運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-09-16 第19回国会 衆議院 外務委員会 第60号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年九月十六日(木曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 今村 忠助君 理事 富田 健治君    理事 福田 篤泰君 理事 野田 卯一君    理事 並木 芳雄君 理事 穗積 七郎君    理事 戸叶 里子君       北 れい吉君    須磨彌吉郎君       福田 昌子君    細迫 兼光君       山花 秀雄君    中村 高一君       大橋 忠一君  出席国務大臣         国 務 大 臣 安藤 正純君         国 務 大 臣 緒方 竹虎君  委員外出席者         調達庁長官   福島慎太郎君         外務事務官         (経済局長)  朝海浩一郎君         外務事務官         (国際協力局第         三課長)    安川  壯君         通商産業事務官         (通商局長)  板垣  修君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  国際状勢等に関する件     ―――――――――――――
  2. 上塚司

    上塚委員長 これより会議を開きます。  国際情勢等に関する件について質疑を継続いたします。
  3. 戸叶里子

    ○戸叶委員 議事進行について、前々から吉田首相にこの委員会に来て外遊目的お話いただくということは理事会でも決定されたことでございます。きのうの閑談で発表されたところによりますと、いよいよ吉田さんの日程も、行く国もきまつたようでございますが、いつ吉田さんはこの委員会に来て外遊目的お話になるのでしようか、伺いたいと思います。
  4. 上塚司

    上塚委員長 委員長はすでに数回緒方総理に対しまして総理大臣出席をお願いするように要請しておいたのでありますが、まだ出席についての確たる御返事はありません。
  5. 戸叶里子

    ○戸叶委員 新聞によりますと、今回の外遊につきましては、吉田さんもたいへん気をお使いになつていらつしやつて、何らかの形で野党の代表者、あるいは議長にもあいさつするし、また国会にも何かの形で連絡があるやに承つておりますが、そうであるといたしますと、今、国会休会中でありますから、当然外務委員会においてその目的を明らかにされるのがその本道であろうと思いますが、委員長におきましては、それをどうお考えになりますか。そしてなお今明日のうちにそれに対しての御努力をしていただきたいと思います。そうでないと、明日この委員会としても重大な決意をしている次第でございますから、どうかその点よくお含みいただきたい。委員長としては国民に吉田首相外遊目的を知らせる一番よい、最善の方法は、今、国会休会中であるから、この外務委員会を通してがいいというふうにお考えになると思いますが、その辺の委員長の御意思を伺いたい。
  6. 上塚司

    上塚委員長 今戸叶君から仰せられたことについては、大体同様の意見を持つておりますが、なお最善努力をいたすつもりでおります。
  7. 上塚司

  8. 並木芳雄

    並木委員 私は安藤国務大臣ビキニの問題について質問をいたしたいと思います。あの大きな被害を受けましたビキニ水爆実験被害補償請求については、安藤さんが担当されておると聞いておりますが、最近どうなつておりますか。まだ的確なる結果が出ておらないようでございます、ことに先般久保山さんの病気の状態が急変をしまして、あの惨状を見るとき、私どもとしては今まで政府で見積りを立ててアメリカ請求しておいた額にも増額を来しておるのではないかと思います。計算の基準というものに重大な変更を来しておるのではないかと思います、従つてそういう点を大臣としては修正されましたかどうか、そうして現在最終的にどれだけの額を先方請求し、先方はそれに対していつどれだけ払うという意思表示をしておるのでありましようか、その点をお伺いしたいのであります。  実は、昨日岡崎外務大臣と一緒に聞こうと思つたのですけれども両方とも大臣が都合が悪かつたために聞くことができませんでした。あのとき安藤国務大臣は、岡崎外務大臣の横にすわつておられたのでありますが、岡崎外務大臣水爆実験協力やむなしとの答弁のときに、ずいぶん渋い顔をされておられたのに私は気がついたのでありますが、これは私は安藤さんとしてはもつともだと思います。何となれば安藤大臣仏教界の役員としてたしか水爆実験中止禁止署名運動のリーダーであると思つております。あれにはおそらく安藤さんも署名されておるのではないかと思うのです。そうすると私はきのうの岡崎外務大臣答弁と、安藤国務大臣の意図するところとには、まつたく相反するみぞができておるということを感じないわけには行かないのであります。従つてこのビキニ補償の問題も、岡崎外務大臣的な心理状態アメリカ請求する場合と、安藤さん的心理状態アメリカ請求する場合とでは、ずいぶん違つて来ると思います。従つてこの機会安藤大臣はそのいずれの気持請求をされておるか、真剣に原水爆実験禁止してもらいたい、こういう信念のもとに請求されておるのか、それを伺いたいのであります。ましてや先般老い一徹から、安藤さんは吉田首相に対して、流言飛語の問題が起つたときに、吉田はけしからぬといつて青筋を立てたのでおります。さすがに老政治家恥を知ると思つて、私どもはこれに対しては敬意を惜しまなかつたわけです。ですからその気持からいえば、今度の吉田外遊に対して、当然原水爆実験禁止アメリカに申し入れるように、大臣としては首相に強く要望をされたものと思うのでありますが、その点ははたしていかがでございましようか。もしそうだといたしますれば、私は外交の担当責任者である岡崎外務大臣安藤さんとの間に非常な違いが出て来て、これはどのように収拾していいのかわからないのでありますから、はつきりこの機会に御答弁をいただきたいと思うのであります。
  9. 安藤正純

