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1954-03-18 第19回国会 衆議院 厚生委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月十八日(木曜日)     午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 小島 徹三君    理事 青柳 一郎君 理事 中川源一郎君    理事 古屋 菊男君 理事 長谷川 保君    理事 岡  良一君       助川 良平君    高橋  等君       安井 大吉君    山下 春江君       滝井 義高君    萩元たけ子君       柳田 秀一君    杉山元治郎君       山口シヅエ君  出席政府委員         厚生事務官   高田 正巳君         (薬務局長)         厚生事務官   安田  巌君         (社会局長)         厚 生 技 官         (公衆衛生環境         衛生部長)   楠本 正康君  委員外出席者         厚 生 技 官         (薬務局麻薬課         長)      市川可知男君         専  門  員 川井 章知君         専  門  員 引地亮太郎君     ――――――――――――― 三月十七日  戦傷病者戦没者遺族等援護法適用範囲拡大に  関する陳情書(第  二〇一三号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  身体障害者福祉法の一部を改正する法律案(内  閣提出第四六号)(予)  児童福祉法の一部を改正する法律案内閣提出  第四七号)(予)  消費生活協同組合法の一部を改正する法律案(  内閣提出第五五号)  未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法  律案内閣提出第六八号)(予)  医薬関係審議会設置法案内閣提出第八二号)  医療法の一部を改正する法律案内閣提出第八  三号)(予)  あへん法案内閣提出第八九号)  母子福祉資金貸付等に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第九七号)  大蔵委員会意見申入の件     ―――――――――――――
  2. 小島徹三

    小島委員長 これより会議を開きます。  まず委員諸君に御相談申し上げたいことがございます。租税特別措置法消費生活協同組合に対する課税に関する問題について、現在租税特別措置法の一部を改正する法律案を審査いたしております大蔵委員会に対し、申入れを行うべきであるとの意見が強いと存じますので、昨日の理事会においてまとまりました申入れの文案をまず朗読いたします。    租税特別措置法消費生活協同組合に対する課税に関する件   昨年七月第十六回国会において、貴委員会は、消費生活協同組合に対する課税につき特に附帯決議を行つているが、当委員会としては、現下の社会経済情勢下における消費生活協同組合事業の使命にかんがみ貴委員会が目下審議中の租税特別措置法の一部を改正する法律案中において、前回附帯決議趣旨法制化のため特別なる措置を講ぜられんことを申し入れる。  以上の意見大蔵委員会に申し入れることに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小島徹三

    小島委員長 御異議なしと認め、そのように決します。     —————————————
  4. 小島徹三

    小島委員長 次に消費生活協同組合法の一部を改正する法律案医薬関係審議会設置法案、あへん法案母子福祉資金貸付等に関する法律の一部を改正する法律案身体障害者福祉法の一部を改正する法律案児童福祉法の一部を改正する法律案、未帰還者留守家族等援護法の一部を改正する法律案及び医薬法の一部を改正する法律案以上八法案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。岡良一君。
  5. 岡良一

    岡委員 この前大臣の御出席のときに、現在きわめて反社会的な悪影響を及ぼしておるヒロポン中毒患者については、この際すみやかに厚生省としても適当な措置を講ずべきではないか、この責任ある措置についてはでき得べくんば本国会中に必要なる立法等措置も講じてもらいたい、こういう趣旨要求をかねていたしておつたのでありますが、その点についてなお具体的にお尋ねいたしたいと思います。  まず第一に、何と申しましてもヒロポンがこうして広く世の中に流れて、その注射が行われておるということについて、現在どのような手抜かりがあり、どういうところにこういうヒロポン中毒原因があるのか、いわば現在の取締りが及ばないために一つ盲点があることは事実が証明しておるが、どういうところにそういう盲点があるのか、これは阿片中毒患者の場合とほとんど同様な事態にもなると思いますので、あへん法案質疑に関連をしてお尋ねしたいと思います。
  6. 高田正巳

    高田政府委員 今日のヒロポン中毒禍というものは非常に大きな社会問題になつておりますことは、御指摘通りであります。それでどういう点に盲点があるかということの御質問でありますが、あるいはぴつたりしたお答えにならないかとも存じますが、御承知ように、ヒロポンを合法的につくり、合法的に使用をいたしておるいわゆる合法面ヒロポンは、量も非常に限られたものでありまして、またその扱い者も非常に限定をされておりますが、さような合法的なヒロポンといわゆるヒロポン禍原因になつておりますヒロポンとは全然世界が別になつておる。合法的なヒロポンが流れて云々いたしたということはこれはないのでございます。いわゆる密造密売による全然別の世界ヒロポン社会に非常な害悪を流しております。  しからばこのヒロポン禍に対していかなる対策を講ずべきかという問題に相なると思いますが、その際問題となります点として、先般も参議院厚生委員会でいろいろと御論議があつたのでございますが、一つヒロポン関係取締りについて罰則が軽いために大して取締り効果が上つておらない、法律で規定しております罰則は三年以下五万円でございましたかでありますけれども、   〔委員長退席青柳委員長代理着席法律で規定されておる程度罰則食つた者はほとんどない。検挙をし、送検をいたし、公判になりました結果は、大部分の者が起訴猶予なつたりあるいは執行猶予なつたり、罰金刑くらいで助けられておる。さようなことが取締りを十分に徹底できない一つ原因になつているのではないだろうかというふうなことが、御論議になつてつたようでございます。この点が一つと、それからもう一つは、取締りだけを十分にやりましても、中毒者が多数あるようでは、需要がどうしてもそこに存在するわけであるから、これによつて利益を受ける密造密売がどうしてもあとを絶たないであろう。従つてこの中毒患者一定の場所に収容して治療を施すとか、中毒患者一定期間社会から隔離するというふうな目的をもつて収容施設考えて行かなければ、百年河清を待つがごときことであるというふうなことも、問題の一つとして論議をされておつたようでございます。  これらの取締りの強化の点、中毒患者に対する対策の点、かような点が非常に重要なる点の一つではないかと存ずるのでございますが、その他に私ども考えまするところは、啓蒙と申しますか、ヒロポン禍の恐るべきことを十分に世の人々に知つていただくというふうなことも、なかなか軽視できない大きな問題だと考えておるのでございます。それで先般も、私ちようどそのときにおりませんでしたが、岡先生大臣に対する御質問で、ヒロポンは今日医療上はさして必要のないものであるかもしれないから、根本的にこれの使用製造も禁止してしまつて、この世の中から合法的なヒロポンというものをなくするということはいかがであるかというふうな御質問があつたように拝承いたしております。これは専門家の一人であられる岡先生の御意見でございますので、私どももその点について十分研究をいたしてみたい、実はかよう考えておるのでございますが、聞くところによりますと、現在の覚せい剤取締法が制定されまする際も、つくつたり使つたりすることを全然できなくしてしまおうではないかという御意見も最初あつたそうであります。しかし専門家の間から、いやいややつぱりこれは必要なものだから、全然なくしてしまうことはいかがなものであろうかということで、現在のよう覚せい剤取締法ができたといういきさつがあるやに仄聞をいたしております。さようないききつもございまするし、医療上これがはたして必要なものであるか、なくても済むものであるかということについては、慎重な検討を加えて参らなければならないと思いますので、私ども省内におきましても、関係向き相談をしますとともに、他の有識の方々にも御意見を拝聴して研究をいたして参りたい、かよう考えます。  ただその問題とは別個に、先ほど申し上げましたように、合法的なヒロポンと非合法的なヒロポンとは全然ルートが別であつてヒロポン禍原因になつておるのは、いわゆる密造密売によるヒロポンである、こういうことを考えてみ、なお麻薬取締りの現状、すなわち麻薬取締法においては、ヘロインというものは製造使用も全然認めておりません。ところがこの麻薬事件の大部分ヘロインでございます。さような実情とあわせ考えまして、ヒロポンを全然つくれなくあるいは使えなくしてみた場合に、ヒロポン禍に対する効果が上るだろうかどうだろうかという点につきましても、私は実は相当な疑問を今日のところ持つておるのでございます。  以上のように、大体の大筋は考えておるわけでございまして、法律でも改正してはどうかという御意見でございますが、その点につきましては、ただいま私どもの方で政府提案でこの法律に手をつけるという予定はいたしておりませんが、参議院厚生委員会の方で、現在の法律に若干の手を加えて、ヒロポン禍の問題に対処いたしたいという御意図で、御研究が進んでおるよう承知しております。多分この国会で御提案の運びに至るのではないかと想像いたしておるようなわけでございます。
  7. 岡良一

