運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-03-24 第19回国会 衆議院 水産委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月二十四日(水曜日)     午後一時四十七分開議  出席委員    委員長 田口長治郎君    理事 小高 熹郎君 理事 川村善八郎君    理事 鈴木 善幸君 理事 田渕 光一君    理事 中村庸一郎君 理事 山中日露史君    理事 田中幾三郎君       遠藤 三郎君    夏堀源三郎君       濱田 幸雄君    松田 鐵藏君       吉武 恵市君    赤路 友藏君       淡谷 悠藏君    辻  文雄君       中村 英男君  出席政府委員         外務政務次官  小滝  彬君         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  楠本 正康君         水産庁長官   清井  正君  委員外出席者         海上保安監         (海上保安庁警         備救難部長)  砂本 周一君         専  門  員 徳久 三種君     ――――――――――――― 三月二十日  余別港の水域変更に関する請願椎熊三郎君紹  介)(第三六九一号)  漁船損害補償制度拡充強化に関する請願(佐  々木盛雄君紹介)(第三七三五号) の審査を本委員会に付託された。 同月十七日  漁業災害補償法制定促逓に関する陳情書  (第二〇二二  号)  漁船損害補償制度拡充強化等に関する陳情書  (  第二〇二三号)  指定中型まき網漁業大型まぐろへの転換に関  する陳情書  (第二〇二四号)  ひとでによる貝類被害救済に関する陳情書  (第二  〇二五号) 同月十九日  漁業災害補償制度確立に関する陳情書  (第二一〇二号)  漁業改良普及事業に対する国庫助成に関する陳  情書(第二一〇三  号)  水産資源保護法拡充と活用に関する陳情書  (第二一〇四号)  水産保護産業排水等の調整に関する法律制定  の陳情書  (第一二〇  五号)  遠洋漁業振興対策に関する陳情書  (第二一〇六号) 同月二十三日  漁港予算増額に関する陳情書  (第二二三九号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  ビキニ環礁附近における爆発実験による漁業損  害に関する件  北洋漁業並びに水産貿易に関する件     ―――――――――――――
  2. 田口長治郎

    田口委員長 これより会議を開きます。  まず公海漁業に関する件について議事を進めます。ビキニ環礁付近における爆発実験による日本漁船被害事件に関し、質疑の通告がありますからこれを許します。鈴木善幸君。
  3. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 先般起りましたビキニ環礁地帯におきます原爆あるいは水爆の爆破実験に伴いますわが国まぐろ漁船被害につきまして、非常に広汎な各種の問題が生起いたしておるのでありますが、外務政務次官にまずお尋ねをいたしたいと存じます点は、先般の実験の結集、漁船出入禁止海域をさらに大幅に拡大するということが伝えられておるのであります。この立入り禁止海域拡大は、わが国の最も期待されるところのかつおまぐろ漁業に及ぼすところの影響は、きわめて重大なものがあるのでござい策して、関係漁業者が非常に大きな関心を払っておるわけであります。もとよりあの海域は、海域自体漁場価値というものは、それほど高く評価されていないようでございますけれども、重要な漁場に出漁いたしますために、伝えられるような海域拡大が行われますと、非常に遠まわりをして漁場に行かなければならない。そのために航海日数に二週間あまりの時間を要し、燃料その他の費用がそれだけかさむのみならず、現在の漁船の油の搭載能力からいたしますと、それだけ漁場におけるところの操業日数が勢い短縮せざるを得ない。漁業経済に及ぼすところの影響はきわめて深刻なるものがあるわけでありますが、この漁場立入り禁止拡大に対しまして、政府は正式にアメリカから通知を受けておられますかどうか。またもし通知に接しておるといたしますならば、わが国立場を十分反映せしむるような外交折衝をなさっておられるかどうか、この点をまずお伺いしたいと思うのであります。
  4. 小滝彬

    小滝政府委員 この危険区域拡大の通報は、十九日にまず在米井口大使に対してなされました。同時に東京においても、これが在日米大使館から外務省に通報せられた次第であります。このような危険区域変更があります際は、普通の場合は、水路部告示でもつて世界各国に通報するという国際水路会議の規定によるとりはからいをするのでありますが、過般のああいう惨事にもかんがみまして、特に日本側へ通報いたしまして周知方をとりはからうようにという申出があったのであります。これによりまして外務省としては、とりあえず関係庁の方へこれを通達いたしまして岡知力のとりはからいをしていただいたのであります。しかし今度の危険、区域というものは、これまでの危険区域よりも非常に広汎にわたるものでありまして、日本漁業また公海に重大なる影響もあると考えられますから、さっそく各関係庁話合いをいたしまして、これに対する今後の措置、特に米国に対しては、いかなる申入れをするかというようなことについて協議をいたしたのであります。大体話も一部まとまりましたので、外務省としてはこれをさらに正式な申出の形式にまとめるため、せっかくこれを審議しておる次第でございます。もちろんこれは正式の申入れと同時に、今こういう重大なる問題が起っておりますので、始終米国側と接触いたしまして、日本側で一体どういう意向を持っているかということは、公式ではございませんけれども、非公式には始終先方へ通報いたしておるのであります。なおどういう点に特に日本側の希望があるかというような点は、水産省においては特別な関心があり、またその方で研究せられた点でありますから、内容について御質問がありますならば、水産庁長官からでもお答えしたらしかるべきであると存じます。
  5. 清井正

    清井政府委員 ただいま政務次官からお答え申し上げたのでありますが、私どもといたしましても、とりあえずの通知外務省より受けまして、関係方面周知徹底方の話がありましたので、とりあえずの処置といたしまして、該地域拡大につきましては同日ただちに各漁業無線を通じて、出漁しております漁船にすぐ通報いたしました。また同時に関係県を通じまして各組合等にも連絡をいたしまして、同海域の拡張の通告に対するとりあえずの漁船に対する周知徹底の方策は講じたのであります。しかしながら私どもといたしましては、この区域が拡張されるということにつきましては、いろいろの観点から問題があるのであります。ただちに関係者である太平洋漁業対策本部の人々の意見も聞いたのでございますが、結局この問題につきましては、漁場価値という問題もありますが、同時にまたもとより南方に出漁する漁船の通路に当っておる。従ってあそこがああいうふうに範囲が広がりますと、迂回して航行しなければならぬというようなことによって影響があるといりような考え方であったのでありまして、私どもまた同様に考ております。  そこでただちに私ども太平洋漁業対策本部意向について、その筋にただしてみようと考えておるのでありまして、向うでは六月末日までやりたいという意向でありますが、そういうような立入り禁止をいたさんとする期間問題等、あるいは漁場区域問題等いろいろ問題があるのでありまして、そういう問題につきまして、いかにこれをアメリカ方に当方の意見を通報してやるかという問題につきまして、外務省目下折衝をいたしておるのであります。私ども意見は、端的に外務省にも十分お申入れをいたしてある次第であります。
  6. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 ただいま外務政務次官並びに水産庁長官から御答弁があったわけでありますが、先ほど申し上げましたように この危険区域の大幅な拡大ということが、日本まぐろ漁業に非常に大きな影響があるということから、政府としてもアメリカに対して申入れを行っておるということでございますが、その内容はただいま長官から概略御説明がありましたように、期間の短縮が可能であるかどうか、また漁場との関係においてできるだけ影響を少なくしよう、そういう点にあろうかと思うのでありますが、この具体的な面につきましては、外交交渉の問題でありますので、これ以上お尋ねをすることはさしひかえたいと存ずるのでありますが、どうか政府におきましては、わが国漁業に及ぼす影響がきわめて深刻であるという事態を十分御認識いただきまして、日本側の、この申入れが十分実現できますように、特段の御努力を願いたいと思うのでありま  次に私は、この太平洋のまん中におきまして、このように実験のために距岸、海里を大幅に越えて、非常に広い海域にわたって危険区域立入り禁止設定をする、これは従来の国際公法に基くところの公海自由の原則に抵触するきらいがあると思うのでありますが、その法的な根拠はいかような立場をとっておられるか、この点の政府の御見解を伺っておきたいと存じます。
  7. 小滝彬

    小滝政府委員 危険区域アメリカ側ビキニ海域に設けましたのは、旧日本南沖統治地域において米国閉鎖区域というものを設定したのに始まつております。これが一九四七年でありますが、信託条項によって、あの地域戦略恥域として、最初はエニウエトツクでありますが、あそこを中心とした領海を閉鎖地域設定いたしまして、これを安保理事会に通管するという措置をとり、新式兵器実験をするというようになったのであります。しかしこの閉鎖区域は、そこに入ってはならない、また許可がなければ入ることを許さないというような一つ閉鎖区域いわゆるクローズド・エリアでありますが、危険区域の方は、その閉鎖区域を指定された結果、付近船舶なりあるいは人命その他の財産等に危険があってはいけないからという意味で、特に警告意味で危険と思われる一定の区域を限って、危険区域として設定したものであります。従ってここには絶対に入ってはいけないという国際法上の権利を主張するものでも何でもありません。海上において演習を行う場合、いろいろ射撃のけいこをするような場合に、危険区域としてその区域を指定し、これに関係のある諸国に通告するということはしばしばあることでありしますが、ちょうどそういう意味においてこの危険区域設定したのであります。従って私どもといたしましては、この危険区域一つ警戒措置、いろいろな危害を与えないように、宏全のための措置の第一歩であるというように見ておるものであります。従いまして国際法上これが適法であるかどうかというような問題でなしに、そうした事実上の危険を避ける措置として私どもも解釈いたしておるのであります。
  8. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 ただいまの政務次官の御答弁ございますが、その影響をこうむりますところのものは、太平洋を航行する船舶漁船でございまして、特ににわが国に最も盛んな遠洋かつおまぐろ漁業が最直接的な影響をこうむるわけであります。安全を確保するための一応の危険の警告をする海域であるという見解でありましても、その影響を受けとるころの者にとりましては、これは非常に重大な問題であり、経済的にも、特にわが国漁業経済に及ぼすところの影響荘大であります。関係国了解と同意を得なくとも、一方的な宣言でやって行けるものかどうか、その点についてあらかじめ日本政府に対して、ただ通告でなく、了解なり相談があったかどうか、その点をお伺いしたいと思うのであります。
  9. 小滝彬

    小滝政府委員 この危険区域設定につきましては、先ほど申し上げましたような、普遍の国際慣例で行われておるような措置とつたただけであって、日本に相談したことはございません。ただ昨年九月十八日に、日本の船でこの区域に入ったものがあるから、それは非常に危険をもたらすおそれがあるので、十分注意してもらいたいという意味で、在米日本大使飢を通じて注意を喚起したことがあるだけであります。先ほどもちょっと例に申しましたように、危険上区域というのは、これまでも例のあることでありまして、新しい措置ではない。従来も、特に演習をする場合とか、あるいは特別な危険な操作をする場合に、今申しましたような告示でやるという場合は少くなかったのでございます。ただここで問題になりますのは、一体危険区域設定しただけで事足れりとすべきであるかどうか。そのあとにいかなる警戒措置をとるのが至当であるか。これはてそのときの危険の程度にもよることでありましよう。あるいはB二九、B三六を飛ばして、無電を使つて十分その辺を調べて、間違いがないようにするということが必要な場合もあるでありましよう。そういう際に、ただ危険区域設定した、たけで事足れりとするような議論が成り立つかどうか。これについては私どもも疑問を持っておりますので、そうした事実について現に米国側に問い合しておりますが、そうした第二次的な警告措置についてどういうようなことをやったということは、また回答に接しておりません。  またもう一つは、こういう区域が、かりに大きく言えば太平洋全部に及ぶというようなことになれば、その航行を禁止するにもひとしいことでありますから、そういうような必要が起つたとすれば、当然関係国にも協議しなければならない筋合いになるだろと存じます。しかしこれまでの区域は比較的陸地から離れたところであって、これまでの常識で言えば、かりにこれまで設定された区域だけが危険であつて、それ以上に危険が及ばないとすれば、それほど不当に大きな海域危険区域として指定して、そこの通行を事実上不可能にするというような性質のものでもなかったように思います。この実験が起りますまで、危険凶域について米国に対して抗議をするとかあるいはいろいろの申入れをするということはなかったのであります。
  10. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 このような危険区域設定通告をやる以上は、その危険水域船舶が入らないように保護する意味合いにおきまして、十分な警戒措置をとるべきだという政務次官の御意見、まことに同感であります。アメリカは、先般の三月一日の実験におきまして、そのような万全の警戒措置をとつてつたかどうか、また次に行われようとする験の際には、さらに今回の不祥事件にかんがみて、より以上完璧な警戒保護措置を講ずるように、実際にその被害を受けた関係国日本として強く申入れて、必ず実現させるべきだと思うのでございます。この点に対して外務省はとのような措置をとつておられますか、お伺いしたいのであります。
  11. 小滝彬

