運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-02-26 第19回国会 衆議院 地方行政委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月二十六日(金曜日)     午前十一時二十五分開議  出席委員    委員長 中井 一夫君    理事 加藤 精三君 理事 佐藤 親弘君    理事 灘尾 弘吉君 理事 吉田 重延君    理事 藤田 義光君 理事 西村 力弥君    理事 門司  亮君       生田 宏一君    尾関 義一君       木村 武雄君    濱地 文平君       山本 友一君    床次 徳二君       橋本 清吉君    阿部 五郎君       石村 英雄君    北山 愛郎君       伊瀬幸太郎君    大石ヨシエ君       大矢 省三君  出席国務大臣         国 務 大 臣 犬養  健君  出席政府委員         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         国家地方警察本         部次長     谷口  寛君         国家地方警察本         部警視長         (総務部長)  柴田 達夫君         国家地方警察本         部警視長         (警備部長)  山口 喜雄君  委員外出席者         専  門  員 有松  昇君         専  門  員 長橋 茂男君     ————————————— 二月二十六日  委員前尾繁三郎君辞任につき、その補欠として  濱地文平君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  警察法案内閣提出第三一号)  警察法施行に伴う関係法令整理に関する法  律案内閣提出第三二号)     —————————————
  2. 中井一夫

    中井委員長 これより会議を開きます。  まず警察法案警察法施行に伴う関係法令整理に関する法律案、この両案を一括議題として質疑を行います。質疑通告がありますので、順次これを許します。藤田義光君。
  3. 藤田義光

    藤田委員 予算委員会に出ておられました法務大臣出席されましたので、本日は私はきわめて簡単に数点だけお伺いいたしておきたいと思うのであります。  まず第一にお伺いしたいことは、本法案審議にあたりましては、警察民主化ということが最も重大な問題であります。私の知り得た範囲内におきまして、権力分散とチエツク・アント・バランスの原則を推進しながらポピユラー・コントロールを受けることが、民主主義の世界的な通念であります。一つ権力があまりに集中いたしまして、民衆のコントロールを受けなくなるとき、民主政治は終りを告げるわけであります。犬養法務大臣民主主義ということに関しましてどういうお考えでありますか、私は質問を開始する前に、まず本問題に関する所見を伺つておきます。
  4. 犬養健

    犬養国務大臣 御承知のように新憲法におきましては主権在民でございます。従つてあらゆる政策、法規をつくります場合、民衆意思というものが反映しないような法律をつくりますならば、それは憲法精神に沿わないものと存じます。この警察法改正いたしますにあたりましても、おそらく御意見相違になる個所が多々あるかとは思いますけれども、私どもも、警察運営民主的管理ということについては、相当頭を使つたつもりでいる次第でございます。
  5. 藤田義光

    藤田委員 私は、これは意見相違ということよりも、根本的な理念の対立になりまして、民主主義ということが非常な危殆に瀕するような改正であろうと思いますので、大前提をお伺いしたのでありますが、ただいまの法務大臣の御答弁によれば、非常に民主的な管理ということを考えて、この法案をつくつたと言われます。しからば従来の警察法前書きに、地方自治の真義を推進するという大前提があつたのであります。従来の警察法根本精神はここにある。これが民主警察目標でなければならぬと私は考えますが、かような大事な大きな旗じるしが抹殺されておるのはどういう理由でありますか、お伺いしておきます。
  6. 犬養健

    犬養国務大臣 前文と文章がかわり、また前文を置くということを、ただいまの政府は適当な法律作成の形式と思つておりません。これは本会議でも申し上げた通りであります。従つて前文にうたいました精神を本改正法の第一条、第三条にうたつたわけでございます。
  7. 藤田義光

    藤田委員 ただいまの法務大臣の御答弁は非常に重大と思います。私ども昭和二十二年五月三日に非常な犠牲を払いまして新憲法を打立てております。この憲法には堂々と主権在民の大原則前文でうたつておりますので、ただいまの御答弁からすれば当然憲法改正すべきではないか。しかる後に警察法前文等の廃止は考えらるべき問題でありまして、国家最高法律たる憲法をそのままにいたしまして、われわれの考えからすれば警察法前書きは適当でないという大臣の御答弁は、その点をどういうふうに解釈しておられますか、お伺いしておきます。
  8. 犬養健

    犬養国務大臣 言葉が足りないために御了解を得ないかもしれませんが、この際政府は、あらゆる法律改正をしなくてもいい、法律前文の上のみで、憲法を初めあらゆる法律改正する意思だとは申し上げてありません。たまたま占領政策中にこしらえられた法律を何らかの必要で改正し、改正案を出す場合は、今の政府としては前文をつけるという習慣をなるべくやめて行きたい、こういう心構えであります。従つて憲法の条章に従いましてつくります警察法改正案のために、憲法そのもの改正するという必要は、遺憾ながら私どもは認めておらない次第であります。
  9. 藤田義光

    藤田委員 国家のすべての法律制度は、憲法に準拠しております。憲法の大原則を曲げました個々の法律というものは、言葉は極端でありますが、純法理論からすれば当然憲法違反であります。これはだれが詭弁を弄しようと、私はさように確信いたしております。従いまして今回の警察法提案にあたりましては、日本法律構造を根本的にかえてから考えるべき問題である。従つて憲法改正ということと関連せざれば、自治法の一部改正警察法改正という小手先を弄することは、非常に危険な事態をかもす結果となり、八年間の占領中及び独立後の施政というものが、あまりにむだになりまして、非常に危険な結果になることをおそれるのであります。この点に関しましては見解相違になるかもしれませんから、いずれあらためて大臣答弁を求めることにいたしまして、本日は御答弁をお伺いいたしません。  先般来同僚委員質問に対しまして、この法律案提出一つの大きな理由として、共産党対策を言われておるのであります。これはいずれ秘密会において、るる説明を聞くことになつておりますから、委細はその後にいたしたいと思いますが、共産党対策のために、警察制度全般をいじるということは行き過ぎではないか。むしろそういう特殊な犯罪案件を処理するためには、一部の特殊な機構をつくればよろしいのではないか、現在の公安調査庁運営を再検討すればよろしいではないか、それが不可能ならばアメリカにおけるFBIのごとき組織考えてもよろしいのではないか、この危険なる警察制度、すなわち共産党対策のために警察制度全般機構を動かすと、結果において非常に危険なものをもたらすということは、犬養大臣がみずから戦争中に犠牲になられて体験されたところでございます。私は警察制度改正にあたりまして、共産党対策を大きな理由にされるのがどうもふに落ちません。その点に関しましてはどういうふうにお考えでございますか。せつかく公安調査庁あり、またアメリカFBIのごとき生きた例があるのでありますから、何も全般的に、その対策のために機構改革をやる必要は絶対にない、かように私は考えておりますが、お考えをお伺いしたいと思います。
  10. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えを申し上げます。警察法改正必要理由のうちに、ひそかに軍事方針をとつている暴力主義的破壊活動にも備えなければならぬということを理由一つに申し上げましたが、これは共産党対策ばかりではございません。また共産主義という思想が人類の生活に悪いということだけでは、警察捜査の対象にならないのでございます。要するに社会を改革して行く手段として、暴力主義的——武器をとつて一気に血なまぐさい革命をやるということに対しては、治安当局は当然お察しの通り関心を持たざるを得ないのでございます。国会においてお互いにこうやつて違う意見を話し合つて、そして双方で中庸を得て行くということはまことにけつこうでありますが、議会主義手段をとらずに一気に武器をとつて社会を破壊するやり方に対しては、左翼にしろ右翼にしろ、お互いにこれを是認するわけに参りません。社会安寧秩序にも関係いたしますので、二つの県、三つの県というふうに同時に起ります暴力主義的破壊活動に対しては、当然警察法改正のときにその用意をいたしませんければ、一人一人の家庭が夜安らかに眠れるようにするという、警察本来の精神にももとると思うのであります。そこで、そのために公安調査庁があるではないか、まことに仰せの通り公安調査庁暴力主義的破壊活動に対して平生思想的傾向を調査いたしております。またその意味で、公安調査庁必要論国会の中でちよいく出る折から、藤田さんから特に公安査調庁をお認めになるような御発言のあつたことは、感謝しなければならぬと思うのでありますが、さて武器を持つて立ち上つた場合、公安調査庁はその任にございません。一般的思想傾向を調査する役所でございまして、これに対応するような任務を与えてございません。そういうわけでこれは別の役所でしなければならぬ。それを私ども警察中心仕事考えておるのでございます。先ほど権力分散民衆警察をコントロールしなければならぬ、ごもつともでございまして、さればこそこのたび御審議を願つております警察法第五条におきまして、中央警察庁が地方に指令するのは、何でもかんでもやつては違法であるぞ、法律に規定してあるだけでやらなければ違法であるぞと、みずから肩身を狭くして厳格に制限してあるのでございます。  そこでFBIの問題でございますが、私も戦後アメリカに二度参りましたときに、FBI活動地方警察関係を見ましたが、これは議論相違になるかもしれませんが、日本におきましては、たまに大事件があつた場合だけFBIのようなものが出て行つても、なかなかうまく参りません。一つには、たびたび申し上げますように、日本民族幾多美点を持つておりますが、二つの異なる命令系統によつて同じような仕事をいたします場合、どうも連絡調整がうまく行かない。幾多美点がある日本民族の中で、これは弱点一つかと思います。戦時中の陸軍と海軍、あるいは近ごろでは官庁官庁との間に、法律作成のときにいろいろうわさが立つ。これはやつぱりどこの官庁が悪いというのではなく、日本人には命令系統が違う場合の連絡調整をなかなか会得していないという一種の民族的な特性があるのではないか。いかなる法律も、民族のその特徴、美点弱点をのみ込んで法律作成をしませんと、抽象的な法律になると思います。アメリカのようにほんとう民主主義が徹底しておりますならば、FBIのようなものが、たまに大事件のとき地方に出て行つても、非常にうまく行きますが、日本の現状におきましては、これは藤田さんふだんいろいろ御研究のようですからよくおわかりでしようが、たまに中央の者が大事件のときちよつと出て行つて、おい協力しろと言つても、なかなかうまく行かないのではないか。これは意見相違になるかもしれませんが、FBI的な組織を遂に採用いたしませなかつたのは、そういう理由からでございます。
  11. 藤田義光

    藤田委員 私はこの警察行政のごとき権力行政におきましては、努めて基本的人権ということを尊重するような方向に運営を持つて行くべきであるということを、かねてより確信する一員であります。     〔委員長退席加藤(精)委員長代理着席〕 ただいま法務大臣の御答弁によれば、アメリカのごとく民主主義の発達せる国においては云々ということがありました。私たちの政治的な理想もそこにあります。少くとも日本民主化されないと再び危険な状態になりますから、私は民衆の啓蒙をやりながら、警察制度のごとき民衆権利義務に直接関連する大きな権力行政は努めてアメリカのごとく民主化されることが、政治家目標でなくてはならぬということを確信いたしております。  そこでお伺いいたしたいのは、警察の本来の仕事ということは公共安寧維持であります。個人の生命財産の保護であります。犯罪予防鎮圧、あるいは捜査逮捕であります。交通の取締りであり、逮捕状の執行であります。私は警察本来の仕事は、これに制約されなくてはいかぬ。従つて建築警察衛生警察等一般都道行政に編入されたことは当然であります。こういう観点からしまして、共産党暴力破壊革命方式に対しましては、おのずから一般警察の本来の業務範囲外である。従つて保安庁法には、かくのごとき暴力破壊行為が表面に現われた場合におきましては、いわゆる間接侵略として、吉田総理大臣以下しばしば御答弁になつております通りに、保安隊ができておりまして、武器を持つてつた場合は、これが間接侵略を撃退するという歴とした国家機構が、われわれの税金をもつて確立されておるのであります。私はその前のいわゆる共産党対策予防の段階においては、現在の公安調査庁機構で十分である、かように考えておりますが、一般警察の中にあえて共産党の暴動の場合を想定したことを中心とした機構運営考えるということは、どうも警察本来の業務を逸脱した危険な改正ではないかと考えるのであります。この点に関する大臣のお考えをお伺いしておきます。
  12. 犬養健

    犬養国務大臣 警察本来の業務が、一般国民が夜安んじて眠られるというそういう方に重点があるべきだ——警察本来の精神についてお話がありました点は、全然御同感でございます。ただ、今申し上げましたように、警察というものは本来発生しますときは、まず自分のうちを守る、それから少し社会的精神が発達すると近所で一緒に守る、さらに発達すると一つの町を御一緒に守る、そういうふうに発展して来たものでありまして、この発展の径路はどんなに後世になつても尊重さるべきだと思いますが、近代社会に国際的な暴力主義的破壊行動破壊思想というものが出て参りまして、それが二十世紀の初頭から著しくなつて参りますと、まず自分のうちを守るという警察の本来の使命が近代社会に応じてかわつて来たことは、やむを得ないのでございます。しかしながら、それでもなおかつ警察の本来の仕事は、藤田さんの御指摘通りでございます。従つて、ふだん一般犯罪とか今御指摘のような交通事故とか衛生とかいうものは、全部府県の人がやるのでありまして、これは一々中央から指令すべきことはほとんどございません。それじやどういうことを中央がやるかというと、月のうち一度あるか二度あるか、そういう問題、そんなにあつてもたいへんだと思いますが、何箇月に一度、たとえばこの間九州の三つか四つの県に、同時に襲いました風水害の場合の治安維持、その中には大分破壊運動扇動的行動もあります。そういう場合に初めて中央が指令する、またメーデー事件とか大須事件とか吹田事件というようなときにやはり中央から指令する。第五条の重要な事項について指令するのは、私は年に何回とないのではないかと思う。あとは全部府県府県で生れたおまわりさんがやつてくれる仕事なんでありまして、その重要な国家的なことだけ指令するという点が、先ほどるる御教示のありましたFBI思想日本に合うようにかえたとおぼしめし願えれば、まことにけつこうなんであります。
  13. 藤田義光

    藤田委員 ただいまの大臣の御答弁によれば、私は今回の警察法改正案の中で、都道府県隊長人事権のごときは、中央で握る必要は全然ないと思います。年に数回ぐらいの指示によつて動く地方警察隊であるならば、少くとも中央意見を聞いて任命しておけば、地方の民主的な任命権によつて十分目的を達成すると思うのでありますが、この点に関するお考えを伺うとともに、この機会に警察権というものの保持者はどこにあるかということをお伺いしたい。今回の警察法改正を見ますと、警察権というものは国家統治権の一部であるという感覚で立案されておるんじやないかと思うのであります。しかるに地方自治法におきましては、その第二条第三項の第一号に、公共秩序維持自治体が持つということをはつきりうたつておるのであります。ところがわれわれの手元にはいまだに自治法改正案も出ておりません。また憲法の問題にもこれは関連いたして来るのでありますが、現在の法律体系からいえば、警察権というものは当然地方自治体固有のものである、国家統治権の一部ではない。私はかように考えるのでありますが、この点に関する犬養大臣の御見解を伺つておきます。
  14. 犬養健

