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1954-05-07 第19回国会 衆議院 経済安定委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月七日(金曜日)     午前十一時十四分開議  出席委員    委員長代理理事 加藤 宗平君    理事 小笠 公韶君 理事 武田信之助君    理事 松原喜之次君       迫水 久常君    西村 久之君       根本龍太郎君    平野 三郎君       前田 正男君    楠美 省吾君       菊川 忠雄君    杉村沖治郎君       水谷 長三郎君  出席政府委員         建 設 技 官         (道路局長)  富樫 凱一君  委員外出席者         総理府技官         (経済審議庁計         画部調査官)  佐藤 清見君         建 設 技 官 木村 三郎君         参  考  人         (総合国土計画         研究所長)   田中 清一君         参  考  人         (総合国土計画         研究所専務理         事)      小西 百一君         専  門  員 円地与四松君         専  門  員 菅田清治郎君     ————————————— 五月七日  委員山下榮二君辞任につき、その補欠として菊  川忠雄君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  参考人招致に関する件  国土総合開発計画に関し、参考人より意見聴取  の件     —————————————
  2. 加藤宗平

    加藤(宗)委員長代理 これより会議を開きます。  国土総合開発計画に関する件について調査を進めます。  この際お諮りいたします。本件調査の慎重を期するため、本日出席されております総合国土計画研究所長田中清一君及び総合国土計画研究所専務理事小西百一君の両君参考人として選定し、意見を聴取いたしたいと存じますが、この点について御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 加藤宗平

    加藤(宗)委員長代理 御異議ないものと認めまして、さよう決定いたしました。  この際一言ごあいさつ申し上げます。参考人各位には、本日御多用中にもかかわらず御出席くださいましたことを厚く御礼申し上げます。  本委員会におきましては、目下国土総合開発計画に関しまして鋭意調査を進めておる次第でありますが、国土開発上、道路建設重要性にかんがみ、この際、本問題について多年独自の調査研究をされておられる田中参考人及び小西参考人両君より忌憚のない御意見を伺いまして、本件調査参考に資したいと存じます。  ではこれより順次御意見を聴取することといたします。総合国土計画研究所長田中清一君。
  4. 田中清一

