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1954-04-10 第19回国会 衆議院 厚生委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月十日(土曜日)     午前十一時二分開議  出席委員    委員長代理 理事 青柳 一郎君    理事 中川源一郎君 理事 岡  良一君       助川 良平君    田子 一民君       降旗 徳弥君    安井 大吉君       山口六郎次君    亘  四郎君       佐藤 芳男君    滝井 義高君       萩元たけ子君    杉山元治郎君  出席政府委員         厚生事務官         (社会局長)  安田  巌君         厚生事務官         (保険局長)  久下 勝次君  委員外出席者         専  門  員 川井 章知君         専  門  員 引地亮太郎君     ――――――――――――― 四月九日  委員中山マサ君及び井堀繁雄君辞任につき、そ  の補欠として降旗徳弥君及び岡良一君が議長の  指名で委員に選任された。 同月十日  岡良一君が理事補欠に当選した。     ――――――――――――― 四月九日  消費生活協同組合法の一部を改正する法律案撤  回等に関する請願神近市子紹介)(第四二  九一号)  クリーニング業法における試験制度存続に関す  る請願松井政吉紹介)(第四二九二号)  同(福田一紹介)(第四三二六号)  戦傷病者援護強化に関する請願中川俊思君  紹介)(第四二九三号)  同(中崎敏紹介)(第四三二七号)  同(塩原時三郎紹介)(第四三四三号)  同(前田正男紹介)(第四三六四号)  同(西村力弥紹介)(第四三六五号)  同(牧野寛索紹介)(第四三八四号)  同(淺香忠雄紹介)(第四三八五号)  同(三宅正一紹介)(第四三八六号)  あん摩師はり師、きゆう師及び柔道整復師法  の一部改正に関する請願安井大吉紹介)(  第四三一六号)  医師法歯科医師法及び薬事法の一部を改正す  る法律廃止に関する請願柳田秀一紹介)(  第四三二三号)  同外四件(中川源一郎紹介)(第四三四四  号)  生活保護法による保護基準率引上げ等に関する  請願山口丈太郎紹介)(第四三二四号)  国民健康保険助成交付金に関する請願(佐々木  盛雄君紹介)(第四三二五号)  戦没者遺族に対する扶助料支給促進に関する請  願外一件(中川源一郎紹介)(第四三四五  号)  釜台町に船員保険病院建設反対に関する請願(  井上良二君外一名紹介)(第四三六一号)  国民健康保険における医療給付費の二割国庫負  担法制化に関する請願中村時雄紹介)(第  四三六二号)  指定薬品以外の医薬品販売業者資格制度に関す  る請願山口丈太郎紹介)(第四三六三号)  元豊川海軍工廠軍属工員遺家族援護に関する  請願穗積七郎紹介)(第四三六六号)  傷い軍人の割当雇用に関する請願三宅正一君  紹介)(第四三八七号)  理容師美容師法の一部改正反対に関する請願(  瀬戸山三男紹介)(第四三八八号)  受胎調節普及に関する請願床次徳二紹介)  (第四三八九号) の審査を本委員会に付託された。 同 日  国民健康保険医療給付費に対する国庫助成の法  制化に関する陳情書  (第二七〇八号)  指定薬品以外の医薬品販売業者免許制度に関  する陳情書  (第二七〇九号)  同  (第二七一〇号)  受胎調節普及に関する陳情書  (第二七一一号)  保育所措置費増額に関する陳情書  (第二七一二号)  社会保障費削減反対に関する陳情書  (第二七九〇号)  医薬分業法の撤廃に関する陳情書  (第二七九一号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  厚生年金保険法案内閣提出第一二四号)  船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第一三一号)  厚生年金保険及び船員保険交渉法案内閣提出  第一三九号)     ―――――――――――――
  2. 青柳一郎

    青柳委員長代理 これより会議を開きます。  都合によりまして委員長が不在でありますので、私が委員長の職務を勤めます。  まず理事補欠選任の件についてお諮りいたします。去る七日理事でありました岡良一君が委員を辞任されたのに伴いまして理事が一名欠員になりましたので、その補欠選任を行いたいと存じますが、委員長より指名するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 青柳一郎

    青柳委員長代理 御異議もないようでありますから、再び委員に選任されました岡良一君を理事に指名いたします。     —————————————
  4. 青柳一郎

    青柳委員長代理 次に厚生年金保険法案船員保険法の一部を改正する法律案及び厚生年金保険及び船員保険交渉法案、以上三法案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。岡良一君。
  5. 岡良一

