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1954-03-29 第19回国会 衆議院 厚生委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月二十九日(月曜日)     午前十一時五分開議  出席委員    委員長 小島 徹三君    理事 青柳 一郎君 理事 中川 俊思君    理事 松永 佛骨君 理事 長谷川 保君    理事 越智  茂君    助川 良平君       降旗 徳弥君    安井 大吉君       亘  四郎君    中野 四郎君       滝井 義高君    杉山元治郎君       山口シヅエ君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 草葉 隆圓君  出席政府委員         厚生事務官         (社会局長)  安田  巌君         厚生事務官         (児童局長)  太宰 博邦君         厚生事務官         (引揚援護庁次         長)      田辺 繁雄君         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部長)  楠本 正康君         厚 生 技 官         (医務局長)  曽田 長宗君  委員外出席者         厚生事務官         (大臣官房総務         課長)     小山進次郎君         厚生事務官         (医務局次長) 高田 浩運君         専  門  員 川井 章知君         専  門  員 引地亮太郎君     ————————————— 本日の会議に付した事件  らい予防法の一部を改正する法律案内閣提出  第一一三号)  身体障害者福祉法の一部を改正する法律案(内  閣提出第四六号)(参議院送付)  児童福祉法の一部を改正する法律案内閣提出  第四七号)(参議院送付)  医療法の一部を改正する法律案内閣提出第八  三号)(参議院送付)  未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法  律案内閣提出第六八号)(参議院送付)  内閣委員会修正意見申入れに関する件     —————————————
  2. 小島徹三

    小島委員長 これより会議を開きます。  まず未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。  本案前回委員会において、すでに質疑を終了しておりますので、ただちに討論に入るのでありますが、本案討論に関しましては、別に通告もありませんので、これを省略し、ただちに採決に入ることに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小島徹三

    小島委員長 御異議なしと認めます。よつて本案討論は省略し、ただちに採決いたします。本案原案通り可決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 小島徹三

    小島委員長 御異議なしと認めます。よつて本案原案通り可決いたされました。  なお、本案に関する委員会報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 小島徹三

    小島委員長 御異議なしと認め、そのように決します。     —————————————
  6. 小島徹三

    小島委員長 次に行政機関職員定員法の一部を改正する法律案に対する修正意見申入れの件について御諮りいたします。  前回委員会においても意見が出ました通り行政機関職員定員法の一部を改正する法律案中、厚生行政機関職員に関する項につきましては、当委員会といたしましても重大なる関心のある事項でありますので、委員諸君要望をまとめました申入れ文案がありますので朗読いたします。    行政機関職員定員法の一部を改正する法律案修正に関する申入れの件  目下貴委員会において審議中の行政機関職員定員法の一部を改正する法律案中、左記の通り修正せられんことを申し入れる。  一、昭和二十九年度一般会計予算修正議決された結果、国立療養所一千床が増加されることとなつたにかかわらず、これに必要な定員を顧慮せずして現行定員を減少すれば、職員を過労に陥れ、ひいては患者の診療並びにサービスに支障を来すおそれがある。よつて国立療養所一千床増床に伴う必要な定員を確保するため行政機関職員定員法の一部を改正する法律案第二条第一項中厚生省定員四万二千九百三十三人を四万三千三百三十三人に修正すること。  二、引揚援護庁業務は、旧軍人の恩給申達事務、未帰還者調査究明事務等臨時的業務であり、その事務の完了に伴い、これに従事している職員は四年間に逐次整理されることとなつているのであるが、これらの職員に対しても臨時待命機会を得せしめるため同法の附則に所要の修正を行うこと。  大体、以上の通り意見内閣委員会に対して申し入れることとし、文案整理等に関しましては、委員長に御一任願うことに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 小島徹三

    小島委員長 御異議なしと認め、そのように決します。     —————————————
  8. 小島徹三

    小島委員長 次にらい予防法の一部を改正する法律案身体障害者福祉法の一部を改正する法律案児童福祉法の一部を改正する法律案医療法の一部を改正する法律案、以上四法案を一括して議題とし質疑を続行いたします。滝井義高君。
  9. 滝井義高

    滝井委員 身体障害者福祉法の一部を改正する法律案の中の身体障害者福祉司についてでございますが、この福祉司の任務というのは相当専門的な、ある程度心理学あるいは医学等知識を必要とするわけでございますが、これはいただいた資料によつて調べてみますと県が四百八十二人で市が三百四十八人、計八百三十人を現在地方公共団体職員として持つておるようでございます。県については身体障害者福祉司を置かなければならないという義務規定になつておるが、市町村福祉事務所においては、これは置くことができるという任意的な規定になつておるわけですが、問題は今後更生医療普及徹底をして、その適正を期するためには当然末端の市町村任意に置くにしても、こういう福祉司を少くとも福祉事務所には一名くらい置いておくことが、この新しくできる一部改正法律使命達成の上から私は不可欠な条件ではないかと思うのです。ところがこれが任意設置になつて、置かないところは主として県の福祉司に依存しなければならないという形になるのですが、こういう点厚生省はどうお考えになつておるのか、まず第一に伺います。
  10. 安田巌

    安田政府委員 身体障害者福祉司お話のように現在八百二十名ばかりがおるわけでございまして、大体一つ福祉事務所に一人ということを目標にいたしておるわけでございます。市町村に置くことができるというのは、たとえば町村の場合は町村福祉事務所を持つているところが現在奈良県に一つだけあるのであります。あとは全部市と県の福祉事務所でございますので、大体市と県が福祉事務所身体障害者福祉司を置く、こういうようにお考えになつていただけばよいかと思うのであります。なるほどまだ未設置のところがございますけれども、なかなか現在地方庁におきましても人員整理等の問題がやかましうございまして、思うにまかせぬ点がございますことは御指摘通りでございまして、今後ひとつ十分その点に努力をいたしたいと考えております。  なお更生医療につきまして身体障害者福祉司の果す役割が大きいじやないかというお話でございまして、実はその通りでございますが、ただ更生医療となりますと専門的になりますので、実際に具体的な問題を取扱いますのは、やはり府県一つあります。相談所まで来てもらわないと最後の指導ができないわけです。そこはいろいろ手のそろつた施設でございますので、そこから判定をいたしましてお医者さんの方に送る、こういうことになろうかと思います。従つて更生医療だけについて考えますと、今のところではそれほど問題じやないと思うのであります。しかし一般的な身体障害者更生指導ということになりますると、やはり第一線の機関の最も活躍すべきものは身体障害者福祉司でありますので、厚生省としては今後十分考えまして、充実をはかるようにいたしたいと思います。
  11. 滝井義高

    滝井委員 今後十分その充実をはかりたいという御説明でございましたけれども、これらの身体障害者福祉司設置及び運営に要する費用の問題ですが、これは今まで国が幾分でもその費用支弁をやつてつたのですか。いただいたこの資料を見てみますと、「改正により国庫負担規定削除」と書いてあるのです。この文を読んでみると、昨年あたりでもやつてつたような感じがするが、昨年の補助金をやつた厚生省関係を全部調べてみてもどうも見当らない。ことしの改正についてみますと、支弁者、結局都道府県なり市の福祉事務所で全額これを支弁することになつておるようでありますが、昨年までやつてつたのかどうか。やつていないとすれば、こういう国家的な仕事を市の福祉事務所なりあるいは都道府県なりの費用とさしてしまうことについては非常に疑問があるのですが、その点伺いたい。
  12. 安田巌

