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1954-11-25 第19回国会 衆議院 厚生委員会 第74号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十一月二十五日(木曜日)    午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 小島 徹三君    理事 中川源一郎君 理事 長谷川 保君    理事 古屋 菊男君       青柳 一郎君    高橋  等君       寺島隆太郎君    安井 大吉君       亘  四郎君    萩元たけ子君       柳田 秀一君    杉山元治郎君       中野 四郎君    山下 春江君  委員外出席者         厚生事務官         (公衆衛生局庶         務課長)    小沢 辰男君         厚生事務官         (薬務局長)  高田 正巳君         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  楠本 正康君         厚 生 技 官         (医務局国立病         院課長)    尾村 偉久君         専  門  員 川井 章知君         専  門  員 引地亮太郎君         専  門  員 山本 正世君     ————————————— 十一月二十五日  委員福田昌子君辞任につき、その補欠として萩  元たけ子君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  食品衛生に関する件  覚せい剤取締に関する件  ビキニ環礁附近における爆発実験による被害事  件に関する件     —————————————
  2. 小島徹三

    小島委員長 これより会議を開きます。  食品衛生に関する件について発言を求められておりますので、これを許可いたします。柳田秀一君。
  3. 柳田秀一

    柳田委員 黄変米の問題は八月でしたか、委員会を開きまして厚生当局態度等を聞いたのでありますが、最近新聞を読みますと、白い黄変米は無害であるとか、つき直せば配給できるとかいうような記事が出ておりまして、これは必ずしも厚生当局意図を正確に伝えておらぬ、また全国民一般の生活の問題ですから、波及するところが大きいと思いますので、きょうは幸い環境衛生部長もお越しになっておりますから、その辺のところを確かめてみたいと思います。  十月の二十六日参議院厚生委員会環境衛生部長は、白い黄変米化学試験では毒性を認めていない。それから顕微鏡検査を行ったが、菌の付着表面的で内部に変化は与えていない。それから白い黄変米をつき直した結果、五十余の菌体で菌が出たのは十例以下で、菌が出たのは著しく減少しておる。つまり菌の付着表面的である。今後の研究課題は、これらの菌が減少したり、無菌状態になった米が化学変化するかである。おそらく白い黄変米はまず安全だという結果になりそうである、こういうようなことを言っておられます。越えて十一月一日に千葉市で開かれた日本医師会設立記念大会で、東大浦口健二教授は、それに対して、去月二十六日参議院厚生委員会楠本環境衛生部長が白い黄変米が安全だという結果になりそうだというような報告を行ったそうだが、あくまで行政的な意見で、そんなことは絶対にないと考えられる、こういうような新聞談話を発表しております。それから十一月の九日に厚生省食品衛生調査会で討議した結果は、白色黄変米菌体米粒周囲糊粉層についておるので、この糊粉層を取除けば菌はなくなる、これは歩どまり九〇%まで三十回くらいつき直しをすれば黄変菌有毒性はほとんどなくなることがわかったので、二十日にもう一度検討をして最終結論を出す、こういうようなことになっておるわけですが、その後二十日の結論でどういうふうになりましたか、それをお聞きしたいのと、なるほど米粒表面には菌体がなくなる、あるいは著しく減少しておるが、菌体そのものは問題ではないので、菌体から出た毒性が問題になる、その毒性物質は米の中に入っておるのかどうか、そういうような検討はもう十分なされておるか。それからさらにつき直した結果、そういう今度配給せんとするものをもっていろいろと人体実験動物実験、その他の実験をした結果、私は配給されるとしてもそういう結果配給されるものと思いますが、ただ研究配給されるのか、そういうような研究された結果、それをよく各方面、人体実験あるいはその他の各種の動物実験その他の研究の結果配給されるのかどうか。  それから農林省の方では今十万トンからの滞貨を持っておるので、なるたけ早く結論出してもらいたいというふうに厚生省に圧力がかかって来ておると思いますが、厚生省としてはこの問題は、そういう農林省の十万トンからの滞荷という問題とは関係なしに、厚生省独自にあくまでも科学的な見地から配給をするかせぬかというめどをつけて最後結論をお出しになるつもりがあるのかどうか、農林省のそういうような政治的な、行政的な面も多少加味されて結論をお出しになるのかどうか、厚生省としてあくまで科学的な見地から最後結論を出されるのかどうか、その点だけを承っておきます。
  4. 楠本正康

