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1954-03-19 第19回国会 衆議院 経済安定委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月十九日(金曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長代理理事 加藤 宗平君    理事 小笠 公韶君 理事 武田信之助君    理事 栗田 英男君 理事 松原喜之次君    理事 菊川 忠雄君    迫水 久常君       西村 久之君    平野 三郎君       前田 正男君    飛鳥田一雄君       杉村沖治郎君    水谷長三郎君  委員外出席者         参  考  人         (東京勤労福         祉協会常務理         事)      柘植粂次郎君         参  考  人         (東京水道局         長)      徳善 義光君         参  考  人         (日本石炭協会         副会長)    小堀  巖君         参  考  人         (私鉄経営者協         会技術委員会電         気部会長)   船石 吉平君         参  考  人         (株式会社三越         百貨店庶務部副         長)      内田  確君         参  考  人         (昭和電工株式         会社常務取締         役)      鈴木 治雄君         参  考  人         (株式会社小松         製作所資材部         長)      石井  格君         参  考  人         (主婦)    吉岡 時子君         参  考  人         (鐘渕紡績株式         会社常務取締         役)      江越 道俊君         専  門  員 圓地與四松君         専  門  員 菅田清治郎君     ————————————— 三月十六日  委員神戸眞辞任につき、その補欠として加藤  高藏君が議長指名委員に選任された。 同月十九日  委員伊藤好道辞任につき、その補欠として飛  鳥田一雄君が議長指名委員に選任された。 同日  委員飛鳥田一雄辞任につき、その補欠として  伊藤好道君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月十七日  国土総合開発の促進に関する陳情書(第一九七  五号) を本委員会に送付された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  電気料金政策総合調整に関する件     —————————————
  2. 加藤宗平

    加藤委員長代理 これより会議を開きます。  本日は、過般の委員会における決定に基き、電気料金政策総合調整に関する件について、参考人より意見を聴取することになつております。本日出席参考人は、午前四名、午後五名でございまして、その氏名はお手元に配付いたしました名簿の通りであります。  この際参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。参考人各位には本日御多忙中のところ御出席いただきまして、まことにありがたく、厚く御礼申し上げます。ただいま本委員会におきましては、電気料金政策総合調整に関して調査を進めておる次第でありますが、今般の電気料金値上げの問題につきましては、各方面に及ぼす影響はきわめて大なるものがあると考えられますので、利害関係者たる参考人各位には、それぞれの立場において忌憚のない御意見を開陳されまして、本調査参考に資せられたいと存じます。  これより参考人各位の御意見を聴取いたすわけでありますが、時間などの都合もありますので、御意見の開陳はお一人十五分くらいずつにお願いいたします。  これより順次参考人より御意見を伺うことといたします。東京勤労福祉協会常務理事柘植粂次郎君。
  3. 柘植粂次郎

    柘植参考人 まず最初に私の立場を表明しておきたいと思います。今回の値上げ案につきましては、時期と方法値上率につきまして反対でございます。以下その立場から私なりに考えました諸点につきまして、参考意見を申し上げたい、こういうふうに考えます。抽象的な問題に流れることを避けまして、ごく具体的な事例を引いて申し上げます関係上、論及いたしまする範囲もおのずから限界がございまして、また時間の関係上十分説明できがたい点もございますので、またあとで御質問等がありましたら補足いたしたいと思いますが、まず私の所属いたしておりまする企業状況と、それから消費者として、特に勤労者中心とした立場から申し上げたいと思います。  私の所属いたしておりまする企業は、株式会社大塚工場と申しまして、鉱山土木関係の機械をつくつておる百六十名ばかりの小さな企業でありますが、当社では値上げ案による直接の負担といたしましては、事務局の方へ提出しておきましたが、別表によつておわかりになると思います。昨年、昭和二十八年の四月から本年三月までの一箇年間の使用電力料、それからそれに払いましたところの各月別料金、それと今度の値上げ案によつてどういうふうになるかというのを各月別に出しております。それによりますと、一応値上げ額といたしましては十八万六千四百九十三円という数字でございます。しかしながらこれは百三十一キロワットという基本料金でありまして、契約電力量と申しますが、これを前提とした数字でございます。この基本電力量については、あとからまた電力量変更等が、ございまして、当然もつと値上りになつて来ることは必定だと考えております。これによりましても一割八分八厘の値上げになつております。電気会社が出しておるところによりますと、この数字はもつとずつと小さい数字になつておりまして、たとえば大口電力の甲ですから一割二分一厘というような数字になつております。しかし実際にはこういうふうに上つておるし、またさらに上る可能性がありますから、当然上ろうかと思います。それから、直接に支払う料金としてはこれだけのものでありますが、そのほかに材料費等に非常に影響を来します。たとえば今度の値上げ案が通過いたしまして実施されることになりますと、私たちの企業では、大体企業の性質上資材費割合が非常に高くて、六〇%になつております。その六〇%の資材費のうちで、特にまたさらにその中の六〇%が鋳造品でございます。鋳造品につきましては、御承知のように非常に電力を食う仕事が多いわけでありまして、そのために当然この資材費値上りも予想されるわけであります。鋳造品について申し上げますと、私のところでは日本鋳造株式会社その他八社に発注し購入している状況でございますが、日本鋳造にかりに例をとつてみましても、日本鋳造には私の会社から約八〇%の仕事を出しております。この八〇%の仕事日本鋳造がやつているわけでありますが、この企業は約八百五十名の中企業でありまして、昨年の三月から本年の二月までに使用電力量としては一千三百七十三万七千七十キロワット・アワーという大きな記録を出しておりますし、また従つて料金も六千二百七十五万八千二百十八円という大きな金額を払つております。これを一箇月平均に見ますと、使用電力量百十四万四千七百五十五キロワット・アワー支払い料金五百二十二万九千八百五十一円、一般企業から比較しますれば非常に大きな割合でございます。また鋳鋼の一トン当り使用電力一量について見ますと、大体一トンについて千八百キロから二千キロの電力量一を必要とするのであります。このように見て参りますと、これら企業製品価格は必然的に高騰を来し、われわれの企業内におきましては材料費値上りとなつて現われまして処理できない状態でございます。二十七年の生産額よりも二十八年の生産額の方が下つております。といいますのは非常にメーカーの競争がはげしくて非常に値引きをされるというような関係がありまして、苦しい状態でありました。反対賃金その他は上り、また資材費も若干上つております。また資材費上り賃金が上つている中で、しかもなお安く売らなければならないというような状況で、非常に幅がないわけであります。その幅のないところへこういうふうに電力料が上り、そうしてまたそれに伴いまして、そのはね返りとして資材費等が上りましたならば、企業経営が困難になることは必定だと思います。そういうような立場からどうか値上げはやめてもらいたい、そういうふうに考えるわけであります。  また次に勤労者家庭中心とした消費者立場に立つて申しますと、もちろん値上案には反対でございます。すみやかに撤回されるよう本委員会善処を要望したいところでございますが、それにつきまして反対理由、あるいは今回の値上案妥当性を欠いていると思われます点等につきまして申し上げたいのですが、これはすでに各方面より反対意見等も集つておりましようし、また十分なる研究もされておられると思いますので、釈迦説法もどうかと思いますので、ここでもまたさらに具体的な問題を一、二取上げまして御参考に供したいと、そういうふうに考えるものでございます。  まず第一にはアンぺア制の問題でございます。このアンぺア制の問題は非常にいろいろなむずかしい問題を含んでおりますので、これは十分研究して実施されないと、非常な混乱が起るのではないかと考えております。これは東電その他の電力会社のこれに対する方針等を十分に検討してみないとわかりませんが、私の知る範囲ではそういうふうに考えております。たとえば電燈会社説明によりますと、十燈以下は五アンペア契約してくださる。これは従量電燈です。大体勤労者家庭というものは従量電燈が多いわけです。定額電燈というのは四燈以下ですが、ラジオで使つたり、そういうものを含めますと、ちよつと考えられない、あるいは特殊な家たと思います。あるいは非常に苦しい家計の家で、大体五、六燈から十燈、十二燈ぐらいまでが標準じやないかと思います。そういうのについて見ますと、電力会社説明では、十燈以下は五アンペアでよろしゆうございますということなんです。実際たとえば七、八燈の家で五アンペア契約いたしたとしますと、これは夜間電熱器を使うとか、あるいはアイロンを使うということになりますと、当然これはヒューズが切れてしまいますから、このヒューズの、あとで触れますが、管理問題です。たとえばわれわれの常識で判断する限りにおいては封印スイッチ、あるいは封印カットアウト——どういうヒューズ管理方法をとるか、その点はよく研究しておらないのですが、当然こういうような処置をとらなければならないと思います。こういうような処置をとるとなると、今申しましたような場合に、ヒューズが飛んでしまつた、どうにもしようがない。夜間ヒューズが飛びますから、電力会社の者でないとヒューズをかけかえられないということになりますと、暗い中で何時間も待つていなければならぬ。あるいはあしたまで来てくれないかもしれない。そういうような問題があります。この点はよく皆さん御研究願いたいと思います。そういたしまして、一応任意の形でアンペアをきめるように説明されております。五アンぺアなら五アンぺアでけつこうですということなんですが、もちろん任意契約といいましても従量電燈料金表中に記載せられておりますところの五アンペア九十円、十アンペア百八十円、二十アンペア三百六十円、三十アンペア五百匹十円、この四種でこれらの契約をするわけですが、そういうように低く契約した場合は、ヒューズを飛ばしたりなんかして困る場合が起るのではないか、そういう杞憂もあります。またこれを高く契約いたしますと、電力会社で出している資料よりも相当上まわる値上率になつてしまう。十分余裕をとつてヒューズが切れたりしないようなアンペア契約しますと——たとえば五でいいところを大事をとつて十にする、あるいは十でいいところを二十にする、二十でいいところを三十にするとか、今までのやり方で行くとそういう問題が出て来るので、大事をとつて高く契約いたしますと、常時高い金額を払つて行かなければならないという問題があり、この値上案説明書の中にありますような値上率ではなく、もつと高い率になつてしまうと思います。この値上率については、先ほど私の会社事例を申し上げましたが、具体的に調べてみますと、この表よりも上つております。さらにまたこれから御説明する中で、この値上率よりそれぞれいろいろな点で上つているということがわかるわけであります。もちろんこの表は法規に基いて種別ごと原価計算から算出したものでありまして、十分私こういうものを信用するわけであります。また東京電力その他の電力会社あるいは関係者の権威と良識をいささかも疑うものでございませんが、しかし実際においてはこの表よりずつと上まわるということも、一応耳に入れておいていただきたいと思います。  さらに具体的な例を申し上げますと、この料金改訂によつて非常に矛盾が起るわけであります、その中て特に今アンペア制の問題を申し上げましたが、もう一つ申しますと、一般家庭に非常に大きなしわ寄せになつているという点でございます。これは皆さんもすでに各方面からの意見も聞いておられると思いますが、たとえば具体的の例を申し上げますと、今度の改正案の中でこういうことがあります。一割五分七厘の値上げになるわけですが、実際にはもつと上るということの例を申し上げますと、かりに一割五分七厘をこのまま受取るといたしましても、たとえば二十八年の上期の収入実績から逆算いたしましても、十円四十四銭というふうになります。そして大口電力で見ますと二円五十三銭となりまして、一キロ当りの差額が六円九十一銭、一キロについて六円九十一銭も一般勤労者家庭はよけい負担しなければならないということになります。それから三十八年度の同じく上期の業種別一キロワット当り収入実績によりますと、従量電燈では一キロワット当り九円三銭、これは税金が入つておりません。これに一〇%の税金が加わるわけですが、九円三銭でありまして、大口丙の場合で見ますと、二円十七銭、大口乙でみますと二円六十六銭、大口甲で見ますと三円六十三銭となつております。現在の基準でもすでに相当なしわ寄せ的な矛盾というものがありますが、今度の改訂案によりますと、さらにそれに拍車をかける結果になるのではないか、そういうように考えます。たとえば前述のような実績によつて、これは仮の計算でございますが、一キロワット当り料金基準として税金値上率をかけてみますと、この方法は正確な数字ではないのですが、ほとんど幾らの差もないので、一応目安として見ていただきたいと思いますが、大口電力丙の場合は、一キロワット当り値上げ額はわずかに四十銭にすぎません。従量電燈の場合には一般家庭では一円五十五銭の値上げになります。先ほどから何回も申し上げましたように、現在すでに大きな開きがあるところに持つて来て、さらに今度の一キロワット当り値上率が、大口丙の場合四十銭、それで一般家庭の場合は一円五十五銭というような、はなはだしい不均衡が生ずるわけでありまして、こういうような立場から、私はぜひ今回これをとりやめて、十分検討し直して、こういう矛盾がないようにして、もし値上げをどうしてもしなければならないのだつたら、十分に時期と方法と、そういうような内容の点を研究してやつていただきたい。貴委員会善処を要望いたしまして、終りたいと思います。
  4. 加藤宗平