    安田政府委員 身体障害者福祉司費用の問題でありますが、御指摘のように、今度の改正によりまして、これが国庫負担から交付税交付金の方に移つたわけであります。大体標準府県につきまして一府県当り身体障害者福祉司設置及び運営に要する費用につきまして三百三十二万四千五百七十二円行くことになつております。これは御承知のように、交付税交付金性質からしまして、具体的にはそれが行つたり行かなかつたりするのでございますが、財政需要としては大体そういうものが見込んであるのであります。  それでは昨年まで国庫負担が出ておつたかというお話なのでありますが、実はやはり平衡交付金行つてつたのであります。ほんとうから申しますと、御承知と思いますけれども予防接種等による国庫負担特例等に関する法律というのがございまして、これは国庫負担と書いてあるけれども、一時二十五年と二十六年は平衡交付金でやつてもいいという法律があつたのであります。これが期限が切れましたから、二十七年、二十八年は国庫負担でやらなければならなかつたのですが、実際は平衡交付金行つてつたというような実情でございますので、今度の法律改正によりまして、その点がはつきりいたしたわけであります。
  13. 滝井義高

    滝井委員 交付税交付金あるいは今までの平衡交付金ということでございますが、私県の民生関係の状態を調べてみますと、たとえば基本的な国民健康保険なら国民健康保険事務職員として国が平衡交付金で見る額は二十人だ、こういう通達を地元へやつているわけです。ところが地元民生部保険課行つて調べてみると、国から平衡交付金で二十人前を厚生省からお前のところにやつたよと通知があつても、実際行つてみると、十三人ぐらいしかやつてない。交付金で中央から通知したよりはるかに低い人員しか置いていない。こういう身体障害者福祉司なんかも、あなたの方から平衡交付金で各府県に少くとも五人分は割当てておるのだ、こう言われても、おそらく各府県は三人ぐらいしか置いていないというのが実情じやないかと思うのですが、その点はどう見られておりますか。
  14. 安田巌

    安田政府委員 身体障害者福祉司について特に詳しく調べたことはございませんけれども、御指摘のようなことは私は十分あり得ると思います。たとえば福祉事務所に置いてあります身体障害者福祉司というのがありますが、これの充足率というものが、大体市部は一〇〇%になつておりますけれども、郡部は八三%ぐらいで、あとはやはり足りないところがあるのでございます。これらは、私どもはいつも監査等に行きまして、悪いところを指摘しまして、これはひとえに福祉司の数が足りないからということで、やかましく通牒を出したり、知事さんにお願いいたしておるのであります。しかし地方財政事情によりましてそれがなかなか実現しないというようなことが実情でございます。それは国庫負担にした方がいいじやないか、国庫負担にすればそういうことがなくなるじやないかという点も、実は私もそういう考えを持つておりますけれども、しかし一方から見ますと、平衡交付金なり、あるいは地方交付税交付金というような制度を前提といたしますと、そういうような費用こそ実は交付金に入れるべき性質のものでございます。そういうふうに、制度の本質から議論をいたしますと、やはり私どもが負けて来るような費用になつて来るのであります。しかし私どもは内心はそういつたものはやはり国庫補助にしてもらつた方が非常に成績が上りねしないだろうかと実は考えておりますけれども、そういう制度が一方でとられている以上はやむを得ないじやないかと思つております。
  15. 滝井義高

    滝井委員 この福祉司は大体どういう学歴といいますか、素養といいますかを持つた人を任命されるのですか。この相談所の活躍、あるいは福祉事務所のこういう更生医療普及徹底というのは、主としてこの福祉司の技術的の指導というものが非常な役割を演ずるように、この法文の上からも読み取れるわけですが、どういう学歴の人ですか。
  16. 安田巌

    安田政府委員 身体障害者福祉法の第十条を見ますとそのことが詳しく規定してあるわけでございます。ちよつと読んでみますと、「第十条身体障害者福祉司は、事務吏員又は技術吏員として、左の各号の一に該当する者のうちから、任用しなければならない。一、社会福祉事業法に定める社会福祉主事たる資格を有する者であつて身体障害者更生援護その他その福祉に関する事業に二年以上従事した経験を有するもの。二、学校教育法昭和二十二年法律第二十六号)に基く大学又は旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)に基く大学において、厚生大臣の指定する社会福祉に関する科目を修めて卒業した者。三、医師。四、身体障害者更生援護事業に従事する職員を養成する学校その他の施設厚生大臣の指定するものを卒業した者。五、前各号に準ずる者であつて身体障害者福祉司として必要な学歴経験を有するもの」こういうふうにこまかく規定いたしまして、ある程度のスタンダードの学歴なり知識経験要求いたしておるわけであります。
  17. 滝井義高

    滝井委員 わかりました。
  18. 小島徹三

  19. 長谷川保

    長谷川(保)委員 らい予防法の一部改正について伺いたいのでありますが、前国会におきましてらい予防法改正されましたときに九箇条の附帯決議がなされまして、この附帯決議につきましては、すみやかにこれを実現するように将来本法を改正するということになつておりました。それに伴いままして今回の一部改正がなされたと存ずるのでありますが、第一及び第二の附帯決議がほぼ今回実現をされて来たわけであります。従つて後の条項について伺いたいのであります。まず「入所患者自由権を保護し、文化生活のための福祉施設を整備する」というようなことにつきましては、その後どういうふうになつて来ておりましようか、実情を伺いたいのであります。
  20. 曽田長宗

    曽田政府委員 入所患者に対しましては、この第三項の項目だけではございませんで、たとえば第六に出ておりますようないろいろな処遇についての改善ということについて項目があげられておるのでありますが、大体患者自由権を保護し、文化生活のための福祉施設を整備するという意味のものといたしましては、患者のうちさらにいろいろ義務教育あるいはその後の教育機会を得たいというふうに考えております者に、その便宜を与えるというような意味で、中学校及び高等学校を一箇所ずつ増設するという経費明年度計上いたしておるのであります。また保育所も二箇所増設する、その整備費が計上されております。それからまた軽症慰者に対しましてその後順調に進みますれば退院の見込みもあるのでありますから、かような者に一応の職業補導と申しますか、いろいろ社会復帰の際の準備をするというような意味におきまして、木工、印刷、縫工園芸等、かようなことを修得いたしますに必要な建物あるいはその維持設備費というようなたぐいのものが新規に計上してございます。それからこれは施設と言えるかどうかわかりませんけれども患者文化教育費といたしまして、前にはいろいろ映写会等に要します経費は従来からも組んでございましたが、そのほか文芸等講師を呼んでいろいろと集会を開くというようなための、講師の謝金というようなものを増額いたすというふうに予算を編成してございます。患者はその後昨年の問題がございました後も、いろいろとその要求というようなものを私どもに書面あるいは園の職員を通じて要望を伝えて来ておるわけでありますが、私どもの方も園の職員を集めまして、いろいろと患者要望にできるだけ沿えるようにいたして行きたい、また明年度においてはその方向に進んで行きたいということを申しまして、そうして今申し上げたように、多少ながらその具体化をはかつております。患者との間にもあまり大きなトラブルは生ぜずに来ております。もちろん秩序を維持いたしますことは園内においてはどうしても必要でございますけれども、できるだけ患者の自由というようなものを阻害しないように、職員に対しても指導して参つておる次第でございます。
  21. 長谷川保

    長谷川(保)委員 まかない費はどういうようになつておりましようか。あの当時一般病院より少し低いようでございまして問題になつておりましたが、その後どういうようになつておりましようか。
  22. 曽田長宗