    楠本説明員 お答えを申し上げます。厚生省といたしましては八月の黄変米の問題が社会問題化いたしましたので、私どもといたしましては率直に再び研究をいたしてみて、その結果国民納得の行く資料に基いて事を処理いたしたい、かように考えた次第であります。従いまして、各研究機関大学等に一方研究をお願いすると同時に、他方では食品衛生調査会に諮問をいたしまして、問題の解決をはかって参った次第であります。先月二十六日に参議院におきましてこの黄変米問題が取上げられましたときに、私はひとまず研究の結果を御報告申し上げた次第でございます。その点は、動物試験の結果あるいはその他いろいろの結果から、ただいま柳田先生が御指摘になったような意味のことをお答えいたしたわけであります。その後千葉の学会におきまして東大浦口博士がまた反駁をしたらしいのですが、私はそのこまかい点は存じておりませんが、ただこの問題は当初から全学界があげて反対をしたというものでは毛頭ありませんで、ごく一部の学者反対をしておったわけであります。従って浦口博士といたしましてもおそらく自分の研究成績から所見を述べられたものと考えております。しかしながら私どもといたしましては、各機関にお願いをいたしました研究成果を総合して、現在判断しておる段階であります。この点はただいま先生から御指摘になった通りでございます。なお現在わかっております範囲は、黄変米、いわゆる外見上正常な黄変米につきましては、ただいまも御指摘のように菌の存在はきわめてわずか、しかも表面糊粉層だけについておることは確実であります。さらにこれらは菌学的並びに組織学的に明らかに結論が出ておりますが、ただはたして毒性物質が組織学的、あるいは菌学的の所見と並行するかどうかということが問題でございます。この点を実は二十日までに結論出したい予定でありましたが、研究が若干遅れております関係で、来月六日ごろ結論を出す見込みでおります。もちろん現在までペニシリンその他の研究におきまして、かびの菌の毒素はすべて菌体の中にとどまっておるということが定説であります。また一方私どもが今まで各機関へお願いしてありました成績について見ましても、菌体外に出ておるという理由は一つもございません。しかしこれは重大な問題でありますので、念には念を入れまして、もう一応この点を確かめて、結論出したい、こういう状況でございます。しかしこれはもちろん見通しを得ておりますので、今までの事実を再確認する、そうして念には念を入れてやる、こういうふうに考えておるわけでございます。  なおこれらの点につきましては、さらに動物試験人体実験を行うかという御指摘でございますが、菌学的にも組織学的にも、あるいは薬理学的にも、何ら毒性を認めないものであれば、私どもといたしましては、何ら動物実験人体実験等を行う必要はないと考えております。ただ私どもといたしましては、目下動物実験を二箇月あまりにわたつて続けておりますが、これは再搗精等の措置を加えずに、白い黄変米をそのまま動物に食べさせておるのであります。特に最も含有率の高い三〇%以上も黄変米の入つているような米を動物に食べさせて、今まで様子を見ておるわけでありますが、現在までのところは、この試食試験においては毛頭変化は認められません。従つてもう少しく動物実験の推移を見て後に、さらにこれを仕上げの意味人体実験に移したい考えでおるわけでございます。  それから最後農林省との関係でありますが、私どもといたしましてはもちろん配給当局でございませんので、あくまでも、成績は科学的に、国民納得していただける資料ができたら、そのときにそれを農林省に報告して、農林省がもし配給が必要であれば、配給するということになろうかとも存じます。私どもはあくまで学問的な立場、純技術的な立場で、この問題の論争の点を明らかにいたしたい、かように考えておる次第であります。
  5. 柳田秀一

    柳田委員 大体わかりました。そうすると今の御答弁を整理しまして、表面黄色になつていないところの白色黄変米と称せられるものについての御答弁と解してよろしいのであつて黄色黄変米についてはその限りでない、かように理解してよろしいでしようか。
  6. 楠本正康

    楠本説明員 御指摘通りでございます。
  7. 柳田秀一

    柳田委員 それから毒素は菌学的にも菌体の中に入つておるということです。私もしろうとでわかりませんが、そういうことであると、糊粉層菌体があれば、その中に毒素があるのであつて、いわゆる米の一番奥の中といいますか、一番しん、そういう方にはかような毒素は入つておらぬ、かように了解してよろしゆうございますか。
  8. 楠本正康

    楠本説明員 御指摘通りでございます。
  9. 柳田秀一

    柳田委員 それからもう一つ、私は動物試験のことを言うたのですが、それならば百歩譲つて厚生省食品衛生調査会、その他学者から結論が出て、歩どまり九〇%くらい、三十回つき直したら菌がいない。菌がいなければ、菌の中に毒素が入つておるのだから、毒素もない。そういう結論になるでしよう。そうしたら百パーセントそれだけの米で動物実験をおやりになるつもりはないか、私はそこを聞きたかつた歩どまり九〇%、三十回つき直した、すると菌がおつても、ごく少数だ。従つてその中に毒素があつても、ほとんどネグレクト・エラーになつてしまう。それを何パーセントというのでなく、それだけで動物実験をやつてみたら、それが一番確実だから、そういう御意図はありませんか。そこまでやらなければならぬものだが、そういう御意思はありますか。
  10. 楠本正康

    楠本説明員 私どもが現在動物実験をいたしておりますのは、そのつき直さない以前の米、つまり周囲にきわめてわずかではありますが、菌が付着しておるであろう米について動物実験をいたしております。その結果すでに二箇月余りを経過いたしておりますが、少くとも現在までのところは何ら変化が出ておりません。従つてこれを再搗精して、菌をとつたものを食べさせても、これはもう結果の出ようはずもなかろう。かように考えております。つまりこれは絶対無害である、かように考えざるを得ないわけであります。
  11. 柳田秀一

    柳田委員 その点は私多少納得が行かぬのですが、この程度にして、もう一つは、厚生省学問的にこれを研究しておるのであつてそれから最終結論出し農林省にまわすのだというのですが、これは厚生省から諮問された食品衛生調査会等がそういうことを言われるのならば、これは私もわかる。しかし厚生省はこれは行政当局なんです。結局私のおそれるのは、厚生省農林省最後には責任のなすり合いをやるだろう。日本官僚行政の最も悪い、いわゆる盲点ですが、それをやるだろう。そこをおそれるのです。従つてこれを配給するのは農林省責任であろうと、この米を配給してはいけないということは、行政厚生当局の確固たる権限の中に入つておると思うのです。従つてそういう、われわれは学問的にやるだけですということではなしに、かくかくのところまでは配給してよろしい。農林省配給しなさい。それから先のものは配給してはいけませんと、行政的にそれだけの断を下すのが厚生省責任である。学問的というが、諮問された学問的の結果を勘案されて、行政的にそれくらいのことをされるのが厚生省立場なので、それは少しおかしいのではないかと思うのですが、いかがですか。
  12. 楠本正康

    楠本説明員 もちろん研究の結果、かような米であるならば無害であるという結論が出ますれば、無論その米は当然配給してさしつかえないわけでございます。従つてこちらはその点は農林省に申入れをするだけでございます。ただ、その結果、それならひとつ再搗精をして配給しようか、しまいかというような問題は、これは農林省責任において行うことでありまして、私ども配給当局ではありませんから、もちろん無害となれば配給してさしつかえございませんが、厚生省としては、その結果は農林省判断、そのときの米穀操作にまかす以外に方法はない。こう考えておるわけであります。
  13. 柳田秀一

