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1954-05-11 第19回国会 衆議院 経済安定委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月十一日(火曜日)     午前十一時十五分開議  出席委員    委員長代理 理事加藤 宗平君    理事 小笠 公韶君 理事 武田信之助君       木村 俊夫君    迫水 久常君       西村 久之君    平野 三郎君       前田 正男君    南  好雄君       楠美 省吾君    菊川 忠雄君       杉村沖治郎君    水谷長三郎君  委員外出席者         議     員 竹谷源太郎君         参  考  人         (全日本中小工         業協議会中央副         委員長)    小林 文雄君         参  考  人         (日本貿易会常         任理事)    藤野忠次郎君         参  考  人         (丸富士株式会         社専務取締役) 宮田  勉君         専  門  員 円地与四松君         専  門  員 菅田清治郎君     ————————————— 五月八日  委員杉村沖治郎君辞任につき、その補欠として  中村時雄君が議長指名委員に選任された。 同月十一日  委員石井光次郎君、小平忠君及び中村時雄君辞  任につき、その補欠として木村俊夫君、三宅正  一君及び杉村沖治郎君が議長指名委員に選  任された。     ————————————— 五月八日  国土開発中央道事業法案竹谷源太郎君外二十  五名提出衆法第三二号) 同月十日  蘆品郡特殊土じよう地帯に指定の請願高橋  禎一紹介)(第二五二号)  同(高橋禎一紹介)(第二四八一号)  電源開発及び多目的ダム建設促進のための特例  法制定に関する請願外一件(福田一紹介)(  第四八六三号)  電源開発工事に伴う立法措置に関する請願(福  田一君紹介)(第四八六四号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  国土開発中央道事業法案竹谷源太郎君外二十  五名提出衆法第三二号)  金融政策総合調整に関し、参考人より意見聴  取の件     —————————————
  2. 加藤宗平

    加藤(宗)委員長代理 これより会議を開きます。  金融政策総合調整に関する件について調査を進めます。  本日は、本件について参考人より意見を聴取することになつておりますが、本日出席されております参考人は、全日本中小工業協議会中央委員長小林文雄君、日本貿易会常任理事藤野忠次郎君及び丸富士株式会社専務取締役宮田勉君の三君であります。  この際一言ごあいさつを申し上げます。参考人各位には、御多忙中にもかかわらず本日御出席いただきましたことについて、ここに厚く御礼を申し上げます。  なお本委員会におきましては、ただいま金融政策総合調整に関し、鋭意調査を進めておる次第でありまして、特に政府の目下実施しております金融引締め政策につきましては、その各方面に対する影響もようやく人なるものとなつて参りましたので、本委員会といたしましては、調査の慎重を期するため、すでに前後二回にわたり、金融機関経済団体など各方面代表者の方々より意見を聴取いたした次第であります。本日御出席参考人各位には、それぞれの立場におかれまして忌憚のない御意見を開陳され、本件調査参考に資されたいと存じます。  これより御意見を伺う次第でありますが、時間などの都合もありますので、御一人十五分くらいずつにお願いいたします。なお参考人発言順序につきましては、委員長に御一任願います。  ではこれより順次御意見を聴取することといたします。全日本中小工業協議会中央委員長小林文雄君。
  3. 小林文雄

    小林参考人 御紹介にあずかりました小林でございます。お招きを受けました趣旨に基きまして、これから私ども立場からいろいろ申し上げたいと存じます。時間が十五分という御制限を受けておりまするので、これは大約しか申し上げられませんことをたいへん残念に思いますが、その点御了承を願つておきます。  まず、本委員会に御出席の議員の方方に厚くお礼を申し上げます。日々国政に関しましていろいろ御尽力をいただいております段、私どもといたしましてまことに感謝にたえません。あらかじめお礼を申し上げておきます。  これから私ども中小企業立場から発言いたしまするが、まず最初に申し上げておきたいことは、中小企業というものの全国的に見た比重でございます。これを人口的に見ますと、日本の総人口の三割四分が中小企業並びにそれの関連者でございます。それから日本全国生産量から見まして、大体八五%が中小企業によつて生産されております。この比重の重さをあらかじめ申し上げておきたいと存じます。  それから今のデフレ政策、これは私どもはやむを得ないことと認めておりまするけれども政府が打出しておりまするデフレ政策政府自体がこれに逆行するような施策をとつておる事実があるのであります。たとえば電気料金値上げ、それから運賃の値上げ、その他公益事業料金が逐次値上げされつつあるのであります。これは私どもから見ますると、こういう政策政府国民耐乏生活をしいておるにもかかわりませず、政府関連事業料金を上げるということが、すでに人心に与える影響相当大きいのでございます。これは値上げということでなしに、何か別の方法政府において考慮なさるべきであると考えております。従いまして国会におきましても、この点をぜひ御再考を願いませんと、この面からやはり人心が政治というものに離反をするおそれがあると考えるのでございます。現在の一応の政策はそういうわけで是認をいたしまするが、ただ若干遺憾に存じまする点は、この政策は私ども五、六年前にすでに低物価政策をとるようにと各方面にこれを提唱いたしました。それが一向実現されませんで、むしろ世相並びに施策はその反対の方向に向つて進んで参りました。従つてここへ来まして、他の圧力が加わつたかのように漏れ伺つてはおりまするが、急激な変化を来しました。そこで徐々にやればさほど悪い影響がなかつたかと思われまするが、急激の変化を来しましたために、各方面で不必要な摩擦混乱が起りつつあるのでございます。と申しましても、この政策をいまさらかえてほしいといつたようなことをわれわれが要望いたしましても、諸種の事情から当分の間はこれが不可能であると存じておりまするので、金融引締めのしわ寄せを最も端的に全面的に受けておりまする中小企業者、特に小規模の企業体に対しまして、何らかの急速な措置を講じていただかなければ、中小企業の続出する倒壊、破産、工場閉鎖、こういつたようなことから、それがただちに社会不安に通じまして、このままほおつておきますると、さほど遠くない時期におきまして、容易ならざる事態を招来いたしまするおそれが多分にあるのでございます。この中小企業、ことに小規模企業体が非常に困つておりまする状態実例を二、三申し上げてみたいと思いまするが、たとえば八王子織物業者の間では、すでに約五〇%ないし六〇%の繰短を今日しております。それから東京都内金物問屋、主として非鉄金属、これを扱つております問屋などは、もうすでに非常な相手方経理状態に不安を持つておりまする関係上、商売はもうしたくない、商売をして代金の回収ができずに相手方が倒産される、あるいは先物が安くなる見込み、こういうような政策をとられますとどうしても安くなります。そこで商売をして損をするよりも、むしろ商売しない方がよいじやないかといつたような、きわめて消極萎縮的な傾向が顕著に現われておる次第でございます。  それから私東京中小工業協同組合理事長をやつておりますが、私ども組合関係だけでも、日平産業閉鎖以来あれを契機といたしまして、すでに工場閉鎖いたしましたものが約十工場でございます。私ども組合の全員が約百二十工場でございますから、今まさに倒壊に瀕しておりまする工場を入れますと、一割二、三分に当ります。今後この傾向だんだん多くなつて参ります。それでこれを救いまする道は、大体もう金融とまず税金というものを二つにわけて考えればよいと思うのでございます。現在の政府の方針が、小さいところはつぷしてしまえ、こんなものはいらないんだといつたようなお考えならこれは別でございます。だがしかし国民全体が平和に繁栄をこいねがう、そうしてまたそういう生活をするのが理想であるとすると、今日とられておりまする、あまりに急激な変化は、これは中小企業、ことに小規模企業体は立つて行かないのでございます。中小企業の中でも今まで申し上げましたのは大体独立した企業体でございまするが、このほかに大企業に属しておりまする下請企業がございます。これらはもうとくに新聞紙上その他で皆様も御承知のことと思いますが、金融引締めが一つの口実になつて下請業者支払いをますます延ばす、たとえば今まで現金払つてつたものは三箇月の手形になり、二箇月の手形払つておいたところは四箇月、五箇月、はなはだしいのは九箇月、十箇月という支払いぶりでございます。大体小さいところが原料を仕入れまして、これが代金が回収されまするまで約十箇月もかかつたのでは、小さいところはとうていやりきれないのでございます。そこでその手形銀行へ持つて行つても割つてくれませんので、自滅の道をたどると知りながら、やはりやみ金融にたよらざるを得ないという現在の状態になつております。従つてども組合組合員工場閉鎖いたしましたもののバランス・シートを見てみますと、必ずしも赤字ではないのでございます。経営体黒字でございます。だが資金繰りがつかないためにやむを得ず閉鎖をする、こういうような工場がほとんど大部分でございます。これははなはだおかしな話ですが、どうしても手形が割れない、現金化されない、しかし払うものは払わなければならぬ、給料も払わなければならぬ、こういつたようなことになりますと、勢い工場は立つて行かなくなる、閉鎖せざるを得ないのでございます。  そこでこの下請問題に対しましては、別に私ども考えがございますので、先月でございますか、ある雑誌に私の意見ども発表してございますが、別の方法でお願いしたい、実は全中協方面でも案を練つております。下請関係臨時調整法といつたような——これは仮称でございますが、そういうような何か下請を救う法律をひとつつくつていただきたい、かように考えておりまして、今その対策について案を練つておりますが、いずれできましたら国会方面にお願いする予定でございます。  さて当面非常に困つておりますこの業界を何とか救つていただきたい、またそれをしなければえらい問題が起りますので、これはひとつぜひ国会方面でもお考えいただきたいと存じます。その一つといたしまして、大体今まで大企業に偏重されております金融政策を改めていただいて、そして中小企業者がさきに申し上げました人口的にも生産的にも非常に大きな比重を占めております関係を御考慮を願いまして、この大企業偏重政策をぜひ改めていただきたい。そして中小企業者の方へも適当に資金がまわりますように御考慮をいただきたいのでございます。なぜ私がかように申し上げるかと申しますと、昨年十月から本年四月までの間に金融引締めということを打出しております日銀の貸出しは、その金融引締めの旗じるしにもかかわりませず、貸出しが七百十億ふえております。それから日銀券発行高はその期間に二十億しかふえておりません。日銀券が二十億しかふえていないのに貸出しが七百十億ふえておるというこの事実は何を物語つておるか。これは少しお考えくださると、この金がどこに行つているかはすぐおわかりのことと存じます。今までの政策があまりに大企業偏重であつたために、いろいろな摩擦やら混乱が起りつつございますので、どうぞこの点を御考慮いただきまして、急速に大企業偏重という点をぜひ改めていただきたいのでございます。  それに関連いたしまして、たとえば中小企業金融公庫国民金融公庫、相互銀行信用組合などの、いわゆる中小企業向け機関にもつと多くの資金を注入していただきたい。この注入していただく割合は、もし今のところ幾らやつたらいいかという適当な数字がわからないときには、これはやはり生産量人口の比率で考慮していただきたい、そうしてできるだけ多くの国家預金部資金でも流していただきたい、こういうふうに考えております。それから信用協同組合といつたような中小企業関係金融措置を講ずる組合ども、やはり政府の慫慂によりましてこれを拡大強化していただいて、そうして相互責任のもとに金融円滑化をはかつていただきたいと存ずるものでございます。われわれとしても実は大いに反省すべき点がございますが、たとえば道義心の欠如、これは中小企業者の中にも相当ございます。今の手形不渡りを見ますと、真にやむを得ざる不渡りもむろん多くございますが、中にはそうでない不渡りもあるように考えます。これはわれわれとしても大いに反省しなければならぬと思います。しかし今申し上げたような観点から、相当量資金中小企業者の方に流れて来ますれば、われわれの方も設備と経営合理化近代化をはかりまして、まずその辺から自立経済の確立を達成するようにお互いわれわれ自身もやはり努力しなければならないと考えております。  それから対策のもう一つはやはり減税でございます。この点については、全中協政府の方へ要望してございますのは、百万円以下の所得に対しましては直税、つまり所得税法人税、あるいは地方税を込めて三五%以下ということにぜひお願いしたいと思うのであります。これなくしては再生産はできません。税金を払うとあと何もできない。個人では食うことができない、法人では再生産することができないような現在の徴税方法あるいは税法では、中小企業者の発展する余地はございません。なお私ども意見は、五十万円以下の所得に対してはむしろこれは免税にしていただきたい。これは社会党の方にもたしかお願いしたはずでございます。けれどもいきなり五十万円以下を免税というわけには行きますまいから、五十万円以下は大体二五%——これは地方税、直税を合せまして二五%以下にぜひ御考慮していただきたい。  以上、中小企業向け金融機関に対します資金量の増大をはかつていただく。もう一つ減税ということ。それから国家財政資金を不必要な面に使わぬ、財政資金生産的の御使用を願う。非生産的の方面はぜひ抑制していただく。それから大企業に対する過剰投資、こういうものも現在かなりルーズになつておるようでございますが、中小企業者の方にはほとんどこういうものはない。こういうこともぜひ国会方面で、御考慮をいただきたいと思う次第でございます。  たいへん概括的なお話であるいはどうかと思いますが、時間の関係もございますのでこの辺で私の話を終りたいと思います。
  4. 加藤宗平

