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1954-04-08 第19回国会 衆議院 厚生委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月八日(木曜日)     午前十一時十七分開議  出席委員    委員長代理 理事 青柳 一郎君    理事 中川源一郎君 理事 松永 佛骨君    理事 古屋 菊男君 理事 長谷川 保君       高橋  等君    亘  四郎君       山下 春江君    滝井 義高君       萩元たけ子君    井堀 繁雄君       杉山元治郎君    山口シヅエ君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 草葉 隆圓君  出席政府委員         厚生事務官         (保険局長)  久下 勝次君  委員外出席者         専  門  員 川井 章知君         専  門  員 引地亮太郎君     ————————————— 四月七日  委員滝井義高辞任につき、その補欠として石  村英雄君が議長指名委員に選任された。 同月八日  委員石村英雄辞任につき、その補欠として滝  井義高君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 四月八日  厚生年金保険及び船員保険交渉法案内閣提出  第一三九号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  厚生年金保険法案内閣提出第一二四号)  船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第一三一号)  厚生年金保険及び船員保険交渉法案内閣提出  第一三九号)     —————————————
  2. 青柳一郎

    青柳委員長代理 これより会議を開きます。  都合により委員長が不在でありますので、私が委員長の職務を勤めます。  厚生年金保険法案及び船員保険法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、前会に引続き質疑を続行いたします。杉山元治郎君。
  3. 杉山元治郎

    杉山委員 私は昨日ちよつと休みましたので、同僚議員質問を聞くことができなかつたので、あるいはきようの質問のうちに重複する点が多少あるかもわかりませんが、その点はお許し願いたいと思うのであります。  厚生年金保険の問題を考えますときに、御承知のように軍人にも今度は恩給が復活いたしました。また官吏には従前から恩給がある。こういうように官吏及び軍人には恩給があるが、産業戦士恩給ともいうべき厚生年金でございますが、私は単にある特種の労働者のみならず、すべて国家のために働いておる人たちが同様に生活保障されて行かなければならないと存じております。そういう意味合いにおいて政府は、すぐには実行することはできないといたしましても、国民全体に対していわゆる老後生活保護する、こういう意味合い国民年金制をつくつて行くというお考えがあるのかどうか、この点をまず第一にお伺いいたしたいのであります。
  4. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 まことにごもつともな御質問と存じます。現在は厚生年金保険法によりまするいわゆる五人以上の事業所に従事しております人たち中心にいたしましてこの適用をいたしておる次第でありますが、さらにこれをもつと広範囲に拡大いたしまして、五人以下の事業所で働いておる人はもちろんのこと、さらに一般国民にまで及ぼすいわゆる完全なる社会保障制度への進行というのが、厚生年金一つの目標でなくてはならないという考え方は御趣旨と同様に持つて、今回の改正にあたりましても相当に検討いたしました。まだそこまでは参りませんでしたが、その精神をもつて進んで行きたいと思つております。
  5. 杉山元治郎

    杉山委員 今大臣の言明の通りに、今すぐにはできないといたしましても、できるだけ近い将来において、国民全般に対して老後心配のない国民年金制度を樹立されるようにお願いいたしたいと思います。  次に、この間緒方副総理が参りましたときにお聞き及びのように、社会保障制度審議会答申を尊重する、こういうお話でございましたが、社会保障制度審議会では厚生年金を設定するにあたりまして、少くとも生活保護より下まわつてはならない、こういうことを強く勧告していると思うのであります。今回の厚生年金保険法を見まして、私どもの見ますところにおいては、生活保護より低くなるのではないか、こういう考えを持つておりますが、この点について大臣の御意見を伺いたいと思うのであります。
  6. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 これは前会も実は御質問がございましてお答えを申し上げたのでございますが、結局社会保障制度中心としての厚生年金年金最低基準を、生活保障という線に持つて行く問題から、生活保護等の観念になつて来る次第でございますが、実は現在の厚生年金で千五百円を一つ基準にいたしました場合に、いろいろ検討いたして参つたのでございます。現在の生活保護法によりますと、二級地の中都市を例にとつて、これらの飲食物なり被服なり、あるいは健康保険費等を合算いたしますと、この年金を受給すると思われまする六十歳以上の年齢層をとつて考えますると、生活保護法におきまして千五百八十円に相なつております。従つて約八十円ほど下まわつております。ただ定額の千五百円にさらに報酬比例を加えまするので——今回の厚生年金最低報酬比例が三百円になります。これを加えますると千八百円に相なります。ただ年齢層の一人を平均にとりますると、厚生年金の方が少しいいのじやないか、甲地の方を調べますると、生活保護法における一級地甲地は千七百八十五円であり、一級地乙地が千六百八十円に相なつておりまするから、大体それを少し上まわるという状態でございます。そこで理論的な点だけを申し上げますと、生活保護法よりも報酬比例を加味いたしました場合には少しよくなる。但しこれは現在の現実家庭生活になりますると、六十歳以上の個人々々だけの比較ではいけないと思います。家庭の構成によつて、その一軒の家庭というものが運営され、生活されて参りまするから、そうなりますと六十歳以上の個人だけの比較ではいけないので、その場合におきましてはお話のような点が多分に生じて参ろうと思います。今回はいろんな財政的な関係等から、一応ただいま申し上げました理論的な基礎を置いて参りましたが、一千五百円というのに押えて参つた次第でございます。現在この一応の線によつて積立金その他の完全積立方式によりまする給付を決定いたしておるような次第でございます。
  7. 杉山元治郎