    柳田委員 それは言葉の上だけでありまして、現在十万トンからの滞貨があるのです。しかもそれは非常な国民の血税の中からしぼつた金で、高い外国米日本の農家に払うお金以上に高い外国米を、食管特別会計の中から捻出して買つておるのです。それを食糧事情によつて農林省がやる、そんなことは言葉の上のあやです。厚生省が無害であると言えば、農林省は待つてましたとばかりに、そのあくる日から配給するのは明らかなんです。農林省は今でも、有害でも配給したいというのが、偽らざる考え方なんです。だから農林省配給するもせぬも、一に厚生省の断にかかつておるのだから、厚生省が断を下したことは、あなたの責任ではないけれども、即農林省配給するのだ、こういう立場に立つて、一旦厚生省が断を下して国民の台所に行つたならば、それは農林省配給したのであろうと、行政的には厚生省共同責任なんだ、あなたの方でそこまで考えられて——農林省としてはもう有毒であつて配給したいくらいなんだから、厚生省立場からある程度これは毒でございませんということになれば、農林省はすぐ配給するのです。従つてあなたの方の最後結論というものは結果的には当然厚生省責任を負うべき立場になると思う。そういうお立場で事を運んでおられますか。いや私どもはただ学問的にやるのだ、こういうふうに公正な結論を集めて、そして妥当な線を出したのだ、あとのことは農林省であります。そういうような責任転嫁はできないと思う。現実問題としてそこを私は問うておる。
  14. 楠本正康

    楠本説明員 この点は御指摘通りでありまして、厚生省が無害という判断をいたしますれば、農林省はおそらく待つていましたとばかりこれを配給にまわすことと存じます。この点は御指摘通りでございます。従つてどもといたしましては、あくまで無害であるということを責任を持つて言い得るだけの根拠が必要であると同時に、一方国民にそれを納得してもらうだけの資料もなければならぬと存じます。しかしどちらかと申しますと、正直なところ申し上げまして従来あまり厚生省農林省配給の点までもかぶり過ぎているきらいもありますので、この辺は行政の限界を明らかにしておきたい、こういうのがお答え申し上げたい趣旨でございます。
  15. 柳田秀一

    柳田委員 これ一点でやめます。そうするといわゆる菌があつて毒素が出て、さらに毒素以外の色素が出たところの黄色黄変米、これに関しては現在のところつき直して配給するとか何とかいうようなお考えはまだないわけでございますね。
  16. 楠本正康

    楠本説明員 現在は黄色黄変米、変色いたしました黄変米というものはほとんど入つておりません。もちろんこれは問題外でございます。このいわゆる黄変米が問題になりましたのは、白い外見上正常な米が問題になつたのでありまして、私どもはあくまでもこれらの外見上正常な黄変米を対象にいたしまして事を処理いたしておる次第でございます。
  17. 柳田秀一

    柳田委員 そうしますと、われわれが最初にこの問題を判断したときには、やはり外見黄色黄変米の方からこの問題に入つて来て、とにかく最初は肉眼的に黄色になつておる米を何%という式でえりわけておつた。ところがそれではどうも不十分だというわけで培養試験をやつてみたら、黄色だけでなしに白色の中にもいわゆる黄変菌がおつた、こういうことになつて来た。そういうふうに考えておりますが、今の御答弁では、問題は主として白色黄変米だけだ、培養してみなければわからないものばかりだというお話でありますが、現在滞貨が十万トンありますが、最初から言われたところの黄色黄変米といわゆる白色黄変米というものをわけると、その十万トンはどのくらいになりますか。
  18. 楠本正康

    楠本説明員 現在滞貨になつておりますのは、すべて外見上は正常な白米であります。従つてただいま御指摘黄色黄変米というものは、これは昨年以前の問題でございまして、昨年からは米は全部白くなつており、しかもなおかつこういう問題が起きましたので、ここに問題がうるさくなつたわけであります。
  19. 柳田秀一

    柳田委員 そうすると現在はいわゆる黄色黄変米というのはあまりないわけですか。
  20. 楠本正康

    楠本説明員 現在入つております米は、昨年諸外国日本政府契約いたしました規準従つてつているわけでございます。それによりますと、黄色黄変米、色のかわつたものは一%以上は買いつけないということになつております。しかしながら実際問題といたしますと、買付が非常に注意されておりますので、最近は一%入つたものすらも入つておりません。なお念のために申し上げますが、来年度の契約におきましては、色のついたものは痕跡でもいけない、こういうのがこの十一月からの米穀年度の外米の買付契約規準になつております。
  21. 萩元たけ子

    ○萩元委員 ちよつと関連して。昭和二十九年八月十四日の朝日新聞の夕刊にこういう記事が出ておるのでございます。「捕えてみれば黄変米食管法違反は成立たぬ、浦和発、去る十一日埼玉久喜署は、東京都豊島区雑司ケ谷六ノ一一三五雑穀商太田昭彦さん(三〇)がトラツクで米十七俵を埼玉県南埼玉郡鷲宮町、センベイ加工業本田精一さん方に運搬中のところを食管法違反疑いで検挙、十三日太田さんの雇主、東京都品川区大井権現町三、六五七センベイ加工業増山真佐四郎さん(三五)を参考人に呼び調べたところ、この米は去る七月二十日東京都台東区竹町一〇東京米穀工業協同組合理事長仙波清氏が同組合員の希望をまとめて政府からセンベイ加工用として払下げを受けた不適格米として払下げ黄変米だということが判つた。同県警察本部捜査二課では、もし払下げられたのが不適格米とすれば、この事件について食管法違反疑いは成立しないものとみている。」こういう記事なんでございますが、せんべい加工ということになりますと、これは黄変米の毒はなくなるものなのでございましようか。
  22. 楠本正康

    楠本説明員 ただいまお話の問題は、私まだ承知いたしておりませんが、ただ私ども農林省との話合いで、この黄変米の毒があるかないかという問題が根本的に解決するまで、一応主食以外に黄変米を転用することについても待つてもらいたいということを申し入れまして、農林省の方においてもさよう理解をいたしております。従つて黄変米問題以後今日まで私どもといたしましてはみそ、しようゆ用あるいはせんべい製菓用等黄変米が出ているものとは考えておりません。ただ横流しその他いろいろの問題がございますので、さような点からあるいはかような事件が起きているのかもしれません。しかしその場合は明らかに食管法違反になるわけでございます。
  23. 小島徹三

