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1954-03-30 第19回国会 衆議院 厚生委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月三十日(火曜日)     午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 小島 徹三君    理事 青柳 一郎君 理事 長谷川 保君       越智  茂君    助川 良平君       高橋  等君    降旗 徳弥君       安井 大吉君    亘  四郎君       佐藤 芳男君    滝井 義高君       萩元たけ子君    杉山元治郎君       山口シヅエ君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 草葉 隆圓君  出席政府委員         厚生事務官         (薬務局長)  高田 正巳君         厚生事務官         (児童局長)  太宰 博邦君         厚生事務官         (保険局長)  久下 勝次君         厚 生 技 官         (医務局長)  曽田 長宗君  委員外出席者         厚生事務官         (大臣官房総務         課長)     小山進次郎君         厚生事務官         (医務局次長) 高田 浩運君         専  門  員 川井 章知君         専  門  員 引地亮太郎君     ————————————— 三月三十日  委員中野四郎君辞任につき、その補欠として佐  藤芳男君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 三月二十九日  厚生年金保険法案内閣提出第一二四号) 同日  戦傷病者援護強化に関する請願中村三之丞  君紹介)(第四〇五四号)  同(細野三千雄紹介)(第四〇七三号)  同(辻政信紹介)(第四〇七四号)  同(富田健治紹介)(第四〇七五号)  同(田子一民紹介)(第四〇六七号)  同外一件(堀川恭平紹介)(第四〇七七号)  同(熊谷憲一紹介)(第四〇七八号)  同(原健三郎紹介)(第四〇七九号)  同(櫻内義雄紹介)(第四〇八〇号)  同(赤澤正道紹介)(第四〇八一号)  同(逢澤寛君紹介)(第四〇八二号)  同(橋本龍伍紹介)(第四〇八三号)  同(大西正道紹介)(第四〇八四号)  同(寺島隆太郎紹介)(第四〇八五号)  同(園田直紹介)(第四一四三号)  同(山下榮二紹介)(第四一四四号)  同(船越弘紹介)(第四一四五号)  受胎調節普及に関する請願岡村利右衞門君紹  介)(第四〇六六号)  同(只野直三郎紹介)(第四一四〇号)  指定薬品以外の医薬品販売業者資格制度に関す  る請願青柳一郎紹介)(第四〇六七号)  同(岡本忠雄紹介)(第四〇六八号)  同(武田信之助紹介)(第四一四六号)  理容師美容師法の一部改正反対に関する請願(  相川勝六紹介)(第四〇六九号)  同(伊東岩男紹介)(第四〇七〇号)  柔道整復師健康保険診療報酬一点単価引上げ  に関する請願荒舩清十郎紹介)(第四〇七  一号)  クリーニング業法における試験制度存続に関す  る請願木村文男紹介)(第四〇七二号)  同(葉梨新五郎紹介)(第四一三五号)  同(塚原俊郎紹介)(第四一三六号)  同(高橋圓三郎紹介)(第四一三七号)  同(戸叶里子紹介)(第四一三八号)  同(井手以誠君紹介)(第四一三九号)  クリーニング業法存続に関する請願鈴木茂三  郎君紹介)(第四一三四号)  未帰還者留守家族援護強化に関する請願(江  藤夏雄紹介)(第四一四一号)  戦傷病者戦没者遺族等援護法公務死適用範囲  拡大に関する請願古井喜實紹介)(第四一  四二号)  保育所事業費国庫補助増額等に関する請願(江  藤夏雄紹介)(第四一四七号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  医薬関係審議会設置法案内閣提出第八二号)  厚生年金保険法案内閣提出第一二四号)  厚生行政に関する件     —————————————
  2. 小島徹三

    小島委員長 これより会議を開きます。  まず医薬関係審議会設置法案議題とし、質疑を続行いたします。降旗徳弥君。
  3. 降旗徳弥

    降旗委員 それではちよつと思いついたことを御質問申し上げたいと思います。  実はこの医薬分業の件は、長い間世上の問題として騒がれた問題でありまして、私どももこの点につきまして非常に注意をし、また努力もして参つたのであります。そこで率直に申しますと、医薬分業の期日は三十年の一月からこれを実行することになつておるのでありますが、医者の側から見ましても、あるいは薬剤師の側から見ましても、この問題は一方的な主張にのみよつて解決するものでない、お互いが深く反省いたしまして、両者が協調して万全の施策を講ずるということに一致団結する必要があることを痛感せざるを得ないのであります。従つてこの医薬分業ということが一般国民あるいは被保険者に対して便利であり、有効であるという点にのみ私どもはその必要を痛感するのでありまして、医薬分業はしたけれども便利でない、一般国民にもあるいは被保険者に対しても費用が多くかかることである、こういうことになりますと、私どもが努力して参りましたことも、業者が要望して参りましたことも、その目的より遠ざかる結果となる、こう思うのであります。従つてこの点につきまして当局としてはどういうお考えを持つておるか、あるいはこれらの問題についてどういう指導をなされておるか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  4. 曽田長宗

    曽田政府委員 医薬分業をいたしましたあかつきた、いかような利害があるかということにつきましては、もうすでに国会で十分討議されたことだとは思うのでありますが、私ども了解いたしておりますのでは、あくまでも医師医師でなければできない医術を患者に施す、それに対しまして患者投薬いたします薬剤というものの調剤は、これは専門薬剤師がこれを担当するということによりまして、この調剤の正確を期し、またいろいろ薬物そのほか器具類、こういうようなものの節約もはかる、そして医師医師として、医師歯科医師でなければできない仕事に専念するというようなことによつて医療内容を向上させることができる、そしてそれを実施するのに、分業をいたしましても経費の増額というようなことは必ずしも来さないというようなところから、これを実施しようというふうに決定になつたと思つております。
  5. 降旗徳弥

    降旗委員 私から具体的の問題として質問申し上げたいと思いますのは、私が被保険者である医者診療を受けたといたします。私はその医者が懇意であり、また自分の身体をよく知つてとおると思いますから、その医者診療を受けた場合に、処方箋をもらつてもその医者から投薬してもらうことが私としては非常に都合がいい、こう思う場合がある、その場合には医者は自由に投薬ができるわけですか。
  6. 高田正巳

    高田政府委員 さような場合には、患者さんが特にそのお医者さんに調剤をしてもらいたいという意思を表明なされば、そのお医者さんから薬をいただけることに相なつております。それは改正法律の二十二条の例外として定められております第一号によります。
  7. 降旗徳弥

    降旗委員 そこでもし私が医者の場合に、被保険者が私のところに診療を求めて来たときに、自分投薬することが正しいと思つた、その場合にあなたは私の方で投薬してもよろしいかと聞いて患者なり被保険者が先生にお願いいたします、こう言つた場合も先ほど御答弁なつたと同じような処置をしていいわけですか。
  8. 高田正巳

    高田政府委員 この二十二条第一項第一号に「患者又は現にその看護に当つている者が特にその医師又は歯科医師から薬剤の交付を受けることを希望する旨を申し出た場合」こういうふうな規定になつておるのでございますが、この規定の解釈につきましては、この法律が成立をいたしました二十六年の国会におきまして、いろいろ質疑応答の形において確認されたところでございます。医師薬剤師との専門分野をきわめてはつきりさせるという趣旨でありますから、この「特に」は非常に狭い範囲に限られたものと私ども考えております。すなわち患者が特に当該医師に対する信頼感その他の事情から特別に申し出た場合、こういうことでございましてただいまおあげになりましたような、お医者さんから誘いをかけると申しますか、そういう場合にはこれは含まないんだ、こういうふうにごく狭く解すべきものと考えております。
  9. 降旗徳弥

    降旗委員 そうすると、医者が問いを発して、患者医者投薬を頼むという場合は含まないわけなんですか。私自身としてはそれを含んでいるように考えておつたのですが、この点をひとつ……。
  10. 高田正巳

    高田政府委員 非常にデリケートな問題でございますが、この当時の御審議の経過から徴しますと、この分業趣旨が根本的に左右されるようなことがあつて法律精神に反しますので、さように非常に弾力性を持つて解します場合には、全然この精神が骨抜きになるおそれもある、かようなわけで、特別に申し出た場合、こういうふうに狭く考えて参りたいと私ども考えております。
  11. 降旗徳弥

