○田中(幾)
委員 人命に関する点は、
アメリカその他の国も良心によ
つて十分注意するでありましようけれ
ども、魚類に対する点は人命よりもはるかに軽んじて、むぞうさにやられはしまいかというおそれが今後もあるのであります。われわれは魚類を水爆の危険から守るために、水爆の使用、管理、製造に対するある
方法をとらなければならぬと考えておるのでありますが、これは平時における
被害でありましたけれ
ども、戦時における長崎、広島の原子爆弾による
被害に対しても、
アメリカに対して損害
賠償を請求せんとする在野法曹の空気があるのであります。私はもしこれらのことが成功しまして、ある
意味において原子爆弾の使用、製造、管理が制限されるならば、魚族もこの
被害から守れる。そこで私はこの損害
賠償の点を少し申し上げて、
外務省の所見をただしたいのでありますが、これは
日本弁護士連合会所属の岡本尚弁護士の立案になるものでありまして、広島、長崎に対する原爆の投下は
国際法違反である、こういう見地に立
つておるのでありますへーグの陸戦条規の第二十三条によ
つて「毒又ハ毒ヲ施シタル兵器ヲ使用スルコト」「不必要ノ苦痛ヲ与フヘキ兵器、投射物其ノ他ノ物質ヲ使用スルコト」これが
禁止されておるのでありまして、これによりますと、これ以上の威力を持つ原子爆弾を使うということはこの条規の違反である。これが第点であります。それから第二点といたしまして、九〇七年に第二回へーグ平和
会議において、特殊弾丸いわゆるダムダム弾の使用
禁止の宣言が採択されております。それから九二五年にはジユネーヴにおきまして毒ガス等の
禁止に関する議定書がとりきめられておるのでありますが、これにも違反をする。それからへーグの陸戦条規二十六条によ
つて、攻撃の事前
通告がなか
つた、事前
通告がなか
つたのみならず、われわれは当時においては原爆というものの存在すら知らなか
つたのである、これもやはり違反であるという根拠に立
つております。それからこれがもし
国際法違反でないとしても、条理すなわち自然法に反するというのが岡本損害
賠償理論の根拠にな
つておるのであります。そして
アメリカの法律によりますと、「
国際法若くは合衆国の締結せる条約違反に基く総ての外国人の提訴」は米連邦の地方裁判所においてこれを行う。そこで考えられますことは、
日本の国家もこれによ
つて損害を受けておるのであるから、
アメリカに対して損害
賠償の請求権があるかないかという問題、それから
被害を受けた個人は、
アメリカに対してその
被害に対する損害
賠償を求め得るやいなやという問題、
日本国の
アメリカに対する損害
賠償については、平和条約十九条によ
つて切の損害
賠償請求権を放棄しておりますから、多少の疑義があろうと思うのでありますが、
日本の国家が損害
賠償を放棄したとしても、損害を受けた
日本の
国民個人は、
アメリカに対して損害
賠償の請求権を放棄していない、これが岡本理論の根拠であるのであります。最近聞くところによりますと、全部の損害
賠償を起すことは金額が非常にかさむし、費用もかかるので、分割して訴訟を提起するという情報が伝えられておるので、
日本弁護士連合会においても
研究をしておるということであるのであります。そこでもしこの訴訟が
アメリカの裁判所において取上げられまして広島、長崎の原爆による
被害者が損害
賠償の幾分でもとることができますならば、このことによ
つてすでに原子爆弾というものの使用が不可能になる。今後それの使用ができないということに決定されるのでありまして、これは私はまことに大きな問題であると思うのでありますが、もしこの訴訟が
日本人の弁護士によ
つてアメリカに提起されましたならば、
外務省は体いかに考えられますか。その前に、またこういうことを
研究なさ
つたことがありますかどうか、またこのことが実際に取上げられて提訴するという具体的な手績がとられた場合には、
外務省はいかようになされますか、あるいはこういう空気があるという情勢に対して、どういうふうにお考えになりますか、この点をお伺いしたいと思います。