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1953-12-14 第19回国会 衆議院 水産委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年十二月十四日(月曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 田口長治郎君    理事 小高 熹郎君 理事 川村善八郎君    理事 鈴木 善幸君 理事 中村庸一郎君    理事 辻  文雄君       遠藤 三郎君    中村  清君       夏堀源三郎君    濱田 幸雄君       松田 鐵藏君    吉武 惠市君       椎熊 三郎君    白浜 仁吉君       赤路 友藏君    淡谷 悠藏君       今澄  勇君    田中幾三郎君       中村 英男君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君  委員外出席者         水産庁長官   清井  正君         参  考  人         (漁業者)   荒川 仙吉君         参  考  人         (漁業者)   木村 友一君         参  考  人         (漁業者)   中村  實君         参  考  人         (漁業者)   宮内 岸助君         専  門  員 徳久 三種君     ――――――――――――― 十二月十四日  委員日野吉夫君辞任につき、その補欠として今  澄勇君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  公海における漁船被害に関する件     ―――――――――――――
  2. 田口長治郎

    田口委員長 これより会議を開きます。  前会に引続き、公海漁業に関する件について調査を進めます。この際吉武委員より発言を求められております。これを許します。吉武恵市君。
  3. 吉武恵市

    吉武委員 私は本日この水産委員会を開いていただきまして、大蔵大臣に御質問を申し上げたいのでございますが、政府は今回起りました李承晩ラインによつて拿捕された漁民抑留状況及び拿捕された船舶に対して、まだあまり実際を御認識になつていないと私は思うのでございます。そこで私は御質問を申し上げる前に、実際に李承晩ラインに出かけて拿捕され、韓国刑務所で二箇月あの虐待を受けて帰り、現在船を拿捕されてこの暮れが越せないでほんとうに困つておる者を参考人として当委員会に招致し、その実情を聴取する必要があると思うのであります。ついてはその参考人として山口県萩市の漁業者宮内岸助木村友一中村富荒川仙吉の四君を指名せられこの四名の方からまず実際の生の意見大蔵大臣に聞いていただきたいと思いますので、ここに動議として提出いたします。
  4. 田口長治郎

    田口委員長 吉武君の動議に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 田口長治郎

    田口委員長 御異議なしと認めます。よつて動議の通り決定いたしました。  それではただいまより公海における漁船被害に関する問題について参考人各位よりその実情を承ることにいたします。まず宮内岸参考人より発言をお願いします。
  6. 宮内岸助

    宮内参考人 私たちが萩の港を出て李ライン行つて位置を見るということは全然聞きもせぬし、また李ラインそのものもよう知らぬのであります。季ラインではあまり商売したのではありません。それだのに向う李ラインの二マイルに入るといつてつかまえた。私たち向うの軍艦がつかまえて、別に李ラインでも何でもないから――その李ラインそのものすら、政府が行つちやいかぬと言えば何も行きはしません。私どもの萩の船は五十トンもある大きな船じやありませんから、台風が来ればよう行けぬから、李ラインより二、三十マイル離れたところで私ども商売しておつたのであります。そこで操業中に韓国の軍隊が来ましたけれども自分たち李ラインヘは別に入つておらぬと思つて安心して、逃げ隠れもせぬで商売しておつたのであります。船もとられ、懲役にされる、そういう考えもない。それなら逃げ隠れもいたしますけれども……。それで木村さんと光栄丸船長と一緒に乗つたのであります。そうして乗つたらどうなるのですか、明日帰れる、明日帰れるというので、別に懲役に行くとは全然思わなかつたのであります。向うもそう言うのであります。そのときの艦長がこう言われました。五一五の艦長であります。君たちは気の毒だ、日韓会談が――日韓会談もよう知りません。日韓会談が始まるから日本政府朝鮮資産を要求する。朝鮮資産はどうなんでありますか、何もわからないものですから問うたのでございます。気の毒だがお前らを人質にとるというのです。こう言つて連れて行つた。結局日韓会談が始まる前の日であります。これは自分はよう知りません。むろん乗組員も知りません。そうしてつかまえられて行つてから、油はあるか、油はある。佐世保にいつの日か帰れるだろうと思つてつた。とつた魚だけはしようがないから、腐つてもいいから日本に帰られるだろうからと思つたら、十日ばかりたつてから、佐世保に帰るのじやなくて、木浦刑務所行つたのであります。刑務所行つて――ちよつと調べがあるからといつて着の身着のまま上つた上つて刑務所扉口行つてからわかつた。初めは刑務所とはわからなかつたが、見張りがあるから、これは刑務所じやわいと思つたのであります。実際こちらは、懲役からもどつてから考えるんですが、われわれは自分の船で、平和な海で商売を一生懸命やつて魚をとつておるのに、なぜ韓国につかまえられるのか、在外資産を要求するから――検事論告でもそうであります。十一月二日に検事論告がありましたが、君らは気の毒だが、しかしお前たち山田長政ちようど同じた。山田長政はシャムを侵略し、これを征服した。昭和の初期において日本は満洲を侵略した。お前は吉田首相の命令を受けてこの韓国を侵略せんとして入つたから、ここにいるお前も懲役にしてやるというのです。刑務所から出て来てから、どうも腰が立たないから一週間ばかり寝ておりましたが、きのうおとといの新聞を見たところが、政府はどないしてくれるのか、船をつくるのか、大きな銀行で借りられるならいいが、大蔵省も金がかかりましようが、私たち日掛・月掛・頼母子をとつてつたのであります。けれどもじいさんは三十年前に海で死んだ、じいさんの代から私はずつとこの商売をやつて会社とかなんとか言わずに、あつちの姉に十万円、こつちの兄に五万円を借りてから、日掛でとり、頼母子をとり、信用金庫で組合信用で借りたのです。それで船をつくつたのです。実際に拿捕権も何やら知らない。拿捕権というのも懲役で聞いたのです。それが何やら何も知らぬのであります。保険すらまだあつたのですが、よう入りません。船が四年か五年くらいたつたら入ろうと思います。それまでは利のつく金をこつちからもあつちからもよけい借りておるので、実際そういう保険があつても、それを知つてつても入れないのであります。実際それだけ余裕の金があつたら……。実際十八トンや十九トンの船では、日本から何百マイルの沖にはよう出られません。その程度で沖へ出たのであります。それでも自分のからだより船が大事だから何も言いません。木浦上つたとき、自分の船とわかれるときには、私は子供にもわかれて来ましたが、それよりも実際泣いて刑務所に入つたのであります。ほかの会社船長はばんとしたりつぱなセビロを着ておつたが、自分たちナツパ一枚しかないのです。ナツパ一枚で……、今でも船の夢を見るのでございます。船を返してください。私は何も政府にはよう言いませんが、でき得るなら少々船はいたんでおつてもかまいませんから、返してもらいたい。そうすれば私はこういうところへは何も来やしません。おとといの新聞を見て組合から、お前さん代船どころじやない、何ももらえない、こう言われたり、近所の人にも聞いたわけであります。新聞を見て、東京へ行く道はわからないが、ひとつ行つてみようじやないかというて、おとといの夜立つたのであります。実際に船しかない、あとには何もないのであります。百万円で買つたのも、百万円は信用があつて買つたのではない、頼母子でこさえ、日掛をとり、一軒々々から借りてこしらえたのであります。どういうわけでもとしてくれぬのでありますか。私はもどらぬならしようがありません、政府で――実際に何も悪いことをしたわけでないのに船とられて、監獄にぶち込まれて……。私らはほんとうにきのうおとつい来た、やれ日掛をとり、実際はずかしい話だが頼母子もとつたのであります。私は頼母子あととると二万円からあるからそれをとろう、それじや日にちが来ぬから日掛をとろうというので、女房が日かせぎに行つておりまして百八十円もらつている、それで米の二升くらい買える、子どもたちはときに養つて行ける、日掛をとつたら千円のものが七、八百円でとれました。三百円はしかたがないが、かけてから六千円かなんぼか、六千円の日掛が落ちてから来たような次第であります。私たちほんとうに船を返してもらつたらいいので、こういう東京のような西も東もわからないようなこんなところへは来ないのであります。それで四百万円は船にかかりますけれども、四百万円ももどしてくださいということは、ほんとうのこと何も言いませんが、その値打がある、自分考えじや時価じや二百五十万円あるかなしかで、それは二百万円のものもありましよう。船さえもどつてくれたら……。実際に御無理なお願いですけれども、何も不平を言うことはない。まして乗組員はまだ働き行つておる者で、百二十人ぐらいおりますけれども、十四、五人の働き口はありましたが、あと三、四十名ばかりは今刑務所であれほど悪い、人間が食うものでないものを食つたから、働けないで足がふらふらしておる者が、ずつと――ここにもおるが、注射をしてやつと来たんですが、おれは東京で死んでもいいから、どの人に頼むかそれも知りませんが、どこの省に頼んで行つたらいいかわからぬが来たわけであります。だから何ぼ実際につくつたらどうとか言われても、私たちの船は違うのであります。このくらいのものでありますが、萩のものは福岡や下関や何かと違つて自分の船に土足では入らない、御飯粒一粒落しても自分の船では拾う、七年、八年たつた船でも拾います。そのくらいで、トロール船などみなくつで入つたりする、私たちはげたやくつでは入らないで大事にする。私ども刑務所に先ほど行きましたが、あと乗組員はどこへ行つたやらわからない、とにかくあたりまえのところじやない。どこへ行きましたか。船からこちらへ帰るのでも、韓国の船で帰るときに一ぺん自分の船を見たい、別れたいと思つてデツキに出たが、なまじ見ると未練が残るから見まいと、ハッチの中で二人は泣きました。自分子供に別れたよりもつらいくらいのものであります。政府は何をやろうと知らぬが、あまりにも政府同情がないと思います。
  7. 吉武恵市

    吉武委員 時間がございませんし、参考人も相当おられますから、ひとつ次々にお聞きを願いたいと思います。
  8. 田口長治郎

    田口委員長 要点だけお願いします。
  9. 宮内岸助

    宮内参考人 船さえもどつた自分らは何とも思いません。病気にかかつた思つてあきらめます。
  10. 田口長治郎

    田口委員長 ほかにたくさんおられますから、それでは次に木村さん。
  11. 木村友一

    木村参考人 私は大蔵大臣にお願いいたします。  今宮内岸助さんが大体のお話をいたしましたが、私どもは実際において船は生命より貴重なものであります。これはだれも同じであると思います。先般新聞でも見ましたが、農林大臣あたり風水害の対象のようなことも考えておられましたが、私はそれとは違うのじやないかという考えを持つております。風水害に児舞われた方は、一年の収穫は全部失われるかもしれませんが、土地が残つております。われわれは土地自体が船なんです。これを失つた今日、その日の生活もできないのが事実なんです。これをいかに切り抜けるかということも考えておりますが、これは私政府に責任がないとは絶対に言いません。なぜならば、われわれが拿捕されたのは、その日一日に一挙にあれだけの船が拿捕されたのではありません。次から次へと私ども済州島に拿捕されて行きましたときには、済州島には一週間も十日も前の船がおりました。その後に私は拿捕されて行つたのでございますが、この間にあつて政府は何ら平和ラインの近くへ行つて操業してはいかぬ、こういうふうに日本漁船拿捕されているから、当分の間あの付近に行つちやいかぬという――ほんとう日本政府はわれわれ漁民日本の国民の一員と思われるんだつたら、この注意を与えてほしかつたんです。それともなくして、われれわは長年の漁場を求めて、前々から秋の出漁準備にとりかかり、あの長い夏の期間を遊んで、そしてこれに操業するには相当多額の仕込みをしました。この仕込みも、あつた金で仕込みをしたのではございません。あらゆる方面から借り受けて仕込みをして、そのまま船をいきなりあちらの方に置いて帰つた。私どもは決して自分の船を、政府が金を貸してつくつてくださいというんじやありません。何とかして一日も早くわれわれの船を返していただいたらそれでけつこうです。これが返らぬときまつたらわれわれは飢え死にします。それともう一つは、乗組員そのものが実際困窮のどん底に陥つておる。行くところがない。これから先、よしんば船をつくるにしても、船は簡単にできるもんじやありませんから、今から注文をする。船ができるまで半年もかかる。この間どうしますか。食わずにおられません。それで私ども政府に向つて言いたいのは、金を借りるとかどうとかいつても、金は利子がつきます。船は返されぬのだから、船をつくるんだつたら、無利子で金を貸してやろうというおぼしめしがありましても、私は無利子でも実際いやなんです。政府が無利子でお貸しになつたところで、これの裏づけになる保険に必ず入れということになる。保険でも相当の利子になりやしないか。これは加算いたしますと、大方一割くらいの利子になります。これは保険をつけられることはさまつたものと思います。そうしますと、まだ前の船の償還ができないうちに、高利の未払いのものが相当あり、それに重ねてこれの借受けをしましたならば、とうてい払うことはできません。それでそんなできないことをやるというようなことは、私どもしようもございませんから、船をこの際政府が何とかして年内に返していただきたい。私ども日本の国の法律にそむいた覚えはありません。国の法律にそむかねば、国はわれわれのためにどうしても船を補償しなければなりません。返していただきたい、これだけを私は切に要望しておきたいのであります。
  12. 田口長治郎

  13. 中村實

    中村参考人 お願いします。さつき言葉と同じ言葉でありますけれども、どうか私たちの全財産であります船を返してください。向うの裁判にありましたように、君たちは気の毒だけれども、国家の犠牲であるというので、涙をのんでわかれて来ました。この船を即時に返すようにお願いいたします。でないと、私たち船員も、その船員留守家族もあすにも困つている状態であります。東京に来るのにも、皆お金を出し合つてくれてからようやく来ましたのであります。政府の責任確かに私はあると信じます。どうか返してください。できなかつたら全部補償してください。お願いいたします。終ります。
  14. 田口長治郎

  15. 荒川仙吉

    荒川参考人 私たちは、この年の暮れの迫るのに、船をとられて船員一同あすの日をどうして過したらいいか、毎日思案に暮れております。こうして東京に出て来たのも、みんなで旅費を出し合つて、どうか行つてわれわれの思うことをよく頼んで来てくれというようなことで来たわけでありますから、どうかその留守におるみんなの気持もおくみになつて、一日も早く船をお返しくださると同時に、われわれの安心のできるようにひとつお願いしたいのであります。
  16. 田口長治郎

    田口委員長 参考人に対し質疑があればこれを許します。
  17. 吉武恵市

    吉武委員 参考人に承りますが、あなた方の今の実情は、簡単な発言ではあるけれどもどもは想像がつく。この暮れに非常に困つているという点を、だれでもいいですから困つた実情お話しください。
  18. 宮内岸助

    宮内参考人 私たちは旧でございますけれども、新の七月の下句から私はびた銭一銭ももうけをやつておらぬのであります。自分の方は全部分けでありまして、漁に行つたら漁に出ております人間もその家族も食べれぬということはないが、船がなくて収入がありませんので、今日掛の取合いであります。今度来るときでも千円のやつが七百円でも落ちぬのです。一万円なら七千円で、あとは捨てるわけであります。李ラインがあぶないというので、私のところにほかに四、五十隻そういう船がおりますが、李ライン近所商売するその船が、李ラインは九月の初めから出漁ができぬから、十万円のところが五万円しかもうからぬのです。そして高い日掛組合や何かに払うのです。そして乗組員家族も食わしてやらぬから頼母子をとろうとします。乗組員も食われぬからとろうとする。乗組員が食われぬ、船主が食われぬで私たちは取合うのです。それでせり合つて、私はこの月一ぱい頼母子は何ぼに札を書いても落ちないと思います。だから船主乗組員もその家族たちも困る。乗組員は三十から二十七、八、結婚して二、三年、古いものでも五、六年しかたつていない。乳飲子を抱いておる女房はよう働かぬ。市の救済事業の日役へ行くといつても、乗組みは年が若くて子供乳飲子だから、女房がよう働かぬのです。ほかの広島の者が日掛で入るし、所同士が半分以上とられたからいよいよ共食いで、この月一ぱいだろうと思います。頼母子でも一万円が七千円でも落ちやしません。
  19. 田口長治郎

