです。「ハの事項は削除いたしたのでございます。そういうような事案につきましては、直接に運営そのものについてどうしろこうしろというような指揮をいたさなくても、先ほど申しました最小限必要なものさしとしての活動の基準でございますとか、教養でございますとか、あるいはまた警察行政に関する最小限必要な調整は、各地方が自由に行動できるけれども、それに対する一つの規制という点から調整することで何とかやつて行けるだろうという趣旨から出ているものでございます。」だからその点は、このハの事項は除いておるけれども、しかしほかの項目によつて同じような目的は達し得るのであるから、この条項はあげなかつたのだ、こういうふうな御説明なのです。だから要するにこの全体の中には、今の事項も実質上は含まれておる。従つて「国の公安に係る警察運営」ということは、具体的には第三号に掲げておる二つの問題だけであるけれども、実際は、権限としてはそういう問題についてもこの第五条の二項に列挙された権限の範囲内で、都道府県警察というものに対して統制することができる。しかも警察庁はその所掌事務の範囲において都道府県警察を指揮監督することができる。こういうふうに解されるのですが、それでいいのですか。
  130. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 ただいまおつしやいますような、ちよつと誤解を起すような文句であつたかもわかりませんが、それは他の条項で、たとえば教養とか連絡調整ということでまあまかない得る限度もあるから、そこでがまんすべきで、それよりも一歩さらに進んで指揮監督までしてやるということになると行き過ぎになりますから、削除いたしたのでありまして、この点は政府委員説明に若干誤解を及ぼすような点があつたかもわかりませんが、連絡調整あるいは教養といいましてもおのずから限度がありまして、たとえば国家的な事案がこのイ、ロのほかに起つたという場合において、連絡調整の範囲内で、まあ普通の状態ならまかない得ましようが、これがきかぬ場合にそれは法に基く指揮監督だ、それに従えということまでやることは行き過ぎであるし、その限度でがまんすべきでなかろうか、これがほんとうの趣旨でございます。
  131. 北山愛郎

    北山委員 私は、この第五条の二項で、今のそういうふうな解釈は非常に重要な点であると思いますので、これはほかの委員の方々からもこの点は十分つつ込んで明らかにしなければならぬと思うのです。特に警察教養という問題についても、現行警察法のもとにおける国警本部の権限というものは、大体において行政管理の範囲すなわち人事あるいは予算あるいは組織あるいは教育というようなものに限られておるわけでありますが、実際の活動につきましてはそれを逸脱しているのではないかというような、いろいろな具体的な例があるわけなのです。たとえば昭和二十八年の四月九日に国警本部刑事部長並びに警備部長から、各管区本部刑事部長あるいは各都道府県方面警察隊長に対しての通牒、これは昨年の四月の選挙に対する指示なんです。選挙当日における選挙運動の取締りについてというような通牒を出して、そうして具体的な問題である昨年四月の衆議院選挙これに対しての取締りについての指示をいたしておる。こういうことも、国警長官の御説明では、これは教育の範囲であるというような解釈をしておられる、あるいは行政管理の部面であるというような説明をしておられる。そういうふうな、われわれの常識から言うと、当然これは警察運営に対する具体的な指示であつて、現在の国警本部の権限を逸脱したものである。かように考えるようなことまでを教養である、教養の仕事だ、教育であるということで説明をされておる。こういう例を見ますと、今後もこの第五条の二項のまぎらわしいようないろいろな条項を拡大解釈して、どんどん運営されると、これは地方の都道府県警察の全部の運営にわたつて統制し、あるいは指揮監督をするという権限が警察庁に出て来る、こういうふうに考えるわけであります。私はその点で非常に重大だと思うのですが、さらにこの逐条説明によりますと、五条二項の六号、七号、八号、いわゆる警察教養施設維持管理、それから警察通信施設の問題、それから犯罪鑑識施設、こういうような点については、現行法と、この国家公安委員会、あるいは警察庁の権限はかわらないのだ、こういう御説明でございますが、これははつきりかわつているのです。現在のものは、「警察教養施設維持管理に関する事項」となつておりまして、施設維持管理するという仕事んなです。ところが今度の法案によりますと、「警察教養施設維持管理その他警察教養に関すること。」こうなつておる。単なる施設維持管理だけじやなくて、その他一般警察教養、同様に通信施設維持管理、その他警察通信に関すること、あるいは犯罪鑑識施設についても同じ、従来はそれは施設維持管理に限られておる。今度は拡大されておる。その範囲について警察庁が都道府県警察を指揮監督することができるという範囲に入つているのです。ですからその点において逐条説明は違うのじやないか、従来と同じであるというような説明は違うのじやないかと思うのですがいかがですか。
  132. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 逐条説明の際に、一々の号について現行法と厳密に対比して御説明をいたさなかつたので、字句の厳密な意味におきましてはそういう違いがあるという御指摘かと思いますが、現行法は、警察教養の施設につきましては、なるほど「警察教養施設維持管理に関する事項」とありまして、「その他警察教養に関すること」という字は出ておりません。また「警察通信施設維持管理に関する事項」ということはありますが、「その他警察通信に関すること」とは書いてないのでございますが、これは実質上は同じ意味だというふうに御説明したつもりですが、現行法では四号で、「その他国家地方警察の行政管理に関する事項」、その他行政管理に関する事項というのは、現行法の二条にもございますように、人事、組織、予算等に関する一切の事項、この人事というのは非常に広い意味の人事管理でございまして、当然職員に対します教育、訓練というようなことが入つておるわけであります。それから通信にいたしましても、現行法の四条二項には但書がございまして、「但し、国家地方警察及び他の自治体警察との連絡のために、自治体警察はこれを利用することができる。」というふうなこともございますし、通信の施設維持管理、それから警察通信の運用自体は、これは明らかに行政管理に属するものであるということから、字句においては、確かに御指摘の通り違いがございますが、実質においてはかわりはないという意味で、きわめて大まかに御説明申し上げたつもりであります。
  133. 北山愛郎

    北山委員 教養なり通信あるいは鑑識というようなことが、当然行政管理の中に含まれるというなら、これは別に書く必要はないと思うんです。やはり従来の行政管理という意味は、必ずしもそこまでを含んでおるとは解しがたいので、これは現行法の第二条にあるように、人事とかあるいは組織とか予算、そういうことに関することを書いてあるにとどまるのでありまして、それだからこそ特に教養施設維持管理とか、そういうことが別に書いてあるわけなんです。しかもそれが、ある施設維持管理するという意味と、その他警察教養に関する事項ということになりますると、教養施設維持管理以外に教養に関する部分が全部広がつてしまう。通信についても同じです。そういうふうに内容的には非常に拡大しているのであつて、これは厳密に解釈をしなくても、当然現行法よりこの条項の上では権限が相当広がつておる。しかしおそらく従来でも必ずしも現行法を厳密に忠実に履行しなかつたから、実質は今度の警察法が当てはまるのじやないか。そういうふうに感覚的には国警本部の方々は麻痺しておるかもしらんけれども、しかし法文の上では明らかに異なつておる。たからその点を確認しておきたいのであります。  それから従来と非常に違う点は「警察装備に関すること。」これが新らしく入つた。それから警察職員の活動の基準に関することというのが十一号に入つておりますが、この「警察職員の任用、勤務及び活動の基準に関すること。」というのは一体どういうことなんですか。
  134. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 警察装備については、逐条説明の際にも申し上げましたように、およそ警察官全体といたしまして、警察の服制ないし装備というようなものにつきましては一定の規格、基準に従わなければならないというので入れました。それから任用、勤務、活動の基準も同様の趣旨でございまして、警察官に新たに採用する場合には、ある県では高等学校卒業以上の者を採用するとか、ある県では小学校卒業でいいのだといつたように、非常に全体が均衡を失するというようなことになりましては、ぐあいが悪いので、任用について、一定の学歴なり、一定の年齢なり、あるいは体格でございますとか、そういうようなものについて、警察の活動として必要な限度におき、まして基準を設ける必要があろう。勤務及び活動の基準につきましても、同様の趣旨におきまして、あるいは外勤警察勤務のことでございますとか、あるいは留置場におきまするところの諸般の人権擁護、あるいはまた逃走防止といつたような形から、この留置場勤務につきましての基準を設ける必要があろうかと思います。それから活動の場合におきましても、一番の刑事訴訟法の精神に合致いたしまするところの、警察内部が設けますところの犯罪の捜査規範、あるいはまた警備に関しまするところの非常警備の実施のあり方、そういつたような事柄につきまして、いたずらに何でもかんでもこれで基準を示すという意味ではございませんで、およそ警察官の特殊性、あるいは活動に対しまする当然の一つの規格的な要請として、必要な基準だけを示すことができるようにという趣旨でございます。     〔佐藤(親)委員十長代理退席、委員長着席〕
  135. 北山愛郎

    北山委員 そうすると第十二号の「前号に掲げるものの外、警察行政に関する調整に関すること。」これが私は非常に問題たと思うのです。  そこでお尋ねをしたいのですが、先ほど私が指摘をしました、現在国警本部がやつておりますいわば選挙運動の取締りに対する指示であるとか、あるいはこれは昭和二十八年七月六日の通牒でございますが、今次衆参両院選挙における公職選挙法違反被疑者の一斉捜査についてという通牒でありますが、今次参議院選挙に際して各警察管区本部から報告のあつた全国手配を必要とする逃亡中の重要被疑者は別紙の通りである云々というふうにして、具体的な犯罪捜査についての指示をしておられる。こういうことは一体今度の法律の第十二号のいわゆる「警察行政に関する調整」という中へ入るものかどうか。一体こういうものは今までやつてもいいものだつたかどうか。それはどういう根拠によつてつてもよかつたか、あるいは今度のこの新しい法案通りますと、そのようなことはどしどしおやりになるつもりであるかどうか。それが許されるのか、許されるとすれば、それはどの条項によつてできるのであるか、これをお伺いしたい。
  136. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 ただいまは下部警察官の連絡事項としてやつておるのでありまして、下部警察が知つていなければならぬことを、それぞれの警察は全国の警察に連絡をする場合もありますが、こういうような事柄は、たとえば警察の本部で連絡をするから、それを全国に連絡をしてもらいたい、その方が便利だということによつてそれは連絡をいたしておるのであります。
  137. 北山愛郎

    北山委員 私の質問に対して連絡によつてつたのだということですが、通牒の形式から見ると、上級の役所から下級のものに指示をしている普通の通牒の形態をとつております。そういう措置をされたいというような言葉でやつておるわけなんです。だから私は普通の連絡には解せられないのですが、しかし権限がなければ下級の機関としてはこれを守る必要がないのですから、そういう意味で連絡である、こういうふうな詭弁をおつしやるのだろうと思うのですが、しかし問題は今後この法律でもつてそういうことをどしどしやれるものかどうか。やれるとすればどの条項を基礎にしてそういうことができるのか、それをお伺いしたいのです。
  138. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 やはりこれは第三項の「常に緊密な連絡」という中にも入ろうかと思うのでありますが、都道府県警察はお互いに緊密に連絡をしなければならないということが他の条項にも書いてございますが、この場合に、あるところで大きな犯罪が起つた、それについて手配をする、その手配を各都道府県まちまちやつているよりは、国警本部に報告をし、その本部から各府県の報告をまとめて連絡をしてもらうという方が便利だというので、そういつた連絡の事実行為だと御了解を願いたいと思います。
  139. 北山愛郎

    北山委員 今の第三項というのは、「国家公安委員会は、都道府県会安委員会と常に緊密な連絡を保たなければならない。」この条項ですか。
  140. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 さようでございます。第五条の第三項、それから五十八条の相互間の協力の意味、この両方であります。
  141. 北山愛郎

    北山委員 そういたしますと、ただいま私が指摘した具体的な今までやつた例、そういうようなことは、説明では明らかにこの第二項の範囲に入らないで第三項の公安委員会同士の連絡あるいは協力という範囲に入ると解して間違いありませんか。
  142. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 先ほどの御例示の点は、大体ただいま私が申し上げた通りでありまして、そのほかに活動の基準あるいは教養という中に入る場合もあろうかと思いますが、先ほどの選挙の取締りの場合に、公平に行えとかあるいは選挙違反検挙の際には少くとも責任者の承認がなければ逮捕令状を請求してはいけないとか、一般抽象的なものは、これは捜査の活動の基準だと考えるわけでございます。
  143. 北山愛郎

    北山委員 どうも少しおかしいのです。どだい第三項の「国家公安委員会は、都道府県会安委員会と常に緊密な連絡を保たなければならない。」という規定そのものもおかしいのです。この組織系統から言えば、特別にこういう項目を設けぬでも、国家公安委員会は、ある範囲においては都道府県会安委員会とは常に密接な連絡がとれているような系統ある。でもしわざわざこれを書かなきやならんとすれば、おそらく公安委員会のもとにあつて、しかも独立しておる警察庁と都道府県警察本部との間の関係は、系統的に常に密接なる連絡はとつておるが、しかし公安委員会同士においては連絡がないから、わざわざここに書かなきやならぬのじやないか。要するに国家公安委員会あるいは都道府県公安委員会警察庁とか、そういうものの付属物みたいなかつこうで、まあアクセサリーのかつこうで来ているから、ともすれば公安委員会同士の連絡が切れがちになる。そこでわざわざここに第三項を入れたんじやないか。でありますから今の国警長官の御答弁は、第三項で御説明なさるのはちよつと無理じやないか。しかも連絡協力であるとすれば、やはり従来と同じように、今申し上げたような通牒については、通牒が参つても都道府県警察としては、これを守ろうが守るまいが、今までと同様に自由である。こう解してさしつかえありませんか。
  144. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 これは緊密な連絡でございまするから、従つて都道府県公安委員会が自己の識見によつて、自分はこういう取締りでやるということでやられれば、それでさしつかえないのであります。連絡で示されたことが、なるほどこれはもつともだ、どの府県もこういうようにやつた方がいい、自分の府県もそう思うという場合にはそれに従つていただく、こういうことでございまして、第三項は、ただ公安委員会同士は警察の本体じやないから、そこで公安委員会同士緊密に連絡をとれ、こうあるのではありませんので、むしろ指揮監督とか権限的にどうするとかいうことはここに書いてありますが、それ以外のことにつきましてもできるだけ緊密に連絡を保つてつて行くようにという趣旨であるわけでございます。
  145. 北山愛郎

    北山委員 非常に大事なことでありますから、もう少しお伺いしたいのですが、その緊密な連絡は、たとえば選挙違反であるとかあるいは交通取運りであるとか、こういうふうな捜査方針なり、警察運営、活動についての一般的な基準を示される。これはあくまで連絡、協力の範囲である。そのためにあとの方で、先ほど床次委員が指摘されましたような、警察庁の内部部局の中に刑事部を置かれたり、あるいは警備部を置かれ、そしてその部の中にたとえば刑事部については刑事警察あるいは犯罪予防あるいは保安警察というようなことが所掌事務に入つている。それから二十四条で「警ら及び交通警察に関すること。」ということが入つている。それはあくまで都道府県警察の活動を指揮監督するのじやなくて、連絡協力としての仕事を所掌するためにそういう部課が置かれておる、こう解していいのですか。
  146. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 たびたび申しておりますように、第五条には第二項の一号から十二号まで及び第三項というのがございまして、これらに該当いたしますることをやるわけであります。たとえば第二十四条の警衛及び警備警察及び警邏、交通とありますところについて申し上げますならば、これらに関する諸制度の調査あるいは、企画、あるいは警邏、交通に関する予算でありますから、警備警察に関する予算を策定いたしますとか、また警備でありますから、この第三号の場合もまさしくこれに当てはまつて参ります。それから緊急事態のための計画及び実施というのも、この警備部でやるわけでありまして、警備部の第三号にそのことも書いてあるのでございます。それから交通巡査の教養でありますとか、交通違反も統計でありますとか、警備に関する装備の使い方、あるいは教養の面にも入るかも存じませんが、警察の装備品の調達は警備部でやりますが、どういう装備が望ましいとか、個々の装備についてはこういう欠陥があるとかいうような実際面の調査、そういうものをこの部において行うのでございます。
  147. 北山愛郎

