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1954-10-08 第19回国会 衆議院 厚生委員会 第66号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年十月八日(金曜日)     午前十時十二分開議  出席委員    委員長 小島 徹三君    理事 越智  茂君 理事 松永 佛骨君    理事 長谷川 保君 理事 古屋 菊男君    理事 岡  良一君       有田 二郎君    助川 良平君       高橋  等君    中川源一郎君       亘  四郎君    滝井 義高君       福田 昌子君    柳田 秀一君       佐藤 芳男君    山口シヅエ君       山下 春江君  委員外出席者         参  考  人         (全国労働組合         生活対策協議会         幹事)     吉田 秀夫君         参  考  人         (武蔵野赤十字         病院長)    神崎 三益君         参  考  人         (日本医師会副         会長)     水越 玄郷君         参  考  人         (東京医科歯科         大学教授)   檜垣 麟三君         専  門  員 川井 章知君         専  門  員 引地亮太郎君         専  門  員 山本 正世君     ————————————— 十月七日  委員高橋等君、中川源一郎君及び安井大吉君辞  任につき、その補欠として平井義一君、岡野清  豪君及び江藤夏雄君が議長指名委員に選任  された。 十月八日  委員平井義一君、岡野清豪君、江藤夏雄君及び  三宅正一君辞任につき、その補欠として高橋等  君、中川源一郎君、安井大吉君及び杉山元治郎  君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  新医療費体系に関する件     —————————————
  2. 小島徹三

    小島委員長 これより会議を開きます。  本日は昨日と同様新医療体系に関する件について参考人方々より意見を承ることといたします。御意見を承ります前に委員会を代表して一言ごあいさつ申し上げます。参考人方々には御多忙中のところわざわざ御出席くださいまして厚くお礼申し上げます。本問題は、申すまでもなく医薬分業実施に伴う医療費体系に関する問題でありまして、去る一月厚生省が本件に関する資料を当院に提出せられてからは、当委員会といたしましても何らかの意思をきめるべく、休会中ではありますが、連日委員会を開き調査を進めているわけであります。参考人方々におかれましても忌憚ない御意見をお述べいただきたいと思います。ただ時間の関係上お一人二十分程度に願いまして、後ほど委員から質疑があると存じますので、これにもお答え願いたいと存じます。  なお発言の順序は、かつてながら委員長においてきめさせていただきたいと存じます。  それでは最初吉田秀夫君から承ります。
  3. 吉田秀夫

