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1954-04-07 第19回国会 衆議院 厚生委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月七日(水曜日)     午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 小島 徹三君    理事 青柳 一郎君 理事 松永 佛骨君    理事 古屋 菊男君 理事 長谷川 保君       高橋  等君    亘  四郎君       佐藤 芳男君    滝井 義高君       萩元たけ子君    柳田 秀一君       井堀 繁雄君    杉山元治郎君       山口シヅエ君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 草葉 隆圓君  出席政府委員         厚生事務官         (保険局長)  久下 勝次君  委員外出席者         専  門  員 川井 章知君         専  門  員 引地亮太郎君     ————————————— 四月七日  委員降旗徳弥君及び岡良一君辞任につき、その  補欠として中山マサ君及び井堀繁雄君が議長の  指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  公述人選定に関する件  厚生年金保険法案内閣提出第一二四号)  船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第一三一号)     —————————————
  2. 小島徹三

    小島委員長 これより会議を開きます。  まず来る九日に開会を予定しております厚生年金保険法案公聴会公述人選定の件についてお諮りいたします。本公聴会公述人の申出は今まで十名ほどあり、先刻理事会において協議しました結果、当委員会から出席願います人を含めて次の七名の方を公述人に選定することにいたしました。すなわち非現業共済組合連合会理事長今井一男君、社会保険診療報酬支払基金理事長清水玄君、冨士紡績株式会社労働部長波多野則三郎君、全日本造船労働組合中央執行委員小西昌二君、大阪商教授近藤文二君、早大教授末高信君、全日本海員組合組織部長和田春生君。以上の諸君を公述人として選定するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小島徹三

    小島委員長 御異議なしと認めそのように決します。     —————————————
  4. 小島徹三

    小島委員長 次に厚生年金保険法案及び船員保険法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし質疑を続行いたします。佐藤芳男君。
  5. 佐藤芳男

    佐藤(芳)委員 私はこの機会に、ただいま上程に相なつておりまする厚生年金保険法改正案につきまして、草葉厚生大臣にじつくりとひとつ伺いたいと思うのでございます。   〔委員長退席青柳委員長代理着席〕 本案はもちろん政府提案ではございまするけれども厚生省所管のもので、あなたの責任が一番大きいことは申し上げるまでもないところでございます。この改正案は、改正案とは称しながら、実は新制度の創設に近い性格と内容を持つものであり、よほど慎重に取扱わねばならぬ法案であります。山縣前厚生大臣は、このゆえにきわめて慎重な態度をとられ、下僚の立案に容易に判を押されなかつたのであります。あなたは就任早々一も二もなく、前大臣の案を認められ、ここに発案を見るに至つたのであります。私はあなたの俊敏さに敬意を表するものでありますが、しかし過日のあなたの御説明では納得ができない点が多々あるのであります。昨日政府を代表する資格緒方副総理と質疑応答を繰返したのでありますが、私はなるべく重複を避けまして、重要な点について率直にただし、直接大臣から具体的のお答えを得たいと思うのでございます。最初にわが国年金制度に対する大臣のお考え方を承りたいのであります。  その第一点としてわが国社会保障制度に関しては、多くの問題がございますが、現在当面している最も重要な問題は、年金制度に関する問題であります。由来わが国社会保険制度で最も遅れており、最大欠陥を有するものはこの年金制度でありまして、昨日青柳委員より御指摘に相なつた通りであります。この点はさきにILOにおいて採択されました社会保障最低基準に関する協約に照しても指摘し得るところでございますが、今日わが国年金制度の問題は、きわめて重大なる段階を迎えているということ。  第二点といたしましては、今当面している問題としては、第一に公務員恩給制度に関する問題があると思います。すなわち、昨年の十一月、人事院国家公務員退職年金制度に関して勧告を行い、公務員の現在の恩給共済制度国家公務員法の規定に従つた新しい統一年余制度に改革することを要請しておるのでありますが、恩給共済組合制度間の不公平や、旧時代の封建的た恩給制度をそのままに放置することは許さるべきことではない、かように私は思うのであります。さらにそれから、民間労働者に対する年金保険及び船員保険改正問題があります。本改正問題については、目下改正案がここに提出されているのでありますが、これらは年金制度全般の問題として研究する必要がある。  第三には、国家公務員の新年金制度の問題や、厚生年金保険制度改正問題と関連して、公共企業体職員や都道府県、市町村職員年金制度の問題もあわせて考究する必要がある。すでに昨日も指摘いたしましたように、市町村職員年金問題は、自治庁において共済組合法案が計画され、近く閣議に付議されようといたしているのであります。  以上が今日当面いたしている問題であるように思うのでありますが、わが国年金制度には種々の問題があり、この際これらもあわせ考慮の上、年金制度改正を行う必要があると考えるが、これら年金制度に対する大臣考え方はどうかということを伺いたいのであります。
  6. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 佐藤さんのお説は私まつたく同感であります。現在行われておりまする恩給制度あるいは長期年金制度から考えますと、お話のように、国家公務員に対しまする恩給あるいは地方公務員に対しまするそれぞれの関係年金、また被用者に対しまする共済制度、これらがばらばらになつております。しかもその内容が、一口に申しますると千差万別の様態を呈しておる。またそれぞれの特徴がありますから、特徴を生かしながらも根本的には何とか一つ体系をとつて何か一貫した方法をとつて行くべきである。この考え方は私ども率直に考えて行かなければならない問題だと存じております。昨年は人事院公務員恩給制度に対する一つ勧告をして来た。これに対しましては、確か三月二十九日であつたと思いますが、閣議においてこれらの点を検討するために委員会のようなものをつくつて、これを検討しながらやつて行こうという方法をとつて参つたのであります。いずれそこにおいて十分検討しながらとられて来ると存じ期待しております。  そこで、今回の厚生年金改正にあたりまして、今厚生省考えておりまするのは、これらの共済制度ないしはただいまお話になりました市町村においてちようど今穴となつておりますような十二万七千の雇用員の、どちらにも入つておらない人たちの問題とあわせて、何か共済保険制度をとつて行かなければならぬというような考え方が一部にあるので、厚生年金改正にあたりましては、厚生年金保険制度長期年金中核体としてやつて行くような考え方中心にして行こう、幸いにお話のように全面改正になつておりますから、そういう考え方でやつて行く。従つてただちに現在あらゆる年金制度統一の部面には行き得ない状態ではあるけれども、将来それを考える場合におきましては、厚生年金という一つ考え方中心になり得る改正をして行きたい。なるべくその線でやつて行きたいというのが、私ども持ちました今度の改正根本的考え方であります。具体的に申しますと、あるいはその考え方が具体的に現われた上において不十分な点がなおあるかもしれませんが、本質におきましては、少くともそれを流れ中心には持つて行きたい、そうして今後一般長期年金中核体としては、厚生年金制度を持つて行きたい、その思想体系に統制し得るような厚生年金考えたい、こういう考え方で実は行つておるわけであります。幸い厚生省で所管いたしておる船員保険があります。船員保険もいつそこの機会にがつちりとこれと一体にするような方法をとまで原案では考えたわけであります。しかし先ほど申しましたように、それぞれの保険にはそれぞれの歴史と、対象とか特徴とかがありますので、なかなかにわかにでき得ない状態も了としなければならない、従つて今回は最少限度必要な通算という方法なり、あるいは似通う方法なりということで、ただいま申しました厚生年金中心とした考え方で行きたいという線に近寄らしておる次第でございます。
  7. 佐藤芳男

    佐藤(芳)委員 ただいまの御答弁の中に、厚生年金を将来中核とし、流れ中心として、すべてを包括できるようにという心構えをお持ちでありますことに対しましては、私は敬意を表するのでありますが、そういたしますと、一例をあげますれば自治庁においてただいま立案中と聞いております町村職員共済制度、これに対しましてはもちろん厚生当局におきましては反対をされておる、次官会議においても反対の意を表明されて、また大臣もそのお気持であるように承つておるのでありますが、この点はどうかという点が一点。かりに閣議にかかりましたときには、断固反対なさる、そこまでの決意がなければならぬと思うのでありますが、この点はどうか、これが一点。  第二点は、厚生年金中核として、流れ中心として考えているとおつしやる以上は、しかも自治庁のそうした立案を抹殺しようとお考えでありますならば、どうして厚生年金保険法改正案の際にそれらを吸収し得る措置をこの条文の中にお入れにならなかつたのか、ただ自治庁は強引にこれを出したいと思つておるから、これは縁なき衆生と思つて簡単に片づけてしまわれたように思うのでございますが、それではただいま大臣の御答弁にございました厚生年金保険というものを中核体とし、流れ中心として、すべて包容して行きたいというその熱意が非常に薄いものだというように解釈もできることになるのでありますが、この点いかがでございましようか。
  8. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 ごもつともな御質問でございます。市町村雇員に対します保険制度が、現在約十二万七千くらいだと思いますが、これらの人たちに対しまする保険制度が穴になつている。そこでこの改正案をつくりますときに、ぜひこれを入れたいということを関係当局と十分折衝いたしましたが、なかなか両方話合いがつかないままに日を送るという状態であるから、それならばこれは一応ここからはずしておいて、いつでも厚生年金対象にはして行く。従つて話合いがついたら、その他の改正等において、いつでもやり得るという方法はとつて参つておりました。そういうわけで話合いがつかないままに十二万七千は今回の改正に入つていないことは事実でございます。そこで実は自治庁におきましては、市町村吏員雇員のこれらの人たちの特別な単独立法として、共済組合制度立案したがつておるのも承知いたしております。よりより御相談を受けておりまするから、私はこれに強く措置をいたしております。それはむしろ今申し上げたような考え方厚生年金のことをしておる。厚生年金一本にすべきものである。あるいは従来ある制度の中に吸収すべきである。どうしても急いでやらねばならぬということであるならば、それぞれ市町村には退隠条令があり、あるいは恩給条令があり、あるいは共済制度等をとつておるからそこまでに入れるか、こちらでは市町村関係雇員につきましては健康保険はほとんど全部入つておると思う。従つて場合によると、むしろ単独立法することが必ずしも有利とは考えないという場合もありましようし、両方を選択するのはその人の自由と申しますると、かえつて混乱をすることになつて参るというような意味でよく再検討を促しております。従つて自治庁は再検討をいたしておる。昨日もはつきりその点を私からも申し上げておきましたから、自治庁自体は再検討を始められたと私は考えております。
  9. 佐藤芳男