    曽田政府委員 まかない費は前年度は、御承知のように一月から米価が上りましたために、補正予算におきまして単価が上つております。すなわち二十八年度においては当初九十一円でございましたものが、九十四円十銭になつております。明年度は当初からこの上りましたまかない費で年間を通じて組んでございます。従つて年度予算としては、前年よりはふえたことになつております。なおこのまかない費が他の病院に比べて低いというようなことはございません。ただ御承知のように結核患者に対しましては、特殊な栄養品を与えるというようなことで、結核療養所のまかない費が幾分高くなつておるということでありまして、癩療養所患者のまかない費が低いことはございません。
  23. 長谷川保

    長谷川(保)委員 当時も非常な問題になつておりましたが、癩の不幸な患者諸君に対しましては、これは御本人のためということはもちろんでありますが、しかし御本人のためよりも、むしろ公共福祉のために基本人権をある程度制限をいたしまして、そうして癩療養所に入つていただいて、そこから必ずしも自由に出入ができないというように、家族その他から隔離いたしているわけでありまして、その自由権の確保ということは非常にむずかしい問題であると同時に、政府といたしましても、一般社会人といたしましても、これは一般公共のためにすることでありますので、それだけに十分な配慮と親切とをもつてこれに対しての処遇をしてあげる必要があるのでありまして、そういう意味から申しましても、園内の自由、また出入についての自由ということにつきましては、最大限の努力をしてあげる必要があるわけであります。当時やはり問題になつておりまして、家族と会うために、その他の必要のために、療養所出入するということが当時患者側でも非常に尖鋭に要求されておりましたが、これらのことにつきましてトラブルはないでありましようか。
  24. 曽田長宗

    曽田政府委員 これは次の問題に参るかとも思うのでありますが、患者外出等についてあまりにきゆうくつな取締りをしておるのじやないかというような御心配かと思うのでありますが、今長谷川委員がおつしやいましたように、本人のことはもちろんでございますけれども本人療養ということだけでなしに、社会一般にこの病毒の伝播を防ぐというような意味で、かなり不自由な生活をしてもらつておりますが、不必要な制限を加えるということはできるだけ避けなければなりませんので、どうしてもやむを得ないという範囲においてこの自由な生活を多少制限されるということになります。この外出許可等につきましても、正式に申請を患者にしてもらいまして、それを十分検討して、許し得るさしつかえない限りはこれを許可するというような方法をとつております。これは前年の二月二十日までに申請されました外出の件数が九百七十七件ございましてそのうち許可されたものが八百九件というようなことで、かなり大部分のものは許可されて、ごくやむを得ない場合だけ却下するというような状況であります。今のところ私どもの方には大きいトラブルは報告されておらぬようであります。
  25. 長谷川保

    長谷川(保)委員 園内秩序維持のためにある程度の罰則が、前年度改正されまして、御承知のように静居とか謹慎とかいうものがらい予防法の中に入つたのでありますが、その点につきましては紛争はございませんでしようか。
  26. 曽田長宗

    曽田政府委員 いわゆる秩序を乱しまして、それでもつているくな処分を受けるというようなことは幸いにして今日までのところほとんどございません。但しこれは昨年のような事態もあつたことでありますし、こういうようなことで患者のいろいろな気持というようなものもくみ、また私ども療養所といたしましても、所内の秩序を新しくこれから立てて行くというような考え方でおりますので、全然秩序を乱つたような事実がないかと申されますならば、これはないとは言えないと思いますが、さような場合にあまりに形式的な処分をするというようなことは各所において差控えておる。また私どももこの処分はきわめて慎重にやるべきだということを申しておりますので、今日までほとんど処分がないというふうに考えておるのであります。でありますから、この処分規定というものを、今までないからといつてこの際廃止するということはいかがかと思われまして、私どもはまだこの規定は必要であろう、しかしながらこれは前にも御説明申し上げましたように、なるべく抜かないということにしなければいかぬのではないか、今後もそのつもりで運用して参りたいと考えております。
  27. 長谷川保

    長谷川(保)委員 罰則適用がほとんどないということはまことに喜ばしいことでございますし、私どもも非常に喜びにたえないのでありますが、同時にまたこの適用がされないために、一般に弱いと申しますか、比較的発言等をあまりなさらないような方々の方に何らかの生活に対する圧迫が、逆に園内で行われては困ると思うのであります。あまり発言力の強いものから、少いものに何らかのやはり具体的な人権に対しまする圧迫があつては困ると思うのでありますが、そういうような事実についての報告等は一切まだないでしようか。どうでしようか。
  28. 曽田長宗

    曽田政府委員 その点につきましても私ども非常に注意をいたしておるのでありますが、もちろん多数の、多いところは千何百人と共同生活をしておるところでございますから、その中にいわゆる特殊なグループができたり、派閥的な意見対立というようなものが多少起つておるというような事実はございますが、私どもとしてはできるだけさような対立を解消させて行く。そうしてみんなの意見が不公平に押えられることなしに、園の運営と申しますか、あるいは園内患者共同生活というようなものが、円滑に平和に行くように指導いたしているような次第であります。
  29. 長谷川保

    長谷川(保)委員 慰安金の額が少し上げられておるように予算で拝見したのでありますが、なお患者側には非常に不満であろうと思います。それらについて当局の方に患者側から何か苦情等が出ておりませんでしようか。
  30. 曽田長宗

    曽田政府委員 これは患者側から、私ども明年度予算措置をいたしましたものの倍額くらいな要求が出ておるのでございます。私どもできるだけこの慰安金増額をはかりたいというふうに考えましたが、そう今日の国家財政から考えまして一概に増額もできかねますので、どの程度のところでしばらく納得して行かなければならぬかというようなことで、大蔵当局とも相談いたしました結果、百円の増額ということになつたのでありまして、これに対してもちろん患者は全面的な満足は表明しておりませんけれども、とにかく一歩前進したということにおいては、大多数の患者は一応政府の誠意というものは認めてくれているようでございます。
  31. 長谷川保

    長谷川(保)委員 多分慰安金の額につきましては相当な不満があろうと思いますので、今後とも当局のこれに対する御尽力を要望する次第であります。  次に全快退所者に対します更生資金の支給というようなことは、今日まで幾らかでも行われておりましようか伺いたいと思います。
  32. 曽田長宗

    曽田政府委員 この問題につきまして私どもいろいろ慎重に考究いたしまして、若干の予算を組んでもらいたいというふうにいろいろ努力はいたしたのでありますが、患者の治癒という問題につきましてその治癒の判定の基準をいかに定めるかというようなことで、大体何人くらいの退所者、あるいは退所後ある職業につくとかいうようなことができる者がどの程度あるかというようなことについては相当困難でございます。あるいは退所してまた病気が悪化いたしまして、再入所するというような場合も現在までにも起つております。このような場合の処理をどうするかというようなことについていろいろと事務的にも取扱いに困難が伴うということから、今年度は一応控えて、さらに今後検討するということにいたした次第であります。
  33. 長谷川保

    長谷川(保)委員 なお一年にどれだけ退所者があるか、統計がございましたら伺いたいと思います。
  34. 曽田長宗

    曽田政府委員 最近一箇年の数字を見ますと、おおむね四十名程度でございます。これはいわゆる治癒でございまして、厳重に申しますと、そこが少しぼやけて参ります。
  35. 長谷川保

    長谷川(保)委員 職員の待遇改善等の問題が相当重要な問題になつており、また職員の数も足りないということを私ども各地の療養所等において伺いまして、その実情を拝見したのでありますが、その後職員充実及び待遇改善につきましてはどういうようなことになつておりますでしようか、実情を伺いたいと思います。
  36. 曽田長宗

