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1954-04-06 第19回国会 衆議院 厚生委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月六日(火曜日)     午前十一時二分開議  出席委員    委員長 小島 徹三君    理事 青柳 一郎君 理事 中川 俊思君    理事 古屋 菊男君 理事 長谷川 保君       越智  茂君    高橋  等君       降旗 徳弥君    安井 大吉君       山口六郎次君    亘  四郎君       佐藤 芳男君    滝井 義高君       柳田 秀一君    杉山元治郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣 緒方 竹虎君        大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君         厚 生 大 臣 草葉 隆圓君  出席政府委員         厚生事務官         (薬務局長)  高田 正巳君         厚生事務官         (保険局長)  久下 勝次君         厚 生 技 官         (医務局長)  曽田 長宗君  委員外出席者         厚生事務官         (大臣官房総務         課長)     小山進次郎君         厚生事務官         (医務局次長) 高田 浩運君         専  門  員 川井 章知君         専  門  員 引地亮太郎君     ————————————— 本日の会議に付した事件  医薬関係審議会設置法案内閣提出第八二号)  厚生年金保険法案内閣提出第一二四号)     —————————————
  2. 小島徹三

    小島委員長 これより会議を開きます。  まず医薬関係審議会設置法案議題とし審査を進めます。本案はすでに質疑を終了しておるのでありますが、委員各位より本案実施重要性にかんがみ、医薬分業に関する医療費体系データをおそくも九月中に委員会に提出し、報告することの確認を得ておく必要があるとの要望が強いのでありますが、政府の責任ある言明があれば、この際御発言を願いたいと存じます。
  3. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 御要望の次第には努めて沿うように努力いたしたいと存じます。
  4. 小島徹三

    小島委員長 委員長から厚生大臣にお尋ねしますが、ぜひとも九月中に出していただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  5. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 今の作業状態からいたしますると、御希望に沿い得ると存じております。
  6. 小島徹三

    小島委員長 それでは次に討論に入ります。青柳一郎君。
  7. 青柳一郎

    青柳委員 私は自由党を代表いたしまして、今回提案になつておりまする医薬分業審議会につきまして、賛成討論を行わんとするものでございます。  この委員会におきましてしばしば論議せられましたように、医薬分業審議会が成立することは、医薬分業実施について一応数歩を進めるものであると感ずるものでございます。しかしながら振り返つて、当厚生委員会におきまして昭和二十六年医薬分業に関しまする三つの母法審議いたしましたときに、われわれといたしましてはこの問題の審議にあたりまして、もちろん医師側意見薬剤師側意見をただすべきは当然でございまするが、それよりまして医療を受ける国民立場に立つてこの問題を検討しなければならぬという結論に達しました。しこうして問題は、医薬分業を行うことによつて国民立場より考え医療向上をはたして得られるかどうか、医療内容向上に資し得るかどうか、あるいは患者たる国民の便、不便という問題を第二番目には考えなければいけません。しこうして第三番目には、国民医療費負担を増高するおそれがないかどうかという点を考えなければならぬと存じたのであります。しこうしていろいろ検討の結果修正も行われて、便、不便の問題を一応解決し得る方向には行つておるのであります。また医療内容向上にいたしましても、向上するという議論があり、向上しないという議論があり、事は医学、薬学の進歩発展にまつべきものであるとして、残つた問題は、医薬分業を行うことによつて国民医療費負担を増高するかどうかということで、これが大きく取上げられました。その当時政府におかれましては、医療費は一%ないし三%上るかもしれないという御意見もありました。また上げないように十分努力するという政府の声明も当時あつたのでございます。しこうしてわれわれはこれを信じて医薬分業の三母法を承認し、これを全会一致をもつて可決したのであります。今回の審議会設置法審議にあたりましても、この医療費の問題が非常に大きく取上げられまして、政府におきましては、今回もまた医療費を上げないように十分努力するのだ、ほとんど上らなくてもよかろうというようなはつきりした御答弁があつたのであります。私どもといたしましては、この医薬分業によりまして国民負担する医療費が高まるということは、医薬分業を無意味なものたらしめるおそれがございますので、何とぞこの点におきましては政府十分慎重審議の上善処せられることをお願いすると同時に、今後なおこの問題につきまして十分な審議をこの実施までの間続けて行きたいと存ずるのでございます。  以上私ども態度を申し上げまして、本法案賛成するものでございます。
  8. 小島徹三