    加藤委員長代理 ただいまの柘植参考人の御意見に対しまして御質疑はありませんか。——卸質疑がなければ、次に東京水道局長徳善義光君。
  5. 徳善義光

    徳善参考人 今回申請されました電気料金値上げを含みます電気供給規程変更について、東京水道局全国水道企業者中最大の使用者であります関係上、全国の代表といたしまして、また東京水道局立場におきまして、以下申し上げますような理由によりまして、絶対反対を申し上げるものでございます。  なおその前(、国民の一へとして辛し上げることをお許し願いたいのであります。政府緊縮財政方針を発表し、低物価政策をとり、国民耐乏生活をただいま要望しておるというのが、実情であると存じております。この際に、基本重要産業であります。電気料金値上げを行われるということになりますると、ひいて物価値上り人件費高騰を来し、日本の国際的に置かれておる現状に対しまして、国家の打たんとする手に重大なる支障を来すのではないかということを、私は国民の一人として憂えるのであります。あらためてつまらぬことを申し上げて恐れ入りまするが、この点に関してはおそらく先生方は御承知のことと存ずるのであります。ゆえに私はそういう点からも、この国の重要基本産業でありまする電気料金値上げということは、絶対に政府として、また国会として、御採択にならないことを心から念願するのであります。以下私ども立場におきまして反対する理由を申し述べます。  会社電源開発に伴う資金の増加をおもなる理由として、料金値上げを企図いたしておりますが、電源開発政府至上命令的政策であるならば、当然政府において抜本的の処置を講ずる問題であり、この負担需用家負担させるということは不当であると思うのであります。  次に、前回の値上げに際しましては、会社が予想した赤字は、九電力会社で私どもの聞いておりますところによれば、百九億円であつたのであります。しかるに去る昭和二十八年九月の決算におきまして、六十四億円の剰余金を得、うち三十三億余円の渇水準備金を積立て得たという現状と存じております。これはこの数字のみをもつていたしましても、会社経営料金値上げの決してただいま時期でないと考えられるのであります。  次に、東京電力株式会社老朽設備の改善をさらに強化いたし、送電のロスを軽減して、冗費の節約をはかる等、一層の合理化努むべきでありますが、私どもの見ましたところでは、その熱意と努力はまつたく弥経的であり、独占企業の、しかも重要基本産業であるという重要性格を顧みないで、いたずらに料金値上げによつてこれを補わんとするがごとき態度をとられることは、私は強く反対するものであります。これを利益配当金に徴しまするに、毎期一割五分の配当をいたしております。今日一割五分の配当をかかる国家の重要な基本産業政府はお許しになるのでございましようか。私はこの利益金配当を少くとも現在の各産業における最低限度まで下げることによつて、まず私は電力料金値上げなどということは考えるべきでないと考えるのであります。  なお、上下水道事業は、あらためて申し上げるまでもなく、都民の日常生活上欠くべからざるものであります。保健衛生、防火、産業下水処理雨水氾濫防止等の重要な使命を帯びておるのであります。すなわち高度の公共性を帯びておる事業であります。以下この内容について、御承知のこととは存じますが、二、三御参考までに例を引いて申し上、げさしていただきます。  水道事業市町村公営を原則とし、低廉豊富に飲料水生活用水工業用水を供給して、伝染一病の発生を予防し、また火災を防止し、産業の進展に尽しておるものであります。また下水道事業は、都市汚水の排水を行いまして、伝染病発生の根源を除去するための基本的施設であります。なおこれらの上下水道施設につきましては、国はこれらの事業に対しまして、必要なる用地の獲得等には、国有地を無償で払下げ、あるいは貸付し、公課を免除する等の特別の保護を与えておるのであります。なお水道事業は、ガス交通等公共事業に比べまして、市民任意選択がきわめて困難な事業であります。かかることを考えますならば、公衆衛生の見地からこの使用を極力奨励すべきものでありますから、電力料金値上げの結果、ひいて水道料金値上げをいたさねばならぬように相なりますことは、この点からもまことに寒心にたえない次第でございます。また火災防止のために、法律によつて消火栓の設置が水道事業者に義務づけられております。このために一般給水を必要としない夜間においても、常に一定の水圧を保持するために必要なる電力を、水道事業者の犠牲において負担しておるのであります。このことは逆に申しますと、電力会社にとりまして非常に利益のある電力供給事業と相なつておるのであります。  以上二、三の水道事業特異性を申し述べたのでありますが、今回の値上げが実施されまする場合の具体的な影響について御参考までに申し上げてみます。  水道事業は、他の事業に比して電力を最も多量に消費する事業でございます。数字を申し上げます。すなわち各事業における生産原価中に占めまする電力費割合は、水道が二八・三%、私設鉄道が八・五%、ガスは一・六%、電気銅が六・三%、アルミが一五%、鉄鋼が八・九%、銑鉄が一六・一%でございます。その他は省略いたしますが、かように水道は断然他の事業を引離しておるのでありまして、同一の電気料金値上げでありましても、水道事業に及ぼす影響は、その額におきまして、その内容におきまして、他の事業に数倍するものであります。電力会社申請案によりまして水道事業に及ぼす影響を例にとりますと、東京都の水道に関する値上率は、会社の提案するところによりますと四五%の値上げとなるのであります。すなわち現在東京都の水道は年間二億三千余万円の電力料金を払つておりますが、約一億五千万円の増加電力料を支払わねばならぬことに相なるのであります。これを他の都市の例で申し上げます。横浜市は上水について六八%、川崎市は上水について七〇%、横須賀市は上、下水合せて六四%、千葉水道は六七%、おおむね七〇%程度の高率となるわけであります。従いまして現在水道料金全国物価と比較いたしますと、基本年次にいたしまして約百倍、東京水道料金のごときは七十倍の倍率でございます。従いまして必然的に水道料金値上げということが起つて来るのまります。水道料金値上げをしなければ、市民に確実なる給水の責任を果すことができない、かように相なるのであります。なお現在水道当局といたしましては全国とも地方公務員のべース・アップ、あるいは公営企業施行に伴います減価償却の計上等、水道料金値上げの要因が重なつておるのでありますが、水道事業公共性を顧みまして、この使命を果す上から、料金値上げを今日まで極力抑制して参つておるのであります。私ども自分のやつておる事業のことを申し上げて恐れ入りますが、かような水道事業経営している立場から申しましても、電力料値上げにつきましては強く反対し、反省を求むるものであります。なお昨日も通産省におきまする公聴会出席いたしまして、私はただいま申し上げたようなことに触れまして極力反対陳述をいたしたのでありますが、各方面とも反対の御意見が多数あると思います。また中には御賛成ではないが、やむを得ず御賛成という御意見の発表もあると思います。しかしながら大多数の人は反対と存じます。これは釈迦説法でございますが、どうか需用者及び国家全体のことを御考慮いただきまして、電力会社電力料金値上げについて反対され、御採択せられぬよう心からお願いいたしまして私の陳述を終ります。
  6. 加藤宗平

