運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-04-21 第19回国会 衆議院 大蔵委員会 第44号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月二十一日(水曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 千葉 三郎君    理事 淺香 忠雄君 理事 黒金 泰美君    理事 坊  秀男君 理事 山本 勝市君    理事 内藤 友明君 理事 久保田鶴松君    理事 井上 良二君       宇都宮徳馬君    大平 正芳君       苫米地英俊君    福田 赳夫君       堀川 恭平君    福田 繁芳君       小川 豊明君    春日 一幸君       平岡忠次郎君    山村新治郎君  出席政府委員         大蔵政務次官  植木庚子郎君         大蔵事務官         (管財局長)  窪谷 直光君         大蔵事務官         (銀行局長)  河野 通一君  委員外出席者         大蔵事務官         (銀行局銀行課         長)      谷村  裕君         専  門  員 椎木 文也君         専  門  員 黒田 久太君     ————————————— 四月二十一日  委員有田二郎君辞任につき、その補欠として堀  川恭平君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 四月二十日  物品の無償貸付及び譲与等に関する法律の一部  を改正する法律案内閣提出第一五八号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  経済援助資金特別会計法案内閣提出第一〇四  号)  金融機関再建整備法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一〇八号)  旧日本占領地域本店を有する会社本邦内に  ある財産整理に関する政令の一部を改正する  法律案内閣提出第一〇九号)  閉鎖機関令の一部を改正する法律案内閣提出  第一一一号)  出資受入預り金及び金利等取締に関する  法律案内閣提出第八一号)  証券取引法の一部を改正する法律案内閣提出  第八八号)     —————————————
  2. 千葉三郎

    ○千葉委員長 これより会議を開きます。  本日はまず金融機関再建整備法の一部を改正する法律案、旧日本占領地域本店を有する会社本邦内にある財産整理に関する政令の一部を改正する法律案閉鎖機関令の一部を改正する法律案経済援助資金特別会計法案出資受入預り金及び金利等取締に関する法律案証券取引法の一節を改正する法律案の六案を一括議題として質疑を続行いたします。質疑は通告順によつてこれを許します。まず井上良二君。
  3. 井上良二

    井上委員 最初金融機関再建整備法に関連して二、三質問をいたしたいと思います。  この法案に盛られております内容をいろいろ検討いたします場合、金融機関の旧勘定に属した資産を再評価するということがありますが、この旧勘定資産を再評価した額は一体どのくらいなつておりますか。それからその再評価は一体どんな方法で、だれが立ち会って監督して来たか、これは非常に大事な問題でありますので、一応その経過及び監督といいますか、審査の結果、そういうことについて御説明を願いたい。
  4. 河野通一

    河野政府委員 金融機関の再評価は再評価法その他の法律従つていたして参つております。従いまして、この法律に適合いたしてやつておる限りにおきましては、私どもはその再評価を認めて参つておるわけであります。もつとも金融機関のうちで調整勘定、つまり勘定の残がまだ残つておるのにつきましては、一般のそういつた過去のくされを持っておりませんものに対する再評価の場合と、若干資本組入れその他の点において取扱いが違つておることは御承知通りであります。  なお再評価をどの程度いたしましたかの実績につきましては、銀行課長の方から御説明申し上げます。
  5. 谷村裕

    谷村説明員 ただいま金額について御質問がございましたが、ただいままで私どもの方でわかつておりますのは、動産、不動産合せまして再評価の差額、すなわち再評価による増加分が百十六億五千九百万円、こういう金額になつております。これは銀行だけでございます。
  6. 井上良二

    井上委員 今度新たに確定評価基準を設けて、これによつて評価を行った場合は閉鎖をしてもよい、こういう調整勘定規定を設けて来たのですが、この確定評価基準というものは一体どういう方法できめられるのですか。
  7. 河野通一

    河野政府委員 確定評価と申しますと、手続といたしましては、大蔵省告示に従ってその評価基準をきめるわけであります。たとえば、今日勘定資産になつておりますもののうちで、満鉄の株式といったようなもの、あるいは北支開発の社債といつたようなもの、こういつたようなものがいつまでたつて整理ができないわけであります。今後の推移によりましてかりにこれがある幾ばくかの価値があることがはつきりするか、あるいは価値が全然ないということがはつきりいたした場合においては、それに対してかりに価値が全然ないということになりました場合には、確定評価基準としてゼロ、こう評価をいたすわけであります。この評価の仕方は現実にはむずかしい問題だと思いますが、将来のそういつた外地関係有価証券等につきましては、外交交渉その他の推移等をよく見きわめまして、確実なところで押えて行きたい。これはあまりにかたく押え過ぎますと、旧勘定債権者に対してかえつて利益を害することになります。これを甘くやり過ぎますと、今度は新勘定利益を害することになりますので、これらの点につきましては相当確実に、この程度というところまではつきり出るのでなければ確定評価基準がきめられないということになるわけであります。しかしながら私どもは、一方では戦後の跡と始末のしりでありますところ調整勘定というものが許されるならば、なるべく早く整理をいたしたい、こういう気持が非常に強く働いておりますので、その気持と、今申し上げましたような確定評価基準をきめるということが非常に旧勘定、旧債権者利益と新勘定利益との両方に相反する影響を与えるという点において、慎重に考えなければならぬという点と、両方かみ合せて適当な時期において、そういつた将来への見通しのつく限りすみやかにきめて参りたい、かように考えておる次第でございます。
  8. 井上良二

    井上委員 問題は確定評価基準というのを一体どういう機関で、どういう方法でこれをきめようというのですか。そうしてそういうことをもうすでに事務当局では算出いたしたといいますか、何か策定いたしております資料がありますか、新しい評価基準に対しての委員会というようなものを設けますか、それとも何か新しい法律根拠でも持ちますか、何によつてやるのですか。そうしませんと、今お話のように利害関係者考え方によつてそこに非常に問題が起つて来るので、あなたの方でこれは妥当な評価だ、こう考えても、一方はそれは不当だ、こういうことが当然予想されて参る。だからこの確定評価基準というものが一定法的根拠に基くなり、あるいは侵すべからざる一つ権威がある審査機関があつてその結論によつてこの基準がきめられて行くということでなかつたら、これは非常な弊害を生んで来る、こういうことが想像されますので、その確定評価基準というものをとめる権威のある機関または方式というものは一体どうやろうというのです。その点を明確にされたい。
  9. 河野通一