    安藤国務大臣 並木さんの御質問二つありますから、順次お答えいたしますが、時間がありませんから、簡潔にお答えいたします。  初めの質問に対しまして、アメリカとの賠償交渉が、この間の久保山愛吉君のああいうようなことがありまして、死んでは非常なことだと思つてつたのですが、幸いに助かりました。万一あれが犠牲になるというようなことになりますれば、さらに考えをかえなければならぬと思つてつたのであります。しかしながら賠償の額の中でも、患者二十三人の慰藉料については相当に要求をしておりますから、アメリカはたいていそれを承知するだろうと思つております。それで相当行けると思うのであります。もちろん患者の中には軽いのもあり、重いのもあり、軽いのはさらに立ち直りまして活動もできる人が相当あるそうです。しかしながらこれが慢性化するような危険の人もそこばくある様子ですから、それらを調整しまして、適当に賠償額の中から慰藉料をやるようになつております、それは心配がないと思います。しかしながらもし久保山君が犠牲になつて、死ぬというようなことがあれば、さらにかえなければならないと思つてつたのであります。ところが幸いに助かりました。助かりましたが、まだあれで大丈夫だと保証はできないし、のみならず、あそこまで行きませんけれども、相当重症者がありますから、それらのことを考えますと、もうほとんど最後に近づいているところの賠償交渉に対しまして、さらにプラスして考えなければならぬかと思つて、今関係閣僚検討中であります。  それからその次の水爆実験をどうするかという問題、これは希望といたしましては、水爆実験反対であります。私の意見が通れば、水爆実験反対ということを主張するのであります。しかし私の意見が通るか通らないかということは、これは政府全体の検討を経てからでないときまりません。政府全体としては、そのことについて公式に水爆実験はいけないという段階には達しておりません。私は何とか努力して自分の所信が貫徹するように、それが政府の方針となるように今後も努力はいたしたいと思つております。従つて、こんなことはどうでもいいことですけれども、先ほど並木さんが、私が水爆実験阻止署名運動に異名をしておるかということでありますが、私は署名はしておりません。署名はしておりませんが、むろん賛成はしております。  それからアメリカとの交渉につきましては、今ある段階までは、外務大臣を通じて外務大臣からそういうことについて交渉をしております。  それから最後総理大臣があちらへ行くから、この問題についてどうだというようなお話につきましては、前の前の閣議の席上で総理大臣に私は勧告をいたしました。向う行つたならば、水爆実験――根本的に言えば水爆管理あるいは実験もそこに含みますが、そういう問題について総理大臣が有効なる発言機会を得て勧告をしてもらいたいという希望を申し出してあります。そのときの総理のお答えは、機会を見てやりたいと思つておる、こういうことでありました。以上お答えいたします。
  10. 福田篤泰

    福田(篤)委員 ただいま安藤国務大臣からきわめて真摯な御答弁があつたのですが、これに関連しまして一点だけお伺いいたしたいと思います、それはいわゆる原水爆実験禁止問題でありますが、そのお気持はわれわれも賛成であります。禁止に対して賛成でありますが、しかしこれは相手方のソ連側がやはり禁止しなければ何にもならない問題であつて、理論的には、戦争自体を撲滅しないで戦争の手段だけを何とかしようということは片手落ちの議論になりやすいと思う。そこで閣僚としてぜひお願いしたいことは、この問題はあくまで相対的にソ連とのにらみ合せにおいてお取扱いを願いたいということと、広汎な平和攻勢に利用されないという立場はあくまで堅持して、その正当な主張を続けていただきたい、これをまず要望いたします。総理の今度渡米されるにつきまして、あなたが関係閣僚としてぜひ強く勧告していただきたいことは、実験場所変更の問題であります。ビキニで非常な災害を受けたわれわれといたしまして、この原水爆実験自体は、ソ連禁止保証がない限りは、アメリカ禁止しても無理である、むだなことはわかつているが、少くとも被害最小限度に食いとめたい、これは当然の要望であり、またしなければならぬ要求でありますので、私は国務大臣はつきりお伺いいたしたいことは、従来までにアメリカ側に対しまして実験場所変更を申し入れたかどうか、まだないとすれば、今後その希望アメリカ政府に申し入れる御意思があるかどうか、この一点だけをお伺いいたしたい。
  11. 安藤正純

    安藤国務大臣 これは非常に困難な問題で、ただいま福田君が言われた通りに、またきのうも外務大臣が言つていたように思うが、要するに今の平和というものは一時的な平和で、決して永久性を持つておる平和じやない。その一時的平和がどうして保たれるかと言えば、力のバランスだ。軍力バランスだ。もう少し突き詰めて言うと、今日の時代においては原子力兵器バランスということで辛うじて平和を保つているとも言えるしそうなりますと、今あなたのお話通りに、こつち側ばかりやめても、向うがやめなければ、かえつて平和がこわれるというような憂いもありますから、これは国際的に言うとそう簡単には言えない。しかし私はそこに国際連合があつて国際管理というようなことが今も出ているのですから、それを早く成り立たせるということが一番よいことである、そうなれば従つてこの実験というものも自然になくなる。こつちから言えばそれが禁止になるというふうなところに早く行かなければならぬと思つておる次第であります。しかしアメリカは今はそういう立場ですから、今年のうちは実験をやらないそうです。来年になるとそれは保証はできません。来年になつていよいよやるという場合になりましたならば、十分安全保障をあらかじめ交渉してやるつもりであります。今あなたのお話安全保障の第一は、場所をかえるということですね。日本の方などに影響の及ばない所ということである。しかしこれはそれじや日本影響が及ばなければほかのところに影響がおよんでもいいかということになると、日本立場が悪くなる。これは世界的の問題であり、人類的の問題であるから、日本で困ることはほかの国でも困るに違いない、そういうところを察して行かなければなりませんが、しかしまずさしあたり一番もとは日本であり、かつまた原爆でも水爆でも日本が一番被害を受けておるのですから、これは日本として一番発言権がある、そういう立場から今あなたのおつしやるアメリカ場所をかえる、それを交渉することは当然でありまして、そのことはすでにある段階――外務大臣を通じてその交渉は始めております。それだけ申し上げます。それからなおこれに対してはもつと進んでそのことも交渉もしてもらおうと思つております。
  12. 須磨彌吉郎

