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1954-08-12 第19回国会 衆議院 建設委員会河川に関する小委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年八月十二日(木曜日)    午後三時二十七分開議  出席小委員    小委員長 内海 安吉君      岡村利右衞門君    仲川房次郎君       堀川 恭平君    志村 茂治君  小委員外出席者         議     員 高木 松吉君         議     員 五十嵐吉藏君         議     員 三鍋 義三君         議     員 細野三千雄君         議     員 只野直三郎君         通商産業事務官         (公益事業局次         長)      小出 栄一君         建設事務官         (大臣官房長) 石破 二朗君         建設事務官         (計画局長)  渋江 操一君         建設事務官         (河川局次長) 植田 俊雄君         建 設 技 官         (河川局長)  米田 正文君         参  考  人         (藤原ダム対策         期成同盟委員         長)      林  賢二君         参  考  人         (目屋ダム対策         協議会委員長) 工藤栄太郎君         参  考  人         (三峯ダム対         策協議会委員         長)      伊藤 修治君         参  考  人         (長安口ダム水         設補償対策連合         会代表)    下内  憲君         参  考  人         (花山ダム対策         委員会委員長) 千葉  盛君         参  考  人         (笹生川ダム対         策協議会委員         長)      安間市太郎君         参  考  人         (御母衣ダム反         対期成死守会会         長)      建石 福蔵君         参  考  人         (田瀬更生会代         表)      横田 徳隣君         専  門  員 西畑 正倫君         専  門  員 田中義 一君     ————————————— 五月三十一日  小委員山下榮二君が同月十五日委員辞任につき、  その補欠として稲富稜人君が委員長指名で小  委員に選任された。     ————————————— 同日  堀川恭平君が同月二十七日委員辞任につき、委  員長指名で小委員に補欠選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  ダム水没地域補償に関する件     —————————————
  2. 内海安吉

    内海委員長 これより河川に関する小委員会を開会いたします。  ダム水没地域補償について調査を進めたいと思います。本日は参考人としてすでに御配付いたしました八名の方をお招きしております。この際参考人方々にごあいさつ申し上げます。  本日はお暑いところ遠路御苦労様でございました。本件につきましては、委員会といたしましても、たびたび取上げまして審議して参つたのでありますが、現地方々意見を伺い参考といたすことは、本日初めてなのであります。  その前に御注意申し上げますが、発言は御一人十分程度で御説明を願いたい、そうしてその後に質問に入りたいと存じます。御発言の際は必ず委員長とお呼び願いまして、許可を得て発言していただきたいと思うのでございます。  なお、本日当局として建設省より米田河川局長植田河川局次長、通産省より小出公益事業局次長、この方々がお見えになつております。  それではこれより参考人の御意見を聴取することといたします。第一に群馬藤原ダム対策期成同盟委員長林賢二君の御意見を伺います。
  3. 林賢二

    林参考人 説明に入ります前に、今回の陳情に対する私たちの主目的を簡単にお話いたします。  諸先生方も非常にお忙しいところをおさきくださいまして、私たちのためにこの会議を持たれましたことについて、心から感謝いたします。ダムの問題につきましては、全国をあげて非常な問題であり、また現在すでに工事に着手しておる、あるいは計画に入つております地区を合せまして百六十三箇所、現在計画を持ちあるいは予定し、あるいは地元住民反対を受けて工事に入れないものを合せて約百五十箇所、総計三百十何箇所にわたるダム建設計画を持ち、あるいは現在施行されております。この被害を受ける人員たるや十万九千八百何人、約十一万の人間が、今ダムの問題を中心といたしまして毎日不安と焦慮にかられておる状態でありまして、そのことにつきましては、すでにしばしば中央の国会、政府等に対しまして、陳情、請願あらゆる方法をもちましてお願いが数百回に及んでおると存じます。本日ここに会合いたしました私たちは、この全国ダム地域のうちで、現在最も危急に瀕しておる地区が今回の会合を持ちまして、すでに先生方のお手元へ御配付申し上げてありますところの八箇所のダム代表として参つております。すなわち群馬県の藤原ダム、福井県の笹生川ダム青森県の目屋ダム、岩手県の田瀬ダム宮城県の花山ダム、岐阜県の御母衣ダム徳島県の長安口ダム、長野県の三峯ダム等がそれぞれ参つておりますが、このそれぞれの代表から、現在大きな悩みにぶつかつております問題につきまして御説明申し上げ、とくと先生方の御了解を得て、このダムの問題を、一日も早く最も有効かつ適切に御処理を願いたいということが今回の目的でありますので、この陳情の趣意を申し上げたいと思います。さらに紹介議員地元先生お願いしておりますが、総体的にはすでに建設委員長久野先生あるいは河川小委員長内海先生等の御配慮を深く煩わしておることに対して、特にここに記名しておりませんことを申し上げておきます。  国土総合開発の促進と総合補償対策確立に関する陳情を申し上げます。  政府施策の基本として、国土総合開発の強力な推進に当つているが、その中心をなす事業は、毎年度頻発する災害の防除と水資源高度利用開発、保全のための多目的ダム建設河川改修及び産業開発交通網整備である。  これらの国土総合開発上の中心事業に関しては、所管する建設省が、絶えずその衝に当つて来たところでありますが、国民経済飛躍的発展のためには、災害による減産の防止、生産力の拡充、生産基盤確立、民生安定の施策としてきわめて有効適切であつて、これらの事業完遂に対しては、国民がひとしく賛意と協力を惜しむものではないことは贅言を要しないところであります。  しかるに、その反面、ダム建設その他建設事業用地獲得に伴う補償について、何らの統一なく、合理的な補償がなされていない実情は、きわめて遺憾とすべきであります。すなわち補償実情は、従来犠牲者の名をもつて呼ばれている通り、単なる損失補償であつて、損害に対する埋合せ的補償という姑息なる方法から一歩も脱していない。さらに最も遺憾とすることは、一時的に金銭を支払うものが大部分であつて、真に被補償者生活再建基盤長期にわたつて償おうとする積極的な総合施策が立てられていないことであります。この点は、現在各地方において当面している数多くの事例が如実に示しております。すなわち一時的金銭補償のみでは、安住の地を離れた、精神的衝撃を与え、絶えずつきまとう生活不安に災いされて、生活再建の意欲すら喪失し、はなはだしきは一介の流浪者に堕していることは、国家施策無為無能を露呈せることはなはだしきものがあります。また被補償者補償金獲得をめぐつて、あらゆる悪徳手段が講ぜられ、これによつて惹起されるはげしい混乱と焦慮は、平穏な農山村の生活基盤に著しい社会不安を醸成しております。このような諸事態のために総合開発の諸事業実施を極度に遷延せしめ、貴重な財政投資を空費し、ひいてはわが国経済自立達成をはばんでいることも座視するに忍び得ないところであります。  よつて、これらの事業に直接関係を持つて地方機関を指導し、総合計画の企画、立案と総合開発事業中枢事業実施を担当する建設省は、すみやかに地域特殊性を考慮の上、次の総合補償対策を樹立し、早急な実施に当られるよう要望するものであります。  一、国土総合開発一環として、水没その他建設事業に伴う補償実態等の公正な調査を早急に実施すること。  二、右と並行して生活再建環境整備中心とした総合補償長期更生計画を樹立すること。  三、財産権及び精神的補償相当額とし、代替補償制度確立すること。  四、以上を実施するため、昭和三十年度において特別立法を制定し、補償問題のすみやかな解決をはかること。  なおつけ加えまして、現在の土地収用法の一部改正の中に、河川委員会制度というようなことが設けられているそうでございますが、その制度を持つとすれば、一応全国の各ダム建設被害地帯状況を十分に取入れた方法でなければ、全然無意味であり、かつ、これによつてむしろ災いを増すのではないかというような点も思い合せまして、本日の陳情に対する趣旨説明を終ります。
  4. 内海安吉

    内海委員長 政府答弁は、八名の参考人方々意見開陳が終りましてから一括して答弁することにいたしますから、あらかじめ御了承願います。  次に青森目屋ダム対策協議会委員長工藤栄太郎君。
  5. 林賢二

    林参考人 ただいま総体の陳情説明を私が申し上げましたので、藤原ダムにつきまして説明させていただきたいと思います。
  6. 内海安吉

    内海委員長 工藤君に発言を許したのですが……。そうして林さん、もうお時間になつております。ですから、あまり余談にわたらないようにやつていただきませんと、あと方々が非常に迷惑します。
  7. 林賢二

