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1954-04-20 第19回国会 衆議院 人事委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月二十日(火曜日)     午前十一時一分開議  出席委員    委員長 川島正次郎君    理事 赤城 宗徳君 理事 田中  好君    理事 永田 亮一君 理事 舘林三喜男君    理事 櫻井 奎夫君       山口 好一君    池田 清志君       石山 權作君    加賀田 進君       森 三樹二君    池田 禎治君       受田 新吉君  出席国務大臣         国 務 大 臣 加藤鐐五郎君  出席政府委員         人事院総裁総理         府事務官    淺井  清君         (行政管理庁管         理部長)    岡部 史郎君  委員外出席者         専  門  員 安倍 三郎君         専  門  員 遠山信一郎君     ――――――――――――― 四月二十日  委員山口好一辞任につき、その補欠として前  田正男君が議長指名委員に選任された。 同日  委員前田正男辞任につき、その補欠として山  口好一君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 四月十六日  兵庫県竹田町の地域給指定に関する請願(有田  喜一君紹介)(第四三九九号)  三重県津市の地域給引上げに関する請願(木村  俊夫君紹介)(第四四〇〇号)  福岡県築上郡下の地域給指定等に関する請願(  池田禎治紹介)(第四四一六号)  岐阜県神戸町の地域給指定に関する請願(野田  卯一君紹介)(第四四一七号)  佐賀県北多久町の地域給指定に関する請願(井  手以誠君紹介)(第四四一八号)  広島県因島市の地域給指定に関する請願高橋  等君紹介)(第四四三一号)  同(岡本忠雄紹介)(第四四七五号)  同(高津正道紹介)(第四五〇九号)  広島県宜山村外二箇村の地域給指定に関する請  願(高橋等紹介)(第四四三二号)  同(高津正道紹介)(第四五〇八号)  群馬県上川渕村外六箇町村の地域給指定に関す  る請願藤枝泉介紹介)(第四四三三号)  兵庫県塩瀬町及び山口町の地域給引上げ請願  (富田健治紹介)(第四四七三号)  山形県下の地域給指定等に関する請願牧野寛  索君紹介)(第四四七四号) の審査を本委員会に付託された。 同月十七日  近江八幡市の地域給均一指定に関する陳情書  (第二  八一四号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  国家公務員法の一部を改正する法律案内閣提  出第一〇一号)     ―――――――――――――
  2. 川島正次郎

    川島委員長 これより会議を開きます。  前会に引続いて質疑を行います。櫻井奎夫君
  3. 櫻井奎夫

    櫻井委員 それではこの前に引続いて質疑をいたします。第三国会において国家公務員について論議されまして、人事院が設立となつたわけでございますが、そのときの人事院を設けるという趣旨は、日本の民主的諸制度をどうしても成功させねばならない、そのためには日本官僚制度を根本的に改良しなければならぬ、こういう趣旨の上に立つて人事院が設立されたのであります。そのためには、人事院というものはあくまでも不偏不党であり、いかなる時の権力によつて制肘を受けてはならない、厳正な人事行政を行うために、いわゆる人事院独立性というものができる限り確保されねばならないということを述べられておるわけであります。この点は私は今日といえどもかわりはないと思うのであります。特に問題となるのは、国家公務員は、憲法第二十八条の勤労者団体行動権の大幅なる保障があるにもかかわらず、国家公務員であるために、憲法第十五条の第二項の、いわゆる全体の奉仕者であるという建前から、国家公務員法の第九十八条がその精神を受けて、公務員からいわゆる団体協約によるところの団体交渉権を奪い、なお罷業権も奪つておるわけであります。しかし公務員といえども、国民の一員としての基本的人権というものはこれはあくまでも保障されねばならないのでありまして、公務員法の第九十八条で、公務員からそのような労働者としての、勤労者としての権利を剥奪したからには、当然その代償として、国家公務員労働条件の維持改善なり、あるいはその経済的地位の向上なりについて、人事院責任をもつて解決しなければならない、そのためにはやはり人事院に、時の政治権力というものに屈伏することのない不偏不党独立性というものが与えられねばならないのでありまして、この点は今日といえども私は何ら条件はかわつていないというように考えるのであります。征つてその制限されたところの国家公務員福祉を守るというような意味で、その一つの現われとして、人事院給与改訂勧告権というものが厳存しておる。この勧告権は、従来国会内閣に同時になされて来ている。しかるところ、今次のこの改正案を見ますと、これが内閣にだけ勧告をして、国会には内閣を通して、五日以内に報告をしなければならぬというふうにかわつて来ておるのであります。本来この公務員法改正は、今回に始まつたことではなくして、昭和二十七年の第十三回国会においても、この改正案が出たことは周知の事実でございます。この前の改正案におきましても、やはり国会内閣に対する勧告権を持つており、また、「同時に」ということもあるが、今回は抹殺されておる。今回は人事院機能を大幅に圧縮して、ただ内閣にのみ勧告をすることになつておる。これがこの前の改正案と今回の改正案の非常に違うところであると思うのでございます。しからば何ゆえに従来国会内閣人事院が同時に勧告をしたかと申しますならば、人事院に権威あらしめるために、国権最高機関である国会勧告するということがやはり必須条件であろうと思う。内閣にだけやるのでなく、国会を尊重し、これが国権最高のものであるという観点に立つて、これに勧告をしたと思うのであるが、今回は国会への勧告をとつてしまつた。これはどのような観点に立たれて国会に対する勧告権をとられたか、その所信を明確にされたいと思います。
  4. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 国家公務員団体協約もしくは争議権がないかわりに、人事院という独立性のものができまして、その権利を擁護するということにつきましては、今までお説もあり、政府よりも答弁いたした次第であります。今までは国会政府の両方に向つて同時にしているけれども、これを国会の方はやめて、内閣だけに対してするのはどうであろうか、こういう御質問のように承りました。これもしばしば私及び他の政府委員より御答弁申し上げた通りでございまして、五日間ということでありまするがゆえに、同時でなくても、五日以内に国会にこれを政府としても報告することでありますので、ただ形式論といたしましては、国会政府と同時にせよということであるが、そういう同時にせよということは、たびたび今までも議論のありました通りに、どうも準司法的とか準立法的であるという、やや行き過ぎた点がありはすまいかという点からいたしまして、国会には直接でなく政府勧告するということになりましたが、これも実際の上におきましては、五日間のことでありまするがゆえに、形式論としてはそういう御議論もあるかもしれませんが、人事院独立性を持つておる実質におきまして、国家公務員を擁護するという立場におきましては、何ら相違ないということは、しばしば申し上げた通りであります。
  5. 櫻井奎夫

    櫻井委員 今の大臣答弁を承りますと、今回の場合は内閣勧告をし、内閣はまたそれを国会に五日以内に報告をしなければならないのだから、何ら実質的にかわつてない。ただ形式の上からは異なるけれども、実質的には変化がないのだというようなお言葉でございましたけれども、これは大きな考え相違だと思います。そもそも同時に勧告するというのは、形式論でなくして、人事院のいわゆる独立性——それは内閣総理大臣指揮監督下にあるのでありますけれども、内閣から、いわゆる国家行政組織法によらない独立したところの権能を持つておるその現われなんです。それがいわゆる国権最高機関である国会に、内閣に対すると同じような力を持つて勧告をする。ここにいわゆる人事院独立性というものがはつきり形となつて現われておる。実質的にかわりがないとおつしやいますが、今回の改正案は、人事院を抜本的に改正して、総理府の単なる一外局としてしまつて、これを内閣に隸属させよう、こういう考えから、これは当然起きて来るのであつて、平たい言葉で申しますと、これはいわゆる内閣の家来になつたのだから、内閣という御主人公を通して、国権最高機関である国会に申し上げねばならない、お前が直接に申し上げてはいけない、必ず主人公を通して申し上げろ、こういうことであります。これは実質的に違いがないという大臣答弁のようでございますが、これは非常な相違がございます。人事院を骨抜きにするという考え方にあくまでも原則を置いて、岡部さんも大臣も、このような法改正をいたしても、何ら実質的に人事院機能というものは縮小されてないということをしばしば答弁されておる。なるほど法の上においては、今度できる国家人事委員会ですか、これは今まで人事院の持つておりましたところのいろいろな、たとえば給与ベース改訂勧告であるとか、不利益処分判定権であるとか、また不当な取扱いに対する申出判定権、あるいは試験とか任用とか、こういうふうな準司法権なり準立法権はある程度は与えられおるように見受けられますけれども、しかしこれが総理府の中に入つてしまえば、これはあくまでも形だけの問題でありまして、実質的に人事委員会に直接の権能があるわけではないのであります。たとえて申すならば、今までりつぱに地上に咲いていた花を切つて来て花びんに入れても、花も葉もそのままだから少しもかわらないのだと言つておられるのと同じだが、これは根本的に違うのです。根もなければ茎もない。ただ人事官の身分だけ保障して、機構そのものはすべて総理府の中に吸収してしまつて、これで独立性があるのか、一向今までの人事院権能かわりはないということは、まるでさぎをからすと言いくるめているいわゆる吉田内閣常套手段である。こういう議論にはわれわれは絶対に承服するわけには参らない。この勧告権の問題でございますが、今までの給与改訂については、はつきり百分の五という一つ基準がある。こういうものも今回抹殺されておるが、これはいかなる観点に立つて抹殺されたのであるか、この点を承りたい。
  6. 岡部史郎

