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1954-10-14 第19回国会 衆議院 厚生委員会 第70号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十月十四日(木曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長代理 理事 越智  茂君    理事 松永 佛骨君 理事 長谷川 保君    理事 古屋 菊男君       寺島隆太郎君    安井 大吉君       山口六郎次君    亘  四郎君       滝井 義高君    福田 昌子君       柳田 秀一君    山口シヅエ君       山下 春江君  出席国務大臣         国 務 大 臣 緒方 竹虎君  委員外出席者         厚生事務官         (薬務局薬事課         長)      尾崎 重毅君         厚生事務官         (保険局長)  久下 勝次君         厚 生 技 官         (医務局長)  曽田 長宗君         専  門  員 川井 章知君         専  門  員 引地亮太郎君         専  門  員 山本 正世君     ————————————— 本日の会議に付した事件  新医療費体系に関する件     —————————————
  2. 越智茂

    越智委員長代理 これより会議を開きます。  都合により委員長が不在でありますので、私が委員長の職を勤めます。  前会に引続き新医療費体系に関する件について質疑を続行いたします。長谷川保君。
  3. 長谷川保

    長谷川(保)委員 一昨日の質問で、私は新医療費体系について重大なる欠陥があるということを指摘したのでございましたが、もう少し続いて、私は別の角度から、基本的な問題について伺いたいのでありますが、厚生大臣おいでにならぬでしようか。
  4. 越智茂

    越智委員長代理 見えることになつておると思いますが……。
  5. 長谷川保

    長谷川(保)委員 それでは各局長さんに御答弁を願いたいと思いますが、昭和二十六年の六月二日の衆議院に驚きまする厚生委員会質疑応答を、速記録によつて調べてみますと、調剤いう問題が取上げられております。申すまでもなくこの医薬分業医療費体系では調剤処方箋の問題が中心問題です。御承知のように医師法歯科医師法及び薬事法の一部改正法案は、昭和二十六年の第十国会に提出されましたときには政府案であります。それを参議院修正いたしました。これは参議院議員修正でありますが、その議員の方で出しました文章と政府原案との問題で、本委員会でも委員をしていらつしやいます高橋等君が質問をいたしておる。つまり最初に提出されました政府案では処方箋交付するのにつきまして、「診療患者薬剤交付を受ける必要があると認める場合」には処方箋交付しなければならないとなつておる。それが参議院の方では「薬剤調剤して投与する必要があると認める場合」、薬剤交付という言葉薬剤調剤して投与するという言葉にかえられておる。この点について高橋委員質問をいたしました。それに対しまして参考人として出て参りました谷口参議院議員答弁をいたしておりますものを読んでみますると、参議院がそういうように修正意見を出しましたのは、「たとえば錠剤のごときものを与えるにしましても、やはり薬剤を投与ということになれば、錠剤を与えることはできぬことになりますので、その錠剤くらいは別に処方箋を書く必要もないというので、薬を調合して与える場合のみをさして「薬剤調剤して投与する」というふうに改正をいたしたのでございます。」と改正の理由を申しております。これについて高橋委員がさらに質問をし、ただいま保険局長をしていらつしやいます久下局長が当時医務局次長をしておられ、これについて答弁をいたしております。その答弁では久下医務局次長は、錠剤を与える場合も調剤だと申しております。修正案を出しました趣旨——錠剤医者処方箋を書かぬでも与えられることにしようという修正案を出した。ところが行政官であります久下医務局次長は、いや、それも調剤だというように答弁をなさつていらつしやる。どうも法律修正したものの意見行政官意見とが違うということは実に変なものだと思うのであります。そうすると修正をいたしました意味がなくなつてまつたということになつて参るが、どういうようにお考えになりますか。この同じ質疑応答の中で、やはり参議院に各大学先生たちをお呼びになつて調剤という意味を聞いた。そのことがここに谷口参議院議員によつて引用されておりますが、それによりますと調剤というのは二つ以上の薬を調合する、あるいは一つの薬であつてもそれを溶解あるいは秤量するということを調剤というのだと言つている。従つて谷口参議院議員はこの際錠剤を与えるということは処方箋を書かぬでも与えられるのだというように解釈をしたようでありますが、その後その解釈はどういうことになつているか承りたいのであります。
  6. 滝井義高

    滝井委員 質問中でございますけれどもちようど総理出席を要請いたしておりましたところ、非常に御多忙中にもかかわらず御出席いただきましたので、長谷川先生に非常に失礼でございますが、簡単に五点だけお尋ねをいたしたいと思います。副総理内閣を代表した答弁として簡明率直にお答えを願いたいと思うわけです。  まず第一点は、現在私たち委員会にかかつておる新医療費体系は、旧来の医療費の不合理を是正して、医師歯科医師薬剤師の適正な技術料と薬価の基準を定めるために出発したものなんでございます。先日この新医療費体系というものが閣議に報告されたと聞いております。これは日本医療制度の根本をゆさぶる医療革命だといわれるほどの重大問題ですが、緒方総理はどういうようにこれをお考えになつておるのか、御答弁を願いたいと思います。
  7. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 仰せの通りに今度の新医療費体系は多くの数字を取扱つておりますし、非常に複雑になつており、かつ重大な問題でありまするので、政府といたしましても慎重な態度で研究をいたしたいと考えております。
  8. 滝井義高

    滝井委員 慎重な態度で御検討をいただくということでございますが、ぜひそうしていただかなければならないと思います。この体系閣議においてもあたかも医薬分業関係があるということをお考えなつたのかどうか知りませんが、まあ占領の落し子であるというような議論までが出て、非常に沸騰したということを聞いております。また本委員会においても、すでに十月一日から現在に至るまで十数日の間論議をして来ましたけれども欠陥つては失礼でありますが、まあ欠陥と申しますか、そういうものが非常に多く目につきまして、ここで明白な結論を出すということはどうであろうかと思われるような状態でございます。一方医療を担当する団体である日本医師会は十月十二日に声明を発表いたしまして、本体系には絶対に反対である、こういうことを表明いたしました。このようないろいろの情勢から考えてみますと、本体系実施は慎重の上にも慎重な検討を加えるのでなければ、つのをためて牛を殺すという愚を演ずることになると思うのであります。幾分前の点と重なると思いますが、重ねて御所見を承りたいと思います。
  9. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 閣議内容を申し上げるのはいかがと存じまするが、閣議でいろんな意見が出たことも率直に申して事実でございます。お話のようにこの問題につきましては各方面ともいろんな意見がありまするので、この意見が十分に熟しまするまで、私といたしましても慎重な態度で研究いたして参りたい。重ねてその点を申し上げておきたいと思います。
  10. 滝井義高

    滝井委員 各方面意見が十分熟するまで慎重に検討いただくということで、ございますが、ぜひそうしていただかなければならないと思います。これは参考までに申し添えまして、もう一回御意見を伺いたいと思うのであります。先日本委員会にいろいろな参考人の方をお呼びして非常に貴重な御意見を拝聴させていただきました。特に病院協会原価計算委員長をされておる神崎博士が参りましたときに重大な発言をされたのであります。すなわち現在の日本医療というものは赤字経営の上に立つておる。今度厚生省から出されました本医療費体系も、やはり赤字ということを示しております。神崎博士は、現在のような医療状態で、医療費の支払いのような状態で推移をするならば、病院診療所は荒廃をしてしまう。しかも医療関係者を低報酬と過度の労働に坤吟せしめる状態が出て来る。そういうことからひいては急激に診療内容を低下せしめて日本医療に死の交叉がやつて来るであろう。こういう発言をされたのでございます。私はすでに神崎博士が御指摘なつたような点が現在日本においては具体的に現われておると思うのです。たとえばあの結核患者諸君が入退所基準の問題とか、あるいは付添いの制限の問題等ですわり込む、あるいは医師諸君厚生省の門前にすわり込む、あるいは医師薬剤師諸君が白衣を着て街頭デモをやるというようなことは、今までの日本には見られなかつたことなんです。今までの日本に見られなかつたこういう状態が出ておるということについて、内閣責任者として緒方さんはこういう情勢をどういうようにお考えになりますか。これをひとつ率直にお聞かせ願いたい。
  11. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 神崎博士の御所見は承る機会がございませんでしたが、御質問のような結核患者のすわり込み、あるいは医師のすわり込み、医師薬剤師街頭デモというようなことは、私どもといたしましてもはなはだ遺憾に存じております。政府といたしましても病院及び診療所経営実態向上にこの上とも努力をして参りたい。かように考えております。
  12. 滝井義高

    滝井委員 現在現われておるそれらの現象ははなはだ遺憾であり、かつ病院診療所等経営実態向上にぜひこの際政府は一はだ脱いでいただかなければならぬと思うのでございます。  次に質問いたしたい点は、そういう情勢であるのでございますけれども、同時にこの国民医療費体系と密接に関係をしておる問題として、数年来解決をしないたくさんの問題がございます。たとえば医師社会保険収入に対する税金をどうするかという問題、これは向井大蔵大臣当時からの問題でございます。あるいは点数凹凸是正の問題をどうするか。たとえばことしの七月からパス、マイシンという注射薬単価が下つたのでその点数の引下げをしたのです。その結果医者のすわり込みが起つたが、その単価点数凹凸是正の問題が解決されておりません。あるいは単価が二十六年十二月に十一円五十銭あるいは十二円五十銭と、甲乙それぞれの地区が決定をいたしましたが、これは暫定単価であつた。ところがこの問題も現在そのままの状態になつておるというように、いろいろの重要問題が現在未解決のままになつておるという状態であります。なぜこういう問題が解決をしないかと申しますと、これはもはや厚生省だけでは解決できない他方面にわたる問題を含んでおるからでございます。もつとこれを具体的に申しますならば、一国の予算編成の根本問題に連なつておる問題だからでございます。  そこで副総理に特にお願いをいたしたい点は、厚生省だけではどうしてもこれらの問題の解決が現在むずかしい情勢にある。従つてこれは吉田内閣医療政策充実をはかり一あなたの方では今このデフレ下において新しい政策展開をはかるという主張をされておりますから、その医療政策充実をはかること即新しい政策展開をはかるという意味において、厚生大臣とともに積極的に閣内において新医療費体系まつわるいろいろの問題を解決するとともに、課税単価というような未解決の問題についても、積極的な解決努力がいただけるかどうか、この点ひとつ率直に御表明願いたいと思います。
  13. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 ただいま御指摘の問題は政府といたしましてもいろいろ苦慮いたしておるのでありまするが、何分問題が重大でありますので、この上とも関係大臣と十分に協議をいたして進めて参りたいと思います。
  14. 滝井義高