    杉山委員 今お伺いした通り年金の方が生活保護よりも下まわつている。私は生活保護もこれは憲法によつて最低生活保障するという立場から、これは当然なさなければならぬことと存じますけれども、むしろ一生懸命に労働して、そうしてその報酬の一部分をさいて積み立てて来た保険、その保険を受ける場合に、慈善ではないけれども国家保護を受ける者よりも低いということは、どうしても考えられないのであります。少くとも社会保障制度審議会意見のように、少しでも上まわる、あるいはより上まわつて行かなければならないと思うのでありまして、私はこの点について今の制度に強く不満足の意を表するのでありますが、これはあとの論議になりますので、この点は申しません。  なお次にお伺いいたしたい問題は、国民がおのおのその犠牲を負担いたしますときに、平均がとれておらなければならないと思うのでありますが、厚生年金の問題と、先ほど申しましたような恩給の問題とを比較してみますと、ここに相当差別のあることを見出すのであります。そういうような恩給というものと、労働者恩給にひとしいところの厚生年金というものとの間に、どうしてこういう差別待遇をしているのか、その点についての政府のお考えを伺いたいのであります。こう申しますと、もう大臣はよくおわかりになつていると思うのでありますけれども差別の点を一、二申し述べてみますると、たとえて申しますと、国庫負担の点で恩給は全額をやつている。ところが年金はわずか一割五分か二割しか負担しておらない。支給額におきましても、恩給は、普通恩給平均で五万円あまりになつていると思いますが、年金は二万八千円ほどにしかなつておらない。あるいは受給資格でも、恩給の方は十七年勤続すればいいが、年金は二十箇年以上にならなければいかぬ。そうして年齢が四十歳ならば受取れるが、今度は五十五歳のものをさらにまた五年延長して六十歳にしよう。また恩給の方は給与額でやりますけれども、こちらの方は標準報酬平均月額で行く、こういうようないろいろな差別があることを考えるのでありますが、これを見ますると、昔の官尊民卑の姿がここにも現われているのではないかと思うのでありまして、私はやはり少くとも恩給同一程度にすべての点をして行かなければならぬのではないか、こういう点を考えておりますので、この点に対する大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。
  8. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 恩給厚生年金とには大分相違がございますことは、御指摘通りでございます。ただその中におきますいろいろな考え方の上におきましては、今後においても検討すべきものが幾多もありますが、ただいま御指摘の、たとえば国庫負担の問題にいたしましても、基本は、恩給におきましてもやはり各人の一種の掛金という制度をとつており、月々俸給の何パーセントをかけて行くという態勢だけはとつております。お話のように年齢あるいは資格等におきましても、年齢も五十五歳までは若年停止で今度からは支給しないということにいたしましたから、大分歩み寄つては参つたと存じております。しかしその全体の姿を見ますると、これは御指摘の点はごもつともであろうと思います。むしろ私どもが今後全般的な国民保険国民年金という立場から考えますと、厚生年金というのが一つ中核体をなすというしきたりで進んで来ねばならないのではないか。現在の恩給法等につきましても、人事院等の勧告があり、さらに三月の二十九日でございましたか、閣議決定をいたしまして、これらの点について将来さらに研究をするという期間を置いて参つたのでございまするが、今後これらの点もよく検討して、なるべく均衡のとれる方法——それぞれの特徴もあるから、必ずしも同一でなくてはならないとは言いにくい点もあろうかと思いますが、均衡のとれる方法を、御指摘のように進めて行かなければならないと存じます。
  9. 杉山元治郎

