運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-08-11 第19回国会 衆議院 決算委員会 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年八月十一日(水曜日)     午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 田中 彰治君    理事 天野 公義君 理事 大上  司君    理事 安井 大吉君 理事 松山 義雄君    理事 藤田 義光君 理事 柴田 義男君    理事 杉村沖治郎君       徳安 實藏君    牧野 寛索君       三和 精一君    片島  港君       山田 長司君    大矢 省三君       吉田 賢一君  委員外出席者         農 林 技 官         (茨城食糧事務         所長)     浅見  修君         参  考  人         (東京大学教授         医学部薬理学教         室)      小林 芳人君         参  考  人         (東京大学助教         授医学部薬理学         教室)     浦口 健二君         参  考  人         (第一物産株式         会社穀物油脂部         長)      松井捨次郎君         参  考  人         (安宅産業株式         会社食糧課長) 小野  一君         専  門  員 大久保忠文君         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 本日の会議に付した事件  委員派遣調査報告書に関する件  参考人招致の件  昭和二十六年度一般会計歳入歳出決算  昭和二十六年度特別会計歳入歳出決算  昭和二十六年度政府関係機関決算報告書  昭和二十七年度一般会計歳入歳出決算  昭和二十七年度特別会計歳入歳・出決算  昭和二十七年度政府関係機関決算報告書     —————————————
  2. 田中彰治

    田中委員長 これより決算委員会を開会いたします。  まず委員派遣による調査報告書に関してお諮りいたします。先般当委員会においては、二班にわかれて閉会中実地調査のため近畿、関門、九州方面にそれぞれ出向いたのであります。これが議長に対する報告書については、委員長の手元で作成の上提出することに御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田中彰治

    田中委員長 御異議なしと認め、さようとりはからいます。     —————————————
  4. 田中彰治

    田中委員長 それでは前会に引続き食糧庁関係黄変米問題について審議を進めます。申すまでもなくこの問題に対する世論はきわめて深刻でありまして、慎重に検討を加え、その実態を究明しなければなりません。そこで本件に関しましてなお問題の核心を把握いたしますためには、専門的学者ないし実務者意見を聴取する必要があると考えられましたので、去る九日の理事会におきまして、次の各位参考人として招致することに協議決定したのであります。すなわち東京大学医学部薬理学教室小林芳人君、同浦口健二君、第一物産株式会社穀物油脂部長松井捨次郎君、安宅産業株式会社食糧課長小野一郎君、以上四名を参考人に指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 田中彰治

    田中委員長 御異議なしと認め、さように決定しました。  つきましては参考人各位に一言申し上げます。御多忙中にもかかわらず御出席を煩わし、かつ審議関係上時間もいささかかかろうかと存しますが、本問題の重要性にかんがみまして、何とぞ事実を率直に述べられ、本問題の解明に協力せられんことを切望する次第であります。  それでは通告の順に従いただちに質疑を許します。
  6. 柴田義男

    柴田委員 議事進行について。本日は私ども学者の御意見あるいは商社の現地の状況等も詳細に承るわけでありますが、もう昨日、一昨日といろいろな角度から、この黄変米の問題を取上げて参つたのであります。これに関しましては世論が非常に大きくなつておりますし、日本食糧政策の根本に関する問題であり、しかもビルマ等々からの日本外米輸入に関しましては、今後も継続しなければならぬという問題もあるでありましようし、外交的な問題もあると存じますので、少くも明日の委員会には総理大臣岡崎外務大臣出席要望いたしたいと思います。お諮り願いたいと思います。
  7. 田中彰治

    田中委員長 委員にお諮りいたしますが、柴田委員総理大臣はちよつと無理じやないですか。
  8. 柴田義男

    柴田委員 委員長はどういうお考えで無理だろうとおつしやいますかわかりませんが、少くともこれだけの大きな世論となつておるし、ことにわが国食糧事情は今日百七十万トンぐらいは足りないという計算になつておるわけです。こういう計算の基礎から推しましても、この外米輸入については大きな問題である、こう存じますので、代理の副総理なんということではわれわれは納得いたしがたい。しかも世論がこう大きくなつております場合に、責任者である総理大臣出席いたしまして、根本的な方針を明示する責任がある。しかも昨日は自由党の支部長会議出席されて堂々と所信を披瀝されておるようでありますから、われわれ決算委員会出席されましてこの食糧問題を論議するということは当然総理大臣の責務でなければならぬ、こうわれわれは思うのであります。よつてぜひとも総理大臣出席要望するものであります。
  9. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私は趣旨に賛成するのであります。その理由は、過日来農林大臣厚生大臣、両所管庁の各政府委員等によりまして、問題の経緯あるいは両省間のいろいろないきさつを聴取したのでありますが、われわれの受けた印象では、農林省首脳部、それから厚生省首脳部の間に、この黄変米をめぐつて少くとも昨年の年末以来相当不一致状態が深刻に纏綿したまま来ておつたように感ぜられるのであります。それでありますので、これは要するところ、もし両省間において、閣議等によつて統一方針を当初に立てて、そしてすみやかに解決の道をとつておるならば、八万トンの滞貨に及ばずして私は解決の道があつたのじやないか、こう思いますので、やはりこれは政府内部における不一致が重大な原因をなしておることはいなむことができないと思います。そういうことは国政運用上の大きな責任問題に帰しますので、われわれといたしましては、少くとも内閣責任者によつてこの間のいろいろの政治上の事情、行政上の事情等について相当責任ある答えを求める必要があるんじやないかと思いますので、内閣を代表する人が当委員会出席することが、本問題解明のために重要なことだろうと考えます。
  10. 徳安實藏

    徳安委員 先ほどの御動議でございますが、なるほど総理大臣が出て来ればこれに越したことはないと思いますけれども要望要望といたしましても、もし総理大臣にさしつかえがありましたら副総理審議を進めるといつた程度で、一応委員長の方からとりはからつていただいてもけつこうじやないかと思います。
  11. 田中彰治

    田中委員長 それでは総理を呼ぶようにいたしますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 田中彰治

    田中委員長 御異議なしと認め、総理大臣を呼ぶことに決定いたします。  ちよつと委員各位に御了承願いたいのですが、参考人の方がここにおいでになつていらつしやいますが、参考人の方から順々にいろいろ述べていただくより、みなその道の大家でありますから、ひとつ委員各位からお聞きしていただきたい、そういうぐあいに審議を進めようと思いますがいかがですか。
  13. 徳安實藏

    徳安委員 簡単でもちよつとぐらいお話を聞いてから、それに糸口をつけて質問させていただいた方がいいのではないでしようか。
  14. 田中彰治

    田中委員長 それでは時間もあまりございませんし、あとで各委員から質疑がございますから、東京大学医学部小林芳人さんから黄変米の菌その他こついて御参考意見を承りたいと思います。
  15. 小林芳人

    小林参考人 それでは私から純学問的に私の考えを申し上げまして、何か御参考になればはなはだ幸いと存じます。なおこまかい実験上のことになりますと、浦口君が最も適任と存じますのでお話願いたいと考えております。  この黄変米と申しますのは黄色くなりました外米意味するので、黄色くなつたからといつてすべてが毒であるというわけではないのでございまして、毒のない黄色い米もあるのです。ですからこれを誤解のないようにするためには、黄色の病変米とでもいつた方がいいのかもしれません。名前はともかくもといたしまして、その黄色くなりましたいわゆる病変米というものには特定のかびがある。現在までわかつておりますのは、外地から入つて参りましたのには二種類のかびがわかつております。これが有毒な物質をつくるのであります。そのつくりました有毒なものは米の表面あるいは中にも入り込みまして、これを完全に米から取除くということは非常に困難な状態になつております。  御承知のように、かびの中からいろいろな有効な薬が最近どんどんとられております。ペニシリンなんというのはその最も初めに見つけられた非常に有効な物質であります。その一方割合に似たようなかびから不幸にしてこういう非常に毒のあるものが出て参つたわけでございます。かびそのものは何も人間に害をしようとか益をしようとかいうつもりでつくつているのではないと思いますけれども、これはわれわれの専門からいいますと、薬と毒というものはほんの紙一重のものでございまして、ある条件を与えれば薬として役に立ち、ある条件のもとではかえつて害になるというものが、全部ではないまでも大半であるわけであります。ところで非常に困りましたことには、この毒の性質がはなはだよろしくない毒であります。毒と申しましても許せる、まあまあという程度のものと、どうもこの性質ははなはだ困る——困るというのは人間の健康上非常に困る。ある程度を越しますともうなおらない病変を起す。その結果どうなるかというと、なおらなければそれがそのまま死の直接原因になるというものとあります。これは肝臓腎臓を冒すわけでございます。軽度ならば回復いたしますが、ある程度を越えますと、これはもう今の医学でなおせない、どんどん悪くなつてしまう、そういう性質の毒であるだけに、私どもこれは非常に慎重に研究する必要があると認めましてやり始めているわけで、ことに浦口助教授がこれに専門にかかりまして、昼夜これに没頭して研究に従事しているわけでございます。  ところで、さてそう申しますと、全然食べられないというふうにも考えられますが、そうでございませんで、これもわれわれ学問の方の一つ常識としまして、一定量より少ければほとんど作用がない、あるいはまつた作用がないという限界があるのであります。これは薬にしても毒にしても、全部に共通の性質でございまして、つまりあるわずかな量を飲めば、それだけで少しでも薬になる、少しでも毒になるというのは、これはまつたく間違つた考えであります。ある量に達しなければゼロであるという線がある。その線を越しますと初めて毒作用なり薬の作用を発揮して参るというのがわれわれの専門の方の常識であります。昨今問題になつておりますのはその線を明確にしたいということだと思います。これをいろいろな面から簡単に考察いたしてみますと、薬としてのこの線は、われわれ日常始終問題にしまして引いているのですか、たとえばこれはほんの例でございますから仮定のものでございますが、一日一グラムずつ十日間、そうすると総計十グラムになりますが、そこでやめろ、それ以上は今度は中毒に達するからやめろ、こういうような規定をしておるような薬があるのです。薬の面から申しますと、これは何十年も飲むというようなことは実際問題としてあり得ない。それから医者監督下にありますれば間違いのないうちにやめる。従つてその線も引きやすい、幾日目にやめろということの線を引きやすいのでございますが、食品となりますと、これは非常に困難に承ります。幾日間食べてよろしい。あとはいかぬということは規定しても、実際にそれが守られるということは実に不可能であります。従つて非常に厳重なる規定を必要とする。従つて疑わしいものは廃棄してしまうというのが私は原則だと思います。各国ともそうやつております。一つの例を申し上げますと、バター・イエローと申します色素がございまして、それを食品着色に使つたことがあるのであります。それはバターのような黄色い色をしておりまして、お菓子とか、その他口から入るものに着色する材料に使つたことがございましたが、これは外国でも日本学者でも実験いたしましたところが、がん原因になることがはつきりいたして参りました。肝臓がんができる。しかもこれは非常に長く続けておつて初めてできる。ねずみで、今私は詳しくその条件を記憶いたしませんが、ごく少い量で、大体一年間近く継続して飲ましておりますと肝臓がんができるということがわかつて参りました。これを食品着色用に使用されますと、非常に困る。こういうものを日常一年も二年も食べるということはあり得ないかもしれませんけれども原則としてこれは禁止すべきであるというので、外国も禁止いたしました。その当時私も日本事情を聞きまして、日本厚生省の方でまだ禁止してない状態がわかりましたので、急いでこれを禁止するように進言したわけでありまして、今禁止されているはずでございます。こういうぐあいに、非常に今重要でございますが、ことに今度の場合は主食だけに、同じ食品といつても、さらにこの問題はやつかいな問題だと思います。その性質が悪いことと、何年間食べてあとはやめるとか、そういうことを規定できない。これは何年も続けることと、また人によつての量も違います。いやならやめる、飽きたらやめて、また食べてみたくなつたら食べるという性質のものでございませんので、その点に非常にむずかしい点がございます。ことにこの性質肝臓いう問題で、年をとつて参るに従つて腎臓肝臓も弱つて来るのは生理的であります。例外は幾らもありますけれども、大体から行きますと、弱つて参る。そこへこういうものが行く。あるいは病気ですでに肝臓なり腎臓の疾患か起りつつあるところに、こういうようなものが行くということを考えますと、さらに心配である。もし事情が許すならば、こういう大きな、主食という問題でなければ、一時全面的に禁止するのが常識であると思うのです。学問的に禁止すべしと私ども結論したい。ただあまりにその結果が重大でありますがために、これは厚生省におかれましても農林省でも、たいへんに苦心された結果と思いますが、一パーセントという線を引かれた。この線の引き方を私ども拝見いたしますと、かなりの安全度を見越しての線でございます。私どもこれを拝見してまあまあと思いますが、これを何年間続けても絶対安全ということは少くとも今申し上げられない。少くとも現段階では一、二年この程度で、できましたらもつと低い線、少くとも一プロは絶対に越さない、できたらもつと低い線でやつてくだすつて、その間に十分の研究を重ねまして、そうしてこれなら確実であるという点を早くその間に出したい、こう考える。そうなりましたあかつき、あるいは一プロもあぶないという線が出るかもしれません。このように私は考えます。従つて今問題になつておるように一プロという線をさらに上げるということについては、これは私は論外だと思います。まつたく逆行しておると考えます。こういう衛生的性質のものは、こういう米のようなむずかしい事情のものでなければ、一応禁止するのが常道だと思うのです。そうしてまずこの線ならば絶対に安全だという線を十分な研究の結果出して、そうしてそこに線を引くのが順序でございますが、こういう主食のようなむずかしい問題——われわれも餓死するわけには参らないわけでございますが、主食がなくなつたからという、こういう事情でございますから、これは私はやむを得ない臨時の処置だと考えます。少くともこれを上げることは、私としては学問的にはなはだ迷惑です。私は国民の一人としても迷惑でございますし、学問的にも納得できない。はつきり申せば結論はそういうことであります。
  16. 田中彰治

    田中委員長 それでは浦口健二君から一応参考のために伺います。
  17. 浦口健二

    浦口参考人 ただいま小林教授からのお話で、毒性は確かにある、しかし量によつて微量のときには作用が現われないから、人体あるいは動物には無害である。そこでどこに線を画するか、そういう許容度の問題がある。もちろんこれは皆様は御承知のことでございまして、ビキニの灰においてもガイガー・カウンターの数からどのくらいを許容してよろしいかというような問題がございますが、許容度というのは、これは非常にむずかしい。ことに人間を相手とする場合にはたいへんむずかしい。学問的に実験からある程度の線は出せます。人体にそれを換算することはできます。しかし人間の健康の幅あるいは感受性の幅、そういうものを全部考慮に入れなければいけない場合には、この安全度というのは非常に大きくとらなければならないかと思うのであります。もちろん医者監督下で、ある素性のわかつた薬物あるいは毒物を特定の目的のために使う場合ならば、これは監督もあることでありますし、いつ中止するということもわかつておるのでありますから、もちろん問題はずつと軽くなつて来るのでありますが、主食として、ことにまたそれが配給したあと責任はとれないような性質のもの、しかも相当長期にとることも考えられるような場合には、この安全度はただ私どもが出しました学問的な細々とした線だけで規定したり、あるいは事が起つたときには逆にそれが学者の保証であるというようなことは言つてもらいたくないと思うのであります。そう申しましても、私は今細々とした線と申しましたが、これはちよつとこの研究おい立ちを御紹介した方がいいかと思うのであります。黄変米というものは戦前にすでにわが国においてわかつておりましたし、三宅市郎君という、現在七十何才のおじいさんですが、篤学の先生がまだ若かつたころから研究を始められたのがきつかけで、黄変米というのがはつきり学問的な意味で学名がつき、そうしてその生物あるいは人間なんかに対する作用がある程度研究の緒についたのは、昭和十五年以降であります。私はその当時から、二、三の研究仲間一緒に、その研究にタッチしておりました。これはお断りいたしますが、戦前黄変米であります。かびの方から申しますと、ペニシリウム・トキシカリウム・ミヤケと言つて、ミヤケという発見者名前がついておるのでありますが、当時は黄変米というと私どもは少くともこれだけを考えておつたのであります。従つてその動物に対する研究急性中毒が猛烈であります。しかしそういう一応の結論に達するまでには、終戦後二年すなわち昭和二十二、三年まで十五年からかかつております。初めは非常な勢いで研究活動をいたしましたが、戦争が大分不利になるにつれ、細々と、しかし最後までこの研究を持ちこたえて、一時は私一人くらいになつてしまつたこともありますが、とにかく研究を続けておりまして、幸いに急性中毒ははげしいけれども、先ほどから言われるところの、分量がちよつと欠けますと作用がずつと弱くなりまして、すなわち人間に対する毒性というものは実に問題にならないのではないか、しかもそういう微量なものをたびたび繰返しておつても、相当長期動物実験をやりました結果推定できたことは、ほとんど問題にするに足るような障害はないらしい、もちろんこれは現在新潟大学の内科鳥飼教授が当時、昭和十五年私と一緒に始めて、現在また再び研究陣に帰つて来て研究をやつた結果、貧血が漫性の微量投与をやる場合に一時起る、しかし投与をよすとそれは消える。これは動物の話であります。そういうような程度のこと、あるいは神経症状あるいは肝臓が若干冒されるらしいということも私ども認めておりますが、これは急性毒としての性質がはつきりしておるのに、慢性的な作用が非常に意外なほど弱いというので、これは大量に発生し、大量にその毒が人間の口に入るようなことがない限りは問題ではない。そういう一応急性、慢性の見通しがつきましたのが、昭和二十四、五年であります。ところがちようどその最後の、私ども仕事が一応八分通り九分通りくらい結論に到達しかけておつたときに、不幸にして終戦わが国にいろいろのものが入つて来た。その中から今言つておりますタイ国黄変米あるいはイスランデイア黄変米というような種類のものも発見された。発見されたのはこれは農林省角田技官が、これはむしろ非常な熱情をもつて、いろいろ動物実験をいたしました結果が、日本に入つて来る外米を見るときに、人間にも起るのじやないかというような非常な不安と申しますか、学問的な好奇心と申しますか、そういうもので監視しておつたときに、外米のうちに発見された。そのうちの一、二のものに従来の黄変米、私ども言つてつた黄変米と何か違うようなものがある。それでなおさら熱情をわかすというようなことで、食糧研究所を中心にこれは研究割合に短い間に能率的にと申しますか、一応の結論が出た。その結論が出るまで私どもはその仕事にタッチしておりません。おりませんが、その報告を見ますと、すなわち今イスランデイア黄変米といつておりますものは、これはかび米から菌をとつて来まして、それを無菌の米に人培しまして、すなわち人工でイスランデイア黄変米をつくり、それをねずみに食わせるというような実験をやりました結果、一定期間の後に、割合に短いと思いますが、一箇月か何かだつたと思いますが、肝臓が非常にはれておる。しかもそれを病理学者が見ますと肝硬変であるというようなことで、肝硬変米という名前が、いいか悪いか知りませんが、一時現在いわれているイスランデイア黄変米の前に広がつたことがあるくらいであります。これは私ども医者の方から見ますと容易ならぬことであります。肝硬変というものが、実際において動物でなしに人間に起つて診断がついてしまえば、これは非常に短い間にいずれは死ぬべき運命ということは御存じの通りであります。診断が非常に正確に早期診断ができた場合には寿命は比較的長くなりますけれども、それでも何か、一、二の人の意見を聞きますと、早期診断がついてから、まあ三年だろうかというようなことで、ここに私どもの不安と申しますか、責任と申しますか、私ども、何かこれを聞いただけで放つておけないという立場になつておるのであります。  そこで私ども戦前から細々ながらやつてつた。その研究組織を何とか糾合して、また研究陣を再建いたしまして、そうして研究費ももらつて来て——非常に金の食う、また時間の食う、こんなばかげた能率の上らない仕事医学方面では少いと思うくらいのやつかいな仕事でありますが、これをとにかく再建しよう。それについてはかびの先生あるいは化学の先生あるいは植物の先生、そういうようないろいろな方面の方が完璧に協調と申しますか協力して、一つ実験をやるのに、材料をつくることから、かびを鑑別することから全部幾つかのコンベアみたいな制度で横に流して行こう、そういうような制度をつくるために非常に必要を感じたのでありますが、それが農林省食糧庁の好意あるとりはからいもありまして、私どもがせきつくように早くは運びませんでしたが、とにかくも若干の研究ができるようになつた次第であります。そういうようなことで実際に研究費が私どもの手に入りましたのは、今年が二年目ですから二十八年度からであります。これはなぜかと申しますと、農林省の方はとにかく肝硬変が起るとか起らないとか、あるいは一方では黄変米なんぞは、そんな毒じやないだろうとか、そういうようなことが研究仲間でも一致しておりません。ただその中に、非常にやつかいな今のような肝硬変を起すであろうというような報告があるので、私どもはそれをもう一ぺんやり直してみて、もう少し学問的な正確な意味ではたしてそれがほんとうであるかどうか、あるいはそのときにはできたけれども、それは偶然か何かであるか、そこのところを突きとめたいと思つたからであります。実際に実験を始めましたのは二十八年の二月で、動物実験にかかりました。それ以前は菌の研究医者のところまで来るのにいろいろの研究がございまして、それに準備期間がいろいろかかつた。そうして一つ実験に六箇月は優にかかります。それで一つ実験結論が出て次の実験にかかるというようなことは許されませんので、次々に重なりながら動物の死んで行くのを待つてねずみ小屋の明くのを待つてスタートするというようなことで、狭いところで次々と重なりながらやつてつた、そういう実情であります。私どもの方としてはそういう実情であるときに厚生省でもやはり研究機関を結成されたのですが、これは食品衛生法というものがあるので、それに魂を入れなければいけない、新しい法律、科学の裏づけを必要とするというようなことで取上げられたのです。すなわちこういうふうな研究が今度の戦後の黄変米に関してはまだ緒についたばかりである、しかもそれは研究室で得られた結果にすぎないということ、私ども実験室でやつた結果からすぐに人体に持つて行けるものとも思つておりませんし、行こうとも思つておりません、ただ人体に直接やろうといたしますと、毒の性質考えれば考えるほど、この人体実験に手をつけるべきではないという確信が最近に至つてますます強くなつて参りましたので、やむを得ず動物実験で徹底的に押えて行くよりほか私どもには許された道はないのであります。もし病変が直り得るもので、確かにきくという薬でもわかつておれば、あるいは適当なところで中断すればそれはすぐ消えてしまうとか、あるいはまたそのほか社会立法とか何かの保障、本人に万一のことがあつたらその一生を、あるいはその家族をどうかするというような法律的な保障でもついておれば、あるいは人体実験というものも許されるかもしれませんが、私ども現在研究が発展の途中にあり、まだはつきりした結論に達していないこのときに、人体実験はしたくない。人体実験をやろうと思えば、これは微量なら毒がないだろうというような、そんな微量なものを使つても何ら安全の保障にはなりません。非常に大量の有毒なものを入れて徹底的に変化を起さしてみるというのが学問の業績と申しますか、そこまで行かなければ結局安全度とかあるいは許容度というものは考えられないのであります。従つてそういうことは絶対にできがたい。そこで私どもとしては、そういうような非常に細々とした実験をしておつた。その当時また厚生省側ではさつそく何プロの線というようなことを考えながら研究計画も立て、当時としてはりつぱな研究が出ておりまして、それから出て来たのが一プロという線であります。  そこでたとえばこの一プロというところて私ども動物実験をやつておりますが、参考意見と申しますか、厚生省で一プロではどうであろうかというデータの読み方についてデスカツシヨンをしたときに、私は呼ばれてその席におりましたけれども実験的にかびの上を百プロ、十プロ、一プロあるいは〇・一プロと区切りながらおのおのの動物実験をやつて、それを一々観察して行くわけですが、百プロ、十プロでは変化を認めることができたのに、一プロのところでは変化を認めることができなかつた、顕微鏡で見ても変化がない、それを基準に今度はどこで許すかということを考えるスタート・ラインが、人工のかび米の場合にもそのラインが一プロであるということがそこできめられた。現在一プロの線を守れと私ども言つております。またそれ以上のほかの新提案に対して私ども意見を述べることを差控えておりますが、これは差控えざるを得ないのでありまして、少くとも私自身は、何がゆえにああいうふうな数字が出て来たか、その出て来る理由について正式に説明を責任者から受取つておらないから、従つて考えることはできないのであります。  まあ大体現在の問題に対しまして、過去の私どもの根拠は動物実験であるということ、そこに人体にはたしてどの程度に可能性があるか、それが実現するかということを推定するのに非常に困難があります。しかし推定する場合に人間の安全性を大きく見なければならないということ、その辺のところは実験を通じてわれわれの意見として申し述べて私は正しいと思つております。
  18. 田中彰治

