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1954-09-09 第19回国会 衆議院 大蔵委員会 第70号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年九月九日(木曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 千葉 三郎君    理事 有田 二郎君 理事 黒金 泰美君    理事 坊  秀男君 理事 山本 勝市君    理事 内藤 友明君 理事 久保田鶴松君    理事 井上 良二君       大上  司君    大平 正芳君       島村 一郎君    苫米地英俊君       福田 赳夫君    三和 精一君       藤枝 泉介君    並木 芳雄君       福田 繁芳君    小川 豊明君       佐々木更三君    柴田 義男君       春日 一幸君    平岡忠次郎君  出席国務大臣        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君  委員外出席者         大蔵事務官         (銀行局長)  河野 通一君         専  門  員 椎木 文也君         専  門  員 黒田 久太君     ————————————— 八月十二日  委員本名武辞任につき、その補欠として加藤  高藏君が議長指名委員選任された。 同日  委員加藤高藏辞任につき、その補欠として本  名武君が議長指名委員選任された。 同月十七日  委員春日一幸君、平岡忠次郎君、井上良二君、  小川豊明君及び三和精一辞任につき、その補  欠として河野密君、西村榮一君、中村高一君、  八百板正君及び天野公義君が議長指名委員  に選任された。 同日  委員天野公義辞任につき、その補欠として三  和精一君が議長指名委員選任された。 同月十八日  委員河野密君、中村高一君及び西村榮一辞任  につき、その補欠として春日一幸君、井上良二  君及び平岡忠次郎君が議長指名委員選任  された。 九月四日  委員宮原幸三郎辞任につき、その補欠として  篠田弘作君が議長指名委員選任された。 同日  委員篠田弘作辞任につき、その補欠として宮  原幸三郎君が議長指名委員選任された。 同月六日  委員宮原幸三郎辞任につき、その補欠として  篠田弘作君が議長指名委員選任された。 同月九日  委員篠田弘作辞任につき、その補欠として宮  原幸三郎君が議長指名委員選任された。 同日  委員小西寅松辞任につき、その補欠として宇  都宮徳馬君が議長指名委員選任された。 同日  委員八百板正辞任につき、その補欠として小  川豊明君が議長指名委員選任された。 同日  委員本名武辞任につき、その補欠として並木  芳雄君が議長指名委員選任された。 同日  井上良二君が理事補欠当選した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  税制に関する件  金融に関する件  国有財産管理状況に関する件     —————————————
  2. 千葉三郎

    千葉委員長 これより会議を開きます。  議事に入る前に、まず理事補欠選任についてお諮りいたします。去る八月十七日、理事でありました井上良二君が一旦委員辞任いたしたことがありますので、理事一名が欠員となつております。この際理事補欠選任を行いたいと存じますが、先例によりまして、選挙の手続を省略し、委員長より指名いたすことに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 千葉三郎

    千葉委員長 御異議ないようでありますから、委員長におきましては井上良二君を再び理事指名いたします。     —————————————
  4. 千葉三郎

    千葉委員長 ただいまより税制に関する件、金融に関する件、国有財産管理状況に関する件の三件を一括議題として審議を進めます。質疑通告がありますので、順次これを許します。柴田君。
  5. 柴田義男

    柴田委員 河野銀行局長にお尋ねいたしますが、われわれは地方銀行の……。   〔私語する者多し〕
  6. 千葉三郎

    千葉委員長 静粛に願います。
  7. 柴田義男

    柴田委員 資料をいただいておるのでありますが、この資料によりますと、七月末現在で全国銀行全体を見ますと、非常なオーバーローンなつておるようでありますが、この資料によりますと、全国銀行八十七行で二兆六千八百二十九億四千六百万の預金に対しまして、二兆七千二百八十六万四千円という貸出しが行われておる、こういう状態でありますが、これはこの債券発行銀行である三行が莫大なオーバーローンのような形に見受られるので、こういう債券発行銀行オーバーローンというような状態から推しますると、日本経済界全体から見ましても、さらにオーバーローン解消というようなことは浸透しておらぬように見受けられるのですが、これは実際どういう経済状態の変化か、あるいは政府とつておるオーバーローン解消政策というものが浸透しない結果であるのか、その根本的な御方針と申しましようか、その方針が通らぬと申しましようか、その点に関しましてわれわれの納得の行けるような御答弁を願いたいと思います。
  8. 河野通一

    河野説明員 ちよつと今御指摘数字は、私はつきり記憶いたしておりませんが、最近の状況におきましても、全国銀行預金に対する貸出しの数字は一〇〇%を越えております。こういう状態が、金融の正常な状態に対して必ずしもそのままでいいということでないことは、これは申すまでもないことであります。私どもはなるべくすみやかなる機会に、正常なる預金貸出しの割合というものにできるだけ早く持つて参りたいということを考えております。しかしながらこの問題は、原因はどこにあるかと申しますと、結局実態経済自体がなかなかうまく解決しないということにあるのでありまして、これをさらに端的に申し上げますれば、資本の不足というところに結局問題がある、御承知のように大体各企業における自己資本他人資本との割合というものは、普通いわれております戦前状況におきましては、大体自己資本が、六五程度、それに対して他人資本が大体三五程度であつたかと思います。これは若干移動がありますけれども、大体その程度ものである。それが戦後におきましてははなはだしく逆になりまして、一時は自己資本がわずかに二〇%、それに対して他人資本が八〇というような数字至つたのであります。最近におきましては、それが自己資本充実によつて構成比率がだんだんかわつて参つております。大体自己資本三五に対して他人資本六五という程度まで回復いたして参つておるのではないかと思うのでありますが、それにいたしましても、戦前のような状況に比較いたしますと、自己資本他人資本というものが、企業における資本構成においてちようど逆なつて来ております。こういつた点等がやはり企業における金融機関からの貸出しに依存する、しかも自己資本が非常に少いから、その資本がまわりまわつて金融機関預金として入つて来るものが、どうしても総体的に十分でない、こういうふうな事態が、今御指摘になりましたようないわゆるオーバーローンという現象を起しておる基本的な原因であろうと私ども考えておるのであります。しからばこういう状態はいいのかと申しますと、これは決してよくないと思います。できるだけすみやかにこの問題の解決をはかつて参らなければならぬと思いますが、ただこれを形の上で直すということだけでは実態的に、少くとも完全な解決にならない、要は自己資本充実する、さらに広い意味でいいますれば、他人資本を含めて、要するに蓄積をふやす、資本充実する、資本という言葉はいろいろ誤解も起しますが、要するにそういつた実態的な資本というもの充実して行くということが、何よりも必要なことであろうと思うのであります。今後におきましてもそういつた観点から、経済がだんだん正常化し、力がついて参るに応じまして、資本というもの充実も逐次進んで参ると思いますし、またこの方策のために今後といえども一層われわれは力を尽すことによりまして、逐次こういつたオーバーローン状態解消して行きたいと考えております。なおいろいろ新聞紙上等でも伝えられておりまする、いわゆるオーバーローン解消に対する方策という問題も、現在政府内において前国会以来検討を続けて参つておる問題であります。政府といたしましては、まだこの問題について具体的な結論にまで到達いたしておりませんが、こういつた問題につきましても今後さらに研究を続けて参りたい、かように考えておる次第であります。
  9. 柴田義男

    柴田委員 ただいまの御説明で大体その点はわかるのでありまするが、ただ私どもが一番懸念いたしますのは、今の方針を強行いたしました結果といたしまして、この資料によりますると、債券発行銀行オーバーの分が二千三百億である、そうして今度全国銀行を総体見ますると、五千億のオーバーローンなつておるようでありますが、この状態から推してみまして、地方銀行に対しましては、確かにオーバーローン解消の実績が着々と見受けられるのです。最近に至つては、またこの地方銀行も非常に貸出しの状況が、締めてはおるでありましようけれども実態回収不能等によつて貸出しの比率が高くなつて来ておる、そうしてその反対に、今度は都市銀行というものは、数字の上で見ますると大したオーバーじやないですけれども、実際的な預金正味預金と申しましようか、そういうことを想定いたしますると、相当額オーバーローンがあるのじやないか、たとえば都市銀行十一行のこの数字を見ますると、一兆四千九百七十億か日でございますが、これに対する貸付が一兆四千五百九十億である、数字の上では多少貸出しが締められておるようでありまするけれども、この一兆四千九百七十億の正味預金を見ました場合には、おそらく正味預金というものは一兆三千億内外ではないであろうかと想定されます。そういたしますと、やはり実態が一千五百億くらいのオーバーローンなつておる、そういうことが想定されるのであります。都市銀行オーバー解消は依然としてされないで、すべてが地方銀行あるいはその他の相互銀行等にしわ寄せをされているのじやないかということがうかがわれるのでありますが、そういう状態が現実も行われておるのかどうか、銀行局長から伺つてみたいと思います。
  10. 河野通一

    河野説明員 今のお話数字がそのまま的確に実相を現わしておるとも私は考えませんが、少くとも御案内のように、日本銀行からの借入金相当多くの部分都市銀行に片寄つておる、これは常識的にいわれておることであり、また事実であります。そういつた点から見ますれば、市中銀行が借入れによつて貸出しをまかなつておるということは、それだけ預金に依存する分が少いということになるわけであります。その点からいいますと、都市銀行地方銀行に比較いたしまして、相対的にオーバーローン状態にあるということは言えると思います。これらの問題につきましても、過去においてそういつたことが起つて参りました原因にはいろいろございましようが、今後におきましても、まずできるだけそういつた都市銀行におけるオーバーローン状態解消して行くということが、日本銀行からの市中に対する貸出金を減らして行く一つの大きな要素にもなるわけでありまして、こういつた点に重点を置いて大いに考えて行かなければならぬことは当然だろうと考えております。一方におきまして、私どもはただ預金をふやして行くということの努力、あるいわ自己資本をふやすということの努力だけでなしに、去年の秋以来、いわゆる金融の引締めということで貸出し自体を量的にできるだけ抑制して行くということを現在まで実行いたして参りました。これは、あるいはまだお手元数字が差上げてないかと思いますが、去年の年初から七、八月ごろまでの銀行における貸出金増加状況と、今年の一月から最近までの銀行貸出金増加、あるいは推移の状況とを比較してごらんいただけば、その状況は非常に端的に現われて参つておりますが、貸出金増加は非常に減つて参つております。そういつたことで、一方で貸出し自体をできるだけ重点的にやつて行く、ルーズな貸出しをしないということを今後といえどもできるだけ徹底して参ることによりまして、一方で資金をふやすということと相まつて、これらの問題の解決にも担当寄与して参ると私は思うのであります。そういう意味で、今後における貸出しの調節と申しますか、融資の規則につきましては、今後といえども力をいたして参りたいと考えておる次第であります。
  11. 柴田義男

    柴田委員 もう一つ伺いたいと思いますが、地方銀行借用金というのが二百十八億余ございますが、この地方銀行から借用金として計上いたします科目のものは、ほとんどが日銀でございましようか、地方銀行の別個な借用金というものはあり得るのでございましようか、この点を承りたいと思います。
  12. 河野通一

    河野説明員 帳簿上使われておる借用金は、そのほとんど全部がが日銀からの借入れであろうと思います。ただ御案内のように、インターバンクといわている銀行間の貸借というものがありますが、そういうインターバンク貸借として、しりが出ているものもあると思います。それからコール・マネーと申しますか、要するにコール市場から資金をとるものもございます。これは広い意味におきましては、やはり借用金ということになるわけでありますが、帳簿上においてはもちろん別の内訳で整理してあるのでありますから、お手元にある数字は別になつていると思います。そうしますと、大部分日銀からの借入金と御了承いただいてけつこうであります。
  13. 柴田義男

    柴田委員 そうしますと、都市銀行十一行の日銀から借入額は大体どの程度あるものでございましようか。平均でけつこうでございますから承つておきたいと思います。
  14. 河野通一

