○柴田(達)
政府委員 引続きまして逐条の説明を申し上げます。第二節
都道府県公安委員会のところであります。
第二節の
都道府県公安委員会の職制は、ほとんど
現行法の
都道府県公安委員会の規定と
かわりのない点が多いのでございます。特に逐条の条文の比較表をごらんいただきますれば、その点はここが一番比較しやすいと思うのであります。
第三十八条は、
府県公安委員会の組織及び権限を定めておるのでございます。
都道府県知事の所轄のもとに
公安委員会を置くことも、三人の委員をもつて組織することもまつたく現在と同様でございます。ただ現在は御承知の
通り国家地方警察と
市町村自治体警察との両方にわかれておりますので、
都道府県公安委員会の方は
現行法におきましては
都道府県国家地方警察の
運営管理のみを行うことになつておりまして、
都道府県国家地方警察の
行政管理は
管区本部長が行うということになつているのでございますが、今回はかねがね御説明申し上げておりますように
都道府県警察ということになりまして、まつたく
都道府県というものが一本建でその警察の責めに任ずることになりますので、第三項では
都道府県公安委員会は
都道府県警察を管理するということにいたしまして、
ひとり運営管理のみならず、
行政管理につきましても全面的に
都道府県警察を
公安委員会が管理するということにいたしたのでございます。
都道府県公安委員会に関します限りは、
現行法と比べまして、その
管理権の範囲は非常に広がつているわけでございます。それから第四項に、
都道府県公安委員会の
規則制定権を認めたのであります。これは
地方自治法によりまして、
委員会は法律の定
むるところにより規則を制定する権限を持つておりますが、
現行法はその規定の明文がございませんので、その権限に属する事務に関しまして法令または条例の特別の委任に基いて
公安委員会規則を定めることができることといたしたのであります。第五項は、これは
国家公安委員会のところにもございました規定と見合いまして、
都道府県公安委員会は、
国家公安委員会その他他の
都道府県の
公安委員会と常に緊密な連絡を保たなければならない旨を規定いたしたのであります。
第三十九条は、委員の任命に関する規定でございます。これは
国家公安委員会のときの
任命資格の制限を緩和したというのと見合いまして、現在は任命前十年間官公庁における
職業的公務員の前歴のない者、こういうことになつておるのでございますが、これを撤廃いたしまして、警察と検察の職務行う
職業的公務員の前歴のない者のうちから任命することといたしましたとは、国家、
公務員法の資格の制限を和いたしたことと同様であります。二項の
欠格事由の中に
現行法では準
禁治産者というものが入つておりませんが、
公職選挙法の改正によりまして準
禁治産者は
被選挙権を有することになつていますので、これも国家公安委員同様に準
禁治産者、
破産者で復権を得ない者、これをいずれも欠格の事由といたしたのであります。
禁治産者を載せてありませんのは、これは
都道府県公安委員は、第三十九条の一項にございますように
都道府県の議会の議員の
被選挙権を有する者でなければならないので、この
被選挙権を有する方の資格の中に
禁治産者についてはすでに制限があるからでございます。
過半数つまり二人以上が同一の政党に所属することになつてはならないという規定は現行と同じで、
公安委員会の中立性を保つことにいたしたのであります。
第四十条は、任期の規定でございます。これは
現行法の通り三年といたしまして、全然
かわりはございません。
第四十一条は、委員の失職及び罷免に関する規定でございまして、これまた
現行法と全然
かわりはございません。
欠格事由に該当いたすようになりました場合、それから特別の事由が生じた場合、あるいは同一政党に属する者が二人以上になつた場合に、
都道府県議会の同意を得て罷免するということにいたしているのでございます。
第四十二条は、委員の服務に関する規定でございます。
現行法によりますと、
地方公務員法の第三章六節の規定に準じて
都道府県規則でこれを定めということにいたしてございます。
他方公務員法の六節の規定というのは、
地方公務員全体の服務に関する規定でございますが、これ全体に準ずると申しましても、その規定の内容によりましては多少疑義のあるものもございます。そういう関係からいたしまして、今度ははつきりと
地方公務員法の一定の規定を列挙いたしまして、その規定については準用するということにいたしたのであります。
都道府県公安委員の場合におきましては、但書にございますように、
営利企業の役員となつたりあるいはまた常利企業を営んだり報酬を得て事業や事務に従事するというような場合におきましては、
現行法は委員の勤務に支障があると認める場合のほかこれを行わないということになつておりますのを、同様に今度は「委員の職務の遂行上支障があると認める場合の外は、同項に規定する許可を与えるものとする。」という、書き方の整理をいたしましたが、同一趣旨の規定を加えているのでございます。委員は常勤の職員と兼ねることができないとか、あるいは政党その他の
政治的団体の役員となり、または積極的に
政治運動をしてはならないということにつきましては、これも条文の整理はいたしましたが、
現行法の精神と
かわりがないのであります。
第四十三条は
委員長に関する規定でございます。これも
現行法と
かわりはございません。
委員長は会務を総理する、これだけに
現行法はなつておりますのを、
国家公安委員会の
委員長と同様に会務を総理し、
都道府県公安委員会を代表するということを明示いたしたのであります。
第四十四条は、
都道府県公安委員会の庶務は、
警視庁または
道府県警察本部において処理すること。
第四十五条は、
都通府県公安委員会の運営につきましては、この法律に定めるもののほか、必要な事項は
都道府県公安委員会が自律的にこれを定めることができる規定を設けたのであります。
第四十六条は、
方面公安委員会、これは
北海道の場合におきましては、今回の法案においては
北海道は
道警察として一つの警察になるのでございますけれども、現在も実際におきまして五つの
方面隊にわかれているのでございます。
北海道の地域が広大であるというような
特殊事情からいたしまして、
府県警察の組織におきましても
方面本部を設けることにいたしておるのでございます。この
方面本部に現在も
公安委員会がございますので、この
公安委員会は依然として存続いたしまして、
方面本部を管理する機関として、
方面ごとに
方面公安委員会を置くという規定を設けたのであります。そういたしまして、二項におきましてこの
方面委員会の組織なり権能というものが、
府県公安委員会と同じように三人の委員であり、そての他同様の規定の準用を受ける旨を明記いたしたのでございます。
次は第三節。
都道府県警察の組織に関する規定であります。
第四十七条は
警視庁及び
道府県警察本部の規定でございます。
都道府県警察というものは、その全体を管理する機関として
都道府県公安委員会がございまして、その下に警察の万般の職責を執行いたします
都道府県警察の
執行組織があるわけでございます。その
都道府県警察の本部といたしまして、首都は特にこの本部の名称を、
警視庁という伝統の名称を尊重いたしました。他の
道府県におきましては、
道府県警察本部ということにいたしたのであります。今回の
警察制度の単位が
府県警察ということに、一本になつておりまして、
府県警察が万般の責務に任ずるわけでございますので、本部という名称は、
府県警察の本部という意味におきましてここに用いたのでございます。
警視庁と
府県警察本部は、それぞれ
公安委員会の管理のもとに、その事務をつかさどるのであります。そうしてその本部の位置は、
警視庁の場合は特別区の区域内、
道府県本部の場合は
道府県庁所在地に置くということにいたしました。それからこの本部の