    曽田政府委員 二十八年度に比較いたしまして二十九年度に増員の予定でございます職員数は、定員職員といたしまして医師が二十二名、看護婦が五十五名その他三十四名、それから常勤労務者といたしまして看護婦が百九十二名その他百十二名、その他というのは主として炊事等に当る者でございますが、こういうようにしまして合計四百十五名の増員ということになつております。この数もはたしてこれでもつて十家どうか、いろいろ検討してみてまだ余地は多少あるかと思うのでありますが、今まで私どもの方針として考えておりました看護及び炊事という仕事につきましては、少くとも重傷者の看護といつたことについては、これは院の職員が直接責任をとつて、万事やりくりがつくという最低限の職員数はおおむね満たされたものと考えるのであります。こういうようなことで定員数は相当に増加いたしたのであります。御参考までに今までの定員数を申し上げますれば、千三百九十九名ございました。それが今のように四百十五名ふえましたので、千八百名でございますか、大体そんな数字になるのでありまして、増加の率といたしましては相当なものになるわけであります。  なおこの人たちの待遇の問題でございますが、従来特に看護婦等の定員をもらいましても、その寄舎等の予算が十分につけていただけなくて非常に困つたのでありますが、今回は看護婦につきましては、この全員を収容できる宿舎の整備費も組んでいただいておりますので、この点も非常に私ども喜んでおるのであります。この給与の改善ということにつきましては、今日のところ実は最後的な結論には到達しておらぬのでありますが、従来からの調整号俸がございます、この調整号俸の範囲内でも、より有利な調整号俸をつけるようにいたしたい。それから調整号俸で縛られております限りにおいては、最高六号でありますか、この六号だけ上げるのがせいぜいでありまして、これ以上の優遇ができないのであります。それを今人事院といろいろ御相談しておりますのは、一つは初任給を上げるということでございます。従つて、勤務年限に応じてそれぞれその基本給をもう少し上げて行くということであります。これによりますと、幾分有利になつて来はせぬか。今日までの状況で見ますと、調整号俸だけによりまして、癩療養所職員が俸給の上でその基本給よりもどの程度に特別な優遇を受けているかと申しますと、おおむね二八%ぐらいの増しになつておるのでありますが、明年度は平均して少くとも二〇%増しにはぜひ持つて行きたいと考えておる次第でございます。
  37. 長谷川保

    長谷川(保)委員 癩療養所に勤務いたします職員諸君の犠牲はまことに大きいのでありまして、ただに勤務いたします職員諸君自身のみならず、その家族の犠牲は相当大きいのであります。これは私ども実情を見るたびに、まことに相済まぬと申しますか、深い感動を覚えるのでありますけれども、いずれにいたしましても、由来癩療養所と申しますのは、御承知のように都心から離れたところにあり、あるいは僻陬の地にございます。従いまして、子女の教育等の問題につきましても、職員諸君は非常な困難をしておられるのであつて、一般の者よりも一五%ぐらいよけい給与をとるというようなことでは、その補いにはならないと思うのであります。どうかこれらの点につきましても、今後とも当局の十分な配慮を願いたいと思うのであります。  最後に一つつておきたいことは、栗生楽泉園が先ごろ一部焼失したようでありますが、その後その復興はどういうようになつておりましようか。
  38. 曽田長宗

    曽田政府委員 御承知のように栗生で焼失いたしました建物は管理棟でございまして、ただちに患者の平生の生活あるいは診療に直接影響のあるところでは幸いにしてなかつたのであります。それにしましても間接にいろいろな支障を来しますので、明年度予算にはその新築費を予定して計上してございます。
  39. 降旗徳弥

    ○降旗委員 関連して。ただいまの質疑を承つておりますと、癩の患者外出についてはトラブルが少い、こういうお話でございました。ところが前国会ですか、らい予防法が上程されたときに、多摩の療養所から繰出した多数の患者のデモというものは、深く世人の批評を買つたわけであります。鋭い批評を受けたのであります。ああいうことをあのままにしておいてかまわないというならば、患者外出についてトラブルはなかつたと言えると思うのでありますが、これは別個の観点から批判すべきものだと思います。あれについての取締りはどういうぐあいになされたか、一応その経緯を聞きたいと思います。
  40. 曽田長宗

    曽田政府委員 この前の事件につきましては、私ども非常に遺憾に存じておるのであります。あの事件が済みましてから、各院の院長、庶務課長あるいは医務課長等にも集まつてもらいまして、いろいろとあのような騒ぎを起しましたときの事情、いろいろないきさつ、院内の事情、それから、あの問題が一応結着してその後の患者の動向——患者の方にも、あの騒ぎが行き過ぎであつた、自分たちの主張したいことを強く開陳したということは、多くの患者が大体自分たちの意思であつたというふうには考えているようでありますけれども、その表現の方法においては妥当でなかつたというような反省の機運も強く起つてつてつたのであります。そういう意味をいろいろと勘案いたしまして、もちろん新しい予防法に応じて、それに定められておりますいろいろなこまかい規定もつくる、あるいは患者指導——秩序をいかにして維持して行くかというようなことにつきましても、こちらからいろいろ指示をいたしまして、院長も各院におきましても、その趣旨に従つて患者指導をやつてくれました。そういうようなところで、この前の患者処分につきましては、私ども非常に遺憾ではございますけれども——済みましたことをただ不問に付するという意味ではございません。患者を呼んで十分きつく戒告もいたし、また今後いかようにやるべきかということもはつきりと示したのでございますが、主として私どもがねらいましたのは、やはり過ぎたことを言うよりも今後を戒めて行くということが大事であるというふうに考えましたので、いろいろと所長には指示はいたしましたけれども、具体的にいかようなる処置を講ずるかという個々の患者処分というようなことはこちらから命令はいたしませんでした。またその後の様子を見ておりますが、そのために院内の秩序が著しく乱れておるということは認めておりません。私どもとしては、所長に対して患者処分を具体的に指示いたさなかつたような次第であります。しかしその結果は、おおむね私どもの趣旨というか院長の指示に従つて患者が動いていてくれるように思います。私どもは、注意は怠りませんけれども、今の様子で見ておつてよろしいものと存じております。
  41. 降旗徳弥

    ○降旗委員 私の言いたいことは、とにかくああいう患者が——人目にさほどつかないような軽症患者ならともかくもですけれども、相当程度の患者が集団的に都心に進出して来る、しかも議会の周辺でデモをやるばかりでなくて、厚生省の正面玄関で数日にわたつてすわり込みをしておる、これはたいへんなことなんです。これは他のいろいろの問題に波及するところが大きいと私は思う。ですから、そういう問題はひとり一個の療養所の所長の責任に間わるべき問題でなくて、もう少し広汎な意味においてこれをいかに取締るかということが考えられなければならぬことだと私は思うのです。でありまするから、療養所の所長にその責任をすべて帰一せしめて、他の者は知らぬ顔をしている。このデモについては警察権の発動もあるだろうし、あるいはいろいろの取締りの方法もあるでしよう。しかしそれを単に一療養所の所長にのみ責任を帰しておる場合は、再びかくのごとき世人の批評を受けるような好ましからざる事態が生じないとは限らぬと私は思うのです。ですからその方面についての取締りの方法があるかどうか、あるいはないとしたら、かくのごときことを再びせしめないようにするにはどういう方法をとるお考えであるか、こういうことを私は承つておきたいのであります。
  42. 曽田長宗