    河野説明員 私ちよつと今手元数字を持つておりませんが、最近の日銀から市中に対する貸出金は大体四千億であります。四千億のうち、今お話のありましたように地方銀行が二、三百億ではないかと私思います。そういたしますと、そのほかに農林中金とか商工中金とかが若干日銀から借りておるものもございますが、これは大した金額ではございませんで、その残りのほとんど全部が都市銀行からの借入金考えております。
  15. 千葉三郎

    千葉委員長 それでは大蔵大臣がお見えになりましたから、質疑通告順によりましてこれを許します。まず内藤君。
  16. 内藤友明

    内藤委員 大蔵大臣がお越しになりましたので、二、三お尋ねしたいと思います。実はこの前の委員会が開かれましたときにお出ましいただいてお尋ねしたかつたのでありますが、少し時期が遅れましてどうかと思いますけれども、それはほかでもございません、先般自由党支部長会議というものが開かれたのでありますが、そのときに、新たに検事長になられました池田さんが、いろいろ新しい自由党政策につき御説明になつたのであります。その中に、私率直に申し上げますが、れ録音を二度ばかり聞きまして、言葉も間違いのないよいに念を入れたのでありますけれども、こういうことをおつしやつておられる、今までの金融政策なつていない、こういうことがあるのでありますが、大臣も新聞か何かでお読みになられたと思うのであります。小笠原さんは昨年の総選挙後に大蔵大臣に就任になられましたので、今までの金融政策ということにどれだけの責任があるのか、これは分量からこまく計算はできません。その前は向井さんであつたと思うのであります。しかしいずれにしても、向井先生でも小笠原先生でも、与党の御出身の大蔵大臣なんであります。それを新しい与党幹事長が、今までの金融政策なつていないという言葉をお使いなさつたのですが、そういう言葉大臣がお聞きになられましてどういうふうにお感じになりましたか、まずそのことからひとつ伺つてみたいと思うのであります。
  17. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 人はいろいろな見方でいろいろなことをいわれるものであります。私はそれに対して一々論駁しようとも思いません。ただ金融について遺憾の点があるという意味に私はとつたので、これは見方によつて遺憾な点もあろう、私どもも十分なりとは必ずしも考えておりません、自分たち努力しておるけれども、外から見たときには遺憾の点もあろうということくらいに私は聞いておつたので、特に内藤さんが言われるような強い意味に、実は私は聞いていなかつたのであります。
  18. 内藤友明

    内藤委員 強い意味とか弱い意味とかいうことではないのでありまして、与党幹事長という重責で、しかも新しく就任なさつた池田さんが、開口一番、今までの金融政策なつておらぬ、なつておらぬということで、遺憾な点があるというのではない、だめだということなんです。だめだという極印を押されて、自分は大してそれはそう考えていない、こういうふうな大蔵大臣のお心持だというと、これはまたどうも私どもの常識とはおよそ違うのでありますが、大蔵大臣が反省せられまして、どういうところにどういう遺憾な点があつたのか、それを池田さんが指摘なさつた、なるほどなつておらぬといわれるのも無理はないと思われることがあるのか、そういうお感じは何かないものでございましようか。ただそれは大したことでない、弱いつもりで聞いたのだというだけじやあ衆議院の大蔵委員会におります私どもといたしましては、どうも納得できないものがあるのであります。これは金融政策の根本に関することでありまして、これが改進党の幹事長が批判したり、社会党両派の者が言つたりしたとすれば、あいつらは野党だから、反対党だからああ言うのだ、実はこれで片づく。それで片づけていかぬことだと思いますが、それでもいいと私は思うのであります。しかし大蔵大臣を支持しておる与党幹事長言葉としては、大蔵大臣として、それは簡単なことだなんということで聞き去るべきことでないと思うのでありますが、それでも大蔵大臣は、いやいやおれはやはらかく聞いた、大したものでないんたとお考えなつたか、もう一ぺん大蔵大臣の御真意を——これはお互いに内輪委員会なんでありますから、出先ではございますけれども、ひとついい気持でお聞かせいただきたいと思います。そうしませんと、私どもも実はいろいろ今まで金融政策の問題については御協力を申し上げて来た立場のものなんでありますが、そういうものとしましては、これは大臣に水をひつかけたことだけではないので、われわれ大蔵委員に対しても水をひつかけられたような感じがして憤慨しておるのですが、私はまあ少し血のめぐりが悪いものだから、その憤慨の色がさつと出て来ないだけなんであります。これは春日君あたりでありますと、卓をたたて憤慨するのでありますが、私はそこまでの血のめぐりはよくないものでありますから、もう一ぺん大蔵大臣のほんとうの気持をお聞かせいただきたいと思うのであります。
  19. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私どもは、自分が行つておる金融政策には、これはもう絶えずどんな場合でも最善を尽しておると考えておりますけれども、今内藤さんの言葉でいえば、反省すべきものがあると言われれば、これは一日に三べん省みてもなお足らぬといわれておるくらいですから、絶えず反省すべきことはあつてしかるべきだと思います。しかしなつていないくらいのことを聞いて、そのなつていないという内容はどういうところか一々説明されたわけでもなく、また私に対して何らその話もありません。もし与党でなければ、あるいは委員の諸君で、何でなつていないかということについてお聞きになつたことがあるかもしれぬが、私は何も聞いておりません。そういう一品になつていないというような言葉を、何でなつていないかというような理由をあまり内輪で言うべきものではないと思つております。これはものの通り、扱い方にしてもいろいろございましよう。これは内藤さんと私と顔が違つておりますように違うかもしれませんしかし私自身としては、それは自分の職責を尽せば足りる、こういうように考えております。
  20. 内藤友明

    内藤委員 これはどうもしかたがありませんが、自分はあまり感じていないというのですから、あとは皆さん控えておられますから、その方に譲りますが、私はそういうことに対して少しまじめにお考えいただきたいと思うのであります。これはひとり大臣だけのことではない。われわれ大蔵委員会が実は反省しなければならないことでありまして、決してあげ足をとるとかなんとかいう意味じやありません。そういう言葉に対して十二分に大蔵大臣も御考慮いただきたいものだと思うのであります。  そこで次にお尋ね申上げたいのは、ことしの秋の米の値段の問題でありますが、幸いことしは台風もよくそれてくれますので、たいへんこれは稲の国といたしまして、よろしかつたと思うのであります。そういう関係から、収穫も現在では大体まあ平年作の九八%そこそこは確保できるだろう。従いまして六千三、四百万石は大丈夫だろうということでありまして、外貨の少いのに悩んでおる日本の国といたしましては、非常な救いの神様だと私は思うのであります。そこで一日も早く何とかこの米価をおきめ願わなければならぬのでありますが、ことしこそ今までのような大蔵省のお考えでなくして、何とかひとつ農家が喜んで持つておるものを、あるだけを政府のルートに差上げるような米価にしてもらわぬことには、日本の長い目で見た食糧問題として大きな災いをもたらすのではないかと思うのであります。新聞紙の報ずるところによりますと、農林省は非常に弱腰でありまして、初めはかなり筋通つた線も出しておりましたけれども大蔵省の何と申しますか、いつものがんばりで、だんだんと雪だるまが日に溶けて行くようなふうになりまして、だんだんと弱気になつておるようであります。こういうことは農民に非常に悪い心理的影響を与えておりますので、私ども残念でならぬのでありますが、むしろ私は大きな目から見た日本の外国との収支並びにもう何と申しましても、政治というのがこれは食糧のほかにございません。食い物を抜きの政治というものはあり得るものではない。この問題で何とかひとつ大蔵大臣みずから陣頭にお立ち願わなければならぬのでありますが、この米価は大体どれくらいに、いつごろおきめなさるのか、これは非常に重大な問題でありますから、ひとつお示しいただきたいと思うのであります。
  21. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 米価の問題は、仰せのごとくにきわめて重要な問題でありまするので、各種の資料双方——双方と申しますのは、農林省大蔵省の方面でとりそろえまして、目下いろいろ議論も闘わしますが、その資料に基いて検討相互に加えておるという次第であります。御趣意の点はよくわかりますが、また国の全般としての財政的見地からもものを見る必要等もございますことは申すまでもございません。従いまして、ただいまのところまだ検討中でございますので、途上でどういう考えを持つておるかということを言いますことは、どつちかといえばかえつてその問題の円滑なる解決の妨げになるのではないか、これはあるいは内藤さんから見たら違うかもしれませんが、私としては率直なところそういうふうに考えております、結論に入るまでにはいろいろ紆余曲折がございましよう、またいろいろ議論も闘わされまして、資料も整理されることと思つております。その場合に、こういうことを君は言つたではないか、ああいう議論を述べたではないかということを言われますと、それ自身が非常に問題の円満な解決を妨げることにもなると思いますので、米の問題は私ども真剣に取組んでおる、そうして遠からざるうちに結論を出す、これだけのことを申し上げさしていただいて、その途上の問題は省かしていただきたいと存じます。
  22. 内藤友明

    内藤委員 今も問題になつておりまする黄変米問題とかなんとかいうのがありますけれども、実はこれはやり方一つなんだ。非常にいい政策が行われますれば、みんな高い黄変米なんというようなものは買わぬでもけつこう済むのであります。それが政策が悪いものだから、こんなものまで買わなければならぬというところまで来ておるのではないかと私は思うのです。  そこで大臣にお伺いしたいのですが、今言うことは非常に円満な話合いが阻害されるからというのでありますけれども、それは私はそうではないので、事務当局はいろいろなことをやつておりましようけれども大臣は率直に日本の食糧問題、日本の大きな政治問題、いろいろなことを考えられて、気持としてはこういうふうなことを考えておるということぐらいはあつてしかるべきなんで、またそういう指示が事務当局へ伝えられて、事務当局はその範囲内においての作業をしておるのではないか、そういうことについては、これは国会と行政当局とはいつもお互いに議論しながらこの国の政治をいいところへ持つて行かなければならぬのでありますから、私は心持だけはやはりおつしやつていただいた方が国政に忠なるゆえんではないかと思うのでありますが、まあひとつこう考えておる、こういうふうにやれば外国からこんなにたくさん食糧も入れぬでもよろしい、そうするとなけなしのドルも使わぬでもよろしい、こういう方針だというくらいのことは何か大臣のお心持にあろうと思う。またそういうお心持のもとにおいて事務当局は作業をしておるのだろうと思うのでありますが、そういうところをひとつお漏らし願うと非常にけつこうなんであります。その点もう一つ大臣にお尋ねいたしてみたいと思うのであります。
  23. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 価格の問題はただいま申し上げた通りの事情でありまして、これは途上で皆様に申し述べることは、いろいろの手続を尽してやることでございますので、今日は申し上げない方がよいと思つております。食糧については、今内藤さんがしまいに仰せになつた外貨節約に大いに役立つものだから云々ということについては、これは私しごく同感でありまして、食糧増産に対する事柄でございますれば、これは自分としては全力を尽したいと考えております。またさらに今世界銀行等に対しても、私ども相まつて食糧増産に対する借款等を進めておりまするのもその一つの現われで、これについては私自身の心持は、日本においてでき得るだけ食糧を増産して、食糧自給度を高めたい、かようなことにおいては、これはまつた内藤さんと感を一にしておるのでありますが、米価の問題になりますと、ちよつと他に及ぼす影響等もあり、かたがた差控えさせていただきたいのであります。
  24. 井上良二