    林参考人 ただいま総体的に陳情趣旨だけを申し上げたわけであります。地区状態を……。
  8. 内海安吉

    内海委員長 それでは藤原ダム——工藤さんの御意見発表はしばらくお待ちを願つて、林さんにもう一度お願いいたします。
  9. 林賢二

    林参考人 利根川最上流に現在建設中の建設省直営工事藤原ダム状況につきまして御報告申し上げ、さらにお願いを申し上げたいと思います。  水没戸数は二百二十戸、耕地四十五町歩林野二百五十町歩であります。  現在藤原ダム出先関東地建関係とそれぞれ補償折衝をいたしております。この補償のあり方につきましては、率直に申し上げまして、電源開発あるいはそういつた関係補償との従来からの一つの行きがかり上、補償交渉に非常にかけひきがある。こういう点が、私たちは非常におもしろくないという立場から、現在その地区状況を十分勘案いたしまして、私たちが常に是正し合つたところの線において補償折衝を進めているということを申し上げ、将来の補償関係する考え方としては、ぜひ総合した——総合したということは、ただ単に金銭的な補償だけではいけないということを申し上げまして、真に水没犠牲者が、将来生活権を立て直せる意味合いの公正な補償でありたいということをお願いいたします。  二つ目に、ダム地帯生活設計中心国有林にある、このことを強くお願いしたいと思います。少くとも全国ダム建設地帯は、御承知のように山間僻地であります。山に依存をして生活をする者が八割、九割以上であります。これらの人々がそれぞれ家を失い、耕地失つて立ちのいて行く場所は、やはり山を求めて行かなければ、求める土地がございません。また反面には北海道に入植しろ、あるいはブラジルに行けというようなお話もございますが、一家をそれぞれ携えておる者は、そういう大英断はなされないために、必ずその山間地帯中心として生活を立てるのが建前でございますので、この件につきましては、総体的な問題といたしましてぜひともお取上げ、おとりはからいのほどを願いたい。  三つ目の、永久補償である水面使用権及び漁業権について一このことにつきましては、ただいまの問題と関連いたしますが、ダム建設されますその地帯中心として、犠牲者は将来の生活構成を立てます。そうして、そこにでき上つて来ますところ湖水を利用して将来の生きる道を立てることは当然の事実であります。その場合に、この水面権利あるいは将来漁業によつて生きようという権利がすべてなく、現在の場合においては、犠牲者に使用させてやるというような法律ももちろんございませんし、生き方も全然ないのでございます。これは、少くともダムの問題を計画すると同時に、こういつたものを中心とする犠牲者生き方十分政府自体において考えていただきたい。なお、この水面使用権利用権等は、国か一銭も金を出してやるわけではございません。この権利地元に付与することによつて、あらゆる問題が相当前進されるということを確信しております。この件につきましては、ぜひとも強くおとりはからいのほどをお願いしたいと思います。  四番目に、単なる金銭補償に終ることなく、将来の生きる道を指導されたいということ。これは何でも金をくれてダム建設地帯から追い払つてしまえという行き方が、ほとんど従来の行き方でございました。それが現在すでにダムが構築されまして、その犠牲者がそれぞれの場所一移住して生活を営んでおる状態をつぶさに皆さんに見ていただきましたときに、その人たちが現在どのような生活をしておるかということは、まつたく慄然たるものがございます。ただ単に買収的金銭補償で、あとはお前たちすきにせいというような非常に不親切な問題を中心として、犠牲者は非常にあえいでおるという事態がございますので、金銭補償というそのことだけに終らずして、必ず犠牲者はこのようにして生活を立ていという将来の生きる道をはつきりお示しになつて、さらにこのダムの問題を推進願いたい。  以上四項目にわたりまして藤原ダムから特に御要望、お願い申し上げるわけでございます。
  10. 内海安吉

  11. 工藤栄太郎

    工藤参考人 青森目屋ダムであります。水没戸数八十八戸、人口約七百人、水田四十七町歩、畑地二十五町歩山林原野百三十三町歩りんご園十五町歩宅地一万五千坪でありますと  同ダムについての調査は十年以前からでありまして、いよいよ昨年度から工事に着手することになりました。水没者の要求するところでは、補償面を早急に解決すること、補償面解決せぬ間は工事に着手せぬこと、この金銭にてできる補償は、本工事に着手すると同時に支払つてもらいたい、こういうお願いでございます。  次は更生施設です。この竣工せるダム水没者移転者実情を見るに、金銭にて解決するのみでは物価の変動による更生施設が成り立つておらないようであります。  その次の願いは、国有林野の払下げでありまして、その次は漁業権獲得であります。  そこで初めの謝金すなわち慰藉料でありますが、われわれとしては祖先伝来の墳墓の土地を、国家的要請により、大乗的見地より忍びがたきを忍び、涙をのんでこれに応ずるものであります。しかりといえども、これを処理するにあたつては、先祖、子孫に対し、われらの責任の重大なることは、品や筆にて尽すことのできない精神的打撃、また無財産の者に対してはほとんど補償がないくらいであります。しかしながら、無財産の者といえども、その土地においてりつぱに生活を営んでおるのでありますからダム建設のために生活権を言われるので、これに対して国として相当慰藉料を払うことは当然と考えるのであります。一例をあげて申しますれば、学校の職員にしても二十年以上勤務の人は、退職した場合、老後を安楽に過すくらいの退職金をもらえるのであります。また結婚後一、二年過しただけでも、離婚の場合はこれに相当慰藉料を出しておるのであります。政府といたしましても、この補償の率を御了解くださいまして、誠意ある施策を講じてくださるようお願いする次第であります。  最後に、必ず謝金を多分に決定せられますよう特に要求する次第であります。
  12. 内海安吉

  13. 伊藤修治

    伊藤参考人 天龍水系三峯ダム代表者伊藤修治であります。  水没戸数四十二戸、耕地七十町歩林野八十町歩であります。  一、各省関連性を持たせることについて。総合開発一環たるダム構築問題に関しまして、各省がさらに関連連絡性のないことは非常に遺憾のことである。少くとも総合開発の意義から申し上げましても、当然これは関連性を持つべきものだと私は信じているものであります。即時各省関連性を持つべく、要求すればさような機関をつくつていただきたい。  二、個人補償公共補償は、あわせて行つてもらいたい。ダム構築による補償問題は、個人補償公共補償というものは、少くともあわせて行われるべきものだと考えます。しかしてその犠牲に当面した犠牲者に対しては、村はあたたかい包容をもつてその犠牲者を他に移住させ、あるいは残された財産を保護してやつたり、保護された財産の処分をしてやつたりしてこそ、初めて犠牲者完全補償にやや近いものが得られるものと信じております。それがゆえに、公共補償をあわせて行つてもらいたい。そのためには、その村における産業開発、すなわち林道の開発あるいは灌漑用水開鑿とか、農道の開鑿とか、特別助成の方途を講じていただきたい。  三、土地改良助成特別例を設けてもらいたい。これは前項にちなんだことでありますが、水没農村が、川の流域が水没して上段丘地農地開鑿しようとした場合に、あるいは井水の必要が起る。あるいは農地開鑿をしなければならぬというような場合に、段地が非常に狭いので、今の土地改良助成法からいうと、おそらく恵まれない形になつているわけであります。ゆえに、これに対しまして特例を設けて、かような場合においては相当助成をもつて代替農地ができるようにしていただきたい。  四、電力統制特例を設けてもらいたい。これはすなわち発電県または発電村が特殊産業に対して必要とする場合、あるいはその村の産業、石炭に対する産業、林業に対する産業今の統制下に置かれましたところ電力に対するところ特例を設けて地方産業発展に寄与させていただきたい。  以上であります。
  14. 内海安吉

  15. 下内憲

    下内参考人 徳島那賀川長安口ダムは、徳島市を去る西南二十里、那賀川上流那賀宮浜地内長安品に構築されつつある計画の八十三メートルのダムが完成しますと、宮浜、平谷、坂州の三村二里半湛水湖水によつて水没総世帯は百五戸、田畑およそ十七町歩山林余町歩、神社三、橋梁四、国道のつけかえを要するものが全長二里余であります。  なぜ今まで工事が進捗したか。現在五十余メートルに達しているその工事が始められたとき、補償問題妥結に至るまで工事関係者から反対を続けられていましたが、工事準備工事であると称しながら、ボーリングによる地質調査の延長は南岸に仮排水隧道をつくり、仮設装備整備せられ、昭和二十九年度の末には一部発電を目標として予算獲得運動のためにやむを得ぬ状態であるということが巷間に伝えられておりました。当時二十七年の三月、改進党から出ておられる岡田先生相原先生の両氏並びに県会議員方々現地においでくださいまして、再三の現地調停によつて阿部知事との間に現実に即する物心両面完全補償を条件として、私どもは慈父のごとく尊敬するところ知事の言葉に全幅の信頼をかけて工事の続行を了解しました。しかるに、爾来数十回補償基準案提出方を要望いたしましたが、昨年四月ようやく現地宮浜村公民館において、杉本土木部長折衝覚書の交換をいたしました。  その内容は、補償基準折衝団体交渉とすること、妥結したところの条項の発表双方合意の上でなすこと、補償妥結しても移転完了までに二箇年以上の猶予期間が必要であることも認めたので、当時立会いの県会議員もともに捺印のもとにその覚書を交換したのであります。  その補償内容とするところは、生活の保障を前提とする全体の補償問題の解決方を要望し続けて来ましたところ、昨年の七月に至り県の基準案なるものを発表せられましたが、それは閣議了解基準要綱にのつとつて作成したものでありまして、前段覚書を無視し、しかも近傍類地売買価格及び現地において造成するところ価格等、他府県の実例に照し、まつたく一方的なるところ県案に対し、われわれは全面的に改訂の要を訴えて拒否いたしました。  越えて本年本月五月に至り、再び改訂案なりと称するものを示されました。物価上昇率を勘案して改訂したと申されますが、そのつくられたところの案というものは、田畑山林宅地有形物のみにつきまして五割ないし一割五分程度の引上げを認めておりますが、一般勤労者並びに商業者に対する面において、生業あるいは経営権に対する無形の補償は全然認められておりません。それがために、私どもはとうてい他町村に移住して生存することの不可能なることを痛感いたし、拒否せざるのやむなき点を述べて、去る七日文書をもつて拒否したのであります。かようなることは全国いずこを尋ねましても前例のないことであると思われます。今後はいずこでダム計画せられましても、まず私どもがあいましたかような悲惨なことがないように、補償交渉解決された上で着工されるように希望を申し上げます。  それと危険対策については、前段申し上げましたように五十余メートルのダムが構築せられますと、那賀川水量というものは非常に莫大なものになることは、建設委員方々におかれましてはつとに御承知のことと思います。那賀川の仮排水ダムは、一年に二、三回のオーバーであるというような設計のもとにつくられたのでありますが、私ども承知しておる範囲におきましても、昨年十三回のオーバーがございました。そうして先般六月の二十八、九日の雨量は、約一千五百トンの水量によつて、現在構築せられておるところの第三ブロツクと、南岸に属するところ低地部の岩盤の上をオーバーする莫大な水量でありますし、那賀川上流には数千万の木材がいつも放流されておるので、もし一朝ダムにかかつたならば、上流の者はたいへんな危険に瀕するのであります。それと私ども承知しておりますところの大正七年七月十二日の洪水のときの水量——これは徳島の測候所にお伺いしましたが、記録がないという御答弁でありましたが、二十五年九月三日のジエーン台風において、六千百トンの水量が流れておるという事実がございます。それと照し合せてみますと、この五十余メートルのダム上流に、もしそういうような水が来ましたときには、上流における数戸の人家、人命というものは、危険にさらされておるのが現状であります。その点をつぶさに御検討賜わりまして、もしこのダム構築国家経済並びに国民の福祉に貢献するためにあるとしましても、人命にかえがたいものであると思いますので、さような点を十分に御調査を賜わりたいと存じます。  私どもは、ただ無謀にこの補償金額を要求するものではございません。あるいは他に転住いたしまして現在以上の生活が約束せられるならば、どこまでも大いに協力いたしましようとお誓いいたしましたことは、いまだもつてかわりがないのでございます。かような次第でございまして、徳島那賀川ダム構築がすみやかに完成いたしまして、国家経済並びに徳島県の後進性を将来とりもどすべく御配慮、御努力をお願いして終りといたします。
  16. 内海安吉

