運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-03-02 第19回国会 衆議院 大蔵委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月二日(火曜日)     午前十時二十五分開議  出席委員    委員長 千葉 三郎君    理事 淺香 忠雄君 理事 黒金 泰美君    理事 坊  秀男君 理事 山本 勝市君    理事 内藤 友明君 理事 久保田鶴松君    理事 井上 良二君       宇都宮徳馬君    大平 正芳君       小西 寅松君    苫米地英俊君       藤枝 泉介君    堀川 恭平君       池田 清志君    福田 繁芳君       小川 豊明君    加藤 清二君       柴田 義男君    春日 一幸君       平岡忠次郎君  出席公述人         日本ラシヤ商組         合連合会代表理         事       大瀧岳四郎君         日本絹人絹織物         商協会会長  圓城留二郎君         日本綿スフ織物         商連合会会長 立川  豐君         大阪税務長         (大阪府知事赤         間文三君代理) 播磨 重男君         宮崎県知事   田中 長茂君         日本興行組合連         合会会長    河野 義一君         藤原歌劇研究所         長       藤原 義江君  委員外出席者         専  門  員 椎木 文也君         専  門  員 黒田 久太君     ————————————— 三月二日  委員佐々木更三君辞任につき、その補欠として  加藤清二君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた事件  入場税法案及びしやし繊維品課税に関する法  律案について     —————————————
  2. 千葉三郎

    千葉委員長 これより大蔵委員会公聴会を開会いたします。  本日の問題は、入場税法案及びしやし繊維品課税に関する法律案についてであります。御承知のごとく本委員会におきましては、ただいま税法各案を審査中でありますが、その中で特に今回国税に移管されました入場税法案及び創設されましたしやし繊維品課税に関する法律案の両案に関しましては、委員会におきましても種々議論の存するところでありまして、本委員会といたしましては、右両案を重要なる歳入法案と認めて、議長の承認を得て公聴会を開会いたした次第であります。公述人各位におかせられましては、本問題に対しまして忌憚のない御意見の開陳をお願いいたしたいと存じます。  なお本日の公述人方々は、お手元に配付いたしておりまする印刷物の通りでありまして、公述時間は御一人大体十五分くらいでお願いいたします。それから公述人に対する質疑は、公述人方々から御意見を全部拝聴いたしまして、最後に一括して行いたいと存じますから、さよう御了承願います。  それではこれより順次公述人方々の御意見を拝聴いたしたいと存じますが、発言の順位等につきましては、議事進行委員長に御一任を願いたいと存じます。まず宮崎県知事田中長茂君にお願いいたします。
  3. 田中長茂

    田中公述人 それでは公述人といたしまして、入場税に関しまして私の意見をお聞取り願いたいと思います。知事でありますから、知事会代表のごとく誤解があつてはならぬと思いますので、私は知事会代表者ではないのでございますから、そのおつもりでお願いします。全国知事会といたしましては、遊興飲食税入場税ともに従来通り地方税として残してもらいたいという決議になつております。しかしその内部においては、それぞれやはり立場立場において意見が違うのでございます。そういう関係からいたしまして、私は全国知事会議代弁者としてでなく、宮崎県知事という立場でお話申し上げたいのであります。  従来、御承知通り都道府県財政は非常に困つておるのであります。私ども知事になつて以来、知事会議が何をしておるかというと、今までの知事会議では、ほとんど財政問題を取扱つて、その陳情に日を暮したといつてさしつかえないのであります。それほど全国知事諸君財政問題と取組んでおると申し上げても、決して間違いはないのであります。ことに大部分の財政的貧弱県は、その問題につきましてはもうまつたく困り抜いておる。二十九年度におきましては、いろいろ税制改革、あるいは地方制度の機構の改革があるのでございますけれども、その改革は、むしろわれわれに対しましては相当の圧迫を加えておる、宮崎県といたしましてはむしろ健全財政で、自治庁あたりからもほめられておるくらいであつたのでありますが、二十九年度はいよいよもう困り抜いたという現状であるのであります。そういう観点からいたしまして、この税の問題につきましては、根本の理論の観点からと現実の問題からとはおのずから異なるのであります。われわれといたしましては、地方自治確立財政確立にあるということは申すまでもないのであります。従いまして独立税が、いわゆる地方税税制改革の上に相当現われて来るだろうという期待を持つてつたのでありますけれども、案外その期待は大して達せられないようであります。そういう観点から考えますると、遊興飲食税入場税等も従来通り地方税として残されるということが、理論的に申しまするとよろしいのでございます。しかしながら現実の問題といたしましては、ある意味においては背に腹はかえられぬと申しますか、われわれといたしましては、むしろ遊興飲食税というものは、国税に移管されまして、たくさんちようだいした方がいいということになるのであります。御承知通り義務教育費というものにつきまして、われわれは全額国庫負担を主張して来たのでありまするが、半額しか負担がない。平衡交付金はそれに伴わない。だんだんべース・アツプか伸びて参りまして、一般の経費を非常に圧迫いたしまして教育費につぎ込まなければならぬという現状であるという関係から、半額負担及び平衡交付金でもつて教育費をまかなうことかできないのであります。そういうことからいたしまして、少しでも税源をわれわれのような貧弱県にはまわしてもらいたいというのが、現実の問題であるのであります。そこで入場税の問題といたしましても、理論的には地方の税として残しておいた方がいいのでありますけれども現実の問題といたしまして、ことに二十九年度におきましては、すでに入場税国税として移管しよう、そうして譲与税として地方にやろうという制度が現に国会に提案されておるということから考えましても、さらに原案をひつくりかえして地方税に残してもらうというだけの熱意を持ち得ないのであります。むしろ原案通り国税として置いてもらつて譲与税としてお金をいただくということの方に、われわれとしては現実の問題として賛成せざるを得ないのであります。たとえば宮崎県の例を申し上げまするが、これは推算でありますから、現実いよいよ具体的になりますると多少違うかもしれませんが、かりに入場税につきまして、二十九年度において現行のようないわゆる地方税として計算をいたしてみますると、調定見込額が約一億五千万円であります。収入見込額が約一億四千六百万円であります。そういたしまして、税制改正による収入見込額自治庁試算を採用いたしますると、譲与税といたしまして二億二千七百万円、それから御承知通りに三月の入場税は四月に入つて参りますので、その四月の収入見込額が約九百三十一万円、合計いたしますと、二億三千六百三十一万円になるのであります。そこで現行制度といたしまして、二十九年度の収入見込額を先ほど一億四千六百万円と申し上げましたが、それを差引きますれば、すなわち二億三千六百三十一万円から一億四千六百十九万四千円差引きますと、九千十一万六千円になるのであります。すなわち約九千万円の増収になるのであります。これを自治庁の二十九年度の入場税試算を採用いたしますると、やはり二億三千六百三十一万円から、自治庁の算定したものによりますと一億二千九百万円、それを差引くわけであります。そういたしますると、一億七百三十一万円、いずれにいたしましても一億見当の増収があることになるわけであります。しこうしてこの徴税費がかかるわけであります。もちろん遊興飲食税ほど入場税徴税費がかからぬのでありますが、しかしわれわれのような映画あるいはその他入場税関係興行といいますか、それらの方面の非常に貧弱な県におきましては、どうしても税収をあげるためには、相当手数をかけなければならぬのであります。映画館経営者には非常にお気の毒でございますけれども、最近はやはり税収が非常に少いというようなことから、税務当局職員の方は熱心に徴税にかかつておるようであります。私の県は、実は税収はわずか十億円そこそこであります。それでありますから、ここに百万円、二百万円という金もなかなか大切なのであります。そういうわけからいたしまして、やはり税の徴収には非常に努力しておる、入場税なんかも九〇%以上も徴税しておる。それについては非常な努力を要する。一日に三回ぐらい映画館に行くそうであります。そうして一々切符の端くれをめくつたりなんかしてやつておるというようなわけでありまして、相当の人数と徴税費とを要するわけであります。私の方は非常に緊縮政策をやつておりますから、それなど徴税費もいらぬと思いますけれどもそれにしてもやはり六百万円内外は徴税費に要する。それだけの経費全部は浮かぬわけであります。といいますのは、今度県民税とか不動産取得税とかいうような新しい税ができますから、その計算等経費もかかるわけでありますから、六百万円それ自体がまるまる浮くわけではありませんけれども、ある程度には徴税費が浮くわけであります。のみならずやはり税務当局にいたしますれば、そういう厳格な徴税をやるということは人情として好まぬわけでありますし、ともすればやはり人によつて寛大な処置をするし、また厳格にやるにいたしましても、いやな思いをしなければならぬわけでありますから、その意味においてはめんどうくさいことよりも、いつそ政府の方からそつくりちようだいした方がいい、ことによけいちようだいするわけでありますから、手数をかけずにそつくりまるまるもらつた方がいいというような、あまりにも現実主義でありますけれども遊興飲食税あたりはまつた徴税にいやな感じ職員としては持つようであります。その次にいやなのはやはり入場税であります。ことに映画等というものは、申すまでもなく文化的な教育面多分に持つておるわけでありますから、この方面の発達はわれわれといたしましても大いに考えてやらなければならぬ、できるならば徴税も寛大にしたいというわけでありますけれども、背に腹はかえられぬ財政貧弱な県でありますから、やむを得ずやはり映画館の方にもいやな思いをしていただく。実は宮崎県のごときは、滞納処分までもして、映画館一館くらい廃止されたところもありますが、それは私の方が悪いのではなくて、映画館がいなかの割にあまり多過ぎることに多分に原因すると思います。ことにさらに問題は、今度の入場税は、御承知通り入場券価格によつて逓減されておる、宮崎県のようなところでは——私は行つたことはありませんが、百五十円の入場券なんというのはほとんどないそうであります。たいてい百円以内だそうであります。二十八年度は、御承知通りに百分の五十が税金でございます。ところが今度の税法によりますと、百五十円から七十円までが百分の四十、七十円から四十円は百分の三十、四十円以下は百分の二十、こういうようになりますので、宮崎県のごときは、今の百分の五十というようなことはほとんどなくなつて、百分の四十以下という税率の適用になるわけであります。それでありますから、映画館経営者といたされましても、それだけ税金が経くなるわけであります。県といたしましては、それが現行制度そのままならよろしゆうございますが、今になつてまた税率を上げるなんということは、国会議員もようおやりにならぬと思う。そうすると、そのまま地方税になるとすると、百分の五十が百分の四十以下になつてしまうというわけになりますから、税額は少くなる、手数は一向減らぬというのでは、これまた割が悪いのであります。将来はいざ知らず、とにかく今の原案によりますと、やはりわれわれといたしましては、国税にしていただいて、譲与税にしてもらつた方がどちらかと申しますといいということになる、大都会のように、請負制度みたいなふうにして、そして業者の方から取立てるというようなところでありますと、あるいは地方税の方が業者のお話のようにいいかもしれませんが、われわれのような貧弱県はなかなか厳格に取立てますから、むしろ税率そのものが低い方がよほど業者の方に対しても御利益かと私は想像するのであります。両方多少の反対はありましようけれども、大体業者の方も、全然みんな御反対になる人ばかりもない、やはり中には御賛成の方もあるようであります。どうせ厳格に取立てられるならば、税率の安い方がましだとはおつしやらぬけれども、それでもけつこうだという御意見もあるようでございますから、私といたしましては、県だけの立場でなく、業者の方にも御賛成も中にあるようでありますから、国税としていただいた方がいいと思うのであります。しかし将来はいざ知らず、こういうわけでございます。  それからついでに委員長にお許しを得たいのでありますが、私に対する通知は奢侈繊維税、それから入場税両方になつておりますから、ちよつと簡単に申し上げたいと思います。
  4. 千葉三郎

    千葉委員長 簡単に願います。
  5. 田中長茂

    田中公述人 私は実は奢侈繊維品と、こうありますので、奢侈繊維品でありますから、消費税には反対すべき筋合いのように思うのであります。実は私も非常に迷いを持つておるのでありますが、私の県はラミー生産県でありまして、全国の四割以上を宮崎県で生産しておるのであります。そこで係の方から——というはなはだ定見がないようでありますが、この消費税には反対をしてくれという申出があるのであります。そこで迷いながら実を言うと反対をしたい方が強いのであります。と申しますのは、まつた意見のないわけでもありませんが、実はラミーにいたしましても生糸にいたしましても、今後日本としてはこれは非常に助成をしなければならぬ繊維であると思うのであります。ラミーはことにそうでありますが、生糸といえども、御承知通り戦争によつてデフレーシヨンを非常に来したのであります。今ようやく復活しつつある。これは釈迦に説法でありますけれども外国市場においても、用途が違つて来て、ようやく需要が多少増すのではないか、こういう感じを私どもは持つておるのであります。そういうような繊維類は私は保護すべきである、どつかに多少の弊害があつたにしても、私はこれは徹底的に保護すべきものであると思うのであります。食糧の次に大きな問題は、申すまでもなく衣食住の衣であります。私は極力衣の自給自足を県民に説いております。農民はみな絹糸ぐるみになれ、現に私はそれを奨励しております。太糸の三品種を本年試験場に製作させて、その太糸を県内の農家に手織その他の方法で自給させるということを極力やつておるのであります。そうして夏はラミー着物を着て涼しくやつておれ、そうして都会の人に、逆に農村からラミーであるとか、絹の着物をくれてやつたらいいじやないかというくらいに私は奨励しておるのであります。そうでありますから、やはり価格全体が上らずに、あらゆる方面にこの繊維類が、ぜいたく品としても多少は消費が増す方が私はけつこうだと思う。これは理論的ではありませんが、政策的に申しまして、私はやはり価格が安くて、たくさん使われる方がいい。もちろん税をかければ、それだけアダプテーシヨンによつて価格を引下げるということは考えられることは考えられるのでありますけれども、しかしそんなことは今急にやろうといつたところで、それは急には行かぬのでありますから、政府がある程度の政策を施して生産原価を下げるとかなんとかいう、たとえば繭が非常に増産されて供給が多い、需要が比較的少いというようなときになりますれば、自然に価格は下りますから、そのときはいいと思いますが、さしあたりは、私はむしろ価格が低くて需要が多い、多少奢侈品であつたにいたしましても、それは知れておるし、金持ちが使われるわけでありますから、私はこの段階においては、あまり消費税をおかけにならぬ方がいいのではないかという考えを持つておるわけであります。
  6. 千葉三郎