    岡委員 厚生年金保険法案の今度の改正は、日本社会保障制度を前進せしめるためのいわばスプリング・ボード、またいわゆる骨格ともなるべき重要なものでありまするので、他の委員諸君がいろいろ総括的に御質問はいただいたそうではありますけれども、私はなおその問ただしたい点もありますから、来週の火曜日には、積立金運営について私ども具体的な案を用意しておりますので、ぜひ大大蔵大臣のご出席を願いたい。また年金制の統一という観点から福永官房長官恩給局長人事院総裁等もお願いをいたしたい。それから何といたしましても厚生年金給付の額を決定するということになれば、諸外国の立法例を見ましてもやはり最低賃金制度というものが原則になつておるので、これのない日本において厚生年金給付額を決定するのには、事実上の問題としていろいろな難点も出て来ようと思いますが、幸いわれわれ社会党左右両派最低賃金制制実施についての構想をまとめまして、議員提出立法として今国会に提出しようということになつておりますので、これと厚生年金法との関連についてぜひともこの際事務当局の御見解を承りたい、こう思つておるわけであります。  きようお伺いいたしたいことは多分また皆さんのお尋ねとダブつておるかと思いますが、幸い保険局長もお見えでありますし、社会局長もやがてお見えと思いますので、厚生年金保険法を施行するにあたつて、特に年金給付をするということよりもやはり施設をもつて報いるということが最もふさわしいのではないかと思うのです。実例を申しますると、たとえば英国ロンドンで私ども現実に見ましたところでは、大体七、八十から百くらいの老人ホームがたくさんあつて養老年金はたしか一ポンド七シリングかと思いますが、その千二、三百円の中で千円あまりを老人ホーム支払つて、あとはお小づかいというようなことで、あまり大規模なものではなく、実に和気あいあいとして老後生活を楽しんでおるという姿を見て、非常に私どもうらやましい感じがしております。年をとつたらロンドンへ行つたらいいのではないかとさえ思つておるのであります。ところが一方日本では、離婚訴訟の統計なんかを見ましても、しゆうとと同居するのがいやだということが離婚訴訟の大きな原因になつておる。これには住宅難等の問題もありましようが、そういうふうなことを考えまして厚生年金保険法改正して給付額を適当に引上げることと同時に、老後生活というものについては単に金銭をもつて保障するのみでなく、やはり施設をも保障してやる、こういうような試みが同時並行的に必要でないかと私は考えるわけであります。そういうことで厚生省の方で現在厚生年金保険法に伴う施設がどの程度にあるのか、それにはどれだけの人が入つておられるのか、どの程度規模のものであるのか、また将来何らかそういう点についての構想があるのかどうか、こういつたことを承りたいと思います。
  6. 久下勝次

    久下政府委員 お話の問題は、私どもとしては法律福祉施設という言葉で呼んで実施しておるのであります。まだ現在のところとしては、たくさんな施設行つておらない状況であります。現実にやつておりますのは、御案内のように廃疾のために年金を受給しております人たちに対しまして整形外科の予後の治療をしてあげた方がいいという人が相当ございます。これらの人々に対して、福祉施設という名目で治療費給付いたしております。そのために従前ございましたのは、登別、湯河原及び玉造の三温泉地病院を設けまして、整形外科中心とする今申し上げたような対象の治療をしながら、かねて一般社会保険の被保険者治療も扱つておるわけでございます。なお佐賀県の嬉野国立病院がございますので、これは年金としては施設はございませんが、近所に患者のたまりのようなものを設けまして、治療の方は嬉野病院に委託をしておるのでございます。最近になりましてやはりこの施設の拡充の必要を認めまして、東京大阪に御案内のような厚生年金病院を設けておるわけであります。被保険者の多い北九州の地方や八幡にただいま建設計画を進めておるような実情でございます。病院建設の問題につきましては、私どもとしては既存の施設を整備改善する以上に、——今後ただいま申し上げたもの以上に拡充して行く計画はただいまのところ持つておりません。そこで御引例老人ホームのようなものにつきまもして、年金制度としては当然考えてよろしいものだとは思つておるのであります。ただお話英国の事例のようなぐあいに参らない実情がございます。それは一つには、私どもの方で御提案を申し上げておりまする現在の年金給付額によりましては、老人ホームに入所してその費用を十分まかなえるかどうかについてまだ多分に懸念があるからでございます。年金保険として老人ホーム福祉施設としてつくつて行きます場合には、英国の例のように年金受給額をもつてそれが十分まかなえるようなことでなければ、確かに意味がないと思うのでございます。そういう意味合いにおきまして、老人ホームでもつくろうという考えはございますけれども、ただいま具体的な計画まで進んでおりませんような状況であります。
  7. 岡良一

