○
滝本政府委員 前会に時間がございませんので延ばしました、
勤務地手当支給区分の
基準の問題につきまして、
中間段階でございますが、御報告を申し上げたいと思います。
勤務地手当の問題は、御存じのように、
基準が非常にむずかしいのでございます。むずかしいのではございますが、やはり
一つの
基準を立てまして、それに
従つて作業をやつて行くということをいたしませんと、どうしても全体の
バランスがとれないというようなことになりますので、極力この
基準の確立ということに力を尽しておる次第でございます。現在といえども、それが
人事院において確定しておるということは申し上げがたいのでありますが、おおむねの
考え方等につきまして御
説明申し上げたいと思います。
勤務地手当支給区分の
基準といたしまして、われわれがおもなる
基準、主
基準ということで考えておりますものは、いわゆる
消費者物価地域差指数、
IRDと呼ばれるものでございます。もつともこの
IRDは、
昭和二十七年の七月ないし九月というところまで計算をされまして、その以後は発表がないのであります。従いまして、この
IRDが
基準ではございますが、これを直接用いる場合というのは非常に少い。その後はどういうことに
なつているかと申しますと、
内閣統計局におきましては、
消費者物価地域差指数のかわりに
小売物価地域差指数というものを発表しておるのであります。これは先日差上げました
資料で一部その例示をお目にかけたのでありますが、この
小売物価地域差指数というものは、二十七年の七月ないし九月というところから始まつておりますので、
IRDとの
関係を求めることができることになります。話がたいへんむずかしく
なつて恐縮でございますが、われわれが
地域給の
基準をつくります際には、
消費者物価地域差指数、
IRDを基本にした方がよろしいうふうに今まで
研究の結果考えているのでありますが、二十七年の七月ないし九月以降はこれがないのでありますから、どうしてもこれにかわつて
小売物価地域差指数というものを用いなければならぬのであります。ところが
小売物価地域差指数というものは、
特定の
品目を限定いたしまして、そうして
東京においてはこの価格が
幾らである、またある
地域においては
幾らであるというような
調査に
なつておる。これははなはだ概括的な言い方であります。ところが
消費者物価地域差指数の場合は、
特定の
品目の限定の仕方に非常に幅があ
つたのであります。よく例にとりますが、たとえば
ワイシヤツというようなことを言います場合に、
東京で一般に消費するであろう
品質と、また
地方のある
市町村あたりにおきまして消費するであろう
ワイシヤツの
品質というものに違いがあるかもしれません。しかしながら、その違いは無視して
ワイシヤツの値ということで出て参るのであります。ところが
小売物価地域差指数ということに
なつて参りますと、
品質が限定してございますので、
東京ではそれを
使つておるかもしれないが、
地方においては必ずしもそれを
使つていないというようなことがあるのであります。こういうことでありますれば、
物価を調べ、それを
消費数量に応じて組立ててみるということをいたしましても、
東京の場合は実際の
消費事情をある
程度反映するものが出て参りますが、
地方においては必ずしもそうではない、架空のものが出て参るということになるのであります。そういう点
考慮いたしますと、この
小売物価地域差指数を
消費者物価地域差指数の代替として、そのままただちに用いるということはどうもぐ
あいが悪いのであります。従いまして、われわれは
換算係数というものを用いましてこの
小売物価地域差指数を
消費者物価地域差指数に換算いたしまして使うことにいたしたいと考えております。なお従来
消費者物価地域差指数を
使つておりました際にも、この
消費者物価地域差指数をそのまま使いませんで、ある
程度消費水準指数と申しますか、
消費量をこれに加味いたしまして
使つてお
つた実情であります。
消費者物価地域差指数そのものも、そのところどころの
消費事情を反映はいたしておりますが、量の点に
なつて参りまして、
消費水準という点に
なつて参りますれば欠けてお
つたところがありますので、それを従来は取入れて考えている。ところがそれを取入れて考えるのがよいかどうかということになると、その後の
研究によりますと、取入れるのがよいが、従来と同
程度の
割合で取入れるのがよいということは必ずしも言えないという結論に現在達しております。量をどの
程度取入れるかという問題がまだ若干残つておるのであります。しかしかりに量を取入れませんで
基準をつくるといたしまして、二〇%の
最高地域給の
制度のもとにおいて、零級地の
基準というものは一体どの
程度に考えたらいいかと申しますると、これは
東京を一〇〇といたしますと、八三%ないし八四%というところがこの零級地の
基準、こういうことになるのであります。この零級地の
基準をきめますれば、それに
従つて一級地、二級地、三級地、四級地のそれぞれ
基準がきまつて来ることになるわけでございます。しかしこうい
つた指数におきましても、なおかついろいろ特殊な
