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1954-04-28 第19回国会 衆議院 地方行政委員会 第53号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月二十八日(水曜日)     午前十一時二十三分開議  出席委員    委員長  中井  一夫君    理事 加藤 精三君 理事 佐藤 親弘君    理事 灘尾 弘吉君 理事 吉田 重延君    理事 鈴木 幹雄君 理事 西村 力弥君    理事 門司  亮君       生田 宏一君    尾関 義一君       熊谷 憲一君    西村 直己君       山本 友一君    床次 徳二君       藤田 義光君    阿部 五郎君       石村 英雄君    北山 愛郎君       伊瀬幸太郎君    大石ヨシエ君       大矢 省三君    中井徳次郎君       松永  東君  出席国務大臣         国 務 大 臣 小坂善太郎君  出席政府委員         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         国家地方警察本         部次長     谷口  寛君         国家地方警察本         部警視長         (総務部長)  柴田 達夫君         国家地方警察本         部警視長         (刑事部長)  中川 薫治君  委員外出席者         専  門  員 有松  昇君         専  門  員 長橋 茂男君     ――――――――――――― 四月二十八日  委員木村武雄君辞任につき、その補欠として熊  谷憲一君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  警察法案内閣提出第三一号)  警察法施行に伴う関係法令整理に関する法  律案内閣提出第三二号)     ―――――――――――――
  2. 中井一夫

    中井委員長 これより会議を開きます。  警察法案及び警察法施行に伴う関係法令整理に関する法律案の両案を一括して議題とし、昨日に引続き第一章総則に関して質疑をお進め願います。西村君。
  3. 西村力弥

    西村(力)委員 ちよつと逐条審議からはずれるのですけれども、緊急を要しますのでお尋ねしたいと思うのです。  それは今年の一月二日の宮城前事件の問題で、明日また天皇誕生日一般参賀があると思うのですが、あの問題が起きたときわれわれはまことに痛ましいことだ、遺憾なことであると思つて、当委員会としてはいろいろ調査したのでございましたが、新聞その他の動きから見まして、何か国警警視庁との間で責任所在が不明確である。     〔委員長退席加藤(精)委員長代理着席〕 こういうような立場をとられ、そういうことからこの国警を一体化する必要があるというようなりくつまで立てられるような動きもあつたのですが、われわれとしてはその間の連絡がもつと密接であり妥当であればああいう事件は発生しない、こう思つてその結論も当委員会で出たわけなのでございますが、さしあたつて明日の問題についていかなる方針を立てられ、警視庁との間に連携を立てられたか。そういう連絡の状況あるいは計画というものについて一応お知らせ願いたいと思います。
  4. 加藤精三

    加藤(精)委員長代理 西村君に御注意申し上げますが、理事会の決定によりまして逐条審議に入つておりますので、条文従つて質問を願います。
  5. 西村力弥

    西村(力)委員 何もことさらに逐条に入るそのことを制限しようという意図で言うのではなくて、この委員会としてはこのたびの国会が再開された当初から相当な努力をしてこの問題にタツチしていたのです。ですからそのわれわれの努力というばかりではなく、ああいう事件を再度招かないというために、どういうことをせられておるかということをお聞きするのはぜひ必要だと思うのです。それで御質問申し上げておるわけで、理事会申合せをふいにするとか、あるいは制限するとか、そういう意味でなく、率直にこの点お話願えれば、ただそれだけの質問で、これに関連して延ばすわけではないので、少しやらしてもらいたいと思います。
  6. 加藤精三

    加藤(精)委員長代理 了解しました。斎藤国警長官
  7. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 本年の二重橋事件はまことに遺憾なことでございまして、当委員会におかれましても慎重に御調査をなされた上われわれにも御警告を賜つたのであります。皇宮警察本部といたしましては、宮内庁及び警視庁と緊密に連絡をはかりまして、このたびの天皇誕生日における一般参賀の行事といたしまして、再びああいう惨事を繰返さないように慎重に協議を遂げまして、その結果陛下お出ましになられまする場所は、宮内庁の建物のあのバルコニーではなくて、今度はあの豊明殿跡、今芝ふになつておりますが、あの豊明殿跡に両陛下お出ましになるように計画をし、なお二重橋の鉄橋の両側が木で若干腐朽のきみがありましたので、これをコンクリートに全部宮内庁で修築をせられました。従つて通行し得る幅員が非常に広く相なりましたので、その隘路もなくなつたのであります。警視庁におきましては広場前における整理十分留意をいたしまして、一般参賀人たちが少くとも八列以内の列で参入のできるように、十分措置を講じてもらうことにいたしたわけであります。皇宮警察側におきましても宮内庁における一般参賀者整理というものにもさらに留意をいたしまするとともに、あるいは拡声機の備えつけ、皇宮と警視庁との電話の連絡方法等を十分配慮いたしまして、再びかようなことの繰返されないように準備を完了いたした次第であります。
  8. 加藤精三

    加藤(精)委員長代理 引続き逐条質疑通告者がございますので、順次質疑をお願いいたします。西村力弥君。
  9. 西村力弥

    西村(力)委員 どうも前々から各委員から言われているように、こういう人間を縛る法律で慎重を期さなければならぬというときに、そういうぐあいに一方的な運営をされることについてはまことに遺憾しごくであります。私は、先ほど緊急な質問は一点だけにとどめて終りにしてということを言つたのは、そのあと順序通り私が逐条審議質問を認めていただけたものだと思つてつてつた。ところが、一方的な運営をされることになつて来ると遺憾に思うのですが、今許していただけたのでこれからやろうと思います。  この法律目的の第一条ですか、これは前の警察法前文がここに移つたということがあるのですが、根本的に迷う点は、「且つ、」というぐあいにやつて、「能率的にその任務を遂行するに足る警察」、ここにウエートがかけられて来ておるわけです。私のお聞きしたいのは、この能率的ということと、この前から政府側答弁にある内閣責任所在ということ、これがどういう関連を持つかということなんです。内閣責任所在を明確にしなければならぬということが、この法律改正する一番大きな理由としてあげられておるのでありまするが、この法文を見ますると、そこには能率的という言葉に置きかえられておる。だから結局この能率的にその任務を遂行するということと内閣責任というものとの関連性を明確にしていただかなければならない、かように思うわけでございますが、その点について小坂大臣の御答弁をお願い申し上げたい。
  10. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 このたび御審議をいただいております警察法におきましては、従来の警察法にございまするような前文という書き方をやめまして、第一条にこの法律目的をうたう、こういうことにいたしておるわけであります。前文というような書き方は他にはほとんど例が少いのでありまして、法律体系からいたしましても前文というものはやめて、こうした書き方の方がわが国法律一般の通念にも当てはまると考えて、それにしたらよかろう、こういうことでございまして、この新警察法目的というものは、やはり第一条でごらんいただきますとわかるように、民主的理念というものが非常に強く打出されておるわけであります。要するに国民国民のための警察を持つて、そうして国民の手によつてその警察運営する、こういうことなのでありまするが、これはやはり同時に国民費用においてなされるのであります。従いまして、できるだけその費用を、冗費をかけぬように、国民少い負担によつて国民のためのよき警察行政が期待されねばならぬと考えまして、そうした趣旨に基いて能率的な運営を期待する、こういうことであるわけであります。
  11. 西村力弥

    西村(力)委員 私の質問と非常に違つておるようですが、前文法律体系上から切つたということは総括質問相当議論がありましたので、その点は私は触れようとは思わないのです。ただ先ほど申したように、能率的にその任務を遂行するということと、内閣責任明確化するということが一致するという立場を今までとられておる、そういうふうに私たち受取つておるわけです。ですから、その関係説明してもらいたい。まあ今のお話ですと、国民のコントロールのもとに民主的な理念を基調としてという点だけを強調されておりまするが、そうじやなくて、質疑を継続しておる過程においては、内閣責任所在ということが一番大きくクローズ・アツプされておるわけでございますから、その関係を明確にしてもらいたいというふうに私は御質問申し上げておるわけなんです。どうぞその点を明確にしていただきたい。
  12. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 能率的という言葉の中には、内閣責任明確化という意味が同意語的な意味において入つておりません。御承知のように内閣国会に対して連帯して責任を負うのでありまして、今申し上げた国民のための行政なんでありますから、国民を代表しておる国会に対して内閣は連帯して責任を負う、そうした責任明確化することは、これは行政上当然のことであるのであります。その行政能率的にしよう、こういうことであります。
  13. 西村力弥

    西村(力)委員 それではせつかく資料をいただきましたので、その資料についてお尋ねしたいのですが、今までのような二本建の警察であると能率が非常に上らない、こういうことであるのですが、このいただいた資料によりまして昭和二十八年中の犯罪検挙率をずつと調べてみますと、まあ窃盗は、その検挙率は非常に差がありますけれども、その他の兇悪犯知能犯粗暴犯風俗犯というものはほとんど検挙率に差異を見ない。そういう違いが出るのは、結局窃盗というこそどろ的なものを検挙する率が少なかつたというところに理由がある。そういう、とになると、窃盗を押えるのは、国の事犯ではなくて、こういうことはやはり自治警であつても今後機能も十分発揮できれば逐次能率の上ることであるから、能率が落ちておるから警察制度の一本化をはからねばならぬという理由は、われわれはどうしても納得できない。この表を見て、やはり能率という点において警察法改正を必要とする、こういう理由がございましたら、ひとつお聞かせ願いたい。
  14. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 自治体警察能率が悪いから、それで警察法改正するという趣旨でありませんことは前々から申し上げておる通りでありまして、問題は国家地方警察自治体警察にわかれ、しかも自治体警察はそれぞれの管轄区域が、警察治安対象になる、区域よりも非常に狭い、これを広くして府県に一本化するということが、経費、人の冗費が省け、そうした連絡もたくさんの責任を持つた者がお互いに連絡し合うというよりは、一つ府県責任者が統制をとつて警察事務に当らせるという方が能率的である、かようなわけでありまして、何も自治体警察の今日の検挙率が悪いから、それを高めるためという趣旨でないのであります。その点は誤解のないようにお願いいたします。
  15. 西村力弥

    西村(力)委員 先ほど小坂大臣答弁によりますと、能率的という言葉行政上の能率的なものだ、こういうことでありましたが、前々から今は自治警察能率云々は問題にしないと言われましたけれども、そうではなくてこの警察法によつてどろぼうがつかまるのだとか、こういう能率的な点をすなわち検挙率と端的に私は受取つてつたのでありますが、そういうことは全然問題でないのだ、今仰せられたところは何か前の答弁と食い違つておるように思うのです。そうしますとあなたの方では結局自治体警察というものがあつて、現在においてもそういう犯罪検挙率においての能率云々は問題ではない、それば全然理由にならない、これで自治体警察をかえても検挙率においては満足とはいわないにしてもそのことによつて能率が落ちるという理由はいささかもないということであるかどうか、もう一度はつきり答弁をしてもらいたいと思います。
  16. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私の申し上げておりますのは警察管轄区域が広くなるということによつて、今までより以上に連絡も――連絡というよりは一つ責任者の意思で全警察府県内の自治体警察が動くということになれば、今までよりも能率がよくなるであろう、従つて検挙率国警自警を通じてさらに上るということも期待できると思いますが、たとい検挙率従前通りであるといたしましても、少い経費と少い人員で同様な能率が上げられるということであれば、それでもやはり非常に能率的だといえると思います。自治体警察と申しましてもたとえば東京警視庁のごときは、これは私は世界に冠たるりつぱな警察だと存じます。しかしこの東京警視庁がさらに三多摩の市部も郡部も統轄してやるという方が東京警視庁としましてはさらに能率的になるということは、これは十分言い得ることだ、かように考えます。
  17. 中井一夫

    中井委員長 長くかかりますか。
  18. 西村力弥

    西村(力)委員 大分急がれておるようでございますけれども、そう急がないでお願いしたいと思います。関連質問がありましたらそういう人に譲りますので、私一人だけで独占しようとはいささかも考えておりません。  それでは次にお尋ねいたしますが、警察責務の2であります。ここには訓示的な条項があります。こういう訓示的な条項というものが実際に警察官の服務にどういう規制力を持つか、こういう点について大臣答弁をお願いいたします。
  19. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 警察活動はこの二条の責務によつて規定されておりまする範囲内に限られるべきものでありますから、その責務範囲内において具体的にいかに職務を遂行し執行するかという際の心構えあるいは教養なりが必要であると思います。これまた当然のことであると思いますが、そういうことを一般的に言うのであります。
  20. 西村力弥

    西村(力)委員 こういう訓示規定というものは現在もあるわけなのでございますが、一体この規定というものがほんとうに規制力を持つかどうかというものに対しては、考え方として一般教養の信条としてあるという程度で、実際はこの資料等を頂戴した警察官の処罰の懲戒処分条項というものに現われて来るのだろうと思う。そういう際にいろいろとつて見てみますと、さまざまの理由によつて処分をされておりますが、この資料そのものについて私はまだもつとお聞きしたいのでございますが、この際職権濫用という事項が免職、停職が二、減給が四、戒告が二とありまするが、こういうものの具体例を二、三、どういうケースであるかお話願いたいと思うのです。
  21. 加藤精三

    加藤(精)委員長代理 西村委員に申し上げますが、今答弁資料をとりまとめ中でございますので、他の質問を先にしていただけませんか。
  22. 西村力弥

    西村(力)委員 私が知りたいのは被疑者関係とかそんなものはともかくとして、職権濫用の具体的なケースと、それから被疑者事故というのと、勤務規律違反というものを、これだけはどうしても具体的なケースを知りたいのです。こういう具体的なケースによつて不備不党かつ公平中正というようなことが、警察もそういうところにこの条文が生かされておるということが、具体的に現われておるのじやないかと思うのです。それだからそれを知りたいと思うのですが、今ちよつとできないとするならば、ごめんどうでも後ほど資料にでもして出していただきたい、かように思うわけであります。
  23. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 職権濫用あるいは被疑者事故等につきまして、具体的にここに一件とか二件とか上つておるこの事由は何であつたかということでありますると正確でないといけませんから、資料に基いてさらに申し上げますが、抽象的にあるいは普通起り得る事例を申し上げますと、職権濫用という中には、たとえば警察官職権を濫用して民事事件に介入をするとかいうような場合が比較的多いのであります。また被疑者事故の場合は、被疑者の監視の役にある警察官がそれをおろそかにして逃亡をさせる、あるいは自殺をさせるというような場合が多いのでございます。
  24. 西村力弥

    西村(力)委員 それではひとつ今の職権濫用の件、被疑者事故執行務不適切勤務規律違反、この件の具体的なケースだけを資料として、あとでけつこうですからお願い申し上げたいと思います。  なお人確蹂躙の問題も、これは人権蹂躙事件そのものだけでなく、その事件によつて処分だけが知らされておりますが、私の資料を要求する場合の趣旨はそうじやなくて、どういう事件があつたか――そのあと処分をどうしたかというのじやなくて、どういう蹂躙事犯があつたかということを知りたかつたのでありますから、その点もひとつお願い申し上げたいと思います。その点ひとつお願いして、私はこれでやめようと思います。
  25. 加藤精三

  26. 藤田義光

    藤田委員 私はしばらく欠席しておりましたので、ほかの委員諸君質問とあるいは重複する点もあるかもしれませんが、御了承願いたいと思います。逐条審議に入るという宣告が一昨日なされておりますので、宣告趣旨に沿うて質問いたしたいと思います。  第一条にこの法律目的が掲げられておるのでありますが、先ほど西村委員質問にもありました通り、この法律案民主的保障、これに関する具体的内容法案審議軸心でありまして、非常に重大な力点であります。すでに一箇月以上前に、当委員会において犬養国務大臣が本法案提案理由説明されております。小坂国務大臣はこの提案理由趣旨とまつたく同意見でございますかどうですか。逐条審議にあたりまして最も重大な点でありますから、お伺いしておきます。
  27. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 その通りでございます。
  28. 藤田義光