    滝井委員 関係大臣と相談をいたしまして問題が重大であるので、できる限りやつていただくということですが、ぜひそうしていただきたいと思います。  これで最後でございますが、新しく出ております新医療費体系にしても、あるいはその他これに関連をする今申し述べましたいろいろな医療関係の諸問題にいたしましても、大体において一国の社会保障費のわくで大きく規制されておるのでございます。日本で申しますならば、七百九十九億というこの社会保障関係予算で本年度医療というものは大体規制されることになると思うのであります。具体的に申しますならば、国民医療に直接関係のあるものは、たとえば結核対策費の百三十五億とか、生活保護費の二百八十七億とか、社会保険費の百七億、計五百二十九億、こういうもので一応日本医療いうものは決定されることになるわけであります。もちろんそのほか最近できました日雇い労働者健康保険というようなものは、失業対策費の二百五億円に関係しておりますが、大体五百二十九億という、この社会保障費の中の金額の予算によつて規制をされる形が出るのであります。一国の予算の中でこれらのものがどの程度バランスを占めるかということによつていわば医療関係の問題が決定をされるという状態が出て来ると思うのです。従つて一国のと申しますか、日本国民医療まつわるいろいろな問題を解決するためには、緒方総理にしてもこのバランスというものをぜひ考えていただかなければならぬと思いますが、このバランスの問題についてどういう御見解を持つておられるか。これは少し具体的でむずかしい問題になるかと思いますが、ひとつ率直に御表明をいただきたいと思います。
  15. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 国民医療費の問題は政治の各関係におきましてきわめて重大な問題でありますと同時に、これをどういうふうに扱つて行くか、そのバランスをどうするかということはなかなかむずかしい問題であります。政府といたしましては、たとえば今年のデフレ予算のもとにおきまして、できるだけの数字は計上いたしたつもりであります。今後ともその点につきましては十分努力をして参るつもりでございます。
  16. 長谷川保

    長谷川(保)委員 せつかく副総理おいででありますから一言伺いたいのであります。この医薬分業、新医療費体系の問題を来年一月一日から実施するということにつきまして、今日非常に重大な段階に立ち至つておることは御承知通りであります。日本医師会日本医師会の運命をかけてこれに抵抗するという態度決定をいたしております。私はかかる状態におきましてこれを強行することは絶対にいけないと思う。もし強行しますならば、国民生活に非常に重大な影響を及ぼします医療の問題が大混乱になるから、これは絶対に強行してはならない。何らかの打開策をつくつてからでなければ絶対に強行してはならないと思うのであります。しかも余すところ二箇月半しかありません。これをこの委員会でわれわれ数日にわたつてしさいに検討したのでありますが、おそらくこの期間においてこの調整をはかることは不可能であると思われるのであります。かかる場合におきまして、政府はこれに慎重な態度をもつて臨むというお話でありましたが、この実施の延期というようなお気持があるか、この点を伺いたい。  第二点といたしましては、これは昭和二十六年六月四日に衆議院において厚生委員会討論採決をされておりますその中で、自由党を代表いたしまして青柳一郎委員はこういう討論をいたしております。「政府御当局におきまして言明のございましたように、医師歯科医師の租税の減免、さらにはもつと本質的に、社会保障制度確立のための社会保険医療給付に対する国庫補助につきましても、十分なる努力をするという言明があつたのであります。われわれはこの政府言明を信頼いたしまして」云々と言つて賛成をいたしておるのであります。そこで最近も課税の問題が非常に問題になつておりますし、またこれの影響いたしまする場合の各種社会保険の経済の問題が大きな問題となつて来るわけでありますが、自由党の代表である青柳一郎委員賛成をされるにあたりましては、いわばこういう条件のようなものをつけておるのであります。これにつきまして政府はどういうようにお考えになつておるか、これも今日非常に重大な問題になつておりまするので、承りたいのであります。
  17. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 これはすでに法律になつておりまするので、これを延期する法律が通過いたしません限り実施するほかないのでありますが、但し先ほど来申し述べましたように、非常に事重大でありまするし、ひとり医師会だけの問題でなく、日本国民生活の上、国民保健の上からも非常に大きな問題でありまするので、いかにして国民常識にこたえるだけの具体案が立つかということについて、十分研究いたしたいと考えております。  第二点は政府委員から後ほどお答えいたします。
  18. 越智茂

  19. 柳田秀一

    柳田委員 緒方さんは十一時までというお約束でありますので、一点だけごく簡単にお尋ねいたします。  この厖大な新医療費体系は、厚生省説明では、これを手段、方法にして医薬分業に持つて行きたい、こういうことであります。ただいま緒方さんも、非常に慎重に検討したいと、非常に率直な御答弁を得て意のあるところはよくわかりました。そこで一点だけお尋ねいたしますが、その慎重ということは、こういう国民保健医療に関して非常に重要な問題は、閣議了解とか閣議決定とかむずかしいことはともかくとして、一応閣議においても十分意見をまとめ、各方面意見も聞き、そうして態度をきめる、こういうような御意図のように慎重という意味を解するのですが、さようでよろしゆうございますか、それだけお答え願います。
  20. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 今御質問になりました通りでございます。
  21. 越智茂

    越智委員長代理 福田委員、簡単に願います。
  22. 福田昌子

    福田(昌)委員 簡単に一点だけ御質問さしていただきたいと思います。新医療費体系につきましては慎重にお取扱い願うという御答弁をいただきまして私どもまことに多といたす次第でございますが、重ねてお伺いさしていただきたい点は、病気と申しますのは、個人にとりますといわば災害にひとしいものでございまして好んで病気をする人はないわけでございます。しかしながらしたくない病気も案外度重なつてするというようなことも出て参りますし、結局集まりまりまして、全国の総医療費ということになりますと、膨脹して参る段階にあるかと存ずるのであります。災害対策におきましても、国家予算編成というものは、当初におきましても一千数百億のものをお組みいただいても、いろいろな災害に対してはまた臨時予算をお組みいただくというような形に相なつておりますが、医療費体系につきましても、医療費の面に関する国庫負担におきましても、私どもはやはり災害と同じようにある程度考えてしかるべきだと思うのでございます。具体的に申しますと、必要な場合には他との振り合いを考慮いたしまして、最小限度国庫負担を増加するということは当然やつて参らなければならない施策と考えるのでございますが、この点につきまして副総理はいかなる御所見をお持ちでございますか。
  23. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 御質問趣旨は申すまでもないことであります。これは災害の場合には予期しない災害が起るので、その臨時災害に処して政府として考えなければならぬ場合もありますけれども医療費の場合も十分研究して、予算の許す限りにおいて満足する程度数字を出して参りたい、かように考えております。
  24. 越智茂

    越智委員長代理 保険局長長谷川君の質問に対する答弁を願います。
  25. 久下勝次

    久下説明員 長谷川先生から先ほどお尋ねのありました問題とあわせまして、私からお答えを申し上げます。まず最初に、衆議院厚生委員会におきまして、医薬関係法案参議院修正案を審議いたしました際の私の発言を引用してのお話でございます。ただいま私はその関係の立場にございませんので、私から正式な見解として申し上げるのはいかがかと思いますが、当時の経過を私の記憶しておりまする限りにおきまして申し上げまして、御了解を願いたいと思います。  錠剤を投与する場合を調剤と見るかどうかという問題につきましては、お話のように意見のある問題であることは、承知いたしております。当時厚生省におきましては、いろいろな見地かう関係当事者の間で協議をいたしまして、結局調剤と見るのが至当であるということになりまして、その趣旨においてただいまお読みになりました昭和二十六年何月でございますか、——その前に参議院厚生委員会におきまして、当時の薬務局長からはつきり言明いたしたことがあるのでございます。それを受けまして私がそういう発言をたしかいたしたはずでございます。なお今日の段階におきまして、こういうことがその裏づけになりますかどうかは別でございまするが、社会保険調剤手数料の定めが診療報酬規定にございます。この中に既成薬剤を単に処方した場合には、一般の場合の調剤手数料の半分だけ支払うということがございまして、さらにそれは具体的に解説書もございまして、既成錠剤を単に投与する場合には、今申し上げた普通の調剤の半額を支払うということに該当するのだということが明記してあるのでございまして、私ども実は現在さような取扱いで支払をいたしておる実情でございます。ということは、やはり調剤ではあるけれども、普通の調剤とは性格が若干違うということを半分認めておる証左であるとも思えるのであります。いずれにいたしましても、さような取扱いの実例もありますことを御参考に申し上げておきたいと思います。  ただいま副総理に対してのお尋ねの問題は、私からお答えをいたしますのはいかがかと存じまするけれども課税問題につきましては、政府といたしましてもずつと引続き努力はいたしておるのでございます。しかしながら本年度におきましては、必ずしも従来と同様の結果になりませんでしたために、これにつきましていろいろ問題をかもしておることも承知いたしております。私ども当事者といたしましても、各方面お願いをして、将来にわたつて何かもう少しいい方法はないかということで、目下話合いをしておるような状況でございます。  療養給付費に対する国庫補助の実現でございまするが、すでにこの委員会におきましても私から申し上げたことがあるかと存じますが、健康保険船員保険等、私の所管をしております医療保険につきましても、来年度は一割五分相当額を要求をし、今度はぜひとも実現したいという意気込みで、厚生省といたしましても最も重要な昭和三十年度政策一つといたしておるような実情でございます。これだけを申し上げましてお答えにかえたいと思います。
  26. 長谷川保