    岡委員 ぼくがお尋ねしているのは、非合法なヒロポンなんです。問題はヒロポン製造使用が合法的に認められている。一体なぜ認められているか。これは御承知通り戦争中兵隊を駆使するための興奮剤としてヒロポンが使われたのである。戦後こういうものがあるということがおかしいんです。しかも治療上から言うならば、ヒロポンの禁断症状に対しては、ヒロポンがなくても他の方法は幾らでもある。だれかヒロポンは必要であると言われたが、その人の道徳性を疑わざるを得ないと思う。しかもそれがあなたの指摘したような、いわゆるやみのヒロポンとなつて戦争中の兵士の疲労を防ぐという目的ではなく、人間の最も断ちがたい本能と結びついて悪用されている。そこでヒロポン中毒患者の反社会性としかも離れがたい集団ができている。これが現在におけるヒロポン禍の大きな原因になる。だから問題は、御指摘ように、ヒロポンをつくらない、日本の国からヒロポンの一滴までも駆逐する。このくらいの腹構えでかからなければ、この問題は解決しない。といつても従来それはモルヒネや阿片等でわれわれが経験しているように、網の目から漏れるものもなかなかあるでしよう。そこでヒロポン中毒患者ではないが、自己利益のためにヒロポンを扱う、こういうたぐいに対しては——ヒロポンの原料となるものをどこから入手するか私は知りませんが、その目的のためにこういうものを所持する行為、また自己中毒のために、余儀ない生理的必要からヒロポンを求めている者に対して、いわゆる弱みにつけ込んで非人道的にこれらに売り渡すために、アンプルに入れて注射液をつくるという行為は、徹底的に取締らなければならぬ。これを取締るのはどうかと思うということでは、ここまで広がつたヒロポン禍はどうにもしようがないのではないか。もちろん啓蒙も大事だが、たとえば犯罪を犯して刑務所に入つた、よく調べてみたところが、ヒロポン禍であつた犯罪を犯さしめてしまつてから、ヒロポン禍であるといつて、その責任を追究してみてもしようがない。問題は犯さしめないようにする、いわばヒロポン中毒患者であり、かつまた反社会的な犯罪を行い得る疑いのある者に対して、何らかこれを行わしめないよう特定施設なり——これはできると私は思うのです。やはりこれは伝染病と同じようなもので、黴菌が伝染しないまでも伝染になるのです。中毒患者ということになればやはり民法上も独立した人格としてはいろいろ疑義あるわけなので、しかもこれがそういう反社会的な行動を起すところの疑いが十分にある、可能性が十分にあるというのなら、やはり国が施設を建てて——精神衛生法の中でも広くうたつてあるのですから、予算をとつて、そうして特定施設にでも入れてやつてそのヒロポンを抜いて行く、啓蒙宣伝もさることながら、こういうことを積極的にやるべきじやないかと私は思うのです。一方では利益のためにヒロポンを売る者、あるいは薬品を所持する者、あるいはまたそれをアンプルに入れて注射し得る段階におけるものを持つている者、こういうものを単に摘発して、一万円や二万円の罰金ならば利益を換算すれば罰金を出しても安いものだということでは問題にならない。ここのところはもつと具体的に考慮しておられないのかどうか。参議院ではしておるそうだが、当然これは厚生省の重要な責任事項であるので、そういう御用意がないか。  いま一つは、現在そういうことになつておる人について、家族の了解を得て当人——当人つて決して満足しておらないでしようから、やはり当人にもある程度の納得を得るなり、またそういう犯罪がかつてあるということなら精神衛生法適用の中に入れて、もちと精神衛生の方に予算を組んで、そして所在の精神病院なら精神病院にでも収容してヒロポン中毒を断ち切つてやる、こういう取扱いをすることについての積極的なお考えがないかということを重松てお尋ねをいたします。
  8. 高田正巳

    高田政府委員 私は岡委員の御質問趣旨を最初取違えておりましたので大したお答えができませんでしたが、ただいまの、中毒になつておる者よりは、密造密売、すなわち薬を持つてつたりあるいはアンプルに詰めてやつてつたり、そういうふうなものこそこの問題の根源ではないかという御意見でございまするが、まつたくさようなことでありまして、従つて先ほど私が罰則を強化する方向に進んでおると申し上げましたのも、特に密造密売、しかも営利を目的としてこれをなすというふうなものについて、大体今日の麻薬取締法と同じ程度罰則——七年くらいになるかと思いまするが、その程度罰則にして行くということが実は問題になつておるのであります。  それから次の収容する施設の問題でございまするが、私どもも同じようにこの問題を考えまして、いかにいたすべきかということをいろいろ案を立て、実は予算要求等もいたしたのでございまするが、いろいろな事情でこれが実現いたさなかつたのでございます。しかしながらともかく何とか施設を設けて、これに強制的にでも収容できるということにいたさなければ、なかなかこの問題は解決をいたさないというふうに私ども考えておるのでございまして、その強制収容立法につきましてはいろいろと法律的に論議もあるようでございまするけれども、何とかそこを押し切つてような建前にいたさなければ、この問題の解決は非常に困難である。さよう観点から、近い将来においてさように取進めたいと存じております。ただこの際に問題になりますることは、その施設をつくりまする費用すなわち国の予算に関連いたして参りまするので、この点が実現をいたしておらない関係上、実はこの国会でさような改正を御審議願うに至りませんでした。しかしその辺を何とか近い将来において解決をいたして、さようなことに取運びたいと私ども考えておるわけでございます。  それから精神衛生法あるいは精神病院というふうなお話もございましたが、今日でもヒロポン中毒のために精神障害を受くるに至つておる程度のものにつきましては、精神病院でこれを扱つてもらつておりますることは御承知通りであります。従いましてヒロポン中毒者収容施設としては、予算実現をいたしませんでしたが、精神病床の方は昨年より多く、たしか千八百床ばかり増床ということに予算の方で相なつておりまするので、その精神病床に従来通りヒロポンによる精神障害者収容いたして参ることは一向さしつかえない、むしろさようなことも十分考慮して、ぜひこの予算執行をいたすよう考えておるわけでございます。
  9. 岡良一