    降旗委員 なかなかデリケートなお話らしいのですが、それでは患者医者に頼んだ場合はいいわけなんですね。
  12. 高田正巳

    高田政府委員 よろしゆうございます。
  13. 降旗徳弥

    降旗委員 それでは患者医者に頼んだ場合にはよろしい、そういうことに了承しておきます。それから、実は私もこの点がはつきりしないのでありますが、先日医薬業組合から厚生委員としての私どものところへ陳情書が参つております。これは指定医薬品以外の医薬品販売業者資格制度の問題についての陳情書でありますが、その陳情趣意によります芝、医薬分業昭和三十年一月一日から法律をもつて実施されるとしておるけれども医薬品完全配給という面については遺憾の点が非常に多い。たとえていえば、現にある県では医師一千名に対し薬剤師二百名というぐあいで、かりに一千名の医師が一日に二十通の処方箋を発行したとすると、薬剤師は一日平均百通ずつの調剤を行わなければならぬことになる。これは薬剤師自体肉体上、精神上の重労働である。従つて医薬品販売については、さらに一段と有利有効なる方法が考えられなければならないという趣意であります。現在全国に七千有余の無医村、無薬局村がありますけれども、この実情からいたしましても、指定薬品以外の医薬品販売業者をして医薬品販売面を担当せしむることが、国民保健衛生の万全を期する上において考慮されなければならないと申しておるのであります。ところが現在わが国指定薬品以外の医薬品販売業者は、何ら一定資格なく、単に地方庁の許可によつてその業務に従事するにすぎない、今日医師歯科医師獣医師、助産婦、看護婦保健婦理容師美容師あんま術師毒物劇物営業管理人等保健衛生に携わる者のはとんどが資格制度であり、全国共通であるのに反し、指定薬品以外の医薬品販売業者のみがこのままの姿で放置されておるということは何としても不合理である、従つてこれを全国共通資格制度にしてもらいたい、こういう陳情であります。なるほどこの陳情書にありますごとくに、医師その他が資格制度であるといたしますならば、やはり指定薬品以外の医薬品販売業者についても、単なる許可制度でなくして資格制度によつてすることが一応考えられてもよろしいではないか、こう考えるのでありますが、当局はその問題についてどうお考えになつておりますか、この点を御説明願いたい。
  14. 高田正巳

    高田政府委員 その問題は、大分以前からいろいろと問題になつてつたところでございます。現在の薬事法のとつております基本方針から申しますと、薬剤師以外に薬の取扱いをいたす者の資格を認めるということは、若干薬事法のとつております基本方針と異なつて参ると思うのでございます。それで、ただいま医薬分業との関係から御質問になつたようでございますが、薬剤師のおりません町村等におきましては、これは医薬分業ということはとうていできませんので、それはただいま御審議をいただいております審議会法が成立いたしましたならば、その審議会の議を経て医薬分業をしない例外の地域として定めることになつている。従いまして、医薬分業に直接の関係は私はないと思うのでございます。それらの方々資格はつきり認めるかどうかということは、別の意味におきまして一つの研究問題だと私は考えます。今要求されております方々の身分的な資格はただいま認めておりませんが、販売をする営業権は認めておるわけです。そして、現在の状態、現在の制度でどこに非常な実際上の不便があるかということをその方々からももう少し詳しく聞かしてもらいたい、なお私どもの方でも調査をしてみます、こういうことで、その問題についていろいろと話を伺つておる途中でございまして、これは将来の問題といたしまして検討させていただきたい。ただ、もしそれを認めるといたしますならば、ただいまの法律のとつております建前とは若干逆行するようなことになつて行く問題ではありますけれども、ともかく検討させていただきたい、こういう段階であります。
  15. 降旗徳弥

    降旗委員 今の説明によりまして事情はほぼ了解することができます。しかし、この陳情書要点は、先ほど私が申し述べましたように、医薬分業あかつきには薬剤師調剤仕事が非常に多くなつて、それは肉体上、精神上の重労働である、従つて医薬品を支障なく販売するということに困難が生ずるであろう、そういう場合に処する問題として、この資格制度の問題が陳情されておるわけであります。先ほど御答弁になりましたごとくに、今日ただちに決定すべき問題でないし、いろいろな点において考究するということにつきましては、私も了承いたしますが、今この陳情書にありますのは、医薬分業ということの一つのターニング・ポイントをつかまえて、そしてこの問題が陳情されておるのでありますから、この点につきまして今後十分なる研究と調査をされんことを要望するものであります。
  16. 小島徹三

    小島委員長 ほかに御質疑はございませんか。——それでは暫時休憩いたします。    午前十一時十一分休憩      ————◇—————    午前十一壁二十分開議
  17. 小島徹三

    小島委員長 休憩前に引続き会議を再開いたします。  医薬関係審議会設置法案に対する残余の質疑次会後に譲ることといたします。     —————————————
  18. 小島徹三

    小島委員長 次に日程に追加して、昨夜当委員会に付託されました厚生年金保険法案議題とし審査に入ります。まず草葉厚生大臣より趣旨説明を聴取することといたします。
  19. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 ただいま議題となりました厚生年金保険法案につきまして、その提案理由並びに内容の概略を説明いたします。  現行厚生年金保険法は、終戦後の困難な国内経済事情に対応して、寡婦年金遺児年金等を新設いたしまするとともに、いまだ支給期に到達していなかつた養老年金年額千二百円程度まで圧縮し、それによつて保険料率を引下げる等の臨時応急的な措置を講じたままになつているのでありまして、当時からある程度経済の安定したあかつきには、その全面的な改正が予期されていたのであります。  その後、わが国経済は急速に立ち直りを示しておりまするとともに、他面勤労者生活保障のための社会保障制度拡充整備は、ますますその必要の度を加えつつあるのであります。のみならず本年から被保険者の一部に対し、養老年金支給が開始されることと相なりました関係もあり、厚生年金保険法改正は、この際どうしてもいたさなければならない段階に立ち至つているものと考えるのであります。従いまして、この際厚生年金保険制度の全般にわたつて再検討を加えまして、保険給付内容を改善し、かつその将来にわたつての恒久的な財政計画を樹立することによつて長期社会保険としての基礎を確立いたしたいと考えるのであります。  以下その改正要点を申し上げますならば、第一に、保険給付及び保険料の計算の基礎となる標準報酬については、できるだけ被保険者の賃金の実態に合うようにするとともに、労使負担増を考慮して若干の引上げを行うことといたしました。  第二に、すべての年金給付が、老齢年金給付内容を中心として均衡を保つような体系を考慮いたしました。  第三に、年金給付の額については、定額に報酬比例額を加えたものとし、さらに被保険者によつて扶養されていた者の数によつて加給年金支給し、生活実態に沿い得るようなものといたしたのであります。  第四に、現行法におきましては年額千二百円となつている老齢年金の額の最低を二万一千六百円とし、標準報酬の額に応じてさらに増額するようにいたしました。  第三に、障害給付ついては、障害程度を合理的に区分するとともに、障害程度増進減退に応じまして、給付額を増減し得るように改めました。  第六に、現行遺族年金寡婦年金鰥夫年金及び遺児年金一つの綜合的な体系に統一して、新しい遺族年金制度を設けることとしたのであります。  第七に、脱退手当金制度を合理化いたしました。  第八に、従来支給いたしておりました年金のうち、低額なものは、一定額まで引上げるよう、特別の措置を講ずることといたしました。  第九に、坑内夫以外の被保険者についての国庫負担の割合を保険給付費の一割から一割五分に引上げることといたしました。  第十に、労使負担を勘案しつつ、財政均衡を将来にわたつて保ち得るようにするために、保険料率を調整するとともに、少くとも五年ごとに再計算することとしたこと等であります。  なお、本法案に関連して、政府としては、船員保険法の一部を改正するとともに、厚生年金保険及び船員保険のそれぞれの被保険者期間を相互に通算して、保険給付を行うこととするために、近くこれらに関する法律案を本国会に提案して御審議を煩わす予定であります。  この制度は、将来勤労者のための社会保障制度中核体となるべき重要な意義を持つものでありますので、何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことを希望する次第であります。
  20. 小島徹三