    井上委員 ちよつと関連して……。ただいま内藤氏の質問しております本年度産米価格の決定問題は、本年の供米確保の上に非常に重大な政治問題化しておることは御承知の通りです。しかるにこの価格決定の最高責任者たる大蔵大臣が、この問題に対して明確な御答弁をされていないことははなはだ遺憾であります。政府が本年の産米価格を一体何ぼにきめるかということは、本年の作柄なりあるいは配給日数の問題なり、あるいはまた輸入の実績なりを総合しまして、この程度に買わなければ予定通りの供出は出ないだろうというところできめる、これは例年繰返しておるところであります。ところが御指摘の通り事務当局間ではそれぞれ正確な資料を持ち寄りまして、具体的な適正価格の算出の作業を続けられておることはわれわれも伺つております。しかしこれはあくまで事務当局のやることであつて、政府として本年の産米は一体どの程度にきめるのが妥当かということについては、これはおのずから別問題であろうと考えます。御存じの通り、私どもの推定するところによつても、毎年二千万石からの食糧の不足を生じつつあります。この二千万石をかりに輸入にまたなければならぬということになりますと、ここに年間五、六千万ドルの外貨を余分に食糧につぎ込まれなければならぬことになるのであります。反対に、あなたも御指摘のように、また御賛成のように、農民に食糧増産に協力の手を少しでも差延べられますならば、たとえば昨年から本年にかけてまきつけられました小麦及び裸麦、大麦の実績を見ましても、昨年の麦価政策が農民の期待にある程度合致したというところから、特に日本において米食と混炊できます裸麦の作付面積は五万四千町歩に増大いたしております。あるいはまた大麦の増産面積も四万町歩に増大されております。合せますと約十万町歩からの増大で、三百六十万石が増産をされておる。それをもし輸入にまつということになりますならば、外貨は四千万ドルをかせいでおることになつておる。この生きた事実を大蔵大臣は一体どうお考えなつておるか。現在作柄は平年作以上といわれておるが、政府が必要とする所要量を集荷いたしますには、一に価格を何ぼに買い上げるかにかかつているのであります。すでに早場がどんどん供出されておる今日、まだ価格を決定しない、またその最高責任者たる大蔵大臣がこの問題に対してまつたく抽象的な答弁しかできないということは、農民の供出意欲をいたずらに押えつける以外に効果はありません。  そこで具体的に伺いますが、本年の米価はあなたも御存じの通り、すでに国会においては本年度予算において九千二百円ときめられておりますが、はたしてこの九千二百円の線を大蔵省は、政府としてはあくまで固持する方針でありますか。それとも全国生産農民の大会で一万二千五百円を今年の産米価格と主張いたして、あなたの方にも陳情に行つておるわけであります。かようにいたしましてここに相当の開きが出ております。昨年あれほどの凶作であるといえども、いわゆるどぶ酒に使つた米、あるいは小づかい米としてやみに流れました米は相当多量に上つております。本年また政府が低米価によつてこれを押えつけようといたしますならば、相当多量の米がやみに流れて、正規の配給ルートにこれが上らぬことになります。そうなりますと、それだけの不足分は外貨によらなければならぬ。大蔵大臣は、別の面では国際収支を改善することが当面のわが国経済再建の主要題目であつて、これに国家は総力をあげて努力をせなければならぬということをたびたびあらゆる機会に述べられておるが、国内において正規なルートに上すことができず、しかもその不足分を海外からの輸入にまたなければならぬというこの実情をあなたが見た場合、ここに農民心理をくみ、増産をすればそれだけの価値があるという感じを持たしてやることは、これは当然の農民心理になつて参りますから、さような意味から、あくまで九千二百円の予算米価政府が押切ろうとするのか、それとも農林省が主張しています九千七百五十円程度のところまでは歩み寄ろうとするのか、さようなことは全然考えないとするのか、これは一に本月中ごろ開かれます全国供米会議にも重大な関係を持つておりますので、農民が進んで政府に協力して供出しようという気持を起さすためにも、本日あなたの答弁は非常に重要な影響を持つて来るのでありますから、ぜひこの点は率直に農民の心理をくみ、今日の米価事情を考え、国際収支の改善を考える場合、事務当局の作業にこだわる必要はないと思う、政府はこういう考えをもつてやりたいと思うという点について率直に御答弁を願いたい。
  25. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 食糧問題が国際収支に大きな影響があり、さらにまたその改善の上からいつて、国内の日給度を向上しなければならぬということとか、その余のことだついての御意見は、私はすべて同感であります。但し食糧の増産が、仰せのごとくに価格一本で左右できるかどうかということについては、多少まだ意見のあるところだと存じます。従つてまだ今結論に入らないのに、私はあくまで九千二百円を固持するものであるというような答弁をすることは、ひいて九千七百五十円を固持するものなりという意見と対立をすることになつて、まだ政府部内の調整がとれぬうちに、これをあくまで言うとか言わぬとかと仰せになつても、先ほど申しました通り、まだ御答弁する段階に行つておりませんので、悪しからず御了承願います。
  26. 内藤友明

    内藤委員 ただいま井上さんからもお話がありましたように、それではこういうことだけは大臣言われそうに私は思うのです。去年よりも安くしない、あるいは安くするということだけは言えると思うのですが、そこはどういうものでしようか。この程度は簡単なものですから……。
  27. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これも、消費者としては安いことを希望するでございましようし、生産者としては高い希望もございましよう。従いまして国全体として私どもが見るときに、そのどちらかということを、ただいまここで具体的な案を得ぬうちに、抽象的にかれこれ申すことは差控えたいと存じます。
  28. 内藤友明

    内藤委員 大臣、それは去年よりも安くしないぞ——今のお話だというと、何だか安くなるようなことにも考えられるのであるが、そうなりますと、ことしはいい作をしたのですけれども、農民は協力しないことになるのでありますが、その点どうでございましようか。去年を最低線として守るぞということぐらいは出そうなものですが、それもだめですか。しつこいようでありますが、もう一ぺんひとつ……。
  29. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これは需給その他の情勢を十分見た上でないと御返事をいたしかねるのであります。従つて私どもが申しておるのは、これが双方で結論に入つて来れば申し上げますが、途上ですから、これがどうだこうだということは、非常に妨げになると私は思うので、答弁をいたしかねます。
  30. 小川豊明

    小川(豊)委員 大蔵大臣にお伺いいたします。きのうだと思いましたが、全国の農民の代表が、あたの方の政調会長の水田さんのところへ、米価の問題で陳情に行つた。そのときに、今大蔵省等の発表しておるこの価格では、農民の供出意欲も低下するばかりであるし、同時に農家も経済が維持できないので、もつと生産費にくつつくような価格を決定してもらいたいという陳情をしたところが、水田政調会長は、皆さんの意思に沿うようにするつもりだ、こういうことを言われた。今大蔵大臣の御答弁を聞いていると、これはまだ過程であるから何とも言えない、こういうことを言われる。党の政調会長は、この九千一百円という一つの案に対して農民が反対しているのに対して、あなた方の趣旨に沿うように努力するということを言つておるのですが、そうすると私どもが今肝いておつて非常に食い違いが出て来る。というのは、もしそれが政調会長の言うようなことは実現できないとすると、自由党の政調会長はいたずらに農民をうれしがらせただけで何もしなかつた、こういうことになるのです。党と政府は一体なんですから、その点政調会長とこういう点について打合せを十分になすつて、はつききりと政調会長の言つたことは信頼できるかどうかを伺つておきたい。  それといま一つは、九月二十日は第一期の早場の供出であり、九月三十日が第二期の供出だというのに、いまだもつて早場の奨励金の価格というものは決定しておらない。そういう価格のことを私は今あなたと議論してもいけないと思いますが、少くとも九月二十日までにはこの早場奨励金の価格は決定すべきである。もしこれをせなかつたとするならば、これまた供出意欲を非常に低下させるばかりでなく、農民から言えば、自分のつくつたものを、価格がわからないで供出だけはしなければならない、こういう結果になつて来るのであります。奨励金は一期、二期というようにきめてあるのですから、九月二十日までに幾ら、九月三十日までに幾らと、こういう問題を必ずきめるということをここでひとつ御言明願いたい。これは価格の問題ではありません。九月二十日までにきめなければならないことになつておる。これをぜひ農林省側と急速折衝を遂げてきめてもらいたい。あなたの方のお考えはどうですか。
  31. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 党の政調会長の方からまた何らの連絡がございませんので、党がどういうことを考えておるかということについて、ここで御返事をいたしかねます。  さらに早場奨励金の問題につきましては、これはできるだけ早くきめたい、かように考えておりますが、私どもは今お話のごとく九月二十日、これは一日も早い方がよいので、一日も早くきめたい、かように考えております。
  32. 有田二郎

    ○有田(二)委員 関連して。今の小川君なり井上君なり内藤君はいずれも農村出身の代議士で、この問題について非常に焦慮しておられますが、私は春日一幸君と一語で、消費地の大阪出身で、米の値上げは断固反対であります。むしろ下げていただきたい。下げるということをここで大蔵大臣に声明してもらいたい。しかし事情をよく承りますと、まだ政府としてはその段階に至つていないそうでありますから、その点は了承いたしますが、もう年々歳々上げるばかりなんです。この辺で下げることも十分お考えなつてもいいのじやないか。どうぞひとつできるだけ値下げに政府としては御協力願いたい、これについての御所見を承りたいと思います。
  33. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 生産者と消費者のそれぞれの立場と、国の財政等をも十分に勘案して善処いたしたい所存でございます。
  34. 内藤友明

    内藤委員 どうも有田君なんかのようにとんでもないのが出て来ましたが、私もう一つ大臣にお尋ねしたいのは、二十八年度米の追加払いの問題でありますが、これは去年の米価をきめられるときに閣議で、パリティ指数が上ればそれだけ出そうとはつきりお約束なすつておられるのですが、いまだにどうもお約束通り出ないので、このごろ吉田さんの評判が悪くなつたのもさりながら、こういうふうな公約が実行せられないもんですから、よけいにあなた方の方が評判が悪くなつたような様子なんです。ひとついかがでございますか、評判挽回の意味において、何とか追加払いを約束通り、おそくなつたんですけれどもお出しなさる御意思はございますまいか。
  35. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 追加払いの問題につきましても目下協議中でありますが、これは、私どもはあれがパリテイ計算のみが基準となつものではない。これはいろいろそのときのことについてのしんしやくはできますが、必ずしもそうではなくて、いろいろなことが織り込まれておることは御承知の通りであります。いろいろな要素がみな織り込まれておるので、それらのことをもう少し私どもが分折的に考えてみて、これを国の財政でどの程度処理し得るかというような問題も考えなければなりません。これも率直な言葉で相済みませんが、実は国の財政に余裕がないことは、内藤さん御承知の通りであります。従いましてそれらの問題等もありまして、今十分考えておるところでございまするので、これは追加払いをするということをここで遺憾ながら御返事はできません。
  36. 内藤友明

    内藤委員 それではもう少し待つてるとなさるのですか。どういうことになるんですか。一切もうないそでは振れぬというので、最後までつつぱるのでありますか。つまり去年お約束なさつたことは、そんなものはだめなんだ、ほおかむりするんだということなんでありますか。これは、農民は待つておれば今に渡るのかなということを考えておりますが、その点どうでありますか。今研究最中だから、もう少し待てばもらえそうな気もするんですが、どういうことですか。やるからもう少し待つてくれということなのか、もう一ぺんはつきりお聞かせいただきたいと思うのであります。
  37. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 この問題はただいま申し上げました通り、私どもの方でいろいろな点を考えております。従いまして、まだ実は結論を出しておりません。この問題は結論が出るまで、右か左か、出すのか出さぬのかと仰せになりましても、ちよつと御返事ができかねる次第であります。
  38. 内藤友明

    内藤委員 それではその結論はいつごろ出ますか、いつごろというのをひとつ教えていただきたい。
  39. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これはちようど米価問題等もございますので、その問題はそのときにできるだけ早く解決したい、かように考えております。
  40. 内藤友明