    千葉委員長 次に、藤原歌劇研究所所長さんの藤原義江君にお願いいたします。
  7. 藤原義江

    藤原公述人 私はこういうところへ来てしやべるのに非常に不適任な男でございます。御承知のように、いつもなら何千何万の人を前に置いても、石ころ同様に考えていますから、ちつとも——ちつともと言つては何ですが、割合平気なんですけれども、きようは非常にかつてが違います。それともう一つは、出て行つてしやべれと言われると、根が少しおつちよこちよいだもんですから、すぐ出かけて参りますけれども、ときどきとんでもないところへ出てこいつはしまつた思います。きようも実はさつきからしまつたところへ出て来たと思つていたんです。  およそ一番痛切に感じている税の問題なんですけれども、実際何べん説明されても、わからない。どうしたらどうということが私にはどうしてもわからない。きようもその方の専門家音楽新聞村松社長が私と一緒に来ているので、実際はこの村松さんに話していただくのが一番いいのですけれども、私にぜひ行つてしやべれと言うので、来たわけです。しかも隣で速記されておりますと、私の支離滅裂な言葉があとで活字になるかと思いまして、どうしても思つたことが言えなくて、さつきからちよつと困つているのです。大体ゆうべ村松さんに書いて渡されました原稿がここにあるのですが、たいへんあと先になつていろいろなことを申し上げますけれども、先月アメリカから帰つて一番最初に、いよいよ今度は税が安くなるということを聞きまして、こいつはありがたいと思つていましたら、だんだん説明されてみると、そうでもない。御承知のように、どこの国でも交響楽団歌楽劇、この二つに対しては、ドイツイタリアフランスというような歌劇及び交響楽団の非常に盛んなところは、国家がこれを補助して、しかもフランスのごときは、国立劇場に所属している歌手は、年金までもらうというふうに保護されている。ヨーロツパの国はそういう状態であります。たとえばオペラといいますと、イタリアのミラノのスカラ座ニユーヨークメトロポリタンがすぐ話に出ますが、スカラ座では税はとつておりません。もちろんこれは国家が援助してやつております。中でコーヒーを飲んだり、酒を飲んだりいたしますと、たいへん高い税をとられます。たとえばオぺラハウス以外で一ぱい飲むコーヒーが十円としますと、オペラハウスの中では二十円とられる。その十円はどこへ行くかといいますと、スカラ座に全部行つてしまつてスカラ座では衣裳の代に充てたり、背景費に充てたり、そういうふうにしてその税を使つているというような税のとり方をしております。アメリカにおいては、ニユーヨークメトロポリタンは、昨年も一昨年も、ことに昨年のごときは、新聞で御承知の方もございましようが、いよいよもうやつて行けないので、四十年の歴史あるメトロポリタンオペラもいよいよ閉鎖するというところまで行きました。税は二割の税がかかつていたのですが、それは、数年前に交響楽団オペラの税はなくなつてしまつた。ところが、税を出さなくなつただけではとうていやつて行けないというので、あのメトロポリタンオペラハウスの建物の税をニユーヨーク市から特に無償にしてもらつた。それでもやつて行けないので、いよいよ昨年のごときは、いわゆるシーズンの開きます二週間前まで、閉鎖するか、明けるかというどたんばまで追い込まれたような次第で、これが世界で一番金があるのじやないかといわれている二ーヨークのメトロポリタンオペラでさえこうなんです。  じや、一体日本でわれわれはどんなことをやつているかと申しますと、私が委員長にお願いして、先にしやべらしていただきたいと申し上げたのは、きようもこれから帰りまして、十二時からけいこを見て、切符売りです。われわれのオペラ、それから音楽交響楽団、純バレー、そういう催しは、舞台に立つ人間——合唱団や主役を問わず、おのおのがみな切符券を分担して、あつちへ行つて頭を下げ、こつちへ行つてお願いをし、十枚頼む、二十枚頼むと言つて切符を売りさばいている。ある程度の切符が売れるという見込みがついたときに、初めてその公演ができる。そういう状態で、私の場合は過去二十一年間やつて参りました。そういうふうにして一生懸命かけずりまわつて、そんなにまでして頭を下げて切符を頼んで、売つて——好きなことをやつているんだからいいじやないかと言われれば、それまでですけれども、高い税をかけられてまでそういうことをやつているということを、きようここにいらつしやつておられる皆さんにぜひ知つていただきたい。  そういうわけで、今度特に七百円以上が四割という税になつておりますけれども、七百円も払える人間なら、いくら税をとつてもいいじやないかという議論も出て参りますけれども、実際オペラ交響楽団の場合、特にオペラや本式のバレーの場合は、十何万円という伴奏料を払う。しかも舞台の上で衣装、かつら、背景という一番お金のかかるものに一番高い税がかかる。しかも七百円以上は四割ということになりますと、外国から来る人——戦争に負けて、金のないときに、何も音楽家を呼ばなくても、君たち自身でやつたらいいじやないかと言う人もありますけれども、実際はそうではない。何と申しましても、日本交響楽団オペラというものは、まだまだ外国人まねをやつている。最近やつとそのまねから抜け出しまして、自分たち本来のオペラができるようになり、アメリカでも日本交響楽団の楽譜がニユーヨークで演奏されるようなところまでこぎ着けたのは、外国から偉い人が来たからです。イタリアからだれが来る、ドイツからだれが来る、そういう人の高い芸術を知つて、若い日本音楽家がいいものを書き、いいものを歌うようになつているのが現状でございますから、どうしても外国から人を、たとい少くとも年に何人かは呼んで、これに接しなければならぬ。そういう現状から言いますと、現在御承知のように、高い旅費を払い、また出演料も、われわれなら、今度はやつてみたけれども、税がとても高くて、これだけ税を引かれれば、出演料は上げられないから、先生がまんしてくれ、よろしいということで済みますけれども外国から来た人にはそうは参りません。そういうことを考えますと、七百円以下では——われわれのオペラでも六百円はとつておりますので、そういうわけで七百円以上に四割かかるということが非常に困りますので、これはやはりどうしても現状維持よりも、大体一口にここで立つて申し上げる。何を申し上げたいかといいますと、実際無税にしていただきたい。無税にしていただかなければわれわれのやつている、またみんなかやつております交響楽団、そういうものと怪しげな音楽、と申しましても一から十までありまして、いろいろな種類の音楽がございます。そういうわけで、ぜひひとつ何割に下げていただきたいということよりは、これは無税にしていただきたい。そのかわり音楽以外で、われわれはしやつちよこ立ちしてでも何でもいたして税を納めてもいいので、ただ音楽公演にだけはどうか無税にしていただきたい。一つたちどうしても納得が行きませんのは、われわれと同じような立場にある美術、それの方は非常に庇護されて、展覧会などは非常に割がいいのであります。これがどうしても納得行かない。絵は展覧会でただ飾つておくだけで、それで人が来てそれを見て、しかも年をとつても、あるいは死んだあとでも非常にものをいうものでありますけれども音楽家、舞踊家などの公演というものは、肉体を人の前にさらして、しかもああでもない、こうでもないと言われながら、年をとればもうだめだね。(笑声)そういうものなんですから、これは非常に変なあれですが、美術の方が非常にいろいろな意味音楽方面よりもかわいがられているという——これはひがみではございませんが、どうかそういうふうにして、純音楽と純舞踊の研究発表には、できましたらどうしても七百円以上四割とかなんとかいうことでなくて、これはもう無税にしていただきたいというのが、私のきようここで申し上げる要領で、全部一言にして申し上げれば無税にしていただきたい。  それからつけ加えますが、先ほどから申し上げますのを忘れましたが、われわれの使つている音楽には、税以外に著作権料というものを払わなくちやいけない。私事になつて非常に失礼だと思いますけれども、今度六十何人という大勢の一座を連れてアメリカでみごと失敗して来ましたけれども、この失敗の原因の一つはどこにあるかというと著作権、これはマダム・バタフライというものを一晩やりますと、一晩の楽譜の使用料に純益の中から毎晩二百五十ドル持つて行かれなければならない。日本でもややそれに相当した額は、われわれはプッチーニなんかの作曲家に著作権料を払わなければならない。そういうこともぜひ知つていただきまして、どうか交響楽団、純舞踊というようなものには、今さら国立劇場を建ててくれの何のと申しましても無理かもしれませんが、せめて税だけは下げていただく、あるいはなくしていただくようにお願いいたしたいと思います。  たいへん冒頭に申し上げました通り支離滅裂でおわかりにくかつた思いますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。
  8. 千葉三郎

    千葉委員長 いかがでしよう。先ほど私から公述人の全部が終つたら御質問を受けるということを申し上げておきましたが、藤原さんは今すぐお帰りになるそうですから、藤原さんだけについては五分間くらい、もし御質問があつた——いかがですか、五分間でもよろしゆうございますか——それでは五分間を区切つて御質問を許します。
  9. 内藤友明

    ○内藤委員 先生にちよつとお伺いしたいのですが、お話まつたくその通りだと思います。ただ先生たちがおやりになつておられます純音楽、それから一から十まであるとおつしやいましたが、私どもはどこで棒ひつぱるか、よくわかりませんが、不純なものとどこらあたりで棒をひつぱるかということをひとつ……。
  10. 藤原義江

    藤原公述人 それはここにちやんと表ができています。これはこの前のときに差上げてあつて、たとえばオペラでいいますと、日本には一口にオペラといいますと、われわれのやつているあの大規模なオペラ歌劇であります。それから少女歌劇であります。ことにある地方にわれわれ参りますと、オペラだの歌劇というものが日本では非常に何か妙な、どこがどうだかさつぱりわからないので、ある町へ行きましたら、藤原さんの宝塚の切符を一枚ください、とこう言う。そういうふうに、つまりオペラといえば宝塚といわれている、それくらい宝塚のオペラは有名なんです。けれども、ここで申し上げます純オペラということになりますと、グランド・オペラということになりますと、規模が非常に大きく、合唱団も大勢で、管絃楽団も大勢で、曲で言いますと、ワグナーのオペラだとか、ローエングリンだとか、タンホイザーだの、それからプッチー二のお蝶夫人とか、トスカ、ヴエルデイのアイーダ、そういうものは純オペラ。それからオペレッタでも、コルネビーユの鐘とか、ミカドとか、そういうものは、やはりグランド・オペラではありませんが純オペラの中に入る。お金のかかることはちつともかわりがないのでありますが、そういうわけで、ここに全部書いてございます。これはあとで私からでなく、音楽新聞村松社長が見えていますから、そこでちよつと説明していただいた方がもつとはつきりいたします。私よりも専門的に要領よくおわかりになるように、御説明ができると思います。非常にこれはデリケートなんですよ。どこから線を引くかということですね。大体申し上げると、グランド・オペラと普通のオペラと申しましても、ピアノ一挺でやるオペラもあれば、オーケストラ五、六人でやるオペラもあるし、どこででもやりようがあるわけですから……。この説明ではだめですか。(笑声)
  11. 千葉三郎

    千葉委員長 そのほかに御発言はありませんか。
  12. 井上良二

    ○井上委員 年間どのくらい開催をいたしますか。たとえばあなたならあなたの歌劇なりオペラは何回ぐらい年間開催をいたしますか。それで入場者は大体平均してどのくらいになり、収支はどういうことになつているか。
  13. 藤原義江

    藤原公述人 これはまことに申訳ないのですけれども、全然答える自信がない。というのは、年間何回ぐらいとおつしやられますと、第一に困るのは、われわれは歌舞伎俳優、あるいは新国劇、あるいは新派、あるいはずつと飛びまして文楽のように、きまつた劇場を持つていない。オペラ交響楽団をやつている団体というものは、まつたくのら犬みたいなもので、ごみためのあいているところを探して、そうして公会堂をたつた一つ——東京に公会堂というものは一つしかない。その公会堂というものを各マネージャー及びその他の抽籤によつて割当てられていて、その抽籤によつて割当てられたときに、われわれと妥協し、われわれに好意を持つているマネージャーとぶつかれば、それじや今度は藤原オペラをやろう。今度は貝谷バレーをやろう、今度は小牧バレー団をやろう。だから今から秋のプランを立ててちやんと仕事をしたいのですけれども、場所がない。この世界第二か第三といわれている広い東京に、音楽をやり得るホールというものは一つもない。わずかに公会堂を借りてやる。それも、それを一晩とるためにはたいへんな苦労をしてやりとりをしている。それなら帝劇や歌舞伎座を使つてつたらいいじやないか。これは御承知のような莫大な小屋代をとられますので、無税にしていただいて、一公演五十万円、百万円だれかに出していただかなければやつて行けないような状態ですから、とてもあれですし、どのくらい収支が償うかということになりますと、初めから莫大な赤字を予想してかかつているものですから、そういうことをぜひ村松さんにあとで説明していただいたらと思います。
  14. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 著作料は、日本外国との比率はどんなふうになつておりますか。たとえば日本の著作料はどんなふうにお払いになつておりますか。
  15. 藤原義江

    藤原公述人 これも、アメリカでつらい思いをして来ましたから、アメリカの二百五十ドルというのは、この間骨を削られるようにしてとられて来たからよくわかつておるのですけれども日本ではどのくらい著作料をとられているかちよつとわからないのですが、とられるのはたいへんなものをとられているのです。作曲者が死んでから五十年たつたものはただなんです。しかし現在まだ生きていられる。なくなつてから何十年というのは、その国によつて違いますけれども、その著作権料というものは、ものによつては相当莫大なものをとられるわけです。
  16. 福田繁芳

    ○福田(繁)委員 あなたはいわゆる世界の文化国家と称する各国へ、興行と申しますか、お催しに行つておられるはずと私承つておるのですが、そこで御参考までに伺つておきたいのであります。世界の文化国家と称される国において、そういつたお催しに対して税金をとつておる国に、はたしてどういう国があるか、もし事実あるならば、そういうところはどういう税率をとつておるかということも参考に伺いたいのです。
  17. 藤原義江

