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1954-04-08 第19回国会 衆議院 大蔵委員会 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月八日(木曜日)    午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 千葉 三郎君    理事 淺香 忠雄君 理事 黒金 泰美君    理事 坊  秀男君 理事 山本 勝市君    理事 内藤 友明君 理事 久保田鶴松君    理事 井上 良二君       大上  司君    大平 正芳君       尾関 義一君    小西 寅松君       島村 一郎君    武田信之助君       苫米地英俊君    野田 卯一君       藤枝 泉介君    堀川 恭平君       福田 繁芳君    本名  武君       小川 豊明君    佐々木更三君       柴田 義男君    春日 一幸君       平岡忠次郎君    山村新治郎君  出席国務大臣        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君         国 務 大 臣 塚田十一郎君  出席政府委員         大蔵政務次官  植木庚子郎君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君         大蔵事務官         (主税局長)  渡辺喜久造君  委員外出席者         専  門  員 椎木 文也君         専  門  員 黒田 久太君     ――――――――――――― 四月八日  委員宇都宮徳馬君、小西寅松君、福田赳夫君及  び山中貞則君辞任につき、その補欠として野田  卯一君、武田信之助君、尾関義一君及び堀川恭  平君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  入場税法案内閣提出第三〇号)  交付税及び譲与税配付金特別会計法案内閣提  出第八五号)     ―――――――――――――
  2. 千葉三郎

    千葉委員長 これより会議を開きます。  入場税法案交付税及び譲与税配付金特別会計法案並びに入場税法案に対する修正案一括議題といたします。質疑は通告順によつてこれを許します。井上良二君。
  3. 井上良二

    井上委員 最初大蔵大臣に伺うのですが、大蔵大臣は先般私の質問に対して、すなわち入場税法案修正案自由党から提出されるというお話だが、このことについて知つておるかと言うたところが、まだ知らぬというお話でございました。昨日修正案が本委員会自由党及び日本自由党から共同提案がされておりますが、この修正案について御相談を受けておりますか、それを伺いたい。
  4. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 この内容についてはよく承知いたしております。
  5. 井上良二

    井上委員 昨日地方行政委員会において審議されました入場譲与税法案というものがございますが、この入場譲与税法案に対して修正案がやはり自由党及び日本自由党から提出されていますが、この修正案も御相談をされたのでありますか、これを伺いたい。
  6. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 承知いたしております。
  7. 井上良二

    井上委員 そこでまずこの際明らかにいたしたいのは、これは修正案に対する質問中心にいたすのでありますが、この修正案を見ますと、政府原案よりも入場税税収について相当減収が見込まれると私は思いますが、提案者の方においては政府原案との間に税の減収は見込まれておるのか、おらないのか、この点をまず明らかにしていただきたいと思います。
  8. 大平正芳

    大平委員 今度の修正案による税収見込みでございますが、この税収見込みにつきましては、御承知のようにこれはあくまでも見積りでございまして、いろいろの想定に基いて見積りを立てておるわけでございまして、従来も税の自然増収めぐつていろいろな論議がかわされましたことは御承知通りでございます。今度の入場税見積りは事実上相当の困難が伴います。その原因として考えられますのは、従来地方税つたものを今度国税に移してとるということ、従つて大蔵当局におきましても、原案策定にあたりまして、税収見積り相当の苦慮を重ねられたようにわれわれは伺つておるのであります。そこへ持つて行つてわれわれが相当大幅な税率の軽減という修正案を打出したわけでございまして、この収入につきましては、われわれ同僚の間におきましても、収入増または捕捉の増によりまして予定額だけとれるのだという説と、いやそういう大胆な想定はむずかしいという意見とがあるわけでございます。従つて収入の判定はやはり実績を見た上で判断しないといけないと思うのでございますが、政府当局算定基礎によりまして計算いたしますると、私どもが伺つている数字は、われわれの修正案基礎にいたしまして百四十五億円見当だろうといわれております。これに対しまして先ほど私が申しましたように、われわれ同僚の間におきましても、もう少しとれるのだ、いやその程度じやないかというような意見があるわけでございます。従つて、どうもこのまま施行いたしまして地方財政の方に支障を来すようなことがあつてはならないというので、入場譲与税法案の方に修正を加えまして、地方にわたります金、すなわち百七十二億八千万円までこの修正案による入場税税収額が満たない場合におきましては、一般会計がこれを負担するという法律上の義務を一般会計が負うことにいたしまして、地方財政運営支障がないようにする措置をお願いいたしてあるわけでございます。従つて税見積りは事実上困難があるということ、これにはいろいろの見方の相違がございまして、的確にこの修正案によりまして幾らくの税収が上るということを断言的に申し上げる勇気がないのでございますが、これによりまして、地方財政運営が困るというようなことがないように配慮することにいたしまして御了承を願いたいという所存でございます。
  9. 井上良二

    井上委員 大蔵大臣に伺いますが、政府はこの修正案を示されて、かつこの修正案による歳入見積り額に達しない場合は、一般会計から繰入れてもやむを得ないという修正案を別個の委員会に提出することを承知したということでありますが、政府はこの修正案を見ましたときに、政府原案との間においてどれだけ税収減を見込まれますか、それを明確にされたい。
  10. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 私から、まず税収の問題のようでございますからちよつと御答弁申し上げまして、あと大蔵大臣に御答弁していただきたいと思います。今大平委員からお話がありましたように、従来われわれが使つて参りました資料で、同時にそのまま税率を引下げて計算して参りますと、百四十五億程度数字が出ます。ただこれは、先日井上委員の御質問に私申し上げておいたことを繰返させていただくわけでございますが、ほかの税でありますと、国税として相当実績を持つておりますので、われわれその見積りにつきましても相当自信のある見積りができるわけでございますが、今度の入場税の場合におきましては、新しく国で徴収しよう、しかし地方税見積りがある、これはその通りでございますが、ただ地方税見積り基礎になつておる数字につきましては、いろいろの批判もあるわけでございまして、たとえば相当把握漏れがあるのじやないか、こういうふうなお話があり、またわれわれが事実調べてみましても、そういうものが相当あるように見受けられます。その原因はいろいろあると思いますが、片方で税率を下げて大体その無理をなくすれば、政府原案税率ならば、百九十二億とれるではないか、こういう見積りをつくつたわけでございます。しかしその基礎として使つておりますのは、地方税税収基礎になつておる数字でもございます。結局それもとれませんものでございますから、映画料金配給収入とか、いろいろなものを元にしまして一応われわれとしてはできるだけ正確を期したのでございますが、これに対して違つた見方があり得るというようなお話もあるわけでございまして、結局結果的に見ましてどういうことになりますかということにまちませんと、われわれの出している数字がどういう結果になるかということも実はわかりかねるわけでございます。その意味におきまして、入場税歳入見積りというものには他の税の歳入見積りとは違つた性格のものがあり、従つてこれについての批判相当あり得るということを御了承願いたいと思います。従いまして、今度の案でどのくらい歳入見積りの百九十二億から減るかというような議論になりましても、われわれの方としても何ともはつきりした見通しはつきかねる、要するにただ従来の数字をそのまま使えば、先ほど申し上げたような次第であるということで御了承願いたいと思います。
  11. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 税収については、ただいま主税局長が申し上げた通りでありますが、それは同時に、もつと税が減ると入場者もうんとふえるのだ、従つてそう減収も見ないであろうというような御意見相当あるわけであります。これは実際どつちが正しいか、今の主税局基礎としておる数字をそのままに減しますればちようど百四十五億になりますが、これは税収が減ると入場者もふえるということも事実でありましよう。そういうこともありますし、また景気、不景気に左右されますから、実際はどうなるかはつきりいたしませんが、まあ一部の方は私どもに、これは百九十二億くらいならありますよということを言われる方もあつて、実は正直に私は申し上げるが、どうもこの税収見積り額はつきりいたしません。従いまして、それがはつきりいたしましたときにいろいろな措置をとる、こう申すほかはないと思います。
  12. 井上良二

    井上委員 政府原案による税収見込額は、現在地方税として徴収しております入場税課税標準に基く、自治庁が持つております数字基礎にしておるということが、政府から出ましたこの資料で明らかでございます。政府は、自治庁が持つております入場税税収を大体基礎にして、政府原案税収というものをはじき出されておるので、従つてただいまの御説明からわれわれがさらに聞かなければなりませんのは、昨日自治庁次長鈴木さんは、地方行政委員会において、もしただいま提案されておりますこの修正案による税収算定いたします場合は、正確なことは申されませんけれども、大体六十七億の減収になるということを答弁されております。自治庁長官はこの鈴木氏の答弁に対してどうお考えになつておるでしようか。鈴木氏の答弁は間違つておると思いますか、それともただいまの主税局長答弁が正しいとお考えになりますか。同じ政府であつて、どうしてそんなに数字が違うのですか、自治庁長官に伺いたい。
  13. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 入場税地方税でありますときは、私ども判断も何でありますが、国税になりました以上は、もちろん国で御徴収になり、国で徴収見込みをお立てになるのでありますが、参考として私どもが見た場合にどういう感じがするかということをお尋ねであるならば、昨日次長が申し上げましたように、私どもは今の政府案年間を通じて二百十九億という計算基礎に立つて判断をいたしますと、委員会の御修正になろうとしている案では、年間を通じて六十七億は減収するであろうという大体の見通しでございます、こういうように申し上げたはずであります。
  14. 井上良二

    井上委員 そうなりますと、これは非常に重要な問題でございます。これはただちに譲与特別会計に入りまして、地方財源見当てられる大初な税収であります。その税収政府の見込む税収源自治庁が見込む税収源との上において相当の開きがある。また提案者みずからにおいてはまつたくその見込み見当がつかない、つまり年度間の経過を見てみないと、どれだけの赤字がここに出るかわからないということです。そういうような不確定なことに、地方の重要な財源一つとなつて参りますものを置いておいていいとお考えになりますか。予算的に、あるいはまた税収確保の上において、そういうべらぼうな、ずさんなことが一体許されるのですか。そこで自治庁が申します、従来地方税として徴収いたしておりました算定基礎による税収と、国税に移管した場合の修正案による税収というものと、数字の上で両者の意見はつきり違つております。これはこの法案審議する上において、かつこれが予算的に、あるいはまた地方財政計画の上に非常に重要な関係を持つて来るのです。そういうことを考えます場合、いわゆる税収源算定基礎を、政府原案の場合は一体どういう算定基礎に立つておる、また改正案においてはこういう基礎である、たとえば入場料金段階別にきめられており、税率段階別に違つておりますが、第一種の映画演劇等において、五十円未満の該当の館が全国にこれだけあつて年間入場料はこれだけある、それに対しての課税率はこうなつて行くという政府案修正案とにおける税収算定基準を具体的に示してもらいませんと、この法案審議の上に非常にやつかいであります。自治庁の従来経験される算定数字と、国税移管後における数字の上において食い違いが出ており、しかも修正案においてはさらに大きく開いて来ておる。この現実に立つて、そんな不確実な抽象的な答弁でこの法案審議するわけには参りません。委員長はこの事の重大性にかんがみまして、資料提出まで暫時休憩せられんことを私は要求いたします。そうしなければ問題の審議は進みません。そういう資料が提出できるかどうか伺いたい。
  15. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 井上委員の御質問冒頭に、われわれの算定基礎自治庁の過去の実績を使つているのではないかというお話がございましたが、それは先ほども申しましたように、われわれとしては過去における自治庁――自治庁といいますか、地方税として徴収されて来た入場税数字を使うことはどうも適当ではないということで、これは使つておりません。おそらく井上委員が御指摘になりましたのは、過般われわれの方で、現状のように入場税をとつた場合と、人口割で配付した場合とにおいて、各府県でどの程度の増減があるかということについての資料を提出せよという御要求でこれは提出いたしました。そのことであろうと思います。しかしそれは今申しました過去において現実徴収されていた各府県税収の額それから百九十二億徴収され、百七十三億人口割で配付されたときの数字というわけでありまして、百七十三億、あるいは百九十二億の基礎になるものとして、過去の地方税実績をとつたわけではございませんので、これは御了承を願います。  それからその次の問題といたしまして、それでは一応過去の数字をどういうふうにして計算したか、今度の自治庁とわれわれの方の食い違いはどうか。これは大体結論的には話がわかつておりますがどういうふうにして計算したかということについて申し上げますと、われわれの方でつくりました過去の数字映画が大体全体の税収入の八割を占めておりますので、これを中心にして計算をいたしましたが、映画配給収入というものが一応推定できます。この配給収入から逆算いたしまして、一応の料金収入というものを推定いたしましてこれを今度は各段階別にわけて見ます。各段階別にわけるにつきましては、一応大都市とか中都市、小都市、郡部といつたような推定サンプル調査をいたしまして、この料金段階を調べ、同時に各館の大体の収入を調べ、そうしてそれをそれぞれの階層にある映画館の数にかけて参りまして、一応の段階別の区分をしたわけであります。原案におきましては、映画館課税標準額は、税率が五割の段階にあるものが八億九千八百万円、四割の段階にあるものが二百六十六億九千二百万円、三割の段階にあるものが二百十八億二百万円、二割の段階にあるものが五十三億六千三百万円、こういう数字を出しまして、それによつて税額を五割の段階のところで四億四千九百万円、四割の段階で百六億七千七百万円、三割の段階で六十五億四千百万円、二割の段階で十億七千三百万円、こういうふうな計算をしております。以下演劇演芸等もございますが、これはあるいは御要求があればさらに御説明しますが、大体これが八割を占めておりますので、一応映画館中心にして御説明したいと思います。今度税率が下りました場合におきまして、これはわれわれは全体としてその計算基礎にしているわけでございますが、税率が下つた場合に二つの可能性考えられます。税率が下つて映画料金が下らぬ。それは最初は下りますが、あるいはまた元へもどる、こういうことも考えられます。それから下る場合がある。しかし下らなければもちろん映画に使われる税込み金額というものは従来と同じわけであります。それから下つた場合におきましても――これは昨年酒の場合にわれわれ同じような考え方をしたわけでございますが、税率が下りましても、大体映画に使われる金はおそらくそのまま持続するのではないだろうか。百円の映画料金であつた場合に二回見た人は、九十円とか八十円になれば、二回二分とか二回三分とかいうふうな見方をするのではなかろうか、こういう前提に立ちました。これは実は当初の案をつくるときにも大体その考え方計算をして来たわけでございます。従いまして今度新しい修正案でもつて計算しました場合におきまして、五割の段階にあるものは課税標準額として八億九千八百万円、この税額が四億四千九百万円、四割の段階にあるものが八億五千四百万円、税額は三億四千二百万円、三割の段階にあるものが百九十五億七百万円、税額で五十八億五千二百万円、二割の段階にあるものが三百十一億八千二百万円、税額が六十二億三千六百万円、一割の段階にあるものが八十四億八千六百万円税額が八億四千九百万円、課税標準額全体が六百九億二千七百万円で、税額で百三十七億二千八百万円であります。自治庁とわれわれの方の計算は、これは自治庁の方とわれわれの方と実はまだほんとうに議論して打合せをしておりませんので、そこに多少の誤差が出て来ると思いますが、主たる原因考えてみますと、今われわれの方で想定の中に入れております映画料金が下つた場合におきましても、映画に使われる金は大体同じ程度支出して行くのではないだろうか、こういう想定自治庁は入れていない。税込み映画料金が下れば、それだけ映画に使われる金は減る、そういう前提のもとに立つて計算をしておるように見受けられます。従いましてそこに誤差が出て来るというのは、おそらくそういう原因によるわけでありまして、われわれといたしましては、その程度見積りは従来の政府原案基礎の場合においてもやつておりましたし、今度の場合においてもそういう計算をすることは別に過当でない、こう考えているわけであります。
  16. 井上良二