    犬養国務大臣 これも私の言葉が足りないために御了解を得なかつたのじやないかと思います。年に幾度だからこうでよいという議論は、少々私と見解を異にするのであります。たとえば二重橋事件というようなものが、そう毎年起つてたまつたものではありません。しかし、二重橋事件を再びなからしめるために、厳重に当委員会からもお叱りがあり、今後の対応策を厳重にやつておるのであります。それは度数が少いからほつておくとか、ふえそうだからというのではなく、度数は少くても起つてはたいへんだ、起つた国家がひつくり返るかもしれないということの準備なのでありまして、年に幾回という度数制度の上からこの問題をお考えくださることは、ちよつと意見が違うのじやないかと思います。また公共秩序維持地方警察がやるということは、まことに御同感でございますが、地方々々の頭で処理できない、国家に大きい累を及ぼすような国家的な事件、ことに第五条にうたつてある狭い範囲、それだけは国家でやりたい、こういうことなのでございます。
  15. 藤田義光

    藤田委員 逐一反ばくするようで恐縮でありますが、よく大臣三重橋事件を例にとられます。私は、この二重橋事件というものは、いずれ後日ゆつくり論議したいと思いますが、これは機構の問題ではない、警察運営の問題でありまして、機構の問題としてこの問題を考える必要はない、かように考ておりますから、これは意見相違でありまして、これ以上お伺いすることは御遠慮申し上げますが、私の先ほどの質問、つまり警察権というものは国が持つておるものか、地方自治体が持つておるものかということに対する御答弁がないのであります。地方自治法の第二条第一三項第一号に、「地方公共秩序維持し、住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持すること。」これが自治体固有権限になつております。一例でありますが、こういう現在の法律体制から行けば、私は先ほど来再三犬養大臣答弁されたように、お互が住んでおります向う三軒両隣を平和にしたい、どろぼうも一人もなくしたいというところから、歴史的に発生したこの警察というものの本質からしても、警察権というものは、どうしても地方自治体固有のものであるという解釈を下さざるを得ないのでありますが、今回の改正から見ますと、警察国家統治権の一部であるというような印象を受けます。この点に関する御見解を承りたい。
  16. 犬養健

    犬養国務大臣 詳しいことは国警長官から申し上げますが、これはもちろん地方自治体に属する権利であると同時に、近代生活においては国家統治権の一部にもなつておる。その一部という幅が問題でありまして、一部々々といつて五分や六分になつてはたいへんです。ほんとうの一部にとどめなければならぬというのがわれわれの考え方であります。先ほど来御教示を得ているFBIというものをあのように地方生活を尊重しているアメリカでも置かざるを得ない、FBIはまさに国家警察でございます。ただ問題は、その幅で、みずから非常に肩身を狭くするか、いばつて肩身を広くするかということであります。私から見れば肩身を狭くしておるつもりですが、昨日来肩身の幅が広過ぎるというおしかりを受けておるのでありますが、広い狭いは別として、国家統治権の一部にも繰入れざるを得ないということは、近代生活のやむを得ない結果ではないかと考えております。なお詳しくは国警長官から申し上げます。
  17. 加藤精三

    加藤(精)委員長代理 ただいま法務大臣に、緊急に予算委員会から来てくれという依頼がございますので一応法務大臣に対する質問を若干延期いたしまして、後談また行いますから、御了承を願います。     〔加藤(精)委員長代理退席委員長着席
  18. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 地方自治法との関係につきましてお答えをいたしますが、なるほどただいまおつしやいますように、地方自治法には地方公共秩序維持が、公共団体任務一つになつておることは、おつしやる通りでございます。また国にも公共秩序維持するという責任も、当然あろうと思うのであります。ことに国家警察権を全然持たないということは、これは考えられないことなのであります。ところが自治法で申しておりまする公共秩序維持と申しますのは、これはいろいろな方法で秩序維持をやるわけであります。今警察法で論じておりますような、そういう警察というものを当然持たなければ、この地方自治法にいう公共秩序維持ということに反するかというと、そうは解釈できないのじやないかと思います。今の市町村にいたしましても、警察法から見まして、町村で初めから警察というものを打たないということを、法律で規定をしておる市町村もあるわけであります。持つ市町村もあるわけであります。また現在は、府県におきましては、警察は全然持つておりません。いわゆる警察法でいう警察というものを組織的に持ち、そして国民の自由その他を権力的に制限をして、そしていわゆる警察権の発動として秩序維持するというこの組織は、私は必ずしも地方自治法に、当然持たなければならないものと、今の現行制度がなつておるようには考えないのであります。そういう面から申しますと、いわゆる警察権権限行使というものは、これはしからば地方自治本来のものを国がある程度制限をしているか、あるいはこれは国が本来持つべき国の統治権として、権力をもつて治安維持する、権限行使として治安維持するというのは、本来はこれは国の統治権である、それを法律によつて地方に与えている、こう見るべきか、これには私は議論があるだろうと考えます。われわれといたしましては、実際面としてこの警察行政というものは、ただ権限行使の問題でありましても、地方に主かせておいていい部分が多分にある、国が直接関心を持たなければ国としての治安維持ができないという面は、やはり国の方にもある、だから両々相まつてやるのが、実際問題としていいのではないだろうか、かように考えておるのであります。
  19. 藤田義光

    藤田委員 ただいま犬養法務大臣予算委員会出席されました。私はあと数時間にわたり総括質問をいたしたいと考えておりましたが、大臣の御答弁がほしいために、本日の私の質問はこれで保留させていただきまして打ち切ります。
  20. 中井一夫

    中井委員長 これで休憩いたしまして、午後一時より開会いたします。     午前十一時五十五分休憩      ————◇—————     午後一時五十一分開議
  21. 中井一夫

    中井委員長 午前に引続いて再開をいたします。  休憩前に引続き警察法案及び警察法施行に伴う関係法令整理に関する法律案の両案を一括議題として、質疑を続行いたします。藤田委員の御質疑中でありましたけれども、ただいま出席をしておられませんから、この際順序を変更いたしまして、北山愛郎君に質疑を許します。北山愛郎君。
  22. 北山愛郎

    北山委員 それでは私の順序になつていませんが、質疑通告者がおいでになるまでお伺いをいたします。  まず最初に、これは議事の進行にも関係すると思うのでありますが、警察法提案について、担当大臣として法務大臣が来られておる、また国警の長官が来られておりますが、この資格といいますか、その根拠をお伺いしたいと思います。私ども現行警察法を見ておりますと、警察政府としての所管は内閣総理大臣じやないか、こういうふうに思うのであります。法務省の設置法などを見ましても、警察を担当するという点が明確を欠くのでありますが、その点について法務大臣から御答弁願いたいと思います。
  23. 犬養健

    犬養国務大臣 便宜上長官から事務的にお答えし、また私からお答えします。
  24. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 ただいまの御意見通り警察につきましては主管大臣というものは法律上はございません。現在の国家地方警察国家公安委員会は総理大臣の所轄のもとにあると、法律に書いてあるだけでありまして、従つて、たとえば市町村自治体警察については全然規定がない。しかしながら警察に関する法律、予算というようなことになりますと、これは政府が出さなければほかに出すところがない。従つて政府のどこかにそういう部局があるべきであるかもわかりませんが、今の法律上はないわけであります。そこで警察万般につきましては、特に内閣に担当大臣を設けられまして、制度上ではありませんけれども、あるいは総理の全体の責任の中にあるかもしれません、そういう意味で、広い意味で警察問題について政府のなすべき事柄があるとすれば、それは事実上国務大臣担当大臣でやつていただく、こういうことになつておるわけであります。  それから私どもといたしましては、法律上は国家地方警察本部の職員でありますが、政府のただいま申しました意味における万般の警察に関する事柄については、われわれがその仕事を命ぜられて処理をする、あるいはお手伝いをする、そういう意味で国会に対しましては、われわれも政府委員を命ぜられております。また事実上法案その他についても事務を行つておる、こういう事実関係でございます。
  25. 北山愛郎

    北山委員 警察法によりますと、国警本部の長官は国家公安委員会の指揮監督を受けて仕事をするということになつておりますが、ただいまのような意味で国警本部の長官がこの委員会においでになるということにつきましては、やはり国家公安委員会の承諾といいますか、承認を得ておると思うのでありますが、その点についてお伺いいたします。
  26. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 ただいまお尋ねの通りでございます。私がここでいろいろとお答えをいたしますのも、政府委員としてお答えをいたすわけであります。従いましてあるいは国家公安委員会意見と違う場合があるかもしれません。さようなことにつきましては、国家公安委員会において十分の了解を得ておるのであります。昨年もこの問題がたしか門司委員から出ましたが、その際に、国家公安委員もここに出て来られまして、その了解というか承認というか、場合によれば公安委員会意見が違うかもしれない、それは自分たちは十分了承しているのだ、昨年はそういう御意見でございました。本年も国家公安委員会にあつては、われわれが政府委員として政府のこの法案を説明することについては、十分了承を得ておる次第でございます。
  27. 北山愛郎

    北山委員 次に、この法案を作成いたします際に、その担当大臣である法務大臣の方では、自治警関係の方の意見は徴しなかつたかどうかの問題であります。現行の警察制度におきましては、国家警察自治体警察の二本建で運営をされておるわけでありまして、これが現状がぐあいが悪いというので改正をなさるのでありますから、やはり両者の意見を聞くのが当然じやないか、こう思うのでありますが、この警察法案をおつくりになる際に、自治警の方の意見を実際に徴したかどうか、どういう形で意見を求めたかという点をお伺いいたします。
  28. 犬養健

    犬養国務大臣 昨年はどちらかというと団体的に非常に目立つ御陳情がありまして、たくさんの方が法務省に見え、議会にも見えてお話になりました。今年は昨年言いたいことは全部言つたためでございましようか、主として小人数の、あるいは個人的のお話がございます。現に警視庁関係でも職務柄公には来られないが、公務のひまを見て、私の大臣室に単独でおいでくださいまして、るる御陳情もありました。またある五大都市の一つ自治体警察の首脳部も、ほかの会議で上京した折に私の部屋へ見えまして、非常に詳細な御陳情もありました。そういうように、昨年と違いまして団体的陳情は目立ちませんが、個人的なおちついたお話というものは、むしろ昨年より時間を多く、またいろいろ遠慮のないことを伺つたと存じております。
  29. 北山愛郎

    北山委員 次に、いろいろお伺いしたいこともございますが、これは議事進行の発言で昨日も申し上げたわけでありますが、現在のこの不安定な政情のもとで、政府がこの法案を御提出になつたということについて、私は政府考え方をお伺いしたいと思うのです。それは御承知の通りに現在は、保全経済会なりあるいはその他の利殖機関、あるいは造船疑獄、保安隊の問題、保安庁の汚職、砂糖、繊維というようにたくさんの、政府あるいは政界をめぐる汚職事件というものが発生いたしまして、そして国民の疑惑が非常に深まつておるという状態である。こういうふうな状態において、政府国民権利義務あるいは地方自治等に非常に関係のある警察法、しかも政府、政界のそういう疑獄とは、非常に関係のあるこのようなデリケートな警察法改正というものをお出しになるということは適当でないのじやないか。現在でも法務大臣は、検察官の活動については、一般的な指揮権がおありになる。しかも今度は新しい警察法によつて政府が全国的な警察というものを一本でもつて指揮できるような、中央集権的な機構をおつくりになるということになりますと、これは考えてみると、あるいは政治の腐敗というものを隠してしまう、臭いものにふたをするために利用されるかもしれないというような疑惑すらそこに起るような状態であるわけであります。しかも残念なことには、現在担当大臣としておいでになつておられる犬養さんも、その疑惑の一つ中心である。これは新聞がほんとうかうそかわかりませんが、とにかく昨年の八月ごろにも船会社の関係者と料理屋で会つている。あるいはことしの初めにも、いわゆる有名な中川で会つているというようなこと、これは国会のほかの委員会質疑におきましても、ある程度は大臣もお認めになつておられる。だからして非常に重大な警察法提案し、その担当をなされる大臣それ自身がこれは明らかにしなければ何とも言えませんが、ともかく現実に国民の疑惑の的になつておるというような事態において、私はこのような警察法政府提案すべきではないのじやないか。従つてこの法案は、今進行中のいろいろな疑獄事件というものが、ある程度の片がつくまで保留して撤回すべきである、かように考えるわけでありますが、その点についての犬養さんのお考えを聞きたい。
  30. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えを申し上げます。いわゆる汚職事件というものが出ておりまして、国民国会に対して失望しておるというような傾向のありますことはまことに残念で、われわれ政治家お互いに責任を感ずべきであると思います。しかし汚職事件があるから大事な法案は延ばしていいということは、残念ながら御意見に沿いかねるのでございます。たとえば汚職事件は、ただいま御指摘になりましたように司直の手で峻厳に公正に調べる、またこれについてもし万一政治的な、道徳的な責任観念から、政治のやり方をかえて国民に政治を信頼させるということならば、これは総理大臣がそれを内閣に諮つてやるべきである。しかしその間は全部ストツプしていいというものではないのでありまして、警察法のみならずデフレ政策、物価を下げるデフレ政策は、大蔵委員会予算委員会で遠慮なくやらなければならぬし、またあなた方のきわめて御熱心な社会保障制度、貧しい人たちの生活を保障する制度も、汚職の結果が現われるまではほうつておいてもいいというような議論は成り立たないと同じに、汚職は汚職、大事な国民の毎日の生活、夜まくらを高うして安んじて眠られるような処置をする警察法改正というようなものは、どんどん遠慮なくやるべきだと思うのでございます。  また政治的腐敗を隠すために、警察法をかえるのではないかというお話はまことに意外でございまして、この問題に手をつけるときには、汚職の汚の字もわれわれ知らず、世間も知らない、そのときに手をつけたわけであります。またかりに政府の一部に非常にふらちな者がありまして、警察法をかえて急いで汚職を隠すというようなことをしましても、公安委員会というものもありますし、その公安委員会の中には社会党の委員もおられます。また府県会においては、この警察法をかえると、予算にからんで府県会の議場において、公々然と府県民の面前において警察のなすところを批判するのでありますから、隠そうとして隠せるものではありません。日本は輿論の敏感な、そうして輿論の水準のきわめて高い国でありますから、私はさようなことを信じていない次第でございます。その点はひとつ御了承を願いたいと思います。
  31. 北山愛郎