    佐藤(芳)委員 私が今まで申し上げましたように、公私各種年金制度がたまたま今改革の時期に当面しております。わが国年金制度根本的に建て直すためには、これは絶好のチヤンスである。しかるに政府厚生年金保険だけの面で改正を取上げておりますが、これでは政府としては年金制度を一元的なものにするという考えが見られない。もしこのような改正を行つてしまいますれば、これから他の年金制度の調整をやるといたしましても、ますます困難化すると思うのでございます。よろしく政府公務員をも含めて一元的に考えるべきであると私は政府勧告をしなければならぬ。将来は同格でありますが、どうもさしあたりはという言葉は、いつまでたつても続く言葉であることを私はおそれるのでありまして、私は幸いに草葉さんが厚生大臣に就任されたのでありますから、この点実は大きな期待を持つてつたのでございます。この点は非常に遺憾に考えざるを得ないのであります。  次にわが国年令制度最大欠陥は、各種年金制度通算制のないことでありますが、政府はこれをどうする考えであるか。わが国には各種年金制度がありますか、これらはばらばらであり、これらの諸制度の間に何らの資格期間通算が行われていない。すなわち公務員恩給制度共済組合制度との間にも、また厚生年金保険船員保険制度との間においても、何ら資格の年数の通算が行われていない。言うまでもなく社会保障制度としては、一定期間労働に従事したものには、その職域のいかんを問わず、すべての労働を通じて年金が支給されるようにすべきであり、この点から年金制度は一元的なものに改革する必要がある、こういうように私は考える。本改正案において厚生年金保険船員保険との間には、一応通算制を設けておるものの、両者の間の交流はきわめて少数としか考えられない。問題は公務員恩給共済組合制度との間にあるのであります。しかるに政府提案は、これらの点はまつたく考慮しておられない。さき社会保障制度審議会は、これらの点も考え定額制を主張していたのであります。公務員年金最終報酬制をとり、厚生年金保険に関する政府提案は、金被保険者期間報酬の平均と定額合計額で算定されておりますが、かかる建前ではたして通算考えられるのか、私は疑問とせざるを得ない。この点につきまして、大臣の御所見を承りたいのであります。
  10. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 お話の点が実は中心問題だと思うのです。この問題が解決いたしますると、年金制度根本の問題の多くは解決する。そこで現在までなされておりまする各種年金あるいは公務員その他の問題を検討いたしますると、どうしても根本的な一つのそれぞれの立法に対する措置を講じないと、厚生年金保険法改正だけではできないことになる。従いまして先ほど申しました今度内閣につくります委員会等でこれを十分検討いたしまして、その検討に基いて通算というのはなさるべきものと実は私考えまして、今度はこの厚生年金だけではそれが取上げにくいと存じましたので、考え方といたしましては先ほど申し上げた通りです。そこで市町村雇員共済組合立法措置につきましても、それが単行法になつてしまうと、いまの交流あるいは通算というものにも相当影響があるのではないかというよりな点からも、本筋としても単行法というものは必ずしも妥当ではないと主張いたしておるのであります。今お話通り各種年金がおのおの独立した体系をとつておりまして通算が現在行われておりませんので、これを解決するのが統合根本だと考えまして、この点は今回の年金制度には実現し得なかつた点であります。
  11. 佐藤芳男

    佐藤(芳)委員 次に厚生年金に対する国庫負担公務員恩給等に対する国庫負担との不合理の問題について、一体どうお考えでございますかということでございます。社会保障制度に対する国庫負担の不合理はあらゆる面に見られるのでありますが、恩給共済組合に対するそれと厚生年金保険に対するものとの不合理ははなはだしいものがございます。すなわち両制度ともインフレによつて打撃を受けましたが、恩給共済組合については全額国負担において現在の賃金まで引上げが行われておるのでありますが、厚生年金保険については、国庫負担はほとんど考慮されていない。もちろん一割五分の国庫負担中にはございましようけれども、ほとんど考慮されていない。将来の公私保険料にこれが全部転嫁される。これは公私被用者についてはなはだしい不合理、不公平といわなければならない点であります。公私被用者について、差別待遇する理由は一体どこにあるのか。さらに国家公務員恩給等については、インフレ前の賃金を現在の賃金水準にベース・アツプしているのでありますが、厚生年金については、一律にわずか三千円にしか見ていない。これは従来の賃金の高低をまつたく無視したやり方で、公務員の取扱いとはなはだしく均衡を失するものがある。しかも公務員の分は全額国負担でやるのだから、まつたく不合理もはなはだしいといわなければならぬと思うのでありますが、この点につきましてはどういう御所見をお持ちでございましようか。
  12. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 国庫負担の不均衡である点につきましては、御指摘通りだと思います。ただ国家公務員の場合に、必ずしも全額負担しているとは思つておりません。やはりそれぞれ掛金をかけておりますから、その掛金の率が、片一方と比較してまことに少いじやないかという点にかかつて来るわけであります。これは結局、厚生年金被用者雇用者との掛金が、国家公務員になると両方国家負担するという建前になつておるわけであります。それが一つと、それから一般事業所におきましては大体八三%くらい、雇用者にいたしますと九一%くらいは退職金制度をとつておりますが、この点も実はもつともつと検討余地があると存じます。従つてこれは相当額退職金を認めておるといつたようなかれこれの面を総合いたしますと、御指摘通りにアンバランスはありまするが、しかし全然筋の通らないという状態ではないのであります。ただ国庫負担というものがもう少し均等になされるべきものである、事業の主体によつてそれぞれ違うことは当然でございますけれども、ある程度国庫負担均分化と申しまするか、均等化を、将来一本になる上においてはなお検討して行かなければならぬ、またそういう点から一本化ということも一つ検討すべき問題だと考えております。
  13. 佐藤芳男

    佐藤(芳)委員 次に私の一番関心を持つておる点でございますが、年金給付基準はあくまでも定額制とすべきだ、この主張のもとに、そうした立場からひとつ大臣所見を承りたいのであります。このたびの改正案は、定額制一定の割合の報酬比例制分を加算する建前をとられておりますが、これは最低限度生活を保障するところの社会保障趣旨からいつても、また将来この年金制度を全勤労階級に拡大し、さらに国民年金制度にまで発展せしめて行く場合に非常に都合が悪くなる。また報酬比例制について欠点をあげれば、私は次のようなものがあると思う。  まず第一に、最低限度生活保障という、社会保障趣旨から妥当でないということであります。第二には、将来インフレの起つた際、従来の複雑な報酬の記録はまつたく無意味になつてしまう。第三に、年金制度統合一元化に困難である。第四に、国庫負担高額所得者に多くなる、同じ労働者の中におきましても、高額所得者のみが有利になり、きわめて不合理であります。第五に、報酬比例制年金は、主として退職金制度に由来しているものでありますが、わが国では、年金制度のほかにも退職金制度を必要といたします。その場合、両者報酬比例制となれば重複して来る。これは経済的にも問題があり、高額所得者をさらにさらに有利にするという結果になります。第六に、わが国では労使の負担力限界がある、年金財政限界があると言われておるのでありますが、少い財源でやるときは、必ず最低生活保障に重点を置いた定額年金にすべきではないか、こういうようにあげ得らるるのでありますが、この点について一応承りたいと思います。
  14. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 今回提案いたしましたように、定額制に合せて比例制とつた場合の弊害ということについて、今それぞれおあげになりました点はある程度私も同感であります。しかしただ問題になりますのは、定額制一本にいたしますと、生活保障の面から定額を算定いたして参らなければならぬ。この算定をいたして参ります場合におきまして、第二に仰せになりましたインフレの場合におきましても同様な傾向を来すことは、定額制でないほかの比例制にいたしました場合においても起り得べきことだと考えております。ただそれが報酬比例の場合は、人によつてつて来る。定額制の場合は、人によつて一本になるという均衡の点が考えられると存じますが、同時にまた、定額制をとりました場合、定額限度をどこにするか、そうしてそれが生活保障に具体的にどの程度であるとよいか。もちろんそれはその時代により、経済情勢によつてつて来るのでございます。そこにまた現在の日本俸給体制あるいは給与体制から申しますと一つの困難さがありまして、二十五年の勧告によりますと一応二千円と出ております。今回は具体的に勧告には金額は出ておらないと存じますが、大体三千円、しかし生活保障となつて三千円が妥当であるかどうかということになりますと、これにはやはり相当論議があります。従つて日本の現在の千差万別俸給体系から考えまして、ただちにすべてを定額制一本にするとそういう点において困難性がありまして、これが第一に考えました点であります。それからお話のように、これを国民保険に全部及ぼす場合は定額制が一番やりやすいことになるという点は、私ども同感考えております。その場合も定額制はかりでなしに、他の方法も今後十分検討余地がないか。ただその定額というのは、低い額の人と高率の報酬をもらつている人とすべて一本にする、何年か勤めましたあと何千円から何千円と一本にして、高額者退職金で埋め合せる、こういう制度勤労意欲その他の点から考え国民の意思にぴつたり行つているかどうかは、相当検討せぬければならぬ点であります。従つて定額制だけをとつておりまするのは、私の記憶からいたしますると、イギリスだけではないかと考えております。あとはやはりそれぞれ報酬比例というものを考えながらやつておるのではないか。社会保障制度審議会の御勧告定額というのは、私ども十分これは検討し、尊重すべきものだと考えております。この厚生年金国民全般に及ぼしまする場合の——大多数の国民収入不定の場合におきましては、当然定額というものを考えて来なければ年金制度というものはでき上らないと考えております。それまでに参りますに、現在の段階におきましては、ただいまお話になりましたような弊害を除去いたしますために、一方定額をとり、一方報酬比例をとつて、そしてなるべく現実の体形に合うような方法をとつて行くことが妥当であると考えましたのが今回の改正案となつて現われた次第であります。
  15. 佐藤芳男

    佐藤(芳)委員 どうもただいまの御答弁を通じて私痛感いたしますことは、どうしても私ども考えておりますように、社会保障というものの根本について、もう少しお考えを願わなければならぬのじやなかろうかというような気がして実はならないのであります。大臣はかつて社会事業に非常に専念されておられた、だからすべてこうした厚生行政というものを社会事業的の感覚でやつておられる、私そのような非礼な観察は決していたしていないのでございます。昨日緒方君に申し上げましたように、何といたしましても社会保障というものは基本的な問題なんです。そしてまたこれは生産とマツチした再分配に関する問題なんです。私どもはこういう観点に立つて考えておることが熾烈であるために、どうも大臣言葉がぴんと来ないのかもしれませんが、これはあとの問題といたしまして、やはり社会保障制度審議会も答申いたしておりますように、月三千円の定額で行けば政府提案よりももつと有利である、特にさしむき発生する坑内夫等についてははるかにそれがやはり有利である、どうして定額一本とされなかつたかということにまだ疑問が残るのであります。なおこの月三千円の定額では財源的に困難を伴うのかもしれない。それは積立金の運用を改善すれば財源を捻出し得る、これは厚生大臣だけに望んでも無理なことでありまして、これは小笠原大蔵大臣と不日一問一答を戦わさなければならぬ問題でございますが、こうした運用によつて財源を捻出し得る、また二十九年度の財源措置あとからでも十分できる、だからこの予算には手をつける必要も何もないのだ、こういうように私は考えております。さらに政府は従来から厚生年金保険報酬比例制であつた、従来のインフレの前の報酬をすべて月三千円と見ていることは、これを定額制にしたことにほかならない、またかくのごとく従来の賃金は月三千円の定額一律に見てしまえ、その後の賃金は本人の報酬に比例した年金額とすることは年金制度を算出する場合はなはだしい矛盾を生ずるのであります。政府提案の平均報酬一万円の者を例にとつた場合、その年金額は月二千五百円、これに配偶者の扶養加算を加えて二千九百円にしかならないのでありますが、これでは生活保護法の生活扶助基準三千八百二十円にも達しないのである、少くとも最低限度生活保障がなし得るようにすべきだ、こう私は思うのであります。何としても社会保障は、昨日申しましたようなソーシヤル・ギヤランテイとまでは行かなくてもソーシヤル・セキユリテイのような観念で参りましても、どうしても最低限度生活保障がなし得るようにすべきではないか、だからどうしても月三千円というくらいにはしなければならぬのだ、こう思うのでございますが、これに対して大臣の御見解を承りたい。
  16. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 実は従来の三千円以下のものは三千円とし、それ以上は今回は御案内のように一万八千円に頭打ち、従来一万円を八千円引上げたというかつこうにいたしたのであります。そこでこれでは生活の保障ということまで行かぬではないか、あるいは生活保護法までも及ばぬじやないかという御議論、一方から考えますとごもつともだと存じます。しかしこれも具体的に検討いたして参つたのであります。具体的に検討いたして参りますと、老齢者といたしまして大体年金を受けるのは普通六十才以上、その間にもありますけれども、六十才以上がまず基本になつておる。六十才になりましてから今回の改正におきましては老齢年金を支給するというのが大原則でございますが、大半は六十才以上であるのであります。そこで六十才以上を基本にとつて生活保護法から検討いたしますと、大体平均級地の二級地の中都市くらいを大体の平均した立場にとつて考えて参つたのであります。二級地の中都市をとつてみますと、生活保護法におきましては飲食物、被服費、保健衛生費等を合計いたしまして千五百八十円というのが査定の基準にいたしております。それでこの年金におきましては定額として千五百円で、これに比例制の最低が三百円つくのでありますから、結局月額一千八百円、年額二万一千六百円、こういうことに相なつております。月額一千八百円と相なりますので、現在の生活保護法の査定標準を考えますと、一級地におきまする甲地がこの年齢層におきまして千七百八十五円であり、乙地が千六百八十円と査定の基準を置いておるのであります。そこで千五百円を算定いたしましたのは今申し上げた点から算定をいたしたのでございますので、結局この点から申しますと、生活保護法ともにらみ合せて、一応現在の段階では千五百円、並びに月に三百円の加給加算というのを置いて千八百円、年額二万一千六百円というのにおちつけたような次第であります。もちろんこれ以上ある程度さらにいろいろな額を加算することが将来は必要と存じます。必要と存じますが、最低生活という点から現在の段階におきまして、そして年金財政から算出いたしましてこのような見当をいたした次第であります。
  17. 佐藤芳男