内部組織は、府県という
自治体のことでございますので、条例で定めることにいたしました。ただ政令で定める一定の基準に従うことにいたしたのであります。
第四十八条は、
警視総監及び
警察本部長に関する規定でございます。
都警察には
警視総監を置きまして、
道府県警察には、
道府県警察本部長を置くことといたしておるのであります。第二項は、これらの
警視総監及び
警察本部長の職務を規定いたしたのでございます。これらは、
都道府県警察の執行の長でございます。しかしながら、その仕事の遂行にあたりましては、全面的に
都道府県公安委員会の管理に服するということを規定いたしました。
都道府県公安委員会の管理に服し、そうして執行の長としてその事務を統括し、並びに所属の
警察職員を指揮監督することといたしたのであります。
第四十九条は、そのうちの
警視総監の任免に関する規定でございます。
警視総監は、首都の警察の長という重要な地位でございますので、特にこれは
内閣総理大臣が
国家公安委員会の意見を聞いて任免することといたしております。反面におきまして、
都公安委員会は、
管理機関であるところの立場からいたしまして、
任命権者であるところの
内閣総理大臣に対しまして、
警視総監の懲戒または罷免に関し、必要な勧告を行うことができることといたしたのでございます。
第五十条は、他の
道府県警察本部長の任免に関する規定でございます。
警察本部長は、
警察庁長官が、
国家公安委員会の意見を聞いて任免する。国家的な事務を円滑に遂行することができますように、長官が特に
国家公安委員会の意見を聞いて、任免することといたしたのであります。また
警視総監の場合と同様に、
管理権者でありまするところの
道府県公安委員会は、
任命権者でありまするところの長官に対しまて、
警察本部長の懲戒または罷免に関しまして、積極、消極いずれについても、必要な勧告をすることができる権限を与えることによりまして、任免の適正を期したのでございます。
第五十一条は、
方面本部に関する規定でございます。これは先ほどの
北海道におきまするところの
方面公安委員会の規定と見合う規定でございまして、
北海道の広域であるところの
特殊事情からいたしまして、これを五つ以内の方面にわかちまして、その
方面ごとに
方面本部を置きまして、その区域内の警察の事務の処理に当らしめることといたしたのであります。
方面本部には
方面本部長を置きまして、この
方面本部長の職責は、
道警察の中の
下部組織であるということを除きましては、各
道府県本部長とまつたく同様に、その
方面本部の事務を、
方面公安委員会の管理に服しつつ統括いたしまして、部下の
警察職員を、
道警察本部長の命を受けまして指揮監督することといたしたのであります。
方面本部長の性格、
方面本部長の地位と申しますか、これは特に重視いたしまして、
道府県の
警察本部長と同様に、第四項におきまして、第五十条の
警察本部長の規定を準用することにいたしまして、
北海道警察本部長の任免ではなく、
警察庁長官が
国家公安委員会の意見を聞いて任免する、こういうことにいたしたのでございます。この場合におきますところの懲戒、罷免の
勧告権だけは、これはこの
方面本部長を管理いたしておりまするところの
方面公安委員会が
勧告権を持つことといたしたのであります。
方面本部の数、名称、位置、
管轄区域は、これは
北海道警察の一つの
内部組織になりますので、この法律に定めております五つ以内の範囲においてどうするかというようなことは、
北海道において条例で定めるべき事項となりまして、条例で定めることといたしたのでございますが、しかしながらこれは
北海道の
方面本部の重要性にかんがみまして、
国家公安委員会の意見を聞いて――まつたくかつてに条例で幾つかの区域をわけられるというようなことがあつては困りますので、意見を聞いて条例で定めることといたしたのでございます。
方面本部の
内部組織につきましては、
道府県警察本部の場合と同様に条例で定めることといたしたのでございます。
第五十二条は、
警察署等に関しますところの規定であります。
都道府県の区域をわかちまして、各地域に
警察署を置く。そうして
警察署に署長を置き、署長の職責については第三項に規定をいたしたのでございます。
警察署の名称、位置、
管轄区域、これもまた
都道府県警察におきます重要な事項でございますので、特にこれは政令で定める基準に従いまして、条例で定めることといたしておるのでございます。
警察署の
下部機構として派出所、または駐在所を置くことができるようにいたしております。
第五十二条は
府県警察学校等に関する規定でございます、これは
現行法のもとにおきましても、それぞれ
警察学校を持つていたのでございますが、今回は
北海道の場合には
管区警察学校が設けられないことになつておりますので、
道警察学校は他の地域におきます
管区警察学校と同様の仕事をすることにいたしまして、幹部としての必要な
教育訓練その他所要の
教育訓練をいたしますほかは、
警視庁警察学校、
府県警察学校、それから
北海道におきましては
方面警察学校が、
警察職員に対しますところの、
新任者に対するところの
初任教養とか、その他必要な
現任教養を行うことといたしておるのであります。
第五十四条は
都道府県警察におきますところの職員に関する規定であります。
都道府県警察には
警察官、
事務吏員、
技術吏員その他所要の職員を置くことにいたしておるのであります。
警察官という名称を用いましたのは、後に
警察職員の章にございますように、
警察官というのは一定の職権を持ちました者の
集合名称として用いましたので、持に
警察官、
警察吏員という名称上の制限をやめまして、
都道府県警察の場合にも、身分は
地方公務員でございましても、
警察官という名称で、一般に使われる名称でございますので、踏襲することにいたしたのでございます。
警視総監、
警察本部長、
方面本部長、
警察署長というような執行の責任者は、いずれも
警察官をもつて充てるということを明記いたしました。それから職員の任免に関する規定でございますが、
警察本部長や
方面本部長の任免はすでに前に出ておりますが、それ以外の職員の任免につきましては
警視正以上の階級にあるところの
警察官は、
一般職の
国家公務員たる身分を有せしめることといたしておりますので、これは長官が
国家公安委員会の意見を聞いて任免いたします。その他の一般の
警察官並びにそれ以外の職員の大部分は、
警視総監または
警察本部長が、それぞれの場所におきまして、それぞれ
都道府県公安委員会の意見を聞いて任免することといたしたのであります。この場合におきましても、今までの
本部長の任免の場合と同様に、
管理権者でありますところの
公安委員会は、それぞれ長官あるいは
警察本部長に対しまして、懲戒、罷免の
勧告権を有することといたしてあるのであります。
第五十五条は、
都道府県警察職員の
人事管理に関する規定であります。
都道府県警察職員のうち、
警視正以上の階級にある
警察官は、これは
一般職の
国家公務員といたしております。これは国家的な
警察事務を遺憾なく円滑に遂行せしめる目的をもちまして、最小限におきまして地方的な性格あるいは国家的な性格の両面を持ちますところの
警察事務を総括いたしますところの
首脳幹部だけに、
国家公務員の身分を持たしめることによりまして、
府県警察が国家的な要請にも十分沿い得る態勢を整えることといたしたのであります。この職員の数は、定員におきましては一応の予定といたしまして二百五十名を予定しております。第二項がそれ以外の一般の
警察官並びにその他の
警察職員、
都道府県警察の職員の全体でございまして、その数はおおむね十二万五千人でございます。
警察官の数が約十一万、それ以外の
一般職員の数が約一万五千人とお考えいただきたいと思うのでございます。この大部分の十二万五千人の