    井上委員 ただいまの説明を聞くと、一応われわれも納得する点もございますが、しかし、それは私はあなた方の見込み違いが大分あるのではないか、長い地方税として入場税徴収しておりました地方府県算定のいろいろな角度から検討いたしまして、なるほどあなた自身が、この徴収には一つの疑義がある、そこには相当いろいろな思惑が介在しておつて的確な把握がされていない、こういう一つの疑いの立場に立つて考えられている。一体その把握漏れがあるというのはどういうことをあなたは言おうとしておるか、どういうところにその税の脱税をさしている原因があると考えられているか、これを明確にされたいが、なおわれわれが、従来とつておりました入場税算出内容をいろいろな面から検討いたしてみますと、あなたの申しておりますのとは非常に違うのであります。課税標準額更正比率をかけまして、そこで更正課税標準額を出し、さらにそれに税率をかけましたものが税額として出る、こういう一つ税徴収基準算法によつてやりますと、つまり一〇%かけます五十円以下の場合は九億八千六百万円になり、さらに二〇%の場合になつて参りますと、これが五十一億四千七百万円、さらに三〇%の場合で、四十億八百万円、四割の場合で十九億七千百万円、五〇%の場合で四億三千八百万円、合計いたしまして百二十五億五千万円しか税収は上らぬ。これに映画以外の分を見込みましても実際は非常な減収になるこういうことからいたしまして、算出基礎の上においてわれわれ根拠数字が非常にあやふやでないかということを考える。そこで政府としては、この年度経過を見てみないと税収が的確に把握することができ得ないというあやふやな立場に立つて入場譲与税に対する修正案を出したのではないか。入場譲与税に対する修正案政府が同意をし、それを出すことをやむを得ないと考え根拠は、税収の面において相当赤字が予想されるがゆえに、一般会計から出してもやむを得ないということになつたのではないのですか。この点大蔵大臣どうお考えになりますか。私はそうだとにらんでいる。そうでなければかくのごとき修正案を提出する必要はないのです。一体どういうわけでかくのごとき修正案政府は同意したのか。提案者側においても、また政府考え方においても、年間を通して三、四十億ぐらいの収入減があります場合ならば、ことさら譲与税法において一般会計から繰入れるという修正をしなくともいいじやありませんか。それをやらなければならぬというのは、この税収がいかにその根拠において薄弱であるかということを裏書きしておるじやありませんか。そう大蔵大臣はお考えになりませんか。
  17. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 先ほども申したごとく、この税収がどれだけあるかということは、実際いろいろ算定上むずかしいのでありまして、私どもは必ずしも政府が予定しておるほど入つて来ないというふうにも考えておりません。しかしながら、入つて来ない場合はどうかという今のお尋ねに対しましては、国の方に入るべき一割を国の一般会計の方に入れないことにいたしまして、それで地方の方に御不自由のないことにする、こういうふうにすればよいのではないか。なおまたそれでも――それ以上不足しないと思いますが、万々一それでも不足する場合はどうか、こういうことになりますと、この交付税及び譲与税配付金特別会計の方に一時借入金という規定もございますので、それらの運用によつて地方財政は遺憾なく行ける、こういうふうに考えておる次第であります。
  18. 井上良二

    井上委員 一体政府みずからの計算によりましても、政府原案から申しますならば、ここで四十数億の赤字が出る。それから自治庁計算によると約七十億に近い赤字が出る。そういう赤字が出るということを前提にして一般会計からこの赤字を穴埋めして特別会計に繰入れる、こういうのですが、一体一般会計のどこから穴埋めしようというのですか。
  19. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これは、この税収はつきりとそれだけ入つて来ないということがきまつてからの問題になるので、現在一般会計の問題として、あるいは予算措置として考える問題ではないと私は思いますが、先ほど申した通り、実際どれくらい税収があるかということは非常にむずかしい、今までの入場税徴収状況等から見れば、これぐらい行けるのではないかという少し楽観的な見方もされるのであります。従いまして、結果がどうなるかということで、そのときは考えたい。それでは地方の方の地方税関係がお困りだから、その方のために、今申し上げたように、国の方へ入れる一割の分は、それが入つて来ない場合には差控えておこう、もしそれでも足らぬときには、今の特別会計の方で一割借りることになつておるから、その運用によつてつて参る、どうすれば実際問題としては、現実にそれだけ入つて来るかということが確定したときに、あと財政措置をとつたらいいのではないか、こう考えておるわけであります。
  20. 井上良二

    井上委員 この修正案によりますと、政府原案の百九十二億、すなわち地方に渡します金額に達しない場合には、一般会計から繰入れるということがはつきり出ておる。だから、これは会計年度末まで待たなければわからぬということになりますと、一体地方財政計画はどうなりますか。かりに自治庁の従来の経験からはじき出した数字六十七億が正しいと考えて、これを各府県別に割つてみますと、一県当りが一億三千万円になる。一億三千万円もの赤字が予想されるような配付税をきめておいて、それで地方財政計画は立つとお考えになりますか。こういうべらぼうなことが一体あり得るのですか。また自治庁長官は、そういう不確実な状態において地方財政計画を責任を持つて進めることができますか、これを伺いたい。
  21. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 地方財政については迷惑をかけないというように先ほど申し上げましたが、なおこまかい手続の問題については主計局長からお答えいたします。
  22. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 昨日地方行政委員会に提案になりました譲与税法案の趣旨でございますが、税収入は、先ほどからお話がございましたように的確な見通しが立ちがたいのでございますけれども、万一不足を生じた場合には、初年度に限つて譲与税の全額は百七十二億八千万円とする。そしてそれとの差額は一般会計の負担とするということが書いてあるわけでございます。これは地方財政に、二十九年度分の譲与税として欠陥を生じないようにという趣旨であることは申すまでもないわけでございます。しからばその穴埋めの措置としてどういうことが考えられるか、これは大蔵大臣からもお話がございましたように、まずそれに充当せられるものは一般会計がいただくことになつております一割、約十九億があるわけでございまして、この分は、収入の状況によつて、不足を生ずるような状況のありました場合には一般会計が遠慮しよう、それで十九億の分は埋まるわけでございます。それから、さらに不足する場合にどうするか、これは結局は一般会計が負担をするわけでございまして、後日この特別会計に繰入れをいたすわけでございますが、その予算措置は二十九年度の決算確定後、ないしは年度相当経過いたしまして、入場税収入の推移を十分見きわめました上で、できるだけ早い時期にやるということになるわけでございます。従いまして昭和三十年度の予算になる可能性があるわけでございますが、その間の金繰りにつきましては、この特別会計に規定がございまして、二十億の限度におきまして一時借入金ができることになつておりますので、その借入金の規定を活用することによりまして、年度内におきましても地方財政の円滑なる実施に遺憾のないよう極力努力をする、さような考え方でこの修正案の趣旨はできておると思うのであります。
  23. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 私としては、もちろんこれは自信がなくては困るのでありまして、一応、入場譲与税法案に対する国会側のお考えになつておる修正案で行くならば、二十九年度措置はできる、今までの政府原案におきましても、二十九年度は百七十二億八千万円という総額が予定されておるだけでございまして、それ以上あつても二十九年度収入にはならぬわけでありますから、総額において百七十二億八千万円が確保されるということと、それがそれぞれの必要な時期において地方団体に行くということと二点あると思うわけであります。そこで、必要な時期には多少ずれがありますが、この入場譲与法案に対する修正案では七月、十月、一月、三月において出すということであり、それからただいま大蔵大臣並びに主計局長からの説明でも、国が留保する予定になつてつた十分の一の部分も徴収のぐあいによつては政令の定めるところによつてこれを地方に出す、さらに足らない場合には借入金で措置をするということになりますから、おそらくこの七、十、一、三の四回にわけられる分は、大体百七十二億というものを頭に置いた四分の一が標準になつて出て来ると考えられますので、私としては、二十九年度措置は、入場譲与税法案修正案の行き方からいたしますならば何とかやつて行ける、こういう考えを持つておるわけであります。
  24. 井上良二

    井上委員 そうしますと、地方財政計画というものは、政府原案の大体百九十二億を中心にしまして策定をいたしてお立てになりますか。そうでないと、実際のところ地方はやはり年間財政計画をお立てになりますから、それに基く財源を確保されるということが前提条件になります。その財源があやふやでは困るというところにわれわれは疑問を持つていますから、あなたとしては、政府原案である百九十二億が大体予定通りつて行くではないかということを前提にしておりますか。そこに問題がある。それはどちらですか。
  25. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 二十九年度入場譲与税による地方財政収入は百九十二億の十分の九、百七十二億八千万円というものが財政計画の上で収入になつておりますから、この総額が確保されるならば、地方財政は当初の考え方通りに運行できる、こういうことになつております。
  26. 井上良二

    井上委員 そうなりますと、一方自治庁では百七十二億を年間地方財政計画として策定をするということですが、実際の税収というものはそれに伴わないことが明らかになつて来ておる。そこで問題は、その足らぬ分を一般会計から一番最後の三月なら三月に繰入れることになるか、あるいはまた借入金でまかなうかということになりますが、この場合一般会計から繰入れるというのは、一般予算から繰入れる分であろうと思いますが、一般予算のどの部分から繰入れようとするのですか。
  27. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 一般会計から繰入れる時期がいつになるかという問題は、今後の推移いかんにかかわるわけでありまして、その時期は多分に昭和三十年度になる可能性が多いと思うのでございまして、そのために借入金の規定を活用するということを申し上げたわけでございますが、その問題は別といたしまして、一般会計からこの特別会計に繰入れるということにいたします場合には、そのための特別の予算措置が必要であることは当然でございます。
  28. 井上良二

    井上委員 そこが一番大切であろうと思いますが、問題は、一般会計から繰入れるということになつており、さらにこれから行きますと、これは当然並行審議しておりまする特別会計に入る金でありますが、特別会計にはそういう規定はどこにもありません。これは修正をするつもりですか。
  29. 森永貞一郎

    ○森永政府委員 昨日地方行政委員会に提出されました入場譲与税法案修正の趣旨に即応した何らかの意味の修正規定を当然お考えになつておられることだと思う。そういう筋合いと考えております。
  30. 井上良二

    井上委員 問題は非常に片ちんばのものでありまして、現実に予算はすでに成立しております。その予算をどうやられようというのです。政府は別に補正予算をお出しになりますか、それとも予備金や何かで支出しようというのですか。具体的にどうしようというのです。
  31. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 本年度は補正予算を組まないという考え方を持つております。ただ今お話のように一般会計でやりまして、地方の方には一切御迷惑をかけないという措置をとります。そうして地方財源百七十二億八千万円を、支払うべき七、十、一、三月に支払うことは当然でありまして……。   〔発言する者あり〕
  32. 千葉三郎

    千葉委員長 静粛に願います。
  33. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 これに対して、今申し上げた通り中央が受けるべき十九億何がしの一般会計の分をそれに繰りまわしたり、あるいはまたさらに配付特別会計でしたか、その特別会計の一時借入金でまかなつて行く、しかも金額が確定してはつきりと三月末にすれば、これは来年度の予算では予算措置をとらなければならない、あるいはその前にも予算措置をとる必要が起つて参りますれば、これは予算措置をとらなければならぬと考えておりますが、私どもの今の見通しでは、それほどの必要はないように見通しておるのであります。
  34. 井上良二

