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1954-04-17 第19回国会 衆議院 外務委員会法務委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月十七日(土曜日)    午前十一時三十五分開議  出席委員  外務委員会    委員長 上塚  司君    理事 今村 忠助君 理事 富田 健治君    理事 野田 卯一君 理事 穗積 七郎君    理事 戸叶 里子君       北 れい吉君    須磨彌吉郎君       上林與市郎君    福田 昌子君       細迫 兼光君    加藤 勘十君       河野  密君  法務委員会    委員長 小林かなえ君    理事 鍛冶 良作君 理事 佐瀬 昌三君    理事 田嶋 好文君 理事 花村 四郎君    理事 高橋 禎一君 理事 古屋 貞雄君    理事 井伊 誠一君       押谷 富三君    林  信雄君       牧野 寛索君    木原津與志君       木下  郁君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         検     事         (法務局第二部         長)      野木 新一君         保安政務次官  前田 正男君         保安庁局長         (保安局長)  山田  誠君         法務政務次官  三浦寅之助君         外務政務次官  小滝  彬君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君  委員外出席者         保安庁課長         (保安局調査課         長)      綱井 輝夫君         検     事         (刑事局公安課         長)      桃沢 全司君         外務委員会専門         員       佐藤 敏人君         法務委員会専門         員       村  教三君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案  (内閣提出第一一四号)     ―――――――――――――   〔上塚外務委員長委員長席に着く〕
  2. 上塚司

    上塚委員長 ただいまより外務委員会法務委員会連合審査会を開会いたします。  慣例によりまして私が委員長を勤めますから、さよう御了承願います。  日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案を議題といたします。     ―――――――――――――
  3. 上塚司

    上塚委員長 念のためにお断り申しますが、今日は折あしく外務大臣参議院外務委員会においてのMSA総括質問最終日で、ただいまはそちらに出席いたしております。また保安長官防衛法案にて内閣委員会に、法務大臣警察法にて地方行政委員会にそれぞれくぎづけされております。目下三大臣に対しましては極力出席を督促いたしておりますが、各委員会都合でまだはつきりいたしておりません。しかしただいま保安庁からは前田保安政務次官山田保安局長綱井調査課長出席いたしております。また外務省からは小瀧外務政務次官出席するはずであります。下田条約局長はすでは出席いたしております。また法務省からは三浦法務政務次官桃沢公安課長法制局からは第二部長の野木新一君が出席いたしておりますから、これらの各政府委員に対して御質問をお願いいたします。古屋貞雄君。
  4. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 大臣がいらつしやいませんので、時間の都合で各論の質問をするようにとの御趣旨でございますから、その意味質問したいと思うのです。  第一にお尋ねしたいことは、この刑罰法規によつて保護せられる法益は何であるかということの御説明を願いたい。
  5. 山田誠

    山田政府委員 この法案によりまして保護せられる法益は、第一義的にはわが国防衛秘密考えております。しかしながらこれは日本相互防衛援助協定等によります装備品あるいは装備品に関する情報でございますので、実質的にはそれが裏を返しますと、アメリカ防衛秘密ともなります。いわば日米双方秘密がこの法案法益となつております。
  6. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 刑罰法規の中でも特にこの処罰は非常に重い処罰規定されておりますので、この点が非常に重要になると思うのですが、ただいま御答弁のありました日米相互防衛援助協定三条を拝見いたしますと、ただいま答弁されました日本法益はほとんど抹消されまして、むしろアメリカから日本に供与いたしますものの秘密アメリカにおいて秘密なりと称するものを押しつけられて、しかもそれを日本秘密と称して処罰する、かような形になるように思われるのでございますが、ただいまの御答弁は逆であつて、むしろ日本の保護すべき法益よりも、アメリカ秘密を保護するということが主に考えられるのでありますが、その点についての御答弁と、なお、しからば日本法益を保護することが主であるという御答弁でありますならば、それを裏づけられるだけのものがなければならぬが、この法案のどこにそれに当てはまるものがあるか、具体的に御説明を賜わりたいと思います。
  7. 山田誠

    山田政府委員 これはあくまでも日本自衛アメリカから借りました供与兵器、あるいはその装備品に関する情報秘密として保護する必要を認めまして、今回の提案に相なつた次第でございます。そこで、第一義的に日本法益があるという実証を示せという第二の御質問でございますが、それはたとえばこの法案の第三条第一項第一号「わが国の安全を害すべき用途に供する目的をもつて、」云々、これによりましても、第一義的にはその法益日本防衛秘密保護であるという考えのもとに発足いたしておるのであります。
  8. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 ただいまの御答弁を拝聴いたしますと、第三条が主である、かような御答弁でございますが、この日米相互防衛援助協定の第三条によりますと、アメリカから供与される秘密の物件、役務並びに情報でございまして、これがはたして日本秘密であるかどうか、その情報日本を安全に尊びく一つの大事な情報であるかどうかということにつきましては、これは私ども違うと思うのです。アメリカから申しますならばこれは秘密である、あるいはこの情報アメリカの安全のために非常に危険なものであるという事実がございましても、日本から考えますならば、進んでさような秘密は公開されて、そうしてその秘密がむしろ日本のためになる場合もあり得ると思う。それからその情報自身アメリカのために秘密を保持しなければならぬ情報でありましても、日本のためには公開することがかえつて利益になるような場合があろうとも考えられるのでありますが、この点についてのもう少し具体的な御説明を願いたい。こう思いますのは、この結果、処罰をいたします最後の判断をいたします裁判所裁判の問題まで進んで参りますと、裁判秘密裁判にするのか公開に裁判にするのかという問題まで、これは結果が推し進められて参るのでありまして、さような点との関連がありますので承りたいと思うのでございますが、もう少しその点の具体的な御説明ができましたら承りたい。
  9. 山田誠

    山田政府委員 今の点はわれわれの考え方といたしましては、あくまでもわが国防衛上の見地から考えまして、アメリカから受ける供与品あるいはそれに関する情報アメリカ秘密になつておるものは、わが国におきましてもそれを秘密とすることが、日本自衛上の目的達成上必要である、かような見地から自主的にわが国においてこれを秘密といたす考えであります。ただ、実質的にはアメリカと同様の秘密日本において保護することに相なるかと思いますが、しかしながらそれはあくまでも日本が自主的な見解に立ちましてそれをきめるものでございまして、先ほど質問にありましたような、わが国においてこれを公にしてさしつかえがないと思われるような事項は、日本において独自にこの秘密を公にする意思があるかどうかという点でありますが、これは独自には秘密を公にすることは困難かと思いますが、アメリカと相談し、アメリカに了解を得て、それを公にするということは、もちろん可能なことかと考えます。  なお秘密であるか、秘密でないかということをわが国において最終的に決定をいたすものは、もちろん日本の側にあるのでありまして、裁判所においてこれが決定をされるものと考えております。
  10. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 ただいまの御説明を承れば承るだけ、日本防衛をすべてアメリカにおまかせしてしまつてアメリカさんの言う通りにどうぞおやりください、従つてアメリカの言う通りにならない者は処罰するという規定のように考えられる。さような考え国民が持つことになりますならば、私は問題であろうと思うのです。政府においては、しばしば日本独立国家であつて日本は独自の立場から物を考えなければならない、かような御答弁をしておるのであります。そこで私重ねてお伺いするのでありますが、これをまつすぐに、率直に考えますならば、日本防衛アメリカにまかしておるのだ、アメリカ防衛に関する情報並びに秘密は、即日本秘密である、かような建前前提としての、第三条のこの条項を建前としてのそれからよつて受ける一つ刑罰法規だと思うのでありますが、第三条は、日本刑罰法規をつくらなければならないという義務づけられておる条文であるかどうか、この点もう一つ承りたいと思います。
  11. 前田正男

    前田政府委員 先ほどから山田局長説明いたしております通りわが国自衛のためにわれわれがアメリカから兵器貸与を受けてやつておるのでありまして、わが国自衛というものは、わが国の独自の立場自衛をいたしておるわけであります。しかしながらこの法案にありますような高度な装備品等に対する秘密ということは、もちろんわが国におきましても自衛のためには当然秘密とすべきものであります。従いまして、私たちわが国自衛のために防衛秘密を守る必要がある、こういう考え法案をつくつたような次第でございます。ただMSA協定からは、法案をつくる義務づけはないのでありますけれどもわが国自衛のためには必要である、こういう考え方で立案いたしたような次第でございます。
  12. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 そこでさらに進んでお尋ねしたいのでありますが、ただいまのような御答弁をすなおに、素朴に私ども聞きますと、どうしてもアメリカから押しつけられた、アメリカ利益のための犠牲を国民に払わせるという感じが非常に強く出て参りまして、これから後に、この法律が適用されます場合に対する国民刑罰に対する考え方が、非常にひねくれやしないかと私は思うのであります。そこでお尋ねしたいことは、刑罰法規をもつて臨まなくても、第三条規定から申しますならば、ほかに秘密保持措置を講ずればいい、かように私ども考える。従つて何がゆえにかような重い刑罰法規を制定して、それに備えなければならぬかという理由を私は承りたい。むしろ行政措置でこの目的は十分に達せられると思う。従つて刑罰法規はいらない。従つてこの第三条の第一項には秘密保持に対する措置をとるものとするという義務がここにあるようでありますが、この義務は、あえて重い刑罰法規をもつて国民に臨まなくても行政措置で十分足りる。もし政府行政措置において足り得ないというならば、しかじかかようの点においてさようなことが逃せられない、あるいはこの措置が十分に守られない、かよう点についての具体的な御説明をお願いしたい。結論から申しますならば、行政措置で十分に足りるか足りないか、足りないとすればかような点が足りないから刑罰法規で臨むのだという、その刑罰法規制定理由お尋ねしたいと思います。
  13. 前田正男

