運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-02-23 第19回国会 衆議院 議院運営委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年二月二十三日(火曜日)    午後四時五十九分開議  出席委員    委員長 菅家 喜六君    理事 荒舩清十郎君 理事 鍛冶 良作君    理事 坪川 信三君 理事 渡邊 良夫君    理事 椎熊 三郎君 理事 山本 幸一君       生田 宏一君    押谷 富三君       助川 良平君    田嶋 好文君       田渕 光一君    三和 精一君       山田 彌一君    山中 貞則君       山本 友一君    山崎 岩男君       小泉 純也君    園田  直君       高橋 禎一君    長谷川四郎君       青野 武一君    辻原 弘市君       山田 長司君    山口丈太郎君       池田 禎治君    長  正路君       松井 政吉君    中村 英男君  出席国務大臣         法 務 大 臣 犬養  健君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         検     事         (刑事局長)  井本 臺吉君  委員外出席者         議     長 堤 康次郎君         副  議  長 原   彪君         議     員 安藤  覺君         法務事務次官  清原 邦一君         事 務 総 長 大池  眞君     ————————————— 二月二十三日  委員島上善五郎君辞任につき、その補欠として  山口丈太郎君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  議員有田二郎君の逮捕について許諾を求めるの  件に関する本会議議決に関連して犬養法務大  臣及び政府当局見解聴取     —————————————
  2. 菅家喜六

    菅家委員長 これより議院運営委員会を開会いたします。  本会議休憩中に要求がありましたので、この委員会を開いた次第であります。
  3. 椎熊三郎

    椎熊委員 先刻の本会議の模様で、私ども国会を守る意味から、重大な責任を感じておるのであります。従つて今後の国会あり方についても御協議申し上げなければならぬと思います。  第一の問題は、旧来の慣例を破つて、この議院運営委員会で否決になつた問題を、さらに本会議で同じ党において数の多数をもつてつた。こういうことは非常な悪例になる。しかしそれは手続上としては、あるいは可能なことであるかもしらぬけれども政治道義上は、私どもは許すべからざることであると思つております。  第二の問題は、あなた方の動議によつて有田二郎君は三月の三日より逮捕しておくことができないという決議でございます。その決議が、はたしてどのような効力を発生することでございましようか。私は司法当局行動などを想像して申し上げるのではございませんけれども司法当局は、法律規定に基いて犯罪捜査するのでございましよう。たとい院議でどのような決定があつても、おそらく犯罪捜査のためには、有田君を三月四日以後も釈放しない場合があるかもしれない。そういう場合がもし生じたとすれば、院議決定建前上、本院は検察当局に向つて有田君を釈放すべしとの請求をする結果にならざるを得ないでございましよう。そういう事態がもし起るとするならば、これはまさしく立法府の司法部に対する圧力であり、干渉であり、そういうことは三権分立の建前からいうと、私どもは許すべからざる行動だと考えます。もしそれ、このような院議決定しておきながら、一検察官捜査の都合から、有田君を三月四日以後に釈放しないという事実が起つたとすれば、院議はまつたく一検察官のために蹂躙せられる結果になるのであります。そういう際における自由党諸君責任は一体どうなるのか。こういうことをやつていいのであるかどうか。私は法律の末にとらわれて、解釈の問題を言うのではない。われわれ政治家として国会を守る者が、そういう理不尽たことをやつて国会自体が面目を失墜し、権威を失墜するようなことをやつていいのかどうかということでございます。  もう一つは、さらにこの国会のためにも政府のためにも残念なことは、今回の案件は、閣議決定に基いて内閣総理大臣の名によつて、すでに衆議院堤議長のもとへ逮捕許諾請求がなされたのであります。従つて閣僚は、国家内外情勢、あるいは院内の予算審議情勢等をも勘案して、さらにこの犯罪捜査が重き内容を持つものであるということを、犬養法務大臣からも明言されております。それまで内閣が決意して、これの請求が来ておる。その閣議決定に参画したる閣僚は、本日、内閣総理大臣請求とまつたく相反したる議決に投票したという政治上の責任は一体どうなるのか。われわれは今日以後、この内閣行動に対し信頼を置くことかできないという結果にならざるを得ないと思う。国会運営上から申しましても、われわれの基本的政権あり方から申しましても、私は実に返すがえす残念でたまらない。そういうことは、国家混乱の道程をなし、まことにこのことによつて政府国会信頼を失墜することになるのではなかろうか、私はそれを心配する。私は一有田君の問題ではないと思います。しかも有田君の問題は、この情勢から見ると、司法部が期待しておる真実の探求というものは、もはや不可能になつたと断定せざるを得ません。有田君が本日もし逮捕せられるにいたしましても、三月四日からは解放せられるということになれば、その間、一週間か十日の間でございましよう。どうしてこれだけの大問題がその間に解決できるか。できれば幸いである。もしできないということであるならば、どういうことになるか。再び検察当局有田問題に対して国会逮捕請求することができない。一事不再議の原則がありまして、同じ案件を同じ会期に二度と出せないということになりましよう。内容が大いにかわりておれば別ですが、事態は、本人も同じだし、内容も一同じだということであれば、おそらく請求することはできないでありましよう。そうすれば有田事件というものは、三月四日以後より国会が終る五月八日までの間、手をつけることができないとうことになる。すなわち日本国会司法部真理探求あるいは犯罪捜査に重大なるブレーキをかけたという責任は、おそらく負わなければならぬ結果になると思うのでございます。あなた方は、その責任をどう考えられるか。かくては、国会が清純な審議を進めることができないと思われる。われわれはあの動議にはすでにしちくどく批判をし、不当なる動議であるということを先刻の委員会でも主張した。諸君はわずかながら数の多数をたのんで、あえてこの違法行為不当行為、そうして国会を不信に陥らしめるところの重大な行為をなした。その責任は、ひとりわれわれが負うのみではない。日本議会政治そのものに対する信用という、重大なる基本的な問題に触れざるを得ないことになるのである。その点に対する自由党諸君見解を、私は後学のために承つておきたい。  それから、私はこの機会に正式に諸君の御同意を得て、犬養法務大臣の御出席要求いたします。
  4. 鍛冶良作

    鍛冶委員 今の椎熊君の御発言は、いろいろな問題があります。要約して三点になろうかと考えます。第一は、もし三月三日までという期限を付したにかかわらず、それ以後釈放しなかつたらどうなるかということが一つ、それから、内閣から許諾を求めるという閣議決定をしていながら、閣員がその賛否の表決に入つていいか悪いかという点、第三は、三月四日までに釈放すれば、あと取調べができなくなる、これははなはだ捜査の権限を圧迫するものである、こういう三つに要約できると思います。  第一は、私は憲法上の問題でありまして、国会検察庁より優位にあるものという大前提のもとに立つて、われわれはこの動議を提案いたしたのであります。従つてこの決議従わない場合があるならば、それは違法をあえてするものである、かように断定せざるを得ません。しかし私は、さようなことはないと思います。従つて今日、そういう仮定議論でこれを今からやるということはどうかと思いますので、われわれは、憲法国会決議というものは、検察庁を拘束し得るものである、検察庁より優位にあるものである、この見解を支持しておる。これ以外にないものと思います。やがてどうするかというような仮定議論は、今日差控えた方がいいと思います。  その次に、内閣の問題でありまするが、これは国会法の第三十四条の二によつたものと思います。「各議院議員逮捕につきその院の許諾を求めるには、内閣は、所轄裁判所又は裁判官が令状を発する前に内閣へ提出した要求書の写を添えて、これを求めなければならない。」裁判所から内閣に出る、内閣はこれを受取つたときには、内閣に提出した要求書の写しを添えて、議院許諾するかいなやの意見を求める、こういうことになつております。手続上、内閣を経るというだけであつて許諾すべきやいなやという判断は、内閣にないものなんです。まつた議院にあるものであります。議院判断を求めるというだけのことでありますから、閣僚がそれをやつたからといつて手続上のことについて内閣で手段をとられたかもしれぬが、表決に加わつてはいかぬという意思表示をしておるものとはわれわれは考えません。また、さようなことは絶対にないものと考えます。  第三の、三月四日に釈放すれば、取調べができなくなるではないかということでありますが、これは皆さんに考えてもらいたい。さつきも新聞記者諸君からそういう疑問を出されたのでありますが、この間椎熊さんも法務当局に対して十分質問をしておられたところですから、あるいはおわかりと存じますが、身柄を拘束しなかつた取調べができないのだという考え方は、絶対にやめてもらわなければならぬ。われわれは、身柄を拘束しないで取調べをすることが原則だと思う。任意出頭すればいいと思うのです。それをあえてやらなければならぬということは、まことに私は遺憾千万だと思う。ことにいわんや、国会議員に対してさような考えを持つてつておられるということは、とんでもないことです。これは私は人権のこともあるし、そういう信念を持つておる。向うも、できるだけやつてみたけれども、やむを得なかつたからと言うならば、任意出頭をしても調べられないことはない。任意出頭で十分その目的が達せられるのでありまして、逮捕要求は必要ない。これらの点から考えてみましても、釈放したからそれつきり捜査ができなくなつて真理探求をこわしてしまつたなどという議論は、どこからも出て来ないものと確信しております。
  5. 椎熊三郎

