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1954-02-13 第19回国会 衆議院 水産委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月十三日(土曜日)     午前十時五十七分開議  出席委員    委員長 田口長治郎君    理事 小高 熹郎君 理事 川村善八郎君    理事 鈴木 善幸君 理事 中村庸一郎君       遠藤 三郎君    中村  清君       夏堀源三郎君    濱田 幸雄君       松田 鐵藏君    吉武 惠市君       椎熊 三郎君    白浜 仁吉君       赤路 友藏君    淡谷 悠藏君       辻  文雄君    中村 英男君  出席政府委員         農林政務次官  平野 三郎君         水産庁長官   清井  正君  委員外出席者         農林事務官         (水産庁漁政部         長)      立川 宗保君         専  門  員 徳久 三種君     ――――――――――――― 二月十一日  委員高橋英吉君辞任につき、その補欠として三  和精一君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 二月十二日  特定海域における漁船被害に伴う資金融通  に関する特別措置法案内閣提出第二八号) 同月十一日  蟹田漁港修築工事継続に関する請願淡谷悠藏  君紹介)(第一一二五号)  泊漁港修築工事継続に関する請願淡谷悠藏君  紹介)(第一一二六号)  泊漁港等修築工事継続に関する請願淡谷悠藏  君紹介)(第一一二七号)  漁業調整事務所強化確立に関する請願(有田  喜一君紹介)(第一一二八号) 同月十二日  美国港船入ま整備拡張工事施行に関する、請願  (椎熊三郎紹介)(第一二一三号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  小委員補欠選任  参考人招致に関する件  特定海域における漁船被害に伴う資金融通  に関する特別措置法案内閣提出第二八号)     ―――――――――――――
  2. 田口長治郎

    田口委員長 これより会議を開きます。  昨十二日内閣提出特定海域における漁船被害に伴う資金融通に関する特別措置法案が本委員会に付託されました。ただいまより本案議題として、審議に入ります。  まず政府提案理由説明を求めます。農林政務次官平野三郎君。
  3. 平野三郎

    平野政府委員 ただいま議題となりました特定海域における漁船被害に伴う資金融通に関する特別措置法案につきましてその提案理由並びに要旨を御説明いたします。  一昨年一月十八日、韓国李承晩大統領がいわゆる李承晩宣言をもつて韓国周辺の広汎な海域にわたつて韓国の主権を行使する旨を宣言したのでありますが、かかる宣言は、わが国のとうてい容認できるものではなく、また国際法規に照して何ら根拠のないものでありまして、ただちにこれに対するわが国の見解を明らかにいたしたのであります。  爾来、日韓両国において数次にわたつて試みました会談におきましても、詳細にわが立場説明し、日韓双方の協力によつて漁業問題を解決すべく努力を重ねたのでありますが、不幸にして、会談が決裂し、いまだ再開の運びに至らないことはまことに遺憾であります。しかるところ、昨年九月八日、韓国政府がいわゆる李ライン内に出漁したわが国漁船に対し非常措置をとることを声明して以来、同方面に出漁せる漁船のうち多数のものが韓国官憲によつて捕獲拿捕、抑留され、いわゆる李ライン問題としてわが国漁業にとつて重大なる脅威となり、被害漁業者は言うまでもなく、全国民の憂慮と関心とを集めていることは御承知のとおりであります。この事件によるわが国漁船被害の概要は、平和条約発効後から昨年十二月三十一日現在までに捕獲拿捕抑留されたもの五十隻に上り、このうちには政府監視船一隻も含まれております。  これらの漁船はいずれも正当に操業または航行中拿捕され、韓国に連行、抑留されたものでありまして、乗組員の大半は幸いにして帰国することができたのでありますが、なお若干名の抑留者を残しておるのでありまして、これについては、そのすみやかなる釈放と抑留所内の待避の改善方を申し入れている次第であります。一方、拿捕せられた漁船は一隻も返還を見ておらぬ状態であります。  しかして、今後のこの問題の解決の方途としては、日韓両国合理的基礎に立つて漁業協定の締結に努力することが根本であると考えるのでありますが、いまだ日韓会談の再開せられない現状においては、まず国内的に捕獲せられた漁船の代船の建造を容易にし、関係漁業者の生業を再開せしめる措置をとることが緊急でありますので、ここにこの法案を提出いたしました次第であります。  この法案は、平和条約発効後から昨年末までの間に韓国によつて捕獲された漁船につき、その所有者たる漁業者当該漁船の代船を建造もしくは取得するため、あるいは捕獲漁船以外の他の所有漁船を他の漁場または漁業に転換する目的で改造するために必要な資金並びにこれらに伴い一定漁具を取得するのに必要な資金につき、農林漁業金融公庫からの融資を促進することを目的として、当該資金使途貸付利子等について公庫法特例を設け、優遇措置を講ぜんとするものであります。  以上、本法案提案理由並びに要旨を御説明申し上げましたが、何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
  4. 田口長治郎

    田口委員長 引続き質疑に入ります。鈴木善幸君。
  5. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 昨年来業界の最も大きな関心事でございましたところの李承晩ラインに関連いたしまして、拿捕されたました漁船の代船建造の問題につきまして、今回政府がこの事態の救済のために本法案を提出されたことにつきまして、本委員会はもとより、業界も非常な期待をここに寄せておると思うのでありまして、従いましてこの法案を、私どもはできるだけすみやかに政府と協力いたしまして通過せしめたいと念願いたしておるものであります。そこでただいま平野政務次官から御説明がありました本法案内容につきまして、若干の質疑をいたしたいと思うのであります。  その第一点は、提案理由説明にもございましたが、本法案農林漁業金融公庫からの融資を促進することを目的として、当該資金使途貸付利子等について、公庫法特例を設けて優遇措置を講ぜんとするものである、こういうことをお述べになつておるのでありますが、この優遇措置ということをはつきりお話になつておるのであります。大体この拿捕によりまして従来から非常な経営難に陥つておりましたところの該水域に操業しておりました漁業者は、また拿捕によつて非常な経済的な打撃を受けておるわけであります。従いまして一般公庫審査方法で参りますならば、金融ベースに乗らないというような経済内容に陥つておるものが非常に多いと私ども考えるのであります。そこではつきり本案でも優遇措置を講ずるこういうことを、おつしやつておりますが、この従来の審査におけるべースと、今回の融資にあたつて政府並びに公庫がどういうようなベースに立つてその審査を進めるか、こういうことをまず基本的にお伺いをいたしたいと思うのであります。
  6. 清井正

    清井政府委員 ただいま御質問のありました点でございますが、これはただいまの御質問の点にも御趣旨があつたのでありますが、今回のこの法律趣旨といたしましては、いわゆる李承晩ラインの問題によつて発生一いたしまして拿捕せられております漁船所有者というものに対しまして、臨時応急的にこれが代船をぜひとも確保してやりたい、こういう建前からできておることは御承知通りであります。しこうして従来におきましても農林漁業金融公庫からは、一定の資格を持つた漁船所有者に対しましては融資をいたしておつたのでありまして、しかもその利子等につきましては一般率の七分五厘を普通の利子として貸付をいたしておつたのでありますが、今回は特に漁船の数及びその所有者並びに船名等が特定いたしておるのであります。そういつた関係もありますし、この法案趣旨が、特に当該被害を受けた漁船に対する応急臨時措置という建前からでもございますが、特に利率を七分五厘を五分五厘に、二分引下げてこれを貸付けることになつておるわけであります。この法案内容にもあります通り、この法律ができますれば、一定融資計画を提出せしめまして、それによつて融資せしめるということになつておりまして、私どもといたしましては、当該被害を受けた漁船所有者がその代船建造融資申請いたして参りました場合においては、これを当該漁船所有者に最も有利に解釈いたしまして、当該漁船所有者が五分五厘の比率をもつてその代船等を取得し得るようにということで私ども考えておりますし、農林漁業金融公庫に対しましても、その措置を従来におきましても指示いたしております。公庫自身もそういうような目的を持つて現在事務を進めておるような次第であります。
  7. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 大体長官の御説明によりまして、政府の方におきましても拿捕によつて経済内容が非常に悪化しておる、従つて一般の代船建造のような経営内容の厳選というような観点に立たずに、拿捕されたものについては、これをぜひ確保して代船建造をやらせたい、こういうような御趣旨はつきりいたしたわけでありまして、言葉をかえますれば、拿捕を受けましたところの代船建造は、経営内容が悪化しておりましても、この法律によつて政府が補償してやろうというあたたかい気持でこの立法をなさつたということを私ども了解いたすものであります。  次に第二点といたしまして、ここに「昭和二十八年十二月三十一日までの間に、」という期日限定をいたしておるのでありますが、この法案がただいま政府によつて国会に提案されるまでの間、十二月三十一日以後今日までの間におきまして新たなる拿捕事犯が起つておりますかどうか。もし起つておりますれば、これをこの法案対象として救済される御意思がありますかどうか、この点をお伺いいたしたいと思うのであります。
  8. 清井正

    清井政府委員 ただいまの御質問の点でございますが、この法律は、いわゆる緊急の事態に対する応急措置という建前から日にちを限つたのでございまして、いわゆる二十八年の十二月三十一日までということにいたしてあるのであります。つかまえられております現在の該当船は総計五十隻あつたのでありますが、昨年の九月において約二十八隻、十月において十三隻、十一月のごく初旬に二隻つかまつておりまして、それで合計四十三隻でございます。そのほかは昨年の九月八日以前に拿捕されておるものでありますので、合計五十隻ということになつておるのでございますが、ただいまも御説明申し上げました通り、昨年の十一月初頭に二隻つかまりまして五十隻になりまして以来は、韓国拿捕されておる船はございません。そういうような事情も勘案いたしまして、昨年末に切つて処置をいたしたい、こういうふうになつておる次第であります。
  9. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 次に「政令で定める海域において」と規定いたしておるのでありますが、この海域政令においてどのように規定されるお考えでありますか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  10. 清井正

    清井政府委員 政令で定めますのは、御承知通り法律対象となります船が五十隻と確定をいたしております。拿捕された地点が大体判明をいたしておるのであります。従いまして拿捕された地点を囲みます一定の区画を考えなければならぬと思います。どういう形にいたしますか、あるいは緯度、経度等によつてこれを一定の線で囲むというような形にいたしたらいいのではないかと思つておりますが、要するに対象となります五十隻が拿捕された地点を囲みました一定の海区にいたしたい、こういうように考えております。
  11. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 今の長官の御説明拿捕された五十隻のほかに、いわゆる李承晩ラインというものからわずかにずれておるために、五十隻の対象漁船の中に入らないというような、海域的に非常に微妙な隣接海域というもので拿捕された他の漁船がありますかどうか、その点を念のためにお伺いいたしたい。
  12. 清井正