事情が入つて参りまするし、
誤差もあるというのが
実情でございまするので、われわれはこの
指数で限界をつくりまして、そうしてかつ
きり物事を言うわけにはなかなか参らないのであります。従いましてここにある
程度許容範囲を設けなければならないということになります。
指数そのものの
誤差ということももちろんございまするし、またその土地々々における
民間給与水準が非常に高いということでありますれば
——生活はおよそ
給与が規定して行くという
実情もあるのでありまするから、そういう問題もある
程度あわせ考えなければならぬということになりまするし、また
人事交流等が相当あるということになりますれば、この
人事交流ということも決してないがしろにできない。また大きな
都市におきましては、その
周辺の
考慮ということもあわせ考えられなければならないというようなことがございます。そういうことをあわせ考えまして、この
許容範囲を定めなければならないということになるのでありますが、この
許容範囲をどの
程度に押えて行くかということが、また実は非常に問題でございます。われわれか
許容範囲を一方的にきめましても、それが
実情に必ずしも合わないというようなことではぐ
あいが惑いのでありますから、従いまして従来
地域給のついております
地域の
実情等を見ながら、この
許容範囲を定めて行かなければならない。この
許容範囲をいかに定めて行くかという問題は、いろいろ
研究はいたしておりますけれども、まだ最終的にきめておるわけではございません。この
IRDは、御承知のように
全国二十八
都市しかないのであります。そういう少い、しかも
大都市に限られておるような
指数を、
地域給を考えて行く場合の主
基準にするということは、話はわか
つたようではあるけれども、どうも少しおかしいじやないかということになろうかと思います。ところがその後に出ております
小売物価地域差指数というものは、
全国おおむね五十数
都市というものについて
調査が行われておりますので、従いまして、これを換算しまして
消費者物価指数として使う場合に、
小売物価指数の方がより
利用度が高いということになります。ところが
小売物価指数も、やはりその
調査対象は、おおむね
県庁所在地でありますとか、それに準ずる
大都市に限られておるわけでありますから、やはり同様の問題が一応は残ろうかと思うのであります。従いまして、われわれは、さらにそれが
大都市に限られておるという
事情を補完して、
一体級地の低いところをいかにきめて行くかという問題が残つておるわけでございますが、それは
補助基準として考えて参りたいというふうに考えております。
それでこの
小売物価指数を
消費者物価指数に換算いたしますときには、どのようにいたすかということが問題として残るのでありますが、幸いにしてこれは
内閣統計局の方で、その
利用について
考慮が加えられてお
つたのであります。
昭和二十七年の七月ないし九月というものは、
小売物価指数と
消費者物価指数とがダブつておる、少くとも二十八
都市については両方の
指数が出ておる、これを手がかりにいたしまして、
消費者物価指数に
小売物価指数を換算するということをやるわけでございます。従いましてその結果どういうことになるかと申しますと、先ほど申しました
消費者物価指数で申しますならば、零級地の
基準が
東京を一〇〇といたしまして、
指数で八三ないし八四という
数字になるのでありますが、
小売物価指数を用いますならば、これが八五ないし八六という
数字になるのであります。われわれはこの
指数を用いて行きます場合に、繰返して申し上げますが、これはやはり
指数自体が含みます
誤差範囲というものがあるわけでありますから、やはり心してこの
指数を用いなければならないというふうに考えております。
それでは
補助基準としてどういうものを
使つて行くかということでございますが、われわれは
昭和二十七年の十一月分につきまして、少くも五十人以上の
事業場を有しておるような
市町村につきましては
——すなわち
全国五十人以上の
事業場の
給与はみな調べておるのであります。調べてございますが、ある
市町村に
一つか
二つしかなく、その
消費事情に
影響が非常に少いということであれば、これを
使つて行くということはそう
意味がない。その
事業場数が非常に多いということでありますれば、その
消費事情に及ぼす
影響というものは大きいわけであります。
従つてどの
程度以上の
事業場がありますればこれを
使つて行くかということでございますが、いろいろ
研究の結果、われわれは大体
人口割合の六、七十パーセント
程度の、五十人以上の
事業場の
従業者が
市町村内におります場合には、これを
補助基準として一応考察の
対象にいたすというふうにいたしておるのであります。先ほど申しましたように、この
全国的に五十人以上の
事業場を調べておりますのは、
昭和二十七年の十一月でありますから、これはちよつと
資料が古いのであります。こういう
調査を何回もやるということは事実上予算もございませんし、できるものではありません。
