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1954-03-25 第19回国会 衆議院 大蔵委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月二十五日(木曜日)     午前十時十六分開議  出席委員    委員長 千葉 三郎君    理事 淺香 忠雄君 理事 黒金 泰美君    理事 坊  秀男君 理事 山本 勝市君    理事 内藤 友明君 理事 久保田鶴松君    理事 井上 良二君       宇都宮徳馬君    大上  司君       大平 正芳君    金光 庸夫君       小西 寅松君    島村 一郎君       苫米地英俊君    福田 赳夫君       藤枝 泉介君    堀川 恭平君       安井 大吉君    池田 清志君       福田 繁芳君    小川 豊明君       佐々木更三君    柴田 義男君       春日 一幸君    平岡忠次郎君  出席国務大臣        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君  出席政府委員         総理府事務官         (自治庁税務部         長)      奥野 誠亮君         大蔵政務次官  植木庚子郎君         大蔵事務官         (主税局長)  渡辺喜久造君         国税庁長官   平田敬一郎君  委員外出席者         大蔵事務官         (国税庁税部         長心得)    村山 達雄君         専  門  員 椎木 文也君         専  門  員 黒田 久太君     ————————————— 三月二十五日  委員和精一君及び小西寅松君辞任につき、そ  の補欠として金光庸夫君及び安井大吉君が議長  の指名で委員に選任された。     ————————————— 三月二十四日  関税法案内閣提出第六五号)(参議院送付)  外国為替銀行法案内閣提出第七三号)(参議  院送付)  株式会社以外の法人の再評価積立金資本組入  に関する法律案内閣提出第九〇号)(参議院  送付)  企業資本充実のための資産評価等特別措置  法案内閣提出第一一五号)  公認会計士法の一部を改正する法律案内閣提  出第一一七号)(予) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一五号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一六号)  相続税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一七号)  酒税法の一部を改正する法律案内閣提出第一  八号)  印紙税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一九号)  砂糖消費税法の一部を改正する法律案内閣提  出第二〇号)  骨牌税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二一号)  酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の一  部を改正する法律案内閣提出第二二号)  物品税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二九号)  入場税法案内閣提出第三〇号)  しやし繊維品課税に関する法律案内閣提出  第三九号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第五三号)  揮発油税法の一部を改正する法律案内閣提出  第六一号)  関税法案内閣提出第六五号)(参議院送付)  国税徴収法の一部を改正する法律案内閣提出  第六七号)  関税定率法の一部を改正する法律案内閣提出  第七一号)  米国対日援助物資等処理特別会計法等を廃止す  る法律案内閣提出第三号)  農業共済保険特別会計歳入不足を補てんす  るための一般会計からする繰入金に関する法律  案(内閣提出第五号)  資金運用部特別会計法の一部を改正する法律案  (内閣提出第八号)  製造たばこの定価の決定又は改定に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出第一〇号)  国民金融公庫法の一部を改正する法律案内閣  提出第三三号)  食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案(  内閣提出第五四号)  国税収納金整理資金に関する法律案内閣提出  第七二号)  交付税及び譲与税配付金特別会計法案内閣提  出第八五号)  経済援助資金特別会計法案内閣提出第一〇四  号)  企業資本充実のための資産評価等特別措置  法案内閣提出第一一五号)     —————————————
  2. 千葉三郎

    ○千葉委員長 これより会議を開きま す。  本日はまず昨二十四日本委員会に付託されました企業資本充実のための資産評価等特別措置法案議題として、政府当局から提案趣旨説明を聴取いたします。植木政務次官
  3. 植木庚子郎

    植木政府委員 ただいま議題となりました企業資本充実のための資産評価等特別措置法案につきまして、提案の理由を説明申し上げます。  政府は、資産評価実施状況並びに企業資本構成経理等実情にかんがみ、一定規模以上の会社について資産の再評価強制するとともに、一定限度以上の再評価行つた者に対して再評価税及び固定資産税を軽減する等の措置を講ずることにより、企業資本充実を促進し、その経営の安定と経理健全化をはかる必要があると考え、ここにこの法律案提出することとしたのであります。  次に、本法案につき、その大要を申し上げます。  まず第一に、再評価強制についてでありますが、一定規模以上の株式会社は、この法律施行日昭和二十九年中に開始する事業年度開始の日のいずれか一の日現在で、減価償却資産につき、再評価実施後の帳簿価額総額が、第三次再評価限度額総額の百分の八十以上となるように再評価を行わなければならないものといたしました。但し、施行日前にすでに再評価行つて、右の条件にかなつている場合または再評価を行わなくても昭和二十八年または昭和二十九年中に始まる事業年度開始の日のいずれか一の日現在で再評価の対象となる減価償却資産帳簿価額総額がその日現在で計算した右の最低限度額を越えている場合においては、あらためて再評価を行う必要はないものといたしております。  第二に、陳腐化した資産等の多い会社につきましては、一旦最低限度まで再評価行つた後、大蔵大臣承認を経て陳腐化資産等帳簿価額減額をさせることとし、適正な再評価実施することができる道を開いております。  また、再評価日後に生じた事由により帳簿価額減額をする場合におきましても、その結果、再評価後の簿価総額が右の最低限度を下ることとなる場合には、あらかじめ大蔵大臣承認を要することとし、再評価強制の実効を失わせるような行為を防ぐことといたしております。  第三に、再評価積立金資本組入れ及び減価償却の励行のための措置でありますが、一定期間内に資本組入れ一定限度以上行い、かつその事業年度において適正な減価償却行つた場合に限り、一定割合以上の利益配当を行うことを認めることといたしました。すなわち、約二年間の猶予期間を置いた後、昭和三十二年三月三十一日を含む事業年度から三年間の各事業年度においては、その事業年度までに再評価積立金の百分の四十以上を資本に組み入れた場合でなければ年一割五分を越える配当行つてはならないものとし、また同一の猶予期間の後普通償却範囲額の百分の九十以上の減価償却行つていない場合においても右と同様の配当制限を行うここといたしました。なお、この配当制限は、最低限度以上の再評価を行わなかつた会社に対しては、昭和二十九年十二月三十一日を含む事業年度から適用することといたしております。  第四に、再評価税の減免でありますが、今回一定規模以上の会社について再評価強制することとしたことに伴い、最低限度以上の再評価行つた者に対しましては、減価償却資産についての第三次再評価の再評価債差額のうち再評価限度額の百分の六十五を越える部分に対する再評価税を全額免除することとし、再評価限度額の百分の六十五に達するまでの部分につきましては、第一次、第二次再評価に相当する部分として、これに対する再評価税の二分の一を免除することといたしております。なお、免除額計算につきましては、納税者の選択により、個々の資産について第一次再評価限度額に相当する額を算出して免除額計算を行う道をも開いております。また、すでに第一次、第二次の再評価行つた者最低限度以上の第三次再評価行つた場合には、この法律施行の日以後に終了する事業年度分として納付すべき未納の旧再評価税についても、その二分の一を免除することといたしております。なお、再評価税免除を受けた者が免除を受けた資産一定期間内に譲渡しました場合には、免除を受けない者との権衡を考えて、免除額に相当する再評価税を譲渡の際に課することといたしております。  さらに、以上の措置に伴い再評価税の納付の時期の特例を設けるほか、最低限度以上の再評価行つた者に対しては延納の最終期制限を設けないこととし、また、今後最低限度以上の再評価を行おうとする場合及び陳腐化資産等評価減を行うことが予想されている場合等に過納が生じないようにするための徴収猶予規定を設ける等所要の規定を設けております。  第五に、固定資産税につきましては、再評価行つたことによつてその負担がただちに増加することがないように特別の措置を講じております。すなわち、最低限度以上の再評価行つた者に対する昭和三十年度から三年度間の家屋以外の償却資産に対する固定資産税につきましては、その資産評価額昭和二十九年度分の課税基礎なつ価格を越える場合には、原則として昭和二十九年度分の課税標準をもつてこれにかえることとし、すでに昭和二十八年中に再評価行つた資産の再評価額昭和二十九年度分の課税基礎となつている場合には、原則として昭和二十八年度分の課税価格を越えることがないように措置しております。  以上の再評価税及び固定資産税の軽減の措置によりまして、再評価強制される会社はもちろん、自発的に最低限度以上の再評価行つた場合にも、再評価伴つて企業税負担が直接増加することはなくなるのであります。  最後に、一般投資家ないし取引先等に対して企業経理の実態を認識させる意味におきまして、当分の間、資本金五百万円以上の株式会社等総会に対して提出し、又は新聞に公告する貸借対照表には、再評価実施状況を付記させることとし、また右の貸借対照表とともに総会提出する損益計算書には、減価償却実施状況を付記させることといたしております。  以上本法律案大要を申し上げた次第でありますが、何とぞ御審議の上、すみやかに賛成せられるようお願いいたす次第であります。     —————————————
  4. 千葉三郎

    ○千葉委員長 次に、本日の日程に掲げました二十六法案所得税法の一部を改正する法律案外十五税法案一括議題として質疑を続行いたします。質疑は通告順によつてこれを許します。まず内藤君。
  5. 内藤友明

    内藤委員 ごく簡単に大蔵大臣にお伺いいたしたいのでありますが、きわめてこれは簡単なことなんであります。国民納税義務につきましては、憲法第三十条にもはつきりと規定してあり、これは国民全体がよく認識しているところであります。その納税義務具体的内容というものは常に法律の直接的な規定によつてきまるものでありますので、決して税務当局独断的認定、あるいは便宜的な見方でよけいとるとか、少なくとるとかいうことはあるべきはずがないものと思うのであります。ところが税務の実際を見ておりますと、必ずしもこの原理原則が貫かれておらぬのが今日の実情であります。こういうことにつきまして、大蔵大臣はどういう御所見をお持ちになつておられるのか、まずそれをひとつお伺いいたしたいのであります。
  6. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 たいへん恐縮でございますが、のどを痛めておりますため、場合によつてはかわつて答弁をしてもらうかもしれませんので、その点御了承いただきたいと思います。  もちろん法律に基いてやることは当然でありますが、たとえばあるものについて、それを所得を上げるための費用と見るかどうかというような問題になりますと、御承知のごとくにある基準はありますけれども、ある程度認定にまかせるところがあるのであります。従いまして、税務当局が法に基いてやることは当然でございますが、ある種の認定そのものが妥当を欠くような場合には、税務当局として適任でないということはございましよう。しかしこういうことはありましようけれども税務当局としては、自己の最善をそれぞれ尽しておるもの、また私どもはすべて法律に基いてやるものと実は考えておる次第でございます。
  7. 内藤友明

    内藤委員 まことに大蔵大臣には申訳ございません。長々とお尋ねするつもりでありましたけれども、御様子をお見受けしますと、たいへんお気の毒に存じますので、こういうふうなことはやめることにいたします。実は昨日全員の秘密懇談会を開きまして、いろいろ議事の促進につきまして懇談いたしました。大臣もこれについて与党皆さんからお聞き及びであろうと思うのであります。そこではなはだ恐縮でありますが、大臣に一言お尋ねしたいことがあるのであります。これはこれからの審議に重大な関係があると思いますから、大臣に念を押しておきたいと思うのであります。  それは、今問題になつております税法二つあろうかと思うのであります。一つは例の繊維消費税、もう一つ入場税であります。だんだん大詰めに来ましたので、何とかこの結論をつけなければならぬのでありますが、この二つの問題につきまして、実は私どもが非常に心配いたしておる問題が出て参つたのであります。一つ入場税でありまして、この大蔵委員会では御提案のものが無傷とは行かぬけれども、何らかの傷がついて、与党皆さんがこうして大勢おられるのでありますから、これは通ることと予想いたします。ところが一方地方行政委員会では、これははなはだお気の毒千万でありますが、与党皆さんは数が少いのであります。でありますから、これはおそらく大蔵大臣考え通りには行かないことだろうと思うのであります。従いまして、本会議には、同じ税に関しての関係法律が二様なものが出て来ることと思います。しかしこれは一切は本会議できめられることでありますから、今からかれこれ予断を許さぬのでありますけれども、私ども国会へ出て参りましてからかれこれ七年間になりまするが、第一国会以来いまだかつて見ない場面に、今まさにわれわれが当面しようということになつておるのであります。そこで大蔵大臣の御心境を伺いたいのでありますが、入場税がそういう妙なことになつて来たということにつきましての大蔵大臣のお感じと、もう一つ繊維消費税であります。これは実は与党の皆様から、ひそかなる声で、ゆつくり御審議願いたいというのであります。そうしますと、おそらく私は、これももちろん想像でありますが、審議がゆつくりなされるものと思うのであります。ということを裏返してみますと、これは握りつぶしということになるのではないかと思うのでありますが、してみますと、八十五億という財源が問題になつて来るのであります。これはあまり大きな声で言いますと、参議院に響きまして、予算審議に大きな影響があろうかと思うのでありますが、これはやはり一応はよく確めておかなければならない問題でありますので、大臣にお尋ねするのでありますが、さような事態が起きそうでありますけれども、今日大蔵大臣はこれに対してどういうお心持をお持ちでありますか。この二つの税に対しての大蔵大臣のお感じを、ひとつ率直に申していただきたいと思うのであります。
  8. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 最初の入場税の方は、御承知のごとくに、中央と地方との税制整理調整という考え方から生れ出ておりまして、しかもこれは、地方制度調査会とか、あるいは税制調査会等の答申にもそれが織り込まれておる。従つてどもは、この入場税地方財源調整意味でぜひとも通過することを、あなたの言葉で申し上げれば無傷で通過することを希望いたし、それがために全力を尽したいと思つておるのでございますが、しかしかりに若干の御修正があつた場合、それが予期しておるように、たとえば交付税及び譲与税配付金特別会計等へ入る金額に異動を生じますると、地方財政の見地から非常に困ることになり、それが不足するようなことにもなりますれば、ひいて予算のある程度の更正をしなければならないようなことが起つて参りますので、そういう金額に大きな響きのない程度修正——どもはもちろん原案を望むのでありますが、修正権を左右するわけに行きませんから、その程度であれば、いわゆる予算修正するという問題にはなりませんけれども、もしその金額が非常に差を生じますと、これは予算修正するほかはなくなるという重大な問題でございまして、すでに予算案の御審議が済んでおるときでございますので、この点はぜひ原案で通していただくか、あるいは最も原案に近いもので通していただくよう、心から希望しておる次第であります。  さらに奢侈的な繊維品についてのお話でございますが、今日日本で奢侈を抑制するということについてのどなたのお考えも一致しているのであつて、たまたまこの繊維品についてこれが出て来た。ほかのものも全部物品税等で上つておるのでありますが、しかし繊維品については、物品税課税の率を上げるというところまで参りませんので、特別な措置をとつていただいて——予算を通していただいたのであるから、もちろんこの案は通していただけることと信じて私どもは今後とも努力をいたしたいと思つておるのでありますが、しかし通らない場合にはどうするかとおつしやると、これはどうしても通していただくという考えのもとに私ども予算をやつている、こうしか現在のところは実はお答えができない。もう少しいい仮定でありますとお答えが容易でありますが、どうもよい仮定でないので、仮定の事柄についての御答弁だと、内藤さんの御満足の行くような御答弁がどうもしにくい。これは私は、あなたが私の立場に立たれても御同様のことであろうと、実は率直に申し上げますが、思います。
  9. 内藤友明

    内藤委員 いろいろ小笠原先生にお尋ねしたいのでありますけれども、お気の毒だから申し上げません。しかし、もしできますならば、小笠原先生ひとつ御静養いただきまして、まだ五十幾日も会期があることでありますから、急がないことであると思うのでありますが——これはよけいなことでありますが、あとはよろしく……。
  10. 井上良二

    井上委員 ただいま議題となりました税法各案について大蔵大臣所見を伺いたいのであります。   〔委員長退席内藤委員長代理着席〕お聞きしておりますとたいへん咽喉を痛めておりますか、あるいはお年の関係上お疲れになりまして、精力も非常に減退しておるようでございますので、あまり長時間にわたつて大臣質問をすることは御迷惑と考えますから、重要な点だけについて大臣所見を聞いて他は他の政府委員からお答え願つてけつこうでありますから、ひとつさように簡単に、苦しゆうない程度お答え願いたいと思います。  ただいま内藤委員より御質問をいたしました入場税国税移管に関連いたしまして、政府与当たる自由党の方で、この政府原案に対して、入場税税率引下げに関する修正案提出するということに方針がきまつたようでございます。そうしますと、大蔵大臣は、この税率引下げに対して当然起つて来る予算上の問題等について、一体どうお考えになつているか。特に、これが野党の方から修正案が出るということならば話がわかりますけれども、一応政府原案相談を受けた与党が、今日までずつと原案で参りまして、今日になつて政府与党の中から修正案を出すということは、あまりにも国会審議を愚弄したやり方じやないかということを私ども考えて、与党政治的責任を追究するつもりでおります。まだ修正案が出て参りませんからそこまで今日は言う必要はありませんが、出ました以上は、当然政治的責任を追究せなければなりません。しかし今日の場合、そういうわけで修正案が出されるということが明らかにされました以上は、これに対して大蔵当局同意を与えておるのか、まだ与えてないのか、それをまず伺いたい。
  11. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 まだ何らそういうような相談を受けておりません。従いまして、何も同意を与えておりません。ただ井上さんが言われたように、この案を出しまするときにはすべて自由党の方でも打合済みの案を出したことはお話通りであります。
  12. 井上良二

    井上委員 修正案は多分本日中に出されると思います。もし出された場合、もうすでに案の内容はおわかりでございましようが、これに同意する自信をお持ちになつておりますか。それともそういう修正案は困るとお考えになりますか、これを伺いたい。
  13. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 いずれにしても修正案は好ましくございませんが、しかし修正案内容が、たとえば入場税による収入額に大きな影響がないというものでございますれば、その内容いかん政府としては態度を決定いたしたいと思います。しかし、もしたとえば数十億というような収入差があることになりますと、これは御承知のように地方収入関係に大きな影響がありまして、ひいてはこの特別会計から百七十五億、それが見られておるものが多少そこに差を生じて来ると、何らかの予算修正を要するような問題も金額によつては起つて参ります。実は私たちは、さようなことはないものと考えておる次第でございまするが、なお正式にも非公式にも私自身としては話を受けておりません。従いまして、今のような話でございますれば、内容いかんということで政府態度をきめる、こういうことになると存じます。
  14. 井上良二

    井上委員 ただいまの大蔵大臣の御答弁は、はなはだどうも私ども納得できません。これはすでに昨日本委員会自由党の方から、かくかくの修正をしたいという内示がございまして、われわれとしても党において、いろいろの角度からその修正案についての検討をいたして参つたのでありますが、当然政府としては、与党である自由党の方で修正案をつくりました以上は、これが今お話になります地方財政計画にどういう影響をもたらして行くか、またはたして修正案通りにやつた場合に、政府原案との開きはどうなつておるのかということについて検討されておるはずではありませんか。その検討をされずに、修正案が出た上で検討するというようなことをしましたのでは、一層事態を円滑に運ぶのでなしに、紛糾さすことになりますから、少くとも修正案がつくられた以上は、当然それに対して政府として作業をやつてみて、これが地方財政計画にどう影響して行くか、政府原案修正案との間において、税収はどういう形に現われて来るかということについて作業をやつておるはずではありませんか。やつてないとするなら、はなはだ政府当局としては怠慢であります。だからその内容をもう少し御説明を願いたいと思う。これは主税局長から御答弁を求めます。   〔内藤委員長代理退席委員長着席
  15. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 一応こういう案を考えているといつた程度お話は伺つておりますが、しかし自由党の意思がきまつたものとしてお話をなさつていらつしやるということは、われわれ聞いておりませんから、従いましてこの段階において一応そういうお話があれば、こういう数字になればこういう数字になるはずだということは、われわれはいつでも作業できる用意はできておりますが、そうした意味の御連絡がありませんものですから、われわれとしましては、一応今大臣お答え申し上げた程度状況にあるわけであります。
  16. 井上良二

    井上委員 そういたしますと、これはいずれ修正案が正式に出されました後において、この修正案をめぐつて政府及び提案者に対していろいろ質疑をせなければなりませんが、今日のところはまだ正式に提案がされておりませんから……。ただ、たとえて申しますと、きのうお話願いました案は、入場料が五十円までのものは一割、八十五円までは二割、百三十円までは三割、百八十円までは四割、百八十円を越える分については五割、こういう修正案を発表してございます。従つてかくのごとき修正案が出されました場合——これは当然出されるとわれわれも確信しましていろいろ検討して参つたのでありますが、これと政府原案との間において、税収の上においてどれだけの開きがあるのか、それとも政府では予算修正するほどの開きはないという推定をお立てになつておじますか。想像でいいですから、今申し上げました数字によるあなたの専門的な御解釈を伺いたい。
  17. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 われわれの方で出ております根拠に基きますれば、相当数字の開きが出て来るのじやないかと思つております。その場合におきましても考え方はいろいろございまして、結局地方財政の方に一番大きく響くわけですが、地方財政の方の——これはまあ一種の地方税の軽減と同じ効果を持つわけであります。その地方税の軽減を地方財政の節約とかなんとかいつたような余地がありとして、この意味の軽減をやるということならば、予算にそう大きな関係なしに済むと思つております。これが相当大きな金額になるがゆえに、その面について国が何らかのめんどうを見なければならぬということになれば、それは予算に何らかの影響はあるというふうに思います。ただこの算出の根拠、税率はこういうふうになつていても、結局税収は従来と同じ程度に上るのだという御意見であれば——これは御意見をよく伺つてみなければわかりませんけれども、問題は税取に響くか響かないか、そこになつて参りますので、現在の段階におきましては、われわれの方としては、すぐに予算に響くとか響かないとか申し上げることはまだ早いと思つております。
  18. 井上良二

    井上委員 私どもの方で作業いたしまして、いろいろ検討いたしましたところによりますと、ただいま申し上げました自由党修正案による税率を引下げます場合は、当然予算修正する必要が起つて来ると考えております。現在府県が徴収いたしております税額よりも、この税率で多くとれる、今度政府原案の税率よりも引下げますことによつて現在府県が徴収している税額よりもさらに大きくとれるということは、どういう計算をしても出て参りません。従つて政府原案と、予算修正する必要がないほど税収の方には変更がないという計算基礎が私の方には出て参りません。またそのことが地方行政委員会にも大きく問題になつて、さような修正案がもし通るということになりますならば、地方財政計画に重大な影響を来して来るから、それよりも現行のままに置く方がいいというようなことから、入場税の譲与税関係法案を慎重に取扱わなければならぬとして、地方行政委員会態度をきめかねておる実情にあることは、御存じの通りであります。そこでこの際委員長にお願いをするのですが、ただいま政府当局の御説明を承りましても、われわれを納得させるだけの態度をおきめになつておりません。そうしてまたそんなに大きな開きが起るとは考えられないのではないかという一つの想定的な御見解でございます。そこでわれわれは、さような数字上の魔術によつてこの問題を扱うわけには参りません。少くとも地方財政計画に重大な影響を与えるということをわれわれ考えます以上は、ここでただちに自治庁の意見を聞く必要があり、特に地方税を専門的に検討されております自治庁の税務当局の出席を求めて、その見解を聞きたいと思いますから、自治庁の奥野税務部長の出席を要求いたします。その上で本問題にはさらに検討を加えて参りたい、かように思いますから、奥野税務部長の出席を要求いたします。同時に委員長にお願いしておくのは、ただいま私が質問をいたし、内藤委員からも御質問がありました通り、この修正案は、地方財政計画に及ぼす影響が重大であり、同時に提案されております入場譲与税法案と表裏の関係にある重大な修正でもありますから、この財源確保の見通しが明確でない今日、当然地方行政委員会の見解というものは非常に重要になつて参りますので、地方行政委員会との合同審査をここで私は要求いたします。そうしてこれがほんとうに公正妥当な修正であるかどうかということを検討する必要がありますから、修正案が出されてからでもけつこうでありますから、さようにおとりはからいを願いたい。奥野税務部長はどうなつておりますか。
  19. 千葉三郎

    ○千葉委員長 奥野税務部長は現在地方行政委員会に出席中だそうです。こちらの方に出席方を要求中であります。
  20. 井上良二

    井上委員 この問題は地方行政、財政計画の上に重大な関係がありますから、奥野さんが見えますまで、暫時この質問は留保いたして参りたいと思います。見えましたらさつそくこれを明確にして参りたいと思いますから、それまで他の法案についてこの際質問を申し上げたい。  それは法人税の改正問題でございますが、ただいま政府地方税の入場税を国税に移管する問題、あるいはまた間接税の増徴問題等に関連しまして、税制調査会の意見を尊重したということを大蔵大臣が御答弁をされておりますが、法人税の改正についても、税制調査会は政府に対して答申をいたしております。その重要な点は、法人税が非常に高い、だからその税率を下げるべきである。しかしそう急激に下げるわけには行かぬから、現在四二%のものを四〇%に下げるべきである、こういう答申をいたしております。この答申は一向尊重されておりません。どういうわけで尊重されませんか。われわれが法人税改正を見ておると、ほとんどが租税特別措置法の改正に逃げ込んでしまつてつて、しかもこの改正で減税が四十九億に上つております。これほど多額の減税を行う改正をやつて、しかもそれは一部産業、一部のケースのものについてのみ行つておる。四十九億も法人税で減税をするというのならば、この税制調査会が答申しております税率の引下げについて全般的に考慮することの方が当然正しいのであり、特に資本力の弱い、資金面の非常に困難な中小企業の現状から考えて、税率を少しでも安くしてやるということが、資本の蓄積や、あるいは企業の合理化の上からも絶対的に必要であります。しかるに一産業一ケースのものだけ特別にいろいろな美名に隠れて四十九億も減税をするということは、あまりにも傾斜的な減税とお考えになりませんか。都合のいいときには税制調査会の答申を尊重して、都合の悪いことはほおかむりで行く、一体そういうかつてな話がありますか。あなたはどうお考えになりますか。
  21. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私ども法人税については、実は税制調査会の答申をできるだけ尊重したいと思つて、当初におきましていろいろ考えてみたのでございましたが、何しろあの案というものは、御承知のごとくに大体自然増収を見てできておるのでありましたが、今日自然増収が見がたい情勢に置かれておりますと、どうしましても減税を小幅にするほかない、こういうことになりましたので、これは答申案をごらんになればよくわかりまするが、あれは全部が自然増収を引当てにしたものであります。ところが私どもの今度の予算案では、そういうことをやらなかつた。その結果として、減税をいたしまする半面に何らか埋合せを要する、こういうものが起つて来たので、従つて必要と認める、法人が増資を行つたこと等、そういうことについての分だけを行つた、こういう次第でありまして、私自身は今も機会があれば、法人税は元のシヤウプ勧告の三五までは容易に持つて行けませんけれども、まあ四二から四〇くらいに持つて参りたいという考えには何らかわりはございません。ただそうしますと、財源を何か増税の方に持つて行かなければなりませんものですから、それでやり得なかつた。そういうことでございますので、この点はあの答申案とあわせてお考えくださるとおわかりが願えると思うのであります。
  22. 井上良二