    田中委員長 それでは浅見修さんおいでになつておりますか。あなた黄変米のことで海外へ行かれた御体験をちよつとここで参考になるように述べていただきます。
  19. 浅見修

    ○浅見説明員 ちようど一年前、昨年の六月下旬から九月の上旬まで黄変米の一番中心だといわれますビルマとタイに駐在しておりまして、そのとき進捗中の船積みの立会いと翌年度のビルマ政府、タイ政府との契約の改訂事項、特に黄変米の拒否限界というものを契約に入れるかどうかという問題で、予備折衝をして参つたのであります。ただ現地の情勢は、すでに一年前でありまして、滞在期間も短かいものでありますから、非常に観察が皮相でありますし、また現在の客観情勢とは相当相違を来しておりますが、一応その当時の私の判断の結果を申し上げてみたいと思います。  まず第一は、黄変米の発生の経過、言いかえますると、直接的な発生の理由であります。その一つとして考えられますのは、まずもみの乾燥が非常に不十分である。もちろん米の収穫期はちようど向うは乾シーズンでありまして、意欲があれば十分に乾燥ができるのであります。しかもあとに申します理由のもとにろくろく乾燥しないで、一両日、二、三日のひぼしの程度でもつて乾燥したものをすぐ牛に引かせて脱穀をして、そうしてそれをそのまま倉庫にばら積みをする。従つてそのもみの持ちます水分は、おそらく二〇%以上のものであります。これは農学的に考えまして非常に危険な状態であります。加うるに気温の高いということは申し上げるまでもありますまい。まず第一条件において危険状態に置かれている。  それからその次は、倉庫の設備が非常に不完全であります。それに保管、管理、貯蔵というふうな関心あるいは感覚というものがほとんど皆無に近い。われわれが日本において考えますところの穀物倉庫というふうな概念を持つておりますと、現地の倉庫は全然違つて来るのであります。私どもいくぶん専門的な立場から申しますと、いわば物置である。かりに物を置いておく、つまり盗難予防あるいは風雨をしのぐ、そういう程度のものが穀物の倉庫として使われている。この二つの条件がかみ合されまして、すでにもみの時期において病害の発生あるいは虫害の発生について一番よい条件が提供されているということであります。特にビルマ政府の管理方式は、御承知かと思いますが、政府が、もちろん輸出用は全部統制しております。もみを買いまして、それを精米工場に委託加工さしたものを精米として受入れる経路と、もう一つは、精米工場がもみを農家から買いまして、それを精米したものを政府が買うという経路がございます。そういう前提のもとに、むしろそういつた黄変米を発生する間接的な誘因として考えられますことは、第一には、農民なりあるいは精米工場にすでに企業意欲が非常に低下していること。もちろん自由経済時代は、ビルマでもタイでも、これは世界最大の米の輸出国であつた。生産者、精米工場というものは、それぞれ自国産の米の商品価値の高揚には非常な努力を払つて来た。具体的に申しますと、買受者から注文があつて初めてもみを生産者から厳選して買取つて、それを精米して、高度の商品価値を持つたものを世界の大市場に出したのであります。ところが現在は、特にビルマの場合にその感が深いのでありますが、政府が統制をしておりまして、生産者なり精米工場から買上げますもみの価格なり精米の価格というものが、ここ数年来すえ置の非常に低価格にきめられております。それを政府が精米として輸出しますときの価格との格差というものが国家財源の相当高い部分を占めておるであります。ビルマではその分が八割、タイでは五割ということを聞かされて参つております。その数字的な真偽のほどは直接知つておりませんが、大体そういうふうな見当であります。大体生産者なり精米工場は、できたものをそのまま何でもかんでも出して来る。精米工場はもみの選択なりあるいはその検査ということは全然しないで買込んで精米して、政府から出荷命令を出すまでその間貯蔵、保管というふうな、つまりその入つた米の品質をできるだけよく保存するというふうな関心は全然ない。従つてひどいのはすでに二年、三年前に精米されたようなものがそのまま倉庫に眠つておるという状態であります。そういうふうな理由、あるいはまたさらに申しますと、黄変粒の混入率というものは、世界各国の米の規格には一応全部入つております。ところがその規格を設定しております理由というのは、日本で今問題になつておりますような毒性の問題ではないのであります。単にそれは商品価値として見ばえが悪いという意味で、一パーセントなり三パーセントときめられておるのであります。私がおりますときに日本のこの毒性の問題が非常に社会的な問題だと話しましても、全然取合わないわけであります。まつたくそういう関心がないわけであります。結局最終的には一パーセントの許容限界というものを契約事項の中に入れましたものの、それも単に日本では危険性のある米は買えないからという理由でそれをやつと認めさしたのであります。決して日本毒性の概念なり観念なりというものを織込んで、そういう理解を持つていたというふうには、少くとも私は解釈しておりません。従つてさらに今後の向うとの折衝の場合も、その点をまず前提として考えませんと、いらぬトラブルが起きるではないかというふうに懸念しておるであります。  さらにもう一つは、新聞にも出ておりましたが、例のセイロンではそういう商品が歓迎されているという事実があるのであります。いわゆるゴールド・ライスとして非常に賞美されておるのであります。しかしそれは若干その間に誤解があるのではないかというふうに私は考えております。これはインド、セイロン、インドネシアの方面には、御承知と思いますがボイルド・ライスという米が非常によく売られておるのであります。これはもみの状態のときにそれを蒸熱いたしまして、その後に精米したものであります。これは普通の白米、精米と比べまして非常に栄養価が高い、細菌の発生が非常に少いということで、米としての価値の高いものであります。しかしながらその唯一の欠点は、もみの色がついて表面が黄色くなるということと、もみのにおいがつくということであります。この二つはいずれもなじみの問題でありますから、なれてしまえばそう気にならない。もちろんそういう操作を経ますので、相当高価に東南アジア方面に利用されて行くわけであります。ところが黄変米で、現地で問題になりますのは、今、日本で問題にしておりますような一パーセント、二パーセントというようなそんなものではなくて、黄変米全部が明らかにまつ黄色なんであります。それが今申し上げましたボイルド・ライスと非常に似ておるのであります。ちよつと外見上は区分がつかない状態であります。これを実際に精米工場の最終のホッパーからそういうものが流れ出すのを見て非常に唖然といたしました。そういうものがインド方面の筋肉労働者を対象として相当流れて行く。もちろんその場合は値が相当安く引下げられて売られておるわけであります。そこでボイルド・ライスというのは非常に値が高いのであります。これは相当固定した上層階層の要求によつて売れて行く。しかしその黄変米は外観上は似ておりますが、流れて行く行く先は全然違うのであります。そういうふうに現にインドなりセイロン、特にボンベイ、マドラス方面に非常に需要がありますものですから、いかに相手側の政府とそういうことをきめてもてんで問題にならない。それで現在われわれがどういうことをやつて防止策を講じておるかということにつきましてはこの際申し上げませんが、ただ将来の問題としてまつたく私の個人的な見解を申し上げます。黄変米に実際に毒性があるならば、そういうことを科学的に関心なり研究意欲を現地に持たせることがまず必要だと思います。これには米の取引につきましては非常にかけひきが多くてなかなかむずかしいのであります。しかしながらやはり科学者の言あるいは現物を目の前に見せますと、非常に理解が早いのであります。幸いにこの秋に日本でFAOの会議がございますので、そのときにこの問題を出して、できればFAOを通じましてやはり東南アジア方面にこの黄変米毒性に関します問題を提起して、それに対する関心をまず持つてもらう、あるいは進んで協力的な研究を進めて行くということが前提だろうと思います。そういうような客観情勢をまずつくりませんで、いきなり飛び込んで毒性云々ということをやりますと、非常にまたいらぬ問題が起きて来ることを懸念するのであります。  それからもう一つは、申し上げましたように倉庫の設備が非常に悪いということであります。あるいはまた保管管理に対する関心が全然ないということ、もちろん技術がないわけであります。そういう方面はやはり日本のように米に対する感覚が非常に進んでいるところ、技術的にも商品化に関する段階の進んでいるところから、積極的にやはり支援なり援助をする。ビルマでも現在倉庫の建設計画が非常に進められております。できますれば、あるいはまた賠償の一環としてでも、日本から倉庫の建設に対する資本なりあるいは技術援助をしてやる、あるいはまた申出によりましては保管管理に対する技術的な協力をして行く、そうしてでき上つた倉庫は、日本向けの米を入れる倉庫としてレザーヴするというふうな条件をつける。そうすればこちら側も安心して倉庫に入庫しますときに、こちらの目でもつて非常に厳選した精米をまず外観的に運ぶ、その後になお現実的に培養検査ができればそのことをやつて行く、そのことによつて、もし黄変米の存在が確認されたならば代替分を要求するというふうな条件をつけ得るならば、これはある程度話合いができるのじやないかというふうなことを考えております。もつとも、この問題は昨年ちようど経済ミツシヨンがお見えになりましたときにも、その問題を一応向うに通じていただいたことがあるのでありますが、正面から日本側だけの見解でもつて行きますと、いろいろ問題が起きますので、やはりまず客観情勢なり、向うの利益になるようなことを条件として行きませんと、現地的な黄変米の問題はなかなか解決が困難ではないかと思います。
  20. 田中彰治

    田中委員長 それでは委員諸君から質疑でもあつたら……。
  21. 徳安實藏

    徳安委員 小林先生に伺いますが、学者的な良心から言うならば、むしろ禁止すべきだという御意見でございます。まことにごもつともだと思いますが、先ほどのお話の一パーセント程度のものであるならば常用しても害毒にならぬであろうというふうに承つたように思いますが、それは間違いございませんか。
  22. 小林芳人

    小林参考人 私禁止と申し上げましたのは、純学問的に結論だけこういう毒物に対して下した場合には、今までの公衆衛生の概念から申しますれば一応禁止してしまう、そうしておいてやはり限界を厳密に、相当に時日をかけ、つまり大規模な研究をやりまして、これならば絶対安全、長期間やつても大丈夫である、こういう限界を出しました上で初めてその限界を条件にして許す、これか常道だと思う。ところが実際それをやりましたならば、おそらくわれわれが主食というものをほとんど——ほとんどと申しませんが、配給量は非常に少くなつてしまう、主食というものが食べられないに近くなるというおそれもあるやに聞いております。それからそういう非常に困難なる状況があるがために、農林省なり厚生省は非常に苦心されまして、とにかく応急の処置として一パーセントときめられたと私は解釈しておる。その結果を見ますと、ねずみでかなり厳密に実験をやられまして、そうしてそのねずみは健康なねずみであります。人間にすれば壮年に当る健康なねずみで、まあ大丈夫である。これ以上はあぶないけれども、ここの線なら大丈夫であるという線を出されて、そうしてしかもその線をさらに百分の一に下げまして、これが食品衛生の今までの公式として、食品についてとつて来られた厚生省の方式にのつとりまして、安全なる実験上の限界からさらに百倍の安全度、百分の一に線を引きます、それが一パーセントであります。それが黄変米としての一パーセント許容限度ということであります。私その実験を見ますと、それは半年継続の、続けて飲ませた結果であります。ねずみ人間は感度が違う、おそらく人間の方が敏感である。量が少くて影響を受けるということがちよつと考えられる。ところがそれはまだ現在のところ何も実験がありません。それから期間が一体半年でいいかどうかということがまた問題である。食品であるといつても、副食物のようなものであれば、まだまだその点は安心でございますが、主食というものは、ある人、ある条件状態の人にはこの一パーセントが相当長期続く場合もあり得ると考えられる。それともう一つ病人の場合も考えなければならぬ。それから年ということが一つの問題である。先ほど浦口さんの言われたような、そういう非常に幅の広い許容度考えますと、私はここ当分は一パーセントでそんなに目に見えて害があるというような障害が人間に起るとはちよつと考えられない。ただ今後五年、十年このまま一パーセントで許して行つていいかどうかということになりますと、ここにかなり疑問がある。これを解決するためには、さらにもつと大がかりな研究を進めまして、非常に長期の間食べてもこの線なら大丈夫という線を出して、スタートしたい。しかしこれは私ども何年も実験を繰返しませんと、出ないのであります。私が申し上げました一パーセントというのは、私の考えとしましては、当分の間これでまず大きな障害はなかろう、こういう考え方であります。
  23. 徳安實藏

    徳安委員 外米は長い間日本に参つて食べているのですが、実験の結果、日本の国民の死んだ原因等に対しまして——以前は相当多量の外米が入りまして、ほとんど常食にしておつたような時代があつたのでございますが、この黄変米のかびあるいは病菌は最近急にできたものでございましようか、あるいは前からこういうものがあつたのを知らずに食べておつたものでございましようか。そういう点について御研究になつておりますれば、お知らせ願いたいと思います。
  24. 小林芳人

    小林参考人 私は黄変米のようなものが、戦前といいますか、よほど前からどの程度つてつたかということは全然存じません。またこういう菌があつて、こういう有毒物質があるということは、世界中どこでも気づいておらない。今度初めてのことです。この毒の性質が、学問的な興味から申しますと、すべての学者が非常に興味を持つような性質のものなんです。病理学的におもしろいというのは、非常に困つた、複雑な、いやな病原であるということにもなる。先ほど申しました肝硬変割合短い間——一週間足らずの間に起すということがわかつてつておる。最近非常に多量で、実際問題として食べ得ないくらいの量でございましようが、特別な場合を除いて、一週間くらいで肝臓の細胞がほとんどこわれてしまう。そういうことがわかつてつた。こういう毒は、私の知つている範囲では、世界で非常にまれなものである。これはたまたまかびから毒をできるだけうんと出させて、それをたくさん集めてやつてみて初めてわかつた。これは学界にも何も発表してございませんが、相当大きな興味を専門家の間に起すと思います。  今御質問の過去の問題でございますが、こういう問題はどこの国でも研究は全然やつておらなかつた。ただ何となく日本人に肝臓の病気が多いということは既知の事実です。肝臓がんが多い。最近は肝臓の炎症——肝炎と申しますが、前から日本人に肝臓疾患が多いということについては、いろいろな病気の世界的な統計がございますが、医学的な原因がさつぱりわからない。こういう種類の毒物は、先ほど申したように、非常に大量ある——どこかで集団中毒が起つたというようなことが新聞に出れば気がつきますけれども、たとえば五年、十年食べていた結果、がんが出て出たとしても、その原因が十年間の食糧に入つていた毒物のためだということを突きつめることは、今まではとうてい困難である。これからわれわれが突きとめなければならぬ問題だと実は思つている。毒の性質を今後ももつと追究する必要がある、はつきりさせる必要がある、そういうことです。
  25. 徳安實藏

    徳安委員 浦口先生にお伺いしますか、黄変米であるかどうかという検査、並びにその菌の率がどの程度かということを検査していただきます期間ですが、それは大体何日間くらいでわかるんですか。米が手に入りましてから研究されまして、何日間くらいで回答が出ましようか。
  26. 浦口健二

    浦口参考人 この問題は、私医者でございまして、直接タッチしておりませんので、何日ということは申し上げりれませんが、ただこういう研究、すなわち私どものような、毒性の本体を突きつめようとするような目的に主眼を置いて、これは大学でやつている研究ではありますが、同時に今のような変化が起つて来るについては、これは何とか検定法のようなものが必要であるということは、人一倍痛感している。何かこれの迅速化をはかりたいということは痛感されますが、今は農林省あるいは厚生省がかつて使つてつたような、目で見るような鑑定法あるいは菌培養による方法が採用されておつて、方法としては、すなわち米粒の中に生きた菌が存在する限り、それを検出するという意味では正確であります。正確になりましたが、ただこれは培養によること——かびがはえるのはバクテリアよりはずつと時間がかかるのでありまして、非常にマンマンデーの生物でありますから、従つて菌を培養してから鑑定がつくまでにおそらく二週間、三週間は当然かかると思います。それからあとは化学的に検出する方法はないか、これはたれしも考えられるわけです。かびではなくて、かびの持つている物理的、化学的な性質でもよろしい、あるいは毒物の性質でもよろしい、それを利用したいのでありますが、何しろ化学的なそのものの研究が遅れております。そこでそれをただ研究面で利用するというような性質はありますけれども、これをたとえば港あるいは倉庫に実際にすぐ応用して、そこで簡単にはつきりわかる、こういうことはまだ私どもには夢でありす。従つて簡便な方法というものは今後も必要はありますけれども——御質問の趣旨はその辺のところでございましようか。
  27. 徳安實藏

    徳安委員 これは浦口先生に伺いたい。やはり今と関連して、培養検査ですか、米を検査していただいて、それによつて菌がある、その菌が何パーセントあるのだということを、学者の方からあるいは農林省なりに通知してやる、その試験なさる期間をはつきり聞きたいわけです。今は二週間とか三週間とかいうお話でしたが、そのくらいの程度で培養されて、菌がある、しかもその菌は三パーセントであるとか五パーセントであるとかいうような数字がはつきりわかつて回答していただけるかということです。
  28. 浦口健二

    浦口参考人 これは実際上今までの検査法と、一回検定するに要する大体の時間を申し上げたのでありまして、現実にやつておられる農林省あるいは厚生省の方の方にお聞き願わないと、私は何らお答えする資料を持つておりません。
  29. 徳安實藏

    徳安委員 それでは私が見当違いの質問をしておつたようでありますから、いずれ他の方に伺うことにしまして、黄変米の菌は何十度くらいで死滅いたしましようか。おわかりになつておれば伺いたいと思います。
  30. 浦口健二