  24. 杉山元治郎

    杉山委員 白色黄変米が九〇%に再掲精することによつて毒性がゼロになるという楠本局長お話が今柳田委員の質問によつて明らかになりましたので、私はそれらについて重ねてお尋ねしようといたしませんが、このゼロになつたということについて厚生省の方のいろいろ菌学的、組織学的研究はそうなつたと思いますが、先ほどお話のうちにもございましたように、東大浦口博士がそんなことはない、絶対にない、こういうことを新聞にちようど発表いたしておつたと思うのでありますが、どういう行き違いでそういうことになるのか。私が特に開きたいと思いますことは、衆議院の八月二十三日の決算委員会決議に五項目ありますが、その第三項目は、「病変米配給することは、これを中止すること。再搗精その他の処理をなし、再検討の上、学者の一致した意見により、これを処理すること。」こういう規定がなされておるのであります。これは御承知のことかと思いますが、そういう場合には、局長の話ではもうゼロになつたというのが、学者の一人である浦口博士は絶対にそんなことはない、こういう発表をいたしておるのを新聞でも見受けておるのであります。そこで今言つた決算委員会決議学者の一致した意見によつて決定処理をする、こういうことに相なつておりますが、この学者の一致した意見というのは、これは多数決によるという考え厚生省では持つておるのか。いな一人でもそういうのがあるとこれは一致した意見にはならないという解釈をとるのか。私はこれはたいへん重大な問題になると思います。これは決算委員会はつきりきめた条項でございますので、この解釈問題にかかつて来ると思いますから、一応このことを伺つておきたい、こう思う次第であります。
  25. 楠本正康

    楠本説明員 浦口博士が再搗精の問題についてどのようなことを発表されたか私は承知いたしておりませんが、しかし反対するには反対根拠がなくちやいかぬと思います。たとい一人の学者であろうとも根拠があつて反対をするものなら、私どもとしては十分それをまた率直に研究し直すということをしなければならぬと思つております。ただしかし何ら根拠なくしていたずらに今までの立場反対するようなことがあるならば、私どもはそれは学問反対とは考えません。根拠のなきものは、それはもう学問反対とは考えておりません。従つて反対される方はけつこうでありますから、私といたしましてはどうか反対するだけの根拠、たとえば標本を見せていただくとか、あるいは試験研究の結果かような成績が出たということをはつきり示していただけば、私どもはそれをほんとうの反対理解をいたします。ただしかし根拠なくして反対をされることは私どもはそれを反対考えておりません。
  26. 杉山元治郎

    杉山委員 局長言葉はごもつともだと思うのですが、私が浦口博士に直接会つて聞いたのでないから、その論拠がどこにあるか存じませんが、しかし少くとも学者として新聞に堂々とそういうことには絶対反対だ、こう言うのには相当私は論拠があるのではないか、それでなければ学者的な立場は立たないと私も思いますので、今その点衆議院決算委員会決議もございますので、一応重ねて尋ねたような次第で、ございましてもし浦口博士論拠というものが非常に薄弱なものであるならば、これは仰せのように何ぼ反対論を唱えたところで、これは成り立たぬと思いますが、しかし一応そういうようなことをはつきりと新聞に堂々と書いておられましたので、私どもとしてはこの点はつきり見きわめておく必要がある、こう存じて伺つた次第であります。  なおついでにお伺いいたしたい点は、今お話のように新米穀年度からそういう病変のものは絶対に受取らない、こういうようになつて非常にけつこうなことだと思うのですが、それについては厳重な検査が行われなければならぬと思うのです。そこで聞き及びますと、日タイ間の関係において共同検査機関を設けるという話を伺つておりますが、すでにそういうものが成り立つているのでありましようか。
  27. 楠本正康

    楠本説明員 日タイ間の共同検査の問題につきましては、いまだ結論が出ておりません。目下厚生省からも専門家現地に参りまして、いろいろ調査をしたり、相談をいたしたりしている最中でございます。これがどういうかつこうになりますか、いまだ結論を得ておりません。ただ加州米テキサス米等につきましては、アメリカ側におきまして現地検査機関を設けることが決定をいたしまして、近日中に日本からも学者が参加することに相なつております。
  28. 杉山元治郎

    杉山委員 両方の国々で共同で検査をして、これで何もないということで受取つて、悪い米がこちらに来ないということは、非常にけつこうだと思いますが、かんじんのタイとの関係で、そういうことが成り立つておらない、向うだけで検査をして、これなら大丈夫だといつてつて来た米が、日本病変米が発生したという場合に受取らないとこれをクレームする——厚生省は別にクレーム問題そのものはそうではないかもしれないけれども、しかし検査については相当の責任があると思うのですが、そういう問題は一体どうなるので、ございましようか。
  29. 楠本正康

    楠本説明員 ただいま御指摘のように今後は現地におきまして十分に買付に注意をする、あるいはできたら現地検査をしたものを買つて来るというようなことが最も望ましいのでありますが、といつて、国内の港で検査することをやめるものではありません。従つて念には念を入れる意味でいいものは買つて来るが、さらにこれを各港でもう一度検査をする建前をとつております。ただこの場合、港の検査において不合格になつたような場合には、これは少しくむずかしい点もございまして、これはただちにクレームをつけるかどうかというようなことは、これは国と国との契約の扱い方に尽きるものと存じます。従つてこれらの点は今後日本政府とタイ国政府との契約いかんにかかるものだと存じますが、ただこれはお互いに政府同士の貿易である関係もありまして、必ずしもこれが民間の貿易のような取扱いができない点は、これは一応御了承願つておきたいと存じます。
  30. 杉山元治郎