    岡委員 傷害を受けた人の治療中心とする玉造等療養所については、私も現地で見ました。またこういうものが大阪東京博多等につくられるということも聞いておりますけれども、後者の年金給付額有料老人ホームへ入つてもそこに収容されるために必要な経費を支払うに満たないということになれば、その老人は結局子供たちなりを含めたいわける家族の負担老後を養つて行く結果に相なる場合が多いわけです。厚生年金というものが憲法の二十五条に保障されたあの精神を多少でも生かして行くという建前に立つならば、六十にもなり六十五にもなつて、生産の余力も非常に乏しいというような人に対しては、長々御苦労さまでしたといつて国がその老後生活を見守つてやる、こういうところへ行かなければ厚生年金というもののほんとうの味が出て来ないわけです。そこで、老人ホームなんというものはどうかと思う。厚生保険は相当の積立金も持つている。この積立金が安定なる投資先として、老人ホームというようなものをつくつて受給年金額の中から食費その他必要なものをもらうということでやつて行けぬのか。施設投下資本の元本の償還もそこまでやつて行けば、ぼくは割合やつて行けると思うのですが、その辺のところをもう少し具体的に、お考えがあつたらおつしやつてください。
  8. 久下勝次

    久下政府委員 先ほど私がお答えを申し上げましたのは、厚生保険特別会計として直接法律に基く福祉施設を行います場合のことについて申し上げたのでございます。積立金運用としてそういう方面に投資をするということは、先ほど私が申した趣旨とは違う考え方で行かなければならないと思つております。そういう意味合いにおきましても、考慮をいたしておるのでございまして、現在積立金還元融資養護者住宅並びに病院建設融資をすることにいたしております。その事業の中に老人ホームをつくるための融資考えたらどうかということも、現在考慮のうちには入れておる次第でございます。ただこの場合には申すまでもなく、所定の利率に加えて元金の償還をして参らなければなりません。そういうような金を借りて老人ホームをつくりました場合、その老人ホームは当然有料運用されなければなりません事情もありますので、地方庁あたり地方庁の犠牲において積極的にやつてくれるような計画が持ち込まれれば格別でございますけれども、そうでないような場合には、経営上相当困難を伴うであろうということも考えまして、ただいまのところとしては、まだ具体的にそういうものをつくるところまでは至つておりません。ただ融資転用先として、今申し上げたような適当な相手方があり、積立金融資した場合の償還も確実であるというような見通しのあるところがありますれば、計画の中に入れていいものであろうと私ども考えております。
  9. 岡良一

    岡委員 本年度積立金、これもかつてどなたか御質問なつたろうと思いますが、大体推定額は千百八十一億と承知しておりますが、その程度でしようか。
  10. 久下勝次

    久下政府委員 二十九年度末は大体お話通りです。施行が一月なり二月遅れますと予定より少し減りますけれども、大体予定通りです。
  11. 岡良一

    岡委員 その利子は大体どれくらいになりますか。
  12. 久下勝次

    久下政府委員 ただいま御引例になりました数字は、二十九年度末の数字でありますので、二十九年度予算上出て参ります運用収入は、それに至ります前の積立金基礎といたしております。その点念のために申し上げておきます。二十九年度予算予定をしておりまする積立金利子収入は五十三億五千八百万円であります。
  13. 岡良一

    岡委員 質問が重複してたいへん恐縮ですが、五十三億五千八百万円の中で三十五億は勤労者住宅の方へ、これは利子で出ているのじやなくて、積立金の中から出ているわけですね。その五十三億五千八百万円の利子還元活用は、今度の予算上ではどういうふうにやつておられますか。
  14. 久下勝次