    藤原公述人 さつき申し上げたように、アメリカでは国家は補助いたしておりませんが、ニユーヨークメトロポリタンというのがアメリカ代表的なオペラでございますが、これはメトロポリタンオペラ組合というのがございまして、これだけのものを今年度は欠損したというと、金持が——今どういう金持が出しておるか知りませんが、みんな割当てで出す、そのかわり自分が行つても行かなくても、そのメトロポリタンオペラ——日本の言葉で申しますとますですね。そのますを、あれはだれだれのます、あのますはだれだれのますというのを一シーズン買い切つてしまう。そうして行つても行かなくてもオペラに対し、あるいは交響楽団に対し、カーネギー・ホールでもお金を出して援助いたしております。カーネギー・ホールの交響楽団メトロポリタンオペラ無税なつたことは、先ほど申し上げましたが、無税でもやつて行けないので、今また家賃をなくなしておる。イタリアはもちろん無税で、これは国営です。戦前までは五大劇場は国営でございました。ミラノとローマ、それからトリノとナポリ、シシリーのパレルモ、たしかこれだけだつた思いますが、これだけは無税で、しかもローマの王室劇場の初日は大体総理大臣と、——よく皇太子殿下が見えていましたが、必ず総理大臣が来て初日を明ける、こういうふうにいわれておりますし、ドイツももちろん代表的なものは国営、フランスさつきも申し上げましたように、年金までつけてやつておる。国営でございますから、税はとつているかもしれませんけれども、一般の人から税はとつていないんじやないかと思います。
  18. 坊秀男

    ○坊委員 先ほどの内藤さんのお尋ねに関連して、日本音楽会などをやる場合に、たとえば藤原先生のような、だれが見てもこれは純音楽家であるという方が出演なさるとき、それからまたそうでない、かりに不純音楽と申しますか、まさか浪花節じやありませんけれども、純音楽にあらざる方が藤原先生と一緒に舞台に相前後して立たれるというような音楽会は、これは全然行われないものでございますか、それともまたそういう場合もあるのでございましようか、ちよつとお聞きしたい。
  19. 藤原義江

    藤原公述人 オペラの場合はほとんどございません。しかしいろいろな催しの音楽会というものがございまして、たとえば純音楽からだれ、歌はだれ、ピアノはだれ、ヴアイオリンはだれ、軽音楽からはだれとだれ、それからもつと娯楽的な、中には漫才そういうものも出て来る特殊な音楽会もございますけれども、しかしそういうものは大体慈善音楽会で、それによつてお金を集めて、そのお金を何かに使うというので、税の対象にはならない場合だけそういう会が催されるので、オペラとかシンフオニーははつきりしておりますから、そういうあれはほとんどございません。
  20. 千葉三郎

    千葉委員長 時間の関係上、浅香君の御質問で最後にしたいと思いますから……。
  21. 淺香忠雄

    ○淺香委員 伺いますが、今のお話では、日本などで公演されます場合は、東京では主として公会堂くらいしか使えない、劇場などを使う場合に数十万円くらいの使用料がいるので、とうてい採算が合わぬというようなお話がありましたが、そこで、契約の内容にもよるわけですが、そういつた場合に、借り賃以外に売上げの中から、劇場などを使用いたしました場合に大体何パーセントくらい劇場に払うのですか、そういう契約があるものかないものか、ある場合には劇場の方へどのくらいのパーセンテージを使用料として払うのでございましようか。
  22. 藤原義江

    藤原公述人 そのパーセンテージは、劇場で行います場合は劇場と、たとえば東宝音楽協会というものがございまして、終戦後われわれが劇場でオペラをずつと始めておりましたときは、これは全部東宝の負担でやつておりました。それから歌舞伎座でやつておりました場合も、これは松竹の負担でやつておりましたから、われわれは出演料をもらつてつていたんです。このときにオペラというものが非常にたくさんやれるようになりました。ところが松竹でも東宝でも、あまりに金がかかり過ぎるのと、あまりに犠牲が大き過ぎるので、とうとう両者ともオぺラは今のところ断念してしまつて、できなくなつたんですけれども、これはやはり普通のお芝居のように、しようゆ組合が観劇してくれるとか、あるいは化粧品の組合が観劇してくれるとかいうところまでまだオペラは行きませんから、来週私がマノンというフランスオペラをいたしますけれども、また新しいかぜ薬ができたのかくらいに思つている人が非常に多い。そういうわけですから、とても何割の約束で劇場を貸すというようないい条件でわれわれに劇場を使わしてくれるわけに行かないのです。そういうところに非常にわれわれの苦しいところがあつて、いいものを発表したくても場所さえないのですから、ひとつ何とか……。
  23. 千葉三郎

    千葉委員長 いかがでございましようか、入場税の方がまだ二人あるのです。しかしそれを最後にして、繊維関係の三人の方を先にお願いしたいと思いますが、いかがでございましようか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 千葉三郎

    千葉委員長 では次に日本ラシヤ商組合連合会代表理大瀧岳四郎君にお願いします。
  25. 大瀧岳四郎

    ○大瀧公述人 私ただいま委員長から御紹介いただきましたラシヤ商組合の大瀧であります。当委員会が私ども業者をお招きくださいまして、この繊維品課税についての公聴会を開かれたことにつきまして、厚く御礼申し上げます。  今入場税に関しまして藤原さんがいろいろお話になつておりましたが、藤原さんはこういう席はおなれにならないまでも、何千人という人の前へお立ちになるということはなれているだろうと、私も非常にうらやましく感じました。私は単なる毛織物、ラシヤ、すなわち洋服生地でございますが、これの小売業者でありまして、こういう席は生れて初めての経験でございますので、申し上げることもお聞き取りにくい点があると思いますが、ただ私の業者としての二十一年の経験から、この法案に対する考えを申し述べさせていただきたいと思います。  この法律案を私どもが拝見いたしました場合に、理由といたしましては、奢侈的消費の抑制と国際収支の改善ということがうたつてございますが、内容を拝見いたしました場合に、奢侈繊維品といたしまして、広幅織物、おそらくこれはほとんど毛織物でございましようが、これの奢侈としての限界を一ヤール四千五百円と規定してございます。それで私どもが考えますと、ただいまの春とか夏とかはすぐどうということは少いと思いますけれども、今年の冬ということを考えます場合に、実際に消費者が洋服として着て長持ちをする、実用的であるというようなセビロ服地ないしオーバー地が、これによつて相当課税されるという結果になると考えるのでございます。安い品物ですぐだめになつてしまう毛織物を使うことが望ましい、奨励したいということであれは、もちろん論外でございますけれども、国民に丈夫な、実用的洋服をより以上着せたいという意味から言いますと、この四千五百円ということに対しては、相当無理があると私は考えるのでございます。安物買いの銭失いということが昔からいわれておりますけれども、結果は安物買いの銭失いを奨励することになるのではないかと私は心配するわけでございまして、何が奢侈品であるかということは、その必要の価格ということよりも、それから割出されるところの実際の使用価値という点を考えなければならないのではないかと考えるわけでございます。それで四千五百円という点によりまして奢侈品課税を万一いたすということになりました場合には、結局源泉所得税によりまして、毎月月給からはつきりと税金を差引かれております大部分のサラリーマン、洋服階級がこの高い洋服を着るということになりまして、いわゆる大衆課税と申しますか、ほんとの金持ちがこの奢侈品に対して税金を払うということでなく、大部分の洋服階級がこの税金負担しなければならないという結果になると私は考えるわけであります。それから毛織物と申しますと、冬は大体必需品であることは、皆様御存じだろうと考えるのでございますけれども価格によつて奢侈品をきめたということになりますと、おそらく夏物というような毛織物には奢侈税がかからないことになるわけでございまして、毛織物の最も実用的であり、実際に必要であるという冬季の冬物の場合にこれがかかるということは、同じ国において夏の毛織物には奢侈税がかからぬ、冬物の実際に必要な時期に至つて奢侈税がかかるというような、だれが考えても不合理なことが起きると考えるわけでございます。  それからこの提案理由の第二番目にうたつてございます国際収支の改善ということでございますが、この一面をわれわれしろうととして考えましても、輸出の振興がこの大きな面を負担するのではないかと思うのでありますけれども、その場合に、一定価格によつて奢侈品ということをきめますと、おそらく日本の生産はこの奢侈税がかからないような低品位の悪いものに結局集中されるという結局になることは、これはたれが考えても当然ということになると存ずるのでございます。それで毛織物は美術工芸品というようなものと異なりまして、工場生産でありますから、いま一歩品質の改良、技術の向上ということができれば、なお今後今日以上の輸出が見込まれる際に、こういう芽をつむようなことをいたしますと、せつかくの輸出振興ということが不可能になるというようなことを心配するわけでございます。そこで先ほど申し上げましたように、毛織物は工場生産でございますから、工場の全機能が絶えずよいものに対する生産に努めておりませんと、女工の一人に至るまで優秀なる製品に対する関心を持つておりませんと、急によいものをつくれといつてもできるわけではございません。そういう意味におきましても、国際収支の改善という点には、これらがはなはだプラスになる点が少いと考えるわけでございます。  それから次に私が考えますことは、毛織物は金属什器等とかわりまして、非常に節がある商品でございまして、なお相場の変動もはなはだしいということは、皆様も御存知のことだと存ずるわけでございます。これを品質によらずしてて、単に一定の価格によつて奢侈品の限界をきめますと、きよう四千八百円なりまた五千円なりで売買できておりますものが、十日なり二週間なり後には、気候の変化と季節ということによりまして、五百円くらい安く売られる。つまり限界価格の四千五百円以下に売られるということは絶えずあることでございまして、こういう場合に、実際の税務署という面になりますと、おそらく税務署の末端の仕事をなさる方は、われわれ商人からそういう申告がございましても、これを信ずることはできない。迷いまして、結局承認はいたさない。その結局は、われわれ商人との間に大きな摩擦が起きまして、戦争中、また最近におきまして統制中におきまして、いろいろと官庁、税務署の方々との間に非常にトラブルが多く、そのために一つの例といたしましては、先般の取引高税の場合も同じでございますけれども、法人税を正式に税務署が承認いたしましても、取引高税の面になると、これを承認しないで、更正決定をする、こういうことが現実にあつたわけでございまして、今度の法案を拝見いたしましても、この税金に対しては更正決定ができるように私どもは考えるのでございまして、こういうことが起きますと、必ず官民離反と申しますか、その間のトラブルが非常に多くなりまして、結局われわれとしては、また暗黒時代というような暗い感じを非常に持つわけでございます。この税金の問題が起きましてから、われわれ全国業者が、厳密に申しますと一月二十一日と存じますが、それ以来、一等弱い何の組織もない、最も保守的であるというわれわれ中小工業の繊維業者が一丸となりまして、全国はもとよりのこと、東京におきましても、御存じとは存じますが、共立講堂で四回も数千人の者が集つて反対の運動をした。それから国会に向つて日本初まて以来こういう業者のデモが行われた、この強い反対運動は、税務署との折衝に不安な面を持ちたくない、不愉快な生活をしたくないということから生じているわけでございまして、この点は特に国民の生活を気持よくさせるという意味において御考慮いただきたいと考えております。  それから次に申し上げたいことは、現在の経済界と申しますか、これは戦争中、戦後とかわりまして、まつたく自由の状態でございまして、業態のはつきりいたしておりますものは、紡績、糸を引くことと、織ること、織布でございます。この二つは判然とだれが何をしているかということはわかつておるわけでございます。ところがそれ以下の段階になりますと、自由経済の上におきましては非常にまちまちでございまして、中間段階におきましては、卸を行う人間が小売をし、またときに加工するというような兼営が非常に多く行われているわけでございます。このはつきりしないところに税金をかけるということにおいて、非常に矛盾があると存ずるわけでございまして、もしもこういうことが必ず必要であるとするならば、糸をつくるところとか、ないしはものを織るところという、はつきりしたところにどうして税金をおかけにならないのかということが、われわれの最も不審に思うところでございまして、この中間にかけるということは、非常に無理があると考えるわけでございます。なお法案を拝見いたしますと、第六条におきましては、卸ないし小売の兼業者というものは、その主体とするところの業態の一方にきめるということが書いてございます。これにつきまして、われわれが実際の実務上から考えました場合に矛盾がございますので、それに対してお手元に差上げてございますガリ版刷りの表がございますが、これによつてちよつと御説明いたしたいと思います。  これは問屋と申しますか、卸商の仕入れ原価が四千円というものでございまして、これは課税価格ではございませんそれがその次の段階で、卸を六分なり七分なりやつておる業者と、小売を六分なり七分なりやつておる業者と、二つの業者に行つた場合の例でございますが、卸を六分なり七分なりやつております者が、この法案によりますと、卸売業者ということになるわけでございます。なお小売がおもな者は、小売業者ということに一方的に片寄るわけでございまして、この二つが全然別個に性格づけられる結果といたしまして、一等下の欄をごらん願えばわかるわけでございますけれども、上の問屋の段階から、卸売を主体とするところ、つまり左側でございますが、左側のルートを通つて参りますと、直摘消費者に渡る場合は六千三百十三円——このマージンの考え方というものは、そのきによつていろいろございますけれども、これは一定のマージンということで全部計算してございます。なおその卸屋の性格として、また中間の小売屋に売りまして、それから消費者の手に渡る場合は、六千五百二十六円という数字が出ております。なお卸屋さんが小売を主体としておる者に販売した場合のことを右側で考えますと、その人が直接消費者に販売いたすという場合には、五千六百五十五円になりまして、その人が卸の面で途中の小売業者にもう一度販売して、それが消費者に渡る場合には五千七百四十二円ということになるわけであります。その差がどこから生ずるかということを申し上げますと、限界価格よりも安いものを小売屋さんに売つた場合は、結局小売屋さんというものは、それによつて販売する場合に税金がかからないということになるわけでございますが、なお上の段階が卸を主体としておる者に販売いたしますと、結局途中で税金がかかるということによつて、約千円に近い価格の差が出るわけでございます。これはどなたが御計算なさつても同じでございまして、こういうことは、結局一部の業者が利益を得、一部の業者が非常に不利益を得るということでございますと同時に、消費者がどれがほんとうかと非常に迷うというようなこともございます。こういう意味から行きまして、せつかく戦後の混乱期が終りまして、配給機構が相当秩序立つた今日、またこの配給機構の混乱を生じますと同時に、ものによりましては、各業者間において抱合せの販売が行われるというようなことも、当然考えられるわけでございます。たとえば四千八百円のものを四千四百円で売れば、四百円安く売るわけでございますけれども、もう一つ二千円のものを二千五百円で売るというような帳合いをいたした場合には、公定価格がないというような意味におきまして、だれもこの不正を指摘することは非常にむずかしい問題と思います。なお毛織物の場合におきましては、御存じのように非常に相場の変動がはげらいという意味におきまして、それくらいの販売価格の差は絶えず起きるわけでありまして、この場合におきましても、先ほど申しました税務官吏の末端と業者との間のトラブルというものは、非常に大きな数のものが起きるというふうに私ども考えております。重ねて申し上げますけれども、毛織物は絹織物と違いまして、紡績の数も、また製織業者の数も非常に少いわけでございます。そういう意味から、毛織物の場合におきましては、上の段階でかけるということにつきましては、それほどむずかしいことではないということになりますから、その点もひとつわれわれの反対意見を十分に御検討いただきたいと思います。  それから次に申し上げたいことは、税金の立てかえの問題でございますけれども、われわれ業界の習慣といたしまして、現金取引ということは非常に少いわけでございます。実際に毛織物の現在取引されておりますサイトと申しますか、われわれのサイトの場合におきましては、九十日、百二十日をもつて通例といたしております。それを税法では六十日の猶予期間しかないということは、たださえ金融的に苦しんでおる業者をより以上に苦しめることになると考えるわけでございまして、小売業者は、ことに洋服商の場合におきましては、税金をすでに払つたものを仕入れて売るわけでございますが、御存じのように、洋服は月賦等によりまして、実際に洋服屋さんの手に代金が回収されるまでには相当の日にちがかかります。この間は、洋服屋さんはこの代金を立てかえておかなければならない。これは最も小さい業者で、極端な表現を申しますれば、ここで零細業者である洋服屋さんに金融的の負担をさせるということは、洋服屋さんの死活問題でございまして、われわれ業界は、御存じのように毛織物全般とすれば、現在倒産者も出ておるというような現状からいいまして、この法案の施行が万一行われる場合は、より以上混乱が生ずるということをかたく信じております。  なお最後に申し上げたいことは、こういうことになりますと、現在は自由経済ということにおきまして、業者の登録がございません。その関係上、実際面におきましては、第三国人でありますとか、ないしはもぐりの業者というものが全国に相当あるわけでございます。毛の生産地は、大体愛知県が多いのは御存じの通りでありますが、中央線を伝わりまして、長野、新潟、山形、秋田、北海道という方面、ないしは中国、九州という方面にもぐりの業者、陰の業者が相当かつぎ屋同然の商売をしておる。もちろん税務署の方々は十分これを捕捉するとはおつしやると考えるのでありますけれども、実際面として、また従来の経験から行つて、捕捉ができないということをわれわれは考えるわけでございます。こういう正統なる業者に対して非常に不利であり、また怪しげなる業者に対してはより以上に有利のアドヴアンテージを与えるというような法案に対しては、私どもは絶対に反対をしたいと考えております。  なお委員長の方からなるべく早くというお話でございますので、最後の結論に入りますけれども、この税金のことにつきましては、私ども繊維税という意味で、昨年の夏からいろいろと伺つておるのでございますが、第一回は織物にかかり、次は原糸にかかり、最後に小売にかけるということになつたと伺つてつたところが、またその強い反対にあいまして、今度は卸段階にかかるということになつたわけであります。どなたかもおつしやつておりましたけれども、実際にどこまでほんとうにこの税金に対してお考えを持つておるかということは、私ども立法府の皆様方に対して非常に不審を感ずるところでございまして、こういう迷つたような税金はぜひともやめていただきまして、十分研究の時間を持つて、またわれわれとしても、より以上時間を与えていただければ、実際のことをよくお話して、すつきりした線においての御相談をあらためていたしたい、こう考えるわけでありまして、今回は絶対この法案はやめていただきたいと考えております。  以上簡単でございますが、毛織業者としての反対を申し上げた次第であります。
  26. 福田繁芳

