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1954-04-22 第19回国会 衆議院 厚生委員会 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月二十二日(木曜日)     午前十一時二十五分開議  出席委員    委員長 小島 徹三君    理事 青柳 一郎君 理事 中川 俊思君    理事 中川源一郎君 理事 古屋 菊男君    理事 長谷川 保君 理事 岡  良一君       越智  茂君    助川 良平君       高橋  等君    田子 一民君       降旗 徳弥君    安井 大吉君       山口六郎次君    山下 春江君       滝井 義高君    萩元たけ子君       柳田 秀一君    杉山元治郎君       山口シヅエ君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 草葉 隆圓君  出席政府委員         厚生事務官         (保険局長)  久下 勝次君  委員外出席者         専  門  員 川井 章知君         専  門  員 引地亮太郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  厚生年金保険法案内閣提出第一ニ四号)  厚生行政に関する件     ―――――――――――――
  2. 小島徹三

    小島委員長 これより会議を開きます。  まず厚生年金保険法案議題とし審査を進めます。本案はすでに質疑を終了いたしておりますが、現在委員長の手元に自由党、改進党、日本社会党両派共同提案になる本案に対する修正案が提出されておりますので、まずその趣旨弁明を聞きたいと存じます。青柳一郎君。
  3. 青柳一郎

    青柳委員 各党共同提案になりまする厚生年金保険法に対する修正案につきまして御説明をいたします。  まず案文を朗読いたします。    厚生年金保険法案に対する修正案   厚生年金保険法案の一部を次のように修正する。   第三十四条第一、項及び第三、項中「一万八千円」を「二万四千円」に改める。   第四十四条第一項及び第三項第六号第七号、第五十九条第一項第三号並びに第六十三条第三項中「十六歳」を「十八歳」に改める。   附則第十六条に次の二項を加える。  6 第一項の規定による保険給付については、同項の規定によるほか、左の各号に定めるところによる。   一 従前遺族年金の例による保険給付は、十六歳以上十八歳未満の子又は孫にも支給する。   二 従前寡婦年金の例による保険給付は、十六歳以上十八歳未満の子がある寡婦にも支給する。   三 従前遺児年金の例による保険給付は、十六歳以上十八歳未一満の子にも支給する。   四 従前加給金に相当する給付の額は、十六歳以上十八歳未満の子についても、加給する。  7 前項第四号の規定は、この法律施行の際現に障害年金遺族年金又は寡婦年金を受ける権利を有する者に支給する従前加給金に相当する給付については、この法律施行の際現に当該加給金計算基礎となつていない子に関しては適用しない。   附則第十八条第一項中「二万一千六百円」を「二万七千六百円」に、同条第二項中「一万八百円」を「一万三千八百円」に改める。  この修正案につきまして御説明をいたします。まず五点に集約して御説明をいたします。  第一点は、基本年金額のうち定額部分が、政府原案におきましては年に一万八千円でありましたものを年に二万四千円に引上げる点でございます。これによりまして一応定額部分に重点を置いたという意味も含ませることを得まするし、さらにまたこの委員会におきまして定額部分の一千五百円が生活扶助に比して非常に少いという論議につきましても、これによりましてある程度の解決をせんとするものでございます。  第二の点は、遺族年金の子または孫に関する受給資格要件たる年齢につきましては、政府原案におきましてはなくなつた者によりまして生計を維持しておりました十六才の子供となつております。それを十八才未満引上げる点でございます。この点につきましては他の法制などと対応いたしまして、十六才ではまだ少いという論議が多数に行われましたのを是正せんとするものであります。  さらにただいま申しました第二点と同様の意味におきまして、加給金の対象となる子供年齢を十六才未満から十八才未満引上げることとせんとするものでございます。  第四点は、これまた子供または孫の年齢に関するものでございまするが、従前遺族年金寡婦年金遺児年金の例によりまする保険給付に関しましても、子また孫の年齢を十六才未満から十八才未満引上げることとせんとするものでございます。  第五点の修正点は、従前障害年金の例によりまして支給する保険給付の額の最低額は、政府原案によりますると二万一千六百円でございました。これを定額部分が二万四千に引上げられましたのに相当いたしまして、二万七千六百円に引上げる点でございます。また従前遺族年金寡婦年金鰥夫年金または遺児年金の例によりまして支給する保険給付最低額は、政府原案によりますと一万八百円でありましたものを、これまた基本年金額中の定額部分が二万四千円に引上げられましたために、この一万八百円を一万三千八百円に引上げんとするものであります。  修正の点を要約いたしますると、以上御説明いたしました五点に集約せられるものと存じます。  以上修正案の御説明を終ります。
  4. 小島徹三

    小島委員長 以上で修正案趣旨弁明は終りました。  次に厚生年金保険法案及び同法案に対する修正案を一括して討論に付します。山下春江君。
  5. 山下春江

    山下(春)委員 今回提案されました厚生年金保険法案に対しましては、基本的にはこの法案社会保障制度の究極の目的である国民年金というところに持つて行きたいのが私ども考えでございます。いろいろ不満の点もありますけれども、しかしながら考えてみますると、本保険強制加入でございます関係上、今日の経済状態から見まして、小さな企業家はこの保険金を負担いたしますのに相当な苦痛があろうと考えられます。従いまして、この保険金をかけます企業家の方におきましては、どういたしましてもこの強制加入される保険金というものは、その生産される生産品に転嫁されるおそれがございます。従いましてこれに強制的に加入させられることによつて、そのしわ寄せが声なき国民にかかつて来るという点を私どもは黙視できないと思うのであります。従いまして、五人未満の工場、あるいは農民等、まつた国民年金という点から見ますれば零になつている階層がまだ相当たくさんの数を日本国内に見出さなければなりませんが、この声なき人々がこの厚生年金によつて受ける損害を無視することはできませんので、私はその点については非常に遺憾の意を表するものでありますけれども、しかしながらこの法案ができたことに対しては、むろん従来解決されなかつた階層の非常な大きな救済になり、なおその修正されました箇所によりまして将来国民年金を制定いたしまして国民年金に統合いたしますときの一つの基本的な例をここに示したことになりますので、そういう意味において私は賛成をいたすものであります。あるいはまだこの修正されました箇所におきましても十分とは言えないのでございますが、附帯決議もあることでございますので、将来実施にあたりましてこの附帯決議などをも勘案して実施されるならば、必ずや相当の成績をあげることと存じます。  なおこの保険強制加入でございますので、厖大に集まつて参ります保険金管理運営につきましては、あくまで醵出いたしました被保険者の金が不明朗な使途に流れることのないように、できるだけ公正な民主的な運営によりまして、願わくはこれらの零細な被保険者の上に、それらの寄つて来ました利益金が還元いたされますよう、十分に運営に意を用いられまして将来はこれが国民年金に発展いたしますように希望いたしまして、私の賛成討論を終ります。
  6. 小島徹三