    北山委員 まあそういうおつもりだということは了承いたしますけれども、しかしながら結果的に見ると、この警察法改正によつて、今の政府の息のかかつたものと思うようになるような国の全警察機構というものが、過表においてもあつたような政治警察になり、あるいは思想警察になるというような危険を私は申し上げるわけなんです。これは単なる相愛ではなくして、すでに過去の昭和の初めにおいてわれわれがはつきりと経験したところであります。あの昭和の初めの田中内閣あるいは浜口内閣、犬養内閣の当時におきまして汚職が続発しておる。そうして例の昭和の疑獄、勲章を売るような者が出て来たり、あるいは例の五私鉄事件といつて五つの私鉄の買収あるいは設置について、時の鉄道大臣小川平吉、これは自由党の前身の政友会の人であります。それから小橋一太という文部大臣、これは政友本党の人であります。そのようなそうそうたる連中が、この私鉄の買収にからんで莫大な金をとつたという疑獄がございました。また山梨事件であるとか、あるいは昭和六年でございましたか、例の三井財閥等のドル買いにからんでのいろいろな疑惑があつたわけであります。そのようなたくさんの疑獄が起つたのと併行して、そのときの田中内閣は一体どういう警察行政をやつたか。治安維持法を昭和三年に緊急勅令によつて改悪をして、そうして思想弾圧をした。ちようど現在教員の政治活動を禁止するあのような暴挙をやろうとしておりますが、それと相通ずるものがある。大臣は、日本の輿論はなかなかけわしくて、世間の批判がきついからして、そこで政府が悪いことをしよう、あるいは警察権の濫用をしようと思つてもそれは防げる、こういうふうに申しておりますが、それは思想の自由あるいは言論の自由というものが、十分に確保された状態においてできることである。ところが政府警察法をこのように改悪すると同時に、一方においてはそのような憲法に許された思想的な自由というものまで監視をし、これを制限しようとしておるのではないか。そのような大臣の言う通りであるならば、一方において思想、言論、批判の自由というものをどんどん伸ばして、そうしてその方面から警察を制約するということでなければならぬわけである。ところがそうじやなくて、警察権中央集権にして昔のような警察にしようとしておる、思想制限もしようとしておる、政治活動もだんだん公務員の政治活動の分野を狭くして行くというような方向へ行つておる。それではやはり、昭和の初めにやつたと同じ道を、われわれは歩むのじやないか。そして猛烈な選挙干渉をやつて、内閣がかわると地方の県知事はもとより、警察部長、内務部長の首をどんどんすげかえてしまう。民政党の知事あるいは部長あるいは政友会の部長と、はつきり色わけができておる。だから私は当時の警察を担当しておるある人を知つておりましたが、その人などは警察部長として地方に赴任するときに、はつきり地方の新聞記者に言つておる。選挙干渉めいたことは多少はするかもしれません、そういうことを堂堂と明言しておる。そのような当時の腐敗した政党政治、しかも警察を政治警察として濫用した政府思想弾圧をしたその政党政治というものを再現するのではないか。そうしてそのあげくのはてには、あの五・一五事件の結果軍閥というものがどんどん台頭して来て、フアツシヨ政治が起つて来た。政党政治の終焉になつたという過去のはつきりした経験を、われわれは経ておるわけなのであります。だから申し上げるのであつて、たとい政府がそういう意図ではないとおつしやつても、かつこうがだんだん昭和の初めごろに近づいて来ておる、こういう点を顧みて、これは大臣もよく当時の事情は御承知かと思いますが、達観的に制度としていいかどうか、そういうことをもつと批判的に見ていただきたい。その点についてひとつお伺いしておきます。
  32. 犬養健

    犬養国務大臣 そういう警察になつてはたいへんだという御注意まことにごもつともでありまして、これは全然同感であります。お互いにまだ書生の時分でしたが、ずいぶん乱暴なことが行われまして、御指摘事件は私も記憶に新たなところでございます。北山さんにひとつ了解を願いたいのは、その時分は警察をしてそういうことができる法律上の根拠があつたのであります。その法律は敗戦とともになくなつたのであります。その法律というのはどういうことかと申しますと、今特に御指摘のありましたお互いによく覚えておる治安維持法、集会言論の取締りの極端なやつ、また行政執行法、俗にお互いはこれを警察のたらいまわしと言つておりました。そういう法律の根拠ができておりますので、その根拠の上に立つて——当時の警官も一人一人決して悪い人ではないのでありますが、法律がこれを許しておりましてずいぶん行き過ぎがあり、お互いのみならず善人が迷惑したのであります。敗戦後の新しい警察法においては、この根拠は全部失われたのでございます。従つて法律根拠は新しく民主的な保障のもとにおける警察官の行動を規定したものができておりまして、しかもそれを監視するのはあなた方のお選びになつた、また私たちの選んだ、国民から選んだ公安委員会がこれを監視監督いたします。こういうことになりましたので、昔のようなことには、かりにふらちな警察担当大臣が出て来てもなかなか行きにくい。そこが非常に違うのではないかと思います。しかし万一、運用の上において法律違反に千人に一人ならないとも限りませんから、これは公安委員会などにおいて大いに監視していただく。われわれは公安委員会をそういう力のあるものにしたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  33. 北山愛郎

    北山委員 それでは正式に通告なつ委員も来られたようでありますから、私はあと質問は保留してこの程度で終りますが、ただ一つ、ただいま大臣のお話では、現在のいろいろな法律に縛られているのであるから、しかも治安維持法というような法律はないのだから大丈夫なんだということであります。しかしだんだんその治安維持法の方へ近づいて行つている。例の破防法がそうであります。それから今度の教員の政治活動の禁止、あるいは教員以外の人でもあの団体を利用して一定の行為を教唆扇動するという非常にデリケートなことをやれば、それが処罰されるというような驚くべき法律を出して、逐次世論を気にしながらだんだん過去の方ヘバツクしておるというのが現状だと思うのです。ですから私もその点は実は承服いたしかねるのです。ただ公安委員会があるからというお話でありましたから、この機会に国警本部の長官にお願いをしておきますが、現在の国警なり、あるいは自警もそうでありますが、一体公安委員会というものが、警察法に規定されたように運営されているかどうか、これは私非常に興味を持つておるのです。そこで警察法によりますと、国家公安委員会というものは国警についても単に行政管理、いわゆる人事、組織あるいは給与あるいは訓練いうような面だけで、警察の実際の執行、活動方面はタツチしないはずなんです。その限度にはたして国警の本部がとどまつておるか、あるいはそれを越えて都道府県警察に対して何らかの指示、訓令等をしておるのではないか、私はこれを非常に疑問に思つておる。そこで資料をひとつお願いしておきますが、国警本部で地方府県警察にお出しになつた訓令なり、あるいは指示事項あるいは注意事項といつたようなもの、会議の際に示したもの、そういう資料をひとつ御提出願いたい。はたして現在の警察は、現行法のもとにおいても法律がはつきり守られているかどうか。これは今後警察法審議する場合に、非常に重大なものでありますから、その資料をお願いしておきます。私はきようは一応これで終ります。
  34. 中井一夫

    中井委員長 今の資料の提出は、できるだけ早くするようにいたすそうです。伊瀬幸太郎君。
  35. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 私は大臣に二、三点質問をいたしたいと思うのでありますが、ごく端的にお答えを願いたいと思う。この間大臣の説明を聞いておりますと、今の警察法占領下にあつてできた法律であるから多分に行き過ぎがある、その行き過ぎを是正するために今度改めるのだ、かような御説明でございましたが、その説明を見ますと、一つ府県一本化にせなければ都市で犯罪を犯した人が農村に行く、農村の人が町へ隠れる、それを逮捕することにどうも連絡が不十分だ、こういうことで、強化をするのだということをおつしやつた。それからもう一つは、共産党の地下組織に対抗するために、この改正をやつて強化するのだ、こういうようなことをおつしやつたのですが、一体この連絡不十分によるところの弊害というものが、どこに具体的に現われたか。  それから私きのう資料を要求したのですが、共産党の地下組織に対抗する、こういうお話でしたが、私その資料を見なければわからないのでございますが、一体今の日共というものはどういう武器を持つて、そうしてどれだけの組織を持つているか。今同僚議員の質問にもございましたが、かつて治安警察法をこしらえるときには、これまた日本共産党に対する弾圧をするのでないと言いながらも、共産党に対するだけの弾圧ではなくして、農民運動をやつたり、労働運動をやつたりする人にも弾圧をやつた。それは今おつしやつたような、治安維持法という法律があつたからだろう、こういうことを御答弁をなさつたが、私はその当時の警察行政の、あのむちやくちやな、あの残虐なやり方を身をもつて体験している者です。実際私は警察国家の大きな被害者です。犬養さんも、きようラジオでも放送していたように、二・二六事件、あるいはまた五・一五事件というような、いわゆる右翼テロに対して何の御説明もなしに、共産党に対してのみあなたはそういう地下組織をどうのこうのといつて、一般民衆を恐れさしておりますが、今までの過去におけるところの歴史を見ますと、共産党がそういう暴動をやつたり、共産党が殺人をやつたりじやなくして、ほとんどがいわゆる右翼反動がそういうことをしておることは御承知の通りだと思いますが、一体それをしもひた隠しに隠されて、共産党だけが悪いんだというようなことをおつしやるのには、ひとつ具体的な事例をあげて御説明願いたいと思います。
  36. 犬養健

    犬養国務大臣 お答え申し上げます。たくさんありますが、まず最初に共産党、右翼というような問題で申し上げましよう。たびたび繰返して申しますが、私は共産党とは言つていないのです。破壊主義的な暴力活動というので、この中には右翼が入ります。いつでありましたか朝日新聞に私の参議院の予算委員会における戦後の右翼の動向についての説明が、ほとんど一欄ぶつ通しに出ておりました。おそらく法務大臣として、あんな長い右翼運動についての分析をした人はないと思います。それくらいに私は、個人的な事情からいえば右翼のテロの犠牲者の家族でありますから、その意味からも関心を持つております。要するにお互いに、伊瀬さんが私の所論を反駁する、私も自分の信ずるところを反駁する、お互いの相対立した意見をここで言い合つて国民の批判をまつというこの議会主義、この議会主義を否認して、とにかくナイフや鉄砲でやつてしまおう、こういう主義は右翼だろうが左翼だろうが、私区別しておりません。その意味で私は、暴力主義的な革命手段をとる者に対しては、国民に対してもそれに備え得るだけの警察制度をしておかなければならぬ。まだやつてないじやないかとおつしやいますが、やつたあとでつくつたのでは、これはそれこそあなた方のおしかりを受けるのでありまして、やる徴候を見たら、いち早く衆に先んじて、予防するというのが、政治家ではないかと思うのでございます。そういうことについて資料を出せというお話でございますが、資料も出しますが、事柄の性質上あるいは書き物で残せない部分もございますから、一般の方にははなはだ相済みませんが、秘密会で申し上げる部分もあるかと思います。ほんの一例を申し上げますならば、これは昨年私はよそでしやべりましたからいいのでありますが、暴力主義的な方のものは、一つ一つの件について攻撃目標というものをちやんと持つておるのであります。書き物にしてあります。その攻撃目標は、米軍の基地であり、軍要工場であり、波止場であり、停車場である。そして、それに対する米軍、保安隊、あるいは警察隊の兵力、これに対して暴力主義的破壊活動に賛成する人の人員の力、それの足りないところは、どの県からどう持つて来るというようなことまで、書き入れたものがあるのでございます。また、昨年の秋でしたか、私がある地方に行きますと、秘密文書をしさいに点検いたしましたが、もう「何々報告、司令官殿」と書いてある紙もあるのであります。純然たる軍事組織になつております。また山間部においては、軍事訓練のあとがときどきあるのであります。たとえば私が大阪、神戸地方に視察に参りましたときには、六甲において、あるいは丹波において軍事訓練をやつたとおぼしき形跡がありまして、それについて調査したこともあるようなわけでありまして、平穏でございますが、軍事訓練、軍事組織というものは、やはりそのスピードはゆるんでいない、こういうふうに考えているのでありますが、表向きの情勢は、例の昨年のメーデーで火炎びん騒ぎで、国民がこれを非常に非難したものですから、表向きは反米、反吉田、反再軍備の国民統一戦線と、たいへんおだやかな名前にかえておりますけれども、その底流に流れるものは、私は軍事組織であり、暴力手段による革命運動であつて、ただ世界的なチヤンスというものが熟していないというために自重していると、少くとも治安当局考えて行かなければならないのではないかと存じます。これについてまた御意見を伺いたいと思います。  それから占領政策の一助として行われたと申したことは事実でございますが、同時に占領政策で生まれた現在の警察になかなかいいところがあります。おそらく戦争前と戦争中は、今日のように国民警察に親しむことはなかつたと思います。ときどき交通巡査などが子供に笑つて話しかけたり、実に見ていて私もなごやかになります。そういうことはやはり占領政策が偶然持つて来たいい点だと思います。ただしいて分析して申せば、あのときは二大陣営が何とか仲よく行ける、アメリカも資本主義を一〇〇%主張しないで、ニユーデイールその他で資本主義の悪いところを除去して、ソ連の言葉でいえば、資本主義を六〇%ぐらいに発揮してくれれば、ソ連もレーニン時代のようなボルシエヴイーキを一〇〇%発揮しないで国際協調的に六〇%にすれば、米ソは仲よく行けるではないか、こういうことをルーズヴエルトも言いますし、スターリンも言つて、はなはだ近寄つた。同時に日本降伏の直後におきまして、日本という国は恐しい、だから力を全部分散しなければいかぬ、ことに日本警察というものは、二度と組織網をつくつてはいかぬというので、日本の脅威を二度とあらしめないという細心な注意のもとに警察制度をつくりましたから、警察単位が今日から見ると小さ過ぎると思います。これは吉田内閣の警察法改正の態度がいいとか悪いとか、たくさんあります。それは「自由な御批判でありますが、少くとも警察単位が分割され過ぎていて、これは犯罪捜査にもややこしい。連絡調整にも実際の手続では限度がある。制度そのものにも再検討すべきときが来たのではないかというのは、吉田内閣の警察制度をかりに反対する人といえども、この点だけは認めている。その最大公約数をとると、まあ府県単位がいいのではないか、中央一点張りはこわいし、またあまり細分化されてもだめだ、まあまあ府県単位というのが、郷土愛の単位にもなるし、いいのじやないか、こういうのが国民の大部分の常識のように私は承つているのであります。その府県単位にしたそのあとは、いろいろ任免権や何かであなた方にしかられますが、これは意見相違お互いにありましようが、府県単位においてということは、五大都市出身以外の方は大体賛成ではないか、こう私は思つておるのであります。
  37. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 今大臣は大多数の人が府県一本の警察に賛成だというようなことをおつしやつたのですが、それは少し違うのじやないか。実はきのうあたりも全国の市会議長から一本化には反対だという陳情を私ども受けております。またラジオの街頭録音を聞きましても、この民主警察を守つてくれという声こそ私どもの耳に入つて来る。きよう府県の県会議員が来られて、初めて府県一本の警察にしてくれとおつしやつた陳情を受けたが、私ども毎日受けている陳情というものは民主警察を守れ。せつかくここまで来た民衆の親しめる民主警察をなぜ昔のような恐しいこわい警察にせなければならぬかというような陳情であるが、このちまたのごうごうたる輿論を大臣はお聞きになつていないのかどうか、私はこういうことをひとつお伺いしたいと思う。
  38. 犬養健

    犬養国務大臣 なるほど仰せの通り市会関係はごうごうたるそういう御陳情でありますが、他の面もごうごうたる御陳情があるのであります。つまり府県知事の全国の会議、これは三つの御注文はありますが、府県単位というものはやむを得ない、三つの注文以外は政府提案に賛成だというので、これもなかなかごうごうたるものでありまして、この両方のごうごうを勘案して考えて行くということが、政府の中庸を得た態度ではないか、こう思うのでございます。
  39. 伊瀬幸太郎

    ○伊瀬委員 そこでお尋ねしたい。この理由大臣はさつき答弁をしてくれなかつたのですが一体府県一本化にせなければ連絡が不十分だということはどういうことですか。具体的にその事例があればお聞かせしてほしいと思います。
  40. 犬養健