    井上委員 現実にあなた自身の所管においても、四十数億の減収になるということが明らかにされている。自治庁はその後さらに上まわつたことを答弁されている。そうすると、それは当然一般会計から補給をせなければならぬということになりましよう。現にあなたはそこにおいでになりますが、織物消費税をどうしようというのです。繊維消費税は審議未了の形に進んでいる。これが八十五億、さらにこの入場税において少くともやはり六、七十億の赤字が出る、そこへ持つて来て予算成立に伴つて三党修正によつて一般会計から五十億がすでに流用されておる、そうなると、予備金はたしか百三十億ぐらいで、一体予算をどうするのです。現実に予算の執行はできなくなるではありませんか。そういうことになるものを、政府が平気で修正に応じて修正に乗つたというのは、一体どういうことです。そういうばかなことがありますか。あなた自身が補正はしないと言うなら、予算はすでに成立している今日、一体どうしようというのですか。私はもつとこまかく質問するといいのですが、時間がないのですからあまりこまかく申しませんけれども、そもそもあなた自身の出ております与党から政府原案に対して、最初は強調しておきながら途中でこれを修正をし、しかも大きな減収を生じ、一方これと相見合わなければならぬところの繊維消費税は審議未了の形になつておる。かくのごとく予算執行に重大な支障を来す問題が、あなたみずからの与党から提案されております。一体これは、あなたは政治的責任をどうお考えになりますか。問題はあなたの政治的な生命にかかつているのですよ。今度の税制改正案においてあなたの大きな主張として、いわゆるぜいたく品には課税をするという御主張が踏みにじられ、一方地方の偏在をした入場税国税に移管しようとすることには大きな修正が加えられ、さらに遊興飲食税はみずからやろうとしてもやれない、これはみなあなた方の所属している自由党の提案によつてやられておるのですよ。これはあなたみずから、一体政治的にどうお考えになりますか。あなたに対する不信任ではありませんか。その政治的責任をあなたはどうお考えになりますか。これは大蔵大臣としては相当重要な問題であろうと私は思う。ましてや予算的にどうにもでき得ないものを一般会計から補填をするなんということは、大蔵当局としてはまつたく忍びがたきを忍んでこれに応じておるような形ではありませんか。こんな修正に応ずる一体何の政治的な立場がありますか。私は国会を侮辱するもはなはだしいと思つている。予算が成立して、もうどうにもこうにもならぬようになつておるのに、予算を修正してもかまわぬがごとき修正案を与党から出すというのは、一体何ということですか。そういうべらぼうなことが国政審議の上において通りますか。そういうことでは大義名分は通りませんよ。これに対してあなたは一体どうお考えになりますか。明確に御答弁願いたい。
  35. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 入場税がどれだけ入つて来るかということは、先ほども申した通り明確にはわからない。従つて必ずしも政府の予定しておる額だけ入つて来ないということを断言していない。あなたのように、最初からこれだけしか入つて来ないんだときめてかかるのとは違う。幾ら入る、一応そういうふうに……。(発言する者多し)発言中です。私は一応そういうふうに推定をするけれども、正確なものは入つて来なければわからないということを繰返して言ておるのである。従つて、たとえば地方に対してはそういう措置をするから、地方には何も財政的な不自由はないようにいたして行く、もしまた、それでもなお確定して金額が不足する場合には、一般会計で処置する、こういうことを言つておるのであつて、これは確定した後にするのは当然のことである。あなた方がおつしやる繊維税の問題は、ぜいたく品に今日課税することは国民みな望むところであるから、これは通るものと私ども考えておる。またそういう仮定の上に立つてのいろいろの議論はすべて避けたい、私はかように考えておるのでありまして、これはあなた方と多少信ずるところが違うから、やむを得ず見解の差が出て来ると存じます。
  36. 井上良二

    井上委員 大蔵大臣、聞き捨てならぬことを言うのですね。現実にこの修正案によつて大きな税収減を来すということは明確にされている。しかもその明確にされたことは、来してないというたところで、ないならば何ゆえに一体自由党からかくのごとき修正案を出すのです。何で出すのです。何で自由党がさような修正案を出すのです。   〔「出してもいいじやないか」「自由党と社会党と違うぞ」と呼び、その他発言する者多し〕
  37. 千葉三郎

    千葉委員長 静粛に願います。
  38. 井上良二

    井上委員 日本自由党において昨日地方行政委員会に提案をしたこの修正案は、みずからここへ出て来ておる。修正案によつて税収減を来すという前提に立つて、この修正案を出されている。税収減がなければ、かくのごとき修正案を出す必要はないのです。みずからそういうことをしておいて、それでもつて税収減はないというならば、かくのごとき修正をする必要もない。また大蔵大臣みずから地方財政計画に何ら不安を与えず、必要なものは必ず確保することは当然であり、また確保するためには、確保するだけに必要な予算的法的処置を要する。その予算的法的処置は、正規の法的根拠に立たずに、あなたの一りようけんによつてやれるもんじやありません。予算はあなたの一りようけんではどうにもならぬのです。国会の承認を得なければどうにもならぬのです。それをあなたは一体どういじろうというのですか。あなたの個人的な感覚や才能によつて国の予算はどうにもならぬのです。少くともかくのごとき修正案によつて予算がかわつて参ります場合は、当然補正予算を出さなければならぬ。その補正予算も出さぬというんじやありませんか。しからば一体どこからこの穴埋めをしようというのです。どこから穴埋めをするのです。それを具体的にひとつ説明を願いたい。
  39. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 先ほども申しておる通り、この入場税がどれだけの収入があるかということは、正確にとつてみなければはつきりいたしません。従いましてただいまのところ、一応元のままの推定ではそういうふうになるから、従つてどもとしては、地方財源その他に不自由があつてはいかぬから、その措置はとります。しかしながらいよいよ、たとえば、これも三月、九月でしたか、あるいは七月、十月、一月とやつてみて、なお入場税収入状況等をいろいろ見た場合、これでは非常に不足しそうだというときに、そういつた補正予算等を組まなければならぬかもしれませんが、現在のところ私どもは、これくらいの収入があるのじやないかというふうにも見られておりますので、従つて地方に対する措置をとつて参れば、本年度で補正予算を組むということをやらなければならないというような状態ではない。かように考えておる次第であります。もしそのほかにもいろいろ組まなければならぬような事情が発生すれば、これは別でありますが、入場税だけの問題についていえば、そういうふうに考えております。
  40. 井上良二

    井上委員 大蔵大臣は、盛んに入場税税収については経過を見なければわからぬとこう言う。なるほど新しい修正案では、あなたとしてはそう言うよりしようがなかろう。しからば伺います。一体政府原案は何を根拠にして百九十二億をはじき出しておるのでありますか。少くとも国会の承認を経て国民から税金をとる場合、どれだけとれるかわからぬというような想定のもとに一体原案審議ができますか。少くともこれとこれとこうすればこうなる、だからこれだけの税収は確実に見込まれるという根拠に立たずして、一体税の予算が組めますか。とれるかとれぬかわからぬ、やつてみなければわからぬ。そんなべらぼうな話がありますか。政府原案はそういうでたらめの根拠に立つてつておるのでありますか。そうでなかつたら、あなたの今の答弁は穏当を欠きますよ。少くとも経過を見てみなければわからぬというような答弁をされて、どうして一体政府原案は信用されますか。少くともわれわれは、政府原案を信用性をもつて、確実性をもつて審議して来たつもりである。そういういいかげんな、でたらめなことで提出されておるとは私は思わない。それにあなたみずから大蔵大臣としてどうなるかわからぬ、結果を見なければわからぬと言うておつて、一体予算が成り立つと思いますか。そんな無責任きわまる弁答はないと思います。一体どうお考えになりますか。
  41. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私はそういうことを言つてない。あなたは前から記憶を呼び起していただけばすぐわかる。私の言つておることは、一応今までの案で、今までの根拠になつておる数字からこの税率をかえることによる税を割出して見ると、それは百四十五億になる、一応の推定だ。しかしながら税が下つて来るために入場者等がふえて来るから、今まで多少漏れておつたもので税収入のあるものもあろう、地方にある場合と国税になる場合と多少差が出て来るかもしれないが、そういうことで、こまかい数字がわからないという意味を申し上げておる。従つてあなたが言われる補正予算を組むかどうかということについて御答弁申し上げておるのであつて、これが税収が不確かであるからということで何もでたらめを言つておるのじやない。それがはつきりしたときに補正予算を組むか組まぬかということを申し上げておるので、このことを私は繰返して申し上げておるのであるから、おわかり願えることと思うのであります。
  42. 千葉三郎

    千葉委員長 春日一幸君。
  43. 春日一幸

    ○春日委員 ただいまの井上委員質問に対する御答弁に関連をいたしまして、次の二つの事柄が新しく問題となつて提起されると思うのであります。  その一つは、自治庁計算によりますと、自由党修正案によつて六十七億八千万円の税収欠陥を来すという計算を立つておるのでありまして、大蔵当局の計算によりますと、これが四十数億ということであるのでありますが、そういうような税収欠陥がありました場合、ただいまの御説明によりますと、二十億の借入れあるいは一割の一般会計の繰入の辞退、こういうようなものをもつて補填をして、なおかつ足らざる場合においては特別の財政措置を講ずるとの趣であります。そういたしますと、入場税法案そのものの骨子をなすものは、まずその九割を地方に還元をして、貧富の県の財政の均衡をはかるとともに一割を国庫にとつておくというこの体系そのものがくずれて行くのではないかと思います。あるいはその十割、十一割以上のものを入場税によつて国がとつたものを還元しなければ、この譲与税に規定しております財源を満たすことができないような結果になつて来るのであつて、そもそも入場税は九割は地方にもどし、一割は国がとるということがこの法律の中に明確に示してあります。ところがこれが十割、十一割十二割も出さなければならないということになつたといたしますならば、譲与税法案と入場税法案との関連において重大なる問題をここに新しく持ち込んで参ると思いまするが、これに対して大蔵大臣はどういうようにお考えになつておるか。
  44. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 先ほど自治庁と大蔵省の方の調べについていろいろ御意見が出ましたが、自治庁の分は大体一年分二百十九億と言つておるのであつて、大蔵省の方では、これを十一箇月分見ておるというところに差があるのでありまして、六十七億という結果が大蔵省に出て来ないことは、私は説明せぬでもおわかりのことと思うのであります。  それから入場税のものが九割を地方へ還元し、一割を一般会計へ繰入れる。こういうような数字が違つて来ると、そういう本質と違うじやないか。それは今申し上げた通り、この数字というものが、一応そう言いますけれども、なお相当増収を見込まれるという御意見もありまして、私どもはその増収がないということを言い切れないのです。それはあなたも知つておられる通り、たしかに税金が安くなれば入場者はふえる。酒の税金なども、下げたときに非常に酒の需要者がふえた。タバコでも値下げしたあとは需要者が非常にふえた。こういうこともあるので、税収は意外に多くなるかもわからぬという期待を若干持てないでもないと思うので、私どもはやはり本来の入場税の筋はあくまで通すべきであると考えております。
  45. 春日一幸

    ○春日委員 譲与税法案の中に九割を地方へ還元をして一割を国庫に収納する、このことが法案の中に明記をしてあるわけであります。しかしながらただいまの御説明によりますると、あるいはとれるかとれないか確信が持てない。とられない場合においては、十九億何千万円かの国庫収納金を辞退する。このことがすでに前提になつておる。これで足りないときは二十億円を限度とする一般会計の借入金もあらかじめ想定をしておる。そうだといたしますれば、九割を地方に還元して一割を国庫に収納するというこの譲与税法案における条文は、そこに若干の含み、あるいはこれをその情勢によつては変更することができるというような何らかの条文の上に措置を講じて行かなければならぬのではないかと思うのでありますが、これに対して大臣はどういうふうにお考えになつておるか、主税局の渡辺さんから御答弁を願つてけつこうであります。  それからもう一つお伺いをいたしたいことは、今度税率がひどく下るわけであります。そこで別の面からの御答弁によりますと、大臣はなおかつ増収を期せられる。従つて同じような税収入が期待できるかもしれない、こういうようなことを言つておられる。ただ何となくそういうふうに楽観的に期待をされておる。ところが大臣の楽観的な期待たるや、これは末端の税務署に参りますと、必ずしも単なる楽観的な期待で済まされるものではありません。大臣が税率が下つてもこれだけの収入があるものと期待をしておるというこの考え方は、末端における徴税執行において、映画館その他に対するきびしい苛斂誅求の形になつて現われるようなことがありはしないか。このことを最もおそれるのであります。特にわれわれが指摘しなければならないことは、自然増収ということは、入場税においてはおのずから限度、限界があるでございましよう。酒とかタバコは、消費の増大こよつて相当この税収入が増大する場合もあるのでありましようが、映画館とか何とかいつたようなものは、一定の固定の建物を対象としての収入でありまするから、おのずから収容人員については大体の限度があるのであります。従いまして、本年度においてこのたいへんな減税をしながら、なおかつそこに多くの観覧客を誘致することによつて大増収をはかり得るという推算は、断じて成り立ち得ない。そこで私は、映画館とか興行主を対象としてこれだけの税金をぶつかけて行くという結果にならざるを得ないと考えるのであるが、この点について塚田長官はどういうふうな考え方をお持ちになつておるのであるか。この機会に塚田さんからも御意見を伺つておきたい。それから制度の問題としては、渡辺さんからでも御答弁を願いたいのであります。
  46. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私からもお答えいたしておきますが、あなたは私の言つた言葉に大の字をつけられるから非常に問題が起るのです。私は大増収なんていうことは申しておりません。そういうところまでこの数字が確定しないから、その点を言つておるのであつて、あなたの言うように大増収でもしようとするならば、それはあなたの言葉通り苛斂誅求が行われるかもしれませんが、税務署は苛斂誅求などする役所ではありません。必ず公正にこれを取扱わせますから、その点は御安心を願いたい。  それからなお入場税の今の点でありますが、これは二十九年度のものだけにつきましては、入場譲与税法案の附則にそういうことを入れまして処理する考えであります。これは正修案にそういうものが盛られておるのでありますから、修正案の場合にお聞きくださればよくわかると思います。
  47. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 ただいまお答えがありましたので、私の方から御答弁申し上げることはないかと思つておるのですが、ただついででありますので。――私は今度のこの国会が御計画になつております修正というものを受取りまして、地方財政を担当する立場として非常に心配をしておりますのは、二十九年度だけについてはどうするかということ、それから二十九年度を含めて、今後恒久の措置としてどうするかということと二つあると思つておるわけであります。もちろん今までの政府原案によりましても、二十九年度は、先ほどから申し上げましたように百七十二億八千万円というものが地方財政計画に確保できればこれは同じことでありまして、ただ三十年度以後の措置といたしまして、どうしても若干当初の構想とかわつたものが出て来るように考えられるから、新しい税率というものを構想に置き、二十九年度におけるその税率による税収の実情を見きわめた上で、何らか別途の措置をしなければならないのではないか、こういう考え方をいたしておるわけであります。
  48. 春日一幸