    小島委員長 萩元たけ子君。
  7. 萩元たけ子

    ○萩元委員 私は日本社会党を代表して、ただいま上程されております厚生年金保険法案修正案並び修正部分を除く原案に対して、非常に不満ながらこれを忍んで賛成討論をなさんとするものであります。  厚生年金保険制度は、俗に労働者の恩給といわれるものでありまして、わが国社会保障制度の根幹となるべきものであるとは識者の一致する見解であります。従つて今回の全面的改正にあたりましては、まず第一に今日乱雑に制定されている各種社会保険共済年金制度に対し、当然これを統合し、また広く全国民のための国民年金制度へ発展するための十分な顧慮がなされなければなりませんのに、本案におきましては何らその方針が見られません。一例を申しますならば、これまで従業員五人未満事業所には保険適用がなされておらないのであります。これを拡大して中小企業の悪い条件のもとにある労働者生活保障がなされなければならないと存じます。  第二に、年金給付額は当然労働者最低生活を保障すべきものであるべきでありますのに、あまりに少く、とうていその目的を果し得ません。老齢年金にいたしましても、本人一人の場合のほかは生活保護法生活扶助額にも達せず、家族への加給年金遺族年金におきましては問題にならない少額なのであります。生活保護法にありますような住宅扶助医療扶助等もございません。十五年ないし二十年の長きにわたり苦しい生活の中から賃金の千万の十五という少からぬ保険料支払つた労働者やその家族が、かくも冷遇されてよろしいのでしようか。ことに戦時中から戦後にかけて賃金の千分の百二十三というような驚くべき高額の保険料を強制積立てさせられたのに対し、今回の改正によつて基本年金額計算の特例において、標準報酬三千円未満のものは三千円として計算する程度では、労働者は実質的には非常な損害を受けることになります。なぜわが党の主張して来たように、少くとも最終五箇年間の平均標準報酬給付額計算基礎にして、インフレの影響より労働者を守らないのか、まことに不合理きわまるものといわねばなりません。  第に、受給年齢の点でありますが、今回の審議の過程において明らかになりましたように、政府日本人余命年齢については明らかにしておりますが、労働者労働年齢については何ら資料なく、ただ日本人の寿命が延びたというだけで受給資格期間年齢を延ばしている。重労働者坑内夫熱処理事業等従業者を初め一般労働者の退職が大体五十歳である現状から見て、五年ないし十年間の収入の空白ができることは、私どもの深く心配するところであります。  第四に、積立金運営の問題であります。二十九年度末において千百六十億と推定されます積立金については、これを大蔵省資金運用部資金より切り離して民主的運営機関に引渡し、保険関係者福祉効率的運用に用うべしとは識者の一致した見解でありますのに、本改正案は何ら従来の方針をかえておりません。申すまでもなく積立金労働者の零細な血の出るような賃金から支払われているものであります。これが労働者福祉のために還元融資さるべきは当然であります。さらにかかる安定した長期資金が、年三分五厘ないし五分五厘の低利に運用されているとは驚くべきことであります。政府年金給付の低額について、事ごと保険財政が許さぬと申しておられますが、現に共済組合がいたしておるごとく、これを民主的運営にいたします。れば、まだまだ安全で高い利子を得ることは確実にできるのでありまして、これをもつて保険料を高くすることなくして、給付額を多くし、被保険者福祉を増進することは、十分可能なのであります。しかるに各方面の一致した要望を無視して、依然として独善的な一方的運営制度を改めないのは不満の限りであります。  第五に、私はこれまで論議されたことでありますが、女子脱退手当金について、改正案は明らかに改悪であることをこの際繰返し表明し、一日も早く改善されるよう、同性の立場から一層強く要望するものであります。  以上のほか、わが党は、第三種保険者坑内夫のほか、塵埃類を飛散し、あるいは有毒ガス有毒放射線を発散し、または高熱、高圧その他の不健康業務、及び重労働者を含めること、標準報酬を船員保険同様、第一級四千円より第十九級三万六千円までとすること、また被保険者を将来起り得べきインフレより守るために、社会保険審議会は、物価の変動により保険給付の額を一割以上増減する必要のあるときには、厚生大臣に適当な勧告をし、厚生大臣がこの勧告に従い、必要な措置を講じなければならないこと、また年金額計算するには、定額三万六千円に、被保険者であつた最終五箇年間の平均標準報酬を基準とする報酬比例額を加えた額とすべきこと、また老齢年金免税にすること、また年金受給資格期間並びに年齢を、坑内夫等については十二年並びに五十歳に、一般については十五年並びに五十五歳にし、また障害手当金の額を、基本年金額の百分の二百、遺族年金額老齢年金額の五分の三にし、また遺族一時金の制度を復活するよう改正すべきであると考えます。さらに障害年金の等級を合理化し、また年金給付に対する国庫負担を三分の一とするほか、各党其同附帯決議をすみやかに実現することを切望するものであります。  以上討論で明らかなごとく、この法案並びに修正案に対して、非常に不満であることは、当委員会において論議して来たことでおわかりのことと思います。しかしながらわれわれは昨年十一月以後給付されることになつております坑内夫諸君老齢年金を、たといわずかでもよくするために、涙をのんで賛成するものであります。  なおすみやかに給付額等について、被保険者並びにその遺族等について、人たる生活にふさわしい生活がなされ得るよう改正されんことを、深く期待する次第であります。
  8. 小島徹三