    岡部政府委員 私からもお答え申し上げますが、人事院勧告権国会に対して直接ではなしに、内閣に対して行い、内閣がこれを国会報告するという形にしたのは、人事院権限実質的に奪つてしまうものではなかろうかというお尋ねでございますが、この点につきましては、国家公務員法だけをごらんになりますると、そういうようにお考えになれる面もあろうかと思うのでありますが、これは毎々申し上げました通り人事院もやはり内閣の所轄のもとにおける行政機関の一種であるというような観点からも、お考えいただかなければならないと思うのであります。すなわち行政機関と申しますものは、現在の議院内閣制のものとにおきましては、内閣を頂点として、国会に対して責任を負うのである、こういうように考える次第であります。従いまして、凡百の行政機関にはいろいろな性格を持つているのがあるわけでございまして、具体的に申しますると、現在におきましては、国家公務員八十万のうち、国家企業に従事いたします職員、すなわち公労法適用を受ける職員というものは三十何万ございます。これらの職員福祉利益保護はどこが扱つているかと申しますると、これは結局調停委員会及び仲裁委員会という行政委員会で扱うということに相なつております。すなわち労働省外局としての公共企業体等仲裁委員会公共企業体等調停委員会というものが、この現業関係四十万近くの職員利益保護に当つておるわけであります。その点におきましては、人事院と同じ役割を演じておるわけであります。そういたしますると、今の櫻井委員のお考えを押し進めますと、これらの調停委員会仲裁委員会も、労働省外局として置くのはきわめて不適当で、やはりこれも内閣に置かなければならぬといういうような御議論になつて参るかと思うのであります。さらにこの論旨を押し進めまするならば、中央労働委員会もやはり労働省外局となつておる、これも不都合ではあるまいかという御議論になると思うのであります。現在におきまして労働省外局でありまするこれらの三つの行政委員会がそれぞれ負わされております使命を、独立に、公正に、しかも政府からの圧迫なしに遂行している。こういうように考えられるわけなのでありまして、これはどういうことを意味するかと申しますると、現在の行政組織形態を定めているものは国家行政組織法である。その行政組織法のもとにおきまして、行政機関独立的な権限行使するための機構としては、行政委員会という制度を認めておる。この行政委員会につきましては、それぞれ独立的な権限性格とを与えておるわけでありまして、行政機関独立的な権能行使し、独立性格を持つものとしては、現在の行政組織法のもとにおいては、それぞれ行政委員会という方法があるわけであります。それでこのたびの改組というのは、要するに人事院も一種の行政機関であるから、これを行政組織法のもとに含めよう。すなわち国の行政組織体系化し、合理化しようという趣旨に出ずるわけであります。そういう見地からいたしますと、内閣という最高行政機関のもとに属します独立性を持つた国家人事委員会勧告を行う場合におきましては、内閣に対して行う。これを内閣責任においてただちに国会に対して報告するというようなことは、組織理論の面から申しまして、一歩現在の行政組織体系合理化を進めたものである、こういうように考える次第であります。  それから第二点のお尋ねの、第二十八条の人事院勧告基準といたしまして、百分の五という数字的な制限をとることにいたしましたのは、これはもつぱらここ数年間の実績にかんがみまして、人事院が自由な立場から一層適切に勧告を行うためにこのような制限をとつた方がいいというような趣旨に出ずるものであるのでありまして、この点はこのたびの制度改革機構簡素化という面とは直接につながりがない。もつぱら内容改善、それはその他の公務員法懲戒手続であるとか、刑事訴追関係であるとか、任用制度についても若干の改正があつたのでありますが、それらとの一連の改善案であるわけであります。
  7. 櫻井奎夫

    櫻井委員 なるほど今の岡部さんの答弁は、日本高級官僚らしく、実に水も漏らさぬ御答弁でございました。論旨は、形式理論上非常に整備しております。実に拝聴いたしておつて感心をいたしたわけでございますが、しかし国家公務員おおよそ八十万くらいの中に公労法適用者が約四十万ある。こういう現業の方々は、いわゆる仲裁委員会なり、そういうものがあつて、ここで裁定を下しておる。これはやはり一つ労働省外局であつて、何も独立したものではない、こういうことです。しからば一般職のことを扱つておる人事院も、仲裁委員会と同じような外局になつていいではないかという議論でございますが、これはなるほどりくつの上からいえばその通りでございましようが、労働者はこれでは絶対納得いたしません。現業のいわゆる国家公務員は、はつきり団体交渉権を認められているということが基本です。団体交渉権を認められておつて、その上で仲裁裁定があるのでしよう。一般職公務員には、団体交渉権を認めずにおいて、そして人事院を単なる外局にしてしまつて、一体だれがこの一般職公務員利益を守つてくれるか、これは重大なる問題である。基本的に違います。しからばそのような外局にするならば、現業公務員と同じような団体交渉権をこの一般職職員に与える用意があるかどうか。そうするならば、初めてこれは平等でございましよう。しかし片一方にはそういうものを与えて、片一方には何らのそういう特権がない。特権というよりも当然の人間権利である。そういうものを剥奪しておる、ここに大きな食い違いがあるのであつて、その点はどういうふうに考えておられますか。
  8. 岡部史郎

    岡部政府委員 お答えいたします。国家公務員全般のうち、国家企業に従事するものにつきましては、団体交渉権及びそれに基く団体協約権が認められている。もつとも団体協約権につきましても、公労法第八条によりまして、一定の限度があるわけでありますが、その点につきましては、櫻井さんのお示しの通りでございます。ただ根本的に申しますと、国家公務員というものは、憲法上明らかに定められております通り特殊性を持ちますがゆえに、一般国民の有する第二十八条の団体行動権制限を受けるということは当然なことと考えておるわけであります。ただその制限の受け方に、いろいろ公務員の特質によりまして、ニユアンスをつけているというのが現在の制度体系となつているわけであります。すなわち公務員が広く全部争議権が禁止されているということは、すべての公務員を通じまして、一様であることは御承知の通りであります。ただ企業関係の五現業職員の大部分につきましては、それがその業務の特殊性で、国家企業に従事しているという意味におきまして、現在の三公社職員と同じ立場にあるという点に重点を置きまして、その団体行動権公社職員と同じに取扱つて行くというのが現在の法制であります。ところが公企業に従事している以外の職員、すなわちもつぱら行政権行使にあたる職員を中心といたしまして、その他の職員につきましては、それぞれの職務の特殊性に応じまして、団体協約権あるいは団体交渉権と申しておりますが、そういうものについても制限を受け、またさらに一部の職員、きわめて厳正な立場から国家権力行使にあたる職員につきましては、団結権につきましても、一層きびしい制限を講じているというような段階の相違があるのであります。これらの現業関係職員以外の非現業職員というものにつきましては、国家公務員法が全面的に適用されまして、従つてこれらの職員につきましては、国家公務員法の規定に従いまして、人事院福祉利益保護にあたつているということになるわけであります。人事院が改組されまして、国家人事委員会に相なりましても、これらの一般職員についての福祉利益保護につきましては、従来と何らかわりがない。結局先ほどお尋ねがございましたが、外局と相なるということは、その福祉利益保護の任にあたる行政機関独立性を奪うものではない。むしろ現在の行政組織体系におきましては、外局という形態独立性を確保する最もいい方法である、こういうように今の状態のもとにおいては考えられるわけでございます。
  9. 櫻井奎夫

    櫻井委員 今の答弁でございますが、人事院が広汎な独立性を持つており、いわゆる仲裁委員会やその他の外局相違しており、ある点においては、内閣の意の通りにならないような準司法権なり、準立法権を持つているということも、その基本的な考え方は、やはり現業非現業職員の持つておる利益——現業の方は団体交渉権を持つており、非現業の方は団体交渉権がない、これは人間基本的権利を奪うもものであつて、ただ単にお前たち公務員であるから政府の言う通りになれと言うのは、きわめて封建的な考え方であつて近代国家にあつて公務員といえども憲法に保障されたところの基本的人権は当然有するのでありまして、その意味から、現業非現業の区別は、人事院がそれだけ大きな権能を持つておるために、非現業公務員人事院を頼りにして、自分たちにない団体交渉権人事院独立性があるために、かろうじて今日まで耐え忍んで来ておる。ところがその人事院を、今度は普通の仲裁委員会並にして、外局にしてしまうということになれば、これはやはり重大な問題をあとに残すことになる。ニユアンスがあつてどうだこうだとおつしやるけれども、公務員としての利益なり福祉なりにおいて、現業非現業と何らかわりがあるはずがないのであります。従つて人事院をそのような外局にするならば、当然非現業諸君にも団体交渉権なり何なり、基本的な、そういう人間の持つ権利を与えるべきが私は至当であると思う。そこにおいて初めて非現業公務員諸君も納得されるのでありましよう。あなたの今のような答弁では、やはり片手落ちの感を深くするのであつて一般職公務員諸君が決して納得するはずがないと思う。この点について担当大臣は一体どのような考えを持つておられるか、大臣考えを承つておきたい。
  10. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 実質独立性を欠いておるという、こういう観点のもとに終始御質問に相なつておりますが、私どもはその観点をまつたく異にいたしておりまして、実質において独立性は侵されてわらぬ、こういう立場におきまして答弁をいたしておりまして、そこで食い違いがあると思います。さて、なぜ今まで国家公務員諸君に対して、あるいは団結し、交渉権を持ち、あるいは争議権を与えぬかということは、先般来御答弁申し上げた通りでありますし、過去の実情に即しまして、そのことが国家公務員としてどうか、そういう過去の行動は行き過ぎた点があるというところよりいたしまして、こういう国家公務員法改正が、つまり現行法ができ上つたことであろうと思うのでありまして、それは国家最高機関において当時いろいろ御考究の結果、さような現行法ができたものであろうと思うものであります。
  11. 櫻井奎夫

    櫻井委員 大臣はしばしば今度のような改革をしても独立性が侵されないということを言つておられますが、これは完全な詭弁です。一つ総理府外局になつてしまつた人事院が、そこに独立性があるはずがない。先ほども申したように、形はやはり花もついておるし葉つぱもついておるでしようが、全然根がない。花びんにさした花と同じで、これは独立性があるとおつしやつておるが、それは根本的に考え方が違う。それから勧告にいたしましても、この改正案によると、国家人事委員会俸給表改正を必要と認めるときに行うとある。こういうことになりますと、これは時の政府がどのような財政政策をとるかわかりませんが、かりに今年のようにべらぼうな一兆億円の緊縮予算という、つじつまの合わないような予算を組んで、そして国民耐乏生活をしいるというような場合になつて来れば、これは政府の圧力を受けまして、その単なる一外局であるところの人事委員会が、独自の見解に立つて俸給表改訂勧告というようなことができるはずがないのであります。時の政治権力の思うままに、その指揮に甘んじるということになる。一方またこの条文によると、国家人事委員会俸給表改訂を必要と認めるということになつておるのでありますから、これはなるほど物価は上つたけれども、国の予算はこういう緊縮財政であるから、少ししんぼうしてもらわねばならない、改訂の必要を認めないということになれば、いかようにもこれは国家人事委員会独自の見解がここに生じて来る。これは明らかに、いわゆる独立性が侵されておるのであります。そういう点については、大臣は、この国家人事委員会ができても、時のいわゆる政治権力に侵されるようなことがなく、やはり断固として俸給表勧告をやるであろうというふうに考えておられるかどうか、その点ひとつお伺いしたい
  12. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 しばしばこの点も御答弁申し上げた通り人事院は今度の改正になりましても独立性は失いませんがゆえに、独自の見解において政府勧告するのは当然のことであろうと思つております。
  13. 加賀田進

    加賀田委員 今加藤国務大臣が、今度の改正に基いて人事院独立性が縮小されていないという答弁ですけれども、この法案の改正されたときには、人事院に対して独立性を特に与えなくちやならないといつて総理府外局内閣の所管に置いたものであります。それをまたいつか来た道という形で元にもどしておる。そういう関連性はどう考えられますか。
  14. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 ただいまの御質問でありますが、むしろ私より加賀田君の方がよく御承知だろうと思いますが、こういう改正の問題は、そのときによりまして、ときどき実情に即して行くのでありますゆえに、その場合はそうしたことであつたと思いますが、ただいまの実情は今回の改正案にした方が適当である、実情に即する、こう思つてこういう改正案を提出した次第であります。
  15. 加賀田進