    ○春日委員 大蔵大臣はお急ぎの様子でありますから、大蔵大臣にのみ御質問を申し上げたいと思います。  ただいま税務署は苛斂誅求はしていないと言つておられるけれども、大臣は八重雲のかなたに住んでおられるから、あるいはそういう町の事情がおわかりにならないと思いますが、われわれはちまたの中に住んでおつて、ちまたの声にまみれておる。今度の三月十五日の決定でどういう苛斂誅求が行われたか。あなたは全然御存じないでありましよう。去年より五割増、七割増、八割増というような決定が随所に行われ、税務署には毎日のごとく陳情が来ておる。これが苛斂誅求でなくして何でありましよう。あなたはそういう人は一人もいないといつて大言壮語されますが、そういうような納税者たちのほんとうの声をあなたに一言でも聞かせてあげたい。あなたが少くとも徴税の最高責任者であるならば、そういう断定的な無責任な言葉を放言されるのではなくて、さらに十分その部下を戒飭して、そういうことのないように善処されるという言葉があつてしかるべきだと思う。どうかそういう言葉については十分御注意を願いたい。  そこで関連の質問に入りたいと思いますが、そもそもこの法律案は、政府の提案趣旨の説明によりますと、さきに義務教育費国庫負担法によつて、富裕県に対しても国庫からの支出が行われることになつて来て、今までの平衡交付金の不交付団体までもそういういわば過大の支出を受ける形になつたので、従つて地方入場税国税に移すことによつて調整しようというようなことが述べられておるわけでありまするが、私はこの機会に大臣にお伺いしたいことは、当時義務教育費国庫負担法が制定されたことと相前後いたしまして、当然この平衡交付金の不交付団体であるところの富裕県に対しても国庫の支出が行われる、そういうようなことがあることはどうであろうという政府考え方から、義務教育費国庫負担法の特例法が出たことを私は銘記しなければならぬと思うのであります。ところがこの特例法に対する国会の意思は一体何であつたでありましようか。なるほどこれは政府財政均衡というような問題等もいろいろあるではありましようけれども、国会はさらにこれを、義務教育費国庫負担の基本的な意義あるいはまた東京等の富裕県においてもなおかつ二部教授が行われておるような財政窮乏の実情等を勘案いたしまして、この問題は前後二回にわたつてたしか審議未了になつておると思うのであります。すなわちこのことは、義務教育費国庫負担法によつてもたらされるところのいろいろな凹凸を財政措置、すなわち特例法などによつて調整すべきものではないというのが国会の意思ではなかつたかと私は思うのであります。申し上げるまでもなく、国会は国の最高の決定機関でありまして、その財政措置をすべきかすべからざるかということの議案に対して、本院はこれを否決した形において審議未了になつておることを、一体大臣はどのようにお考えになつておるのでありましようか。すなわちあなた方は、国庫負担の特例法によつて敗れ去つたこのことを、今度はこの入場税によつてその意思を遂げんとしておるかのごとくに私は見受けなければならぬのでありますが、そういうような国会の意思を曲げて、あくまでも意思を通さんとするようなあり方がこの民主政治のもとに許されてはいけないと私は思うのでありますが、一体大臣は、国庫負担法によつて遂げ得られなかつたところの考え方を、この入場税を国に移管することによつて遂げようとするのであるかどうか、この点について大臣から御意見を承りたいと思います。
  49. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 地方財政が、特に財源について調整を要することは、これはもう私から申し上げるまでもなく、地方制度調査会におきましても、税制調査会におきましても、みなそういう答申が出ておるのでありまして、この点は一人の異論もなかつた点なんであります。ただどういうふうにこれを調整するかという問題が残された問題だと思うのであります。これについては、さきにもお話になつたような義務教育費半額国庫負担の特例に関する法案を出しましたが、これは一応御審議にもならないのでありますから、否決等の今おつしやつた意味であるかどうか、それは私は全然存じません。私はさように解しておりません。御審議にならなかつたということ――一応説明もお聞きにならないのでありますから、これは御審議にならないので、あなたがおつしやるように、これは明らかに否決したのであるというふうには私はとつておりません。そういうふうに思つておりません。しかしこの法案については、私どもは今の情勢から見て、二回もすでに国会に出して審議未了に終つたものを、これは理論としては私あくまで正しいと思うけれども、しかし実際問題としてお出しすることはどうかというので、差控えたことは差控えたわけであります。しかし、それではこれを埋め合にせしたのかどうかというと、これはそういう考え方ではなくて、地方の各財源を富裕県といわゆる富裕ならざる府県とにできるだけ公平に、国の財源であるから措置して行こう、こういう点から起つておるのでありまして、そのほかに他意はございません。
  50. 春日一幸

    ○春日委員 ただいま大臣の御答弁によりますと、この特例法が通らなかつたことの埋め合せにこれを出したものでないという御答弁でありまするが、そうすると、先般この大蔵委員会地方行政委員会との連合審査会におきまして、政府の提案理由の趣旨説明の中に、この義務教育費国庫負担法が施行されたことによつて、富裕県にさらに国庫の支出を伴つて来たので、従つてそれを調整する必要がある云々ということが明確にうたわれておるのであります。これは印刷されておる文字でありますから、埋め合せではないと申されたところで、それは明らかに埋め合せであることに相違は毛頭ございません。だからそういうような首尾一貫しないところの場当りの御答弁は、小笠原大蔵大臣としてはまことにふさわしからぬ御答弁ではないかと思うのであります。今後のために特に注意を喚起いたしたいと思うのであります。
  51. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私ちよつと言葉を補つておきます。そのためのみというのみが抜けたのでありまして、この点は申し上げておかなければならぬと思います。
  52. 春日一幸

    ○春日委員 それでは今後抜かさないように願いたいと思います。(笑声)そこで私はあなたに申し述べたいことは、あなたはここにおつて調整されておるが、この調整のしつぱなしなら、私はそれでもなおかつ多少の筋の通らないことはないと思う。ところが今度は入場税国税移管によりまして、たとえば大阪とか東京とかの富裕県から金を相当額取上げられてしまう。だからその減収を満たすため、その額だけをこのタバコ消費税によつて再びここにその増収が期し得る措置が行われようとしている。これは一体どうしたことでございましようか。これは簡単に申しておきまするならば、東京並びに大阪の右のポケットから五十一億何千万円という金を政府入場税国管によつてひつぱり出して、そうして同じ左のポケツトヘこのタバコ消費税五十一億というものを入れてやる、一体こんなことは悪童の悪ふざけと同じではございませんか。私は申し上げたいことは、あなた方がほんとうに地方財政の貧富の不均衡を調整したいというのならば、このはげしい民論に抗して入場税を国管にするというようなあざとい措置をおとりにならなくても、入場税というようなものは現行と何ら関係なく、ただこのタバコ消費税八十何億の調整だけで十分にその措置は講じ得る、その目的は達し得ると思うのでありますが、これに対してその措置をあえて講ずることなく、二段、三段のこの複雑怪奇な措置を講ぜられたことについては、何らか特別の理由がなければならぬと思うのでありますが、われわれが納得するに足るその理由をこの機会に御説明を願いたいと思うのであります。
  53. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私から簡単に説明して、足らざるところをまた別に政府委員から申し上げさせたいと思います。  今度いわゆる平衡交付金というものをかえまして、交付税及び譲与税配付金特別会計をつくりました関係上、今の地方財源の偏在調整という意味も含まれまして、タバコなどのこともいろいろ考えられたのであります。のみならず、一般会計からこういうものに入れることではつきりと財源を与えるという意味が出ておるのでございまして、私どもは別に今おつしやつたような悪い意味を持つてつたものではない、これで一番正しく持つて参るのだと考えておるのでございます。なおこまかいことは政府委員から申し上げさせることにいたします。
  54. 春日一幸

    ○春日委員 塚田大臣からもひとつ答弁願いたい。連帯責任において、大蔵大臣の分もこれから質問いたしますから……。
  55. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 私から補足してお答え申し上げるといいかと思うのでありますが、実は今春日委員は、右のポケットからとつて左のポケツトヘというまことに巧みな比喩で御説明になつたのでありますけれども、実は右にも左にもポケットが一つしかないのだと、そういうことになるのであります。ところが右にポケットが幾つもある、左にもポケットが幾つもあるということになると、どれからとつて来るかということがもう一つその場合に問題になるわけでありまして、あるものはとつて、そうして再配分する過程において、今度わけて行くというところに問題が伏在しておると思う。そこでもしも入場税を国に上げないという場合には、入場税地方にあるだけ偏在の度がずつと出て参ります。この偏在というものを頭に置いて、ただこつちからプラスするものだけでこれをならして行くということになると、非常にたくさん持つて行かなければ偏在が是正できないのであります。もちろん国民負担がまだ幾らでもできるという状態であれば、よけいとるという形でどのようにも偏在是正はできるのでありますが、国民負担はそうできないということになると、地方に偏在しておるものは一応国にとつて来る、それでもまだ偏在は残るわけであります。その残つたものを、このとつたものとプラスのものをやることによつて、つまり入場税を九割返すことと、タバコ消費税の何がしかをやることによつて、最も低い費用でもつて調整をなるべく最大限にしようというくふうがあるわけでありますから、やはり一方からとつて一方からやるのでは同じではないかというようには行かないのが、この措置になつた理由であります。
  56. 春日一幸

    ○春日委員 それは塚田大臣の御答弁といたしましてはまことに詭弁でありまして、何ら私を納得せしめる要素はないのでございます。私も国会にまかり出ますまでは地方議会にありまして、ために辛酸を積んで参りましたので、地方財政のあり方はほぼ私は通暁いたしておると思うのであります。  それで私はあなたに重ねてお伺いいたしたいことは、たとえばこれで貧困県に相当の額が増配されることがあるでありましようが、しかしこれは増配される分だけは地方交付税法においてそれだけ減らされる、すなわちそれは貧困県が除外されるといつたところで、地方交付税の中において調節されるのだから、それは実際的な役割をもたらすものではない。しこうして今度奪われます富裕県でありますが、これも相当額奪われます。ところが現実にはその相当額だけタバコ消費税で今度は増配になつて参ります。結果は何にもかわらない。貧困県はそれによつて増収が来るというものではなくて、今度の入場譲与税によりまして何がしかの増収はあるでありましよう、中央からの交付はあるでありましようが、同時にそれは地方交付税法において、それだけ結局平衡交付金において減らされて行く。富裕県の方は、これは現実相当減収を来すのではあるが、同時にタバコ消費税において相当額だけの増収を来して来るのである。何も変化はない。そこを私どもは主張いたしておるのであります。そういうような経緯にかんがみまして、私どもの主張いたしますことは、結局そういう結果になるならば、こんな入場税なんかにタッチしないで、タバコ消費税だけで同一の効果が上る措置が講じ得るのではないか、このことをあなたにお伺いいたしておるのでありますが、重ねてあなたからの御答弁をお願いいたしておきます。
  57. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 もちろんタバコ消費税というものを全然別の構想で配分するということであれば、総額は同じ額において、偏在是正が私ども考えておるようにできないというものではないことは、私も了承できるわけです。しかし、一応やはりタバコ消費税はタバコ消費税というものを頭に置いて、ある配分基準によつて地方団体というものを一律に考えて行く、そういうぐあいにものを考える方が、タバコ消費税だけは、入場税が偏在しておるからそのわけ方を、特殊府県には非常に不利に扱うという考え方でやるよりもむしろ合理的である、そういう前提に立つてものを考えておりますと、今申し上げたように一応国でとつて、そして合せたものを両方のそれぞれの配分基準によつてなるべく偏在が是正されるようにやる方が妥当な方法ではないか、こういうふうに考えておるわけであります。
  58. 春日一幸

    ○春日委員 私は入場税の国管並びに入場譲与税法案の配分計画というものを基準にしてこのタバコ消費税の配分計画が立てられておりますから、大臣の御答弁なさるような結果が生じて来ると思うのであります。入場税もノー・コメント、譲与税も何ら頭に入れない、タバコ消費税は新しくここに設けられる税法でありまして、しかもこのことは、タバコ消費税を創設するというようなことと相関連して、特に。ヒースの値上げがここに行われておるのであります。そのことと考えまして、この八十何億の増収を考えつつ、ここにタバコ消費税の配分計画を独自の立場で、すなわち地方の貧富の均衡をはかるということのための目的にのみこの配分計画を立てるならば、私はこの入場税にさわることなく同一の目的を達し得ると思うが、それは私の単なる一つの偏見であるか、あるいはそういうこともなし得るのであるか、この点をひとつ地方行政の主管大臣である塚田さんから、責任ある御答弁を伺つておきたい。
  59. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 そういう考えでありますならば、配分の面において、先ほども申し上げましたように、特殊の団体は別に扱うということでありませんければ、同じ額で同じ調整の目的が達しられない、よけい出さなければ、入場税による偏在がそのままにほうつておかれるだけで、よけい出さなければ同じ調整の目的は達せられないと私は考えております。
  60. 春日一幸

    ○春日委員 たとえば義務教育国庫負担法の特例法によりましては、今おつしやつたように、特別の富裕県には教育費を国庫から支出しないという特例法が出た前例もあるわけであります。幸いに国会の叡知によつてその罪悪が看破せられて、これは未然に葬り去られたわけでありますけれども、しかしこのタバコ消費税を特別の団体を除外をして立法するということも、前例を踏襲するならばできないはずはない、立法技術をしてできないはずはない、現に半額国庫負担特例法によつてそういう前例も現にあるわけであります。なぜそのことをあえてなさらなかつたか、しかのみならず東京、大阪の富裕県からは、入場税を何とかして地方に存置してもらいたい、このことのためには、このタバコ消費税によつて受けるところのこの国庫からの支出を辞退することもやぶさかではないという陳情が私は自治庁当局になされておつたのではないかと思うのであります。すなわち彼らみずからもこれを辞退するにやぶさかでない、あるいは辞退せしめるその立法措置も前例においてすでに明確に示されておる。そういうような状況にかんがみて、なぜそのことを自治庁はなさらなかつたのであるか、私はこのことをお伺いいたしておるのであります。
  61. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 そのお尋ねでありますならば、先ほど申し上げたように、私どもも憲法の規定の上からいつて、特に自治団体というものを指定しなければそういうきめ方が違憲であるというようには考えておりません。しかしそういう考え方は、そしてまたかりにそういう立法の構想というものは、違憲ではないにしてもきわめて不自然なものである、私どもはこういう感じをいたしております。そういう不自然なことをするということになれば、入場税を国に上げて、合して自然な方法で配分することの方が妥当ではないか、私どもはこういう感じでおるわけであります。
  62. 春日一幸