    ○福田(繁)委員 今のあなたのお言葉の中で、一つ取消してもらわなければならぬことがある。この税金はぐるぐる迷つているということは、われわれも大いに痛感している。そこであなたは立法府のわれわれに対して、何か不信を抱いているとおつしやる……。
  27. 大瀧岳四郎

    ○大瀧公述人 私の申し上げた不審という意味は、信ずるの意味でなく、審の字の不審というつもりで言つたわけです。
  28. 福田繁芳

    ○福田(繁)委員 それならなおさらその通りです。それは政府に対しておつしやることで、たつて政党の諸君に言うならば、こちらの自由党に対して言うことで、野党のわれわれはそれは何もないことですから、その点はつきりしてもらいたいと思います。
  29. 大瀧岳四郎

    ○大瀧公述人 わかりました。それでは私の今の言を取消しまして——どもといたしましては、この税金に対してはぜひともやめていただきたいということだけ申し上げまして、私のお話を終ります。
  30. 千葉三郎

    千葉委員長 次に、日本絹人絹織物商協会の副会長圓城留二郎君にお願いいたします。
  31. 圓城留二郎

    ○圓城公述人 時間がないようでありますから、少し早いところでやります。お聞き取りにくいところはあとで説明いたします。  ただいま国会で審議されておりますしやし繊維品課税に関する法律案に対して、私はまづもつてこれに絶体反対であることを表明いたします。かくのごとき新税は、現政府の偉い方々がお考えになつたと思われないほど不合理なものであり、かつずさんきわまるものであります。しかも中小企業に不当の圧迫を加え、零細なる家内工業を破滅に陥れるものであります。いたずらに商業機構を混乱に陥れ、加うるに徴税の不合理を来すという、一つとしてよいところのない、まつたくの悪税であることを強調いたしまして、これから本法案についての反対意見公述いたします。  まず第一に、この法案の提案理由を拝見いたしますと、「しやし的消費の抑制を図り、国際収支の改善に資する」云々と述べておりますが、この国際収支の改善とは一体どんな見地からの理由によるのか、はなはだ諒解に苦しむものであります。なるほど今日の生糸の輸出はよくないかもしれません。しかしながら、この法案による一反七千五百円を越える部類に属する高級織物の占める原料生糸の量を一体御存じなのでありましようか。一反五千円の着尺も、一本五千円の帯地も、一万円、二万円もする着尺も、帯地も、または五万円もする振そで模様のような呉服類も、みなその占める生糸の量といえば大同小異、一律のものであります。要は加工費によつて高級かいなかが定まるのであります。高級品といい、かりに奢侈品と申しても、それは零細な労銀の集積にほかなりません。しかもこの七千五百円を越える高級呉服は絹織物全体の生産の量から見れば、きわめてわずかなものであります。これをさらに生糸の総生産高からすれば、一割にも達しないごくわずかなものなのであります。かくのごときごくわずかなものに課税し、日本古来の美術、工芸品として海外からその真価を認められ、また海外にも相当需要のあるものを抑制して、これによつて小量の生糸消費が抑制できたとしても、これが生糸の輸出振興に役立つとは何としても合点が参りません。また国際収支の改善に資する等のため、奢侈繊維品として消費税を課する必要があるなれば、何がゆえに海外から輸入されている高級自動車であるとか、数限りないぜいたくな輸入品がありますが、まずもつてこれを消費禁止か、あるいは輸入禁止の措置を講ずるための法律を出さないのでありましようか。なお奢侈と名をつけた法律が出ることは、わが国において初めてのことでありまして、国民のひとしく注目の的となつている法律であるにもかかわらず、繊維のみに課税しようとし、しかも奢侈と申すにはまことにほど遠いものに課税しようとしているのであります。     〔委員長退席、内藤委員長代理着席〕 一例をあげるなれば、七千五百円の着尺地よりも、二千円の帯締め、一千五百円のネクタイ、三千円、四千円のぞうり、五千円、八千円のくつ、その他あらゆる高級品を見のがしておることは不可思議というも愚かなことでありまして、いやしくもかかる法案を立案するのなら、もつと慎重を期すべきであります。これはとりもなおさず政府が面目のみにとらわれて、織物消費税、原糸課税、さらに小売店頭課税、三転、四転と一夜づけの案を出した証拠の一つでないかと存じます。  次に、ただいま提出されております法案の各条文について批判をいたします。第一条に、課税範囲をあげ、ここにおいて、奢侈品の定義を与えているように見えますが、そもそも奢侈品の定義というものは容易に下しがたいものでありまして、価格のいかんによつてただちにこれを奢侈品であると一律に定めることは危険でございます。のみならずこの課税範囲は、第八条の百分の十五という税率を課すと書いてありますが、八十五億という税収を目標としてはじき出した額でありまして、何とも納得しかねる限界価格であると思います。さらに非課税品は、たとえば七千五百円というならば非課税でありますが、七千六百円となればここに税金が一千百数十円かかる、百円どころではなく、一円違つても千何百円違つて八千何百円と同じようなものが出て来るのであります。これを小売の手から一万円以上に売られましたところで、この品物は税がかからないということになりまして、まことに不可解というべき点であります。また第三条において、担税者を消費者としておりますが、これらは現在の業界の実情を知らぬもはなはだしいものでありまして、すなわち現在の状況は、総体的に買う人の市場でありまして、売方よりも買方の方が強いのであります。従つてこの税を卸売商から小売商に転嫁し、さらに消費者に負担させるというようなことは、とうていでき得ないところでありまして、この税はことごとく、卸商または小売商の負担することとなります。従つて奢侈抑制とか消費抑制とかの本来の目的を離れた取引高税、または流通税のごときものであつて、いたずらに卸売業者、小売業者に税をかけるということになるのであります。——ちよつと省きます。  また第四条において、納税義務者は小売商に販売するものだとなつておりますが、これはすなわち卸商をさすものでありますが、わが国の織物の取引は糸のもつれたように複雑きわまるものであります。これは言うまでもなく、卸売段階の複雑性をさすのであつて、御手元に差上げてある絹織物流通径路図によつて御高覧を願えば明らかだと存じますが、その取引状況はまことに入り組んでいるのでありまして、納税義務者の認定に最も困難な段階であります。かかる段階に納税義務者を置こうとするがごときは、政府は無理に困難を出先末端税務官吏に課そうとするものでありまして、まことに奇怪しごくでございます。またこうした中間段階へ課税するということでございますと、小売商が直接染加工商の方へまわし、また生産者の消費者への直結取引を助長する結果となりまして、絹織物全般の取引径路を混乱に陥れるのみであります。  今、一例を申し上げますと、白生地がかりに一反五千円とすれば、これに染加工賃五千円を加えますれば、一反一万円となり、これを小売商に引渡そうとすれば、当然課税対象となりまして、販売価格は、税一割五分を加えますれば、一万一千五百円となるのでありますが、もしこれがデパート等の小売商、あるいは消費者が白生地を購入して染屋に出せば、白生地の五千円は免税でありますので、五千円の加工賃を加えまして、染上り一万円となつても、これは非課税品ということになるのであります。同じ商品が、流通段階の踏み方いかんによつて一つ課税品となり、一つ無税品となる。実に矛盾もはなはだしいというのほかはありません。一方またお召のような先染品でも同様、卸から買えば課税品となるものを、生産者から直接買えばマージンの関係から非課税品となつて、同じ商品が安く入手することができるわけでありまして、これによつて流通秩序を破壊するばかりでなく、合法的脱税品の大量横行を見ることは、火を見るよりも明らかであります。小売店につきましては、先ほど大瀧さんから詳しいお話がありましたから省きます。  さらに第六条、第七条、第十九条において、小売と卸、または縫製加工業との兼業の場合の業態の判定と、さらにこれに対して必要があれば証明書の提示を求めることができ得ると規定してありますが、これを大蔵事務当局について聞くところによりますと、その判定並びに証明書は、その買う人の所在する税務署長が発行し、その判定は一年くらいの間はこれを変更せぬと申しておりますが、それはできないでしよう。かかることは営業の自由を束縛するものでありまして、明らかに憲法違反であるといわねばなりません。  さらにまた、第十条において、販売価格の申告、第十一条において、税務署長が販売価格等の決定をする旨を掲げておりますが、これがなかなかの問題でありまして、すなわち織物の取引は、電気洗濯機とか、あるいはラジオ、テレビジヨンのごとき、再販売維持価格を定めておるもので、つまり販売価格が安定しておるものならよろしいが、それと異なりまして、絹織物のごときは、季節のいかん、原料生糸の相場の動き、あるいは金融事情等々によりまして相場の変動がはげしく、ことに高級織物に至つては、あたかも生鮮食料品のようなものでありまして、たとえば季節的に見れば、三月十日に八千円であつたものが、四月の十日は、時期遅れとなりますれば、半額近くなるのであります。しかもこの種の織物になりますと、委託販売が多く、一度入帳した後、返品が非常に多いのでありまして、これは必ずしもAの店とBの店とを一律には課せられないところでありまして、そこに、納税義務者と税務署との間に問題を起すところでありまして、このあたりに官民離反の大きな原因を形づくるばかりでなく、決して円満な税務行政の運用は期しがたいと信ずるのであります。  さらに第十二条に、納期を定めて多分の余裕をとつてあるように見えますが、現在織物取引の決済は、短かきは六十日、長きは百二十日以上にもなるのが通例でありまして、高級品は概して前に述べたよりさらに委託販売でありますので、代金の決済には四箇月またはそれ以上の日子を要するのであります。その間における税金の立てかえは、今日のごとき金融情勢のもとでは、卸売商にその能力がありません。  なお第十三条において、返品されたものの税額を控除する旨の規定はありますが、これがまたなかなかの問題でありまして、納税義務者と税務署との間にトラブルを起す大きな原因となりまして、官と民との間の離反をますます大きくする結果となります。なおまた大蔵事務当局は、この税の問題については、ことごとく申告によつて課税する方法をとり、決して納税者の迷惑にならぬと明言していたにもかかわらず、第二十三条にはこれとまつたく反して、税務署員が帳簿並びに商品の検査ができ得ると規定しており、これらは自由営業の妨害以外の何ものでもありません。  以上本法案についての批判とあわせて反対理由の概略を申し述べましたが、最後につけ加えて申し上げたいことは、高級絹織物の製造は、古来の伝統に基いて、しぼりとか、刺繍とか、または手書き友仙とかの特殊技能を象徴するもので、そのほとんどが零細な家内労力の集積であり、これが大企業に対する中小企業の生きる道であります。しかもこれ以上に企業合理化の余地のないものであるということであります。なおまたこうした高級織物の染め及び製造の面には、多く身体障害者が従事しておるのでありまして、課税によつて消費を抑制しようとすることは、すなわち生産を押えることとなり、これに加うるに市場価格の変動、脱税品の氾濫による加工賃の圧迫等により、これが生産に従事する人々の明日の生計に大きな影響をもたらす重大問題であり、失業対策に関連する社会問題にまで発展すべき素地を多分にはらんでおるのであります。  さらに現在高級織物の生産、取扱いの分野には第三国人の入り込んでいる面が相当に広く、彼らの取扱いにかかるものはおそらくことごとく脱税されてしまうでありましよう。それは今日すでに京都西陣あたりの生産の面における実例がそれを明らかに示しております。なおこのほか店舗を持たぬ背負、呉服商と申しまして、何も今は登録はありませんが、とにかく呉服屋というのが横行いたしまして、脱税品が市場に横溢するであろうことは想像にかたくありません。こうした結果は、必然的に八十五億の税収を確保するために取引高税が存在した当時と同様、業者への割当による納税を税務署から強制されることは火を見るよりも明らかでありまして、正直者がばかを見る不合理を再び繰返すことは私どものまつたくたえがたいところであります。  以上をもつて私の本法案に対する反対理由の公述を終りますが、本日御出席の賢明なる、かつ現下の社会情勢に精通しておられる諸先生方の特別の御詮議によりまして、何とぞ本法案が国会において否決されますよう、切にお願い申し上げる次第であります。
  32. 内藤友明