    内藤委員 それからその先に早急にきめていただかなければならぬのは、早場米奨励金の問題でありますが、これは私らもぼつぼつ出しおります。幾らもらえるかわからぬのでは困るのでありまして、これだけは、ほかのものより早めてやつてもらわなければいかぬと思います。御返事はいりませんが、希望としてお願い申し上げておきます。
  41. 千葉三郎

    千葉委員長 赤日一幸君。
  42. 春日一幸

    春日委員 私は日本銀行総裁の更迭説が行われておりますので、この事柄に関連をいたしまして、大臣の御見解を承りたいと思うのであります。  申し上げるまでもなく、日本銀行は国家経済総力の発揮を目的としてつくられたところの中央銀行でございます。従いまして、この銀行の総裁は国家的見地からながめまして、最高の最適任者が運営の衝に当らなければならないと考えておるのであります。しかるところ、国会の資料によりますと、大臣は参議院の大蔵委員会におきまして、一萬田総裁は最高の適任者ではないと思うと断定をされたのでございます。このことは、中央銀行の運営に対して重大な疑惑が投げかけられたことであり、監督責任者としての大臣から直接そのような見解が述べられましたことは、これは日本銀行の目的、使命、機能等から考えまして、金融機関に大きな衝撃が起きておると思うのでございます。従いまして、この八年余にわたつてその衝に携わつて参りました一萬田総裁が最適任者ではないということについては、相当の罪業がなければならないと思うのでございます。すなわちその適格性を欠くところの条項はどういうものであるか、この機会にひとつお示しを願いたいと思うのであります。
  43. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私が申したのは、最適任者とも考えない、こう言つたのです。この言葉の通りに御理解が願いたい。すなわち言葉をかえて言えば、ほかの人をもつてはかえることのできない、日本における唯一無二の人であるとは考えない、こういう意味であります。
  44. 春日一幸

    春日委員 それは私が冒頭に申し述べましたように、政府は当然責任において、閣議によつてこの総裁を任命をいたしておるのでございまするから、政府がその責任において、多くの候補者の中から二流、三流、五流、六流というような人を選任されるはずはないのでございまして、日本銀行の持つ使命、機能、そういうものから考えまして、当然この最高の金融機関の総裁は最高の適任者を推薦し、これを任命しなければならない義務があると私は思うのでございます。さすれば現在のこの一萬田総裁は、その最高の適任者ではないということになれば、最高の適任者がその衝に当るべき日本銀行の性格からかんがみまして、これを不適任者であると断定しなければ相ならぬと思うのであります。最高の適任者でないということは、すなわちヴエーリ・ベストという立場から見れば、ヴエーリ・ベストの人が当らなければならない。そうでないと申すならば、不適任者だと私は考えるのでありまして、この最高の適格条件に何らか欠けるものがあると、私ども大臣の御見解の中から察知をいたしたのでございます。大臣は直接の監督大臣といたしまして、最高のものでないという印象をお持たれになりましたことについては、それだけの理由がなければ相ならぬと思うのでございますが、そういう見解をお持ちになりました過程において、どういうような事柄があつたか、この機会にひとつ国民にお示しを願いたいと思うのでございます。
  45. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 さようなあなたが想像されるようなことは、何も言つておらぬ。私が言つておるのは、最適任者ではない、今註釈したように、唯一無二の人ではない、つまり余人をもつてかえることができない人ではない、こういうことを言つておるのであります。これはあの人でなければならぬとあなたが思われるのは、あたの御随意なんです。私は余人をもつてかえかたい人ではないと言つているのです。すなわち日本における唯一の人ではないと言つておるのですから、それ以上のことは言えない。
  46. 井上良二

    井上委員 ただいま大蔵大臣の発言はきわめて重大であります。御承知の通り一国の中央銀行の総裁というものは、全金融界に対する絶大な信頼を絶対条件とするのであります。従つてこの中央銀行の総裁の信用というものは、金融の円滑化と政府金融政策の具体的な遂行に絶対的な条件のものであります。その中央銀行の総裁の地位に対して、また個人的な識見に対して、政府がこれを監督する立場にあるといえども、とかくの批評をくだすことは、金融界に与える影響がこれまた非常に大きなものがあり得るのであります。政府が絶対的適任者でないというようなことをかりにも考えるならば、すみやかに更迭すべきであります。更迭せずに本人をその地位に置いておいて、大蔵大臣たるものが国会を通して、一萬田総裁は最適任者ではないと思われるようことをかりにも申されることは、金融界に対するはなはだもつて穏当を欠く、不穏当な百薬だと思うのであります。一体かようなことが言い得られるでありましようか。あなたは日銀総裁を更迭するところの職権をお持ちになつております。あなたみずからが最適任者でないとお考えになるものを、何ゆえにその地位にお置きになりますか。またさようなことをあなたの品から言うことが、一般金融界にいかに影響を与えるか。ことに中央銀行の総裁の地位信用に対して非常な誹謗ではありませんか。さような金融不安を与え、その地位に対する不安定をかもすがごとき言動を弄することは、一体大蔵大臣の所見としてこれが聞き捨てになりますか。はなはだあなたのお言葉は穏当を欠く言葉だと私は考えますが、あなたはさようにお考えになりませんか。もう一度冷静に御答弁を願いたい。
  47. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私の答弁は最適任者でないと言つたことを、それは適任者でないというふうにおとりになつたようですが、これは違う。最適任者とも考えない、言葉はとも考えないと言つておるので、これはおそらくあなた方でも最適任と考えておるかどうかは私は知りませんが、ただ私としては、それが何ら金融界その他に影響を及ぼすものでなく、また私の方でかりに国の金融政策その他を行う上において支障がある場合には、さような処置をとります。
  48. 井上良二

    井上委員 どうも吉田さんにまねて、最近あなたは妙な言葉を使うが、最適任者とも考えない、このともという言葉が入つておるから、そこは非常に言いまわしが上手であるので、はなはだどうでも解釈できるようにお思いになりますけれども、少くとも一般の常識的なもの考え方からいたしますれば、最適任者とも考えないというのならば、一体最適任者とはどういう資格を持つた入であり、また今の一萬田さんが最適任者とも考えないという根拠は一体どこにありますか。これは一国の中央銀行としての重大な責務を果しておる地位におる人でありますから、そういうことを監督の地位にあるあなたかかりそめにも——他の取引銀行の人とか、他の財界の人とか、あるいは野党がとやかくこれに対して批判を加える場合には、さほどにも一般は思いませんけれども、これを指揮監督、指導しなければならない地位にあるあなたが、さような言葉を軽々に述べるようなことは、これは非常に穏当を欠くし、影響を与えると思います。さようにあなたはお考えになりませんでしようか。  そこで私は伺いますが、その最適任岩とも考えないという理由は、一体どういうことが最適任者とも考えない根拠になつておりますか。それをひとつ具体的に申されませんと、日銀総裁としての国家的信用は保持できませんから、これは一応あなたとしてそういう言葉を使つた以上は、それに対する責任をお考えなつて、最適任者とも考えないという根拠は一体どういうことをさして言つておるのか、このことをひとつ具体的に御説明を願いたい。
  49. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 一々の言葉に対して、どういうことがどうだということは申せません。私自身はそういう人の批評がましいことは言いたくない。ただ最適任とも考えない、すなわち余人をもつてかえがたき人とは考えない、こう言つただけでありますから、これ以上の言葉は言えません。
  50. 春日一幸

    春日委員 それではお伺いいたしますが、最適任者ではないならば、適任者とはお考えなつておりますか。
  51. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 現に適任者であるから、その席におけるわけです。
  52. 春日一幸

    春日委員 私は日銀法をいろいろと調べてみたのでありますが、日本銀行の総裁は日銀を代表して、政策委員会の定める方策に従つてその業務一般を執行する、こういうことであろうと思うのでございます。大臣は個人的に最適任者でないという見解を御発表になつたのであります。それは小笠原さんの個人の見解でありましようけれども、当然内閣はこの重大なマシナリーの長を任命されるにあたりましては、その当時昭和二十六年六月一日、この重大責務を委託するところの総裁に対しては、広い視野において最適任者を選ばれたに相違ないと私は思います。また内閣ではその責任があるであろうと思うのでございます。ところが任命された当時、おそらくはその最適任者としての任命を受けたこの人が、あなたの代になつてから最適任者ではない、その一段下の適任者のところに辛うじてとどまるというような事柄でありますならば、一応レベルがダウンしたわけです。それについては日銀政策委員会から、この日銀政策委員会の決定した方策に従わないとか、あるいは指揮監督する立場にあるところの日銀政策委員会方針に何か背反するような執行が行われるような上申が、大臣のお手元に提出されたのであるかどうか。この点をひとつお伺いいたしたいと思うのであります。
  53. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 もし不都合なる事実がありますれば、これはいかなる処置でもとれるようになつております。但し今のところ最適任者とも考えないが、適任者であるのだから、その席におられるわけであります。従つてこれについてかれこれと言うことはよくない。
  54. 春日一幸

    春日委員 日銀政策委員会から大臣のお手元に対して、総裁の執行方式について何らかの苦情がましき申達がなされたような事実があるかどうか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  55. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 政策委員会の扱つておる事柄について、その内容をかれこれ申すわけには行きません。
  56. 春日一幸

    春日委員 そういたしますと、政策委員会からその総裁の執行ぶりに対して、大臣手元に何らかの苦情がましき意見の申達が行われたかどうか。あつたともなかつたとも御答弁願うことはできませんか。この点もう一ぺんお尋ねをしておきたいと思うのであります。
  57. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 さようなことはお答えしない方がよいと存じております。
  58. 春日一幸

    春日委員 それではお伺いをいたしますが、私はこの日本銀行の総裁という職責は、これは大蔵大臣にも任命権もないし、解職権もない。総理大臣にもその解職権はないわけでありまして、当然これは閣議の決定、この機関決定が行われなければそういう解任というものは行われないと思うのであります。そこで大臣が別に解任してないのだから、また解任しようともしないとも言うていないのだから、その問題についてはとやかく論議する必要はないとおつしやられればそれまででありますけれども、少くとも最適任者でないというこの断定をされたということ、それから解任しないともするとも言えないというこのことは、すなわち解任することがあるかもしれないぞという意思の表明を参議院においてなされたということは非常に重大ではないかと思うわけであります。これは消極的には、近く解任するぞということがその言葉の裏から、われわれの眼光紙背に徹する烱眼で大体見破ることができるわけでありますが、少くとも大蔵大臣が、総理大臣でもですが、少くとも機関決定を経ずして大体その方向を示唆するということが与える影響の重大さから考えて、これは大蔵大臣としてむしろあなたが最高の適任者ではないような批判をわれわれは持たざるを得ないような感じがするわけでありますが、ああいう表現をされたことは行き過ぎではないか、たとえば閣議決定を経ずしてあるいは消極的に解任される場合があるかもしれないというような推測をこの国会において示唆せしめるようなその言明をされたことは、大臣として越権行為であり、しかも金融界に与えるところのいろいろな衝撃等を考えまするとき、これはたいへんなあやまちを犯されたような気がするのでありまするが、これについてどういうお考えをお持ちになつておりましようか。御回答願いたい。
  59. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私は日本銀行法の命ずる法文にある通り、それはいつでもその罷免権もあるわけでありますから、そのことを言つたのであります。そういう意味で、そういうことについて解任するとかせぬとも御返事は今できない。但し日本における余人をもつてかえがたい人とも考えておりません、こう言つたのです。
  60. 有田二郎