    椎熊委員 ああいう乱暴なことをする自由党諸君だから、そのくらいのことは言うでしよう。鍛冶君の言われる一切は、私どもとは根本的に違つておりますから、これは論争はいたしません。法律上の末節にとらわれて、弁護士的議論などを聞く余裕もない。ただちに要求通り犬養法務大臣の御出席をお願いいたします。
  6. 菅家喜六

    菅家委員長 今椎熊委員より、法務大臣出席要求がありましたが、これはいかがですか。
  7. 山中貞則

    山中(貞)委員 この段階になつて法務大臣を呼んで聞かなければならないという理由もまだお聞かせ願つておりませんし、私どもは何らそういう必要はないものと認めますから、一応反対いたします。   〔「理由があるから呼んでおるんだ」「これだけの問題を起して、責任者意見も聞かずにおるということはいけない」と呼ぶ者あり〕
  8. 田渕光一

    田渕委員 私は、国会の議案の審議の過程において、議運の取扱いにおいて疑義が生じたからといつて、あるいは法務大臣、あるいは行政府長官を呼んで意見を聞くなんというようなことは、いかにも議院運営委員会みずからの権威を失墜すると思う。そういう意味で、私の方は反対いたします。
  9. 山本幸一

    山本(幸)委員 ぼくは、椎熊委員のお説に賛成します。そんなくだらぬことで、国会権威というようなことにこだわる必要はない。(「くだらぬとは何だ、取消せ」と呼ぶ者あり)問題は、犬養さんの政治的な責任にかんがみて、慎重審議したいから言うのです。(「人の言うことをくだらぬとは何だ、失言を取消せ」と呼ぶ者あり)取消す必要はない。   〔「何を言うか、委員長失言を取消さしてください」と呼ぶ者あり〕
  10. 菅家喜六

    菅家委員長 不規則発言は御遠慮願います。発言終つてから、発言をしてください。
  11. 田渕光一

    田渕委員 委員長、そういう発言は、取消しをさしてください。
  12. 菅家喜六

    菅家委員長 取消しを命ずるかどうか、発言終つてからにいたします。山本君、発言を継続してください。
  13. 山本幸一

    山本(幸)委員 ぼくは、椎熊委員の説に賛成します。理由は、犬養さんは政治的な良心にかんがみて、わざわざ棄権をなすつたと思うのです。それにもかかわらず各大臣は、政治的良心を少しも感じておらない。犬養さんに来てもらつて、その心情を伺うことも必要だと思う。もう一つ理由は、われわれ先ほどの議運で、あの条件付は法規に反するという立場に立つてつておるのでありまして、われわれの意見通つたのです。従つて犬養法務大臣に来てもらつて、そういうことについての法務省意見を聞いておく必要がある。こういう見地に立つてわれわれは要求するわけです。   〔「くだらぬとは何だ」「採決々々」と呼び、その他発言する者多し〕
  14. 菅家喜六

    菅家委員長 ちよつとお静かに願います。不規則発言はお慎みください。
  15. 田渕光一

    田渕委員 先ほどの発言中に、くだらぬというようなことを発言したから言うのです。
  16. 菅家喜六

    菅家委員長 それは、あと委員長から発言をするつもりでありますし、いたずらに委員会が混乱いたしますから、理論理論として闘わすというような観点に立つて不規則発言は慎んでいただきたいと思います。今、犬養法務大臣委員会に呼ぶという椎熊君からの発言がありまして、それに賛成がありました。しかし反対もありますので、委員長といたしましては、採決をいたしたくないのでありますが、採決をせよという声もありましたから、いたし方なく採決をいたします。
  17. 池田禎治

    池田(禎)委員 採決の前にちよつと……。
  18. 菅家喜六

    菅家委員長 ちよつとお待ちください。採決をしろということであつたものですから、やかましいことを言うわけではありませんが、そうなると、採決を求められたのはどういうわけでございましようか。採決迫つておきながら、待てということはどういうことですか。採決するなということであればいいのですが採決を促しておつた人が、採決迫つてつた人が、採決いたしますというと、採決は困るというのでは困る。
  19. 池田禎治

    池田(禎)委員 その前に発言を許してください。
  20. 菅家喜六

    菅家委員長 どうぞ。
  21. 池田禎治

    池田(禎)委員 私は、ここにひとつ重大な手抜かりがありはしないかと思う。それは、刑事訴訟法第二百八条の、検事被疑者取調べるにあたつて、十日間勾留することができる、その期間に終了せざる場合は、さらに十日間勾留することができる、この新しい訴訟法国会でおきめになつた。しかるに本日の動議によると、有田君を三月三日まで勾留し、四日には出さなければならないということになると、十日間にも満たない。新しく国会がつくつた法律を、自分で平気で破るような動議が本日可決されておる。(「委員会と本会とは違う」と呼ぶ者あり)ちよつと待つてください。国会の場合が違うならば、国会議員の場合は、法律的違反があつて逮捕しなくていいということになるのか、そういうことは一切おかまいなしにやれるものかどうか、これはお互いかきめたことですから、お互いで反省する必要があると思う。この点、自由党の方はどういうお考えを持つておるか。その御見解を承らぬと、議員がつくつた法律を、自分動議でひつくり返すということであつては私は困ると思う。その点承りたい。   〔「採決々々」と呼び、その他発言する者多し〕
  22. 菅家喜六

    菅家委員長 お静かに願います。
  23. 三和精一

    三和委員 あなた方の御意見は拝聴しました。本日の本委員会においてはわれわれは敗れましたが、本会議おいては偶然にか、わが党は勝ちました。われわれが勝つた場合に、それが違法であるということを言うのですか。椎熊君のお話を聞けば、大臣自分できめたものだから表決に加わつてはいかぬと言う。しかし大臣の場合は、大臣としての人格と代議士としての人格と二通りある。私はそういう点からも、さしつかえないと思う。
  24. 山本幸一

    山本(幸)委員 自由党諸君は、今度は採決要求しておりますから、採決を願います。一切のことを採決で行きましよう。
  25. 田嶋好文

    田嶋委員 私は、結局この問題に対しては、いろいろ法律的な理論を述べれば、明らかに私たちの理論が正しいと考えております。(「じようだん言つちやあ困る」と呼びその他発言する者あり)われわれの説明も、鍛冶君の説明の不徹底な点を補足したいと思うし、とにかくこれが一応議題になりました以上は、われわれの意見を明確にする意味におきましても、採決ということでなしに、大臣なら大臣出席願つてでも、われわれの意見も明らかにしたい。従つて採決しないでお諮り願いたいと思います。   〔発言する者多し〕
  26. 菅家喜六

    菅家委員長 ちよつとお静かに願います。傍聴の方もお静かに願います。静かに審議を進めてもらいたいと思います。  ただいま池田君よりお話がありましたし、椎熊君よりもそういう御意見があつたのであります。その論戦は別としまして、犬養法務大臣をこの委員会に呼ぶということは、採決でなくきめたいということでありますから、委員長にひとつ御一任願いたいと思います。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 菅家喜六

    菅家委員長 そこで私といたしましては、犬養法務大臣出席要求いたします。どうぞ事務の方から、犬養法務大臣に、この議院運営委員会出席をするようにお話をしてください。
  28. 池田禎治

    池田(禎)委員 この委員会法務大臣を呼ぶということについては、従来の委員会慣例によれば、いずれの党から請求があつた場合でも、しかるべき場合にはすでに慣例として呼んでおる。しかるに、われわれが言つては応じないが、自由党の方が言えば応ずる、そういうことをおやりになるのか、委員長にお伺いいたします。
  29. 菅家喜六

    菅家委員長 お答えいたします。委員長は、あなたのお考えと同じ考えのもとに、採決に付さずに法務大臣出席要求したいという考え方で、要求いたしたわけであります。
  30. 池田禎治

    池田(禎)委員 その慣例は守つてもらいたい。そうでないと、採決言つておいて、反対だとか言うことはおかしい。
  31. 菅家喜六

    菅家委員長 それでは犬養法務大臣出席まで暫時休憩いたします。    午後五時二十四分休憩      ————◇—————    午後六時二十七分開議
  32. 菅家喜六

    菅家委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  要求によりまして犬養法務大臣がおいでになりましたので、この際質疑を許します。椎熊君。
  33. 椎熊三郎