    田中参考人 ただいま委員長殿から御紹介をいただきました田中清一でございます。本日この権威ある国会経済安定委員会におきまして、私の多年研究をいたしておりまする国土総合開発について参考人として意見を聞いていただきますことをまことに光栄に存ずる次第であります。  私がこういうことを考えるに至りました経緯を少々述べさせていただきたいと思います。実は第二次大戦の末期になりまして、だんだん食糧が詰まつて参りました。そうしてはからざる敗戦をいたしましたために、だんだんと国土が狭められまして、さらに人口はどしどしとふえて参りました。これを一体どういつたことによつて解決しようかということがこのことを考えたもとでございます。  その解決方法といたしましては、いろいろの議論がございますが、そのうち最も顕著なものは、人口調節いわゆる産児制限によつてこれを解消しようという方もあります。その次は、人口食糧の問題は、すべからくたくさん日本で品物をつくつて、それを外国に輸出して、その金で食糧を買つて行けばいい、こういうことを言う人もあります。またその次には、移民によつてこれを解決すればいいという方もあります。はなはだしい誤謬の意見としては、日本人は米を食い過ぎるから、麦と切りかえればいいというような議論さえも出て来ます。この四つとも厳密に考えてみますると、机上の空論でございまして、これはどれも成り立ちません。あとから御質問がありましたら、私はこれについて詳しく申し述べる準備をしております。それで、この四つがだめだとしましたら、どうすればいいかということになります。その前に、私どもが悲惨な戦争を何べんも明治以来繰返したということを考えますときに、これは人口資源のアンバランスから起つて来るということが考えられるのであります。なかんずく山でございます。こういつた国民的に不安がなければ、ああいつたばかげた戦争に血道を上げて、腰の曲つたおじいさんからおばあさん、小学校の児童までかかつて行きはしなかつたと思います。そこでこの問題を解決せぬで行つて平和国家文化国家も成り立たぬと私は確信をしておるのでございます。それでこれを現在の日本の置かれた立場において解決するのには、もう残されたところはこの日本の国をもう一ぺんよく高いところから見直してみる。すなわち日本の現在利用されていない土地を十二分に利用して、そうしてこの民族生存を保つて行くということのほかにはないという結論に到達したのでございまして、この見地からこの総合国土計画を立案したのでございます。そこでよく調べてみますと、御承知のように日本東北から西南まで馬の背中のような尾根続きでありまして、ほとんど平地らしい平地はないのでございます。聞くところによると濃尾平野全体でもアメリカの人が一人持つている牧場か農地ほどしかないそうであります。そういつた狭いところに八〇%もある山と高原をそのままにしておいて、二〇%足らずのこの平地を、生産によらざる施設、その他むしろ人間を腐らかすような、ほとんどわが民族を不幸にするような施設がどんどんできて行きまして、そうして農耕地を狭めて行きつつある状態でありまして、このままに放置せんか、われわれは近き将来に重大なる国民的生存の脅威を感ずることは火を見るよりも明らかだと私は思うのであります。そこでこの日本の八〇%もある山と高原を生かして使うのには、どうすればいいかということになりますると、私の調査したところによりますると、北海道は別にまたお話をいたしまするが、本州におきましても、東北から参りますなれば、十和田湖の付近にしましても、八幡平の付近にしましても、平舘の付近にしましても、その他雫石の方面、仙台の向うの王城寺原、その他岩手平野一円、那須野ヶ原軽井沢富士山麓、その他等々、岐阜県へ行きましても中津川から大井、多治見その他加茂野、蜂屋村方面から飛騨高原にかけます、また伊勢から大和へ抜けるところにもたくさんの不毛のりつぱな平原がございます。その他兵庫県の和田山の方から津山方面、それから広島県の三次と、九州に行きましても、こまかいところは申しませんが、阿蘇の高原にしましても、まことに空気が清澄で、水が清くて、景色がよくて、人の住むにはまことに快適なところがもう無数にあるのでございます。それでこれを人の住めるようにして、そうして生産にあらざる施設、いろいろございましよう、一々申し上げませんが、それと最も日本の国情から適当な精密機械工業その他の軽工業といつたものをこれに分布して、そうして日本平坦肥沃で一年に二毛作三毛作もとれ、冷害も早魃もないようないいところで、現在都市となりつつあるところを農耕地化する。そうして食糧問題を解決するということを考えたのでございます。  そこで今申し上げましたような、山岳地帯または高原地帯に、人に今すぐ行けといいましても、なかなか行きませんから、これにはりつぱな道路をつけて人が楽に快適に住めるように、そこにはもちろん文化施設もこしらえ、また上級の学校もそこにこしらえる。そうしてたとえばここから近いところで、那須野ケ原にしましても、今アメリカやドイツにあるような道路さえつくれば、一時間か一時間十分で行けるのであります。軽井沢にいたしましてもその通りでございます。また富士山麓にいたしましてもその通りでございます。そういつた一時間内外大型バスででも通えるような、乗用車ならば四十分か五十分で行けるようなところに、かかる不毛の捨ててあるようなところがあるにかかわらず、何を苦しんで大河川の沖積層二毛作三毛作のできるようなところをつぶして、生産にあらざる施設をどしどしつくるというようなこと、これははなはだ疑問であります。ほんとうに民族の将来を考えますならば、終戦後ただちにこれをやつた方がよかつたと思います。私はその当時すでに東久邇内閣のところへこの案を持つて参りましたが、今日までこれが少しも顧みられざることは、まことにわれわれ民族の将来にとつて残念でございます。  そこでその道をつくるということでございます。