    杉山委員 一日も早くそういう均衡のとれるように、官尊民卑の従来のような姿にならないように、御努力を願いたいと思うのであります。先ほどお話のように、年金支給額年間一万八千円、月一千五百円、こういう少額でありますが、その年間一万八千円というものが出て参りました基準がどこにあるのか、その根拠の点についてお示しを願いたいと思うのであります。
  10. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 これは実は最低を三千円に引上げて、三千円以下も三千円とし、最高をいろいろ現在の俸給体系では高くなつておりまするが、一応は一万八千円ということでいたしました。従来はこれが八千円でございましたが、実態に即応するように一万八千円に引上げました。従つて最低の場合を考えますると、先ほど指摘になりました定額を月に千五百円におきました。これに最低に対する報酬比例を三百円といたしまするので、月に千八百円、年に二万一千六百円と相なるような次第であります。その千五百円の定額基準を、生活保護法乙地を大体中心にいたしまして算定いたしたのでございます。それで月に千五百円の定額、それに対する報酬比例の三百円を加えまして、月に最低千八百円、それが年間にいたしますると二万一千六百円、あとはずつと報酬比例に応じまして増加をするという形をとつて参つたのであります。
  11. 杉山元治郎

    杉山委員 月千五百円の基準生活保護法にのつとつておる、こういうお話でございましたが、先ほども申し述べましたように、保護人たち生活保護するということも、これは必要でありますが、大いに国家のために働いて、そうして自分の報酬の一部を積み立てて参りましたこうした産業戦士年金としては、どうも私はあまりにこれは低過ぎやしないか、こういう感じを持つのであります。そこでもつ基準を上の方に置くべきではないか。たとえて申しますと、青年男子の一箇月の生計費が五千四百円なければならない、こういうことを二十八年二月の人事院の発表に申されておるのであります。私は生活保護といういわゆる気の毒な人たちを援助するというところに基準を置くべきでなくして、むしろもつと高いところに基準を置くべきではないか、どうしてみてもそれだけなければ今日の生活はできぬという線に持つて行くべきではないか、こう考えておるのでありますが、その点についてはいかがお考えですか。
  12. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 お説の点は私ども大いに傾聴をいたして行くべき点だと存じております。従いまして厚生年金というものは、少くとも老後におけるある程度生活保障一つの基盤になつて来なければならない。その観点からの計算というものが、やはり常に今後も立案の基礎になつて行くべきものと考えております。ただ従来月に百円、年に千二百円という養老年金というものが打出されておりましたような関係で、従つて今回一躍増額をして、そろばんの上からすると何十倍の増額に相なります。しかし現実におきましては、二万一千六百円、月に千八百円が最低であり、それ以上はずつと俸給に応じて増して参りますが、最低がその一点になつて来るという現実に相なつております。そこで一度にこれを一万八千円の報酬も、これは健康保険等は三万六千円でございますから、その点までずつと伸ばして参りますと、そこまで支給が当然多くなつて参る。これらの点も相当考慮をいたし、また社会保障制度審議会等においても答申に強く御指摘いただきましたが、財政的な方面で、なお一躍伸ばすという点において、相当将来保険経済運営の上にただちにとつて参りますことに困難を感じまして、まず順次その方向に進むべきものと存じます。従来の百円を今回は千八百円という段階まで持つて来たような次第でございます。
  13. 杉山元治郎