    小島委員長 以上で大臣趣旨説明は終りました。  次にただいまの説明に補足して保険局長より細部にわたる説明を聴取することといたします。
  21. 久下勝次

    久下政府委員 若干のお時間を拝借いたしまして御説明を申し上げたいと思いますが、法案そのものにつきまして一々申し上げますと相当な時間を要します関係もございますので、お手元に「厚生年金保険法案に関する説明資料」というつづりが差上げてございます。これの一番最初に「厚生年金保険法案要綱」というのがつづり込んでございますので、これに基きまして説明を申し上げることにいたしたいと思う次第であります。  なお内容に入ります前に、先ほどの大臣提案理由説明にありました点について若干敷衍して申し上げたいと思うのであります。  厚生年金保険法の制定は、御案内の次第でございます。昭和二十八年十二月末現在の被保険者総数は七百六十七万六千人を越えておる次第でございます。同時に、この被保険者によつて扶養されております被保険者家族、被扶養者でございますが、これが健康保険の例で申しますと、大体被保険者数の一・七倍ということでありますので、被扶養者総数は千三百万を越える数になるものと考える次第であります。そういたしますと結局被保険者、その被扶養者数を合せまして二千万人の勤労者並びにその家族が本制度に直接の関係を持つておると思つてよろしいと思うのでございます。  こういうふうに適用範囲が非常に広い制度でございますが、先ほど大臣説明にもありましたように、戦争初期制度が創設され、特に終戦後のインフレ時代を経過して参りましたために、当時長期保険でございます関係年金給付はあまり行われず、一方保険料だけはどんどん徴収されるというようなことで、年金保険制度の根本に対しましていろいろな批判が起つたのでございます。そこでインフレ時代貨幣価値の下落に対応して、一面におきましては新しい給付を創設して、被保険者に喜ばれるような制度にしたいというような方針と、同時にまた逆にそれとは全然正反対措置でございますが、被保険者負担を大幅に軽減をするというような措置があわせとられたのでございます。主としてその改正昭和二十三年に行われておるのでございますが、そのときまでの保険料率は、一般男子標準報酬月額の千分の九十四を毎月徴収をする。これを労使折半負担徴収をしておつたのであります。坑内夫は千分の百二十三、一般女子は千分の五十五というような、相当高額な保険料徴収する制度になつてつたのでございます。先ほど申し上げました保険料負担を軽減することのために、大臣の御説明にもございましたように、まずこの制度の根幹をなしまする老齢年金につきまして、大幅に年金額を縮減して、月額百円というものを支給する程度にとどめるという方針のもとに、主としてこの点から保険料率の低減をはかつたのであります。そうして昭和二十三年の改正によりまして、一般男子千分の九十四、坑内夫千分の百二十三というような高額な保険料率を一挙に千分の三十に引下げまして、今日に及んでおる次第でございます。  一方におきまして新しい給付をつくつたと申しまするのは、遺族年金に類する寡婦年金鰥夫年金遺児年金でございまして、当時におきましては、被保険者老齢年金をもらう前に死亡いたしましても、その遺族には年金が出なかつたのでありますが、老齢年金をもらう前に死亡いたしました被保険者遺族に対しまして、その寡婦鰥夫遺児に対して年金支給するという制度をつくつたのでございます。ところがこの制度が前から存在しておりました狭義遺族年金と非常にアンバランスになつておりまして——狭義遺族年金と申しまするのは、現行法遺族年金でありますが、これは老齢年金を受給いたす資格のある者あるいは受給しておる者が死亡した場合に、その遺族に転給される遺族年金であります。これは老齢年金が千二百円という低額に押えられました関係上、その半分の、年額六百円きり年金が出ないというような制度にしてしまつたのでありますが、一方遺族年金でありまする寡婦鰥夫遺児年金につきましては、最終報酬月額の三箇月分を平均いたしまして——大体最終報酬と申してよろしいのですが、この二箇月分を支給するというような、相当高額な給付をするような制度になつてつたのでございます。  もう一つ顕著な例を申し上げますと、脱退手当金制度であります。脱退手当金と申しますのは、制度創設当初からあつた制度でありますが、これは、被保険者保険料徴収されて将来年金給付を受けたりするのでありますが、途中で被保険者資格を喪失した者につきましては、保険料のかけ捨てになることを防ぎますために、本人のかけた保険料銀行預金利子程度のものを加えたものを還付する制度であつたのであります。これは、そういう考え方から申しますれば、昭和二十三年に保険料率を大幅に引下げましたときに、その金額もそれに応じて当然引下げるべきであつた考えるのでありますが、さきに申したような趣旨に基きまして、脱退手当金給付額を下げないで、保険率を計算して参つておるのであります。従いまして、大ざつぱに申し上げますると、労使合せて千分の三十の保険料しか納めておりませんのに、脱退手当金の額は千分の五十五程度のものが還付されるというような、被保険者本人の立場から申しますれば、銀行預金なんかよりよほど有利なことになるような、私どもから考えれば、合理的でない制度のままになつてつた次第であります。こういうような点が、今度の改正を全面的にいたさなければならないと私ども考えておるおもな理由であります。  それからこれも大臣お話にございましたように、昨年の十二月以降坑内夫に対する老齢年金支給が開始されるような時期にも立ち至りましたので、私どもとしては一昨年来この案をつくることに努力いたして参つたのであります。政府としては昨年の暮れ一応最終的な案を得まして、法律に基いて社会保険審議会に諮問いたしたのでございます。いずれ資料をお届けいたしますが、社会保険審議会におきましては各委員いろいろ御尽力いただましたけれども、終局的には労使及び公益代表委員の意見の一致を見ることができませんで、三者の意見そのままを厚生大臣に答申されたような次第でございます。  そこで私どもといたしましては、それらの意見の答申をもらいましてから、なお原案につきまして再検討を加えましたほかに、さらにこれも法律に基いて内閣に所属する社会保障制度審議会にも原案を諮問した次第でございます。社会保障制度審議会からも答申がありまして、若干原案を修正したものを今回御提案申し上げるような段取りになつた次第でございます。内容に入つて申し上げる前に申し上げますことは、大体そんなことでございます。  次に、労使の意見の突き詰めたところを御紹介申し上げて御参考に供したいと思います。労働者側の意見として、保険給付内容が改善され、増額されるということでありますれば、若干の保険料負担増額することもやむを得ないということでありました。なおその財源としては国庫負担も大幅に増額し、あるいは積立金運用につきましても注意を払つて、財源を確保することによつて給付額を原案より大幅に増額すべきであるというような意見が主流を占めておつたように思います。これに対して使用者側の意見は、緊縮財政の今日でもございまするし、保険料負担が額の上において大幅に増額するという政府の原案には賛同しがたいということが一つのポイントでございます。また年金給付は、それにも関連いたすのでありますが、報酬比例を加味することなく、定額制で最低生活の保障をすればいいというのが使用者側委員の御意見であつたのでございます。大体そういうような御意見を参考にして私どもとしては成案をまとめたつもりでございます。  以下先ほど申し上げました要綱について簡単に説明を加えて参りたいと存じます。改正の目的の第一に、標準報酬という見出しがあります。これは御案内のように、精神としては、勤労者のとつておりまする報酬額がそのまま標準報酬として制度の土に現われるべきでありまするが、実際は若干の食い違いがあります。これはこういう制度をいたしておりますのは、もつぱらと申してよろしゆうございますが、事務上の便宜のためでございます。具体的に申しますれば、四千五百円から五千四百九十九円までの標準報酬をとつておりまする者は標準報酬が五千円をとつている者というふうにきめて行くわけでございます。一万円とつている者は一万円でいいのでありますが、九千五百円から一万一千円の者は一万円というふうに計算するわけであります。そうすることにより、これを基礎として、これに保険料率をかけて保険料徴収するということをいたしますとともに、また半面この標準報酬の額が基準になりまして各種の年金額が計算せられ、あるいは脱退手当金の計算が行われるわけでございます。そういう意味から標準報酬をどういうふうにきめるかということが保険給付の面に実質的に影響いたし、また半面保険料負担に影響があるわけでございます。ここに書いてございますように、現行法は最低三千円から最高八千円までの六階級にわけておりますが、この制度では健康保険はすでに三万六千円に上つておりますし、また船員保険におきましても同じような理由の保険を含んでおりますにかかわらず、やはり三万六千円が最高額になつておるのでございます。そこでこの標準報酬を賃金の実態に合せるとは申しながら、一方において労使負担増ということも勘案いたしますと、これをどの程度引上げするのがよろしいかということが重要な改正のポイントとなつたわけでございます。いろいろ検討をいたしました結果、一挙に他の制度のように持つて行きますことも、労使負担を急激に増加することになりますので、政府の原案といたしましては最高八千円の現行法の額を最高一万八千円にいたしたい、こういう案を提出いたしておる次第でございます。なお最低三千円から一万八千円までの内容の区分は十二等級、かようになりますが、これは事務上の便宜も考慮いたしまして、健康保険の区分と同様にいたしておる次第でございます。  それからもう一つの問題は、その次の項にございますが、後に申し上げますように年金給付は被保険者本人が過去においてどの程度の報酬をとつてつたか、言葉をかえて申しますれば、どの程度のどういう保険料を納付いたしておるかということが年金給付の基本になる関係があります。これは申すまでもないことでございますが、ところでインフレの時代を経過して参りましたために、インフレ前の非常にに低額な報酬をとつておりました時代のものをそのまま報酬にとつて標準報酬額としてとつて参りますと、保険給付額が非常に低いものになつて、今日の実態に合わないおそれがございます。そこで過去の低い時期の標準報酬は全部新しい制度の最低額を三千円に見ようというふうに考えておる次第であります。  第二は保険給付でございます。これは老齢年金障害年金遺族年金というふうに各項目をわけてございますが、各項につきまして簡単に申し上げておきたいと思います。老齢年金、ここに書いてございますように二十年以上被保険者でありました者が六十歳に達しましたときに、支給をするものであります。簡単に申しますとそういうことでありますが、六十歳になつたときにまだ被保険者でありますれば被保険者である期間は支給をいたしません。被保険者資格を喪失した者が六十歳に達したか、あるいは六十歳を越えて被保険者資格を喪失いたしましたときに支給をすることになつておるのであります。これは一般男子、女子ともこれでやつております。二十年以上ということは男子、女子かわらないのであります。坑内夫につきましては、従来から二十年の資格期間が五年短縮いたされておりますので、新しい制度でもそれを採用するつもりでございます。それから当時坑内夫と女子につきましては給付開始年齢を、六十歳を五十五歳、五歳だけの差をつけて女子及び坑内夫の労働の実態に合うようにしたい考えでございます。なお六十歳に引上げるということは、これは一つの大きな問題があるのでございまして、社会的に一般に行われております停年制の問題に大きな関連を持つ次第でございます。こういうふうに引上げまする趣旨は、一般的には後に資料をごらんいただきますればおわかりいただけますように、日本人の平均寿命が非常に延びて参りました。この点が言いかえれば労働可能の期間が長くなつたと申してよろしいと思います。また諸外国の制度を見ましても、そういうようなことを根拠にいたしまして、現行法のように一般男子五十五歳、坑内夫五十歳というような支給開始年齢をとつておるところはほとんどございません。