    ○内藤委員長代理 次は、日本綿スフ織物商連合会会長、立川豊さんにお願いいたします。
  33. 立川豐

    ○立川公述人 私は綿スフ織物の連合会の役員をいたしておりまするものでございまして、本法に直接の利害関係のない、比較的楽な立場からこの税法に対する意見を簡単に申し上げてみたいと思います。  私は、政府が現在の経済情勢にかんがみまして、国民の租税負担の調整と奢侈的消費の抑制をはかるという目的から、高級な商品に新税をかけようとするその趣旨そのものについては、必ずしも反対をいたすものではございません。しかしあらゆる商品の中で、繊維品ぐらいその生産から加工、さらに配給に至るまでの機構が複雑になつておるものは他に類例がないのでございます。従つてこの新税をどこの段階でかけるかということは、法案の作成に当つて十分の調査と研究を行つて慎重を期せなければならないと思うのでございます。ところがこの繊維税が国会に提出されるまでのいききつを見てみますと、たびたび納税義務者となる対象が変更されておるのであります。この法律案は大蔵省の主税局におきまして、二、三の事務官によりまして、わずか二日間の短期間に立案して成文化されておるのであります。繊維卸業に従事すること四十数年の経験を持つ私でさえ、繊維全体に対する取引法とかいうものにつきましては必ずしも十分の知識を持つておらないのであります。ところがおれは一宮の税務署に五年ばかりいたから、繊維のことなら何でも知つておるというような、きわめて頭のかたくなつた事務官によつて作成せられた法律が、いかに欠陥だらけで、矛盾と無理があるかということを委員の皆様に訴えたいのであります。  内容につきましては前公述人がお述べになりましたので、私は全部省略いたします。ただ私が平素考えておりますのに、価格の安定性のないそういう物品をとらえて、そうして消費税をかけるということが間違つておる。こういうことをぜひお考えを願いたいと思います。しかもその安定性のないものを流通段階の中間でかけるということがいかにむずかしいか、このことをぜひ御了解を願いたいと思います。必ず元でとるか、下でとるか、どこかの締めくくりのところでとらなければ、あたかも河川の流れの清きを求めるのに、源をきめないのと同じことでありまして、卸商の段階でとるということは一番最悪の段階でとるというような印象、また事実そういうような理由があるのであります。  それから次に間接税というものについて私の考えを申しますが、間接税というものはどうしても大衆課税になりがちなものであります。また大衆課税にならなければ間接税というものはとれない。タバコ、酒税を上げたのも、これもみな間接税であります。この間接税をおとりになりまする場合に、大衆課税に移行するというような議論が一部に行われておりますが、私は大衆課税になることをおそれないでおとりなさい、一番楽にとれるところでおとりなさい、こういうことをお勧めしたいのであります。今日繊維の輸入原料は、一ドル三百六十円というやみドルより非常に安い価格で仕入れて、しかもそれを売つておりまするのは、五百円に近い相場でわれわれは買つておるのであります。こういうときに、そういう高収益、大企業の段階で低率な二分か三分の消費税、いわゆる生産税、生産者からとるから生産税と言えましようが、それをおとりになつて、その段階で吸収されてしまつて、大衆課税に行かない。そこだけがまんすればいいわけです。高収益の大企業ががまんすればいい。それが最初の政府の考え方であつたわけです。それがまわりまわつてとんでもないところでとろうとするから、われわれのようないまだ角帯前だれで、国民の中でも思想穏健な、政府の言うことは何でも御無理ごもつともと聞くようなものが旗をかついで国会の前を通らなければならぬ。それがわれわれには耐えられないのです。やりたくないのです。そういう点をお考えになりまして——私は必ずしも趣旨そのものには反対するのではありませんが、この法律というものは、今年は野党の皆様、自由党の皆様の御理解のもとにやや好転はいたしておるように承つておりますが、来年はまた必ず出直して来ると思います。その際におきましても、どうぞ今われわれの申し上げることを十分お考えくださいまして、法案の取扱いにつきましてはもう少し慎重にお願いしたい。  なお国会法によりまする公聴会等をお開きになつてども意見をお聞きくださいましたことは、まことに感謝にたえませんが、なお税制調査会という機構のメンバーを一度委員の皆様がお改め願いたい。どういう人たちがこのメンバーに入つておるか。われわれ中小企業の代表などは一人も入つておりません。従いまして、われわれの意見はいつも全然無視されている。ちようどねこに追い詰められたねずみのように、われわれは窮鼠怒つてねこにかみついたのです。そういう点をお考えくださいまして、税制調査会のメンバーの中には、中小企業者代表も加えるような政治を与党の皆さんにお願いいたしまして、終ることにいたします。
  34. 内藤友明

    ○内藤委員長代理 この際お諮りいたします。公述人に選定いたしました大阪知事の赤間文三君より、都合により出席できないため、代理人として大阪税務長の播磨重男君に意見を述べさせたいとの申出がありました。これに同意するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 内藤友明

    ○内藤委員長代理 御異議はないようでありますから、大阪知事の代理として、税務長の播磨重男君より意見を聴取いたします。播磨重男君。
  36. 播磨重男

    ○播磨公述人 ただいま御紹介にあずかりました大阪税務長の播磨でございます。本日は当委員会におきまして、ただいま御審議中の入場税国税移管問題につきまして公聴会をお開きになり、大阪知事にこの問題について意見を述べよという御通知をいただいたのでありますが、知事が折あしく府会開会中のために、抜き差しができないことになりまして、はなはだ御無礼とは知りながら、私が知事にかわりまして出て参りましたような次第でございます。  入場税問題は私ども目下の重大関心事でありまして、この重大問題について私ども意見をお聞き取りくださる機会を与えられました皆様方の御高配に対しまして、まずもつて厚く御礼を申し上げます。それでははなはだ潜越ではございますが、皆様のお許しを願つて、ただいまから大阪知事の代理として、本問題に対して考えておりまするところを申し述べさせていただきたいと存じまするので、何とぞ意のあるところをお聞き取り賜わり、よろしく格別の御高配を賜わりたいと存じます。  御承知通り現在の府県税制は、事業税と入場税遊興飲食税との三大税源によつて、成り立つておるのであります。そのうち入場税は事業税に次ぐ税額を持つておるのでありまして、府県の自主税源としてきわめて重要な部分を占めておるのであります。たとえて申しますと、昭和二十八年度における大阪府の税収見込み額は、事業税が八十八億円、入場税が二十二億円、遊興飲食税が十三億円、その他の税が五億円となつております。従いましてこの入場税国税に移管せられますことは、府県といたしましては三大税源のうちの一つを失うことでありまして、府県税制体系の根幹に触れる問題でありますのみならず、府県税制のよつて立つ基盤がくつがえされることになると申し上げて、決して過言ではないのでございます。私はまずこのようなことがはたして地方税確立の名に値するものであるかどうか、この点を指摘いたしたいと存ずるのであります。もとより府県税につきましては、これと並行して別に府県民税不動産取得税、タバコ消費税譲与税等の新税を興すことが考えられておりますが、地方団体の財政地方住民の負担に直接関係のある地方税制の根幹というものが、新税を興して穴埋めをするからといつて、さように簡単に抜き差しをしてよいものとは思わないのであります。私は新税を興して府県財政を充実してやるという親心があるのであれば、むしろ従来の税の根幹は根幹として置いて、その上に適当な新税をつけ加えてやるという考え方こそ正しい考え方ではないか、そうすることによつてこそ地方税制も安定をいたしますし、地方財政も安定が保たれるのではないかと思うのであります。にもかかわりませず、府県税の三本足のうちの一本を引抜いて、その穴埋めを新税で継ぎ足してやるからそれでいいじやないかといつたやり方は、これは地方団体に対しても、また地方住民に対しても決して親切なやり方ではない。これでは地方税財政をあずかる私どもといたしましても、安心をして中央の措置に信を置くことができなくなるのではないか、かように考えられるのであります。  そこで申し上げたいことは、そもそも入場税という税種が、はたして国税としてふさわしい税種であるかどうかということであります。私は入場税こそ遊興飲食税とともに、最も地方的な特色を持つた地方税としてふさわしい税種であると存じます。御承知通り税金というものは、国でも地方団体でもどちらでもいいから、ただ納税者から徴収すればいいというものではございません。地方税にふさわしい税は地方団体が徴収してこそ、初めて納税を通じて地方自治の進展を期することができるのであります。沿革的に見ましても、入場税遊興飲食税とともにもともと地方税として発生し、育成されて来たものでありまして、たしか昭和十三年に、戦時中のゆえをもつて一時国税となりましたが、終戦後昭和二十三年に再び地方税に復元されて今日に至つたものであります。このように同じような性質を持ち、同じように久しく地方税として取扱われて来た入場税遊興飲食税とを切り離して、一方は国税に移管し、一方は地方税として存置するということは、これまつたく理不尽きわまる措置であると申し上げるほかはないのでございます。ことに入場税地方税のうちでも最も徴収成績のよろしい税種でございまして、今日ではほとんど一〇〇%に近い徴収成績があがつておるのであります。しかもここまでの成績があげ得ておりますことは、決して偶然ではないのでありまして、府県税務当局者の並々ならぬ努力と、関係業者の理解と協力とがようやくここまで実を結ばしめたものである、私はそう思うのであります。先ほど宮崎県知事が、大府県なんかは、請負課税でほどよくやつておるというようなことを申されましたが、決してそういうことはいたしておりません。大阪も東京も公給票券と申しまして、金券にひとしいものを交付し、日々これを調査した上で徴税に努力をいたしております。決してさような安易な徴税のやり方はいたしておらぬのであります。いずれにいたしましても、かくのごとく地方税として最も成績があがつており、地方財源としても最も有力な入場税をこの際わざわざ国税に移管するということは、何らの理論的根拠も実際上の必要もないのでありまして、私どもといたしましてはどうしても納得がいたしかねるのであります。  次に今回の入場税国税移管は、これを国税に移管することによりまして、新たに譲与税制度が設けられることになつております。この譲与税制度を設けることによつて、地域的な税源偏在の是正、地方団体間の財政の調整をはかるということが言われておるのであります。ところが入場税国税に移管して譲与税が創設されると、一般の府県の財政がこれによつて少しでも救われることになるかといいますと、少しでもこれは救われるであろうなんと考えておる者かございましたならば、これはとんでもない間違いであります。なぜかと申しますと、譲与税といいましても、これは国から府県に交付されるものでございまして、名は譲与税ではありましても、無理に税と名をつけたにすぎないものであります。その実は従来の平衡交付金、今度できる地方交付税と同じようなものでございます。従つて譲与税ができたために、入場税よりも幾分増収になる府県がありましても、これによつて得た増収額は、同じ国から交付される地方交付税の交付額からそのまま全額差引かれることになります。宮崎県ではただいま知事さんが、譲与税になると一億別後の増収が見込まれると言われました。この一億前後の増収平衡交付金からそのまま差引かれるのでございまして、差引はゼロでございます。従いまして幾ら譲与税の配分を受けましても、結局において府県の財政上にはいささかもプラスにはならないものでございます。のみならず、かえつて地方財政に対する中央統制の強化を招来することになるのでございます。  さらにまた譲与税というものは税と違まして、国庫予算を通じて地方団体に譲与される一種の交付金と同じものでありますから、国庫財政と深い因果関係に置かれ、国庫財政の都合によつて、常に左右せられるおそれのあるきわめて不安定な財源であります。すでに揮発油譲与税の方は、御承知通り法案が提出される以前において当初の方針が変更せられまして、昭和二十九年度限りの暫定的なものに改変をされたようであります。この一事をもつてしても、譲与税なるものがいかに不安定な財源であるかは明らかであります。かく見て参りますと、入場税のような伸張性のある重要な税源が国税に移管せられ、それだけ府県の自主税源が失われるということは、これはまことに府県財政上の一大マイナスであります。政府はこれを税源の偏在調整とか、あるいは府県財政の調整であるとかと申しておりますけれども、私どもといたしましては、入場税国税に移管し、これを譲与税の財源に充てるということは、これによつて国庫の負担すべき地方交付税の減額をはかり、府県同士間の財政的犠牲において、国がそのみずからの財政負担をのがれようとするものである。かように解釈をするほかはないのでありまして、かかる措置に対しましては、絶対に反対せざるを得ないのでございます。  次に今日やかましくいわれております地域的税源偏在の是正、地方財政調整の問題について一言申し上げたいと存じます。わが国における地域的経済力の偏差から各地方団体間に相当程度税源の集中度に相違がありますことは、これは事実でございます。そこで従来は財源の不足する地方団体に対しては、国庫からその不足財源を補うという方法によりまして、地方団体間の財政調整が行われて来ておるのでありまして、すなわちこれが従来の平衡交付金であり、今度できる地方交付税であります。ところが入場税国税移管につきましては、今度は財源に余力のある地方団体から、税その他の財源の一部を取上げて、各地方団体の財政政府の考えるわくの中に無理にも押し込めようとする意図が、あまりにも明瞭にうかがえるのであります。  ちよつと考えますと、入場税は東京都や大阪府に偏在しておる。それでこれを国税として徴収して各府県に人口割で公平に譲与してやるというのでありますから、しごくもつとものように受取れるのであります。ところがよく考えてみますと、これで他の府県の財政がどこか助かるところができるのかと申しますと、これは前にも申しましたように、地方交付税で差引勘定をせられますから、結局のところ、どこの府県も得をするところは出て来ないのであります。そういたしますと、これは東京都で約四十五億円、大阪府で約二十億円の減収となりますから、要は東京都や大阪府等のようなところがそれだけ財政損失をこうむるというだけになるわけであります。この点は、自治庁や大蔵省当局はよく承知しております。承知をしていてあえてこれをやろうというのでありますから、これも結局は東京都や大阪府の財政に圧縮を加えて、都や府の財政を、政府の考えるわくの中に無理にも押し込めようとするものであるとしか解釈することができないのであります。私は乏しい知識でありますけれども、いやしくも自治体たる地方団体の税財政に対して、かかる意図、かかる方法による露骨な統制を加えようとしたことは、かつてなかつたと思うのであります。これでは地方自治も、地方財政の自主性もまつたく無視したやり方ではないかと申し上げざるを得ないのであります。しかも東京都や大阪府が自治庁や大蔵省当局の見るがごとく、財政上余力があり、ロスがあるかと申しますと、これはとんでもない、見当違いもはなはだしいものであると申し上げざるを得ません。もし財政に余力があり、ロスがあるのであれば、東京都も大阪府も地方自治団体でありますから、みずから税率を引下げて住民の負担を軽減したいのであります。ところが東京都も大阪府も決して財政が楽でないために、税は標準税率一ぱいを課税し、人一倍これが徴税に努力を払つておるのであります。しかも東京都においてさえ、現在でもなお中小学校の整備に十分手がまわらず、二部教授をしておる実情であります。しかるにこれを富裕団体と称し、財政にロスがあると申しておるのであります。私どもから言わしめますならば、そのようなものをつかまえてどこを富裕団体というのか、どこに財政上のロスがあるのかと申したいのであります。  大阪府の実情を申しますと、本年度最終予算額は二百五十九億円でありまして、うち府税収入が約百二十八億円前後と相なる見込みであります。今度政府提出の地方税法改正法律案原案通り成立いたしますると、どうなるかと申しますと、事業税で十二億八千七百万円の減、入場税が二十四億九千五百万円の減、計三十七億八千二百万円の減に対しまして、府民税で十六億三千六百万円の増、タバコ消費税で八億二千百万円の増、不動産取得税で四億八千九百万円の増、自動車税が二億一千三百万円の増、入場譲与税で八億二百万円の増、揮発油譲与税で六億三千万円の増、計四十五億九千百万円の増、差引譲与税も入れまして八億九百万円の増収となる見込みでございます。ところが一面におきまして、警察の受入れに年間四十四億円、昭和二十九年度においては三十三億一千五百万円の新たな財政需要が必要となるのでありまして、税収において八億九百万円の増収がありましても、なおかつ差引二十五億六百万円の財源不足を生ずることになるのであります。またこのほかに昭和二十九年度におきましては、本年一月のベース・アップによりまして、府職員費及び教職員費において約十五億円の支出増が見込まれておりますので、かれこれ合計いたしまして、財源不足額は実に四十億円に達することになるのであります。この四十億円という数字は、大阪税収入額のほぼ三分の一に相当する金額でありまして、いかに大阪財政に弾力があるといいましても、この穴埋めをすることはまことに容易ならぬことであります。大阪財政には余力がある、ロスがあるといわれておりますけれども、実情はただいま申し上げましたように、それどころの騒ぎではないのであります。昭和二十九年度におきましては、大阪財政思いつた圧縮を行わない限り、健全財政を維持することは困難であります。この実情につきましては、何とぞ皆様方の十分なる御理解と御同情とを賜わりたいと存じます。  いろいろと申しましたが、以上申し述べました諸般の理由によりまして、入場税国税移管には絶対に反対であることを申し上げまして、皆様方の格別なるとりはからいを切にお願い申し上げる次第でございます。
  37. 内藤友明