    久下政府委員 毎年度年金特別会計運営の仕方は、積立金利子収入保険料収入国庫負担がおもなるものでありまして、これを歳入にいたしまして、そうして年度ごとに必要な給付費その他の支出をまかなつているわけでございます。年度末に余りますと、これを積立金にまわす。預託するというようなやり方でございます。また資金運用の方は、申すまでもなく大蔵省の資金運用部におきまして計画を立て、資金運用部審議会の議を経て決定をいたしておるわけであります。この場合は、二十九年度なら二十九年度に大体三百億程度厚生年金積立金が入つて来るのを一つ歳入のわくにいたしまして、他の資金運用部歳入とあわせまして、運用計画を立てておるわけでございます。従いまして三十五億という来年度融資計画というのは、利子がどうであるというようなことは考慮に入らず、資金運用部全体の計画の一環として入つているわけであります。
  15. 岡良一

    岡委員 それはどうなんでしよう久下さん。取扱い上は、財政法上そういうふうにしなければならぬということになつておるのですか。利子というものはちやんとそれだけを別途に積立てるなり、とりわけおいて、予想される利子についてはただちに現金が手に入らないとしても、何か金融の道を講じまして、その利子だけは純然たる被保険者福祉還元にする、それくらいのことは当然やつていいじやないかと思うのですが、それが給付費の中にまた入つて行くというのは、給付費計算の中にやはり利子が入つておるわけですか。
  16. 久下勝次

    久下政府委員 現在の改正案につきましても、同様の考え方をしておるのでありますが、積立金というものは要するに給付に必要な財源としての運用収入である利子を生むために考えておるわけでございまして、従いまして給付費に充てられますものはまず利子が優先するという考え方なんでございます。それに国庫負担を加えましてやつて行く。だんだん年々給付が増して参りますことを見通しまして、将来の終局的な姿といたしましては、一定積立金がたまつて参り、それから出る毎年の運用収入と、そのときどきの国庫負担、その年の保険料収入、この三つのもので年々の給付をまかなつて行くというようなかつこうになるわけでございます。それに至りますまでには、多少の、もちろん大きな出入りはございますが、来年度厚生保険特別会計年金勘定だけの部分で申し上げますと、保険料収入になつております。それから運用収入も先ほど申し上げた五十三億八千万円、国庫負担が一億八千万円、合計いたしまして大体収入総額が三百九十億程度になつております。これに対しまして年金勘定支出総額は約七十億でございます。結局これを差引きました三百億余のものが資金運用部に預託されるというかつこうで、これからずつと当分毎年過して参りまして、終局的な姿を先ほど申し上げた毎年度出て来る運用収入である利子と、国庫負担と、その年の保険料保険給付をまかなつて行くというようなかつこうになるように仕組んだものでございます。従いまして利子だけ特別に別扱いにするというような考え方ではやつておらぬのであります。
  17. 岡良一

    岡委員 厚生年金保険財政運営上利子だけは積み立てて行つて、これを何か福祉に還元するということは、今度の法律案のような積立て保険料率なり何なりということになると、不可能なことだということになるわけですか。
  18. 久下勝次

    久下政府委員 不可能と申し上げているのではないのでございまして、考え方として積立金利子収入がむしろ第一次的に保険給付財源になる、こういう建前でございますから、還元融資基礎になりますものは、むしろそれよりも利子を生むもための積立金をどうせ運用して行かなければなりませんので、その場合に、ただいまの建前で申しますれば、資金運用部に預けて、その貸出しも一般市中銀行から借ります場合に比較いたしましては、非常に低利で貸し出されております。こういうような低利運用で被保険者福祉になるような施設住宅病院とかいうものに運用するというような面で、還元融資考え行つてしかるべきものと考えております。
  19. 岡良一

    岡委員 私が申し上げたいのはそこなんです。大体被保険者から保険料をとつて、それを積み立てて行く。これがある条件ができたときの被保険者年金給付になる。ただ問題は、その積み立てて行く過程において積立金から生ずる利子なるものは、一時給付の中に入れるという予定をされているものであるのかどうか。予定されていないが、たまたま利子が出て来ておるから、これを現在は年金勘定収入として給付に充てておられるのかという点なんですよ。
  20. 久下勝次