  17. 千葉盛

    千葉参考人 宮城花山ダムとよそのダムと違う点を申し上げたいと思います。第一、水没戸数は百九十六戸、宅地二十町歩公共施設、これは全部でございます。耕地百十町歩林野六十五町歩、以上のような状態になつておりますが、これは村の最も中心地全部が湖底にされるという結果になるのでございます。従いまして、その水没する地区補償のみで完全な補償といい得ないという点を、十分御了承願いたいと思います。  次に、私どもの特に常に考えておることでお願いしたいと思いますことは、第一に、この補償に関する考え方、この面において私どもどうしても承服のでき得ない感じを持つておるものでございますが、その理由といたしましては、受益者は、下流の地域におりながら、永久にダムによつて災害をこうむらないのだという安心がある。またそれによつてこの地の経済に及ぼす影響は、まつたく甚大なものがあると思うのでございます。それに反して、私ども水没する者の場合、先ほどどなたかの陳情の中にもありましたごとく、物や金にかえることのでき得ないとうてい忍ぶべからざるものがあるのでございます。詳しく申し上げますと、いろいろむずかしくなりますけれども、われわれ住みなれた郷土、先祖代々が血と汗によつて築き上げたる一切の財産を放棄するという、その精神的の打撃は、永久に何ものによつてもいやすことのでき得ないという大きな打撃のあることを、まずもつて御了承願つておきたいと思うのでございます。従いまして、その経済に及ぼすところの問題、これに対しましては、従来の補償された人の生活状態を見ますに、現在の補償の算定においては、決してこれが完全な補償であつたということは、遺憾ながら私ども見ておらぬのであります。私ども水没者は、全国的に同様と思いまするが、ほんの片いなかに住むほんとうの純心な農民が対象になるのであります。かような片いなかにおりながらも、先祖伝来なして来たそのことを継承してやつております。生活という面においては何ら心配がない、いわゆる安心感を持つて生活しておることは、申し上げるまでもないのであります。こういうような状態にあるものが、いわゆる国策によつてダムの候補地になりますと、国策に対して反対するということは、もちろんこれは国民として恥ずべきことであるというようなことが私どもの頭の底にはよくこびりついておりますので、この点に対して、反対はもちろんできぬことでございます。しかしながら、生活という面に対しては、いろいろただいま申し上げましたような無形——形の上に現われざる問題が多々あることをお考えをいただきまして、なお下流の人たちは、いながらにして何ら心配なくして生活ができるのに、そのために犠牲に——犠牲という言葉が当るかいなかわかりませんが、政府とするものの立場はそうしたものによる補償、いわゆる一対一、こういつたような原則によつてこの問題が解決されるということが、決してこれは妥当でないのではなかろうか、かようなことを考えるので、この点善処をしていただくようにお願いしたいと思います。  次に、工事の着工は、補償の一切が解決されないうちに着工されては困る、こういう問題でございます。先ほどどなたかの御説明にもありました通り、実はこの問題に対しては、しばしば陳情いたしておりますけれども、各所の従来やつた経験から見ますと、附帯工事だ、あるるいはつけかえ道路であるから、こういうような名目のもとに仕事に着工することが、まずもつて先になつておるのが現在の実情でございます。こういうようなことで、さきに申し上げたような片いなかの私どものような者が、目の先にハツパをかける、あるいは何千人の人が来てその工事に着工する。本工事補償解決せぬうちはやらぬとはいうものの、そういうような工事に着工されたとき、そのときの部落の者どもの気持をよくおくみとりをいただきたい。非常に脅威を感ずることは申すまでもない、こういうようなことになつては、いまさらどうにもならないというような非常な心配をする。従つて補償の問題に対してはもちろん考えてはおりながらも、どうにもならぬのだ。いわゆる、申し過ぎるかもしれませんけれども、圧迫がされておる、圧迫感を感じておる。従つて補償の問題については、言いたいこと、お願いしたいこともせずに、やむを得ず承諾をした結果、生活においてまことに困つたことが起る。このときに初めてわかつて来る。その実情をよくお調べ願つて、そういうような誤りのないような方法をとつていただくことをお願いしたいいと思います。  次に税金についてでございますが、これは法の内容によつて、私どもつてなことを申し上げてどうかというような懸念もされますけれどもダムによつて得たところのものに対して税金を賦課する、こういうことは、まことに不合理でなかろうか。もちろんその場所にそのままおれば、何らそうした税金は賦課されなくとも済む。しかるに、いやなことをしいられると申し上げましては言い過ぎかもしれませんが、心の底では決して喜んで御協力を申し上げる気になれない、実情を申し上げればそうです。しかしながら、これは国策である以上、やむを得ないと思うというので、泣きながら承諾をしておる。そうしてその代替として得たものや金、これに対して税金を賦課する、その補償のうちに大体税金というものも含んで補償されるのかいなや、こういう点を考えまするときに、この問題に対しては、当然税を賦課するということをしないようにしていただきたい、かように考えるものでございます。  いろいろ申し上げたいことはたくさんありますけれども、時間の関係もありますので、私からこれだけをお願いいたしておきます。
  18. 内海安吉

    内海委員長 次は福井県筋生川ダム策協議会委員安間市太郎君。
  19. 安間市太郎

    ○安間参考人 福井県笹生川ダムの概況。笹生川ダム策協議会委員安間市太郎。流域面積約八千町歩、うち村有林が三千町歩。内訳、水没宅地一万八千九百五十一町、田十六町四反、畑百町、山林二百五十八町、原野七町、採草地七町四文、その他七町となつております。  昭和二十六年度に計画されまして、福井県総合開発一環といたしまして笹生川にダム建設することになつたのであります。最初知事の公約では、いずれのダムにも負けない補償をする、移住地をつくりダム犠牲者のモデル・ケースとして文化村をつくり、生活に不安なからしめるよう努力をする、こういう公約のもとにわれわれはダムを承諾いたしました。しかるに、県といたしましては、調査その他工事には相当力を入れておりますが、補償問題に入りますと遅々として進まないのであります。ようようにしてこの六月に出して来た県の補償案たるや、微々たるものでありまして、それは三分の一程度のものを出ないというような、実に劣つた補償でございます。それで、われわれは地元案をつくつて、ただいま県へ提出しておる次第でございます。さきにも御説明もあり、またほかの地区からも御説明があると思いますので、わが笹生川の特異性についてのみお願いいたしたいと思います。 残地補償について——笹生川ダム地区は、他のダムとは少し意味が異なるのでありまして、他県のダムでありますならば、国有林が百町あるいは千町内外でありまするが、わが村は国有林は一つもないのであります。公有林を除いたほかは、全部私有あるいは共有地になつておるのでございます。今までは、この広大な山林によつて村全体が製炭あるいは製材、その他それに付随する工事によつて生計を立てて来たのであります。あまつさえ他県より林業その他の人が年々何十人と入り込んで、われわれの村で出かせぎを吸収する余力を持つておつたのでありますが、このダムのために立ちのきを余儀なくされれば、他地へ入植するよりしようのないというわれわれの現状であります。  下の工事は、全部水没されまして、山の急斜面に村を建てることもできず、どうしてもこれは大野市、十二、三里離れたところへ移転するより方法はないのであります。県はこれに着目いたしまして、木本原総合開発を今やつておる次第でございますが、この総合開発にわれわれを移されましても、ここには何ら山林、薪炭林というようなものの配分の方法は考えられないのであります、これはこの土地にないのであります。それでわれわれは、この大きな山林をこのまま置いて行けばかわいそうである。どうしても残地補償というものを受けなければならぬ。なおまた、この細民の立ちのきに際しましては、残地補償より得る補償金額を同等に配分して立ちのかなければ、とうてい立ちのけないということによりまして、ある程度田畑等の価格は他県よりも引下げて、この方を要求しておるのでございます。  なお天恵物補償というものを要求しております。これは八千町歩の山を控えておつたので、今までの収入あるいは付属物は事欠かず、無限に、永久に与えられた天の恵みでありまして、これを離散すれば、ただいまも申し上げましたように薪炭林すらないのでありますから、こういう恵みにはあえない、また何どき不幸があつても——夫を失いむすこを失いましても、これによつて収入を得て生活をするということはとうてい望めないのであります。従つてこの天恵物補償というものをお願い申し上げたい。  それから移住が、入植に際しては国策である以上、国家開拓地については入植民並の取扱いが受けられるよう御配慮願いたい。  これら三項目を笹生川ダムの特異性としてお願いいたしたいのでございます。何とぞ御配慮を願います。
  20. 内海安吉