    杉山委員 次の点はすでに大臣も触れられたと思いますが、加入範囲の拡張の問題であります。五人未満事業所労働者というものは、労働者の中の八〇%を占めております。ところが今のように五人以上ということになりますと、こういうような大部分労働者が除外される。そうして事業所から申しますと、こういう小さな事業所は経済的にも不安定で、また生活がそういうわけでいろいろと不安な状態に置かれておると思うのでありまして、こういうところの労働者諸君ほんとう保護育成をして行く、こういうことが年金制眼目でなければならぬと思うのであります。今度の年金改正の場合に、なぜこれらの人たち強制加入にすることができなかつたか。生活保護をする問題もありますが、むしろこういう人たちこそこういうような方面に入れて行かなければならぬじやないか。あるいは事務がめんどうであるとか、あるいはいろいろとそういう手続の点に困難があるというようなお話があろうかと思いますけれども、そういうことをあえてやつて行くことが、いわゆる厚生年金、また労働者老後保障の問題について大切なことだと思うのであります。ただ仕事がめんどうだ、あるいはいろいろ金の取立てに問題があるというような事務的なことを考えておつてはならぬと思うのであります。この点についての大臣の御意見をもう一度伺いたい。
  14. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 御指摘の点まことにごもつともでございます。現在は五人未満に及んでおりませんような状態であります。しかも五人未満の場合に、相当いろいろな社会保証としての一つの重点を考えられるのであります。実際上の問題といたしまして、実は五人以下の事業所が一応百三十万程度あり、その対象に一応考えられる被用者だけでも三百三十万程度考えて行かなければならぬという状態ではないかと存じております。現在適用いたしております事業所が二十三万に対しまして、七百六十七万の被用者対象にいたしております関係から見ますと、まことに五人未満事業所事業形態が複雑であり、しかもその給与体系がさまざまな状態になつておる。さまざまな状態であり、複雑であればこそやらなければならぬことも、私どもよく存じております。従いまして、これをやります上には相当方法調査、しかも同じ保険率でいいのか、保険の種類と組織体系は同じように行つていいのかどうかといういろいろな問題があると存じます。これらの五人未満事業所によつて、今までのがあまり阻害される状態になつて改正眼目にもなりませんし、そういう点の研究が実はまだ十分行われておりません。その点に対しましては十分研究をいたしまして、態度を決定したいと存じておる次第であります。方針といたしましては、御趣旨はよく尊重して参りたいと思います。
  15. 杉山元治郎

    杉山委員 大臣も御趣旨はよく了承してくださるということでありますから、少なくとも国民年金へ移行する前にこの五人未満のものはまず入れて行かなければならぬという順序になると思いますので、ぜひこれらの人々が一日も早く年金制度の中に入り、老後の安心を得るようにしていただきたいと思うのであります。  次にお伺いすることは、すでに質問があつたと思いますが、厚生年金積立金運用の問題でありまして、二十八年度の積立金でもすでに八百億円以上もあり、その利子が三十一億円になつております。二十九年度はおそらく千二百億円以上になり、その利子だけでも五十四億円になると思うのでありますが、こうした積立金運用の問題について、私どもはこれを積み立てた労働者福祉のために還元して使用しなければならないと考えておりますが、現在積立金はどういうように運用されておりますか。なお労働者方面福祉のため・にいかほど還元されておりますか、その点についてちよつとお伺いいたしたいのであります。
  16. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 二十九年度末におきます積立金を、一応一千百六十九億九千万円とそろばんで出しております。その利息収入が五十三億六千万円、従つてこれらの積立金管理運営というものが、この保険経済一つの大きな中心になつて参ります。この点につきましては、この積立金性格等から考えまして、安全であり、しかも将来確実な管理運営ができるというのを一つ中心考えて行くべきものである。それとあわせて、これらから生じます利益、いわゆる利息相当いい方面運営して行くということがつきものであると存じておりますが、こういう点から考えますと、現在資金運用部資金にいたしまして、それによつて運営をいたして行く。将来これらの利率等につきましては、できるだけ十分と思われます、いわゆる現在の五分五厘をさらに少しでもいい利潤にまわるように、関係者と協議をいたしておるような状態であります。さらにこれらの積立金をできるだけ還元して、被用者醵出者の方に利益が行くようにして行くべきものではないかという御趣旨はごもつともであります。今までは、昭和二十七年度からこれが還元融資をいたしておりますが、二十七年度におきましては、住宅に十億、二千四百九十八戸、病院に六億、一千六百五十三床の融資を行い、昨二十八年度におきましては、二十五億に増額し、住宅に四千三百六十二戸、二十億、病院に二千四百十六床、五億の融資をいたしましたが、なお不十分であると考えております。二十九年度におきましては、住宅並びに病院等についてのいわゆる融資先はまだ確定はいたしておりませんが、予算におきましては三十五億を見ております。しかし三十五億でもなお不十分と存じておりますので、将来はこの還元融資をもう少し十分にいたしまして、これらの方々に対する利益を増進するようにはかりたいと存じております。
  17. 杉山元治郎