都道府県警察の職員は、当然これは
地方公務員ということに相なりまして、
地方公務員法の適用を受けることは当然でございますが、ここにはその
地方公務員の適用を受けるにあたりまして、いろいろこまかいことを条例や府県の
人事委員会規則で定めることといたしております。それらの事項につきまして警察という職務の特殊性を考慮いたしまして、その定め方にあたりましては第三十四条第一項に規定する職員すなわち
警察庁の
国家公務員たる職員の場合の例を基準といたしまして、その
地方公務員法に基いて条例や
人事委員会規則を定めるという旨を規定いたしたのであります。その規定する内容のおもなることは、ここに書いてございますように、「職員の任用及び給与、勤務時間その他の
勤務条件、服務並びに
公務災害補償」等に関しまして、
国家公務員の例を基準として定める旨を規定いたしたのであります。
第五十六条は、
府県警察職員の定員に関しまする規定でございます。
警察庁の職員は
行政機関定員法によつて定めるわけでございますが、
府県警察におきまする
警視正以上の職員は、
国家公務員の身分をなるほど持ちますけれども、これはしかしながら国の
行政機関に属する職員ではございませんので、
自治体であるところの
府県警察に属する職員でございます。そういうことからいたしまして、この
地方警務官、すなわちこれは
警視正以上の階級にある
警察官の名称をかりにつけたものでございますが、その定員は
都道府県の警察を通じまして、政令で定めます。これが先ほど申し上げましたように、約二百五十人と予定いたして、おります。その
都道府県警察ごとの
階級別定員は、
警察庁の職員と同様に
総理府令で定めることにいたしております。その他の約十二万五千人に当ります大部分の
地方警察職員の定員は、これは
地方公務員法の適用を受ける者でございますので、条例で定めることといたしております。ただこの場合におきまして
警察官の定員、これは
階級別にでございますが、
警察官の
階級別、
府県別の定員につきましては、政令をもちまして一定の基準を定めまして、それに従わなければならないということにいたしまして、特に
警察官については条例で定めますけれども、その全国的な均衡に遺憾なからしめるようにいたしているのでございます。
第五十七条は、組織の
細目的規定は、
都道府県公安委員会規則で定められるということを規定いたしたものであります。
次は、第四節、
都道府県警察相互間の関係についての規定でございます。
現行法におきましても
国家地方警察、
市町村警察にわかれておりますけれども、この
市町村警察相互間あるいは
国家地方警察と
市町村警察とは「相五に協力する義務を負う。」という規定が、
現行法の五十四条にあるのでございます。今度は
府県警察ということになりますけれども、その
府県警察相互は協力する義務を持つものであるということを明文として現わしたのであります。なお
現行法にはそのほか「相互に、犯罪に関する情報を交換するものとする。」といつたような規定がございますが、これは
相互協力義務の精神の現われとして具体的に特記したことでございますので、今度は五十八条の「相互に協力する義務を負う。」という一本の規定にとりまとめたのでございます。
第五十九条は、
都値府県警察におきまするところの援助の要求に関する規定でございます。
現行法におきましても援助の要求というものがございまして、
国家地方警察、
市町村警察間がそれぞれ援助の要求をなし得ることになつておるのであります。
府県警察になりましても、
府県警察相互間、また特別の場合におきましては
警察庁の専門的な技能を持つ者に対して援助の要求をするという場合がございますので、第五十九条は
警察庁または他の
都道府県警察に対しまして
都道府県公安委員会が援助の要求ができることにいたしたわけであります。援助の要求が
公安委員会と
警察本部長に区々にわかれることがありませんように、援助の要求の主体になるものは、あくまで
公安委員会ということにいたしたのでございます。二項はそのような場合におきまして
都道府県公安委員会が、他の
都道府県の警察に援助の要求をする場合においては、「あらかじめ必要な事項を
警察庁に連絡しなければならない。」旨を規定したのであります。
都道府県警察というようなかなり大きな警察というものが、他の
都道府県の警察に応援を求めなければならぬというような場合は相当重大な場合でございます。
警察庁といたしましてはそういう場合におきましては、調整の必要が起る場合が多かろうと思いますので、特に連絡義務を課したのでございます。第三項はこの援助の要求によりまして他の
府県警察の
警察官が応援派遣され、あるいは
警察庁の職員が派遣されましたような場合におきまして、その派遣された
警察官は援助の要求をした府県におきまして、その
府県公安委員会の管理のもとに職権を行うことができるということを規定いたしました。これは
現行法の援助の要求の場合におきましても、援助の結果派遣されました
警察官は自己の主体性においてではなく、その援助の要求をいたしました
公安委員会の管理のもとに服しまして、援助の目的に沿つて職権を行使するという規定の趣旨にならつたのでございます。なお
現行法におきましては援助の要求の場合におきましての費用の負担関係が、こまかく規定いたした点がございますが、
現行法におきましては
国家地方警察、
市町村警察にわかれております関係上、費用負担の規定をはつきりさせる必要がございましたし、特に国家的な要請において出動いたします場合には、国が負担しなければならないような規定の必要がございましたが、昨日経費の規定のところで申し上げましたように、相当広域にわたりますような出動といつたような経費は、おおむね国庫が支弁することになつておりますので、まず費用負担の問題は大部分の場合問題がないと思います。それから国庫が支弁しないような仕事の性質のものにつきまして応援関係ができましたような場合においては、これは当然に両者の協定によるのでございますが、協定の性質は当然援助を要求したところが負担するように解釈すべきであると思います。これは
現行法におきましても
市町村警察相互間の費用の負担は特に明記してございませんので、一応要求者が費用の負担をするのが本則であるという解釈になつておるのでございます。
第六十条は
府県警察の
管轄区域外においての権限の行使に関する規定でございます。これも
現行法におきましては第五十八条において非常に詳細な規定があるのでございます。法案の第六十条におきましては「その
管轄区域内における犯罪の鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕その他公安の維持に関連して必要がある限度においては、その
管轄区域外にも、権限を及ぼすことができる。」これは
現行法の五十八条の規定と書き方こそ違いますけれども、その
管轄区域外におきますところの権限の行使の範囲、限界につきましては、おおむれ同様の考え方であります。ただ
現行法は、
市町村警察が
国家地方警察の統制に服しないといつたような厳格な条項がございます関係上、犯罪をめぐりまして、その区域内で行われた犯罪、その区域内に始まつた犯罪、その区域内に及んだ犯罪並びにこれに関連する犯罪というような犯罪を中心といたしまして、やかましく規定いたしておるのでございますが、
府県警察だけになつておりますので、これはここに掲げてございますような警察の責務につきまして、関連して必要がある限度において、
管轄区域外においても権限を行使することができるという規定によりまして、実際はそれぞれ具体的には話合いによりまして、これがいたずらに府県間に紛争の的となることがないように留意せしめたいと考えるのでございます。二項はその場合におきまして、
管轄区域外に権限を及ぼす場合におきとましては、その区域を管轄している警察との緊密な連絡義務を規定いたしたのであります。
次は第五章の