  9. 古屋菊男

    古屋(菊)委員 私は改進党を代表いたしまして、強い希望意見を付して本案賛成するものであります。  本案は、医薬分業関係法を施行するにあたつて制定しなければならない省令の内容に関して、調査審議する目的で設置されたものであつて本案の通過によつて初めて親法律が瑕疵なき形において施行適用されるものでありますから、本案を今国会に提出するということは行政措置として当然の措置であり、また国会としては母法現行のまま完全なる形において施行するためには、本案を可決しておくことが妥当であると思うのであります。私はこのような意味合いにおいて本案賛成の意を表するものであります。しかしながら実体論からいたしますと、私は本案が提出されました経緯につきまして、きわめて不満の意を表せざるを得ないのであります。医薬分業を現在わが国実施するということがはたして妥当であるかどうか、諸般の事情から見て非常に問題だと思うのであります。第一、わが国においてはまだ基礎条件が成熟しておらないので、わが国医療体系に重大なる支障をもたらす問題であると信じるのであります。かりに百歩譲つて、将来わが国国民医療を改善合理化するために、最小限にわが国に適応した医薬分業を、国民生活の実態を勘案しつつ逐次実施して行くとしても、はたして明年の一月一日から実施することが可能であるかどうかということははなはだ疑問であります。たとえば本案審議を通じまして、各委員から強く指摘されたのでありますが、昭和二十六年から三箇年もの長い期間におきまして、今日に至つてまだ医薬分業実施するに最も重要なポイントであるところの、新しい医療費体系に関するところの資料というものが、遂に本委員会に提出されなかつたのであります。本委員会委員がいかに追究しても、政府当局には何らの基礎資料というものはないのであります。かような状態でありますから、明年一月一日までには必ず措置を完了するという答弁であつたのでありますが、これはとうていむずかしいと思うのであります。昭和二十六年六月二十日に制定公布されてから三年も経過しているのですが、今日まだ一片の重要な資料すら提出できないような事務進行状況であつたならば、今後残された半年間では完全な結論は出し得ないと私は思うのであります。不完全な調査によつて結論を得たものでこれを実施するならば、非常に危険であり、わが国医療体系破壊であると思います。私は当局においてもつとまじめに考慮されて、むしろ十分なる検討をしなければならないと思います。さようでないと後日に医薬分業執行の期日をさらに延期するの措置をとらなければならないようなことが出ると思うのであります。事前の調査をとられずして、準備不十分のままで本案を提出されたのは私としてきわめて不安であります。しかし現行法が変更されざる限りは、本案を可決しておくことが法律上の措置としては必要でありますので、残念ながらこの案に賛成の意を表するのであります。しかしながら政府当局におかれましては、本案がたとい可決されましても、諸般の情勢に真摯率直なる態度を持つて勘案の上に、明年一月一日からはたして医薬分業関係法律を施行することが妥当であるかどうかということを早急によく検討して、その結論に基いて必要な措置を至急に講じていただきたいと思うのであります。以上の点を強く要望しておく次第であります。
  10. 小島徹三

  11. 滝井義高

    滝井委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となつております医薬関係審議会設置法案に関しまして、一応法体系を整えるという意味において賛意を表したいと思うのでございます。  わが党といたしましては、一応昭和二十六年に、この母法のできる当時においては、賛成いたしておる関係上、法体系を整えるという点で賛意を表するのでございます。しかしわれわれ社会主義政党として、根本的に医薬分業をやることが、国民大衆の幸福になるかどうかという点については、なおわが党といたしましても慎重考慮を要する点でございます。本委員会における審議の経過にかんがみてみますときにおいては、大体においてわれわれがこの医薬分業の問題を根本的に解決するためには、四つ基本的な問題の解決が前提でなければならないと思うのでございます。  まず第一点は、分業実施することによつて国民大衆が現在よりよりよき医療を受け、しかもより安い医療費負担で済む、こういう形がまず第一に出て来なければならぬのでございます。ところが政府のこれらに対する答弁というものはまつたく確信を欠き、はたして誠意を持つてこの医薬分業を推進するかいなかという点さえも明確を欠くという状態であつたのでございます。  さらに第二の点といたしましては、医師薬剤師専門技術者としてのあり方でございます。このあり方については、当然薬剤師についても、医師についても適正妥当な技術料というものが、資料的に科学的な基礎に基いたものが出て来なければならないのでございますが、わずかに医師については、今までの資料基礎とした、二万ないし四万という線が出、唇歯輔車の関係にある医薬分業実施する上において、車の両輪をなす薬剤師技術料至つては、まつたく暗中模索のていたらくであつたのでございます。これでは口に医薬分業を唱えながらも、まつたくその検討を怠つておると非難されても政府は一言もないはずなのでございます。  さらに第三の点は、現在日本における医療方式として、大きく発展をして参つたところの社会保険に対する関係でございます。国民のほとんど半数がまかなわれておるこの社会保険医薬分業との関係というものが、少しも明白にされなかつたという点でございます。すなわち医薬分業実施することによつて、この社会保険生成発展をして行くのか、それとも破壊危機に瀕するのかという、こういう重大な問題についての解明がなされなかつたのであります。  さらに第四の点においては、現在の日本医療費の中において大きな比重を占めておるところの薬品、すなわちその薬品製薬をなす製薬業分業との関係でございます。医薬分業をなした後におけるところの製薬業が今の自由放任の姿において粗悪薬品、あるいは優良薬品、色とりどりつくつて国民医療に供給しているという姿がそのままでいいのか、あるいは誇大広告をしている姿がそのままでいいのか、こういう点についての厚生当局の明白な構想さえも打出されなかつたのでございます。  このような四つの問題、すなわち国民負担力に関連する問題、あるいは社会保険に関連する問題、あるいは専門技術者としての医師薬剤師の報酬の問題、あるいは製薬業に関する問題等一つとして明確にならなかつたのでございます。この重大な制度実施するにあたつては、当然国民理解と、そうして日本の現実に応ずる方法をもつて実施せられなければならないのにかかわらず、国民理解を得るどころか、私たち国会議員理解さえも得ることができずして、政府はこれを実施しようとしておるのであります。すでに三年前に決定をしたこの法案基本に対して、慎重考慮をすると申しておるのでございます。吉田内閣はそんな内閣であろうかと思つて、私は唖然たらざるを得ないのでございます。私はここで吉田汚職院慎重検討居士という名を与えたいのでございます。(発言する者多し)
  12. 小島徹三

    小島委員長 静粛に願います。
  13. 滝井義高

    滝井委員 少くとも今度の九月までには絶対に慎重考慮されて、果断に実行して行くところの実行居士となることを要望いたして、涙をのんで賛成の意を表明するものでございます。
  14. 小島徹三

