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1954-03-09 第19回国会 衆議院 地方行政委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月九日(火曜日)     午前十一時二十八分開議  出席委員    委員長 中井 一夫君    理事 加藤 精三君 理事 佐藤 親弘君    理事 灘尾 弘吉君 理事 吉田 重延君    理事 藤田 義光君 理事 西村 力弥君    理事 門司  亮君       生田 宏一君    尾関 義一君       濱地 文平君    前尾繁三郎君       鈴木 幹雄君    床次 徳二君       橋本 清宵君    阿部 五郎君       石村 英雄君    北山 愛郎君       大石ヨシエ君    大矢 省三君       中井徳次郎君    松永  東君  出席国務大臣         国 務 大 臣 塚田十一郎君  出席政府委員         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         旧家地方警察本         部次長     谷口  寛君         国家地方警察本部         警視長         (総務部長)  柴田 達夫君         国家地方警察本部         警視長         (警備部長)  山口 喜雄君         自治庁次長   鈴木 俊一君         総理府事務官         (自治庁税務部         長)      奧野 誠亮君  委員外出席者         参  考  人         (名古屋市警察         長)      宮崎 門郎君         専  門  員 石松  昇君         専  門  員 長橋 茂男君     ――――――――――――― 三月八日  国会議員選挙等執行経費の基準に関する法  律の一部を改正する法律案内閣提出第八七  号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  小委員長及び小委員選任に関する件  公聴会開会に関する件  警察法案内閣提出第三一号)  警察法の施行に伴う関係法令の整理に関する法  律案内閣提出第三二号)  地方税法の一部を改正する法律案内閣提出第  五六号)     ―――――――――――――
  2. 中井一夫

    中井委員長 これより会議を開きます。  地方税法の一部を改正する法律案を議題として、質疑に入ります。通告順によつて質疑を許可いたします。北山愛郎君。
  3. 北山愛郎

    北山委員 地方税法改正質疑なんでありますが、改正要綱によつてやれというわくをはめられておりますが、その前に、これは大臣おいでになつてから質問するのが当然かと思いますが、便宜上鈴木次長おいでになつておりますので、次長にお伺いいたします。  まず今度の地方税法改正案趣旨とするところが、大臣説明要旨の中にいろいろ書いてあるわけであります。まず第一点として私ちよつと変に思いますのは、「第一は、地方団体自立態勢強化に資するため、独立財源の充実をはかることであります。」そう書いてあるわけであります。そこで塚田大臣は先ごろ来府県地位につきまして、将来は府県知事公選官選にするとか、あるいは将来地方団体というものを、いわゆる一段階制にして府県というものを国の出先機関にしたいというような意向を機会あるごとに申し述べておられるようでありますが、そういたしますと今回の地方税法改正におきまして、府県に対して独立財源を与える。自治体としての、たとえば道府県民税あるいは不動産取得税というように独立財源を与える趣旨と、ちよつと矛盾するのではないかというようなふうに考えられるわけですが、その点についてはいかがお考えになつておりますか。この点をまずお伺いしたいと思います。
  4. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 現在の地方自治制度建前から申しますと、府県市町村という二つ自治団体を同じような建前において、憲法なり地方自治法において認めておるわけであります。この関係において御承知のごとく地方制度調査会答申がございまして、その答申によりますれば、府県自治体としての性格はかえないけれども、それが広域的な自治団体である。あるいは国と市町村との間の中間的な性格を持つた中間単位における自治団体というようなことで、もつと現在の地方自治制度の規定を実際の実情に即するように改革すべきであるというような答申が出ているわけであります。自治庁といたしましては、そういうような答申の線に沿つて地方自治法改正案を目下立案中でございますが、しかし府県というものをまつたく自治団体であることをやめてしまいまして、府県を一つの行政官庁にしてしまう。純然たる政府機関にしてしまうというような考え方は、少くとも自治庁におきましてはただいまのところ全然持つておりません。やはり市町村府県というものは、おのずからその位する地位が違いまするので、ひとしく一団体ではありますが、働きまする機能におきましておのずから異なるものがあると思うのでございますけれども、しかし府県はやはり自治団体としての性格を失うべきものではないというように考えるのであります。ただ府県地位が、たとえば町村の合併等相当に将来進捗いたした場合におきましては、現在の規模のままでいいかどうかというところに根本の問題があり、あるいはこの規模をさらに拡大をして適正なものにするというふうな問題が出て来るかと思いますけれども、しかしさような中間単位のものにつきましては、やはり自治制を存置するということはあくまでも必要なことではないかと思うのであります。そういう点から申しまして、今回の地方税法改正案におきまして、府県税源として配分せられておりまするものが非常に都市的なものに偏しておりますので、これを普遍化いたしまするために道府県民税創設いたし、あるいは不動産取得税タバコ消費税というような新税をさらに増すことによりまして、府県自治体としての性格にもマツチいたしまするような改正案を用意いたしたわけでございます。
  5. 北山愛郎

    北山委員 私どもは今後出て参ります地方自治法改正内容というものが出て参らないとよくわからないのでございますが、そういたしますと知事官選という問題は別といたしましても、現在の府県というものを中央出先機関の方へ近づけるというような改正内容は、今度の地方治法改正には含まれておらない、こう了解してよろしゆうございますか。
  6. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 私どもただいま考えておりまするところでは、先般の地方制度調査会答申の線に沿つたものを立案しようということでございます。従いまして自治体としての根本性格には何ら変更はない。ただ現在府県市町村が一律に地方公共団体という名前で呼ばれて、同じような機能を持つような建前になつておりますけれども、先ほども申し上げましたようにやはり府県市町村よりも区域の広い、いわゆる広域的な自治団体でございますから、現在の働きから申しましても、そういうような性格機能をより多く持つておるわけであります。そういつたような府県の実際の実情に即応いたしますように今回は改正をするようにいたしたいということで案を用意いたしておるのであります。
  7. 北山愛郎

    北山委員 私は非常にそういう点疑問を持つのでありますが、現在でも府県性格というものは、御承知通りにその大部分、七、八割の事務というものは国の委任事務である。要するに国の仕事を命ぜられ、あるいは請負をやつておるというのが今の府県性格である。さらに加えて今度の警察法改正におきましても、府県単位警察ということをいつておりますけれども、結局府県警察というものは、府県という団体の中に寄生しておるという形にとどまるのであつて、その負担の方は府県という自治体負担させる。要するに台所の方は府県という自治体にまかなわせるが、仕事の方は国の方の命令系統でやらせるという傾向を強くしておる。それを上手に表現すれば、先ほどの鈴木次長のようなお話になると思うのですが、今までもそうでありますが、将来とも国でもつて府県というものを国の事務のために都合よく使い、そして財源の方は地方住民負担をかけるというようなかつこうが、ますます強化されて行くのではないかと思うのです。今度の地方税法改正等もその傾向が非常に濃厚に現われておる。表向きは独立財源を与えるといつておりますけれども、実際は国の事務をやる。国の事務経費負担するために府県税なら府県税財源としての不動産取得税なり、あるいは都道府県民税創設をするというかつこうになつておるのではないかと思うのであります。警察費につきましても、今度の警察法改正によつて、国費の方では八十三億円の軽減になる。それだけの分あるいは百五億円というものが地方費において負担がそれだけ増すわけであります。従つて地方団体府県の方は税金をよけいとらなければならない。その分として市町村から市町村民税の一部を巻き上げて、それを道府県民税として創設する。あるいは不動産取得税創設するというようにしなければならない。これをうまい言葉で言えば、独立財源を与えるということでありますが、結局は国の仕事を間接にさせるための財源地方税の中でまかなわせるというのが、今度の地方税法改正のほんとうの姿ではないかと私は思つておるのですが、この点はいかがでしようか、お伺いいたします。
  8. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 今回の改正によりまして、大臣が先般提案理由で申し上げましたごとく、地方独立財源と申しますか、税源が六百二十四億総体においてふえるということを申したわけでございますが、このことはやはり警察制度改革関連をして、ただいま北山委員が仰せになりましたが、なるほど御指摘のごとく府県におきましては新しく百五億の財政需要警察制度改革関連をして生ずるわけでございますけれども、しかしそれを償いまして余りあるような税源を与えることになるわけであります。市町村から二百十億、国から約百億余り財政需要がふえまして、結局府県総体としては三百十六億の財政需要が新しくふえるわけでございますが、御指摘のような道府県民税タバコ消費税あるいは不動産取得税増収新設等によりまして三百八十八億でしたか約四百億余り税収府県にはふえるわけであります、反面、市町村におきましては市町村民税等が減つて参りまするけれども、これを補填するためにタバコ消費税が新しく参りますから、これはたしか二百億余りのものが市町村では新しく税としてふえるわけでありますが、ほかに警察制度改革によつて今まで警察に投入せられておりましたものが約二百億余り減るわけでございますから、これを合せますと、市町村では約四百億余り財源の上で従来に比して余裕が出て来るということでございまして、これはやはり府県市町村両方団体を通じて見ましても、地方独立財源をそれだけ強化したということが言い得ると思うのであります。
  9. 北山愛郎

    北山委員 私はだいまの次長さんのお話ではどうも納得が行かないのであります。私ども地方財政を考える場合には府県市町村並びに地方住民を全部ひつくるめてこれを考えるわけです。地方団体財源を与えたといいましても、新税創設をいたしますというと、それだけ地方住民は新しい税の増徴のために苦しまなければならぬということもあわせ考えて、私どもはものを処理して行かなければならぬと思うのです。そういたしますと、これは地方財政計画の場合にもお伺いしたわけでありますが、御承知通りに二十九年度におきましては、この地方財政計画、これを自治庁のおつくりになつ計画によつて見ましても相当額節約、約三百六十五億というような地方財政節約見込みましても、さらに二十八年度に比べて四百八十億だけよけい金がかかるのだということになつておりますが、今の節約というものをしなければ七百億あるいは八百億というような地方財政には新しい需要額がふえて来るわけであります。これはだれが考えましても当然であるわけであります。ところが、それに対して国の方では二十八年度と二十九年度を比較してみますと、ほとんど何ら財政的な援助をやつておらないのじやないか。ただいま警察法についてだけ取上げて鈴木次長から十分な財源措置を講じておるのだというお話がございましたが、私どもは大ざつぱな計算をいたしますと、そうじやなくて、私ちよつと計算してみましたことを読み上げますが国の方の地方財政に対する負担の増減を申し上げますと、ふえる方、地方財政に対して国でめんどうを見る方を昨年に比較いたしますと、タバコ消費税、これが府県に対しては九十七億、市町村に対しては百九十四億、合せて二百九十一億というものを地方に移譲するわけであります。それからガソリン譲与税が七十九億、合せて三百七十億であります。それから補助金のふえる分を合せますと、約四百十六億ぐらいになるのじやないかと思うのであります。ところが減る方を見ますと、先ほど申し上げましたような警察費が六十三億、それから平衡交付金が百六十億減ることになつております。それから起債の方は、政府資金起債が百八億減る、それから公共事業費等補助金が百三十四億減りますから、合せて四百六十五億減るという計算になる、これは非常に大ざつぱな計算でございますが、こういう点を見ますると、国の地方財政に対する補助金なり、あるいは平衡交付金なり、あるいは起債なり、そういうものを見ますと昨年に比べまして今年はほとんど援助の手がふえておらない、地方財政は何百億も財政需要がふえておる、それを国の方ではめんどうを見ておらないわけです、その足らない分を何でやらなければならぬかというと、御承知のように今まである税金自然増収、これが四百十一億その他、今ここにありますような不動産取得税であるとか、そういうふうな新税を設けまして、要するに地方団体増税をさせて、増税節約によつてこの地方財政需要増加というものをまかなわせようというのが今度の地方財政計画じやないか、これが国の政策じやないか、こう思うわけです。ですから、ここに書いてあります今度の地方税法改正提案理由はなかなかりつぱなことを書いてございますが、根本趣旨は、地方団体財政いか財政需要がふえようとも、それは地方税増税によつてまかなわせよう、国は昨年に比較して一文もふやしてやらないのだ、こういう趣旨だと私どもは考えざるを得ない、これについてもう一ぺん鈴木さんの御意見を承りたいと思うのです。十分な財源を与えておるのだというようなお話でございましたが、どうも総体的に見ますと、そうじやないように思う、その点をもう一ぺん承りたい。
  10. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 本年度の地方財政計画関連をせられましてのお尋ねでございますが、申すまでもなく地方財源としましては、本年あるべきものは、地方自治建前から申しますれば、地方税でございますから、地方税を増強いたし、地方税をもつて地方負担に属しますものをまかなつて行くというのが、大原則でなければならぬと思うのであります。     〔委員長退席加藤(精)委員長代   理着席〕 そういう点から申しますと、地方税源を増強することが、やはり地方財政政策の問題といたしましては一番基本の問題であろうと思うのであります。ただそういうふうにいたしますと、経済構造が違います関係から、どうしても富裕団体はいよいよ富むが、貧弱なる団体は一向調整財源が得られないというところから、交付税制度あるいは今回の譲与税制度が、ややそういうふうな性格を一部持ちまして生れたわけでございまして、そういうようなとにかく税の財源ということを第一義的に地方財源基礎として考えることが、やはり地方財政政策としては根本ではないかと思うのであります。今回の地方税法改正は、そういうような趣旨沿つて立案をせられておるわけでございます。半面指摘のような節約を行つておる、あるいは国の補助金支出金等がそれほどふえていないではないか、あるいは起債わくが減つておるのではないかというような点を指摘せられましてのお話でございますが、まずこの節約につきましては、政府といたしましては、国、地方を通じての緊縮予算を組む、こういう建前でございまするから、国が公共事業費について一割程度節減をする、こういうことになつて参ります以上は、やはり地方につきましても、臨時事業費あるいは単独事業費について、さような程度節減を考える、あるいは国が人件費物件費等につきまして一割の節減をする、こういうことになりますれば、地方もそれに応じて、ただ小規模団体でございますから、団体としての弾力性が少いわけでございますから、若干低率の節約をする、こういうことは、やはり中央地方全体を通じて、国全体の財政の問題として考えまするならば、地方財政としてもこれに即応せざるを得ないのではないかと思うのであります。  そういう意味で、今回は百二十億の節約があるわけでございますが、臨時事業費の二百四億余り節約は、昨年の異常な災害があつた関係で、昨年はことにふえたわけでございますけれども、来年度は、本年の現年災害いかようになるかわかりませんが、今日の状態におきましては、その関係は非常に激減をするわけであります。そういう意味臨時事業費の額において非常に減つておる、またそういう災害地方負担基礎にいたしてはじき出しますところの起債の上におきましても、当然にこれが減つて参る、こういうことでございます。  そういうような関係から、要するに、国、地方を通じての節約という緊縮財政基本方針と、災害というような異常の事態が今年収縮して参るような関係二つの点から、御指摘せられましたような節約という問題が、国庫補助金の面におきましても、起債の面におきましてもあるいは地方それ自体の計画の上におきましても現われておるのであります。従つて今回の地方財政計画といたしましては、警察制度改革関連します限りは、先ほど申し上げましたように、必要な措置はいたしておるつもりでございますし、その他はさような事情に基いて編成をせられたものでございまして、その限りにおきましては、十分な案とは申し得ないかと存じますけれども、とにかく今年の状況において可能な限りの措置をいたしたつもりであります。ことに既定財政規模の是正ということは、さような状況のもとにおいては非常に困難であつたことでございますが、とにかくある程度これもやつておるわけでございまして、来年度の地方財政計画といたしましては、この程度で御了承を願いたいと思うのであります。
  11. 北山愛郎

    北山委員 国の方でも昨年に比較して節約をして、例の一兆円予算を組んでいるから、地方でも節約をしてくれというようなお話でございます。しかしこの点についても私は納得ができない。国の一般会計一兆円予算というのは、実はこれはごまかし予算であるということは明らかなんです。たとえば例の財政投融資を二百二十八億円減じております。なるほど一般会計においては減じておる。しかしそれは資金運用部資金にみんなかぶせておる。それをプラスすると、国の予算とそれからたとえば例の租税の還付金歳入の方から引いておるというようなことを入れただけで、それだけでもう国の予算は昨年の一兆二百七十億という規模に達してしまう。そういうことを見ただけでも、国の方がほんよう節約をやつていると言うことはできない。しかも国の方ではそういう特別会計なりあるいは資金運用部資金なり、いろいろの操作ができる。地方財政においてはできない。それと同時に、これもこの前の委員会でもお尋ねしましたけれども国税歳入見積りにおきましては、国民所得見積りというものは三%幾らくらいしか見ておらぬ。そして比較的低目に税の増収を見て、減税をやつている。ところが地方税におきましては既定税目におきまして四百十一億の税の伸びを見ている。これはおそらく一五%くらいになるのではないかと思う。地方税が一五%伸びるというのは、一体どこからそういう数字が出て来るのであるか。国税で三%幾らならば、地方税においても同じに見なければならぬではないかということです。そういうふうな見積りをされますと、地方団体としてはその財政計画に合うような税をしやにむにとらなければならぬということになるわけです。それが勢い地方税の徴税の強化となつて現われる。またその上に新しい税目がふえて来るということになる。要するに、国の方は所得税減税であるとか何とかいつて、いい子になつて地方団体増税をしなければならぬ。その怨嗟の声、国民の恨みというものは地方団体で引受ける。そういう憎まれ役は市町村府県の方で引受けさせよう。これが国の魂胆である。これは邪推かもしれぬが、どうもシヤウプ税制以来のやり方を見ておりますと、そうしか見えない。  しかも昨年来この委員会でも再々問題になりましたように、地方財政には相当赤字がある。最近の見積りによりますと、二十八年度のおしまいにおいて三百六十億の赤字があるというふうな見積りであります。それに対する措置は何もしておらない。それはどうなるのであるか。塚田大臣は、昨年の委員会では、よく調査をして、二十九年度においてはしかるべく処置したい、こう言われた。ところが二十九年度の予算を組むときに、地方財政計画をつくるときに、その三百億以上の地方財政赤字には何ら触れておられない。この点はどうなんでありますか。そうして独立財源を与えるとか何とかと、いろいろ体裁のいい基本方針などを並べて、地方税法をつくつておる。どうも私ども納得できないのでありますが、この地方財政とあわせて今の地方財政赤字問題、それから地方税法、こういう関連についてもう一ぺん聞かしていただきたい。また地方税自然増伸びが二五%もあるというのは、どういう基礎からそれが出るのか、はつきりとお答えが願いたい。
  12. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 地方財政においては赤字が累積いたしているにもかかわらず、地方税伸び見方等が、国税に比して非常に多いではないかというような点の御指摘でございますが、この地方税税収見込みにつきましては、お手元に配付いたしております資料にございますごとく、地方税の中で当該年の収益といいますか、利益を基礎にしておりますものと、前年の所得基礎にしておりますものと、両方あるわけでありますが、市町村民税所得割でございますとか、個人の事業税でございますとか、こういうものが前年の所得でございますから、基礎数字国税所得税をつかまえれば、おのずからこれは明らかになるわけでございまして、この辺の数字につきましては、事が明確になつておるわけであります。それから法人税割あるいは法人事業税といつたようなことしの所得の分につきましては、これは国税収入見込みというものと十分突き合せをいたしまして、算定をいたしておるわけでございます。この点も国税との間に格別の齟齬はないはずであります。地方税について特に国税と別個の基礎に立つて算定せられますものの一番重要なものは、固定資産税でございます。固定資産税につきましては、御承知のごとく一番端的な例をあげましても、宅地の値上りというようなものが顕著でございますし、そのほかに新しく建築せられます家屋あるいは新しく取得せられます償却資産といつたようなものが、年々固定資産税増加基礎になつているわけであります。そういうようなものは、それぞれ関係主管省方面あるいは勧銀その他の方面と、十分主張を聴取すべきものは聴取いたしました上で、根本算定をしておるのであります。従つて個々税目につきましての御説明は、後刻税務部長から申し上げますが、そういうような基礎に立つて増収見込みを立てまするとともに、半面事業税であるとか、あるいは固定資産税につきましては、御承知のごとく税率の引下げをいたしておるのでございまして、地方というものが常に増税負担をこうむつて、そのために不評判を招く、こういうような形では少くとも今回の地方税法改正案はないのであります。シヤウプ改革直後におきましては、地方税が新しく増徴せられ、地方税といえばもう一概に増収をするのだということで、一番身近な団体でありながら、地方民からは地方税は非常に苛酷な税をとる、税率も高い、負担も過重であるというような批判があつたことは確かでございますけれども、今回の地方税法改正案におきましては、むしろさような点も十分考えて個人事業税負担の軽減、公平を期するようにいたしておりますし、固定資産税についても従来とかくの批判がありました点にかんがみて、税率を引下げておるわけでありまして、さような点から申しますならば、今回の改正案はそう無理な税の見込みを立てておるものとは考えないのでございます。しかしなお地方団体がとるべき税の税源がふえて来るということは、これはむしろ地方自治の立場から申しますならば望ましいことであつて、国の補助金がふえるということに相なりますと、これはかりに物価の値上りがございましても、なかなかそういうもののカバーができない。補助金でありますれば、まつたく弾力性のないものでございますが、税でございますならば、その点の弾力性も、税の種類によつて若干の違いがありましても、伸びがあるわけでございますから、従つて税収がふえる、税源がふえるということは、これは地方自治の立場から申しましてもいいことではないか、ことに徴収の努力によつて増すこともできるわけでございますから、そういう点から申しましても、今回の改正案地方自治強化に役立つものである、私はこういうふうに考えておる次第であります。  赤字の問題につきましては、御指摘のごとく、私どもも非常に遺憾な点があると考えております。しかしこれはやはり財政の再建整備法案の御審議中でございます当委員会の結論を私どもも十分拝聴いたしまして、今後の問題として十分努力するようにいたしたいというふうに考えております。
  13. 加藤精三