    内海委員長 次は岐阜県御母衣ダム反対期成死守会会長建石福蔵君。
  21. 建石福蔵

    ○建石参考人 私は御母衣ダム反対期成死守会の建石であります。私どもはこういう機会にいつか皆様のお耳に入れたいと思いましたが、本日その機会を得られまして、非常に喜んでおります。  御母衣ダムは、岐阜県の庄川水系の十四万二千キロの計画でございまして、水没戸数二百六十戸、耕地百五十町歩、そういう大きなものであります。  これは昭和二十七年十月十八日に官報に公表になりまして、計画を進められておるということでありますが、私どもはその前、昭和二十七年六月から、現在計画なるものの絶対反対計画変更について、死にもの狂いになつて各官庁やら電源会社に運動を続けておるものであります。にもかかわらず、ますます郷土が混乱をきわめ、今や地獄の様相を呈しております。電源会社は、調査調査といつて工事を進める一方、卑怯にも卑劣な手段をもつて切りくずし工作をやつておるのであります。こういうことを通産省の方々や経審の方々にも幾たびもお願いをしておつたのでありますが、たまたま本年の四月上旬、通産省の課長の方々、経審の事務官の方々にもお願いをして、いかにしてもわれわれは残念である、政府のやることならばあんな卑怯なことをやらず、もつと正々堂々とやつたらどうですかということを申し上げたのですが、まるきり山の中の人間は金さえくれればどこにでも持つてつてつていい、こういうことをやつておるのでありまして、まことに私どもは残念なのであります。私どもは、電源を興していただくことには絶対反対ではありません。ただ私どもの大きな犠牲の以外において事をはかるということを、しろうと考えに考えておるのであります。それでどうか計画を変更してくださいということをお願いすると、あれはもう調査済みである、あんなところはもう調査してやつてもだめであるというので、ポール一本持つて帰つた形跡がありません。まして今の計画は、十億円を投じて三年も四年もかかつて、まだ調査調査だと言つている、いまなお調査だと言つております。そして、国家の仕事ならば卑怯な切りくずしはやらぬようにしてくださいと言つたら、それはやらぬということを電源会社の平島理事や佐々木総務部長が言いながら、いまなお切りくずしをやつておるような状態であります。私どもの郷里は地獄のような様相を呈しております。ほんとうに私どもは何といつても残念で残念でしかたがないのであります。私も時たま、そういう経費もかかることだから、私ども代表だけでお願いするといつても聞かぬ。ここにおいでの岡村先生も御承知でありますが、あの飛弾の山奥から大挙して百何人という人が二回も来ております。現金にしたら五百万円を使い、私どもは命がけで皆様のお耳に入れたいと思つて、また私どもの気持を聞いていただきたいということでやつておるにもかかわらず、少しも聞き入れられないので、もう私どもは郷土を守り、祖先の墓石をまくらにして死ぬよりしかたがないという覚悟を持つたのであります。しかし、私どもが死ぬというばかなことはこの世の中にありません。ただ私どもの気持を少しも聞き入れてくださらないということを、私どもは懸念しておるのであります。そういうことをいろいろお願いしたいのでありますけれども、時間の制限があるそうでありますから、いつかの機会にまた皆様に御調査お願いしたいということをくれぐれもお願いする次第であります。  また通産省の方々にもお願いしたいと思いますが、私どもはほんとうに郷土を愛する以外にない反対でありまして、そういう点も、今までにも御交渉願つておることと思いますけれども、私どもの気持をくんでいただきまして、私どもお願いするかわつた所の調査をしていただいて、ああいう大きい犠牲のないよう、国土総合開発という美名のもとではありますが、電力開発は一方的な開発なんでありますから、そういう点もくんでいただきたいということをお願いする次第であります。
  22. 内海安吉