    清井政府委員 拿捕された船の中には、いわゆる先方で言いますところの李承晩海域をわずかにはずれて外に出ておるものと推定されるものもあります。しかしこれはただいま申し上げました五十隻の範囲内に入つておる船であります。従いまして区画いたします海域も、いわゆる李承晩ラインそのものでは決してないのでありまして、拿捕された五十隻を含む海域を確定する、こういうことに相なつております。
  13. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 次に、この法案におきましては、農林漁業金融公庫のみを融資機関規定をいたしておるのでありますが、これは申すまでもなく、公庫法によりまして融資対象になりまするものは、保有船舶合計トン数が千トン、常時使用する従業員が三百人以下の個人あるいは法人ということ、いわゆる中小企業者限定をされておるのでありますが、拿捕されました工十隻の中には、この公庫対象にならないところのものが九隻ばかりあるように思うのであります。これは政府におきましては、開発銀行融通をさせるという御方針のもとに、すでに政府開銀との間に折衝されて、三億九千万円でございますか、大体融資の額も話合いがついておるというように私ども聞いておるのでありますが、そこまで話合いがついておりまするならば、やはりこのような国と国との政策の行き違いによりまして起つた拿捕と何じような犠牲者でございまするから、何ゆえにこれらの船も対象として取上げるように、開発銀行ということを農林漁業金融公庫と同様にこの法律の中に明記しなかつたか。この点をお伺いをいたしたい、こう思うのであります。
  14. 清井正

    清井政府委員 御指摘の通り、ただいま私が御説明申しました五十隻の中には、九隻の分が、いわゆる千トン、三百人以上の範囲に属しまして、開発銀行より融資をする対象の分になつておるのであります。この法律におきましては、開発銀行の分は除きまして、いわゆる十トン、三百人以下の比較的零細なる経営漁業者にしてかかる被害を受けた者を対象といたすという建前を実はとつておるのであります。農林漁業金融公庫が本来そういう建前でできておりますので、今回のこの処置につきましても、この法律によつて低利の取扱いを受けるのは、従来より農林漁業金融公庫におきまして貸付対象といたしておりますところの比較的経営の零細なるものの漁船対象といたすということにいたしたわけであります。しかしながら、ただいまのお話にもありましたようでありますが、開発銀行貸付に相当する九隻につきましても、実際問題としては同様の被害を受けた漁船なのであります。従いまして、私どもといたしましては、これはこの法案措置とは別個に、関係官庁及び開発銀行と昨年末より緊密な連絡をとつてつておるのであります。当該九隻の分は、その該当会社はつきりいたしておるのでありまして、五社であります。従来開発銀行と非常に関係のありました会社もありますし、そうでない会社もあるのでありますが、私の方は、個々会社個々の船の具体的な問題といたしまして、昨年末より開銀あるいは経済審議庁とも協議いたしましたが、開発銀行といたしましては、この趣旨を了といたしまして、この問題につきまして融資申請があれば必ず受付けるということを申しておるのであります。ただいまでも時々折衝いたしておりますが、開発銀行としては、そういう意気込みで、この拿捕された趣旨を了とし、その隻数も九隻でありますし、また会社はつきりいたしておるものでありますから、個々の問題といたしましてその事情を了といたしまして、申請については十分研究をいたして行きたい、こういうことを実ははつきり申しておるのでありまして、この法律措置開発銀行関係措置、両々あわせてこの問題の解決を考えて参りたい、こういうふうに考えておるのでありまして、この法律については開発銀行の方には触れずに、農林漁業金融公庫の分の、比較的経営の零細なるものの拿捕船に限るということにいたして参りたいというふうに考えております。
  15. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 長官は、開発銀行をなぜ農林漁業金融公庫と相並んでこの法律の中に入れなかつたかということにつきましては、はつきりした御説明を避けられて、事実上融資ができるようにやつておるという御説明であつたわけでありますが、私推察をいたしますに、そういうような大きな企業体においては、この法律が一面ねらつておりますところの金利五分五厘、あるいは第六条に規定しておりますところの都道府県の利子補給、こういうような恩典まで与えなくても、そのような大きな企業体は十分やつて行けるというような観点に立ちまして、おそらく最も零細なるところの中小企業者のみを対象とする企業だけをここに規定されたものと思うのであります。私どもも、現在の政府財政事情その他から考えまして、必ずしも大きな企業体についてまで利子補給あるいは五分五厘の特別な金利をぜひとも与えなければならないというように強くは考えていないのでありますけれども、ここに私どもが非常に考えなければならない点は、その安い金利利子補給ということは、その恩典は与えないにいたしましても、法律の上ではつきり開発銀行から出すのだ、これは開発銀行に対して法律の上ではつきり融資の義務を与えるというような意味合いで、中小企業とはその金利あるいは利子補給の面の恩典を異にいたしましても、この法律の中に開発銀行融資機関として明記する必要があるのではないか、こう私は考えるものであります。と申しますのは、先般の水産金融に関する小委員会におきまして、私ども開発銀行あるいは水産庁にいろいろ説明願つたのでありますが、その際に、開発銀行はあくまでケース・バイ・ケースで考える、決して拿捕船であるからということで義務的な融資ということは考えていない、開発銀行審査ベースに乗るものであればこれを取上げるのであつて、必ずしも九隻を開銀融資しなければならないというようなぐあいには考えていないということがはつきりいたしたのであります。私どもは、今回の大きな国策の食い違いによつて受けました特殊なこのような犠牲者に対しては、大企業でありますから金利あるいは利子補給という面の恩典は与えないにいたしましても、先ほど長官が御説明になりました、漁船を失つたものについては代船を確保してやるという、その点だけは必ずできるようにするためには、ここに農林漁業金融公庫開発銀行とを法律の中にはつきりうたいまして、そうして金利利子補給の面については別途の規定を設けて、その恩典中小企業者よりも、場合によれば差をつけるというような点も考慮に入れて配慮すべきものだ、こう考えるのでありますが、この点を重ねて長官にお伺いしたいのであります。
  16. 清井正

    清井政府委員 ただいまの御質問あるいは御意見の御趣旨は、私もわかるのでありますけれども、この点は私が先ほどお答え申し上げましたと同じお答えを申し上げざるを得ないのでありますが、それはこの法律におきましては、比較的零細経営農林漁業金融公庫貸付について、こういう法律的な裏づけをするということでございまして、それ以外の九隻に相当する部分につきましては、ただいま私のお答えいたしました通り、行政的な措置並びに運用等によりまして、開銀の方においてもそういうつもりでおりまするから、開銀等とも十分連絡をいたしまして、具体的な問題の処理としてこれを扱いましてそうして、この問題を円滑に解決するように進めて参りたいと考えておるのであります。本法におきましては、農林漁業金融公庫の分についてのみいたした方がいいのではないかと、私は考えておるのであります。
  17. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 私この点につきましては、長官と若干意見を異にいたしますが、それは一応その程度で保留いたしておくといたしまして、もしこの法律開発銀行というものを載せなくとも、政府はこの九隻の代船建造の確保についてもし申請があつた場合には行政措置によつて必ず確保できるような融資を、開発銀行をしてやらせるというはつきりした責任をお持ちになり得るかどうか。そういう確信がおありになるかどうかという言明だけを、この際明らかにしておいていただきたいと思います。
  18. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 関連して申し上げたいのでありますが、ただいま鈴木委員の御意見を承つておるのに、私は非常に意外なことを考えるのです。この問題は人為的な問題である。国際場裡におけるいろいろな複雑な点があつて、しかして不幸にしてこういう問題ができ上つておる。しかしこれは人為的にこれを阻止せんとすれば、阻止する方法があつたものと思う。しかして今鈴木委員の言われておる開発銀行対象になる九隻というものがある。この九隻の所有者というものは、まつたく三百人以上、千トン以上の船を所有しておる漁業者である。小さな漁船が、国の現在の外交またはいろいろな事情というものを関知せずに、ここに危険がないと思つてつて出漁したもので、拿捕されたということとは、根本的に異なるものである。この九隻という船は世界の外交日韓の問題、中共の問題、かような問題をその担当の係も、また当事者も相当の関心を持つていなければならない。しかもこの期日の昨年一月十八日以前におきましては直二十隻という拿捕船があり、今や南の海の日本の漁船は戦々きようきようとして警戒をしつつ出漁しておるものだ。それに対してこうした有力なる漁業会社がその渦中に入らなければならないという思想がどこから出て来ておるか、これが一点。また人為的に阻止できる問題なのにどうしてこういうような法律を定めなければならないか、その水産庁意見が疑わしい。しかして今日いかにしても災害を見ることができ得ない自然の暴威によつて今北海道の岩内、また瀬棚付近において、これまた五十そう以上の大破、遭難、しかも三十何名という人命まで失つた災害がある。これに対してどういう御措置をとられるか。この法律内容から行きますと、政令で定める漁具までということになつておる。しかもまた「特殊保険に係る保険金の支払を受けることができる場合における当該保険金の金額に相当する資金を除き、」となつておる。特殊保険というものは、こうした問題が今まであるがゆえに、これを警戒して漁民に対して当委員会において制定した保険なんです。しからばこれを人為的に阻止できるものは、その事情をよく存じていなければならない。私が先ほど申したように、二十トンか十五トンか、こんな小さな漁船は、そうした方法も関知せずして、今までの慣例によつて保険もかけていない。全然心配ないと思つて、そこに出漁したものが不幸にして拿捕された、これらに対してはまことに気の毒である。この法律を定められる理由もそこにあるだろうと思うけれども開発銀行から融資を受けるなどという大会社が今までの環境、しかも現存の状況を勘案したならば、遠慮してこういう危険な区域に出漁すべきでない。それをあえて出漁して、しかして自己の会社の信用をもつてなけなしの開発銀行公庫資金のわくに入ろうなどということはもつてのほかのことである。私は鈴木委員意見にまつこうから反対するものである。長官はこの法律を定めることによつて、現在までの立場国際情勢を関知しない中小漁民に対して注意を払い、しかしてこれを善導して、将来かかる災害のないように導くということであつたならば、公庫融資も私はあえてはばむものではない。事情を知りつつやつておるものにどこに開発銀行融資すべき必要があるか、またそれより人為的に阻止できない天候によつて――港の中に入つておる船まで、全部引出されるような大しけによつて破壊された漁船に対しては、どのような措置をとられて、どのような法律をつくられるか、長官の御意思を承りたい。
  19. 清井正