    ○春日委員 それではさらに質問を先に進めて参りたいと思います。塚田大臣は、この入場税国管の問題に関連をいたしまして、地方が昭和二十三年以来今日までまる六箇年間にわたりましてこの入場税を育成して参りました。そのためには相当の犠牲が払われておる。特に現在人的施設、さらには物的施設が厖大なものがあると思うのであります。ところがこの税法が通過いたしますと、この地方府県が持つておるところの人的施設並びに物的施設というものは全然無用のものになる。これは厖大な犠牲であり、大きな損失でありましよう。さらにまた、今度は国がこれをやる場合におきましては、国の方では新しき人材を必要とし、さらに新しき資材を調達しなければならないでありましよう。これによつて、一方において地方自治団体については大きな損失を生じ、さらにまた一方においては大きな新規の支出を伴つて来る。これらの一切の費用はあげて労働者の負担になると思うのでありますが、こういうようなことをいろいろ閣議で検討されたことがあるかどうか。さらにあなたは自治庁の長官として、これらの地方自治団体がよつて受けるところの損失をどういうような方法で賠償補充されんとしておるのであるか、この点を伺つておきたいのであります。
  63. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 その点の御意見は、私どももごもつともであると思いますし、そういう点も十分考慮いたしたわけであります。しかしそれを考えてもなおかつこのままにしておくごとによる偏在、そしてその偏在から来る総括的な国、地方を通じてのむだが国民にかかつて参るものでありますから、国民の負担を最小限にして、国も地方も最小限の費用でもつて最大の仕事をして行けるという国費の効率的な使用ということを考えると、やはりこうせざるを得ないのではないかというふうに感じるわけであります。従つて地方団体で、そういう意味において若干の特殊な団体が御困難をなさる面は、私どもといたしましてもいろいろな方法で考えられるだけ考えよう、たとえば特別平衡交付金などで考えられる面があれば考えよう、またいろいろな施設をされている場合に、そういうものがかりに起債か何かでできておる場合には、そういう起債の元利の償還というものは、おのずからそれぞれの団体の基準財政需要の上に出て来るはずでありますから、そういう面で一応ある程度は見られるわけであります。そうは見られておりましても、最終的に全額の損失を補つてあげるということはもちろん参りませんが、その程度はごしんぼう願う。また国におきましても、今まで入場税徴収に対して地方で養成された人間がおるのに、その人間がその仕事に従事しなくなつて、国に新たに徴税吏員を養成しなければならぬという問題が起きることも御指摘の通りであります。そういう若干のいろいろな困難というものは先ほども申し上げましたような別の考慮を総合勘案いたしまして、そういう解決策を講じたわけであります。
  64. 春日一幸

    ○春日委員 府県地方税徴収いたしておりまする現状は、直税課と間税課であつたかと思うのでありますが、この間税課は遊興飲食税とこの入場税をともに取扱つておることによつて、どうにかそう徴税機構が体系をなしておると思うのあります。ところが今回は、あなたの方が遊興飲食税だけはどういうわけか知らないが、とにもかくにも現状存置ということで地方に残される、そうしてその入場税と遊興飲食税と二つで運営されておつたところの間税課なるものが、今度は半分になつてしまう。全部なくなつてしまうならば、これは間税課を全部廃止すればいい、ところが半分とられたんだから間税課を廃止するわけにも行かぬし、それかといつてつて行くについては人が多過ぎる。これは私は人的配置の上に重大な支障を来して来ると思うのであります。このことは徴税行政の大きな混乱であり……。(発言する者あり)うるさいなあ……。
  65. 千葉三郎

    千葉委員長 静粛に願います。
  66. 春日一幸

    ○春日委員 そういうふうに間税課をやめるわけにも行かぬ、閉鎖するわけにも行かぬ、同時に置いておくにしてはこれは費用が高過ぎる。このことが地方の行財政の上において大きな混乱を生じて来ると思うのだが、これは当然国において責任を持つて何らかの救済を行わなければならぬと思う。このことをあなたは何かお考えになつておるか、どういう措置を講ぜられるお考えであるか、この機会にひとつ答弁を願いたい。
  67. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 新しい事態に応じ、国民の立場というものも考えて、適切な措置を講じたいと考えております。
  68. 春日一幸

    ○春日委員 適当な措置を講じたいとの趣でありまするが、府県自治団体が自由党のこの暴虐な政策によつて受けるところの大きな損失に対しては、中央は当然その実質的な犠牲を償う措置を講じなければならぬと思うのでありまして、幸いに大臣においてそれだけの何らかの心の準備がおありになる様子でございますから、これは、ぜひともひとつ必要にして十分なる措置を講ぜられることを強く要望いたすものであります。  次にお伺いをいたしたいことは、知事官選に関する問題についてでございます。これは過ぐる警察法の本会議におけるわが党の門司君の質問に対しまして、塚田大臣は知事官選のことは適当なことと考えて、自分は今もなお知事官選のことは適当だと考えておるという本会議の御答弁がございました。このことは本入場税と重大なる関係を持つのであります。(笑声「注意、注意」と呼ぶ者あり)私ども考えますことは、まず地方の自治の振興、これは何といつたところで地方に独立財源を確保すること以外にはございません。そこで今度独立財源を中央に奪つて来る。これは地方の自治が危殆に瀕することは何人も想像できるところであります。われわれはこれを憂えおるのであります。あなたの方は今回警察法の改悪によりまして、自治警を廃止することによつて中央集権的官僚警察をつくり上げようとなすつていらつしやる。そこでまず地方自治団体から警察を奪おうとしておる。それからこの入場税を取上げることによつて地方財源をまずここで取上げようとしておられる。さらにこの間の答弁によりますると、知事は民選はふさわしくないので、これは官選にした方がいいのだと今も大臣は考えておるという明確な御答弁があつたのでありますが、警察をとり知事をとり、そうして地方からこの財源を奪い去る、このことは、私はあなたの方がもうこの府県というものを自治体としてみなさないで、あるいは中央の出先機関として、これを根本的に変更改竄しようとしておるのではないかとすらわれわれには考えられるのであります。従いまして、ちようどこの三つの事柄はあなたのみ所管する事柄でありますから、この機会に、知事官選を今もなおあなたは適当と考えられておるのかどうか。さらにそのことを推進する意図がおありになるかどうか。さらに今後はこの府県自治体を地方公共団体として認めて、育成して行こうと考えられておるか。これは適当な機会に国の出先機関としてその組織がえをされようとしておるのであるかどうか。このあなたの御見解をひとつこの機会に承りたいのであります。
  69. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 知事官選につきましては、もちろんまだ考え方をかえておらぬのでありますけれども、ただしばしばいつもの機会に申し上げておりますように、これはまだほんの私見の程度でありまして、政府が成案として、もしくは制度として国会に御審議を願つておりますのは内閣全体の意見でありまして、私の意見がちつとも基礎になつておるわけではありませんので、従つて今の当面の議題とは関係がありませんので、別の機会に問われるならばまたお答え申し上げることにして、この機会には御容赦願いたいと思います。
  70. 千葉三郎

    千葉委員長 春日君に申し上げますが、時間も十二時を過ぎておりますし、まだ質疑者が二人残つております。なるべく柴田君の方にも時間を差上げたいと思つておりますから、さよう御了承を願いたいと思います。
  71. 春日一幸

    ○春日委員 それでは、柴田君も大分お待ちになつておるようですし、私はまだ三十幾つ質問があるのですが、それでは一応柴田君に譲りまして、私はすべての質問者が終つてから、都合によりましてはさらに質問を続行するということにいたしまして、残余の質問は留保いたします。
  72. 千葉三郎

    千葉委員長 柴田君。
  73. 柴田義男

    ○柴田委員 大蔵大臣が、どんな御用かわかりませんが、この重要な法案を半端にされて退場されたことを非常に遺憾に思うのであります。この政府の提案理由の一番大きな問題は、理由書にも明記されておりますが、たとえば収入が少数の府県に偏在しておつて、こういうことではいけない、地方財源の偏在を是正することがこの入場税国税に移す根本の理由のように見受けられるのでありますが、そういう事実がはたしてございましようか、その点を承りたいと思います。
  74. 植木庚子郎

    ○植木政府委員 入場税財源地方偏在の状況は、申すまでもなく明瞭に存在すると思います。従いましてこの偏在をでき得る限り是正して行こうということが、今回のこの譲与税法案の一つのねらいであることは申すまでもございません。
  75. 柴田義男

    ○柴田委員 そういたしますと、この三月二日かと記憶しておりますが、この奢侈繊維品消費税の問題、あるいは入場税国税移管等の問題で公聴会が開かれたのでございましたが、その公聴会の席上でもひとり最も小さな県であつたと記憶しておりますが、宮崎県の知事が国税移管を賛成されただけでございまして、その他たとえば全国の映画館の連合会長である河野氏なんかも、全国に四千に余る映画館が存在しておりまして、全部がこの国税移管に対する反対を表明しておる。そういたしまして、ことにこの地方財源の大きな部分が入場税にかかつておるのであります。しかも地方財政の中でも、これは地方のいろいろな施設の改善をはかつておる重要な財源であるということを訴えておる。また私どももこれを調査いたしまして、この話はまつたくその通りだと考えておる。しかも偏在しておるということで、これを国税に移すということでありますが、同じような問題として取上げました遊興飲食税は地方に存置されておる。遊興飲食税には数万の人々が関係を持つておる。この数万の人々は一両となつて昼夜の別なく反対運動を展開された。反対運動が強ければそれを地方に残してしまつて、反対運動が――この数万の人から見ますと、四千の業者がこの反対運動をいたしてましても、四千の業者であるがゆえにその反対を押し切つて国税に移さなければならないという根拠がどこにありましようか。これは遊興飲食税との並行的な面で非常に矛盾があると考えますが、この矛盾について私どもに解明を与えていただきたいと思うのです。
  76. 植木庚子郎

    ○植木政府委員 遊興飲食税と入場税と、ともに今回地方財源の偏在是正の見地から国税移管がし得たならばということは、政府も初め考えておつた問題でございましたが、その後いわゆる諸般の情努にかんがみまして、今回入場税国税移管のみといたしまして、遊興飲食税につきましてはしばらくこれを見合せておる次第でございます。もちろん遊興飲食税の国税移管に関連いたしましていろいろと反対の運動があつたことは承知しております。これも一つ政府の反省の材料であつたことは認めますが、ただ単に人数が多いからその分についてはこれをそのままとし、たまたま入場税関係関係する者が少いから国税移管を敢行したというわけではないのでございます。
  77. 柴田義男

    ○柴田委員 諸般の情勢と申しますのは、私どもは新聞紙上で見ますると、古い大蔵大臣であつた池田さんが関西に旅行なさると、たくさんの料亭のおかみ諸君が出迎えに出て陳情等が行われたということを報じておりますが、そういうことをもつて諸般の情勢と御判断になるのでございましようか。その点を承りたい。
  78. 植木庚子郎

    ○植木政府委員 私はさような事実そのものも実は承知しておりません。政府の今回の意思決定につきましては、国会内における各議員の方々の御意向も頭に置き、あるいは政府の閣僚の皆機もいろいろな点を十分考慮に置かれ、また世論の趨向についても十分に頭に置いて、その上で決定された次第でございます。
  79. 柴田義男

    ○柴田委員 しかし実際の問題といたしまして、単に諸般の情勢というだけでは国民大衆は納得しない。入場税というものは、そもそも一般大衆の娯楽にかかる税金ございますので、悪法であることはもう最初からきまつてつて、撤廃することは当然な措置でなければならぬとわれわれ考えておりまするが現在の地方財政の状況から見まして、これを地方に残すべきことは当然である。国会のほとんどの意思もそこにあつたと思うのです。ただ政府がこれを現在の租税的な方針から国税に移管するのだ、しかもその国税に移管する建前の場合でも、私どもが納得できませんのは、この税金の問題であります。税額も、政府が大衆に訴えるには減税々々ということを常に訴えておりまするが、当初政府が提案されました理由から財源の状況を拝見いたしますると、十一箇月で百九十二億を組まれておる、十二箇月に換算いたしますると二百十八億でございます。現在地方徴収いたしておりまする税額は百八十億そこそこであつたと存じます。そういたしますると、十二箇月で二百十八億を組んだということは、また大衆を欺瞞して、略奪政策を考えておつた。こう考えざるを得ませんが、この修正案は別といたしまして、今回の二百十八億をお組みになつた御精神はどこにあつたのか、これを承りたいと思います。
  80. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 地方制度調査会、それから税制調査会の御答申にも御意見が出ておりましたが、国税へ移す場合におきまして、現在御承知のように、五割の税率になつておりますが、必ずしも五割そのまま徴収されていない面が相当ある。それにつきましてはやはり相当の理由があるのだから、現在地方税収としてあげておるところを目途としまして、税率の調整をして国で徴収する、そのかわり執行の方は適正にやる、そうするのが政府としてしかるべき措置ではないか、こういうお話はわれわれもその通り考えておるわけでございます。従いまして今度の案におきまして、われわれとしましては、税率の引下げこれはありますが、税収としましては、大体地方徴収したと同じ程度のものを目途として考えておる。これは当初からずつとさように御説明申し上げておるつもりでございます。
  81. 柴田義男

    ○柴田委員 そういたしますると、今度二百十八億を組んだ当初のお考えというものは、現在までの地方税で存置さしておつた時代から約二〇%の増税をお考えになつたのでございましようか。
  82. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 われわれの方で考えましたのは、現在地方徴収している場合に、昭和二十九年度においてどれくらいの税収になるか、まずこれを考えまして、それに応ずる税収をあげるのにはどの程度税率調整を行つて行く、こういう意味で原案を出した次第でございます。
  83. 柴田義男

    ○柴田委員 過去の地方税の比率の非常に高かつた時代は、やはり相当な滞納があつたのであります。滞納があるということはよくないことで、税率を引下げて、現在では九三%とか九二%とかに徴収率が非常に上昇している、こういう現実が現在あるのであります。これをまたこういう政府考え方で二〇%も増徴するということになれば、さらに滞納が生ずるというようなことをお考えにならぬでしようか。この現実は、たとえば今の入場税の問題だけでなしに、今日われわれが滞納の状況を過去委員会で調査いたしました場合に、いろいろな種類がございまするが、一千四百億円の滞納が現存しております。こういう現実をわれわれは見のがすわけには参りません。そういつた場合に、単に税率を低くしたというだけで、はたして完全な徴税ができるかどうか。ただ国は予算を当初組んだから、入場税は二百億とらなければならぬ、そして九〇%は地方へ還元しよう、こういう机上計算だけによつてのみ徴税の方法というものをお考えでございましようか。その点を承りたいと思います。
  84. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 われわれの方の考え方は、むしろ逆でございまして、現在地方税として収入しているその額を元にしまして税率をきめ、大体この程度徴収は可能じやないか、こういうふうで原案を組んでおります。予算の編成はその上に立つて全体がなされておる、こういうわけでございまして、予算の編成が先にできて、それにつじつまが合うように税率が云々された、あるいは税収が云々されたということではございません。
  85. 柴田義男

