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1954-05-13 第19回国会 衆議院 厚生委員会 第45号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月十三日(木曜日)     午前十一時十分開議  出席委員    委員長 小島 徹三君    理事 青柳 一郎君 理事 中川源一郎君    理事 古屋 菊男君 理事 長谷川 保君    理事 岡  良一君       助川 良平君    田子 一民君       降旗 徳弥君    亘  四郎君       滝井 義高君    萩元たけ子君       柳田 秀一君    杉山元治郎君  出席政府委員         厚生事務官         (薬務局長)  高田 正巳君         厚 生 技 官         (医務局長)  曽田 長宗君  委員外出席者         専  門  員 川井 章知君         専  門  員 引地亮太郎君     ————————————— 五月十二日  委員越智茂君、山下春江君及び川上貫一辞任  につき、その補欠として福井勇君、中曽根康弘  君及び有田八郎君が議長指名委員選任さ  れた。 同日  委員福井勇辞任につき、その補欠として越智  茂君が議長指名委員選任された。 同月十三日  岡良一君が理事補欠当選した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  連合審査会開会申入の件  厚生行政に関する件     —————————————
  2. 小島徹三

    小島委員長 これより会議を開きます。  まず、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。去る四月二十八日、理事でありました岡良一君が委員辞任されましたに伴いまして、理事が欠員になつておりますので、その補欠選任を行いたいと存じますが、委員長より指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小島徹三

    小島委員長 御異議ないようでありますから、再び委員選任されました岡良一君を理事指名いたします。     —————————————
  4. 小島徹三

    小島委員長 次に血液銀行に関する件について柳田委員より発言を求められておりますので、これを許可いたします。柳田委員
  5. 柳田秀一

    柳田委員 私は、結論は最近各地で保存血液血液銀行あるいは乾燥血漿を製造するところ乾燥血液会社のごときもの、あるいはその他各医療施設で直接患者輸血する場合、こういうような血液供給する機会が非常にふえて参つておりまするが、これに対するところ厚生省の何らかの法的な取締り、あるいはこれを規制する基準というものがとられる必要があるのではなかろうかという観点に立つてお尋ねするのですが、話を都内に限定いたしまして、現在東京都内で、業として血液を売つて、これによつて生活の全部ではありませんが、生活の資に供しておる者、こういう者は大体どれくらいの人間がおりますかお聞きしたい。
  6. 曽田長宗

    曽田政府委員 血液銀行、言いかえますれば保存血供給業者、これは薬務局の方の所管でございますから、薬務局長からお答えがあると思いますが、もしもただいまの御質問が、いわゆる給血あつせん業者……(柳田委員「違う違うと呼ぶ」)そうでございませんでしたら、薬務局長の方からお答えいたします。
  7. 高田正巳

    高田政府委員 促存血として供給をいたしておりまするのは、全国でただいまのところ十五箇所、いわゆる血液銀行というものがございます。その中で、わけて申し上げてみますると、公立すなわち都道府県立が三箇所でございます。北海道、福島、千葉、それから公益法人立すなわち日赤その他の法人でございますが、これが六箇所、東京が二箇所、神奈川が二箇所、石川が一箇所、熊本が一箇所、それから私立すなわち株式会社でやつておりまするものが六箇所、大阪が一箇所、名古屋が一箇所、兵庫が一箇所、広島が一箇所、それから東京が二箇所。ただいまの御質問、私途中でございましたが、東京に何箇所あるかという御質問に対しましては、公益法人立が二箇所で、会社でやつておりまするものが二箇所、計四箇所東京都内にございます。
  8. 柳田秀一

    柳田委員 今のは血液銀行として保存血あるいはプラスマにする、両方含めてですか、血漿にするのを全部含めてですか。
  9. 高田正巳

    高田政府委員 保存血でございましてプラスマのことは今の中に入つておりません。
  10. 柳田秀一

    柳田委員 私が問いましたのは、今プラスマにする場合、あるいは保存血の場合、あるいは病院等で直接血液供給する場合、そういう場合に、そういうのを生活の全部とは言いませんが、それをもつて業としておる、あるいは生活の資に供しておるというような人々は都内で推定どれくらいおるか。これは推定でありますが、いろいろカードに登録されておる方もありますし、またそれぞれのところに血を買えといつて来ておる人もあるでありましようから、大体どれくらいの人間がおられるとお考えになるか、その点をお聞かせ願いたい。
  11. 高田正巳

    高田政府委員 保存血という形でなしに、患者輸血をする場合に直接にその人間からとつてただちに輸血をするというふうなのは直接病院等でそれぞれコネクシヨンをもつてつておられる。これは薬務局の方ではそういう人たちがどれくらいおるかというただいまの御質問に対しては調査をいたしておりません。
  12. 柳田秀一

    柳田委員 私の尋ねるのは別に薬務局に尋ねておるのでもなければ、医務局に尋ねておるのでもない。厚生省に尋ねておる。従つてかりに近親輸血の必要があるというような場合に近親が臨時にやられるということを問うておるのではない。たとえば日雇いの者が雨の日にあぶれたような場合に、そういう血液を買うところ行つて、血を買つてくれといつておる、あるいは学生がアルバイトで血を買つてくれといつておる、そういうのはそれぞれの病院にみなそれぞれのカードがあるはずです。そうしてちやんとその血液型とかその他いろいろの既往症等を尋ねて記入した一連のカードがあるはずです。だから厚生省の方でもそういうものを収集したものが都内だけでもあるはずである。そういう観点からさしあたり都内でどれくらいあるか、従つてそれをもつて生活の何らかの資に供しておるというような者が都内にどれくらいあるかということを尋ねておるのであります。
  13. 曽田長宗

    曽田政府委員 各病院で、お話のように、臨時的ではなしに月に一ぺんとか二へんというようなぐあいで、必要に応じては給血の用立てをしてもらえるというような人たちの名簿ができておるということは、ただいまおつしやつた通りでありますが、それが全病院でどれくらいあるかということにつきましては、ただいまのところまだつかんでおりませんので、お答え申し上げかねるのであります。
  14. 柳田秀一

    柳田委員 それならばそれはいずれ御調査願うとして、そういう血を売る人の仲介の労をとつておる、そういう業者があるように聞いております。そういう業者は大体都内にどれくらいおりますか。
  15. 曽田長宗

    曽田政府委員 これもただいまのところは、あつせん業者と申しますか、仲介業者と申しますか、こういうような人たちを公認するとかいうような制度になつておりませんので、この数もなかなか実態がつかみきれないでおるわけであります。非常に相済みませんと思いますが、正確な数字を申上げかねます。
  16. 柳田秀一

    柳田委員 そこで問題になるのはこういうことなんです。第一は、自分からだの大事な血液を売つておる。ところ仲介する者が、最近の言葉で言うならば、それのリベートですか、マージンですか、ぴんはねですか知りませんが、そういうような仲介料をとつておる。はなはだけしからぬのであつて、人の血液をもつて自分がぴんはねしておる、こういう業者が少くとも四、五十人は東京都内におるというふうにも聞いております。そういう者に対するところの何らの取締り立法ができておらぬところ一つ問題点がある。第二は、その乾燥血液を製造するところ窓口には、ことに年末等になりますと、あるいは雨の日等にはたくさんの方が押し寄せて、かりに一日に二十人くらいの方から血液をとるならば、大体その工場の生産需要力があるのに、百人も押しかけて、カードを持ちながらあぶれて帰る人がある。しかも小さな子供を抱いた主婦とか、買物かごを下げたような主婦もある。しかも雨の日にはそういう人がふえるということは、いわゆるニコヨンに出ておる階層が来ておるということである。しかもそういうカードを持つた人人は、はなはだしきは二重、三重のカードを持つてつて名前をかえておる。そうして甲の名前によつて月曜日、乙の名前によつて水曜日、丙の名前によつて金曜日というように、一週間三回も血液供給しておるのもあれば、はなはだしきは連日供給しておるのもある。さらに問題点は、その血液をある会社では一CC二百円くらいのところもあり、一CC四百円くらいのところもある、あるいはもう一つはなはだしいのは、保存血液銀行からの輸血によつてシヨツク死をした事例もあるわけです。そういうふうに現在輸血をめぐつては社会問題として、医学問題として、相当大きな問題をここに蔵しているわけです。そこで厚生省としては今私があげたような問題点に関しては、何らかの取締り立法をする必要に当然迫られておると思います。かように考えるわけであります。しかしながら何らそういうものに対して厚生省から積極的な動きが見えないわけで、ただいま私が質問いたしましても、そういうような立法をするなり、何らかの取締り規則をつくる基礎調査すら十分できていないような御答弁なんです。従つて今私が言いましたような問題点に対して、今後厚生省はどのように対処されて行くのか、事態をどういうふうにお考えになつておるのか、その点を伺いたい。
  17. 曽田長宗