    長谷川(保)委員 参議院修正案を出されたが、その修正案を出された意味がなくなつてまつたということも実に変なことだと思うのでありますが、今の答弁は一応了承するといたしましよう。  御承知のように医科大学では薬理学を十分なさる。そうすると医者調剤能力がある。これはやはり同じ六月−二日の福田委員質問に対して久下医務局次長局長は「調剤権という言葉はいかがかと存じまするが、少くとも医者には調剤能力はあると考えております。」調剤能力があるということをはつきり言うておられますが、これは当然だと思う。調剤力がなかつたら私はたいへんなことになると思う。大学でもつて十分薬理学をやつていらつしやつて調剤能力がある。この者にたとえば錠剤を与えることすら許さない。もしそれを今言つたよう調剤だと解釈いたしますると、薬事法第二十二条違反になりまして、結局御承知のように附則によつて三万円以下の罰金あるいは三年以下の懲役、場合によつてはこれを併科するという恐しい刑罰が控えておるわけであります。もちろん薬科大学があり、薬剤師という制度があるのですから、この建前といたしましてはもちろん薬剤師調剤をするというのが当然なことであります。それゆえに各病院等においてみな調剤が行われておる。けれども薬剤師を雇うだけの規模でない小さい病院診療所等の場合に、これは国民立一場から申しても、一軒で済むか二軒で済むかというときに、一軒で済むことができればこれはもちろん便利にきまつておるわけであります。やはり小さな規模のものでは薬剤師を雇うだけの必要はないということであれば、今の極端な話になりますと、錠剤を与えるということも調剤だからいけないとして、薬理学を修めております調剤能力のあります者に対して罰金を科さなければならぬということは、どう考えても常識から申しまして不当である。しかもそれを罰金、懲役でもつて縛るということは、一昨日申し上げましたようにこんなひどい話はない。これはお医者さんたちが怒るのはあたりまえだと私は思つております。こんな人をばかにした話はないのであります。いわば能力があるのにそれをさせない。ねこの前にかつお節を置いて、食べたらいけない、食べたら罰金だというのと同じだ。あるいはおはちをかかえて断食をしておれ、断食をしておらないなら罰金だ、懲役だというのと同じでありまして、これはどう考えても不当であると私は考えます。この調剤能力のあります者に、錠剤を与えるのにすら——もちろん医者のつくります錠剤の場合と製薬会社のつくります錠剤の場合とがありまして、私どもの今の考えでは、むしろ製薬会社のつくりました錠剤の場合が当然考えられるのでありますが、これをしも与えてはいけない、それは調剤であるから、罰金である、刑罰である、体刑であるというようなことは、どうしても不当だと思うのですが、これはどうでしよう。それを調剤として罰金で縛るということは、これは一応国家できめたことでありますから、行政官の皆さんがあれこれ言う筋合いではないのでありますけれども、しかし行政官として率直に申しましてこれを無理だと思いませんか。
  27. 尾崎重毅

    ○尾崎説明員 薬務局長病気で、ございますので、私から一応お答え申し上げます。ただいまも久下局長から御説明がありました通り、確かに御指摘の点は問題がありますので、国会でもその当時問題になつたことだというふうに承知いたしております。ただ私どもといたしましては、一応あの二十六年に成立いたしました法律は、いわゆる明以治来の医療の建前、医者は診察、治療をし、薬剤師は薬に関する部門を受持つという建前が七十年来なかなか実現しなかつた。そういうことで一応あの法律でもつて解決をしたというふうに承知いたしております。従いまして問題は現行の薬事法解釈から、薬理学を修めたお医者さんには錠剤を投与することくらい認めるという解釈が出て来るかどうかという問題になると思いますが、先ほども申し上げました通り、一応国会でも大体政府側の見解といたしまして、そういう場合も調剤であるというふうに御答弁申し上げ、議員にも御納得いただいたのでございますから、私どもといたしましては一応そういう解釈で進みたいと思つております。
  28. 長谷川保

    長谷川(保)委員 いろいろ御責任の立場にありますから率直に聞く方が無理かもしれませんが、しかしこれはだれが常識で考えても無理だと思うのが当然だと思うのです。  もう一つここで調剤の問題で重大な問題が起つて来ると思う。それは最近御承知のように、診療所あるいは病院等で注射をいたしますときに、医者が混合注射をやる。混合注射をしない場合の方が少くなつた。ほとんど混合注射をやる。そうすると先ほど申しましたように、大学の先生がやつて来て調剤という意味を国会で説明した中に、二つ以上の薬を調合する場合には調剤だ、こう言つたわけだが、その考えというのは正しいかどうか。正しい〜すると、今の混合注射ということが調剤になる。従つて混合注射ということができるのか、できないのか、罰則の適用を受けるのかどうか。これは非常に現実問題として重大問題ですが、この場合をどう考えるか。
  29. 尾崎重毅

    ○尾崎説明員 実は調剤ということが現在法律上問題になりますのは、薬事法に基きます問題でございまして薬事法ではその二十二条に、販売または授与の目的で薬剤師でない者は調剤をしてはならないというふうになつております。従いまして今お話の点は、いわゆる販売または授与のための調剤という現行法上の問題にはならないと思います。
  30. 長谷川保

    長谷川(保)委員 それは実に重大だと思う。そうすると、医者が治療するために注射をする場合、今度は注射料という技術料が別にできて、そのほかに薬の原価がプラスせられる。新医療費体系によりますとそうなると思うのでありますが、その場合にこれは授与もしくは販売ではないという解釈になりますか。
  31. 尾崎重毅

    ○尾崎説明員 私申し上げましたのはいささか言葉が足りなかつたかもしれませんが、一応薬事法上で問題になりますのは、薬そのものを販売または授与する場合、それが注射薬であります場合には、注射薬をお医者さんがもしお売りになるというような場合には、これはやはり薬剤を売ることになるのですが、確かに今お話の点は、そういう一種または数種の注射薬を混合して患者に注射をなさる場合であろうと思いますので、そういう場合は、私が申し上げましたような意味の販売または授与のための調剤ではないということでございます。
  32. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そうしますと、注射筒を通して人間のからだの中につつ込むやつはいいが、手をもつて錠剤を口の中に入れるということはいけない。医者が入れてやればいいかもしれぬが、本人が入れたらいけない、こういうことになりますか。
  33. 尾崎重毅

    ○尾崎説明員 その点になりますと、いわゆる錠剤を与えます場合においても、処置というような場合もあるわけでございまして、そういう場合も、一応販売または授与のためにそういう薬を調剤するという概念にはなじまないわけでございます。従つて一般的にいつて、注射をするということは、私も処置というふうに解釈しております。そこで、処置でないという意味において錠剤を与えるという場合には、これは当然薬を与えるということになりまして、原則論から行きまして、一定の処置に従つて特定人の特定疾病のためにそういう薬をやる場合には、原則に従つて処方箋を出していただかなければならぬ、そういうことになるので、ございます。
  34. 長谷川保

    長谷川(保)委員 ずいぶんややこしい、あぶなつかしい解釈でありますが、何にいたしましても、これは能力のある者がその能力を使用することができない。大学で教育を受けて、しかも医師となる課程といたしましては、それは必須科目である。その能力があるにかかわらず能力を使用させない。使用する場合には罰金、体刑だ。これはどう考えても間違いである。こういうばかなことは普通の頭脳では考えられません。私はもちろん医者でありませんし、国民の一人として、また人間の一人として考えて、道理かり言つてこんなばかなことはありません。もし適当な万策がとられなければ、私はこの次の国会に改正法案を出すことをここに申し上げておきます。これは人間をばかにしておる、国民をばかにしておる。こういうことはたいへんいけないことだと思います。政府当局の注意を喚起しておきます。  次に、今度の医療費体系を見ますと、すでに同僚議員指摘しているわけでありますけれども医者の技術というものを時間で計算をして行く。時間だけで計算するというわけではありませんけれども、まずその根本が時間である。時間というものと高度の技術というものは次元は全然違うのだ、性質は全然違う。根本的に違うものを、それよりほかに計算の方法がないからといつて、違うものできめて行くということは不合理もはなはだしいものだと思う。何らか他の方法考えてやらなければならぬ。他の方法かないならば、現状をかえるということはこれはできない。現状よりもよりよい方法がないとならばできないことになる。全然次元の違いまする時間というものと技術というものを同じものとして考えるという考え方はどうしても不合理だと思う。この点、同僚議員指摘したところでありますけれども、さらに不合理だと考えないかどうか。また不合理だと考えるならば、他の方法でもつて考え直すということをお考えになるかどうか伺つておきたいのであります。
  35. 曽田長宗

    ○曽田説明員 私どもも、診療に対する報酬か時間だけではきめられるべきものではないということは了解いたしておるのでありますが、ただいまも長谷川会員からお話がございましたように、それではその医療の質と申しまするか、こういうものをどういうふうに数字で現わすかということになりますと非常に問題がむずかしいのでありまして、幾つかの試みはございます。私どももいろいろと検討いたしておるのでございます。また医師会等からある案が出されたということもございます。しかし、これをすべての医師の人たちか、すべてというのはあるいは言葉が悪いかもしれませんが、多くの医師の人たちがはたして了解してくださるかどうかということを考えますと、これは非常にむずかしい問題であるというふうに考えられますので、あるいは、構想を新たにして特殊な専門医制度というようなものを考えて行くかというようなことにつきましても、これも医師会と一緒になつて検討もしておるのであります。かような状況でありますので、今のところ、医療の百質の問題というものを報酬の評定の基準としてただちに組み入れて行くということは今回はむずかしかつたというふうに考えておるのであります。ただ、私ども考えておりますことは、ここに出されました案、あるいは資料として提出いたしましたものは、これは一応の基準でございますので、その基準がすべて一月一日から実施される新医療費体系の中には取入れてないわけであります。その体系の中に載せてありますものは、何と申しますか、診療行為群でありまして、注射とかあるいは調剤というようなぐあいにまとめてございますので、その中の内訳というようなものを定めて参ります場合には、ただいまの御指摘の点というようなものをある程度考慮してきめて行くべきではないかというふうに考える次第であります。これは私から申し上げるのはどうかと思いますけれども、現実に実施されております現行点数というようなものは、これは十分な計算から出たものではないかもしれませんが、慣行としましてはさようなものがかなり入つておるのではないかというふうにも思われますので、出て来ましたこの基準がただいま申し上げたような性質だということをよく了解して現行のものと比較しながら検討して参りますれば、さしあたりとしましては大きなあやまちも犯さずに行けるのじやないかというふうに考えておる次第でございます。少しくどくど申し上げたようでございますが、一応私どもの思つていることを申し上げた次第であります。
  36. 長谷川保