    田口委員長 これにて参考人に関する議事は終了いたしました。参考人各位には長時間にわたり御苦労でございました。これにてお引取り願います。  ただいまより大蔵大臣に対する質疑に入ります。これを訂します。吉武惠市君。
  20. 吉武恵市

    吉武委員 ただいま実際に拿捕され、韓国刑務所に二月もつながれて、麦飯に大根の菜つぱを塩で煮たわずかなものをわけ合つて食つて帰つた参考人言葉をお聞き取りになつたと思います。われわれは参考人からほんとう実情をもつと聞きたい。しかし政府諸公に御質問しようとすると、農林大臣もわずか一時間、大蔵大臣もきようは一時間しかとれないと言われる。貴重なわずかの時間でありまするから、ただわれわれが端折つて言つたのではあなた方はお聞きにならない。そこで実際に体験をし、実際にこの暮に困つておるこの参考人から生の意見を聞いていただいたのです。わずかな時間ですから尽きません。しかし大臣にお目にかかる機会がわずかしかないからやむを得ない。そこで私は大蔵大臣に承りたい。この拿捕された漁民たちについて、先だつてあなたに会つて聞くと、水害は日本の国内で起つた問題だが、今度の拿捕は魚をとりに出かけて行つたのだから、つかまつたのしようがないというお話である。今の参考人が言うように、この対馬水域はよその漁場ではありませんぞ。日本人祖先代々二百数十年にわたり、ろをこいで、ときには難船して祖先は命を失つておる。その貴車な対馬水域に、わずか二十トン足らずの船に乗り組んで漁をしておる。そうしなければ食つて行けないのが今日の沿岸漁民実情です。これに対して、今お話にもあつたように、李承晩李ラインを引いたつて、どこからどこまで引かれているのやら漁民は知らない。彼らの実際の話を聞いてみると、李ラインまで接近していないと言つておる。しかし専門の地図を持つて行つているのではないからわからないかもしれません。これはよその漁場ではありません。日本人祖先代々開拓した漁場であり、ここで日本人は毎年二千隻の船で漁をし、百三十億の収益を上げて、それが日本食糧資源になつておりますよ。米麦が日本人食糧源であると同時に、この魚も日本人の貴重な食糧資源である。それを命を的にして小さい船に乗つて毎年出かけて行つておる。もしほんとうに危険であるならば政府はなぜ注意しないか。もちろんわれわれは李承晩ラインを認めることはできません。政府もまたこれを認めないと言う。それはいいけれども、それならこの漁民たちに対してなぜ保護の手が延べられない。保安庁があつて、この保安庁日本人生命財産保護のためにあるのではありませんか。海上に対する警備は何のために置いてある。何も知らないあの漁民たちが漁をしておるのに、政府一つ保護の手も差延べない。そうしてつかまつて韓国の牢屋にぶち込まれ、二月の後栄養失調でやつと帰つて来ておる。まだ六十五名残つておりますよ。それに対してわれわれがほんとうに困つておるから何とか金を貸してやれと言つてもお聞きにならない。今の連中の言つた言葉があなたはわかるでしよう先生たちは船を返してくれと言つておる。これは政府が帰すべき努力をすべきです。彼らが悪いことをしてとられたのならしかたがないでしようが、日本祖先代々開拓した漁場で正当に漁をして、それを不法にとられ、もし政府の力でできないというのなら、それぞれ自分で取返すのですか。それはなかなか簡単にはできないでありましよう。しかしそれならばそれにかわつた船を彼らは政府の力でつくつてくれと言つておる。われわれはそれをただでつくれとは言わない。政府が今日お貸しになつておる一番安い利子でいいから貸してくれと言つても、あなたはお聞きにならない。今お話の中にありましたように、かりに政府が三分五厘で金を貸してくれても保険に入るためには六分五厘の保険がつく。そうするとそれだけでも一割になりますよ。今までつくつた船は、金持が自分の金でつくつた船ではない。さつきのように、祖先代借金借金を重ねて、高い利子でつくつて来ておるのです。借金も返さなければならない。ところが今政府公庫の金を七分五厘で貸してやると言われるが、七分五厘でかりにこれを借りたとしても、保険料の六分五厘を払えば一割四分、それに古い借金を払えば三割以上になりますよ。それでも政府はこれらの気の毒な漁民に対して、ただ一粒の同情の涙もないのですか。私はこれに対する大蔵大臣の御意見を承りたいのであります。
  21. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 今拿捕されました漁民方々お話を聞きまして、心から御同情申し上げるのであります。ただ吉武委員お話の中には、二つの重大な点が違つております。このことをはつきり申し上げておきます。私は船をつくる金を貸さぬということをいまだかつてつたことはありません。お貸しすると言つておる。これをどういう間違いから言われたのか知りませんが、お貸しすると言つておる、貸さぬと言つたことはない。それからもう一つは、こちらから出て行つたからしようがない、そんなことを私は言つたことはありません。そういうことを言つた人があるということを話しただけのことであつて、私はさように考えていない。この点も違つておる。しかしお互い議員同士の間ですから、そんなことはどうでもよろしいが、私が考えておることをここで率直に申し上げてみたいと思います。私は、船が拿捕されて漁民各位が非常に苦しまれ、また船も返されないということは、これらの方々にとつての非常な不幸であるのみならず、日本にとつても非常な不幸であると思います。従いまして船はできるだけ返してもらわなければならぬと思うが、これは吉武さんもよく御承知のように、大蔵大臣がなし得る範囲ではないので、その問題で大蔵大臣をお責めになるよりも、これは外務大臣をここへ呼んでやつてください。日韓交渉の事柄を大蔵大臣が出しやばつてやるということはできません。しかし私どももできれば早く返してもらいたいと思うが、しかし返さない場合もあるであろう。また返さない場合にしからばどうするか、これは何といつて代船を建造しなければならない。従つて私は代船建造の金は、農林漁業金融公庫を通してお出しいたしますと言つておる。出さぬと言つておるわけではない。お出しいたしますと言つておる。最初から御答弁にそういうことを申し上げております。但し農林漁業金融公庫は、普通市場の金利と違つて七分五厘という非常に安いもので、これは吉武さんも知つておられるが、そこらの銀行へおいでになつて、たとえば興業銀行でもあるいは勧業銀行でも、長期信用金庫でも、今日長期の金を借りるものはみんな一割一分以上、一割二分です。それを農林漁業金融公庫であるから七分五厘のをお出ししておる。しかしこういう特殊の事情もあるから一分ぐらいおまけして――おまけするというのは行政的措置をとつて六分五厘ぐらいでお出ししてもいいということを言つておる。このことははつきりお聞きとりのはずです。われわれとしてはなすべき最善をしようとしておる。それに対してあなた方の方でどういうことをおつしやつておるかというと、これに対して、政府は保証しろということをおつしやつておる。農林漁業金融公庫が金を出すのであるから政府が保証する必要はない。これは金を出すのですから、何も保証はいらないと私ども思つております。それが一つ、それからもう一つの点は、三分五厘にしろこういうふうにおつしやつておる。なるほど今おつしやるようなことでわかりますが、今日本の国の財政はどういう事情におかれておるか。私どもはそういう補助金を出し得ない事情にあるということをはつきり申し上げておる。特に今日以後、そういうことはもうなし得ません。二十九年度予算では補助金も大幅に打切らなければなりません。今あなた方も全部の方が口をそろえて、日本はそういう補助金を整理をしろ、補助金を整頓しろということを口をそろえて言つておる。そういうときに新たに補助金を出すことはできません。そういうわけで、今の日本をインフレに持つて行つてはならぬので、すべての諸君が、反対党の諸君でも――反対党といつては語弊があるかもしれませんが、もつと財政規模を縮小しろ、もつと金を出すなということを一様に言つておる。補助金などを整理して打切れ、こういうことを言つておられる。これが全部の輿論です。財政規模はもつと縮小しろということを言つておる。(「保安庁費をやめてしまえばいい」と呼ぶ者あり)但し今言われておる社会党の諸君は、保安庁費をやめてしまえ、全部削れといえばこれは別です。ここに改進党の方がおられるが、改進党の方も全部予算規模を縮小しろ、もつと小さくしろ、こういう御意見なんです。全部がそういう御意見である。しかし御意見はどうでもよい。御意見もそうであるが、今の日本はそういうものをやるべき日本ではない。やり得べき余力がないのです。従いまして私は自分が責任者としてなすべき最善を尽します。なすべき最善を尽すが、政府としてやり得ないことまでやれとおつしやつても、私としてはやれませんということを申し上げておるのです。言いかえますれば、代船建造について、必要な資金は農林漁業金融公庫で出させましよう。しかしこれに対しては利息を六分五厘まで、行政措置でできるだけのことをいたしましよう。おそらく今日本で、 これらの方々がおつしやつておる一万円の金を借りるのに、七千円で頼うと言うておる。そういう事情のときに、むろん不十分に相違ない。しかしこれは国家の責任であるから、国家がやれ、これはまだ別な人が考えてくれなければならぬ。大蔵省としては財政的の切り盛りをするだけですから、財政措置としてなし得べき最善を尽す。これで私は大蔵省としては皆さん方に対する自分のなすべき最善を尽しておるので、今日大蔵省が自分の財政資金を出して、その中から六分五厘の金を出す。これは私はなし得べき最善だと思う。補助金を計上しろ、私はこれはできません。また今後の日本の財政はそういうことを許しません。これは二十九年度予算をごらんくださればわかるが、相当大幅に、皆さんがたえず御希望になつておるごとくに大幅に削減します。そうやつて初めて日本をインフレに持つて行かぬように救つて行くのだから、この点はどうぞあしからず御承認願いたい。
  22. 吉武恵市

    吉武委員 大蔵大臣の今のお言葉の中に、貸さぬとは言わぬ、貸してはやる、貸してはやるが六分五厘の普通の利子でなければ貸せないとおつしやる。
  23. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 普通ではございません。七分五厘が普通です。
  24. 吉武恵市

    吉武委員 七分五厘が普通でもよろしい。ところがあなたは、私どもが言つたのではお聞きにならないから、参考人の実際の生の意見を申し上げた。今までこれらの沿岸漁民は、小さい船をつくるのに高い金利で借金をしてつくつておる。その元をとられておるのですよ。いいですか。この借金のある上に、食つて行くのにやはり船をつくつて漁をしなければ食えないから、新しい船をつくるのに金を借してくれというのです。あなた方だつたら六分五厘なら安いかもしれません。しかし沿岸の漁民借金まみれになつて元をとられて、新しい船で生活もし借金も返すのに、六分五厘で借りて、さらに保険料六分五厘をとられて、旧債の高い利子をどうして払えますか。あなたは銀行家だろう。払う道を教えてください。そこで漁民は早く船を返してくれ、船を返してもらえばいいということを言つているのです。これはもちろん大蔵大臣の権限じやありません。外務大臣がやるのだろう。しかしこれは何大臣、何大臣の問題じやない。国民から見ればだれがやつてくれてもいいのです。政府の責任において取返してくれと言つておる。しかしこれは言うべくして簡単には行きません。相手の国がある。もしこれができなければ、政府の力で船をつくつてくれと言つておるのですよ。政府が全額金を出してつくるということは容易なことじやない。日本の財政が苦しいから、政府の今まで貸しておる一番安い利子でいいから貸してくれ、返すからと言つておるのです。現に水害でも冷害でも、三分五厘で出しているじやないですか。あなたは補助金をやめるとおつしやるが、水に流されたあの田畑の復旧に、今日農民が、一文も政府が金を出さずにどうして復旧ができます。来年度からあなたはそれができますか。流された田畑を復旧するために、政府は九割まで補助を出しているでしよう。これを今度の船は、九割まで政府が金を出してくれといつているのではない。金は返すから、三分五厘で金を貸してくれというのです。水害や冷害で出しておられるじやないですか。また片方では、大きな船会社の外航船に三分五厘で政府の金を出しているじやないですか。それに今度の李承晩のこの問題は、政府にも責任がありますよ。先ほどのように、もし悪ければ政府がなぜ注意をしない。日本の開拓したこの漁場を守るべく、命を捨てて出かけている。牢屋にまでぶち込まれて苦しんで帰つておる者に、ほかへ三分五厘の金を出して、どうしてこの拿捕された、漁民に三分五厘の金が貸せないのです。もう一度この点お答えを願いたい。
  25. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 大蔵省としては、私は財務当局として最善を尽しておるわけで、これ以上力が及びません。
  26. 田口長治郎

    田口委員長 松田鐵藏君。
  27. 松田鐵藏

    ○松田(鐵)委員 私は大蔵大臣に対しては、常に尊敬を持つておるものであります。しかも私がかつて野党の当時非常に友情を厚くしてくれて、常に笑いをもつて話をされておつたのであります。その人格に対しては、非常に尊敬をして来ておるものであります。この問題につきましても、大蔵大臣は水産というものに対して非常に認識を持つておられる大臣であつて、私どもは非常に意を強うしておつた。しかもまた常に党との連絡も十分されておられるので、この法案が論議されるときにおいても、万全の御努力を払つてくださるものだと私は信じておつたのであります。ところがこの法律そのものが、議員提出の形になつて出るという委員会においてのお話でありました。私はそれに対して反対をしたものであります。要はただいま漁民各位がいろいろと論議されて、いな実情お話になつておることから聞いていつても、議員提出でこうした法案が出る場合は、本年には間に合わないであろうというのが私の一番の杞憂でつた。よつてこれはどうしても政府提出として出さなければ、本年には間に合わないのじやなかろうかというのが私の考え方であつたのであります。よつてわれわれ委員会は、政調会を通して、しかして総務会を通して大蔵当局と折衝するにあたつて、意外にも大蔵当局はこれに否決という態度を示した。よつて今国会にこの法律を提出することができ得なくなつた。ここに私は一番の問題があると思うのであります。要は、ただいま大蔵大臣お話になつたごとく、二十九年度の日本の財政の面から見てとうてい不可能であろうという御議論でありましたが、二十九年よりも三十年はもつともつとひどい年になるのじやないかという財界の見通しでもあり、また大蔵大臣の苦労というものもそこにあることだろうと思うので、二十九年は曲りなりにも予算が成立するだけの案ができても、一体三十年はどうするかということで、非常に高遠なお考え方からすべてのことをなされておる大蔵大臣の苦労というものはよく察せられる。またその立場からいつてのただいまの大蔵大臣の御議論であることは了承いたします。しかし私どもは、今日自由党によつて内閣ができておる、その自由党内閣において、総務会、政調会を通つた法律を、大蔵当局において誠意があるならば、ただいま議論になつておる金利の問題は打開の道はあると思う。たとい三分五厘でなくとも、五分五厘であろうと四分であろうと方法はあることだろうと思う。公庫から出すということであるから、公庫の最低の金利は五分五厘と思つておる、しからばそこにまた打開の道があろうが、われわれは、公庫の金よりも中金の金を使つて、この政策として出すことが一番簡単でなかろうかという考え方から議論を進めて行つたものであります。そうしてその議論を進めておるのに、ただ金利の補助というものに対する難点があるということからいつて、政調会、総務会を通したこの法案に対して、大蔵省はほんとうの誠意を示さなかつたところに一番の問題があり、今日、かつてはわが党の大臣をされた吉武君においてこの議論が出ておるわけであります。これは大蔵大臣として、あなたのお考えでもつとここに力を入れてもらわなければならないところである。今や今国会は休会になつた。そこで休会になつたならば、休会になつたこの年末に、どういう方法でもつて融資をするかということをあなたもお考えにならなければならない。政調会、総務会を通つたこの法案に対して、大蔵当局は、もつともつと真剣になつていただかなかつたならば、党と政府との間に大きなみぞができ、これによつて今後の政情というものがスムーズになつて行かないのではないかということも考えなければならないと思う。財政よりももつともつと高度に、政党と政府という関係をよく調整して行かなかつたならば、今後の日本の政治というものはやつて行けないだろうと私は考える。よつて私は、大蔵大臣願わくは、休会明けの国会にはこの法律を通せるように御努力を願いたいと同時に、それまでの間はこの法律が通るものとしての融資の――一時は高い金利でもいい、あとからまたこれを切りかえて行つてもいい。よつて法律は通るものという政策の樹立のもとに、ひとつ万全の御考慮を払つてもらわなかつたならば、いつまでこんな議論をして行つたところで話は始まるものではない。血の出るような漁民の叫びをよく認識され、将来の日本の政治、政党と政府というもののこの関係をよく御認識にならなければ、とんでもないことができ上るのじやないか。また私は鳩山自由党に帰つてわんわん騒がなければならないような事態が出て来る。であるから、こういうときは、大蔵大臣まあひとつよくお考えになつて、そうして、政調会、総務会を通つたものであつたならば、何とか通るように、あなたの言つておる金利のことは、いろいろな条項はあとからまた調整するとして、そういうように持つて行つていただくことを私は希望するが、御意見はどうであるか。
  28. 椎熊三郎