    加藤(宗)委員長代理 ただいまの小林参考人の御意見に対して質疑があればこれを許します。
  5. 菊川忠雄

    菊川委員 小林さんに一、二点お尋ねしますが、今の税金の問題でございますが、私一昨年と記憶しておりますが、東京都の中小企業者——といつて零細個人商人でありますが、それの税金調査してみましたときに、国税、地方税を含めて大体半分くらいが税金になつておるという状態であつたと記憶しておるわけであります。東京都から都民印刷物を配つておりますが、その印刷物を見ても、一昨年には、かりに十五万円の所得申告があつた分に対しては、たしか四八%近くが税金の計算になるということが当時表の中に出ておる。だから十五万円くらいの所得の人は直接税と都の関係の税、区民税といつたものを含めて四八%くらいになるから、その分は税金としてとつておけ、こういう注意であつたわけです。もちろんその後税制もかわりましたけれども、また業態においてももちろん違うでしようが、かりに十五万円の所得を申告する個人商人であれば、今お話の税は、全部ひつくるめて何十パーセントになつておる見当でしようか。それからその申告がかりに三十万円の人とか五十万円の人とかいうことになると、個人でどれくらいの率になつておる見当か。それからこれが法人の場合、今は実際はどのくらいの率が税金になつているかお伺いしたい。
  6. 小林文雄

    小林参考人 資料はございますが、きようはその方の資料は持つて参りませんでした。しかし大体法人の方は、大も中も小も率はきまつておりますので、全体で四十二の十五でございます。か、それに都民税その他を加えますと、約六十何パーセントになります。個人は大体それと同じくらいの程度で、あるいは業種によつては、もつとよけいにとられているのもございます。というのは、法人も小さいところはほとんど同じような状態でございますが、個人の小さいところ帳簿はよく整備されてございません。これはほんの一例でございますが、私の知つておるところでは大体利益を算出するときに、すでに多少の無理がございます。それに税金がかかりますので、個人利益は計算いたしますと、ほんとう利益帳簿上の利益とございます。つまり税務署の認定された利益税金をかけられますと、ほんとう利益の八〇%くらい持つて行かれる場合もございます。
  7. 菊川忠雄

    菊川委員 もう一つ簡単にお尋ねしますが、東京で私ども多少関係しておる者から聞きますと、最近こういうふうな問題が起つておるのです。たとえばある信用組合に百万円の預金がある。そこで支払いに必要であるからというので、二十万円を下げに行つた。そうすると一流銀行あて小切手をもらつた一流銀行にその小切手を持つて行くと、銀行は、その信用組合との取引は自分の方は貸し過ぎになつているから、この小切手不渡りだ、すぐ金にするわけには庁かないというので、驚いて信用組合に返した。信用組合では一日、二日待つてくれというので、ようやく金を間に合わした。これは私どもから見ると、そういう中小企業関係金融機関には、実質的には一種の取付状態が来ておるのではないか。預金者預金をしておりながら、しかもそれがすぐに現金で引出せない。こういうのを最近私二、三聞きました。こういう実情相当にございますかどうか。
  8. 小林文雄

    小林参考人 私もその実例は聞いておりますが、その信用組合は、実は最初から少し危惧の念を持つておられた信用組合ではないかと思います。と申しますのは、これは人の問題でございまして、信用組合でかなり正しい運営をしておりますいいところもたくさんございます。しかし中小企業金融公庫法案が議会で通過いたしましたときに——あの法案はここにおられます小笠さんに非常に御尽力願つてできましたために記憶しておりますが、私ども市中銀行から非常に反対を受けました。あのとき市中銀行ではこう言つているのです。あなた方は、そうやつて小さいところ、信用金庫や組合のようなところまでを相手になさるけれども、ああいうところ情実が多くて、情実貸しが非常に多いからかえつていけないのではないか、調査網も少いのだし、完全でないのだから、国家資金をああいうところにまかせるのはかえつてよくないのじやないかということが、大きな市中銀行反対の理由の一つでございました。これはやはり一面事実なんです。そういう組合もあるのです。これは要するに人の問題でございまして、確かに非常にうまく運営されておる組合もございます。そういういかがわしい組合のあることも私聞いておりますけれども、全体から見ると、そう多くはないと思つております。
  9. 菊川忠雄

    菊川委員 私のお尋ねしたのは、誤解されては困りますけれども、こういうのです。私の聞いたところでは、信用組合としては相当長い歴史もありますし、都内で堅実な中でも有数なものだろうということであります。たまたまそういうところにこういう問題があつたのです。それは結局長い間の取引で信用しておつたその相手中小企業者下請露係にある親工場その他の不渡りのために思わざる焦げつきを起した、こういうことであつて、中には運営よろしきを得ないところもありましようけれども相当堅実に運営をしておるところの、そういう中小企業露係金融機関ですら、中小企業の今の経営難実情からこういう問題に逢着しておる場合がある。ここにも私は非常に重要な中小企業の問題があると考えるわけです。私はそういう信用組合についての不安とか危惧を尋ねておるのじやなくて、堅実にやつておるが、しかし今の金融引締め政策というものが今までの堅実な経営の常識をもつてしてもなお考え得ないところの大きな痛手を取引先中小企業に与えておる、ここに問題がある。そういう事実が方方にて出ておるとすればゆゆしき問題である。こういうふうに考えて、そういう点でお尋ねをしたわけですけれども、そうすると、こういう例は運営よろしきを得ないところに間々あるのであつて、まだそういう心配は全般的にはないというふうに判断してよろしゆうございますかどうか。
  10. 小林文雄

    小林参考人 ただいまのお話でございますが、これは今あなたのお話のように、政府の引締め政策影響いたしまして、堅実に経営されております中小企業者が、先ほど申し上げましたように、工場閉鎖いたしますのに、それが原因となつて赤字でなしに黒字であつて閉鎖するようなところがございます。これは私の組合にございます。そういうところ取引しておりますと、今お話のようなことが起ります。これは将来だんだんふえると思うのです。というのはいかにわれわれが堅実に経営いたしましても、金繰りがつきませんから、前の手形不渡りなつたとしても、それを埋めることができないのであります。そういう意味では御心配のことは今後十分できると思います。でありますから、その点につきまして国会方面でも御配慮いただきたいと申し上げておるわけであります。
  11. 加藤宗平