  15. 杉山元治郎

    杉山委員 私は日本社会党を代表いたしまして、今議題となつております医薬関係審議会設置法案に対しまして、法の体系賛成の意を表するものでございます。  病気は、あるいは一部は自分から招いたものもございますけれども、大部分の疾病というものは、自分が望まなくても受けております人生の不幸でございます。しかしてこれが貧困の原因になつている関係からいたしまして、私どもはむしろ医療は国営にまで持つて行かなければならないものだと考えております。決して医療を営利のわざに持つて行くべきではない。しかし一時にそういうことを断行はできませんので、おのおの医療薬業がその仕事において生活が保障されるようになつて行かなければ、私どもの思うような段階には進んで参りません。そういうような意味合いにおいても、私どもは今度の法案によつて医療あるいは薬業生活を保障されることに至りますとともに、いろいろこの委員会において論議されましたように、国民大衆が従来よりも負担が加重されることがなく、滝井委員お話になりましたように、よりよい医療、安い費用で国民医療が受けられる。そうして明日の生産が営まれるような方向に進んでもらいたいと思うのであります。それをいたしますために、先ほどからお話がございましたように、十分な資料のなかつたことを遺憾といたしますので、委員長大臣に申されましたように、九月にはぜひはつきりしたデータを出していただいて、それによつてども審議を進めて参りますことができるように望みまして、私は賛成の意を表する次第でございます。
  16. 小島徹三

    小島委員長 採決いたします。本案原案の通り可決するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 小島徹三

    小島委員長 御異議なしと認めます。よつて本案原案の通り可決いたされました。  なお本法案に関する委員会報告書の作成に関しましては委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 小島徹三

    小島委員長 御異議なしと認め、そのように決します。     —————————————
  19. 小島徹三

    小島委員長 次に厚生年金保険法案議題とし、質疑に入ります。  なお質問なさる方に申し上げますが、緒方総理は非常に忙しいと思いますから、質問はまず緒方総理にしていただいて、大蔵大臣厚生大臣には後刻お願いしたいと思います。佐藤芳男君。
  20. 佐藤芳男

    佐藤(芳)委員 ただいまの委員長の御方針に従いまして、大蔵大臣並びに所管大臣でありまする厚生大臣に対する質問はしばらく留保いたしまして、緒方総理に対して二、三の点につきまして伺いたいと思うのであります。  ただいま議題と相なつておりまする厚生年金保険法社会保障の重要なる一環でございまするので、特に政府を代表する立場にありまする緒方総理にその御所見を承らざるを得ないのでございます。第一に伺いたいことは、社会保障に対して政府はいかなる考えをお持ちになつておるかということであります。申し上げるまでもなく社会保障制度国民基本的人権を尊重し、その生存権を保障するために当然確立されねばならぬ制度でありますることは、近代国家の例外なしに認むるところでございます。なおおそらく緒方総理同感の意を表せらるると思うのでありますが、私どもは現在の経済機構資本主義の上に立つておるということはこれを認むるのでございます。これを根本的に変革を加えて、社会主義経済機構にかえようとは考えていないのであります。しかしながら資本主義経済をこのまま推し進めて参りますれば、シユンペーターの所説をまつまでもなく、資本主義経済というのはその内蔵する矛盾によつて崩壊する運命に逢着するのであります。そこで私ども資本主義機構を守りつつ、性質の異なつた原理を取入れてこれを社会構造の中に同化せしむることによつて資本主義経済を更生せしむることが最も賢明な方法だと考えておるのであります。社会保障はかかる危機を回避し、資本主義経済を更生せしむる使命をになつておるものでございます。ですから社会保健関するいろいろな施策というものはわが国政の基本的なものである。従つてわが国政におけるその地位というものはきわめて重要なものであると信じておるのでありますが、まず第一にこの点について、緒方総理はいかにお考えになつておるか伺いたいのであります。
  21. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 ただいまお述べになりました社会保障制度についての御意見は、大体において政府も同じ考えを持つております。今日の自由主義経済は非常な長所を持つておりまするが、同時にその発展に伴いまして、何としても社会保障を必要とする面が出て参ります。そのために政府としましては社会保険審議会あるいは社会保障制度審議会というようなものを設けましたが、これは自由主義経済発展に伴つて必然的に生じます今申しましたような面を社会的に、国家的に保障して行くために設けたのでありまして、いわゆる社会主義政治形態に至らないまでも、そういう制度をとることによりまして、資本主義の一面の欠陥を補いながら、その経済機構を強化して参ろうというのが政府のかねてとつておる立場でございます。   〔委員長退席古屋(菊)委員長代理着席
  22. 佐藤芳男

    佐藤(芳)委員 ただいまのお答えには大体において私は満足いたすのでありますが、政府社会保障関係に関してかような御言明をなさる、またただいまのお話の中に、従つて社会保険審議会社会保障制度審議会を設けてまでおるんだというお話の一節もあつたのであります。しかし制度をいかにおつくりになりましても、そうした諮問機関をおつくりになりましても、その諮問機関熱意を傾けて審議してそうして政府に勧告をいたし、あるいは政府からの諮問に対して答申をいたしておる、これがほとんど無視さるるということでありましては、社会保障熱意を持つてかようなものを設けておるのだとおつしやつても、思うたばかりがこじきの年忌という言葉がございますが、少しも社会保障は前進をいたさぬのであります。私は社会保障あり方建前についての副総理のお考えは了承するのでありますが、これを具体的に前進せしむるための熱意に欠けておらるることをきわめて遺憾に存ずるのでございます。建前に対して同感の意を表せられました以上は、今後においてはぜひこれにひとつ熱意を加えていただくことがきわめて必要と考えるのでありますが、この点に関していかがお考えでございますか。
  23. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 その点につきましても根本的には何ら違いはないのでありまするが、社会保障制度審議会答申につきましては、今の諸制度を変革して行く関係上あるいは財政上の一応の見通しというようなものを持つて、少し長い目で検討する必要がありますためにすぐ実施されていないものもありまするけれども、できるだけその答申は尊重して参りたいという考えでおります。
  24. 佐藤芳男