    浦口参考人 これまた私は学者でございまして、菌の方の専門家ではないのであります。私ども実験をやつているのは、菌の方の専門家とかびの専門家と共同して、連繋をもつてつておるのでありまして、私の発言はいわばただ横で聞いたりなんかした程度のもので、あまり正確でないかもわかりませんが、ただおつしやるような今問題になつているかびだといたしますと、これは大体六十度か七十度くらいの温度では死滅するのではないか、私はそういうふうに心得えております。もちろんかびは発育の途中で外の熱に対する抵抗がだんだんかわつて参ります。それで米の中にある場合と、培養器で人工的にはやした場合と、その組成がもちろんかわりますが、しかし割合温度が低いということを申し上げられることは、たとえば台所で処理することのできる温度でけつこう死んでしまうということは、これは申し上げられる。すなわち百度以下のところで死滅するということであります。
  31. 徳安實藏

    徳安委員 もう一つ浦口先生に伺いますが、菌のほかに、菌からよつて生ずる毒素とかいうものがあるそうですが、この毒素はやはり菌と同様な時間で死滅するのでしようか。
  32. 浦口健二

    浦口参考人 その点が実はまだはつきりしておりません。それは菌そのものが毒性があるのではなくて、菌が生産するあるいは死滅して破壊する死体ですか、あるいは分泌するものですか、その辺はわかりませんが、菌に由来する物質動物に毒物である、これは確かなんであります。その毒物が化学的には一つのものではもちろんありませんでしよう。従つて一々のものがどれくらいの温度で破壊されるかということは、まだ化学的な検索が行つておらないので申し上げられません。ただタイ国黄変米、すなわらあの中にはかびが生産する黄色の色素でチトリニンというのがあります。このチトリニンというのは毒性を持つております。おそらくタイ国変変米の毒はこれが本体ではないかと一時研究室でも言われました。今でも何かそういう疑いを持つております。結論は出ておりません。ただかなりの役割を果していると思われるチトリニンは百七十度、私はこれは耳聞きの方でございますが、百七十度で破壊される、こういうふうに心得ております。それからイスランデイア黄変米肝臓を冒すとさつきから言われます。この方の検索はまだむずかしく、もつとはつきりしない部分が多いのであります。ただいろいろの色素が含まれております。その色素そのものはおそらく毒性関係ないだろうと推定をしております。そうすると色素でない部分に毒物があるのだろうと考えられる。その毒は少くとも実験室でのかびのからだからとつて来て実験材料にするのであります。そのときの温度は百度の温度を数時間優にかけながら、しかも破壊されないでけつこう実験をやつているのでありますから、すなわち百度には耐え得るものと私ども考えております。両方ともお台所の温度ではこれは破壊されないだろう、この二つのものについては大体そう言つて間違いないだろうと思います。
  33. 徳安實藏

    徳安委員 小林先生浦口先生、どちらでもいいのですが、おわかりならおつしやつていただきたいと思います。黄変米に菌の生ずる原因はこれはどうもどこに聞きましてもあまりはつきりした回答はないのですが、どういうところでこういう菌が生ずるのでしようか。先ほどビルマから帰られたという所長さんのお話によると、乾燥がよくないとか、倉庫が不完全だとかいうようなこともあるようでございますけれども、そういうようなところに原因があるのでしようか。あるいは実つているもみの時代からそういう原因があるのでしようか。あるいはこれを防ぐ方法というものがあるのでしようか。何かそういう点について両先生で御研究になつていることかと存じますが、その一点を御説明願えれば非常に仕合せだと思います。
  34. 小林芳人

    小林参考人 今の御質問実は私のちよつと専門とははずれておりまして、ただ御参考に私の専門外のことでございますが、まあ今までの研究の途上に私の耳に入りましたことを私なりに総合してお答え申し上げます。  このかびというものは実は目に見えませんで、この空気中にもわれわれの周囲にも実にたくさんのかびがあることはわかつております。私どもかびの毒物についてこの黄変米のことを浦口博士が始めましたときに、空気中から落ちて来るかびでこれを静脈内に入れますと恐ろしい熱を出す、そういうかびを戦後につかまえたことがあります。そのときにいろいろ調べたのでございますが、口から入つたのでは全然害がない。静脈の中に入れますと恐ろしく高熱が出る。御承知のように病人が重くなりますと、ぶどう糖を静脈内に注射をする、あるいは生理的食塩水を静脈内に多量にやります、そのときに非常に高い熱が出てがたがたふるえて来る。四十度、四十一度という熱が出る。これが原因が非常に不明だつた。それを浦口君が突きとめました。これはぶどう糖をつくつている間に空気中から落ちて来るかびなんです。アメリカでもほとんどこれと前後して、やはりバクテリアの種類のそういうものがこの製造の途中で落ちて来る、それが一ぺん入りますと精製してももうとりきれません。非常にわずかなものですが、とりきれません。そのとりきれないわずかなものが四十度、四十一度という熱をわれわれに起すことがごく最近わかつたのであります。そういたしますとわれわれの周囲というものはかびや黴菌にとりかこまれている。しかもかびというやつは非常に繁殖力が強くて熱あるいは消毒薬なんかには弱い。そのかわり繁殖力がものすごい。特に胞子を出しましてどこへでも飛んで行つて、そこへつきましたらふえて来る。ですから米なんか傷のある、胚芽のへこんだようなところにことによけいつく。米一粒中の持つております水の量、この水の量が、専門家によりますと、非常に厳密に何パーセント何パーセントとか調べられておりまして、その限界を越えてうんと乾燥すれば非常にはえにくくなる。そういう胞子のようなものがくつついて繁殖しようとしてもつまり繁殖しにくい状態になります。ですから防ぐ一つの方法としては乾燥をよくするということが一つ。湿度が高くなるに従つていろいろの自分の好む湿度のかびがそこへはえて来るということがわかつて参りました。まだまだ米に発見されておりますかびというものは四十種類くらいあります。それがみな毒性を持つているものではございません。無毒のものが多うございますが、調べられているものがまだ少い。私が今後の研究で非常に重要だと申しましたのは、今わかつたのは二つ三つにすぎませんが、今後そういうかびを一つ一つどうしてもやはり調べて行かなければならぬということなんです。どうも乾燥をよくするということがいい。昔は米を非常によく磨いてつるつるにして光沢を出した。ああいうような表面が非常になめらかだと、かびというものははえにくいものだそうです。傷のあるところにはえる。傷をつけないで乾燥をよくするということだそうです。それからビルマのようなああいう貯蔵のときの条件、倉庫のようなものを非常によく完備するということが私は必要なことだと考えます。ちよつとそれだけ申し上げます。
  35. 田中彰治

    田中委員長 柴田義男君。
  36. 柴田義男

    柴田委員 いろいろ承つたのでございますが、先ほど小林先生浦口先生も、プロまではまあまあというところであろう、こういう御説でございますが、今度食糧庁あるいは厚生省との覚書を見ますと二・五パーセントまで、しかもそれは一日に限る、一月のうち一日だけは二・五パーセントまでの許容率であるということを発表しております、そういたしますと今のお説の一プロということとは非常に相違があるように見えますが、これをどうお考えでございましようか、この点をひとつ承りたいと思います。それから一パーセントという点ですが、これはやはり何日も継続してはどうか、こういう問題をひとつ承りたいと思います。もう一つは、先ほど来タイ国黄変米の中にはチトリニンといいますかそういう毒素がある、こういうことでありますが、イスランデイアの黄変米に対しましては、どういう種類の毒素が含まれておるのか、イスランデイアの黄変米には肝臓が冒される場合が非常に多いという御説でございますが、このイスランディアの現地におきましてもやはり肝臓病の者が現実に多いのかどうかという問題について、もし御調査がございましたら承りたいと思います。  それから先ほど菌と菌から生ずる毒素とは別個なものであるようにわれわれはここで初めて承つたのでございますが、菌と毒素が別個であるということはどういうことでありましようか、もう一度承りたいと思います。
  37. 小林芳人

    小林参考人 最初の御質問にお答えいたします。二・五パーセントと一パーセントの問題ですが、これを数学的に申しますならば、二・五パーセントを一日やるのと、一パーセントを二日半ですか、つまり総量としては同じになるから一パーセントを数日続けていいなら二・五パーセントも、たつた一日だつたらいいのではないか。これは数学的には計算できるのでございますが、われわれのような生物専門から申しますと、そこが原則的に非常に大きな違いがあるのであります。と申しますのは、薬でも毒の作用というものは、一日に与える量、それからそれがからだに入りますと濃度になります。これが絶対的に大事な条件になる。次いでそれがどれくらい幾日間継続するかということが一つの大事な要素になるのでありますが、一つの要素として一ぺんあるいは一日に与える総量というものが非常に大きい。ですからこれを例によりますと、十グラムの砒素を十日間かかつて、一日一グラムずつ与える。そのときは無害であるからこれをつめまして五グラムずつ二日間やつても、総量は同じですから、五グラムずつ二日間やつてもいいじやないか、しかしこれは全然違う。五グラムずつ二日間やりましたらそれははるかに強く作用が現われて参ります。これはたとえば医者に薬をもらいまして、もつたいないから一日分を二日か三日に引延ばして飲んでもきくだろう、これは絶対だめです。やはり限界がある。これと同じ意味で、数学的に一日に幾らだからというのは、実験をやつて、ちやんといいという実証ができない限り、これは私どもとしては承認ができないのであります。これだけを申し上げておきます。
  38. 浦口健二

    浦口参考人 今お話の一パーセントにおいて一線を引いて、さらにその上にいろいろの算術をするということについては、結局私どもの一番知りたいのは、外面的には何かおかしな計算だと思いますけれども、私どもはやはり実証を通じてものを考えるべきだと学者としては思うのであります。従つてこの前の楠本部長の談として新聞に伝わつておるものだけしか私どもは知らなかつた当時、何を根拠に——何を根拠にということは、どういう実験的な事実を根拠に算出されたかを直接聞きたかつたのであります。たまたま二日の日でありますか、厚生省で主催された研究者協議会というのがありまして、その趣旨は今後の研究対策の方針をきめようというのであつたのでありますが、私ども参集者に、これは新聞だけで承るのでなく、当然その結論でなした、その二・五云々という結論を出されたその間の根拠になるものを、説明してほしかつた。直接聞きたかつたのであります。私はそれを要求したのであります。しかし確答を得られませんでした。ただ私どもとしてまわりから推定できることは、厚生省の内部でやつた動物実験、それから新聞の伝える京都大学の人体実験、この二つなんです。新聞は初めから人体実験だと楠本部長明言すと書いてありました。私はそれならば何か計算の仕方でああいうロジックもあるものかとお聞きしようと思いました。また厚生省側でやつた実験を基礎に、ああいうふうなことが、算出されるならば、どういう点をスタート・ラインにされたか、それを聞きたいと思つてつたのであります。結局新聞に書かれておる人体実験を基準にしたということはお認めになりますか。しばらく考えて、どちらとも明言はいたしたくないという話でございましたので、それ以上それを追究することはできませんでした。そうすると私どもはそれ以上のことを考えるということは許されなくなつて参るのであります。動物実験をいたしたものならば、それからどういう係数をかけて、どういう安全度をとるということも一応考えてみることはございます。その線で行くか、もう一つ別の線で、人体実験で行くか、とにかく私はこれは理解し得ないといいますか、安全度の出し方について説明を受けなかつたので、結局二・五というのは、反対とか賛成とかいうのでなくて、一体ああいう考え方が、私ども動物学あるいは薬理学というものをやつておる者の考えのどこに該当させて考えてよろしいか、それができないというだけのことであります。  従つてその点はよろしいとして、第二の御質問、一パーセントを継続期間はどこまで許されるかという御質問かと承りました。これは先ほど来たびたびお話しておわかりになつておるかと存じますが、一パーセントという線はまあまあのところです。そのまあまあがどうやつてできたかということは、私はちようどそのとき何といいますか、参考人みたいな形でその席におりました一人でありますが、厚生省の出した動物実験の結果が一パーセントのところの線はどうであろうかという議論のときに、私どもは直接その種の実験をそのときは持つて参りませんでしたけれども、その毒物の性質を比較的考え得るというような意味で呼ばれて出て行つたのであります。行政的な決定とかそういうことだつたら私は出たくない。学者としての研究がまだ緒についたばかりで、不完全な材料で、そういうものにすぐにお答えすべきものを持つておらない、中間のところでありますから、私はそれは触れたくなかつたのであります、行政には関係ありません、どうか出て来れということで私は出たのであります。一パーセントの線というものは厚生省内から提出されました。それに対して安全度一〇〇を見たということも説明がありました。結局安全度を十分にとるという、その十分さの解釈において少しばかり、結論ではありませんが、私が研究者として要求したい安全度の幅と、それからそのほかの方々が考えられた点とあるいは少し食い違いがあつたかと思います。と申しますのは、かび米を人工的につくりまして、動物に食わせる、先ほども申しましたが、何段かの百プロ、十プロ、一プロ、段をつけて、一匹ずつそれを食わせるわけであります。そうして一プロの線で変化がなかつたというところを——そこで結論を出したのではありません。そこで動物実験の自然のかび米で変化のなかつた最初のトップのところのパーセンテージを計算の基準にする、スタート・ラインにする。ここのところが、実際には直接今度の黄変米騒ぎが起つてからたいへん混乱しております。それはこの問題に関係なしにも言えることでありますが、大体薬の安全度を推定するのに厚生省の内部で中間的につくられた規格がありまして、動物、ことにねずみの場合に、わかつた薬を使つて今のように各段にずつとやつてつて、変化がある、そして最後に変化がなくなつたところの量をスタート・ラインにした場合には、人間に適用するときには、その百分の一の量を与えればよろしい。最低百分の一というのが、すなわち安全度で表わせば、それは百倍だという表現を使つております。そこで、ここで問題なのは、今のかび米、人工かび米を動物に使つてプロの線が出た、それから計算するのでありますが、計算して安全度をかけますと、たとえば動物人間とは実際に食う米の量はもう格段の相違がある。御承知かもわかりませんが、あの小さな、百グラムのねずみが二十グラムの飯を食うのであります。私どもが五十キロと仮定しますと、十キロの飯を一日に食うのであります。私どもは実際は五百グラムくらいしか食べませんが、そんなにたくさん食う習性のあるねずみ、すなわち人間の二十倍も食うような習性のもので実験をやつたのであります。人間がそういう二十倍も食うようなことはあり得ないのです。一升飯、何升飯といつても、絶対にありません。人間の場合には、実際の二十倍にはね上つたところで、やつた実験に匹敵するわけであります。すなわち安全度は二十倍とそこでとれる。ねずみで出た一プロというものをそのまま人間に与えたとする、そのときに、飯の食い量からいうと、二十倍、それからもう一つ違うことは、かびの性質でありますが、これは一プロといえばどちらでも一プロのかびとお考えになりましようけれども、実際に自然のかび米の一プロと、それから培養によるかび米の一プロと、これはその中のかびの生え方なり毒物の入り方というものは必ずしも同じではない。百粒の中に十粒自然に入つてつた。それから一方はかびを培養して人工のかび米をつくつて、十粒白米か玄米九十粒とまぜた場合を考えると、同じ十粒同士であつても、その中の含有されている毒はどちらが多いか、これは実証がない。従つてわかりません。しかし実験室で使うときに、すなわち動物実験に実際に使つた人工のかび米というものは、これはいい条件で十分に生えることをこいねがつてつくつたものでありますから、非常に強い毒が含まれているものと考えてよろしいかと思う。ところが船で持つて来たやつに発見されるかびは自然につくのであります。その条件は私どにはわかりません。わかりませんが、少くもさしでとつたり何かして、その中に一プロ、二プロ、すなわち百粒の中に一粒、二粒というのは、かびの方から申しますと、それほど蔓延しているのではないので、かびがつき始めのときで、まんべんなくどの粒にも広がるというのではなくして、ごく少数ぽつんぽつんとくつついている状態をまず想定できる。そうしますと、このかびの生え方というものは非常に新しいものか、とにかくあまり元気のないものだ、いい適当な条件実験室でばあつと生やしたものよりは、はるかに少いのじやないか。その証拠は何かと言われれば、私どもは困りますけれども、まあ弱いだろう。弱いだろうというフアクターをかけて、たとえばそれが五分の一であると仮定いたしますと、自然のものの方が、人間研究室で十分につくつたものよりは、毒性は五分の一しか入つてないだろうと仮定しますと、そこでさつきの話にもどりますが、その動物実験の結果を判定すると、やつぱり人間が現実に配給されて食うものは、たしか同じ一プロでも五分の一に弱いだろう。すなわちそこで安全度が五倍になる。さつき飯を食う方で二十、かびを実際につくつている方で毒素の上で五としますと、二十かける五で百倍の安全度ということになる。すなわち動物実験で出た何も変化のないその段のところを基準に、実際に一プロつたと思いますが、人工のかびをそのまま人体に持つてつても、それは百倍の安全度ということになります。これは偶然そこで一致してしまつたので、話が非常にこんがらがつておるのであります。何か動物について一プロと出たものを、すぐ人間に一プロと横にすべらしたようにお考えでしようけれども、決してそうではなかつたのです。計算して行くとそうなつてしまうのです。ですから、はたして五分の一ととつてよろしいか、それは実証はなかつたのです。御承知通り、私どものはトツプを切つて実験を始めたと言い条まだ三箇月、厚生省ちよつと出て始めているのですから、もう少し遅れておるかもしれません。そうすると、実験的のデータはまだ製造中でありまして、その途中のものを持ち寄つて、これが蔓延しては困るから、何とか基準をつくろうという相談のときでありますから、ともかく徹底的な結論なんか申し上げられる時期ではないのであります。だんだん予想される不安とか害を何とか狭くしよう、そのためには少しでも科学的なものを入れて行こう。そういう努力で提供した材料でありまして、それから以後どんどん研究は進んでおります。遅々としておるといつても進んでおります。これは全然未知の世界の仕事でありますから、なかなか困難が多いのでありますが、進んでおります。今になつて考えれば、それはあのときもう少し何とかならなかつたかと批判の余地はあるかもしれませんが、そこまで責めたてられたら、私どもは行政に対して何らお役に立つような実験のデータも意見も述べられなくなつてしまうのであります。ただそういう空気の中で提出された一パーセントの線であります。なおそのときに、もう少し安全度を大きくとれないものか。何しろ人間が食うのであります。かびの毒素そのものは、かび米の品質ではなくて、実際の毒の分量だから、これは動揺するだろう。そのフアクターも入れて何とかならないだろうかという気持を述べたのです。述べたときに、それは安全度を百にとつてあるから一応の安全はあります。しかし、私どもの気持として、ただ純実験的な狭い視野からの主張としては、あるいは強い不安になり過ぎておるかもしれませんけれども、もう少ししぼれないものか。たとえば一プロというのは、ほんとうに一プロをずつと配給するなんということはないでしようね、と私は言つた。しかし、いやそんな心配はない。これは暫定的な処置である。しかも実際にさしをとつてかび米を調べたときの量は、あるときは〇・三、あるときは〇・一と出るかもしれない、それは動揺するだろう、ただこの線よりもはね上つたときにそれを切るんだ、配給からとめるという線なんだ、そういうことですから、下の方でふらついている。だから一プロを通して人間が食うことはちよつと考えられないし、かりに三十日配給しろとおつしやつても、現在の配給事情からいつて外米はそんなに手持ちはないし、それからその中にかび米はまた少くなるんだから決して御心配は御無用だ、そう言われた。私はそこまで言われるまでもなく、実際にすでに欠配があつたかどうか知りませんが、毎日お米をもらえる身分じやないので、そうだなと思つて、これがぼくらの意見と行政官庁の意見との違いだろう、ここで勉強したぐらいのつもりで私は帰つて来た。しかし大丈夫かなという気持はちよつとあつたのですが、ただ帰りしなに、これは先生方の意見参考に聞いただけであつて、ここで結論は出しません、あとでいずれ省内で決定しますということを私に言つてくれたものですから、私はやれやれと思つてつた。なるほどそれから二週間ですかしましたら、ガリ版でタイの黄変米については一プロイスランデイア黄変米痕跡云々という、そのときに出た結論に大体準拠したようなものを届けてくれました。そういうふうにきまつたものと実はこの間まで考えておりました。今もその意見はかえておりません。暫定的な処置でありまして、それが一月に三十日必ず配給する基準であるなんと言われますと、まつたくどきんとするのでありまして、そんなばかなことをだれが言つたか、私は実際憤慨したくなる、ほかの人も聞いておつたじやないか、私はその席上で言つたのであります。いかにも学者が保証した線、しかもその保証は二月でも三月でも通して大丈夫だという線のように響くような新聞記事を見ますと、私はあんまり学問というものが悪用されることはいさぎよしとしないのであります。
  39. 田中彰治

    田中委員長 委員諸君、実はそこに配つたの黄変米をつき直したものです。この前もちに非常に毒素の菌がありまして、それを動物なんかに食わして害があつたものを、もちの上を削つて中だけを食わしたら何ともなかつた。何ともなかつたということは菌が少くなつたということだから、一応一皮むいたら菌が少くなるのではないかというので、試験につかしてみた。これを今日ここにおいでになる参考人厚生省に持つてつていただいて、もう一回試験してもらうことに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 田中彰治

    田中委員長 それではそういたします。
  41. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 小林先生にお伺いいたしたい思います。いろいろお述べくださつて、結局、プロを越さないというその限界は、相当学者の立場を貫く共通した御意見のように拝聴したのであります。この研究、調査をなさつておる学者は相当おありだと思いますが、池田という国立衛生研究所の方も昨日大体同様にお述べになつておりました。これはこの種の研究をなさつておる学者の多数の御意見のように了解していいのでございましようか、その点いかがでございましよう。
  42. 小林芳人