    ○有田(二)委員 日銀総裁の一萬田氏のお話が出ましたが、私は今井上委員が言われた通りに、かえるものならあつさりかえる。かえないものならば、私は与党の一人であるけれども、一萬田氏のことについて最適任者でないという大蔵大臣お話というものは、私は遺憾だと思うのであります。それはなるほどそうであるかもしれません。あるいは一萬田氏よりもより適任な人があるかもしれませんし、また一萬出氏が最高の人でないというお言葉に、しては、私は何らの批判を与えることはできませんが、またこのことは、参議院の大蔵委員会に私が出ておりませんから、その質疑応答の中に順次そういう言葉がお出になつたので、これだけ取上げると何だか変なことはなりますが、やはり情報としてはこれが大きく取扱われて来るわけであります、しかも一萬田氏は、今日まで日銀総裁として実に八年三箇月の長きにわたつておやりになつておられるのであります。その間功罪いろいろありましよう。しかしながら日本金融界に大きな功績を残されたことも事実であろうと思うのであります。従いましてまだやめさすとか、やめさせないとかいうことではないでありましようが、将来もしも一萬田氏が引退されますような場合には、一萬田氏に傷をつけないように、八年三箇月の長きにわたつて日本金融界に努力して来られた一萬田氏のいわゆる終りを完うさせるというような意味合いにおいて、私は大蔵省並びに大蔵大臣の御努力をお願いしたいと思うのですが、御所見を伺いたいと思います。
  61. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 まつたく御同感であります。私どももこの八年数箇月、一萬田氏はいろいろな批評はありましようが、尽された功績はきわめて大きなものがあると思います。従いまして、今のところさようなことは考えておりませんが、もしさようなことがありまする場合には、仰せの通りにできるだけの優遇をいたしたいと存じております。
  62. 春日一幸

    春日委員 昨日参議院で、これは最適任でないということを断定されたのでありますが、これは金融界に現実の問題として衝撃を与えておると思うのであります。すなわち最適任でない人が日本銀行の裁総をやつておるのか、こんなものを相手に本気で取組めないぞ。いつなんどきこの男はかわつてしまうかわからない、あるいは最適任でないという事柄の中には、いろいろな要素が含まれておりましよう。その要素は何であるか。それはいろいろ調べてみると、解任ができるときには、法令、定款、命令に違反するとか、公益に害を及ぼすとか、刑罰を受けるとか、犯罪を構成するとか、いろいろあるわけだが、何らかそういうようなものの中の一つに触れるのではないかという不安を国民は持つに至つておるわけであります。それで私はあなたにお伺いしたいのは、現にそういう衝撃を与える言動をあなたはなされた。もしもあなたが最適任でないと思われるならば、ただいま有田君が言われた通り、これは最適任でないから解任するのだといつて、そういう措置をとられるのが、私は責任ある監督者のあなたとしてふむべきところの措置であろうと思うわけであります。今日もその重責に着けておいて、この男は最適任ではない、こんなものはいつでもかえようと思えばかえられるのだと言うことは、これはむしろ罵詈讒謗みたようなものであります。われわれがいろいろ理由を聞いても、かけがえがないというのではない、いくらでもかけがえがあるのだということでは、国民も金融界も、これに関心を持つところのものは、それでもつてなるほどわかつたといつて納得しないと思うのです。最適任でないというが、絶対唯一無二のものではない。私はあなたが大蔵大臣として最適任であるとは思わない、かえようと思えばかえられる。それは少くともあなたを任命したところの内閣総理大臣吉田茂が、あなたこそは最適任であるとの大確信をもつてあなたを任命しておるわけです。あなたが大蔵大臣であるうちに吉田茂が、大蔵大臣は最適任でない、こんなものはとりかえればとりかえられるというようなことを国会なり新聞なりに報道されたら、あなたはそれで職責が勤まるでしようか。あなたの人望と権威はそれで失われる。それと同じように、あなたの監督下にあつた一萬田総裁でも、こんな者は最適任じやない。かえればいつでもかえる人はあるのだ。そんな罵詈讒謗を浴びせられてその職責が果せるかどうか。このことについていろいろ道義上、政治上、おそらくはまた日本銀行の機関としての職務遂行の上において重大な支障を与えたと思うが、これについてあなたはただいま一日に三回ずつ反省すると言つたが、顧みて悔いるところはないか。この点ひとつお伺いいたします。
  63. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 いろいろ私に対してあなたの罵詈讒謗がありましたが、私自身自分の心中を率直に言うと、顧みて何ら恥ずることはありません。あなた自身、今小笠原三九郎は大蔵大臣として最適任者でないと信じておると言われたが、おそらくあなたとしても、ちつとも省みる必要はないでしよう。従いまして私は、最適任者でないという意味はさつきよく説明をしておるのです。最適任者でないということは、その人でなければどうしてもやつていけないという意味ではない。余人をもつてかえることができないというのが最適任者である。最というのは言葉意味説明すれば、もつともということです。これ以上の人がないということです。それでは日本にはあまりに人材が不足しておる、その意味であつて、あなたの考えるようには考えません。
  64. 春日一幸

    春日委員 私はそういう質問をいたしておりません。私はあなたと攻防境を異にしておりますので、そういう反対者が最適任者でないといつたつて、それはあなたにはかわずの頭にしよんべんで、あるいは柳に風と受け流し、あなたはこたえないであろう。けれどもあなたを任命したところの総理大臣が、大蔵大臣小笠原三九郎は最適任者ではないということを言つたならば、あなたの権威はやはりそこに大きな損傷を受けるじやないか、職務執行の上において、最適任者がその責任において、その信頼においてその職務に当つていないということであれば、あなたは精神的にも、実際の運営の上においても障害を受けるであろうが、それと同じような状態に今一萬田があり、一萬田個人がどうあろうとも、日本銀行のナシヨナル・バンクとしてのその運営の上において支障するところ甚大なりと考えるのだが、私があなたをどうこう言うのではなくて、その任命権者あるいは解任権を持つておるところのその監督者が、そういうことを言つたということは行き過ぎではないかどうか、このことをあなたにお伺いしておきたいのですから、ひとつ率直に御答弁願いたいと思います。
  65. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私は何ら行き過ぎでもなく、私の所信を述べたにとどまつた考えておる。
  66. 春日一幸

    春日委員 それではよほどの必要があつて、その見解が表明されたと思うのであります。従いまして、今一萬田総裁が日本銀行の総裁として最適任者ではないというその言明を、ことさらに参議院においてなすつたというその理由についてひとつお伺いをいたしたいのであります。
  67. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私の信ずるところを述べただけで、理由は述べる必要はありません。
  68. 井上良二

    井上委員 私どもこの問題を、何も大蔵大臣言葉じりをつかまえて、ことさらいやがらせの質問をいたしておるのではありません。これは影響するところきわめて重大にして、かつかようなことが軽々に論議されるということは、日本金融行政の上に非常に重大な影響をもたらすゆえでありまして、決して私どもはことさらにあなたの言葉じりを歪曲してとやかく言うておりませんから、この点はひとつ冷静に御判断願つて御答弁いただきたい。  そこで私が伺いますが、あなたとして、他人をもつてかえることのでき得ないような絶対最適任者とは考えておらない、かような御心境のような御答弁でございました。そういたしますと、かりに万が一、一萬田氏がかようなことが影響いたしまして——また従来一萬田日銀総裁の更迭問題が与党内部においても、また財界の一部においてもいろいろうわさされておるということを、われわれは新聞を通して知つておるのですが、さようなことの結論としてあなたが最適任者にあらず、かようなことを国権の最高機関を通して表明されたことが原因なつて、一萬田氏がここに辞表を提出いたしました場合は、あなたはその辞表を受理されますか、これを伺いたい。
  69. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 現実の問題に対しては、実情に即して処理します。
  70. 井上良二

    井上委員 現実の問題に対してというわけではありません。問題は現実化されて来ております。おそらくあなた方与党の幹部の方々や、あるいは閣僚の一部の一萬田氏を更迭するための精神的なデモンストレーシヨンではないかと私はにらんでおる。もしさようなことが事実といたしまするならば、これははなはだもつて金融界に対する大きな不安の因子をつくる結果となつて、大蔵大臣としてとるべき処置ではないと私は考える、さような意味からあなた自身として、一萬田氏が辞表を提出した場合、あなた自身はその場合は最適任者でないとお考えなつているのだから、当然その辞表はあつさりと自分が受取つて、自分が最適任者と考えものとこれをかえるということがほんとうの心境じやありませんか。さような意味ではないのですか、それとは違うのですか。
  71. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 別に総裁の任期というものは、先ほどお話なつたように閣議できめることになつております。従つて閣議前にかれこれ私の意見を述べることはできません。
  72. 井上良二

    井上委員 閣議の意思はあなたの意思で大部分左右され得るので、あなたが直接日銀の業務監督者として、また日銀の総裁がさような感情のもとに動かされておるということになりますなをは——日銀の業務内容なり総裁の地位なりのことについて一番詳しく知られておるあなたの意見によつて、閣議は百パーセント私は左右されると考える、そういうようなことは常識であります。それにあなた自身がこの問題に対して何ら明確な御答弁をされずに、このまま日を過すということは一層金融界に与える影響の重大なことをお考えになりませんか。こういうもやもやした気持でこのまま日銀総裁を置くということは、あなた自身金融界にさほどの影響がないとお考えでありますか、この点をお伺いいたします。
  73. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 金融界にさほどの影響あるとは考えておりません。
  74. 井上良二

    井上委員 伺いますが、さようにいたしますと、一国の中央銀行の総裁が時の政府大蔵大臣から最適任者と思わぬというようなことを言われて、これが当人に及ぼす影響、これを取巻く人々のいろいろな以心伝心による流言、デマというようなものがどう影響するかということについて、あなたはお考えなつておりませんか。さようなことは全然ないと考えておりますか。
  75. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 最適任という言葉は、繰返し私が言つている通りで、最適任者とも考えないということを言われたとこが、そういう影響を持つとは私は考えません。
  76. 井上良二

    井上委員 それはどうも大臣としては、自分の言うたことに対して責任を考えない吉田暴言と一緒であります。私はまつたくこれは一つの暴言であると考えます。言い過ぎであると考える。与党である有田君でさえ、あなたの発言は言い過ぎだ、かように批判しているくらいである。あなた自身も有田君の質問に対して、一萬田氏の過去における金融行政の功績をたたえて、ほんとうによくやつてくれた、もし万一本入が円満退職する場合には、十分な待遇をしてはなむけをしてやりたい、かような御答弁をされておる。さようにあなたが思う人に、絶対不信用を来すような言動をいたすという裏には、今春日君が質問をいたしておりましたが、これはあなた方の関係内部において、一萬田更迭についての何かお話があるのではありませんか、全然さような話はありませんか。これを伺いたい。
  77. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私どもそういうことについてはお答えができません。もし今のようなことが具体的にかれこれありましたときは、よく協議をして処理いたします。
  78. 春日一幸

    春日委員 やはりこれは納得はできません。私は端的にお伺いをいたしますが、日本銀行の使命、性格から考えまして、こういう重要責務を担うところの総裁は、最適任者がその衝に当らなければならぬと思う。一萬田氏が最適任者でないと思うならば、最適者ととりかえる意思はないかどうか、この点をひとつお伺いいたしたい。
  79. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 いかなる場合でも、最適任者が得られることが望ましいのでありますけれども、これはどの人事でも次善の人がなつたり、三番目の人がなつたりすることは、あなた方もよく御承知の通りであります。従いまして最適任者でないということは、あなたにさつきお答えしているように、適任者でないというのではなく、最適任者とも考えないということを言つているのであります。
  80. 春日一幸

    春日委員 一萬田氏は昭和二十一年に任命されて、昭和二十六年に重任されているわけであります。重ねてその重き任務を負つたということは、よほどその成果が高かつたからであろう、しかもその職責を果されたからこそ重任を受けたのだと思うのであります。これは、選考されますときはおのずから選考基準というものがあるでありましよう。そのいろいろな選考者たちがその基準の上に立つて人を選び出して来て、そこでできた結論が結局一萬田氏が重任するということであるならば、任命されたその当時においては最高の適任者として政府がこれを任命して、国会に承認を求めて来たのだと私は思うのだが、ほかにも最高の適任考があつたにもかかわらず、次善、三善の一萬田氏を持つて来てこの重き任務に配したという理由は、あなたに御答弁ができるかどうか、御答弁ができたらひとつしていただきたい。
  81. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 当時私は閣僚でなかつたので、答弁ができません。
  82. 春日一幸