警察職員につきまして御説明を申し上げます。今回の法案におきましては、特に
警察職員という章を設けまして、
警察職員について通則的に規定すべき事項を単独の章として網羅せしめたのでございます。
筋六十一条は
警察官の階級に関する規定でございます。これは
現行法におきましても、
国家地方警察、
市町村警察おのおのそのところに規定があるわけでございます。
現行法におきましては、
国家地方警察の場合におきましては、長官、次長というものが階級名の一つになつておりまして、それ以下警視長から巡査までの階級があるわけでございますが、今度の場合におきましては、長官は階級を特に保有せしめないで、それ自体がこの法案の立場から地位はおのずから明瞭であるということにいたしまして、
警察官ではございますけれども、これは階級を持たせないで、長官がすなわちそれ自体が
警察官であるということにいたしました。
警察官の階級といたしましては、
警視総監と警視監を加えまして、現在と同じように階級といたしましては九階級にわけているのでございます。
警視総監は首
都警察の長でありますものについての階級であり、警視監といたしましては、新たに大きな警察でございますとか、特に重要ないすに対しまして、約九人ばかりを警視監の定員に定員上は予定をいたしている次第であります。
第六十二条は
警察官の職務に関する規定でございまして、これはおおむね
現行法にもこのような規定が
国家地方警察、
自治体警察ともにあるのでございます。
第六十三条は
警察官の職権行使、これは職権行使と書いてございますが、その
管轄区域を明瞭ならしある意味の規定でございます。この法律はすべて警察の組織法でございまして、職権行使のあり方を規定する法律ではございません。この六十三条の場合におきましても、都通
府県警察の
警察官は、当然には自己の
管轄区域内において職権を行う。ただこの法律において特別の定めがある場合を除くほか――特別の定めというのを申し上げますと、先ほどの援助の要求のあつた場合、応援に行つた場合、それから
管轄区域外に職権行使が及んだ場合、それから次の二箇条がございますように、現行犯人に関しまする場合、それから移動警察の協議が整いました場合、それから後の緊急事態の場合にこれまた遠くへ派遣された場合、こういうことが、特別の例外の場合でございます。
第六十四条は現行犯人に関する職権行使の規定でございます。御承知の通り刑事訴訟法の二百十三条によりまして、現行犯人につきましては、普通の私人でございましても何人といえども逮捕状なくしてこれを逮捕することができるという規定かございます。
警察官には自己の警察の
管轄区域という職権行使の制限がございますので、従いまして自己の
管轄区域内におきまして現行犯人を逮捕いたしました際には現在でも問題はございません。しかし自己の
管轄区域外のところにおきまして現行犯人の逮捕に当りますような場合におきましては、
警察官としての職権行使というものは区域外でございますからないということになりますので、もちろん逮捕状なしに一般の人同様に逮捕することはできるのでございますけれども、これは
警察官としての職権行使ではなくて、一般の人と同様の刑訴二百十三条の権限でしかないということになつておりますために、非常に困る問題が現在においても多々あるのでございます。そういう場合におきまして
警察官が現に犯罪を行いつつある犯人を逮捕する場合におきましても、公務執行妨害が成立いたしませんとか、あるいはそれによりまして
警察官が負傷いたしましても、
公務災害補償の支給につきましての疑義があるというような障害がございますので、かねがねこれは問題になつており、全国の
公安委員会からも非常な要望が年々歳々出ておつた問題でございます。これは
現行法に規定がないからでございますので、
管轄区域におきます職権行使の多多例外の場合があるのでございますが、その一つといたしまして、この場合は
警察官は現行犯人の逮捕に関しましては、いかなる地域においても
警察官としての職権を行うことができる旨を規定いたしたのでございます。
第六十五条は移動警察に関する職権の行使でございます。これはずつと昔から警察は移動警察というものをやつております。
現行法におきましては、この移動警察は一つの援助の要求の組合せといたしまして、十県なら本県の範囲で移動警察をやります場合には、それぞれの援助要求を根拠といたしましてやつておりますが、いかにもその援助の要求は移動警察の場合は恒常的なものであり、かつ非常に複合的なものであります関係上、特に今回は移動警察に関する職権の行使という規定を設けまして、二以上の
都道府県警察にまたがりますところの交通機関においての移動警察については、関係
都道府県警察の協議によつて定められた
管轄区域内において職権行使ができる。協議ということにいたしまして、この協議によつて定められた
管轄区域内におきましては、個々の
警察官の所属する
管轄区域外においても職権行使ができるという
管轄区域についての本則の例外としての規定を設けたのでございます。
第六十六条は、小型武器所持に関する規定でございます。「
警察官は、その職務の遂行のため小型武器を所持することができる。」これは御承知の通り
警察官等職務執行法におきまして、武器の使用は一定の厳格な制限のもとに認められておるのであります。しかし
現行法におきましては、
警察官のこの所持に関する規定の明文を欠くのでございまして、いろいろの点におきまして明文の根拠がないということは困る点がございますし、それから他の鉄道公安官でございますとか麻薬取締官というようなものにおきましても、小型武器の所持は規定されておるのであります。なおこの小型武器というのは現在におきましては拳銃のことを称するものであると御了解いただきたいのでございます。
第六十七条は被服の支給等に関する規定でございまして、これは
警察官が被服の支給を受けましたり、それから装備品の貸与を受けるのでございます。被服は御承知の通りでありますが、装備品といたしましては、いわゆる手帳でございますとか、あるいは警棒でございますとか、手錠でございますとか、警笛でございますとか、また先ほどの拳銃、帯革といつたような装備品があるのでございます。被服の支給は、給与の一つとして見られる点もございまして、はつきりした法律の根拠がないと不都合なのでございます。
現行法におきましては、巡査給与品及び貸与品規則という古い勅令が
警察法の附則によりまして生きております。しかし今度は
警察法が全文的に改正せられますので、この古い生きている勅令が根拠を失いますので、この法律の中において、国は
警察庁の
警察官に対し、県は
都道府県警察の
警察官に対しまして、それぞれ政令、条例の定めるところによりまして被服の支給、装備品の貸与をすることができる旨を規定いたしたのであります。
第六十八条は皇宮護衛官の階級等についての規定でございます。皇宮護衛官の階級は、
現行法におきましては警視長から皇宮巡査までとなつておりますが、
警察官の場合に警視監というものを加えましたので、ある場合におきまして警視監たる者を任命すべき必要が起る場合も予想されますので、警視監を加えまして、皇宮警視監以下の八階級にいたしたのでございます。第一項、三項は、皇宮護衛官について
警察官と同様の規定を準用すべきものを規定いたしたのでございます。
第六十九条は、
警察職員の礼式、服制、表形に関し必要な事項を
国家公安委員会規則で定めることを規定いたしたのでございます。これも
現行法におきましてそれぞれ
公安委員会規則で定めることができるようになつております。礼式とか、服制とか、表彰とかいうことは、警察職務の特殊性からいたしまして、全体的に一つの秩序規律をあらしめるために必要なる事項であり、しかもこれは単なる内部的なことである場合が多いので、
国家公安委員会規則で定めることといたしたのであります。
次は第六章におきまして、緊急事態の特別措置に関する規定を御説明申し上げます。