    井上委員 都合の悪いときには次の財源をと、こう逃げおるが、国民税負担の限度というものもお考えくださいますならば、増税よりも減税という方が現在のわが国の財政の上では重大な段階に達しておることは、税制調査会が冒頭において政府に重要な答申をいたしておる通りであります。従つて歳出の面において何としても大幅な圧縮をする必要があり特に不要不急のいろいろな補助やその他政府のやつております各種の行政処理をもつと能率的効率的な面に改めて、歳出を圧縮して行くという手を打つべきでありますけれども、なかなかそう急激には参らないので、政府の苦心しているところはわれわれもよくわかるのでありますが、さように考えてみましても、また今大臣の御答弁の中にうたわれました点から想像しましても、ただいま申し上げましたこの四十九億の減税というものは、増資分の配当金の損金繰入れ、価格変動準備金の積立金の限度拡大、設備輸出の所得に対する減税、これは一般的にはそう目立ちませんけれども、これに該当します企業には相当効率的な減税でございます。二十九年現行法による法人税の申告見込額は千五百五十四億、このうち二十八年度の実績から見ると、資本金五百万円以上の大会社が納める税金は七〇%でありますから千八十八億、このうち四十九億が減税されるということになりますので、その実際の税率は四〇%弱となります。しかもこの大会社のうちで今回の改正の適用を受けるのは範囲が非常に狭いから、実際には一部の会社の税率は相当低くなり、さらにこの一部の会社への傾斜的減税は昨年の改正において七十七億を減税いたしております。この昨年の七十七億と今回の四十九億とを合せますと、これら大法人の税率は三五%に下つてしまうのです。しかるに一方中小法人等は依然として高率の四二%がかけられておるのです。約一〇%も傾斜減税を特殊な会社ケースに行つておるというこの事実を、大蔵大臣はどのようにお考えになりますか。なるほど資本蓄積の必要から、増資分の配当金の損金繰入れや、あるいは価格変動準備金とか、あるいはまた輸出振興の設備輸出の所得を減税するとかというようなことは、いろいろ説明をすればなるほどと国民は納得をするかもわかりませんけれども、しかしこれはどつちかと申しますと、相当大きな大法人でなければでき得ない。現在のわが国の経済の実態から見ました場合、これらのものが三五%の減税を受けて、資本力のない、経営資金面で非常に困つておる中小法人は依然として四二%の重税でほおつておかれるということは、税の負担の公正を説く政府当局としてはあまりにも片手落ちだといわれてもやむを得ないのじやないか、こう私は考えますが、いま一応この点について御説明を願いたい。
  23. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 今お話なつたうちの価格変動準備金制度の改正、増資配当の損金算入、あるいは輸出所得の特別控除制度の改正、こういうようなものは、これはひとり大会社に限らず、中小のものもみなやれるのでありまして、たまたま大会社もあるかもしれぬが、事実は中小でも何でも何も区別しておるものではございません。いずれもこれがやれるのであります。なおこまかいことは、私は声が出ませんから、政府委員から答弁を申し上げます。
  24. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 税率の全体として、たとえば現在の四割二分から四割に下げる、こういう方向も確かに一つの御意見だと思いますが、現在の経済政策的な要請に基きまして、何としても自己資本をもつと充実するような、あるいは払込み資本を大きくして行くような、こういう考え方があるわけでございますし、また現在の価格変動準備金の制度におきましては、かねてからいろいろ批判があつたわけですが、物が値上りする時期に、将来の値下りに備えて準備金を積み立てておきたい、しかし現行制度ではそれができないから、これをぜひ考えてほしい、これは税制調査会でも同じような意見が出ておるわけでございまして、そういうような経済政策的な要請がやはり相当大きくございますので、しかもそれはただいま大蔵大臣が申し上げましたように、決して大きな会社だけにやれる道というわけのものではないのでございまして、そういうような意味からいたしまして、どちらの方向に税制の重点を置きながら考えて行くか、こういう点になると思いますが、現在の各般の情勢から言いますと、やはりこうした経済政策的な要請を多分に取入れて行くことが、結局日本経済全体の発展のもとになるのじやないか、こういう考え方のもとに、現在のような提案がなされておる次第でございます。
  25. 千葉三郎

    ○千葉委員長 井上君に申し上げますが、奥野税務部長が来ておりますから、御了承ください。
  26. 井上良二

    井上委員 それでは法人税はまたあとまわしにしまして、さいぜん入場税修正されるのであろう税率について質問をいろいろいたしておりましたが、特にこの入場税は、譲与税としてそのほとんどが地方に交付されることになりますので、特に地方の財政計画の上に重大な影響を持ちます関係から、その方面の専門的な御意見を承ろうと考えまして、奥野税務部長さんに御出席を願つたのであります。すでに奥野さんお聞きか存じませんが、実は自由党の方で、本日本委員会に現在出ております政府原案を次の通り改正するようでございます。すなわち入場料五十円までを一割、八十五円までを二割、百三十円までを三割、百八十円までを四割、百八十円を越える部分を五割と、さような大修正を行うことになりますが、私どもの方の党でこの修正に基く税収の面をいろいろな見地から検討いたした結果によると、かくのごとく大幅に税率を引下げるということになりますと、当然予算修正をしなければならぬ実情が起つて来る、こういうことになりますので、そこで現在府県が徴収しております税額よりも、また政府提案をいたしております原案よりも、この修正案によつて税収はそう大差なくとれる、そうして地方財政計画にもさほどの影響を与えない、こういう見解にお立ちのようでありますが、われわれはそれと反対に影響すると見ておりますので、特に従来地方税を御担当されて、入場税の徴収状況等についていろいろ御検討されて参りました奥野氏より、はたしてこの修正案通りやつた場合、ただいま申しますような影響はないかどうか、また一体どれだけの差額がそこに生ずる予定であるかという点を、ひとつ専門的に御説明を願いたいと思います。
  27. 奥野誠亮

    ○奥野政府委員 私は、ここへ参りまして初めて入場税の税率を政府案よりもさらに引下げようという話があることを承知したわけであります。それによつて減収が生ずるか生じないか、地方財政上欠陥を生ずるか生じないかという御質問のようでございます。その御質問は、言いかえてみれば、現在の政府案による入場税の収入見込額が寡少であるかどうかという御質問にもなろうかと思います。寡少であるかどうかという御質問に対しましては、御承知のように入場税国税移管にあたりまして、第三種施設の利用に対する課税が除外されております。さらに税率の引下げが行われております。そういう意味におきまして、私たちとしては、あれだけの収入を上げるためには、税務当局におきまして相当な努力を要するのじやないだろうかというふうな考え方を持つておるのでありまして、寡少であるとは決して思つておりません。さらにまたそのことを言いかえれば、地方税であるがために徴税力が非常に弱い、脱税が非常に行われているのじやないかというふうな御質問にもなろうかと思うのでありますが、これにつきましては、昭和二十三年に入場税が国税から地方税になりました際に、従来行われていなかつた票券の公給制度を実施したわけでありまして、他の税におきますよりも、この入場税に関しましては非常に徴税成績をあげておると確信いたしておる次第であります。従いまして、税率の引下げが行われますならば、それだけ確実に収入が落ちて来るのじやないかというふうな考え方を、私ただいまここへ参りまして教えられて持つたわけであります。
  28. 井上良二

    井上委員 そうしますと、まだこれは具体的に修正案が正式に本委員会提案をされておりませんから、はつきりした政府の見解をここで明確に伺うことは非常に困難でありますけれども、時間的な関係もありまして、修正案提出されることが自由党の方で決定的になつておりますので、予備的に伺うのでありますが、ただいま奥野さんのお話によりますと、現在政府原案においてさえ、従来府県が徴収しておりました税額よりも——府県が徴収しておつた税額というよりも、政府が現在の予算に盛られておる税額だけを徴収することは、政府原案においても非常に努力を要する、なかなかそう簡単にそれだけ集めることは困難であるという御説明のように承りました。さような、政府原案でさえ予算金額だけのものを徴収するということは非常に努力を要するという場合において、さらにその税率を引下げるということになると、事実具体的にはこれが予算的にどういうことになつて参りますか、この点をもう少し、まだ成案は出ておりませんので、想定でよろしいからひとつお聞かせを願いたい。
  29. 奥野誠亮

    ○奥野政府委員 入場税の徴収されたものの九割相当額が、御承知のように入場譲与税として人口按分して都道府県に還付されます。一応予算の額が定まつておりますけれども、別途提案されております入場譲与税法案によりますと、国が徴収いたしましたものを三月分をまとめて翌月に交付するという仕組みになつておりますので、かりに徴収額が減少して参りました場合には、予定されております都道府県の歳入がそれだけ減つて来るということになるわけであります。
  30. 井上良二

    井上委員 私の聞いておりますのは、そういうことではなしに、あなたの前の御説明にございましたように、政府原案においても、従来府県が徴収しておつたような額を集めるということは非常に困難ではないか。いろいろ除外例も設けたりいたしておりますから、実際困難ではないかというあなたのお話でございましたので、そこで、今度さきに申し上げましたように、自由党の大幅な修正、税率の引下げ、そうなつたら一層徴収は困難になりはせぬか。そこで政府原案の場合とこの修正案による場合との開きをあなた方は一体どの程度見込まれておるかということを伺つておるのです。推定でよろしうございますから、その点……。
  31. 奥野誠亮

    ○奥野政府委員 私はただいまここに参りまして引下げの率を教えていただいたわけでございます。従いまして、これに基く計算はいたしておりません。ただ一見いたしましたところ、かなり大幅な引下げのようでございますので、相当な減収を生ずるというふうに想像いたします。
  32. 井上良二

    井上委員 そうしますと、これは政府当局においても、所管いたします大蔵の税務当局も、あるいは地方庁においてもまだ具体的な作業は、どうなるかということをやつていないようでございますから、いずれこれは修正案が出ることは明確でありますので、至急政府の方では作業をやつていただきたい。両方ともやつてもらいたい。そうしてそれが出て来ますまでは、われわれとしてはこの問題に対して議論をしておるわけには参りませんから、これは委員長からひとつお確かめ願いたいのですが、自由党の方で修正案を出すということは、昨日の懇談会で明確にされましたので、本日いつごろここへ提案をされるか、その提案と同時に、政府の方でその案に基いて作業をやつて、その政府の明確な、今私が問うております点が明らかになりますまでは、この審議はしばらく延ばしてもらいたいという動議を私は提出いたします。そうしなければ事実上審議はできませんから、そういうようにおとりはからいを願いたい。いつ出すか、委員長から一ぺん自由党の方に聞いてください。
  33. 千葉三郎

    ○千葉委員長 ただいま自由党側から回答がありまして、目下法制局において調整中だそうであります。調べに参りましたから、後刻御返事をするそうであります。
  34. 福田繁芳

    福田(繁)委員 私は、この際委員長に特にあつせん御配慮方を願いたいことがあるのであります。ただいま井上君の御動議によりまして、入場税に関する問題に対して、後ほど自由党から御回答があることはわれわれ衷心から了承いたします。ただ御承知のように、本日は院の内外、国民の注目の的になつておりまする、また現政府としましても重大な法案でありますところの教育法に関して、わが改進党から提案しました修正案が大体ある程度の妥結点が見出されまして、勢いそれに伴つて、改進党としてはこれから顧問会議及び常任委員会、代議士会、議員総会、この四つの機関を経由しまして、大体午後二時ごろに結論を出して本会議に望むというのが今の状態になつておるのでありますが、この教育法案与党自由党に関しましても重大な関心をお持ちになつておられるはずなのであります。同時にまたこれは社会党の諸君にもいえると思うのであります。そこで問題の修正案を出したわが改進党としましては、一層重大な責任がありますので、本大蔵委員会改進党所属四人の委員は、ことごとく顧問会議を初めとして、議員総会に四人そろつて列席しなければいけないところのはめになつておるのであります。それで今井上君のお出しになられました問題に対しまして、後ほど自由党から御回答があるのでありますし、それにそう時間を食わないと思いますから、大体私たち改進党の四つの機関の会議の終えるまで、それは午後二時ごろと思います。それまででき得ますれば本委員会は御休憩さしてもらつて政府並びに与党に重大関心のあるところのこの教育法に関して、修正案を出したところのわが改進党として、四人が衆知をしぼつてこれに邁進いたしたい、こう思いますので、この委員会は午後二時ごろまで御休憩くださるように、特に自由党諸君に委員長から私の意のあるところを懇請願つて、そうして御了承得られるように格別の御配慮を願いたいと思うのであります。
  35. 千葉三郎

    ○千葉委員長 ちよつと速記をとめて。   〔速記中止〕
  36. 千葉三郎

    ○千葉委員長 速記を始めて。ただいまの福田君の御発言はあつせんの申出と解釈いたします。よろしゆうございますか。従つて会議はこのまま継続することにいたしまして、改進党の四名は随時欠席するかもしれません。この点を御了承願いたいと思います。なお申入れの中には、午後二時までは動議その他の採決は一切しないということになつているそうでございます。   〔委員長退席、淺香委員長代理着席〕
  37. 井上良二

    井上委員 この際私は政府に確かめておきたいのですが、ただいまお話通り自由党の方では正式に修正案を出すことは明確にされました。そこでこの修正案に基く税率の引下げによりまして、予算的に政府原案と一体どれだけ税収がかわつて来るか来ないのか、それからまたそれが地方財政計画にどう影響して来るかというこの作業をいたしてもらいまして、それの結論がどのくらいの時間がかかつたらできるか、それをこの際ひとつ承つておきたい。私が今問うております重大な点に対しての政府答弁がいただけませんと、審議の上に非常に重大な支障を来しますから、政府のおよその予定を伺つておきたいと思うのです。両方ともお願いしたいのですが、どれだけの時間がかかればできますか、それをひとつお聞かせ願いたい。
  38. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 先ほど申し上げましたように、自由党の方からわれわれの方にまだ正式にお話がございませんので、どういう内容かということについて——結局問題は、たとえば税率の区分などがかわつて参りますと、それをどういうふうに推定して行くかという点に問題があるわけでございます。それから自由党の方の修正が税収の減を見込んでいるのかいないのか、いろいろな問題があるわけでございまして、われわれの方としましては、まだ内容を拝見しておりませんので、何時間あればできるといつたようなことはちよつと明確にいたしかねますが、われわれの方といたしましても、御承知のように四月一日に施行していただきたい法案がたくさんあるのでございまして、できるだけ早い時間に、少くとも相当確実な数字をつくり上げることは、十分努力して参るつもりでおりますので、そう御心配になるような長い時間はかからないで済むのじやないか、かように考えております。
  39. 奥野誠亮

    ○奥野政府委員 税率が引下げられた場合に、どれだけ減収になるかという問題、私は問題はそれだけにとどまらないと考えております。といいますのは、この問題につきましては、府県側にも非常な賛否両論があるわけでございます。賛成している側は、これは税源は地方のものであつて、国にかわつて徴収してもらうのだというふうに考えているわけでありますので、おそらく税率引下げが行われます場合には、これらにこたえる措置もあわせて行われて行くのだろうと考えております。単にことし幾ら減収になつて、その措置をどうすればよろしいか、こういう問題にとどまらないことをよくお考えをいただきたいと思います。
  40. 井上良二

    井上委員 これは委員長にちよつと伺うのですが、幸い自由党の筆頭で……。ただいまあなたもお聞きの通り与党として一応政府原案を今日まで支持して、これの通過に努力をされて、いろいろ党内事情その他輿論によつて修正をお出しになるということで、連日これについての御努力をされて修正案をもとめられたらしい。その修正案が、ただいま承ると、法制局へ行つておる。法制局へまわして行くくらいならば、何ゆえに修正案政府当局に示して、政府の御意向を承らぬで修正案をおつくりになつたのですか、それを伺いたいのです。
  41. 淺香忠雄

    ○淺香委員長代理 井上良二君にお答えいたします。これは党内事情でありますので、この問題はただいま私からお答えの限りでありません。御了承願います。
  42. 井上良二

    井上委員 これは党内問題というわけには参りません。少くとも重要な国の予算上に関する修正を出した以上は、当然その修正に対する責任をお持ちにならなければなりません。ましてわれわれ野党側から出したという場合ならば、政府の意図をそんなにそんたくしなくても、国会国会として独自の立場でやつていいのですが、少くとも政府与党として、最初大蔵大臣原案については自由党ともよく相談をして出したということであり、しかもその原案を今日までずつと通すことに努力して来た与党が、今日になつて修正案を出し、しかもその修正案修正部分については、当然政府に、原案をこうかえるがどうだということについて打合せをすべきである。それを、打合せをせずに修正案をかつてにつくつてしまうというやり方は、これはわれわれ今審議する上において非常に大きな支障に当面しておるわけです。政府は知らぬ、初耳だと言う。さようなことが、一体政党政治の上に立つて行われておるこの国会において許されるかどうかという問題がございますから、これは党内事情で済みません。国会議題として議事に入つておりますから、当然これを審議する上におけるあなた方の取扱い上の見解を明確にされませんと、審議がやはり停頓しますから、これはまことに困る。もう一度お答えを願いたい。
  43. 淺香忠雄

    ○淺香委員長代理 ただいま党内においていろいろ調整あるいは連絡等が行われておりますので、先ほど申しましたように、御質問の要旨についてはここでお答えできませんが、ひとつ御了承願います。
  44. 井上良二

    井上委員 そうしますと、これは正式に改正案が出た場合にいろいろ伺うことにいたしますが、その場合においても、与党としましては、政府相談をせずにかつてに出した、政府がどう考えておろうと、おれはおれの方だということでお述べになりますか。
  45. 淺香忠雄

    ○淺香委員長代理 修正案が出ました場合には、あるいは御要望の線に沿うてお答えができるかもわかりませんが、ただいまのところは、ちよつとお答えは明確にできかねますので、ひとつあわせて御了承願います。
  46. 井上良二

    井上委員 それでは、さいぜんの法人税に続く質問を展開いたしますが、どうも渡辺主税局長の御見解を聞いておるというと、これら法人税の全体の引下げの問題を何ゆえにやらなかつたかという点については、はなはだ不明確であります。さきにも申し上げました通り、大法人に対しては昨年度の減税と本年の五十億に近い減税を合すというと、三五%にも実際減税になるのです。一方こういう恩典をこうむらない中小法人は四二%で、重税が課せられておるのです。だからそういう点からわれわれは、あまりにも大資本を守るところの傾斜的減税じやないかということを言わざるを得ない。ですから、そういうことをやるだけの余裕があれば、何ゆえに税制調査会が答申しておる答申を尊重しないか、せめて四〇%にでも下げてやるのが当然じやないか、こういうことです。それはあなたの方でつくつた資料は、多少数字が違うかもわからないが、そういう都合のいい数字だけをはじき出して来て、答弁技術でうまくごまかそうといつたつて、それはいけません。現実に四二%という重税が中小法人にはかけられておりますから、これらの会社は、この今済みました増資分の配当金の損金への繰入れとか、価格変動準備金の積立て限度の拡大とか、あるいは設備輸出に対する減税とかいうことは、恩典をほとんど受けません。それだけの余裕がないのです。逆にこれらの中小法人は、政府の金融引締めによつてどんどん追い込められておることは御存じの通りであります。だからあなた方は資本の蓄積、近代化、合理化、輸出の振興ということを口をすつぱくして言うておるけれども、税制の面では、何らその面に対して積極的な手が打たれていない。中小法人が近代化し、合理化して行くための一番大きな負担は、何といつても公租公課というものが大きなものになる、金利がその次に大きなものになる、その次が人件費ということになつている。その人件費の内容を解剖しても、その人件費というものは、ほとんど税で大きな負担を背負わされて来ておる。そういうことが事業の経営の上に大きな負担になつているということを、あなたよく御存じでありましよう。そういう面において、大法人にはいろいろな恩典を与えて、租税特別措置というところへ逃げ込んでしまつて、かんじんの法人税の改正においては、せつかくすなおに二%ぐらいは減税してやれと言うているのをほつたらかして、大資本に傾斜的にどんどん減税率でカバーして行くというやり方をしておる。そうお思いになりませんか。
  47. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 先ほどもお答えいたしましたが、考え方は二色あると思います。こういう主として経済政策的な考え方に基きます減税、これをやめて税率を一般的に下げろ、これは一つ考え方だと思います。井上さんが御主張になつたような考え方であります。それから片方には、国が一つの大きな政策的な方法を考えて行く。従つてそれを推進するために幾つかの税制上の措置を講ずべきじやないか、こういう考え方があるわけであります。そのほかに、今度幾つかあげられております、たとえば価格変動準備金とか、こういう考え方は、これもまあ経済政策的な意図がある程度つておりますが、これは税自体の面から言いましても、こういう考え方をとるということは、これは私は入り得る余地のものだと思つております。その場合におきまして、税制調査会におきましても二つ考え方が並行して出ているわけでありまして、一面においては税率を下げろ、一面においては、価格変動準備金とか、あるいは同族会社に対します積立金の課税とか、こういう点を直したらいいじやないか、こういつたような考え方、これは税制調査会でも二つ考え方が併存しているわけであります。政府として取上げましたのは、そうした税率の面、これは実は大臣も申しておるように、できるだけ考えたい方向なんですが、この方はなかなか財源関係もございまして、思うように十分行かなかつた。しかし価格変動準備金の問題でありますとか、あるいは同族会社の積立金課税の問題でありますとか、こういう点については、税制調査会の御意見は確かに一つの御意見でございます。従いましてできるだけ尊重して行きたい。そういう面で全体の政策ができておりますが、私は井上委員のおつしやるように、これが大きな会社のためにだけできている措置だというふうには実は思つておりません。同族会社の積立金課税のような問題になりますと、これはむしろ小さな法人の方が中心の問題でございますし、それから価格変動準備金の問題は、現行制度でございますと、小さな会社はちよつと使いにくい面もございますが、今度のような制度になりますと、むしろ小さな会社がやはり相当これを利用できる余地も出て来るわけでございます。資本充実の問題につきましては、これは多少意味が違いますが、しかし現在オーバー・ローンの議論がされ、何とかして自己資本充実して行かなければならぬ、こういう議論がされている際でございますので、これを促進する意味において、臨時的に特殊な措置考える。この制度にしましても、これは現実の問題としてどうかということになりますと、大きな会社でもこれが利用できないところもあり、小さな会社でも利用できるところもあり、その間いろいろ事情はあろうと思いますが、われわれとしましては、大きな会社だけ、あるいは小さな会社だけという考え方でなしに、とにかく資本充実ということは現在の日本経済においては重要である、この意味におきまして、この制度を採用すべきじやないか、こう御提案申し上げているわけでございまして、非常に大きな会社、小さな会社と区別されておりますが、結果的に見ましても、必ずしもそういう差別があることになつているとも思いませんし、考え方としましては、もちろんそこに差別的な扱いをしようというつもりは毛頭ないわけでありまして、ただこういう経済政策的な面を織り込みながら税の軽減をやると同時に、それによつてそうした経済政策的な面を促進するのがいいか、あるいは税率一般を引下げるのがいいか、これは二つ考え方として私はあり得ると思いますが、政府のとるところは、やはり経済政策的な当面必要な面に重点を置くべきじやないか、こういう方針をとつたわけでございまして、そうなりますと、いささか意見の違いということで申し上げる以外には、ないのではないかというふうに思つております。
  48. 井上良二

    井上委員 さらに私交際費の制限に関連して二、三質問をいたしたいのですけれども、実は内閣委員会の方から、本委員会で決定いたしました申入れについて呼びに来ておりますので、参らなければなりませんから、後ほどこれは質問することにいたしまして、私の質問は一時保留いたしておきますから、御了承いただきたいと思います。
  49. 淺香忠雄