  9. 杉山元治郎

    杉山委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となつておりまする厚生年金保険法案について各派共同修正案賛成し、残り本案にも、左派の諸君と同じように、涙をのんで賛成をいたすものであります。(笑声)  今萩元委員の申しましたと大体同様の意見を持つておるのでありますが、厚生年金は、申すまでもなく労働者保険でございまして、これは経営者保険ではございません。ですからほんとう労働者諸君の期待に沿うようにしなければならないと存ずるのであります。しかし国家財政の点もございまするので、私どももあながち全幅的に労働者諸君の意をいれるということはできないことも承知いたしておりまするが、少くともこの保険の性質にかなうような改正がなされなければならない。またたびたび社会保険審議会なりあるいは社会保障制度審議会なりが政府勧告いたしておりまする点が、盛られておらなければならない、こういうように考えておつたのでありますが、遺憾ながらその点は非常に少い。なおかつこういうような改正の場合に、各種社会保険がまちまちでありますことは、窓口においても困りますし、またこれを扱うところの医者においても困ります。どうしてもこれは統一されなければならぬということは、一般の声でありましたか、その点にも何も手をつけておらない。いな時によれば、逆に地方公務員保険ができて、なお窓口を多くし、統一を乱しておる。こういうような傾向すらも見えることを私どもは非常に遺憾にいたしておるのであります。  そこで萩元委員も申しましたが、私どももこの保険をいたしますことは、国民年金の一歩前進をする、こういう建前からいたしまして、労働者においても少くとも単に五人以上の事業所の方々だけでなしに、五人未満事業所の方においてもこれは当然入れなければならない、こういう考えを持つておるのでありますが、当局はこれは調査がめんどうであるとか、あるいは給付の問題がまちまちである、こういうような事務的なことからいたしまして、これを欠かれておることを非常に遺憾に存ずるのであります。  なお第三種保険人たちも、単なる坑内夫だけでなしに、坑内夫と同等の重労働、あるいはそういう状態にある労働者諸君を、第三種保険の中に入れるように拡大すべきでありますこと。なお今修正において一万八千円が二万四千円に引上げられた。これは一万八千円ではいわゆる生活保護と大差はない。いな時によれば低い。こういうことでは、年々積立てて来た労働者諸君と、あるいは自分のあやまち、あるいはそれでないまでも、ただ保護を受ける、そういうような人たちと同等であるということを、私どもはどうしても考えるわけには行かない。こういう点がいれられまして、二万四千円に修正がされたのでありますけれども、た、た五百円多くなつたということでは、これは生活保護よりも少しあるいは上まわつたかもしれませんが、これをもつてほんとう労働階級老齢年金になる、またそれによつて生活保護されるというものにはなつておらないと思うのでありまして、少くとも私どもが要求いたしましたように、三万八千円にされなければならないと思うのであります。  それとともに、こうした老齢年金を受取る場合におきましては、ただ所得であるということで、また税務署がこれに税金をかけるようなことがあつてはなりませんから、そういう点についても免税の点を十分に考慮しておかなければならないのでありますけれども、この法律にはそういう点が明らかになつておりません。どうかそういうわずかの所得におきましても税金をかけられるというようなことのないように、これを免除するような方法を講じてもらうことを、私はぜひこの法案の中に考えてほしいことを申し上げておきたいと思うのであります。  なお積立金の問題につきましては、あとで附帯決議が出ますので、私は詳しく申し述べませんが、ぜひ積立金が民主的に運営されて、しかもこれが労働者福祉のために用いられる――この附帯決議のうちには老人ホーム等のことが書かれておるようでありますが、特につけ加えておきたい点は、今労働者住宅に非常に困つておるのでございますから、労働者住宅のごときに特に用いらるべきであるということであります。働かないでよい人間がりつぱな家に伸び伸びしておる、働かなければならぬ、生産する人が、実に裏長屋におる、こういうことでは生産が上りません。どうしてみてもほんとう生産を上げて行こうとするのには、労働者に十分の休養のとれるような住宅が必要であるということを私どもは痛感いたしておりますので、積立金運用、使用につきましていろいろ考えられましようが、附帯決議のほかに、私は労働者住宅の建設のために特に用いていただくということの、私どもの希望の一端を申し述べまして、また附帯決議が単なる附帯決議として置かれるのではなくして、一日も早くこのことが成就されるように当局に要請いたしまして、はなはだ簡単でございますが、私の討論を終ることにいたします。
  10. 小島徹三

    小島委員長 以上で討論は終局いたしました。  採決いたします。まず自由党、改進党、日本社会党両派共同提案になる修正案を可決するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 小島徹三

    小島委員長 御異議なしと認めます。よつて修正案は可決いたされました。  次にただいまの修正部分を除く、残り原案について採決いたします。本部分原案の通り可決するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 小島徹三

    小島委員長 御異議なしと認めます。よつて本部分原案の通り可決いたされ、本案修正議決いたされました。  次に青柳一郎委員より附帯決議に関する発言を求められておりますので、これを許可いたします。青柳一郎君。
  13. 青柳一郎

    青柳委員 各派共同提案になりまする附帯決議案について御説明申し上げます。  まずこの決議案を朗読いたします。     附帯決議案   今回提案せられた厚生年金保険法案を見るに、将来勤労者のための年金制度中核体となるべきものとしては、未だ不満とする点が少くないが、政府は次回の改正期までの間に可及的速かに適用範囲従業員五人未満事業所へ拡大し、又標準報酬については、健康保険法等と同様その最高額を三万六千円まで引き上げる等、これが内容充実を図るとともに、進んで国民年金制度樹立への基礎として、まず現行各種年金制度について綜合的見地より根本的改正を行うことに最善の努力を払うべきである。   なお本法案運営に関しては、政府は速かに次の諸施策の実現方に邁進すべきことを要望する。  一、巨額に上る厚生年金保険積立金管理運用については、効率的民主的措置を講じ、特に醸出者の意向を反映し得るよう工夫すること。  二、老人ホーム等収容施設及び療養施設を増設して年金受給者年金により老後生活を営み得る方途を講ずること。  三、年金受給権担保とする金融の途を講ずること。   右決議する。  簡単な説明を加えます。ただいま各党討論の中にもありましたように、この厚生年金保険は、現在におきましてもすでに七百五十万人に及ぶ被保険者を擁し、現在すでに八百億に上る積立金、さらに来年の三月末になりますと、一千百億円に上る積立金を擁するものでありまして、政府当局の御意見にもありましたように、この厚生年金保険こそは、各種年金保険中核体をなすものであるということははつきりといたしておるのでございます。しからばこの厚生年金保険中核として、さらに将来の国民年金への発達を期待することこそ、われわれの任務であると存ずるのでございます。従いましてこの前段におきましては、そのうちの具体的なものを二つあげてあります。一つは現在適用を受けておりません五人未満を使用する事業所に雇われている人につきましても、この適用範囲の拡大を、おそくとも五年後の改正期までには実現する、この間においてできるだけすみやかなる機会に実現するという点、さらに標準報酬月額を、現行の八千円を今回一万八千円に上げられましたが、さらに他の健康保険法などと同じように、三万六千円まで上げる、この二つの具体的な方法をここに示しました。こういう方法によりましてさらに本年金制度充実発展をはかる。そして国民年金に一日も早く到達するように希望するのが前段趣旨でございます。  さらに後段におきましては、これに伴いましてまず第一点といたしまして、多額に上る積立金運用――現在ではこれが五分三厘の運用にしかなつておらぬのでありますが、この運用をもつと効率的にいたしまして、それによりまして年金額の増加、あるいは保険料の低減というようなものをはかるべきであると同時に、この年金保険法強制貯蓄によるものであります。そういう趣旨を十分と参酌せられまして、今までの、また将来における事業主労働者国家への貢献という点もよく認識せられまして、これら労使双方意向がこの積立金運用に現われるような措置をお願いいたしたいというのが第一点であります。  第二の点は、老人ホームあるいは療養施設をつくられまして、年金受給者がただでそこで生活し、さらに療養を受ける措置を講ずるようなくふうを、できるだけ早くしていただきたいというのであります。  第三点といたしましては、すでに年金受給する資格を発生いたしました方につきまして、その受給権担保として金融措置を講ぜられたいという趣旨でございます。  以上本附帯決議案につきまして御説明をいたした次第でございます。
  14. 小島徹三