    佐藤(芳)委員 最低生活の保障ということの全きを期しまするためには、私見として申しました三万六千円でも足らぬのであります。しかし政府の原案ではただいま指摘いたしましたように、生活保護法の対象者よりも少い、こういうことでは何の社会保障政策ぞや、こういわざるを得ないのでございまして、私はきわめて不満に存ずるのでございます。  なお質問者も控えておられますようですから、私の質問はこれで打切りますが、最後に厚生大臣に私、心からひとつ申し上げておきたい。  政府社会保障省の設置もまだ考えていない。各省ばらばらの社会保障施策を調整するための国務相もいない。かてて加えてこうしたことに熱意の乏しい吉田総理のもとにおけるあなたのお立場でありますから、きわめて重大でもあり、また非常に御同情申し上げなければならぬのでありますが、私はこいねがわくは、草葉厚生大臣社会保障大臣になられたというお気持で社会保障の問題に取組んでいただきたい。ただ下僚から出された案をそのままごらんになつてこれに同意を与えられるというようなことでなしに——私は久下さんに社会保障大臣なつた気持でということは言い得ないのであります。それは事務的でけつこうです。その保険局長の案をごらんになる場合におきましては、社会保障大臣なつたお気持で、大きな観点に立つて十分検討されて発案した以上は、矢でも鉄砲でも持つて来いというような気魄に満ちた御説明と御答弁を実は私は承りたかつたのであります。この点におきましては、決して草葉君が元社会事業の大家であられたから、社会事業家的な感覚を持つて厚生行政をやつておられるとは思いませんけれども、ぜひひとつ今申し上げたような大きなお気持でやつていただかなければならぬ。これを私は切にお願いするのであります。
  18. 青柳一郎

    青柳委員長代理 次に滝井義高君。
  19. 滝井義高

    ○滝井委員 大体佐藤委員からおもな点の御質疑があつたようでございますので、一、二点重複しない点だけお尋ねいたしたいと思います。  まず厚生年金制度考える場合に、やはりその時代の背景というものをわれわれは考えなければならぬと思うのです。日本における厚生年金は、昭和十六年の太平洋戦争に突入する直前にこの制度ができて来ておるわけです。考えてみますと、その年金制度はやはり二つのねらいを持つてつたのではないかと思われます。その一つは当時の産業戦士の老後の生活を保障する、こういう一つの面、いま一つは、当時の国家財政というものに対して一つの財政上の資金を確保しようという面があつたと思う。すなわち強制貯蓄の形で勤労者の賃金の中から幾分の財政資金を貯蓄をして行く、こういう形があつたと思うのです。こういう二つの面があつて厚生年金制度というものの確立が企図せられたのではないかというニユアンスを感ぜられるのです。ところが昨年の十一月にたまたま三千二百人ばかりの坑内夫の年金額が月に百円、年額千二百円では低いということから、これは老後の保障をするに至らないということが、改正一つの大きな契機になつておるが、同時にもつと日本の現在の客観的な情勢を考えてみると、いわゆるサンフランシスコの日米安全保障条約の態勢かうMSAの態勢に突入して行く。同時にそうなつて来ますと、ここに安い労働賃金で強度の労働をしてもらわなければならないという、こういう形も同時にできて来ておることになるわけです。ちようど時代はまさに太平洋戦争直前の状態と現在の日本状態とは非常に歩み寄つた形ができて来ておると思うのです。日本社会保障制度の確立というのは、あの太平洋戦争あるいはそれ以前の満州事変前後を契機として大きく行われて来たということは、社会保障史を読んでみてすぐわかることなんです。ところがその前後にできた社会保障制度そのものがきわめて不完全であつたがために、何ら労働者の保障にならなかつたし、インフレの高進のためにますますその保障ができないことがはつきりして来たわけなんです。ところが現在のような民主的な国家になつて参りますと、あの太平洋戦争前後よりかさらに強く社会保障制度の確立が要請せられると同時に、やはりMSA態勢確立のためには国家財政の貯蓄という面、いわゆる軍備のために金をつぎ込まなければならぬという面も強く出て来るわけです。その証拠には、まだ強制貯蓄の形までなさぬが、すでに東京商工会議所等においても、労働者賃金の中から幾分貯蓄をしようじやないかという声が出て来ておるということは、はしなくもその一端を暴露しておる、こう思うのです。われわれは社会主義政党としてもちろん反対ですが、現在保守党が日本の政局の推進に当つておるという点から考えてみますと、当然MSA態勢よる長期の防衛的な計画が保守三党において立てられておるとするならば、少くとも保守党に良心があるならば、長期の社会保障計画というものが当然議題に上らなければならぬ段階に来ておると私は思う。その点保守党の良心としての厚生大臣だと私は思うのです。少くとも社会事業を長くやられた大臣なんですから、そういう再軍備態勢が一方において進んでおる今日、一方においては当然ここに良心的な社会保障制度をつくらなければならぬということになると、保守党の良心としての大臣は、閣議において、あるいは自由党の内部において、長期の社会保障制度というものを大体どんなふうに頭に描いておられるのか、これは厚生年金をやる場合に当然考えなければならぬ一番のポイントだとわれわれは思うのです。それなくしては、今まで厚生省のやつて来た日本社会保障制度が継ぎはぎだらけであつたというその非難を、またこの厚生年金改正においても受けなければならぬことになると思うのです。一貫した長期の社会保障制度の中におけるこの厚生年金改正というものはどういう位置を占めておるか、こういり大きな長期の社会保障計画の中の一環として厚生年金制度考えられなければならぬと思うのです。従つて厚生大臣としてに、吉田内閣のこの長期の社会保障計画についてどういう構想を描いておられるのか、まずこれを伺いたいと思います。
  20. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 実は吉田内閣といたしましても、自由党といたしましても、この長期の年金制度というものに対しましては強い考え方を持つておるのであります。長期年金制度の完成に向つて力を注ぎまして、それが一つの経済安定であり、国民生活安定であるという基本に立ちまして、今回の厚生年金というものも取上げ、改正をいたした次第でございます。そういう線で強力に財政等におきましてもこの社会保障中核といたしましての厚生年金に力を注いで参つた次第であります。
  21. 滝井義高

    ○滝井委員 どうもそれは答弁にならないのであつて、何も私は年金制度を言つておるのではないのです。年金制度社会保障制度の一環であるわけです。従つてこういうMSA態勢が現実に実行せられ、すでに日本の経営者団体からは強制貯蓄をやらなければならぬと言われるような段階が来ておるときに、あなたは吉田内閣を代表する厚生面を担当せられる大臣として、長期の社会保障計画をどう考えておるか。しかもその長期の社会保障計画の一環として私は厚生年金制度というものが取上げられておると思う。今の答弁のように、長期年金制度に努力をするというようなことは何も構想じやない。その構想はこれこれこうである、その中で厚生年金はこうだというその全般の構想はどうかということをお尋ねしておる。
  22. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 ただいま御質問のような点から考えて参りまして、実は予算の面におきましても社会保障制度に対しまする吉田内閣、自由党の考え方といたしましては、昨年は全歳出に対する割合が七・一%であつたと思いますが、今回は八・二%、強力に財政的にもこれに力を注いで、しかも長期的には国民生活の安定を基準社会保障制度を盛り上げて行こう、こういう考え方で財政的にもあるいは政策全体としてもそれに力を注いでいるわけであります。従いましてその一環としての厚生年金におきましても、その考え方で、従来の予算措置等よりもはるかに増額をいたした措置をとつて参つた次第であります。
  23. 滝井義高

    ○滝井委員 それは私も大臣から聞かなくてもよくわかつておるのです。昨日自由党の方の代表の質問で、青柳委員も、吉田内閣になつてから非常に社会保障費がふえたのだ、こういうたいへんお得意な質問をされたわけなのです。それはよくわかつておるのです。そういうことではなくして、現在日本社会保障制度全般に対して、吉田内閣は大体どういう構想を持つておられるかということなのです。この点どうもピントがぼけますので、もつと具体的につつ込みますが、たとえば現存国民の半分以上というものは未組織のままに医療の面、いわゆる疾病保険の面が放置されておる、あるいは労災保険にしてもばらばらになつておる。船員保険なんかは一本にしておるけれども健康保険はそうではない。あるいは失業保険は、同じ保険でもやはりばらばらに行われておる。年金も、さいぜんから佐藤さんがるる御説明になつておる通り恩給あるいは地方公務員、全部違つておる。こういう各種保険のばらばらになつておる状態で、しかも国民の大半というものは未組織である。年金でさえも五人以下の者を使つておる工場、車業場においてはそれをどうするかということも、いまだに調査研究居士で依然として調査研究をやりますということで、時代がまさに転換期に入り、危機に直面しておるときに、国民はほつたらかされておるということではいけないのではないか、少くともMSAの防衛態勢をきめて行くならば、やはり国民についても考えなければならない。なぜ私がそういうことを申すかというと、外貨予算その他の割当をめぐつてみても、すでに統制経済というものが現われて来ておる。もう国民は米を食う時代から粉食の時代が現われて来ておる。純綿にわかれて、また混紡を着なければならない時代が来ておる。国産奨励運動が出て来ておる。強制貯蓄をやらなければならない時代が出て来ておるのです。こういう客観的な情勢のもとにおいて、今までの社会保障制度ではばらばらのままで行くということは、これは厚生を担当する大臣としては私は許されないと思います。やはりあなたが当然そういうものに対する推進力となつて、吉田内閣なり自由党なりの一つのはつきりした政策を打出してもらわなければならない。一つだけぽつんと年金制度を出して来てもらつても、この危機の時代、転換期における社会保障制度の一環とはどうも私ども考えることができない。これはきよう大臣がそういう構想を持たぬということなら、やはり閣議できめてもらつて、そういう構想の一環としてこういうふうに推進して行こうという、さいぜん佐藤さんが言われたように確信のあるところを打出して来られないと、われわれとしてはこの前も医薬分業のときにも審議できぬと言つたのですが、これも同じような形になつてしまう。今度は改進党も私の方に同調するようでありますから、そう気安くもできないと思いますが、やはり大臣も腹をきめて、はつきりして来てもらわないと、日本社会保障制度がどういう方向に行くのか迷える羊では困ります。もつとはつきり勤労者のためにやつてもらわなければならないと思いますが、構想が今わかれば述べてもらうし、わからなければこの次でけつこうです。
  24. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 大いに構想を持つた、その構想の上に立つたのがこの改正でありまして、よくごらんいただきますと、従来の厚生年金制度とはすつかりかわつております。この点は佐藤さんからも、改正というよりもむしろ根本的にやり直したくらいではないかという御指摘があつたほどであります。そこでいわゆる勤労者、被用者に対します、私ども考えております根本的な社会保障を最も端的に現わしておるもの、そういう意味から申しますならば、従来の千二百円、月に百円というような問題とはおよそかわつた考え方の上に立つた厚生年金を打立てた次第であります。
  25. 滝井義高