    ○淺香委員長代理 小川豊明君。
  50. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 主税局長にお伺いします。先ほど井上委員大蔵大臣との入場税についての質疑の中で、私は実は今日初めて聞いたのですが、与党によつて入場税修正が行われるという話を聞いている。それは税額はどうかということに対して、大蔵大臣は、税額にかおりがなければ大体そういうことはしかたがないと思う、いいと思う、こういうように答弁なつたと聞いております。私ども考えるのには、税額の問題ではないと思うので、この課税方式が正しいか正しくないかということが問題じやないか、こう思うのです。そこで政府としては原案を出されたが、それはもちろんこれが十分正しいのだと思つて出されたと思う。ところがそれが与党によつて修正されても、税額にかわりがなければそれでもいいということに対して、あなたの方では一体どういうような態度をとられるつもりですか。
  51. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 われわれの方といたしましては、最善の案だと思つて原案提出してございます。ただしかし一応国会で御審議を願つているのでございますから、国会の御審議の結果、ここを修正した方がいいじやないかという御意見があれば、これは国会の御審議の結果にまつ以外にないというふうに思つております。大蔵大臣が申し上げました点は、おそらくこういう意味じやないかと思います。予算との連繋ということに重点を置いた御答弁を申し上げたのじやないかと思つております。従いまして、たとえば予算の補正といいますか、修正といいますか、それとの連繋においては、税額にかわりがなければ、予算をどうこう動かすという問題はない、こういう意味で御答弁申し上げたのじやないかと思つております。
  52. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 あなたの方では原案を最も正しいと思つて出された。これは当然ですが、最も正しいと思つて出されたのが与党によつて修正が行われた場合には、税額に関係がなければ、これは国会の決定、だからしかたがない、こういう答弁に私は聞いているのです。そうすると、あなたの方の出された最も正しいというものは、ある程度正しくない形できめられて行くということにはなりますね。
  53. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 それはある意味において意見の相違ということになるのではないかと思います。と申しますのは、政府としてはこれが一番正しいというか、これが適正な案だというふうに思いましたからこそ御提案申し上げておるのでございますが、しかし国会の御審議の過程あるいは結果として、国会としては政府考えた案よりも、こう修正する方がより正しい案だというふうな意思決定があればこそ、そこで国会の御修正があるのではないか、こういうふうに思います。
  54. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 そうすると、あなたの方ではこれが最も正しいと思つておるが、国会の意思決定があつたのだからそれに従うほかない、こういうことで、意見の相違というのは、国会の意見と政府の意見の相違と解釈してよろしゆうございますか。
  55. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 政府の出しました原案国会修正され、それが成立すれば、政府原案と、国会の意思であるというべきだと思いますが、最後に成立した法律とが違う。これは言葉の使い方でございますが、少くとも政府が当初考えていたところと国会が最終的にお考えなつたところとは違う、これはそういうふうに申し上げていいと思います。
  56. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 そこで私は、今度は税の権威、あるいは信頼性、こういうものについてお尋ね申し上げたいと思うのですが、私は実はきのうから物品税法案が何がしかの修正がされるとか、撤回されるとかお聞きしておる。これの顔を立てる——顔を立てるというのは失礼だが、非常に熱心に審議しておるわけですから、これをそうしよう、そうしようと目見当のようなものを絶えず聞いておる。こういうことでは、税の権威と信頼性というものが非常に乏しくなるのではないかということを実は心配しておる。これは私ども日の浅い人間にとつてはまことに消化不十分なことになるのかもしれませんが、少くとも国民全体は、非常に苦しい中から税金を払つておるわけであります。この苦しい中から払つておる税金だから、この税金に対する権威と信頼性というものを持ち得なかつたら、これはたいへんなことになるのではないか、こう思つておる。そういう点から見ましたときに、たとえば繊維課税の問題、あるいは入場税の問題、遊興飲食税の問題、物品税の問題、こういうものについての今までの審議をずつと私ども見て来ますと、たとえば繊維税課税等の問題では、原毛に課税されるとか、あるいは小売にそれが移るとか、今度は卸に移るとかいうように、絶えずかわつて行つておる。こういうことでは、一体確信が十分にあつてお出しなさつたのか、あなたの方では、ここで課税するのが最も正しいのだという確信のもとに出されなければならぬ。また課税を受ける方もそれでこそ払えるのだ。それが何か力のある運動等によつて、原毛に行つたり、小売に行つたり、あるいは卸にまわつたりするようなことがあつたとしたら、これは力の弱いもの、運動の足りないものが税金を払わなければならぬ、こういう結果になつてしまうのではないか。それから私は遊興飲食税も入場税と一緒に当然この国会提案される、こういうふうに承知しておつた。ところがこれは提案されなくなつた。これもいろいろ事情はあるでしようけれども、これは当然提案されるものと常識としてみな考えておつた。ところが、提案されなかつたことがいいか悪いかということは別として、これが提案を見合されている。物品税でもそういう点が多々ある。私は不純にものを考えたくはないのですけれども、こういうふうにせつかくあなたの方で十分に研究や調査がなされて提案されたものが——議会の決定は重んじなければならないというが、これは議会の決定ではないのですね。この繊維課税等はまだ決定されていない。ところがその過程において三転も四転もしてしまつておる。入場税でも与党によつてこれが修正をされようとしておるということを、私はきよう初めて聞いた。そういうふうに調査が不十分というのか、研究が足りないというのか、あるいはあなたの方に自信がないというのか、こういうことでは税の権威なり信頼性なりが非常に失われて行くのじやないか。これはゆゆしいことじやないか、こういうふうに思う。議会における答弁の技術とかなんとか、そういうことでなく、私どもまだほんとうにしろうとですから、この点はぜひお互いに心配する立場ですから、聞かしていただきたい、御答弁を願いたい。
  57. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 当初一応政府原案といわれましたものが、国会提案まれる過程におきましてかわりましたり、あるいは国会提案された後におきましての修正といつたような問題、これが絶対的な案、これがほんとうにいいとわれわれ自身は一応考えておりましても、それがどこまでも絶対的なものだというふうなことも言いかねますので、その過程において幾つかかわるということは、私はあり得ることだと思いますが、結局問題は、それが小川委員の御心配になつておりますように、正しい理論といいますか、現在の日本のあり方から見て、これが一番いいという姿に問題が順次修正されて行くならば、私は政府原案国会審議において修正されることはあたりまえのことであり、それによつて税に対する信頼が失われるということはあり得ないと思います。ただもし小川委員の御心配になつておるように、それが違つた理由によつて、そこにそういうものが出て来るということにつきましては、御心配のような点が出て来るわけだと思いますが、われわれは、国会が最高の機関として、御責任をもつてその点は最もいい姿における法案をつくりあげるべく御審議つておると信じております。従いまして、結局そういうことによつて修正であれば、修正するということ自身が決して税そのものにどうこうという問題はないと思います。ただ要するに、もし不純のものといつたような疑惑を残すような点があるとすれば、そこに問題があるわけでありまして、これは国会の御審議の過程においては、そういう点において、そういう意味でなしにほんとうに正しい税制、あるべき税制ということを御念頭に置かれて御審議になつているのじやないか、そうであることをわれわれは信じております。
  58. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 今御答弁を聞いておると、国会がまじめに、あるべき姿で審議することを望むというて、私どもの方にあなたは大分要望なさつておるようですけれども、たとえば繊維等の問題は、まだ国会にかかつて修正されたのでも何でもないのに、そういうことが原毛なり小売に行つたり卸に行つたりするというふうに、その過程で絶えずかわつて来ております。それは、あなたの首の振り方で、日本の税金がここにかかつたり、そこに軽くなつたり、そこに重くなつたりしておるということは事実なんです。国会審議する前にあなたの方で提案する、そうすると、あなたの方が提案されて少くとも政府として——おるいは政党側で出ておられる大臣とか、あるいは政務次官等にはまた政党的な関係が出て来るからやむを得ないと思いますが、少くともあなたの方では、よほどがつちりした考え方でなければならないと思つておる。ところが、また例をあげるならば、今言う繊維課税のように二転も三転もしてしまつたというならば、一体国民がそれを信じられますか。これが何でかわつたかということが了解がつきますか。あなたが最も正しいと思つて出されたものが途中において二転も三転もしておる。私どもは金がどうだとか、金品がどうだとかいうことばかりが不純だと思つておるのじやなくて、力とか、そういうような形で、ほんとうにあなたが良心に照してこうでなければならないと思う課税がゆがめられて、他へ転嫁されて来ておることは、私はやはり不純だと思います。そういう形があつてはならないと絶えず思つているにもかかわらず、私はここに繊維課税の問題でも非常に不純なものを考えざるを得ない。入場税等においてもこれは修正されている。遊興飲食税は提案を見合せてしまつた。われわれ野党は政府を攻撃するばかりが能じやないが、こういう税金というものは、国民が非常に苦しい中から払つておる、たいへんで苦しいけれども、これを払わなければならぬのだ、払うという考え方を国民全体が持ち得るようにしなければならぬにもかかわらず、こういうことではそれがきわめて稀薄になつておる、私はこの点を心配してお尋ねしている。  それからこの入場税ですが、この中に一種、二種、三種とがあつて、ゴルフとか、麻雀とか、パチンコとか、こういうものは地方税に移つているわけです。こういうものは映画、演劇等より非常に課税しづらいわけです。査定が困難だと思うのです。こういう査定の困難なものを地方税に置いて、映画とか演劇とか、そういう査定の比較的たやすいものを国税に移管してしまつた。ゴルフとか、こういうものだけを地方税に残しておくということは問題が残るのじやないか、これに対してどういうお考えですか。
  59. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 最初の繊維消費税が原糸あるいは小売、卸売といろいろ案がかわつて行つたという点についてでございますが、これは私どもは当初原糸課税ということを考えておりました。しかし本来の性格からいいますと、消費税である限りにおきましては、これは理論としても小川さんよく御存じでありますが、消費の段階に一番近いところで課税するということが、消費税としては一番いいあり方だということにされているわけでございます。といつて消費のあまり近いところでやりますと、一番消費に近いところが小売でございますが、小売業者の数が非常に多いといつたことから、課税技術の面からいつても、徴税費の面からいつてもそこに困難がある。そこで原糸で課税すべきか、小売で課税すべきか、卸売で課税すべきか、これはそれぞれ一長一短があるわけでございます。その一長一短を考えまして、なおその上で原糸で課税すべきか、小売で課税すべきか、卸売で課税すべきかという、いろいろな判断がそこに出て来るわけであります。その意味において原糸課税、あるいは小売課税、卸売課税といろいろ検討してみたのでございますが、ただいま御提案申し上げている姿が、一応負担の公平をできるだけ期するということとか、あるいは徴税費をできるだけ少くして済ませるとか、あれやこれや考えれば、一番いいんじやないかということになつたわけでございます。もともとはつきり原糸課税がこれ一つしかないといつたような案のものではございませんので、そこに当初政府がいろいろ考えました案についても議論の余地もございますし、そこで与党の方々といろいろ御相談申し上げている過程において、そうした姿ができたというわけでございます。われわれとしては現在の姿のものが、原糸課税に比べて非常に妙な曲つた姿のものであるというふうに言い切るべきものではないと思つております。  それから入場税について、いわゆる第三種の設備利用を抜かしたのはどういうわけだ、これは確かに第三種の設備利用の関係は、非常に課税上むずかしい問題があるわけであります。それはわれわれもその通りだと思います。それをさらに探究して参りますと、設備利用の関係で一番大きいものは、最近においては、パチンコ屋などが一番その税額が大きいわけであります。これは商品を出しているといいますか、あとで玉を景品と引きかえておるといつたような関係もございまして、単純に入場料の何割といつたような課税方法をとるのが適当であるかどうかという点には、多分に疑問があると思つておりまして、むしろどちらかといえば、パチンコの機械一台について幾らといつたような課税方法をとるのがいいのではないか。といいましても、いなかでやつております場合と、たとえば東京の銀座のまん中でやつておる場合と同じ税金というのも、これを妙な話でございます。たとえば東京でいえば、幾つかの盛り場とか場末とか区域をわけて、そうして一台持つておれば幾らという姿で課税をするのが一番簡明でもあると同時に、むしろ玉代全体の幾らといつたような課税方法をとるよりも現実的であり、実際上適正な課税になるのじやないか。しかしそういうような課税方法は、どうも国税という姿でとるのは非常に複雑になるわけでございます。といいますのは、国税でやれば日本全国について一応考えて行かなければならぬわけであります。むしろそれを地域的に府県にお願いして、東京都ならこうする、あるいは静岡県ならこうするといつたような考え方で課税をやつていただく方が現実的でもあり、実情にも合うのじやないか。こういうような考え方をいたしました結果として、その他にも第三種はございますが、割合にその他の税額は少いものでございますから、設備利用一般というものを一応府県の方に残しまして、今の地方税の改正案でございますと、これは法定外特別税のような姿になると思いますが、われわれの方としましては自治庁にもお話して、府県がこれを法定外特別税でやつていただくように、法定外特別税の場合には、その御協議にいつでも応ずる用意がわれわれの方にあるということを実は申し上げておるわけであります。   〔発言する者あり〕
  60. 淺香忠雄

    ○淺香委員長代理 御静粛に願います。
  61. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 なぜ第三種を抜かしたかといいますと、むしろ府県税として置いておいた方が適実な課税ができる、国税として持つて行きますと、それがちよつとむずかしいのではないか、こういう考え方がありましたので、自治庁とも相談しまして、今のような姿の案を御提案申し上げておる次第であります。
  62. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 これは原糸にやつた方がいい、小売にやつた方がいい、卸にやつた方がいい、そういうことはあなたは専門家で、私どもがとやかく言うのは釈迦に説法でおかしいが、ただ私ども考えるのは、ここに提案される過程で二転三転しておるということは、あなたの方の研究や調査が不十分であつたではないかと言われてもしかたがないじやないか、そういうことなんです。どつちが正しいかということはあなたの方が専門家だから、あなたは十分お考えなつた。ただ最も正しいものに行くべきであるにもかかわらず、その過程で二転三転しているということは、あなたの方の調査や研究がきわめて不十分であつたというそしりを免れないのではないか、そういうことは税に対する信頼感を失わせる結果になりはせぬか、こういうことをお聞きしておる。
  63. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 今の御質問はよくわかりました。確かに最後にこれが一番いい案だというものを出す過程において、よその方々の御意見を聞いたりなとして幾つかの案が出たということにつきましては、われわれの調査が不十分じやなかつたかとか、それが税に少くともいろいろ疑いを持たせるような悪い影響を与えやせぬか、これはまことにおつしやる通りでございまして、われわれとしましては、今度の苦い経験を経まして、今後におきましては、こういうことのないように十分戒心して参りたい、過去のことで非常にまずかつたということにつきましては、私もそれを率直に認めまして、遺憾の意を表する以外には、ございません。
  64. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 きわめて謙虚な御答弁で、今度提案されるときは——輿論を尊重することは大切です。輿論を十分尊重されるという態度はいいと思いますけれども、輿論の中にはまたいろいろの輿論も出て来ると思う。あなたは国の税金を扱う中心的な大黒柱なんです。従つて、あなたの信念が途中でくるくるまわるようでは、国民はあなたを信頼できなくなる。あなたを信頼できないと、税金を信頼できなくなる、この点について今後十分御考慮をお願いしたいと思うわけであります。  次に、先般からお尋ねしている砂糖の消費税の問題について、ここで二、三点お尋ねしたいと思います。御承知のように砂糖は、戦前八十万トンぐらい有効需要があつた。それを今百十万トンぐらい入れているわけです。これは業務用が六〇%で、家庭用が四〇%という比率で輸入されている。ところが、今日食糧不足その他から耐乏生活を唱え、食生活改善運動が政府の手によつて行われているというならば、これは家庭用をもつと増すことによつて食生活改善運動に寄与するんじやないか、こう思うが、あなたの方が直接の関係じやないから、この点はおきまして、ここで私がお尋ねしたいと思うのは、製糖会社——十九の製糖会社が非常に厖大な利益を上げているということも、前々から申し上げているから省略して、この非常に厖大な施設は、今二百万トンぐらいの処理能力があると私ども考えている。ところが外貨事情その他からいつて日本が輸入するのは百万トン程度だということになると、過剰能力五〇毎ということは、砂糖自体のコストを非常に高くしてしまう結果になる。こういう厖大な施設を今まで放任して、それを助長して来たということは、きわめて遺憾である。あえてそれについてのお尋ねをしたいと思う。  それから、この厖大な利益を上げている製糖会社は、なぜこういうふうに施設が増大できたか、これは割当の形からいつて、施設をふやせばどんどん割当を受けられるから、夢中になつて施設を増大して行つた、こういうことです。その施設に対する資金はどこから出ているか研究してみると、これはいろいろ銀行等からも出ておりますが、製糖会社に対しては、大蔵省は消費税の三箇月の延納を認めている。そうすると、百万トンの砂糖を毎月平均八万トンずつ出荷する、これは出荷のときに消費税がかかるわけですが、現行の二十三円五十銭の消費税で、八万トンに対して九億三千九百万という金が、製糖会社は無利子、無担保で使えることになる。しかも、今度砂糖消費税をもつと値上げして、二十八円に引上げるとすると、十二億一千五百万という厖大な金をこの十九の製糖会社は無利子無担保で使えることになつて来る。厖大な利益を上げている製糖会社に、こういうふうに延納を認めて、十二億以上の金を無利子無担保で使わせなければならない理由がどこにあるのか、あなたの方はそれでも正しいと思つておるのかどうか、この点が一つ。この点については、あなたは製糖会社の不況な時代があつたとかなんとか言われるでしよう、しかし今日製糖会社は非常に厖大な利益を上げつつある。これに対して三月の延納を——延納自体は認めるとしても、三月でなければならないという理由は私はないと思う。一月だつてよいと思う。こういう点についてあなたはどういうふうにお考えになつておられるか。  そのほかにもう一点あるのですが、非常にいやな問題ですから、今の御答弁を伺つてからにいたします。
  65. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 現在輸入能力から見まして設備が相当余つている、これはわれわれもそう思います。従つて稼働がたとえば五〇%とか、そういうことのゆえにコストの問題にも響くのではないか、これも御意見の通りで、われわれもそういうことになつていると思いますが、設備の関係につきましては、政府を代表して出ているということになりますと、私からそんなことを申し上げるのはちよつとぐあいが悪いのですが、農林省などで割当をやつている、それが設備能力を一応中心にやつておりましたために、いわば過剰設備ができた、従つて、農林省としても最近においては、そういうことを相当反省して、割当の基準などもかえた。これはやはり小川委員の御質問だつたと思いますが、食糧庁から御答弁申し上げている通りでございまして、現在におきましては法律規定で、たとえば製糖工場の設備を免許するとか増設を免許するとかいうことになつておりませんので、結局行政指導的にこれをどう考えるか、あるいは現在の割当のような関係において好ましくない方向に向うような割当が行われているかどうかというような問題にかかるわけですが、この点については、政府といたしましても十分検討いたしているわけでございまして、同時に、過去においてそうした好ましくない姿になつたことについては、割当等についても少くとも今後はそれが続かないように努力しているわけでございます。実はわれわれの方と関係が多少違いますので、それ以上のことは所管の大臣なり他の政府委員からよく御説明申し上げた方がよいのじやないかと思います。  第二に御質問のありました納期の関係でございますが、これはお話のように、現在の法律では、砂糖は出荷されますとそのときに納税義務が発生して、出荷の時期から三箇月以内徴収を猶予することができる、こういうのが法律規定になつておりますので、現在はお説のように、三箇月の徴収猶予をやつおります。われわれの方でもこの問題はいろいろ検討してみておりますが、大体サイトが十五日から一月くらいのが多いようでございます。従いまして、そこで二箇月程度金が使えるのじやないか、これはその通りになるわけでございますが、現在の三箇月の制度をつくりましたについても、これはお前そう言うだろうというふうにあらかじめおつしやいましたが、一応当時におきましては、あの程度の延納がぜひ必要であつたわけであります。結局、買手が強くなりますと資金の回収は遅れますし、売手が強くなりますと資金の回収は早くなる、その意味におきまして、われわれの方といたしましては、もつと納期を延ばすとか、もつと納期を縮めたらいいじやないか、いろいろな意見があるわけでございますが、事業をやる方の関係からいたしましても、それがその都度、その都度で延びてみたり縮んでみたり——これはもちろん法律の許される限度の範囲でございますが——というのもいかがだろうか。やはりある程度の安定性が必要ではなかろうか、こういうことを考えまして、その意味からしまして、現状におきましては砂糖会社が確かに相当有利な資金の状態にありますが、そのまま三箇月になつております。ただしかしこの点につきましては、現在大蔵省でも実は問題として取上げまして、とにかく先行き当分の間、砂糖が相当強含みである限りにおきましては、三箇月というものをそのまま何も認めて行かなくてもいいのじやないだろうか。こういう意見も実は相当あるわけでございまして、ただあまりそのときそのときの風向きで動かすのもどうかと思いますし、事業をやつている人の採算のべースもございましようから、その辺も一応十分調べました上でこの問題は処理して行きたい。三箇月を必ずしもわれわれ実行問題として、将来の問題としましてまでこれを固執する意図は実は持つておりません。もう少しこの点は研究さしていただきたい、かように思つております。それからなおもう一つつけ加えて申しますが、先ほど無担保、無利子とおつしやいましたが、これはおそらく小川委員の誤解だろうと思つております。担保はとつております。ただ要するに実質的に無利子になる、これはお説の通りでございます。
  66. 小川豊明

    ○小川(豊)委員 これは今あなたが答弁してくだすつたんですが、砂糖の業界が非常に困難な時代があつたことは認めるのです。困難な時代があつたから三月の延納を認めた。今日のように、近年非常に厖大な砂糖資本がますます増大して行くという中で、何も三月もああいう大資本に恩典を与えておく必要はないじやないか。世の中ではもつと非常に困つておる人があるのだから、そういう点をもつと一月なら一月くらいに、あるいは一月半なら一月半に引下げてもいいのじやないか。それだけ国庫が違つて来るのだからそうすべきじやないか、こういうふうに私は考える。ぜひこれは御研究願いたい。  そこで砂糖会社——これはあなたの直接関係じやない、むしろ食管の方にお尋ねすべきことなんだが、この十九の製糖会社の中で、二、三年前までは一砂糖商にしかすぎなかつた製糖会社が、今では日本一の製糖会社になろうとしているわけであります。そうして戦前から非常に困難の中で砂糖の仕事を開拓して来た業者を非常に驚かしているわけだが、この製糖会社の重役陣を見ると、中央の国税庁から一人、日本銀行から一人、地方銀行から一人、こういうふうに重役が送られている。そうしてこの会社は八百万ドルの外貨の貸付を受けて設備を増大している事実がある。こういうことがあるから、製糖資本と政党なり官僚なりが世間からうわさをされることになる、こういうように外貨の貸付は八百万ドルまで受けたというようなこと、しかもこれは国税庁から送り込んだとは思いませんが、国税庁から一人、日銀から一人、地方銀行から一人、こういうふうにやつておいたら、世間は、それがやめて行つたんだから当然だということでは決して黙過せないと思う。しかもこの製糖会社が、一砂糖商にしかすぎなかつたものが、日本一の製糖会社になろうとしている。こういう状態を、あなたの方は、法律はどうであろうと、少くとも指導なり何なりでこういうものはもつと是正すべきじやないか、こう思う。この点はあなたの答弁を求めるより、これはむしろ食糧庁の関係から私はお伺いした方がいいと思うが、税金を預かつておられるあなたとして念頭に置いていただきたい。時間も大分たちましたので、自分だけでしやべつては恐縮ですから、一応ここらで……。
  67. 春日一幸

    ○春日委員 ただいまの小川委員の発言に関連をいたしまして、某製糖会社に対して日銀から一名、国税庁から一名、こういうような諸君がそこの重役に就任をしておられるということを述べられたのでありますが、このことは折しも砂糖価格の形成並びにこの砂糖会社の高利潤がいろいろと政治問題になつております立場上、まことに重大であります。公務員がそういう営利会社の重役をする場合は、当然公務員の営利企業に対する就職制限に関する規則等がありますので、はたしてその規則の規定通り就任手続が行われておるかどうか、この問題は重大でありますので、すみやかにこの問題をつまびらかにするために、特別の小委員会等をひとつ設置されて、真相の糾明をされたいという動議を提出いたします。  さらにもう一つ動議を提出いたしますが、時間が十二時半でありまして、お互いに腹がへつてつております。議員が慎重審議するのに、やはり空腹のアブノーマルの状態では慎重審議を欠くと思われますので、この際休憩をされたいという動議を提出いたします。
  68. 淺香忠雄

    ○淺香委員長代理 動議を提出されましたが、まず第一点の動議に対して、小川さんの御質問の中には、今言われましたように、国税庁とか、あるいは日銀というお言葉がありましたが、もちろん速記録を見なければならぬのですけれども、すでにやめられた方、こういうお話があつたかのように思うのであります。従つて今の動議とは内容を異にすると思いますので、この点は春日君いかがでしようか。
  69. 春日一幸

    ○春日委員 公務員の営利企業就職制限に関する規則というのがあるのでありますが、それに規定された通りにその人事が行われたかどうか。これをさかのぼつて調査するということは、当委員会の任務であります。従いまして、そういうことを調査するために小委員会を設置されるとか、あるいは後刻適当なときに理事会において、この真相をつまびらかに糾明することは当然だろうと思いますので、この点おはかり願いたいと思います。
  70. 淺香忠雄

    ○淺香委員長代理 春日君に申し上げますが、あなたがきよう御出席になる前に申合せをいたしまして、きようは御承知通り改進党が総会を開いておりまして、全部退席するので、お互い各党は申合せをして二時まで動議その他一切出さぬという約束をいたしましたので、ひとつ御了承願います。
  71. 春日一幸

    ○春日委員 それでは、ただいまの動議はひとつ委員長に対する強力なる要請ということにいたしますから、委員長職権において適当の措置を講ぜられたいということを強く要請をいたします。  さらにただいま申しました通り、すでに十二時半でありまして、私は腹がぺこぺこでとても審議されません。従いまして、すみやかにひとつ休憩されたいということを要請いたします。
  72. 淺香忠雄

    ○淺香委員長代理 まず第一点は聞き置くということにいたしまして、第二の休憩の要請でありますが……(「異議なし」と呼ぶ者あり)それでは暫時休憩をいたします。二時に再開いたします。    午後零時二十九分休憩      ————◇—————    午後二時三十二分開議
  73. 千葉三郎

    ○千葉委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。
  74. 福田繁芳

    福田(繁)委員 私はこの際委員長並びに自由党の同僚諸君に心から感謝と一応のごあいさつを申し上げておきたいと思います。  先ほど本委員会としては非常に重要な法案審議いたしておる最中でございましたが、例の教育法の問題に関して、われわれ改進党四人の者が退場さしてもらうことに対して、寛大なる御理解と御便宜をおはかりくださいまして、非常に心からありがたく存じております。もう諸君は結果を御承知のように、わが党は無記名投票の結果、五、六票の違いをもちまして、現内閣が非常に期待しておるところの結果が生れたわけなのであります。言いかえれば、改進党の四人の大蔵委員のわれわれが、この委員会の諸君の御理解のもとに退場して議員総会に臨んだ結果が、かようなことになつたわけであります。さようでありますから、大蔵委員会自由党の諸君も、なるほど法案審議をお急ぎになることはよくわかりますけれども、この時局多端の折からでもありますし、自由党内閣は、大蔵省はもちろん、各省全般にわたつておられますので、政局を安定させ、言いかえればこの危機を乗り切るために、大局的な見地に立つて委員会のスムーズな運営をはかられるよう御希望して、先ほどの御便宜に対して諸君に心から厚くお礼を申し上げておきます。
  75. 内藤友明