    河野政府委員 確定評価基準のきめ方につきましては、現行の金融機関再建整備法の第七条第二項に、「前項の評価基準は、暫定評価基準及び確定評価基準の二とし、命令の定めるところにより、主務大臣がこれを決定する。」こうなつております。これに従つて主務大臣告示をいたすわけであります。現在までに告示をいたしておりますものがたくさんございますが、たとえば大蔵省告示というのが昭和二十三年ごろにたくさん引続いて出ておりますが、その中に、たとえば中国連合準備銀行という北支銀行がございましたが、これの株式はゼロである、あるいは上海にありました中央儲備銀行株式もゼロであるといつたような暫定評価をいたしておるわけであります。これはその当時の外交交渉その他の結果、これらのものに対する評価というものがどの程度になるか実はわからないでおつたわけであります。従いまして暫定的にそういう評価をして一応の締めくくりをつけておる、しかしながらあくまで暫定でありますがために、これを確定的な評価といたすことによつて調整勘定なり旧勘定というものを締めてしまうわけに参らなかつた、こういう点がありますので、今後は、これらの問題について、先ほど申し上げましたような観点から、確定評価基準というものができますならば、なるべく早くこれをつくつて行く。そうしてその確定評価基準によつて評価をいたしました結果によりまして、調整勘定閉鎖するという措置を許されるならば早くしたい、こういう私ども考えでありまして、ただ先ほど来申し上げておりますように、この評価基準というものはいろいろ利害の錯綜いたします問題でありますから、慎重に取扱つて行きたいと考えております。従来は、御案内のように再建整備法の運用をはかりますために再建整備審議会というのがあつたのでありますが、これは先般来審議会整理ということによりまして現在はございません。従いましてこういう機関に諮つて確定評価基準をきめるということはいたさないつもりであります。
  10. 井上良二

    井上委員 ただいまの御説明によりますと、旧日本占領地域にありましたいわゆる儲備銀行等株式大蔵大臣告示によつてこれをゼロとする、こういう御説明であり、それがゼロが正しいか正しくないか、またそれをゼロと認めるか認めないかということにしないというと、調整勘定閉鎖することができない、こういうことになるので確定評価をひとつやりたいという御意向のようであります。ところが昨日苫米地さんからも御質問がありましたように、実は外地における預金及び送金、これが儲備銀行銀行券をもつてこの預金送金をしておる、そうすると、その預金はこの法律によつて支払いを受ける、ところがそれに投資しておりました株式債権としての権限を認めない、こういうことになると、そこのところえらくややこしくなつて来ませんか。
  11. 河野通一

    河野政府委員 今のお話は、儲備銀行券そのものについてこれをどう取扱うかということは、昨日も説明があつたと思いますが、この問題についてはまだきまつておらぬことは御承知通りであります。儲備銀行券建預金というものは、儲備銀行銀行の札の信用いかんの問題よりも、その預金扱つた銀行自体債務としていかに考えるかという問題であります。またその銀行によつて振り出された送金小切手が、たとえば儲備券建であつた場合においては、その儲備券建による銀行債務、その債務銀行が払えるか払えないかという問題でありまして、儲備銀行自体株式がゼロであるか、あるいはそれが幾らかの価値があるかという問題とはまつた関係のないものであります。従いまして、これらはその当事者たる銀行債権債務としてこれをどう処理すべきか、その債権債務といたしましては、その銀行が払います場合には、その銀行の持つておる資産でもつて払うわけであります。その資産によつて払えるか払えないかが実際問題として問題になるのでありまして、これらの点につきましては、先般来御説明申し上げております通り、その銀行で払える範囲において払うというのが、今度の法案を通じて一貫した思想になつておるということを御了解いただきたいと思います。
  12. 井上良二

    井上委員 そこのところは非常に議論のあるところで、昨日苫米地さんからも執拗に質問を続けられておるところであつて、問題はなかなか複雑にして、単に政治的な考慮で問題を解決することは困難であろうとわれわれは思います。  その次に伺いたいのは、調整勘定閉鎖する際、この勘定利益金の残額があるときは、確定損負担をしました株主に対して、その負担額及び利息に相当する金額分配することができる、こういう法案になつております。問題は確定損負担した株主に対してその負担額及び利息に相当する金額分配することにした、この問題が実は問題になつて来る。といいますのは、預金者は一体どうなるか、預金者のやつはどんどんかつてに封鎖で切下げて、そうして旧勘定で処分してしまつて、その後調整勘定閉鎖したときに相当利益があつて、これをその損をした株主だけに分配をして、預金者には一向にその利益を与えないというのは一体どういうわけですか。それはちよつとおかしいじやないか。
  13. 河野通一

    河野政府委員 今井上さんのお話通りにするとおかしいのでありまして、そういうことでないようにしてあるのであります。調整勘定閉鎖いたします場合には、打切られた預金者等に対してまず払う。払つてしまつて閉鎖をしてなお残りがあれば、打切られた株主最後に返してやる。その場合に利息に相当するものをつけるかつけないかについては、いろいろ議論が実はあつたのでありますが、株式代金の払いもどしではない、つまり一ぺん打切つたものに対する別の請求権として、期待権として残つておるものと考えますがゆえに、これについてはその利益金が残つておるならば、その範囲内において利息相当分程度のものはつけてやることが公平に合致するであろう、こういう考え方からつけておるのでありまして、もちろん打切られた株主に払いますのは一番最後であります。打切られた債権者その他の債権者に全部払つて、なおかつ調整勘定利益があつた場合において、それをすべて新勘定に持つて行くというのは、少しあまりに新勘定に片寄り過ぎるのじやないかという議論がありますので、打切られた株主打切られた金額を限つて自主的に払いもどす、こういう措置をしたいのでありまして、これは企業再建整備法に基きましていわゆる第二会社をつくた場合、それらの場合におきましても同様に実はなつておるのであります。従来金融機関だけについて、その金融機関株主だけについて、調整勘定が非常に利益金を上げて参りまして、しかも打切られた預金者に対して全部払つたあとに余剰が出て参りました場合に、なおかつ打切られた株主に対しては返さないという建前になつておりましたものを、やはり公平の原則から、順位は最後でありますけれども、そういう利益金がある場合においては払うというのがこの改正の趣旨であります。
  14. 井上良二