    椎熊委員 ちよつと関連して質問をします。関連ですから一緒に答えていただきたい。  大蔵大臣に念のために聞いておきますが、この議員提出の法案に盛られている二十憾の融資そのものについては御反対がないことと了解してよろしゆうございますか。
  29. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 まず最初に松田さんにお答えしておきますが、吉武さんは実は今あまり政府の話のことばかりされているものだから、ぼくもお話を聞いているうちにだんだん切り口上になつたことは申訳ないが、もう少し打明け話をした方がいいと思います。実は、私が聞いておるところでは、政調会の方の会長にも聞いたが、そういうことは承知しておらぬと言い、幹事長にも聞いたが、やはりそういうことは承知しておらぬということでありまして、ちよつと話が違つておるのであります。従いまして、今松田さんが言われたように、政調会も通つた、総務会も通つたというようには聞いておらないのでありまして、大蔵省がいいと言つたものだから大蔵省がよければという話をした向きのことはあつたのだけれども、大蔵省にはまだそれまでの相談はなかつたので、この点については何か行き違いがあるのではないかと、これははつきり申し上げておきます。従いまして、この問題についてはなお十分考えたいと思つております。  それから今の椎熊さんのお話でありますが、こちらの方でも金額は一応査定してみないとわかりません。わかりませんが、代船建造に要する金は、これは農林漁業金融公庫を通してぜひお出ししたいと考えております。  それからまた、この利息について今ちよつと話が出ているのですが、五分五厘という一番安い例があるという話も聞いているので……。(「いや、三分五厘だ」と呼ぶ者あり)それは、補助するのは別ですよ。補助によらざるもの、いわゆる行政措置によるものですね、そうでしよう松田さん。
  30. 松田鐵藏

    ○松田(鐵)委員 そうです。
  31. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 その五分五厘を三分五厘にすることについては研究してみましよう。この点については、私が申し上げているのは、七分五厘が普通だが、これを六分五厘にしましようということを申し上げている。というのは、船をつくる方は皆さんよくおわかりだろうと思うが、どこでも一割一分です。特殊銀行からでも、あるいは長期信用銀行からでも、お借りになつているのはみなそうです。三割、四割で市中では貸しているけれども、そうでなく、長期信用銀行は特殊的な立場の銀行だが、それからでもあるいは開発銀行からでも、借りているのはみな一割一分です。補助しているものは別ですよ。そういうふうになつているので、私は六分五厘というのは相当利息としては勉強していると思うのです。私の言葉で言うと、大蔵省はでき得るだけ最善を尽している、こういうことを申し上げているわけです。しかし、さらに五分五厘という例があるからそれについて考えろというお話なら、これは考えてみてけつこうです。但し、利息補給ですね、利子補給、この補給の問題は、今も言われておるのですが、これはもう少し日本の財政をお察し願いたい。これは椎熊さんの党でも、そういうことをあまりやらないで、強引に緊縮をやるということを言われているくらいでありまして、実は今度のこの二十九年度予算には、相当大幅に補助金その他を整理するほかないということは、これはどなたがお考えになつてもわかる。そういう際にまた三分五厘の補給金を新たに一つつくるというここと、なかなか容易ならぬ問題で、俗な言葉で言えば踏み切りがつきません。従つて私は今のところはお断り申し上げるほかないのであります。しかし今お話も出ておる資金関係のことは、これはどうしても業者に立ち上つてもらうことは必要だから、融資の方法はとりたい。しかし金額のことは実はまだ調べておりませんが、必要な金は出したい、かように考えております。
  32. 椎熊三郎

    椎熊委員 私は元来議員提出の法律案が政府の財政措置に影響ある問題は、憲法の規定はどうあろうとも、国会運営の上からは慎むべきことだという持論を持つております。そういうことはしてはならぬ。各国の国会法等の規定を見ますと、ほとんどそれは禁止の条項になつておる。そうでないと、立法府と行政府の区別が画然と行かない。そこでもし財政措置を必要とする議員立法をなさんとするならば、それは政府当局、行政府との間に徹底的の了解を遂げた上でなければ、少くとも日本の現状においてはいけないという考え方を持つておるのです。そこで融資の問題についてあなた御了解になるかと特に聞いたのは、その点でございます。しかるところただいまの大臣の御説明によれば、大体融資には御同意のようである。ただ建造費の査定の問題について、それは実際に当つてみなければわからぬという状態は無理もないことだと思いますが、大体においてこのくらいなことを政府はしなければならぬという御覚悟のようでございまするから、そうだとすれば、われわれは議員立法をするのに何をか躊躇せんや、堂々議員立法をしてもいいんだと思う。利子の問題についてはただいま大臣のおつしやる通りだと思うが、これは多少李ラインの問題については、ただ単に一方的に李承晩政府を責めるというだけではなしに、事ここに至りました経過については、政府においても相当の責任のある問題だと私は思います。そこでこれは一般の救済事業利子補給の観念とは違つて、国際的に大きな影響を及ぼすこの問題について、政府の一部の責任においても、これのよつて来る被害というものは当然救済してやらなければならぬという道義上の責任も私はあり得ると思う。そういう点につきましては、今回のこの融資の問題は御同意願つたあとは単なる利子の問題だとするならば・そこは政党出身の小笠原大臣としての政治力の発揮のしどころだと私は思うのであります。そういう点では十分お考え願いまして、自由党の党内事情と政府との関係は私は知りません。知りませんけれども、自由党の諸君からは私に連絡があります。それは各機関は内容において賛成しておるのです。ただ三役とか称する党内の人々は、政府の行政上の措置をおもんぱかつて、これは軽々に賛成することは、政府を窮地に陥れるのではなかろうかという深い思いやりから来て、しばらく待つたということだつたそうでございます。従つて本日明らかになつた点は、あなた自身は、融資は厳格なる査定はするが、やつてしかるべきだという御意見があるとするならば、これ以上自由党の三役なる者も反対はしないだろうと思います。こういう事情が明らかになつた以上は、私は遠慮せずに、議員立法でこの法律委員会は通過させます。本会議のことはまたそれ以上別途の方途において考えなければならぬのです。そういう意味で本日大蔵大臣が明らかに御意思を発表になつたことは、当問題の解決のために私は非常にありがたいことであつたと思います。感謝いたします。次いでこの利子補給の問題につきましては、先ほど申し上げた李ラインに関する日本側の被害の問題は、ひとり朝鮮側のみにあるとは思われない節もあつて政府においては十分なる責任を感知していただかなければ解決がつかぬ問題だということを、念のために申し上げておく次第であります。
  33. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 今の椎熊さんのお話はよくわかりますが、私の申し上げる意味は建造に要する融資です。これについては行政措置でもとれますので、特別なる立法はいらないんじやないかと思います。しかしあとの問題についての私の意見を徴されると、これは今のように、来年度、二十九年度予算編成等の上から見まして、それをまた従来の補助金整理等の観点から見まして、ただいまのところ御同意をいたしかねるということをどうぞ御了承願います。
  34. 吉武恵市

    吉武委員 私はまだ大蔵大臣は御認識がないと思う。いいですか。公庫から金を出させる代船融資というのは、あなたの腹の中でわずか三億か四億ですよ。そんなことでできるものじやありません。それから船だけつくつたつてどうして漁に出られます。船道具がなければ漁はできません。船だけはつくつてやる、金は貸してやる、あとは知らぬぞ。そんななまやさしい問題じやない。わずかじやないですか。かりに二十億の融資をしたにしたつて政府が差額を利子補給をしたつて、一年の予算は幾らです。わずか一億五十万円しかならない。わずか一億五千万円の利子補給が今日の財政でどうしてできないのです。公庫から金を六分五厘にしてやるからそれでいいじやないか。これじや私は済まないと思う。拿捕された漁民は、返してくれ、ただでつくつてくれというのが本音なんです。しかしそういうことは今の日本の財政ではむずかしいから、現在まで政府貸している一番安い利子でいいから貸してやれと言つている。現に風水害やあるいは冷害、あるいは外航船融資に三分五厘で何十億という金を出しているじやないですか。一年にわずか一億五千万円の利子の補給がどうしてできない。椎熊さんが言われるように、政府ほんとう同情の涙があれば、これくらいのことを御同意になるのは何でもない。政府がやりにくければ、われわれが議員立法で出す。政府はそれくらいのことを御了承なさい。もしあなた方がそれでいいということになれば、この年末に山口県あたりでは、すでに県が政府で出すという腹がきまれば五割保証して立てかえてやろうと言つている。それまでに来ているんですよ。もう一度御返事を願いたい。
  35. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 建造資金に必要なものは融資する、私はそういうことは申し上げております。なお六分五厘の点も申し上げる通りでありますが、あなたは今――これは古武さんにも似合わぬことで、わずか一億五千万ばかりじやないかと言われますが、そういう累積が今日の予算をつくつているのでありまして、一億五千万ばかりじやないのです。それが今日の大きな補助金のもととなつて財政難に陥つているのであります。従いまして私どもは、国としてはやることはやる、できることは尽す。しかしやはりできるだけのことはそちらでもやつてもらわなければならぬ。なお山口県が五割の保証をするということは聞いておりましたが、この点についてはちようど会議員の人が来られまして、県としてもかような措置をとります、こういう話を聞いて、たいへんけつこうなことだと思つておりますが、それではあなた方五割保証すれば金は借りられますか。五割の保証じや金は借りられません。これが実情じやございませんか。これは古武さんの方がよく御存じだろうと思うのです。そこで私どもは建造資金は融資しようというのです。何もかも政府がやれとおつしやつても、政府がやることにもおのずから限度があります。
  36. 赤路友藏

    赤路委員 どうも今までの話を聞いておりますと、大臣は非常に利子補給にこだわつているようですが、先ほど吉武委員から言われますように、これは他のものと比較してそう大きな金額に上らない。もちろん二十九年度の予算規模の面から、大臣としておつしやることは無理はないと私たち考えます。しかしながらこの前御承知の通り外航船舶の利子補給をやつておられますが、あの場合私たちは反対だつた。あれはどういうお考えでやられたか。あれは調べてみると、二十六年度のこれらの融資を受ける会社の利益は相当上つておりますよ。その前に炭住の利子補給をやつておりますが、これら両方とも遡及してやつている。炭住の利子補給は二十三億に上つている。しかも当時炭住の利子の補給を受ける会社はそれぞれ利益を上げている。そういつたケースとは違つている。今お話になつたようにほんとうに困り抜いているんだから、ここは一つ大臣の、椎熊さんが言うように、政治性を持つて、そういつもかも無定見に、どれもこれも一律に財政が困難であるのだからといつてさんちやくを引締めるだけが大臣としての職務ではなかろうと私は思う。少くとも今度の場合においては、特に困つておるこういうような零細な人たちに対しては、何らかの措置をとつてもらわなければいけない。私は大臣が最初から何とかしようとおつしやることはわかる。十月三十日須磨彌吉郎氏の質問に対して、大臣ははつきり答弁されておる。これにも私は不服がある。十月の三十日ですよ。今日はすでに十二月の十四日だ。その間何も出ていないのですよ。しかも今吉武さんが言つたように、もう末端ではどうにもならぬから、山口県あたりでは県が五割の保証をすると言つておる。こういうような現実に追い込まれておることをひとつ十分御承知願いたい。そうして木で鼻をくくつたような御答弁ではわれわれは納得できないのですよ。あんな答弁では私は困ると思う。もう少し大臣は温情のある、現実の面に即した形で、ひとつ何とかここのところははつきりした態度を、大臣ほんとうの心構えをおつしやつていただきたいと思います。
  37. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 まあ別に切り口上ではないのですけれども、どうも自然あらたまつていけませんが、私ども政府としては、できるだけなし得ることは最善を尽したいと思つております。このことはかわりありません。ただ今ちようど仰せになりましたけれども、実はあの災害対策等についての分、あれはあの当時議員立法でおきめになつて九割になつてしまつたということは御承知の通りであります。すでに御立法にたつた以上、それに従つて予算化しておる、こういうわけであります。それから今おあげになりました二つの例で申しますと、たとえば船舶補給金の力は、ここに椎熊さんもおられますが、いわゆる三党協定で政府の原案よりも、元五分であつたのを三分五厘に下げて来られていろいろお話があつて、しかもそのときのお話では、よそがくつをはかしておるときに日本のように高げたをはかしておつたのではいかぬ。よそも三分五厘しかないのだから、そこのところを金利だけはよそと平等にしてやれというお話で、なるほど調べてみたらどこにも三分五厘以上のものはなかつたので、これに御同意をいたした、こういうわけ合いであります。その他も、炭住の問題、これは御承知かもしれませんが、ずつと古い問題です。あの当時占領行政で、少しむちやくちやに向うの方の命令でつくらして、当時これは炭鉱業者の責任でないということが明らかになつた問題であつたので、それで確実に金を払わすということに主眼を置いてあの処置がとられたことも御承知かと思います。これはあえて弁解とかなんとかいうのではございません。私は成行きを申し上げておるので、私もできるだけのことはいたしたいと思います。いたしたいとは思いますが、今日の財政状況では、これも率直に言うと、少し心を鬼にしなければやれなくなつて来ております。まことに相済みませんけれども政府としてはできるだけのことはいたします。この点でひと御了承を願うよりほかないと思います。
  38. 赤路友藏

    赤路委員 大臣は今の御答弁の中で、災害対策関係はこれは議員立法でおやりになつたから当然政府の方で承知しなければならなかつたのだ、こうおつしやつたですね。そうすると、先ほど椎熊委員から申し上げましたように、議員立法でやれば政府は当然おやりになりますね。やらざるを得ないでしよう。いいですか。
  39. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 それは議員立法でちやんとおきめになつてこれは三分五厘の利息だとなつておれば、行政府としての政府はその立法された法律には従わなくてはなりません。もしあなたの言うように、それに従いませんと言つたら、君はこの法治国から出て行け、こういうことになります。
  40. 田口長治郎

    田口委員長 白浜仁吉君。
  41. 白浜仁吉

    ○白浜委員 私はいろいろ大臣の御答弁を今まで承つてつたのでございますが、ここでもう一つ大臣のお考え方を聞いておきたいと思いますのは、今利子補給の問題にからみまして、大臣が財政当局としてのお考え方を一応述べられましたことにつきましては、いろいろ議論があるにしましても納得される点もあるのでございますが、私が申し上げたいのは、政府李承晩ラインを認めてないという声明を幾度かにわたつて出しておるのでございますが、これを守つておる。ということは政府は全然これについて保護の手を延べていない。しかも漁民に対しましては、行つてはならぬということは一度も言つていない。そうしますと韓国は、かつて総督府の船籍にありましたところの七万数千トンの漁船自分のところに返せ、その見返りに質にとつておくのだということでこの漁船拿捕をやつておるのでございますが、国家の負担を漁民の犠牲においてなそうとするという考え方は私はどうしても納得できないのでございます。しかも漁民自分らの手で、非常に苦しい中から危険を冒して日本食糧増産にも寄与しておりますし、また財政経済面にも重大なる寄与をいたしておるのでございます。私どもは一家の家庭から見ましても、道楽むすこがどうこうした、かりにそのために非常に借金で苦しんでおるのを、たまたまおやじが余裕があるのに、あるいは苦しい中から見捨てておくということはあり得るにしましても、今まで働いておりましたところの関係漁民は、税金の面なりあるいはその他の面で国家に忠誠を尽しておるところの非常に善良な国民であるのでございます。こういうふうな点もあわせて考えていただきたい。私どもはこういう際に政府が何ら財政措置もとつてくれないというようなことになりますと、どうして私ども関係漁民は、これから先安んじて私どもの生業につくことができるかどうか、こういうふうな点もあらためて考えていただきたいと思うのでございます。現在日本はいろいろな問題で、自衛の問題につきましてもいろいろな面で制約を受けまして、私ども保護をされておらないのでございます。しかしながら少くとも関係漁民は、自分らの力で国家の保護なしに守らなければならないどいうことになりますと、何のために祝金を納め、あるいはその他国に対する義務を果しておつたかということが言えるのではないかと、私は考えるのでございまして、この点につきまして大蔵大臣は、ただ財政当局の責任者として考えるばかりでなく、吉田内閣の重要なる閣僚として、当然日本の将来のためにもまた私どもが常に主張しておりますところの公海自由と申しますか、日本がどうしても海に伸びなければならないという点から考えてみましても、国家はいろいろな犠牲を払つてでもこういうふうに漁民保護して行くのだという強い意思表示をこの際示すことが、国際的にも日本の権威を高め、また権利を保つて行く上において必要ではないかと考えるのでございます。なるほど一億五千万円あるいはまた二億円の利子補給ということは、先ほどから大臣が申されました点から見まして重大な問題であるかもしれませんけれども、私は先ほどから申し上げました理由によりまして、この際大臣考え方をもう一度あらためてお聞きしておきたい。またぜひとも大臣は、吉田内閣の重要な閣僚としての地位から見ましても、この際考えを改めていただきたいという要望と兼ねて、考え方をもう一度お尋ねしておきたいと思うのでございます。
  42. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 ただいま仰せになつた点、いろいろごもつともな点もございますが、ただいまのところ私は政府として最善を尽しておると考えておりますので、なお今後ともひとつ十分考えさせていただきます。
  43. 中村英男