    ○内藤委員長代理 次は、日本興行組合連合会会長河野義一さんにお願いをいたします。
  38. 河野義一

    ○河野公述人 私は日本興行組合連合会を代表しまして、当委員に私ども意見を述べる機会を与えてくださいましたことを、つつしんでお礼を申し上げます。私のお願いを申し上げるに先だちまして、私どもはこの運動を、昨年の九月から遊興飲食税の人たちと提携いたしまして運動して来ておりましたが、私ども興行を本業といたしておりまして、こういう政治的運動になれておりませんので、運動が下手といいますか、陳情の趣旨を先生方に申し上げるすべを知らなかつたといいますか、最初に遊興飲食税と分離されてしまいまして、遊興飲食税は心配のないようにそのまま地方税になつております。私どもは下手だつたというような関係か、運動がうまく行かなかつたという関係か、取上げられまして、この法案が通りますと、私ども全国業者四千は、その半数くらいは倒産に瀕するのではないかという実情にありますので、地方代表が、特に多い人は四十日なり五十日東京に詰切りで運動といいますか、先生方にお願いをしてまわつておるような始末でありまして、非常に苦しい立場に追い込まれておりますので、大蔵委員会におきまして、私どもの希望のかないますよう御審議願いたいということを、特にお願い申し上げておきます。  こういうことを申し上げていいか悪いかわからないのですが、しろうとが言つたんだということで、もし悪かつたらお取消しのほどをお願いいたします。先ほど宮崎県の知事さんから、われわれ業者の中には、一部政府原案賛成しておる者もあるというようなことが申されまして、そういう先入観が先生方に入つておると、これから申し上げることにつきましてもたいへんだと考えますので、私ども全国業者四千、一人もこの原案賛成しておる者はないということを、ここではつきり申し上げておいてさしつかえないと思います。特に九州代表として、福岡の興行連合会長は約五十日東京にとまり切りで先生方にお願いをしてまわつておるということを申し添えまして、宮崎県の知事から、業者の一部には原案賛成しておる者があるということを申されましたが、そういう者は一人もないということを、御記憶願いたいということを特にお願い申し上げます。  入場税の沿革につきまして、先ほど大阪の方から申されましたが、私どもも私ども立場といたしまして、簡単に申し上げさせていただきたいと思います。入場税は、御承知通り当初観覧税といたしまして、業者に直接課せられた地方税でありました。それが支那事変の勃発によりまして、国費の増大をまかなうために、昭和十四年に税収の半分を地方に還元するという条件をもつて国税に移管され、同時に大衆課税といたしまして、入場者に一割の税を課する戦時税となつたのでありますが、その後税率は逐次引上げられまして、地方に還元する分は逆に下げられまして、昭和二十年、平和回復とともに当然元の観覧税に還元さるべきものと思つておりましたが、単に徴収しやすいということと、きわめて伸張性の多い税源であつたためにかえつて増税されまして、時には十五割以上にもなり、昭和二十三年にようやく地方税に還元されまして、二十五年には十割になり、昨年一月から五割に引下げられたのでありますが、なおこの税金は、ほかの税金に比較してみまして非常に高い税金であります。先ほど、私どもの仲間ではありませんが、藤原さんが世界各国の例を申されましたように、世界において、十割とか五割とか、こんな高率な税金をとつておる、ところはどこにもございません。この日本におきまして、終戦後憲法が改正されまして、文化国家の建設ということが憲法の条文にもうたわれておるのでありますから、少くとも大衆娯楽である私ども税金などは、当然無税にさせていただけるものであると考えておりましたが、あべこべに、むしろ高率の税金を課せられるという傾向になつておるような実情で、私どもといたしましては、その取扱いについて不当を叫ばなけなればならない実情にあるのでございます。このために観客の支払われる税込み入場料は、二十八年十月現在では、全国の小売物価指数においても一一二%以上に当る高額となつております。このような大衆への負担は、勢い観客の漸減となりまして、最も大衆に身近い唯一の文化娯楽を失う結果となつております。またこの高率入場税のために、われわれ業者が受取る税を抜いた入場料は、一般物価指数に対しまして、約七五%にしか当つておらぬ低率であります。この低収入をもつて一般物価指数並に膨脹して来た諸経費を支払つておるのでありますから、言葉をかえて言いますならば、現在の入場税は形式的には大衆課税であるが、実際には業者が自己収入を削つて支払つておるという実情でございます。実例をあげて申しますならば、代表興行場である日劇の昭和十二年ごろの入場料金は、入場税がなくて五十銭でありました。当時の理髪料金はほぼ同額であつたのでありますが、現在では五割の税を含めた同劇場の入場料と理髪料金とが大体同じであります。また入浴料についても、昭和十二年の約二百五十倍であるのに比べて、入場料金は、税込みで大体同率の倍数でありまして、このような収支の償わない苦しい経済を、過去数年にわたつて十五割、十割の課税下に続けて来、その結果生じた滞納税金も、五割減とともに非常に強化徴収されまして、やむなく高利の借入金等によりましてほとんど完納したのでございます。先ほど宮崎県の知事さんが、都会は何か都なり県なりとなれ合つてうまいことをやつておるというようの御口吻がありましたが、むしろうまいことどころではなく、私どもは正直に申し上げまするならば、遊興飲食税の人たちは、票券交付とか、一回飲みに来ても、その都度ごとに飲みに来たという証明がないのでありますし、私どもは票券を交付され、その票券の中に一つ一つ税金がついておるのでありますから、うまいことをやるなんということはどうしてもできないのであります。ほとんどそういう状況で、苦しい財政の中から経営しておつた関係上滞納金があり、その滞納金も整理されまして、借金あるいは他の財産を転売するというようのことによつて完納したのでありますが、その経営は戦前に比べて依然として少しも楽にならない、現状を脱却しない程度のものであります。  高率な入場税を課せられながら、一方われわれがなおこういうことを申し上げたいのは、そういう高率な税金を課せられておるというだけでなく、私どもは特別徴収義務者といたしまして、役所から票券を公給されておりまして、もしその票券に対する入場税を一日半時でも滞納するようの場合がありますれば、票券を交付してくれないのであります。先ほど繊維業者のどなたかから営業の自由ということが叫ばれておりましたが、私どもは営業の自由ということは夢のような気がいたします。どんな税金でも、滞納したらすぐその日から商売をさしとめられてしまう、事実上の強制処分を受けてしまうというような商売は、日本にいろいろの商売がございまするが、おそらく私どもの商売をおいてほかにないと私は信じております。そういうようの意味で、この営業場に対しての現在の票券交付制度というものは、私どもの納得のできない線でございまして、そういう意味から、私どもはこの悪税を撤廃してもらいたいという運動を前から展開しておつたのでありまするが、その過程におきまして、たまたま入場税国税移管にされるという法案が政府案として提出いたされたのであります。政府はこの理由といたしまして、今回地方財源の偏在を是正するというようのことをあげられておりまするが、そういうことがほんとうに政府の考え方であるならば——先ほど申し上げましたように、私どもは九月以来、遊興飲食税とともに、現状のままにしてくれ、地方税のままにしておいてくれという運動をしておるのでありますが、遊興飲食税だけは地方に残され、私ども税金だけは国税に移管される、これは政府の言われる財源の偏在是正という点から考えまするならば、むしろ遊興飲食税の方を国税に持つてつて、われわれの入場税地方税の方に置くことの方が正しいのじやないか。そういう事由は、遊興飲食税の方は全国に三十五万の業者があり、私どもは仮設興行を入れまして僅々約四千館であります。その数の点からいいましても当然そういうことが考えられますし、また私どもの商売は、地方からわざわざ映画を見るために東京へ出て来るとか、芝居を見るために東京へ出て来るとかいうのも多少はありまするが、大部分はその土地々々によりまして、皆さんの娯楽機関として愛用されておるようのものでありまするから、少くとも財源の偏在を是正するというりくつには当らないものだと考えております。そういう建前から持つて行かれるならば、遊興飲食税を当然持つて行き、私ども税金地方に置いていただくということは、私ども税金がとりいい税金だ、私ども業者は非常に正直な業者だ、またほかの税金のように、ごまかしたくともごまかし切れぬ制度になつておる税金であるという点から考えても、そうあるべきだと私は考えております。二十八年度の税収見込額に比して、入場税の第一種、第二種のみを国税移管としながら、総額において九%の増を予算に組んでおる。二十九年度の十一月で百九十二億円、年に換算すれば二百十八億円だけ組んでおりますが、下げると言つておりながら、この税率が半減するだけでなく、むしろ政府の案としましては下げてやつたらいいじやないかというが、実際問題としては、四十円未満の入場料は全国にほとんどないのでございまして、全国興行者の中の約二〇%ぐらいしかないのでございますから、実際の数字から見ますと、増税になつておるということが私は言い得られると考えております。これはまさに入場料の内包する各種の矛盾に政府が目をおおうて、税率の引下げを唱えながら、実際には増税をはかつておるということがいわれるのでありまして、いたずらに徴収を強化して業者を苛斂誅求するということが実情でございまして、これ以上私どもは苛斂誅求されましては、どうしてもやつて行かれないという段階まで来ておるのでございますから、この点も特に御賢察願いたいと思えております。  前に述べましたように、全国興行場は、この高率な悪税を加えられることによりまして、同時に非常に写真料金が高いので、どうにか経営がやつて行かれるというものは、歩合興行をやつておる大都市の一流館くらいのもので、大多数の興行場は歩合興行でなく、フラットでありまして、その経営が困難を来しておるという実情でございまして、そういう意味から、皆さんがごらんに来ていただきましても十分のサービスができないので、非常に衛生設備が悪いとか、いすが悪いとか、小屋もきたないとかいつて御非難を受けますが、実際はそういうことが原因しておりますから、文化国家建設、文化事業というような面でございますから、でき得るだけこの税を安くしていただきまして、その設備を完備させていただくということが非常に私どもが考えているところでございます。大都市に大きな興行場はございますけれども興行場の大部分は中小都市、あるいは農村に散在しておるのでございまして、従つてそういう地方の観客に限られておるのでございまするが、収入は少いのでございます。一方人件費その他の諸経費は、地方の農村でも、地方の都市でも、大都市の大興行場でも大差はないのでございますから、小さいところになればなるほど、地方になればなるほど経営が困難でございます。そういう事情を地方庁でよく認識して考えておつてくれるものでございますから、地方税務当局では、地域的に特殊な事情を勘案して、各館の経営の合理化をはかつていただいて、各館の経営内容をよく知つておられますので、その実態に即応した徴収の仕方をしていただいておるということが現実でございますので、私どもはどうしても地方に置いていただきたい、こういうことなのでございます。地方に置いていただくために、地方の特殊事情に甘んじて、そうして私どもは脱税をしようとか、あるいはいいかげんごまかしをしようとかいう考えではございません。ただ地方に置いていただけば、従来からの関係、従来からの特殊事情をよく知つて地方の実情に即応した税の取り方をしていただける、こういうことであります。こういう実情を無視して、新たに画一的に国に持つて来られまして、そうして徴収方法を強化されまするならば、私どもの文化、娯楽の窓が全然倒産、閉鎖という状況になるということは必然的でございます。入場税が高率になり、なお私ども徴税義務者として重い責任を負わされておりながら、そういう苛酷な取扱いを受けておる。先ほど大阪知事さんが、約一〇〇%の納税率だとおつしやられておりましたが、ほんとうにその通りで、地方に置いていただいて、地方税務当局と協力しておるということは、私どもの納める税金がすぐ私どもの身近の学校になり、橋になり、衛生施設になり、警察の施設になるということでございまして、私どもは私どものそういう大きな犠牲でありますが、自分の村、自分の国、自分の県をかわいがりたいというために、少しでも役立てばということで、私どもその大きな犠牲を甘受しておるのでございますから、どうかその点も十分御理解していただきたいと考えております。(「もうわかつた、わかつた」と呼び、その他発言する者あり)もう少しですから……。これは私が書いたものでなくて、地方の皆さんの意見一つ一つ持ち込まれておるのですから、皆様の前にごひろうして帰らないと、帰つて、お前何のために行つたのとつるし上げを食うとつらいので、どうぞやらせていただきます。  そんなような意味で、税源の偏在を是正するということが政府の名目ですが、あくまでもその必要があつて移管するならば、同一税金である、しかも納税率のきわめて悪い、しかし団結力は非常に強くて、政治運動は非常に上手であられる遊興飲食税をなぜ地方に存置して置くかということを私は強調したいのであります。私どもは運動が下手だからということになると、私ども国会に対する御信用、あるいは政治というものに対する認識を非常に裏切られるような気がいたします。結局私どもが目的を達するには、正しい主張ではだめなんで、何か力をもつて、しかもその力は正義の力ではなくて、暴力の力をもつて国会に押しかけなければだめなんだということを私どもは認識せざるを得ないのであります。はなはだなまいきなことを言つてあとでたいへんしかられるかもしれませんが……。     〔「まけておく」と呼び、その他発言する者あり〕
  39. 内藤友明