    杉山委員 この際直接黄変米の問題ではございませんが、黄変米が最近やかましくなり、また米に対しまする細菌学的な研究が非常に盛んになつて来たことはありがたいことだと思いますが、黄変米以外になおいろいろそういうような付着している菌が多々あるのではないかと思うのであります。その中には無毒のものもございましようし、ものによつては有毒のものもあるかと思いますが、そういうような細菌学的な研究が今進んでおるのかどうかということと、また毒性のある菌が発見されておりますならば、それの化学的な、医学的な研究方法がどういうように進んでおるのか。また中毒症状を起しまするいろいろ菌の性質と申しますか、そういうものについてのまだまだ未解決のものもたくさんあるのではないか。あるいは黄変米そのものについても単に肝臓とか腎臓とかいうことだけでなしに、そのほかにそういういろいろなものもあるのではないかと思うのですが、そういう問題についての御研究が進められておるのかどうか、その点を一応承つておきたいと思うのであります。
  31. 楠本正康

    楠本説明員 御指摘のように米に生えますかびについては、現在うるさく言われております黄変菌のほかに三十数種類あるといわれております。これらのものについては、もちろん現在いろいろ研究を進めております。ただしかし黄変菌以外の三十数種類の菌につきましては、いまだその毒性を確認したものはございません。  なお自然の状態においては、いわゆる白い米につく程度の毒においては、黄変菌すらもはたして毒性があるかどうかというようなことはまだ言えない段階だと存じます。従来毒性ありと言われておりますのはさような菌を純粋培養しまして、それから人工的に抽出し毒素を使つて毒があるとかないとかいう話が出ておるわけでございます。かような操作をいたしますれば、どんな食べ物にもたいていは毒が出て参りますので、この辺に非常なむずかしさがあるわけでございます。しかしながらさような意味からいたしますれば、三十数種類のその他のかびについてもおそらく何らかの毒が出て来るのではないかと思いまして、せつかくこの辺は現在研究をいたしておる最中でございます。
  32. 杉山元治郎

    杉山委員 けつこうです。
  33. 柳田秀一

    柳田委員 さつき一つ質問を忘れましたので、環境衛生部長にお伺いいたします。実はつき直しておる場合に糊粉層を取除くと、大体害はなかろう、こういうような御答弁でありました。つき直して糊粉層をとつてしまつたときに、米そのものに栄養学的にどういう変化をするかということについて御研究になつておるか。栄養学的には何らかわらない。栄養学的に多少カロリー等において落ちるのかどうか。この点は主食の問題、国民栄養の問題で非常に重要ですから、その蛋白、それから含水炭素、脂肪、あるいはその他のビタミン、あるいはミネラル等に関して御研究が進んでおりますかどうか、これだけちよつとつけ加えて伺つておきます。
  34. 楠本正康

    楠本説明員 糊粉層は、これは澱粉層と違いまして、蛋白質、脂肪その他いろいろな栄養物質を持つております。従つて考え方によれば菌の繁殖がしやすいのじやないかということも考えられるわけであります。従つてこれらの糊粉層を完全に取除きますれば、当然栄養価値としてそれだけ落ちるわけです。しかしながら白米というものの定義は、糊粉層までを完全に取除いたものが白米の定義であります。従つて栄養的のことをいえば白米よりも七分づきがいい、こういう議論になるわけであります。しかし外米の場合には、やはり私どもはこれは七分づきとか何とか言わずに、まずこれは白米として食べるべきものだという考え方を持つておる次第であります。
  35. 柳田秀一

    柳田委員 この点は多少問題がありますから、またいずれこちらも少し研究しておきます。     —————————————
  36. 小島徹三

    小島委員長 次に覚せい剤取締に関する件について発言を求められておりますので、これを許可いたします。
  37. 柳田秀一

    柳田委員 そこで覚醒剤の問題ですが、本問題に関しましては十九国会でもずいぶん論議をいたしました。少くとも私たちは厚生省に対して、このような全国の青少年に恐るべき害毒を流しておるものはもうこれを製造すら禁止して、ヒロポンというものはすべていかなるヒロポンもこれは密造、密ルート以外の何ものでもないということにされてはどうかというような点を結論的に出したかつたのでありますが、その点に関して参考人より意見をお聞きいたしますと、結核の手術の場合に必要であるとか、あるいは精神病の研究の場合に必要であるとか、ごく少数の例外のためにどうもまだ薬務局においてもそのふんぎりがおつきになつておらないような状態らしい。それはともかくといたしまして、いよいよ出でてこのヒロポンの害というものは恐しくなつておる。最近の犯罪、特に青少年の犯罪というものはあげてヒロポンに帰納できるというくらいになつて来ておる。しかもこの対策は、これは大きくわけるならば、警察当局においても取締りを強化するとか、あるいは法務当局においてもこれに対するところの罰則を強化するとか、あるいは厚生省において精神衛生学的にこれを収容する施設を拡充するとか、あるいはその他学校、あるいはその他の青少年補導機関等におけるところの民間指導、その他母の会等の各民間団体の協力というようなものがそれぞれ要請されるわけですが、実は私どもの社会党といたしましても、来るべき国会においてはこのヒロポンの問題は大きく取上げたい、かように思つておりますので、本日はただその準備の意味において多少基礎的な点だけをお尋ねいたしておきますが、現在全国におけるヒロポン常用患者の数、それからそのうちで特にもう明らかにヒロポン中毒に陥つておる者の数、さらにそのうちでどうしてもこれは凶暴性その他の理由によつて強制収容をしなければならない者の数、そういうような数字について厚生省も実態調査をされたと思いますが、その結果をひとつお知らせ願いたい。
  38. 高田正巳