    中村(英)委員 ちよつと関連して……。私大蔵大臣の答弁は全然腹入りしないのですが、政府は最善を尽しておる、こういう御説明ですが、もちろん大臣はさいふを握つておられるのですから、ひもを締められることはわかるし、二十九年度予算に関連してインフレを起さぬような予算構成の上からお考えになる点はわかるが、私ども考えは根本が違うのです。これは椎熊氏も言われたように、この問題は単に李承晩だけの問題でなくして、政府が責任を負わなければならぬ面が大分あると思う。そこで先ほど参考人の方が言われたように、まつたく漁師そのものは何も知らずに出ているのです。しかも拿捕された船は、ある意味では補償の意味で李承晩がとつているような節もあるのです。そういうような点から見ても、これは水害と比較して申されましたが、水害以上に国が補償しなければならぬ面がある。水害の場合は少くとも農民が生活できないし、またそういう措置をしないと増産できない。これは単に議員立法であるだけでなく、そういう措置ができないから高率の利子補給をし、あるいは補助を出す、そういうことが与野党とも意見が一致したのです。この場合はそれ以上です。天災でなくして、政府の責任において全部国が金を出して新しい船をつくつて差上げなければならぬような責任があると思います。そういう点から行くと、私は単に六分五厘が安いとか、五分五厘がどうこうでなくして、従来三分五厘の水産の利子補給あるいは冷告、水害における特殊立法もあるのです。三分五厘という利子さえも、私どもは遠慮し、気がねをしながら言つておるようなわけであるが、これはむしろ無利子政府が建造しても当然であるので、そういう義務もあると思う。だから私は、大蔵大臣が大蔵省は最善を尽しているというが、そういうことは、この問題に対する認識のほどが足りないと思つておりますが、いかがですか。
  44. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 御承知のようにこの問題に対しての、ちよつと言葉が悪いかもしれませんが、責任がどうこうという問題になると、一体農林省の方でどういうふうなことをしておつたかという問題になつて来ますので、これは私がちよつと御答弁いたしかねる問題であります。従いまして、私どもはただ財政的措置としてどういうことをやり得るかということだけを考えておる次第でございます。それで大蔵省としては、現在のところ農林漁業金融公庫に金を出し、その利息を安くするということが、最善を尽しておることであると申しておるのでありますが、もし農林省の方で、これは自分たちの非常に重大な責任であつたということであれば、これは内閣一体としても考えなければならぬと思います。
  45. 今澄勇

    今澄委員 私は大蔵大臣にこの機会にお伺いをしておきたいのは、大蔵大臣の立場もよくわかります。わかりますが、来年度の予算編成の概括の見通しが、ほぼ骨絡だけは、大蔵大臣としての見通しがあると思いますが、その中でいわゆる船舶建造の利子補給と、今まで行われている利子補給について、それじや全部これを切り落すというお考えであるのかどうか。  それから第二点は、この三分五厘は、私どもとしては三分五厘なんというばかなことは、ほんとうはないと思う。だからこの前の予算委員会では、われわれ野党としては季承晩ラインに関する船舶利子補給資金として、二億円を予算の中に計上して――私どもは、少くとも本予算では間に合わぬからというので、第二次補正予算で計上したけれども、これは多数の反対にあつてわれわれは無念の涙をのんだのです。そういつた経緯にかんがみても、私は一億五千万くらいな利子補給が、来年度一兆一千億程度と思われる予算の規模から見て、一体その何パーセントになるのかということを考えてみると、私は大蔵大臣の立場はよくわかるけれども、お考え一つではやれるのではないかと思う。だから私は、大蔵省として三分五厘が非常につらければ、一体それなら四分なり五分なりならばおやりになるのかどうか、それらの点もあわせて私は聞いておきたいと思います。  なお、この李承晩ラインに関する船舶の問題については、最終的には韓国日本が損害賠償の請求をするということが、独立国の建前としてはほんとうにこれがあたりまえの話なんだから、私は外務大臣にもお伺いしたいと思いますが、この際政府は特別予備金その他の方から出しておいて、あと韓国に損害賠償請求をして、それが入れば政府の財政を埋める。それが入らなければ、国家としてこの金をどうするかということを閣議でお諮り願うというような、国民が納得の行く線で大蔵大臣が努力をせられるということが、私どもはこの際当然のことではないかと、かように思うのです。以上の点について、大蔵大臣の御見解を聞いておきたいと思います。
  46. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 今の御質問の最初の方の、船舶の三分五厘の補給、あれは御承知のように法律できまつておりまして、法律ですから法律を改めるということにしなければならぬのでありまして、この点についてはまだ相談いたしておりません。従つて来年度予算を御審議願う節に申し上げたいと思つておりますが、できるだけ私どもは、この前の骨格予算のときにも申し上げたように、できるだけ補助金のようなものは整理したい。こういう強い考えを持つております。  それからこの利息についてのお話でございますが、もしこの利息について、ちようど松田さんでしたか古武さんでしたかにお答えしましたが、五分五厘という例もあるのですから、もう少しこの点についても考えぬかということになれば、これはひとつどもの方で、どういう処理をとり得るか考えてみます。実は七分五厘というものは、市中の金利から三分五厘の利子を引いたものです。こういう金はどこでも一割一分というのが普通で、三分五厘の補給があつたものと見ていいのです。それで七分五厘ということになつているのですが、それはこういう特殊なものですから、さつきも、六分五厘にする所存でありますと申し上げたのですが、さらに五分五厘という例もあるので、それについては考えぬかということになれば、これはよくひとつ相談をしてみたいと思つております。それはひとつ皆様の御期待にも沿い得るように考えてみたい、かように考えております。
  47. 今澄勇

    今澄委員 ただ大蔵大臣に申し上げておきますが、大蔵大臣が五分くらいなら相談して考えられぬこともないと思う、三分五厘ならどうもやりにくいという点は、私今御答弁を聞いておりますと、どうも大蔵省として矛盾の点があると思う。私声を荒げて大蔵大臣に追究してみたところでしかたがないのですが、理論的に言いますと、来年度予算の規模の中で、今言つた船舶の方は法律ができているのだから、私が見るところでは三分五厘で予定通り出ると思うのです。これは大蔵大臣はどう言われても既定事実なんです。そうすると日本の大船船会社の造船関係の方は、そういつたような利子補給をして、しかも漁船関係で零細漁民の近海漁業の皆様方の船の分は、断固としてどうも三分五厘ではということになると、解決の道としてはこれはもう議員立法でわれわれが法律を出して、それに大蔵大臣を従わせる以外に道がない。先ほど椎熊委員からも言われましたように、そういう議員立法によつて政府に強制るということは、この際日本の現状から考えて適当でないと思うので、私ども話合いで行きたいというので、この水産委員会が超党派的にそれらの問題を考えて、今私ども野党各派は打合せをした結果、改進党、左右両社会党並びに無所属を含めて、この法案の立法化について、ここで満場一致話合いがきまつて、自由党の皆さんにはこれから政調会で御相談を願いますが、おそらくは野党各派が満場一致できまつているものを、自由党の政調会が反対をされるということはないと思う。だからそうなつて来ると、この水産委員会で議員立法が成立するのです。自由党の皆さんがたとい御反対になつても成立するのですから、自由党の皆さんも賛成間違いなしと思う。そうすれば、法律によつて大蔵省がおやりになるという立場に入られるよりも、この水産委員会に対して大蔵大臣からいま少し誠意ある答弁をされて、そうして韓国との交渉その他はむろん外務省でしようけれども、内閣においていろいろ話合されて、将来のその穴埋めとしては、損害賠償の道もあるし、来るべき日韓会談の中に繰入れて、いろいろと要素としても述べられるのである。この法律は少くともわれわれから言えば不満です。おそらくは現地の漁民の皆さんもたいへんに不満であろうと思うのです。ほんとうはこんなばかなことはない。だけれども日本の財政の現状等を思い、与党たるべき自由党並びに政府の立場をも思うて、私どもが百歩譲つて、まずまずこの線で漁民の皆さんにごしんぼうをしていただきたいという、これは非常に大きく渡つた立場に立つておるのであります。大蔵大臣としては、今の日韓交渉に対する大蔵省の見解の御表明はなかつたのですが、日韓交渉に対する大蔵省の考え方、さらに議員立法が水産委員会で成立したならば、私どもは具体的に金融機関その他と連絡をとつて、見返りに年内に緊密措置をとりたいと思いますが、そういうことに対する大蔵大臣としての御見解を承りたい。  なおもう一つ、来年度予算について、あなたはしきりとインフレ抑圧、補助金切捨てを言われておりますが、来年度予算で大体一兆七百億に政府が押えて、さらにその中から減税等をやつて一兆二、三百億程度あるいは一兆程度で予算をとどめるとしても、私はいろいろの項目をながめておりますと、整理して節約のでき得る項目は非常に多いと思う。あなたの言われる米の自由販売その他ずつと自由党内閣並びに小笠原財政のあり方を見てみると・ここに五分五厘と三分五厘の差のきは言いよいよわずかになつ来て五、六千万円になりますが、それだけの財源が国家全体のインフレに大影響を及ぼすなどというような大蔵大臣の御答弁は、私は少くとも常識を持つ者として考え得られない。この際大蔵大臣・そこはひとつ情をもつて何とか処理されるということにお考え願えないものかどうか。もし大蔵大臣の方で、大蔵省としては絶対にやれないということであれば、大臣の立場はおありでしようけれども、私ども野党各派としては、立法府としての立場から、議員立法によつて法律であなたに御強制申し上げるよりしかたがないと思つております。
  48. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 私どもは議員各位の、御立法を阻止する権限は持つておりませんので、これはやむを得ませんけれども、ただ現在のような日本の情勢下において、やはり補助金が出てふえて行くというような予算措置を伴う立法については、最初椎熊さんからも話があつたが、皆さんがやつていただかないことを心から希望する。しかしおとめする権限は何も持つておりません。やはりこういう事柄については、なるべくやめていただくことを心から熱望いたします。  それからよくあなたは三分五厘と、かりに五分五厘にしますか、六分五厘にしたつてわずかじやないかと言われるが、すべて数字というものはわずかの上の累積になることであつて、そのわずかということが一番恐しいのです。これをわずかでないか、わずかでないかといつて一いつもわずかくが一ずつと大きくなつて一兆七百億という予算になつてしまうのです。従つてわずかでもやはり忍んでいただける分は忍んでいただこう、こういうのが私どもの心からの念願であります。従つてどもは、今いろいろ仰せになりましたが、ひとつこの際は、いろいろな御事情もあろうけれども政府の方でも必要な資金を出す、建設資金は出すことにする。これに対して一番安い利息のところで、いわばやり得る安いところで行くということにかりに相談が――私は今六分五厘ということを申し上げておるが五分五厘、政府がそこまで言うなら、ひとつ苦衷を了としてやろうかというようなところでやつていただくことをお願いをいたします。  日韓会談等につきましては、実は閣議としてまだ何も相談がございません。大蔵省としての問題は、向うとのいわゆる財産関係に起つて来る問題があるだけでございまして、たとえば日本向うに持つておる財産、面うがこちらに持つておる財産についてどうするかということだけが大蔵省の関係でございます。従いまして国務大臣として言えというなら、国務大臣として実 は閣議で相談を受けてないから申せません。大蔵大臣としてなら、この問題は談判に入つておりませんので、これもちよつと申し上げるわけに行きません。
  49. 田口長治郎

    田口委員長 鈴木善幸君。
  50. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 拿捕漁船代船難造資金、並びにあの漁場で操業ができませんために他の漁場へ転換いたしますそのことに伴います転換資金、この融資の問題につきましては、ただいままで大蔵大臣委員各位との間に意見の食い違いがあるようでございますが、これはこれ以上大蔵大臣お話を申し上げましても、ただちにここではつきりした御答弁が得られない、委員会世に同調するというはつきりした御言明ができないことと思いますので、私は他の二点の問題につきまして、大蔵大臣にお伺いしたいと思うのであります。  それはかねがね大蔵大臣に私ども自由党の代表者としましてお目にかかつて、お願いを申し上げておつた件でございますが、一つは年末の緊急融資の問題でございます。これはお話をすでに申し上げておりまするように、九月に対馬漁場で操業いたします場合に、各漁船漁船の修理を行い、あるいは米・みそを借り受け、燃油を仕入れまして、いわゆる仕込みを受けて出漁をした、そしてその漁獲物でもつてそれを決済するというのが漁業の慣習でございます。その最初の出漁漁船拿捕されまして その後全然収入の道がない。そのためにこれらの仕込み資金は全部膠着いたしておるわけでございます。従いまして関係漁業者の経済も逼迫をいたしておりますし、なお造船所あるいは油屋あるいは米、みそ屋、そういうような関連いたします産業や商売人が、全部行詰まつておるような状態であります。下関あるいは福岡の地区あるいは長崎地区等におきましては、ほとんどモラトリアムのような状態になりまして、手形の不渡りが頻発しておる、こういうような非常に急迫した事態にございますわけでありまして、この歳末を控えまして、これが他にも大きく影響して行く。そこでこれに対して緊急融資をお願いしたいということを、かねがね大臣にお願いをし、大臣もそれは何とかしなければいかぬだろう、そういうような好意ある御答弁でございましたが、これらに対しまして、いかような措置を大蔵省として具体的にお進めいただいておりますか、この点をお伺いをいたしたいと思うのであります。  それから第二の点は、抑留船員の帰つてつた者-現在六十数名の考がまだ帰つて参りませんが、帰つて参りました驚に対して、当時生活援護の立場から抑留船員の援護資金、救済資金としまして大蔵省で御提案になり、閣議で決定をして、一月七千円、三箇月分だけを支給なさつております。また差入れ費の一万円も出していただいておりますが、当初大体六箇月を予定して閣議決定をしておるはずであります。ところがその帰つて参りましたところの漁業者は、先ほどの参考人お話にもございましたように、栄養失調でからだも弱つておる。その上に船から離れたところの漁業者は何ら収入の道がない。生活にも困つておる。自分らのわずかの財産を処分をし、あるいは無尽、頼母子等から非常に不利な条件で金を引出して、辛うじて生活をしておるという気の毒な状態にあるわけであります。一方大きな会社等の漁船におきましては、船員保険に加入をしておりますから、半失業の状態にございますこれらの船員は、船員保険の方からもあるいはその措置によりまして保険の給付が得られるのでございますけれども、そういう三十トン未満の小さい船は船員保険にも加入していない、帰つては来たけれども何ら収入の道がない。からだも非常に弱つておる。生活に極度に困窮しておるという事情でございますが、そこで当局におかれましても、六箇月分を予定をして閣議で御決定をなさつて、約七、八百万円の金が今残つているはずであります。大蔵大臣の御措置でいつでも出せるようにすでに決定を見ている、これをこの歳末を控え、非常に困窮をいたしておりますところの零細な漁業者に対して、あとの三月分を支給なさる御意思がございますかどうか。以上二点だけお伺いしたいと思うのであります。
  51. 小笠原三九郎