    ○柴田委員 そういたしますと、今度の日自党の提案されました修正案によりますると、六十七億かの減収であろう、こういう予定なのでございまするが、この場合にも井上委員大蔵大臣に対する御質問もございましたが、こういう場合に、減税という問題が現実に行われる、ただ大蔵大臣は今後の推移によつて、あるいは徴税方法によつてこれをまかない得るかもしれない、非常にたよりないようなお答えであつたのです。もう一つは、地方に還付する額は決して減らない、地方には迷惑はかけない、こうおつしやつておられる。そういたしますと、これらに対しまして、今度は相当な徴税のための費用もかかつて参りましよう。ただだまつていても天から降つて来るように税金は集まつて参りません。地方々々の税務署では、この入場税国税に移管するというので、もう三月未日から夜も日も寝ないで準備に大わらわであつたということもわれわれ聞いおります。入場税に範をとるとか、いろいろな方法で準備が行われておつた。これが現実に行われるということになりますると、今度はもつとこの準備に対しまして相当な能力をこれに傾注しなければなりません。こういうような場合に、相当な費用というものもここにもちろん考えなければなりませんが、これらの国税移管によつて生ずる徴税のこめの費用というものをどういうようにお考えなんでございましようか。
  86. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 入場税の徴税の経費として予算に計上してありますのは、金額で二億三千八百万円、それからこれによる定員の増加は、これは予算の今の数字とうらはらになりますが、四百七十人という定員の増を予定しています。
  87. 柴田義男

    ○柴田委員 そういたしますると、私どもには、たとえば二百十八億余りだという当初の政府原案に対する画然たる資料もまだ何もいただいておりません。それから今度は日自党の修正案によつて実際六十七億という減税が行われるという資料も何もいただいておりませんが、どういう計算から六十七億という減税が行われるのか、これをひとつ伺いたい。
  88. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 六十七億の数字先ほどもいろいろ話題になりまして、昨日の地方行政委員会におきまして、自治庁次長が一応の計算になるといつてお示しになつた数字だと思いますが、ただ先ほど大蔵大臣が申しましたように、それは平年度数字でございます。本年度、初年度数字というのは、当然それから一月分少くとも減るといつたような意味におきまして、さらに減になるというものであることをまず申し上げておきたいと思います。  それからわれわれの方としてどれぐらいの減収といつたような問題になるかということにつきましては、これも先ほど井上委員の御質問に対してお答えしましたように、一応自治庁計算と少し違いますが、初年度において従来の計数をそのまま基礎にとれば、百四十五億という数字が出ます。これにつきましては、修正案提案者などはそれほど大きな減収にならぬじやないかという御意見もあるわけでありまして、この点につきまししは、この見積りが過去においてわれわれがずつと手がけて来た国税でないというところに非常に特殊な性格があることを御了承願いたいと思います。
  89. 柴田義男

    ○柴田委員 どうもあまり抽象的な御説明で、われわれ頭が悪いせいかはつきりしませんが、結局この政府の今のお考え方というものは、行き当りばつたりで、ちようど中央気象台なり測候所で天候を予想してもらつてでもいるような感を深くするものでありますが、そういうような以外に御答弁ができないでしようか。もう少し具体的に、これは、こういう率で行くと現在の映画がどういう状況であるか、あるいは日本のいろいろな映画関係を持つ以外の、たとえば芝居の状況でもいいし、いろいろな面で、入場税というものは大体これだけというものは税収が確実に入るんだ、だから税率の引下げによつてこういう状態になるんだという具体的な御説明を承りたいと思います。
  90. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 その点につきましては、先ほどあるいは不十分であつたかもしれませんが、井上委員の御質問に対しまして、現在の百九十二億の見積り基礎になつている場合の映画だけを申し上げましたが、映画について五割の税率の分はどれだけの収入金額見積り、どれだけの税額を見積つておるか、あるいは四割の場合はどれくらいというふうに、実は一々数字をあげたわけでありまして、同時に今度の修正案の場合において、一応過去の数字をそのままとるとしますれば、百四十五億という計数になります。その積算の基礎としての収入金額税率ということは、先ほどあげたわけでございますが、あるいはもう一度申し上げる必要がございますれば、申し上げてもちつともさしつかえございません。
  91. 柴田義男

    ○柴田委員 それから今度の修正案でたとえば五十円までは幾ら、八十円までは幾らというような段階相当ございますが、今日の映画入場税の問題でも、われわれはたまに映画を見ましても、そういう五十円だとか、八十円というようなものは、ニュース館でございますれば別でございますが、一般の映画にはそういう低額な映画入場料というものはごく少数だと思う。まつたく少数の範囲ではそういう低額のものがあるかもしれませんが、これらを非常に税率を低くいたしましても、ほんとうに一般大衆は何らこれによつて恩恵に浴するようなことはない。全国の四千かの映画館の中で、百円未満の入場料というものは二〇%もない。こういうようなことを公聴会の席上でも連合会長は訴えております。こういう現実から見ましても、やはり現在の日自党が修正案として提案されました骨子を見ましても、決して大衆の負担が軽減されるというようなことは、単にから宣伝にしかならないと思いますが、これらに対しましてどうお考えでございましようか。
  92. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 今のお話は、われわれの方は大分違つた見方をしております。現在普通入場料金といわれておりますのは、御承知のように五割の税率がかかつているわけであります。従いまして、たとえば百五十円の入場料金といわれます場合におきましては、税金が五十円で入場料金が百円でありまして、われわれがここで議論をしておりますのは、その税金を抜きました料金でございます。従いまして普通入場者がお払いになつていらつしやる入場料金の三分の二に当るわけでございます。従いまして、そういう税抜きの入場料というものを中心にして考えて参りますと、むしろ料金中心的なものをなしておりますのは、五十円から八十円、あるいは八十円から百三十円、今度の修正案によりますと、百三十円といつたようなところの料金が一番中心をなしている。東京におきましては、中心地の映画館は、たとえばロード。シヨウのようなものでございますと、相当料金をとつておりますが、ロード・シヨウでなければ、税込みで百四、五十円というのが相当の一流館でございます。まして東京でも場末に行きますと、税込みで百円前後というのが相当多いのではないか。田舎へ参りますれば、さらにそれより相当低いところがありますので、一応われわれの方としまして修正案になりますと、相当減収が憂慮されるという問題が起きるわけでございまして、もし柴田委員のおつしやるように、いや、もう料金はもつと高いところが多いんだということが事実でありますれば、修正案によつて減収というものはあまり考えなくてもいい、こういうことになるわけでございます。
  93. 柴田義男

    ○柴田委員 そういたしますと、今の御説明等を伺つておりますと、現在の修正案でも増税が相当行われ、減収が行われないという御見解でございますか。
  94. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 われわれの方といたしましては、従来二百十二億を積算した基礎からいえば、百四十五億という数字が一応出ますということは、先ほど来申し上げておる通りでございます。ただあなたがおつしやつておるように、これでは料金の高いところが大体多いから、従つてこれによつては要するに負担は減らない。これはわれわれの見るところと違いますということも申し上げておりますが、もしそういう事実であるならば、それほど減収は出ないはずだ、こういうことを申し上げておるだけであります。
  95. 柴田義男

    ○柴田委員 そういう点、修正案と当初お組みになつた原案との比較は、十分検討されたでございましようか。そうして現実に私の意見とかあなたの意見ではなしに、実際問題としての御調査が完了しておりましようか。その点を承りたいと思います。
  96. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 われわれの方といたしましては、当初案をつくりますときに、できるだけ資料を集めましてつくつたわけでございます。従いまして、先ほど来申しているような次第だというふうに申し上げているのです。修正案ができましてから、特にその後検討をしたというのは、時間的にもそういう時間がございませんので、できておりません。
  97. 千葉三郎

    千葉委員長 よろしゆうございますか。――佐々木君。
  98. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 すでに同僚諸君が詳細にわたつて質問いたしましたので、私は主として根本問題について二、三塚田自治庁長官にお伺いをいたしたいと思います。なお多少同僚諸君が前に質問したことと、これから私が質問することが重複する点があろうかと存じますが、なお政府に対し、私は氷解しない疑いをここで解こうとする点もございますので、御了解願います。  そこで結論から申しまして、私はこの入場税国税移管は近世まれに見る悪税であると思うのであります。この近世まれに見る悪税だということは、税率が不当であるとか、徴収方法に欠陥があるとかいうことではなしに、第 一には、この入場税国税移管というものは、根本的には日本の民主主義の基礎をなす自治制の実際的な破壊にある、この点が第一点であります。  第二点は、この入場税の移管は、その結果においては、かつて日本の封建的な税制体制であつたところの各種附加税の復活であるところの反動性、この二つにあるだろう、こう思うのであります。  そこで私は塚田自治庁長官にお聞きするのでありますが、あなたは今日地方自治庁の長官としてある任務というものは、日本の民主主義の基礎である自治制の体制をよりよく健全にして、よりよく発展せしむるところにあなたの任務があるだろう。あなたはそのために日夜心胆を砕かれておることと存ずるのであります。そこで一体自治とは何なのか。自治とは国家権力に対して地域人民の自主的な創意による政治にあると私は思う。地域人民の自主的な意思による政治というものも、その根本においては政治である上におきましては、これは絶対に財政基礎が条件であります。この自治体における独立せる税のいわゆる財政基礎のないところに、民主主義の基盤であるところの自治制の存立の理由は断じてないのであります。ところがあなたは今幾つかある、たとえば事業税、遊興飲食税、固定資産税とともに、今日この地方自治の財政的基盤である入場税国税に移管されようとしておる。あなたはその代表として、たとえばタバコ消費税等をかげんしてやるというおためごかしのことをおつしやるでございましようけれども、とにかくこういうふうにせつかく与えたる財源を漸次剥奪して、国家の権力のもとに統制、集中、強化しよう、この精神は何といいましても、あなたが地方自治を守るべき職責にある自治庁長官としては反対の結果である。自治政権の権力の骨を抜こうとする、自治制度の破壊者である役割をあなたは今日勤めておると私は考えるのであります。あなたはこういうふうに漸次独立せる地方税国税に移管して、どうして一体健全な地方自治制度というものを今後発展せしめて行くのか、この点についてあなたの御意見を伺いたいと思うのであります。
  99. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 自治制度を育成するためには、財政基盤が確立して行かなければならないという点は私もまことに同感であり、絶えずそういう考え方地方制度というものを見ておるわけであります。そういう意味におきまして、今までの地方財政というものの制度が十分でなかつたということを痛感いたしましたので、地方制度調査会の意向も十分くみ入れて、その方向において相当大幅な今度の改正が行われておる。ただ問題は、たとえばそういうようなやり方をある一つの税だけでやるかどうかということでありますが、先ほど来しばしば問題になつておりますように、いろいろ地方の税というもの、私は入場税というものは本来の性質から行けば、確かにこれは地方にあるべき税だと思うのでありますが、ただいろいろ考えられる地方の税というものは、どの税をとりましても非常に偏在する傾きがあるのです。もちろん偏在をいたします場合には、よけいとれるところにはよけい金をつぎ込んでいい理由も確かにあると思います。たとえば東京でありますとか、京都でありますとか、大阪でありますとか、そういうところであります。ただその場合に国民負担がどこまででも耐え忍んでいただけるというならば、そういう考え方で私は行きたいと思うのであります。ただ少ししかとれないところへ国から限りなく補足して差上げて、そうして地方がほんとうに自治を確立できるような方向に行きたいと思うのでありますが、どの税をとつてみても大都市府県に偏在する。そこで最小限の費用でもつてある程度の仕事をしていただくということになると、その偏在するもののうちの幾つかを国へとつて、そうしてそれを再配分するという過程においてその目的を達するということにしなくてはとても行けない。そこで全体として見ましては三十三、四パーセントであつた地方の独立財源が三九%程度にまで今度の改革では伸ばしてありますし、それから国に地方団体が依存しておる財源というものの面から見ましても、これは独立財源というものは地方の方が今度ずつと多くなつておる。それから全体としてごらんくだされば、御指摘のような点は十分考慮されておるのでありますが、今申し上げましたような事由で、その中の特殊なものがこういう形で一応吸い上げられて、そうして地方に再配分されるという形になつたのです。従つてそういうことを考えますこと自体が、政府もしくは私がこの自治制、自治の育成というものをちつとも考慮していない、むしろ反対にそれよりも自治制の破壊を意図しておるというようなことは、まつた政府もしくは私の考え方どちらにもないことでありますので、御了承を願いたいと思います。
  100. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 塚田長官の御答弁は、中学校の財政の講義としてはこれは当然かもしれませんが、少くとも本国会に対する答弁としてはまつたくなつていないと私は思う。今日日本の国家が地方税として遊興飲食税、固定資産税、事業税等を創設するにあたつて、この税金が、少くともこれだけの特殊的な税金として考えるならば、これが特殊の府県に偏在するということはとうに見通されておる。であればこそ、そこで地方平衡交付金制度というものを設けた。あなたもこのことは忘れてはいないでしよう。地方平衡交付金制度というものは、このような地方に偏在しがちな地方税の不均衡を是正するためにできたのである。しかるにあなたは、この平衡交付金制度の精神をまつたく没却して、自治制度内の独自の財源によつてのみ公平を期そうとお考えになつておるということでございますが、事業税といい飲食税といい固定資産税といい、これらのもので一体どれが各府県平等に、あなたの言うように平等にとれる税金がありますか。いずれも富裕なる府県においては偏重しておる。単に入場税を移管しただけで公平は期せられません。そんなでたらめな答弁をもつて委員会をごまかすことはいけない。そういう意味におきましては、入場税のみが特殊の府県に偏重するにあらず、あらゆる税金がその府県の特殊性によつて、特に富裕なる府県に偏重することは明らかであります。もしあなたの言うような原則に基いて地方税考えたならば、このうちで一体各府県公平に課税されておる税金があるか、指摘してごらんなさい。あなたが何と弁解しましようとも、今日そういうことのために平衡交付金制度が存在する以上は、単に入場税をもつておる特殊の府県に偏重するという理由にはなりません。これはあなたが何と弁解しましようとも、あなたのお考えは意識すると意識せざるとにかかわらず、あなたがほんとうにそういうような心を持つているかどうかは別として、地方自治制度の根幹である独自の財源を奪うということについては議論のないことだと思う。  そこでもう一つ、これは先般来各委員においてすでに質問し尽されておることでございますが、今の長官の答弁と関連して、ここではつきりしておきたいことがある。あなたのお考えからいたしますならば、将来は当然遊興飲食税、固定資産税ともに富裕県のみに偏重する税金だということは明らかであるから、やがてこれらのものは当然国税に移管するという理論に発展することになりますが、この点もう一ぺんあなたの口から、やるのかやらないのか、明確にしていただきたいと思うのであります。
  101. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 先ほど私がお答えしたことを正しく御理解いただいていなかつたと思うのでありますが、私は他の税は偏在しないと申し上げたのではなくて、どの税も偏在をする、まことに困つたものだ、そこでそのうちのどれかのものを取上げることによつて最小限の調整をしたい、それがこの考え方だということを申し上げたわけであります。平衡交付金制度がその目的のためにあることはおつしやる通りでありますが、平衡交付金制度では救済できない部分があるわけであります。そうして、平衡交付金制度だけで調整をしようとすると、要するに高い線で標準を合せようということになるものですからして、総体として国民負担がふえざるを得ない。そこである程度の線で地方団体を調整をして頭をそろえようということになると、うんとよけい出ているところからはとるという形が出て来ざるを得ないのであります。これは全体として見てやむを得ないのじやないかという感じであります。入場税はやつて、遊興飲食税は今度やらなかつたわけであります。これは調整をいたしますにしましても、全部一律に調整をすることにはもちろんならないのであります。そのときの国民負担の状況などを考えましても、ある程度の偏在は認めていい。偏在を認めるべき理由もあるのでありますから、非常に大きな部分だけをはずして行く。そういうぐあいに総体の状態を見ましたときに、今度は入場税だけを国にとることによつてあとは平衡交付金、交付税制度、譲与税制度というようなもので、大体政府が意図する偏在是正ができるということで遊興飲食税は国へ取上げないことになつた従つて今の構想では遊興飲食税は依然として地方に残る、そういう考え方をいたしております。
  102. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 塚田さんは、現在の地方税が特殊の府県に偏在しているのであると言いながら、入場税だけで、ここであなたの言う公平の原則が期せられるかというと期せられておらない。もしあなたがほんとうにそういう考え方を実行しようとするならば、われわれからいいますとあなたのお考えは結果において地方自治の精神を没却することになるのであります。またあらゆるものを国税に移管して、あとは人頭比率によつて還元するということに、あなたのお考えからいつても発展しなければならぬはずだ。ところが遊興飲食税や固定資産税その「他」のものは、いずれも依然としてこれを地方に置くということは、あなた自身地方財源を無慈悲に奪えない現在の情勢を認識しておるからだ。こういうような地方財源、独立財源というものを与えないでいいというあなたの言う単なる公平の原則だけでいうならば、こういう問題をやるのがほんとうじやないですか。あなたがわれわれの意見のように、地方には独立財源を与えなければならぬという理論を認めておればこそ残余のものを与えておると思う。どう見てもあなたのそういうお考え、遊興飲食税や何かをそのままにして、単に入場税だけをいじめたという考え方政府に何らかの財政的意図があるからだ。何の財政的意国があるかというと、言うまでもなくあなたは入場税国税に移管しておいて、一〇%ピンはねをしておるでしよう。あなたはこれを地方に還元するときは、九〇%しかこれを還元しないではありませんか。何によつてそういうことをやるのかというと、現在の吉田内閣の財政が行き詰まり、この行き詰まりを打開するために地方自治を犠牲にするのです。この点は数字の上で明かでありませんか。あなたが詭弁を弄して逃げようといたしましようとも、明かにこれは吉田内閣の財政事情に基く地方自治の撹乱税制と言わなければなりません。そこであなたは、そういうふうに一〇%ピンはねをして、あらためて地方自治にどういうことをするかというと、ここにあなたはピースの四十円を四十五円に値上げをしております。きようは不幸にして大蔵大臣おりませんが、せんだつて大蔵大臣質問したときにおいて、四十円のピースをのむ者は勤労大衆にはないということを言われた。いかに現在の閣僚の頭が変になつておるかということは、これ一つでわかる。パチンコ屋に行つてごらんなさい。パチンコ屋の景品は皆ピースであります。あなた方はピースは高級品だという単なる観念的なお考えをもつて、事実上この入場税国税に移管する代償として国民に対して重税を課そうとしておるのであるます。私は今ここで増税を問題にしようとするのではない。この五円のピースの値上げというものは、事実においては、かえつて敗戦前の日本がとつておりましたところの、たとえば所得税附加税、家屋税附加税、県税附加税、そういうような附加税に実質上は該当するのであります。将来こういうふうにして国家が漸次地方税国税に移管して地方財源を奪いながら、その奪つた財源の補填としては旧各種附加税の復活を意図しておる。なるほど今日この五円はタバコ消費税という名前で呼んではおりますけれども、これは明らかに附加税であります。結果においてこれは附加税の復活でありますが、この点を自治庁長官は附加税とお考えになるかどうか、その点をお伺いいたします。
  103. 塚田十一郎