    椎熊委員 先刻の本会議の状態につきまして犬養法務大臣に若干の質問をして、事態の解決に対する参考の資料にしたいと考えるのであります。幸い犬養法務大臣のほかに刑事局長司法次官等も見えられておりますから、専門的のことにつきましてはそれぞれの方からお答え願えればけつこうであります。  司法部が、今回問題になつております有田二郎君の犯罪容疑に対して、捜査の必要から、国会開会中ではあるが、接見を禁止して監禁した上調べなければ真相を糾明することができない、そういう先般来の御説明によつて、私ども同僚議員がこういう容疑を受けておることを非常に残念に思いつつも、しかも、犬養法務大臣に対しては、検事総長お話によつて国会において重大な案件審議中ではあるが、それをも考えたが、この事件の糾明ということは検事総長の言われたように大事なことである、従つて、あえて逮捕許諾を与えてもらいたいということで、閣議決定を経て、吉田総理大臣の名によつて衆議院請求されて参りました。われわれは純真にこの問題を取上げて、判断資料として先般来いろいろの質疑等も行われました。許諾を与えるも与えないも、それは国会の自由であります。人おのおの判断があつてしかるべきであろうと思います。しかるに、先刻の本会議におきましては、自由党の方々から突如意外なる動議が提出せられました。この逮捕制限をつけるような動議でございます。動議は簡単ですから読んでみますが、「本件については来る三月三日まで逮捕することを許諾する。右動議を提出する。」私はこういう動議が諾否の決定をするに先だつて出されたということについて、国会運営上に非常に疑義を持つ。当委員会としては、先刻の表決の結果、そういうことをしてはならぬということで、賛成反対かを率直にきめればいいわけだ、そういうことにきまつたのであります。それにもかかわらず、本会議におきましては自由党からただいま朗読したような動議が出ました。これは、国会の、衆議院院議検察当局捜査活動一つ制限を加えたものだと私には解されるのであります。法務大臣はどうお考えになりますか。まずそれから承りたい。
  34. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えを申し上げます。法務当局国会を尊重する念におきましては、従来とかわりございません。しかし、この具体的問題にいかに対処すべきかということは、御承知のように逮捕許諾の御返事が簡易裁判所べ送られますので、簡易裁判所がこの逮捕許諾の御意向に基いていかなる勾留状発出するか、それによつてまたこちらの態度の変化があります。いかなる勾留状発出せられるか、いまだうかがい知れないときでございますから、仮定議論として、今私が先走つて法務省がどういう態度をとるかということは申し上げかねる次第であります。勾留状発出のぐあいによつて決定しなければならないと考えます。
  35. 椎熊三郎

    椎熊委員 すでに本院は先ほど申し上げたような捜査制限を加えるがごとき決定を多数をもつてしたのであります。そこで、これの決定をもし尊重せられるものとすれば、三月三日までは逮捕ができるが、それ以外は逮捕できないという決議なんです。司法部捜査行動というものは、そういうものに制肘せられるのか、せられないのか。これは刑事局長からお答え願います。
  36. 井本臺吉

    井本政府委員 ただいま大臣が御答弁申し上げました通り裁判所がこの許諾に対していかなる逮捕状なり勾留状なりを発するか、それによつてども態度も当然きまつて来る次第でございます。もちろん、精神におきましては、今日の院の決議は十分尊重いたしたいと考える次第でございます。
  37. 椎熊三郎

    椎熊委員 検察当局捜査に対する行動法律規定に基いてやられなければならぬと思います。本院の先ほどの決議法律ではない。一院意思決定にほかならないのであります。これが法律規定に優先するものかどうか。解釈上の問題ですが、あなたの見解を承りたい。
  38. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 本日のことは憲法第五十条に基いてなされたと了解いたしますので、その限りにおいては、法律に対する働きとして強い力を持つというふうに考えております。
  39. 椎熊三郎

    椎熊委員 法律衆参両院の一致した決議によつて成立するのであります。一院意思決定両院決議したる法律よりも優先するとあなたは考えられるのですか。これは、私は、あなたがここにいらつしやつておることを知らなかつたので、法制局長官に聞いていないのですが、司法当局見解を主として聞きたい。あなたは内閣の側の人ですから、内閣に不都合なような答弁はできないかもしれない。尊重するとあなたはおつしやるが、事重大でありますから、あなたではなくて、司法当局見解を聞きたい。(「検察当局というのはたいへんな違いだよ。裁判当局だ。」と呼ぶ者あり)言葉の末にとらわれるな。司法省の役人に聞いておる。   〔「たいへんな違いです。」と呼び、その他発言する者あり〕
  40. 犬養健

    犬養国務大臣 この前申し上げましたように、逮捕許諾の院の意思表示が直接届く相手裁判所でありまして、裁判所がいかなる具体的方法のもとに院の御意思を尊重するかどうかは裁判所がきめるのでありまして、そのきめ方の具体的表現として、逮捕状発出がどんな期限付になるか、そういう問題になると思います。従つて直接私どもがここでそれについて御回答申し上げるべき正当の相手ではないと考える次第でございます。
  41. 椎熊三郎

    椎熊委員 刑事局長のお答えは、院の決定を尊重するということであつたと思います。そうすると、あなたの解釈から来ると、院の決定を尊重すれば、三月四日以後は有田君を逮捕できないことになると思うが、そう解釈せられておるのですか。
  42. 犬養健

    犬養国務大臣 便宜上私から御返事申し上げることをお許し願いたいと思います。私も、法務大臣といたしまして、院の決議を尊重する念においては従来とかわりがありません。また刑事局長も、精神においては院の決議を尊重するという心構えを申し上げにのでありまして、さて具体的な態度いかんということになりますと、現実的に裁判所勾留状発出のぐあいによつて考える、当面の相手裁判所である、こういうふうにお答え申し上げたのでございまして、言葉の少々足りなかつたことを御了承願いたいと思います。
  43. 椎熊三郎

    椎熊委員 検事総長から犬養法務大臣請求があつて閣議決定を経てこういう請求がなされた。それは、旧来の例もあるし、法律の根拠もあつて憲法上の問題にも準拠して、捜査の必要上逮捕するという。そこに期限付逮捕というようなことがあつては、捜査当局の目的からいうと、この請求をした精神からいうと、相反したる院の決議であると私ども思うのだが、あなたはいかように考えられますか。
  44. 犬養健

    犬養国務大臣 捜査当局の便宜いかん、便利の程度いかんということならば別問題でございますが、現実の問題として、院の決議を尊重するという建前のもとに御返事を申し上げておるのであります。その院の決議を尊重する心持がどう具体的措置に法務省で出るかという問題は、今申し上げましたように、この前のことと関連がございまして、直接院からの御返事を受ける当の相手たる裁判所がどういう措置に出るかにおいて、またわれわれの解釈が違うわけでございますから、しばらくここで確答を御遠慮申し上げたいというわけでございます。これはかた苦しい御返事ではありますが、砕けて申し上げますと、期限付許諾ということは前例もございませんし、またほんとうにそれを扱う検察庁として、帰つて検察庁意見いかんということを聞く時間も今ないようなわけでございます’から、ここで早計に御返事することは、かえつて軽卒のそしりを免れないと思いますので、しばらく確答あるいは明確なる解釈を申し上げることを御遠慮することをお許し願いたいと思います。
  45. 椎熊三郎

    椎熊委員 犬養法務大臣のお言葉はごもつともだと思います。私は了承いたします。  そこで、政治家たる犬養法務大臣に憲政上の信念について私は聞きたい。日本の立憲政治の根本をなすものは三権分立にあると私は思います。そこには、近代的の行政機構あるいは国会の実体からは、末端の場合で立法なり行政をやつているような場合、あるいは行政府司法部のやられるようなことをやつておるような場合も間々私は例外的にあると思うが、基本的には三権分立が明確でなければ立憲政治というものはうまく行かないのじやないか。ことに今度問題になりました犯罪容疑者の逮捕のごとき問題、そういう行動にまで、立法府が、国家最高の機関であるという建前から、検察の行動等に一つの重大な影響を与えるような行動をするということは、私は憲法の精神を蹂躙した国会の行き過ぎではないかと思う。そういうことを許されるならば、かりに——仮定のことを申し上げることは差控えますが、国会はいかなることでもなせるということであるならば、犯罪捜査ということも、政府に都合があり多数党に都合があるという場合には、どんなことでもできるという結果になつて、それは暴力政治、専制政治以上の恐怖政治だと私は思う。立憲政治としてそういうことは許されないことだと思うのです。大慶先生は御先代以来日本の憲政のために精進せられ、ことに犬養大臣は、先般、この席上において、自分自分の生れない先から国会を守つておる家柄に生れた人間であるということを涙ぐんでまで申された方ですから、憲法土の解釈について信念のあるお答えを私は望むのであります。しかして私は、長年にわたつて犬養大臣には師事した者です。あなたによつて指導された私なんです。立憲政治の本質に対しては先生の御指導を願つた。この先生に私はこんな具体的な大問題が起つた以上、ことにあなたは日本司法部の最高責任者であられるのですから、この点について信念的な御発言をお願いしたいのであります。
  46. 犬養健

    犬養国務大臣 椎熊さんの御趣旨はよく了解をいたしました。この趣旨の原則論が司法部にとつて重大であることはよく承知しております。しかし、この場合、原則論にすぐさま具体論がしつぽについておるわけでございますから、具体論を切り離しての原則論というものは誤解を招きますので、しばらくこの場合は御猶予を願いたいと思います。しかして、院議を尊重すべしとか、三権分立とかいろいろ原則論の御意見もあり、私にもありますけれども、今の場合、この原則論は、裁判所勾留状発出の様式いかんという一つのわくの中に入れて私の役所に届けて来るわけでありまして、無制限原則論が法務省に届くわけでもございません。このわくを最初に入れるべき裁判所態度決定以前に、受取る第二の受取相手である法務当局原則論に基いて議論を申し上げるということは、少しく早急ではないかと思いますので、これは平に御容赦を願いたいと思います。
  47. 椎熊三郎