    前田政府委員 私たち兵器貸与を受けますのは、わが国防衛に必要であるから借りるわけであります。わが国自衛によりわが国の安全を保つために借りるわけであります。従いましてわが国の安全を害すべきような目的をもつて不当にやるとか、あるいは不当な方法でこういうものを他人に漏らすというような人がありますならば、これはわが国の安全、わが国自衛根本に触れる問題でありまして、今の行政措置の件のことは私たちもできるだけ十分に処したいと思いますけれども、しかしながら現在のわが国の情勢から見まして、わが国の安全を害すべきような目的をもつてそういうようなことを行う人、その他ここに書いてありますような人たちがおらないということは断言できないのでありまして、従いましてやはりわれわれといたしましては、わが国自衛、安全のために当然こういう法規を設ける必要があると考えておるのであります。
  14. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 そうしますとかように承つていいのですか。日本アメリカ防衛によらなければ、アメリカから機密兵器を貸してもらわなければ、日本自衛はできないのだということを前提としてお考えになつておるというように承わつていいのでしようか。
  15. 前田正男

    前田政府委員 わが国防衛をするためには、わが国独自の考え方防衛するわけでありますけれども、しかしながら日本経済財政力から見まして、日本防衛に必要であるという観点から貸与を受けたわけであります。しかし貸与を受けることはわが国財政上そういう必要がなくなれば日本の独自のもので生産してもいいわけであります。一部の車両その他は日本でもつくつておるわけであります。しかし日本経済財政現状から見まして、日本防衛に必要であると思つて貸与を受けておるわけであります。
  16. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 私は今どういうものを借りておるか知りませんけれども、たとえば船舶貸与条約のような問題でありましても、私どもから申しますならば、ああいうちやちなものを持つて歩いたところで、ビキニのような原子科学の世界の中では何もならないと思うのです。そこでこういう秘密がむしろ軍機に関する秘密ということになりますならば、むしろ物そのもの秘密よりも、その中の機械力に対する秘密よりも、計数であるとかあるいは計画であるとかいうものの問題になると思うのです。それはそういう計画によるもの、たとえば作戦計画であるとかあるいはそうした情報というようなものが主だといたしますならば、それはすべてがアメリカアジアに対する防衛政策であつて日本にはむしろ発表してもらつた方がいい、なるべくアメリカ秘密だという情報が全アジアにはつきりして来て、そうしてアジアの各国がそれによつて戦争などを起すことはやらぬようにしようじやないかということで、力をもつて戦争を押えつけよう、平和を押えつけようという考えを持つておるアメリカよりもその方がましだと私は思う。そういう意味において私はこの立案されておりますところの刑罰法規というものは、まつたく考えられない刑罰だ、かように考えます。その点について、これは大臣から承りたいと思つておりますが、そういうことを私ども考えて参りますときに、この第二項と第一項を考えますと非常に矛盾だらけなのです。第二項では公衆に周知させろということを書いてある。この問題は条文の中に入りまして、秘密とは何ぞやという問題が問題になつて参りまして非常に不明確なのです。しかしこれを周知させろ、しかしながら秘密保持矛盾しない適当な措置をとれ、こういうことがありますが、この刑罰法令によるところの秘密とは何ぞや、その秘密を裏から国民周知徹底させろということができるかできないか、これは非常に矛盾しておることでございまして、実際上から行くならば明確に、この点が周知徹底させたのだ、この点が秘密を保持する限界だという限界認定は、おそらく神様でなければ私はわからぬと思う。こういうことについてこの第二項と第一項との矛盾というものは、矛盾でないというはつきりした御説明を願いたい。
  17. 下田武三

    下田政府委員 第三条の第二項は、日米両国政府がこの協定を締結いたしました結果、援助が実施されましてどういう効果を発揮し、またその援助進展ぶりはどうであるかというようなことを、両国国民によく納得させるように、あるいはパンフレツトをつくる、新聞ラジオ等説明する等、あらゆる措置で周知させるということをきめたわけであります。アメリカ政府といたしましても、国民の高い税金で外国援助をいたすのでありますから、それが日本でこういうように役立つておるということを国民説明する必要がございます。日本国におきましても、ことに今日の現状におきましては、こういう援助が役に立つかどうかということについて疑問を持つておられる向きがありますので、日本政府といたしましても周知させる必要はあると思います。そこで周知させるのはいいのですが、この法案でも品目数量という点を秘密にいたしておるのでありますが、秘密兵器が何台アメリカから来たというところまで周知させることはこれはいけないのでありまして、そういうように秘密保持を害しない範囲内でもって、できるだけ広く国民に周知させようというのが、第三条の第二項のねらいでございます。
  18. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 ただいまの御答弁の中に数字の点がありますが、数字を知らせることが日本防衛上あるいは日本に対して非常に不利益だ、こうおつしやいますが、むしろ私は数量を教えた方がいいのだろうと思う。数量を教えてこういうものをこういうぐあいに借りて来た、どういう性能を持つたものである、こういうことを国民に明らかにして、それに対する国民の認識を深めて、そうして国民はこれに対していかなる協力をするかという問題が起きなければ、どんな軍艦でどんな武器でどんなものを借りて来た、その数量もわからない、さようなつんぼさじき国民を置いておいて、国民自衛協力をしろということは私は不可能だと思う、そういう矛盾があると私ども思うのです。さような矛盾があるかないか。この御説明によりますと、その矛盾は全然ないようですが、私どもはそういう矛盾があると思う。私は自衛権とは何も武力をもつて日本を守るという、昔の国際法からいうところのさような自衛権というものでなくして、国民全体が協力して誠心誠意国を守るという一つの気持が自衛権であると思うのです。従いまして数量がわからない、どんな性能機械のものかわからない、つんぼさじきにおいてお前たち協力しろ、これはむしろこういうような考え方自体が、すでに自衛権を破壊するものだと私は思う。この点はどうなのでしよう。
  19. 下田武三

    下田政府委員 先ほどからお話が大分抽象的でございますので、わかりやすい例を申し上げますと、たとえば最近爆撃の技術が非常に発達いたしておりまして、雨が降つてろうが雲があろうが、電波でもつて目標を探知して爆撃することが可能になつております。これに対応いたしまして高射砲の方もこれの装置が雲でおおわれておろう飛行機の所在を探知して敵機を撃ち落すということも可能になつております。そこで高射砲の精巧なレーダーこれはむろん電気の装置でありますが、電波でありますからその電波を無効にする電波飛行機は放射して高射砲のねらいがきかなくなる装置もあり得るわけであります。そうしますと日本のそういう高射砲基地というものは大体数がわかりましよう。そこにたとえば百台そういう高性能高射砲が来たという数字がわかりますと、大体これは日本高射砲陣地に二台ずつ行き渡つているなということがすぐわかります。それでございましたならば日本を侵略しようという意図を持つている国から見ますれば、これは非常に好都合数字が手に入ることになるわけであります。でございますから、いかに国民に周知させるにいたしましても、数量品目、何が来ておるか幾ら来ておるかという数まで教えるということは、これは国の安全にやはり有害でありますので、そういうことはいたさない。いたさないが、できるだけ広範囲に両方の国民にこれはけつこうなことであるということを説明する手段をとろうというのが、第三条第一項の趣旨でございます。
  20. 上塚司