    内藤委員 先ほど大臣が来られましたので、少しお尋ねしたいと思つておりましたけれども大臣は御病気で非常にお気の毒なので差控えていたのですが、主税局長から以下お尋ねすることにお答えいただきたいと思います。  先ほど小笠原さんにお尋ねいたしましたのは、納税のことにつきまして、税務当局が便宜的裁量をしたり、独善的認定をするということのないようにしなければならぬのだということについて、大臣所見を伺つたのでありますが、それはその通りだということの御返事を得たのであります。大体大蔵当局は、できるだけそういうことのないような態度で臨んでおられると思います。そこで私は、具体的な問題について——これは決して税務当局の個人の考えで独善的な認定なり、あるいは便宜的な裁量をしておるというのではございません。ただその制度そのものにそういうふうなことがある。一、二の例を申し上げまして、それに対して主税局長お答えを得たいと思います。それは実はほかでもございませんが、昨年の税制改正において有価証券取引税というものを新しく設けました。そして従来所得税の課税対象でありました有価証券の譲渡による所得は、原則として非課税所得としてこれを除外したのであります。これは所得税法第六条第一項第五号には、同法「第九条第一項第八号に規定する所得のうち、有価証券」云々の「譲渡に因るもの」と定めたのでありまして、有価証券の譲渡による所得であつても、第九条第一項第八号の際外しておりまする、すなわち営利を目的とする継続的行為によつて生じたものには従前通り所得税を課することとなつております。実はここで問題になりますのは、営利を目的として継続的に行われたかいなかということによりまして、税負担に大きな差が出て来ますので、この点について主税局長の御見解をお尋ねいたしたいのであります。すなわち税制改正の本旨は、できるだけ不公平なことを避けようということにあるのでありますが、継続的行為によつて生じたものは課税するということでありますので、しからざるものとの間に非常な不公平が出ておるように思うのであります。これに対して主税局長の御見解を一応お聞きしたいと思うのであります。
  76. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 所得税を課税いたします場合におきまして、その場合の所得とは何かという点につきましては、これは根本的にいろいろ議論して参りますと、相当問題のあることであります。従つて日本税法におきましても、当初におきましては、財政学の上でいいますと源泉説と呼んでおりますが、いわゆる一時的な所得はこれを所得に見ないで、継続的に繰返される所得所得税の対象とする、こういうような考え方でずつと進んで参りましたことは、これは内藤委員よく御承知通りであります。しかしいろいろ税負担の点を考えて参りますと、その継続的な所得だけを担税力ありとして所得税の対象とするのではどうも不十分である。そこでその次に考えられましたのが、一時の所得に対しましてもやはり課税して行くべきではないか、大分アメリカ等でもそういう考え方が出て参りまして、これが広がつて行つた日本所得税法におきましても、そういつた意味で、いわゆる一時の所得、それが現在におきましては譲渡所得、一時所得という名前で取入れられて来ていること、これまた御承知通りだと思います。その場合におきまして、昨年の改正におきまして、有価証券の譲渡の所得についての課税をやめたという分は、これはその一時の所得の中における有価証券の譲渡の所得、これは補足の点におきましてもいろいろな困難もございます。これは理論としてはとにかくとして、実際的な見地から見まして、これはもうちよつと無理じやないだろうかといつたような観点から実はやめたわけでございまして、その機会に、有価証券取引税というものを制定されましたが、これは譲渡所得をやめたから有価証券取引税がその代償だというような意味とはわれわれは思つておりませんし、昨年の国会でもそういうふうな御説明を申し上げたと思いますが、有価証券取引税を片方で課税する、少くとも一時の所得である有価証券の譲渡所得につきましては、これは課税しない。そうなりますと、今度は常利を目的とする継続的行為による所得というものは何か。これはいろいろ法律としてはその通り書いてあるわけでございまして、これをどう解釈すべきかという点につきましては、いろいろな考え方ができると思いますが、少くとも税務官庁としては、税務署によりましてその解釈がまちまちになつてはいかぬという意味におきまして、一応の解釈の統一はしております。しかしその解釈が終局的に正しいかどうかという点は、これは最後まで争うようになれば、裁判所でおきめ願う以外にない問題でございますが、それにしましても、行政官庁としまして、税務署あるいは国税局によりまして解釈の不統一ということは、非常に国民の間に御迷惑をかけますので、この点は一応統一したものをもちまして、現在の解釈をいたしておるわけであります。
  77. 内藤友明

    内藤委員 それでは、私は具体的にひとつお尋ねしたいと思つておるのですが、営利を目的とする継続的行為というのは、証券取引法に定めてあります証券業者のごとく、もつぱら営利を目的として証券売買をしておるものだけをいうのでありますか、どうですか。
  78. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 証券取引法によるいわゆる証券業者が、営利を目的とする継続的行為を営んでいる方であるということは、これはその通りだと思つております。しかし営利を目的とした継続的行為によつて、有価証券の譲渡による所得を得る人が、これは反対解釈的に証券業者だけに限るというようにはわれわれは解釈しおりません。
  79. 内藤友明

    内藤委員 それでは証券取引法には抜け道があるのですか、どうですか。と申しますのは、証券取引法第二十八条によりますと、銀行その他の金融機関、金融機関以外の法人または個人が事業として有価証券の売買を営むには、大蔵大臣に申請して、証券業者名簿に登録を受けなければこれは許されないのであります。従つて前に申しました所得税法に定めてあります、営利を目的として継続的に有価証券の売買をなすものは、当然証券取引法上の証券取引業者として登録せられなければならないものであるということになつておるのでありますが、それ以外のものがあるとするならば、それは証券取引法に抜け道があるのかどうか。その点をひとつお示しを願いたいと思うのであります。
  80. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 証券取引法による有価証券の売買を営んでいるものというふうに書いてございます、いわゆる有価証券業者は、われわれの方でも主務局の方の意向をいろいろ聞いてみたのでございますが、有価証券を広く公衆を相手に売買しているものがこの有価証券取引業の対象になる。お客さんが特定しませんで、それで店を張りましていろいろな人がお客さんに来る、それで売買している。これで取締ろうというのが証券取引法の本旨である。従いまして法文にいろいろ書いてございますが、この有価証券の売買の場合におきましては、そうした公衆相手の売買というものが取締りの対象になり、それが有価証券取引法の規定による証券業者というふうに考えております。それではそれ以外の範疇で、今内藤さんが問題にされようとしておる営利を目的とする継続行為による有価証券の売買をするものというのはどういうものか。これはだんだん問題が詰まつて来て、そこに焦点が出て来るわけでありますが、われわれの方で考えておりますのは、たとえば私なら私が証券業者に頼んで株の売買をやつておる。そうして株の値上り値下りによつて一応の所得を得ておるような場合におきまして、私は公衆相手に売買するというよりは、むしろ私自身が証券業者を通じて株の売買をしておるわけなんでで。それが一年に一回、二回といつたきわめてまれに売買する場合ではなくて、いわゆる株で飯を食つておるといつた姿において売買をしておる。これは証券取引法の取締りの対象としては、法律の本旨からいつて、そこをねらつておるわけとは思つておりません。こういう姿のものは、証券取引法にいう売買とは考えておりません。従つてそういう場合においては、別に大蔵大臣の許可とか許可でないとかいう問題を対象にしておりません。しかし税法の立場から見ますと、始終株を売つたり買つたりしておる。そうすればそれはやはり営利を目的とする継続的行為にあたるのではないだろうか。従つてこういうものは証券業者でなくても、営利を目的とする継続的行為によつて証券の売買をして、そこに所得を得ておるもの、こういうふうに解すべきではないかという解釈をしております。
  81. 内藤友明

    内藤委員 問題は実はそこにあるのでありまして、そういう業者でないものを業者であるかのごとく税法で取扱うということは、何か法的な根拠がなければできないわけでありますが、それをそう取扱う法的根拠がありますか。
  82. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 業者というふうにおつしやいますと、この場合には多少話がややつこしくなりはせんかと思つております。普通業者というと、証券取引法の取締りを受けるものが業者というふうに言われておりますが、こういう証券取引法の取締りを受けていないものであつて、証券会社を通じて証券売買をする、それも年に何回といつたまれにやるのではなくて、株屋さんの店頭へ行つて、証券の値段の動きを見ながら売つたり買つたりしておる、これは証券業者ということは言えないと思います。しかし営利を目的としておる継続的行為の範疇には入る、こう解釈すべきではないかとわれわれは思つております。
  83. 内藤友明

    内藤委員 それではもう一つ掘り下げてひとつお尋ねいたしますが、あなたの方で営利を目的として行われたかどうかという区別は、何を標準として考えられるのか、またいかなる程度でもつてそれが継続的行為だと言われるのか。この点をはつきりひとつお示しをいただきたい。
  84. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 営利を目的としておる標準というのは、通常の場合売つたり買つたりしたことから、現実にもうかるか損をするか、これはいろいろあろうかと思いますが、そういう証券の取引をしておることは、これによつて所得を得ておるだろうということで、一応われわれの方としては、営利を目的としておるというふうに考えるべきだと思つております。それで継続的にやつておるというのをどういう標準で見るべきか。これは具体的に見て参りまして、またほかの理由によりましてもそれが継続的であるということを、税務署もそう考え納税者としても自分はそう見られてもしようがないというように、争いがないことがはつきりしていればこれは問題ないのです。しかしこれがなかなかはつきりしない場合もあります。現在はつきりしない場合の標準としましては、一年間に大体五十回以上株を売つたり買つたりしている。かつ取引の総株数が二万五千株以上、この程度の取引をしていれば、その回数から見ましても、株の扱い数から見ましても、一応営利を目的としておる継続的行為というものに当るものではないだろうか。しかしこれも一応の基準でございますから、他の別な反証によりまして、しからずと言えるはつきりしたものがあればまた別でございますが、これだけの回数、株を扱つていれば、一応営利を目的とする継続的行為というふうに解釈すべきである。これは税務官庁としての解釈でございまして、それが訴訟になつて、それで通るか通らないか、これは別問題でございますが、われわれの方としましては、一応常識的——常識的というのはわれわれだけの常識かもしれませんが、それくらいに考えるのが間違つてないところの解釈じやなかろうか、かように考えております。
  85. 内藤友明

    内藤委員 五十回以上、二万五千株というのを、一つの基準に置かれるという尺度を持つておられるのでありますが、実はこれに問題があろうかと思うのであります。そこで、なぜ五十回で二万五千株か、これは税務署の方が納得する考えかしれませんけれども、そうでなく、こういうふうな仕事をやつておる者が納得する何か根拠があるのですか。
  86. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 国税庁の直税部長が参つておりますので、実際面の経験もありますから、直税部長から答弁いたします。
  87. 村山達雄

    ○村山説明員 ただいまの内藤委員の御質問は、はなはだむずかしいのでございます。先ほど主税局長からお話がありましたように、われわれの方では、有価証券の譲渡による所得は、大部分は譲渡所得だと思つております。ただそれ以外に、今問題になつております事業としておやりになることでありますならば、それは事業所得である、しかし事業という程度まで至らなくても、ある程度継続反復しておる場合には、現在の雑所得に該当するものであろうと考えておるわけです。そこで譲渡所得とそうでない雑所得、あるいは事業所得の限界をどこに認めるか、これはまつたく常識問題であるわけであります。国税庁が、いろいろ疑わしい場合には、五十回でかつ取引株数が二百万五千株以上とはじきましたところは、昭和二十七年分につきまして、ちようど株の取引が一番盛んなときであつたのてあります。このときに証券界に相当うわさの立ちました人たちについて、証券界の協力を求めまして実は調査をしたわけでございます。これは相当大口取引者といわれる人たちについて調査いたしまして、このうち約半数以上の大口取引者というようなところで線を引いておるわけでございます。ですからあの株の一番盛んなときでさえ、証券界で一番大口取引者といわれる者、しかもそのうち半分落すというくらいの感覚であります。別に五十回、二万五千株というものについて、理論的根拠があるのではなくて、このくらいに押えておけば、かりに雑所得として課税されても、そう世間から非難を受けるほどでないという大事をとつたところで引いたのでございます。ですから今日のように株の状況が悪くなり、あるいは株価の状況が一般のような年でございますと、このくらいの基準で行つても、常識的に考えてそうおかしくないのじやなかろうか、理論的には腰だめといつていいだろうと思います。
  88. 内藤友明

    内藤委員 直税部長の話はわかるのですが、株の売買というものは、そのときの景気不景気で波がある。非常に好景気のときはそうであつたかしれませんけれども、そうでないときはまたそうでないということになつているのです。あるときの現象を押えて、五十回、二万五千株というものをきめられて、これが法律か何かならば修正するということもございましようが、あなたの方は一つの基準を示しておるだけのことです。これは規則でも何でもない、そういうものをあなたのところでなかなか御変更なさらぬというところに、実は税務当局か独断的に納得することが多いので、この問題が起きて来るのじやないかと私は思うのでありますが、それはそのときの状況によりまして、別に理論的根拠もないのですから、御変更なさるのでございましようね。ただそのとき、あなたのお感じは、このごろはこんなものだというだけなのですから、そのときの経済状態で動かしなさるのか、動かしなさらぬのか、実際問題としてその点をお聞かせ願いたい。
  89. 村山達雄

    ○村山説明員 経済状況に応じて直さないという建前をとつておりませんで、状況によつて、従来の取扱いではむしろいかにも不公平になるという事態が参りました場合には直すというつもりでおります。但し先ほどもお話申し上げましたように、最近きめたこの取扱いの基準は、株が最も活発な時期を押えております。従いましてその二十七年の平均程度の取引をやつておつた人は、二十八年、二十九年になりますと、二十七年に比べるとはるかに少くなるのであります。ですから状況に応じて毎年々々改訂するといたしますと、ことしはもつと基準を下げなければならぬ、こういうことにもなるかと思われますが、その点は先ほどお話しましたように大事をとりまして、あいまいの事柄について、継続的の行為と見られる人があまり多くならないようにという考慮から、株の取引の一番はげしいときをとつておるわけなのであります。従つて今後の問題といたしまして、二十七年以上に株が非常に上りまして、取引も旺盛になつて来る、そうして今の二万五千株、五十回という基準でやりますと、ほとんど大部分のものが雑所得ないし事業所得になるというような事態が参りました場合に改訂を考慮いたしたい、かように考えております。
  90. 内藤友明

    内藤委員 今の点はそれで了承いたしておきます。  そこでもう一つ主税局長にお尋ねしたいと思いますが、公務員とか、あるいは団体、銀行、会社の役職員などは、ほかに証券業以外の職を持つております。これが自分の資産の運用、利用のために、株式を買受けたり譲渡したりする場合、これは課税対象にならないと思うのでありますが、念のためになるかならないかお尋ねしたい。
  91. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 きわめて常識的にお答えすれば、それはならないと、むしろごく大ざつぱにお答えしていいと思います。ただしかしそういうような人でありましても、たとえば会社の重役のような人であつても、どういうかげんか知りませんが、非常に株に熱心であつて、今国税庁の方から申しましたような、五十回、二万五千株以上の取引をなさつていらしやるという場合におきましては、一応他の職業がどうであるということに関係なしに、その方は、その間にやはり営利を目的とした継続的事業をなすつていらつしやるというふうにわれわれは解釈しております。ただ普通の場合は、内藤委員がおつしやつたような職業についていらつしやる方がそういうことをなさることはめつたにございませんから、たまに何回か取引なさるというのは、今の基準から考えまして、営利を目的とした継続的行為というふうに解釈する、われわれのその基準には該当しないのじやないか、かように考えております。
  92. 内藤友明

    内藤委員 こういう問題は、どちらかと申しますと、税務当局認定の分量が非常に多い問題なのでありますから、こういうようなことにつきましては十分御考慮いただきまして、問題のないようにしていただきたいと思うのであります。これは法律の不備なところもあろうかと思うのでありますが、十二分にひとつ問題の起らないように御心配をいただきたい、こう思うのであります。
  93. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 内藤委員お話はごもつともでございまして、われわれとしましても、国税庁としましても、こういうことでいたずらに紛糾を起すことのないように十分配慮をいたしたいと思つております。
  94. 春日一幸

    ○春日委員 私は午前中から平田国税庁長官の出席を求めております。所得税並びに法人税その他租税特別措置法等に関連いたしまして、どうしても徴税の最高の責任者であるところの平田長官の御見解を尋ねなければならない問題があるのであります。自由党の諸君は審議の促進方をはなはだ強調しておられますけれども、すでに十二時から今もうかれこれ三時間になるのであります。今なお御出席にならぬ。一体これはどういうことでありましようか。これではわれわれは、審議を促進せよと言われても、われわれが答弁を求めておる当事者が御出席にならぬでは、質疑ができないわけでありますから、一体これはどういうことなんでありますか、ひとつ責任者から御答弁を願いたい。局長では間に合わないから、私は長官の出席を求めておる。どうして出ないのですか、これはこの場の監督者である植木政務次官から……。
  95. 植木庚子郎

    植木政府委員 間もなく伺うはずでありますが、今伺えないのは先ほど休憩時間から国税庁の方で緊急の用務が起りまして、それで今帰つておりますが、おつつけ参ると思います。
  96. 春日一幸

    ○春日委員 国税庁にいかなる緊急の用があるかしれませんが、少くとも国会は国権の最高の機関として、これ以上の緊急というものはあり得ない。私どもは本日この重要議案を審議をするという立場において、質問することがあつたら堂々とやつて参りたいというので、従つて何も突如として要求するわけではない。午前中の会議から私は平田国税庁長官の出席を求めておる。国会軽視もはなはだしいと思います。私はいずれにいたしましても、午前中から質問を通告いたしておりまするし、今や私の順番であります。従つて私は質問をしなければならないのである。これを他の順位者に許すということになりますと、私はさらにその機会を逸する形になります。重要な審議を尽すことができません。従いまして、平田国税庁長官が出席になるまで、とりあえず休憩をいたしたいという動議を提出いたします。なぜ出ないのですか。僕の順番は譲りませんよ。
  97. 千葉三郎

    ○千葉委員長 春日君の御意見はごもつともだと思います。春日さんの御要求は休憩ということでありますが、一時保留願いまして、他の人におまわし願つて、平田長官が来られたならばやつていただいたらどうでしよう。
  98. 春日一幸

    ○春日委員 本日の理事会の決定によりますと、五時に一応休憩をされて理事会が開かれるという申合せになつております。私の質問順位を次の質問者に譲りますならば、私はその限られた時間において私の質問を完了することができるかどうか、私は確信がございません。しかして私は五時以前にこの質疑行つて、われらの疑点を明らかにしなければならぬ、その責任を持つているのであります。従いまして、私の質問順位を他の質問者に譲ることはできません。しかしてこの平田国税庁長官の出席は、私は午前十二時から要求しておるところのものであります。しかるにただいまの次官の御答弁によりますと、何か他の用事があつて出れないというのだが、そういう前例をもし残しますならば、われらのこの重要な議案審議をするとき、政府の責任者が他に用事があつて出れない出れないということになる。それで審議することができるでありましようか。この悪例を残すわけには行きません。国会の権威のため断じてここで休憩を宣言せられまして、平田国税庁長官がすぐにも来られるようにされたいということを重ねて要望いたします。
  99. 千葉三郎

    ○千葉委員長 十分以内には来るそうでありますから、このまま十分間休憩いたします。    午後三時七分休憩      ————◇—————    午後三時十九分開議
  100. 千葉三郎

    ○千葉委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。春日一幸君。
  101. 春日一幸

    ○春日委員 これからひとつ国税庁長官としんみり質疑応答をさせていただきます。  まず最初にお伺いをしたいことは、今回の所得税法並びに法人税法の改正によりまして、所得税法においては五十四条削除、法人税においては四十条削除、相続税においても同様の取扱いがされておるのでありますが、すなわち今回第三者通報制度が廃止されようとしているわけであります。内藤君も触れられたと思いますが、今まで憲法三十条によつて国民には納税の義務がある、法律に基いてその通り納税しなければならぬとあるが、往々にして大企業、大法人等においては、明らかに計画的な脱税が行われておる向きがないわけではない。そういうような場合においては、第三者通報という制度が制度化されておりまして、そういうような、いわゆる憲法に定められた国民の義務をカンニングに逸脱せんとする人々に対する制裁の規定が設けられておつたのであります。そこでまず渡辺主税局長にお伺いしたいことは、今度制度としてこれを廃止しようとするとその理由は一体何であるか、この一点。それから平田長官にお伺いをいたしたいことは、従来までこの制度のもとにおいて一体どの程度の通報が行われたのであるか、通報の行われた実際額がどういうものであるといたしましても、この制度そのものによつて、脱税を行わんとするその不正行為をどの程度牽制することができたと考えておるのであるか、徴税の経験等からかんがみてこの制度の収めたところの効果、それからその弊害、こういうものをひとつこの機会に明らかに願いたいと思うのであります。
  102. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 第三者通報制度の問題は、税の執行の問題と直接結びついておりますから、その利害得失等につきましては、平田国税庁長官からお話申し上げた方がいいかと思いますが、われわれといたしましても、国税庁の管下において行われております第三者通報を見て参りまして、確かに当然納税すべき人が免れている、そういつた場合におきまして、この第三者通報が相当効果を持つこともございますが、同時に、今度は逆に、第三者通報そのものが場合によつてはいわば職業化するといつたようなことになつて参りますと、むしろこの制度はおもしろくないのじやないか、利得よりもむしろ害なり失の方が多いのじやないだろうか。それともう一つ、現在におきましてだんだん税務の機構も整備して参りまして、こうした第三者通報を待たずしてなお相当の効果を上げ得るということになりますと、この制度はむしろやめた方がいいのじやないか、こういう結論でこれの削除を御提案している次第でございますが、実際の執行と非常に結びついておりますので、その点につきましては国税庁長官からお答えいたします。
  103. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 第三者通報の件でございますが、御承知通り終戦後査察を始めました当時、ことにその直後におきましては、実は大部分が通報の資料によりまして査察などを行いまして、相当実績を収めて来たことは確かにあつたのでありますが、その後だんだん査察につきましても事務に慣熟いたしまして、最近におきましては、通報によりまして実際に調査に着手するケースはたしか二割から三割くらい、あとの大部分は、その他の税務の普通の調査に際してわかつた資料に基きまして、さらにいろいろな予備調査をいたしまして、それに基いて査察に着手する、こういう傾向になつてつております。従いまして、私ども率直に申し上げまして、この制度かあればあつただけ、それだけ効果があることは認めるのでございますが、その反面今主税局長から話しましたように、いろいろ変な動機でなされる場合が、実は率直に申し上げまして、遺憾ながら相当多い。ことに職業的に利用される向きが一方においてはある。そういう場合におきましても、もちろんそれ自体としましてはそれだけの効果は生ずるわけでございますが、そういう点をあわせ考えますと、今後におきましては、こういう法律上認められた正規の通報制ということによらずして、査察行政は大体やつて行けるのではないかという見通しを実は立てているような次第でございまして、その点はこの制度をやめたから非常に仕事がむずかしくなるとか、あるいはなすべき脱税の摘発ができないということは、まず今のところなかろう、こういうふうに考えておるわけであります。  なおちよつと数字を申し上げますが、昭和二十七年度——本年度は途中でございますからまだ締切つておりません。二十七年度におきまして通報を受理しました総件数が三千三百六件でございます。これは通報だけではなくて、普通の法人等について査察されましたものを含んでおります。その通報に基いて若干の調査をいたしまして、更正決定などを行いましたのが千二百九十五件、税額で六億四百万、それに対して報償金を実際に交付に値するというので出しましたのが二百一件、報償金の額は一千五百万、こういう状況になつております。先ほど申し上げましたように、今後においてはかような法律上認められた制度といつたようなものはなくても、あるいは事実上いろいろ通報して来る場合もあると思いますが、それは確かに一つの資料になろうと思います。それよりも、むしろ税務の側におきまして予備調査等をさらに合理的に精密にいたしまして、査察の対象を慎重に選定して行くようにいたしたい、こういうように考えております。
  104. 春日一幸

    ○春日委員 ただいまの御答弁によりますと、特に渡辺局長の御答弁によりますと、職業化するきらいがあるから、まあやめるのだという御答弁でありましたが、職業的に通報を行つておるいわゆる脱税の通報屋というものがあるものかないものか、現実に脱税を通報することを業として、それでもつて渡世をしておるというような具体的な事例がどの程度出て来たものであるか、この機会にそれを明らかにお示しを願いたいと思います。
  105. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 今その方の精密調査は手元に持つておりませんが、もちろんそれだけでやつておるというところは少いと思いますが、そのほかのいろいろなものと合せて、そういうことも一緒にやつておるというふうなものが間々見受けられるようでございます。具体的な事例は今ちよつと手元にございませんが、私申し上げましたことは抽象的には間違いはないと信じております。
  106. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますと、ただいま御答弁によつて明らかにされました通り、二十七年度だけでもつても、その通報を受付けた受理件数が三千三百六件、しかも現実にあなたの方が御調査をなすつた件数が千二百九十五件であつて、脱税が行われておつて、その通報によつて更正決定が行われた税金が六億四百万、これは実に厖大な成果が上つておるのではないかと思うわけであります。従つて私がこの機会に考えさせられることは、こういうような法律によつて、憲法三十条で厳粛に規定しておるところの国民の納税の義務を怠り、不正な手段によつて脱税をしておる人々を制裁する規定が今まで現実に行われて参つて、そのことはまた脱税の防止のために相当役立つたのであり、しかも脱税した人々に対してこれを更正決定することによつて、この税収を確保する、すなわちその不正、不備のものと公正なものとの権衡を保たしめるという制度として、これは私は相当効果があつたのではないかと思うのであります。ただいま自由党の諸君が、ばかにつまらない質問だとおつしやつておりますが、これは大事業、大法人にしてみれば、まことに御意に満たない質問でありましようけれども、少くともこの制度によつて不正なるものを、脱税を事前に防止できる、しかもすでにその不正を行つた人から、当然納付すべき税金を納付せしめる、こういうような法律がそうばかげた法律だとは私には思われないわけなんです。  されば私は渡辺主税局長に重ねてお伺いをいたしたいのでありますが、これなくとも効果が上るという御答弁である、すなわち現在の税務署の機構は非常に熟練熟達をして来たので、こういうような内部的な通報や外部的な通報を受けなくても、税務署自体の自主的な一つの能力によつて課税の適正が期し得るのだ、こういうことでありますけれども、同時にまた一般の徴税思想も次第に普及して、この税に対する国民意識も次第に高揚して来たということでございましようが、しかし現実には、先日もあなたにお伺いをいたしました通り、今回のこの法人税の税収予算調書に見ても明らかな通り、あなたの方は法人に対して二割というものはどうしても更正決定をせなければなるまい。すなわちこれは不徳義の悪意に基く脱税申告ではないであろうが、いずれにしてもそれが過小な申告であります限りにおいては、いろいろな内容要素が含まれておると思うのであります。すなわち法人の実際の申告見込額千五百五十三億に対しては、しよせん二割以上は更正決定をせなければならない。すなわち三百四十一億七千二百万円というものは、あるいは誤つてか故意にか、とにかく過少の申告が行われておるというこの現実は、しよせんそういうような大法人において脱税もしくはこれに類するような申告がなされておることを現実に裏づけるものではないかと思うわけであります。すなわち税法国民との間におきましては、道徳と徴税能力との関係においても、これは必ずしもそういうような制度がすでに不必要になつたというような証明はここでは立たないと思う。すなわちただいま渡辺主税局長は、職業化するのはおもしろくないから、他の一つの理由は、これなくとも効果が上るというこの二つの理由によつてこの法律を廃止されんとしておるのでありますが、一つは職業化するといつたところで、そんな職業化した事例はないと国税庁長官はおつしやつておる。同時に他の一つの理由は、これなくとも効果が上るとおつしやるけれども、現実には二割以上のものが、百人の申告者のうち二十人以上のものは更正決定をせなければならない。しかも税額においてもその程度の更正決定をしなければならないということは、あなたみずからがつくられたというこの税収予算調書の中に明確に示されておるところであると思うのであります。すなわちこの第三者通報制度を廃することの理由というものは、二つともこれは証明されてはおりません。私はこの機会にお伺いいたしたいことは、この第三者通報制度というものは、現実にその通報を受理された件数が三千件も越えるような厖大な件数である。しかも調査してみるとはたしてその通りの脱税が行われておるという現段階において、この法律を廃止するということについては、これはよほどの理由がなければならない。しかもその理由たるや、今伺つた範囲内では、これはわれわれは納得するような理由ではあり得ないのであります。これについて渡辺局長から重ねて御答弁を承りたいと思います。
  107. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 職業化すると申しましたのは、たとえば探偵社とか、そういうまがいの人の通報が実は相当あるわけでありまして、そういつた関係から、そういう人たちが通報をして来る。それがいろいろ私の過去においての経験から見ましても、はつきりちやんと根拠をつかんだというよりも、割合に漠然とした意味の通報をしまして、それに基いてこの跡始末はどうなつたというようなことを相当言つて来る事例があるわけであります。従いまして、先ほど国税庁長官から申し上げました数字から見ましても、実際に参ります通報と、それの利用できる通報との間には相当の隔たりがあるといつたような事例があるわけですが、そんなような意味を私は職業化云々といつたような用語で申し上げたわけであります。なるほど現在までにおきましては、更正決定の額は相当の額に上つております。これは順次改善されて行くことを期待しております。先日もるる御説明申し上げましたが、われわれの方の積算におきまして、更正決定の額と申告の額とをわけて積算しておりますのは、当初において、申告の額から一応の見積りの出発をしておるがゆえにそうしたわけでありまして、本年度においても必ずこの程度の更正があるといつたような意味のものとは必ずしも思つておりませんが、しかし同時に相当改善はされて来ておる。といつて更正決定が全然なくなるまでにはまだ相当の時間がかかるんじやないか、その点は春日委員のおつしやる通りでありますが、先ほども平田長官が申し上げましたように、最近における査察の事務が、どちらかといいますと第三者通報によりますよりも、国税庁の内部の関係による資料でもつてむしろ動いておる。またそれが全体のバランスをとつて査察をやつて行く上におきましても適切な行き方ではないだろうか、そういう方向に向おうとかねてからしており、漸次その方向に向い得る態勢になりましたので、この機会において、いろいろな批判があつた制度は廃止してもさしつかえないじやないか、こういう意味で御提案申し上げておる次第であります。
  108. 春日一幸