    杉山委員 これは労働者諸君のいわゆる汗の結晶が積み立てられておるのでございますから、そういう金をただ資金運用部に委託して一面大企業の金融にまわすということでなく、ほんとう社会福祉のためにのみこれを使われるということにぜひしてもらわなければならぬ。特にこれは労働者諸君積立金でございますから、労働者諸君福祉のために還元していただきたい。これは今伺いますと約三十五億ということであつて、これではまだ足りないというお話でありますので、少くとも利子の大部分をそういう福祉のために還元されて行くということでございましたならば、いわゆる基金が残つておりますならば、そう一時に取立てるものではなく、保険と同じことで順順に減つて行くものでありますから、十分に運用ができて行くものと思いますので、根本の基金だけ心配のない制度管理して参りますならば、金利くらいは福祉にまわしてもけつこうかと存じますので、ぜひひとつそういう方面に御努力を願いたいと思います。とともに、これは長谷川委員であつたかと思いますが、触れられたと思いますが、単に安全ということだけを考えて、いわゆる大蔵省資金運用部に委託しておるというような状態でありますが、何とか厚生省関係のこの金を管理する特別な制度を設置して、今申しましたような労働者諸君福祉のために使つて行くというような考えはございませんでしようか。今大蔵省にまかせておりますから、こちらが使いたいと申しましても大蔵省方面に使われて、こちらの方のほんとう福祉のための利用が少くなつておる、こういう心配がありますので、この点はいかがでございましようか。
  18. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 この積立金が年々相当多額になつて参る関係がありますので、ただいまお話のありましたような御意見が一層検討されるべきものとして生じて来ると存ずるのであります。これらの点につきましては、実は私どもも十分検討いたしておるのでありますが、ただ現在の状態から考えますと、これを一つの独立のものとしていたす場合に、このような多額積立金を確実に安全に、しかも有利に運営するという一つのやり方をいたしますためには、相当機構スタッフを持ち、日本経済の動向を十分に検討してかかりませんと、まことに危険になると存じます。従つてこれらの点を考えますと、新しく厚生省にそれらの機構スタッフ経済調査とをあわせながらやつて行く場合におきましては、十分研究をしながらいたしませんと、軽軽しく進み得ない状態だと存じます。これらの点を考えますと、幸い国家におきまして資金運用部という機構を持ち、スタッフを持つておりますので、現在はその方が最も確実であり、かつまた有利に運営するように今後いたすという建前からいたしておりますが、お説の点につきましては、いずれ今後の問題といたしまして、十分研究をすべきものと考えます。
  19. 杉山元治郎

    杉山委員 けさの朝日新聞の論説にも書いておりましたが、今度の厚生年金改正法案には、今お話積立金の問題に対して、いわゆる通貨価値がかわつた場合についての問題がはつきりしておらない、こう示されておりますが、前には、これはいい、完全なものだと考えたやつが、インフレのために月百円、年千二百円ということになつて、今日では子供のこづかいにも及ばないということになつたのも、これは通貨価値の変化でございますが、将来どういうように通貨価値がかわるかわかりません。そういうような問題について見通しはなかなかむづかしいことですが、しかし、やはり何かそれについての見通しをつけ、またそれについての策を講じておかなければ、労働者にとつて政府の方にとつても重大な問題になると思います。そういう問題について今度の法案には少しも明瞭になつていないわけでございますが、こういう点についてどういうふうにお考えでありますか。
  20. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 これまたごもつともな、かつ中心に考うべき点だと存じます。実は、二十三年でございますかの改正によりまして、お話のように月に百円の養老年金というかつこうになつて参りましたから、現在から申しますと、貨幣価値その他の点からまことに問題にならないような状態でございます。従つて、今回の法律改正の主眼をそこに置いて来たわけでございますが、それにいたしましても、従来最初から出発いたしました厚生年金考え方の上におきましては、大体年金として、老後のいわゆる養老という立場から考えますと、四箇月分を養老年金に充てるという考え方で来ておつたわけであります。そこで今度の改正では、これらの点を十分検討いたしまして、最低の三千円におきましては一年の六〇%といたしておるのであります。従来お約束をいたしました以上にこの率は多くいたしております。従つて貨幣価値の変動等の起きます場合においても、一方においてはこの率を一つ中心として行かなければならぬと考えております。同時に、これらの変動が将来ないとは限りませんから、この法律におきましては少くとも五年ごとに一つの検討をし直す。従つてこれらの変動がはなはだしいときには、もちろん五年を待つまでもなくこれらの点を検討いたしまして、法律改正等をいたして、それらの情勢に即応するようにして参りたいと存じております。
  21. 杉山元治郎