    上塚委員長 古屋君にちよつとお諮りいたしますが、外務大臣はただいま参議院委員会を抜けてこちらに見えておりまして、一時ごろまでおられる予定ですから、その間に外務大臣に対する質問をできるだけやつていただきたいと思います。
  21. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 承知いたしました。それでは外務大臣お尋ねをしたいと思います。ただいままでお尋ねをいたしておりました問題でございますが、外務大臣お尋ねしたいことは、この根本におきまして、本法案を制定いたしまする目的それ自体が、私ども政府のお考えになつておりますような目的では達し得られない。むしろ国民に対して刑罰をもつて不知の問題を押しつけよう、弾圧をするというような形に考えられておるのでありますが、外務大臣に承りたいことは、刑罰法規をもつて臨まなければ、この目的は達せられないかどうか。いわゆる日本義務づけられた相互防衛援助協定三条目的は、刑罰法規にあらざれば目的を達せられないかどうか。私どもはむしろ行政処置をもつてなされましてもこの目的は十分に達し得られる。のみならずかような処置をとること自体が、日本自衛権の発動に対する国民協力を得るゆえんと考えますが、その点は外務大臣いかがにお考えになつておりますか。
  22. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはまず申し上げておきたいのは、アメリカから援助を受ける兵器全部を、数量でも品目でも何でもかんでも秘密にして、漏らした者に刑罰を科するというのではなくして、普通のものはこれは一向さしつかえないわけであります。特に機密を要するために、アメリカでも刑罰をもつてこの機密を保持しておるような種類のものだけに限りまして、機密保持をやるという趣旨であります。従つて国民にも相当程度これは周知できるはずでありまして、ただその中の一部のごく機密を要する機械とか、その他のものについて発表ができないという程度であります。それから、そういう特に秘密を要するものは、これはパテントみたいなものもありますし、いろいろな非常に高価なもので、まあかりに一つの例でありますが、この機密を技師かなんかが知つて、よその国に売つたならば非常に利益を得るというような種類のものもあり得るわけであります。このときに行政処分のようなことでそれを免職するということだけは、非常に大きな利益を得るような秘密を保持するには適当でございません。非常にたくさんの利益を得るために外国秘密を売るというようなこともあり得るわけでありますから、どうしてもこの高度の機密を要する種類のものにつきましては、この程度処罰を伴わなければ、機密保持はできまいと考えております。
  23. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 そうしますと、この法案を見ますと、まず非常に不明確な点の字句が非常に多いのであります。たとえば防衛秘密とは何ぞやという問題になつて参りますと、これは非常に不明確であります。それから刑罰法規でございますから、犯意を必要とする。全然無知の国民に対して処罰をもつて対するということになりますから、秘密に対する認定はどういうけじめでするかという問題が起きる。従いまして周知徹底せしめておるものについて機密を保持する、こういうのならりくつが合うのでありますが、努めて秘密は教えない状態において、しかもそれを漏洩し、あるいはこの情報を利用した、かような場合にこれを処罰するという法規でございますが、この防衛秘密というものの国民に対する周知徹底状態はいかがにいたしてやられるのか、その点を承りたいと思います。
  24. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはアメリカでも第一に機密のものはずいぶんたくさんありましようけれども、たとえば水素爆弾の実験でもある程度は映画にして公開しておるようなわけであります。また非常に高度の機密を持つものでも、こういう飛行機がある、飛行機の中の構造等は発表しないにしても、こういう飛行機があるという程度のことは知らしておりますから、何でもかんでも秘密でないことは、もう十分御了承願えると思うのであります。そこで特に機密を要するものについては、これはここのところが機密なんだから発表しないぞと言つてふれ歩くわけには行かないと思う。やはりこれは機密にしておきますと、普通の方法をもつては内容を探知することはできないのであります。何か特別の賄賂をとつて、青写真をとるとかなんとかしなければ――あるいは業務上知る者はありましようが、業務上知る者については、業務に携わる者に特に注意いたしまして、これは機密でこういう罰があるということを言うのであります。普通の一般の国民は、ただそこらを歩いておつたからといつて、そういうものがわかるわけはありませんからして、この点は私はこの法律案で十分保てるし、国民に特に迷惑をかける理由はないと思うのであります。
  25. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 私は実は言論の弾圧になるおそれがあるということを非常に心配するわけであります。それは情報に関する関係でありますが、新聞社の諸君は、情報を収集するという場合において、新聞業界において競争がございますから、努めて早く、正確なものを報道したいというようなことで、報道をいたします場合に、はたしてそれが秘密の漏洩になるかならぬか、この刑罰法規にひつかかるかどうかというような問題についての、新聞報道陣の諸君のそれに対する認識、いわゆる犯意の問題が非常に問題になつて来るのではないかと思うのでありますが、かような情報に対する種取りと申しましようか、実情調査と申しましようか、さような点についての、一体この業者に対するこの刑罰をもつて向う前に、何らかの方法でこれに対しては秘密である、これに対しては情報をとつてはいけないというようなことの周知の方法でも前提となされてお考えになつておるのか。ここに第二項の方には、周知せしめ徹底せしめるということが書いてございます。しかしながら秘密保持矛盾しない適当な方法、こういう条文になつておるようですが、かような点については、言論の圧迫であるとか、新聞社諸君の活動を相当制限するということになることをおそれるのでありますが、さようなおそれに対して外務大臣は、さようなおそれはない、かようしかじかで大丈夫だ、かような確信が得られるような御発表を国民に願えますならば、その点を御説明願いたいと思います。
  26. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 たとえば、例をもつていたしますれば、船を借り受ける。その船の中のレーダーだけが機密装置である。これはこの法律案にいう機密になると仮定いたします。新聞社がその船を見て、こういう船だとか、その中の部屋割とか、いろいろなことを書いても、それは何にも問題にならぬわけであります。ただ人の出入りをしない場所が一つつて、そこのところは機密であると仮定いたしまして、そこへは普通入らないのであります。これは何か非常な不当な手段をとれば別でありますが、そうでなければ普通入らないところでありますから、その意味では新聞社の普通の報道に対して何らこれを抑圧することはないと思います、そういう点についてはまた逆に、そこの場所は特に間違つて入るようなことのないように十分なる注意をいたすはずでありますから、その点でも心配はないと私は確信いたしております。
  27. 上塚司

    上塚委員長 古屋君にちよつと申し上げますが、なおほかに外務大臣に対する質問者が三人ございますので、二十分程度外務大臣に対する質問をおとめくださつて、他の質問者にお譲りを願いたいと思います。あともう十二、三分ございます。
  28. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 努めて時間を節約して承りましよう。そこでさらに承りたいのは、この刑罰は政治罰であるか、自然罰であるか。この点が問題になると思うのですが、問題は、起訴されて、裁判が公開されて、これが公表されるならば、この法律はつくる必要はないということになるわけです、従いまして私どもはこの処罰は政治罰であつて自然罰ではない、かように考えておるのですが、この点外務大臣はいかがお考えになりますか。
  29. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはむしろ専門家の方から答えた方がいいと思いますが、普通にわれわれの常識で申しますれば、ある機密が公にされてしまつたということでありますから、それはもう機密でなくなるという場合もあろうかと思います、従つて裁判にかけるということも、特にないしよにしなければならぬという場合ばかりじやない、こう考えております。
  30. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 法務省の専門家の方がいらつしやるでしようから、お答え願いたい。
  31. 桃沢全司

    桃沢説明員 ただいまの御質問によりますと、もし裁判で公開された場合に、そこで秘密が公表されてしまう。そういうことならばこの法律は機密保護の建前から矛盾があるのではなかろうか、こういう御趣旨に伺つたのでございますが、なるほど裁判の過程におきましてこれが外部に漏れる、公にされるという場合もあろうかと存じます。しかしながらこういう法規を設けることによりまして、そういう犯罪を防ぐ、そこに主眼がございます。もしもこの機密保護を第一義といたしまして、絶対に外部に漏れない裁判をすべきであるという考えを持ちますと、憲法八十二条との関連において非常に問題があるのでございます。人権擁護と申しますか、国民の基本的人権との関連において、憲法八十二条の規定がございますので、この八十三条の精神は十分くんで、かりにそのことによりまして秘密が漏れるという影響がございましても、これは憲法八十二条の建前からやむを得ないことである、かように考えておる次第でございます。
  32. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 その点をなお明確にしたいのでありますが、自然罰か政治罰かの問題で、政治犯でありますならば憲法八十二条で公開しなければならぬことになるわけです。従つて秘密裁判はできないのでございますから、起訴されれば全部公開される。従いまして機密機密でなくなるという今の外務大臣の御答弁によりますならば、初めから処罰がいらなくなるということになるのじやないかと思いますが、これは政治罰でしようか。それとも自然罰でございましようか。憲法八十二条に基く公開をしなければならない犯罪になるのかどうか、その点をお答え願います。
  33. 桃沢全司

    桃沢説明員 八十二条の二項の但書に「政治犯罪、出版に関する犯罪」と憲法第三章に規定してあります関係の部分は、憲法八十二条によつて絶対に公開が要請されているのでございます。この法案に違反したものが、すべて八十二条の但書に当るかどうかは問題でありまして、個々の事件によりまして、それが但書に該当する事件であるかいなかが判定せらるべきものと存じます。しかもその但書に該当するかいなかを決定いたしますのは、もつぱら裁判所でございます。私どもは、裁判所がこの八十二条の解釈にあたりまして、厳正にしてかつ適切なる判断を下されるものと期待し、また信じている次第でございます。
  34. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 私は個々の問題ではないと思う。この法案の一条から三条までに明確に、これこれはしかじかと書いております。この事態は政治犯か自然犯かということを問題にしているので個々ではないと思う。ことに三条などははつきり書いておる。わが国の安全を害すべきというような問題になりますと、これは完全に政治犯である。政治犯であるならば八十二条で全部公開しなければならぬという結論になる。従つて個々の場合に裁判所がきめるのではなくして、初めからきまつておる。かような点はどうなのでしようか。
  35. 桃沢全司