    佐藤(芳)委員 とにかく私は、この第一点につきましては政府の今後の善処を要望して次に進みたいと思うのであります。  社会保障の範囲というものは御承知のようにきわめて広いのであります。ソシアル・セキユリテイの考え方をもつていたしましても相当広汎にわたるものである。いわんやソシアル・ギヤランテイの立場をとりまするならばさらに拡大さるるのであります。従つて内容は多種多様であるのでありますが、その中から特に私は救貧——貧乏を救う、それから防貧——貧乏を防ぐ、この二つの比重について考えてみたいのであります。もちろん転落者を見殺しにできない、これを国の責任において救うことは当然ではございますが、それとともにむしろそれ以上にでき得る限り転落者を出さぬ、つとめて貧乏者をつくらぬという方策が推し進められなければならぬと思うのであります。国費支出の面から考えましても、そういう考え方で進んだ方が必然的に国費の節約にも相なるのであります。そうだといたしますれば、社会保険について政府は従来の考え方をやめて、心機一転その改革と、それから運営と、国費支出ということについて思いをいたさなければならぬという結論になるのであります。社会保険に対する政府の従来の考え方は実に、ごまかしを事とし、単に惰性に生きていると申し上げて過言でないと思う。なぜ私がごまかしということを申し上げるかと申しますれば、これは幸いに大蔵大臣も御同席でございますが、大蔵大臣にはまた特別に私から質問を行いたいと思うのでありますが、なぜ私が声を大にして政府社会保険に対する今日までのやり口が第一にごまかしだと言うかと申しますれば、たとえば二十九年度の予算案、これをわれわれが受取つてみましたときにも、今や生死の関頭に立つておりまするところの国民健康保険、これを何とかしなければならぬという社会保障的な立場からいたしまして、私どもはその一つとして医療給付費の二割国庫負担ということを要請いたしました。最初政府は一割五分の心組みであつたものを、私どもは二割ということで進言を申し上げた。二十八年度予算におきましても、私どもは二割に修正をいたした。ところがわずか十億足らずの金を、大蔵大臣がしぼられたのでございましようけれども、一割五分の金につけ加えられて、その合計額を逆算して医療給付費基礎となるべき数字を御決定に相なつた。従つてあの金額では、医療給付費の二割国庫負担ということは言い得ない。羊頭を掲げて狗肉を売るのたぐいと相なつた。従つてども自由党方々日自党方々にお願いをいたしまして、増額修正を見たことはなまなましい実例なんです。基礎となるべき数字をごまかすということは、これは私は政治の上における最も慎むべきことだと思う。例をあげまするならば、医療給付費の根拠となるべきものは、一点単価かけること一件当りの点数かけること利用率かけること被保険者数でなければならぬ。その一点単価だけに例をとりまするならば、厚生省厚生省なんです。厚生省が大蔵省に御要求なさつたときには十一円五十銭ということなんです。これは過大でございます。公的医療施設割引等関係もございまするので、これは修正案の計算によりますれば十一円十四銭が妥当だ。それを少い金で逆算したのでありますから、十一円五銭と相なつておる。一件当りの点数につきましても、また利用率にしましても、全部が数字ごまかしなんです。ですからわれわれは、あえて修正をいたした。まだございますけれども、副総理はお忙しいのでございますから、たつた一例でたくさん、一を聞いて十をさとる明敏なる副総理でございますから、私はこれ以上申し上げないのでありますが、こういうごまかしが非常に多いのです。しからばなぜ私は今度惰性に生きていると、こう申し上げるかと申しますれば、今日日本社会保険ほど、ちんば的であり、ばらばらのものにないのです。これを統合する熱意というものが少しも見受けられないのみならず、このばらばらをますますばらばらにするために政府は努力しておいでであるのであります。現在の制度によることがでるのに、最近自治庁におきましては町村吏員共済組合をつくろうとしている。この点につきましては、あとで厚生大臣にもたださなければならぬのでありますが、私の仄聞するところによりますれば、厚生大臣はこの点だけは私と思いを同じゆうされましたものか、反対であるようである。次官会議におきましても、厚生次官反対の意を表明されている。次官会議さえまとまらないものが、それが今度政府諮問として社会保障制度審議会にかかつて来ている。おそらくこれが閣議にかかりましたときに、緒方総理はこれを抹殺されることを私は確信するのでございますが、このように各省ばらばらなんです。これを統一する方向に持つて行くという熱意がないのみならず、むしろばらばらを助長いたしておるのである。ただいま議題と相なつております厚生年金にいたしましてもやはりそうです。ただ厚生省だけの考え方から出発している。ですから公務員の恩給やその他の制度との関連性を考慮されていない。すべて各省ばらばらである。今日わが改進党のみならず、どの政党でも異口同音に近き将来国民年金にまで発展させたいと考えている。厚生省もそう思つておいでなんだ。それならば、こうした改正案を出される場合は、将来国民年金制度の確立を前提としての考えのもとに案の作成に当らなければならぬのに、その考慮は少しもない、まことに遺憾にたえないのである。私がただいま申し上げたことは、これは事実の話でございます。おそらく副総理はそこまでよく御存じでないと思う。従つてこの点について私は答弁を煩わそうと思いません。ただ私は副総理の認識を、この委員会に出席された今回を契機として、ひとつ銘記せられたいと思う。私はいたずらに政府を攻撃して快をむさぼるものではありません。真に第一段に申し上げましたごとく、社会保障そのものの重要性にかんがみてかく言わざるを得ないのでございます。吉田総理社会保障の問題に対しては熱意を傾けていられない。これは天下周知の事実だ。むしろ社会保障なんというああした事柄はきらいなんだとさえお考えであるのでなかろうかと思う。しかもそれがつるの一声で閣議が左右されている。いつでも最後になると、つるの一声で閣議が左右されている。ここで私は緒方さんにお願いしたいのです。つるの一声という言葉は徳川の初期にできた言葉で、しかもこれはつるの一声という言葉だけでなかつた。つるの一声よりもすずめの千声という言葉であつたものが、徳川幕府の、民をしてよらしむべし知らしむべからずの方針から、いつの間にか、すずめの千声の方が抹殺されてしまつた。しかし私は、つるの一声も全然抹殺しようとは考えないのでありますが、総理つて千手観音でないのでございますから、ぜひひとつ、何の問題でもそうですが、特に重要なる社会保障の問題に関する限り、閣内の知能ある方々総理をひとつ教育していただきたい。総理に吹き込んでいただきたい、その先頭に緒方総理が立つていただきたいのである。緒方総理も他の者から教えていただけばいいじやないか。聞くは一時の恥なんだ。私はこの際社会保障重要性にかんがみて、ぜひひとつ緒方さんに御賢慮を煩わしたいと思うのであります。従つてこれらに対しては答弁の必要はございません。  ただ私やや具体的に緒方総理にこの際お聞きをいたしたい。第一に、ただいま申し上げましたように各省ばらばらなんでございますから、政府社会保障省をつくつて社会保障行政を統一する考えがあるかないか。もしもこれは急の間に合いませんということでありますならば、国務大臣の一人をして社会保障関係の行政だけはひとつ連絡調整をとらしめるというくらいはやつていただかなければならぬと思うが、これらの点についてはどうお考えでありますか。  第二点といたしましては、これは申さぬでもいいことかもしれませんが、ただいま私が指摘しましたように、政府は今後ごまかしをやめ、またいたずらに惰性に生きようとする態度をやめて、社会保険の統合を目ざして進まれる意思があるかどうか。  第三点は、公私各種の年金制度がたまたま今日改革の時期に当面いたしておりますることは、むしろこれは幸いなことだ。この際せめて、年金制度だけでも統合調整するという絶好のチヤンスだと思うのでありますが、その点はいかがお考えでありますか。この三点を伺いたいのであります。
  25. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 今冒頭にお述べになりましたことは、非常に教訓になりました。次に具体的にお述べになつ社会保障省あるいは社会省というものを、社会保障制度の専管の役所として置く意思があるかないか、もしそれができなければ専任の大臣を置くのはどうかというお話でありましたが、社会省あるいは社会保障省というものは将来必要になるであろうと考えまするが、今のところそれを置く考えは持つておりません。  それからいろいろな保険制度を統合する意思はないか。これはその方針で、その目標をもつて進んでおることは御了承いただいておると思いますが、いろいろな制度それぞれに沿革がありまするので、今急にそれを一本化するということも困難でありまして、厚生省におきまして、その点につきましては十分研究を重ねておるのでございます。  それから年金制度につきましても、同様なことを申し上げ得ると思うのでございます。これも先般人事院から一つの勧告が出ておりますが、それにつきましても十分に検討して行きたい、さように考えております。
  26. 佐藤芳男