    井上委員 問題はその調整勘定のやり方であろうと思います。従つて調整勘定をあなた方の方で厳重に監査をいたしまして、真にその勘定の結末が預金者に相当払いもどしをされるということになりますならば、その勘定にさらに利益が残るということを予想することが一体あり得るかどうか、預金者に完全に支払いをいたしますならば、その勘定にさらに利益が残るということは考えられない。そこでその勘定預金者にはこの程度返して、最後にこれだけ残しておこう、そこでこれはこういう法律ができておるから株主ももらうようにしてやろう、こういうことになつて、そこをうまく調整しよう、こういうことにされた場合、現実においては、この法律によつては認めるわけに行かぬことになるではありませんか。たとえば預金者に対して七分払いもどしをする、まだ利益あと三分ある、その三分を株主にそれぞれ分配をする、こういう調整勘定の決をつけたときに、一体それをあなたの方で認めますか。
  15. 河野通一

    河野政府委員 これは実はきわめて簡単なことなんでありまして、預金者債権者でありますから、株主違つて、その在外財産全体に対してふくらむとか縮まるとかいうことはないわけであります。百円の預金者はいかなる時代においても百円の払いもどしを請求できるわけであります。ところが一方でその見合いになつておりまする調整勘定というものは、これはよしあしはいろいろ議論がありましようが、過去におけるいわゆるインフレーシヨンおかげで、いろいろ不動産等の値上りがある、あるいは従来とれないと思つて勘定に入つてつた資産がとれるようになつて来た、こういうことになりますと、調整勘定利益というものはぐんとふくらんで来る。しかも預金者についてはいわゆる金約款というものはついておりませんから、過去において百円の預金をした人は、その後貨幣価値が下つてもやはり百円しかとれません。もちろん利息はつきます。従つて百円の預金者がかりに三十円だけ打切られたとすれば、その三十円しか返さない。それには過去における経過期間利息はつきますけれども、それだけを払いもどせば、調整勘定利益金というものはずつとインフレおかげでふくらんで来ても、それに対してふくらんだだけの持分を預金者が持つということはない。これは在外債権者自己資本を構成する株主との相違だと思います。そういう関係から調整勘定利益金というものが余る場合がある。現に中間分配を最近まで各金融機関なんかにやらして参りましたが、一部の金融機関銀行におきましては、旧債権者全額支払いをして、しかも利息相当分まで払つてなおかつ余りが出ておるのであります。これは今申し上げましたようなよしあしは別として、やはりインフレの結果そういうことになつて来ておる。こういう事態があるわけでありますから、この点は御了承いただきたいと思います。
  16. 井上良二

    井上委員 それはその預金者預金に対して一定支払い限度をきめて、その支払い限度まで達してなおかつ金が余つたということを想定されて、そういうお考えのようですが、百円の預金をしておつた者は百円を返してもらうだけの権限を持つております。ただその当時のいろいろな金融財政事情から三十円しか返さぬ、こういうことにきめたのです。その後、あなたのおつしやるように、その金融機関所有財産が、その後の物価変動貨幣価値変動によつて非常に値打ちが出て来た、それで今日これを配分する場合は相当そこに利益金が生ずることが明らかになつて来た、そうならその金は、その預金者に、三十円で打切つておるやつは四十円に引上げてやるという法律改正を何で出さぬのか。もしそういうことが予想されるならば——株主にも公平の建前から一部分配をするというのならば、その一定わく打切つたところ預金者に対するそのわくを拡大して、支払いを少しでもよけいしてやるということが建前じやないですか。その方はほうつておいて、こつちだけはうまい都合のいいような法律に改定するというのは、これは片手落ちじやないですか、そう思いませんか。
  17. 河野通一

    河野政府委員 実はこの再建整備法という法律は、私が銀行議長をやつておる時分につくられたものでありますが、非常にわかりにくいむずかしい法律であります、しかし今お話の点は、みなちやんと入つておるのでありまして、違いは預金者たる債権者株主といういわゆる自己資本を構成するものとの違い、この本質的な違いにかかつておると思うのであります。その点で今お話のように、打切られた預金者、つまりかりに百円の預金者が三十円に打切られたといたしました場合に、その調整勘定利益金が非常に大きいから、三十円でなしにそれをもう一ぺん百円なり二百円にして返してやつたらいいじやないか、こういう御議論かと思いますが、これはやはり預金という性質からいつてそういうことはすべきじやない。ただその場合において、利息はつけなければいかぬ、利息はお払いしなければならぬのでありますが、その利息をつけてお返しするというのは、第三十七条の二以降に詳しく規定を設けてあるわけでありまして、その点につきましては、今お話のような実質的にインフレーシヨンのお陰で貨幣価値が下つたという点から行きますと、実質的に預金者にお気の毒したという場合はあるわけでありますけれども、これはすべて貨幣の形態において持つてつた場合におきましては、当然にみな共通する問題でありまして、それがために金約款とか、いわゆる貨幣価値に相応した逆算をした価値をつけて預金者にふくらまして払いもどすということは、私は現在の法律事情から見ると適当ではない、かように考えております。
  18. 井上良二

    井上委員 もう一点伺つておきますが、この確定評価基準によつて整理を促進いたしました場合に、最後のこの調整勘定閉鎖するときに、実際上その勘定利益が生じ得る予想が立ちますか立ちませんか。これはこれからやつてみようということであるから、一つの推定ではつきりしたことは言えないにしても、相当利益が予想されますか、それともそう大したことはないというのですか。大したことがないならそうやかましいことはないが、大したことがあるということになつて来ると、この問題は簡単に済まされぬことになりますから、その見通しを一応御説明願いたい。
  19. 河野通一