    藤田委員 しからば提案理由説明重点もきわめて簡単にお示し願いたいと思います。
  29. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 簡単に申し上げますが、現行警察法は戦後早々にして占領政策の一環として施行されたものでありますから、もちろん非常によい点もあるのでありますが、その後の運用の結果に徴しましても、非能率かつ不経済という欠陥を持つておることを免れないというふうに考えるのでありまして、こういう欠陥を是正するために、何かやはり相当なる改正をする必要があるのではないかということは、つとに世人の認めるところであると思うのであります。現在の警察制度は御承知のように、国警と市町村の自治警と二本建になつておりますが、片一方国家的性格に過ぎて、自治的な、民衆に親しまれるという要素がやや欠如しておる。片一方の都市を管理する自治警というものは完全自治に過ぎて、国家的性格に欠けるところがある。やはり国家的性格地方的性格を兼ね有すべき近代警察専務運営にとつては、適合せざるものを内蔵しておるというふうに思えるのであります。でありますから、一方その間にそうした細分化された警察運営をもう少し有機的にする、そうして制度自体が内蔵する欠陥の前には、運用の妙というものがもちろん考えられるのでありますが、運用妙自体にも限界がありますので、やはり警察単位の分割から生ずる盲点の存在というものが警察法効果的運営制度自体から妨げている面があると思われる。そこで国の治安に対する責任の不明確という点も出て来ておりますから、こうした国警自治警の施設と人員が互いに重複していることは、国民にとつてもまことに不経済な負担になつておるのであります。こういう面から考えてやはり改正することが必要である。こう思うのであります。この警察制度を改めるにあたつてどういう点を重点とすべきかというと、依然として警察運営に対するところの民主的な線を貫く、これは絶対に必要でありますが、その民主的な保障の基盤の上に立つて治安維持任務遂行能率化と、責任明確化、この二つの懸案の解決をいかにすべきかという課題に対して回答を与えたのが本法案の骨子である、こういうふうに思うのであります。内容について詳しく申し上げますれば、非常に時間がかかると存じますが、この点は重要な点でございますから、少し時間をいただきまして、簡単に申し上げておきたいと思います。まず第一に公安委員会制度を存置しております。すなわち警察管理運営民主的保障を確保するために、中央地方を通じて公安委員会制度を置いて、警察管理せしめることといたしております。  第二は府県警察を一本化したことでございます。すなわち国警自治警はともに廃止いたしまして、新たに府県警察を置くことといたしたことであります。  第三に、府県警察内容について申し上げますが、これは都道府県警察におきましては、国家的要請に基く最小限の制約を除いて、あとう限りこれに自治体警察として性格を具備せしめる。こういうことにいたしたのであります。従つてその職員は原則として地方公務員の身分を有するわけでありまして、警察に要する経費につきましては、一定の国家的の警察活動に必要な経費は国が支弁するほかは、原則として府県負担といたしておるのであります。従つてこの府県警察活動に要する経費というものは、都道府県の民主的に選ばれました議会の審議を通じて、常に住民の公然たる批判の前に置かれるということになつておるのであります。都道府県警察は国家的な警察事務限つて中央警察指揮監督を受けることにいたしまして、その事項法律に明記いたしまして、警察中央集権化というようなことがないように十分な配慮をいたしておるのであります。なお都の警察というものは、首都警察として非常に重要でございますから、都の警視総監の任命については、特にその地位の重要性にかんがみまして、内閣総理大臣国家公安委員会意見を聞いて任命することにいたしております。  第四に中央警察機構でございますが、中央警察官理機関たる国家公安委員会委員長国務大臣をもつて充てることにいたしておりまして、国家公安委員会はその管理のもとに警察庁を置いて、国の公安にかかわる警察運営をつかさどり、また教養、通信、鑑識、統計、装備、こういう事項に対する統轄をなし、並びに警察行政に関する調整を行わしむる、こういうことにいたしておるのであります。この国家公安委員会において国務大臣委員長となつておる点が新しいのでありますが、この国務大臣は五人委員会委員長でございまして、採決には加わりません。表決権委員が行使することになつております。全体といたしまして非常に経費の節減という面が大きく出ておることは、御承知通りでございます。なお人員も減少いたし、従つて経費も減少する、こういうことになつておりまして、幸いにして御審議をいただいて可決いたしますれば、七月一日から施行する、こういうことになつておりします。  以上御説明いたします。
  30. 藤田義光

    藤田委員 全面的に犬養国務大臣と同意見のように了解いたしますので、これに基いて大体条文を根拠といたしましてお伺いしたいと思います。先般柴田総務部長説明にもありました通り、この第一条は、この法律の大目的を掲げておるのでありますが、この法律案全体が一つ組織法である、職権行使に関する法律は別に定めるという御説明であります。われわれもさように解釈いたしておるのであります。西村委員質問に対する御答弁にもありましたが、従来は第一条の形式をとらずして前文を掲げておつたのでございます。いわゆる権力事務なるがために、憲法と同一の体裁によつて警察法というものができておつたのでありますが、今回は現行法前文に該当するものを第一条に持つて来ております。これは私は非常に重大な変革と考えるのでありますが、この点に関する理由小坂大臣よりひとつお示しを願いたいと思います。
  31. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 西村委員にも申し上げたのでございますが、前文を置くという法律形式は、わが国におきましてはきわめて少い事例に属するのでありまして、例をあげてみますと、たとえば教育基本法、あるいは日本学術会議法、国立国会図書館法、この程度であろうかと存じます。要するにこうした前文を書くというこの感覚が、私ども日本国の法律を見ております者からすると少し異例に属しますので、むしろ法律の体裁としては、法文の中に第一条として目的を掲げるという方がよかろう、こういうことでございまして、前文で書いたから、あるいは法案内容として書いたからといつて、その間に考え方の相違というものはないのであります。要するに民主的な線を貫くということにおいての考え方の根本的な相違はない次第でございます。
  32. 藤田義光

    藤田委員 その点に関しましては見解の相違になりますので、これ以上お尋ねいたしませんが、しからばただいま御説明の中にありました責任明確化のための改正であるという一点であります。今回の改正の第六条には、国務大臣委員長になるということを規定いたしておるのであります。また十六条には、警察庁長官の任命方式、五十条には、道府県本部長の任命方式を規定しておるのであります。この任命方式を規定した案文からいたしますと、この責任明確化に関する態勢というものが、第一条の趣旨に沿つていない。いわゆる民主的保障をしたという大臣の御説明でありますが、実際上最も重要なる人事に関しまして、総理大臣から警察庁長官、あるいは道府県本部長に至る間、一貫して、民主的保障のための重大な機構であると説明されました公安委員会というものにほとんど権限がないのであります。総理大臣警察庁長官、道府県本部長、この一貫したいわゆる吏僚組織によつて人事が掌握されてしまう。道府県本部長の下の警察署長も当然道府県本部長が任命することは常識でありまして、かかる観点からすれば、名目だけ公安委員会を残しまして、民主的保障をしたという強弁はされましても、実際人事権について、総理大臣警察庁長官、道府県本部長、警察署長、この一貫した系統を見ましたならば、ただいまの小坂大臣の御説明ではわれわれは大きな疑問を持たざるを得ない、かように考えるのでありますが、民主的保障ということと、公安委員会が人事に関しまして権限を持たないということ、この点に関するお考えを伺つておきたいと思うのであります。
  33. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 御承知のごとく、憲法第六十五条、第六十六条には、行政権は内閣に属する、内閣は連帯して国会に対して責任を負うということが明記されておるのであります。行政をいたします以上国民のための行政であり、国民に対して責任を持つということは、民主的な保障を持つて貫いております民主憲法の建前でございます。そこで私どもは、この法律の中に流れております一貫した強い太い理念民主的保障である、かように申し上げておるのであります。このゆえに公安委員会は、第二障にもずつと書いてありますが、警察運営をつかさどり、諸種の統轄をいたし、また警察行政に関する調整を行うということを任務といたしておりまして、ただいまお述べになりましたようないわゆる行政系統、警察庁、あるいは府県警察の末端の署長に至るまで、これに対しては罷免勧告権を持つております。すなわち人事に対して罷免勧告をすることができるのであります。しかも国家公務員として行つておりますのは、十三万人の中て――整理されれば十一万になりますが、その中の二百五十名ほどで、それらがぽつんぽつんと各県に参りまして、その民意を代表する公安委員会に罷免勧告をなされるということになつておるますれば、これではいたたまれない、これがすなわち強い人事権である、こういうふうにお考えを願いたいと思うのであります。
  34. 藤田義光

    藤田委員 世界に類例少い理想的な労働三法に関する行政を担当されました小坂国務大臣としては、少し観測が甘過ぎるのじやないかと私は思うのであります。それでは罷免勧告というものに対しまして、これを聞かざる場合の保障は何ら規定されておらないのであります。従いまして実際上は罷免勧告という権限は与えておりましても、それを関係者が聞かないで依然として職にとどまることも可能でございます。私はこういうふうなものを人事権というふうに解釈することはいかがかと存ずるのでありまして、これは単に気休めの規定にすぎないと考えております。人事権にあらず、人事権の一部でもないと考えておるが、この点に関するお考えを伺いたいのであります。  それから憲法の行政権の規定等を述べられたのでありますが、私は内閣といえども、憲法九十九条のいわゆる憲法を擁護する重大責任というものがあるのでありまして、憲法に背反する危険のあるような法律をつくること自体が憲法違反であります。この点に関しまして私のお伺いしたいのは、これは先般同僚古井委員からも質問があつたのでありますが、しからばこの警察事務というものは自治体の固有事務というふうに解釈されるのか、あるいは行政事務であるから、これは内閣の権限に腐するものであるというふうに大臣はお考えになりますか。この機会にあらためてお伺いしておきたいと思います。
  35. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 罷免勧告権が人事権にあらずというお話でございまするが、ただいま申し上げたように、民主的な社会におきましては、罷免勧告を権威ある機関によつてなされて、それを聞かない結果がどうなるか、これは独裁的な運営がなされておりまする社会においては別でございましようけれども、なかなかそれに抗することはできない。実際問題といたしまして、これはいたたまれなくなるのでありまして、そうした民主的保障がなされておる、こういうのであります。さらに府県警察というものは、自治体に対しまして国家が警察という行政事務を委任するものである、かように考えております。
  36. 藤田義光

    藤田委員 罷免勧告権というものは人事権であるというふうに解釈されたのであります。一応私も民主的な保障の一部であるということは認めますが、現に現行警察法におきまして、吉田内閣は齋藤国警長官の罷免を計画して、これが現行国家公安委員会運用の妙を得まして、その目的を達成することができなかつたという生きた実績があるのであります。こういう前例があるので、私は、勧告しましても、これを聞き入れないで、断固としてそのままの姿を推進するということが今後あり得ると思うのであります。そうすれば、それを守らなかつた場合の法律的な規定を何らせずして、これが人事権であるということをそのまま解釈することは、多少私は危険があるのじやないか、かように考えております。こういう点に関しまして、もし人事権ならば、率直に、都道府県公安委員会国家公安委員会も任免権を持つというふうに、一歩進んではつきり規定されたかつた、かように考えるのでありまするか、その点に関する解釈をお伺いしておきたいと思います。
  37. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 今個人をさして仰せられたのでありますが、そうした例は、公安委員会というものがいかに民生的保障に役立つかということの例になろうと思うのであります。私が先ほどから厦次申し上げておりまするように、地方におきまして、地方と直接つながりのない少数の個人が参りまして、その地方の多数の者から選ばれておりまする公的な機関の批判の前に立つのであります。その批判が非常に不利である場合に、行政事務が能率よく運営せられるかどうかしというとについては、これは常識上、非常に困難であるということが言えると思うのであります。そうしたことは、政府なりあるいは地方自治体なりのよく忍ぶところではないのでありますから、そこにおのずからなる民主的運営の妙を得た人事権というものが存在して来る、こういうふうに思うのであります。
  38. 藤田義光

    藤田委員 総理大臣の権威をもつてしても、国家公安委員会が人事権を握つてつたから、斎藤長官の罷免ができなかつたのであります。私は、この民主的保障軸心として犬養さんもあなたも公安委員制度を取上げられておりますので、もし民主的保障というものを公安委員会の中心に置いたならば、何ゆえに現行法のごとき強い人事権を公安委員会に与えなかつたか、この点に関する疑問がただいまの答弁では解明されないのであります。私は、さようにすることによつて、過去のいわゆる政党支配の警察再現ということは防止できると思うので、ありまするが、この点に関する見解をいま一度伺いしておきます。
  39. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 府県の場合特にそういう気持を持つておられるようでありますから申し上げますが、たとえば府県公安委員会警察の主任者を任命する場合、府県だけで選ぶことになりますと、範囲が非常に狭まる。知られているその地方の出身者とかあるいはその前任者とか、非常に範囲が限定されるのであります。これは警察事務に堪能な、しかも人格高邁、識見ある人、国家全体として見ればそういう人が多いわけでありますから、そういう人々の中から進んで、こういう人はどうですかと、意見を聞いてきめる、こういう方が全体としての運営から見ると、私は適当でなかろうか、こういうふうに思つておるのであります。決して独断的な、あるいは警察国家的な意図はその間に毛頭も包蔵していないのでありますから、さようその点は御了承願います。
  40. 藤田義光

    藤田委員 小坂さんのような非常に穏健、善良な国務大臣が在職中はわれわれもさような心配はあまりいたしません。しかしただいまの御答弁でありまするか、どうしても実際上法律の明定がなければ、そういう危険に陥る可能性が非常に強いのであります。現行法前文には。「地方自治体の真義を推進する」とはつきり述べてありますが、今回の都道府県警察というものは、犬養大臣と同じように、小坂大臣自治警察であるというふうな解釈のもとに大臣を引受けられたのでありますかどうですか。あらためて、お伺いしておきたいと思います。
  41. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 憲法に規定されていることでありますから、明瞭でございますが、国政全般が国民に由来し、国民の信託を受けて行わるべきものであり、国民の基本的な人権が保障され得る、また地方自治尊重の観念を包括するものでありますから、地方自治を非常に重視することは当然であります。由来警察事務というものは、国家的な事務と地方的な事務との両方のまざり合つたものであるということはよく言われるのでありますが、国家的性格というものをあまり強く出しますれば、これはかどが立ちますし、さればといつて、地方的ということになりますと、そこに民主的な味も出て来ますが、いわゆる情に流される。そこで両方白紙に返して、一本化したということがこの府県警察でありますが、これが地方団体であるかどうかということは、地方団体であります。
  42. 藤田義光

    藤田委員 警察本来の使命は、改正案第二条に示されておる通りでありまして、個人を中心とし、対象としたものであります。ただいまの御答弁で、自治警察であるというふうに私は解釈したのでありまするが、かつての同僚委員質問と重複いたしまするが、現在自治体でつくつておりまする公安条例、これは今後政令でつくるというような御答弁もあつたやに速記録で了解いたしております。ところが政令と条例とは本質的に性格が違うのであります。これは国家がつくるものと自治体がつくるものでありまして、それをそのまま政令に委譲するというところに非常な法律的な無理があるのじやないかと私は解釈しておりますが、ただいまの大臣答弁からしますと、自治警察ならば全国の都道府県公安条例等のごとき条例を策定する権限は依然として持続するのであるか、どんどん今後もつくれるのであるかどうか、この点をお伺いしておきたいと思います。
  43. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 都道府県公安条例を今後さらに新たにつくることももちろん可能であります。現在つくつておりますところは、そのまま何らの変更を受けることなく存続をいたし得るのでございます。先般質問のありましたのは、市町村の公安条例がどうなるかという御質問でありました、市町村の公安条例もそのまま残ります。しかしながら市町村の公安条例で市町村の公安委員会に届け出るというような文字が、あるいは市町村の警察長に届け出て許可を受けるというような字句があるといたしますならば、この市町村の公安委員会というものは、これは府県公安委員会とみなす旨のいわゆる整理に必要な政令というものを、出す必要が起ろうか、かように御答弁を申し上げたのであります。
  44. 藤田義光