    須磨委員 関連。ただいま安藤国務大臣並木委員に対するお言葉の中に、久保山氏が死ななかつたのであるということを申されしまして、死んだならば思い返さなければならなかつたというようなふりにとれるお言葉がございましたか、これは久保山氏が死ななかつたということには、わが国の医学の非常に進んだ手当によることもありますが、私ども被害を受けた日本人といたしましては、死ぬとか死なないという偶発的なことと損害要求する権利とは、別に考えなければならぬと思うのであります。ことに私が非常に強調いたしたいのは、人類多き中にわが日本人だけがとりわけて三回にわたる被害をこうむつておるということは、天下に対し人類に対し、われわれがそれに賠償を求め、今後再びかくのごときことなからんことを期するような申入れをする崇高なる権利を持つておると私は信じて疑わないのであります。さような点から申しますれば、一久保山氏が死ななかつたということによつて減免する理由には一つもならぬと思うのでございますが、私の御答弁の聞き違いであれば幸いでございますが、そうでなかつたといたしますれば、いかなるおつもりでございますか、御返答を願いたいのでございます。
  13. 安藤正純

    安藤国務大臣 私の言葉が表現が混雑したかもしれない。私はそのあとで福田君の質問にお答えしたように、これは人類的の問題なんだ、非常な問題であり、しかも日本が一番被害をこうむつておるのですから、この立場からいつて世界に向つて一番発言権があると思つているのですよ。ですからあくまでそれをやらなければならないということは間違いない。それから久保山君が――それはこういう意味なんです。久保山が死ぬか死なないかということよりも、あの患者をあれだけ出したということは重大問題なんです。ところが幸いにわれわれはなおることを欲している、万一あれがなくなるということになつたら、さらに大きな悲惨なことなんだから、なくなつた場合には――これは補償要求段取りの話なんです。段取りとしてもつとそういう場合にはどうするのだということを考えておかなければならぬ、従つてそれを検討しておるのです。しかしそれにはかかわらず、まだ重症患者はずいぶんあるのですから、この際さらに今までの交渉に加えて交渉をしたいというので、関係閣僚相談中であります、そのことを申し上げておきます。
  14. 並木芳雄

    並木委員 それではビキニの問題はまた他から質問が出ると思いますか品、私はもう一点だけ安藤国務大臣に、吉田首相がやめるかやめないか、この点について質問したい。私は、私の方が芦田さんが一昨日吉田首相に会いしまして、きのうあのように新聞記者団との会見で発表し、また新党促進協議会の方々にも発表しております。あれで見ると、芦田さんの印象では、明らかに吉田首相外遊直後にやめるということになるのであります。そこで昨日吉田首相外遊がきまつたその閣議に列席しておられた安藤国務大臣に、率直にお尋ねするのですけれども、はたして吉田百川外遊終つてただちにやめるという意思表示をしたかどうか、あるいははつきり意思表示をしないまでも、安藤大臣から見て、これは確かにやめるという印象を受けたのかどうか、それを承りたい。またあなたの従来の生一本な気質からしますれば、芦田さんがああいう発言をした以上は、当然きのうの閣議において、吉田首相に面と向つて首相はほんとうに外遊したらやめるつもりなのか、あなたはこともあろうに、よその改進党の人にはそういうことを漏らすけれども、なぜわれわれ重要な閣僚にはそれを知らさないのだ、こんな反民主主義活動的な総理大臣がほかにあるか、こう老い一徹で食つてかかる、これは当然だと思うのです。おそらく私は安藤さんは何らかの形でそれをやつてると思うからこそ、きようは質問するのでありますが、その点をどういうふうに安藤さんは確かめましたか。
  15. 安藤正純

    安藤国務大臣 この問題は政府としてお答えすることはできないのが当然なのです。今のあなたの質問も、私に対する質問と思うのです。私は、それは政府としての答弁ではないのですよ。あなたの方も政府としてのあれではないのだから……。私は芦田君が会つて、ああいうことを何か非常に的確のようなことを言つておるが、私はそういう印象を受けない。今までも私と会つておる間にああいう程度のことはあつたこともあるし、私はそうあれだけで確実だとは思つておりません。従つて閣議できのうその話は出ません。それから閣議で受けた印象は、やるのだろう、こういう印象であります。それからなぜ私が質問しなかつたか。一旦口の先まで出たのだが、わざとやめた。やめたには私はまだ先に考えがあるから、その考えを実行するためには、今ここで――この間も怒つてけんかしたばかりだから……(「あの調子でやればいい」と呼ぶ者あり)いや、そうむやみにけんかしてはおかしいことになつちまうから、またけんかする場合もあるから、まあ治めておいたわけです。
  16. 上塚司

  17. 福田昌子

    福田(昌)委員 先ほどからのお話で、安藤国務大臣がこのビキニの被爆問題に関しまして、賠償の点で非常に御熱意がある点を私ども非常に感謝いたしておりますが、このアメリカに目下要求中でまもなく解決するであろうといわれる賠償額の総額、それは間接賠償を含めた問題であるかどうか、もう少し詳しい点を聞かせていただきたい。
  18. 安藤正純