みんな六十歳ないし六十五歳、はなはだしいところは七十歳ぐらいになつてから初めて老齢年金支給するという制度があるわけでございます。そういうような理由から六十才ということに引上げることにいたしましたが、ただ社会的に一挙にこれを法律施行と同時に六十才に引上げをいたしますると、停年制をしておる事業所の九割が現在五十五才の停年制をとつております。そこでそういうところの勤労者にとつては非常に大きな影響を与えまするし、また場合によりましては、日本の雇用関係全般に影響を及ぼすと考えまするので、これは漸進的な方法をとることに考えております。大体簡単に申しますると、法律施行のとき五十二才以上でありますれば現行通り五十五才で開始をする、五十一才から四十九才までの人につきましては五十六才で開始をするというふうにいたしまして、最終的には二十年後に六十に頭がそろうように、漸進的な方法をとる予定でございます。  それから高年齢者の資格期間の特例、これは四十才を越えて被保険者になりますような人につきましては、所定の二十年の資格期間を満たすことが実際問題として困難でございます。そういう人につきましては十五年で開始をするというふうに特例で新たにこれを設けたものでございます。それから廃疾考に対する老齢年金の繰上げ支給というのも新しい制度で、現行法にはございません。老齢年金給付する資格期間を満たしておる人が六十才になるのを待つておりまする間にけがをいたしたという場合には、老齢年金を繰上げ支給してやるという制度でございます。  それから老齢年金額、これらにつきましては少し御説明申し上げますが、ここに書いてございますように、定額一万八千円に報酬比例額を加算したものというふうにいたしたのであります。現行制度老齢年金につきましては、制度の建前としては報酬の四箇月分を支払うということで全面的に報酬比例になつておるわけでございます。これに対しまして社会保障制度審議会の勧告は、累次にわたりまして定額一本で行けという勧告であり、先ほど申し上げましたこの法案を諮問いたしました答申にも定額制を主張しておられるのであります。この定額制にしなければならない理由というのは、主として社会保障であるから最低生活の保障をすればいいということ、それからさらに給付費に対しまして国庫の負担がございますが、これは給付費に対して一割とか一割五分とかいう関係になつている以上、高額所得者には国庫負担が多額に行くというような結果になることがおもしろくない、いろいろなことがございます。私どもとしてもこの定額制を主張する論拠に対しましては十分考えなければならないと思いまして、制度的には定額一万八千円、月額一千五百円という制度をとることにいたしました。それに若干の報酬比例を加算するということで、現行制度の全面報酬比例に対して相当大幅に定額制を取入れるというようなことにしたのであります。  次にもう一つ加給年金がございます。これは被扶養者に対して出す年金でございますが、これは現行法にはございません。この老齢年金に新たに附加することにいたしたものでございます。  一々申し上ておりますとだんだん長くなりますので、少しはしよらせていただきますが、坑内夫の特例の廃止、坑内夫につきましては現在二重の特例がございます。先ほど申し上げましたように資格期間を五年短縮するほかに、継続して十二年坑内夫であると年金がつくというようなさらに附加した特例がございますが、今日のいろいろな考え方から申しまして、附加した特例につきましては今後はとりやめてしかるべきであろうという考え方をとりましたのであります。  それから老齢年金の遡及支給というのは、先ほども申し上げました昨年の十二月から年金支給が開始されることになつているので、これらの人につきましては新しい制度年金額を繰上げて支給するように措置しておる次第であります。  次は障害年金でありますが、これは時間の関係もございまするから、各項目につきましては一々申し上げないことといたしまして、概略だけ申し上げます。  障害年金と申しますのは、被保険者が被保険者期間中にけがなり病気によりまして廃疾になりました場合に支給する年金でございます。これは現行法では一級、二級と二階級にわかれておりましたが、いろいろ検討いたしましてそれを一級、二級、三級にわけることにいたしました。二級に相当いたしまするものは、老齢年金と同額の年金支給し、一級は常時介護を要する程度のものであるというので、年額一万二千円の加給をするものでございます。三級廃疾の程度につきましては、二給年金の七割を支給する建前にいたしたのでございます。それから一級、二級、三級にも該当しない廃疾の程度の低いものにつきましては、障害手当という制度現行法にもございます。これも続けて参りたいと思いますが、その額を若干低額にいたしました。現行法では最終三箇月間の平均標準報酬月額十箇月分を出すことになつておりますが、今回の制度では三級年金の二箇月分を支給する建前にしたのでございます。  その程度障害年金は終らしていただきまして次は遺族年金でございます。先ほども申し上げましたように、現行制度寡婦鰥夫遺児年金といわゆる狭義遺族年金というものが同じ制度の中に混在をしておりまして筋も立つておりませんように考えております。今回はこれらの各年金を統合して遺族年金というふうにいたしました。被保険者老齢年金をもらう資格期間を満す前に死んでも、満したあとに死んでも、その遺族には年金を出すという制度に改めました次第でございます。年金の額は、一般の観念に従いまして、老齢年金の二分の一というふうに考えております。なお一級、二級の障害年金者の受給者がなくなりました場合にも、その遺族には遺族年金を出すことにしている次第でございます。  ここで申し上げておきたいと思いますることは遺族範囲でございます。これは現行法に若干の修正が行われて為りまするので、念のために申し上げておきたいのでありますが、現行制度は、先ほど申し上げた被保険者老齢年金をもらう前に死亡いたしました場合には、その配偶者と子供にだけしか遺族年金が出ない。これに反しまして老齢年金をもらう資格期間を満した者がなくなりますと、その遺族は配偶者と子のみでなく、父母、祖父母、孫まで遺族年金が出るようになつておるのであります。しかもそれは漸次転給をされて行くような建前になつております。そこで今度新しく遺族年金を統合するという建前に立ちましてさらに新しく民法の精神等も考慮いたしまして、両者の遺族範囲を調節したような制度にいたしたのであります。まず、一般的に配偶者と子には文句なしに遺族年金が出ることにいたしました。父母、祖父母、孫につきましては、順次、配偶者及び子供のないときには父母に、父母のないときには祖父母に、祖父母のないときには孫にというぐあいに従来の転給の観念に若干制肘を加えたのであります。しかしながら孫までに年金が行くという点については、現行とかわりないのであります。すなわち、言葉をかえて申しますれば、寡婦遺児鰥夫年金が今度遺族年金に統合されることによりまして、その遺族範囲は孫まで広がる。従来の狭義遺族年金は今度の改正によりまして父母、祖父母、孫につきましては若干の制限が加わるようになり、両者折衷をされたというようになつておる次第でございます。  遺族年金につきましてはこの程度にとどめさしていただきまして、次は脱退手当金でございます。これは現行制度内容的に若干かわつておる点がありますが、その点を主として申し上げます。脱退手当金としては現行通り制度は存続いたしますが、内容は合理化するという言葉で大臣から御説明申し上げたのであります。一般男子につきましては、資格期間あるいは給付開始年齢はかわつておりません。五年以上五十五才に——忘れておりましたが、五十才が五十五才に上つております。この点失礼しました。そういう点で大体老齢年金等でやりましたのとかわりない考え方を取入れたのでありますが、給付の金額につきましては、さしあたり当分の間保険料が後に申し上げますように、千分の十五が被保険者負担、その千分の十五に相応するものに若干利子をつけ加えた程度のものを計算をいたしまして、それを別に法律の事項に書いてございますような年限に応じて同額のものを出すようにいたしたのであります。  女子につきましては、現在の制度脱退手当金と申しますものは、一般的に男子と同様に、資格期間は五年になつております。五年被保険者でないと、やめても脱退手当金がもらえないことになつておりますが、ただ結婚、分娩のために被保険者であることをやめました場合には、六箇月で脱退手当金が出る制度になつておるのでございますが、そこで今回女子勤続年数を調査いたしました結果、五年というのは長過ぎるというふうに考えて、また結婚後五年というのを、特別に取上げることもいかがなものであろうかということで、その中間をとりまして、二年以上被保険者であれば脱退手当金を出すということに改めたのでございます。給付金額については、男子よりも若干高額のものが出せるのであります。数字で申しますと大体千分の二十程度のものが女子の脱退手当金として出せる見込みでありますので、さようにいたしたのであります。なぜそういうふうに男子と違うかと申しますと、女子につきましては別計算でいたしたのでございます。日本の女子は長期に勤続する人が少いために、従つて年金給付のための財源が比較的少くて済むわけでございます、そういう関係上その部分だけが同じ保険料率保険料をとりますと、脱退手当金の方に多くまわるということになる関係もございまして、その方が日本の女子の勤労の実態に沿うゆえんであると考えまして、男子と女子とは資格期間及び給付の領につきまして差をつけると同時に、女子につきましては五十五歳まで至らなくてもやめたときに支給をするというふうにいたした次第であります。  最後に保険料及び国庫負担の点について申し上げます。保険料率をどうきめるかということは、年金財政計画を立てる上に非常に大きな問題でございます。ここの要綱に書いてありますのは、保険料率は左の通りとする。男子千分の三十、女子千分の三十、坑内夫千分の三十五、任意継続被保険者千分の三十というふうにしてございますが、私たちとしてはさしあたり五年間くらいこれでやりたいという考えでございます。五年たちましたあと積立金の予定利率がどうかわつて参りまするか、この辺を勘案いたしました上で若干の増額をいたす必要があると考えておるのでございます。  簡単に一般男子についてだけ申し上げますると、もしも将来ずつと長く現在の積立金の運用利まわりのように五分五厘にまわるものといたしますれば、五年後に千分の三十四、つまり千分の四だけ引上げることによりまして、将来の保険財政の見通しが立つ予定でございます。しかしながらもし予定利率が五分五厘にまわらない、十年間ずつと四分五厘程度しかまわらないというような計算をいたしますと、別に資料で差上げてございますように、五年後に千分の四十にいたしまして、十年後に千分の四十五にして財政的に計算がつくというふうに考えております。いずれにいたしましても、主として今後の運用利まわりの率に関係をして参りまするので、さしあたりは利子負担増を急激に来さないというので、大体におきまして現行の料率を持続することにいたした次第でございます。国庫負担につきましては、大臣の御説明にもございましたように、一般勤労者の分だけ五分の負担増額をすることになりました。このために昭和二十九年度におきましては、一割にしておきますよりも、二億三、四千万円の負担増額になります。この額はしかし、将来非常にふえて参る予定でありますことは申すまでもございません。終局的には四十年くらいたちましたときには、老齢年金の受給者が約二百八十万程度になる予定をいたしております。全体の年金の受給者が五百万人を越える見込みでございます。そういう時代になりますと、年金給付額が毎年毎年千八百億程度になりますので、この一割五分なり二割の国庫負担というものは、申すまでもなく相当な額に上るわけでございます。いろいろ折衝いたしました結果、一割五分という五分だけの増額が承認をされ、ただいま参議院におきまして御審議をいただいておるところでございます。  大分端折りまして恐縮でございましたが、時間の関係もございますから、これをもつてきようのところは御説明を終りたいと思います。
  22. 小島徹三