    ○内藤委員長代理 静粛に願います。私語を禁じます。
  40. 河野義一

    ○河野公述人 まあちよつとまけていただいて、私どうもそのような気がいたしますので、どうぞそういう意味で……。  今まで九月以降、実はここで先生方にお目にかかると、お前何しに来たんだと言われるが、お伺いしまして、先生お願いいたしますと言つて、頼みに行くこと自体もつらいつらい思いでお百度も踏んでいるのですが、どうも陳情下手といいますか、言葉下手というのですか、いつでも悪いところへ追い詰められております。実は今朝新聞を見ましても、これもしろうとですからわかりませんが、繊維税はやらないということは新聞に出ておりましたが、入場税のことが書いてございませんから、入場税はまただめかと実は心配して、きん玉が上つたり下つたりしているような実情でありますから、何とかこの大蔵委員会にお願いしまして私どもの意のあるところをくんでいただきまして、全国四千の業者を助けていただきたいと思いまして、くどいようですが、いろいろとお願いするわけでございます。どうぞその点よろしくおくみとりのほどを、私どもの希望のかないまするよう、国税に移管されずに、現状のままに置いていただきたいということをくれぐれもお願いいたしまして、全国興行組合を代表いたしまして、先生方にお願いいたす次第でございます。
  41. 内藤友明

    ○内藤委員長代理 以上で公述は終りました。これから各公述者の皆さんに対しまして、質疑に入りたいと思います。
  42. 福田繁芳

    ○福田(繁)委員 時間がありませんから、簡単に一、二点伺いたいと思います。繊維税に関しては、いずれ来年あたりの国会でまた御意見を伺うことにして、大体今日の状態では、質問する必要がないと思いますから省略いたしまして、入場税に対して、ただいまの河野義一君に伺いたいと思います。  先ほどこの入場税の問題に対して田中知事は、今度のこの政府原案に対して反対するのは興行組合全体でない、一部の人間政府原案賛成する者があるのだということを言われた。あなたは、絶対にさようじやない、全部の興行組合の者が一丸となつてこれに反対しているのだと言われたのだが、それは違いないかということを再確認いたしたいと思います。
  43. 河野義一

    ○河野公述人 私も興行組合を代表いたしまして、全国興行組合の会長といたしまして、こういう権威のある席に呼ばれてお願い申して上げておるわけでございますから、決してふまじめな、責任の持てないことは申し上げないつもりでございます。私どもがこの運動を始めました当初におきましても、これはどこのデマかは知りませんが、私ども業者の一部が国税移管に賛成しているとか、あるいは東宝、松竹の代表者賛成しているとかいうようなデマが飛んでおりましたので、実はその点を非常に心配いたしまして、つい十日ばかり前でしたか、参議院の自由党の平井先生のところへ行きましても、そういう御質問を受けまして、とんでもない話だというお話でありますから、私はすぐ五社の社長に興行組合に寄つていただきまして、こういうことを平井さんが言われている。私ども業者全部は打つて一丸となつてこの運動に反対しているのに、こういう声を放たれることは非常に迷惑だからということを申し上げました。ところが、絶対にそういうことはないのだ。ただ大勢いる社員のことだから、多少そういう希望的意見を言うような者があつたかもしれないけれども、それはいろいろの見方があろうが、会社自体として、興行界全体としてそういうことは毛頭ない。それで興行組合の運動の趣旨を列記して、それに同意の署名捺印をして、もよりもよりに出したらどうだということを松竹の城戸副社長が提案いたしまして、その通り書きまして、数日前にお届けしているような始末でございますから、田中さんの言われましたように、私ども業者の一部に賛成の声があるということは、絶対ないということを重ねて申し上げます。
  44. 福田繁芳

    ○福田(繁)委員 私はもう二、三点御質問したいと思いますが、なるべく簡単に要点だけ答えてもらいたいと思います。  要するに全国の二府四十三県の業者映画の製作者、これは一丸になつて政府原案反対しているということが本員はわかつたわけなんだ。そこでなお法案審議の参考資料に伺いたいのでありますが、いわゆるニュース映画館というものを除いて、それ以外の映画館全国で幾らあるか。これが一つ。その数の中で、外国映画日本映画を上映している数、これがわかれば伺いたい。
  45. 河野義一

    ○河野公述人 はつきりした数は今手元に持つておりませんが、ニュース映画式のものが全国の中で五分もないと思います。それから邦画、洋画の別は、大体邦画が六割、洋画が四割くらいだと心得ております。
  46. 福田繁芳

    ○福田(繁)委員 それではもう一点だけで、あとは淺香君に譲りましよう。実は私は映画入場税というものは、いわゆる文化国家でやつて行く以上は、文化財というものに対して課税の対象にしたらいかぬというのが実は私の持論なんであります。そうした問題に対して、幸いに興行組合の諸君が来られておるんだから、きようはその問題について数点伺つてそういう見解に立つて税制問題に検討を加えてみよう、こう思つたが、時間がないから省略いたしますが、ただ一点伺いたいのは、今のような全映画館の四割が外国映画であつて、残る六割は日本映画であるというような場合ならば、大よそここ数年たたない時分に、日本映画館というものはことごとく洋画になつてしまうおそれがありはしないか、こう思うのです。そんなことがあつては困るので、日本人の文化というものは日本人によつて基盤を強固にして、そして育成強化しなければならない。健全なる日本映画の普及発達ということをわれわれは祈念しておつたわけであります。そこで数年前に健全なる日本映画を作製するにはどうしたらよかろうかというので、映画の倫理規定というものをつくつて、いわゆる日本の健全なる映画をつくらすようなことを示唆したことがあるのですが、今なお日本のいわゆる国産映画についての倫理規定というものがあるかないかということを、最後に伺つておきたいと思います。
  47. 河野義一

    ○河野公述人 社団法人映産審というものができておりまして、どの程度までそういう先生のおつしやられるような内容を実施しているかということはわかりませんが、社団法人映産審というものがあります。それによつて大体映画の向上発展というようなことを考えて、研究されつつあるという状況でございます。
  48. 福田繁芳

    ○福田(繁)委員 わかりました。それでもう一点、今度は最後になるわけだが、さすればちよつとむずかしいようなきらいがありますから、苦言を呈しておきますが、われわれは何とかして入場税というものは絶対政府原案反対してこそ、ほんとうに映画を通じてラジオというのは耳だけで聞いて文化水準を高める。新聞は目で見て文化水準を高める。映画は目で見ながら耳で聞きながら文化水準を高めるか、さもなければ悪くなるかという大きな役割を演ずる。そこででき得る限り日本映画というものは健全なる発達をしてもらいたい。健全なる発達をするためには、入場料を安くしてもらいたい。入場料を安くするためには、税関係はできるならば撤廃して、一人でもよけいに国民に正しいところの日本映画を見せるというように考えて行かなければならぬと思つておりますが、そういつた意味合いで、入場税問題に対して私自身は、ことに改進党は、野党の諸君と一丸となつて、与党の諸君の同調を求めて、正しく、これは業者のみならず、全国知事会議の要望にも沿う意味において善処いたしたいと思うのだが、ねがわくは製作者と興行者が一丸となつているというんだから、製作者と興行者は表裏一体をなして、より以上よりよいところの映画をつくつて、そうして一人でもよけいに負担を安くして国民に見せてやる。そうしてねがわくは、できるだけ日本映画の質をよくして、そしてつまらぬところの外国映画日本映画が侵蝕されないように、言いかえれば、今度は興行者と製作者の合作したところの再反省といいますか、それこそ業界の倫理化規定というか、そういう自粛を大いにやつてもらわぬことには、われわれがいかに税を安くしても、映画の本然の務めということが依然とり残されて、そうしていつまでたつても馬車に乗り遅れるきらいがあるから、その点を興行者は興行者らしく多分に反省されんことを、よい機会ですから、私は失礼ながら苦言を呈しておきたいと思う。淺香君に譲ります。
  49. 淺香忠雄

    ○淺香委員 入場税について播磨重男公述人に伺いますが、いろいろ反対についての意見を十分伺いましたが、税源偏在の是正について、ただ反対々々と言うだけではどうも通らないと思うのであります。従つてこれを反対するはいいが、この税源の問題について、関係の府県側に何か腹案がもしあるようであれば、一応参考のためにお知らせをいただきたい。
  50. 播磨重男

    ○播磨公述人 私は税源の偏在是正ということについては、先ほども申し上げましたように、この考え方自体に地方財政の自主性の確保という点と相矛盾するものがございます。その方法いかんでは地方財政に対する国家統制の弊を招来し、地方財政全体を殺してしまうようなことにもなり得るのじやないか、かように考えます。従いまして、私としては地方税制はあくまでも確立をして行くという方向をとりながら、それでもなおかつ財源の足らない府県に対しては、地方交付税の交付等によつて国から援助をして行くという方法が正しいのではないか。政府の一方的な計算によつて、個々の地方団体に対して、お前のところは税金が余つているから、その税金の一部を取上げるんだというような方法は正しい方法ではないというふうに思います。しかしどうしても税源の偏在是正が必要であるというのでありますれば、地方税らしい地方税であり、既存の税種である入場税国税に取上げて、地方税制の一角をくずしてまでこれをやるという行き過ぎた方法をとらなくても、たとえば今度考えられております府県の新税の一部を操作することによりまして、十分調整的な機能を果させることも考えられたはずではないか。そうすることによりまして、そこに何らか弱小府県にも迷惑をおかけせず、国庫の持出しもなくて、政府の考えている目的を達することができたはずなのではないか、こういうように考えております。
  51. 淺香忠雄

    ○淺香委員 もう一点、東京とか大阪は、いわゆる富裕県とよくいわれているのですが、こういつた府県から上つて来ますところの入場税等税金を、東京とか大阪のようなところだけに使うということに対して、不合理ではないかという意見をしばしば聞くのでありますが、この点について、あなたのお考えをいま一度言つていただきたい。
  52. 播磨重男

    ○播磨公述人 むろん東京都や大阪府の都税や府税は、全部そこで使わしてもらつ、おります。ところがこれは東京都や大阪府から上る税金の総額から見ますと、ほんの一部にしかすぎないのであります。大阪府の府税収入は、本年度は百二十八億円前後でございますが、大阪府民の負担する国税といいますものは、九百億円から一千億円にも達しておるのではないかと思われます。そのほとんど大部分は東京都や大阪府のためには使われておりません。ことに申し上げたいことは、国の予算の中にも、地方交付税とか、あるいは公共事業の補助金とか、あるいは災害復旧の補助金とか、地方団体に対する国の財政援助費が、ざつと見積りまして二千五百億円以上あるのではかと思います。その一割の二百五十億円は、これは大阪府民の負担と見て間違いがないのじやないか。もしかりにこれらの地方団体に対する国からの援助がいらないものといたしまして、これを大阪府税としていただけるということになりますと、二百五十億円が新たに大阪府税として確保できる計算になるわけでございます。この二百五十億円という額は、現在の大阪税収入百二十八億円の実に二倍に相当する金額であります。これだけの金額は国庫予算を通じまして、すなわち大阪や東京から上る税金現実に一般の府県や市町村の財政援助に使われておるということが言えるのではないかと思います。
  53. 淺香忠雄

    ○淺香委員 同じく入場税の問題について、興業組合連合会長さんにひとつ伺いたいのです。いろいろ反対の理由をたくさん伺いましたが、こういうことを私どもよく聞くのです。というのは、税のとり方が、いわゆる入場税国税に移管されました場合に、税務署の方が当然これにタッチする。そうしますと、今地方税においてした場合には、比較的理解があるといいますか、緩慢な取扱いが受けられるが、一たび国税に移管された場合に、税務署の方から、入場税ばかりでなく所得税その他の問題にも立ち入つて、非常に圧迫が加えられるのではないか、そういう点に業者が非常な恐怖を感じておられるということを耳にするのですが、そういつた点についてはいかがですか。
  54. 河野義一