    安藤国務大臣 アメリカに提出してあるところの額ですか。
  19. 福田昌子

    福田(昌)委員 そうです。
  20. 安藤正純

    安藤国務大臣 提出してあります額は、約三十五億内外であります。しかしその中には非常に検討をいろいろ要すべきものがあります。アメリカ日本のその提出した要求額に対しまして、検討を経て、今日まで外務大臣とずつと折衝をして来ておりまして、アメリカがたいてい承諾をしそうな額は相当少いのであります。少いのでありますが、その中に直接賠償並びに直接間接の間の中間といいますか、直接に近い中間的のような賠償も入つておると思います。
  21. 福田昌子

    福田(昌)委員 まだ最終段階になりませんから、従つてアメリカが出す最後的な額面というものは、もちろんきまらないわけでありますが、非常に少いというお話でございましたが、大体どれくらいのところをただいま申しておるのであるか。それから二十五億の中には間接賠償も当然入つておると思うのでありますが、これに対してアメリカがなぜ間接賠償を全然考えないのか、この点をあわせて伺いたいと思います。
  22. 安藤正純

    安藤国務大臣 アメリカは今までの例としてこういう例はありません、初めてです。しかしいろいろな損害を他国にかけたことはずいぶんあるのですが、従来の例としてみな賠償したのはほとんど直接損害範囲なんです。間接損害というようなことはほとんどないといつてもいいのである。だからアメリカ間接損害ということはどうもそう簡単には応じられないという態度なんです。  それからもう一つは、間接損害限界範囲がすこぶる不明確で困つているのです。たとえば農作物冷害があるといえば、その田畑をずつと検査してこれだけが冷害だというその本体がそこへ出るのです。風水害を受けたといえば、その風水害損害がそこへ出るというわけです。ところが、ビキニの方のたとえば福龍丸の問題であるとか、患者の問題だとか、患者の生活とか、患者慰藉とか、まぐろをずいぶんたくさん廃棄しております、その廃棄をした全体の分とか、あるいは危険区域の外を遠まわりしたのもそこまで入れてあるといつたようなことは、みんな直接損害アメリカがたいてい承知するだろうというので入つている。それ以外にはどういうことかというと、まぐろの値下りによる市場の混乱、それで商売がしにくくなつた、金の操作がうまく行かないで困つたということなんです。あるいはその中には間接間接というものまで入つておる。あるいはすし屋が困つたとか、かまぼこ屋ちくわ屋が困つたとかいうようなところまでもこの二十五億の中には入つておるわけなんです。でありますから、そういう限界範囲と性質が冷害対策とか風水害対策というようには行かない。そこにこちらも非常に苦心があるのです。しかしながらなるたけそれをこちらから賠償をさせたいという態度でやつているのであります。そこでアメリカの方は先ほど申しました通り間接損害を今まで賠償した例はほとんどない。一つの大きな例として考えられるようなことは、第一次世界大戦のときにアルゼンチンの船をドイツの船が押収して、そこに積んでいた石炭をみんな取つちやつた。それから船にも非常な損害を受けた。その船はアルゼンチンに追い返された。その間の船としての仕事ができなくなつた。そういうような大損害があるにかかわらずそれが両方の国で争つた結果、国際司法裁判所に提訴されたのです。国際司法裁判所の判決はそれでも積んでいた石炭代たけを返せばよろしいという面接中の直接損害できまりがついた、こういう判例もあるようなわけで、アメリカとしてもそういうような論拠で、どうも間接中の間接といつたようなことはむずかしいという態度でありまして、今は直接損害、しかし直接でもさつき言つたように中間的直接損害はそこに含まれていると思います。
  23. 穗積七郎

    穗積委員 関連ですから、ごく簡単に今の問題について三点列挙して一ぺんにお尋ねいたしますから、整理してお答えいただきたいと思います。  われわれは、国際的な被害が起きましたときには、国際通念として当然間接損害まで補償責任がある、こちらは請求権があると考えます。しかし具体的に問題になりますと、やつぱり間接といい、直接といい言葉の問題ではなくて、今度の事態に即して一体日本側はどこまでを直接損害としてこの損害賠償要求範囲にしておられるのか。たとえば漁業者の非常な被害、それから魚屋の被害、また農作物等に対する被害等もあろうと思うのですが、今度起きた事例の中で具体的に調査された被害実態に即して一体、どこまでを直接損害、つまり補償対象として話をされて向う交渉された結果、どこに食い違いがあるか、それを具体的にひとつお答えいただきたいと思います。補償要求範囲ですね、直接といい間接という言葉でわわわれは問題を正確に理解することはできませんから、一体こちら側はどこまでを補償要求対象として考えておられるか、被害の実情のうち、これが第一点でございます。  それから第二点は損害賠償補償額のトータルの問題でございますが、補償額対象というものは、被害実態に即して初めて補償ができて来るのでございますが、どういう被害が起さたかという最終的な判定はまだできないと思うのです。久保山氏はこの間死にそうになつたけれども死なかつた、また一月の後日に死ぬかもわかりません、あるいは他の患者にいたしましても、続いてどういう久保山氏同様の重大な被害が出て来るかもしれない、あるいは家族に対しましてもどういう被害が甘辛出て来るかもわからない、そのことは今最終的に被害実態というものを科学的に査定することができない状態でございますから、従つて補償額最終決定というものは未確定にしておくべきだ、原則だけ確立して、起きて来た被害に対して都度適切なる前の賠償されたと同じ単価の計算従つてどんどん補償は追加さるべきものであつて、最終的に打切るという段階にはまだ至つていないと思うのです。ということは、今申しました通りに、補償対象であります被害実態がまだ把握できない段階であるものですから、その点は補償額最終決定は未確定の状態に置いて、あと請求権はこれで打切らないという交渉にすべきだと私は考えますが、その点についてはどういうお考えでどういう交渉をしておられるか、それをお尋ねいたします。  第三点は、今まで伺つておりますところによると、こちら側の今までは一つきりして来た被害に対して、それを基礎にして一応これだけの補償要求されておる、それに対して向うが払おうという額は相当の開きがあるということです。ところでこれが最後まで話合いがつかなかつた場合、日本補償によります正当な権利、正当な価額評価によりまして要求いたしましたものが、向うによつて拒否された場合には、一体どういう態度でお臨みになるつもりで刈るかどうか、すなわち今までの岡崎外務大臣答弁によりますと、これは損害賠償請求権を発動して成規の要求をして、たとえば国際司法裁判所に提訴してあくまで争うというような態度をとらないで、示談でいわば見舞金のようなことでお互いの好意ある話合いの中でまとめたい、こういうことを言つてゆられるわけですが、それが今申しましたように、向うが好意を示さないで、われわれ国民の判断から行きますと、被害者はもとよりですが、第三者の国民の判断からいたしましても内輪と思われるようなこの要求でも、向うが拒否いたした場合には、今までのような好意ある見舞金で話をつけたいというような態度を一擲されて、国際裁判所なり何なりへ、はつきりした損害賠償請求権を発動して要求されるつもりであるかどうか、その三点についてその際一括してお答えをいただきたいと思います。
  24. 安藤正純