    長谷川(保)委員 御趣旨のあるところはわかりますけれども、しかし技術というものと時間というものは違うということは、だれが考えても明らかでありまして、この点についてやはり新医療費体系というものは、これはもつと検討しなければいけない。そうしなければ医師会側の満足を得るということは絶対にできない。だれが考えてみても、これは不合理だ。なるほど時間というものは人件費の一つの要素にはなるでしよう。けれども、技術といつても人件費の一つの要素には違いありませんが、時間と人件費とは全然別の問題であるということでありますから、これはそうしないと、技術差というものは何としてもつけなければならない、これは非常に大きな問題で、非常にむずかしい問題である。現実問題としては私はずいぶんむずかしい問題だと思います。これはどうしてもまず技術というものを時間で計算するという考え方をかえないと、この新医療費体系というものはすべての人を納得させる、つまり道理の立つものにはならない。道理の立たないものを強行するということは、民主主義の社会ではできないわけでありますから、道理に立つておらないということがわかつて来れば、もう一度これは検討なさる必要があると私は思うのであります。この点も政府の注意を喚起いたしておきます。  それからもう一つ、私は知恵者ぞろいの厚生省で、まあおおよそ知恵のないことをなさつた見本が今度の新医療費体系にある。どうもこういう知恵のないことをなさるのでは、少し月給を減らさなければいかぬと思う。処方箋料が無料である。お医者さんたち処方箋を書くのはいやだと言つているのでしよう。いやだと言うものに、言うことを聞かせるならば、私は女をくどいたことはありませんけれども、少し甘いものを見せるのがあたりまえじやないか。だからなぜ処方箋料をたとえば一点とお考えにならぬか、そうしたら書いちやいかぬと言つてもお医者さんは処方箋を書く、ひよつと書いて十二円五十銭になる、こういうことであればどんどん書くかもしれぬ。処方箋を書かせることが今度の新医療費体系、あるいは医薬分業の問題でも中心の問題だ。なぜ一点ぐらいのものをおつけにならぬか、これじや、いやがるものを何でもただでやらせよう、もちろんそれは再診料に入つておる、初診料に入つている、こう言うでありましようけれども、しかし処方箋を書くという時間、その手数、たとえば先日いただきました資料でも、初診を八・八分でやれ、再診でありますと四分幾らかでやれ、こういうことであります。その中に処方箋を書いて渡すということ、相当な時間がいる。こういういやがることを無理やりにさせるというならば、やはりやつただけのことはあるということを直接見せるのが政治じやないのかと私は思うのであります。処方箋をあくまでただで書け、書かなければ罰金だということになりますと、子供のほつペたをなぐつておいて笑えというのと同じことです。子供にあめだまをしやぶらせればひとりでに笑うのです。ほつペたをなぐつておいて笑えというのは実に無理な話である。ひとつ処方峯料をおつけになつたらどうかと思うのであります。これに対する御意見を承りたい。
  37. 曽田長宗

    ○曽田説明員 この診療報酬の形をいかようにするかということにつきまして姿をいろいろ考えてみたのであります。今日までのいわゆる薬治料というものを、実際にかかつた薬品の原価と調剤社費、その他の部分、これは言葉が悪いかもしれませんが、余剰部分というものの三つにわけますれば、最後に申し上げました部分が医師に対する診察料的な分子であるということを申し上げたのであります。このものをどういう形で医師報酬として支払うかということにはいろいろな形が考えられる。処方料というような形で払うこともできます。また診察料すなわち初診料、再診料の中に込めて払うという方法もある。これはどちらが正しい行き方であろうかというようなことを検討いたしました結果、これは結局同額のものを診察料と処方箋料というふうにしてわけるか、あるいは処方箋だけ、あるいは診察料だけ、どれか最もいいかということにつきまして検討はしたのでありますが、結局実態が同じものであるならば、それからまた医療の将来のあり方というようなものをいろいろ考えます場合に、できるならば幾つかの行為をずたずたに切つて行くという考え方よりは、一応の分析としてはこまか、見る必要かがございますが、これを最後の診療費の形としてまとめて行きます場合には、できるならばまとめられるものはまとめて行きたい、事筋の簡素化にもなります。これはお医者さん自身の御計算というような点からいつても、その方か簡易だと思うのであります。これは、ここまで申し上げるとどうかと思いますけれども考え方といたしましては、御承知のように点数で行くという考え方、それから一件当りという考え方、もつと極端なことを言いますれば、イギリス式の人頭割というようなものか、ございますけれども、それぞれに一長一短があるのでありますが、私ども処方箋料を診察料の中に込めたということには一つの長所もあるのではないかというような考えも加わつておるのであります。実質的には同じものをただ二つにわけるか一つにするかというだけの問題だと思つて、かような案にまとめたのであります。
  38. 長谷川保

    長谷川(保)委員 だからそういう点がどうもあまり机の上で考え過ぎたというものである。やはり人間の心理というものを考えて、いやなことをしてもらうということならば、やはりもう少し甘いことも一緒につけてやらぬとできぬのじやないかと私は思うのでありますが、賢明なる皆さんの御参考に供しておきます。  次にその点が資料でははつきりしておりませんが、こういう新医療費体系をもしやるとしますと、当然再診ということが非常にふえて行くと思われます。これは参考人のどなたかも証言しておられますし、同僚議員の方も言つておられる。これはいいことでもあると私は思います。重症の方、あるいはたとえば急に外科的な傷害を受けたというような方を一日に何べんでも行つて見てやる。そうすると何べんでも再診料が入る、こういうことになります、この再診料については、現実問題として何か制限を加えますか、加えませんか。
  39. 久下勝次

    久下説明員 この方針を具体化いたしますのは社会保険の面で、近く出て参りますその場合のことですから私からお答え申し上げます。  実はその辺のところまでまだ細部の検討をいたしておらないので、ございますけれども、今私がちよつと思い浮かべますのは、そういう患者の自宅へ再三往診を依頼されて参ることがあろうと思います。そういう場合にはその都度往診料は支払われると思うのであります。その意味におきまして、実際に必要があつて行きました場合に再診料だけを切るというわけには参らないのじやないかと私は考えております。ただその辺は濫用にわたるようなことがありますれば、いわゆる濃厚診療の事例になるものと思いますけれども、一般的には一日一回というぐあいに切ることも無理じやないかというふうに私としては考えております。
  40. 長谷川保

    長谷川(保)委員 現実問題としまして、今度の新医療費体系では、ここなどが医師の収入あるいは保険財政あるいは国民医療費の負担というものが大きくわかれるところだと思うのです。実際に病人を扱つてみますと、大部分の場合病人の方は何べんでも医者に見てもらいたいのです。ですから、そのたびに再診料を払うか払わないか、受取るか受取らないか、これは医師の収入からしましては非常に大きな問題です。現実、問題として、医師の収入あるいはその他の保険財政上、今申しましたような関係では一番大きな点じやないかと私は思う。これをもし変に制限しますと、制限診療ということで保険局長はつるし上げられるということになります。今日は社会保険の制限診療ということが非常にやかましく言われておるときでありまして、これは非常に大きな問題だと思う。この問題をこの新医療費体系をおやりになる前に十分に現実的に考えておく必要がある。またそれによつてどもの新医療費体系に対する態度も違つて来る面がよほどございますから、その点も現実的に十分お考えになつて、私どもにその意見を教えてもらいたいと思うのであります。  それから次に、これはもちろんまだほんの仮定でありますが、実はほかの委員から聞いてくれと頼まれたのでちよつと伺つておきたいのでありますが、こういうことが考えられるかどうかということであります。それは、薬剤師諸君医師諸君が今まつこうから対立しておりますが、薬剤師諸君に入ります調剤料や薬価というものをコンスタントのものにしておいて、そして医師会側が非常な不満を表明しておりますので、医師報酬を増すという黄味で、医師会側に入りまするものだけを単価点数を整理してもつと上げ、実際に収入を多くするということが考えられるかどうか。これは私個人も問題だと思いますが、ちよつと伺つておきたいと思います。
  41. 久下勝次

    久下説明員 医師調剤いたします場合と薬剤師調剤いたします場合と二つの場合が将来起つて来ると思います。その場合に、今考えておりますのは、現行の制度で行きますと、調剤手数料となつておりますが、調剤技術料医師薬剤師との間で区別することは適当でないと考えております。この問題は、薬局が購入いたします薬価と医師が購入いたします薬価とはおのずから違いがございます。私どもが従来までの実情検討しておりまするところでは、購入価格に約一割くらいの差があるようでございます。そうなりますと、その実態に目してそのまま考えますれば、薬価基準と申しますか、こういうものは医師の場合と薬剤師の場合とで区別するのが妥当ではないかと現在では考えております。そうなると、少くとも薬の値段におきましては二本建の薬価になるということがあり得るわけであります。ただいままだ最終的な結論を得たわけでございませんので、もう少し資料の検討も必要と思います。今最終的なことを申し上げるのではございませんで、そういうふうな一般的の違いのあることだけを申し上げておきます。その意味におきまして、結果におきましてそういう点の差が出て来るのではないかと思います。
  42. 長谷川保

    長谷川(保)委員 それがまた現実問題として非常に大きな問題だと私は思います。一昨日もその点ちよつと申し上げたのでありますが、薬の値段というものは、購入いたしまする購入方法、つまり代金の支払い方法によつて非常に建つて来るし、地方々々で非常に違います。つまり不便の土地になればなるほどそれは高くなる。それから今御説明通り、薬局で買います場合と診療所で買います場合とまた遍つて、非常に複雑になるのであります。しかしこれは現実問題といたしましては、その薬の値段としてプラスいたします分のもとが非常に違つて来るのでありますから、そこで現実の収入の面で非常に大きな違いが出て来るが、薬価基準をどういうところでおきめになりますか、伺つておきたいと思います。
  43. 久下勝次

    久下説明員 現在ほとんどの場合口が医師に薬治料として薬価も含めて支払われております。これにつきましては、お話のように、従来金田を三つの地域にわけまして、いなかの方に行くほど輸送賃その他の関係から薬価が高くなるような基準が定められておつたのでありますが、本年の七月一日から実施しております薬価基準の改訂によりまして、これを全国二つの地域にわける程度の方が妥当であるということになりましたので、三段階の地域区分を二段階にいたしております。これが将来ともそういう形ができて行くのではないかと現段階では考えておる次第であります。
  44. 長谷川保

    長谷川(保)委員 今度は少し方面をかえまして、人件費の問題でありますが、この新医療費体系の計算の基礎になつておりまする人件費というものは、すでに欧米の医薬分業をいたしておりまする国々のほとんどが強制分業ではありませんで、任意分業であるようでありまして、しかも罰則がついておらないわけでありますが、それらの国々におきまする医師の収入、報酬というものと著しく差がある。もちろんこれらの欧米におきまする百原則として医薬分業が行われておる国々での医師報酬とわれわれの国の医師報酬とに非常な差があるということが指摘されたのでありまして、また御提出の資料によつてもそれは明らかになつたのでありますが、その非常に低い収入の現状を土台といたしましてこの新医療費体系をつくられた。これは根本的にやはり再検討をする必要が絶対にあると思います。これは英国は、医療国営をいたしておりますあの資料を見ましても、医師に最低幾らの収入の保障をしなければいかぬかという額を見ましても非常に高い、われわれの国とは考えも及ばない高いものであるわけであります。それが英国におきまする医師生活を守り、医療を万全にいたしますための最低の保障であります。しかるにわれわれの国におきましてはてんで問題にならないほど低いものが今度の新医療費体系考えられます基礎になつておるわけでありますが、その基礎になつております新医療費体系、御提出になりました基本的な資料の八ぺージを見ますと、ここに医師歯科医師薬剤師俸給調査表がございます。税込み一人一箇月ということでございますが、これの医業経済調査の病院というところを見まして、その一般病院というところを見ますと、個人立施設の院長の収入は八万七千二百二十三円、四十二病院を調査したものであります。個人立以外の施設におきましては三万七千五百三十五円、驚くべき差がございます。この個人立施設の院長の収入は、その院長の生計費から調査したようにこの一番下の註の二に書いてあるのでございますが、こんなに大きな開きがあるというのは一体どこから出て来ておるとお思いになりますか。
  45. 曽田長宗