    藤田委員 ただいまの御答弁からいたしましても、自治体固有の権限に基いてつくりました条例は、そのまま府県条例に移行するということならば、解釈上あるいは無理がないのではないか、一旦それを政令においていろいろ規定するということになれば、そこに自治体の権限の侵害というようなこともあり得るのじやないか。自治体の住民の代表によつてつくられました条例が、国家機関において政令として取上げられる、これはちよつと無理ではないか。現在の地方自治法の建前からいたしましても、憲法上からいたしましても、それに背反する危険がありはしないかと思うのであります。市町村条例を同じ自治体の府県条例に改めて行くということが本筋ではないかと思いますが、いま一度その点に関する御答弁をお伺いしておきます。
  45. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 市町村の条例が府県の条例に当然この法の改正でなるのではございません。もしさように政令等で書きますれば、それこそあるいは府県の自治権の侵害ということにもなると思います。さようではなくて、市町村の条例はそのまま当該市町村の条例として残つているわけであります。市町村がその条例を廃止しようと思えば廃止ができるわけであります。改正をしようと思えば改正ができるわけであります。従つて市町村の条例の中に市町村の公安委員会に届け出なければならぬというようなものが――ただ公安条例に限りませんが、他の条例等にもあると仮定をいたしました場合、市町村が自発的にすべてそういうように必要な手続を経て改正を加えられるということであるならばそれでいいわけでありますが、どこも一様に市町村でそういうように必要な手続を経て改正を加えるということもめんどうでもありましようし、またそういうことをなさらないというような場合には、市町村公安委員会というものを都道府県公安委員会とみなすという政令を出しますならば、その条例はそのまま執行ができる、かように申し上げるのであります。
  46. 加藤精三

    加藤(精)委員長代理 政府委員に申し上げますが、自分の市町村の大事な公安条例について必要な改正を加えないなどという市町村はないはずでございますので、その点はそういう場合を予想しなさらぬで、御論議を進めたらどうかと思つておるのですが、その点……。
  47. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 委員長の御指摘の通りでございます。先般古井委員の御質問として、そういう改正も加えないで廃止もしないという場合にどうするかというお尋ねでございましたから、さような場合にはこの法令の経過措置としてさような措置ができますということを申し上げたわけであります。
  48. 加藤精三

    加藤(精)委員長代理 藤田委員と門司委員にお願いいたしますが、この論議は非常にたびたびございまして、国警当局の政府委員の考えも大体そうした考えでございますので、その点に関する論議は一応打切つたらいいのじやないかと思いますが、御了解を得たいと思います。
  49. 藤田義光

    藤田委員 これは見解の相違になるかもしれません。委員長の御意見でもありますから、私はこれ以上追究をいたしませんが、地方自治法第二条に基くいわゆる公安条例というものは、これは憲法の大精神に基く自治体固有の権限によつてできております。それを今回の法律案にうたわずして政令でそこを侵害するというようなことは、非常に問題になるのであります。案文そのものを侵害するのではないにしましても、非常な疑問があるのでありましていずれ後日にあらためてお伺いすることにいたします。  次に小坂大臣の御見解をお伺いしますが、吉田総理大臣は現在の都道府県制を再検討して、知事公選の弊害が非常に深刻であるから将来官選にしたいということを言われたことがございます。     〔加藤(精)委員長代理退席、委員長着席〕 そうしますと、今回の警察法改正案におきまして、都道府県警察というものは自治警察ということを言われておりますが、知事官選というような段階になりました場合に、いかようなる措置をとられる予定でありますか、吉田内閣の首班、吉田総理大臣の言明があつた問題でありますから、仮定の事実として答弁を拒否されないようにお願いいたしたいと思います。
  50. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 何かその点が問題になりまして、国会で御論議をいただいておりました。私も聞いておつたのでございますが、その論議の結果につきましては、こういうふうであつたかと思うのであります。自分は何も知事官選にしたいとかそれがいいとかいうことを、言つたのではない、新聞記者団が見えて、いろいろ知事官選はどうですかという話があつたから、自分はそれは諸君に聞きたい、諸君は知事官選がいいかねと聞いた、そんなようなお話であつたように承つております。何も断定的な問題としてこの問題が出ておるのではない。従つて私は仮定の問題と思いますから、その問題に対する論議は差控えたいと思います。
  51. 藤田義光

    藤田委員 どうも日本の新聞を読まないし、日本の新聞をきらいな総理大臣が、新聞に知事官選の問題をしわ寄せされて、小坂大臣まで答弁を拒否されたということは、私は理解できないのでありますが、仮定の事実であつても、せつかく国警担当大臣になられたのでありますから、大胆率直にそういう事態になつたらそのまま国家警察にするというような所信を、この機会にお聞きした方が、法案審議上非常に便利であると私は考えたから、仮定であるということを知りつつも、吉田内閣において最も知性のある小坂大臣の知識をこの際披露していただきたいと考えたのであります。できましたらあらためて御答弁願いたいと思います。  次いでお伺いしたいのは、この第二条の警察の不偏不党、公平中正という問題であります。大臣の先ほどの提案理由説明にもありましたが、最も公正でなくてはならぬ警察行政におきまして国家公安委員長国務大臣がなるということは、政党内閣の現状からしまして、どうしてもこの点に対する大きな疑問が起きて来るのであります。この点の疑問と矛盾をどういうふうに調整されるのでありますか。この機会に伺つておきたいと思うのであります。
  52. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この知事官選問題につきまして再度の御質問でございまするが、これはこういうことじやないかと思うのであります。たとえば官選という問題が出るといたしますれば、現在自治体は府県も自治体であり、町村も自治体である。自治体が二本あるということはどうなのか、こういうような問題じやないかと思うのでありますが、そういう問題はいずれにいたしましても国会の御論議を得ることであると思います。この場合国会の御論議の一つの、何と申しますか、資料とも言うべきものは、現在府県警察がそのときはできておるじやないか、府県警察があるからどうか、こういうような一つの重要な判断の資料になるのでありまして、むしろ問題は逆になる。府県警察が知事官選になつたらどうなるというのではなくて、知事官選になる場合に府県警察があるかどうかということなのでありまして、従つて仮定になると申し上げている次第でございます。御了承願います。  それから公安委員長国務大臣がなるということは非常に御賛成の論か多いようでございますが、私どもとしてこういうふうに考えておりまするので、憲法上行政権は内閣に属するのでございますから、しこうして内閣は連帯して国会に対して責任を負うのでありますから、国会に対して責任を負う大臣がいるということは警察についても適当であろうと思います。その場合国家公安委員会警察行政運営、統轄、調整という機能を第五条において持つておるのでございますが、その範囲内において警察国会に対して責任を負う。しかしその責任を負うと申しましても、常時国務大臣公安委員会に出席いたしまして、そうして正しい意味においての内閣の考え方、行政の進め方そうしたものを公安委員諸君にも話し、また民主的な意見を代表せられる各界の有識者である公安委員各位の意見も聞いて、相互に十分意思を疎通させておくことが、第九条の範囲内においての警察責任を負います。場合に非常に適切ではないか、こういうことと考えております。
  53. 藤田義光

    藤田委員 そこでお伺いしたいのでありますが、不規則の発言もあつたのでありますが、われわれも、応国務大臣の国家公安委員長という機構には非常な関心と好意を持つておるのでありますが、それは前提が全然違います。先ほど来申し上げました通り行政運営軸心であります人事権を何人が握るか、この人事権は総理大臣から警察庁長官、都道府県本部長、この一貫した系列が改正案で確立しておるのであります。この際におきまして国務大臣委員長にいたしましてもこの国務大臣は浮いてしまう。何のために委員長に持つて来るか、どうも責任の確立ということを先ほど来強調されるのでありますが、委員長たる国務大臣改正案においては責任の確立を期待されておるのであるから、あるいは総理大臣の命令一下末端の警察署長に至る責任の態勢の明確化を期待されておるのであるか、その点がどうもはつきりしないのでありますが、この点に対する大臣の御見解を伺いたい。
  54. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 非常に命令一下ということを強く考えますれば、公安委員会というものもなくて、国務大臣から警察庁長官、あるいは府県本部長、こう行くのが非常にいいのでありましようが、そういうことになりますると、いわゆる警察国家になり、非常に民主的な運営を阻害せられる、こういうことで公安委員会というものを非常に重要視しているわけなのでございます。従つて第五条の警察運営、統轄、調整という面において公安委員会行政庁の責任者であるわけでございますが、ただいま申し上げましたように国は答弁、そうしたものを国務大臣が当ります際に、やはり現在ですと、私も担当をさせていただいておりますけれども、これでは公安委員会等と直接のつながりがない、そこでもう少し人間としての触れ合いと申しますか、そういう機会を持つということによつて、さらにその間の意思の疎通を十分にする。そういう点が期待せられる、かように考えておる次第でございます。行政の非常な能率化という点から行きますと、あるいは御議論もあるかと思うのでありますが、やはりそれをあまり進めますと、今度は非常に弊害の面も強く出て来るということで、この法案の御審議をいただいておりますような条項になつているわけでございます。
  55. 藤田義光

    藤田委員 ただいまの大臣の御答弁からしますと、総理大臣の任免という点は削除した方が改正案御提出の趣旨に沿うのではないか。しかもこの改正案の第十一条の規定等も今少しくはつきりいたしまして、委員長たる国務大臣は堂々と表決に加わつて行くという方向が、警察行政に対する責任明確化を期待される政府原案の趣旨に沿うのではないか、かように考えるのでありまして、もし政府の原案の通りで行きましたならば、人事を握つた総理大臣という非常に強力なる権限を付与せる責任者と、委員長たる国務大臣、こういう二つの系統ができて参りまして、むしろ委員長たる国務大臣というものは、政府の提案理由におきましては、これにひとつ国会その他国民に対する責任を持たせようと目ざしながらも、実際上人事権も持たない。これは小坂大臣は政務次官もやられたし、現在労働大臣もされております、行政機関の長として十分御存じのところであります。人事権を持たない責任者というものは、外に向つて責任態勢を確立することができないのであります。単に国家公安委員長という空名を持して責任態勢を確立するということは、現在の国家行政組織法その他の態勢からいいましても非常に矛盾をしている。官庁の常識を逸脱した提案の理由ではないかと思うのであります。いま一度この点に対する御見解をお伺いいたしたい。
  56. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 総理大臣はなるほど国家公安委員の任免権を持つているわけでありますが、この公安委員会の任期もまたきまつておるのでありまして、その任期中はよほどのことがなければ異動なんというものは考えられない。その点において任免権といいましても、相当局限されたる任免権であろうと思います。そこに警察国家というおそれを除いておる苦心があろうかと思うのであります。やはりそうした公安委員会の年限五年なら五年というものは身分を保障されている。しかも公安委員会というものは一般の良識ある者から選ぶ、しかも国会の同意を得て選ぶ。国民から選ばれた公安委員と、総理大臣という行政府の長と、国会とのお互いのチエツク・アンド・バランスの原則がそこに微妙に有効に働く、こういうことを期待しているわけでございます。ただいまの御議論もまさにりつぱな御議論として相当部分あろうかと思うのでありますが、私どもとしてはさように考えているわけであります。現在審議会でもつて、奇数審議会で委員の数が奇数でございますので大臣が会長をしておるという例は、たとえば外資審議会とか外国為替審議会とか、そういうものもあるわけでございますが、これも、それでは外国為替に対する権限は政府は持たぬのか、あるいは外貨がどんどん減つてつて、結局政府の施策が悪いから減るんじやないかと言われた場合、いやあれは外資審議会がやるので私の責任ではありませんとは、大蔵大臣は申さないわけでございまして、その間にやはり運営の妙を尽すということができようかと思うのであります。
  57. 藤田義光

    藤田委員 具体的には、小坂さんみたような若きりつぱな大臣が在職中に実際上運営の権限を持つてもらつて、もし改正されるとすれば、それを軌道に乗せたいという老婆心から申し上げておるのでございまして、この点に関しましては、総理大臣との関係は十分ひとつ再検討していただきたい。これは御答弁を求めません。  そこでお伺いしたいのは、現在の憲法九十六条の規定でございます。憲法九十六条には憲法改正の手続を規定いたしております。非常に慎重な規定をいたしておるのでありまして、国会で議決しました上に、さらに国民の投票を求めるという規定を憲法の改正にはつくつておるのであります。御存じのごとく、現在町村の自治警察廃止の自由を法律は認めておるのであります。この自治体警察を廃止する場合におきましても憲法九十六条と同列の、大体同じ規定を打つておるのであります。町村自治体警察の存廃にあたりましては、町村議会の議決のほかに、さらに住民投票を必要とするということが、はつきり法律できまつておるのであります。それほど警察というものに対する国会の見方は非常に慎重でありまして、この点からいたしましても私はこの警察事務というものは、自治体の本義に関連した重大な事務であるというふうに考えておるのであります。従いまして、一片の法律によつて、この政府の改正案が全面的に現在の警察法を改めるという行き方にも、憲法上の疑義を私は持つておるのであります。かりに一歩を譲りまして、こういう体裁による改正を企図することが可能といたしましても、少くとも私はこの改正案の中には、ただいま特例法で明示したいわゆる改正手続、慎重なる住民投票と関係都道府県議会の議決というようなものを考える必要があるのじやなかつたか、かように考えるのであります。私は憲法九十六条の精神を、警察法法案提出にあたつては、そのまま具体的に示すべきでなかつたかということを考えまして、これと照応いたしまして前文掲示の方がよかつたのではないかということを最初に聞いたのでございますが、その点に対する御見解を特にこの法律の問題に関連してお伺いしておきたいと思うのであります。
  58. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 現在、自治体警察法律で持つことができる、こう規定しております市町村において、廃止する場合においては住民投票にかけるという慎重な手続をとつております。それは、当該の市町村議会で決議をするというだけでは不十分ではなかろうか。法律上与えられてあるそのものを廃止しようという場合には、慎重に住民全体の意向を聞いた方がよろしいというので、慎重な手続を規定いたしておるのでございますが、現に現在の警察法におきましても、五千未満の市町村は法律上持つことができないことになつておるわけでございます。また府県も、市町村のような自治体警察は持てないことに現在の警察法はなつておるのであります。従いましてこの自治体警察を市町村に持たせる、また市町村に持たせるについてどの程度の市町村に持たせるか、あるいはこれを市町村に持たせないで府県に持たせるかという点は、これは私は普通の法律の手続で、法律規定のできるものだ、かように政府は考えておるのでありまして、警察法は憲法と同じように住民投票にかけなければ改正ができないということでありましては、またあまりに慎重に過ぎるのではないだろうか、かように考えておる次第であります。
  59. 藤田義光