    春日委員 その当時、閣議が責任をもつて国民の前に、この一萬田氏を最高の適任者として推薦をして来た。ところが吉田内閣はその後ずつと継続をしておりまして、あなたは、その後入閣をされたわけであります。ところが閣議がおそらく最高の適任者として推薦をして来たものを、しかも法律によれば任期は五年と規定されておるのだ炉、任期半ばにしてその最高の適任者の適格性を喪失しているかのごとき点については、何らかその原因があろうと思うのでありますが、ひとつその理由を国民の前にお示しを願いたいと思うのであります。
  83. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 適格性を欠いたと言つたことはございません。あなたはいつも、適格性を欠いておるなら事実を示せと言うが、私はいまだかつてそういうことを言つたことはない。あなたの質問に対してお答えしている通り、最適任者とも考えない、すなわち余人をもつてかえられないとも思わないと答弁しているのであつて、これは私の所信を述べたのだから、理由を申し述べる必要はありません。
  84. 春日一幸

    春日委員 やつぱり納得さしてもらわなければ、くどいようでも質問をしなければ私の任務は果せないわけであります。日本銀行の総裁は重責なんだから、最高の適任者に当つてもらわなければ困るのですよ。次善、三善の、二流、三流の人物でこういう任務を遂行してもらつては、国民経済の能力遂行の上に支障がある。これはだれだつて考えられると思う。やはり試合をするときには、その本チャンが出て試合をしてもらわなければ困る。かけがえのできにくい、最高の人を政府の責任においてその衝に当らしめなければならないと思うのだが、この人は最高の適任者でないとあなたが断定した以上、最適任者をあなたは求める義務がある。従つてあなたにはその最高の適任者と更迭させる義務があると思うが、その意思ありやいなや。ひとつその言明に対する今後の見通しについて、あなたの御見解を承りたいのであります。
  85. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 自分の所見はたびたび述べた通りで、もはやこれを繰返しません。
  86. 春日一幸

    春日委員 私の申し上げましたのは、この一萬田さんが最高の適任者ではない、そうであるならば、やはり最高の適任者をもつてこの衝に当らせていただくということが、日本銀行にふさわしい人事を行うこの内閣の責任であろうと思うのであつて、従つて、この最高の適任者でないということは、最高の適任者としての適格性を喪失したのです。最高の適任考であつたからこそ、二十六年にこの内閣がこれを選任したのである。その後そうでなくなつたということは、やはりその最高の適任考としての適格性を喪失したのだから、その喪失した理由は何であろうとも、そうなつた以上はしかたがない、従つて最高の適任者とこれをかえていただいて、そうして政府日本銀行が一心同体になつてしつかりやつてもらわなければ困る筋合いのものだと私は思うのだが、それを更迭する意思があるのかどうか、この点を伺つてみたいと思います。
  87. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 すでにたびたびお答えした通りであつて、繰返しません。ただ一言申し上げておきますが、ただいまのところ、金融行政等において私どもは十分連絡をとつてやつておるので、御心配のような点は何もございません。
  88. 井上良二

    井上委員 ただいま大蔵大臣は、政府金融政策の上から考えて、別に日本銀行総裁を更迭する意思はないということを明確にされております。ところが先般、自由党の政調会の方で、新政策を打出したいから、大蔵省として新政策をひとつ盛り込んで、大蔵省の見た新経済政策というようなものを一ぺん考えてみてくれ、こういうことで大蔵省案として新聞に発表されておるのがございます。これによりますと、政府は新たに金融政策を遂行するにあたつて、金町支配権というもの政府の手に掌握しようとする意図が、この政策の中に明確に現われております。との金融支配権を政府の手に掌握しようとする場合は、当然金融の中立性というか、いずれの政治勢力にも支配されず、日本の置かれております経済の諸般の情勢の上に立つて、最も効率的な面に金融が合理的に行われて行くという堅実な金融行政は行われずして、政府の圧力によつて、あるいは与党の思うままに金融が動かされる危険性が、この政策の具体化によつては多分に現われて来るということが見抜かれるのであります。そういたしますと、さような政策を具体化するにあたつては、いわゆるその最高の責任者たる総裁というものは、少くとも与党の息のかかつた与党政策をすなおに遂行し得る人がその地位につくことが最も妥当である、これは常識的にさように考えられるのであります。さような意味合いから考えまして、あなたはわれわれの質問に、現在の日銀総裁を更迭する意思なしということを申しておりますが、また現に与党の中からも、九月九日のただいまは更迭する意思はないが、その後に起る新しい情勢によつては更迭するかもしれないということを裏書きしておるのであつて、さような意味合いから考えるときに、これは何か政治的な大きな含みが日銀総裁更迭問題に起つておりはしないかということにつき、国民一般、特に財界、金融界の面で強い一つのうわさが飛んでおるわけでありまして、かようなうわさを打消す上からも、ここ当分、少くとも日銀総裁の任期満了するまでは、一切さような意思は持つていないということの言明ができますか。この点を明確にされたい。
  89. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私どもは、与えられた日銀法に基く権限の行使については、慎重を期しますけれども、その与えられた責任は果す所存であります。従いまして、任期中どうこうというようなことについては、ここで申す限りでございません。これは自分の権限をここで放棄するようなことになつて、かようなことについてかれこれ言うことはできません。また責任を果す上から言つても、いかなる場合でも自己の責任を十分に果し得るようにいたしたいと思います。  なお、そのほかにいろいろな内容があるのじやないかということについては、私どもはそういう内容は一切開いておりません。また私どもは、実は金融政策の円滑なる推進を衷心からこいねがつておるのであつて、この点さつき内藤さんが言われた、絶えず日に三たび省みているかということは、日本銀行でも現在のところはよくやつておりますけれども、しかしこの金融政策について、さつき内藤さんの言われた言葉に、なつておらぬじやないかという非難もあつたくらいで、これは十分省みて、もつと円滑に事をやつてもらわなければならないと考えております。
  90. 井上良二

    井上委員 ただいま大蔵大臣は、ただいまのところはさようなことは考えてない、こういうお話でございました。私の一番聞かんとしておるところは、日銀総裁更迭問題をめぐつて財界、金融界及び一般の国民は、何かここに大きな政治的意図が漂うておるような印象を強く受けておるのです。このことを早く払拭しませんと、中央機関たる日銀の機能の円満な運営の上にいろいろ支障を来しはせぬかと、こう私は考える。これは一つ政治的な問題でありますから、大蔵大臣として特に発言されました、最適任者とも考えないということが、いろいろな誤解を生じて、これがまたいろいろ政治的に利用されて、とやかくのうわさを一層高めて行く大きな原因になることを憂えるのであります。さような意味から、政府としては、少くともわが国の金融情勢の安定化を望むところから、日銀総裁はこの際は更迭する意思がないということを言明することが、あなたのこの問題に対するいろいろな疑いを受けました発言に対しても、それを明確にすることであり、また更迭問題に対する国民の疑惑を一掃することになりはせぬかと思いますから、その点に対するあなたの率直な——さようなことを今政府考えておらぬということを、ひとつ国民に対してお答えを願いたい。
  91. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 政府政府の責任において、この問題について最善を尽します。
  92. 内藤友明

    内藤委員 関連して。日銀総裁の問題につきましては、いろいろ承つておりますと、どうも私ども了解しにくいところがあるのであります。それは、最適任者でない、余人はたくさんおるぞというふうな御説明でありますけれどもちよつとこれは私ども常識的な言葉ではないと思う。もしそうであるならばあるで、大蔵大臣は非常に豊富な政治的手腕をお持ちなんでありますから、私はそんなことを言わぬでも、おだやかに事が納まるのではねいかと思うのであります。私は何も一萬田さんの肩を持つとか持たぬとかいうことは何にもない、そんなことはどうでもよいのであります。ただ日銀総裁というものに対して、直接の監督の立場にあるあなたがそういう御批評をなさることは、どうかと思うのであります。だから私がこの際委員長にお願い申し上げたいのは、今までこの委員会で論議のありました大蔵大臣言葉でありますが、これはどうも穏当を欠くように思いますので、委員長からひとつ静かに大蔵大臣お話しいただきまして、お取消し願えればまことにけつこう。日本の財界にとりましてはこれほどけつこうなことなし。もしそう願えなければ、あまりそういう言葉を肩を怒らしておつしやらないように、委員長から大蔵大臣お話し願えないものだろうか、別にこれは動議でも何でもありません。私はそういう固苦しいことはしたくないのであります。こういうことは心理的な影響を及ぼすとところ大きいものでありますから、りくつ抜きで——委員長はそういう政治的な手腕の豊富な方でありますから、大蔵大臣と膝をつき合せて、そこらあたりひとつ了解していただいて、参議院の大蔵委員会、衆議院の大蔵委員会で、あまり肩を怒らして、そり身になつて言わぬでもいいと思うのでありますが、もしまたこれは、大蔵大臣も吉田さんみたいになつたのではないかというようなことを世間に言われますと、大蔵大臣に対しても申訳ないと思いますが、そこらあたりのお話合いを願いたいものだということの意見をひとつ申し上げたいと思うのであります。  実は昨年私どもがベルギーに行きましたときに、国立銀行のフレル総裁でありましたか、その方にお会いいたしまして——これはあなたにも去年アメリカでお会いしたいということを、非常に得意になつて話しておられた方でありますが、この方が、国立銀行のこういう仕事というものは、じつくり腰をおちつけてやるべきものだということをおつしやつておられた。ところが日本の国はなかなかベルギーのように行きません。こういうとんでもない経済基盤の弱い国で、きようあつてあすないような国でありますから、(笑声)大蔵大臣はそういうむちやなこともおつしやると思うのでありますが、何だかいろいろ考えてみますと、どうも大蔵大臣日本の国を代表した気持なつておるように考えられますので、よけい残念に思うのであります。でありますから、どうかひとつ委員長小笠原さんと何か話合いをしていただきまして、そんなことを肩を怒らしておつしやらないように、もつと円満な政治的な扱いを願えないものだろうかということを委員長にお願い申上げたいのであります。
  93. 春日一幸

    春日委員 ずつとこの問題を中心といたしまして、それぞれ委員が手をかえ品をかえるというと何ですが、この暗雲低迷しておる日本銀行総裁問題を明らかにして、そうして金融界に不明朗なものありといたしますればこれを一掃したい、こういう考え方で大臣に質問を展開して参つたのでありますが、遺憾ながら決算委員会のあのひようたんなまずのような、ぬらりくらりしたような御答弁で、真相には触れられない。更迭されるともつかず、されないともつかず、それかといつて、最高の適任者ではないというこの罵詈雑言のまま残されておる。われわれはこの質問を通じて何一つ納得したものはないのであります。  そこで私が質問を終るにあたりまして大臣に一言申し述べておきたいのは、あの人が最高の適任者でないとするならば、これはすべからく更迭をされて、そうして更迭をした後において、これは最高の適任者でなかつたからかくかくかように更迭したのだ、こういう発表をされるのが妥当であろうと思うのでございまして、まだ人事が何ら行われてはいない、更迭が行われていない先に、その現任者に対してこの人は最高の適任者ではないという刻印を押すということは、その監督者として妥当性を欠く点が非常に大きいと思います。この事柄からよつて来るところの問題として、金融界に対してあなたは何ら動揺衝撃を与えていないと言われておるが、現実の執行運営の上において日銀相当な衝撃を受け、今後の執行の上に相当な支障を来すと思いますが、一にかかつて全責任はあなたにあるということを申し上げて、私の質問を終ります。
  94. 井上良二