    曽田政府委員 この輸血問題につきましては、私ども大体考えておる筋を申し上げますれば、まず第一は、なるべく新鮮血液ではなしに保存血あるいは今のプラスマというようなもので用が足ります限りはその使用を奨励して参りたい。またそれになるべく支障のないような措置を講じて参りたいということが第一でございまして、いわゆる血液銀行の設置あるいはおもな公立病院等におきましては、これは外に配付いたしませんので銀行とは目せないのでありますが、その施設内で使う保存血の準備というようなことについて奨励指導というようなことをいたして参りたいというのが一つであります。しかしながらどうしても新鮮血液が必要だというようなこともございます。そういうような場合を考えないわけにも参りません。こういうものにつきましては大体給血者病院とが直接に結びつきまして、そうして給血をしていただくということを建前考えておるわけであります。従つて給血輸血の場合に、最後にその危険と申しますか、患者に対する危険及び給血者の健康に及ぼす影響ということにつきましては、あくまでもそのとつて輸血を行います医師責任を負うべきものである、医師以外に責任を負つていただける人がいないというふうに考えておるのでありまして、御承知のように医師法に基く厚生大臣告示というものによりまして、この給血輸血を行います場合にかような注意を願いたいということを指示してあるわけであります。それに対しましていわゆる給血のあつせん業者あるいは仲介者というものの存在ということについては、私どもかように考えて行きます。原則的にはさようなものの存在ということを認めたくないというのが基本的な考え方なのであります。従つてこれを取締るという必要は御説のように私どももいろいろ検討いたしておるのでありますが、ともするとこの取締りなるものが反面においていわゆる公認というような形になりやすいというところから、そこから生ずるいろいろな障害ということもおそれられますので、これをはつきりと認めて、そうしてそのかわり一方において厳重な取締りをするということが踏み切れないので今検討をいたしておる状況なのであります。大体考え方状況お答え申し上げました。
  18. 柳田秀一

    柳田委員 それでは問題をしぼつて行きます。第一、そういうものをあつせんする業者、こんな者の存在は許されません。だからそういう者の存在は許せぬような一つの法律をつくる必要があるという点であります。こういう他人の血液によつてそれをぴんはねをする、こういう者は絶対存在を許せない。だからこういう仲介業者取締りをするのではなしに、それは許せないというような立法措置が必要なので、そういう立法措置を講ぜられておるかどうか、まずその点をしぼつてお伺いしたい。
  19. 曽田長宗

    曽田政府委員 今はこれを許すということは私どもとしても考えていないということを申し上げたのですが、それはもつともであるが、それではさようなものの存在ということを全然抹殺するように厳重な取締りをやれないかという御意見だと思うのであります。これにつきまして私どもは今申し上げたような基本的な考え方でおるのでありますが、実情といたしますると、ある程度各病院等で、ことに給血者需要が非常に多いとき、少いとき等の動揺があるというようなところ、かようなところでは、やはりある程度いい意味で給血者を紹介してもらえるところというようなものが便利である、そういう者が全然いなくても困るというような意見施設から聞いておりますので、たださような仕事をいたしますためには、いろいろ各県にも相談をいたしまして、一つの試験的な試みのようなことをやつておられるところもあるのですが、そういう仕事保健所あたりでもつてやつたらどうかという考え方もあるのであります。しかしながら今日までのところでは、保健所等が間に立ちましても、今までの仲介者のように、必ずしも円滑に行かないというような事情もありまして、私ちよつと先ほど申し上げましたが、一方においては保存血液で間に合うという場合には、そちらでもつて間に合せるというような筋を片一方で大きく出して行きますならば、今のように全然禁止をするということに踏み切りましても、医療支障を生じないのではないか、しかし今日においてはまだそこまでちよつと踏み切れないのではないかというような感じを持つております。
  20. 柳田秀一

    柳田委員 最近問題になつております売笑取締り以上に、人の血を仲介してピンはねしているというものは天とともに許せぬ罪悪でありますので、こういうものの存在は極刑をもつてすぐにそれを根絶するような断固たる方針をとり、それによつて生ずる不便は何らか他の方法によつてやるという毅然たる態度を厚生省はとらなければ、これは天下の笑いものになると思いますから、善処をお願いいたします。  次は問題をこういうふうに持つて行きます。厚生省もなるべくプラスマあるいは保存血液銀行等において間に合せたい、また学問の進歩もそこまで参つたのでありますから、私もその説には同意なんです。そうなりましても、どうしてもそういうような乾燥血液をつくる会社あるいは血液銀行というものには、やはり相当の人が血液を売りに来るわけです。従つてそういう場合に血を売る人に対しても何らかの一つ規制をしなければ、今言つたように甲の名前において月曜日、乙の名前において水曜日、丙の名前において金曜日、あるいは連日というような例もありますが、そういう点が取締れない。あるいはまたそれによつて来るところの身体に及ぼす影響においても、これは人道上も見のがすべからざる問題がある。従つてそれを取締一つの例としては、給血者のそういうカードには必ずその人の写真を貼付するのも一つ方法でありましよう。あるいはまた血液をとる前にその人間の赤血球の量、白血球の量あるいは血液比重その他綿密な血液検査——当然給血者には梅毒、マラリアその他の検査がされておると思いますけれども、そういうものでなしに、その都度都度そういうような血液学的の検査をして、その血をとることによつて人体に何らの支障を及ぼさないという一つの確証をとつた上において血をとらなければならぬというような取締り立法、あるいは百CCの血を買うにしても価格が一定していない。百CCが二百円のところもあれば、四百円のところもある。従つて最低百CC幾らであるかというような一つ基準を設ける必要もある。そういうような規制方法が今とられなければ——これは非常にゆゆしき問題になつておるのです。あなた方は比較的安閑と構えておられますけれども、実際に血液銀行窓口に雨の降る日にでも行つてごらんなさい。ニコヨンがほんとうに哀れな姿で血を売りに行つている。あぶれて帰つて来る姿を見てごらんなさい。私はここで取締り立法をやらなければ大きな問題になると思いますが、そういうような取締り立法はどうなさいますか。
  21. 高田正巳

    高田政府委員 先ほど私が申し上げました保存血液製造所血液をとつてもらいに来る人の取扱いにつきましては、ただいまカードをつくつて——何と申しますか、そこへ来るお得意というような制度にはなつておりませんで、だれが来てもいいという建前にいたしております。そうしてその都度検査をして採血する。それでその検査は今先生がおつしやいましたような大体の線で、その人が伝染性疾病のない者であること、それから貧血のない者、血液比重千五十二以上の者、また梅毒検査陰性の者、大体こういうような標準でやりまして、月一回二百CCを健康を阻害しない限界と、こういう方針でやつておるのでございます。ただ先生指摘のように、その血液銀行で一日に大体何人くらい、何CCくらいとるという標準がございますので、雨の日あるいは他の仕事であぶれた日にはそこに殺到いたしまして、結局血液をとつてもらえないというような事態の生じておりますることはよく承知をいたしております。ただ来る人についてはその都度今申し上げましたような方針採血をいたしておりますことは事実でございます。
  22. 柳田秀一