    ○春日委員 私がお伺いをしたいことは、とにかく社会でどろぼうや人殺しがあれば、その被害者は当然のことでありましようが、しかし国民といえどもそれを警察なり適当な機関にこれを告訴する、これは当然の道義であろうと思うわけであります。そこで乏しい中からみながおのおのしぼりとられるような形で税金を納めておる。ところが大法人がずぼらな経営をしておる。年間何百万円というような交際費を使つてつて、しかもなおかつ厖大な利潤が上つておる。それを隠匿しておるということを知つた国民が、この不道徳な、この悪虐なやり方に対して義憤を感ずることは当然であろうし、その事柄をそれぞれの徴税機関に通報するというようなことは、私は大して弊害をもたらすものではないと思う。私はこの一つ法律ができるためには容易ならざるところの経過を経なければならないと同じように、その法律を廃止するには、何人も首肯できるだけの一つの理由がなければならぬと思うのであります。ただいまあなたの御答弁によりますと、三千三百六件を受理して、しかしそこの中には探偵社だとか、そういうようなところから漫然とした通告が行われておつて、信憑性に欠くものが多いということでありますけれども、現実にはこの法律によつてとにかく千二百九十五件というような調査が行われて、調査の結果六億円を越えるような大きな税収入がここに確保されておるのでございます。このことは十分重視しなければなりません。社会正義のためにも、遵法精神をさらに高めて参りますためにも、そういうような憲法の規定を踏みにじるような、しかも厖大利潤をとつてつて、なおかつそれを虚偽の申告をするような、そういう不義不徳な人々に対しては、他のこれを知つた者に通報させるというような法律を残しておいてどこに弊害があるでございましようか。たとえば国税庁において機動力が完備していて、そういうような人々のお世話にならなくてもいいということなら、これはまことにけつこうなことではあるが、さらにその能率に加えて、こういうような不義不徳の人々の摘発に対して国民の協力を求めるという態勢が、この徴税方式の上に弊害をもたらすものでは私は断じてあり得ないと思う。私はかくのごとく確信をするのであるが、これに対して植木政務次官はどういうぐあいにお考えになつておるか、御答弁を願いたいのであります。
  109. 千葉三郎

    ○千葉委員長 植木政務次官の前に、平田長官からお答えがありますから……。
  110. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 先ほどの数字に補足しまして、少し申し上げて御参考にいたしたいと思います。今通報によりまして約六億ふえましたと申し上げましたが、査察全部では二十七年度において二十五億八千万円程度の数が出ております。従いまして通報によります分は約三割弱、二割五、六分に当つております。それから通報の件数は、二十六年度が五千百二十三件、二十七年度が三千六百四十一件、こういうふうになつておりまして、大体部内の内偵調査、準備調査等によりまして摘発するのが、最近の傾向としましてむしろ多くなつておりまするし、私はやはりそういう方向に行くのがいいと思つておるわけでございますが、もう一つ事情をつけ加えて申しますと、今春日委員お話のように、確かに私ども義憤を感じて、脱税者を通報するということに対しては敬服に値すると思うのです。そのこと自体純粋にそういう気持だけから出ておりますれば、そういう制度も非の打ちどころはないと思うのでありますが、どうもいろいろ聞いてみますと、それだけではなくて、その他の動機によりまして行われる場合が相当多い。もちろん結果はいいことには違いないと思うのでありますが、部内で会議でけんかして、その結果とばつちりが来ておるとか、あるいははなはだしいのは、親類と申しますか、内輪の者が、いろいろの事情で対立関係からしましてそういうふうになるといつたような場合も、職業家のほかに実はあるのでございまして、そういうところまで利用してやらなくても、私どもみずからの力で、ここまで来ますればやるのが常識的ではなかろうかということを、実は国税庁といたしましても感じておるわけであります。ことに報償金というのが権利としてくつつくというのが制度化の一番大きな点でありまして、今後におきましても、春日委員お話のような、義憤を感じて投書をよこすというようなことは、もちろんこの制度がなくなりましても私どもは相当出て来るのではないかと思いますが、そういうような貴重な資料は十分資料といたしまして、脱税の公正な摘発と処理に遺憾なきを期したいと思つておる次第でございます。
  111. 植木庚子郎

    植木政府委員 ただいま平田政府委員お答え申し上げた通りでありまして、私もこの第三者通報制度につきましては、法制上こうした勧奨と申しますか、報償金を出してこういうことが行われるような制度にしておくことは、あまり好ましい問題ではないと思います。先刻来申し上げております通り税務の機能もだんだん整つて参りましたし、経済界の実情も、終戦後の混乱から、さらにその後のインフレのどんどん進みます際、あるいはさらにこれが防止のためにいろいろ経済界に大きな変動がございましたが、こうした時代に比べますと、今日はだんだん安定して参つて、おりますし、   〔委員長退席、淺香委員長代理着席〕 かような時期において、いわゆる報償金を出してこれを慫慂すると申しますか、この制度をなお続けて行くことは、もはやその時期ではないのではないか、かように考えます。のみならず、私ども長く税務職員をやつておつたこともございますが、こうした制度がなくても、仰せの通り正義の士はどんどん忠告もしてくれます。あるいは通報も入れてくれます。こうしたものをでき得る限り利用して、一方税務機能の十分な充実を期して参れば、脱税を防止することも可能である、かように考えておる次第であります。
  112. 春日一幸

    ○春日委員 委員長質問いたしますが、私がただいまこの質問を始めましたら、あなたはまことにつまらぬことだとの不規則発言をされたのでありますが、はたしてこの第三者通報制度に関する法律審議は、まことにつまらぬ質疑であると今もなおお考えになつているかどうか、この点を委員長から御答弁を願いたいと思うのであります。もしもこの所得税法並びに法人税法に関するこの真摯な質問がまことにつまらぬ質問だとあなたがお考えであるならば、その委員長のもとにおいてわれわれがこの質疑を続行することは、どうかと考えられますので、この点ひとつ委員長から御答弁を願いたいと思うのであります。
  113. 淺香忠雄

    ○淺香委員長代理 お答えいたします。私はそういうような失言をした記憶はありません。
  114. 春日一幸

    ○春日委員 ないということでありますので、深くはこれをとがめず質問をいたすことにいたします。  ただいま早田長官の御答弁によりますと、この通報制度によつて納めた税額は六億何がしではあるが、しかし査察によつて徴収したものが二十五億である、こう御答弁でございます。そこで考えられますことは、すなわち脱税の額がまことに多いということであります。二十五億の査察によつて徴収されたところの金額たるや、これはまさしく脱税ではありませんか。二十五億というのは申告していないのだから、査察によつてこれがあげられた税金であるから、これは脱税者がそれだけおるということなんである。だから、脱税者がたいへん多いとするならば、この脱税者を防ぐためのいろいろな措置が必要となつて来るであろう。その一つ措置として考えられたのがこの第三者通報制度であろうと思う。現実に二十五億が査察によつてあげられている。しかも通報によつて六億あがつているという。こういうような百鬼夜行というか、脱税が非常に横行しているこの段階において、この制度を廃止するというようなことについては、われわれはまことに納得ができないのである。しかのみならず、ただいまの長官の御見解によりますと、その他の動機が好ましくないという御答弁でございます。その他の動機の中には、そこを解雇されたところの従業員が私怨に基いてその会社内容を暴露する場合がある、これは好ましくないというお話、さらにはまた親戚同士が不和になつた。そうして相手の内情を知つているがために、その相手方が報復的手段としてそういう通報をすることも好ましくない。国民道徳上、一面においてはそういうようなことは好ましくないことであるかもしれない。しかしながら脱税が行われてもいいというような考え方のもとにおいて、その他の動機に対してあなた方が今のような感じをお持ちになるというようなことは、私はもつてのほかであろうと思う。何人といえども法律に定めた通り納税する義務があるのであるから、その義務を果していないところの人々に対しては、その人が脱税しておればそれだけ他の人が重く負担をしなければならぬ。従つてその犠牲者たちがその不心得な脱税者を通報することは、これは私は公正な行動であろうと思う。(「不道徳だ」と呼ぶ者あり)今そういうような者は不道徳だと山本君が言つておられるけれども、そういうような者は大企業の傀儡である。すなわち大企業者が自分の好ましからざる男を解雇する、使用人を解雇する。そうすると、その男がその会社の内情を知つているので、こういう脱税が行われているというようなことを通報する場合があるでありましよう。そのことは、企業の経営者にとつてははなはだ痛いところをつかれる形になるので、こんな法律があると、思つた通りの不当解雇をするとあとでひどいしつぺ返しを受ける、これを廃止してくれというようなことを、山本君のような人に、あるいは特に依頼があつたりなんかして、そうしてこういう法律改正というような形になつて来たのではないかとすら私は考えられる。すなわち現実にその脱税がじやんじやん行われておる。査察をすれば二十五億出て来るし、通報によつて調べてみれば六億何千万円というような金が出て来る。従つてそういう制度を残しておくというようなことをしないで、すなわち脱税者を保護するというようなことをあなたが立法して来るという手がありますか。現在いろいろな増税が行われようとしておるではありませんか。繊維には課税しようとしておる。砂糖の増税、タバコの値上げ、酒の値上げ、電気料金の値上げ、こういうような大衆生活に大きな負担をさせるゆえんのものは、それだけの国費をまかなわなければならぬからだ。それだのに、一方不正な申告をしておるところの厖大利潤の所得者が脱税しておる場合に、それを通報するというこの法律を廃止するという、そのような時代に逆行するような、現在の税法改正の首尾一貫を欠くような改正法律案提出されるということは、われわれまことに合点が行かない。一体これはどうした理由によつてこんな法律案が出て来たものであるか、もう一ぺん植木政務次官からこれは御答弁を願わなければなりません。
  115. 植木庚子郎

    植木政府委員 今回の第三者通報制度の廃止の原案を立てました理由は、先ほど来申し上げたことを繰返すのみになるかもしれませんが、報償金を与えてこうした通報を奨励するようなかつこうになる条文を残しておくことが適切でない、かような見解に基くものであります。   〔淺香委員長代理退席、委員長着席〕 この報償金の制度を廃したからといつて、私は通報が全然行われなくなるとは申しません。先ほども申します通り、こんな制度が何にもない時代でもやはりいろいろ誠意の士はおつてくれます。こうした人々がいろいろ税界の至らぬところを指摘して、これが調査の動機になることも、従来といえどもつたのであります。しかし今日この状況になつて参りますと、税界の機能もだんだん充実して参りましたから、この制度を廃止いたしまして税務の行政をやつて行きましても、何ら不都合なことは起らない。脱税が行われるような場合におきましては、いろいろな今日の直接、間接の資料調査によつて十分にこれを調べて行くことができるだろう、おおむねこうした確信を得たからこの制度を廃止する、かような次第でございます。   〔「あら探しはもういい」と呼ぶ者あり〕
  116. 春日一幸

    ○春日委員 あら探しだなんていわれると、君を赤むきにむくぞ。(笑声)おととい言つておつたことときよう言つておることと違うような社会党じやない。  そこで私はお伺いをしたいことは、結局これは大企業の脱税擁護の法律になりはしないかということなんです。質問の核心はそこにあります。ということは、現実に査察をすれば脱税が行われておるのです。それだからそういうような脱税をせしめないためにこの法律がある。何人といえども、人を雇つて商売をやつておる人は、そういう不正なことを行えば、結局第三者通報制というような水も漏らさぬような制度があつて脱税はできないようになつておりますぞという、すなわちこの所得税法における五十四条、法人税法における四十条は、この税法に対して水も漏らさぬ完備した体制を示す条文であろうと思う。ところが今度ここで脱税しても、それは行政裁判とは行政訴訟とか、いろいろなことが制度としてはあるでありましようけれども、これは訴訟手続というものはどういうものであるか、御案内の通りである。その事実をあなたの方へ通報すれば、ただちにそれによつてそれぞれの活動は開始されるのだ。裁判というものは、やはり訴訟書類から、あるいは弁護士から、それぞれの手続をして行かなければならないので、そういうような手続はなかなか庶民にはなし得ないものです。従つて企業における厖大利潤の所得者に対して、脱税のでき得ない体制をここに完備しておるところの条文を削除するということは、これは脱税が容易にでき得るという体制をここに新しくつくり出そうとしておるものと考えても、私はあまり思い過しではないと思う。一方において苛酷な大衆課税を強行しつつ、片一方においてはこういう脱税に対して、脱税しやすいような便宜、便法を講じようとしておることは、これは国民何人といえども義憤を感ぜざるを得ないところであろうと思うが、この問題については何べん言つたところで同じような御答弁でございますから、これはわれわれ社会党といたしましては、断じて承服でき得ざるものであるということを十分この機会に述べて、次の質問に移ります。  そこで先般国税庁から税金に関しての輿論を調べましたプリントをちようだいいたしましたが、それをずつと読んで参りますと、その中で結論として答申されておることは、課税されておる低額所得営業者の数の多いこと、このことが最も太い文字で書かれておつたと思うのであります。政府は低額所得者に対する税源をいろいろな面を通じて十分断行しておるのだというようなことを言つておられるけれども、現実にはこれらの全般的な輿論調査の答申は、まだ申告所得税においてその課税をされておるところの低額所得の営業者の数が多いということがそこに述べられておるが、これに対して所管国税庁長官はどういうような考え方を持つておられるのであるか。どうしたらこの低額所得の営業者を課税の対象からはずすことができるとお考えになつておるのであるか。この点をひとつお伺いいたしたいのであります。
  117. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 最近所得税を毎年軽減して参りましたが、私どもその中で一番考えて参りました点は、基礎控除と扶養控除を財政の許す限り引上げまして、低額所得者の負担を緩和するということでございましたことは、春日委員のよく御承知通りかと思います。その結果といたしまして、納税人員も一時に比べますと相当減少いたしております。これも事実で、ございます。ことに農業所得者の平均所得水準が非常に低くて、しかも家族が多い世帯、こういう世帯は猛烈な減り方をいたしております。昭和二十四年度にはたしか三百七、八十万人でありました納税者が、今年は災害等の関係もありまして、百万以下、八十万くらいに減少しておるような状態でございます。それから中小の営業者の場合でも、数字を申し上げてよろしゆうございますれば、申し上げますが、相当減少いたしております。しかし減少したとはいえ、戦時中に比べますとまだまだ非常に多い。これはもう申し上げるまでもない事実でございます。しかも平均以下の所得層が相当数多いところからいたしまして、相当多数の納税者がやはり所得税を納めておるということは、これはもう厳たる事実であると思います。従いましてこの点につきましては、財政事情の許す限りにおきまして、やはり基礎控除なり扶養控除を引上げまして、低額所得者の負担を緩和するということは、私はしごく当を得た処置でございましようし、また今度の改正案におきましても、苦しい財政の中から、そういう趣旨の所得税の改正が行われておるように拝見いたしておるのでございます。徴税にあたりましては、もちろん当然のことでございますが、所得の大きいものから丁寧に調査をする。しかし小納税者といえども、やはり勤労所得が源泉で差引かれておりますので、負担の衡平を期するという意味におきまして、少い手数のうちでできるだけさきまして丁寧な調査をいたしまして、的をはずさない課税をするというように鋭意努力しておる次第でございます。
  118. 春日一幸

    ○春日委員 今回税制調査会の答申案に基いて、基礎控除、扶養控除というようなものがいろいろと引上げられておりまして、従つて標準家庭における免税点というものは、ずいぶん上つておると思うのであります。ところがわれわれが二十七年、八年、九年、これは特に申告所得税について調べてみたのでありますが、二十七年度においては、補正による減等を含めまして八百三十九億、二十八年度は、補正による減を調整いたしまして七百十三億でございまして、申告所得税の税収予算額が三百十三億、そこで昨年度のその税収から、本年度は基礎控除その他青色申告等について格別の控除の措置が講ぜられておりますので、相当減税が行われなければならぬのであります。しかるところ二十八年度の七百十三億に比べまして、本二十九年度はいろいろ減税措置を講じたのだ、そういうことを言つておられるけれども、税収予算額というものは七百十九億八千二百万円、これは相当の増徴を考えなければならない、こういう予算が組まれておるわけでございます。こういうことは、すなわち免税点のボーダー・ラインにある人々、大体これを十七万円と見るか十八万円と見るか、いずれにしてもそのボーダー・ラインにある人々は、普通ならば免税になるのだ、課税対象外になるのだが、しかしこれは税務署の方の手心でどうにもなるものでございまして、たとえばあなたの方の便宜の手段として、現在お知らせの制度があるのだが、現在十八万円の所得課税対象にしておくならば合点が行くのだが、現実には去年は十八万円、二十万円であつたのが、ことしは二十六万円だ、三十万円だというようにお知らせが発送されております。そのお知らせを納得しない者には、手きびしく更正決定をもつて臨もうとしておる。そうすれば、この減税というものは何にも意味をなさないではないか、そういうような方法を講ずることによつて、税の徴収権、決定権を行使することによつて、現実には昨年度よりも相当額の増徴をする、ここに疑問を持つわけであります。制度としての基礎控除、扶養控除の引き上げにもかかわらず、現実にはこういう増徴が行わるのであるが、これは一体どういう操作によつて増徴を見込んでおられるのであるか、この徴税の現場を担当されておる国税庁長官のお心構えを伺つておきたいと思うのであります。
  119. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 数字が一番正直でございますから、数字で申し上げます。今私不確かなものを申し上げまして恐縮でございました。正確な数字を申し上げますと、農業所得者は、先ほど二十四年度三百七十万人と申しましたが、これは私の記憶違いでございました。二十三年度が三百七十三万人、二十四年度は三百二十万人、それが二十七年度の実績は百十三万人、二十八年度は、これは見込みでございますが、六十六万人くらいに減る、こういう概況でございます。従つて農業所得者に関する限りにおきましては、本年度は一番多いときに比べまして、五分の一くらいの納税者になるということでございます。  それから営業所得者につきまして申しますと、二十三年度が二百三十六万人の納税者、二十四年度が二百二十四万人の納税者、それから二十七年の実績は、百三十三万人の納税者に減つております。百万ほど減つております。二十八年は見込みでございますが、百二十四万人程度に減る、こういう状況でございます。  それから先ほどお知らせとか、更生決定のお話がございましたが、原則論を申し上げて恐縮でございますけれども所得税はやはり実際に所得を把握する、納税者に実際の所得を申告してもらう、税務署においても、実際の所得をできるだけよく調べまして、申告指導もやり、更正決定もやるという建前でございます。この四、五年来やはり年々所得がふえております。これは昨年におきましても、やはり一昨年に比べますと、何と申しましても売上げ等を調べましてもふえておりますし、精密な調査をいたしました納税者の場合におきましても、的確に所得のふえておる納税者が多い。しかし全部ではございません。従来ややともすると一律になる弊が多いという非難もございまして、本年は特にその点について注意させたような次第でございます。やはり所得がある程度ふえますと、控除が引上げになりました場合において、所得がふえない場合ほど減らない、これは事実でございますが、しかし年々所得がふえまして、なおかつ税法の改正の方がそれに先走つて、それを越えて引上げられておる結果が、先ほど申し上げましたような数字になつておる次第でありまして、その点御了承願いたいと思うのであります。私は、あくまでも所得税は実際の所得を把握して税をかける、それの一番いい方法は、青色申告により納税者に記帳していただいて、それに基いてやる、それでありますから、税務署が更正決定をやる場合におきましても、あとで帳面のどこが悪い、どういう点が計算違いであるかということを指摘しないと、更生決定ができない、こういう納税者課税上の非常な大きな武器に実はなつておりまして、私の方からいたしましても、帳面なくして概計で推定課税するのでは、どうしても真相がつかめない、やはり帳面についてそれを丁寧に計算いたしまして、適正なる税額を把握するというのが一番よい方法だと考えまして、最近特に青色申告の増加に力を入れておる次第でございます。昨年簿記の方法も思い切つて簡素化いたしました関係上、約二倍くらい青色申告が増加しております。今度この税法改正で、さらに妻控除を認めていただくはずになつておりますから、この法案通りますれば、さらに四月一ぱい増加運動をいたしまして、そういう正しい課税ができる方向に一層努力いたしたいと考えておる次第で、ございます。
  120. 春日一幸

    ○春日委員 御答弁によりますと、いずれにしてもお知らせなるものは、結局正確な所得を対象としてそういう通告を発しておるのだ、こういうことでございます。私どもの主張は、生活費には課税すべきではない、年収二十四万円以下の標準課税は税金のかからぬようにしろということは、私どもの強い年来の主張でありまして、はからずも今回税制調査会の答申案も、年間二十四万円の低い所得に対しては、やはり課税すべきではないというようになつておる、これは常識になつておるのだ、こういうような答申を出しておるのでございます。問題になりますのは、結局二十万円以下の低所得者、これに対するあなた方のお知らせなるものの影響力についてでございます。あなたは正確な所得をねらつてお知らせを出しておるのだということでありますけれども、少くとも二十万円以下の零細業者たち、こういうようなものには、帳簿があるところもありましようが、その大部分の者は帳簿がない、こういうような人々に対してあなた方がお知らせを出しておるのだが、お知らせを出す限りにおいては、相当の調査がなければならぬのだ。   〔委員長退席、淺香委員長代理着席〕 現実にあなた方のお知らせば、調査もなし、何にもなしにぱつとこれが出て来る、なまくらな中学の先生が試験の採点をするのに、扇風機の前に答案を持つて行つて、ふつと吹かせて、遠くから百点、九十点というふうに点をつけたということを私は年少のころに聞いたことがあるが、今の税務署のお知らせば、あたかもそんなようなもので、そこは三割増し、その業態は去年の四割増し、あすこは景気がよかつたから五割くらい増せ、こういうことで、すべて去年の確定申告なるものを標準にして、何割増しということで水増し決定がお知らせの形態をもつて本人に恐ろしい脅威を与えておる。これは一体どういうことでありましようか。あなた方がそのお知らせをお出しになるというこのことは、すでに事実調査に基いてお知らせをお出しになつておるかどうか。的確なる所得に対して、これを課税対象とするのだ、こういうことでございます。だとすれば、それが正確な所得であるかどうかということには、やはり事前の厳密な調査がなければ、お知らせなどというもので機械的に処理できるものではない。はたしてこんな調査が行われておるのであるかどうか、この点をひとつ明確に御答弁願いたい。
  121. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 簡単に申しますと、もちろんできるだけの調査をいたしておるわけでございます。これは今度春日先生が国政調査においでになるときに、私も一緒に行きまして、どういう調査をしているかつぶさに見ていただくのが一番いいと思いますが、必ずしも十分な人間でございませんので、すべての納税者に収支の精密な調査ができているかということでございますと、これは遺憾ながらそうは行つておりません。でございますが、大体毎年九月ごろから調査に着手いたしまして、一月ごろまでに相当な納税者につきまして、ある程度丁寧な調査をやります。丁寧な調査のできない納税者につきましても、戸順調査とか、あるいは探聞調査とか、いろいろな方法によりまして、できるだけ帳面のない納税者につきましても、雇い人の状況なり、あるいは商売の状況等も個別的に調べまして、そういうのをもとにいたしまして調査額をきめる、一応きめたのに基きまして、実は今申告につきまして、こちらといたしましては親切のつもりでお知らせいたしておるわけでございます。しかしこれはもちろん更正決定でも何でもございませんので、そういう法律上の効果は全然ありません。お知らせ額に御不満の方には税務署に来ていただきまして、よく説明をし、お互いに話をいたしまして、正しい申告が出るようにいたしております。それでもどうしても話がつかない納税者が相当ございまして、今ちようどそういう納税者につきまして、必要に応じて、最初に調査した事項以外のことを本人が申し立てられまして、もつともな節があるような場合はさらに調べまして、そして修正申告なりの指導をいたしておるわけでございます。それで税務署が自信があると思うにかかわらず申告が出て来ない場合に更正決定をする。その場合でも、なおまた納税者が御不満の場合は、再調査の請求を正式にやつてもらう。そしてもう一ぺん税務署で調べますが、それでもなおかつ御不満の場合は、審査請求になりまして、税務署外の国税局に直属いたしております協議団で、比較的老練な者がもう一ぺん調べ直して、できるだけ公平な課税をするという手続に実はなつているわけでごいます。お知らせというようなものは、そういう意味のものでしかないということを御了承願いたいと思います。しかしできれば、こういう方法はできるだけ将来は幅を少くして行きたい。青色申告者についてはそういうことはいたしておりません。事前に決算書等を見まして自発的に正しい申告が出るように慫慂いたしております。それで相当の成績をすでに収めつつございます。従いまして、青色申告がふえますれば、おそらくお知らせといつたような便宜の方法も漸次少くすることができるのではないか。ある程度期間を要しますが、そういう方向に申告所得税の運用を持つて行きたいということで、目下いろいろなくふうをいたしおる次第でございます。
  122. 春日一幸

    ○春日委員 ただいま長官から国政調査の御慫慂を受けましたが、そういうお勧めを受けるまでもなく、私どもは昨年の第十五国会当時、各地の税務署、国税庁等に参りましで、つぶさに徴税行政の実際を調査さしていただいたのでございます。そこで私どもがどうもはつきりわからなかつたことは、このお知らせの制度であります。このお知らせの制度なるものは、国税徴収法所得税法のどこを見てもない。一体これはいかなる法律の根拠に基いておやりになつておるのであるか、この点をひとつお伺いしたいと思います。
  123. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 先ほども申し上げましたように、親切の意味で事実上やつておるということでございます。従いまして、法律上の拘束力は全然ございません。
  124. 春日一幸