    清井政府委員 ただいま松田委員から根本的な問題について御疑問が出されたのでありますが、私はこう考えたいのであります。この問題はいわゆる李承晩ラインに関する問題でございますが、御承知通り李承晩ラインは、初め李承晩ラインなるものを宣言いたしましたけれども、このライン内において出漁をいたしておりました漁船については、何らの措置をとつて来なかつたのが大体の今までの例であつたのであります。ところが昨年の九月八日に突如としてその海域内において漁業をする日本漁船捕獲するということを宣言いたしました。その後先ほど申し上げましたような経過をたどりまして、五十隻に及ぶ日本漁船拿捕されておるのであります。その前にも拿捕されたものも少しございました。それはごくたまに少しずつ拿捕されたものがあつたのでありますが、九月八日の宣言によりまして、突如として強力なる措置をとつてつたというところにその本質があるのじやないかと、私は考えておるのであります。そこで、今までは李承晩ラインであるけれども、とにかく安全操業ができるのだという気持で操業しておつた漁船が、そういう直書によつてわずかな期間の間に捕獲されたということに対しまして、私どもといたしましては、できるだけ拿捕された漁船所有者に対しましての損害を少からしむるという意味において、臨時応急の措置としてこの法案を立案いたしたのであります。もつとも私どもはその後関係海域に出漁する漁船に対しましては、たびたび注意を発しまして、ただいまお話のありました通り、いわゆる特殊保険なり乗組員給与保険の制度なりを完全に利用するようにということを指示いたしており、その後出漁いたしております漁船は、ほとんど全部その保険の制度を利用しているように私は考えておるのでありまして、とにかくそれに至らざるところの、事態に即応する臨時応急の措置といたしましてこの法律をもつていたしたい、こういう考え方であるのであります。そういう意味におきましては、大経営の船についても同じような意味に該当するわけでありますが、ただこれは先ほど私が申し上げましたような心情によりまして、本法は小経営漁船所有者に対して行う、その他の漁船所有者、すなわち比較的大経営漁船所有者に対しましては、開発銀行からの融資について今後もできるだけごあつせん申し上げて、その損害を少くして参りたい、こういうふうに考えて、この法案を立案いたしたような次第であります。  またそれに関連いたしまして、北海道方面において非常な暴風雨によつて損害を受けた。漁船についてお話でありましたが、この点は事情も一応伺つておるのでありまして、早急には案は立ちませんけれども、非常な損害を受けた漁船に対しましては、これまた融資等の措置によりましてできるだけの措置を講じて行かなければならぬものと、目下対策を考究しておるわけであります。
  20. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 松田君からいろいろ御意見がございましたが、その点につきましては私はこういうような趣旨で申し上げているわけです。あの朝鮮半島より百九十九海里に及ぶというような公海に、不法に一方的な宣言を発しまして管轄権を主張する。わが政府といたしましても、国民といたしましても、こういう不法な主張はまつたくこれを容認できないのでありまして、政府もしばしばこれを内外に声明をいたしているのであります。またあの海域は、数百年にわたりわが漁民の手によつて開発された重大な漁業権益であります。これをあくまで死守しなければならないというのが、漁業者並びに国民一般の感情であつたのであります。そういうことから、このような一方的な不法な措置に対しては、わが方においては、あくまであの漁業権を守るという立場が出漁いたしている。そういうようなことでございまして、不当なる拿捕がここに発生いたしたのであります。私は大企業に対して五分五厘の安い金利融資をせよと、あるいは都道府県も利子補給をせよというようなことを申し上げているのではないのであります。そうでなく、代船建造のための資金はあくまで確保してやるべきである。そのためには法律開発銀行というものをうたわず、行政措置だけで十分代船建造資金の確保ができるかどうか。そのことを政府において、はつきり法律に載せなくとも益金の確保ができるという確信をお持ちになつていれば、これは後ほど委員会において協議をして方針をきめるべき問題だと思うのでありまして、その点をお尋ねしておつたのであります。  次に第六条の問題につきましてお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、それは暮の委員会において政府を代表されまして、私の質問に対して保利農林大臣は、都道府県が代船建造資金融通を受けた漁業者に対して当該資金利子の一部を補給した場合、その半額を政府において平衡交付金等によつて補助する、こういうことをはつきりと言明なさつているのであります。大体公庫漁船融資は七分五厘でございまして、この法律によつて五分五厘ということになりますれば、その差額二分、この二分を部面府県が利子補給をいたしました場合には、その半額、一部を政府で平衡交付金等によつて見るということを言明され、法案提案の際までに政府意見を固めて、はつきり措置をするということを言明なさつているのでありますが、この都道府県が利子補給をいたしましたものに対する半額の政府補助という問題につきまして、この第六条だけでは明確を欠いているのであります。この点政府の確定をした御方針はどういうぐあいになつておりますか、お伺いしたい。
  21. 平野三郎

    平野政府委員 ただいま鈴木委員お話の第六条の点でございますが、これは最も重大な条項でございます。これにつきましては、政府としてはつきりその意思を明らかにいたしたいと思いますが、この第六条によりまして都道府県が二分の利子補給をいたしました場合におきましては、その半額に相当する部分は特別平衡交付金によつて見るということを必ず実行いたす所存でございます。
  22. 田口長治郎

    田口委員長 自浜仁吉君。
  23. 白浜仁吉

    ○白浜委員 ただいま御説明を受けました今度の措置法案について、若干質問をいたして、政府当局の御意見を承つておきたいと思うのでございます。先ほどから、鈴木委員からいろいろお話があつたのでございますが、この法案を見ます場合に、私は政府が今度の問題につきまして、なお国際漁業と申しますか、公海漁業についてどういうふうな考えを持つておられるのかということにつきまして、冒頭に御意見を承つておきたいと思います。  鈴木委員も先ほどいろいろお話があつたのでございますが、私は本問題は、こういうふうな観点から政府は提案をされたのではないかというふうに了解をいたしているのでございます。すなわち私どもが当然公海漁業として主張をいたして、そういうふうなところにわが国漁船が出漁をいたしているのでございますが、普通ならば私どもは、その操業の保護を軍艦なりあるいはその他でしておく。そういうふうなことによりまして拿捕から免れる。従つて安全操業ができることに相なるのでございますが、日本の現在の情勢から見てそれができない。従いまして漁業者は自分自身の力で漁業をやつて行かなければならない。しかも日本の漁業は、沿岸漁業の行詰まりから、また食糧対策面から見ましても、どうしてもこれを公海に求めなければならないという現段階におきましては、なおさらこの感を深くするのでございますが、こういうふうなことができないがゆえに、この不当なる李承晩大統領宣言を受けて立つ場合に、私どもの権利を主張する以上は、政府が少くともどうしてもこの権利は守るんだという考えのもとに、軍備ではできないというふうな考えから、とられてもとられてもわれわれの当然の権利を守るんだ、しかもその守る方法として、乏しい財政の中からでも融資なりあるいは何なりの方法でわれわれの権利を守るんだという考えのもとに、この法律が提案されたというふうに了解をするのでございますが、この点について冒頭に政府当局の御意見を承つておきたいと思うのでございます。
  24. 平野三郎

    平野政府委員 御意見通りにまつた政府といたしましても同感でございます。従いまして政府としては、日本の権利はあくまで主張をいたす考えでありまして、日韓会談を通じましてこの実現方に努力をいたしているわけでございます。私先ほども提案理由の際に申し上げましたように、ただいま日韓会談が停止の状態にありますので、できるだけすみやかにこれを再開いたしまして、わが方の主張を貫徹すべく努力をする決心でございます。その間におきましては、ただいまの御意見にもございましたように、暫定的に現在のような状態をもつて進むより以外にはないわけでありますが、この紛争の解決につきましては、現行平和憲法の示すところによりまして、外交交渉を通じてのみ行い得るわけでありますので、その線を通じて日本国民の権利を確保するように努力いたしているわけでございます。
  25. 白浜仁吉

    ○白浜委員 ただいま御趣旨を伺つて、当然のことと思うのでございますが、私の意見とほぼ同じようだというふうに理解をいたしまして、これ以上この問題に触れないのでございますが、それにいたしましても、今度提案をされましたところのこの特別措置法案については、これは政府の考えが非常に徹底をいたしておらぬということを私は申し上げたいのでございます。外交交渉をいたすにいたしましても、また国際正義に訴えるにいたしましても、これは当然限られた力の中、現在の国力に応じてしかできないのである。そうであるけれども、われわれの主張は正しいのだということを見せるためにも、政府は最大の努力をすべきであるというふうに私どもは考えるのでございます。先ほど鈴木委員が触れられた問題については私は触れないのでございますが、この零細中小漁業者の自己の負担によりまして、私ども日本の漁業の権益を守る。これらの人たちが、先ほど松田委員の指摘されましたように、いろいろな特殊保険その他で当然自分みずから守らなければならなかつた。そのことは一応認めるといたしましても、それができなかつたところの零細な中小漁業者が非常に困つておるという段階におきまして、また出先の農林中金あるいはその他の金融機関が、金融ベースその他で非常にしぼつておるという現在の状況におきまして、この損失補償も何も考えないような法案で、はたして救済ができるかどうか。そういう見通しにつきまして政務次官から御答弁をいただきたいと思うのであります。
  26. 平野三郎

    平野政府委員 重ねて申し上げますが、ただいまの御意見政府といたしましても全面的に同感でございまして、これら拿捕せられました漁業者の方々に対しましては、政府としてはあとう限りの処置を行いましてこの補償をしなければならない、かような考えからこの法案を提出いたしたわけでございますが、この法案につきまして不徹底であるという御意見でございますが、幸いにこの法案が皆様方の御了承を得まして成立いたしたあかつきにおきましては、なお不十分な点につきましては各種の行政措置を通じまして、適当なる措置をとりたい、かように考えておる次第でございます。
  27. 白浜仁吉