    井上委員 大蔵大臣に率直に伺いますが、ただいま内藤さんからお話になりましたことに対してのあなたの御心境はどうでありますか。
  95. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 どうも仮定の問題でありますからお答えができませんが、さようなことがありました場合には、よく事実を明らかにしたいと存じます。
  96. 井上良二

    井上委員 大蔵大臣は、新聞によると近く外遊をされるそうですけれども、その外遊は何の目的で外遊をされますか。それからこれが問題の吉田外遊の何か下ごしらえになりはせぬかということがいわれておりますが、吉田外遊との関係はどうなつておりますか。たとえば外資導入、あるいはその他の問題がございますから、これらの問題にどう関連をするかということと、この外遊前に日銀総裁問題について更迭がされるのではないかといわれておるし、また外遊からお帰りになつた後にこの問題は具体化するのでないかということがいわれておりますが、あなたは、さような近い将来に日銀総裁というような重要な職責にある者を軽々に更迭する意思なしとお考えなつておりますか、この点について、この外遊とあなたの日銀総裁の指揮監督の立場からの御所見を伺つておきたい。
  97. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私の今回行きまするのは、九月の二十四日から開かれる国際通貨基金並びに国際復興開発銀行の第九次年次総会に日本代表として出席するためでありまして、これは毎年各国の大蔵大臣等がみなその国を代表して出席しておるのであります。何らそれ以外のことはございません。但し向うから何かと話が出たときにはよく伺つて来ることもございましようし、さらにまた私の知つておることで答弁することもありましようし、あるいはまた復興開発銀行につきましては、ちようど目下いろいろな借款等の話があるときでございますから、自然その話が出れば私が説明等のことをするときもあろう、かように考えております。
  98. 井上良二

    井上委員 その前後に一体総裁の更迭をするかどうか。
  99. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 その問題はすでにたびたびお答えした通りでございます。
  100. 千葉三郎

    千葉委員長 有田君。
  101. 有田二郎

    ○有田(二)委員 この際大蔵大臣に御所見を伺いたい。銀行局長と主税局長がおられますから、この際大蔵大臣にはつきり御意見をちようだいしたいのは、実は四年ほど前から、この国政調査の際にいつも痛感することは、金融機関の更正決定の問題であります。銀行相互銀行あるいは信用金庫、こういうものがほとんど更正決定を受けておる。これは銀行局長通達と主税局長通達との間に幾分見解の相違があり、一つの例をあげますと、たとえば不良貸付の整理の解釈について、銀行局長通達と国税庁の方の見解とが違うというようなことがありまして、金融機関はほとんどあげて更正決定を受けておる。金融機関というものは、やはり何と申しましても信用を重んじなければならないものでありまして、最も信用ということを中心としておる銀行なりあるいは相互銀行なり信用金庫なり、あらゆる金融機関がいつでも税金の場合に更正決定を受けるということは、はなはだ遺憾なことである。私はこれについて、再々国政調査の結果、本委員会においても、また銀行局、主税局におきましても、どうか両局長間に話合いをしていただいて、それはあやまちもありましようから、修正申告させるとか、あるいは何らかの方法をさせるべきであつてこれがやはり原因をしまして、銀行と税務署との間に末端において対立がある。それで銀行の方ではなるべく脱税を慫慂するようにしている。それに対して税務署の方では、頭からがんとやつて何とか取立てようとするというような、末端において銀行あるいは国税庁の査察課なり調査課の間に一つの感情の対立が生れて来るのであります。従いまして、きようお越しになつておられる主税局長と銀行局長ちよつと親しく話をされたら、この問題は解決がつくと思う。ひとつ大蔵大臣のこれに対する御所見を承りたいと思います。
  102. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 有田さんのおつしやつたことはよくわかるのです。銀行局の面で見ますると、銀行の内部蓄積等についての考え方が、税務署で見るのとは多少差があることがあつて、今お話の通りになつておるのじやないかと思います。従いましてこのいきさつにつきましては、それぞれの局長から御答弁申し上げますが、なお御趣意の点はよく内部の調整に重きを置けということでございますので、この点は十分いたしたいと存じます。
  103. 有田二郎

    ○有田(二)委員 実はデフレ下のこういう情勢になりましたので、金利の引下げについて大臣はこの際何らかお考えなつておられるか。私は、金利の引下げということは当然考えられなければならない問題だと思うのでありますが、こういう非常なデフレ状態になりました関係上、大蔵大臣として、このデフレ下の金利引下げの対策についての御所見を承りたいと思います。
  104. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 デフレ政策推進の途上においては、むしろ逆の場合、金利引上げ等のことがあることは、有田さん御承知の通りであります。けれども、効果をだんだん生んで参ります場合、特にいろいろな生産費とか、あるいはその他の点から見まして、これはだんだんと金利を下げる方向をとらなければならぬことはお話の通りだと存じます。但し日本の現在の銀行資金構成から見ますと、なかなか急には下げにくいと思いまするが、方針といたしましては、金利引下げの方針に持つて参りたい、かように考えております。
  105. 千葉三郎

    千葉委員長 ちよつとお諮りしますけれども大蔵大臣は一時からビルマの賠償使節団と会うのだそうです。そこで今質問が残つている方々は井上小川、平岡、三氏が残つております。ですからそれを簡単にやつていただきまして、三人をこの際終らせたいと思います。
  106. 春日一幸

    春日委員 ぼくは五秒で済みますから……。ちよつと簡単にお伺いいたしますが、大臣が昨年アメリカにいらつしやいましたとき、フレキシ・ボードを製造しておりますジヨンス・マンビルとかいう会社があるそうでありますが、そこへ御訪問になつたことがありますかどうか。このフレキシーボードの日米合弁会社の問題が本委員会においてすでに数次にわたつて論議されましたが、大臣は御出席になつておりませんので、いろいろ資料になりますので、御訪問になつたことがあるかどうか、ちよつとお伺いいたします。
  107. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ニューヨークの郊外におけるジヨンス・マンビルの研究所は、三百万ドル以上を投じたりつばなものであります。従いまして私もこの研究所を案内を受けたのでありますが、ジヨンス・マンビル会社を訪問したような事実はありません。
  108. 春日一幸

    春日委員 そういたしますと、ジヨンス・マンビル会社の資本と技術導入について、アメリカにおいてジヨンス・マンビル会社から御要請を受けられたとか、あるいは御要談に対して言質を与えられたとか、そういうようなことはないものと理解してよろしゆうございますか。
  109. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 さような事実は全然ございません。
  110. 春日一幸

    春日委員 了解いたしました。
  111. 千葉三郎

  112. 井上良二

    井上委員 ちよつとこの際伺いますが、最近新聞の報道によりますと、全国主要銀行中ベース・アップの問題が取上げられて、これが具体的に要請されつつあるときに、多分銀行局が、直接そのベース・アップの運動に政府自身タッチすることは困るが、しかし金融全般的な立場から他の産業との関連においてこの際ベース・アップを要求するがごときは妥当な処置とは考えられないから、各銀行はさような要求があつても、かような要求を聞くことは相ならぬ、こういう通達を出したとか出さぬとかいう話がありますが、これを大蔵大臣お聞きになつておりますか。
  113. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 さような通達は出しておると聞いておりません。ただ、さつきちようどお話があつたように、日本の金利を漸次下げなければならぬということが一般の要望であります。ところが現在日本の各普通銀行資金コストは、大体七分二、三厘に達しておることも井上さん御承知だと思います。従いましてできるだけこの際資金コストを安くする意味で、銀行企業の合理化その他のことについても、大いにやつてもらわわなければならぬが、同時にこの人件費等についても、あまり増加しないようにというこの増加の趨勢をとめる意味での話があつたことかと思います。これは銀行局長の方で直接いろいろやつております。そういうことはあつたかと思いますが、主としてこれは銀行の今のかさんで行く資金コストをこれ以上高めたくないという配慮から来ておるものと思います。
  114. 井上良二

    井上委員 それでは私はあとで銀行局長に聞きますから、他の大蔵大臣に対する質問を先にやらしていただきます。
  115. 千葉三郎

  116. 小川豊明

    小川(豊)委員 大蔵大臣にお伺いいたします。池田さんや愛知さんがアメリカへ特使として行かれて、その場合アメリカとの間に日本防衛五箇年計画というものが一応了承された。そうしてそれが最終的に三十一万五千の防衛隊を置く。そういうことから、ことしも三万、来年も四万増強して行く、こういうふうにわれわれは承知しているのですが、この可否を私は論じているのではないのです。そうではなくて、これを日本の財政面から見て行くとき、三十一年度以降には、特別の事情の変化がない限り、予算の編成というものは非常に困難になつてしまう。どうしてもそういう点からいうと、憲法を改正して徴兵制度をしかないことには、この予算編成というものは困難なんですが、政府は憲法の改正はしない、従つて徴兵制もとらないということを言明されておる。今そのことのよしあしを論ずるのではなくて、三十一年度以降の予算編成というものは、そういうことが前提にならなくては非常に困難だ、そういうことが私は考えられる、そこで今、本年度あるいは来年度の予算等はそういう前提がなくてもやつて行けるという見通しのもとに編成なさつておるのかどうか。たいへん長い先の話で恐縮ですが、お伺いいたしたい。
  117. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 防衛問題については、小川さんもお聞き及びの通り、五箇年計画というものはないというふうにいわれており、私どもも承知いたしておりません、ただ来年度はおよそこれくらいだということは、いつも承知してその年の予算を組んでおるのであります。つまりおよそこういうことは来年度には予想されるという、次の年の分についての大よそのことを聞いて予算を組んでおるのは事実でありますが、ただいまのところ、まだ三十年度の予算も出ておりませんし、輪郭にも接しておりません。従つて三十一年度がどうなるかということは、この三十年度が出ますときには、自然およそこうなるのだという一応の見通しについては話を受けますが、これはいつも大よそでございます。それ以上受けませんので、ただいまのところこういうことについて何にも申し上げる材料を持つておりません。
  118. 小川豊明

    小川(豊)委員 たいへん時間を急がれておるので、私はこの点もつとお尋ねしたいが先へ進みます。  今度自由党が発表されたいわゆる新経済政策、発表されたものの外貌だけを新聞を通じて私は見たので、これに対する何らの批評の余地はないのでありますが、今までのインフレ政策——政策と言うのは何ですが、ともかくインフレ政策をデフレ政策に切りかえてやつて来たが、今度の新経済政策というものの外貌を見ますときに、この中に統制のにおいが私どもには相当強く感じられて来ているわけです。それでインフレからデフレ、さらにわくをつくる経済というふうに切りかえられて行くとき、引伸ばしたり、あるいは収縮したり、わくへ押し込んだりするそうした過程一の中で、中小企業や労働者、農漁民等が非常に圧迫される形が出て来ることは当然であつて、そこには中小企業の倒産も出て来る、失業者の増大もできて来る。そこでこういうふうな政策を立てる場合には、中小企業対策とか、あるいは失業対策等の用意と準備がなくして経済政策を変更して行くことは、いたずらに社会不安を増大することになる。そういうことから、来年度の予算編成にあたつて、政府が持つておる中小企業対策なり失業対策なりというもの——まだこれはもちろん過程であるから、私もこうであるということはお聞きしようとは思いませんが、大臣はこれに対してどういう考えをもつて臨まれるかということをお尋ねしたいと思います。
  119. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 中小企業に対する措置につきましては、お手元へ表が配つてありますので、今までとりました措置はひとつごらんを願いたいと存じております。私どもはできるだけのことをいたして参つておると存じますが、しかしなお今後とも中小企業者に対する問題は——これをわけますと、業者自体がいろいろやるべき方面を除きますと、主として一つ金融の面であり、一つ税制の面であると存じます。従つて今後とも金融をどうするか、税制をどうするかという問題については十分検討を加えて、中小企業者の立場に対して適当な措置をとりたい、かように考えております。  お話になりました失業対策は、こういう仕事をやつて参りますときにはきわめて肝要なことでございますので、昨年秋このことを決意しまして以来、ちようど前年度より社会保障費的失業保険費その他を全部合せまして、五%ずつそれぞれ増額いたしておきましたが、これではなお若干足らぬところが現実の問題として出て来るのではないかと存じます。もし出て参るようなことがございますれば、さきに実行予算という言葉でいわれておる運用上保留してある分等もございますので、これを財源とした適当な予算措置をとりたいとも考えております。しかしいずれにしましても、ただいまのところは、来年三月分までの予算がとつてありますので、その必要はございません。  そこでお尋ねの三十年度はどうかというお話でございますが、三十年度の予算は組んでおりませんけれども、先ごろも私が三十年度についてのいわゆる標準予算といいますか、ほとんどきまつたようなものについて、交渉せぬでもいいようなぐあいにしますときの話の一つとしまして、やはり来年はこういう情勢だから、社会保障費的なものは若干増額する必要がある、こう思うので、これらの増額を見る必要があろう、こういうことを私は言つておるのでありまして、これは十分考えるつもりであります。
  120. 小川豊明