    河野政府委員 これは先ほどもちよつと申し上げましたように、銀行のうちのある銀行につきましては、実際上打切られた債権者全部にお払いをして、なおかつ調整勘定利益が残るものが若干あります。しかしそれは大した金額ではございません。それから各銀行ごとにみな事情が違うわけであります。昨年でありますか、中間分配を実は認めたのでありますが、中間分配をいたしましたところをごらんになりましてもおわかりのように、ある銀行では、百パーセント打切られた債権者払つております。ところがある銀行においては、一文も中間分配ができないというところもあります。それからある銀行においては、三〇%できたというところもあります。そういうわけで、各銀行調整勘定内容次第によつて払える程度、分量がみな違つて参る、こういうことに相なるわけでありますが、今後それではどういうふうになるかといいますと、やはり調整勘定にあるところ資産がどういうふうな価格になつて行くか、その推移によつて違うと思います。これは経済全体が、非常に大きなインフレになれば非常に価格が上りましようし、一方デフレになれば価格が下るという問題もありましようから、今的確には申し上げられませんが、現在のところから推定いたしますれば、旧債権者分配して、なおかつ非常に多くの利益が残るということは考えられない次第であります。  それからなお申し上げておきたいと思いますが、打切られた株主に対して、最後に旧債権者たち払つた後なお残りがあれば旧株主に払うというのは、残りを全部払うわけではありませんで、株主が、たとえば九割打切られたといたしますならば、その打切られた金額に相当する金額限度として払うのでありまして、残り利益金を全部株主にわけるというわけではございませんので、その点も誤解のないように御了承いただきたいと思います。
  20. 井上良二

    井上委員 もう一点、閉鎖機関令改正について伺うのですが、最初約千八十八機関ほどが閉鎖機関として指定されて、その清算事務がほとんど完了いたしましたが、現在まだ清算未了の分が八十くらいありはぜぬかと思います。問題は、この閉鎖機関清算結了の結果はどこへ発表しておりますか、そしてこれは国会承認は必要としないのですか。その閉鎖機関清算をいたした、結未のつきました内容についてどこへ報告をされ、それについて一体どこが監督をし、これが完全な清算を行つたものをどこが一体承認したのですか。これは一応国会承認を要しないのですか。それを伺いたい、
  21. 窪谷直光

    窪谷政府委員 清算の結果についての問題でありますが、まず各閉鎖機関を担当しております特殊清算人ところ決算書を作成いたしまして、大蔵大臣にその決算承認を求めて参ります。大蔵省においてその決算書内容審査いたしまして、承認すべきものと決定をいたしましたものは、その旨の通知を清算人に対していたすわけであります。それに基いて清算人新聞公告をいたしまして、その決算内容について異議のある者は、一箇月以内に申出をなさるようにという新聞公告をいたすのであります。なお新聞公告だけではありませんで、官報にも公告をいたすのでありますが、それで一箇月いたしまして、異議の申立がないときに初めてその決算が確定するということに相なつております。
  22. 井上良二

    井上委員 そこで、あなたの方がこの清算の結果を承認するその結果、清算人はそれを新聞官報等公告する、これによつて清算事務が結了した、こういうことになつておるらしい。そこで問題は、閉鎖機関清算内容であり東京支社、総理官邸を下へ降りた所にございますが、一体あの支社は清算事務で何ぼに払い下げられたのですか。幾らの価額で払い下げられておりますか。
  23. 窪谷直光

    窪谷政府委員 満鉄の東京支社の土地建物は、昭和二十七年三月三十一日に処分をいたしておるのであります。その合計は二億九千七百九十三万六千円という処分価額に相なつております。
  24. 井上良二

    井上委員 昭和二十七年と申しますと、相当地価も暴騰いたし、かつ普通の鉄筋コンクリートの建築をいたします場合の価格も相当暴騰いたしております。たとえば、この下に新らしくできました官庁ビルは、あれで二十数億かかつておるそうであります。そうしますと、坪当り少くとも七、八万円についておりやせぬかと思います。あの虎ノ門の横にあります満鉄東京支社は、その地理的条件から、かつ建物の状態から考えて、二十七年当時の価格で見積つて二億九千万円ぐらいであれを払い下げるという清算のやり方が、一体妥当な清算とあなたの方は認定したのですか。これは一つの例だけれども、あらゆる閉鎖機関清算事務内容をわれわれは伺つておりますが、たとえば、その閉鎖機関が持つてつたところのいろいろな商品の処分、あるいは建物の処分、自動車の処分というものが、いかに法外な安い価格で払い下げられておるかということを私どもは聞いております。だから、一体それはだれが監督をし、だれがその評価の正当さを確定するかということについては、私どもは今日まで疑いを持つて来た。あなたの方と清算人との間でやつておるわけだが、それが正当な評価あるかどうかということは、審議機関なり評価委員会にかけて、そうして払い下げるものは払い下げ、処分するものは処分するということにすべきじやないかと思う。あなたの方では、満鉄東京支社が二十七年においてあの大きな建物を二億数千万円で払い下げられるについては、それだけの理由を持つておるでしよう。ところが、あれを二億数千万円で払い下げたというたら、天下が笑いますよ。そういう清算のやり方がありますか。それを二億数千万円として評価したという根拠はどこにあるのですか。それから、これの土地建物の坪数、今日あれだけのものを建てるとすればどのくらいかかるか。それを御説明願いたい。
  25. 窪谷直光

    窪谷政府委員 満鉄支社の敷地は千二百九十四坪ございます。それから建物は、御承知のように鉄骨鉄筋コンクリートのつくりで、七階建になつておりまして、延坪数が三千五百三坪ということになつております。それで一応部内におきます売り払いの最低価格とて評価をいたしました額を土地と建物とにわけてみますと、土地が四千六百五十八万六千円、建物の方が二億四千七百四十九万八千円、それを合計いたしますと二億九千四百万円になりまして、先ほど申し上げた実際の処分価格との開きは、約三百万円程度高く協議がととのつたということに相なつておりますが、それで見ますと、土地の坪当りの単価が三万六千円、建物の坪当りの単価が七万一千八百円という程度に相なるのでありまして、当時の価格としては大体適正なところであつたろうと私としても考える次第であります。  なお御参考までに申し上げますと、この建物は昭和十一年にできた建物でありますが、終戦後におきまして入札をやつたわけでありまして、最初二十三年三月に入札をやり、その後前後六回にわたりまして入札をいたしたのでありますが、いずれも五千万円程度が最高の入札価格でありまして、なかなかあれを相当高い金額で買い取ろうという申出もなかつたわけであります。従いまして、この二億九千七百万円という処分価格は、入札の場合よりも相当有利に売れておるという考え方も立ち得るかと思います。当時の処分価格としては、今日から振り返つてみましても、適正なものであつた考えられる次第であります。
  26. 井上良二