    加藤(精)委員長代理 北山さんに御相談申し上げますが、大体地方税法改正要綱(税目別)という要綱の目次に従つて税目別に質疑をやりたいという御意見の方が非常に多いようでございますので、なるべく簡単にお願いいたします。
  14. 北山愛郎

    北山委員 ただいまのお答えなのですが、地方税がなるべくふえる方がよろしいというような御意見、地方団体としては独立財源が出ることは好ましい、私も同感であります。しかし現在における税の体系から見ますと、必ずしもそのようには言えないのではないか。と申しますのは、地方税がふえるということは、力のない者に重い税がかかるという結果になる。御承知通り事業税にしましても、結局上から下まで同じ率である。課税標準の金額の大きさに従つて税率が累進するというのじやなしに、一二%なら一二%、八%なら八%、上も下も同じ率であるというようなことは、国税所得税等と違う点であります。どうも地方税についてはいわゆる物税があつて、自転車あるいは自動車等に関する税金でも、金持の持つておる自転車であろうが、貧乏人の持つておる自転車であろうが、税率はかわらないというようなことでありますから、どうしても地方税がふえるということは、税金が下の方に重くなるということになるのではないか、そういう点も私どもは憂えるわけであります。しかしこの点につきまして、あるいはまたただいまの地方税自然増の問題、その内合は個々についてただいまお話のような計算基礎が資料として渡されておるということでございますから、さらに資料を拝見した上で別にお伺いすべき点は御質問をいたしたいと思うのであります。また地方赤字の問題にしましても、実はそのお答えでは納得ができません。大臣が今お見えになつたので、非常にいい機会であると思つておりましたが、すぐお帰りになられましてまことに残念でありますが、委員長お話もございますから、私の質問は一応これで打切ることにいたします。
  15. 加藤精三

    加藤(精)委員長代理 ありがとうございました。  この地方税法改正要綱(税目別)の目次に従いまして、第二の道府県民税から質問を開始することにいたしたいと思いますが、よろしゆうございますか。――御異議がないようでございますから、さように決定いたします。
  16. 西村力弥

    ○西村(力)委員 議事進行について。総括質問も今後あり得るということを前提として入るのでしよう。
  17. 加藤精三

    加藤(精)委員長代理 そうです。  それでは道府県民税から始めます。
  18. 門司亮

    ○門司委員 大臣おいでになつてから、総括的の大臣説明に対する質問はいたしたいと思います。大臣に対する質問、いわゆる提案理由説明に対する質問を行つておりませんので、要綱に基く説明とは、あるいは多少食い違いができるかと思いますのと、もう一つは提案理由説明がわからなければ、具体的に入つて参りましても、それを納得しがたいものが私はかなり出て来ると思う。それはあとから答弁を聞いたのと、今の答弁とは考え分の上において食い違いがあるということがあつてはならぬと思う。その点はあらかじめ委員長の方で了承しておいていただいて、大臣が出て参りましたら、提案理由説明についての質問を、これは私だけでありませんで、全体に許していただきたいと思います。
  19. 加藤精三

    加藤(精)委員長代理 了承いたします。
  20. 門司亮

    ○門司委員 まず道府県民税についての質問をいたしたいと思います。道府県民税創設された趣旨を、この前条文の内容については、一応お伺いいたしましたが、この機会にもう少しはつきしりお聞かせ願つておきたいと思います。
  21. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 現在道府県で道府県税負担しておりますのは、道府県住民の三ないし四%でございます。その結果ごく一部のものだけしか道府県税を、道府県住民でありながら負担していない。しかもそれらの税の大部分が都市の区域において徴収せられる税金でございます。このような関係から、道府県の議会におきまして農村関係者からいろいろな施設を要求いたしますと、府県経費を分担しないで、そういう要求をする資格がないじやないかというふうなやじが、都市の区域から選出されている議員から飛ばされるという話までも聞くのであります。こういうことでは道府県が一体として運営されて行かなければならないのに、税制の上でこれを阻害しているというふうに言えると思うのであります。そういうような関係から道府県住民が広く道府県に要する経費の一部を分担し合いながら、同時に道府県の行政運営に対しまして積極的に関心を持ち、またこれに力を合せて行くというふうな態勢を税制の上で築き上げて行きたい、かような考え方で臨んでいるのであります。
  22. 門司亮

    ○門司委員 一応非常にもつとものように聞えるのでありますが、今日の府県地方市町村との自治体のあり方であります。自治体のあり方については、御承知のようにいわゆる憲法に言う地方自治の本旨というものから来る自治体というものは、市町村であるということは、大体学者の間では定説だと思う。また私もそうだと思う。従つて補完行政あるいは広域行政を行うものが府県の行政であるとするならば、私は府県税が多少片寄つておりましても補完行政であります以上は、それでいいのじやないかというふうな考え方が出て来る。府県が完全なる自治体であるという考え方からするならば、これはそういう今のようなお説が私は生れて来ると思う。しかし概念論としてはどこまでも地方府県が補完行政であるという建前の上から立てば、何も税の多少の不均衡があつたところで、それを補うこと自身が府県の使命である。私はこの点の解釈は、今の奥野君の言うような考え方で割り切る筋合いのものじやないと思う。なぜ私はそういうことを言うかと言いますと、今日の資本主義の社会においては、勢い都市にすべての富が集中されるということはわかり切つたことである。これは一つの社会の現象であります。従つて都市から納めまする税金がどうしても多くなる。それが担税力を持たない農村に対して、補完行政の建前の上から配分されるということは、私は少しも不都合じやないと思う。だから今日のこの税の創設にあたつて、ただ単に自治庁がそういうお考えのもとでやられておるとするならば、私は非常に大きな誤りだと思う。その誤りでありまする一つの大きな証拠としてここに出て来ておるものは、何が出て来ておるかと言えば、御承知のように均等割にしても全部百日ずつ引くことになつておる。そうすると、大都市は現行七百円のものが六百円になり、中小都市は現行五百円のものが四百円になり、町村は現行三百円のものが二百円に下げられるということである。これは町村財政の上から行きますと、非常に大きな打撃だと私は思う。市町村民税創設したときに、七百円、五百円、三百円という数字を出しました根拠は、おのおのの自治体の持つておりまする仕事内容、あるいは住民の担税力というようなものが考えられて、この市町村民税にはちやんと段階がつけられている。これが府県税の場合には、一応奥野君の考えのようならば同じでいいと思うが、そうすると、これが市町村財政に及ぼす影響は非常に大きなものである。大都市がかりに七百円の中で百円をとられる痛手と、町村の三百円の中から百円をとられる痛手というものとでは、大都市の三倍くらいの財政的に大きな痛手を町村は負わなければならない。だからこの税金の取り方というものは、先ほどの私の理論は別にいたしまして一応奥野君の理論を取り入れるといたしましても、地方財政というものの現実に沿わない画一的な物の考え方であるとしか考えられないが、それについて自治庁はこれだけ町村に大きな打撃を与えてもさしつかえないとお考えになつているのかどうかお伺いしたい。
  23. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 道府県民税創設いたしました趣旨は、ただいま税務部長から申し上げた通りでございますが、その結果たとえば均等割がそれぞれの段階において百円ずつ減らされて道府県に参ります。それが小さな団体において、三百円のところが二百円になるということは、非常に打撃ではないかというような点についての御指摘でございますが、確かにその点だけの御指摘であれば、まさしくその通りでございますけれども、しかし今回は市町村民税のうちの約三割程度のものを府県に持つて参る。その結果百七十三億余りのものが市町村では減りまして、府県で約百七十億余りのものがふえることになるわけでありまして、この点から申しますと、住民負担においてはかわりはないわけでありますが、市町村財政面はそれだけ減るわけであります。そこでそれを補填いたしますために百十五分の十というタバコ消費税市町村に与え、その結果市町村としましては百九十億余り財源を得るわけであります。この関係では市町村の方はプラスになるわけであります。のみならず警察制度改正によつて、ことに自治体警察を維持しておりました市町村におきましては、二百億余り財政需要が基準財政需要算定基礎からいいましても減つて来るわけであります。そういうことでありますので、市町村財政総体として勘案をいたしますならば、これは今回の税制改革によつて財源相当に補強されたというように考えるのであります。  なお道府県性格が補完的なものであるからというような点についての御議論もございましたが、現実の道府県の姿はさような補完的な面、あるいは広域自治体としての面が事実あるわけでありまして、そういう点はまさにその通りでございますけれども、しかし依然として府県自治体としての本質を失わないものであり、今回われわれの考えておりまする案も、さような考え方のものでございまして、道府県自治体としての根本から申しましても、そうような税を創設いたしてもさしつかえないのではないかというふうに考えるのであります。また現実の問題といたしまして、道府県予算を編成するという場合におきましても、わずか三%ないし四%の主として都市に居住いたしまするような者のみが負担をする税の配分ということになりまして、予算上農村方面相当流れて行く経費府県としては相当あるわけでございますから、そういう点から申しましても、実際の行政運営上どうしても相当広い基礎に立つた府県住民から税金をとる。こういう建前になりますることは、府県行政を円滑に行います上におきましても必要ではないかというふうに考えるのでございます。
  24. 門司亮

    ○門司委員 非常に丁寧にごまかす答弁だと私は考えざるを得ない。そうごまかさなくてもいいと思う。今の御答弁の中には、たとえばタバコ消費税をやるからいいというようなことでありますが、これは総体的な問題であります。タバコ消費税の百十五分の十を市町村にやると言つておりますが、これは市町村と言つたつて、その中には五大市が含まれておる。同時に東京都も含まれておる。多くのタバコ消費税財源を獲得するのは大都市にきまつておる。私の問題にいたしておりますのは貧弱な町村をどうするかということであります。町村にはこの利益がきわめて少いのであります。警察法改正してそれの財源地方にいらなくなるというが、今日地方警察を持つておる町村はどれだけあります。今日自治警察を持つているという町村は指で数えるほどしかないのです。従つて警察法改正によつて財源的に多少のゆとりを持つて来んというのは市に限られておる。町村にはその恩恵は一つもない、そういうかつてな、全体を総合した答弁を私はここで聞いておるのではない。自治行政というものは現実に地方の町村を一体どうするかということである。理論の上で、数字の上でつじつまが合うからそれでいいんだというものの考え方を持つておるから、今日のような自治体ができ上つておる。私どもは少くとも自治体を議論しようとするならば、やはり個々の実態というものをつかまえて行かなければならない。それで私はこういう画一的な徴収の方法をすれば、貧弱な町村はより以上困るであろう。大都市は七百円の中から百円削られるのだから大した痛手ではない。現実に困つておる町村が三百円徴収しておる中から百円削られてごらんなさい、どれだけ痛手があるか、私はこの創設自身にも意見がありますが、この税金の徴収の方法には非常に大きな矛盾があるので、今の鈴木さんの答弁などというものは、ただ単に机の上の数字を並べただけであつて、個々の町村に行つてごらんなさい。警察法改正して警察費がいらなくなる町村がどれだけある。それの恩恵に浴するものがどれだけある。タバコ消費税の各町村別の分布状態を調べてごらんなさい、大部分は大都市に行くにきまつておる、こういうことでこの府県民税の創設府県の行政を行うのだから、府県民全体で税金を納めるような建前にすることがいいのだという議論は、一応の議論として成り立つかもしれない。しかし徴収しようとするならば、こういう間違つた徴収をすべきものでもないし、同時に先ほどから言われておりますが、府県民の中でわずかに四%ぐらいしか府県民税を納めていないというが、そんなことはないと思うのです。一体事業税をどれだけ納めているか、市町村民税の対象になつておりますものと、それから同時に県税の対象になつておりますものについては、おのずから対象が違うのであります。市町村民税の対象は、その事業のといいますか、すべての収益のあるものに全部かけておる。ところが事業税の対象というものは全部にかけておるわけではございますまい。従つて数字の上から見ればきわめてわずかな数字が出て来るかもしれないが、事業自体というものについては私はそう片寄つていないと思う。だからそういう表面上の数字だけでこまかすというようなことは、私はやめた方がいいと思う。もう少し真剣に答弁してもらいたい。私はこの問題をもう少し掘り下げるために当局に要求をいたしておきますが、この市町村民税によつて七百円を徴収しております五大都市あるいは東京都の二十三区を含みますが、どれだけの税金が当該都通府県に徴収されるのか、同時にそれは今日の住民税との割合がどのくらいとなるか、それからその次の中都市で五百円を徴収しておりますところから百円ずつ取上げて、それがその中都市の市町村民税に及ぼす影響がどのくらいの割合になるのか、あるいは今日税法上三百円しかとることのできない町村で、百円の税金を取上げられると、それがその町村の市町村民税に及ぼすパーセンテージは、一体どのくらいなのか、少くとも県税を設けるということは一応理論の上では成り立つといたしましても、この税金を徴収しようとするならば、やはり今課税になつております四・二・一の割合、こういう割合で徴収することが府県市町村財政の間において調和を保つて行く問題である、と同時に市町村財政を苦境に追い込まない一つの税制の建前だ、こういうふうに私は考えるが、この点についての御意見をもう一度承つておきたいと思います。     〔加藤(精)委員長代理退席、委員   長着席〕
  25. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 先ほど私が申し上げましたことが、いかにも架空だというような仰せでございますが、そういうことを申したつもりは全然ございません。警察を維持しておりまする市町村については、御指摘のごとく非常にこれは緩和されるのでありますが、それ以外の町村におきましても私はタバコ消費税をまわしますことによりまして、相当緩和されるだろうと思うのでございます。タバコ消費税の額は、これはまたいずれ税務部長から詳しく申し上げると思いますが、二百億近い額が参るわけでございますし、市町村民税の移譲される部分はそれよりも三十億程度少いわけでございますから、総体数字からいえばさような結果になるわけでございますし、また均等割につきましては総体として二十億程度のものでございますから、その辺の関係から申しましても、個々の団体について見ましても、町村につきましてこの結果さような非常に大きな変動を生ずるということはないと考えます。また最終的な調整といたしましては御承知のごとく地方交付税があるわけでございますから、その辺の調整も可能であるというふうに思うのであります。
  26. 門司亮

    ○門司委員 ますます答弁がおかしくなるんです。最終段階は平衡交付金でやるというのですけれども平衡交付金でやるからいいというのなら、何も地方財政などわれわれはちつとも心配いたしません。足らないものは国がやるというならけつこうであります。少くとも今日の地方自治体の要求いたしておりまするものは、やはり自主財源によつて地方財政を完全に運営して行くというのが、私は自治の根本の考え方でなければならぬと思う。財政がどうなろうとも、その税制によつて苦しむ町村があれは、それは国が見てやればいいというのなら、何もここで地方自治の振興だの、地方自治をどうするかだのという議論をしている必要は毛頭ない。われわれはどこまでもやはり憲法で示しております、そうして新しい地方自治法のもとに、地方の自治というものは地方住民の総意によつて、これを運営して行くという自治の観念の上に立つて議論をしておるのであつて、足らない分は平衡交付金でやるからいいというのなら、税制などどつちになつてかまやしない、何もここで口からあわを飛ばしてけんかする必要は毛頭ない。もし自治庁次長がそういうお考えだとするならば非常に大きな誤りたと思う。これはひとつ考え方を直してもらわぬと自治体は助からない。警察費の問題などは特にそうなんです。警察府県に行くから市町村警察費は少くなると言いますけれども警察費自身については府県負担はかわらないのでありますから、むしろ逆に言えば、警察費負担しなかつた市町村によけいな課税をしなければ、私は警察費のまかないはできないと思う。得をする自治体ができるというのは、単なる警察を持つている市、あるいはごく少数の町村であります。大部分の町村というものが今まで警察を持たなかつたから、警察費というものはほとんど納めておらないところもありまして、これが県でやるということになれば、勢い県税としてとられるということになるから、結局こういう問題が出て来たと私は思う。これは町村の住民からいえば、警察費だけよけい徴収されることになる、警察費としてこれだけ徴収しないからわからぬようなものたけれども。それで府県民税というものの創設されたのが――私どもの議論は多少かわつておりましても、とろうとするならばやはりさつき申し上げましたような、地方市町村財政というものを圧迫しないように、圧迫をするのならこれを公平に、大都市も僻村も同じような割合でとられる、そうして負担の均衡化をはかつて行くということが、私は正しい行き方じやないかというように考える。従つて今の答弁のようなごまかしの答弁で、そのままわれわれが承服するわけには毛頭参りません。  さらに次にもう一つ具体的に聞いておきたいと思いますことは、この条文を見て参りますと、これだけのものが現に徴収されて来るということになると、先ほどから申し上げておりますように、特に町村では非常に困ると私は思う。そこで現実の問題として、たとえば前年度の所得税の百分の十八しかまだとつておらないというようなところは制限税率一ぱいにとつておらない、あるいは標準税率をはずしましたから、大体制限税率一ぱいだということになりますが、制限税率一ぱいとつておらない市町村が、これだけ県に吸い上げられることによつて、私はおそらく制限税率まで、これを課税するであろうということは大して想像にかたくないと思う。そういたしますと、現実に市町村住民負担はそれだけふえて来ると思う。この点についての見通しは一体どうなつておるか、もしお考えがあるならお聞かせ願いたいと思います。
  27. 北山愛郎