これはその青写真にある通り北海道の稚内、根室から鹿児島の端までの高原地帯、先ほど申し上げました食糧はできないが、人の住むのにはまことに好適なところを、ずつと日本背骨道路をつくりまして、それから各重要港湾重要都市に対して肋骨型に適当の幅の道路を設けて、そうして運輸交通の便をはかることにいたしましたならば、人は喜んでそういつたところに住むということを考えるのでございます。そこでこれを断行するのには、幾らぐらい金がかかるかと申しますと、全部私の思う通りにしましても、一兆円しかかかりません。私の思う通りと申しますのは、現在の農産物の生産高の上に、米に換算したカロリーにおいて二千万石に相当するものをとるということが理想でございます。そうして現在道がないために、牛も馬も羊もつれて行けないような日本特有の広大な草原地帯を生かしまして、牧畜業を営むとともに、海洋における動物性蛋白、脂肪、こういつたものを計画的に増産することになりますれば、日本領土を縮められたとはいえ、四つの島にもまだ一億人の人が、悠々と平安な快適な生活を営むことは絶対に不可能ではないという確信を持つておるのであります。しかも一億人になるまでには、少くとも二十箇年くらいはかかりますから、大体二十箇年のうちに私どもは道義の高いりつぱな平和民族になつて世界各国から迎えに来てくれるようなりつぱな民族になると同時に、現在日本食糧だけでも千七百億円も買つておるのを、買わぬでもいいようにいたします。また先ほど申しましたような道路が完成いたしますれば、年に一千億円程度の国際観光収入が得られる確信がございます。これは架空ではございません。すなわちスイスにおきますることを考えましても、それくらいは十分とれるのでございます。御承知のようにスイスは現在の日本領土の五分の一くらいしかないのでございまして、日本のように海岸景色のいいところは全然ないのでございますが、それでもなお一年に二億七千万ドルの国際観光収入を得ておる事実があるのでございます。私どもの国はその五倍もあつて、さらに景色のいいところがたくさんございます。ですから一千億円くらいの国際観光収入が得られるということを私ども確信いたしております。そうしまして、もし約二千七百億円の現在ない金が浮いて来るとしますれば、十年たてばたいへんな金になりますから、今までのように大砲をぶち込んだり、爆弾を落したり非常な残虐行為をして領土的侵略をやらなくても、納得ずくでりつぱな豊穣な土地を買い求めて移住することもできるようになると思います。  今申し上げましたのは食糧を二千万石つくるようにすること、国際観光収入で一千億円上げることということでございましたが、そのほかに日本にこの道路をつくることによつて、あまり無理せぬでも非常に原価の安い電力を三百七十万キロぐらい起せます。それから木材が、現在切つても道がなくて出すに出せないところから五億二千万石くらいは出るようになります。その他鉱物資源におきましても、今までは道がないために、馬の背中や人の力で出しておつて貧鉱として棄てられておつたものが、道さえできれば製錬所へ一日に三回でも四回でも運べるというようなことになつて、今までの貧鉱は転じて良鉱となるのでございます。御承知のように金山などは、一万貫の土砂を運んで一貫目も金はとれないのでございます。その他銅鉱にいたしましても、銀鉱にいたしましても、鉄鉱にいたしましても鉛にいたしましても、皆条件が悪いのでございますから、道をつけることによつて一切が解決するのでございます。そうして日本の国を立体的に使うごとにいたしますならば、この国は狭いどころか広いということを発見したのでございます。そういうわけでこの国土計画を考えたのでございます。  その後各方面にお願いをいたしまして、第十六国会においては建設省の方で一千万円の調査費用をとつていただいて、今その一部分である東京神戸間だけをせつかく建設省の方で調査していただいておるわけでございます。どうして東京神戸間をまつ先にやつたかと申しますと、この間は御承知のように六大都市最短距離で結ぶ道路なのでございます。それとともに富士山麓のようなたくさんの不毛の土地を控えておりまして、東京の郊外へ行くぐらいの時間の、一時間足らずでそこに行ける有利な点、その他富士川、大井川、天龍川、木曽川、琵琶湖、これらの電源開発ということによつて、少くとも百四十万キロくらいの、都市に持つて行くのにまことに都合のいい線路の短かい有利な電力が起せる確信がございます。それから赤石山脈を中心としたる山嶽地帯、また恵那山を中心とした山嶽地帯木曽から飛騨へかけてのこの付近木材資源の少くとも二億七千万石はこの道路開発によつて、最も容易に利用、保存、管理をすることができる見込みでございます。そういつたところから、まず第一に東京神戸間をつくりたいと考えたのでございます。何となればこの日本の貧しい経済で、金をかけるばかりで、その元利が早く回収できないところは多少あとまわしにならなければならぬ状態であるがためでございます。この東京神戸間の道をつくるのに約一千億円かかるのでございますが、これは少くとも五年ぐらいはかかりますから、二百億円ぐらいを一年に支出していただけば、これが完成できるという見込みがあるのでございますから、現在の日本状態を考えますると、だんだん失業者もふえて参りまして、また行政整理等の重大問題も横たわつておるのでございますが、この際にこういつた仕事を政府でおやりになつていただきましたら、国民はどれくらい救われることであろうと思います。  何しろ今までの常識から行きますと多少かわつたところがございますから、疑問が非常にたくさん委員皆様方にございましようが、御質問にお答えしたいと思いますから、私の話はこれくらいにいたしておきます。詳細な数字等も持つておりますから、もしその必要がございますれば、ここに参考人として私とともに出て来ておりまする小西君から、またお話を申し上げたいと思います。
  5. 加藤宗平