従つてどうしてそれを補正して行くかと申しますと、幸いにして労働省で毎月
勤労統計というものがございますが、これのさらに
府県別の
地方毎月
勤労統計というものがあるのであります。これはずつと出ておりますので、
地方別にどういうふうに
事業の種類に
従つて傾向が現われておるかということが、これによつて推察できるわけであります。そういう
資料を加味いたしまして、この二十七年十一月分の
賃金調査の
数字を見て行こう、こういうことを考えております。それでこの
民間給与水準指数をどういうふうに
利用して行くかと言いますと、これはこの
数字をこのまま使うわけではございませんが、しかし大体におきまして、この四級地、三級地、二級地、
一級地、零級地の
基準というものをわれわれの方でつくつておるのであります。これは
統計の結果を
利用いたしましてつく
つたのでありますが、たとえば四級地でありますと、
東京を一〇〇といたしまして九四%
程度が
標準である、三級地であれば七五%
程度が
標準である、二級地であれば六八%
程度が
標準である、
一級地であれば六二・三パーセント
程度が
標準である、こういうふうにつくつておるのであります。
地域区分において、ある
地域がかりに
一級地であるという場合において、その
市町村内における
東京を一〇〇とする
民間給与指数が、二級地以上の
指数を占めておるという場合には、一応この
補助基準というものを問題にいたすわけであります。そういうところについてはさらに詳細な
調査をいたしまして、これを二級地に上げるべきかどうかというような判断をいたす、こういうことに
なつております。それから、ただいま申し上げましたのは
民間給与水準指数の
利用でありますが、さらに
府県内におきましては、
統計局でやつております
小売物価指数というものと大体同様の方法によりまして、
府県内の多くの
地域について
小売物価調査をやつておられるところがあるのであります。それは
府県内において、
小売物価指数あるいは
消費者物価指数に換算いたしましたものが、どのような
分布をしておるかという例を図示いたして、
二つの例を前回お示しいたしたのでありますが、そういうものが出て来る理由は、やはり
府県の
統計課等におきまして、
内閣統計局が
全国的にやつておる
調査要綱に基いて同様の
調査をやつておるというようなことがあるのであります。そういたしますと、こういうものは
十分利用に耐え得る、
内閣統計局の
指数は
全国主要都市のみでありますけれども、さらにそれを補完いたしますために、この
府県内の
小売物価指数あるいは
消費者物価指数というものをかみ合せて使い得る、かみ合せて使い得るということであれば、先ほどの
民間給与調査の
民間給与水準指数も同様であります。この
二つをかみ合せて参りますと、
府県内において
キーポイント式に多くの
市町村の格付ということも考え得る、こういうことになるのであります。従いまして
補助基準の中で非常に大きなウエートを占めるものは、この
民間給与水準指数と、それから
府県でやつております
消費者物価地域差指数あるいは
小売物価地域差指数ということになります。ところが
府県でやつておられません場合におきましても、われわれはある
特定市町村につきまして多くの
資料——そういう
資料は各
市町村で努力して出しておられるようでありますが、
主食でありますとか、
主食の中においても、特にある
品目を限定して
物価調べをなさつておるのであります。これが
相当信憑性があるというふうにわれわれの方でにらみました場合には、これから
小売物価指数に準ずるものを個々につくることができる、そういうふうにいたしまして、そういう
資料もつくり上げて、
市町村の全体との関連を考え得るということになるのであります。そのほか
人事交流上の
観点という問題は、この
地域給というものが、現実に行われました効果に非常に
影響がある。
人事交流を妨げるというようなことが結果として起る場合があるわけでありますから、そういう点についてはやはり別途の
考慮を加えて行かなければならない。そういう点も、これはいわば
一つの
基準になるかもしれません。
また
都市周辺地域の取扱いにつきましては、これは六
大都市でありますなら数が限られておりますから、詳細にその
通勤の
事情、あるいは
通勤に要する時間、あるいはその
交通機関の
発達状況と申しますかそういうもの、あるいは
都市の
中心部と
周辺部との
交通量というようなもの、あるいは
物価差の
状況というものをつぶさに調べる、そういうことによりまして六
大都市周辺というものは、おおむね個別に具体的な
調査をやりまして、これをきめて参るつもりでおるのであります。なお
人口二十万
程度あるいは三十万になりますか、その辺の
都市に
なつて参りますと、やはり同様の問題があろうかと思いますが、これは六
大都市ほど精密な
調査はできませんが、市街地の
形成状況でありますとか、官舎の
分布状況、あるいは
交通事情というものをでき得る限り調べまして、やはりその
バランスをとつて行くということにいたしたいと思つておるのであります。なおわれわれは
府県の
人事委員会あるいは
府県庁から各都道