    加藤(宗)委員長代理 杉村君。
  12. 杉村沖治郎

    杉村委員 ちよつとお伺いします。九ほど来の小林さんのお話は、まことにしごくごもつとものように私どもうかがえるのですが、あなたのお話を伺りておるうちで、中小企業の一番困つておるのが金融の問題である。ところ手形割引もしてもらえない、こういうようなことが主要な原因のようにりかがえるのです。どこの銀行割引をするのには割引をするだけの信用力を見て割引をしておるわけなんですが、その割引ができなくなつたということは、中小企業者に対するところの、金融業者が信用できないということになつたのかどうかという点なんです。実は昨年の暮れごろから、秩父の織物業界が火が消えたようになり、実際の金繰りができなくなつて非常にぐあいが悪いのです。その銀行関係を調べると、そういうふうに銀行手形割引をしなくなつたからかというとそうでもない。今までやはり担保力があれば、どんどん割引して来薫るのですが、その点は銀行が従来の程度担保力あるいは信用力では割引をしないということが、この最も大きな原因となつておるのでしようかどうかということが一点。それから東京都内金物屋であるとか、あるいは八王子織物業者が八〇%の操短をしておるということですが、これは金繰り関係でこうなつておるのですか、それとも需要がなくてこういうふうになつておるのですか。私ども考えでは、政府がなるほど一兆円以内の緊縮政策をとつておるとは言つても、中小企業の最も大きな困る原因というのは、国民購買力の問題じやないかと思うんですが、国民購買力減退程度はどの程度になつておるでありましようか。私はもしも困るとすれば、購買力の方が減退しておるからであつて購買力があれば操短をしなくても済むのではなかろうかと思われるのですが、この操短金融政策から操毎を来しておるのであるか、国民購買力がないために操短を来しておるのであるか、それらの点はいかがでありますか。  いま一つは税の問題でありますが、今日本中小企業者のうちで企業組合というのをつくれば非常に合法的に減税になるのですが、現在中小企業組合がどれくらいできておるでありましようか、それが今おわかりでありましたら伺いたい。
  13. 小林文雄

    小林参考人 ただいまのお話の第一は、銀行あるいは金融機関手形を割るときに、今までの担保力あるいは信用力のあるところは割れておるのだがというようなお話でございました。その点は政府銀行局長から、貸出しの何割かを減らせという通達があつたのでございます。その通達に基きまして、各金融機関は前月の貸出しよりも何割かを減らすことを目標にしてございます。ところ銀行商売ですから、かたいところはやはり貸すのです。そうするとかたいところでも一割なり二割なり減らします。また減らさないところもございます。そこで百万円のわくが五十万円貸すと、あと五十万円しか残つていない。その五十万は一割、二割片一方で減らすやつを減らさないで貸してしまうから、こちらの残つた方には三割も四割も影響して来る。そういう点はございます。  もう一つは、大企業支払いがだんだん悪くなつて参りました。これはそういう人ばかりではないでございましようけれども、私はこれを大企業経営者の道義心の欠如と申しております。こういうことを契機にいたしまして、支払い能力があるにもかかわらず支払いを延ばすという例があるのであります。むろんこれは全部ではございませんが、そういう例があります。たとえば今まで二箇月の手形あるいは小切手払つておるところが、向うがこうするのだからおれの方も右にならえをしなければならぬということで、四箇月にもなる。銀行は、普通の信用状態では九十日でございます。よほどいい信用を持つておりますところでも百日であります。それ以上の手形は、大体において銀行では扱つてくれません。百二十日、百五十日の手形は、何か普通以外の事情があるところでなければ扱つてくれません。例外もありますが、大体においてそういうことであります。従つて先ほど御質問のございましたことは、やはり政府金融引締めの影響でございます。  それから購買力の問題でありますが、こちらに繊維関係の方がいらつしやいますので、繊維の方からお話があると思いますが、私どもの得た報告によりますと、現実には購買力が必ずしも減つてはおらない。給料が減つておりません。従つて購買力は現実にはそうまだ著しい減りは見られない。例えばこの間八王子の人に聞いてみますと、今八王子織物業者に一億五千万円の融資があれば、材料が買えて全体の操業ができるのに、その金がないためにその材料が買えない、従つてどうしても操短せざるを得ない。織れば売れる、こういう見通しがついておるらしいのですけれども、金がないために材料を買うことができない。もう一つの例は問屋であります。先ほど申しました非鉄金属問屋でありますが、これを問屋金融と申しますが、今まで小さな工場のめんどうを問屋金融的に見ておつた。材料を若干提供いたしまして操業させておつたところが昨今の状態問屋自身がもう非常に苦しいものですから、若干のめんどうを見ますればその工場は操業ができるということがわかつてつても、材料をまわすことができない。従つてその工場は、注文がありながら物をつくることができなくて、遊んでおります。こういう小さな工場で材料がないために遊んでおる傾向は漸次ふえて参ります。従つてこの将来を考えますと、相当恐ろしい結果になるのではないかしらと考えております。  それから企業組合の問題であります。実は私のところではつきりした統計がありませんけれども企業組合ができているところとできていないところという御質問でございましようか。
  14. 杉村沖治郎

    杉村委員 つまりどれくらいの中小企業者に対するパーセンテージにおいて、どれくらいの中小企業組合ができておるか、こういうことなんです。企業組合をつくりますと税金が非常にぐあいがよくなる。その中小企業組合が、中小企業者の数に対してどれくらいの割合でできておるか、おわかりであつたら伺いたい、こういうことでございます。
  15. 小林文雄

    小林参考人 それは今私の手元に資料がございませんから、ちよつと明確なお答えができないのでございます。
  16. 杉村沖治郎

    杉村委員 あと一点伺います。大企業者に金融の偏重だということは、まつたく私は遺憾に思つておる。事実私どもは調べておつてまことにその通りなんです。そこで昨年の十月から今日までに七百十億の貸出し増加になつておる。そうして日銀発行高はわずかに二十億しかふえていない、こういうことは明らかにこの金がどこに行つておるかということはわかつておる、こういうお話であつて、まことにその通りであろうと思うのです。こういうことになつて来ると、昨年よりも七百億の貸出し増になつてつて、そしてその下請業者に対する関係が、どうも金の払いが悪いというきわめて不都合千万なことなんです。しからばこれはどういうことであるかということを今伺つても、どうもあなたの方でもすぐにこうだということを教えていただくわけにも行きますまいが、これにつきましては私どもも非常に熱心に調べておるわけですが、どうか今日以後でもけつこうですが、こういうことにつきまして資料がありましたらいただかしていただければたいへんけつこうだと思つております。別にお答えを願わぬでもけつこうでございます。お願いをいたしておきます。私の質問は終ります。
  17. 加藤宗平

    加藤(宗)委員長代理 ほかに御質疑はありませんか。——ほかに御質疑もないようでありますので次に移ります。  日本貿易会常任理事藤野忠次郎君。
  18. 藤野忠次郎