    小滝政府委員 先ほども申しましたように、先方には随時こちらの考え方を伝え、またこれまでこちらで調査した結果に基いて、いろいろ話合いをいたしております。ただ正式な申入れになりますと、先ほど水産げ長官から申しました、この危険区域を設けている期間の制限という問題にいたしましても、このような実験をして、そのあとをなるべく早く危険区域でないように解除するようにという点をとつて考えてみましても、現に科学者が集まりましていろいろ研究はしております。その研究の結果を待たないと、ただ短かくしるというだけで、かえつて危険を増加するというようなことになつても困りますし、またこちらの準備が十分でなくて、申し出ましてただちに向うから反撃されるような申出でもどうかと思われますから、非公式にはいろいろ先方に中入れてわります。もちろん東京米国大使館、またアメリカ日本大使館から国務省に申しましても、専門家でもないので時間がかかりますからそれに対する、反響をすぐつかむというわけには行きませんが、非公式にはごちらの意向先方に伝えまして、先方研究調査を促しておるような次第であります。公式な申入れもきわめて近い機会にいたしたいと考え百ております。
  12. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 次に今回被害を受けました漁船船員並びに漁船補償の問題につきましてアメリカ当局も非常な誠意を示されて、アリソン大使を通じて正式に十分な補償をやる、またあらゆる面で治療その他に協力をするという、当然ではありますが理解ある申出をしたということを伝えておるのでありますが、その後におきますところの補償に関する日米間の交渉はいかように進んでおりますか。具体的に船員あるいは漁船補償について、十分関係者が困らないような救済措置を講じ得る見価しをお持ちになりますか、その点をお伺いしたいと思います。
  13. 小滝彬

    小滝政府委員 補償の問題につきましては、米国の方でこの事実が判明次第公正なる補償をいたす意向であるということ々声明したのであります。その後官辺筋の話として新聞で伝えるところによれば、の日本の船が危険区域にあつたとなかつた等とを問わず賠償するといりように伝えられますし、また一方では、原子力委員会の方の委員長をしている人の言明としては、まず事実た調査することが必要であるというような、むしろ反対的な声明もありまして、いつ、どういう方法賠償を実施するかは、正式にはまだはつきり私どもの方にはわかつておりません。そこで日本としては、とりあえずこちらで調べた結果に基いて賠償を要求すべき、であるという意見も出ておりますが、何分今度の被害は相当広範囲にもわたつておりますので、そうした面も応は調査を進めておりますが、まだ決定的なところに参つておりません。それに加うるに、これに関連したいろんな問題も非常に調査を急いでおりますけれども、結論的なものには通していないので、先ほどから申しますように、正式に文書にまとめて、先方これこれの額をこういうふうにだしてもらいたいといううな申出はいたしておらないのであります。しかし幸いにしてわれわれの接触している感じから申しますと、この問題は先方も非常に憂慮いたしておりますので、必ず適当な措置米国側によつてもとられるであろうということを期待している次第でございます。
  14. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 今回の事件についての科学的な調査につきましては、日米合同調査という機関がいち早く設置されまして、あらゆる角度から科学的な調査研究を遂げておるようでありますが、この補償の問題につきましても、日米間にそのような合同調査機関を設置いたしまして、直接間接の被害について十分な正しい補償がなされるように、政府はそういう合同調査機関の設置を要望する御意思はございませんか、この点をお伺いしたいと思います。
  15. 小滝彬

    小滝政府委員 去る十六日に米国側へ、まず米国側で判明している事実を問い合せましたことに対しまして、まだ正式の回答が参つておりません。しかし最近の情報では、できるだけ早く回答をよこすということを言つておりますが、向うからの回答と、また日本側で今しきりに進捗しておる日本側調査を突き合せてみまして、非常に見解相違と申しますか、調査の結果に相違があるというような場合になれは、今鈴木さんのおつしやいましたようなことも考えなければならなくなるかもしれませんが、現在のところは、日本日本調査に基いて、そして日本の要求すべきことは要求するという方法で進めたいと考ええております。
  16. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 先ほど政務次官の御答弁の中にも、今回の事件被害は相当広範に及んでおるという御意見がございましたが、事実はまつたくそ通りでございまして、今回の事件が、わが国かつおまぐろ漁業はもとよりでございますが、全漁業、全水産業に与えました経済的な影響、また消費大衆に与えました水産食料に対する心理的な影響はきわめて深刻であり、甚大であるわけであります。政務次官もすでに新聞等で御承知と思うのでありますが、まぐろ類あるいはさめのごときは、ほとんど現在もなお価格は、三割程度下落をいたしております。一時は東京の築地の市場等は、ほとんど大物の市が立たない。一般的に一時は半値以下に価格が暴落しておるのであります。その他まぐろ以外の水産物につきましても、ほとんど漏れなく影響を受けておるのでありまして、わが国漁業界がこうむつたその影響はきわめて深刻なものがあるわけであります。政府におきましては、直接の被害であります。船員あるいは漁船補償はもとよりでありますが、わが国水産界に及ぼしたところのこれらの打撃、影響につきましても十分調益をされまして、これをアメリカ側が納得するように十分なる措置を講じていただきたい、このごとを特に強く希望いたすのであります。次に外務政務次官にお伺いしたいと思うのでありますが、新聞等で報ぜられておるところによりますと、アメリカ側から、被害を受けました船員及び漁船アメリカ側に引取りたいという申入れがあつたやに伝えられておりますが、もしそれが事実であるといたしますならば、日本政府としてはどのような立場をとつて交渉を進めておられますか、その点をお尋ねしたいと思うのであります。
  17. 小滝彬

    小滝政府委員 船員のことは存じませんが、船舶に関しては、アメリカの方で灰の実験などをしたいから引渡して、もらえないだろりかという非公式な申出があるとは、私ども承知いたしております。しかしもちろん渡すか渡さないかは、これは日本の国籍の船舶でありまして、当然日本がかつてにいかようにでもきめられることでありますが、できるだけこういう惨禍を、災いを転じて福となすために、研究あるいは今後の治療に役立つような方に利用することが最も適当でありますので、そうした問題は実は外務省の主管すべき問題でもなく、いろいろ厚生省とかあるいは水産庁その他関係の向き、ことに学界も非常な関心を持つておられますので、こういう各方面と連絡いたしまして、その結論が、かりに向うへ渡した方が有効であるということになれ、ば、外務省対外的折衝機関で、ありますから、そういうようにとりはからうことになるのでありましよう。しかしそれが反対であるならば、外務省として特に引渡さなければならぬ、あるいは引渡しては困るという特別な外務省見解は持つていないのであります。
  18. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 船舶問題についてそういう申入れがあるという点がはつきりいたしたわけでありますが、政務次官が言われますように、このような人類の惨禍を将来再び起さないように、また治療その他の今後の対策を確立いたしますためにもあらゆる関係機関便宜を供与して、あらゆる角度からこの原子力の問題について究明をするという点につきましては、おそらく国民諸君も十分納得いたしているところと思うのでございますが、しかしそれはあくまで日本がその便宜を各方面に供与するという立場でありまして、直接の被害をごうむつた日本国におきましては、科学あるいは医学、あらゆる方面機関を動員して、貴重な、しかも非常に深刻な犠牲の上にできたこの問題の究明を十分やる意味合いにおきましても、また今後の漁船のこういう事態に対する日本恒久的対策を立てる意味合品いからいたしましては、この漁船は断じてアメリカ等に渡すべきではない。便宜は与えてやるけれども、あくまで日本中心になつて、この船を徹底的に、科学的に究明する資料として確保すべきだということが、学界を初め国民感情であろうかと私は思うのであります。この点につきましては、ただいま政務次官もあくまで日本の船であり、日本考え方によつて独自の立場で処理さるべきものだというお話がございましたから、外務当局においても、十分国民感情を了察されまして、善処されることを希望するものであります。  次に、先ほども申し上げましたように、今回の事件かつおまぐろ漁業その他に及ぼした影響は非常に深刻でございます。国内におけるまぐろ等に対する国民恐怖感は、時間とともに徐々に解消されて行くことは考えられるのでありますが、私どもが一番憂慮いたしておりますのは輸出の面でございます。御承知のようにかつおまぐろは対米輸出の非常に大きな部分を占めているのでありまして、その輸出額は生糸をしのいで年間約三千万ドルを越えるという、わが国にとつては重要な輸出水産物であるわけであります。このことについてすでに外国新聞等も大きな関心を払つておりまして、日本がこれらの輸出にあたつて十分な検査をやつているかどうかということについて、異常な注意を払つております。またアメリカのカン詰業者その他も、これについて異常な関心を寄せられているように報道せられているのであります。外貨獲得に非常に重要な役割を果しているまぐろかつおのカン詰及び冷凍輸出品の今後の輸出の上に、いささかでも影響があるといたしますならば、重大な問題であると思います。これにつきまして水産庁あるいは厚生省におきまして、いかようなる御措置をとつておられますか。この点をお尋ねしたいと思います。
  19. 清井正

    清井政府委員 ただいま御質問がございました輸出まぐろ措置でございますが、これにつきましては、先週の終りころでございましたが、こういうような事態が単に国内の生産者あるいは消費者等に対する影響にとどまらず、ひいては冷凍まぐろ、あるいはカン詰の輸出先であるアメリカの消費者に対してもある程度影響が当然考えられる。そこでこのかつおまぐろの冷凍並びに輸出品は、御承知の通りわが国の水産のみならず、輸出品としても相当重要な地位を占めているのでありまして、これの今後における興廃は、わが国水産業にきわめて重要な影響を及ぼすことは当然であります。そこで私どもは、これは早く適当な措置――先手を打つた方がいいという考え方を持ちまして、当時業界の意向も聞きましたので、輸出されるところの冷凍及びカン詰については、厚生省の権威ある検査を受ける。この検査の結果これが全然無害であるという証明を発行することによつて、この商品の信用度を確保するという措置をとろうというので、とりあえずの措置をとることにいたしたのであります。決定後ただちに実施に移しました結果、その後この事件が起つてから輸出されます冷凍まぐろにつきましては、全部厚生省の権威ある検査を終了いたしまして、輸出船積みをいたしたのであります。その後検査をいたしましても、何らの事故がなく、ただいま進行をいたしている最中であります。業界においても、このことについてきわめて関心を持つておりまして、現在われわれの考えておりました措置に全面的に協力をしているようでありまして、私どもとしては、この問題の見通しのいかんに関連いたしますが、当分はこの措置を続けて参りまして、米国向けの輸出について努力を払つて参らなければならないと考えている次第であります。
  20. 田口長治郎

    田口委員長 厚生省環境衛生部長は今役所を出たそうですから……。
  21. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 ただいま長官からの御答弁によりまして、政府が特に輸出水産物の面に重大な関心を持たれて、この事件が起るとただちに適切な措置を講じておられることを伺いまして、私ども満足いたすものでございます。  私は結論として申し上げたいのでありますが、わが国漁業は、沿岸漁業においては、資源の枯渇によつて年々漁民の経済は疲弊の一途をたどつております。また李承晩ラインの設定等によつて以西底びきを初め深刻なる打撃をこうむつている。その他ソ連における拿捕、中共におけるところの拿捕事件が頻発いたしまして、わが国漁業は全面的に重大なる悲境に立たされているのであります。ただわずかに日本漁業の将来の発展の道は、遠洋かつおまぐろに大きな期待を寄せられているのであります。その際に今回の不祥事件が惹起いたしまして、わが国漁業界のこうむつた影響はきわめて深刻かつ甚大であります。私は、伝えられるところの危険水域拡大等に対しましても、政府関係機関が、日本漁業の糧かれております現在の窮状を十分認識されまして、これの対策を十分立てられることが必要であり、かつ国内の消費者の啓蒙、あるいはただいま清井長官からお話がありました、日本においてはこのような万全の検査の措置を講じておるという点を、外務省その他を通じまして、国際市場に対して啓蒙宣伝を十分徹底させまして、日本漁業及び水産物輸出について、できるだけ影響を少からしめるように、今後日本かつおまぐろ漁業が、このためにこれ以上大きな打撃をこうむることのないように、特段の御配慮をいただきますことを特に強く希望いたしまして、私の質疑を終ることにいたします。
  22. 赤路友藏

    赤路委員 関連して。先ほど鈴木委員の質問に対して外務次官がお答えになつた中に、本問題が起つてから、さつそく関係各省と協議をして、まとまつた意見を持つて外務省の方から正式に申し入れたということをおつしやつております。これに対して水産庁長官の方から、当面とりあえずの措置と、申入れらしい要綱を御答弁になつたのでありますが、鈴木委員はこうだろうという仮定の上に立つて話を進められたようであります。そこでその協議されてまとまつた意見というものは、一体どういうものであつたか、そのことをそのままアメリカ側に正式に申し入れたのか、この点をひとつお聞きしたいと思います。
  23. 小滝彬

    小滝政府委員 私は正式に申し入れたと言つたのではございません。大体話に一応のまとまりがあつたから、その都度こちら側の意向はこういう点が要点であるというような点を、随時先方と話し合つたといつたのでありまして、正式の申入れにつきましては、いろいろ調査の結果も総合して考えないと、すぐ申し入れても、それが合理的でないものでありますと、結局こちらの申入れかそのまま実行できないということになるので、そうした面も考慮しなければならないため、非公式に話合いをしているということを言つたのであります。
  24. 赤路友藏

    赤路委員 それはよくわかりました。それでは関係各省と御協議になつて、まとまつた意見はどういうものであつたか、これをお聞かせ願いたい。
  25. 小滝彬

    小滝政府委員 まだここで、一々具体的にどうだということを申し上げる段階に至つておりません。先ほど申し上げたように、大体の意向はこういうところにあるのではないかということを突きとめた程度であります。ただいまそうした点は、まだはつきりした結論でもございませんので、ここで声明する段階になつていないと考えます。
  26. 赤路友藏