    岡委員 精神衛生法は、御存じように、各府県ごとに、人数は多少の差があるかと思いますが、小さい県でも三名の精神鑑定指定医を設けておるわけであります。この五名のものが会議によつて、これは施設入院せしむべきであるという断定を下せば施設入院をさせなければならない。その場合その費用は国が受持ち得るものならば県と共同でその負担をする、またその家族負担し得るものであると認めた場合は家族負担をする、こういう取扱いになつておると私は記憶しておるのです。それで問題は、御存じのごとく精神病床は今入りたい、入れたい、入れなければならないと希望されておる向きに対して、病床充足率はわずかに二割七分なのです。だからこれは足らない。千八百床くらいそういうものを多少国の補助で建てられてみたところでこれじや焼け石に水でありますから、やはり問題はそれくらいを建てたところで足りないということが一つ。  もう一つは、ヒロポン患者は、やはり平常は生業に従事しておる場合が非常に多い。従つてその家庭の多少の収入源をなしておるという場合も多いと思う。これをある病室に入れると、その期間中はやはりその人の自由なる生産行動を制限することになつて、その人はその人自身生活資金というものを獲得ができないという状況に置かれるわけです。その場合に——これはやはり広義の精神病者なのです。ヒロポン中毒者精神病者じやないというのではなく、明らかに中毒という状況になつておればこれは意思薄弱な変質者なのです。これは明白に精神病者だと私は思う。そこまで精神衛生法範囲を概念の上において拡張して、その上で三人の指定医がこの者は施設収容すべきであるとした場合に、これは他の精神病者違つてやはりその入院に必要な、治療に必要な予算というものは国なり地方団体が持つてやる、ここまでやらなければなかなか精神衛生法は、ヒロポン中毒患者についてはからまわりをする。千八百床くらいの精神病床増床では実際問題としてからまわりする、そういう点ももう少し具体的につかんで、予算的にも考慮して行く必要があるということが一つと、もう一つはこの際何とかほんとうに若い青年——青年ばかりを収容している刑務所に行きますと、ヒロポン中毒者が三割、四割を越える、これを見るとわれわれは日本の国の政治の貧困をさえ感ぜざるを得ない、悲痛な感慨に打たれることがあるのです。それにつけてもやはり青年に希望を持たすということではございましようが、そこまでは行かないとしても、厚生行政のわくの中で、やはり大阪とか京都とか東京とか、ヒロポン患者の多いところには、この際国の方でも予算を出してもらう、そうして精神衛生法を漫然と適用せずに、特に対象をこのヒロポン中毒患者、特に反社会的なあるいは犯罪的な行動が現にあつた者、かつてつた者、またあり得る者などについてこれを調査して、これらをこの施設において直してやるというようなことも当然お考えになつてしかるべきではないか。いわゆる特定地域ヒロポンから清められた地域を指定してやるというような点を、もう少し積極的に政府はやるべきではないかと、こう私は思うのです。これは別に新しく法律をつくるとか、予算をどうこうとかいうよりも、現在の精神衛生法予算を裏づけてやる。特に特定地域については、ヒロポン中毒患者についての特定施設を設けてやる、これくらいのことはいわば予算の面でもかなり操作をし得るし、ある程度の実効を上げることができるのではないか、こう私は思うわけなんですが、どう思われますか。
  10. 高田正巳

    高田政府委員 精神病ベットが全体的に足りないということは御指摘通りでございます。そこに千八百床くらいふえたところでとても何ともならないということは、まつたく私もさよう考えておるわけであります。  それからヒロポン患者収容いたしました場合に、治療費とか、収入源がなくなりますので、これに対する生活のいろいろなめんどうを見るというふうな措置が必要であるというふうなことにつきましても、私どもも同じよう考えておるわけでございまして、さよう観点から、ヒロポン関係予算を実は要求いたしたのでございます。  それからこの問題については、特に惨禍の広い地域を特別に扱つたらいいじやないかという点につきましても、私どもも同じよう考えておるわけでございます。ただ岡先生のただいまの御意見では、ヒロポン患者精神衛生法対象者として全部が考え得るのではないか。それで精神衛生法運用、あるいはそれに伴う予算の操作によつて何とかやられるのではないだろうかというような御趣旨の御意見ように拝聴いたしたのでございますが、もしそうであれば、あまり立法措置というような問題は起つて参らないのでございますけれども、私どものただいま考えておりますところでは、ヒロポン中毒者の中には精神衛生法対象になる者とならないものがある。数からいうとならない者の方が多いのではあるまいか。それに対しては精神衛生法と別個な措置を講じなければ、この問題は解決をいたさないのじやないか、かよう観点からいろいろと実は研究いたしていそのでございます。しかしながらヒロポン患者の中で精神衛生法対象になる者も、これはもちろんあるわけでございます。さようなものにつきましては精神衛生法弾力性をもつて運用をいたすことによつて、この問題の解決一つの策にはなる、かよう考えでおるわけであります。
  11. 岡良一

    岡委員 これは一ぺんゆつくり皆さんとも相談をして、精神衛生法解釈をこういうふうに拡張解釈が可能なのかどうかということを研究すべきだと思うのですが、問題は、精神病というものはこれは現在の定説として、たとえば局長が宴会に行つて一ぱい飲んで黒田節を歌つたら、急性アルコール中毒症という精神病です。かなり範囲が広いのですから拡張解釈は認められるものだと思うのです。何とかひつくるめてやれば、あれで予算さえあればやれますから、御研究願いたいと思います。
  12. 山下春江

    山下(春)委員 関連して……。私はおそく来ましたので岡先生から御質問があつたかもしれませんが、戦前日本年少者ヒロポン中毒患者がどのくらいございましたか。
  13. 高田正巳

    高田政府委員 戦前ヒロポン患者はいなかつたように私は承知をいたしております。
  14. 山下春江

    山下(春)委員 そういたしますとこれは戦後に起りました非常な不祥事実だと思うのでありますが、私はこのヒロポンの蔓延の状況をつまびらかには存じませんけれども、新聞その他に報道されている状況を見て、十四、十五あるいは十三歳というような者がヒロポンを打つてようという、その動機がどういうところにあつたかということを御調査なつたことがあれば伺いたいと思います。
  15. 高田正巳

    高田政府委員 これは私どもの方で調査をいたしたものはございませんけれども取締り当局の方で事件なつたものを通じて調査をいたしたものはあるように私も記憶いたしております。私の記憶によりますれば、動機といたしましては実に種々雑多でございます。あまり大した動機というふうなことでなくて、むしろ青少年等の場合におきましては、友人からの誘惑であるとか、それから好奇心であるとか、入りまする動機におきましては非常に簡単なことからだんだんと深みに入つておるということのように、私は承知をいたしておるのでございます。
  16. 山下春江

    山下(春)委員 これも重複するかもしれませんで恐縮でございますが、今ヒロポン密造いたしております人々の中で、国籍別に大要でけつこうですから伺いたいと思います。
  17. 高田正巳

    高田政府委員 これも資料が手元にございませんので、正確なことは申し上げられませんが、密造密売等に当つておる人々、それによつて検挙された人々の中には、日本人でない者が相当多数あるというふうに承知をいたしております。
  18. 山下春江

    山下(春)委員 ただいまの御答弁で、年少者がこれに手を触れます動機は種々雑多であるが、大体友達からの誘惑あるいはちよつとした好奇心というようなところから入る。それからヒロポン密造販売をいたしております者は、検挙された者等によれば、日本人でない者が相当多数あるということに、私はこの問題の非常に大きな憂慮すべき問題があるということを考えざるを得ないのであります。かつての阿片戦争その他のことを考えてみましても——十三や十四の者がヒロポンを打つなどということを考えつくわけがございません。敗戦後青少年が間違つた遊びやいろんなことをいたしました傾向が非常に多くございましたけれども、しかしながら一種の麻痺薬であるいわゆるあへん系統のものを使用することを思いつくということは、そこに何らかの意図を持つてこれを指導し誘惑する者が陰にあると考えざるを得ないのであります。そういう点から、これは厚生省の直接のお仕事ではないとも思われますけれども、しかしながらこういうものが国内に広く流布されております現状は、岡先生からもその点の御指摘があつたと思いますが、これは厚生省としては一刻も猶予のできないことであり、そしてなまやさしいことではいけないことであります。非常に恐るべきことであります。しかも大人にも、私はつまびらかでありませんが、大人にも相当な中毒患者はあると思います。それは大人というものは、いろいろな中毒患者世の中にうじようじよいるのでございますから、必ずしもヒロポンばかりとは思いませんけれども年少者がこういうものに侵されるという現象は、ただ薬務的な面から、小さい窓から見ないで、もつと根本的に、しかも非常なる大規模をもちまして、国が責任を持つてこれを取締ることに乗り出す——今ではおそきに失するのでありますけれども取締るべきであると思います。厚生省といたしましては、直接こういうことに関係のある省として、これを取締り当局にまかしておくということははなはだ無責任、と申しては気の毒でありますけれども、容易ならざること、だと思いますので、その点に対する御決意を承つておきたいと思います。   〔青柳委員長代理退席、委員長着席〕
  19. 高田正巳