    ○藤野参考人 私藤野と申します。つい二、三日前に貿易会の方から今日の話がございましたが、時間の余裕がございませんし、本日は日本貿易会を代表しての意見と申しますよりは、一貿易商社の立場からむしろいろいろお話をさせていただきたいと思うのであります。  昨年の秋ごろから、御承知のように主として輸入金融を中心に引締めが起つて来たわけですが、現在貿易商社に起つておることとしましては、輸入の場合には輸入信用状をいただくのが一つ、それから輸出の場合でも現実に商品の船積前三箇月間は金融を受け得ることになつておりますが、実際はなかなかそれができない。従つて実際問題としまして、相当の商社にも、輸入、輸出ともに金融措置をどうやら講じておるという商社は日本に現在一軒もない。かりに貿易商社のうちで、直接金融機関から金融引締めの対象にならない幾つかの商社に対して、銀行の貸出しのわく、あるいは割引のわくを急に締めて来ないということがありましても、実際問題として金融機関からはわくを締められなくても、取引関係から手形の延期とかあるいは前払いとか、そういうしわが寄せられておりますから、実質的にはやはり相当金融上苦しい立場にあります。それで金融引締め前と後、かりに同じ人が同じ実態の経営をしておつても、従来は支障なく手形割引かれておつたものが、同一人が同一の性質の手形を出しても、現在はそれが不渡り手形と同じ効果である。こういうことは程度の違いこそありますが、これは現実に起つております。その場合に金融機関から見ていろいろ拒む理由があるかもしれませんが、先ほどもお話が出たように、それは日々起つております。現在日本だけの物価が高いから金融を引締めて、デフレ政策によつて国内の購買力を不必要なものはできるだけ削り、消費生活を節約して日本全体の物価を国際物価にさや寄せして、そうして輸出を振興して国際収支の均衡をとる、こういうことが基本政策でしようが、そうなりますと貿易ということが現在では一つ国家的要請ということになつておるわけですが、実際行われることは、貿易を一つの産業として見た場合に、それほど国家的要請があるにもかかわらず、貿易産業に対する実際上の施策がどうも徹底してないのではないか、こういうふうに実際貿易をやつておる立場からは考えられるわけです。もちろん貿易商社自体が脆弱であるとか、数が多過ぎるとか、非常に弱い。それも事実でありましよう。それから現在かりに自己資本が一億とすると、大体それくらいの貿易商社なるものは月にそれの三十倍も四十倍も取引をするわけです。それは二面から見ますと、その貿易商社自体の活動力を現もして、いい意味で取引が大きいということも言われるでありましようが、反面同時に、それはそれだけのことをやれば非常に危険を包蔵するとい、ことでもあります。資本構成自体が間違つておりますし、大半は銀行の借入金その他金融機関の借入金などでまかなつて行かないとやつて行けないという不自然さがあるわけですから、貿易商社自体も弱い、これはその通りだと思います。従つてそういう弱い貿易商社を相手に、貿易の必要はよく認めるけれども、なかなか十分にまかせられないのではないか。現に皆さん各社の決算書を見てもおわかりたと思うのですが、一期六箇月間の決算書を見ても相当の貿易商社でも利益はあの程度です。工場経営になると、一期の利益三億を計上するのはざらにありますけれども、貿易商社では現在日本では一軒もありません。こういう状態で、貿易の必要性、それから国際収支のバランスをどうしてもとらなければならないという建前から、いろいろお話のありましたように、中小金融その他国内産業全般にも相当な犠牲が起つて来ているときに、どうも口に貿易の必要をとなえるだけで、実が一向上つていないし、何かこの辺で基本的なことをやつていただかないと、どうも貿易商社自体にも悪いところがあると思うのですが、振興させるなら振興させるような、外部の力もこれに随伴して行かないと、なかなか効果は期待できがたいと思います。  それからできるだけ輸入を抑圧する、そうして外貨の節約をその意味においてはかるということですが、しからば輸出の場合にはどうか。輸出に何ら積極的の奨励策が講じられておりませんから、日銀あるいは金融機関から見た場合には、これはある一定の金を貸すわけですから、別段この資金が輸出資金、輸入資金ということでなしこ、全体のわくがありますから、現在ど同じに苦しい立場であります。先ほどちよつと申し上げましたように、輸出金融に対して別段の奨励策がない、様に引締められている、こういう、かうな現状になつておるわけであります。結局今までやつておられたこと、デフレ政策というこの方針を途中でやめるわけには行きませんでしようし、これで順次健全化ということには向つておるに違いないのですが、被害があつちこつちからあまりにも大きいということです。そういうふうな方法で行きますと、日本国家経済の全体が小さくまとまつて来てしまうというふうな効果しか現われないと思うのですが、やはりもう少し具体的に、輸出に対する積極的の施策が必要じやないかと考えられるわけです。それから輸入の場合の削減にしましても、もちろん現在では食糧とか繊維とかが、御承知のように日本全体の輸入の三分の一以上をこれでやつているわけですが、ただ金を出さずに、形式的に輸入を抑圧するというだけでなしに、もう少し基本的にそういつたものの国内増産をやるとか、別の方面から、金融措置デフレ政策をとる一環であるというふうな見方から、金融措置だけがデフレ政策の中心になつているという現状を少し改めて、やはりほかの総合的の施策とあわせてそれをやつて行かなければ、——まあすくに金を締めるごとか一番効果的で早いことに違いはありませんけれども、それだけでは足らないのじやないか、かように考えられるわけであります。  それから輸入抑圧といいましても、それ誉ばもつともつと徹底的に不要不急のものは押えるとか、それから例のシツパース・ユーザンス、外国で一応貸してくれる、積出人がある一定期間の信用を与える、こういうものを現在では一元的の金融施策に反するから、日本金融機関及び日本の貿易商社はやらぬことになつておりますが、外国商社だけはこれをやつております。こういうことではどうもおもしろくないように思います。それはちようどかつてわれわれが北支や中支で非常に経済統制をやつた場合に、日本人の商社はあらゆる点からこれを締め上げたが、中国側の同じ商社は放任しておつた、こういうことではやはり何もならぬじやないか。従つてシツパース・ユーザンスを日本商社並びに日本金融機関が中止するなら中止するように、一様にこれを徹底的にやるか、外商だけをその点から放任させておくということではどこにねらいがあるか了解に苦しむわけです。  それから輸出金融の優遇措置については、いろいろ何回も何回も各方面で論議をされおりますし、われわれもあきるほど同じことを繰返しておるので、あらためてここで申し上げるまでもないことです。たとえば輸出金融の貿手の借入金については、無記名制度を撤廃してもらいたい、あるいは金利をもう少し輸出の場合には引下げてもいたいとか、いろいろなことがあるわけです。しかしそういうことももちろん主流にはなりますけれども金融の技術的措置であつて、やはり基本的にはいろいろの摩擦が起ると思いますけれども、貿易をやつて国際収支を是正するということが一つの大きな絶対の目標になつておる以上は、そういうふうに持つて行かなければどうもいけないのじやないか。現在必要な重要物資の輸入はことごとく外貨割当、これは直接工場に行く、そうすると貿易商社はその工場の単なる下請機関、海外から内地までの輸送を代行するという程度であつて、そうなるについては商社がなかつたとか、貿易も割合に戦後新しいとか、やらせたいのだが力がないとか、いろいろ総体的なこともありましよう。しかし順次もとに帰つて、やはり貿易をそれほどやらなければならぬ国情であるならば、そうであるように、外貨の割当は貿易商社にできるだけやらせるように、そして貿易商社は工場と違いますから、これに過大な設備投資をするとか、それから必要以上な生産拡充をするとか、その結果よけいな資金を外国から入れなければならぬとか——それによつて海外へ人を大いに出すわけです。現在交通が開けたとは言いますけれども、まだまだ現状においては盲貿易の域を出ておらない。もちろん相手国の事情もあつて、簡単には人を海外に派遣し得ない場合もありますけれども、それにしても今の範囲においてもう少し積極的に外地へ駐在せしめてその人員を強化しますと、外地の事情もさらに一層よくわかるし、結局それをもつて国内産業の方によく反映して行くということになるのじやないか、かように考えております。いろいろなことを前後矛盾して申したかもしれませんけれども、簡単に、平素考えておりますことだけを申し上げました。
  19. 加藤宗平

    加藤(宗)委員長代理 ただいまの藤野参考人の御意見に対して質疑があれはこれを許します。
  20. 杉村沖治郎

    杉村委員 外貨予算の関係に入つていろいろ伺いたいこともあるのですが、そういうようなことは別としまして、貿易関係で最も重要なことを伺いたいと思いますが、時間もありませんから、むしろきわめて単純な、小さいことですけれども日本の非常にたくさん失業をしておるような人に必要な、造花の輸出ですね。これを、今非常に恵まれない人たちが内職にやつておる。ところかこれが二、三年前にばつたり工賃ももらえなくなつてしまつたこともあるのすが、あれは輸出ができないためにああいうことになつたのか、それともいわゆる中間的な、謀略的なことによつてああなつたのか。また現在は非常に振興して、これが東京都を中心として埼玉、茨城、群馬、長野、栃木というようなところでも非常にたくさんに行われておるのですが、これの関係はどんな状態にあるのでありましよう。今困つておる人たちが零細な工賃で造花業者から仕事をもらつておるのですが、これは多分行き先はアメリカだろうと思つておりますが、これらの関係はどんなことでございましよう。これに対してお話が聞きたいと思うのです。
  21. 藤野忠次郎

    ○藤野参考人 特定の造花の輸出については、私やつておりませんから、よくわかりませんけれども、おもちや類は最近相当数量的には出ておるようでございます。やはり普通の輸出の場合にもこういつた点が当てはまる。原価が高くなるとかあるいは輸出金融が見てもらえないから工賃も渡らないというふうなことがある。造花といえども、特殊の性格を持つたものでありましようけれども、やはり一つの輸出品である以上、先ほど申しましたような大きなほかの輸出金融保証とか、そういうものの関係を受けて、十分金融のめんどうも見てもらえないということもあるだろうと思うのですが、私造花をやつておりませんからよくわかりません。
  22. 杉村沖治郎

    杉村委員 貿易金融ということはきわめて重要なことなんでありますが、日本の貿易商社のことは私どもにはどうもよくわかりませんけれども、私ども国の財政関係から輸入食糧等のことを調べておりますけれども、昭和二十六年度に日本で輸入をいたしました米が黄変米で食えなかつた、それにもかかわらずまた二十七年には同じところから輸入した。二十七年はもつとひどいような黄変米というようなことで、事実そうであつたかどうか知りませんけれども、そういうことで、これは全部国民の食糧としては政府は配給することができなかつた。それで私どもが二十六年にこれほどの黄変米が出たのにもかかわらず、どうして二十七年にこのたくさんな黄変米を入れたのか、この黄変米はあちらで引取るときにはわからないで、船積み後において船の中で黄変したのか、それとも陸揚げしてから黄変したのかというようなことをこまかく政府に質問して行つたところが、いわゆる貿易商社、外国出先の者に頼んで検査をしてもらつたのだ、こういうような政府の答弁であつたのです。結局貿易商社の人たちが関係しておるのですが、そういうように非常にひどいことをしておつて、国にえらい大きな損害をかけておるのですね。ああいつたようなことについていま少し貿易商社が、ほんとうに国策の線に沿つて、まじめに国民のために外国との取引関係に従事してくれたならば、国の損害を受けることもたいへん少くなるであろうと思うのですけれども、どうも利潤追求のみに一生懸命で、ほんとう国家国民というようなことに対する関係がきわめて薄いんじやないかと思われるわけです。それで貿易商社の仕組みはどんなぐあいになつておるのですか、簡単でけつこうでございますから、ひとつ御説明が願いたいと思います。
  23. 藤野忠次郎