    内海委員長 次に岩手県猿ケ石川田瀬ダム田瀬更生会代表横田徳隣君。
  23. 横田徳隣

    ○横田参考人 岩手県猿ケ石川田瀬ダムは、農家の総戸数二百八十二戸、うち水没移転者百十二戸、水没水田百三十町歩、畑地が百十九町七反、宅地が十一町六反、民有林二百八十二町六反。  水没者の動向は、水没者の移転先、村内が六十七戸、村外が四十五戸。残存土地が水田二十九町九反、畑地五十一町六反、宅地七町、民有林五百町、国有林千四百四十四町七反。  田瀬ダム昭和二十七年三月に協議が成立いたしまして、九九・九%まで調印を完了しておるのであります。  水没以前の農家の経営規模は、昭和二十六年一箇年の統計をとつたのでありますが、農村収入の米が、二千八百五十八石、農産以外、畜産、山林、水産等の現金収入が四千百五十七万六千二百四十六円、一戸の月平均が二万二千三百八十八円となつておるのであります。米は全部落民をまかなつたほかに、八十六石六斗を供出しておつた計算になつております。ところが今後の農家の経営規模といたしましては、残存農家二百三十六戸、水田一戸平均一反二畝、畑地二反一畝となり、極度に零細化され、今年より米だけでも千七百二十六石の移入をしなければならなくなつたのであります。  農産以外の現金収入も極度に減じまして、畑の喪失は葉タバコ、養蚕の収入を減じます。他の畦畔にあつた家畜用牧草は、畜産に大きな影響を与えるのみならず、肥料の供給源も失つたのであります。従来の淡水漁業は、根底から建直さなければならなくなりました。われわれは昭和二十六年以前の生活水準を保つには、飯米移入資金を含め、一戸月平均三万二千七百六十円、しかしこれらの現金収入の基盤を喪失いたしまして、自給の態勢は完全に壊滅してしまつたのであります。  一方他町村に移転した者の動向につきましては、農業以外に職業を求めて、市街地に移転して給料を得るなり、旅館等を経営した一部の人々を除き、商業を始めた者は、上ろうと商人の悲しさで、決して生活は楽に行つておりません。中には補償金を消費し切つて苦しんでおる者もあります。また農家はそのほとんどが単作地帯に移転したために、田瀬のような多種多様な現金収入の道は断たれまして、薪炭にも事欠く始末であります。ことに経営不振による離農のあとを引継いでその土地を買つたような者が多いのでありまして、移転二年足らずに、すでに悲鳴をあげておる者が大半であります。せつかく移転しておりながら、移転地をむすこ、夫婦にまかせて、田瀬の親類をたよりに舞いもどつて来ておる老人さえある始末であります。  このような事態に至りまして、われわれ二百三十六戸の残存農家は、極度に狭められた土地で、水没以前の生活水準を保つて行くために、いろいろの研究をしているのであります。すなわち、一戸一月平均三万二千七百六十円の現金収入を得ることが、どうしてもわれわれの生活を保つ上に重大であります。田瀬の農家は、従来は生産物を金にかえて計算することは、あまり考えておりませんでしたが、今度はすべての生産物等は、商品として金にかえるというようにかわつて来たのであります。そうして結論的に、この水準を保ち得る見通しは一応理論的に出しております。従来第一の収入源は林産物でありました。薪炭、木材、くり、採草、かやとか生草、乾草、次に山菜、ぜんまい、ふき、きのこ、ぶどう、これが三三・三%、次に養蚕及び葉タバコの農産収入が二三・二%、労働賃金収入の二三・四%、次いで牛、乳牛、子馬、緬羊、原毛、羊毛加工品、うさぎ、鶏、成馬飼育等の畜産収入が一九・六%、残る五%はあゆ、くきばや、かじか、うなぎ等の水産収入その他の雑収入でありましたが、今度はこういう割合の現金収入を得ることは絶対不可能でありまして、民有林五百町歩計画的に高度に利用するとともに、国有林一千四百四十七町七反の払下げを受け、部落または谷内村の管理として、田瀬の人々によつて計画的に造林を行い、永久に涵養しなければなりません。しかし将来は、従来の山林収入よりは増大いたしますが、当分はこれらの資源涵養によつて減収を免れないのであります。農産収入は、耕地の激減によつて養蚕、葉タバコも減収しますし、労働賃金収入においても、働く事業所がなくなり、かえつて過剰労働力が生じて参ります。この労働力を生産労働に切りかえなければなりません。畜産収入は、従来は農地の畦畔すべてに栄養価の高いクローバ等が自然に繁殖し、飼料はきわめて豊富でありましたが、今度は放牧地を採草地帯に改良することは最も容易でありますから、現在の乳牛飼育頭数八十頭、搾牛頭数二十頭をさらに増加することは可能であります。緬羊はメリノー種の最も優秀な品種が岩手県第一を誇つているくらいであります。この増殖も可能であります。その他役牛、やぎ、鶏等の小家畜も可能で、畜産収入は最も多くなる可能性があります。この畜産の増殖にあたつても民有地及び国有地を高度に利用しなければ計画例れに終つてしまうのであります。  また水産収入はまつたく一変するのでありますが、従来の猿ケ石によつて漁獲していたものを、将来は田瀬ダムによる養殖漁業とする、これらの計画には、ぜひともわれわれ水没者漁業権を付与してもらわなければなりません。田瀬ダムは、先祖伝来の墳墓の地を湖底にし、去るに忍びがたく残留したのでありますからダムに残つた者全体でこのダムを永久に保護する、自給態勢を確立するために、耕地の拡張をはかるため、従来の米食を他の主食生活に切りかえるために水田造成、畑地造成に重点を置き、畜産の増殖をはかり、酪農を主体とする山林の依存度を大きく持ち、国有林野の払下げを受け、共同管理を行い、計画的に生産造林を行つて、永久に山林資源の保護をはかるため、谷内村との協力を得るというような基本線を出したのであります。  そうしてこれがために、これの実行方法といたしまして、湖内のダムに土砂の流入を防止するために、湖岸周囲の一帯地域を帯状に湖水保護林地帯を設定して保護する。この保護林地帯は伐採を制限するとともに、諸管理は団体において行う。湖水には魚類を養殖して現金収入をはかり、諸施設を整備して湖上の利用をはかる。このためには谷内村の協力を依頼し、田瀬湖漁業権、湖面利用、湖岸施設は田瀬に優先的に与えるよう措置を講ずる。これらの管理等も団体において行う。附帯道路に沿つて小部落ができたので、この部落を中心耕地を造成し、耕地に続く箇所に採草地、放牧地を造成して経営の合理化をはかり、畜産に重点を置くため一戸当り乳牛三頭以上を飼育し、総数七百頭以上を飼育する。このためには飼料の自給化をはかるため、耕地、採草地、放牧地の造成、草種の改良をはかる、これも協同的に行う。採草地、牧草地に続く地帯は、広葉樹林地帯を造成する。この地帯といえども、針葉樹適地には針葉樹の造林を行う。針葉樹は二十五年伐期として、製炭を主とし、毎年一定面積を伐採し、優良樹種の更新をはかり、保護涵養を行う。広葉樹林地帯に続く村界、部落界の尾利までを針葉樹林地帯に造成する。これは四十年伐期として用伐を主とし、毎年一定面積を伐採するとともに造林を行う。林野のこのような計画伐採造林による林産収入を確保するために、谷内村の協力を依頼し、国有林野一千四百四十七町七反の全面積の払下げを受ける。このようなことが現在われわれが計画しているところの星対策であります。  何とぞ御協力によりまして、この実現を見るようおとりはからいのほどをお願いするものであります。  次に、未調印者に対する解決であります。田瀬ダムにおきましては、現在ただ一人の未調印者があり、去る八月四日に東北地方建設局より、内容証明をもつて、九月湛水準備を控え、早急に家屋移転をするようにとの通告が来ております。この人は、水没地点にただ一人の製材業者であり、絶えず二十人以上の労務者を雇い、製材工場二箇所を持つております。かつて戦争中、軍部より船舶材の供出を命ぜられ、勝ち抜くための職域奉公と、それに協力し、自己を犠牲にする覚悟をきめ、従業員の食糧、馬車の馬糧を確保するために、いわゆるやみ食糧を求めて、船舶材の供給を遂げたのであります。このやみ食糧の購入が司直の取調べるところとなり、遂に留置場生活を余儀なくされた経験を持つております。このようなことがこの人の胸にどう響いておるか。食糧を補給しなければ、国に対する御奉公はできなかつた。御奉公するには、法を犯さなければならなかつた、国の施策の矛盾というものを、どれだけ留置場の中で考えさせられたかと述懐しておるのであります。今度のダム問題につきましても、製材業者としての生命線たる木材運搬のため、第一に道路の切りかえ、動力用電力の切りかえが先決であります。そのことの解決の話もなく、一方的にただの二百三十万円補償を押しつけて来ても、引上つての工場開設は不可能である。第一番にこのような施設を施してから協議に応ずるということで、現在まで拒否して参りました。電力はその後一箇年半を経た本年春、やつと切りかえられましたが、道路の方は切りかえられましても、まだその買収代金すら支払われておりません。しかも九月から湛水するとの通知は、われわれ水没者をして、あまりにも玩弄するものであると遺憾にたえないものであります。この人の言う戦争中のあの矛盾と現在のこの一方的な措置とは、相通ずるものがある。現在国家更生対策に必要な諸要求、この解決の見通しがつかない限り協議には応じかねると言つております。このような事態が起きたのは、決してわれわれの責任に課せらるべきものではないと思うのであります。もつと建設当局が誠意を示してくれたならば、ほんとうに水没者の立場になつて事を処していただいたならば、このような事態は断じて起きなかつたと思うのであります。この内容証明の中にあるところの強制措置とは一体どのようなことでありましようか。移転しないのに水をためるのか、それともどのような態度をとつて来るのであるか、御見解があれば御答弁願いたい。  次に、今後のダム施工に関する教訓であります。これは各説明者からるる申し上げておるのでありますが、このような事態になつて、われわれも協力はしましたが、各説明者が言われたように、非常に一方的なやり方である。話合いが納得できないままに工事が施行されておるということは、絶対避けなければならないことであると思うのであります。  それから強権発動の措置は絶対とらないこと、これは土地収用法などによつてこれを遂行せんとしましても、水没者はますますこれによつて事態を硬化して行くのみでありまして、何ら効果がないと思うのであります。  さらに特殊金融機関を設けること、補償金等を有効適切に利用し、更生資金を確保するために、水没被害者を主体とする特殊金融機関を設け、水没被害の将来に不安なきを期すること、こういうことが最も必要じやないかと思つておるのであります。  以上実情を訴えまして、私の陳述を終ります。
  24. 内海安吉

    内海委員長 以上をもちまして、参考人各位の御意見発表は終りました。まことに各代表の御意見は悲痛なる決意でありまして、われわれも心から同情の意を表するものでございます。これに対しまして、ちようど建設省よりは河川局長並びに河川局次長、官房長、さらにまた通産省よりは小出公益事業局次長がお見えになつております。ちようどこの問題に打つてつけての担当官であられるのでありますから、どうぞ懇切丁寧に御説明なり御答弁を願いたいと存じます。
  25. 米田正文

    ○米田説明員 ただいま各地区ダム水没関係方々補償に関する御意見を承りました。たいへんわれわれも啓発されるところが多かつたことを感謝いたします。特にそのその水没の責任者であられる方の声でありまして、われわれといたしましては、今日の御意見は非常に貴重な御意見として承りたいと存じます。  今日、総合開発計画を各地で実行をいたしておりますが、これは今日の日本の現状から見まして、どうしても開発を強化しなければ、今後の日本の見通しができないという立場から開発を推進いたしておるのでございます。その地区全体といたしましては、非常に従前よりも開発されることは事実でございますけれども、そういう開発事業を推進して参りますと、その中にただいまのように水没を受ける、あるいは自分の宅地田畑を買収されるというようなお気の毒な方が出て来るのであります。そこでこの補償の措置については、従前からわれわれといたしましても、いろいろと苦慮をいたしております。要は、われわれの方針としては、現在の生活状態を、水没等を受けたあとにおいて、その生活再建をして、従前の生活水準を下らないということを基準にいたしております。そういう方針から、各地でわれわれの実際の、直接の施工もやつておりますし、それから補助事業として各府県が実施をいたしておるものもございます。しかし今日はそういう趣旨でやつておるのでございます。ただそういう簡単に抽象的に方針を申し上げても、実際問題となると、なかなかいろいろと問題があると思います。ただいま個々に御意見がありましたように、公正な、総合的な補償をすべきだ、あるいは国有林を今後の生活中心にすべきだ、あるいは水面使用、あるいは漁業権の問題は、被害者に——被害者と申しますか、水没を受けた者に付与すべきではないかという御意見、あるいは慰藉料いわゆる精神補償の問題も当然考えるべきではないか、あるいは各省相互の連絡が十分でないではないか、あるいは土地改良等の事業を同時に実施をすべきであつて、そういう助成も同時にすべきであるというようなこと、あるいは補償金に対する税金の免除、それから残地補償の問題、天恵物補償の問題、あるいは受入れ地の整備の問題、代替地の問題というようないろいろな問題がございます。われわれといたしましても、こういう問題については、個々はいろいろと従来からも研究を進めて参つて来ております。いいお話を承りましたが、いろいろとまた御不満の点も多々あるので、われわれとしてはこれに改善を加えて行く方針で進んでおります。全体の問題としては、最近各地の御要望もありますし、われわれの今後事業を進める上からも必要でありますから、ダム用地等の取得方に関する立法をいたしたいというので、現在立法の準備をいたしておるところでございます。具体的な個々の問題について、法案を準備いたします過程において、個々に検討をいたしたいと思つております。そういう場合にはわれわれとしても各地の適切な例の研究調査をいたしまして、参考事例にいたすつもりでございます。本日の御意見等も、そういう措置に対する貴重な参考意見として承つたのでありますが、今後もなお御意見をお伺いする機会もあろうかと思います。できれば来国会にはそういう立法措置で行きたいというので、今日努力しているような状態でございます。  要は、私どもの今考えておりますのは、先ほどもお話がございましたが、この補償は、水没等の犠牲を受ける方方に対して、自分がその補償の対象になつた気持で、あたたかい措置をすることが根本だと思つております。そういう趣旨で今後の研究を早急につけたいという考えを持つております。
  26. 小出栄一