    北山委員 関連して。ちよつと前段のところなのですが、先ほどの鈴木さんの御答弁では、タバコ消費税等でもつて補うのだ、最終的には交付金で補うことができるのだというふうなお話たつたのですが、これはどうも私は納得が行かない。実は平衡交付金は昨年より減つているのじやないか。それから地方起債も減つている。減つている額は、平衡交付金――今年度は交付税でございますが、それらの方は市町村において約三百三十五億円ばかり減つている。これは間違いがあつたならば訂正していただきたい。起債の方が四十七億ばかり減るのじやないか。そうすると平衡交付金起債両方合せて、減る分が二百八十五億ばかりになる。ですからただいま、この市町村民税の一部を県民税に移譲して、その足らない分はタバコの消費税でもつて十分補いがつくと言つても、平衡交付金起債で今申し上げたように非常に莫大に減るものでありますから、結局市町村分について見ると、昨年よりも歳入が非常に減るのじやないかと思うのです。ただいまのタバコの消費税の市町村分のふえるものは約百九十四億です。ですからその分だけ見ると、確かに市町村民税から府県の方へ移す分を補つて十分余りがある。約八十億ばかりを移すことになるわけでありますから、百九十四億から百十億余りが出るでありましよう。ところが一方では平衡交付金起債が二百八十五億ばかり減るのですから、そつちの方の不足が大問題なのです。だから次長お話のように最終的に平衡交付金で補うのじやなくて、平衡交付金起債の不足をどうするかということがかえつて逆に問題になるのじやないか市町村の分について見れば昨年よりも悪化している。これをどうするのですか。  それからもう一つは、先ほど税の自然増の問題で出て来ましたが、市町村民税の三割を県民税の方に移すと言いましたが、道府県民税の方のふえる分が百六十九億ですから、普通から言えば、市町村民税においては昨年よりもこれだけ減じなければならぬわけです。市町村民税の減る分は、この税収見積りでは八十一億です。これがどういうことを意味しているかと言えば、その差額約八十何億というものは住民がそれだけ増税されるということなのです。住民負担が八十何億ふえるということになる。そしてその結局市町村が楽になるならまだいいとして、市町村平衡交付金起債が大幅に減るものでありますから、税の増収――タバコ消費税どもつても、大幅に足りなくなるということです。これを一体どういうふうにして補つたらいいのですか、私はその点非常に疑問に思うから先ほど来お伺いしているのです。
  28. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 最初に道府県民税創設するという前提に立つて申し長げたいと思うのであります。もちろん道府県民税創設する理由等につきましては先ほど申し上げたわけであります。またこの過程におきまして、同時に個人の行う農業や林業にも事業税を課税すべきだというような議論もあつたわけでありますけれども、むしろ総体的に考えましてそれは避けた方がいいのではないかという結論をとり、かたがた一層道府県税創設すべき、だという結論にもなつたわけであります。均等割の額を、道府県民税市町村民税との間においてどのような割合によるかということは、門司さんが指摘されましたように私たちも非常に悩んだ問題であります。悩んだ問題でありますが、前提条件といたしまして、均等割の絶対額を道府県民税市町村民税とを合せまして増額したくないということであります。これが一つの基本的な態度であつたわけであります。第二には、均等割の額を道府県民税については市町村を通じてやはり一律の税率の方がよいのではないだろうか、これも第二に考えました基本的な態度であつたわけであります。その結果が、結局一律に百円ずつを市町村民税の均等割から減額しようという結論をとるに至つたわけなのであります。その結果それでは町村が非常に痛めつけられるのではないだろうか、特に町村が困るのではないだろうかという議論になるわけでありますけれども、均等割の納税義務者は、人口で言いまして二〇%から二五%ぐらいになるのであります。人口一万の町村をとつて参りますと、これによつて減額されます額が二十万円ないし二十五万円であります。他に収入が与えられないのなら格別でありますけれども、まずほかの制度改正も行うわけだから、その程度ならがまんしていただけるのではないだろうか、こういうふうに結論として考えたわけであります。確かに御指摘になりますように一つの問題があるわけでありますが、こういう結論をとりましたのは、ただいま申し上げましたような考え方に基いておるわけであります。それでは特に市町村だけが痛めつけられるのではないだろうかという御疑問もあるわけでありますので、一応大都市とその他の都市と町村とにわけて、これらの関係ちよつと触れておきたいと思います。  個人均等割を減額いたしまする結果、大都市で減収になりまする部分が一億六千百万円、都市で減収になりまする額が四億六千七百万円、町村で減収になりまする額が十二億千百万円、確かに町村分が多いのであります。反面に法人税割の減収になりまする部分が、大都市では二十億三千五百万円、都市では十八億六千九百万円、町村では九億六千五百万円、この辺になつて参りますと、むしろ都市の方が痛めつけられるわけであります。これらの反面にタバコ消費税を与えまする結果は、大都市では五十一億六千八百万円、都市で六十三億千八百万円、町村で七十九億六十九百万円、人口数が多いものですから全体額としては大きくなるわけであります。こういうような総体的な制度改正をにらみ合せて、個人均等割につきまして町村分を百円減額することは、町村にとつてはお気の毒だと思つたのでありますが、まずがまんしていただける線ではないだろうか、こういうことを考えたわけであります。  それからもう一つ、このような経緯から市町村の方では制限税率一ぱいでとるようなかつこうになつて来るのではないだろうかというような御疑問であります。これは昨日申し上げましたように個人所得割の額につきましてはその市町村に、市町村相互に均衡をとりながら配賦するという制度をとつております。従いまして個人所得割の税率の高いところでは、県民税の賦課税率というものは非常に低くなるわけであります。従つてその町村で残される税額というものは、標準税率的なものから考えました場合には多いわけであります。従いまして府県民税の結果、特段に制限税率一ぱいまでとろうとするような傾向を招くことはないのじやないだろうか。むしろ均衡のとれた府県民税が示されることによつて、その市町村の個人所得割が他の市町村に比べて重いかいかということが、割にはつきりして来るのであります。そのような結果は、特に多額の税収入をあげようとすることが困難になるのじやないだろうか。言いかえるならば、市町村相互間において、ある程度市町村民税の個人所得割の均衡も確保されて来るのじやないだろうか、こういうような考え方をむしろしているのでありまして、それを望んでおるという意味で申し上げるわけじやございませんが、逆に申し上げますれば、制限税率一ぱいにとろうとする傾向を馴致するというお考えに対しましては、むしろそうじやないだろうかというような気持を持つているわけであります。  それからもう一つ、事業税の納税義務者数が何人であるかというお話があつたのでありますが、大体二百二十万人程度と見込んでおるわけであります。
  29. 鈴木俊一

    鈴木(俊)政府委員 北山委員の仰せは、私が先ほど地方交付税で最終的に調整をするということを申し上げましたところが、地方交付税は今度は少いではないかというお話でございましたが、これは地方財政計画の上では、先ほど来いろいろ申し上げましたごとく、税の増収なり国の支出金なり総体を見合いまして、本年度新しく必要になつて参りまする新規財政需要を一方見込んで、さような財源をもつて処置できませんものを交付税に持つて行つたわけでございますから、政府といたしましては、今の地方財政計画で調整ができるという考え方に立つているわけであります。
  30. 床次徳二

    ○床次委員 議事進行について。この機会に委員長にひとつ要望いたしたいと思います。本委員会の審議につきましては、過般の理事会につきまして、警察法と税法改正案と併行審議することになつて、すでに開始せられておるのでありますが、今日まで地方税法の御審議の模様を伺つておりましても、相当多数の疑義があり、しかも広汎な改正案でありますので、はなはだ多くの時間を要することと思われるのであります。いずれも重要な法案で、できるだけ早く成立を望むものでありますが、何分にも警察法は、施行期日は政府が予定しておりますのは七月であり、税法はやはり新しい年度から行うのが各般の上に便宜であることが予想せられるのでありまして、この審議につきましては、今までのような審議の方法では、はたして遺憾なき審議を行つて、年度内に地方税法が成立するかどうか、あるいは否決せられるかもしれませんが、その決定を見るかどうかということにつきましては、疑問なきを得ないのであります。私はむしろ当委員会といたしましては、警察法につきましては、これをしばらくあとにまわし、当分の間は地方税法を中心に議事を進行せられまして、結論をなるべく早く出されることの方がよいと思うのであります。従来すでに理事会等の決定もありますが、今日までの審議の経過にかんがみまして、特にそれを強く考えますので、委員長に対して、これは理事会にかけるなり何なりして、適当に善処せられんことをお願いいたしたいのであります。しからざればこの地方に非常に関連の多い地方税法に対して、われわれは十分なる責任をもつて審議することができないのではないか、これを強くおそれる次第であります。委員長におかれましては、適当にお諮りいただきまして、この問題について善処せられんことを、特にこの機会に申し上げる次第であります。
  31. 中井一夫

    中井委員長 御趣旨は了承いたしましたが、この問題につきましては、予定ではありますが、大体において理事会において御決定になつておるのであります。そういうふうに、あらためて相談をしたいという御趣旨であるならば、理事会においてもう一度諮り直すよりほか道がありませんが、その趣旨に了解してよろしゆうございますか。
  32. 床次徳二

    ○床次委員 けつこうです。
  33. 中井一夫

    中井委員長 それではそういうことにいたします。午後一時半から再開することにして、暫時休憩いたします。     午後零時四十五分休憩      ――――◇―――――     午後二時十五分開議
  34. 中井一夫

    中井委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  この際公聴会開会に関する件についてお諮りをいたします。昨日地方税法の一部を改正する法律案についての公聴会開会の承認を議長に求めておりましたところ、本日その承認を得ましたので、これよりその開会の日時等につきまして決定し、その旨議長に報告いたしたいと思います。つきましては、去る六日の理事会の決定通り、来る十八日午前十時より地方税法の一部を改正する法律案について、公聴会を開くことにいたしたいと思いますが、御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 中井一夫

    中井委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。諸般の手続は、委員長よりただちにとることといたしますから、御了承を願います。     ―――――――――――――
  36. 中井一夫

    中井委員長 なお地方税法改正案に関する大蔵及び建設両委員会との連合審査の日取りにつきましては、各一日として、十五日または十九日のいずれかに決定すべく、本委員長と両委員長との間にとりきめを進めることとなりましたから、これまた御了承を願つておきます。     ―――――――――――――
  37. 中井一夫

    中井委員長 これより警察法案及び警察法の施行に伴う関係法令の整理に関する法律案の両案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑に先だちこの際お諮りいたします。過日門司委員より両法案の審議にあたり、名古屋市警本部長宮崎四郎君を参考人として出席を求めてほしいとのことでありましたので、去る五日理事会を開いて協議いたしましたところ、出席を求めることとなり、本日同君が出席されましたから、同君より参考人として、実情並びに意見を聞き取ることといたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  38. 中井一夫

    中井委員長 異議なしと認め、さよう決しました。質疑の通告がありますから、順次これを許します。門司亮君。
  39. 門司亮

    ○門司委員 きよう名古屋の本部長においでを願いましたのは、――警察が各自治体に分散されておるということが、警察能力の上からきわめて非能率である、そういうようなことが今度の警察法改正の一つの大きな眼目であるように当局から承つておるのであります。われわれが今日まで警察法施行以来六年の間見て参つておりますときに、警察法施行の当初におきましては、警察制度がかつての国家権力のもとに強力な警察行政が行われておりましたときから、民主警察に移りかわりましたことのために、往々にしてその運営あるいは取扱いの上に多少の齟齬のあつたことはわれわれ認めざるを得ない、また事実上それがあつたのであります。しかしその後長い間の訓練と申しますか、日にちの間にだんだんとそれらの非常に悪かつたと思われる連絡、協調というようなものは是正されつつあると、われわれは確信を持つて申し上げることができる。従つて先ほどから申し上げましたように、この警察法改正の一つの大きな理由として、地方の自治警察いかにも非能率であるということになつて参りますれば、これは地方の今日までの自治警察の名誉のためにも、われわれはこの際はつきりしておきたい。同時に民主警察のこの建前が、門家警察によつてくずされようといたしておりますときに、われわれはぜひこの問題を追究をして、納得の行く線までこれの研究調査をいたしませんと、この法律案の審議をいたしまする過程においては、非常に大きな支障があるとわれわれは考えております。それは地方住民が非常に大きな財政的の負担と精神的の協力によつて、今日の自治警察、いわゆる民主警察が育成されて来ている。これをただ単に能力の面からこれがいけないという一つの理由は成り立たないと思います。しかし成り立つても成り立たなくても、一つの大きな理由にあげられておる。そこで私は、今日国、地方を通ずる犯罪の中で未解決のものがたくさんあると思う。しかしその中でも最も世間に多く伝えられておりますものは、約四年前に地下にもぐつております例の共産党の八幹部の検挙というものがいまだに行われていない。この問題は警察能力を議論いたしますときに、必ずどこでも出て来る問題である。もし警察が一本であつたならば、あるいはこれはとつくに片づいておらなかつたか、警察がばらばらであるから、こういう問題がいまだに処理できないのではないかというようなことが往々にして言われるということは御存じの通りであります。従つて国家的の一つの犯罪で、具体的のものであるこの問題が未解決にあります。全部解決はいたしておりませんが、その中の四分の一、八幹部の中で二人は検挙されていることは事実である。しかもその一人を名古屋の市警においてこれを検挙していることは事実である。従つて私のきよう質問いたしますのは、この共産党の幹部の検挙にあたつて、名古屋市警といたしましてはいかなる手段と方法によつて、あるいは国警自治警相互間にいかなる連絡協調が保たれて、この実績が上げられたかということについてのお話を願いたいと思います。
  40. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 御質問にお答えを申し上げます。  八幹部の捜査に至ります前に、警察の能力のことについていろいろお話がありましたが、私政府の方で言つておられるのに同惑のところも一部あるのであります。非常に小さな警察で、能力としても考えなければならぬというようなものがなくはないと思うのであります。しかしそれをいいことにして、自治体警察全般を非能率だというように言われることには、私全自警を代表して遺憾の意を表したいと思うのであります。自警の中にもなるほど非能率なのがあるかもしれません。しかしながら私は国警の中にもう一層非能率なのがあるということをいろいろ知つておるのであります。これはあとで問題が別になつて出て来ると思いますから、そのとき詳しくお答えを申し上げることにいたします。連絡協調の点におきましても、私必ずしも万全だとは申しません。しかしながらある程度規模自治体警察は、十分の連絡と協講をとつてつておるはずであります。国警長官は過ぐる日自由党の総務会等で、治安情勢を詳しく御説明なつたようでありますが、そういう情勢の最も激烈なるところ、大事なところ、大部分こういうものは、実は自治体警察が差上げておるところと確信をいたしております。従つて連絡が悪く、協調が行われていなかつたならば、あれほどの御報告ができるはずはないのであります。従つて連絡協調を基調にして自警と国警が、今日まで国家治安のために異常の努力をしておる結果、初めてああいうりつぱな御報告ができたのであろうと思つて、長官の御報告があるごとに、実は自警の者としても非常に喜んでおるのであります。お互いにやつたかいがあつた、少くとも齋藤長官が大きな顔をしてやられてよかつたと、かように思つておるのであります。齋藤長官が情報をとられて報告をしておられるのではなくて、事実共産党の活動の中心地は大体六大都市その他自治警の部分であります。それがうまく国警に連絡せられておるからこそ、長官が全国をまとめていかにも国警本部がやつておるようにおつしやることができるのであります。これは連絡協調がいかにうまく行つておるかということを証明して余りあるものだと、かように私は考えております。ほんとうに国警長官が自分の手でとつたものだけをお出しになるならば、私の方でもひとつそれでやつてみよう、そう考えております。私はそういう重要な事件については、自警と国警との間にいささかのみぞもない、警視庁と国警、六大都市と国警、あるいはその他の大都市と国警の間に重要な問題に関する連絡協調については、決してみぞがないということを申し上げたいと思うのであります。従つて長官が国警の努力によつてとつたがごとく報告せられておるものは、大部分あるいは主要な部分において、自治体警察が貢献しておるということを申し上げたいと思うのであります。  八幹部の捜査でありますが、八幹部の捜査をしなければならなかつた当時というのは、必ずしも現在と状況が合つておらぬのであります。まだ非常にこんとんとした事態から、ようやく抜け切ろうというときであつたのでありますが、あの潜行が始まりましてから私の受持つております名古屋市内だけにも、八幹部のあるいは紺野与次郎あるいは長谷川浩、こういうような人たちが潜行したという情報を得たことは数回あるのであります。その都度特別な捜査をいたしまして周密な捜査をした結果、大体名古屋にいないことは確実だろうということがわかつた際に、初めて捜査の手を抜いたのであります。たまたま九月の下旬、大阪から連絡がありまして、紺野与次郎が名古屋市にどうも潜入して、もぐつておるらしいという情報を得たのであります。今まで数回そういうことを繰返して、その都度特別捜査をしたのであります。特別捜査をしたいろいろな苦心談なり方法については、これは今後もまた行わなければならぬときがあると考えますので、こういう席で一々申し上げるのはいかがかと思いますから、その点は省略させていただきます。しかし大体皆様方がお考えになつてもお考えつきにならぬであろうと思われるような方法をいろいろ講じて、とにかく大体これならば名古屋におらぬという自信を持つておつたのでありますが、最後に情報を得ました九月下旬の場合には、また捜査をいたしております場合に手ごたえがあつたようであります。手ごたえがあつたところが、どうも人物が違いそうだということがわかつたのであります。大体これは紺野与次郎ではない、人相が違うということから、これは春日正一のようだということがわかつたのであります。春日正一だということになりますと、いつどこにどういうふうに動くかということを見なければならぬのであります。その方面の手配をやつたのであります。非常に周密な計画を立てて相当の人を動かしたのでありますが、幸いなことには、その年の十月の二十五日ごろでございましたか――春日をつかまえたのは十月七日でありますが、十月の二十五日ごろ両陛下が名古屋に行幸啓になられまして国体が行われることになりました、従つて、幹部が集合していろいろ相談をいたしておりましても、行幸啓の相談をしておるということで、ごまかしをして、行幸啓のことに装つてつておつた部分もあります。それは最後の二、三日のところであります。大事な打合せは私らも庁内でほとんどやつておらぬのであります。私も公安部長も警備課長も、すべて日常の業務をやつておるような顔をして、必要な連絡は大体別の所で――共産党がやつておると思われる方法によつて、こちらもやつたのであります。従つて、新聞社の諸君は非常に目も鼻も耳も鋭いのでありますが、その諸君も実は全然気がつかないでおつたのであります。大体人を確認することができました。それは確かに間違いはない。それじやおるときに入り込まねばいかぬし、逃げられてはたいへんだ。ところがどうも出歩いている節があるので、あき巣をねらつたらたいへんなことになるというので、今度はおる日を確認をしなければならぬ。その手をまた使つたのであります。ようやくきようは確かにおるというので、夕方から出られないように、逃げられないように要所々々に見張りをつけて、人に目立たないように、向うがそういう人を立てておつたらたいへんでありますから。そういうこともやつて手をつけたのは真夜中の十二時過ぎでありますが、結局うまくつかんだのであります。上手に行つたと思いますのは、町の一角をまず包んでしまつて、それが完成して今度は家を包む、家を包んで初めて中に入つて行くという式でやつたのでありますが、春日本人は非常に自信を持つておりまして、絶対に否認ができると思つておつたようであります。にせの通行証というか、乗車券、定期券、こういうものも持つておりますし、ちよつと見にはこまかされるところであつたのでありますが、私の方に非常に気のきいた鑑識課員がおりまして、もし本人が逃げるようなら、ひとつその場で手相を見てやろうということで、最も指紋に明るい鑑識員を二人連れて行つておつたのであります。その諸君は右手の指紋番号と左手の指紋番号を覚えておりまして――私の方の幹部が行つて起してやつたところが、全然人違いのようだというので、実は捜査の主任はこれはやりそこなつたかなと思つてどきりとしたそうであります。ところが幸いに連れて行つておつた指紋係に、これは人間は間違いないと思うのだが一ぺん見ろと言つて、手を出せと言つて出させたところが、そこで初めてぶるぶるふるえ出したそうであります。それまではもう泰然として絶対に逃げられるつもりでおつたようでありますが、手を出せと言つて現場で指紋を見出したところが、どうも間違いがない、それでこうやつて主任をつつついた、指紋がぴつたり合つているというので頭を下げたのであります。すぐに私はそのことを大阪の総監と東京の総監に直接電話をいたしまして、名前を告げたら悪いというので、名前を告げないで指紋の番号で右手どういう番号、左手どういう番号、そういう者を今つかんだということを知らしたのであります。その晩はある所に隠しておきまして、あくる日すぐに横浜の方に送つたわけであります。送りましても新聞社はまだ気がつかないでおつた。朝私らが出ましても、普通の時間にみんな出て普通の通りにやつておるから気がつかない。ところがあるよそのところから漏れて参りまして、春日をつかまえておつたじやないかということで大分責められたことがあります。決して私自治体だからつかまらぬというようには思わぬのであります。非常に彼らももぐり方がうまいので、必ず百発百中というわけには行かぬかとも思いますが、一本にしておつてもこれはつかまるとは保証できない。結局みなが努力する、その努力が報いられるかどうかの問題であつて、一本にすればつかまるなんというような簡単な問題ではないと思うのであります。もう一つは、戦争前と戦争後と比べまして、非常に警察の能率が落ちたように言われる節がありますが、実際は、犯罪の捜査につきましても現在の捜査上の手続は、非常に民主的になつておりまして、いかに人権を尊重するかあるいは無辜をなくするかという方面に至らざるなき法条が設けてあります。戦争前には警察の側で悪用することのできる執行法がありまして、非常にそれを悪用した例があります。従つて、同じ人間がやつておりましても、捜査上の能率を上げるということについては、法律の建前からなかなかそう簡単に行かぬと思うのであります。そういう意味で、戦前の能率と現在の能率と比べて、あれほどやかましい人権尊重の規定があるのに現在ほど効果を上げておれば、日本の警察は著しく進歩をしておるものとかように私は考えております。特に自治体についてはさように考えるのであります。せんだつて東京の最高検察庁に参りまして、検事総長と次長検事さんにお会いしていろいろお話を聞いたのであります。大都市の犯罪捜査についてはいかがでございますかということを聞いてみましたところが、戦後独立した当初は必ずしもよくなかつた、しかしもうこの二、三年は非常によくなつて戦前にも劣つていない。大都市の仕事は非常にうまく行つている。もししかるべきところから大都市の成績はいかんというようなことを聞いて来られたならば、いつでも回答をいたすつもりでおるというようなことを言つておられました。小さな自治体警察で、市長さんも議会もやめたいというところもなくはないのであります。そういうところに当てはまるあまり能率が上らない、あるいは一本でなければできぬというようなことを非常に言つておられますが、そういうことは実は根本的のことではないのじやないかと思うのであります。今度の改正が非常に根本に触れておるにかかわらず、あげられておる理由はすべて枝葉末節とは申しませんがきわめて技術的な問題であります。こういうことは、何も根本をいらわなくても、国警でいろいろ考えておられる方法、自治警でいろいろ経験によつて知り得た方法で、十分打合せをして打開をすることができるかと思うのであります。私は今度言われておることかうまく当つておるというようには必ずしも見ておりません。
  41. 門司亮