    ○春日委員 国会はあなた方に国権をゆだねております。ところがそのゆだねる範囲は、法律の条文にこれを制限列挙いたしております。あなた方の裁量とか、あるいは法律の限度限界を越えて親切を押し売りするとか、あるいはその法律の限度限界よりしりぞいてこれをずさんにするとか、そういうような裁量は許しておりません。法律できめてないことを何でやるのでありますか、ただいま平岡君から、そういうようなことはあたかもいんぎん無礼という言葉が該当するから、この言葉を使つて攻撃しろという助言を得たのでありますが、いんぎん無礼という言葉たるや、まことに言い得て妙であります。あなた方や税務署員にとにかく何も権利を与えておらない。お知らせなんて、そんなむちやくちやなことをしてはいけないのです。申告納税制度というものは、これは現行税法の背骨であります。申告しようと思つておる。ぼくはどうも昨年が二十万円だつたし、いろいろそろばんをはじいても、二十万円以上の所得はない、二十万円で申告しようと考えておる。そこへお知らせがぐつと来る。貴殿の本年度の所得は三十万円であります、こういうお知らせが来れば、しかも相手が税務署であります。あなたは親切にお知らせを出すと言われておるが、納税者は、税務署は御親切な方だと思うかどうか、立場をかえてお考えなさい。今年は二十万円と申告しようと思つておるのに、あなたは十五万円でいいというようなお知らせが来るならば、これはえらい親切な話だと思うのでありますけれども、現実にはみんな彼らが考えておるよりも三割なり五割なり、ひどいのになると七割も水増ししたところのお知らせが来る。しかもそのお知らせたるや、国税徴収法においてもどこにも規定していない。そんな権限をあなた方に付与してはいない。付与していないところの権限を行使するということは、これは職権の濫用ではないか。基本的人権の蹂躪ではないか。これは民主的な徴税制度をあなた方みずから蹂躙するものであると思うが、植木政務次官はこの重大なる法律規定にない徴税方式に対して、どういう責任を感じておられるのであるか、しかもこのお知らせ制度なるものを今後も持続するお考えであるかどうか、この点を責任ある御答弁を承りたいのであります。
  125. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 先ほど親切だと申し上げました趣旨を、もう少し若干敷衍さしていただきまして、説明さしていただきたいと思います。お知らせは、先ほど申し上げましたように、法律上は別に何も拘束力がございませんので、別段納税者がそれによつて申告しなくとも、それは法律上の制裁も何もあるものではございません。それから親切と申しました意味は、税務署である程度調査をいたしております。全然そういう指導をしないでほつておいて御申告を願うと、今までの実際の状況から申しますと、どうもまだ申告所得税の本来の動かし方に納税者の方もよくなれておられない関係もございまして、どちらかと申しますと、低い申告が多く出て来る。そうなりますと、あとで税務署が今度修正申告、更正決定というようなことで、爾後に納税者との間に非常にトラブルが多くなる。これは税務署側といたしましても、仕事の能率、運営がうまく行かないおそれがあるのでございまして、納税者側といたしましてもなかなかめんどうくさいことになりまして、おもしろくない点が多々あるのではなかろうか。そういう状況でございますので、むしろ軽い意味の事実上のお知らせを事前にいたしまして、それに基いてできるだけ税務署に来ていただきまして、申告額について具体的に実は話をして、それで申告をしてもらう、こういう手続をふんでおるわけでございます。しかし申告所得税の理想から申しますと、今春日委員お話通り、そうしたことをやらないで、期限までにはまつたく自主的に申告をしていただいて、しかもその申告が大体実際の所得に近くて、あとで大してトラブルが起きない、こういう方向に行くのが私は理想だと思います。従いまして、現状としましてはやむを得ないが、将来はだんだん幅を狭くいたしまして、こういう事実上の御親切もなくて済むような申告及び調査をするように持つて行きたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  126. 植木庚子郎

    植木政府委員 ただいま平田政府委員からお答えしましたのを裏から申し上げるようなものでありますが、このお知らせという問題は、法律で定められた制度ではありませんが、もしこれをやらないで、法律に定めてある通り所定の期限までに自発的に申告をしていただいて、そうしてそれを調査して、いろいろその事後の処理をするということになりますと、やはり事後において税務署との間を行つたり来たり、あるいは税務署が出かけたりということが相当起るわけであります。それを事前に、当該年度における当該業況の調査の結果に応じてその人に対して、これくらいになると思いますが、念のため御参考までにお知らせしますと、事前に御通知をすることによつて、御本人の方でもそれによつて、かりに春日委員のおあげになりましたような例の、二十万円ぐらいで申告しようかなと思つておられた方が、税務署が二十四万円だといつて来れば、二十四万円ぐらいならやむを得ないから思い切つて出そうという方も出て来ると思います。そうした場合には、事後にいざこざをするつまらぬいきさつがそれだけ少くなる、こういう意味で、お互いの手数が省け、若干でも税務行政がスムーズに参る、かように考えて今日まで実行しておるのであります。なお今後の問題といたしましては、これまた長官の申し上げました通り、この範囲はだんだん狭まつて来るだろう、かように予想いたしております。
  127. 春日一幸

    ○春日委員 現在の日本の政治制度は、その民主主義憲法によつて、あらゆる行政の基本的なあり方ということが厳粛に規定されておるのであります。そしてこの憲法は、基本的人権のことを最も大きく規定をいたしておるのであります。刑事訴訟法においては、自白を強要することができない、あるいは人殺しやどろぼうや火つけ、そんなものすら黙否権を行使することができるわけであります。ありのままの姿で物事を処理して行くというこの形式が、ここに規定されておると思うのであります。そこでこの税金の問題についても、所得税法、あるいはまた国税徴収法、そういうもので、国が権力を税務署員に付与する場合におけるその行動の限界点というのが、ここに厳粛に規定されておる。誘導尋問もこれは法律違反であります。それと同じように、あなたが親切ごかしでお知らせを出しておられるというのであるけれども、こんなものが親切だと言つて国民が感謝するはずはだれもない。自分がこのくらい申告しようと思つているところへ、あなたの方から手きびしいお知らせなるものが来れば、それに影響を受けるということは当然であります。これは自白の強要であり、軽く見てもこれは誘導尋問であつて、法的根拠を持たないものであります。そういうような悪い執行をしてもらつては困るではありませんか。それは国民が困るのです。国会があなた方にそんな権限を付与していないことを、あなた方がかつてに親切——親切であつてもいけないのです。不親切であつてはなおさらいけないのだが、親切とか不親切とか、感情によつてそんな法律を執行してはいけない。法律制限に列挙している通り、その範囲のことを行えばそれでよろしい。そこでそれがあくまで親切なら親切だと仮定いたしましても、その親切に基くところのそのお知らせの決定額の通告なるものが、ほんとうにあなた方が的確なるところの所得として調査の上、これが送達されるものならばあるいはまた親切であるかもしれないと思う。ところが現実にはてんで御調査がなつてはいない。また現在のあなた方の徴税能力をもつてしては、その一つ一つに対して的確な調査をするなどということは時間的にも能力的にもそんな余裕があり得るはずはない。それで現在の申告制度が悪いとするならば、その法律を改正しなければなりません。法律をそのままほうつておいてそうして申告制度というようなものをきちつと確立しておきながら、申告制度を根本的に蹂躙するような、こんなお知らせ制度というようなものはあつてはならないのです。法律に欠陥があるなら、なぜその法律を改正するという態度に出て来られないのでありましようか。この点ひとつ渡辺主税局長から御答弁をお願いしたいと思います。
  128. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 やはり現在の日本の税制におきましては、申告納税制度でやつて行くのが一番いいじやないかというふうにわれわれは思つております。ただこの過渡的な時期におきまして、この申告納税制度をうまくその本旨において生かして行くことにつきましては、税務当局でも納税者におかれましても、ほんとうにこれを生かすまでの間に時間がかかるということのゆえに、今いろいろ御議論がございましたが、お知らせ的な過渡的な措置がなされているのでありますが、これはどこまでも過渡的なものであり、結局この税制をほんとうに生かして行つてこそ、日本税務行政における民主主義化の実現ができるのではないか、かように思つておりますので、そういう意味におきまして、この申告納税制度の根本をかえて行くということについては、現在われわれは考えておりません。どういうふうにしてこれをほんとうに生かして行くかということについて、国税庁にも御努力願つている次第であります。
  129. 春日一幸

    ○春日委員 ただいま過渡的便法としてお知らせ制度を併用して行つているのだという御答弁でございますけれども、それならそれで、それは法律規定しなければいけませんぞ。この申告納税制度というものを施行するが、しかしながら過渡的な段階において、当分の間お知らせ制度を併用することができるとかなんとかいう法律規定がなければならぬ。そういう法律改正をなさらなければならぬということは、私が申し上げるまでもなく、渡辺主税局長が十分御承知のはずであります。そこでこれは私の私見でありますが、現実にはあなた方の税務署員の定数をもつてしては、一人々々に対して的確なる所得額を調査把握することは、これはおそらくアブソリユート・インポシブルであります。そこであなた方がやむを得ずして、こういうお知らせというようなことで、見込みでお知らせ額を送達しておられるわけでありますが、それは明らかに法律違反であり、国民がこれに困つている。だから現在の申告納税制度と、それからあくまで税制を民主的に推進して行くという考え方と、さらにはまた正確なる所得を把握して行くというこの考え方の上に立ちまして、そういうような官僚的なお知らせ制度というものをやめて、これにかわる、すなわち団体納税制度、こういうようなことをひとつ考えてみてはどうかと私は思うのであります。団体納税制度は、現在制度としてはこれを認められておりませんけれども、三人寄れば紋珠の知恵とか、あるいは岡目八目一とかいう言葉もあります通り、お互いの業種業態によつて団体交渉を税務署とする。そうすれば高い者は不満でありますから、お互い内輪同士でその理由を述べて、同僚たちに了解を求めるのでありましよう。過小の申告をしている者には同僚たちが、あなたがあまりにも少いことのためにわれわれが余分に納めなければならない、あなたはなかなか内福のようだから、もつと申告してもらわなければならない、こういうことによつて、現在のこの官僚的なお知らせ制度にかわつて、民主的な、グループ内における調整が行われるのではないかと考える。従いまして、この際法律に違反をするところのお知らせ制度を廃止して、これにかわるところの団体交渉、団体納税制度を制度化する考えはないかどうか。ないならばその団体制度のよつてもたらすであろうところの弊害は一体何であるか、この機会に渡辺主税局長の所信を承りたいと思います。
  130. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 団体交渉制度といつたようなものにつきましては、やむを得ざる手段だつたろうと思いますが、かつて一応そういう姿のものが事実上ある程度なされたことは存じております。その結果を見ますと、おそらく春日委員がねらわれている面より、むしろ非常に逆な面になるのではないかというふうにわれわれはおそれております。まず第一の問題としまして、業者団体なら業者団体の全体の所得というものをどうきめるかということが、まず第一に出て来なければならないと思うのであります。これは春日委員承知のように、結局各個人の所得の集積があつて、その団体の構成員の所得が一々きまりまして、初めてその団体の所得がきまらなければならぬものですけれども、それを逆にそうした帰納的にきめないで、演繹的にきめるために、団体全体の所得をまずきめるとすれば、これは正確にきめることは非常にむずかしうございまして、むしろ一人々々に当つて初めて総額がきまるという性格のものでなければならぬ。従つて今度はその団体の額がきまつた場合におきまして、それが正しいか正しくないかということがまず第一に問題になります。第二には、今春日委員お話でございますと、同じ団体交渉でも、まず団体の総額をきめて、あと団体の内部の額は団体に相当広い権限を与えるといいますか、まかせる、一口に言えばそういう意味お話のように伺いますが、そうしますと、それがはたしてうまく適正に行くか行かぬかという点に多分に疑わしいものが出て参ります。と申しますのは、過去におけるいろいろな経験からと申しますると、こういう団体のいわゆるボスといわれる人が、自分の負担を小さな人の方に押しつけているのではないかというふうに疑われる節が非常にしばしば出て参りまして、実は団体交渉といつたものに対する批判がその面からかつてずいぶん出たことがございます。そういつたように、一応事実問題としていろいろ見て参りました結果を考えて参りますと、せつかくの御意見でございますが、団体課税といつたような方向は、少くとも現在考えられている民主的な税務行政の方向からいえば、全然逆な方向に行くおそれが多分に、ございまして、ちよつとこれを採用するという気持にはなつておりません。
  131. 春日一幸

    ○春日委員 団体納税制度のよつてもたらす弊害が多いと言われておりますけれども日本も新憲法が施行されましてからすでに八箇年間、民主政治というものは非常に進歩しつつあると思うのであります。これは自由、平等、正義という立場に立ちまして、いろいろと批判力が強く、またその能力も高まつておると思うのであります。あなたのおつしやるように、強い権力を持つところの役員とか理事長とか、そういう者が自分の権力に隠れて不正な申告をしておるということになれば、その男は必ず民主的な部内の批判を受けて、その事柄をやはり修正せざるを得ないような結果になりつつあるわけであります。不正は許されておりません。またその不在は、いろいろ摘発する手段もあろうと思うのであります。私は現在あなた方がおやりになつておるところの現行のお知らせ制度なるものが完璧なものであれば、こんな考え方を申し述べることはないのであります。あなた方が調査をなさらないで、法律規定もしていないのに、計画徴税を行おうとすれば結局このお知らせなるものを出さねばならないという立場にあるのだが、このことははなはだ弊害をもたらしておるので、その弊害を除去することのためには、何かほかに思案はないものであろうか。それで考えたのが一つの団体納税制度である。しかも現実には一部において、この交渉も特殊のやむを得ざる例外として認められているところの地域も、また業態も、ないわけではないのであります。従つて少数の税務署員によつて多数の納税者の的確な所得額というものを把握することが困難であるならば、それにかわるところの民主的な制度、すなわちおかめ八目によつてお互いの所得を推定して行く。しかも全然そのことは基礎がないとおつしやいますけれども、すでにこの徴税制度がしかれておるのでありまして、戦後におきましてもすでに八箇年間、さらに新しい制度によりまして、それぞれ基準数字というものが現われております。昨年度この人はこのくらいであつた、事業が発展したり衰退したりすればこれくらい減るということは、腰だめとかなんとか、その程度のことで案外正確な数字が出て来るものであります。税務署員が一ぺんも調査しないで、去年二十万円だつたから今年三十万円ぶつかけてやれ、びつくりして交渉しに来たら、まあ二割くらい負けてやれという現在の査定方式より、その民主的な制度をつくつた方がはるかに効果的であり、しかも権威のあるものであり、少くとも法律に違反するというようなことはないであろう。しかも民主政治というものが貫かれていると思うのである。これに対して平田国税庁長官はどういうようにお考えになつておりますか。徴税の現実の当面者といたしまして、ひとつあなたの経験と実感に基く御答弁を願いたい。
  132. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 率直に申し上げまして、先ほどの言葉を繰返すようになりますが、今度私と春日委員と同行いたしまして、税務署の実情を一ペん見ていただきたいと考えておりますが、一向調査をやつていない、見込みだけでぽんぽんやるという言葉だけは、遺憾ながらそのまま受取るわけには参りませんので、御了承願いたいと思います。所得につきましては、もちろん十分手がまわつて十分な調査ができているというところまでは、遺憾ながら申し上げがたい。しかしながら先ほど申し上げましたように、相当な納税者につきまして、やはり納税者のところに行きまして、半日、一日、あるいは場合によりましては二日くらいの日数を要しまして、相当な調べをいたしておるのでございます。それほど丁重な調査をいたさない場合におきましても、先ほど申し上げましたように、たとえば斬髪屋さんになりますと、いすの台数がどうなつておるか、大体一日どれくらい入るだろうかというくらいのことは、現場に臨みましてそれぞれ調べておるのでございます。   〔委員長退席内藤委員長代理着席〕 そういうものに基きまして調査額を出しておるような次第でございますので、単純な見込みでやつておるとか、あるいは二割やそこらを簡単に直しているとかいうようなことは、全然そういうケースがない、百万のうちに一つもないとまでは言い切れませんが、そういうことをあげまして全体の調査が非常にずさんだというふうに御指摘願いますと、どうも若干私どもの方も困ることがございますので、その点はこの機会に実際を申し上げたいと思います。  なお団体利用の点につきましては、これは率直に申し上げまして、戦時中どうにも人手がなくてできなかつた場合におきまして、団体の意見を聞いて、順位、指数等に基きまして所得額を出させて、話合いできめたこともございます。しかしその点につきましては、先ほど渡辺主税局長から申しましたように、遺憾ながらどうもやはり弊害が相当に多い。今日は大分よくなつているとおつしやいますが、私は事柄の性質上、そういうものにつきましては、やはりそういうふうになりがちだと思うのでございます。私どももちろん団体につきましては、資料の提出、意見の聴取ということは、現在といえども必要に応じてやつております。まじめな団体である限りにおいては、できるだけいたしておりますが、個々人の所得をあくまでも税務署は責任を持つてきめる、この責任態勢は明らかにしておきませんと、いいかげんなことになる。率直に申しまして、地方税の一部に、どうもやはりそれと反するようなやり方をやつている税があるようでありますが、これは長い目で見ますと、やはり弊害が多くて、うまく行かない。従いまして、若干むずかしい方法でありますが、所得税につきましては、やはり個々の所得、帳面に基いて自分も計算して申告するし、税務署もそれを記入する場合におきましては、帳面を調べて、なお申告が悪いものは指摘いたしまして更正決定をやるという方法が、所得税行政の今後のあるべき姿であると思います。そういう意味におきまして、繰返すようでありますが、青色申告の線を伸ばして行くが、そうでない納税者に対してもできるだけ丁寧な調査をいたしまして、まじめな申告が出ることに努めまするとともに、正しい更正決定をやつて行くということが、やはり所得税の将来を考えますと、基本的に向うべき道ではなかろうか。そういう意味におきまして、この際団体課税、割当課税的な行き方はやはり避けるのが本筋じやないだろうか、このように考えている次第でございます。
  133. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 今平田長官からのお話がございますけれども、実際各税務署において、徴税方法とか、あるいは決定なさいます場合においても、一人の税務署員で大体四百五、六十、多いところでは五百くらい受持つております。そのくらい多くを受持つておりますので、実際は、まじめに調査いたしまして決定をするのがまあ二割、あと八割までは認定できめるのだ、こういうふうに言つております。そういう点、長官は長官室にすわつておられて、こまかいことはわかるまいと思いますが、私たちはそういうことを税務署の係の人から聞いております。そこに無理をするから、この間われわれこの委員会で決議いたしましたように、非常に結核患者等も多くなつて行くというようなことであります。そういう点は長官はどうお考えになつておりますか。
  134. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 大体所得税の受持ちは、全国平均で行きますと、営業者の場合三百五十くらい受持つてつているようでございます。大阪局管内は定員が少し少い結果、若干多い実情でございます。久保田委員の今のお話は、おそらく大阪局管内のことだろうと思いますが、やはり大阪は全国平均より受持ちが多いようであります。そういう点につきましては、定員法の改正に伴いまして、今度は若干修正すべく、定員の配置を考えているような次第であります。それにいたしましても、御指摘の通り三百四、五十人受持つている。そのうち少くとも二割くらいは、御指摘の営業者の帳面に基いて、できれば収支調査、できなければ少くとも売上げ基本調査というように、これは事実に基いて、的確度をつかむように指導いたしております。従いまして、調査は相当行き届いているはずだと思います。しからばその他の納税者はいいかげんにやつているかと申しますと、これは率直に申しまして、調査の方法はそれほど丁重ではございませんが、やはり戸ごとに行きまして、営業の状況、さつき申しました店舗の状況、雇い人の状況、あるいはごく短期間の売上げ等の状況、その他経営の事情等もできるだけ経営の責任者に会いまして、話合いの上で、いわゆる比較権衡といつたような方法を講じまして、最後に調査額をきめる、こういうやり方をいたしているわけでございます。その際、やはり熟練度が十分でありませんとか、あるいは先ほど御指摘のように、人手が必ずしも十分でないといつたような事情から、やはり調査に粗漏があることは事実でございまして、そういうものにつきましては、更生決定後におきましては、さらに協議団等で調査いたしまして、正しい所得に直すという幾つかの道を講じまして、できるだけ正しい所得を見出すようにということを考えている次第でございます。私も税務署へ行きますと、すぐ帳面を持つて来いというので、いつも帳簿をめくつて見るのでございますが、最近は三、四年前よりも署員の能力も高まつて参りまして、調査の方法もよくなりつつあります。しかしながら、まだいかんせん平均年齢は二十七歳くらいでございますし、経験年数も五、六年でございまして、これではまだまだ不十分であると私は思います。理想から申しますと、経験年数が少くとも平均十年くらい、平均年齢も三十二、三歳の人が実際の所得調査に当ることが望ましいのでありまして、こういうことに税務署員も漸を追うて持つて行きたい。そうしますと、調査の方もさらに一段とよくなるのではないかというふうに期待いたしている次第であります。せつかくそういう趣旨で勉強いたしている次第でございますので、御了承願いたいと思います。
  135. 久保田鶴松

    ○久保田(鶴)委員 長官のおつしやいましたことは一応わかりますが、どうしてもここには無理がある。そこでこの間、委員会で決議いたしましたことに対しまして、すなわち人員整理等の問題が今問題になつておりますが、ただいま申しましたような、無理のあるのに人員整理をするという問題は、長官はどういうふうにお考えになりますか。
  136. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 この問題は、先般井上委員から御質問がありましてお答え申し上げた次第でありますが、率直に申しまして、税務だけの見地から理想を申しますと、やはり人手は十分でないと思うのでございます。しかし一方におきまして、行政整理ということは今輿論になつているような情勢でございますし、またそうでなくても、私どもできるだけ少い人間、少い経費でいい仕事をするということは、役人として当然のことでありますので、そういう点も考えまして、仕事のやり方、一方において事務の簡素化もできるだけはかりまして、ほかの方面に人間を振り向けまして、それほどでない方面は若干省くといつたようなくふうをいたしますれば、何とかやつて行けるのじやないか、そういう意味で実は原案に応諾いたしているような次第でございます。その際におきましても、御指摘の直接調査なり、帳簿の調査に従事しておりますような署員はできるだけ減らさないで、その他の間接的な内部の資料の整備だとか、帳簿の整理といつた方面に当つている部面をできるだけ節約いたしまして、調査の徹底、徴税の的確ということにつきましては遺憾なきように配意して行きたい、かように考えている次第でございます。
  137. 春日一幸

    ○春日委員 ただいま平田国税庁長官の御答弁でありますが、人間はたれだつてかさつ気とうぬぼれのない者はない。それで、あなたの方は団体納税制度だと不公正なものが現われて来る、それで税額の決定というものはあくまでも税務署がやらなければならぬ、税務署は正確だと言つているが、それはあまりにも官僚的な独断なんです。これは一人よがりです。私が申し述べたいことは、結局あなた方のような世の中の世情にも深くたけて、判断力も、学識経験も深い人たちが、これはこれくらいに査定するというので一々やられるということになれば、これは税務署員的な感覚でおそらく正鵠をずいぶん把握できるだろうと思う。けれども現実に税務署の前線で処理をしている諸君は、これを申し上げてははばかるが、中学校を出て来て二、三年立てば前線に行つてしまうのです。非常に若くて、また経験の乏しいような人たちがそういう大きな国家権力を現実には行使しておるのです。さらにあなた方は定数が少いものだから、自分で、たとえば課長とか係長とか、比較的経験豊富な諸君がみずからその処理をすることは許されない。結局若い、経験の乏しい人たちがそういう団体的な、たとえば歯医者さんの団体はこれこれ、げた屋さんはこれこれとかいうようなことで、所管の業種別に大体更正決定なりそのお知らせを出してしまわれる形になる。だからあなた方が、おれたちは正しいのだというような一方的な偏見でそういうように思い込んでしまわないで、これはやはりおか目八目というか、みんなで寄り合つて話し合うというような考え方もあるいはいいのではないか、こういうようなことを十分考えられて、特に現実のれつきとした問題は、いずれにしても法律にないことをあなた方がやつておられることについては、やはり何分の呵責もあろうし、そういうことが許されておるか、許されてないかは、現在は自由党がむちやくちやにやつておるからそれで済んでおるけれども、これは社会党のような法律を尊ぶ内閣になりますると、とてもとてもそんなむちやくちやは許されるものではない。だからその過渡的な便宜、便法というものにもおのずから限界があるのです。いいですか。自由党内閣が更迭しても、この徴税制度はやめるわけに行かぬ。あくまでも合理的に、そして法律に基いた執行ができるように、国税庁長官としてはやはり国家的責任に基いていろいろ配慮、検討を加えて行かなければならぬと思う。だからそういう独断を十分お慎しみあつて、そうしてそういうようなお知らせ制度は可及的すみやかにこれを廃止して、これにかわるところの民主的な一つの徴税制度を考えられるべきであると思うが、この制度をおつくりになるところの責任者である平田国税庁長官は、これに対してどういうお考えをお持ちになるか。さらに御見解を承りたいのであります。
  138. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 私は、役所で責任を持つてやる、この意味をちよつと敷衍して申し上げておきたいのでありますが、団体課税をやりますと、率直に申しまして、役所側が責任のがれをいたしまして幹部の責任としてしまう。幹部が非常に正しい人でありますと、これはまたうまくさばいて行く場合が多いと思いますが、遺憾ながら必ずしもそれを期待するわけに行かない。しかもそういう団体というものは、別にむずかしい制度としてでき上つておるわけではない。便宜に何かの団体を利用するほかはないと思いますが、そういう態勢のもとにおきましては物にそうでありますが、やはり所得というものは個人の問題である。その個人の所得につきましては、個人がやはり申告義務者として正しい申告をする責任がある。正しい所得を決定するという責任はやはり役所で責任を負いまして、そのかわり課税の紛争はやはりどしどし文句のあるところは言つてもらいまして、そうして責任の所在を明らかにして行政をやつて行く、これが一番合理的な、民主的な制度じやなかろうか。従いまして、役所の内部におきましても、同じ者にやらしたのでは結局最初にとらわれるという点もありますので、協議団というような組織もつくりまして、税務署の調査の決定に不服のある方は協議団にどしどし要求してもらつてつてもらう。ポスターも最近泣き寝入りは古いというポスターをつくりまして、税務署へこれから張りつけようと思つておりますが、そういう行き方で行きますのがほんとうに民主的な、合理的な納税課税の方法ではなかろうか。実は私はそう思つておる次第でありますが、さきの責任の所在に関連いたしまして、さらにつけ加えさせていただきたいと思います。
  139. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 私も平田国税庁長官と同じように考えておりますので、現在の制度を実行の上において生かして行くということを、この上とも考えて行くべきではないか。従いまして制度そのものについてこれをどうこうするということは考えておりません。   〔内藤委員長代理退席、委員長着席〕
  140. 春日一幸