    桃沢説明員 政治犯罪という観念は、非常に古くからある観念でございますが、その範囲をいかなる限度に求めるかということについては、学説上もいろいろの争いがあるのでございます。私ども考えておりますのは、本法違反がすべて政治犯罪として該当するかどうかは、実は疑問があるのでございます。たとえばこの条文から申しますと、第四条でございますが、過失犯は政治犯罪には含まれないというのが大体の通説かと存じます。政治犯罪の範囲についてでありますが、大別いたしますと、主として客観説と主観説にわかれると存ずるのであります。客観説の中に秘密保護法違反が入るかどうかという点は、また問題もあると存じます。しかしながら主観説の中の目的説には入り得る場合があるのではなかろうか、ただいま古屋委員の御指摘になりましたわが国の安全を害する目的でやる、いわゆる諜報活動としてやるという場合には、多くの場合、政治犯罪に該当するものではなかろうかと考えます。しかしながらさような関係ではございませんで、もつぱら金銭を目的とするというための漏洩罪もあろうかと存じます。かようなものがはたして政治犯罪であるかどうかはきわめて疑問でございます。さような意味におきまして、国々の具体的事件につきましての裁判所の公正適切なる判断にまちたい、かように考えておる次第でございます。
  36. 古屋貞雄

    古屋委員 法理論はあとからまた承ることにしまして、時間がないそうですから、あと一点だけ外務大臣に承りたいと思います。  これは念を押すのですが、私ども三条を拝見いたしますと、何だかアメリカから押しつけられて、アメリカ防衛のために日本人たち処罰されるというような感じを持たせられる。これはひねくれて申しておるのではないので、率直にこの三条を解釈してさように感ずるのであります。おそらく国民もさような感じを持つだろうと思いますので、あらためてなお一点だけ外務大臣お尋ねしますが、防衛秘密というものに対して、はたして秘密であるかどうか、あるいはその情報秘密にすべきものであるかどうか。これは日本の独自の立場からこれを考え秘密を防御しなければならない、かような情報秘密としてこれを禁じておかなければならない、周知せしめてはいけないということは、日本の独自の立場決定権を持つのがあたりまえとは思いますけれども、持たれておるのか、それともアメリカから供与されるいろいろの物件あるいはアメリカから出された情報でありますから、やはりアメリカ秘密を必要だとする場合には、当然にこの条文で私ども日本の国としては秘密なりとしてこれを保護すべきかどうか、この点だけ伺いたいと思います。
  37. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それはもう、アメリカでかりに秘密にしておる物件がある、これを日本秘密を守らないといえば、日本貸与なり贈与しないだけの話であります。しかしながら日本防衛のために必要とあれば、そういう機密の武器等も譲り受けたいのであります。そのときにはアメリカと同様の程度秘密を守るという約束をしなければ、アメリカ側が貸与しないのは当然でありますから、そういう意味で、アメリカからMSA等に関係して譲り受けるものについては、いろいろなものがありますが、その同様の程度秘密を守る、これが本法の趣旨であります。
  38. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 そこで承りたいのは、日本では戦力を持たないということは憲法ではつきりしておりますから、武器を持ち、武器を借りるということ自体が、これは禁ぜられておるように私は思う。持つことができないと思う。従いましてただいま御答弁になりましたような武器の内容に対する機密、かような問題は私は考えられないと思うのでございますが、その点やはり武器は戦力とはおつしやらぬのかどうか、その点議論がありましようけれども、もう一度承りたいと思います。
  39. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは木村さんがたびたび御説明いたしておりますように、近代戦を遂行するに足るだけの装備、編成を持つたものが戦力であるという建前でありまして、日本の国を防御するために武器を持つちやいかぬということは、憲法には何ら規定してないと信じております。従いまして、必要な武器を借りることはさしつかえない、こう考えております。
  40. 古屋貞雄