    ○藤野参考人 貿易商社については、ただいまお話があつたような事例もあつたかと思うのですが、もちろん貿易は御承知のようにお互いに遠隔地でありまして、信用以外に何ものもないわけですから、そういうことをやつた貿易商社はもうはつきりわかるわけですから、政府でもこれに対して措置を講ずるとか、またそういうものから除外されるというか、順次脱落して来るだろうと思うのです。それで特に私利追求ということになりますと、その定義にもよりましようけれども、もし貿易商社側にもそういうものがあるとするならば、ほかにもそういうものがあるんじやないか。しかしそういうことは、ただいまお話の通り、もちろん絶対にやめるようにしなければならぬ。貿易も概して売る方が買うよりむずかしいわけです。輸入の方が輸出よりはどちらかというと楽なんです。そうして大体国外の取引先あるいは国内と、そのころと違いまして、順次取引の系統もお互いに軌道に乗つてつておりますから、今後そういうことが二度と起らないように、貿易商社自身も自覚しなければならないでしようし、また貿易商社の数が多過ぎるということが絶えず問題になつて従つてこれも至急統合整理しろという説が始終新聞にもあるわけなんですが、しかしなかなか——合併、企業整備によつて組織力を大きくし、資本を大きく蓄積して信用の増大をはかるということで、非常にけつこうなことなんですが、合併その他の方法でも実際は非常にむずかしいと思われますのは、すべて大きなものを小さくしろということから、終戦後御承知のように三井物産、三菱商事の組織は百人以上一緒になつてはいかぬというので解散になつて今日に及んでおるわけでありますが、それを順次逆の方向にこちらからやつて行こうということなんですが、単に形式的に合併しても、かりに二村が合併して相当人の整理を行うということになつて来ますと、整理された人はまた寄り集つて、自活のために二つ三つ会社を起す。二つの会社が合併の結果一つなつたが、しばらくすると実際は五つにも六つにもなつてしまうということも起りがちで、非常にむずかしいんですが、日銀その他政府の方も、絶えず貿易商社の主として合併による統合整備ということを言われておりますけれども、その機運は一般に動いておると思うのですが、今申し上げましたような妙なことも起りかねないことですし、今頭を痛めている最中です。
  24. 杉村沖治郎

    杉村委員 貿易業者から見た船舶関係ですが、あなた方の終戦後から今日までの輸入、輸出面においての用船関係はどんなぐあいでしよう。その状態をひとつ聞きたいんですが、外国の船舶を今でも借りてやつておるかどうか。今はやはり船が不足であるのかないのか。不足だとすれば、どれくらい外国の船を使つて商品の輸出入をやつておるかというようなことがおわかりでしたら、ひとつ大体でけつこうですから…。
  25. 藤野忠次郎

    ○藤野参考人 貿易にはもちろん自国船舶を使つて輸出し、同時に輸入するということが大切で、少くとも船舶、保険、金融機関、こういうものはもう不可分一体をなして行かなければ、ほんとうの意味の貿易はできないのであります。どのくらいのパーセンテージになつておりますか、はつきり私も存じ上げませんが、たとえば肥料で言えば原鉱石とか、塩とか、ああいうものは相当外国船舶によつております。パーセンテージははつきり覚えておりませんけれども日本船舶だけでは現代ではまかないきれないようになつております。従つて各社とも相当外国船舶にもたよらざるを得ない現状であります。
  26. 小笠公韶

    小笠委員 簡単に一言だけ伺いたいのですが、先ほどお話の中で、要するに貿易、輸出振興が国家的要請でありながら、これに対する具体的施策が足らぬ。要するに総合的な施策ということに尽きると思いますが、しからば具体的な施策、基本的な施策、あるいは総合施策は何を考えておるか、ひとつ例示を願いたい。
  27. 藤野忠次郎

    ○藤野参考人 貿易の必要性はもちろんでありますが、貿易商社の隷属的関係、実際問題としてもちろん貿易商社自身が無力であるとか、資金的に資本構成が不十分である。それから数が多過ぎて不必要な競争が起るとか、輸出の場合にも輸入の場合にも、向う側よりは逆にこちら側で、仲間同士で不必要な競争をする。こういう点ももちろんあると思うんですが、一足飛びには困難だと思います。やはり外貨の割当というふうな場合に、貿易業者の方も、当然自分のやるべき統合整備なり、それからそういう弊害のあつたところは順次直すということが前提でありましようが、そういう点をもう少しやつていただきたい。  それから輸入の場合に、先ほどの例のような外商のみに対するシツパース・ユーザンスの適用といいますか、これはやむを得ない事情もあるかと思うんですけれども、シツパース・ユーザンスなるものが輸入金融引締めの趣旨に反する、こういうところが主たる実情であるならば、やはりそれはその趣旨を貫いていただいた方がいい。そういうふうな点について具体的にやつていただきたい。  それから輸出金融——もちろんその後いろいろバーターとか、それから加工貿易、それに伴う保税倉庫の改善とか、こういうことは順次緒についておるわけですが、輸出の方の金融措置についても、あるいはまた輸出金融の貿手の借入金の場合の特免制度、こういうものも急には無理だと思いますが、順次その趣旨に沿つてつていただきたい。こういうふうなことであります。
  28. 加藤宗平