    柳田委員 そういう方針であるだけのことであつて現状はそうではない。現状はあるところへ昨日も行つて血を売つた。きようはまた別のところ行つて血を売つている。はなはだしきは同じところ名前をかえて前の日も次の日も行つている。そうして血をとられた者、血を売つた者はもうふらふらで帰るような事例もあるのです。そういうものをあなた方は全然お考えになつておらぬ。今の取締りのままでは——そういうような弊害がもう現に出ているのです。かわいそうに現状はもう金にせんがために自分からだを張つているのです。何にも取締れないじやないですか。だからもつとりつぱなカードをつくつて、どこの場合でも何月何日には血液を何CC採血したとこれに記入する。それに標準があつてやるならば、これはどこに行つてもわかるのでありますが、今はそういう制度ができておらない。もつと抜本的な取締り方法なり規則なりをつくる必要があると思うのですが、あなた方は現状を説明するに汲々として、厚生省としての達見ある答弁に全然出ぬじやないですか。もう少し、こういうふうにやつて現在の弊害を除去したい、除去するにはこういうふうにやりたいという一つの意図を聞かしていただきたい。
  23. 高田正巳

    高田政府委員 先ほど私が申し上げましたのは、単なる指導方針ということではなしに、厚生省告示基準として定めておりまして、それで採血者につきましてはもちろんカードはつけており、そのカード写真を、ただいまの基準では全部張るようにはなつておりませんけれども、ほとんど大部は張つております。あるいは中に落ちているような者があるかもしれませんが、張るということにいたしております。従いましてこれが励行いたされますならば、先生の御期待に沿い得ると私は存じているのでございますが、実情がさようになつておらぬというふうな御指摘でございますので、この点につきましては十分実際を調べまして、もし先生指摘のようなことであるといたしますならば、これは何らか所期の効果を収めるように具体的な方策を立てなければならない、かように存ずる次第であります。
  24. 柳田秀一

    柳田委員 最後に、これは一度厚生委員の方も御視察に行く必要があるのではなかろうかと思いますが、それぞれの窓口で実に何といいますか、無秩序と申しますか、簡単に血液がとられ過ぎておるのです。実際に私はある人の体験も聞いたのですが、ほとんど連日血液供給している人が多いのだそうです。そうしてただ自分生活のためにほとんど自分の血を張つているという人が事実おるのです。そうしていつも青い顔をしておるのですが、そういう例が今のままでは取締れないというのが一つ。それと仲介してピンはねしておる人がおるのです。事実それにとられているのです。だからそういう点厳密にお調べになつて——今のままでは必ず弊害が出て来る。だから今のうちに芽をつんでおく必要がある。こういう保存血液あるいはプラスマというものがだんだん普及して来ますと、直接血液というものはある特別の一つ過程なら過程の中において使われるだけで、だんだん減つて来ると思います。ただ問題は保存血液血漿を買うと相当高くつくという点が非常な問題になつておると思いますけれども、私はそういう事態が当然来ると思う。今のうちに何らかこれの取締り立法と、それからその規則だけは十分つくつてつてもらわなければ、漸次生活が苦しくなつて参りますと、必ずこれに対して大きな社会問題が出て来るということを御注意申し上げておきます。また厚生省としてはこれに対しての御関心が薄いように思いますので、十分御調査の上対策を立てられるようにお願いいたします。
  25. 小島徹三

    小島委員長 次にヒロポン中毒に関する対策の件について、岡委員より発言を求められておりますので、これを許可いたします。岡委員
  26. 岡良一

    岡委員 ヒロポンの問題は繰返し大臣にも、また局長にも、すみやかに適当な対策を講じてもらいたいということを申してありますので、私としてはいまさら対策を講ずることの是非について論議をしたいとは思わないのであります。ところで一体、その後政府の方では、覚醒剤による中毒の蔓延あるいはまた覚醒剤中毒患者のもたらすもろもろの社会的な悪い影響というものを中心としての対策を、どの程度に講じようというプログラムを持つておられるのか、いわば具体的に立法措置を講ぜられるとして、そういうことがあるのかないのか、またその内容はどういう御趣意を持つておるか、この機会に承つておきたいと思います。
  27. 高田正巳

    高田政府委員 この問題につきましては、今岡先生指摘のように、従来もたびたび御質問があり、またお答えを申し上げておるところでございます。私ども取締りを強化するということにつきましては異論のないところでございまして、おそらくこの国会立法措置も講ぜられることと考えております。残ります問題は中毒者対策でございますが、この中毒者のうちで精神障害者言葉をかえて申しますならば、ヒロポン常用者のうちで精神障害者ということで、精神衛生法で取扱い得る者が相当あります。これは精神衛生法の線に沿つて、必要があれば二十九条によつて強制措置ができることになつております。この精神衛生法の線でずつと強力に進めて参りたい。この点につきましては精神衛生法所管局とも打合せをいたしまして、さようなことにいたすことに相なつております。ただ常用者のうちで、精神衛生法でいうところ精神障害者には当らない、しかしほつておけない者があります。この部分をどうするかということが、目下私ども検討を進めておる中心の問題でございます。これにつきましては何らかの立法措置をいたしまして、これらの者を、必要があれば一定の所に収容をいたして、常用ということをやめさせるような措置を講じたい、かように考えておるのでございますけれども、それにつきましては金がかかるのでございます。従いましてその財源をいかにすべきかということと関連をいたしまして、法律的な措置につきましても、率直に申し上げて実は踏み切れ得ないのでおるという現状でございます。なお精神衛生法に該当しない常用者につきましては、強制的に収容をするということがはたして立法的に可能であるかどうかというような純粋な法律問題としての疑義も、若干は存在をいたしておるのであります。財源的な問題と純粋な法律問題につきまして、両方相並んで研究をいたしておるような現段階でございます。
  28. 岡良一

    岡委員 今度は第一の罰則の件でありますが、罰則の点では近き将来に、あるいは国会覚醒剤取締法等の改正を通じて、適当な罰則の強化を期待しておるようでありますが、その場合に罰的は大体どの程度が当局としては適当であろうと思われるのであるかという点をまずお聞きしたい。たとえば現在のありさまでは、ヘロインでは輸出入、製造、製剤、譲渡、譲受、使用、所持、その他一切が一年以下の懲役であり、常習者であれば情状によつては十年までの懲役、ヘロインはそういうふうにきびしい厳罰をもつて臨んでおる。モルヒネ以下一般麻薬についても、五年以下の懲役もしくは十万円以下の罰金または併科もできる。営利の目的であれば、七年以下、五十万円以下の罰金というような相当の罰則規定をもつて臨んでおる。ところが現在覚醒剤では輸入、製造、所持、譲渡、譲受、使用その他いずれも三年以下の懲役または五万円以下の罰金である。そういうようなことであつてみれば、きわめてこの覚醒剤中毒が蔓延をするということも当然のことであると考えられるのであるが、一体覚醒剤のいわば密造、密売買、あるいはその所持、使用等については、どの程度に罰則を強化した方が妥当であると思われるのかという点が一つ。いま一つは、先般も新聞で見ると、いわゆる後楽園のヒロポン密造部落を急襲、そうしてわずかなアンプルが発見されたということでありますが、そこで問題は、こういうふうに罰則を強化し、密売買の源泉を急襲いたしましても、そのあかつきの急襲の結果がわずかな戦果に終つておるということでは、これはいかに強化しても、そこに及ばない面があると想像されるのであります。こういう場合これが特定の者によつて、特定のいわば日本の法律の十分に及ばぬうらみがあるようなところに、そういうことが行われておるときには、その根源に力強くほこ先を向けて行かなければならぬ。この点具体的に当局としてはどいうふうにすべきであるかという点、以上の二点についてまず承りたい。   〔委員長退席、古屋(菊)委員長代理着席〕
  29. 高田正巳

    高田政府委員 第一点につきましては、大体私どもとしては、取扱者の違反等につきましては現状の三年くらいのところで十分でございますけれども、いわゆる密造、密売買というようなものにつきましては、大体麻薬並、モルヒネとヘロインと区別してお話でございましたが、大体モルヒネ並くらいのところで妥当なのではないか、そうしてしかも常習でありますとか、営利の目的でありますとか、さようなものは五年よりさらに加重をいたすというような線が大体妥当なのではないかというふうに私ども考えておる次第でございます。これが先般も申し上げましたように、この法律を従来の経緯から改正をお取上げになつております参議院の厚生委員会の方でも、大体そういうふうな気持でおられるように拝承いたしております。  それから第二点の御質問でございますが、これは直接には取締り当局の捜査の問題になつて参りまするので、私がとやかく申し上げるのはいかがかと存じますけれども、結局いろいろなヒロポンに関連する末端の犯罪というものからたぐつてつて、さかのぼつて根源を押えて行くという捜査の一般的な方針ということで行くよりほかに、なかなか具体的には手がないのではないだろうか。従来ともさようなやり方でやつておられるようでありますが、だんだんたぐつて参りますと、途中で切れてしまいます。それから切れなくても、どうもその辺が根源らしいということで急襲してみますと、いろいろな関係からそこであまり所期の効果を納めなかつたというふうなことも相当あるのでございますが、しかしやはりこのやり方を繰返し繰返しやつて行くというよりほかになかなか名案もないのではないか、全然別個な新手がどこから出て来るということは、なかなか私ども考え及ばないところであります。
  30. 岡良一