    加藤委員長代理 ただいまの徳善参考人の御意見に対して御質疑はありませんか。——質疑がなければ次に移ります。日本石炭協会会長小堀巌さん。
  7. 小堀巖

    小堀参考人 日本石炭協会会長小堀であります。御指名によりまして、全国石炭鉱業界といたしましての今回の電力料金値上げに対しまする総合的な意見を申し述べさせていただきます。お手元にプリントを差上げておきましたから、これを朗読して参りたいと思います。  まず、電力料金改訂に対する総合的な意見であります。今般九電力会社が申請いたしました供給規程変更及び地域差調整協定変更による電力料金値上げは、全霊弔電力の一〇%に相当する多量の電力使用する石炭鉱業といたしましては、ただちに石炭生産原価高騰を来し、石炭業界国家の要請にこたえて努力しつつある炭価引下げの実現に対しまして、重大なる支障を来すものであります。よつて石炭鉱業といたしましては、後述する理由によりまして、電気料金値上げ反対いたしますとともに、料金制度改訂に関しましては、条件付をもつて賛成いたすのであります。  次に電力料金値上げ影響について申し上げます。まず電力使用量及び電力費石炭鉱業に対する現状であります。これは歴年でありますが、昭和二十八年における石炭鉱業使用実績は次の表に表わしておりますように、買電——電気会社から買つた電気であります。これが二十四億九千万キロワット・アワー、炭鉱が持つておる自家発が三億五千万キロワット・アワー、合計二十八億四千万キロワット・アワ1に達するのでありまして、右の買電電力料金は八十八億七千四百万円となつております。詳細は次にあります表に書いてあります。この表はずつと続くのでありますが、紙がありませんから二つにわけて書いてあります。  そこで表についてちよつと説明いたしますと、右の方の一番下に原単位とありますのは、石炭一トンを生産するにつきましている電気の量であります。全国平均いたしまして、石炭一トンについて六十一キロワット・アワーを使つております。次の左側の表の最後の段にあります出炭一トン当り電力費というところを御注目願います。全国平均で二百五十円五十銭ということになつておるのであります。次に申請料金実施の場合の石炭鉱業に対する影響であります。今回申請の制度変更並びに料金値上げが実現した場合、昭和二十九年度における石炭鉱業負担増加は次の表のようになつております。石炭一トン当り五十五円六十五銭の生産原価増しを来すことになるのであります。これだけ高くなることになります。これは地区別に表に表わしてあります、その下から二番目の段に全国平均として出ております。次に、料金制度改訂問題についての意見であります。戦時、戦後を通じて、石炭鉱業に対してはいろいろの優愚策を講じていただき、電力問題につきましては、保安電力、つまり炭坑の水を揚げるとか、通気の扇風機をまわすというような電力でございますが、これはその重要性によつて量的には絶対的に確保していただいておりますが、水力料金の割当比率を見ますと一1水力料金は御承知のように安い方の電力でありますが、表面的には非常に炭鉱が優遇されたようになつております。しかし実績の上で検討してみるとまつたく逆で、買電に対して全産業九六%となつておりますが、石炭鉱業は八八%の実績になつておるのであります。つまり安い電力の割当が少いのであります。このほかに、火力料金に相当する自家発電の電力を、総使用電力の一三%も自給しておる状態であります。石炭鉱業が、現行割当制度、つまり火力、水力の割当でございますが、この制度を実施して以来、計画生産による政策的割当、計画生産と申すのは、肥料とか鉄鋼とかいうものに計画によつて電力の割当をもらつておるのであらますが、その政策的割当に反対して、実績基準とするところの割当に転換してもらうことを希望いたし、なおさらに水力、火力の割当でなく、一本建の料金にもどることを主張して来たのも、以上述べましたような理由によるのであります。よつて料金制度の改訂につきましては、次の条件付をもつて今回の申請原案に賛成いたすものであります。  その第一は、炭鉱には、さきに言つた通り、自家発電所を持つものがありますが、この自家発電所有炭鉱に対しましては、戦後電力不足時における電力の動員等の特殊な歴史及び今後なお需給調節に協力を必要とすることを考慮されまして、適正な特殊措置または特別契約によつて買電炭鉱と料金の均衡を保つこと。つまり自家発電を持つておる炭鉱との関係でございます。  二番目に、供給規模の条項を電力会社の一方的のものとせず、需給双方対等の協議によつて規定するよう訂正してもらいたいと希望するのであります。今までは、電力会社が一方的にきめた規定を押しつけられておるようなかつこうになつております。その具体的の例を申しますと、工事を負担する場合、つまり炭鉱では自分の費用によつて工事いろいろとするのでありますが、その場合、電気工作物の管理、所有権については双方協議の上決定するようにきめること。今までは、炭鉱業者が自分の費用においてつくつた工作物は全部電力会社の所有に帰しておるのが普通であります。  次に、制限、中止の料金割引のほかに、質の低下の料金割引を追加する。電気の質と申しますと、サイクルが下つたり、電圧か下つたりすることであります。  三番目に、契約電力超過使用の場合、三倍の違約金をとられておりますが、三倍の違約金はあまりにも過大である。  四番目に、端数の処理はすべて四捨五入に改めてもらいたい。今までの契約では、電力会社の都合によつて切捨てあるいは切り上げをやる、それからそうでない場合は四捨五入をするというふうに、まちまちになつておりますが、これを公平に四捨五入に改めてもらいたい。ちよつとした問題のようでありますが、大きな電力を使うときには、非常な問題になるのであります。  五番目に、大口最大電力の決定は、月間十五分を基準としておりますが、これを一時間の計測に改めてもらいたい。  六番目に、自家発電所有者に対する予備電力基本料金は、使用しない月は免除し、かつ電力量料金は常時電力並に取扱つてもらいたい。大分専門的のことになるのでありますが、こういうことでございます。  なお委託発電の場合は電力会社基本料金を支払つてもらいたい。つまり炭鉱の自家発電に対して、基本料金電力会社の方からもらいたいということであります。  以上は制度と料金とに対する意見であります。  次に、現在電力会社から申請されておる案について、おも立つた点を二つばかり指摘してみたいと思います。  まず値上げ案の収支計算であります。そのうち石炭費の点を検討してみますと、電気事業連合会提出資料の料金改訂理由書によりますと、二十九年度には九百四万トンの石炭をたくようになつており、その金額は四百五十億円と計上しておりまして、品位と炭価は、二十七年度に比較して、カロリーでは、五千三十カロリーのものが五千三百七十六カロリーと七%向上しており、石炭の値段は、平均五千六百七十九円のものが、今度は五千七十六円と、これは一〇・五%値下、すなわち八九・五%ということになつております。すなわち燃料価値としてはカロリー向上率の二分の三乗に比例するのでありますから、七%のカロリー向上は二一%の炭価引下げということになるわけであります。右のカロリーの向上と炭価の引下げとは二重に燃料費を低下せしめるというふうになり、総合低下率は、資料に数式が書いてありますが、計算によりますと、七八・七六%に燃料費が低下することになるのであります。従つて前に申しました四百五十億円の石炭費は、カロリー及び炭価が二十七年度並ならば、五百七十億円に相当するのでありまして、差引百二十億円の石炭代の引下げということになるのであります。しかるに連合会から提出した資料によつて比較してみますと、現行の電燈電力総合全国合計収入金額は、燃料費調整前において千八一百三十八億円、燃料費を調整した後において千七百九十四億円となつておりまして、差引燃料費低下分はわずかに四十三億五千万円しか見込まれておらぬのであります。燃料費の調節率が不当であることは明らかにこれでわかるのであります。つまり繰返して申しますと、百二十億円下つておる電力が、わずか四十三億円しか下つていないというふうに予算が計上されておるのであります。こういうことがわれわれの調査の上にちやんとわかつて来るのであります。  その次の問題は、二段料金収入の見積りを検討してみますと、二段料金制度の地区におきましては、一段料金適用の算出方法は、過去二箇年間の実績基準としておりまして、夏は九五%、冬は八五%、年間平均しますと九〇%とすることになつておりまして、需用者は一〇%の二段料金を課せられる。つまり高い方の料金を課される。一〇%だけは高い料金を払うことになつております。しかるに電力会社の見積りでは、二段料金の収入を二・七%だけしか適用しておりません。これは明らかに収入の見積りが過小になつております。こういうふうな不合理が検出されるのであります。なお以上指摘しましたほかに、電気事業会社内部の人件費、修繕費等の合理化、それから先ほどもお話がありました資本と配当率に関しましては、四・二倍に資本が膨脹しているのでありますが、それに対しまして今までは一五%でありましたが、今後は二一%というふうなことになつておりますが、配当率は一二%、つまり四・二%に膨脹した資本に対しまして、二一%の配当が、これがはたしていいのか悪いのか、そういう問題もございます。それから第三次再評価の適否、償却の長期化ということも当然問題になつております。なお金利の引下げの措置、諸税減免の措置、そういうふうな未解決な諸問題を解決いたしまして、需用者がほんとうに納得し得る状態において初めて料金値上げ、というものを行うべきものと考えるのであります。先ほどの御意見とまつたく同じことを申し述べているのであります。  よつてこの際早急の値上げは時宜を得たものとは考えられませんので、料金値上げには反対するものであります。  大体石炭鉱業界としましては、総合いたしまして以上の意見であります。なお参考資料といたしまして各地区別の状態をそこにつけておきました。これはひとつ読んでいただきたいと思うのであります。全国にわたつた炭鉱事業でござい事ので、なかなか尽し得ないのでございますが、御不審の点は御質問によつてお答えいたしたいと思います。
  8. 加藤宗平

    加藤委員長代理 ただいまの小堀参考人の御意見に対して御質疑はございませんか。
  9. 菊川忠雄

    ○菊川委員 ちよつと参考までにお尋ねしますが、自家発電設備を所有する炭鉱は、もちろんこれは大手筋であると思いますけれども、大体現在では炭鉱の経営面から見ますれば何。パーセントになり、それからその出炭量から行くと、どれくらいの出炭をまかなつているという割合になりますか。
  10. 小堀巖

    小堀参考人 自家発電を持つている炭鉱は十五くらいありますけれども、実際に運転しております発電所の数は十社くらいが運転しております。大体大手の半分以上が自家発電を持つております。大手は大体出炭は六十七、八。パーセント出しております。そのうちの半分以上、全体の四〇%くらいは自家発電を持つている炭鉱が石炭を出しております。そして量はさつき申し上げましたように、単位総収量が深くなつて増して参りましたので、一三%くらいが自給自足しております。以前はもつと大きい比率でございました。
  11. 加藤宗平