    高田政府委員 このヒロポンの問題は、ただいま私がいろいろと御答弁をいたしておりますけれども厚生省だけではなかなかどうにもなるものではございません。災いの一番のもとをなしております密造密売取締りも、今日の体制におきましては私ども以外のところで御担当いただいておるようなかっこうになつておりまして、それぞれの関係によつて、たとえば青少年の関係でございますればいろいろ学校とか、社会教育とかいう問題も出て参ります。従いましてこれは政府全体の問題として取組むべき問題である、私どももさよう考えておるのでございます。それの現われとして今日行われておりますことは、特に御指摘ように、青少年の場合が非常に重大であるという立場からいたしまして、内閣に青少年問題協議会というものが設置されておるわけであります。ここへ各省並びに民間の有識の方も御参加になりまして、特に専門委員会をつくつてこれらの問題を取上げ、いろいろと討議研究を重ねて参り、その専門委員会並びに青少年問題協議会の結論も出て参つております。この線に沿つて関係各省がそれぞれ自分の分担に応じてこの問題を取組んで行こう、かような態勢を示しておるわけでございます。ただいま行われておりますことはさようなことでございますが、いずれにしろこれは政府全体の問題として取組んで行くべきことである、しかもそれは緊急を要する問題であるという山下先生の御所見には、私どももまつたく御同感に存ずるわけでございます。
  20. 山下春江

    山下(春)委員 今の薬務局長の御答弁は、大ていそれよりほかに方法がないと思いますけれども、ただ今の御答弁の中で私幾らか気に食わないのは、厚生省だけでやれる問題でない、内閣全体が——そんなことを言つておるのであります。各省の中で一体だれが一番責任を持てば手取り早く捕捉できるかといえば、やはり厚生省であります。政府はこういうめんどうな問題は何とか審議会、何とか審議会にみな押しやつてしまつて、その審議会は何をしておるかといえば、何もしていないということで、結論は何も生れていないのです。医薬分業にしろ、青少年の問題にしろ、めんどうな問題は何でも審議会をこしらえて、審議会の中に押し込んでしまう。これが現在の内閣の姿でありますが、それではとてもこんな急を要する、そうしてこんな問題を審議しておることすらじれつたいほど重大に考える問題を——さりとて厚生省責任とは私は申しませんけれども厚生省が、われわれに最も深い関係のあるこの問題をこうしておくことはできないのだ、審議会をこしらえてその中に送り込んだだけでは困るのだとがんがん言つていただけば、これは非常に前進すると思うのでありますが、厚生省では青少年問題の審議会ができたから、それで結論が出るであろうといつていたら、三年や五年すぐたつてしまいます。それではむしばまれるものが全部むしばまれてしまつたあとになりますので、私は厚生省薬務局長をいじめるというのではないのでありますけれども、どうか一番責任の多い、一番関連の多いあなたが先頭に立つて、どんなに政府ににくまれても、怒られても、そんなことに屈せずがんがんやつていただいて、審議会などに送り込んで御安堵なさらないように、厚生省の方もひとつ本気になつてつていただいて、内閣全体が動くようにしていただきたい。ことほどさように重大な問題であると思いますので、この点を強く要望いたしておきます。
  21. 岡良一

    岡委員 今御答弁の青少年問題の協議会ができたことを承知しておるのですが、これは売春禁止法への大きなステツプになつておるような感じがありますが、われわれの委員会としても、このヒロポンの問題は、今御指摘ように、軽々にすべきものでもなく、すみやかに解決すべきものである。今御答弁のように、青少年問題協議会の方でヒロポン禍についての何らか適切な対策についての要綱等がもしできておるのでありましたら、ぜひとも全委員にこれを御配布いただいて、われわれ委員としても、また委員会としても、適当な意思決定に到達すべき必要のある問題と思いますので、資料として御配付をお願いいたしたい。
  22. 高田正巳

    高田政府委員 できておりますので御配付申し上げます。
  23. 小島徹三

    小島委員長 滝井義高君。
  24. 滝井義高

    ○滝井委員 あへん法案に関連して一、二質問申し上げたいと思いますが、昭和二十年に連合国総司令部の覚書によつて、けしの栽培が禁止をされたわけであります。その後昭和二十三年に麻薬取締法ができて、麻薬の使用等は相当厳重な取締りが行われることになつたわけであります。従つて昭和二十年覚書が出た当時の日本のあへんの使用量、それから麻薬取締法が昭和二十三年に出た当時の使用量とは相当の違いがあると思つておるのですが、それをひとつ、日本の必要とした使用量はどの程度になるか御説明を願いたい。
  25. 高田正巳

    高田政府委員 戦前日本の麻薬の使用量は年によつて違いますが、あへんにいたしまして大体三十トンから三十五トンくらいの間を行き来いたしておつたと存じます。終戦後麻薬の取扱いが非常にやかましくなりまして、一時あへんも全然進駐軍に押えられてしまい、それから麻薬の製造も禁止をされ、それがしばらくして麻薬の製造は禁止解除になりまして、製造ができることになつたのでございまするが、二十三年の麻薬取締法で非常に厳重な規制をいたして参つたのでありまして、その間におきましては、戦前と違いまして非常にあへんの消費量も少くなつております。大体年間五トンないし十トンというふうな数字を示しておつたのでございます。ところが昨年の三月に成立いたしました現行の麻薬取締法の施行に伴いまして、今までの法律で不必要に取締りをいたしておりました点が是正されましたために、その消費量も平常の年の量に復しつつあるのでございます。二十八年には二十五トンを消費いたしたよう状況でございます。大体さようなことが大勢として申し上げられると存じます。
  26. 滝井義高

    ○滝井委員 もしこの法案によつて、今後日本が麻薬いわゆるけしの栽培を実施をするとするならば、国内において大体どの程度のものを栽培することをお見込みになつて計画を立てられておるのか。
  27. 高田正巳

    高田政府委員 来年度もしこの法律案が成立をいたしますれば、けしの栽培を再開いたし得る建前に相なるわけでございます。これはこの栽培によつてとれまするあへんが不正なルートに流れまして、いろいろと問題が起るというふうなことも、十分顧慮いたさねばなりませんので、私どものただいまの気持では、このけしの栽培を大規模に再開をいたすつもりはないのでございます。取締りのできまする範囲におきまして、戦前からこのけしの栽培をやつておりました特殊な技術を存置いたしておるような地方に、徐々にこの再開をしてもらいまして、取締りの方とにらみ合わせて、だんだんに耕作反別をふやして参りたい、かような気持でただいまいるわけでございます。
  28. 滝井義高

    ○滝井委員 質問の要点は、そのけしの栽培をすることによつて、どの程度の量を二十九年度にはつくられる予定であるかということなんです。
  29. 高田正巳

    高田政府委員 これは二十九年度におきましては、今年の秋に種をまくわけでございまして、収納は三十年度からになります。従いまして二十九年度におきましては、この法律によるけしの栽培からとれるあへんというものは一応ゼロということに相なつております。
  30. 滝井義高

    ○滝井委員 二十九年度にまいて三十年度にとれるものは幾らですか。
  31. 高田正巳

    高田政府委員 ただいま幾らと予定をいたしておりません。これは申請者の申請状況等にもよるわけでございますから、私どもとしてはただいまのところは予定をいたしておりませんけれども、大体の気持としましては、今申し上げましたように、そう大した量を予定しておらない、かようなことは申し上げられるかと存じます。
  32. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、さいぜんの御答弁で、二十八年三月、現在の麻薬取締法が制定されてから、平年度にかえつた、それが大体二十八トンないし二十五トンくらいだ、こういう御説明でございましたが、それならば戦前においてはどの程度栽培をし、どの程度輸入をしておつたか、これをひとつ御説明願いたい。
  33. 高田正巳

    高田政府委員 戦前は大体栽培面積が一番多いときで千六百町歩ほどでございました。年によつて違いますが……。それで大体あへんの採取量といたしましては、最も多いときで約三十トン採取をいたしておりました。
  34. 滝井義高