現行法におきましては、第七章におきまして、国家非常事態の特別措置の規定が存するのでありますが、今回はこの国家非常事態という名称を改め、緊急事態ということにいたしましたほかは、その特別措置の内容としては
現行法の規定するところと何ら趣旨において
かわりはないのでございます。むしろ警察組織全体に一つの変更が加えられますので、
現行法の場合よりはその効果というものが比較的少いものになつている場合が多いのであります。
現行法におきます国家非常事態、今回の法案におきます緊急事態というものは、一つの治安が相当乱れたような場合におきまして、
警察官が平常の警察組織ではどうも完全に職務の遂行ができがたいというふうに認められる場合におきまして、この組織のあり方が非常のあり方にかわる規定でございます。国家非常事態という
現行法の名称は、いかにも何か非常に関する国民の権利義務に関係のある、実体的なことが予想される事態のような感じを受けますが、この緊急事態の特別措置はそういう実体的なものではなく、あくまで警察の組織法の範囲においての特例の措置であることにすぎないものでありますので、緊急事態という名前にかえたのでございます。ことに現行の保安庁法におきましては、出動の場合に「非常事態に際し」ということを規定いたしておるのであります。保安隊か出動するような場合は、一般的に申しまして警察力では十分仕事がで、きないといつた、よほどの事態でなければなるまいかと思うのであります。その場合が非常事態ということになつておりますので、警察の中で組織がかわるというだけの事態の際におきまして国家非常事態というのは――後に保安庁法ができました関係上、その均衡上のことにつきましても配慮をいたしたのであります。
第七十条は、この緊急事態を布告いたします場合と、その内容を規定いたしたのでございます。「
内閣総理大臣は、大規模な災害又は騒乱その他の緊急事態に際して、治安の維持のため特に必要があると認めるときは、
国家公安委員会の勧告に基き、全国又は一部の区域について緊急事態の布告を発することができる。」と規定いたしておるのであります。その布告を発する場合の書き方が、
現行法におきましては、「国家非常事態に際して、」となつておりますのと、「大規模な災害又は騒乱その他の緊急事態」ということにして、その程度をはつきりいたしたのであります。しかしながらこれは第五条におきまして、
警察庁が平素大規模な災害、騒乱というような国の公安にかかる事案については警察運営に当つておりますので、事態がさらに大きなものになりまして、緊急事態とも称し得るような、一つの治安の撹乱した状態になりました際におきましては、
内閣総理大臣がこの布告を発する、しかもこの布告は
現行法同様に
国家公安委員会の勧告に、あくまで基いてやるものであるということを明記いたしておるのであります。なおその布告は全国の場合もございますし、地方的な一部の区域の場合もあるのでございます。
七十一条、七十二条は、この緊急事態の布告が発せられた場合の布告の効果とでも申すべきものでありますか、この特別措置の場合の内容を規定いたしたものでございます。
現行法におきましては、この布告の効果といたしましては、おおよそ二つの意味があつたのでございます。つまり警察の単位自体が非常にたくさんなものにわかれております。しかもそれが
市町村自治体警察といたしまして、平素におきましてはまつたく独立的な地位を持つておるものでありますので、国においては何らの権限がなかつたわけであります。この
現行法におきましては国家非常事態の布告の場合に初めて、独立しておる、
府県公安委員会のもとにあるたくさんの
国家地方警察や
市町村自治体警察に対しまして、総理大臣が統制できるという意味が一つあつたのでございます。いまひとつの意味は、
公安委員会制というものがそれぞれしかれておりますが、この場合長官や警察
管区本部長が、
現行法におきましては
公安委員会を通じないで、直接に執行の職員同士がそれぞれの指揮命令関係に立つたという、つまり
国家公安委員会がこの限りにおいて横にはずれるという意味を持つておるのでございます。こういう二つの意味を持つておるのが
現行法の規定でございますが、今回の法案におきましては、たくさんの警察がばらばらにあるのを統制するという意味におきましては、いわゆる大規模な災害、騒乱というような事案のさらに緊急化したものでございますが、第五条によりまして一応
警察庁長官が指揮監督権を持つておるわけでございますので、第一の意味は失われておるのでございまして、
国家公安委員会や
府県公安委員会が、ある限度において、つまりこの事態の収拾を可能ならしめる限度において横にのきまして、そうして総理大臣がこの場合初めて直接に長官を指揮監督する関係に立つのでございます。平素におきましては、総理大臣は長官、総監の任免権しか持つていないわけでございますが、この場合におきましては職務上も長官を指揮監督するということになり、また長官や管区警察局長は
府県公安委員会を通ぜずしてこの布告の区域内におきましては、直接に
警察本部長というようなものに対して、諸般の必要な指揮命令ができることにいたしておるのでございます。それがこの布告の効果の内容でございます。第七十一条はこれを明記いたしまして、
内閣総理大臣はこの布告が発せられた場合におきましては、本章の定めるところによりまして一時的に警察を統制する。
現行法におきましては一時的に全警察を統制するとありましたが、先ほどのような意味におきまして「全」という字をとりました。それからこの場合におきましては、
内閣総理大臣はその緊急事態を収拾するため必要な限度において、長官を直接に指揮監督するものとする。
国家公安委員会がこの限りにおきましては面接長官を指揮監督しておるのを、今度は緊急事態の場合には初めて総理大臣が直接に長官を指揮監督することになりまして、
国家公安委員会は最後にございますような助言義務を持つという立場に置かれるのでございます。
第七十二条はやはり布告の効果といたしまして、先ほど申し上げましたように、この布告が発せられました場合には、長官は今度は
公安委員会を通せず布告の区域内の
府県警察の
警察本部長に対しまして、管区警察局長も同様に、必要な命令を発したり、また必要な指揮をすることができることになつておるのでございます。これも
現行法にあるところと、その関係においては同様でございます。それから第二項は、今度は布告の区域外に対しましても、布告の区域内に対する応援のために派遣をすることを命ずることができるのでございまして、これも
現行法に規定がある通りでございます。ただこの場合におきましては布告の区域外というのは一応平穏に
警察事務が行われている場所でございますので、布告区域外に対する場合には
府県警察に対してと、こういうふうに規定いたしてございまして、当然その管理者であるところの
府県公安委員会というものがあるわけでございますので、
府県公安委員会を通じましてその応援派遣の命令はなされるというふうに区別いたしているわけでございます。第三項は、このような場合におきまして布告区域に派遣された
警察官、あるいは布告区域外に派遣された場合を含めまして、その
警察官は府県の
管轄区域というものを離れまして、その区域内におきましては、いかなる地域においても職権を行うことができるということにいたしてあるのでございます。これも応援派遣の場合の例外の職権行使は
現行法の規定するところであります、
第七十三条は、この緊急事態の布告につきましての国会の承認及び布告の廃止に関する規定でございます。これも
現行法に規定する通り、このような警察の組織が非常の態勢に移るということは重要なる事項でございますので、
国家公安委員会の勧告に基いて布告を発しますが、その発した日から二十日以内に国会に付議してその承認を求めなければならないというのは、現行通りの規定でございます。ただ