    加賀田委員 改正案が適正であるかないかという問題を質問しておるわけではないのであります。人事院独立性を侵されていないという答弁であつたのでありますが、第三国会のときに吉田総理自体の手から出したときに、独立性を特に人事院としては与えなくちやならない、そのためにこの改正案を出すといつて総理府外局を今度内閣に置き、しかも財政的にもある程度の独立性を認める、拡大しなければならないといつて出して来た。それを今度また元にもどつて来るというのは、いかに情勢の変化があろうとも、これは経済情勢とか一般情勢の変化に基いて自由に人事院独立性というものは縮小されたり、あるいは拡大されたりするような性格のものではないと思うのです。だから同じ吉田内閣の手によつて独立性を与えなくちやならぬといつて出して来たものを、今度は独立性は従来と同じなんだといつて元にもどすということは、どうも一貫性がないわけなんで、前に吉田内閣の手によつて出したときに、ほんとうに独立性を拡大するのだという説明通りの意図で出したとすれば、どちらかが間違つておる。現在出されたのが、やはり独立性を縮小されているのか、あるいは前の第三国会に出したときに独立性がそのままであつたのか、どちらかが間違つておるのではないかと思うのです。全然違つた形で出ておる。その点ひとつ説明願いたいと思う。
  16. 岡部史郎

    岡部政府委員 事技術的に関しまする部分がありますから、私からお答え申し上げますが、ただいま加賀田さんが仰せになりました人事院独立性というものがどこに現われているかと申しますと、第一には人事院を構成する三人の人事官あるいは前の言葉で申しますならば人事委員会の人事委員の任免あるいは身分の保障という点におきまして真に独立性が現われていると思うのであります。その点におきましては昭和二十三年の改正の際に人事委員人事官に改めました場合に、人事官の任免、ことに罷免手続であるとか、弾劾手続等におきまして、きわめて高度の独立性を与えたわけであります。この点におきましては、人事官の身分というものは高度に保障されまして、その与えられました権限行使するのに、最も不覊独立にこれを行うことができるように思われるのであります。従いまして人事官の身分の保障、権限独立という点につきましては、このたび何ら変更がないわけでありまするから、この点におきましては、加藤国務大臣から先ほどもお答え申し上げた通りであると存ずるのであります。ただ、今加賀田委員が言われました、国家行政組織法適用することにしたことが、きわめてその独立性をそこなうことになるのではないかというようなお尋ねでございますが、その点におきましては、国家行政組織法をこれに適用するということは、決して何らその人事官独立性、あるいは人事院権限行使について支障を来し、これを弱めるというものではないと、こう考える次第でございます。
  17. 加賀田進

    加賀田委員  独立性を妨げない、また今後妨げないようにしたいというような答弁がしばしばあるわけですけれども、しかしこのことはやはり組織そのものの形態に基いて、あるいは内閣自体のそのときの意思に基いて妨げ得るような体制を整えるということは、これは非常に危険じやないかと思います。いかにこの委員会で、政府責任として今後そういう独立性を妨げないといつて答弁されても、この状態に基いては、やはりその当時の総理大臣自体の意思に基いて、人事院に対して具体的に圧力がかけ得る体制をとるべきではない。いかなる内閣ができようとも、いかなる総理大臣ができようとも、そのときの意思に基いて、人事院にいろいろ圧力をかけられるような体制をぼくはとるべきでないとこう考えます。  なお櫻井君から質問があつたように、百分の五の問題ですね。これはもつと自由にする、あるいは人事院としても自由な意思に基いて勧告できるような幅の広いというような説明があつたのでありますが、この百分の五の勧告というのは、百分の五以下であつたら勧告してはならないという裏づけではない。いわゆる百分の五以下でも勧告する権利があるし、百分の五以上だつたら絶対に勧告をしなければならぬという規定であつて、それとこれと抹殺した関連の上に立つて私は人事院のこういう勧告権に対しては、もつと幅の広い、自由な権限を与えたということは逆の意味であつて政府のいわゆるそのときの圧力に基いて、勧告しなければならない状態であつてもできないという、かえつて人事院のそういう勧告権に対して制約を加えるような改悪となつて現われて来ておるのじやないか、その点をひとつお伺いしておきたいと思います。
  18. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 今の御質問をもう一度……。
  19. 加賀田進

    加賀田委員 国家公務員法第二十八条の、百分の五以上増減する必要が生じた場合には、人事院はこれに対して必要な勧告をしなければならないと出ているのを削除したのはなぜかという櫻井委員質問に対する答弁で、加藤国務大臣は、これは人事院勧告権をもつと大幅に、自由な意思に基いてするようにという意味でこれを削除したという御答弁をされた。これは、ぼくは、まつたく反対だと思う。百分の五以上の増減があつた場合に勧告をするという権限じやなくして、百分の五以下でも勧告する権利は、人事院としてはあるわけなんです。特にこれは百分の五以上の増減のあつた場合には勧告しなくちやならないという規定をしたわけです。それほど公務員に対しての給与は、この法律によつて保護しているわけです。それを抹殺してしまうと、時の内閣の意思に基いて、今のこういう権限が縮小されて来るとわれわれは考えておりますが、縮小されて来ると、その当時の内閣人事院に対する圧力によつていろいろ勧告をしなくちやならないという状態になつても、人事院勧告権というものを制約することになつて来る。だから加藤国務大臣の説明と全然逆の場合がわれわれには考えられる。それをひとつ説明してもらいたい。
  20. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 二十八条の、「俸給表に定める給与を百分の五以上増減する必要が生じたと認められるときは、」という、この百分の五という一つのめどをとつたということは、けしからぬじやないかという御議論でありまするが、むしろこれで、私はある意味において自由になつたじやないか、人事院独立性が——百分の五とありますけれども、百分の五でなくても、人事院がこれを勧告する必要を生じたときには自由に勧告し得る、こう私は思つて、むしろこれは自由になつたことであろうと思うのであります。ことに先刻来、人事院を非常に縮小して、根を切つてどこか花いけへいけたようなものだということがありましたが、私どもは少しもそうは感じておらぬのでありまして、独立性ということは制度ばかりではないのであります。その人事官でありまするか、今度人事委員と申しまするか、それの地位、身分というものが保障されるときに、初めて独立性ということが維持されると思うのでありまして、これが一番大事な問題であろうと思うのであります。人事委員を任免する場合もそうでありますし、ことに人事委員を罷免さすというような力は、内閣には何もないのであります。ゆえにこれが人事院の非常な独立性を維持しておる。今度の改正におきましては、少しもその点を侵してはおりませんがゆこに、花の根を切つて花いけにいけたなんということは、全然そうではないのであります。むしろこれは、ちやんと肥料を増したものと考えております。
  21. 加賀田進

    加賀田委員 もつと大臣は勉強してもらわなくちや困ります。二十八条は、百分の五以上増減があつた場合には勧告するというのじやない。百分の五以上増減する必要があつた場合には必ず勧告しなければならないという規定であつて、今でも勧告権はあるわけなんだから、大臣のさいぜんの説明では、結局今の人事院では、百分の五以下なら勧告権はないというようにあなたは答弁をされております。それは大きな間違いだ。百分の五以下でも人事院としては勧告権はあるわけなんです。しかし百分の五以上の場合にはぜひ勧告しなければならないという規定で、ここで公務員に対する保護をしているわけなんです。だから、たとえばこれを削除されてしまえば、その状態に基いて、百分の十の増減を必要とする場合でも、勧告しなくてもいいという通論も出て来るわけです。(「そこが自由だ」と呼ぶ者あり)それは人事院そのものに対しては自由かもしれません。しかし私はそのことによつて公務員労働条件というものが、逆に利用されるおそれがある、それを言つているわけなんです。ぼくは浅井総裁にもお尋ねしたいのですが、これは確かに私どもの法文解釈では、百分の五以下でも勧告権があると考えておりますが、その点に対して一応総裁の見解を承りたいと同時に、大臣からも御答弁を願いたいと思うのであります。
  22. 淺井清

    ○淺井政府委員 勧告し得る場合と勧告しなければならないということは、その違いがあるように考えております。
  23. 加賀田進

    加賀田委員 議事録を見ますと、加藤国務大臣答弁はそうなつておると思うのでありますが、それを撤回されるのでありますか。総裁の答弁通り加藤国務大臣が了とされるならば、私は質問を終ります。
  24. 櫻井奎夫

    櫻井委員 国務大臣は今の浅井総裁の答弁をお認めになるのですか、それなら答弁はいらないということになるのですがね。
  25. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 ただいま総裁の答弁した通りでよろしゆうございます。
  26. 川島正次郎

    川島委員長 それでは休憩いたします。  午後二時から再開いたします。     午前十一時五十分休憩      ————◇—————     午後二時三十六分開議
  27. 川島正次郎

    川島委員長 午前に引続き会議を開きます。  櫻井奎夫君
  28. 櫻井奎夫

    櫻井委員 午前中私が申し上げましたのは、同じ国家公務員の中で、現業公務員、いわゆる公労法適用されておる公務員と、非現業公務員との間における差別的待遇、一方に団体交渉権を許し、一方に団体交渉権がない。しかもその団体交渉権を持たない非現業公務員は、この代償として非常な独立性の強い人事院がその保護機関であつたために、まずまず納得して今日まで至つたわけでありますが、人事院機能を今回のごとく大幅に縮小するということになれば、ここに当然この現業非現業との間に不公平が生じて来る。このことはるる午前中に申し上げましたが、この点に関しまして、担当大臣である加藤国務大臣お尋ねいたしますが、このような不均衡を何らかの形で、たとえば現業非現業公務員仲裁裁定制度のごとく、いわゆる団体交渉権を認めるとか、何らか不均衡を是正する意思がおありになるのかどうか、この点を第一点としてお伺いいたしたい。
  29. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 今さような立法措置を講ずろ考えは別に持つておりません。
  30. 櫻井奎夫

    櫻井委員 そうすると、全然そういう考えがないというと、やはりこの現業非現業との間における不公平ということについては、大臣はお認めでありますかどうですか。
  31. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 一般公務員は、しばしはお答えいたしましたように国家に奉仕する、そういう立場におるのでございまして、現業とはよほど性格が違つておりますがゆえに、ただいまお答えいたした通りでございます。
  32. 櫻井奎夫

    櫻井委員 それは違いますよ。現業の中にも国家に奉仕する公務員が多数あります。郵政省のごときはそうじやございませんか。何らそこに違いはありませんよ。大臣はもう少し勉強なさらないと、これはとんでもない御答弁だと思うのです。一般職国家に奉仕し、現業は別に直接国家に奉仕しないかのごとき言辞でございますが、それは重大な認識の相違でございます。その点はいかがでございますか。
  33. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 ただいまの櫻井君の御質問は、たとえば五現業のごときもので一般職と、公労法適用のものとの差別についてのことでございますか。
  34. 櫻井奎夫