    吉田参考人 吉田秀夫でございます。お呼出しを受けました新医療費体系本文を読みましたのは月曜日でございまして、詳しい関係資料を入手しましたのは大体五日の夜、それで実は連絡が非常に悪くて六日に御案内を受けたということで、あわただしい中で私の意見をまとめざるを得なかつたのであります。ざつくばらんに申し上げますと、今度の新医療費体系はよほどの専門家でない限りはこの体系の理解は非常にむずかしいということを感じました。そのことはかつて私が苦労しました社会保障制度審議会委員としての第一次社会保険制度の勧告や、それから占領中の総司令部サムス准将強制によつてできました臨時医療報酬調査会あるいは医薬制度調査会、これらの機構の経験から見ましても今回の新医療費体系内容は非常に了解しがたい点がたくさんあるわけであります。そういうわけで私の意見はこのような経験から来た若干の専門的な知識と、それから労働者あるいは被保険者国民大衆の立場に立つて申し上げたいと思つております。  まず冒頭に昭和二十七年の百五十五の病院と二百十七の診療所、百四の歯科診療所のいわゆる医療費施設実態調査の全貌を当局勇気を持つて公表したという英断に対しましては敬意を表したいと思うわけであります。さらに医師会系統の協力が全然なくても医療費施設原価計算のいろいろな調査の一部を公表したというその勇気にも若干の敬意を表したいと思うわけです。これはなぜかといいますと、二十七年の実態調査は少くともこれは政府の恒例の仕事でありまして、二十七年の三月の医療費施設実態調査の結果によりまして、一体病院診療所経営のバランスがこの調査によつてとれておるのかとれていないのか、そういうありがままの姿を明るみに出すのが私は実態調査の目的であると思うのです。このことによりまして御案内のように、ことしの六月以降非常にはげしくなりました、たとえば医師会あるいは保険医関係の運動、これは前代未聞のすわり込みやあるいは本日休診という戦術やあるいはバス、スクーターなどによつて全国各地においていろいろな形で大会等が持たれておりますが、こういう保険医や公私の医療機関診療費は非常に安い、あるいは単価を上げろという要求が、厚生省の非常に権威ある調査によつてはたして正しいものかどうかという、その判断する材料に私はこの実態調査がなると思うわけです。もう一つは私は参加して非常に苦労したわけでありますが、二十五年八月から二十六年二月まで約七箇月かかりました新医療費体系方式の算定の基礎であります。この医療費体系を生み出すいろいろな算術の方式は、医師その他の医療技術者技術料をいかに評価して、それを中心にしましてあるいは医療費体系を具体的にどういうふうに実施するかということを、最も権威ある政府自身が作成する点に非常に重大なる関心を持つて参りました。  大体本来はこういう実態調査原価計算方式を入れました新しい医療費体系というようなものは別個に公表されるものでなければならないと存じます。特に実態調査は少くとも二十七年三月の調査でございますから、一年遅れました二十八年春かあるいは去年の秋ごろ公表さるべきものと存じておつたのでありますが、これはなぜ二年半も経過してようやく今日なされたかということ、さらにその調査に対しましても新医療費体系のいろいろな今後あるべき姿と結びつけまして、それと不可分の関係もとで出されたということは非常におかしいと私は思うのです。もともと今のままの当然あるがままの姿、これは医療施設の問題が新医療費体系という当然あるべき姿で、ゾルレンとして出されたというところに実は問題があると私は存じます。御案内のようにせつぱ詰まつた来年一月から実施するといういわゆる強制医薬分業の問題、そのための新医療費体系という積極的な要請がすでに目睫に迫つているということがもしなかつたならば、私は、昭和二十七年の三月の医療費施設実態調査も当分の間日の目を見なかつたのではないかとさえ邪推する次第であります。なぜならば二十七年の三月の大病院診療所を合せまして約四百七十七箇所の医療施設のほとんど全部が、政府の非常に正しいと思われます実態調査の結果によつては全部が赤字経営であります。それは一番厖大な表をずつと繰つて行きまして、診療行為別回数並びに点数、受領すべき報酬額及び患者数というのを見ますと、大体一目瞭然でございます。それをたとえば一の表の4aの病院の約百五十五の施設の三月の統計表を見ますと、実際にかかった経費が二億二百四十七万円、それから実際に受領すべき金額が一億七千六百四十九万円、差引赤字が二千五百九十八万円ということになっております。この赤字は一四%に該当いたします。これが病院内容であります。精神病院やあるいは結核療養所、あるいは伝染病院その他の病院全部を含めてこういう赤字があるという点でございます。  さらに関係の深い一般診療所二百十七施設を考えてみますと、これは約七%の赤字ということになっております。これは二十七年度の三月において、すでに公、私の医療機関経営がやつて行けないということを示していると私は考えます。大体この調査が、減価償却等をどういうふうに見たかという点はさておきまして、これは公務員並あるいはそれ以下の医師看護婦の非常に低い賃金と、労働強化を大体そのままにしてなされたものだと考えます。その後人件費あるいは物件費あるいはガス、水道料あるいは光熱費米代等はみな上昇しております。昨年十二月に入院料往診料を若干上げましたが、上げたにしましても、この赤字は相当大きなものになっていると思う次第でございます。こう見ますと、大体医療機関への医療報酬が実際に非常に低いし、単価も引上げない限りは、もはやその経営は維持ができないということは、この調査で示しているのではないかと思います。大体こういう事情のために、この調査は今まで公表されなかつたのではないかと私は考えます。  さらに新しい医療費体系を考えた場合に、その基礎なつたこういう実態調査が、この赤字のままで、赤字をさらにカバーしないで出すということ自体に問題がありますし、もしそういうことになりますと、ますます医療機関を危機に追い込んで、国民医療を破壊するものになる。今まで医療機関関係でカバーして来ましたのは、やはり医師医療従業員の非常な低賃金と、その労働強化と、あるいは若干の診療内容の低下ということでカバーして来たかもしれませんが、これにも限界があるわけです。  さらに新医療費体系で一番問題になる点は、まず二十七年十月に実施されました施設精密検査、このためには原価計算方式が相当取入れられてあると思うのでありますが、そういう問題と、さらに政府考え方が根本的に間違つていやしないかと思います。そのことは私が参加した、たとえば、臨時診療報酬調査会にしましても、あるいは二十六年の国会におきましても、少くとも医師の適正な医療技術に対する評価もとにするということ、それをもとにして新しい医療費体系をつくれという御要求がありまして、そういうことにして分業実施したあとに、国民医療費にどう響くかということであつたと思うのであります。ところが率直に言いますと、今回のこの新医療費体系のやり方、あるいは考え方は、そのような方法からその体系を出して、医療費が一体上るか下るかということを検討したものではなくして、初めから二十七年度の調査の分析から国民医療費をきめて、そのわくの中で操作をするという驚嘆すべきくふうをこらしております。これは初めから上るも上らないも問題はないわけであります。大体こういう考え方態度あるいは作業自体が私は問題だと思います。  さらに調査会答申によりますと、これは御案内のように診療報酬を二つにわけまして、医者診療報酬薬剤師診療報酬とにいたします。医者診療報酬は御案内のように(1+α)という技術指数がございます。その技術指数に掛算しまして医者平均賃金、たとえば一分間に何円という平均賃金でありますgと、その診療行為にかかりました所要時間t、それと人件費N物件費Mとを全部原価計算で出すというのが医者診療報酬内容でございます。薬剤師の方の診療報酬は、薬剤師技術料は調剤の手数料でして、それに人件費物件費薬代というものを足し算したのが薬剤師診療報酬です。こういう方程式で、実は一切の数千、数百という診療行為ごとに全部計算するのが建前でございました。ところが本文を見ますと、さしあたつて医療分業実施を控えまして、それに必要な診察料薬治料注射料の三点にしぼつて出すようになつております。これが大体おかしい第一の点であります。従つて他の数十、数百、数千の診療行為報酬は全部あとまわしということになつております。おそらく厚生省でありますから、数百、数千の診療行為ごとにあるいは点数はきまつておるかもしれませんが、全然出ておりません。  さらに第二の不合理な点は、最も重要な医師技術料評価の問題であります。本文を読みますと難易度、すなわち前のあれからいいますと(1+α)という技術指数が考えられ、あるいは実行されたかどうかという問題であります。おそらく何ぼいろいろな調査会意見をたな上げする厚生省でも、少くとも医者の技官がたくさんいる厚生省でありますから、最初は私はこの技術指数を、(1+α)をお考えになつたと思うのであります。ところがこれがどこかに消えてなくなつてしまつております。もしあればはつきりと出していただきたいと思うわけです。もし(1+α)という技術指数が全然ないならば、結局は医者の一分間当りの平均報酬とその診療行為にかかつた時間の掛算のみが技術料として残るわけであります。これは肉体労働者あるいはニコヨンあたり労働者並の、単純生産の労賃であるといつてもいいと思います。しかしニコヨンの場合、日雇い労働者の場合は、大体スコップや物を運んだりする道具等は全部貸与されますが、医者の場合はそういろいろな手段は自分持ちということになりますと、ニコヨン以下ということになりかねません。さらに時間が多くかかればかかるほどそれだけ報酬が多くなるということになれば、これはたとえば脊髄注射というようなことは、あまり時間がかからないと思うのですが、脊髄注射等は非常にむずかしいと言われております。それとたとえば私たちでもできます浣腸というような、非常に簡単な処置の場合に、浣腸の方がもし時間がよけいかかつた場合は、この方が報酬が高いのだというようなことは、どうしても私はしろうととしても考えられません。これは医者としての頭脳的な複雑労働を否定しまして、ひいては医者の拡大再生産を全部否定するということになりまして、少くともこの本文の随所に見られておりますように、物と技術とわけたものだ、技術料だというような、高級な、お上品な名前をつけるには値しない問題だと思つております。  さらに調査会答申は、人件費や、あるいは物件費やあるいは薬代、それぞれ原価計算をしまして、足し算をして出す方程式をとつております。ところが本文によりますと、薬治料注射料技術料はほとんど諸経費に含むという、そういう文句に相なつております。これから考えますと、当然人件費物件費を含み(1+α)gtもNもMも全部一本になつているということになると思うのであります。これは歯科の補綴の問題も同様だと考えております。これでは技術をわけたのかわけないのか全然わからない。実際には何もわけていないのではないかということさえ思います。しかも政府の出しました本文の物の対価と切り離して技術云々ということには全然ならないのではないかと思うのであります。  さらにこの新医療費体系が、本文と、その本文参考になりました基礎的な資料の間に数字の点で至るところにいろいろな食い違いがある点であります。これは一体間違つているのか、あるいは私は非常に頭が悪いのかわかりませんが、とにかく非常にこれがたくさんの食い違いがございます。たとえば本文の方には病院の場合の投薬回数が六十八万五千回数なつておりますが、この大きな表の第二表では六十八万三千、注射本文では二十九万四千、ところが大きな表では二十九万二千、処置本文では二十九万九千で、大きな表では二十八万一千、手術が二万九千、大きな表では二万七千ということになつておりまして、こういう回数の点だけを例にとりますと、こういう間違いがございます。これは千単位というようなことで区切つておりますから、千以下のいろいろな回数なりあるいは点数を四捨五入したかあるいは消えてしまつたか、そういう点につきまして、そういうものを累計しますと、非常にひずみが拡大して統計学上おかしいのではないかと思います。  さらにそれから最も重大な点であります、たとえば本文病院一般診療所歯科診療所のabcの表のうち、たとえば診療行為名前、実際かかつた回数の問題、現行点数の問題、三番目に費用から換算した点数(B)というのかございす。ところがそのいろいろな現行点数(A)と、今言いました費用の点から換算した点数(B)というのは、この一番下の帳じりが合つているわけです。病院からいいますと、大体千六百三十九万六千点という帳じり現行点数費用から換算したいわゆる新医療費体系の一番大事な体系によりましても、全部合せておいて、新医療費体系のBの項が逆に上に、比例按分したというのでありますが、一体比例按分したデータはどこにあるのか、どんなに探してもいただいた資料にはないのであります。これは一体お医者やあるいは中小企業税金を払う場合、青色申告というのがございますが、この青色申告は作文でございます。なるべく税金をのがれようとする体裁にしてつくられておるのが大多数であります。その場合に必ず税務署の役人が来て、やれ預金通帳を出せ、あるいは実際家計に何ぼかかつたかということをつつ込まれますと、青色申告というものはくずれます。それと同じように、どうも隠しておるものが、出されていない資料がたくさんあるのではないかと思うのです。たとえば昭和二十六年当時のわれわれ調査会答申によりますと、少くとも厚生省医務局病院診療所原価計算要綱案というものを出しているはずです。それから診療行為別等価係数という厖大なパンフレットも出しているわけです。そういう原価計算方式やあるいは等価係数をどこへどういうようにお出しになつたかという元の原簿が全然資料として出ておりません。もしこういう調子でやられるならば、私は権威ある国会審議に対して、非常にけしからぬ態度で臨んでいるとさえ思う次第であります。  さらに往診料を入れていないという点はどういうものであろうか。これは昨年の十二月に入院料とともに若干値上りしました。これは明らかに厚生省は重要な保険給付として往診料を認めていることだと思うのであります。たとえばいただきましたこの資料の中に、一般診料所の場合には、初診料が九万四千七百六十二点、それから往診料は八万五千六百七十八点とあります。まるで初診料往診料は対々くらいの点数なつております。これはそれだけ保険経済にウエイトがあるということです。それをたとえば往診料の問題を初診料と再診料にわけましても、往診でももちろん診察はするのですから、それにぶち込んだとしましても、実際に点数として出ております往診料費用を、一体どこでどういうふうにしたのかという点は、いただきました資料には全然ございません。  さらにこの新医療費体系基礎調査なつた点で、統計学信憑性が薄いということは、今までも若干申し上げました。ところがもつと詳しく言いますと、二十七年の十月の精密調査は、全体の医療施設の——これも政府からいただきました資料の中から出したのでありますが、この全体の医療施設の八三・六%を占める個人立一般診療所があるわけです。これが換算しまして七万二千七百五十あります。その七万の診療所のうちわずか十三箇所を実は精密調査の対象にしておる。これは三月の調査の百十四のうち十分の一に該当します。このわずか十三の中でベッドのない診療所が九つもあるということであります。私のようなしろうとが考えましてもいろいろ専門の科は十くらい大きな科があると思う。だからそれを全部按分しますと、この一診療所の典型的な姿が、こういう統計学的な非常に荒いデータで出るか出ないかということであります。これはおそらく学者等が見ましたら、全然問題にならぬのではないかと思います。  さらに三月の調査によりましても、一日の患者、たとえば零人から二十人までという施設が、いただきました資料では五六・五%もございます。そして平均値を出すと言つておりますから、結局二十人前後あたりが平均値ではないかと思つておるのでありますが、もし二十人前後で統計基準にしたということになりますと、それ以下の約五割、半分を占める大多数の施設の問題はどうなるのだということになります。  さらに病院は非常に経費がかかつて診療所は安上りだという建前経費の安い診療所基準にしていろいろの点数を割出して、一番安い経費でやるということになりますと、非常に経費のかかる病院はますます、この体系によりますと、赤字が増大するということになります。大体米の値段をきめる場合でも、いろいろの農民の階層別基準にしまして出しておりますが、病院の場合、あるいは診療所の場合は、その施設内容は大小さまざま、実にてんでんばらばらです。それをごつちやにして、どこに基準を引くかという点が非常に大事な点であります。その基準引き方にも私は問題があるのではないかと思うわけであります。  それから新医療費体系の構想からいいますと、病院診療所注射や薬を非常にもうけ過ぎている。病院の場合には入院料も非常にもうけ過ぎている。大体病院入院収入比重は、全体の収入の約半分近い比重なつております。それらの三つをそれぞれ新医療費体系によりますと、大体三分の一くらいずつ点数を減らして、これを診療費に全部ぶち込んで行くというのが、私はよくわかりませんが、率直な体系の正体ではないかと思うのです。そうしますと、診療所の場合には、いただきました資料によりますと、全体の収入の約一割強が診察料つたのです。それを三倍なり四倍近くに上げて、そうして診療所施設経営の重要な柱にするということであります。大体私は医者技術料は診断こそ最も重要な医者技術料であると思つております。従つてその診察料を上げて行くということに対しましては賛成であります。しかし御承知のように、現在の社会保険健康保険制度からいいますと、初診療本人まるまる負担家族は半額負担もともとかかる一部負担の出し方は、昭和二十二、三年ごろ濫診濫療を押えるために例外としてなされたもので、これは原則ではございません。診察料というものをこれほどまで高く評価しようという厚生省当局でございますから、診察科目あるいは診察行為を重要な医療行為と見、また重要な社会保険医療給付であると見ていることはおそらく間違いないと思うのであります。そうしますと、これほどまで尊重する診察料でありますならば、これは当然給付内容にすべきであります。それを給付外にしておくこと自体が矛盾であります。もしあくまでも給付外にするならば、大体診察医療行為ではない、医療行為の名に値いしないということをはつきり厚生省は断定すべきだと思いますが、この点が一体どういうふうになるのか、全然示されておりません。従いまして現行通りでこの医療費体系実施をするということになりますと、まるでせつかくの非常に尊重すべき医者技術料実施が、被保険者千二百万人とそれからまた二千万人近い家族の直接の負担で、その犠牲で実は診察料尊重という光栄ある仕事実施しようということになりますので、これは趣旨は賛成でございますが、われわれ被保険者大衆は絶対反対せざるを得ないわけであります。  私の非常に素朴な計算によりましても、たとえば被保険者が現在千二百万人ほどおりますが、それが年に三回病気になるということになりますと、今度厚生省が示しております初診料六点、これを七十円と仮定しても、年に三回千二百万人の労働者病気になりますれば、二十五億二千万円初診料がかかります。家族は大体この一・四倍といたしますと、三十五億二千八百万円かかりますから、合せますと六十億四千八百万円という診察料がかかるわけです。今まで大体本人負担家族負担がございましたから、このうち三分の一増加することになりますと、これは国民医療費は、あるいは直接の労働者あるいは家族犠牲は約二十億に該当するという非常に素朴な計算になります。  最後に、このような不合理な、実はでたらめに近い新医療費体系が、こういうことが条件になりまして、そうして強制分業が一月の一日からあと二箇月余りで実施されるということでは、国民八千万あるいは全医療機関はたまつたものではないとさえ考えます。これは大体正確な資料は出せないとは私は言えないと思うのです。それをいろいろな重要な資料が伏せてございますから、その伏せてある資料も当然お出しになつて、それでもなおかつどうも新医療費体系のいろいろの資料では非常に不十分だというならば、何箇月、何年かかつてでも、何回でも納得できるまで私は出し直したらいいと思うのです。あと一番心配しておりますのは、分業実施関係なく一月からこの体系実施しようというような、そういう強固な決心が厚生大臣にあつたということであります。これはその後の厚生委員会の質疑応答で医薬分業と不可分だということで直つたそうでありますが、もしそういう気持がありますと、私は分業関係なくても、この新医療費体系だけでも、一切の医療費計算され、一切の社会保険診療報酬計算され、それが実施されることによりまして、非常に心配する、憂慮すべき混乱とまた破壊が起るのではないかと思うのであります。と申しますのは、本文でもちよいよいと厚生省側は言つております。約七〇%を占める全国の内科、小児科の医者、特に結核関係医療施設は官公立、私立を問わず、私は非常に崩壊の度を促進するであろうということを心配するのであります。  これも私流のしろうとの非常に素朴な計算でありますが、たとえば今一人の結核患者がいると仮定いたしますと、月にパスが一日十グラムで、これは三十日で三百グラムかかるわけです。これが現行点数では百八十四点、この原価が六百三十四円であります。ところがマイシンという注射は大体月に八本ということになりますと、これが現行点数では百三十五点、原価が千四十円、合計いたしますと点数では三百十九点、これが甲地の計算で行きますと、三千九百八十七円五十銭ということになります。それから原価でありますが、パス、マイシンの原価千六百七十円を引きますと、二千三百十七円五十銭が実は結核患者一人についての医者収入ということになつております。それを新体系で考えますと、大体パス、マイシンというような薬、あるいは注射薬を使いましても、そのためには原価で全然もうけになりませんから、これは全然除外しまして、パスがたとえば一日の調剤料を〇・五点としますと、三十日ございますから十五点になる。ストマイが一日二点、これは皮下注射で、二点としますと、これは八回ございますから十六点になるわけです。それから再診料を週に二回というふうに計算しますと、これが一回四点にしますと三十二点、合計いたしますと六十三点で七百八十七円五十銭というのが今度の新医療費体系による医者の手取りということになります。そうしますと今までの現行の制度から言いますと、差引一人の結核患者につきまして千五百三十円の収入減になるということであります。これでは一体内科系統あるいは結核専門病院、療養所あるいは診療所はとうていやつて行けないのではないかと思うのです。それでなくとも病院あたりはやりくり算段がつかなくて、アパートなんかになつておりますが、そういう傾向が出て来るのではないかと思います。  こういう医療機関の崩壊は結局国民大衆が非常に不仕合せということになるのであります。医者にかかりたくてもかかれなくなるということになると思うのであります。そうしますと、せつかく政府昭和三十年度には大幅に結核対策をやるのだということになりましても、病人もなおせないような形でどうして結核対策をやるのか、五百数十万人の結核患者はどこへ行けばよいのかということにもなりかねないのであります。しかもそういう点から言いましても、こういう医療機関を徹底的に崩壊に導くというような気持は、少くとも厚生省の事務局の技官の人たちはさらさらなかつた思うのであります。しかしこういうことになりますと、医療制度も、ひいては医育制度も、大学のいろいろな医者の養成制度も破壊される。そうして小児科、内科あるいは結核専門医者になり手がなくなるのではないかと思います。ひいてはこのことが社会保険制度に深刻な影響を与えまして混乱は必至であります。もともと国民医療費のこの限られたわくの中で医者技術料をまともに出すということはほとんどできないのだということが一番わかつているのは、厚生省の技官の連中ではないかと思うのであります。そういうことを考えますと、そのためにはどうしても、技術料を出すためにも国庫貞担が必要になる。ところが一番大事なことはこういうことではなくて、大体二十七年当時のすでに崩壊あるいは非常に赤字経営で悩んでおります公私の医療機関の今の現状をどうするかということなんです。これは去年の十一月の入院料往診料程度ではとてもカバーできません。これから神崎先生等からお話があると思いますが、さらにその後の七月の点数引下げというようなこと、またその上にデフレ経済の中での物価のいろいろな変動によつて少くとも二十七年当時から最近までは非常に大きな経済の不安定な時期にございます。その不安定な社会——正常な状態ならばまだいいのでありますが、その不安定な時期を大体条件にしまして、二十七年当時のいろいろな調査現行点数だというような表現であつたり、あるいは現在の医療報酬というようなあの主文にあります表現であつたりして、そうして実際に割出されているところに問題があるのであります。従つてこれはどうしてもそういう医療機関、あるいは多数の医者保険医赤字で、施設々々の医師、あるいは医療従業員が徹底的に労働強化と低賃金で困つているというようなことを放任しておいたのでは、さしあたりの日本の医療機関の危機は全然打開されません。従つてこういう当面の公私医療機関の問題や、あるいは全医療従業員のこういういろいろ困つた状態をいかにして打開するかということこそ、当面の一番大きな問題ではないかと思います。具体的に言いますと、これは大幅な単価引上げによる負担以外に解決の道がないのではないかと思います。  たいへん長くなりましたが、以上で私の公述を終ります。
  4. 小島徹三