    加藤(宗)委員長代理 ほかに御質疑はありませんか。——ほかに御質疑かなければ、次に移ります。丸富士株式会社専務取締役宮田勉君。
  29. 宮田勉

    宮田参考人 ただいま御紹介にあずかりました宮田勉であります。私ども中小企業と申します中で最も小さい、小のそのまた小という非常に微々たる営業をいたしておるものでありますが、それだけに現実に一般国民の日常生活に密接に結びついておる現状を、統計的な大きな面からは何もわかりませんですが、私が日常この目で見、またみずから体験したことをお話して、趣旨とは少しはずれる面もあるかもしれませんが、参考にしていただきたいと思います。  先ほども最初小林さんがおつしやつたように、業者の中で商売しない方がいいんじやないかという考えを持つておる者が出て来た、これは厳然たる事実でありまして、現に私の方の店においても、現金で、商いする場合にはともかくとして、信用取引いわゆる掛けの取引の場合には、十割のうち五割までは取引をやめようというような、非常に信用取引を危険視した商売の対処の仕方をしております。われわれがこういうふうに信用取引を全然危険視するという現状に立至つた根本的な原因は、先ほど来ほかの方々が言つておりますように、金融の引締め、これは一方的に金融を引締められたというばかりでなく、われわれが現在商取引において受取る手形というものが、商取引関係で普通現われる場合はともかく、先ほどの小林さんの場合は九〇の線が出ましたし、われわれの場合には普通六十日という決済条件が主であります。なお六十日より延びるというものは非常に少く、紡績関係の綿あるいは人絹糸関係というようなものになりますと、三十日、ものによつては即金で支払つてくれ、こういうような取引状況が過去にとられて来た取引条件なんでありまして、それが今日に至りますとはるかに延びまして、六十日や百二十日はもちろん、現金のものが六十日になつてしまうというように、実に金繰り状況から来た信用取引の不信、これによる営業に対する販売熱というものが、経営者のみならず販売人の末端に至るまで、ある程度商売をしながら、これを売つていいのだろうか、あるいは売つて悪いんではないかと、商売人としては一番忌むべき状態に立ち至つておる現状であります。ではこういうふうな私ども中小企業の業者だけが全部が全部こういう状況になつておるならばまだ何とかしてほかに打開の道があるのじやないかというようなことを日常考えておりますが、具体的に例をあげますと、これは他に影響がありませんからはつきり申し上げますけれども、私どもの店で昨年さる地方銀行に二百四十万の担保を証券担保として提出してあります。それに対して証券手形を持つて行つて割引いてもらつた場合に、昨年においては二百四十万に対して三百万くらいまで割つていただきました。ところが昨年の夏になりますと、担保の八掛、すなわち二百万を割る数字しか割つてくれない現状になつております。本年に入りまして一月、二月はさほどでありませんでしたが、三月に至りまして、すでに割つてつた手形の期日、三月に落ちた金額の八割、正直に申し上げますと、三月に百六十万円受取る手形が落ちましたその八割しか割つてくれぬ。ところが四月になりましたらまたその八割という、二箇月でもつて、すでにそういう数学を明示された。最初から見ますと四割以上のものが削減されております。これが中小企業ばかりでなく大企業に至るまで全部そういう率で適用されておるかということを一応相当つつ込んでみましたところ、地方銀行ですから、大した大企業はございませんが、それにしても特殊関係による会社に対してはいまだに百パーセントの貸付をやつております。それと、いわゆる銀行あるいは金融機関のわれわれ中小企業に対して断る口実と申しますか、担保が入つておりまして、その担保の半分くらいしか割つてくれない関係上、信用がないということは銀行としても言えない立場上、現在銀行に金がない、金があれば割つて差上げますということを支店長あるいは貸付係というものが中小企業に対して一応答えている。それでは金があるかないかを銀行筋に対してわれわれがつつ込みますと、支店長自身がわからぬ。今月の融資の割当は、日銀の方から言われて、その月初めに、あるいは前月の月末に重役会を開いて、重役会の決によつてある程度の。パーセンテージを出す。それによつて割引手形を割ると言う。重役会の決定の来ないうちは、いつ割れるあるいは幾ら割れるということはわからぬ、こういう返事です。ところがわれわれ商売をやつておる人間は、その月の手形を割る金額が、金融機関ではその月の初めでなければわからぬということを言われたのでは、支払い手形を発行してあつた場合には、少くも六十日先までは出る金額がはつきりわかつております。入る方の金額は、もちろん営業の売上金というものもありまするが、受取つた手形が割れるか割れないか、それによつてそこに大きな金融操作の食い違いというものが出て来る。先ほど小林さんも申されましたように、不渡りを一旦出した場合は、完全に黒字でありながらその店は倒産してしまう。なお都市銀行、あるいはいわゆる六大銀行に行きましても、やはり同業の聞くところによりますと、これは同じようなことが言われておる。特に顕著な例としては、日常新聞なんかでもよく言われております選別融資という言葉を使つて、非常に厳重なふるいにかけておるというようなことを言つておりますが、しからば選別融資というものが完全に行われておるかというふうに見ますと、特に六大銀行、前の財閥銀行の系統を引いたものは、選別融資でなくて系列融資、いわゆる同一系統の大規模な企業に対して融資をしておる。これは大きなところへ貸せば完全に安全であるということは一理ありまするが、ところが、では系列融資の中で全部が全部黒字で、全部が全部非常に優秀な企業かといつた場合には、貿易商社の藤野さんもここにおられますが、有名な貿易業者であるところが二十億の負債を出しておる。それでもなおかつつぶれずに立つておる。中小企業黒字でありながらつぶされてしまう。私ども銀行に日にちがずれるために手形不渡りを出す危険に陥るという場合に、中小企業を対象として国民金融公庫とか、あるいは中小企業金融公庫とかいうものがございまするが、それとても信用保証協会とかあるいはその他の信用機関の審査を受けて、裁決を得て初めて借りられるわけであります。ところが現在の他から来るしわ寄せ、いわゆる受取手形不渡りが出た場合には、こういうものにたよつてつたのでは間に合わないのであります。ところが大きな企業の場合には、もちろん信用もあるのではありましようが、そういう場合銀行に飛んで行つて手形を出してすぐ割つてもらつて、それで埋めるという芸当もできるのでありますか、遺憾なから中小企業にはそういう芸当はできないのであります。それでは銀行に金がないということを、しばしばわれわれは銀行行つて断る口実に受けて来ますが、現実に銀行に金があるかないか、これは銀行法の関係もいろいろあつて、私どもにはわかりませんが、われわれ中小企業のものが非常非常に不満に思つておることは、金のない銀行、ごとに都市銀行が、なぜあの莫大な費用をかけて不要不急の最たるものである各支店を、一区に一つならまだしも二つも三つも、一つ建てれば三千万も四千万もかかる建物を建てておるか。私は神田でありますが、現に神田の地区内にも現在六つも銀行が建つております。建築中のものもあります。これが全部鉄筋コンクリートのすばらしい建物であります。それでいて中小企業に金を貸さぬ。それでは銀行が何のためにそういう建物を建てるか、これは自分の取引先銀行の支店長に聞きましたところ預金獲得のためだと言う。預金の獲得ということは確かに銀行としては大事なことでありましようが、しかしその預金獲得のためにその地方に建てた支店に、いわゆるお客さん筋ですか、神田なら神田の周辺の預金者から集めた預金が、中小企業ところへ還るかといつた場合に、そこで百万集めた場合でも、二十万あるいは三十万しか還らぬということで、ますます中小企業から金を吸い上げて大企業の方へまわすということが、非常にはつきり現われておる。中小企業といたしましては、できることならば、先ほど非常に危険視されておりましたが、信用組合あるいは信用金庫——そのときに足りない金額はたかたか十万か十五万てあります。そのためにつぶれるのでありますから、それを割に簡単に迅速に用立ててくれる信用金庫あるいは相互銀行信用組合、そういうようなものこそ各市中へ数多くつくつてもらいたいものであつて、大きな銀行の支店というものは都市の中心地、経済の中心地であるならばいざ知らず、われわれ中小企業の零細な商いをしておる商店街、それも目抜きの場所に建てるということは、非常に反対なんであります。また大企業へ融資したという場合に、商社ばかりでなく設備へ融資した場合に、コストの引下げということは、これは確かにあり得ると思います。こういうようなコストの引下げを先にやつてしまつて、全国の三〇%あるいは四〇%に達する現在の中小企業生産というものを圧迫して——この人たちの対処する打開策というものを講じてからやつておるならば、何も問題はありませんが、これをやらずに、ただ優秀な企業であるからというだけでそれをやつている関係上、物価の引下げという面から見れば、あるいは一面達しられたかには思いますが、われわれの関係しております商品の種類におきましては、大企業から出ておる商品というものは、昨年も本年も値段においてちつともかわりはありません。ところ中小企業がつくつておる商品というものは、昨年と今年の差でなく、前月と今月あるいは今月の月はなと今月の半ばというもので、非常に値段が違つております。それと、いわゆるわれわれが言う投げ物と称している品物で、相場以外の品物が出ますが、こういうものにいたしましても、結局は中小企業がそれを買うだけの能力がありませんので、資金量の豊富な大企業ところでみな安く買つてしまう。ではそれを安く買つたのだから安く出してくれるかというと、結局大企業はそれを採算点に乗つけて、十分にもうけてからでないと出さない。具体的な例を申し上げますと、私ども業種の関係で山梨中央銀行取引しておりますが、山梨中央銀行の吉田支店、ここは御存じかもしれませんが、皆さんの召している洋服の裏は、日本全国の八割まではあすこで生産されるのでありますが、その材料は以前は生糸でありましたが、最近は人絹糸になつております。それも旭化成でつくつている人絹糸であります。ところが旭化成は、一番最初に売り出した人絹糸の値段から、現在に至るまで一銭も下げておりません。その下げていない反面、地方銀行に対して、旭化成そのものが一億円の融資と申しますか、特別預金をしている。特別預金をいたしまして、糸を織つてくれた機屋さんの手形は、この一億の中から割つてつてくれという条件つきでもつて銀行に金を預けた。それが吉田の機屋さんを今まで潤して来た一つ金融源でありました。ところが最近に至りまして、いわゆる機屋が受取る手形の日にちが延びて来て、六十日でもらつたものが九十日、百日になつたために、月に百万円の需要量が倍になつて、月に五十万円しか出て来ないというような関係で、結局そういうめんどうを見てもらつていながらも、品物を非常に安く生産原価を割つて機屋は投げ出さなければならぬ。機屋自身は、その旭化成からの一億という金があるので、割つてもらえると思つてまず織ります。織つてしまつた後に支払いの決済というものが、こうこいうふうに二月、三月と延びて来ますから、先ほど八王子の例が出ましたが、現在は吉田におきましてもやはり六〇%ぐらいの操短をやつております。  また先ほど御質問がありましたが、購買力があるかないかという問題につきましては、多少政府施策が徹底したせいか減つております。それよりもなお一番感ずるのは、以前は月末において非常に購買力が上つたのであります。私どもは店頭で毎日零細企業をして、月末は日々の売上げが非常に上つたのでありますが、最近に至りまして月はなから五日までに現金の動きがふえて来た。ところが先月あたりからそれがずれて、十日前後にならぬとある程度の金が動いて来ない。動いたなと思うとすでにそれでとまつてしまう。少くも現金の動く山が、以前は月末から少くとも十日間ぐらいありましたが、最近は二、三日でおしまいになつてしまう。それも翌月の十日前後である。こういうふうに購買力そのものも非常に線香花火的なものになつて参りました。  また、これも先ほどちよつとお話がありましたが、大企業下請という問題になりますと、われわれ小業者といたしましては、いわゆる小業者の大企業のデパートというものに対して物を納めた場合、デパートは最近は下払いという問題ではなく、いわゆるキヤンセル——これは外国商社の例から来たのかもしれませんが、キャンセルが多くなつて来た。それとても品物が悪くてキャンセルするならばともかく、一応非常に厳重な検査をして納品を受けて、それを三月なら三月、四月なら四月商品を陳列しておいて、その結果自分のところの営業成績が悪くて売れなかつたというものを、全部元方の屑屋にかけるべく、半年近くたつてからそれだけの数量の品物を全部返して来る。そしてその月あるいはそのあくる月の支払い分からそれをもろに差引いてしまいますから、結局下請企業としては計画が全然立たない。いつ返されるか、いつ返されるか——悪いものを返されるならばこれはある程度予測もしましよう。全然悪いところはなく厳重な検査を受けて納めておるものですから、普通の商取引であつた場合には必らずある程度支払い時期が延びても支払つてくれるものが、デパートなるがゆえに、いわゆる大企業の横暴さといいますか、一方的にこういうことをして下の問屋がつぶれてしまう。つい五日ほど前でありますが、松屋の下請の吉田さんというのがキヤンセルを食いまして、大分不渡りを出して一軒つぶれました。これの整理に私は行つて参りましたが、結局はそこのお店も黒字ではあるのですが、ほかからのしわ寄せのためにつぶれてしまつた。非常に中小企業が弱体であるといいながらも、中小企業をつぶす根本の原因は、現在は中小企業自体の中からでなく、他からの圧力が非常に多い。八割くらいまでは他からの影響によつてつぶれておるのであります。取引に対する不信というものがわれわれの間に高まつておるということは事実であります。  はなはだ簡単でありますが、以上をもつて終ります。
  30. 加藤宗平

    加藤(宗)委員長代理 ただいまの宮田参考人の御意見に対して質疑があればこれを許します。御質疑はありませんか。——ほかに御質疑もないようでありますので、これをもちまして、本日の参考人よりの意見の聴取を終ります。参考人各位には長時間にわたり忌憚のない御意見を開陳されまして、本件調査の上に、多大の参考となりましたことをここに深く御礼を申し上げます。     —————————————
  31. 加藤宗平