    北山委員 この前警察運営ということについてちよつお伺いしたのですが、ここの第五条にも警察運営という言葉がございます。運営ということを一体どういうふうに解釈せられておるか、これは逐条説明の中にも若干説明せられておるのですが、何か具体的な個々の事案の処理ということに対する実際の執行面、活動面というような部面だけを運営と言うておられるようなんです。そこで警察運営という意味とそれから運営に対する指揮監督というのは、個々の犯罪についての指揮監督でなければ運営に対する指揮監督でないか、あるいは先ほど例をあげましたように、一つのの選挙の取締り方とかということについての指揮をするというのが、やはり運営の監督じやないかと私どもは思うのですが、そうじやなくて、個々の犯人の捜査であるとか、あるいは個々の騒擾事件の鎮圧であるとか、そういうふうなことに対する指揮だけがいわゆる警察運営の指揮である。何かそこにわれわれの常識と説明とは合わない点があるのでありますが、今の運営という意味と、それから指揮監督というのは、やはり個々の具体的な事件についてだけさすものであるか、運営についての一般的な指揮監督というようなことも、やはり運営の指揮監督じやないかと思うのですが、その辺もう少しはつきりしていただきたい。
  148. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 ここで申しております警察運営と申しますのは、御意見のように、個々の警察の外部活動、オペレーシヨンそのものをさすのでありまして、警察官が活動する場合に、たとえば犯罪捜査につきましては、犯罪捜査規範というものを設けまして、捜査に当る場合の各種の要注事項というものを出しておりますが、これは運営の指揮ではなくて、警察活動の基準、あるいは警察教養の一端と解釈いたしているのでございます。
  149. 北山愛郎

    北山委員 そうすると、一切の行政活動に対する指揮監督という意味は、ただいま長官がお話なつたように指揮という言葉が使われているか、これをお伺いしたいのです。具体的場な個々の犯罪の捜査とか、そういう捜査に対する指揮だけが運営の指揮であるか、いわゆる一般的な方針、たとえば先ほど例をあげたような、選挙の取締り方針を指示するとかいうようなことは、これは指揮監督に入らないのか、一般的の行政活動としては、この指揮監督という言葉が、今長官が言われたようなものに使われているのであるかどうか、その点をはつきりしていただきたい。
  150. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 お説の通りでありまして、そういうものは調整か連絡であります。指揮監督と申しますのは、個々の警察運営オペレーシヨン自体について指揮をするという場合に限つている所存でございます。
  151. 北山愛郎

    北山委員 そうすると、内閣法の第六条に、「内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督する。」というようなこと。これは個々の行政活動の具体的のオペレーシヨンに対して、内閣総理大臣が指揮監督するものであるか、これをお伺いしたい。それ以外にも、指揮監督という言葉はたくさんある。
  152. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 内閣法第六条に、「内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督する。」これは行政の一般について指揮監督すると、かように解釈すべきであると思います。
  153. 北山愛郎

    北山委員 これは当然であると思うのです。だからすべての行政活動について、警察ばかりでなく、個々の具体的な問題について一々監督する、指揮をする、命令をするということでなければ、運営の指揮監督ではないのだというのではなくて、やはりこの種の問題はこういうふうにやれということもまた指揮監督の部類に入るのだ、こういうふうに解釈する。従つて今のお話通りそれが当然だと思うのです。そういう意味において内閣総理大臣が指揮監督するとかいろいろな文句が使われておるわけなんです。従つて第五条の第二項にあるような事務全般について警察庁は都道府県警察を指揮監督ができるのじやないか。だからたとえば今の基準を定めること、あるいは教養に関すること、あるいは警察行政の調整に関することについて単に連絡、協力でなく、指揮監督をすることができる。個々の犯罪の捜査ということだけについての命令が指揮監督ではなくて、それは一般的な捜査方針なりあるいは選挙取締りのやり方なり、そういうものに対しての指揮監督もまたこの中に含まれるのじやないかというふうに解されるのですが、ただいままでの御説明では具体的な警察運営に対する指揮監督というものは三号の範囲に限られておるのだ、それ以外については指揮監督はやらないのだというような御説明なんですが、それじや間違いじやないかと私は思うので、先ほど来お伺いしておるのですが、その点はどうでしよう。
  154. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 指揮監督という中にはこの第五条の二項各号が指揮監督になるわけであります。それはおつしやる通りであります。しかし個々のものについて指揮監督するのはこの警察運営に関すること以外はございませんと申し上げておるのでありまして、たとえば警察職員の任用、勤務活動の基準というものをきめて出します。その場合に身長五尺何寸以下の者を採用するようにという基準をきめましたら、その基準に従つているか従つていないかというその指揮監督はするわけでございます。しかし、個々の犯罪捜査についてこういう人を捜査に着手するときにはこちらの指揮を受けなければならぬ、あるいはこういう事件を処理するについてはこちらの監督か指揮を待たなければやつてはいけない。そういうぐあいに個々の事件を指揮するというやり方は、五条の二項からは出て来ないし、そういうやり方をしないという建前で書いております。従いまして先ほど申しました警察運営警察の外部活動の個々のものについて指揮監督するというのは第三号のみでございます、こう申し上げておるのでございます。
  155. 北山愛郎

    北山委員 どうもよくわからないのですが、要するに先ほど申し上げたような、ある特定の選挙運動の取締りについての指示というようなものは、警察運営についての指揮監督の範囲に入るか入らないか。個々の選挙違反をやつたものに対する捜査なり、そういつたものを指示するものだけが警察運営に対する指揮監督であつて、ただいま例をあげたような場合は、これは指揮監督ではないのだ、それは連絡協力の範囲である、今後においてもそうだ、こういうふうに解釈していいのですか。
  156. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 先ほど選挙の例を引かれましたが、あの場合、一般に示しましたのは、緊密な連絡ということでありまして、たとえば今度の参議院の選挙について逮捕令状が出て、そうして宮がわからないのはこれこれの人である。これは各府県から報告をもらつて、それを連絡したということでありますし、選挙の投票日の前日に、たとえば選挙事務所を捜査するというような非常識なことをやらぬ方がよかろうというようなことも、これは気づきとしての連絡であつて、ここに言う警察運営に関する指揮ではむろんございませんし、どれにも該当しないと思います。従つてそういうものについて府県公安委員会がこれを無視されましても、指揮監督に、反したというわけでもありません。指令違反というわけでもないと思います。
  157. 北山愛郎

    北山委員 しつごいようですが、例をあげて一つお聞きします。これは非常に将来の参考になると思うのですが、昭和二十八年六月二十七日の大阪管区本部長からの関係都道府県警察隊長に対する通牒であります。海上犯罪の一斉取締りについてということでいろいろ書いてありますが、海上犯罪の一斉取締りを左記によつて実施することにしたから、それぞれ実情に即応した計画を樹立して、取締りの万全を期せられたい。なお自治体警察長には、各別の協力をお願いまする。従つてこれは協力と協力以外の何か、取締りの万全を期せられたいというのと使いわけをしておるのです。従つてこれは文句の体裁から見ても、おそらく普通の上級機関が下級機関に対する命令のような体裁をとつておるのですが、こういうような実例についてもまたやはり第五条第に項の各号の範囲には入らない。そういう権限はないのだ、こう考えてよろしゆうございますか。第五条第二項で、警察庁長官は、都道府県警察に対してこういうようなことについての指揮監督をする権限はないのだ、こういうふうに考えてよろしゆうございますか。
  158. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 ただいまの海上犯罪の一斉捜査でございますが、そのほかにも、たとえば交通取締りの一斉励行をやろうというようなことは、今まで自警、関係府県と相談して大体いつごろがいいか。そのときに、一斉にやろう、各府県かあるいは各警察がまちまちにやつてつたならば、なかなか効果が上らないから、適当なときに適当な方法で一斉にやろうというような話合い、連絡によりまして計画を立て、こういう計画になつたからそれによつてつてもらいたいということを事実上やつておるのでございまして、これは今度の法案によりますと、やはり連絡にあたるのがほんとうであろうと思うのであります。どの府県もそのきめた方針によつて一斉にやるということが望ましいから、それでやろうということになつておるわけでありますが、しかし特定の県がいや自分のところは都合が悪いから、今やれないということになりましても、これは指揮監督のそとに出るというわけではなかろうと考えるのであります。
  159. 北山愛郎

    北山委員 今二、三の例を申し上げたのですが、要するに同一種類の警察運営のやり方についての指揮監督というものは、やはりこの新しい警察法においても、警察庁長官は都道府県警察にそういう取締り方針とか、そういうことについてのそういう形式における指揮監督はできない、指揮監督が警察運営においてできるのは、第五条第三項の第三号に掲げる場合に限られるというような御説明のようでございますが、大体締めくくりとして、さように了解してよろしゆうございますか。
  160. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 さようでございます。
  161. 中井一夫