    小島委員長 ただいまの御発言本案附帯決議を付すべしとの動議であります。お諮りいたします。青柳一郎君の動議通り本案附帯決議を付することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 小島徹三

    小島委員長 御異議なしと認めます。よつて附帯決議を付することに決しました。  なお本案に関する委員会報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 小島徹三

    小島委員長 御異議なしと認め、そのように決します。     ―――――――――――――
  17. 小島徹三

    小島委員長 この際柳田委員より厚生行政に関して発言を求められておりますので、これを許可いたします。
  18. 柳田秀一

    柳田委員 最近京都におきまして国会議員遺族大会出席をいたしましたところ、退席を命ぜられたという非常なる不祥事件が発生いたしましたにつきましては、われわれ遺家族援護の問題に対して、従来より超党派的に、真に戦争による犠牲者に対して、われわれとしてできるだけのことをして来た厚生委員会として、かくのごとき事態の発生をまことに遺憾といたしますので、大臣から所感を伺い、あわせて各党の各位からも御意見が伺えるならば幸いと思います。  まず大臣に御質問したいと思うのでありますが、初めに事件の概要を四月十五日の毎日新聞が報道しておりますので、簡潔にそれを申さしていただきます。「十四日草葉厚相を迎えて京都円山公園音楽堂で開かれた京都府下遺族大会で主催者側が参議院厚生委員藤原道子、安部キミ子両議員の退席を要求するという事件が発生、両議員は押問答の末退席したが、帰京のうえ近く参院厚生委員会で問題としてとりあげるためいきさつを報告することになつた。同遺族大会は十四日朝行われた京都護国神社合祀祭に引続き午後零時半から京都府遺族会、京都市遺族連合会の共催で遺族約五千名を集めて開かれ遺児の育英費全額国庫負担遺族扶助料支給の促進など六項目を決議したが、会の中ごろ参議院厚生委員資格で会場に現われた藤原、安部両議員に対し司会者の稲荷多良助氏(京都府遺族会常任理事)が「京都府下だけの内輪の大会だから退席していただきたい」と要求、両議員が「遺族の声を聞くことは厚生委員の重要な仕事だ」とこれに応じなかつたところ、さらに京都府遺族会長の中川源一郎代議士も来て「遺族だけの会合だから会場から出てほしい」と再三要求したため両議員も遂に退席した。」こういういきさつでございます。この問題に対していずれあとから私も意見を述べたいと存じますが、当時御出席になつておりました厚生大臣として、また所管事項でありますので、まず御所見を承りたいと思います。
  19. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 ただいまの柳田さんの御質問の十四日の遺族大会には、私も出席いたしたのであります。私が出席いたしましたのは午後一時半ごろであつた。ただいまお話のありましたその席に藤原さん、安部さんが見えておりまして、ことに安部さんから、私ども出席したのであいさつをしたいと申し出たが、主催者はきようは日程が組まれておるので遠慮してほしいということだが、大臣からも一言、あいさつができるように言つてもらいたいというお話がありました。よく主催者にお話になるといいじやないでしようかというので、そのことを私からも主催者に申したのでございます。私が参りましたときは退場という話は全然ございません。そこで私に対する主催者側の話では、きようは京都府内の各党の方々にも別に案内を出しているわけでもないし、従つてこういうプログラムで進んでおりますから、プログラムの通りにいたしたいというので、それを藤原さんも安部さんもよく御了承になつたと存じますが、私があいさつしました前後であつたと思いますが、その会場を出られた。むしろそういう状態をお知りになつて、せつかく出席されてもそういう事情ならあいさつをせずに帰つた方がいいだろうというのでお帰りになつたと思うのでありまして、むしろ議員としてたいへんごりつぱではなかつたか、私自身としてはこういう感じを受けました。あとで私あいさつしまして、いろいろ援護法その他最近国会を通過しました一部改正、また当委員会等で特に質問がありました親の結婚等の点について話をしましたが、私の話の前に主催者から、せつかく国会議員の方が御出席になつているけれども、きようはこういうプログラムで進んでおりますから、ごあいさつ等も願いたいが、願えないのははなはだ遺憾です。御出席に対しては、厚くお礼を申し上げますというあいさつをしておられた。そこでそのようなことが両方とも都合よく済み、また来会しておる人々もむしろごあいさつ以上にそういう気分を受けられたと私は存じて、私はあいさつをいたしましてから、次の用事がありましたので退席いたしたような次第でございます。
  20. 柳田秀一