    小川(豊)委員 失業対策は、今のところ生活の補助と緊急失業対策補助と、この二つが二本建になつておるようであります。これは今の若干増額するというようなことではなかなか困難ではないか、この点についてはもつと大幅に増額することをお考えにならないと、今日の失業者の増大というもの数字を見てもはつきり出て来ている。ことにせんだつての報道で見ますと、完全失業者は五十八万、今まではここ二、三年四十六、七万であつたのが、急にここで五十八万になつて来ておる。これはたいへんなことだ。従つてこの点については十二分にお考え願わなければならぬが、この議論は打切ります。  もう一つは、最近の金融の引締めが影響して来ておると思いますが、中小企業のみならず、大企業にもさらに相当の困難が出て来ておる。従つてこの大企業から下請機関である中小企業等に注文をなされたその支払いの手形、これが六十日から九十日、百日にもなつているというようなことが中小企業を非常に圧迫しているわけです。こういう現実を見て行くときにお尋ねしたいと思うことは、大企業が下請の中小企業等に手形で支払う等の場合、これは私は幾日ということは言い切れませんが、六十日なり、あるいは九十日なりを越えてはならないということを法律で規定して、制度化して中小企業を守るというようなお考えがあられるかどうか。さらにそれをするならば、その規定以上に手形が上まわる場合には、それをを制限する一定の金利を付した手形を出さなければならないというようなことは考えていいではないか、こう思いますけれども政府にそういう御意思があるかどうかお尋ねします。
  121. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 今の社会保障費的なものにつきましては、これは必要な額を来年度において考慮いたしたいと考えております。若干と申しましたのは、数字が見当りませんので若干ということを申したのでありまして、若干と言つたから僅少という意味ではございません。数字を申すことができなかつたから若干と申したのであります、必要な経費はもとより計上するつもりでおります。  それから今の下請に対する問題でございますが、これは今公取の方でいろいろこのことについての配慮をいたしておることはお聞き及びの通りだと思います。ただ実際問題として、手形を六十日にきめてしまうというようなことを法律的にやりましても、そうすると、今度注文しなくなるとかえつて困りはしないか、事実においてそこに注文しないとなると困る問題も起りましようと思うので、従つてあまり法律でこれをきめるというようなことはどうか、私どもはさような考えを今のところ持つておりません。ただ公取等でできるだけその間をあつせんいたしまして、これはいわば大企業者も中小企業者も一体としてやるべきものなんですから、その間を上手に調整するということで、経済問題はあまり法律によらずに処理いたしたいと考えております。
  122. 小川豊明

    小川(豊)委員 この問題についてはもう少し大臣の意見をお聞きしたいと思うのですが、一時までということで時間がありませんし、平岡さんも残つておりますから、平岡さんに譲ります。
  123. 千葉三郎

    千葉委員長 平岡君。
  124. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 あとで詳しいことは河野さんからお聞きしますが、ただMOF勘定設定をめぐりましての論議が新聞にちよつと出ておりましたので、政府の最終的な見解というものがきまつておるかどうか、すなわち、もつと具体的に言いますと、この勘定の設定を複数銀行に認めるか、単数を考えているか、この点を伺いたい。
  125. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 いわゆるMOF政府勘定をデポジツトリー・バンクにするかどうかという問題についてのお尋ねでありますが、これは為替銀行といたしまして認可いたしました東京銀行は認めました。その他の銀行につきましては、ただいまのところ十二ほど出ているところがあるかと思います。なお支店として置いているところが五つほどあるかと思います。これらについてどう処置するかという問題は、目下いろいろな観点から取調べておりますが、まだこれは結論に入つておりません。
  126. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 この一行だけに認めようという問題に対して、自由競争を阻害するという観点から反対論があろうと思うけれども、しかしこの専用銀行を設立した一つの趣旨は、そうした自由競争というか、国内市中銀行の自由競争ということに対する見解、認識から出発したものでありますから、国際的な視野からして集中的に、効率的に効果をあげるための措置をとるべきであろうと思うのであります。そこで政府も俗論に耳をかさず、果敢な措置をとつていただきたい、このことだけを申し上げて、あとのこまかい点は河野さんからお聞きしたいと思います。
  127. 春日一幸

    春日委員 たいへん恐縮なんですが、この五月三十一日の衆議院の本会議で、中小企業の危機打開に関する決議案が各党共同提案で出されました。そこの中に、ただいま大臣指摘のように、金融政策の問題があつたのだが、なかんずく金融問題として具体的に決議をしておるのは、政府指定預金の引揚げの猶予と新規預託なんです。この新規預託をされたいということは、場自由党も含めて本会議で満場一致で決議されている。その前段には、金融窮迫の事情がいろいろずつと述べて、ある。しかもこの金融梗塞打開のためにひとつ新規預託をしてくれ、こういうことを本会議で決定しておるのです。そして大臣から慎重に御要請にこたえるという御答弁があつたのだが、その後だんだんと金融書しくなつて来て、本問題について本委員会河野銀行局長に要請しておるのですが、なかなか事がそこへ運ばない。大臣の御出席がないものですから、最高責任者としての政府の見解をただす機会を得なかつたわけですが、一体衆議院の本会議の決議、すなわち衆議院の意思というもの大臣はどういうふうに考えておられるか。しかも衆議院の意思は、具体的に事を掲げて政府にその実施を迫つておるのだが。一体政府は新規預託をされる意思があるかどうか、されるとすればその時期はいつでもあるか。衆議院の本会議の議決が無視され、すでに三箇月経過しておりますが、明日御出席がないということでありますから、本日この問題について、なるたけ衆議院の期待にこたえるような御答弁を願いたいと思います。
  128. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 指定預金の問題につきましては、ある指定預金を延ばすことと新規預託の二つがあります。私どもはもちろん院議を尊重するのに十分な注意を払いたいと思つておりますが、そのうち六、七、八の三箇月につきまして、それぞれ四箇月ずつ延期したことは御承知の通りであります。ところが新規預託の問題でありますが、一つは財源の問題もございます。もう一つは、これは皆さん新聞等でもごらんになつた通りに、政府の散布資金、いわゆる財政資金の散布が割合巨額に上つておりまして、いつもですと引揚げであるべき時期に麦が増収になつたというような問題とか、あるいはまた貿易が改善されているというような問題がいろいろ作用しまして——これは作用するのはけつこうでありますが、政府の散布資金がむしろ引揚げ時期に多くなつているというのが実情なんです。特に第三・四半期になりますと、今の米作から見れば大体二千億くらい政府の財政資金の散布超過になるのではないか、かようにも実は考えております。ただ春日さんのおつしやるように、これは行く方面と今の中小企業方面とちよつと違うじやないかという点もあろうかと思いますが、全体の金融面から見ますれば、そういうぐあいに著しく緩和されて参るのであります。さような点から、ただいまのところこれらの点をよく勘案して適当な措置をとりたい、かように考えておるので、まだ新規預託をどうするかということは、今の財源の問題、財政資金の散布状況等から見てちよつと決定しかねている次第であります。
  129. 春日一幸

    春日委員 政府並びに日銀政策を通じてわれわれが分析をいたしておりますところでは、政府の指定預金は大体中小企業にウエートを置いております。ところが財政金融引締めを発表されました昨年の十月をめどとしますと、当時四百五十億あつたものがすつと減つて、今日ではほとんど三十億か四十億だろうと思われる。そうしますと、この間中小企業者の金は四百億くらい政府によつて回収されたわけです。ところが日本銀行の貸出しは、昨年の当該十月において三千四百五十億にとどまつていたものが、今日四千億を越えるということは、日本銀行の貸出しも中小企業が使つているといえばそれまでですが、その比重は、大企業と中小企業とではデータの示す通りで、大企業の六割何分、中小企業はその率が少いわけであります。従つて中小企業から引揚げられた四百億円内外の通貨が、今度は日本銀行市中銀行を通じて大企業に流れている、こういうような批判も現実には成り立ち得る。これは昨年十月と今日との通貨量がそう大した異同がないということから、いろいろそういう推測もできるわけです。そこで大企業は、日本銀行市中銀行との協力によつて一応資金はある程度減じているのだが、中小企業はこの四百億を引揚げられたことによつて一層資金の枯渇を来している。だんだん研究されていると申されますけれども、特に八月、九月は今までのうちで一番金融難であるという状態を、金融機関がそれぞれの現場において訴えているようであります。大臣に申し述べたいことは、この所論は各党を通じてのもので、河野銀行局長にその要請が強く行われておつた、ところがこれは大きな責任が伴うでありましよう。そこでこれは大臣の深い御理解による御措置を願わなければならぬ問題であると思うのでありますが、何といつたところで、自由党の諸君まで提案者となつて、しこうしてこれは満場一致で議決されておる。すなわち、衆議院が具体的な各項目を九項目もあげて満場一致でこれを議決したということは、これはよほどの事柄でありまして、当時大臣からそれに対して大いに慎重に考慮して善処するという御答弁もあつた。私どもはこの議決が行われてたからには——新規預託は本委員会の長い懸案ではあつたのだが、本会議の決議をとつたことによつて、政府をしてこれを実施せしめることができる、政府もこれに対して御理解を賜わつたものとわれわれは期待しておつたのでありまするが、四箇月を経過した今日なおその実施に至つておりません。伺いますと、慎重に検討を加えてその実施を云々ということであります。農村方面にはいろいろな金が流れて参るでありましようし、大企業にも救済融資がいろいろ行われましようが、結局中小企業者が当てにいたしておりますところの政策資金源というものは、昭和二十四年以来この指定預金に依存している度合いが非常に高かつたのでありますから、その実態をよく御把握願いまして、指定預金の新規預託について十分御検討いただくことを強く要望いたします。これに対してどんなものか、もつと色気のある御返事を願いたいと思います。
  130. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 春日君の言われることはよくわかるが、私どもは全体の目から見て、今年のような政府資金の散布超過状況になるときにはいろいろなことを考えなければなりませんが、ただ先ほどもちよつと申した通り、散布状況は、受けるものと中小企業ちよつと違う場合もありますので、それをどういうふうに調整して行くかということで、今検討しておりますから、これは国会の御意思もあり、十分検討、善処することにいたします。
  131. 千葉三郎

    千葉委員長 本日はこの程度にとどめまして、次会は明十日の午前十時半から開会することにいたします。  なお理事の方々に申し上げますが、明日は午前十時から理事会を開きますから御参集願います。そうして先ほどの内藤君からの発言のある点も御相談したいと思います。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十一分散会