    曽田政府委員 前半の患者が医院から外出いたしました場合、これに対してその際患者を取締る法的な根拠といたしましては、いわゆる旧法によるよりほかしかたがなかつたわけであります。従つて患者が外に出て参りまして、これが公衆衛生上あるいは癩の伝染予防上非常に危険が強いというふうに認めました場合には、都道府県の知事がこの患者を強制的に療養所に入れることができるようになつてつたのであります。それで御承知のように東京都の方ともいろいろ連絡をいたしまして、そういう事態に立ち至れば必要な手段をとらなければならぬというふうになつておりましたが、療養所といたしましては、ただ単に秩序の維持をいたして参るということはございましたが、外に出て参りますのを押えるという力も持つておりませんでしたから、そういうこともできないので、それに対して別な処分ができぬというような事情にあつたのであります。ところが今度新法が出て参りましたので、これにははつきりと外出してはならないというようなことになり、それを犯しましたときには処罰の規定があるわけでありますから、今後はその処罰が法的な根拠を持つてつたわけであります。
  43. 降旗徳弥

    ○降旗委員 ちよつと具体的に新法を説明してくれませんか。
  44. 曽田長宗

    曽田政府委員 これは私から御説明するのがいいか、公衆衛生局から説明するのがいいかわからぬのでございますが、十五条に「入所患者は、左の各号に掲げる場合を除いては、国立療養所から外出してはならない。」ということになつておりまして、一つ、「親族の危篤、死亡、り災その他特別の事情がある場合であつて所長が、らい予防上重大な支障を来たすおそれがないと認めて許可したとき。」それから二番目の「法令により国立療養所外に出頭を要する場合であつて、所長が、らい予防上重大な支障を来たすおそれがないと認めたとき。」というようなぐあいに定められております。これには罰則がついております。
  45. 降旗徳弥

    ○降旗委員 私はどうもその辺が非常に弱いと思うのです。やはり委員諸君が言われるように、癩患者というものは非常に気の毒な境遇にあるものなのだから、国家がこれに対して救済の道を講ずることについてはやぶさかであつてはならぬと思う。これは当然であると思う。しかしながら一方において先般示されたような無遠慮な、しかも横車的な癩患者の集団のデモンストレーシヨンをそのままにしておくということは、これは癩患者自体の立場から言つてもとらないところだと私は思うのです。ただいま局長の言われた罰則というものは、何も厳格な罰則でないわけです。当然な罰則なのです。従つてこの前の事情をつぶさに考えてみますると、厚生省側あるいは取締りの都知事の場合におきましても警察の場合におきましても、非常に弱いところがある。それでああいうぶざまなデモンストレーシヨンをやらせるということは、療養という意味だけでなしに、国の政治に及ぼすところの影響が非常に大きいと思う。それからもう一つは、ああいうぶざまなことが行われたのは、病気の伝染にさしつかえるということにならなければ罰則を受けないことになるのですが、しかし私どものしろうと常識から言つても、ああいう程度の患者が集団的に都心に、しかも人の出入りするそのちまたにああいう示威運動をするということが、決して病気の伝染にならぬとは言えないと思う。ですから癩の予防あるいはその治療に関することについて、国家が積極的にいろいろの施策を講ずるということについては、私は同意せざるを得ないのですけれども、ああいうような問題について断固たるところの処置をとり得ないような状態で今後過して行く、しかも先ほどの局長の御答弁によりますると、患者外出する場合には何らのトラブルがない、そんなような考えでは、公衆衛生の立場あるいはそれはひいて社会の秩序に及ぼす問題ですが、これをほんとうに維持して行くということはおぼつかないと断言せざるを得ない。でありますから、私はこの際いろいろこまかい質問を申し上げることは差控えますけれども、ああいうぶざまなことが再び繰返されないようにするためには、どうしたらいいかということをひとつお考え願いたい。この問題は療養所の所長の責任に帰すべき単純な問題じやない。これは天下の政治に関連するところの大きな問題なのです。でありますから厚生省一つの手で及び得ないとするならば、これは他の省とも協議して他の立場からこれを批判、検討いたしまして、かくのごとき不祥事の起らないようにするということに万全の処置をとられたい。これだけをお願いしておきます。
  46. 小島徹三

  47. 杉山元治郎

    ○杉山委員 同僚長谷川委員から大体癩に関して質問していただきましたので、できるだけ重複を避けて二、三の点をお尋ねしてみたいと思います。患者要望一つとして癩という名前をかえてほしい、ハンゼン氏病としてほしい。これは癩という名前をどうしてもつけておかなければならないのか。患者がそういうことを要求いたしますならば、これは何も大した問題はないのだから、そういう伝統的ないやがる名前をよしてそうして新しい名称にかえてやるという親切さが厚生省にはないものかどうか、まずその点をお聞きします。
  48. 楠本正康

    ○楠本政府委員 癩という言葉は現在すでに社会一般に使用されておりまして、一つの通用語となつております。ほかに適当な言葉があるかと申しますと、学界あるいは諸外国の間で一致した言葉というようなものはまだ見出されておりません。従いましてもちろん病名の変更につきましては今後十分に検討はいたしますが、しかし何と申しましても癩予防に関しまする国民の思想の向上あるいは認識というようなものをさらに高める方が先決ではなかろうか、かように考えておる次第でございます。しかしながらこれらの点は十分に今後検討いたしたいと存じます。
  49. 杉山元治郎

    ○杉山委員 国際的にも、あるいは学術的にもきまつた名はない。その国々において今言うような名称をつけておるというのでありますが、しかしそういうように伝統的な名前を持つているから患者が非常にこれをきらつておる。できるならば彼らが要求しておりまするように、ハンゼン氏病、こういう名前にしてほしいと思うのですが、そうすることにどういうさしつかえがあるのでしようか。
  50. 楠本正康

    ○楠本政府委員 ただいま御指摘のようなことも一つの言葉ではありますが、これらのものはまだ日本ばかりでなく、諸外国の学者の間でも一致した一つの言葉ではございません。特にこれは名前の問題よりも、施設なりあるいは国民の理解の問題の方が先に立つのではなかろうか。実体を無視して名前だけかえたところで、やはりこの問題は解決しないのじやなかろうか、かように考えております。従つてむしろ国民一般がよく癩の問題を認識し、これに理解を持つという態度こそ望ましいのじやなかろうか、かように考えております。しかし御指摘の点につきましてはなお今後も検討をしてみたいと存じております。
  51. 杉山元治郎

    ○杉山委員 もしも別に大してさしつかえのない問題であると思うならば、患者一同が熱望しているので、この熱望にこたえてやることが必要であります。国民全体の癩に関する認識を高めることはおおせの通り必要でございまして、この人たちに対して十分の同情と理解を持ち、そしてほんとうに一日も早く日本から癩がなくなるという事態をつくつて参りたいと思うものであります。そういう意味合いで、大しておさしつかえのない問題ならば要求を入れてやつたらどうか、そういうことでお伺いをしたわけであります。  次にお伺いしたい点は、長谷川委員お話になりましたが、癩療養所の所員の待遇の問題でありますが、特に人手が足りない。だからもう少し職員を増加してほしい、こういう要望が強いようであります。今お伺いいたしますると、四百十五名がふえたということでありました。そこであの人たちの要求は他の結核療養所、あるいは国立病院等に比較すると、癩療養所人員は少いと思います。彼らの訴えておりますところによりますと、国立病院では患者一・四人に対して職員一名、結核療養所では患者二・八名に対して職員一名、こういうことになつているが、癩療養所患者九人に対して職員一名、こういう割合になつていると申して来ておるのでありますが、これは事実でしようか。あるいはこれに多少の誤差がございましようか、その点をお伺いしたいのであります。
  52. 曽田長宗