    藤田委員 法律自治警察を与えられている、この前提が実は私たちと見解の相違があるのでありまして、私はこの現在の法律の四条を見まして、これは当然に市及び人口五千以上の市街的町村はその区域内で警察を維持するというものは、固有の権限です。法律が与えているから云々という御答弁は、これはわれわれ見解が違うのではないか、かように思うのであります。しかしただいまの御答弁からいたしましても、あまり慎重過ぎるから住民投票を省略したというようなことを言われましたが、私は特にこの警察に関する法案等は慎重過ぎることはない。その証拠には終戦後マッカーサーがやりました占領政策一つの大きな軸心として警察の解体をやつたほど、警察事務というものは非常に重大であります。そういう観点からいたしましても、これは見解の相違になりまして、ご答弁を求めても結論は出ないと思いますが、現在の自治体警察というものは、終戦後マツカーサーが法律をつくらして与えたものであるという御見解でありますか、どうですか。私はこれは発生的な歴史的な沿革、中断されたことはありましても、町村の警察、自分たちの住んでいる向う三軒両隣を平穏に暮したいという人間固有の本能からしまして、警察というものが住民固有の権限ではないか、かように考えておるのでありますが、御意見がございましたならば、ひとつお伺いいたしておきたいと思います。  それから次にお伺いいたしたいのは、これは自治庁長官の御出席があつた方が適当でありますが、今回の政府の定員整理におきまして、八十万の国家公務員からわずか三万の整理警察は十数万の中から三万、非常に不公正な整理計画されたのであります。特に労働問題に対して造詣の深い小坂さんが国警担当になられましたが、この行政整理上の不均衡について、大臣はどういうふうに解釈されておりますか、この機会にお伺いしておきたいと思います。
  60. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 行政整理を行いますに際しましては、御承知のように平面的に見まして、現在の機構のままで事務が重複しているというところがありはしないか、さらに縦横の関係で見まして、機構が重複しておりますために、従つて事務の重複しているところがあるのではないかというようなことを、種々の観点から自治庁長官は非常にに苦心されまして、今回の案をつくつたようでございます。そこで現在の機構が二重になつているというふうに見られましても、いろいろよく実情を聞いてみると、そうではないのだというような面がございまして御承知のように制度的な改革があつて人員整理というものは、比較的行政整理案には出ておりません。警察の場合は、御承知のように国家地方警察自治体警察とを合せて府県警察にするということで、制度上の改革がございましたのでただいま仰せられましたような数字が出て来た。かように心得ております。
  61. 藤田義光

    藤田委員 労働大臣として職業安定局あるいは労働基準局等を所轄されております御感覚からいたしまして今回の改正案によりまして都道府県の警視正以上の人事権を警察庁長官が握る。最高の責任者は国家公務員である。これは第五十四条の規定にもありますが、私は官庁の組織の常識からいたしましてもあるいは国家行政組織法の建前からいたしましても、警視正以上のいわゆる都道府県警察の最高責任者が国家公務員である。人事権は警察庁長官が握つているという建前からしまして、そのもとに人事権を握られている警察署長その他の一般警察職員というものは、当然実質上国家公務員的な扱いを受ける。しかも握つておる専務というものが、当然国家事務となる可能性が非常に日本の官庁組織の一般常識からして強いと考えるのであります。たとえば知事だけを官選にして副知事以下を地方公務員にするというようなのと大体同列の問題でありまして、最高責任者が国家公務員である以上は、その事務全体が国家公務員というふうに解釈せざるを得ないような事態にならざるを得ないかと考えるのでありますが、大臣はどういうふうにその点お考えですか、お伺いいたします。
  62. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 警察職員が整理があますれば全体で十一万人、そのうち二百五人程度が国家公務員である。他は地方公務員であるということから、非常に行政能率あるいは行政運営上の欠陥が出やしないかという御議論かと拝承いたしますが、警察事務というものはやはり行政事務でありまして、これが地方団体に委任されておるというような関係から見まして、その事務そのものの性質から見ましても、また広く適任者を得るというような観点からいたしましても、そのような体制でさしつかえないし運営も御期待に沿うことができるのではないかというように考えております。
  63. 藤田義光

    藤田委員 時間が午前中ございませんから、以上をもちまして私の質問を保留しておきたいと思います。ただいま大臣から人物を得るために国家公務員にせられた。地方公務員に人物なしというような非常な軽卒な答弁がありました。これは非常に重大な問題でありますので、この問題については午後続行することといたしまして、午前中はこの程度で終りたいと思います。
  64. 中井一夫

    中井委員長 暫時休憩いたします。午後は二時から続行いたします。     午後零時五十四分休憩      ――――◇―――――     午後二時四十七分開議
  65. 中井一夫

    中井委員長 休憩前に引続き、会議を開きます。  午前の会議におきましては、警察法案及び警察法施行に伴う関係法令整理に関する法律案の両案を一括して議題とし、第一章総則に関しまして質疑を行い、藤田義光君の質疑が残つておりますので、同君の質疑の継続を進めます。藤田義光君。
  66. 藤田義光

    藤田委員 大分会期も終りに近づきましたので、われわれの発言も節度をもつて、なるべく能率的、経済的にやりたいと思いますが、質問を始めます前に、委員長にお伺いしておきたいのでございます。巷間伝うるところによれば、政府は大幅な会期延長を計画いたしておるということでございます。しかりとすれば、私は政府与党の立場を多少でも参酌いたしまして、経済的、能率的な発言をしようと思つておるものも、会期が大幅に延長になれば、遠慮なく長時間やらしていただきたいと思います。この点ここに質疑を続行するにあたりまして、非常に重大な問題でありますので、まず委員長からその間の消息をひとつ率直にお伝え願いまして、私の発言に対する御指示を仰ぎたいと思います。
  67. 中井一夫

    中井委員長 お答えをいたします。私は委員会審議にのみ専念没頭いたしまして、政府のそういう方面に関する態度につきましては、いまだこれを承知いたしません。政府といたしましては、一旦きめました会期中にはすべてを進め、すべてを結了したいとの意思あるには相違ないと思いますが、あるいは時によりましては会期を延長するかもしれませんが、願わくは、今日におきましてはいまださような形勢も現われていないのでありますから、会期は八日に終了するものとして審議の御進行を願いたいと存じます。
  68. 藤田義光

    藤田委員 一応承知いたしておりまして、大体八日の日には採決する予定のもとに、質問を続けて参りたいと思います……。
  69. 中井一夫

    中井委員長 藤田君に申し上げますが、八日は参議院の審議も入つておるのでありまして、衆議院だけの最終日ではございませんから、何とぞその点御了承を願います。
  70. 藤田義光

    藤田委員 委員長から御注意もありましたので、なるべく簡明に質疑を続行いたしたいと思いますが、この総則に関する質問が終れば大体全部の問題が明らかになりますので、やや煩雑になりますが、総則に関する質問をさせていただきます。  先ほど小坂大臣から、犬養大臣提案理由は全然同じであるという前提のもとにその大綱を示されたのでございますが、どうも私は自治警察に対するに国家警察、この定義がつまびらかでないのであります。先ほど小坂大臣の御説明の中に町村を管轄する国家地方警察は、国家的性格に過ぎる、都市を管轄する自治体警察は、完全自治に過ぎて国家的性格にかけるという意味の御説明があつたのでありますが、非常に重大な点でありますので、いま少しくこの点を具体的にお示し願いたいと思うのであります。
  71. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 町村を管轄いたしておりまする国家地方警察は、御承知のようにすべてが国家公務員であります。また刑事も全部国の刑事でありまして、府県あるいは市町村議会等の監視監督も何ら受けておらないのであります。この点はあまりに国家的な組織といたしましての色彩が強過ぎるのはないか。市町村を管轄いたしておりまする市町村警察は、こりはまた全部が地方公務員である。また費用東京警視庁の分に対しましては若干の補助の道がありますが、以外は全部町村の費用である。また市町村警察は国の監督というものをふだんは何ら受けておりません。ただ非常事態の場合総理の指揮権発動の場合だけでありまして、一面国家的色彩を持つている。警察の処理の組織といたしましては、自治体的な色彩に過ぎている、かような趣旨だと御承知いただきたいと存じます。     〔委員長退席灘尾委員長代理着席
  72. 藤田義光

    藤田委員 そこでお尋ねいたしたいのでございますが、この第二条の警察責任関連いたしまして、その地域を一十六条に指定しておるのでございます。御存知のごとく第二十六条には、「都道府県に、都道府県警察を置く。」「都道府県警察は、当該都道府県区域につき、第二条の責務に任ずる。」とあります。現行法四十条でははつきりと警察維持の主体を明示しておるのであります。この点に関しまして私は三十六条、第二条に関連した規定からいたしますと、どうも都道府県警察都道府県自治警察にあらずして地域を指定と申しますか、単位地域を三十六条で示しておるのに過ぎない。従つて都道府県警察の名を冠しておりますが、実際上は改正案の三十六条は単位地域を示しておるにすぎないのでありまして、都道府県自治体の警察ではないということがこの規定からもはつきり言えるのではないかと考えておるのであります。この点に関してひとつ御答弁をお願いしたい。
  73. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 この条文都道府県区域都道府県警察を置くというのではございませんので、都道府県都道府県警察を置くと申しまするのは、都道府県というのは区域でなくて都道府県という団体という趣旨であります。さようでありますからこれは都道府県自治体警察、かように解釈をいたしおりますので、われわれといたしましてそのような御疑念がおありであるならば都道府県警察を維持し、その管轄区域内において第二条の責任に任ず、こう書いておるのと意味はかわらないと考えております。
  74. 藤田義光

    藤田委員 これは立法の解釈で、長官のただいまの御説明もできると思いますが、現行法がない場合は、ただいまの御解釈で了承できるのでありますけれども、現行法四十条とわざわざ表現を大巾にかえたその根拠が、今の答弁ではつきりしないのです。小坂大臣の御説明で、あとうる限り今回の警察自治体警察としての性格を具備せしめる、あとう限りという一定のわくがありまして、無条件ではございません。その裏をめくつてみれば三十六条あたりで単に区域内だけの指定をした規定をつくつたのじやないかという解釈も出て来るわけであります。そういうふうに表現を大巾にかえられました理由をいま一度お答えを願つておきます。
  75. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 これは表現を大巾にかえたというわけではございませんが、われわれこれを自治体警察として考えておりまするのは、この法律によつて国が留保をいたしておりまする権限以外は、一切地方にまかされておるのでありまして、さればこそ通常の警察費用都道府県負担であります。また警察の機構、都道府県警察の本部の機構あるいは署を置く場所あるいはその他の警察の組織に関する事柄も、本法において規定しております以上は、一切都道府県の条例をもつて規律をいたしておるのであります。またこれに従事します公務員地方公務員でありまして、この地方公務員都道府県の人事委員会あるいは公平委員会の管轄のもとに置かれるものでありまして、さような意味からいたしまして、なるほど御指摘のように三十六条の規定のいたし方は、文句といたしましてただいま仰せになるような意味からであれば、私が先ほど申しますような意味にかえた方が誤解を招くおそれはなかつたと、ただいまくやんでおるわけでございます。
  76. 藤田義光

    藤田委員 そうしますと、この点に関しましては修正の余地があるというふうにわれわれは解釈するのでございまするが、この機会に小坂大臣にお伺いいたしたいのは、午前中の質疑でも申し上げました通り、今回の改正案をながめますると、警察庁長官は実質上の警察大臣であります。この長官を中心に末端に至るまで実際上の人事は握られてしまうのであります。そうしますると、戦争前の警察制度は、御存じの通り内務大臣、その下に警保局長がありましたが、都道府県におきましては、警察部長というポストは都道府県知事の参謀にすぎなかつたのでございます。非常に強力なる知事というチエツク機関があつたのであります。今回は警察庁長官から直接警察本部長に参りまして、その外に存在いたしますところの公選されたる知事というものは、単に県費負担の名義においてチエツクできるのみでありまして、そのほかに関しましては全然権限がございません。特に午前中も申し上げました通り、この人事権を持たざる官庁のごとき組織というものはあり得ないのでありまして、人事を中央に直結いたしました警察本部長の、国家権力を背景にした府県における力というものは非常に強大なものになつて来る、これは必然であります。そうしますと、その都道府県内において選出されました公選知事の立場というものが非常にむずかしいものになつて来まして、この面から地方自治というものがこわされて行のではないか、そういう点に対する私の懸念に対しまして大臣はどういうくふうによつて――この法案ではどうもそのくふうがはつきりいたしませんが、こういうくふうによつてその点の心配を解消される所存でありますか、お伺いしておきます。
  77. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 警察庁長官におきまして事実上の警察大臣となるというお考えができるということでございますが、私どもはこの法案につきまして別に御説明申し上げておりますように、警察庁長官はその上にこれを管理する国家公安委員会を持つております。この国家公安委員会というのは非常に民主的な機関である。でございますからして、この国家公安委員会管理監督のもとに警察庁長官というものは行動し得るのでございますから、そうした莫大な権限というものは長官にはなかろう、そうした民主的な規制があろう、かように考えておるのであります。また警察庁長官が府県本部長を任命する、この機能に対しての批判を与える機関がないではないかということでございますが、これまた都道府県公安委員会の罷免勧告権というものがございまして、常にその府県の住民の意思を代表するというところの公安委員会の監視監督のもとにあるわけであります。またその都道府県公安委員会は、知事が任命するのでございますから、いわゆる戦前の制度におきますような、そうした中央からの二人の意思が非常に迅速に、何の批判もなく、全国を席巻し得るということはあり得ないことである、かように考えております。
  78. 藤田義光

    藤田委員 小坂国務大臣の政治感賞の問題でございまして、これは例は適当でないかもしれませんが、先般内務省の先輩である次田大三郎という人が新聞論説にも書いておりましたが、ソ連のベリヤのごとき者が出て参りまして、――斎藤さんがそういうふうな大それた計画をされる人柄でないことはよく存じておりますが、かりに権力を持たせた場合におきまして、人間の弱点といたしまして、私は非常な危険が包蔵されておるのではないかと思うのであります。御存じの通り官庁の組織、通常、管理で一番強いものは人事権であります。そうしますと、公安委員会の罷免勧告権を小坂大臣は非常に過大評価されておりますが、現在の公安委員会制度においてすらやや浮き上つておる、特に都道府県公安委員会のごときはその感を深うしておるのでありますが、私は最小限、現在の国家公安委員会程度の権限、人事権を持たせておつたならば、私の先ほど来の不安は解消するのであります。ところが総理大臣に人事権は握られてしまいます。しかもこの第四条によつて公安委員会は権限を持たなくなつた上に、総理大臣の所轄のもとに服するというような姿でありまして、この点に関しましては、もし小坂大臣のようなお気持であれば、私はこの際官庁の運営上最も力の重点である人事権、つまり任免権を公安委員会に復帰させましたら、この改正案というものが非常に生きて来るじやないか、かように考えておりますが、どうしてもこの原案を固執されまして、都道府県あるいは国家公安委員会に対して、警察庁長官や都道府県本部長の任免権というものを還元される気持はございませんかどうか、これを就任早々フレッシュなところで率直に感覚をお伺いしたいのであります。
  79. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 就任早々であまりよく存じませんので、満足の行くようなお答えがしにくいのでありますが、人事というものは非常に重要であります、よどんではいけないし、広い範囲でなければならない、こういうふうに私も考えます。そこで地方の場合、警察本部長がその地方のみの観点から見られるということは、今申し上げたような観点から見るといろいろな弊害があるのではないか。むしろ広く中央において選考するという方針の方が、今お話のございましたような点から見るとよろしくはないか。ただこれが無批判に、一本に、ただ一人の意思によつて流れて行くということであれば、これは今お話のような弊害もあろうかと思いますから、都道府県公安委員会という民主的な機関の意見も聞いてこれがなされる。また罷免勧告も随時行われるような制度といたしておいて、常時民主的な監視のもとにさらされる、こういうことにしておくことが必要であろうかと考えておのでございます。私も、非常に甘いというおしかりを受けることかと存じますが、政府といたしましては原案を最善と考えております。
  80. 藤田義光