    柳田委員 私は、国会議員が退席を要求される――いやしくも国民の代表であり、しかもその府県におけるところの遺族大会において、当然国会においてわれわれが審議するような要求事項、決議事項が掲げられておるようなこういう大会で、国会議員が退席を要求されるそのこと自体に大きな問題があると思います。しかしきよう私の問わんとするのは、先ほど申しましたように、この遺家族の援護に対しては超党派的にやつて来た。ことに遺族会等に対してはあとからも申し述べますが、われわれとしては遺族会に関係するところの法律審議して来た際にも、最近遺族会が非常にボス化して来ておる、一部政党の食いものになつておる、一部政党というよりは一部国会議員の自分の選挙のために利用されておるというような声を耳にするのでありますが、私たちは、厚生委員として遺家族の援護にほんとうにわれわれの力の限りを尽したいという立場から、やはりこういう遺族会というものは健全な運営をさせたい、育てて行きたいというのが厚生委員全体の念願であると思います。将来これを正しい道に持つて行きたいという念願から質問するのでありますから、そういう意味でお聞き取り願つて、虚心担懐に簡単に一問一答式にお尋ねします。大臣においては、最近遺族会がそのようにボス化しておるとか、あるいは一部政党人の自己の利益のために利用されておるというような風評をお聞きになつたことがありますかどうか、簡潔にお答え願いたい。
  21. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 現在の遺族会になります前の遺族厚生連盟等におきましては、そういう風評がないでもなかつたかと存じますが、その後改組いたしまして現在の遺族会になりましてからは、この委員会あるいは参議院の厚生委員会等での審議状態そのものが反映いたしまして、挙党一致で、別に政党的な色彩というものはなくなつておると考えております。
  22. 柳田秀一

    柳田委員 ところが現に京都府におきましては、ただいまの厚生大臣のお言葉をまつたく否定するような事件が起つておるわけであります。この円山大会におきまして、きようは京都府下の内輪の大会であつて、主として国会等に働きかけをし、決議をする、府下の衆参両議員には御案内をしておらないのだから出て行つてほしい、こういうわけでありましたが、時たまたま京都府知事選挙の最中で、立候補されておりました一候補者が――日本赤十字社支部長の肩書きの方でありますが、日本赤十字社支部長という現職を辞職もせずして、日赤の支部長の資格のままで立候補されたことすら私は疑問を持つておりますし、問題もあると思いますが、その方には出席を認めておるわけであります。しかもその方には政党が応援しておるわけでありまして、その後その方に対するところの支援決議をしておるわけであります。こういうことは明らかに、今大臣がおつしやつたような超党派というような点とは全然矛盾しておるという一つの事例であるわけであります。これが明らかにそういう意図のもとになされておるということは、もうだれしも解釈できる。これは御答弁はいりません。いかに大臣が否定されても、これは厳然たる事実であります。そこでお尋ねいたしますが、そういうような大会において、国会議員としてことに厚生委員として出席した者に対して退席を要求するというようなことは妥当な行為であるかどうか、これは京都の大会でなしに一般論として、厚生大臣は率直にどうお考えになりますか。
  23. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 一般論といたしまして、もちろん必ずしも厚生委員でなくとも国会議員として当然御出席になつて、退席を求められるというような事件ではないと思います。京都の場合は退席ということで載つておりましたが、私のおりますときにおきましては、ごあいさつの問題であつたのであります。私もごあいさつをいたしましたが、そういう意味においての話し合いであつたと存じます。しかし一般的にはもちろんそこで遺族の声を聞くということもこれは適当であろうと思います。
  24. 柳田秀一

    柳田委員 私は党利党略のために言つておるのではありませんので、これは虚心坦懐にお聞取りを願いたいのですが、そこで非常に問題になりますのは、当日主催者側から中川代議士談で「遺族会は政治結社の届出もしており特定の政党の人に退席してもらつても問題はないはずだ。」ということを言つておるわけであります。自治庁で調べてもらいますと、政治資金規正法に対するところの団体としての届出をしてあるそうでありますが、こういう遺族会が政治結社としての届出をしてあることに対して大臣はいかがお考えになりますか。
  25. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 政治結社の届出は実は国会等に対しまする政治的な運動と申しますか、する場合においてどうしても政治結社として届け出ておかないといかないということが、当時占領下でもございましたが、そのときにもそういう事例があつたわけであります。従いまして私どもも当時遺族会に関係しておりますが、遺族会が政治結社の届出ということはおかしいじやないか、しかし陳情一つもいかないという、そういう当時の話でございました。これは私自身がやつてつたときのことでございましたから、あるいはどうか、私が当時受けた内容でございます。そこでそういう意味で府県では政治結社の届出をほとんどいたしておる、しかし私どもがいたしておりましたところではいたしませんでした。それでもしかし大多数のところはいたし、その後その組織がかわりました現在ではおそらく政治結社の届出をそういう意味でしておる、そういう意味で国会に対しましても遺族関係の立法措置に対する政治運動等を行つておる、こういうふうに考えております。
  26. 柳田秀一

    柳田委員 なるほど大臣のおつしやるように、たとえば国会等に政治的な陳情をしなければならない、そういう意味において政治結社の届出をせられたというのならば、百歩譲つて了とするところもあります。しかし中川代議士談のように「特定の政党の人に退席してもらつても問題はないはずだ。」こういう言明に対しては大臣ほどういうふうにお考えになるか、将来のために大臣に率直に良識を持つてお答えを願
  27. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 これは私が今まで申し上げた御答弁で私の意中は御了承いただけると存じます。
  28. 柳田秀一

    柳田委員 大臣も男でありますから、一応はよくわかります。わかりますが、しかしこれは事はそういうことだけでなしに、明白にあなたからはなはだ遺憾であつたというぐらいなことは当然所管大臣として言つていただかなければならぬ。このくらいのことは大臣として御発言願えませんか、いかがでございますか。
  29. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 京都で私のおりましたときに受けましたのは、退席という問題ではなしに、あいさつという問題であつたと思います。一般論の場合には、これは今後そういう退席ということが起ることは私は常識的にはないと思います。ただあいさつとか、特定の場合には、あるいはプログラムとかいろいろな関係で起り得ることはあるのではないか。
  30. 柳田秀一

    柳田委員 そこで問題になりますのは、昨年第十六国会でしたか、財団法人日本遺族会に対する国有財産の無償貸付に関する法律案というのが出て参りました。これは御承知のように遺族会に財団法人の軍人会館が所有しておつたところの国有財産の建物を無償で貸し付けようという法律であります。この法律審議するときに、われわれ厚生委員会といたしましても、いろいろ問題になつておりますような、遺族会が一部のボスにあやつられたり、一部の特定政党のために利用されたり、一部の特定政党人の自己の利益のために利用されておるとか、あるいは遺族会を食いものにして生活しておるというような風評もありますので、われわれ厚生委員会遺族会にこの旧軍人会館を利用せしめることにおいては賛成でありますけれども、その間において非常に懸念いたしたのであります。従いまして厚生委員会では慎重に審議いたしました結果、小島委員長の名前におきまして附帯決議をつけております。その附帯決議の後段におきましては、遺族会は明朗にして民主的なるを期し、政府は適切なる監督措置を講ずることということを要望しております。そうして遺族会の役職員の解職等に対しても、政府厚生大臣の監督権の強化をわれわれは附帯決議しておるわけであります。しかるにもかかわりませず、われわれの杞憂が現実にここに実現して参つたわけなのであります。こういうふうに遺族会が特定の政党を支持するがための団体に利用されたり、あるいは特定の政党人の当選を得せしめる目的をもつて利用されたりするようなことになりますならば、われわれが昨年審議いたしました、旧軍人会館を遺族会に与えるというこの審議そのものをもう一度考え直さなければならぬ事態に来ておると思うのです。これに対して厚生大臣はいかがお考えになりますか。これをひとつお伺いいたします。
  31. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 昨年の元軍人会館の払下げについての当委員会附帯決議等につきましてはよく承知しております。従いましていわゆる遺族会として一方の政党を政治的に、というあり方は、私たちはとらざるところでありまして、遺族会自体の円滑なる発達をこいねがい、また指導して参りたいと存じます。
  32. 柳田秀一