現行法は、この場合に六十五条におきまして、もしも衆議院が解放されているときは日本国憲法の規定によつて緊急集会による参議院の承認を求めなければならないということでありまして、必要な場合には国会を召集したり、また緊急集会によりますところの参議院の承認を求めるほかないような規定になつておりましたが、これはその後出ました保安庁法の出動に関しまする規定と同じように、国会が閉会中、または衆議院が解散されているような場合には、その後最初に召集される国会においてすみやかに承認を求めなければならないということで、保安庁法の出動の場合よりはさらにむずかしく規定をつくつてあるのを、均衡上保安庁法の出動の場合と同じような規定にいたしているのでございます。
第七十四条は
国家公安委員会の助言義務でありまして、この条章によりまして、総理大臣が諸般の職権をこの場合持つのでございますが、この場合
国家公安委員会が直接長官を指揮監督する必要がなくなつた場合におきましても、絶えず必要な助言をしなければならないということを規定しているのでございます。
第七章は雑則についての規定でございます。
第七十五条は検察官との関係に関する規定でございまして、これは
現行法の規定と同じであります。ただ「別に法律の定めるところによる。」というのを、はつきりと「刑事訴訟法の定めるところによる。」ということを明記いたしましたことと、それから検事総長と緊密な連絡を保つものといたしまして、
国家公安委員会のほかに、
国家公安委員会のもとに権限を持つことになつておりまする長官を加えたのでございます。
第七十六条は恩給に関する規定でございます。今度のこの改正案によりまして
府県警察の職員となる者のうち、いわゆる
地方公務員法の適用を受ける者については、黙つておれば恩給法の適用がなくなるわけでございますが、特に
地方警察職員となりましても、その全体につきましては恩給法の規定を準用することといたしました。人事の交流が行われましたような場合でありますとか、あるいは警視の階級の者が
警視正になるとかいうことによつて身分が
かわりました場合に、恩給法上別の体系になりまして、そこに非常に支障が生ずるということがないようにいたしてあるのでございます。これは
警察職員としても非常な恩恵であると存ずるのであります。この場合におきまして七十六条の規定は恩給法の規定を準用することと、その場合に権利の裁定や負担者や恩給の納金の際の読みかえの規定を書きまして、さらに第二項におきまして、いわゆる恩給法の中に警察監獄職員――これは警部補以下の者は特に十二年で普通の恩給がつくようになつておりますが、警部以上のものは文官という恩給法上の用語でありますが、それにわかれておりまして、その区別を明確にいたしているのでございます。さらに第三項におきまして、今後
地方警察職員が、
国家公務員たる者が
府県警察の職員になりましたり、あるいは
府県警察の職員が他の
府県警察の職員になりましたような場合におきまして、それぞれ恩給法の準用を受ける、つまり雇用人は恩給法上入りませんけれども、雇用人を除く恩給法上の適用ないし準用のある者については、それらの転任についてはこれを勤続ということに見なすということにいたしまして、一々それが退職と見なされない、こういうことにいたしまして、先ほど申し上げましたような人事の交流について遺憾なからしめ、かつ本人の利益というものをはかつているのであります。
第七十七条は国有財産等の無償使用等に関する規定でございます。これは国有財産法や財政法によりまして、国の財産というものは無償で貸付をするというようなことの制限や禁止の規定があるのでございます。ことにこの場合の
警察庁の財産は、行政財産たる性格のものが多いわけでございましようが、この場合におきまして教養施設や通信施設や犯罪鑑識施設等については、国がこれを管理することになつておりますけれども、実際におきましては府県以下にあるものにつきましては、
府県警察に無償で使用させる場合がございますので、国有財産法、財政法の規定との関係上これを明記いたしたのでございます。第二項は警察通信施設の使用でございまして、これまた警察の性格がそれぞれ府県という
自治体でやるところの警察ということになりますので、専用の電話線にいたしましても他のものに転用してはならないという公衆電気通信法とか、有線電気通信法の規定がございますので、その関係上、
警察庁と専用者となるところの
都道府県警察とが相互に警察通信施設を使用し得る旨を規定いたしておるのであります。
現行法におきましてもこれは第四条に同様な規定がありまして、それにかわるものであります。
第七十八条は「この法律に特別の定がある場合を除く外、この法律の実施のため必要な事項」たとえば緊急事態の布告の実際の手続でありますとかこまかいことにつきましては、必要の範囲において政令で定めることにした規定でございます。
最後に附則についての御説明を申し上げます。附則は二十八項からなつておりますが、その中のおもなるものにつきまして概略だけを御説明いたしたいと思います。施行期日でございますが、この法案の施行期日は七月一日から施行することになつております。但し条項によりましてこの法律の施行のための必要な準備行為に類するようなものは、公布の日から施行することといたしております。おおむね前の
警察法の場合には三箇月を越えない期間というのがございましたけれども、ある種の期間を設けまして、それによりまして諸般の準備行為を可能ならしめるという見地から、七月一日という日をきめました次第であります。
第三項は現在の
国家公安委員会と
府県公安委員会というものは一応生れかわるという規定であります。この法律によりまして新しくなりますので、一応廃止して新しく委員を選任し直すということを念のために規定いたしたのでございます。第三項はその場合の公安委員の選任のための必要な手続、国会の同点というようなことを、七月一日から公安委員が厳として管理者としていなければならない関係上、そういうような準備行為をすることを、この法律の施行前においても行うことができる旨を規定いたしたのでございます。第四項、第五項は最初の
国家公安委員会の委員の任命に関する規定でございまして、最初の任命の場合だけ、五人のうち任期を任期は五年でございますが、全部一斉に五年といたしますと、いつも五人ずつ改選されるということになりまして、
公安委員会としての継続性というものがなくなりますので、一人は一年、一人は二年、三年、四年、五年というふうに、最初の委員に限りまして任期の差別をいたしたのであります。第五項はその任期は
内閣総理大臣が定めるということにいたしたのであります。
第六項はこの任命の場合におきまして、本省の中にございますのと同じように、もし国会の閉会等の場合におきましての処置につきまして、事後承認の手続ができることを規定いたしておるのであります。第七項、第八項は、今度は
府県公安委員会の委員の任命につきまして、先ほど国家公安委員につきまして申し上げたと同じように、一年、二年、三年という最初の任期につきましての例外の規定を設けているのでございます。
第九項と第十項は、従前の
警察職員に対する身分の継続の規定でございます。一応
国家地方警察、
市町村警察ともに廃止されるのが、今回の法案の建前でございますので、
国家地方警察本部におきましても、これは廃官廃庁ということになるわけでございます。
市町村自治体警察もなくなるということになるのでございます。組織は確かにそうなりますが、その職員につきましては、別に辞令を発せられない限り、それらの職員というものの身分継続の規定を設けまして、継続的に新しい警察の職員となることができるようにいたしたのでございます。第十項の場合におきましては、ここに掲げてございますように、その
都道府県の
国家地方警察の職員も、その
都道府県の区域内にあるところの
自治体警察職員も、その
都道府県に置かれるところの今度の
都道府県警察の職員になるということを規定いたしたのであります。この規定によりまして、