    ○高田説明員 ヒロポンの常用者その他のことにつきましての数をつかんでおるかというお尋ねでございますが、これは事柄の性質上正確な数字はとうていつかみがたいのでございます。この点は御了承いただきたいと存ずるのでございますが、私どもの方で本年の五月、六月にかけまして若干の実態調査をやつてみたのでございます。ただこの方種いろいろと私ども検討いたしたのでございますが、なかなか正確なものをつかみがたいような事情にございますので、方法といたしましては十分な方法ではないと思うのですが、一応やつてみたのであります。従いましてその対象になりました常用者のいろいろな分析というふうなものにつきましては、非常に貴重な資料になつたと思うのでございます。この調査から、ほんとうにこれは推定でございますが、全国の常用者の数等を一応推定いたしたのでございまするが、その推定から参りますると、申し上げるのもいささかはばかるくらいの根拠でございまするけれども、一応申し上げてみますと、大体嗜癖者としましては五十五万という推定をいたしたのでございまするが、これは非常に数字が少いかと思うのであります。まず五十万から七十万くらいではあるまいかという想像をいたしております。それからそのうちの中毒者でございまするが、これも非常に不確かな数字でございますが、まあ二十万以上あるのではないか。その中で強制収容する者はどのくらいかということは、あるいは公衆衛生局の方からお答えがあるかも存じませんけれども、ちよつと私どもはつかみにくい、想像もいたしかねるような状況でございます。大体さような数字を一応推定いたしておるのでございますが、ただいま申し上げましたように、申し上げるのもはばかられるくらいの非常にあぶない数字であるということをひとつ御了承いただきたいと思います。
  39. 柳田秀一

    柳田委員 ヒロポン禍がこれほど大きく社会問題になつておりますがゆえに、やはり先般結核に関するあのような厖大な実態調査をなされた厚生省としては、同様の意気込みをもつてこれに対する調査等にも——相当の予算措置がいろうと思いますが、やはり根源を押えるためには実態を正確に把握してからでなければ押えにくいわけでありますから、もう少し正確な実態調査を、これは薬務局だけではありません、公衆衛生局その他医務局の所管にもわたつておると思いますが、これは厚生当局でもう少し綿密な実態調査をおやり願いたいと思つております。  そこで来年度予算に厚生省としては、ヒロポンに対して大蔵当局にどれほどの予算要求をなされ、現在どの程度まで大蔵当局との話合いがついておるか、これを概略ひとつお示しを願いたい。
  40. 高田正巳

    ○高田説明員 来年度総額七億円あまりを要求しております。中味は、金額といたしまして、中毒者の収容ベッドの増床という方が重点になりますので、これにつきましては後ほど公衆衛生局の方からお答え申し上げます。私どもの方の関係といたしましては、何といいますか、全般的な油といいますか、そういうふうな関係の費用になつております。覚醒剤問題対策協議会に要する費用、それから都道府県のいろいろな取締りの補助金でございますとか、あるいは都道府県の行います啓蒙宣伝に要する費用でございますとか、さような性格のものが中心になつております。それで大蔵省とどの程度の話合いがついておるかというお話でございますが、来年度の予算はこれからの折衝に相なるわけでございます。本年度のものといたしまして、実は補正関係で私ども関係の経費も、来年度要求いたしておりますのを月割りにいたしましていろいろ話し合つたのでございますが、私ども関係といたしましては少額でございますので、新たに補正をいたすよりは、中で既定経費の流用等によりまして措置をいたしたらよかろうということに相なりまして、この取締りの補助金につきまして若干のものを流用で使うということに、本年度といたしましては相なつたような次第でございます。なお重点はベッドの増床ということになりますが、それは公衆衛生局の方からお答えいたします。
  41. 小沢辰男

    ○小沢説明員 私どもは来年度覚醒剤の中毒者の医療保護の対策といたしまして増床をお願いいたしておりますのは、覚醒剤の中毒者に関する増床ということで、全国に三千二百二十床、予算といたしまして総計約六億の要求をいたしてございます。なお一般の精神病院の増床は、このほかに六千床お願いをいたしておるのでございます。内一千床が国立関床、五千床が補助による公立及び法人立の精神病院の増床の要求でございます。精神衛生法の対象になりましたために措置入院の規定が適用できます関係上、この両者を総合的に活用して行けるというふうに考えますけれども、覚醒剤の重要性にかんがみまして、覚醒剤対策の特別経費としてお願いをいたしまして、それを三千二百二十床、こういう予算を出しているわけでございます。なお今年度は覚醒剤のための特別の経費というものはなかつたのでございますが、精神衛生対策費の中で精神病床の増床が国立を含めまして二千一百床ございます。私どもの補助関係の予算が千八百床でございます。その中からある程度のものをさきまして、覚醒剤の中毒患者のための医療施設の拡充をいたしておるような状況でございます。なお補正予算の機会に大蔵省にもいろいろとお願いをいたしまして、現在までのところ昭和二十九年度の実行予算から節約を予定されまして執行を保留されておつた額の中から、私どものこのヒロポン・ベツドのために二百五十床分、補助金といたしまして千五百六十万ばかりの経費でございますが、これを追加補正という意味で二百五十床の増床経費を目下ほぼ大蔵省の了解をとり得ております。なおそのほかに、実は来年度の費用の中では、こまかい費用でございますけれども、覚醒剤の中毒患者の医療保護の研究といいますか、医療保護についての専門的な検討を願います精神衛生審議会における覚醒剤部会の経費、あるいは地方の特に患者の多いような市町村を選びまして、その市町村に民間の方でいわゆる指導員のようなかつこうの方々をお願いしまして、そして民衆組織の中心になつていただいて、覚醒剤のいろいろな対策に御協力していただく意味における指導員の経費も若干織込んであるのでございまして、今年度もこの補正のときに、実は既定経費の一部をさいてでも、とりあえず覚醒剤中毒患者の医療保護の研究を少しずつ始めさせていただきたいということから、わずかの経費でございますが目下流用その他の措置について大蔵省にお願いをいたしておるような次第でございます。
  42. 柳田秀一

    柳田委員 十九国会で精神衛生法を改正いたしまして、覚醒剤患者も入院できることにいたしたのでございますが、法改正後今日までこの法の適用によつて覚醒剤患者、ヒロポン中毒患者を精神病院に入院させた数は、現在までに何人になつておりますか。
  43. 小沢辰男