  162. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 二、三の点についてお尋ねいたします。第五条でありますが、国家公安委員会は、国の公安にかかる警察運営をつかさどるとありまして、警察教養、警察通信、犯罪鑑識、犯罪統計及び警察装備に関する事項を統轄する、この辺は非常に詳しいのですが、並びに警察行政に関する調整々行うとあるのです。私どもすうつと読みますと、公安委員会は行政管理と輝営管理をやるものでありまして、警察行政に関する事項をつかさどるならばわかりますが、調整を行うとあるので、これはどうも少し逆のような印免を受けるのです。この点どうですか。大臣意見をお聞きしたい。
  163. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 これは警察行政事務を全部権限あるいは任務としておるのではありません。警察行政は都道府県が建前で、従つて同じ任務、権限を国家公安委員会が持つのではありません。その警察行政事務全体に関して、そのうちの国の公安にかかる警察運営、それから教養、通信、犯罪鑑識、犯罪統計、警察装備に関する事項の統轄事項、それからもう一つは調整事項、それに限るという趣旨でございます。
  164. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 今のお答えですが、警察行政は都道府原が、建前ということ、私はそういう御答弁だろうとは思つたのです。しかし国家公安委員会自体の中においても、管区警察もありますし、警察行政はあり得るわけであります。公安委員命が警察送信だとか、犯罪鑑識だとか、そういうことについて統轄するとありますけれども、これこそ警察庁長官にまかす問題であつて、やはり公安委員会内部の、都道府県に行くまでの管区その他の警察行政というものはあり得るわけであります。それは公安委員会の最も重要な仕事のように私は思うのでありますが、ここのところ調整と逃げておるのです。そうすると、そういう警察行政は、警察庁長官がもつぱらやるというような建前になつておるのでしようか。その辺のところをもう一度お聞かせ願いたいと思います。
  165. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 ちよつと御質問趣旨がわかりかねましたが、公安委員会がただいま申しました五条の第一項にあることをその任務、権限といたしまして、その任務、権限を行使するために警察庁長官管理するわけです。警察庁長官に事実上この公安委員会のやるべき事柄実施をやらせる。それについて公安委員会は長官を指揮、管理するということでありまして、公安委員会任務、権限の範囲と、長官の所掌事務の範囲は、まつたく一致をしておるのであります。狭い広いはないのであります。
  166. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 どうもよくわかりませんが、警察行政というものに関する調整――ここにいう警察行政とは、具体的にどういうものになりますか。
  167. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 これは警察事務ということと別にかわりはないのです。
  168. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 運営管理とか行政管理ということをやかましく言つたと思うのでありますが、現行公安委員会制度のもとにおきましては、府県公安委員会については行政管理の権限がない。これを今度新しく行う、これは非常に大きな変革なのです。従つて国家公安委員会においては、初めからそういうものを持つてつたと私どもは理解しておるのでありますが、どうなのですか。
  169. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 先ほども御説明をいたしましたように、行政管理運営管理の二つにわけ出したのは、国家地方警察の面におきまして、行政管理は国家公安委員会が全部やる、運営管理は都道府県公安委員会がやる、こういう建前になつておりましたので、行政管理運営管理をわけましたが、今度は都道府県公安委員会は行政管理運営管理もやりますから、そのわけ方はいたしておりません、すべて警察の行政とかあるいは警察の事務を行うということになつておるのでございます。従つてこの法律におきまして、は、ただ第五条第二項第三号に警察運営という文字が出て来ておるだけでありまして、そのほかの場合には全然出て来ておりません。従つて今お尋ねの第五条第一項の警察行政に関する調整といいますのは、警察運営管理についても、行政管理についても、現在の観念から申しますと、府県間の調整をはからなければならないという仕事は国家公安委員会が行う、こういうことです。
  170. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 今のお話ですと、警察行政に関する調整というのは、府県間の調整という意味と了解していいのですね。
  171. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 さように御理解くださつてさしつかえないと思います。
  172. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 それ以外に、私は国家公安委員として警察行政というものははつきりあり得ると思うのであります。その点で、もし府県間の警察行政に関する調整ならば、それをはつきりとここにお書きになつたらどうかと私は思います。しかしこれだけでもずいふん時間をとりましようから言いません。  最後に申し上げたいことは、こういうふうにはつきりと犯罪鑑識だとか警察通信だとかわかり切つたこと、警察庁長官公安委員会の命を受けておやりになる警察行政と常識的に考えられるものこそ、私は公安委員会の重要な任務じやなかろうか、かように実は考えておりますが、この程度にしておきます。  次に第六条についてちよつとお伺いいたしております。委員長は国務大臣をもつて充てるということになつております。従つて委員長と委員はこの条文においてはつきりとわけてあるように思いますが、さように了解してよろしゆうございますか。
  173. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 その通りでございます。
  174. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 そこでこれまで公安委員会が外部に対して文書をお出しになつた場合に、公安委員会としてお出しになつたか、公安委員長としてお出しになつたか、両方お使いになつておると思うのですが、どういうことでありますか、その内容によつて説明をしていただきたいと思います。
  175. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 現在はすべて公安委員会の名義で外部に対しまして出しております。
  176. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 そういたしますと、今後とも公安委員会という名前でお出しになるおつもりでありますか、その辺を伺いたいと思います。
  177. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 現行法は委員長は会務を総理するとなつております。これは国家公安委員会府県公安委員会ともになつておりますが、今回の法案におきましては「委員長は、会務を総理し、国家公安委員会を代表する。」という項を入れたのであります。国家公安委員会を代表するという意味は、委員長が国家公安委員会を代表してその意思を決定するというような意味をもちろん含むものではございませんので、その意思決定におきましては後にありますような公安委員会の合議制によつておるわけでありますが、そのきまつた意思を外部に出しましたりするような場合におきまして、委員長の名義を使つた方が便利だというような場合もございまして、今度は国家公安委員会の名義を使う場合もございましようし、あるいは事態によりまして公安委員長の名義を使う場合もあろうかと存じます。
  178. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 この辺のところは実際の運営において非常に微妙なものがあるだろうと想像するのであります。慎重にどういう場合はどうだということをあらかじめ決定をしていただきたいと思うのであります。今のお答えにありましたようなことでは、公安委員長は自分の意思というものはないわけであります。全部合議制でもつて公安委員会の意思を代表する、こういうことになつております。そうなりますと、国務大臣が公安委員長になるわけでありますが、その場合に国務大臣が公安委員長としては非常な制約を受けるということに私はなると思うのであります。そういうふうに解釈していいわけでありましようね。これは当然のことであります、
  179. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 公安委員長がこうだと思つておられましても、公安委員会の意思決定が右だということになれば、公安委員長としては右の決定に従つて行動されなければならないということになるわけであります。
  180. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 そこでやはり問題は残ると思うのでありますが、たとえば閣議決定と公安委員会の決定とがまるで逆になつたというようなことがあり得ると思うのであります。具体的に起つて来ると思うのであります。そういう場合にはどういう立場になりますか、これは小坂さんから御答弁をいただきたいと思います。
  181. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 その場合国家公安委員会の意思を委員長が代表するのでありますから、国家公安委員会がきめたことが委員長の意思を拘束する、こういうことになると思います。
  182. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 委員長は辞職せざるを得ないということになるのですか。
  183. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 しばしばお話申し上げておりますように、こういう問題はすべて良識をもつて処理さるべきものだと思うのであります。今御提示の件は非常にまれな例であると思いますが、その場合は国家公安委員会の委員が意思表示をして、表決して決定すれば、その委員会の意思によつて委員長はその意思を表明する、こういうことになると思います。その場合辞職するかしないか、それはまたそのときのいろいろな事情がありましようから、一概に言えぬことと存じます。
  184. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 この点は私は非常にまれなことを心配して聞いてどうも何でありますが、しかし私はあり得ると思います。警察法改正法案につきまして責任の明確化ということをやかましく言われます。そこでそういうものとして関連して私はお尋ねしたわけでありますが、そういうことになりますと、ここでチエックをされるということになる。私はそういう場合には内閣は前の意思を撤回して、公安委員会の意思に従うというふうな今のお話で、一応シビル・コントロール、そこまではつきりお考えになるならたいへんけつこうだと思うのであります。私は大いに疑問だと思いますが、実際問題としてはどうでありましようか。  そこで、どうも非常に卑近なことをお尋ねして、小坂さんに恐縮なんでありますが、先ほどお尋ねいたしましたうちで、委員長と委員をはつきりと区別をしてこの条文ができております。そして委員につきましては非常な制限をつけておると私は思います。この条文には制限をつけておるのでありまして、それは第七条にある。実際委員長任命の場合に国務大臣をもつて充てるわけですから、歴代の内閣はこの制限をつけた精神を取上げて行くかどうかということは、私は非常に重要だろうと思うのであります。そういう意味において、もしこの法案通りました場合、現内閣はこの条文にあります委員長の資格を、委員長選任の場合にも十分お考えになつてやられるおつもりであるか、その点をちよつとお尋ねいたしておきたいと思います。
  185. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 第七条は民主的管理た徹底させようという趣旨であるということは言うまでもありませんが、この法案趣旨従つて委員会運営するように、人選等の場合は考慮されると思います。先ほどの、閣議の決定と委員会の決心が異なつた場合というお話、きわめてまれな例でありましようが、考えられるかと思いますが、その過程に立つてお話申し上げましたけれども、公安委員会で決定することが、ただちに同一問題が閣議において問題になり、両者の決定が相反するというようなことは、実際問題として私はあり得ないことじやないかと思います。
  186. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 今非常に土手な御答弁でありましたが、私はやはりあり得ると思うのです。この間の例の検察片と皆さんの御意見の対立、ここにもやはり現われておると思います。まあなければけつこうであります。内容が違うとおつしやるかもしれませんが、やはり警察というものは多少そういうものと似ておりますから、私は十分あり得る、かように思います。しかしもう十分おわかりだと思いますから、あまりこの問題について深く入ることはこの程度でよします。   そこで第七条ですが、先般もちよつとお尋ねをしたのでありますけれども、この点ひとつ確めておきたいのであります。旧職業軍人のうちで、憲兵あるいはまた海軍で警察的な仕事をしておつた人、この人たちが、第七条の「委員は、警察又は検察の職務を行う職業的公務員の前歴のない者のうちから、内閣総理大臣が両議院の同意を得て任命する。」この中に含まつておるというふうなことでありましたが、この点をこの逐条審議の際に、はつきりと政府当局から言明をしていただいておいたらどうか、かように思いますが、お答えをいただきたいと思います。
  187. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 第七条の「警察又は検察の職務を行う職業的公務員の前歴」という中に、警察官あるいは検察官といつたようなものが入ることは当然であるけれども、それ以外の憲兵のようなものが入るのかとうかという点につきましては、憲兵のようなものは含まれるように解するということを先般もお答えしましたけれども、ここにありますのは警察官警察職員あるいは警察官、検察職員というふうに書きませんで、「警察又は検察の職務を行う職業的公務員」こういうふうにいたしておるのでございます。その事柄の実質が警察の仕事あるいは検察の職務というものに属する仕事であるならば、そういう仕事をやつてつた者はやはり前歴者として読むという考え方でおるのでございます。従つてその中に入るものとして大体考えられますものは、今申しました警察官、皇宮護衛官、事務官、技官といつたものは当然でありますが、旧軍人の中におきまして警察事務を行つたところの憲兵、あるいは法務官の中で検察事務を行つてつた者、こういうものはこれに入る、それから現行の制度におきます警察官警察職員でありませんでも、昔の内務省警保局の職員あるいは府県警察部長といつたようなものも当然その前歴者として入る、こういう解釈であるのであります。
  188. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 当然であろうと思うのでありますが、この点もう少上確かめておきたいと思うのであります。それはたとえば旧内務省の警保局長なんというのは、やはり前歴者に入るわけですね。
  189. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 入ります。
  190. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 それでは次にお尋ねしますが、たとえば鉄道とかあるいは運輸省の海上保安庁ですか、ああいうものの公安官というものはどういうふうになりますか。
  191. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 特別司法警察職員といたしましては、それらの仕事が警察事務の全般を行つておるものとは認められないようなものが多いのであります。麻薬取締りでございますとかあるいは鉄道関係だけとか、こういつたようなことでありますので、そういうものはこの中には解釈上入れない、かように考えております。
  192. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 その点を念のためにはつきりとしてもらいたいと思うのです。従つてこれはきようでなくてけつこうでありますが、具体的に林野庁の何をしている者はいいとか、あるいは公安官はいいとかいうふうなことを、この逐条審議の終るまでに、この間も宣誓内容についてお願いしたのと同じように具体的にあげてもらいたいと思います。  またもう一つ念のためにお尋ねいたしたいのですが、「職業的公務員の前歴」といいますと、たとい一月やつても二月やつてもこれに入るというふうにからく解釈をすべきだと思うのですが、その辺の御見解、兼務はどうであるとか、それを伺いたい。
  193. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 大体「職業的公務員」というのは現行法にもある言葉でございますが、これは俸給、給与を受けてもつぱらその公務を行つている者、こういう解釈でございまして、もつぱらこの場合におきましては検察、警察の仕事をやつているもの、こういう考え方であります。警察や検察を商売にしている者、わかりやすく言えばそういうことであります。一箇月やわずかの期間やつてもどうかというお尋ねにつきましては、これはたとい短期間でありましても、実際問題としては非常に軽微なような場合もございましようけれども、法律の上におきましてはやむを得ない、やはり前歴者として採用されない、かように考えております。
  194. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 この点でくどくお尋ねをいたしまするのは、実は都道府県公安委員会あたりになりますと、そういう調査もなかなか行き届かない場合が多い。ことに旧陸海軍の軍人などということになりますと、そういう面がありますので、私は特にこの点をお尋ねいたしたわけであります。  そこで先ほどの鉄道公安官とか、そういうものは何年やつてつてもいいのですか、その辺のところを伺いたい。
  195. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 これは先ほど他の政府委員からも答えましたように、その事務はきわめて限られた事務でありますし、鉄道の業務あるいは林野の取締りならば林野庁の業務とも密接に関連してやつておる仕事でございますから、この制限の中には入れない、かように解釈をいたしております。
  196. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 それでは次にお尋ねをいたしますが、第七条の第四項であります。ここはたしか旧法では暴力団体その他の団体の団員ですか、役員ですか、そういう者はいけないというようなものがあつたと思うのですか、今回それをおとりになつておる。これは都道府県公安委員会であつたかもしれません。それについても先般お尋ねをしたのですが、はつきりしないうちに質疑を終つたような気持がいたしますので、その点、もう一度なぜそれをおとりになつたか伺いたい。  それからけさほども問題になりましたが、総則の第二条、第三条に不偏不党、公平中正という文句があります。そういうものと関連があると思うのでありますが、ここに禁治産、禁錮以上の刑に処せられる者とありますが、選挙違反にかかつたような者について特に一項目を設けて、そういう派閥根性の強い、党派根性の強い人を排除するというお考えはおありにならぬか、これをお尋ねしておきたい。
  197. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 まず最初の、今度は「政府を暴力で破壊することを主張する政党その他団体を結成し、又はこれに加入した者」というのを除外いたしましたが、政府を暴力で破壊するいわゆる暴力団体だということの認定はなかなかむずかしいのでありまして、むしろそれよりもそれに疑わしい人たちは、知事が任命せられる場合に良識をもつて任命せられないでありましようし、また宣誓の場合に公平中正に職務を執行することを宣誓されるわけでありますが、それにもかかわらず一党一派に偏するとか、ある特殊の団体のためにはかるというように、警察運営せられるというような場合にはこれを不適格な者として罷免ができるわけであり、またすべきものでありますから、この規定は削除をいたしたのでございます。  それから禁治産あるいは禁錮以上の刑に処せられた者という中に、選挙違反にかかつたものを特にここに掲げる必要はないかというお話でございますが、これはただいま申しましたのと同じような理由によりまして、特にその犯罪の種別を別にしなければならないというようには考えておりませんので、要は総理大臣あるいは府県知事が国会あるいは都道府県議会の同意を得て任命せられる方でありますから、そういう一党一派に偏するというような極端な人は任命される心配はないでありましようし、またさような場合には罷免されるべき人でありますから、その欠格条項として上げなかつた次第であります。
  198. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 今のお話、選挙違反はこれはそうでしよう。具体的に言えばそういうことになりましようが、第五項ですが、これもこの間お尋ねしたのでありますが、現在国家公安委員あるいは全国の都道府県の公安委員で政党に属しておる人はおられますか。これはおられましたら、ひとつ何人おられてどういう人か聞かしてもらいたい。
  199. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 入つておられる人のあることは間違いはございませんが、何人おられますか、ちよつと今統計は持つておりません。
  200. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 私は実はもうこういうものは全然実際問題としてあまり意味がないという考え方なんです。それは日本の現在の政党の組織がそうなんです。出入り自在なんです。きのうまで自由党の党員であつたがきようは神戸の市長に立候補するから無所属で行くというので、その間に脱磯届を出したらそれでしまいなんです。あしたひとつ公安委員に推薦するからひとつ党を離れておいて無所属で行く、それはかまいませんということになるのです。それができないのは日本の現状では共産党の党員くらいではなかろうかと思うのでありまして、実際問題としてこれは効果はあまりないのです。それよりもむしろ政党員でない方がいいというふうにはつきりとした力が――憲法違反だとか何だとおつしやいますけれども、私はそれの方がかえつてはつきりしていいと思うのでありますが、どうですかその辺のところ小坂さんひとつ……。あまり形式的過ぎる。
  201. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 形式的というお話もなるけど背綮に当る点もあろうかと思います。しかしそうかといつてこれをとつてしまうと、それじや逆に政党に属した方がいいから全部党員を充てろという議論も出て来る。このことはほどほどかと考えております。
  202. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 そういうふうに幾らでも逆に言えば法もくぐれるから何にもならぬということを私は最後に申し上げておきたいのでありますが、そこで今公安委員会は、この間から調書をいただきましたが、一週間に一回くらいおやりになつておるようでありますが、今後ともそういう状況で国家公安委員会はお続けになるつもりでありますか。
  203. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 この警察法案施行になりました場合の公安委員会の開催が、どの程度になるであろうかというお尋ねでありますが、新しい公安委員会が任命になりましたら、そこで公安委員会でまたおきめになるだろうと存じますが、大体今までのような状況でさしつかえはないじやなかろうかと考えております。と申しますのは、大事な事柄、緊急に御意見を決定を願わなければならないという場合には、臨時に集まつていただくわけでございますが、そういう場合はそうひんぴんとあるわけではございませんので、一週に一回を常則とするということで、十分ではなかろうかと私どもとしてはただいま考えておるわけあります。
  204. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 ところで今度行われまする制度――もしこれが通りますと公安委員会委員長がこれを招集して、そうして委員長は国務大臣が当る、委員長が招集しなければ一月でも二月でも公安委員会を開かなくてもよいということになつております。ただ十一条三項に「委員長に故障がある場合においては、」こういうことがあります。この故障というのは具体的にどういうことであるか、わしはいやじやと言うたらそれは故障になるのですか。
  205. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 故障と申しますのは、現実に病気であるとか、あるいは長期の出張であつて、現実に委員長としての職務がとれないという場合でございます。委員長が一月も、半年も開かないでおいたらどうかというお話でございますが、それでは公安委員会としての意思決定を願う場合に欠くる場合がありますから、さようなむちやなことはないと考えます。最初公安委員会が退任されまするならば、この運営に関する内規をおつくりになる、現在もできておるわけでございますが、その内規によつて招集されることだと考えます。
  206. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 私お尋ねいたしましたのは、今回の法案によりますと、公安委員会の招集は委員長だけ、ほかの者はできないというところに非常に問題があると思うのであります。これは委員のうち、たとえば二名から要求があつたら開かねばならぬとか何とかいうふうな、そういう修正をぜひする必要があるように思うのでございます。警察のことでありますから一時間を争うこともあるし、また一日、二日を争うこともたくさんあるでありましよう。またそれが非常な政治的なものとの関連において委員長は開きたくない、全国の輿論はぜひ公安委員会を開いて早く決定しろというようなことが必ず出て来ると思うのでありますが、そういうことについて、この十一条には何の規定もない、この改正案には何の規定もありません。それについてひとつ御意見を伺います。
  207. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 ただいまの点は、この第十四条で国家公安委員会運営に関して必要な事項を定めるという中に定め得る事項だと、かように考えておるのでございます。現在の公安委員会運営規程の中にもその趣旨がございまして、委員または国家地方警察本部長官もしくは国家消防庁長官は委員長に臨時会議の招請を要求することができる、ということがございまして、その趣旨は十分考えておるのでございます。われわれといたしましては、法律に書いておかなくても今まで通り運営公安委員会できめられる、運営規則によつてできるであろう、かように考えておるのでございます。
  208. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 要求することができるとあるようでありますが、それを委員長が断つた場合にはどうなるのですか。
  209. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 法律的に申しますと、断わることもできるということになるわけでありますから、ただいまおつしやいますように、そういう場合は断わることができないと、この法律にあつた力が御心配の点はなくなることだと存じますが、しかし実際問題として法律に明文を置かなければならぬような、そんな状態はなかろう、かようにわれわれ立案者としては考えたのでございます。
  210. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 非常に甘い考えであるということを申し上げておきます。
  211. 門司亮

    門司委員 私は今大体中井君から聞かれておりますし、それから北山君から聞かれております。から、そうたくさん聞くこともないのでありますが、少し聞いておきたいと思います。  それは第四条の関係でありまして、「国家公安委員会は、委員長及び、五人の委員をもつて組織する。」こう書いてあります、これは八条の規定にはどうなつておるかというと、八条の規定には委員の任期が定めてあります。委員長でありまする大臣にはむろん任期があるはずはないのであります。そこで大臣をいつでも総理大臣はとりかえることができる。悪く言えば吉田さんのようにむやみやたらにいつでもとりかえられる。そういたしますと、今度の警察法改正法案を見ておりますと、委員長の権限は非常に大きい。そこで権限の非常に大きい委員長国会の承認も経なければ何もしない。そうして総理大臣のかつてにとりかえられるようなことでは、この行政委員会に対して大きな疑問が出て来ると思う。少くとも今日行政委員公をこしらえておりますものは、そういうことのないように――いわゆる内閣とかあるいは地方の執行機関といつたよりなものが、むやみに干渉したり、あるいはこれをいじることのできないようにこしらえたのが、大体戦後の行政委員会制度であることに私は間違いがないと思う。そういたしますと、ここでは委員の身分には――そのほかいろいろな関係もありますが、やかましいことをくつつけておいて、そうして委員長である大臣には何らの制限がないのであります。これはあるはずがないのであります。そこで委員には警察官であつた者はいけないとか、あるいは憲兵であつたものはいけないとかいつておるが、大臣になるにはそういう資格はちつとも関係がない。そうするとこの行政委員会というものは、一方においては委員に厳重に資格条件を与えておるようでありますが、委員長にはまるつきり無制限であります。何も考えておらない。私はこれは実におかしいと思う。だからこの点は一体どうお考えになつてこういうことになされたのか、その点をひとつはつきり伺つておきたいと思います。
  212. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 委員長の権限が非常に大きいとおつしやいましたが、それほどでもないと思うのであります。委員長は大体委員の身分を持つていないのでありまして、表決権もない。従つてよい意味においての政府考え方を反映するというものでありまして、先ほども中井委員にもお答えしたのでありますが、かりに内閣の意思と途つても、これは非常に崩れな過程だと思いますが、そういう良識をもつて一致するように持つて行くことがいいと思いますし、まれにそういうふうに意見か相違いたしましても、これは委員会の意思決定というものを委員長が尊重する、こういうことになると思います。従いまして今のような強大な権限を持つということを前提とする御議論は私どもとしては承服いたしかねます。
  213. 門司亮