    加藤(宗)委員長代理 ただいまの田中参考人の御意見に対して質疑があれば、これを許します。御質疑はありませんか。——御質疑がなければ次に移ります。総合国土計画研究所専務理事小西百一君。
  6. 小西百一

    小西参考人 私は主として東京神戸間の中央道計画路線に直接いたしまするきわめて狭い範囲における資源開発可能性につきまして、従来の調査に基いて簡単に御説明を申し上げたいと存じます。この調査は、中央道をはさみまして、山梨県と、長野県の木曽及び下伊那郡、岐阜県の東濃地区及び静岡県の北部の一部を含むのみでございまして、きわめて狭い範囲調査の基礎をとつておるわけでございます、  まず第一に森林資源のことでございまするが、ただいま田中から赤石山系並びに恵那山系地方のみの森林資源蓄積数字を申し上げたのでございますが、この沿道直接県のみの森林資源、まつたく退蔵されておりまする、眠つたままの森林資源数字は、約三億二千万石ございます。  次に地下資源は、各種類のものがたくさんあるのでございますけれども、そのうちで最もおもなもののみについて申し上げますと、まず石灰石でございます。これが約二十億トンというのが、従来きまつておりまする推定量でございます。長野県全体といたしますと約十五億トン余りということが確認されておるのでございますが、さてこの石灰石は、御承知通り石灰、セメント、カーバイド、苛性ソーダ、その他重要工業用原料としてきわめて用途の多いものであることは申すまでもございませんが、特に注目を要しますのは、最近化学繊維工業として非常に重要視されて参りましたビニール工業のきわめて重要な原料であるということでございます。  それからその次は、長野県下に蓄積されておりまする約三億トンの蛇紋岩でございます。この蛇紋岩は、御承知でもございましようが、近年非常に注目されて参りました溶成燐肥主要原料でございます。溶成燐肥は、申すまでもなく国際的に、きわめて新しい性質を持つた肥料として注目されておるのでございまして、日本でも従来の硫安、過燐酸石灰肥料などに比べますると、きわめて長足の進歩をこのわずか四、五年の間に遂げつつあるのでございまするが、特にこれが日本において注目されます原因は、一つは従来の化学肥料が、ややもすれば土壌を酸化して農産力を低下せしめる懸念があるということが言われておりましたけれども、この溶成燐肥においては、土壌を酸化する硫酸根なるものは皆無であるために、土壌生産力を低下させる心配がないということが、専門家によつて確認されておるのでございます。そういう意味におきまして、日本農業生産の改善という見地から、同時に肥料を改善するという意味合いから、溶成燐肥工業の将来は国際的に非常に注目されておりまするが、この中央道の近い沿道蛇紋岩埋蔵が少くとも三億トンを下らないということは、非常に注目してよろしいと考える次第でございます。その次は主として岐阜県下の東灘地区にございます亜炭約一億五万トン、それから同じく東濃における耐火粘土の一千三百万トン、さらに埋蔵量が非常に莫大であると確認されております東濃地区の大理石、その他各地区におきまして金、銀、銅、マンガンその他各種類鉱物資源が確認されております。これらの資源が、高速道路ができることによつて市場との連絡が非常に迅速となり、あるいは経済的な開発が可能となるという見通しは、最も注目に値すると考えるのでございます。次に水力電気でございますが、従来の調査によつてすでに確認され、しかもまだ開発に手をつけられないものだけで約百万キロ、この沿道に近いところにございます。この資源中央道の実現することによつて開発が容易になり、その時期が早められるということは、専門家のひとしく認めておられるところでございます。さらにこの中央道計画に基く水力電気開発見込量は、ただいま田中参考人が申しました通り、約百四十万キロあるわけでございます。  次に国際観光資源見地から見ますると、従来の調査によりまして、いまだ広く世に紹介されていないものといたしましては、南アルプス、恵那峡さらに天龍峡及び周知の富士五湖地帯、その他至るところに新しい、きわめて価値の高い国際観光地が開かれることになるのでございます。  さらにその次に最も本案において重要視されております開発計画一つは、超精密工業の設定でございます。先ほども話にございましたが、現在の輸出工業は、国際市場における競争力がきわめて微弱である、日本輸出工業は何らかの根本的な大転換を要請されておる時期に直面しておるわけでございますが、このときにおいて超精密工業をこの沿道に起し得る可能性がきわめて高い。すなわち海岸から遠く、潮風も塵埃も少くて、湿度もそんなに高くない、精密工業を興すにきわめて恵まれた条件を持つた地域が至るところに発見されるのでございまして、一例を富士山北側富士五湖近傍に求めてみましても、私どもの従来苦心いたしました調査の結果によりますると、たとえば光学機械及びレンズ、時計工業ベアリング工業ピストンリング工業タイプライター工業事務用機器、楽器、計器、測定器ミシン工業、超精密工作機械精密エンジン類、これらのものを非常に高い技術的水準のもとに経済的に生産する可能性があるということを確認しておるわけでございます。これは将来の日本輸出工業に大きな転換をもたらす可能性を暗示しておると考えるのでございまして、ことに原料資源及び燃料に恵まれることの少い日本において、最小限度原料及び材料で最大限度経済価値を生み出し得る工業は何かと申しますると、この精密工業をおいてはほかにないわけでございます。これがこの中央道計画におきまして最も重要視されておりまする開発条件一つでございます。農業関係におきまして、この中央道近傍のみのことを申し上げますと、現在わかつておりますのは、新しく開墾可能用地が一万二千町歩土地改良をやつて生産力をさらに高められる土地が二万七千町歩、その他原野が約八万町歩ございますが、その中で草原、山の斜面などを利用いたしまして、牧畜、酪農の源として利用し得る面積が相当あるわけでございます。  さてこのいわゆる田中プランは、従来の国土利用方法を、あるいは産業の立地を、まつたく新しい観点から見直そうというところに最も顕著な特徴があるわけでございまするが、ただいま申し上げました石灰石原料とするビニール工業、これはすでに経済審議庁、通産省において大増産計画が樹立されておりますることは、皆様承知通りでございまするが、日本経済自立を実現する見地から申しまするならば、食糧最大限度の自給をはかるとともに、年によつてはその輸入金額食糧にも劣らない綿花及び羊毛輸入最小限度に押える政策がとられなければ、日本経済自立ということは非常に困難でなかろうかということが考えられるのでございまして、特にビニール及び木材パルプ原料としました化学繊維工業輸出を将来大々的に発展させるということが大いに考えられなければならないと確信いたします。たとえて申しますると、二十七年度の貿易統計を見ますると、綿花貿易、すなわち原料綿花輸入して製品輸出したそのバランスが、二億二千万ドルの赤字になつております。羊毛貿易の帳じりを見ますと一億二千万ドルの赤字でございます。日本繊維工業国際競争において往年の面影を失つておることはすでに御承知通りでございまするが、これに対して合成繊維貿易はどうかと申しますると八千二百万ドルの黒字になつております。このことは何を物語るかと言えば、要するに国内産の原料をもつてつくられる繊維製品には競争激甚なる国際市場においてもなおりつぱに競争して行ける自力があるということを明らかに物語つておるものと考えるのであります。単にビニールのみならず、木材パルプ原料とする繊維製品を考えてみましても同様でございます。  新しい見地から日本資源利用を考えなければならぬということを申し上げましたが、その一例をいま少し具体的に申しますると、森林資源の一部として薪炭用材が御承知通り年間約一億ほど消費されております。まつたく灰になるものが一億ほどでございます。もしこれが電力開発が十分に行われて相当の割合まで電力によつて置きかえられて、しかして高速輸送道路ができることによつて市場との連絡が有利になるという条件が備わりまするならば、資源産地に近いところにおいて近代的なこの化学繊維工業をきわめて有利に営むことが可能なのであります。現在薪炭用材は、山元で調べた結果によりますると、年によつて多少の変化はございまするが、平均石当り五百円内外で売られております。この薪炭用材を灰にしてしまわないで、その何割か、少くとも三割や四割はパルプ用材として使える可能性があるという専門家の説でございます。もしこれをパルプにするとしますと経済価値が約七倍半になります。さらにこれを製紙に加工いたしますると経済価値は十一倍になります。さらに化学繊維製品に加工いたしまするとその経済価値は三十倍ないし三十五倍になるのでございます。乏しい資源を灰にしておることは能でない、この乏しい資源を最高限度に経済価値高く利用しなければならぬということがもし肯定されるならば、今申し上げましたような数字は御一考に値するのでないかと考えるのでございます。  大体おもな中央道の計画を中心といたしまして、開発可能性のある諸点について概要を申し上げた次第でございます。
  7. 加藤宗平