    塚田国務大臣 お尋ねの点を次々とお答えを申し上げます。私がこの地方財政というもの、地方税制というものを見る基本の構想は、先ほどから繰返して申し上げますように、国民が負担を限りなく忍んでいただける状態であるならば、私は、性格として地方税であるべきものは全部地方税にしておいて、そうして偏在から来る貧弱府県の部分は、国がとつた税金でもつてカバーをし、補つて行くというところへ持つて行きたいのであります。しかしそうは行かないので、ある程度は今までのような措置をとつておるということであります。それから入場税を国にとつてピンはねしておるじやないかというお尋ねでありますが、こういう問題を御検討くださる場合に、そこのところの一部分だけを御検討くださると、おつしやるようなお考えが出て来るのであります。しかし問題はすべて、ことに制度政策というものは総合的に御検討くださらないといけないのでありまして、入場税を国に上げたときに一割とるという理由は、国に保留するという理由をしばしば大蔵省側から御説明申し上げたように、一部分はとる者の徴税意欲を起させるためにそれから一部分はその費用をカバーするためということであつて、そういう理由があつて一割税度確保しようという考え方が出た場合には、おのずから一割が国に保留されるということを頭に置いて、他の部分がちやんと調整されておるのであります。たとえば交付税の率で調整されておるとか、その他ガソリン譲与税の率で調整されておるとか、そういう点で調整されて、総合的に地方財政というものの必要にマッチするように財政計画ができておるのでありますから、個々の部分だけを取上げていただいたのでは、まことに困るわけであります。  それからピースを値上げをするということですが、ことしは国の税の上におきまして、ある部分は減税をいたしております。ある部分は御承知のように、これも一種のかわつた税でありますが、上げております。これはおそらく大蔵大臣からお答えすべき性質のことでありますが、私が想像いたしますのには、やはり総額をきめるということにいたしましても、どの部分で負担をいたすかということで、おのずから一方で減らし、一方でふやすということはあり得ると思います。
  104. 佐々木更三

    ○佐々木(更)委員 もう一つ。あなた何と弁解しようとも、全体の国家財政から見れば、あなたのような弁解がかてに成立つといたしましりも、ともかく一〇%をピンはねすることは明らかなんです。それからなおこの人場税の国税移管の代償としてのあなたのお答えがなかつたけれども、ピースを五円値上げしたことは否定すべくもない事実なんです。あなたが何とおつしやつても、そういうことでピンはねの代償として五円のピースの値上げをしておることは明らかであります。これは旧附加税――かつて所得税附加税、何々附加税というものがあつたが、実際上はその附加税の復活と同じ意味を持つものであります。あなたはお答えがなかつたけれども、ともかくこれは私がさきに指摘いたしましたように、地方自治を財政的に根本的に破壊する結果を招来するということが第一、第二には、そういうようなかつての附加税の復活のごとき反動的な税制体系だ。これ以上はあなたと議論になりましようから私は打切りますが、とにかくこれは近世まれに見る悪税であります。あなたの心に銘記すべきだと私は思います。
  105. 藤枝泉介

    ○藤枝委員 動議を提出いたします。ただいま議題となつております両案中、入場税法案並びに入場税法案に対する修正案につきましては、この程度にて質疑を打切り、ただちに討論採決に入られんことを望みます。
  106. 千葉三郎

    千葉委員長 ただいまの藤枝君の動のごとく決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」「異議あり」と呼ぶ者あり〕
  107. 千葉三郎

    千葉委員長 御異議があるようでありますから、賛成の諸君の御起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  108. 千葉三郎

    千葉委員長 起立多数。よつて入場税並びに同案に対する修正案の質疑はこれにて打切ることに決しました。  引続き入場税法案及び同法案に対する修正案を一括して討論に付します。討論は通告順によつてこれを許します。反対討論としまして内藤友明君。
  109. 内藤友明

    ○内藤委員 ただいま議題となつております入場税法案につきまして、私は改進党を代表いたしまして反対の意見を表示いたしたいと思います。  政府の提案理由によりますと、入場税地方から国へ移しましたのは、税の偏在是正のためだというのであります。これがただ一つの理由であります。これも一つ考え方でありましよう。しかし他面入場税地方的な、しかも将来増収の可能性の強いもので、ありますので、これを国に移すことは地方財政を軽視するものであるといわなければならぬのであります。委員会審議の跡を顧みまして、政府当局説明は、国民を十分納得せしめるに足るものではなかつたことを、はなはだ残念に思うのであります。地域的に偏在しておる税金は、ひとり入場税ばかりではございません。遊興飲食税も事業税もその他の雑種税も、みなそうでございます。ことに入場税よりも遊興飲食税の方がもつと偏在しておるということは、政府の事務当局が説明しておるのであります。もし正しい政治を行わんとするならば、何ゆえその最もはなはだしいものから手をつけないのか。地域的偏在是正を目途として行わんとする税法の改正ならば、当然最も偏在しておるものをまず考うべきではないかと思うのであります。是正を最も必要とする遊興飲食税をやらないのは、まことに理解に苦しむところであります。聞くところによりますと、政府は当初遊興飲食税も国に移すことに決定したのであります。しかしこれは猛烈な反対を受けて、あえて曲つたこととは知りながら、これを中止せられたのであります。しかもその反対した人々はどんな人々か、あからさまに申すことは、いささか国会の品位を下げますので、ここでは申しません。すなわちかような、言うことのできない、やわらかな春のような運動によつて政府はころりと降参して、入場税のみが爼上に載せられたのであります。いつぞや春日委員がこの委員会におきまして、このことにつきまして真実を述べたのでありますが、自由党の諸君から猛烈な抗議が出まして、速記録は委員長の責任において数十行削除したことがあつたのであります。かくて正しい政治はゆがめられております。かかる道筋をたどつて来た入場税法案には、私どもはどうしても賛成できません。自由党の皆さんもまともに賛成できなかつたと見えまして、与党の立場にあるにかかわらず、税率修正案を昨日の本委員会に提出せられました。これが今まさに委員会を通過せんといたしております。こうもして何とか国民の納得を得ようと努められておるのでありますが、いささかもののあわれを感ずるのであります。しかも与党修正案によりまして、百九十二億の入場税収入が、政府説明によりますると百四十五億に減るのでありますが、私どもは百三十億くらいに減るかと思うのであります。約六十億の収入不足、三〇%の取不足になるのであります。かくも驚くべき修正案をお出しになつたのであります。しかも奇怪千万なことには、かかる厖大な収入減修正を与党から突きつけられて、いささかも責任を感じていない小笠原国務大臣の政治責任であります。一体政治の責任はどこへなくなつたのでありましようか。世の中は暗いような感じがするのであります。かかる指導者を行政の責任者にしている日本の八千七百万の国民こそ、不幸この上もないといわなければならぬのであります。私はいろいろの角度から反対論を申し述べたいと思うのでありまするが、もはや申し上げる勇気はございません。すみやかに責任を感じて正しい政治を行えとの言葉で、入場税法案に反対するものであります。
  110. 千葉三郎

    千葉委員長 次に日本自由党の山村新治郎君。
  111. 山村新治郎

    ○山村委員 私は日本自由党を代表いたしまして、本法案修正案に賛成の意思を述べんとするものでございます。  この法案は、昭和二十九年度予算との関連性を持つところの重要法案でございます。従いまして二十九年度の予算を成立せしめたるところのわが党並びに保守党といたしましては、これを否認することはとうてい許されないことであるのであります。すなわち私どもが賛成する第一の論点がここにあるのでございます。  なおまた地方財源の偏在につきましては、すでに改進党の諸君からも討論があられたごとくでございまして、特にこの地方財源の偏在は、この入場税ばかりではないという御議論がございますが、実際に、試みに浅草の六区に参りまして、映画館に入つている方々はどういう方々がたくさん入つているかというと、それはいずれも千葉県なり、茨城県なり、埼玉県なり、地方の方々がたくさん入つておるのでございまして、これを一般遊興飲食税と同一視するということは、いささか私としてはけげんにたえないのでございます。すなわちこういうような偏在いたしておりまする財源を、公平にわかつという意味からいたしましても、これには賛成いたすものであるのであります。  なおまたすでに皆様方御存じのように、この入場税に反対をする業者関係の方々の非常に大きな声のあるのも事実でございまするが、これは実際には、この税率が引下げられたることによりまして、今までの行きがかり上は反対をいたしておりますが、心底におきましては、実際は現在は賛成の段階に至つていることは間違いないと思うのでございます。元来この今の入場税地方税にあつた方がよいという御議論は、それは地方税にあるために、業者の方々がぴしぴしととられないで済むという点に、一つの反対理由があつたことはいなめない事実だろうと思うのでございます。しかし業者の方々といえども、公平な正しい徴税によりまして、その正しい徴税に応ずるということは、むしろ法治国におけるところの国民の義務であろうと思うのであります。同時にまた見積り的な、一応請負的な税を納めておるために、その経営の面におきましても、相当ずさんな経営がなされておることはいなめない事実でございます。もし今度の修正案によりましてこれが国税に移管となりましたならば、的確な数字がこれによつて把握ができるのでございます。その経営の面からいいましていかに健全な経営ができるかということを思うときに、実際は、心ある業者は今日では賛成をいたしておると私は思うのでございます。  なおまた税収が非常に少くなるではないかという御議論があるようでありますが、これはものの経済の道理を知らない議論であると私は言わざるを得ないのであります。特に税率の引下げによりまして入場税が安くなるということは、それだけ観衆がよけいに入るということにも相なるのであります。その点から考えますときに、税収が減るということはないと思うのでございます。   〔発言する者多し〕
  112. 千葉三郎