    古屋(貞)委員 私はさようなものは戦力と考えますので、意見が相違しておりますから打切ります。各論はまた別に質問いたします。
  41. 上塚司

    上塚委員長 次は高橋禎一君。
  42. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 外務大臣MSA協定の締結の責任者ですから、今審議中のいわゆる秘密保護法案については十分御研究になり、かつその実施についても責任者の一人であると考えます。そこですべてにわたつて御承知でなければならぬ、またそのはずでありますが、しかし時間の関係もありますし、きわめて外務大臣向きの質問を二、三いたしたいと思うのであります。  日本国憲法第九条の問題に関して、これまで国会が開かれるたびごとに、数年来この問題が論議されて参りました。ところがせつかく長い間論議を重ねたにもかかわらず、国民においてはまだ十分この問題が政府のおつしやるのが正しいのだというふうに理解されておらないと私は思いますし、むしろ政府説明は間違つておるのだという感じを持つた人の方が多いと思つておるのであります。そこでこういうふうな国民の観念、これはすなわち社会通念でありますが、そういう通念を持つておる社会において、本法のごとき、アメリカにおいては軍機保護法たる内容を持つており、日本国においては軍機保護法ではないのである、単に政府がこれまで軍備ではない、防御だと言つて来たその防衛を保護するためにこの法律はつくられるのだ、しかもその内容はアメリカの船舶、航空機、武器、弾薬その他装備品あるいは資材あるいは情報アメリカから来たこれらのものの秘密を保護するのだ、こういう法律の内容なのです。国民の社会常識では、アメリカにおいては軍機保護法をもつて取締られるべき内容ではあるが、日本においては軍機保護法ではない、日本防衛のためにアメリカから来たこれらのものの秘密を保護するのだというようなこの法律、これが一体国民に十分その精神が徹底をして、そうしてこれが守られるかということについては大きな疑問がございますし、私はむしろこれは容易に守られないのではないかという疑念を持つておるわけであります。そこでこの法案を見ますと、私ども研究すればるすだけ不明確な点が出て参るのでありますが、こういう特殊な法律でありますから、従来の法律にその例を見ましたように、この法律はこういう目的をもつて定められておるものであるということを、第一にはつきり国民に徹底さすように規定をさるべきではないか、私はこう思う。国民はこの法律に定められておる内容を守るということが、一体何のためであるかということに非常な疑問を持つておる。むしろこれは先ほど質問にも出ましたように、アメリカの軍機をわれわれが守らされるのではないかという感じの方が強いと思う。そこに立法上非常な欠点があるわけでありまして、国会においての審議中政府当局の御答弁を伺つても、その点がまだまだ解明されないというようなことであつたのでは、とうていこれを実施しても国民には守られないというふうに私は考えますので、その点を明確にすべきではないか。こういう法律においてこそ、法の目的を冒頭にはつきりと掲げておくことが必要だ、すなわち法の持つておる内容を国民周知徹底さすと同時に、法律の目的を十分周知徹底さすようにしなければ、とうていこの法律の運営はうまく行くものではないと思うのですが、これについては外務大臣はどのようにお考えでございますか。
  43. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は法律の専門家でありませんから、そういうものを入れたらどうかというような技術的の点はさておきまして、私は国民はそうひがんで考えておるとは思いません。どこだつて自分の所で機密にしておるものをよそに渡した場合に、おれの方はそんな機密はないのだ、どんどん出してしまうのだというなら、渡さないだけであります。渡してもらいたければその程度秘密は守るということでなければ、武器を渡してくれないのは当然でありますから、その範囲のことをやつておるので、われわれは防衛上そういう種類の装備等も必要だと考えますから、アメリカで守つておる程度機密を守るという約束をして、そうして日本の防御に必要なる武器等を譲り受けたい、こう考えるのでありますから、その点に私は国民が疑念を持つとは考えられないのであります。
  44. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 日本国民は、日本が軍備を持つておりました当時には、軍に関する機密日本国防衛のために守らなければならぬということは、もう国民の常識になつておつたと思うのです。ところが日本は軍備を持たないというのだから、軍の機密を守るというようなお考えは全然なくなつておるわけなのです。これは当然なことですし、また憲法はそう定めておるのですから、そこに憲法の精神に沿うた国民常識というものができ上つておる。ところがわれわれはアメリカの軍の機密を守らなければならぬという感じをまだまだ持つておらぬと私は思うのです。そこは外務大臣は、アメリカの軍の機密を守らなければならぬということは、アメリカからこれらのものを借り受けるのだから、借り受けるためには守らなければならぬということはわかっておるはずだとおつしやいますけれども、そう簡単なものではないと思う。むしろそんなものは不当なやり方であるというふうに考えておる人の方が多いと思う。日本国の、軍の機密を守るということについての観念は全然なくなつ国民に対して、アメリカから借りたのである、こうしなければ貸せないのであるから、われわれはアメリカ装備品あるいはまた情報等の機密を守らなければならぬ、その程度の観念でもって、一体この法が完全に守られて行くかどうか、またそういうふうな政府考え方でもって、MSA協定によつてアメリカに対して背負つておる日本国の責任が果されるのかどうか、また日本防衛秘密というものは守つて行けるかどうか、その点についての外務大臣の確信をお尋ねいたしたいと思います。
  45. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはアメリカの軍の機密といいますが、軍の一般的な機密を守るという約束は何もしておらない、日本防衛に必要なものを譲り受けたりなんかするときに、その範囲内の機密アメリカと同様に守る、それでなければだれも譲り渡す国はありはしない、それが必要である範囲内においては、これはやむを得ないことである。私は国民はこの点はよくわかるだろうと信じております。
  46. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 アメリカの軍の機密を全部守るための法律だというふうに私も考えていませんし、そんなことを尋ねた覚えはないのです。ここに書いてある内容は、結局アメリカ秘密にしておることだけなのでしよう。アメリカの軍の秘密の一部だと言えば言えるわけです。しかしそれを守つて行くには、日本国民は心から守らなければならないという考えを持たなければならない。アメリカから借りるのだから、これを守らなければ貸せないのだから守れ、こういうふうなことでは、この法律が完全に国民の間に履行されるように私は思えない。借りるのだ、日本は借りなければならぬのだが、こうしなければ貸さないのだから守れ、そんな簡単な不徹底なことでは私はこの法律制定の目的は十分に達成できない、こう思います。もつとはつきりと、この法律はこういう趣旨のものである、日本国民のために、どれだけなるのだということを徹底さすことによつて、真に法の目的を達成し得る、こう思うのでありますが、法律技術のことは自分ではよくわからぬとおつしやつても、これは簡単な法律で、よく御存じのはずですから、そういうような逃げ言葉でなくして、真に責任を持つて、このアメリカとのMSA協定によつて日本の課せられている責任を十分果そうという国際信義の上からも大切なことなのですが、そういうふうにお考えにならないかどうか。まだ今審議中ですから、いくらでも修正すれば修正する余地があるわけですから、少しまじめに考えてこの点を御回答願いたい。
  47. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私はあなたとその点は御意見が違うのだからやむを得ませんが、この法律は、国民はよく理解してもらえるとかたく信じております。要するに日本防衛するためにはこういう種類の武器が必要である、その装備、武器等はアメリカから手に入れるほかは、今のところはなくて、これはアメリカ機密にいたしておる。しからば日本防衛のために、その程度機密を守つてこれらの装備その他のものをアメリカから譲り受けるということが必要なのであつて国民は十分に理解してくれるものとかたく信じております。
  48. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 先ほど古屋君への答弁にもありましたと思いますが、この協定三条の第一項の規定からは、必ずしも刑罰をもつて取締るというような措置をとらなくてもいいのだ、こういうふうに伺つたのでありますが、その点について重ねて御答弁願いたいと思います。もし刑罰をもつて取締るということがこの協定三条から当然義務づけられておるというのでないならば、私は日本国が軍備を持たないことになり、従つて軍の機密を守るというようなことはあり得べきものではないのだというふうになつ国民、これにアメリカからこれこれのものを借り受け、情報の提供を受けるのだから、アメリカではこれを秘密にしているのだから、これを守らなければならぬということについての措置というものは、行政的な手段で解決することに努力をして、その努力ではとうてい協定の上から日本国が背負つておるところの義務を果すことができないというような危険を感じたときに、刑罰法規の制定というような段階に進んで行くのが最も賢明な政治のやり方ではないか、こう考える。一体まだ自然犯的な、いわゆる国民の常識あるいは道徳観念等から、当然にこれは守らなければならないものというところまでに達しておらないところの行政的な取締りというものは、国民にとつてはきわめてきゆうくつな、もつと言葉をかえますと、国民が圧迫をされる、そしてそれが具体的な事件となつて取締りを受ければ非常な弾圧を受ける、こういう感じがするものなのです。それはほんとうの民主主義国家のあり方としては間違つていると思うのです。従つて行政措置、行政的手段によつてこの協定上の義務を果すことに努力して、それでも日本国民はこの秘密を犯す危険があるという、そういう段階においてこの種の法律を制定すべきものでないか、それが賢明な方途であると考えるわけでありますが、外務大臣はそこまで考え、またそういう方向に向つて御努力をなさつたかどうか、その点をお伺いいたします。
  49. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 こういう機密については諸外国におきましてもすべて取締りの法規がありまして、むしろこの法案よりも厳重な程度の取締り法規があるのであります。日本アメリカから機密の装備等を受けようとしますれば、この程度処罰規定のない行政措置等によつては、アメリカ側としてはとうてい必要な装備等を貸すわけはないと私は考えております。従いまして、アメリカ側からその必要な装備等を譲り受けるためには、この程度のものはどうしても必要だ。あらかじめほかの方法でためしてみて悪かつたらというわけには行かないと信じております。また何か先ほど私が処罰はいらぬのだというふうに言つたようにお話でありましたが、そんなふうには言いません。私は処罰は必要だ、こう申したのであります。
  50. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 今最後にお答えになつた、処罰が必要でないと言つたのは尋ねる方の間違いで、処罰が必要だ、こういうことになるのですか。この協定三条一項の規定は、当然刑罰法規をもつて取締りをするというような措置をしなければならない義務があるのだ、こういうふうな御趣旨でありますかどうか、その点をお伺いいたします。
  51. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 いや義務はありはしません。ただアメリカ側から日本を守るために必要な装備等を譲り受けるためには、この種の法案が必要である、こう考えております。
  52. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 外務大臣先ほど、各国でこういう法律があるのであつて、そうして取締りを厳重にやつておる、こうおつしやるのです。そこに非常な問題があるわけであります。各国ではもちろん軍備をやつておるのでしよう。国を守るための軍備をしておるので、その軍の秘密は守らなければならぬということにして、もしそれに違反すれば刑罰をもつて臨む。これは軍備を持つ国においてはもう国民の常識になつておるのです。ところが日本では、軍備は持たないと憲法もいい、政府も軍備ではない、こうおつしやるのです。だから軍備を持たない以上軍の機密というものはない、そんなものがあつてはならぬと憲法が定めておるその国民と、軍備を持つて防衛をしておる国の国民のものの考え方を同じように考えておられるというところに、私は大きな間違いがあるというのですよ。その点を先ほどからお尋ねをしておるのです。だから、外国ではこういうふうな内容の法律を持つておる、そうしてそれは十分効果を上げておる、こう言われるような考え方がこの法律の立案にあたつていささかでもおありになつたら、それはたいへんなことだと思う。だから私は先ほど来申し上げておりますように、国民は軍の機密を守らなければならぬというような観念がないのに、ただアメリカからものを借りるので、アメリカの軍の機密の一部をわれわれは守るのだ、こういうふうな考えでは実に不徹底なことである。だから法律ではつきりそれを定めるなり、むしろこの種の法律を守らなければならぬということが国民一つの常識となるまでの間は、刑罰をもつて臨まないで、努力をして行政措置だけをもつて解決をして行くということが賢明な方法ではないか。そうしないと、いたずらに国民をして、他国の軍の機密を守るためにわれわれが弾圧をされるのだ、取締りをされるのだという観念を持たせる。しかも相手がアメリカですから、日本国民の現在抱いておるところの感情というものを思いますときに、私はそういうやり方は日本の将来のためにならぬと確信しておるのです。その点をお伺いしておるわけであります。
  53. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 よその国がアメリカからMSAで武器を受けるときには、厳重な取締り法規を持つているということを言つているので、別に軍機保護法がよその国にあるから日本もどうだということじやない。要するにアメリカからそういう種類の装備等を借り受けるためには、この種の法律がなければ借り受けられない、従いまして私はこれが必要だというので、何もアメリカ機密を守るのじやない、日本防衛のためにこういうものが必要で、そのためにアメリカから借りて来なければならぬ場合には、アメリカと同程度機密を守つてやるのは当然のことだと思います。国民はこれはすなおにわかるとかたく信じております。
  54. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 もう時間が参りましたから、ただ一点今の問題に関連してお導ねをしておきますが、外国アメリカからMSA協定によつて武器を借りれば、同じような法律を制定して取締りをしておる、これを守つて行く、よそでもやるのだから日本でもやるのだということですが、アメリカから武器を借りたり、あるいは軍に関する情報を提供されておる国、すなわちアメリカMSA協定を結んでおるその国は、軍備をしつかり持つて、軍の力によつてその国を防御するという態度をはつきりしておる国々なのでしよう。日本のように、軍備は持たない、戦力は持たない、こう言つている国じやないのでしよう。そこに大きな間違いがある、こういうことを私は申し上げておるのでありまして、外務大臣はその点についてはきわめて認識が誤つておると私は思つております。しかし時間の関係もありますから本日はこの程度にいたしておきますが、後日法務委員会等においてこの点をはつきりいたしたいと思いますから、最後の点について御答弁を願つて私の質問を終りたいと思います。
  55. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は軍のあるなしには関係は――まあ多少はあるかもしれませんが、全部の関係はないと思つております。またアメリカ側から譲り受ける兵器等についても、軍の機密ではなくして、たとえばパテントであるような種類のものもあると想像されるので、これは一般にアメリカ側でそのパテントを採用しておつても、よそにそれをむやみに使われては困るというようなものもありましよう。軍があるから、ないからといつて、それで区別をするべきものじやないと思います。
  56. 上塚司