    ○小沢説明員 それは目下調査中で、ございますので、まだ総計の集計ができておりません。今問合せ中であります。いましばらく御猶余願います。
  44. 柳田秀一

    柳田委員 それではそれは至急に調査出してください。ということはいかに法を改正いたしましても、実際にこれが活用されておるかどうか。これはまた今後覚醒剤の予算措置をとる上においても非常に重要になつております。というのは覚醒剤の中毒患者は強制的に入院させにくい、あるいはしてもそこでしばらくほつておけばなおつて出て来る。出て来た患者は——日本の環境は非常に悪い。パチンコはチンジヤラ、チンジヤラやつている。またかかつて何度も入つて来る。私は法の改正だけではなかなかうまく行かないと思うので、はたして法の改正以来これがどのように活用されておるかどうか。これは施策の第一着手になるのですから、早急に資料をお出し願いたい。  それからこれは委員長にお願いしておきますが、厚生省関係のものが六億とか七億では日本の覚醒剤禍は救われないと思う。従つてしかるべき機会において、この委員会を覚醒剤だけの問題について一日さいていただきたい。そしてできるならばやはり厚生当局、大蔵当局さらに法務当局、それから警察関係等を呼んでいただきたい。これは本年度の最大の課題として覚醒剤問題ともう少し取組まなければいかぬ。単に六億とか七億の行政的なこういう措置だけではいけない。できるならば私は大きくこの覚醒剤患者を収容する施設をつくらなければいけないと思う。現在幸いにして警視庁当局においては従来にないところの本腰を入れて、これの検挙、取締りに当つておる。しかし検挙、取締りに当つてもそれを収容する施設がなければ何にもならない。そこで収容施設を大幅に持つて行くと、覚醒剤患者がなくなつたらどうするか。私はそれはたいへんけつこうなお話であると思う。従つて一応当座としては大きく増床して、さらに覚醒剤患者が日本からなくなれば、そのものは現在なお足らぬところの日本の精神病患者のベツトに活用するもよろしい。そのものを今度は日本の結核ベツトに活用するもよろしい。そういうような有機的関連のある手段として現段階において手を打たなければならない。これは私は各政党に課せられた大きな使命だと思う。そういう意味において、当委員会におけるそういう問題は、単に覚醒剤患者のための増床だけじやない。これは将来日本の精神病床の増床にもなり、さらにこれはひいては結核病床にも利用できるというような総合的な見地から十分な対策を立てる、と同時に検察庁当局における現在の検挙の手はゆるめない、さらに現在の取締りを厳重にやつて行く、こういうような対策をすべての行政部門があけて一元的な運営のもとにやるのでなければ、日本の覚醒剤禍はこの現状からは救われない、依然として同じことをただ堂々めぐりしておるにすぎないということを私は非常に憂えます。従つて委員長においても近き機会にそういうような参考人をお呼び願うもよろしいし、また各関係の官庁から、それぞれの責任のある方に来ていただいて、これを大きな総合的の見地から検討するという機会をぜひつくつていただきたいということを要望しておきます。
  45. 小島徹三

    小島委員長 理事とよく相談してみます。
  46. 杉山元治郎

    杉山委員 今の点につきまして私も一言つけ加えて質問をしておきたいと思うのでありますが、今の説明員のお話では、本年度ヒロポンのための増床が三千二百二十床、一般精神病に対する病床が六千床、その予算が約七億円くらいのものだというお話がございましたが、私どもの見ますところでは、政府よりもはなはだ不確かな調査あるいは資料でございますので、政府自体も実態をつかめないと言うか、私の方もそう正確なことは申しかねるけれども、精神薄弱なりヒロポン患者として収容しなければならないような人が四十三万人、これは国家財政からみな入れるわけにも行かないが、せめてそのうち三万三千くらいは入れなければならないのではないか、こういう見当を持つておるのでありますが、今のお話のような、本年度をただ来年度にも進めるというくらいではとてもヒロポン患者を強制収容し、また治療して行くということはむずかしいと思うのであります。ヒロポン禍の問題は申し上げなくともわかるように、このままで推移いたしますならば、おそらく以前中国が阿片禍となつたと同じように、亡国の兆を来すと思うのであります。こういう意奪いにおいて、いろいろ経費の多端なときであつても、今のうちに根本的に治療していただかなければならないと思いますので、私は前委員お話になつたように、この際に国家が決意を持つて、ヒロポン禍に対する対策を立てていただきたい。それについては今申し上げましたように少くとも三万三千という——ちよつとけたが違つて来ておるのです。このくらいのものが必要だと思うのでありますが、それについての政府の見解を一応ただしておきたいと思うのであります。
  47. 小沢辰男

    ○小沢説明員 先ほど申し上げました七億という予算は、覚醒剤対策の特別経費として別わくにお願いをしております経費の総額が七億だということを申し上げたのであります。精神障害者全体のものが、先ほど申し上げましたようにそのほかに六千ベツドの増床経費、あるいは覚醒剤の患者も一部含め得るいろいろな患者の入院費その他合せまして、そのほかに三十億ぐらいがあるのでございます。今正確な数字を持つて来てございませんが、従いまして覚醒剤の特別対策費として別わくにお願いをしておりますのが七億でございまして、精神衛生の、そのほかのベツドの増床経費を合せますと、三十億を越える金額になるのでございます。それからお話通り精神障害者のことしの実態調査によりますと、約四十三万人が入院を要するという結論になつておるのでございます。これにつきましては私ども今後この実態調査結論に基きまして、精神衛生の基本的な対策を樹立し、そして増床その他の計画をはつきりと打出して行く考えでございます。ただいろいろ予算の都合上今年度は実態調査結論の前に要求をいたしました。国家財政から行きまして一ぺんに急激な増床ができないために、一応六千床というものを計上したような次第で、ございます。     —————————————
  48. 小島徹三

    小島委員長 次にビキニ環礁附近における爆発実験における被害問題について発言を求められておりますので、これを許可いたします。萩元たけ子さん。
  49. 萩元たけ子