    小島委員長 それでは次に神崎三益君の御意見を承ります、神崎君。
  5. 神崎三益

    ○神崎参考人 私は日本病院協会副会長という関係で、この新医療費体系について一応考えておる意見を申し上げたいと思います。  先ほど吉田さんのお話にもありましたように、この資料をいただきましてから時日がなかつたものでございますから、それを日本病院協会の総会に諮るというような時間はもちろんありません。従つて在京理事の間でこれを研究いたし、また昨年十二月以来病院原価計算委員会というものを組織いたしまして、大体今回厚生省がやられました行き方とほとんどかわりのない、但しわれわれの原価計算厚生省におかれてはすでに決済されたものについての部門別計算——全部がそうであつたとは私は申しませんが、そうであつたもの、われわれ日本病院協会における原価計算は、原価計算の計画のもとに、たとえば各個の診療行為にどれだけの時間を要するか、あるいは原料を要するかというようなことも、個々に一行為に一つの伝票をつくりまして、また補助員をつけてタイム・スタディをやるといつたような方針でやつておりますので、いささか信憑性については、われわれが今実行しおるものが成果を結べば、より大きい信憑性があるではないか、かように考えております。  原則として、診療報酬体系が、物に対して支払われるのでなくて、医師技術に対して支払われるという、この原則についてはわれわれ賛成でございます。しかしながら先ほどの参考人のお言葉にもございましたように、われわれ時間がないので倉卒の間に調べましたのではございますが、本案は遺憾ながら未熟児である。十箇月たつたまるまる育つた赤ちやんでないということを申し上げなければならない。この月足らずの子供ではありまするが、われわれも厚生省とともにりつぱな医療費体系の生れること、りつぱな赤ちやんの生れることを念願しております。でございますから、どうか今後もひとつこれをりつぱに育て上げるということを委員諸公におかれてもお考えいただいて、われわれに約束していただきたい。今のものが未熟児だから、そのままこれを捨ててしまうということでは、まことに残念なので、どうぞそういうふうにりつぱなものに育て上げるという熱意は捨てていただきたくない。と申しますのは、今回の医療体系は新医療費体系と銘を打つておりますが、当時私は関係しておりませんでしたが、日本医師会の二十六年当時の役員から聞きますと、その際非常な努力をして大体こういう線のものをわれわれはつつてつたのだ。さつきもお話に出ましたように、二十七年に調査があつて、それから三年間これが伏せられておつたというそのお話からも御承知願えますように、二十六年にすでにこの問題に手をかけておつたのだ。それが突然に医薬分業の問題が起きるとともに、未熟児ながら世の中へ出されようとしておる。ここら辺に私は非常な矛盾があると思います。また昔から日本ではお医者に対する報酬を薬礼と申しておりまして、薬のお礼と書いておりますが、これは長い間の慣習でございますから、それを改めるに案を出して、三箇月のうちこ実施に移すというようなことは、乱暴きわまる話ではないか、かように存じます。こまかいことは申し上げませんが、大まかな点で二、三矛盾を申し上げてみたいと思います。  それは、技術に対する報酬であるということを前提に置きながら、この厚生省から配られました本文の第二ページをごらんいただきますと、そのaのところに、病院における実態、左の方に診察、投薬、注射処置、手術、充愼、その他項目がずつと並べてありまして、その次の行に、総回数、それから三行目に現行点数A、第四行目が費用から換算した点数Bと書いてございます。そうしてその差額が(A−B)、かようになつております。また本文の九ページをお開き願います。附表の三−一と書いてある方で、病院という項目でございますが、この九ページに初診料及び再診料に重点を置くために、外科処置からずつと皮膚科処置、尿道洗滌、膣洗滌、そういつたものの今までやつておつた料金をすつかり取上げまして、これを財源にして初診料と再診料のところへ持つて来てございます。なるほど一応初診料、再診料という技術は、これは満足な数字ではございませんが、一応これで六点なり四点と、今までよりも技術を見たんだぞ、こう厚生省では言われるのでありますが、ところが、また元へもどりまして、今の二ページの診察、投薬、注射処置、手術、この手術の項目の、今現にマイナスの一八二という赤字を出しておるところの手術、この手術の赤字については何ら考慮が払われていない。診察が高度の技術であるならば、私はだれがお考えになつても、開腹手術あるいは脳の手術というようなものは、より高度の技術じやないかと思う。その技術に対して何ら考慮が払われていない。赤字赤字のままで放置されておることは、この医療費体系技術に対する報酬であるというふれ出しと非常な矛盾があるということを申し上げたいのであります。なおその中に、これはさしあたつてのことであつて、いずれこれらの点については後刻考慮するというような文句もあるようでございますが、私どもはその後刻考慮という言葉は絶対信用いたしません。と申しますのは、去る二十六年に非常な決心でもつて全国の医師が立ち上つた際に、二十六年の十二月に暫定単価なる名のもとに、現行の一点単価、都会において十二円五十銭、地方において十一円五十銭がきめられた。すでに五箇年経過しておりまして、暫定は依然として暫定で、われわれ小学校のときに、しばらくという字は、一時間もしばらくであり、一日もしばらくであるということでしたが、宇宙の悠久からすればそれは五年くらいはしばらくである、こういうお考えかもしれませんが、これでは承服できないのでございまして、その点さしあたつての云々は、決して私は信用できない、かように申し上げます。  それから今度の医療費体系で、医者の所得あるいは国民負担に変動がないようになつておる。それはそもそもが変動させないという大きな鉄のわくをはめて、その中で操作されたのでありまするから、答えが出ておつて、十に足すの何を足したら十五になるか、これは小学校の子供でもわかる、かように申し上げたいので、これはおそらく立案者は、先ほどの参考人のお話にもありましたように、層的にいろいろ苦労しておつくりになつた。私も資料をつくる経験を持つておりまするから、これだけの資料をおつくりになるのには、どれだけ御苦労なさつたかということは、それに携わつた人の御苦心はよくわかるのでございますが、残念ながら医薬分業の例の附帯決議三箇条に、国民医療費負担をふやさないことという大きなわくが入つております関係で、心ならずもかような資料をおつくりになつたのではないかと、わが身に引比べて案文をおつくりになつた方に御同情申し上げます。さようなわけで、大きく振り出した技術に対する対価であると申しながら、手術料もやみからやみへ葬らなければならない、処置料も削除しなければならない、かような矛盾が生れておるのでございます。  なお総医療費に変動がないということをおつしやるのでありますが、これはもう私この案をもらいましてから、車の中でもあるいは家へ歩いて帰るときでも、いつも考えた。それは頭が悪いからわからないのだろうと反省しながら考えておるのでございますが、大体これが分業とからんでおりますから申し上げるのでありますが、いわゆる調剤手数料というものが〇・六になつております。現行の単価で考えますと、これが約七円になります。私の病院で毎日外来で三百剤の投薬をいたしております。これを一月に考えてみますと、六万三千円になります。私の病院収入から見ますと、〇・六%の手数料がわれわれの薬局でいただかなければならぬ。今までの医療報酬を受取る中には、その薬剤師のお方は加わつていなかつた。それが今度医薬分業で一剤について七円、この手数料が高いとか安いとかいう問題はまた別に起きる問題でございましようが、七円かけるところの一年の調剤数というものは、これは相当なものになるのではないか。国民の総医療費を二千億といたしますと、私の病院で調剤手数料が千分の六、それをかけてみますと、十二億というものが、これだけ考えましても今までよりふくらまなければならぬ。十二億くらいは一兆から見ればヴイジブル・スモールであると言われれば、あえて何をかいわんやである。かようなことで非常に御苦心がございます。そうして先ほど申しました再診料の方へ四点以下のものはみんな繰込んだ。九ページに書いてあります外科処置、皮膚科処置、尿道洗滌、膣洗滌、それから単純な洗眼、点眼、複雑な洗眼、点眼、耳処置、欧氏管通気、こういうものはもう診察が伴つて行うところの主義であるから、これは再診料へみな含めてしまつた、こういうお話なんでありますが、これはなるほど一人の医者がやるのであると考えますと、これもあとで文句を申し上げますが、済むのかもしれませんが、ここに大先生とそしてりつぱな免状を持つた助手とがいるとします。それで大先生が膣のぐあいを見て、これはこういう方針で行かなければならぬ、今までよりも大分糜爛がひどくなつた、さあお前洗滌せいということになりますと、その小先生の方が洗滌をやるわけです。それで大先生の診察は再診料で、これは当然高度の技術なんですから受取らなければならぬ。そうするとその小先生がやつたところの洗滌というものはどうなるか、その技術料、それは技術じやないんだということであれば、特殊なシャワーを用いて洗滌をする、尿道洗滌の場合でも同じでございます。こういうことが成り立つか、これが技術でないという。器械に、水道の先にホースでもつけたらよさそうな話を、そもそも医者の元締めである厚生省が出されるに至つては私いささか良識を疑うものでございます。  次に欧氏管通気というのがございます。これは御経験なつた方があるかと思いますが、風を引きますと、鼻と耳との間につながつておる欧氏管が炎症を起しまして、閉塞を起す。そうすると鼓膜が外圧で中ヘヘつ込まされまして、そうしてがんとして耳が聞えなくなる。これに通気をいたしまして欧氏管の閉塞を開通させますと、また耳が聞えるようになる。この欧氏管の通気ということは、私は大学の名誉教授をしておられる耳鼻科の大家に承りますと、実際にその通気ができるまでには十年の年期を入れなければならないということであります。診察の方は、欧氏管が詰まつておるかどうかということを管を通してのぞくわけではないのでございまして、鼓膜が引込んでおるかどうかという診察、あるいは聴力検査でなるほどこれは高度に欧氏管が閉塞しておるという診断なんでありまして、これが初診療なり再診療になる。そこで処置として、その十年の年期を入れなければならない通気が始まるわけであります。これも今の点数が四点以下であるために抹殺されて、そうして再診療の方へ繰込まれる。それから内科方面で申しますと処方箋、これは今までは処方箋料というものは厳然と存在しておりましたが、これを認めないというところによると、処方箋に使うところの紙はどうせ大きさはこれくらいのものだ、これへ持つてつて幾らのインキがいるか、原価計算をしてみたつてそれは計算にならない。だからそれは当然また診察料の方へ繰込むべきだ。私も世界を歩いたことはございませんが、おそらく世界のどこへ行つて医者が処方箋を書いてその処方箋に対するお礼のないという国はないと思います。日本がその新例を開くというのであればでございますが、かようなひどい御苦心がこの案には盛り込まれております。  以上が大体この本文を拝見しての私のほんの二、三日の間で目についた非常な矛盾でございます。そうでございますから、私はこの案は未熟児である。今これを生れ出させますと、足もない手もないというような、見せもの以外にはならない崎型児が生れて来る、かように結論をいたします。  なお先ほどちよつとお話もありましたし、また入院料が幾らか黒字になつておるというようなお話があつたのでございますが、これもまことに近視眼的な見方でございまして、先ほど来言われておりますような統計の見方をいたしますと、歴然たる赤字なつております。昨年も苦労していささか入院料を上げていただいたのでございますが、それはどういうところに現われておるかと申しますと、さつきお配りしました資料の一番あとの方についているかと思いますが、全国の日赤病院病院従業員全体の平均給与のカーブでございます。それから実線の方が国家公務員のカーブでございます。わずかではございますが、二十四年から二十五年の初めまでは、病院従業員の給与ベースは国家公務員を上まわつておりました。これはこの資料の中にもありますように、病院の職員構成は、その六五%が医師看護婦技術員というような、高等の教育を受けて国家の免状を持たなければその職に従事することのできない特定な人間で構成されております。私はかような高度の構成を持つておる職場は他にないと考えているのでございますが、その病院従業員の給与ベースが、二十四年、二十五年の初めまでは、わずかではありますが国家公務員を上まわつておりました。ところが二十五年の三月ごろにこれが交叉いたしまして、それから二十六年の暫定措置、あるいは二十八年の暮の入院料の値上げ等がございましたが、幅はだんだんだんだん開いて参つおります。医者の方の言葉で、脈と熱の交叉がありますと、これを死の交叉と申しますが、このカーブの交叉、これは日本医療の死の交叉である。国政燮理の名医がこれを見たならば、なるほどこれはたいへんだ、日本の医療は、医者がギヤーギヤー言うのも無理はない、これは断末魔の様相しを呈ておるということが、これでよくおわかりだと思います。同様な済生会のカーブはこれよりまだ何パーセントか——書いてはおりませんが、下まわつております。なおこの資料の八ページの附表の二でございますが、医師歯科医師薬剤師俸給調査表というのがございます。これの一般病院個人立以外の施設というのをごらんいただきますと、院長から助手まで全部くるめた医師の平均給与が二万三千七百五十七円、最近原価計算のゆえをもつて電力料金の改正がございましたが、電力会社の全従業員、電工さんから、そこら辺を走りまわる修理のお方まで含めた給与ベースが——これもあとから配りました資料の三枚目が二枚目にございますが、電力会社全員の給与ベースは二万四千八百三十三円でございます。若干ときのずれはございますが、院長以下の全職員が二万三千七百五十七円、ここにAから一までの病院の給与調べがございますが、これは現状でございます。この現状で、九つの病院のうち三つの病院は、現在においても医者の平均給与が、電力会社の職工さん等を含めた平均給与の下にあります。これは私一部しか持つておりませんが、厚生省がお出しになりました医師労働者年収比較というのがございます。アメリカ、イギリス、ニュージーランド、チリー、ここら辺で見ますと、大体熟練労働者の四倍から五倍、未熟練労働者の五倍半ぐらいな年収を医師は得ております。日本では、これも厚生省から承りましたのですが、二・幾らの年収、これは医師一般労働者、並の労働者の二・幾ら、二倍ちよつとということでありまして、外国の医者に比べまして値打が半分以下ということで、まあこれも日本に生れたおかげとあきらめざるを得ないのかとも思つております。しかしものには大体つり合いというものがございますので、一応つり合いのとれた線までには持つて行かれなくてはならないのじやないか。これは新医療費体系から若干脱線いたしましたが、どうもこの新医療費体系そのものが、医療報酬をそのままにしてやつて行こうということのために、今申しました原則論的の矛盾が非常にあるということと、また少しでも黒になつておるようなところにはすぐ目が光つて来る。これでは今の前参考人のお話のように、なぜこういう低い単価で医業が今まで続けられたかということは、お配りしましたこの資料に書きましたように、医療人件費が非常に低く圧縮されておる、そして非常によけいに働いておる、そして設備が十分にできないというこの三点にしわ寄せされて、そうして給与ベースのカーブにおいてすでに二十五年の初めに死の交錯をしておる。ここをお考えいただいて、なお病院側の立場から申しますと、医師の人口対比は、厚い資料の終りの方にございますから、あとでごらんいただけばいいと思いますか、日本は医者の数から申しますると、大体世界でも五本の指の間に入るだけの数はありますが、今度はベッド数の方で参りますとこれはまた逆で、こり統計の十三ページに世界各国の病床数がございますが、日本は十万人対三百三十二床、一番多いところのスイスは千五百二十七、スイスの約五分の一のベッド数しかない。日本から以下のところはインドとトルコがございます。下から三番目くらいなところで先進国の約五分の一のベッド数、かようなことでよろしいかどうかということもひとつ先生方にお考えいただきたい。  たいへん長い時間をいただきましてありがとうございました。
  6. 小島徹三