    上塚委員長 木下郁君。
  57. 木下郁

    ○木下委員 時間があまりありませんからごくかいつまんで一、二点お伺いします。  これは古屋君も高橋君も今お聞きになつたことに関連するのですが、MSA協定の第三条の「両政府の間で合意する秘密保持措置を執るものとする。」というその措置は、この秘密保護法でおしまいになつた、これで完了したと思つてよろしいのでありましようか。それともまたこれ以上の、具体的にいいますと、この法律をもう少し厳格にするとか、あるいは別な措置を講ずるとかいうようなことが、まだMSA協定のときに予定されておるのでありましようか、その点をまず伺つておきます。
  58. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 MSA協定のうちにはこれ以外には全然話も出ておりませんし、従いまして何ら予定されたものはありません。
  59. 木下郁

    ○木下委員 そうしますと、この法律ができれば、これは日本の国内法として完全なものなのですから、先ほど話もちよつと出ておりましたように、日本裁判所でこれが政治犯なりという見解のもとに秘密が公開され、判決の理由の中にも当然こういう秘密をこうしたということがはつきり公開されなければならぬ。そういうときにアメリカから、それはこの措置としてはなかなか困るというようなことを言つて来られる危険がありはしないかと思われるわけでありますが、そういう危険はないのであるというふうに予定されておりますかどうか、その点を伺つておきたい。それはやはり裁判所も、はつきり裁判官としての裁判はいたす覚悟はしておりましても、そこは人情で、また現に占領下においての裁判では、私具体的な事実をはつきりつかんではおりませんが、世間で伝えられるところでは、裁判官の裁判に対して、それが手ぬる過ぎるとかなんとかいうことで、占領軍からいろいろ外からの要求があつたということを聞いております。これは占領治下でありますからやむを得ないということも法律の面からしても考えられますが、すでに独立いたしておる日本裁判においてさようなことが少しでも感ぜられる危険があつては相ならぬという意味で、そういう点に対しては危険は毛頭ないのだというお見通しの上でこの法案をお出しになつておるのかどうか、それを伺つておきたいと思います。
  60. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 MSA協定においても合意する措置とありまして、われわれの方ではこれが適当であると考えて先方とも相談して、先方もけつこうであろうということになつてこの法案を出したわけであります。従いまして、裁判のやり方等についても先方でももちろん研究いたしております。結論的に申せば、この法律が通つて、この法律通り裁判所が法を執行しますればアメリカ側としては何ら言い分はない、何ら問題はないと確信いたしております。
  61. 木下郁

    ○木下委員 そういうお見通しであれば、その点に対する心配は全然解消したわけであります。しかし何と申しても今の日本アメリカ立場は、半年前の話を顧みましても、副大統領のニクソンという人が来て、日本の憲法の制定はミステークであつたというようなことを、ごく何でもない、日常茶飲事のごとくいわれております。ああいうような空気があれば、やはりその点に関する日本政府としての覚悟ははつきりきめておかないと、あとでこの秘密保持措置をするその措置が、ここは足らぬからこういうふうにしてくれというような注文が出て来たのでは、国民もたいへん迷惑するし、また日本裁判の威信というものにもたいへん関係すると思いますので、十分気をつけていただきたいと思います。  なお次に、アメリカから供与される装備品秘密に属するものには標識をするということになつております。その標識のやり方等について伺うわけではありませんが、アメリカ秘密考えておる内容と、日本の――保安庁長官が政令でその標識の方法なんかをきめるそうですが、保安庁長官の考えておる秘密というものの内容が食い違うこともありはしないかと思う。だからそういう問題について、秘密なりやいなやというその秘密事項の判定は、これはやはりこの法律に基いて日本裁判所がきめるべきものだ、判定すべきものだと考えますが、さように理解してよろしゆうございましようか、その点を伺つておきたいと思います。
  62. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 もちろん、裁判になりますれば裁判所認定することになります。
  63. 木下郁

    ○木下委員 それから供与される装備品ということになつておりますが、供与という意味は、日本に貸してくれるもの、貸与されるものと、くれるもの、贈与されるもの、この二種類以外には出ないと思います。ところが先日の政府委員説明の中に、この兵器日本兵器会社でつくるということが出ておりますが、それは、アメリカから器材を持つて来てそれを組み立てるというようなことは問題はないと思いますが、図面があるとか、あるいはサンプルだけはもらつているが、日本の保安隊でもつと持ちたいというようなことが当然起るのじやないかと思います。さような意味で、日本の国内の兵器工場で同種類性能兵器をつくることがありはしないかと思うわけです。ところがこの法文の解釈から行きますと、日本兵器工場で日本の資材でつくつたものは供与されたものではない、貸与されたものでもなければ贈与されたものでもない。そうしますと、そういうものに関する秘密が従業員から漏れたというような場合には、この処罰規定目的にはならないと考えておりますが、さようなふうに伺つておいてよろしゆうございましようか、そういう御解釈でありますか。
  64. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私も非常にこまかいところまではわかりませんが、これは裁判官が決定することになろうかと思いますが、要するに、たとえば青写真をもらつて来るとかあるいは一時借りて来る、その青写真が機密であれば、その機密は守らなければならぬわけと考えております。従つて、工場へ同じものを注文いたしましても、その青写真の機密が漏れないような措置は講じなければならぬと思つております。
  65. 木下郁

    ○木下委員 この秘密保護法の第一条の第三項の一を見ますと、「アメリカ合衆国政府から供与される装備品等について左に掲げる事項」というようなことが書いてあり、性能なんかも書いてありますが、もしさような意味であれば、これは立法技術上の手落ちではないかというふうに思います。しかし、今ここで議論をするつもりもありませんからその点は私の見解だけを申し上げておきます。  憲法の問題につては、これは木村長官に伺いたいと思つて先日伺いかけておつたのですが、先ほど外務大臣のお言葉にも戦力のない軍隊だとかいうことが出まし。たこれは、国民はよくもまあしんぼう強くああいう同じようなことを繰返しているものだ、ばかげたことだというふうに感じている人もあるでしようし、またこつけいに感じている人も相当ありはしないかというふうに私は感じております。その憲法論を今外務大臣にあれこれ伺うつもりはありませんが、私の解釈では、今の政府の解釈は非常な詭弁だと思つております。それに関連して、将来こういうことを言われやしないかと思うので、一点伺つておきます。というのは、日本国の軍隊、あるいはアメリカの軍隊というその軍隊というのは、私はその軍隊の最高の命令権、いわゆる統帥権がその国にあるかどうかということが、一番その国の軍隊なりやいなやというものの標準になると思うのです。戦力なき軍隊なんという今の政府の解釈、この言葉は外務大臣がおつくりになつたのではなくて、木村長官か法制局長官がおつくりになつたのだと思つておりますが、将来日本が国連に入つたというような場合に、これは日本の軍隊じやない、国連の軍隊だ、その構成はおもに日人の志願兵でできておるけれども、統帥権が国連の最高司令官にあるのだということで、また戦力なき軍隊みたいな解釈論が出て来やしないかというふうに憂えられるわけであります。さような意味外務大臣は、その国の軍隊というのはどこを標準にして解釈なさつておるか、その御見解を承つておきたいと思います。
  66. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは私も法律的にはどうかと思いますが、普通考えられておりますのは、ある国においてその指揮権がその国に属しており、その費用その他経費はその国の財政からまかなつておる。そうして主としてその人員はその国の国民である。かつその目的は、その国の安全を守る、こういう趣旨のものが一国の軍隊である、こう考えております。
  67. 木下郁

    ○木下委員 次にMSA協定なんかを締結された責任者として外務大臣に伺つておきたいと思う。日本の侵略を防ぐといつておりますが、その侵略する国というのは、国民的な常識としても大体ソ連と中共だというふうにみな考えておると思いますが、やはりMSA協定を御締結になつた、そうして日本防衛ということを、こういう秘密保護法なんかまでつくつて用意しておかなければというふうにお考えになるその相手国としては、ソ連と中共ということにお考えになつておるというふうに理解してよろしゆうございますか、その点を伺つておきたい。
  68. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはいわゆる仮想敵国というお話だと思いますが、軍隊でも何でもいいのですが、要するにある国の防衛力が、その国として相当の程度まで行きますれば、今度はどこの国を目ざして、それ以上にしなければならぬかどうかということが出て来ると思いますが、ただいまの日本現状では、実際上産業力あるいは人口、海岸線等に比して非常に小さな部隊でありまして、実はこれだけで日本防衛には足らないことは私は明らかだと思います。従いまして、まだ仮想敵国などというものを考える時期ではなくして、独立国として必要な最小限度の防備の力にはまだとうてい達していないと思つております。従いまして仮想敵国のようなものを考えてはおらないのでありまして、まだ事実上ソ連、中共を相手として国を守ろうというような、自衛隊にしてもそんな編成装備はとうてい持つておらない。仮想敵国というものはございません。
  69. 木下郁