    ○萩元委員 ビキニで被災された患者さんのその後の状態をお聞きしたいと思います。
  50. 尾村偉久

    ○尾村説明員 九月に久保山さんが死去されまして、残り二十二名の患者が入つておるわけでございます。これは福龍丸関係の患者だけでございます。そのうち七名が東大病院、十五名が東京第一国立病院へ入つております。その後二十二名の方いずれも経過良好でございまして、現在東大に入つておられる方は、白血球数で申しますと、三千台の方が二名ございまして、その他の患者はいずれも四千台ないしはそれ以上の数でございます。しかもこれは減少の傾向がなく、逐次若干づつ増加の傾向にあります。その他の症状といたしましても久保山さんのああいうことがございましたので、みな非常に精細な観察を続けておりますが、中で肝臓の障害が継続しておる方がわずかございます。全般的な症状から見ますと、いずれも軽快に向いつつある、こういうことでございます。もちろん臓器のごく一部のところに非常に心配する症状があつた、あるいはまたそういう症状が近い将来出るというようなことは、一人々々違いますので、今全般としては軽快の徴候にあるけれども、特殊な症状が絶対に一人も出ないということは断言できないわけでございます。これはいずれも初めての障害なものでありますから、その点はまだ断言できないわけでございますが、以上のようなことから、現在の段階では、全体の患者のうち相当数が、自宅ないしは郷里等に一時でも帰郷してみるという時期が近く来るであろうというのが、今のところ主治医団の意見でございます。従いまして、個々の患者にも、その点について大体主治医側の見込みはこうであるというので、一ぺんうちに帰つて、練習のために環境を変化してみる意思があるかどうかというのを今当つておる状況でございます。二十二名の中で一人二人は、実際に軽快退院ということでうちに帰すことも可能な人もあるようでございますけれども、しかし何分従来わかつてつた病気でないものでございますから、帰つてみて環境の変化だけでまたどう悪化するかというおそれがあるものでございますので、まず最初には、帰郷療養といいまして、作業療法のような形で自宅に五日なり一週間なり帰して、それの結果をもう一ぺん精細に検査いたしまして、やはり異状がないということを若干繰返した上で軽快退院の問題を最終的に相当数の方にはかりたい、こういうことで今進んでおります。以上の通りでございます。
  51. 萩元たけ子

    ○萩元委員 それでは補償の状態はどういうことになつておりましようか。
  52. 楠本正康

    楠本説明員 補償問題は、一応直接被害と間接被害とにわけまして考えておる次第でございます。もちろんこれらのものは各省の分を総括いたしまして外務省が折衝いたしておるわけでございます。これらのうち厚生省関係いたしております問題、たとえば患者の問題、治療費、生活費、あるいは廃棄いたしました魚の件、かようなものはいずれも直接損害に該当するものでございます。従つて直接損害に関する限りは、今のところは別に折衝もさしたる問題がないかに聞いております。従いまして、少くとも患者の問題等に関連いたしました厚生省関係の分につきましては、私どもは補償は相当額が実現されるものと考えておる次第であります。
  53. 萩元たけ子

    ○萩元委員 相当額ということで、まだはつきりした数字はおわかりになりませんでしようか。
  54. 楠本正康

    楠本説明員 この点は各省それぞれの問題につきまして計算をいたしまして外務省がこれをとりまとめておるわけでございまして、従いまして別に不当に少いとか、あるいは補償として不適当なものであるというような額は、おそらく直接損害につきましては考える必要はなかろうかと存じておる次第であります。
  55. 萩元たけ子

    ○萩元委員 もう少し具体的に伺えませんでしようか。
  56. 楠本正康

    楠本説明員 この点は実はいろいろ外交上の問題もあり、また国内でお互いそれぞれ関係官庁が多い関係もありまして、事務的にも思わしくないということから、今まで事務的には公表を避けるということて実は進んでおるわけでございまして、これは外交上の含みもかなりあるそうでございます。どうかさような点で、私ごとき事務当局といたしましてはちよつとお答えをしかねるかと存じますが……。
  57. 萩元たけ子

    ○萩元委員 それでは広島、長崎の障害者が、聞くところによりますと一万人もあるというようなことでございますが、正確な数字はどのくらいございましようか。
  58. 楠本正康

    楠本説明員 現在被爆者の数は全国に散らばつておりますが、大体広島、長崎を合せまして、現在約三十万人程度と考えられております。しかしながら、これらのうち特に何らかの症状を持つておるものというようなものは、必ずしも調査が進んでおりませんので明らかなことは申し上げられませんが、広島市に関する限りは、広島市の医師会等が協力いたしましてある程度調査を進めておりますが、これらによりますと、現在の調査の範囲で大体二千名程度が障害者になつておるということでございます。
  59. 萩元たけ子

    ○萩元委員 その状態はどのようでございましようか。
  60. 楠本正康

    楠本説明員 これは当初は外症的な患者、障害者が多かつたのでありますが、その後いろいろ調べてみますと、やはり血液にかなりの症状を認められる者、つまり内科的の障害者というようなものが意外に多く、現在でもすでに今年になつてからも十名程度が原爆症によつて死亡しているような状況でございます。これらの患者は、主として現在東大病院、国立病院等に入院いたしております。患者の症状というようなものを呈しているものが、内科的疾患については多いわけでございます。
  61. 萩元たけ子

    ○萩元委員 私どものまだ知らないところに患者さんたちの非常に悲惨な状態があることがたまたま聞かれるわけでございまして、これらの方が月日がたつて忘れられるということなくビキニの被災者と同じわけでありますので、この治療、救済、将来どうするかということについては、国としてもあらん限りの力を尽していただきたいことを強く要望いたします。具体的な数字がまだビキニの患者さんについてもお聞かせ願えないので、たいへん残念に存じます。
  62. 小島徹三

    小島委員長 それでは戦争犠牲者補償に関する件についての質疑は明日いたすことといたしまして、本日はこれをもつて散会いたします。次会は明日午前十時より開会することといたします。    正午散会