    藤田委員 御存じの通り現行警察法は、刑事訴訟法とともに英米流の流れをくんだ法体系に属することは、私が申し上げるまでもございません。戦争前の刑事訴訟法あるいは警察関係法規は大陸系でございまして、この点はマツカーサ元帥によつて大幅な改正を受けたのであります。私たちは、この占領中マッカーサ元帥の占領行政が、大失敗したのもたくさんございましようが、成功したのもたくさんあると率直に認めております。特に地方自治の問題に関しまして、マッカーサー元帥の施策よろしきを得たと信念的に信じている一人でありますが、現在の刑事訴訟法、特に昨年の十六国会でございましたか、改正案が出されましていろいろ拘留期間の延長その他の問題、あるいは検事の指揮権の問題が表面化いたしましたときに、私は率先してこの点に反対いたしました。現在の民主化された、警察官警察制度のもとにおいては、警察に逮捕権を持たせてよろしい、しかし平巡査に至るまで、この基本的人権を侵害する逮捕という行政権を持たせてはいけないから、少くとも警部以上というようなことに調整ができたと記憶いたしておるのでありますが、この司法警察に関しても強大なる権限を警察は持つてつているのであります。その観点からいたしますと、よほどこの警察の執行運営には民主的理念を尊重しなくてはならぬと考えるのでありますが、いま一度お伺いしておきたいのは、この民主的理念を基調とする警察、このことに関しましてひとつ新大臣の所見をお伺いしておきます。民主的理念を基調とする警察に関する所見をなるべく具体的にお示し願いまして、私の質問が簡単に終るようにお手伝い願いたいと思います。
  81. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この警察法そのものが組織法であるということは、いまさら申し上げるまでもございませんが、この組織のあり方が結局におきまして一番具体的に現われて参ります面は、財政負担という面であろうかと思うのであります。けさほども申し上げましたように、この改正案のねらいとするところは、いわゆる占領治下にあつてできました非常に尊敬すべき幾多の制度の改善のうちで、やはり日本自体として運営の実績について考えてみると、多くのむだがあり、不経済があるということであるとすれば、そういう点は民主的理念に立つて国民のために政治をするという考え方からいたしましても、当然にむだを排除する、こういう考え方にならねばならぬという点が大きく考えられておるわけでございます。もちろん憲法におきまする国民に由来する政治、国民の信託によつて行わるべき政治、そして国民の基本的な人権が保障され、また地方自治を尊重するという観念、こういうものが失われてならないことはもとよりでありますが、またそうしたものを保障する意味から申しますれば、むしろ執行法においてそうしたものは十分保障さるべきものである。今お話になりました刑事訴訟法であるとか、あるいは警察官職務執行法であるとか、そういうような執行的な面において保障さるべきものであつて、私どもかつて行政執行法というものが行われた事例も知つておりますけれども、そうしたことをなされぬという前提に置かれております組織法たる新警察法でございますから、民主的理念というものについては、私ども強くこれを大筋といたすべきであろうと思います。さればこそ、またこの第一条にも、「民主的理念を基調とする警察管理運営保障し、」ということで、現在の警察法前文においてうたつてございます精神、人間の尊厳を最高度において確保するというその精神を第一条において明記しておる、かような次第でございます。
  82. 藤田義光

    藤田委員 ただいまの大臣の御答弁からしますと、ただいま憲法の前文の重要な点を一部申されたのでありますが、その大臣の感覚からしますと、たいへん失礼でございますが、私は現行法前文をそのまま第一条に持つて来た方が民主的理念を基調とした警察ができる、かように考えております。これは見解の相違になるかもしれませんが、その点に関しまして、あまりに簡明過ぎる表現に対して非常な誤解を生じておる、かように考えておるのでございます。もちろんただいまの大臣の御答弁のごとく、執行法的なものにおいていろいろ考えたいということは、私はこの新警察法そのものが組織法であるという柴田総務部長の御説明にはまつたく同感でありまして、その点に関しましては、執行法等の面において相当是正し得る範囲はございまするが、何と申しましても、基本的な組織法でありますので、この第一条の表現にはわれわれはどうも同意しかねる点が多いのであります。それからその問題に関連してお伺いしたいのは、最初に申し上げましたのと前後しますが、国家的色彩あるいは自治体的色彩という問題であります。先般来公聴会等によつてわれわれがはつきりつかみましたのは、現在の警察事務のうち約一五%以下が純然たる国家的事務であります。最高一五%であります。この百分比からいたしましても、大部分は自治体本然の事務である。これが現在の警察の実態であります。そういう観点からいたしますと、先ほど午前中小坂大臣答弁されましたような、国家警察自治体警察をちやんぽんにしたような中間的なものという感覚には反対せざるを得ないのであります。たとえば千名の職員がおれば最高百五十名以内を国家的事務を運用する警察官に充用すればよろしいじやないかという説も出て来るのでありますが、この点に関しましてはどういうふうな御見解でございますか。
  83. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 国家的な色彩と地方的な色彩、これは分量的にどうであろうかという御意見でございまするが、これを分量的に表わすことはきわめて困難だと思うのでございまして、普通一般に、これは地方にまかせていい、地方的色彩が非常に強いものだと考えたもの、たとえば普通の殺人あるいは窃盗といつたようなものは、これはもう地方にまかせて、地方住民がまくらを高くするという程度のものであれば、それでよろしいという考え方も立つわけでありますが、その種類の中にも、たとえば殺人につきましても非常に重要な意味を持つ殺人がある、国にとつて非常に重要な意味を持つた窃盗があるというぐあいになりますので、これはしかく、一五%が国家的色彩で八五%は地方的色彩だというぐあいにわけることはきわめて困難だと考えるのでございます。そこで、しからばこれを半々と考えるか何ぼと考えるかというわけでございますが、とにかく、当該地方団体にとつてもきわめて重要な事柄は、国にとつてもまたきわめて重要な事柄であるわけでございますので、従いまして、費用の一部分と職員のごく若干の一部分は国で持ち、あとのほとんど大半の三分の二近くは費用においては地方で負担をさせる。結局物を動かすのは人と金でございますから、人ばかり持つておりましても金がなければ動きません。従つて費用をたくさん負担するということはまた、費用負担する者において非常に強い発言権がある、かように私どもは考えておりまするので、この制度から考えまして、人事の点、費用の点、その他のすべての点から考えて、これで地方的色彩が何割で国家的色彩が何割だというようには、なかなか判断しがたいのでありますが、私どもといたしましては、まず分量から申せば、三分の二程度はこれは十分地方の色彩を発揮している、さような制度であろう、こういうように考えているわけでございます。
  84. 藤田義光

    藤田委員 そこでお伺いしたいのでございますが、これは昨日床吹委員からも御質問がありまして、ただいまは三分の二程度は地方的色彩があるという御答弁がございましたが、この第五条の第二項第三号の規定でございます。こういう規定をつくつておきますると、当然これは現行法の六十一条の二に該当する新しい規定であるという総務部長の御説明がございましたように、緊急非常事態に相当する規定であります。そうしますると、この改正案の第六章の規定というものは当然不要になるのじやないか、わざわざここにこういう長い条文を費す必要はない、第五条の第二項だけで尽きているのじやないか、こういう論が出て来ると思いますが、その点どういうふうに御解釈なさいますか。
  85. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 この新警察法案の第五条第二項の第三号がありますことによつて緊急事態の特別措置の規定は不必要ではないかという御意見だと存じまするが、この第百五条の第二項第三号の場合におきましては、これは通常の警察組織の運営の中において行うのでございまして、なるほど、大規模な災害にかかる事案あるいは騒乱にかかる事案につきましては、指揮監督権は持ちますけれども、しかしこれとても県の公安委員会管理のもとに府県警察は動くのでございまして、しかもこういつた場合に、この事件については指揮監督はできますが、その際に、他の一般警察の万般の事務処理とにらみ合せて行わなければならないというような非常に大規模な緊急事態ということに相なりますと、通常のこの手続の運営状態から緊急事態の処理方法にかわりまして、警察事項の一切合財をあげて総理のもとに統括できることの必要が生じて来るであろうと思うのでございます。さようでありませんと、第五条の第二項の規定のみでありまするならば、この規定を逸脱して、この規定の濫用をやらざるを得ないというようなことに相なると考えまするので、非常緊急事態の項がありますることは、第五条の規定を濫用しないで適切にこの法に規定しておる通り運用をし、しかもそれで国家社会の要請に十分こたえられる、こういうためだと御理解をいただきたいのでございます。
  86. 藤田義光

    藤田委員 次にお伺いしたいのは、先ほどもちよつとお伺いしましたが、はつきりいたしません。第二条第二項の不偏不党、公平中正のこの問題であります。もし現状のままならば、改正案が通過すれば、小坂さんが委員長になられましよう。小坂さんは自由党の代議士であります。現在自由党内閣であります。そうすれば当然この第二項の規定に反する行動をとるということは、政党人として常識でございます。政党出身大臣たる委員長警察法第二条第二項の厳然たる規定に背反しないようにどういうふうにくふうをされるか。私は、この点に関する新大臣の何か卓越した御所見がありはしないかと思いますので、お伺いしておきたいと思います。     〔灘尾委員長代理退席、委員長着席〕
  87. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 御承知のごとく、国家公安委員会は奇数委員会でございまして、その委員会におきまして国務大臣委員長となつておる次第でございます。そこで国家公安委員会の意思決定をいたします場合の表決権は、委員長は行使しないということになるわけでありまして、委員長は可否同数の場合決裁権を持つわけです。その際に、奇数委員会でありますから、実際問題といたしまして委員長表決権行使の場がなくなる、こういうことになつております。なお道義的に申しまして、警察というものは、ここに書くまでもなく、不偏不党、公正な運営がなさるべきものでございまするので、政党大臣といえども独断の意思を委員会に押しつけるべきものではなかろう、かように考えております。もしそういうことをしようといたしましても、公安委員会というものはそうした政党的運営を基盤にしておるものではございませんから、そうした横車を押すようなことはなし得ないものであろう、かように思つております。
  88. 藤田義光

    藤田委員 そうしますると、先ほどの御答弁に齟齬を来すのではないかと思うのであります。警察庁長官は総理大臣を中心に強大な人事権を持つておる。しかしその行き過ぎは公安委員会というものによつて是正して行く、公安委員会というものに相当の期待を大臣は寄せておられるのであります。ただいまの御答弁によりますると、委員長はほんとうに空名を持するようなかつこうになるのであります。可否同数のとき決裁権がある以外にはほとんど無力化してしまうというような意味に解釈いたしたのであります。もともとこれは中身を割れば自由党の案でなかつた、野党の案であつたのを取入れたのだから、われわれはこの点腐してはあまり関心を持たないということならば、また別でありますが、私は、第二条第二項の規定があり、しかも人事権を中心とした警察庁長官あるいは都道府県警察本部長の行過ぎはこの機関によつて是正すると、民主的理念というものをこの二点に集約して説明されている大臣としましては、私は、公安委員長たる国務大臣立場というものが非常に微力に過ぎはしないかと思うが、その点はどうでございますか。
  89. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 けさほどの御答弁と重複するようなことになるかもしれませんが、その点はお許し願うことといたしたいと思います。私は、行政権が内閣にあり、国会に対して内閣が連帯責任を負う、こういう立場からいたしまして、行政委員会の長に国務大臣がなるということは当然であろうと考えます。ただその場合、そうかといつてその委員長の個人の意思が強く表面に出て来ることは、警察制度あるいは警察という事柄自体から好ましくないことでありまして、そういうことのないようにするために、公安委員会という中正な機関の立場がある、かように考えるのであります。そこで私は、先ほども申し上ましたような立場からいたしまして、公安委員長国会に対して責任を持つ以上、常時その委員会に出席をいたしまして、委員会の空気も十分知り、またよい意味においての政府の考え方というものをよく連絡するということによりまして、いわゆるロボットというような意味でなく、また権力の横車を押すという意味でもなく、真のよい意味においての行政が円満に遂行される、こういうことを期待しておるわけでございます。
  90. 藤田義光

    藤田委員 そうしますと、大臣提案理由説明で強調されております、責任明確化という点で、単に国会に対して公安委員会あるいは警察庁の情報を伝えるに過ぎない。これは非常に弱い。かつて岡野国務大臣がメッセンジャーボーイと言われたのでありますが、そういう立場委員長としての国務大臣はすわるにすぎない。これでは今回せつかく大改正――改正というよりも新法をつくつたようなドラスティックな改正をやられた意味の大半はなくなるのではないか。能率化責任態勢の確立という二大目標の一半は失われてしまうのではないか。先ほど来の御答弁を聞いておりますと、ただ委員長というポストに国務大臣の肩書ですわつているだけで、政党色は絶対入らぬ、何ら自分の意見を述べる機会もない、国会に対してただ説明するということでは、わざわざ国務大臣委員長の席にすわる意義は大半なくなつてしまうのではないか。そうすると責任態勢の確立という今回の大改正目的がなくなるのではないかと思うのでありまするが、いま一度その辺のところをお答え願いたい。
  91. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 警察というものの建前からいたしまして、片寄つた意思を強制すべきでないということは先ほど申し上げた通りでございますが、国務大臣が常時委員会に出席するということによりまして、正しい意味においての意思の疏通をはかつておくということは、責任明確化になろうと思うのであります。現在でも総理大臣のもとに国家公安委員会行政上あるわけでございますが、またその意味においての責任というものはあるわけでありますが、何も知らないものをただやぶから棒に出されて、責任をとるとかとらぬとかということになれば、これは行政の全きを得ない、かように考えるのであります。けさほども申し上げたのでございますが、他にも例がないわけではございません。外資審議会あるいは外為審議会、これは大蔵大臣が会長をして下に委員がある、この委員会の意思というものについて大蔵大臣として責任をう、こういうことになつておるのであります。それとまつたく同意語であるとは私決して申しませんが、これは警察の職能あるいは大蔵行政の職能、それぞれ違う面があるのでありまするが、そうした意味においても常時意思の疏通をはかり、明らかにするということが責任明確化になろう、かように考える次第でございます。
  92. 藤田義光

    藤田委員 その常時意思の疏通をはかるということによつて責任明確化、この点に私は相当臭いものがあると思うのであります。たとえば選挙のときに際しましてま常時特に頻繁に意思の疏通をはかられる、その結果が第一線に反映して来て、国会はその後にしか開かれない、そういう結果になることを恐れまして私たちはどうしてもこれは自治体警察の色彩をいま少しく強くするくふうをする必要があるのじやないかと思う。そのためには都道府県警察だけに集中した現在の改正案は行き過ぎではないかと考えておるのであります。この点はいずれ修正の段階で考慮いたすことにしたいと思います。委員長、私さらに質問はありまするが、長くなりますので、ほかに先ほどから発言を求められておる方がありますので、本日はこの程度で保留いたしまして、いずれ八日に採決になる際に、八日になりますか、十日になりますか、その機会にまた発言を許していただくということで本日は質問を終ります。
  93. 中井一夫

    中井委員長 了承いたしました。藤田君はその質問を留保し、順位を他の諸君にお譲りになりました。大石ヨシエさん。
  94. 大石ヨシエ

    ○大石委員 小坂さんは新米ですのであまり私は聞きたくないのです。ところが実は私が聞かんとするところは全部藤田先輩がおつしやいました。それで私が小坂さんお聞きしたいのは、今回の警察法改正というものは、日本の一つの革命であると私は深く信じております。それに本委員会になぜ総理大臣が御出席くださいまして親切丁寧にこれに対して御答弁くださいませんか、全権を握られる者が総理大臣でございます。吉田さんがここへ来てなぜ親切丁寧にわれわれに説明してくださいませんか、あなたはいつ吉田さんをここへ連れて来てくださいますか、まずそれをお聞きしたい。
  95. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 今回の警察法が革命であるという御意見は、私は実はしばしば御説明申し上げておりまするように、この警察法改正というものは、終戦以来の新しい警察法をその後施行いたしてみまして、非常にとるべきりつぱな改革がなされたとは思いまするけれども、他面においてわが国の国情よりいたしまして修正すべき点を多々見出すものがある。そこで提案理由にも御説明申し上げましたような理由によりまして改正すべきところは改正する、こういう考えでございます。従いまして国家警察自治体警察というものを両方とも白紙に還元いたしまして、府県警察ということにいたしておりますることは、いまさら御説明申し上げるまでもないのでございますが、要するに根本的な改正と申しまするよりは今申し上げました趣旨においての必要なる改正、かように御了承を願いたいと考えておる次第でございます。なお今のような立場におきまして私も全権を持ちまして当委員会に御出席を申し上げ、いかなる御質問に対しましても誠意を持つて、はなはだ至りません者でございますが御答弁を申し上げて、御了承を得たいと考えておる次第でございます。なお国家公安委員会行政組織上の主務大臣というものは、総理府としての内閣総理大臣であるわけでございます。しかし内閣総理大臣がその権限を担当大臣としての主任大臣、私にまかされておるわけでございまするので、私の出席をもちまして御了承を願いたい、かように考えておる次第でございます。
  96. 大石ヨシエ