    佐藤(芳)委員 ただいまのお答えにつきましてなお重ねて伺いたいのでありますが、社会保障省は将来必要になつて来るかもしらぬ、その際に考慮をする——先ほど私が申し上げたことがよく御了得が行きますれば、将来必要になつて来るならばという言葉は、あなたのお口から出ないはずなんだ。あなたは、必要かもしらぬが、しかしこれは将来の問題だ、こういうようにおつしやるつもりなのがかような表現になつた、こう私は善意に解釈するのでありますが、それに関連いたしまして、それを将来の問題とされるということでありますならば、さしあたり調整することがきわめて必要な事柄なんでございまするから、国務相の一人をしてその連絡調整に当らしむるということ、これはそれこそつるの一声ですぐできることなんでございますから、この点については御答弁がなかつたのでありますが、その点を伺いたいことと、それから社会保険の統合については、それぞれ没革があり事情があるから急速には行かない、しかしその方向に進めるように厚生省に命じておるのだというお話でございますが、これはおつしやる通りいろいろの没革もあり、事情の相違もありますから、これはなかなかきよう、あすすぐということにはなり得ないことは私もよく了承しておるのであります。ただ先ほど例をあげました自治庁が立案をいたしておりまするところの町村職員の共済組合のごとき、将来統合したいというお考えがありますならば、これ以上ばらばらにすることをお考えになつては相ならぬ。しかもそうした問題について厚生省に命じておるというお話でございますが、それが先ほど申し上げますように、厚生省ではどうにもならぬ面がある。各省ばらばらにわたつておるのでございますから、従つて先ほど言われましたように、今の町村吏員共済組合の問題のごときも、次官会議において対立が出て来る。厚生次官次官会議自治庁の案に反対をいたしておるのでございます。ですからただ社会保障の一部分——まあ大部分でしようが、一部分を担当していられますところの厚生大臣に頼んであるから、これはうまく推進ができるということはとんでもないことなんです。各省ばらばらだから、厚生大臣ではできないのです。ですから私は、社会保障省をおつくりになることは将来のこととお考えになるならば、さしあたりの問題として、一人の国務相をして連絡調整に当らしむるというぐらいのことはおやりになつてもいいのではなかろうかということを、第一段に申し上げざるを得ない。これについてどうお考えでありますか。
  27. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 私事情をよく知りませんから、よく研究してみます。
  28. 青柳一郎