    椎熊委員 私は犬養大臣憲法上の解釈についての信念をお伺いしたいと思いましたが、さすがに巧みなる辞令を用いてピントをはずしておられます。私は先輩に対してこの点をそれ以上追究することは避けたいと思うのであります。  他の点から承りたいのは、検事総長の進達によつて、あなたは、この国会情勢を見きわめつつも、なおこのことを必要ありとして、このことに同意して、しかも閣議にはかつて閣議で満場一致で決定したということであります。しかるに、本日はこういう条件付許諾が院の意思決定なつた。そこであなたは、この問題の具体的現実のこの決定について、あなたの御希望とは違つた結果が現われたのですからそれに対してはどういう御感想を持つておられますか。はなはだ遺憾だとあなたは内心お考えになつておるだろうと私は想像するのです。しかし、それは言葉のあやでなしに、あなた方はこういう結果を望んでおつたのでなくして、率直に許諾するか反対するか、その答えを聞きたかつたのであろうと想像する。しかるに、こういう……(「誘導に乗つちやいかぬ」と呼ぶ者あり)誘導される方ではありませんぞ、犬養先生は。(「率直に言いたまえ」と呼ぶ者あり)率直に聞いておる。こういうあなた方たちの予期せざる意外な決定をなされたことについては、先ほど刑事局長お話を聞いても、こうしなければならぬと考えた結果のときとは非常に違つた結果が出ておるのです。それに対してあなたはどう思われるか。現実にこういつた決定を見たことについて遺憾の意を表せられておるのか、これで満足しておられるのか、それはあなたの自由意思です。それを聞きたい。
  48. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えを申し上げます。  まず最初に申し上げますが、閣議決定は、裁判所から言つて参りました有田二郎議員逮捕許諾を院に取次ぐということの閣議決定をいたしたのでございまして、さよう御承知を願いたいと思います。  次に、今日の院議をもつて決定されました、何と言いますか、議決と申しますか、この逮捕許諾について、つねつて痛いか痛くないか、うれしいか、うれしくないかという感情問題は私も人間としてございますけれども、同時に、私は、法務省態度を代表する法的人格を持つておりますので、法的人格としては、逮捕許諾の最初の受取る相手である裁判所態度決定以前に申し上げるということは、いささか早計であろうと思います。また砕けて申し上げれば、初めてのことでございまして、裁判所がどういう意見を持つておるか、検察庁がどういう意見を持つておるか、まだ帰れないのでございますから、聞くひまもない。聞かない先に法務大臣がどんどん意見を言うことは、ちよつと私は早計ではないか、こういうふうに思います。
  49. 椎熊三郎

    椎熊委員 私はだんだんこうい問答をすることを非常に遺憾に思うのです。あまりしつこくなるようですからこのでとめますが、もう一点聞いて、おきたいのは、そこで閣議決定は、検事総長の進達によつて国会請求する手続だけを決定したということでございます。あるいはそうでございましよう。しかし先般来あなたがこの席へ来て主張せられておるお言葉は、閣議はどうあろうと、あなたは、検事総長との間に相談せられて、これは断固こうする以外に道がないと言われた。唯一無二の絶対のことかと私は聞いたくらいですよ。その通りだとあなたはおつしやつた。そういう閣議決定の形式になることとは違つて、最高の責任者たるあなたは、これ以外に方法がないということで御請求なつたのにかかわらず、それとはまことに相反したる院の意思表示があつたとならば、そこにあなたは、あなた並の御決意の披瀝あるいは御感想の披瀝というものがあつてしかるべきで、裁判所がどうしようが別として、あなたは検事総長お話になつてあれだけの決意をなさつた以上、これに対する感想というものがなければならぬはずです。私はそれをあえて聞かなければならぬということは、これは非常に大きな日本の司法制度の根本をゆるがすような大問題ではないかとさえ私は感ぜられるのです。そこで、最高責任者たるあなたは、非常に意外なる決定をされたのに対して、一裁判所のそれに対する受答えがないから自分の信念を吐露することができないというのは、私ははなはだ遺憾なんです。そこで、検事総長の側としては、唯一無二絶対の方法だと決意せられて、閣議にその方法がなされてやつたということだが、その結果はあなたの意表に出た結果になつたについて、遺憾であるとか、それでいいとか、こんな決定があつてもどういう方法があるとか、そういうことをおつしやつてもしかるべきじやないかと思う。そうでないと、世の疑惑は解けないのです。こういうことで閣僚閣議に列席して賛成しておきながら、投票はまつたくそれと違つた投票をやつておる。いかにも、しろうとから見ますと、この捜査を妨害するが、ことき悪意に解釈する、あるいは捜査をして不能に陥れるがごとき行動国会がとつたように外部には私は映ろうと思う。これは私は、憲法を守り、国会を守るためには、そういうことが解明されなければ、国民は納得できないだろうと思う。それであなたのこの問題に対する御見解いうものは、われわれにとつても非常に大きな資料になるのでございます。そこであえて失礼をも顧みず重ね重ね聞いておる。あなたの巧みなる言葉によつて、この場でなくして別な機会にまた考えて来ておつしやるというようなことだが、私は法律家の法律解釈論などを聞いておるのではないのです。政治家としての先生の御決意、御判断というものを伺うことを望んでやまないものでございます。
  50. 犬養健

    犬養国務大臣 重ねてのお話、お気持はよくわかりますが、私の言葉が足りないために、分析しないままおくみとりくださつたことと思うのであります。もちろん、逮捕許諾請求というものは裁判所から国会にあてて行く。そのお返事は国会から裁判所に行くわけであります。この前お尋ねになりましたのは、法務当局裁判所逮捕許諾請求をしたときの気持はどうであるか、こういうことなんで、事態が来る以前の私の心境をお聞きになつた、また必要性の有無をお聞きになつたので、それに対しては、裁判所に対して検察当局逮捕許諾をしていただかないとなかなかこういう種類の問題は捜査しにくいといつた態度に対して、いろいろ個人としては苦痛はありますが、是なりといたしたのであります。こう申し上げたのであります。  さて、問題は別になりまして、逮捕許諾請求裁判所から国会にあてて請求せられ、今日院議をもつてその返事が裁判所に行くわけでございます。裁判所ではそれに基いて拘留状を出すのでありますが、その勾留状の出し方にどのくらい国会の御意向が反映するかということを、今度は私どもは反射的に事務として取扱わなければならない。そこで、政治家としての信念ということはこの場合申し上げにくいのでありまして、裁判所態度いかんというわくの中に入れられて、さて法務当局はどういう態度をとるか、こういう問題でありまして、私の言葉の足りないために二つの筋道にわかれておる問題をごつちやにして申し上げたことをお許し願います。
  51. 椎熊三郎

    椎熊委員 犬養大臣考え方と私の考え方とに非常に大きな食い違いがあるのです。犬養大臣は、裁判所から国会にこういう請求が来たという、国会決定裁判所になされた、こうおつしやる。これは根本的に違うのです。われわれは、内閣総理大臣内閣を代裁して国会意思を問うて来た。われわれの決定内閣に対しての答えなんです。それだから、その責任者であるあなたの考えを私どもは聞いておる。裁判所に聞いておるのではないのです。文書から見れば、内閣総理大臣の署名で来ておるのです。われわれは、これを簡易裁判所の判事に答えるために、決議をしたのではないのです。内閣に答えるのです。その以後の手続上の問題は、内閣裁判所でいろいろございましようが、国会裁判所との関連によつてつたのではなくして、内閣総理大臣請求して来たから、それに対する意思表示をしたのです。そこに根本的な私は食い違いがあると思う。しかし、もとよりこれ以上はどうもしつこいようでございますし、別な機会に、私どもは、本会議の席上でこれを大きく取上げて、政府意見というものを問いただそうと思つておりますから、この席上では私はこの程度にとどめておきます。なお私は、他の同僚からも関連して質問があると思いますので、この程度にいたします。   〔「委員長」「委員長」と呼ぶ者あり〕
  52. 菅家喜六

    菅家委員長 ちよつとお待ちください。山田君に許します。他の方はその次に許します。
  53. 山田長司

    山田(長)委員 大分詳しく御質疑があつたので、私はただ一点簡単に伺います。期限を付したということは司法権に対する侵害ではないかということが考えられるわけですが、大臣はそれについてどういうふうにお考えになりますか、伺いたいと思うのです。
  54. 犬養健

    犬養国務大臣 御承知のように、だれが見ても法律専門家でございませんから、だれが見ても信用できる専門家に答えさせますから、お許しを願います。
  55. 井本臺吉

    井本政府委員 いろいろ説があると私は考えておるのでありまして、院議がきまらぬ前であれば別であります。すでにきまつたことでありますから、この院議を尊重いたしたいという気持でございます。
  56. 山本幸一

    山本(幸)委員 ちよつと関連して——刑事局長に申し上げますが、今山田君がお尋ねした点は、期限を付したようなものが国会決定された。そこで、そういう期限を付したものでは、捜査の方にさしつかえがあるのではないかということを心配しておる。従つて捜査上さしつかえがあるかどうかという点をはつきりしてもらいたい。ただ国会が、きめたから尊重するということでなしに、事実捜査上においてさしつかえができるかできないか、この問題を明確に御答弁願いたい。
  57. 井本臺吉