    ○滝井委員 輸入量は……。
  35. 高田正巳

    高田政府委員 輸入はただいま手元に資料がございませんですが、その年の需要量との差額を輸入して参る、こういうことになるわけでございます。
  36. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと大体戦前三十トンないし三十五トンだ、こういうことでございましたので、栽培が三十トンできれば、輸入はその差額のゼロから五トンぐらいを輸入しておつた、こう了解してさしつかえないですか。
  37. 高田正巳

    高田政府委員 ただいま申しました千六百町歩それから三十トンぐらいのものを国内で生産をしておつたというのは、最も多い年のことでございまして、それから戦前の国内の消費量が三十トンから三十五トンと申し上げましたけれども、多い年には四十何トンを消費いたしておることもございますし、今の御意見ようなことには、ただちに結論は参らないと思います。
  38. 滝井義高

    ○滝井委員 現在の国内のストツクは大体どの程度ありますか。
  39. 高田正巳

    高田政府委員 今年の三月末で十トンということになつております。
  40. 滝井義高

    ○滝井委員 予算にあへんの栽培として百十五万円計上せられているわけですが、その百十五万円はけしの栽培ばかりでなくして、サントニンの栽培も含まれておると思うのです。そうしますと百十五万円くらいでは何町歩栽培できますか知りませんが、サントニンと両方だということになれば、サントニンも非常に不足をいたしておりますので、これはもう大して問題になる数量ではないと思う。そうしますと現在のこの予算書において、日本が輸入をするあへんの買上げ代金は大体一億円、十六トンになつておる、国内のストツクが十トンとしますと二十六トン、それで現在二十五ないし二十八トン一年に使うということになると、ことしの需給も不足する状態だ、こう考えられるのですが、その間の調整はどうしてやられるのですか。
  41. 高田正巳

    高田政府委員 予算に出ております薬用植物の百十五万円の補助金は、実はこの法律で再開をいたしまするけしの栽培とは別な問題でございます。ちよつと御説明を申し上げてみますると、この法律でけしの栽培を再開をいたすということは本格的な問題でありまするが、実は昨年の秋に現在の麻薬取締法による麻薬研究者として、かつてけしを栽培しておられました地方でほんのわずか——これはたしか全国で数町歩だつたと思いまするが、ほんのわずか研究的にけしの栽培をやつてみてもらつたのであります。それでこれにはいろいろと制限と、負担を負わせて実は研究をやつてみていただいておるわけであります。それで来年度、二十九年度にそのけしからあへんがとれるということになるのでございまして、これらの研究者に対しまして、百十五万円のうち六十五万円だけを種子の確保及び研究というふうなことについて補助をいたしたい、かよう予算なんであります。従いましてこの法律案でけしを栽培いたしまする場合には、補助金ということは全然考えておりません。それからただいまの保有量、また一億の予算で予定されている輸入量と、来年度のあへんの需給の関係は一体どうなるかという御質問でございますが、先ほど来申し上げましたように、来年度初めにおきまして国内の保有量十トン、それから一億円という予算によりまして海外から輸入をいたします数量を、私どもは大体一〇%のモルヒネ含有に換算いたしまして、十七、八トンくらいは輸入できると今予定いたしております。それを合せまして来年度のあへんの供給には大体事欠かないという目算を立ててやつておるわけでございます。
  42. 滝井義高

    ○滝井委員 麻薬取締法ができた当時におきましては、せいぜい五トンか十トンで済んでおつたわけであります。それが麻薬取締りが緩和されるとともに、急激にその五倍の使用量が出て来た。戦前麻薬というものは放漫に使われておつたのです。ところがわれわれが現実に診療に当つてみても、そう麻薬というものはめちやくちやに使えるものではない。ところがそれが緩和されたということで急激に五倍以上も麻薬がふえて来たということについては、これは普通の病院てそんなに急激に多くのふえ方をすることは、今までの受入れ、あるいは払出し等の厳重な報告等から考えてみても、そう飛躍的な増加はないと思うので、これはどこか特殊のところにそういう要素があつたのではないかと考えられるのですが、どういうところでこういう増加の素因をなしておるのですか、伺いたいと思う。
  43. 高田正巳

    高田政府委員 終戦後逐次あへんの使用量がふえて来て、昨年の四月から急にふえて来た。これはどこか特別にふえたところがあるのかという御質問でございますが、そうではないのでございまして、終戦後におきましては、御承知ように連合軍の麻薬に対する態度というものが非常に苛烈をきわめまして、と申しますることは、戦争中まで日本は麻薬については非常に国際的な信用がなかつた、さようなことも関連をいたしまして、非常に苛烈をきわめて、この取扱いにつきましては、御承知だと思いますが、犠牲者等も相当出ているわけであります。さようなことで終戦直後におきましては、片一方で麻薬のあへんは全部接収され、麻薬の製造も禁止されたというふうなことから、むしろほんとうならば医療用に使うべきところでも使わないでやつて来たというふうなことが真実の状況だと思うのでございます。それがだんだんと回復をいたしまして、そこに麻薬取締法の昨年の改正というふうなこともございまして、全般的に麻薬が正常なる使われ方をいたして来たというふうに見るべきであろうと思うのでございます。麻薬使用者の数におきましても、旧法時代、すなわち昨年の三月以前におきましては五万くらいでありましたが、新法になりまして現在では約十五万くらいにふえております。さようなことからいたしましても、使う人がふえているわけでございますから、当然使用量もふえておる。それからなお旧法におきましては〇・二%の燐酸コデイン以下のものは麻薬としては扱わなかつたのであります。それ以上のものは全部麻薬として麻薬取締法対象にいたしておつたのでありますが、新法で麻薬として扱いません範囲を広げまして、一%以下は麻薬取締法対象として取扱いませんで、御承知のせきどめの薬や、家庭薬等にもどんどん入れて使えるようなことに法律を改正いたしました。さよう関係から、元のせきどめ薬はあまりききませんでしたが、最近の薬は相当きくようになつてつておるというようなわけでございます。この関係使用量に非常に大きく影響して参つていることは事実であります。  なお麻薬の使用量をわが国の現在の使用量と諸外国の使用量と比較いたしてみまする場合には、人口比で参りますと、まだまだわが国におきましては使用量は非常に少いのであります。さようなわけで終戦後だんだんとふえて参りましたことは、何も特別な事情でふえたわけではなくて、だんだんと正常な形に返つて来たということが申し上げられるのではないか、かよう考えている次第でございます。
  44. 滝井義高

    ○滝井委員 大体増加の素因はわかりましたが、このあへん法でけしの栽培をやるものについては補助金がない。しかも百十五万円というのは、これの補助金だと思つておりましたが、そうではないようであります。そうしますと、これはやはり重大問題だと思います。これは実験研究をやつた人に百十五万円の中から六十五万円くらいやることになるでしようが、もしこのあへんの栽培者に政府が何ら補助金を出さずに、できたけしを買つて、その代金だけでまかなえということになりますと、これは微量で、しかも高貴なものなのですから、やみに流れることは火を見るより明らかでございます。そうしますと、さいぜんも申しましたように、すでに日本は過去において麻薬については国際的な信用がないわけです。さいぜんから岡先生なり、あるいは山下先生からるる御説明がありましたように、すでに現在日本の青少年というものが注射を打つということによつて何らかそこに快感を得るという経験も経て来ておるのであります。従つてそういう基盤のできているところに麻薬の製造というものが、あるいは麻薬の栽培というものが国内の至るところで将来普通に行われる形ができて来る、自由ということは語弊がありましようが、ある程度の監視のもとに行われて来るということになりますと、戦前よりはるかに危険な状態が出て来ておると思う。現在すでに道義の頽廃ということは、もう衆目の一致するところなんです。そういう客観的な道義の頽廃、そうしてしかもヒロポンというよう注射を打つ経験を青少年が持つておるという状態で、そこにけしを自由に栽培するという要素が加わつて来るならば、これはもう日本の国内は麻薬の中毒患者がぐんくふえて来るということも、今の日本の状態から考えて確実だと思うのです。むしろわずかに一億円で十六トンが輸入できるとするならば、これは考え方によつてはあへんの栽培というものをもう少し延ばす方がいいのではないかという結論さえも出て来るのではないかと思うのですが、この点薬務局で絶対そういうことは起らないという自信がおありなのですか、いかがですか。今までのヒロポンの状態あるいは過去の日本の麻薬中毒の状態等から考えて、どうもそういう杞憂がしてならないのです。これは二億もあれば三十二トンの輸入ができるんですから、二億円くらいの金なら、むしろ国内のそういう危険がある状態から考えてつくらない方がよいんじやないかという結論さえ出る。その点の御答弁を願いたい。
  45. 高田正巳