府県内の
生計費の
観点から見ました
都市の
順位表というものをいただいております。従いましてこれも十分活用いたすのでありますが、それは以上申し述べましたようなことをわれわれが
作業をやります際に、これを無視しないで十分
使つて行く、こういうことにしてやつて参りたいと思つております。
以上まことにラフな大ざつぱな申し方をいたしたのでありますし、またわれわれの方でいよいよこのキイ・ポイントになる、かつきりしなければならぬところを
研究はしておるけれども、まだ正式にきめていないというものもあるわけでございまして、はなはだ大
ざつぱな話にな
つたのでありますが、以上が大体今回
作業をやつて参ります際のやり方でございます。
そのほかさらに今回はもう
一つ、いわゆる
町村合併促進法というものに基きまして、
町村の
合併というものが二十八年の年度内にも相当行われて参りましたし、また二十九年の四月一日にも
相当数行われるのであります。これはおおむね三十一年まで続くようでございますが、その大半は二十九年に終了するという
状況のようであります。もちろん二十九年の大半の終了を待つておるわけにも参らないのでありますが、少くとも四月一日に相当多量の
町村が統合されますならば、この
事情を見送るわけには行かない。
町村が
合併いたします際には同一行政区画となるのでありますから、でき得る限り同一行政区画内の級地を同じくするということにいたしたいのでございます。しかしながらその中に三級地、四級地というものがありまして、もし
合併が相当広汎な
地域にわたつて行われるというような際には、必ずしもこれを全部一緒にすることが妥当であるとも考えられないのであります。その辺の手心は加えなければなげないというふうに考えております。
町村合併で一緒になりましたところをある
程度同一にするということは、これはどうしても考えなければならぬ点でございますが、ならなか
つたところにつきましても、やはり
地域給制度の本旨から考えましてそれをほつておくというわけには参らないのであります。従いましてそれといかに
バランスするかということが問題と
なつて参ります。相当多量の
町村が最近続々
合併されますので、そのあとを追つかけて行くようなことが、現在のわれわれの
作業の状態に
なつております。四月一日に
合併するもの等についても必ずしも従前の情報がない。でありますからこれをなるべく早く調べて、
バランスをとる
作業をやつて参りたいというふうに考えております。今回といいますか、近き将来ということになりますか、あるいは少々遠いかもしれませんが、
地域給改訂の勧告をいたしますならば、
町村合併等につきましても、既存のものについては
バランスがとれるのであります。しかしながら将来のものについて
バランスをとるというわけには参りません。現在の
給与法の条文によりますとそれがとれない。たとえばわれわれが今後行いまする
地域給の勧告、またそれが法案として出まして国会で御決定になりますものが、たとえば二十九年一月一日現在の行政区画ということになりますれば、それ以後の変化というものは顧慮できない、これは
給与法上に何らかのくふうをこらしまして、そうして
町村合併がありました際には、ある
程度自動的にこれが是正できるような措置を講ずるとか、あるいはもうそういうことがあ
つた場合には逐次勧告権を発動いたしまして、常時やつて行くか、あるいはわれわれとしては国家公務員が主でありますから、そういう場合にはとりあえず官署指定というような方法で、次回の勧告までやつて行くというような、いろいろな方法があろうかと思いますが、ある
程度人事院に権限をおまかせ願いまして、この是正をやるという措置がもしできますならば、これははなはだ円滑に行くのではなかろうかというふうに考えておるのであります。ところがその分だけ
人事院におまかせ願うということになりますと、またあたりさわりがある。
町村合併だけを問題にしなくてもよいじやないか。たとえば電源開発で、ある
地域が非常に
物価が高く
なつたということであるならば、当然それは
人事院がほつておくという手はないじやないかということにもなりましよう。またいろいろな
関係である
特定な
地域が
物価が非常に高くなるというような
事情がある場合、それはみな
人事院の方でやつてしまえばよろしいということになれば、これはもう次から次に停止するところを知らず、遂に
地域指定は全部
人事院でやればよろしいというようなことにもなるわけであります。ところが
人事院で全部やるということになりますと、これはまた予算の問題等とも関連して来て、事実上権限はあつても何ら実行ができないということにもなるかもしれません。従いまして今後その辺をどうやつて行くかということにつきまして、われわれの方としましても現在いろいろ
研究はいたしておりますが、さらにもう少し
研究を重ねまして、確定案として、いずれ
地域給の勧告をいたします際に法律を是正するか、あるいはどうするという措置を具しまして御
審議願うことになろう、このように考えておる次第であります。
以上はなはだ簡単でございましたが、現在申し上げ得るところはその
程度でありますので、御了承を願います。