    赤路委員 それでは水産庁長官が、各業者に対してとりあえずの措置として、危険区域拡大についての通告をやつた、それから各県へもそうした通告をしたとおつしやつたこと、及び危険区域として拡大通告があつたその場所において、演習する時期の短縮ということが可能であるかどうかということ、あるいは危険区域の縮小というようなことが、ちよつと今水産庁長官の御答弁の中にあつたと思いますが、この通告水産庁だけでおやりになつたのであるかどうか、あと期間の短縮が可能であるかどうかということその他の点は、ただ協議だけであつて、この点について、正式にアメリカ側と話し合つたものではないと確認をしていいのか、この点お聞きしたいと思います。
  27. 清井正

    清井政府委員 私からお答えできることだけ申し上げます。私は危険区域拡大通告が正式にあつたという通告外務省から受けたのであります。同時にこれを各方面周知徹底してもらいたいという通告を受けたのであります。これは私どものみならず、海上保安庁等の関係各省も同様に受けております。私どもはこの通知を受けましたから、ただちに外務省及び関係官庁と相談をいたしまして、この通知を受けたからには漁船の操業の安全を守るという観点から参りまして、とりあえずこういう通告があつたということの通報をいたしたのであります。その点は先ほど申し上げた通りであります。そこで私どもは、その後いろいろ事情を検討いたしまして、本問題につきまして、外務省といろいろ折衝をいたしておる、こういう次第であります。
  28. 赤路友藏

    赤路委員 関連質問でありますのであまり他の面にわたりたくないと思いますが、鈴木委員からアメリカ側申出による福龍丸の引渡し交渉と申しますか、これが非公式にあつたかというようなお尋ねがあつたようでありますが、これに対しては関係各省とよく協議をしてみて、その協議の結果渡した方がいいという結論が出れば渡すことになるかもしれないというような御答弁つたと思うのです。いろいろ考え方もあろうと思いますが、私は鈴木委員がおつしやつたように、これはいかなる理由があろうとも、絶対渡すべきでないと思う。こうした考え方で協議をされるということ自体が、私は間違つておるのじないかと思う。もちろんアメリカ側の万では引取りたいでしよう。しかしアメリカ側の今回の事件に関する考え方と、日本側考え方とは、まるで私は立場が違つておると思う。アメリカは、みずからがやつた原爆の効果というものが、どういうふうに現われているかということの上に立つて、福龍丸を必要とするでしよう。しかしながら日本はそうじやない。日本側立場から言うならば、全世界をおしなべてみても、原爆被害を受けたというのは日本だけしかない。従つて日本立場からこれを言うなれば、これは日本人全体の生死の問題なんです。日本みずからの手においてあくまでもこれを究明して行くということが、私は日本立場だと思う。どういう結論が出るか、これは仮定の問題であつてわかりませんが、私は鈴木委員と同様、絶対に渡すべきでない、こういうふうに考えておりますが、これに対する外務次官の考え方をいま一度お聞かせ願いたいと思う。
  29. 小滝彬

    小滝政府委員 先ほど申しました言葉に、私はかりにという言葉を二度使いましたが、かりにそういうことになれば、その全体の利害得失、どれだけ貢献するかという考究の結果によつて、そういうこともあり得るということを申したのであります。ところで一体根本的にアメリカに引渡すということを言えば、言葉が悪いのでありますが、ただ向うに持つて行くというのではなくて、今の静岡にあります船の灰を取除いて消毒をすることは、これは日本がやつていいし、適当な機関でやつていいのですが、けさも聞きましたけれども、静岡あたりでは、あそこに船体があつては、非常に人心に与える影響もおもしろくないということを、陳情に見えた向きもあるのであります。これは引渡しの問題とは別でありますが、そういうふうな関係もありますので、あそこにいつまで置いていいか、悪いかということは考えものだろうと存じますが、今その船をどこかに動かしてきれいにするとか、あるいは代船をつくるとかいうことは別箇の問題として、十分各庁で考えておるところでありますから、それに従つてやるのが一番適当であるという措置について、その意向を尊重いたしまして行動いたすことになります。
  30. 赤路友藏

    赤路委員 それは何ぼここで押し問答しても、これは考え方相違であつてやむを得ないと思います。私の申し上げておるのは、そうした考え方の上に立つてやられることがいけないのだ、こう申し上げておるのです。あくまでも日本みずからの立場をはつきり堅持してやつていただきたい、このことでありまして、おそらくこれは外務次官と私の方の考え方相違だと思いますから、ここで何べんやつてみても始まらぬと思いますので、これ以上は申し上げません。  ただもう一点お聞きしておきたいことは、いまだに正式な申入れ、抗議等がアメリカに何らなされていない。これはいろいろと研究して慎重を要する。もしも、反撃を受けるようなずさんなことでは困るというような外務次官のお話であつたと思う。これはどこまで慎重にやられるかわかりませんが、しかし事は原爆という、あまり類のないことであつて、これを研究するというんじや何年かかるかわけわからぬ。これはそういう考え方でなしに、あくまでもただちにこれらの点に対しては抗議をすべきであると思う。鈴木委員の質問の御答弁の中にもあつたのでありますが、以前からあそこは危険区域としてある程度区域設定されておつた。その区域のあつたときはあまり問題にされていなかつたのだ。ところが今度の事件が起つてから大きく問題にされて来ておるように思われるというような面が御答弁の中にあつたと思いますが、私たちもそう思います。もつと率直に申しますならば、私たち自体がこれに対してはうかつであつたのではないか。かりそめにも公海のまん中に一線を引いておるということだけは事実なのです。これを日本では認めておる。一体その法的根拠はどうかというので、鈴木委員から話があつたわけなんですが、私が心配いたしますのは、それに強く抗議をしないで、この危険区域拡大の線がそのまま一時的にあつたとしても、日本によつて認められるということになりますならば、爾後の日本の遠洋漁業に及ぼす影響を考えてみなければいけない。しかも今日日韓会談がそのままで、一向膠著して放置の状態にある。これとても、この六月になりますならば当然漁期に入るわけなんで、再びこの問題が燃焼して来ることは明らかなんです。日韓会談が問題となつておるのは、やはり李承晩ラインの問題なんです。公海のまん中に線を引くことをわれわれは許さぬ、そういうことなんです。もしもそういう面がそのまま認められるということになると、日韓会談に及ぼす今後の影響ということも考えなければいけない、それでなくともアラフラ海の問題にいたしましても、フイリツピンにしても、インドネシアにしても、いろいろ問題が輻湊しておる。これは日本の遠洋漁業の死命を制する問題になると思う。そういう観点から行くならば、これは一時たりといえども私は認めるべきでない。ただちにこれは抗議をしてそうしたような一方的な宣言をなくすることの努力をすることが、今日政府としての使命でないか、こういうふうに私は考える。この点についてどういうふうにお考えになつておるかというが一点。  もう一点は、このアメリカ側の方の措置については、安保理事会に出しておるというお話があつたように思います。そこでこうした問題について、政府は国連に対して、これらのものを撤回するための抗議をする意思があるかどうか。あるいは申入れ措置をとる意思があるかどうか、この二点をお聞きしたいと思う。
  31. 小滝彬

    小滝政府委員 先ほど御指摘がありましたように、いつまでも調査の結果を待とうという気持は毛頭ございません。御指摘のようにこういう問題を深く探究いたしますればいろいろな問題もありましようから、そういう結果を待って正式な抗議をするという考えでなしに、ちょうどこちらの調査が整いましたならば、こちらから申入れをする考えでありします。しかしその前に随時相互話合いをしておるというのが現状であります。そこで御質問の第一点は、危険区域を認めないように、これの設定に抗議を申し出ろということであります。これは結局今度の調査がある程度まで進み、そうして今度拡大された危険区域はどれだけの打撃を与えるかという点においてよく調べました上、もっと力の弱いもので実験してもらうとか、いろいろ申出方法はあろうと思います。根本的に申しますれば、こうした実験とか射撃とかいう場合には、海上において危険区域というものが従来国際慣例上認められておりますので、その領土内で行う実験の結果が他に大なる影響を及ぼさないような予防措置を十分講じてやるということになれば、そういう実験は絶対にしてはならぬということは日本としては言えないと思います。こうした実験も終局的には平和の意義ということを考えてやっておるものと私どもは見ておるのでありまして、公海で灰が落ちるようなことは絶対にやってはいけない、艦隊を持っている国も海上演習をすることは公海自由の原則に反するから絶対にいけないというところまで世界の状況が進んで、理想境になっておればありがたいのでありますが、現在はそうではないので、そうした根本的な申入れができるかどうかは、十分考慮いたしまして措置をとりたいと存じます。なお国連への抗議の意思はないかどうか。これもその被害太平洋全体に及ぶとか、重大なる影響があるということをはっきり突きとめた上で、そういう措置もとらなければなりませんが、現在ではそれについての十分な調査をいたす段階でありまして、その結果によっては今おっしゃいますようなことも考えられるのでありまするが、いずれにいたしましても現実の問題としては、三月一日に起りましたあの悲惨な事件をどう解決するかということを第一段とし、同時に今後こうした惨禍が起らないような予防の措置をどうするかということについて、十分隔意なき意見の交換をいたしまして、これが再び起ることのないように措置いたす考えであります。
  32. 田口長治郎

    田口委員長 遠藤三部君。
  33. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 私はただいまの質問に関連いたしまして、区域拡大の問題について意見を申し上げたいのであります。先ほど政府答弁を聞いておりますと、危険区域拡大した、だからそれを承知しろ、それをそれぞれ関係機関に知らせて、こっちの方で万全の措置を講ずる、こういうような実に受身の、はいくといって返事して、喜んでその危険区域拡大の要求に応じているような感じを受けるのであります。しかし事柄はきわめて重大であります。先ほど来外務次官のお話によりますと、従来の国際慣例から言いましても、危険区域を指定して、それが一定の区域に限られておって、一定期間ここへは入ってはいけないという場合には、危険区域設定することは国際慣例上認められておる、こういうことでありましたけれども、今までの海軍がやっておる演習なんかと、今度の原爆の場合とはまるで規模が違う。まったく新しい事態なんであります。しかし詳しいことはわかりませんけれども、その地点を中心にして円周を描いたその三百マイルに及んで被害がある、こういう問題になって参りますと、あんなに大きな太平洋でありますけれども実に狭いものになってしまう。これを平気でやられて参りますと、これはまったく公海自由の原則を破壊するものであります。ここらで国際慣例を立て直さなければならぬときが来ているのではないかと私は思う。でありますから、調査を大いにやっていただくことはけっこうであります。調査をやっていただいて、その影響の範囲を調べていただくことはけっこうでありますけれども、今まで新聞紙等で伝えられておるその事情から見ますと、今までの慣例を破った新しい事態に直面しておる。でありますから、今度これだけ危険区域拡大した、こういうことを言われて易々諾々としてそれに追随しているような態度は、私ども国民感情としてはまつぴらごめんであります。もっと強くこの危険区域に対して抗議を申し込むことが、当然だと私は思う。公海自由の原則をまったく破壊される。そうしてしかも、私はこの際もう一つはっきりしておきたいことがあるのでありますが、それは魚類に及ぼす影響であります。私ども原子物理学にあまり詳しくないのでありますから――あまりと言いましてもほとんど知らないのでありますからよくわかりませんが、海の中で泳いでいる魚に対してはどういう影響があるのか、海の中で泳いでいる魚が、たとえば原爆の爆発をする周辺百海里のところで、かつおまぐろなんかが放射能をしょい込んでおる、そういうことが考えられるとしますと、これは一日に数百キロも走って行くそうでありますから、たちまち太平洋の隅々まで届いてしまう。天平洋のどこの海岸で魚をとっても、入な放射能にかかってしまう。太平洋が砂漠のようになってしまうのであります。これがわからないとはっきりしないのでありますけれども、この点については詳しい人がおるかどうか知りませんが、どなたでもいいのですけれども、生きておる魚に対してはどういう影響があるか、たとえばダイナマイトを川の中で破裂させるようなぐあいに、破裂した周辺何海里までは爆発の震動によって魚がみんな死んでしまうとか、それから先の何海里までは放射能のために魚が死んでしまうとか、さらにその外辺においては何海里までは放射能を持っても、まだ生きておるけれどもひよひょろして病人状態で泳いでおるといったようなことがあるのかどうなのか、その辺をまずお伺いして、それからまた質問を続けたいと思います。だれかおわかりの人があればだれでもいいのです。
  34. 楠本正康