    櫻井委員 国家公務員の中にいわゆる五現業のようなものもございますし、一般職のように非現業のものもあるわけです。ところがこれは同じ国家公務員の身分を持つてつて、この現業諸君は御承知の通り当局と団体交渉権があるわけです。その上その団体交渉が妥結に至らない場合は、仲裁裁定が下される。従いまして当然彼らは団体交渉権を持つている。ところが今回の改正によりますと、一般職の者は——これは前から団体交渉権はもちろんなかつたわけですけれども、そのかわり人事院という独立性の強い機関があつて、彼らを保護しておつた。給与の勧告についても、国会なり内閣に同時に勧告権を持つ非常に広汎な権威を持つ人事院保護機関としてあつたわけです。ここでいささかバランスはとれておつたと思う。ところが今回のこの改正案によりますと、人事院独立性というものを大幅に縮小して、単なる総理府外局にしてしまう。現業の人たち仲裁委員会一つ外局ですが、人事院をこれと同じようにしてしまつて、その下にある一般職公務員には団体交渉権がないわけです。片一方には団体交渉権がある。同じ国家公務員でありながらこんな不均衡が生じて来る、こう私は言つておる。従つてこれを同じようにするために、公務員法適用による一般職公務員には、団体交渉権なり何なりこれに見合うようなものを考えておられるかどうか、こういう質問であります。
  35. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 公労法適用の者と、公労法適用外の一般公務員とは不均衡で差があるというお話でありますが、不均衡であるということにつきましては、先般山口君の御質問に対して、何とか均衡を得るようにしなければならぬということを申しましたが、それらに対して団交権を与えるなどということは考えておりませんし、ことに先般来しばしばお答えしたごとく、今度の改正案によつて人事院性格は弱体化しておらぬから、その点は別にかれこれ議論はなかろう、こう思つておる。ただ同じ現業で同じような仕事をしつつ不均衡な場合におきましては、ある点までこれを何とか均衡をとるようにいたしたいということは、私が山口君に先般お答えした通りでございまして、それは今調査いたしておりますので、何か成案を得ましたならば、今国会にでも提出いたしたいと思つておるような気持でおります。
  36. 櫻井奎夫

    櫻井委員 了解いたしました。ただいまその不均衡に対する具体案はないが、いずれそのような処置をとりたい。そのために今でも研究中である、こういう御答弁でございます。従つてもしもこの法案が通りました場合は必ず大臣のただいまの言質を忠実に守られて、同じ国家公務員の中にあるこの不均衡というものについては、十分に考えていただかないと、とても公務員が納得しない、特に非現業一般職においては、とうてい納得しないというふうに考えるのであります。  その点はそのくらいにして、次に国家公務員法改正案の提案理由を見ますと、しばしば大臣答弁しておられるように、わが国行政機構の実情に調和した組織と権限を持たしめるために現在の人事院を改組する、こういう提案理由でございます。     〔委員長退席、山口(好)委員長代理着席〕 それから占領政策の行き過ぎを是正するために、行政機構の実情に適応して改める、こういう提案理由の趣旨のようでございますが、一応念を押しておきます。
  37. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 これもしばしばお答えした通りでございます。
  38. 櫻井奎夫

    櫻井委員 占領政策の行き過ぎを是正するようなことで、実情に調和するような組織と権限を持たしめる、こういう話でございますが、しからば現在の人事院機構なり権限なりにおいて、どこが不調和なのでございましようか。どこにそれを改めなければならぬ不調和の最も顕著な事実があるか、ただそういう抽象的な言葉でなくして、実はこういうところが非常に調和を破つておる、こういうところが行政機構の全般的な運営の上において非常に支障がある、従つてこういうふうに改めるのだ、こういうふうな具体的な御説明をいただかないと、ただ言葉の上だけの理由では、納得できないわけでありますが、その点をひとつ具体的にお示しを願います。
  39. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 これもしばしば私より、また政府委員よりお答えした通りでございます。
  40. 櫻井奎夫

    櫻井委員 しばしばあなたは御答弁になつておるとおつしやいますが、われわれは一つも聞いてない、しばしば聞いてない。(笑声)具体的な例を、どこが調和を欠くのか、現在の人事院権能なり組織でやつてつて、どこに調和を欠いておるのか、実情に即しないところがあるのか、ここがこういうふうだからこう改めなくちやならぬという提案理由である以上は、そこにはつきりしたものが示されなければならぬ。ただ言葉の上で調和を欠くとか、実情に即しないといつたところで説明になりません。はつきり具体的の例を私はお示し願いたい。私は今までここを一ぺんも休んでおりません。よく聞いておりましたけれども、大臣から何ら具体的な答弁をいただいてない、従つて私はきようそのことをはつきり御解明を願いたいと思うのです。
  41. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 櫻井さん終始御出席だつたというお話でありましたが、御出席でございましようが、私からもしばしば申したことでございまして、要するに今度の改正はわれわれが一口に申しますれば、これが現状に即したものだと、こう思つてさしつかえないのでありまして、他の政府委員よりもこのことはしばしば申し上げたことでございます。
  42. 櫻井奎夫

    櫻井委員 具体的な事例を私は要求しておる、具体的な事例をお示し願いたい。もししばしば言つたといわれるなら、私が聞き漏らしたこともあるかもしれませんから、もう一度ここではつきり御答弁願いたい。
  43. 岡部史郎

    岡部政府委員 お答え申し上げます。今度の改正案に織り込みました諸点、すなはち二重予算制度の廃止であるとかあるいは人事院という機構上の地位を総理府外局の地位に置いて、他の行政機関と同じように、国家行政組織法におきまして、これに適当な地位を与えることとか、行政機関としての機能におきまして、内閣のもとにおける行政機関である以上、その勧告権内閣に対して行い、内閣国会に対してこれを報告するというような諸点、すべてこれらは独立後のわが国の行政組織の現状にマツチせしめるような改正点であるわけであります。
  44. 櫻井奎夫

    櫻井委員 それは今回の改正の要点なのですよ。こういうところをこういうふうに改めた、そうとしかとれないのです。現在の人事院の持つておる権能なり機能なりというのを縮小されるわけでしよう。それをどういうわけでこうするかというと、これはあなたの今の御説明は、ここに出したものの改正の要点を説明されておるのです。改正の要点はここに書いてありますから、何も私は聞く必要がない。現在やつておる人事院のあり方というのが、どうしてわが国の行政機構の実情に調和しないのか。調和しないから、こういうふうに改めたと書いてある。調和しない具体的な——人事院というのは、非常な権能を持つてつて国会内閣に同時に勧告する、こういうことははなはだけしからぬ、内閣予算というものを無視して、かつて勧告をする、こういうことは非常によろしくないから、こういうふうにしたのだとかいう理由があるはずです。ところがそういう理由については、何ら具体的に示されずに、ただ国情に調和するとかなんとかいうような、抽象的な言葉であります。私が要求しているのは、現在の人事院がこういうふうなことをやつてつては困る、これははなはだよろしくないというような具体的事例を、ひとつはつきりお示し願いたい。
  45. 岡部史郎

    岡部政府委員 お答え申し上げます。ただいまの櫻井委員お尋ねは、運用上どういう欠点があつたかというような御意向のようでございますが、制度が現在の諸般の制度とマッチしているかどうかということと、その運用がどうかということとは、別問題でございまして、非常に制度上にいろいろの問題がありましても、それは運用によつてカバーして行ける面もございますし、その機関を運用する職員の良識にまつて、欠陥をカバーされる場合もいろいろあるだろうと思うのでありますが、要するに政府として問題といたしますのは、制度がどうであるかということが重点であるのであります。制度がこういうよう健現在の国情とマツチしておらない、あるいは諸般の行政制度とマツチしていない点を改めるというのでございまして、現在ある機関がどういうように運用されて、その運用がけしからぬとかいいとか、そういうことをこの提案理由において申し上げておる趣旨ではない、こう存じております。
  46. 櫻井奎夫

    櫻井委員 そうすると、これは運用上の問題でなくて、ただ制度上の問題だ、いわゆる外面的に見て、非常にかつこうが悪い、日本の行政機構の形の上で非常にこれはかつこうが悪い、こういう独立権限を持つた人事院なんというのはほかにない、たんこぶのように一つ飛び出ているから、きちつとした一つのわくに入れよう、こういう考えから、今回の法案を提案されたというわけでございますか。
  47. 岡部史郎

    岡部政府委員 おおむねお説の通りでございまして、現在の公務員法のもとにおける人事院機構が、現在の憲法のもとにおける議院内閣制と種々な点におきまして難点があるではないかというような御質疑が、第三回国会以来種々あつたわけでございますが、その場合におきましても、ここにおられる淺井総裁以下関係政府委員は、そのような議院内閣制人事院制度との制度上の難点は、人事官の良識によつて運用して行くつもりであるというような答弁も、しばしばあつたわけでございまして、政府側といたしまして、その運用につきましてかれこれ申すのでないのであります。あくまで制度として、現在の行政組織全般に心けるふさわしいあり方に直そうというのにほかならないのでございます。
  48. 櫻井奎夫

    櫻井委員 これはまことに異なる御意見を承わるものでございまして、制度と運用と切り離しておられるようでありますが、制度ができて運用というものができて来るわけです。運用上何ら支障がないのに、制度をかえる必要はございません。これは本末転倒もはなはだしいので、ただ制度の上から形式を整えなければならないという理由のもとに、現在の人事院を改組される何らの理由もないと思うのでありますが、その点はどうですか。
  49. 岡部史郎

    岡部政府委員 運用と制度という問題につきまして、御指摘があつたわけでございますが、行政組織あるいは機構改革ということは、これはもとより機構それ自体といたしまして、できるだけこれを合理化し、その組織を正しくして、それによりまして常に運用のよろしきを確保するというのが、組織面における政府側の努力すべき当然の責務だろうと思うのであります。     〔山口(好)委員長代理退席、委員長着席〕 制度におきまするいろいろな難点を運用だけでカバーして行くということは、これは政府側としてとるべき策ではないのでありまして、もちろん制度は運用によつて生きて行くのでございますが、できるだけ制度の面におきましても、運用のよろしきを得るように、逐次改善して参るための努力を尽すというのが、政府として当然必要であろう、こう考えておる次第でございます。
  50. 森三樹二

    ○森(三)委員 今櫻井委員から質疑がなされました提案理由の点について、制度改革について、どこにその必要があつたかというような問題がつつ込まれておつたのですが、どうも私は御答弁を伺つておりましても、今回の改正案をつくらなければならぬ理由というものが非常に薄弱だと思います。私どもは、政府がいわゆる緊縮財政によるところの機構改革、そしてまた人員の整理、こういう面からこういうふうにしたのか、あるいは人事院独立性を認めておいたのでは、結局予算の措置その他について、どうしても人事院が自主独立勧告などをやるので、これを押えつけるために機構改革を行わんとして、今回の改正案が出たものである、こういうように考えておるのであります。あなた方は表面の答弁をなさいますが、その意図しておるところは、いわゆる人事院の弱体化をはかつておるものにほかならない、かように考えるのですが、いかがですか。
  51. 岡部史郎