    小島委員長 それでは水越玄郷君のお話を承ります。水越君。
  7. 水越玄郷

    ○水越参考人 日本医師会副会長の水越玄郷でございます。今回亭主省から提出されました新医療費体系について日本医師会意見を申し上げます前に、この体系がつくられましたよりどころをなす資料日本医師会との関係について簡単に御説明申し上げたいと思います。  去る昭和二十七年二月一日医療施設面の調査をするからこれに協力をしてもらいたいという申入れがありましたので、日本医師会は二十七年三月四日付をもちまして、一、この調査は現状の実態調査であるから、これを医療行政の基礎資料として医師技術料診療報酬単価及び点数等を決定することは誤りである。またこの調査から医業の経営費や医師の生活費が出ても、それが適正なものであると断定しては誤りである。従つて技術料単価点数等の決定は本調査とはまつたく別の観点から決定されねばならないと考えるがそれでよろしいか。第二に、施設表のわけ方等は専門的に検討すべきであつて、不合理な平均が出されないよう計算方法、結果の発表等は日本医師会とも協議すべきであると考えるがどうであるか。さらに第三には客体の抽出については任意抽出法、すなわちランダム・サンプリングが採用されているが、その抽出比は二十分の一である。二十番目に標本を引き抜く結果は異質的な病気診療所が抽出せられるおそれがあるので、統計基礎とすることには危険性が多分にあるが、これについてどうお考えになるか等の二十二項目について申入れを行いました。さらに二十七年三月六日当時統計部長であつた現曽田医務局長と日本医師会の当時の田宮会長、榊原副会長が、一橋大学の山田勇教授を囲んで、ただいま申し上げた二十二項目について懇談いたしましたが、その際曽田部長は、日本医師会の指摘しました欠点を認めまして、この調査計算方法には種々の方法があるので御要求次第何も包み隠しはしないから協力してほしいというような説明がありました。その後日本医師会から三月調査の結論がどうなつたかとお聞きしましたところ、厚生省は三月調査はとうとう役立つ結果が出なかつたので、特に発表するようなものはないというようなお答えがあつて、とうとう発表されなかつたのであります。次いで十月調査については、二十七年八月七日、当時の宮崎次官に、第一に実態把握の目的中に医業経営の合理化を指導するがごとき意図がまつたく認められないことは遺憾である。第二にこの調査医療施設面の経営実態を把握するものであつて、この調査から将来かくあるべしという結論は出し得ないものと思うが、それでよろしいかというような点を二十四項目にわたつて申入れを行いましたが、基本的事項、すなわち調査目標の明確化及び総合原価計算方式の適用の経緯に対する私たちの疑問は、少しも解消されないので、遺憾ながら十月の調査には協力をすることができかねましたので、これを拒否した次第であります。従つて今回提出されました新医療費体系については、すでにそのよりどころとなる資料そのものについて日本医師会は承服いたすわけには参らないのであります。  次に、新医療費体系についてわれわれが問題としておりまする基本的な問題点を申し上げてみますると、第一に集約された統計数値が、新医療費体系にはそのまま使用することが可能であるかどうかというような裏づけの証明ができていないということであります。たとえば調査対象は病院が二十分の一、診療所は二百分の一でありまして、その数が非常に少いので、これから推計し、または結果を論ずることはきわめて危険であるというようなこと、採用、不採用の資料の数及び分布等集計処理の方法が明確でないこと、三月調査と十月調査との異つた調査方法及び対象を随意に使用することの根拠を明確にしていないこと、初診料、再診料等の点数算出基礎となる一点単価計算過程が明確でない、実動時間及び単位当り人件費の算出基礎が明確でないこと等のことであります。  第二に、この新体系昭和二十七年の調査もととして、医療費の総額を動かすことなく、医療行為別に点数を置きかえただけであるということであります。たとえば技術料を分離することを提唱しておられますが、診断に処置を混入せしめておるということ、初診料を六点にし、再診料を四点にして、その増加分を薬治料注射料から一部をまかない、四点以下の処置は全部無料にしてこれに当てておるというようなこと、現在五点となつておりまする処方箋料を認めておらないということ、さらに医療技術に対する評価は、単にそれに要した実働時間で算出しておること等でありまして、これでは分業実施をした場合、国民医療費が上るか下るかを検討する適正な尺度とはならないと考えられるのであります。すなわち昭和二十七年の一時期の調査の分析でありまして、これが現在いかなる形に変化しておるかということが明確になつておらないのであります。このことは分業を強行するために医療費の総額を頭から押えて、その中で厚生省が都合のいいように点数を操作したものであるといわざるを得ないのであります。しかるに国会が求められたものは、適正な医療技術に対する評価を基とした新しい体系でありまするので、それが分業実施後に国民医療負担にどんなに影響を及ぼすかということでありまするので、この資料の結果が適正であるということは誤りであると考えておるわけであります。以上が基本的な日本医師会のこの新医療費体系に対する指摘したい問題点であります。  次に、附帯的な問題といたしましては、昭和二十七年の医療経済に関する調査の結果、出て来たところの各医療行為分に要した物件費と、各医療行為に要した時間によつて人件費を按分したものの和であるということであります。従つてたとえば診察という医療行為分を例にとりますと、物件費プラス人件費と所要時間をかけたものであるというようなことになつておるのであります。このやり方のウイーク・ポイントは、要するに医療技術に対する経済的な評価を所要時間で決定したというところにあるのでありまして、個々の診療行為についての技術料が、所要時間に比例して経済的評価が増大するということ、及び各行為の難易さを無視するということでありまして、医療の本質を根本的に誤解した考えの所産である、かように断ぜざるを得ないのであります。  次に新医療費体系として求められたものは、医療技術に対する合理的な評価を基にした新しい医療費体系であるべきである、かように考えておりまするが、今回厚生省から出されました新医療費体系は、昭和二十七年の一時期に支払つた俸給を医療行為に要した所要時間に按分したものであるから、医療技術に対する評価としては不合理だ、かように考えられるわけであります。さらに昭和二十七年の三月及び十月の調査は、目的が明瞭を欠いておる。経営分析的のものか、総合原価計算的のものかが明らかでない、両者混同の形が見えるということであります。なお工業生産における総合原価計算方式医療に適用して、医師技術原価計算方式で決定するというような形でありますが、これは非常な誤りであつて、しかもこれは不可能なことであろう、かように考えるわけであります。  次に、新体系への移向は、現行報酬体系の分析によつて得られる結論から出発するものというように書いてありますが、この分析から議論を発展せしめるには、その結論を是とする観念に立たない限り不可能である。すなわち初診療、再診療点数は、診療所経費から算出したものを用いてありますが、病院経費から算出すれば、さらに医療費は増加するはずであろう、かように考えられるわけであります。  次に、新体系には、技術料については現実の所得を中心として考えているというように記述されておりますので、答申に言われております(1+α)が全然考慮されておらない。特に重要なる技術料であるべき診察料初診料とか、あるいは再診料の中に、四点未満の外科処置、その他十項目の医療費を含ましておるというのでありますので、答申中の技術料が所要経費人件費及び薬から分離され、適正に評価決定せられることによつて医療の向上が期せられるだろうということには、まつたく適合しておらないという点を指摘せざるを得ないのであります。  さらに答申の中に、技術料は原価として国民所得の控除に比例して引上げられるであろうと書いてありますが、年々国民所得がふえておるのにもかかわらず、技術料には考慮されておらないというような点もわれわれの承服しがたいところであります。  次に、昭和二十七年三月の医業経営でありますから、当時からの人件費物件費の変動をどういうように処理するのかということも明確にされておりません。さらにこの医療内容の控除もまつたく企図しておらぬということ。次にこの調査で調剤技術料については、病院診療所から算出してありますが、それから出た数値をただちに薬剤師の調剤技術料にするということには疑問がある、かように考えております。厚生省の行つた原価計算の方針からすれば、開局薬剤師の調剤について算出すべきであつて、少くとも調剤時間及び経費の補正というものを出さなければならないであろう、かように考えるわけであります。  以上を要約いたしますならば、今回の新医療費体系国民医療費を増加させない前提に立つて資料をそろえ、この資料に基いてつくつた作文でありまして、これが実施されたあかつきは、国民負担は必ず増加し、さらに国民医療に非常な混乱が起るということが予測いたされますので、議員各位の特別な御高配をいただきまして、善処されんことを切にお願いいたしまして私の所見を終る次第であります。
  8. 小島徹三