    ○楠本政府委員 たいへんむずかしい御質問でございますが、これはまだ研究調査が初めての例でございまして、わが国といたしまして、あるいは世界各国におきましても、かような確たる研究成績がございませんが、ただ従来の原子能力あるいは物理学の考え方といたしまして、きわめて近い範囲におきまして、しかも表層を泳ぐ魚類というものは、かなりこれらの影響を受けるものと考えなければなりません。ところがかなり距離が離れ、しかも深部におきましては、海の流れが強いために、一般に病毒がきわめて薄く拡散されます関係で、何ら生物に支障のないものと考えております。ところが遠洋漁業においてとられます魚類は、表層魚ではほとんどございませんで、多くは深海を泳ぐものでございますので、従ってさよりのようなものは別といたしまして、まず私どもは、現在のところは危険はないと考えております。
  35. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 今の答弁で正しいかどうか私はわかりませんが、とにかく表面を泳いでおる魚は影響があることははっきりしておると思います。そこで半径三百マイルに及ぶような大きな円周を描いて、それらの海域の表面に泳いでおる魚が、あるいは放射能を背負っておるかもしれない。こういうような状態をつくり出すようなことをやたらにやられた日には、たまらないのである。これは危険区域を一方的に宣言することができるというような従来の慣例とは、まったく新しい事態であります。これはこのままほっておいたら太平洋は砂漠になってしまう。そうして太平洋の沿岸の何億という人間は、非常な危険にさらされるような結果になってしまう。でありますから、新しい国際慣例をつくる意味で、今度の原爆事件は非常に幸いの問題でありますから、この機会に新しく国際慣例をつくる。そうしてしかるべく国連に訴えるなら訴えるでよろしい、アメリカに対して直接交渉するなら、それもよろしい、そういう積極的な心構えをもつて、この事態の根本的な解決に当る考えを持つておるかどうか。それを持たないようでは何ともしようがない。私はぜひ持つてほしいと思う。それについての外務省見解をもう一度伺つてみたい。
  36. 小滝彬

    小滝政府委員 お説はまことにごもつともでありまして、こういう被害が非常に広汎な区域にわたるということであり、ことに太平洋水産業が重大なる支障を来すということになれば、これは人類の大問題でありますので、仰せのように確固なる信念を持つて措置をしなければならないと存じます。しかし先ほども御質問になりましたように、こうした問題がまだはつきりいたしておりませんので、たとえば新しい国際慣例をつくりますにいたしましても、とにかく一応科学的な調査の結果、いろいろな試験結果を持ち寄らなければ、日本だけで通用しても、またほかへ通用しないというのでは、結局目的を達成できませんから、せつかくそうした面の研究を進め、申入れも今御指摘の危険区域についてもいたしたいと考えております。
  37. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 外務省当局は、この原爆自体の詳細なる調査をされるとおつしやるのでありますが、それに対してはまつたく賛成でありますけれども調査をするためにいたずらに荏苒日を送つていることは、国民感情がこれまた許さないのであります。そこでとにかく留保付でもいいから、ただ危険区域拡大されましたといつて関係業者に全部知らせる前に、アメリカに向つて、もし事態がはつきりしたならば、この危険区域は撤廃してもらわなきやならぬようになるかもしれないというような、留保付の抗議でも申し込むことが当然だと思いますけれども、そういうことに対して外務省は考慮したかどうか、もう一度伺つてみたいと思います。
  38. 小滝彬

    小滝政府委員 周知方とりはからいは、かりにそうした実験が再びされて、被害があつたらたいへんでありまするから、一方では二心これの周知方をとりはからつて危険のないようにしなければならぬという措置として、とりはからいをいたしたのであります。同時に私ども先ほどから申しましたように、何もこの問題は、やむを得んというのでほつておいたわけでは絶対にございません。先方と連絡をとりまして、先ほどから具体的に申さなかつたので、あるいは徹底しなかつたかもしれませんが、日本見解は大体こういう意見も出ている。これがこのまま実施せられるということになれば重天なることが起るかもしれぬというような点は、十分先方に伝えておるはずであります。ことに東京におきましては、向うアメリカ大使館とずいぶんそうした点を話合いをしておるのであります。
  39. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 そこで先ほど船の引渡しの問題が出ておりましたが、それに私の意見を申し上げておきますと、これは同僚委員意見とまつたく同様であります。理由は喋々申述べる必要はありませんけれども、この原爆の被害船を引渡すようなそういうだらしのない、情ないことをしないように、そういうことに対しては絶対反対だということをひとつここで申し上げておきます。  それから損害賠償の問題でありますが、この問題も先ほど来議論になつておりましたが、あの原爆以来国内に非常に大きな波紋を描いておる。魚屋さんがみな店を締めてしまつた。国会のすし屋さんも店を締めてしまつたのです。まぐろはもうだめですから、すし屋は大半店を締めておるのです。そうして先ほど鈴木委員の言われたように、まぐろの値段は半分から三分の一くらいになつてしまつた。その被害たるや莫大なものであります。そこで私は、今水産当局にお伺いしておきたいのでありますが、その正確なる被害調査をすることは相当の期間を要するでありましよう。けれどもそういう部門と、こういう部門と、こういうものには損害がありました、その金額は追つて知らせますけれども、大体においてこういう厖大な被害があつたということを、アメリカに要求して損害賠償をよこしなさいということをまず一本矢を打込んであるかどうか、それをひとつ伺いたい。損害があつたらば交渉するとかなんとかいうのはまことになまぬるいのであります。どういう部門について損害があるか、たとえば魚屋さんの損害が幾ら、あるいは冷凍まぐろ、あるいはまぐろのカン詰をつくつておる業界の人々の損害の程度はどの程度になるか、あるいはその他の部門もどういう影響があるか、どの部門でもいいから、こういう部門についても損害があるというような誰査がほぼ進んで来ているかどうか、それについて水産当局の調査の実情、進行の状況をお尋ねしておきたいのであります。
  40. 清井正

    清井政府委員 お話の通りに、これはお話の通りに、これは相当広範囲に影響を及ぼしたことは事実であります。私どもは目下直接並びに間接の被害につきまして、各方面より資料をとり寄せましてただいまいろいろ計数整理をいたしておる状況でございます。この問題につきましては、なお関係省とも十分相談をいたしまして、最後の結論を得たいとただいま計算をいたしておる状況でございます。
  41. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 その被害の問題に関連しまして、先ほど冷凍まぐろやカン詰のアメリカに対する輸出の問題について、厚生当局及び農林省当局から、こちらで厳重なる検査をやつておる、支障なく船積みができておるという答弁がありました。支障なく船積みができておるだろうと思います。けれどもアメリカの方ではこれにクレームをつげるようなことはないのですか、どうですか。アメリカの方では、相当危険だというようなことを言つておるように新聞等は伝えておるわけでありますけれども、もしそういうことがあれば、私はアメリカに対してはなはだ不満の意を表さなければならぬと思います。私はここでちよつと断つておきたいのでありますが、私ども決して反米でも何でもない、アメリカとともに手をつないで行かなければならぬという考えを持つておるものであります。であればこそ私どもアメリカに対して、強く言わなければならぬと思うのであります。アメリカ日本かつおまぐろ漁船に大きな損害を与えておいて、それからできて来たカン詰は、食えないからそいつは断るのだというような断り方をするようなことは、絶対あるまいと思うけれどもアメリカの情報はどうなつておりますか、もしおわかりでありましたら外務当局から伺いたいと思います。
  42. 小滝彬

    小滝政府委員 第五福龍丸の事件がありましてから、西海岸の方でまぐろの冷凍についてのいろいろうわさは飛んだようであります。しかし三月一日以前のものでキャンセルして来た、契約解除して来たというものはない。しかし三月一日以後のものについてはよく考えなければならぬということを言つている輸入業者もあるという報道がロスアンゼルスから参つております。こういう公電が参つております。しかしこれは公電ではございませんけれども、最近の情報によりますと、向うの方でもテストをする方法をとることになつたように報ぜられておりますので、今のところは、すぐクレームがつくとかいつた問題が起つたという情報には接しておりません。
  43. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 ただいまのお答えで、アメリカの方はまだ疑問があるように伺つたのでありますが、これは明らかに外務当局の政治の一つの問題だと思います。この国内の事情をはつきりアメリカ当局通告をして、もしそういうことがあるならば、日本国民感情としてまつたくこれを許すことができない。そういう情勢であることを事前に通告しておいていた、だきたいと思う。さもないとクレームがついたといつても、そこまで行つてからではおそいのであります。ですからその点については、ぬかりなく強硬な態度をもつてアメリカに臨まれんことを私はお願いするわけであります。これは要するに今回の原爆問題は、水産業にとりましてこれほど大きな問題はないと私は思う。文字通り日本水産業の死活の問題だと私は思います。この重大な関頭に立つて、水産当局も外務当局も、今までのようなしきたりに押されて、アメリカに対してきわめて従順な態度をとるという態度でなくて、アメリカに対してもわれわれの主張すべきものは、はつきり主張して行く。そうして賠償をとるべきものははつきり賠償をとつて行く。これがほんとうの意味日米親善になると思いますが、そのことを特に御考慮願うことを要望いたしまして、私の質問を打切つておきます。
  44. 田口長治郎

    田口委員長 ちよつとお諮りいたしますが、正式の質問の申込みがあと四人残つております。関連質問の申込者が五名でございますが、いかがでしようか、正式質問者の質問が、終つてからゆつくり関連質問の方にやつていただく、そういう方法をとりたいと思いますが、いかがでしようか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  45. 田口長治郎

    田口委員長 それでは田中幾三郎君。
  46. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 今回の水爆による被害は、また水爆の威力というものは、われわれの想像を絶しておりまして、日本はもちろん世界に向つて非常なセンセシヨンを起しておるのであります。しかもそれは平時においてこういうことが起つたのでありまして、これはまことにわれわれの驚愕するところであるのであります。先刻来この被害に対する処置、今後の方法について大分論ぜられておりますし、もちろんこのことは重大問題でありますけれども、人道の上から、また世界平和を守る上から、この原爆の使用、製造、保管ということは非常に重大な問題であると思います。日本は今回の唯の被害国として、この機会にアメリカに対し、また国連に対して、今後原子爆弾の使用、管理、製造について、何らかの申出をする意図があるかないか、これを点お伺いしたい。
  47. 小滝彬

    小滝政府委員 原子力の国際管理の問題は、これまでも相当長くソ連と米国との間で論ぜられておつたのでありますが、結論を得ない。ようやく最近平和的使用について米国とソ連の間に話合いが進もうとしておるような状態でありまして、原子力を持つておる国の間に話がつかないというと、第三国の方からいろいろの申出をいたしましても、それに耳を傾けて聞くということは、実際問題としてなかなか期待ができないだろうと存じます。しかし今度の不幸な事件は、面において原子力の非常な威力を世界に示したことでありまして、これが幸いにして平和への情勢を動かす上に役立てば、それこそほんとうに災いを福とするのでありますが、それかといつて、今この際ただちに日本が、国連の方へ日本としてこの問題を訴え出ることが適宜の措置であるかどうかということは、よく考えなければならない問題であると存じます。現に米ソ間でも話が行われておるようでありますから、今度のいろいろの実験の結果、あるいは調査の結果が、できるだけ世界の平和に役立つように、そして相なるべくは原子兵器というようなものが使われないようになり、平時においてこれを実験することがないようになる機運を醸成するに役立つとすれば幸であると思います。
  48. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 人命に関する点は、アメリカその他の国も良心によつて十分注意するでありましようけれども、魚類に対する点は人命よりもはるかに軽んじて、むぞうさにやられはしまいかというおそれが今後もあるのであります。われわれは魚類を水爆の危険から守るために、水爆の使用、管理、製造に対するある方法をとらなければならぬと考えておるのでありますが、これは平時における被害でありましたけれども、戦時における長崎、広島の原子爆弾による被害に対しても、アメリカに対して損害賠償を請求せんとする在野法曹の空気があるのであります。私はもしこれらのことが成功しまして、ある意味において原子爆弾の使用、製造、管理が制限されるならば、魚族もこの被害から守れる。そこで私はこの損害賠償の点を少し申し上げて、外務省の所見をただしたいのでありますが、これは日本弁護士連合会所属の岡本尚弁護士の立案になるものでありまして、広島、長崎に対する原爆の投下は国際法違反である、こういう見地に立つておるのでありますへーグの陸戦条規の第二十三条によつて「毒又ハ毒ヲ施シタル兵器ヲ使用スルコト」「不必要ノ苦痛ヲ与フヘキ兵器、投射物其ノ他ノ物質ヲ使用スルコト」これが禁止されておるのでありまして、これによりますと、これ以上の威力を持つ原子爆弾を使うということはこの条規の違反である。これが第点であります。それから第二点といたしまして、九〇七年に第二回へーグ平和会議において、特殊弾丸いわゆるダムダム弾の使用禁止の宣言が採択されております。それから九二五年にはジユネーヴにおきまして毒ガス等の禁止に関する議定書がとりきめられておるのでありますが、これにも違反をする。それからへーグの陸戦条規二十六条によつて、攻撃の事前通告がなかつた、事前通告がなかつたのみならず、われわれは当時においては原爆というものの存在すら知らなかつたのである、これもやはり違反であるという根拠に立つております。それからこれがもし国際法違反でないとしても、条理すなわち自然法に反するというのが岡本損害賠償理論の根拠になつておるのであります。そしてアメリカの法律によりますと、「国際法若くは合衆国の締結せる条約違反に基く総ての外国人の提訴」は米連邦の地方裁判所においてこれを行う。そこで考えられますことは、日本の国家もこれによつて損害を受けておるのであるから、アメリカに対して損害賠償の請求権があるかないかという問題、それから被害を受けた個人は、アメリカに対してその被害に対する損害賠償を求め得るやいなやという問題、日本国のアメリカに対する損害賠償については、平和条約十九条によつて切の損害賠償請求権を放棄しておりますから、多少の疑義があろうと思うのでありますが、日本の国家が損害賠償を放棄したとしても、損害を受けた日本国民個人は、アメリカに対して損害賠償の請求権を放棄していない、これが岡本理論の根拠であるのであります。最近聞くところによりますと、全部の損害賠償を起すことは金額が非常にかさむし、費用もかかるので、分割して訴訟を提起するという情報が伝えられておるので、日本弁護士連合会においても研究をしておるということであるのであります。そこでもしこの訴訟がアメリカの裁判所において取上げられまして広島、長崎の原爆による被害者が損害賠償の幾分でもとることができますならば、このことによつてすでに原子爆弾というものの使用が不可能になる。今後それの使用ができないということに決定されるのでありまして、これは私はまことに大きな問題であると思うのでありますが、もしこの訴訟が日本人の弁護士によつてアメリカに提起されましたならば、外務省は体いかに考えられますか。その前に、またこういうことを研究なさつたことがありますかどうか、またこのことが実際に取上げられて提訴するという具体的な手績がとられた場合には、外務省はいかようになされますか、あるいはこういう空気があるという情勢に対して、どういうふうにお考えになりますか、この点をお伺いしたいと思います。
  49. 小滝彬