    ○白浜委員 第一条の「政令で定める海域」ということにつきましては、鈴木委員からも御質問があつたのでありますが、先ほど水産庁長官お話伺いますと、どうもはつきりしない。今度の特定海域というものが李承晩の韓国政府拿捕された漁船に限るというふうなことでありますれば、この法案の冒頭において、特定海域とするよりもむしろ韓国拿捕された漁船というふうにはつきりうたつた方がいいというふうに私は考えるのでありますが、そういうふうなことも国際間の微妙な段階において非常に影響が大きいということでありますならば、一応了とするのでございますが、この法案が提出され、しかもこの法案が可決されれば即日実施をされるということでありますれば、海域というものが政令で並行してこの委員会に提示さるべきものと私は考えるのでありますが、長官はその点どういうふうに考えておられますか、御回答をお願いしたいのであります。
  28. 清井正

    清井政府委員 政令で定める海域の問題でございますが、これは御趣旨もございましたが、これは特に「政令で定める海域」というふうに書いてあるのであります。海域範囲につきましては、先ほど鈴木委員の御質問に対しましてもお答え申し上げたのでございますが、これは一部はいわゆる李ラインの中に入つておるのもありますし、またすれすれで外に出ていると推定されるところもあるのであります。従つてそういつた過去に拿捕された船の地点を包括する一定海域をここで指定いたしまして、その損害融資対象となる漁船が全部入るように海域を指定して行きたいと考えておりますが、この案につきましても、本日は間に合いませんが、次の機会にはぜひ案として御提示いたしたいと考えておる次第であります。
  29. 白浜仁吉

    ○白浜委員 第三条の「政令で定める漁具」というものはどういうふうなものを考えておられるのか。またこの漁業者というものは水産業協同組合も含んでおるのかどうか、ひつくるめて御答弁をお願いしたいと思います。
  30. 清井正

    清井政府委員 この漁業者というものには水産業協同組合を含みます。  それから「政令で定める漁具」でありますが、これまた政令案を出します際にお示しいたしたいと思いますが、普通考えられますものは操繰網とかはえなわとかいうような、一セットの漁具は一応含めて参りたいと考えております。
  31. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 私は先ほど申したように、この問題は人為的に阻止できるものであるという確信を持つておるのであつて、そうした問題に対してこうした法律をつくつて融資を受ける。これは小さな漁民というものは、先ほど申したように、全然その環境を知らずして、安全なりと思つて出漁したものである。それが拿捕されたというものに対しては、まつたく気の毒であるから、こうした法律をつくるべきであるが、りつぱな会社まで開発銀行から融資を受けるようにしなければならないという議論はとんでもない話である。中小漁民はたとい一千五百万円でも二千万円でも、かつお、まぐろの資金開発銀行から受けようとして今日非常に苦労をしておる。私は常に言う、資本漁業は沿岸から手を引けということを常々論議しておるものであります。これに対して四つある資本漁業が三つまでも手を引いておる。そうして漁民の要望を体得しつつ漁業を営むりつぱな漁業会社もある。一方において、零細な漁民が金を出し合つてまでかつおまぐろの漁業をやらんとしても、これらが開発銀行融資を受けんとしても、なかなか容易なものではない。しかるにこうした法律をつくり、鈴木委員の議論から行きましたならば、こうしたりつぱな会社に対しても、気の毒であるから、開発銀行から融資を受けられるように政府は責任を負えという議論である。いくらでも人為的に防備できるものが、自己の利益のためにこうした問題になつたものを何で――日本の漁船であるから同様にそれは保護してやるべきではあり、日韓会談によつてこうしたものを解決すべきことが政府の責任である。沿岸の漁民を一人でも多く救つてやり、融資をしてやるのが、政府の責任でなければならない。しかるにそれが逆に、人為的に防備できるものに対して、開発銀行から融資をするように責任を負えなどという議論は、私は実際において受取れないと考えておる。しかもこのうちに、この資料から見ると、百トン近い底びき漁船が十一隻もある。一そうの底びきをやろうとしたならば、これは二千万からかかるものでありましよう。これには完全に特殊保険もつけておることでありましよう。これらが零細な漁民に便乗して、この法律の姿に隠れんとする。長官はよく御承知でありましよう。かつて免許料、許可料を全廃したことがどういう結果になつておるか。資本漁業が一社において何千万という利得を得ておるじやないか。沿岸漁民はどのようであるか、わずか一億何ぼという金にすぎない。六億の免許料、許可料において四億近いものを資本漁業が利得しておるじやないか。要するに零細な沿岸漁民を扇動して、自己の利益をはからんとするやからのやつておることである。この法律にもはつきり現われておるじやないか。百トンも持つておる底びき漁船が、その代船建造する資金の幾分かを貸してくれというのならまだしものことである。それを漁具資金まで貸せということに当委員会が賛同できるか。かかる零細な漁民の名をかつて、これに便乗せんとするようなことは、国会の権威にかかわることである。今日財政はどのようなことになつておるか。また重ねて言う。こうした法律を制定するときにおいて、議員提出であつてはいけない、政府提案にせよと言つたのは、私である。しかも政府の責任において利子補給もやるべきである。しかし公庫は、日本の漁民に対して、水産行政の上から金融をして行かなければならないから、公庫のわくをはばむようなことがあつてはいけない。当然これは中金から出すべきであるという議論をしたものである。政府は一向にその考え方をこの法案には表わしていない。しかして代船建造のわくは十五億である、これは当然中金が出すべきものである。長官の曲に答えたこの資料から行くと約三億である。三億の金が公庫の十五億の中からとられておる。しかして一般の全国の漁民は、三億というわくをこの一部の者にとられておる。そうしたならば、これらを調整するのが中金でなければならぬ。中金は系統機関の金融機関であ。中金が出すのが理の当然であつて、そうしたものでなかつたならば、中金の存在がない。ただ事業にのみ貸すのが中金ではない。幾らでも方法があつたはずなんだ。しかも利子補給は、三十隻かそこらのほんとうに零細な漁民つたならば、幾らの利子補給が必要であるか。そこからいつたならば、いかに緊縮内閣といえども、わずかの利子補給はしてやるものだと私は考えておる。しかも中小漁業も百トンの機船底びきもこの中に入つておる。ゆえにそれらをカバーしなければならない。政治的圧力によつてこれはやつたものだ。これに対して私は反対するものだ。水産げにおいてこうした法律をつくることに反対するものではない。しかしてこれは人為的に防げるものである。どうしてもでき得ない港の中に入つておる漁船まで本今日の災害によつて全部破壊されている問題をどう解決されるか。これも当然公庫から出さなければならぬものであろうが、しかしこれらに対しては、政府公庫から出すか、中金から出すか、そのわきまえをはつきりして行かなければならぬ。中金は系統機関であり、また中小漁業融資保証法もあるのだ。かような面を水産庁においてよく勘案して行かなければならないものであろうと私は考える。みだりに法律ばかりつくつて、それでもつて漁民が右往左往しておるのが今日の姿であります。一つも軌道に乗つていない。一部業者の政治的圧力によつてかかる法律をつくるなどということはもつてのほかだ。現にこの法律を制定するとき、どこで一体会合したか。会合の場所はどこか。吉武君が血を吐くような言辞でこの委員会においてやつたのは、この零細漁民を救うためにやつたものである。底びき漁船だとか、トロール船だとか機関も備わり、レーダーも無電も備わるものが、この法律に便乗せんとする考え方である。水産長官ばかりではなく政務次官もよくこういうことを勘考されて、この法律に対する影はどこにあるかということを考えなかつたならば、日本の政治はめちやめちやになつてしまうことでありましよう。私は、根本的にもつとこの法律に対するその裏を論議して行かなかつたならば、この法律の制定に対してまつこうから反対するものであります。しかし小さな漁民が知らずしてこうした結果によつて生じたものに対しては、政府もわれわれもこれに対して大いに同情をして立ち行くように導いて行かなければならないものと思います。私の議論にもし反駁があるなら、どなたからでも反駁していただきたい。
  32. 平野三郎

    平野政府委員 まことに松田委員お話通り、零細なる漁民を保護するという立場からの御熱意、また今回の与件は人為的に防ぐことが必ずしも不可能ではないというような点につきましては、深く敬意を表する次第でございます。しかしながらただいまお話の中にありましたような、この政府から出しました法案につきましては、一部特定漁業者の政治的圧力があつたというようなことは全然ないわけでございまして、政府といたしましては、ただいま松田委員からお話がございましたように、本来農林中金から融資をすべきである、こういうことでございますが、農林中金は一般原則として、通常の事業に必要な資金を貸出す機関でありまして、かような外国から拿捕される、いわば一種の災害であるわけでありますが、すでに国会におかれましては、各種の災害につきまして幾多の特別の立法もできておるわけでありますが、そういう点から考えましても、これはそれ以上の災害と申されるべきものでありまして、むしろ利子その他の点につきましても、さらにもつと優遇措置を講ずべきが本来ではないかというような考えも持つておるわけで、こういう観点から本法案を提出いたしたわけでございます。ただ松田委員の御意見の人為的にこれを防ぎ得る余地があつたかどうかということにつきましては、これは実情に照らしまして十分検討をし、今後人為的に防ぎ得るようなものを防がなかつたというような場合につきましては、もとよりこういう優遇措置を講ずべきではございせんし、またそういうことのないように、行政指導を通じまして漁業者に対して警告を発しますとともに、善処いたしたいと存ずるわけでございますが、政府としては別段特定の政治的圧力を受けたわけでも何でもなく、まつた政府の考え方といたしまして、今別の事件に対しましては、当然かような措置を講ずべきであるという観点から提出をいたしておるわけでございまして、どうか委員各位の御賛同を願いたいと思うわけであります。
  33. 赤路友藏