    青柳委員 私の質問せんとするところは、大体ただいま佐藤委員がお触れになりましたから、多くを質問する必要はございませんが、ただ一点だけを御質問したいと思うのであります。この質問をせんとするのも、今まで吉田内閣があらゆる努力を払つて社会保障の充実に熱心であられた、その熱意をさらに推し進めていただきたいという観点に立つものであります。吉田内閣は二十四年に内閣を組織せられましたが、その前年に社会保障費に使つた金は、各種の社会保険及び扶助並びに結核対策を中心とする公衆衛生及び医療並びに各種社会福祉に対する国家の負担、これらを合せましてわずかに百四十億円でございます。当時の総予算に占めるパーセンテージはわずかに三%のみでございます。しかるに昭和二十九年の予算におきましては、すでに八百億になんなんとし、その総予算に占めるパーセンテージは実に前内閣当時の二倍半、八・二%に及んでおるのであります。数字はまことに正直でございます。これこそ吉田内閣が今まであらゆる努力を払つてこの社会保障の充実強化に努力をしたことを、正直に物語つておるものと思うのであります。かかる観点に立ちまして、将来なお吉田内閣がこの年金制度の充実に努力を重ねていただきたいという点から、ひとつ私は質問いたしたいと思うのでございます。  元来わが国社会保障制度はその発達がばらばらであるだけ、きわめて不均衡な発展を示しております。複雑多岐にもわたつておるのでございます。その総合整備、一つにするということは、しばしば要望されておるのでございますが、中でもこの年金制度の発達が非常に幼稚をきわめ、しかも複雑なのでございます。年金制度にはどういうものがあるかというと、これはもう御存じのように厚生年金、船員保険、恩給、さらに公務員の共済組合、また町村職員の恩給組合、地方公共団体の恩給制度及び私立学校の教職員の共済組合、こういうふうに各種の年金が並立いたしまして、この間に何らの統制、連絡がなく、しかも不均衡をきわめまして、その発達も遅れておるのでございます。吉田内閣が努力を払つて行いました点は、数字の上から見まして、そのパーセンテージの増加から見ますと、もちろん社会保険にあるのでございます。短期給付による健康保険にあるのでございます。第二番目が国家扶助であります。年金についての発達はほとんど見るべきものがなかつたのでございます。それだけ問題はこの年金制度については少くないのであります。しかるに政府におきましては、今回単に厚生年金と船員保険のみを問題として取上げられたのでありますが、私はほかのすべての年金制度とともに、ただいま御質問がありましたようにこれを改革すべきものと思うのでございます。もしまだ全般的な整備態勢が整わないというのであるならば、本年より支給を開始せられる坑内夫に対する老齢年金が、年にわずかに一千二百円、月に百円というがごときことはまことに笑止千万でございますので、これらの点に関してのみ一時的な是正を行うにとどめまして、この際は応急的な改正措置だけでよいのではなかつたかと思うのであります。しかるに全般的な年金制度の総合調整を考えることなくして、この厚生年金保険のごとく現在も七百五十万人に及ぶ被保険者を擁し、八百億円にも及ばんとする積立金を擁するというような、将来わが国年金制度の基盤たるべきことを約束されております制度を、他の各種の年金制度とは切り離し、無関係に改正せんとするのは、今後における年金制度の整備をますます困難化せしむる危険があると思うのであります。もちろん全国民を対象とする国民年金制度の確立を今ただちに実現することは、国の財政あるいは国民経済その他諸種の事情から時期尚早なりと考えられますが、その第一の段階といたしまして、一応現在存在しております雇われておる者に関する各種の年金制度だけでもまず一元化いたし、続いて現在漏れております五人より少い人を持つておる事業所の雇われておる者を第二段階にこれに加え、また自営業者でも特に年金的保護の必要な寡婦、遺児というような人々を加えた範囲で年金制度考えて行くことが最も適当と考えられるのであります。年金制度の必要はいかなる人にも考えられておりますし、ことに、最近のわが国の人口趨勢から申しまして、老年者が非常に多くなつて来るという点から考えましても、将来国民年金制度への発展を考慮しておく必要があると思うのであります。これに関して政府の御所見を承りたいと思います。昭和二十三年度においては、総予算のうちたつた三%しか社会保障制度に使われませんでしたが、これは他党の内閣でございました。しかるに来年度の予算におきましては、皆様方の御努力によりまして、実に総予算のうち八・二%という、その当時の二倍半にも及ぶ事業が充実せられました。この内閣におきまして、ぜひこの国民年金制度への一歩々々の前進を行つていただきたいのでございます。この点に関します御所見を承りたいというのが、私の一つ質問でございます。
  29. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 国民年金制度は、制度として私どももまことに望ましいと考えております。しかし今お述べになりましたように、今ただちにその制度を確立するまでには参りませんが、先般人事院からも国民年金制度の案が出ておりますので、十分に検討して参りたいと考えております。社会保障制度につきましては、今御指摘のありましたように、政府はあまり大げさにうたつておりませんけれども予算面をごらんになればわかりますように、できるだけの財源は乏しい中からこの方面にさいておりますので、逐次改善せられつつあることは御了承できておると考えます。なお今の年金の制度につきまして厚生大臣から補足してお答えいたしたいと考えます。
  30. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 お話の点の、いわゆる長期保険はこの機会に統合すべき考え方から取運んで行かねばならぬという点につきましては、まつたく私どももそういう観点から検討して参つたのであります。ただそういう意味におきまして、直接的には本年から支給を開始せられます老齢年金の百円であるとかいうようなものにつきましてさしあたつて改正をして、あとはその統合を目ざしてやつて行つたらよいのじやないかという他面における意見も出ておりましたが、この老齢年金に着手いたしますと、どうしても遺族年金あるいは障害年金などそれらに関連しておるすべてのものに手を触れませんと、保険経済の関連性というものを失つて参るのであります。そういう意味から、今回は部分的の改正ではなくて、いわゆる老齢年金だけの改正だけではなくて、全般的な改正に至らざるを得なかつた次第でございます。そこでその改正の基本といたします立場におきまして、将来の年金制度の中心を厚生年金に置くという考え方のもとに長期年金を考えて行きたい。これが確立いたしますと、それが基本になり、この中に吸収し得る態勢をとつて参りたいというように考えております。  そういう点から考えますと、先ほど来のお話にございましたように、国民年金に移行する前提としての年金制度というものが根本になつて来ると思います。そういう意味から現在この中に入つておりません五人以下の事業所も加えるべきではないか、これは当然そういう方向に進んで参らねばならぬと存じましたが、実は五人以下の事業所は、現在の状態におきましては百三十万箇所ぐらい、人数にして約三百三十万ぐらいに及んでおるというように一応にらんでおります。現在厚生年金に加盟しておりますのは、事業所が大体二十三万程度、人員は七百六十七万という状態であります。五人以下のものは数が多くて人数が少く、その形態はまことに千差万別の状態でございます、それから雇用形態が違つております。従つて賃金形態も違つております。そこでこれにただちに厚生年金を実施いたします場合におきまして、保険料の負担に対する問題として、国民経済と中小企業経済との影響というものを相当強く考えて行かなければならない。また事務的に考えまして、これらのばらばらの小さい事業所の事務関係がもつともつとスムーズに行くような体系をとつて行く、こういう点からいたしまして、一応五人以下のものを全面的に調査をして、実態を十分把握してからいたすべきであると考えまして、将来は当然五人以下にも及ぶべきものとは考えておりますが、今回の改正にはこれを含めることができなんだことを、はなはだ遺憾に存じております。
  31. 青柳一郎