    ○春日委員 国税庁長官に申し述べますが、あくまでもおれたちは正しい、そういうような意見については、あまり聞く耳を持たぬというかたくなな態度を持つておられますけれども、私は一つ資料をあなたに申し上げる。これはこの質問のためにできた資料ではありませんけれども一つの参考資料になろうかと思われる。先般砂糖税の問題についてわれわれが資料をつくつておるうちに、現在砂糖会社が全国に十九ありまして、これらの諸君が一つの独占的規模で製糖事業を行つております。製糖事業は同じ形態の事業なのです。原糖の割当を受けて、これから砂糖を精白して販売する事業なのでありますが、そういう同じ業体の事業が、その経理の結果がどういう所得になつて現われておるかということなのですが、これを見てみますと、日本製糖のごときは、資本金に対して一九八%というような利潤を上げておる。それから名古屋精糖のごときは二四五%、それから塩水港精糖のごときは一七四二%、日新製糖のごときは、うんと減つて九三%、こういうふうにある業体は一七四二%も利益を上げておるような会社があるかと思うと、他のものは九三%の利益しかしげていない、こういうようなぐあいで、その経営技術のやり方、あるいは損失の落し方、交際費の出し方、中川の酒の飲み方なんて、これはいらぬことかもしれませんが、いずれにしてもそういうような帳簿の技術的繰作によつて、あるものは五〇〇%の利益が上り、あるものは九〇%の利益しかしらない。税金はこの決算書に基いて課税されるということになるんだが、団体納税制度になれば、おそらくこんな不均衡は許されまいと思う。あなたの方はこれだけの原糖の割当を受けて、これだけの事業をやつておる、あなたも私も同じ商売をやつて、同じ原価で買つて、同じような方式でつくつて、同じような価格で売つておる、それである者は資本金に対して千何百パーセントというような利益を上げて、ある者は九〇%の利益しかない、こんなでたらめなことはいかぬ、あなたの方はもつと納めろというような民主的な制肘が加えられて来るんだと思う。ところがあなたの方のこの結果によりますと、これは政府の参考資料として出されたものでありますから、おそらくこの決算書はすでに国税庁によつて確認されたものであろうが、これはむちやくちやなんです。ある者は三〇〇%もうかりました、そういう結果が出て来た、それでようござんすというようなこと、ある者は九〇%しかもうかりません。じやんじやん損失に落してしまつた。ああさようかというようなことは、団体納税制度ならば断じて許されるはずがない。やはり原糖の配給量によつて、大体均衡されたところの税負担をする結果に私はなつて来ると思うのです。私が思うには、これは徴税に対する基本的な論議でありまして、自由党がこれをしんぼうして聞いておつてくれるのも、多少のつらいところもあろうかと思うが、現実には、今こそあなた方が民主的にいかに税金の問題を解決して行くかということについて、何らかの措置を講じなければならない段階に到達しておるのです。本日政治問題の九割までは経済問題、経済問題の九割までは税金問題、税金問題こそ政治問題の九割九分までを占めておる問題なのです。従つて現在の税制はほんとうに民主制度が確立されておるかどうかということは、日本の政治が民主化されておるかどうかというこのことにつながる重大問題です。われわれは民主的に税法をつくつたが、しかしながらこの税法はあなた方によつて守られてはおらないのです。あなたはこういう申告納税制度が制度化されておるのに、申告納税制度を認めないで、お知らせ制度を確立して君臨しておられる。だからこういうことはいけない。法律に違反するから、いけないから何かかわる方法をとらなければならない。何かほかの方法はないだろうかというので新しく思案した結果、私どもはこの団体納税制度によつて、この製糖会社の十九社を調べて見たところだけでも、こんなでたらめになつて来ているのだから、これはだれが考えても変だ。だから変なことは、やはり修正するということについて、われわれか考慮を加えることは当然のことであります。だから団体納税制度は、それは一つの弊害があるであろうが、またそれだけの一つのプラスの面もあろう。あなた方は、われわれのやり方、われわれの考え方、そしてあなたの部下がどの程度おられるか知らぬけれども、その一人々々があなたと同じような感覚と、経験と、能力を持つて国民に臨んでいるわけじやないのです。もつといい方法があつたならば、国民の協力を得てその徴税制度を民主化し、よつてつて日本政治を民主化する、こういう方面へ進んで行くのは、これはいいことだというふうに考えてもよさそうだと思う。私はまだここにこんなにたくさん質問がある。(「休憩々々」と呼ぶ者あり)しかし再開前の申合せに基きまして、この程度で休憩されることでありましようが、私は諸君に申し上げておきたいことは、これらの質問は、あなたが定刻に出て来ておつてくださればもう終了するのです。しかしながらどこかへ飛んでしまつてちつとも出て来られぬから、休憩後引続いて質問せざるを得ない状態である。私は、一つ一つの項目の上で二つの項目が済んで、なお十六項目ある。(笑声)さよう御承知願いたい。そこで私の質問は、休憩後引続いてそれを許されるということを条件にいたしまして、これをもつて質問を一応終ります。
  141. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 ただいま砂糖会社の利益状況についてお話が、ございまして、非常にお話がお上手だから、もつともだというふうに響いたようでありますが、なお一段と内容を調査してみないと、なかなかそう簡単に緒論づけるわけには行かないのじやないかと私は考えるわけでございます。ことに戦後の会社は、払込み資本金というものが非常にでこぼこで、事業の分量に対して非常に払込み資本金が多い会社と、非常に少い会社と、それから積立金の多い会社、、いろいろございまして、非常に資本構成がうまくないので、今度実は国会にも、資本充実に関する法案が、再評価に関連して出ているような次第でございますが、おそらく砂糖会社の場合におきましても、同様な事情があると思います。それからまた利益の状況等も、やはり経営のやり方によつて、相場が動くときには特にやはり違うので、それを一律に行きますのは、それは私は課税の公平を得たものじやないと思います。もちろん内容につきましては、精密な調査をいたしまして、的確な所得を把握するということは必要でありますが、砂糖会社などに割当てるという問題は、ちよつと私ども税金の常識では、それで的確な課税ができるとはとうてい考えられぬような気がいたしますので、もし何なら内容を調べてお答えいたしますが、そのことだけをつけ加えさしていただきたいと思うのであります。
  142. 千葉三郎

    ○千葉委員長 しばらく休憩いたします。    午後五時四分休憩      ————◇—————    午後六時五十六分開議
  143. 千葉三郎

    ○千葉委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  すなわち所得税法の一部を改正する法律案外十五税法案及び米国対日援助物資等処理特別会計法等を廃止する法律案農業共済保険特別会計歳入不足を補てんするための一般会計からする繰入金に関する法律案資金運用部特別会計法の一部を改正する法律案食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案国税収納金整理資金に関する法律案国民金融公庫法の一部を改正する法律案製造たばこの定価の決定又は改定に関する法律の一部を改正する法律案の七法案、合せて二十三法案一括議題として質疑を続行いたします。質疑は通告順によつてこれを許します。   〔「議事進行」と呼ぶ者あり〕
  144. 千葉三郎

    ○千葉委員長 福田繁芳君。
  145. 福田繁芳

    福田(繁)委員 私はこれから開かれるところの当委員会が至つて和気あいあいと円満のうちに遂行されることを念願するために、参考に委員長にこの際一、二点伺つておきたいと思う。  まず第一点は、夕景休憩当時に問題となりましたところの理事会は、お催しになられて一応終つたと存じておりまするが、間違いございませんか。
  146. 千葉三郎

    ○千葉委員長 先ほど五時に委員会を休憩するにあたりまして、理事会を開くという宣言をいたしました。ところがその理事会には、久保田委員から所用のために欠席するという旨の通知があつたのです。そこで理事会を開きましたが、社会党の左派からは御出席がありませんでした。右派の方からは平岡委員が出席中でありましたが、これも途中からお帰りになりました。そこで完全なる理事会ではございませんでしたが開きまして、そうしてこういうことをきめました。午後六時半に再開いたして、そうして約一時間、本会議があるまで質疑を続行しようということをおきめしたのであります。そうしてその一時間ばかりした後にまたそこで理事会あるいは懇談会を開いて、さらにこの法案の運営の問題で相談しようじやないかというだけのことを申し合せたのであります。そこでそれに対する誤解が先ほど、ございましたので、今正式に緊急理事会を開きまして、質問を続行するということの再確認をいたしました。
  147. 福田繁芳

    福田(繁)委員 さすれば本員が先ほどから傍聴いたしておりました、今より約十分ほど前に終えました理事会、あれが正式の理事会と、さように了承してようございますか。
  148. 千葉三郎

    ○千葉委員長 さように了承してけつこうでございます。
  149. 福田繁芳

    福田(繁)委員 なおもう一点伺いたいと思いますが、本員が傍聴しておりますると、理事会散会の直前にわが党所属の内藤理事から発言されましたのに、これから委員会が始まるのでありまするが、重大なるところの動議がいずれの党派から出ようとも、一応委員長は権限の上でそれを取上げられる。但しその動議に対する運営方法は、追つて理事会に諮つた上にするというところの内藤理事から動議が出されたので、それを御了承の上でこれから委員会を始めるものだ。言いかえればそれが前提であるというように本員は了承いたしておるのでありますが、委員長はそれに対してどうお考えになりますか。
  150. 千葉三郎

    ○千葉委員長 ただいまの内藤委員からの申出でありますが、それは私はもう一時間ばかり質疑を続行いたしました後に、その問題についてあらためてお諮りしたい、こう考えておりました。
  151. 福田繁芳

    福田(繁)委員 さすれば、われわれ委員として委員長の人格を信頼いたしまして、これから向う一時間に、可及的すみやにか能率的な質疑があるわけでありますが、その間までには重大な動議はない、こういうように見て取つて、われわれがこれから質問してよろしい、こうお思いになりますか。どうでありますか。
  152. 千葉三郎

    ○千葉委員長 動議はあるかもしれませんが、その都度十分御相談申し上げます。
  153. 福田繁芳

    福田(繁)委員 さすればその出るべきところの動議に対して、内藤委員の御希望のごとくに、一応お取上げになりましても、それを運営することに対しては、同時に理事会をお開きになつて、そうして御相談されるのでございましようか。
  154. 千葉三郎

    ○千葉委員長 委員長といたしましては、さようにとりはからいたいと考えております。
  155. 福田繁芳

    福田(繁)委員 了承いたしました。どうぞ御続行願います。
  156. 淺香忠雄

    ○淺香委員 議事進行。ただいま福田委員からの発言がありましたが、理事会は御承知通り、前日にすでに、五時まで質問を続行し、そうして理事会を開いて、きようまでに上程されておりますところの法案をどう処置するか、操作の問題まで御相談をされたのであります。従つて五時までに質問が終りましたあかつきには、この五時から開かれました理事会において、法案の最後的なお取扱いを願えるものと思つて、私ども与党理事は出席いたしたのであります。しこうして今委員長が言われましたように、正式に理事会を開くと宣言いたされました。しこうして集まりました中には、なるほど今おつしやつたように、右派の方からは平岡君が出席されておりました。途中で退席されましたけれども、その平岡君をして、右派の方の諸君に御伝達を願つているものだと私どもは解釈いたしておりました。しかるにその理事会は、一応懇談会に終られたかのような、委員長のただいまの報告でありましたけれども、私どもは釈然としないところもございますが、しかしながら今日まで委員長に非常に御努力を願い、また野党の諸君にも御理解を願つて、この法案を円満に上げていただきたい。かく思いますがために、委員長承知通り、私ども与党は、今日質問を遠慮いたしまして、すべての時間を野党にお譲りをいたして参りましたことは、賢明な委員長におかれましては十分御賢察あられるところであろうと私は思うのであります。しこうしてただいま開かれました理事会を——決して私は委員長のお説を否定するものではありませんが、改進党の内藤委員からの、動議が与党の方から出ましたあかつきには、委員長においてその取扱いを理事会にさらに諮るというようなことは、これはどうしても私どもは納得できぬのでありまして、今日までこの法案審議する過程におきまして、野党の諸君からたびたび動議が出ました。その動議は委員長において、動議は先決であるという建前におきまして、ただちにその採否を決定しておいでになりました。しかるにわれわれ与党の方から出ました動議に対しては、再び理事会を開いてこれを御相談するというようなことにつきましては、私ども与党としては納得しかねるところでありまして、従つて国会法の規定に基きまして賢明なる委員長におかれましてはひとつ善処されんことを切望する次第でございます。
  157. 千葉三郎

    ○千葉委員長 今の淺香委員の御発言でありますが、私は十分了承しておりますけれども内藤委員の発言したのは、与党からの動議ばかりじやありません。野党、与党いずれから来ても、一応理事会でその取扱いの方法を諮ろうじやないかという御趣旨のように私は考えたのです。ですから、大蔵委員会は今まで円満にやつて来たのですから、ここで突如として与党が少いときに一方から動議が出る、また野党が少いときに一方から出るということだと混乱いたしますから、その取扱い方を一時休憩して御相談した方が、かえつて円満に行くのではなかろうか、こう考えて、せめて一時間ばかりはここで十分審議して、そうしてさらに理事会を開いて、そうしてこの法案をどうするかということを御相談した方がいいのではないか、いわゆる冷却期間と申しますか、それの方がいいのではないか、決して与党を押える意味じやないということを御了承願いたいと思います。
  158. 淺香忠雄

    ○淺香委員 ただいまの委員長のお説に決して私は違背するものではありませんけれども、しかし今日までの議事進行は、野党の方から何回か出ました動議は、くどいようでありますが、ただちに採否を決せられました。ところが今日に及んで私どもが、動議が出るか出ぬかわかりませんけれども与党から出ましたその動議に対しましては、さらに理事会を開くというような前例をおつくりになりますならば、これもよろしいですが、そこで、今後この国会中におきましてこういう動議がいずれの党から出ましても、委員長におかれましては理事会を開いて、そうしてその決をおきめくださるなら、私どもは承諾いたします。
  159. 春日一幸

    ○春日委員 ただいま内藤理事提案に対しまして、淺香理事からいろいろ御意見が述べられました。そこでわれわれ野党側として納得できないことは、しばしばわれわれが動議を出したが、それはそのまま認めて来た云々というお言葉でございました。今日までの過去四箇月にわたる本委員会における内藤理事の運営というものは、私はまことに公正であり、しかも本委員会審議に貢献するところ甚大なるものがあつたと思うのであります。私どもは二箇月ぐらい前で、ございましたか、野党連合の名において、特に社会党両派の主張に基いて繊維税を課税すべきではないという動議を提出したことがございます。その場合といえども内藤理事は、この繊維税課税に対して反対の立場にありながら、こういうような法案の運命に重大なる影響を与えるような動議については、すべからく慣例を尊重して理事会に諮つて、その妥結を得た後でなければ、こういう動議は採決すべきではないという立場におきまして、われわれの主張をしりぞけられた先例をわれわれは想起しなければならぬと思うのであります。われわれは、慣例はやはり淺香委員と同じようにこれを尊重することにおいてやぶさかでないのでありまして、ただいま淺香理事から、今までしばしば動議が出たけれども、これに対して云云という言葉がございましたが、少くとも法案に対して、これを否決するか可決するかというような段階における動議を提出した場合の本委員会の取扱いは、すべて理事会に諮つて、そうして理事会の決定に基いて運営がされているということは、これは先例がここにきびしく証明していることであるのでございます。従いましてわれわれの動議が、時間が来て腹がへつたからこの辺で休憩してはどうかというような動議や、あるいは質問の相手がまだお見えにならぬから、十分か十五分先にお見えになるなら、それまでちよつと待つてみてはどうかという、こういう程度の動議であつたのでありまして、これは淺香君が述べられたような、法案の死命を制するごとき重大な動機については、理事会に諮ることなく決定されたという前例はごうもないのでございます。こういうような意味合いにおきまして、内藤理事の発言に基いての議事についてのおとりまわしこそは、不文律であるところの慣例を尊重する立場におきまして、当然の御措置であろうと考えます。その決定のごとくにおとりまわしを願いたいということを重ねて要望いたします。  なおこの問題につきまして異論がありまするようならば、この問題を議題に供されまして、さらに長い時間をかけて論議される場合に、われわれはこれを迎え撃つにやぶさかなる者ではないのであります。
  160. 千葉三郎

    ○千葉委員長 いかがでございましようか、淺香委員からの御提案もございましたが、動議の中で、委員長が特に重要であると認むるものは、与党からのものであると野党からのものであるとを問わず、理事会を開いてその措置を御相談する、そういうふうにこの委員会では決定いたしたいと思いますが、いかがでしよう。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  161. 千葉三郎

    ○千葉委員長 ではさようにとりはからいます。柴田君。
  162. 柴田義男

    ○柴田委員 所得税及び法人税のことに関しましてお尋ねいたしたいと存じますが、まずこの中の法人税に関しまして、基本的にお尋ねいたしたいと思います。  法人税の条文を逐条見て参つたのでありますが、一般的な軽減をさらに行われていない、こういうことが指摘されると思うのであります。なお特別措置法といたしまして多少改正をされて、資本の蓄積をはかるため、こういうようなことは多少見受けられるのでありますけれども法人税において私どもが最も奇怪だと存じておりますることは、出版の関係法人税に関しまして心を加えておらないことであります。たとえば前には新聞紙等に対しましても、いろいろな課税の方針が政府当局にあるやに聞いておりまするけれども、新聞出版関係等から非常な反対を受けました結果、これは御提案がなかつたけれども、現実に出版関係に対しましてさらに考慮を払つておらない。片手落ちのような感じを抱くものであり、私どもが何も今議論を申しませんでも十分おわかりのように、出版は新聞紙やその他の関係と同一な状況に置かれておりますことは、喋々申し述べる必要がないと思います。たとえば知識の普及でございましても、あるいは文化の向上に寄与することはもちろんで、ございましようしこういう出版の中には最も重要な教科書出版もございます。あるいは一般図書、雑誌等、こういうものが国民大衆に及ぼす浸透力と申しましようか、その深さは非常に絶大なものであると考えるのであります。また公益性から申しましても、非常な性格が強く盛られておるものであります。こういう関係から明治四十何年かと記憶いたしますが、今日に至りましても、地方におきましては地方税、地方事業税の免除がせられております。あるいはまた鉄道運賃の点におきましても特例が設けられておりまするし、郵便におきましても同様な措置がとられておる。ひとり法人税だけに心を加えておらぬというのは、あまりにも片手落ちのような気がいたしまするが、これに対しまして大蔵当局はどのようにお考えでございましようか、伺いたいと思います。
  163. 平田敬一郎

    ○平田政府委員 主税局長が今すぐ来ると思いますが、便宜私がお答え申し上げたいと思います。  法人税や所得税は、お話のようにある業種に限つて税率を減免するとかいうようなことは、事柄の性質上あまり適当でない。原則としましては、法人税はやはりそれが会社である限りにおきましては、大体同じ課税をするということで、多年にわたつてずつとやつて来ているわけでありまして、その点事業税と性格が昔から違つておるのであります。私どもはそういうふうに考えておる次第でございます。従いまして出版業が公益上重要性云々の問題はございますが、少くとも所得に対してかかる法人税に対しまして特例を設けることは、負担の公平の見地から行きまして、私どもといたしましては賛成いたしがたいのではないか、このように考えている次第でございます。
  164. 柴田義男

    ○柴田委員 法人税の中でもいろいろ特例がたくさん盛られておりますることは、どなたも御承知通りだと思います。たとえば第五条の一に掲げておりまする日本赤十字社、あるいは商工会議所その他社会福祉法人というようなものが、非常に特別な保護を受けておるのであります。こういうように全免をするというようなことは、私どもももちろん考えませんが、少くも法人税第五条の一に掲げておるような程度措置がとられてしかるべきではないか、こういうことを考えるのでありますが、主税局長もお見えのようでございますので、もう一度重ねて承りたいと思います。
  165. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 現在法人税の非課税法人としておりますのは、今お述べになりましたような非常に公益性の強い法人だけに限るように考えておりまして、民法三十四条の法人どもつては全然非課税にしておりましたが、最近の状況を見ますと、かなり収益事業をやつておる法人もございますので、こういう法人でありましても、収益事業に対しては法人税を課税する、こういうような建前をとつておりまして、法人税におきましては、事業税などと大分性格が違うものとわれわれは考えております。ことに現在の法人税は、いわば所得税の前どりという関係になつておりまして、所得税の配当に対して二割五分控除をして行くというようなこともあわせ考えて参りますと、業種のゆえに税率を左右するということは、現在の法人税のとつております建前といたしましても、適当でないというふうに考えるわけでございます。
  166. 柴田義男

    ○柴田委員 ただいま主税局長から、法人税の第五条の一というのは、公益性の強いものに限つてこういう措置がとられておつて、出版物というものは公益性がそれほど強くないような印象を与えるような御答弁でございますけれども、先ほど主税局長が御出席前にるる私は申し述べたのでありますが、出版関係と申しますのは、御承知のように文化の面にとつても教育の面にとつても、国民大衆に植えつける浸透度が非常に強い、しかも非常に公益性の深いものであるということをわれわれは認識しておるのであります。こういう観点から、出版関係に対する法人税の措置というものは、もつと考慮すべきではないのか、こういう点で実はこの議論を進めておるのでありますが、公益性が強くない、こういうようにお考えになられるとすれば、どういう理由で強くないとお考えになるのか、承りたいのであります。
  167. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 今私の方で免税法人にしておりますのは、その法人の主体というか、性格というか、目的自身が公益性が非常に強いものだけに免税を限定しておるわけでございまして、事業の性格からいうと、いろいろな御意見もあろうと思います。出版界におきましても、それの持つておる性格からして、確かに今柴田委員のおつしやつたような面もあろうと思います。その面から推して行けば、たとえばほかの事業などにおきましても、同じような問題があるのでございますが、法人税はその性格からいつても、その法人の主体というものを考え、さらに先ほども申しましたように、所得税のいわば前取りである、結局今お話の出版業というのは、営利事業としての出版業であろうと思いますが、それは結局配当をするいわゆる会社的な存在であるということになれば、その性格からしますと、他の事業とやはり共通のものを持つているんじやないだろうか。出版業といいましても、たとえば赤十字社が出版するとかいう場合におきましては、これはもちろんあらためて申すまでもありませんが、課税の対象になつているわけではございませんで、従いましてものの重点をどこに置いて考えるべきかというところにおきまして、われわれの方としましては、その事業の性格というよりも、法人の性格というものから判断すべきものじやないか、かように考えております。
  168. 柴田義男

    ○柴田委員 しかしそうであつたといたしますと、たとえば国有鉄道法の扱いも、あるいは郵便法の扱いも、これに対しましては特別な措置を講じております。たとえば国有鉄道法の旅客及び荷物の運送規則によりまして、二百七条で「国鉄の承認を受けた新聞紙又は雑誌で、新聞紙にあつては発行の日から五月以内、雑誌にあつては発行の日から三十日以内のものに対しては、受託・運送・引渡し及び運賃計算について別に定める場合を除き、特別の取扱いをする。」以下二百八条もございますし、郵便法におきましても、第二十三条によつて、第三種の郵便物の認可のあることを現わしております。このように、鉄道であろうと郵便物でございましようと、あるいはまた物品税施行規則にいたしましても、特例を設けております。こういうようにあらゆる面におきまして特別措置を講じておるのにもかかわらず、ひとり法人税だけが出版関係に対して何らの恩典をかけてくれない。こういうようなことは片手落ちじやないか。こういう点を私は伺つておるのであります。出版物に関して株式会社という存在は、同じような商事会社でございましようが、性格そのものは普通の商事会社、あるいは貿易会社等とはおのずと違うのであります。こういう点でお尋ねを申し上げておるのであります。
  169. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 結局税の性格というものから来ると申し上げるべきじやないかと思つておりますが、法人税におきましては、その法人の性格というものが、たとえば株式会社といつたような営利会社でございますならば、その事業がたとえば電気事業とかなんとかいうものにつきましても、それが公益事業であるとかないとかいろいろな議論があるわけでございます。そういう点は全然抜きにしまして、一応課税をして行く。こういうような観点からいたしまして、先ほど私ちよつと申し上げたのは間違えたようでありますから訂正させていただきます。公益法人におきましても、出版業をやる、それで営利的なもの、収益を上げているものが相当あるようでありまして、これは税率は三五でありますが、課税をしております。それが今言つたような関係からしまして、一応その法人の主体というものが営利会社であるかないかというところに重点があるわけでありまして、さらにもう一歩踏み込んでみますと、現在の法人税は、先ほど申しましたように所得税の前取り、結局出版業による利益でありましても、配当といつたような姿に順次なつて行くわけでございまして、その意味からしまして、出版業だけについて、特にその事業の性格からいつて、特別な扱いをすべきものというふうには思つておりません。ただ出版業の持ついろいろな性格からしまして、たとえば新聞などの性格からしまして、物品税とかそういう場合におきましては、これは別途の考え方におきまして、相当課税においてしんしやくすべきものを持つというふうに考えておりますが、法人税が現在出版業を特にどうこうしないということとは、これまた立場が全然と違うという意味におきまして、われわれはそこに矛盾があるというふうには解しておらない次第であります。
  170. 柴田義男

    ○柴田委員 ただいま新聞等に対しては特別なことを考えなければならぬが、一般の出版に対してはまた別の考えを持たれておるように主税局長の御答弁でございましたが、われわれは出版物の発行と新聞紙の発行はほとんど車の両輪のような関係にあるものである、こういう考え方を基本的に持つておるのであります。再三くどくどと申しまするが、たとえば日本の出版物の関係を見ましても、それはまつたく見られないようなインチキ雑誌等もあるでしようけれども、そうしたものはほんとうに少数で、出版の部数から申しますならば、まつたく数えるに足りぬような状態で、今日の出版界の状況を見ますと、水準から申しますならば、戦前にやや匹敵するような状況に発達をしております。その半面、出版物は非常な犠牲も払つておるということを見のがすわけに行きません。たとえば教育の自由、出版の自由という立場から、教科書等も自由出版であります。けれどもその半面、今度はおびただしい数の返本があるといわれております。これが出版自由といいながら、教科書の出版業者は八十社あるとか九十社あるとか称せられておりますが、現に最近破産、倒産が続出しておるのであります。こういう大きな犠牲を伴つて出版を継続しております。そうして教育に対しましても、文化に対しましても、大きな力を注いでおるということは見のがし得ない現実だと私は思うのであります。これらに対しまして、新聞紙とは別個の扱いをなさるというお考えは、どういうお考えからそういう別個の扱いをなさるのか、もう一度重ねて承りたいと思います。
  171. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 先ほど新聞紙のことを申しましたが、新聞用紙だけを特別に扱つておりますのは、これは法人税でございませんで、物品税の話でございます。物品税において、新聞用紙というものについて特殊の扱いをしておりますのは、同じ出版物の中におきましても、新聞用紙というものが非常に大衆性を持つており、従つてこれはやはり同じ紙でありましても、相当性格が違うのじやないか、こういう意味におきまして、新聞用紙について物品税課税しておりませんが、これは物品税の話でありまして、新聞社といえども、同じ株式会社である限りにおきましては、法人税の場合においては他の出版会社と全然同じ扱いをしておるわけであります。
  172. 柴田義男