    門司委員 それは少しおかしいです。今までの実例を調べてごらんなさい。大体去年に委員会が開かれて議決事項のあつたのが私の勘出では二十一回あります。その中で可否同数の場合、四人または二人で議決したことが八回あります。そうなつて参りますと、今までの過去の例から推して行きますと、個数の場合で可否を決していることが相当ある。偶数の場合はやはり可否同数になり得るという危険性をたくさん持つておる。そうなりますと表決権は持つていないが議決権はあるのでありますから、私どもの考え方から行けばこれは相当になければならないと思う。決して権限がないわけではない。同時に招集する権限を持つておる。この招集する権限は非常に大きな権限ですよ。さつき中井君が言いましたように、大臣がいやだと言えばこれは招集できないのでありますからどうにもならない。それを制約することは何も書いてないのであります。大臣の権限が薄いなどと言われておりますが、これほど大臣が大きな権限が持つておるものはない。要するに国会で言えは委員長の職権とか、あるいは議長職権だとか言つておりますけれども、議長職権において会議を開くということはよほどのことがなければ議長職権では会議は開けない。委員長委員長職権で委員会を開くのにはやはり理事会その他の十分な理解を得ておかないと、委員長の職権で委員会を開くということは、何か波瀾がなければ普通のときでは考えられない。従つてそれだけ大きな権限を持つております委員長の資格が何にも制限されていない。さらにその次には政党に所属する者云々と書いてありますが、今の大臣は大体政党に所属しておると見た方が間違いがないと思う。そうすると委員の中で二人以上は困るという規定があるが、委員長が特定の政党に所属しておる場合に、これもその勘定に入るのか入らないのかということが出て来る。それで私は第四条に委員長及び五人の委員と書いて、委員長委員会の中から除外された形を示されておりますけれども、その点については私は非常に疑問と危険を持つておる。だから今のような御答弁でなくて、一体大臣に対して職業的の制限をしなかつたのに――大臣というよりも委員長でありますが、委員長に対して職業的の制限をしなかつたこと、同時に政党的の制限をしなかつたこと、このことは頭隠してしり隠さずというか、片方はばかに規制して公平中正、不偏不党ということを表わしたようですが、実際はきわめて片寄つた制度になると私は思う。だから大臣の資格を制限しなかつたということと、政党員でおるということに対しても何らの制限を加えておらないというこの二点について、もう少しはつきりした御答弁を開いておかないと、これは非常にあぶないと思う。
  214. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 この点は実は政府の方からこういうように委員長の資格は制限しないようにした方がいいとかいうような御意見があつてしたのではありませんで、われわれ事務当局として、当然かくあるであろうということで考えたわけでございます。それは委員長を国務大臣をもつて充てると申しますこの趣旨は、大臣もたびたびお答えになつておられますように、政府の正しい意図を警察に反映をさせる、また警察のあり方を政府あるいは大臣を通じて国会に反映をしていただくという趣旨でありますから、従つてここで委員長たる大臣の資格を制限するということは、かえつておかしくなるのであります。大臣のお答えになつておりますように、従つて表決権がないわけであります。先ほど四人出席してきめた例が会議録を見ると非常に多いとおつしやいますが、しかしこれらはすべてみな満場一致でありまして、可否同数で争つて委員長が採決したという例は今までございません。またそういつたような重大な問題でありますれば、欠席せられる委員はないと思います。
  215. 門司亮

    門司委員 私は今の齋藤君の答弁は非常に重大だと思う。政府からそういう要請があつたわけじやない、事務当局が害いたというならば、一体この案は政府の案ですか、だれの案ですか。閣議で決定したのでしよう。閣議決定をまたない案ですか。大臣はどう考えていますか。閣議決定事項たるに間違いはないでしよう。
  216. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これは作成の経緯についてお話しておるのでありまして、そうした形式的なことを言つておるわけであります。
  217. 門司亮

    門司委員 私は形式的のことを言つておるのではない。実質的のことを言つておる。なるほど経緯の中には、示唆はしなかつたかもしれない。あるいは事務当局が書いたかもしれない。しかし閣議決定事項であることには間違いはないから、閣議が責任を負うべきです。閣議決定事項でないといえばだれが責任を負うのですか。
  218. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 ただいまのお話は、いかにも政府がこの委員会を自由にしたいためにこういうような規定を置いたのではないだろうかというような御意見ではないかと、私が考えつて答弁を申し上げたのでありまして、これは事務的に考え、また法制局で純理約に考えて、このきめ方がよろしいのではなかろうかというのでわれわれは立案いたしたのであります。閣議においてもこれがよろしいということで御決定になつたのでありますから閣議に責任のあることはもちろんでございます。
  219. 門司亮

    門司委員 どうせ閣議に責任があるというのなら大臣に御答弁していただきたい。さつき申し上げたような資格制限等をとうして与えなかつたのか。
  220. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これは事務的な処理に属するものであつて、われわれといたしましてそうした規定について、この規定は事務的におかしいではないかというようなことがあれば、これは閣議で問題になりますけれども、私どもの良識において御質問のような疑点は出て来ないものでありますから、閣議でよろしかろうと承認したのであります。もちろん私どもは責任を持ちます。ただ、今国警長官がお答えになりましたのは、この原案をいろいろと作成する経緯について申し上げたので、特に政党として公安委員会を支配するとかいうような観念がいやしくもなかつたということの証明の意味で、御説明があつたことと私は考えておるのであります。
  221. 門司亮

    門司委員 それは政党としてこれを支配するという考え方があつて書かれたとは言われますまい。これは言いたくても、内心はそうであつても、そういうことをここで答弁されたのでは、えらいことになりましようから、そういうことは言われますまいが、しかし問題は、委員長は大して権限はないと言われておりますが、これをごらんなさい。今までの委員会委員長は、会務をただ総理するという程度のものであつて従つて指令といいますか、あるいは通達といいますか、それらのものにつきましても、大体委員会名で出ているのが正しいと私は思う。今度はとにかくこれは委員会の代表者なんです。この代表者の責任が薄いということになると、どうにもならなくなる。招集する権限を持つているし、委員会の事務を総理して、さらに委員会を代表するものであるということになれは、これは委員会の中心の人でなければならぬことはわかり切つておる。ただ公平を期するということを――ごまかすという言葉を使えば悪うございますが、実はカムフラージユをすることのために表決権だけは与えずにおいた方がよかろうという程度である。従つて議決権は与えてある。結局、もし大臣答弁が正しいとするならば、これはあくまでも乳人の委員の議決を経なければならないというように書いて――委員長はただ会務を総理し、これを代表する、いわゆる委員会できめられたものについて、国が責任を持つて行くというだけなら、まだ話はわかるのでありますが、ちやんと議決権を持つている。議決権を持つているということは、会議の建前から言えば、一番大きな権限ですよ。この次にはもう少し変なことが書いてあるから、あとで聞こうと思つておりますが、会議の形から行きますと、表決権を持つことよりも、むしろ議決権を持つている場合の方が権限は大きいのである。それはなぜかというと、可否同数にわかれた場合、いわゆる委員会意見が二つにわかれた場合どう決するかということであつて、最も大きいのである。一番大きな重大な任務は議長の最後の一票にほかならないのである。しかも最後の一票がものをいう場合、つまり意見が一致しないという事件は、そうたくさんあるものではないと私は思う。きわめて重大な用件か、ことに意見のかけ離れた大きな問題でなければ、可否同数になるようなことはめつたにないと私は思う。だから、あとは表決権がなくて議決権があるたけだから議決権の場合は、数が少いのだから大したものじやないということは、これは大きな繰りだと私は思う。数の上から行けば少いかもしれないけれども、そのこと自体の上から行けは、私は大きな問題たと思う。委員会意見が二つにわかれなければならないほどの問題のときの議決権を持つております以上は、委員長の権限が軽いのだという答弁は当らないと私は思う。もし小坂さんが委員長になられれば、これはきわめて重大な責任を背負われなければならぬことになると思う。従つて、先ほどから申し上げておりますように、やはり委員長の資格にも、普通の委員の資格と同じような権限を持つことが必要じやないかということ、同時に、政党人についてもやはり同じような制限を加えることが必要じやないかということ――私がこのことを申し上げましたのは、たとえば今度の検察庁と犬養前法務大臣との関係でありますが、ああいうものにつきましても、犬養さんは全然しろうとでありまして、かつての経験のない人である。警察行政の中で公安委員会がかつて警察行政のようなことをやつておる者については、職業的にこれを制限をしておることになつて参りますと、委員長についても、私はそういう制限を加えておつた方がいいのではないかと思う。こちらに制限を加えておつて委員長たる大臣が、あるいはかつての警視総監をやつてつたとか、あるいは警保局長をやつてつたとか、あるいは検察の検事総長をやつてつたとかいうような人てありますれば――委員会において委員長が無言の行をやつて何らの発言もしなければ、何らの意思表示もしない、ただ委員長の席にいるだけだというならまだしもでありますが、少くともこれを代表している以上は、なかなかそうは行かないと私は思う。その場合にはどうしても、委員の資格を制限される限においては、委員長の資格も制限すべきだという強い主張を私は打つておるのでありますが、そうお考えになりませんか。
  222. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私は委員長の権限ということについて、そうあなたのおつしやるようなほど強大なものでないということを言いましたその意味は、委員長として委員会の内部支配の権限というものはそうあるものじやない、こういう意味であつて、決して責任が軽いというようなことを申したつもりはないのであります。これはしばしばお答え申し上げたことを繰返すことになるのでありますが、この委員会が何がゆえに奇数構成の委員会になつておるかという点についてまた触れなければなりませんが、委員長が採決権を持つておるということは、この委員会が奇数構成になつておるということで非常にあなたのおつしやる意味は薄くなつて来ると思うのであります。可否同数で争うとか、あるいは委員長が採決権を行使しなければならぬというような重大問題でありますれば、公安委員会の良識におきまして欠席をするということはないはずであります。また委員長の良識におきまして、もし事故のあるような委員のあります場合には、その人の意見を十分徴し、出席がもしかりにできなくても出席と同様の効果のあるような方法を講ずべきものと思うのであります。従いまして決して委員長の採決権によつて委員会がどうこうされるという憂いはない、――これは甘いといつておしかりを受けるかもしれませんが、私はさように思つております。  なお委員長の資格について制限を設けられるべきじやないかというお話がございましたが、国務大臣としてなります場合も、委員がなります場合も、あるいは他から委員以外の人がなります場合も、これはそのときの内閣の良識の問題だろうと思います。私はただいま門司委員がお述べになりましたような趣旨において考えらるべきものが普通の姿であろうと思います。大体普通のことをやつておらなければ内閣自体が参るくらいでありまして、そのためにまた国会があるのでありまして、あまり取越苦労をなさらなくてもよろしかろうと思います。
  223. 北山愛郎

    北山委員 私もその点はたくさんの疑問を持つておるのですが、先ほど国警長官は政府の意図を委員会に反映させるのだ、そのために国務大臣と兼任しておる、こういうことを言われました。しかし一体どういう方法で反映させるのか。反面から言うと、委員長会議の主宰者である、議事をとるだけのものだと言つて会議体というふうな説明をなさつておるのですが、問題は政府の意図を反映させるために、会議の際に委員長がどんどん意見を言うことができるのじやないかと思うのですが、もしも当委員会中井委員長のように、公平な議事のとり方をして行くというならばいいかもしれませんでしよう。しかしとれがもし政府ではこの問題はこういうふうに考えておる、あるいはこうではふうに持つて行かなければ予算がとれないのだというような議事の内容について委員長がどんどん意見を述べて会議を指導して行くということになれば、これは表決以前から会議を動かして行くことになると思うのですが、委員長は、ちようど当委員会委員長のように、ただ議事を公正に通常して行く上において主宰されるというのであるか、政府の意思を反映させるために委員会でどんどん意見を述べて主宰して行くのであるか、これは非常に重大であると思うので、その点をはつきりさせていただきたい。
  224. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 政府の意図を委員会に反映すると申しますのは、しばしば申しておりますが、正しい意味において反映する、こういうことで、決して横車を押すというような考えはないのであります。委員長というのは、言うまでもなく中井委員長のごとく非常に円満に公平に議事をとるべきものであつて委員長の私見を申すことはさしひかえるべきものであることは常識であります。ただ私どもとして考えますことは、国務大臣委員長といたしまして常に会議に出席しております間に、委員の識見というものを十分聴取することができる。従つてどういう気持でこういう決定がなされたかということについてはよくわかるわけです。従つて委員長としても、何も会議中と限りませんが、その後において、政府は実はこういう考えをもつてつておるのだ、諸般の情勢、たとえば経済状況等はこうなつておるのだというようなことを説明するのが正しい意味において政府の意図を反映するということになろうと考えておる次第であります。
  225. 北山愛郎

    北山委員 そうすると、いろいろな情報を報告することができるが、委員長としては会議の際に意見を申し述べることはできない、こう考えてよろしゆうございますか。
  226. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 大体会議そのものがごく少数で構成されております。わずか五人でございますから、非常に懇談的に話合いができることと思います。ただ議事としてやります場合には、議事の進め方の規則があるわけでございますから、そうやたらな横車は押せぬことになつておると私どもは考えております。
  227. 北山愛郎

    北山委員 横車とか、正しい運営だとか、良識だとかいうのは形容詞でありまして、そういうことは常に正しければ問題ないのであります。組織としては、あらゆる場合を想定した民主的な機構を設けなければならぬので、そういう形容詞は省いて議論をしたいと思います。そうすると委員長もどんどん意見言つたり話合いをする、そうして運営をして行くという意味においては、先ほど来説明があつたような単なる会議の主宰者ではない、内容的にこれを指導してお互いに意見を交換して議事を進めるというような、会議のメンバーとしては相当な役割は果すのだというふうに考えられる。この点は非常に危険だと私どもは考えます。
  228. 門司亮

    門司委員 今北山君からも聞かれましたが、私もう少しこのことで聞いておきたいと思います。六条に会務を総理すると書いてありますが、その会の議案といいますか、協議すべき事項を提示するということは、だれの権限に属しておりますか。
  229. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 委員長の権限に属すると思います。
  230. 門司亮

    門司委員 委員長の権限に属することだというお話ですが、そこで問題がまた出て来るのであります。私はおそらくそうだと考えております。ところでこの会議といいますか、協議をいたします議題というかは、委員長が提示する、そうしてそれを協議する者が普通の委員である、こういうことになつております。委員の方には、何度も繰返して申し上げますようにいろいろ制限が加えられてある。その会務を総理して、さらに議題を提供する本尊様は何も制限を受けておらぬ。そうなつて参りますと、公安委員会の資格が現行法よりも少し緩和されております。現行法では、国家公務員であつた者はいけないと書いてある。役人以外の者でなければならぬということになつております。今度はその点は役人であつてもいいように響いてある。制限はかなり緩和されておる。しかしこういう警察職務に対しての経験意であつてはならないと書いてある。ところが大事な議題を出して参ります委員長がかつて警察の親玉であつたり、あるいは政党にはつきり属した人であつて、そうして委員会の構成のメンバーの中にも加わつておらない。委員長を加えれば当然三人になるんだが、しかし委員は二人であるからいいんだというような構成であつては、やはり私は一党一派に偏する公安委員会運営が必ず行われるという気がいたします。従つて会務を総理し、議題を出す者が大臣であるとするならば、大臣こそ十分気をつけなければならぬ。先ほど小坂さんはそういうことは常識的にはあり得ないと言うが、そういうことは言えないと思います。この法律の中でこういう書き方をするならば、やはり十分ここでは委員長の資格というものを制限し、さらに政党その他に対しても公安委員会の円満な運営と、はたから見てわれわれの今議論しているようなことのないようにしてもらいたい。二条並びに三条に持つてつて、一党一派に偏することのないように中立性を保つというなら、その最も重要なポストである公安委員会委員長に対しても、やはり不偏不党、一党一派に編上ないような施策をこの際講じておくことが万全の措置だと思います。従つて公安委員長の資格については、そういうことを制限すべきである。これは何もむずかしいことではないと思う。内閣の組織から申しましても、三分の一は国会に籍を置かない人でもよいということになつておるから、公平にこの人事の処置はなし得ると思います。そういう処置をどうしてもとれませんか。いかに警察職員に不党不偏中正を保つということを誓わせても、本家本元のこの公安委員会が片寄ることの危険性を持つておる以上は、なかなか警察が中正を保つことは困難であると思いますので、重ねて質問をいたしておきますが、どうしてもこれをとりかえるわけには参りませんか。     〔委員長退席、灘尾委員長代理着席〕
  231. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 国務大臣が非常に非常識なものであるという前提に立つての御議論のようでありますが、私はそういうふうには思つておりません。しかも国務大臣は常に国会の監視のもとにさらされておるのでありまして、御懸念のようなことはないと思いますので、この点について特にそうした制限事項を書き加える必要はまいと考えております。
  232. 門司亮