    加藤委員長代理 それでは次に移ります。私鉄経営者協会技術委員会電気部会長船石吉平君。
  12. 船石吉平

    ○船石参考人 では私鉄の立場から意見を申し上げたいと思います。  御承知のように私鉄は公益事業といたしまして大衆の足を受持つているのでございますが、特に朝晩の通勤輸送という重大な使命がありまして、これは言いかえれば諸産業の足ということもできると思うのでございます。戦後通勤が、住宅難の関係か、ふえて参りまして、御承知のように非常に混雑して参りました。このために各私鉄とも相当多額の資金を投じまして、車両あるいは変電所その他駅設備などの増強をいたしております。これは一両の電車が大体二千四、五百万円いたしますので、十両の電車をつくつて行くということは二億四、五千万円を投ずるわけでございますが、しかもなお混雑は緩和しないで、朝晩ひどいときには定員の三倍にも達するというような混雑状況でございます。これらの設備をいたしておりましても、一方電源の方が十分でありません関係で、事前認可も思うように受けることもできないし、また渇水になりますと電力の制限もせられる、あるいは電圧が下つて来て電車の運転が乱れてしまう。こういうことでは私鉄が公益事業としての使命を果すことが全然できませんので、そういう観点から今回の電力料金値上げが電源の開発を促進し、またサービスを向上するためにどうしても必要だということでありますれば、ある程度の値上げはやむを得ないと考える次第でありますけれども電力会社から申請いたしました値上案によりますと、相当いろいろな内部に含みがあるように考えられますので、この点は十分な検討と査定が加えられなければならぬと考えるのでございます。詳細な数字についてはなかなか論ずることはむずかしいのでございますけれども、たとえば水力の出水量でございますが、これを過去十年間の平水にフリーズしております。ところがここ数年の実績を見ますと、毎年々々計画よりか大体一割前後の豊水になつております。電気会社の方ではこれを異常豊水だと言つておりますけれども、数年間にわたつて毎年々々異常豊水があるということは考えられないのでございまして、全体の水力の発電量を三百三、四十万キロワット・アワーと考えましても、これの一割といえば相当大きなものでございまして、それだけは石炭をたかないで電力会社の方としては収入になるのでございまして、それをもう少したくさん見積つてもいいのではないかと考えるのでございます。それから二十九年度の収入計算でございますけれども、ただいまもお話がございましたように、二段料金分のとり方が非常に少い。全体で電力の方で考えてみますと、全体の需用合計三百四億九百万キロワット・アワーに対しまして、わずか六百何十方キロワットで、パーセンテージにしまして二、三パーセントとつてございますが、それだけしかとつてないのでございます。しかし実際は先ほどお話がございましたように、平均一〇%、少く見積つても七、八パーセントの二段料金分をみな払うことになると思いますので、この差も相当大きな額になると考えられるのでございます。また支出の面におきまして、今もそれに触れられましたけれども、再評価を最大限まで、九七・六%までとつてその償却を考えておるようでございますけれども、これは同じ公益事業であります私鉄の場合、全国平均がわずかに五〇%でございます。これに比べまして非常に大き過ぎるように考えます。こういう点を考えましても、相当大幅にこの値上げ率は下げてもいいのではないか、こういうふうに考える次第でございます。  それから次に今回の値上げ率は全国平均一四・四%ということが発表されております。この割合を出した分子と分母に何をとつたかということが非常に問題となつておるのでございまして、これのために各産業でそれぞれに勘定した値上率電力会社で言つている値上げ率が非常に相違があるわけでございまして、私鉄の場合、値上げ案のままで計算いたしますと、お手元に差上げました参考資料を一応ごらん願いたいのでありますけれども、大体五〇%から九〇%、名古屋地区では九〇%の値上げになつております。これは収入を計算しますときの分母は二十九年度の想定需用率に標準分として過去の平水量によるものだけを考えて、あとは全部旧料金の火力料金として計算したものを分母とする。すなわち大きくとつておるわけであります。分子にはさつき申しましたように二段料金をわずか二、三パーセントしかとらない計算で、非常に少くなるような計算にしたものを分子にして、そうして出したのが一四・四%ということになつておるわけでございます。こういう点も十分に検討する必要があるのじやないかと考えるわけでございます。私鉄の値上げ率かどうしてこういうふうに高いかと申しますと、今度の料金値上げになるばかりでなく、料金制度が同時に改正になるというためでございまして、従来私鉄は公益事業といたしまして運賃も統制されておりますし、また非常に利益も少い事業でございますので、その点を関係官庁の方でも認めていただきまして、この電力の割当の院面でいろいろと考慮をしていただいた。そのために従来は火力率は三%ないし四%であつたものが今度は新しい料金制度によりましてこの考慮は全然せられなくて、しかも私鉄は朝晩の通勤という非常に大きなラツシユ・アワーを持つております関係で負荷率が非常に悪いので、それによつて割当てられる電力量は非常に一段分の平均量が少いのでございまして、こういう関係で二段料金分は頭打ちとなつて非常に高い料金を払わなければならぬ、こういうことになるわけでございます。  次に私鉄は先ほども申しましたように、公益事業といたしまして、運賃が統制されておるために経理状態が非常に苦しいので、こういうふうな大きな値上げはそのままではどうしてものむことが、できないのでございまして、この鉄道の経営が苦しいことを二、三申し上げてみたいと思います。  御承知のように鉄道の通勤輸送が公益事業として一番大きな役割を持つておるのでございますが、この通勤客が払つております定期運賃でございますが、これがまたべらぼうな割引なつておるのであります。この通勤客は戦前は全乗客の約五〇%でございましたが、最近にはこの通勤定期客が全体の乗客の六五%から七〇%にも及んでおるのでございまして、こういうような通勤客は大体朝六時から九時まで、夕方は四時から一七時までの間に集中するわけでございます。このために先ほども申しましたような車両、変電所、あるいは信号設備とか、そういうふうな設備のほかに、これに要する乗務員、駅員を準備しておかなければならないのでございますが、これが通勤時以外の日中にはほとんど大半を遊ばせなければならぬ、こういう状態でございます。こういうふうに通勤輸送のために私鉄としては非常に大きな犠牲を払つておるのでございます。この通勤客の定期運賃というものは非常な割引を強制されておるのでございまして、この割引率はお手元に差上げました一番最後のページをごらん願えるとわかるのでございますが、参考第二表でございまして、普通定期で五十キロの程度になりますと、七九%の割引でございます。また通勤定期は八三%の割引でございます。通学定期に至りましては九Q%の割引となつておりまして、言いかえますれば、月のうち三日乗ればあとはただで乗つておる、こういうふうなべらぼうな割引をさせられておるわけでございます。これも公益事業といたしましてやむを得ないことと考えておるのでございますけれども、この定期客が年々増加して参りますので、私鉄の経営は非常に苦しいわけでございます。こういうわけでございまして、私鉄の業績も非常に悪うございまして、一部の特殊の鉄道や、都会地で非常に恵まれた環境にある数社を除きまして、配当もみな一割以下でございますし、中には二十七年度の下期の実績を見ますと、四十社というものが欠損または無配当でございます。また再評価のごときも先ほど申しましたように、第二次分も含めましてわずか五〇%にすぎないのでございます。  次に私鉄の支出のうちに電力費がどんな割合になつているかということを申し上げてみたいと思うのです。第三表をごらん願いたいのでありますが、これはちようど都合のいいといいますか、よくわかる表がございましたので参考にここにあげたわけでございますが、これは関西の七つの私鉄の実績でございます。これで見ますと、二十二年の上期には電力費が四・二%であつたものが二十七年の下期には一〇・九%までふえております。これは相次ぐ電力料金値上げによつてこういうふうになつたのであります。それから人件費は二十二年の上期には六〇%であつたものが、これが企業の努力と経営合理化によりまして二十七年の下期には四七%まで下つております。それから諸経費は二十二年の上期には一二・八でありましたものが二十七年の下期では二五・五になつております。これは先ほど申し上げましたように、新しい設備をどんどんつくりました関係で諸公課あるいは利子がだんだんふえて参つたのでありまして、この点は電気事業者とまつたく同じでございます。その結果どういうことが起るかと申しますと、人件費はそれだけ下つたにもかかわらず、諸経費と電力費がふえた関係で、この二行目にあります材料費、これは主として補修材料費であります。この補修材料費が二二・三パーセントから五・六パーセントであつたものが、二十七年の下期には一六%まで圧縮された、こういう形になつておるものでありまして、この状態でも補修は非常に苦しいために運転の安全も十分に確保いたしかねるというような状態になつているのでございますが、ここへ持つて来て、さらに電力費増加することになりますと人件費と諾経費はもうどうすることもできませんので、勢い材料費を食うよりほかにしかたがない。こうなつて来ますと、いよいよ鉄道の運転の安全が脅かされるようなことになるわけでございます。現在御承知のように鉄道運賃は値上げができない状態でございます。こういう際におきまして、電力料金の上るということは、非常に私鉄としては苦しいのでございまして、もちろんこの案のままのような大幅な値上げがあるということになりますと、私鉄としてはもう手をあげるよりしかたがないということになるわけでございます。現在全国の私鉄の占める電力量の比は全国平均いたしまして、最近の調査によりますと九・六%ということになつております。これがかりに六〇%上ることになりますと、約六%のものが補修費を食う、こういうことになるのでございます。従来は電力の割当制度の運用によりまして、先ほど申し上げましたように、私鉄に対しては特別な処置をとつていただいて、こういうような苦しい経営も続けて来たのでございますけれども、今度割当制度が廃止されて、そのまま裸になつて参りますとどうしてもやつて行けないという状態になつて、鉄道運賃の値上げも必然的に続いて考えなければならぬようになるのではないかということを常に心配しているわけでございます。この点につきまして電力会社におきましても、また関係当局におきましても、私鉄に対する料金値上げ影響ができるだけ少くなるようにということで、いろいろと考えていただいているようでありますけれども、ただ他の電解工業であるとか、あるいは化学肥料のように特約料金制度を利用することができないのでありまして、そういう点で非常にこの調整がむずかしいと思われます。こういう状態でありますので、ちようど私鉄に対して定期運賃制度を考えたと同じような考え方で、電力料金も私鉄のような公益事業に対しましては、特別な料金を考えていただくよりほかにしかたがないのではないかと考えられるわけでございます。こういうことを貴委員会におきましても十分に御考慮くださるようにお願いいたしたい次第でございます。
  13. 加藤宗平

    加藤委員長代理 ただいまの船君参考人の御意見に対して御質疑はありませんか。
  14. 松原喜之次

    ○松原委員 ちよつとお尋ねしたいのですが、最後の第三表、これに見合う戦前の標準年次のものはありませんか。
  15. 船石吉平

    ○船石参考人 今ちよつとないのでございます。
  16. 松原喜之次

    ○松原委員 それから七私鉄というのは、在阪五社以外に、あと三社はどこですか。
  17. 船石吉平

    ○船石参考人 神戸と山陽電鉄だつたと思います。
  18. 松原喜之次

    ○松原委員 山陽電鉄と神有ですか。
  19. 船石吉平

    ○船石参考人 そうです。あとは五大私鉄でございます。
  20. 松原喜之次

    ○松原委員 そうすると、特殊にこの割合の非常に違つた会社がありはしませんか。たとえば人件費が非常に多い会社というようなものはありませんか。
  21. 船石吉平

    ○船石参考人 これはただ内訳の推移を御説明するために持つて来たのでありまして今お話のように、特に小さな鉄道になりますと、その割合は非常に違つて来ます。ことに電力費割合も、小さい鉄道ではうんとふえて参ります。それからまた非常に大きな会社になりますと、比較的その割合が少くなるような場合もございます。ただこれはこの数字をお目にかけるのでなくして、こういうふうに移つているといういきさつを御説明いたすためにつけたものであります。
  22. 菊川忠雄

    ○菊川委員 これは船石さんの方だけに特にお尋ねすべきことでないのですが、一体電力会社はこういう特殊な電力を大口に使う企業に対して、こういう申請をするという前に何らかの打合せか何かやるものですか、何もやらないでただ電力会社独自で政府に対して申請をする、こういうことになつておりますか、どういう関連でしよう。
  23. 船石吉平

    ○船石参考人 それは前には全然相談いたしません。ただあとで、私ども影響があまり大きいので、関係官庁方面にもお願いしたり、運輸省の方にもお願いいたしましたので、電力会社の方でも、あとでいろいろと相談を始めたような次第でございます。
  24. 加藤宗平

    加藤委員長代理 ほかに御質疑はありませんか。——質疑がなければ、以上をもつて午前中の参考人各位よりの意見の聴取は終了いたしました。  午後は一時より引続いて参考人より意見を聴取いたします。  午前中はこれにて休憩いたします。     午前十一時五十八分休憩      ————◇—————     午後一時五十二分開議
  25. 加藤宗平

    加藤委員長代理 再開いたします。  午後は午前中に引続いて電気料金政策総合調整に関する件について、参考人より意見を聴取いたすことになつております。  この際参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。参考人各位には本日御多用中にもかかわらず本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございました。ここに厚くお礼申し上げます。ただいま本委員会におきましては、電気料金政策総合調整に関して調査を進めておりますが、このたびの電気料金値上げの問題につきましては、各方面に及ぼす影響はきわめて大なるものがあると考えられますので、利害関係者たる参考人各位には、それぞれの立場において忌憚のない御意見を開陳されまして、本調査参考に資されたいと存じます。  これより参考人各位の御意見を聴取いたすわけでありますが、御意見の開陳は御一人十五分ぐらいずつにお願いいたします。これより順次参考人より御意見を伺うことといたします。株式会社三越百貨店庶務部副長内田確君。
  26. 内田確