    ○柴田委員 先ほどもこの出版は、たくさん出版いたしましても、もどつて来る返品というものが相当莫大であるということを申し上げたのでありますが、これはひとり教科書だけでなくして、一般出版物にも相当大量の返品というものができておる。これはここに幸い統計があるのであります。たとえば児童関係の書籍におきまして、月によつて違いますが、一月に九百五十万部印刷いたしましたのが、返品部数は六十六万部であり、あるいは婦人雑誌に至つては発行部数が四十万で、この一月にはやはり四十万の返品ができておる。こういうまつたく差引ゼロというような場合もあり得るのであります。大衆雑誌にいたしましても、非常に大きな率の返品を来しておる。五百七十万部刷りまして、約二百万部の返品を見ております。こういうように毎月同じようなことを繰返しておるのであります。これはかつてにお前たちは印刷して、かつてに返品ができるのであるから、出版の下手な結果ではないかというようなこともあるいは言われるでしようけれども、これだけ出版業者と申しますものは大きな努力を払つて、そうして日本の文化の向上のため努めておるということも見のがし得ない事実であろうと思うのであります。こういう点から、どうしても法人税に対しましては多少でも将来考えてもらわなければならぬ、こう思うのでありますが、これに対しましてもさらに御考慮をお払いになる余地はないのでありましようか、もう一度伺いたい。
  173. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 出版業は、お話のごとく非常に返品の多い事業であるということは、われわれもよく存じております。同時にそれだけに、たとえば売値をきめます場合におきましても、相当返品を予想して売値をきめるというのが、通常の姿であるというようにわれわれも見ております。従いまして、返品がないで済めば非常に利益が上るわけでございますが、そこに返品の問題がございますために、出版の仕事というのが非常に経営の上からいいましてもむずかしい仕事であるということ、売れたからといつて、それこそ非常に利益が上つたと思つていると返品が来まして、結局逆に赤字になるような場合も間々あるということも、われわれ存じております。従いまして課税の上にあたりましては、その返品のような点につきましては、もちろんそれを十分考慮しました上で、収益を算出し課税して行くというやり方をとるわけであります。そういう性格のものは、実は他の商品にも間々あるのでありまして、出版業について特に税率を考えるということは、少くとも将来の問題としましても、なかなかむずかしい問題じやないか。特に先ほども申しましたように、現在の法人税の性格というものが、所得税のいわば前どりのようなことになつておりまして、配当所得になれば二割五分の控除をしているという点になりますと、もうその配当がどこから生れたということを特にそこでせんさくするようなことができなくなつて参ります。そのようなことから行きまして、なかなかむずかしい問題ではないかということを、私は今でも考えております。
  174. 柴田義男

    ○柴田委員 もう一つ、先ほどは発行部数等は単に一般に月刊雑誌というような面だけで申し上げたのでありますが、一般書籍の面におきましては、もちろんそれほどの返品はございません。これらの宗教的なもの、あるいは哲学的なもの、歴史的なもの、政治的なものというように、年間に発行いたしまする部数と返品の状況を見ますると、一般雑誌のような莫大な返品というものはもちろんないのでありますが、ただいま主税局長は、そういう返品まで見越したやはり価格というものが算定されるであろうというようなお話でございまするが、出版関係のものは決してそういうものじや、ございません。やはりたとえば教科書のような問題でございますると、何斤の紙で何ページのものであつて、しかも何色のものであれば、どれだけの価格が正当な価格であるというようなことで、最高価格と大体押えつけられておる。これは文部省等が厳重に監督されまして、教科書出版に対しては安価なもの、安価なものとの指導方針をとつておられる。これに対しましては、やはり絶大な犠牲を払つて出版業者というものは出版をやつておるのであります。こういう点の一つの証拠といたしましては、先ほど申しましたように、八十社、九十社とあるところの出版業者のうちから、大体一割か二割の業者だけが残されまして、あとの八、九割の業者というものは毎年倒産、破産をいたしてかわつて行つております。全体の出版業者の数というものは八十社、九十社という基準をいつでも保つておりまするけれども、その中の八割近くの七十社かあるいは六十五社という会社が、新しく新しくとかわつて行つておる。こういう現実をわれわれは知つておるのであります。ほんとうに大量生産をいたしまする十社か八、九社だけはようやく営業を継続しておる。それも莫大な配当なんかをやれるような域に達しておる会社は少いのであります。こういう関係から見まするならば、もう少し出版業者に対すら何らかの措置は当然講じていただかなければならぬものである。こうわれわれは考えておるのでありますが、この点に対しましてもう少し御考慮を払つていただきたいと思うのであります。
  175. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 われわれも同じ出版と申しましても、いろいろその種類に従いまして、今の返品などにも相当の相違があるでしようし、価格の問題などにつきましても、いろいろ違いのあるであろうことは存じておりますが、出版事業というものを一体として考えて参りますと、先ほど来御説明申し上げておることを繰返さざるを得ないことになりまして非常に恐縮でございますが、一応現在のところ、問題はあえて出版に限らず、いろいろな問題について、われわれ将来ともここで御議論のありましたことはよく研究して参るつもりでございますが、出版のことだけについて特別に何とかするといつたようなことは、今のところ、ちよつとそういう心境に遺憾ながらなつておりませんが、ただ今のお話だけに限りませんで、ここでいろいろ御議論になりました部分につきましては、将来の問題としましてはわれわれは常に謙虚な気持で反省をして行くべきじやないか、こうわれわれ考えておりますので、その辺で御了承願いたいと思います。
  176. 柴田義男

    ○柴田委員 次の問題に移りますが、この法人税の第二条で今度改正になりましたことは、前のこととの非常な大きな相違というものは見受けられませんが、たとえば第二条に「同条第二号と掲げる法人(以下外国法人という。)に対しては、この法律施行地にある資産又は事業の所得についてのみ法人税を課する。」こういう項目が特にうたわれておりますが、これはどういうわけでこの同条第二号に掲げる法人というものができて参つたのでございましようか、この点を承りたいと思います。
  177. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 法人税法の一条をごらん願いますと、一号の方に「この法律施行地に本店又は主たる事務所を有する法人」というのがございます。それから第二号の方に「この法律施行地に本店又は主たる事務所を有しない法人でこの法律施行地に資産又は事業を有するもの」こういうふうに書きわけてございます。普通われわれが至るところに見ます会社というのは、大体日本の商法によつてできておる法人でございますから、これは一号の法人に該当しまして、その場合におきましては、その法人所得全体に対して課税する、これが一号にうたつてあるわけでございますが、二号の法人と申しますのは、たとえば本社がアメリカにありまして日本に支店を持つている、こういうような会社で、ございます。こういう会社につきましては、本店がアメリカにあるわけでありますから、アメリカで税金をかけるのは全体について課税いたしますが、しかし同時に日本で支店を持つており、あるいはその他事業をしておる、こういう場合におきましては、日本としましては、その日本にある事業についてはやはり日本課税権を持つ、これが大体実は各国の間で行われておる通常の仕方であります。従いまして、一応日本法人税法においても二条で、一号の内国法人とそれから二号の外国法人、こういうふうに書きわけているわけでございまして、これはアメリカの例など見ましても、たとえば日本に本社のある会社が、アメリカに支店を持つておりますと、その支店から生れる所得については、アメリカの税金がかかる。日本の方としましては、アメリカの支店の所得を含めまして、その会社の全所得課税しますが、しかし昨年の改正で直していただきましたので、アメリカが払つた税金はその税金から引く、こういうことで二重課税防止の措置をとつている。そういうわけでございまして、原則としまして、日本に本社があればその全所得について法人税を課税する、本店がなくて支店だけしがなければ、その支店の所得だけについて日本としては課税する、こういう考え方で法人税ができておるわけでございます。
  178. 柴田義男

    ○柴田委員 その点はよく了解したのでありますが、そのほかに、たとえば同族会社という場合でございます。今日までは株主の一人が株式の三〇%以上を有しておりました場合を同族会社という扱いをやつたのでございますが、今度の改正によりまして、一人の株主が株式の五〇%以上を有した場合を同族会社と見る、こういうように改正が行われるようでありますが、この同族会社というものは現在非常に多いのであります。大体個人経営でありますと、税金の関係で非常に過重な税金をかけられる、こういうことで、最近小さいものでも家族が集まつて株式会社が非常に多くできて来ておるのでありますが、これらのことを考慮された結果、五〇%以下を同族会社とみなさないで、株主の一人が五〇%以上を持たなければ同族会社と見ない、こういうお考えでこういう改正が行われたのでありましようか、その他何か理由があつてこういう改正が行われたのでありましようか、その点を承りたいと思います。
  179. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 実は昭和二十五年のシヤウプ勧告前におきましては、一人で——もちろんそれに家族とか関係者を含めますが、五割以上を持つているものを同族会社として扱つて来ておりました。同族会社が他の会社と違つて特殊な扱いを受けますのは二つの場合がありまして、一つは、積立金をした場合に、その積立金が一定限度以上になりますと、現行法でございますれば、その積立金に対して毎年百分の五を課税する、今度の改正案でございますと、その超過額に対して一回限り百分の十を課税する、これが配当をした場合の個人の負担との権衡といつたことから考えられている規定で、ございます。もう一つ関係は、いわゆる同族会社の行為否認と呼んでいる規定でございます。これは同族会社でございますと、その同族会社の持主との間にいろいろな取引があつた場合におきまして、税負担の軽減を目的とした、そこに特殊な売買契約も可能である、それは負担権衡上適当でないと認めれば否認できる、よその国でもかなりこういう規定を持つておりますが、その二つがあるわけでございます。あとの方の関係から申しますと、一人で三割以上持つていれば会社が支配できるということで、現在の一人三割以上というのも一応適当な規定考えられるのでございますが、同時に二十五年にシヤウプの勧告による改正で、現在のように同族会社の範囲が非常に広くなりましたのは、主としてその面の考え方が中心じやないかと考えます。しかし個人との権衡といつたような、たとえば積立金課税のような問題を中心として考えて参りますと、どうも一人で三割持つているというものから同族会社にするというのは、少し同族会社の幅が広過ぎやせぬであろうか。同族会社である限りにおきましては、もう少し個人的な色彩の強いものをやはり同族会社にすべきじやないだろうか。実はこれはかねて各方面から相当な批判を受けておつた面でございます。従いまして、今度積立金課税の制度をかえる機会におきまして、同族会社につきまして一人とか二人とか三人とか、そういう区別を一々こまかくいたしませんで、一人の場合、二人の場合、三人の場合、それは一列に扱いまして、三人以下の場合においては五割、これによりまして同族会社の幅が狭くなるわけでございますが、規定の重点をむしろ積立金課税の上に置くべきじやないかという考え方に立ちましたものですから、このように狭く同族会社規定すべきものじやないか、かように考えたわけであります。
  180. 柴田義男

    ○柴田委員 同族会社の定義を、そういうお考え方からおやりになつたということはわかつたのでありますが、この資本的な限度がここに設けられておらぬのでありましようか。たとえば資本金が五十万の株式会社であつても、一株主が五〇%以上を持つた場合は同族会社と見る、資本金が一億の株式会社であつても、同じようなお考え方をお持ちなのでありましようか、その点をもう一度承りたいと思います。
  181. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 それは資本金が割合に小さな会社、今お話のございました五十万円の会社でございましても、また一億の会社でございましても、その点は同じようにわれわれは考えております。大きな会社になりまして、なおかつ同族会社であるのがいささかおかしいと思うような会社も幾つかあるのですが、しかしその会社の性格から見て参りますと、やはりそういうのは半分以上同族が持つておるとすれば、たとえば配当の問題にしてもいろいろな問題にしても、割合にそこの大株主の意思でほとんど左右されるという性格にあるものですから、資本金の大きさによつてこの区別をすべきものであるというふうには考えておりません。
  182. 柴田義男

    ○柴田委員 もう一つは、租税特別措置法の一部を改正する法律案の中で、今一番問題になつておるのは、交際費の問題だと思います。この交際費の問題について、昨日から本日資料を配付されたのでございますが、証券業者とか、あるいは商品の取引業者、あるいは貿易業者・あるいは信託会社というような業種の別によつて、この取引金額に対する倍率がみな相違しております。こういう資料を私どもいただいたのでありますが、これらの諸会社がどういう根拠で、証券業者の取引の金額状況から倍率ができ上り、あるいはまた銀行会社のような場合の取引金額に対する倍率ができ上つたのか、どういう根拠からこういうものができ上つたのでございましようか。具体的な例を一つ二つでけつこうでございますから、お聞かせ願いたい。
  183. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 交際費の制限の場合におきましては、先日来もいろいろ御質問がありまして、お答えしておつた次第でございますが、今度の考え方としましては、一応前年度、二十八年度を基準年度と考えまして、それの三割を少くとも節減していただきたい、こういう意図のもとに、基準年度の七割を越える場合においては、越える分の半額を損金に算入しない、これを第一の建前にしておるわけでございます。ところがその場合において考えられますことは、昨年度までの閥交際費なども非常に切詰めた会社もありはせぬか。そういう会社に対しましてなおかつ三割切詰めろ、そうしなければその上の半額を損金に算入しないぞというようなことになるのは、少し無理な場合が出て来はせぬか。そこでこういう数字をつくつたわけであります。従いましてそういう考え方に基いておりますので、われわれとしましては、一応いろいろな業種にわたりまして実は実績をずつと調べてみたわけでございます。数も相当ございますが、そうして見て参りますと、業種によりまして実は相当あらげております。従いましてそれをできるだけ縮約する意味において、同じような数字の出たものは一括しようというところで、実はまず大きく集めまして、そうして先ほど申しましたように、基準年度の七割というところに重点を置いておりますので、そこの平均的な数字の七割以下のものが初めてこの比率で、場合によつては七割まで節約しなくとも、この率の方で行けるというような考え方に持つて行くべきじやないだろうか、そう考えましたから、一応実績をとりまして、——これは会社によつて非常にあらけておりますが、それの平均を一応とりまして、それの七掛というところを目途としまして、実はこういう数字をつくつたわけでございます。その前に、取引金額によるべきか、あるいは資本金額によるべきか、利益金額によるべきか、これは昨年も、内容は大部分違いますが、こういう案を出しておつたのでありますが、いろいろずいぶん研究してみましたが、どうも資本金の大きさとか、収益の大きさとかで見るべきではなくて、やはり取引金額というところで見るのが割合一番近い数字が出る。そこで今度の場合も、実は取引金額で見たわけでございますが、いろいろなあらげた数字ができておるのであります。それをできるだけ縮約しました姿にいたしまして、同時にそれの七掛といつたようなところをとりまして、一応これは政令の案でございまして、まだ最終の決定には至つておらないのでありますが、まあこういう案を出しまして、一応各方面の御意見も聞いてみたいというふうに思つております。
  184. 柴田義男

    ○柴田委員 そういたしますと、たとえばこの倍率をお出しになつているところには、今大騒ぎされております造船業というものが入つておりませんが、たとえば造船関係の今世の中でいろいろととりざたされておりますような、中川において交際をいたします場合と、あるいはほんの——五百万円以上の資本のものを今度の対象としておられますが、五百万の会社といいますのは、今の金額にいたしましてはまつたく小会社であります。その五百万の資本金会社が交際をいたします場合には、どこかのおでん屋で交際をやるという場合が多いと思うのです。こういうような場合を考えました場合に、単に中川でひとつ取引をやつて一ぱい飲む場合のことと、おでん屋で交際をやつて、ほんとうに小さな金額の取引を行うというような場合と、相当大きな開きがここにあると思うのであります。こういたします場合に、五百万円以上の会社であれば、この倍率に全部当てはめろというようなことは、言葉を強くして申しますならば、あまりにも暴挙にすぎはしないかと思いますが、どのようにお考えでございましようか。
  185. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 割合小さな会社がこういう率をつくりますと、どうも大きく出るという傾向にあることはお話通りでございます。従いまして、昨年どちらかといえば率の方を中心にして実は制限をしようとした場合におきましては、資本金の大きさなども頭に置きまして、そのときには五百万円とか、そういうことに限らないで、もつと法人全体に実は及ぼすような案であつたゆえもありますが、一応これに率のかげんをしたらどうかというようなことも考えてみたわけでございますが、今回の場合におきましては、先ほども申しましたように、とにかく前年実績の七掛というところまで御節約願うというところを重点に置いておるものでありますから、いわばこの率の方は、それの特別な無理を補足的に直すという考え方に立つておりますので、特に資本金の大きさで等差をつけるという、こうなると当然複雑な姿になつて参りますが、そういうことでなしに、こういう簡略な姿で行きましても、それで何とか弊害もなくやつて行けるのではないか。こういうふうな考え方に基きまして、大きな会社、小さな会社という区別は、この際としては避けた方がいいのじやないかということで、こういう考え方になつております。
  186. 柴田義男

    ○柴田委員 たとえばこの銀行、信託会社、農林中央金庫、商工組合金庫というような一連の金融機関の場合を例にとりますと、これらの場合は、たとえば貸し付けました金利、あるいは手形の割引料というものが取引の金額になるのでございましようか。それとも金利でなくて、実際のたとえば上期であるとか下期であるとかいうような期を通じて、純益によつて交際費というものの算定をなされるのでありましようか。その点をもう一度承りたいと思います。
  187. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 配付の資料のうしろの方にたしかおつけしてあるつもりでございますが、今お話になりました金融機関の例をとつて申しますと、相互銀行の場合におきましては、二に書いてございますが、手形割引料、貸付金利息、債券買受手数料とか、こういうもののトータルによつて一応取引金額というか、基準金額考えております。従いまして、それは大体半年が事業年度だと思いますが、各事業年度金額を出しまして、その事業年度に使います交際費につきましては、その取引金額にこの率をかけたもの、それから普通の一般の金融機関。普通の銀行等につきましては、五にございまして、二から四までの事業以外の金融業というふうに書いてございますが、この場合におきましては、貸付金の利息、手形割引料、手数料、有価証券貸付料、債務保証料等、こういつたような通常の業務の収入を一応基準といたしまして、それに割合をかける。実はその割合を出すもとは、こういう片方にまずもつて交際費の額を押えまして、そうしてこういうものの金額を押えまして、先ほど言いましたようにアヴエレージの大体の率を出しまして、それの七掛というところでつくつてあるものでございますから、その場合に何を標準にとるのがいいかという問題がありますが、金融業におきましては、こういう数字をもとにしてとることが、大体各銀行の交際費の率を見て参りますと、一つのものさしとしては一番適当じやないか、かように考えてこういう数字にしておるわけでございます。
  188. 柴田義男

    ○柴田委員 もう一つ伺いますが、昨年の実績を見まして七〇%と押えられますと、どの種類の会社でも昨年の実績を押えまして七〇%だけ認めるという形でございましようか。この点に関しましてわれわれが最も懸念しなければならぬ問題は、昨年たとえば今の造船疑獄のような大きな交際費を使つた会社というものは、相当広範囲に認められる結果に陥りはしないか。そうしてまた一般正常の形の上に立つた会社というものは、今年は非常にきゆうくつになるというような状態が生じませんでしようか。その点を承りたいと思います。
  189. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 今のようなお話は、われわれも実は考えてみたわけでございまして、七割という数字が割合に節約しやすい状態に昨年あつたという会社と、昨年もうすでに相当節約していて、これ以上節約はなかなか困難であろうと考えられるような会社等、いろいろありはせぬか。従いまして、ただ昨年の実績の七割というものだけを標準にしまして、それでこの責任の範囲をきめるというのは無理が起りはせぬか。そこで今申しました率のようなものをもう一つのものとしてつくつたわけでございまして、そのいずれか高い方を越えた場合におきまして、その越えた額について二分の一を損金に算入する。従いましてこの数字は、昨年のそういつた実績の大体平均をとつているものでございますから、昨年すでに平均、あるいはそれ以下の交際費であつた会社につきましては、本年もし節約ができなかつたとしましても、その率のところの範囲に大体入り得るのじやないだろうか。そういうことを実は目安にしまして、この率をつくつて行こうという考え方に立つておるわけでございます。
  190. 柴田義男

    ○柴田委員 これは議論をいくら重ねても、私どももたとえば東京の大銀行でございましようとも、貿易会社でございましようとも、これらの諸会社の今日までの交際費の状況というものは、何かスキヤンダルでもあつて新聞紙等をにぎわした場合のみわれわれは知り得るわけでございまして、現実はわからぬのです。だからやはりこの問題は、多少手数でございましようが、たとえば東京の代表的な十一大銀行のうちの五つぐらい、あるいは貿易会社でございましたならば、第一物産であるとかいうような何か代表的な物産会社、あるいは船会社であつたならば、二、三の船会社というような、従来、たとえば昭和二十六、七、八年の三箇年くらいの交際費の状況について、もし調査資料がございましたならば、後日提示していただきたいと思いますが、いかがでございましようか。
  191. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 私の方に当然これの基礎なつた資料があるわけでございますが、会社の名前をあげてお出しするのはいかがかと思います。大体どういう種類の会社がどんな交際費という点について、サンプルにしますと、なかなか並べましてもわからないし、平均した数字ですと、なかなかわかりにくいわけでありますが、いろいろ考えまして、御参考になるものを何か提出したい。要するにこれの算定基礎があるわけでございますから、会社一つ一つの名前というのはどうかと思いますが、何か参考資料として提出したいと思います。
  192. 柴田義男

    ○柴田委員 今のお答えでございますが、われわれも今この問題を調査いたしますのに、何も特定の会社を究明するなんという考えは持つておりません。ただ一つの例を参考に伺いたい。こういう考えでございますから、銀行の名前はABCでも何でもけつこうです。  それからもう一つ税務署当局が、われわれ地方におつて小さな会社を経営しておりましても、非常に目が高くて、交際費という科目じやなくとも、鋭い観察眼をもつて、別な科目でも、交際費等であれば、これは交際費だと指摘されている。こういう点も十分御考慮を払つていただいて、そのBなりCなりの会社の従来交際費という形のようなものがあつたならば、それらの集計を一つ御調査くださり、資料としてお出しを願いたいと思います。
  193. 藤枝泉介

    ○藤枝委員 動議を提出いたします。ただいま議題となつております二十……。   〔「質問中だ」「答弁々々」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然、聴取不能〕
  194. 千葉三郎

    ○千葉委員長 御着席ください。先ほどの柴田委員の御質問は、希望をお述べくださつたと思うのです。それからさらに藤枝委員からの発言がありましたが、それは場内騒音のためによく聞き取れなかつた。そこで委員長はこれから三十分だけ休憩して、その間理事会を開きたいと思います。    午後八時九分休憩      ————◇—————    午後九時十七分開議
  195. 千葉三郎

    ○千葉委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。  ただいまの理事会におきまして、次のように申合せをいたしましたから御報告をいたします。  それは二十四法案、すなわち所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案相続税法の一部を改正する法律案酒税法の一部を改正する法律案印紙税法の一部を改正する法律案砂糖消費税法の一部を改正する法律案骨牌税法の一部を改正する法律案酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の一部を改正する法律案物品税法の一部を改正する法律案入場税法案、しやし繊維品課税に関する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案揮発油税法の一部を改正する法律案国税徴収法の一部を改正する法律案関税法案関税定率法の一部を改正する法律案、米国対日援助物資等処理特別会計法等を廃止する法律案農業共済保険特別会計歳入不足を補てんするための一般会計からする繰入金に関する法律案資金運用部特別会計法の一部を改正する法律案食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案交付税及び譲与税配付金特別会計法案国税収納金整理資金に関する法律案国民金融公庫法の一部を改正する法律案製造たばこの定価の決定又は改定に関する法律の一部を改正する法律案、中、入場税法案、しやし繊維品課税に関する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案交付税及び譲与税配付金特別会計法案を除く二十法案に関する質疑は明日午前中に打切り、その後の討論採決は同日中に行うこととして、その手続は理事会で打合せることにいたしました。  なお午前の質疑のうち、入場税に対する自由党内示の修正案について、その収入見込み関係をただすことといたしております。その上に佐々木更王氏より質疑がありますので、これもその際許すことにいたしました。  また先ほどの柴田委員の御発言は、私は希望と解釈ふたしておりましたところ、御本人に問合せましたところが、答弁を求むることになつておるそうでありますから、もう一ぺん御質疑になつて政府当局より御答弁をお願いしたいと思います。
  196. 柴田義男

    ○柴田委員 先ほど私は租税特別措置法の一部を改正する法律案のうちの、当局から試案として提示されておりました各業種別、あるいは取引金額に対する倍率等の問題、たとえば十一大銀行のうちの半分くらいとか、あるいは貿易会社その他の例証をあげてもらいたい、こういうことでありましたが、それに対する御答弁は、特定の銀行、会社の名称まであげることは困難だということでございましたので、それはよろしいが、たとえばABCというような形においてもけつこうでございますから——ただこの案によりますと、二十八年度の実績をもつてこれの七〇%を認める、こういうような案でございますが、二十八年度だけ一箇年を見ることは、言葉を乱暴に言いますと、乱暴ではないか、暴挙じやないかと思う。少くも二十六年、七年、八年、その三箇年くらいの実績と統計をとりまして、その上でこの七〇%というものを認めてはどうか、こういう質問を試みたのであります。
  197. 渡辺喜久造

    渡辺政府委員 二十八年だけを基準年度にすることは、一年だけですから、その意味において、やはりもう少し長い期間をとつたらどうかという意味の御質問だと思います。その点、われわれも実はいろいろ検討してみたのでございますが、やはりその基準年度の実績の七割といつた場合におきましては、基準年度における交際費が幾らということを、やはり一応会社としては計算しなければならぬわけでございます。そういうようにした場合におきまして、それがさらに二十八年にとどまらないで、二十七年、二十六年ということになりますと、相当会社としての事務量が非常に大きくなつて来るのじやないかということを実は心配いたしまして、なるほどお説のように、もう少し基準年度を何年かとつて平均したらということも一つの御意見だと思いますが、その実務的な支障を考えて参りますと、まあ一年で乱暴だといえば確かに乱暴のような感覚もございますが、やはり一年で済む方がいいのじやないか、実はそういう意味におきまして、基準年度を一年だけにいたした、こういう次第でございます。
  198. 千葉三郎

    ○千葉委員長 他に御発言がないようでありますから、本日はこの程度で散会いたします。    午後九時二十二分散会