    ○滝井委員 どうもそれでは御答弁にならないのです。私は何も厚生年金制度のことを言つておるのではなくて、吉田内閣社会保障制度全般に対する大ざつぱな構想をひとつ述べてくれ、こういうことなんです。厚生年金はもうここに出て来ておるからわかつておる。そうではなく、たとえば国民保険というものをどういうぐあいにやるとか、健康保険をどうします、失業保険をどうしますということです。これは統合します、統合しますと言われるのです。私どもは予算委員会でもあなたにも、塚田さんにもお尋ねしたのです。塚田さんはやるのはやるのだからあまりつつ込まないでくれと言われるのですが、どういうぐあいにやるのかが出て来ない。統合するにしても、日経連とか総評とか、総同盟とか、いろいろ案を出しておるのですから、政府からも日経連の案ぐらいのものはここに出て来なければおかしいと思うのです。だから私が言うのは、日経連とか、総評とか、総同盟の出しておる案ぐらいの、政府の構想をひとつ出して述べよ、こういうことなんです。なければないと言つてもらえばよいのです。
  26. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 結局せんじ詰めて申しますと、全般的には二十九年度の予算におきまする方針が内閣の方針であります。具体的に申しますと、たとえばその中で厚生年金考えるという場合には、国民全体として見れば抜けております。多く未組織の場合が抜けておるのであります。あるいは五人以下が抜けておる。これらの構想をまとめて、それらに対する手はどうするかというのが具体的な問題であると考えます。そこでこれらの点につきましては、昨日も申し上げましたように、五人未満の場合におきましては、事業種並びに人の問題、内容等の問題で、もちろんわれわれもそこまで伸ばしたい。あるいは将来は国民年金にまで行きたいが、それには一つ段階があるので、その第一段階として、その基本である厚生年金を充実しながらそこに進んで参りたい、こういう構想で進んでおる次第であります。
  27. 滝井義高

    ○滝井委員 それ以上言つてもどうも同じようでありますから……。しからばこういう長期の年金も含めていろいろ保険があるわけです。こういうものがすでにインフレーシヨンの結果役に立たなくなつたので、今度の改正が行われたわけなんですが、こういう長期の保険は、そのときの経済の変動によつて大きな影響を受けることになるのですけれども、その調整というものをどうお考えになりますか。
  28. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 そこで経済の変動によつて影響を受けます場合は、負担金その他の点について検討いたすというのがこの法案の中に「少くとも五年ごとに、」というて具体的に出しておる点であります。従いまして普通の場合におきましても、少くとも五年ごとには検討し直す、しかしその間に重大な変更あるいは経済的な変動があつたような場合には、五年を待つまでもなくこれを検討しながら、その時代に見合うようにいたして参る次第であります。
  29. 滝井義高

    ○滝井委員 そう言うだろうと思つてつたのですが、そういうぐあいにこの法案は一応五年間は経済の変動がない限り固まつた形が出て来るわけです。そうしますとこの法案の出た由来を考えてみると、これはもう被保険者の労働者もとても最低生活を保障する案ではないといつて公聴会その他では必ずしも満足ではなかつた。それから企業家の方もあまり保険をよくするとわれわれの負担が増加するのだから困る、政府の方もあまりやつてもらつては国の負担が増加するから困るといつて政府当局もいい顔をしなかつた。資本家、事業主の方も、勤労者、すなわち被保険者の方もあまりいい顔をしていない。何といいますか、総スカンを食いながらも、総スカンだから結局厚生省の案を出して来た、こういう形のものなのです。そういうきわめて不完全なものが出て来ているのです。ところが一方考えてみると、比較的営業成績のよい工場、事業場の状態考えれば、そういうところは退職手当も割合ふん張つて出しておる、あるいは退職年金等も持つておる、すなわちわが社の社員についてはどこも出すけれども、こういう大きな社会的なものについては、みんな割合利己的なんです。これは政府も財政ということで非常に利己的に動いておるし、事業主も労働者もみんな利己的に動いておる。利己的に動かないで一生懸命やるのは、おそらく厚生大臣保険局の人たちだと思うが、こういう三者三様のものに対して、あなた方はどういう努力をされましたか。またどういう努力をされるつもりなのか。
  30. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 お話のように、関係しております雇用者並びに被用者並びに政府、これらの立場を慎重に検討いたして参りますと、被用者雇用者との間には、それぞれの立場において主張が異なつておりますのは、あるいは保険審議会等で現われて来た意見でございます。それでこれらを考えて参りました場合に、政府として最も妥当公正なる改正の案をどの点にとるかというのが、最も慎重を期した点であります。従つて、一方におきましては国庫負担も増す、あるいはある程度は雇用者側の負担も増してもらつて、現在の経済情勢において、また労働情労において、この程度までは負担ができると私ども考えました点、これは被用者の方から考えますと、被用者としてはこの厚生年金の給付額がある程度多い方がいいということは、これはもう当然であります。しかし、これにも保険経済その他でおのずから段階があると思います。その段階において政府としては少くともこれだけはぜひいたしたい、あるいはその点は雇用者に納得していただいても、全勤労のためには、将来むしろその方が十分プラスになる面がありはしないかという考え方で、この案はどちらかと申しますと、そういう含みが相当入つておる場合があるかと思います。しかし、そうすることが今の日本労働対策と申しますか、産業対策と申しますか、あるいは社会保障と申しますか、そういう点から申しますと妥当であるといたしまして、これらの点を十分理解してもらうように方法をとつて参りましたが、それぞれの立場において十分な理解は事実できなかつた点もあろうと存じます。その点は、努めてこれらの関係者には政府考えを了解してもらうように努力はいたしましたけれども、あるいは努力が不十分であつたかとも存じますが、一応現在では、この案はそういう意味において改正一つ限度であると考えまして、皆さんにお諮りをいたしておる次第であります。
  31. 滝井義高

    ○滝井委員 そういう方向で改正せられたそうですが、今度のこの改正によつて一応保険料が千分の十五で五年間すえ置き、それから標準報酬月額が最高一万八千円までになつたわけですが、それによつて労使の負担の増加をする分は、大体どのくらいになりますか。
  32. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 両方とも千分の四十二、パーセントにいたしますと四。二%、そういうことになつて来ると存じます。
  33. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、今度の改正で受給者が出て来るわけですが、大量の受給者が出て来る時期は大体何年後ですか。それから同時に定額制だけを実施した場合と、定額制報酬比例制との複合の形で行つた場合との事務費の関係ですね、事務費は、大体報酬比例制で行けば、計算その他で莫大にいつて来ると私は思うのでありますが、定額制で行く場合とこの両者併合で行つた場合との事務費の開きは、金額にして大体どの程度になるのか、この二点をちよつとお伺いしておきます。
  34. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 事務費の方はあと保険局長からお答えすることにいたしまして、人員増につきましては、本年度末におきまして概算いたしておりますところでは、各種年金及び一時金等を入れまして三十九万五千、十年後の三十九年におきまして九十七万四千、五十年後の七十九年におきまして五百三万二千、かような計算をいたしております。
  35. 久下勝次

    ○久下政府委員 私から補足してお答え申し上げます。二十九年度予算で事務費総額は四億八千二百二十二万五千円、こういうことに相なつております。これは事務に要する経費全額が国庫の負担に相なつておるわけであります。定額制にいたしました場合と報酬比例を加味いたしました場合の事務費の差でございますが、私どもとしては計算に明確に出るほど大きな差はないものと考えておるのでございます。具体的に申し上げますと、現在の制度におきまして被保険者のカードが全国で二千五百万枚ほどございます。このカードの整理を現在のところは人手でやつておりますので、非常に人員が必要でございます、どんどん被保険者の数がふえて参りますにつれて、この事務に要する人員の費用もかさばつて参るわけでありますが、私どもといたしましては、少くとも昭和三十年度にはこれの近代的な機械化をいたしまして、人件費の節減をはかりたいと思つております。それにいたしましても、定額にする場合と報酬比例を加味する場合とでは事務に若干の差がありますことは事実でございます。ただ、保険料を徴収する関係もございまして、各人のカードの中には当然その都度報酬額を書き加えて参らなければなりません。最後に受給要件を満たしまして受給権が発生いたしまして給付をするときに、過去の報酬を一応平均をとるというような操作が必要なだけでありまして、これらはそのときだけの問題で、カードをつくるそれ自身の費用としてはあまり差がないと思うのでございます。なお、被保険者は御承知のように坑内夫と一般の者との資格の種別の変更等もあるししますので、いずれにしても、報酬額についてもカードの中に書き入れて行く操作、これが年金の事務の一番大きな問題であります。そのカード整理のために必要な費用は、報酬比例を加味することによつて格段にふえるものとは考えておらない次第であります。
  36. 滝井義高

    ○滝井委員 これ一点だけで終りますが、大体社会通念上扶養家族は十八才未満というのが税金その他普通いろいろのものに用いられておるのだと思うのです。特にこの年金の扶養加算で子供を十六才未満とされたのはどういうお考えでこういうことになつたのですか。
  37. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 これもこもつともだと存じます。援護法では十八才にしておりますし、恩給法では二十才、ここでは実は十六才にいたしております。従来厚生年金で十六才といたしておりますのは、労働基準法による労働年齢というのを中心にいたしまして、十六才というものをとつて参つておる次第であります。
  38. 青柳一郎