    高田政府委員 補助金を出さぬとこれはやみに流れやせぬか、こういう御質問でございます。採取いたしましたあへんはすべて政府が収納するのでございますが、そのときの収納価格の問題になつて来ると思うのであります。それで収納価格左幾らに定めるか、どういうふうに定めるかということにつきましては、法律案の三十一条にございますが、これは耕作者が十分に採算が合うということを、やはりこの収納価格をきめまする際の重要なる要素の一つとして考えて参るわけであります。従いましてその補助金を出さぬからやみに流れるではないかという点につきましては、さほど御心配はいらないんじやないかと思つております。ただいくら十分採算が合い、また相当な他の裏作をやりますよりは、たとえば例をあげて申しますならば、麦を耕作いたしますよりは、相当な収益があつても、これをやみにあへんとして流した場合には、より莫大な収入になるというような事情、それからただいま御指摘の国民道義の問題、現在の状況というふうなものからいたしまして、やみに流れるおそれが多分にありはせぬかという御意見であります。この点につきましては、私は先ほど申し上げましたように、私どもといたしましても十分に心配をいたしまして、この法律案の全体をお読みいただきますとわかるのでございますが、非常にやかましい規制を加えております。しかも先ほど申し上げましたように、栽培をいたしたいという申請がかりにたくさんあつたといたしましても、われわれが取締りをいたし得る能力の限度というものとにらみ合せながら、その範囲を広げて参りたい、かよう考えておることは、先ほど申し上げた通りでございます。しからばそれだけ危険を冒して、一体国内でけしの栽培をする必要がないんじやないか、全部輸入したらよい、こういう御意見は確かに一応もつともの御意見でありまして、私どもとしましても、この法律案を起草いたします際には、その点を一番問題にいたして検討をいたしたわけでございます。しかしながら戦前日本は、けしの品種で一貫種と称しておりますが、多年改良に改良を加えて、りつぱな品種もつくつておる。そうしてそれを栽培し、そこであへんを採取しておりました人々も、だんだんと年をとつて参りまして、しばらくほつておきますと、そういうふうな技術というものがなくなつてしまいやせぬだろうか。さような品種というものも非常に失われてしまつて、心配なことになつてしまいやせぬ、だろうか。そういうふうなことも十分に想像されるところであります。またやりたいという希望も相当出て来ております。さような点をあわせ考え、また輸入々々と申していかなる場合にも輸入をすることだけにたよつておることも、外貨事情のこの際にどうだろうか。かようないろいろな諸般の事情を総合判断いたしまして、この際けしの栽培を全然してはいけないんだという今日の体制は、これは改めてできることにしておいて、しかしながら実際に耕作をいたす範囲というものは、取締りの面と十分にらみ合せてだんだんと広くして行つたらどうだろうか。さよう考えからこの法律案を実は御提案申し上げた次第でございます。
  46. 滝井義高

    ○滝井委員 今の局長の御説明、なかなかもつともだと思いますが、なぜ私がそういうことを申し上げるかというと、現在のタバコの栽培、これは類似のものなんですが、非常に厳重に政府は専売制をとつて取締つておる。しかし町のパチンコ屋に行つてごらんになると、「光」と同じものが、同じような箱に入つて氾濫をしておる。これはおそらくどこか私設の専売局があるんじやないかとさえ思われるほど氾濫をしておる。タバコでさえもあのくらい偽造品が氾濫するのですから、そういうわずかの量で非常に高い値段のするものは、そういうことに流れるのは当然だと思うので、慎重な態度でやつていただきたい。  最後にひとつ、三十三条についてですが、ここにいろいろ、けしの耕作者の栽培こあたつて、風害、水害、雨害、震害と書いてございます。虫害がないようでありますが、けしには大体虫の害というものはないものなんですか。私、虫の害があるということを聞いておるのですが、虫の害が抜けておるのですか。これを最後にお尋ねして私の質問を終りたいと思います。
  47. 高田正巳

    高田政府委員 私も専門家でございませんので、けしにたびたび虫害があるかどうかという点は十分に承知をいたしておりませんが、かりに虫害があつたとしましても、その他の災害ということになりますので、これは災害補償の対象になるかと思います。
  48. 岡良一

    岡委員 私のお尋ねしたいのも、実は滝井君と同趣旨なんです。問題は国内であへんの栽培が認められ、従つてあへんを原料とするところの麻薬の製造もでき得るというふうに相なりますと、こういうところからいたしまして、先ほどいろいろと論議をいたしましたようヒロポン患者ができやしないかという点を心配いたしておつたのであります。そこで今局長の御答弁によりますと、いわばあへん栽培者の特殊な技術と、多年の経験から得たいい品種が、今これを自由に栽培せしめることを許さないでおくと、絶えてしまうのではなかろうかという点が一つの理由である。いま一つは、たとい二億円でも、やはり貴重な外貨であるから、国内において自給することが、日本の海外収支の上から見て適当ではないかということ、同時にまた第三点としては、この法案を通じて、このようなあへんの悪用については十分規制し得る程度のものを条文にうたつてあるから、この方の御心配はなかろう。大体この三点で一応われわれの杞憂が取除かれるであろうという御答弁であつたのであります。そこで一応お尋ねいたしたいことは、ここに詳しい数字の統計がないといたしましても、外国から輸入をされておつたあへん、モルヒネ、あるいはヘロイン等に基くところの中毒患者、すなわち厚生省の方でキヤツチされた中毒患者のここ数年の年次的な数をひとつお答え願いたい。
  49. 高田正巳

    高田政府委員 私どもの方で的確に把握いたしております麻薬中毒患者は、昨年末で七千くらいでございます。これはここ年々若干ずつ増加をいたしております。この麻薬は何であるかと申しますと、大部分は密輸のヘロインであります。ただいま七千くらいと申しましたのは、七千四でございます。そのうちでヘロイン及びモルヒネが五千八百七十八、コカインが九十三、あへんアルカロイドが四百三十五、その他が五百九十八。これは正確に把握いたしておりまする中毒者でございます。私どもはもう少し多いというふうに推定をいたしておりますが、その数字がはたしてどのくらいかということになりますと、ヒロポンような多数のものでないことは確実でございます。おそらく二万内外あるいは三万に近いというふうなところのことではないかと存じておりますけれども、これは推定でございますから正確ではございません。
  50. 岡良一

    岡委員 取扱う医師とすれば、一応これは麻薬中毒患者であるという診断を下せば、その府県の知事等に届出をしなければならないはずではないかと思いましたが、そうでしたね。
  51. 高田正巳

    高田政府委員 さようであります。
  52. 岡良一

    岡委員 そしてその数字を集計されたものが、今の七千四名ということになつておる。——そこで問題は、それではここ数年の間に、ヘロインあるいはモルヒネ——特に最近私どもがつれづれに読む小説などを見ると、モルヒネを輸入してヘロインをつくつておるというのが東京都内の実情であり、私は非常にスリルに満ちた探偵小説なんかを一、二回見たことがある。モルヒネを輸入してヘロインをつくつておるということは十分あり得ることですが、そういう場合当局の麻薬取締官等が押収したモルヒネ、ヘロイン等の麻薬の量は、ここ数年、年次的にどのような動揺を示しておるか、伺いたい。
  53. 市川可知男