    ○河野公述人 先生がおつしやる通りに、そういう点も多分に心配しております。ただ先ほど申し上げましたように、地方の実情によりまして、一率一体の税率をかけられることはむろん当然でありますけれども地方の実情に即応しまして、地方の税務吏員は、いろいろの事情を勘案しましてめんどうを見ていただける、興業者の成り立うような方向に協力といいますか、めんどうを見て徴税していただけるということは実情でございますし、それが今度国税になりまして、新たに地方の実情を知らない税務吏員が来まして、しやくし定規にびしびしといいますか、重箱のすみをようじでつつ突くようなことをやられたのでは、今でも税率が高くて困つてやり切れないのに、より以上どうも困つて来るということでございます。
  55. 春日一幸

    ○春日委員 全国関係団体の代表者並びに学識経験者として本日公述を願つた諸君の御意見が、すべてこれわが社会党が従来強調して参たことをそのまま裏づけされたので、わが党の主張がいかに正しいものであるかということに、私は一層の自信を深めたわけであります。そこでただいま淺香君の質問に関連をいたしまして、府県代表大阪税務長並びに興行組合の連合会長に強く申し述べたいことは、今回この入場税が国管されるにあたり、諸君の最も強い反対の根拠は、国税に移管されれば、税率通りとにかく辛辣な徴税が行われるであろう。さすれば困難な経営がさらに困難の度を加えるということでありますが、その言葉の裏を返せば、現在の五割の税金を納めればとても経営が成り立たないのだ。そこで現在は府県自治体と結託のもとに、適当な一つの自家調節を行つて、辛うじて経営を行つておるということなのであります。このことはひとり映画館の経営のみならず、料飲店においてもこれは今は公然の秘密になつておる事柄であつて、このことはむしろその責任があなた方にあるというよりも、法律にあると私は思う。そこでわれわれは、この問題の抜本塞源的な解決としては、とりあえず、われわれ野党協力の力で、この政府の暴逆な政策を阻止することに成功することではあろうが、しかもなお諸君の経営そのものは多くの疑惑を残すことになろうと思うのであります。そこで次に諸君に申し述べたいことは、今後やはり継続運動として、納めれば納められる税率、すなわちそれは一割であるか、五分であるか、あるいは二割であるかもしれませんが、納められない税率をそのまま現在の法律で認めておいて、そうしてそれに手かげんを加えて、とにもかくにも納め得る額だけの徴収で満足しておるということは、これは法治国のもとにおいては許されない。ことに地方自治団体の行財政の権威をも失墜する事柄であろうと思いますので、この問題が済みましたならば、やはり継続的な問題として、五割が負担に耐えかねる問題であるならば、その減率運動を強力に展開されて、そうしてその法律が実施できるように、またその法律が遵守できるように、ひとつ業者の協力が継続的に行われることを強く希望いたしまして、わが党といたしましては、諸君の主張がちようどわが党の従来の主張を裏づけられたものであるということをもつて、深い敬意を表して質問を終ります。
  56. 加藤清二

    加藤(清)委員 時間も差迫つておるようでございますから、ごく簡単に二問だけお尋ねしたいと思います。  繊維税の問題につきましては、すでに各公述人方々が専門的知識を持つて委曲を尽しておられますから、あえて私質問をする必要はございませんけれども、ただこの税金がかかつてつた当時に、白ということがはつきりわかつておるにもかかわりませず、税務官吏や、あるいはあのときの経済調査庁のおかげで、四十日間もほうり込まれました経験を持つております私は、このことが再び繰返されることによつて、非常に業界に対する悪影響のみならず、日本経済に及ぼす影響の甚大さを考えまして、まずお尋ねしたいことは、ただいま繊維税が問屋街にかかるということになつておるようでありますが、はたして担税能力があるかないかという点を、今日の糸へんの商社、問屋街の経済状況からかんがみて推定を下してみたいと思います。それで問いの一点は、問屋さんの決済の現状と、それからすでに今春になつて参りましたが、今年の冬物の残りが一体どのくらいあるだろうか、この残品のおかげで困る、この困り方をどう処理して行かれようとしているのか、この点についてお尋ねしたいと思います。これは、決済の方法につきましては、絹も毛も一緒でございますが、冬物の残品については、特に毛の方の関係にお尋ねしたいと思います。
  57. 大瀧岳四郎

    ○大瀧公述人 それではただいま御質問の二点に関しまして御答弁申し上げます。取引の担税かということに関しまして、サイトの問題のことが第一の御質問と考えますが、現在問屋から小売屋に行く場合、また問屋から卸商を通じて小売屋に行く場合ということを考えますと、戦前の日本経済が非常に強く、各業者に金融力のありました時分は、一応六十日ということがいわれておつたのでございますが、現在各業者の力が非常に弱いという現状では、九十日、三箇月ないし百二十日、四箇月の期間をもつて手形その他によつて決済されるのが普通であります。  第二の御質問でございますが、昨年度の冬物の残がどれくらいあるかという御質問でございますが、ことに毛織物に関しましては、シーズンが判然としておるという関係で、毛織物の立場から御返事を申し上げますと、御存じのように昨年は暖冬異変ということがございまして、毛織物の消化が非常に悪かつた。これは暖冬異変に加えまして、購売力が非常に低下しておつたということが拍車をかけたと考えるのでありますが、冬物、オーバー生地並びにセビロ地を平均いたしますと、四〇%ぐらい残つておるというふうに考えております。
  58. 圓城留二郎

    ○圓城公述人 絹の方におきましては、高級品のごときものは、毛以上に決済が遅れるようであります。御承知かも存じませんが、高級品は委託するものが相当あるのであります。三箇月たつてからその品物が返つて参ります。そうすると、もう何ぼ税金を猶予していただいても、とうてい耐えられるものではありません。はなはだしいものは四箇月、五箇月となるものも、高級品でございますからあるのでございます。もつともこの法律に、返還したものには免税をしてやる、税を元にもどしてやるというお話がありますが、税を元にもどしてもらつたぐらいの問題ではありません。先ほど申しました通り、もう時期をはずれますれば、半額以下になるのであります。魚市場と同じことでございます。午前と午後と全然違うのでございます。この辺を御了承願つて、この税を負担することは、問屋の現在の能力から行きまたら、とうてい耐えられないものでございます。御了承願います。
  59. 加藤清二

    加藤(清)委員 わかりました。それではもうあと一点。結局これ以上ここで税をかければ、今でさえも倒産商社が続出しているというときでありますから、一層それに拍車を加える効果はあるけれども、中小企業を助ける効果はない、こう解釈してよろしゆうございますね。  それでは第二点につきまして、この課税がはたして輸出振興に効果があるかないかという点についてお尋ねしたいと存じまするが、去年、おととしと比べますると、去年は千五百万ドル、おととしが大体二百万ドルばかりの毛製品の輸出が上つたと記憶しておりまするが、その輸出品ははたしてどういう品質のものであつたかと見ますると、これがほとんど高級品であつた。ところで高級品にこの税がかかるということになれば、機屋の方では、当然売れないという見込みから生産を手控えなければならない、従つて絹機でも今操短がすでに行われている、毛の方も値切れその他で躊躇している、こういう状況でございまするが、この点一としてはどのように考えていら体業界つしやいまするものか、これが一点。次にもう一つ隣合せの問題でございまするが、奢侈品々々々といつて、何か犯罪人みたいに憎たらしく考えていらつしやるようでございまするが、同じ絹の高級品にしても、これは吉右衛門が着て踊れば、決してぜいたく品ではなくして、完全な投資である。ところが綿であつたとしても、新しい綿をぞうきんに使えば、これはぜいたく品と言わざるを得ないのです。そういう観点から行きまして、今度の奢侈品という範疇でございますが、この奢侈品のカテゴリーが、どうも法案立案者の方にはよくわかつていないようでございまするけれども、およそ毛だとか絹というものは、面積で値段をきめていらつしやるようだが、ほんとうは目方で行くのが正しいのではないか、かように考えております。その面積で行つたおかげで、先ほど話のありましたように、夏物のトロピカルやパンピーチなどにはかからないで、そうして冬物の反毛糸でつくつたオーバー布地にかかる。こういう結果を来しているようでありますが、この点につきまして絹、毛両者に、一体輸出振興に効果ありやなしや、奢侈品というものは面積できめていいものか悪いものか、この点をお尋ねするわけでございます。
  60. 大瀧岳四郎

    ○大瀧公述人 まず毛織物についてお答えいたします。毛織物の輸出は、先ほど加藤先生から御質問のありましたような数字と存じますが、元来日本の毛織物の輸出というものは、戦前におきましてはいわゆる円ブロック、満韓支という方面に相当よけい出ておつたわけでございます。これは相手方の民度ということから行きまして、相当低品位のものを主体としておつたわけでございます。ところが現在の日本状態から行きましては、皆様御存じのように、満韓支という市場を一応失つておるわけでありまして、大体昔よりは民度のより以上高いところへ輸出しておるということがやむを得ない事情と考えております。その関係上、毛織物の輸出に使われますものは、相当高品位のものを輸出せざるを得ないという現状であります。しかるに今度のこの新しい法案によりまして、四千五百円という価格によつての線を引いて奢侈品をきめますと、おそらく内地向けの製品に対しましては、生産者はその限界に達しないような品物をつくらざるを得ない。これは人情であり、経済の原則であると考えるのでありますが、そういたした場合には、結局工場生産品であり、美術工芸品でない、一、二の名人上手があつただけでは決してできない毛織物ということから行きまして、高品位のものをつくつて、輸出振興をして、国際収支を改善しなければならないという点には相反するものと考えております。  それからもう一つは品質のことでありますが、先ほど私申し上げたと存じますが、品質によつて奢侈品をきめるということは、私どもうなずける点もあると存じますが、価格一本でそういうことをやりますことについては、非常に疑義があると考えております。たとえば卑近な例をとりまして、一万五千円の洋服を二箇年着る、二万五千円の洋服を五箇年着るということが、どちらが実用的であつて真の経済であるか。国民の負担を軽くするかということを考えていただければ、この答えには当てはまると考えるのでございまして、一時に高い金を出すから、そのこと自身が奢侈であるという考え方には、訂正を要する面があるのではないかと考えております。そういう意味で、先ほど申し上げましたように、毛織物は必ず必要である。たとえば狭い日本でございますから、夏と冬はこれは必ず着なければならない日本で、絶対必要品の毛織物が、冬には奢侈品になり、夏には奢侈品にならないということは、この法案に対しての大きな矛盾と私どもは考えております。
  61. 圓城留二郎

    ○圓城公述人 お尋ねの輸出の点でございますが、これは戦前、戦後ともアメリカの関税が非常に高いものでございますから、大体はいわゆる奢侈品とか工芸品とか申すものは、皆さん御承知であろうと存じますが、友禅であるとか、振そでのごときものをよくあちらへ嗜好として持つて帰られるのでありますが、先ほど申し上げました通りアメリカの関税の関係であろうと思いますが、たいてい中古品のごとくにしてお持ち帰りになつたり、また中古品を相当持つてお帰りになつたり、また現在でも飛行機に一枚、二枚というものを積んでお持ち帰りになるのは相当の量だと私は想像いたします。現に小売店や百貨店に対して、私ども神戸とか、あつちこつちの話をいろいろ聞きますが、外人が日本のものをくれぐれと言うて、日本のものが相当売れるということで、日本の方よりは近ごろこの着物というものについて非常に趣味を持つておられます。御承知でありましようが、かの湯川秀樹先生の奥さんがあちらへ行かれても、もう絶対に日本着物でなければ夜会にも何にも出られぬとまで言われたことを、私どもは直接聞いております。その他御夫人連れであちらへいらつしやつた方の話では、この着物を向うでは非常に賞讃するそうでございます。従つてそれが一つの趣味となるのでしようか、言葉は少し悪いのですが、最近隠れて相当行つておるのであります。現在小売店や百貨店では、夏でも冬でも同じものが売れる。これは表面上数字には出ないと思いますが、相当出ておると存じます。これは今後年々ふえて行くように考えております。  なおこれに対して先ほどちよつと申し落したのですが、これがために戦争当時においてすら、この技術をなくしてはいかぬからというので、政府は法律までつくつてこの技術の保存をはかつてくれた。日本人はそれ何を短こうせい、国民服だと言つてつたときにもかかわらず、振そでであるとか友禅であるとかいうような高級品は、政府みずから保護しておつたのであります。また保護をしなかつたら今日回復いたしません。この保存をしてもらつたおかげで、この技術者が残つておるのであります。またこの技術者というものは、先ほど申し上げました通り、たいてい身体障害者が多うございますので、親が、子供が生れて少し不具者だとかいうような者を、そういう専門の学校へやつて、そうして今日これをつくつておるのでありますから、これが抑制だの、これを消費してならぬだの、税金などということは、はなはだもつて当を得ないことだと私は考えるのであります。ちよつと少しつけ加えました。  なお奢侈品ということについてのお尋ねでありますが、私ども奢侈というものがどうしても合点が行かぬのであります。たとえば品質のいいものを選びます。その精練をよくします。あるいは撚糸をよくします。あるいは染色のはげない高級の染料を使います。なおデザイン等について、意匠の上でもずつと進歩したものを使う。あらゆる点を考えてやりますならば、相当価格が高くなるのはあたりまえなんでございますが、先ほど申しました通り政府が糸を輸出したい、国際収支を合したいとおつしやるならば、糸の量には何も関係がないのでございますから、この辺をよくひとつ御了承願いたいと存ずるのであります。また面積によつてというお話がありましたが、これはおそらく毛織の方だと思いますので、よく調べてみます。
  62. 内藤友明

    ○内藤委員長代理 以上をもちまして、公述人方々からの御意見を全部拝聴いたした次第でありますが、この際委員長から一言ごあいさつを申し上げます。  公述人方々には御多用中にもかかわりませず、わざわざ御出席の上、両法案について忌憚のない御意見を開陳せられ、本委員会におきましての法案審査の上に多大の参考になりましたことを、委員一同にかわりまして厚くお礼を申し上げます。  本日はこれをもつて散会いまします。     午後一時三十七分散会