国家公務員法上もし新規採用ということになりますと、六箇月が条件付の採用期間という非常に仮の身分になるわけでございますが、この身分継続の規定によりまして、条件付採用ということではなく、身分が普通の状態において継続されるということになりまして、職員に不安をなからしめたのでございます。それからその場合の定員につきましては、ただ五十六条の
都道府県警察職員の定員の規定によりまして、
警視正以上の者につきましては政令で、それから大部分の
地方公務員である者につきましては条例で、定数をきめることになつておりますが、今回定員整理の問題がございますので、その政令や条例におきましてそれぞれ定数を定めますけれども、現在おりまする人間よりは、その定数の方が少いということになるかと思うのでありまして、その余りの部分、つまりそれを越える数につきましては、政令や条例の定むるところによりまして、その期間の間は定員外としておくことができる。これは
国家公務員の方の行政整理につきましても、近く国家に
行政機関定員法が提案されると聞いておるのであります。その場合に定員を越える者は一定の期間定員外とされるのに見合うのでございまして、これは府県の機関でございますから、国の
行政機関定員法の定めるところではございませんので、政令や条例で同様の規定を設けまして、
地方公務員につきましては、この提案理由の説明にもありますように、四年間の期間内にこの整理をするということにいたしておるのでございます。それから
国家公務員につきましては、この政令で定める方の
警視正以上の者につきましては二年間の範囲で、他の
国家公務員同様に二年間で整理をするということにいたしておるのでございます。
第十一項から第十四項までの規定は、警察用財産の処理に関する経過規定でございます。警察の組織が
国家地方警察から府県に移る、それからまた
市町村警察からも府県に移る。二重の関係におきまして、国と市町村から警察が府県に移るわけでございます。それに伴いまして、行政財産としての財産が、警察組織の変更に伴いまして新たな団体に移つて参るということは、当然のことであると存ずるのであります。ただその場合におきまして、どの財産が必要であり、どの財産をどういうふうに移転するかということは、今までの改正の際のような機会におきましても、物件的にその財産がたちまちある日をもつて移転するというような書き方ではなくて、やはり
地方自治法の規定なり地方財政法の規定によりまして、その地方公共団体の議決によりまして移転をしておるのでございます。それから必要な物、不必要な物というような認定がございまして、事実上は協議によるという扱いであつたと思うのでありますが、これにつきましては、特に今度は市町村という団体から府県に移る――二十三年は府県という団体から市町村に移つたのでございますが、今度は逆になりますので、広い方の上級の団体に移る場合もございますので、この関係を特に協議によるということを明瞭ならしめたのでございます。財産の移転関係につきましては、先ほど申しましたように、国から府県に行くものと、市町村から府県に行くものと、市町村から国に来るもの、こういう三つのコースがあるのでございますが、それらにつきましては、十一項は土地を除き、それぞれこれこれの間においてあらかじめ協議するところに基き、かつ第三十七条に規定する経費の負担区分に従つて、それぞれその三つの関係において譲渡するものとするということを規定いたしたのでございます。協議によるのでございますが、この経費の負担区分については、たとえば通信、鑑識、教養といつたようなものについては国に移るわけでございます。それから一般庁舎とか校舎とか、被服といつたような装備品についてはこれは府県に移るわけでございます。その関係をはつきりいたしておるのでございます。
第十二項は、この場合におきまして、他の機関と共用している場合の、国または地方公共団体所有の財産についての使用の規定をきめたのでございまして、これも以前、二十三年等にあつたのと同様な規定でございますが、これまた同様に協議によりまして使用するということを明瞭ならしめたのでございます。
十三項は、この十一項、十二項の譲渡または使用の場合の無償有償の関係でございまして、前一項の規定による譲渡使用は原則としては無償といたします。これは先ほど申し上げましたように、行政財産が新しい一体に、組織の変更に伴つて移るわけでございますから、ことに二十三年におきましては、府県から市町村が無償で取得しておるものが大部分でございます。それからその際に国から創設の補助金が出ておるものも、かなりあるのでございます。こういうような、もしその取得の過程が無償で取得しているものについては、新たな団体に対しまして行政財産として無償で譲渡されるのが原則であるのが当然であると存じます。しかしながら例外といたしましては、起債によりあるいはその他市町村住民の負担によりまして、その財産が取得されておるというような場合もあるのでございまして、こういう場合におきましては、無償とすることが非常に不適当であるというような場合もあるかと存じます。そこで当該譲渡または使用にかかる財産に伴う負債がある場合、その他政令で定める特別な事情がある場合においては相互の協議によりまして、当該負債を処理し、またはこれを譲渡もしくは使用を有償とするため、必要な措置を講ずることができるということにいたしたのであります。詳しくは、政令で定めるとここに書いてございますように、政令で定める特別の事情がある場合として、政令で定めることになると思うのでございますが、大体この財産が起債によりまして負債となつているような場合におきましては、その負債を継承することが原則であるのが当然であると思います。しかし場合によりましては、これを有償ならしめる場合も必要であると思います。それから起債による場合以外におきまして、その財産が組織の変更後におきまして、その公共団体の市町村の区域内の警察用途以外の用途に用いられるような場合も起るかと思うのであります。
警察署が警察本部の一部になる、市の警察本部であつたのが、県の警察本部の一部になるといつたような場合もあるかと思います。あるいはその財産の規模が非常に一般の市町村の負担以上にわたるような場合がございまして、市町村財政に支障が及ぶというような場合もあるかと思いますので、そういう場合につきましては有償の措置を講ずることができるようにいたしたのであります。
十四項は、これらの財産の移転はすべて協議によるわけでございます。しかしながらその最終的な決定は、その協議がもしととのわず争いになりました場合におきましては、申立てによりまして
内閣総理大臣が政令の手続によりまして裁定することにいたしているのでございます。最終的にはこの関係は裁定できまるものであると思います。もちろんその裁定に際しましては、これは一般の民事手続によりまして争うことができることは当然であるのでございます。
以上のような関係で、この財産の移転につきましては、それぞれ本則に定めるところによりますけれども、その根本といたしましては、決して財産が強制的に移転されるものではなく、自治法なり地方財政法の規定によりまするところの団体の議決によりまして、自律的に相談づくめで移転するという精神を取入れているのでございます。
第十五項は、給与に関する経過規定でありまして、現在の給与についてはいろいろの団体におきまして非常に開きがあります。ことに国に比較いたしまして都市、ことに大きな都市の
警察職員の給与が非常に高いのは御承知の通りであります。その調整の規定といたしまして、この法律の施行の際に
地方警察職員となる者の受ける給与は、前の規定によりまして
地方公務員法の適用を受けるわけでございますから、条例で新しい給与かきまるわけでございます。それでその条例で新しい
府県警察の職員としての給与がきまりますと、そのきまつた給与が元の
市町村警察の場合、あるいは法律上は