    岡部政府委員 お答え申し上げますが、このたびの人事院の改組に関しまする国家公務員法改正案と申しますのは、内閣におきまして行政制度を大規模に改革する、その改革の方針といたしましては、できるだけいらない行政事務はこれをやめる、また従来煩雑に過ぎた関係法令は改廃する、それから行政機構もこれを合理化する、それによつて生じた余剰人員を縮減する、こういうような考え方で参つておるわけであります。それに基きまして、定員法の改正案についてもただいま御審議いただいておるわけであります。制度改正といたしましては、この人事院の改組もその一つでありまして、内閣の所轄のもとにある人事行政機関としてのあり方というものが、一面におきましてはそれはあくまで行政機関たる内閣責任のもとにおいて行うべき人事行政を実施し、担任する行政機関であるという実質と、それから一面におきましては国家公務員福祉保護するために、その身分上の保障について裁定を行うとか、あるいは準立法機能を行うとか、あるいは試験を行うとか、または勧告を行うというような、政府の普通の行政から独立して行うべき機能を、これを独立的に行い得るような、その二つの面とを合せて、それを現在の議院内閣制のもとにおいて最もふさわしいように調和するようにというのが今度の改正案趣旨であります。森委員お尋ねのように、むやみに人事院権限を弱体化するという趣旨はごうもないことは、繰返してお答え申し上げておきます。
  52. 森三樹二

    ○森(三)委員 あなたはそのように人事院の弱体化をはかるものでないというような非常にきれいな答弁をしておりますが、しかし憲法の七十三条には、「内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。」として、その四号に、「法律の定める基準に従い、官吏に関する事務を掌理すること。」そして憲法六十五条には、「行政権は、内閣に属する。」とある。この六十五条の基本的な原則というものは何人も承認せざるを得ないと思うのですが、従来人事院というものは内閣の直轄であつた。しかるにそれが今度内閣総理大臣の隷属下にあるということは、これはもう機構改革上当然弱体化しているということは何人も疑いをいれない既定の事案ではないですか。それをあなたは弱体化でないとおつしやいますが、機構自体がやはり弱体化されている。しかも人事院総裁という名称をつけてありましたその人事院の長官が、やはり機構改革によつて、認証官としての地位は、いろいろな角度から検討してようやく残りましたけれども、しかしその長官たる身分の扱いについても、これはだれが見ても格下げだ。総理大臣の思うがままにあご一つで動くのだという印象を受けているじやないですか。それが弱体化でないというのは非常に矛盾した答弁だと思うのですが、いかがですか。
  53. 岡部史郎

    岡部政府委員 お答え申し上げますが、機構の面において申し上げますと、人事院の地位というものはどういうところにあるかということをこの前も申し上げましたが、これは公務員法の三条で規定する内閣の所轄のもとにある機関であります。内閣の所轄のもとにある機関というのは、内閣に対して独立性を持つかどうかという点が問題となるわけであります。しからば内閣の所轄のもとにある機関というのはどういうものかと申しますと、結局実定法上で見ますと、内閣法十二条に根拠を求めなければならぬだろうと思います。森委員は法律の専門家でよく御承知だろうと思うのでありますが、内閣法十二条に、内閣の事務を助けしめるために官房のほか、法律で定める機関を置くことができるとございます。そういたしますと、人事院の法律上の基礎はここに求めなければならぬのじやないか、こう考えなければならぬわけであります。人事院と申しまして地位がきわめて独立的な性格を持つているように見えるのでありますが、実質内閣の補佐部局である。しかるにこれが外部から見ましてきわめて独立性の高い機関のように考えられ、そして事実そういう働きをいたしますのはどこに原因があるかと申しますと、結局人事院を構成する人事官の身分が高度に保障され、しかも独立権限を持つているというところにあるのではなかろうかと思うのであります。それで今度は、そういう独立的な権限を遂行するためにふさわしいように、行政機構上どういう地位を与えるかと申しますと、結局総理府外局という地位が最もふさわしいものと考えられるわけであります。と申しますのは、総理府外局には、国家公安委員会でありますとか、公益事業委員会でありますとか、土地調整委員会でありますとか、独立的な権限行使する機構が含まれておるわけであります。そういう意味におきまして、独立の地位を、現在の行政組織法、あるいは憲法あるいは内閣法のもとにおいて与えようとすれば、これは虚心坦懐に申しまして、現在の国法のもとにおきましては、総理府外局としての行政委員会組織にするのが一番独立性を与え得る道であろう、こう思うのであります。  それからその前に森さんからお尋ねのありました憲法第七十三条の第四号の「法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。」と申しますのは、従来は官制大権によつて官吏に対する事務が定められておりましたのを、今度は法律でやる、その法律は何かと申しますと、国家公務員法であります。それはもちろん御承知のところでありますが、それを内閣がやるということは、内閣の下に各省がありまして各省大臣が分担管理するわけでありますから、内閣のもとにおきまして内閣総理大臣がこれを分担管理いたしますことも——七十三条四号ばかりではございません、七十三条各号に列挙されておる内閣の本来の仕事として、各省大臣が分担管理をする、内閣総理大臣がやはりこれを分担管理をするということは、ごうもさしつかえないことだろうと思うのであります。そういう意味におきまして、本来内閣に属します行政事務としての人事行政事務、それから先ほど申しました独立権限を今の行政組織のもとにおいて最もよく行使し得る機構として、総理府外局としての人事委員会考えられた、こういうように御了承願いたいと思うのであります。
  54. 森三樹二

    ○森(三)委員 今御答弁がありましたが、内閣法の十二条云々ということで、内閣の監督下にあるというお話がありましたが、それならばなおさら今回の改正によつて——現行法の三条の二項には、「国家公務員に関する事務を掌理するため、内閣の所轄の下に人事院を置く。」ということになつておりますね。それが今度の改正では、内閣総理大臣の所轄のもとにいわゆる総理府外局となるというような案になつておりますね。そうするとあなたがさつき説明された点と矛盾しないですか。つまり内閣法の十二条云々を根拠にして人事院というものの性格を規定されておる、それならば何もあらためて内閣総理大臣の所轄のもとにそういう総理府外局を置くということをしないで、やはり現行法のままにして、「内閣の所轄の下に人事院を置く。」ということの方が率直に言つて筋が立つのじやないですか。
  55. 岡部史郎

    岡部政府委員 お答え申し上げますが、先ほども申しました通り人事院というものは人事行政機関としての一種の行政機関である、そうして現在の国家行政組織法というものは、内閣の所轄のもとにおいて行政機関の組織を定める法律でございます。そこで現在の人事院行政機関であろという本質にかんがみまして、これに行政組織法適用して、その組織を正して行くということは、これは政府として当然の立場であろうと思うのであります。行政組織機関である以上、これに行政組織法適用して行くのが当然であるといたしますならば、行政組織法において人事院に与えらるべき地位は何かと申しますと、それは結局総理府外局としての行政委員会よりほかにないのではないかという結論に達して来るわけであります。そういう意味におきまして、内閣の補佐部局であるという形式的な地位を改めまして、総理府外局としての行政委員会に移すという考え方でございます。
  56. 櫻井奎夫

    櫻井委員 今の岡部さんの答弁を聞いておりますと、人事院はもちろん中央人事行政機関である、あくまでもこれは行政機関であると言われる、そのことは私どもも認めておる。議院内閣制度のもとのそういう人事行政機関であるから、これから筋をたどつて行けば当然これは行政組織法適用されることになる、こういうふうにあなたはずつとさかのぼつて来られる。それはそれで一応筋は通りますが、しかし人事院には人事行政機関であるというほかに、もう一つ忘れてならない大きな権能がある、義務があるということです。それは普通の勤労者であれば当然基本条件として許されておるところの団体交渉権であるとか罷業権であるとかを国家公務員は剥奪されておる、この代償として与えられておるのが人事院のあの大幅な独立性であろうと私は解釈するのです。従つてそれに見返るものをつくらずして、ただ行政機構の整備というようなことで行くならば、これは本末を転倒するのであります。日本憲法は、あくまでも主権が国民にあるという厳正なる大原理を前提としておるのであります。内閣の都合によつて自分たちの行政機構がかつこうがいいようにというような、上からの考え方でなくして、主権は国民にあるのであるから、この主権者である国民利益を守るということがまず憲法の精神に忠なるゆえんであると思う。従つて国家公務員からこれほどの大きな基本条件を奪い去つておるのですから、それに対する代償としての、人事院公務員に対する福祉保護の面、こういう面はもつと強調されて、そのような単なる機構改革とか、かつこうのいいように理論づけて行くということでなくして、この大事な点をあなた方は没却しておられるのではないかというふうにわれわれは考えざるも得ない、この点はどうでしよう。
  57. 岡部史郎

    岡部政府委員 今の櫻井さんのお尋ねたいへんごもつともな点かと思うのでございますが、まず第一点といたしまして、政府といたしまして今の行政組織のかつこうをほしいままに定めようとするのではないのでありまして、これはこの国会におきまして制定いただきました内閣法及び国家行政組織法に従いまして行政機関のあるべき姿をただそうというのでございまして、根本は国の行政機関のあり方というものを国家行政組織法という法律が定めているのだということをひとつ御了承いただきたいと思います。  それでその行政組織法のもとにおきまして、人事行政機関をどのように定めるかという点につきまして考えなければならぬ点は、ただいま櫻井委員の御指摘の点が非常に重大な点だろうと思うのであります。ごく率直に申しまするならば、人事行政機関としてこれを独任制の機構に改めることもきわめて容易なことでございます。能率であるとかスピードとか決断とか、そういうことを考えまするならば、単独制の行政官庁ということも十分に考えられることでありまして、人事行政機関を単独制の機関とするべしということも、これはアメリカにおきましても非常に有力な意見が現在出ているくらいでございます。ところで今腰弁さんから御指摘のございました、一面におきまして公務員福祉利益保護するための独立的な権限を確保しなければならぬ、こういう点が大事な点だろうと思うのであります。そういう点と一般の人事行政機能とを結びつけまして、これをできるだけ全体として独立性の高い機構にしよう、そのためには人事委員会という合議制の機関——人事院も現在合議制の機関でありますが、こういう合議制の機関によりまして、その各構成メンバーの地位、身分というものを保障し、これに独立権能を与える、こういう仕組みとなつておるわけでございます。全体といたしましては、その点におきましては櫻井さんのお考えにかなり近いものがあろう、こう存ずる次第でございます。
  58. 櫻井奎夫