    杉山委員 それでは、通貨価値がかわりました場合に、今お話のように大体生活の六〇%を保護して行く、こういうところに基準を置いている、こういうように了承してよろしゆうございますか。
  22. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 従来のは十二分の四であつたのでありますが、今回の改正では百分の六十というのを最低にいたしました。従来の点等を考えていたしたのでございます。将来のことはここでただちには申し上げかねますけれども、今回の改正中心をそこに置いたのでございますから御了承願います。
  23. 杉山元治郎

    杉山委員 もう一つ伺いたい点は、これは多分佐藤委員であつたかと思いますが、触れられたと思いますが、年金制度の統一の問題であります。今日は、恩給あり、共済組合年金あり、厚生年金あり、また私立学校の教職員組合の共済年金あり、いろいろと複雑多岐をきわめておるわけであります。しかるにまた人事院国家公務員の退職年金法というようなものを制定するというような話も伺いまするが、そういうように、今日までも非常にたくさんの種類があつて、またこれを取扱うのに窓口がめいめい別々であつて非常に困つておると思うのですが、この改正のときにこそ、一歩でもこれを統一して行くという方向に進めて行かなければならないと存じます。今申し上げたように、自治庁あたりも地方公務員の年金制考えて、そうしてまた別途につくるというような話もございますが、もう一歩これを進めて統合統一して行くという点、これはすべての経営者も労働者も希望しているし、またこれを扱うところの医者諸君もこいねがつておるのであります。ぜひこのために一般の努力がなされなければならぬと思いますが、一向どうもその様子が見えないで、ますます複雑多岐になつて行くような感じがいたしますので、この際政府の御所信を伺つておきたいと思うのであります。
  24. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 まことにごもつともでございます。現在長期年金を実施いたしておりまするのを考えましても、恩給体系、共済制度体系及び保険制度体系、その中にはさらに幾つか分類されまするので、相当多くの形におきまする長期年金制度が実施されているような現状でございます。そこでこれらの年金制度を考えて参りますると、おのおのその出発におきまして特殊的な性格を持つているのが大部分であります。特殊的な性格を持つておりまするために、給付内容、条件等が、先ほど指摘になりました例から考えましてもいろいろ異なつております。しかし一つの長期年金養老等を中心にいたしました国民年金という考え方からいたしますると、それらの等差はありましても、少くとも均衡を持つた一本にしたものにするという方向へ行くべきものであるという点におきましては、まつたく私どもも同感であり、そういうふうに努力をいたして参りたいと存じております。実は、今回船員保険等につきましても、できるならば厚生年金ほんとうは一本の形でいたしたいと存じておりました。しかし、これらの受けまする被用者の性格、内容等からいたしますると、やはりおのおのの特徴がありまして、簡単に同一の形態にするということはなかなか困難な状態でございます。ほかの点もそうだろうと存じます。しかしその中には、あるいは通算の問題であるとか、あるいは年限の問題等において共通し得る部面が必ずあると存じます。これらの点を考えながら統合統一という線に近寄るように、それぞれの線で努力をいたして参りたいと存じます。ただいま御指摘の市町村共済組合等におきましても、実は現在これらの立場における長期年金等の中で一つの穴になつておりまするのが——十二万七千ほどの市町村におきまする雇用者関係の方々が、長期年金という制度からはずれておるという状態でありまするので、従つて地方自治庁等でこの検討が現在なされておるという段階であります。しかしそういたしましても、ただいま御指摘にありましたような統一というのを一つ中心にいたした線からこれは考えて行くべきもの、かように努力をいたして参りたいと存じております。
  25. 杉山元治郎