    犬養国務大臣 これは非常に大切なことでもございますし、つつ込んでお聞きになりたいというお気持はよくわかります。これは実際家に御説明させることが一番よいかと思いますので、連絡などに苦心した政府委員から御答弁をさせます。
  41. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 大臣もしばしば述べておられますように、この単位管轄が違いますと、自分意見というものはやはりどうしても人間として加わらざるを得ない。従つて多元的であればあるだけに、一元的に処理するのと多元的に処理するのと、同じ一つの対象に対して徹底するという場合に、ここに非常にむずかしい問題が起るということは、理論上も十分おわかりになるだろうと思います。これも大臣がしばしばおつしやつておられますが、大体今日の犯罪の区域というものが非常に広がつております。それは中には一つ市町村の中で犯罪を犯し、その中に被疑者がいるという場合もありましようが、犯罪行為自体が数市町村にまたがつている。また関係被疑者は数府県の間をあちこちと逃亡を続けるということが、大体今日の犯罪形態になつておるわけであります。この際にそれじや互いに力を尽し合えば連絡もよく行くじやないか、こういうことでございましようが、例をとつてみますと、たとえば大阪の市内である大きな強盗殺人事件が起つた、その手配は少くとも大阪府下全部にしなければならないという場合に、これが一元的であれば、一つの一斉通報機によつて府内の各警察に一度に手配が届くわけであります。そしてその手配によつて関係署がどういうように活動するかという監督も一元的にできる。これが現在のように、大阪府内におきましては警察単位が二十くらいあります。市がたくさんあります。国警の部分もあります。従いまして大阪市内で起つた事柄を府の本部に連絡する。府の本部から府の笹下の各警察に連絡する。同時に関係の他の大阪府内の市にも連絡する。市はそれを受けてその市内の警察に連絡するというだけでも時間が相当かかる。一昨日大臣も超短波無線のことを話されましたが、今日大阪府の警察あるいは市の警察もパトロールカーを持つて、この無線通話ができる車がたえず市内あるいは府内をパトロールいたしておりますが、その場合においてもこの単位が違いますと、どうしても波長を違えなければならぬ。この間どなたか、それはどんな波長でも聞けるものを持つておればいいじやないかというようなことをおつしやつておられましたが、これは無線電話でありますから、お互いに話し合うわけであります。ただ一般の放送のように一方的に放送しているのを聞いているだけじやありません。お互いに無線局同士が話し合うわけであります。現在大阪府には無線局がおそらく二十くらいあると思います。大阪市の警察は無線局を三、四十持つております。この無線局同士がお互いに話し合うという場合に、どうしても通信統制をしなければ混線をしてしまう。従つて一つの通信統制をいたしまするその組織の中における波長というものは一つでなければならぬのであります。そこで大阪市内でパトロールカーが、ある殺人事件にぶつかつた。それを他の大阪府内を走つている。パトロールカーに知らせようと思つても、府内の方あるいは他の市警の方のいわゆる波長の違つたところには話ができない。これを市の本部に話をし、市の本部が今度は府の本部の統制室に話す。府の本部の統制室がまた府のパトロールカーに話をしなければならない。そこでその無線通信の統制をするものの頭というものは、これは市の本部あるいは府の本部において、必ずしも両方機械的に動く問題でありません。府の方としてはそれよりこちらの方を先にやらなければならぬというものがあるかもしれない。そういうような場合にいろいろなことで、府下全体に手配をするというだけでも、これが二十幾つかの多元的なものにわたつておりますとなかなかうまく行かない。警察の最も大事な神経中枢はこの無線及び有線の通信機能であります。これが単に機械的に働くというものにつきましても、それほど多元的になつて来ますと、機械的の機能を発揮させるというだけでもそれだけの不便がある。従つて頭の中で一々判断して、そして対処をしなければならぬという問題になりますと、大臣もしばしば言つておられますように、ただお互いに連絡をよくしようという努力だけでは、まかない切れない不便というものが非常に多いわけであります。従つてこれが多元的であればあるに従つて、いろいろな施設も、あるいは人的なものも、お互いにダブらざるを得ない。これは能率的に考えて非常によくないし、また経済的に考えてもきわめて不経済である。それならば、できるだけ安い経費で、能率のいい、そして民主的な、国民あるいは市民に喜ばれる警察をつくるのが政府としての責任ではなかろうか、かような意味からこの警察法改正法案を提出せられたものだ、私ども事務に当つておる者もさように考える次第でございます。
  42. 大矢省三

    ○大矢委員 議事進行。今度の法律は、自治警を廃して府県単位の国家警察にする、こういうのです。今斎藤さんの説明を聞きますと、これは国家警察というか、府県単位の警察を強化しようという立場にあるわけです。自治体警察を残そうとする意見があるのに、その強化しようという意見だけをここで言つて、一方的にわれわれが聞くということは、はなはだ審議の上に不公平である。自治体警察の言い分はどこに欠陥があるか。われわれは警察の問題についてはしろうとです。強化しようというくろうとの国警斎藤さんだけに聞いたり言つたりするのでは、公平な審議ができないから、この審議中は、自治体警察のどなたか責任のある人に出て来てもらつて斎藤さんの言うことに対しては私はこう思う、自治体としてはこうだということを聞きたい。都会の犯罪人がいなかへ行く、いなかの犯罪人が都会へ来るということがあるから、十幾つの自治体警察が大阪なら大阪にあると困る、こう言うけれども、昔と違いまして、交通は発達しているし、通信は完備して、むしろ大阪の農村へ行くよりも、兵庫県、京都、奈良県の方が早く、十分か十五分で行けるのです。それを単に府県単位に、七十数万の奈良県を一つにし、二百数十万ある大阪も一つしかいらぬのだ単にそういう犯罪があるからどこかに固めなければならぬというのならば、もつと方法はある。これは自治体警察といわず、国家警察といわず、やはり治安を守ろうというのですから、これは両方とも非常に利害が相通ずるものであるし、ほんとうにその実際にあたつて、ことにいいところを今大臣は非常に強調されたが、私はそのいいところを残したい。警察治安を守るということは部分的な問題である。もし大きな問題が起きたときに、警察はかつてにやつてくれ、おれはむしろこれに味方するのだと住民が言つたら、治安は守れません。だから治安を守るということは、そこの住民と警察が協力して初めてなる。公安委員会があるから大丈夫である、そういう甘い考え方では、これから先の治安というものは守れないと思う。ほんとうにあなたが真剣に考えるならば、このいいところをどうして残さぬか。警察官だけで守るのだというのでは、昔の国家警察とちつともかわつておらぬ。だから、いいところは残し、欠陥は補うにはどうすればいいかということを、もつと私どもは真剣に考えて、それに対して納得の行く説明があるはずだと思うから、私は今申しましたように、この審議中には自治警の人と国警の人と両責任者に出て来ていてもらいたい。これは委員長にぜひお願いしたい。これは期間でどうなるか知りませんが、それだけはひとつお願いしてこの審議を進めたい、こういうふうに考えます。それからできれば今の答弁を願いたい。
  43. 中井一夫

    中井委員長 大矢君の御意見につきましては、先日来の理事会におきましても、また他の委員諸君からも、たびたび出されている御意見であります。ただしかし、自治警の関係者をずつと引続き召喚しておきまして、この委員会出席せしめるということも、どうであろうかというような考慮から、大体この委員会審議の予定をつくりまして、一般質疑を七日間、秘密会を一日間、逐条説明を一日間、逐条の質疑を四日間、法務もしくは内閣委員会あたりから申入れの来るべき連合審査会を二日間、それから公聴会を二日間、各党の態度決定を一日間、討論採決に一日間、大体こういうふうに最近理事会できめられたのであります。そこでこの公聴会の二日間の間に、自治警の関係者だけではなく、その他一般の有識者、庶民の人々にも来てもらつて話を聞こう。その際先日来国警方面から説明のありまする点につき、国警意見を是なりとするか、またその間に何らか誤りがあるかというようなことをとりただされたらいかがであろうかと思いますが、大矢君の御意見はさらに進んで、自治警方面の関係者を引続きこの委員会出席せしめておきたい、こういう御意見でありますから、あらためて理事会を開きまして、理事会の決定にまちたいと思います。
  44. 大矢省三

    ○大矢委員 どうぞそう希望します。斎藤さんのおつしやられることを自治警察の人が聞いておつて、それに対して公聴会のときに言つてもらうならいいけれども、一方的に言いつぱなしでは、国警の方がどう考えているか、自治警の方ではわかりませんから、その点ぜひそうしてもらいたい。
  45. 中井一夫

    中井委員長 理事会によつてこれを決定したいと思います。今大矢君の御質疑がありましたけれども、これに対して政府側の答弁を求めます。
  46. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私がいかに政府委員の立場で答えていると申しましても、国家地方警察という名前を持つておるという面から、さようにお考えになられるのはごもつともであろうと存じます。しかしながら先ほどのお説のように、自治体警察をやめて府県単位の国警にするというお説は、これはこの法案とは相当隔たつた考えではないかと、私はこう思います。今日の国家地方警察は、御承知のように自治的要素は全然ございません。府県の公安委員が任命せられておるのでございますけれども、しかし警察官は全部国家公務員であり、それから予算も全部国の予算であつて府県会も全然タッチをしない、そういう強い国家警察になつておるわけであります。そこでただいま大矢委員のおつしやいますように、警察はどうしてもやはり一般国民と親しくなければならぬ。税務署だとかそういうような役所組織ではうまく行かぬのじやないか。今日の国家地方警察自治体警察に比べて国民の信頼もなし、一般から非常に官僚的だといわれ、県民からは離れておる、かようには私は思いませんが、しかし制度の上から申しますと、いま少しく府県民の方々からの率直な批判を受けられるような体制の方がいいのじやないか。さような意味で、国家地方警察もやめてしまつて、あるいは今の国家地方警察を例にとりますならば、それにもつと自治的色彩を持たせ、府県自治体警察の形にして、予算は大部分府県費で支弁をしていただく。そうすれば府県会で予算を通じての十分な監督もしていただける。予算使用上の監督だけではなくて、警察官のあらゆる行動について、府県会においてあからさまな監視を受ける、こういう立て方が、府県民に親しみを持つという意味からも、またさらに警察が自粛するという意味からむしろいいのではないか。さような意味から申しますと、今までの国家地方警察、これをもし国警と呼ぶならば、国警というものが廃止されてしまつて、これに相当強い自治性が加わるわけであります。今日警察法について、この地方行政委員会でいろいろごやつかいになつておりますが、今の制度の上から考えますと、国家地方警察地方行政委員会にあるのが、まことに私はおかしいような感じを持つくらいの制度になつております。しかしただいま提案されておりますような法案になりますれば、これは警察が全面的に地方行政の一環になるわけでありますから、今後であれば、私はこの地方行政委員会で論議されるのに非常にふさわしい組織になるのではないか、かように考えておるようなわけであります。(門司委員「何を言う」と呼ぶ)私の申しますのは、国家地方警察の面だけから申しますと、自治性というものが非常に少い。そういう意味で申し上げておるのであります。それを今度の改正によりますと、国家地方警察がなくなつて、全部府県警察になり、この地方行政というところで論じてもらうのに、最も適した形に警察全体がなるのではないかという感じを、率直に申すと持つ、かように申し上げておるのであります。
  47. 門司亮

    ○門司委員 私はきよう発言をしないつもりでいましたが、今の斎藤君の言葉で発言せざるを得なくなつた。この委員会審議するのがおかしいというのは一体どういうわけだ。この委員会のありますゆえんは、当初においては、御存じのように治安及び地方制度委員会という名称がつけられておつた。その当時の日本警察制度というものは、旧警察制度であつた。ところが警察制度改正されて、自治体警察を大体主体とするということになつておる。国家警察といえども、これは国家地方警察言つておる。一方には自治警察がある。その警察法改正を自治の大任をあずかつておるこの地方行政委員会が取扱つて不都合だというのは、一体どこなんだ。私はもう少し国警長官ははつきりしてもらいたい。君がそういう頭で警察法提案するということ自身が間違つておると思う。
  48. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私の申しておりますのは、今国家地方警察組織だけから申しますと、自治的な色彩が非常に少い。これは警察としてはよろしくない。今度の制度になれば、全体として自治的色彩が入つて来て、非常にけつこうだと思う。そういう意味で私は申し上げております。その点は誤解のないようにお願いいたします。
  49. 門司亮

    ○門司委員 私は決して誤解もしていなければ、聞き違いもしていない。さつきから申し上げておりますように、現行警察法でも、国家地方警察という、地方という文字をなぜつけたかということである。警察行政というものは、地方自治体がその主体でなければならないことは、たびたび申し上げられておる。それはお昼前にも藤田さんからいろいろ地方自治法の例をとつて言われておる。いわゆる地方行政というものの責任は、国民の最も身近な基本的の人権と自由を守ろうとするならば、それは権力によつて守り得るものではないということである。お互の自治の中からそれらのものが生れて来ることは、斎藤君もしろうとでないのだから、警察の歴史を読んでごらんなさい。警察の歴史というものはちやんとそれで育つて来ておる。同時に行政の最後の大任というものはどこにあるかということについては、どういう事例があるか。たとえば京都におけるあのずつと長い間続いておつた郷土組織のようなものです。応仁の乱のときにすでにできておるが、応仁の乱に長い間京都が戦火の巷にあつて治安が確保されなかつた。そのときに京都の市民はこれを郷士委員会と称して、あそこに自警団組織をつくつて、そうしてお互いの町内の自治はこれが守るということをちやんとやつておる。そのことは応仁の乱以来ずつと続いておる。それから徳川時代の状態を見ても、町奉行があり、あるいは番所があつたが、最後の辻番所というものは私設である。これは決してお上のものじやなかつたということは、歴史がはつきりしている。最近においても最も大きな事例としてあげられるのは、大正十二年の大震災である。戒厳令がしかれている。警察の力だけではだめだということで、戒厳令をしいておる。戒厳令をしいても、なおかつ治安を確保するために、おのおのの町内にちやんと自警団をこしらえて、そうしてお互いが自治を守ろう、治安維持しようということで協力しておる。私は少くともこの治安の問題については、地方自治体というものを離れた行政は行えないものだと思う。これはただ法律の中にこういうことが書いてあるからこうだというだけではない。そういう事態になつておるときに、今日の警察法自身をなぜそういうことにしたかということは、斎藤君も御承知であろう。一面には国家犯罪というものがあり、従つてどうしても国家警察というものは必要なんだ。アメリカの例もお昼前に言われたけれどもアメリカにもちやんと国家組織がある。このアメリカ警察というものは、あなたも御存じだと思うが、州に行けば州の憲法かあり、州の法律があり、これを犯したものは州の検事局で検挙し、州の裁判所で裁判をし、州の監獄に入れておる。州に警察を持つているところは、ちやんとそこに検事局を持ち、裁判所を持ち、監獄を持つている。国の法律を犯したものについては国がこれを処置している。それはおのおのの自治体において犯す一つ犯罪の系統と、国全体としての一つ犯罪の系統があるということはわかり切つたことである。従つて今日国家地方警察があるということは、財政的に見てもあるいは能力的に見ても、本来の姿は自治警察であるべきであるが、しかしその能力を十分に発揮することのできないものに対しては、これは国の一つ組織の中に入れて行うということになつている。今日の国家地方警察というものは、明らかに国の犯罪を取締り、国の犯罪に対する関係を持つと同時に、能力とその力を十分に発揮することのできないであろうという市町村警察というものについて、これを総合したものである。従つて警察法をごらんになればよくおわかりになるように、警察の指揮命令権というものの最後は体どこに行つているかということである。やはり国家にこれが集約されていることは御存じの通りである。同時に警察法その他の改正あるいは意見等については、やはり国警長官政府の役人としてこれを取扱われている。これは私よりもあなたの方がよく御承知のはずである。従つてここで取扱うことがおかしいとかいうことを、警察の方の関係が今のように発言されることはおかしいと思う。もし斎藤君自身がそういうお考えであるならば、斎藤君自身もう少し警察法を読んで来なさい。
  50. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私は門司委員のお考えとまつたく同じ考えで申し上げているのであります。ただいまおつしやいますような警察というものは性質であるにもかかわらず、国家地方警察というものにはあまりに自治的な色彩というものが乏しい。今度この制度を改正していただければ、国家地方警察の面から申しますと、今までよりもほんとうにいわゆる地方制度的な色彩が濃くなつて来て、ただいま門司さんのおつしやるような趣旨に沿うものになるのじやないか、という趣旨で私は申し上げたのであります。別に他に意図があるわけじやございません。今までの国家地方警察は、あまりに国家的色彩が強過ぎておつた。それが今度は地方的色彩が非常に多分に、むしろ地方府県の自治警察になつてしまうわけでありますから、そういう意味から私は門司さんのお考えとまつたく同じ考えで申し上げておるわけでございます。
  51. 門司亮