    ○内田参考人 電気料金値上げについては、私どもは業務用の電力需用者でありますが、戦後年々歳々繰返されて来た電力需給の不均衡による停電、節電、使用禁止等の電力制限に悩まされて来ました私ども需用者立場としては、一日も早く電源開発が進みまして、需給の均衡がとれ、安心してしかも安定した電気の使用ができることを望んでおるものであります。幸い最一近著しく電源開発も進められまして、年を追うて発電力が増強されつつあることはまことにけつこうなことであります。この新規電源開発分の建設費が高くかかるので、資本費が増加することは当然であると思われます。従つて、総括電力原価が高騰することも認めないわけには行かないと存ずるのであります。しかしながら現下国をあげて緊縮政策が叫ばれている折柄、需用者負担のみにおいてこの電気料金値上げが解決されることは必然的に生産物価高騰を来し、政府の低物価政策を阻害し、産業経済の上からはもちろん、国民生活を脅かすものと思われますので、このような姿での料金値上げは絶対に避けなければならないと存じます。しかしながら電源開発の促進は絶対に阻害されるようなことがあつてはならないので、このためには一方電気事業内部の一層の経営合理化を希望しますし、さらに他方政府及び国会におかれましても、この原価高の原因である資本費の軽減のために公益事業の性格上特に開銀金利の引下げ、固定資産税、法人税、事業税等の減免、さらには電気税の全廃等に努力されて、国民負担にならないように処理されることを望むのであります。  次に、料金制度の改訂につきましては、申請の料金制度は現行の割当制に比較しまして、公平妥当に近いと思われますので、割当の廃止に賛成したいと思います。百貨店は業務用電力の適用を受けているのでありますが、以前から割当の廃止と料金の一本化を願つているのであります。すなわち現行の割当制度は電力不足による需給調整の目的のために昭和二十四年十二月に定められたものでありますが、これは使用電力量の制限のための割当というよりも、安い料金使用できる電力量の割当となりまして、実際の電力不足時の制限とは無関係となつているのであります。また割当量の基準が、昭和二十五年七月から二十六年六月までの一箇年の各月の使用実績によつて割当量が定められているために、月々の使用単価が不同であるごとと、三年後の今日では使用状態も非常にかわつておりますために、割当量をはるかに超過して一般使用している状態であります。従つて単価も非常に高額となり、月々の差もはなはだしく、また同じ業態でも単価の差が多いのであります。このことは大口需用においても同様であると思います。こういう欠陥は料金の一本化と割当の廃止によつて事務の煩雑によるむだな経費とともに消滅することができると思います。このような理由で、現行割当制度の廃止には賛意を表したいと思います。今回申請の負荷率別料金制は、基準を最近の二箇年の実績の負荷率によつて標準電力料を定めたために、料金単価は高くなりましたが、公平化されたので、一本料金化の実現を望みたいのでありますが、まだ需給の均衡が不完全な現段階としては、この程度の料金制度でいいのではないかと思われます。ただ業務用としましては、頭打ちについては、大口需用と同様に差別のないようにしていただきたいと思います。かつそのほか大口の負担金が非常に多いように思われますので、これが軽減をはかつていただくように研究されていただきたいと思います。  なお百貨店の今回の値上げによる影響と申しますか、値上げ率は、四、五分から多いところで四割くらいに当ると思います。従来業務用の単価は非常に高いので、ございまして、大口使用しております私どもとしては、電力関係とあまり電力料金の差をひどくされないように希望したいのであります。
  27. 加藤宗平

    加藤委員長代理 ただいまの内田参考人の御意見に対して、御質疑はありませんか。
  28. 菊川忠雄

    ○菊川委員 ちよつとお尋ねしますが、おたくの三越百貨店では、これは季節によつて違いましようけれども、今までの大体平均した目安でけつこうですが、電力料金というものは、経常費のどれくらいのパーセンテージでございますか。それからそれが今度の総合改訂の結果はどれくらい電力料金のパーセンテージが上るかというような見当がございましたらお話願いたいと思います。
  29. 内田確

    ○内田参考人 私は技術屋の方で、営業費の方の関係を詳しく知りませんので、はつきりしたお答えができないと思いますが……。
  30. 菊川忠雄

    ○菊川委員 それではよろしゆうございます。
  31. 加藤宗平

    加藤委員長代理 御質疑がなければ、次に移ります。  昭和電工株式会社常務取締役鈴木治雄君。
  32. 鈴木治雄

    ○鈴木参考人 私は昭和電工の鈴木でございます。私これから述べさせていただきますことは、私ども立場と、それから今回の値上げによりまして、どういう具体的な影響があるかという問題と、最後に今回の値上げに対しまする私どもの要望を簡潔に申し述べたいと思います。  まず第一に立場でございますが、私ども会社は電気化学工業を営んでおるわけであります。電気化学工業と申しますのは、御承知のように、硫安とか、石灰窒素、合成燐肥といつたような肥料でございます。あるいは苛性ソーダ、塩素、塩酸カリ、青化ソーダといつたような薬品、それからカーバイト、合成樹脂、合成繊維の原料といつたような重要化学工業製品の製造をやつておるわけであります。そのほかにまたアルミニュームとか、製鉄、製鋼、フェロ・アロイ、黒鉛電極、研磨材というような工業製品、これはいずれも電力を大量に原料として消費する製造工業であります。それでこういうような製品はいずれも衣食住その他国民生活に密接に関係のある製品でありまして、原価における電力費の占める位置も非常に大きいわけであります。さらにこのうち硫安とかアルミニユウム、電極、鍋製品といつたようなものは、外貨不足の昨今、輸出産業として非常に重要なものでございます。またカーバイトを原料にしてやつております合成繊維のごときは、輸入防遏の観点から非常に重要な産業であるというふうに思つておるわけであります。それで電気化学工業が年間に消費しているキロワット・アワーは、二十八年度に約百億キロワット・アワーでございまして、電気事業者の総販売電力量の約四分の一を占めておるわけであります。現在私どもはかように大量の電力を消費しておりますが、電力会社といろいろな面で非常に協力しておるわけであります。と申しますのは、深夜間に非常に電力が余る。あるいはお正月とかメーデーの日とか、そういうような日に電力が余るというようなものをすべて有効に使つておる。それからまた豊水期に電力が非常にふえますが、そういうときにもできるだけ余剩の電力を消費しておるというような意味合いにおきまして、電力の非常に大きな波を調整しておるという役割をしておるわけであります。私ども会社は、今東京電力の特別大口の約二七%、東北電力の一八%、北陸電力の八%、中部電力の一二%程度のものを特別大口のうち使つておりますが、いずれも大体工場は発電所の近くの山元に置きまして、送電のロスの少いようなところ、また都会にもございます。それは都市の深夜間における余剰電力を大部分使用するというようなことでできておるわけでございます。このように非常に電力を大品に使用いたしますので、戦前は自家用電力を非常に持つておりましたけれども、それが電力国営によりまして全部自家発をとられてしまいまして、目下はそれを売電しておる。その売電が非常に値上りになり大幅になる傾向がありますので、非常に困るわけでございます。今度の値上げによつて一般には一割一分四厘の値上げというふうに言われておりますけれども料金規定がそのまま自動的に適用された場合には、私どもの工場が方々にございますが、八割九分、四割三分、六割、七割九分、五割、三割三分、三割九分というように非常に大幅の値上げになるわけでございます。一般に言われておりますように一割一分四厘の値上げでは決して納まらぬ、はるかに大幅な値上げになるということでございます。電力会社の方ではそういう規定によらずに、特約によつてもつと少い程度の値上げで済むのだと言つておりますけれども、提案されておる特約料金によりましても、四割、五割、六割というような大幅な値上げの見通しの工場が多いわけでございます。影響はそういうことでございます。  そこで最後に申請書に対する要望を申し述べさしていただきますが、総括原価につきましては、これはいろいろな立場から厳密に査定されておりますので、私はここに意見を申し述べません。願わくは原価のあらゆる項目が厳正に査定されまして、最低額に査定されることを要望したいわけであります。         一  次に工業用の電力一般電力との問題でありますが、二十六年の引上げのときに、平均の値上げが二割一分でございましたが、特別大口はそのときに二割六分の値上げとなりました。二十七年の値上げのときは、一般の平均が二割八分でありまして、特別大口は四割一分三厘という、はるかに高い値上げであります。今回もただいま申しましたように、工業用の大品に非常に大幅な負担がかかるわけであります。一般に大口の方が安く、普通の小口が高いのではないかという漠然とした知識が普遍しておるようでございますが、私どもから考えますと、たとえばアメリカでは、工業用電力一般家庭電力というものの電力の較差はどうなつておるかということを調べますと、日本の方がはるかに小さいわけであります。私どもといたしましては、日本が国際経済競争をやり、工業立国で行く以上、やはり工業用電力というものはできるだけ安くすべきではないか、そういうふうに考えます。そこで前二回においても、このように大品に非常に負担がかかつておりますので、今回の値上げの場合には、ぜひこの問題を調整していただきたい、訂正していただきたい、最悪の場合でも、一般値上率を上まわらざる値上げにとどめていただきたいということが、真剣なる要求でございます。  最後に制度の問題でございますが、先ほど割当制度の廃止に対して御賛成意見もございましたけれども、現在の日本経済というものは非常に困難がありまして、決して野放しにするとか、そういうような事態ではないのではないか。電力の需給がすべてミートしていればともかく、いまだに電源開発の過渡期でありまして、非常に不足なのでありますから、やはり重要物資の生産について支障なからしめるような割当制度の存続というものは、どうしても必要ではないかというふうに考えるわけであります。かりに現在の割当制度については不都合な点があれば、そういう点は是正すべきでありますが、ここで野放しにして消費抑制を行わない、重要産業の計画性あるいは生産というものについて自由にするということは非常に心配なことではないか。そういう制度の改廃と値上げと二つが今度の値上げには入りまじつてつているわけでありまして、問題の所在が非常に不明確になつているわけであります。この値上げの問題と制度の撤廃という問題は、すべからく分離して考えるべきでありまして、値上げについては先ほど申しましたように、総括原価を厳正に査定して、最低にとどまらしめるべきでありますし、制度の改廃につきましては、日本の経済の当面しておる現在のむずかしい状態を勘案しまして、電力の需給が十分になつたときに制度の改廃を行うべきである。もしも現在の割当制度について不都合な点がありますれば、そういう点は具体的に検討して是正すべきではないか、こういうふうに思います。特に特約制度ということを非常に申しますが、それは現在の電力で需給が均衡のとれていない段階におきまして、とにかく電力会社の一方的な通告によつて電力を使わなければいかぬ、負荷の調整というようなことが非常に一方的になるのではないかというような点が力関係からいいまして非常に消費者としては弱い立場になりますので、電力の供給の質についても非常に心配いたしたわけであります。要するに私どもといたしましては電源開発も進むわけでありますから、重要産業については年々その開発の度合いに応じて電力の供給量がふえるべきである。第二に、質の点については、従来の質よりもよい質の電力がもらえるはずである。第三の価格の点については、一般値上率よりも大幅の値上げになつては、とうていがまんし得ないということになるだろうかと思います。結論的に申し上げますとそういうことになります。
  33. 加藤宗平

    加藤委員長代理 ただいまの鈴木参考人の御意見に対して御質疑はありませんか。
  34. 菊川忠雄

    ○菊川委員 午前中にもお尋ねしたのですが、硫安工業のようなものは電力を重要なる主要原料とする産業であり、従つて電力会社から見れば一番大事なお得意になる。そういう向きに対しても従来こういう料金なり、あるいは制度の改正の際に、申請の以前に調査あるいは打合せを電力会社の方からあなた方の方になさつておるのでありますか、ないのですか。そういう慣習があるかどうか、今回はあつたか、なかつたか、そういうことについてちよつとお尋ねしておきたい。
  35. 鈴木治雄