    小林参考人 今実際に黄変米実験研究に従事いたしております者全部がほとんど一致した一プロという線は、それは先ほど来浦口博士からお話のようにもつと厳重な線がほしい、しかしできるだけ低い線で押えるようにして、少くとも天井は一プロ、それ以上は絶対に——それでさえ学問的にいえばもう少し検討して、さらにはつきりした安全な線を出したい、少くとも当分は一プロだ、これはみな一致した意見でございます。但し、この問題に関与して実験をやつております者はまだそうたくさんはございません。今後今までのような貧弱な研究の陣容ではなかなか手間がかかる。何とかこの点は早く、ここまでは安全であるという線を出すなり、あるいは私としては、これを解毒してしまう方法を見つける、体内に入つてもそんな肝臓腎臓なんかに害を及ぼさない方法ができればそれもよろしい、あるいはついているかびと同時になるべく完全に近く毒素も除去する、こういう研究もぜひやりたい。これは日本以外にちよつとできない実験だと思います。米の産地の南方あたりに研究者もおりますけれども日本と比べますと、まだまだとうてい下の方でございます。これは日本のわれわれでぜひはつきりときわめたい、こう考えております。
  43. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 だんだんと毒素の研究毒性研究をお進めくださつておると思いますが、去年の六月に厚生省から食糧庁にあてまして、旧輸入病変米の処理基準というものが出ております。これによりますと、タイ国の黄変米を含有する変質米については、一プロ以下の場合は飯米として配給してもよい、それ以上はできない。それ以外のものの原料にする、イスランデイア黄変米につきましては、これは痕跡的存在はやむを得ないが、しかし含有するものについては原則として飯米としての配給はしない、両者混合するものについてはイスランデイア黄変米と同一に扱う、大体こういう趣旨になつております。それで特に伺いたい点は、その当時以後に御研究の結果は、これらの毒性は当時に比較して弱いというような方向へ現われつつあるのでしようか、もしくは強いというような実験の結果が現われつつあるめでしようか、しろうとの問い方でありますので、学問的に正確な表現でないと思いますが、これをひとつ御説明願いたい。
  44. 浦口健二

    浦口参考人 今まで行われておつた六月の混入率をきめた当時は、先ほど申すように、私どもの方としては三回、四回くらいの実験でございます。非常に不安定な、しかしできるだけ資料を集めて一応の線を出そうという厚生省の原案に対して、私どもはその貧弱なものから意見を述べた、そういう状態です。その後私どもの方でもやつております、それから厚生省でもやつております。農林省農林省で、これはいち早く角田博士が本問題の最初から肝硬変云々というような結果を出しておるのでありますから、これは非常にはつきりした、重味のある意見といいますか、結論的に恐ろしいような結論を最初に投げられたわけであります。どこを基準にして最近の結果が弱くなつたとか強くなつたとするか、それは実は非常にむずかしいのであります。御承知のように、かびを米という食いものにくつつけまして、しかもそれを生かしておきましてそこに毒物が生存するのであります。いかに生活条件としての温度とか培養条件というものがはつきりいたしましても、その毒物の出て来る量は非常に動揺するのであります。いつも同じようには出ないのであります。元来がそうであろうということは、今度の黄変米ではない前の黄変米のときに、私は数年にわたつて同じかびを一年に何回となくたびたび培養してみて経験したことであります。どういう理由かわからぬ。同じようにやつたつもりなのに、毒物の性質があるときは弱くなり、だんだん弱くなるかと思うとあるときは強くなる、そういうように私どもにわからないが動揺するということはあるので、私どもの経験ではかびというものはずいぶん気まぐれなやつだ、毒物の出し方はかわるものだということを痛感しておるものであります。そこで、そういうかびでつくつたかび米をいかに神経質に規格通りにやりましても、その動揺は想像しておかなければいけないのです。ただそれがどのくらいの強さだということをきめる尺度がないのであります。ないと申しますのは少し悪いが、むしろその未知のものを使つてこれから尺度をつくろう。動物に与えて動物の変化を機能的に、あるいは形態的と申しますか、顕微鏡なんかで調べるわけなのです。調べてどういう変化が起つているかを見るのです。起つている変化が強くなつたり弱くなつたりすることは事実でありますが、その原因がそのかびの気まぐれにあるか、あるいは動物体の感受性の動揺にあるか、あるいは食いものにあるか、そういうことがはつきりしないのであります。従つて結果そのものは、実験はたとえば十何回やつた——一年間に大体十三、四回やつておりますけれども、その結果の強さが時によつて動揺しておることを認める。認めますが、それでは六月の委員会のときになぜ痕跡を認めずそれから以後に大分ゆるくなつた、何か根拠があるだろうとお考えかと思うのでありますが、それはイスランデイア黄変米だけのことについてお考え願いますと、私ども実験及び実際に系統的に始めた厚生省実験もそんなにその前後でひどい変化はないのでありまして、強さにおいても結果においても、格段の差というものは認められない。ただ六月にきめますときには、実験の貧弱なデータをつかんでここで何か出そうというときの話であります。農林省から出ている角田氏の報告の方は、非常に悪性な肝硬変という結果が出ております。私どもの方はそれがほんとうかどうかを確かめるために、組み立てて何回か繰返し始めた序の口の三べんないし四へん目に今の問題が起つている。従つてどもの方は角田氏のような強い結果が出るかどうかを再確認しようと思つている途中でありますから、従つてどもの結果だけで押し通す、すなわち案外変化が少いかもわからぬというような点で押すのはあまりにむちやであります。しかもれつきとした科学的な実験である。私どもは角田氏のその結果を顕徴鏡で見ますとりつぱな肝硬変であります。どうしてそれができたかということは、私ども学者的にやかましく言うと、だんだん変化して行くその頂上と出発だけで、途中がわからぬからオーケーをしないのだとがんつただけでありまして、それを私どもつている途中でありますから、従つて一応の敬意を払つておる。またそれがほんとうに混入しているかもわからないということは大いに考えられることでありますから、私どもとしてはその前のすでに発表になつているものにかなり重きを置いて、自分たちの結果はその点では少しひつ込めた。従つてつてつて万々一にもこういうことが起つたらこれは食品衛生法の趣旨に反するということで、ちよつと配給は好ましくないという線を出した。ですから実験そのものはそれから以後も大体私どもの方に関する限り、あるいは池田博士の方に関する限り割に動揺が少い。あまり強いものは出ておらなかつた。おらなかつたと申しますのは、今は出ておるのであります。ただごく最近にそれがはつきり出て、角田氏のような結果が確かにあり得る。相当それははつきりした意味で、先ほど小林教授も紹介されましたように、そういう結果が出ておりますが、これは学問上に認識させるといいますか、承認を得るだけでも大仕事であります。そういうことがあれば医学上の大問題であります。あまりこういうところで話したくないのですが、そういうことが出ておりますから、従つて今度の二・五なんかは関係がないのであります。とにかくごく最近の私どもの心境をもし問われるならば、少くとも一プロの線を破ることだけは何とかかんべんしてもらいたい。将来はあるいはそれを締めなければいけないのではないかという方向を研究的には思つております。そういう意味でございます。
  45. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 今の説明によりますと、御研究の結果は角田博士の最初に発表せられましたイスランデイア肝硬変の毒素がだんだん確認されるといいますか、そういう方向へ進行しているようにも伺えるのでありますが、そういたしますと、さつき小林教授日本人の肝臓がんとか肝臓疾患が非常に多いというようなことにも思い至りまして、やはり何としましても学者が証明し、実験する結果のその線は、これを破る何らかの実験上の根拠がないならばそれに従う以外には、もし真理に忠実であろうとすれば道がないのではないかとも考えます。これは私の感想ですけれども、そういうようなことを思いまするのでお尋ねするに至つたのであります。そうしますると問題を転じまして別の面をちよつと伺いたいのですが、これはやはり純学者的なお立場でお述べ願えればけつこうなのです。行政的な理由は一切いりません。  イスランデイア黄変米毒性あるいは毒物、それの構造とか本体というものはまだはつきりしない面がある。そのイスランテイア黄変米についてすでに肝硬変の発表が角田博士によつてされておる。学者はこれを認める方向に現在は進んでいる。そのイスランデイア黄変米が、黄変米処理基準の古いものによれば痕跡があるものもやむを得ないということになつておる、それでもイスランデイア黄変米を含んでおるものの配給をしないという原則ははつきり出ておる。この原則が今度の七月二十四日の両省の申合せによると破られておる。つまりこれは学問的に御判断願うと、前の処理基準よりも寛大に扱われておるということだけは言い得るのでしようか、さらに厳格になつたというのでしようか、これは他のいろいろな要素が加わらぬと正確な意見は出ないかもわかりませんけれども、概念的に申しますれば、一プロ以上のものも食糧配給に可能であるとして、いわば元の線はそこでこわれておる。イスランデイア黄変米は配給しないという原則が、これも配給するということでこわれておる。われわれしろうとから考えて、この二点からだけでも去年の基準よりも黄変米の処理が非常に寛大になつたというふうに考えられてしようがないのですが、これを純学問的にお考えになりましたら厳格になつたのか、同じなのか、あるいは寛大になつたのか、これは簡単でよろしゆうございますが、どういうことになるのでありますか、お答え願いたい。
  46. 小林芳人

    小林参考人 私から……。実は、今浦口博士からお話がありましたように、肝硬変のすごい変化が起るというのを角田博士により見つけられましたのが今度の外米黄変米の初めであります。そのときの実験はイスランデイアでやつておりまして、実にひどい変化が肝臓に起こつております。タイ国の方は腎臓に多く行つており、ややそれほどではないというので、実験をやりまして、結局去年の六月あたりの厚生省衛生試験所の実験の結果から、タイ国の方は一応一プロということが許されました。イスランデイアの方は、角田博士の実験をもう一ぺん繰返して確かめて、確認した上で処置しようということで、浦口博士もまた厚生省の衛生試験所でもイスランデイアについての実験がずいぶんやられたのであります。その結果角田博士のようなすごい結果がずつと出ていないのであります。ほとんどタイ国と同じくらいであります。動物における量的の変化を百プロ、十プロ、一プロあるいは〇・一プロとまぜまして、同じ条件で見て参りますと、肝臓には変化が参りますけれども、最初に見つけてわれわれをびつくりさせたような病変がいずれからも出ない。大体タイ国とイスランデイアというものは、毒性からいつてほぼ同じくらいという結果がその後ずつと出たのであります。そこで最近、いつごろか私も詳しいことを存じませんが、一応この状態ならばイスランデイアだけを特に区別することもあるまい、タイ国と同列でよかろうということでずつと現在まで来ておるのでございます。ところが浦口博士の述べられましたお話は、何とか角田博士の出したあれを確認してみたい、あれはいいかげんなものであつたのではなかろう。そこで先ほどからお話がありますように、ああいうかび類でも黴菌でも毒物を自分から産生いたしますが、その量というものは温度とか、湿度とかいろいろな条件に左右されて、少ししか出さないときと、うんとたくさん毒物を出すときとあるのです。そこでいろいろ条件をくふういたしまして、ある条件によつて——その条件とは温度で、普通かびをはやしますと温度よりもやや高い温度、最近の気温くらいの温度で、三十度から三十二、三度くらいの温度である期間、何週間か培養いたしました。それを実験材料に使いましたところが、これが角田博士の最初の実験をまつたく確認するようなすごいものが出た。これは数日前のことなんでございます。米にいつもそんなすごい毒物があるとはちよつと考えられませんが、ある条件を与えられまして、非常に最悪の条件、われわれから見れば最悪の条件、かびから見ると最善の条件で、自分の毒物を発揮できるような条件を与えますと、そういう可能性もあるということが数日来やつとわかりました、こういう実情であります。
  47. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 今伺いましたことで残つておりますから……。それは実験上の新しい御発見でありますが、そこで、学問的に見まして、以前に一プロと押えておりましたのを今度ははずしておりますね。はずしておるというのは、あるいは横手から見、裏から見、あなたの答弁を別の面から見ることになるのかもしれませんが、要するにそれは許容限度をゆるめたでしようか、厳格にしたのでしようか。その点なんですが、それはどう解釈すればいいものですか。それはやはり学問的に、科学的に考えないと、常識的にははつきりしないようであります。
  48. 小林芳人

    小林参考人 私から御答弁申し上げますが、こういうようにいろいろ問題が起つております最中に、実はそういう恐ろしいはなはだ危険な性質がわかつて参りました。こういうことを考えますと、タイ国の方には、イスランデイアと比較して、それと匹敵するほどの大きな毒性のあるということは、見つかつておらないのであります。タイ国の方とイスランデイアとでは、現在の研究段階では毒性性質からいうと多少の差があるかのごとく見えております。しかしこれは先ほど来申し上げておりますように、私ども研究としてはまだほんとうに緒についたばかりだと私は考えております。先ほど申しましたようにイスランデイアの方は非常に悪性で、タイ国の方はやや性質がいいということをはつきり申し上げる段階になつておらない、タイ国の方が安全だという証拠もないのであります。またどういう条件でどういうふうにしましたならば、非常に毒であるという証拠があるいは出ないとも限らない、ただあくまでも学問的に考慮いたしますと、こういう毒物というものは普通のわれわれの生活の上には、そう年中来るような条件ではない、大体は一プロときめたときくらいの、毒性割合たくさん持つておると思つても、大体二十五、六度から二十七、八度ぐらいの温度で培養しておりますから、そのくらいの温度以上に上るということは、一年のうちにはそうはたくさんはございません。全体に学問的に見まして、イスランデイア黄変米に、われわれが最近見ましたようなあんな強い毒が含んでおる、こうは私どもちよつと解釈しておらないのであります。従つて今タイ国とイスランデイアということをはつきり区別して、一方は辛くする、一方は甘くするという論拠も、どうもわれわれには見出せない実情でございまして、先ほども申しておりますように、私ども研究としては緒についたばかりで何にもこれを参考にして調べる過去の実験がないのであります。まるで無から出したような実験でありますので、私の想定としては、最悪の場合は日本人の主食というものを考え直さなければならぬような実情が、あるいは出て来るかもしらぬというふうにも思われるわけであります。しかしそういうことを軽々には申せません。まだ何も論拠がございません。そんな程度で、学問的に申しますとまだスタートで、これは学会に発表して、みんなで大いに学問的な線をこれから出さなければならない。イスランデイアとタイというものは一応そういう線が出ましたが、ここではつきりと両方の差異がどれだけあるということをちよつと学問的には申せないというのが現状であります。
  49. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 両先生はいろいろとお仕事中でお急ぎのようでありますから、簡単にして終りたいと思いますが、御答弁も簡単でけつこうであります。  ちよつと幼稚なことを伺うようですけれども、この毒素は各黄変米を通じてどこにあるのでしようか。黄変米菌を顕微鏡で見ると、胞子あるいは梗子、小枝、小生子、いろいろございますね。どこから出しておるのですか。どこから毒素は現われて、どこで見つかつておるのでしようか。もう一つ、色素はどこからつくり出しておるのでしようか。もしくはどこにあるのでしようか。色素の点は、白米と黄色粒がありますので、ちよつと問題にしておきたいと思います。その毒素と色素はどこにできて、どこに入つているか、ちよつとそれだけを簡単に御説明願いたいと思います。
  50. 浦口健二

    浦口参考人 今の御質問に、私どもの方としては——これはかびの方の植物学者の方のことで、直接にお答えする資料を持つておらないのです。それからもう一つは、毒素の本体を追究するのに、今とにかくかびのように、動物にあつて変化が起るという方向で調べておるわけですから、そのものが何であるか、あるいはどういう性質かがわかれば、そういうことはすぐにお答えができるだろうと思います。それは化学の人と植物学の人、この二人でまず第一に相当基礎的な知識をつくつてからでないとわからない。おそらく植物生理学的な仕事だと私は思います。
  51. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 チトリニンは大体発見されておるようですが、チトリニンはどこから出て来るのですか。
  52. 浦口健二

    浦口参考人 残念ながら私にはちよつとその点わかりません。
  53. 小林芳人

    小林参考人 学問的に非常にむずかしい御質問で、実はそういうことも、ちよつと専門をはずれておるのですが、知りたいのです。こうお考えになつたら、およそいいのではないかと思います。これはきわめて学問的に、常識的な考え方ですが、われわれ高等動物は食べものを食べ、それから小便をし、大便をいたします。時々刻々つばきも出ますし、汗も出ます。分泌物も出ます。あるいは大気中から呼吸をします。食べものが材料になつて、ここで栄養物をとつて変化し、いらなくなつたものが出ているわけです。それから薬なんか飲みましても、その薬が変化して出る、あるいは変化しないでそのままいろいろなところから出て来るものもある。これは非常に高等な動物でありますが、植物もやはり似たようなことをやつて絶えず動いておる。栄養分をとつて、栄養分によつて自分が生活して、変化したものを出しておる。出しましたものは、われわれから言えば、大便で出たり、小便で出たり、汗になつて出たり、からだのまわりにべつたりくつついているのもある。糞便の中に入つているものもある。外へ出ているのもある。そうお考えになればいい。からだのためにいろいろな栄養をとりまして、そこで変化しました結果、複雑な形になつて外へ出るのです。一部は体内に入つている。そういう性質で非常にとてつもないようなものを彼らはつくるように見えますが、そういう微妙な、人間の知らぬ、われわれの化学で、試験管の中ではできないような非常にむずかしいものを、黴菌とかかびがつくる。そういうものがたくさんあるわけであります。
  54. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 顕微鏡で見ると、この枝の胞子のここら辺に、幾つか円や楕円の胞子が散乱して見えます。その胞子自体には毒性のものは何か見つかるんでしようか、どうでしようか。
  55. 小林芳人

    小林参考人 ちよつとその点も私正確にお答えできませんが、その胞子というものは、ある程度生殖腺みたいなものでございますから、繁殖のための抵抗力が非常に強くて、生活は極度に耐乏生活やりまして、なかなか熱にも強いし、薬にも容易にやられないという性質を持つておるものが多いのであります。そしてちようど自分の生きるに都合のいい条件のところへくつつきますと、今言つたように、そういうからだをつくつて、そこで初めて毒物を出す。だから、何も胞子そのものが毒をたくさん持つているということは、全然ないとは申し上げられませんが、ないと思います。
  56. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 去年の年末以来、白米に黄変米菌が付着しておるということが見つかつたらしい。そこでどうもこの点しろうとらしい御質問ですけれども、どの段階になるときに米か黄色化するのでしようか、黄色粒になるのでありましようか。どうも御説明を読んでみますと、いずれの黄変米も黄色かもしくは、あめ色になる、いつまでも白くあるもの、こういうものは一つもない。こういう御説明になつておる。これはどの段階まで成長いたしましたときに黄変化するのでありましようか。これはどうですか。
  57. 小林芳人

    小林参考人 これもたいへんむずかしい御質問で、学問的にも実際にそういうこまかい点までまだよくわかつておらないと私は思います。ただ私ども大体想定いたしますのは、かびを培養いたしておりますと、毒というものはだんだん色がついて参る、それにほぼ並行して毒力もだんだん強くなつて行く、若いうちは弱いのが、だんだんとある年がたちますと、人間でいえば、青年か壮年になつたと思われる時分に、あるマキシマム、天井に達します。それ以上に培養を続けて行きますと、毒力が落ちて来るというのが大体の通説であります。やはり青年から壮年時代の血気盛んな時分、それからだんだん衰えて行くという自然の経過をとつておるものと思われます。色素と毒素が同一物であるかどうかということは、これもこれからの問題でありますが、こういうような実験をぜひ化学の方面で、これはいわば日本の第一人者を実はわれわれ研究陣にほしいと思つておりますが、非常にむずかしい問題であります。そういう方面からわけて参りましたらおそらくわかると思いますが、今までのところは大体の見当でありますが、あるいは色を出すものと毒物とは別なものかもしれない、伴つて参りますから、色がついて来ると毒があるという結果にはなりますけれども、厳重にこの両方を化学的に分類しましたら、あるいは別なものも出て来るかもしれない。そうしますと、毒そのものは無色である、たまたま色素が伴つてつた。そうなると、色素を伴わない無色の毒もあり得るのではないかという心配も起る。そういうこともあり得ると思います。
  58. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そこで主食に関しましては、非常に重大な保健上の問題でありますので、日本米、内地産の米にはかつて黄変米は発見されなかつたのでありましようか。やはり非常に湿度の高い日本の国でありながら……。どうも全世界の米の産地どこにも分布しておるような御説明もあるが、その点はいかがですか。
  59. 小林芳人