    青柳委員長代理 次に井堀繁雄君。
  39. 井堀繁雄

    井堀委員 厚生大臣にお尋ねいたしたいと思います。大臣はたびたび他の委員の質問に答えられる中で、本法の改正根本的な改正に触れたかのごとき言説がありましたが、これは私どもにとりましては奇異な響きを感じたわけであります。すでにこの法律が昭和十六年に労働年金保険の名前で発足してから十三年の歴史を持つ、かなり長い保険制度で、しかもその主管が政府でありますることは申すまでもなく、この種の保険というものを今日どう改正しなければならぬかということは、議論の余地はないほど歴史的に裏打ちができておるはずであります。ことに私がこの機会厚生大臣に的確な御答弁を伺おうと思うのは、この厚生年金保険の性格は、長期保険であることは申すまでもありません。ことに政府が被保険者に対してその保険を契約、すなわち約束する場合において、はつきりした見通しかなければならぬことは当然てあるが、もしその見通しが、やむを得ざる客観的な事情のために約束の履行ができない場合にはその責めを負うということは、これは私企業であつてもきびしく強制されておるわけであります。ことに国家事業の場合にありましては、このことはきわめて重大な政治的責任であるわけであります。この保険は、先ほど来お話がありましたことで、重複を避けまするが、元来この長期保険の目的は、一つには労働者の老後の生活を保障しようということはきわめて明確な条文になつておりまするから、ごうも疑う余地はないのであります。しかも長期にわたつて労働力を社会に提供し、国に俸仕して老衰し、あるいは廃疾、そういうまつたく国にすべてをささげ尽して日本の産業、経済のために多くの貢献をした者に対して、国が社会保障制度でこれに報いることは福祉国家として当然でありますが、そういう制度がまだ誕生していない際に、これを保険制度にとつてかわつたわけであります。従つてその保険については、被保険者が当時、高率なと私どもは言いたいくらいでありますが、乏しい収入の中から保険金をかけて来て今日まで維持されたものでありましてこの保険金は、言うまでもなく老後のためのもので、そうして昨年の十一月から約三千人以上の人が養老年金の給付を受ける権利か現在発生しておるわけであります。こういう人に、一体当時の保険の計画したものと、その養老年金の金額というものとだけを引合いに出しても明らかなように、老後の生活の保障がまつたく意味をなしていないのであります。たとえば百円や二百円の月額保険料をもらつても、それが何の生活の足しになりましよう。こういう事態が発生したということは、この種の保険を管理する政府としては重大な責任であります。従いましてこういう問題の解決は、それは党の立場——先ほど来だんだん自由党の御自慢もありましたが、私が保守党に強調いたしたいのは、こういうことは資本主義政党が一番先に義務を負うべき事柄であつて、こういうものをこの状態に放置するようなことにすれば社会秩序はこわれます。しかも保守政党としては、保守的な政策を遂行しようとすれば、言うまでもなくこういうものについては重大な関心と、責任ある処置とがとられなければならぬわけであります。こういう精神からいたしますなら、この改正などというものはまゆつばものであります。われわれ立場を異にする政党としては、こういうものを批判するのに、私どもの党の政策のものさしをもつてはかろうとはしません。保守党の立場に歩み寄つて、この問題についてお伺いいたしておるわけであります。この種の保険というものは、今日抜本的な改正を迫られておるということは、私がここで述べるまでもなく、今日の制度のもとに設けられておりまする社会保険審議会においても、あるいは社会保障制度審議会においても、いろいろな情勢を勘案して最小限度と思われるものを提示されておるわけであります。しかもこれらはそれぞれの合理的な方法によつて選ばれた政府の機関であります。この審議会の答申や勧告をまつたく無視した提案が行われておるということは、私どもとしてはどうしても了解のできぬことであります。こういう点に対する厚生大臣の所信のほどを伺つて、重大なものを二、三お尋ねをいたしたいと思うのであります。
  40. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 お話のように、現行と申しますか、従来の厚生年金インフレ等の影響のために、相当内容がちぐはぐになつている。最初は掛金においても千分の五ないし二十三、一般で千分の九十四あるいは女子は千分の五十五という高率の掛金をいたしているのを二十三年に改めて、現行にいたしたわけであります。そうしてそれがいよいよ老齢年金や養老年金として支給される段階になりまして、御指摘のように月に百円という、まことに現在の状態から考えまして問題にならないような状態、そこで今回これを、先ほど来申し上げましたように、一千八百円、年に二万一千六百円という額に引き上げて参ろうといたすのでありますが、そのいきさつの中において、ただいま御指摘のように、社会保障制度議議会においては定額制による、その生活保障というものを織り込んだ一本の方向をとつて行かなんだのではないか、確かにその通りであります。これも先ほどだんだん申し上げましたように、定額を千五百円にし、報酬比例をこれに加えて、そうして千八百円という最低の額を割出して参つたのであります。現在の情勢におきまして、国庫負担を一割五分に増しまして、この計算をもつてするということが最も妥当であると考えましたのが、今回提案をいたしております改正法でございます。
  41. 井堀繁雄

    井堀委員 私の問いに対する答弁といたしましては、まことに不満足なものであります。しかし順次具体的にお尋ねすることによつて明らかになると思いますが、今大臣の御答弁の老齢年金給付の額をフラツトの場合に千五百円、それに比例制を併用しているわけですが、一体千五百円という金額が、十三年の間保険金をかけて来た過去の歴史的事実からいつてどうであるか、これを計数的にひとつ検討願つたことがあると思う。御案内のように、昭和二十三年七月の改正の際における政府当局の説明書を拝見したのでありますが、その中で六百円の最高額の保険掛金、すなわち標準報酬を改めておるわけです。その改める際の政府の説明によると、インフレの進行に基いて保険経済を見合うようにするという建前改正案を出しておると述べておる。これは私は正しいと思う。今日の場合にもこの考え方がやはり貫かれなければならぬと思う。そこでお尋ねをいたしますが、昭和十三年、保険を企画した当時の掛金、当時約束しました百円でも二百円でも、その当時の金額でありますならば、最低の生活を維持するに足る実情であつたことは私ども信じておる。ところが今日のインフレの進行の結果というものは、二十年も十五年も長期にわたつて労働に奉仕し、かつ保険金をかけた忠実な老後の労働者に対して千五百円、それはよしんば計算の仕方で多少相違するにしても、最高額の比例制による加算をいたしましても、先ほど大臣は何か他の委員への答弁において、しきりに生活保護法の中の生活扶助料の問題を例にしておりましたが、その金額に比べましても私ははなはだ低いと思う。乏しい社会保障制度の中で生活保護法は確かに唯一のものだと思うのでありますが、これは申すまでもなく、ただに生活扶助だけではありません。生活扶助を受けるような状態にある人々には、おおむね教育扶助でありますとか、医療扶助、住宅扶助、埋葬扶助といつたような各種の扶助が総合されて給与を与えておるのが今までの実例であります。ですから私は確実な資料を得るために、正式に政府から文書で回答をとつておりますが、その回答によりますと、大体今日の生活というものは世帯を構成しているわけです。日本生活が諸外国と異なりますのは、私が説明するまでもなく、よい悪いは別として、家族制度の中に生活構成が行われておりましてこの点を取入れたところに日本生活保護法の特徴があります。もし抜本的な改革だというならば、老後の労働者は、死亡の場合は別でありますが、何といつて生活は家族単位の中で営むのでありますから、その点を考慮して金額をはじき出さなければならぬと思う。ところがもし生活保護法に例を求めるなら、今日の生活保護法は、一級地においては九千二百円、二級地において、四人から五人家族には八千七百円から八千九百円、実際はこういうものによつて生活が保護されておる実情であります。それがどこに及びますか。抜本的な改正をするというならば、他の四つの保険があります、そのうちの老齢年金だけでもそういたすべきだと思うのでありますが、一体あなたはどこを根拠にして千五百円を払つて——あるいは標準報酬の点についてもあとでお尋ねをいたしますが、万八千円に押えておいて、それが一体どうして抜本的な改正でしようか、御答弁を伺いたい。
  42. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 従来二十三年の改正前におきましては、先ほど申し上げましたように、掛金におきましても相当多額で、最低で、女子におきまして千分の五十五、一般の男子におきまして千分の九十四という掛金をいたして、一年間の養老年金は四箇月分を支給する、こういう行き方であつたのであります。それを二十三年に、普通の場合は千分の三十、坑内夫は千分の三十五、女子千分の三十としまして、養老年金を月百円に改正をしたわけであります。従つてそういういきさつから、今回はこれを月額千五百円と、これに対する加算というのをいたして参つたのであります。でありますからこれらと比較いたしますと、一年分に対して四箇月を養老年金として参つた当時と、現在の最低支給額というものとを比べますと、むしろ今回の改正の方がその点は有利になつておると思います。  それから私先ほど一つの引例として生活保護法の場合を申し上げましたが、これはお話通り生活保護法におきます一人の標準と家庭の標準とが違うということは御指摘通りだと思います。だから一人だけ割出して基準考えればよいじやないかということには、御説の通り必ずしもならないと思います。
  43. 井堀繁雄

    井堀委員 それで明らかになりましたが、今度の改正は、老齢年金の一点だけを取上げても、保険改正といたしましては決して根本改正にならない。もう少し練り直して、少くとも社会保険審議会の討議の過程において雇い主側も反対できない程度のものでも出せばまだしも、それ以下のものでどういうわけでこういう案をおつくりになつたのか、一体社会保険審議会の答申を大臣はどういうふうに考えられるか。これは答申と申し上げるほどのものではなかつたらしいのでありますが、私は多少関係者の一人として論議の過程を承知しておりますが、この審議会に、もちろんこの原案ではございませんでしたが、先ほど私が冒頭に申し上げましたように、政府の責任において厚生年金保険の抜本的改正を迫られておるのに、その改正をどうしたらよいか案を持たないので、社会保険審議会の労を煩わしたいというまことに当を得た提案があつたと私は思います。それぞれ被保険者の立場、使用者の立場、あるいは公益側の立場から真摯な検討が続けられまして、もちろん雇い主側からは負担の加重の立場からかなり渋つた意見もありました。しかし保険改正趣旨については何らの異存はなく、抜本的改正を必要とするということについては異存がないのみならず、当時経営者側の団体から派遣されておりました、すなわち日経連の代表者すら、日経連の意見としてこの際思い切つて保険統合をなすべきだという主張さえしたのです。この点でひとつお尋ねをいたしましよう。被保険者側の立場は別として、すなわち経営者側の立場をとる使用者側の委員ですら、各種の社会保険が各省にまたがるということは、被保険者においてはなはだしく不便をこうむるだけでなく、社会保険としての運営の上から言つても好ましくないので、至急に保険統合されてそうして被保険者のための保護を充実したらどうかという趣旨改正を要望されました。そのために、むしろこの種の改正は、そういう抜本的な問題に取組むべきじやないかという意味で消極的な態度をとつたことは事実であります。この点は日経連の声明その他で明らかでありますが、この点を厚生大臣はどのように判断されておるかを伺いたいと思います。
  44. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 社会保険審議会における審議の過程におきましていろいろな御議論がありましたことは、よく私承知しております。結論におきまして、社会保険審議会は一致した意見にまとまり得なかつたという状態でございます。そこで今回の改正にあたりまして、ただいま御指摘に相なりましたように、従来は四箇月分を養老年金の給付といたしておりましたが、今回は低額者——三千円までの人につきましては、一年の六〇%になつておりますので、パーセンテージでなしに、貨幣価値として、むしろ従来よりもはなはだ増額をいたしております。そういう状態になつておりまするので、改正自体はパーセントから申しましても相当飛躍をいたしておると考えております。たださきに申し上げました社会保険審議会の場合におきまして、おのおのの立場におきまして大いに傾聴すべき御議論はありましたが、全体といたしましては一致した御意見に到着し得なんだ次第であります。従いましてこれらの御議論を勘案しながら今回の改正等検討して参つた次第であります。
  45. 井堀繁雄