    ○門司委員 大体今までの経過は十分知ることができたのでありますが、さらにもう一、二点お伺いをしておきたいと思いますことは、ただいまのお話の中にもありましたように、そうした一つの国家的犯罪、いわゆる地方的犯罪ではない犯罪につきましても、今日の自治警察いかに苦労をし、いかにこれに協力――協力というよりも、むしろこれは本能的のものでありますから、私は協力という言葉は使いたくないのでありますが、警察自体の職能のために尽力されておるかということが、一応了解ができたのでありまして、必ずしもこの大臣説明に書いてありますようなことではないのではないかということが考えられる。そこで、先ほど大阪その他から連絡があつたというお話でございますが、これは大阪の自治警察であつたのか、あるいは国警の隊長であつたのか、それを一応聞いておきたいと思うのでありますが、このことについての予備知識として一応お答えになる前に、お考えを願つておきたいと思いますことは、大臣説明書の中にこういうことが書いてある、いわゆる都市警察あるいは五大市というような大きな警察能力を持つておる警察については、これを存置したらいいじやないかという意見はあるが、しかし自治警察というものあるいは大都市の警察を残せば、その周辺との間に何か遮断されて――遮断という文字が使つてある。私はこれは非常に大きな問題だと思う。なるほど都市の行政区画は地図の上であり、現実には道やその他のものでわかれておることはその通りでありますが、「大都市とその周辺地区とを遮断せしめ、このために警察対象としての両地区の一体性を阻害し、警察運営の有機的活動に著しさ障害を来すのみならず」云々、こういうふうに書いてある。従つてこの問題は、警察行政を考えて行く私どもとしては非常に大きな問題であります。大臣指摘されておりまするこういう都市警察を残すということは、何か警察行政の上で運営が遮断されてしまうということが書かれておるので、今のお話の大阪からの連絡が自治警察であつたのかあるいは国家警察であつたのか、この点をもう一応聞いておきたいと思います。
  42. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 私、説明を十分にいたしませんでたいへん失礼いたしましたが、連絡を受けましたのは大阪の警視庁であります。従つて捜査を進行しますにつきましては、大阪の警視庁と終始連絡をとりました。また大阪の警視庁から、特に名古屋にその期間ある人人に来てもらいまして一緒にやつたような状況もあり、しかしこれはいろいろ市民の協力を得ておることでありましてその名前を出すことは非常に困ることがありますので、そういう関係から、捜査の内容は今日に至るまで、実は新聞社その他にも一切発表いたしておりません。ただ大阪警視庁と名古屋市警との特別連絡による特別捜査によつて春日をうまくつかまえた、かように考えております。  それから今度の法案の大臣説明あるいは長官の説明を聞いておりまして、私にもどういう意味かよく納得ができないのでありますが、遮断と言い、あるいは盲点を生ずるという言葉で表わしておられるようであります。実は私、そういうことを非常に意外に思うのであります。どういう意味かあまりはつきりつかみ切れぬでおるわけであります。おそらく近代的な、非常に装備なり人材のそろつておる都市警察の中は、治安維持上非常にうまく行くかもしれぬが、そのまわりがうまく行かぬから、そこで段落といいますか非常に差がついて、いかにも外目には何もやつておらぬように見えはせぬか、それを何もやつておらぬというふうに認識して、盲点であるとか遮断であるとか大臣閣下や何かは言つておられるのか、こう思うのであります。もしそういうようなことがありとすれば、それは大都市なり中都市の責任ではなくて、その段落、盲点といわるべき地域を受持つておる人のやり方がまずいのではないか、こう思うのであります。と申しますのは、一、二事例をあげて申しますが、私の方で二十五年から二十八年まで四年間に司法事件――これはその他の犯罪を抜いておるようでありますが、約十二万件をあげております。その二割五分の二万五千件というのは名古屋以外で起つた犯罪であります。遠くは東京、北海道も含みます。日本国中を含みますが、最も多い数はどこかというと名古屋の周辺であります。だんだんその数が減つて行くのは三重県あるいは岐阜県、静岡県というふうになつて行くわけであります。その中で最も多い数は愛知県であります。従つて大臣その他がおつしやられておる盲点になるべき地域が、最も多く名古屋市に近いわけでありますから、最も多くあげられておると思うのでありますが、二万五千件であります。その二万五千件をあげておる同じ期間に、日本全国の警察で名古屋市以外に起つた事件を検挙しておるのは五千件であります。従いまして差引いたしますと、二万件を実は名古屋市が名古屋市の主として周辺に貢献をいたしておるわけであります。盲点ができるのではなくて、名古屋市の税金と名古屋市の警察力でもつて、周辺の治安維持に貢献をいたしておる、かように思つております。これは一例を刑事事件にとりましたが、問題になつておる警備事件についても私は一、二申し上げておきたいと思います。  名古屋市と川をさしはさみまして守山町というところがあります。三十六年の五月の改正で、この警察は十五人ぐらいの定員で小さな町でありますので、今は国警の中に入つてしまいました。川一つ隔てて独立した小さな警察があつたわけであります。そこの一角に非常にたくさんの朝鮮人が群居いたしておる。そこは終戦後朝鮮の諸君が非常に元気がよくて、日本人はもうあれどもなきがごときふるまいをいたした時代がありまして、まだその余勢を持つておつたときであります。昭和二十四年の二月であつたかと思いますが、全国的に北鮮関係の財産接収ということが行われ、そのとき財産接収は愛知県下でも数十箇所あつたかと思いますが、やらなければならぬ。国警の管内というよりも自警の管内の方が多かつたと思うのでありますが、そういう状況で結局愛知県の地方警察としては、これに援助をしなければならぬような状況であつたのであります。守山警察からも愛知県に要請が行きまして援助をしてもらいたい、財産接収をするにしても非常に頑強な大きな朝鮮部落でありますから、そこの朝鮮人学校を接収するのはたいへんだというので要求をされて、愛知県としては三百五十人の警察官をそこに派遣することになつたのであります。ところが三百五十人全部愛知県の地方隊を出すわけには行きませんので、名古屋市では、いつでもどんなにしても出してあげるからということを申し出ておきましたところが、百七十五名ほしいということを言つておりました。それで私はおかしい、百十五名ぐらいでは治まりがつかぬのに百七十五名ということはどういうことか、一ぺん隊長のところに行つて相談をして来てごらんというので隊長のところに公安部長をやつたのでありますが、相談の内容と申しますのは、愛知県下でまだほかにたくさん接収をしなければならぬところがある、そこに国警の人をできるだけたくさん応援にやらないと間違いが起きるかもしれない、名古屋市のすぐ隣の守山町の接収はそこに国警から人をおやりにならぬでも、国家地方警察の力でそうしてよろしいとおつしやれば名古屋市が全部引受ける、混成隊で名古屋が百七十五人、国警が百七十五人というようなやり方よりも、三百五十人全員名古屋が持つてつてやつた方がうまく行くのではないだろうかどうだろうかと言つたところが、そうやつてくれれば非常に理想的だ、自分の方で百七十五人割愛しておつたものをほかの――また近所に春日井という市がありまして、ここにもまたその問題があるわけであります、春日井、それから今の小牧の付近でありますが、そこらにもあつたかと思います。それは非常に望ましいことだというので、それではそうしましよう、寺山のところは三百五十人、足りなかつたらもつと出してもいいが、守山のことは名古屋が引受ける、だからあなたの国警はほかの方に持つてつて、ほかの方を失敗せぬようにやつてもらいたいということでやつたのであります。名古屋には当時愛知県の中央の朝鮮人の本部があつたわけであります。それが中村駅の駅裏にあつたわけであります。そこはおそらく相当暴力をもつて抵抗するであろうというので、鉄かぶとをつけた相当の人数を持つて行つた。大体千人でありましたが、事なくこれは解決をすることができました。同時に私の方から、当初は三百五十人でありましたが、だんだん時間の経過につれて様子がおかしくなりまして、増強いたしました。結局名古市の全警察力とは申しませんが、名古屋市の応援だけでその事件は全部解をしてしまつたのであります。バスに二台くらいの非常にたくさんの者を検挙したわけでありますが、二十年四月までは、その一帶の地区はこわくておまわりさんがまわることもできなかつた。ところがそれで手入れをいたし一まして徹底的にやつたところが、その次からは守山署はわずかに十五人の警察でありますが、十五人の受持の警察官がそこを巡察ができるようになつたのであります。これは盲点というよりも私は盲点でない証拠じやないか、こう思うのであります。  もう一つは同じような豊和重工業というのが枇杷島か新同時にあるようでありますがそこで労働争議が起つて、人を出してもらいたいという援助を受けました。幾らでも必要なだけはそれは援助をしなければ行くまい。しかしまだ事が起らないのに現場まで警察官をやる必要はないから、どのくらいほしいのだと言うと、千人くらいほしい。それでは千人のうち五百人だけはもよりの警察、最も近いところの警察にひとつ配置というか、応援に持つてつて、そこへ置いておく。あとの五百人はいつでも行けるように各署に待機をさせるということで応援をしたわけであります。結局現場まで出動をさせないでも事件は解決をいたしましたがこれなどもブランクでない、盲点ではないということを私現わしておるのじやないかと思うのであります。  まだ事例をあげろとおつしやれば幾つも事例はありますが、大体代表的なものを一、二あげてお答えにしたいと思います。
  43. 門司亮

    ○門司委員 国警の隊長にこの際これと関連した問題でちよつと中間に聞いておきたいと思います。今の共産党の事件に関して、大阪の警視庁からの連絡であつたということがわかつたのでありますが、大阪の警視庁はもちろん自治警察であります。従つてこの事件に対して国警はこの間にあつてどういう連絡をとられたのか。国警は全然これらの事件に対して関知しなかつたのか。その点をひとつはつきりしていただきたいと思います。
  44. 山口喜雄

    ○山口(喜)政府委員 私からお答えいたします。ただいまの春日氏の逮捕の件につきましては、共産党の幹部が追放されまして逮捕状が出ましてから、国警といたしましても全国の各国警はもちろん自治警察と協力をして特別捜査を行つておつたのであります。二十六年九月三十日にこの追放中の幹部の捜査のために、当時本部一長をいたしておられた次長がここにおられますが、大阪の管区本部の主催のもとに大阪、京都、名古屋、神戸の四大都市及び管内の各府県の警備主務部長会議におきまして情報の交換及び検討を行つたことがあるのであります。その席上におきまして、大阪市の警視庁より追放幹部の某が、名古屋市内に潜伏中であるという有力な情報の提供があつたのであります。これによりまして私の方といたしましては、関係府県あるいは隣接府県に対しまして特にいろいろと注意をして捜査をするようにということで、指示いたしたような次第であります。以上であります。
  45. 門司亮

    ○門司委員 そういたしますと、これは国警長官からはつきり聞いておきたいと思いますが、今の御報告によりますと、全然自治警と国警との連絡がなかつたわけではない。いわゆる管区本部長の主催のもとに密接な協議が進め部長の主催のもとに密接な協議が進められて、大体効果があげられたというように考えて参りますと、これは自治警と国警との間に、ここに指摘されておるような大きなみぞはなかつた。いわゆる今日の警察制度のもとにおいても、十分やり得るのだということを言つても、ちつともさしつかえないのだと思うのですが、それに対する国警長官の御意見があつたら、ちよつと伺つておきたいと思います。
  46. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 私はたびたび申しておりますように、自治体警察は何もやつていないからだとか、非能率だとかいうことは申しておりません。また大臣もそうであります。ただ、できるだけ共通した治安対象、治安の中心である市とその周辺というものは、これはひとつの統轄者といいますか、一元的に運営される方が、もつと能率が上がるだろうと申しておるのであるまして、ただいま名古屋の市警本部長からいろいろ事例をあげられましたが、周辺で犯した犯罪が市内でたくさんあるということも、これはいかにその治安の対象が市の区域を越えておるかということを示しておる事例でありますから、その際にこれが多元的であるよりも、一元的の方がなおよくなるのであろう、こういうことを申しておる次第であります。
  47. 門司亮