    小林参考人 日本米、日本内地の米ですが、内地の米については先ほど浦口博士も言われたように、内地の米を対象にして実は研究を始めておりましたところが、うんとたくさん食いますと、非常に急激に中毒が参りますが、われわれが普通食べておるくらいでは、いわゆる慢性的な恐ろしい中毒はない、ほとんど無害に近いということと、内地米を貯蔵する余裕もなくなつたために実際かびのある米がなくなつた、それだけだと思つてつたのであります。ところが最近こうやつて外米が入つて参りまして、いろいろなかびにぶつかる。特に病毒を出す二つのかびがわかりまして、実はこれはいろいろかびの学者の方で研究いたしておりますと、イスランデイアのかびは世界中に普遍的なかびで、カリフオルニアの米にイスランデイアが入つていたというようなことも新聞に出ましたが、これは当然のことで、日本の米にも見つかる場合がある。但し非常に量が少い。これは世界中の米というもの全部に広がつたかびだそうでございます。タイ国も、まあどの辺まであるかということを詳しく調べておりませんが、この二つ以外の有毒な米もありそうな結果も出している人がある。こういう点もわれわれはこの二つの菌ばかりに固定しないで、外米とか日本内地の米とか区別しないで、あらゆる米について検討をいたさなければならない。相当普遍的と考えていいのではないか。温度と湿度の関係でそういう胞子が広かりましたら、これはどこでも汚染されるわけでありますから、どんどん広がりますと、今まで日本になかつたようなかびがはえて来る可能性はないとは言えない、こう考えております。
  60. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ではもう一点だけ……。いろいろお説を伺いまして、非常に重大な問題に取組んでおられますあなた方の御経験によりますれば、この種の問題は菌の問題から、毒素の問題から、あるいはさらに分布の問題から、各般わたつていろいろな角度から研究しなければならぬということは、われわれしろうとでも思うのですが、一体こういうことはかなり大きな総合的な研究、あらゆる角度から学者を動員するような設備とか人とか、いろいろなものを合せた研究でないと、ばらばらてんでにやつておるようなことでは、これは百年待つようなことになるのではないかと心配もされるのです。こういうことについては何かよりよりあなた方の方でも御会合になる機会もありましようから、お感じになつておることがありましたら、教わりたいのです。結論だけでけつこうですが……。
  61. 小林芳人

    小林参考人 今のお話つたく私も同感でございまして、今の日本医学なりその他化学の面が非常に活溌化いたしまして、世界に遅れをとらないように戦後大いに盛り返しては参りました。昨年実は私は世界中をまわつて歩いて痛感いたしましたことは、いかにも日本の設備が貧弱でございまして、われわれ能力は彼らに少しも劣つていないと自負しております。ある意味では進歩しておる面もございます。遺憾ながら戦争を契機といたしまして、学術の進歩がえらい飛躍をやつた。ところがあの十年間われわれはほとんど自分の研究室あたりの設備ができないで、やつとこさ現状をこわされずに維持することに精一ぱいで追われておりました。ところがそんなことにかかわらず、どんどん進歩を進めておつた外国も幾つかあつた。それを見て参りますと、設備の点でえらい大きな差をつけられたなということを痛感いたします。アメリカのような金持ちの国はこれはちよつとわれわれすぐはまねできないと思いますが、西ドイツ、それから北の方のスウエーデン、英国はもちろん、ずいぶん経済的に困つておると思われながら、研究室は実にりつぱである。われわれの東京大学をごらんになればわかりますように、外観は実はりつぱでございますが、あれは何らの補修費がございませんで、もうこわれてよごれてそのままなんです。修理する費用が少しは参りますが、非常に乏しいためにどうにもならない。こわれたものを直すとえらい費用がかかつて、今度は研究費がなくなつてしまう。そこで乏しい研究費を有効に使うためには、設備を新しくするというところまでとうていまわらない。従つてわれわれもいろいろななくふう努力で、われわれのこの大きなハンデキヤツプをできるだけ隔たりにならぬように努力はいたしておりますが、何にしても非常にそういう設備と機械の進歩の差をつけられますと、現実に私ども二、三年でできることを、アメリカあたりを見ますと、彼らは優に半年でやつてしまう。これでは同じような研究をやつていたのではてんで競争にならないと、私どもは痛感して参つたのです。西ドイツの状態を見て参りましたか、実にりつぱに戦後復興しました。建物は決してわれわれよりもりつぱとは思いません。われわれよりも簡素な建物を使つておりますが、実験の実質である設備そのものにうんと金を使つている。最新式のものを備えております。スウエーデンのような北の国はなおさらでありまして、英国また同様でございます。そういう面から考えまして、われわれは先ほど来浦口君の言つたような細々といつた感じを受けるのでございます。われわれの努力でこれは何とか続けて、彼らの機械力に及ばないところを補つて行かなければならぬと思つて努力いたしておりますが、これも限度があります。これは茅学術会議議長の話がいつぞや文芸春秋に書いてありましたが、これを外国で見ながら、実に同感いたしたのでございます。まつた外国から見れば骨董品に近い機械をわれわれは大事に使つて、能率の悪いことを承知しながらやつておるという実情でございます。また研究員が不足なのも、私ども一つの悩みでございます。これは生活がこういうわれわれのような地味な仕事をやつておりますと、非常に苦しい。従つて非常に能力のある人もやり通せないで、やめてしまう人が非常に多い。非常に残念でございますが、何とか研究者の養成ということも、実は骨を折りながら実に不足でございます。各方面のこういう必要なことが起つて参りましても、金、設備、次いでというよりも、一番悩みは研究者でございます。これはちよつと半年や一年訓練しても、なかなか一人前の結果を出すというまでには参りません。長年の訓練か必要でございます。そういう人を急に得られない。これが大きな悩みでございます。ですからこれは平時からこういう方面に十分の力を入れるようにひとつ御努力願いたい。われわれも努力はいたしておりますが、われわれの力だけでとうていできることではございません。今度の問題でもそうでありますが、いつもそのときになつてあわてて、人が足りない、設備がないということを今まで繰返しております。そういう方面のことについても、いつでもとりかかれるだけの研究陣というものが、文明国ならはどうしてもあるべきだと思います。それだけ申し上げておきます。
  62. 柴田義男

    柴田委員 これは先生方の御領域でないかもしれませんか、ひとつ御指導を仰ぎたいと思います。たとえば一プロまでは現在までの状態でまあまあである、こういう御意見でございます。ただきよう現在がこの米に対して一プロの黄変量が混入しておる。これがたとえば一月なり二月なり経過いたしますと、この一プロの変化があるのじやないかとわれわれしろうとには考えられますが、そういう変化はございましようか。その点を承りたいと思います。
  63. 浦口健二

    浦口参考人 かびの成長速度と申しますか、成長というものは、それはある時期にとまることもございます。しかし普通のときはだんだん発育して行くものと考えます。また繁殖がはげしい、分裂がはげしいようなときに、毒素は大体生産されるものと考えます。そうすると、かびは現在寄生しておつて、しかもそれから以後のある期間における発育がいいか悪いか、それは存じませんが、生きておつて、とにかく何か変化を起しておるのでありますから、減ることはよもやあるまい。それだけは申せると思います。それ以上のことはちよつと申し上げられません。
  64. 田中彰治

    田中委員長 委員各位にお諮りいたします。この際暫時休憩いたし、さらに午後二時から再開いたすことにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  65. 田中彰治

    田中委員長 御異議なしと認め、よつて午後二時まで休憩いたします。     午後一時十九分休憩      ————◇—————     午後二時三十九分開議
  66. 大上司

    ○大上委員長代理 休憩前に引続き会議を開きます。  午前に引続きまして午後は参考人としておいでを願いました第一物産株式会社穀物油脂部長松井君並びに安宅産業株式会社食糧課長小野君、両君に対していろいろ聞かしていただくのですが、まず御両君にお願い申し上げます。  本委員会といたしましては、この黄変米審議をするにあたりまして、はたして政府買付契約といいますか、委託買付というか、皆さんの方におかれましてどのような手順でこれを内地に運んで来られ、どのような手順で倉庫に納められるか、あるいはまた皆さんの方においてこの政府の買付委託と申しますか、運送と申しますか、その他についてどのような責任があるのかないのか等々を聞かしていただきまして、なお委員からそれぞれ御質問があると思いますので、おわかりの点はつまびらかにお教えくださいますようお願い申し上げます。  まず第一物産株式会社松井君にお願いいたします。
  67. 松井捨次郎

    ○松井参考人 私の方の委託買付をしております地域は、ビルマとタイ国、それから台湾と三地域であります。ただいまいろいろ黄変米が問題になつておりますが、一番話題になつておりますのはビルマでございます。ほかの地域も大体同じような方法でありますから、ビルマについてお話申し上げましよう。  食糧庁との問の契約はビルマ米委託買付契約というものを結んでおりまして、いたします仕事は、食糧庁とビルマ政府側のSAMB——ステート・アグリカルチユラル・マーケツテイング・ボードとの間に締結せられましたビルマ米の契約条項によりまして現地で荷物を受取る。その規格に合つた品物をとつて来る。それから日本まで輸送する船を手配いたしまして、荷物を内地に持つて参ります。しかる後にこれを陸揚げしまして倉庫に入れて食糧庁に渡す、そういう仕事でございます。現地で荷物を受渡しいたします際に、品質の点で今いろいろ黄変米のことが問題になつておるのですが、この黄変米というのは契約書の中にはイエロー・グレーンという言葉が使つてございまして、つまり目で見て黄色くなつている米という表現でございます。従いまして毒のあるなしということは契約には入つておりません。それで私どもとしましても、現地で品物をとりますときの基準は、目で見て黄色くなつているかなつていないかということで品物を選別して来るわけであります。  まず順序立つて仕事を申し上げますと、日本側から積取船をきめましてビルマ政府の方に通告いたします。そうしますと本船が積取港に入ります五日か一週間前に、ビルマ政府のSAMBの方から私ども現地におります者に、どこの精米所とかどこの倉庫にあるものを積み出して本船に積むからという通知があるわけであります。さつそく倉庫なり精米所に出かけまして、そこで精米しておるところあるいはすでに精米されて貯蔵されているものを一応予備検査するわけでございます。まず大体大丈夫だということになりましたならば、その荷物を向うの手で積み出しまして、本船に載せた後に日本側に引渡すということになつておりますから、向う側ではしけなどを用意して、本船の船側まで持つて参ります。そこで積取船の上にわれわれ駐在員及びその下に使つております現地人の検査員、それから本年からは国際的に信用のあるといわれておりますゼネラル・スーパー・インテンダンス——IITCというような国際的な検定員もわれわれの陣営に加えまして、そういう連中が一袋々々さしを入れまして、それで黄変粒のあるなしを調べるわけでございます。契約によりますと、黄変粒が全然ないことが望ましいのでありますが、やむを得ざる場合に一パーセントまで許容率というのがビルマ側との間にできております。一パーセント以上のものは全部はねておるような次第であります。それから悪い場合にはとりかえをいたしまして、数日問予定より延びても船腹一ぱいになるまで荷物を積みまして日本へ持つて参ります。船は大体三週間くらいかかるかと思います。港に着きましてからすぐ陸揚げしまして、そこで食糧事務所の検査がございまして、われわれの仕事が終るわけでございます。  一応概略ビルマの米を日本へ持つて参ります私ども仕事について御説明申し上げたわけであります。
  68. 大上司

    ○大上委員長代理 質問は残りの小野君に御説明願つてからにしたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  69. 大上司

    ○大上委員長代理 では次に安宅産業の小野君にお願いいたします。
  70. 小野一

    小野参考人 私の方はイタリア米だけが食糧庁から指定をいただいて、それ以外の地域についてはまだ指定をいただいておりません。従つてイタリア米の黄変米についてお話申し上げます。  食糧庁とのイタリア米についての契約は、本船船側渡しまでの価格を見積つて食糧庁の公示に基いて一応入札をいたしまして、決定になりました外貨をもらいまして先方に信用状を開きます、信用状を開きますと、イタリア側におけるシッパーは、イタリア側における米の国家機関がございまして、エンテ・ナシヨナル・リシという機関からもみの払下げを受けまして、受けてすぐそれを各精米所に持つてつて精米しまして、それから与えられたシツプメントを船に積むのであります。ところがイタリアでは全体で精米工場が約二百近くある。非常に大小さまざまありまして、大きなのは日産百トンから小さなのは五トン、十トンまであります。これを動員しませんと積み期に間に合いませんので、もみの払下げを受けてから大体船積みするまで一箇月ないし一箇月半くらいの間にそれを準備するわけであります。従つて今度船積みを始めるときはイタリアの積出港はサボナと申しまして、ゼノアから約一時間くらいのところであります。ここで積むのですが、倉庫の設備というものはほとんどなく、日に大体七百トンないし八百トンしか積む能力がない。従つてその短期間につくつた米を船のポジシヨンに合せて次々発送しておる。従いましてその検査はどういうぐあいにしてやつておるかといいますと、まずイタリアの国内の米の取扱い機関でありますエンテ、ナシヨナル・リシがその年の米穀の標準検査をして、それを発表して、それに基いて行つております。そのときには今日問題になつておりまするイエロー・グレーンというのは〇・二五パーセントと発表されております。それを今度は精米所が受けましたときには、受けてすぐ精米をする。次に先ほど松井さんからもお話のありました国際的検定機関、スーパー・インテンダンスがこの検査に立ち会つて、その検査を二百幾つかの工場から持ち寄つて、そこで肉眼検査をやつております。従つてその結果は買入れ条件は一パーセントとなつておりますが、実際は一パーセント以下で、こちらへ着いたやつの結果を見ましても肉眼検査による結果は多くて二・七パーセント、少いのは〇・二五、〇・一というような数字も出ております。そこで検査をしたやつをもう一ぺん今度は貨車に積んで、サボナという港に着くときには、また貨車の封印を切つて、そこでまた検査をして、トータルをしますと、精米所で検査をした数量と、貨車の封印を切つて、そこで検査をした数量とで大体一割程度違います。従つて貨車へ積み入込んだあとで船積みにするときには、航海中の変化を恐れまして、木のやぐらを組んで、ヴエンチレーシヨンでもつて空気の流通をよくして、特に航海中はインド洋のような暑いところ、湿気の多いところを通るものですから、天気のいいときにはできるだけハッチをあけて、空気の流通をよくする。     〔大上委員長代理退席、委員長着席〕 そういうことは船長にくれぐれもわれわれが毎回頼んでおります。従つてわれわれとしては最善の努力を払つて、本船に積んで日本に来るわけであります。それで、日本に来ますと、船側渡しですね。それ以後は食糧庁の指示するところへ委託運送契約で運んで行く、こういう形態で今までやつております。概要を申し上げました。
  71. 田中彰治

    田中委員長 それでは質疑を許しまします。大上君。
  72. 大上司

    ○大上委員 まず松井さんに二、三お尋ねしたいと思います。ただいまの御説明で大体政府の委託買付あるいはそれの以後の事務等については了承ができたのですが、この黄変米のあるかないか、すなわち商品の選別権と申しますか、これは買えるのだ、これは持つてつてもいいのだ、これは肉眼で検査して、ここで買つちやいけないというところの選別権は政府にあるのですか、代行をなさつておる皆さんの商社の方にあるのですか、もしも商社のあなたの方に選別権があるとなると、これはたいへんな問題だと思うのですが、そこのところをお聞かせ願いたいと思います。
  73. 松井捨次郎

    ○松井参考人 ビルマ米の場合には、契約の上で品質につきましての検査というものは、ビルマ政府の一つの機関でありますボード・オブ・パネル・オブ・サベア、BPSという、それの機関がございまして、これが発行する検査証というのが最終条件ということになつております。ただその場合に日本の場合だけは例外でありまして、私ども三社の現地におります者がその検査に立ち会うわけでございます。それで自分たちは検査をしたということの副署をする。その証明書にカウンター・サインをする。積出しにおいてはイエロー・グレーン、黄変粒が一%以下であつたということを向う側の検定人が見、こちらのわれわれもそれを見て、そしてサインをして来る、そういうことであります。
  74. 柴田義男

    柴田委員 関連して……。今の御説明でございますと、この検査はやはり向うの国際的な検査機関がやることが最終的だ、こういう御説明なのですが、しかし食糧庁と商社との間の契約によりますと、第三条で、乙が船積み書類に甲の承諾する検査人によつて検定書を添付して甲に提出したときは甲はこれと引きかえに云々ということがございますが、日本政府のいわゆる甲の承諾するという検定人というのは今の御説明のような国際的な検査機関というものでございますか、その点を承りたい。
  75. 松井捨次郎

    ○松井参考人 これは一般の食糧の場合も同様だと思いますが、ビルマ米の場合にはボード・オブ・パネル・オブ・サベア、これはビルマ政府の一つの機関であります。それを食糧庁が認められておる。また地域によりましては、たとえばタイの場合などではゼネラル・スーパー・インテンダンスとかあるいはIITCというような国際的な検定の機関がございます。それを食糧庁が認められておるのであります。従いましてそういうところの検査証明書がございますれば食糧庁に受取つていただいております。
  76. 大上司

    ○大上委員 大体了承はしたのですが、そこでさいぜんちよつと柴田君もこれは触れたのですけれども、たとえば検査したものがたまたま内地へ来まして食糧庁のすなわち日本国政府の方の検査においてキャンセルされた、こういう事実があつたかないか。  それからもう一つは、簡単に申し上げます。さいぜんの点で大体はわかりましたのですが、BPSですか、先方の国の検査機関たるべきところのいわゆる検査証があればいいのだ、それでもなお念を入れるためにあなたの方の商社のお方が検査をするのだ、従つてそれに副署をつけるのだ、こういうように私は受取つたのですが、それなればどこまでも、相手国の検査機構があれば、あなたの方では黄変米であるとか、これは持つてつて主食として不適格だとかいうようなことは全然なしに、機動的に扱われるのですか、どうですか、この二点をお尋ねします。
  77. 松井捨次郎

    ○松井参考人 今お話の現地での検査と内地での検査との相違という点でございますけれども、委託買付の場合には現地での検査で検査証がその通りのものができておりますれば、内地へ荷物が到着しましたときにこれがはなはだしく途中で異状になつたということがあるかもしれませんが、現地での検査証が通り、つけてありますれば、内地での食糧庁が検査なさつた結果というものは、一応私どもの方は、数量は別といたしまして品質につきましては別に関係ないものと思つております。  それから毒があるかないかという点でございますけれども、これは契約の条項が先ほど申し上げましたように、イエロー・グレーン一パーセント以内というようなことになつておりますので、たとえば色が白くて有毒だというようなものにつきましては、技術的にも現地ではねる方法もないわけでございますが、契約から申しましても、向う側としてもそれはそのまま渡して来るであろう、私どももこれを断る、すぐその場で発見するというような技術方法がありませんし、契約条項にのつとつての受渡しでございますから、ただ色が黄色というだけを標準に受渡しをしております。
  78. 大上司

    ○大上委員 最後一つ、重ねて松井さんに御迷惑ですがお尋ね申し上げます。今次新聞紙等におきまして、この黄変米の問題は相当関心もあり、また取扱つておられる商社のあなたとしても、相当御関心をもつて研究されておられると思うのです。そこでいわゆる国の大切な資金を使つてこちらに商品を入れて来る。あなたの方はどこまでも商品の売買でございますが、一体このような問題が起きたのは政府機関が怠慢であつたのか、あるいは日本国政府それ自体が改善すべき点があつたにもかかわらず公認して今日のような現況になつたのか、お取扱い商社としてのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  79. 松井捨次郎

    ○松井参考人 私が米を輸入していると申しますか、商買人としての常識的な考え方で申しますと、どうも買手市場、売手市場という言葉がよく使われますけれども、昨年、一昨年あたりまではまだ各国とも輸出余力が少くて、買手が非常に多かつた。そういう場合にはやはり力の関係でなかなかこちらの言い分が通らなかつた状況ではないかと思います。この黄変粒が一パーセント以上あつては困るというような条件を入れましたのも、昨年の最後の契約分からであると思いますが、そろそろそのころはこちらの言うことも多少は通るような状況になつて来たのではないかと思います。但し現在でも黄変菌があるとか、これが毒であるというのは現地のビルマ政府側の方に説明いたしましても、なかなか了解しないのであります。これはそういう衛生思想が普及していないのかどうか、よく存じませんか、そちらの方の研究というものは、ビルマの方ではほとんどないのじやないかと思います。それで話をしましても何か商品にけちをつけて来たのではないか、日本は買いたたきに来たのではないかという印象を与えるだけでございまして、その点まで相手方に納得させるということは総領事館あたりもやつておるようでありますが、なかなかむずかしいようであります。それからもう一つは積地の検査で受入れるという点につきましては、ビルマから買つておる各国ともビルマのBPSという検査機関の証明書でみんな積み出しております。日本はそれに加えて食糧庁の代行社である三社の立会人が立ち会つた純分検査をしたというカウンター・サインをする、それをつけ加えておるのであります。
  80. 藤田義光

    ○藤田委員 この問題はいずれ近日中に一応われわれの立場を宣明する必要がある。それにつきまして、商社側の方から、ぜひともお聞きしたい数点を質問してみたいと思います。  まず第一点は、黄変菌の発生過程その他の学問的な点はしろうとでわかりませんが、積地の問題、それから船積みしましてから日本の港に着くまでの問題、それから入港後いわゆる国内の問題、この黄変菌が一体どこで一番発生しておるか。積地であるものが大部分であるか、あるいは船の設備が悪いために船上の問題もあるのではないか、あるいは日本に入港した以後においても、こういう病原菌が非常に蔓延しておるということもあつたのではないかというように三つの段階にわけて考えておるのでありますが、ただいまの第一物産の方の御発言によりますと、どうも国際検査員の証明は、これは世界各国ともそれに従つておる。われわれ商社も副署するが、それは単なる副署であつて実際上権威を持つた検査立会いではない。書面上副署するだけだということにたりますと これは積地、つまり売渡し国の責任ということで、こういう問題が非常に大きくなつておる。また船の施設がまだ悪いためにそれに輪をかけておるのか、あるいは日本に入つてからまずいのか、そういう点を商社の方として感じられておる点をひとつお答え願いたいと思います。
  81. 松井捨次郎