    小笠原国務大臣 鈴木さんにお答え申し上げます。例の下関その他において、中小企業の方が油代とか食糧代とかそういうものを立てかえておいて、漁船拿捕になつたために金融に苦しんでおる。これについては金額をまだ具体的に聞いておりませんが、これは措置することに大蔵省の方針は決定しております。これはいわば指定預金を預ける、こういうことで済むのでありますから、さような措置をいたしたいと思います。ただこの問題がいろいろこじれておつたものでありますから、まだ手続として遅れておりますが、これはさように措置いたします。  あとの問題ですが、実は抑留中の分についてはお払いを申し上げたのでありますが、こちらに帰られてからの分はどうするかということについては、実は農林省の方からまだ大蔵省の方へ正式に打合せがないのです。そこでこれは政府部内のことではありますが、一ぺんよく連絡をとりまして、どういうふうに措置すべきか、原局の方から案が出て来ませんと、私どもの方でも措置の方法が妥当を欠いてもいけませんから、これはひとつよく相談いたしました上で措置いたしたいと考えております。
  52. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 第一の問題につきましては、金額もわずかでございます。約四億七千万円、五億足らずの金でございまして、これは大臣もぜひめんどうをみてやろうという御意思でございますから、緊急にひとつ緊急融資の面は御配慮願いたいと思います。  それから第二の点につきまして、若干大臣に事情を申し上げておきたいと思うのであります。それはこの乗組員の給与保険法でございますが、これは拿捕中だけ保険の給付があるという制度になつてございますので、給与保険に準じますると、保険給付は帰つて来れば停止になるのだから、保険米加入の者もそれに準じて処置すべきだという御議論もあるかと思うのであります。そこでトロール船あるいは大型の手繰船等におきましては、この給与保険のほかに失業保険の方に加入をいたしております。これらのものは船から上つておりますれば給付がございます。私どもは、せつかく六箇月の給付をするというお考えで閣議決定をして予算措置を講じていただいたということでございますから、船員保険法に準じましてこれらの零細な漁業者を救済していただきたい、こういうことでございますから、何分よろしくこの点をお願いいたしたいと思います。
  53. 田口長治郎

    田口委員長 辻文雄君。
  54. 辻文雄

    ○辻(文)委員 先ほど大臣は、李ラインの問題についてはまだ何も自分たちではわからぬ、むろんこれは外務省の問題もあるようでありますけれども、あなたの今の御答弁を伺つております間に、いろいろのことを考えてみますと、大蔵省自体も非常に直接な関係があるわけなんです。これは私が申し上げるまでもない。この解決がつかぬからこんなことになつた。これは十五国会の当初にも常に私が言つておる通り、すでにこれはクラーク・ラインやマ・ラインがああいうことになつたときに起つたことであります。それから先に三回やつておいて、漁業協定について親身になつてつておる者がなかつた。それできようあなたがおつしやるようなら、お忙しいですから、そういうものには目を通されないと言えばそれつきりの話でありますが、読売新聞に「李ライン固守」ということがここにはつきり出ております。これにいろいろ書いてありますが、これを読上げると長くなりますからよします。そういう意味から申し上げますと、アメリカに頼んでみても、アメリカ自体がどういう考えであるかということもわかります。ジャーナリズムがこういうことを書いたのに対して、それは推察だろうといつても、やはり新聞社というものは、それぞれに大きな金を投じてでも各世界の情勢にタッチするようにしてあるはずであります。そうすると私は、かようなことをやはり一応大きな参考資料にしなければならぬ。その面から考えますと、あなたが先ほどおつしやつたように、請求権と、漁業協定とをにらみ合せてどういうふうに持つて行くかというようなことも、李承晩自体も十分考えておる、ですからはつきり申し上げれば、今日それが解決つくというのに、これはつかぬから年内には再開せぬとがんばつているくらいでありますから、そうすると来年どうなるかということです。ですから並行してやつていただけばこんな問題は起らないのです。先ほど参考人がそれぞれ言われた通りに、私どもは聞いておつてほんとうに涙が出るようなお話です。ああいうことを大臣の目の前で言うのには、よほど思い切つた考えでなければ言えないと思う。私ども赤路君と委員長と私と三人、その他の各位も萩には参りました。あの三人、四人の参考人のみの声ではないのであります。こういうことを如実に現地で私どもが受けて聞いております気持、それが今日の代表者の大臣に対するあの訴え方だと私は思います。こういうときですから、せめて各委員がそれぞれ親身になつて――あるいは吉武委員のごときは、一番ひどい現地の方ですから、同じ同士としてもあれだけの強い言葉にならざるを得なかつたろうと思う。私はその土地人間じやなくても、日本国民の一人としても、また水産委員としても、また国民の代表の代議士としても、どうしても吉武委員のように言いたい。そういう立場ですから、これは言いかえればあなたに対する心からの訴えなんです。お互いにりくつはありましよう、しかし私はこういうときこそ心の政治をやつていただきたい。あなたは通産大臣の時分には、よけいなことですけれども、野党の私どもですらも現在の小笠原大蔵大臣は、温情のあるしかも勉強してていねいに御答弁くださるということで、あなたがおいでになると野党からしつかりというような声があがつてつた。今日の御答弁を聞いておると、少々はなはだ遺憾ながら、それは将来のことをあなたが懸念されてみたり、いろいろ深いお考えもあると思いますが、私がお聞きしていて何となく冷たい、いわゆる官僚はだの採算を中心にしたお答えのようにしか聞えませんでした。きようはいろいろりくつは申し上げません。差控えます。またこういうことについては外務にお伺いするようにしまして、ぜひこの際各委員が申されました通り、責任はむろん私どもは当然政府にあると思つておりまするので、そのことを考えるのみならず、かりにそれはたな上げしても、大蔵大臣日本の代議士の御一人としても、国民の御一人としてでも、幸いにあなたが日本の財政を握つておられる主管であられるから、それがどう涙をもつて心の政治をするかという観点に第一義を持たれまして、どうかこのように困つている、ない金を皆さんから出していただいて来た。その心の幾分でも慰めて、日本のために再び立ち上つてそうして資源獲得、また日本の財政に対する強力な行き所に帰つていただくようなることになるように、こんな大切な日本の危機に陥つている際でありまするそれだけに、ひとつこういうときにほんとう大蔵大臣の涙を見せていただくようにお願いして、私はこれで打切ります。
  55. 田口長治郎

    田口委員長 暫時休憩いたします。    午後零時三十一分休憩      ――――◇―――――    午後一時五十二分開議
  56. 田口長治郎

    田口委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  公海における漁船被害に関する問題について、外務大臣に対し各委員より質疑の通告があります。順次これを許します。吉武恵市君。
  57. 吉武恵市

    吉武委員 外務大臣にお尋ねするのでありますが、例の李承晩ラインにひつかかりました漁船の返還の問題であります。と同時に李承晩ラインをわれわれとしては認めるわけに行かない。この点につきましては、もう外務大臣には詳しく申し上げぬでも御了承のことだと存じます。ただ問題は、これがいつまでもほつておけない問題であるのであります。非常に急迫をしておる。というのは、漁民にいたしましては、特に沿岸の零細な漁民は実は二百数十年親代々、あの対馬沖には昔からろをこいで行つて魚をとつておる。最近ようやく二十トン未満くらいの小さな船で、危険を冒しながら実は行つておる。それがつかまつて向う刑務所に入れられ、ようやく帰ることだけは大多数の者が帰つて来たのでありますが、それは着のみ着のまま、船もとられれば船道具もとられ、全部とられてしまう。ちようどこれは農民でいいますれば、親代々農地を耕して生計を立てておつた。ところがその土地を全部とられてしまつたのと同じなんです。実は今日も午前中に大蔵大臣がお見えになりまして、現地でつかまつてつておる船員が四人ほど来まして、参考人としてそれらの意見を聞いたのですが、漁民から見れば、どうして政府はこれを取返してくれないか。それがなかなかむずかしければ、どうして政府はその船のかわりをつくつてくれないか。水害や何かで土地を流されれば、政府は九割も補助をして、その土地を復旧してくれる。漁民にとつて農民の土地と同じような漁船を、しかもわれわれが悪いことをしたわけでも何でもない。親代々昔からやつておるその漁業を続けてやつたのを、李承晩ラインの声明によつてたちまち奪われた。先生たち漁民のことですから、李承晩ラインがどんなものやら、実はあまり詳しく知りません。それから行つていたのも、朝鮮の沿岸近くまで行つているわけでも何でもない。対馬沖の昔から行つておる漁場に毎年行つておるだけです。去年まではそれが李承晩ラインがあつても漁ができた。八月まではできた。それが九月の七日から突然拿捕された。そして今日も証言をしておりましたが、連中がつかまつて向うの連中が何と言うかというと、お前たちは気の毒だ。漁民には気の毒だけれども、これは日本政府といろいろな財産請求権の問題でもめておるのだ。それが解決しないから、お前たちを人質にとるのだ。船もその質にとるのだ。お前らにはかわいそうだけれどもしようがない、こう言つておるというのです。現に言つたという。そうすると、そういう問題のためにこんな沿岸の零細漁民が、まる裸で親代々の船をとられる。しかもその船は借金をしてつくつておる。ほんとうを言いますと、この暮れにせつぱ詰まつておる。もうそのその日の生活ができぬから、頼母子もうんと高い利子を払つてつて、その日その日を送る、質に入れるものもなくなつておるという状況にまで追い詰められておるのであります一そこでわれわれも、この前からも政府に話しておりますけれども、そういつても外交交渉というものはそう簡単には行かない、少くともかわりの船を安い利子で借りる程度しかできない。三分五厘の利子だけを払つて何とかこれを再建してやつてくれぬかということを話しておるが、政府はそれさえお認めにならぬ。そこで漁民からすれば、金を借りるとか何とかややこしい問題でなくて、一日も早く取返してもらえぬかということでありますが、これに対して外務大臣にもう一度お骨折り願えないか、そのお見込みを伺いたいのであります。
  58. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今吉武君のおつしやつたような事情は十分聞いておりまして、災難にあつた漁民に対しては非常に同情をしておるわけであります。ただ政府部内にもおのずから管轄がありまして漁船に対してどういうことをしてやるかとか、漁夫の生活をどういうように考慮してやるかということは、おのずから管轄の省もありますので、その方に善処を願うよりいたし方がないわけであります。私の方といたしましては、まだ残つております六十名ばかりの漁夫のすみやかなる帰還及び今おつしやつた漁船を早くもどす、こういうことを専心やつておるわけであります。御承知のように漁民の大部分が帰つて参りましたが、これについてはいろいろのいきさつもあるだろうと思いますが、ある程度国際的な輿論といいますか、そういう方面の力も影響しまして、先方でずいぶん変な帰し方でありますが、要するに裁判をして有罪の判決を受けた者をそのまま釈放する、あまりりくつには合わぬようなことでありますが、とにかく帰してよこした。そこでただいま同じようにいろいろ方法を使いまして、残りの漁夫をすみやかに帰還させる、この方は相当早く実現できるのではないかという期待を私は持つております。漁船の方ももちろん返還の必要はありますので、強く要求もいたしておりますし、また関係の方面にもこれをよく話しております。しかしわれわれといたしましては、とにかく両方とも大切には違いありせんが、片方は人間のことでありますから、どうしてもこれをまず第一に帰還させるということをしなければならぬ、こう思いまして、その方に全力を注いでおりますが、同時に船の方にもいろいろの手を使つてつております。ただ漁夫の方は帰り得る見込みはかなりついておつて、これはもはや時日の問題ではないかと私は思つております。漁船の方はなかなか目鼻が早くつきません。そこで私ども考えておりますのは、漁船が帰るということが――これは当然将来かりに日韓交渉が始まるにしましても、その前提前条でなければならない。漁船を押えておいて話し合いをするというのはりくつに合わないわけでありますから、この点は強く言つておりますが、そうかといつて漁業ができなければならぬということもあります。全曲の船がとられたわけではなくて、船はあるけれどもまだ漁業ができないという人も多いのですから、それを考えますると、一方日韓間の話合いも進めなければならない、こう思つておりまするから、必ずしも漁船が全部帰らなければ、日韓間の話は始められないというようなかたくなな態度まではとらなくてもやむを得ぬじやないかと思つております。それで場合によつたら、従つてやむを得ませんから、日韓会談の間で漁船の返還ということを、また強く話をしてみるという手もありましようけれども、ただいまのところは、まず前提として漁夫、漁船が帰つて来る。これがまず原則であるという主張を強くいたしておりますが、万一やむを得ない場合は、漁夫が全部帰つて来るならば、漁船の方は他の方法をもつて引続き返還の要求を続ける。こういうことで一方においては朝鮮海峡における漁業をできるようにしようという考えで、ただいま進んでおります。そういうようなわけでありますので、御質問のような、漁船がいつ幾日帰つてくるかという点については、はなはだ残念でありますが、ここでいつ幾日までにというようなお答えがまだできない状況になつておりますが、私としましては今おつしやつたような漁夫一同の非常な困難もよくわかつておりますので、できるだけあらゆる努力をいたしまして、漁船の返還も一日も早くやりたい、こう思つておるようなわけであります。
  59. 吉武恵市