    櫻井委員 そういうふうな観点に立ちますと、今の人事院の持つておる強い独立性をわざわざ剥奪をしまして、形式の上からこれを総理府の一部局の中にとじ込めてしまうというようなことは、片方の面、公務員に対する利益保護機関であるという面を軽んじて、人事行政機関という面だけを強調されておるというふうにしか受取れないのです。人事院のあり方そのものが、八十万ですか、五十万ですか、その家族を含めて数多い公務員の人たちの生きる権利、彼らが当然人間として受ける権利を守る機関である、そういうことをあなたもよくおわかりのようでありますから、それを強調されるならば、私は現在の人事院のあり方が正しいと思う。もちろんこれは占領下の立法でございました関係上、現在の公務員法一つも欠陥がないというふうには私は考えておりません。これはやはりいろいろ改める点はあるでありましよう。しかしながら根本的なもの、人事院の持つておる大幅なる独立性を奪い去つて行くということはこれはどうしても納得できない。特に民主主義の発達した国家においてそういう公務員利益がまず考えられなければならないということは当然のことであります。政府はもし今次改革案を企図されるならば、まずそこに思いをいたすべきであつたのが私は当然と思うのであります。それをただいたずらに制度の上からかつこうをつけるということのみ強調されて、片方の面が忘れられ、しかも制度上の難点を云々されておりますが、この改革の中には、先ほど私が指摘しましたように、はつきり矛盾がある、現業非現業のごとき問題もそれです。そういうふうに整備されるならば、そのような矛盾というものも十分解決をつけて、その上で系統を立てたりつばな案として出されるならば、われわれはこれを了承するのでありますが、今度の改革案はまことに一夜づけの、何だか鐘たいこ入りで宣伝した行政機構改革というものをどうしても強行しなければならぬというので、一番弱いところの人事院と警察、こういうふうなところに勢力が向つたというふうにしか解釈されない、こういう点は非常に問題として残るのであります。私どもはこのような改正案というものは全面的に納得ができない。  それからもう一つ、これはこの前の委員会におきまして、受田君がそこに論点をしぼつて質問されたのでありますが、これはもうここで私は繰返す必要はないと思います。今のような独立性の強い人事院が持つておる人事院規則、これによつて特に問題点となりますのは、自由党が総力をあげて今次国会に通過を企図しておられますところの教職員の政治的活動の禁止であります。これは本来全然系統の別であるところの地方公務員の政治的自由を奪つて国家公務員法の中のあの人事院規則を適用するというようなまつたくでたらめの法案でございます。これはこの人事院規則の中にあのような基本的人権を大幅に奪つておるような政治行為の禁止をやることがはたして妥当であるかどうか、この点においてはまだ大いに問題があります。あれは違憲的立法といわれておるが、それはここに関係がありませんので、一応問題は別といたします。しかしとにかくあのような人事院規則というのは、これはやはり人事院が大幅な準司法権、準立法権を持つておる、そのような上であの規則というものが制定されておる、特にあの政治的行為——一四—七ですが、あれはやはりその裏づけとしては人事院の持つておる準司法性、準立法性、この独立性があるから、あれがどうにか辛うじて意義を持つておる。しかしながらこれはまた別個の問題でございますけれども、あなた方は人事院機能を大幅にとつて、これを一外局にしようとなさる。そうすれば、一総理府の一外局たるところの国家人事委員会なるものが、あのように大きな、基本的人権を剥奪するような規則を制定する権限があるかどうかということです。これは今後非常に大きな問題になつてつて来ると思う。まつたく自由党の政策は首尾一貫しない。今回の国会にかかつたところの繊維税、警察法の問題、地方税の入場税とか遊興飲食税、あれもまつたく支離滅裂です。今回のこの法案も、片一方で教育ニ法案においてあれほどの難点を突破し、強行して、立法技術上明らかなる矛盾を犯しながらこの人事院規則を適用して、やつとそれが通つたかと思うと、今度はこの大事な人事院権利を大幅に縮小するという。これはまつたく首尾一貫していない。人事院が一総理府外局となるならば、あのような規則というものは、当然国家人事委員会権能をはずれる。あれははつきり法律によつて独立の立法をすべきものであると考えるが、その点の大臣の御解釈はいかがでございましようか。
  59. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 御質問の要旨は、人事院独立性を侵害するということであると思つておりまするが、これは私どもとまつたく考えを異にしておるのでありまして、総理府外局といたしましても、しばしば政府委員、私がお答えいたしたごとく、人事院独立性というものは何ら侵されておらないのであります。身分保障ということが人事院独立性でありまして、これは少しも侵されておりませんがゆえに、私は、端的に言えば、少しく色めがねをかけて見られておるのじやなかろうかと思うのであります。  それから人事院規則の問題でありまするが、これも私がしばしばお答えしたごとく、今度の国家人事委員会が従来のごとき権能を持つておるならば、これはありましてもさしつかえないことで、規則を制定することができるのはあたりまえのことであります。しかしこういう政治的行為に関することは立法措置が適当でないという御質問がしばしばありましたので、私は、原則論としてはごもつともである、これもしばしばお答えした通りであります。
  60. 森三樹二

    ○森(三)委員 私は加藤国務大臣お尋ねしたいのですが、あなたは、さつき第八委員室で答弁されたときにも、独立性は侵害されていないと答弁をしており、また今の櫻井委員質問に対しても、独立性は侵害されておらないということを言つておるのですが、その独立性を侵害するしないの標準は、単にその構成メンバーの任免の問題ばかりの問題ではないと思う。その構成しておるところの人事官の行政行為の意思決定に対して、上部から圧力をかけて、その意思を決定さすかさせないかというような、その行為の面にも私は重大な関連性があると思う。たとえば裁判官が自分の判決をする場合には、最高裁判所の長官といえどもその判決に関与することができない、またそれを指示することもできない。自己の職務遂行に何ら制肘を受けないというところにむしろ私は重要なポイントがあると思うのです。もちろん任免権の問題もありますが、しかしそれよりかこの運用にあたつて国家公務員の生活、給与を守るために、人事官がみずからの意思に基いて勧告をする、そこに問題の重要さがあるわけです。もちろん任免権の問題もありまするが、単に任免権だけの問題じやない。自分の意思決定をするということについて絶えず支配されておつたならば、そこに独立性の侵害の問題が私はあるのだと考える。たとえて言うならば、現行法の二十八条に「給与を決定する諸条件の変化により、俸給表に定める給与を百分の五以上増減する必要が生じたと認められるときは、」「国会及び内閣に適当な勧告をしなければならない。」となつている。この条文あるがゆえに、人事官は百分の五以上の増減があつた場合には、この規定に基いて、上部からいかなる圧力がありましても、この法律を遵法する意味において断固たる意思を表明することができる、すなわち勧告することができる。ところが今度はこの条文は削除されてしまう。しかも内閣総理大臣の直轄になるとすれば、絶えずこの勧告等についてはいろいろ、制肘を受けるということは必然的なものである。この二十八条の条文が抹殺されてしまいますと、人事官俸給表の定める給与を百分の五以上増減をする必要が生じたと思つても、従来はそういうふうに認定をすればただちに勧告ができたんですが、これがなくなつてしまうために、今度は勧告することができない、しようと思つても、自分の意思決定をすることが困難になつて来る。結局人事院なるものの職務上の運用にあたつて独立不覊の意思を決定し、公務員の生活を守るという勧告ができなくなる。従つてかりにいくら身分が保障されておつたとしても、そうした重要な仕事の上において独立性というものが剥奪されてしまうということになる。私はここが非常に重要であると考える。この点を加藤国務大臣が十分お考えになれば、やはり独立性が侵害されておるものだという考え方が生れて来るのだろうと私は思う。その点について国務大臣の明快なる答弁を願いたいと思うのです。
  61. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 この点も私がしばしばお答えいたした通りでありまして、身分が保障されておるということが一番この独立性を持つておることであります。御承知のごとく、裁判官が他から制肘を受けぬということは、身分が保障されておるということが一番大いなる一つのことであろうと思う。同時に人事官もその任期中は政府はかれこれすることができない。しかも人事官なるものは、相当の人が出ているわけで、今ちよつと読んでみましても、相当の識見を有する人で、三十五才以上の人で、人格が高潔であるという人でありますがゆえに、私自身といたしましてはさような人にかれこれ制肘を加える意思はない。これはしばしばお答えした通りでございますし、またさような独立性を持つておる者が私の鼻息をうかがうということはないのであります。そういう人であれば、すでに人事官みずからが資格を喪失したわけでありまして、これはやむを得ぬことであります。あなた方は何でも独立を侵害しておると言いますが、私は右の点からいたしまして、独立性は厳として維持されておるものなりと信じておるのであります。
  62. 森三樹二

    ○森(三)委員 加藤国務大臣の御答弁は非常におもしろいと思う。人格が高潔で、年齢三十五以上であれば、だれからも制付されるということはないと言うんですが、加藤国務大臣のお年は六十以上、七十に手が届いたか、それ以上だと思いますが、年が行つていれば、しかも人格、識見があれば、そういう人が地位についておるとするならば、それが独立性があるということにあなたはお考えになるのですか、御答弁を願います。
  63. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 これも私はしばくお答えした通りでございまして、そういうふうな人事官の資格までも欠いた——年のことで言うのじやありませんが、相当の者が人事官になつておるのでありますがゆえに、それが自分の身分と申しますか、自分の自尊心を傷つけて始終政府の鼻息をうかがうような人はすでに人事官ではないのであります。能力のない人であります。私は人事官が身分が保障され、任期も保障されている以上はさようなことはないと思う。これまで心配いたして参りましたならば、何ともしかたがない、こう思います。
  64. 森三樹二

    ○森(三)委員 たとえばあなたは国務大臣として内閣の一員ですが、いくらあなたが人格、識見高潔であり、それこそよわい六十幾つになられておつても、総理大臣はあなたを今ただちに罷免することもできる。これは憲法上総理大臣の任免権というものは厳に規定されている。従つてあなたがいかにりつぱな給与改訂を行おうとしても、これがもしいわめる吉田総理の緊縮財政予算というようなものと背反するような給与体系をあなたが実行しようとしたならば、お気の毒だけれども、あなたは罷免される立場にある。一片の書面によつてただちにこれは断行される。従つてあなた方がいかに人格高潔でも絶えず吉田総理の鼻息をうかがつていなければならないという建前に私はあると思う。何人もこれは承認することと思う。従つてそうしたところのその人格の高潔であるとかないとかいうことにかかわるものではなくて仕事の上においてあなたが吉田総理が何と言つてもおれは毅然としてやり得るのだという立場にならなければならない。今回の改正案によつてはいわゆる人事官というものはいかに身分が保障されておるとはいうものの、内閣総理大臣の直轄に置かれておる、絶えず内閣総理大臣の鼻息をうかがわなければならないという立場に置かれていることは、これは否定できないと思う。だから今のあなたの御答弁というものはまつたく本末転倒しておる御答弁だと私は思うのですが、重ねてあなたの御所見をお伺いしたい。
  65. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 私は断じて総理の鼻息をうかがいません。しかし総理は私を罷免する権力を持つておるのでありまして、これはやめさせることはかつて次第であります。しかし人事官は罷免権は内閣にありません。
  66. 森三樹二