    小出説明員 ただいま八人の参考人の各位から、補償問題に関連いたしまして、きわめて貴重な御意見を拝聴いたしました。通産省といたしましても啓発され、かつ参考になりましたことが多々ありましたことを、最初に感謝いたします。  通産省の関係といたしましては、要するに電源開発の問題でございます。御承知のように電源開発という見地からこれをやつておりまして、ダム建設もございますし、ことに最近は、ただいま建設省からお話がございましたように、多目的ダムと申しますか、国土総合開発という見地から、単に電源開発だけでなく、治山治水の見地、あるいは農業用関係灌漑用水というような広い各種の目的を総合的にあわせてやる建設というものが、非常に進んで参つたわけでございます。従いまして、通産省といたしましては、その中の電力の、水力電源の開発という関係から、これに御協力をいたしておるのでございます。  補償に関する考え方といたしましては、根本的には、ただいま建設省からお話がございました通りでございまして、私どもが最初に水力電源の開発地点を選び、どういうふうな設計で、どういうふうな工事内容でこれを進めるかを考えます場合に、まず第一には、できるだけ犠牲者を少くする、水没家屋をできるだけ少くするという点を当然配慮いたしておるのであります。多くの犠牲者を出すことは、電源開発は結局国民の税金による厖大な財政資金を投じていたす開発事業でございますから、犠牲者をいたずらに出す、従つて財政資金をよけい出すということはまことにばかげた話でありますので、まず基本的には、できるだけ犠牲者を少くするために、どういうふうな設計をし、どういうふうな地点を選んだらいいかということに、まず第一に配慮をいたしておるのであります。ただ電力開発というものは、御承知のようにそれぞれそれに必要な地質なり、あるいは地形というふうな技術的の条件がございますために、ある一つの水系において水力電源の開発をいたします場合には、技術的に見て、その地点でなくては、ほかの地点では困るという技術的な面がどうしても出て来るわけであります。従つてその際には、やむを得ずある程度犠牲を覚悟していただいて、電源開発を進めざるを得ない、こういうような立場にあることをまず基本的に御了解をいただきたいと思うのです。そうして具体的に補償金額の全額なりあるいは補償内容を決定いたしますにつきましては、御承知の通り、昨年の閣議においてきめられました補償要綱の線に従いまして、全国的にできるだけ統一された方針——ただそれには、それぞれ土地の立地条件的なり、あるいは天恵物の状況等によりまして、いろいろ特殊事情というものがございます。その特殊事情をできるだけ合理的に織り込みまして、各地間の不公平が生じないような補償の仕方でやつてつて来ておるのであります。ことに多目的ダムになりますと、電源開発関係のみならず、治山治水なり、あるいは灌漑用水関係がございますので、先ほどどなたかの御意見にもありましたように、できるだけ各省の間の連絡をする。これは当然やらなければ工事が進まないわけでございます。全体としてどういう時期にどの程度工事を完成して行くかという工事の進捗状況等につきましても、絶えず連絡をとり、またその工事に要します費用の配分につきましても、緊密な連絡をとつてつておるのであります。今後もその方針で進めて行きたいと思います。  なお二、三の点につきましてお答えいたしますが、天龍水系のお話の中に、電力統制特例を設けてもらいたいというお話でございました。あるいは御質問の趣旨の捕捉の仕方が間違つておるかもしれませんが、地元に特に安い電気をというお話であつたようでございます。これは御承知のように、電気料金というものは、政策的にきめられる料金ではございませんで、もつぱら客観的に、コスト主義と申しますか、原価計算の上に立つてできております料金であります関係上、特に原価上、料金を高くするとか特別に安くするということはできないように、特例ができないような電気料金の計算の仕方になつております。そういう点をこの際あわせて御了承を願いたいと思います。  また二、三の方の御意見のように、金銭補償のみに片寄らないようにしてもらいたいというお話でございます。これはまつたく御同感でございまして、昨日もこの委員会におきまして、岡村先生の御質問に対しまして、国家補償の問題についてお答えしたのでありますが、すべてを金だけで解決しようということでなく、やはりその土地からできるだけ離れたくないということが、水没される方々の最大の希望であると考えられます。かりに水没をいたしましても、その近くに代替地を与えるというようなことによつて、その土地を依然として引続いて利用が可能であるようなぐあいに考えるべきであるということも、あわせて考えて行きたいと思つております。単に金だけ出してどこかに行つてもらいたいというような、つつぱなした態度でなく、あと生活権をほんとうに確立できるような形に持つて行きたい、こういうように考えておるのであります。  最後に、岐阜県の御母衣地点の問題であります。この点につきましては、かねてから実は非常に心配をいたしておるのであります。ただいま水没反対の立場の方からの御発言がございましたが、この地点は、率直に申しまして、電源開発会社が設立されまして、電源開発審議会において、その開発はどの地点をいつまでに完成しろということを決定いたしまして、官報に公示するのであります。その公示地点の中に最初に入つた地点でございます。会社が発足当時でございました関係もございまして、会社といたしましても、この御母衣地点の開発につきましては、会社設立早々の関係もあり、いろいろその間に不手ぎわと申しまするか、行き違い等もあつたことは、確かに事実でございまして、この点私ども通産当局といたしましても率直に認める点でございます。と同時に、もう一つこの地点の非常に困難なことは、地質が非常に困難である。従つて他の地点におけるような、普通の設計工事方法では開発ができにくいということが、その後の調査によつて漸次明らかになつて参つたのであります。この間には、アメリカからも地質なり土木の専門家を二人ほど呼んで参りまして詳細に調査をせしめ、また最近において、さらにあらためてもう一回調査をいたしたのであります。その結果、ダム設計といたしましての地点は、すでにただいま定められております地点以外には、もし御母衣地点を開発するとすれば、その地点以外には開発地点は地質的にはあり得ない、こういうような結論になつておりますことをまず御承知願いたいと思います。またその場合の施工の方法といたしましては、普通のグラヴイテイ・ダムではなくて、ロツクフイル・ダムという設計方法によりまして、しかもそれが今までおそらく世界にもほとんど例のないほどの大きな設計になつて参ります。従つて今回の、ただいま世界銀行に対して要請しております借款の問題も、この御母衣地点の工事の技術援助、あるいは工事用機械の輸入ということも、その中に一つの重要な項目になつておるそうでございまして、この地質なり地形が非常に困難をきわめておる地点である。従いまして、今日までずいぶん長い間調査々々ばかりやつておるようでございますが、そういうような関係で非常に遅れておるということも、これまた事実として認めざるを得ないのでございます。ただその間地元方々との折衝の面におきまして、いろいろ不手ぎわもございました。十分まだ皆様方全体の御納得を得ていないということは、まことに遺憾でございますが、なお今後できるだけ会社側とも協議いたしまして、特に電源開発全体の立場、また特に電源開発の地点の中でも、御母衣地点が重要な地点であるということを御了解をいただきまして、御協力していただくように、さらに私どもといたしましても努力いたしたい、かように考えておる次第でございます。  なお、この補償問題をさらに一層円滑に進めますために、何かもつと合理的な基準で法律上の措置も必要ではないかというようなことも、かねがね通産省といたしましても考えておりまして、先ほど建設省からもお触れになりましたような立法措置につきましても、また通産省事務当局としても考えておるような次第でありまして、いずれ各省とも相談いたしまして、具体化することが必要であれば具体化して行きたい、かように考えておる次第であります。  電源開発関係から通産省としてのお答えをいたした次第であります。
  27. 内海安吉

    内海委員長 以上をもちまして政府当局の意見発表が終りましたが、これに対して小委員諸君の御質疑なりあるいは御希望なりがありましたら、この機会に政府当局並びにこの参考人諸君に対して御発言を願いたいと思います。
  28. 岡村利右衞門

    ○岡村小委員 ただいま通産省からるる御説明いただきました御母衣ダムのことにつきまして、一言希望を申し上げたいと思います。  先ほど死守会会長さんから申されましたごとく、同地方の人々は、決して電源開発反対ではございません。ただ地点が反対であります。それはどういうことかといえば、その地方電源開発にしろうととして考えて適当な地がある、そこならば、ただ一戸の犠牲者のみでよいという地点があるのであります。そこをぜひとも調べてもらいたい。そうして、調べてどうしてもだめだというならば、地元の人も納得するかもしれないと思つているのであります。しかるに、全然そういうことを調べてくれないのであります。実は私も何べんも電源開発会社に行きましてそのことを申し上げました。そうしたところが、電源開発会社では、調べた調べたと言うのでございます。しかるに地元の人々は、一人としてそこに調べに来たものはないということを言つておるのでございます。であるから電源開発会社はうそを言つている、おれ達を百姓だからといつてだますのだと言つて、非常に感情的に激興しているのであります。そういう意味におきまして、私はぜひともそこを徹底的に調べてもらつて、そうしてこういうわけだかういけないのだということを十分説明していただきたいということを切にお願いする次第であります。
  29. 小出栄一