    小島委員長 以上で補足説明を終りました。  次に本案の質疑に入るのでありますが、本案は今会期中当委員会審査いたします法案中、最も重要なる法案一つでありますので、質疑の方法順序等につきましても、理事会において検討の上進めて参りたいと存じますので、質疑次会以後に譲ることといたし、この際佐藤芳男君より議事進行について発言を求められておりますので、これを許します。佐藤芳男君。
  23. 佐藤芳男

    ○佐藤(芳)委員 委員長に伺いたいのでありますが、ただいま御宣告がありましたように、理事会で質疑等の御相談をなさるということでありますが、この際御注文いたしておきたいことがございます。他の付議されております案件等の処理の御関係もございましようから、本件に関する質疑の日取り等はもちろん遅れることとは思いますが、本件に関する質疑を行われます第一日においてこの案の重要性にかんがみまして、総理大臣、もしも総理大臣が診断書のごとく、流行性感冒による神経性筋肉痛でありますならば、やむを得ませんから、副総理でよろしゆうございます。なお大蔵大臣並びに厚生大臣、この三大臣の出席の御都合をお聞きくださいまして、その日取りを御決定願いたいと思います。さらに委員長より厚生当局に対しましてすみやかに資料を提出されることをお願いいたしたい。なおその資料の中にはぜひ社会保険審議会の答申並びに社会保障制度審議会の答申をも含めていただくように御要求を願いたいと思います。
  24. 小島徹三

    小島委員長 お答え申し上げます。できるだけ理事会に諮りまして御趣旨に沿うようにいたしたいと思います。     —————————————
  25. 小島徹三

    小島委員長 次にメーデーの広場使用に関する問題、その他厚生行政について滝井委員より発言を求められております。これを許可いたします。滝井義高君。
  26. 滝井義高

    ○滝井委員 厚生大臣が御出席でございますので、大臣に、メーデーで皇居前広場使用の件についてお尋ねいたします。先般来木村厚生次官から総評の柳本メーデー実行委員会の事務局長に場対して、正式に文書で使用まかりならぬとの通告をいたしておるようでございます。過去においてすでに皇居前広場は五回にわたつてメーデーに使用いたしておるのでございますが、どういう経過で厚生当局としてはこの皇居前広場を国民大衆のために使わせないという決定に相なつたのか、要約してまずそれを御説明願いたい。
  27. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 厚生省といたしましては、実は皇居前の外苑の管理をいたして以来、これが特別使用につきまして検討して参つたのでありますが、昭和二十七年以来その方針を確立いたしまして、第一には政治的、宗教的の目的のためにあるいは治安を乱すおそれある行事には許可しない、第二には小区域、短時間でない行事は許可しない、第三には国家的行事には許可をするという方針を定めまして、これを従来管理して参つたのでございます。ことに右の方針に照しまして取扱つて参りました関係から、昭和二十七年、二十八年のメーデーに対しまする使用許可は不許可といたした次第でございますが、ことに昭和二十七年の皇居前広場におきまする御承知のような事件がありましてから、国家的行事にこれを、使用するという方針をとりましてその後は国家的行事を中心といたしまして許可をする方針をとつてつておりますため、今回二、三、この五月一日を中心としまして、ただいまお話にありましたメーデーの使用許可等を願い出て参りましたが、不許可方針をとつたような次第でございます。
  28. 滝井義高