    ○大石委員 しからばもうこの委員会には吉田さんは御出席くださらぬ、さように解釈してよろしゆうございまする。
  97. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 はなはだ至りません者でございますが、私の出席をもちまして総理と同様にお考えになつていただきたいと思います。
  98. 大石ヨシエ

    ○大石委員 あなたが代理ですか、ああそうですか。それでは私はお聞きしたいのでございますが、斎藤さん、あなたはくろうとです。それでここに警察責務という字がございますが、私は刑事訴訟法の詳細に関して存じ上げません。これに対して私は説明を求めたいと思います。
  99. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 刑事訴訟法に規定をいたしておりまする警察職員に関します事柄は、これはこの法律案の第二条によりまする犯罪の捜査、被疑者の逮捕に関しまして捜査の仕方あるいは被疑者の逮捕の仕方というものを、人権に反しないようにこういう方法で捜査を進めたい、逮捕をする際にはこういう方法で裁判所の許可を得て逮捕をしなければならぬ、そういう手続のことを刑事訴訟法に規定をいたしておるのでございます。
  100. 大石ヨシエ

    ○大石委員 ただいま藤田議員が刑事訴訟法のことについてちよつとお触れになりましたが、そうするといかなる警察官でも裁判所の判事の判こをもらつたら、それはどういうことでも任意出頭を求めることができるのでございますか、その点をお伺いしたい。
  101. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 任意出頭は、これは警察のしかるべき権限を持つた者からお願いをするわけでありまして、これは強制的ではございません。先ほど藤田委員がおつしやいましたのは任意出頭ではなくて、逮捕の場合――逮捕の場合は警部補以上の警察官で、公安委員会が指定した者でなければ逮捕令状の請求権はないのでございます。
  102. 大石ヨシエ

    ○大石委員 しからば私の言わんとするところは藤田さんがおつしやいましたことと別の観点から聞きますが、公安委員会の任用資格でございます。この公安委員会の任用資格を何ゆえかくのごとく小範囲におきめになつたかということをお聞きしたい。
  103. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 現在の警察法による国家地方警察国家公安委員会の任用資格は、これはきわめて制限をせられておるのでございます。従つてつて専門的な公務員でなかつた者ということに相なつております。また都道府県の力は過去十年間に専門的な公務員でなかつた者ということにいたしておりますが、これは警察はともすると官僚化する、それを民主的な運営を確保いたしますために、警察の監督責任者でありまする公安委員は、そういつたいわゆる官僚的な臭みのないものが必要であるということで、現在の法律は相当狭く限定をいたしております。しかしながらこの資格の制限はあまりに形式に失して、かえつて適当な人を公安委員に得ることが不可能な場合もあるという声が一般的でございますので、このたびはこの制限をほとんど撤廃をいたしまして、ただ警察官僚化しないという保障だけを残しまして、警察、検察の前歴者でない者ならばだれでもよろしいというふうに広めた次第であります。
  104. 大石ヨシエ

    ○大石委員 お広めになつたというたら、範囲をどの程度お広めになつたのですか。
  105. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 国家公安委員におきましては、ただいまも申しましたように、かつては専門的な国の官吏あるいは地方自治体の公吏であつた力はこの資格に当てはまらない、任命ができなかつたのでございますが、今度は警察検察の専門家であつた者以外は、だれでもよろしいというふうに広まつたのであります。地方におきましては、過去十年間に国の官吏あるいは地方の公務員であつた者はいけなかつたわけでありますが、今度は警察、検察の経歴者でなければ、きのうまで国の官吏あるいは地方の公務員であつた方でもよろしいというふうに広まるわけであります。
  106. 大石ヨシエ

    ○大石委員 そうすると元警察官吏で、あつた、そういうような人はこの中に入らぬのですね。
  107. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 さようであります。
  108. 大石ヨシエ

    ○大石委員 この公安委員というものは一つのでくのぼうである。国家公安委員でもでくのぼうであつて、坊さんかお医者さんがなつてつて、結局は斎藤さんが実権を握つていらつしやる。私が一番心配するのはこの点なんです。総理大臣は権限を持つておるわ、その下に警察長官がすべての人事権を持つて自由になさる。そうすると今は自由党内閣でけつこうであります。今度それがひよつとすると共産党になるかもしれぬ。いまさつきちよつとおつしやいましたが、スターリンが天下をとるということになるかもしれぬ。(笑声)そのとときに警察法がこうなつておる。そうしたら一体これはどういうことになるのでしようか、私はそこを心配するのです。社会党左派が天下をとり、今度は共産党がとる、そうするとここにスターリン、ムツソリーニ、ヒトラー、こんなものが現われてそれを悪用する、これは一体どうなりますか。斎藤さんあなたはどう思われますか、それを聞かしてください。
  109. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 公安委員は無力で、あつて警察の専門家がこれをロボツトにするというようにおつしやいますが、実際はそうではございません。国家公安委員五人の方々を、どんな有能な警察官警察長官に任命されましても、これを手にとつてロボットにするなどということはとうていできるものでないと私は思つております。私の過去の経験から申しましても、五人のりつぱな公安委員さんを無視するなどということは実際問題として、できるものではない。ことに都道府県にある公安委員というものは、各府県にそれぞれあるいは各政党の党籍を持つた力もおられましよう、いろいろな考えを持つた方がおられるわけでありまして、百数十名の都道府県公安委員さんの目をごまかして、自分の思う通りのかつてほうだいな事柄をやれるということはあまりにも天を恐れざる考え方であつて、そういうことはとうてい実施ができないのであります。従いまして私はもしただいまおつしやいますような独裁的な考え方を持つた者が警察長官に万一選ばれるということがありましても、たちまちにして罷免をされてしまうであろう、かようにかたく信じておるのでございます。
  110. 大石ヨシエ

    ○大石委員 しかし先日ここに聖路加病院の橋本さんとかいう公安委員の方が来ておられましたが、警察のことをいろいろ質問してもその人は何にも知らなかつた。結局でくのぼうであつた。そうするとあなた方はこのでくのぼうを公安委員にお選びになることが最も適当あつてそうして斎藤さんの意のままになる、こういうことだと私は解釈しておりますが、斎藤さんそれでよろしゆうございますか。
  111. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 聖路加病院の院長は私はりつぱな方だと思つておりますが、これは国家公安委員ではございませんので、お考え違いだろうと思います。国家公安委員は総理大臣がこの国会の同意を得て任命せられるのでありまして、私どもはこの公安委員の監督下にあるわけであります。従いまして私どもがどういう公安委員さんがよろしいかということは申すべきではないのであります。現在の公安委員といたしましてはたとえば総同盟の会長の金正さん、あるいは前の日経の社長の小汀さんでありますとか、あるいは青木品川白煉瓦の社長でありますとか、あるいは弁護士の高野さん、いずれもりつぱな方々でありまして、決してさような無力な方ではございません。
  112. 大石ヨシエ

    ○大石委員 そこで不偏不党且つ公平中正を旨とする、こう書いてあります。ところがその例を言いたい。京都には左派の知事さんがおられます。その左派の知事さんは公正無私でなくちやならない。それはどんなものでもよい。それがある特定の政党を支持する。知事でもそうです。しからばこういうような法案が通つたら、吉田さんは吉田天皇になつてすべての権限をあの人が持ちます。そうするとこれはフアツシヨになります。斎藤さんはこれをどういうふうにお考えになりますか。知事でさえフアツシヨになつているが、それがこういうふうに吉田さんがいろいろな権限をお持ちになるとムツソリーニ、ヒトラー。今度吉田さんがなくなられるとあるいは共産党の人が出るかもしれない。これはどうするか。社会党も出るでしよう。これをどうするか。その点を私は聞きたい。私はそれが非常に心配なんです。
  113. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 ただいま知事の政治的不公正ということをおつしやられましたが、少くとも警察法運用するのに関係いたします者は不偏不当、公平中正を旨としなければ相ならぬのでありまして、吉田総理の独裁というお言葉もございましたが、とにかく国会において選任をせられました総理でありまして、これはムソリーニとかヒトラーとかいうものとは、同じ名前の総理でありましても、その構成の仕方が、日本の国会が健全であります限りは御心配になることはないと考えております。
  114. 大石ヨシエ

    ○大石委員 ところが斎藤さんなかなかそうはいかぬのです。これは次田大三郎さんがおつしやつていらつしやるように、ソヴイエトのベリヤの場合に私は匹敵すると思う。こういう警察法はひつ込ます必要があるあなたはどう考えておるか、こんなもの撤回して自治体警察を現在のままにしておいたらいい、いらぬことをして何をしておるか、何ですか、こんなくさつたような法案を出して。
  115. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 次田先輩の論文を非常に御引用になられるようでございますが、先ほど大臣からお述べになりましたように、中央地方公安委員会の制度があり、そうして日本の議会制度が確立しておる以上は、ベリヤが現われる心配はないと私は考えます。
  116. 大石ヨシエ

    ○大石委員 しからば齋藤さん、せんだつても言つたんですが、国家警察自治体警察府県一本にしたら、一体どういう警察かこれはわからぬ、中間的存在である。そうして、あなたはごまかそうとなさつておる、なかなかごまかそうとなさつてもわれわれ野党はあなたのごまかしには乗りません。これをどうしてくれますか、現在のままでよろしい、かえる必要はありません。どうします。
  117. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 大石委員も現在の警察法におきましていろいろ欠陥のある点は御承知通りだと存じます。従いましてこのたびの政府の案といたしましては、さような欠陥の点をできるだけ是正をいたしましてそうして国民少い負担国民の期待に沿える民主的な警察をつくり上げたいというのが、政府の提案の趣旨でございますので、決して私はごまかすつもりはございません。意のあるところを了とせられたいと思います。
  118. 大石ヨシエ

    ○大石委員 今度の総選挙になつたら、とにかく斎藤さんが人事権をすべて握つて、社会党はみな落選して、そうしてまず改進党さん半分と、それから自由党さん全部が御当選なさると思う。それでこういう法案を出してわれわれ勤労大衆の代表を圧迫なさるつもりで、これをお出しになるかと私は思います。真剣な声を聞かしてほしい。
  119. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 選挙の例をお引きになられましたが、私は警察法案がこの法律通り運用されまするならば、選挙などにおきましてはどの政党のためにも最も公平な警察になるであろう、かように考えております。
  120. 大石ヨシエ

    ○大石委員 それはうそですよ斎藤さん、そうしたらなぜ全国の要所々々に管区警察本部をお置きになるのですか。これは何ですか。これはやはり自由党の全部、改進党の半分の種を植えつけようとして、こういうものをお置きになるのです。なぜこの管区本部をお置になりますか。これはつきり聞かしてもらわぬとどうにもならぬ。
  121. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 管区本部はしばしば申し上げておりまするように、今日の犯罪対象が非常に広域にまたがつておりまするので、従いまして警察連絡調整という面から考えますと、どうしてもこういつた広域面において連絡調整に当るものが必要に相なるわけでございまして、ことに同時多発の大きな擾乱というような場合を考えますと、この組織がどうしてもなくてはならない、かように考えておるのでございます。
  122. 大石ヨシエ

    ○大石委員 そうしたら斎藤さん、これは国家警察であると思つて審議したらよろしいのですね。自治体警察ではないと私は思う。それでわれわれ審議する者はこれは国家警察であるという意味審議してよろしゆうございますね。国家警察なら国家警察とはつきり言いなさい、そうしたらわれわれはそういう意味においてこれを審議します。
  123. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 この点は先般大石委員にもお答えいたしましたように、都道府県警察は、これは本体はどこまでも自治体警察でございまして、なるほど国に留保されている監督権とか、あるいは国からある基準を示すとしいう場合がありますが、この本来の性質は自治体警察でございます。
  124. 大石ヨシエ

    ○大石委員 それだつたら小坂さんを警察担当の大臣に置く必要もなければ、吉田さんが吉田天皇になる必要もない。すべての権限はそういうふうになつておる、これは一貫して一つの流れになつておる。これを国家警察とわれわれは思つて今後審議いたします。さよう御承知を願いたいと思いますがいかがでございましよう、よろしゆうございますね。国家警察ですね。
  125. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 さように御了解をいただきましてはまことに困るのでございます。自治体警察でありますことには間違いがないのでございます。ただ国の必要とする最小限度におきまして、国家公安委員府県警察につきまして指揮監督する面も一部あるわけでございます。
  126. 大石ヨシエ

    ○大石委員 そうしたらやはり国家警察です。それで改進党の半分と、それからわれわれ左右両派はこれを国家警察思つて審議をいたしますから、さよう御承知を願いたいと思います。これは国家警察です。さよう御承知をお願いしたいとこちらから特にお願いする次第でございます。
  127. 中井一夫