    ○鈴木参考人 ただいまの御質問でありますが、電力料値上げという問題は、九電力会社が話合いで御承知のように申請書をつくるわけであります。それはもつぱら電力会社が自主的にと申しますか、消費者意見を聞かないでつくつたものであろうと思います。それについての具体的なやり方については今回の場合も、ある程度割当制度が撤廃された場合には、それにかわるべき特約制度というもので円滑に運営したいということを抽象的にも言つておられますし、ある場合には具体的な相談があるわけでありますけれども、特約というものはいわば個々の電力会社消費者契約、普通の私法上の契約でありますから、別に強制力がないわけです。従つて先ほど申しましたように、割当の場合には規定通りやられる。そうしますと驚くような大幅の値上げになる。そうしてかりに特別契約をやりましても、相当な幅の値上げになるということで、もちろん全然話合いというか、御質問の趣旨がよくわかりませんけれども、全然連絡がないというわけではありませんけれども、その間の両者の考え方、その他については非常に相違があるということでございます。そこでここですぐ制度を大きく変更してしまつたというような場合については、消費者としては非常に大きな不安がある。そこでそういう制度の改廃を行うならば、慎重に、今御質問があつたように、消費者も納得できるような事前の十分な討議と調査と検討がなされた後にさる、べきものである。それに対しては相当時間がいるのではないかというふうに考えます。
  36. 菊川忠雄

    ○菊川委員 こういう質問を私が何度もするのは、私どもの考えから申しますと、今日こういう重要な日本経済並びに日本のそれぞれの産業影響のある電力料金改訂というようなことを、従来一電力会社あるいは九つの電力会社の業者のみが相談をして政府に申請をする、こういうやり方そのものが妥当かどうかということがわれわれの研究すべき問題だ、こう考えるからなのであります。従つてこれはそれぞれの政党の立場によつて違う点もありまするが、本来ならばこういう電力事業経営そのものの根本を考えなければなりませんけれども、少くとも電力料金改訂というものは、直接需用者影響を及ぼし、それがひいて国民生活と日本経済全般に影響を及ぼす。こういうものについては電力会社がきめて申請をすべき事柄ではなくて、もつと広い国民的な各層の意見のもとに申請がさるべきである。こういう考えを持つておるわけですから、今日電力事業経営する人が公益的な精神を持つておるとすれば、当然こういう建前をとつてしかるべきと考えます。そういう点からいたしまして、多少とも重要な関連産業の向きに対しては何らかそういうふうなことが従来行われておるかどうか、慣例があれば知りたい、こういう意味であります。そうしますると、その一部としての特約というような問題については、業務上営業上やる電力会社仕事なのであつて、その根本である改訂の問題全体について、たとえば硫安工業にはこの結果どういう影響が来るか、それは従つて企業内部で負担し得る問題であるかということは、電力会社として調査の必要上、それぞれ硫安会社には尋ねにも来ないし、資料を求めにも来ないし、また意見も聞いていないのが今までのやり方だ、こういうふうに見ていいかどうか、こういう点であります。
  37. 鈴木治雄

    ○鈴木参考人 今のお話非常にごもつともでありまして、そうすべきだと思いますが、実際は事前に硫安会社意見を聞くというようなことはありません。しかしながら電力会社としては、あるいは自分の調査機関を動員して自主的に調査されているかもしれませんけれども、われわれの方の立場からいいますと、今御質問のような趣旨のことはないのですから、ぜひそういう趣旨を電力会社におつしやつていただきたいと思います。おそらく電力会社は申請する際には、そういう影響よりは自己の経営が採算的にできるかどうかという見地からもつぱら申請をしておるだろうと思うのです。
  38. 菊川忠雄

    ○菊川委員 ありがとうございました。
  39. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今度値上げをすることになりますと、あなたの工場のいろいろな諸製品のコスト、そういうものにどんな影響がありますか、もう少し詳しく伺いたいということが一つ。もう一つは割当制度を廃止して特約制度にすることは需用家に対して非常に不利益だというお話でしたが、その不利益だということの少し具体的なお話を教えていた溶きたいと思います。
  40. 鈴木治雄

    ○鈴木参考人 コストに対してどういう影響があるかということのお話ですが、先ほどから硫安の話が出ておりますので、硫安を一例にして硫安への影響の具体的な数字をお話したら非常にいいのじやないかと思います。硫安に関しましては、実は硫安工業協会というものがありまして、それで各会社の硫安工場に対する影響の調べがございます。それをちよつとごひろういたしたいと思いますが、硫安は製法が二つございまして、電解法とガス法というのがありますが、電解法で一トン四千三百十四円、ガス法で九百四十六円、平均いたしまして一千五百二十八円というトン当り値上げでございます。硫安は一般にかますで取引されておりますが、相場が現在大体八百五、六十円かと思います。それで一かます平均いたしまして五十七円程度値上がりになるわけであります。コストに対する具体的な影響はそういうことであります。  それからもう一点の特約の悪い点という御質問でございますが、御承知のように、現在電力はまだ需給関係が均衡をとれていないわけであります。そこで特約制度に移る場合には、どうしても消費者の都合よりは電力会社の都合のいいように契約ができる。もつと端的に言えば、余つたときは電力をよけい使え、足りないときは使つてもらつては困るというような形の、消費者からいいますと、非常に使いにくい電気を使えというような形の契約になりかねないわけであります。つまり質の問題について非常に心配である、一方的に押しつけられる心配が非常に大きいという点が私どもとして心配しておる点であるわけであります。それから全体の供給量についても別に責任的なものがありませんから、場合によつては量が減ることがあるのじやないか、もしもそれをふやしたいという場合には、料金がその見合いにおいて高いものを買うという形で、量の点と質の点と価格の三つの点で非常に不安があるということであります。そういう不安はなぜあるかといえば、需用が多くて供給が少いわけでありますから、これを今の割当を廃止して自由な形に置けばどうしても売手市場になりますから、そういう点が消費者としては懸念されるというわけであります。
  41. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今のは硫安工業協会の意見書の中に出ておる数字だと思うのですが、これを見ますと特約による割引は考慮しないで五十七円三十二銭ということなんですか。
  42. 鈴木治雄

    ○鈴木参考人 そうです。
  43. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 特約による割引というのは今から想定できないでしようけれども、大体目安としてこれを考慮に入れますと、どういうような見当が出て来るのでしようか。
  44. 鈴木治雄

    ○鈴木参考人 今の御質問ですが、特約は各工場によつて全部違うわけであります。ですから特約があつた場合には、ではこれより幾ら下るか——下ることは下ると思いますが、ただその幅についてはどの程度の下り方かということは非常に推定になりますし、不確実になりますが、このものをかりに一〇〇といたしますれば、個々の場合については単価としては六〇とか七〇とか八〇というふうに下るのじやないかと思います。ただ問題は先ほど申しましたように、負荷というものの性質というような、質的な面の悪化というものがなかなか価格に捕捉し得ない面もありますから、事実上どの程度下るかということについては非常に問題だと思います。
  45. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そうすると、特約による低下という問題は各工場によつて違う。その場合にもそうなりますと、特約それ自身がやはり大きな工場と小さな工場では条件が違つて来る。従つて特約制度というものは比較的大きな工場はそれによつて下るし、小さな工場にはしわ寄せが行くという結果も出て来るおそれもあるわけですか。
  46. 鈴木治雄

    ○鈴木参考人 それは必ずしも観念的にそうも言えないかと思います。場合によつては大きな工場に大きなしわが寄るし、小さな工場がよくなる場合もあるかと思います。要するに特約というのは個々の契約ですから、そこに共通のルールがない。ですから現在の割当制度からかりに特約に移るにしても、特約の模範的といいますか、標準的なものはこうあるべしといつた一定のものさしがやはりいるのではないか、そういう点についても審議するためには十二分の供給側と消費者側との、あるいはさらに高い見地でそれを見る政府なりの中立的な、より高度な見解というふうなものも加味されて、そういう一つの標準ができるにあらずんば非常に力関係で不幸なところもできるし、比較的そうでないところもできるかもしれぬ。そういう点がすべてあいまいでありますから、やはり一気に廃止して自由放任にするということについては消費者として非常に不安感が多いということであります。
  47. 松原喜之次

    ○松原委員 硫安工業ですか、硫安だけではなしに、重化学工業と言われる方の電力の需用の量は一番大きなものでありますから、それで特にお伺いしたいのですが、三年か四年前に電力会社の九分割が行われた。その際においてあなた方の業界は賛成せられたのかあるいは反対をせられたのか、その際にいずれの理由があつてそうされたか、その後の経過ははたしてそのときに考えられたのと同じ結果が生れておるか、こういう点についてお考えを承つておきたいと思います。
  48. 鈴木治雄

    ○鈴木参考人 ただいまの御質問でありますが、当時の九電力会社への分割という問題は、私はつきり記憶しておりませんけれども、やはり占領政策の一環として多分にそういう思想のもとに行われたかのように記憶しております。従つて硫安業界が九分割によつて得か損かあるいは是か非かということについてさほど真剣な論議がされたように私記憶しておりません。おそらく九分割によつて論議されていたいい点というようなものを割合——傍観者ではございませんけれども、それじや硫安がこう言つたから九分割がやまるとかやまらぬとかいうような発言力もなかつたと思いますので、ただ観察し推移したということだと思います。従つてその当時こういうふうになつたらこういう利点があるとかという点について硫安企業に対して約束的なものはなかつたかというふうに考えております。
  49. 加藤宗平