    曽田政府委員 私もここに患者職員との比率の数字を持つて参りませんので、今おつしやつた数字が正しいかどうかは申し上げかねますが、一般の病院及び癩の療養所あるいは結核、精神療養所というところでその比率がかわつておることは明らかでございます。しかしながらそこに収容されております患者性質によりまして、むしろ特別に医療の手が必要とされておらないというようなところでは、医師とか看護婦というものが当然人数が少くなつて参るわけであります。またそのほか患者の中に日常の生活に困らぬ人たちが割合にたくさんおる、いわゆるコロニー式の施設でございますれば、患者が自分の身のまわりの世話ができることになりますので、職員の定数が幾分つてもよろしいということで、すべての医療施設が同じ比率でなければならぬとは私ども考えておりません。しかしながら癩の療養所はそうは申しながらも手不足ではないかというようなことで、私どももいろいろ検討いたしました。そして今回はこの程度の増員をはかつた次第でございます。さらに今後もこれでもつて間に合うかどうかということ、患者も今申し上げたように、中には普通の仕事、軽度の作業ならばやれる人もおります。またうさ晴らしの意味からいつても、あるいは療養の目的から申しましても、ある程度の軽作業をやるということはさしつかえのないことであり、また患者が希望しておる次第もございますので、その辺をにらみ合せて、適当な数を勘案して、必要に応じて増員をはかつて参りたい。かように考えております。
  53. 杉山元治郎

    ○杉山委員 今正確な数をお持合せないというのでありますから、やむを得ませんが、しかし概括的にでもいわゆる国立病院あるいは結核療養所と比較して、職員の数は多いか少いか、こういう点についてはどうでしようか。
  54. 曽田長宗

    曽田政府委員 一般病院に比べて結核療養所は少うございます。癩療養所結核療養所よりもさらに職員数は少くなつております。これは先ほど申し上げた理由で少くなつていると私ども考えておるわけであります。
  55. 杉山元治郎

    ○杉山委員 私は癩療養所のようなところこそ非常に人手もいり、職員もどうしてもよけいいるのではないか、こういう考えを持つておりますので、当局も十分御調査になつてよくおわかりになつておると思いますが、今お話のようにぜひ今後十分注意していただきまして、彼らの要望にこたえることは十分できなくても、それに近い職員を置いていただくように、希望しておきます。  次にお伺いいたしたい点は、癩の新薬ができて、これがありさえすれば非常にいいという話を前年あたり伺いました。プロミンの結果はその後どういうようになつておりますか。病人の状態などについておわかりならばお知らせ願いたい。
  56. 曽田長宗

    曽田政府委員 プロミンの効果につきましては、私どもが今まで持つておりました治癩薬としては、最もすぐれたものであるというふうに考えておるのでありまして、今日皆さんが療養所をお訪ねくださいましても、十年前、二十年前の療養所の様相とは非常にかわつておりまして、少くとも患者の外貌に現われておる症状等は、きわめて軽微なものになつております。しかしながらこの癩が、はたして根治したというふうに認められるかということになりますと、これは根治の定義にもよるのでありますが、完全になおり切つたというところまではなかなか参りません。しかしながらその割合はわずかとはいいながらも、以前に比べますれば、幾分ふえて来ておるということは考えられる。先ほど申しましたように、大体収容患者一万人のうち年に四十人程度は、まずまずなおつた考えてよかろうというようなことで、外へ出されております。これとても完全な治癒というふうに判定できるかどうかは、学問的には疑問が残つておる次第でございます。
  57. 杉山元治郎

    ○杉山委員 その退所いたしました四十人の人たちの病歴は、今お話のプロミンなどが作用しておるのか、あるいはそういうことでなしに他の療法でなおつておるのか、その点をお伺いしたい。
  58. 曽田長宗

    曽田政府委員 現在はほとんどすべての人所患者に、新しい治癩薬の治療を行つております。最近の四十人の退所者は、皆プロミン療法を受けたものと考えられるのであります。しかしそれでは従来プロミンがなかつたときには全然なおつた者がなかつたかと申しますと、従来でもきわめて軽症で入所しました者等は、昔からの療法でもきわめてわずかですが、やはり実際的な治癒と認められて退所した者があつたことはあつたのであります。これは程度の差であり、確かにふえておることはふえておるというふうに考えられます。
  59. 杉山元治郎

    ○杉山委員 次にお伺いしたい点は、国内の癩患者を見つけ次第、できるだけこれを診療検査し、そして療養所に入つていただく、こういうことから今日の新しい法律ができて来たと思いますが、御承知のように、隣国から相当密入国者がある。その中に癩患者がいないか。密入国者と癩の問題をどういうふうに、ごらんになつておるか。それについての御所見を伺いたい。
  60. 楠本正康

    ○楠本政府委員 この問題につきましては、出入国管理をやつております方面とも十分連絡をいたしまして、現在でもかようなものの措置は講じておる次第でございます。今後一層関係官庁と連絡を密にいたしまして、適宜の措置を講じて参りたい所存でございます。
  61. 杉山元治郎

    ○杉山委員 適宜の処置を講じなけれればならないが、そういう人たちのうちに癩患者がなかつたかどうか、またあればその数はどれくらいであつたかということをお伺いしたい。
  62. 曽田長宗

    曽田政府委員 若干名今日までにおきましても発見されております。それでさように発見されました者に対しては、入国管理局におきまして、癩療養所の構内に、私ども御相談を受けましたので、私どもの方も御援助申し上げて、この収容所を設置されております。もちろんこの収容所の管理は入国管理局でございまして、私ども厚生省ではありませんが、さような措置が講ぜられて、しかるべき時期にこの人たちは送還されるというふうに私どもは期待しております。
  63. 杉山元治郎

    ○杉山委員 若干名ですね。数があまりわかりませんが、そういうことを申すにはあまりに資料が不備ですから、若干名にいたしておるんでしようが……。
  64. 曽田長宗

    曽田政府委員 数字もわかつております。今の施設に収容されましたのは三名でございます。そのうち二名が送還されまして、ただいま一名残つております。
  65. 杉山元治郎

    ○杉山委員 もう一つお伺いしておきたいのは、国立癩研究所を今度設けることになりましたが、私どもの手元に癩の研究所を置いてほしいという要望があちこちの癩療養所の方から来ております。おそらく当局の方にもあることと思いますが、大体現在はこれをどこに置く予定になつておりますか。また政府の方でこれを置くということがきまつた以上は、大体置く場所などもおわかりになつておるだろうと思いますが、これを置くのには、十分公平に、いろいろな情実なしに、ほんとうに日本の癩の将来を考えて、癩の研究所として最も適当な場所に置いていただきたいと思うのです。そういう点についてどういうようにお考えになつておりますか。その点をお答えいただきたいと思います。
  66. 曽田長宗

    曽田政府委員 仰せのように方々から招致運動が起つておるのであります。しかしこれも今の御意見のように、公平にきめて参らなければなりませんので、私ども慎重に相当各地の状況を検討いたしておる次第であります。いろいろ今日までこの問題を研究して参りました学者等の、分布あるいはどういうような題目で研究しておられるかということ、あるいは各地の既存の研究施設機関の配置の状況というようなものについて、慎重に検討しておる現状でございまして、十分公平に考慮を払つて決定いたしたい。ただいまはまだ決定いたしておりません。
  67. 杉山元治郎