    ○門司委員 この点はいずれ大臣おいでになりましてから、もう少し確かめたいと思いますが、今の齋藤長官の答弁はけなはだおかしいのでありまして、これは大臣の提案の説明を読んでみるとはつきり書いてある。「警察単位の分割により生ずる盲点の存在が警察の効率的運用をみずから傷つけて参つた次第であります」と書いてある。それからその次には、さつきも読みましたように明らかに「大都市とその周辺地区とを遮断せしめ」という文字が使つてあり、「このために、警察対象としての両地区の一体性を阻害し、警察運営の有機的活動に著しき障害を来すのみならず」と書いてある。だから齋藤さんの今のお言葉とは非常に違うのであります。齋藤さんはそんなに強く言つていないということですが、大臣説明書を読んでみると、自治警ではどうにもならないのだ。警察行政が警察自体を阻害しておる。みずから盲点をこしらえておる。同時に警察の行政は二つに遮断されておる。そしてそのことのために有機的活動に著しき障害を来たしておると書いてある。有機的活動というのは、今名古屋の隊長からお聞きしましたようなことが有機的な一つの活動だと考える。そしてその有機的の活動の中に何らの支障というほどの支障がなくして、お互いに今日まで効果を上げて来ておるといたしますならば、この大臣の言葉というものは、あまりにも今日の警察を一本化することのために誇張した言葉だと思う。このまま読んでみれば、まるで自治警というものはなつていないのだ、こんなものを置いておるから警察の盲点をこしらえて、みずからその能力を著しく障害しておる、こういうように受取れるから実は私は名古屋の隊長さんに来ていただいて、その事情を聴取したのであります。だからこの点は、これ以上齋藤長官に聞いても、大臣の気持はおわかりにならないと思いますから、今日は齋藤長官の気持は気持ちとして聞いて、あとは大臣おいでなつたときに、大臣にお聞きしたいと思います。  最後にもう一つ名古屋の隊長にお聞きしておきたいと思いますことは、今日の公安委員会制度の問題でございます。私どもといたしましては、今日の公安委員会制度によつて警察の中立性が保たれておると考えておる。ところがこれがもし今考えられておりますような公安委員会が単に罷免あるいは懲戒だけを、任命権者に対して勧告することができるというようなことになつて参りますと、おのずから警察の運営の上に今までのような画然とした中立性でなくして、現在改正されていますものを見て参りますと、上からまつたく一本になつておる、いわゆる国家公安委員会委員長大臣である、そうしてその大臣のもとに警察庁が置かれて、この長の任命は公安委員会の意見を聞いて総理大臣が任命する、任命された長はさらに府県の隊長を任命する、あるいは府県の隊長はさらに府県警察職員の任命権を持つということになつて来ると、この任命権者とそれから警察の運営管理に対して横からにらんでおるという公安委員との間に、今までよりも非常に弱い公安委員会の存在に私はなると思う。こうなつて参りますと、はたして警察の中立性というものが保てるかどうかということが、やはり今度のこの警察制度改正については、大きな問題になつていると思う。従つて警察の中立性に対して、現行の公安委員会制度警察運営の上にもし障害があつたとするならば、それをひとつお聞かせが願いたい。もし何ら障害がなくして、かえつて警察の中立性が保ち得たというようなことがございますなら、その点もひとつお話をしていただきたいと思います。
  48. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 これは現状をよく見ていただかないと問題がわかりにくいのじやないかと思います。と申しますのは、現行の警察法によりますと、国家地方警察自治体警察とはちよつと違うところがあります。自治体警察においては人事権を含む一切の行政管理と運営管理を公安委員会がやつておられる。従つてこれは今の政府から中立であり、政党から中立であると私は考えております。ことに同じ政党の者が何人までおられるかというところまで詳しく規定がしてあるわけでございます。従つて政治的な中立とかあるいは中央の権力からの中立ということが保障されておると思います。一方国家地方警察の方におきましては、運営管理を国家公安委員会がやられるということになつて、人事権を含む行政管理は東京でやられることになつております。法律はまさにその通りになつておるのでありますが、実際の運営はそれと大分違つておるように私らは見ておるのであります。どういう点が違うかと申しますと、ほんとううはここにおいでの国警本部長官次長や各部長さん方は警察の運営に関しては一言半句も権限がないはずだと私は思うのであります。これは法律の規定であります。ところがそういう方々が非常にたくさんの指示、通牒というようなものを出しておられるようである、隊長会議をされるとそういうことについて訓示をしたりあるいは注意をしたり指示をしたりしておつたようであります。これは私何だか非常におかしなことだと思つておるのでありまして、どうも了解をよくしないのであります。しかしその国家地方警察につきまして、今後罷免の申請を許すということになりますれば、現在の府県の公安委員よりも、府県に関する限りは私やや権限が伸張されたかと思うのでありますが、しかしその程度の公安委員会の権限の伸張によつて中央の政治権力その他のものから地方警察を断絶することができるかというと、私はそれは全然だめだというように思うのであります。明らかに警察法地方で運営することをきめておるものを、何らかの言訳をして、運営がほとんど中央から行われておると一緒のように、私らには見えるのであります。実際は各県とも公安委員会が運営しておるのかもしれませんが、どうも私らの目にはさようにうつらないのであります。従つて、今後各自治体警察あるいは都市はつぶしたいという御意向のようでありますが、そういう警察ができて、そうして罷免を、勧告じやなくて、申請するというようなこと、あるいは勧告になつても同じでありますが、イニシアチブのない公安委員会の人事についての権限というようなものは、私はこれは飾りものではないかというふうに思うのであります。ほんとうに政党あるいはその他の権力から独立させなければならぬというのならば、まずイニシアチブを地方の公安委員会に与えるべきだろう、かように考えております。
  49. 門司亮

    ○門司委員 私はほかに所用がありまして長く質問をしておるわけにも参りませんから、他の同僚の質問に譲りたいと思いますが、この際私は国警長官に、委員長から資料の提出をお願いしていただきたいと思うことがあるのであります。そのことは、今お話になりましたような、国家公安委員会の運営管理に属すると思われますようなことが、現実に国家公安委員会の成規の会合並びに成規の手続によつてこれがなされたどうか。今日までわれわれが知り得た範囲におきましては、いわゆる現行警察法にいう運営管理と目されます部分について、往々にして国警本部から、刑事部長であるとか捜査課であるとかいうような名義のもとに、各管区本部長並びに警察隊長に指令されたようなあとがあるようにわれわれは見受けております。従つて国警当局にお願いをいたしますことは、今日までの国家公安委員会会議録が、もしお示し願えるならそのお示しを願いたいと考えておる。このことは別に他意あるわけじやございませんが、今名古屋隊長からも言われましたように、運営管理と行政管理の問題は、法律上これが両然と区分をされておりますので、もしこのことが区分されないで、そうして当然国家公安委員会が責任を持つて行わなければならないことが、行政管理の権限を持つておると申しましても、運営管理の面では事務局に過ぎないところからもし指令されておるというようなことがあつたら――今度の警察法改正で、国家公安委員会性格が大きくかわると同時に、その権限もまたかえられようとしておりますので、国家公安委員会が今日までやつて参りました会議その他の様子を知る参考資料として、その会議録とは言いませんが、そのときどきの通牒と申しますか記録もあり、あるいは公安委員会の月報というようなものも出ておると思いますので、これらのものをぜひお示し願いたい。この点委員長から国警に要求していただきたいと思います。これで私の質問を終ります。
  50. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 今の門司委員の御発言の中に、ちよつとお誤りになつておりやしないかと思うところがあります。国家公安委員会も全然運営管理の権限がない、権限がないか従つてここにおられる長官も、その他の幹部も、運営に関する部分は一切権限がないはずであります。ちよつと今門司先生のお説を聞いておりますと、国家公安委員会は運営管理の権限があるのじやないか従つてそれの会議を正式手続を通してやつておればいいのではないかというふうに聞こえたのでありますが、国家公安委員会は全然権限がないのですから、だれが出されようが、今の法律から見れば国家公安委員会の正式な手続というものはあるはずがありませんが、いずれどなたかお出しになつてつても、そういうところから出ておるものは、非常事態の趣旨が行われておらない限りは正当でない、私はそう考えておりますから、ひとつ国家公安委員会も運営の権限は全然ないということをよくお考えになつてつて、資料が出ましたら何してください。
  51. 中井一夫

    中井委員長 門司君、ただいまの御要求ですが、今宮崎参考人の意見がありましたが、これにつきやはり御要求を維持されますか。
  52. 門司亮

    ○門司委員 私は今の誤りの点は誤りとして認めておきますが、私の聞きたいと思いますことで、今資料を提出してもらいたいことは、今日までの国家公安委員会と運営というものが、正常に行われておるかどうかということであります。このことは今度の公安委員会制度改正する上において、私は非常に大きな示唆を一つ与えているものじやないかと考える。それはなぜかといいますと、現在の公安委員会が完全に公安委員会の規則にのつとつて、たとえば過半数以上の者が集まつて、あるいは協議をされたりあるいはいろいろなことがされておればその通りでいいのでありますが、今度の改正法案では、この公安委員会というものが単なる諮問機関のような形になる。そうして公安委員会の構成の中に委員外大臣を含むというようなことになつておりますので、今までの公安委員会に対してなぜこういう改正を加えなければならなかつたかという一つの過程を、われわれが調査いたしまする場合には、やはり過去の公安委員会のあり方というものをわれわれは、十分知つておきたい。従つて過去の公安委員会のそうした月報なり何なりが出ておりますならば、そういうものを指示していただいて、そうして国家公安委員会会というものはどういう形で従来運営されておつたかという一つの資料にいたしたいと考えておりますので、その点ひとつ委員長は了解せられて要求をしておいていただきたいと思います。
  53. 中井一夫

    中井委員長 ちよつと国警長官にお尋ねいたしますが、今の門司君の御要求の資料をお持ちですか。
  54. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 月報に出ておる程程度のものはさしつかえないと思います。
  55. 中井一夫

    中井委員長 別に国家公安委員会の会譲録というものはないのですね。あるのですか。
  56. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 簡単に抄録したものがございます。
  57. 中井一夫

    中井委員長 それでは今の門司委員の御要求の趣旨を体せられて、お出しになつてよろしいものをお出しをいただく、こういうことを願つておきます。
  58. 藤田義光

    ○藤田委員 国会の委員会の席上で私事を述べて恐縮でありますが、実は、私の父は三十数年間地方自治の第一線におりまして村会議員場をやつておりました。その間実に十数回にわたり、警察の留置場に選挙違反入つたのであります。あるときは、私の母も村民にぼた餅を食わせたと、うことで警察に入りまして、われわれ幼い兄弟は両親なくして非常に悲惨な生活をしたという体験を持つておる一員であります。ある雑誌は明治十年から四年間続きました川路大警視視以来の非常に強い統一されたる警察ができ上ろうとしておるという批判をしておる今回の警察法でありまして、私はせつかくの自治警の第一線に活躍されている名古屋の本部長が見えておりますので、質問はきわめて簡単にいたしますので、答弁の方も要点だけをしていただきたいと思います。  実は本部長のことを申し上げて参考人であるから恐縮でありますが、本部長は終戦前の内務省の警保局におられた方であります。経済警察を主としてやられておりまして、むしろ私は終戦後の自治警察の功罪を国会において論議し、全国民の批判を仰ぐためには、むしろ戦前の経験がない方がいいのじやないかと思うくらいでありますが、大体門司委員の質問に対する御答弁を聞いておりますと、われわれの立場と大体似たり寄つたりの御答弁をされておりますので、この機会に数点にわたり御質問しておきたいと思います。  まず第一にお伺いしたいことは、これは犬養大臣を初め政府委員は、今回の改正の一つの眼目として、共産党対策ということを非常に強調されております。私はかつて新聞記者として内務省を担当したこともございますが、共産党対策のために全警察機構が動員されたという例はないのであります。先ほどの御答弁の中に春日君を逮捕したとき相当多数の警官を働員されたということを言われたのでありますが、おそらく名古屋市警全般からすれば一部の警察官ではなかつたかと思うのであります。もし共産党対策が今回の警察法改正の一つの軸心ならば、私は何も警察機構全般をいじる必要はないんじやないか、かように考えておりますが、春日君のときに動員されました名古屋市警における動員数をパーセントでお示し願います。また共産党対策のための機構全般の改正ということは私は反対でありますが、本部長はどういう御所見を持つておられるかお伺いしたいのであります。
  59. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 共産党対策というわけではございませんが、従来のそういう方面に当つておつたと思われるような仕事をしておる者は、現在警備課、府によつては警備部と警視庁あたりは言つておるようでありますが、そういうところかと思います。結局国家治安に関する事務地方の純粋の地方治安というのですか、その住民の生命、身体、財産の安全あるいは交通、こういうような自治体の治安を維持するという式のものと、国家的な性格の非常に強いものとを対立さして考えてみるとわかるかと思うのでありますが、ただいま第一問にありました春日正一の場合には、ある一定のときに逮捕に向いましたときに動員いたしました者は九十名であります。それから私の方で常常そういうことに専念をしております専務の係員は百四十名ばかりであります。大体三%から五%ならいいのではないかと私は考えておりますが、場合によつてはあるいは一割にならなければいけないかもしれません。しかし現在の状況あるいは過去創設から今日までの状況から見ましたならば、全員の三%から五%がそれに専念をしておる、もしかの場合には全警察陣が応援をするということで、国家治安に関しても大体聞違いなくやつて行けるものだろうと私は考えております。従つてもし可能ならばそういう者をより出して、アメリカのFBIのような形の国家の特別捜査機関あるいは治安機関というようなものをつくられ、あるいはそこには、現在あります公安調査庁の一部も包含された方が好都合かと思いますが、そういうものを考えられますならば、私は今の国家地方警察も現在の自治体警察も、ともに住民に親しみ愛される、信頼される、こういうようなほんとうのサービス警察というのですか、市町村生活に密着した警察として、明朗な警察について行くんじやないかと思うのであります。たまに起るがしよつちゆう見ておかなければならぬ、しかしそういう治安事件というのは、私はそう全員を使わなければならぬと思わないのであります。この点は今後の改革の非常に重要な点かと考えております。
  60. 藤田義光

    ○藤田委員 次にお尋ねしようと思う点をお答えになつたのでありますが、現在の公安調査庁の運営を改善いたしまして、アメリカのFBI的なものを都市警察、自治警察以外につくれば、大体共産党対策は完璧であるというふうに了解するのであります。  次にお伺いしたいことは、犬養法務大臣提案理由説明は読まれたという参考人の御答弁でありますが、その中に「都道府県警察は国家的な警察事務に限つて中共の警察庁の指揮監督を受けるものといたし」と、はつきり言明されております。ただいまの御答弁とこの大臣提案理由説明を読み合せますと、私はますます今回の警察法改正は、FBI的なものと公安調査庁の運営改善ということによつて足りるのではないか、かように考えておるのであります。現在の憲法下における法律構成におきましては、地方自治体から治安の問題と教育の問題を取上げましたならば、現在の自治体の運営あるいは自活体の本質というものは完全に壊滅するわけであります。その一面をこわされようとする今回の改政案において非常に危険なものを、私は地方自治すなわち民主主義の基盤に減じておるのでありまして、今回の警察法の第一条には、民主的理念を基調とするというようなことがうたわれながらも、内等においてはむしろそれに逆行する箇所が非常に多くなつているように感ずるのであります。問題が小さくなりますが、たとえば通信施設あるいは通信業務等に関しましても、これは国家でどうしても統一しなくてはまずいということも、今回の改正の一つの理由になつておりますが、この通信の電波の波長が異なつておるために、全国の一斉指令その他に支障を来すというようなことも言われておるのでありますが、この点技術的な問題でありますけれども、国警の通信と市警の通信の調整は、どういうふうにやられておりますか、お伺いしておきたいと思います。
  61. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 ただいまの前段のFBIの点につきましては、もし国の財政なり考方が許すならば、特別のFBIみたいなものをつくられて、それが全国自警、国警の領域を問わず、区域の管轄をなくして、全国どこでもその事件について捜査をする、応援を求めるときには一般警察に応援を求めるというような形のものがでればそれが理想的ではないか、それを貫くために隊長の任免権を手に入れるということはとんでもない邪道に入つて行く第一歩だ、かように考えております。改革案を見ますと、その中に実は命令しないはずの業務についていろいろ事務分担をきめておられるようであります。どうも説明をしておられることと、法案の中のことと必ずしも一致していない点があるようであリます。そういう点は今後御審議のときに十分ひとつ御検討をお願いしたい、これは自治体の立場として特にお願い申し上げるわけであります。  技術的な問題で、これは私全国的な問題をとやかく言うことができないかと思うのでありますが、愛知県内だけに限つて考えてみますと、東京から無電で愛知県の通信の本部に来ると思うのでありますが、そういう無電は実は名古屋の無電が一緒に受けては私は困るのじやないかと思うであります。私は常非に短い期間でありましたがアメリカに参りまして、アメリカの通信の状況を見て参りましたが、広く全州通さなければならぬという無電の波と、小さな地域に使わなければならぬ無電の波というものはかえてあります。名古屋もまさにその通りになつております。最初は占領時代のことでありまして、三十サイクルが国警でありましたか、百五十サイクルを自治体警察用に占領軍にきめられたので、これはしかたがなかつたのでありますが、実際は、三十サイクルも、百五十サイクルも波長同じにして通信を一緒にやれるであります。従つて私のところでは、初め無電台がないために、三十サイクルの国警でつくられたものを買え買えということで買いまして、その後、現在百五十サイクルのものも持つております。従つて両方の施設を持つておるわけでありますが、実際は波を私の方だけで二つもらつておるわけであります。と申しますのは、私の方で使うものと消防で使うものと、これは通信官庁の仕事でありますが、同じ波をくださつて、非常に困つておるのであります。火事の最中に事件が起りますと、一方をとめて一方を聞いておかなければならぬというような状況が起つております。従つて私の方では、消防の波と別個の波を警察独自に一つもらわなければいかぬというので、いろいろ実績を出してごらんをいただきました結果、これだけのことをしておるならば、特別に波をやつてよろしいということで、実は波を二つもらいまして、日常使う波は、消防と違う波をもらつてるわけであります。もう一つの波は非常のことが、ある重要な箇所に起つた場合に、消防の災吉報知機みたいに特別の施設をあちらこちらにお願いしておるわけであります。その施設にボタンが入ると、特定の放送が無電によつて無電本部に入つて来るというようなことが構想されておるのであります。しかも私どもの波は、非常に電力を小さくしてありまして、大体名古屋だけで聞ければいいつもりでありますが、現状は豊橋の近くまで聞えるようであります。それで名古屋市内はさような波の配置をしておることの方が、実は能率を上げることになると思うのであります。全県下一斉に全部みな聞えるようにしなければならぬと考えることの方が、実は私どうかと思つておるのであります。
  62. 藤田義光

    ○藤田委員 質問が前後しますが、先ほどの御答弁の中に、警備関係、特に共参党対策を中心とする警備関係に動員される名古屋市警の人員は、総警官の大体三%ないし五%という(宮崎参考人「それは専従者の味意です」と呼ぶ)その専従者は、三%ないし五%ということを言われております。東京の警視総監のお話によりますと、大体東京におきましては、共産党対策はもちろんでありますが、総理大臣の警備あるいは国会の警備その他在外公館の警備等の非常に国家的な警備事項が多いところでございますが、ここにおきましても、せいぜい一〇%前後と言われておりす。そうしますと、私は大体この専従者のパーセントを中心に、これに国家的な職員の責任者を置きまして、それによつて自治警の全般の態勢を維持して行くことが、最も現実的ではないかと思うのであります。具体的に言えば、宮崎本部長のもとに、警備課長には国家公務員を置くというような体制をとれば、今回の改正案趣旨は大体において達せられるんじやないか、こういう気がいたすのでありますが、その点に関しましては、どういが御感想でありますか、お伺いしておきたいと思います。
  63. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 まつたく同感であります。
  64. 藤田義光

    ○藤田委員 次にお伺いしたいのは、現在の警察法の前書きには非常に地方自治ということを強調されております。われわれも、これを守つた警察でないと、権力行政なるがために、基本的な人権に重大なる支障があるということを深く憂慮する一員でありますが、今回の改正案は、非常にこの点が薄くなつて来ておるのであります。それで私は地方自治を推進するための警察制度でなくてはならぬと思う。都道府県自治というのは、いわゆる第二次的な自治体でありまして、自治の色彩が非常に弱くなつておるのであります。どうしても第一級、すなわち下級自治体たる市町村がデモクジシーの基盤である関係上、自治警察もここに根を下しておらなくてはならぬということを感ずるものであります。現在国家警察と略称されておりますが、現行の警察法のいわゆる国家警察は国家地方警察でありまして、この地方という言葉の中に、非常に自治の本旨を尊重するという趣旨が盛られておるのでありますが、今回もしこれが都道府県単位に集中されて参りますと、当然県政の総合執行者としての知事の立場、あるいは県議会の立場が、非常に微妙なものをはらむと思うのであります。たとえば名古屋市警が存置されまして、愛知県警察本部がいわゆる自治警察として併置されました場合、そういう新機構のもとにおける運営は非常にむずかしい問題になると思いますが、もし都市警だけを残しまして、この警察法が通過いたしました場合の現行法との功罪を、きわめて簡単でけつこうでございますが、率直に御答弁を願いたいと思います。
  65. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 非常にむずかしい問題で、先の見通しでありますから私よくわかりませんが、実際は地方自治体を強化しようというので、町村合併なども非常に強行されておるようであります。従つて地方自治の本来の自治体としての都市警察を残されるのを原則にしてもらいたいと思うのであります。しかしそれを言うと、それだけでは実際は警察規模なり、あるいは財政力でできないことでありますから、それをある程度の区域にまとめて、そしてそれを能率的に動かせるようにするというようにお考えいただくと非常にいいと思うのでありますが、本来の案はそうなつていないのであります。今度の県一本にされるというのを私ども自治体側として見ますと、自治体警察ではなさそうである、自治体警察の仮装をしておるが、実際は国の出先機関ということになるのじやないかというように心配をいたしております。従つてそういう意味の県政とのつながりが出て来るのじやないかと考えております。
  66. 藤田義光