    井本政府委員 捜査にさしつかえがあるかないか、それを今お答え申し上げましても、すでにきまつたことでございますから、今私がここで言うことは意味がないことだと考えております。
  58. 山本幸一

    山本(幸)委員 そこがぼくは明確じやないと思う。きまつたことだから私の方ではしかたがない。その通りです。これについてあなた方が一言半句私は干渉はできないと思う。これは正当な意見だと思う。私どものお尋ねするのは、きまつたことだからしかたがないと言いなからも、そういうきめ方は、あなたの方の捜査上にさしつかえがあるかどうか、これをお聞きするのです。   〔発言する者多し〕
  59. 井本臺吉

    井本政府委員 従来の私の説明で御推察いただくよりほかにいたし方がございません。   〔「委員長」「委員長」と呼ぶ者あり〕
  60. 菅家喜六

    菅家委員長 高橋君が先に求められておりますから、高橋君に許します。
  61. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 法務大臣にお尋ねいたします。問題は、先ほど来もお話の出ました三権分立主義を破壊するところの院議決定ではないか、こういう問題であります。法務大臣は、先ほど来、裁判所から請求があつたものを、内閣は事務的にこれを素通りさせるものだ、こういうようなお考えのようですが、素通りさせるものであるならば、裁判所へ来たらすぐ何も考えておる必要なくして、本件のごとく何日かの日を要することなくして、すぐ素通りさせればいいことなんです。その間にやはり内閣のいろいろの手続があり、その手続をして、やはり内閣意思決定されたところによつてなされるわけです。そこで問題は、衆議院議決せられたこの条件付許諾を、内閣としては素通りでこれを裁判所の方に回付されるかどうか、回付されるとお考えになるかどうか、これをお伺いしたい。お考えになる必要があると思うのでありますが、それはなぜかと申しますと、三権分立主義に反して、憲法を蹂躪したところの院の議決というものをそのまま裁判所に回付するということであつては、内閣はないものと同じことなんです。   〔発言する者多し〕
  62. 菅家喜六

    菅家委員長 お静かに。——静粛に願います。
  63. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 そこで私は、この院議憲法の三権分立主義に反すると思う。なぜかというと、裁判所を非常に拘束し、裁判所をある意味において断圧をするものと思う。なぜかといえば、無条件でイエスかノーかを問うて来たものを、条件をつけることによつて法務大臣自身も先ほど来申された通りに、裁判所がどういう態度に出るかどうかわからぬ、逮捕状を出すかどうかわからぬ、出すとしてもどういう形式で出すかということは法務大臣すら予測がつかぬというような状態になつたでしよう。それが裁判所として一つの拘束になる。また、問題は、おそらく自由党の提案者のごときは、これは検察庁の問題であるから、裁判所は拘束しない。逮捕状を出そうと思えば出す、出すまいと思えば出さないでもいい。あと検察庁で引受けるというお考えがあるかもしれないが、三月三日まで来ないうちに検察庁が本件を起訴したらどういたしますか。起訴したならば、検察庁意思だけで私は釈放することもできないと思う。その場合に裁判所が三月三日までに裁判所でこれを釈放しなければならぬということになれば、それこそ国会裁判所を拘束するものである。これではいかぬと思う。ここが問題なんです、(「何も拘束じやないじやないか。」と呼び。その他発言する者あり)これを裁判所の拘束でないといつて、何がほかに拘束することがあるか。拘束の典型的なものです。裁判所としては、せつかく審理裁判のために必要であるから勾留したいという場合に、この院議があつたために三月四日の日には釈放しなければならぬということであつたならば、三権分立主義はくずれてしまう。司法権の独立はそこにないと思う。もしも、裁判所で、この院議憲法に反するものであるから、三月三日が来ても四日が来てもこれを釈放しないということであつたならば、国会の体面いずこにありやと言うのです。だから、そこのところはそういうふうな重大なる影響のある問題でありますから、一体、法務大臣は、この問題についてどう考えられるか、三権分立主義に反する院議であるということを知りつつも、本日素通り裁判所に御回付になる御意思かどうか、この点を明確にお答え願いたい。
  64. 犬養健

    犬養国務大臣 素通り裁判所に交付するかどうかということは内閣の問題でございまして、法務大臣よりもお答えの適任者を選びたいと思います。あとの、いろいろ高橋さんの御心配のこともわかりますが、結局、私どもとしては、院議がなされたということに対して、人間として敬重の念を持つという以外に今申し上げようがないのでありまして、申し上げようのないという事情はよく御承知のことと思います。小島さんも……(笑声)   〔「よけいなことを言わぬでよろしい」「進行々々」と呼び、その他発言する者多し〕
  65. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 ただいま法務大臣がこの際申上げようがないとおつしやるのは、回答することができない、こういうことですか、そこに問題がある。申し上げようがないということは、答弁することができないというような趣旨に私は理解するのですが、その通りでございますか。(「よく聞こえない、わからない。」と呼ぶ者あり)この際私の問うたことについて、申し上げようがない、こうおつしやる以上、申し上げようがないと言われるのは、質問に対して回答することができない、こういうお話なんですか。申し上げようがないというのは、何ら内容がないというのですか。
  66. 犬養健

    犬養国務大臣 お答えいたします。あなたに申し上げようがないのではないのであつて、まず今日のこの許諾を受取る裁判所がどういう勾留状発出をするか、それを見たあとでなければ、国務大臣としてお答えのしようがございません、こういうことでございます。   〔「委員長」「委員長」と呼ぶ者あり〕
  67. 菅家喜六

    菅家委員長 今高橋君に許しておりますから……。
  68. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 ただいまお尋ねしたのは非常に重要な問題なんです。裁判所を拘束するということは、法務大臣もおわかりになりましよう。捜査の段階においては、その問題は何とか検察庁が処置する、法務大臣も処置しよう、こういうことになるかもしれませんけれども裁判所にまわつて来て、裁判所がこれを審理裁判の上において勾留しなければならぬという必要があるときに、衆議院が三月三日までという条件をつけた、その問題をどう処置するかということについて、もしも院議が有効であるとすれば、釈放しなければならない。そうすれば裁判所を拘束するものでしよう。もしもこれを、憲法に違反するものである、三権分立主義を破壊するものであるということで勾留を継続するということになつたならばそれこそ、内閣責任を持つて裁判所に回付されたその結果が、そうなるのです。これはよほど考えなければならぬ。(「仮定論じやないか。」と呼  ぶ者あり)仮定論じやないですよ。法律上当然これは予測してかからなければならない重大な問題なんです。それを仮定論ということで軽々しく取扱つてつたならば、たいへんなことになる、私はこういうように思うのです。だから、裁判所が、二の院議を尊重して、国会意思に屈服するか、あるいはまたこれを尊重しても、国会決議というものは無効であるという態度に出るか、いずれにしてもこの院議というものは無効であるのではないか、(発言する者多し)こういう問題であります。そう軽々しいことではないのですよ。これをはつきりしなければ、日本憲法維持かできない。日本の司法権というものは確立されない。国会が現在のようなだらしないことであつては、司法権が厳正であり公平でなければならぬ。私はその信念を主張するのである。法務大臣のこれに対する意見をはつきりお答え願いたい。しかし今日答えられぬということであるならば、研究された後でもいいから、お答え願いたい。ずばりとこの際そのくらいのことは御答弁できないなんとおつしやるはずはないと私は思うのです。これは司法権の問題であるし、日本の運命に関する問題ですから……。
  69. 犬養健

    犬養国務大臣 高橋さんの御熱誠はよくわかります。また何を言わんとしておられるか、よくわかります。しかしながら、実際問題として、私ども曲府当局としては、実際の措置から遊離した原則論を申し上げておる場合ではございません。また地位でもございません。すでに院議決議された今日、あとにおいて、この方が都合がよかつたとか悪かつたとか言うことは益のないことでございますから、御返事を差控えたいと思うのでございます。   〔「議事進行」と呼び、その他発言する者多し〕
  70. 菅家喜六

    菅家委員長 辻原君より議事進行の発言を求められておりますが、辻原君の議事進行の発言の以後に、また御質問があれば順次お許ししますから、辻原君の発言を許します。
  71. 辻原弘市

    ○辻原委員 先ほどの犬養法務大臣委員外に対する発言はきわめて不穏当だと思いますので、この点をお取消し願いたい。(「何のことだ」と呼び、その他発言する者多上)犬養法務大臣の先ほどの答弁の中に、委員外の者に対しての氏名を呼ばれたことについては、不穏当だと思います。
  72. 犬養健

    犬養国務大臣 これはとんだ間違いをいたしました。小島さんが熱心に御意見を述べられておるようでありましたので、委員だと思つておりました。   〔「法務大臣委員を知らないでど   うするか」「厚生委員長だぞ」と呼び、その他発言する者多し〕
  73. 辻原弘市