    加藤委員長代理 ほかに御質問はありませんか。御質疑がなければ次に移ります。株式会社小松製作所資材部長石井格君。
  50. 石井格

    ○石井参考人 小松製作所の石井格でございます。私の方はここへお出しいたしました日本機械工業会の「電気料金値上げ並に料金制度改正に関する要望」というのがございます。これをひとつ参考にごらん願いたいと思います。それからここに同じものをガリ版で刷つてございますが、ここに書いてありまする通り、値上げにつきまして結論から申し上げますと、日本機械工業会といたしましても理由なく反対をするものではありませんが、総合的結論を申しますと値上げには反対である、こういうことを申し上げるのであります。私はちようど金属機械工業をやつております小松製作所の関係でございまして、従いましておもに私の会社に関することとなるのでありますが、その理由といたしましても、ここへ書いてあります通り、なぜこれがいけないかと申しますと、機械工業の企業合理化現状を見てみまするときに、電力会社側の内容を分析してみますと、やはり資本の再評価なり資産の償却なり人件費の増大等、相当に再検討を要するものがありまして、これはやはり政府の施策におかれましても固定資産税の軽減とか開発資金の利子軽減とかの考慮を煩わしていただきたい、こういうことを強調したいのであります。  それから第二の理由といたしましては、物価の値下げを強行して輸出の振興をはかつておる際でございますときに、この基本政策にわたりますような値上げというものはまつたく矛盾を来す、こういうことが言えるのであります。それからわれわれのやつております全国の主要動力の工場、それから電熱を使いまする工場に対する電力の今回の影響を見てみますと、電力会社全国平均一四・四%につきまして、われわれの平均値上げ率が二十・四%になつております。二七・四というものは相当大きな数字と思うのでありますが、われわれのやつており粟津の工場を例にとつてみますと、粟津の工場の今予想される値上げが大体三五%、三割五分くらいの値上げをこうむるわけであります。一方同じ石川県でございますが、小松の工場の例をとりますと四七%になつておる、こういう現況に置かれておるのであります。これをもう少し分析いたしまして、コストに、どれくらいこれが及ぼして来るかという例をとつて参りますと、これは鋳鋼品の例をとりますと、鋳鋼品で大体二・五%ぐらいのコストの値上りを見るのであります。これを掘り下げまして、たとえばトン当り九万円のものをつくつたといたしますとやはり二千二、三百円の値上げが当然出て参りまして、販売のときにこれだけ減る。販売価の方はどうかといいますと、われわれいろいろ官庁あたりへも納めておりますが、その値段は結局かわらない。そうするとその差額というものをどうするか、こういう問題に逢着いたしまして、非常に困難を来すわけであります。  それから次に申し上げたいことは、機械工場といたしましては非常に電気の電圧が低下をいたしまして、これによつて受ける影響が非常に大きいのであります。これも例を申し上げますと、粟津の工場は電力が三万ボルトでありますが、ときによつては千ボルトぐらいも下つて来る。このために電気炉の操業に非常に影響をこうむりまして、その一つの電気炉の利用が非常にだめになる、うまく行かぬということがしばしばございます。こういう能率のはなはだ低下する場合をもう少し考えられて予防を講じていただきたい、こういうことを要望するのでございます。  それからその次に申し上げたいのは、われわれの機械工業におきましては通告電力の七〇ないし八〇%程度に相当する実績を上げなければならぬというような責任額といつたものがあるのであります。これにつきましては負荷率の比較的よくない機械を扱います工業におきましては非常に不向きである、こういうことが言えるのでありますが、この点も何らか講じていただければ仕合せだ、こういうぐあいに思つております。  それから料金制度の実施には、われわれのような夜じやなくて昼間操業をいたしておりますものにつきましては、常時電力料金が二・五倍以上になつたことにもよるのでありますが、この値上げ率が高くなれば、機械工場はどこの工場でも常時電力に依存して、昼間に稼働しているのが建前でありますが、この昼間の操業を阻害するような料金制度の実施には反対である、こういうことは言えるのであります。  それからもう一つ次に申し上げたいのは、需用電力料金が十五分の実績最大をとるということに最近はなつたのでありますが、電気炉を使つておりまする工場におきましては、非常にピークがかわつて来ます関係でこれは非常に不利なんでありまして、電力会社からすればそういうものをねらつて十五分を計量をして、そうして高い料金をとるということは望ましいのでありましようが、われわれ使う方から申しますと、非常に不利になりまして、従来より高い電力を結局使いましてこれがまたコストに影響して来る、こういうことが非常にわれわれとしては言いたいのでありまして、これも制度の上からぜひもう一度改正をされまして、一時間計量による電力料金、こういうぐあいに改めていただきたい、こういうことを要望するのであります。  大体そういうことでありますが、先ほど鈴木さんから申されましたように、機械工業におきましては電力の量についてのみならず、質においても禍根のないような電力を供給されることを強く要望されまして、単に監督規則において規定するにとどめませんで、一定の電圧、電力の総量を実際に確保していただくように処置を願いたい、そういう要望を願いまして、そうして需用者側としまして、衷心良質の電力でいい製品を安くということに心がけるつもりで協力を惜しまないものであります。大体そういうことで終ります。
  51. 加藤宗平

    加藤委員長代理 ただいまの石井参考人の御意見に対して御質疑はありませんか。
  52. 菊川忠雄

    ○菊川委員 私は全然しろうとなので、これはちよつとお教えを願う意味でお尋ねいたしますが、午前中の石炭協会の代表者の要望の中にも、大口最大電力の決定は月間十五分を一時間計量に改めるということがあるのであります。大体各大口電力を使われる向きは今回そういう要望のようでありますが、これは十五分を一時間というふうにすることは、十五分をもつと長くする意味ですか、一時間が適当であるという意味であるのか、一時間ということは技術的にどういうことを意味するのか、これをお教えを願いたいのであります。
  53. 石井格

    ○石井参考人 これは従来電気というものが始まりまして以来ずつと計量というものは一時間でやるということで進んで来た、設備もそういうぐあいにできて来ていたわけであります。何年間か長い間の習慣が一時間の計量、こういうことで進んで来ておりましたが、ところがいろいろと値上げ理由の一つといたしまして、瞬間的に負荷が非常に大きくなるところがある。そうするとある十五分をとりますと、そこに高い負荷の記録を読み上げられます。その次の十五分には非常に低かつた。またある点は高かつた、またあとの十五分ではすごい変化をしている、こういうことが早い話が一々記録に載つて、それによつて料金をとられる。こういうことになるわけであります。一時間ということになりますと、それが平均いたしまして、高いところだけじやなくて、一時間のいわゆる平均値をもつてやられるものでありますから、その最大が少し低くなる、こういうことから実際的には長い行き方が、使う方としては低賃金で安い、こういうことから出発したのでありまして、使う方と供給する方とはまつたく反対立場になるものと思われます。
  54. 菊川忠雄

    ○菊川委員 私も実は先日ある町工場を見まして、旋盤を使う現場で実際に計量器を見せてもらつたのです。十五分では電力会社はもうけるであろうけれども、使う方は困るということはわかるのです。そこでこれは電力会社の方にもいずれお伺いする機会があると思いますけれども、一体今回十五分というように電力会社が区切つたのはどこに電力会社の方から見ての事情があるとあなた方はお考えになつておるか。ただ料金計算のためにこれが電力会社としては有利だというのか、何か技術上十五分にしなければならぬ電力会社側に事情があるのか、これを私はしろうとだから、ひとつお教えを願いたい。
  55. 石井格

    ○石井参考人 これは明確なことは私も存じませんが、大体単位が一時間であつて、なるたけ短いほどいいわけなのでありまして、でき得べくんば五分でも十分でも、その方がいいのではないかと思います。しかしそういたしますと、計器の設備の問題でいろいろとまた困るのではないか、それにつきましてはこれは私の想像でありますが、四分の一としまして、十五分とつておけば、相当確実にピークに応じ得るのじやないか。電気炉あたりでは、大体十五分くらい相当使いまして、あとの三十分くらいは流すという場合も出て来るのであります。そういう計算上の問題と、それから計器設備の問題と、それから料金とからみましてできたものではないかと思います。これは間違つておるかもしれませんが、そういうぐあいに想像しております。
  56. 加藤宗平

    加藤委員長代理 ほかに御質疑はありませんか。——卸質疑がなければ次に移ります。  主婦 吉岡時子君
  57. 吉岡時子

    ○吉岡参考人 今回の電気料金値上げにつきましては、家庭婦人の立場から私は絶対に反対をいたします。  来る四月一日から現行料金の一割四分四厘の値上げをする申請を通産省にいたした電力会社九社の申し分によりますと、二十七年度の電力原価総計一千四百四十八億円に比べて、二十九年度の原価総計は二千百一億になつたために、六百五十四億円の原価増しとなるが、販売電力量が六十九億キロワット増加したので、これによる料金収入が三百九十億円増しとなるので、これを差引きました二百六十億円が電力原価の純増であつて、これは資本費負担増加によるもので、この二百六十億円に原価増しを吸収するための電気料金値上げ全国平均一割四分四厘となると言つております。この数字による説明理由は、一応当事者としての申し分でありましようが、しかし生活必需品であり、あらゆる産業の原動力である電気が、今ここで一割四分四厘の値上げをいたしますと、あらゆる生産物啓または交通費に、娯楽費に割当てられて参りますと、すべての物品、すべての営業面で、電気料金値上げによる値上げということになつて、たちまちにして国民生活が極度に脅かされることになると思います。たとえば電燈代だけをとつてみましても、定額電燈で六十ワットと四十ワットの二燈に、ラジオ三十ボルト・アンペアの一台の現行料金は、夏期料金が三百円で、冬期料金が三百五十四円でありますが、新料金、すなわち値上げ後では、夏期料金が三百三十七円、冬期料金が四百十三円で、一割二分以上の値上げになつております。メートル制で、十燈以下で五十キロ時を使う家庭では、現行料金が夏期料金で三百四十一円、冬期料金が五百二十七円でありますが、新料金から見ますと、夏期料金が四百十五円、冬期料金が五百九十円で、これは一割七分の値上げとなります。またメートル制で、上手に主婦が電気を使つて四十五キロ内にとどめて、超過料金を支払わなかつた場合をとつてみますと、現行料金は夏期において二百八十六円、冬期においては四百七十円が支払われ、新料金では夏期において三百八十三円、冬期におきましては五百四十円で、これは二割四分という高率な値上げになつております。  以上のように、原案にいわれるところの値上げ率と、実際の支払い値上げ高とは大きな差があるのであります。この値上げ案が通りますと、メートル制の家庭アンペア制がしかれることになりまして、ラジオを聞きながら、アイロンをかけつつ、モーターで井戸水をくみ上げるような能率的なことはとうていできなくなるのでございます。たとえば十燈の家庭で五アンペア用のヒューズをつけられますと、この強さは五百ワットが限度ですから、かりに五級スーパー一台で六十ワツトを、アイロン三ポンドで二百ワットを使えば、電燈の半分は消しておかなければならないという不便がございます。またモーターで井戸水をくみ上げている家庭では、十アンペア契約をしなければならない。こういうことになりますと、現行の百六十五円の基本料金が百八十円にはね上る結果となります。家庭消費電力料金最低限度で以上のような数字になりますが、家庭によつては、冷蔵庫を、洗濯機を、掃除機を、電蓄、さてはミキサー、トースター等、あらゆる電気器具にたよつて生活している家庭では、どんなに大きな負担になることでございましよう。たとい電燈のみ電力によるという家庭におきまして、値上げされてもたかだか三十円か四十円で、タバコ一箱くらいの差という考えを持つている人もあるかもしれませんが、食生活、衣生活の原動力が電気産業に依存しております今日では、さつそくに家庭消費面で絶対的に行き詰まりを味わわされることになるのでございます。私の家庭の交通費を例にとりまして、たとえばメートルー制電気料金の四十五キロわく内で、超過料金を支払わなかつた場合の料金値上げ高、すなわち二割四分をそのまま交通費に振りかけたといたしますと、夫の勤人がバス、国電、都電、息子の大学生が私鉄、都電、娘の高校生がバス、国電を利用いたしますので、以上の定期券使用に現在は三千七百五十円を支払つておりますが、これを二割四分値上げと仮定いたしますと、新料金は四千六百五十円という数字になります。この数字は、都電一本とか、また国電内まわり線のみの通勤者、学生の方々から見ますと、脅威的な数字であるかもしれませんが、近時郊外生活者がふえて参りまして、学生、また勤人が都心よりよほど遠隔のところから出て参りますので、この程度の出費をしておる人がかなり多いと私は思うのでございます。  かような現状にあります庶民階級の上に、四月一日より電気料金値上げを断行されるといたしますと、続々諸物価の暴騰を招くことになりますが、はたして勤人のサラリーが四月一日をもつて、ただちに二割四分以上の増俸が約束されるものであるとは考えられないのでございます。その結果、生活苦のあまり、またく賃金値上げ闘争に拍車をかけることになりまして、ストライキに明けてストライキに暮れる始末になり、ひいては国民生活機能の円滑を欠くことになる憂いがあると存じます。また電気料金値上げにより、夜間学校の経営などにも大きく響くものと思われますが、この値上げ料金支払い費は、必ず学生の授業料にしわ寄せされるのではないかと思います。授業料の値上げによつて、せつかくの進単の志を思いとどまらなければならない有為なる青年男女学生が出て来ることによつて、将来国を背負つて立つ青年を、みすみすみがかずして地中に葬つてしまうような愚かなことになると思います。公益事業と言われております電力会社の言い分の一つに、資本構成の不均衡を是正するために、株式資本の拡充をはかり、一割二分の安定配当を考慮中と聞いておりますが、全発電量の二割しか消費しない家庭から全収入の四割を上げているという矛盾はどういうふうに解釈すべきでございましようか。戦後インフレに次ぐインフレで精魂尽きた国民生活が、まだまだ元通りに立ち返つていない今日、しかも公益事業であるところの電力会社が、完全に黒字財政を目ざして、その負担国民にかぶせ、もつて国内経済を撹乱させる原因となることは、現内閣の緊縮政策を根底からくつがえすものと考えられます。  以上述べましたように、すべての物価高となる電気料金をあえて値上げするならば、輸出の振興にも影響を来し、日本経済を面目ないものに陥れると思いまして、今次の電気料金値上げには絶対反対を唱えるものでございます。
  58. 加藤宗平