    安藤国務大臣 こちらで考えている直接的損害というのには相当広い範囲が入つております。第一に、福龍丸がああいう重大な被害を受けたのだから、福龍丸の処置の問題、それから福龍丸に載せてあつた船具、それから船員の私物、そういうものの処置、それから患者二十三人の治療費、それから慰藉料、それから福龍丸に載せてあつたまぐろは全部廃棄しましたから、そのまぐろの廃棄、それから続いて大きいのは三崎へ入つて来た第十三光栄丸という船のまぐろがたいへんだつた。これらの賠償、それ以後先月の半ばごろまでですかに、その中にはたいへん少いのもあるのですよ、しかし大なり小なりまぐろを積んで来て、いけないやつを海中に廃棄したのが百四十九隻くらいあるのです。それから以後また少しふえております。大したこともありません。
  25. 穗積七郎

    穗積委員 八月からふえたのじやないですか。
  26. 安藤正純

    安藤国務大臣 八月中少しふえましたね。少し少くなつたが、また最近ふえたのです。今出してあるのは入つていないのです。あるときで切らなければしようがないですから切つて、しかしあとから追加要求をしているんですよ。そういうようなものがみんな入つております。それからもう一つは、危険区域を設定したために船が大まわりをして行かなければならない。直接に行けるやつが危険区域の外をまわつて行かなければならない、日数がかかる、すべての費用がかかる、そういうものも直接賠償という方の範囲に入つております。そういつたようなものが直接損害。それから間接損害というのは廃棄したまぐろ以外の値下りから起つた市場の混乱、それから卸とか仲買いとか、そういうものの金の融通の困つたこと、そういつたようなもの並びにまぐろばかりじやない、まぐろによつてこしらえる、まぐろだかかつおだか私は知りませんが、そういつたようなものによつてこしらえるかまぼこだとか、ちくわだとか、そういつたようなものも、あらゆるものが間接的なものの中に入つているのですよ。それが直接、間接のわけ目になつておりますが、しかし先ほどから言う通りに非常にその限界範囲とで困るのです、実際にいいますと……。けれども、直接損害としてどうしても最低限度やつてもとらなければならぬという中には、大体面接及び中間的面接損害は入つております。  それから第二問の補償額の……(穗積委員「つまり追加請求権を留保しておるということですな」と呼ぶ)最終決定はここが問題になるんですよ。今最終決定を打切ると、その方が早くきまりがついて都合がいいかもしれないが、そうすると、同時にあとからあとからふえて来るやつもきまりがつかないから、ごとに一方には俊鶻丸があつちへ行て来まして、帰つて来ていろいろこつちで調査をしている。それからまた十一月になるとアメリカから数人の科学者を呼びまして、日本と共同調査をすることに計画しておまりすから、そういう共同調査などの持論をまつて、それから最終決定したがいいか、そこを実は今決しかねて、関係閣僚検討中であります。それから今あなたがおつしつたように……。
  27. 穗積七郎

    穗積委員 追加請求権の問題についてはどういうお考えであるか伺つておるわけです。追加請求権を留保すること、現在は予測しないものが将来被害が明らかに出て来た場合……。
  28. 安藤正純

    安藤国務大臣 今適当だと思つてきまりをつければ、あとから出たものの追加要求を留保してもらうということは当然のことです。それからもう少し延ばしてどうきめようかというので、実はそこのところは重大な問題だから相談中なんです。そう御承知願いたい。それから話合いがつかない場合、最後はどうするのだということですね。これは延びて、向うが言うことをどうしても聞かない、追加要求なんて聞かない、向うで切つちやつたらそれでおしまいにするというようなことがあれば、それにむやみに応じるわけには行わないですね。どこまでもごつちは追求して行かなければならぬ。その方法としてずつと延ばして、どんどん交渉を継続するか、それでもいかなければ国際司法裁判所に提訴するか、世論に訴えるか、いろいろな方法は考えられると思います。
  29. 上塚司