  128. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 きようからは逐条審議に入つたわけであります。従いましてまた元へもどるようなお話は、私どもといたしましてもなるべく避けたい、かように考えております。ただ総則のことでありまするから、原則的な規定がありますので、多少そういうきらいがあるかもしれませんが、そういう意味でお尋ねするのでありますから、その辺のところは御了承賜わりたいと思うのでありますが、まず第一に第三条でお尋ねをいたします。  第三条はこの法律には「警察の職務を行うすべての職員は、日本国憲法及び法律を擁護し、不偏不党且つ公平中正にその職務を遂行服務の宣誓を行うものとする。こうありまするが、この服務の宣誓はどういう形でおやりになるのですか、ちよつとお尋ねいたします。
  129. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 服務の宣誓は警察職員に任命をされます際に、任命権者の前で宣誓を行う方針になつております。
  130. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 今聞きますと任命権者の前ということになりますると、たとえばどういうことになりますか。府県警察隊長が任命されたときには、この制度による長官の前で宜誓をするのでありますか。
  131. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 この警察法案によりますと、長官に対して宣誓を行うということになります。
  132. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 そういう面で依然として私は問題が残ると思うのでありますが、この服務の宣誓の内容について原案をお持ちでありましたら、ひとつ発表していただきたいと思います。
  133. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 現在の宣誓の内容国家地方警察の基本規定になりまして次のように規定をされております。私は日本国憲法及び法律を忠実に擁護し、命令を遵守し、その綱領が警察職務に優先してそれに従うべきことを要求する団体又は組織に加入せず、何ものにもとらわれず、何ものをも恐れず、何ものをも憎まず、良心のみに従つて、公正に警察職務の遂行に当ることを厳粛に誓います。かように規定をいたしております。
  134. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 今の宣誓は、今度警察法改正なすつてもその通りおやりになるおつもりであるかどうか。
  135. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 大体この通りでよろしからろうと存じますが、もしこの法南米が通りしますならば、さらにこれに不偏不党という文字を入れる方が、なお法律に忠実であろうかと考えております。
  136. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 これからは大臣にお尋ねしたい。大臣は、午前中の説明で占領下につくつた法律であるから、日本の実情に沿わないものは改めねばならぬと言われましたが、この宣誓という制度は大体日本の実情に合つておるものであるかどうか、大臣の御意見を伺いたい。
  137. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 日本の実情におきまして、宣誓をするということは、現在国会におきましても、ある種の委員会では行われておりますし、宣誓をするという制度は、これにおいて始まつたものではございません。私は、この制度は特にかえる必要はない、かように考えております。
  138. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 今国会においてもやつておるし、これは昔はなかつたことであつて新しくできた制度であるけれども、日本の現状にも合つていて、このいい精度は残しておきたいという御趣旨を私は了解してるわけでありますが、この宣誓に違反しますと、とせういうことになりますか、大臣の御意見を伺いたい。
  139. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 宣誓に違反したらどうなるかというよりも、実際その行動が服務紀違反になる、かようなことになります。従つて、適格者としての資格を喪失する。かように考えます。
  140. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 今の答弁では私満足できないのでありまするが、宣誓に違反をした場合にどうするかという規定がないような宣誓というのはありますが、どこかにそういう規定があれば教えてもらいたい。
  141. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 この宣誓に違反をいたしましたときには、紀律違反といたしまして、国家公務員法なり、それらの服務の規定によつて処置をされるわけであります。
  142. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 その紀律違反についてはどういうところまでの罰則があるのか、内容をひとつお聞かせいただきたい。
  143. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 これはその重きに従つて、あるいは懲戒免職になることもありましようし、あるいは単に不適格ということで罷免をされることになるだろうと思います。
  144. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 この点、はそういう御答弁ではどうもよく納得できないのであります。先ほどからも言いましたように、宣誓の制度というのは非常に新しい制度でありまして、場合によつては、これは儀式のような感じでやつておる人が非常に多いと、私は日本の現在の実情において思うのであります。従つて、先ほど大臣の御答弁のように、国会なんかでも宣誓する、その通りなんです。しかし、それには偽証罪というのがあつて、罰則の規定がちやんとあるのです。これはこの警察法案の総則において書かれておるのだから、きわめて重要なことだろうと思う。それについて、それに違反をした場合にはまたほかの規則か何かで行く、そういう簡単なやり方ではどうも納得ができない。警察官は任命のときに服務の宣誓をやる、これは国民の基本的人権に非常に影響のある重大な職務である、そしてそれに反した場合の罰則は何もない。最近大いに問題になつている教育二法案などの問題についても、政治活動をしたらどうだという刑罰規定まであるのです、これは非常に問題になつておりますが、無理押しに刑罰規定までつくつた。せめて行政罰という話が出たのに強引に通した。この第一条の宣誓は、私は形容詞じやなかろうと思うのですか、これに違反した場合の法文を何かこの同じ警察法案の中に当然入れるべきだ、かように思うのです。それでなければ、こういう制度を設けても実際の効果はどうであろうかということを私は申し上げておる。警察官は人を縛る、自分の縛られる方は少い方がよいのだ、そういうえてかつてなものではいけない。これははつきりひとつ大臣の御意見を伺いたい。
  145. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この法律によつて警察の職務を行うすべての職員」と相なつておりますが、国家公安委員もそうでありますし、都道府県公安委員警察官及び警察職員たる事務官、技官という範囲のものはこの適用を受けることになります。そこで、今お話の点は先ほどお答えしたことでございますが、警察庁の職員及び警視祝正以上の都道府県警察警察官は国家公務員法によりまして人事院規則の定めるところにより、地方公務員たる都道府県警察警察職員は地方公務員法によりまして、国家公安委員につきましては第十条の規定によつて国家公務員法が準用されますから、そうした定めによつて服務の宣誓をする義務があるわけでありますから、その義務違反の場合は、先ほど申しましたような公務員としての適格性を失うということになつて、懲戒罷免をされる、こういうことになると思います。
  146. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 懲戒罷免だけで、それでよろしいのですか。その辺のところをちよつと……。
  147. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 警察官職権を濫用いたしました場合には、刑法等においても特に職権濫用罪の規定かございます。その他各種の法規によつて処断をさせるわけでございますから、現在警察官の勤務の状況その他から考えまして、さらに何かそういつた面で処罰をしなければどうしてもほつておけないというような抜けているところは、ただいまないのではなかろうか、かように私どもは考えているのでございます。
  148. 石村英雄

    ○石村委員 小坂さんのただいまの御答弁の中に、この職員というのは公安委員も含むという御説明だと聞きましたが、間違いございませんか。
  149. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 その通りであります。
  150. 石村英雄

    ○石村委員 そうしますと、地方の府県公安委員の罷免条項にはそんなものはないように思うのですか、どうなりますか。
  151. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 都道府県公安委員につきましては、第四十一条に規定によりまして地方公務員法が準用されるのであります。
  152. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 今の問題はこの程度にいたしておきますが、実際はこの総則が形容詞みたいになることを私は非常におそれてお尋ねをしたわけであります。  同じような意味におきまして、第一条、第三条にありまする不偏不党とか、公平中正という言葉、こういうものをたびたびうたうならば、どうしてこの総則の精神によつて下まで貫いて行かなかつたかと非常に私は残念に思うのであります。先般来二箇月半にわたつて政府当局の説明を聞きますと、たとえば能率の問題とか経済の問題とか、小坂さんはもう総括質問で済んでおるように思つておられるが、実はちつともはつきりした解答は出ていないのであります。その不偏不党という面におときましても、ほんとうにこれを通そうというならば――公安委員の任命に際してもいかにも不偏不党であるごとく、一つの政党から、一人以上入つてはいけないとかなんとかいうこまかい規定があつて、それは、三人になつたら一人はやあさせるとかいうようなことはありますけれども、大体日本の国情から考えて、日本の現在におきまして、政党に所属しておる人というものは、実は蓼たるものなのであります。この点について私は少し議論をしたいと思うのでありますが、現在政府でわかつておるでありましようが、八千五百万の国民のうちで政党員というものは一体何人おるのであるか、その人数の内訳をひとつ知らしていただきたいと思います。
  153. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 各政党の党員の数を調査したことはございませんので、せつかくでございますがお答えの資料を持ち合せておりません。
  154. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 それは警察ではおわかりでないかもしれませんけれども、ほかの機関によつてわかると私は思います。これは全国の各市町村において各支部は届出をいたし、おそらくそれはすぐお調べになるとおわかりになると思います。自治庁ではわかつておると私は思います。その数非常に少いと思うのです。おそらく共産党が、一番多くて、何万か知りませんが、もちろん十万を越えることはないだろう。社会党の左右両派にいたしましても、現実に党費を々納めて、まじめに党員としてやつておる者は非常に少い。そこで不偏不党ということを貫くならば、むしろ政党に関係のある人を、政党員である者公安委員の中に入れないというのか、一番はつきりするのじやないかと私は思うのです。その場合には憲法違反の問題とか、政党政治の国柄からいつてそれは行き過ぎであるとかなんとかいう議論はおそらくあつたと思うのでありますが、そのいきさつをひとつ聞かしてもらいたいし、またそれに対する大臣の常識的な判断を聞かしていただきたい、私はかように思います。
  155. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ごく常識的に考えましてこの不偏不党という観念は、警察制度運営するそのものの中に存在すべきものであろうと私は考えておるのであります。国家公安委員の任命あるいは都道府県公安委員の任命におきましても、そうしたことは良識上当然考えらるべきものであると思います。ただこれに特に制限をつけまする際に、ただいまお述べになりましたような憲法上の疑義というような問題もございまするから、これは最大限これ以上はいけない、こういう制限をつけたものであるというふうに考えております。
  156. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 この点はどうも表面非常に公平を装つて実は幾らでも抜け道があるので申し上げるのであります。同党に属するなどというものは――あなたあした公安委員になつてくれ、よろしい、それじや県議会に諮るから、その日に脱党届けを出したら何もないのであります。現に全国の自治体でもつて町村合併で大いに選挙をやられておりまるが、どうも最近自由党や改進党は汚職が一番多いのでということになると、ほとんどの候補者は無所属である。しかし実際は保守系統のような形になるのであつて、そういう意味からいつて、どうも不偏不党な貫くということになれば、今お述べになりましたこれ以上はいけないというようなものじやなくて、もう一挙に、公安委員になるときには政党に属してはいけないというように、はつきりやつた力が実は筋が通るように私は思うのであります、その点について、そうはつきりやれば憲法違反になるのかどうか、ひとつお尋ねをいたしておきたい、かように思います。
  157. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 なるほど中井委員のおつしやいますように、政党の党員は公安委員になれないということを規定いたしますのは、あるいは警察の不偏不党を維持するゆえんであるかもわかりませんが、しかし一方において何人も政党の党員になり得ることは憲法上最も大事なことでございまするので、従いまして政党員であるから必ずその政党のために働くであろうという前提はいかがであろうかという点も考えられまするし、そこらはほどほどを考えまして、同一党員の人かあまり過半数を制することになつてもいけないであろうから、まあその辺でチエックをしておいたらという程度でとどめておるのであります。
  158. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 お気持も実はよくわかるのでありますが、不偏不党をほんとうに貫こうということであるならば、日本の現状から考えまして、先ほどのように小坂さんがなるべくそれ以上はいけないと言う制限のものとも関連するのですが、法律規定しても幾らも抜け道のあるようなこういうやり方、これについては、むしろそれを書くのならばもつとはつきりと――公安委員を任命する場合に同一政党から二人以上はいけないというのならば、過去五年間そういう政党に属しておつた者はいけないとか、過去三年間はいけない、そこまではつきり行かないと、実はこの趣旨は徹底しないと私は思う。この法律では、九人の公安委員会が五人とも与党でやろうと思つたらやれますよ。ただ前の日にみんな脱党届けを、出しておいたらいい。今は政党員ではありません、公安委員になるためにわれわれは不備不党にならなければなりませんから、もう私は政党の党員であることをやめましたということを簡単に言えばいいのでありまして、制限しようと思うならばそこまで行かなければならない。この総則の精神を生かすというならば、そこまで行かなければ意味がないと実は思うのであります。この点についてひとつ意見を聞かしてもらいたい。幾らでも法網はくぐれるというような甘いものではいけない。  それからもう二つ、この不偏不党というものをあくまでも貫くというお考えであるならば、これは何回も問題になりましたが、長官の任命について私は、今の日本のあり方は政党政治であります。総理大臣はもちろん党人であり党首でありますが、その総理大臣が任命するよりも公安委員会が任命した方が不偏不党であろうと思うのでありますが、この点についてあなた方が責任明確化――私どもは八十五日間の審議の中でちよつとなるほどと思いましたのは、責任明確化が現在の制度であると非常に困る。犬養大臣は、私どもに言わせると詭弁でありますが、何と言うかといいますと、皆さん自身も私の直接の管轄でないところの、たとえば東京部の警視総監の管轄のことまで聞かれるじやないか、あるいは自治体警察の中で起つた事件まで聞かれるじやないか、それは実際は国警担当の大臣としては全然管轄外のことであるけれども世間はそう思つているでしよう、その常識がとうといのであるというような話でありまして、この点だけは私どももちよつとそうかなと思つたところなのでありますが、そういうものから行きましても、私は不偏不党というもののある限りは、ことにあなた方の案によると国家公安委会の中に自分の部下のような国務大臣が入つておるのであります。また普通四人も五人もいるわけでありますから、これを通そうと思えば、私はやはり公安委員会の任命とする、これほど筋の通つたことはないのでありますが、責任のの明確化というものはそこまでやらなければならぬ。それほど自信のない内閣総理大臣というものは私はそう世界にたくさんあるまい実は思うのでありますが、どうですか、この点もう一度お答え願いたい。
  159. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 政党員であるというと、非常に政党意識が強い場合があります。政党員でないからといつて非常に不偏不党でない場合もあるのであります。そこで今までの御説明で尽きているかと存じますが、国家公安委員なり都道府県公安委員を任命いたします場合の基準は、法律にお読になりますごとく書いてあるわけでざいます。そこでそれだけでは与党勢力によつて自由に左右し得るではないかその公安委員の質というものはいかようにでもかえ得るのではないかという御懸念に対しましては、私どもといたしましては、それはすべて国会なりあるいは府県議会なりの同意を得て任命されるものであるという点もつてお答えを申し上げたいと思うのであります。従来国会におきまして国家公安委員を任命して御承認を得まする場合においても、すべて満場に一致になつております。こういう任命につきましては、特に表決なもつて争うというような形では、実はその後の運営の円滑を期し得ないのでざいますから、非常に党派的にこの人はと思われるような意識を持つた人の場合は、国会の御同意を得まする場合にすでに問題になるのでございます。そこに中立性の確保ということが期待されると思うのでございます。なお責任明確化ということにつきまして、犬養大臣のお話を引かれましたが、私もその例は非常にけつこうな例であろうと思うのであります。すべて行政ということは非常に多岐にわたり、また警察行政というものも非常に国家的にも幅の広いものでありまた国家的なもの地方的なものすべて含めて警察行政というのでございますから、そういう意味におきまして、この法律で御審議つておりますように、総理大臣国家公安委員会意見を聞いて警察庁長官を任命するということは、これはそういうお考えも一方にあろうかと存じますけれども、私どもとしては不偏不党ということに別に抵触するわけでない。ことにチエツク・アンド・バランスの法則が、先ほど申しげましたように十分働いておりますから、その点につきましての懸念はないものと、このように心得ております。
  160. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 国会で承認します人事の問題については、いつも満場一致で行つているということでありますが、しかしそれはあくまで単にこれまでの二、三年の経過だけでありまして、常にまたかわつた内閣ができますと、押し切る場合も出て来る。現に最近も、われわれまつたくびつくりしたような法律運用されよこともあるわけであります。何もそれをやつたからといつて違法じやないということになると、法律をつくりますときにはそういう甘い考えでおつくりになつては困るのではないか、かように考えます。不偏不常の問題についてはこれはただ形容詞的に総則に書いてあるだけで、中に入つてみると、そうでないような、逆に行けるように解釈できるという、そのことが私どもやかましく申しておりますいわゆる扇のかなめの問題であろうと思うのであります。どうも今の政府は扇のかなめが――国警でもつて形は扇であるが、かなめだけは違うというようなものがこれをつらぬいております。その点は警察の特殊性であるというような考え方もありましようけれども、先ほどもあなたがおつしやつたように、実際の運用においてはうまく行つているというようなことでありますならば私はたとえば府県の隊長のごとき現に府県公安委員会が任命権を持つにいたしましても、実際の面においては私はやはりうまく行くだらうと思うのであります。これは国の警察と全然縁もゆかりもない警察隊長が来るなんということは考えられません。現在地方自治体の他の部面、たとえば土木行政その他の部面におきましては、建設省、厚生省関係におきましても、やはり知事は東京連絡をしてやつているのであります。実際の面において運用されるというふうなことが答弁として出て参りますと、私たちはそれ運用いたしましてこれではならぬというようなことになると思うのでありますが、これは総論でも大分やかましく言いましたから繰返しはいたしません。  最後に、第二条の二で「いやしくも日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあつてはならない。」とこうありますが、しかし実際の場合に容疑者を逮捕して非常に迷惑をかけて、裁判になる前にこれはもう何でもなかつたというて放免するというようなことが、しばしばあるように聞くわけでありますが、そういう場合の補償というような問題についてはどうなつておりますか。
  161. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 警察あるいは検察で勾留されまして、それが無罪になりました場合の補償は、刑事補償法に現在特定の条件のもとに補償が規定をされているのでございます。
  162. 大矢省三