    門司委員 もう一度聞いておきます。今国務大臣はきわめて常識的だと言われておりますけれども、他の委員には任期があります。国務大臣には任期がない。そうしていつでもとりかえられる。だからたとえばこの間の犬養さんみたいに、ああいう行政措置をしておいて、すたこら逃げるようなことになつたら、責任の持つて行きどころがない。これは危険ですよ。きわめて常識的だと言われますけれども、現在の内閣はあまり常識的なことをやつていないから、われわれ心配するのです。従つて第四条第二項の委員長に対しては、そういうある程度の資格なり何らかの制限を加えておきませんと、これは必ず政党警察にならざるを得ないというように解釈するのであります。  次に聞いておきたいのは、第九条第三項の三人以上が一つの政党に所属する場合は一人は罷免する、従つて二人以上を越えてはならないというこの規定と、この第四条第二項の委員長の資格の関係であります。たといこの委員会のメンバーに入つておらないからといつて、三人以上の政党員になるという危険性を多分に持つておると思う。従つてその大臣が政党に籍を持つておりますときは、この法律から文面通り解釈すれば、委員長は別になつておるからそういうことはないという形になると思うのでありますが、常識的にものを考えて行きますと、これの公正を期することのために、これを第九条の三項に当てはめて、政党に籍のある限りは、普通の委員の中の一人にこれを加えるというようにお考えができないだろうかどうか。この点は非常にむずかしいことだと思いますが、そう私は考えます。これについて大臣はどうお考えでありますか。
  233. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 遺憾ながら私は無理ではなかろうかと思います。大臣はいつでもかえられるのたから、非常にかつてなことができるのではないかというお話でありますが、これはむしろ逆ではないかと私は思います。委員の任期は五年ありますから、自分の思うことを言つておりますれば、五年間は保障されておる。あなたの御表現を借りれば、それこそいつ首が飛ぶかもしれない大臣と違つて、委員としては、自分の正しいと思うことをあくまで主張できる。むしろ御心配の点は逆に心得てもいいのじやないか。むしろ委員の任期についての制限くらいのお話が出ても、その議論から行けば、私どもは原案がいいと思つておりますが、おかしくないのじやないかと思うくらいであるわけであります。
  234. 門司亮

    門司委員 大臣意見はおかしいと思うのです。片方は五年間の任期を持つておるということは、やはりそうむやみにこういうものはかえられないということが一つの大きな原因だと思う。今日五年の任期を持つている委員は、参議院は六年ですが、これは選挙されておる。五年という任期は相当長い任期だと思うのです。そう短いものではないと思う。なぜこういう長い身分保障をしておるのかということもあとから聞いてもいいのですが、それもやはり警察という仕事が非常に大きな仕事であつて、そうむやみに警察行政のあり方がかわつて行つたのでは、やはり国民に非常に迷惑をかけるので、身分保障として一応五年間くらいの長い間の身分保障をしておくということがいいという考え方でなされたものではないかと私は考える。そこへ行きますと大臣はいつでもとりかえることができるのでありまして、きようでもあすでもかえることができる。従つて見方によつては、いつ無責任な態度がとられないとも限らない、またとり得るであろうと思う。そこで政府の意向を伝えると言つておりますが、政府の意向を伝える場合に、ことに大臣の資格の制限が何もしてありませんから、従つて警察国家時代に警察権力をむやみやたらに振りまわした経験を持つている人がうつかり大臣にでもなろうものなら、大体警察行政のあり方は、こういうことだということで、これを強く指示することになると思う。警察は一党一派に偏しないといつても、偏しなくてはいられなくなる。私は大臣とまつたく逆な考え方であります。でき得るならば、従来のように国民の批判を受ける期間を十分与えていただきたい。大臣は身分の保障も何もしていないのですから、いつでも罷免ができるのありますから、(小坂国務大臣「委員もそうです。」内閣は都合が悪ければいつでもやめさせることができる。片方は罷免はなかなかできないのであります。国会の承認を得なければなりませんし、そうむやみに罷免はできませんから、おのずから責任も十分感ずることになると思うが、この点は大臣と私と非常に大きな開きを持つておる。
  235. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 今門司さんのおつしやつた意見で、心配がなくなるというふうに、だんだん自分としても確信を強めて行くわけであります。委員の任期は五年あるのでありますから、その間に自分の意見を主張しておれは身分は保障される。自分がやめたいということなら別でありますが、逆に今度は大臣の方は任期が保障されていない。その期間にできるだけ良識あるよい行政をやろうとするのは、政治家としての共通の心理だろうと思うのであります。そうした意味でお互に牽制される。でありますから委員の任期が非常に確定し、保障されておるということのために、特定の人が個人の意思によつて委員会の意向を左右するということは、いよいよできなくなると思うのであります。しかも委員長というものは、しばしば申し上げておりますし、また門司委員もよくおわかりのように、決定権は、可否同数の場合採決権があるといいましても、委員の数は奇数であるのだからそういうことはできないのであります。でありますから、委員長の資格等について特段の制限を設けなくても、国務大臣という立場において、国会の監視を受けておるのでありますし、決して御心配のようなことはない、こう私は確信てしおります。
  236. 門司亮

    門司委員 私はそういう議論になつて参まりすと少し議論をしなければならぬことになりますが、御存じのように、これは少し当てはまらないかもしれない思いますが、われわれの考え方からいえば職務についてのいろゆる平等観といいますかこれも、憲法の十四条にやはり規定をいたしております人としての平等観と、ある程度同じように考えるべきではないか。それは憲法の二十二条に、御存じのように職業の選択を許しております。従つて職業選択の自由を二十二条において許しておつて、十四条には法の前に人としてはすべて平等権を与えておるという関連性から考えて参りますと、結局こういう資格の場合にも、一つの委員会を構成いたします場合の資格条件といたしましても、大体これはやはり平等の資格の上に立つて委員会を構成するということが私は正しいのではないかと思う。どうも委員長だけ特別の取扱いをするということ、しかもそれが委員会の構成の中に入つているということはおかしいのじやないというように多少考えらよるれうになるのでありますが、これは明らかに委員会の構成メンバーについて人としての平等に及ぼす権利を与えておらない。片一方には制限をしておる、委員長制限をしておらない、こういうふうに私には一応解釈ができるのであります。この点については大臣はどうお考えになつておりますか。
  237. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私は、この公安委員というものはたとえば国会なり府県会なりの同意を得て任命されるのでありますが、なつてしまえば任期は非常に安定して長い。こういう場所に参りますと、むしろ身分を保障されていない者よりも非常にわがままになりがちないのでありまして、これは他の例でありますが、行政委員会委員長でわがままかつてをやつて勇名を天下にとどろかした人もある。それは役人の経験があるかといえば役人の経験は全然ない。こういう民間人がそうした権力地位につくと、とんでへない行政をやり出す人が中には出て来る。私は委員長というものは、ことに国家公安委員というような重要な委員会委員長というものは、常に国民の監視下にさらされて、いつでも身分が安定していない、首を飛ばそうと思えばいつでも飛ばされる、そういう地位にある人の方がよいのではないか、こういうふうに私はむしろ逆に考えておるのであります。これは何も職業的に差別があるとかそういう意味ではないのでありまして、職業はいかなる地位にあつても平等なものでありますが、そうした憲法の平等観というものをほんとうに身につけておる人とつけていない人がある。その身につけていない人が一応委員長なつた場合、あるいは国務大臣がその委員の中から選ばれた場合に、むしろこれを飛ばすのには骨が折れる。大臣がいいかげんなことをやつた場合にはすぐ飛ばせるのでありまして、むしろ逆ではないか。こういうふうに思つております。
  238. 門司亮

    門司委員 私は、そのことは大臣とはまつたく逆な考え方であつて大臣が変なことをされればすぐ首が飛ぶということは、そのときの内閣の都合によつてであります。内閣の意思に沿わざることをやれば大臣は必ず首が飛ぶのです。これはわかり切つておることです。従つてそういう内閣の意思に沿わぬことをやつて首のつながつた大臣はおそらくない。総理大臣に反逆して、反逆という言葉はどうかと思うが、反抗をして総理大臣の意思に沿わざる行政をやつたならば大臣の首はつながつていないと思う、必ず首は飛ぶのです。従つて私どもから考えますと、これはやはり政党警察になり得る一つの危険性を非常に持つている。第四条の委員長の資格に何らの制限も加えていないというところに、私は一つの問題が残されておるというように考えておりますが、しかしこれだけを一日中議論しておつても始まらぬと思いますので、一応大臣意見だけをこの機会に聞いておきたいと思います。  その次に聞いておきたいと思いますことは五条の問題であります。五条についてはもうしばしばいろいろと議論がされておりますので、私はこの五条全体についての議論は避けたいと考えております。ただ第一項の三号におきまして「左に掲げる事案で国の公安に係るものについての警察運営に関すること。」、こう書いてあります中に、「民心に不安を生ずべき大規模な災害に係る事案」ということがイに書いてある。口には「地方の静穏を害するおそれのある騒乱に係る事案」、こう書いてあるが、この場合に、この前の委員会で、木村保安庁長官に来ていただきまして、自衛隊の任務警察任務との間についての御質問をいたしたのでありますが、自衛隊法にはこの騒乱という文字が使つてありません。この場合には直接侵略、間接侵略という文字が使つてある。そこで警察法と自衛隊法との間にそういう食い違いがあるのであります。自衛隊法には直接間接の侵略という言葉を使つており、警察法には騒乱という言葉を使つておる。そうして自衛隊法には、その場合には自衛隊が出動することができるようになつている。従つてこの警察法にいう騒乱という文字は、一体自衛隊法にいう直接間接の侵略という文字のどれに該当するのであるか。その点を一応聞いておきたいと思います。
  239. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 個々の騒乱の中には、自衛隊法の中にあります直接侵略の場合もありましようし、間接侵略の場合もありましようし、また間接侵略というほどでない場合も入つております。大体騒擾罪にあたるような場合にはすべてこれに入るわけであります。
  240. 門司亮

    門司委員 騒擾罪にあたる場合はこれにあたるということになつておりますが、そういたしますと、自衛隊の出動との関係になつて来るのでありますが、自衛隊の出動にいたしましても、それからこの警察法にあります国家非常事帳の宣言の場合にいたしましても、内閣総理大臣公安委員会を通じないで非常時の宣言ができるようになつております。これはあとで、ずつと先の方で聞こうと思つておりますが、実際はそう書いてある。公安委員会意見を聞いてとは書いていない。非常事態の出動については、総理大臣警察庁長官に命ずることができると書いてある。そういうことになつておりまして、実際上の問題としては、騒乱の場合には国家公安委員会の権限に属すものではないのではないかという懸念が私にはできて来るのであります。今七十条、七十一条とここに書いてありますが、例の非常時宣言の場合と騒乱の場合は一体違うのか、その点をもう一つ聞いておきたいと思います。
  241. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 緊急事態の特別措置は、やはり国家公安委員参会の勧告に基いて総理大臣がするということになつております。  それからこの五条の騒乱と申しますのは、これは範囲が非常に広いわけでありまして、騒乱のうちで、これが非常に大規模になつて来て、この警察法の通常の運用の状態ではぐあいが悪い、この騒乱事態自体について指揮監督するというだけでは間に合わないというような場合に、緊急事態の布告がなされるわけでございますから、緊急事態の布告をなすに至らないまでは、この第五条の運用によつてまかなわれるわけでございます。  それから自衛隊の出動の場合は、これは必ずしも緊急事態の特別措置がとられるとは限りません。事態が非常に重大であつて、緊急事態の特別措置がとられますならば、これは総理の下に統轄されますけれども、自衛隊が出勤したからといつて、緊急事態の布告がない、通常の運営でまかなつて行くという場合もあり得るわけであります。
  242. 門司亮

    門司委員 この前保安庁の長官に、その点をかなりよく聞いたのでありますが、問題はそういう事態ができた場合の、いわゆるそれを統轄する一つの機関といいますか、権能者であります。今の長官の答弁を聞いておりますと、自衛隊の出動とは別だというようなお話でございますが、災害その他の場合に自衛隊が出て参ります場合においては、私は大して実際上の問題としては刑事上の問題は起らない。主として行政上の処置で済むのである。いわゆる人体の安全を保障するとか、あるいは衛生保健のお手伝いをするとかいうことにすぎないと思いますが、この口の、騒乱その他に対します場合における自衛隊の出動というものは、私はある程度の刑事警察的の職務を相当行わなければならない事態が出て来ると思います。その場合、その事犯に対する警察権といいますか、そういう権利の所属は一体どつちに置くつもりですか。非常事態の宣言のときはわかつておりますが、それに至らない場合に、もし自衛隊が出動した場合の指揮権、統轄する権利といいますか、それは一体どちらに所属するつもりですか。
  243. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 自衛隊の行う任務につきましては、自衛隊の長官、それを監督する総理大臣、それから警察職員の行います職務につきましては、この法律に基きまして都道府県公安委員会、さらにそれについて指揮監督いたします場合に国家公安委員会及び警察庁長官、こういうことになるわけでありまして、この両者それでは別々にやるのかというわけでありますが、建前としては別々の指揮系統でございますけれども、しかし自衛隊が出動する場合には、警察と緊密な連絡をとらなければならぬということが自衛隊法にも書いてありますし、また緊密な連絡をとらなければ事実上困るわけでありますから、この間に両者の統轄者において緊密に連絡をとりまして、場合によつては、自衛隊としてはこの部面の点をやつてもらいたい、あるいはこの建物の警備は自衛隊でやつてもらいたい、ほかの方は一般警察でやる、というように協議の上、両者齟齬のないようにやつて行きたい、かように考えておるのであります。
  244. 門司亮

    門司委員 そうしますと、こう解釈しておいてようございますか。そういう場合には結局指揮命令はおのおの別別であるが、ただ緊密な連絡をとつて行くということに解釈すれば、私は今の答弁ならいいと思いますが、そういたしますと、責任の帰属というものがおのずからここに明確ならざるものができはしないかというふうに考えられる。それと同時にもう一つは、自衛隊の権限というものは、時間的に申し上げまするならば、非常事態の場合、あるいは出動したそのときだけの権限であつて、将来に向つての捜査あるいは逮捕というような事犯に対する権限は、自衛隊にはないと私は思う。従つてどうしてもそういうときには、やはり警察がそれを受継いでやるということに、今のお話なら私はなると思います。そうなつて参りまするならば、一応の指揮命令権というものは、要するに七十条に書いてありまする緊急事態の布告のない以前における騒乱その他の場合は、やはり警察が一応指揮命令権を握るというように明確にしておいた方がいいのじやないかというように私は考えるが、この点はどうお考えになりますか。
  245. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 自衛隊が出動いたしました場合に、その指揮命令権を警察が握る、いわゆる警察が自衛隊を指揮命令をしてやるという形になりますことは、はたして当を得たものであろうかどうか。と申しまするのは、まず実際面から考えましても、自衛隊を指揮命令いたすのは、日ごろから自衛隊を訓練し、自衛隊の活動能力というものを十分心得た者が指揮命令をするのがよろしいのでありまして、これを警察が指揮命令をするということは、かえつて事態の収拾をまずくするのじやないか、むしろ指揮関係の間における連絡を緊密にしてやるという方が実際上効果が上る、かように考えております。
  246. 門司亮