    ○曽田説明員 いろいろな理由が考えられると思うのでありますが、個人の病院の場合におきましてはいろいろ交際もございますし、またその生活といたしましても、ある程度の収入がございますれば、すなわち支出に耐え得るならば、現実においても相当な支出をやつておる。これに対しまして個人立以外の施設におきましてはいわゆるきまつ報酬ということになりますから、それに応じて、生活というものもいわゆるわくをはめて行かざるを得ない。非常に大ざつぱなことを申し上げまして恐縮でございますけれども、大体そういうようなところからこの差ができ得るものと思うのでございます。
  46. 長谷川保

    長谷川(保)委員 御説のような点もあると思いますが、私は現実の病院診療所等を拝見しておりまして、もつとほかの大きなフアクターがあると思う。個人立の施設の院長は八万七千二百二十三円の収入があるにかかわらず、どうして個人立以外の施設では三万七千五百三十五円でいいか、これはいいということはもちろんありません、個人施設の院長がこれだけの報酬をとつておるということであれば、当然個人立以外でもほぼこれと似たような報酬収入がなければやつて行けるはずはないのであります。すでに同僚議員から指摘されましたように、わが国の開業医諸君医師諸君の平均年齢が四十六だといたしますると、大体むすこや娘が二人あるいは三人は大学に行つている、高等学校に行つている、こういうことでありましようから、税込み三万七千五百三十五円で、これから税金を源泉徴収でとられてどうしてやつて行けますか。このやつて行けつこないものが表面に出て来ている、それをやつて行けつこあるようにしているに違いない、それはどこから出て来ているか。一つは研究費名目で給料が出されておる、これは別個になつておるということがおそらくあろうと思いますが、この中に研究費名目で入つているものが出ているのか出ていないのか、この点が一つ伺いたい。  いま一つは内職収入だと思います。これは病院に勤務しておりながら、その病院の仕事以外の仕事をしてそれぞれ収入を得ておる、これは厚生省でおやりになつておる国立病院、国立療養所のお医者さんがみなやつております。私は非常に不明朗だと思う。公立病院、療養所に勤務しているお医者さんその他の者たちが、その病院に勤務しながら内職をなさる、非常に不明朗であります。なぜさようなことをなさる、生活ができないものですからやむを得ない、そういう不明朗なことを厚生省で管轄していらつしやるところの病院、療養所がみなやつております。これは私が申すまでもなく、厚生省でも先刻御承知のことだと思います。そういうことをせざるを得ないような安い給料というものを土台にしてこの新医療費体系はつくつてはいけない、こういう革命的なものをつくるときにはあらゆる面で合理的で道理に合つたものにしなければいけません。その暗い面で内職しなければならぬ、あるいはどうしようもない、研葬費名目で何とかしておかなければ医者が逃げてしまうということではいけないと思うのであります。まず研究費名目で出したものがこれに入つているのかいないのか承り、またただいま申しましたような内職収入でやつて行くという建前がいいか悪いかこれを承りたい。
  47. 曽田長宗

    ○曽田説明員 研究費名目のものは、本人渡しのものはこの中に入つております。本人に渡さずに、いわば共同的な経費というようなものはこの中に入つておりません。それから現実の、特に国立病院というお話がございましたが、かようなところにおける医師の給与はこれでいいと思うかどうかという御意見につきましては、私は何とかして改善いたしたいものというふうに考え、またその努力も今後さらに続けて参りたいというふうに考えます。
  48. 長谷川保

    長谷川(保)委員 問題はこういう個人のふところに入ります研究費名目がこれに入つているといえばなおさらであります。ずつと院長のクラスを拝見いたしましても実に低いのであります。こういう低いものを土台にしてこの新医療費体系の計算をなさつてはいけません。そうすれば今申しましたような暗い、病院に勤めておりながら内職をする、その収入をあてにしなければならぬということになる。私の知つておりまするある社会保険診療所におきましてはひどい赤字であります。なぜ赤字になるか、この内職であります。収入の十分ありそうな患者は自分のものにして内職してしまう、そうでないものを病院患者にする、こういうことでいくらやつても大赤字なのです。しかしそういうことをせざるを得ないように体制をつくつておくことが間違いだ、だからそういう体制をくずしさえすれば、紳士でありますところの、インテリでありますところの医師諸君がなぜそんなことをしましよう、こういう低いものを基準にいたしまして新医療費体系をつくるということは間違いだ、さきに申しましたように相当に摩擦のあることをここに実行しようとするならば、だれが考えても道理にかなつているように、また今まで持つておりました権利を放棄しなければならぬということであれば、それにかわるものを与えて行かなければこの摩擦を突破することはできません、この壁をつき破ることはできません。私は根本原則といたしまして薬剤師諸君調剤をするという制度賛成であります。そういうことをなさるべきだ、けれども今申しましたようないろいろな面で、今回の医薬分業、新医療費体系をなさるということは、まだまだ十分な準備が整つておりません。二十六年の六月二日もしくは四日の本院の厚生委員会におきまする答弁を見ますると、久下医務局次長答弁しておりまする中に、この法律をつくつてから実施まで三年あるから、その間に国民の理解を得るような手だてを十分してこれを実施いたしますということを申しております。その三年の間に国民はまだ何にも理解しておりません。しかもこのような大摩擦であり、大衝突であつて日本の重要な医療制度がくずれるかもしれないというような非常な難関に逢着しておるのである。私は今日まで同僚諸君とともに見て参りましたこの新医療費体系は、いまさら申し上げるまでもなく、数々の欠陥が露呈し、しかも根本的な欠陥が数々露呈しております。こういうものを押しつけてはいけません。やはり民主社会は道理をもつて、納得づくで進んで行くのが根本、原則です。その道理を無視した行ぎ万をしてはいけません。従いまして私は今日医師会の諸君薬剤師会の諸君も納得をするように、決して無理をしないで——薬剤師諸君の立場といたしましても、日本医師会が壊滅してよろしいという立場ではありますまい。日本医師会の立場もまた、薬剤師諸君の立場を無視してもいいというわけではありますまい。双方ともにこれは国民のために楽しい健全な日本の民主社会をつくるために協力しなければならぬ立場であることは申すまでもありません。それが今日のような正面衝突の立場に立つたということは実に残念きわまることである。しかしここに至りましたことにつきましては、国会の責任なしとは言えません。二十六年の第十国会の審議のありさまをいろいろ調べてみましても、決して開会には責任なしとは言えません。国会も考え面すべきである。政府当局もまたこれをもつて押して行くべきではありません。あらゆるものが、薬剤師会も、医師会も、国会も、政府当局も協力をしてこの壁を突破し、国民を難関に陥らしめないように、あらゆる努力をしなければなりません。それには時が必要である。しばらくの時をまだ必要とする。かつて久下医務局次長が申しましたように、三年間に医師会等各方面の納得が得られておりません。この納得を得るために、各方面ともお互いに私利私欲を捨てて、偏見を捨てまして、国家のために、社会のために協力をする、われわれ同胞のため協力をするという態勢をとつていただかなければならぬと思いますので、このことを深く政府当局に要望いたします。また国会もあらためて同僚諸君とともに新しい方策を練るでありましようが、深くこのことを要望いたしまして、私の質問を終ります。
  49. 越智茂

    越智委員長代理 福田昌子君。
  50. 福田昌子

    福田(昌)委員 今長谷川委員からまことに適正妥当な、質問、御意見がございましたが、まつたく私も同感で、そのように政府当局にも強く要望いたします。  もう質問も相当出尽して参つておりますからごく簡単に、質問させていただきたいと思います。一昨日御質問申し上げた点で、保険局長で、ございますが、国民医療費の中で、国保の負担分、また社会保険の点におきまして二十九年度は国保だけ医療費の二割を国が負担をしたが、三十年度は健保にも医療給付費の一割を国が負担する。国保にはもちろん二割負担する。その他社会保険関係で国が負担する分の予算書をお示し願うということになつておつたのでございますが、お示し願えませんが、御説明を願いたいと思います。
  51. 久下勝次

    久下説明員 はなはだ申訳ありませんが、ただいま印刷をしておるようでありましてきよう午後のうちにお届け申し上げるようにいたしたいと思つております。
  52. 福田昌子

    福田(昌)委員 一昨日お願い申し上げまして、きようは御持参いただくということであつたわけですが、まつたく申訳ない御処置だと思います。あす特に資料を御提出いただいて質問を続けて申し上げたいと思いますが、ただ今日重ねてはつきり御回答いただいておきたいことは、今まで国民医療費のうちで、ことに国が負担しておつた医療費の負担分というものは、二十九年度では百九十七億であるということ、これは結局政府が従来説明して参つておつた国庫負担分がまことに多額に発表されておつたことははなはだしく齟齬して参つておるという点であります。  それからまたただいま問題になつておりまするところの健保単価甲地、乙地、甲地にいたしますると十二円五十銭のものを一円引上げ、乙地にすれば十一円五十銭のものを一円引上げることによつても国の負担分は、その引上げたことによつてわずかに十六億しか増加しないという点が、これははつきり御答弁いただいた点でありますが、間違いないところと思います。この点重ねてはつきりした御返答をいただいておきます。  それとこのいただきました資料では国の負担分は二十八年度では八・四九%になつて出ておりますが、これは何に対して八・四九%になつておるのでございましようか。
  53. 久下勝次

    久下説明員 私どもが調査をいたしましたのは国民医療費に対してであります。
  54. 福田昌子

    福田(昌)委員 国民医療費に対して国の負担は二十八年度は八・四九%になつておる、こういうことでございますね。——重ねて次にお伺いいたしたい点は、今度この新医療費体系でお示しいただきました新しい支払い区分の点につきましてでございますが、たとえば初診料を六・二〇三点にするとか、あるいはまたその薬剤調剤の分野におきまして、薬剤原価は病院では〇・九五一点であり、診療所では〇・九三四点であり、また調剤料ということになりますと〇・五九三点とおきめになつておられますが、こういうものを実施するということにいたしますれば、まるく一応直すという御答弁がありましたが、それをお直しになる場合にはどういうふうな形で、どういう基準でお直しになるのでありますか。
  55. 久下勝次