    ○藤田委員 ほかにたくさん質問者がありまあすから、最後に一点お伺いします。先ほど申されました警備の関係、これは国家的犯罪に関連した問題でありますが、この警備の運用いかんによりまては憲法の保障しました基本的人権にも非常に影響が大きい場面が出て来ると思います。従いまして警備警察の運営者という方は、よほど慎重でなくてはならぬと思うのであります。この自治警察が警備を徹底的にやつて行くということになりますと、あるいは時と場合によりましては憲法違反というような重大事態を起こす危険があるように考えるのでありまして、何かかねて警備警察の運用に関しまして注意されている点がありましたら、お示し願つておきたいと思います。
  67. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 共産党対策として警察が活動いたします場合も、現在まだ共三党そのものも、共産主義も、いずれも非合法化されておらぬし、いずれにしてもいかなる犯人に対しても、憲法の要求する訴訟手続あるいは逮捕の手続をとらなければやれないわけであります。従つて名古屋その他自治体については、すべて憲法の保障する人権を極度に尊重する趣旨で、あるいは自由を極度に尊重する趣旨でやつておられるものと私は確信をいたしております。私の方はまさにその通りであります。それでできる確信を持つております。
  68. 大石ヨシエ

    ○大石委員 宮崎さんにお聞きにいたしますが、私は管区本部というのは必要ないと思います。あなたは自治体警察の隊長さんですが、区間本部というものは必要があると思われるか、ちよつと御感想をお漏らし願いたい。
  69. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 区間本部がいらないということは管区本部におられる方もときどき言つてられるようでありますが、私も感想としてはいらないと考えております。
  70. 大石ヨシエ

    ○大石委員 私も管区本部は必要がないと思います。一体日本は占領されて四つの島になりました。その四つの島になつておるのに、屋上屋を架するような管区本部をつくて、そてして国民の血税をこうした方面に使うということは、私は非常に現在不合理であると思います。宮崎さんもそういうふうにお考えでございますか、もう一度おつしやつてください。
  71. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 まさにその通りであります。
  72. 大石ヨシエ

    ○大石委員 齋藤国警出長官にお尋ねします。あなたは管区本部を非常に必要であるとおつしやいます。先日もあなたは私の申し上げるのと非常に違うことをおつしやいましたが、私は日本が現在この四つの島になつて、こんなに小さくなつておるのに、こういうようなものを置く必要はないと思う。今度の改正案においてもこの管区本部を置いていらつしやいますが、一体それはどういうような考えであるか、もう一度お聞かせ願いたい。
  73. 中井一夫

    中井委員長 大石さんの御発言なり御質疑一決して制限するわけではありませんが、参考人がせつかく出ておりまして、かつほかにも質問を希望せられる方が多々あるのであります。従いまして、一応質疑は参考人へ御集中を願つたらどうであろうかと思いますが、いかがでしよう。
  74. 大石ヨシエ

    ○大石委員 それではそうしましよう。  では宮崎さんに私はこういうふうな意見を持つておるということをちよつと聞いていただきたいのですが、管区本部というものは屋上屋をつくるものである。そしてくだらぬところにくだらぬ費用を使う。これはもつと有意義な方面国民の血税を使つたらよいと私は思う。つまり管区本部があばかりに、管区本部の人は毎日遊んでおる。たとえて言うと、東京と横浜とで事件が起つた。自動車で行けば一時間足らずで行けるきわめて近い距離にあるのに、もしここに関東管区警察局が実現すと、警察庁の長官はまず関東管区警察局長に連絡して、この関東管区警察局長があらためて県の幣警察隊長に連絡しなければならない。そこで二軍の手間、二重の時間を要する。私が合同の改正法案をあげて反対する理由はこの点にある。宮崎さんはもう少し親切丁寧に私に返事してちようだい。ほかの人にはもつと親切だつたじやありませんか。時間がなくても、もつと親切におつしやつてちようだい。
  75. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 親切にとおつしやいますが、私がお答えするぐらいもうあなたがよく知つていらつしやるので、どうも答えの内容が今あなたがおつしやつてしまうものだから、私お答えしにくいのであります。まさにあなたのおつしやる通りに私も考えておりますが、私の言いたいことをあなたがこう思うとおつしやるのだから、私も同感と言うほかはないのであります。
  76. 北山愛郎

    北山委員 宮崎さんにお伺いしますが、公安委員会の管理という問題であります。従来の警察法でも行政管理、運営管理という言葉を用いているわけであります。今度はそのような区別をやめて一般的な管理という言葉を使つている。そこでさらに国家地方警察におきましては、従来は国警長官は国家公安委員会の指揮監督に服するという言葉もございましたが、今度はそういう言葉はやめてしまつて、「公安委員会の管理の下に」という言葉にかわつております。そこで私どもはこの管理という言葉に非常な疑問といいますか、幅のある言葉の内容に興味を覚えているのですが、従来でも行政管理あるいは運営管理、あるいは従来の公安委員会の指揮監督というものにもいろいろ問題があろうと思います。これがさらに新しい警察法の管理という言葉になつたならば、その解釈が非常にあいまいになつて来やしないか、かような懸念があるのであります。管理の内容に指揮監督を含むかどうか、その指揮、監督というのはどういうものであるかについて、私どもはいろいろ疑問を持つているのでありますが、その点についてひとつ宮崎さんの御意見承りたいのであります。
  77. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 これは立案者がそういうように考えておられるのであつて、私の方からとやかく言うのはどうかと考えるのであります。立案者が管理という言葉にどういう意味を持たしておるかを十分お聞きいただいて、それを聞かしていただきませんと、私がとやかく言うのはどうかと思いますので、お許しを願いたいと思います。
  78. 北山愛郎

    北山委員 実は参考人と国警長官と一緒に並行して質問をすればいいんですが、委員長から参考人の方を主にしてやれというお話ですから、そういうことになるのですが……。
  79. 中井一夫

    中井委員長 ちよつと申し上げますが、必要のある場合はどうぞなさる方がいいと思います。御質疑趣旨が通らぬようなことでは困りますから……。
  80. 北山愛郎

    北山委員 先ほどのお話を承つて特に興味を持つているのですが、共産党に関するいろいろな情報を国警本部の方でおとりになつている。その調査は大都市の自治体警察が提供したものがおそらく主であろうというお話があつたわけであります。そういたしますと、共産党の情報交換というものは、休どういうような御連絡でやつておられるのであるか。国警本部の方から国家地方警察府県警察はもちろんのこと、あるいに自治体警察に対てしてかくかくの情報を提供せよという御指示でもあるのであるか、あるいはそれはどういう根拠に基いているのであるか、そういう点をお伺いします。
  81. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 一番最初に国家の治安に関する限りもう少し中央政府が積極的に自治体にも指揮監督をされていい部面があるということを申し上げましたが、現行法においては実ははつきりそういう点が出ておらぬのであります。ただ国警、自警相互がこういうものは連絡共助をするようにということになつております。ところが先ほど申されましたような共産党関係の情報については、相手の組織が相当広汎にわたつているわけでありますから、一地方で持つていても生きた情報にならぬわけであります。従つてこれな相互に交換する必要があると思うのであります。お互いの紳士的と申しますか、法律上いえば連絡共助に当るかと思うのでありますが、そういうつもりで相互に交換をするということでやつているわけであります。
  82. 北山愛郎

    北山委員 今の点国警長官にお伺いしたいのでありますが、一定の連絡方法によつて情報を交換しておられるのであるか、それぞれの自治体警察なり、あるいは国警の各府県警察なり、そういうものの一般的な発意によつて情報を交換しているのであるか、一定のやり方をきめて情報を交換して、その結果国警本部には一定の共産党に関する情報がまとまつているのであるか、その間の事情をお伺いしたいと思います。
  83. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 ただいま宮崎参考人から述べられましたように、お互いに情報を交換し合いませんと事実がわかりませんので、警察法に基く自治体警察、国家地方警察がお互に情報を緊密に交換をする。法律にもそういうように書いてありますし、そういうことによつてお互いに地域の接触している所と接触している所が、だんだん情報を交換し合つて上まで持つて行く、こういう形になつております。
  84. 北山愛郎

    北山委員 それでは一点宮崎さんにお伺いしますが、最近われわれはよく聞くのでありますが、警察――それは必ずしも国家地方警察とばかりは言えないでございましようが、地方関係町村あるいは地方住民に対して寄付をお願いして、あるいは割当をして寄付をもらつて警察の厚生費なりいろいろな雑費をそれでまかなつている例を聞くのであります。その形は警察の協力会であるとかいろいろな形式があるようであります。私の方の郷里にもそのはなはだしい例も知つているのでありますが、あるいは市町村に年間の経費を割当てて、一町村平均何十万円というような警察協力費というようなものをとつているということを聞くのであります。これはあなたの方ではございますかどうですか。あるいは国家警察の方にそういう例があるかどうか、御存じでございましたらお話願いたいと思います。
  85. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 私の方から名古屋市警で寄付を割当ててお願いするということはやつておりません。国警の方では――ほかのことは知りませんが、愛知県では、国警管轄の市町村に、これは県税の割合になつているのかどうか知りませんが、各町村から年間大体十五万円なり三十万円くらい、寄付という形になつておりますが、割付けになつているようであります。町村会で割付けをされている、そういうものが行われているよりであります。大体二百くらいあるようでありますから、そうすると五千万円くらいになるのかなと考えているのですが、これは詳しい数字計算してみたことがありません。
  86. 北山愛郎

    北山委員 次に、先ほどの宮崎さんのお話の中にもあつたのでありますが、国警本部におきましては、現在の警察法建前ではいわゆる行政管理でありまして、警察の執行活動の面については、地方の県の警察に対しても指示、指令、そういうものができないはずだ。しかしそれを越えてやつている例があるというお話がございました。そこで私も実はこの点に疑念を持つておりましたので、この前資料を要求いたしまして、また国警長官にもその点について前に質問をしたのであります。ところが長官は、これは教育の範囲内で行われておるのだという御説明があつたようであります。  ところが資料としていただきました昭和二十三年から二十八年までの全国警察隊長会議における国家地方警察本部長官訓示という中には、常識的に考えまして、どうしても教育という範囲を逸脱して、実際の警察運営の具体的な面に触れておるような事項が相当見受けられるわけであります。たとえば昭和二十六年の十二月五日の長官訓示の要旨の中にも、四の警備態勢の強化についてというところに、「刑事部と警備部との事務調整についてである。過般行つた刑事部と警備部との事務調整は、叙上の如き事情に処して事務の重複を避けて強力なる左右破壊分子の取締体制を整備することを目的としたものであるが、云々、それから「一方警備部としては、この賦課された責任に対え得るように十分な適材を配置し、警備陣営の捜査能力の向上に意を用い、両者協力して社会運動を背景とする犯罪の警備態勢の確立に万遺漏なきを期せられたいのである。」と言つているようなことは、やはり普通の教育訓練というような範囲を逸脱しておるのではないか。その他にも数箇所相当顕著な例がございますが、その点については長官は一体どういうふうにお考えでしようか。またこれ以外に、先ほど通牒のお話がございましたが、具体的に選挙の取締りであるとか、あるいは反税闘争に対する取締り方針であるとか、警察活動の具体的なやり方について、国警の方から地方警察に指示している例が相当あるのです。そういう点はやはり教育の範囲でございましようか、その点をはつきりとお答え願いたい。
  87. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 ただいま私の訓示要旨を例にお引きになりましたが、これはまつたく行政管理の中に入るものである、すなわち分課の組織をどうしたらいいか、あるいは警備の態勢をどうしたらいいかということは、これは行政管理の最も典型的なものだと私は考えております。また選挙の場合には、取締り方としてこういう点は注意しなければならないということ、たとえば純正公平にやるという心構えはもちろんのこと、選挙取締りについてはこういう点で人権を尊重しないようになるおそれが多分にあるから、そういう点は気をつけなければならないということは、行政管理として、また教育の面として当然のことと考えておるのであります。
  88. 北山愛郎

    北山委員 その他の例を若干申し上げたいのですが、たとえば昭和二十八年の一月二十四日に、国警本部刑事部の捜査課、参議院議員通常選挙の取締りについてという中に、違反容疑の報告のことであるとか、その後選挙通信を出されまして、そしていろいろなやり方について万全の措置を講ぜられたい云々というふうなことをやつておられる。しかも昭和二十八年の三月十四日付で刑事部長名でもつて各管区本部長等に通牒を出しておりますが、衆議院解散通知及び選挙取締り態勢について、そしてその取締りのやり方について打合公をするからというので三月十九日に捜査課長の会議を招集しておるのです。こういうようなことは一般の教育のことは――あなたの常識は別として、一般の常識から言えば、普通の警察活動の指示、運営に対する指導であるというように考えざるを得ないのじやないか思うのですが、あなたの方から言えば、これもはやはり教育の範囲でございましようか。
  89. 中井一夫

    中井委員長 北山君、願わくは参考人へ質問を集中せられんことを希望いたします。
  90. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 私はここにこういう犯罪がある、あるいは選挙偉反を犯しておる。これを取締まる上にある人を逮捕しなければならぬ。こういうことは私は運営管理だと思います。選挙にあたつてどういう点に注意をしなければならぬか、人権蹂躙は警察全体として非常に注意しなければならぬ問題でありまして、たとえば新刑事訴訟法の精神にまつたく合致をするように、そうして犯罪を検挙して行くのにはどうしたらいいか、犯罪捜査規範には、犯罪があつて逮捕しようという場合には、署長あるいはそれ以上の承認を得なければ令状を請求してはならぬ、こういうふうにきめておるのであります。ことに選挙などの場合に、ここに刑事一個の考えで令状をとつて逮捕するようなことになつては、これは人権を毀損するおそれがきわめて多い。従つて選挙の際にはそういう点を注意をする。場合によれば犯罪捜査規範を選挙に際して守つておるかどうかということを監督のできるように、そういう様式でもつくつて、事後監査をあとで隊長ができるようにしたらよかろうという注意は、私は行政管理の必要な面だと考えております。
  91. 北山愛郎

    北山委員 それは斉藤長官の解釈でございまして、行政管理の定義は現警察法の第二条にはつきりと書いてあるのです。「この法律において行政管理とは、警察職員の人事及び警察の組織並びに予算に関する一切の事項に係るものをいう。」とあつて、その次の運営管理の中にお話のようなことが書いてあるのです。ですからどう考えましても今列挙したようなことは、個々の具体的な事例について指示するのじやございませんけれども、やはり警察の運営管理であると思う。しかしこの点はさらに議論をしても何でありますから、事例をよく調べまして長官に次の機会にまたお伺いしたいと思いますがなぜこういうことをお伺いするかと申しますと、私は警察の権力を地方分権しなければならぬということは、警察権力が人民の自由なる人権を侵害しない保障のためでございます。しかしそれはやはりその国の国民の民主化の程度、あるいは警察官の教養、警察官が真に民主化された警察官であるというような程度にも関連があると思う。もしもほんとうに信頼のできる警察官がやります場合においては、ある程度中央集権の体制においても、民衆としては信頼ができる警察運営がなされるのではないかと思います。そこで現在の日本の警察官がほんとうに信頼のできる教養とあるいはほんとうに民主化されておるかということを知らなければならぬ。こういう観点から、今の警察官が法律をよく守つておるかどうか、これを私は明らかにしなければならぬと思うのであります。次に一つの例としてただいま国家地方警察基本規程をもらつたわけであります。この基本規程を拝見いたしますと、これまた現在の警察法を守られていないといういろいろな事例を見るのであります。というのは、この警察法によりますとと、警察庁の長官は国家公安委員会の指揮監督のもとに仕事をやる事務部局であるということになつておりますが、公安委員会は長官のやることについて責任を負うだけであつて、あとの仕事の執行については一切合財長官にまかせられておのるです。はなはだしいのは、この基本規程の第十条の第二項に、「長官は国家地方警察の職員の指揮、管理、規律及び服務に関する規定について、警察法並びに民主的な警察実務の改善に資するよう、必要な改正を国家公安委員会に勧告しなければならない。」とあつて委員会の指揮監督のもとに服しておる長官が、委員会に勧告をするということです。ですからその委員金の下にあるんじやなくて、同格にあるようなかつこうです。第十三条にも、長官は、皇宮警察の行う職務について、国家公安委員会委員長と定期的に協議するものとする。」となつておる。協議をする機関なんです。同格の機関のようなかつこうに書いてある。少くとも現在の警察法のもとにおいて、長官が公安委員会の指揮下にあるのですからして、こういうような勧告をするだの協議をするだのという体制にあるべきはずがない。ですからこのような基本規程を公安委員会自体がつくるということは、これは現在の警察法に違反しておるものであると私は考える。従つてこれをもしも今度の新しい警察法によつて管理というような名前にして、しかも人事権を内閣総理大臣の方へ持つて行くということになりますと、国家公安委員会のようなものは、もうアクセサリーみたいものになる。ただ民主的理念の象徴のようなものになる。悪くいえばカムフラージである。そのようなものになると思うのですが、この点については宮崎さん並びに国警長官の御両人にお伺いいたします。
  92. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 私、今のは長官に対する質問かと思つてあまりよく聞いておりませんでしたので、長官がどういうふうにお答えになるか、それを聞いて、問いがどうであつたか、ひとつよく聞いてみたいと思います。
  93. 中井一夫

    中井委員長 どうですかね。これはひとつ参人がわざわざ来ているんですから、参考人に御集中が願えないでしようか。長官はいつでも質問ができるのですから……。
  94. 北山愛郎