    ○辻原委員 先ほどの高橋さんの御質問に関連して、一点私はお尋ねしておきたいことがあります。先ほどの答弁によれば、内閣許諾の問題については単に事務的にこれを取扱つておるだけである、関門トンネルであるという御答弁でありましたが、私はそれについて思いますことは、先日の当委員会において、一体、今回の有田問題について、自由党の党員である犬養大臣は、ただいまの政局ということを考え、しかも国務大臣ということで予算を策定した国務大臣としての責任ある地位に立つて、この有田問題をいかに考えるかという点に対する質問を発しましたときに、たしか、犬養大臣の答えは、この点に関して自由党の党員であるという立場についてもそのことをいろいろ考え考え考えた末今日この許諾を求めることに決定したということをこの席において述べられたことを私は記憶しておる。そこで私お伺いいたしたいことは、(「議事進行じやないじやないか」と呼び、その他発言する者あり)犬養大臣閣議決定をされたということで言われながら、いかなることをその席上で述べられたか、この点について、私は、この席上において、内閣はただ関門トンネルの役割をしたというそういう答弁を聞いて、今まで私が受取つてつた決意されたということについては、その許諾を求めることについて、あなたが内閣の一員としてその問題に対する態度決定せられたことは、われわれは、少くとも常識においては当然そうあるべきだと考えて、そう了解しておつたのであります。一体あなたの言われるのは何をそれでは決意なされたのか、この点についてあらためて伺いたい。  〔発言する者多し〕
  74. 菅家喜六

    菅家委員長 法務大臣発言を許しておりますから、お静かに願います。
  75. 犬養健

    犬養国務大臣 ただいまの御質問は、先ほど椎熊委員にお答えをした通りで御了解願えると思うのですが、内側が有田議員逮捕許諾についてどういうことをすべきかということは、ここに法制局長官もおられますから、法制局長官からさらにお答えを願えればなおはつきりすると思いますが、問題は、裁判所有田議員逮捕許諾をするというときの決定について、法務大臣はどういう心境であつたかと言われるから、申し上げたのであります。今はどうだということになれば、すでに院議決定されたあとで、法務省あるいは検察庁の都合が、こうすればよかつた、ああすればこうであつたということを申し上げるのは益のないことである。従つて御答弁を申し上げない、こういうことであります。これは何べんお尋ねをせられても、申し上げられないことは申し上げられないことを遺憾といたします。   〔「議事進行」と呼び、その他発言する者多し〕
  76. 菅家喜六

    菅家委員長 松井君より議事進行の発言を求められておりますから、これを許します。
  77. 松井政吉

    ○松井(政)委員 私は、法務大臣と運営委員長両者に対しまして、議事進行との関連について御答弁を願いたいと思います。それは同僚の辻原委員が申し上げたのでありますか、われわれが本日議運を再度開いて、法務大臣出席要求いたしましていろいろ御質問申し上げておることは、だてやじようだんじやないのでございます。議院運営委員会国会の運営をルールに乗せて、民主的に、今後のいかなる重要法案に対しても審議をスムーズにして行こうとする考え方一つ国会全体の立場において間違つたようなことをやつてはならないという考え方一つ、そこで質問をしておるわけであます。従いまして、いやしくも御出席をなさつた法務大臣は、委員であろうと、委員外であろうと、笑いながら、小島君もそうじやないかというような、個人の名前をさして言うことは不見識きわまる。私は慎んでもらわなければなりません。かりにまたそういうことが何か起つた場合には、委員長は、国会の運営をすべて円満にやろうとして担当されておりますこの運営委員会でありますから、やはり大臣にも注意を即座に与えなければならないはずであります。われわれが議事進行をやる前に、委員長の注意によつて取消さすようなことが、一番スムーズに事が運ぶのであります。本日の委員長は、こういう問題でございますから、不規則発言もございますが、そういう不規則発言についても、委員発言についても、やはり私も委員の一人として黙つておるというほど緊張しておる場面でございますから、そういうことのないように注意すべきが当然であります。なぜその場で注意をなさらなかつたか、その点を明らかにし、それが悪かつたというならば、あらためてスムーズな議事の運営をやつてもらいたい。
  78. 菅家喜六

    菅家委員長 委員長に対する質問に対してお答えを申し上げます。ただいまの松井君の御説まことにごもつともでありまして、その当時、法務大臣が間違えて御答弁になつたのではないかと思いまして、注意をいたそうと思つてつたやさきに、不規則発言が多くしてその機会を失つてしまつた次第であります。今後は十分委員長においても注意しまして、不規則発言は慎んでいただくとともに、委員外の方も発言を慎んでいただきたいと思うのです。松井君と同様な運営をいたしたいという考えであるので、今朝来の私の運営ぶりを御農繁になれば、その点よく御了解願えることと思います。しかしなお、その点の手続の足りなかつたことがありますれば、今後の運営には十分注意しまして、そういうことのないようにいたすつもりであります。どうぞさよう御了承を賜わりたいと思います。  池田君から先ほど来発言を求められておりますので、この際池田君に許します。
  79. 池田禎治

    池田(禎)委員 犬養法務大臣に一、二お尋ねをいたしたい。あなたが先般の当委員会の秘密会において申されました態度と本日とはたいへんな隔たりがある。私はこれをあえて追究しようとは思いませんが、ただ一点黙つておられない点があるので申し上げる。この運営委員会に付託されたものは、内閣総理大臣吉田茂氏の名において、衆議院議長に、衆議院議員有田二郎逮捕許諾に関する件を付託されたのであります。すなわち内閣を経て参つたのであります。内閣は、持ちまわり閣議であるけれども、全閣僚がサインをし、これを衆議院に回付して参つたのであります。その結果につきましては、本日の院議をもつて決定された通りでございます。そこで、内閣でいかような扱いをなさるかということを私どもはお尋ねをいたしたい。ところが、あなたは、私の方ではただ事務的にここを経由して行くのである、かように仰せられたが、私はさように思つておらない。政府から出され、閣僚がサインをして、閣議決定したものでなければここへ回付されて来ないのです。事務的なトンネル機関であるならば、サインをする必要がどこにありますか。閣議閣僚がこれにサイン、署名をいたしまして、効力が発生いたしまして、衆議院に回付されたと私はそう思う。政府責任を持つて回付されたものと思う。それをトンネルとはどういう意味ですか。(「トンネルとは言つていないじやないか」と呼び、その他発言する者あり)事務的にもしあなた方がそういうことを言うなら、トンネルということは言い過ぎですから、私は申しませんが、事務的に申しまして、あなたがあくまでそう仰せられるならば、内閣責任を持つてこれを行わなければならないものである、私はこういうように思う。そう言う前倒しありますか。あなたの御所見をお伺いしたい。
  80. 菅家喜六

    菅家委員長 ちよつとお待ちください。池田君の今の御質問は、先ほど来しばしば各委員から質問があつたことであります。そこで、むしろお諮りするのでございますが、それについて御意見があれば別でございますが、その点は佐藤法制局長官に御答弁願つた方がその事柄は判明するのではないかと思います。従つて佐藤法制局長官からお答えを願つて、なおそれに足らざるところがあれば、さらに御質問があれば法務大臣からということにいたしたいと思いますから、一応佐藤法制局長官から答弁したらいかがですか。
  81. 池田禎治

    池田(禎)委員 犬養法務大臣が当委員会の秘密会において御発言なさつたのであります。それに関連をする重要なことでありますから、承つておるのであります。
  82. 菅家喜六

    菅家委員長 それでは法務大臣に御意見があれば……。
  83. 犬養健

    犬養国務大臣 お答える申し上げます。実はいつの間にか事務的に素通りさせるとか、トンネルとかいうことになりまして、これはひとえに私の説明が足りないためのことだと存じます。しかしながら、そういう意味ではないのでありまして、先ほど椎熊さんにお答えしたのは、内閣国会に対して有田二郎議員逮捕許諾をお取次して、国会決議をされたいということを決定いたしたわけでございます。その言葉が行き違いまして、まことに恐縮に存じます。
  84. 池田禎治

    池田(禎)委員 そういたしますと、内閣はお取次でありますから、ものによつては、これは取次がなくてもいいわけでしようか、どうでしようか、その点を……。   (「そんなばかなことがあるか」と   呼び、その他発言する者あり〕)
  85. 犬養健

    犬養国務大臣 こういう専門的なことになりますと、法制局長官からお答え申し上げた方がなお明瞭だと存じますが、握りつぶすことはできないと私は解釈しております。
  86. 池田禎治

    池田(禎)委員 犬養さんがやはり法務大臣のときであつたかと記憶いたします。もし間違つておりますればその点は取消しますが、衆議院議員自由党の代議士三池信君の逮捕状は、内閣において保留され、握りつぶされておつたという事実がある。そういうことは今回の場合できなかつたかどうか。私は、あなたがそういうことをしたというならば、こういう事実と関連をするので、ときによつて右し、ときによつて左するような、さような答弁は、権威ある衆議院議院運営委員会においてはお断り申し上げます。
  87. 犬養健

    犬養国務大臣 三池議員のことはよくはつきり覚えませんけれども、ここに事務次官がおつて記憶しておると思いますから、間違うといけませんので、事務次官から答弁いたすことをお許し願います。
  88. 清原邦一