    小島委員長 それでは次に檜垣麟三君のお話を承ります。
  9. 檜垣麟三

    ○檜垣参考人 歯科医師といたしまして、今回の新医療費体系につきまして、私どもの考えを述べさしていただきたいと思います。  今回厚生省で発表せられました新医療費体系は、国民医療費というものを一定のわくの中にきめて、そのわく内におけるいわゆるアン・バランスを修正するということに重点を置かれておるようでございます。そのためにどういうことが起つたかと申しますと、まず第一に私どもが不満に考えますことは、いろいろのしわが歯科診療に寄せられたということでございます。それはどういうことかと申しますと、このわく内において操作せられましたために、歯科におきましては薬剤の使用の量が非常に少いのでございます。これを言いかえますと、薬価というものの収入はほとんどないと申してもさしつかえないくらい少量でございます。そのために、そのわく内の操作のために、歯科の薬価の少いところへ多くのしわ寄せが参りまして、歯科診療費というものに、補綴においてたいへんな削られ方しておるということが第一の不満でございます。  それから第二に不満でございますことは、歯科診療と申しますものは、これは御存じのように、治療とか抜歯とか切開いたしますようなことは、まつたく医科の外科と同じことをやつております。従つて医科における外科あるいは耳鼻咽喉科あるいは眼科とまつたく同様でございます。しかしながら最後の操作をいたします場合の補綴と申しますものは、これは歯科の特技になつておるわけでございます、これを歴史的にお話申し上げますとなおよくおわかりでございますが、日本におきましても歯科と申しますものは医科の一分科として口科という名前で発達して参りまして、そして口科の医者と申しますものは、初めは補綴的の処置までやつてつたのでございます。当時の補綴的処置と申しますものはきわめて簡単なものでございましたので、不都合なくやつて参れましたのでございますが、だんだんと高等技術が発達して参りまして、そして歯科の技工というものが複雑になつて参りまして、一つの専門が現われて参りました。それが外国で申しております一つの技工士、日本でも一部認められておりますところの技工士の仕事というものが現われて参りましたのでございます。しかしその技工と申しますものは本来は歯科医師仕事でございますので、従つて歯科医師は教育の上におきまして技工を非常に重んじて教育されております。学科の配分におきましても約三分の一がそれに充てられておるような状態でございます。技工と申しますのは、皆さんのうちで実際に入れ歯をお入れになつた方あるいは金冠をお入れになつた方があると存じますが、これは技術によつて効果というものは非常に違うものであります。従つて歯科の補綴におきまして、技術差というものを認めていただきません料金というものは、われわれとしては考えられないのであります。それでは一体歯科の料金というものはどういうところからきまつたかと申しますと、実際初めにおきましては、明治の終りにおきましては、これはドル建でありました。アメリカの歯科料金がそのまま日本に入れられておつたのであります。それがだんだんかわつて参りまして、現在のように、戦後においては社会保険診療というものが非常に進んで参りましたために、ほとんど社会保険診療に、従来の診療というものが席巻された形になつておるわけでございます。従つてこの技工というものについて、たとえば金冠をつくります場合の材料の比と技術の比というものを、ほかの技術の比と同じようにお考えになつていただきますと、これは歯科医の特技というものをまつたく無視せられた案でございますので、今度きめられました補綴の料金というものに対するアン・バランスの直し方と申しますのは、まつたくほかの診療とほとんど同様に考えられてやつてあるように私どもは見ております。これに対しまして非常に不満を持つております。技術差というものをどうしても考えていただかなければならぬ。しかし社会保険診療のような一定のわく内の診療でございますならば、これはその必要はございません。なぜかならば、たとえば優秀な人であろうと、ことし卒業いたしました者であろうと、診療報酬というものは一定されておるのでございますから、しかもそれは契約診療でございまして、その契約に従つてつておるのでございますから、それはさしつかえございません。しかし一般歯科診療の料金というものに対しましてその技術差をまつたく認められないということは、現行の一般の料金の性質というものをまつたく無視してきめられておるものだ、こういうふうに私どもは考えております。そういう点におきまして非常な不満を持つておるわけでございます。  その他の点におきましては、歯科診療と申しますのは、現在の医科、歯科と独立した学科になつておりますけれども、もともと一個の人体を扱うものでございますから、従つてその診療料金というようなものの考え方まつたく医師会と同感でございます。ただ歯科として考えていただかなければならないことは、以上の諸点が最も大きい点でありますので、これだけをお考えになつていただきたい、かように考える次第でございます。
  10. 小島徹三

    小島委員長 それでは参考人方々意見はすべて承りました。  次に質疑に移りますが、質疑の通告がございますのでこれを順次許します。なお質疑をされる方は一々お聞きしたい参考人の方の名前をあげて御質問願います。有田二郎君。
  11. 有田二郎

    ○有田(二)委員 まず吉田さんに御意見を拝聴したいと思います。吉田さんは全国労働組合生活対策協議会幹事というように私ども承つております。全国の労働者を代表なさいましての御所見と承つたのでありますが、特に今度問題になつておる医薬分業でありますが、私は医薬分業とは考えていないのです。医薬分業というものは、薬は薬剤師が売つて診療医師がするのでありまして、これは私ども昭和二十六年に参議院並びに衆議院に法案が参りましたとき——これは医師なり薬剤師というものを対象に考えるものではなくて、一般大衆の利便を考えなければならない。われわれは国会議員でありまして、特に参議院の職域代表と違いまして、衆議院においては一般の大衆を中心に物事を考えて行かなければならない。従つて患者を中心に物事を考えて行かなければならない。そこで昭和二十六年の六月二十日に出ました医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律案というもののポイントは、医師におかれましてははなはだ御迷惑でありますが、国民大衆の利便のために処方箋を書いていただきまして、そうして患者がお医者さんで買おうと薬局で買おうと、その患者の自由意思にまかせるというのが要点でありました。従いまして私は、労働組合の代表であるあなたとしては、当然これに賛成していただけるものという考えを持つておるのでありますが、御所見を承りたいと思います。
  12. 吉田秀夫

    吉田参考人 大体有田先生のお話の通りの現行法律ならば私どもも原則的には賛成であります。ただ処方箋を無条件にどの病気にも出さなければならないということになりますと、たとえば胃がんとか、非常に患者本人に致命的な精神的シヨツクを与えるものもあると思いますので、その点はやはり処方箋全部発行といいましても例外規定は当然あるべきものだと思います。ただ薬をもらう場合に、患者が自分の信頼する医者からもらおうと、あるいは薬局からいただこうと、それは患者の自由意思でやるというのが私は民主主義における国民の基本的な権利だと思います。その点が一貫して将来とも貫かれるというような法律の体裁でありますれば何らさしつかえないと思うのでありますが、ただ承りますと、ある一定の地域を限つて、ある特定の病気以外は全部医者は処方箋を出さなければならない。その処方箋は医者の調剤を禁止して全部薬局でなければならないというふうに巷間伝えられておるわけです。これは任意分業ならば一向さしつかえないと思いますが、医者の調剤権を剥奪するということは、私流に考えますと、調剤するという行為も、診断からいろいろな調剤処置注射あるいは手術と、診療行為が一貫しておりますので、これは医療の本質上どうかと思いますし、また法律をもつて医者の調剤を禁止するというような事柄につきましても、ある一定の地域では禁止して、大部分の農山漁村地域では放任するということ自体は、本法律の建前上もし強制法律ならばおかしいと思うわけであります。それで医薬分業につきましては、任意分業で、患者国民大衆の希望するところによりまして、医者からもらおうと、あるいは薬局からいただこうと自由にしてもらいたい。これが建前でなければならぬと思つております。
  13. 有田二郎