    加藤(宗)委員長代理 ただいまの小西参考人の御意見に対して御質疑があれば、これを許します。
  8. 菊川忠雄

    ○菊川委員 これは参考人でなくてこれに関連して政府の方にお尋ねするのですが、今伺つておりますと、調査費が一千万円ほど十六国会で計上されておるというのですが、その後建設省においては調査費をこの道路計画のみに使つておられるのか、それともやはりほかの計画も含めて使つておられるのか、こういう点をひとつ御説明願いたいと思います。なおこれがこの道路計画に関連してはどの程度具体的に使われているか。それからついでに経審の方もお見えですからお尋ねしますが、総合開発見地から経審としてこの道路計画をどのように評価しておられ、そして現在具体的にどういうふうな方針で研究なり調査を進めておられるかというふうな点をあわせて参考にお尋ねしたいと思います。  なおそういう点について、参考人の方からも、今まで政府からこの調査のためにいろいろと援助も受けておると思いますが、どういう点が特に今後必要であるかというふうなことがありましたら、御説明を願いたい。
  9. 木村三郎

    ○木村説明員 それでは調査費のことでお答え申し上げます。  この調査費は、道路オンリーの調査費ではないのでございまして、総合開発調査費という費目の中から出ておるのであります。先ほど一千万円とおつしやいましたが、正確にはもつと少いのでありまして、四百五十万円であります。これは二分の一の補助でございまして、国が半分、関係県が半分ということで調査を今やつておるところでございます。  それで国土総合開発調査費のことをあらかじめお話申し上げますと、これは国の中で特に重要な地点——御案内の通り特定地域と申しておる地域についての調査費、それから調査地域というものがございまして、それに対する調査費ということでございまして、この内容は道路も一部ありますが、資源調査費、あるいはダムの建設に伴いますところの水没の対策費、あるいは水利の調査費、あるいは工業の実態の調査費といつたように、各種の調査費になつておるわけでございまして、これが当初二十八年度予算では二千八百万円でございましたのが、その後皆さん方のお骨折りによりまして、さらに三千万円の追加が認められましたので、その際に各地域を貫くような重要な、問題をあわせ考慮しようということになりまして、先ほどお話のございましたような中央道調査費がついたような次第でございます。大体以上であります。
  10. 佐藤清見

    ○佐藤説明員 お答えいたします。経済審議庁といたしましては、国土総合開発法に基きます全国計画の一環といたしまして、昭和四十年度を目標にいたしまして全国の輸送計画がどうなるであろうというその一環といたしまして、この道路も考えて行くべきなのでありますが、ほかにまだいろいろ考えるべきところもございまして、輸送問題の具体的な路線までは研究がまだおりて来ている段階になつておらないのであります。大体道路で六億トンくらいの輸送量を考えなければならぬということはわかつておりますが、具体的にどの路線にはどういうふうな輸送量があるかというようなところまではまだ来ておりませんので、具体的な建設省の方の調査をまちまして、そういうものも織り込みましてだんだん考えて行きたい、こういうように考えております。
  11. 菊川忠雄

    ○菊川委員 あとは参考人の方にもこれについての御意見をあわせ承りたいと思います。今の御説明で、経審の方の計画部としては、いわゆる中央道路計画というものはまだ調査研究の対象に取上げてないというように承つたんですが、これは国土総合開発法に基くものを対象とするというような官庁のわくはありましようけれども、経審としては当然取上げられて研究調査すべき筋のものだと思うのです。こういうことは将来やはり取上げるというお考えであるかどうか。  それからもう一つは、これは木村さんでなくて富樫さんの方の関係になるわけでありますが、ここに東海道弾丸道路というのがあります。これは今建設省として調査の対象になつて、今の四百五十万円の中にその費用が出ておりますかどうか。それからこの東海道弾丸道路とこの中央道路というものとは、建設省としてはどういうふうにお考えになつているか、こういう点をもう少し御説明願いたいと思います。
  12. 佐藤清見