    小出説明員 ただいま岡村先生から御指摘のありました御母衣の関係につきまして、ほかの地点ではどうか、非常に犠牲が少くて済む、こういう地点はどうかという点につきましては、大分前でございましたが、二、三の方が御上京して陳情されましたときに、直接私承りました。私自身実は技術屋でないから、当時技術の専門家にも伺いました。また電源開発会社の方にも連絡いたしたのでありますが、ただいまお話のように、全体調査の結果、結局ただいまきまつている地点以外にはない、こういう結論で、実は技術的の問題でございますので、いかんともいたし方がなくて、そういうお答えをしたのであります。ただいま御指摘のように、もし全然調査せずにそういう結論を出しているということが事実でありますれば、これはまことに申訳ないことであると思います。さつそくその間の事情を調べまして、研究調査しておりませんでしたならば、ただちに調査をいたしまして、そうしてそれがやはり技術的にだめであるということをさらに確認できますならば、それによつて地元の方に十分御了解、御納得の行くような措置をとつて行きたい、さように考えております。
  30. 只野直三郎

    只野直三郎君 ダム建設犠牲者に対する根本的対策に関して、建設省当局の御意見を承りたいと思います。  今度の全国的に行われておるダム建設ということは、これは日本の国土計画の、いわば革命的なことである。従つて、そのダム建設のために犠牲になる人というのは、いわば日本の国土計画の革命の犠牲者、日本の再建の犠牲者、そういうことになると思いますが、現在八人の方の陳情をお聞きしますと、ことごとくが、これはかなえてやらなければならぬものであるというふうに私は痛感をしたのであります。  そこで、先ほど河川局長さんのお話で、大体の方針はわかつたのですが、二、三の方から特に要望しておるところの、たとえば土地を離れる者が、その土地を離れることによつて受けた精神的障害、それに対する慰藉料の請求、こういう考え方は、これはもつともだと特に私感じたのであります。やはり土地を離れたというそのことのために、将来の生活が容易でないということ、そのほかに精神的な衝撃によるその人の生活態度の変化ということもある。そこで国家としては、それだけのものをやはり与うべきではないか、それに対して今度新しく立法措置をするとするならば、そういうふうな点を十分に考慮しているかどうか、そのことをひとつお聞きしたいと思います。  それから、今の、たとえば電源開発犠牲なつた、その場合に電力を特別にその犠牲者のために安くしてもらえないかという要望があつたのですが、それは電力料金の関係から安くはできない。安くはできないとしても、安くしてもらつたと同じような保護政策を特別に立法化する必要があるのではないか。そうしなければ、一律にみな同じ料金を払う、犠牲なつた人も同じ料金を払つて行く、それは非常に不合理なんです。そういうことをなからしむるように、やはり国家がそういう場合に特別の保護規定を設ける必要がある、そういうふうに思いますが、そのことについてどうお考えになるか。  それからこの金銭補償によつて、一時に何十万あるいは百何十万というような大金を——大金を比較的あまり持たない着実な農業生活をやつておる人人が、一時的に大金を持つことのために、やはりそこに経営その他その金の支出、そういうことに度を失うことがあるのではなかろうか、それに対する保護対策を何とか考える必要があるのではなかろうか。たとえばその金を特別に預かつておいて、それに対してむやみに浪費させないように、何か特別な組合を組織するとかなんとかして、めちやくちやに金を使つてしまうことのないように保護指導するということが、これは非常に親切な行き方であるのだろうと思いますが、そういうことについての保護対策、そういうことも、この犠牲なつた人々のためにする親切なやり方である。とにかくダムをつくることのために大部分の何十万、何百万という人が利益を受ける。しかも五万、六万、十万程度の人がそのことのために大きな犠牲を払うことになるならば、受益者である一般国民としても、これは捨てておけない問題だと思いますので、立法措置をする場合に、そういう点に対する政府当局の考え方はどんなふうなのであるか、以上のことを大体お尋ねするのです。  それからもう一つ、これは陳情者側の藤原ダムの林賢二さんのお話にあつたのですが、補償をめぐるかけひきのために犠牲者の間に混乱が起つておるということですが、そのかけひきというのは政府側の方か、あるいは当局側の方から来るかけひきであるか、あるいは被補償者に対する補償金その他をめぐつて、第三者がいろいろな策略を用いてかけひきをするのであるか、そういうことについて、ただそれだけでは十分に納得行きませんから、時間がなかつたので御説明することができなかつたのだろうと思いますので、もし適切な例がございますれば二、三の例をお聞かせ願いたいと思います。
  31. 米田正文

    ○米田説明員 御質問の第一点は、土地を離れた者の精神補償の問題ですが、これは現在の電源開発に伴う補償基準の中には、一応考えることになつております。それから建設省にはまた建設省としての公共用地取得の補償の基準がございますが、これは原則としては考えない。しかし特別の場合には例外として認める、こういう行き方をいたしております。一つの基準の全体から見れば、精神補償も一部認めるという行き方を、国としてはやつておるわけであります。それで、これは今後の立法時における問題の一つでございますけれども、全体としては今日そういう傾向にあるということを申し上げたいと思います。  それから発電をしたらその付近の者に電力を安くやつたらどうだ、こういう御意見でございます。これは通産省の方の御意見であろうかと思いますが、私どもの今日の考え方としては、補償補償としてこういうものから除いて考えて行くという行き方をとつております。もしこれを補償として一部認めるということになれば、やはりそれは一つの補償の中に含まれる問題になつて来ると思います。これは分離するか、中に入れるかという問題はあろうと思いますが、今日では、こういう電力を安く使うということは除外をして補償を計算して行くという方法をとつております。  それから、農村、しかも僻地の部落に一時に多額の金を渡すために、いろいろな事件を起して、せつかくもらつた金を無一文にするというような事例も今までによく聞く例でございます。われわれといたしましても、そういう支払つた金を確実な方法で保管をして将来の生活に資して行くという大方針にいたしておりまして、県及び市町村あるいは組合等に対して、そういう措置を極力いたして行くように、今奨励をいたしておるような状態であります。もちろん、これは今後考えて行くべき問題でございますが、これは法律の条文に入りますかどうか、私今申し上げられませんけれども、入ろうと入るまいと、この問題は考えて行くべき問題だと思います。
  32. 小出栄一

    小出説明員 ただいまの御質問の中で、電力料金の関係でございますが、ただいま河川局長からお答えになりました通りでございまして、料金体系全体の関係から申しまして、そういう政策的な意味の料金はとれないと思います。従いまして、もしそういうふうな必要があれば、それはやはり補償の問題と考うべきである。電力料金を補償の意味で安くするということは、料金体系全体の観念から申しまして、ちよつとむずかしいのではないか、かように考えております。
  33. 林賢二

    林参考人 ただいま只野先生からの御質問でございますので、このことにつきましてお答え申し上げます。  先ほど私から申し上げました補償金獲得をめぐつて悪徳手段が講ぜられておるという点を申し上げました。この実際の状態は、当事者間から起る場合が一つ、第三者から起る場合が一つ、これが両者行われております。当事者同士で起つておるという状態は、さきごろ現に完全にダムは完成されて、移転者がそれぞれ移転計画をやつた田瀬の場合を御参考にしますと、はつきり出ております。これは建設省自体がやつておる工事でさえ、補償を受ける者に対して、ないしよで補償をしてやる。たとえばこの家へ来て、お前の補償はよその家よりはよい、これは隣の家に言うな、ないしよで補償してやるという切りくずしをやる。建設省自体がこういうことをやつております。ですから、電源開発あたりでたんまり金を入れて来て、おい、どうだというのは、当然やるやり方であります。最近こういう状態は是正されております。特に藤原ダムの場合においては、今までたんぽの補償を出すという場合には、犠牲者側からものすごい数字を出す、八十万出せ、百万出せというようなことを言つてやる。それは相手が親切でなく、切りくずしやかけひきをやつて来るからしかたがない。貧弱な農民はへたなかけひきをやる。そういうことはとうに過ぎ去つて、どのような方法によつてそれが増設され、建設されるかという根本的な問題が考えられれば、決してそういうふうな問題は起つて来ない、こういうふうに考えるわけであります。そういうような事態が各所に行われるので、補償をめぐつていろいろな問題が起つて来る。そういうような未成熟な事態を氾濫させておいて、端から解決しようというような悪いやり方をやつておるということが今までしばしばあつた。  それから第三者的に起る問題と申しますと、たとえばダム建設が——藤原ダムもそうでありますが、犠牲になる地区に対して何らの理解もなく、あるいはこれに対して補償の問題が全然前進しないにもかかわらず、工事をどんと持つて来てやつてしまう。そういう場合に——これははつきり申し上げてよいか悪いか存じませんが、現実でありますので申し上げます。その場合に、特殊な精神を持つた方々がこれを利用します。そうして、現政府はこういう悪いやり方でやる、きみたちはなぜこれをやらぬかということを必ず言つて来ます。であるから、全国的にダム建設される地帯は、先ほど御母衣の方からも御意見がありましたが、反対をするということ、ダム建設というとすぐ反対、その反対は何か。すぐ裏があるのではないかというふうに——ダム建設地帯は、ここに集まつておる代表者が、それぞれ意見を申し上げているように、真に大きな国策を理解して、この建設に賛成しておるのにもかかわらず、むしろそれを誤解させるような手段を——政府は親切にめんどうを見てくれない、それがために、わざわざそういうように、第三者が問題を起すような原因をつくつておることは、私たちまつたく忍びないのであります。ダムの問題は、横の連絡も全国方々が集まつて相談しておるというような事態でありますので、もうかけひきではなく、真にその状態において、まつたくお互い同士が誠意をもつて打合えば、この問題は必ず解決される、こういう雪にわれわれ考えておりますので、そういう点と、特に今までの補償のやり方がよくなかつたということを申し上げたいのであります。
  34. 只野直三郎