    吉武委員 大体大臣のお考えが、日韓会談を行う前に、漁民漁船を返してもらいたい、これを質にとつてやるなんていうことはけしからぬということで折衝されておることも了承しております。漁民がいろいろの方面から指示があつてつて来たことは、私も非常に感謝しておるのでありますが、漁船は今話したように、実はなかなかほつておけない。大きい資本家の船でありますれば、また得る道もあるのでありましようが、ほんとうの零細漁民はそれが親代々の唯一の元手であります。従つて話がつかないので非常に困つているということだけでほつておけない実情にあるのであります。そこで問題は二つあります。今お話がありましたように、捕われた船を何とかして早う取返すという問題と同時に、あそこへ出漁ができないために、船が捕われないでも非常に因つているという二つの問題があります。これは二つとも解決していただきませんと、一つだけでいいというわけのものではありません。そこで外交交渉のことでありますから、お骨折りいただいても、すぐあしたの日にこれができるというわけにも行かぬでありましよう。そこで私がお尋ねしたいことは、漁民が船をとられておるのに、それを漁民自身の責任としてほつておくことができるだろうかという問題であります。これは一外務大臣ということではなくて、政府として私はお答え願いたい。というのはあなたが外交交渉をやつておられるうちに、おおよその見当なり感じというものは出るでありましようが、この李承晩ラインでとられた船というものは、漁民向うのやつがはつきり言つていた。お前たちは気の毒だ、気の毒だけれども、実は日本との間に財産権請求の問題なんかがある、それがために質にとるのだ。そういう思想はあると私は思うのであります。御承知のように朝鮮に船籍があつたのを終戦直後に、これは日本の船ですから日本が持つて帰るのは当然のことでありますが、それについてやはり向うが要求しておる。そうしてそういう船の代償、あるいはまた日本向うに残した私有財産を要求しているという問題の交換にこれが押えられているということになると、これを漁民の責任にして置いておくというのはあまりに気の毒じやないか。   〔田口委員長退席、鈴木委員長代理着席〕 これは普通の、ただ天災や水害にあつたとかなんとかいう問題とは違う。国と国との間の問題を、漁民が責任を負い、損害を負い、そして泣いている、こういう問題であります。ですからこの点は早く取返してもらわなければなりませんが、もし取返すことがおそいということになると、この船は木船ですから、もう半年もすると虫がついて使えなくなる、それから漁具や何かおそらく盗まれていると思うのです。そうしますとそういう問題は――これはむずかしい問題ではあろうが漁民の責任にしてほつておくということは、私は政府としてなさるべきものじやないのじやないかと思いますが、その点をひとつあなたはどういうお考えを持つておりますか。
  60. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 漁夫や漁船をつかまえたということにつきまして、今おつしやつたように、向うの役人なりが、これは日韓交渉の質に置いているのだということを言つたというお話でありますが、私は今度のやり方について、先方がどういう動機でいわゆる李承晩ライン内の措置を強行したかということについては、いろいろ情報もとつており、調査もいたしております。またこの問題について非常に関係の深いアメリカの韓国における参事官等も始終こちらに来ておりまして、その話もよく聞いております。下の役人がいろいろなことを言うことはありましようけれども、私が今まで聞いたところを総合しますと、そういう日韓会談を何か有利に導くためにこういう措置をしておるのだという点は、どうも私はそうは考えられないのであります。これは正直なところ別に政府の責任をのがれるとか何とかいう意味ではなくして、事実はそうでないと思います。そうかといつて漁民が因つていることは同じことですから、別にそれで漁民が困つていないとかいるとかいうことなりはしませんが、日韓会談の何かの材料にしようという考えでやつているとは、それだけは私は思いません。おそらく向うとしては李承晩ラインというものを主張する法理的な当然の帰結として、その中に入つて来たものだけを押えて、そうして普通領海に入つて来た船に対する措置と同じような方法を講じているのじやないか。つまり乗組員に対しては裁判にもかけ処罰をする。船やその中に積んでいるものは没収する。こういう領海侵犯と同じようなことをしておるのじやないかと思われるのであります。向うの主張もやはり領海と同じように、主権をそこまで延長しようという考え方から来ておるように思うのであります。  そこで今おつしやつたようなことは、きよう初めて伺うのですが、この点についてもよくさらに情報等を確かめてみたいと思いますが、今まで私の了解したところとは多少その点が違うのであります。  それから外務省といたしましては、これはもちろん手ぬるいこととお考えになりましようし、また効果が上るか上らぬかもわからないような事情でありますが、しかし漁船のつかまえられたものに対しては、損害の請求の権利を公文をもつて留保して韓国側に申し入れてあります。かりに返還されましてもその間のロスがありますから、そういうものに対しては、韓国側にとにかく権利を留保する意味で、その都度公文を出して日本の態度を明らかにいたしております。これは外交交渉のことでありますから、今おつしやつたように時間の非常にかかる場合もありまするし、また従つて実際上もう船がほとんどなくなつたと同じような、役に立たないような状況になつておるとか、漁具がどこかへ行つてしまつたとかいうこともありましようけれども日本政府としては、漁民の当然の権利を保護するためには、やはり損害補償の権利はその都度先方に公文で申し入れて、はつきりした記録をつくつております。これは将来の交渉に一つの題目となるものと考えておりますが、それ以外にどういうふうに漁夫を保護し、またその生計を維持せしめるかということにつきましては、これは私としても関係のあるものでありますから、農林大臣その他関係の閣僚とも相談はいたしますが、主としてこれは農林省方面で具体的の問題を考えてもらう、それをわれわれはできるだけ漁民の苦痛を少くするように御援助をいたしたい、こう考えているような次第であります。
  61. 吉武恵市

    吉武委員 大体わかりましたが、この李承晩ラインにいたしましても、またこの付近で漁をいたしたことについての韓国のとつた行為につきましても、向うが不法行為であるということは、これは当然お認めになると思うのですが、その点をまず最初に明らかにしていただきたいと思います。
  62. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 われわれもその通り考えております。
  63. 吉武恵市

    吉武委員 それから、その点に関連して一言申しておきますが、先般参議院の水産委員会で、静岡県の、つかまりました船長が来て話しておりましたが、明らかに李承晩ラインに入つて漁はしていない。外にいたやつをつかまえて連れて行つた言つている。本日来ました参考人意見を聞きましても、今まで自分たちは長年行つているところであり、しかも李承晩ラインよりもまだ離れていたのに、それをただ入つて来たといつて、数時間かかつてやつと済州島かどこかに連れて行つたそうであります。その辺で漁をしておる。ですから領海の付近まで行つたというのでも何でもありません。この点はひとつ、もう少し交渉の際にもお調べになつておく必要があろうかと思いますから、念のために申しておきます。  そこでただいま外務大臣お話によりますと、不法行為だということで、われわれも当然そう思います。今までにかつて例がないことであります。そこでこれに対して、とられました船その他について、損害賠償の請求権を保留してあるということでありますが、かつて阿波丸事件というのがありました。阿波丸事件というのは、戦時中であつたあとであつたかよく知りませんが、つまりこれが沈められて、そうして損害賠償の請求の問題が起つた。そのときに政府は、その問題は別個にいたしまして、これに対して国として救済の方法をおとりになつたことがあると思いますが、その点はどうでございましようか、お聞きしたいのであります。
  64. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 初めの、李承晩ラインの中で捕えられたか、外で捕えられたか、この点についても私ども実情は十分調査しておるつもりであります、いずれの船につきましても、その捕えられた地点等は、できるだけ、わかる限りにおきまして、地図にしるしをしまして、そうして調べております、が、これは念のために申し上げるのですが、韓国側に対しては、私ども李承晩ラインの外で捕えられたからということで、特に強い抗議を申し入れるということはいたしておりません、これは李承晩ラインを認めない建前でありますから、いずれにいたしましても、沿岸でない公海において捕えられたものに対しては、同様な態度で強く先方に申しております。  それから阿波丸の関係でありますが、これは戦争の末期、昭和二十年に台湾沖でアメリカの潜水艦に沈められた、その前に阿波丸は南方における連合国側の捕虜の救恤品その他を運ぶために、連合国特にアメリカからは安全航行の保証を得まして、標識等もつけ、そうして向う行つて、帰りに台湾海峡にさしかかりましたときに、霧が非常に深かつたのと、約束の時間と多少ずれておつて、地点が多少違つているということはありましたろうけれども、アメリカの潜水艦に沈められた。それでアメリカとしては、戦争中でありましたけれどもこれに対しては謝罪をいたしました。なおこの補償は、ただいま戦争中で話がつかないが、戦争が終つたならば、そのときの政治情勢その他は考慮せず、これだけは単独に補償をいたしたい、こういう意思表示をいたしております。そこで日本側といたしましては、その当時なくなつた人々に対しましては、たしか戦時中の戦死した人と同じような取扱いをいたしまして、そのときにすでに補償を与えたと思います。それから貨物につきましては、やはりある程度それを考慮して個人の補償を多くしたろう思いますが、戦争中のことでありましたから、個人の荷物というものは比較的少かつたように思います。それで政府の持つてつた政府の必要とする品物が割合たくさん入つてつたのではなかろうか。それから阿波丸自体は、これは日本郵船会社の船なのであります、これにつきましては、当時特別の補償をする予定にしておりましたところが、戦後しばらくたちまして、昭和二十四年だと記けしておりますが、終戦後、当時に至るまで非常に経済的に困つたときに、アメリカ側の援助が参りまして、とにかく無事に切り抜けて、その当時やや将来の光明といいますか、やや安定したところに来ましたので、外務委員会で発議をいたしまして、この阿波丸の補償については、アメリカ側の終戦以来の援助を感謝する一つの方法として、この補償は日本側から放棄しようじやないかということになりまして、国会の議決を得て放棄しております。その結果残りましたのは、つまり個人については、その当時、すでにその前に一通りの補償をいたしておりましたので、残りましたのは船の問題であります。これについては、たしかその後ずつと長くたちまして、一昨年でありましたか、たしか一昨年だと記憶しておりますが、郵船会社に対して、阿波丸の代船を建造するについて、一般の融資の中に一隻を加えて、普通の融資と同じことでありますが、建造の融資をいたしたと記憶しております。
  65. 吉武恵市

    吉武委員 大体わかりましたが、外国の不法行為による船舶の損害につきましては、政府につきましてもある程度の責任を痛感されて、個人に対する、死亡者に対する見舞、あるいは財産に対するある程度の補償あるいは船につきましてもやはりお世話をなさつた。私はこの漁船につきましても同様だと思うのであります。従つて私は、これについて政府に責任がないとはいわれないのではないか、こう思うのであります。もちろん韓国の責任は追究し、あとで損害賠償の請求は、これは当然とるべきでありましようが、今すぐきよう、あすの話に行きません。従つて早く返還をしてもらいたいということが、これはもう第一の念願であります。これはひとつ外務大臣としても、この募れを待つまでもなく、極力折衝をしていただきたい。われわれも先般アメリカの大使館にも参りまして強く要望しております。人の返還についても要望をしております。これは政府だけにまかせて、政府の責任だから政府でやれなどということは言いません。これは今日日本の置かれた実情からいえば、政府も国民も、だれもかれも一緒になつて、一丸になつてやるという強い決意を持たなければ解決しない。そこで私はただ政府を責めるという意味で言つているのではない。でありますから、国民とともに、手をつないで、これを何とか解決をするという熱意だけは持つていただきたい。と同時に、それが長引けばむろんのこと、現に漁民は困つて泣いておる。でありますから、政府もその点はよくお考えになつて、これは外務大臣の所管ではありませんが、政府としては一貫した問題であります。従いまして農林大臣大蔵大臣等につきましても、他に例もあることでありますから、ひとつお骨折りを願いたいということを要望して、私の質問終ります。
  66. 鈴木善幸

    ○鈴木委員長代理 淡谷悠藏君。
  67. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 大臣にお尋ねいたします。李承晩ラインということで、立ち入る漁船拿捕されるような危険は、前からお感じになつておられたかどうか、また感じておられたならば、海上保安庁に対して、何らか外務省としての指示をがあつたかどうか、この二点お伺いしたいと思います。
  68. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 こたは韓国側が前々から言つておりまするし、従前もちよちよいそういう例もあつたのでありますから、われわれとしては、韓国側が不法な行為に出るかもしれぬという懸念は持つておりました。従いまして水産庁の監視船とか、海上保安庁の船とかに対しては、よく懇談をいたしまして、できる限りの保護を加えるように話合いをいたしておりました。
  69. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 午前中現地の参考人方々のさまざまな陳述を聞きましたけれども、最も心外に思うのは、李承晩ラインに立ち入ると危険だからというような警告が一度も発せられなかつた。何ら危険もなし、また入ることも違法でないというので入つてつた者が、突然拿捕され、あるいは抑留されているので、政府に対してたいへんに不満を持つておるのでありますが、こういうような行き違い、ただいま大臣が答弁されました十分保護を加えるようにという指示と、現地における食い違いは、一体どの辺から生じたものでありましようか。明らかにしていただきたいと思います。
  70. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは私は実はよく承知しておりませんが、政府としては李承晩ラインというものは認めておりませんから、李承晩ラインに入つたら危険であるというようなことは、言う立場にないのであります。実際上こういう船が出かけまして、できるだけ付近の漁船に対して保護を与える万全の措置を講じたい、こういうつもりでやつておるのであります。
  71. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 ただいまの御答弁は私はまことに不満足なんでございますが、これは当委員会におきましても、しばしば質問に出た問題でございまして、あるいは朝鮮の船が不当な処置に出るかもしれないが、そのときには十分監視船を動員してあやまちなきを期するということを、大臣からも、保安庁の長官からも承つております。しかも現地の漁民が、政府自体もあまり危険がないだろうなんて考えておられて、突然こういうような日にあつたことは、私はどうしても政府の怠慢だとしか思えない。そこでしからば、これからの保護というもの、これから起る事態について、海上保安庁の巡視船あるいは水産庁の監視船に対して、外務省はどのような指示をされるか。
  72. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 われわれの方は、御承知のように、外交交渉を担当しておるのであつて、国内の事態に対してとやかく干渉がましいことは言いませんけれども、外交交渉の模様を水産庁なり農林省なり、あるいはその他の方面によく連絡をいたしまして、こういう状態であるからという材料を十分提供して、関係各省の善処を求める、こういう立場で従来も来ております。今後もその方針で進むつもりでおります。
  73. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 前には農林大臣から、やはり所管外であるというような御答弁があり、あるいは大蔵大臣にしましても、所管外だと言つておる。外務大臣もやはり所管外だと言つておる。そうなりますれば、われわれはここに総理大臣の出席を求めざるを得ないような立場になるので、そういうような事務的な所管の問題ではなく、あなたが十分農林大臣なりその他の関係の官庁と連絡をとつておやりになるならば、そうしたあなたの御指示と末端における処置との食い違いは生じないと思うのでございますが、ほんとうに連絡されたのですか。あるいは今後海上保安庁の船が李ラインに入るようなことがある漁船に対しては、どのような処置をさせられるか、その点を私はお尋ねしたい。外務省としては何ら指示を与えていないかどうか、あるいは注文をつけていないかどうか、こういう点でございます。
  74. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ほんとうに連絡しているかどうかとおつしやいますが、委員会に参りまして、うそを言うわけはないのでありますから、その点は御承知願いたいと思います。  それから末端でもつてうまく行つていないとか行つておるとかいうことは、これは外務大臣の責任じやないのであります。外務大臣は農林省の船なり運輸省の船なりに対して命令を下すわけじやない。関係省の大臣なり関係省の首脳者に対して、よく事情を説明して、こういう事情であるから、その範囲内でできるだけの保護を講ずるようにお願いするわけであります。従つてそこに食い違いがありましても、外務省としてはその食い違いは、残念にはもちろん残念でありますが、水産庁の船をひつぱつて来て、こつちにいろとかあそこにいろとかいうことはできないのであります。
  75. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 そういたしますと、外務大臣の御意思にもかかわらずこういう事態が発生したことは、保安庁の責任と了解いたしますが、日韓会談その他の見通しにつきまして、現地の漁民に対し、今後引続き李ラインと入ることは危険であるとか、入つてはならないとかいう具体的な御指示があつたかどうか、もしあつたとしたならば、外交交渉のおそくなつたことによつて生じた漁船の損害に対して、関係閣僚に外務大臣としての何か要望があつたかどうか、その点も承りたいと思います。
  76. 岡崎勝男

    ○岡崎外務大臣 われわれは李承晩ラインというものを認めておりませんから、李承晩ラインに入つてはいけないということは一度も言つたことはありません。ただ関係の漁業組合の代表者とかいろいろな人が参りますから、実情は話しております。つまりよく同じことを言うようですが、たとえばわれわれが往来で歩道を歩いているということは何らさしつかえないことであるけれども向うからトラックが歩道の中に入つて来たらどうするか。おれは歩道を歩く権利があるからひかれてもしかたがないと言つてがんばるか、それともトラックが来たときは身を避けるか、これは漁業者自分の判断に従うよりしかたがない。実情はこうなつて、こういうふうな危険もないことはないという実情を話しておりますが、李承晩ラインに入つてはいけないということは、私どもは申さないのであります。なお関係方面とは始終連絡をいたしております。
  77. 鈴木善幸

    ○鈴木委員長代理 淡谷君に申し上げますが、外務大臣は二時半から宮中の方に出向かれることになつておりますので、要点を簡単に御質問願いたいと思います。
  78. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 ただいまの大臣の御答弁でございますが、李承晩ラインに入つてはならないという指示は出していない。出していないので、漁船が入つた。そして向うの方の不当行為と認定されるでしようが、拿捕、抑留が生じた。その場合に、先ほどお話がありました海上保安庁の船が保護を加えるというのは、どういうふうな保護を意味されておるのでありましようか。あるいは今後もそういうような注意がないとすれば、生活に困つた漁民が入るかもしれません。入つた場合に、日本の監視船がどのような保護を加えるという意味でありましようか。あるいはまたそんなものは保安庁の船が保護を加えることが不可能だ、こういう意味でありましようか。その点だけはつきりしていただきたい。
  79. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 海上保安庁の船がどういう保護を与えるかということについては、私は海上保安庁の船に対してさしずをいたす立場にございません。海上保安庁の船が、一般的な保護の指令を受けまして、出て行きますれば、そのときの情勢に応じまして、その船長の裁量等もありましようが、これによつてできるだけの努力をいたすことになるはずだと思います。
  80. 今澄勇

    今澄委員 私は、外務大臣の今の御答弁のごとく、一度も入るなと言つたことはないということは、確かにその通りだと思いますが、政府が、あぶないから入つてはいけない李承晩ライン政府は認めたというようなことは、いまだ一度もないのだから、そういう政府の声明を信頼してこの漁場に出て被害を受けた。その被害というものは、この前総理大臣にも予算委員会で御質問申し上げたところ、それは国の責任であるというお話でしたが、今の外務大臣お話を聞いても、その被害というものは国家の責任に帰するように思うが、外務大臣の御見解を伺つておきたいと思います。
  81. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 われわれもそれは先方の不法行為によるものと思いますから、外務省としましては、先ほど申した通り、韓国政府に対して損害の補償を要求し、またこの権利を留保しておるわけであります。
  82. 今澄勇