    ○滝井委員 この皇居外苑の広場は、これは国有財産法のいわゆる公共の福祉用財産に当ると思つておるのでありますが、これが公共福祉用財産たることは国会の議決を経てきまつておるものだと思います。それを、どういうわけで政治的、宗教的目的のもので治安を乱すもの、あるいは短時間使用でなければいかぬということを厚生省の方できめられたのでありましようか。あるいは閣議できめられたのかもしれませんが、そういう具体的な、国会の議決を経た公共福祉財産を、かつてに行政府が制限をすることができるものでしようかどうか、その点をひとつ……。
  29. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 実は公共の福祉に使うという意味におきましても、かような管理方針をとつておくことが公共の福祉には最も妥当であるという考え方から、さような制限を設けておる次第でございます。
  30. 滝井義高

    ○滝井委員 この問題については、多分昨年の十二月であつたかと思いますが、最高裁判所が一つの解釈をはつきり明示しておるのです。公共の用に供される目的に沿う限り、管理者、すなわち厚生大臣ですね、厚生大臣の「単なる自由裁量に属するものではなく、」その規模、施設を勘案し、「その公共福祉用財産としての使命を充分達成せしめるよう適正にその管理権を行使すべきであり、若しその行使を誤まり、国民の利用を妨げるにおいては、違法たるを免れない」こういうように最高裁判所は判決を下しておるわけであります。そうしますと、これはその規模、施設を勘案して当然使つてもいいわけなんであつて国会が公共の利用に供する財産であるということを議決しておるものを、行政府でかつてにきめるということは、どう考えても私は行き過ぎだと思うのです。もしそういう特別な場合以外には使うことができないというのならば、その用途の廃止を当然国会に再議決を求むべきだ、こう私は思うのです。それにもかかわらずそういう非常に狭い範囲に使うということは、どうも行き過ぎだと思うのでありますが、その点の解釈はどうなつておりますか。
  31. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 昭和二十七年の不許可に対しましては、ただいまお話になりましたように公訴がなされ、その結果につきましては、第一審、第二審におきましてそれぞれの判決がなされたのであります。なお昨年の不許可につきましても、大体同様な取扱い公訴がなされたのであります。しかしこれらの公訴の内容あるいは判決の内容を十分精査いたしますと、必ずしも厚生省がとつております態度に対しまして、全面的に私ども方針を変更するという内容ではないと解釈いたしております。これは今後なおいろいろな形におきまして、この厚生省並びに政府がいたしておりまする管理方式がなお確立するには——現在は確立はいたしておりますが、これに対する異議がありますので、その最終的確立はあるいは日時を要するかとも存じますが、これらの判決等から考えましても、必ずしも私どもは不当ではないと考えております。従いまして現在の国有であります皇居外苑の使用につきましては、従来の管理方式をもつていたしましても、別に不都合がないと存じまして、国民大衆の福祉並びに公共の利用に供するためには、むしろその方が適当であろうという方針のもとに進んで参つておりますし、またこれらの使用範囲におきましては、管理は厚生大臣の管轄にありますので、その方針で進んで来てもさしつかえないという解釈のもとに管理権を続けて参つておる次第でございます。
  32. 滝井義高

    ○滝井委員 最高裁判所等の見解において、厚生省側と同じような見解をとつておる基本的な理由としては、皇居前広場に五十万という莫大な大衆が集まり、しかもそれが午前九時から午後五時までという長時間にわたつてあの位置をふさいでしまうということは、国民公園という見地から見て、どうも不都合であるというようなことが大体おもなことになつておるようであります。そうしままと、もしそういう五十万という数でなくて——最高裁判所はあそこの広場に入る人員を大体二十五万程度と、こう見ておるようでございます。そうしますと、もし二十五万より低い二十万程度の者が、今言つたように九時から五時までというような長時間ではなくして、たとえば四時間とか、午前中だけ、こういうような比較的短時間の間にあそこを使用する、こういう状態になつた場合には、大体どういう見解に厚生省はなつておりますか。
  33. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 実は今回も大体二十万程度であつて、使用の時間は午前十時から午後一時まで、但しこれらの二十万が撤退行動をして、そこを退去するまでは約二時間を要する、結局は三時ごろまでと存じますが、そういう内容の申請であつたのであります。前回の申込みは、お話のように五十万においての話であつたのであります。今回は二十万ではございますが、二十万といたしましても、午前十時から約午後三時ごろまでの使用ということにつきましては、国民全体の福祉と皇居外苑の性格からいたしまして、五十万が二十万になつたからという意味だけでは、これを不許可にすることがむしろ適当である、こういう同様な方針をもつて、今回も不許可の通達をいたした次第であります。
  34. 滝井義高

    ○滝井委員 もう一回大臣に確認いたしたいのでございますが、そうしますとあの皇居前広場をすらすらつと厚生大臣の方で許可する場合を具体的にあげてもらいたいと思います。さいぜん政治的、宗教的目的のもので、治安を害するとか、あるいは小区域短時間のものとか、いろいろ言われましたけれども、もつと具体的に、はつきり、これこれの場合は許可する、それ以外はだめだということをあげてもらいたいと思います。これはすでに新聞にも出ておりましたが、赤尾敏氏等から愛国祭としての使用も出ているわけです。従いまして、労働者の一年一回の祭典であるメーデー、しかもこれは歴史的な祭典だと思う。しかも日本国民の九割九分以上を占めている勤労者なんです。これは何も組織労働者ばかりでなく、将来は農民も中小業者も集まつて来るかもしれません。またメーデーというのはレクリエーシヨンの意味も入ると思うのです。そうして皇居前広場は国有財産として国民の福祉のために解放されている。そういう点から考えて、もつと具体的にこういう場合とこういう場合は許可まかりならぬというはつきりしたものをここで出してもらいたい。そして同時に国有財産法の性格をかえてもらうような議決を国会に再申請すべきだと思う。そうしないと、これはいつまで経つてもいたちごつこで、年々歳々厚生省に対して総評から使用の申出が出る、そうするとこれを裁判に持つて行く。裁判の判決が終つたときはすでに五月一日は過ぎておつたというような、こういうことを繰返すことは大臣としてもまずい行き方だと思います。そこで第一の具体的な使用許可の限界と、今後の大臣のこれに対する速急な解決の方針、この二点について御答弁願います。
  35. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 皇居外苑の使用の方針といたしましては、昭和二十七年からはさつき申し上げましたような三項目をあげた方針で参りましたが、昭和二十七年のあの事件が起りまして後は、国家的行事にこれを使用する、国家的行事以外は使用しない、但し国家的行事には国家的行事と同一なものももちろん含んで、その後実は御承知のように消防出初式には許可いたしましたが、それ以外には許可いたしておりません。かような方針をもつて進んでおります。  なお今後の手続の問題等で、今のお話ごもつともなお話だと思います。またさような点が十分検討されてはつきりいたすことが、今後のいろいろな問題を解決するゆえんだという意味においての御質問と存じますので、その点は十分検討いたします。
  36. 滝井義高