    北山委員 それでは長官の答弁はあとでいただくことにいたします。
  95. 中井一夫

    中井委員長 それでは長官の答弁はあとでいただくことにいたします。
  96. 中井一夫

    中井委員長 そういうことに願います。  中井徳次郎君。関連質問についてのみ発言を許します。
  97. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 関連というよりも前から通告しておりますが、宮崎参考人に具体的な人数について二、三点とちよつびり意見を伺いたいと思います。簡単に申しますから簡単にひとつ説明していただきたい。名古屋市警の定員と実在員は幾らになつておりますか。
  98. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 定員は警察長以下三千五百九十六人であります。実在員は大体三千四百六十人くらいだと思います。
  99. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 大体ということでありますが、この間に百三十人ほどの差があるわけですが、将来この実在員を定員の方に近づけるつもりであるか、逐次人員の整理をやられるつもりであるか。
  100. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 ほかの市でもそうであるかと思いますが、名古屋市警では両三年前から定員縮限の計画を立ててやつておるのであります。名古屋では、二十八年度中に百八十人定員より節減する予定にしております。あと二年百八十人を続ける予定であります。
  101. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 そうしますと最終にはどれくらい定員を減らすつもりでありますか。
  102. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 約七百人減ります。約三千人くらいの定員になります。
  103. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 約七百人の減員という計画でありますが、これによつて経費はどれくらい浮きますか。
  104. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 二億五千万円くらいになるでしようか。もつとよけいになるかもしれませんが、今はつきり覚えておりません。ベース・アップ次々に行われますから……。
  105. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 それではこの七百名の減員は、現状のままでも十分自信をもつて減員ができるわけですね。今回の改正について犬養法務大臣は、人件費、物件費の節約をして九十億の節約になると言つておりますが、現状のままでも名古屋だけで二億五千万円の節約ができるということになると九十億の節約というのは羊頭を掲げて狗肉を売るというようなことであることは、今の御答弁ではつきりしたと思いますが、さように了解をしてようしゆうございますか。
  106. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 大体三万人節約すると、一人当り今のベースで三十万円として九十億円になるというような計算になつておるかと思いますが、政府の方のことは私よくわからないのです。
  107. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 次は経費の問題で伺いたいと思いますが、名古屋の公安委員会の一年の経費はどれくらいか。それから国警の方に伺いますが、愛知県の現在の公安委員会の一年の経費はどれくらいであるか、お答えを願いたい。
  108. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 私はつきり覚えませんが、大体百五十二万円くらいだつたと思います。
  109. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 名古屋ですね。
  110. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 ええ。
  111. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 愛知県は御存じじやありませんか。
  112. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 私知つておりますが二千九百五十万円。
  113. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 その二千九百五十万円というのはほんとうですか。
  114. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 予算書に載つておるようです。
  115. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 これは非常に大きく違う数字だと思うのです。愛知県の国警の方の定員はどれくらいでしようか。ひとつ国警の方に伺つてみたいと思います。
  116. 大矢省三

    ○大矢委員 関連して。今の中井君の質問の要旨、内容ですか、国警と自治警の費用の資料、これをひとつ出してください。私どももこれが一番重要だと思いますからぜひひとつ……。
  117. 中井一夫

    中井委員長 その資料は日本全国にわたるのですか。どういうふうに区分をするのですか。
  118. 大矢省三

    ○大矢委員 国警の全体のトータル、それから自治警のトータル、このことです。
  119. 中井一夫

    中井委員長 それは府県別によるのですか。
  120. 大矢省三

    ○大矢委員 そうです。
  121. 中井一夫

    中井委員長 いかがでしようか、今の資料はありますか。
  122. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 全国をトータルしたのはすでに出しておりますが、府県別の方はこれからつくらないと――ちよつとできないかと思います。
  123. 大矢省三

    ○大矢委員 あとでけつこうです。
  124. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 それからただいま公安委員会経費の比較のお話がございましたが、これは予算の組み方が大分違いますので、従つてこれは公安委員会経費として上つておるということだけからの御比較では実態が非常にかわつて来るだろう、この思います。
  125. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 今の御答弁どういうふうに違つておるか、ちよつと御説明をいただきたいと思います。
  126. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 たとえば公安委員会経費として公安委員の俸給、それから交際費だけを含んでいるところもありましようし、また府県が公安委員会経費として、そういつた公安委員の給与というもののほかに、府県実情に沿つて支出をした方がいいというような、公安委員会の表彰費とか、そういうようなものも入つておるところもございますから、大分違うのじやないかと思います。
  127. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 私も実は三千万円くらいだということは聞いておりました。こう伺つたのでは、組み方が違うといわれてもどうも納得できないのであります。約二十倍になつております。俸給は二十倍になるわけはないでありましようし、交際費もそうたくさんいるわけはないし、私ども今度の国警の改正で、経費が非常に節約になるというふうに聞いたのですけれども、  これはあまり県の方でおやりになると、どうもゆつたりとお組みになる、この点は大いに疑問として、私どもとしては残しておきたいと思います。  その次にもう一つ宮崎さんに伺いたいのであります。この間の犬養さんの説明では、人員の整理だけではない。施設が重複をしておる。それが一本になる、こういうことを言われた。確かにそれもあると思うのでありますが、私具体的に考えてみまして、どれとどれだ、また庁舎を二本にするというふうなことはあるでしようが、それ以外に犯罪関係で、施設が国警と自警が重複をして、非常に不経済であるということの具体的な大きな問題がありましたら、ひとつお知らせいただきたいと思います。
  128. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 施設がダブりはしないかということはよく言われるのでありますが、私どもが考えておりますことでは、実はダブつておらぬように考えております。それは警察学校について考えてみますと、私の方の警察学校では、現任官の教養を一常にやつておるわけでありますが、これは愛知国警でもやつておられます。しかし私の方では現任教養だけをやつておるので、初任官の教養については愛知県の学校に頼んでおるわけであります。現に巡査になつておるものの教養は、これは名古屋市向きの警察官、名古屋に来ておる警察官の教養であります。名古屋市向きの警察官の教養をすべきである、そういう意味では一緒のところで漠然と教養をするのは私は間違つておると思うのであります。そういう意味では特殊の警察学校がいる、従つて現任教養だけをやつておる私たちの学校施設は、別にダブつておるとは考えておりません。その他に自動車学校、自動車の免許試験場があります。私営の分も県の分も、いずれも満員の状況であります。県はそのほかに一、二箇所支所をつくつておられるようでありますが、名古屋市の分も実はもう一ぱいで、また増設をしなければならぬような状況になつておるのであります。たとい警察が一本になりましても、この施設を一本にするということはできないかと思います。庁舎の関係が二重になるということが考えられるかと思いますが、庁舎については、これは愛知県の庁舎を国警は使つておられるようであります。私らは創設後つくつていただきまして、そこに入つておるわけでありますが、よくよく考えてみますとダブつておると思われるのに非常におがしな点が私はあると思うのであります。結局本部の庁舎がダブるということを言われるわけでありますが、本部の庁舎に今五百六十人ばかりおると思いますが、そのうちの三百五、六十人は、実は第一線の仕事をしておるものであります。従つて庁舎が特にダブつておるというようには私考えないので、事務を持つておるものについてどうかということになるかと思うのでありますが、その事務を持つておるものの庁舎を考えてみましても、結局そう大きなダブりになつておらぬと思うのであります。その点は、私らの考えを逆に申し上げますと、過去六年間名古屋市のまん中におられたわけであります。国警本部が東京におることについても、私その当時自治警が独立する前の警察法ができるときの経緯を聞いておりますと、国家警察の本部というのは、これは警察運営そのものには関係しない。人事、予算あるいは通信、鑑識、こういうようなことで、警察運営そのものに関しないから、何も東京におらぬでもいいだろう。山梨に引越したらどうだ、山梨は国家警察のルーラル・ポリスの管轄区域ではないかと言われて実は弱つておるというようなことを言つておられたのですが、そういう考え方もアメリカさんがしたらしい。私らもよく考えてみると、大都市の中に国警本部を無理に置かんでも、自分の管轄区域の方でしかるべきところに置かれたらそれでいいんであつて、大都市の中に二つあるといつて市側のが余つておられるように考えられておることは、私都市側としては非常におかしいと考えております。
  129. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 先ほどの公安委員会の費用の計上の仕方が非常に違うというお話、たとえば国家地方警察の方では、府県府県費で出す関係の費用というものは、全部公案委員会の費目に掲げられてあるわけであります。従つて自動車の運転免許に要する経費であるとか、そういうものまで全部公安委員会経費として組まれるわけでありますから、自治体警察と公安委員会経費とその内容が、そういう意味で非常に違つております。それからついでに愛知県の警察官の総数は千七百七十五名であります。
  130. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 先ほど寄付金の話がございましたのですが、これは宮崎さんは他管内であるから知らぬかもしれませんが、大体五千万程度であろうということでありますが、そういう意味で、形式はいろいろ公安委員会とかなんとかいうものをつくつてつているということですが、地方自治体が国警に対してとにかくも寄付の形でしたものが全国で総額どれくらいになつているか、国警の方おわかりになつたら関連してお答え願いたいと思います。
  131. 柴田達夫

    ○柴田(達)政府委員 先ほど来寄付のお話も出たようでございますが、これは国家地方警察として町村に対して寄付を割当てているということは、やかましく制限をしている問題でありまして、そのようなことはないと思います。いろいろの町村の団体等が自発的に寄付をするというような事例はあるかもしれませんけれども、これについてはもちろん統計を持つておりません。
  132. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 どうもそういうような法律的な解釈をされますとその通りでありますが、現実は日本国民全体が自警以外のものには相当な寄付をとられておる。先ほど名古屋の宮崎さんが名古屋市ではとつておらぬとおつしやつたけれども、私は実際は多少はとつておるのではないかと思います。たとえば交番をつくるとかなんとかいうときに地元の人からとつていると思う。こういう面についてあまり法的な表解釈だけで御答弁なさらずに、もつと近代国家として国民警察についてはつきりとした意識を持ち、また警察の側も国警、自警を問わず、こういう寄付行為は将来やめるようにしていただきたいと思います。  最後に一つ。自警の方が能率が上るとか国警の方が上らないとかいう問題について、実は名古屋のある市民から伺つたのですが、一つの例であると思うのでありまするが、名古屋においては自動車の免許状を与えるのに、十名の警察官がかかりまして昭和二十七年度か八年度において、大体一年七万数千件の検査をやつておつた、ところが同じように愛知県にある国警におきましては、十三名かかつてそれよりも二万ぐらい少い数字を扱つて、しかも非常に困つたことには、自警の方はすぐに免許状を与えたけれども、国警は十日ないし二週間置く、こういうものが一つの例である。市民はよく見ておるから、名古屋市の市警の人たちの方は大いに勤勉で、そういうサービスをやつておるのだ、こういうことを実は伺つたのでありますが、そういう事実は話通りであるかどうか、宮崎さんから御返答をいただきたいと思います。
  133. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 詳しい数字は私今持ち合せませんが、地方警察でやつておられるよりも私の方が件数か多いように思います。二十七年に名古屋市警が六万四千八百二十四件、国家地方警察が五万二千二百一件、二十八年に市警が八万六千八百八十一件、国警が六万七千九十七件、お説の通り数字であります。これを扱つておる人数はこれでは名古屋市の方が五人少くなつておるようですが、大体私の方は、きよう試験をしますと、明日の午前十時からは全部渡すということでやつております。国警の方では大体十日ないし二週間かかつておるようでありますから、それは運転手さんがそう言つたかもしれませんが間違いありません。
  134. 藤田義光

    ○藤田委員 関連して。ただいま国警と自治警の能率の問題に関しまして、生きた資料をひつさげて中井委員から御質問がありましたが、ひとつ全国各地にわたる総合的な資料を国警当局でおつくり願いまして、当委員会に出していただきたい、これは希望であります。
  135. 中井一夫

    中井委員長 具体的な内容はどういう資料ですか。
  136. 藤田義光

    ○藤田委員 能率、資格です。これは非常に重要な資料でありますから。たとえば今の自動車の免許に関する実際の専従者数、あるいは件数等の比較、こういうものをひとつつくつていただきたいと思います。  それから関連して、先ほど中井委員から都道府県公安委員会の問題が出ましたから、それに直接関連いたしませんがお伺いしておきたいと思います。都の公安委員会の委員というものは、御存じの通り全国人口の約一割、七百数十万の人口を代表して都知事が都議会の承認を得て任命するわけでありますが、この改正法によれば東京都の公安委員というものが警視総監の人事に関しましてほとんど権限がなくなつてしまいました。これはほかの道府県の公安委員に比較いたしまして、非常に重大なことと思います。私は、政治、経済、文化、教育の中心地である、しかも全国の人口の一割を占むる東京都民の代表たる都の公安委員が警視総監の任免に関しまして権限がほとんどなくなつてしまう、これ非常に重大な事実じやないかと思います。これに対する宮崎さんの所見を伺いたい。  次にもう一点お伺いしておきたいことは、富崎さんも最初に答弁されたように、巷間盛んに、財政負担にたえないために自治警を廃止するという動きがあるのであります。これは私は主義主張から言えばまことに嘆かわしいことでありますが、現実の問題でありまして、あるいは十五万以上の都市警察を残せ、あるいは三十万とかいろいろ言われております。宮崎さんは百二十万の大都市警察の本部長をされておりますから、質問が適当でないかもしれませんが、もし都市警察を存置するという前提のもとに論を進めました場合におきまして、大体警察官がその本来の使命を最も有効に果せる最低規模単位、これはどのくらいの都市であるか、これは一警察署の理想的な単位ということにも関連して参りましようが私は少くとも一都市内に複数の警警察署を持てるところでないと、効率的な警察の運営はてきないんじやないかと思います。そういう観点からしまして最低限の、しかも大体支障なき警察運営をするためには、どのくらいの入口を擁するところからか適当であるか、これは第一線で十年近く体験されました宮崎本部長の率直な御見解をひとつ披瀝していただきたいと思います。
  137. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 都の公安委員をどういうふうにしてきめるかということでありますが、これは帝都という特殊の性格を持つておりますので、その他の都市、府県と同様に考うべきかどうかというようなことについて、非常に大きな問題を含んでおると思います。従つて私のように帝都に関係のない者がとかくのことを言うのはどうかと思いますので、これはひとつ私にそういうことについての発言の能力なしということで、お許しをいただきたいと思います。ただ東京都の取扱いを帝都という立場から特別にするにしましても、東京都議会と何らかの緊密な関係がある、あるいは長官と関係があるということにならなければならぬのじやないかとは思うのであります。そういう調整を政府と東京都知事と東京都議会がいかようにやられるか、これは十分研究を要することかと考えます。私個人の意見は申し上げかねます。  第二番目の、自治体警察を六年間やつて来て、何らかの結論が出ておるのじやないかということ、なかつたら自分の個人的意見でも率直にということでございますが、都市警察を抱えておられました全国の市長さん方がお集まりになつて、いろいろ御協議になつた結果、昨年の秋一度人口十五万以上都市がいいんじやないか、十五万以下については、任意にその議会、その都市の住民の意思によつてやめさしたらどうだろうということが決定になつたことがあると思うのでありますが、これは私、大体十五万以下くらいの都市の警察長か市長に意見を申し上げて、さようになつたのではないかと思うのであります。市長さん方が全国の会議でそういうようにきめられたということについては、ある程度、全員そう賛成されたかどうか知りませんが、警察長の中にそういうお考えの方がたくさんあつたろううと考えております。また衆参両議員をたくさん含んでおられます地方自治確立連盟とかいうところでも、大体それに似た線が出たように聞いておりますし、学者の方が御研究になつたのでも、大体それらの線が出たやに聞いております。私自分で考えてみますと、愛知県下で十五万と申しますと、ちようど豊橋市でありますが、警察二つあります。今二百五十人くらいおるかと思いますが、大体一つの警察単位としてやれるんじやないか、何かのことが起つても、一応のささえはつくし、やれるんじやないかと思いますが、これは私の豊橋を見ての考え方であります。その他の都市をいろいろあげられて、これも十五万だがどうだと言われても、これは土地の状況なんかもあり、なかなか困難ことであります。豊橋の署長さんのやりぐあいを見て、独立しておやりになつても、りつぱなものだと私考えております。
  138. 西村力弥

    ○西村(力)委員 先ほど自動車の運転手の免許状発行について、国警の方が少し能率が劣るというお話がございましたが、宮崎さんのお話では、一番最初に国警側の非能率の問題を自分も知つておるとか、考えておるとかいう御発言がありましたが、何もお互いにどろ試合をしてもらうわけではなく、私たちの審議の参考のために、許される範囲で御発言願いたいと思います。
  139. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 総じて能率の問題が出た場合に、私はほかの府県のことをよく知りませんが、聞いてみると大体同じような状況のようでありますから、足の一角に触れて全象を想像するようなとになつておるかもしらぬと恐れながら実は私申し上げるわけでありますが、愛知県下の小さい自治体がたくさんありまして、それが二十六年五月の法律改正であつたかと思いますが、そのときは、小さな警察は非常に非能率だ、そういうところには昔から大体一人か二人おればよかつたところに、七人も八人もおるからということで、合併になつて数年たてば、相当人員の整理ができとるのじやないかと思つておつたのでありますが、合併後そういうことが行われておりませんので、どうも合併されたときとその後とでは、治安情勢が非常にかわつたのかどうか知りませんが、どうも人が多過ぎるのじやないか、そういうように考えておつたわけでります。今度いろいろ表をとつて調べてみますと、国警の方では非常に幹部が多いようであります。愛知県にだけで見ますと、巡査二人弱に対して幹部が一人おられるようであります。名古屋市警などで考えますと、四人に対して一人になつておるようであります。結局机にすわつて、書類が来ないかと思つて判こを特つてつておる人がたくさんおつて、実際に町をまわつてほんとうに市民を保護する人が割合に少いというような形があるように思うのであります。そういうことが能率の上らぬもとじやないかと考えております。能率が上らない原因の一つは、小さな都市でもそういうことがあり得るのじやないかということを考えておるのであります。この点を十分検討しなければ、実は能率の問題は簡単にきめられぬじやないか、私はさように考えております。国警の方では二十六年五月に、小さな自治体を集めたから、幹部を必要としないのに非常にたくさん幹部が入つて来て、実は整理ができないで困つておるのだというような御説明がしたいかと思うのでありますが、昨年の秋に法律改正がありまして、逮捕状を、請求する場合には、警部以上がやらなければならぬということになりました。そうすると、それまで署に二人おり、三人おり、あるいは四人おつたところでも、また大体一人ずつ警部をつくられたようであります。そうすると、何か仕事が一つふえるごとに警部をおつくりになるのかなというように思うのであります。何だか整理をされるのか、そういうように変なポストをつくられるのか、終始一貫しておらぬように思うのであります。今度の人員整理ということが起つた場合に、急に人減らしをしなければいかぬということで、しかもその大部分が何らの御相談もなく自治体でかぶらなければならぬというようなことは、私は非常に遺憾に思つております。
  140. 西村力弥

    ○西村(力)委員 それはわかりました。つかぬことをお伺いするようですけれども、宮崎さんの御経歴は、戦前から警察官をなさつていらつしやるのかどうか、それをお聞きしたいと思います。
  141. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 私、昭和八年に内務省に入りまして、昭和十二年の夏に滋賀県の警務課長になりまして、昭和二十年十月十四日ですか九月十四日ですか、一斉罷免になるまでずつと警察におりました。
  142. 西村力弥