    今澄委員 韓国政府に対して損害の補償を要求し、この権利を留保したということではなく、この損害は国が引受けるべきではないか、国が入るなとも言わないし、李承晩ラインを認めたとも言わないのだから、その国の方針を信頼して行つた漁民被害というものは、国家が責任を負うべき被害であるかということを私は外務大臣に聞いておる。向うに請求するとかその他のことは外交的な措置だけれども、少くとも国家が責任を負うべき被害であるということでなければ、論理の筋が通らぬと思う。これは政府李承晩ラインというものを認めない、漁民に対してもそこに行くことをとめていないということから生じた被害であるから、政府が責任を負うべき被害であると思うがどうかということを重ねて御答弁を願いたい。
  83. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは必ずしも私は政府が責任を負わなければならないということはないと思います。しかし政府としては国民の困難な状況を見れば、当然あらゆる措置を講じてその困難を救済するのはあたりまえの話であります。ただ、たとえばこれは問題が韓国でありますからいろいろ議論が出ますけれども、たとえば千島なり歯舞、色丹なりの例をおとりになつてみれば、あそこでは公海の自由という原則は、やはり日本政府は堅持しております。   〔鈴木委員長代理退席、委員長着席〕 しかしながら現実におきましては、歯舞、色丹と根室の間のまん中の筋よりも歯舞、色丹側に近寄りますと、ソ連の軍艦等につかまります。これも政府としては、そんな公海の中に筋を引くことを認めておるわけではありませんから、実際上これをいかぬとも言つておりません。言つておりませんが、この場合は漁民の方で、相手がソ連の軍艦である、危いと思つて実際上出かけられない。出かけられないから操業についても非常に困難があります。しかしこれを政府が何とも言つてないからどこでとつてもさしつかえないのだといつて出て行かれますと、これはやはり先ほど申しましたように、相手が非常に乱暴な措置に出たときは、漁民といえども適当にこれに対応しなければなりませんから、実際上は出ておらないような実情であります。これはカムチヤツカ方面の公海におきましても同様の状態になつております。ただ韓国場の合は非常に近いのと、それから従来から漁民行つてつたところですから、事情は通いますけれども、われわれとしましては、この漁民たちの困難を救うためにできるだけ努力をいたすことは当然だと思いますが、これをただちに国の責任として国の方で補償をいたすべしということになりますかどうか、私は法律家でありませんからよくわかりませんが、すぐそういう結論にはならないのじやないか、こう考えております。
  84. 今澄勇

    今澄委員 それは重大な御答弁で、私どもはこの水産委員会にかかつておる法律の末端を外務大臣にお伺いしようなどとはさらさら思つておりません。私が聞きたいのは、李承晩ラインを認めないのであるから、その操業については水産庁は操業をやめろということは一度も言つておらない、だからわれわれは、安んじて操業でき得るものとして操業をした、その漁船被害については何ら責任を負わないのだという御答弁は、実にこれは理論が通らないと思うのです。私は政府が、李承晩ラインを認めないけれども、入つて行くことに危険であるから、しばらくの間、何月何日から何月何日まではちよつと操業をやめてくれ、その間に入つてものについては政府は責任を負わぬということを表明して、責任を負わぬというなら話がわかると思いますが、内閣としてはそんな日本漁民に対するふまじめな、そして何らの指示も与えないで、被害があればお前たちの損だというような政治で、一体外交の衝に臨んでおられる岡崎さんの御答弁として、それであなたよろしゆうございますか。私どうもあり得べからざることと思うので、もう一ぺん念を押してお伺いしておめますが、少くとも李承晩ラインは認めない。だから操業は一つもやるなと言わないということで、この前々からずつと起つておる事態は、そういうことがもとで起つておる。漁民日本政府を信頼して出ておる。たまたまそれを防ぐべき力が足らないというだけの話であるが、しかしその生じた結果については政府が責任を負わなくて、一体漁民が内閣並びに国の政治というものを信頼しないことになつたら、これはどうなりますか。これは責任ある大事なことで、法案の末梢の区々たることについては私はあなたに聞こうとは思いませんが、外務大臣としては、その被害についてはまさに国が責任を負うべきものであつて、国を代表して韓国に損害賠償の請求をやるのだ、しかし国力が足らぬから日本の主張が通らないことはあり得る。しかし根本としては国が責任を負うべきものであるというふうに、あなたは政治家としても、今の民主政治のもとにおいて、もつとつつ込んで御答弁を願わなければならぬと思います。
  85. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 どうも民主政治の御講釈を聞いても御返事のしようがありませんが、これは法理論的にいえば不法行為をやつたの韓国なんであります。従つて国としては、韓国に対して漁民にかわつて損害の補償を求める、これが筋道であつて、直接漁民に対して国が補償をするかどうかこれは法律でもあれば別でありますが、そうでなければ直接の国の責任というものはすぐには出て来ないのじやないかと私は思います。但しこれをほおつておいていいかどうか、それはまつたく別問題でありますが、筋道としては韓国から損害の補償を取立てるのが当然であろう。すぐこ漁民にどうしなければならぬという政治上のいろいろな問題はありましようが、法律政府がそういう船に対しては補償しなければならぬということには、直接出て来ないのじやないか、これが私の趣旨であります。
  86. 今澄勇

    今澄委員 これ以上私は申しませんが、今の岡崎さんの答弁は、岡崎さんはそれでよろしいということなら何をか言わんやであります。今の吉田内閣の外交方針としては、李承晩ラインを認めないというのです、操業は禁止しないというのです。やられたお前たちは、今韓国で権利を保留しておるからそれを待つておれ、何ら政府としてはそういうものについて国家が負担を感じて補償の責めに任ずる責任はないという岡崎さんの御答弁で、私はそれが吉田内閣の外交方針であり、岡崎さんの考えであるならば、何をか言わんやであります。ただ問題は、申し上げておきますが、一体そのようなものの考え方で、今の日本の困難な状態がやつて行けるのかどうか。私は少くとも政府李承晩ラインを認めない。漁業について禁止をせざる限りは、それから生じた一切の責任は政府の責任である、けだしそれは韓国へ要求すべきものであるから韓国に要求するのだ、こういうふうに考えております。これは見解の相違であります。もう一度聞いておきますが、請求して、留保しております日本の損害賠償については、日韓会談においてそれが通りそうな情勢であるかどうか。もう一つは、新しい日韓会談をいろいろ用意されておるようであるが、日本側代表は御承知のようにもう交代して、公使で転出せられましたがあと日韓会談の責任者はだれを中心として御検討されておるか。アメリカからいろいろ仲裁的要望が申し越されておるようでありますが、そのアメリカ側の仲裁に関する責任者はたれであるか、これだけひとつお答え願つておきたいと問います。
  87. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今澄君は日本の外交方針と、そうして国内の措置とを一緒にして議論しておるようでありますが、私が答弁しておるのは、外交に関する問題であります。国内の方は国内の方で別個に考えるので、これをごつちやにして、これは吉田内閣の責任だというふうに押しつけられてははなはだ迷惑であります。それから日韓会談の代表者は、これは行政府できめることでありまして、まだきまつておりませんが、いずれきまりますればわかると思います。それからアメリカ側といろいろ話をいたしておる。これは私もいたしております。私の部下の者もいたしております。
  88. 今澄勇

    今澄委員 今私が聞いたのは、アメリカ側が仲裁に入つて、仲裁案をこちらに示しておるのであるが、アメリカ側の責任者はアリソン大使なのか、たれなのか。アメリカ側が入つて日本との間にあつせんしておる責任者、それから日韓会談日本側からとにかく責任を持つて代表として出そうという人物がいまだにきまつておらないという話でありますが、外務省としてはこれは外務省なりその他いろいろ集まつてきめるわけでありますが、責任者は外務省になるでしよう。それがいまだにきまつておらないということで、そういう賠償問題その他の問題等いろいろあるのに、どうして解決できるかということの参考に聞いておる。時間がないから次に譲りますが、もう一度お聞きしておきたいことは、第一点は、日本側責任者は大体外務省のどういうところになるようなお考えであるか、これは外務大臣のお考えでよろしゆうございます。アメリカ側を代表してこの日韓交渉のあつせん役をしておる責任者はたれであるか。第三点としては、今私が申し上げました、あなたはえらい内閣のとか何とか言われるけれども、あなた個人として、外務大臣としては一つも禁止しないで、出て行つた者の損害を国家が全部補償することにはならぬと思うという御答弁でありましたが、今のあなたの御答弁では少しぼやかしたようであります。ではもう一ぺん、外務大臣としては、李承晩ライン内に起つた一切の事態というものは国家の責任であると思うか、それとも国は責任を負わぬものと思うかという点について、明確に思うとか思わないということについて御答弁願つて、爾余の問題はこれから派生するものと思いますから、私の質問を終ります。
  89. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 お断りしておきますが、アメリカがいろいろの案を出して双方に交渉しておるというのは事実じやありません。アメリカ側は両方の間に円満解決ができるように、できるだけあつせんしておるのでありますが、案を示して、これでもつて行こうというようなことは言つておりません。アメリカ側の責任者については、アメリカ側の御都合もありますから、ここでだれだということを申すのは差控えます。外務省なり、将来日韓会談の責任者につきましては、たいへん御心配のようでありますが、われわれももちろんいろいろの点を考えておりまするから、その点は御心配くださらぬでも大丈夫だと思います。これは行政府で適当な処置を講じます。  それから国の責任がどうかという……。責任という言葉は非常にあいまいなのでありますが、一体責任というのは何かということになります。つまりこの国の国民を守る責任は政府にある。しかしその守る範囲は、責任があるからそれじやお前の損害は全部一銭一厘残らず政府は金を出して払つてやる義務があるかどうかということになりますと、これは必ずしもそうでない場合もあるので、責任と一言に片づけられない。私の答えられますのは、外交交渉におきましては、この行為の損害を韓国側に請求し、これを留保して将来の交渉をいたす、これは外務省の責任であります。
  90. 田口長治郎

    田口委員長 遠藤三郎君。
  91. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 ただいまの外務大臣今澄委員との責任論の問題について、実は私どもどうしてもふに落ちないのであります。そこでこいつを長く繰返ししても時間がありませんから、簡単に一つだけ聞いておきたいのですけれども政府に全責任はないといたしましても――かりに一歩譲つて政府に全責任がないということになつても、その責任の一半は政府にあるのじやないか、その点をお認めになるかどうか、その点を伺つておきたいと思います。
  92. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 政府としては国民を守つて、国民の生活を安定する責任があるわけであります。しかし現にある種の立法処置も講じられようという議論があるくらいであります。何か法律がなければそれだけのものがないという実情もありまして、何もなくてもすぐその李承晩ラインでつかまつた船なり漁民なりについては、全部の被害に対して政府が金を出して補わなければならぬ、そういうふうに法律はなつておらない。ただ事実上農林省なりその他の関係方面で、できるだけ国民の被害を少くして、生活を安定させるように努力すべきである、こう私は考えます。
  93. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 もう一言追加さしていただきたいのですが、問題はあの李承晩ラインを漁業するということは、日本政府は禁止しておらない。平穏公正に漁民は漁をしておつたわけであります。もし危いならそれをやめなさいということを政府が忠告をし、あるいは禁止しておるならば、そこえ行つた場合にはそれは責任がないということが言えるかもしれませんが、日本の領土権の範囲内といいますか、公海で自由にやれるのだということが長い間の慣例で認められている。その地域で漁業しておつて拿捕されたという事件でありますから、政府にどうしても一半の責任があるというふうに私ども考えなければふに落ちないのでありますが、それでも全然政府には責任がないというお考えであるかどうか。少くとも一半の責任だけはあるのではないか。漁師の方にも責任があるかもしれませんが、しかし一半の責任はあるじやないかということを、われわれはどうしても考えざるを得ないのであります。この点についての御意見を伺いたい。
  94. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私は責任がないと言つているのじやなくて、従つて現に韓国政府に対しては損害の補償を要求しておるのであります。それ以外の漁夫に対するいろいろな措置につきましては、これはおのずから管轄の省があつて、今せつかく研究中なのでありましようから、私がそれに対してまで口を出すのはどうかと思うのであります。ただ、今申した通り現に法律をつくつて、何かしようというお考えもあるやに聞いているくらいでありますから、従つてその法律がなければそれだけのことは実際上できないというような実情であるからこそ、そういう法律をつくろうとされたのだろうと思います。そういうことから見ましても、それじやすべて損害は自動的に政府がどんどん払つて行かなければならぬかというと、そういう結論にはならぬだろう、こういう意味です。
  95. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 私は政府の責任を明らかにして、そして政府を追究しようとか、政府を糾弾しようとかという考えではないのであります、問題は、その責任の一半を政府が負わなければならぬかどうかという点について伺いたい。それがはつきりしなければ政府の力の入れ方が違つて来るのであります。もう少し力を入れなくちや困るということをわれわれは言つておるのであります。そこで言を左右にしてその責任論をやつておらないでさつぱりと一半の責任は政府にも確かにあるのだということをお認めになつて、その上に立つてとつ強力にやつていただきたいということを私はお願いするわけであります。そういう意味でありますが、これ以上議論しましても同じことを繰返すことになるので遠慮いたしますが、その次の問題としまして、日韓会談の今後の見通しの問題につきまして、どういうような経過になつておりますか。外務大臣はどういう見通しを持つておられるか。新聞等に伝えられるところによると、なかなか困難であるというふうに書いてありますけれども、実際のこの進行状況はどうであるか。しかもその困難な理由はどこにあるか。どういうふうにしてこれを打開する考えであるか。将来の見通しはどうであるか。こういう点についての外務大臣の率直な御答弁をお願いしたいと思います。
  96. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 日韓会談につきましては、私はこれを開きたいと考えます。いろいろ両方の主張には合わないところもありますけれども、とにかく会談をしない限りはますます議論が合致する見込みはないわけでありますから、これは会談をしたいと思つております。それにつきましては、日本側としてもできるだけの譲歩をする、これは当然であります。韓国側もやはり同じような態度で出て来られると思つております。そこで日韓会談につきましては、久保山発言がどうであるとか、あるいは財産権がどうであるとか、あるいは今の漁業の問題とか、いろいろあります。ありますが、私は、たとえば久保田発言を取消さなければならぬというような議論もあるようでありますが、これは個人の発言ということは久保田氏が断つておりますから、取消すというのはおかしな話でありますけれども、そういう問題にこだわつて日韓会談を開かれないようにするのは建設的じやないと思います。これは過去のことを議論しただけでありますので、こういうことがこだわりになるならば、日本側としてはこれがこだわりにならないような措置を講じて会談を開くのが適当であろうと思います。ただいろいろなその他の主張につきましては、これはなかなか合わないところもあろうと思いますが、会識は開いて、会談で十分意見を開陳して、合うか合わないかこれはわかりませんが、とにかく会談を開くということにいたしたいと思います。いつ開けるかということにつきましては、新聞等にはいろいろ困難なようなことが書いてあるのを私も見ましたが、しかし私の感じでは、あるいはそうむづかしく考えなくても、会談を開くことに順当に進みつつあると思つております。ただ年内に開けるかどうかということについては、まだここで確言することはできませんけれども、できるだけ早く会談を開くように現にいろいろと努力いたしておりますから、あるいはそのうちに開けるようになるかもしれないと思います。ただ、開いたらそれじや問題はすべて解決するのかというと、そうは行きません。会談はなかなか困難であります。あるいは解決しない場合もあり得ると思うのであります。しかしとにかく会談を開いて話してみる、こういうつもりで進んでおります。
  97. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 日韓会談の問題については外務大臣も非常なお骨折りで、だんだん進展しておるように伺つてありがたく思うわけであります。しかしこの問題はなかなか重大な問題でありまして、あくまで腹をすえて追究をしていただきたい。特にその際私は、外務大臣の頭の中に入れておいていただきたいことは、拿捕されて抑留された人たちが、まつたく話にならないような、人道上の問題だと言つて強調しなければならぬほどの待遇を受けておるのであります。御承知のように留置場へ置かれた人たちは、一日二十四銭くらい、新聞を一枚買う程度の副食の補給しかなかつた。みんな出て来たときには、もう栄養失調でもつて顔がむくんでいた。これはまさに人道上の問題であります。そういう乱暴なことをしており、また拿捕された船のいろいろな船具などを、次から次へと略奪をしておる。こういうことさえも私どもは伺つておるわけであります。これは国際間の道義に反するということを私どもは強く感ずるわけであります。この点は韓国に向つてあくまで追究し、そうして反省を促していただきたい。そのことをお願いして私の質問を終ります。
  98. 田口長治郎