    ○門司委員 それでは少し大臣に聞いておきますが、一体この警察府県自治警察ですか、国警ですか、どつちですか。はつきりひとつ願います。
  52. 犬養健

    犬養国務大臣 たびたび申し上げますように、これは自治体たる府県の機関に属する警察でありまして、自治警察と思つております。
  53. 門司亮

    ○門司委員 もしそうだとすれば、警察長並びに警視正以上のものが国家公務員であつて警察の首脳部が国の直属になつているということはおかしいじやないか。現行の警察法はちやんと府県の公安委員会というものが警察運営管理に当つている警察長を任命しているから、これの方がいいと思う。だからそういう線をはつきりしておいてください。一体これは自治警察なのか、国家警察なのか。
  54. 犬養健

    犬養国務大臣 それは昨年からあなたと何べんも議論して来た問題であつてお互い見解相違でありまして、これはむずかしい議論になるのでございますが、今お話のありましたような門司さんの警察制度発生論は全然同感でありまして、末端のところは自警団に近いようなものが一番いいと思います。御承知のように門司さん自身もお認めになりますように、またアメリカのようなほんとうに平民的な国でもFBIというものを持つているのは、国家的職務というものが警察運営に含まつて来た、これはお認めになつていると思うのであります。わが国では命令系統の違うものがやると、相互の連絡調整だけでは、すなわち別の言葉でいえば、運用の妙をいたしてもいかんともすべからざる部分が残るので、国家的事務つまり警察法第五条にはつきり法律をもつて国民諸君にお約束してあるごく幅の狭い国家警察事務だけをやるために、国家公務員の資格を与える。それは危ないというのがあなた方の御意見、私の方では、法律でお約束してあるからあぶないようなことをすれば、法律違反で公安委員に懲戒罷免を受けるようになるから、あぶない者はやられてしまう、こういうので、そこが昨年来の意見の違いで、どうも立場の違いでしようがないんじやないか、こう思うのであります。
  55. 門司亮

    ○門司委員 立場の違いと言うが、私は立場の違いはないと思う。私の意見も、犬養さんの意見もほとんどかわらぬと思う。警察行政の中は全部が自治警察でなければならぬということは、日本の現在では通らない。これは国家犯罪もありましようし、また国の治安という面から考えてもその通りです。その中で、いかに警察民主化するかということのためにつくられたのが、現行法なんです。従つて現行法は明らかに自治警察が主体であります。そして自治警察として能力もなければまた経済的に見ても、それを処置するだけの財政的な規模も持たないというようなところだけは、これを国家警察行政がつかさどる。国警の範疇の中に加えただけであります。これは自治警察が本体であつて国家警察をそれに加えたものであつて、本来は必ず自治警察でなければならぬというのが警察の建前であると思います。それを、今度の警察法府県単位の自治警察と言われておりますが、首脳部は全部国家公務員であつて府県の公安委員会があつても、これが任命権を持たぬということになつて参りますと、これは自治警察とはいえないと私は思う。政府も少し真心があつて府県自治警察と言うと少しぐあいが悪いから、府県単位の警察ということで、自治という言葉を抜いて単位という言葉にかえられた。これは政府にも多少良心があつたところではないか、こう考えておるが、良心があるならもう少し明確に御説明願いたい。
  56. 犬養健

    犬養国務大臣 これはまつたく大事なところですから、お互い議論を尽したいと思います。去年も申し上げたと思いますが、私もFBI制度というものを長く勉強してみました。あちらへ行つてもみました。しかしふだん日常のことを府県の自治警察あるいは町村の自治警察がやつていて、何か大事件のときだけ乗り込む、この制度は、私は日本には不適当と見ておるのであります。第一大事件というものは、警察というものの本質上、警察の手柄になる事件です。千載一遇という言葉はどうか知りませんが、めつたにない、警察の手柄になる大事件だけ東京にふだんいる男がどつと行つてさらつてしまう。これはなかなかうまく行くものではないのです。そういう根性の者ばかりとは言いませんが、そこがお互い神様でない人間の弱さでありますから、人間の弱点というものは、やはりお互い見ておかなければならぬのではないか。日本ではどうもFBIの制度はむずかしいという私及び私の属しておる與党の共通した考え方でございます。もう一つ、首脳部がみんな国家公務員だからこれで押えてしまう——私はそうとらないのです。昨年あなた方よりおしかりを受けまして、よく反省してみて、今度警視正だけにする。府県によつて違いますが、多くて四人、少くて二人、ほんとの府県に属する警察職員は二千人くらい。そこへ入つて行く。他郷へ入つて行くのです。そこに生れたのでなくて、他郷に入つて行つて府県会もにらんでいる、公安委員もにらんでいる中で、うまを合せて行くのですから、あなたは強者と言い、私たちはうまを合わせなければなかなかうまく行かない、弱者と見ている。そのちようど中間かもしれません。少くとも強者とは私見ていない。よく斎藤君と話をするのですが、今度これがかりに御審議通りましても、今後の府県警察本部長というものは、ただおいこらだつたら、すぐに罷免懲戒を食らう。だからよほど苦労人であつて、そうして自分の我を通さないで、輿論とも妥協をし得る良識のある者でなければうまく勤まらぬ。要するに苦労人でなければ勤まらぬとよく座談に言つておるのですが、他郷に入つて行つて府県会でやられるし、公安委員会にもやられる。その中で、第五条にうたつてある国家的事務をやつて行くというのは、私はよほどその府県とうまを合せる人でなければうまく行かぬと見ている。ここがあなた方とどうも考え方が違うのではないかと申し上げる点なのであります。
  57. 門司亮

    ○門司委員 私は今日これ一事だけしか言いません。あとは明日でも質問します。さつきの斎藤君の言葉から派生的に聞いておるのですが、今の大臣考え方は非常に危険だと思う。警察というものは、普通の行政事務とは違う。命令系統というものに対してはほとんど絶対的服従でなければ、警察行政というものは完全に行えないと思う。個々の警察官が、上司の命令を聞いても聞かなくてもよいということではいけないと思う。それから同時に秘密を要します。それから迅速を要します。従つてこの警察行政というものは、やはり上の命令が下まで通ずるような組織にできておる。今日の制度では、軍隊がなくなりました今日の日本行政組織の中では、命令を遵奉するのは警察だけだと思う。ほかの行政事務では、課長がこうだからといつても、ほかの係長がぐあいが悪いからといえばやれるかもしれない。そこで多少押問答していても、五日や二日の時間があつても、何も行政事務にはさしつかえない。しかし警察だけは一分間でも争う事件がある。そこで命令によつては、下位の諸君は、その事のいかんを問わず、実際にこれに服従してやるような制度でなければ、警察の能率は上らぬ。そのことを考えますと、今の犬養さんのお話のように、他郷に入つて行くというようななまやさしいことであるなら、こんな警察法をつくつてつたのでは日本警察は能率が上りません。下の部下の者に言いたいことを言わせて、上からこう言つたけれども考えておこうかといつて、机のひきだしに暖められておつたのでは、警察行政は行えません。私は警察の本質はそこにあると思う。従つて警察行政というものに対してだけは、そういう弊害のないようにつくつておくことがよいと私は考えておる。国家公務員はただ上の頭だけだから下は、とこうおつしやいますが、これが一番危険であつて、下がそうで上が逆ならまた別でありますが、上の方の命令が国家的な色彩を持つておる、あるいは政党的な色彩を持つてつた場合には、下はどうにもなりません。私はそれが実際の警察のあり方だと思う。だからもう少し警察のあり方等については御注意願いたい。私は、おそらく大臣の行き方は、もう大体民主化して来たからそう逆もどりもしないだろうというお考えから出ておるのだと思います。一年や一年、あるいは半年くらいはそれで行けるかもしれないけれども、時期が来ればそれではできなくなる。私はこれ以上質問をいたしませんから、その点は大臣としてもよくひとつ考えをいただきたい。
  58. 犬養健

    犬養国務大臣 だんだんの御意見傾聴いたしました。飛び入りの方があまり長くなるのはどうかと思いますが、非常に重要なことをおつしやつてくださるので、私も丁重にお答えしようと思います。その通りなのです。それだからむやみやたらと国家公務員たるものが職務として指令してはいかぬ。それで第五条に幅を狭くしたのです。これは狭くないという御議論でございましようが、御承知のように第五条の中のイとロ、つまり方々の県で起る災害、ちよつとした雨なんか災害にはなりません。たいへんな雨で、熊本県も福岡県も長崎県もやられるというような場合、あるいは騒乱事件メーデー事件とか大須事件とか吹田事件、そういうもののほかは、鑑識、教育、通信、これはやはり統一しなければなりません。それから装備、それから調整というのは、今度は刑事訴訟法でこうなつたからこうしろ、これは全国的です。それ以外の普通一般の犯罪、火事、どろぼうあるいは交通事故というものは、府県でまちまちでいいのです。だからあなたはおこわがりになりますが、その線は非常に細く、しかも口でない、印刷して、法律で、国会で投票してもらつてからきめるのですから、その幅は、御心配なら、もつと厳格にあなたの方でわくをつくつていただいて私の方は決して不服でない、こういうふうに考えておるのでございます。
  59. 北山愛郎

    北山委員 今の質疑に関連するのですが、府県単位の警察か、あるいは府県自治体警察かというようなこと、私は、これを自治体警察だと政府の方で考えてない証拠が一つあると思う。もし自治体警察考えておるならば、これは地方自治に非常に関連があるのだから、この警察法審議については、塚田自治庁長官が常に出席しておらなければならぬ。地方自治法第二条に関係のある重要な事項です。しかも府県自治体警察であるか、あるいは府県警察であるかということは、今後における府県を、今の政府がどういうふうにしようとしておるかに非常に関係がある。しかも塚田長官は知事を官選にしろとか、した方がよいとかいうことを、個人的な意見であるか知らないが、ちよちよいと言われておる。だから私は、なおさら警察法審議については非常に関連があるから、今後はいつでも塚田長官に列席をしていただくように委員長にお願いを申し上げます。
  60. 大矢省三

    ○大矢委員 この間から聞いていると、大臣は、あまり手を広げぬということを非常に強く言う。そうすれば国だけ押えたということをしばしば言う。ところが、警察庁の仕事の中に、警務部、刑事部、警備部、通信部というようにあつて、第二十四条の二号に「警ら及び交通警察に関すること。」と書いてある。ここまでやるのです。それから二十三条の三号の「保安警察に関すること。」これはあなたの言う警察庁の仕事の限度の範囲外です。こういうところまでやつて、そうしてこれに押えた押えたと言うのは、これは一体どういうわけですか。大臣がしばしばそう言いながら、この仕事の中には交通あるいは刑事の問題までちやんと入つているのであるから、普通の地方警察ちよつとも違わぬ仕事をやつている。しかるにそんなことはやらぬやらぬと言う。
  61. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 私からまず条文の意味を御説明を申し上げます。ここに書かれておりますことは、第五条の各号に書かれておりますことの中でありまして、たとえば「警ら及び交通警察に関すること。」とありますと、これはあるいは交通の事故の統計もありましようし、それから交通取締規則の改正の問題もございます。それについての法の解釈は、こういうわけだというて連絡をする事項もございます。ただ現実の個々の交通取締りを、あの人はこういう違反をやつたからあげるとか、そういう指図はいたしません。そういう日常の事柄は、全部地方にまかしておくわけであります。現在もこういう事柄は自治体警察に対しましては、やはり連絡をする必要がありますから、われわれの方で連絡をいたしておるわけですが、今度はそれを法律の上にはつきりいたしまして、この第五条の各号に掲げてありまするような事柄に該当する範囲内で、仕事をやる部局という意味で、ここに書いておるのでございます。二十三条の保安警察と申しますのも、たとえばやかましい売春取締りをどうするか、そういう場合にはいろいろ地方の実情も調べて、どういうようにやつて行くか、実情はどうなつておるか、政府であるいは国会の方で売春取締法案をつくられる、それについて警察の取締りはどういう見地でやつたらできるだろうか、地方の意向はどんな意向かということをまとめる、そういうことをやはりやらざるを得ない。従つてここでは第一線でやるような仕事の内容とは違いまして、統括と連絡と調整、あるいは活動の基準、第五条各号に掲げてある事柄に限るわけであります。
  62. 大矢省三

    ○大矢委員 私はそういうことを聞いているんじやない。この警察庁のやる仕事範囲を限定した。そのことは一年に一ぺんあるか二へんあるかわからぬが、大きな災害、騒乱、この二つに限られて、それ以下は地方でやるのであるから、われわれはそういうことをしないから、心配ありません、こういつてしばしば鬼の首でもとつたように言うから、それなら一体どうしてこういう「保安警察に関すること。」それから「警ら及び交通に関すること。」とか、警察庁に刑事部という単独の部門を置いているのでしようか。警察庁においてそんなものまでやろうというのですから私は言うのですが、いわゆる犯罪予防、保安警察、さらにまた警邏、交通、こういうものまでやるのだ、その部門の中に特に刑事部というものを設けて、そうしておいて、年に一回か二回しかないのであるから、心配ないのだ、心配ないのだと幾ら説明しても、法律にちやんと出ている。これは単なる事務をとるくらいなら、刑事部として新しく大きな部門を置く必要はない。こういうことは大臣にはなはだ失礼なことかもしれませんが、国警の人たち、あるいは最近出て来た官僚が、内務官僚のはなやかなりし昔を夢みて、相当強く、必要な部門であると吹き込まれて——こういう法の内容について、これは限られているけれども、こんなことまでやるのかということを、ほんとうに調べたのかということを私は疑う。どうしてこういうことまでやらなければならぬのか。
  63. 犬養健