    ○西村(力)委員 それでは戦前警察方面を担当せられて、戦後は警察官といいましても自治体警察の長となられた、その二つの場合の御感想をお聞きしたいんです。とにかく戦前は、近く逮捕者の犠牲者の慰霊祭も行われるということで、われわれにも案内が来ておりますが、その実情を調べてみますと、虞殺とか獄死とかいうのが非常に多い。なお病死なんかでも、これは無理な投獄とか、たらいまわし、あるいはテロ、そういうものによつて病気が高進して死んだというのが非常に多い。そういう警察行政が行われた時代にどういう感想を持たれたか、そして現在どういう感想を持たれていらつしやるか、この点についてお伺いしたいのであります。
  143. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 私、戦前に特高課長もごくわずかの期間でありましたがやらされたことがありまして、そのとき先輩各位からいろいろなことを聞いたのであります。また長い経歴を持つた特高の係の人から、それが私の部下にたまたまなつておつたために、いろいろ話を聞いたのでありますが、戦後新聞にいろいろ書かれたようなことを具体的に私は経験したことはないのであります。そのような話は聞いておりますけれども、具体的には私は自分では知らぬのであります。戦争後私一斉罷免でやめておつて、幸いにというのですか、不幸にしてというのですか、追放にならなかつたために、名古屋市警ができるときにどうだと言われて、実は行くことは行つたのでありますが、行くときに実は非常に心配をいた。どういうことを心配して行つたかと申しますと、ただいままで言われております警察がばらばらであるために、おそらく従来自分が警保局のもとで働いておつたときのような警察は二度とできないだろう、やれるだろうかと非常な危惧を持つて行つたわけであります。行つてつているうちに、ほんとうにこれはなかなか容易ならざることだということ思つたのでございますが、やつておるちに結局県内の警察長の連合会ができ、あるいは全国的に警察長の連合会ができて、いか警察を運営するかというようなことで、それぞればらばらに独立しておるはずの警察が運営について重点的に相談をして、それではこうやろうじやないか、ああやろうじやないか、あれの取締り方針はこうしようじやないかというようなことで、いろいろお互いが苦悶の中から研究をしつつ方針を打出して、それをそれぞれ公安委員会に諮る。公安委員会でも独断でやると間違いがあるというので、県下でまとまり、あるいはブロツクでまとまり、あるいは国に対するような関係のものについては全国的なまとまりのある全国公安委員会連合会というようにして連絡、協調をする組織が法律のほかにできて来たのであります。そうするとそこでほんとうにお互いは手をつないでおるという気持が出て来て、結局協力態勢が初めてでき上つたと思うのでありまして、初め私が心配しておつたようなのは、それは法律ではできないことであります。しかしながら法律の外に人がほんとうにその気持になれば連絡、協力をする方法があるのであります。それをみごとに自治体は公安委員会の部面においても警察長の部面においても打立てたので、従つて全国の国警については東京の本部でいろいろごめんどうは見ておるかもしれませんが、自治体に関する限りは東京の警視庁に両協議会の本部を置きまして、そこの事務局でいろいろまとめをしてもらつておるわけであります。それによつて実は非常に強固な連絡組織、協調組織かできましてこれは単に何かの要求を政府にするというようなことではなくて、日常の業務を行うについて自信を持つてやれるようになつたのであります。その組織は県におきましては国警隊長がその中に入つておられるのであります。国警隊長と一緒に全県下の自治体警察長が会談をつくつて、県下においては国警と自警との連絡がその機会を通じてなされるのであります。国警はこういうふうにしたいというし、自治警はこういうふうにしたいといえば、その間相談をしてまとめる。命令の立場ではなくて、上下の立場ではなくて、連絡、協調、あるいはお互い対立しておるように人は言いますが、対立ではなくて、お互い権限を尊重し合いながら援助して、そうして一つの目的に行こうという態勢が県においてもでき上つておるわけであります。ところによりましてはそういうような組織ができておるにかかわらず、必ずしもうまく行かないというような点もありますが、幸いに愛知県には非常にりつぱな隊長が毎度見えました。従つて自治体に対しても非常に御理解のある方ばかりであります。従つて弱い自治警があればその弱い自治警をいかように助けて行こうかというようなことで非常に御心配をいただいたわけであります。国警と自警との連絡がうまく行つておるということについては、私今日まで愛知県は全国的に有数であつたろう、かように考えております。従つてここにおきましてときどき国警の悪口を言うのは私非常に心苦しいのであります。決してどろ試合をするつもりで言つておりません。従つて現場では私こういうことは申し上げないのです。今日ここに出て来て委員会で御質問になるから、これは公式の答えとして申し上げておるのでありますが、決して私は愛知国警を悪く考えておりません。非常によくやつておる。私らもよくやつておる。両者互いに連絡協調してうまくやれば、この制度で必ずうまく行くという確信を私は持つておるのであります。私が初め二十三年の三月七日に自治警の長になつたときと、まつたくかわつた感じを持つております。たくさんの先輩が議会にもおられるわけであります。ことに警保局で非常に長い経験をお持ちになつておる先輩の方もたくさんおられます。そういう方々は、不幸にしてちようど私が二十三年三月七日に考えたようなことを――まだ自治体の六年間の実際の運営を御存じにならないので、私が二十三年三月七日にした心配を現在しておられはしないかということを、私よくその辺がわからないのですけれども思うのであります。
  144. 西村力弥

    ○西村(力)委員 かつての警保局長時代には命令一下警察権を広汎に強力に使用できたわけであります。それをカバーするための御苦心が成功に導きつつあるという目信を持つてやられておる点、われわれとしても非常に心強いのでございますが、現在名古屋の市警の隊長をやつていらつして一番こわいものは何でございますか。質問はとつぴでございますけれども、しかし公政を担当しておる方として自分が何物か恐れるものがなければならぬ。これは大きく言えば国民、人民ということになるでしようが、現在の立場に立つて最もこわい――こわいといつては言葉が少し過ぎるのですけれども、そういうものはどこにあるか。常々どういう気持でお仕事をなすつていらつしやるか、その点をお聞かせ願いたい。かつてはやはり自分の上長とか、人事権を持つ人々、そういうものに対して畏敬を打つたであろうと思うのですが、現在どういう気持ちでいらつしやるか、これを承りたい。
  145. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 ちよつと今の質問の御趣旨がよくわからないのです。こわいというのはどういう意味か、警察取締りの対象としてこわいのですか、何かよくわからないのですけれども……。
  146. 西村力弥

    ○西村(力)委員 警察行政を担当する者として恐れるものというか、端的に言えば普通の官吏は上の役人が恐しい、人事権を持つておる人が恐しいということになるのですが、あなたは市警の隊長として一番恐しいのは何であるかということです。
  147. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 よくわかりました。市民であります。
  148. 西村力弥

    ○西村(力)委員 私の質問はちよつと法案に直接関係がないようでございますが、ほんとうに市民がこわいということによつて警察をやられておる、その通りであると思うのですが、しからばそういう市民を敬愛するというか、そういう立場を実際に警察の運営にどう反映しようと常々考えられておるか、そういうことについて特に具体的な例、かつて警察官であつたらこうするであろうが、新しい都市警察の隊長としてこういう事件のときに、市民を大事にする立場からこうしたという事例はございますか。
  149. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 これは正しいことかどうかよくわかりませんが、一、二事例をあげたいと思いますが、共産党の取締りについて考えてみましても、共産党に強いような警察をつくるということでは、私は必ずしも目的を達せんと思うのであります。共産党を取締るために一番大事なことは、共産党でない市民の方と警察が一体になつておらなきやならぬということだと思うのであります。市民から親しまれ、愛され、信頼されるような警察をつくることが、実は共産党を浮き上らせる、過激な分子を浮き上らせるということになるかと思うのであります。そういうような警察をつくつておけば、少々扇動やアジが行われても私は大丈夫かと考えております。従つて常に警察の側に、市民にあつてもらわなければならぬという立場ですべての取締りなり、法の執行は行わなければいかぬのではないか、かように考えております。事例をとりますと、救急車というのがあります。これは名古屋では消防で運営しております。救急車を派遣する場合の規定は屋外、たとえば道路で交通事故が起つたといつたようなときに限つておるようであります。私の方ではパトロール・カーが四六時中町をまわつているわけでありますが、救急があつた、あるいはお産が急に起きたというようなことで、もし警察の百十八番へ非常電話がかかつて参りましたならば、そういうものは救急車で扱わないということになつておるので、消防の方ではお断りしますが、警察では飛んで行つて送ることができるものであれば乗つけて送るし、医者を連れて行つた方がいい場合は医者を乗つけて送る。あるいはは輸血するために、血液銀行から血液を送るというようなこともやつております。またよそのいなかから出て来て道に迷つておるというような人には、番地がわからないとか、どうも見当がわからないというようなことであれば、すぐに無電で本部にかければ本部でそれを関係の派出所の方に連絡をいたしまして、その家ならどこにある、どう行けばよろしいということで、そこに本人を乗せて連れて行つてあげる。迷子を見つけたならば、その見つけたところですぐに本部に発信をして、こういう迷子がここにおるが、見当らないかということを本部に聞く。本部の方はできるだけそれを民間放送にでも頼んで、ラジオで出すというようにして、わかればすぐ連れて行つてあげるというようにして、とにかくどんな小さな事件でも、いやしくも百十八番にかかつて来た以上は、必ずパトロール・カーは行けということにしております。大体十五台持つて運転しておるわけでありますが、夜中でも八台か九台は常に動いておるわけであります。従つて電話がかかつて来ておる最中に、もうパトロール・カーが現場に行つたという例は非常に多いのであります。よつぱらいがあばれておる、あるいは難癖をつけておるというようなときに、行つた事例は非常に多いのでもります。市民の側から考えますと非常に事件としてはつまらない事件であります。しかしながら警察がそんなつまらない事件でもすぐに来てくれるという感じが、実は私治安維持に非常に大事だと思うのであります。年に一ぺんかニへんしか起らないような行動をパトロール・カーがつかまえるよりも、電話がかかつて来るたびに、どんなつまらない事件だと思つても、パトロール・カーが行つてやれば、警察はなるほどよくやつてくださるという安心感、信頼感ができる。そうすれば初めて私は、そこに警察と民衆の間に血が流れると思うのであります。血が流れておる限りは、共産党が少々あばれても、それを浮き上らせることができる、かように確信しておるのであります。従つて名古屋のパト・カーの使い方は、あるいは六大都市のパト・カ―の使い方と違うかもしれません。しかしいやしくも百十八番にかかつて来た以上は必ず現場に最も近い車がまつ先に行き、そうしてどんなつまらないことであつてもよろしい、御用を勤める。そうすれば今度はそこの奥さんなりお宅の人が会社に行き、あるいは自宅の井戸ばた会議と申しますか、そういうところで市警の車がすぐ来てくれる。ああいうふりならばどろぼうが入つても大丈夫だとか、あるいは何が起つても大丈夫だということになる。そういう感じが私治安維持の一番大事なところだろう、この考えておりますが、これは私の考えが当つておらぬかもしれません。
  150. 大矢省三

    ○大矢委員 簡潔に二点だけお尋ねいたします。今度のこの改正法案は、治安の確保と責任の所在を明らかにするために、どうしてもしなければならぬという政府説明でありますが、たとえば幹部を任免するとか署長を更送するとかいうふうな場合に、本部長が原案を立てられて、公安委員の承認を得て任免されるという実例があつたかどうか実際の運営をお聞かせ願いたい。さらにいま一つはどうもあれは適当でないというので、羅免を公安委員から本部長に要求した実例があるかどうか。つまり更送さすとか何とか、人事について公安委員会相当の意見があると思いますが、そういうことについての任免というものを、どういうふうに実際運営されているかということが点。  それから、御承知のように今度の警察法改正では、府県の本部長は警察庁長官から任命されるのでありますから、警視正以上は国家公務員であります。それからその下にいる警視といいますか、署長あるいは幹部の人たちは、これは自治体の雇い人であつて、すなわら地方公務員である。一体地方公務員を国家公務員が任命するとかあるいは更送守るとか、人事権を左右することをどう考えるか、これは何だか私は割切れぬものがあると思う。かりに雇い主である自治体の長の市長が、あの人は必要だ、なるほど非難もあるかもしれないが、どうしてもこの人は必要だと言うが、よそから来た国家公務員である府県の本部長が、あれはいかぬからやめさせろと言つて、よその雇つている地方公務員をかつてに任免できることになるですが、これではどうも本人も割切れぬでありましようが、そういう雇用関係からいつても割り切れぬし、うまく行かないと私は思う。もしこの法案が通過すれば、本部長として経験のあられる宮崎さんは、一体このことをどういうふうにお考えか、参考のために、ぜひお聞かせ願いたい。つまり公安委員会の運営の実情と、それからこの法案が通つたときは、いわゆる本部長は国家公務員であり、その下のほとんど九割九分までは地方公務員であるが、その地方公務員の人事権を本部長が左右することはどうか、この辺とうも割切れぬと考えるのですが、その二点について……。
  151. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 現在の状況につきましては、国家公安委会に全部の案を特つて行くわけに参りませんので、私のところでは、本部の次長、部長、課長、それから各署の署長の異動案をつくります場合には、必ず持つてつて御承認を得て発令するようにしておりますが、今まで、あの署長をやめさせたければいかぬとか、あれをこつちに持つて行かなければいかぬというようなことの、御要求を受けたことはございません。  今後のことにつきましては、私この法案に実は全面的に反対をしているので、それが実施になるときのことについては、どうもお答え申し上げかねます。
  152. 大矢省三

    ○大矢委員 この法案では、国家公務員である本部長が、地方公務員である者を自由にできることになつているが、あなたの経験からいつて、一体そんな人事がうまく行けるかどうか、私は非常にぎごちないものが必ず出て来ると思う。それで長としての経験を持たれるあなたは、こういう法案が通つたときに、矛盾を感じないかどうかと  いうことです。
  153. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 そのことについては過去にそういう例がありました。戦争前  の警察においては、たしか警部以上が官吏であつたかと思いますが、警部補以下が県の吏員であつたはずであります。そういうことで判任官待遇か何かではありましたが県の予算になつておつたはずであります。今度も大体そういうことになるかと思うのでありますが、任命そのものあるいは異動そのものは、法律でそういうような権限があることになれば、必ずしもおかしくならぬかと思うのでありますが、これが実施をされましたあかつきに、私非常にぐあいが悪いことが起こつて来るだろうと思うのは、給与の関係であります。給与が非常に違つております。それを調整するために、一方の方は上げないで一方は上げるとかいうようなことが起つて来るかと思うのでありますが、ある場合には本給が削られて手当にするというようなことも聞いている。そうすると、本給が削られて手当になりますと、これは恩給に関係をして来るのであります。従つてあの給与というものは非常に深刻な問題をはらんでおるのであります。実際はそういう詳しいところまでは本警察法改正案内容について検討いたしておりません。大筋についてだけしか検討いたしておりませんからよくはわかりませんが、この給与の面は非常は深刻なことになつて来る。そうするとたまたま法律はできました、しかしながらこれを動かす人たちがしつくりした気持になつてやらぬのではないか、こういうことを思うのであります。いかに法律が理想的にできましても、それをになう警察官の気持にしつくりしたところができなかつたならば、これはちよつと問題であります。警察というものは、私が申し上げるまでもなく渾然たる統一体でなければいかぬのであります。上は警察長から下は巡査の全員に至るまでが、同じ歩調で同じ方向に常に歩いておらなければならぬものと確信をいたしております。ところがその中に変な考え方をする、どうも考え方が統一できない、これは生活にからんでおりますから、非常に深刻であります。そうすると命令はされても上下べりをするというようなことになつ来ますと、今後起つて来ることの予想せられる経済上の不安、あるいは社会上の不安、あるいは政治上の不安こういうものが錯綜して複雑な世の中になつて来た場合に、数だけはそろつておる、一本になつておると言いながら、実際は腹の中でほんとうに一本になつておらないものが、どんなにたくさんあつても烏合の衆であります。その点をよくお考えになつてやらぬと、今年の秋ごろはとんでもないことが起つて来はせんかということを心配しております。
  154. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 この機会に、私は宮崎参考人の御意見については何とも申し上げませんが、事実の点について若干申し上げておきたいと思います。特に申し上げたいと思いますのは、国警に幹部が多い、ことに最近刑事訴訟法の改正があつて警部を増した、何か仕事がふえると幹部ばかりを増す、こういうことでございましたが、国警の方に幹部の数が多いのは、国警の性格あるいは地方の署の性格と申しますか、こういう面からやむを得ないことだと思つております。署を配置いたしますのは、おのずから地勢その他に左右されるのでありまして、従つて署には署長その他必要な幹部というものがどうしても必要になります。また県本部におきましても小さな自治体警察の事柄につきましても、いろいろと先ほどお話がありましたように、ある意味においてお世話を申し上げるこいうような面からも幹部が多くなつて参ります。昨年の警部の増員は、これはむしろ国会の御希望もそこにあると私は考えたのであります。法務委員会において刑事訴訟法が論議をせられまして、人を逮捕する場合に少くとも警部以上の者の判断によつて、逮捕状を請求してもらいたいということから、さように御修正に相なりまして、私どももなるほどその通りである、この点今まで気づかなかつたのはいけない、むしろ人権に関係のあるような事柄を扱う主任者、あるいはその直接の補佐というようなものは相当人格識見の高いものでなければいけないのだ、これは巡査部長や警部補にまかせておいてはいけない。そういう意味から警部補でやつておつたところを、警部でやつてもらいたいということが、人権尊重上どうしても必要だ、かように考えて来て、他の警部補あるいは巡査部長を減らして、識見のあるものを警部に登用するという方向に進んでおるのであります。この点は特に御了承をいただきたいと思います。
  155. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 今の説明を聞いて私非常に遺憾に思うのであります。何だか私らの方で人権を尊重上ないでやつておつたかのような印象を受けたかと思いますから弁明をいたしておきます。私の方では刑事課長が警部で従前からおりまして、警部以上でなけれぱ逮捕上の請求はできないことにしてあつたのであります。署長がおれば必ず署長、署長が不在の場合には次長次長もいなかつたならば刑事課長、警部ということで、あの法律ができる前から、指令をまたずしてちやんと警部でやつておつたわけであります。従つて今度新しい制度ができましてからも、私たちはその線を崩さないでおるのであります。原則として署長がやるべきものだ、かように考えております。従つて署長のもとに主任警部がおられるところにまた警部を増さなければ人権の保護ができぬというようには、私らは考えておりませんからさよう申し上げておきます。
  156. 中井一夫

    中井委員長 一応皆さんの質疑は終了したと存じます。宮崎参考人におかれては、遠方のところわざわざおいでをいただいて御苦労に存じます。  なおこの機会に、ほかに特にこの警察法改正につき、皆さんに申し上げたいと思われることはございませんか。
  157. 宮崎門郎

    ○宮崎参考人 ありません。
  158. 中井一夫

    中井委員長 それでは御意見もなしと承りました。
  159. 中井一夫

    中井委員長 本日この委員会をどうするかは後に御相談をいたすことにいたしまして、この際お諮りをいたしたいことがございます。きのう設置いたしました地方財政再建整備法案審査小委員会の小委員長及び小委員の選任についてお諮りをいたします。これは投票の手続を省略して、委員長より指名することに御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 )中井委員長 御異議なしと認め、さようにいたします。まず小委員には、     加藤 精三君 前尾繁三郎君     吉田 重延君 床次 徳三羽     藤田 義光君 阿部 五郎君     西村 力弥君 伊瀬幸太郎君     中井徳次郎君 松永  東君の十名を煩わし、小委員長には床次徳二君を指名いたすことにいたします。  それでは本日はこれをもつて散会いたします。     午後五時九分散会