    ○森(三)委員 もちろん罷免権はありませんが、今度の人事院機構改革によつて人事院というものは内閣総理大臣にも所轄になつているのだ、従来は内閣そのものの所轄であつた。ところが今度はそれをしぼつて内閣の連帯性の所轄と総理大臣個人の所轄と大いにそれは意味が異なる。そこに私は問題の重点があるのだと思う。そこで私はあなたにお尋ねしているのだ。その点について御答弁を願いたい。
  67. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 何べんもお答えすることでありますが、人事官はやめさせることはできぬじやありませんか。任免のときに至りましてはこれは国会の同意、承認を経ることになりまするが、もし人事官を罷免さす場合には内閣にはその力がないのでありまして、国会が罷免するという弾劾訴追の手続をとることであろうと思うくらいに地位が強固になつておるのであります。それだから人事院というものはきわめて強い独立性を有しておる、こう申すのでございます。
  68. 森三樹二

    ○森(三)委員 だから私の言うのは任免権はもちろん総理大臣人事官はありませんけれども、仕事の上においてあるいは感じの上においてそういうような感覚を受ける。いかに身分が保障されておるといつても、総理大臣の気持とちぐはぐなような勧告をするということはやはりできない。たとえばその任期期間はかりに勤めたにしても、その次に任命される場合においてはやはり国会の承認を得て内閣炉任命するようになるのでありますから、一応はやはり内閣総理大臣の意向というものは考えなければならぬ。国務大臣ほど内閣総理大臣のごきげんをうかがわなくてもいいかもしれませんけれども、しかし自分はかように考えると思つても、総理大臣の意向が自分と違つた方向にあつた場合には、それを無視するというようなことはできなくなつて来るのではないかというところに私は問題があると思う。あなたは任免権の問題ばかりを論議されておりますが、私はそれと同時にこの二十八条第二項の人事官が自己の判断によつて法律を遵法して仕事をすることが、改正法によつて二十八条の第二項の規定が削除されてしまう以上は、できなくなるのではないか、そうしたところの根拠というのもを失つてしまう。仕事の上に独立性というものがなくなつてしまうじやないか、あなたは単に任免権の問題、地位の問題からばかりこの人事院性格というものを論じられておりますが、私は仕事の上において独立性というものが失われて来るならば、これこそこの方の問題が重大だと思うのです。むしろ人事院のつくられておるところの目的は人事官の地位の問題でなくて、国家公務員の生活を守るか守らないかというところに問題のポイントがあのです。私はそこを言つておるわけです。いかに人事官の地位が保障されようとも、仕事の上において独立的な意思決定ができないということになつたならば、これはまつたく意味のないものだと思う。そごを私は独立性が弱体化しているのではないかということを言つているわけです。
  69. 岡部史郎

    岡部政府委員 私からお答え申し上げます。実は人事院独立性というものがどこにあるかということは先ほどからしばしば質疑応答があつたわけでありますが、一つの点におきましては、加藤国務大臣からお答え申し上げました通り人事官の身分が保障されているということ、もう一つの点はその権限独立的に行使できる、こういうことであります。この両方をあわせて考えなければ独立性の全貌が出て来ないわけでありますが、しからば現在の公務員法のもとにおきまして、その独立性がどこに端的に現われているかということをしいて申し上げますと、現在の公務員法の第三条の二項に人事院はごの法律に定める基準従つて内閣報告するという規定があるのであります。これが人事院権限独立性を表わす規定と解されておるのであります。報告するというのはどういうことかと申しますと、これは実は率直に申しますと、アメリカ流の行政権限行使につきましての考え方でございまして、この報告をするということが一方におきましては指揮すなわちデイレクシヨンに対しまして報告する、リポートをするというのが行政機関の上下の関係を表わす方式である、こうされているのでありますが、この公務員法の第三条二項の人事院はこの法律に定める基準従つて報告をするということは、この監督が憲法第七十二条に定める監督以外には具体的に指揮は受けないのだ、単に法律に定める基準従つて監督すればいいのだということにつきまして形式独立性を示している表現なのであります。今度の改正案におきましても、この第三条二項の規定は削つておりません。従いまして森委員がしばしば言及なさる内閣総理大臣の直轄の一部局じやないか、従つて独立性がないのだというような点は当らないわけでありまして、これらの独立権限行使するにふさわしい機構として行政委員会という組織にになつておるわけであります。行政委員会というものは権限独立性を与えるための機構なのであります。行政委員会であるということは、所管大臣権限からは独立してその権限行使し得る形式を示しておるのであります。それをこの報告ということのさらにこれを具体的に申しまするならば、人事委員会は現在の人事院が持つております通り、規則制定権におきましては、内閣総理大臣の承認を要しません。その意味におきまして、規則をみずからの判断におきまして制定することができるという意味におきまして、完全な独立権限を持つております。また試験の執行につきましては、これは当然のことでありますが、何ら他の機関の容喙を受けないで完全に試験を執行できます。また勧告につきましても、今お話がございましたが、やろうと思えば独立にみずからの判断におきまして適切な勧告をなすことができるごとになつております。それから職員が不利益な処分を受けました場合、あるいは適当な行政措置を要求いたします場合におきましては、みずからこれに対しまして他の何らの指揮を受けないで判定できるということになつております。これらの独立権限独立の身分のある人事官が、人事官会議の意思によりまして決定することができるという点におきまして、人事院独立性があるわけでございまして、これらの諸点におきましては、このたびの改正案においてわからないということははつきり申し上げることができます。
  70. 森三樹二

    ○森(三)委員 あなたはいろいろの点から独立性を何ら侵害されておらないと言いますが、私がさつき言つた二十八条二項をごらんくだされば、この法律にはちやんとこういうふうに明定してあるのです。従つてこういうような条件が具備されれは人事院は自主独立勧告するということをしなければならないことになつている。ところがあなたは今度改正されてもやろうと思えば自由にやれると言うけれども、その自由にやれるというところの基準がなくなつたならば、これはやろうと思つてもそう簡単にできません。それが証拠に、現在われわれが国会でも言つていろいろ責める——責めるという言葉はおかしいのですが、すなわち昨年のベース・アップの問題でも、昭和二十八年三月の物価指数を基準として人事院はちやんと勧告する意思ができておつた。ところがそれさえもやはり政治情勢の判断からなかなか勧告が遅れ、しかも昨年の七月十八日の衆議院を予算が通過した翌日に勧告が行われておる。あなこがそういうような政治情勢というものを分析しないで、勧告しようと思えばできるなんと言つていることは、それは子供に対するお説教と同じですよ。現実の問題はやはり直視しなければなりません。現実の問題の分析に立つてあなたは答弁しなければなりません。従つてこういうような二十八条第二項でもつてりつぱに明文化されてしまえば、人事院はやりますやりますと言つても、たとえば地域給の勧告でさえも今日行われていないでしよう。やるべきごとをやれないのはどこに根拠があるかというならば、それはいろいろな情勢がありましようけれども、いわゆる内閣の圧力という言葉は当らぬにしても、政治情勢の動きというものが作用しているわけなんです。しからば二十八条二項がなくなつた場合、何を根拠にして、私どもはこういう勧告をしようと思うのでありますということが言えるか。あなたが羅列しているところは、身分の保障とかいろいろ三条三項を引用されておりますが、そんなことは問題にならないのです。何が問題であるかというと、人事院ができておるところの一番の問題は、公務員の生活を保障するところにあるわけでしよう。これはあなたも否定できないわけです。しからばその集約して来たところのいわゆる勧告が一番問題なんです。勧告を自主独立考え方によつてやれるかということが問題なんです。しからばこの二十八条二項というものをとつてしまつたならば、何を基準として勧告することができるか。ここが一番大切なんです。どういうわけでこの条文を抹殺したのか。そこにいわゆる弱体化と独立性の侵害がある。
  71. 岡部史郎

    岡部政府委員 第二十八条第二項から百分の五という形式的な基準をとるということにいたしましたのは、従来の人事院の今までの実情にかんがみまして、これをとつた方が人事院として適切な勧告を実施できるということにいたしたということは、淺井総裁がはつきり申し上げている通りでありまして、私はそれにつけ加える何ものも持つておりません。
  72. 森三樹二

    ○森(三)委員 私は淺井総裁に今尋ねているのではないのです。あなたの御所見を聞いているのです。私は淺井総裁の答弁か何か、そんなものがあつたかどうか今ちよつと記憶がないが、そういうものを引用しない、あなたの独立した見解を尋ねている。あなたはこの条文がなくなつても自由にできると言うけれども、現在でさえもやつていないでしよう。やれないでしよう。やろうとしてもなかなか勧告ができないでしよう。やるべき法律があつてさえも人事院はなかなかできないでしよう。この条文がなくなつたらまつたくまつ暗やみですよ。暗やみにちようちんなしに歩くのと同じですよ。方向を見失つたかじのない船と同じことです。あなたの独立した御見解を聞きたい。
  73. 岡部史郎

    岡部政府委員 私の見解先ほど申し上げました通り、淺井総裁が御説明申し上げたのに同感でありますから、そういう点を申し上げたのであります。二十八条におきまして、勧告基準として百分の五という形式的な基準を示すことが適切であるかどうかということは、これはいろいろな見地から考えられるだろうと思うのであります。形式的な基準を置く、それから形式的な基準をいかなるパーセントに置くかということも一つの問題だろうと思うのであります。また勧告というものが生計費、民間の賃金指数その他諸般の事情を考慮してなすべきものであります以上は、必ずしもそのような形式的な機械的な基準がなくとも適切に行い得るものと思うのでありますが、そういう点につきましては、その実務の衝に当られる方からお答え申し上げるのが適当であろうと存じますので、これはこれ以上私からはお答え申し上げるのを御遠慮申し上げたいと思うのであります。
  74. 森三樹二

    ○森(三)委員 私はまた自分の番が参りましたときに、本格的に人事院総裁なりその他の方にも質問いたします。今私はあなたに質問しておつたが、私は今その点に対してあなたが答弁できないというようにとつて一応この点の質問は留保いたしておきます。
  75. 受田新吉

    ○受田委員 関連してちよつと総裁にお尋ねしておくのですが、公務員法の二十三条の「法令の制定改廃に関する意見の申出」でありますが、「この法律の目的達成上、法令の制定又は改廃に関し意見があるときは、」とあり召す。今回この法律を改正することになりましたけれども、人事院総裁として意見を提出されましたでしようか、
  76. 淺井清

    ○淺井政府委員 今審議されている今回のこの法案は、人事院の方から積極的に希望したわけではございませんから、これに対して原案は決してこちらから出してはおりません。これは御承知の通り昨年の夏以来行政改革本部、あそこでできた案であります。
  77. 受田新吉