    ○市川説明員 昭和二十七年に押収いたしました生あへんは二キロ四百五十五グラム、二十八年においては四キロ四百二十五グラム、それからヘロインは二十七年が八キロ二百十九グラム、二十八年が十一キロ九百五十九グラム、コカインが二十七年が六百四十二グラム、二十八年が三百九グラム、モルヒネが二十七年が一キロ三十グラム、二十八年が一キロ九百二十グラム、あへん煙膏が二十七年が八十三グラム、二十八年が四十グラムであります。
  54. 岡良一

    岡委員 そういうふうに、いわゆる不法な手続を経て外国から密輸入され、そして当局によつてたまたま発見され押収されたものの量が、二十七年度と二十八年度を比べましてもかなりふえております。そのふえておる背後では、このように不法に輸入をされた麻薬の常用者の数がこれに比例をしてふえておる。かつまたこれは比例して大いにふえるであろうという状況を暗示するものではなかろうかと私どもは見るのでありますが、この点についてのあなたの方のお考えはいかがでしようか。
  55. 高田正巳

    高田政府委員 私どもも大体岡先生と同じよう考え方を持つております。国内に入つて来るものが、国内の麻薬中毒者がだんだんふえて来るからふえるのか、あるいは入つて来るものが多くなるからふえるのか、そこの因果関係はなかなかむずかしいことだと存じますけれども、ともかく最近の麻薬事犯を通じて観察いたされますことは、麻薬の密輸入、密売というふうなものが非常に組織的になつて参り、従つてわれわれが取締りをいたす際にも、これに対応するような組織的な敏速な態勢をとつて参らないとなかなかおつつかない。非常にむずかしい犯罪の態様を示しつつあるということは、確かに申し上げられると思います。
  56. 岡良一

    岡委員 それはしかし私はこう思うのです。これは麻薬を使用する者についても、また麻薬そのものについてもやはりグレシヤムの鉄則が生きておるので、悪貨が良貨を駆逐するという形において、両方ともどもの相関的理由でふえて来ておると思う。根本的に言えば、これは吉田内閣の疑獄の責任であると私は言わなければならぬ。そういうふうにいわば国民が希望を失つて、せつな的な快楽に走ろうとする道義的な頽廃は、明らかに政治の貧困ではあろうが、これは青柳先輩もおられるからあえて慎むといたしまして、とにかくそういう数字の裏に隠れてそういうふうに逐年ふえて来ておる。しかもおそらく密輸入業者の密輸入の段取りがますます巧妙になつて来ておるにもかかわらず、ふえて来ておるということも考えられるわけなんですね。そこでそういうふうにどんどん大量に麻薬がふえつつあるということに対して、何らか適切な納得の行く方法を具体的にお示し願いたい。でないと、国内でこれが猶予できるということになれば、これは現在国外から個々に持ち込まれるものについても、相当な処罰をもつて臨まれておるにもかかわらずふえて来る。これが国内であへんを自由に販売することができるということになれば、これを原料とする麻酔剤がふえて来るということにもなるので、国外から入つて来るものが年々ふえて来る。これを取締り得ないうらみがある。なぜこれが十分に取締り得ないのであるか。これをあなた方のこれまでの経験上から、こうしたらいいのではないかという御意見があつたらお聞かせを願いたい。
  57. 高田正巳

    高田政府委員 これはなかなかむずかしい御質問でございまして、どうしたら麻薬の密輸、密売というものが取締れるかということになりますと、そう速効薬があるものではない。法律的な措置におきましては十分な罰則も設けておりますし、取扱いの厳正を期するという意味では麻薬取締法というものがありまして、十分な規制を加えておるわけであります。従いまして結局は取締りの任に当る機構なりあるいは人なりの質的、量的、技術的な向上を期してこの問題に対応するよりほかに方法がないのではないか、かよう考えておるわけであります。
  58. 岡良一

    岡委員 その通りなので、私も非常にむずかしい問題であろうと思うし、これは長年日本政府もいろいろ苦労しながら実効をあげて来なかつた。そこであへん法でそういうむずかしい問題についてたくさんの条章を起してその取締りをやる。が、これまたその実効が期せられるかどうかという点に私は疑問を持つので、その点でお尋ねをしておるのでありますが、この条文に盛られたようないろいろな規制の方法をもつてすれば、不法にあへんの常用者がふえて来るようなことはあり得ないという点について政府の方では確信があるのか。われわれが納得のできる、こういう具体的な方法でもつてやれるということのその骨子となる点をもう一度御説明願いたい。
  59. 高田正巳

    高田政府委員 この法律の全体をごらんいただきますと、まずこれほど非常に綿密に規制した法律は少いくらいの程度に規制を加えております。ただいくら法律で規制を加えても、今の覚醒剤と同じようなことで、やみにもぐる分はどうにもしようがないじやないかという御心配があるかと思います。そこで問題になつて参りまするのは、先ほどからたびたび申しておりますように、どういう程度にこの栽培を許して行くかというその実際の扱いが非常に問題になつて来る。私のただいまの考えでは、これは取締りの任に当ります関係当局が十分なる目を光らせますることは当然でございまするが、それ以外に耕作者がお互いにいろいろ相互監視をするようなことにでもなりまするならば、非常にその辺はうまく参るのではないか。実は戦前日本は相当広い耕作をやつてつたわけであります。その当時からさような組織というものもある程度できておつたやに私も承知をいたしておるのであります。従つてむしろ私の気持では、さような組織などもできて、十分に取締りができる範囲でだけ許して行こう、その程度考えを持つておるのでございます。従いまして、この法律通りましても、ただちにけしの栽培を方々でやつて、それが流れて行くというふうな御心配は、まずこの運用によつてなくして参りたい、かようなつもりでおるわけでございます。
  60. 小島徹三

    小島委員長 杉山君。
  61. 杉山元治郎

    ○杉山委員 私はけしの栽培について一、二伺つておきたいと思うのであります。  さきに滝井委員のお伺いしたところでは、戦前の栽培面積は千六百町歩ほどあつた、こういうことでございますが、二十九年度はまだ不明で、大体申請者の模様によつて決定する、こういうようなお話でございましたが、もし申請者がございましたならば、何ほどでも許すおつもりであるのか、まずこの点を伺いたいのであります。
  62. 高田正巳

    高田政府委員 法案の十一条に「厚生大臣は、毎年、けし耕作者又は甲種研究栽培者がけしを栽培することができる区域及び面積を定めて、公告する。」ということになつております。これは何々県のどこそこ地方というふうに厚生大臣の方で先にきめてしまう、それで総面積も全国で幾ら、何々県では幾らというふうにきめて公告をするわけであります。それでその範囲で許して行くわけであります。しかしながらその面積にも申請者が達しない場合には、もちろんそれより以下になりますが、それ以上出て参りました場合には、栽培を許可いたさない、かような運びに相なる次第でございます。
  63. 杉山元治郎

    ○杉山委員 そういたしますと、大臣はあらかじめ区域並びに面積を公示する、こういうことならば、先ほどお話の、二十九年度はどれくらいやるという大体の予想があるはずだと思うのですが、さきのお話ではそれはわからない、こういうようなお話でございましたから伺つたようなわけであります。
  64. 高田正巳

    高田政府委員 私の申し上げ方が悪かつたかも存じませんが、大体まきつけをいたすのは本年の秋でございます。従いまして、それまでに定めればいいのでございます。それで予算が通過いたしますれば、本年の春には外国から輸入をいたすことになつております。その買付の状況でございますとか、それから国内のあへんの需給の状況等をいろいろにらみ合せて、本年の秋までにきめたい。それで、ただいまのところ何町歩とか、何十町歩とかいう数字については、まだ腹案を持つておりませんけれども、いずれまきつけをいたしまするまでには、諸般の情勢をにらみ合せまして、しかも先ほど来、るる私が申し上げておりますように、取締りのできる程度範囲、地方でということを頭に置いて、その面積なり、区域なりをつかみたい、かようなつもりでいるわけでございます。
  65. 杉山元治郎