    上塚委員長 福田昌子君。続けてやつてください。なるべく集約してお願いします。
  30. 福田昌子

    福田(昌)委員 私も時間をとりますと御迷惑でございますから、逐条的に簡単に集約してお尋ねさせていただきます。まだ、決定線が出ておりませんが、ともかくアメリカが今の段階で中間的な賠償としてでも支払おうかと申しております金額は大体どれくらいであるかということが一点。  第二点はもし久保山氏がなくなつてつたといたしましたら、そういう不幸な事態があつたといたしましたら、この三十五億の金額総額に対して、どういう変更をお加えになるおつもりであつたかということが第二点。  第三点は、アメリカの学者がこの十一月に来朝されて、この三十三名の被害者の状態につきまして研究され、日米合同でその疾病の治療ないし、それから生れて参ります補償の問題も検討されるというような御答弁でございましたが、それはそれとしてまことにけつこうであると思うのでありますが、私ども考えますことは、この原爆の被害を受けました日本、しかも三回にわたりましてこういう犠牲者を出しました日本が、世界中で一番原爆症に対しまする研究というものは進んでおるのではないかという感じがするのでございます。しかもアメリカは広島、長崎の原爆の被害に備えまして御承知のABCCの研究所を持つておりまして、アメリカ当局は原爆症に対しましては相当な研究をすでになされておると思うのであります。ところがこの広島のABCCの研究機関につきまして思い合せ、考えさせられることでありますが、ABCCの研究におきましては日本の学者においてもずいぶん研究がなされておつたのでありまして、その研究の結果からいたしまして、原爆症に対してはこういう治療が必要であるというようなことを申しましても、それがその当時のアメリカには受入れられなかつたという点がございます。また日本の学者の学会における発表もアメリカ側からさしとめられておつたという事態があるのでございます。またその後、こういつた原爆症につきまして多少関係のあつた学者がアメリカに参りまして、いろいろアメリカの学者と研究討論をいたしました際におきましても、アメリカの学者の中には、日本の研究というものはもつともであると自分たちは考えるが、日本アメリカから見た場合に非常に言論が自由である日本では自由にいろいろなことが発言できても、アメリカの今日では発言できないのだ、うつかりしたことを言えばいすにすわらされる、もちろん断頭台にすわらされるということを含んだいすにすわらされる危険もあるのだということを、学者自身が申しておるというようなことも伝え聞いておるのであります。かようなことを考え合せますと、アメリカでは原爆に対する被害というものが、政治的に非常に過小に評価されておるのではないかという気がいたすのでございます、アメリカ当局員体は正直に言えば原爆の被害がいかなるものであるかということは知つてはおりましようが、それをいかにも政治的に過小評価しておる。従つてそれから生れて来る賠償問題もできるだけ小さく考えて行きたいというような気が多分にあると考えるのでございます。従いまして私どもアメリカのそういう態度に対してこの際反省を加えたいと思つております。こういう意味で、アメリカがこの原爆の被害に対しましても正式に訓点を表したというのは、駄目大使が遺憾であつたということを申したにすぎないのでありまして、何らアメリカはこの被害に対して、ほんとうに人道的に相済まなかつたというような謝意も表しておりません。こういう点が私ども国民としてはなはだ遺憾であります。従つてそれから生れて来る賠償問題も、金額が非常に低く決定されるということにもなり得るわけにございますから、かかる点を考えまして安藤国務大臣におかれては、アメリカ日本のこの被害者に対する態度というものを改める必要があるという意味から、アメリカに何らかのこれに対する精神的な謝意におきましても、あらためてアメリカに謝意を求める御意思があるかどうか、この三つをまず伺わせていただきたいと思いいます。
  31. 安藤正純

    安藤国務大臣 いろいろ御質問でありますが、時間がありませんからかいつまんで申し上げます。アメリカが今度の実験に対しまして過小評価している。それは実際的には過小評価しているのか、していないのか知りませんが、そういう現われはあるんです。現に向うの原子力委員会が中間報告を議会にいたしました報告の中にも、日本患者を軽く見ていたり、あるいはまぐろの中にあるまぐろのカウントを少く見たりするような傾向がありまして、それは非常に深く遺憾としておりまして、私などは政府としてではありませんが、そういうことを発表したことがあるくらいなんです。しかしながらだんだん様子もわかつて来、ことにこの間の久保山愛吉君が危険状態に陥つたことに対しては少し認識を改めたような傾向もあります。  それから陳謝ということを正式にはして来ませんが、陳謝的の遺憾の意は表しております。この間アリソン大使が外務大臣にあててそういう意味のことは言つて来ておる次第であります。  それから先ほど申し上げましたように、この交渉の結末をどうするかということなんだが、今きまりをつけると、早く言うとこれ以上の増額ができないということがあるんです。それである  からその方はさらに延ばして行こうか、それとも先ほどから穗積さんにお答えしたように、まず適当なところで打切りにして、あとから出て来る追加要求を留保しまして、一応きまりをつけるか、その点を今関係閣僚交渉中であるというわけでございます。
  32. 上塚司

    上塚委員長 ただいま緒方総理がお見えになりましたが、渉外事項で十二時十分前にどうしても出られなければならない。そのために緒方総理に対する質問を急いでやりたいと思いますから、福田委員この際この程度で、他日またお願いしたいと思います。
  33. 穗積七郎

    穗積委員 議事進行について。緒方総理にはじつはいろいろ質問があるわけですが、十二時十分前におでかけになるということになるとあと十五、六分しかございません。それではとうてい一人の委員質問すら十分できないということになりますから、渉外事項でどうしてもやむを得なければ、きようは十二時前に御退席になつてもやむを得ませんが、明日はぜひご出席いただくように、委員長からひとつこの際はつきりお約束をいただくように御交渉いただきたいと思います。
  34. 上塚司