    小滝政府委員 日本国は御指摘のように、平和条約第十九条において、請求権の放棄をいたしております。その中には、「戦争状態が存在したためにとられた行動から生じた連合国及びその国民に対する日本国及びその国民のすべての請求権を放棄し、」すなわち日本国民の請求権も放棄するということを、この平和条約によつて日本国の請求権のみならず、国民の請求権も放棄するということになつております。でありまするから、法律論から申しまするならば、日本国民に対する責任と申しますか、国民の持つている請求権は国家がこれにかわつて補償するというなら、これは大蔵省なんかの問題でありますが、単なる法律論をいたしますならば、日本国家がかわつて補償するのであつて、このことはたとえば十六条の中立国における私有財産までも日本は放棄して、赤十字国際委員会の方へ引き渡すということであります。そこで今度は個人と国家の関係からいえば、平和条約だけの建前から申しますならば、適当なる補償を憲法によつて与えなければならぬということになるのでありまして、日本国の政府といたしましては、その請求をなし得ないことになつております。但しアメリカの国内法において、そういうことが事実取上げられて、その訴訟に勝つということになれば、当然それは個人としてアメリカで認めることでありますから、日本政府としては、それに反対すべき理由はないだろうと存じます。
  50. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 私の申し上げるのは、今の平和条約によつて放棄された、放棄されないという法律論をやつておるのではありません。もしそれを日本国の政府が、国民の持つておる権利を個人にかわつて放棄したのであるとするならば、これは憲法違反であります。個人の権利を侵害したことになるからこれは別問題でありますが、そういう法律論を私はしておるのではありません。こういう訴訟が提起された場合に、国家は別に異議を申すという理由はない、進んでこの原子爆弾の管理、制限ということのために、政府はこのことに対してただ傍観をするだけだが、このことのために進んで積極的に何らかの措置を講ずるかどうかということを伺つておるのであります。
  51. 小滝彬

    小滝政府委員 政府といたしましては、平和条約を守らなければならないのでありますから、平和条約に違反した行動を政府みずからとるということは不可能な次第であります。
  52. 田口長治郎

  53. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 ただいままでの質疑応答の内容を伺つておりますと、どうも私は納得のできない点が多々あるのであります。まず第一に、三月の一日以前に漁獲した冷凍品がアメリカに行つてクレームを受けたことはないこう言明をなさつております。これは私の調査によりますると、具体的に申し上げまするが、アメリカに冷凍まぐろを積んで行つたフリスペート・マリナー三百二十五トン、この船のまぐろアメリカに揚げてはならないという報告が入つておる、これを政府がお知りになつておるかどうか、あるいはおわかりにならないかもしれません。私もこれはその電報を直接受取つたわけではありませんが、ただこれはきようこの委員会に出席するせいぜい三時間前にこの電報は入つたかもしれません。そういうことであるから、これからでも続続そういうような問題が起きはせぬか、こう私は心配するのであります。たとえば今インド洋に行つて漁獲している相当数のまぐろ船、これは冷凍まぐろがねらいでありましよう。これをあちらの方で全部あの危険海区において漁獲したまぐろのように解釈して、そういう処置をとるということがあるかないかわかりませんけれども、あまりにこの宣伝が強いために、日本ばかりでなく、アメリカにおいても、このまぐろは食べないという宣伝が行われているのではないだろうか、これはたいへんな問題でありますので、今申し上げたフリスペート・マリーナ三百一十五トンの積んだまぐろは三月一日以前に漁獲したものである。これがアメリカに陸揚げされないという報道を受取つておるかおらないかということを伺いたい。
  54. 小滝彬

    小滝政府委員 私どもの方ではその情報を受取つておりません。今水産庁の方に伺いましたが、水産庁の方もそういう情報を受取つていないということであります。なおこの際お許しを得まして申し上げたい点は、こういう原爆の試験に関する情報がいろいろまちまちに伝わるのでございまして、あるいは場合によつては、必要以上の心配を日本のみならず世界の各方面に及ぼしておるようでありますので、外務省もすでにアメリカの大使館に対しては、できるだけこういう必要な心配を消費者が持たないように、先方でもいろいろ宣伝機関を持つおることであるから、協力してほしいということを申述べ、協力を依頼しておりますと同時に、外務省の情報局においても、毎日の外人記者会見などには、努めてこうした危惧をなくするように努力をいたしておる次第でございます。
  55. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 今申し上げましたことは、これは組合から報道を受けたものであつて、組合がこういうような事実をたしかアメリカから直接受けたのではないだろうか、こういうふうに考えておるのであります。これは水産庁でもさつそく御調査を願いたい。ということは、この船ばかりでなく、なおあとから行く船もこういうはめにあうということをおそれるからであります。大体この放射能というものが、今の原爆の被害を受けたまぐろに限つておるのか、その他の動物及び植物にも多少あるのかどうかということを厚生省の方から御説明を願いたい。簡単にあるとかないとかということでよろしゆうございます。
  56. 楠本正康

    ○楠本政府委員 福龍丸に積載しておりましたまぐろ、さめ等につきましては、確かりかなり強い放射能を証明し得ました。しかしこれはいろいろ調査の結果、降つて参りました灰によつて汚染された結果ということが明らかになつております。なおこれらの魚体におきましても、筋肉の深部には放射能が及んでおりません。  次に先ほどもお答えいたしましたが、私ども現在まで船にいたしまして約八十そう、約八十万貫の南方からの魚類を、五港において厳格に検査をいたしておりますが、これらの中には例外なく一つも放射能の支障があるようなものはありません。全部無事であります。かような点から見ますると、先ほど総括的に申し上げましたように、もちろん灰をかぶるというようなことは別でありますが、そうでない限りは必ずしも心配がないという証明になるのではなかろうかと存じます。とにかく今まで百万貫に近いものを調査いたしておりますが、一例もございません。
  57. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 そこで、新聞ラジオが非常にこれを大きく宣伝したということは、この問題を、あまりに宣伝によつてこの被害をますます大きくしたということであります。毎日私どもが食べておる米に――やはりこれは実際に私は実験したわけでも調査したわけでもありませんが、この放射能が二十パー・ミニツトから百パー・ミニットまである。人体においては、非常に生命があぶないというところまで行くには一万パー・ミニットなければならぬ。こういう関係があるそうであります。しかしそうなりますと、事はめんどうですから、いわゆる日本まぐろの問題は、あらゆる魚にも非常に危険であるという宣伝について、そうではないということを、農林及び厚生両大臣から声明する何かの方法をとる考えがあるかどうか、まずこれを伺いたい。
  58. 楠本正康

    ○楠本政府委員 現在少くも入荷し、出荷されておりますところのまぐろ、あるいはその他の魚類が絶対に心配のないことは、過日農林、厚生両大臣が連名で談話を発表いたしております。なお私どももこれらの安全性につきましては、すでにお聞取りの通り、ラジオあるいはいろいろな報道機関を通じまして、極力その徹底に努めておるわけでありますが、むしろ逆に、国民の側から誇大に危険視されて、うわさを生んで徹底を欠いておるというような点を、はなはだ遺憾に思つております。
  59. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 あなたの方の宣伝力が足らないのです。新聞、ラジオの報道によつて、山の奥に住んでいる人たちまでも、魚を食べてはならないという宣伝が非常に大きく浸透したということであります。であるから政府の宣伝力はまことに弱いということであります。しかしそれは国内ばかりであればまだいいが、今申し上げたように、アメリカまでもこの宣伝が非常に徹底しておるということである。そこで先ほど来非常に問題になつておる危険区域拡大によつて、どれくらいの損害があるだろうかという質問に対しては、例によつて調査研究中という名答弁である。まあそれはそうでしよう。しかし調査研究それもよろしいが、私はある方法によつて調べたところによりますと、その損害は大体一日二億円に達するのではないだろうか、これをはつきりと申し上げます。これも、これからなお再調査することでありますから、その数字がはたして当るかどうかということはちよつと早いかもしれませんけれども、大体において禁止区域によつて生ずる損害は、直接間接に莫大である。その付近には中型漁船は出られない、大型漁船でも迂回して行かなければならぬ、これによつて生ずる魚の鮮度の問題、あらゆる魚価の問題等に及ぼす影響が、おそらく一日三億円に達するであろう、こういうことになるのじやないか、こう考えております。そこで戦争中に広島、長崎において受けた原爆の被害は、おそらく日本国民は永久に忘れることはできないだろう。今また再びビキニの環礁で受けたこの損害は、日本国民に与えられた大きな問題であり、日本政府がいかにしてこれを処理するかということは、国民とともに検討しなければならぬと思うのであります。しかるに十分の調査をする力があるかないか知りませんけれども、たとえばアメリカ輸出するとすれば、合同調査もいるかいらぬか、合同検査もいるかいらぬか、この点もまだ明確ではないということであります。私の考えは、アメリカ輸出するまぐろは合同調査、合同検査によつて、これはどの海区でとつたものであるから危害はないということをアメリカ人によつて証明され、アメリカに放送されることによつて、これは間違いなく被害がないということが証明されるのじやないだろうか、日本政府日本国民にさえ徹底することができない、まして日本の宣伝力はアメリカに及ぼすほどの力は持つていないのだ、よつてアメリカヘの宣伝は、アメリカ人によつてこれを宣伝させなければならぬということになつたならば、アメリカ人もともに合同調査、合同検査に参加させて、その責任を分担させることは当然じやないだろうか。この合同調査によつて判明した損害額が二億円に達するほどであつたならば、今禁止区域になつておるところを変更しない限り、たといこれを予告して云々といつたところで、当然その責任を回避することはできない。よつてアメリカは一日に二億円の損害を賠償することを前提としない限り、この場所を変更しないということが言えるかどうか、私はそこに結論が達するだろうと思うのであります。もしそれはたえられない損害である、それでは場所を他に変更しようということであつたならば、それは日本漁業者に与える損害のないところに持つてつてもらいたい。いかに戦争に負けたからといつても、これ以上、面も四回も原爆の被害を受け、日本国民が、戦争に勝つた強大な国の圧力によつてその生活権を誇れるということは、われわれにはたえられないのであります。よつて政府は、この問題をもつと大きく取上げて行つてもらいたい。私の言う二億円がはたして的確な数字であるかどうかということは、私も今申し上げておつて寸分違わないということは言えないけれども、それが概算による数字であつても、それはその禁止区域変更しない限り、今申し上げたように必ずこの損害額を賠償することを前提としてもらいたい。再びアメリカがこういうことをやることは、勝つた国であるからもちろんでしよう。なるほど戦争するために、軍艦は公海においていろいろな行動を起すことがあり、これがそういう大きな問題になつて来れば、弱小日本はいかんともいたし方ないのであつて、魚をとるための航行のために公海の原則を堅持せよといつても、それは及ばないところである。よつて私は、どこまでも原則的には損害の補償という点を重点に置いて、この区域変更もしくはその損害の補償を強く要求する、また調査機関は合同調査によつて的確に現わすことは、あちらにもその責任があるから、その責任を分担することはむしろ当然じやないかと思うのでありますが、これに対する御答弁を願いたい。
  60. 小滝彬

    小滝政府委員 治療あるいは消毒という面について日本と協力したいという申出がありましたのみならず、今次の事件については共同で調査をしたいということは、先方からも申し出ているわけであります。しかし日本としては、あくまで日本が主になつてやりたいというのが大体の意向のようであります。現に作目からも、今度参りました専門家日本側と話をしております。しかし事件そのものについての調査についても、国内でもいろいろ議論がありますので、先ほど申しましたように、日本が主としてやらなければならない必要があり、またその方がより有効であるという場合は、共同調査というものも十分考える余地があるだろうというふうに申し上げた次第であまりす。
  61. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 政府の苦しい点はよくわかりますけれども、将来に残る大きな問題でありますので、私はあえてこのようなことを申し上げる次第でありますが、そこで今後の輸出水産貿易というものに非常なる影響を及ぼすことは当然でありますので、いやでもおうでも私が今申し上げたことをあちらで聞いてくれるか、これはいわゆる宣伝の力によつて左右されるのである。今アメリカまぐろの需要が非常に大きくなつておるその原因はどこにあるか、それはカン詰業者がじやんじやん宣伝費を使つて、大体一〇%ないし二五%の需要が多くなつたということだそうであります。それほど宣伝によつて効力を現わすアメリカに対して、この恐るべき害を、人命に及ぼすいわゆる原爆魚はアメリカに出せないことは当然でありますので、ここでどうしても政府から、最も強い声明なりあるいは何かこれに対する宣伝――これは金がかかつても、これくらいちつとは予算をとつて、ひとつがんばつてもらいたい。緊縮予算であなた方たいへんお苦しみのようですけれども、緊縮々々といつたところで、金を生かして使えばそれは政府のためにもなる、国民のためにもなることであつて、何も遠慮するところはない、そういう意味におきまして、政府の方では、先ほど申し上げたように、将来に及ぼす影響は非常に大きいので、何の遠慮をすることはないから、調査及び検査の面は責任の分担の意味において、合同検査、合同調査をして、将来に残る二億円の損害賠償を獲得することを前提として行動してもらいたいということを、私は強く主張いたすのであります。これをもつて私の質問は打切ります。
  62. 田口長治郎