    ○有田(二)委員 吉田さんのおつしやる通りになつておるのです。法律をあなたはよく御研究になつていないと思うのでありますが、昭和二十六年六月二十日の法律というものは、今あなたが御希望になつた通りになつておるのであります。医者の調剤権を剥奪いたしてはおりません。医師は調剤をすることができるということは、薬事法にも、医師法にも書いてあるのでありまして、その点誤解のないように願いたい。われわれは国民の代表として患者の利便ということを中心にやりまして、参議院はもちろんのこと、衆議院も各党が賛成いたしまして、全会一致でこの法案か通つたわけであります。従いましてどういう方面からどうお聞きになつたかわかりませんが、医者の調剤権を剥奪しておるというようなことは断じてないのであります。その点だけ御了承願いたいのであります。今度の御医療費体系にいたしましても、今神崎氏から月足らずの赤ちやんという御批評がありましたが、私も同感であります。けれども神崎先生は手もない、足もない赤ちやんというお話ですが、月足らずの赤ちやんというものは手もあり、足もあるのです。それがだんだん大きくなつて来て、手も足も大きくなる。その点は神崎先生にこれに関する代案がおありならば別でありますが、私はちよつと苛酷ではないかと思います。つきましては、この吉田さんの御意見の中に新医療費体系の問題でいろいろ御議論がありましたけれども、この前の昭和二十六年六月二十日の法律に対して、附帯条件として、国民負担を増加させないということをこの厚生委員会で決定し、国会において決定されておりますから、それによつてつくられたものでありまするから、幾分そこに非難されるべきものも当然ある、こう考えますけれども、私は全国の労働組合を代表しておられる吉田さんに、新医療費体系の悪い点があつたらぜひとも労働組合側を代表されまして修正するようにひとつ御尽力を願いたい。先般も厚生大臣を呼びまして、新医療費体系に万一修正すべき箇所があるならば改めろということを強く意思表示いたしておりますので、その点をお願いいたしたいと思うのであります。  さらに日本医師会副会長の水越さんにお尋ねいたしたいのであります。われわれは医師の問題につきましては非常に関心を持つておるのでありまして、厚生委員会のみならず、私は最近まで大蔵委員会に所属いたしておつたのでありますが、税金にしましても、大蔵委員会医師税金を全面的に取上げまして、私も主査として東京国税局管内、関東信越国税局管内、それから金沢国税局管内の三局を分担いたしまして、全部まわつてつたのであります。そしてまた金融の面につきましても、医師の金融について国民金融公庫から二十六年度に二億七千八百五十万円、二十七年度には六億八千二百五十万円、それから二十八年度には八億六千七百六十万円、さらに中小企業金融公庫には、二十八年九月十六日にできまして以来二十九年の三月までに七億九千六百三十万円、さらに本年の六月までの三箇月の間に五億三千三百万円という多額の金を、今日敗戦後の疲弊した経済ではありまするけれども、医業並びに歯科医師業に出すように大蔵委員会としては努力して参つておりますし、また税金につきましても、われわれはあらゆる努力をすると同時に、先年事業税を撤廃しろというお話がありましたときにも、医師並びに歯科医師の事業税の撤廃には万全を期して努力して参つておるのであります。しかしながら昭和二十六年六月二十日に医師法並びに歯科医師法、薬事法の一部改正法律案が衆参両院全会一致で通過いたしております。しかも一月一日からこれを実行しなければならないという態勢にあるときに、今日新医療費体系というものは、なるほど神崎先生のおつしやる通り月足らずの赤ちやんではありまするけれども、やはり全国医師会の御協力を願つて、月足らずでも死んでいいというのではなくして、これを助けるのが私は医師の務めであろうと考えるのでありまして、同時にこれに御反対であるならば、私は今後のこの医療費算定について具体的な御代案が日本医師会におありになるかどうか、この点の御所見を承りたいと思います。
  14. 神崎三益

    ○神崎参考人 ただいまの有田代議士の御質問にお答え申し上げます。日本医師会では、技術と薬を分離すれば最低一二%増加するというような計算はできておりまするが、具体的に一々診療行為別にわけての新体系というものは現在まだできておりません。
  15. 有田二郎

    ○有田(二)委員 患者負担がおふえになるということですか。
  16. 神崎三益

    ○神崎参考人 そうです。
  17. 有田二郎

    ○有田(二)委員 政府の答弁では患者負担はふえない、こういうことであります。法律が六月二十日に通つているのでありますし、一月一日からこの法律か実行されることは——国会で定められたものでありますからして、これに対してやはり日本医師会としては厚生省に御協力願つて国民の迷惑にならないよう、また医師それ自身もお困りにならないような対策を講じておかなければならぬ。きよう実は要綱をちようだいしましたがまだ読んでおりませんので、いずれ拝見いたしたいと思いますが、ぜひ医務局と御連絡をおとりになつて、この新医療費体系についても、月足らずの赤ちやんをどうか死なないように育てていただいて、この法律が一月一日から実行されるのについて万遺漏ないように医師会に御協力を願いたいと思います。同時に、一点単価につきましても、私どもは自由党でありますけれども、当然これは引上げなければならないというので、先般来政調会なりあるいは政府当局と、いろいろ交渉して、まだ政府としても自由党の政調会としても発表することはできぬでしようけれども、何とかしたいという線で、今水田君も非常な努力をいたしておるような次第でありますが、この点、新医療費体系にお力をお貸し願えるかどうか。これは月足らずだからほつておくのだ、こういうお考えであるかどうか、御所見を承りたいと思います。
  18. 神崎三益

    ○神崎参考人 ただいまの有田代議士の御意見でありまするが、私先ほど原則論だけを申し上げまして具体的なことは供述いたしませんでありましたが、いずれにしましても、今回の新医療費体系につきましては、発足早々からすでに日本医師会意見を異にしておつた。従つて日本医師会がぜひ調べてほしいというような面についての調査がなされなかつた。しかも調査した結果を日本医師会に発表なされなかつたというようなことからしまして、あの新医療費体系に対しては絶対に賛意が表し得ないということであります。従いまして、医薬分業は別といたしましても、要するに国民医療を向上させるためにはかくのごとき医療体系がなくちやならぬということについて、われわれは将来ともこれが改革にいろいろと努力することにやぶさかでありません。
  19. 有田二郎

    ○有田(二)委員 最後に一点。他の委員の質問がありますから私はこれで切上げますが、一つ医師会にお願いしたいことは、この新医療費体系というものは不満足でありましよう。ありましようけれども、これを少しでもお気にめすようにぜひ修正案なり御意見を出していただいて、一月一日からは、何としても法律で規定されているのですから——延期立法か衆参両院を通れば別でありますけれども、どうも解散の算が多いのでありまして、十一月ごろ吉田総理が帰つて来ると解散になると思うのであります。そうすると、法律は当然一月一日から実行に移されますので、最悪の事態もお考え願いまして、うまく延期立法が希望通りになれば別でありますけれども、どうかひとつ御検討を願いたいと思います。終り。
  20. 小島徹三

    小島委員長 高橋等君、時間の関係がございますからなるたけ簡単に願います。
  21. 高橋等

    高橋(等)委員 私は、簡単に神崎さんと水越さんにお伺いいたしたいと思うのですが、最初に神崎さんにちよつとお伺いをいたしてみたいと思います。この新医療費体系につきまして、いろいろ有益な御意見を拝見いたしましてありがたくお礼申し上げます。ただ、私たちが今までいろいろと検討いたしておりまする点は、これを一月一日からいわゆる医薬分業実施に当てはめた際に一体どういうようになるであろうかということで、これは非常に大きなわれわれの研究問題でございます。それで、それをまた分析しますと、積極的にいえば、国民医療がはたして向上するだろうか、どうだろうかというような問題もありまするが、消極的に考えてみますと、国民医療負担がどうなるのか、及び医師及び薬剤士の収入がどうなるだろうか、こうい薫をわれわれとしては一応検討いたさにやいかぬ。そこで昨日は薬剤士会の方に、この調剤料で、薬局その他を整備されてはたしてうまくやつて行けるかどうかという点を申し上げたのです。それと同じようなことをお伺いいたすわけでございますが、ただいまのお話によりますと、この新医療費体系というものは国民負担をふやさぬということを前提にして組み立てられているのだ、すなわち現在の事実をそのまま分析したようなかつこうでつくられておる、こういうことから出発されているのです。そこでこれを適用いたしました場合に、診療所とか病院、そういう方面のいろいろの収入減というものはどういうようになるのだろうか。これは各科によつても違うでありましよう。あるいはまた病院の大きさ、あるいは診療所の大きさ、いろいろな点で非常にむずかしいお話を承ることになるのでございますが、その点がどうなるかというような点をお聞かせ願えれば非常に仕合せだと思うのであります。
  22. 神崎三益

    ○神崎参考人 ただいまの御質問でございますが、冒頭申し上げましたように、資料をいただきましてほんの数日でございまして、これを計数的に詳しいお話を申し上げることができないのは遺憾に思います。ただいまの質問とは直接関連ございませんが、先ほど有田先生から、月足らずは手も足もそろつている——なるほど専門家が一本やられたことになるのでありますが、これは私もこういうところに場なれないので少々上つていた関係がありますので、ひとつこういうふうに私の気持があるということを御了承願いたいと思います。それは案が月足らずであつて、そうして手が欠けておるか足が欠けておる畸型児である、こういう意味でございますから、どうぞさように御了解を願います。関連がありますので有田先生にも申し上げておきますが、私は冒頭に、これは日本病院協会の総会に諮つたものではないが、理事の中の打合せでは原則論としては賛成である。但し今申しますように崎型児のおそれが多分にあり、月足らずである。そういう意味でこれをにわかに明年一月一日から実行されるということには反対でございます。そうして代案があるかということでございましたが、これも先ほどちよつと申し上げましたように、昨年の暮れ以来、われわれは権力を持たないので、申合せによりまして、ほんとうに日本の医療の正しい姿を出そうというので、自発的に協力するものすでに百病院なつておりますが、それについて目下精密なる原価計算をしておりますので、しばらく時をかしていただきたい。  それから先ほど水越さんからもお話がありましたが、これは私申し上げるつもりで言い落しておりましたが、一行為、医者単価に時間をかけるという技術料計算には、全面的に反対でございます。と申すのは、一つのことをやりますのに、たとえば腰椎穿刺をやるといたしますと、不熟の者ははちの巣のように刺します。ちようどはちの巣そつくりになりまして、相当時間がかかると思います。なれた者は一発でひよいとやる。そうすると時間をかけられたのではとんでもないことになるので、これは技術を対価とする原則であるならば、技術の値打ちをひとつ認めていただきたい。技術者としてはこの新医療費体系はのむわけに行かないということを、これは先ほど大事なところを言い落しておりますから、御承知を願います。  それで先ほど先生の御質問でございますが、これはさようなことで手がなかつたり足がなかつたりいたしますので、そこら辺を見て、厚生省では現在のわくよりは出ないということなんでございますから、手があつたり足がつけ足されたらこれは足が出るということに落ちるのではないか、かように存じております。詳しい計数的なことは申し上げられませんが、かようにあらかじめ御承知おきを願います。  なお有田先生から朗報を聞かせていただきましてたいへんうれしいのでありますが、これはわれわれ今も現に単価の改正の問題で非常な主張をしておるのでございますから、おそらくこの体系は、先ほど申しますように完全なものにすると、それだけで現行単価でもふえなければならない。また単価の改正は申すまでもない。そういうような点でどうも絶対足を出さないということの答弁ができない、これでひとつ御了承願います。
  23. 高橋等