    柳田委員 先ほども大臣からこの退席を要求したというようなことは大臣として言外に行き過ぎである、遺憾であるという意味の御答弁があつたのであります。しかし京都の問題に顧みまして、こういうような措置をとつた京都の遺族会に対して何らか適切な措置を大臣としてはおとりになる御意思がありますかどうか。これはこの軍人会館等とからみ合せまして、当然遺族会に対してはそういう経理内容の監督だけでなしに、やはり会の民主的な明朗な運営ということに対する附帯決議を尊重される建前からも、その構成団体である京都の遺族会に対して、何らか適切な措置をお講じになられる意思があれば、これをひとつ明確に御答弁願いたいと思います。
  33. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 京都の大会につきましては、私自身が出席いたしましたので、従つて私自身が出席しております範囲におきましては、今申し上げたように両方とも至つて紳士的な態度をもつてのごあいさつの問題の話合いであつたと承知をいたしております。従つてこれを一般にも吹聴し、また一般人たちもあいさつをされる以上に、これらの方々の出席に対しては感動をしておつたと思いますので、従いましてその印象を持つて帰りましたから、あとで新聞を見て実は私もびつくりしたような次第であります。それでこの新聞の記事がほんとうであるかどうか、あるいは取消すなり、また京都の遺族会にどうこうということは今では考えておらない次第であります。
  34. 柳田秀一

    柳田委員 はなはだもつてのほかのお答えを聞いたのでありますが、現に当事者である藤原道子君から聞いたところでは、再三再四入りかわり立ちかわり五人の方が来て、最後には二人の婦人議員を追い出すがごとくに退席を要求したということが事実であつて、何も好んで退席したわけではありません。いやしくも国会においてわれわれの厚生委員会が主として審議する幾多の決議案に対して、この遺族の血の出るような叫び声をちまたにおいて十分くみとることがわれわれ国会議員の任務であると思つてこそ、両議員は行つておられる。それに対して退席を要求した。こういう事例に対して大臣の言われるように、本人は納得して退席したのでもなければ、紳士的に退席したのでも何でもない。一方的にかわるがわる五人が来て執拗に退席を要求したので、遂に憤然としてよろしい、それなら国会においても問題にするといつて退席しておりますので、従つてこういう問題に対しては、これを一つの例として全国の遺族会に対して、大臣としては適切な措置を講ずるのが当然ではないかと思いますが、重ねてお尋ねいたします。
  35. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 実は藤原さんと安部さんがその席を立たれたときには私はおりましたから、従つてその他の方が御出席になつてつたかどうかは存じません。お二人のお帰りになつたときには私がちようどおつてそうして私にも、さきにお話にありましたように、あいさつをしたいからあなたからもひとつあいさつができるように話してくれないかというお話で、これを助言いたしたのであります。そういう関係で、私は事実その席におりましたが、憤然として立ち上つて帰るというようなことじやなかつたと私は考えておる。それで藤原さんが安部さんに、もうこの程度で帰ろうかというのでお帰りになつたと私は承知いたしておるのであります。
  36. 柳田秀一

    柳田委員 大臣の御答弁よりも本人が言つていることが確かであります。従いましてこの問題は、国会議員に対して退席を要求したということ、そのことが問題である。遺族会が特定の政党に利用され、特定の政党人の自己の利益に利用されるということが問題である。ボス化されておるということが問題である。あるいはこの軍人会館の無償貸付等に対しても、遺族会の明朗な民主的な運営いうことをわれわれが院議をもつて附帯決議しておることでもあるし、そういう点で大臣の御答弁は、当の藤原議員に私が聞いた話によりましても食い違いがございます。しかもこの問題は、将来われわれ厚生委員会として遺族の援護の問題に対して真剣に考えて行かなければならぬ大きな問題を含んでおる。さらにまた軍人会館等を無償貸付で利用せしめんとする遺族会でありますから、われわれはこれをこのまま不問に付するわけには行かぬと思います。従いまして今後遺族会がこのような誤つた姿でなしに、ほんとうに正しい姿に持つて行かんがためには、われわれはやはり事態を究明しなければいかぬ、そういう意味において私は委員長におとりはからいをお願いいたしたいのでありますが、近き機会にこれに関するところの当事者を参考人として呼んでいただいて、この問題をもう少し究明していただいて、われわれとして党利党略の問題でなしに、真剣に遺家族のために、ほんとうに民主的な遺族会になつていただくように、またその遺族会と手をつないで、われわれ厚生委員会としてはあたたかい援護の手を差延べられるように、各党各派が遺族会に心から協力して、遺族のためにほんとうの万般の施設をやつて行けるようなためにも、私は委員長においてどうか格段の御配慮を願つて、参考人を呼んでいただくような機会を持つていただきたいということを要求しておきます。
  37. 小島徹三

    小島委員長 柳田君にお答えいたします。参考人招致の件に関しましては、いずれ理事会を開いて相談いたします。しかし発言の内容は相当重要でございますので、委員長自身から厚生大臣に対しましては慎重に考慮せられんことを要望いたしておきます。  次に山口シヅエ君。
  38. 山口シヅエ

    ○山口(シ)委員 私もただいまの柳田先生の御意見について同感するものでありますが、私も実は十四日に起きましたこの退席事件の記事を見てまことに遺憾に感じた一人であります。そこでたいへん掘り下げた御質問でまことに恐縮でございますが、大臣はこのような会に各府県どの程度御出席なさつていらつしやいましようか、また御記憶がございましたら何箇所くらい御出席なさつておられましようか。
  39. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 私は実は遺族の大会等には時間が許します限り努めて出ておりまするが、最近のは今の京都なりその他近府県あるいは愛知県等でございます。
  40. 山口シヅエ