    上塚委員長 副総理の御都合もありましようから、私からできるだけ御趣旨をお伝えしてそういうふうに要請します。
  35. 穗積七郎

    穗積委員 ちよつとここにおられますから伺つてください。
  36. 上塚司

    上塚委員長 ちよつと速記をとめて……。   〔速記中止〕
  37. 上塚司

    上塚委員長 速記を始めて……。細迫兼光君。
  38. 細迫兼光

    細迫委員 緒方総理に簡単に質問いたします。いよいよ吉田総理大臣の御外遊が二十六日からと開議決定に相なつたということを承るのでございますが、その外遊目的など、従来われわれは耳にしていないのであります、これを国民の前に宣明していただきたいという強い希望を持つておりまして、その方法としまして、この外務委員会において御宣明になることが最も適当な手段であると考えておつて、かねてから委員会としまして御出席要求しておるのでありますが、総理大臣には今明日のうちに当委員会に御出席相なることができるでありましようかどうか、この点を伺いたいと思います。
  39. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 今明日のうちに出席はおそらく不可能じやないかと考えております。
  40. 細迫兼光

    細迫委員 御出席もし相ならぬということになりますれば、私どもとしましては外遊目的を国民に宣明する意思がないか、あるいは用事をして納得せしめるに足る理由がないか、いずれかであると解釈せざるを得ない結論に達すると思います。まことに遺憾でございますが、右の結論に達することに相なれば、またわれわれとして考えるところがあるということをここに申し上げておきます。  次の問題は新聞によりますと、昨日の閣議において非民主主義活動対策委員会というようなものが設けられたという話でございます。むろん治安維持法のようなものをつくるとか、あるいはその趣旨に従つた活動を政府がやろうとかいうような趣旨のものだと想像せられるのであります。これはアメリカの議会において、共産主義運動の禁止というようなことが行われた、非合法にしたというようなことが行われたことなどと考え合せ、またダレス長官が立ち寄られたことなども考え合せまして、これはダレス長官がこのたび日本に立ち寄られた一つのみやげじやないかというようなことも考えられるのであります。ダレス長官が何しに来られたかということにつきましてもわれわれは何ら開くところがないのでございますが、この非民主主義活動対策委員会の発足を中心として、ダレス長官の日本訪問の話の内容をできる限り明らかにしていただきたいと思います。
  41. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 ダレス長官が先般マニラで開かれましたらSEATO会議の後に、アメリカへ帰国をする途中日本に立ち寄りまして、総理大臣以下と午餐をともにして懇談をしたことは事実でありますが、これは実はもし旅程の都合で日本に立ち寄れば日本としても歓迎するということを申し入れ、ダレス長官がその結果として立ち寄つたのでありまして、私の承知しておる限りにおきましては、そういう特別に日本と折衝しなければならぬ、あるいは話をしなければならぬ要件は持つていなかつたように承知しております。今の非民主主義活動云々というものは、そのときにダレス長官が持つて参り、それ々総理がみやげにする云々といううがつた御観察でありますが、そういうことは全然ございません。
  42. 細迫兼光

    細迫委員 グレス長官のもたらされたみやげでないにしても、私は少くとも吉田総理大臣外遊のみやげではあるのではないかと考えておるのでありますが、この問題は時間がありませんから省きまして、もう一つわれわれは極東の安全にとりまして重大な問題に当面しておるのは近東の問題でありますが、吉田総理大臣外遊につきましては、行かれるとするならば、この極東の安全についてアメリカ政府の考慮を煩わす、ぜひそういう使命を持つてつていただきたいと思う。それはたしか去る二月であつたと思いますが、アメリカ下院においてクーダート議員がロバートソン国務次官について次のような質問をしておる。すなわちアメリカの主導権のもとに台湾を中心とする一連の極東諸国を軍事的に支援し、中共へ武力的に突入する時期を待つという政索であるか、こう質問いたしましたのに対しまして、ロバートソン国務次官はイエス・エグサクトリー、こういう答弁をしております。これから見ますと、まさに中共への突入のきつかけをここにアメリカはねらつておるのではないか、いわんや太平洋艦隊の増強というニュースをわれわれは一方に聞くのでありまして、まこと寒心にたえないのである。極東の安全についてそういう刺戟するかのごときこのないように、争いについて介入することのないように、アメリカに対しての申入れというようなものをも、外遊なさるとするならば使命の一つに加えていただきたいと思うのだが、御意見いかがでしよう。
  43. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 ロバートソン国務次官がどういうことを申したか私承知しておりません。極東の問題につきましては、総理アメリカを訪問いたしましてアイゼンハウアー、ダレスその他アメリカ政府の指導者と会見する場合に自然に話及ぶだろうと思いますが、こちらから何かの折衝の案を用意して参るということは今のところございません。
  44. 上塚司

    上塚委員長 中村高一君。
  45. 中村高一

    ○中村(高)委員 総理外遊が昨日閣議で決定したそうであります。きのう外務大臣お話によりますと、二十六日に出発するというのでありますが、二十六日にはどこの飛行機で何時に出発せられるのか。日本にも日本の飛行機があるのであります。おそらく外国の飛行機で出るようなことはないと思いますが、その点をまずお答え願いたい。
  46. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 二十六日の出発の時間ははつきりませんが、夕刻だろうと思います。それに乗ります飛行機はカナディアン・パシフィックの飛行機だと思います。これはまつすぐバンクーバーに先に参りますので、日航機はバンクーバーまで参りませんから、やむを得ないだろうと思います。
  47. 中村高一