    ○杉山委員 しかしもう設定するということになり、おそらく予算もとれたんだと思いますから、これは早急にきめて行かなければならぬ問題だと思いますので、多くを申しませんが、先ほど申しましたように、ほんとうに公平に、適当な場所に設置されるようにということを要望いたしまして、私の癩に関する質問はこれで終ります。
  68. 小島徹三

    小島委員長 その他児童福祉と身体障害医療法についての御質疑はありませんか。
  69. 滝井義高

    滝井委員 身体障害者福祉法の一部改正の十九条の五、六と児童福祉法の二十一条の五、六に関連して、どちらも同じ内容のものでありますから、この二十一条五の方で、都道府県知事は、指定医療機関の診療内容及び診療報酬の請求を随時審査することができることになる。しかもその診療報酬の額を決定することができることになつておりますが、今度は二十一条の六におきましては、指定医療機関の診療報酬の請求が適正であるかどうかを調査する必要があると認めるときは診療録その他の帳簿書類を検査させることができる。こうなつております。この二十一条五の随時審査する必要があると認めるときの診療簿その他の検査と、この関係はどういうことになるのでありますか。どうも府県知事の権限を考えると、同じようなことだと思いますが、同じことをただ文章をかえて書いたにすぎないという感じが濃厚にするのですが、この関係をひとつ……。
  70. 安田巌

    安田政府委員 二十一条というのは何か間違いじやありませんか。
  71. 滝井義高

    滝井委員 身体障害者十九条の五、六、それから児童福祉法は二十一条の五、六となり、どちらも同じ内容です。
  72. 安田巌

    安田政府委員 十九条の五の方は、これは都道府県知事が一般的に診療報酬の請求を随時審査し、その額を許可することができるということになつております。たとえて申しますと、基金の方に委託いたしまして基金の方で審査部会というものがございましてそこで審査するということがそれに当るものでございます。十九条の六になりますと、これは具体的にどこの診療機関についてこういうことを調べたいというような問題が起りましたときに、その帳簿検査をいたしましたり、あるいは報告を求めることができるという規定でございます。前の方は一般的に、いわゆるよく健康保険や生活保護法で医療の補助といわれております審査でございまして、私どもの現在の考えでは、社会保険診療報酬支払基金の審査会がございますが、そちらでやつていただくつもりでございます。
  73. 滝井義高

    滝井委員 ちよつと局長さんは認識不足でございますが、現在の審査というのはこれは児童福祉法資料の説明にも書いてある通り、診療内容を審査するのでありますから、従つて診療内容を審査をして、そのあとにあるように、報酬額の決定をして行くわけであります。従つてそれは個々に、具体的に、個別に決定をされて行くわけであります。診療の内容を審査する場合にはどういうことが審査されるかというと、給付された育成医療なり、更生家療なりの具体的の実施内容を審査するわけであります。従つてその診療報酬の決定にあたつて、これはあやしい。どうも少し診療が過剰である。あるいはこちらの指定をした治療よりもより多くのものをやつているというような疑いがあれば、当然これは当該官吏をして具体的に診療所に行つて診療録を調べなければ審査にはならぬわけでず。ただ紙の上の審査だけでは非常に妥当性を欠くわけであります。現在厚生省で普通審査を受けるあるいは監査を受けるというようなときは、もう診療の報酬の内容まで決定して行くのですから、当然診療所に行つて、あるいは病院行つて、診療録なりあるいは患者に具体的に施されておるギブスなりの状態を見なければ、こういう請求書に対する診療報酬の具体的な決定というものはできぬのじやないかと思います。そうしますと随時審査ということとあとの必要に応じて審査をするということとは本質的には何ら違つたことがないような気持がするのです。
  74. 安田巌

    安田政府委員 先ほど申し上げましたように、十九条の六のほうは、具体的に何か問題がありますときに報告の請求をいたしましたり、当該医療機関について職員が現地検査をするということであります。十九条の五は、一般的なことをきめておるのでございましてたとえばその次の二項、三項をごらんになつてもわかりますけれども、普通の場合には診療報酬支払基金法に定める審査委員会意見を聞かなければならない。その意見を聞いてやるわけでありますから、お説のようにこれは書類で調べて見まして、間違いがあるかどうかということを調べることを規定したのだと私は思つております。
  75. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと十九条の五の二、「指定医療機関は、都道府県知事が行う前項の決定に従わなければならない。」こうなるのです。だからその適正妥当なことを実際自分がやつてつても、あなたの方で請求書を出して書類だけでぴたつと切られて、これは従わなければならないのだから異議の申請も何もできない。こういうことではこれは非常にたいへんなんです。具体的に帳面を見てもらつて、あるいは現実に患者を見てもらつて「従わなければならない」ならいいけれども、局長さんが言われるように、紙の上でこれはおれの決定通りに診療機関は従わなければならぬとびたつと打切られたのでは、私はたいへんだと思います。
  76. 安田巌

    安田政府委員 更生医療の具体的な問題についての具体的な答えにならぬかもしれませんけれども、たとえば現在結核とかいろいろ病気がございました場合に、診療方針というのがきまつておるわけでございます。こういう場合には注射を遠慮するとかあるいはこういう場合にはストマイ、パスを使つてもいいというふうなわけでございます。そういうようなものをつくつてありまして、基金の審査部会によりまして、民間の医師会の方もお入りになり、専門家がごらんになつて、これは当然なことであるとか、あるいはそういうようなことをおきめになつておるわけでございますが、現在の社会保険なりあるいは生活保護法の医療扶助のやり方と同じことをここにあげたわけでございます。
  77. 滝井義高

    滝井委員 医療機関の診療報酬というものは、健康保険の診療方針及び診療報酬の例によるということになつております。それならば健康保険は正当なものでも、一方的に官庁が決定したものについては当然異議の申請ができると思うのですが、ちよつと今ここに健康保険法と診療報酬の指針等の書類を持つて来ておりませんので、ちよつと条文を指摘することができませんが、一方的に切ることはないと思うのです。これはおそらく身体障害者並びに児童福祉法という特殊な法律であるのでこういう規定があるのだと思いますが、健康保険の方でそういうものがありますか。
  78. 安田巌

    安田政府委員 これと同じでございます。ちやんと基金の審査部会がございまして、これに民間の医師会の関係の方も入つていただきまして、審査して行くという方針をとつております。特にこれだけがそういつた権限を制限しておるのではないのでございます。
  79. 滝井義高

    滝井委員 どうも私今法文を持つていないので、ちよつと抗弁いたしかねますが、一方的にこういう複雑な治療をやつたものを切られてしまうということになると、私は非常に適正を欠くと思うのです。「決定に従わなければならない」ということの一方的な制限で、これは安い治療ならいいのです。身体障害にしても、児童の身体不自由の人にしても相当長期の、しかも高級技術を必要とする治療なんです。そういうものを一方的に、現実の患者も見ず、診療録も検査せずに決定されてしまうということは、非常に不当なことだと思う。この立法が特殊な立法で例外的なものであるというならばやむを得ないのだが、今までの審査なりあるいは監督の状態を見ても、その審査会に向つて今の慣行の上からいつて当然いろいろ申開きその他をしておると思うのです。それによつてやはりあとに過誤を認めたと言は、どんどんそれを修正してくれておると思うのです。この医療だけがどうもはつきりとだめだと打切りをしておるような感じがしてならないのですが、もう少し条文を調べてもらいたいと思います。
  80. 安田巌