    犬養国務大臣 これは何もうのみにしたわけでなくて、昨年なかなか問題になつたのです。刑事部という名前がよくないじやないか、刑事連絡部とか何とかつけないと、いかにもここでやるようなことになるという御質問を昨年はなかなか受けました。そういう御心配なら、この諸条の下に、どういうことをやるということを書いてげら刷りでおまわしします。そうすれば御安心になると思う。
  64. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 大臣が特にこれこれに限つているとおつしやいますのは、運営自身について直接指揮をしたり監督をしたりすることはこの二つのことに限つている、こう大臣が説明をしておられるのでありまして、それは五条の二項の三号のイ、ロでありまして、ほかの方は運営自身でなくて、その基準であるとか、先ほど申しました一般的な調査とか、そういうことは直接日常の警察活動ではなくて、あるいは統計の事務とか、あるいは交通取締りにいたしましても、たとえば交通巡査の手の上げ方は、各国の例を調べてみるとこういう方がいい、あるいは右まわりがいいとか、左まわりがいいとか、そういうことなんでありまして、そこはひとつ誤解のないようにお願いいたしたい。
  65. 大矢省三

    ○大矢委員 私は刑事部という名前にとらわれているんじやない。二十三条、二十四条の二条に、明らかにこれこれの事務をつかさどるとある。ただ基準をこしらえるなら、交通の問題とか、保安の問題なんか、各地方で県条例とか市条例とか、——自治体警察の方はどうか知りませんが、条例でやる。なるほどあなたの言われるように、調査とか、鑑識、統計、そういうものは必要かもしれません。しかしながら保安警察とか、警邏及び交通に関することまでもやるのだ、こういう事務をつかさどると書いてある。これだけに限られているならば、こういうものを除いて、単に統計とか調査ということにしたらいい。そんなことはやらぬというから、ずつと調べて来ると、こういうこともちやんと事務としてやるのだということになつている。私は刑事部という名前を言うんじやなくて、こういう内容を持つているから、これだけしかやらぬと言うけれども安心ならぬというのです。
  66. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 この点は少し誤解をしているのじやないかと思いますが、たとえば二十三条には「警察庁の所掌事務に関し、」とありまして、警察庁の所掌事務というのは、第五条の各号に掲げてある事柄が所掌事務である。そこでこの所掌事務の中に、たとえば「犯罪鑑識施設の維持管理その他犯罪鑑識に関する」と。」あるいは「警察行政に関する調整」十二号でありますとか、十一号の「勤務及び活動の基準」であるとか、いう事柄について、刑事関係についてはこういう事柄、警備関係についてはこういう事柄というように、さらに小わけしているわけでありまして、全部五条でしぼられておる。法文上もその点は第五条の事柄をさらにこまかく書いてあるだけであつて、これを越えて五条にない事柄を他の二十三条、三十四条に書いてあるわけではないのです。
  67. 大矢省三

    ○大矢委員 それならば一体五条のどこを適用しておるか。「民心に不安を生ずべき大規模な災害に係る事案」といつても、この災害は一年に一ぺんあるかないかわからぬ。それをわざわざ書き入れてある。それから「地方の静穏を害するおそれのある騒乱に係る事案」これも一年間に一回あるかないかわからないようなものです。その前の、警察に関する諸制度とか、あるいは国の予算であるとか、そういうものについて必要なことを、二十三条ないし三十四条に書いてあるならば、私は言わぬ。しかしながら事務をつかさどるものの中に、警邏とか保安に関するものまで入れている。だからして言う。一年に一ぺんあるかないかわからないようなこの二つの事柄以外に、この二十三条、三十四条は入つていないのかどうかということです。これはあなたがここでやめられて、このまま次の人がこの法律を見たときに、必ずやりますよ。これだけの規定がちやんとあれば、どんな説明をしようが、必ずそれをやることはきまつておる。
  68. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 ただいま御説明申し上げますように、たとえば二十三条に「保安警察」とありますが、これは第五条の中に「警察に関する諸制度の企画及び調査」とございます。この「警察に関する諸制度」という中には、保安関係の諸制度、があります。その保安関係の諸制度は、これは刑事部でやるのだ、また保安に関するいろいろな調査、これはこの刑事部の「保安警察に関すること。」で、ここでやる。それからまた活動の基準、調整ということがあります。保安警察についての活動の基準あるいは調整——今度こういう保安関係法律ができた、その解釈はこうだというのが、この三十三条の「保安警察に関すること。」というのでありまして、決して第五条を逸脱しているわけではないのでございます。その点は十分御理解をいただきたいと思います。
  69. 大矢省三

    ○大矢委員 そうすると結局指示することになるのじやないか。騒乱とか災害ということに限られたつて、いわゆる保安だとか警邏、交通にまで指示が及ぶのじやないですか、今のあなたの説明の通りですと。
  70. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 この災害と騒乱につきましては、運営自体について指揮監督するわけですから、今こういう騒乱が起つた、それをこう鎮圧せよ、その鎮圧の仕方は、もう何名増して、あるいはこの際はできるだけ現行犯逮捕でやつてしまえというように、個々の事件について指揮をするわけです。三号の災害と騒乱以外のものにつきましては、そういつた個々の事件についての運営の指示はいたさない一般的の基準だけでございます。どこで交通事故が起つた、あの事故の検挙の仕方はこうせよとか、その事故についてはこうしなければいかぬという、その事件についての指揮監督はしない。それはこの三号に掲げてあるものについては、個々の事件について指揮監督をするが、それ以外のものの個々の事件の扱い方は、全部地方まかせということになるわけであります。
  71. 大矢省三

    ○大矢委員 大臣は、今斎藤さんが説明されたように、結局はこの二つの事柄しかないが、しかし刑事部においての保安警察並びに警邏、交通に関してまでも一つの方針を指示するのだ、こう言つておられるが、それでいいですか。
  72. 犬養健

    犬養国務大臣 今申し上げましたように、災害とか騒乱についてはその警察運営そのものを指揮するわけです。あとは一般的に、外国ではこうやつているから、こういうふうにした方がいいと思うとか、一般の指示であつて、全然性質が違うのであります。またそのくらいのことは、国の中央で指示することが便宜でもあり、必要ではないかと思つております。
  73. 大矢省三

    ○大矢委員 それでは単にこれこれのものは指示事項ですね。
  74. 犬養健

    犬養国務大臣 そうです。
  75. 石村英雄

    ○石村委員 これは犬養法務大臣に聞くのですが、今もこういうことが規定にあるとかないとか非常に文句が出たのですが、先ほど北山委員質問に対しても、犬養さんは、昔は治安維持法があつたからそんな悪いことをしたのだ、今度はそういう法律がないから、警察が昔みたいな悪いことをすることはないというような御答弁つたのであります。治安維持法に対しては破防法があるではないかという論議も起ると思いますが、しかし私考えますのに、今までのわれわれの経験から申しますと、昔の警察は非常に選挙干渉をやつた事実がある、これは天下周知の事実であると思います。しかし選挙干渉をやつてよいという法律は昔もなかつたと思います。法律はなくともそれをやつた。この規定で五条にどういう制限があるとかないとか言つてみたところで、時の権力者に警察を握られたら何をするかわからない。法律にあろうがあるまいが、自分の都合のよいことをやるのだということが、われわれの長い間の警察から受けた体験なんです。その点をひとつ考えて、五条に制限があるとかないとかおつしやつても、これは国民は納得しないと思います。
  76. 犬養健

    犬養国務大臣 言葉が足りないせいか誤解を与えたようで遺憾に存じます。昔の治安維持法とか、職務執行法とかいうものは、たらいまわしだの、言論、集会の自由を奪つたりした、それの法律的根拠をつくつたのであつて、まことに乱暴な立法だと思います。また行き過ぎもあつたと思います。終戦と同時になくなりまして、はずしつぱなしではないのでありまして、今度は新しく警察官の職務執行法というものに基いて、そのわくでやるようになつております。選挙干渉のことを申されましたが、今そういうことのない証拠には、政府の大官でずいぶんひつかかつたりして問題になつたこともあるのであります。これは昔のように、政府の大官だけは全力をあげて守れとかいうようなことにはなつておりません。これはひとつお調べ願つて、選挙干渉で半端なことがあつたら、私はいさぎよく職を辞したいと思いますから、実際問題として御心配ならばそういうことはお調べ願いたい。法律的根拠は、警察官の職務執行法にあるわけでありますから、その根拠の上に立つておるわけでありまして、そういう心配のないようにできておると、両様からお答えをしたいと思います。
  77. 石村英雄

    ○石村委員 本来の藤田委員にお譲りしたいと思いますが、今のように大臣はおつしやるのですが、選挙干渉なんというものはぞうさないことです。何も違反だと言つてとつつかまえなくとも、与党の方の運動員はほつたらかしにしておいて、そうして野党側の運動員には尾行をつけておいて動けないようにしさえすれば、実際りつぱに与党の勝利となるわけであります。これははつきりした選挙干渉です。これは法律でどうこうするということにはならないが、実質的にはそういうことがやれる。上の方から指令が出て来る、隊長が部下に指令をする、そうすると選挙違反でも、こういう事案があるからと言つたつて、その方はほつておいて、野党側の形式犯のようなものをつかせるとか、今のように尾行させるとか、合法的に干渉は幾らでもできます。その点をわれわれは問題にするわけであります。
  78. 犬養健

    犬養国務大臣 非常に誤解があるようでございますが、公安委員が監視をしておりまして、そんなことができるはずのものじやございません。その選挙干渉というのはあなた方の主観が手伝つておる。論より証拠、与党の私の同僚からも、一体君はどつちの党の国警担当大臣かと言つて選挙のときに食つてかかられる。これは両方とも自分の被害には相当主観的のものが入るのではないか、これはほんとうにお調べくださつてけつこうです。まことに誤解が大きいので驚き入つた次第でありまして、今の警察制度では公安委員会が目を見張つていて、与党だけをやつて、野党を尾行できるなんて、そんなものではありません。私はあまりそういうことは熱弁を振わないようにしておりましたが、そういうことは実際ございませんから、ひとつ組織立てて御調査願いたいと思います。
  79. 石村英雄

    ○石村委員 一つ私はつけ加えておきますが、犬養さんならそういうことをおやりにならぬと思いますが、実は、私は社会党に入つたのは日が浅くてまだ一年にならぬ。現在でも自由党の友人もたくさんおる。一昨年秋の選挙のとき選挙違反が自由党に起つたのですが、それをある方面から電話をかけて摘発をとめております。これは私は事実知つておる。そういうことは幾らでもやられておる。ただいまの大臣の御答弁は、大臣は信頼いたしますが、実際はそんなことはやられておるのだということだけは、はつきり私は考えております。いかにお前の考えが間違つておるとおつしやつても、確信を持つてそういうふうに思つておりますから一言申し上げます。
  80. 藤田義光

    藤田委員 午前中の委員会で、今回の改正案に関する基本的な問題を数点お伺いいたしましたが、本日は主として警察法改正をめぐり、どうしても原案のままではこの警察法は通してはいけない、どうしてもこの警察法を攻め落さなくてはいかぬ。そのために、本日は主として外堀の一部を埋めておきたいということから、まず全般的な問題の一部を質問として展開いたしておるわけであります。従いまして、午前中主として民主警察の問題に関しまして、大臣の所見を伺つたのであります。引続いてお伺いしたいのでございますが、警察法立案にあたりまして、警察権は国の統治権の一部であるか、あるいは自治体固有のもので、あるか。法務大臣の御答弁によれば、どうも向う三軒両隣りを平和に暮させるために警察制度ができたというような御答弁があつておりますから、これは自治体固有のものではないかというふうに私は考えるわけであります。午前中答弁が途中になりまして、あと斎藤長官が補足されましたが、これは統治権の一部でもあるし自治体権限でもあるというふうな御答弁がありました。大臣も大体似たような御答弁であつたように記憶いたしておりますが、重大な問題でありますから、この際重ねて御所見を伺つておきます。
  81. 犬養健

    犬養国務大臣 その前に石村さんにお答え申し上げますが、御指摘の点は重大でございますから、さつそく調べます。今の事件は山口県の第二区ですね。——これはさつそく責任をもつて調べます。  それから藤田さんにお答え申し上げますが、発生論的に申し上げたことは御承知の通りでございます。これは、去年衆議院の本会議で鈴木義男さんが発生論を述べられまして、非常にりつぱな御質問であつたと思います。しかし、発生論だけでは解決し得ないものがあると申し上げた次第でございます。ちようど五十年前にライト兄弟が飛行機を発明しました時期には、人間が鳥のように飛んでみたいという単純な気持からああいうものをつくつた。そのライトも、今や人類の滅亡をし得べきものを載せて、戦争の第一に有力な道具に使うとはゆめにも思わなかつたと同じで、発生論的に私は解決できないと思うのであります。発生論的にまず自分のうちを守り、近所を一緒に守り、町を守るという、この発生論的な根拠というものは無視してはいけない、これを強調いたしたのでありますか、近代社会に伴う、ことに国際社会のいろいろな不安に伴う暴力主義的破壊活動——これは共産党ばかりじやございません。たびたび共産党のように解せられるので、まことに困つておるのでありますが、右翼も入つております。そういうものに備える。何となれば、これは一つ場所でやるというような頭の単純な戦法はとりませんで、同時に一、三箇所で、あるいは数箇所でやる。その場合、どうしても、国家的な上の高いところから見て、方々にあんばいする警察事務というものが必要なんじやないか。その意味で、統治権の一部分をなす部分ができて来た。これはやむを得ない近代の所産だ、こう申し上げた次第でございます。
  82. 藤田義光

    藤田委員 これは私ごとを申し上げて恐縮でありますが、昭和二十三年の暮れ、かつてわれわれの総裁でありました犬養大臣を非常に民主的な政治家として尊敬して、私は当時の民主党に入党したわけであります。ところが、その同じ犬養代議士が法務大臣として今回の警察法を出されたということに関しまして、これは犬養さんの政治生命のために非常に嘆かわしい次第であり、実は私は残念に考えております。しかも現在の閣僚の中で、文学等のごとき文化的素養のある大臣は、犬養さん以外にいないのであります。そういう観点からいたしまして、私は、最後の案においては相当民主化されたものが出て来るだろうと想像しておりましたが、今日の結果になつております。逐条の問題その他に関しましては後日ゆつくりお伺いしますが、ただいまの御答弁からお伺いしたいことは、しからばこの警察権の限界というものをどこに置かれる御方針であるか。これは歴史的な過程においては、自治体のものであるかもしれぬが、近代社会の構造上統治権の一部にもなつているという大臣の御答弁には、私は一応了承いたしますが、しからば、警察権の限界というのが統治権そのものでなければ、おのずから相当かわつた形をとらなくてはならぬ。この点に関しまして、大臣はどういうところに限界を置かれて、今回の改正案をつくられたのかお伺いしておきます。
  83. 犬養健