    ○木下委員 その点は外務大臣としての地位からそうはつきり言うこともちよつと差控えたいというような御考慮もあるのじやないかと思いますが、大体世間が理解しておるところであります。そんなにはつきり伺わぬでもよろしいのであります。  これは私木村長官に伺いたいと思つておることでありますけれども、憲法九条の前段の解釈について、国際紛争を武力で解決しないということが第一項の方に出ております。常識的に、国際紛争の頂点は侵略だ、一つの国が一つの国の領土内に軍隊を差向けて入れた、侵略された国は早くやめてもらいたいといつてそれを要求する。そこでその排除が力で来たのだからなかなからちが明かぬので戦争になる。これが国際紛争の一番の頂点だと思つております。その国際紛争という中を木村長官に先日伺いかけておりましたら、本会議のベルが鳴つたので十分伺えなかつたのであります。侵略を防ぐのは国際紛争ではないというかのごとき答えがありかかつたので、私よく理解ができなかつたのであります。これは十六年前ですか、日本軍が中国に行つていた昭和十二年に始まつた日支事変というものは日本からの侵略だ、これに対して中国が交戦をして来て長期抗戦をやつた、これは私はりつぱな国際紛争だと思う。一つの国が一つの国に侵入して来たらそれは国際紛争になるのじやないか、私は国際紛争の最も明瞭なるサンプルみたようなものだと思つておりますが、どういうふうにそういうものを御解釈になつておりますか。
  70. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は侵略というものは国際紛争じやなくして、国際紛争の結果起るものだと思つております。どこの国といえども何にも理由のないのによその国に入つて来る、侵略して来るということはない。かりにその国の領土を自分がほしいと思つても、まずおれの方の属国になれとか、おれの方の領土に入れとかいうことを話をして、話がつかなければ力ずくで来る。侵略ということは国際紛争の結果であつて、その前に何かしら紛争がある、こう確信しております。またそうでなければ憲法の規定も妙なことで、武力による国際紛争の解決はいけない、もし侵略ということが国際紛争の頂点にあるならば、武力を使わない侵略ということはあり得ない。要するに国際紛争というのは侵略じやなくて、侵略はこの結果だ、こう考えます。
  71. 木下郁

    ○木下委員 それはたいへんな違いだと思います。国際紛争の起る原因と紛争というのは私は別だと思う。現に竹島に日本の領土の標識があつた、それを韓国の海軍が上つてつてつてのけて占領したというようなことについては折衝されておると思います。これは明らかなる国際紛争です。それは紛争というものをそう抽象的に取上げて、言葉の上でかれこれいうべきものではなくして、世間の常識は、国際紛争といえば、やはりなぐり合いも国際紛争だというふうに私は考えております。しかしここで議論をしてもしかたがないと思いますし、時間もありませんので、この程度できようの質疑は打切ることにいたします。
  72. 上塚司

    上塚委員長 次に井伊誠一君。
  73. 井伊誠一

    ○井伊委員 私は一点だけお尋ねしたいと思います。さつきから質疑応答を承つておりまして、わかつておるようではありますが、こういう次のことについてはいかがでございましようか。この法律によつて守らるところの秘密、この秘密は少くとも日米両国政府においては秘密ではない、こう解してよろしいですか。
  74. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ちよつと御質問趣旨がはつきりしないのですが、日米両国政府秘密として取扱われる事項をさしております。
  75. 井伊誠一

    ○井伊委員 秘密として取扱われる事項がすなわちこの法律によつて守られる、こういうふうにいたしますならば、少くともその秘密の内容というものは日本政府もこれは知つておる、貸与せられるところのこれらの物件、つまり防衛秘密としてあげられておるところの構造や性能、製作、保管または修理に関する技術、使用の方法品目及び数量、こういうものが必ずついてまわるものでありますが、その品目数量とかあるいは使用の方法とかいうものは、ある程度日本もこれを了解し、また了解をせしめるような、つまり両国政府間においては秘密の事項にならないかもしれぬけれども、一番問題になるのはやはり性能あるいはそれの製作上の技術といつたようなもの、ことにそれの資材というものが含まれておる。この資材自体におけるところの秘密というものは、数量や何かではなくして、その資材そのものに持つておるところの密秘というものは、今の日進月歩するところの科学の進歩の前においては、なかなか多くの秘密の部分がある、ことに秘密のうちの最も中核になるものではないかと思うのであります。そこでこういうものも含めて国民にこれだけは防衛秘密であると示すところの政府自体は、ほんとうの秘密の本体というものを理解していなければならないはずだと考えるので、これらのMSA協定等によつてわが国に供与せられる特件について、これらのものを受入れる側においてその秘密知つておるはずだ、また知らなければならないと考えるのでありますが、その点はいかがでありましようか。
  76. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それはその通りであります。
  77. 井伊誠一

    ○井伊委員 このことについては、さようにいたしますれば、日本政府がまずこれも最も理解して、それの秘密が漏洩しないことが政府によつて確保されなければならない、これを扱うものはその次であると私は考える。そこで一体アメリカが物件をわが国貸与する際に、その貸与物件のところについておるこれらの秘密というものは、第一次的にはわが国のどの範囲において保持されるか、政府のどの範囲においてこの秘密は保持されなければならないかということをお聞きしたい。
  78. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは要するにアメリカ側でどの程度にこれを秘密にしておるかということに即応して、こちらでも同様程度秘密を守る約束をいたしております。従つてアメリカの法律を見ますと、大体秘密というものは五種類にわかれておつて、その中の、たとえばある種の秘密は関係者の局長にしか見せないとか、ある種のものは課長まで見せる、あるものはその下のだれのところまで見せるというようにみなその分類があるわけであります。そのある秘密についての向うの取扱いぶりを確かめまして、その範囲においてこちら側でも適当な秘密保持処置をとる、こういう趣旨であります。
  79. 井伊誠一

    ○井伊委員 アメリカにかような秘密取扱いの区分というものが定まつておる。その慣習に従つてわが国もこれを取扱うというふうに今のお話では聞えるのでありますが、その取扱いの区分というものは、わが国に何らか特別な定めというか、よりどころというものがあるのでありますかこれをひとつ伺います。
  80. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 大体その区分は政令によつて定める予定になつております。
  81. 井伊誠一

    ○井伊委員 そういたしますと、この防衛秘密というものは、どういうところまでも徹底的にわが国ではだれかこれはわかつておるのであつて、結局わからないなどというようなことはないのだ、つまりあるわくを示し、この箱の中は秘密だというようなことではなくて、箱の中にあるところのそのものの性能、そういうものに至るまで全部、こちらの方もわかつておる、そうしてそれはわが国のごく狭い範囲の人だけにしかわからない、扱わせない、こういうふうになるわけでございますか。
  82. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 アメリカのやり方を見ておりますと、大体五つにわかれておりますから、その一番下位のものは、ずいぶん広く知られておる部分があります。ですからそれは段階によつて違うわけであります。いわゆるトツプ・シークレツトというのは知られてないわけであります。
  83. 井伊誠一

    ○井伊委員 おそらくは秘密の段階というものがありまして、それは時を経るに従つて一般に常識化して来ることになると思うのであります。最も秘密のものでさえもそういうふうになると思うのでありますけれども、さしあたり次々と供与が行われるということになつて来ますと、私どもがおそれるのは、おそらく最も秘密に属するものは、わが国においてはわからないのじやないかということなのであります。それともまたわが国などに対しては、そういう最も機密に属する兵器のようなものは供与しない、こういうふうにでも聞けばいいのか、それとも、これは今のお話でまだよくわからないのでありますけれども、その秘密は向うが理解するがごとく日本でもほんとうに全部理解して、これを受取るのであるかどうか、こういうことなのであります。それで、政令はあとで出るのじやないかと思うのですが、外務省あるいは保安庁でもでありますが、一番先にこれは秘密なのだということをほんとうに理解しておる、つまり言つてみれば、秘密知つておるわが国の代表的の人は何人がなるのでありますか、それをお聞きしたい。
  84. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それは内容によつて違いましようが、どうせこれはMSA等による武器の貸与もしくは譲与されたものに関することでありますから、保安庁の中におきまして一番先は保安庁長官でありましよう。その他関係部局の人々がこれを理解するということになろうかと思います。
  85. 井伊誠一