    田口委員長 次に小高熹郎君。簡単にお願いします。
  99. 小高熹郎

    ○小高委員 時間もないようでありますから簡単にお尋ねいたします。  李ラインというものをかつてに引いて、これでよろしいかどうか。それじやお前の方で引くならおれの方でも引くぞというようなことが国際法上許されるかどうか。大陸だなのように、地質学上元陸地であつたものが陥没したその地点を問題とするなら、これは別問題でありまするが、そうでなくて、こちらの政府では認めないことを、一方的にここは立入り禁止だというようなことをやつていいか悪いかということを、国際法上どうさばくかという基本問題についてお尋ねいたしたいのであります。本日の毎日新聞に、インドネシアの最高責任者のスダルソノ外務省アジア局長の談話として、主として日本漁船日当に六十マイルの地点を切つて立入り禁止を提唱せんとしておるというような記事があるのでありまするが、この基本問題が解決しないで、インドネシアもやるし、あるいはフイリピンもやるという際に、日本はどういうふうにして行つたらいいか、またこういう紛争をどこで解決するのか。李ラインがことごとく基本となつて、インドネシア等の問題も今後生ずるのではなかろうかというような危惧を抱いておるのでありまするが、この国際法上の解釈を御説明願いたい。
  100. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 この問題は、われわれはもちろん公海の自由という立場から、国際法上不当だという主張を続けておるわけでありますが、相手方はまたいろいろの理由をつけて、これは正当だという議論をいたしておるわけであります。従いまして国際法的に言いますれば、これはどうしても一種の国際紛争となりますから、たとえば国際司法裁判所に提訴いたしまして、その判決を仰ぐというようなことが法律的な解決の一つの方法だろうと考えております。ただこれにつきましては、国際連合に加盟しておる国は別といたしまして、加盟していない国につきましては、相手方が応訴をいたさないと国際司法裁判所判決は効力を生じないわけであります。たとえば濠州のごとく、日本が国際司法裁判所に提訴するということを承諾しますれば、これで手続は完了いたしまして、あとは国際司法裁判所の判決を求めということになりますが、要するに国際司法裁判所の判決が国際法的に申せば一番適当な手段じやないかと考えております。
  101. 小高熹郎

    ○小高委員 それではこれは希望意見として出しておきます。もう一回機会をあらためてお尋ねいたしまするが、かように押せ押せでもつて押されて、わが国の漁業操業区域が縮小される。それに対しここまではわが国の領海なんだ、かつての実績もあるし、また国際法上支障がないのだというような強力な一線を、報復手段ではないけれども、ある程度持ち出さなければいけないのじやないか。それでないと、いつまでたつてもこの問題は一方的に押しつけられたもので終るのじやないかと思いまするが、これは時間もございませんから、御研究願つて、追つてまたあらためて質疑応答いたしたいと思います。
  102. 辻文雄

    ○辻(文)委員 どの同僚委員の皆さんもお尋ねになつて、必ず腹に落ちていないと思うのですが、私も岡崎大臣の御答弁はどうしてもわからぬ。あんたは責任を負わぬという証左として、道路の上で子供が遊んでいて、さつと右に行つた、片方から貨物自動車が来てひいた、そんなものの責任までとれるかというように私には聞えた。それがもし子供であつた場合には、親がやはりそれを守る責任がある。言いかえれば今度の問題は、政府が親であつて漁民子供であります。その子供に、お前たちはあそこの中に行くと、たとえばそれは李承晩ラインを一方的に引いておるとしても、危いからあんなところには行かないようにという注意は、やはり外務の主管担当の最高責任を持つておられるあなたが、たとえば農林あるいは、その所管に通じるとおつしやつても、あなたから明らかにそういう注意をお与えいただくことが、そしてお与えいただいた後に、なおかつそれでも生活のために行つたという場合には、いくらか責任が軽くなる。そうしてそのあとの責任は、国と国との問題で解決をつけてやると言われるなら、私はもう少しふに落ちます。しかしその子供に危険な場所も知らせずにおいて、そうしてお前たちがかつて行つたとおつしやらないまでも、かつて行つたんじやないかというような、言いかえればそういう言葉に聞えるような、言葉の言いまわしがそう私どもには聞える。あなたが責任を持たずに、そのかわり国が向うに補償させるように交渉をしておる、こうおつしやるのか、どうしてもその責任という言葉が私どもには割り切れません。これはお互いに学問的に、あるいはあなたが言われる法律的に責任というものを解釈するということになりますれば、これは人類の本質のことだから、私はあなたと議論しなければならぬ。これは空間動勢から理論を持つて行かなければならぬ。そしてわれわれはいかなるものを至上霊魂から与えられておるかということから話をしなければあなたとの問答は解決つきません。こんなことを言つてつたならば禅問答と同じです。そういうものではない。今日のような思想の危険な、また危機に立つているわが国、そして私に言わしむれば、明治維新のときよりももつと危険じやないかと思つておる。そういう際にこそ担当しておる政府は、思想的にも十分御注意くださらなければならぬと思う。かようなものを引継いで行つて、そして荏苒と日にちを延ばして、しかも片方は食うか食われるかということで、ほんとうに血の出るような叫びを大蔵省に発しておる。そういうようなことのさ中に、大蔵大臣にそれは私の責任じやない、そこまではできませんと言われてがつかりする。これではどうなりますか。ましてやその根源をなす外交の所管大臣であられますあなたが、そういう場合に責任を持ちませんと言うことはただちに大蔵のきんちやくにも響きます。あなたがここでその責任がないと言われることは、これは言い過ぎかもしれないけれども、私どもの気持の上から、いわゆる常に私が言つておる心の政治の上から言うならば、つつぱなしてお前たちはどうでもよろしい、日本の国民はどうでもよろしい、さらに延長すれば、そんなことにでも考えられる段階になると思うから、もう一度私どもは良識に訴えて、そうしていかなる責任があるかということを、ひとつ御答弁願いたい。
  103. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私の言い方が悪くて誤解を与えたかもしれませんけれども、私の申す趣旨は、たとえば実際農林省なり、水産庁なりあるいは厚生省なりその他関係省で、農民の困窮を救うために、いろいろ努力をし、考えておるのはこれは当然であります。ただ、今あなたの例を引かれたように、子供が歩道にいて車がやつて来た、親がこれは注意をする、そのときにもし親が注意をしなかつたら刑法上の責任に問われるか、裁判にかかつて刑罰を受けるか、そういうような法理的に議論をされるから、私はそこまでの責任はないものだ、こう申したのであります。要するに実際上の処置と心の問題とかいろいろ言われましたが、しかし実際上の問題と法律上の問題とは別でありますから、実際上政府が国民の生活の安定を心配していないとはだれも言つておるわけじやない。またそれ以外に政府の仕事はないのでありますから、国民の生活の安定のために努力をすることは当然であります。ただ法律的に、それじあすぐそういうことが政府の法理上の責任になつて来るか、こういう法界論をおつしやるから、それはそこまでは行かぬでしよう、こう申しておるのです。
  104. 辻文雄

    ○辻(文)委員 私はあなたに刑法上はどうとかこうとかいうことは申し上げなかつた。あなたがそう言われるから、私は気持、心の問題であなたに申し上げたのです。良識であなたは責任があるか、ないと思われるかということを私がお尋ねしたことは、速記録をごらんください。いくら言つたつて同じだから、私はこれで打切りますから、どうぞその意味においての責任が持てるか持てないか、私の言つた今の気持からの問題の確答をいただけばけつこうです。
  105. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 どうも責任という定義がはつきりしませんので、あるときは法律上の責任になり、あるときは心の道義的の責任になるようで、どうも私には確答とおつしやつても、はつきりしたことは申し上げられませんが、政府としては、国民の生活の安定のために関係省ができるだけの努力をするのが当然であります。あらゆることを今後もやるつもりでおりまするし、また関係省もそう考えております。従つて外務省の分担としては、韓国政府に対してできるだけ交渉をいたす、こういうつもりでおります。
  106. 辻文雄

    ○辻(文)委員 刑法上とか心とか、ちぐはぐに言われるけれども法律人間がつくるものですよ。いつかの機会に、もし大臣がそう言われるなら、私は、さつき申し上げたようなことから大衆の生活に入つて行つて、大衆の道義のことまで、法律をつくることまで、お話を聞きましよう。その根源からあなたがお答えいただけば、従つてその気持において責任が起つて来ます。これで私は打切ります。
  107. 田口長治郎

  108. 椎熊三郎

    椎熊委員 私は簡単にお伺いしたいと思います。ちようど水産庁の長官もおられますから、お二人でお相談の上お答え願つたらなおさらいいと思います。李ラインの内側で漁業することが危険であるということは、常識でも考えられる問題であるが、水産庁は漁民に対してその警告を与えなかつた漁民は、当然日本漁民行つて操業してもいいと信じて行つたわけです。そこで、外務大臣がそういう危険を予想されつつも、漁民に警告を発しなかつたゆえんのものは、李ラインと称する一方的のラインの中に入つてはあぶないなどという警告を発することは、結果的にはどうあつても、一応李ラインというものを国家的に、あるいはあなた外務大臣として認められるという結果になるので、それは日本の国家のために不利益であるから、そういう警告を発しなかつたのだ、そういう意味なんでございましようか。
  109. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私は国家の利益であるとか利益でないとかいうことよりも、むしろ公海の自由ということは、少くとも今までの国際法上の原則であります。従いまして、かりに国家の利益でない場合であつても――そんなことはありますまいけれども、しかし公海の自由ということを主張するのは当然のことであります。特に日本にとつて不利益であるとは思いませんけれども、利益、不利益の問題と別にしまして、公海の自由ということは当然主張すべきものだと考えます。
  110. 椎熊三郎

    椎熊委員 そうすると、公海の自由を原則として堅持する以上公海の自由における保障というものは世界に向つて主張することができると思う。それを現実の問題からはああいう一方的のことが行われておつて、そこに危険が発生しつつあるのに警告を発しなかつたということは、ただ単に公海の自由だから、そこで何か問題が起つた場合は、それは一体だれが責任を負うかということは、あなたの議論から言うと、国際司法裁判所か何かで判決でもない以上は、どつちがいいかわからぬということになるのでしようか。
  111. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私はさようには考えておりません。少くともただいまの公海の自由、これは最近におきましては、その端を太平洋宣言及び連合国宣言に発しておるのでありまして、これはアメリカの戦争に参加した一つの大きな理由、あるいはイギリスなりその他の国々がこの戦争に出ました大きな理由の一つは、公海の自由を守る、これはドイツの潜水艦のことを主として言つたのでありますが、公海の自由を守るということにあるのであります。従つてこれは当然のことであり、また最終的にはこれは国際司法裁判所に決定をまたなければならぬとしましても、国際慣習なり国際法上の常識として、これはあたりまえの話であります。私はその間に何ら疑問を持ちません。
  112. 椎熊三郎

    椎熊委員 国家の責任というものを、ただ被害を受けた漁民に直接いかなる救済をするかという責任はどうなつているかということと、外交関係を担当しておる外務省あるいは政府が、この問題全般に関することとを混同しておられるのではなかろうか。現に政府は責任を感じておると私は思う。感じておればこそ韓国に向つては賠償を要求しようとしている。日韓会談においてはそれが主たる重要な問題の一つになるでありましよう。あなたの言明からいつてもその通りである。そうすると、政府はすでにその問題に対する責任を感じておるのです。そこでこの問題全体としては、政府には一半の責任がある。全部ことごとく政府の責任だとは思わぬ。主たる責任は向うの不法行為にあると思うのですけれども、しかしながら起つた事態に対して、日本政府日本の国民に対する責任を感じておればこそ、これから交渉を始めようとするのですから、責任のあることは明らかだと私は思う。ただその責任が、漁民の今の窮状に対してどう救済しななければならぬかという具体的な問題になれば、それはいろいろ論議になると思う。それは国会自体が考えることであつて、われわれはその責任において、あるいは今日困つている漁民の融資の問題であるとか、融資に対して大蔵当局が便宜を与えてくれる問題であるとか、そういう個々の問題は、漁民救済のために国会自体も考えるのであります。しかし政府は、一般国民に対する責任の上に立脚して、韓国に請求権まで主張しようとする責任を自覚しておられるならば、この漁民救済の具体的問題に対しても全然無関係であつてはならぬ。そこに何らかの責任があるのだと私ども考えたい。そうしてもらわなければ、国民のための政府だとは言えないことになる。あなた方の独断的考えで何でも遂行して行けばいいということであつて、今日の国民がこれほどの窮状にあり、これほどの民族的感覚を刺激しておる問題に、それほど困つている人間とは全然切り離されてこの問題を処理せられんとする外交上の根本的思想に、私はあなたと違う点があつて、やつぱり愛国的良心と、この国民をほつておいてはならぬという熱意のもとに立つてその主張をしてくださるならば、私はあなたを信頼できる。そういう熱意があるならば、今国会がやつておる漁民救済の具体的問題に対しても、おのずから政府考え方があるのではなかろうか。それはこつちは関係ないんだというような責任回避の態度に出られておるように見られることは、私は今日の民主政治の上に立脚したる政府の態度としてはとらざるところである。われわれは大いに協力したいと思つておりますけれども、あなたのようなそんな薄情なことをされると、協力したいにも協力しようがないことになりますから、そこを今みんな聞いているので、法律上はどうとかこうとかいうことでなしに、これは日本政府にも責任がある、責任があるので、交渉しているのだ、従つて苦しい立場にある漁民に対しても、政府としての非常なる考えをもつて、これを何とか救済してやるという考えのもとに立脚しておるからこそ、この外交交渉を強く進めたいのだ、ということを言つてくださるならば、それはありがたいと言つて、紛糾しないで済む。従つてそのことはさつき大蔵大臣とだんだん話合つているうちによくわかつて来て、利子の問題でも七分五厘から六分になり五分五厘まで考えようという、まるでバナナやのようだ。話合えばだんだんそういうふうに国民の救われる道はおのずから発見せられると思う。私は外交上では国民一体となつてその当事者を推進しなければ損だと思いますから、外交上の問題についてはとやかく申しません。国内の問題では、あなたはそういう愛国的気持で、国民のための外交だという精神に立脚して御親切に取扱つていただけば、われら同胞同士の間柄のことですから、これは口角あわを飛ばして議論するほどの問題ではない。そういう意味のことをわれわれはあなたの口から聞きたい。しからばこの委員会というものは、なごやかにスムーズに進んで行くと思う。水産庁長官もおられるが、水産庁長官はあれだけ紛糾の状態を見ても、いまだ一ぺんも警告を発しなかつたということは、あなたの独断ではないと私は思う。やはり政府全体のことを考えてやられたんだろうと思う。それであなたは相談の上御答弁したんだと思う。こう私は言つている。
  113. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 とにかく私は先ほど申し上げましたように、ノルウエーの公使の信任状奉呈がありますから、宮中へ今すぐ行かなければ時間が大分遅くなつて困りますから、お説はよく了承しました。私どもはとにかく委員会で責任があると言うと、それなら何を出せ、これを出せと言われる。それでこちらも警戒しておる。私もやはり政府の一人でありますから、そうは行きません。しかしおつしやるような意味の責任は私どもあるのですから、そのために先ほども吉武君の御質問に答えて、外交交渉等は責任を持つてやるのだ、こういうことを申しておるのであります。どうぞ御了承願います。
  114. 田口長治郎

    田口委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもつて御通知申し上げます。  これにて散会いたします。   午後三時十三分散会