    門司委員 もう一つこの項で聞いておきたいと思いますことは、非常事態といいますか緊急事態の場合は、総理大臣が布告をいたしまするし、それから自衛隊にいたしましても、総理大臣の所轄であることに間違いはございませんので、それでいいのであるが、今の御答弁だけでは、もう一つつ込んで聞いておきたいと思いますことは、緊急事態に至らざる、ここに書いてありまするいわゆる騒乱の場合においても、もし自衛隊が出動してくれというならば、その自衛隊の出動の要請権というのは一体どつちにあるのか。これは自衛隊のところで聞けばよかつたのでありますが、この前私聞いておりませんので、この機会に聞いておきたいと思いますが、私は自衛隊は要請されて出て来る性質だと思うのでありますが、その場合の要請権は一体どこに所属するのですか。
  247. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 災害その他の場合に自衛隊の出動を要請いたしますのは、自衛隊法にありますように府県知事以外にはございません。
  248. 門司亮

    門司委員 府県知事以外にはないということ、これは昔から大体常識的にそういうことが考えられておる。それから現行警察法にも、やはり一府県でそういうことが行われた場合には知事がやるということに大体なつておりますが、問題になつて参りますのは騒乱の内容、それからその範囲、その規模というようなものについて、これは事実上そういうものが起るのであるから、そういうやかましいことは言わなくてもおのずから明確になつて来るのだといえばそれまででありますが、しかしその間における内容の調査というようなものは一体だれが行うのか、その点をもう一度ここで聞いておきたいと思います。
  249. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 自衛隊出動に至るまでの事態の調査は、どちらがやるかということでございますが、これは通常警察の活動といたしまして警察が当然やる事柄でございます。しかし自衛隊の方も警察と緊密に連絡をしながら、そういう情勢になりました場合に事態の判断をするであろう、かように考えるのでありまして、自衛隊が出動いたします場合には、現実にはある種の事態が表面に現われて、そしてこの事態の収拾について、自衛隊がはたしてみずから出なければならぬかどうかという判断は、自衛隊自身においてもできるはずでございますが、しかしそれは事実上警察と緊密に連絡をとりまして、こういう事態だから事実上自衛隊に出てもらつた方がいいのではないのかということを申します。自衛隊の方も、こういう事態なら自分の方が出た方がいいのじやないかと思うという事実上の連絡は、当然あるべきことだと考えるのでございます。
  250. 門司亮

    門司委員 それからその次に聞いておきたいと思いますことは、これはあまり聞かれておりませんのでこの機会に聞いておきたいと思います。一項の十一でありますが、「警察職員の任用、勤務及び活動の基準に関すること。」ということになつております。それで問題になりますのは、法律にもおそらくそう書いてあると思いますが、任用についての数その他は大体政令で一応定めるというようなことになつておると思う。そこで府県の自治警察とは言つておりますが、実際の数その他は、やはり政令できめられておるということになつておる。条例でこれをきめようといたしましても、条例だけでは警察官の数はきめるわけには行かない。いわゆる政令の範囲においてこれをきめなければならない。現行警察法においても、最初はそういうやかましい規定を設けておりました。そうして大都市は人口何人について何人、中都市はどういうことということに非常に限定いたしておりましたが、これはあまりよくないということで、今日では地方の自治体にほぼ任意にこれがまかされております。そうやかましい制限をしていないようであります。ところが今度の警察法においては、「警察職員の任用、勤務及び活動の基準に関すること。」という項に該当するのではないかと思いますが、ずつとおしまいの力には、職員の数その他については政令で一応これを定めるということになつておりまして、府県の条例では簡単にできないように私は考えるのでありますが、「任用」についてはそういう人員その他までも含むのか。あるいは任用についての資格条件あるいは試験をする場合の条件というようなことだけがここで考えられるのか、その点をもう少し明確にしておいていただきたいと思います。
  251. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 この任用の基準という中には定員は入つておりません。任用する場合の資格、そういつたものでございまして、定員は五十六条において初めて政令できめた基準に従つて条例できめなければならないということになつておるわけであります。
  252. 門司亮

    門司委員 大体それはそうだと思つておりましたが、その前の第五条の二項の十号の装備に関することでありますが、この「警察装備に関すること。」は、非常に簡単のように聞えて参りますが、実際はその警察の所在の地域的の影響がかなり大きくあるのでありまして、こくいなかの警察の装備と、都心の警察の装備はおのずから違つて来なければならぬ。必ずしも一律一体には行かないと思います。これらの問題については、基準だけを示されてあとは条例に譲られるつもりであるか、この場合は単なる警察の装備に関する基準だけを示されんとするのであるか、その点を聞いておきたいと思います。
  253. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 装備に関することの中には、国が面接支給する装備もございます。またただ基準を示して府県でそれに従つてつて行くというものもあるのであります。たとえば拳銃でありますとか、あるいは鑑識用の自動車であるとか、そういうようなものは国で直接きめ、国の費用で配付をするわけであります。府県でまかない得るような簡単な装備がもしあるといたしますれば、必要に応じて基準はきめられるわけでありますけれども、ただいまおつしやいますように、大都市といなかの方と、ものによつては非常に違いまするから、それらの点は伸縮を十分持つて行かなければならぬと思います。
  254. 門司亮

    門司委員 それは政令か何かできめられる予定でございますが。ただ単に政令で、府県の条例できめることができるというようになつておりますか。
  255. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 これは国できめないことはすべて府県に自由にできるわけでありますから、何も書いてないことは全部自由にできるわけであります。
  256. 門司亮

    門司委員 そうするとちよつと納得が行きかねるのです。書いてない範囲は府県で自由に装備ができるということになつて参りますと、これはここで申し上げることはどうかとは思いますが、先日来いろいろ問題になつておりまする寄付の問題は必ずここに出て来ると思うのであります。少くとも今日警察の寄付行為というようなものについて十分に政府が監督しようとするならば、やはりこの装備に関する問題については、政令か何かで天体おきめになつて、そうしてそれ以上のことについてはあまりやらぬようにすることがいいのじやないか。ここでこの寄付行為その他な制限するより方法はないんじやないかと実は考えるわけであります。従つてさつきから政令か何かできめたらいいという意見を私は申し上げておるのでありますが、そういうことについてのお考えはございませんか。
  257. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 御意見まことにごもつともだと存じますから、できるだけさようにいたしまして、寄付等を誘発させないようにいたしたいと存じます。
  258. 門司亮

    門司委員 それからその次は六条でありますが、六条については大体さつきの四条のところでこれを一緒にまとめてかなり質問をいたしましたので多くを申し上げませんが、これは非常にこまかいことであつてどうでもいいようなことでございますが、警察法の中には現行法にもやはり委員長に故障のあつた場合という文字を使つております。それからこの法律にもやはり「故障」という文字を使つておる。しかしこれを私どもは日本人の観念から申し上げますると、故障という言葉は人に対する言葉ではないような気がする。これは現行法を書きまするときに、アメリカから参つたその原文が、これは英語で言えばどつちも同じように、解釈がされておるものですから、つい故障という文字を使つたのでありまして、あの原文をさつきも齋藤さんのお話のように直すことができなかつたものでありますから、結局故障という文字を使つたのであります。従つてやはりこの新しい日本立場からこの法律を書きかえる場合には、やはりここは日本人の考え方のように、私は事故というような文字を便つた方がわかりいいのではないか。何か故障という言葉は、日本人の通念からいうと機械か何かのようなものであつて、人間にはあてはまらぬようにわれわれ気がするのでありますが、これは非常にごまかいことでありますが、しかし現行法にもこう書いてあるからこう書いたと言われれば、それまででありますが、現行法はやはりアメリカから持つて来た法律であつて、いろいろかえてはならないということになつてつたから、つい解釈が両方にできるようになつておりますから、あのままに押し切られたのでありますが、これは私はおかえになつた方がいいのではないかというように考えるのでありますが、この点もし御答弁がございますれば答弁をしていただきたいと思います。
  259. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私もこの故障というのはちよつとおかしいのじやないかということを法案審査の際に話したこともあるのですが、調べてみますと、他の法令にも最近多々ありまするし、法制局も最近はこの方をよく使つておるということでありましたので、これに従つたのであります。
  260. 門司亮

    門司委員 それからその次の七条について一応聞いておきたいと思いますが、この七条には先ほどもちよつとお聞きをいたしましたように、この法律で定めるものでありまするし、それから他にも教育委員会その他について制限をいたしておりますので、必ずしも警察法でこの職業の前歴のある人を委員にしないという制限をしたということが悪いということは、一応現行法では、むしろ現在の状態では成り立たぬというような意見もないわけではございませんが、やはりこれはさつきも申し上げましたように、憲法の十四条から見ますると、このすべてが平等であつて、そうして職業の選択の自由を許しているというような建前からいえば、私は必ずしもそういう大きな制限をすることが一体いいか悪いかということに、多少疑問を持つております。しかしわれわれといたしましては、やはり今度は多少この職業の範囲が緩和されております。われわれは今の職業の範囲か緩和されたということで、このままでいいと思いますが、これを法律的に見て参りますと、やはりそういう一味の疑念がないわけでもないように考えられます。前歴のあつた人については一体どうしてそれが悪いのか、その点をこの機会に少しはつきりしておいてもらいたい。前の大臣は前歴があつてもいいというのでありますから、ここでどうして前歴があつて悪いのか、その点ひとつお聞きしておきたい。
  261. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 そもそもこの公安委員会制度と申しますのは、一つは警察が官僚化しないように、警察一般国民の良識をもつて連帯されるようにという保障だ、かように考えておるのであります。従いまして現行法におきましては、この改正法案におきまするよりも、もつときびしい制限をしておるのでございます。政府といたしましては、やはりこの公安委員会の良識をもつて警察運営するという考え方は、きわめて民主的警察にふさわしい考え方でありますので、この考え方はどうしても踏襲をいたして参りたい。そこで警察の官僚化あるいは警察権力化と申しますのは、一般の官僚というよりは、やはり警察官僚化をするということが最もいけないのでありますから、従つて警察または検察の職務を行つた前歴者というものだけを制限をすれば、警察の官僚化の防止に役立つだろう、かように考えまして制限をこの範囲にとどめた次第であります。
  262. 門司亮

    門司委員 これは前の大臣には制限をしないで、ここだけ制限するということはつじつまが合わぬような気がする。今のようなお考え制限することがいいということは、われわれもそれでいいと考えておりますが、しかしそうだとすると、やはり私は大臣にも制限をすべきではないかというように考えております。  その次に聞いておきたいと思いますことは、第十一条でありますが、委員会の招集といいますか、これは公安委員長がやる。第二項には可否同数の場合の議決権が書いてある。さらに第三項は代理委員長は定足数について委員として計算をするということが書いてございますので、この代理委員長は投票権と議決権を持つように、われわれは解釈できるのでございますが、その通りでございますか。
  263. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 代理委員長は票持つことに相なります。御意見通りです。
  264. 門司亮

    門司委員 これは二票持つことができる規定が実はないわけではありません、現在でも私はあると思いますが、例の健康保険組合の委員長といいますか理事長といいますか、あれは大体こういう形を持つておると思います。互選の委員長であります関係から、そういうものを持つていると思いますが、ただわれわれが危惧いたしますのは、法の全体からいつて委員長の出席した場合は、委員長には表決権を与えておらない。そうして議決権だけ与えておる。それから代理の委員長ができた場合には、表決権とさらに議決権を与えておる。五人の委員が全部出席いたして参りますると、これは委員は四人になりますから、勢い同数になるという危険性が生れて来る。その場合にはやはり私はこの法の建前から行けば、代理委員長は議決権だけでいいのではないかというように考えられるのであります。この場合だけ表決権と議決権を持つておるということになれば、これはこの法律の建前の上からいつておかしいものができやしないかというように考えられる。従つてほかに前例があるといえば、先ほど申し上げましたようなものがあるにはあるのでありますが、しかしこれは実際の面からいえばおかしいのであつて従つて委員長の腐しておる方が可否同数の場合に必ず勝つ。二票持つておりますので、可否同数でなくても必ず勝つ、こういう運営の仕方はどうかと実は考えるのでありますが、この点についてもしお考えがあるなら聞かせていただきたい。
  265. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 代理委員長なつた場合に一般の議決権をなくして、可否回数の場合だけ採決権を持たした方がいいのではないかという御意見たと存じますが、それも一方法であろうと存じまするが、ただいま御意見にもありましたように、他に例のあることでもございますので、政府といたしましては原案の方がよくはなよだろうか、かように考えておるのでございます。
  266. 門司亮

    門司委員 これは議論になりますから私はそれ以上は申し上げませんが、その次に問題になつて参りますのは、前段の十一条の一項であります。これには「国家公安委員会は、委員長が招集する。国家公安委員会は、委員長及び三人以上の委員の出席がなければ会議を開き、議決をすることができない。」こう書いてあります。この一項と三項との関係でありますが、委員長代理の場合は、これを委員にして勘定次いたしますので、従つて委員長を除きますると、委員は二人でも会議が開けるように解釈ができるのであります。それでもよろしゆうございますか。
  267. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 委員長に故障がありまする場合には、委員長代理者と、それからそうでない平の委員二人、これで会議が開けるわけであります。
  268. 門司亮

    門司委員 そうなると、これはずいぶん妙な規定でありまして、委員長がおる場合には、三人必ず出て来なければならない。委員長がいない場合は、委員長代理を入れて三人でいいようであります。しかし少くとも委員長の資格を持つております以上は、あと二人来ればそれでいいのだというこの兼合いは、少しおかしいのじやないかと思うのですが、そういう感じがいたしませんか。そうなると、どうしても委員長のいる場合は委員長を入れて四人で会議を開く、委員長がいなければ三人でも会議が開ける、こういうことになるのであります。私はこの点はちよつとおかしいと思うのですが、それでよろしゆうございますか。
  269. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 公安委員が五人でございまするから、少くともその五人の公安委員のうちで、三人おられなければ会議が開けないということを建前にいたしまして、その上に委員長がおられるときには、委員長会議を主宰する。委員長が故障の場合には、三人のうちから代理委員長になられた人が会議を主宰すればよろしい。従つて実質上三人委員がおられればよろしいということに重きを置いておる次第でございます。
  270. 門司亮

    門司委員 どうも私はその点、委員会の構成上はなはだ疑問が残るのであります。これは非常に善意に解釈すれば、あるいはこれでいいかとも思われる節がないわけではありません。しかし構成上から言いますると、委員長のいる場合は、少くともこの公安委員会委員長はメンバーであることに勘違いはないのであつて、しかもそれが最後の決議権と申しますか、採決権を持つておるということになつておるときには、委員長を入れて四人でなければ開けない、それがいなければ三人でも開いていいということになると、これはちよつとどうも委員会の構成上から行くと、私はかなり大きな疑問がありはしないかと思いますが、これがいいか悪いかということについては、きようはこれ以上私は質問はいたしません。  それでは次に聞いておきたいと思いますことは、十四条の規定であります。十四条には、「この法律に定めるものの外、国家公安委員会の通常に関し必要な事項は、国家公安委員会が定める。」こう書いてあります。そこで問題になりますのは、国家公安委員会に委任をいたすことにここではなつておるのでありますが、委任をいたしておりまする国家公安委員会の権限というものが、出て参りました運営に関して必要な事項については、これは委員会の規則と解釈すべきであるか、あるいは法律で定めるもののほかと書いてあります以上は、これは普通の場合は政令のようなものと解釈していいのか、この点をひとつ伺つておきたいと思います。
  271. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 重要な事項については、その前の十二条にございますように、国家公安委員会規則の制定権が認められておりますので、公安委員会規則によつて定めることができますし、公安委員会規則によらなくて、公安委員会が内規的に定めることもできる、かように考えております。
  272. 門司亮