    井上委員 それはいろいろあなたの方でそれだけの理由があつておやりになつたのだろうが、問題は、たとえば閉鎖機関清算事務大蔵省から清算人を派遣をしておりますが、それはわずかに一人か二人である。そして、そこに働いておりました人々もやはり一部清算事務に携わつていて、財産の処分をやつたわけです。だから、ほんとうに公正妥当な清算評価を行うということより、もうこれは店じまいだからできるだけ早く清算事務を結了しようということからして、不当に安い価格で処分されておるという事例はたくさん出て来ております。そういうことについてだれもが責任を負わぬ。単に新聞官報公告して、異議申立てがないので、それでもうこれは得心したもになり、こういう一方的な解釈で清算事務が結了されておる。それが妥当なやり方であつたとは言えません。これはもうほとんど大部分が済んでおる問題でありますから、今さら死んだ子供の年を数えるようなことを言うてみたつて追いつきませんけれども、われわれとしては、その処分のやり方に対して非常な疑惑を持つておる。  なお、今度の法案によりますと、閉鎖機関外地にある財産についても、大蔵大臣承認があれば管理、処分することができるという新しい規定を設けたが、この外地にある財産というのは、具体的にどこの国にどういうものが閉鎖機関財産として残つておるということがおわかりでありましようが、おもなものだけひとつ御説明願いたい。
  27. 窪谷直光

    窪谷政府委員 これは正金銀行資産が主たるものでありますが、まずブラジルにあります資産が、日本円に換算して八億円程度あろうかと思います。これは従来ブラジル国政府の法律によりまして凍結されておつたのでありまして、当然ブラジル政府としてはブラジル政府の収入になし得る立場にあつたのでありますが、ブラジル政府の好意と日本側におきます熱心なる要請との両方が実を結びまして、ごく最近に至りまして、とにかく日本側に返そうという話がまとまりまして、大体返還ということについての向うの政令の公布にまでこぎつけたわけでございます。しかしながら、この財産は日本に取寄せるわけに参りません。向うでも為替管理をやつておりまして、日伯経済の発展に貢献するような方法において使用するという条件と申しますか、そういう考え方から返還をいたして来たのでありまして、これを現行法におきますと、清算人といたしましては受領をすることは可能であります。従いまして受領いたしましても、じつとどこかに銀行預金するなり何かしておく以外にないのでありますが、それを運用いたしますためには、清算人に対して新しいこういうふうな権限を与えてやりませんと、できないということから、こういう規定を御立法願いたいという趣旨でございます。そのほかに、インドにおきましても若干の資産があるのでありますが、これはまだどうも向う側の数字とこちらで予想しております数字と相当食い違いがございますが、向うの敵産管理人から通報をいたして来ましたところによりますと、資産が約五億六千五百万円、負債が約五億六千万円、差引きいたしまして約五百万円程度の純資産があるというふうに言つて来ておりますが、この数字につきましては、日本側の持つております数字ではどうも納得行きませんので、今向う側といろいろ数字の照合をいたしておるようなことでございます。さしあたりこの新しい条文で処理をいたしたいと思いますのは、今申しましたブラジルにおきます正金の資産ということを考えておる次第でございます。
  28. 春日一幸

    ○春日委員 ただいま井上委員の御質問に関連をいたしまして二、三の事柄をお伺いをいたしたいと思うのでありますが、ただいま論議されました満鉄ビルの払下げの問題でありますが、これはたしか十五国会でありましたか、すでに相当深く掘り下げて論議がされておりましたので、私は再びここでこれをむし返そうとは考えておりませんけれども、ただいまの御答弁ははなはだ私は首肯いたしかねる筋があるのでございまして、あなたの御答弁によりますと、この評価額は決して安いものではない、大体当時の時価に換算して適正価格であつた。しかのみならず、当時この処分方法をめぐつて、競争入札に付したのだが、最高の入札が五千万円かれこれしがなかつたので、その処分を行わず、その後二億九千万円何がしで処分をしたということでございましたが、それは当時の当局と当委員会とがいろいろ審議をいたしましたその結論をくつがえして、あたかも政府が当然のことをやつたことであり、何らこれに対して疑義がないような印象を与えますので、この機会に私は明確にいたしておかなければならぬと思うのであります。あの官庁総合ビルが二十数億円をかけておることは、これは御記憶に明確なところでありまして、なるほど坪数にいたしましては幾らかあちらの方が広いでありましようが、相匹敵するところの延坪数を持つております建物が、一方においてはとにかく調度も完備しておつて、それでもつて二億九千万円、片方は二十何億何千万円かかつておる。はなはだしく不合理でございます。この問題を本委員会において質問をいたしてつまびらかになりましたことは、その競争入札にあたつて、建物の状態がどういう状態にあつたかということなんです。それはすなわちアメリカの機関がそこに入つてつたではありませんか。たとえばそこの玄関にはピストルを持つた護衛がついておつて、そうして当時占領下にあつて、アメリカの機関がそこに入つてつた。いつのくという見通しも立つていない。そういう状態において公売に付したところで、そんなものをだれが買いますか。五千万円でも出したというようなことがあつたら、これはまことに稀有のことです。少くともそういう物件を競争入札に付するということであるならば、それは当然入つてつた人に出てもらつて、そうして白紙の形においてこれを競争入札に付さなければならないわけです。入つている人が自分の思つた価格でとにかく落すということになつて来れば、入つている人に対して特別の判定がついて来る。何人といえども、アメリカ軍ががんばつてつて、いつのくかはてしもつかない、そういうものを、実質価格によつてとにかく十分値を出して手に入れようというようなことは、常識的においても考えられないことです。あなた方が当時これを処分するにあたつては、アメリカ軍が入つておる形においてアメリカ軍にこれを払い下げたということに国会の論難が寄せられておつたのである。あなたはそれを、五千万円しかなかつたのであるから、これを二億何千万円で売つてちつともさしつかえはないのだ、しかも適正価格だというようなことをおつしやるというのであるならば、もう一ぺん問題をむし返して論議を尽さなければならぬと思うのであるが、あなたは当時この競争入札、さらにまたこれをアメリカ関係に払い下げたことをきわめて適切妥当なことと今も考えておられるか、確信を持つてそういう御答弁がなされ得るかどうか、この機会にあらためて御答弁を願つておかなければならぬと思います。まずこの一点を御答弁願いたい。
  29. 窪谷直光