    井堀委員 この問題は、大臣が報告を正しくお受けになつておれば、今のような答弁はなされぬと思う。正式の答申案が得られなかつたことは私も承知しておりますが、先ほど私がお尋ねしたのは、前回の社会保険審議会に対する厚生省当局のこの改正に対する扱い方についてお尋ねをしたわけであります。大臣は詳しく承知しておらぬようでありますから、また別だ機会にほかの方法で明らにするつもりでおりますが、しかし大事なことでありますから、一言だけ答弁してもらいたいと思います。それはこの厚生年金保険を抜本的に改正するためにはどうしたらいいかということについては、当時の厚生省の態度はまつたく白紙であつたが、まつたく白紙では論議を進めるには不便であるからということで、厚生省事務当局メモというものを出して、そのメモを中心に経営者側も意見をつくり、被保険者側も意見をつくり、また公益側の立場をとる委員諸君も、それぞれ団体もしくは個人の見解を明らかにしておるわけであります。この資料はそちらに届いておるはずであります。そこでまつたく意見が一致したもの、やや一致できたもの、まつたく一致のできぬものとにわかれたわけであります。まつたく一致したものはこの際取入れるべきだと私は思うが、そのまつたく一致したものもこの際取入れられていないということなんです。こういう点に対して私は非常にこういう委員会を軽視する政府の最近の態度というものはよくないと思う。特に社会保障制度審議会の答申はかなり昔であります。この点から行きますと、保険統一整理というものはすみやかに行われなければならぬわけで、これは私は冒頭に申し上げた。保険改正を急がなければならぬのは政府の立場からしても当然であるのに、正規のこれらの機関の答申をまつたくここでは無視しておるわけであります。この点の態度は一体どういう考え方であるか、吉田政府の見解を責任あるところでお答えを願つておきたいと思います。
  46. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 お話の点、社会保険審議会の最初の諮問まで行くまでのいきさつ等につきましても、よく私も承知をいたしております。そこでこれらについて一致した意見等もおありになり、むしろ根本においては社会保障の立場から、各種もろもろの年金等の統合というのは、これは保険の方におきましても、社会保障におきましても、意見がありあるいは答申のあつた点でございますが、これは先ほど申し上げましたように、根本としてはその意見は私どもは大いに尊重する。ただ現在の段階においてにわかにこれを一本にするというのには、相当おのおのの立場の調整をし、それぞれの法律の足固めをして、そうしてその段階に行くべきものである、かように考えておるのであります。それでこの意見そのものが厚生年金改正にただちに現われて来なんだという点においては、その通りでございます。しかし厚生年金改正だけではこれはいたしかねるのでありますから、根本方針といたしましてはそこへ行く段階として、この改正そのものも考えながら進んで行くという方針をとつて参つたのであります。
  47. 井堀繁雄

    井堀委員 二つの委員会の答申を尊重されなかつた点は明らかでありますが、どうしてできなかつたかについては明らかでございませんのを遺憾に思いますが、とにかくこの種の改正をする場合には、特に社会保険審議会の意見を聞かなければならないことは法律の規定に明らかになつておるところであります。しかもその両方委員は、あの当時はかなり回数も重ね、時間におきましても非常に多くの時間を奉仕されて、真摯な態度でそれぞれの立場を代表し、もしくはまつたく保険制度一本になつて検討したものであります。こういうものがまつたく蹂躙されてしまうということになりますることは、事柄は社会保険審議会の答申を軽視したという言葉で見送られますけれども、これは保守政党としては私は重大なミスだと思う。こういう委員会を十分に尊重して行くところにこそ保守政党の特長があると私は思うし、社会政策に対する忠実な行き方だと思う。みずからそういうものを蹂躙するような、無視するような、軽視するような態度というものは、私は保守政党ではなくて反動だという非難攻撃を受けても受答えのできない事実だと思う。こういう点ば十分注意さるべきことであつて、私どもの立場からとやかく申すことではございません。政府自身の責任において行うべきことであります。それはともかくといたしまして、今にわかにそういう答申が実施困難だということは判然としたのでありますが、私はそういう審議会の答申は決して理想案を出したものとは思われません。被保険者ははなはだしく不満である。経営者もかなり不満足である。にもかかわらずこの辺でという社会保険審議会の意見もまとまつた。社会保障制度審議会においてはなおさらそうである。大局的立場に立つて答申が行われておりますことは、この報告書によつて明らかだ。このことは今ここでむし返す必要はありませんが……。そこで具体的な事実について大事だと思われるところだけを一、二お尋ねをいたします。  もし保険統合を前進する姿にあるということでありますならば、それはわれわれは善意に理解するのであります。そこで前進の姿であるかないかを具体的事実について御答弁を願いましよう。たとえば健康保険厚生年金保険とは一番近い性格を持つております。一体健康保険厚生年金保険を調整して行こうとすればどこに一番大きな障害があるか、どこを扱えば一番簡単かという点は、これはしろうとが考えても一致する点としては標準報酬統一はぜひやらなければならぬということですが、健康保険は御案内のように二万六千円ですが、今度の改正は一万八千円である。これは一体どういうわけですか。ひとつこれに対する大臣の見解を伺つておきましよう。
  48. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 統合に向つて努力をすると申し上げたのでございますが、具体的には一向どうも現われて来ぬじやないかというお話であります。しかしこれは手取り早いところからだんだん現わす予定をしております。現に船員保険とこれとをマツチさせるというのもそれでございます。ただいま御引例の健康保険の問題は三万六千円だつたと記憶しております。三万六千円と片方は一万八千円だということになつておりますので、お話通りに今一万八千円から三万六千円まで行つておりません。答申等で伺いますると三万六千円が希望されている点であると存じますしかしにわかにこの従来の八千円を約五倍近くいたしますることは、負担も急激に増加いたしますので、そういう点を勘案いたしまして、将来永久に現在の一万八千円でとどめるという考えは持つておりませんが、しかしそれには段階があるというので、実は今までの八千円を相当飛躍して一万八千円にいたしたのでありまして、その一段階としては相当努力をいたしたつもりであります。
  49. 井堀繁雄

    井堀委員 あまり技術的な問題をお尋ねすることは失礼かと思いますが、政治的な責任の立場において御答弁願わなければならぬ点だけを伺つておきます。あなたは八千円を一万八千円にしたからたいへんな飛躍のようにおつしやられる。八千円に改正されたのは昭和二十三年であります。一体今日インフレの進行状態は、貨幣価値に対して何倍になりましたか。昭和二十三年には公務員は千八百円ベースでありました。それが今人事院は一万七千円を勧告しております。一体厚生年金保険だけについて、しかも被保険者は貨幣価値の高い掛金をかけております。それが被保険者の何らの責めに帰せない他の条件に基いて自分の権利が蹂躙されておるという事実は、こういう長期保険を担任する政府としては、あらゆるものを犠牲にしてもこういうものに対しては予算を割愛するなり、あるいは保険の経営の中において抜本的な改正をなすべきである。それを二十三年の八千円を今日、しかもこれは何も八千円を一万六千円にしてくれろというのではありません。標準報酬がそれについて上るということでありまして、何かそれが飛躍のようなことを言つておりまするが、そうすると健康保険の三万六千円は何か不穏当の改正のように聞えますが、どうもその辺は保険に対する認識を欠いておるのではないかと思いますので、御勉強を願うことにいたしまして、そういう御答弁は決して適当ではございません。できまするならば、健康保険との調整を保つ意味において——もちろん経営者側の方ではこれに難色があります。しかし保険料率を引上げようというのではありません。当然法律の基本精神は動かないのでありまして標準報酬は、インフレの高進に基いて給与ベースが上つて来ておるのであります。その給与ベースに調整して行くということは改正ではありません。運営の自動的な進化にすぎないのであります。これを改正などという考え方はたいへんな誤りでありまして、まして抜本的改正なんということは片腹痛い。これに対する答弁は困難でありましようから、後日事務当局にお尋ねをして明らかにしますが、この機会大臣にもう二、三大事な点と思われる点をお答え願おうと思います。  それでは一体なぜこの際標準報酬をそういうところに押える反面に、老齢年金給付の年齢を従来五十五才であつたものを六十才、五十才であつたものを五十五才、これは言うまでもなくこの法律ができた当時に、あなたは五十五才になりますと老齢年金を差上げますよという約束をしておいて十三年過ぎた今日になつてずるりと五年も引延ばすというやり方は納得のできぬことである。この辺はどういう見解でこういう案をおつくりになりましたか。
  50. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 従来はただいまお話になつておりまするように、普通の場合は五十五才であり、坑内夫の場合には五十才であつた。それを今回は六十才と五十五才に引上げて参つたのであります。従来のこれらの約束をいたしました方々には、それぞれ実施期間を順次それにマツチさせます。従つてこれが完全実施は二十年後でございます。その間はずつと順次これを繰延べて参ります。今回の法律がそのままの姿で実施されますることは、二十年後になつて初めてそのままの姿で実施されて来る次第でございます。それを何ゆえに五十五才を今回六十才にしたかという問題、これはいろいろ検討いたしますると、日本の平均寿命あるいは労働寿命と申しまするか、これらもずつと延びておりまするし、これら等を検討いたして参りまして、世界各国の実情等を調べて見ましても、これらの長期保険の実施状態が大体六十才以前でやつておりまするのは今まで日本だけであつたと思います。ほかの国等におきましては、これが相当延びております。そうして今申し上げました日本の平均寿命あるいは余命というものが最近ずつと延びて参りまして、生産年齢と申しまするか、労働年齢等もこれに比例をいたしまして延びて参りましたから、従つて産業等に対します影響等もむしろ五十五を六十に延ばす方が妥当である、こういうふうに考えていたしたのでありまするが、それにいたしましても、ただいまこれをそのままただちに実施することは従来の関係もあつて不穏当と存じます。従つて完全実施は二十年後にいたしたのであります。
  51. 井堀繁雄

    井堀委員 その答弁は私としてはまことに了解に苦しむのでありますが、今あげられました五十五才を六十才に引上げる理由の一つとして、労働年齢を取上げられております。私の手元にある資料から行きますと、労働者労働年齢というものはむしろ低下して参つておる。反対であります。これは化学工業あるいはその他いろいろな新しい、近代的な企業活動の被害が労働者の生命を縮めておる統計が出ておる。この点からいえば逆である。それから第二にあげております日本人の寿命が延びておるというのでありますが、確かにそれはその通り、しかしこれはいろいろな関係もあるでありましようが、乳幼児の死亡率の減退によるものがこの問題を規定する大きなフアクターになつておる。でありまするから、こういうものの場合には尺度にはならぬのであります。それから一部には長生きをする者が出ております。たとえば結核その他の療養上の改善によつて出ておりますが、しかしこれはこの場合には例にとるべきではないのであります。でありますから、そういう理由でありまするならばこれはおやめになることを希望しておきます。  それからさらに年齢をにわかに——調整はもちろんやることでありますけれども、基本的なことは十三年前にさかのぼつて約束をしたことを——長期保険というものはそういうものではありません。掛金を最初かけたときから十三年かけて来ておるのであります。それを全部払いもどしをして、そうして新しい制度を約束するというのであるならばいいけれども、この場合には、やはり被保険者の権利をいささかでも蹂躙する場合には、被保険者の了解なしにはやれぬことである。もちろん国会がそれを代理しておるのだといえば今日の制度では一応りくつが通るでしよう。しかしそれでは審議会の制度を設けたのが意味をなさなくなる。私は厚生年金保険審議会の中に被保険者あるいはこれに関係の深い雇い主、それに知識経験者を入れたということは、こういう関係者の意思がいかなる場合の法律の改正においても無視されたり蹂躙されたりすることがないように、それを守ろうとするところにこの法律の一箇条が入つておると私は信じておる。そういう意味で被保険者側はあげて反対をしておる。経営者側といえども、この点に対しては——政府側の改正をもし諮問されるならば、正規の機関においては反対されない。原案を主張しておるのであります。でありますから、これは答弁になりませんし、たいへん見当違いの御答弁でありますから——そうでありますならば、これは私の思い違いでお尋ねをしたのでありますから、現行通りにおやりになることが正しかろうと思います。  次に進んでお尋ねをいたすのでありますが、適用範囲を拡大する点について先日も他の委員から質問があつたようでありますが、その答弁を伺つて納得ができませんので重ねてお尋ねをいたします。今日社会保険審議会においても強い要望がありましたし、社会保障制度審議会政府に対する勧告答申案を見ますると、このことをよく説明しております。すなわち社会保障制度というものの足がかりにこういう社会保険各種のものを統一整備することを繰返し強調しておるのであります。こういう点からいたしますると、今日適用外に置かれておりますものの中で、常時五人以上の事業所に限られておるのでありまするが、五人以下の企業というものは、大臣答弁で数字を明らかにしておりましたが、私の統計はやや古いもので、昭和二十六年の総理府の統計でありますが、五人以下の事業所は、製造業だけを見ましても六二・六%、商業におきましては九一一%でありますから、日本労働者として当然この保険の恩恵を受くるべき対象労働者で、おおまかでありますが、約半数ばかりの労働者が漏れておる。しかも中小企業、零細企業に属する人々の日本経済における地位というものは、非常に重要であります。その重要度におきましては、むしろこういう社会保険の恩典を一番先に享有せしめなければ、日本経済の復興はこういうところに大きな障害を生じ、これが日本経済の一大ネツクになつておるわけであります。でありますから、もし社会政策としてこの種の保険を普及徹底しようとするならば、まずこの際中小企業、零細企業の悪い条件のもとにあります労働者の救済のためにこの保険が手を差延べるべきことは、私が説明をするまでもないと思うのであります。この点に対して、あなたの言質をとらえて言うわけではありませんが、あなたは真摯な態度で、しかも社会保障について、あるいは社会政策について熱心な態度を表明されておりましたから、それほど熱意があるならば、この機会になぜ思い切つて中小企業、零細企業に手を差延べる改正をなさらなかつたか。この点に対しては、どうも今までの大臣答弁では納得できませんので、ひとつ納得のできるような答弁をお願いいたします。
  52. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 お話のように、数字は私が申し上げるものとは少し違いますが、相当多数の、しかも全労働者に対します比重といたしまして、相当大きい比重を持つておりますのが、五人以下の事業所における被用者状態だと思います。これを今回の改正に入れてありませんでしたのは、実はこれらの五人以下の事業所状態がまことに千差万別でございますから、そこに働いておりまする被用者状態検討いたしましても、その形態、あるいは報酬状態、また雇用の期間という問題を把握することはまことに困難であります。そこで五人以下までに延ばさなければいかぬという考えは、私どもも捨てておりません。ぜひこれはやりたいとは考えておりますが、それらの具体的な調査をして、そうしてそれらに対します掛金なり、保険財政なりに及ぼします影響、負担能力、それから中小企業の国民経済との関連性、これらを十分検討いたして考えて行かなければならない。あるいは特別の取扱いをするかどうか。一方重労働に対します取扱いは特別な取扱いをいたしておりますが、さような点も一律に行けるかどうか。さような実態的な問題が考えられて来るのであります。具体的に申し上げますると、この五人未満の事業所におきます実態は、直接私どもの方で今後なるべく早い機会に調査をしたいと思つております。その調査の結果に基きまして、これらの点を十分検討をして進めて参りたいと考えております。
  53. 井堀繁雄