    赤路委員 本法案内容に対していろいろと質疑が、全般的に鈴木委員からも白浜委員からもなされたと思います。ただ御答弁を受けました中で、一点だけお聞きいたしたいと思います。この第一条の末尾のところに、「農林漁業金融公庫からの融通を促推し、もつて漁業経営の安定に資することを目的とする。」という条文にあります。それから説明書の中に、「当該資金使途貸付利子等について公庫法特例を設け、優遇措置を講ぜんとする。」とこういうふうにうたつておるわけなんですが、両方とも非常に漠然としておるように私は考えるのであります。先ほど来鈴木委員の御質問の中に、貸付調査の基本的考え方いかんということがあつた。その御答弁に対して鈴木委員は、この法律によつて拿捕船の代船建造は必ずできるものと了解する、こう鈴木委員は自分で御了解になつておるのですが、長官の方からはそれに対して何らのはつきりした御答弁がないようでございます。この点鈴木委員が了解した通り私たちも了解してもよろしゆうございましようか。この点ひとつ御答弁をお願い申し上げたい。  いま一点は、これはこの法文に示されておりますように、政令で定めた海区における拿捕船の代船建造と、漁船改造だけが対象となつておるのでありますが、御承知通り李ライン内に操業しておるものは非常に小さい船が多うございまして、李ライン内で操業ができなくなつて、二十トン、三十トン程度の船は非常に今困つておる。どうしても漁種転換をやらなければならない段階に来ておりますが、これらのものに対して何らか御考慮が別途あるかと思いますが、ございましたらそれらの点について御答弁をお願い申し上げたい、以上二点お聞きいたします。
  34. 清井正

    清井政府委員 第一の点は先ほどの私のお答えが不十分であつたのでございますが、これは本法律案の第二条にも、公庫はこの法律に基いて小業計画並びに資金計画をつくりまして、当該被害漁船の代船建造についての融資の計画をいたしまして、こちらの承認を求めておるような次第になつております。これは全部当該漁船につきましては融資をみるということでございます。  それから第二点の問題でございますが、この法律は御承知通り拿捕されたもののみに限定されておるのであります。ただ拿捕されずして、特に他へやむを得ず転換をいたしたという場合につきましては、これは先般御説明申し上げたのでございますが、農林漁業金融公庫のわくとしては七千二百万円の融資わくを保有いたしてあるのでございますから、これは本法の五分五厘にあらずして、一般公庫貸付金の七分五厘によつて拿捕されざる船舶の転換については考慮してある、こういう措置が講じてある次第でございます。
  35. 赤路友藏

    赤路委員 長官の答弁は、私のお尋ねするところとちよつとピントがはずれておるように思うのですが、この第二条に掲げられておりますように、行政庁としては代船建造資金融通に関する計画を定めなければならない。従つてこういう御計画はお立てになると思います。ただ問題は、その計画がされたものが、そのまま金融機関によつてのまれて行くかということなんです。金融機関は金融機関としての独自の立場を堅持した場合に、この計画の中に入つておるものが、融資を受けられないというような事態が起つて来やしないかということなんです。そこで私がお尋ねいたしましたのは、この法律の本質から申しましても、拿捕された漁船に対する建造融資は、少くとも優先的に確実になされなければならないのじやないか。もちろん金融機関は金融機関としての考え方がございましよう。また見方もございましよう。しかしながらこの法律の本質から行つた場合は、前の状態がどうであるとか、以前の一もつと率直に申しますと、焦げつきがあるとか何とかいうので落ちるというようなことになりますと、この法律にうたわれておる代船建造というものができない。現実の今のこの法律をつくる目的は、ほんとうに小さい漁業者、三十トン、三十トン、四十トンというような小さい漁業者、しかもこの問題が起りましたのは最近の問題でない、かなり長い期間こういうような問題が起つて、相当困り抜いた業者であるということはお考え願えると思う。従つておそらく私は、これらの拿捕された業者で一定度を越えた借金を持つていないものはないのじやないのじやないかと思う。そういうような面を取上げて、金融機関が信用度が薄いということによつて貸さないということになるとしますれば、この法律をつくつた意味はございません。ただつくりつ放しということになる。仏つくつて眼を入れずという形になろうかと私は思います。そこで重ねて私は、しつこいようでございますが、そういう場合も想定いたしますがゆえに、今鈴木君が言つたように了解をしてよろしゆうございますか。拿捕船は必ず代船建造ができるものと了解していいかどうかということでございますので。いま一応重ねてひとつ御答弁をお願いいたします。
  36. 清井正

    清井政府委員 これは先ほど申し上げた趣旨と同じことになりますが、いわゆる拿捕船の船数が特定いたしておりますし、それに対して必要なる融資の金額を特定いたしておりまして、すべてわくが確定いたしておるのであります。従いまして本案趣旨から申しましても、拿捕された代船建造につきましては、必ず融資がし得るものと思います。
  37. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 ちよつと関連して……。融資の額が調査されておるというのですが、ひとつこの金額を明らかにしてくださいませんか。
  38. 清井正

    清井政府委員 私どもの方で金額を算定いたしましたのは、個別の船でございます。トン数を出しまして平均単価を算出いたしましたので、全体の金額につきましては判明しておりますが、個々の船については金額は判明しておらないのであります。
  39. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 漁政部長わかりませんか。
  40. 立川宗保

    ○立川説明員 長官の申した通りであります。
  41. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 漁具はどうですか。
  42. 清井正

    清井政府委員 漁具につきましても、総計が七千八百九十一万八千円という数字は出ておるのでありますが、これまた全体の数字でございまして、個々には判明いたしておりません。
  43. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 そのうち底びきと延べなわとさばづり、こういうようなものの総計はおわかりになりませんか。
  44. 清井正

    清井政府委員 ただいまちよつと判明いたしておりません。
  45. 松田鐵藏

    松田(鐵)委員 ただいまのどの船に対してはどのくらいのトン数であるから幾ら、漁具はどういうものであるから幾らというような資料の提出をお願いしたいのであります。
  46. 田口長治郎

  47. 淡谷悠藏

    淡谷委員 この法律は、あくまでも抜本的な解決を目ざし、その解決ができるまでの暫定措置というふうに理解いたしますが、この抜本的な公海漁業の問題を解決する手というのは、現在の日本では外交交渉による以外に方法がないということを平野次官が申されております。しかもその外交交渉は、日韓会談が再開されるまではどうも進展しないというふうな御答弁でございますが、日韓会談はいつごろ再開のお見込みでございますか、これが一点。  さらにこういう外交上から招来されておりますいろいろな漁業者の損失に対する外交的な措置を、一体どうとられるのか、農林省は外務省とはつきり交渉されておるかどうか、その点をお伺いしたい。特にこの前に保利農林大臣に質問いたしましたら、近くその方の交渉をいたしたいと思いますという答弁を得ておりますが、中共並びにソ連によつて拿捕された船の損害金に対する何らかの措置を講ぜられておるかどうか。これはソ連、中共と韓国とは外交上の観点は違うでございましようが、被害を受けております漁民にとつては苦痛は同じことでございます。これを一体農林省としてはどういうふうに考えておられますか。特に最近外交問題による漁民災害がひんぴんとして起りました。ひとり李ラインやあるいは北洋漁業だけではなくて、つい昨日の新聞にも、九十九里浜において、米軍が実弾をもつて威嚇射撃をやつた。これはこの三月に調達庁との間に契約の更新があるはずでございますが、こういう契約更新とからんで、米軍が実弾をもつて実力行使をするようであれば、李承晩ラインがまさに日本の海岸まで別な国によつて広げられて来たというふうに感ずるのであります。こういうケースについて次の御答弁をお願いいたします。特に九十九里浜の問題については、お調べになつ範囲内で、真相を御説明願いたいと思います。
  48. 清井正

    清井政府委員 私から初めに御答弁申し上げます。韓国との交渉につきましては、先ほど政務次官よりお答え申し上げた通りでございまして、昨年末に若干再開のきざしがあつたのでありますが、それもうわさにとどまりまして、現在まで再開の段階に至つていないのであります。私どももその後、事務的には外務省とも緊密に連絡をとりまして、何とかして会談を常軌に乗せたいということで交渉いたし、またいろいろ情勢を聞いておりますけれども、今のところ残念ながら確たる曙光は見えておらない状況でございます。ただこの海域におきまして拿捕された船あるいは抑留された人、その他これによつて生ずる損害等につきましては、その都度外務省から正式文書をもつて韓国代表部に抗議を申しております。その抗議の中に、よつて生ずる損害賠償については、その権利を保留する旨をはつきりいたしておりますので、そのたびに必ず韓国に対しましては損害賠償を請求するというようなことがはつきり出ておるのであります。その他中共関係並びにソ連関係につきましても、拿捕されておる実例は現にあるのであります。これは公海漁業の安全という考えから申しましても、まことに遺憾なことであると思いますけれども、ただいまもお話がありました通り、いろいろ事情を異にいたしておりますので、私どもといたしましては、何とか日本の漁業者が安全に航海できるようにということは望んでおりますけれども、その後なおこれに伴つて何らか交渉するというような段階には、残念ながら立ち至つていないような状況でございますから、御了承願いたいと思います。  またそれに伴いまして九十九里浜の問題にお触れになりましたが、この点は、私ども新聞記半によりまして、さつそく実情を調査いたしておりますけれども、おそらくこれは、現地の協定によりまして、あそこは御承知通り演習区域になつております。そこで一定の日にち、一定の時間は必ず高射砲の実射をすることになつておりまして、その間は一定海域漁民が立ち入らないということがはつきりきまつておりまして、それによつて生ずる損害は損失補償をいたしておるのでありますが、その趣旨が徹底しないために、一部漁船がその規定を守らずに、危険海域で操業しておつた、その程度があまりひどいので、何か威嚇射撃した、こういうようなことじやないかと推定いたしております。これはいずれはつきりした事情を調べまして、適当なる措置をとりたいと思いますけれども、おそらく実情は、そういうふうに一定海域には一定時同出漁しないという約束をむしろ守らなかつたというような言い分が、米軍側にあるのじやないかと推測いたしておりますが、いずれにいたしましてもこれは推測でございますので、もう少し実情を調査いたしたいと思います。
  49. 淡谷悠藏