    ○松井参考人 段階的に分解しての検査はもちろんしておりませんし、お願いもしていないわけです。従つてどの段階で発生するかということは科学的には私どもも存じませんが、いろいろ専門の方の意見を総合しますと、ビルマの精米所でもみの貯蔵時代に、これは非常にそまつな貯蔵場所でありまして、湿度と熱もそこに出て来るわけであります。そまつきわまるところにもみの状態で長く置いておく。それからその次には白米になりましても、従来は長い間貯蔵されていた例がある。その辺が黄変米原因ではなかろうかというお話がございましたので、本年とりました分につきましては、まず本船が入るまぎわになつてから精米してもらうということを頼みました。今までは白米にして長く置いておいた。そまつな倉庫に置いておいたのですが、そういうことをやめまして、注文して、本船が入港するなるべく近いときに精米して用意してもらう。それから次にもみの貯蔵の方につきましても、いろいろ向うに話をしまして、その後の状況では、詳細なことは存じませんが、各地のもみ倉庫が逐次改良されているというような話を聞いております。詳細には私も存じません。あとは輸送船中の変質でございますが、私どもとしましては、なるべく、米に特別な関心を持つております日本船を使つた方がよいと思いまして、ビルマ積取りには全部日本船を使つております。そして経験のある船によく依頼いたしまして、航海中に天気のよいときにはハッチをあけて空気を通すとか、あるいは水滴がたまるのを米にかからないようにするとか、いろいろ注意を払つてつて来てくれると思います。航海中の変質は、その輸送期間がそう長い間でもありませんので、これもまた積出すときの状態、菌の状態というものは培養もできませんものですからわかりませんが、それほど大きなものではないのではないか、こう考えております。  内地に参りましてからは、私どもの手を離れまして、食糧庁の指定せられる倉庫に入れますので、それから先配給までにどれだけ置かれるか等のことは、詳細私どもわかりません。
  82. 藤田義光

    ○藤田委員 一部の新聞では積地で検査することは大体契約にないが、非公式に積地の倉庫で検査をさせてくれている。それから船積みの場合に、はしけの上で第二回目をやる。第三回目が本船上で、たとえばビルマの場合はビルマの人と、商社の方と、それから食糧庁あたりから行つております方の立会いで最後の検査をして引取るというような報道もあつたようでございますが、先ほど来の参考人お話では、大体国際検査員の検査だけでもう日本の港まで持つて来てしまうというのが真相でありますか、もう一度お伺いしたい。
  83. 松井捨次郎

    ○松井参考人 先ほど申し上げましたのは、まず本船の入ります日の一週間前くらいに、ビルマの政府の方から、今度積む米はどこの倉庫あるいはどこの精米所から出すという連絡がございます。それに基いて、先ほど申し上げましたように、その倉庫なり精米所なりに出かけまして、そこで予備検査をするわけであります。但し倉庫に入れます場合なんかでも、倉庫の検査は、積みつけておりますと、その中の中まで、積み込んである袋のまん中のところはなかなかサンプルがとれません。ですから、その荷物を、外からとれるだけのサンプルをとつて、これで大体よかろうということになりましたら、すぐ荷物を出荷させる。はしけで持つて参りましたときに、まずさしを入れまして、これはもうまるで黄色くてだめだというのはそこでどんどんはねます。白くてこれは大丈夫だというのは積ませます。ただ幾らかまざつてつて、許容率の一パーセント以内か以外かわからないというような分が出て来ますと、そういうのはまたはねておきまして、後に立ち会つて厳重に検査をして行く、そして積むか積まないかきめるわけであります。いずれの場合でも、予備検査の倉庫の場合は別でありますけれども、はしけの中あるいは本船の上で検査しました場合には、向うの正式の検査機関であるBPSの人とSAMBという売手側の立会人、それと買手側の代理人としてのわれわれ三社、そこにわれわれ三社の技術的な顧問といいますか、そういうような資格でゼネラル・スーパー・インテンダンスとかIITCというような国際的な会社の人間がわれわれを助けまして、われわれの側に立つて立ち会つてくれます。
  84. 藤田義光

    ○藤田委員 この問題は、日本の港に入つて以後の病原菌に関しましては、今各方面研究を進めておりますが、船上の借日進と積み地の問題、これを追究して行きまして、かりにほとんど積み地の関係黄変米が生じておるのだという結論が出ますると、いろいろ貿易上、外交上微妙な問題をはらんで来るのではないかと思うのであります。それで世界各国が国際検査機関を信用しておるのに、日本だけがそれにけちをつけるというような検査も、これはなかなかめんどうじやないかと思いますが、端的にお伺いしますが、敗戦以来日本の国力の背景と申しますか、国際信用の低下と申しますか、そういうことが影響いたしまして、どうしても悪い米を日本にまわす、いい米はアメリカ方面へまわすというようなことも行われているんじやないか。これは公開の席上で恐縮でありますが、商社側ではそういう点もなかなか鋭い観察をされておるのではないかと思うのであります。どうも戦争前まではそういう問題が大体なかつたんじやないか。これは学問的な検査がなかつたのでありますから、根拠は薄弱でありますが、敗戦後非常に飛躍的に深刻さを加えた問題というふうにわれわれは解釈したいので、そういう観点からしまして午前中浅見さんが言われました賠償による現地設備の強化改善、これは非常におもしろい着想と私も敬服しておりますが、そういう点からしまして、商社では、ただいまの御発言で駐在員も置いておられるようであります。何かそういう調査を——国会で黄変米を取上げてから相当の時日を経過いたしております。従いまして現地駐在員に何か黄変米原因等について秘密裡にでも資料を集めさせたことがありますかどうですかお伺いしておきたいと思います。
  85. 松井捨次郎

    ○松井参考人 黄変米原因についての資料といたしましては、先ほど浅見さんが現地に出張されました、あるいは農林省食糧庁から行かれた方々のお話も伺いましてやつておるわけでございますが、ただ考えておりますのは、先ほどの御質問の一つに、悪い米が日本に来るのではないかというお話がございましたが、ビルマの場合を申し上げますと、いわゆるボイルド・ライスといいますか、一応水につけてやつた米、それは日本なんか買いません。それを除いて輸出されるものの一番よいものはユーロツプ・ナンバー・ツーという品種のものであります。それから始まりまして一番悪い、一番安いのがナツセンSMS、これが一番安くてしかも輸出余力が一番多いのであります。大体七、八十パーセントがこの悪いクラスであります。ところが大体日本で買いつけておりますのは、よい方からずつととつて行きまして、一番悪いナツセンSMSというクラスはとつておりません。これは一昨年あたりまでは少量入つておりました。そのあたりは、やはり売手が強かつたと申しますか、需要と供給との関係でそういうことになつたのではなかろうかと思いますが、本年に入つて参りましたところでは、そういう一番悪い米はとつておりません。でございますから、ビルマは、輸出される米の中のむしろよい方を日本に出しておるという状況ではないかと思います。現地で原因を調べることが非常に大事なのでございますが、これは一つは技術的な面がありますのと、もう一つは、先ほどもお話が出ましたが、向う側としますと、黄変菌というものに対する認識が非常にない国でございます。そこに黄変菌を調べるのだといつて大上段から行くことは、いろいろ向うの新聞論調などを見ましても、何か日本はそれに乗じて難くせをつけに来たのではないかというようなことをいうくらいの空気でございます。それで原因を究明することがなかなかやりにくいのでございますが、ただ先ほどいろいろ専門の方々の御意見で伺つたところによりますと、それを改善する策として、船積みの直前に精米するとか、あるいはちようど今ごろは雨季でございますが、雨季前に荷物を全部とつてしまうようにするとか、あるいはでき得れば、私どもとすれば、権威ある研究、技術方面の方が現地にいらして、現地で培養なり何なり研究していただきたいと思いまして、もしそういう御計画が食糧庁方面におありでしたら、お手伝いといいますか、ぜひそういうことはいたしたい、こう思つております。その程度でございます。
  86. 藤田義光

    ○藤田委員 この収穫の時期とか、あるいは掲精の時期というような技術的な問題について、日本のアドヴアイスをそのままフランクに受入れるということは、なかなか向うの面子もあろうかと思います。最後に、今言われました、日本厚生省食糧庁あたりの係官を乗船させて、向うで商社代表が副署されるときの立会い程度ならば、そう国際的な刺激は強くないのじやないか。どうも今BPSのサインの下に単なる副署をされる、これは形式的なサインにすぎないということでは、国民の主食に関連しておりますから、問題がなかなか深刻であります。それでわれわれとしましては、商社の責任追究というようなことよりも、むしろ政府が全責任を持つてもらわなければならぬ。非常に貴重な外貨を使つておる問題であります。それで、これはほかの物品の貿易にも悪い影響があつてはたいへんでございます。なかなかむずかしい問題でありますが、かりに船に食糧庁厚生省の人を乗せてもらう、向うの引取りの現場まで立ち会つてもらうという方法がいいのか、あるいは現地に厚生省食糧庁の人に常駐してもらう、持つて来たものに関しましては政府は全責任をとる、こういう体制を確立する必要があるのじやないか。当委員会としましても一応の線を出す場合に、そういうことが当然議題になろうかと私は想像いたしております。商社代表としまして現地の空気を常に吸つておられる参考人の方としましては、私が今設例として二つの場合、船に乗つてつて現地の引取りに立ち会うあるいは現地に常駐する、この二つの説で、いずれも現地の雰囲気を知りませんからわかりませんが、そういう方法ができるものかどうか、午前中の学者の御説明によりますと、研究の結果というものはなかなか一朝一夕に正確なものは出ないようでありますが、これは学界の研究を促進していただきまして、至急にこの肉眼検査以外の、相当科学的な方式を、その場で出せるような方式は学界で考えてもらうということにしまして、そういう二つの方法は実現性がありますかどうですか、率直なところをお伺いしたい。
  87. 松井捨次郎

    ○松井参考人 これは交渉はもちろん外務省から向うの政府に交渉していただくことになると思うのでございますけれども一つの例といたしまして、本年、先ほど申しましたジエネラル・スーパー・インテンダンスとIITCというような、国際的な検定専門の会社といいますか、検定機関ですが、これを日本側に立たせて向うと対抗させたいというような話がありまして、向うに話をしたのですけれども、やはり向う側としますと自分の方の政府機関であるBPS、これは米を売る方のSAMBと違つた組織でありますが、やはり政府の機関の一つであります。その政府機関がある以上はほかのそういうような検定というものは困るということでございまして、結局向う側に対しましては売手側としては、SAMB、買手側としては食糧庁の代理の三社、その三社に加えて三社の顧問といいますか、そういうような意味で二つの検査機関に参加してもらつているような状況であります。従つて初めからそういう目的で日本から専門の方を派遣されるということは、どうも外交上のことで私どもちよつと見当つきかねますけれども、今の状況ではちよつと簡単に承知しないんじやないかというような気もいたします。しかしこれは正式の交渉をいたさないと、ちよつとわれわれも予測できませんが、向うが自分の方の検査機関を固執することは相当強硬でございます。
  88. 藤田義光

    ○藤田委員 私の質問は大体終りましたが、船の上の状態がまだ全然研究されていないと思います。従いまして商社側におかれましても、船積みしたあと日本の港に着くまでの間に、施設の不完備等のためにこれが蔓延するというような事態がなきにしもあらず、ぜひひとつ御調査の上食糧庁方面に至急資料を出していただきたい。これはなかなか学問的な問題でしろうとにはわかりませんで、時日を要するかもしれませんが、なるべく至急その努力を、サンプリングでもけつこうでございます、全部の船はたいへんでございましようから。そういうことを考えていただきたい。  それからビルマのラングーンの総領事など何もほかにすることはありません。これは米の輸入が一番大きい問題で、外務省の役人も全力をあげて農林省の役人あるいは厚生省の役人にかわつていただいて、実際上総領事館員は全部この問題の専門家をあてるという大人事異動をやつても一向さしつかえないと思うような大問題であろうかと私は思います。ただいま現地の雰囲気も多少お聞きしましたが、今お願いしました船の、どの船か一つ試験的にそういう資料でもとつていただいて、船の上に原因がないということになればやはり積地の問題だけになつて参りますので、問題をだんだん狭めて行く必要があるのじやないか。これは永久に国民の不安が解消しないということになりますと、外米依存が当分続きますだけに、非常に問題が大きくなつて来るだろうと思います。最後にお願いしまして、これで私の質問を終ります。
  89. 田中彰治

    田中委員長 山田長司君。
  90. 山田長司

    ○山田(長)委員 一、二点伺います。松井さんに伺いたいと思います。先ほどあなたの話を伺つておりますと、現地において持つて来るときに、有毒性については大体一パーセント以上のものは買つて来ないというお話があつたように伺つたのです。一パーセント以上のものを持つて来ないということでおられるが、実際今たいへんパーセントの上昇されているものが国内に入つているということからこんな大きな問題になつているわけです。実際上二パーセントも二パーセント以上ものものが来ておる状態になつておるわけですから、この点について何かあなたのお考えがおありになるだろうと思いますが、その点ちよつと伺いたいと思います。
  91. 松井捨次郎

    ○松井参考人 先ほど申し上げましたのは、契約書にありますのは、イエロー・グレーンという言葉が使つてあるのであります。色が黄色くなつているという、食糧庁では黄変粒といつておられますけれども、それが一パーセント以下ということになつております。私は技術方面の詳しいことは存じませんが、色が白くとも毒性のあるものもあるようでございます。また黄色くとも毒のないものもあるというようなけさほどのお話もございましたが、従いまして色が白くて菌があるという方は肉眼で判定できないのです、従つて現地でとりますのは肉眼で見た色で一パーセント以下のものをとつて参ります。そうして内地で培養された結果が、その色のあるなしにかかわらず、高いパーセンテージの菌が発見されたのじやないか、こういうふうに思つております。現地では培養試験はやつておりません。肉眼で見まして黄色い色でとつたりとらなかつたりしております。
  92. 山田長司

    ○山田(長)委員 先ほどから伺つておりますと、どうもこんなふうな輸入の様子をされておられますと、将来も続続こういう形で黄変米が入つて来るだろうと思われるのですが、何か商社の立場から黄変米が入つて来ないような方法があるのじやないか、こういう目安があるような気がするのですが、何かそれについて御意見はないですか。
  93. 松井捨次郎

    ○松井参考人 一応今の段階で考えておりますことは、ことしは、先ほど申し上げましたような、船積みの前になるべく精米させるということ、それから雨季前にとるということで、実は黄色い色の点につきましては昨年よりよくなつて来ております。ただその菌の点は、これを培養しないと発見できないようなお話でございますし、そういたしますと私どもとして、実は現地で船にものを積みますときに、何かその場で菌が発見されるような方法が、専門の方の御研究で生れますれば、これが一番望ましいことであると思います。それまでの間のやり方としまして、あるいは現地で——それがいろいろな国際関係がありましてなかなか簡単でないと思いますが、しろうと考えとしましては、大きな倉庫をつくりまして、その中に検査をしたものを入れる、実は昨年あたりもそのことを研究しまして、向う側の政府にも打診したのでございますけれども、向うでなかなか応じていなかつたような状況でございますが、大きな倉庫でもつくつて菌の検査の済んだ分を入れるというようなことができますれば、ある程度現地での培養の検査が実行できるのではないかと思つております。本船を待たしておきまして、そうしてその間に培養するというようなこと、あるいは現地で荷物の割当がありましたその荷物をサンプルをとりまして、そうして内地に航空便で送つて内地で培養して、その結果によつて積む、積まないをきめるというようなことは、理論的にできないことはないかもしれませんですが、今のように積み込む一週間前くらいに向うで言つて来るのでありますから、こちらで培養が三日か四日て済まなければ、結果はわかりませんし、またかりに一万トン船に積むといたしまして、一万トンのものを検査しまして、それがだめだつた、船はどんどん走つて行く。そのかわりのものをとるとすれば、一万トンのものを積むとすれば、二万トンも三万トンも同時に検査をやりまして、そのうちからいいものを抜いて船に積むというようなことをしなければならない。またそういうような菌が発見された分のあとの処置というのもございましようし、これは実際の問題としましては、向うの政府に対する相当強力な交渉をしていただいても、現段階ではあるいはむずかしいのではないかと考えております。
  94. 柴田義男

    柴田委員 今まで説明を承つておりますと、検査の問題が一番大きな問題のようでございますが、私ども聞いておりますのに、非公式ではあるが、たとえばビルマでもタイの場合でも、倉庫でまず検査をされ、それからはしけに積む場合にまた検査して、最後に船揚げの検査をやる。こういうように三回の検査が行われておるように聞いておつたのですが、今承つておりますと、そうでないようですが、三度検査を行われるということは全然あり得なかつたのでしようか。その点をまず承りたい。  もう一つは、今まで御意見を承つております範囲では、政府対政府の買付契約に基いて商社が委託の関係だけをおやりになつておる、この面だけを一通りつたのですが、純然たる民間貿易の点が相当量あると思つておりましたが、そういう純然たる民間貿易の点で、やはり同じようなコースで検査をやられるのであるかどうか。民間貿易の場合にはどういう方法で商社が向うの国から買いつけ、そうして日本政府に売り渡す、こういう経緯を承りたいと思います。
  95. 松井捨次郎

    ○松井参考人 検査を何度やるかという御質問でございますが、これは大体船積みを開始する一週間くらい前に向うの売手の政府機関であるSAMBから買手の代理店のわれわれ三社の方へどこの荷物をいつ出すという通知が参ります。その通知に基きまして倉庫なり精米所に行つて予備検査をします。但しそれでは十分でございませんので、一応その予備検査でよかろうということになりました荷物は監査いたしまして、はしけで本船のそばへ持つて来ましたときに、はしけの中あるいははしけの甲板の上で検査をするわけであります。一度だけの検査というわけではございません。予備検査をいたします。  それから民間貿易というお話は、これはほかの国のことでございますか、ビルマのことですか。
  96. 柴田義男

    柴田委員 ビルマやタイにはないのですか。
  97. 松井捨次郎

    ○松井参考人 タイには一部民間の形式をとるのがございます。つまり売手が民間になるもの。それからビルマは、現在ありませんけれども、一昨年から一時民間貿易の形式をとつたことがございます。その形式と申しますのは、一昨年ごくわずかの数字でございましたが、当時はまだ売手の方が強くて、買手の方が米をみなほしがつてつた。ビルマ政府は、国際的に政府間の契約でする分につきましては、そう高くない値段で売つてつたわけでございますけれども、それでは向うとしても財政的に困るというので、もつと高く売りたいということがあつたのではないかと思います。一部を民間貿易の形式つまり入札という形で、民間の商社にビルマ商社の名前で入札しまして売り出したことがございますが、しかしその場合も、日本向けは何トン——品種も何品種で日本向けは何トンというふうなわくはきまつておりまして、形の上では民間でございますけれども、実質的には高く売るためのビルマ側のそういう手段であつたというふうに思つております。従いましてその米の受渡しは、純粋に政府間の契約分と同じ受渡し方法をとつております。
  98. 山田長司

    ○山田(長)委員 小野さんにも一つ伺いたいと思います。それから松井さんにも伺いたいのですが、どうも船に積み込んでから検査をされるということは、ばかにされているように思われてしかたがないのですが、一体船に積み出される前にどうして陸における検査ができないものか、これを一応承りたいと思います。さらにイタリアの場合も、こんなふうに船に積み込まれて検査をされるのかどうか、参考にひとつつておきます。
  99. 小野一

    小野参考人 お答えいたします。先ほど申し上げましたようにイタリアの場合は、精米所でも一応検定人が検査をするし、それから貨車からおろして船に積み込むときも検査をいたします。ですから二回検査いたします。われわれの取扱つておる商社が現地に行つて、現地の精米所と、それから積み込むときに検査に一応立会つております。しかしその数字は、こちらに着いたときの肉眼検査の数字と何らかわつておりません。従つて黄変米のその数字というものは一パーセント以内で現われております。従つて肉眼検査以外の検査は向うでは行われないので、われわれはこちらに帰つて来て初めてわかつたので、実は向うでは一パーセント以内という自信を持つてつたのであります。そういうわけで二回は検査をしております。船の中でやるということは、実際問題として貨車からおろして船に積み込むときに検査をやりまして、それも実際その日にやるのですから、中であろうが外であろうが結果は同じことであります。ただ船の中に入つた場合に、航海上の変化を起さないためにいろいろ木のやぐらを組んで、ベンチレーシヨンでもつて空気の流通をはかつて、防止には努めております。
  100. 松井捨次郎