    久下説明員 まず私ども考えておる第一の点は、初診料と再診料の端数がございます。この問題は、一応社会保険点数に表わします場合には、初診料、再診料としては切り捨てたらどうかというふうに私ども考えております。そうしますと、おのずからそこにはそれだけの部分が余剰として出て参りますので、これを検査料、処置料等必要な部面に公平に配分をするようにしたいと考えておるのが第一でございます。  それから第二は、今お話のございました薬剤料及び注射料の問題でございますが、お読み上げになりましたような数字は、いずれもそれぞれの部門につきましては全体の平均値だけがお示ししてあるわけでございます。そこでおのずから数字の上から、注射につきましては注射そのものの技術料注射薬品代というのが総額として出て参ります。またその平均的な数字から、薬剤料につきましても調剤手数料と薬品原価が総額として出て参るわけでございます。そのうち調剤技術料と注射の技術料につきましては、ただいまのは平均的な数字で出ておりますが、それから導き出しました総額の範囲内におきまして、調剤及び注射の行為の難易によりまして、具体的には差等をつけた点数をきめたいと思つておる次第でございます。薬品代につきましては、調剤及び注射を通じまして、ただいまのところでは大体実費用を支払うような形にした方がいいではないかと思つておりますが、この点は先ほどの薬剤についての薬価基準関係もあり、また事務上の問題もございますので、もう少しその点は検討したいと思いますが、大体の考え方としては、実費用を払つた方が結果においては合理的ではないかと考えておる次第であります。
  56. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういたしますと、たとえば初診料の六・二〇三点、再診料の四。五九三点、こういうものは全部端数を切り捨てて、初診料は六点、再診料は四点になる、こういうふうに解釈してよろしいのですか。
  57. 久下勝次

    久下説明員 ただいまの段階におきましては、その程度考えております。
  58. 福田昌子

    福田(昌)委員 それから進んでお尋ねいたしますが、たとえば皮下注射の技術料病院の場合は二・八二二点、診療所の場合は二・五九四点ということになつておりまするが、皮下注射の技術料というものは病院診療所も差別がないと思うのでございますが、新医療費体系においては差がつけられておるが、これは実施なさる場合においてはどういうふうに調整なさるのか。
  59. 曽田長宗

    ○曽田説明員 あの資料に載せておきましたのは、注射技術料のうちでもその内容にいろいろなものが入つておりますので、個々の注射技術料といたしましては診療所の結果を採用しているのであります。しかし病院におきましては非常に手数のかかるやつかいな注射が頻度としてよけい入つて参りますので、注射の平均が病院の方では上つて来た。それで個々の皮下注射なら皮下注射だけ、あるいは静脈注射なら静脈注射だけというものにつきましては、これは診療所基準をとつてただその頻度で平均がかわつて来たというふうに御了承願いたいと思います。
  60. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういたしますと、実施いたします場合においては、病院診療所も一応同一点数にならす、そうしてその上で皮下注射は何点、筋肉注射は何点、静脈注射は何点というふうに病院でも診療所でも一定にきめる、こういうことでございますか。
  61. 曽田長宗

    ○曽田説明員 さようでございます。
  62. 福田昌子

    福田(昌)委員 そうして端数はすべて切り捨てる。たとえばその切捨て方におきましても、四捨五入で切り捨てるのかと思つておりましたらさにあらずで、端数となつたものはすべて切り捨てるということに承つたのですが、そのようになさるのですか。
  63. 久下勝次

    久下説明員 先ほど申し上げましたのは、初診及び再診につきまして、お手元に上げております資料に出ている端数のことを申し上げたまでであります。実はそういう措置を今考えております理由は、一番頻度の多いのは、先ほど長谷川先生もおつしやつたように再診でございます。これが四・五九三点というふうに出ているはずでありますが、これを切上げということにいたしますと、結局は国民医療費をそれだけ増す結果になりますので、影響も大きいのでございまして、四捨五入の観念で措置するということは適当でないと考えております。しかしながらそれを切り捨てたからといつて、私どもの立場から申せば、保険財政でそれだけもうけるというような意味ではないのでありまして、他の方法で検査料その他に適当に配分をするということを今考えておる次第でございます。初診料の方は、四捨五入の観念から申しましても、当然コンマ以下の二〇三というものは切り捨てられてしかるべきものではないか、そういうふうな考えでございます。  なお調剤手数料あるいは調剤技術料というものを含めたものは〇・五九三点と出ております。これは現在の点数表にあげられておりますと同様に、現在の段階ではこの問題は金額で現わした方が適当ではないかと思つております。と申しますのは、〇・五九三点というのを現行の加重平均単価十一円八十三銭をかけて出しますると七円七、八銭になります。この七円を越えた八銭というのは、あるいは場合によつては切り捨ててもいいのじやないかと思つておりますが、少くともそういうふうに七円とか、剤型によりまして六円とか八円とかいうぐあいになるかもしれぬと思つております。いずれにしてもそういう意味の端数は考えますが、調剤手数料に関しましては今のところ現行の建前と同じように金額で現わして行くのが当然だというふうに考えております。
  64. 福田昌子

    福田(昌)委員 御精神のほどがよくうかがえるのでありますが、最初答弁を受けましたときにおきましては、再診療四・五九三点を四・五九五点に引上げることによつて医者技術料をより適正に評価したという御答弁を承つておつたのでありますが、ただいま承るところによりますと、どうも患者が何回も再診を受けて再診料が増加するに違いないから、四・五九五点と出ているところも、保険経済を第一に考えなければいけないから、医者技術料なんぞというものは無視して、これを端数は全部切り捨てて四点にするという御答弁を承つたわけでございます。重ねて承らせていただきますが、こういうように医者技術料は第二にして、全部社会保険経済のわくから算術を割出して参るということに医務局長は御賛成なんで、ございますかどうか。この点医務局長のイエスかノーかの一言で御答弁お願いしたいと思います。
  65. 曽田長宗

    ○曽田説明員 新医療費体係といたしましては、再々繰返して言うようでありますが、支払いの仕方をかえるということだけを考えておりますので、その限りにおいては端数のついたあの数字基準にいたしたいというふうに考えております。
  66. 福田昌子

    福田(昌)委員 私はそういう御答弁を願つたのではないのでありまして、保険局長医療技術に対する考え方にあなたも賛成しておられるかどうか。ことに初診料、再診料のこの二つの点をとつてみても、端数はすべて保険経済の上から切り捨てる、こういう簡単な例を引きまして、そのような考え方に賛成かどうかということをお伺いしたのでございますが、筋違いの御答弁でございまして、あとで医務局長お尋ねしたいと思つておりますが、まず保険局長に重ねてお尋ねしておきます。  こういうように端数はたいがい四捨五入というより、全部切り捨てて参る。一点未満のもの、たとえば調剤のごとき、そういう一点未満のものはこれは今の貨幣価格でこれを表示するというようなお話でございまして結局こういう御意思というものは、全般的に言いますと、今の保険経済のわくを広げたくないということから出て参つておると思うのでございます。この保険経済というものはできるだけ広げたくない、こういう考え方からやられておると思いますが、そうでございますか。
  67. 久下勝次

    久下説明員 これは保険だけの立場から私考えて申し上げてるのではないのでございまして、この新医療費体系の原則にも掲げてありますように、国民医療費を増さないという方針にのつとつておる考え方なのであります。その考え方をそのまま私どもも受取りまして、今度のように、先ほど申し上げたような措置をとりたいと思つておる次第でございます。
  68. 福田昌子

    福田(昌)委員 国民医療費を増さないということは、保険局長の立場から見れば、それは御所管の限定された今日の社会保険の支払いのわくをふやさないということに相なるのは当然でありますが、どのような答弁をなさつてもそのような結論になるわけでありますが、そういたしますと、今度お示しいただきました新医療費体系の中で、たとえば調剤料は〇・五九三点ということにいたしましても、この薬品の価格というようなものは、これは調剤料の〇・五九三点というようなふうに、これはいつまでもくぎづけなさるかどうか知りませんが、今の保険単価点数昭和二十六年十二月に暫定としてきめられながら、三年も四年もすえ置かれておりますが、きつとそういうような筆法で今後も相当長くすえ置きなさるつもりでありましよう、技術料というものは。ところが薬品の原価というものは、そうそう保険局がほおかむりなさつてすえ置こうといたしましても、薬品の原価にはこれは相当な変動があろうかと思うのであります。なぜならば、薬品は利潤追求をほいしままにした自由企業でありまし出て物価の上昇につれて、他の経済的な変動につれていち早く上つて参ります。従つて薬品原価そのもの、たとえば調剤いたしまするその調剤の原料になります薬品の個々のものにおきましても、あるいは注射いたします薬品においても、当然これは上つて参ると思うのでございますが、こういつた薬品が上つたり、あるいは厚生省お好みの下つて参るような場合には、さつそくこれに変動をお加えになるおつもりがあるのかどうか、この点伺つておきたい。
  69. 久下勝次

    久下説明員 薬品の価格につきましては、確かにお話通り常に変動いたしております。大体従来のやり方から申しますと、御案内の薬価基準によつて社会保険の支払いをする建前になつております。毎年少くとも一回大改正をする、小改正も一回くらいやるというような考えで従来も来ておるのでありまして、特別な急激な変動のない限りは、大体その程度改正によりまして、今後も薬価の変動に応じた措置がとられると思うのであります。
  70. 福田昌子

    福田(昌)委員 その薬価基準によつて、これから薬価というものを毎年特別考えて参りたい。その薬価基準の変動によつて医療費の処置もとられるというお話でございますが、そのことは薬価基準によつて薬剤価格というものが暴騰すれば、医療費もまたそれにつれて当然暴騰して参るわけでありますが、そのときにはしかるべく国庫負担もやるし、医療費の総領の膨脹に対して適当の処置をとる、こういうお考えなんで、ございますか。
  71. 久下勝次

    久下説明員 薬価の変動に伴いまして薬価基準改正されるということと、変動の仕方にもよりますけれども、保険経済の負担が増しますために国庫負担をとるかどうかという問題とは、私はおのずから別の問題だと考えております。しかしながら皆様も常に仰せの通り社会保険が社会保障の電要な一環として今日関心を集めておりまする建前から言いましても、当然これに対して何がしかの国の負担があつてしかるべきである。これは単に専務費だけでなしに、国民健康保険に実現を見ておりますように、療養納付に対しましても国庫の負担をすべきであるということで、先ほども申し上げた通り、私どもの立場におきましても最も重要な、昭和三十年度政策一つとして力を入れている次第でございます。そういう意味合いにおきまして、この問題は処理して行きたいと思う次第であります。
  72. 福田昌子

