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佐藤(芳)
委員 とにかく私は、この第一点につきましては
政府の今後の善処を
要望して次に進みたいと思うのであります。
社会保障の範囲というものは御承知のようにきわめて広いのであります。ソシアル・セキユリテイの
考え方をも
つていたしましても相当広汎にわたるものである。いわんやソシアル・ギヤランテイの
立場をとりまするならばさらに拡大さるるのであります。
従つて内容は多種多様であるのでありますが、その中から特に私は
救貧——貧乏を救う、それから
防貧——貧乏を防ぐ、この二つの
比重について
考えてみたいのであります。もちろん
転落者を見殺しにできない、これを国の責任において救うことは当然ではございますが、それとともにむしろそれ以上にでき得る限り
転落者を出さぬ、つとめて
貧乏者をつくらぬという方策が推し進められなければならぬと思うのであります。
国費の
支出の面から
考えましても、そういう
考え方で進んだ方が必然的に
国費の節約にも相なるのであります。そうだといたしますれば、
社会保険について
政府は従来の
考え方をやめて、心機一転その改革と、それから運営と、
国費の
支出ということについて
思いをいたさなければならぬという
結論になるのであります。
社会保険に対する
政府の従来の
考え方は実に、
ごまかしを事とし、単に
惰性に生きていると申し上げて過言でないと思う。なぜ私が
ごまかしということを申し上げるかと申しますれば、これは幸いに
大蔵大臣も御同席でございますが、
大蔵大臣にはまた特別に私から
質問を行いたいと思うのでありますが、なぜ私が声を大にして
政府の
社会保険に対する今日までのやり口が第一に
ごまかしだと言うかと申しますれば、たとえば二十九年度の
予算案、これをわれわれが受取
つてみましたときにも、今や生死の関頭に立
つておりまするところの
国民健康保険、これを何とかしなければならぬという
社会保障的な
立場からいたしまして、私
どもはその
一つとして
医療給付費の二割
国庫負担ということを要請いたしました。
最初政府は一割五分の心組みであつたものを、私
どもは二割ということで進言を申し上げた。二十八年度
予算におきましても、私
どもは二割に
修正をいたした。ところがわずか十億足らずの金を、
大蔵大臣がしぼられたのでございましようけれ
ども、一割五分の金につけ加えられて、その
合計額を逆算して
医療給付費の
基礎となるべき
数字を御
決定に相
なつた。
従つてあの金額では、
医療給付費の二割
国庫負担ということは言い得ない。羊頭を掲げて
狗肉を売るのたぐいと相
なつた。
従つて私
どもは
自由党の
方々、
日自党の
方々にお願いをいたしまして、
増額修正を見たことはなまなましい実例なんです。
基礎となるべき
数字をごまかすということは、これは私は
政治の上における最も慎むべきことだと思う。例をあげまするならば、
医療給付費の根拠となるべきものは、一点単価かけること一件
当りの点数かけること
利用率かけること被
保険者数でなければならぬ。その一点単価だけに例をとりまするならば、
厚生省も
厚生省なんです。
厚生省が大蔵省に御要求なさつたときには十一円五十銭ということなんです。これは過大でございます。
公的医療施設の
割引等の
関係もございまするので、これは
修正案の計算によりますれば十一円十四銭が妥当だ。それを
少い金で逆算したのでありますから、十一円五銭と相な
つておる。一件
当りの点数につきましても、また
利用率にしましても、全部が
数字の
ごまかしなんです。ですからわれわれは、あえて
修正をいたした。まだございますけれ
ども、副
総理はお忙しいのでございますから、たつた一例でたくさん、一を聞いて十をさとる明敏なる副
総理でございますから、私はこれ以上申し上げないのでありますが、こういう
ごまかしが非常に多いのです。しからばなぜ私は今度
惰性に生きていると、こう申し上げるかと申しますれば、今日
日本の
社会保険ほど、ちんば的であり、
ばらばらのものにないのです。これを統合する
熱意というものが少しも見受けられないのみならず、この
ばらばらをますます
ばらばらにするために
政府は努力しておいでであるのであります。現在の
制度によることがでるのに、最近
自治庁におきましては