    ○松井参考人 なぜ船の上で検査をして陸で検査をしないかという先ほどの御質問でございましたが、本船の上に荷物を積むまで契約をいたしまして、そこで日本側が受取る。従いましてほんとうから申しますと、陸でもし私どもが検査をしまして、今度船まで持つて行くのは向うのはしけで持つて行くわけですから、その間に荷物でもすりかえられると、われわれかえつて不利なことになるのではないかと思います。従いまして本船の上で検査をして、そこではねるものははねるというのが、われわれとしてかえつて確実な方法ではないかと思います。その場合に、今までの例で一船七、八千トン積むわけですが、二千トンぐらいはねた場合、相当遠くの方からはしけで持つて来るのをはねるので、SAMBの方も一時は非常に険悪な状況になりまして、どこの商社のだれはけしからぬというふうに、向うから文句を言われるほどにやつたことがございますが、そういう場合には本船まではしけを持つて来て、そこではねるために非常に摩擦が多くなりますが、特にあらかじめ向うの倉庫なり精米所なりへ行きまして、予備的に見て、まずこれなら大体よかろうというところで荷物を本船に持つて来させて、そこで荷物を受取ると同時に、目方もそこではかりますが、それと同時に品質の検査をします。もちろんそこで悪いものはどんどんはねて、はしけでもつてもどらせて、またかわりのものを持つて来させるというようにいたしております。
  101. 田中彰治

    田中委員長 片島港君。
  102. 片島港

    ○片島委員 検査について一つだけお伺いしておきたいと思うのですが、検査をせられるときには、有毒米でなくして肉眼で見て黄色くなつているというのが一パーセントということになつているのですね。そういたしますと、これは専門家でなくてもわかるものでありますか。もしわかるとすれば、家庭に配給された場合に、白くて有毒性のものは現地でもわからないし、培養試験をしなくてはわからないわけでありますが、黄色いのが一番有毒性が強いといたしますならば、もし百粒のうちに一粒というような割合で黄色いのがまじつておるのがわかるとするならば、家庭において全部黄色いやつを拾い出してしまえば、白いので有毒のものはわからないかもしれませんけれども、非常に有毒性というものが全体についてパーセンテージが下るのではないかと思うのですが。それは普通の人でも少し研究すれば検査をする場合にわかる程度のものでありますか。
  103. 松井捨次郎

    ○松井参考人 色は肉眼で見てわかります。これは大体その年の最初の船積みの前に売手と買手と、それから仲に立ちますBPSというのと立会いで標準の見本をとりまして、それでこの程度であればよろしいという標準見本をつくります。それと照し合せて受渡しをして行くわけでありますが、肉眼で見て色のついているものはわかりますし、それでどんどんはねているわけでございます。ただ最近いろいろ国内で問題になつておりますのは、色のついていない分ではないかと思うのですが、一応私どもつて参りました荷物を食糧事務所で検査されますときに、もちろん色の点も見られると思いますが、その点は積地で検査したのと同じ程度に、一パーセント以内でやつております。色のついていないので毒があるというのが今問題になつておる、こう思つております。
  104. 田中彰治

    田中委員長 吉田賢一君。
  105. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 少し方面をかえて松井さんに伺つてみたいと思うのですが、今のビルマ並びにタイは非常に過剰生産で、世界的な米の豊作で、むしろどうはかそうかということに弱つているくらいな立場にある。そうすると買手の日本としてはかなり強い立場にあるのですが、弱い立場でありましたときよりも、もつといろいろと主張することは主張し、厳格に要求するものはし得るようなそういう関係に置かれておるのではないでしようか。
  106. 松井捨次郎

    ○松井参考人 確かにお話のように、非常に余つているという状況でもございませんが、ビルマの場合はインドか相当大量契約をいたしましたりしまして、余つているということではないのですが、確かに売手が強かつた時代から買手だんだん強くなつて来たということは事実でございます。その点、たとえば黄色粒の問題にしましても、一昨年あたりの契約には承知してなかつたものが去年あたりから載せられるようになつた。あるいは価格等につきましても、昨年は六十ポンドでございましたが、今入つて来たものは五十ポンドというふうになつております。来年度は、あるいは状況によつてはもう少し下るかもしれません。そういう点で多少は通つて来ると思いますけれども、ただ黄変米菌と申しますか、その問題につきましては、ビルマ側で菌の毒性ということをなかなか認識しないのです。
  107. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 第一物産株式会社の代表取締役は前田鉄三さんとおつしやいますか。
  108. 松井捨次郎

    ○松井参考人 三人おります。
  109. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 その一人にそういう方がおられますね。
  110. 松井捨次郎

    ○松井参考人 おります。
  111. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 タイ、ビルマにおきましては、輸入商社というのは、数社に事実上限定されているのですか、それはいかがですか。それからもう一つ、あなたの方は輸入のみをなさるのですか、あるいはいろいろな雑貨等を輸出するということもなさるのですか、その点いかがですか。
  112. 松井捨次郎

    ○松井参考人 輸入に限定されているかというお話は、米につきましてはビルマで日綿実業と、もと東西交易、今三菱商事となりましたが、それと、私どもの三社が政府の委託買付の仕事をいたしております。タイでは八社であります。それからもう一つ、輸出をしているかというお話でございますが、会社といたしましては、輸入のほかに輸出ももちろんやつております。現地の店といたしましては、タイの方は日本からの輸入もやつておりますが、ビルマでは米の仕事のためだけに駐在を許されておりますので、米の仕事を中心としております。
  113. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そういたしますと、ビルマについては三社が事実上独占されているというわけですね。他の会社が自由に政府と契約するということは可能なんですか。それはいかがでしようか。
  114. 松井捨次郎

    ○松井参考人 これは食糧庁と私どもとの間の契約で事実そうなつているのでございますけれども、実際問題としてはほかの方はおやりになつていない、やれないようになつております。しかし食糧庁がその会社も委託買付の仕事をさせられるということになりましたならば、それはできることじやないかと思います。食糧庁が指定しておられると思います。
  115. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 これはあなた自身代表取締役でもないから、お答えになる筋合いでないかもわかりませんけれども、国会におきましては黄変米をめぐりまして、輸入の手続について相当改革しなければならぬのではないかという議論が実は起つている。必ずしもあなたの方がいいとか悪いとか申すのではないのです。全面的に食管体制をめぐりまして、輸入制度についても相当議論が出ておりますので、たとえばこれは何年目ごとに公入札をなさるような制度になつているのでしようか、あるいは特殊な契約はずつと持続しているのでしようか、あるいは月々の一つ一つの契約についてまたおやめになるということもあるのでしようか、そういう辺について見通しはどうなんですか。
  116. 松井捨次郎

    ○松井参考人 今私は手元にはつきりした資料を持つて来ないのでございますが、たしか私どもはそういう仕事を地域別に指定を受けましたときは、当分のうちということが入つてつたと思います。永久不変のものとは私ども自身も思つておりません。
  117. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 一つ一つ契約なさるわけですね。
  118. 松井捨次郎

    ○松井参考人 契約はビルマの場合は、一船ごとであります。一船ごとに、あるいは何千トンといいますか、船ごとに現地で委託買付契約をいたします。
  119. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それから、あなたの方は、政府の買いつけます外米を輸入なさるについて、途中で減量することは、やはり政府との契約におきまして、あるパーセンテージは認めるというような約束はできておるのですか。その点を伺いたい。
  120. 松井捨次郎

    ○松井参考人 途中の自然減耗と申しますか、輸送中に水分が減りますために、あるいは荷役しているうちにこぼれるというようなことがございますが、そういうものにつきましては、一定はしておりませんけれども、ある程度の許容率は今の制度では認められております。そうしてそれを出ました分は、私どもの方の責任になります。
  121. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 その幅をちよつとおつしやつていただきたい、何パーセントか。
  122. 松井捨次郎

    ○松井参考人 大体自然減耗は一パーセントから二パーセントです。
  123. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 わかりました。たとえばあなたの方で、宝隆丸で、二十九年四月一日名古屋に産地シヤムの外米が入つておりますね。御記憶ございますね。これによりますと、BLの数量は六千百五十トン、それから食糧庁が船から受取りました数量は六千六十九トン、そうすると約百トンほど足りないですね。もちろんこれはバラじやなしに、麻袋積みだろうと思います。シャム米ですからね。そうすると、六千百十五トンで約百トン足りないというような場合、これは一体原因はどうなんでしようか、またそういう場合はどういうような始末をされたのか、政府と輸送商社との間に何か交渉でも行われたのでしようか。
  124. 松井捨次郎

    ○松井参考人 約二パーセントの減耗であります。その許容率以上に出ましたものにつきましては、政府にそれだけの代金を返納するわけであります。
  125. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それからもう一つ。あなたの方で、この例を一つつて問答してみたいのですが、ただいまの宝隆丸は本年四月一日入港しておりますが、その契約の時は今わかりますか、資料がないとわかりませんですか。——それではよろしゆうございます。それでは別の面から伺いましよう。さつきおつしやいましたイエロー・グレーン、これは黄変だろうと思いますけれども、これは要するところこういうような契約の趣旨にかんがみますと、やはり有毒の米ということが趣旨であるというふうに解すべきではなかつたでしようか。ただ色が黄色いからどうのというだけでなしに、たとえば黄色くない米もあるわけです。あめ色というのもあり、その他の色もあつたのですからね。通称黄変米言つておりますけれども、ずいぶんだくさんの色があるようです。そういうような趣旨に解すべきじやなかつたでしようか、その点いかがでしよう。
  126. 松井捨次郎

    ○松井参考人 先ほどイエロー・グレーンと申しましたのは、実は簡単に申し上げて十分御説明申し上げなかつたのは申訳ないわけでありますが、実はその言葉通り申しますと、全部あるいは一部イエローあるいはオフカラード、ですから少し悪くなつてるグレーン、それから非常に悪いにおいのする米というようなのが一パーセント以下、こういう意味であります。しかし、そのうち今ちようど黄変米について問題になつておりますから、イエロー・グレーン、イエロー・グレーンと言つて申し上げておるわけであります。ところがイエローとオフカラード——オフカラードというのは色が悪くなつておるのですが、そういう色のついてる分は、いずれも二パーセント以上あるのははねております。
  127. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 あなたの方は白米の黄変米を御承知になつたのは、いつごろでございますか。あなたの方の白米の黄変米がずいぶん入つております。これは御承知と思いますが、オーシャン号、宝降丸、高明丸、富士川丸、辰日丸などずいぶんだくさん入つておりますが、色の白い米に黄変米と称する有毒米が入つて来るということをお知りになつたのはいつごろですか。
  128. 松井捨次郎

    ○松井参考人 はつきり記憶しておりませんが……。
  129. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 去年ですか、ことしですか。
  130. 松井捨次郎

    ○松井参考人 ことしでございます。去年黄変米の問題がありましたときに、そういうのがあるという話はいろいろ知つておりましたが、現実に自分たちの方の荷物にこれが出て来たということを知りましたのは、ことしになつてからではないかと思います。
  131. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ことしといつてもいろいろありますが——大よそでよろしいですが。
  132. 松井捨次郎

    ○松井参考人 春くらいだと思います。はつきり覚えておりませんです。
  133. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 実は米を輸送していただきますことは、国民からいたしましても、主食という点、保健の点、それから莫大な、数十億の財政支出の点等々から考えまして、たいへんなことでございます。そこで私どもの調査した政府提出の資料によりますと、すでに去年の八月——昨日は十二月と聞いておつたのですが、きよう厚生省からとりました資料によると、去年の八月すでに白米の黄変米について厚生省から農林省に対する通牒が出されておるという事実があるのです。あなたの方の契約の一条項にそういう黄変粒が混入するという場合には一パーセント以上は拒否するという権限が与えられ、取得した。それが買手市場になつて来たので、ビルマもそういう条項をのんだ。そういたしますと、去年の八月ころからすでにそういう問題が政府間で問題になつて、通牒を出しておるようなことでありますが、あなたの方はことしになつてお知りになるというのは、一体どこかがうかつか、問題を過小視しておるのか、あるいはそういうようなことについては一向しかるべき手続を怠つてつたか、どこかに穴が抜けておつたか、くぎが抜けておつたというような気がするのであります。もつと早くお知りになるべききわめて重大な問題だと思いますが、それはいかがなものでしよう。
  134. 松井捨次郎

    ○松井参考人 昨年私たちの承知しておりましたのは、いわゆる黄変というのは、黄色いものの方が非常に問題になつておりました。一パーセント以上はいけないというのも黄色い、イエロー・グレーンの方であります。白い色でそれがあつたというのは、私どもの方は食糧庁に荷物を渡しまして、港によりましては厚生省の方がサンプルをとりに来られることもあつたかと思いますが、どなたが厚生省の方がわからない。われわれの契約の相手は食糧庁でございます。食糧庁の方に渡しまして、食糧庁厚生省に行つて話合いされるのであります。従いまして私の方は厚生省から、お前の方はこうだつたという話はいただいておりません。その時期につきましては、私たちといたしましては、ことしのいつごろということははつきりしないのでございますけれども、去年はそういうものがある。色が白くてもあるということは、実は去年から螢光燈を使いまして現地で調べてみた場合に色が白くてもあつたということは承知しております。私どもの荷物でそれが現地で出て来たというのは去年の末ごろでございます。その結果がはつきりわかつたのはことしの春の初めごろであつたと思います。
  135. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 去年の十一月三日以降の白米の黄変米が初めて見つかつたのはあなた方の去年十二月二十八日入港のオーシャン号のビルマ米の分であります。ですから去年の分であります。もつともこれが最終検定を受けまして、最終検定の結果が通産省から通告されたのは遅れておりますが、時期はそうなつております。  それからもう一つは、あなたはどれが厚生省の役人か、どれが食糧庁の役人か知らぬようなことをおつしやつたのですが、別にあなたを責めるのではないけれども厚生省の検定駐在員というものはたくさんおるわけではないのです。また食糧庁の役人の方にはあなたの方の現地の人は平身低頭実にいんぎん丁重をきわめておるのです。だからわれわれは現地調査をいたしまして知らぬということはどうもおかしいのです。はやり船に行つて差入れておることもありますし、倉へ入れておることもありますし、ばらのときは麻袋に詰めておりますし、そういうようないろいろな段階におきましてそれぞれ役人の方がみな出張りますけれども、これはとつくに御承知でなくてはならないのです。今あなたを責めるのじやないけれども、この問題が非常に重大なことであつて、どこの段階で過失があつたかということを究明することが一つは国会の責任なのです。それで伺つたわけであります。  そこでひとつ問題を転じて伺いたいのですが、一体あなたの方といたしましては、国際検定人が証明書を出してこれを受取つた以上は、そういう有毒の米については契約の趣旨という観点におきましては、その分については責任はないわけですか。それがついている以上は受取つた段階におきましては契約の趣旨は履行されたということになるわけですか。
  136. 松井捨次郎

    ○松井参考人 契約の形式から申しますと、おつしやる通りだと思います。
  137. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 今ちよつと手元に資料を持つておるのですけれども、つまり日本の政府とビルマの政府との間の領事その他が交換しました文書によりますと、食糧に不適格品はやはり売買物件の、重大な過失といたしまして契約を解除できるという趣旨が私は含まれておつたと思うのです。またこれは国際貿易におきましても本来食糧に供することを目的として一定の物品を売買いたしまして食糧に適しないものがあるということが発見せられた場合にはその原因を糾明するということは当然である。国際検定人にどれだけの権威があるかは別といたしまして、またそれによつて一切の責任をお互いに解消するのだという文句が契約の上にあるといたしましても、契約本来は人間が食うものを買うのです。人間の食うものを売つたはずです。ところが人間の食えない、食えば一生不治の病いになるような毒素を含んだ米が売られたという場合には、国際検定人が判を押したのだからそれで責任の持つて行きどころがない、表へかさを持つて行かずに雨に降られてばかをみたというようなそんな財政の権限を日本政府にはわれわれは与えていないと思う。また常識上もそうであると思います。そういうことは国際貿易上の信義から見ても当然であると思う。検定人が判を押しておるからどこへも言うて行くところがないのだ、国会ががやがや言つて、国民は配給拒否をして、損は国民の税金でしりぬぐいをするというそんなばかなことで納まるとはどうしてもがてんが行かないのですが、いかがですか。
  138. 松井捨次郎

    ○松井参考人 おつしやる通りでございます。ただその点そういうものが人間の食糧に適しないということを、ビルマ側がまだ十分認識していない間でありますから、その辺の説明は学術的ないろいろな資料をただきまして、向うを説き伏せなければならないと思います。もちろん一般の契約では重大な過失がある場合にはクレームができるわけでありますが、現在のところでは相手方にまずこれに非常に毒があるのだ、有害なんだということを納得させる段階でございまして、まだそれも向うを納得させるだけの学術的の材料が、ことに白色の分につきましてはないわけでございます。
  139. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 一つ一つの売買について、全国の商社から希望者を募つて、指名もしくは競争入札でその輸送人をきめるような場合ならば、私はかくまで言わないのですけれども、ビルマの場合は三社です。だからこれは見方によつては独占しておるのです。そういう立場におありになるのだから、貿易の常識から考えても、法律の売買の原則から考えても、またどこから考えましても、ともかく毒物のある米を売られたのに対して代金を払わなければならぬということは何としても国民は納得できません。外交上ビルマに対しては賠償問題か残つておるから、そんなことをしておつてはたくさん賠償金をとられるかもしれないとか、バーター制であるから、そんなことを言つたら物を買つてくれないとか、そんなことがよしんばあつても、それはそれ、これはこれ、私の言つておることは国際政治場裡の上において筋が通る当然の考え方であろうと思う。外交は外交で手を打つ責任者がおる。貿易はまた通産大臣がおるのです。けれども、これはそうじやなくして、農林大臣が所管しているところの食糧を国民の主食といたしまして買いつけて、主食に適しないことが明確になつて、今あなたのお説によると資料不十分である。だから相手を説き伏せなければならぬ。相手が医学的な薬学的な認識が乏しいのだから、それを説くのにはなかなか骨が折れるとかなんとかおつしやいますが、それはいらぬ御心配だと思う。あなたの方としてはともかく重大なものを運んで来たのだ、毒米を運んで来たということで、ほんとうに国民の一人になつてくださつて、政府に向つてこれはけしからぬじやないか、何とかしなければはならぬじやないかというように言つていただきたい。これは責めるような言葉づかいでまことに失礼でありますけれども、非常に重大になつております商社の代表者であるから私は申し上げるので、どうしても泣寝入りしてひつ込んでおるような法はないと私は思います。あなたにそれをやつてください、交渉してくださいというのではないのですよ。ないけれども、どう考えましても、国際検定人のその検定書一本で文句を言えなくなるということは私は納得できないので、これに対する御所見をあなたの方から、また松井さんからも聞いておきたいと思います。
  140. 松井捨次郎

    ○松井参考人 ただいま御趣旨の通り私もさらにつつ込んで食糧庁の方といろいろ相談して、これは食糧庁の方でもしそういう御計画をつくつていただけば現地に研究所といいますか、そういうものでもつくつて、そこでひとつ技術的な面でやつていただくようにお話をしたのであります。あるいは倉庫等の問題につきましても、その案をつくつて現地でよく交渉して参ります方法もありますが、私どもとしましてはこれは外交を通じまして向うの政府にぜひ交渉願いまして、でき得れば現地で積むときに間に合うように、白色黄変菌が発見されるように、技術的な問題も交渉しまして、相手方の政府もそれを納得して、悪いものを持つて来ないようにする、それには私どもとしては、そういう方法で全力を尽して協力して行きたい、こういうふうに思つております。
  141. 小野一

    小野参考人 お答えいたします。ただいまの吉田委員お話はごもつともと思います。われわれとしましても、先方の方に対しても一応現在そういうことが問題になつておるということは申し上げております。今後とも食糧庁と御相談の上で、具体的な数字を向うへ突きつけて交渉したいと思つております。
  142. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 浅見さんにお伺いします。さつき藤田委員からも現地の、たとえばビルマにおける総領事は、日本の米を輸入するということ以外に仕事がないとまでおつしやつた。私どもも、食糧庁の説明によりますと年間百億円はビルマに米代を払つておるのです。実に大きな財政の動きがビルマとの間にあるわけです。この総領事は、こういうひどいものを食わされておつて——相手が民度が低いのだから、文明が進んでおらぬのだというようなことで値を値切つておるというような、そんなばかげた状態なんですか。一体総領事というものは、まつ先に、ほんとうにこういうものに取組んで解決する、そういうようなことをするのが仕事でないのでしようか。あなたはいろいろ現地でごらんになつたのですが、あなたの見なすつたことはどうなんでしようか、ちよつとお述べを願いたい。もつともあなたが行かれた仕事が違いますから、門違いならばけつこうでございます。
  143. 浅見修

    ○浅見説明員 わずかの期間でありますので、特に私どもの立場から主観的に言うことはできませんが、まつたく御説の通り、あそこはすべて米中心であります。経済外交の比率は米だけで、日本からものを出すにしても米を輸入しなければならないというので、すべて米を中心に総領事館は動いておる。ただ何といたしましても一番外交回復のもととなります講和条約と賠償問題がありますから、どうしてもそれにはいろいろ心づかいをしながら米の問題も処理しなければならないことがあるので、私どもは良心的に、外務省の立場からこちらに駐在官がおりますし、また通産省の出先の者もおるので、それと一緒になつて米の問題を中心として、どうしても国内に配給できないような米は買えないというので、相当内部的には論争いたしまして現在の状況になつております。総領事の立場からはこちらといたしましては十分努力いたしておるのであります。
  144. 田中彰治