    高橋(等)委員 私はここで何も禅問答や漫談をやつているわけじやないのです。ただいまお尋ねいたしました点は非常に大切な点であります。そこで抽象的な感じでなしに、もう少し御親切に、これをやつた場合に医師側にどのような影響があるのか——実はあとであなたにお聞きしようと思いましたが、水越さんには要するに医薬費の国民負担がどのようになるのかというようなことをもう二更お聞きしたいと思うのです。が、神崎さんの場合、たとえば調剤手数料があなたの病院では千分の六、そこで二千億に千分の六をかけて十二億だから、これは減るんだ、こう言われるけれども、これは十二億という数字は間違いないのである、二千億に千分の六をかけるのが間違いだと私は思うのです。これは分析すれば二千億よりももつと内輪になるのではないかと思うのです。そういうこまかいことはどうでもいいのですが、大体医師の各科別の収入へどのような影響が来るのか。その数字はもちろん今ここでお話になる御用意もなかつたかと思いますが、大体のあなたの御見当を承らせていただけば非常に幸福だと思うので、どうぞお願いいたします。
  24. 神崎三益

    ○神崎参考人 先ほどから繰返して申し上げますように、時間がないために数字のお答えができませんということを遺憾に思いますが、これは厚生省本文にありますように、耳鼻科であるとか眼科であるとかいうような、現在原価計算をやつておりますと徹底的な赤字が出ておる科につきましては若干の増がある、かように考えます。内科、小児科方面におきましては、厚生省では大差がないというお話でございますが、これは私今感じからもあの厚生省の言う通りであるかどうかということをちよつとお答えでき一ません。
  25. 高橋等

    高橋(等)委員 それでは神崎さんにお伺いすることはこれくらいにいたしまして、あとはなお研究をいたしたいと思います。  水越さんにお伺いいたしたいのは、この新医療費体系実施した場合に、ここが大切なんですが、必ず国民負担がふえるのかどうか。それを理想的に考えた場合にふえるのか。このままの新医療費体系実施をした場合に国民負担がふえるのかどうか。先ほどちよつと聞き漏らしましたが、大体医師会の方の御調査では患者負担が二一%くらいふえる、こういうお話がありました。これは新医療費体系をやつた場合にふえるのかどうか、それを一応承つておきたいと思います。これはわれわれが一番心配いたしておる点でございますので、よく了解の行くようにお話を願いたいと思います。
  26. 水越玄郷

    ○水越参考人 ただいまの御質問で、医療費がふえるかふえないかというお話でありますが、この新医療費体系につきましてわれわれがまず問題といたしておりますところは、要するにこの新医療費体系は頭を抑えておるということをまずうたつておられる。そこで物と技術をわけた、こういうことをうたつておられる。ところが私たちは、物と技術をわけるときには、その技術を単に時間でもつてはじき出すという考え方では技術は出て来ない、そこで答申にあるように、(1+α)というものがあくまでもここで考えられなければ、物と技術がわけられないのだという原則を持つておるのであります。従いまして、物と技術をわける前提にはあくまでも(1+α)がなければならぬ。そういう観点から計算いたしますと、この新医療費体系について当然われわれは(1+α)というものを要求せざるを得ないのであります。従いまして新医療費体系そのままを実施いたしましても、必ず幾ばくかの増加はある。先ほど申し上げました一二%というものは、医薬分業が行われた際には一つの業態がまた間に入つて参りますので、従いまして一二%ふえる、かように申し上げておるわけでございます。御了承願います。
  27. 小島徹三

    小島委員長 滝井義高君。
  28. 滝井義高

    ○滝井委員 神崎先生に一、二点お尋ねしたいのですが、私たちが今ここで議論をしております場合に、総医療費という概念が論議をされていないわけです。先生はこの際総医療費というものはどういう概念とお考えになるか、これをお聞きしたいのです。  現在質問その他を聞いてみると、総医療費というものと医師に支払う総医療報酬とが混同されて議論が行われている感じがするのですが、この臨時診療報酬調査会において私たちが論議をした総医療報酬Sというものは、医者診療に対する報酬をS1とし、調剤に対する報酬をS2として、シグマS1プラス・シグマS2なんです。ところでこの総医療費というものは、これにプラスのシグマS3プラス・シグマS4——たとえば配置薬というようなもの、あるいは医療行政の行政費、こういうものが入つて、日本の総医療費というものが決定されるのだと考えておる。ところが今の論議をいろいろ聞いてみますと、医者に払う診療報酬と総医療費との観念がごつちやにされておるような感じがするのでありますが、先生方は、総医療費という場合に誓ういうお考えでいろいろ議論をされておるか、それをひとつお聞きしたい。
  29. 神崎三益

    ○神崎参考人 われわれの方で医療費という問題を論じますときは、今最後におつしやいました狭い意味の医療費——直接医療費とここに書いてございますが、それをもつていろいろ話しております。
  30. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと政府の出しておる本文の方の、昭和二十七年度の総医療費千五百四十九億九千六百万円というものは、直接の医療費ではないわけですね。直接の医療費というものは、たとえば病院診療所に対する支払いで、この狭義の医療費というものは千二百八十九億しかないわけですね。このほかにこの七ページをごらんいただくと、これには直接医療費の総額と、二番目に間接医療費の総額とが入つておるわけです。従つて政府から出しておる総医療費というものは、先生が今言われる狭義のものではないわけです。ないと私はこれで見るのです。そうすると今の総医療費というものは、狭義のものではなくて非常に広義のものに解釈されると考えるのですが、その点もう一ぺんお伺いいたします。
  31. 神崎三益

    ○神崎参考人 この二十八年度の総医療費は二千九十二億、直接医療費は千九百七十四億ということで、大体これを目安に千九百、それを概算二千億というふうに考えておるのであります。あるいは私の読み方の間違いかもしれませんが、二十八年度におきまして直接医療費千九百七十四億となつておりますから、約二千億、こういうふうに踏んでおります。
  32. 滝井義高

    ○滝井委員 わかりました。そういう意味の総医療費の概念だということでございますね。  そうしますと、総医療費統計のとり方その他についてはいろいろ意見もありますけれども、それはなおあとで御検討願うことといたしまして、先生がさいぜんいろいろ御指摘になりました、たとえば病院の手数料なんていうものは赤字があるが、それをそのままにしておる。このほかこれには往診料が全然評価されていない。これは先生の病院では往診があまりないかもしれませんが、評価されていない。こういういろいろな欠陥があるわけですが、とにかく一応この新しい体系というものは、昭和二十七年度の総医療費千五百四十九億を基礎にして、ここに初診料の六・二〇三点とか、あるいは再診料の四・五九五点というものが出て来ておるわけです。これは政府の答弁では、一応このまま三十年の一月一日から実施をする。この六・二〇三点の二〇三というような端数は、まるくしなければならぬというわけなんです。その場合に総医療費をふやさないということなんですから、当然単価も十一円五十銭ということなんですね。しからば適正な技術料というものが六点かける十一円五十銭、あるいは十二円五十銭であるかどうかということは一応問題外に置きまして、先生が今御発表になりましたこれを見てみますと——きわめて名言を聞かしていただいたのですが、脈と熱が交叉をして死の前兆が現われておる。日本医療は、死の交叉点を通り越して今危機だということをおつしやいました。そうして全日赤病院で職員の平均報酬が一万二千五百円だということなんです。そうしますと、現在の十一円五十銭の単価点数をかけたものが適正な技術料であるかどうかということを問題外にいたしまして、一応これはきわめて厳粛な現実論を分析した結果が出て来ておるのですから、現実論で行かれて、一万二千五百円の俸給でさえも、病院というものは、医師看護婦薬剤師が過労になる。病院の整備が放置せられ、医療内容が低下の傾向にある、こういう現実があるわけなのです。少くとも最小限度その現実を修正して行くということになれば、世の中にはさいぜんも言われたようにバランスというものがありますから、これを国家公務員並のバランスにそろえて行く、一万五千四百八十円というバランスにすれば、それが適正な技術料であるかどうかはわかりませんけれども、一応病院経営というものの実態から考えれば、今より病院の整備が幾分かできて、医者労働強化が減つて患者診療内容も充実をして行くという形が出るのです。従つて一万五千四百八十円程度に先生の病院のベースを上げた場合に、病院経営というものはどういうぐあいになり、単価はその場合にはおよそどの程度になるかということなのです。先生がいつか参議院か自由党の政務調査会か何かで御説明なさつたということなので、それを説明してもらいたいと思います。私が今まで調査したところで、九州の社会保険病院なんか、一番少いので単価が十四円にならなければやつていけない、そう言つております。国立療養所なんか、十七円ないし十八円という線が多いようですが、先生の病院というものは一万二千五百円というふうにベースが非常に低い。昨日日通の勤労部長さんに来ていただきましたが、その病院では二万六千円で、政府が出した統計と同じようになつている。いわば国立病院とともに公的医療機関の支柱をなす日赤済生会の病院がこういうことでは、やはりわれわれは考えなければならぬ、こう思うのです。従つてひとつざつくばらんに正直なところをお聞かせ願いたいと思うのです。
  33. 神崎三益

    ○神崎参考人 申し上げたいことをお開きいただきましてありがとうございました。資料が配つてございますからそれをごらんいただきますが、ページの組み方が間違つておるかもしれませんが、「一点単価は斯くあらねばならぬ」というのが第四枚目にございます。先ほど御説明申し上げましたカーブは日赤の全国の五十幾施設の平均でございます。これは全日赤の施設全部についての全体的の稼働量であるとかあるいは人員であるとかいうことはまだ計算ができておりませんので、そこで私の今やつております武蔵野赤十字病院及び済生会の中央病院、この二つを資料にいたしまして——まず先生のおつしやる通り順序というものがありますから、これは私ども不満でございますが、一応公務員並の給与ベースの線まで引上げて、そうして大体日本の医師の平均稼働量は八千五百程度になつておりますが、武蔵野病院なり済生会中央病院で見ますると、医師一人当りの稼働点数が二万点前後にございます。そこで公的の医療機関で、整備もできておりますし、補助人員もございますから、全国医師の平均、いわゆる八千五百点まで稼働量を下げろということは無理だろうと思います。また今は時代が時代でありますから、がんばつて働かなければならない。そこで二万点を四分の三の仕事にいたしまして一万五千点、ちようど済生会中央病院と日赤武蔵野病院がその稼働量が平均しておりますし、規模もほぼ似ておりますので、四分の三に稼働を下げます、稼働を下げますといつても来る人を断るわけに行かない、そこで人員をふやさなければならぬ。これは御意見があるかと思いますが、一応医師が主体でございますから、医師がふえればその補助人員もふえなければならないということで、定員を三分の四倍にふやしております。そうして給与ベースを公務員並に引上げますと、この一ページのしまいから七行日あたりに書いてあります十五円六十八銭でなくてはならない、済生会の数字を基礎にいたしますと、十五円八十七銭、こういう数字が出て参るのでございます。十五円六十八銭に十五円八十七銭、大体似たような数字が出て参ります。なお世界の医師報酬から考えまして、また先ほど申し上げましたように、病院を構成しておる者の素質を考えまして、これよりも上まわらなくちやならないというので、現行より五割ふやすといたしますと、十七円五十八銭に十七円八十四銭、こういう数字が出ます。それから先ほど申し上げました電力会社の全従業員の給与ベース並にいたしますと十九円八十八銭、いわゆる二十円の単価要求して至当ではないか、かような数字になつております。
  34. 滝井義高