    ○滝井委員 最後に、国家的な行事ということなんですが、現在の日本の国家は主権在民の国家なんです。だから皇室の行うことは国家的な行事とは言えないと思うのです。従つて国家的行事というのは具体的にどういうことを言われるのか、これが一つ。いま一つは、五月一日はもう間もなき一箇月でやつて来るのです。これをこのまま大臣が検討されると言つてつて五月が来れば、また混乱が起ることは火を見るより明らかで、すでに不許可にされて、その不許可に対する対策というものもおそらく総評でもとると思います。従つて具体的に今後この問題をどういうぐあいに解決するのだという点を、やはり早く声明なり、あるいはここで御言明をいただくことが、今後の混乱を防ぐゆえんだと私は思うのです。そしてやはり合理的な使用方法を国民の前にはつきり示さないと、国会で公共の福祉のために使用する財産であるということを議決しておるにもかかわらず、一方的に行政府がやるというのは、われわれ国会議員としても納得できないところがある。これを早急にやるために、いつごろその手続を完了するのか、国家的行事というのはどういうものを言うのか、その点をお伺いしたい。
  37. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 国家的という的の字を入れましたが、国家の行う行事はもちろん国家的行事であります。従いまして従来国家の行つておりまする行事をあそこで許可をいたしております。それ以外には、今申し上げました消防の出初式、これだけでございます。そういう意味から的という字を入れたわけであります。さらに今後の問題について、これはただいま私御答弁申し上げるのを失念いたしましたが、大日本愛国党代表赤尾敏の名義をもちまして、同様五月一日十万人の参集による午前十時から午後四時までの平和所願愛国祭執行のための使用を申し出ております。しかしそれとただいまお話になりました第二十五回メーデー祝典に使用の申出がありますが、両方ともさような意味において不許可の通達をいたしております。はつきりと意思表示はいたしておりまするから、両団体ともさよう承知をしておられると存じております。
  38. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 厚生大臣が御出席でありますので、時間もございませんから、きわめて簡単に三つの問題について伺いたいと思うのであります。  第一点は、御承知のように各都道府県に保険課がございまして、その職員諸君が約六千人おられます。この人々の身分は御承知のように国の官吏である。ところが業務は地方の業務であるというわけで、たとえば給与の点でも恩給の点でも、あるいは業務自体の点でも非常に困つております。前年来この関係を何とか割切つだものにしてほしいということが、たびたび私ども会議員の方に陳情されて参つておるのであります。私どもも当然これは筋の通つたものにしてそうして能率的に仕事ができるように、また身分等が安定するようにすべきだと考えておるのでありますが、これについて厚生大臣の御意見はどうでありましようか。関係局長がいなくてぐあいが悪いようでしたらあとでけつこうだと思いますけれども、一応御答弁をいただきたいと思います。
  39. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 お話の点まことにごもつともだと思います。この身分ははつきりいたしておると存じますが、実際の監督は地方の府県等でいたしておる状態になつておると思います。これらの人事の問題は一切厚生省で握つてはおりまするが、地方的色彩が濃厚になつております。従つてただいまお話なつたような点が起つて参ると思います。こういう点につきましても、人事等の問題は全国的に、また本省の内外を問わず考えるべきものであり、いわゆる優秀な人はそれぞれその道が開けるようにいたすべきものであると存じまして、その方針をとつて参る予定でおります。従つて身分はそうなつておりまするが、お話の少し割切れないところが事実はあると存じます。こういう点につきましては、人事の交流、人事の異動等におきまして十分研究して参りたいと存じております。
  40. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 これは予算との関係におきましても、私は方法を立てれば、業務管理上の人件費の問題等を考えれば、道は幾らでも開くと思うのでありますが、これはずいぶんややこしい問題でありまして、実際各都道府県の現場の職員諸君は非常に迷惑をいたしておるのであります。現場の職員諸君が安定して能率的な仕事ができるように、また恩給、給与等の問題につきましても、地方職員と差別されておるというかつこうでありますから、そういうかつこうでないように特別の配慮をしてあげるべきだ。単に人事権を持つておるとか、業務に関しまする命令権を持つておるとかいうことでなしに、やはり実際現場で働いております保険課の職員諸君が十分安定してやつて行けるように配慮すべきだろうと思う。いろいろな役所にありがちな系統だとかセクシヨンだとかいう問題はございましようけれども、現実の一番大事な問題は、能率のあがるように、また職員諸君が安定してやつて行けるようにということでありますから、十分の御配慮を願いたい。この問題についてはすみやかに御研究願いまして、面子等にこだわることなく、現実の業務がうまく運べるようにお願いしたいと思います。  時間がありませんので、こまかいことは他の機会に伺うことにしまして、次に第二の問題といたしまして日本医療団の残余財産の問題でございます。これは前年、日本医療団の財産の処分に関しまする法律としては、われわれ衆議院の議員立法として提出し、ここにきようも御列席の亘委員が当時提案理由説明をなさいまして、これにつきましては当時の速記録を見ますと、これは日本医療団の残余財産であるから、特別の場合のほかは旧日本医療団の施設の整備に使うということになつておりまして、法律としましては日本医療団の旧施設とともに公的医療施設の整備というようなことに使つていいことになつておりますけれども提案理由には日本医療団の設備の整備に特別の場合のほかは使うということにはつきりいたしておるのでありまして、この点は私厚生省の立場も尊重いたしまして、厚生省の局長の方に個人的にひそかにこういうことをやつてくれたら困るということを実は申し上げたのでありますけれども、それに対してどうも私の申し上げていることをお取上げにならないから、やむを得ず先般予算委員会の分科会でこの問題を追究いたしました。しかるになお取上げませんので、私は今日は大臣の御意見を伺いたいと思うのであります。具体的な例を申しますと、新潟県に吉田町という町がございますが、この町に町立病院をつくるということで、これに残余財産のうち一千万円を持つて行くということを厚生省の一課長が申しております。そして地元には相当な反対があるにかかわらず、これを将来県立病院に移管するということにして町立病院を建てるということにいたしておるのであります。その後私どもはちよつとそれに対する反対等の御注意を申し上げました後に、その課長はまた現地におきまして、自分が首をかけても一千七百万円持つて来る、こういうことを言つておるのであります。そして遂に予算委員会で私が追究し、なお私は、厚生省の役人がこういうことを言つては困る、そういうことをされては困る、こういうように紳士的に申し上げた。しかるについ数日前の新聞を見ますと、遂に強引にそこに町立病院を建てることを決定したということであります。当時私は医務局長に、日本医療団の残余財産をどういうようにお使いになるか、すでに決定をしておるはずだからその資料を出しなさい、こう予算委員会で申し上げましたけれども、その資料をいまだに提供いたしません。そこで私は自分で、それでは旧日本医療団の関係にどういうように事実使われておるだろうかというわけで、実は先日国立清瀬病院長に来てもらいました。清瀬病院は当時日本医療団のうち最も大きな三つの医療施設である。一つは御承知のように今日の東京療養所、一つは国立の東京第一病院となつておるものである。これに清瀬病院。この清瀬病院は三つの大きなものの一つである。東京療養所や東一の方は御承知のように相当りつぱな施設である。けれども清瀬病院は、たびたび私はあそこを調べに行つて知つておるのでありますけれども、実にみじめなひどい施設である。前厚生大臣のときにも私はこれを取上げましたが、日本の代表的な国立の結核療養所がこれほどひどいものでは困る。研究室のごときはまるで物置のごとく非常にひどいものである。診療所のごときはろくなものはない。しかも道路が今までと反対側を通りましたために、施設全体が交通路に対しましては背中合せになつておるので非常にやりにくい。病棟の一つ一つを見てまわりましても実にひどいものである。こういうものに対しまして、前厚生大臣のときに、見に行つてみなさい、こう申し上げました。そうして公的な医療機関であるから何とか整備してほしい、こう申し上げまして、当時山縣厚生大臣も一度見に参りましようということでありました。こういう事情でありますから、私は清瀬病院はその代表的なものとしまして病院長に来てもらいまして、その後この日本医療団の残余財産があなた方の方に分与される話があるがというと、全然ありませんというのです。しかもこの清瀬病院の事情を聞いてみますと、昭和二十年だつたと思いますけれども、爆撃されまして病棟が焼けております。そして当時よりも二百人も定員が減つておる、そうしてがたがたである。こういうようなものにまでいまだに日本医療団の分与財産が行くようになつておらぬ。その焼けましたときた当時の金で二十数万円の保険料が日本医療団に入つておる。そういうものが分与財産になつておる。それをまず特別資金としてこういう施設を整備するのだといつて、この亘委員が当時提案説明をしているにかかわらず、それに関しては何らの分与財産を持つてつて整備するということをしないで、しかも厚生省の一課長が自分の懇意を持つて千七百万円を必ず首にかけても持つて来るということを言明するというのはとんでもないことである。私は明らかに汚職を形成すると思います。しかもいろいろ事情を聞いてみますと、みずから選挙に出るという準備のためにしているらしい。こういうことのためにこの費用を使うということはとんでもないことだ。私はもしこれを適正に法律制定の趣旨従つて使わないというならば、決算委員会及び行政監察委員会に持ち出しまして十分に調査させるつもりである。このようなことは残念なことだ。私はそれだから紳士的に内側から御注意申し上げて、みつともないから何とかそういうことのないようにしてくれ、公的医療機関のできることは私は賛成だけれども、しかし法律をつくつたときの趣旨をくまないでそういうことをしてもらつては困る、こういうように申し上げておるのであります。しかるにそれを今申し上げましたように強行しようとする、これは私は断じて黙過できないのであります。これにつきまして厚生大臣はどういうように御承知なさるか、それを承つておきたい。
  41. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 医療団の残余財産の取扱いにつきましてはお話の通りだと存じます。従いましてあの立法の趣旨に沿うように当然厚生省はこれを処置すべきものである。ただいま御引例になりましたような事件は、私具体的によく調査をいたしまして調査の結果は適当な機会にまたお話を申し上げ、もしやそこにいろいろ疑義を招くようなことがありますならば、十分さようなことのないようにいたしたいと考えます。
  42. 佐藤芳男