    岡委員 私ども具体的にお聞きしたい点は、たとえば麻薬の監視員が取締りのために現場に行つて、しばしば覚醒剤をもあわせて発見した場合に、それに対する処置をする。何かそこまで権限を拡大して来ると、現在の麻薬監視員の陣容では非常に手不足ではないか、あるいはまた出入国管理令に基く強制送還の措置を励行するというような観点からも、現在の捜査とまたその執行のあり方、またそれに対する対策等、——これは直接あなた方の御関係ではないと思いますが、これを勘案しての具体的なお考えを承つたわけなんですが、この点はあとでまたあらためてお伺いいたします。  それから先ほど述べられた精神衛生法との関連でございますが、これは公衆衛生局と薬務局ではどの程度まで話合いをいたしておるのですか。
  31. 高田正巳

    高田政府委員 公衆衛生局とも実はじつくりと昨日も相談を数時間いたしておるのでございます。学問的に精神障害者と認められる者はヒロポン常用者のほとんど全部であるか、あるいは一部であるかというようなことにつきましては、これはまた専門家の御意見も伺つてみなければならぬ。しかしながら現在の実定法で、現在の精神衛生法が規定しておりまする精神障害者ということになると、どうもヒロポン常用者の全部を包括することは無理なんではあるまいか。しかし相当な部分の者が精神衛生法でも考えられる、こういうふうな大体の私どもの話合いでございます。従いまして精神衛生法で行けるものは、ヒロポン中毒によつてその対象者になつた者について、公衆衛生局としても重点的に取上げて行く、こういうふうな話合いをいたしておるような次第でございます。先生の御質問の御趣旨とかわつたことをお答えしたかもしれませんが、足りませんでしたら重ねてお答えしたいと思います。
  32. 岡良一

    岡委員 麻薬の場合、刺激が高じて、常時麻薬を使用しておる者について、これまでの取扱いの事例では、やはり体刑をもつて臨むということになつた例があるのでございますか。
  33. 高田正巳

    高田政府委員 先生の御質問は、麻薬中毒患者に対して体刑をもつて臨んだ例があるかということでございますが、それはございます。麻薬の中毒自体では、刑罰に処することは、無論現在の麻薬取締法ではできなかつたと思いますが、中毒になつているような者は不法所持、不正使用をいたしております。従つてその面で麻薬取締法にかかつて参る。従つてこれに体刑をもつて臨んだ場合はあると私は承知をいたしております。  それから麻薬の話が出ましたので、先ほど岡先生からお話がありました取締り方法の問題であります。麻薬取締官に覚醒剤の違反を取締る司法権も与えたらどうか、そうすれば成績が上るかどうかというふうな問題が実はあるのであります。これは結論的に申し上げまして、麻薬取締官の陣容をふやしますならば、何と申しましても薬の方の知識はたくさんございますから、それに従来麻薬の犯罪捜査におきまして、捜査技術の点についても経験者でございますから、両面を持つているという立場から取締りは強化できるものと私ども考えます。しかしながら現在の麻薬取締官の陣容でありましては、司法面を背負いましてもなかなか覚醒剤取締りはとうていできない。やつぱり警察が従来通りその当面の責任に立つてつていただかなければ、とうていわれわれの肩に負い切れる問題ではない、かように考えているのであります。ただ先生が御指摘になりましたように、麻薬を捜査いたしまする段階におきまして、覚醒剤もあわせて出て来る場合がございます。その場合に、麻薬の方は直接検察官と連絡をいたしまして自分で処理できるわけでありますが、覚醒剤の方は警察の方に送致をしなければならない、あるいは告発という手続になりますので、警察の方でやつてもらわなければならぬというふうなことで、そこに何と申しますか迅速を欠いたりするようなことがあつて、若干その力をそがれるというふうなことも具体的にちよちよいございますので、麻薬を捜査するに関連して出て参りました覚醒剤の違反につきましては、これは麻薬取締官にも司法警察権を与えていただくということは、姑息ではありますけれども一歩前進することには相なる、かように存じておるわけであります。  それから出入国管理令との関係でございますが、これはたしか現在では覚醒剤の違反者であつて一年以上の実刑を食つた者が、幾らでありましたか記憶が不確かでありますが、それでないと送り返せないということになつておるそうでございます。これはいやしくも覚醒剤の違反者であるならば、それがどういう判決になりましても送り返せるというふうなことになるならば、私どもといたしまして、あるいは警察といたしましては取締りの面で非常に便利がよかろう、かように考えておるわけであります。ただこれにつきましては国際間の相互主義というものがございますので、国際問題に関係するおそれもあつて、簡単には参らないという意見が法務省方面から出ておるということも実は伺つておるわけであります。覚醒剤取締りという観点から見ますならば、さような態勢がとられるならば非常にプラスになるのじやないか、かように考えておるわけであります。
  34. 岡良一

    岡委員 それでは結局この覚醒剤取締り罰則規定が強化されるということになれば、事実上の見通しとしては、やはり麻薬監視官も覚醒剤監視官も同一な権能——麻薬監視官に対する覚醒剤監視官になるのか、あるいは麻薬覚醒剤ともどもに司法警察官の権能を持つて追究し得る陣営というものが出て来るという見通しが可能になるのじやないかと思うし、またその陣営も相当充実をして行かなければならぬということもやはり考えられておるわけなのであります。  それからいま一つの問題については、これは国際間の問題というお言葉ですが、しかしそうかといつて、そう国際間のことにばかり気がねして放置しておくという問題ではないので、これは別途なところでわれわれははつきり根絶のための適当な方法考えたいと思いますが、そこでお伺いしたいことは、先ほどちよつと言い違いをいたしましたが、覚醒剤の嗜癖が高じて慢性中毒の症状になつた者は、当然覚醒剤を不正に保持しておるという事実が伴つておるわけであります。ところが慢性に中毒しておるという状態では取締りの対象にならない、しかしそれが事実において不正に保持しておるということで対象になる。これが罰則規定が強化され、体刑が科せられるということになれば、その場合、いわば法廷における裁判官の判断によつて、その罰則規定のわくの中において、慢性の中毒の症状から発現をした犯罪は構成してないにしても、この者は不正に所持しておるというところから、おそらく取調べの進行に伴つて、彼が慢性の中毒者であるということは当然すぐにわかつて来ると思う。その場合に彼が不正に所持しておるという事実のもとにおいて処罰の対象になり体刑を科せられるということになれば、当然その身柄は刑務所に入れられるかあるいは感化院に入れられるか、拘束されなければならぬ。そうすれば精神に障害が現われているかいないかは別として、現われているという事実がないにしても、不正に所持しており、また彼が慢性の常用者であるという事実があるとすれば、これは現在でも少年医療院とかいつて各地に精神薄弱者あるいは性格異常者という者の少年犯罪に対しては特別な施設を持つてここに入れておる。こういういわゆる強制保護施設のようなものが、所持しておるか、また精神の障害発生に至らない者の施設としては現にあるわけなのですが、このわくを広げればすぐそこで処理できるのじやないか、少くとも対策に一歩進めることができるのじやないかと思う。  それからいま一つの問題は、すでに中毒の症状があつて、みずからも傷つけあるいは他に危害を及ぼすおそれのある者、いわゆる強制入院措置をとり、入院の手続をとり得るという精神衛生法第二十九条に該当する者であるという場合は、当然入院措置の道を講じて、これを指定する精神病院あるいは公共立の精神病院に入院せしめなければならぬという手続がとられるわけであります。そうなれば別に今薬務局の間と公衆衛生局の間で精神衛生法によつて人を扱うか、あるいは物は覚せい剤取締法でやるのか、しかし精神衛生法からはずれたものはどうするかということは——現行法でも多少手を加えて行けば一応覚醒剤取締りの対象というものを法的にある程度まで体系づけられるのじやないか、そういうふうに私は思うわけであります。そういう点はいかがでありましようか。
  35. 高田正巳