    ○清原説明員 三池さんの場合は、たしか佐賀の市警察署から裁判所逮捕許諾請求がありまして、裁判所から内閣の方に書類が来たのであります。その間に国会が休会になりまして、御本人が検察庁任意出頭された関係で、逮捕請求の必要が——具体的に詳しいことは私も存じませんが、必要がなくなつたというので、逮捕請求を撤回して参つたのでございます。その結果解消したと思います。
  89. 池田禎治

    池田(禎)委員 ただいまの清原次官のお答えはまことに私はこつけいだと思う。国会が休会になつた。これは記録があるのですから、あなたが確かな記憶がないというなら、今日記録を持つて来て、この場でもその記録は出ます。事務当局に命ずれば出ます。そういう詭弁では困る。私はただ今日ではその責任を追究しようとしておるのではない。いかにすればあなた方がこういう逮捕状に対してもこういうように濫用をなさるかということを、私どもは申し上げておるのである。こういうことでは、国民に対して、国会というものは、自分たちの都合のいいときには、いかようにも扱いをする、われわれの特権を必要以上に濫用するという、国民に与える印象を私はおそれるのです。私は、あえて次官や法務大臣責任を追究して、あなた方はけしからぬ、そう言うのではありませんけれども、これは明らかにそういう事実がある。それをあなた方があくまでも強情に言い張るならば、私は証拠を突きつけて、次官なり法務大臣と対決してもけつこうです。そういう詭弁はおつしやらないでいただきたい。われわれやはり議員の身を守るということはあくまでも筋を通すべきで、そういうことならば、何人に聞かれても、はずかしからざる方法によつて憲法を守り、民主主義を擁護するという筋を国民の前に出さなければならぬ。これはよくあなた方の胸に手を当てて答弁してもらいたい。強弁では困ると思います。  次に、事務当局にお尋ねいたします。先般のこの国会において決議されました、刑事訴訟法の第二百八条と今回の期限付逮捕許諾について、これはこの法律を破るものにあらざるや、−私はかように思うのでございます。これは事務当局でけつこうでございます。法務大臣からいただければなおけつこうですが、次官なり事務当局においてお答えしていただきたい。すなわち第二百八条と今回の許諾条件付の問題、これは刑事訴訟法第二百八条を破るものではあるまいかと私は思うのでありますが、事務当局でけつこうですから、御見解を明らかにしていただきたい。
  90. 井本臺吉

    井本政府委員 先ほど来大臣の御答弁申し上げておる通り裁判所勾留状期限付でいつまで出すかという判定を待つて、私どもは処置したいと考えておる次第であります。
  91. 池田禎治

    池田(禎)委員 もう一つ事務当局に私は伺いたい。私はがんじがらめにものを言うのではない。ただ、先ほど来伺つておると、法務大臣の言葉の中には、従来の私の答弁で御推察を願うとか、刑事局長もさような意味のことを申しておる。私もそうわからないことを申しません。しかし、一点、今回の条件付許諾は検察権の行使に対する一つの圧迫にほんとうにならないかどうか。この点こうもさしさわりがございませんとあなた方は御答弁なさるのか。やはりいろいろな支障があるとお考えになるか。その辺の率直な事務当局の御見解を承りたい。
  92. 井本臺吉

    井本政府委員 決議があつた以上、今さら私どもがどう申し上げてもいたし方がないことで、御決議によつて跡始末をしなければならぬ、こう考える次第でございます。
  93. 椎熊三郎

    椎熊委員 ちよつと関連して。ちよつと局長にお尋ねするのですが、一体この決議は非常に明確を欠いておると思う。しかしながら、本件については、来る三月三日まで、逮捕することを許諾するとあるのですね。あなたのお答えだと、これによつて勾留状は何日まで勾留するということがどう出て来るかわからぬということですな。そうすると、逮捕は三月三日までいつでもできる。勾留期間というものはこれに拘束せられないという御解釈をとつておられるのですか。
  94. 井本臺吉

    井本政府委員 憲法に書いてございます逮捕というのは、刑事訴訟法上の逮捕、勾留、一切を含めたものと私は考えております。
  95. 椎熊三郎

    椎熊委員 そうすると、あなたのさつきの裁判所から出て来る勾留状の出し方を見なければ何ともお答えできないというのと違うことになるですな。これは絶対でしよう。あなたの今言うのは、逮捕と勾留を一切含めてのことだということなら、三月三日以後は勾留しておくことができないという解釈なんですか。
  96. 井本臺吉

    井本政府委員 これは裁判所の判定でございますから、私がとやかく申し上げるわけに行かないのでありますが、先ほど来申し上げました通り、本日のような院の決議、これに対しましては、裁判所はその期限を付したということをどう扱いますか、これは裁判所の判定にまつよりいたし方がないと思います。また、私どもといたしましては、あくまで、院の決議がありますので、それを尊重する、こう申し上げたわけでございます。
  97. 山本幸一

    山本(幸)委員 関連して。いろいろ皆さんから質問がありますので、私はただこの際一点だけお答え願いたい。せつかくお出まし願つたのですから伺いたいが、実は先ほどの本会議でこの案件決定せられる前に、自由党の皆さんから、要するに条件付でない、期限付であるけれども期限付のものを付して動議を出してもさしつかえない、こういう御説明が強くあつたわけです。その結果、議院運営委員会では、それはいけないということになりまして、採決の結果自由党側の諸君の主張が敗れたわけです。しかるに、たまたま本義においては、議運で敗れたにもかかわらず、その動議が成立したという形ですしそこで私は、常識として一応解釈をしておるのですが、自由党の皆さんもそういう主張をせられるについては、一応法制局長官にその点について相談というか、何と申しますか、意見を徴するというのか、そういうことがあつたように考えるのですが、あなたは相談を受けられたか、あるいは意見を徴されたか、それをまず伺いたい。
  98. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私の意見自由党を左右するほどの力を持つておりますればたいへんけつこうでございますけれども、遺憾ながらさような力は持つておりません。今のお尋ねの点は、おそらく議院規則の百何条でしたか、その関係のものであろうと思います。そういう議院規則というようなことになつて参りますと、まつたくわれわれの手の届かぬところにございまして、これは一に国会あるいは議員の御制定にまつほかない問題である、かように考えておるわけであります。
  99. 山本幸一

    山本(幸)委員 法制局長官は誤解しないように願いたい。あなたの意見自由党を左右するということは私は絶対考えていない。そういう筋違いのことを言わぬようにしてもらいたい。質問をしたのは、事は議院規則であるから、私の方では関与することではないとおつしやるかもしれないが、これはすでに採決してしまつたのだから、今採決したのをどうこうというのではないが、一応疑義を持つておるのです。私は、しろうと判断で、私の知る範囲でありますが、民法では期限条件付とは区別をいたしておると伺つております。しかし、本件の国会法解釈の場合は、あくまでも条件だと思う。こういうようにはつきり規定をしておる。表決に際しては条件を付してはならない、こうはつきり規定しております。その点について、あなたの専門的の御意見を伺いたいと思います。
  100. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私個人的の意見はいろいろ持つおりますけれども政府側の立場として、政府委員として、議院規則の解釈を申し上げるということはいかがと思いますので、さしひかえさしていただきたいと思います。   (「委員長」「委員長」と呼ぶ者あり〕
  101. 菅家喜六

    菅家委員長 今高橋君に発言を許しますが、ちよつとお諮りをしておきます。先ほど予算委員会法務大臣出席をいたされておつたのに、こちらの方に質問があるということで、予算委員会からこちらの方に御出席を願つた次第でございます。ただいま、予算委員会から、ぜひ法務大臣を予算委員会出席するようにとりはからつてもらいたいという委員会の希望の通知が参つておりますので、高橋君の発言を許しましたならば、この程度にいたしまして、質問が尽きませんでしたら、また今後引続いてどうやるかということを御協議した結果にいたしたいと思います。さよう御了承を願います。
  102. 山本幸一

    山本(幸)委員 ちよつと、法制局長官意見を聞いておるのです。あなたはどう解釈をされるかということです。
  103. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 政府委員としては、それは潜越なことになりますから、お許し願いたいと思います。
  104. 山本幸一

    山本(幸)委員 解釈できませんか、政府側として……。
  105. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 政府委員としては申し上げかねます。   〔発言する者あり〕
  106. 菅家喜六

    菅家委員長 高橋君に発言をお許しいたします。
  107. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 私は、刊事局長から御答弁願つてけつこうですが、法務大臣もよくお聞き願つておきたいと思うのであります。このたびの院議について裁判所がどういう態度に出るかということは不明である、こういうことはもつともだと思う。しかし逮捕についての許諾があつたものとして逮捕状が出る。それで勾留された場合に、これを捜査の段階において釈放することは、検察官法律の命ずるところによつてやらなければならないものであると考えるわけであります。そこで一体、捜査中に三月三日という期限が満了したときに、検察庁としては、裁判所期限をつけずに逮捕状を出しておる場合に、検察庁がそれを一体釈放されるかどうか、釈放すべきであるという解釈をおとりになるか、釈放しないでそのまま継続勾留してもさしつかえないという解釈をおとりになるか、それをまずひとつ伺いたいわけであります。もう一つは、先ほど法務大臣にもお尋ねいたしましたが、御答弁がきわめてあいまいであつたわけであります。捜査期限満了前に検察官がこれを起訴して、裁判所が審理の必要ありとしてこれを勾留しておる場合、その間に三月三日の日が満了した場合に、裁判所が何らの釈放の措置をとらなかつたときに、検察庁としては一体どういう態度をおとりになるか。その二点をお答え願いたいと思います。
  108. 井本臺吉