    ○大矢委員 関連して。起訴されて裁判にまわつて、そうして無罪になつた場合には国家が賠償しますけれども、警察に二昼夜とめられて、どうも済まなかつたといつて出される者が相当ある、私たちはよく知つている。それに対して何もない。しかしこれも神様でないからあり得ることである。あるいは投書であるとか聞き込みであるとかいうことで、あり得ることだけれども、しかしそれが二へんも三べんも重つても、刑事とか署長とか、これらの人は何らの責任を感じていない。私はこれが大きな問題だと思う。私はせんだつて統計を出してくれと言いましたが、その中に二日間の勾留のものが入つてい乙かどうか知りませんが、検察庁に書類を送らずにそのまま済んでいる事件が相当ある。これも非常に迷惑してい石。こういうことが二回、三回重なつた場合に、その刑事なり署長が、どこでやられるかしりませんが、とにかく責任を明らかにしてもらいたい。昔軍隊では軍隊内の憲兵がおりましてそれをやつてつた。ところが今の警察ではそれが少しもない。いくらこんなものを書いたつて、実際上は何にもやつていない。私は実例は幾らでも知つておりますから出しますが、それこそ問題が複雑になりますから出しませんけれども、その点を明らかにしてもらいたい。
  163. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 お説のように起訴され、あとで無罪になつたという場合には賠償の規定があります。そうでありません場合につきましては、国家が故意または過失によつて損害を与えたということになれば、国家賠償法の賠償がある。しかし故意でも過失でもない、警察の常識をもつてつたのであつたけれども、それが無罪になつた、あるいは起訴されなかつたという場合には、その賠償の規定はありません。そういつた賠償のことを新しく法律に設ける必要があるかどうかは十分研究を要する問題であろうと存じます。また警察で検挙したが、その検挙が非常に不当であたつというような場合には、人事管理面で賞罰を明らかにいたしておるのでございます。しかしながらただ不起訴という場合におきましても、以前の起訴猶予というものも不起訴ということになつておりまするので、犯罪はないとは言えないけれども、刑事政策上起訴を免除するという場合もありますので、もし国家賠償を規定するということになりますと、非常にむずかしい問題がその間に起つて来るのではなかろうかと考えるのであります。
  164. 大矢省三

    ○大矢委員 その故意、過失、不当というのはだれが認めるのですか。署長がそれ々認めるのかどうか知りませんが、自分の部下に、これは故意だつたとかいうことはなかなかきめにくい。一体、だれが認めるのか。  それから実際上何にもなくて実に迷惑しておるのが相当ある。そういうものが市なつたときはどういう法律でどう処分するのか、ただ身分について懲戒をやるとか、服務規程によつて処置するというのではなく、またそれは見違いだ、間違いだ、それは過失である、故意でなかつたからといつてそのまま見のがされたのでは、取調べを受けた人はどうなるのです。それを私は言うのです。一体故意、過失、不当ということはだれが認定して、だれがそういうことの最後の決定をするのか、どういう慣習があるのか、その点をひとつ……。
  165. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私の申しましたのは、たとえば国家賠償法によりまして、「公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えた」場合には国家賠償法の規定がある。この場合に故意または過失の認定はだれがするかということでありますが、故意または過失によつて違法に損害を加えられたと思う者が、裁判所に対して賠償の請求をするわけであります。その判断は裁判所がやるわけであります。
  166. 大矢省三

    ○大矢委員 それではこういうことなのですか。不当、故意であつたと思うときには裁判所に訴え出る。そうしたら裁判所でちやんと決定して、それで賠償するのだ。しかしそれではあまりに弱い者いじめではないですか。国民が、やられたからといつて一々裁判所に訴え出なければどうにもならぬ。それが、明らかにニへん、三べんと重ねてやつた刑事、署長は、みずからの良心に訴えて責任をとるべきだ。やつれた者の立場に立つて考えてもらいたい。ただこういうことで訴訟を起せばできるのだというのが今までの警察官の態度、考え方だ。それだから善良な国民が今まで非常に迷惑している。私はこの点を人権尊重、主権在民の新憲法に基いてもつと――これは私の一つの思いつきでありますが、たとえば公安委員に対して言つて行くとか、あるいはそういう場合に事実調べをしてもらう。しかも刑事がこういうことをやつているのはことごとく感情でやつている。場合によつては料理屋に行つて一ぱい飲んで、それらの言い分を聞いて、その顔を一立てるためにやつたということがしばしばある。そういうことを訴えたらただちに懲戒免職だのと言わず、部署をかえるとかあるいは悪かつたということを反省する余地を与えるとか、何とかなければ結局泣き寝入りになつてしまう。訴訟になつたらそれで打切るということでは、国民は一々二日や三日ひつぱられたことを訴訟で賠償を要求するということは事実上できないことだ。できないことをやれといつても、こういう規定があるからといつても私どもは承服できない。こういうことを機会に、そういうことについてはいわゆる苦情を持つて行くところがあるとか、実際に本人が間違つた考えを持つているならば、それを解くようにするとか、何とか警察官の行き過ぎに対して方法を講ずる必要がないかどうかということです。
  167. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 ただいまさような場合に賠償規定があるかとおつしやいましたから、私は賠償のことを申し上げたのでありまして、警察といたしましては先般も申し上げましたように、そういつた意味の人事管理というものはまことに大事であります。事件を適切に処理することも大事でありますが、それにもまさつてそういつた意味の人事管理が大事だということを申し上げたのでございます。人事の監督に当つております者は、公安委員はもちろんのこと、そうでありません幹部の者といたしましても、そういつた人事管理面に細心の注意を払い、少しでもそういつた苦情を聞けば、それをほんとうに確かめてみて、その状態に応じてあるいは戒告を加えて、ふたたび繰返さないようにするとか、戒告ではいかぬという場合には、今おつしやいますように華をかえるとかいろいろな賞罰を考えまして、そしていやしくも人権を毀損するようなことのないように努めなければ相ならないのでございます。そのようなためには、われわれといたしましては警察の内部にあるいは監察員の制度を設け、あるいは府県公安委員の方々におかれましても、できるだけそういつた苦情をお聞きになつて隊長にそれを示されて、それで人事管理の適正を期するように、隊長を指導鞭撻していただきたいということをお願いしている次第でございます。     〔委員長退席灘尾委員長代理着席
  168. 門司亮

    ○門司委員 大矢さんの関連ちよつと聞いておきますが、これはいずれあしたかあさつてでも逐条審議移つたときにも聞くつもりでありましたが、問題はこれが組織法だから、結局施行法をお出しになる予定ですかどうなのですか。
  169. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 別に施行法は出す予定はいたしておりません。現在ございます施行関係の法令で今のところ十分やつて行ける、さように考えております。
  170. 門司亮

    ○門司委員 そうすると、今の大矢さんの関連ですが、御存じのように憲法の十七条には、明らかに国民の何人も公務員の犯した不法行為に対しては、国または地方公共団体に損害を要求することができるということが書いてあります。また四十条には抑留あるいは拘禁をされる場合については、裁判で無罪になつた場合には損害を請求することができる、この四十条を受けたのが一応国家賠償法だと思う、ところが前の十七条を受けた法律はないのであります。法律の定あるところにより損害を希求することができるというのが十七条にはつきり書いてある。憲法の四十条の規定を受けた法律はあるが、十七条の規定を受けた法律はないのであります。従つて今のような問題が起つて来ると私は思う。だから、これは法務大臣ではございません小坂さんに聞くのに少し、どうかと思いますけれども、せつかく今そういう意見が出ましたので、関連して一応お開きしておきたいと思いますが、警察行政の上でそういうことが一体必要だとお考えになるかどうかということを、ちよつと御答弁つておきたいと思います。
  171. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 法律的に申しますと、憲法十七条に基いたものが国家賠償法でございます。憲法四十条に基いたものが刑事補償法、こういうことになつております。ただいまのような場合、これはまことに弱い者いじめと申しますか、職務の濫用によりましてはそういうことになると思うのでありますが、そういうことのないようにするということが非常に必要であろう、かように考えております。
  172. 門司亮

    ○門司委員 ないようにすることはもとより必要なのであります。必要なことはわかり切つておりますが、あるので困るからお尋ねしておるわけです。憲法の十七条にはつきり「法律の定めるところにより、」こう書いてありますから、やはり憲法の条章に基いて法律をきめることが、国の行政責任を持つておる者の一つの仕事だ、そうして国民の権利を守るべきだ。だから大臣にお聞きしておりますのは、そういう意味警察を担当されておる大臣が、特に警察の問題で問題になつておりますので、そういう法律を制定することがいいというお考えがあるかどうかということを聞いておるので、これから、先は法務大臣にお聞きすることが必要だと思いますが、今警察立場から問題になりましたので、念のためお聞きしておるのです。
  173. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 法律的な立場は法務大臣にひとつお答え願うことにいたしたいと思いますが、今述べましたように、憲法の条章を受けての単独の補償関係法律が一応あるわけであります。問題は執行面において、私の警察担当という立場からいたしますれば、執行上誤りなきを期する、こういうことを考えております。
  174. 門司亮

    ○門司委員 どうもそういう答弁では困る。執行上の誤りなきを期すると言われますけれども、誤りがあるから心配している。執行上の誤りがあればあなたは責任を負いますか。誤りなきを期するというが、誤りがあるようにと書く人は一人もない、みなないことを念願しておる。
  175. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私はそういう個々の問題についての責任は――これは責任のがれをするわけではございませんが、官制上はないのであります。ただ私も国会議員といたしまして、国民のものができておる。他に加えるということがいいか悪いかということは、これは行き過ぎになりますと、盾の両面が私はあるだろうと思うのであります。ぜひ保護しなければならぬというものもありますし、またそういうものが非常にルーズになるということは考えものでございますから、そういう点はよく研究してみないと、何とも申し上げられません。
  176. 門司亮

    ○門司委員 法律じやない、憲法にそう書いてある。そういう法律をこしらえるかどうかということです。
  177. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 憲法に書いてある法律の建前からいたしますと、国家賠償法なり刑事補償法なり、こういうものがあるわけであります。
  178. 門司亮

    ○門司委員 その範囲でいいというお考えですか。
  179. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 実態を調べてみないと何とも申し上げられませんと申しているのですが、法律関係はこういうものがあるから、職務権限を逸脱することのないように十分注意いたす、これが国警担当大臣として国会で申し上げる範囲だろうと考えます。
  180. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 私の質問からいろいろ花が咲いたわけですが、この問題は、小坂大臣が新しいからあるいは御存じないと思いますが、今の法案組織法である、それに対して職権を行使する法案が整備されておらぬじやないかということがずいぶん問題になつたわけです。どちらを先にすべきか。ぼくたちといたしましては、職権行使の方を先にすべきであると思うが、どうかというようなことが問題になりました。ところが今国警長官の説明によりますと、今は出す意思はないということでもりますが、しかしこれは今会期では出す意思はないというようなことだろうと私は思うのでありまして、今警察組織法改正の場合にも一番疑義をもたれているのは、また昔の警察になるかというような心配である。それは八十五百万国民全部の心配です。あなた方はそうは絶対にならぬと言うが、そういう心配をしている。それをコントロールするためには、私は今の質問大臣にいたしました結論として、こういうものはあつさり、悪うござんしたといつてすぐに賠償する。外に行けば、交通違反なんかその場で罰金をとつています。そういうような形で、大体警察署でもつて一定の予算を組んで、いや済まなかつた、さあ日当五百円というふうな形が警察全体としてぜひ必要だと私は思うのでちよつとお尋ねしたわけです。そういう面については私はもつと率直に皆さんのお気持を伺つておきたいと思うのです。
  181. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 ただいま大臣からお答えになりましたように、憲法の十七条に即応して国家賠償法が制定せられ、四十条に即応して刑事補償法が制定せられ、これもまだ数年前に制定せられたのでありまして、その際にも、一体起訴された後のものだけでいいか、それから国家賠償法において故意または過失という場合に限るべきかどうかか、いろいろの点で御研究になつて国会で御制定になつたのでございまして、当時いろいろと御研究を願つておつくりをいただきました賠償法なり補償法でありますから、現在はこの程度で適当ではなかろうかと政府といたしても考えているのでございます。また今後いろいろな御意見も伺い、研究もしてみたいとは存じます。なお中井委員から、警察行為法というようなものを早く整備するようにというお話で、先般もございましたが、これは何かお考え違いをしていらつしやるんじやなかろうかという感じが私はいたすのであります。と申しますのは、今の警察法警察組織法でございます。警察職権行使をいたしますには、何らかの法令に従わなければ職権行使ができません。職権によつて人の身体の自由を拘束し、権利を制限するというのは、これは刑事訴訟法、それから今の警察官等職務執行法、大体これで足りるだろうと考えているのであります。以前の警察におきましては、治安維持法でなしに、治安警察法、あるいは行政執行法というものがございまして、心の警察官等職務執行法よりももつと広い職務行使の権限を認めておりましたが、これは適当でないというので、今の新しい刑事訴訟法あるいは警察官等職務執行法にしぼつてしまつたのであります。これ以上警察が職務を執行するための権限をふやすために法律を設けよう、かような考えは持つていないのでございます。
  182. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 その点少し誤解があるようですが、私が申し上げたのは、警察官の職務に対する何もありますが、原則的に警察というものをひとつ国民の側から考えてもらいたいということなんであります。これは元の原則にかえりますが、従つて職権行使のそういう法案ということにつきましても、警察官はこれ以上のことをしてはいかぬとか、これをやつてはいかぬという意味法案ということなんであります。そういう国民立場を守るというようなことで、その意味においても現在においてすでにそれがあるということになれば、それはそうかということになるわけでありますが、一般国民はそういうことはあまり詳しくは知りません。そういう意味で現在日本がいまだに警察国家になるとか、ならぬとか、非常に心配します根本には、やはりそういうものがあるのじやないかというふうな考え方があるのであります。警察から国民を守るというか、そういう形は逆なのでありますが、職権のやり過ぎを制限するというような意味における何らかの法案が必要ではなかろうか、こういう意味なのであります。それが現在の法案の中に全部あるということならけつこうでありますが、その辺のところを承りたい。
  183. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 お考えのほどは大体ぼんやりわかつたような気がいたします。なお十分お考えのほどをひとつ個人的に伺わせていただきまして、そうしてこの公の記録に残す必要があれば、また御質問を受けることにいたします。一応よく個人的に十分御趣旨のあるところを承らせていただきたいと思います。
  184. 大石ヨシエ

    ○大石委員 そうしたら、私は警察官から被害をこうむつたでしよう。すぐ何とかいうと警察官吏は、公務執行妨害というが、この公務執行妨害の範囲というものはいかなるものであるか、これを私は聞きましよう。
  185. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 公務執行妨害は、公務員がその公務を執行しようというのを、第三者が暴行または脅迫によつてそれをさせない、公務の執行をさせないという場合に公務執行妨害が起るわけであります。ある仕事を公務員がしようとするのを暴行あるいは無理に手足を拘束をしてさせないとか、あるいは脅迫をしてさせないというふうにした場合に、公務執行妨害罪が成立するのであります。
  186. 大石ヨシエ

    ○大石委員 東京都の自治体警察が私のしりをなぐつた。そのとき私が怒つた。彼らいわく、公務執行妨害、自分たちが私のしりをなぐつてつて、そうして公務執行妨害であるという。これは自治体警察なるがゆえにそういうことを言つておるか、国警なるがゆえにそういうことを言つておるか、公務執行妨害の範囲というものはどんなものであるかということを私は、再確認したい。
  187. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 たとい公務執行妨害であろうとなかろうと、人のおしりをひつぱたくということはこれはいけません。これは警察官職権の濫用でありまして、これは国家地方警察であろうと、自治体警察であるとを問わず、いけないことであります。
  188. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 この質問を終りますが、一番最初にお尋ねいたしました服務宣誓の内容、これはひとつこの法案審議中に出していただきたい。かように思います。
  189. 灘尾弘吉

    灘尾委員長代理 本日はこれにて散会いたします。     午後四時五十五分散会