    ○杉山委員 実は戦前ども大阪の三島地方で、御承知ように、たくさんつくつてつた関係もございますので、一応そういうことがわかりますれば、われわれの地方の非常な参考になる、こういう点で、あらかじめその点を伺いたい、こういうふうに考えたわけであります。  そこで、先ほどもお話がございましたごとく、けしを栽培さすというのには、現在栽培しているものよりもより多くの所得がなければ、これは勧めてもできないと思うのであります。そこでけし栽培をいたしますと、反当り一体どれほどの収入があるというお見通しでございますか。
  66. 高田正巳

    高田政府委員 これはしばらくとぎれておりますので、栽培の状況がどういうふうになつて参るかということは、実際にやつてみませんとちよつと見通しがつかないと思うのでございますが、大体戦前と同程度と一応考えまして、そしてあへんの反当りの収穫は二キロないし三キロ、あへんのモルヒネの含有量は一〇%、こう仮定をいたしてみますと、収納価格をモルヒネ一キロ当り六万円とかりに計算をいたしますと、反当の収入は約一万二千円から一万八千円程度になる計算となる次第でございます。それにけしの種子、けし粒の販売による収入等も考えることができると思うのでございます。それで現実にどのくらいの収入になるかということにつきましては、先ほど申し上げましたように、栽培技術の上手下手にもよるわけでございますが、政府の収納価格によつて非常に大きく左右される、それでその収納価格を定める際には、生産者の生産事情というものを考慮の一番大きな要素に置きましてこの価格を決定しなければならぬ、かように存じているわけでございます。
  67. 杉山元治郎

    ○杉山委員 今お伺いするような反当り一万二千円やそこらですと、たとえば麦をつくりましても、上手につくりますれば三石内外とれますから、現在の作でも大体それ以上になるのであります。そういうような点で、政府の方でいろいろと御要望になつても応じにくい。また今申すようないろいろなめんどうな取締り等もございまして、そういう点を非常にきらう農民としては、むしろ少しくらい収入は少くても楽な方がいい、こういうことになりはしないかという心配をいたすのであります。それはそれとしまして、そういう収納価格はいつごろにきめて、農民に知らされますか。
  68. 高田正巳

    高田政府委員 三十一条の二項にございますが、「毎年九月三十日までに、あへんの収納価格を公告する。」ということになつております。言葉をかえて申しますと、種をまく前にということでございます。それでその価格によりまして翌年度とれましたあへんを収納いたすわけであります。
  69. 杉山元治郎

    ○杉山委員 そういうふうに種をまく前にその年の収納価格がわかつておらなければ、いわゆる災害補償の問題におきましても、七割の収納があれば補償をしない、こういうことになつていますと、価格の模様があとで変動されると、七割にならなかつた、こういう問題でいろいろ問題が起つて来ると思いますので、あらかじめそういうふうな収納価格がわかりますならば、三割以上の災害、こういう場合に初めて補償の問題がはつきりして参ると思うのであります。しかしその三割の災害というものも、そうするとその地方々々によつて、大体この地方はこれだけの収納がある、こういうきめでございますか、あるいは政府自体の方で大体一反歩ではこれだけとれるものだ、これがとれなかつたらどう、こういうことになるのでございます。か、あるいはそういう概括的なものではなしに、その地方地方で、お話のように土地の関係もございますし、また栽培技術の関係もありまして、いろいろと収納の率が違うのでございますが、もし政府の方でただ概括的にきめておきますと、今のような各所においていろいろの弊害がまたできて来るのではないかと思いますが、その点ひとつお伺いしておきます。
  70. 高田正巳

    高田政府委員 収納価格は含有しておるモルヒネの量できまると思うのでありますが、そのきめ方は地方々々によつて区別をするかということでございますが、これは全国一本できめたいと思います。そうして土地の関係その他でとてもそれだけの採算のとれないところではこれはやらないということになつて来なければならぬ。従つて結果といたしましては、おそらく昔からやつておいでになりますところで、栽培技術の十分に上手な方がたくさんおられて、耕地の土壌の関係等も非常に都合がいいというようなところを、私どもも区域として指定をいたすつもりでありますし、また申請も出て来る、かようなことに現実問題としては相なるかと思います。
  71. 杉山元治郎

    ○杉山委員 収納価格はモルヒネ含有量のパーセンテージでお出しになる、これは特別問題はないと思います。ただこの土地は三割の災害があると認めるのにどこを標準に置くかということなんであつて、その地方々々の大体の生産率と申しますか、収穫率というものがはつきりわからないと、三割以上の災害かどうかということはわからないと思う。大体そういうことを地方地方の植えつける場所で、ここでは大体このくらいの収穫なんだ、こういうことをあらかじめおきめになつているのかどうか、その点をお伺いしているわけであります。
  72. 高田正巳

    高田政府委員 その点につきましては災害補償のことを規定しておりまする三十三条の条文をごらんいただきますと、「その者の平年度収納代金の額の十分の七」、こういうことに相なつておるのでございます。その具体的なその人の平年度収納代金の算定の方法は政令の定めるところによる、こういうことに相なつておるわけでございますので、御心配はないものと存じます。
  73. 杉山元治郎

    ○杉山委員 年々栽培をされているならば、大体その人の平年の収穫量というものはわかるのでありますが、今度しばらくぶりで初めてやる、こういうことになりますと、そこは標準がきまらぬ、こういうわけなんです。だからそこをどういうふうに政府の方でおきめになつているか。大体こういうようになるからこれぐらいとれるのだ、それにならなければどうする、こういうのか、この地方では戦前に栽培していたときにこれこれであつたから、その地方ではこれこれとれる、こういうような標準をきめているのかどうか、この点を伺つているわけであります。
  74. 高田正巳

    高田政府委員 なるほど来年度、本年度は初めてだから平年度がないじやないかという御質問でございますが、それはまつたくその通りでございます。従いましてまあ戦前にやつておられましたときと同じような条件のときでも押えてということに相なるかと存じますが、その辺のところはただいままだ十分に成案を私自身も持つておりません。ただ御指摘の大阪の三島郡につきましては、先ほど申し上げました本年度麻薬取締法による研究者として若干の研究的な栽培をしていただいておりますので、さようなもの、その実績等もその際の資料の一つとして考え得るのではないか、かように今のところ考えております。
  75. 杉山元治郎

    ○杉山委員 まあそういうような点でいろいろとやつていただきたいと思いますが、これは非常に微妙な点で、三割減収だということはもちろんいわゆる政府の収納した量によつてきめられるのだろうと思いますが、その点で先ほどいろいろ御心配があつたように、これを隠して他に転売されるのではないかという心配もある。私はそういう悪い百姓さんがあるとは思いませんけれども、ごくわずかなところでありますと、これならばいわゆる災害補償にかかるということから、今言うようにそのものが隠される、あるいは転売されるという危険もないとは限らないと思うのですが、そういう点についての十分なる監督はされるだろうと思います。他の農作物については御承知ようにそういう災害についての評価委員と申しますか、災害評価の共済制度があるわけでありますが、平生からそういうような災害の模様を調査をする委員とか、何らかの制度が考えられているものでしようか、どうでしようか。
  76. 高田正巳

    高田政府委員 その点につきましては、ただいま具体的には考えておりませんけれども、この仕事を進めて行く際におきましては、農林省の特産系統の方と十分に連絡をし、協議をしてやろうということに、政府の内部では話合いをしております。さようなことにつきましては、農林省方面がいろいろと事情にお詳しいと存じますので、この方の御意見も聞いて、もしさようなものが必要であるというようなことにでもなりますれば、またそのときにひとつ十分考えて参りたい、研究を今後重ねて参りたい、かよう考えております。
  77. 杉山元治郎

    ○杉山委員 栽培者の問題については、私はきようはこれだけにしておきます。残余のものはまたあとでお伺いしたいと思います。
  78. 小島徹三

    小島委員長 本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。   午後零時、三十九分散会