    窪谷政府委員 入札をいたしましたその状況を御報告申し上げたのでありますが、これはまさに仰せのように、向うが入つている状態における入札者の評価額でありまして、単純にこの金額に対して多いということから有利であるということは断定できないと思います。私の説明が若干足りませんでしたので、私がそれから見ても有利じやないかというようなことを言つたような印象を与えましたことを、はなはだ恐縮に存じます。入札者の方は、なかなか米軍はどかぬだろう、ただ使用料はとにかくもらえる、従つていつの時代にかのいてくれる、そうすれば自分の方で自由に使えるというようなことを期待しての入札でございましようから、全然だれも入つておらない建物の場合の入札価格よりも低いということは、常識的に考えられると思います。この点はまことに仰せの通りでございまして、私の説明が不十分でございましたことは恐縮に存じます。それからなおアメリカ合衆国政府に売り払つたということにつきましては、一つは、閉鎖機関といたしまして、なるべく清算をすみやかにやらなければならぬという要請が一つございましたのと、それからアメリカ合衆国政府の方で非常にあの建物をほしいという強い要望がございまして、そのあたりからアメリカ合衆国政府に売り払うということに相なつたと思うのでありまして、日本側で入札をいたしましても、ああいうふうに米軍が使つております状況でありますので、有利な処分も困難であつたというようなことから、アメリカ合衆国政府に売り払うということに決定されたものというふうに考えている次第であります。
  30. 春日一幸

    ○春日委員 まことにけしからぬことです。日米行政協定によりますと、アメリカの駐留軍は、とにかく独立が達成された後においては、都心を引払つて、できるだけ僻遠の地に構えるということが条約の中にあるのです。従つて日本国政府としては、虎の門にあるような満鉄ビルは、その協定の趣旨にかんがみまして、当然立ちのきの要求をなさなければなりません。そうしてそれを白紙にして、最も実質的な適正価格でこれを換価処分をして、そうしてそれを管理している人々に対して十分報いるだけの措置をとらなければならなかつたのです。あなた方は当時当然尽すべきことを尽さなかつたのじやありませんか。すなわち、あなた方はアメリカの強権に屈したのである。そんなばかなことがあり得るはずはない。だからその当時われわれ委員会においては、この問題は例の公園敷地の問題と関連してずいぶん糺弾された事柄でございまして、当時政府からは相当な釈明も陳謝もあつたと思うのでありますが、ところが今井上委員質問に答えて、その五千万円の入札しかなかつたから、あるいはこの評価額で換算すれば何とか適正であつたというような、まるでそらとぼけた答弁をなさるということはない。もう少し事態の真相を十分把握されて——場所がかわろうと期間が経過しようと、事柄というものはそんなにかわるべき性質のものではありません。今後の答弁は、もう少し慎重に所管事項を研究の上御答弁願わなければ困ります。その問題はただいま御釈明がありましたが、この点は了とはいたしませんが、今後十分御注意を願うことといたしまして、さらに質問を進めます。(「不信任案を出せ」と呼ぶ者あり)  なおただいま内藤委員から、不信任案も出るのだから、そんな政府を相手にそう質問をするなという御忠告もありまして、私どももそのことは同感ではありますが、しかしこの際やがて野たれ死にをするであろう内閣の一つの葬送曲として、二、三の問題を聞いておかなければならぬと思うのであります。  ところで今回議題となつております三つの法律案に関連をいたしまして、戦争中のいろいろの債権債務を、今回の特別立法によつて逐次復活することが企てられておると思うのでございます。従いまして、この事例並びにその趣旨にかんがみまして、他にもやはりこれと並行的に措置を願わなければならぬ事柄が多々あろうと思うのであります。この機会に私の指摘いたしたいのは、戦時火災保険の支払いの問題もやはりあわせて取上げなければ権衡を失するのではないかと思うのでございます。申し上げるまでもなく、当時の戦時火災は戦時補償特別措置法か何かによりましてたな上げされておるのでございます。法人は一万円、個人の場合は五万円でございましたか、そういうふうに、戦争中の火災保険の保険金は支払われておりません。このことはどういう事柄であるかと申しますと、当時はなはだ大きな災害がありまして、従つて保険金の支払い額が相当にふえた。その後遂に戦いは敗れて、ああいう疎漏状態になつたので、結局何もかも切り捨ててしまうということで、これがたな上げされて今日に至つておると思うのであります。しかしながら一方被保険者の立場から申しますと、そのような災害をこうむることは必至である、だからその危険からみずからを守るために、普通の保険料金よりもさらに高い保険料金、すなわち戦時保険という特別保険料を支払つてつたところがはたしてその事態を見るや、保険金は払つてもらえない状態で今日までそのまま立ち至つておるのでございます。ところが一方保険会社の状態はその後どうであるか。保険会社は当時当然払わなければならなかつたところの保険金を払わずして、その財産を継承して今日に至つております。全国十八社の保険会社が今日どの程度利益を収めておるかということは、当然河野銀行局長は御承知でありましようが、配当は最高のものであります。賃金ベースもこれまた最高の水準にあります。危険準備金の積立てのごときは、これは古い調査でありますから、今はさらにふえておるのでありましようが、三百五十億、社内積立て五十億、不動産のいろいろなものを合しますれば、おそらく火災保険会社が現在持つておる総資産は、私は六百億ないしは六百五十億を越えるのではないかと思うのであります。こういう厖大な資産を彼らが持つに至つておるが、戦争中の債務についてはそのままたな上げされて現在に至つておる。現在われわれは終戦の処理をいろいろいたしておる。フイリピンに対しても戦争の責任を果すというために、賠償の使節団が渡航されました。いずれインド、インドネシヤ、ビルマ等についても、こういう問題が逐次処理されるでありましようが、本日まで審議しておりますこの三法案は、いずれも戦後の特別措置によつてたな上げされた債権債務の復活のために論議せられておるわけで、当然火災保険の債権債務も同じ事柄でありますので、同様の趣旨によつて処置がされてしかるべき事柄であると思うのであります。従いまして、この機会に同時にこの戦争中の火災保険の問題が処理されなければ、これは権衡を失するものと私は考えるが、これに対して河野銀行局長はどういう御見解をお持ちになつておるか、承りたいのであります。
  31. 河野通一