    ○佐藤説明員 先ほど説明が少し足りませんでしたが、私の方の全国の計画の方のものもだんだん具体的に進んで行きまして、建設省の方の調査も進みまして、どうしても中央の線としてこういうようなものが必要であるという結論になりますれば、当然全国計画の一環として考えるべき路線であると考えます。
  13. 富樫凱一

    ○富樫政府委員 東京神戸間の高速道路の問題が出ましたのでお答えいたします。  建設省で今計画し、調査いたしております東京神戸間の高速道路は、先ほどお話の四百五十万円の調査費からは出ておりませんので、一般公共事業費から出ております。二十七年度からやつておりまして、すでに実測は完了いたしましたが、なお地質の調査等の問題が残つておりますので、二十九年度にこの調査が完了いたすことになつております。  そこで建設省の考えております東京神戸間の高速道路とこの中央道路計画との関連を申し上げますが、高速道路といたしましては、いろいろ比較線をとりました結果、建設省としましては、大体東海道線に沿う——かなり離れておりますけれども中央道に比べますと東海道線に近い線をとつているわけでございまして、中央道高速道路の対象には考えておりません。ただ建設省で考えております道路整備計画の中には、資源開発あるいは生産道路というふうなものを考えているわけでございますが、そういう資源開発の点に関しましては、具体的の総合開発計画がきまりましたならば、その線に沿うて道路整備を具体化して行きたいと考えておる次第でございます。
  14. 菊川忠雄

    ○菊川委員 参考人の方で何かこれについて御希望がございましたら……。
  15. 田中清一

    田中参考人 先ほど委員の菊川先生から、参考人の方に今後の希望とか、あるいはどういつたぐあいに政府が私を援助しておるかということが聞きたいという御質問であつたように思います。さきに一千万円の調査予算が出まして、今せつかく調査をしております。それはおもに図上の調査で、その図上の調査を明瞭ならしめるために四万分の一の航空写真から、一万分の一に引伸ばした、この中央道付近一キロ幅の図面を作成いたしました。それがその費用のうちに入つておるものだと思います。その他の調査にも行つておるのだと思いますが、それはただ国家的見地からこういつた道ができれば、民生安定に偉大な威力を現わすというそれだけのことでありまして、このことに対して私は約十年の日子と数千万円の金は使いましたけれども政府からはお茶一ぱいももらつて飲んでおりません。それで今後私の最も希望したいことは、せつかくここまで御調査ができたのでございますから、今後も引続きこの道路に対して、あるいは橋とダム・サイドが可能かというようなこと、ボーリング調査その他地質調査をやつていただくことを希望するがために、引続き相当額の調査費用建設省へ出すように国会からやつていただきたい。この完全な調査はもう一年くらいやりますれば十分な調査ができる見込みでございます。この金額につきましては専門家のお方からして、建設省から御申請になるだろうと思います。これで先ほどの菊川先生の私に対する御質問のお答えとしたいと思います。
  16. 楠美省吾

    楠美委員 田中参考人に一言お聞きし、私の希望を申し上げたいのですが、先ほどの田中参考人お話の中にも、戦争直後この大事業をやりたかつたと言つておられます。こういつた大土木事業などは大戦争のあとにただちにやつてもらえたならば、今日のような思想混乱を起さずに済んだと思う。いつの時代にも大戦争の後に、敗戦後でも勝つたあとでも大事業というものはやるべきものだということを私は考えておつたものでありますから、その当時やれなかつたのは非常に遺憾でありますが、それにつけても田中参考人が私財を使いまして、これだけの計画をされておるということには心から敬意を表します。私は青森出身で、自分の郷里を案じて言うのではないのでありますが、日本食糧問題などを考えましても、一箇年に一千七百億余の金、総予算の一割六、七分もの金を外国に払つております。それで農林省のはつきりした数字は覚えておりませんが、終戦後食糧増産に使つた金は約二千億だそうでありますが、米は依然として六千五百万石以上に出ておりません。なぜこうなるかいろいろ農林省の人たちにもこれから研究してもらい、またメスを入れなければならないと思つておりますが、農林委員会では農林省のちようちんばかりを持つておるような現状であつては、決して食糧増産はうまく行かないのであります。ほんとうにそういう問題にメスを入れてやらなければならないと思つておりますが、重点的に国の政治をほんとうにやつたならば、依然として総予算の一割六、七分も食糧の金を払わなくても済むと思いますが、今の民主政治と申しますか、陳情政治と申しますか、代議士は自分の地盤に金を持つて行かなければ当選できない、いろいろな弊から日本に重点政治ができない。だからいつまでもこのざまで終つておるのだ、こう考えております。代議士のわれわれの責任だと考えておるのでありますが、それにつけても今度の道路の計画を見ましても、第一期は神戸東京、こうなつております。先般も田中参考人の下で働いておるある方が私のところに見えましたから、私はなぜ第一期計画を東北の方に持つて行つてやらないか、これは自分の郷里を案じて言うのではない、かつて戦争中の代議士四箇年時代は満州の開発をやつたために、青森のあの字も四年間一言も言わなかつたぼくだが、なぜ第一期計画として東北に計画しないのか、こう言つたのであります。この計画についてはいろいろ林道——森林の開発等も私は論じておるのでありまするが、日本の国有林野の図面を見ても、国有林野はほとんど東京以北、東北北海道であります。東京以南にはほとんどないと言つても過言でないくらい、国有林野は東北北海道が多いのであります。また余つた土地の多いのは東京以北、東北北海道であります。一体ほんとうに日本の政治家並びに官吏、いろいろな人たちが重点を置いて、北海道、さらに東北開発をやつたならば、いつまでたつても一割六、七分も食糧費として外国に金を払わなくて済むのではないか。これには非常にめんどうなことはあるが、どうしても重点的にやらなければならぬのに、代議士諸君が妙に役人のようにこまかくなつて、こまかい数字を論じなければ委員会で発言もできないような空気と相なつております。それは非常な一つの政治家の堕落だと私は思つておるのであります。もう少し大局的に目を注いで政治家はやらなければならぬと考えておりますが、今の雰囲気はそうなつておりません。そこで私は田中参考人が、そういう方面に目を注いでこれだけの大計画を持つておられるあなたならば、なぜ東京北海道の方に先に計画をしてくれないのか。一期の計画をなぜあつちの方に持つて行つてくれないのかと考えるのでありますが、これについて参考人の御意見を伺いたいのであります。
  17. 田中清一