    只野直三郎君 今の林さんのお話によつて、いろいろのことが案じられるのですが、政府側としては、その問題をどういうふうに思つておられますか。
  35. 米田正文

    ○米田説明員 全体の問題としては、やはり公正妥当な補償基準ということに帰すると思います。そういう基準がはつきりいたして来れば、今のような問題はほとんど解消するのではないか。今度立法しようという趣旨もそこにあるので、今後の解決は、そういう方面に重点を置いて行きたいと思つております。建設省でないしよでやつたというお話もございましたが、そういう特殊な事例は私まだ聞いておりませんけれども、そういうことがないように気をつけさせておりますから、御了承を願いたいと思います。
  36. 五十嵐吉藏

    五十嵐吉藏君 河川局長の御答弁のうち、補償に対する基本的な考え方、それは、従前の生活水準を下らないということを基準としてやつておる。それはむろんそうでしようが、これは金だけではなかなか解決のできない点が多々あるわけなんでありまして、先ほど通産省からも御説明がありましたが、補償の金をもらつて、その金をふところにして、行く道に困るという場合ができて来るわけなんです。そこで問題は、補償ということと同時に、あとの更生計画、つまり村づくりということになると思うのですが、今の通産省の御説明では、それは金だけでなしに、そういう面で推進をして行きたいというのです。それはもつともだし、またそうでなければなかなか解決せぬと思います。そこで、実際において、一体だれが責任者となつて、こういつた具体的な問題を進めて行くかということなんです。ただそういうお話だけはたびたび聞くのですが、しからば一体だれがやるのだろうか、県がやるのか、それともそれ以外に本省に考えがあるのか、これを具体的にどうお考えになつているか、お聞かせ願いたい。
  37. 小出栄一

    小出説明員 電源開発の場合で申しますれば、電源開発会社なり、あるいは電力会社が工事の施工の主体になるわけでありますが、ここが大体地元の県知事なりあるいは市町村長の協力を得て、今の村づくりというような面につきましても、現在建設中の地点につきましても、地元と御相談の上でこれを実行する、こういう体制になつております。従いまして、具体的に申し上げますと、開発会社の現地建設所長が中心になりまして、これが地元知事さんなりあるいは村長さんなりとあらかじめ相談の上で、水没される方々をどの地帯に移し、それにどういうふうな村づくりをする、それからそれに必要な道路をどういうふうにするという計画を立てまして、協力して実行する、こういうような体制で電源開発につきましてはやつております。
  38. 五十嵐吉藏

    五十嵐吉藏君 実際問題として県の方にあとの更生計画の心配をさせるようになると思うのです。ところが県は金がなくて、思うように動けないということで、結局現実の問題となつて一番困るのは、水没犠牲者であるという事態相当多いと思うのです。そこで県との話合いを十分にやつてもらわなければなりませんが、建設省としてもう少し県の方が十分動き得るような措置を講じてもらわなければ、動けぬと思いますが、この点どうお考えになりますか。
  39. 米田正文

    ○米田説明員 新しい村づくりなり、あるいはそれにかわるべき現地計画なり、そういうものについて、今の通産省関係電力会社あるいは電源開発会社なりは、責任者として当然の義務であると私は思つております。われわれの方といたしましても、企業者が建設省であれば建設省、農林省であれば農林省が当然その責任者であると思つております。ただその実行をいたしますには、これは総合行政に持つて行く方がどうしても便利である、その総合行政をやつている県がそれをやるのが最も適当だと思います。今までの事例でも、府県にこれを依頼するということで、その府県に依頼したものを見まして、われわれの方としてできるだけそれを援助して行くという形を今とつておりますが、おつしやられるように、県の計画に百パーセント満足を与えるような予算の支出、あるいはその他の措置ができないような事情もあります。ありますが、やはり今後立法でもやるということになれば、その辺をはつきりさせることも必要だと思つております。が、今日は、現実に極力県が中心になつて補償の対策を立てて行くという行き方をとつております。
  40. 五十嵐吉藏

    五十嵐吉藏君 いずれにしても、建設省で直轄してやるといつたようダム等に対しては、県がやれる方向に十分お考えを願いたいと思います。  もう一つ、皆さん代表方々の御意見を承ると、皆さん共通たお考えになつていることは、政府のやり方はどうも一方的である、そうして誠意もない、親切心もない、こういうことで、特に御母衣のお方の御意見のごときは、まつたく胸をつくものがあつたのです。しかし、政府の首脳部においては、今も局長が言われたように、あたたかい気持で親切に措置をして行きたいというのですが、どうもダムの問題がなかなか進捗をいたさぬのは、ここに基本的な食い違いがあると思うのであります。あなた方おやりになることを、当事者の水没者の皆さんの方で、常に役所のやり方は一方的だ、了解も話もつけないのに、工事はどんどんやつてしまうというような感じをずつと持つていたのでは、何かにつけて私は支障が出て来ると思う。そこで、出先の機関あるいは現地の者が、交渉に欠陥があるとか、いろいろな点はあると思いますが、とにかくそういう声が非常に高いということが、今後のダム建設をする上において、一番支障になつて来るのではないかと思います。あなた方の今のお気持はわかるのですけれども、現実にかけ離れたそういつたような事態が起つておるということは、これは十分ひとつお考えを願わなければならぬと思うのです。これが解決をして行かぬと意思の疏通をしない。どうも食い違つておると、何をやつても、いや、あれはこう思つているのだろう、ああいうふうに考えているのだろうということで、どうもうまく行かぬ。その点に対してどうお考えになつていますか。事実は今の皆さんの御意見の御発表の通りだと思います。これはよほど重大な問題だと思うのです。基本的にこれを解決して行かぬと、うまく行かぬと思います。その点についての御所見を承りたい。
  41. 米田正文

    ○米田説明員 私どもこの補償にあたつては、先ほど申し上げた通り、ほんとうに水没者の気持になつてやることが根本要件だということを、絶えず関係者には言つております。けれども、それがまだ十分でなくて、きようのお話の通り、そういう関係が原因をなしたものも多々あるようでございますし、おつしやるような点がまだ十分でない点については、さらに一層われわれも協力をいたしまして、ぜひ私はあたたかい気持でこの補償対策に当るようにいたしたいと考えておる次第であります。
  42. 五十嵐吉藏

    五十嵐吉藏君 まあひとつぜひそういう気持で今後進めて行つてもらいたいと思います。  それから各代表の共通した御意見で、ずつと前から問題になつておるのですが、水面使用権並びに漁業権というものを、当然水没者に与えるべきであるという問題、これに対してどうお考えになつていますか。
  43. 米田正文

    ○米田説明員 これは今のところ漁業権は水産庁の関係知事が認可をして行くということに制度はなつております。結局横の連絡の問題でございますが、われわれとしてはこの新しい水面使用権あるいは漁業権については、水産庁とやや違つた考え方を持つております。というのは従来水産庁では、漁業権許可者に新しい水面あるいはその湖水漁業権をそのまま与えるというような行き方をとつておつた事例がたくさんあります。けれども、われわれとしては、それは適当でないのではないかという考え方をいたしておりまして、今水産庁と話をしようという段階でありますが、われわれは従来の漁業権ならば、漁業権はごく水位の低い川の小さい場合の漁業権であつて、今度六十メートル、七十メートルあるいは百メートルというような高さのダムができて、その場合の漁業権はまつたく異なり、ことに漁具、漁法のごときもかわつて来るというので新しい行き方、新しい漁業権というものを設定すべきではないかという考え方も一部私の方ではあるので、この辺を水産庁と今後折衝したいと思つております。現実の問題として、従前の漁業権を拡張して新しい湖水漁業権に移した場合に、問題の起らぬところと起きるところと二通り今日ございます。それらについても研究をいたしておりますけれども、まだ今日のところは、新しい水利権だという定義が明確になつておらぬ段階でございますので、こういう新しい水利漁業権だという定義を出したいと考えております。
  44. 五十嵐吉藏

    五十嵐吉藏君 私もその点に対しては、河川局長とまつたく同感です。知事が認可権を持つておることもよく承知をしておりまして、実は知事に再三話をしても、大体府県というものは、従来の漁業権ということを中心に考えておるのです。だから、なかなか話がうまくはかどらぬ。そこで、これは大乗的な見地から、とにかくダムというものをこれからどんどんつくりやすく持つて行くという意味合いからも、これは今のあなたのお考えになつているように、どうしても漁業権水面使用権というものは水没者にやるということで強くお進めを願いたいと思います。これは知事が権限をもつておるといたしましても、政府としてひとつ横の面からでも縦の面からでも、適当な方法で強力に実現するように推進をしてもらいたいということを強く希望を申し上げまして質問を終ります。
  45. 内海安吉

    内海委員長 たいへん長い時間、治水計画の上において最も重要なダム問題について、参考人各位並びに委員諸君においては活発なる意見の交換を行われまして、近く通産省及び建設省において立案をされますところのこの基本法の制定にあたりまして、まことに参考になる貴重なる御意見であるということを感謝するものでございます。本日は暑いところ長時間御苦労さまでございました。  本日はこの程度といたしまして、散会いたします。    午後五時二十六分散会