    門司委員 この規定については、今お述べになりましたように、十二条に大体書いてあるのでありまして、これ以上十四条で公安委員会運営に関する必要な事項ということは、運営という文字を使つてありますが、これは実際は運営管理であるのか、あるいは何であるのか、この法律ではこの面がはつきりいたしておりませんから、われわれにはわからぬのでありますが、ここに私はかなりの幅があるように考えられるのであります。それは今の十二条との関連性がどうもはつきりしておりません。国家公安委員会運営に関する問題については、大体十二条で私は事は足りておるのじやないかというように実は考えるのであります。この規定だけはいらないのじやないか。もしそういう規定があると、往々にして公安委員会運営に関して必要な事項であるが、しかしそれは単に公安委員会運営の事項だけでなくして、出過ぎたものになりはしないかというような気がするのであります。従つてこれは十二条限りで大体いいのじやないかというような考え方から、私は今質問を申し上げておるのであります。従つてもしこれのお考えになつておる事例等がございますならば、この際ひとつ示していただきたい。
  273. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 十四条は、公安委員会会議規則、そういうものでございます。先ほどからお述べがありましたように、委員の中から会議を開いてほしいという要求があつたら開かなければならぬとか、あるいは先ほど議題にする者はだれかとおつしやいましたが、これは原則としては委員長でもりますけれども、委員がこれを議題に供してくれということであれば、委員長議題に供さなければならぬとか、そういうように会議事柄について書いてない事柄については、すべて公安委員会で何でもきめることができる、こういうことになつております。
  274. 門司亮

    門司委員 だから私が聞いておりますのは、十二条で大体事は足りておるのじやないか。十二条で公安委員会規則を制定することができる、こう書いてありますが、運営という文字を使つてことさらに書かなくとも、すべて規則の中に入るのじやないか、こういうわけでありますから、規則であれば、一応話はわかる。どの範囲のものであり、どのくらいのものであるかということがわかります。公安委員会運営に関しては別に規定することができると書いてありますから、この規則と運営の範囲というものは、われわれにははつきりわからぬのでありまして、その点をもしわかるならば、これこれこうこういうことを大体考えておるというようにお示しを願えればけつこうだと思います。
  275. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 先ほど長官からお答えがございましたように、現在国家公安委員会運営規程というものがございまして、先ほど来お話がございましたように、毎週一回どういう場合に開くとか、あるいは臨時の会議をどうするとか、委員や事務当局からの要求によつて開くとか、こういつた事例、それから議事の実際の運営の方法とか、非常の場合はどうするとかいうような事柄が書いてございますが、こういつたような事柄について、国家公安委員会運営規程というものが当然制定せられる。なおそのほか、先ほども門司さんからお話がございましたような故障といつた場合がどういう場合かというようなことについて、委員会自体が自主的にきめるとしうようなことがありますれば、きめますし、また議決の細目的な方法、あるいは委員会の意思を外部に発表する場合にどういう方法によつてやるか、つまりこの法律に定めるもののほかでございまして、この法律の基本的なものは今の十一条を中心に書いてあります。これ以外の細目的な公安委員会のやり万といつたようなものについて、自主的に制定をすることができる、こういう範囲におきましてこまかいことをきめることになるかと思います。
  276. 北山愛郎

    北山委員 ちよつと疑問がありますので、確かめておきたいと思います。国家公安委員会の権限に属する事務に関する委任の規則をつくることができるということが、第十二条のわけですが、国家行政組織法の第十二条、第十三条、第十四条に、外局の長のいろいろな命令なり、あるいは訓令、あるいは通達、あるいは告示というような事項がございますが、これはやはり国家公安委員会にも適用されるわけでございますか。たとえば国家行政組織法第十三条「各外局の長は、別に法律で定めるところにより、政令及び前条第一項に規定する命令以外の規則その他の特別の命令を自ら発することができる。」とか、あるいは十四条の「各大臣及び各外局の長は、その機関の所掌事務について、公示を必要とする場合においては、告示を発することができる。」第二項が「各大臣及び各外局の長は、その機関の所掌事務について、国家公務員法及びこれに基く規則の規定に従い、命令又は示達するため、所管の諸機関及び職員に対し、訓令又は通達を発することができる。」特に第十四条の告示あるいは訓令、通達というものを国家公安委員長は発することができる。その分については警察法には書いてないのだ、国家行政組織法の方でそういうことができるのだと解釈していいわけですか。
  277. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 ただいまお尋ねの国家行政組織法の第十三条と第十四条の関係でございますが、この国家行政組織法上の国家公安委員会は総理府の外局でございます。第十三条の別に法律で定めるところにより、規則その他の命令を発することができるという別の法律が、警察法案の第十二条でございまして、法令の特別の委任に基いて、その権限に属する分についてだけ国家公安委員会の制定権を認める。別に法樺で定めることのいかんによつてその制定権の幅がきまるわけであります。  それから第十四条の方の告示をしましたり、訓令、通達を発することは、国家公安委員会は外局として当然できるわけであります。
  278. 北山愛郎

    北山委員 第十二条の第二項はどうですか。
  279. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 第十二条の二項の「それぞれ主任の各大臣に対し、案をそなえて、前項の命令を発することを求めることができる。」当然これも適用があるわけでございます。主任の大臣である総理府の長である内閣総理大臣に対しまして、それを求める、依頼をすることができるわけでございます。
  280. 北山愛郎

    北山委員 これはもちろん第一項の主任の大臣の行政事務についてですから、この際は内閣総理大臣の所轄ということですから、いわゆる所轄の権限の範囲内におけるものについて、今のような命令を発することを求めることができるという意味で、一般警察のその他の部分について、主任大臣が権限のない事項についてはもちろんできないというふうに解してさしつかえありませんか。
  281. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 御意見通りでございます。
  282. 灘尾弘吉

    灘尾委員長代理 それでは次に第三章をお願いいたします。
  283. 門司亮

    門司委員 今日は改進党の諸君もおりませんし、第二章について改進党の意見はほとんど聞かれておりません。従つてこれ以上議事を進めることは困難であると思いますから、本日はこの程度で打切つてもらいたいと思います。
  284. 灘尾弘吉

    灘尾委員長代理 御無理もないことだと思うのですが、改進党の諸君は、本案に関する党内の御相談のために退席いたしましたので、質疑は留保したい旨の申入れが委員長にあつたそうです。委員長はこれを了承されたそうですから、その辺の御懸念はなく御審議願いたいと思います。  それでは第三章に移ります。北山君。
  285. 北山愛郎

    北山委員 三章ではなくて二章にまだあるのですが……。
  286. 灘尾弘吉

    灘尾委員長代理 残りはあとにひとつお願いいたしまして、第三章をお願いいたします。
  287. 北山愛郎

    北山委員 それでは二章の方は保留をしておきます。  この警察法第十五条に、「国家公安委員会に、警察庁を置く。」こう書いてあるわけでありますが、この警察庁については、この性格について非常な疑問があるわけなのです。この前の委員会での質疑では、これは国家行政組織法上はいわゆる庁ではない、庁という名前はつけておるけれども庁ではないのだ。また国家公安委員会の事務部局でもあるが、しかし同時に付属機関でもあるというように、警察庁の性格というものが非常にあいまいであるわけです。この点については法制上非常に疑義があるというので、この前法制局長官の出席を求めたのでありますが、遂に質疑に至らなかつたわけで、その疑問が残つておるわけであります。まずお聞きしたいのは、この警察庁というのは国家行政組織法上のいわゆる第三条の庁ではない、どちらかといえば、国家公安委員会の附属機関であるというようなことでありますが、これがさらにあとの方に行きますと、第三節のところに別にまた附属機関というものを持つておるのです。それでこの附属機関がまた附属機関をもつておる。こういうことは一体適当であるかどうであるか、まずこの点についてお答えを願いたい。
  288. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 お話通り、この前もお答えを申し上げたと思いますが、警察庁は大体総理府の外局である国家公安委員会に付属する機関でありまして、国家行政組織法の第八条におきますところの「その他の機関」こういうことになつておるわけであります。その警察庁にさらに附属機関があるのではないか、附属機関の附属機関というものがあつていいのかというお話でございますが、これは外局の外局とか、あるいは附属機関の附属機関という例もあるようでございます。第八条の場合――別に附属機関という言葉が第八条の中にあるわけではございませんが、これを普通第八条の機関と申しておりますが、その公安委員会の外局ではございません、附属の機関だ、こういうふうに御説明いたしたものでありまして、その警察庁にさらに附属機関があるということは、法制上あえて支障はないように考えております。
  289. 北山愛郎

    北山委員 まあ支障がないというお話でございますが、これは国家行政組織法の第二条の「国家行政組織は、内閣の統轄の下に、明確な範囲の所掌事務と権限を有する行政機関の全体によつて、系統的に構成されなければならない。」という、全体としての構成について系統的に、はつきりした構成を持たななければならぬというような原則にも反する異例な形であろうと思うのであります。そこで庁という名前をつけておるのですが、しかし実際行政組織法上の庁ではないというのでありますから、従つて国家行政組織法の中に書いてある庁というものの部分はすべて適用がない。その他たとえば第十条に、「各大臣、各委員会委員長及び各庁の長官は、その機関の事務を統轄し、職員の服務について、これを統督する。」とか、そういうふうに庁という名前は使つておりますが、そういうものはすべてこの警察庁には適用がないのだ、これは独自の存在である、かように考えてよろしうございますか。
  290. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 国家行政組織法の第三条におきますところの庁ではお話通りございません。従いましてこの警察庁の場合には、警察庁長官の仕事の内容、権限をあらためて書いてあるわけでございますが、この第十条の「各庁の長官は、」というのが、ただちに警察庁に当てはまるものとは考えておりません。
  291. 北山愛郎

    北山委員 この前の御説明で、この警察庁というのは国家公安委員会に付属する機関である、しかも事務局を兼ねているというような御説明でありましたが、また同時に公安委員会とは一種独立な機関であるというような説明でもあつたのですが、どういう点において国家公安委員会とは独立をしているのであるか。これはこの法文のどこにその独立性が明らかにされているか、それを根拠に基いてはつきりとお答え願いたい。
  292. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 公安委員会に附属する機関としてやや独立性が認められていて、単純な事務局でないということに考えておりますが、それはどこに現われておるかというお尋ねでございますが、これは第十七条に警察庁の権限というものが明記してございまして、国家公安委員会管理のもとにおいてではありますが、第五条第二項各号に掲げる事務を警察庁は自己の権限としてつかさどるということに現われておりますし、それに相対応いたしまして、先ほど御審議願いました国家公安委員会の五条の権限の中におきましては、「国家公安委員会は、前項の任務を遂行するため、左に掲げる事務について、警察庁を管理する。」とありまして、公安委員会がこれ全部を自分でみずから細目までやつている。そしてそのやり方も、事務局に警察庁がなつているという考え方ではなくて、第五条第二項の各号の仕事は警察庁がやはり自己の権限としてもやれるのだが、しかし警察の仕事については、特に国家公安委員会というものが、普通の役所と違つてございまして、国家公安委員会警察庁を管理しておる、主人公がいるわけであります。その主人公のもとにおいて、その実施の仕事は自己の権限として警察庁が行う、こういうとこるにその性格の一端が現われているかと思うのであります。
  293. 北山愛郎

    北山委員 ところがこの前、警察庁の内部部局をきめるという場合には、国家行政組織法の中の規定を引用せられまして、事務局の内部部局というものは法律で定めるというようなことがあるから、ここに法律で書いてあるのだというような説明であつたわけでありまして、従つてこれは本質上当然の性格として、国家公安委員会の事務局であるというような説明をなさつておるわけなんです。そうしますと、そういう意味においては一向独立しておらぬではないか。国家公安委員会の事務局であると言われるのですから、警察庁の内部機構というものはその中に各部課がきめられてありますが、それは当然事務局という意味においてきめられておるのだ、従つてその説明では独立性がないわけなんです。だからその説明と今のお話とは矛盾するわけでありますが、その点はどういうものでしようか。
  294. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 逐条説明で申し上げました際に、内部部局については、部の機構についてはこの法律で定め、課等の機構につきましては政令で定めることにした、これは国家行政組織法におきましては部課の掌握事項というものを本来法律で書くことになつておるのでということを申し上げたので、この警察庁がそれ自体事務局である、こういうふうにおとりにまつたのだと思うのでありますが、そのときにもう少し詳細にその関係を御説明申し上げればよかつたかと思いますが、私の方で逐条説明を申し上げましたときの気持は、国家行政組織法の第七条におきまして、「委員会に事務局を置く。」そうして「前二項の規定は、事務局の内部組織に、これを準用する。」ということがございまして、事務局でありますならば、その府、省、庁に部課を置くということは必ず法律によらなければならない、課を置く場合には政令で定めなければならないということが、委員会の事務局に準用されるわけであります。この警察庁は、かねがね御説明申し上げますように、委員会の事務局であるような性質もあわせ持つものでございます。つまり公安委員会自体は総理府の外局でありまして、この委員会には事務局を置くということになつておりますので、警察庁が即公安委員会の事務局ではないけれども、この場合の国家行政組織法の事務局の役割はどこかと申せば、やはり警察庁があわせて行う、こういう性格を持つておりますので、その法の精神に従いまして、委員会の事務局のような役割もするの人ならず、その上さらに独立した権限も行うわけでございますから、相当重要な組織と考えなければなりませんので、国家行政組織法の事務局の場合でもそういうふうに法律で、きめなければならないという精神にならいまして、この警察庁の内部部局も同様に法律できめ、あるいは課については政令できめるということにいたしたという説明をいたしたつもりであつた。そのときの説明が不十分なので矛盾した説明であつたのではないかというお尋ねであるかと思いますが、詳しく申し上げますればそういうふうに考えております。
  295. 北山愛郎

    北山委員 その説明のあげ足をとるわけではありませんが、国家公安委員会の事務局的な正確を持つておるということはご説明なつたわけです。従つてこれは純粋の第八条の付属機関であるというならば、それは独立な性格を強く持つということも言えるも思いますが、一方においては付属機関の性格を持ち、一方においては事務局の性格も持つておるというのでありますから、むしろ独立性というよりも、ある程度事務局的な性格も持つておる、しかもそれは各部課の全範囲についてであるということになりますと、強くこれが独立的な機構であるというような御説明はどうもはつきりしないのではないか。なるほど、管理のもとにということも、第十七条に国家公安委員会管理のもとに警察庁はあるという説明もありますけれども、しかしその管理というのは、その範囲は内部的なコントロールであるにしても、やはり指揮監督権を含んでおるということは前の御説明であつたわけでありまして、その範囲というものがその管理のもとにというだけでは何ら独立性をそこに示しておるものではない。だからしてどうも、その法文の上では独立性ということは説明してございますが、はつきりしないのではないか。どこに一体独立的な性格があるのであるか。それたもう少しはつきりしていただきたい。
  296. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 まつたく独立の機関であるというふうには考えておりませんで、国家公安委員会のもとにのある機関であるということは間違いないことであると思います。そうしてその仕車をするについても、公安委員会管理のもとに仕事をするわけであり、これはお話通りです。しかしながらその権限は、国家公安委員会が全部仕事をするのに対しまして、ただそれの手足になつて事務局の役割を果すものではなくて、警察庁というものは、第十七条によりまして、第五条二項の事柄につき自己の権限としてすべて実施するわけであります。もちろん警察庁の長官は、国家公安委員会の方から指揮監督を受けるわけであります。その指揮監督なりその方針に従いまして、その管理のもとに、その実施については、やはり自己の責任において、自己判断に基いてその事務を実施する、その限りにおいては独立性がある、独立性のあるところの付属機関であつて、単なる事務局ではない、こういうふうに考えておるのでございます。
  297. 北山愛郎

    北山委員 その独立性というのは、第十六条の警察庁の長官は、都道府県警察を指揮監督する、しかし国家公安委員会は直接には地方の都道府県警察を指揮監督する権限がない、間接にこの警察庁を通じてやれるという点にむしろあるのじやないか、この法文の上ではそう思うのです。そこで第十六条第二項の「都道府県警察を指揮監督する。」というのは、これは都道府県公安委員会を通じてという御説明があつたわけでありまして、その際の都道府県警察は、都道府県公安委員会を含むものである、公安委員会を通じてであるというようなお話でございましたが、そうしますと、実際の指揮監督の系統は、警察庁長官から都直府県会安委員会に対して命令なり何なりされるということに了解してよろしゆうございますか。
  298. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 お話通りであります。
  299. 北山愛郎