    久下政府委員 現在の段階で申しますれば、その点はどちらから申してもよろしいんじやないかと思うのであります。要するに先ほど申し上げましたように、将来恒常的な姿になつて年金受給者も五百万とか六百万とか、一定数に達して参りまして、その状態が続いて参りますような時期に到達いたしましたときのことまでを計算いたしまして、そしてそのすべての費用を原価に換算をして保険料率をきめたり、あるいは国庫負担の率に基く計算をしたりしているわけでございます。従いましてそれまでの間は、もともと建前としては先ほども申し上げましたように、そうした終局の姿につきましては、積立金運用収入保険給付の最も重要な財源になるという考え方で仕組まれておりますので、ただ現実には、具体的に来年度予算の例を申し上げますれば、支出総額六十九億七千万円ほどでございますが、このうち保険給付費だけで申し上げますと、五十七億ほどであります。これに対しまして歳入面国庫負担利子収入保険料とこの三つ収入になつて参りまして、来年の例で申しますと、五十七億の保険給付に対しまして、五十三億の利子収入がありますから、これを充てたということも言えましようし、また保険料の方で立つてつて利子は積み立つておくのだということも言えると思うのであります。その辺は別に当分の間の考え方としては区分をして考えなくともよいような仕組みになつております。
  21. 岡良一

    岡委員 そこで最後に、そうすると本年度七十億ばかり、その中で給付五十七億ばかり、そこで利子収入が五十三億ほどある。そうすれば年々の積立金は三百億ばかり今年もある。この三百億ばかりのものから本来給付は払うべきものであつて、たまたまそれを預けておるから五十三億の利子が出たという。この法律このままで三年、五年になつてもかえないで行けば、利子改入というものは給付に充てなければ、年々雪だるまのように積み立てられてふえて来るということもあり得るわけですね。それでは厚生年金保険財政というものが、何らか非常に大きな打撃を受けるとか、手違いが起るということはないのですね。
  22. 久下勝次

    久下政府委員 そうでございますね、利子収入というものは、当分の間の説明としては積立金に繰入れられまして、年々の保険料だけ保険給付をまかなつて行くのだというような少くともここ十二、三年の間くらいまではそういう説明でよいと思うのであります。ただ十二、三年後になりますと、こまかいところの数字はありませんが、かりに二十年後の数字で御説明申し上げますと、保険料をある程度恒常的にとつて参ります関係上、二十年後の保険料収入は三百八十五億程度でございます。これが将来ずつと続くわけでございます。ところが二十年後になりますと、保険給付所要額は四百三十六億になりまして、年々保険料は足らなくなりまして、その場合には結局その年に入つて参ります利息収入五百五十九億の一部を食つておるというかつこうになつてよろしいのではないかということになると思います。こういうわけでありまして、その辺は恒常的な姿になりますピーク時のときの考え方と、途中をどういうふうに説明して行くかということは、ちよつと時期によつても違うと思いますので、あいまいに申し上げているような点は、さような事情があるからでございます。
  23. 岡良一

    岡委員 そうすると、二十年後に四百八十億ほど給付を払わなければならぬ。ところが収入は三百七十五億しかない。そこで利子収入が五百六十億ほどあるということになれば、やはり利子というものは百七十五億入つたつて、二十年後には三百八十億ほど上まわつて来るわけですね。その利子というものは未来末劫にずつと上まわつて来るんじやないですか。
  24. 久下勝次

    久下政府委員 そこの点は多少違うと思うのでごげいまして、大体五十年ないし七十年くらいのところを押えて申し上げますれば、その点ははつきりするのでございます。今私の方で計算しておりますものでは、五十年後をとつて申しますと、五十年後の保険給付費総額は千五百八十四億円ということになります。これに対しまして収入になります保険料は、依然として三百八十五億にすぎません。利子収入は一千四十六億円、それから国庫負担が、現在の法律の率で参りますると、二百四十三億円になります。それを合せたもので保険給付をまかなうわけでありますが、このときにはまだ収入総額が千六百七十四億円でありますので、約百億ほどそのときには余りがあります。七十年ぐらいになりますと、その辺がほとんど利子収入国庫負担保険料との総額が千七百三十七億の収入になりますが、保険給付費が千七百二十九億円になり、ほとんどとんとんになつてしまいます。そういたしますと、利子は毎年々々保険給付に充てられる、保険料はこれまた積立金にまわす余裕なしに、保険給付にまわすということになりまするので、七十年ぐらいたちますると、積立金はほとんど増加をしなくなるわけでございます。増加せずに、全部それらの財源をもつて給付に充てて行くというかつこうをねらつておるわけでございます。
  25. 岡良一