    ○滝井委員 今の一万二千五百円を国家公務員のベースに引上げると、少くとも一点が単価十五円以上でなくてはならぬという、こういう結論のようでございます。これは政府の方の答弁によれば単価一円上げれば八十億だ、こう言われる、算術計算にすればそうなるのでしよう、実質はもつと少くて済むのでしようが……。そうなりますと現在の日本の一兆円の予算のわくの中で七百九十九億という社会保障費とのバランスの問題になつて来る、防衛費と社会保障費のバランスをどうとるかという、これはきわめて重大な政治問題に発展すると思います。これは参考人の先生方にお聞きすることでありませんが、そういう結論を教えていただくと非常にけつこうだと思います。そうするとこれは推定になりますが、今度もしこの初診料を六・二〇三点、再診料四・五九五点あるいは薬治料を一・五二七点、注射料病院で申しますと技術料が一回が二・八一三点、それから注射薬品費平均が一回が四・七四三点とこういうぐあいに出て、処方箋はない、こういうような形で実施をされた場合に、先生の病院収入と申しますか、そういうものは、これは計算が正確なことは出ていないからわからぬでしようが、大よそ勘で所得の構成がどうなるだろうかという点なんですが、実は昨日国民健康保険関係の方の御意見を伺いましたが、医療費の分配というものに相当な大きな変革が起る。従つて直営診療所あたりはおそらくやつて行けない情勢が出るのではないかという御意見が出た。きよう吉田先生の御意見によれば、パス、マイシン等を使つた場合には非常に収入が減つて来るという具体的な実例が示されました。私もこれは勘として、今後の形態は、高貴薬を使うということになれば収入が減るという形になつて来る感じがするのです。そうして国民診療というものは、ありふれた雑駁な注射をしておればあまり損はない、というのは技術料が入り内診料が入つて来る。そこに物の価格が今までならば上ればそれについて技術料としての点数が上つて来たからよかつたが、今度は技術料は固定をしてコンスタント、そうして入つて来る薬品の買入れ値段そのままで加えられて行くということになれば、高いものを買つて注射をするということは損になる。むしろ安い物を使つて医療をやるという、診療内容の低下が起つて来る可能性が非常にあると私は見ておるのです。そういういろいろな点を考慮しまして、先生の感じとして、病院あたりの収入が、昨日健康保険の方は直営診療所あたりは相当の減収を見るだろう、病院経営はやつて行けるかどうか疑問だという御意見があつたのですが、先生あたりの病院のこれを見た感じはどうでありましようか。ここらあたり国民負担とともに病院経営の実態に非常に変化を与えるという私たちのこの新医療費体系に対する判断の一つの指標になると思うのです。その点もひとつ勘でけつこうですからお示しを願いたいと思います。
  35. 神崎三益

    ○神崎参考人 御質問でございますが、相当重要な問題でございますから、むやみな勘も用いられないと思いますが、これはさつき申し上げましたように、この案そのものがわくをがつちりとはめまして、そのわくの中で、今までこの形で、この名前で出していたものをこの名前にするということなんでございますから、これは個々の施設、個々の病院ついてはいろいろありますでしよう。たとえどこの前抗生物質の値下げがございましたときに、結核を主として扱う病院においては二〇%の減収、ところが一般病院でさほど結核の患者のいないところにおきましては三%の減収で済んでおる、かようなことでございますから、せつかく先生のお話でございますけれども、大体あの案を見まして私のところで考えたときには、何しろわくがはめられておるのだから、そうすると平均な病院は大体そのままじやないか、こんなようなことで、十分でないのですがどうぞ……。
  36. 滝井義高

    ○滝井委員 私はこういう感じがするのです。これは大きなわくではそのままですけれども、再診療というものに四点何がしというものがついておるわけなんですね。これはやはり医療に一つの変革をもたらすものではないかと私は思うのです。と申しますのは、今までは投薬とか注射とかがなかつた場合に再診料の二点というものはくれておつたわけです。ところが今度はそれがあつてもなくても、患者が来れば再診料の四点というものがある。これはやはり日本の医療に対して一応物と技術とを、これはきわめて不完全な分離の形式ではございますが、一応分離した一つの形式としては再診料の四点何がしというものが出て来ておるわけです。そういう点で患者にも相当心理的な影響を与えますし、医者にも相当心理的な影響を与えるという点において、今までの状態とは違つた要素が相当出て来るのじやないかという感じを持つておるのですが、この点をお聞かせ願いたいと思うのです。昨日健康保険の連合会から参られた方も、この四点というものがあるから、私の方としても保険経済にこれがどういう影響を及ぼすかという点については相当慎重な検討を要しなければならぬであろうという、四点あるいは六点というものは高過ぎるという結論的なお言葉もあつたのです。そういう点から考えると、診療費を支払う側の健康保険組合の方がそうなんですから、今度は支払いを受ける先生方の方も、そこらあたりに何か感じがなくてはならぬと思うのですが、これだけを最後にお聞かせ願いたい。
  37. 神崎三益

    ○神崎参考人 払う側から高くなるからというお話でございましたが、先ほど先生が最初におつしやいました、技術に対して払うのだ、この感じはどうだということにつきましては、これは最初に申し上げましたように、原則としては私は賛成であると申し上げたことでおわかりいただけることと思います。くどく申し上げるようですが、一方にふやしただけ、一方に減らしております。このことを考えますと、とられる方はなるほどよけいとられるようになるのじやないか、こういう感じをお持ちになるかしれませんが、いただく方の側になつてみますと、これは減るのじやないかと言いたいのでありますが、わくで締められておりますから減りはしないということを言われれば、そうですか、こうお答えするよりほかないのであります。どうか少し時間をかしていただきまして、十分検討した上で御満足の行くお答えを直接なりまた書面で申し上げたいと思います。
  38. 小島徹三

    小島委員長 福田昌子君。
  39. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 神崎先生に一点だけお尋ねさせていただきたいのでございますが、この新医療費体系を御提出いただきました厚生大臣の御説明によりますと、この体系によりまして医療の向上が期せられるという御説明があつたのでございますが、この点につきまして神崎先生いかようにお考えでいらつしやいましようか。
  40. 神崎三益

    ○神崎参考人 簡単に申し上げます。この案では医療の向上は望めない、これは先ほど来私が申し上げることでよく御了解いただけたことと思います。
  41. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 私どももさように考えるのでございますが、先生の御専門のお立場から、ことにどういう点でこれは非常に医療の向上を望めないものであるかという点を一、二お示し願えたら幸いだと思います。
  42. 神崎三益

    ○神崎参考人 それも先ほど申し上げましたように、これは従来の健康保険の診療報酬においてもそうであつたのでございますが、技術差というものが全然認められていない、これは致命的な、医療の向上に対する救うべからざる障害だ、私はかように考えております。  なお手術料が、さつき申し上げましたように、無視されておるという点、まあ診察料にいたしましても、手術料にいたしましても、これは私の機関にまだはかつた公のものではございませんが、日本の医療費体系と申しますか、診療報酬体系は、個人の技術差を認めるという線が出ない限り、これは、先ほど給与の面で種々の方策があると申しましたが、それと別個に、腕をみがいても、さつきもちよつと申し上げたように、下手で時間が長くかかつた方が報酬がよけいになるというような計算基礎、だれがやつても欧氏管通気をやれば三点である、二点である、こういうもののきめ方というものは絶対にありません。工場生産で一つかまどから焼いた陶器にしてもできふできがある。いわんやその間に素質の違いがあり、修練の年期の違いがあり、また同じ十年にいたしましても、血を吐く思いをする修練を重ねた者と、そうでない者、こういうことで、これは御質問から少し離れますが、こういうことを私は考えております。  日本の診療報酬体系については、ぜひ個人々々の医師が自分で自信を持つて標榜するところの料金を堂々と請求させて、そうして健康保険というものも、国民健康保険を入れますと、国民の八〇%が恩恵を受けておるのでございますから、これを無視するわけには行かない。そこでいい人にかかつて早くなおつた方が結局その個人にとつては得なんですから、医者が誇りを持つて標倍する、そしてどんな医者でも喜んで保険医になるところの自信のほどの料金を公示させて、その差額は自分のふところから出す、ここで行くべきだと思うのです。今言われるところの濫療と申しますか、これは、医者が濫療するのじやなくて、患者の方が濫受療だと私は思うのでありますが、それによつて濫受療の弊も防がれますし、また医者も誇りを持つて、張合いを持つてわざをみがくことができるのじやないかと思うのです。  もう一つ、これはたいへん乱暴な議論のようでございますが、先ほど初診料、再診料か患者負担になれば、——今は初診料でございますが、患者は困るのではないかということでございましたが、私は現行の健康保険は健康保険ではない、疾病保険であると思う。健康診断に来た患者はその恩恵に浴するわけには行かない。そこで健康診断こそ無料で徹底的に全国民に施し、疾病を発病以前に食いとめるというところに真の日本の医療がある、こういうように考えております。
  43. 柳田秀一

    ○柳田委員 ちよつと委員長にお願いいたします。昨日と本日と参考人をお招きいたしまして、われわれはこの新医療費体系について各角度がらこれに対する問題点をお聞かせ願つた。われわれ委員といたしましては、日本の医療を大きく変革せんとするこの新医療費体系に対しては、参考人をお呼びしたときにも虚心坦懐に意見を聞いて参つたつもりであります。また今後これを実施せんとするその衝に当つている厚生省当局としても、この声は十分肝に銘じてよく検討しなければならぬ。しかるにもかかわりませず、昨日本日と二回にわたりまして厚生当局がここに顔を見せておりません。これは別に顔を見せぬからどうこうというのではございません。われわれ立法府で独自にこういう参考人方々をお呼びしてやつているのでありますから、厚生省としては関知したことではないかもしれませんが、少くとも医療というものをやるからには、医療を担当する側の人間も、医療を受ける側の人間も、みなそのそれぞれの意見内容を聞くことが、それを行政に反映して行く上において最も必要なことであつて、ここにいわゆる民主政治の本体がなければならぬと思うのであります。従つてこの新医療費体系昭和二十七年のザインの状態から、こうあるべきであるというゾーレンを出して、さらに厚生省はこれをかくしなければならぬというミユツセンまで出そうというのであれば、そのミユツセンを押しつけて、あとは知らぬというならば、これは専制政治である。民主政治の本体というものは、納得の行く政治でなければならぬ。そういう意味において、きようは厚生当局も虚心坦懐に傍聴に来るべきである、私はかように思います。きようはあとの祭りでありますけれども、この委員会会議録をなるべくすみやかに御配付願いたい。現在休会中でありますが、各委員会が大分活発に開いておりますので、従来の例から見ますと、会議録の作成に相当の時日がかかる。従つて委員長においては特別におはからいを願いまして、会議録を至急作成されまして、われわれに配付されるなり、またこの会議録を通じて厚生省当局がどういうような意見がここにおいて開陳されたかということを知る機会を早く与えていただくように、特に御配慮を願いたいと存じます。
  44. 有田二郎

    ○有田(二)委員 議事進行について——柳田君の意見に私も賛成であります。しかしきようは参議院の厚生委員会で、新医療費体系の説明を今厚生省当局から聴取中であります。従いましてきようは医務課長以下、あまり月給の高くない人、課長以下が来ております。ですから、医務課長は、今柳田さんのおつしやつたことをよくお聞きになつて、速記録をよく大臣に読まして、万遺漏のないようにお願いしたいと思うから、委員長は、こういうときには参議院の厚生委員会とよく連絡をとつていただいて、厚生大臣以下を出して、われわれと一緒によく勉強するようにおとりはからい願います。
  45. 小島徹三

    小島委員長 お答えいたします。御趣旨に沿うようにいたしましよう。本日は厚生当局もお忙しかつたし、また実際働いた連中は出て来ておるようでありますから、この点は御了承願います。  以上で本日の委員会は終了するのでありますが、終りに臨みまして、委員会を代表して一言ごあいさつ申し上げます。参考人方々は、御多忙中のところ長時間にわたりまして有益な御意見をお述べくだされ、厚くお礼を申し上げます。  明日は午前十時より開会いたし、厚生大臣、政府当局に対する質疑を続行いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十八分散会