    北山委員 そうすると、この警察庁長官の所掌事務に関係のある、その権限内の関係のある事件については都道府県会安委員会に指令が出て行き、都道府県警察本部長には出ないのだ、こういうふうになる点が明らかになつたのです。その都道府県公安委員会というものは、自治体である府県機関であります。従つて、もしもその指揮監督に従わなかつた場合は一体どういうことになるのか。都道府県公安委員会警察庁長官の指揮監督に従わない場合、その公安委員会は、一体府県に対して責任を負うのであるか、あるいは国家公安委員会なりそういう国の方に対して責任を負うものであるか、それをお答え願いたい。
  300. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 府県公安委員会警察庁長官の指揮監督にどうしても服さなかつた場合どういう手段があるかというお尋ねであつたかと思いますが、これはもちろん指揮監督権があるわけでございますから、法律上の服従の義務が指揮監督に関する限りあると思います。しかしながら、服従の義務はありますけれども、それを守らなかつた場合に強制手段があるかというと、強制手段はございません。従いまして、法律的な拘束力はあるわけでございますが、強制してあくまでそれを実施せしめるという手段はないわけでございます。
  301. 北山愛郎

    北山委員 そうすると、その際に、都道府県公安委員会は、自治体である府県の議会であるとか、そういうものからその責任を問われる場合があつても、国の方からこれを処分するというようなことはあり得ない、それでよろしゆうございますか。
  302. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 御意見通りになると思います。
  303. 北山愛郎

    北山委員 あわせてお聞きしておきますが、府県知事が――この警察法できまつておるいろいろな仕事があるわけでありますが、その仕事を執行しなかつたような場合、これは国家行政組織法の十五条でありますか、それには該当しない、やはりその場合でも、府県という自治体の機関の長として府県知事が行う仕事であるからして、たとい警察法に規定された仕事であつても、国の方から罷免するとか懲戒するとかそういうことはあり得ない、こう考えてよろしゆうございますか。
  304. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 御指摘になりました国家行政組織法の十五条の関係は、この場合適用がない、これは地方公共団体の長が国から委任を受けている仕事についてでありまして、御意見通りであります。
  305. 大石ヨシエ

    ○大石委員 緊急質問……。
  306. 灘尾弘吉

    灘尾委員長代理 緊急質問の御申出がありますが、今晩はもうしばらく一般質疑をやりますので、そのあとでお願いしたいと思います。
  307. 大石ヨシエ

    ○大石委員 私に許してください。
  308. 灘尾弘吉

    灘尾委員長代理 大石委員に申し上げます。まだ発言を許しておりません。しばらくお待ち願いたいと思います。
  309. 大石ヨシエ

    ○大石委員 ちよつと、私に発言さして。
  310. 灘尾弘吉

    灘尾委員長代理 しばらくお待ちを願います。中井委員。
  311. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 第三章に移つて行くわけでありますが、私の質問はいつも簡単でありまして、今日も簡単にお尋ねをいたします。  今北山さんから御質問のありました第十六条に、警察庁長官は「都道府県警察を指揮監督する。」とありますが、これは都道府県公安委員会を指揮監督するというふうに解釈してよいわけでありますか。
  312. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 公安委員会だけを監督するという意味ではないと思います。府県警察を指揮監督するというのでありまして、府県警察全体を指揮監督するという建前でございますが、この府県警察を全面的に管理しているのは府県公安委員会でございますので、府県警察を指揮監督するにあたりましては、公安委員会に対し、これを通じて府県警察を指揮監督するという心持でおるのであります。
  313. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 都通府県公安委員会を通じてやる場合には、管区警察局というものがありますが、これを経由して書類をお出しになるのかどうか。
  314. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 書類に限りませず、第三十一条にも、管区警察局長の権限のところがございまして、管区警察局の所掌事務については、府県警察を、管区警察局長も指揮監督するようになつております。管区警察局長はその所掌事務を通じて指揮監督することが多いと思います。ただ管区警察局の所管になつておらない東京都でございますとか、あるいは北海道というものは例外になります。
  315. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 大体わかつて来たのでありますが、そういたしますと、都道府県警察を指揮監督する場合、書類は大体管区警察本部経由する、あて名は公安委員会、こういうことになると思うのでありますが、それでよろしいですね。     〔発言する者あり〕
  316. 灘尾弘吉

    灘尾委員長代理 静粛に願います。
  317. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 お尋ねの、書類が必ず管区警察局を経由するか――書類の経由をする場合が多かろうと思いますけれども、必ずしも経由しない場合もあるかと思います。多くは経由すると思います。それから書面は必ず公安委員会あて出すか、こういうお尋ねでございますが、正式の書面といたしましてはそういうことになると思います。ただすべての役所がいたしますように、補佐機関へ、こまかい事柄について出面を出すということがもちろんないわけではございませんが、それらについて受けましたものも、公安委員会に対しまして、それらの仕事について、その管理のもとに仕事を行う関係影響を与えるものではないと思います。
  318. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 その点は私は非常に重要だと思うのであります。私どもが心配いたしますのは、はつきり申しますが、警察庁長官から都道府県警察本部長にすぐ書類が行くと、公安委員会が浮いてしまうというふうなこと、その点をわれわれは非常に恐れるからお尋ね申し上げたわけであります。その辺のところはどうですか。必ず公安委員会に書類が行くということを原則にしてもらわないと、自治体警察としての都道府県警察の体系がくずれる、かように思うのでありますが、どうですか。
  319. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 現在におきましては、都道府県公安委員会は行政管理権を持つておりません。従つて、直接府県の隊長あてに指示をするという場合が――行政管理の面がさようであつたわけでありますが、今度は、都道府県公安委員会は、行政運営一切の管理をするわけでありますから、原則といたしまして、公安委員会あてに書類が渡される、かように御了解いただきたいと存じます。
  320. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 そういうことが当然であろうと思いますが、どうぞその原則ぼつぼつくずさないようにお願いをいたしておきたい、かように思うのであります。  それから第二節の第十九条であります。これは私、皆さんのような警察方面に堪能な方にとつてはしろうとの意見かもしれませんが、十九条に「長官官房及び左の四部を置く。」とありまして、警務部、刑事部、警備部、通信部、こう四つある。内容を見ますると、警務部と刑事部というものは相当違つておるのでありますが、国民全般の感じから見ますると、警務部というものと警務部というのはちつとも区別がつかぬ。大体警察庁の中へ入つて、刑事部はわかるし、通信部もわかるのであります。しか警務部と警備部は、私はしろうとではちよつとわかりにくいと思うのであります。この際内容を見ますると、警務部というのは大体各省における総務部的な仕事をしておる長官官房と重複する点があるかもしれませんが、むしろ警務部という内容に照しまして、この名前をむしろ民主的に国民にわかりやすく総務部というふうにはつきりなすつた方がいいのではないか。皆さんにとつてはまことに変に思われるかもしれませんが、二十二条にあります人事、福利厚生、監察、これは全部総務的なものであります。装備といいましても、具体的なものを規定するわけではなくて、一般的なものであるというふうに考えるのでありますが、それについて、どうもこういうわかりにくい名前よりは、はつきりとしたらどうかと思うのでありますが、どうでございますか。
  321. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 警察の中では、二十三年以降相当長期間にわたりまして、警務部、警備部、ことにこの警備部の所掌いたします事項を、警備警察ということでその事柄かおのずからわかるようになつております関係もあり、また警務につきましても、ずつと以前から警察については警務課とか警務部とかいう観念がございますので、非常にはつきりいたしておるつもりでございますが、あるいは外部からごらんになりまして、どららも警の字がついておつて非常にわかりにくいということもあるいは、ごもつともかと存ずるのでございます。しかし現在は長官官房というものに当るのが総務部ということになつておりまして、総務部とここに書いてあります四部制によりまして国家地方警察本部はやつておるわけでございます。今度は五部制として総務部を長官官房ということに改めまして、総務部の方は従前通りの名称を踏襲いたすことにしたのであります。広い意味におきましては、この長官官房のやる仕事も総務部的な仕事であり、また総務部のやる仕事も確かに総務部的な仕事であるかと思います。従前の長官官房に当るものを、本部等におきましても、あるいは府県の国警の機構におきましても、あるいはは自治体警察におきましても、同様に準じているような場合が多いかと存じますが、総務部と警務部をわけておりますので、警務部をにわかに総務部に改めますと、そこにまた内部的に観念の混淆を来す点もあるので、警務の仕事の主体は、ほかの仕事もありますが、広い意味職員の人事管理関係を中心にやつているわけでございます。わかりにくいという点がどうしてもあるということにつきましてはごもつとものお尋ねでございますが、大体二十三年以来ずつと踏襲して来ておりますので、だんだんわかりかけて来た時分ではなかろうかと思いますので、この部でやつて行きたい、かように考えておる次第であります。
  322. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 今の御答弁でもつともの点もあるのでありまするが、私これ全体を拝見して、警察庁というものはやはり相当頭でつかちのような感じがいたします。経済的にやるというふうなことを非常にモットーにされておるわけでありまするが、部が四つもあつて、長官官傍は人事をやらない、警務部でやるというようなことは、どうも常識的でないように思うのであります。そういうふうな御説明でありますると、むしろ警務部をやめてしまつて、長官官房にあと三部、こういう形のカがすつきりと経済的であるように私どもは考えておるのであります。  それと同じようなことで一つお尋ねをいたすのでありますが、二十九条の皇宮警察本部であります。この皇宮警察本部というのは今とれくらいの人員がおられるのですか。大体でけつこうですが……。
  323. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 端数は略しまして大体現在九百人くらいであります。
  324. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 九百名について多い少いの論もあろうと思いますが、私どもは少々多いように思いますけれども、いずれにしましても、それにも皇宮警察学校というのを置くのは私はどうかと思うのであります。どうして特にこういうものを置くのでありますか。皇宮警察本部におつた人は一生全然ほかへは行かない、あるいは地方から皇宮警察本部へ入れないというようなことでもありますまい。確かに特殊性があるとは思いますけれども、わざわざ学校を置いて九百名の者について教育をするよりも、むしろ一般警察官のうちで適任者なり練達の士を皇宮警察本部にまわすというような内規でもおつくりになつてやれば、それで十分でなかろうか、私はかように思うのであります。どうもあまり機構ばかり整い過ぎていわゆる経済的な連帯という面が忘れられ、だんだん逐条になつて参りまするとこういうところでなかなかずるく考えていて、はつきり各地に警察大学、警察学校を置くということになつている。教養を高めることはけつこうでありまするけれども、これはどうもあまり行き過ぎのように思いまするが、どうでございますか。
  325. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 一応ごもつともでございまして、先般もどなたか同じような御意見の御開陳があつたのでございますが、御承知のように以前は各府県警察練習所というものがございまして、小さな府県になりますと六百人、七百人、昔ならば四百人というよな定員しかなかつたような県もあつたわけであります。この皇宮警察の前身は、前にも申しましたように宮内省の警察部でありました。そこでもやはり皇宮警察練習所というものがございまして、宮内護衛官の教養に当つてつたのでありますが、府県警察練習所が府県警察学校になり、また皇宮警察練習所が皇宮警察学校というようになつてつたのであります。その点は私はやはりこれを現状の通り置いていただくのが皇宮話術官の教養向上のために適切ではなかろうかと考えておるのであります。
  326. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 この点については意見の相違でありましようが、私はこのようなものをいまさら置く必要はないと思う。それよりも四、五年おまわりさんでもやつておりました人柄の人を皇宮警察の方に遜り込むということでもつて十分役割を果せる、かように思うのであります。まあ早宮警察本部は必要でないという御意見もあると思いますが、一応これを認めるといたしましても、ここまで形を整えるのは実質上どうか、さように考えるわけであります。  なお四節以下は明日にいたしまして、大体三節までの質問は終りたいと思います。
  327. 中井一夫

    中井委員長 ちよつとお諮りいたします、大石君から緊急質問の御要求がありますが、これを許してよろしゆうございましようか。(発言する者多し)
  328. 大石ヨシエ

    ○大石委員 斎藤さんにちよつとお尋ねいたしますが、第一章にもどつて第一条に、「この法律は、個人の権利と自由を保護し、」というところがございます。私は自分がどろぼうにあい、そうして警視総監にも会つて参りました。そうしたところが、麹町の警察署長が私を被告人である、こうおつしやつた。被告人ということは、これは起訴されて初めて被告人と呼称されるのでありますが、自治体警察の、しかも日本の中央の麹町の警察著長がこういうことをおつしやいました。一体この警察法というものは、個人の人権を尊重されておるものであるかどうであるか。これは一体どうであるか、齋藤さんにお聞きしたい。こんなばかなものを、よりあなたはおつくりになりました、一体これはどうなんです。これを聞きたい。
  329. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 この警察法は、個人の権利と自由を保護するということを一番重点に置きまして、しかも警察運営にあたりましては人権の尊重を一番の基底といたすものでございます。ただいま大石委員は、どろぼうにあつて届けたところが自分を被告人だと言われたということでございますが、被告人という言葉は、これは起訴されて初めて被告人ということになるわけでありますから、ただの被疑者という段階においては被告人という言葉は使わないのでございまして、何らかの誤解に基くものじやないか、かように私は考えております。
  330. 大石ヨシエ

    ○大石委員 それだつたら、代議士がどろぼうにおうた、どろぼうにおうて警察に訴えた、訴えたらそのどろぼうが私を告訴する、そうしたら私が被告人になる、一体そういうことで個人の人権というものが認められておるかどうであるか。こんな腐つたような警察法つたらやめた方がよいじやありませんか。齋藤さん、どうですか。だれがこんなものをつくつたんですか。こんなばかな法律を……。
  331. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 大石委員がどろぼうにあわれた、ところが大石委員が被疑者であると思つておる人から告訴状が出ておるということであるならば、それは大石委員がいわゆる告訴をされておられるのでありまして、その場合においては、警察としましては、告訴状が正しいというように認めれば、一応被疑者というように考えるかもしれませんが、その場合におきましても、これは決して被告人ではございません。
  332. 大石ヨシエ

    ○大石委員 それから、まだ真偽のほどをたださずに毎日新聞に出すということは――われわれは信用をもつて代議士に当選しておる。その人間を警察所長がみだりに新聞に発表する、これで個人の基本的人権は認めておるか、どうであるか。こういうばかな法案は、あなたもおつくりになつたのでしよう。一体齋藤さん、どうです。
  333. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 ただいまのことは、この法案あるいわ現在の警察法案とも関係がないことだと任じます。ただいまお述べになりましたような、かりにだれからか告訴をされた場合に、その内容をみだりに公表するということは、やはり警察といたしましては十分慎まなければならぬ事柄だと考えます、具体的に大石委員の事柄に関します問題がどうでございましたか、これは具体問題について警視庁からお聞きをいただきたいと思います。私の力では十分報告も受けておりませんので、答弁をいたしかねる次第であります。
  334. 大石ヨシエ

    ○大石委員 そこで私が特に斎藤さんにお願いしておきたいのに、告訴をしたら、どちらがほんとうであるかということをよく慎重に調査をした上で新聞に発表するなどはよろしい。けれども、どろぼうにとられた、そしてどろぼうがかえつて私を告訴して新聞に発表する。われわれは泣寝入り、こんな不名誉を代議士は一体どうして回復するか。一警察のためにこうして新聞に発表されて、私はこの信用をいかにして回復するか。まずあなたもよくお考えくださいまして、今後誤りのないようにしていただきたいと思う。ゆえにこの警察法は、個人の権利と自由を保護も何もしておらぬ。それならこの第一章のこういうような体裁のいい言葉は消した方がよろしい。何も個人の権利と自由を保護しておらぬじやないか。この一事を見てもよくわかるであろうと思います。いつそこれは消したらどうですか。消してしまつた方がいいでしよう。あなたは今後警察長官として、一つのベルで三府四十二県の警察をお動かしになる偉大なる人物におなりになるのでありますから、どうぞ基本的人権を無視しないように、ひとつ慎重な態度でお臨み願いたいということを私は切に望みます。あなたの返答はいりません。
  335. 灘尾弘吉

    灘尾委員長代理 本日はこの程度で散会いたします。     午後八時九分散会