    田中委員長 徳安實臓君。
  145. 徳安實藏

    徳安委員 松井さんにお伺いいたしますが、ビルマの米は政府と政府との売買契約かついて輸送だけ請負つているというが、請負は先ほどのお話によりますと三社だというのですが、三社で競争入札をすべておやりになつているのですか。
  146. 松井捨次郎

    ○松井参考人 三社で競争入札——普通政府協定、政府間の契約でFOBというか、本船に積んだときの値段はきまつている、それからあと日本に持つて来るまでの値段というものは、船運賃の違いというものが出て来る、それで船のきめ方は三社で船会社から日をきめまして見積りを出します。それで船齢とか船か同じときにあまり何ぱいも重つて入るということでは荷役ができませんから、その辺の意見を加えまして食糧庁に出しまして、食糧庁の方から船はどの船とどの船がいいということをきめていただく、あとは現地で検査をしますことと、船内人夫などを雇つて船に積み込む、用船する、日本に持つて来てから入庫する、それに伴う代金決済、その面を私どもはするわけであります。
  147. 徳安實藏

    徳安委員 それは三社で大体話合いがついたものを政府の方で随意契約のようになさるのですか、船賃もみな三つの会社がわけ合つてやるということですか、どういうことですか。
  148. 松井捨次郎

    ○松井参考人 ビルマの場合には大体三社は均分された数字で食糧庁の方から今度契約した分について、お前のところは何トンだ、お前のところは何トンだというふうな指令が来るわけです。ですからそのトン数に基いて船を探して、荷物の受渡しをやつて行くのです。
  149. 徳安實藏

    徳安委員 どうもちよつとふしぎのようにお話を聞くのですが、そうすると船賃の競争もなければ扱いの競争もなしに、ちやんときまつてつたのを三社で平均割に割当てる、こういうような意味ですか。
  150. 松井捨次郎

    ○松井参考人 船賃の競争は私ども船会社の間ではあるわけであります。船会社の問ではこういう荷物があるからというので、船会社に見積りを出させて、その見積りの間に高い低いがあつて、それを食食糧庁の方でわれわれが集めて持つて行きました分からどの船がいい、どの船がいいということをきめられる、三社の間の競争ということは、価格の点では食糧庁が結局船などをきめられますから、取扱数量というのは大体前もつてここは何トン、ここは何トンというように船の方にお話がございますから、普通の入札とは違うわけです。
  151. 徳安實藏

    徳安委員 そうすると船賃も船会社同士の競争があるとすれば、甲の船は幾ら、乙の船は幾らという見積りが出ると思いますが、その出たのを安い方に入れるのではなくて、食糧庁の方で、その出ました書類を見て、かつてに向うできめるわけですか。そうすると、安いものにきめるというわけでなくて、この船にきめると、そのきめられた船をあなたの方で用船する、こういう意味でございますか。
  152. 松井捨次郎

    ○松井参考人 食糧庁がおきめになるときはもちろん安い方からおとりになると思います。それで今度はビルマから十万トン持つて来る、それについて安い方から船をかりに十ぱいなら十ぱいきめて、それだけをやるということになりますと、今度その次におのおの自分の取扱うトン数に応じまして、それではこの船は自分の方が実務を取扱う、この船は君の方で実務を取扱うというふうに話をきめて、食糧庁に申請をしまして、そうしてその許可をとるわけであります。
  153. 徳安實藏

    徳安委員 そうしますと、あなたの方で大体三社でわけて仕事をする。このビルマの船は岸壁に横づけになつて、側船か何かでどんどん積み込むようになつているのですか。はしけで本船へ積むようになつておりますか。
  154. 松井捨次郎

    ○松井参考人 大体はしけで積むようになつております。
  155. 徳安實藏

    徳安委員 船賃は、食糧庁が船をきめる、そうして安い方から運賃をきめて行く。しかし契約は、やはり運送賃ということになりますと、用船料もあなたの方へ食糧庁から払うことになるのですか。あるいはそれを抜きにして、船賃は食糧庁からじかに払つて、そうしてそのほかの扱い料だけはあなたの方で契約してとる、こういうことになりますか。
  156. 松井捨次郎

    ○松井参考人 それで船がきまりますと、それに基きまして、私の方で納入する見積書を食糧庁へ出すわけです。たとえば船運賃、その他の費用を全部込めまして、あるいは送金に要する費用というものを克明に計算したきまつた形式がございます。そのきまつた形式のものを出しまして、そうして本船の輸入港着といいますか、日本の港に着いたときの値段を計算して、食糧庁に提出するわけです。そうしてそれを検討されまして、その結果私どもの方と食糧庁との間で委託売買契約書というのができるわけです。その場合、一番もとになるFOBの価格というものは政府間できめた値段であります。
  157. 徳安實藏

    徳安委員 船は、今のお話では、日本の港へ着いて、沖で渡すというようなお話のようですか、そうしますと今度は、船からはしけに積んで陸揚げをして倉庫に入れるのは、別個な契約であるのですか。
  158. 松井捨次郎

    ○松井参考人 その分は委託運送契約というのがございまして、業務に付随して、港の倉に入れるまでの仕事をいたすわけでございます。それは別に契約をいたします。
  159. 徳安實藏

    徳安委員 これはやはりあなたの方の名義で付属事業としておやりになりますか。あるいは他の者に請負わせるようにしてあつせんをされて行くのですか。その点はつきりしていただきたい。
  160. 松井捨次郎

    ○松井参考人 委託運送の方は、私ども名前で輸入業者がやることになつております。これは請負でございますけれども、それで港から倉へ入れるまでやります。
  161. 徳安實藏

    徳安委員 契約のときには当然倉庫に入れるまでを一本で請負うべきでないでしようか。それを途中で切つて、それから先は付属として請負わせるというようなことは、どうもふに落ちないのですが、どういうわけですか。
  162. 松井捨次郎

    ○松井参考人 これは一般の輸入食糧がそういう形になつておりますので、あるいはそういう同じような形を適用されたのじやないかと思います。それと今までのところでは、決済関係から申しまして、信用状を開きまして船で積み出しますと現地から手形が来る、手形が到着しましたときに代金の支払いを受けて、それで手形を落すわけであります。それを決済するために、一応沖に着くところまでですと、本船のFOBの価格に運賃、保険料その他を加えたところで一応決済を受けるというような形になつております。それに付随した別の契約ということで港の作業をいたします。
  163. 徳安實藏

    徳安委員 最近この問題についても、リベートがあるとかいうようなとで騒がれて、新聞等でも大分にぎわつたことがあるのでありますが、私どもは、これは契約の本人が政府ですから政府の方に聞きますが、同じことならば二本に切らなくて一本でやるべきだと思いますが、これはほかの方に聞くことにいたしましよう。  このビルマから日本に参ります食糧に対する扱い料、これは一トン当りで大体どのくらいになつておりますか。
  164. 松井捨次郎

    ○松井参考人 これは〇・五パーセントであるわけであります。大体五万円ちよつとになると思いますから、これは品種によつて違いますが、一トン当り二百五十円くらいであろうと思います。それから原料が途中で目方が減つた場合に、われわれが責任を負わなければならぬので、そのために積立てをしております。これは一トン当り六十円を引きましてそれだけは別に積み立ててあります。
  165. 徳安實藏

    徳安委員 それは諸掛や何か、全部を引いたほんとうの手数料ですか。たとえばはしけ賃とか積込み賃とか、そういう実費を全部はねた手数料ですか、あるいはそういうものを全部包含したものですか。
  166. 松井捨次郎

    ○松井参考人 〇・五というものははしけ賃とか、そういうものは別であります。ただこの〇・五で人件費とか、海外に出しておる人間の費用とか、店の費用、電信料とか、そういうものをまかなうわけです。
  167. 徳安實藏

    徳安委員 今お宅の方では、現地のビルマには何人ぐらい社員がおられますか。
  168. 松井捨次郎

    ○松井参考人 現在ことしの分はもう終りましたので人が減りましたですが、六人おりました。現在は五人であります。
  169. 徳安實藏

    徳安委員 もう一つ、今度は小野さんに伺いますが、お宅さんはイタリアだけだというお話でありますが、イタリアの方は、ほかの商社が競争して入つておりますか。
  170. 小野一

    小野参考人 イタリアの方は、現在食糧庁の方から五社指定されておりまして、その五社が一応食糧庁の指示に基いて共同買付をしております。というのは、これは数年前売手市場のときに、われわれ五社だけで自由競争をやつておりまして、向うがLCを早く開いたものでないとライセンスをおろさない、日本以外に有利な条件があつた場合には日本に出さないということで、日本が米を買うためにずいぶん苦労したことがあるのであります。その場合に、やはり日本人同士で足をひつぱつていたのでは、ほかの者にうまい汁を吸われるというようなことから、結局われわれが高い費用を払つて日本に米がとれぬということではばからしいということで、相手国の競争相手を対象として、われわれは一致団結してやつたのであります。それがために一昨年でしたか、かの地の米をつかむことができたのです。最近に至つてはわれわれの方が、五社の指定のために他国に競争しで相当な米をとつたという結果が出て来ておるわけなんです。
  171. 徳安實藏

    徳安委員 そうしますと、五社が申合せて一社みたいな形でやつて、そうして政府との関係は競争入札のような形のようにおつしやつていたけれども、一応は……。
  172. 小野一

    小野参考人 一応はほかの地域の買付の公表があつたときにこういうこともありましたということにして、入札の形式でやりました。
  173. 徳安實藏

    徳安委員 形式は入札だが、実質上は一社で……。
  174. 小野一

    小野参考人 五社です。
  175. 徳安實藏

    徳安委員 五社だけれども共同買付をやり、共同の討算をしているとすれば一社と同じですね。表面は五社でやつておるが、実質は一社ということですな。
  176. 小野一

    小野参考人 そうです。
  177. 田中彰治

  178. 柴田義男

    柴田委員 続いて小野さんに伺いますが、イタリアなんかは大体二万石そこそこじやないですか。
  179. 小野一

    小野参考人 二十七年度には日本に十万トンばかり入れております。去年は三万トンくらいです。
  180. 柴田義男

    柴田委員 イタリアへ五社入つてつて、去年三万トンお扱いになつた。そうして〇・五パーセントの手数料ということになると、邦貨にいたしまして一千万円内外です。それを五社でわけるということになると一社三百万円、それで現地に人を派遣して採算がとれるものでございましようか。
  181. 小野一

    小野参考人 われわれとしては、数量的に採算がとれません。しかしわれわれも指定されている以上採算ベースを度外視してどうこうということは、この商売だけをやつているわけではありませんから、ある程度そういう必要性に迫られて取扱つております。
  182. 柴田義男

    柴田委員 今伺つておりますと、日本の言葉で申しますと、基本米価ですが、基本米価に対する手数料は〇・五パーセントだ。そういたしますと、手数料の面から見ますると非常に少いのですが、今小野さんの御説明のように、実際採算を度外視しても指定をされておるからやつておられるという犠牲的なお言葉なんですが、われわれのふに落ちないのはその点なんです。商社が厖大な費用をかけ、しかも相当の人数を外地に派遣しておつて五パーセントでやる、表面的に見ますと、そういう状態が現われているのだが、そのほかに何かもうかることはないのかどうか。向うの政府との間の契約以外に自由に買つて来れるようなものがあるのか、そういう点を承りたい。もう一つは、船賃あるいははしけ運賃というようなものも含まれるものかどうか。この点第一物産の松井さんからでもけつこうでありますが……。
  183. 田中彰治

    田中委員長 柴田委員、商社が自己で買いつけるのもあるのです。買いつけて、売るのは手数料が何割ときまつておらないのです。日本の買いつける米麦は全部で一千億くらいやるでしよう。それの〇・五パーセントは全部商社にわけてやつておるのです。自己の買いつけるのは別です。そう思います。
  184. 松井捨次郎

    ○松井参考人 自己の買いつける分というのは、ビルマの場合にはございません。全部政府契約です。ほかの地域はございます。ほかの地域、たとえば私どもなんかも輸入しましたが、仏印のサイゴン付近、これなど向うは民間側が輸出しまして私ども輸入しますが、いずれにしましても、これは食糧庁に納入するわけであります。〇・五パーセントの点はちよつとはつきり御説明しませんでしたか、日本に持つて参りました値段、陸揚港到着値段の〇・五パーセント、従つて途中の運賃についても〇・五パーセントというのが乗つかるわけであります。これは大した金額ではございません。何かほかにもうかることでもないのかというお話でございますが、気分的にはこういうことがございます。今民間の普通の商売でございますと、相手先が倒産したりなんかする、貸倒れの危険があるが、食糧庁の場合には、まじめに経費がつぐなうようにやつておりますれば相手先のつぶれることがないという点、その程度です。
  185. 田中彰治

    田中委員長 杉村君。
  186. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 ちよつと松井さんに伺いたい。先ほど委託買付契約、こういうことをおつしやられておつたが、その委託買付契約によつて買いつけた米についてのあなたの方の責任解除の時期はいつなんですか。
  187. 松井捨次郎

    ○松井参考人 内地へ持つて参りまして食糧庁指定の倉庫に入れて、食糧庁に引渡したとき、数量はそこであります。品質につきましては、現地での検査証明書、それで受渡しをしております。
  188. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 そうすると、食糧庁指定の倉庫に入れたときつまり数量の責任解除になるのであつて、品質については検査証明書を受取つて船に積んだときで、それでもう米に対する瑕疵の責任はなくなる、こういうのですか。
  189. 松井捨次郎

    ○松井参考人 そうでございます。積地での検査証明書を契約通りのものがとれましたとき、つまり悪いものをはねてよいのだけにして、契約通りの検査証明書をとりまして、品質についてはそこで。但し輸送中の保険事故、海難その他がありましたときは一応食糧庁から代金をいただきますけれども、いずれ保険会社に求償していただき、返納するわけであります。
  190. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 いわゆる海損の起つた場合は別個です。海損関係は商行為で、商法上きまつておりますから別ですが、要するに品質というものはあなたの方で検査証明書を受取つたときで責任がなくなる、こういうことですか。あなたの方を委託されておるということは、すなわち国民の主食の買付をあなたの商社を信任して政府から委託しておるのだと思うのですが、その点はいかがですか。あなたの方はそれだけ政府から信頼を受けて買付をやつているのではないかと思いますが、いかがでございますか。
  191. 松井捨次郎

    ○松井参考人 信用してやらせていただいているのだと思います。
  192. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 そこで先ほどの毒性の問題に入つて行くのですが、なるほどビルマならビルマ、あるいはタイならタイの米について、日本人は毒だと言つてもビルマ人なりあるいはタイの人が食べては毒ではないのだ、こういうことになると毒の認識の問題になつておるので、それは国際関係であつて、ただここで議論したつて始まらないことなんです。それはビルマの国民の体質と日本の国民の体質とが違えばそうなる。けれどもそういうことは別として、とにかくあなたの方は商社として、いわゆる貿易業者として、日本人の食べるところの主食を、この米を持つて行けば日本人が食べるに適するというだけの識別を、少くともあなたの方ではして買い入れるだけの善良なる委託された商社としての責任があるのではないかと思いますが、いかがでございますか。
  193. 松井捨次郎

    ○松井参考人 おつしやる通りでございまして、私の方といたしましては、契約の条項はこれでありますけれども、もちろんできるだけいいものを持つて来るというつもりでおります。ただ白色黄変米といいますか、色が白くて黄変菌があるというものにつきましては、できるだけ早く技術的にそれがかつちりと積込みのときにわかるような方法を専門の方々の方で研究していただきまして、私どももそれを応用して一刻も早くかつちりとした積込みをいたしたいというふうに思つております。
  194. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 それはあなたの方で買付をする場合においては、単に政府にたよるとかたよらぬとかいうことは別個の問題です。政府もそれに協力しなければならぬと思いますけれども、しかしいずれにしましても、政府はあなたの方の商社に信頼をして国民の主食を買い入れた。その米が黄色かろうが青かろうが、食えば腎臓肝臓を冒して毒になるというようなものであつた場合には、たとい検査証があつても、あなたの方でも政府に対して貸担保の責任があるのではないかと私は思われる。さらにあなたの方がその政府に対する責任と同時に、ビルマの買付先の相手方に対してさらに貸担保の追究をするのは別個の問題ですが、あなたの方としても政府に対するところの責任があるのじやなかろうか。契約書等を巨細に検討しなければなりませんけれども、しかし黄色いとか青いとかいうことは別個の問題であります。主食のことでありますから、それが毒で食えないという場合には、それは主食としての役をしないわけです。だからその責任はあなたの会社、すなわち政府から信頼されて委託買付契約の衝に当つたあなたの方の会社にも責任があるのじやないかと思うのです。そうした法律問題はさらに契約書を検討してからでないと私ははつきり言い切れませんけれども、一応はどうもあなたの方にもそういう責任があるのじやあるまいかと思われますが、それについてはどんなお考えですか。
  195. 松井捨次郎

    ○松井参考人 これは私も法律的にいろいろ研究してみないとちよつと現在わかりかねるのでありますが……。
  196. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 常識的でけつこうです。
  197. 松井捨次郎

    ○松井参考人 常識的には、両国政府の間できめられた契約書の条項にのつとりまして、受渡しをして書類をそろえてやつて来たということでございまして、これはちよつと今までのところは責任の問題についてはまだ研究しておりませんのでわかりません。
  198. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 それは両国政府の契約書というものは一応基準でありますけれども、契約書にどう書いてあろうとも、国民の食う米を買うのですから、その点は私はそういうふうに考えられるのですけれども、まあ法律問題はあまり多くを伺つても、あなたとしては軽々にお答えできないでしよう。そこで先ほど伺つたのですが、この委託契約に基いてあなたの方で受取る一切の金の率は幾らになりますか。買付手数料はトン当りどういうことになりますか。〇・五ということでしたが、それが全体ですか。それは運送賃も含むものか、それは別なんですか。
  199. 松井捨次郎

    ○松井参考人 品質によつて値段が違いますが、五十ポンド、約五万円がビルマの積込地におけるFOBの価格でございます。それに積込地の船内荷役料、それからあと検査したり何かする費用です。これが港によつて違いますが、トン当り大体四百円から五百円くらいです。それからこまかい数字を計算したのを私持つて来ていないのですが、あと決済に要するいろいろな手数料を銀行に払います。信用状とか為替関係、それから銀行の金利とか、この数字は違うかもしれませんので、もし間違いましたら御了承願いますが、トン当り三、四百円かかると思います。それは精細な計算があると思います。それから海上運賃がトン当り大体二千七百円から三千円くらいだと思います。それからちよつと正確な数字はないのでございますが、海上保険料が七、八十円になります。それから手数料は〇・五パーセントです。
  200. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 そこでこのうちの海上保険料は政府が払うということになると、危険負担はやはり政府の方にあるのですか、あなたの方にあるのですか。海上保険いわゆる海損関係は、あなたの方の危険負担で輸送されておるのだから、あなたの方で御負担になるのじやないですか。その点どうですか。それはどちらでもけつこうですが、いわゆる海上の危険をあなたの方で負担なさつておるのでしよう。やはり政府が危険負担をしておるのですか。
  201. 松井捨次郎

    ○松井参考人 危険負担の問題でありますが、私どもが信用状を開きますと、現地の看貫表、品質の検査証、船荷証券、それに基くインヴオイスなどをそろえて銀行経由で参ります。それが到着いたしますと、食糧庁は一応代金を支払つて、その書類を引きかえに全部保有されるわけです。これに保険証書をつけて、保険もカバーしてあることを証明して食糧庁に渡す。そしてシフ日本までの代金を受領いたします。
  202. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 政府が出していますね。
  203. 松井捨次郎

    ○松井参考人 政府が出しています。
  204. 田中彰治

    田中委員長 松井参考人、保険料とか運賃とか荷揚料とか、そういうものに対してもやはり〇・五あなたの方でもらうのですね。
  205. 松井捨次郎

    ○松井参考人 はあ。〇・五は一番あとのところでたしか……。
  206. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 あしたの議事についてお願いしておきたいのですが、実は将来の黄変米輸入阻止の対策につきまして、これは当然結論も持たなければならぬと思つておりますが、つきましては、だんだんと伺つておりますと、現地に対してたとえば学者を派遣するとか、いろいろ折衝するとか、いろいろな方法も講じ得るのだが、外交関係を無視しては現実関係が成功不可能のような感じがいたしますので、その点はやはり外務大臣その他適当な人をぜひ当委員会へ呼んでもらつて、輸入阻止に対して積極的な措置を講ずることと、それから従来これに対してとり来りました措置、外交折衝、たとえばビルマとの国交回復、その他賠償等もありましようから、そういうこともにらみ合せまして、やはり外務省の意見は十分に聞いておく必要があると思いますので、お願いいたしたいと思います。
  207. 田中彰治

    田中委員長 外務大臣を呼びますか。
  208. 杉村沖治郎

    ○杉村委員 小野さんにちよつと……。別に答えていただかなくてけつこうですが、先ほどの松井さんの答えてくだすつたことは、やはりあなたの方でも同じことでございますか。
  209. 小野一

    小野参考人 同じです。
  210. 田中彰治

    田中委員長 それでは本日はこの程度とし、次会は明十二日午前十時より開会いたします。  これで散会いたします。     午後四時五十五分散会