    犬養国務大臣 警察法改正に際しましての私の心得については、昨日大矢委員からもともとと御忠言がありまして、十分銘記しておるつもりでございます。今また藤田さんからお話がありまして、そういうことがあつたのでは私としてもたいへんであると考えて、この審議に携わつておる次第でございます。これはひとつ十分私の心構えを申し上げておきたいと思いますが、ただいま、国家統治権の一部としての表現が警察法改正に際して、どういうところへ出ているか、これは、先ほどから盛んにおしかりを受けている第五条のあの中だけに少しも限つていないじやないかという御質問がありましたが、政府としては、限つている、そのほかのことは府県警察の毎日の運営にまかせる、こういう考え方であります。
  84. 藤田義光

    藤田委員 私は、憲法改正に先んじて唐突として今回警察法改正案を出したことは、これは非常に問題であるということを申し上げたのであります。その具体的一例を申し上げまして大臣の御批判を仰ぎたい。それは、憲法の条章に従えば、基本的な最高人権として就職の機会均等が許されておりますが、占領政策中に国家公安委員に対する就職制限をつけたのは、アメリカ用当局の失敗であつたと私は思う。少くも国家公安委員には各界各層の衆知を集めたりつぱな人を当然抜てきすべきであります。にもかかわりませず、就職制限を緩和はいたしておりますが、しかしながら全面撤廃がなされていない。これは憲法違反ではないかという声は当然起きて来るわけであります。むしろ私は、警察庁長官に対しまして、先ほど申し上げましたある程度のチエツク・アンド・バランスの原則を適用するためにも、警察の経験者を国家公安委員に一、二名入れておいた方がいろいろな批判を阻止する上において、非常に運営の妙を発揮するのじやないかというように考えております。保安庁法等におきましても一部制限がありますが、悪いことをしている保安庁法に右へならえする必要は絶対ないわけでありまして、この点に関する犬養大臣の御批判を仰ぎたいと思います。
  85. 犬養健

    犬養国務大臣 お考えの御趣旨はごもつともだと思います。大体こういう警察法ができましたのは、世界各国が日本の侵略に懲りて、できるだけ日本の官吏というものをチエツクしておこう、こういう極端な警戒心の現われだろうと思います。そこで警察庁長官その他国家公務員たる警視正以上などをチエツクするためには、経験者が公安委員に入つた方がいいのじやないか、その意味で警察官の前歴のある者が入つた方がいいのじやないか、これも非常に御寛大な議論で、一部そういう議論もプライヴエートに私聞きました。しかしどうも国会議員でも旧内務省の警保局系とか盛んな御演説があるくらいでありますから、公安委員警察官の前歴のある者を入れれば入れたで、また別なお小言があるのではないかと思います。警察官の長い前歴があるとかいうことは、御本人には気の毒だが、国民の誤解を用心深く避けるということも必要でございますから、警察官、検察官の前歴のある人は遠慮してもらおう、こういうことになつたわけであります。結局これは政治道義といいますか、職務道義に関係することで、今日の予算委員会でも国務大臣は会社の重役になることはいかぬというような御議論もあつたのですが、これは憲法から言うと、何になつてもいいようなものの、国民がつい疑惑を持つようなことは避けろ、こういう道徳問題だろうと思いまして、その意味で前歴者は避けたわけであります。
  86. 藤田義光

    藤田委員 ただいまの法務大臣答弁通りでありまして、大臣が会社の重役を兼任してはいけないという法律はございませんが、これは運営上そうしてほしいという徳義上の問題であります。従いまして、国家公安委員の任命制限等は撤廃いたしまして、実際の運営国家公安委員の任命にあたりまして、そういう留意をすればいいことでありまして、あえて憲法違反の嫌疑を受けながらこういう規定を残しておくことは、実際の運営上非常にまずいことになりはしないか、私はかように考えております。これはあらためて実際の運営上それをやればよろしいのであつて法律の明文は必要でないと考えるのでありますが、その点のいきさつはどうなつておりますか、お伺いしておきます。  それから先ほど御答弁がありました警察権の限界にも関連いたしておりますが、共産党対策ということが、警察法改正一つの軸心でされておることは先般来再三言明されたところであります。しからば、今回の警察法改正におきまして、どこで共産党対策を具体的に推進しようとするか、機構上どういうくふうがなされておりますか。私は実際の機構を見ますと、現在の国警本部とほとんど同じような機構になつておるが、このどこでそういう運営をしようとするか。私はこの法文を一覧しますと、当然そこには何か日陰者の機構をつくらなければならぬというジレンマに陥られはしまいか、そういうことを考えております。また公安調査庁との調整はどういうふうにして共産党対策をやろうとするおつもりであるか。今法務大臣として国警を担当されて、運営の妙を得ておりますが、独立いたしました場合、これは絶対大きな問題を起すことは必至でありますが、公安調査庁との関係はどうするか。この法案によれば、共産党対策を担当するようなはつきりした明文はどこにもないのでありますが、この点に関する大臣の御見解をお伺いしたい。
  87. 犬養健

    犬養国務大臣 お答え申し上げます。  まず公安調査庁でございますが、これは御承知のように、団体規制というようなことの是非判断をし、その基礎調査をする任務を持つております。大体公安調査庁共産党のテーゼその他を非常に注意深く読みまして、それから結論を出し、そうして共産党あるいは共産党に類する暴力的破壊活動が本年、来年、再来年どういうような方向をとつて行くだろうか、少くとも本年は表面どういう変化をとつて行くだろうか、こういう文書の裏にはどういう国際的あるいは国内的な中央指令があるであろうかという分析をいたしまして、その結果、分析が当つているか、当つていないか、思想傾向の調査としていろいろやつております。その結果、憂うべきこと、心得べきことは警察本部にも横に連絡をして行く、こういうわけでございます。共産党のみならず、集団的な破壊運動にどう処するか。これはしばしば申し上げますように、警察単位があまりこまかいとうまく参りません。従つて府県単位にしていただくように御審議をお願いしておるのも、その対策一つの現われであります。また昨日ですか、一昨日ですか、大石議員が無用論を非常にお述べになりました今の名前でいう管区本部。これら二重行政事務をきれいさつぱり今度は御遠慮して捨てますけれども、通信その他においてそこへ一つのセンターを置く。これはこの種の破壊運動にきわめて特徴的な、同時に数箇所に置く、同時に数県に置くのを予防する意味であります。
  88. 藤田義光

    藤田委員 そこでお伺いしたいのは、第一条の目的その他に関しましては、逐条審議の際に詳細お伺いしますが、民主的理念を基調とする警察運営管理をやろうというのが、今度の警察法の目的であると明示されております。従つて私は、どの点に民主的理念に基いて運営管理を計画され、くふうをされておりますか、この機会にお伺いしておきたいと思います。
  89. 犬養健

    犬養国務大臣 これは昨年からたびたび申し上げて、そのたびに反対論は反対論として伺つて来ているのでありますが、結局これは第一は公安委員制度でございます。それが骨抜きだとか、骨抜きでないとかいう御議論は、また別の問題でございましよう。しかし公安委員を置かない方が能率的ではあります。どんどんかつてなことをした方が、時間も早いし、いいのでありますが、能率だけが警察ではないのであります。つまり国民が何かかつてに官吏がきめたと思うような警察では、国民の支持がございませんから、国民の選んだ公安委員が、いいとか、悪いとか、あいつはけしからぬというように監視をし、管理をする機関として公安委員会を残したわけでございます。もう一つは、今度は予算にからんで、府県会に警察本部長その他が出席して説明をし、また討論採決などのときにすわつております。その際にふらちな者はこつぴどくやられ、地方新聞にでかでかと書かれると思うのであります。そこに民論の制約というものがありまして、国民はそれを読んで、やはり警察というのはおれたちが関与している、おれたちがしかつたり、ほめたりする余地がある、こう思うところが、かたい言葉で言う民主的理念の保障ということになるのではないかと思います。
  90. 藤田義光

    藤田委員 非常に小範囲の、さびしい民主的理念でございまして、この点に関しましては、いずれ機会をあらためていろいろお伺いしたいのであります。  次にお伺いいたしたいのは、捜査権の一元化の問題で、これは非常に重大な問題だと思います。私は太平洋戦争中あるいは支那事変中新聞記者として、ずつと内務省を担当しておりました。特に敬愛する犬養大臣が留置された歴史的な報道をした一人でありますが、当時の私の記憶からいたしましても、当時の警察すらこの警察法が意図するほどの強い一元的な捜査権というものは持つていなかつたのであります。ところが今回の警察法には捜査権の一元化が相当強度に織り込まれております。私は国家犯罪その他に関しましては、全国の検察庁が健在している限りは、あまり心配はいらぬと思う。大臣が心配されます共産党の武装蜂起に対しましては、われわれが苦しいながらつくりました保安隊がありますので、これを動員せしめればよろしいという考え方でありますし、この捜査権の一元化をこれほどに強く打ち出された理由が何かありますか、この機会にお伺いしておきたいと思います。
  91. 犬養健

    犬養国務大臣 技術的なことは国警長官から答弁されると思いますが、私幸いというか、不幸というか、法務大臣を兼ねておりまして、刑事訴訟法に関し国警側と了解事項を持たせた片方の当人であり、また片方の当人となつているわけでございます。犯罪に関して第一義的捜査権はもちろん警察官にございます。これは刑事訴訟法の御審議のときにも、はつきりと申した通りであります。検察官と警察官と捜査が競合しましたときは、刑事訴訟法によつて検察官の指揮を受けることになつておりまして、その場合の円満な了解は閣議了解でもはつきりうたつてございますし、双方でまた別々に了解をしているわけでありますから、捜査の一元化というのは捜査の法文化のようにも聞えますが、これは刑事訴訟法が健全である限り、そこは一種のチエツク・アンド・バランスが行われておると思います。
  92. 藤田義光

    藤田委員 非常に名答弁で、捜査権が警察官と検察官に二元化しておるから、そこでチエツク・アンド・バランスするというお話でありますが、刑事訴訟法の百九十四条以下に捜査の指揮権の規定があるやに記憶いたしております。この捜査の指揮権はこれが健在なる限りは警察捜査権の一元化は絶対必要でない、むしろこれはある程度分担しておいた方が検察官の一元的な捜査権に非常に運用の妙ができるのではないか。犬養さんが法務大臣をやめられました際には、これは必ず問題になると思います。これは最高検の検事総長の御意見を聞かないとわかりませんが、ただいま大臣は二元的な運用によつてチエツク・アンド・バランスすると言われましたが、それは長くそういう方針で行かれるつもりでありますか。検事の指揮権の範囲拡大の問題等も一応考えられておるこの際におきまして、私は大臣の忌憚ない御見解をもう一度お伺いしておきます。
  93. 犬養健

    犬養国務大臣 私自分でペンをとつて、——何条だか忘れましたが、検察官と警察官との関係は刑事訴訟法による他の法律によると初め書いてあつたのですが、どうも不明確なため、私がペンをとつて刑事訴訟法によるとこう書きました。それから個々の犯罪捜査の場合は含まない、こういうこともはつきり閣議了解で、これはわれわれ各大臣全部署名してあるものであります。この二つでもつて——どういう御趣旨か少し私わかりかねた点が恐縮ながらありますが、捜査の一本化というあなたの心配していらつしやることは、ないのではないか、こういうふうに考えております。
  94. 藤田義光

    藤田委員 この問題につきましては率直に申し上げまして、私の研究がまだ十分でございません。機会をあらためてお伺いしたいと思います。  次に、石村委員質問しました点と多少重複いたしますが、この警察法改正案を見まして、世人は一様に選挙干渉を懸念いたしております。当時の新聞報道を見ましても、各社の論説が選挙干渉の危険を説いておるのであります。民主政治の基盤は選挙である。この選挙が公正に行われないと、民主政治というものはスポイルされる危険があることは、これはもう当然でありまして、その点に関しまして先ほどの石村委員質問に対する御答弁が、あまりにもおざなりでありまして、何かもう少し、大臣にその人を得ておれば懸念はないというような危険なものでなくて、法律の根拠に基きまして何か絶対自信がありますかどうですか。もしかりに、政党を申し上げては恐縮でありますが、極端な政党が政権を握つたような場合におきまして、おそらくわれわれは落選の筆頭に列なる一人であろうというように考えておりますので、この点は深刻な問題でありますから、ひとつ率直にお伺いしておきます。
  95. 犬養健

    犬養国務大臣 これはさつき石村さんに法規に基いて御答弁しなかつたことをおわび申し上げます。今藤田さんの御質疑を受けているうちに気がついたことなんですが、それは去年第五条の第二項の三のイ、ロその次にハという箇条を書きまして、これがなかなかやかましい論議だつたのであります。読み上げますと、「国家の利害にかかわり、または国内全体に関係もしくは影響のある事案」これも中央警察庁が具体的に指揮ができるように書いてあります。これが選挙干渉になるのではないかということに対しては、そうではない、大じかけのいろいろ詐欺事件とか何とかが入ると申し上げましたが、いかにもこの文句は選挙干渉をしないという保証はどこにも実はないものですから、これは削つてしまつたのです。今度はこういう国家の利害にかかわり、国内の全般に関係もしくは影響があるというような漠然としたことは、中央警察庁は指示できないことにいたしました。なぜ抜かしたかというと、第一の理由は、選挙干渉ができるのではないかという御心配、ことに国会での御心配に対して敬意を表して削つた。これは速記録に残りますから、あなたの選挙のある限りその速記録を御持参願えば、私は大丈夫だと思います。
  96. 藤田義光

    藤田委員 これは犬養大臣に対する個人的なアドバイスでもあるのですが、もし社会党が政権をとりましたら、犬餐さんはまつ先に落選します。私はこの法律をそのまま通しておいたらどういうことでもできると思う。それは具体的にどういう根拠に基いてそういうことを申し上げるかということは、逐条審議のときに申し上げます。  それから先ほど大臣は近代国家としての構造云々を言われましたが、近代国家の構造という点から行きまして、一体今回の警察法改正案は——終戦後八年間の日の本法律、政令その他憲法に至るまで、すべて英米流の法律体系日本はなつておるのであります。明治時代の日本の法制体系は、あげて大陸系、ドイツ系を中心といたしておりました。一体に憲法以下幾多法律が英米流に書きかえられております今日におきまして、今回の警察法改正案はどこ流の法律案でありますか一応お伺いいたしたい。
  97. 犬養健

    犬養国務大臣 不敏にして各国の全部を読んでおりませんから、どこ流——どこ流なんというほかの国をまねたんでは、またおしかりを受けると思いますから、これはたびたび申し上げましたように、日本人の長所と欠点、二つ命令系統の間における調整がうまく行かない欠点も見抜いてつくつた日本民族の所産である、こう申し上げるよりほかないと思います。
  98. 藤田義光

    藤田委員 数年後の行政法の学者は、必ず世界の二大法制系統たる大陸系であるか、英米系であるかという範疇にこれをわけることは、もう自明の理であります。その際これは単に犬養流として行政法学者が記録するわけには行かぬのでありまして、その理念の根拠、基盤は英米流にされたか、あるいは大陸流にされたか、学者の意見も開かれた以上は、私はおそらく当然研究されたと思います。非常に唐突な質問のようでありますが、これは重大な歴史に残る法案でありますからお伺いしておきます。
  99. 犬養健