    井堀委員 五人未満の事業所の把握が非常に困難であることも、あるいは雇用の形態が複雑であることも私はよく承知しております。でありますが、この重要な日本産業経済の上に多数の労働と経営があるわけでありますから、これをそういう困難なという理由でこういうものの外に置くということであつては、この保険としてはまつたく生命をつまれていると思うのです。そこでそういう困難はあらゆるものにつきものであります。しかしたとえば日雇い健康保険を取上げて来たという点は、こういう困難をここでも克服する努力が具体的になつているわけでありますから、できぬことだという理由にはならぬ、ただ困難だという理由だけにしかならぬ。そこで困難ということで安易につこうというのは、社会政策としてはやるべきものじやありません。社会政策に対して多少でも理解があり、誠意を示すならば、その困難を克服することこそが社会政策である、これは資本主義の弊害をチエツクするものでありますから、困難と取組まないところに社会政策などはあるはずはないのであります。そういう答弁は、社会政策に対して無理解である、あるいは誠意を持たぬという答弁にかわる言葉に響くのでありまして、そういうことは私は許されぬと思う。そこで、問題は困難であつても、その困難と取組んで行くというところに今度の改正がその芽を出して来なければならぬと思う。  それからいま一つこの問題に非常に重要な関連を持ちますのは、こういう事業所労働条件が低いという点、これはいろいろ実態調査をしておりますが、政府は一方においては、中小企業の五人未満の労働者であるからというので、勤労所得税を免除する、この点は国税庁はきびしく調査をしております。第五回目の歴史をつくつているようですが、国税庁は、勤労者の零細な所得に対しては厳密な調査と追究を企て、勤労者の所得を完全に把握しております。これだけの熱意と努力がこういう年金保険に取組む人々にありますならば、易々としてそういう実情を把握することができます。これが熱意の度をはかる一番いいものだと思います。勤労大衆に対する徴税に対しては、このようなきびしい手を差延べている。しかも長い間尊い勤労によつて日本の経済や福祉に貢献した労働者が、年老いて、その老後の不安の中において何らの社会保障がないので、保険の形においてその生活の保障の道を講じようというものに対して、調査あるいは把握が困難だというような理由によつて見送るということは、言語道断といわなければならぬのであります。把握は困難でありません。こういう答弁は不穏当だと思う。しかし末尾で一生懸命やると言つておりますから、今後大いに期待することにいたしておきましよう。この改正についてそういう点で修正が出たら喜んでお受けになるだろうと思いますから、私は修正案に対して御意見を伺いたいと思つておりますが、答弁はよろしゆうございます。  そこであと二つだけちよつと済みませんが御答弁願いたいと思います。  一つは、先ほどの佐藤さんの質問に関連してぜひ伺つておきたいのであります。保険の給付について定額制と標準報酬比例制とを質問されておりましたが、大臣答弁はどうも腰がはつきり切れていないようでありますから、その辺の所見をもう一度ここで明らかにしてもらいたいと思います。先ほどの質問者は、社会保障制度保険を混同しているように私は聞きました。社会保障制度であれば、これは定額制がいいのであります。そこで、これに保険の精神を加味するということになれば、定額制を無視することは適当でなかろうと思う。ただこの保険を、社会保障制度審議会が強調いたしておりまするように、将来そういうものに近づけるために定額制の金額をふやし、そのウエートを大きくして行くということは望ましいことであります。  いま一つ私が見解をただしたいと思うのは、老後といいますけれども、大体勤労者の生活というものは、過去長年の間の賃金、月給の収入によつて一つ生活の形態ができているわけであります。その形態が保険に切りかえるせつなに、従来の収入とはまつたく別な、打つてかわつたものになるということは、これは非常な変改になりますので、こういう生活保障という立場から言いますと、社会保障制度が徹底して来て、もう老後は老後として新しい社会の中で育てられるのならは、これはもうそれでよろしい。しかし今のような乏しい保険経済の中でこれを保障しようとするならば、私はフラツトにするということは少々飛躍があると思う。こういう点に対してそこまでお考えになつてこの措置をとられたのか、あるいは失礼ですけれども、こうやく張りの改正であるからどうでもいい、ちよこつとやつておけというつもりか、ここら辺をひとつつておきます。
  54. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 これは十分検討して実は今度の改正をいたしたのでありますが、お説にもありましたように、定額一本というのは一つの全体的な保障制度の立場から考えますと、国民全体というような場合、あるいは全然固定収入等がないような場合においては、一つ定額というものが基本になつて来ると思う。しかし少くともある報酬があり、それが日本のような形態における低額から高額にずつと来ております場合においては、今までの報酬体系を無視した定額一本というものは、相当現実と離れた考え方が生じて来るのであります。従つて各国ともこの点は相当困難を感じておると見えまして、定額制一体でやつておるのは、純社会保障的な立場をとつておるイギリスだけだと承知いたしております。そういう点から考えます場合に、今回千五百円を一方の定額として、これは国庫負担も相当いたしておりますから、従つてそういう均衡性等も考えまして定額制をとつて行く、その他はそれと見合つて報酬比例制をとつて行く。これが現状においてもまた現在の保険経済においても最も妥当ではないか、こういう考え方でいたしております。従つて定額制一本で行くという勧告もございましたが、将来国民全体に及ぼして、これを収入がない場合にやつて行くときには、むしろ何とかそういう点を考えて行かなければならないが、現在の情勢ではただちにこれをとつて行きますると、むしろ混乱をして来るおそれがあります。従つて定額報酬比例とをそれぞれ仕わけまして、今回のようにいたした次第であります。
  55. 井堀繁雄

    井堀委員 そうだろうと思つて、まつたく私のお尋ねは意味があつたと思います。そこでそういう御答弁までできたのでありますが、そうすると、この改正案とあなたの御主張とが食い違つて来る。それはここで定額制を以上の理由であなたが反対される、もしくはそういう意見にくみしがたいという見解は私と一致するわけです。そういたしますと、どうしても国民健康保険の三万六千円まで持つて来ませんで一万八千円で切りますと、今日の一万八千円以上の幅をあなたはどのくらいまでお認めになつておるか。今まで保険金をかけて来た人が、一万八千円以上になりますと、一万八千円で押えられますよ。この議論はまつたく矛盾撞着を来しますから、その主張をなさる場合には、少くとも最低限度健康保険の三万六千円まで持つて来ないと、その主張は貫けませんぞ。その辺の見解をひとつはつきりしてもらいましよう。
  56. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 これは理想的に申しますと、むしろ三万六千円ももう少し現実において上がございますから、そのままの姿で行く方がほんとうは理想的かもしれません。しかしいろいろな意味において、現在では健康保険では三万六千円、こちらの方でも強い一方の意見としては、三万六千円が保障制度審議会、保険審議会にも出ておりますことは、よく承知しております。ただこれを一万八千円からただちに三万六千円にいたしまする上においては相当な影響がある。あるいは事業主につきましても、この一万八千円にいたしましたことによつて、大体において八十八億必要じやないか、そのうちで事業主の負担が半分でありますから、四十四億になります。ただこれには法人税を控除することになりますので、法人税を控除いたしますと、二十五億五千万円の負担になつて来ると存じております。また被用者においても同様な負担考えられる。これらの負担考えて参ります場合に、この一万八千円をただちに三万六千円にする場合におきましては、相当な負担増があり、またその負担増に見合つて保険経済をいたして参ります場合におきまして、現在の被用者の場合を考えますと、現在は平均して月に百五円が今回の場合は百七十円になりますので、これで平均して六十五円の増になつております。これがさらに三万六千円になりますと、ずつと増額をされます。そういう点を考慮いたしまして、将来あらゆる面においての統一ということを考える場合には、頭をそろえ、しりもそろえながらパーセントもそろえるということが妥当であるとは承知いたしておりますが、そういう関係から今回は一万八千円ということにいたしたのであります。
  57. 井堀繁雄

    井堀委員 この問題は非常に重要でありますが、やや専門的な事柄でありますから、後日事務当局にただしたいと思います。  もう一つお答えを願いたいと思いますことは、保険経済全体の立場から、雇い主の負担のにわかに極端な増額はいろいろな意味で抵抗があろうと思います。また労働者の方も保険金を引上げることによつて保険の実体を備えるようにするということににわかに同意をしかねる向きもあろうと思います。この辺については私どもの立場から見ますと、残念ではありますが、国民生活の窮迫した現状においてこういうものと取組む者も同様に苦難の道だと思うのであります。しかしここに努力を払おうとすれば、どうしても国庫負担の増額によつてその難路を切り開いて行く以外にないと思う。でありますから、国庫の負担について、この際この保険の抜本的な改正とまで行かなくとも、先ほど来御答弁つて来ましたように、社会保障制度審議会ないし社会保険審議会の間においていろいろ検討されました程度の事柄をぜひ実行に移して行く。そうするためには昭和二十九年度の予算の中における厚生年金に関する改正案の予定した金額というものは、こういう問題を解決する上に大きな障害になると思う。そのわくの中でこういうことを議論させる結果にもなると思う。この予算に対する厚生大臣の見解をひとつつておきたい。
  58. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 これは結局こういう保険経済でございますから、しかも厚生年金社会保障としての中核をなすものと考えますので、あるいは事業主あるいは被用者のそれぞれの負担に即応しますような国家の負担というものを考えて参つたのであります。国家財政は御承知のような状態でありますが、それにいたしましてもこの保険事業はぜひ国家の力を入れるべき重大なものでございますので、従来は一般に対しましては一割でございましたが、今回は一割五分といたし、二十九年度におきましては八億七千万円の国庫負担をいたしたのであります。この状態を続けて参ることを考えまして、十年後の三十九年には三十四億を見込んでおります。五十年後になりますと二百四十三億を国家が負担しなければならない、こういう状態に相なつて参ります。その程度はどうしても国家がこれらの事業の重要性にかんがみまして負担をすべきものと考えております。
  59. 井堀繁雄