    青柳委員 ただいまの御答弁によりまして逐次に努力を誓われたのでございますが、元来社会保障制度というものは、一部の国民を対象としてでき上つたものは真実のものではございません。全国民を対象として行うところに社会保障制度の真の意義があるのでございます。しこうして防貧的な、救貧的な社会保障制度も逐次充実しておりまするが、これらに関する手直しを着々行われるとともに、防貧的社会保障制度である年金制度に今後政府はお力を入れられるべきであると固く信ずるものでございます。この点につきまして、なお将来とも御努力をせられんことを熱望いたしまして、私の質問を終ります。
  32. 古屋菊男

    古屋(菊)委員長代理 長谷川保君。
  33. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 先ほど来質疑応答がございましたが、私は、今日の政府社会保障制度考え方は、口では非常に重んずるとおつしやいますけれども、事実そうでないことは明らかであると思うのであります。たとえだ社会保障制度審議会の勧告をほとんど実現せられません。すでに国会におきましてたびたび決議までいたしましたけれども、いまだに実現をされておらないのであります。また今回、勤労者の恩給と言われておりますような重大な、社会保障制度の根幹をなす厚生年金保険法審議がなされるときにおきましても、社会保障制度審議会におきまして大臣等の出席を要望せられましても、これに出席をなさらないのであります。また先ほど来、予算面において、あるいはパーセンテージにおいてというようなお話がございました。なるほど過去におきまするわが国社会保障制度の皆無に近いような時代と比べまして、今日は予算のパーセンテージもふえておりますけれども、世界の文明国と言われておりまするような国々、いな、それほどまでに取上げられておりません小国等の歳出に対するパーセンテージに比べましても、これは微々たるものであつて、実にはずかしい今日の日本状態でございます。従いまして、口ではさように申しておられる。また、たとえば今同僚議員から質問されましたような各種年金制度——今日年金制度わが国に九つくらいありますが、にまばらばらである。こういうものは統合するつもりだ、こうおつしやいますけれども、今度の厚生年金保険法の全面改正にあたりましても、そういう努力はちつとも見られない。これはつとに社会保障審議会からきびしく指摘されておるところであります。現実問題といたしまして、政府は再軍備の費用に大なき金をとられますために社会保障制度を進展せしめ得ない、これが今日の実情であるといわざるを得ないと思うのでありますが、副総理はいかにお考えになりますか。
  34. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 政府としてはそういう考えは全然持つておりません。政府は、口で社会保障制度審議会を尊重すると言うが、腹のうちは違つておりはせぬか、違つておりません。財政事情その他ですぐ実施できないものは緒についていないものもあります。今軍備の問題を仰せになりましたが、今の軍備といたしましては、いわゆる今日の防衛力というものは、まだ一人歩きができない程度のもので、私はある程度のことは、国が独立した以上やむを得ない、それと同時に、そういう防衛の必要が生ずれば生ずるほど社会保障の面におきましても、できるだけの施設を進めて行かねばならぬことは、政府でも十分承知いたしておるのであります。その間に政治の、何と申しますか判断を必要とする、今のやり方は数字で御承知のように、乏しい財源の中からでもできるだけのことはしておりますが、それは政府の判断に基きましてやつておる。いろいろの考え方もありましようが、実際の施設として、政府としまして腹と口と違うようなことをやつているというようなことはございません。   〔古屋(菊)委員長代理退席、委員長着席〕
  35. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 先ほど申しましたように、恩給があり、国家公務員の共済組合があり、あるいは地方の町村等におきまする共済組合、私立学校教員の共済組合、この厚生年金と、各種の年金制度がございますが、これらに対します国庫の負担は個々ばらばらである。こういうことは、憲法において全国民を公平に扱うという公平の原則に反すると思うがどうか、この点を伺いたい。
  36. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 お話のように、現在の年金制度におきまして、あるいは国庫負担等におきまして、異なつている面が確かにあります。これは従来からの成立の歴史あるいは経緯等がそういうふうになつております。従いまして、先に申し上げましたように、これらをなるべく統一して一本にいたす方法で進んで努力をしたしておる次第であります。
  37. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 厚生年金保険は俗に勤労者の恩給であると言われておるのでありますが、政府はこれを重要な制度考えておられるかどうか、また考えておられるならば、これをもつて勤労者の老齢その他のときの最低生活を保障するという原則に立つておられるか、その点を承つておきたい。
  38. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 現在のものをもつて十分であるとは考えておりませんけれども、今日の勤労者の生活を少しでもよくして参りたい、この制度は漸次発達さして参りたいつもりでおります。
  39. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 勤労者の最低生活を保障するという原則の上に立たれておるのかどうか、それを承つておきたい。
  40. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 そういう目標のもとにやつておりますが、必ずしも今のままで最低生活を保障し得るとは考えておりません。
  41. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 それ以上追究すべきでありますけれども、この点は厚生大臣その他に後に伺うといたしまして、もう一つ……。
  42. 小島徹三