国家地方警察の給与の場合も理論上はあり得るわけでありますが、その元の給与に比べて低くなつている場合、その額に達しないような場合におきましては、その差額につきまして調整のため、政令の基準に従つて条例によりまして調整額とも称すべき手当を支給し得ることにいたしたのであります。従つてこの手当は前の給与と新しい給与の差額についての支給でございます。その基準につきましては政令で詳しく基準をきめまして、実際問題として詳細にこれを規定いたしますのは、条例によりまして各府県がきめる問題であると思うのであります。ただ国はこれに対しまして、予算の上におきましても、地方財政計画の方について、一定の財源をこの趣旨通りに準備をいたしておくということでございます。ただこの調整額に当る手当というものは、永久に支給されて行くというわけには参りませんで、その差額かなくなるまでの間支給するというふうに私どもは考えています。これも政令の基準できめるところになると思うのでありますが、将来昇給等によりまして、この差がだんだん減つて来る場合におきましては、昇給はいたしますけれども、その昇給に当る額の分を手当の方から落して行くということにいたしまして、結局元の俸給額に達するまでの問はこれを見てやる、こういう精神で、要するに今までの給与が急激に減ることによりまして
警察職員の生活に非常な打撃を与えない、今までの生活を維持することができるようにするための経過的な配慮の趣旨であります。
十六項、十七項、十八項は、特別な処分等につきましての経過規定でございまして、十六項は休職、特別待命、懲戒処分をすでに受けておる者、休職と特別待命をすでに受けている者については、引続き従前の例によりましてそのまま効果が継続する。それから懲戒処分につきましては、施行前の事案にかかる懲戒処分について、まだそれがきまつておりません者につきましては、従前の例によりまして、前の懲戒処分を行う権限のある者にかわる懲戒処分権者がやつて行くことができるように規定いたしているのでございます。
不利益処分につきましても、これも
国家公務員、
地方公務員ともに同様の経過規定でございます。
十八項
公務災害補償につきましても、本来ならば
公務災害補償というものは、その災害が確定したときの使用者が補償をし、支給すべきものが本則でありますけれども、この身分切りかえは単なる転任や退職とは違いまして、全面的にすべての職員の身分が切りかわるわけでございますから、補償を受ける職員の便宜も考えまして、七月一日以降におきましては、この新しい給与を支給すべき国または
都道府県の負担者が継続して
公務災害補償の負担をするということにいたしたのであります。
十九項は、この場合古い組織がなくなるものがございますので、すでに施行前に退職した
警察職員に対するところの
公務災害補償について疑問がございますので、その点はやはり従前の例によることを明記いたしたのであります。
第二十項から第二十二項までは退職手当に関する経過規定でございます。これは一口に申しますと、二十項は
国家地方警察職員が
地方警察職員になつた場合、二十一項は
自治体警察の職員が引続いて
府県警察の職員となつた場合、二十二項は
市町村自治体警察の職員が
国家公務員たる
警察職員になつた場合でありまして、この三つの場合、いずれも身分が継続されます関係上、特にその切り
かわりにおきましてそれぞれ退職手当を支給しない、そうしてその期間を通算するということにいたした規定でございます。これは一度に多数の者が身分が
かわりますので、国家財政においても、あるいは市町村財政においても、全部に退職手当を支給するということになれば、財政上重大な影響がございますし、かつ本人の利益も考えまして、この身分の切り
かわりにあたりまして退職手当は支給しないで、在職期間を相互に通算するという規定にいたしたのでございます。
第二十三項から第二十六項までは恩給に関する経過の規定であります。恩給については、
地方警察職員となつた者につきましても、恩給法の規定を準用するということは将来長きにわたる問題でございますので、本章の中に規定いたしまして、附則の中には今までに特例がついております関係を、この制度の経過規定といたしましても同じようにその特例を継続させるという趣旨の規定であるのであります。現在の
警察法の附則の七条それから前回の改正の附則の四項によりまして、二十三年以前の
府県警察時代の職員は、恩給法の準用を受けておるのであります。それから町村が住民投票をもつて廃止いたしました場合に国警へ編入されております場合においても、恩給法の規定の適用を受けているのであります。この二つにつきましては、今度の制度の改正におきましても、その当時から継続して恩給法の適用なり準用を受けている職員については、なおその効力を有するということで、その特例の継続を認めておるのが第二十三項でございます。
それから第二十四項は、こういう特例がなくて、今まで
市町村警察の職員であつて、つまり二十三年以後初めて
市町村警察に採用されましたところの職員についても、その者が今度
府県警察に移ります場合において、退職年金や退職一時金のいわゆる恩給法に準ずべき退職給付を受けないで来ました場合においては、その者が
市町村警察の職員として在職した期間を、恩給法の公務員としての在職期間とみなしまして通算する旨の規定を設けたのであります。
二十五項は、その場合の警察監獄職員と文官との区別に関する規定であります。要するにこれらによりまして、恩給についてはいろいろの
警察法の切りかえ、将来またいろいろ
府県警察間の交流等によります身分の切りかえ等につきまして、要するに恩給関係が継続するというふうにお考えいただきますれば、それで正しいのでございます。
二十六項は恩給法の一部を改正する法律によりまして、昨年若年停止の条項の改正が出ております。これは本年の四月一日から適用されることになつておりますが、ちようど七月一日からの
警察制度改正の前におきましてこれが適用されますと、相当長期にわたつて継続しておる職員が、この若年停止でさらに年齢が延長されないうちにやめてしまうという傾向が非常に強く起りつつあるのでございまして、そういうことになりますと非常な混乱が予想されますので、特にこの恩給法の一部を改正する法律の施行の際に在職しておつた
国家地方警察及び
自治体警察の職員についてだけは、八箇月の期間を一年間に延長いたしまして、つまり四箇月その適用を延期する特例を設けたのであります。
二十七項は警察の共済組合に関する経過規定でありまして、これは非常に複雑な規定でございますけれども、要するに
自治体警察の雇用人のうち特別なものが、今まで
自治体警察の共済組合に入つておりましても、これが恩給法に準ずるような退職年金や退職一時金の条例の適用を受けておつたために、今度は共済組合の職員としては継続いたしますけれども、全然新しく共済組合員としてその期間が出発するようになることになる。これは雇用人だけに限りまして、ほかの職員に比べまして非常な不利益なことになるのであります。これをその職員が退職給付を受けない場合に限りまして、
市町村警察自体の共済組合としての組合員であつた期間を組合員の期間としてずつと通算いたしまして、将来その雇用人が退職する場合におきましても、ほかの職員が恩給法の適用を受けますので、恩給法によりまして救済されるのと同様に、共済組合の退職金に当るものとして救済を受けることができるように規定いたしたものでございます。なお本項の中には責任準備金の金額だけは納めなければならないということも規定いたしております。
二十八項は、この法律の施行のための必要な経過措置を以上掲げましたもののほかに必要があれば政令に委任するという規定でございます。
以上はなはだ概略な説明でございまして、御理解を願うには不適当であつたかとも思いますが、また御審議の際に御質疑によりましてお答えを申し上げることにしたいと思います。
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