    河野政府委員 戦時特殊損害保険法に基きまして保険をいたしました火災保険、これが戦後におきまして、個人につきましては五万円、法人については一万円を限つて打切られましたことば、今御指摘の通りであります。ただ問題は、打切りました理由につきましては、今春日さんがおつしやつたところ事情が違うと私は考えております。この打切りました法律は、戦時補償特別措置法と言いまして、このいわゆる戦時補償打切り法は昭和二十一年十月に施行されたのでありますが、終戦の結果、戦時中政府がいろいろな場合にいたしておつた補償を全部打切るという措置をとつたのであります。その措置の結果、実は今問題になつております金融機関再建整備法等もできて参つたのでありますが、この措置よしあしについてはいろいろ御議論がありましよう。ありましようが、この措置の一環として、今お話のありました戦時特殊損害保険法に基く保険も打切りをしたということになつたのであります。なぜ戦争保険について、この戦時補償打切りの一環として取扱うことになつたかと申しますと、この戦時特殊損害保険法に基く保険は、保険会社をして取扱わせたのでありますけれども、実質は国営保険であります。つまりそれによつて利益が出ましたならば、それはすべて国に納付する、そのかわりにこの保険によつて損が出た場合においては、その損は国が補償する、こういうふうな建前になつておる性質の保険であります。従いましてこれは完全に国営の保険で、そういう観点からいたしますと、やはりこれは戦時請求権に該当するという観点に立ちまして、ことさらにはつきりこれらのものも戦時補償打切りの法律の対象として、戦争保険金の請求権も当然に入る、こういうことにいたしたのであります。その結果今申しましたように打切りを受けたのでありまして、これは保険会社の自己の責任とか、あるいは自己の計算によつて支払いをする普通の保険とはその性質をまつたく異にしておる。現に損害保険会社が自分でやつておる保険に関する限りにおいては、あの再建整備法という一連の戦争後の跡始末をいたしました法律によりましても、保険金の支払いは一切打切つておりません。これは生命保険等においては打切りましたにもかかわらず、損害保険については一文も打切つていないのであります。従つて損害保険会社は——東亜保険会社は再保険会社で特殊の事情がありますが、それを除きましては、あらゆる損害保険会社が全部調整勘定を持つておらないということは、つまりすべて保険金の支払い債務は完済をいたしたということなのであります。今申し上げたような戦争保険金につきましては、保険会社自体利害という点からこの問題を処理すべき性質のものではない、こういう観点に立つて今申し上げたような処理をいたしたのであります。この点は一般の保険会社自体の計算によつてやる保険とその性質を異にするということを御了解いただきたいと思います。  なお現在御審議をいただいておりまする三法案につきましては、これは主として在外関係、ことに引揚者であられる方々等に対して、これらの金融機関が自分の払える範囲内においてお支払いをするという法律でありまして、今御指摘になりました、国内においていろいろ戦争上の損害を受けた方々に対する措置とはおのずから——もちろんこれは権衡をとるという問題はございましようけれども、その点につきましてはおのずから性質を異にする。しかも国内の問題につきましては、単に戦争保険金の支払いをいかにすべきかという問題だけでなくして、広くわたつて戦争損害、戦争犠牲という点についてどう考えるかという問題ともあわせて考えなければ問題だと私ども考えておる次第であります。
  32. 春日一幸

    ○春日委員 私はとりあえず卑近の事例としてこの議題となつておりまする三法を引例いたしたのでありますが、ただこの三法に限つたことだけでなく——なるほど三法は引揚者の問題に直面しておる問題でありますが、その法律の精神は、これは戦争犠牲者に対する当時の国家の責任を果すという考え方の上に立つていろいろのことがなされておる。たとえば軍人恩給の問題だつて、当時ぴしやつと打切られたのでありましたが、このことも、やはり国家が国民に対する責任を果し得る立場になつたならばもちろん果すということで、これは昨年から復活されておることはあなたは御承知通りであります。こういうようなぐあいに、戦争中の国と国民との間の契約事項が契約不履行になつておるのだが、しかしながら国民と国との関係は、その後引続いてずつとあつたわけでございまして、なし得る立場になるならば、これをなすことは当然のことであり、幾多の事柄がなされておるのでございます。従つてこの火災保険の問題でも、当然これはやらなければならない。あなたはただいま、要するに戦時特殊損害保険法、これによつたものは全部払わないで、その他のものは全部払つておると言われておるのでありますが、戦争中の火災保険にして、この保険法によらざるところの保険というものが一体どの程度つたのでございますか、参考のためにこの機会に伺いたいと思うのであります。
  33. 河野通一

    河野政府委員 ちよつと私は手元に材料を持つておりませんが、おそらく戦争保険に入つておりませんものは相当数あつたと思いますが、いずれ資料について取調べた上でお答え申し上げたいと思います。
  34. 春日一幸