    高田政府委員 岡先生の、精神衛生法で行ける者は、精神衛生法で行く、その他の者は刑法なりあるいは少年法なり、もう少し広げて言いますれば児童福祉法というふうなもので行けるのではないかという御質問でございます。これは理論的には、岡先生がおつしやつたように、少年法や刑法等でも行けるはずであります。しかし先ほど岡先生から麻薬違反者で体刑を受けた者があるかという御質問でありましたので、それは私はあるというふうに申しましたのですが、覚醒剤の場合には不法所持で体刑を受けたような者は非常に少い、実刑を受けた者はほとんどないというふうに今までの法務当局等の御答弁から私は承知をいたしております。と申しますのは、りくつの上では刑法や少年法等でもやれるわけでありますが、何と申しましても向うは行われました犯罪自体を重視いたしますので、それがただ不法所持であるというふうなことでありますれば、比較的軽く扱われる、少年法なり刑法なりで扱われないで、警察で説諭を加えて釈放されるというふうな扱いになつておるのが現状なんであります。従つて先生のおつしやいますように、やり方によつては現在の法律でもやれないことはない、これはあるいはさように申せるかもしれません。しかし現実の問題としては施設がないために何とも処置ができておりませんので、その現実面から何らかの対策を講ずる必要があるのじやないか、これが結局検討の要点になつて来るかと存ずるのであります。一応私どもが研究をいたしまして考えておりますことを申し上げまして御参考に供しました。
  36. 岡良一

    岡委員 罰則が強化されて不正に所持しておる者も体刑を科するということになつて来れば——この者の将来のためにも、またその者が中毒の症状になり、それが社会の秩序に反するような害毒を与えるということを予防する立場からも、法廷において体刑を科し得るということになれば、この者に対しては本人あるいは保護者の同意を得て少年院とかその他の施設収容して行く、そうして適当な治療の道が講ぜられる。そこで精神の障害者という段階に至らない者は、理論的にではなくて実際に、一応現行法でやれるのじやないか。そうすると精神障害者にしてみずからを傷つけ他人に害を及ぼすおそれがある者について、本人及び保護者の同意を得て精神病院または指定病院に入院させることができるという精神衛生法二十九条が適用される。これをもつと精神衛生法に明確に——覚醒剤による嗜癖が高じてこれが特にみずからを傷つけ、あるいはヒロポン中毒患者の多くは特に他に危害を及ぼすおそれは事実上十分あるわけです。それが事実上起つて、犯罪が構成されてからつかまえたのではこれは話にならない。精神衛生法の趣旨もそういうことを予防するというところに大きな目的があるわけです。だから、この法律の建前からも、この法律を多少いじつて——いじるというか、解釈を拡大して、自分を傷つける覚醒剤というような、いわば健康上むしろ自分の性格をまでも破壊し去るようなものをみずから常用し、さらに量的にも漸次多量に使用するということは、明らかにみずからを傷つけるものであります。しかもその結果、しばしば幻覚やあるいは妄想に襲われて、不祥な犯罪事件、しかも奇矯の犯罪事件を起しておるということは、十分に他に危害を及ぼすおそれがあるわけです。だから、そこのところ精神衛生法に明確にうたうということによつて——精神衛生法第三条に「「精神障害者」とは、精神病者(中毒性精神病者を含む。)、」とあるが、この精神障害者の範疇の中に「慢性薬物の中毒者を含む」というのを入れて行けば、結局精神障害を発現するに至らない麻薬の中毒患者で、事実上麻薬を不正に所持している者については、前項のような形で一応収容できる。これには予算が伴いますが、法律としては一応これに対する対策が立ち得るわけです。いずれにしても予算が伴う問題ではありますが、法体系としてはこのような関係法規でやり、一方覚せい剤取締法はやはりものを対象とするものである以上、ものについて十分遺憾なきを期し、そのための陣容を強化するというようなことがやれるじやないかと思うのです。そこのところはどうなんでしようか。
  37. 高田正巳

    高田政府委員 岡先生のただいまの御見解は確かに一つの御見解だと思います。従いまして、精神衛生法でやれない常用者について、刑法関係では少年法で現実に罰則を強化することによつてそれが措置できますれば、これは今のようなことで行けると思います。ところが、これがそういうふうに運用されるかどうかということは、一にかかつて裁判所の判決にあります。それで私ども考えておりますところでは、この裁判所の判決によつてきまるわけではございますが、犯罪というものが大したものでないのに、おそれがあるとか、あるいは軽微な犯罪、すなわち不法所持というようなものまでも全部刑法なり少年法関係で解決してもらえると期待することは、いささか無理ではないか。大体先生がおつしやるように、そういうことになるかもしれない。しかしながらそれを期待することは、いささか無理ではあるまいか。だから、先生がおつしやいましたように、厚生省関係で精神衛生法を広げて行くか、あるいはその他の立法考えるか、いずれかで対策を立てる必要があるということを前提にものを考えないと現実の問題は片づかないのではないか、かような気持でいろいろ検討をいたしておるわけであります。その際に、先生がおつしやいましたように、精神衛生法をずつと広げて解釈をし、あるいは立法をし、片一方刑法関係で措置をしてもらつてあとに何も残らなければ、その方法も確かに一つ方法である、かように考えております。
  38. 岡良一

    岡委員 それから林さんの「慢性覚醒剤中毒について」というリーフレツトを見ますと、東京都の多摩少年院では二四・三%、女子の愛光学園では二〇%が、ともども覚醒剤を長期使用をしているということになつております。これは少年法によつて十分やれることと思います。ところで、これらの諸君について、一体幾つから覚醒剤の使用を始めたかを調べてみると、十六から二十というのが三九%ということになつております。そうなつて来ると、これは児童福祉法に関係して来ると思うのです。これはやはり児童福祉法にも何らか対策を講じなければならぬような考えがするのですが、その点いかがでしようか。
  39. 高田正巳

    高田政府委員 確かに児童福祉法の関係もございますが、それは結局個々ばらばらに対策を立てては成果が上りませんので、どういう観点から一貫した対策を立てて行くか、そのどれが適当であるかという研究問題になつて来ると思います。児童福祉法におきましては、児童の福祉をはかるという観点からものを考えて行く、刑法、少年法の関係は、犯罪という国の刑罰権の面でものを考え精神衛生法は御承知のような建前でものを考え、かりに私の方でものを考えるといたしますれば、薬事についての規制を全からしめるために考えて行く、こういうようなことになるわけであります。これをどこから取上げましても何らさしつかえのない問題であつて、どれが適当であるかということだけの問題にすぎない、かように考えております。
  40. 岡良一

    岡委員 児童福祉法でこの問題を取上げて行くとすれば、具体的に児童福祉法の中でどの部分にどういうような改正を加えた方がいいかという点について御意見なり伺えればけつこうであります。  それからこれは医務局長にお伺いしたいのですが、かりに精神病院が百名のヒロポン中毒患者収容すると、事実上他の分裂症や躁欝症の患者の中に分散しては入れられないのです。彼らが麻薬中毒の症状から解放されたときには、彼らが持つて生れた本来的な性格異常を露骨に出して行く、あるいは麻薬中毒に基く精神異常者としての行動をとるのであつて、これはまつたく精神病院内に一つのモツブを養うことになるので、こういうことはできるものじやない。精神病院がみなヒロポン中毒患者をお断りするのはそういうことからだろうと思う。たつた二人か三人入れても病院内の秩序が完全にこわされてしまう危険性がある。そういう事情であるから、公立でもいいし、私立でもいいが、全国的に精神病院にこれを分散配置をしなければならぬ。しかも精神病院における逃亡率で一番多いのはヒロポン中毒患者です。これは実に巧妙に逃げる。であるから、これは当然公立病院に入れる、普通の収容施設に入れるわけには行かない。これは精神病院の建築規則に基く逃亡等についての相当な施設を持つたところに入れなければならないことになる。同時にまたそういう者は分散的に配置しないと、ある一箇所に集中的にヒロポン患者を持つて来られてはこれの管理はとても容易でない。そういう点、これは医務局長所管になるのかもしれませんが、全国の精神病院に相当予算をとつておられるようだが、こういう者をこういうところに配置する必要があると思うのです。これは公衆衛生局の方だと思いますが、医務局の方でも直接間接に重大な関心を持たれてしかるべき問題だと思いますので、この機会に御所見を伺つておきたいと思います。
  41. 曽田長宗