    安田政府委員 なお詳しく調べますが、私の記憶はそういうようなものはないと思つております。そこで健康保険の方も具体的に今御指摘のような問題が起る場合があるかということなんですが、先ほど申しましたように診療方針その他についても大体きまつておりまして明らかにこれは過誤である、あるいは間違つておるというものは、審査部会では書類の上で落すようでありまして、従つてこの査定の率等も一劣とか二%に達しない程度のものであるように私は記憶いたしております。しかしお話のようにこれは相当額が大きくございまして、そういつたような関係が十分にわからないというときには、さつき御指摘のような診療録なりあるいは実際に行つて立入り検査するなり報告を求めるなり、そういうようなことをやるのではないかと考えております。これは特に特別の医療であるから特別のことをやつておるのだということではないのでありまして、その点はまたよく調べてからお答えいたしますが、多分私は間違いないと思つております。
  81. 滝井義高

    滝井委員 そうすると診療報酬は随時審査をする、こういうことになると思うのですが、随時審査をするということは、必要があるときにはいつでも審査ずるということであつて、毎月々々出たものを審査するということにはならないと思う。健康保険の方は、出したものは毎月々々一切のものを審査しておるわけです。そうしますとこれは健康保険法の方法によると言いながらも、診療の内容及び診療報酬の請求は随時審査するということになつておる。そうするとこういう厚生医療や育成医療についてだけやつたりやらなかつたりするということなんですか。
  82. 安田巌

    安田政府委員 これはいつでもできるということなんでございまして、十九条の五の三項にもございますように、診療報酬の額を決定する場合は審査委員会意見を聞かなければならないということになつておりますので、基金で設けました審査部会できめたものを府県知事が尊重するわけでございます。そういう意味で一方的に知事がきめてしまうということ、これは法律の上からそういうことになるかもしれませんが、実際はそういうふうなこととはよほど遠いのではないかと考えておるわけです。繰返して申しますが、別に健康保険なり生活保護の医療扶助と特にかわつた規定をこの中につくつたというわけではございませんから、その点で根本的の問題にいろいろ御意見があるかとも思つておりますが、他意はないわけであります。
  83. 滝井義高

    滝井委員 どうも十九条の五にしても、二十一条の五にしても、私は文章が少しおかしいと思うのですが、随時審査するということは、定期に必ず審査するということではないのです。これは私は文章の上からそうなると思う。ところがそのあとには、都道府県知事は、社会保険診療報酬支払基金法に定める審査委員会意見を聞かなければならないということになれば、これは必ずということになる。ところが前には審査は随時だとなつている。これは明らかに矛盾をしておる書き方ではないかという感じがするのですがね。この法文からいえば、随時だから今月はしなくてもいいのだということになつてしまうわけです。
  84. 安田巌

    安田政府委員 十九条の五の「随時審査し」というのは、審査することができるということなんであります。それで十九条の六の方はこれは明らかに具体的な医療機関まで働きかけて行き、あるいは具体的な医療機関にそういう報告を求めて審査をするということでありますから、別に矛盾はしておらないかと思いますが、なおよく調べます。
  85. 小島徹三

    小島委員長 お諮りいたします。ただいま議題となつておりますらい予防法の一部を改正する法律案身体障害者福祉法の一部を改正する法律案児童福祉法の一部を改正する法律案及び医療法の一部を改正する法律案、以上四法律案につきましては、質疑もほぼ終了していると存じますが、以上各案の質疑は終了したものと認めるに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  86. 小島徹三

    小島委員長 御異議もないようでありますから、右四案はいずれも質疑を終了したものと認めます。  次にらい予防法の一部を改正する法律案討論に入ります。長谷川保君。
  87. 長谷川保

    長谷川(保)委員 らい予防法は昨年改正されましてから、当時要望されましたところを順次取入れて行くということに対しましては、私どもまことに同慶に存ずるのでありますが、ただこの最も不幸な同胞たちに対しまして、その公衆衛生予防上からとはいえ、なお基本人権が多分に制限せられているということにつきましては、われわれはあらゆる配慮を払いまして、この同胞たちの不幸を少しでも償い、補うために努力しなければならないと思うのであります。先ほど質問いたしました点につきましても、私どもはなお十分に改善すべきところが多分にあるということを認めざるを得ないのであります。いろいろ国の方の状況募りまして、今日の事情になつておることでありましようけれども、これにつきましては、なお当局がこれによつてとどまることなく、進んでこの不幸な同胞たちの人権を守るという立場からいたしまして、さらに特段の努力をせられることを深く要望するものであります。  なお同僚議員から、昨年の予防法改正についてのいろいろな問題が取上げられましたけれども、あのような問題にいたしましても、この同胞たちに対するもつともつと深い同情と、また基本人権を守ろうとする民主主義的な深い私ども努力がありますならば、また法律がさようにできており、実情がさようにありますならば、あのようなことはなかつたろうと思うのであります。むしろ癩の不幸な同胞たちの責任であるというよりも、われわれ社会人の責任であり、われわれ国会に籍を置きます者の責任であり、また行政当局の大きな責任であると思うのであります。今後あのような不幸なことがないようにするためには、当時国会において決議されました附帯決議をすみやかに十分に実現するということよりほかに道はありません。むしろ反省すべきは国会と行政当局の側にあるのでありまして、癩患者の側にその責任を課することは見当違いであると私は思うのであります。かかる意味合いにおきまして、今回の一部改正につきましては、それの一歩前進するものといたしまして、一応これに賛成し、残る附帯決議につきましては、すみやかなる十分な誠実を持つた改正努力せられるよう切望いたしまして賛成の意を表する次第でございます。
  88. 小島徹三

  89. 杉山元治郎

    ○杉山委員 私は日本社会党を代表いたしまして、らい予防法の一部を改正する法律案に賛成の意を表しますが、この際一言申し述べておきたいことは、長谷川委員も申されましたように、先国会でこの法律を制定いたしますときに、私どもは九つの附帯条件をつけまして、今回の改正にその一部を取入れられたことは一歩前進したものである、こういうことで非常に喜ばしいことであります。しかしまた残された部分も非常に大きいのであります。実際罪なくして配所の月をながめるというようなこの同胞、癩患者の人たちに対しまして、私どもは、単なるあわれみということでなく、一面この人たちの人権を尊重しつつ、この人たちが安んじて療養のできるように、どうか残された附帯決議の部分を一日も早く実現していただくようにお願いいたしますとともに、この療養所に大きな犠牲を払つて従事しておりますところの職員に対して、十分な施設をし、また手当をしてくださることもあわせてお願いいたしまして、賛成の意を表するものであります。
  90. 小島徹三

    小島委員長 以上で討論は終局いたしました。  採決いたします。本案原案通り可決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  91. 小島徹三

    小島委員長 御異議なしと認めます。よつて本案原案通り可決いたされました。  次に、身体障害者福祉法の一部を改正する法律案児童福祉法の一部を改正する法律案及び医療法の一部を改正する法律案、以上三法案を一括して討論に付すのでありますが、三法案につきましては討論の通告もありませんので、いずれもこれを省略し、ただちに採決いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  92. 小島徹三

    小島委員長 御異議なしと認めます。よつて、三法案の討論は、いずれもこれを省略し、一括して採決いたします。  以上三法案を原案通り可決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  93. 小島徹三

    小島委員長 御異議なしと認めます。よつて三法案はいずれも原案通り可決いたされました。  なお、ただいま議決いたしました四法案に関する委員会報告書の作成に関しましては、いずれも委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  94. 小島徹三

    小島委員長 御異議なしと認め、そのように決します。  本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもつて御通知いたします。    午後零時四十九分散会      ————◇—————