    ○山口(シ)委員 それでは三箇所程度と承知いたします。それで主催者側ではたいへん内輪の大会であつたと申しておりますが、大臣はどういうお感じでありましたでしようか。
  41. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 何でもその日朝合祀祭が京都の霊山の護国神社であつて、それに遺族が参拝し、それから大会ということになつた、もちろん京都の遺族の方々の会合だと思います。
  42. 山口シヅエ

    ○山口(シ)委員 たびたび恐れ入りますが、大臣はやはり大臣の御資格で御出席なさいましたか。
  43. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 大会には大臣の資格出席いたしました。
  44. 山口シヅエ

    ○山口(シ)委員 大臣の資格で御出席なさいまして、大臣の立場でごあいさつをなさつていらつしやるわけだと私は存じます。そこで私は特にこの退席を命ぜられた方が婦人議員でありましたために、一層強くこの問題に関心を持ちましたが、おそらくこの婦人議員お二人も国会議員としての資格でそちらにごあいさつに上つたものだと存じます。私どももたびたびこのような会に出席をさせていただいておりますが、おそらく招かれざる客であつたといたしましても、国会議員資格として出席いたしました場合は、たとい時間がございませんといたしましても、何らかの方法で一分あるいは二分のあいさつは必ずさせてくださつているものでございます。この場合も同党の方がお二人出ていられるのでありますから、たとい片方の方だけでも一分、二分の簡単なあいさつであつてもこの場合させるのが私は常識ではなかつたかと考えます。それにもかかわらず退席を命じたということに、私はこの当日の会に非常に疑問を持つ上に、また選挙運動で各党派が非常に熱心にその候補者のために協力をしていたという当時の事情を考えてみましても、私どもも特に野党であるからひがむのではございませんが、ただいまの大臣の御答弁に対してもはなはだ納得の行かないものを感じたものでございます。大臣もよくお考えくださいましてその点をもう一度あらためて御答弁を願いたいと考えます。
  45. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 退場をするというようなことは普通ちよつと考えられぬことであります。ただあいさつとなりますと、私も再三遺族会の他府県の大会に出ましたが、あいさつをしなんだことは数度ございます。これはいろいろプログラムの順序なり時間の関係等からでありますが、しかし私がおりましたときには、京都の問題だけはこうしておいでになつておるけれども、プログラムの関係でごあいさつをなされぬことははなはだ遺憾であつたと断つてつたくらいであります。それだけ私は聞きましたから、従つてその前にあるいは何かいきさつがあつたら別でございますが、そういう意味であつただろうと思います。  先ほど柳田さんのお話にもありましたが、遺族会というものは私は一政党政派の政治運動のために結成されたものではないと考えます。これは当然今回の戦争における戦死者の問題についてともどもに同じような人たちが協力して、力も十分いただいてその目的を達するようにむしろ相互的な修養あるいは向上のための一つの会合である、こう考えておりますので、今後もそういう方針で間違いのないように指導をいたして参りたいと考えます。
  46. 山下春江

    山下(春)委員 今回のこの問題ははなはだ遺憾な問題だと思つております。退場を命じたということは非常に没常識な行動でございまして、いけないことであります。遺家族あるいは留守家族などの心情はわらをもつかみたいようないちずの気持を持つております。政治家というものはけしからぬ者で、自分たちの野望を達成するために、それらの純真な弱い人々をいつも利用するなどというような考え方が政治家の中にあることが遺憾なことであつて、そういうことを是正するために引揚委員会において各県の遺家族の団体とかあるいは留守家族の団体とかいうものの会長に、国会議員がならない方が好ましいということのために、最近国民運動総本部の解組をいたしまして各党から国会議員にこれの運営に御参加を願つて各県においてこれらの団体の長に国会議員がおなりにならないことが望ましいという運動を今起しつつあるのであります。  京都で起りました問題は、ちようど私も十四日は京都に応援に行つてつたのでございますが、実は私も招かれないのでそういう会合があつたなかつたかを存じません。しかしながらたまたま今回は、名前をはつきりあげて言えば、自由党中川源一郎議員が会長であられたために、非常に自由党の党利党略にこの遺族団体が使われたということになりますが、これは社会党の先生方にはなはだ恐縮でありますけれども、必ずしもそうばかりでなくて、留守家族の人々からいいますと、シベリアの引揚げなどというものは、あるいは大山郁夫先生のおかげ、あるいは高良とみ先生のおかげ、こういつたような宣伝が全国に流布されておりまして、その点はいずれも同じであります。従つて私はかような純真なわらをもつかみたいような、しがみつきたいような、いちずの弱き方々を利用しようとする国会議員の根性が大体けしからぬと言うのでありまして、そういうことに対しまして厚生省が関与するわけには参りますまいけれども厚生大臣におかれましては少くともこういつたことが公正に行われるために――私どもは今、国総を解組しまして国会議員は全員がこの国総の委員になりまして、地方においての団体の長にならないことが好ましいという運動を起しております。私も野党の一人でありますが、野党だからひがむというわけではありませんが、これはどうしてもそういう会が催されますと――私どもはあいさつをしたがらない方でありますから、しろと言われる方がむしろ迷惑なくらいでありますけれども、じつと見ておりますと、とかく与党の方がそういうところに立つという事例が多いのであります。しかし考えてみればあわれな根性で、そういうところへ行つて一番困つている人々に向つてつてな熱を吹いて、そして支持を得ようなどというあわれな根性を持つ国会議員というものは実際情ないと思うのであります。そういうことでなく、遺家族問題あるいは留守家族問題というものはだんだんと生活が今年度あたりから相当きびしくなると思います。従つていろいろな訴えたい問題も起こつ来ようと思いますので、これら運営の点にわれわれが明朗に、ほんとう他意なく御協力するという態勢をつくるくらいなことは考えなければならぬことで、これは議員自身も考えなければなりませんが、直接その衝におられます厚生省といたしましては、われわれの今の解組いたそうということ、地方のそれらの団体の長に国会議員がならないことが好ましいという線にひとつぜひ沿つていただきたい。今回のような不祥事が起つて参りまして――おそらく退席を要求されたということは私はほんとうであろうと思うのです。どういう状態であつたか現場におりませんからわかりませんが、ほんとうであろうと思われるような感じがいたします。そういうことははなはだおもしろくないことでありますが、ただあいさつをするとかしないとかいうことは、やはりそういう会合を持ちます責任者は、プログラムが一ぱいでございまして一分も余裕がないという場合があり得るのでありますから、これは要求すべきでもないし、断ればよろしいのであります。しかしながら国会議員を退席せしめるというようなことは、これはいくら考えましても没常識であつて許せないことであります。過ぎ去つたことはいたし方ありませんが。そこで私は今柳田委員からの御要求のここに参考人を招致して、その事情を聴取するということは、私はお願いをする資格はないのでありますけれども、もはや済んだことで、厚生大臣としては将来さような事件の起らないように御配慮を願つて委員会に来てお互いが水かけ論をやりましてもこれ以上の議論は出ないと思いますので、何とぞひとつ柳田委員におかれましては、委員長にお申出の件は厚生委員会の一員といたしまして何とかごかんべん願つて、この退出を命じたことは悪いことだと私は存じますがゆえに、ひとつその点を折れ合つていただいて、今後こういうことのないように厚生大臣から御言明をちようだいすれば、中に立つて努力をいたしたいと思います。
  47. 草葉隆圓