    曽田政府委員 今医務局の関係の点につきまして御質問がございましたので、その点だけ私からお答え申し上げます。お話もございましたように、この精神病対策、あるいはヒロポンによる精神異常というものも含めまして、この対策は公衆衛生局の担当事務でございますが、私どもとしましても国立の療養所のうちに精神療養所がございます。また国立病院のうちにも若干の精神病床を持つておるというような関係があるのでありますが、今も岡先生から言われました通りのことを私ども考えておるのでありまして、患者をただ私どもの療養所に預けられましても、非常に取扱いに困るので、一つ考え方としましては、十分対策を講じた、また設備も整えた特殊な施設をつくる必要があるのじやないか、今まであります現存の施設にただ入れられたのでは困るという意見一つ、それに対しまして他の一面においては、そうかといつてこの患者を数十人、数百人というように大勢集めますというと、いかように物的な整備を施しても処置が非常に困難である、だからむしろ一名、二名くらいずつを分散して各施設が預かるという方がよいのではないかという、実は二つの意見がありまして、私どもの方もまだ結論には到達しておらないのが現状でありますので、はつきりしたことを申し上げかねるのであります。
  42. 岡良一

    岡委員 最後にこれは私の希望なのですが、第一点はあくまでもヒロポンの問題は地味な問題ではあるが、日本の青少年を心身ともにむしばむ重要な問題なので、できるだけ早く厚生省としても有効な対策を講じてもらいたいということを、私は三月の初めに大臣にも申し上げた。その後遷延今日に至るも対策がない。参議院の方で何とかしてくれるだろうということで、多少のアドヴアイスを提供しておられるということでは、やはり非常に手抜かりだと思う。  それからもう一つは、この問題の取扱い、解決のための立法措置というものが、やはりヒロポンそのものの中毒患者、また中毒のおそれある者、また中毒によつて自分自身にあるいは社会的に害毒を流す者を一貫して、これに対して大きなメスを入れるという行き方が一番けつこうだと思うのです。もちろんそうあるべき、たと思いますが、そういうことになりますと、現行の法体系との関連性の問題で、官庁のセクシヨナリズムがそれぞれまた顔をきかすということになると、即効を期しがたいのじやないかというおそれもありますので、そういう場合は応急の措置として、目的を一つに集中して、そういう問題について、青少年問題協議会というものがありますが、これを内閣においてせずに、厚生省内で各省各局が集まつた一つヒロポン対策特別協議会とでもいうものをこしらえられて、そうして予算的にも至急ひとつ大蔵省あたりと強硬な折衝をされて、この大きな、日本の青少年の将来に暗影をもたらさんとしておる重大な社会問題を早く解決をしていただくという勇気と決意をお願いして、私は質問を終ります。
  43. 柳田秀一

    柳田委員 ちよつとそれに関連して……。同僚岡君が今国会ヒロポンの問題を再三追究しておられるのですが、薬務局長答弁では——ヒロポンの製造を禁止しろというのが岡君の議論で、われわれもその通り。現在ヒロポンは大日本製薬と武田で製造をしておるように承知しておりまして、これすら問題であると思いますが、問題はやはり密造だ。そこで薬務局考えは原料製造段階を押えるんだ、だからどこにどういう原料がどういうルートで流れておるか、それを今調べておる、こういう御答弁だ。私はいつまでたつたつてそんなものは調べられはせぬと思う。きようの答弁でも途中で消えておる。途中まではどうやらお調べになつておるらしい。しかも聞くところによりますと、これは地下に相当——ちや、ちなアンプルをつくつているのじやなしに、地下に一大製薬工場ができておるという風評すらある。あるいはその資金がどういう方面に流れておるか多少想像されぬでもないのでありまするので、委員長においては、ヒロポンの問題は厚生委員会としては重要な問題だ、今の社会問題としても、日本の青少年の重要な問題だから、ぽかんとしておるわけにいかぬ、そこでこういう会ではぐあいが悪いので、秘密会にしていただいて、国警の責任者も呼んで来て、そうして現在までのこの密輸ルート、密造ルートで突きとめたものはどういうものか、あるいはこれに対してそういうことをやつておるのはどういうようなところで、どういうような人間がやつておるか、あるいは今までに知つたところではどういうような製造段階があるかというようなことはわれわれ委会員にはつきりさしていただきたい。しかるべき機会に秘密会を開いていただいて、厚生省当局並びに法務当局さらに国警等、そういう関係のところをひとつ呼んでいただいて、徹底的にこの全貌を明らかにしていただきたい。それによらなければまたそれに対する対策も立てにくい、ぜひひとつ委員長において取上げられんことを要望しておきます。
  44. 古屋菊男

    ○古屋(菊)委員長代理 その点は理事会にかけて協議いたすことにいたします。御了承願いたいと思います。  次に癩患者の健康児童通学に関する件について、長谷川委員より発言を求められておりますので、これを許可いたします。長谷川委員
  45. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 時間がないので、簡単に実情を伺いたいのであります。御承知のように、熊本の恵楓園の未感染児童保育所であります龍田寮、ここに収容しておりまする児童の新入学生四名の熊本市黒髪小学校への通学の問題につきまして、われわれの方にも先般来患者の方からたびたび陳情が参つております。私もあまりこれは表面化しない方がいいという意味で、今日まであまり問題にしないで、問題が問題でありますからすみやかに解決すると、こういう見通しでおつたのでありますが、事態はいよいよ険悪になつて参りまして、この四名の新入学生は、恵楓園長やあるいは熊本医大等におきまして、この健康児については何ら危険はないということをはつきりしておるのでありますが、これがPTAの一部の人々によつて通学を拒否せられて、その後いろいろ関係者が尽力しておるのでありますが、ついに学校は同盟休校というような事態にまで立ち至つておるようであります。医務局といたしまして、この件につきまして御調査ができておるかどうか、また御調査に基いてどういうような手を打たれたのか、実情を伺いたいのであります。
  46. 曽田長宗