    田口委員長 松田銭藏君。
  63. 松田鐵藏

    ○松田(鐵)委員 外務委員会及び水産委員会また本会議でもこの問題が取上げられようとしておる。かかる状態に、あり、またひいては今までの各委員の発言、それからこれから控えております各委員の発言も同じことだろうと思うのでありますので、私は別な角度からこの点を考えてみたい、かように考えておるのであります。  まず第一に今回の事件は、どなたの考えからいつても、世界平和の確立のために非常に大きな貢献になつたものと私は考えます。今まで日本の国会においても、やれ保安隊、予備隊、再軍備というような問題で論議されておる。これからも論議される。しかし今回の事件が発生してから、あたかも日本の保安隊は軍備でも何でもないおもちやのようなものであります。むしろ青年訓練所にひとしいもののように考えられるのであります。ゆえにこうした問題は世界平和確立のために非常に大きな効果をあげたものであるという考え方を私は持つておるのであります。しかしてこの事件に対し、当委員会においても再三にわたつて論議がかわされておる。本日の委員会においての政務次官の御答弁から行くと、相手国たるアメリカに対しての補償の問題を、十分慎重に考えて行かなければならないということをおつしやられておるのであります。ここであります。災い転じて福となすべく、日本の国力を増すべきことを考えて行かなければならない。この補償の問題に対して外務省は、あらゆる観点から考慮してもらわなければならないと思うのであります。物質的な問題、またこれからの経済の問題、これらもあることでありましよう。しかし一番大きな打撃をこうむつたものは漁民であります。この漁民の補償という問題は、今太平洋の島島はほとんどアメリカの領土となつておる、委任統治となつておる。これらに対して日本漁船に基地を与えられるよう努力すべきである。今のままの状態では、一航海において一週間ないし二週間の重要な燃料だとか、また能力だとか、かようなものを消費し、経済に及ぼす影響が甚大であるということは、だれしも知つておることである。しかしアメリカの委任統治島に対する、またはアメリカの領土である島島に日本漁船の基地を得ることができ得たとしても、この原爆の被害のあつたビキニ勘の付近、マーシャル群島は、まぐろ漁業にとつてはあまり好漁業とするものではありません。もつと南に、もつと東に相当有望なる漁場が控えておるのであります。これらの漁場の高々に日本の漁民の寄港を許すことができるならば、漁民に与える影響は将来相当緩和されることであろうと考えるのであります。こういう点が外交を通じてのこの問題の解決の一点にもなることであろうと私は存ずるのでありまして、こういう点を深く留意せられまして、この交渉一つの条件または希望、これから協調の方針に持つて行くように御努力されんことを私は希望いたしまして、私の質問を終ります。
  64. 田口長治郎

    田口委員長 淡谷友藏君。
  65. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 ただいままでの同僚各委員の発言に対する外務当局並びに水産庁の御返答に対して、私まず第一に大きな不満を感ずるのであります。去る二十日に当委員会におきまして私強く要求して参つておりますが、この間少しも御返答に進歩が見られません。依然としてあの日の状態のまま荏苒日を過したとしか考えられない。いろいろ政務次官の御答弁でありましたが、まずアメリカがどう出るか、この点を模索するだけで、日本自体の外交方針というものは全然立つてない。こういうことは、この重大なる時期に立ちまして少くとも日本外交のあり方でないということを痛感いたします。本日もこの委員会に農林大臣なり外務大臣なりが出て参りまして、最も大きな被害を受けております水産業務について、はつきりした外交方針、はつきりした水産行政のあり方を御説明願いたかつた。言うまでもなく、アメリカがすでにこの実験区域拡大するということを言つておる以上、時期は六月か七月か知りませんが、また同じような実験をやることはさまつておるのではありませんか。われわれはモルモットのよりに、実験被害があつて初めて交渉するというそんなあわれな存在でありましようか。私は昨年の夏以来、李ラインの問題が起りました当時から、この問題は強く外務当局に要求しておるはずでございます。その当時岡崎外務大臣は、日本の現状をもつてしてはこれより以上の交渉はむずかしいと御答弁せられておる。李ラインのあの暴挙に対して、日本の国が今のような状態である限り、これ以上の交渉はできないというのは、暗に日本が再軍をすることをほのめかしておるのか、あるいは他の条件を待つておるのか、これは私ぞんじません。しかし李ラインすらあえて撤去し得なかって日本の外交の弱さというものが、この水爆の問題に対してほんとうに腹をすえてやる意思があるのか。この点はつきり御答弁を願いたい。私は、少くとも日本外務当局というものは、アメリカの外交官ではなくて日本の外交官だと思います。アメリカの態度がどう出ようと、まず日本の外交の基本線だけは、独立国としてはつきりしておいていただきたい。特にMSA以上の問題が、安全保障という一点から今や締結されようとするならば、平時であれ戦時であれ爆弾をこうむつた者は死ぬんです。爆弾が戦争によつて使われましても平和の時代に使われましても、被害を受ける程度は少しも逢いはありません。これで一体どこに日本の安全があるか。これだけ大きな不安を与え、これだけ大きな損害を与えられたならば、何を今後平和問題を論ずる必要があるか。先ほど小瀧政務次官の御返答によりますと、世界が軍備がなくても十分に平和になるような時代ならいざ知らずと言つておりますが、すでに、戦争を開始せずして戦争と同じような被害を与えておる今日、現実の日本かどのような外交方針で行かれるか、はつきり御答弁願いたい。特に私は、きようは水産庁長官にはあえて質問いたしません。保留いたします。少くとも沿岸から沖合いに、沖合いかち遠洋漁業へという基本線が、このような事態に処して変更されるのかどうか。外務省は、遠洋漁業に対して今や大きな抱負を持つて乗り出そうとしております日本漁民に対して、今後はつきり責任を持つてその安全を保障し得るかどうか、この点を私は外務次官に答弁願いたい。李ラインの問題を初め、同僚各委員が言われた通り、中共の問題に対してもあるいは北洋漁業に対しても事が起りそうな予想がありながら、この予想を押えるような手をちつとも講じないで、起つてしまつて多くの人間が被害を受けて、大損害を与えられて、それからあわてふためいてやるようなときはもうおそいので、この機会にこういう点も御答弁を願いまして、日本の外交方針が、われわれ水産委員会が決定いたしました遠洋漁業に乗り出すという基本線をはたして守り得るかどうか、その自信があるかどうか、こういう観点から、まずきようのところは小瀧政務次官の御答弁を願いたい。
  66. 小滝彬

    小滝政府委員 遠洋漁業の重要性を認識しておればこそいろいろ各国と漁業交渉を行つて来たのであります。李承晩ラインについて非常に軟弱な態度をとつた、いわんやアメリカに対しては何にも思うことを言わぬだろうというようなことをおつしやいましたが、私は実は李ラインに対、する問題よりも、今度の問題の方がとりはからいやすいと思う。何となれば、りくつの通らない李承晩政権との論争は非常に困難でございますが、すでにこれまでも新聞情報などを総合して考えますと、正当なる補償をしようと言つておる。ただちに協力をしようというので、あるいは淡谷さんには御不満でございましようけれども、医療やあるいは調査とかいう面で協力をただちに申し出ておるくらいでありますから、私どもは皆様の御期待に沿うように、アメリカに対して日本の主張をしなければならぬところは、十二分に主張して行きたいと考えております。なお起つてから、そのあと措置をするというようにおつしやいますけれども、実はこれはアメリカ側でも、予期しないような大きな爆発になつたというように言つておるようでありますし、アメリカの議会の委員会においてもこれがいろいろ討議せられておるようであります。でありますから、再びこういうことがないように予防措置を十二分に講じなければならない、そうして遠洋漁業というものが円満に遂行せられるように最善を尽したいと存じまして、今せつかくそうした努力を続けておる次第であります。
  67. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 御答弁を伺いましてまことに欣快に存じます。私はおそらく外務省は李ラインの問題よりも今度のビキニの問題を重大視されておるだろうと思いますが、そうじやなくて、李ラインよりはもつと簡単だ、李ラインなら解決できないが、ビキニ環礁の問題は解決ができるという御答弁でまことに欣快に存じます。どうぞその通りにやつてもらいたい。待つております。  そこで私お伺いしたいのは、拡大された区域というのは、すでにはつきり次の演習を予想しておると思います。これはあなた自身といえどもちつとも反対はないだろうと思う。そうしますと、少くとも思いがけない被害が起つた今度の事態について、日本側には日本側としては要求があるはずです。すでに与党内にも爆弾実験はやめてもらわなければならないという強い意見が出ておる。今度はアメリカ側区域拡大して実験をすることが予想外であつたということは許されない。そういう観点から拡大された区域に対して、日本外務省は確然たる方針を持つてアメリカ交渉しておるのか、その点もう一点伺わしてもらいたい。これは当然やるという意思がはつきり明示されておる。これに対しての外務省の御意見があいまいですが、どういう要求をされるか、はつきりお伺いしたい。
  68. 小滝彬

    小滝政府委員 先ほどからその点についてはお答えして来たつもりであります。各省と協議いたしまして、大体日本側立場もわかりましたので、それに応じているく話合いも進んでおる。がしかしその内容を一々言うことは、今交渉中でもありまするし、ここで勇ましく申し上げますことは、向うの原子委員会の方へ伝わつて、コールというチェア・マンの説もこらんになつたと思いますが、そういう悪い影響を与えるということは、結局遠洋漁業保護するゆえんでないから、私はこの際は慎しみたいというのが私の率直なる答弁です。
  69. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 お答え願つておるというのですが、私は、各省の意見がまとまればその通りやりますじや外交方針じやないと思う。外務省はそういう意味で各省の意見に盲従する、こんな形かどうか。おそらくは国民の輿論は、爆弾実験に対してはかなり強硬な抗議をするように外務省に要求しておると思う。さつきから船やあるいは船に乗つた人間が日本のものであるということは確認されておるようでございますが、私は外交も日本のものであるという点を確認してもらいたい。相手の出様もさまざまございましようが、相手の出様を日本に有利なように、世界の平和に貢献するような方向に強くやつて行かれるような、毅然たる外交方針はないのですか、お伺いしたい。
  70. 小滝彬

    小滝政府委員 私が申しました各省というのは日本人の各省であります。日本人の意向を体して、日本人としての日本政府として交渉しようというのでいろいろ話合をしておると申したのであります。外務省は一々専門家を持っておりません。いろいろな問題について外務省だけできめることはできないのでありまして、そうした申入れ内容などについて話合いをしておるのでありまして、決してアメリカ側意向を聞いて、それで申入れをしようとするのではなしに、日本専門家、いろいろ受持の行政部局と話合いをして、そうして意見をまとめて厳重申入れをするということを申し上げたのであります。
  71. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 最後に一点要望だけ申し上げます。その言明を聞いてほつといたしました。実はその点もお忘れになつたかと思つて心配いたしたのであります。はつきり外交が日本のものであるということを忘れなければ、まことに安心いたしました。ただ李ライン以来常にできないとは言つておりません。できるできる言つて置きながら、どうも事情がうまく行かないのでという理由で、あの大きな拿捕ができるまで再百日を過した。今度は李ラインよりもたやすいそうでございますが、たやすい点でも、今にやる今にやるで、あの原爆患者の補償も十分とれず、日本の漁民に対しても大きな不安を与えたままで、できるできるとおつしやつておらないで、ただいまの御決心とただいまの大きな自信とをもつて、できるだけ早くこの問題を御解決くださるように願いたい。長くなれば私はあらためて委員会を開くことを要求いたしまして、今度は大臣に御出席を願つて、はつきりこの責任を究明したいと思います。以上希望を申し上げて終ります。
  72. 小滝彬

    小滝政府委員 ちよつと申し上げておきますが、誤解があるようであります。たやすいと言つたのではなしに、向う話合いをいたしますときに、りくつを申してもりくつの通らないようなやつと違つて、大いに相手方でも日本立場を考えておるようであるから、こつちはもちろん思い切つて日本の主張の存するところを十分申し入れ得るという点において、私は李ラインの交渉とよほど行き方が違うということを申し上げたのでありますから、その点御了承願いたい。
  73. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 誤解がないように私からももう一ぺん確認をしておきたいと思いますが、ただいまの御答弁では、李承晩というのは話が通らない、りくつが通らない、アメリカの方はりくつはわかるし、話はわかるようだし、日本のためにもなろう、こういうふうだから交渉しやすい、こういうふうに確認してよろしゆうございますか。
  74. 小滝彬