    淡谷委員 先ほどの長官の御答弁によりますと、この法案対象になる拿捕漁船が五十隻ということでございましたが、ただいまの御答弁では、韓国の問題あるいはソ連、中共の問題にいたし豪しても、外務省がさつぱり交渉しておらぬという実態が明らかにされております。これによつて当然また拿捕船が出て来ると思います。現にこの間の新聞でも、中共がつかまえた。韓国もいつ拿捕するかわからない。これは一日も早く措置を講じなければならないと思いますが、これは水産庁の問題でなくて外務省の問題と思いますので、外務省からもあらためて御答弁を願いたいと思いますが、これに対する見通しをもう一ぺんお伺いしたい。このままの勢いで進むならば、拿捕船がさらに出るのではないか、あるいは出ないというのか。またこれを解決するためには、現在の日本の国の外交交渉だけではできない。従つてもつと日本が実力を持たなければならぬといつたような、再軍備の効果まで考えられておるかどうか。端的に申し上げますと、日本が強力な軍艦を持たない限りは、この問題の根本的な解決はないというふうにお考えになつて、じんぜん日を過しておられるかどうか。これは外務省に聞くのが本筋でございますが、水産庁長官としての一応の見通しをお伺いしたい。  それから九十九里浜の問題ですが、こういうふうなケースは随時現われて来ると思います。これは内灘その他の演習地の問題でもしばしば触れましたように、現在の賠償あるいはいろいろの契約の事務処理が円滑に行つていない点から、たびたびこういうケースが出て参ります。かりに演習地に指定されておる危険区域に侵入した事実があつたとしても、これに対しては、はつきり刑事特別法の規定がございまして、この刑事特別法によつて処断されるのがほんとうだと思います。その法によらずして、ただちに米軍が実弾射撃をもつて脅威する。脅威のわく内におる間はよろしいが、万一実害を与えるようなことがなしといたしません。これは一体どうなつておるのか。その法によらずして、かつてに外国の軍隊によつて脅威と称する実弾射撃をするなんということは、まことに不穏当だと思いますが、こういう点も、もう一ペあ長官並びに次官の御答弁を願いたいと思います。
  50. 清井正

    清井政府委員 ただいま御質問日韓関係の問題でございますが、これは私どもはあくまで会談の再開という、正規な筋道で行くべきものだと考えておるのであります。ただ先ほど申し上げました通り、なかなかこの問題がうまく進展いたしません。私どもといたしましても、これはいろいろな観点から申しまして、非常に重要な問題だと思つておるわけでありまして、実は外務省とも常に緊密な連結をとつてつておるのであります。むろん外務省といたしましても事故のある都度、先ほども申し上げました通り、公文をもつて相手方に抗議文を提出いたし、その他適当な機会に常に相手方に注意を喚起いたしておるのでありますけれども当該抗議文に対しまして、韓国側からは一度も返事がないというような状況であります。たびたび外務省が返事を催促しているのでありますが、一向に返事が来ない状況にあるようでございまして、実は事務的に申しましても、私どもとしては当惑をしておるのであります。しかしこの問題は、このままにほうつておくべき性質のものでもございませんので、また今後どういうふうに進展するかということもなかなか予測ができない問題でありますから、私どもといたしましては、一刻も早くこの問題を解決すべく、正常な日韓会談が開かれることを切望いたしておるような次第であります。  それから九十九里浜の問題でございますが、これまた新聞記下だけでございますので、確実に調査をいたさなければわからないわけでありますが、この点については現在何とも申し上げられないのであります。なお実情をよく調査した上でお答え申し上げたいと思います。
  51. 田口長治郎

  52. 中村庸一郎

    中村(庸)委員 私はこの法案につきましては、「特定海域における」ということが問題だと思う。しかしこの九州西水域における漁場というものは、わが国漁業者の開発した非常に大きな漁場であつて、その漁場に対して、李承晩が一方的にこういう暴挙をあえてしたということによつて、この特定海域ということだけ取上げて、こういう法律をつくろうとされると私は考えるのであります。またこの李承晩ラインによつて拿捕された漁業家の損失というものに対しては、同情にたえないのでありますが、これに以通つたケースにおいて拿捕された船をどうされるのか。これだけこういう措置をとられるのか。あるいは中共において、あるいはフィリピンにおいて、こういう問題が続々起つて来るだろうと思うが、そういう問題に対してはどう考えられますか、ひとつつておきたい。
  53. 清井正

    清井政府委員 この点は、先ほどもちよつと触れたのでありますが、これは特殊な事態に即応いたしまする臨時応急の措置といたしまして、とりあえず昨年末までに拿捕されました漁船についての応急措置としての法律案であります。韓国以外の国に拿捕されたものも、ほかに多数あることは私ども十分承知をいたしているのでございますが、この方面に出漁する漁船につきましては、なるほど拿捕されたという事情においては同じでございますけれども当該国が韓国とやや事情を異にしているような状況もございますし、その他いろいろの状況から考えまして、本法律案によつては、韓国拿捕されたもののみに特定いたすという、こういう臨時応急の措置として考えて参りたい、こう考えている次第であります。
  54. 中村庸一郎

    中村(庸)委員 臨時応急の措置として、この九州西水域における問題だけ取上げられたということでありますが、他の場合においてはこういうことをされないお考えでありますか、あるいはまた、これは臨時応急の措置であるが、他の場合もこういう措置をとられる考えでありますか、承つておきたい。
  55. 清井正

    清井政府委員 その点は考えておりません。
  56. 中村庸一郎

    中村(庸)委員 これは李承晩ラインにおける漁業家の損害を補償しようというのが建前だろうと私は考えます。船を拿捕された人は、これはまつたく気の毒のきわみでありますが、わが国におきましては、各地よりこの九州西水域に出漁しております。小さな漁業家が、小さな漁船をもつて、互いに融資をし合つて出漁して、しかも三箇月も滞在して漁業ができず、借りた金の債務もいかんともすることができないで、そして今日まつたく窮況に追い込まれている漁業家がたくさんあります。私はきよう突然この法案に接したので、資料を持つて参らないのでありますが、同じ漁業家が損害を受けたのは、拿捕された人だけではないのである。苦しい中から融資をして、そして二箇月も九州に出漁して、ただそのまま帰つて来て、あとの生活も立たないという漁民がたくさんの数あるのであります。そういう人に対しては何らの対策も講じないで、船を拿捕された人だけに代船建造融資をして救済するということは、少々片手落ちではないかと私は考えるのですが、この点に対しても長官の御意見を承つておきたい。
  57. 清井正

    清井政府委員 これはお話通り拿捕された以外にも、主として関東から該海域に出漁いたしまして、さばづり漁業でありますが、当該海域が危険のために、もどつて来たような船が相当あるのであります。その点は御指摘の通りでございますが、その点につきましては、先ほどちよつと赤路委員に対して御説明申し上げておいたのでありますが、拿捕された以外の者が、漁種をかえるとか、あるいは改造するとかいうような方法によりまして、他に転換いたしたいという場合におきましては、公庫に七千三百万円のわくが保留してあるのであります。そのわくの中において融資をいたしましてそれらを行わせる、実はこういうふうに考えている次第であります。
  58. 中村庸一郎

    中村(庸)委員 ただいま長官から御答弁を承つたのでありまするが、しかしもう他に転換もできないような非常に苦しんでおる漁民もありまするので、この点は十分この法案の中において解決できますならば、これに越したことはないと思うのであります。この法律案は追つて委員会に付託されることと思うのでありますが、その際におきましては、十分孝順に入れられて、また私どもも十分審議を尽して、あるいはこの法案の修正というところに行くかもしれないと思うのであります。ただこのわくが七千三百万円ですか、とつてあるというだけではなかなか救われない問題であろうと思いますので、私はその点を申し上げておきます。  それからもう一点承りたいのでありまするが、この法案の中に損失補償の規定が少しもないのであります。ただすべての代船建造の金を借りられるということでありますが、この問題に対してもう少しはつきりすべきだと私は考えておりまするので、次の機会に私はその点を主張したい。これで終ります。
  59. 清井正

    清井政府委員 ただいまちよつとお答えを申し上げておきますが、漁場をやむなく転換いたしました船、特にさば船等につきましては、すでに御説明してありますが、特別にこれをかつお・まぐろの臨時許可をいたしておることは御承知通りであります。そこで、相当の隻数の船がかつお・まぐろに実は転換をいたしておるので刈りまして、その措置は別途にとられておるのであります。その低かそれに関連いたしまして、漁船を改造するに必要な資金融資されておるということでございます。私どもといたしましては、拿捕された以外の船につきましてもできるだけの措置はとるつもりでございます。  それから損失補償の問題がただいま出たのでありますが、これは農林中金等よりこれに融資するのでありますれば、損失補償という問題もございましようが、御承知のように農林漁業金融公庫政府資金を主として財源としておるのでありまして、しかも利率もきわめて低利でやつておるのでありますから、建前上損失補償の必要はないように考えておるのであります。
  60. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 李承晩ライン及びその付近において漁船拿捕され、そのために金融措置としてこの特別措置法が今ここに提案されております。時間もありませんので、ここに大ざつぱにお伺いいたしたいのでありますが、この問題は零細漁民の救済を主とした自的に考えていいか、あるいは国策に準じたというようなことで特別の措置を講ずるように考えていいものであるか、この点をはつきりしたいと思います。
  61. 清井正

    清井政府委員 ただいまの御質問ですが、要するに私どもは、李承晩ラインというものを徹頭徹尾認めていないのであります。その点において私どもは、最後までこの問題につきましては韓国側と折衝いたしまして、当該海域に出漁する漁船の安全操業を念願いたしておることは、先ほど来御説明申し上げた通りであります。この法律規定されましたのは、拿捕された船につきまして、特に経営の小さい方々につきまして公庫から低利で融資をいたしまして、漁業経営の安定に資するようにいたしたい、こういうことでございます。
  62. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 いや、そういうことじやない。目的がどちらにあるのかということをお伺いしておる。抽象的では困ります。零細漁民漁業経済を救済するためにこの特別措置法を御提案になつたのでありますか。今の御答弁であればそのようにも解釈されますが、そう解釈してよろしゆうございますか。
  63. 清井正