    田中参考人 ただいまの先生の御意見ごもつともでございまして、先ほど冒頭に言いました通り東京から青森まで、さらに北海道に達するこの原野、森林、その他水産にいたしましても鉱産にいたしましても、これは実に日本の三分の二もあろうと思います。これは私の調査によつてもわかつておりまするが、何さま私どもが考えますのは、どうしても政治力というものに押されるのでございます。この政治力というものが自由になりまするならば、今先生のおつしやつたことはただちにこれやらなければならぬことだということも考えておりますが、終戦後私が考えましたことは、御承知のように日本の国情がまことに騒然たるものでございました関係上、外から来るもの、うちから来るものがもしも混乱状態に立ち至つたような場合には——そういつたことはなくとも、少くとも日本は世界一の地震国であります。また火事も木造建築の関係上至るところにあります。そうしていざというような不測の事態が発生した場合には、六大都市がまずまつ先に機動的にそれを使つてつて行けることを一つ考えたのでございます。  それで国土総合開発の点から行きますと、東京神戸間ができますれば、その次はどうしても少くとも東京、青森間のものに着手して、漸次開発行つて行かなければならぬものだと確信してはおりますが、何さま私は政治家ではございませんから、プランは立てておりましても、政治でどつちへ曲つて行くかもわかりませんが、私は今の御質問通りのようなことは考えておるのでございます。
  18. 菊川忠雄

    ○菊川委員 私もう一つお尋ねしてみたいのですが、今のいわゆる東海道弾丸道路、これは今調査の過程にあると思いますが、どれくらいの総経費で何箇年計画というふうなところの見込みが立つておるかどうか。この地図を見ましても、大体大都市を通じて走るので、沿路補償の経費が多額に上るだろうと思う。  それから一方の中央道路の方はそういう補償の費用は比較的少くて済むのじやないか、しかし建設費などはあるいはこの方が多くかかるのではないか、こういうふうに私しろうと考えで見ておるのです。そこで一体東海道の弾丸道路の場合にはどれくらいの経費がかかるか。今の中央道路の方は五箇年で一千億円という大体の見当があるわけですけれども、それを中心にして考えてみたいのでお尋ねしたいと思います。これは富樫政府委員になりますか、それとも木村さんになりますかわかりませんが、ひとつ御説明を願いたいと思います。それとあわせて中央道路を計画しておられる立場から、東海道の弾丸道路というものについて、比較検討した場合に、どういうふうに見ておられるのか、おさしつかえなければここで御意見を聞かしてもらいたい、こう考えております。
  19. 富樫凱一

    ○富樫政府委員 東京神戸間の高速道路につきましては、まだ調査を完了しておりませんが、現在の段階で概算いたしましたところ約千四百億ほどかかります。お話のように東海道線に沿う方は、用地の問題、補償の問題に相当金もかかりますし、またむずかしい問題も予想されるわけであります。ただいまのところはまだ資金計画が立つておらないのでございますが、計画といたしましては外資を幾分でも入れる。また東京神戸高速道路に有料道路にしたいという考えで進んでおりますので、公社案というふうなものも考えておるわけでございますが、また資金の方が具体的になつておりませんので、実施計画については確立されておりません。ただ工事計画というものだけが立つておるわけでございます。  それから中央道路との対比について御質問がございましたが、中央道につきましては、先ほど田中さんからお話のありましたように、ただいま航空写真から一万分の一の平面図をこしらえておりますので、これに中心線を入れ、縦断、横断をとりまして、その上で工事量を積算し、工事費を出すという過程になつておりますので、ただいまのところどのくらいかかるかということは申し上げられないのでございますが、今われわれの考えております高速道路よりは、おそらく相当金がいるのではないかというふうに想像いたしております。
  20. 菊川忠雄