    小滝政府委員 それはちよつと違います。私はアメリカだから、韓国だからどうと申したんじやございません。今度の出方を見ましても、向うが十分公正なる補償もしよう、また協力も十二分にするからひとつ連絡してくれというように出ておるところを言うのでありまして、私は人種的にどちらがいいというようなことを言つた覚えは毛頭ございません。
  75. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 よくわかりました。
  76. 赤路友藏

    赤路委員 関連して。ただいま淡谷君の質問の中で、私聞き間違いであつたかと思うのですが、いろいろ交渉中であるという言葉があつたように思いますが、アメリカと非公式にこの問題で何か交渉されておるのですか。
  77. 小滝彬

    小滝政府委員 今はつきり私の言つた用語を記憶しておりませんが、向う日本側の趣旨を随時伝えまして、向うの方が日本立場了解するように努力しておりますという趣旨を申し上、げたのであります。
  78. 赤路友藏

    赤路委員 先ほどの田中委員の質問に対する関連でございますが、田中委員の方から原子力の国際管理という問題が出たのであります。これに対する御答弁は、原子力を保有しておる双方の当事者の国が話合いがつかなければ、第三国側からは非常にむずかしいのじやないか、ごもつともな話だと思います。しかしまたそのあとで、今回のような事件が起つたことは、第一国側としてこれを促進することができる空気を十分つくり得たのじやないかというような御意見があつたように思う。これももつともで、その通りだと思います。そこで私のお尋ねしたいの  はその後段の面なんですが、確かにこれは第三国側から、世界平和のために原子力の国際管理という問題を出していいんじやないか、これに対する外務次官の方のお答えの中では、今出すことが時期であるかどうか、妥当であるかどうか、その他十分検討をしてからというお答えのようであつたのです。なるほど事は重大であるし、慎重を要しましよう。外務次官のおつしやることも一応私はよくわかるのでありますが、事が重大であるだけに、私はやはりこの問題については、日本政府としましては少くとも原子力の国際管理という問題を大きく打出すべきである、かように考える。先ほど来同僚の淡谷奮からいろいろ言つたのですが、常にできるできると言つてももできていない。これは当てはまらないかもしれません。この言葉は外務省としてははなはだ不満な言葉であると思いますが、われわれが受ける印象は、こういう印象を受けておることは事実なんです。今回の場合においても私が心配するのは、先ほど来夏堀委員もおつしやつたように、答弁がほとんど同じケースの答弁で、常に善処するとか研究をするとかいうようなことで時期を失してしまつたのでは、私は問題にならんと思う。こういうような時期であればこそ、より早くこうした問題に対する手は打たれるべきじやないか。この点に際してもう一応、くどいようですが次官の御答弁をお聞きしたい、こう思います。
  79. 小滝彬

    小滝政府委員 答弁に進展がないということでありますが、それは私もふり返つてみてまことに残念だと思います。できるだけ早く実際的な措置がとり得るように最善を尽したいと考えます。しかし質問の御要点は、原子力の国際管理の問題であると思いますが、私は先ほど申し述べましたところをさらに訂正し、また追加する気持はございません。しかし具体的な問題をここで申し上げるならば、この原子力の問題につきましては、政府の方でも重大なる関心を持つておりまして、この平和的利用の問題についてはゼネヴアに本部のあるあの協力機関日本も協力態勢を整えようと努力しておりますし、またこれも対外的な面でありますが、来る四月ごろにゼネヴアにおきまして、原子力による被害をいかにして食いとめるか、いかなる国際約条をつくつた原子力による被害が少くなるかというような会合もございますので、これに対しては外務省も十分援助して、日赤の方から人を派遣してもらうようにいたしております。今おつしやるのは、原子兵器の問題でありますけれども、私はこの問題は、一足飛びに日本で飛び出しても、今度の事件でこれまでに収集し得た資料だけですぐ飛び出しても、具体的に実際問題として成果を収めるかどうかわからないので、すなわち平和的利用の面あるいはそうしたゼネヴアの条約に関連したような面からだんだん進んで行きましたら、お説のような国際管理の問題についても、解決の道が自然つくものではなかろうかというように考えまして、とりあえずの措置といたしましては、先ほど申しました二つの点を具体的に考えております。
  80. 赤路友藏

    赤路委員 いま一点、淡谷委員の質問に関連してお聞きしたいのですが、今度かくのごとく危険区域拡大されたことによつて予測されることは、再び原爆なり水爆なりの爆撃演習がビキニを中心にしてやられるという予測がつくわけであります。だといたしますと、これがやられるということは、相当危険区域というものが拡大したでしようか、先ほど厚生省の方がおつしやつたように、近辺にある魚は、ある種の影響を受ける、放射能を内包する魚というものは動いておるのであつて危険区域の中にじつとしておるものではない。それだけにこれは今後にも非常な問題点を残すと私は思う。従つて今後の、番重点になることは、こうした爆撃演習を再びやつてもらいたくない。これが日本国民の希望でもあるだろうと思う。世界的なことはわからぬといたしましても、その被害を受けた日本国民としての最も率直な感情だろうと私は思います。だから拡大された地域がどうだとか、こうだとかいう問題のむしろ中心的な問題は、もう再びこういうことをやつてもらいたくないということなんです。このやつてもらいたくないというこの意思をアメリカ側へ十分通じて、われわれが予測するような第二回、第三回の爆発をやらないように、努力する措置をおとりになる意思をお持ちになつておるかどうか、この点を一お聞きしたい。
  81. 小滝彬

    小滝政府委員 やつてもらいたくないという気持は仰せの通りであります。がしかし同時に、今の国際情勢下において、原子兵器の実験を絶対にやつてはならないというところまで持つて行けるかどうかは、非常な疑問があり、日本は平和のために友好国と協力をするという立場を堅持しておるものでありまするから、そうした面から考えまして絶対にこれが非常に大きな影青を及ぼすというような場合は別でありますが、ほんとうに十分なる警戒措算、予防措置がとられて行われるならば、それを絶対にやつてはならないという申入れをするということは、目下のところ考えておりません。
  82. 辻文雄

    ○辻(文)委員 ただいま赤路君がせつかく質問中だが、さつきから私もじつと聞いていて、言い尽されておるようには思います。しかしこれは日本被害を受けた当事国ではありますけれども、やはり世界の輿論というものが相、当この意味において上つていると思います。それは自分たちの国は被害を受けなかつたからということでは、今まで同僚委員が質問いたしましたような要素において考えないと思うのです。根本的にこの原爆についてはどういうことを処置するかということを私は考えているので、その際に今までの次官の御答弁の中には、あるいは集団的には国連にこういうことを申し込むとかいうことはわかりますけれども、それでなくても、友好国あるいは友好国で、ない、まだ交戦状態にあるような国に向つても、この意味を話して、世界平和のためにどう思つているかというくらいのことは、日本の独立国家としての重大な外交の面を受持つておる外務省としては、私はやはり呼びかけてみる必要があるんじやないか。むろんあなたがおつしやるように、何の資料もなく、子供のようにそういうことを呼びかけることはおかしいようにも思いますけれども、一面これだけの輿論が起つておるということだけは、たとい精密な資料がなくても、外郭的な印象でも受けていると思うから、そういう場合に、精密な資料を整えてから交渉するのと同時に、並行する意味合いで呼びかけておいでになると、夏堀委員がおつしやつたような宣伝を一応その中に兼ねつつ、武力を持たない日本としては、その意味の強い独立国家としてのあり方と、外交のあり方になるのじやないかというような考えを私は持つのです。今までたとえば国連のような集団じやなくて、そういうようなことを独自に個々の友好国にでも働きかけてごらんになつたことがあるかどうか、ひとつもそういう御答弁に触れてないように、私の聞き漏らしかもしれませんが、思いますので、お答えを願いたいと思います。
  83. 小滝彬

    小滝政府委員 私もまつたく同感であります。特定国に対して、ある領土で行つておることを、すぐ権利とか、あるいはある特定の法律違反というようなことで申し入れるというよりも、国際輿論に訴えるということが最も有効であろうと存じますので、先ほども申しましたように、今度の事件は非常に不幸であつたけれども、国際平和に役立つものがありはしないかということを申し上げたのであります。もちろんこれをキャリーいたしますものは国際的なニュースでありまして日本のこの国会での討議も相当詳細に世界各国に報道せられておりますし、また私どももできるだけ正確なる情報を各国に知らせるようにして、盛り上つて来る輿論を醸成するのに、今度の不幸な事件でありますけれども、この機会をとらえて十分そうした面にも努力いたしたいと考えております。
  84. 辻文雄

    ○辻(文)委員 私が伺つておるのは、現在までにそういうことをおやりになりましたかということを伺つておるのであります。事件が発生すると同時に、友好国、あるいは国連のことですけれども、個々に友好国に対してそういう呼びかけをなさつたことがございますかということです。
  85. 小滝彬

    小滝政府委員 情報としては世界各国外務省としても流しております。ただ利害関係を直接持たない国に対して申込れをするということはどうかと思われますので、在外公館に対しまして情報を随時通報するという措置はとつております。ただ国際機関への申入れは、先ほども申し上げましたように、具体的な問題をとらえてやらなければなりませんので、とりあえずはこの四月のゼネヴアにおける会議では、今度の事件は非常に有効なる、貴重なる資料を提供するものかあろうと確信いたします。
  86. 辻文雄

    ○辻(文)委員 一応わかつたような気がいたしますけれども先ほどから繰返されておりますが、私どもの印象としては、何かしら外務省がぬるいような感じを現実に受けておりますので、もしさようなことが今日までになされていないということでしたら、私がただいま申し上げましたようなことを、今度どうか現実に行われるように要望して、私の質問を終ります。
  87. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 私はただ一点だけでありますが、私の質問の際に厚生省並びに海上保安庁の方がおそろいでございませんでしたので留保いたしておいたのでありますが、それは先日の外務委員会会の政府答弁におきまして、海上保安庁の砂本警備救難部長の御説明の中に、福龍丸のほかに原爆の灰の汚染を受けたものが十三隻あるという御答弁があり、さらに厚生省の楠本環境衛生部長が、厚生省の調査によるとさような事実はないという答弁をいたし、政府の間で食い違いを生じておつたよりであります。本日の当委員会におきまして、厚生省の楠本環境衛生部長先ほど答弁によりますと、厚生省は約八十隻、八十万貫以上の船と漁獲物を精密に調査したが、第五福龍丸以外にはそのような被害を受けたものはないということを明確に答弁なさつておるわけであります。私は、この際海上保安庁におきまして、その後における調査によつて厚生省の調査と一致するような結果が発見されて、政府調査はこに完全に致を見ておるかどうかということをお尋ねいたしたいのであります。ということは、先ほど来各委員からお話がありましたように、原爆の水産物に与えた被というものが非常に過大に宣伝をされて、岡内の消費大衆はもとより、アメリカその他に対する影響も非常に深刻のように察せられるのであります。今後のわが国かつおまぐろ等輸出貿易の面に対する影響もきわめて大きいと存じますので、この際第五幅龍丸以外にそのよりな被害を受けた船があつたかないか、この点を厚生省ははつきりしないと言明しておりますが、海上保安庁のその後の調査の結果をこの際御発表願いたいと思うのであります。
  88. 砂本周一

    ○砂本説明員 結論的に申し上げますと、完全に致している、こういうふうに申し上げたいと思うのであります。しかしこれには若干説明を加えたいのでございます。私の方といたしましては、放射能そのものに対する調査その他の機関も知識もございません。従いましてビキニ関係と申しましようか、その地域を通りました船に対する帰航後のいろいろな反応の調査につきましては、厚生省並びにそれに関連を持つ各現地の機関がおやりになるのでございまして、私の方といたしましては放射能の状況、影響につきましてはみずからの力でやつてはおりません。でございますから、厚生省の放射能の影響につきましての御意見は正しいと思います。私の方の特別な調査意見もごいません。
  89. 田口長治郎

    田口委員長 小高熹郎君。
  90. 小高熹郎

    ○小高委員 外務政務次官お尋ねいたしますが、国際ユネスコとこの水爆問題の関係でございます。先ほど来議論は尽きておりますが、明快なる答えが出ませんために同様なことが繰返されておるのでありますが、国際友好関係あるいは平和精神に根拠を持ちます国際ユネスコに提訴するとか、あるいはこの会議に持ち出すことは、国連へというよりももつと手近く、国際ユネスコにはわが日本は加盟しておるのでございますから、当然こういう措置がもつと早く講ぜられておらなければならないと思うのでございますが、それに対する御見解を承りたいのであります。
  91. 小滝彬

    小滝政府委員 御指摘のようにユネスコはそうした機関でありますから、  ユネスコにおいてこの問題が取上げられるということは一つ考え方であろうと思います。しかしなるほど戦争小に日本はああいう惨禍を受けたのでありますが、これまでのところ、この原子力の問題を出しますということは、ユネスコで普通取扱つております問題の範囲以上に、政治的な問題を多分に含んでおりますため、今までこうした申出をしたことはございません。しかり今後あるいはそういう機会があるかもしれません。今までのところはそうした意味におきまして、非常に政治的な問題で、他の方面で取扱われていた問題でもありますので、これまではそうした発言をいたしたことはございません。
  92. 小高熹郎