    清井政府委員 重ねて御答弁申し上げますが、法律に書いてあるだけの意味でございまして、漁業経営の安定に資するように当該被害者の漁船の代船建造融資をいたしたい、こういうことでございます。
  64. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 きようは時間がありませんので、ごく簡単に次のような点をお伺いして、あとはあとにいたします。  ただいま淡谷委員及び中村委員よりも御質問があつたようでありますが、単に経済が非常に窮迫して困るという点を考慮されてこの法案を提案になつたとすれば、それはまことに同情すべき点がありますので、これはたいへんけつこうなことであります。けれども、法は少くとも公平でなければならない。救済ということだけであるならば、窮迫しておる漁民がどの地区にどの程度あるかということをお調べにならなければなりません。たとえば、私青森県でありますが、青森県の陸奥湾の漁民はその日の生活にも困つて、娘の身売りをしておるのです。そこで北洋の調査船でもよいから何とか一そうでも転換の方法を講じてもらいたいというので、私も援助して、組合をつくらして何とかしたらいいだろうということでやつておりますが、そういうことはおそらく津々浦々どこにもたくさんあると思います。そこで重点的にこの問題を取上げたのはどこに意味があるのか、これは国策を意味したものじやないか。しかし国策といつたところで、李承晩ラインに必ずお前が行つて魚をとれという命令を下したわけではないのだ。たまたま魚をとりたいから行つてひつかかつたということであれば、気の毒ではありますけれども、そういう解釈で行きますと、その範囲が非常に広くなるので、この問題の取扱いは、李承晩ライン及びその付近において拿捕された漁船限定するということに疑義ある、こういうことになりはしないかと私は考えるのであります。できるならばこれは国策に持つて行きたいのだが、しかし国策となると、幸か不幸か北洋漁業というものは、日米加漁業協定の線において水産庁が計画を立てて許可をして、それから出漁するということになりますので、これはほんとうに国策であり、そうしてこれが拿捕された場合に対しては、国策の線に沿うて協力したその拿捕船に対してはどういう措置を講ずるか、あるいはこの海域において拿捕された船に対してはどういう措置を講ずるかということが、大きく展開するであろうと思うのであります。よつて、今申し上げたように、政府は公平に措置しなければならない。ただ一部の人たちだけに対して便宜をはかるために一海区、一地区に限りこの特別措置法を講ずるということは、ちよつと納得ができない、こう思いまして今質問をした次第であります。この点をどうお考えになるか、御答弁を願いたい。
  65. 清井正

    清井政府委員 ただいまの御質問でございますが、なるほど拿捕されたのは韓国にのみとどまらないことは、先ほども説明申し上げた通りで、中共にも拿捕され、ソ連にも拿捕されております。従つてどもといたしましては、拿捕された船の所有者あるいはその関係者はいわずもがな、一般漁業者に対しましては、総括的な諸般の施策によつて漁業経営の安定をはかるために諸般の策を講じなければならないことはもちろんでございます。これは単に金融の措置のみならず、一般措置によつて漁業経営を安定して行かなければならぬというふうに考えておるのであります。ただここで韓国のみ取上げましたのは、先ほども説明申し上げました通り李承晩ラインという特殊を向う側の宣言があり、しかも今までは割合に穏やかであつたのが突如として拿捕されまして、それが短期間に相当拿捕されるという特殊な事態がありましたので、その特殊な緊急事態に対する措置のみを特別に取上げるということにいたしたい、こういう建前からこの法案を立案した次第であります。
  66. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員 拿捕される場合には、いつも突如として拿捕される。何も最初からその計画があるであろうから、あそこに行つて拿捕されましようというばかな漁船はありません。いつも突如として拿捕されることは当然であります。私が今申し上げたいことは、戦争時代、食糧確保のために政府が半ば命令的のように、この地区は何百トン魚を供出せよ、こういうことがあつた時代があります。その命令を遵法するがために漁船は非常な危険を冒かして出漁して、潜水艦にねらわれ、いろいろなことで遂に遭難して行方不明になり、あるいは撃沈されたことが相当あつたのであります。しかも私の持つておる漁船も、潜水艦にやられて撃沈されたのであります。けれども私はその当時、政府のその方針に従つて、どこまでもその数量を確保するために、自分たちの責任において漁船を仕立ててまで、その数量を確保したことを記憶しております。そのときに、なぜ国家がこれを補償してくれないだろうか、戦争当時でありますから、補償すべきものでないだろうかと言つたけれども、財政の都合で補償できないのだ、こういうこともあつたのであります。これを私記憶しております。今この問題を、国策でもない、漁民の経済的な非常に苦しいことに同情して、この提案によつてかくするのだ、これはわかつております。けつこうなことであります。けれども保護の必要があるならば、それは一地区、一海区の少数の人人のためにやるべきものではなくて、もつと広汎にこれを考えるべきものである。しかし政府は、財政面においてそのような広汎な措置を講ずることはできない。できないならば、先ほど松田君からもいろいろ意見がありましたけれども、これをどの程度に調整するかということは、今後に及ぼす影響が非常に大きいのであります。よつて、たとえば北洋漁業の日米加漁業協定の線によつて、国策としてこれを許可され、五月に出漁せんとする船団が、歯舞、色丹の日本の領土であると称しておるその島の周辺において、なおそういう不幸な拿捕されるようなことがあつたならば、これは国策の線に協力したといつてさしつかえないではないか。そのときにこれをどう処置なさるかということは、大きな問題として、将来必ず問題になるだろうと思つておりますので、今質問しておる次第であります。しかし本日は、この大きな問題をただちにここで解決すべく御答弁を願いたいということは、私は考えておりません。これは将来に及ぼす影響が非常に大きいのでありますから、じつくりとお考えになつて政府がこういう問題を公平に、法律的に措置するために、国民の批判を受けておるということを前提として申し上げておるのであります。今までいろいろな問題が出ておりますので、国民の目がなかなか光つております。よつてこういう特別措置という金融上の措置は、何かしらそのあり方を明確にしなければならない、こう考えておりますので、こに質問しておる次第でありますけれども、きようは、しいてこの問題に対して必ず御答弁をしてくださいとは申し上げませんから、あとでよろしゆうございます。この問題は、またそれからそれからといろいろな問題をひつさげて質疑に立ちたいと考えておりますので、きようは時間がありませんから、これで質疑を打切ることにいたします。
  67. 田口長治郎

    田口委員長 遠藤三郎君。
  68. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 私は二、三の点について簡単にお尋ねいたしたいのであります。昨年の暮以来この問題で非常に論議して参りまして、一応の方向をきめて参りましたが、その考え方に対して、この法案を卒直にいいますと、まことにインチキなんだ、ごまかしなんだという印象を私は受ける。その第一の点はどういう点かといいますと、代船建造資金融通するのでありますけれども、先ほど来各委員から質問がありまして、この資金は必ず公庫から出させるようにいたしますと言つておる。けれどもどもはそれを信用することはできない。なぜかといえば、今まで苦い経験を何度も繰返しておるのであります。金融公庫を預つている責任者は、たといそれが政府資金であろうが、損失をすればその人の責任になるのである。損をしてもいいから融通しろというようなことを、政府が命令することができるでありましようか、できはしない。法律の根拠がなければできないのであります。従つてどうも償還能力が危いというものに対しては、融通することはできないというのはあたりまえのことであります。しかも今度のこの融資は、どういう条件の漁民融資をするか。今までの船をつくるために、すでに大きな借金をしておる。その借金がまだ返せない間にまた新しい借金をしなければならぬ。つまり三倍の負債を背負つて、そうして償還しなければならないということでありますから、信用能力も低いし、償還能力もきわめて低いと見なければならぬ。ですから一般の金融常識からいいますと、こういう人たちには金を借すことはできないのであります。そういう条件の漁民に金を貸せということを、政府は責任を持つて言いますといつても、それは信用することはできない。そういう損失をしたならば、政府が補償してやるという保証をはつきりして初めて政府はそれを言い得るのであります。それをしないでおいて、確かにこれは融資ができるであろうという了解をするとかいうような話もありましたけれども、私どもはそれはとても一理解できるものではない。これはごまかしだ。何べんも何べんも国会でこういうごまかしを繰返して来ておつたわけだ。ですからこの点どうしても代船建造をしなければならないという人に、必ず融資しますというならば、われわれの常識が納得できるように、損失した場合には補償しますということをはつきりしなければ、これは信用することができない。私はこの点について政府当局の御意見を承つておきます。
  69. 平野三郎

    平野政府委員 これは先ほど来御説明申し上げましたように、拿捕された漁船の名前を初め、その隻数はわかつておるわけでありまして、また農林漁業金融公庫の中に、これに貸し付けるべきわくを定めておるわけでありますから、必ず融資ができるわけでございます。なお遠藤委員お話のように、拿捕されたといえば信用状態の不安定な立場にあることは御説の通りであります。従つて一般の金融機関からすれば、融資は妥当でないということになります。従つて農林漁業金融公庫という、主として政府出資によるところの金融機関から貸出す、こういう建前になつておるわけでございます。従つて政府の責任において円滑なる金融をいたす、こういうことになつておるわけでございますから、ひとつ政府を御信用願つて御了承願います。
  70. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 今政務次官は政府を信用しろとおつしやいますけれども、私は政府を信用することができない。なぜかといいますと、政府は国家資金を損をしてもよろしいから貸せという命令をする権限がないのであります。それができますか。損をしてもいいから貸しなさい、国家資金だから損をしてもいいという命令が出せますか。もしそれを出したとすれば、これは重大問題であります。そんなことを政府にやられたら、かなわないのであります。国家の資金だから、損をしてもいいから貸せというようなことを、もし政府が命令したとすれば、この政府は放つておくわけには参りません。そういうばかなことができるわけがない。それを信用しろというのは無理であつて、私どもはどうしても信用できないと思うのだけれども、それでもなお信用しろというのかどうか、もう一度聞いてみたい。
  71. 平野三郎

    平野政府委員 政府といたしまして、農林漁業金融公庫に対しまして、損をしてもいいから貸せ、こういう命令をもちろん出すことはできませんし、またそういうことはいたしませんが、しかしながらこれは一般の金融機関と違いまして、先ほど来御説明申し上げましたように、きわめて低利かつ長期の資金でありまして、またこの出漁という問題は、外交交渉によつて必ずわが国の主張が実現できる、こういう確信のもとに進んでおるわけでございまして、いずれこれらの建造されるべき代船は、それぞれ所定の目的に向つて出漁いたして、その目的を達成し得る。こういう前提に立つておるわけであります。従つてその償還につきましても、必ず計画通り償還ができ縛る、こういう見込みでありまして、決して前途不安であつて、だめになるということはないと確信をしておるわけであります。その確信のもとに貸付を進めて参るわけでありますから、その点において政府を御信用願いたいと思います。
  72. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 今の政務次官の御答弁は、率直に育つてしまえば子供をだますような議論ですけれども、これを追究しておつてもしようがない。私の言つておることは、この点をはつきりすることが今度のこの法律をつくる場合においての一つの要点になる。ですから小委員会でもこの点は十分論議してみたいと思うわけであります。従つてこの点をいつまで政府を追究しても始まらぬわけでありますから、この点はこの程度にしておきます。  それから第二の点は、筋六条に「都道府県は、代船建造資金融通を受ける漁業者に対し、当該資金利子の一部を補給することができる。」というこの法律規定も、先ほど来の説明を聞いておりますと、県が二分の補給をします、そうすればそのうちの一分を政府が補給してやります、こういうふうなことを言つておりますけれども、これもまことにごまかしも一はなはだしい。県はこんなことはやりわしません。なぜかというと、県全体の情勢からいいますと、三そう五そうの船が拿捕されたからといつて、県としてはこれを簡単に取上げることができないのであります。しかも李承晩ラインの問題は、日本の国が非常に弱くなつておる、その国家の一番弱味をこれが一つに集約して背負い込んだ形になつておる。県にはこの問題について責任がないのです。むしろ国にあるのです。そういういきさつがあるから、県が三分の補給をしますといつてのうのうとしていると、これはとんでもない間違いです。県はこういうことはなかなかやらないと思つておりますけれども、何かいかにも二分の利子補給が県の方から出て来るような説明ですけれども、どういう根拠によつて、県から二分出るということを考えておられるか、その点を伺つておきたいと思います。
  73. 平野三郎