    加藤(宗)委員長代理 次に去る八日本委員会に付託になりました国土開発中央道事業法案を議題といたしましす。竹谷源太郎君。
  32. 竹谷源太郎

    竹谷源太郎君 ただいまから国土開発中央道事業法案の提案理由を説明いたしたいと思いますが、これに先だちまして、本法案を提出いたしました基本的構想について若干申し述べたいと思います。  わが国の人口はすでに八千七百万に達し、近い将来一億に達するのでありますが、これだけの人口が二十七万方キロの狭小な国土に生活しているのであります。しかるにこれら人口の大部分は、この狭小な国土のわずか二〇%足らずの平地地帯に蝟集している状況でありまして、国土の八〇%の地域は人間の住むに値いしない地域として残されているのであります。そこでここに思いを一新し、この残された国土のうち、自然地理的に人の住み得る範囲の土地を、経済的社会的に人の住むに値いする領域といたしますならば、国土の中に新たな国土が現われるごととなり、いたずらに限を外に向ける必要はないこととなります。このためには、この地域を経済的社会的地域たらしめなければならないのでありますが、それには交通条件の整備を先行さすべきであります。  今、近代的自動車道をこの未開発地域に貫通させ、この地域に残された啓源の開発、耕地、牧野の造成、適地産業の立地等を促しますならば、ここに新たに人口を定着し得ることとなるのであります。これは迂遠の方策に似て、今日及び将来のわが国民経済の再建、国民雇用の達成の上に欠くべからざる施策であるのであります。  その理由は、わが国の国際収支を見ればわかりますように、それははなはだしく不均衡でありまして、その原因の最たるものは、食糧、衣料原料及び工業原料の輸入量の大きいのに対し、輸出すべき製品の少いことによるのであります。これの改善のために目先種種な対策も必要でありますが、根本的には、まず食糧及び衣料原料の輸入を減らす一方、わが国独特の産業を振興させることが必要であります。  食糧については、単に米麦の増産にとどまらず、総合食糧対策を立て、酪農、牧畜等の振興をはかる必要があるものと思われます。そしてそのためには、今日放置されている原野、草地の利用高度化がはかられなければならないと同時に、人口、都市及び諸施設が、農耕地として最適の平地地域に蝟集し、または過度に集中し、年々数万町歩の農地壊廃を来しつつある状況を改める必要があります。  衣料原料につきましては、綿、羊毛にかわる合成繊維工業の発展をはかるべきであります。また、材料を外国に仰ぐことを少くして、附加価値の大きい精密工業のような、または大部分の原料が国内で得られるセメント工業等の振興をはかるべきであります。東南アジア諸国が着々として軽工業圏となりつつある現状において、わが国はすみやかに産業構造を転換させ、その生きる道を発見しなければなりません。これは今日産業界の先覚者の強く主張するところでもあります。従つて今日わが国は、国土の中に新たな国土をつくり出し、ここに今後増加する人口を定着させ、平地地帯における人口の蝟集、都市の過大化を防ぎ、貴重た農地はできるだけこれを保存し、一方この山地地帯において土地利用の高度化をはかつて、酪農等の発展をはかるとともに、精密工業等、前記工業が内陸工業たるの性格にがんがみ、ここに立地条件を整備して、これら定業衣誘致する根本施策を講ずべきであります。ことに今日、極度の金融引締めによつて中小企業の倒産は著しく、また潜在及び顕在失業者は日一日と増大し、国民は前途に光明を失い、社会不安は憂うべき状態にあり、これが対策は焦眉の急となつておりますが、国土開発道路の建設は、失業者及び未就業者に就業と新たなる天地を与え、国民に光明を与えるものであります。  以上の構想はなお十分に意を尽しませんが、その構想に基いて、その第一期計画として本法案を提出した次第であります。これより本法案の説明に入りたいと思います。  まず本法案の目的といたしますところを申し述べたいと思います。その第一は、国土開発中央自動車道と名づけますところの高速自動車道を、中部山地地帯を貫通させまして、東京・伸戸間に開通し、東西の経済圏を最短距離、最短時間で連絡しようとすることであります。  その第二は、この自動車道の開設と相まつて、これにかかわる自動車道事業及び自動車運送事業、または沿線の土地、森林、電気事業等を一体的に経営することによりまして、沿線地帯における豊富な森林、水力、地下、観光、土地等の未開発資源の開発、精密工業または酪農等の避地産業の立地振興、これに伴う新都市及び新農村の建設等いわゆる総合開発をはかろうとすることであります。  その第三は、以上の自動車道及びこれにかかわる諸事業、すなわち国土開発中央道事業の経営を一体的、能率的に行わしめますために、国土開発中央道事業公社の設立をはかろうとすることであります。  その第四は、国土開発自動車道は、国民経済力の発展と国民生活領域の拡大を期して、国土の新たな開発をはかることを目的とし、従来の人口稠密地帯を縫い、都市と都市を結ぶという常識的な道路建設の目標や、経済的測定の尺度を根本的に一新し、国土計画の見地から縦長なわが国土をできるだけすみやかに連絡するとともに、未開発地帯の開発、新産業の立地振興、人口の再配置等をはかることができるよう、主として国土の脊梁部を縦断または横断させて、国土の全土にわたり逐次建設することを目途とする高速幹線自動車道路の第一期事業として着手することであります。従つて本事業の成功をまちまして、東北自動車道、九州自動車道のごとく、逐次これを開設するとともに、これにかかわる事業の経営をはかつて行くことを期しておるわけであります。  次に中央自動車道の性格について申し述べたいと思います。  第一にその総延長は四百九十キロメートルでございまして、その経過地は、地図でごらん願いたいと思いますが、東京都区内を起点とし、八王子を経て神奈川県与瀬町を通り、山梨県大月町から富士吉田市を経、富士山北麓を富士を左に富士五湖を右に見て精進湖畔に達し、ここから富士川におりてこれを渡り、支流の早川沿いにきかのほつて赤石山系の東側に深く入り、約七キロメートルのトンネルをくぐり赤石山の内ふところに顔を出します。ここが静岡県の大井川上流で、ここの標高か九百四十メートルで、本経過地中の最高標高地点であります。ここから本経過地中最長の約九キロメートルのトンネルをくぐつて、長野県の天龍川の支流遠山川が赤石山系の西側に深く入つたところに出ます。これからしばらくこの川に沿うて下り、途中からこれをはずれて約五キロメートルのトンネルを二つくぐつて、ちようど天龍峡で天龍川を渡り、今度は恵那山系に近づき、約六キロメートルのトンネルで岐阜県の中津川に出て、ここからは一路多治見市を経て愛知県に入り、名古屋市と岐阜市の中間を抜け、大阪市の北方から神戸市に至るわけであります。このコースは、地図を一覧願えればわかりますように、東京・神戸間を直線で結ぶコースの上をほぼたどつておることとなりまして、従つて四百九十キロメートルの総延長は東京・神戸間の最短距離となるのであります。  このコースは、従来中部山地地帯が障害となつており、特に赤石山系は富士川と天龍川にはさまれた間が約四十キロメートルもありまして、とうてい横断不可能と思われていたのでありますが、先刻申し上げた通り、この赤石山系はその東側に富士川の支流早川が、その西側に天龍川の支流遠山川が、それぞれ東西の流れで深く入り込んでいることと、大井川がこの山系を縦に真二つにわけていて、しかもその地点の標高は九百四十メートルにすぎない上に、その緯度も東京より南寄りで、この地点を通過する限り、さして雪害の心配もないという天与の地形をなしていることによりまして、七キロメートルと九キロメートルの二つのトンネルを貫通すればここを突破することができるのであります。この赤石を突破しますならば、中部山地地帯のその他の地点はそれほど困難な地形ではないのであります。  以上の経過地をたどるのでありますが、巧みな設計によりまして、最急勾配四%、最小曲線半径二百メートルないし三百メートルを保持し、乗用車は時速百キロメートルないし百二十キロメートル、トラックまたはバスは時速六十キロメートルないし八十キロメートルの高速自動車道とすることができ、これにより東京・神戸間を乗用車で約五時間、トラックまたはバスで約七時間の最短時間で連絡することができるのであります。  第二に中央自動車道は、ただいま説明いたしました通り、九キロメートル、七キロメートル、六キロメートル、五キロメートル、五キロメートルの五つの長大トンネルを貫通させることが特色となるのでありますが、これをおそれてトンネルの延長を短かくしたり、またはこれを避けるためただいま述べましたコースをはずれて迂回し、または標高の高いところを通過しようとしますならば、道路延長が増し、曲線が多く、勾配が急となり、また地くずれ、なだれ等の被害をこうむることとなり、高速自動車道の本質が失われるのみならず、後に述べますように、この地帯の資源開発、産業振興上の効果を著しく減殺するものとなりますので、本法案の第三条におきまして、中央自動車道の満たすべき要件を規定いたしたのであります。  長大トンネルにつきましては、もちろんわが国従来の旧式土木施工法によつては不可能視されるのでありますが、本自動車道を施工します場合には、最新の土木技術と機械力を縦横に駆使しなければならないのでありまして、これによりますならば、従来七キロ延長のトンネル掘弊に十年を要しましたものが二年で足りることとなるのであります。従つて中央自動車道の開設工事によつて、わが国の土木技術の近代化と施工の機械化が期待されるわけであります。  第三に、以上の近代土木技術と機械力の活用によりまして、工事期間は五箇年、その総経費は約一千億円の予定でありますから、年間約二百億円の投資によりまして中央自動車道は開設されるのでありますが、この投資額に比して、国民経済上プラスされるところははるかに大きいのであります。  第四に中央自動車道は、その経過地が主として山地地帯であるため、農耕地の壊廃、人家の移転等の被害損失を住民に与えることがきわめて少く、また買収すべき用地の地価“安く、このことは開発事業の実施上重要な要素をなすものと思われます。  第五に、中央自動車道は東京、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸の六大都市、すなわちわが国の経済中枢部を最短時間で連絡すると同時に、未開発の中部山地地帯、特に富士山麓、赤石山系、長野県南部、恵那山系、岐阜県東美濃等の地域を貫通することにより、重要経済圏の連絡と未開発地帯の開発を同時に達成することができるのみでなく、連絡道路を整備することによりまして、表日本、裏日本を容易にその勢力圏に収めることができるのでありまして、国土の開発上もつとも経済的、社会的効果の大きい路線であることであります。  