    ○佐藤(芳)委員 ただいまの問題につきまして関連質問をお許し賜わつたのであります。私の出身県であります新潟県の吉田町の問題でありまして、かく申す私の方が一番事情が詳しいと思つておるのでありますが、またいきさつも十分承知をいたしておるのであります。大臣は非常にお忙しいようでありますから、またただいまきわめて妥当なる御答弁もあつた次第でございますから、大臣調査をされます便宜の上からという意味合いで申し上げたいと思うのであります。新潟県におきましてはマツカーサー命令によりまして医療団が解散になり、これを府県が受入れるという厚生省の御方針に従いまして、全国における医療団施設の約二割という厖大な施設が新潟県にあつたのでありまして、これを全部一括して県は引受けたのであります。その当時私追放者ではございましたが、新潟県立病院設立協議会というものをつくりまして、三宅正一君などと相談をしまして、私はその会長の職にあつたのであります。従つて当時の北村大蔵大臣並びに舟山国有財産局長と面接をしまして、各府県に率先して新津県がこれを受入れることに決定をしていただいたのでございます。価格等もきめていただいたのでございます。その際の条件といたしまして、将来残余の財産が必ず出て来る、その際にはあくまでもその関係県のその引受けた施設に対する整備拡充のために配当いたすという確約もあつたのでございます。これらの事情にかんがみまして、ただいま長谷川委員より御発言のように、亘君が趣旨弁明をされまして決議案も可決に相なつておるのであります。従つて六億数千万円の剰余財産が出ました以上は、全国の市町村の医療団当時の施設の二割を新潟県が受入れたのでありますから、原則として六億数千万円の二割を整備資金として新潟県に与えられるということを期待をしておつたのであります。ところが厚生省におかれましては、もちろんそれも考えるが、さらに国立病院にも金をまわしたい、さらに一般公立病院にも金をまわしたいという御方針だ、これも私は尊重して、かれこれ批評はいたしません。しかしながらあくまでもただいま長谷川委員御指摘のように、医療団から引受けました県の医療施設に重点が置かるべきことは、これは当然のことに属するのでございます。ところが最近私のひそかに仄間をいたしたところによりますと、新潟県の方へ参ります金を調べてみますと、十日町病院、これは医療団から引継いだ病院でございます、そこにわずか七百万円程度、そうして一千万円は吉田町のこれから建てます町立病院に交付されるということ、しかもこの吉田町の病院は実は私どもが県当局に進言をいたしまして、今日国民健康保険診療所などが振わない一つの原因は親病院がないからである。ここに思いをいたしまして、名郡に一つづつの県立病院は必要であるということから逐次各郡ごとに県立病院がふえておるのでありますが、その吉田町は西蒲原郡にあるのでありまして、ここで地方事務所のございます巻町と吉田町がこの誘致につままして争いを起しまして、県は手を上げたのでございます。それではひとつ新年度においては東頸城郡の方へ病院を建てよう、争つておることは顧みることはできないということに相なつた。ところが吉田町の町長と町議会議長、それからそこから出ております県会議員、この三名が協議をいたしまして、まずもつて町立病院をつくれ、そしてこれを県に移管をする、町立病院をつくるには金がない、一方町として起債を申請する。一方またあなたの部下の某課長がたまたま新潟出身で、そのおやじさんはかつて選挙に出られて、その地元とも因縁浅からざるものがある。そのお礼心か、あるいはまた長谷川君御指摘のように、将来自己が立候補するためかどうか、そんなことは私にはわかりませんが、そういうようにうわさされておる人物なんです。その方が、一千七百万円必ず持つて来てやると言明をされたと地元では称しておるのであります。私は、地元に反対がないならば、これもけつこうだと思つたのであります。但し最近承るところによりますれば、医療団から引受けて県立病院になつております十日町病院にわずか七百万円、そこへすでに一千万円の内示が行つたということであります。しかもこれより先私は医務局長にもこのことを申し上げ、高田次長にもこのことを申し上げ、両者とも、いやごもつともだという面持で私と会見をされておつた。ところがその某課長に対しまして私が会見をいたしましたところが、あなたは病院そのものに反村じやないでしようから、ぜひあなたがまとめてください、それではあなた内示なんか出してはいけませんよ、出しませんと言つてつたのですが、口頭をもつてその後内示がすでに行われておる。ところが地元におきましては、町長並びに議員のリコールをやる。その前提として、穏当の措置といたしまして、まずもつて政府に対して陳情書を出す。一日のうちに千数百名の陳情書の署名がまとまつて、これを私は木村次官の方へ差出してある。また新潟市から出ておりまする社会党の櫻井君の方からは、同じその陳情書医務局長の方へ出してあるにかかわらず、これが一課長のきわめて強い信念的なお立場から強行されんとしておるのが現状でございます。私は町立病院でもけつこうです。県の病院局長から公文をもつてつておるのでございますが、今あんなに争つている問題、これを県立病院にあとで引直すなんということは毛頭考えておりませんという回答も私は得ておるのであります。かような状況に相なつておるのですから、私が大臣に御考慮願いたいことは、元医療団から引受けておりまする各府県の県立病院に対して重点を置くということを決して忘れてはならぬということが第一。第二は、他の町立病院というものにもお下しくださつてさしつかえありませんが、自治体を破壊してまでも、そうした方面にお出しになる必要がどこにあるか。自由党の県会議員からも、改進党の県会議員からも、また社会党左派の県会議員からも私は陳情を受けておる。陳情に左右されるものではありませんけれども、これくらい不明朗なことはないのでございまするから、ぜひひとつこの上とも御考慮を煩わしたいことを強く要望いたしまして私の質問を終ります。
  43. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 たいへん時間がおそくなつて恐縮でありますが、実はビキニ問題で焼津の方へその後の実地調査に行つて参りました。焼津の方では、治療、援護等を船員保険だけでは困る。しかもこの間もここで論議されましたが、彼らは六千円くらいしか手当が入らない。これは実際困る。君らはどのくらい収入があるかと言うと、ごまかしておりましたが、二万円ないし三万円でございます。だから六千円ではとても治療にも行けません。何とかもつといい手を打つてくださいということを言つておりました。  それから第五福竜丸の現場へ参りますと、鉄条網を張りまして、巡査が昼夜監視に立つておりまして、船付場が非常に狭いのであります。一方に沈みかかつた福竜丸があり、反対側に十数隻のほぼそれと同じ型の漁船が並んでいるので、出入りが非常に不自由でできません。それでよその漁船が入つて来れないので非常に困る。ぜひとも陸上に揚げてもらいたい。そしてすみやかに放射能に対する適当な設備をコンクリートででもつくつてもらいたい。こういうことを要望しておりました。もつともなことであると思うのであります。多分きようあすあたり焼津の市会ではその決議をするようでありますが、これらのことについて十分御尽力をいただきたいと思うのであります。  ついでに伺つておきますが、この船体は日本側に確保するように当委員会でも申入れをいたしたわけでありますが、さようになつておりましようか。  時間がないので、ほかのことも一緒に伺つておきますが、東大に入院しております人の事情について都築博士から秘密の証言がありましたが、それよりももつと事情は悪いようです。けさ東大病院の方の関係人に伺いますと、もつと犠牲者が出るのではないかということであります。これは重大なことでありまして、私ども同胞といたしまして、また人道上からもまことに遺憾きわまりのないことだと思うのであります。これらについて治療費、研究費等に万全の策を立てていただくように、当委員会の同僚委員から要請があつたのでありますが、これらの問題はどういうふうになつておりましようか。
  44. 草葉隆圓

    草葉国務大臣 第五福竜丸の船体につきましては、御意見を尊重して、政府で買い上げるという方針を決定いたしました。さよう御承知をいただきたい。  それから現在あります場所は、お話の通りでありまするので、これは至急何とかいたさなければならない問題であります。これも今連絡協議会をつくつておりまするから、そこで急いで検討しようということで、先ほど来申し合せた次第でございます。  患者の取扱いは、事重大な問題でありまするので、現在、御承知のように、東大と国立第一病院におのおの収容いたしておりますが、これらの患者の治療あるいはその家族に対する家族手当というような問題は、当然船員保険法でやるべきでありますが、これも実際上ある限度があります関係で、それを通り越してということはなかなか困難であろうと存じます。しかしかような特別な、そして治療を急ぐ患者でありまするから、これらに対する費用は、いずれ補償等の方法でアメリカとの関係が当然生じて参りますので、そういう方法も含めて十分な方法をいたし、家族に対しましても船員保険法だけの問題でない角度から検討をして参る考えで現在は進めております。その点御了承をいただきたいと思います。
  45. 小島徹三

    小島委員長 次会は追つて公報をもつてお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時一分散会