    井本政府委員 先ほどから申し上げました通り裁判所で院の決議をどうとられるか、それかきまつた上でなければ、私どもとしては最後的な結論を申し上げかねる、こう申し上げた次第であります。裁判所が勾留の期限をあるいは三月三日までということで出すかもしれませんし、あるいはその先に延ばして勾留するというような勾留状を出すかもしれません。それについては、裁判所態度がどうきまるか、そのきまつた上で私ども態度をはつきりきめたい、こう考えておる次第であります。
  109. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 そういたしますと、検察当局としては、裁判所に対して逮捕請求をし、裁判所政府にその許諾を求める件を回付し、政府から国会にまわつて来て、政府としてもあるいはまた検察当局としても、逮捕許諾があるということを予期されて、それを希望されておつた考える。ところが、この際そういうような条件付な、期限付議決があつたために、現在の法務省の担当者とすれば、裁判所がどういう態度に出るか不明だから、現在のところまつたく見通しがつかぬ状態に追い込まれたということは、検察当局をしてこの事件捜査をはなはだしく迷わした、妨害されたという結果になるかどうか、それについてお答えを願いたい。
  110. 井本臺吉

    井本政府委員 先ほど来申し上げました通り、本日の院議がありましたので、その院議従つて処理するよりいたし方がないのでございます。それについて裁判所がどう判定をいたしますか、それによつてども態度をきめたいということを申し上げた次第であります。それ以上には、今ほかのことを申し上げかねるのでございます。
  111. 菅家喜六

    菅家委員長 大体質疑が尽きたようでございますが、最後に一点だけ椎熊委員より御発言がありますので、それで質問は終りたいと思います。その後において、どういう形になるか、なお御相談申し上げます。
  112. 椎熊三郎

    椎熊委員 司法部の当局の人に私は意見を交えて聞いておきたい。これは非常に重大なことです。自由党が三月三百まで逮捕できるという動議を突然出して、多数をもつてこういうことを決定した。その意図は、三月四日以後は有田二郎君は自由の身にしておきたいという意図にほかならない。私ども先般来あなたから聞くところによると、これは証拠隠滅をすでにやつた形跡もある、これ以上放置しておいたのでは証拠隠滅のおそれがあるから、どうしてもこれ以外に方法はないのだ、身柄を拘束しなければならぬのだ、そういう信念のもとにこういう請求をして来られた。しかるに、自由党は、有田君を三日以後四日から自由なからだにしておきたい、あなた方の捜査の感じとは違つて有田君の自由を国会決議によつて保証してやるという挙に出た。これは、初めてのことでもあるし、将来この種の問題に対する前例ともなるから、従つてこの問題を、ほんとうに日本の司法制度を守り立憲政治を守るという上において、重大なる決意のもとにこれを処理せられないと、私は非常な混乱が起きるものだと思います。私は、自由党諸君にして、ほんとうに、国会を守り、憲法を守つて行くという熱意があつたならは、捜査当局に対してこのような条件を付さずに、堂々有田君みずから進んで出たいと本人も言つておるくらいなんですから、このようなことをせずに、清純な状態において事態を明らかにされた方が、国会の名誉にとつてもほんとうに救われることであつたと思うのです。それが、四日以後有田君が自由の身となるに至つては、国民はこれをどう思うか。法の前に平等でなければならぬわれわれ日本人が、国会議員たるのゆえをもつて検察当局の手はほんの一部分、一定の限界までしか及ぶことができないということになれば、司法部権威を守ると同時に、かくのごとき理不尽なる動議を出したことが国会の恥辱であると思うから、そう言うのです。そういうことをしてはならぬのです。世間一般に思われるであろう有田君をほんとうにどこどこまでも調べさせるということに妨害を与えたというこの事実は、おおうことができない。それでいいのか。それで国民が承知するだろうか。(発言する者あり)このことについては、疑いを受けておるのに、君らは多数をもつて司法権の、検察権の発動にまで妨害加えるというむちやな行動が現に行われておるのです。ここで私どもまことに考える。あなた方もほんとうに司法当局としてこれは看過することのできない問題ですぞ。ほんとうにあなた自身は日本憲法を守るという自信のもとにこれを処理せられなければならない。そういう意味において、先ほど来からのあなたのお話を聞くと、国会がすでにこういう決定をしたのだからこれを尊重する、裁判所はしかしながらどれだけの勾留状を出すかわからぬというので、裁判所勾留状というものに自由があるということを言外に漏らしておられる。そうなると、国会議決とは齟齬しておることになる。大問題が起りますぞ。国会決議が蹂躙せられるか、あるいは司法部の独立というものが蹂躙せられるか、非常に大きな問題だと思います。犬養さんは非常な責任を感じておられるでございましよう。ところが、あなたが最高責任者であるあなたのこの時代において、このことがほんとうに後世にまで残るような前例をつくることになるから、その意味で、あなた方には、ただ単に国会の分野とか今の内閣あり方がどうだとか、自由党の力がどうだとか、そんな問題ではありません。ほんとうに日本国会の真髄に触れる大事な問題でございますから、そういう意味で、ほんとうに公平なる、ほんとうに愛国の信念を持つてこの問題を処理していただきたい。私はそれを念願するのでございます。これが私の最後の念願であります。質問ではないので、はなはだ失礼な言もございましようが、どうかお許しいただきたいと思います。これをもつて終ります。
  113. 菅家喜六

    菅家委員長 それではありがとうございました。     —————————————
  114. 菅家喜六

    菅家委員長 お諮りいたします。大体司法当局に対する質問は終つたのでありますが、休憩しております本会議をこれから続行することにいたしましようか、どうですか。それを決定していただきまして、その進行をはかりたいと思います。
  115. 松井政吉

    ○松井(政)委員 ちよつとその前に、本日法務当局の方々に来ていただいて見解をただしたのでありますが、要するに、国会が本日議決したことについては、期限を付した事柄について裁判所の出方を待たなければわからぬという答弁に終始しておるわけであります。従いまして、裁判所の出方をわれわれもやはり見なければならぬ形になりますので、本問題については、今後も法務当局その他の見解をただす必要が本委員会にあるということをわれわれは要求しておきたいと思うのです。
  116. 菅家喜六

    菅家委員長 それはよろしゆうございましよう。
  117. 椎熊三郎

    椎熊委員 そのために、本日の本会議は開かずに、明日本会議を特に開いてもらうということを御決定願つておいたらいかがでしよう。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  118. 池田禎治

    池田(禎)委員 明日という理由はどこにありますか。定例日以外に本会議要求して行つてもはなかなか開かれない。従つて定例日以外はやらないということは厳守されなければならない。私は定例日にやろうということを申し上げます。   〔「それじや今日やろうじやないか」と呼び、その他発言する者あり〕
  119. 椎熊三郎

    椎熊委員 先ほど来の、犬養さんそのほか当局のお話を聞いても、本日本会議を開いて緊急質問しても、答えはあの通りなんです。決意ができていないのです。答弁ができないのです。それじや無意味なことになるから、ちやんと向うか決意されて、ちやんとして来てから開くべきです。ただ本会議をそう遷延させることもいけません。他の重要法案もたくさんあるので、そのために重要法案の審議が遅れるようなことがあつては申訳ないから、明日特に本会議を開いて、本日の残余のものを明日本会議でやるということに願いたい。
  120. 山本幸一

    山本(幸)委員 そういうことでさしつかえないと思いますが、ただ松井君その他の御発言にありましたように、犬養さんの答弁は、終始裁判所決定を見なければならぬとおつしやつた。そうなれば私どもから質問しておりましたように、諸般の疑義があるわけですから、おのずから裁判所態度決定を待つということになるわけです。従つて、明日の本会議椎熊委員のおつしやつたようにしても、本会議を開く前に、やはり議院運営委員会を開いて、もし明日にでも裁判所態度がきまれば、さらに質疑を続行するということを前もつて御了承願うことにして、私は賛成いたします。   〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  121. 菅家喜六

    菅家委員長 ただいま諸君から御発言がありましたので、明日定例日では、ございませんが、特に本会議を開くことにいたしまして、従つて午前十時に理事会を開き、十一時に本委員会を開き、本会議の議事の順序等をきめたいと思います。なお、ただいま山本君からのお話の点は、その通りに取運びたいと考えております。なお、重要法案が本日の日程に上つてつたのでありますが、明日はその審議に進んで行きたい。この問題の質疑質疑として並行的にやるということに御承知を願いたいと思います。  それでは本日は一旦会議を開いて散会にいたしますか。
  122. 椎熊三郎

    椎熊委員 会議を開かないで、このまま開くに至らずということに決定したらいかがですか。
  123. 菅家喜六

    菅家委員長 それでは、本会議はこのまま開くに至らずということに決定して御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  124. 菅家喜六

    菅家委員長 御異議がありませんから、さよう決定いたします。  本委員会はこれにて散会いたします。    午後七時四十八分散会