また本自動車道は、現在開発または調査中の富士・白根、天龍・東三河、木曽等の特定地域または調査地域を貫通し、その開発を促進するものとなります。すなわち中央自動車道は、単に既開発地域の交通輸送のスピード・アツプ路線にとどまるものでなく、また単に未開発地域の開発道路にとどまるものでもなく、その両者を兼ねるとともに、表裏日本をも結ぶ新たな幹線道路となるものであります。これが国土開発中央自動車道と名づけるゆえんであります。  次に本法案の意図しますところは、ただに自動車道の開設にとどまらず、その開設を根幹事業といたしまして、自動車道事業および自動車運送事業または沿線の土地、森林、電気事業等の一連の事業を経営いたしますことによつて、文字通りの総合開発、すなわち自動車道を中心とする総合開発をはかろうとするのでありまして、この点につきまして申し述べたいと思います。  第一に申し述べたいことは、本地域と申しますか、本事業と申しますか、ここにおいては総合開発が実際に行われやすい条件を具備しているということであります。総合開発を効果的に実施して行くことが、今日わが国民経済に課せられた最重要課題であることはここに申し述べるまでもないのでありますが、この施策は、国土総合開発法その他に基きまして、近年ようやくその緒についたとはいえ、なおその真の成果が発揮されているとは言いがたいのでありまして、その原因は種々あると思いますが、その一は、電源開発を除き苦しては、開発事業の多くはただちにペイしない、いわゆる長期投資的な事業であるため、今日の財政状況ではその投資が渋られがちであること、その二は、種々の開発事業がそれぞれいわくつきであつて、その調整が容易でないため、これらの開発事業のうちただちにペイする事業と長期投資的事業とを巧みに組み合せ、できるだけ企業的に実施して行く仕組みがないことによる点が大きいと思います。  国土開発中央道事業におきましては、中央自動車道の開設は、もちろんそれ自体は長期投資的事業でありますが、幸いなことに、それはわが国の経済中枢を最も有利な条件で連絡する路線であると同時に、この沿線地帯における森林、水力、観光、土地等の未開発資源は、この自動車道の開設によつてただちにその経済価値を発揮するに至るものでありますから、この自動車道事業及び自動車運送事業と森林、土地、電気事業等の経営とを組み合せて行きますならば、その企業経営は十分に可能となるのみならず、一方これら事業は従来その事業化が放置されていた、いわば何らいわくつきのものでないので、こうした一体的経営を妨げることが少いと考えられるので、ここにおいて総合開発の実を上げることが十分に期待できるのであります。  第二に、国土開発中央道事業の内容について具体的に申し述べますならば、この中央自動車道沿線の未開発資源のうち、特に本自動車道の開設によつて直接事業の対象となるものは次のようであります。  その一は、赤石山系、恵那山系における奥地未開発森林でありますが、その蓄積は一億石を越えています。これは現在文字通り未開発でありまして、本自動車道はこのどまん中を貫通しますので、林道または水路の附帯建設によつて年間二百万石、石千円としましても二十億円の用材の伐採、搬出が容易となるのであります。ここから、たとえば東京からわずか一時間半の距離となりますから、ちようど奥多摩の山系に赤石山系が忽然として移転したと同じことになります。  その二は、早川、大井川、遠山川における未開発電源でありまして、約五十万キロワットに達します。資材運搬の容易と、これらはいずれも人家の水没等に対する補償問題を伴なわないのでありますから、その発電コストは極度に引下げられます。また、その貯水池群を巧みに連絡することによりまして、木材搬出のための水路を兼ねさすことができるのみでなく、これらはいずれも河川の最上流部に属しますので、治水、砂防上有効となる等の多目的効果が期待されるものであります。  その三は、富士山麓、長野県南部、岐阜県東濃等の地域における広大な土地の利用であります。これらの地域は、大都市地域からいずれも短時間で達せられることとなりますので、大都市地域の近郊または背後地となつて、これらの地域の持つている自然的、社会的条件に経済性が加わり、特に精密工業については、湿気、潮風、塵埃のないこと、地盤の強固なことによつて、従来のわが国精密工業が海岸地帯に立地しており、そのため精度に欠くるところがあるのに対して、東洋のスイスに比すべき地域を与えることとなるほか、内陸工業の立地を促し、または大都市地域を控えた集約的酪農等の振興の原因となり、また観光、文化等施設の立地誘導等が可能となり、その土地利用の高度化、土地価格の高騰が見込まれるのであります。  その四は観光であります。富山山麓は言うに及ばず、南アルプス、恵那山系の景勝は驚くべきもので、特に大都市地域から短時間で達せられることとなることは、その利用価値を一層大きくするものでありまして、国際および国内観光上東洋のスイスたるにふさわしい新たな境地を開くものであります。  その五は地下資源であります。石灰石、蛇紋岩等のほか、金、銀、銅、亜鉛等の埋蔵があり、恵那山系は特にわが国に残された豊庫であるといわれています。  その六は、本自動車道による自動車道事業及び自動車運送事業でありますが、この事業は、第一に中央自動車道の勢力圏の広さにより、第二に以上説明いたしましたような資源開発、産業立地、人口集中等により、その採算性につきましては、容易に御判断していただけると思うのであります。  第三に、企業的、採算的ということを申し上げましたが、もちろん一企業におけるそれを言うのではないのでありまして、国土開発中央道事業が国民経済へのプラスをできるだけ大きくすることができるよう従来のような非能率的実施を排し、能率的効果的実施を期するためにとられる方途として考えられていることは申すまでもないのであります。  次に、本法案におきましては、国土開発中央自動車道の開設と、これにかカる事業を国土開発中央道事業と称し、これを個々の事業としてでなく、一体的事業として経営し、その効果をすみやかに上げ、もつて公共の福祉を著しく増進することを期しているのでありますが、このために、まず国において基本計画を確立し、これに基く実施の大部分を国土開発中央道事業公社をして当らしめることとしているのでありますが、これについて申し述べます。  第一に、国において基本計画を樹立することにつきましては、その一は、昭和三十年度を開始年度とする五箇年計画として国土開発中央道事業審議会の議を経て決定することとし、本年度中にその基礎調査を完了することを義務づけております。その二に、本計画は、国の根本施策に属するものであり、かつその実施は長期にわたり、また従来と異なる方式によらしめるものであるので、その計画について国会の承認を求めさせることとしております。  その三に、本計画の内容は、自動車道の建設計画と、この沿線地帯における資源開発、適地産業の立地振興、新都市及び新農村の建設、治山、治水、水道、電源開発、電気通信計画とし、これに加え、これは本法案の特色でありますが、これらの事業のため損失をこうむる住民に対しては、単に金銭補償というにとどまらず、彼らができるだけこの沿線地帯においてその損失を償われ、またはその生活を再建し、環境を整備することができるよう、定住地設定等の事業をその補償の範囲内で、または補償と関連して行うよう補償計画を含ましめることとしているのであります。  第二に、国土開発中央道事業公社につきましては、その一つの業務として、中央自動車道の建設と、これにかかる自動車道事業及び自動車運送事業の経営を主とし、これに沿線の土地経営、この自動車道の開設によつて開発が可能となる一定範囲の奥地未開発森林の経営、適地産業の立地振興をはかるためのパイロット工場または試験場の経営、これらの事業と関連して必要な範囲の治山、治水、水道、発送電、電気通信をあわせ行い、このほか補償事業を直接行うこととしております。その二は、これらの事業を行うため必要な土地、奥地未開発森林等の国有財産を、国有財産法第十八条の規定にかかわらず本公社に出資することを規定しております。その三に、本公社の資本金は、前記の現物出資のほか、一千億円の現金出資による政府の全額出資とし、関係地方公共団体、民間受益者からは、政府保証による事業債によつて資金募集をすることとしております。その四に、公社の予算は、その事業を企業的に経営することのできるよう、需要の増加、経済事情の変動、その他予測することができない事態に応ずることができるよう弾力性を与えるようくふうしてあります。その五に、公社の経営については、役員として理事長一人、理事二人及び監事二人の少数精鋭主義をとり、理事会かその業務運営の重要事項の決定機関となり、理事長及び理事は、その決定に従う業務の執行機関となるものとし、その責任を明確にし、全責任をもつてその業務に当らしめることとしております。その六に、公社は、諸般の事業にわたるため、内閣総理大臣が二元的に監督することとし、その業務計画については、国土開発中央道事業審議会の調査審議を経て、一元的に内閣総理大臣がこれを承認することとしております。  最後に、中央自動車道事業が、国民雇用の上に及ぼす影響について申し述べたいと思います。この事業の遂行のため、延べ約八千五百万人の技術者、事務従事者及び労働力を必要とします。今日職を得べくして得られざる数百万の地方青年を組織し、技術的訓練を与えつつこれに従事させるならば、その与える好影響ははかり知れざるものがあります。以上は直接必要な労働力でありますが、開発事業の進展に伴い、さらに新たな需要を来たすものであることは言うまでもございません。  以上をもちまして、国土開発中央道事業法案の提案理由の説明を終えたいと思いますが、委員会におかれては、本法案の意図しますところを十分に御理解いただきまして慎重に御審議あらんことをお願いいたす次第であります。
  33. 加藤宗平

    加藤(宗)委員長代理 以上をもちまして、提案趣旨の説明聽取は終りました。  なお、本案に対する質疑は次会に譲ることといたします。  次会は公報をもつてお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後一時三十四分散会