    平野政府委員 全面的に国の責任であるということを言えばそういうことも言えると思いますが、一面また県という法人が存在するわけであつて、これはやはり県内において県民が損をした場合においては、隣保共助の精神によつて、県がある程度の補償をするということは、これは当然であると考えるわけであります。すでに山口県等におかれましては、正式に県が利子補給をするということを聞いておるわけでありまして、必ず県がこの精神において実行されるものと考えます。また借りる場合におきましては、その分の半額につきまして国で負担をする、こういう考えでございます。
  74. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 今のこの問題についても、押し問答をしておつてもきりがないから、この程度にとどめておきますけれども、これははつきりさせなければだめなんだ。その点をはつきりさせなければ、ただ政務次官がここで答弁したくらいのことでは、これは簡単に動かない問題だということをここではつきり申し上げて、そうしてまた小委員会で十分に論議をしてみたい、こういうことを申し上げておきます。  第三の点は、漁業転換の資金融通をする、こういうことになつております。この点は重大な問題であります。これは農林大臣もあるいはこの委員会におきまして、あるいはさらにまた本会議においてもはつきり言明をしておりましたけれども、実はこの法律を見ますと羊頭狗肉で、われわれがやかましく言つてつたことが全然落ちてしまつておる、これもごまかしです。そのこまかしの羊頭はどこにあるかといいますと、あのときに李承晩ラインに殺到して漁業をやつてつた、その中でつかまつた船というものは、ごく少数です。わずか五十ぱいかそこらであります。ところが何百隻という船があそこの漁場を目がけて建造しそうしてそこ以外には使えないような型の船ができ上つてしまつておる。漁業転換をするにもすることができない。そうしてかりにかつをまぐろの漁業権をもらつても転換の資金がなくてやれないんだ。そういう人たちに転換をさせて、その援助をして資金融通をしてやろうというのが一つの大きなねらいであつた。この問題の一つの支柱でもあつたわけであります。ところがこれを見ますと、まつたくそれを忘れたようになつておる。これはもうとんでもないごまかしだと私は思うのであります。そこでもう一つはつきり指摘しておきたいことは、この法律上の条文を見ますと、たとえば何丸会社というような大きな会社が二十ぱいも三十ぱいも船を持つてつた。そのうち一ぱいか二はい拿捕された、あとの十八はいはその海域には出ておつたけれども、つかまらなかつた、そういう会社は転換資金をもらえるような仕組みになつておるようであります、しかし小さな漁民が集まつて一ぱいつくつて、その船がとられてしまつた、ところがその漁港で小さな船が集まつて三ばい五はいつくておる、これらの船の転換資金はもらえない、どうしてもおかしい、これはどういうふうに説明するのであるか、どうも片手落ちといいますか、何といいますか、われわれはこの法律の条文を見ておつて実に不可解に思うわけでありますけれども、そういうへんな取扱いをする条文をつくつたのかどうか、その点についての政府の見解を伺つておきたいと思います。
  75. 清井正

    清井政府委員 ただいまの御質問でありますが、この点は先ほど中村委員の御質問に対して一部お答えを申し上げたのでありますが、なるほど遠藤委員お話通り当該海域に出漁しておつた船は当時は関東方面よりさぱつり船が大分出漁しておりました。また底びきも出漁しておつたのであります。ところがああいう事態が起りまして、一部拿捕されましたけれども大部分のものは漁業を放棄して帰つたということはお話通りであります。そこで私どもは、拿捕された船と、それから漁場をやむを得ず転換した船の対策の問題でありますが、この点は差別をつけたということでなしに、私どもといたしましては、やはり転換した船と、船そのものがつかまつたものとはおのずから若干区別があるだろう。従つてやはり船そのものがつかまつたものは、やはりこの際代船の建造をして行きたい。  それから漁場をやむを得ず放棄した船に対しましては、これは御承知通りかつをまぐろ等に転換せしめるというふうに、これは臨時措置もできております。さばつり船の一部につきまして、大体百隻以上のものはかつをまぐろに一時転換をする。その転換に必要な資金につきましては、これは先ほど御説明申し上げた通り七千数百万円を公庫に保留してあります。これは五分五厘ではないのでありますけれども公庫の中にわくをとつておるということでいたしておるわけでありまして、私どもといたしましては、直接この法律で取扱いますものは、やはりつかまつた船が必ず一番先に考えられなければならないのではなかろうか、つかまらなかつた船につきましては、今申し上げた通り、転換漁業のための改造に必要なる資金融通する、こういうようなことによつて、両々相まつて措置をして行きたい、こういうことでありまして、特に差をつけたという意味に私どもは考えていないような次第であります。
  76. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 時間がありませんから簡単に結論を申し上げておきたいのでありますけれども、この問題も大きな問題であります。あなたが説明していない点は、大きな会社が持つておるやつは転換をする場合には五分五厘の恩恵を受けて、しかも箇々の小さな連中がやつておるものは恩恵を受けない、七千万円で十ぱ一からげでやられてはおかしいじやないかというのであります。その点について、もう一度はつきりお答えいただいて、あとこまかいことは、小委員会なり今後の委員会で十分御審議願うことにして、私は質問をやめておきます。
  77. 清井正

    清井政府委員 ただいまの遠藤委員お話でありますが、この法律拿捕された当該漁船所有者拿捕された代船を建造したり、あるいは取得したような場合、あるいはほかに船を持つておる場合、あるいはほかに船を買つて、それを転換するときに、この法律が適用されるということは御承知通りであります。ですから問題は、大きい船、小さい船ということでなしに、拿捕された船、拿捕されない船というところで差をつけました。この法律は、いろいろ問題があるのでありますけれども拿捕された船についてのみ措置をするということで差がついておりまして、大きい船、小さい船ということで差がついているのではないのであります。
  78. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 大きい船、小さい船という意味じやないのであります。ある大きな会社があつて、二十隻の船を持つておる。その船が李承晩ラインに行つてつた。そして二隻がつかまつた。十八隻はつかまらずに帰つて来ておるけれども、この転換には、この資金が出て行く仕組みに書いてある。しかしこれはそういう大きいやつだけを見て、今度は小さな漁港で大勢集まつて一隻つくる、こういうような連中は、その恩恵に浴さないのじやないかということを言つているのです。
  79. 清井正

    清井政府委員 ちよつと御質問趣旨を誤解しておりましたが、これはこういう意味でございます、なるほどこれを見ますと、「当該漁船所有者たる漁業者当該漁船の代船を建造し、若しくは取得し、又はその所有に係る他の漁船を漁場若しくは漁業の転換の目的で改造する」こう書いてあります。そこで、かりにただいまの先生のお話を考えてみますと、ある会社がありまして、その会社の船が一つ拿捕された。ところがほかに拿捕されない船が何十隻かある。それが幾らでも改造できるじやないかというふうに伺いましたが、もしもそうであるとするならば、私はその点についてこう考えておるのであります。これは、この法律に書いてある通り、「当該漁船所有者たる漁業者当該漁船の代船を建造し、若しくは取得し、又はその所有に係る」云々と書いてありまして、ある会社のAならAという船がつかまつた。その船の代船を建造するという場合、その代船を建造しないで、たまたまほかに船があるから、それを改造したいというときは、それは認めしよう。一対一でございます。
  80. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 その点はわかりました。なおこの問題については時間がないから、この辺でやめておきますけれども、転換融資の問題は、すでに問題が解決しておるような話でありますけれども、そうじやないのです。転換ができないで、ばたばたしておるような連中がまだまだおる。その事実をはつきり突きとめて、そしてこの問題を十分審議していかなければならぬ、来るべき委員会なり小委員会なりで論議をしたいと思いますから、この程度で質問を打切ります。
  81. 田口長治郎

    田口委員長 この際本案の取扱いについてお諮りいたします。開会前の御懇談の際に、あらかじめお打合せをいたしました通り本案につきましては、審査の慎重を期するため、漁業制度に関する小委呉会の審査に付することといたしたいと存じますが、これに御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  82. 田口長治郎

    田口委員長 御異議なしと認めます。よつてそのように決しました。
  83. 田口長治郎

    田口委員長 次に小委員の異動についてお諮りいたします。水産貿易に関する小委員白浜仁吉君と水産金融に関する小委員志賀健次郎君より、それぞれ所属小委員を交代いたしたいとの申出がありますが、このように決定するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  84. 田口長治郎

    田口委員長 御異議なしと認めます。よつてそのように決定いたします。
  85. 田口長治郎

    田口委員長 次に小委員会における参考人招致の件についてお諮りいたします。水産貿易に関する小委員災より、同小委員会において起草中の輸出水産業の振興に関する法律案について、関係業者の意見を聴取するため、日本冷凍食品輸出組合専務理事安達義治君、日本缶詰協会専務理事岡武夫君、日本かつお・まぐろ漁業協同組合連合会会長横山登志丸君、東京まぐろ缶詰協同組合専務理事馬場孟夫君、以上四名を参考人として選定し、次回の小委員会において意見を聞くことにいたしたい旨の申出がありますが、小委員長の申出の通りとりはからうに御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  86. 田口長治郎

    田口委員長 御異議なしと認めます。よつて、そのように決定いたします。  本日はこの程度にとどめまして、次回の開会日時は公報をもつて御通知いたします。これにて散会いたします。    午後一時十五分散会