    ○受田委員 この法律の執行に関して全権を人事院にまかせられたと同じことになつておるわけでありますが、その人事院が法律の改正を妥当であると認めないという立場であるにかかわらず、行革本部が独自の見解をもつてこの法案を出されたということに対しては、よほどの自信があつたことだろうと存じます。そこでこの法律の制定の当時にさかのぼるのでありますが、昭和二十三年十一月、第三国会の劈頭でありました。吉田総理みずからが、第三国会公務員法改正国会だと叫んでおられたわけでありますが、あのときに吉田総理の委員会における発言といたしまして、こういうことを言つておられます。総理みずからが提案の趣旨説明に立つておられますが、その改正趣旨としては人事院が人事に関しての特別な指導監督権を持つて、そうして第一には政党色を帯びあるいは忠誠の念に反するようなことがないようにする、また一面からは官僚政治に陥つて民主政治の発達を妨げることがないようにする、そういう意味人事院としてはある程度の独立性を持たせる、しかも一々政府指揮監督を受けるというのではなくて、独自の立場を持つようにさせることが官僚政治の弊を打破することになつて、民主政治の確立を期することができるというような意味のことを総理みずから答弁をされておるのです。これははなはだ重要なことであつて、こういう意味で今の吉田さんが総理大臣としてこれをお出しになつておられます。ところが同じ吉田さんがこうした基本的には人事院のある程度の根本的改革案ともいうべき法律改正をなさるのに当つて、この五年半前に言われたことと今日出されておることとが非常な食い違いを生じ、しかも吉田さんのこの主張のもとに改正された法律に基く人事院が、何ら改正の意見も申し出ておらぬにもかかわらず、独自の見解をもつて内閣総理大臣がお出しになつたということは重大な疑義があると思うのです。この法律誕生以来の変遷を振返つてみて感無量なものがあるのですが、総理は何の意図をもつて改正されたのか、総理みずからの声を聞きたい。しかも総理はよほど自信を持つて今申し上げたような国家公務員法改正案をお出しになつて、官僚政治の悪弊を打破するのだという大信念を掲げておられました。この悪弊を打破する大信念のもとに成立したこの国家公務員法によつて、従来高文に合格した諸君が横暴をきわめた官僚政治がある程度ブレーキをかけられて、民主政治確立に一役を果したということ、これは国家公務員法の偉大なる功績の一つだと思うのです。しかるに今回勇気をもつてこの法律案をお出しになつた吉田さんに、五年間の心境の変遷史も聞きたい、そうしてこれをお出しになる以上総理みずからがここでその所信を述べていただきたい。加藤さんに全権を委任されておるということで、初めは曖昧模糊であつたのを、先般の委員会において加藤さんは正式な国家公務員法担当大臣ということが確定いたしましたが、しかしながら加藤さんの御見解のもとには、先ほどお伺いしておりましても、一般職職員、公企労法の適用上の職員等の解釈に対しても、まだ曖昧模糊たるものがありますから、国家公務員法適用範囲がどこにあるかについても、まだ十分御研究ができていないような趣も見られますし、特別職、一般職との関係ということになりますと十分検討を加える必要がありますし、国家公務員法の中に掲げられてある特別職と一般職との範疇をどこに限界線を引くかという問題も私たち自身が考える点もたくさんあるのですが、そういう問題について十分研究が達しないままにごの法律改正が出されておると思うのです。そこで総理の御見解はどこにあるか、五年半の総理の思想変遷史というようなものもお聞きいたせたらと思うのです。五年半前には総理みずからが委員会に出ているくと趣旨説明をなさつて、懇切丁寧にいろいろと所見をお述べいただき、淺井総裁も当時臨時人事院長として諸般の御見解を御表明になつて、おおむね総理と見解を一にした御答弁をなされております。こういう点からかかる重要法案の改の改正案が出されておるにかかわらず、総理はこれをよそごとのようにお考えになるという、これはたいへん問題が大きいと思うのです。そこで政務御多端で、目下内閣に危機迫るという感じは、これは国をあげて隠すことのできないことです。国際的にもこの汚職内閣の汚らわしい行いにつて顰蹙その極に達しておる。特別職にある国務大臣として、国家公務員全体の奉仕者としての立場である加藤さんのような高潔な人格の方は特に責任をお感じになつておられろと思うのです。従来委員会における大臣の出席要求は委員長とごの委員会の主管大臣とが御努力をなさつておられるわけです。従つて国家公務員法改正案には常に総理みずからが説明に当つておられ、委員会における発言をしておつた歴史にかんがみまして、改正重要法案の審査にあたりましては、特にこの法律案の性質が内閣総理大臣の所管事項で、他の国務大臣に委任するのが間違いだというほどの重要な法案なのです、他の部局じやない、内閣の部局なのです。従つて加藤さんは常時御説明なさる主管大臣としてまことにけつこうでありますが、この法案の基本的な性格については、この法律の制定の最初の責任者である吉田内閣総理大臣炉、今日幸いに依然として総理の地位にあられますから、よし命幾ばくもあらずしてまさに大廈のくずるる一歩前といたしましても、法律を出された以上はやはりその当面の責任者吉田内閣総理大臣が、この委員会において政府基本的な意図をお示しいただくことを私は要望するものでありまするが、委員長並びに加藤国務大臣いかがお考えでありまするか、御答弁を願いたいのであります。
  78. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 私はこれを担当する大臣といたしまして一言お答えいたしたいと思います。当時は占領治下でございましたがゆえに、独立後の今日とは趣を異にしておることは受田君御承知の通りであります。ことに五年前のごとでございまして、行政改革本部においていろいろ検討いたした結果、時代に適合するような法律の改正案を出した次第でございます。私はあえて言葉じりをつかまえて言うわけではございませんが、同一の内閣でありましても、何年かの間には改正法律案を出すのでありまして、それで今度も、二十三年と仰せになりましたから六年前でありましたか、同じ吉田内閣におきましてもその後実施した経験に基きまして、そうして、改正法律案を出すということは私は当然なことであろうと思います。
  79. 川島正次郎

    川島委員長 受田君の御希望は内閣に伝達いたします。
  80. 受田新吉

    ○受田委員 加藤さんにもう一言。加藤さんのお言葉ごもつともな点があります。とともにその思想変遷史、吉田総理みずからの心境変遷史というものを私は伺いたい。総理みずからが五年前に委員会で御説明になつたのです。担当国務大臣でなくして総理みずからがこれを説明され、委員質問に答えられたのです。これははつきり記録が残つているので、加藤さんも総理によく申し出られて、五年前には委員会に直接出られていろいろと御説明に相なつた総理が、その同じ法律の改正についてはやはり最高責任者として総理みずからが一言ひとつ意図を表明していただきたいということをごあつせんいただく熱意があるかないか。今あなたには熱意がないように見えましたから、それを伺つておきます。  もう一つは、総理は外務委員会とか予算委員会にはしばしばおいでになる。ところがこの人事委員会やほかの委員会にはなかなかおいでにならぬ。しかしこの法律の性格上、これは総理みずからが説明されなければならぬ基本改正案なんです。これは重大な法案なんですよ。軽々しく取扱うべきものでないのです。従つて加藤さんは、総理に、従来この委員会における最初の法律をつくるときには、総理みずからが御説明になり、また改正案も御説明になつたそうだが、今回ごうして人事院の意見も聞かぬで、独断でもつて行政管理庁がこれを出したような傾向がある。これは政府責任において、ひとつ総理へ御説明くださらぬかということを加藤さん、あなたの心情を吐露されて、人格を傾けられて、当つて見てくださいませんか。そうしてその結果を御報告いただき、いかなる交渉をされたかの結果によつては、われわれ党派を越えて、おそらく与党の各位も御異存ないことと思いますので、総理みずからの委員会における御発言の要望にこぞつて大挙参上いたしたいと思うのであります。どうぞこの点につきましても加藤さんのお約束をここでしていただきたいと思います。
  81. 淺井清

    ○淺井政府委員 ちよつと受田さんの御発言中あるいは誤解があるのではないかと思いますので、申し上げますが、人事院が今回の法律案改正に意見を述べたとか述べないとかいう点でございますが、最初のお尋ねは、公務員法第二十三条による意見の申出をしたかどうかということでございますが、この意見の申出国会及び内閣に同時にいたすもので、さような意見は申し出ない、こういうようにお答えを申し上げたのであります。従つて今回の改正案の原案は、行革本部及び行政管理庁において作成せられたのでありますが、できましてから人事院へ見せられまして、これに対して人事院といたしましては、できるだけこれをわれわれの考え方に近づけるように努力する意味においての意見は述べておるのであつて国会へごの法案が出る前に全然人事院には見せないで出したという意味ではないのでありますから、その点は誤解のないようにお願いしたいと思います。
  82. 受田新吉

    ○受田委員 時間が来たけれども、ちよつと申し上げたいのですが、私は総裁のお気持はよくわかります。しかし総裁御自身としては、この法律の改正案を出すことについて、公務員法二十三条の規定に基く申出をして、そうして内閣及び国会に出された後に、政府かあるいは国会改正案を出すというのが筋としては正しいのではないかと私は思うのでありますが、そういうことが結果はいかようであろうとも、筋としては、順序としては、その方が民主的であるとお考えでないでしようか。この点たいへんお苦しいかもしれませんが、お答えいただきたい。
  83. 淺井清

    ○淺井政府委員 それはちつとも苦しくないのでありまして、これは人事行政に関することでありますから、その改正案人事院が主務官庁の地位をとつてさような意見の申出をいたし、それに基いて改正案を作成することも一法でございます。しかしまた行政権は内閣にございまして、人事行政もやはり大きな意味の行政権の一つになつておりますから、内閣が発議をとつて改正の案を立てることも、これは禁止されておるまいと考えておりますが、さらに国会が議員立法によつてかような改正案をお出しになることも、これももとより当然のことであろうと考えております。
  84. 受田新吉

    ○受田委員 それは立法権国会にあるし、また行政権は内閣に属しております。けれども人事院にこの人事行政の全般的な施行を委任されておるという立場から、人事院の意見を聞かずしてその人事行政に関する基本法の改正がなされるということは、これは筋としては、順序としては誤つておるのではないか、そこを私は今お伺いしたいのです。  もう一つは、この内閣がこの法律案をお出しになつたことについてはなはだ了解に苦しむ点は、さつき申し上げたように総理みずからが五年半前に、これほど熱情を傾けられたこの法律案が、もう人事院の意見も聞かぬでいい、内閣だけで独自の見解改正案を出せというように軽く片づけられるというようなことは、吉田内閣によつて人事院を生み、できれば国家公務員法の精神を十分民主的に、大衆にも浸透させるようにして法律改正をなされれば、それは筋が通るが、それを抜きにしてどんどんと独自の見解でやられるということは、これはきわめてゆかしい独裁的傾向を帯びるものだと思うのです。従つてこういういきさつを考えると、どうしても総理みずからの御発言を聞かずにおれぬようになつて来たのです。そこで加藤さん、御努力いただけましようか。今の御努力いただけるかどうかをお答え願いたい。
  85. 加藤鐐五郎

    加藤国務大臣 熱意ある御要求は私からよく伝えます。
  86. 川島正次郎

    川島委員長 今日はこの程度にとどめまして、明日午後一時から開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時六分散会