    福田(昌)委員 ただいまの御答弁からいたしますと、薬価基準従つて、薬価が膨脹しても、それだからといつて国庫負担その他の方法によつてその膨脹した分を補うという簡単なわけには参らない。但し社会保障全般の建前からいつて、世界の趨勢もあることだから、ある程度医療費の膨脹に対して国庫負担をすることは当然でなければならない。それは薬価の増減のみならず、療養の点においても当然その点は考えて行かなければならぬということでございますが、これは裏を返せば、薬価基準において相当薬価が上つても、それだからといつて医療費が膨脹したからといつて、それに対してさつそくいろいろな措置をとるということは、そう簡単には参らないということにもなるわけでございますけれども考えればそういうことですね。
  73. 久下勝次

    久下説明員 薬価の最近の傾向を申し上げますと、実は改訂の都度上つたものも下つたものもありながら、全体としては下つているというのが現在の実情でございます。従いまして、将来薬価が上つたらという問題を今仮定をして論ずることは別といたしまして、今日までの状況におきましてはそういう実情もございますので、あえて福田先生にたてついて申し上げるのではなくて、国庫負掛の考え方というものは、赤字が出たからとか、あるいは財政が苦しくなつたとかというような意味でやるべきものでなくて、もつと別の立場からも当然考えられてしかるべきものではないかという意味で、国庫負担の問題を処置して行きたいという考えでございます。
  74. 福田昌子

    福田(昌)委員 別の立場からお考えいただくというようなお話がございましたが、別の立場がたいへん問題があるのではないかと思うのでございます。薬価が大体下りつつあるという御答弁でございましたが、ことにまた保険経済の上から支払う薬価というものに対して非常に御関心が払われておる、こう思うのであります。下る薬剤に対しましてはこれに対する制限診療の規定も乏しいのでございますが、上る薬剤、たとえば現実の価格において非常に高い薬剤、たとえばクロマイ、ストマイというようなものになりますと、明らかにこれに対しては使用する場合に制限する規定を設けて、高い率剤を使わせない、疾病がどのように准もうとも保険財政の上から先にわくなはめておいて、高い薬を使わせないというような御配慮がありますために、総体的な社会保険の上からする薬剤の価格のひどい変動を押えておられるのでありますが、そういうような措置を今後もなお続けておとりになるおつもりでございますか。
  75. 久下勝次

    久下説明員 抗生物質その他比較的高価な薬品につきまして、現在治療指針を定め、見ようによればその使用を制限するというふうに見られなくもないような措置を講じておることは、おつしやる通りであります。しかしながら、この考え方は決して保険経済を守らんがために、保険経済の支払いが膨脹するためにという考えでとつておるものではございません。国民保健の上から、また医学の立場から、そういう薬については新しい薬品でもございま下るし、具体的にこういう使用をするのが最も医学的に正しいのであるということで、それぞれ専門の学会の答申を経まして実際行つておるものでございます。答申のありました問題につきましては、少くとも、従来のどの例をとつて申し上げてもよろしいのでありますけれども、学会の答申通り社会保険におきましてはこれを採用しておる次第でございまして、むしろ制限をするという気持よりも新しい医薬品を被保険者のためにも合理的に使用できるようにしたいという気持で私ども考えておる次第でございます。
  76. 福田昌子

    福田(昌)委員 大体の医者は、常識から申しまして、新薬が出ますと、その新薬に対しまする文献というものは、ほかの古いこれまで踏襲して使つて参りました薬に対する文献は読まなくても、新しい薬に対しては非常な努力を傾けて読みあさるのでございます。新薬が出た場合は、個々の医者自身がその使い方において、また適応症において、厚生省で御心配いただかなくても十分検討し、そうして勉強して参つております。専門家でない厚生省の保険局からそういつた治療指針なんかお出しいただかなくても十分であるのでございまして、もし厚生省の御意図が保険経済の膨脹には何ら関係ない、ただ国民医療の立場から、そうしてまた医者の医学的な立場からこういう治療指針を出したというただいまの御答弁でありますなら、その二つの理由であります範囲内におきましては、そういうような治療指針は今後一切撤回願いたいと思うのであります。そういうものを出していただかなくても、われわれはちやんと良識において勉強してやります。そういうことは今後お控え願いたいと思うのであります。  重ねてお尋ねさせていただきたいのは、日本医療機関でございますが、いただきました資料の第四分冊八ページを読んでみますと、病院診療所経営主体別に発表がなされておりますが、それによりますと、国立の中で、厚生省所管外の国立病院というものが病院において百三十二、診療所において五百七もあるのでございます。こういう厚生省所管外の病院診療所というものは一体どういうものでございましようか。
  77. 曽田長宗

    ○曽田説明員 厚生省所管以外の国立病院は、一番数の多いものは国立大学の付属病院でございます。そのほかに鉄道、通信あるいは専売というようなものが入つております。
  78. 福田昌子

    福田(昌)委員 医務局長病院別のことはあとでお尋ねいたしますが、保険局長にまとめてお尋ねいたしましよう。  ではまた単価の問題に返りますが、薬品の原価というものは、薬価基準をつくつていただいても当然変動によつて基準を上げて行かなければならぬ。またものによつては下げるものもありましよう。しかし総医療費というものは保険局長がいかに強弁なさつても、結局局長自身のお考えは第一に保険経済にとらわれてのいろいろな措置であるということは、これはもう御説明をまたないところであります。そういたしますと、薬価が上がる、薬品原価が上るということによりまして総医療費というものはふやさない、保険経済のわくを広げたくない、国庫負担も別個に考えて参らなければならないというような立場に立つて参りますと、結局押えられて参るのは、薬品の暴騰によつて同じわく内によつて薬品の分だけが膨脹いたして参りますと、残された技術とかその他処置料の方面において圧迫が来るのは当然になつて参るのであります。従いましてこの新医療費体系というものは結局物と技術を巧妙にわけたかのごとくいたしまして、これを実施することによつて、今後ますます今でさえ低い医者の技術の保障というものを下げて参ろうということにしかほかならないのでございます。賢明な保険局長でありますから、それくらいの意図をもつて今日の保険経済の赤字を何とかして防ぎたいという意図からお出しになつた。まことしやかに技術と物とわけるという観点に立つてしかしながら実際には物の暴騰によつて膨脹するその圧力に対して技術料をより一層押えて参ろうという意図があることは明らかに見のがせない点だと思うのでございます。  ところで今度の新医療費体系でありますが、前々からの御答弁によりますと、これは医薬分業実施する一つ段階として考えたわけではあるけれども、この新医療費体系は必ずしも医薬分業の前提ではない。この新医療費体系そのものは、また別個に独立したものとして考えておるという御答弁でございましたが、その通りでありますか。
  79. 久下勝次

    久下説明員 現在国会に報告し、御審議をいただいております新医療費体系は、実際問題としては一月一日から実施されます医薬分業の前提として決定をし、御報告を申し上げておるものであります。さて医薬分業は、それではやめになつたかという議論になりますと、これはあくまでも抽象論になり、仮定の論になりますが、こういう診療報酬の支払い方法に関しまして、物と技術とを分離するという考え方それ自身が、抽象的には別途に考えられることであるという意味合におきまして、先日滝井先生の御質問にもお答えした次第であります。
  80. 福田昌子

    福田(昌)委員 はなはだ巧妙な御答弁をいただきまして、よくわからないのです。医薬分業をやめるかもしれないという仮定のことに対しては、従つて仮定のことでありますから御答弁はむずかしいと思うのですが、医薬分業をやめるにいたしましても、この新医療費体系厚生省において何らか実施する意思を持つておられるかどうか。——私の方から具体的にお尋ねいたしましよう。医薬分業を何らかの事態によりまして来年一月一日から実施して参らないという段階に立ち至りました場合には、それでも新医療費体系を今の社会保険医療報酬の上において実施するおつもりであるのかどうか。さらにまた実施した方が都合がいい、今の支払い形態よりもこの新しい医療費体系をとり入れた方が都合がいいというようにお考えになつておるか、これについてお尋ねしたいと思います。
  81. 久下勝次

    久下説明員 お尋ねにそのままお答えを申し上げることにならないかもしれませんけれども、私ども行政庁におります者といたしましては、すでに昭和二十六年に両院を通過した法律実施する責任を負わされておるので、ございます。その上にのみものを考え、いろいろなことをせざるを得ないのであります。従いましては、私としてはこの新医療費体系に基く社会保険点数表も改訂して参るべきであると思つたわけでございます。もしも何らかの事情で医薬分業が一月一日から実施されないようになつてもやるかどうかという仮定を前提にされました御議論に対しましては、私の立場として今そのことを責任をもつてお答えできませんが、そういう事態に立ち至りましたときにあらためて考えさせていただきたいと思います。
  82. 福田昌子

    福田(昌)委員 なかなか政治家的な御答弁をいただきましたが、重ねてその点だけお伺いいたしておきます。ただいまの社会保険における支払い形態よりも、この新医療費体系の方がさらに進んだ体系である。従つて社会保険の支払い方法においては、この新医療費体系を使つた方がより妥当であると考えておられるかどうか、この点くらいはお答えになれると思いますから、お答え願いたいと思います。
  83. 久下勝次

    久下説明員 お尋ねの問題は、実は私どもとしてはこういう角度から一応の検討をしてみたのでございます。この新医療費体系に基く点数の改訂が実現しないといたしますれば、現行点数表のまま医薬分業に入らなければならないということになるわけであります。そうなりますと、これも正確な計算じやございませんけれども、全体の社会保険財政に対して一割近いプラスをそのためにのみ負わなければならないという結果になる計算が出ております。八%強のプラスになるのではないかという程度の、これは多少漠然としておりますが、数字が出て参るのでございまして、医薬分業を来年の一月一日から実施するという形になりますれば、私どもとしてはこの新医療費体系に基いて点数表の改訂をすべきであると思つておる次第でございます。
  84. 福田昌子

    福田(昌)委員 もうやめたいと思つておりますが、ただいまの御答弁ではまたふしぎなことを伺つたわけであります。医薬分業をやる場合に、この新医療費体系というものを実施しなくて、現行の支払い体系をこのまま踏襲して行けば、全般的に約一割近い、八%前後の支払いの増加が考えられるという御答弁でございました。しかもそれゆえにこの新医療費体系を急いで編纂したのだということになつて参りますと、結局新医療費体系というものは、医者の技術や薬剤師やその他の歯科医師の技術を適正に評価するという美名のもとに、実はそうじやなくて、医薬分業をやつたときに、おまけに薬剤師側の取り分さえまた別個に考えなければならないときに、これはますます保険経済が膨脹するから、何とか保険経済を膨脹しないで、手ごろな名目のいいものを選び出してごまかしをしようじやないか——ごまかすという言葉が悪ければ、保険経済の膨脹をどうにかして防ごうじやないか、その意味合いにおいて出して来られたものとしか考えられないわけであります。私が御質問申し上げた以外のことを御答弁いただいて、私としては非常にありがたいのでありますが、私はそういうことを今御質問申し上げたのではないのでありまして、医薬分業をやるということに法律ではなつておりますが、しかしこれが何らかの事態によりまして三十年一月一日からやらないことがあるかもしれない、そういたしました場合に、この新医療費体系というものは、厚生当局としては今の支払い報酬としては最も適正妥当だとお考えなつたからこそ出したのだと思いますが、これをある程度実施なさるかどうかということをお尋ねしたのでありますが、それに対しての御答弁がなかつた。従つて、私は重ねてこの新医療費体系の方が今の支払い体系よりも一歩進んだものと考えておられるかどうか、従つて、進んでおるからこれを実施したい希望があるのかということだけを御答弁願いたいという質問をしたのであります。従つてその点、イエスかノーかだけを御答弁願いたいと思います。
  85. 久下勝次