    井堀委員 なるほど乏しい日本財政の中から醵出するという困難についてはよく理解ができるのであります。ただ問題は一兆億の予算をどこにどう使うかという、すなわちこれはそれぞれの政策の決定点、分岐点になると思うのでありますが、この点については言葉の上では社会政策について十分理解があると言い、熱意があると言い、予算を割愛したという数字をいろいろ言つておりますが、保険の一割五分の負担が、全体との比較において一体どれだけのウエートを占めるかということについては、これはまつたくナンセンスだ。ちつとも社会政策に対する理解のある予算じやありませんよ。社会保障制度にとつてかわろうということになりますと、従来被保険者並びに雇主が負担しておりました全体が国庫にかわつて来るのであります。国が全額つて来ることになるわけてあります。一割五分がいかにも社会保障制度に対する理解のある予算だなどというと笑われますよ。五十年先に二百四十三億になるですつて、じようだんじやありませんよ。労働者と雇主は八百億以上の積立金をいたしております。こういう問題はそういうお考えでありますと、前後が不一致いたしますから、何かの考え違いだろうと思いますが、吉田政府の予算の組み方において、厚生大臣としては非常に申訳なかつたという御答弁がいただけると私は思つております。あなたの熱意を疑うものではありません。吉田政府の性格についてはある程度見通しておるから……。だけれどもあなたは厚生大臣でありますから、その中でも闘わなければならない理由があるわけであります。そんなものでけつこうな態度をとられてはいけませんよ。それは申訳のない話だ。そこでこのことについてはこれは本来は予算委員会等でやるべき事柄でありましよう。でありまするから厚生大臣の善意に期待いたしまして、このことにはきようは触れますまい。  そこでこれと関連いたしまして、すでに厚生年金の積立金が八百億を越えておろうと思います。この積立金が今日大蔵省の資金運用部に凍結と言うと言い過ぎかもしれませんが、大蔵大臣の統轄のもとに押えられているというこの事実であります。すずめの涙ほど還元融資が行われている。厚生大臣労働者と雇主が零細な——しかも先ほど来真摯な論議が行われております中に明らかにされたように、保険としてはまことに労働者に対して申訳のないような給付しかできない。保険財源がということで逃げておるのでありますが、この八百億の運営はどうなさつておいでになりますか、利率はどのくらいですか、このことについてまずお答えを伺いましよう。
  60. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 先のお話社会保障制度に移行いたしましても、各国もそうでございまするが、社会保障制度必ずしも全額国庫負担というのはほとんどの多くの国はいたしておらないと思います。むしろそれぞれの立場における負担というものを考え、かつまた国家もこれに対する負担考えておるのがいわゆる現在各国のとつておる社会保障であろうと思います。従いましてこの厚生年金もその線から実は出ておる次第でございまするが、そこで積立金の点でございます。積立金は昭和二十九年度末にいたしまして一千百六十九億九千万円を計算いたしております。これが先も申し上げましたが十年後になりますと五千五百四十億円ということに相なります。五十年後には二兆六百三十三億という計算をいたしております。そこでこれによつて大体利率を現状の状態にし、将来も検討いたしまして、そうして完全積立方式による一つの計算をいたして参つたのであます。いろいろ計算をいたしましたが、一応完全積立の方式をいたして、積立金と掛金国庫負担とで見合つて、これに対する給付が安全に行くという方法をとつて参りまする上には、積立金の運営管理というものを最も完全に、そして安全な方法をとつて行かにやならぬ、これは何よりも第一だと存じます。従いまして相当利率が高くなりましても、利率ばかりで運営いたしますると、かつてそういう経験もあるようでありますが、とんでもないことに相なるわけでございます。従つてこれらを十分検討して運営をするが第一ではないか、そこで現在考えております運営は、先ほどお話のありましたように資金運用部資金によつて運営をして行く、国家自体が責任を負うという態度をとつて来ることが最も安心のできる、そして心配のいらない完全な方法ではないか、こういう考え方で資金運用部資金としてこれを活用いたしておる次第であります。この場合に利率の問題が結局根本問題になつて来る。利率が資金運用部資金の運用の場合に低くなつて、安全であつてももう少しいい方法がないかというのが問題になりますので、従つてこれらの点につきましては現在の国家財政の全体としての責任における安全と利率を考えながら、できるだけ利率を十分にするという方針で行きたいと思います。
  61. 井堀繁雄

    井堀委員 利率は幾らですか。金額は幾らになりますか。
  62. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 五分五厘で計算をいたしております。
  63. 井堀繁雄

    井堀委員 五分五厘一本ですか。
  64. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 今申し上げました数字は、最初十年はそういうことにしまして、あとは四分五厘の計算であると思います。
  65. 井堀繁雄

    井堀委員 私の承知しております率はもつと低い率を聞いておりますが、まあそれはよろしゆうございましよう。そこで私のお尋ねいたしたいのけ、八百億と思つておる間にもう一千億になつたというのでありますから、非常に巨額な積立金がどんどん増大しておるということであります。私どもは積立金が増額して行くということは保険経済をゆたかにすることであるし、保険の安全な保障になるわけでありますから喜ばしいことと思う。しかし積立金をやることがこの種の保険の目的でないことはいまさら申すまでもないのであります。口を開けば保険財源に籍口して、厚生大臣は何か今までの月額二百円を千五百円も出せばたいへんな改正のようなことを言われたのですけれども、これは行きがかり上言つておいでになると思う。数字は決して今日の老後の生活を保障する何らの役立つ金額にはなりません。今後よしんばこれはフラツト制両方入れまして二千円、要するに思い切つてみて三千円もらつたところで、どうして今日長年の間労働で精魂を消耗さした老後の保障になりましよう。これはもう問題にならない低い数字でありますから、そういう積立をするということよりは、その積立金をさいて、保険経済の大きな体系として保険給付の額なりあるいは範囲なりを拡大することが一番適切な改正だと思うのです、抜本的改正でなくても、当面の緊急な改正に私は手をつけるべきだと思う。一体積立金を長い間して、しかも私のあれからいたしますと年五分だと見て、金額によつて段階にわかれておると思いますが、低い率です。ところが公務員共済組合が同じような性格の保険をやつております。ここの積立金は民主的な運営と一般にいわれますが、共済組合関係者によつて管理され運営されておるわけであります。この実情を調査いたしましたところ——一昨々年でもうちよつと古くなりますが、私の調査いたしましたところによると、年利七分を上まわる利率で活用されております。しかも決して危険なものの運営ではないのであります。きわめて安全で、しかもその運営が、一つには還元融資と申しますか、被保険者、すなわちその構成メンバーのために活用されておるという事実を承知しております。大臣はこの点に対する、これとの関係について、私の見解にどういうお考えであるかをお答え願いたいと思います。もう一度申し上げますと、安全であるということはもちろんのことであるが、政府が金庫の中へ入れておけば安全だということには労働者にとつてはたらぬのです。私どもは安全だと思つて厚生年金保険に期待をかけて来た。ところが今日になつてみればだまされたことになる。労働者としてはそういうように考えるのです。ただ金がなくならなければいいということではなくて、金の価値が新聞紙にばけてしまうということでは困る。昭和十三年にかけた百円は今日の百円ではございません。労働者生活に一体この金が役に立つか立たぬかということでわれわれは貨幣価値を判断するのであります。また保険はそうでなければならぬのであります。ここに一千億の積立てが後生大事にかかえられて、しかもその融資が——形式的な何か運営委員会のようなものがあるようでありますが、これは政府の役人と金融機関の人が入つているだけで、申訳的なもので、大蔵大臣のまつたく一所存でこの金が運営されるに至つては、たまつたものではありません。この問題はあなたのところにも出ておると思います。社会保険審議会の一致した意見として決議が行われて、答申してあるはずであります。これは政府の金庫の中へ入れておけば安全だということは一方的な見解であつて、人民を疑うものの考え方から出て来ておる。これは方法はあるはずでありますから、関係者によつて、しかも安全で民主的な運営をさせて、できるならば一部は還元融資をされるか、あるいはその運営の中にも保険経済の中にも直接プラスできるような道を開くことが、この際喫緊な問題だと考えるのでありますが、それに対する何か準備がないかどうか、なければこの際修正の中にお入れになるような御意思がないかということまで伺つておきます。
  66. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 根本方針はお考え通りであります。安全であり、しかもこれを有利にまわす。還元融資をしながら被保険者にこれを有利に利用させるという、その根本方針におきましてはまつたく同感であります。従つて具体的な問題になりますと、現在の五分五厘というのがもつと伸びて来ないか、また還元融資が、現在はお話通りに本年度も三十五億でございますから、もつと行かないかという問題になつて来るわけであります。これはもちろん還元融資は本年度三十五億でございますが、将来は大いに努力して被保険者に対しまして有利にこの金が利用せられるようにいたして参りたいと考えております。また利率の点につきましても、ほかの関係もありますから、これは関係省でありまする大蔵省等と現在も折衝しておりますが、できるだけ有利な方向に今後も努力して参りたいと思います
  67. 井堀繁雄

    井堀委員 いろいろお尋ねをいたしましたが、なお実際上の問題につきましては事務当局の方にお尋ねいたすことにいたしまして、これをもつて私の質問を一応打切りたいと思います。  ぜひこの機会に希望を申し上げておきたいことは、これは党の政策であるとかあるいは政府の性格というようなもので曲げられてはならないきわめて喫緊な制度改正を迫られている制度であると思うのであります。御案内のように、今日この制度改正についてそれぞれ関係当局が誠意を示さないと、今後日本のこういうものに対する、勤労大衆の政府に対する信頼は地に落ちると思う。このことはひとり吉田政府に対する信頼だけではなくして、こういう社会政策に対する、ことに長期保険に対する労働者の、たといみじんでも疑いを残すようになりますと、今後社会政策を実施する上にも、ことに日本の置かれている将来というものには福祉国家をつくり上げて行かなければならぬ至上命令があるわけです。福祉国家建設のための、これは重大なる事柄の一つであると私は思いますので、たといその改正がやむを得ない事情のために狭い範囲にとどまるといたしましても、将来において福祉国家に貢献のできるような形に改正が押し進められなければならぬと思うのでありまして、今後国会におきましても貴重な御意見が各方面から出ると思うのでありますが、そういう意見に対しまして大臣は十分これを取入れになられまして、党の政策や内閣の狭いわくにとじ込められず、福祉国家建設のために十分の御努力を期待いたしまして、一応質問を打切ります。
  68. 青柳一郎

    青柳委員長代理 本日はこれにて散会いたします。明日は午前十時より会議を開きます。    午後一時三十七分散会