    犬養国務大臣 どうも何国流でなければいかぬという御議論が少し無理なんじやないですか。むろんこの委員会制度というものは、ことにアメリカ人の好んで用いるところでございます。ごく厳格に言いますと、日本人が委員会制度で、つまり大勢で最後に多数決できめる——国会委員会ではございませんよ。そういうものが適するか適しないかという根本論もございました。しかしそれは別として、その点だけアメリカのバターくさいというような議論もありますが、とにかくこういう権力を行使する制度は、できるだけ民衆の選んだものがけむたい存在として残る方がいいという考え方で、委員会を残したのでありまして、もちろんイギリス法、大陸系統の考え方との混合した点はございましよう。今の憲法でもそうだし、お互いが毎日やつているこの委員会ども、大陸流と英米流の考え方の混合物です。混合物ということをきらつていいのかどうか、世界の文化はおのおの特徴があるのでありまして、一方の文化だけが人類に適するという考え方で制切つていいかどうか、私はやはり長所をまぜて行つていいのではないか、こう考えているのであります。
  100. 藤田義光

    藤田委員 かつて吉田総理は、行政委員会制度は原則として廃止したい。これは日本流の法律理論と申しますか、政治論でありましよう。ところがただいま犬養大臣委員会の運用の妙を残しているのだという御答弁であります。大陸系と英米系のミツクスであるというような御答弁でありまして、私はこれが国会の速記録に残るために、後世の行政法学者はさぞ判定に苦しむだろうと非常に同情するわけでありますが、これはいずれ後日の問題にいたしまして、次にお伺いいたしたいことは、この特別捜査権者の問題であります。検察官との関係は先ほど少しお伺いいたしましたが、たとえば麻薬取締官、鉄道公安官等、警察権を持つておる国家公務員が、全国に約九万人現存いたしております。実にゆゆしき国費の支出でありまして、この点に関しましては今回の警察法改正にあたりまして、何らかの整理統合のくふうをされなかつたかどうか、計画はされたがそのまま流れてしまつたかどうかをお伺いいたします。
  101. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 ただいまの点は政府行政改革制度を審議されるところにおきましても、一応は項目としてお取上げになつたようでございます。しかしながら今日の警察の中にこれを全部統括してしまうかどうかということは、なお研究を要する問題があるというので今回は全然取上げないことに相なつた次第でございます。
  102. 藤田義光

    藤田委員 ただいまの長官の御答弁からいたしまして一度計画されたようであります。それでは犬養大臣にお伺いしたいのでございますが、将来これらの機構の問題の再建整備ということを考えられますかどうですか、この機会にお伺いしておきます。それに関連いたしまして公安調査庁というものを、将来現状のままで置かれる方針でありますか、あるいは将来運用上何か検討を加えられる予定はありませんですかどうですか、お伺いいたしたいのであります。
  103. 犬養健

    犬養国務大臣 麻薬とか、ダイナマイトの扱いとかいろいろあります。これは昨年も問題になつたのでありますが、今各省が持つておるものを、ここに警察法改正と同時に全部解決するというためには、実際事務上なかなか時間を要しますし、また研究を要する点がございますので、今回の改正に入れませんでした。しかし確かに二重になつているようなところもございますので、これはゆつくり各省と相談してみたいと思います。つまりゆつくりというのは、これに間に合わないから早くしろというようなやり方ではなくて、別の問題として何か解決方法を考えてみたいと思います。それから公安調査庁というのは、私はやはり現実の犯罪捜査警察機関と別にした方がいいのではないかと思います。つまり心を静かにして千九百何年というレーニン以来のテーゼを読んで、国際間のリポートをとつて、そうしてこれから結論づけて行くわけです。それから各国の論文なども読んで、毎日どうやつて、つかまえようかというよりも、共産党運動とか、あるいは右翼運動というものはどうなつて行くだろう、今年はどういう変化があるだろう、しからばどういう会議が行われるだろう、どういう破壊運動が行われるだろうと、心を静かにして考え役所であつて、これはすぐ犯罪捜査でつかまえようというのと、別にしておいた方がいいのではないかと思います。経費が重なるというので、改進党の方では何とかした方がいいという御意見もあるようでありますが、なるほど別々に役所があるのですから経費はかさばつておりますが、心を静かにして万国の暴力主義的な運動の年々の傾向、長きにわたる一貫した傾向を調べるには、別の役所にしていただいた方が有効ではないか、こう考えております。しかし、できるだけむだを省きたいと考えております。
  104. 藤田義光

    藤田委員 これらの機構の諸問題に関しましては、私は、犬養大臣の良識を期待いたしまして、将来ぜひとも再検討していただきたいという希望を申し述べておきます。  次にお伺いいたしたいのは、現在の自治警、国警に奉職する者の最も深刻なる関心一つは、三万人の整理の問題であります。巷間伝うるところによれば、大体平均年齢の高い現在の自治警察から整理するということがいわれております。この法律がどういう運命になりますか保証できませんが、もし将来警察官の整理等をやる場合におきましては、よほど運用の妙を尽さないと、いろいろ問題を起すと思いますが、犬養大臣としてはどういう御方針でありますかお伺いするとともに、今回の警察法改正をめぐりまして、現在自治警察国家警察が何と申しましても鋭く対立いたしております。また都道府県会と都市との対立は自治体に大きなひびを入れようとしております。こういう自治体の争いを、一刻も早く収拾することが真の政治である、このまま放任しておりましたならば、やがて警察同士がどろ試合を始める、そういうことになりましたならば、日本社会秩序は非常な危殆に瀕する。そういうときこそ暴力行為が頻発する危険があるのでありまして、少くとも現在の自治体の争い、あるいは公安委員の争い等の段階において、何とか早く妙手を打つべきではないか。警察同士がどろをかぶり始めたら非常に危険である。ところが、不幸にして——この改正案ができるまで、私の記憶にして間違いがなければ昨年十二月二十日ごろまでは、相当緊密な連繋のもとに審議をされて来た。ところが、年を越えるとともに唐突として国家警察が自治警察意見を聞かずして、最終案が発表されたというようなことも聞いております。真偽のほどはわかりませんが、そういう過去のいきさつが今日の紛糾を来しておる一つの大きな原因だろうと思うのであります。緊密な連繋をしてじつくり話し合えば結論は同じであつても、相当こういう問題は解消できたのではないか、非常に残念に思つております。法務大臣は自治警察の幹部あるいは公安委員等に対しまして、過去において何かそういう配慮をされましたか、今後また何か政治的に手を打たれるという気持はありませんか。この法案を押すことは提案者としてもちろん当然でございましよう。しかし、押すことによつて生ずる自治警察の摩擦等をそのまま放任しては、これは政治家ではありません。何とかして早くこういうトラブルを解消してもらう方法を考えてもらいたいと思いますが、御成案がありましたら、この際率直にお示し願いたいと思います。
  105. 犬養健

    犬養国務大臣 非常に大切な御質問を受けまして、私は感謝いたします。そういう点について藤岡さんに苦衷を述べられたと同じ方が、私をも訪問しております。そして私はその方に対して善処を約束いたしておる次第でございます。今日もある都会の自治体の相当の方が見えまして、私は大臣室で、ちようどだれもおりませんので、ゆつくりお話をしたのでございます。そこで、例は不穏当かもしれませんが、過去において私と縁の深かつた中華民国の国民政府ができましたときに各党各派を入れまして、だんだん整理するときには、よその党を整理する、そのときに非常に暗いかげを町の民心に与えたのでございます。またこれは実現したのでないから保証はできませんが、北京政府もそういう傾向があると言つている人もあります。それに対してやはり暗い気持を持つている人が相当あると思います。今度のことはその例では不穏当でございますが、体のよいことを言つて合併しておいて、だんだん自治警察の方を抜くということはまつたく私の方針にございません。それは御承知のように行政整理というものが国民の要望でございますから、人数を減らすということは国民にお約束をしある程度輿論の喝采を受けたと思いますが、そのしわを旧自治警——もしこれが通りましたならば旧になりますが、旧自治警からだけ目立たないようにだんだんへらして行くということでは、ほんとうに公器をもてあそぶこになると思いますから、私の目の黒い間はそういうことはいたしたくないと思つております。  もう一つ、御質疑ははございませんでしたが、自治警の方々の一番御心配になるのは今の給与の差でございます。これは申し上げましたように、その差に対しては調整金をもつて補う。これは金額を見る。しかし恩給とか退職金とかに響きますから、恩給、退職金は今の制度が続いたのと同じように結果としてする。こういうお約束をしているわけでございます。先ほどの御注意、いろいろ自治警でも言いたいことがあつたが、機会を失したというような御注意はたびたび私受けておりまして、そのたびにそれじやあなたの知合いを連れて来てください。何日に法務大臣室でお目にかかりますといつて、個々別々的にはずいぶんお目にかかつたつもりでございます。
  106. 藤田義光

    藤田委員 私はこの委員会の問答あるいは個々面接等でなくして、根本的にいま少しく自治体同士の争いあるいは国警、自治警の対立を解決せずんば、せつかく警察の能率化ということを意図しました今回の警察法案そのものをめぐりまして、国家治安が乱れるということを非常に憂慮しております。これは長年苦労をされております法務大臣の政治的手腕に期待したいと思いますが、私はいずれまた総括質問を続けますから……(「あとにしろ」と呼ぶ者あり)あとにしろという発言もありますので、あと一、二点問題点だけをとらえてお尋ねしたいと思います。それは今回の改正案におきましても、依然として管区本部というものが管区警察局という名のもとに存置されております。大石ヨシエ委員質問に対しましていろいろその必要性を説かれたのでありますが、私は今回の改正の最大眼目たる警察の能率化という点からすれば、こういう中間的な存在はなくしまして、直接府県警察に指令できる、あるいは連絡できる機構運用を計画する方が、むしろ今回の改正には忠実ではなかつたか、かように考えております。また塚田管理庁長官の手元においても、せつかく行政整理をやつておる際におきまして、管区本部というものは無用の長物ではないかというふうに、私は極端に考えております。むしろ能率を上げるためには、ああいうものはない方がよろしい。現在のポストの温存というようなけちな考えで残されたとは思いませんが、何らかほかに方法はなかつたんですか。
  107. 犬養健

    犬養国務大臣 これは私もずいぶん考えたのでございます。私も管区本部というものが屋上屋のきらいがあれば、何も過去の因縁にとらわれることはないという考え方で検討いたしました。その結果藤田さんの御指摘のような屋上屋の点もあるのであります。これは行政事務のところでありますが、今度はこれをむしろやめました。そこでなぜ入れるかといいますと、結局私は神様でない人間の能力の範囲というものの測定から来ると思うのでございます。先ほども申し上げましたように、この間の風水害——長崎県、熊本県、福岡県で、どこが一番ひどくて、どこの県の余剰警察官を応援にやれるか、ということは、その県に聞いたつて、身がかわいいからさきますとは言いません。おれのところがもつと水がふえて来たらたいへんだ、まあさかずに置こう、これは人情で当然のことであります。ところが東京から九州の空を眺めまして、どこがいいというようなことを、言えば言えるというりくつも立ちますが、これは親近感がありません、そこで四、五県の県の総括した管区本部で見ているとわかるので、佐賀県から二百名出せ、まだ大丈夫、こういうことが言えるわけでございます。同時に三、四県あるいは二、三県へまたがつて起る騒乱事件でも、それだけの親近感を持つて管区本部のものならできる。中央からやれるということはりくつで甘えますけれども、どうもできにくい。内灘でいろいろな騒ぎが起りまして、そうして東京から指令すればいいようなものの、どうも山を経た向うでわからないので、そばの管区本部に調べさせると実情がわかる。こういうようなわけでございまして、その適当な単位に警察活動で欠くべからざる、さつき申し上げた超短波のステーシヨンを置く、センターにする、こういう考え方でございます。ついでにそこに一番あなた方の関心を持つていらつしやる民主的な警察をつくる学校を付属して置く、こういう考え方でやつております。
  108. 藤田義光

    藤田委員 私はこれは明治初年の警察ならば、ただいまの法務大臣答弁で満足します。今日のごとく通信機材あるいは交通施設が発達せる場合におきましては、この狭小なる日本中央の指示が電光石火行き渡らぬからああいうものを残す、どうもアジア大陸の法務大臣をされておるような感覚で日本の土地を見ておられますと、いつまでたつて吉田内閣の植民政策等が進展しないと思うのでありまして、ほんとうに狭小な日本の最後に残されました——旧領土のうち五割五分残されただけでございますが、これにさらに七つも管区警察局を置くということは、アメリカの一州にも相当しないこんなところに六つも七つも警察局があるというのはどうも不自然ではないか。ましてや町村合併が非常に促進されまして、最下級の自治体というものが規模を雄大にして来ております。従いまして都道府県のとりでをはずしまして、道州制をしこうではないかということが、識者の間に言われ始めておるときにあたりまして、日本を細分化するような組織を残されたということに関しましては、私はどうも近代国家という感覚を持つておられる大臣にしましては、あまりに思慮分別が小さ過ぎたのではないか、むしろこういう中間機関はない方が今回の改正目標を達成するに便ではないか、かように考えております。現に昨年の私の郷里熊本県の災害におきまして、やはり警察官は家族を持つております、女房子供を持つております。従いまして機動力を発揮して、電光石火救援におもむいたのは、集団的な訓練素養を積んでおります保安隊でありました。警察官に対する感謝状が出たということはあまり聞きませんが、保安隊は至るところで感謝状をもらつておる。やはり自分の郷里を守る警察官は、自分の郷里に踏みとどまりまして、自分の家族と自分の郷里を守つております。ほかの土地に出動しようということは、あの豪雨の中ではあまりしておりません。そのために保安隊というものが運用の妙を発揮したわけでありまして、災害等を例に引かれれば、これはむしろ保安隊の存在理由一つであつて、私は警察局の存続の理由にはならぬと思うのでありますが、その辺はどうでございますか。
  109. 犬養健

    犬養国務大臣 今の御質問、たいへん私の理論にあてはまつて来る御質問であります。つまり道州制がいい。日本ちようどカリフオルニアと同じくらいです。だからこんなにたくさん県を置き、県知事を置く必要がないというのと同じ思想だ。そうして将来あるべき道州制と大体管区本部が同じくらいのものになる。これは先馳者として御賛成願つたものと了解する次第でございます。
  110. 中井一夫

    中井委員長 藤田君、非常に大切なる御質問でありまして、傾聴いたしている次第でありますが、委員会の空気も察知せられ、大体この程度で御審議をおやめ願い、次会に譲つていただきたいと思いますが、いかがでしようか。
  111. 藤田義光

    藤田委員 よろしゆうございます。
  112. 中井一夫

    中井委員長 それでは次会はこれから理事会を開きまして、理事会で御決定いただきます。  なおこの機会に政府に資料の御提出を希望いたします。この警察法改正行政改革に重要な関係のあることは、政府の言明せられるところでありますので、ただいま藤田委員の御質疑中に重要な問題があることを発見いたしました。いわゆる警察関係ある、もしくは類似する現存官庁並びにその吏員数及びその各予算、それから今回政府がなさんとする政府行政改革によつて、これらの官庁並びに吏員に対する影響、人員、予算の減縮関係等があるならば、これはひとつ資料としてお出しをいただきたい、こういうことであります。  それでは本日はこれをもつて散会いたします。     午後四時二十一分散