    加藤委員長代理 ただいまの吉岡参考人の御意見に対して御質疑はありませんか。
  59. 菊川忠雄

    ○菊川委員 ちよつと吉岡さんにお尋ねします。たとえばお宅で申しますと、御家族何人で、そうしてこまかいことは別ですが、収入の中の何パーセントぐらいが現在の電気料金になつておりますか。これは計算されておるわけではないでしようから目分量でけつこうです。そうして大体今お話のような程度でよろしいのですが、今度の改訂料金の結果どれくらいにはね返つてつて来るかといつたようなことも計算ございますか。1つまり家計の中で何パーセントくらいが電気料金になるだろうかということです。それからそれが今度、今のお話の電燈料並びに交通費というものにもはね返つて来るだろうということも含められて、どれくらいにふえるだろうか。収入は絶対にふえるとは考えられませんね。
  60. 吉岡時子

    ○吉岡参考人 私ども家庭はただ四人の家族でございまして、ただいまは都営住宅に住んでおりますので、電燈数といたしましてはわずかなんでございますけれども、やはり電気アイロンを使いましたりいたしますために、私どもとしましては極力一燈制をもつていたしておるのでございますけれども、全収入の幾らになりますか……。私どもではおそらく五百円くらいずつを電燈料に払つておるのでありますが、まことに不備でございまして失礼でございますが……。
  61. 菊川忠雄

    ○菊川委員 それでよろしゆうございます。
  62. 吉岡時子

    ○吉岡参考人 私はつきり申し上げますと、主人の収入がただいまのところ税を抜きまして二万五千円でございますが、その中から五百円くらいずつを支払つておるのでございます。
  63. 菊川忠雄

    ○菊川委員 どうも失礼いたしました。
  64. 加藤宗平

    加藤委員長代理 ほかに御質疑はありませんか——質疑がなければ次に移ります。  鐘渕紡績株式会社常務取締役江越道俊君。
  65. 江越道俊

    ○江越参考人 鐘渕紡績株式会社の江越道俊であります。  九電力会社から申請されました電力料金改正が、わが鐘渕紡績株式会社に与えるであろうところの影響をここに陳述をいたしまして、関係各位の十分なる御勘考と御善処をお願い申し上げたいと存じます。  まず結論的に申し上げますと、料金値上り電力会社公表のものをはろかに上まわつておりまして、製品コストに響き、熾烈な国際競争場裡にあろ紡績の輸出をいよいよ不利ならしめ、輸出意欲を著しく減退、喪失せしめ、わが国最大の輸出産業でありまする紡績業の重き使命に大なる支障を来すことであります。さらに強調を申し上げたいことは、その申請されるところの値上げ率の算定が実情を無視して行われておりまして、ために値上げ率が一見低きがごとく見えましても、実際の値上りが予想外に大きいという事であります。その原因は一段分料金の過大な値上げをまつ向から受けておるからであります。さらに基準となる過去の実績の大部分が、通産省勧告によります操業短縮時のそれが含まれていることに起因していることでございます。  これからただいま結論的に申し上げましたことの理由、事情をやや具体的に、数字的に御説明申し上げたいと存じます。  まず料金値上げが製品コストにいかに響くかと申しますと、当社製の二十番手換算綿糸一こりに対しまする支払い電力料金は、従来約七百五十円でありましたが、今回の申請単価によつて計算いたしますと、約一千五十円となります。従いまして三百円の上昇、すなわち値上げ率は四〇%と相なるわけであります。当社は国内各地方に工場が散在いたしておりますので、これを電力会社別に関係工場について試算してみた結果、申請料金によります支払い金額値上り率は次の通りに相なります。すなわち東京電力管下の値上げ率が七五%、同じく中部電力管下のそれが六八%、関西電力管下の値上げ率五・五%九州電力管下はやや下りまして、これが値上げ率二〇%と相なります。これらを総括いたしましてわが社の全国平均を出しますと、値上げ率が四〇%となる次第でございます。よつて当社一箇月間の電力料金支払い額は、昨年の平均月間三千七百五十五円、それが今回の改正案によりますと、それを増加すること月間千五百万円、すなわち一箇月に五千二百五十五万円の支払い電力料金となる勘定でございまして、かかる急激なる経費の増高が採算面に著しい悪影響を及ぼすことは申すまでもないところでございます。  次に紡績業における使用電力費が、全生産費中に占めまする比率がやや小さいために、他の経費の削減によつて電力値上りの悪影響をカバーできるのではないかと申さるる向きもございますが、なるほど電力費の全生産コスト中に占めまする比率は六%弱でございます。しかしながら紡績業においては、すでに御承知の通り、極度の企業努力によります合理化によつて経費の節減を実施して来ておりまして、これ以上にコストを低下せしめますことはきわめて困難なる事情にあります。いかなる面の経費が増加いたしましても、ただちに他の経費の削減をもつてカバーはできないのが現状でございます。従つて、言うがごとく、今回の電力費値上げによる分を、他の経費を削減して吸収することは至難な状態に立ち至つておると申なさなければなりません。よつて電力費値上りが、輸出採算上に及ぼす悪影響は、何ものによつてもカバーされることなく、値上り額そのままのものが全生産費に加算されることになります。現在原綿代は六万五千円前後いたしております。これに諸経費を加算しました綿糸一こりの原価は七万八千円前後でございます。これに対しまして、輸出価格が七万二千円、すでに出血輸出の状態でありますから、電力値上りはさらにこの輸出採算悪化に拍車を加えることに相なることは多言を要しないところでございます。なお電気事業は基礎産業でございますから、電力料金値上りは、もちろん他産業にも甚大なる影響を及ぼし、機械、工具代、資材費その他諸物価高騰を来し、紡績業における電力料金値上りそのもの以外に、上述諸経費の上昇、騰貴となつて、出血をいよいよ多量にすることまた自明の理であると申さなければなりません。  次に電力一キロワツト・アワーの単価について申し述べますると、現行三円四銭が四円三十二銭となります。おそらく大口電力一キロワツトーアワー当りの単価といたしましては最高のものになるのではないかと考えられます。これは小口電力が新制度において一本料金なつた場合と大差なく、工場によつては、大口電力でありながら、むしろ小口電力より割高となる工場もございます。このため電圧別料金差、さらに小口に比し負荷率良好なることに対する料金面における優遇措置というものはまつたく無視される結果となつております。他業種におきましてはかなり高額なる業種も、ございましようが、さような向きに対しましては、いわゆる特約をもつて値上げ率をある範囲に食いとめる措置が考えられておりますが、しかし紡績業に対しましては何らかかる措置は講ぜられずに、労働基準法により深夜作業に困難な業種は、いたずらに高率料金負担を余儀なくされているような事情でございます。なお改正案による一段分電力量の割当算式の対象として、基準月を昭和二十六年十月から昭和二十八年九月までをとられておりますが、御承知の通りわが綿糸紡績工場は昭和二十七年三月から昭和二十八年五月までの十五箇月間は政府勧告によります操短、いわゆる操業短縮を実施いたしました関係上、その間の負荷率は平常より一〇%ないし一五%も低下いたしておりますゆえ、この間の電力消費実績を修正、もしくは基準月の変更というようなことをぜひともこの際お願いいたしたい次第であります。  冒頭に申し上げましたごとく、今回の値上げ率が電力会社申請の全国平均一四・四%をはるかに上まわる四〇%を越える原因を探求いたしますと、申請の値上げ率の算定が実情を無視して行われたにほかならないからであります。割当制度改正は、基準負荷率によつて一段分を決定し、二段料金制を採用いたしておりますが、問題は、一段分と二段分料金との関係なんでありまして、新制度におきましては、キロワット・アワーの小さい二段分を値下げし、キロワット・アワーが大きく、使用量の大部分を占めますところの一段分を極端に値上げいたしております。現に関西の場合の一段分の値上げ率は五九%にもなつているような次第でございます。これは外見上二段料金制そのものが急激な値上りとならないためにとられた措置のまうに承つておりまするが、現実は相違しておりまして、電力会社にとり最も安定した、最も安易な増収政策なのでございます。  以上電力料金改正の影響を申し上げました。なお改正電気料金に関する聴聞会が九地区においても御承知の通り実施されておりますので、各地区において紡績各社が陳述いたしましたところもあわせて御参考にしていただければはなはだ幸いであると存じます。  以上であります。
  66. 加藤宗平

    加藤委員長代理 ただいまの江越参考人の御意見に対して御質疑はありませんか。——小笠君。
  67. 小笠公韶

    ○小笠委員 簡単にお伺いしますが、ただいまお話の紡績二十番手のもので内地物は幾らしておりますか。
  68. 江越道俊

    ○江越参考人 内地物は、言うのをちよつと落しましたが、輸出向よりはやや高目になつております。しかしながらこれがぎりぎりの線でありまして、これあるがゆえにいわゆる出血輸出ができるような次第でございまして、これがまた原価を割るようなことでありますれば、紡績業はとうてい成り立たないということが言えると思います。
  69. 小笠公韶

    ○小笠委員 第二点は、生産総綿糸量のうち、輸出と内需との割合はどのくらいになつておりますか。
  70. 江越道俊

    ○江越参考人 大体輸出三に対して内需が七でございます。御参考のために申し上げますが、戦前はその逆でございまして、輸出が七の内需が三という状態でありました。これを何とかしていわゆる輸出産業の大宗としての紡績の面目を発揮させたいと思つておりますが、なかなか参りません。
  71. 加藤宗平

    加藤委員長代理 ほかに御質疑はございませんか。——質疑がなければ、以上をもつて本日の午前、午後にわたりました参考人からの御意見の聴取はすべて終了いたしました。  参考人各位には長時間にわたりまことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次会は公報をもつてお知らせいたすことといたしまして、本日はこれにて散会いたします。     午後三時十九分散会