    千葉委員長 静粛に願います。
  113. 山村新治郎

    ○山村委員 また事実問題といたしまして、全国平均の入場税を調べてみましても、これはいずれも七十円以下ということは各委員の認めるところであるのでございます。従いましてこの税率が一割に下つたということによりまして、、あるいは一割五分に下つたということによりまして、大衆の受ける利益が非常に莫大なものであるということを忘れてはならないと思うのございます。口に大衆の味方を叫ぶところの社会党両派の諸君が、大衆の利益になる本案に反対をされるという論拠は、いささか私として了解に苦しむところでございます。  もつと考えなくてはならぬ点がもう一点あるのであります。それはいわゆる請負的な納税方法でありますがために、何とかして聴衆、観衆をよけいに集めようというような興行者側の見解で、実際問題として地方におきましては二本建あるいは三本建というような映画が興行されているのでございます。かりに一本一時間半といたしますと、三本建といたしますれば四時間半という長い時間が、映画を見るために費されているのでございます。締め切つた映画館の中で四時間半もの長い間映画を見ているということは、一体健康上からいつてよろしいかどうかということを考えなくてはならないと思うのでございます。すなわち的確な数字把握するという意味から行きまして、特に地方財源の偏在を是正するという意味から、私どもといたしましてはこの修正案に全面的な賛成の意を表するものでございます。(拍手)
  114. 千葉三郎

    千葉委員長 次に小川豊明君。
  115. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 私は日本社会党を代表して、ただいま議題となりました入場税法案に対し反対の意思を表明するものであります。奇しくも同じ選挙区で相争う山村さんと、ここに入場税問題に対してともに賛否にわかれて議論をしなければならないというわけであります。  この敗戦による混乱と苦悩の中から、日本はまず軍国主義、帝国主義を払拭して、民主主義を基調として文化国家、福祉国家の建設に邁進して来たのであります。それに基いて新憲法も制定されたのでありまして、誤れる権力主義者の野望から国家と民族を守るために、中央集権的統治を改め、地方分権制度を確立し、その建設に邁進、努力しつつあるのであります。地方自治の確立はすなわちこの本旨によるものでありまして、地方自治を確立せんとすれば、これには三つの要素が必要だと存じます。その一点は、知事を公選して、政府の代官的知事を県民の福祉を守る知事に改めることであります。第二には、国家権力を擁護するための警察制度を改め、市民の安寧と秩序を守るように改善することであります。第三は、地方財政を確立して、でき得る限り中央に依存せぬよう、確定財源地方に持たせることであります。地方自治はこの三本の支柱によつて支えられているのであつて、そのいずれを弱体化せしめても地方自治の繁栄は期待し得ないのみならず、やがては中央集権国家と変貌して、帝国主義国家への悲劇の前提をつくるものと考えるのであります。入場税地方税より国税に移管し、府県の均衡をはかるという政府の施策に対し、かかる理由により私は反対するものであり、第二には、この入場税が昨日修正されて出たのでありますが、これは聞くところによると、日本自由党との間で折衝の結果こういうふうな修正がされたとしますと、今まで吉田内閣に対して恨みとのろいとを持つて打倒を叫んで来たわずか八名の日本自由党に、何で自由党が妥協してこういうことをしなくてはならぬか、大自由党の面目いずこにありやと言わざるを得ないのであります。この点についても、地方自治確立の基本線を逸脱するものであつて、まつたくの政治取引にしかすぎない、かように考え、反対するものであります。  第三には、入場税とともに遊興飲食税が国税に移管されることになつてつたのであります。それが、業者側が金を出し合い、あるいは強い反対を行つた結果立消えになつた、こういうことは国民たれ一人知らないものはないのであります。遊興飲食税は反対があつたから立消えにさした、入場税は反対が弱いから国税移管を強行するというがごときは、きわめて不明朗な措置であつて政府の信頼性を失わせるものであります。さらに本委員会にかかつておる繊維税の経過を見ますと、最初は原毛に課税せんとして業者の反対運動が展開されると、これを小売業者に転嫁せしめ、そうして二十万の小売業者がその不当を鳴らして、猛反対が起ると、今度は三転してれを却売業者に持つて行く。かくのごとくに自信のない措置が課税の上に行われるならば、これこそゆゆしい問題でありまして、税金が金と反対とによつてどうにでもなるという印象を国民に与えることは、税の権威と信頼感とを失わせるものであります。かくては苦しい中から国家の発展を念願して納税する国民が、正直者ほどばかを見るという結果になるのであります。  次に、この入場税国税に移管するにあたりまして、舞踏会とか、玉突きとか、パチンコとか、こういうものを第二種地方税として残してあることであります。ところが演劇等の査定しやすいものは国税に巻き上げ、そうして二種の査定困難なもの、あるいは査定にあたつてトラブルの起りがちなものを地方税として残しておくということは、親切な地方行政とは言えません。国は査定困難なもの、トラブルの起りがちのもの等をまず指導して、その困難を取去つた後に逆にこれを地方税に移すという指導と親切がなければならないのでありますが、そういうことがまつたく欠けておるのであります。  以上の点より、地方財政を枯渇させ、地方自治の進展を阻害させる入場税国税移管に対して反対をするものでございます。(拍手)
  116. 千葉三郎

    千葉委員長 次に自由党の黒金泰美君。
  117. 黒金泰美

    ○黒金委員 私は自由党を代表いたしまして、簡単に本案について賛成の意を表そうとするものであります。  地方自治の確立と同時に、その裏づけになつております地方財政を確立することは、わが党といたしましても非常に熱望いたしておるところであります。しかるに現実の状況を見まするときに、非常に税源が偏在いたしておりますことも疑うことのできない事実であります。ある一つの県の一人当りの県民の所得は他の県の二分の一にも及ばない、あるいはまたある県の県税収入総額は東京における歌舞伎座あるいは日本劇場の入場税額にも及ばない。この事実を考えました際に、独立税を持ちますと同時に、あるいは交付税の制度、あるいは譲与税の制度によりまして、この間の均衡を保つことの必要なことはいまさら申すまでもないところだと存じます。従いまして、今回政府はこの入場税国税に移管いたしまして、その収入金の九割を各府県に譲与しようということにつきましては、むしろ立案のおそきを憂えておつたくらいでありまして、われわれといたしましては衷心賛成をいたす次第であります。しかるにこの案につきましても、いろいろな輿論があつた次第であります。大体県側からいたします財政上の理由に基く反対もありました。これは今申し上げたような趣旨から国税移管が行われるのでありますから、従つてしばらくがまんしていただくといたしましても、映画を見られます国民大衆から、せめて映画ぐらいは文化国家として気楽に見られるようにという切なる御要望があつたわけであります。これに対しまして政府提出の原案は、税率がはたして現状に即応しているかどうか、この点につきましていろいろと検討をいたして参つた次第であります。その結果、日本自由党の御配慮によりまして一昨日修正案ができ、昨日この修正案の提出となり、われわれといたしましては、熟慮の結果賛成いたすことになつた次第であります。両社の方々は、この修正の結果非常に税収の激減を来すであろう、従つて地方財政への影響が大きいという点を考慮せられておるようであります。映画をごらんになつた方はおそらくおわかりになると存じますが、非常に売れのよい映画がかかりましたときには小屋が満員になりますが、その翌日売れない映画がかかりましたときは、がらがらであります。このような状態でありますために、会社におきましてもしも非常によい映画をつくりました際には入りがよくて、収入がふえるものと考えます。同時にまた税率の引下げによりまして、その結果入場料の引下げ、あるいは引下げがないまでも、設備の改善その他サービスの改善にまわるところが大きいと思います。その結果消費の増高を示しまして、私どもといたしましては、いろいろと研究をいたしたのでありますが、先ほど政府で御説明になりましたほどしかく激減を示すものとは考えていないのであります。しかも一歩譲りまして多少の減収があつた場合に処しまするため、別途入場税譲与税法案におきまして、地方財政に懸念のないような考慮まで払つておるのでありますから、今回の修正によりまして、国民大衆に益するところがありましても、地方財政に対して害は絶対にない。かような確信のもとにここに賛成いたす次第であります。  最後に政府御当局に対してお願いをいたしたいのであります。この国税移管に対して反対の大きな理由の一つは、地方の課税は比較的ルーズに行われておつた。これが国税に移管されるために苛酷と申しますか、峻厳な課税が行われるであろう、この点を考慮しての反対がかなり多かつたように思うのであります。何事も初めが大切でありますから、どうか十分な御考慮を払われまして、国税に移管されて非常によかつたという大衆の声が起りますように、政府として格段の配意をせられることを希望いたしまして、賛成をいたす次第であります。(拍手)
  118. 千葉三郎

    千葉委員長 次に社会党の井上良二君。
  119. 井上良二

    井上委員 私は日本社会党を代表しまして、ただいま議題になりました入場税法案に絶対反対の討論を行いたいと思います。  入場税がその対象とするのは、主として一般勤労国民大衆層であります。またわが国の立つております平和的文化国家という立場から考えましても、文化の向上の見地から、入場税のごときものは廃止すべきが妥当であり、われわれは入場税を廃止すべきことを基本的に考えておるのであります。しかも今回政府は、従来地方税としてありましたこの入場税を、一部地方に偏在をするという理由のもとに国税に移管いたしまして、その九割を地方に還元しようというのでありますが、入場税を偏在するとして取上げて地方に公正な財源を配分しようと考える前に、何ゆえに政府はもう少し地方財政の確立を考えないのか。この点が、私どもがこの法案に反対する重要な根拠であります。  御存じの通り地方財政支出は年間約一兆円に近いのでありますが、この一兆円の財政支出のうち、確立財源として地方にあります税源はわずかにその三〇%であります。あと七〇%はまことに不確実な、政府の時の財政の都合によつて左右されることになつてつて地方自治を確立擁護し、これを伸張しようとする民主主義の根幹からはおよそかけ離れた地方財政の現状であります。かくのごとき実情において、地方財政を所管します自治庁においては、この地方財政の苦しい現状からして今年地方財政支出を大幅に圧縮せんとしており、そこへ持つて来て在来ありました地方税収に対して本年は大きく増徴を見込んでおる。その上新しく改正法案を出しまして、さらにこの増徴を計画しておる。かくのごとくして地方自治は、その堅実な発展を裏づけるべき財政がきわめて不確実、困難な基盤の上に立つておるために、年百年中何方という地方の団体の代表者が、これが財源確保のため自治庁に、大蔵省に押しかけて跡を断たない実情であり、政府はこれを身をもつて経験しておるはずであります。この地方自治確立に関する必要な対策を考えずに、せつかく地方財源一つとしてありました入場税を、単に偏在するという美名のもとに国税に取上げてしかもその再配分をする。その再配分の内容たるや、なつてないじやありませんか。現在偏在しておるのは、大体東京、大阪を中心にする五十億余りであります。その五十億余りを国に吸い上げてしかも一方平衡交付金では五十億を削減して、貧乏府県にプラスしてやるがごとき錯覚を起さして、実際は何ら増額されない現状に置いておいて、しかも今度の改正案によつて政府みずから説明するところによつても四十七億からの減収になるじやありませんか。同じ吉田内閣のもとにおいて、自治庁の方では六十七億の穴があくと言い、一方大蔵省においては四十七億の穴があくと言う。一体こんなべらぼうなずさんきわまる説明によつてどうしてわれわれがこの法案に賛成することができましよう。まつたくなつていないのであります。しかもわれわれがここに非常に納得しかねる点は、この税収減一般会計から穴埋めすると言うが、一般会計予算はすでに本院を通過し参議院の審議期間を経過しまして、自然成立して予算は実行に移つておる。その予算の中からこの税収減を穴埋めするということは、一体政府のどこにそういう権限が許されておるか。しかも予算修正もせず、補正予算も出さず、一体どこからその金を持つて来て穴埋めしようというのか。国会の権威と審議権と憲法を無視するもはなはだしいやり方を政府は計画しておるじやないか。そういうべらぼうな話はありません。  この入場税がいかに悪税であり、いかに地方財政の上に大きな影響をもたらすかということから猛烈な反対が起りまして、これの審議が遅々として進まぬことからして、遂に自由党は、おぼれる者はわらをもつかむということで、たつた八名の日本自由党におすがりをして、日本自由党修正に賛成をした。こういうだらしのない、権威のないことで、一体何を考えて国会の審議に臨んでいるのか。その結論はまつたくなつていない。われわれはさようなずさんきわまる本案に絶対賛成するわけには参りません。こうしてすでに昨日地方行政委員会で多数をもつて、この入場税法案がいかに無謀な法案であるかということからして、同じ国会において先議をもつて入場税地方に残すということを決議し、さらにまた入場譲与税法案はこれを否決しておるのです。この事実から考えても、いかにこの法案がむちやくちやな法案であり、実際用をなさない状態になつておるかがわかる。向うでは多数で可決されるのだから、大蔵委員会は与党が多数だから、ここでやつておいたら、うまく行けば本会議で何とかなるかもわからぬと考えやがつて、(笑声)それで時を争うて、今までこの法案審議せずに待つてくれ、何とかもう少しこいつはないしよにしておいてくれ、修正案があるなら修正案を出して早く審議をやろうじやないかと言つても、依然として出さずに、大蔵大臣に聞けば知らぬ存ぜぬ、まるつきり馬耳東風で流しておつたのを、突如として地方行政委員会入場税関係法案審議するや、あわてふためいて、まるで足元から鳥が立つようにこれを持ち込んで来て、多数の力で事をきめようとしておるけれども、これはそうは問屋がおろしません。(笑声)おそらく本会議では地方行政委員会の決議が先議されると思います。そうなれば、天は正しい者を助けますから、私は自由党の中にもこれに対しては相当反対する人もおりますので、必ずこの地方行政委員会の先議案が可決されると思う。そうなれば、ここでこの案を可決しても一事不再議で廃案になつてしまつて、あなた方のせつかくの努力は水泡に帰して、自由党は天下に大恥をさらすということを明確にいたしまして、私は遺憾ながらこの法案に賛成できないということを明らかにして、討論を終ります。
  120. 千葉三郎

    千葉委員長 これにて討論は終局いたしました。  引続き採決に入ります。まず最初大平正芳君外十三名提出の修正案について採決いたします。本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  121. 千葉三郎

    千葉委員長 起立多数。よつて修正案は可決いたしました。  次に、ただいま議決いたしました修正案修正部分を除いた原案について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  122. 千葉三郎

    千葉委員長 起立多数。よつて本案は大平正芳君外十三名提出の修正案のごとく修正議決いたしました。  この際お諮りいたします。本日議決いたしました法案に関する委員会報告書の作成提出等の手続につきましては、委員長に御一任を願つておきたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  123. 千葉三郎

    千葉委員長 御異議なしと認めます。よつて委員長に御一任をいただいたものと決しました。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時四十二分散会      ――――◇―――――   〔参照〕  入場税法案内閣提出)に関する報告  書   〔都合により別冊附録に掲載〕