    ○小高委員  せんだつて寺岡参事官がむいでになりましたとき、外務省にお帰りになつたらよく相談して、外務大臣が本日御出席いたされた場合に、あらかじめ答えを持つて来てもらいたいという要求を出しておいたのでありますが、政務次官がおいででございますから、さだめしこの答えがあろうと思うのでありますが、それは太平洋の魚類全般に及ぶということは、先ほど来話が出ておる通りで、拡張解釈すると際限がないのでございまするが、それと同時に人、類史上の大問題として、せんだつて申し上げたことが内部で相談になられているかどうか、それはこういうことを言うたのであります。かつてゴビの砂漠のほこりが旋風のために空へ上りまして、成層圏へ行つて、それが前世界へ広がつて、そしてこれが世界の流行かぜインフルエンザの原働力となつたということを学者が報告しておる。また桜島の噴火が直接ここへ灰が飛んで来たわけではないかのごとく伝えられておるのでありますが、ともあれ太陽の色が当時まつ赤にかわり成層圏へ舞い上つた桜島の噴煙が東京へ降つた事実はあるのでございます。こういうことから四月以降に行われますところの試験が何回となく繰返され、その強度が四倍であるとか、五倍であるとかということになりますと、地球の回転及び風の吹きぐあい、これらによつて推察するに、それはアメリカにも被害があるであろう、日本にも被害があるであろう、全世界、全人類が非常な脅威を受けるのでございまして、この点についてあらかじめ魚の問題もさることながら、全世界全人類史上の問題として慎重な考慮と協議をなされたいということで、きよう御出席のときにあらかじめ答えを持つて来てもらいたい意味のことを観うたのでありますが、相談があつたかないかは別といたしまして、さような趣旨で申し上げたのでありますから、これに対して相当広範囲な、水中の問題でなく、全人類に関することに相なつておりますので、外務省はもう少し、これは積極的に乗り出しても決してさしつかえなかろう、かような意味において、もし国連へ提訴するのがあるいは主張するのが苦しいとしたら、その前に国際ユネスコへ勇敢に申し出たらどうか、こういうのでございますから、それに対する見解を承りたいのでございます。
  93. 小滝彬

    小滝政府委員 そういう話は私は聞いておりませんが、すべて今調査中でありますし、また今後どういうような措置をとるかということも、米国側と話し合わなければならぬ問題でありまして、その結果によつては、あるいはそういう問題も考えなければならないと存じますが、現在のところはこの問題を十分探究して、その結果によつて決定すべきものと考えております。
  94. 山中日露史

    ○山中(日)委員 大分時間もおそくなりましたので、ごく簡単に一点だけ政務次官お尋ねしたいと思うのです。先ほど来話も出ておりました損害の賠償に関する点でありますが、特に間接被害賠償要求についての外務省としてのはつきりした腹を、この際承つておきたいと思うのであります。実は私昨日東京都内の足立区の魚市場に参りまして、東京都の中央卸売市場の業務部長、足立区の分場長、東京都の衛生技師並びに仲買人の代表、それから小売業者の代表、こういつた人々とひざをまじえて、この魚の入荷状況、損出の程度、こういつたものを調査して参りました。それによりますると、この原爆のまぐろの入荷されましたのが十六日でございますが、その前の三月十一日から十五日までまぐろだけについて調べてみますと、足立区で取扱いました数量が二千八百五十三質でありました。十六日は原爆のまぐろが入つた日でありますから、全然入荷がございませんで、越えて十七日になりますると、千三百六貫目という半分以下に入荷が減つてしまいました。越えて十八日になりますと、九百貫目になつてしまいました。十九日になりますと、驚くなかれ、たつた三十六貫目よりほか入荷がない。二十日にはゼロ、こういうような数字が明らかになりました。それで仲買人等ついていろいろ話を聞きますと、十七日にはもう値段は、三割から四割くらい安く売らなければ売れない、十八日にはほとんど半分以下の値段じやなければ売れない、十九日にはほとんど売行きがない。残つたやつはどうしたかというと、残つたやつはほとんど原価を切つて売らなければならないというような状態であるということであります。なお値段の点について調べてみますると、一番高いときで一貫目五百円、安いときは一貫目二百円になつてしまいました。小売業者の代表に聞きますると、原価を二割五分くらい引いて売らなければならないような状態が続いて来た。残つたものについてはかすづけにするとか、みそづけにするというようなことで、店にストツクしてそのまま置かなければならないというような状態で、こういう被害を一体どうしてくれるのか、こういうようなことでございました。足立区だけで日に平均概算で二百工十万円くらいの損害があつたということでございます。これはただ東京の足立区だけの問題でありますけれども 東京都内の各魚市場におきましても、この種の現象があつたと思いますし、また東京意外の日本各地においても、やはりこういう問題かあつたと思うのでありますが、こういつたことは当然間接被害であります。こういつた間接被害に対しまして、政府アメリカに対して、これを要求するというはつきりした考えを持つておるのかどうか、実はつけ加えて申し上げまするけれどもアメリカ駅留軍が日本に駐留しておつて演習等によつて日本国民に損害を加えた場合に、間接被害についてはこれは日本政府賠償する、むろんこれは日本と半分ずつ負担すると思いますが、こういつた日本の方で承諾をして基地を使わせて、それによつて起きた間接被害においてすらアメリカ側において半額を負担するということがきめられている以上、この公海の原爆の試験で、しかも直接灰をこうむったかどうかわかりませんけれども、こういつた被害を受けておる、この被害に対しては当然私どもアメリカに要求する権利があるというふうに考えておる。聞くところによりますると、現在まだ百四十五隻も南方等の船が帰つて来ておらない。これがまた日本の港に着きますと、いわゆるまぐろ旋風で、またいろいろな問題が出て来るのではないか、なるほど厚生省の方ではガイガーの検査等によつて、放射能のないものには刻印を押して、大丈夫だという宣伝をしておりますけれども、やはり日本人の心理というものは妙なもので、われわれ初めまぐろを食うということに非常に危険を感じております。これは般の心理だと思います。こういつた間接被害に対しては、当然要求する権利があると私どもも考えておりますが、外務省としては強くこれを要求する腹構えでおるかどうか、この点を点お伺いしたいと思います。
  95. 小滝彬

    小滝政府委員 まだこうした被害調査中でありますので、具体的にどういう形式で、どういう賠償を要求するかは決定いたしておらないのでありますが、今仰せのような点も十分考慮しなければならないと考えております。
  96. 山中日露史

    ○山中(日)委員 数量とかあるいは金額とかいうものは、詳細調査しなければおわかりにならないと思いますけれども、今申し上げたように、現実にこの原爆、まぐろのために被害をこうむつている人はあるわけです。もうすでにデータが出ておるわけですから、こういう場合に要求する考えがあるかどうか、その原則を聞いておるわけです。  もう一点は、昨日の会合におきまして、小売業者から強く要望されましたのは、こういつた自分たちの商売のやり方の上手、下手にかかわらない損失、つまり原爆まぐろのために、こういつた収入減を来した。これに対しては税の減免その他についても考慮を払つてほしいというような強い要望もあつたのでありますが、政府はこういつた不可抗的な、業者の間接的な被害による収入減に対しては、税その他については大蔵省でないからわからないかもしれませんが、政府としてはどういうふうに考えているか、これをあわせてお聞かせ願いたい。
  97. 小滝彬

    小滝政府委員 国内措置についてはどういうふうにされるか、私答弁いたしかねますが、国際的に申しますると、実はこういうことを言うと非常におしかりを受けると私予期しておりますが、この種の事件につきまして、いろいろ取調べをしておりますが、間接被害というものは、これまでの慣例によれば、原則としては取上けられないのが実情であります。ただ先ほど申しましたように、私どもはこの間接被害も十分考慮に入れなけれ、はならないと考えておりますけれども、この点について、今具体的にどうするということは言明いたしかねます。原則といたしまして、間接被害というものは、いろいろ拡大すれはたいへんなものにもなりますし、わからないので、国際ばな従来の慣例の原則を述べろとおつしやいますれば、これは含まないのが普通のようであります。
  98. 赤路友藏

    赤路委員 一点だけ私の質問に対する御答弁の中で、どうしても納得のできぬ点があるので、外務次官にお尋ねいたしますが、予測される爆撃に何ら申入れの意思がないということであつたと思います。やつてもらいたくないと私は申し上げたのですが、やつてもらいたくないということは同感である。しかしながら予測される爆撃には何ら申入れをしない。絶対にやらないということは言えないという。それはそうでしよう、その点はよくわかる。しかしながらやつてもらいたくないということは言えるはずです。私の申し上げたいのは、この予測される爆撃による危険区域拡大なんですが、それは非常に大きな不安を日本人にかもしておる。これは事実なんです。こうした不安を除去する意味から行きましても、これは何らかの意思表示をアメリカにするのは、私は当然じやないかと思う。これが何ら意思表示をなされないというのは、私はどうしても考えられない。その点を申し入れる意思がないというふうに、ぱつと打切られたのですが、これではあまり考え方がおかしいと思うのだが、その点をもう度御答弁願いたいと思います。
  99. 小滝彬

    小滝政府委員 あるいはそれはこれまでの質問にお答えしたから、用語が足りなかつたのかもしれませんが、絶対にやるなということを権利的な立場で言えないということは、あなたに対して答弁したはずであります。ただこの危険区域拡大に関連する問題については、各省とも話合いをしておるので、すでにこちらの大体の意向というものは、随時米国側に伝えているが、さらに歩を固めてアメリカ側に申し入れるはずだということを鈴木さんの質問にもお答えしたはずであります。
  100. 赤路友藏

    赤路委員 それは危険区域拡大なんです。危険区域拡大はよくわかつたのですが、危険区域拡大ということの根本には、その爆撃が予測される。だから私はそういう爆撃はやつてもらいたくないと思うのです。これは日本人全体の感情であろうと私は思う。だからやつてもらいたくないという意思表示は、当然アメリカに対してさるべきじやないか、こういうことを私は申し上げておる、この点です。
  101. 小滝彬

    小滝政府委員 爆撃をやつてもらいたくないということは、こつちが書わなくても、向うも十分知つていることと思います。ただどうしてもやらなければならない場合は、できるだけ被害のないような措置をとらなければなりませんので、そうした面で努力している次第であります。
  102. 赤路友藏

    赤路委員 これはこれ以上申し上げません。こんにやく問答になるので実に困るのですが、今のほんとうの日本人の感情日本立場から言つた場合、少くとも――私は絶対にやるなというような強いことを言えというのではない。しかし少くともやつてもらいたくないくらいの意思表示ができぬというのは、私はおかしいと思うのですがどうですか。
  103. 小滝彬

    小滝政府委員 先ほどお答えいたしましたところでも、やつて、もらいたくないという意思が含まれていることは十分わかるだろうと思います。
  104. 小高熹郎

    ○小高委員 秋はさつき御質問しましたので、やめようと思いましたが、あまりこの問題に対する外務省当局の態度か軟弱であると同時に、敏感さを欠いているのではないかと思われるので、あえて一言つけ加えざるを得ないのであります。赤路委員が繰返しているようてありますが、それはもつともと思います。国際ユネスコになぜ調査団を要請しないのか。国際ユネスコのような平和機関調査団を要請する、そうして調査団が来ればおのずから答えが出るのであります。正面から正攻法でやるから、材料がほしいの資料が必要だのというのであります。そういう手をもう少し鋭敏に打てないものか、これを私は要求しているのであります。これは激励する意味において、お答え願わなくてもよろしいことにしておきますが、とうかそういう意味で、ひとつ特に鋭敏なる御努力を願いたいと思います。     ―――――――――――――
  105. 田口長治郎

    田口委員長 この際北洋漁業並びに水産貿易に関する件について、松田鐵藏君より発言を求められておりますからこれを許します。
  106. 松田鐵藏

    ○松田(鐵)委員 専門の委員会及び協議会においてるる論議されました、北洋漁業及び漁業用燃油その他の事柄について、ソ連に対しての折衝をしなければならない、そのため人を派遣したいという委員会一致の意見でありまして、当委員会においてこの問題に対する決議を行うことにしていただきたいと思いまして、動議を提出するものであります。  この内容につきましては、その文面を読みますると、    北洋漁業並びに水産貿易に関する件   北洋を漁場とする公海漁業並びに漁業用燃油及びその他の資材の相互貿易等について、ソ連邦との間に話し合いをすることは、わが国水産業にとつて誠に重要であり且つ急を要することである。   よつて政府は、その円満なる発展を期するため、わが国漁業者等のソ連邦えの入国等について特段の考慮を払うべきである。   右決議する。 というのであります。これを委員長において、しかるべくとりはからいをお願いしたいと存ずるのであります。
  107. 田口長治郎

    田口委員長 お諮りいたします。ただいまの松田君の決議案に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  108. 田口長治郎

    田口委員長 御異議なしと認めます。よつて本決議案は決定いたしました。  なお本決議は文書をもつて関係各大臣あて送付することといたしますから御了承を願います。
  109. 松田鐵藏

    ○松田(鐵)委員 今のに関連して、つきましては今後における当委員会といたしまして、この問題に対する委員会の要望等に対する意見のとりまとめ方を、委員長はしかるべくとりはからつていただくこと、人選は水産庁に一任されて、水産庁は各団体及び適当な処置を講じてもらうようにとりはからわれんことを要望しておくものであります。
  110. 田口長治郎

    田口委員長 本日はこの程度にとどめ、次会の開会時日は、公報をもつてお知らせいたします。  これにて散会いたします。    午後四時四十二分散会