    ○菊川委員 今の田中参考人お話では、富樫さんの綿密な意味からの御検討とは、まだまだ開きがあるのは当然だ思います。しかしわれわれしろうと考えにしましても、東海道線に沿うて高速道路をつくるという場合には、いざとなれば用地収用あるいは補償というふうな問題は、対人関係ですからむずかしいと思います。電源開発一つやるにしてはなかなかうまく行かない。時間的にはかえつてそのことのために早く行くべきものが遅れてしまうというふうなことがここに考えられるわけです。ところが一方は対人関係が少いから、結果においては私は楽ではないかという気がするのです。従つて最後は補償の費用の問題だということになりますと、こういう東海道の弾丸道路などというのは、補償費が多額に上るのではないかと考えるか、中央道路の方が、建設費が高くつくから総経費も高くつくだろうというだけの説明では、必ずしも納得できないのですが、田中さんの御見解はいかがですか。
  21. 田中清一

    田中参考人 私の今までの研究と経験によりますと、平野を行くのは非常に高くつくのです。なぜなれば、今富樫先生から東海道は賃取り道路にするというお話がございましたが、これはごもつともなことで、ぺーするためには金等もとらなければならぬでしようが、それがためには一切の道路を立体交叉にせなければなりません。御承知のように平野には農道から普通の里道、その他においても一里のうちに十幾つもあるようなところは方々にございます。また鉄道の横切らねばならぬところ、国道の横切らねばならぬところその他ありまして、平野を少くとも二十二メートルの幅で八メートルくらいの高さに万里の長城のようにして行かなければならぬ場合がおもなのでございます。その土盛りの土を三里も四里もひつぱつて来なければならぬような平野もあるのでございますから、平野を行くということは、ただに農耕地をつぶし、住宅を移転するというようなことでなしに、建設費においても相当の高額につくと思うのであります。それに引きかえ、中央道路案で行きます場合には、先ほど菊川先生から大分高くつくだろうというお話もございましたから御説明申し上げなければならぬが、比較的安い地面です。しかも大部分国有地を通つて行くのでございますから、その点、用地の買収その他に対しては比較にならないほど楽に行けるということは、皆様承知通りであります。それから日本では非常に隧道を恐れるという、一つの癖がございますが、今日天龍川における佐久間ダムの排水路の工程等を見ますと、十メートルもあるような隧道が、一日に片方から八メートルないし十メートルも進むようなすばらしい機械を使つてつておることは事実であります。それで今までのそういつた機械を使わない計算といたしましても、隧道は三億五千万円ないし四億円であつたら、たいていの架設のむずかしい山の中でもできることは事実でありまして、これは専門の方々がよく御存じの通りであります。もし中央道が高くつくという御懸念があるならば、かりに赤石嶽全部を隧道に抜いたと仮定いたしましても、富士川から天龍川まで、あるいは木曽川までの間の隧道全部にしましたところで、かりに三億円、四億円としますれば幾らも違わないのでございます。そういつた関係で、高くつくという先入観のもとにこの計算をやろうとすると間違いが起るのでありまして、もぐらもちのようにくぐつたとしましても、三億五千万円か四億円しかかからぬということを知つておいて、それからいろいろの計算をするのでなければ困ります。しかし東海道案とこの中央道案とは比較すべきものではないのでございます。東海道案には東海道案の特徴がありまして、すべての東海道における都市を縫つて通りますから、それに対する人がたくさん乗つたり降りたり、あるいは港湾から荷物を積卸しするという特徴があります。中央道は、これは資源開発して、しかもできれば六大都市をなるだけ短距離にして、いついかなる事態か発生してもそれを完全に克服するようなことを考えなければならぬと思います。と申しますことは、今後地震があつても火事があつても——昭和十九年のときは、東海道は御承知のように地盤が悪いために鉄橋は横にずつてしまう、道は割れてしまう、そうしてほとんど二箇月も通れなかつたために、全国民が非常な不便を感じたことは記憶に新しいことでございます。そのときにおいても、中央線だけはあれだけの隧道があり、いろいろしましても、一日も休むことなく通つたことを考えますと、それ以上にもつと有利な中央道案は、そういう事態が発生いたしましても、東京でも大阪でも名古屋でも神戸でも、その他岐阜にしても大垣にしても、横浜にしてもその付近平野にしても、お互いに食糧その他物資の融通ができますために、なくてもよいような混乱を起すことのないようにということも考えておるわけでございます。そういつたわけで、元来東海道とこちらとは道の性質を異にしておるのでございますから、道はたくさんありました方がよろしゆうございますが、日本の現在の経済状態から考えましたときに、どちらが最も有利であるかということは政府のお考えくださることでございますから、私はどつちがよいとも悪いとも申し上げることは差控えます。
  22. 加藤宗平

    加藤(宗)委員長代理 ほかに御質疑もないようでありますので、本日の参考人意見の聴取は以上をもつて終ることといたします。  参考人の各位には、長時間にわたり忌憚のない御意見を開陳されましてまことにありがとうございました。つつしんでお礼を申し上げます。  なおこの際参考人招致の件についてお諮りいたします。金融政策の総合調整に関する件につき、来る十一日火曜午前十時より参考人を招致して意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  23. 加藤宗平

    加藤(宗)委員長代理 御異議ないものと認めましてさよう決定いたします。なお右参考人の選定については委員長に御一任願いたいと存じます。  本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後零時三十八分散会