    曽田政府委員 こまかく申しますと長くなりますので、今長谷川先生からお話がございましたところまでは繰返して申し上げないのでありますが、私どもとしましても、かように問題が紛糾するに至らないうちに、何とかこの円満な解決ができないかということで、恵楓園の当局及び九州の医務出張所の職員を派遣しまして、いろいろと努力いたしたのであります。今お話がございましたように、最初恵楓園の診断及び熊本大学の付属病院の診断書というものによりますと、少くともその四人の新入学生につきましては、特別に懸念する必要はないというようなことでございました。それに基いて教育委員会がこの四名の子供は入学させるようにという決定をして、学校当局にも伝えられております。これに対し、それに反対しておりました父兄がそれに承服いたしませんで、その四人の子供が学校に出て来るのならば、自分たちは子供を学校にやらないと、いわゆるストライキをやつて、そしてしばらく対峙の状況が続いたのであります。こういうことでは困るというので、市の文教委員会その他いろいろの中に仲介の労をとつてくれる人たちがございまして、いろいろ双方に話を進めていただいたのでありますが、なかなかうまくまとまらない。それで結局もう一ぺん熊本大学に検診をお願いして、その結果に基いていずれかにきめるというようなことで——それがどの程度に事前の予解があつたかどうか、私どももどうもはつきりてたさないのでありますけれども、さようなことで検診を再び受けた。その結果といたしまして四人のうち三人の子供はまつたく完全な健康児である、そのうちの一人につきましては癩患者ではない、しかし今後観察を要するということが但書について出て参つた。さようなところから、教育委員会におきましては三名の子供は通学してもよろしいが、一人の子供は今未感染児童を収容しております龍田寮の中に設けられた黒髪小学校の分校で教育を受けるようにという指示をされたのであります。これに対しまして恵楓園及び園内の患者は非常に不満でありまして、癩ではない、まだ癩とは真定されておらないものである、かような子供であるから、これは決して通学を拒否せられるべきではないということで、非常に激昂しておりまして、その決定が正当な判断とは考えられないというように申し立てて紛糾いたしております。こんなことは申し上げてどうかと思うのでありますが、一時私どもの方に情報として入りましたのは、患者が激昂して、自分たちが正論だと思うことが十分に世間に伝わらないで、こういうようなことでは困るから、ぜひ自分たちを園外に外出を許してくれというようなことを言い、これは今外の意見をいろいろその患者諸君にも知らせ、また患者意見も外にいろいろ通ずるというような道は、園の職員あるいは市の教育関係の方々、その他を通じて、相当によく意思の疎通ははかり得ておるのだから、君たちが出る必要はないと思うというようなことで、園外に外出いたしますことは極力園として制止しておつたのであります。一部には無許可であつても外出をして、そういう頑迷な意見を持つている人たちにその蒙を開きたいというような意見を述べる者もあつたりしまして、この制止に非常に苦労をいたしたのでありますが、幸いに園長その他の職員と、患者の中でも非常な自重論と申しますか、いろいろ物事を慎重に考えてくれる人たちが多いのでありまして、今私どもところに入つておりますのでは、そういう非合法な方法はやはりとるべきではない、しかし自分たちの主張というものはよくわかつてもらうように理解してもらわなければならぬ、また私ども初め関係の者にはその患者の趣旨がよく伝わるように努力してもらいたいということを申しておるような状況であります。今私どもの方からも係員を派遣しておりますが、これは理論的には、ことにらい予防法に基く解釈としましては非常にはつきりと割切れてしまう問題なのでございますけれども、かような問題は性質上御了解願えると思うのでありますが、いろいろ今までの因習というようなものもございますので、その辺をなるべく摩擦を少く、できるだけ穏便に、正しいところに解決の結果を持つて参りたいというふうにせつかく努力いたしておる状況であります。
  47. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 そうしますと四人のうち一人だけは観察を要するというのはどういう意味で観察を要するというのでしようか。その点が一点、いま一つ、黒髪小学校の分校で教育するとおつしやいますが、龍田寮の中に分校という名義のものをとにかくつくる、こういう意味でありましようか、この二点についてお伺いいたします。
  48. 曽田長宗

    曽田政府委員 あとの御質問の方からさきにお答えいたしますが、龍田寮の中には従来から黒髪校の分林がございました。恵楓園側といたしましては、この分教場をつくつてもらうことを非常にきらつておりまして、本校に入れてもらいたいということを、かねがねすでに十年ほどの間、毎年のようにお願いしておつたようであります。その御許可がなくて、そのかわり龍田寮の中に分教場をつくつてやるから、そこで勉強してくれというふうに言われて、建坪は広くございませんが、その建物自身は相当りつぱなものができておるのですが、それにもかかわらず患者側といたしましては、むしろそういうものをつくつていただいたことは非常に迷惑なことだ、むしろそういうものなしに本校に入れてもらいたいというふうにかねがね申しておつたものなのであります。その分教場がございます。患者の要求は、今先生もおつしやいましたように新しい入学生だけではなしに、二年生以上の生徒も二十一人ばかりおるのでありますが、これもみな許可してもらいたいというのが患者の要求なのであります。ところがとにかくほかの者はもう少し待て、それでは今度入る新入生だけについて許可をしようというようなことで、それに対しても園側としては非常に不服であつたのでありますが、私どもも一挙に問題を解決するといつても、こういうものはむずかしいのでありますから、一応新入生四人だけ入れていただけるというならそれだけをまず通わせまして、あとの問題はまた相談するというふうにしたらよかろうと申しておつたのであります。二年生以上の生徒は分教場で今のところ勉強しておるのであります。  それから最初にお尋ねになりました問題は、これは多少観察を要すると言われましたこの児童につきましては、ある場所に神経の肥厚らしきものが認められるというような点が一応指摘されておるわけであります。これに対しましてはまたいろいろ専門家の意見のわかれるところでありまして、これは必ずしも癩でなくとも、普通の子供においても数パーセントはさような状況が認められるというようなこと、それからそのほかいろいろ子供につきましての知覚の異常の検査の仕方というようなことですとか、何かを鑑定いたしましたお医者さん方の所見に多少の食い違いがございます。しかしながらいずれにおいてもこれは今癩とは診定はできない、また感染の危険があるものとはどちらも認めてはいないわけであります。ただその所見において——所見といいますか、所見もほとんど合致しておりましても、その解釈において多少の意見の食い違いがあるというような点でございます。そういう意味からしばらく観察しなければその病名の診断はできないというふうに一方は言つております。一方の方はとにかく癩病ではない、だから通学させていいという見解でございます。従つて熊本大学の診定にいたしましても、この児童を通学さすべきではないという言葉は全然ないのでございます。これはしばらく観察の要ありということを教育委員会が判断してそのようにきめられたのであります。しかしこの観察ということは通学させても観察はできないとは言えないわけであります。従つて熊本大の診断書に基きましてもただちに通学を拒否するという結論は出て来ない、それからもう一つ、これは私ども考えなのでありますが、かりに多少将来癩患者に変ずる人じやないか、癩が生じて来るんじやないかという疑いがあつたといたしましても、それではその患者を龍田寮の分教場に通わせろと言われましたことは私どもとしては少し合点が行かない。龍田寮の分教場というものは、これは癩の軽症患者を通わせているのではないのでありまして、親は患者ではございますけれども、その子供たちは完全な健康児であるのであります。その健康児と一緒に遊ばせてよろしいという限りにおいては本校でいけないという理由はりくつとしてはどうしても立たないと思います。私ども今のところさらにいろいろと実情を詳細に検討してみなければならぬと思いますけれども、私ども大体は園長の考えております考え方を基本的には正しいと信じておるわけであります。ただ理論的にはさようといたしましても、今申し上げましたようにこれは一つの社会的な問題でございますから、その辺でなるべくりくつだけでは割切れないところはいろいろ情味を加えてしかるべく解決法を講じたいというふうに考えております。
  49. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 事情は大体わかりましたが、この龍田寮の中の分教場では困ると患者の申しまする意味、つまり子供を小学校にぜひ通わせたいという意味は私も想像はできますが、お調べになつところその患者が、父兄が要求いたしまする、あるいは園の当事者が要求いたしまするその理由がどういうところにありましようか。子供をあくまで学校へ通わせてほしい、こう言う理由について伺いたい。
  50. 曽田長宗

    曽田政府委員 ただいまのところは一年から六年までたしか一人の先生が教えております。龍田寮の職員が多少お手伝いはしておりますが、大体資格のある先生は一人という状況でありますので、これは義務教育といたしましても十分なことができないということが、最も重要な理由になつているわけであります。そのほかとにかく親は不自由な療養所に入つておりましても、子供は他に病気をうつらせる危険はないのだから、その子供には自由な生活をさせてやりたい。ほかの一般社会から子供までが隔離をされたような生活はさせたくないというような考え方がつけ加わつて、一般の普通の子供と同じように本校に通わせてもらいたい、こう申しておるのであります。
  51. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 龍田寮の分教場は教室の設備はあるのですか、広いのですか。
  52. 曽田長宗

    曽田政府委員 生徒の数も二十数名程度のものでございますから、全体としても広い必要はないのであります。たしか私も見ておりますが、二部屋だつたと思います。しかし二部屋と申しましても、一年から六年まで皆入つておるのでありますから、完全な授業ができるとは、私ども考えましても、思えないような状況であります。  それから教材とかなんとかにいたしましても、対象の児童が少いのでありますから、いろいろ療養所の方ですとか、あるいは藤風会とか、あるいは地元のM・T・Lとかいうようなところにいろいろ御援助を願つて、書物などをいろいろちようだいをしておりますが、どうしても普通の学校のように整うというわけには行きません。
  53. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 オルガンとか、ピアノなどはありませんか。
  54. 曽田長宗