    ○井伊委員 保安庁長官というようなものは、この後どういうふうになるかわかりませんが、文民で、そして保安庁長官になるような人は行政的な手腕ももちろん必要なのですが、ほんとうの意味において、科学的な機能の精髄というものを理解する者は、そういう人ではないはずだと思う。これは、ほんとうの向うの代表的な精髄を持つておる、それが機密なのです。目に見える数量だとか品目だとかいうようなものは、これは別で、ほんとうの一番の機密はそういうところにあると思う。またそれが、これを犯す場合において最も重くなる性質のものと考える。従つてその機密というものは非常に狭くなつて来ると同時に、その責任がはつきりしておりませんと、国民はだんだん遠く離れて行つてしまうのです。もつとも内容は秘密だからわからないしするから、私はもしこれが制定せられるということになれば、政府部内――保安庁なら保安庁、そのうちのごくわずかの者がほんとうの秘密知つておるというだけで、あとはほとんど知らないのじやないか。保安庁長官とても、率直にいえな私はなかなか知るわけに行くまいと考える。それともやつぱりそういうときになれば保安庁長官に責任があるのか、外務大臣などはどういうふうになりますか。
  86. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 どういうことになりますか、要するに、これはMSAと艦船貸与協定に基いて供与されるいろいろなものに関する秘密であつて、外務省ば直接そういうものを供与される立場にありませんから、どの程度これに関与するかわかりません。わかりませんが、あるいは何か非常な問題があつて、国務大臣としてそういうものに関与する場合があるかもしれません。これは実際やつてみないとわかりません。保安庁長官も技術的には理解されない部分があるかもしれないけれども、これはどうせ保安庁へ来るのでありますから、それをどの範囲に機密を保持させるかということは、保安庁長官のさしずによつて行われ、また取締りも行われると思います。
  87. 井伊誠一

    ○井伊委員 秘密の内容というものは、先ほど外務大臣の仰せられる通り、こちらは国防のためにそういうMSA等の援助を受けなければならない、その秘密を守らないようであつては、向うは貸してくれないはずだ、それはその通りだと思います。それだけにこちらの方でそれをあばくようであつては貸してくれないというものがあると思う。漏れては困る、しかし貸してやりたいというところにむずかしい問題があるのでありますから、私は、この秘密のある重要な点は、日本国に対してもこれは秘密なりとして与えるのではないか、こう考えておるのであります。そういうことになりますと、これを理解する人間というものは、日本にはいないのではないか、そういうことになつて来ると思うのです。ことにそういう重要な秘密を漏洩するというようなことになりました場合の責任は、やはりこれはごく少数の人でなければならぬと思う。それから第二次、第三次的に国民に責任がある。しかしこの法律の立て方はそのところがはつきりしておりません。これはむしろ国民が全部国民として責任を負うというのがこの法の大体の建前である。これは、言つてはならぬ、そういうものに近寄っつ、のぞいてはならぬというような警戒を与えるような建前になつておりますけれども、いよいろこれが効力を発動して何か具体的な事件が起るということになれば、これは裁判所が何とかこれに対して裁判をしなければならぬのでありますが、裁判官にはたしてそういうものの理解があるかどうかということも実は疑わしい。今五つの階段があるということですが、その中の最も重大な秘密ということになれば、国民のどの階層の者でもわからない、主管大臣でもわからないと見るのがほんとうだと思う。こういうようなものを受取るときの受取り方です。その機密がどういうふうにして日本に知らされて来るのか。それは何かわくをきめて、この中は何だかわからないけれども機密だぞとして受取るのであろうかということであります。なぜこんなことを言うかというと、この法律というものは、何も向うからしいられて、義務づけられてやるのではなく、日本が自発的にこれをつくるのだといつてこの法律をつくるのですから、そうすると、この機密というものは、どうしても日本国がこれを知つていなければならない機密です。けれども、今のはMSA援助を受けるというところから出て来る機密なのですから、どうしても機密の本体は向うになければならない。そうすると、その機密日本に対してもほんとうに知らせて、またこちらの方が理解してこれを受取るかどうかということに私は疑問を持つのです。この法律を国民に適用する場合において、自分でわからないで、そうして法律だけは多数でもつてつくつても、われわれこの審議にあずかつて、これに賛成していいかどうかわからないということになる。そういうふうにして、できておるぞといつて国民にこれを従うべく求めるというところに、私は審議の上でどうしても矛盾を感ずる。だから、そこのところはどういうふうにしてこの機密を受取るのでしようか。これは国民機密だから知らないが、受取る者にはその構造、性能、製作、保管まはた修理に関する技術、使用の方法が、その物件を扱つておるうちに明らかになるものもありましようが、そうではないものは、やはり日本にも知らせないで、これは機密だ、こういうふうにして来る部分もあるのじやないか、こういうふうに思うのでありますが、そういうことはなく、ほんとうに全部これをのみ込んでおつて受取るのであるかどうか、そういうことをもう一度重ねてお尋ねいたします。
  88. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 実際問題として、これは秘密だけれども、中身は言わないぞというようなことは、日米間にもあり得ないし、またそんなことを言つても、日本の技術者で関係する人が研究すればわかることだと私は思うのであります。アメリカ側としても、中身を知らせないで秘密を守らせるなどという、そういう妙なことを考えてはおりません。またわれわれもそんなことを承服するわけがないので、これは全部内容その他を周知して、そして納得した上で、なるほどここのところをこういうふうに秘密として守らなければならぬという結論を出してやるわけだと思います。
  89. 井伊誠一

    ○井伊委員 実際問題はおおまかにやるが、ほんとうの裁判という問題になるときのことを考えておりますから、それをお尋ねするのであります。もちろん向うの方で、これは説明できない、秘密だ、こう言つてそういうものを与え、わが国に対して秘密を守れというようなことは言うまいと思う。そういうふうに常識的には思われるのでありますけれども、かりにそれが説明してあつても、アメリカの科学の進歩しておる程度と、日本のその程度というものが、常に同じ段階にあるとはどうしても考えられない。そういう場合を考えますれば、その秘密だか何だかわからぬで出して来たものさえも理解し得ないかもしれない。そういう場合ですから、そういうものは、私は何もかも日本に打明けて来るというようなふうにもなかなか考えられないと思うのです。そうでなければ、もう一般に日本でもわかつておるようなものしか――大した秘密でないようなものを秘密なりとしてよこす、そういう武器の範囲、そういう程度のものということになりそうに思われる。私はそうでなく、やはり最もすぐれたるものを貸与するということになれば、性能等について、ほんとうにアメリカにとつて秘密とされるようなものがその貸与物の中に含まれて、そのまま日本に来るものと私は考える。そうすると、これの扱いに対する責任は、第一次には保安庁長官というふうにお聞きしてよろしゆうございますか。
  90. 前田正男

    前田政府委員 ただいまお話のことは、これは私たち日本の国の自衛のために借りるわけでありまして、それを置いておきまして、自衛のためにそれを使うわけで、場合によりましては、故障なども起りますし、また破損することも考えられるわけでありますから、それを使うときに、当然構造であるとか、性能であるとか、あるいは使用方法であるとか、あるいは修理の方法とかを知らなければならないわけで、そういうことを秘密にして渡されては何の役にも立たないわけです。われわれは自衛のために借りるわけでありまして、当然そういうものはわれわれは全部知つて使う、こう考えております。
  91. 上塚司

    上塚委員長 井伊君にお諮りいたします。外務大臣は一時までということで、あなたもたいへん短かいということであつたものですからお許ししたのですが、できるだけ集約をして御質問願いたいと思います。
  92. 井伊誠一

    ○井伊委員 この一点だけです。こちらの方で使うものだから、秘密のものをそのままでは使わない、こういうふうに今おつしやるのですけれども、資材というようなものから考えますと、これは私の想像ですけれども、資材というようなものの性能、あるいは製作というようなことの秘密はなかなかわからないだろうと思うのです。こういうようなものは、わかつているようで、実はわからない。これは政府の方で、これは秘密であつて知らせてはならないのだということがはつきり理解されておつてこそ初めて国民にもこれを守らせるというほんとうの根拠が出て来るのであります。ただ漠としておつて、わからないのだ、理解はしないのだといつたようなことをもつて、ただそれだけのものを、これは秘密なのだと言う、こういうふうになつているのじやないかというのが私どもの心配するところなのです。これは科学的にすぐれた人たちに全部これを研究してもらつて、これは秘密でも何でもないということが確定して貸与を受けるものではないと思う。保安庁の関係のごく少数の人が知つているだけでしよう。そう考えられるのです。そういう場合を考えますと、これはその点が一番問題になるのじやないかと思う。従つてこの責任の範囲というものは、一般国民よりもむしろここのところにあるのであつて、第三条第一項第三号の業務により知得した者というようなものだと思うのです。それを受けなければわからないけれども、やつている間に研究したところがそれがわかつた。資材の構成分子がどういうふうなものであつて、こういう一つ性能を発揮するのはこういうところにあるのだというようなことになつて来ると思います。それが漏れて行くというようなときのことを考えますときに、そんなことは政府もわからなかつたのだというようなことになりはせぬかということです。その点はどうですか。
  93. 前田正男

    前田政府委員 この資材のことは、御承知の通り大体現在の科学技術の力をもつてしますれば、その分析その他いろいろの組織の構成等の事項はわかりますし、そういうようなことは当然向うからわれわれは教えてもらうわけであります。ただ最後に申されました業務により知得したというような範囲の者が一番注意しなければならぬことでありまして、これは厳に戒めてやらなければならぬことである、こう考えております。
  94. 上塚司

    上塚委員長 これにて外務委員会法務委員会連合審査会を散会いたします。    午後一時四十一分散会