    岡委員 どうも気の長い話で……。社会局長が来ておられるから、ちよつとお尋ねしたいのですが、実は今保険局長にお尋ねしているのは、今度厚生年金がいよいよ改正になるということで、一万八千円余の給付が受けられることになつている。ぼくが思うに、日本の今一番気の毒な階層は老人だと思うのです。これは離婚訴訟なんか見ましても、やはり若いお嫁さんがしゆうとと同居するのはいやだという別居訴訟が相当出ておる。このごろは、年寄りだつてへそくりなんかで一年や二年しのげるというような年寄りはいないと思うのです。そこへ持つて来て、家族の気分、若い者の気分が民主主義のはき違えで、なかなか手荒いということになると、やはりこれは老人生活を守つてやる、長々御苦労様でしたということで、それをできるだけ守つてやらなくてはならぬ。ところが今のところは御存じの通り、養老院に入つていれば非常に肩身の狭いことなんですね。そうじやなく、厚生年金法で、六十、六十五ならば仕事はやめてもある程度生活を保障してやる、老人の人権を保障する、堂々肩を張つて養老院に入れるというようにしてやらなければならぬと思うのですよ。そういう点で全国に養老施設が一体どれだけあるか、その点を厚生年金法とも関連して少しお尋ねしたいと思うのであります。
  26. 安田巌

    ○安田政府委員 まことにごもつともな御説でございまして、家族制度もだんだんくずれて参りますし、経済の状況もかわつて参りましたので、年寄りが困るということは仰せの通りだと思います。現在養老施設としては、四百五十箇所ぐらいで、二万九千人ばかりの者がそれに収容されておるわけでございますが、まだ各町村あたりから毎年々々養老院を建てたいという希望が相当ありますので、お話のように養老院が足りないのではないかということにつきましては、私ども実は同感でございます。ただあとでお話になりましたのは、有料老人ホームというようなお考えだと思うのでありますけれども、この方は現在公立的なものは神奈川県で昨年始めまして、十二人ばかり収容されておるのが一つだけでございます。私立のものが三箇所ばかり現在あると思います。ところが私どもまだ実績をつまびらかには知りませんけれども、非常にむずかしいと思われますのは、計算をいたしてみますと、大体一人について八千円ぐらい月にかかるのではないかという気がするのです。その内訳は、食費として四千円、三千円がいわゆる人件費その他の管理費としてかかる。あとの一千円が建物その他の臨時的な償却費というものと見ると、大体八千円かかる。そこで今お話のような方がそういう施設に入られると申しましても、今後毎月八千円ずつ払つて行けるかどうかということは、これは入つていただくときにかなり問題があると思うのであります。もしそういう場合に払えなくなるということになりますと、やはりこれは生活保護の取扱いをしなければならぬ。そうして同じ施設生活保護の人とそうでない人と入るということになると、差別待遇ということが起りまして、これもまずいというようなことになりますので、そういうところが一つの難点じやないか。あるいはその老人が今後何年生きるかというようなことで、平均余命どのくらいというようなことを計算いたしまして、逆算して、それでは一時にこれだけ納めなさいということを考えてもいいわけでありまして、そういう考え方もあるのであります。しかしこれも非常に数が少うございますから、そういうことをやつてどの程度の安全率があるか、これも非常にむずかしい問題だと思います。そういうような点が今のところ有料老人ホーム一つの問題になつておるのじやないかと思います。そのほか郵政省あたりで年金受給者にそういう施設をつくるというふうな話があつたことを新聞で読んだことがありますが、その後どうなつておりますか、まだつまびらかに承知いたしておりません。
  27. 岡良一

    岡委員 国立病院なんかで一般の結核患者なんか——国立病院は少し安くしておるようですが、一般の病院では少し単価が上つているから、幾らぐらいになりますか、——一日三百三十円ぐらいで、一箇月九千九百円ぐらいで扱つておる。それは医者をつけて、看護婦を十人に一人なら一人つけて、ちやんとやつておる。しかもそういう病人だから、相当栄養を与えながら、一日三百三十円でやつておる。それを老人ホームに八千円などというのは、カロリーの少い、手数のかかる病人でもないし、べらぼうだと思います。まあそういうことはいいとして、たとえば国の方でやはり各府県につくらす。そのときに相当補助を出してやる。そこで投下資本、土地建物というようなものの元本は、国なり県なりが見る。補助も出してやる。経営についても、あるいは保姆もいるでしよう。また事務職員もいるだろう。こういうものも県が持つというように、いろいろなめんどうを見て、全国的に相当老人ホームをつくつてやる。少くともそれは厚生年金保険料給付で何とかやり得る。多少足し前をするというようなことで、つくるべきじやないかとぼくは考えるのだけれども、この点たとえば今度の予算省議なんかで、お互いの案として何かそういうことをお立てになつたかどうか。
  28. 安田巌