    小島委員長 長谷川君に申しますが、大蔵大臣は外人との約束があつて出なければならぬことになつておるそうですから。もう時間が進んでおりますから……。
  43. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 それでは簡単に伺います。いま一つは今回の法案によりますと、三千円未満の標準報酬の者に対しましては、過去におきまするものにつきましては三千円に引上げるというようになつております。御承知のように過去におきましてこの法律ができましてからこの方、戦時あるいは戦後の非常なインフレによりまして、せつかく労働者がその相当に過大な重い負担に耐えて保険料を支払いましたにかかわらず無にひとしきものになりました。今回のものによりまして、過去十年間のそのインフレによります大きな労働者の損害が大体三千円というところに引上げられることになつたのでありますけれども、しかしここに考えなければなりませんことは、今日三千円の報酬というのは一体だれがもらつているか。七百数十万人の厚生年金の被保険者諸君の標準報酬を調べてみましても、三千円、四千円未満でも多分七百数十万人のうち三万六千人しかないと記憶しております。私の記憶が少し違うかもしれませんが、こういうような国家の戦中、戦後のインフレによつて生じました労働者の損害というものは当然国家が負担すべきものである。過去約十年にわたりましての標準報酬が全部三千円にくぎづけされるということは、この労働者諸君に国家の負うべき負担を転嫁するものであつて、当然これは国家がその損害を負担し、過去約十年にわたりまして被保険者であつた諸君が今日幾らの平均標準報酬をとつているかというところに立ちまして、そこまで引上げて、その差額の負担は国家がすべきものであるというように思うのでありますが、国家が負担すべきものと思うかどうか、これにつきまして副総理の御所見を承つておきたいのであります。
  44. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 三千円以下の所得を得ておりまする被用者は昨年末の現在におきまして、私どもの方の調査では二十二万八千六十四人と相なつております。パーセントにいたしますと二・九七であります。そこでこれらの少額所得者を三千円に引上げたのであります。三千円以下は三千円と計算をいたすのであります。それだけ以下の所得者の所得を有利に多く見よう、こういう次第であります。現実にいろいろな場合の労働体系におきましてさような状態がありますので、あまり低くいたしますことはまことに保護の立場あるいは福祉の立場には沿わないと存じまして引上げた次第であります。
  45. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 厚生大臣等に対します質問はあとですることになつておりますので、私は緒方総理に聞きたいのでございますが、今のお話でございますので、大体の事情はわかりますから、この点に対しては追究しません。  いま一つ私は重大な問題を政府を代表する緒方総理に伺つておきたいのであります。御承知のように保険料の積立金が二十九年度末に参りますと一千百億円くらいになると思うのでありますが、これが将来のあるときにおきましては、大体ピークにおきましては一兆八千億円になる、今日の日本のすべての銀行の総預金に匹敵するものである、これの使用方法というものをいかにすべきかということは、実に重大なる問題をわが日本の社会に投げかけておると思うのであります。しかしいずれにいたしましても、これは労働者とまた使用者の出資いたしましたものがほとんどでありまして、これに対して一割、今度の改正によりましても一割五分もしくは二割というものが政府の国庫から支出するものであります。あとの八割ないしは八割五分というものは労働者、資本家が出す、こういうのであります。従いましてこの運営につきましては、当然これは公益代表、使用者代表、被保険者代表によるところの民主的な運営機関によつてこれを被保険者及び使用者、ことに被保険者の利益のために用うべきである、それを何らの発言権をなくしまして、今日のような資金運用部に持つて参りまして一方的に用いるということは根本的に違う、条理が立たぬと思うのでありますが、この点につきまして、今後の日本の社会に対しますきわめて大きな問題を含んでおりますので、政府の所見を承つておきたいのであります。
  46. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 この資金の運営に間違いのないようにするために現在のところ資金運用部に繰入れまして、公正なる使途に使うことになつております。
  47. 小島徹三

    小島委員長 次会は追つて公報をもつて通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時十八分散会      ————◇—————