    杉山委員 おのおの個々に発達して参りました関係で、それぞれ特殊な情勢があることは、大臣お話通りだと存じます。しかしそう申しまして、いろいろ特殊な事情があるから、そこに困難があるから、こういうことを申しておりましては、いつまでたつてもこれは統一はできないと思います。政府は大英断を振つて統一のために邁進してもらわなければ、決して統一はできないと存じます。どうかいろいろの困難を克服して、社会保険一つにし、また進んで厚生年金全般に持つて行く、こういうように御努力願いたいのであります。  最後に、その点からもう一つ伺いたい点は、年金受給資格の年限を通弊することを考えておいでになるが、ある事業の方に何年か働く、それでまた他の方に働く、そういうように、働きの年限は相当国家に御奉仕しておるのでありますけれども年金制度のあるところに働いておる、年金制度のないところに働くということになると、せつかく働いておりながら切れて行くということに相なりますので、あるいは役所に働いておつた、今度年金のある場所に働いておつた、こういうような官、民の職場の問題もこれは大いに通算制を考えてやつていいのではないか。いわゆる恩給年金との関係もございましようが、そういうようにせなければ、今までこれは制度のやむを得ない措置として権利を放棄しておつたかもわかりませんけれども年金制度というものの根本的な精神から考えて来るならば、官に働こうが、民に働こうが、またそういうようないわゆる恩給年金のない場所は別問題といたしましても、そういう制度のあるものにはこれは一応通算をしてやるという考え方が必要でないかと思うておりまするので、そういうことについての考え方を伺つておきたいと思います。
  26. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 これも私ども御同感でございます。ただこれらの点について、先ほど申し上げましたように、恩給年金制度のありますもの全般といたしますと、結局国民年金という最終目標というものとあわせながら、これと歩調をそろえて来なければならないと存じておりますが、まずその第一歩といたしまして、今回船員保険厚生年金とを通算いたす、これはまつたくその方針で、今回ようやくこれが実現したような次第でありまして、これも本日本院の御審議をいただくように提案をいたしたいと思つているような次第であります。
  27. 杉山元治郎

    杉山委員 大臣に対する総括質問はこれをもつて終りまして、部分的条章については厚生省当局から伺いたいと思います。     —————————————
  28. 青柳一郎

    青柳委員長代理 日程に追加して、厚生年金保険及び船員保険交渉法案を議題とし、審議に入ります。まず草葉厚生大臣より趣旨の説明を聴取いたしたいと存じます。草葉厚生大臣
  29. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 ただいま議題となりました厚生年金保険及び船員保険交渉法案につきまして、提案理由を御説明いたします。  このたび政府におきましては、厚生年金保険法の全部を改正する法律案及び船員保険法の一部を改正する法律案を国会に提案いたしまして、ただいま御審議をお願いいたしておりますが、これらの改正案におきましては、両法案とも老齢年金及び遺族年金については、その給付の基準を、原則として同一にいたしております。従いまして、この機会に両保険における被保険者期間を通算して老齢年金または遺族年金支給できるようにいたし、両保険の被保険者及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与するよういたしたいと考えまして、この法律案を提案いたした次第であります。  以下法律案の要点につき、御説明申し上げます。  第一に、両保険における被保険者期間を通算することにいたしたのでありますが、この通算は、老齢年金支給する場合及び老齢年金受給資格期間を満たしている者が死亡したことによる遺族年金支給する場合並びにいずれかの保険において任意継続被保険者となるために必要な被保険者期間を計算する場合の三つの場合に、これを行うことにいたしております。  第二に、両保険における被保険者期間を通算した場合における保険給付は、原則として、最後に被保険者であつた保険において、これを行うことにいたしました。  第三に、老齢年金受給資格を得るために必要な被保険者期間は、厚生年金保険法においては、原則として二十年、船員保険法においては、原則として十五年ということになつておりますので、両保険の被保険者期間を合算する場合には、この点を勘案してそれぞれの期間につき必要な調を行うことにしております。  第四に、一の保険における老齢年金の受給権を有する者が他の保険の被保険者となつた場合または一の保険における障害年金の受給権を有する者が同時に他の保険における老齢年金の受給権を有する場合あるいは同時に両保険における遺族年金の受給権を有するに至つた場合等につき、それぞれ必要な調整を行うことにいたしました。  第五に、両保険の被保険者期間を通算して行う保険給付に要する費用につきましては、政令の定めるところにより、厚生保険特別会計と船員保険特別会計とにおいて按分して負担することにいたしております。  以上この法律案を提案いたします理由を御説明申し上げましたが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
  30. 青柳一郎

    青柳委員長代理 以上で説明は終りました。本案は本日付託になつたばかりでありますので、質疑その他は次会以後に譲ることといたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後零時八分散会