    ○春日委員 火災保険会社といたしましても、おそらくは戦況が拡大されて参りますれば、それぞれ空襲を受けて相当の被害を生ずるということは当然考えるのでございましよう。従いまして、そういう大損害を受けたときには、一社の資力をもつてしては支払い能力を欠くに至るであろう。そのことのためにこの戦時特殊損害保険法という法律ができた。この法律ができた以上は、火災保険会社がその法律の保護を受けないで、みずから進んでその裸保険の危険を負うということはあり得ないと私は思う。相当あつた、こう言われるからには——あなたは当時からこういう方面の権威者であられますから、われわれしろうとがとかく批判的なことを申し上げても権威がないかもしれませんが、常識的に考えられないことでありますので、これは資料として御提出をしていただきたいと思います。  さらに私がこの機会に申し上げたいことは、この保険というものはなるほどその一年々々の契約ではあるが、しかし実質的にはこれは継続的な事柄であります。期限が到来すればあらためてその点を——まあ会社はかわるといたしましても、いずれにしてもその保険をかけて行く。従つてこのことは全国にあるところの十八社か十九社かの全体的な責任、すなわちプール計算においてやはり物事は判断をしてさしつかえない問題だと思うわけであります。保険事業というものが日本にできましてから何十年——おそらくは火災というものは五十年に一ぺんか、統計によりますと七年に一ぺん、一生のうちに一回か二回しかそういう災害にはかからないけれども、そのときのために年々歳々火災保険会社に被保険者は金を払つておるのです。従いましその戦争のときに、今こそ長年かけて来たこの保険料が生きてみずからに返つて来るという期待のもとに、さらに高い料率をも被保険者は意に解さないで、この戦時特殊損害保険というものにかかつてつたと思う。従いましてその法律の正面からの判断によりますると、なるほど国営保険でありますから、保険会社がそれに責任を負わないというような一応の形態にはなつておりましようけれども、その実質は、すなわちその保険会社がずつと過去何十年かにわたつて上げて来たところ利益に対して、何らかの寄与をなさなければならないということは、道義上から考えてみても私は当然考えられることであろうと思うのであります。私もちよつとは調べてみたのだが、法律建前からは、なるほど国がやつたのだから損失があつた場合には国が補償し、利益があつた場合には国へ出すという一応の形にはなつておりますけれども、しかしこの火災保険料と火災保険事業というものは、これは百パーセントが戦時特殊損害保険料ではなかつたわけなのです。普通の火災保険料。プラス戦時保険の料率が加わつてこういう形になつております。従いましてその火災保険料の一定歩合のものは、保険会社が自分の事業収益として加えるわけでありまして、従つてこれが打切られたことによつてはなはだしき利益を得ておるものは、これは一つは国であり、一つは保険会社でなければならぬ。しかもその保険会社が全財産を継承して今日隆々たる勢いである。私が今申し上げました数字があやまちであるかもしれませんが、今わずかに六、七年間の事業経営によつて何百億というところの、おそらくは六百億を越えるところの大資産を有しておるのに、何十年かかけて来たところの被保険君たちは、その当時唯一の自力更生の頼みの綱としておりましたところの保険金をちつとももらえないで、今日四苦八苦生活にあえいでおるこの状態が——今いろいろの戦時、戦後の債権債務がここで復活されようとするならば、政府は当然このことをよく考えて、すなわち権衡を失しないところ措置を講ずる義務があると思う。しかしながらこの問題はなお大きな問題でございましようし、すでに倒れかけておるところの内閣に向つてこのような貴重な理論を申し述べましても、何ほどの価値もないかと思われますので、これは今後の委員会の政治問題として、あなたの方も十分御検討を願うことといたしまして、なお私どもの方におきましても、さらにこれに対するいろいろな基礎的な研究を加えて、最も近い将来にこういう均衡を失しないことのための合理的な立法措置を講じたいと考えますので、政府の方におきましても十分御検討を願つておきたいと思います。  まだいろいろ問題がございまして、これらはまことに重要な問題でございますけれども井上君から注意がありまして、これはおそらくは内閣の生命に関する問題であろうと思いますので、一応理事会におはかりをいたしましてから、あらためて質問を継続することにいたします。
  35. 苫米地英俊

    苫米地委員 資料を要求いたします。この三法案が通過した後でよろしゆうございますから、政府から資料をいただきたいと思います。各金融機関閉鎖機関、在外会社の旧勘定資産及び負債の現況並びに未払い送金及び在外預金支払い可能額及びその限度、これだけの資料をいただきたいと思います。
  36. 淺香忠雄

    ○淺香委員 動議を提出いたします。  ただいま議題となつております六法案中、金融機関再建整備法の一部を改正する法律案、旧日本占領地域本店を有する会社本邦内にある財産整理に関する政令の一部を改正する法律案閉鎖機関令の一部を改正する法律案の三法案につきましては、質疑も大体尽されたと思われますので、この程度にて質疑打切り、ただちに討論採決に入られんことを望みます。
  37. 千葉三郎

    ○千葉委員長 ただいまの淺香君の動議に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  38. 千葉三郎

    ○千葉委員長 御異議なしと認めます。よつて法案に対する質疑はこれにて終了いたしました。  討論の通告がありますので、これを許します。内藤友明君。
  39. 内藤友明

    ○内藤委員 三法案のうちで、閉鎖機関令の一部を改正する法律案に対して附帯決議をつけたいと思うのであります。読みます。    閉鎖機関令の一部を改正する法律案に対する附帯決議案   政府は、旧横浜正金銀行等についても速かに未払送金為替及び在外預金の支払ができる措置を講ずるとともに、特殊清算人債権者のために弁済すべき財産を信託する場合には主たる利益代表者に信託することとする等、引揚者の利益をも考慮して、本改正法の運用に遺憾なきを期せられたい。  以上であります。
  40. 千葉三郎

    ○千葉委員長 これにて討論は終局いたしました。  引続き採決に入ります。右三法律案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔総員起立〕
  41. 千葉三郎

    ○千葉委員長 起立総員。よつて右三法律案はいずれも原案の通り可決いたしました。  次に、内藤友明君提出の閉鎖機関令の一部を改正する法律案に対する附帯決議案について採決いたします。これに賛成の諸君の御起立を求めます。   〔総員起立〕
  42. 千葉三郎

    ○千葉委員長 起立総員。よつて本附帯決議案は決定いたしました。  なおただいま採決いたしました三法案に関する委員会報告書の作成、提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じます。  午後二時より懇談会を開くことにいたしまして、この程度で休憩いたします。    午前十一時五十四分休憩      ————◇—————