    ○安田政府委員 その前に、八千円では高いじやないかということでございますが、入院料もいろいろございまして、完全看護で、完全給食で、そうして寝具まで出すということになりまして、その上で二・九点というようなことがなくなりますと、大体一日五百円になりますから、一万五千円くらいになるわけでございます。これはさておきまして、八千円というのは、いわゆる有料老人ホームとしてつくる場合に、公費の養老院と違つて、そういう方が気持よく入つて生活できるようにということを考えますと、四畳半一部屋に一人ぐらいの割合で計算をしておるわけであります。いろいろ施設なんかも十分にして、気持よく老後が養つて行けるというようなことを考えますので、そのくらいかかるわけであります。そこで予算の話ですが、二十八年度と二十九年度老人ホームをつくつたらどうかという予算を実は出したのであります。これは結局大蔵省の査定で落ちたのでありますけれども、その理由は一応もつともなわけなんで、まだ公費で養老院に入れなければならぬような方が相当あつて、その施設も足りないと言つているときに、そこまでまだ手がまわらぬじやないか、そういうような見解であつたと思うのであります。それで今府県でそういうものを建てたらというお話があつたのでありますが、府県で建てます場合に、やはり問題はそういう施設をつくりましても一体そういう金が出せるかどうかということが問題なんでございまして、もしそういうような金を、その人が生きている間、十年なり二十年なり、はつきり出せるということになれば、これはどんどんつくれるのじやないか、一時的な費用ならば何とかなるという気がいたすのであります。そこで今岡委員がおつしやつた点は、確かに私は一つの問題の解決点だと思うのでありまして、ことに貨幣価値の変動がはげしいときとか、あるいは貯蓄があまりできないときは、やはりそういつた年金で、経営費というか、食費その他に充てて行くというのが一つの案だと思います。もし今後厚生年金給付額がある程度つて行きますならば、厚生年金給付をそういう費用に充て、一人ではやつて行けないけれども、そういう施設に入るならば自分は厚生年金給付があるからやつて行けるというような形にすると、非常にうまく行くのじやないかという考えを私は持つております。
  29. 岡良一

    岡委員 こまかい問題ですけれども、これも御質問が出たかもしれませんが、厚生年金の受給者は生活保護法との関係はどうなりますか。
  30. 安田巌

    ○安田政府委員 生活保護法では、補足性の原則ということを申しておりまして、あらゆる自分の資産を先に使つていただいて、足りないところを国が出すということでございますので、年金がもらえますならば、その人はそれだけ引かれる、こういう建前になつております。
  31. 岡良一

    岡委員 とにもかくにもこのごろ多少物価が安定したといつても、この程度厚生年金給付では足りないと思います。そうすると結局何やかやであえいでおられる一般家庭の家族扶養の中にこれが包括されて、その負担になつて来るということでは、せつかくの年金制度の意味が半減するのではないかと思うので、この際現金を給付することにのみ努力しないで、何とか施設をもつて報いて行くようにしたらどうか。厚生年金の額がかりに千円であつたところで、一家にして見れば、どうせそこにおられれば家族扶養ということでやはり相当の負担がかかるわけであります。これはやはり足りなければ生活保護法か何かで——一人だから生活保護法の適用は受けられますまいが、何とか便法が生れて来るのじやないか、問題は、老人に対し施設をもつて老後生活を守つてやるという点について、こういう法律がせつかくつくられた機会に、何とか厚生省の方でひとつ努力をしていただきたいと私はつくづく思うわけであります。これで私の質問は終ります。
  32. 青柳一郎

    青柳委員長代理 他に御質疑はございませんか。——それでは御質疑がないようでございますので、本日はこの程度で散会いたします。次回は来週火曜日十三日午前十時より開会いたします。    午前十一時四十五分散会