    久下説明員 イエスかノーかだけでお答えすべきでありますが、先ほど私がお答え申し上げましたことにつきまして、大分誤解があるように感じられますので、それだけ申しておきます。私が先ほど現行の点数表のまま医薬分業に入つたらどうなるかという影響を一応考えてみたのは、実はごく最近の二、三日前ですが、私どもとしては大体今お尋ねになりましたお言葉通り考えておるのであります。医薬分業実施いたしますためには、現在私どもが持つております資料なり、あるいは私ども考えましたところにおきましては、この新医療費体系に基いて実施に入るのが最も妥当で走るというふうに考えておる次第でございます。
  86. 福田昌子

    福田(昌)委員 私はそういうことを御質問申し上げておるのじやないというのに、どうしてそういう御答弁をなさるのですか。今の社会保険の支払い体系で行けば医療費が膨脹するということについて、厚生省は二、三日前に八%膨脹するということがわかつたとお答えなつたのですが、私ども医師会の方でざつと計算いたしましても、どんなに切り詰めて計算しても十二、三パーセントくらい膨脹することは前々から医師会から出しているわけであります。従つて厚生省のあり余る十分なデータからお考えいただいたら、必ず医療費というものはある程度膨脹するじやないかということを前々からお尋ねしておつたのでありますが、そのときには決して膨脹いたしませんとかなんとか巧妙な御答弁をいただいて、二、三日前ちよつと御研究いただいたら八%膨脹するということがわかつたそうでありますが、私はそういうことをお尋ねしているのじやないのであります。新医療費体系というものを一応医薬分業とは切り離して考みておるというお話ですが、それなら今の支払い体系よりはこの新医療費体系の方が一歩進んでおると保険局長考えておられますかどうか。その線から、今の支払い体系医薬分業実施とは関係なくこの新医療費体系を取入れて参りたいとお考えになつている九どうか、このことをお尋ねしておるわけです。
  87. 久下勝次

    久下説明員 今の支払い体系よりもこの支払い体系の方がいいと考えております。
  88. 福田昌子

    福田(昌)委員 この新医療費体系によりますと、医薬分業実施しても、八%膨脹する分が押えられるそうでございますから、これは保険局長のお立場に立てばいい体系には違いないと思います。その点はつきりいたしました。  そうしますと、この新医療費体系の面からいたしますと、ただいま問題になつております地域差というものに対する配慮がどういうふうに払われるのかわからないのでございます。たとえば点数にいたしましても、十一円五十銭と十二円五十銭の差をつけられておりますが、治療する医者の側に立つてみますと、たまたまいなかに住んだばかりに自分たち技術料総額というものが落されて考えられておる、これは了承できないのであります。しかも、いなかに行けば行くほど買い入れる薬剤医療器具というものは高いというようなわけで、出費が多いのに、収入がむしろ一番低い診療費で押えられるというような地域差は、適正合理な医療の配分を考えておられる保険局長から見れば当然撤廃されなければならないと思うのですが、いかがお考えでございましようか。
  89. 久下勝次

    久下説明員 地域差の問題につきましては、私ども実は現在非常に悩んでいるのでございます。ああいう制度がありますのに、簡単に撤廃をするわけにも参りませんし、存在をさせる以上は何とか合理的なものにすべきではないかというような見地から、実は非常に処置に悩んでおる問題であります。今お話になりました薬価につきましては、薬価基準で高いものを支払うことになつております。その点は、むしろ一般生計費から申しますれば、都会よりもいなかの方が高いというようなことからあの制度が生れているように承知しております。今日あるがままの地域差というものがその通り妥当であるかと言われますと、私自身も今日のあるがままの姿が妥当なものとは申せないような現状であります。この問題はそれに関連していろいろ他の問題も随伴して参りますので、一般の問題として検討いたしておる次第であります。
  90. 福田昌子

    福田(昌)委員 まだたくさん質問が残つておりますから、あすさせていただきたいと思うのですけれども、もう五分ほどお許し願いたいと思います。  この医薬分業法律通りに行けば実施されるでしようが、そうなりますと、今までの医者の側から申しますと、当然調剤ができておつたわけですから、調剤のための薬品というものを相当ストックして買つております。そういうようなものに対して政府御当局はどうなさいますか。それは医者がかつてに買つたのだから、当然それはむだになるというお考えでありますか。あるいはまた、これは強制医薬分業というもので、政府のお考えによつて強行されるのであつて、一種の企業整理ですから、そういう意味で当然政府において何らかの御処置というものを考えてしかるべきですが、どういう補償をなさるおつもりですか。
  91. 久下勝次

    久下説明員 その点も一応考慮いたしたのでありますが、実際に一月一日からどの程度調剤いたしますか、薬局に移つて行くかというようなことにつきましても、御承知のような但し書がついておる法律でございますので、明確に予想もつきませんので、さような措置は一応講じないでおつた次第でございます。
  92. 福田昌子

    福田(昌)委員 とにかく、人様の分はあまり心配しないで、自分の保険給付のわくだけ頭痛はち巻で心配したのが、この新医療費体系であつて、しかもその看板は、まことしやかに、医者の技術を尊重したり、歯科医師薬剤師の技術を尊重したということになつているのでありますが、看板にいつわりありもはなはだしい例もありましよう。先ほどの地域差の問題等も非常に悩みの種になつておられるそうでありまして、事実また保険局長が非常に御心配いただいておることも私ども長い間非常に感謝いたしておるのでありますが、そういう御心配いただいておる問題こそ一番先にこの新医療費体系において修正してしかるべきだと私は思うのであります。地域差をつければむしろさかさまにつけるべきでありまして、いなかの方こそ買い入れる資材は高いし、患者は少いかどうか知りませんが、いろいろな点からいたしまして、いなかの方こそ単価は格高であるというのが当然だと思うのでありますが、地域差をさかさまにつけて、そうして悩みの種であると言いながら、いつまでもこれを放置しておるということは、私たちのとらないところであります。また新医療費体系という、こういう厖大な資料を何箇月かかかつておつくりになるなら、あと二箇月半に迫つた医薬分業の時期を控えておりながら、いわば強制的に、戦時態勢において、住宅などを立ち退かせたと同じようなそれに類似の犠牲を医者にも負わせるわけでありますが、それにもかかわらず何らかの補償というものもまだ考えていない。それはどの程度補償すべきかということも具体的には全然想像もしていなかりたというような御答弁をいただきまして、実に行政当局として無責任きわまるという感じがいたしたのでございます。それで医務局長がお勤まりになるということになれば、医務局長は実に楽なものだという感じがいたします。私は医務局長を今まで御尊敬申し上げておりました。今でも御尊敬申し上げておりますが、その医務局長がこの新医療費体系を出して来られたということにおきまして、私は曽田さんは医務局長だと考えておつたのでありますが、この資料を見せていただいて、やはりこれは統計部長さんの方が最も適職じやないかという感じさえいたしたのでございます。医務局長であれば、医者の技術というものをもう少し評価して、新医療費体系という名に値するだけの医者の技術というものを評価して、厚生省部内におきましても、曽田さん自身の医者であるという立場において、みずからの尊厳においてその技術料というものを主張してしかるべきであつたと思うのでありますが、それにもかかわらず、この委員会に出て来て、初診料を六・何がしにしたとか、再診料を四・何がしにしたことを、医者の技術に対する適正評価であると認めますとかなんとかいう、そういう御答弁をいただきますということは、保険局長答弁ならば私どもは了といたします。しかし、医務局長からそういう御答弁をいただくというにおいては何をか言わんや、私は医務局長にこういうことを申し上げたくないと思つておつたのでありますが、非常に遺憾である。医務局長がそういうごまかしの御答弁をしておられるということは、しいて申しまするならば、医者自身の体面、全国八万の医者の地位と体面をあなたがあなたの一言によつて落しているのだ、それほど重大な発言であるということをお考え願いたいのであります。全国八万の医者、また三、四万の歯科医、また五、六万に近い薬剤師の適正な技術というものをあなたの一言によつて落しておられる。みずからの技術というものをみずからいやしめることによつて卑下している。自分の技術をみずからいやしめるということは、ことわざにもありますように、人がこれをいやしめるのはあたりまえでございます。従つて日本医療技術というものは天下から軽蔑され、こういう低いところにくぎづけされるということはあたりまえであると思うのでありまして、そういうことを医務局長自身が反省しないでおるということを私どもは遺憾に思つておるのであります。せつかく優秀な医務局長が何としたことかと思われます。おまけに、出して来られました最近の資料を見ますと、たとえば医者の一分間単価ですが、四円三十六銭でしたか、そういうことによつて医者の一分間単価をきめて参つておる。私どもは工場の女工さんと同じような仕事を、今までまだ時間が足らずにやつておりません。従いまして、一分間にどれだけ仕事の量を上げるか、一分間の単価がどういうふうになつておるかというような働きぐあいで強要されておりませんから、そういう働き方を知らなかつたのでありますが、珍しい単価を出して来られました。医者の一分間単価が四円三十六銭というような、こういう単価は、公務員側においてもきつとそういう単価の割出し方があつたのではないかと思うのでありますが、一体医務局長の一分間単価はどれくらいになるのでありますか。大臣の一分間単価、そういうことはこの資料で御説明願いたいと思うのでありますが、この点は控えましよう。そういう無理なことを医務局長お願いするということははなはだ御迷惑かと思いますから、資料としては御遠慮いたしますが、しかし、こういう医者の一分間単価というようなばかげ切つたものを出して来られるという、その根本的な考え方。これを医務局長が出して来られたということについて非常に私どもは遺憾に思うのでありますが、この点については・時間がないですからあしたお伺いすることにいたします。
  93. 越智茂

    越智委員長代理 本日はこの程度でとどめ、次会は明十五日午前十時より開会することにいたし、これにて散会いたします。    午後零時五十六分散会