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岡部政府委員 お答え申し上げます。実はこういう
意見が広く伝わ
つているわけであります。すなわち、戦後におきましては
人事関係
事務が非常に尨大にな
つたので、これに従事する
職員が戦前に比しまして数倍、数十倍に上る。従いまして、
行政事務を簡素化するためには、どうしても
人事管理事務をもつと徹底的に簡素
合理化しなければならぬという
意見をよく聞くのであります。一面ごもつともな点もあるのであります、実は戦前におきまする
わが国の
人事行政と申しますものは、ほとんど
人事行政らしい
人事行政がなかたとも言える
状態なのでありまして、戦前の経験を引きまして、戦前にこうだ
つたから戦後も戦前程度に引きもどしたらいいじやないかというような御
意見は、少し
実情に即しない無理な
意見ではなかろうかと思うのであります。戦後におきまして
わが国に
人事行政らしい
人事行政が初めて導入された、また中央
人事機関も初めて設けられたというようなこと、それから、従来
各省の
給与であるとか、昇進手続であるとか転任の手続であるとかいうものは、ごく簡単にや
つていたわけでありますが、戦後は
給与関係におきまして、地域給
一つと
つても非常に複雑にな
つておるわけであります。あるいは
給与ベースの問題についてもその
通りであります。また
職員の個々の
給与の格付の問題にいたしましてもきわめて複雑で、
職員の
権利義務に影響するものとして慎重に考慮しなければならぬ。それらがまたすべて
法律に
基礎を置くということにな
つておりますので、この勢いを、先ほど申しました
俸給令の昔にもどすということは、言うべくして行い得ないことを、御了承いただきたいと思うのであります。
人事院ができまして、これらの新しい
公務員制度の実施にあたりましては、いわば白紙に絵を書くようなものでありまするから
——ことにその点におきましては、
アメリカで専門的に発達いたしましたいろいろな
制度、
人事手続に関する調査報告、統計というような
制度も急激に採用するこになりましたので、当初におきましてはきわめて詳細、しかも相当煩雑な手続があ
つたことは認めなければならんのであります。新しい
制度ができますために、そのような
実情に即さない煩雑さがある程度まぬがれなか
つたことは事実であり、これはやむを得ない
事情があると思うのであります。従いまして、これらの
人事行政事務に従事いたします
職員数も相当急激に増大して参
つたわけであります。昔で言えば、たとえば
内閣官房の
人事課が昭和十二年に設けられまして、課員がわずかに数十名というのが、
終戦後におきましては、
人事院一つとりましても、千人以上の
職員を擁するのは多過ぎるではないかというような
考え方があ
つたわけであります。しかし一旦実施いたしましてそれらの手続が軌道に乗り、またこれらを実地にためした上で
わが国の
実情に即しまして、あるいは
わが国の
行政規模から申しまして、これらの事項は簡素化すべきではないかというような
意見もだんだん出て参りまして、
人事院におきましてもその点の簡素化にここ数年来努めておられるのでありまして、一時に比べますればきわめて大幅に
人事行政手続の簡素化が行われていることは明らかであります。また最近におきましても
人事院規則の
改正等しばしば行われ、その手続の簡素化に努力しておられるともこれまた明らかであります。それに伴いまして、
各省の
人事担当部局の負担の軽減あるいは手続の簡素化ということも、これまた実際に行われているわけでありまして、ここ数年の
行政整理におきましても、
人事及び会計手続の簡素化ということを重点といたしまして、
実情に即してこれを簡素化し、その定員の縮減をはか
つて参つたわけであります。現在におきましては相当程度の縮減あるいは簡素化が行われておる。しかしなおこの
人事手続につきましてはこれを簡素化し、
人事事務に従事する
職員を縮減する余地がずいぶんあると
考えられますので、
人事院及び
各省においてもその点努力いたしておる次第であります。なお根本的な
公務員制度の簡素化につきましては、さらに努力する余地があろうと思うのであります。しからば
人事行政に従事している
職員の数はどれくらいが適当なのかということ、それに関連いたしまして、現在なお多過ぎるかどうかということについて、何か客観的な基準がなかろうかということも、私どもの研究題目としていろいろ
考えているわけであります。これらの
人事手続につきまして、あるいは
人事行政につきましてきわめて発達していると思われる
アメリカにおきましても、
行政改革に関するフーヴアー
委員会が
人事行政に従事する
職員が、少し多過ぎはせぬかということにつきまして
各省、各庁に当
つて実際に検討いたしましたところでは、大体七十五人に
人事関係の
職員が一人いるというのが大体の基準で、ところによりましては三十五人に一人というような数字を示しているのもあり、大体七十五人とか、八十人とか、百人以内のところがよかろうではないかという
意見のようにも思われるのであります。これを
わが国の
実情に照してみまして、どの程度の規模が妥当かということは、いろいろ
事務手続の繁閑あるいは
行政手続が機械化しているかどうか、
能率化しているかどうかということも
考えに入れなければなりませんので、なかなか早急に結論は見出し得ないのでありますが、この
人事手続を
わが国の
行政事務の
実情に照しますと、総体といたしましてなお簡素化し得る余地があるのではなかろうかということは、一般的に
考えられているところであると申して異存はなかろうと思うのであります。