    ○草葉国務大臣 実は現在各府県の遺族会を見ますると、お話のように国会議員の会長の方が、全体としてちよつと数ははつきりいたしませんが、衆参議員を入れますと十名内外おありだと思う。これは各県の模様によつても違いましようが、私の承知しております範囲の点から考えますと、町村で遺族会長を選び、その遺族会長が郡で選び、その郡がまた県で選ぶというような下からずつとやつて来ておるような会であります。こちらからこういう処分をしてはいけないということはちよつと言いにくいいわゆる民主的な団体だと存じております。しかし一面から申しますと、弊害さえなかつたらたいへんいいような場合もたくさんあると思います。従いまして今後の遺族会の会合等におきましては、ただいま御疑念のような点は私どもも十分これら全国の遺族会に伝えまして、誤りのないことを期して参りたいと思います。
  48. 中川源一郎

    中川(源)委員 京都の遺族大会のことについての御発言で、私最初から承つておりませんので何でございますけれども、一言誤解のないように申し上げておく必要があると思います。  実は先般の四月十四日、五日は毎年慰霊大祭を行うということになつておりまして、私は京都府の遺族会長でございますから、私の責任において大会を開いた。大会の前に慰霊祭を行つた。慰霊祭も大会も私の方からお招きをしておるわけです。お招きをしてない方に対しましても、慰霊祭にわざわざ御参拝くださいました方にお参りをいただいております。それから先日参議院の方がお見えになつて慰霊祭に御参列になりました。それにつきましてはお招きはしておりませんけれども、バツジをおつけになつた参議院の方でございますので、わざわざ御参列くださいましたことにつきましては感謝の意を表し、そうして玉串を奉典していただきました。その後に遺族大会というのはその現場では行つておりません。それは円山音楽堂の方まで参りまして、今度は内輪の会ですから、遺族のみの会で、遺族以外の方には出席はお断りしております。それて大臣だけは、四名の大臣は特にこちらから御招待を申し上げ、大臣以外の御意見を聞かないということに役員会で決定しております。(発言する者多し)よく聞いてから御発言なさい。それからそれは特定の人だけです。その場所はだれでも入れる場所ではございません。これは料金を払つて、柵を設けてその中にたれでも自由に入れるところじやありません。招待申し上げておる遺族だけの特定の人が入れるのでず。どなたの紹介で、どなたの御案内でお入りになつておるか知りませんが、国会議員だからどこへでも行けるということはないと私は思います。京都府選出の国会議員は十数名ありますが、それらの方々にも御招待申し上げておりません。そしてその際に大野木秀次郎氏もおられた。この方は奉讃会長です。特にお招きしてもよろしいのですが、当日は衆議院も参議院もそういう方はお招きしておらぬ。特に四名の大臣、ことに厚生大臣をお招きし、そして恩給に関係のある加藤国務大臣、こういう方々をお招きして大臣だけの意見を聞こう、それから東京から長島銀蔵という日本遺族厚生連盟の会長を前に七年間やられたのですが、この人をお招きするということは、前から役員会で決定しておつた。それだけの人に発言を求めて、他の人は一切お招きしたこともございませんし、また先ほど申しましたように、京都府だけでございません。近府県に有力な代議士の方もおいでになりますけれども、それはお招きしておらぬのです。左派の方だけを何のためにそこにお入りを願うのかという議論が非常にやかましかつたのです。それでかつてにお入りになつたのか、どういうわけでお入りになつたのかわからぬ。そこは特定の場所ですから、特定の人間だけしか入れない。遺族同士の慰め合いの会ですから、その慰めるのは、だれよりも大臣の意見を聞き、恩給または弔慰金、こういうものに関する意見を開くためです。(発言する者あり)
  49. 小島徹三

    小島委員長 お静かに願います。
  50. 中川源一郎

    中川(源)委員 選挙に利用するというようなことは困るのです。そのあとで、日本社会党というポスターを持つて、盛んに遺族を迷わすようなものを発表された。ことに六百二十八億の予算を組んだことは成功であつたということを書いておられる。これは社会党は反対であつた。本会議においても、社会党はその恩給を出すことに反対であつた
  51. 小島徹三

    小島委員長 中川君、議論にわたらぬように願います。
  52. 中川源一郎

    中川(源)委員 成功であつたというような文章のものを遺族に配付して、遺族を迷わすがごとき行動をとられたということについては、遺族は憤慨して、私が会長でありますから、会長のもとに、それらの憤慨した遺族が一々陳情、意見を述べに来ておつた。そういうわけですから、誤解のないようにしていただきたい。特定の人だけしか入れないのです。出てもらうというのは、遺族全体に諮つて来てもらつたのです。それでせつかくおいでになりましたから……。(発言する者あり)
  53. 小島徹三

    小島委員長 お静かに願います。
  54. 中川源一郎

    中川(源)委員 その際に遺族が特に世話になつた民生部長であつた田村義雄氏が立候補して、これを推薦するということに決議をもつてきめたのです。そういうことでありますから、その決議を発表しただけのことです。本人は、どうもありがとうございましたということで、何も意見は発表させません。そこは演説会場でも何でもありません。そういうものを利用するという考え方はいけない。その詳しいことを申し上げますと、時間を要しますから申し上げませんが、誤解のないようにしていただきたいと思います。
  55. 小島徹三

    小島委員長 次会は公報をもつてお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十五分散会      ――――◇―――――