    曽田政府委員 オルガンはたしか一台あります。
  55. 岡良一

    岡委員 関連してお尋ねしたいのですが、やはりあの問題が起きたことは、癩病に対する一般の認識が十分ではなく、従来言われて来た天刑病だとか、遺伝的な疾患だという一般的な通念がまだ十分払拭せられていない。癩病に対する科学的認識がまだ一般に知られていないというところにPTAあたりの微妙な気運が生じた原因があるのではないかと思う。こういう点はまた患者の親たちとしても、健康児であるにかかわらず隔離された環境の中で教育を受けなければならないということから、子供の将来を考えた場合に親心として考えてみると、やはり無理からぬことである。こういうようなことがやはり大きな摩擦の原因になつたのではないかと思うのです。そこで事実上の問題として、癩療養所で癩患者の夫婦から生れた子供が、保育所、小学校、中学校というふうに、一括して親の環境から隔離された状況で育てられ、教育を受けたところ、たとえば栗生楽泉園はそういう施設を持つており、現にあそこでは癩病の発生率が高くなつているのではないかということが言われておりますが、そういう点を調べたことがあるのですか。
  56. 曽田長宗

    曽田政府委員 ただいま岡先生から御指摘になりましたように、私どもも今度の問題につきまして非常に反省せられると申しますか、準備が足りないというふうに考えておりますのは、今の患者の診断方法、あるいは患者の社会に対する危険性、あるいはその患者に接触した者から発生するその発生の度合いというようなものについて私どもが非常に不正確な知識しか持つておらないというようなことで、これが皆さん方に先般も御承認願いました二十九年度予算に癩研究所を設けていただいた一つの趣旨であろうと思うのであります。今の具体的な御質問につきましては、それは一般の社会におります児童に比べまして、親に癩患者を持つております子供のその後における癩発病率というものは、親に癩患者のおります者の方がはるかに高いということは申し上げられると思います。しかしながら保育所に収容されております子供たちについては医員の方からも絶えず観察をいたしておりますが多少とも疑わしい症状があるというようなことになりましたならば、これは早くから発見に努めまして、そうして明らかに癩患者であるということになれば、癩療養所に収容するということになつております。少くとも癩療養所に入れるに及ばない、まだ癩とは診定がつかない段階というものにおきましては、かりにそれが将来癩になるものだつたとしても、その時期においては他に癩菌を振りまくというようなことは、まず今日の癩学者の定説としましては万々ないというふうに考えられておるのであります。
  57. 岡良一

    岡委員 時間も迫りましたので詳しく申し上げることも何ですが、問題は癩療養所に附設された施設であつて、癩患者からおぎやあと生まれたとたんにもうすでに乳児院的な施設に隔離され、そうして保育され、さらに小学校、中学校全部療養所の付属施設ではあつても、環境的にはまつたく隔離の状況において育つている、そういう聚落の癩発生率が事実の問題として比較的高い、一%をやや上まわるとさえいわれておる。私はそういう数字を見たことがある、そうするときわめて粗雑な統計ではあるが、八千五百万の中で二万六千人癩患者がおるとしても、癩の出現率ということになれば三千倍以上の出現率がある。ところが癩は完全な接触感染である。しかも接触感染をして症状が発現するにしても、その潜伏期が一番短いものでも乳児に感染した場合十六年なり十七年たたなければ出て来ない。そうしてみれば義務制である中学校期間中はおおむね出ない、症状が出ない限り他に伝染する危険がない、こういう点をやはり科学的な基礎の上に立つてこの問題を処理すると同時に、いま一つは癩療養所に附設された乳児院や保育所や、また小学校、中学校、なるほど衛生的には隔離されておるけれども、しかし発生率が多いということは、やはり接触をする機会を与えておる、管理においてやはり欠けるところがあるわけである、こういう点についてもう少し具体的につつ込んだ御検討を願つていただきたいということを私は希望したいのです。それについて何か御意見があつたらお伺いしたい。
  58. 曽田長宗

    曽田政府委員 現在保育所に収容されております子供たちは、今お話がございましたように生れてただちにわけられておる者もございますが、中には生れてから数年間親と一緒に生活いたしておりまして、三つ、四つになつてから親が癩と確定して収容所に収容されて親とわかれて来ておる者もございます。ですから過去において感染の機会を持つた者が相当にあるのであります。でありますから保育所に収容されましてから新たに感染が起つたと認められるようなものは、今日までほとんどないのであります。しかしながら保育所に収容されてから発病した、感染は収容される前に起つておつた、いわゆる潜伏期において収容されて、数年後に発病したという者はこれまでもあるのであります。またそれはあり得るのであります。ところが今申し上げましたように、さような意味から参りますれば、今の保育所に収容されておる患者というものは、癩にはなつておらないけれども、将来発病するかもしれぬというその危険性をもつて一般の社会から隔離せらるべきだという考え方で参りまするならば、通学問題はネガテイヴの結論になつて来ると思う。しかし私どもが知つておりますいわゆる癩予防の知識としましては、かりに癩が発病するものであつても、今のようにきわめて初期とかあるいは発病を確認に至らないうちというような段階においては他に感染させるということはほとんどないと考えて、実際的にはないと考えてよろしいのじやないかというのが私ども考え方なのであります。そういう点から行けば、今の保育所に収容されております患者の中から、百人のうち一人とかあるいは二人とかいう程度の患者がその後見つけられますとしても、これが見つけられて結節ができうみが出るというころまでそれをほうつておくとなつたらこれはゆゆしい大事でありますけれども、その兆候が現われて来たならば十分厳重な検査をして、そうして早い時期に確定をして癩ときまれば収容所に入れる、さような措置をとつておる限りにおいては、その保育所の中で感染が起る、あるいは保育所にいる子供が他に感染を起させるということは万々ないというふうに私ども考えておるわけであります。
  59. 岡良一

    岡委員 そこで少し食い違いがあるのです。問題は小学校なり保育所なりに収容されておる者が、たまたま癩患者である両親のいずれかの一方あるいはその両親と一年なり二年なり三年なり一緒におつたというならば、その接触の機会があつたわけだから、彼らは感染をしておるし、従つて潜伏期なりにあつたかもしれない、こういう点については早期発見のための健康管理は特に必要になつて来る、この健康管理は別に小学校や保育所を別にしなければできないという仕事ではない、これはかりに患者が零歳において二歳において感染をしても十六か七にならなければほんとうは他に伝染をするような危険を持つような症状に至らない、してみれば保育所なり小学校でこれを分校にしなければならないといういわれはない。それは癩患者が天刑病というまだ残つている日本の古い単なる一片の恐怖感や、一方健康児童のPTAの諸君の恐怖感に屈服しておるのであるから、こういうふうな間違つた考え方をなるべく社会からなくするという努力をやはり厚生省がやるということは、癩患者一つの大きな希望なのです。これはどんな療養所に行つても彼らがひとしく言うことはそれなのです。おれたちは遺伝病じやないのだ、伝染病なのだということを社会に認識させてくれということは癩患者の共通の希望なのだから、そういう点も考えて医学的な癩の危険というものをわかりやすく社会の上に広めてやる。いま一つは事実上の問題として私はかなりこういうことを聞いたのです、それは保育所の保姆さんがあるいは乳児院の保姆さんが、とにかく谷を渡り山を越えて乳をやりたいと来る、これを断り切れないというようなこともあるというのですね、ぼくはそういうことをすれば角をためて牛を殺すことになるのじやないかと言うのですが、かりに局長なりわれわれがその場に立たされて断り切れるかというとなかなかむずかしい問題があるわけです、それはそういう保育所なり乳児院の位置の問題もある、療養所のすぐ近く目と鼻の近くに置いておいたら来ますよ。そういう意味の管理をもつと徹底をする必要があるのじやないかということ、こういう点を今後はひとつ御研究を願いたいということを希望しておくわけです。
  60. 古屋菊男

    ○古屋(菊)委員長代理 次に連合審査会開会申入れの件につきましてお諮りいたします。  本日あらためて地方行政委員会に付託になりました市町村職員共済組合法案につきましては、社会保障制度の見地から、当委員会といたしましても重大関心事でありますので、地方行政委員会に連合審査会開会の申入れをいたしたいと存じますが、その申入れをいたしますことに御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  61. 古屋菊男

    ○古屋(菊)委員長代理 御異議がないと認めまして、そのように決します。なお同連合審査会開会の時日等に関しましては、両委員長において協議の上決定いたしたいと存じますから御了承願います。次会は明十四日午前十時より開会いたします。  本日はこれをもつて散会いたします。    午後一時一分散会