町村吏員の
共済組合をつくろうとしている。この点につきましては、あとで
厚生大臣にもたださなければならぬのでありますが、私の仄聞するところによりますれば、
厚生大臣はこの点だけは私と
思いを同じゆうされましたものか、
反対であるようである。
次官会議におきましても、
厚生次官は
反対の意を表明されている。
次官会議さえまとまらないものが、それが今度
政府の
諮問として
社会保障制度審議会にかか
つて来ている。おそらくこれが閣議にかかりましたときに、
緒方副
総理はこれを抹殺されることを私は確信するのでございますが、このように各省
ばらばらなんです。これを統一する
方向に持
つて行くという
熱意がないのみならず、むしろ
ばらばらを助長いたしておるのである。ただいま
議題と相な
つております厚生年金にいたしましてもやはりそうです。ただ
厚生省だけの
考え方から出発している。ですから公務員の恩給やその他の
制度との関連性を考慮されていない。すべて各省
ばらばらである。今日わが改進党のみならず、どの政党でも異口同音に近き将来
国民年金にまで
発展させたいと
考えている。
厚生省もそう
思つておいでなんだ。それならば、こうした改正案を出される場合は、将来
国民年金
制度の確立を前提としての
考えのもとに案の作成に当らなければならぬのに、その考慮は少しもない、まことに遺憾にたえないのである。私がただいま申し上げたことは、これは事実の話でございます。おそらく副
総理はそこまでよく御存じでないと思う。
従つてこの点について私は
答弁を煩わそうと
思いません。ただ私は副
総理の認識を、この
委員会に出席された今回を契機として、ひとつ銘記せられたいと思う。私はいたずらに
政府を攻撃して快をむさぼるものではありません。真に第一段に申し上げましたごとく、
社会保障そのものの
重要性にかんがみてかく言わざるを得ないのでございます。吉田
総理は
社会保障の問題に対しては
熱意を傾けていられない。これは天下周知の事実だ。むしろ
社会保障なんというああした事柄はきらいなんだとさえお
考えであるのでなかろうかと思う。しかもそれがつるの一声で閣議が左右されている。いつでも最後になると、つるの一声で閣議が左右されている。ここで私は
緒方さんにお願いしたいのです。つるの一声という言葉は徳川の初期にできた言葉で、しかもこれはつるの一声という言葉だけでなかつた。つるの一声よりもすずめの千声という言葉であつたものが、徳川幕府の、民をしてよらしむべし知らしむべからずの方針から、いつの間にか、すずめの千声の方が抹殺されてしまつた。しかし私は、つるの一声も全然抹殺しようとは
考えないのでありますが、
総理だ
つて千手観音でないのでございますから、ぜひひとつ、何の問題でもそうですが、特に重要なる
社会保障の問題に関する限り、閣内の知能ある
方々が
総理をひとつ教育していただきたい。
総理に吹き込んでいただきたい、その先頭に
緒方副
総理が立
つていただきたいのである。
緒方副
総理も他の者から教えていただけばいいじやないか。聞くは一時の恥なんだ。私はこの際
社会保障の
重要性にかんがみて、ぜひひとつ
緒方さんに御賢慮を煩わしたいと思うのであります。
従つてこれらに対しては
答弁の必要はございません。
ただ私やや具体的に
緒方副
総理にこの際お聞きをいたしたい。第一に、ただいま申し上げましたように各省
ばらばらなんでございますから、
政府は
社会保障省をつく
つて、
社会保障行政を統一する
考えがあるかないか。もしもこれは急の間に合いませんということでありますならば、国務
大臣の一人をして
社会保障関係の行政だけはひとつ連絡調整をとらしめるというくらいはや
つていただかなければならぬと思うが、これらの点についてはどうお
考えでありますか。
第二点といたしましては、これは申さぬでもいいことかもしれませんが、ただいま私が指摘しましたように、
政府は今後
ごまかしをやめ、またいたずらに
惰性に生きようとする
態度をやめて、
社会保険の統合を目ざして進まれる意思があるかどうか。
第三点は、公私各種の年金
制度がたまたま今日改革の時期に当面いたしておりますることは、むしろこれは幸いなことだ。この際せめて、年金
制度だけでも統合調整するという絶好のチヤンスだと思うのでありますが、その点はいかがお
考えでありますか。この三点を伺いたいのであります。