    ○中村(高)委員 今度の旅行に要します費用が三千万円とかいうふうに新聞には出ておりましたが、現職の総理大臣が国費を使つて海外旅行をせられるのでありますから、どのくらいの国費を使われるのか。また随員は七名ばかり新聞に出ておりましたが、そのほかに佐藤榮作君が随行せられるそうでありますけれども、佐藤榮作君はどういう資格で連れて行かれるのか、また佐藤榮作君は現に刑事事件で起訴せられておる被告でありますけれども、国際親善を目的とするという旅行に何で一体日本の被告を連れて行かなければならぬのか、はつきりしていただきたい。
  48. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 総理一行の外遊に要する費用は、精細のところまで私承知しておりません。おそらく二千万円と三千万円の間くらいなものであろうと思います、これは各随員が属します省庁の旅費規程がありますから、その旅費規定の予算の中から出すはずになつております。それから佐藤榮作君の外遊でありますが、これは随員にはなつておりません。
  49. 中村高一

    ○中村(高)委員 随員になつていないとすれば、こういう資格で同行せられるのか、そして現に起訴せられておる人を同行するということに対して、政府はやはり責任を感じなけれなばらぬと思うのでありますけれども、そういうことに対してどういうふうにお考えになるかを聞いておるのです。
  50. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 佐藤榮作君は総理の一行に同行いたしません。資格は個人の資格であろうと考えます。
  51. 中村高一

    ○中村(高)委員 外遊目的についてたびたび質問をしておるのでありますけれども、結局昨日外務大臣は占領中のお礼だとか、あるいは今後の国際親善だとかいうようなきわめて抽象的なことを言われておりますが、首相外遊目的の中には再軍備に関するものとか、あるいは太平洋防御に関するものとか、外資導入に関するものとか、そういうような具体的なものがあるのではないかどうか、お答え願いたい。
  52. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 今お述べになりましたような項目は、具体的にはございません。これを要しますに、いわゆるグツトウイル・ミツシヨンと申しますか、親善旅行でありまして、日本と相手国との平和条約ができたあとになるべく早く行きたい希望総理は持つてつたのでありますが、いろいろな国内の政治情勢から今日まで延びたわけでありまして、日本の主権を回復するに至るまでのいろいろ列国の好意を謝する点もありますので、それに対する政府としましてか、あるいは国民的と申しますか、謝意を表しようという目的で参るのであります。
  53. 中村高一

    ○中村(高)委員 もう一つ、昨日決算委員会に証人として総理大臣が呼ばれておるのでありますが、公務の支障だということで出られなかつたのであります。この外務委員会にも今明日は出られる見込みがないというのでありますが、出られる見込みのないのは公務のためか、あるいは病気であるか、どつちでありますか。
  54. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 先ほど御質問に対しまして今明日のことを申し上げましたのは、外遊に伴う公務でございます。
  55. 中村高一

    ○中村(高)委員 どうも外遊に伴う公務だというのでありますが、これから二十六日までは外遊に伴う公務でせわしくて、もう一切国会には出られないというのか。しかし聞くところによると、国会代表者を非公式に呼んで、そして何か飯でも食いながら話をしようというようなことのようでありますが、そういう時間があるならば、国会を通じて国民に外遊目的はつきりすることは当然だと思うのであります。そういうつまらぬ時間があるならば、非公式に代表を呼んで話をするというような時間があるならば、堂々と国会に出て目的はつきりするのが当然だと思いますが、お答えを願いたい。
  56. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 ただいま国会が開会中でありませんので、総理は各党各派の代表的地位におかれる方々においでを願つて外遊についてのごあいさつをしたい、そういう気持で多分できれば明日だと思いますが、明日そういうことをいたすべく今手はずを整えておる次第でございます。
  57. 上塚司

    上塚委員長 須磨彌吉郎君。
  58. 須磨彌吉郎

    須磨委員 緒方総理に一、二お伺いをいたしたいと思いますが、かねて問題になつておりますラストボロフ事件というのがございます。これはひとりわが国内の問題の人ならず、国際的におきましても非常な関心の的となつておるのでありますが、まずお伺いいたしたいのは、国内におきまして、私もかつて関係しておりました外務省から関係者を出すに至つたようなことは遺憾しごくに存ずるものでございますが、まだまだ掘り下げまするといろいろなことが出て来るというふうなうわさも聞き、すでに政府におかれましては、検事を二名か派遣をされて手を尽くしておられる様子でございますが、これに対しまして、すでに政府としておとりになつておる特別な措置がございますか、まず伺つておきたいと思うのでございます。
  59. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 ラストボロフ事件に伴いまして何か特別の措置をとつておるかというお尋ねでございますが、特別措置といたしましては、今御質問に中にもありました公安調査庁の柏村君外一名をアメリカに派遣いたしましてアメリカの当局と一緒に取調べをいたしまして、その柏村君外一名はすでにもう帰つて参りておりまして、今のところ特別の措置はとつておりません。
  60. 須磨彌吉郎

    須磨委員 この間祕密保護法が本委員会において問題になりました際、あるいは内閣委員会においても私は副総理にお伺いをいたしたことがございますが、今後わが日本というものは冷たい戦争と申しますか、心理戦術のおびただしい、はげしい戦場となるということは当然の勢いでありまして、今や朝鮮動乱とインドシナの戦乱が終りました今日では、わが日本がこの心理戦争の目標の主たるものの一になつておるということは、国際上明らかな事実でございます。しかるに過去半年において、私どもがさような提議をいたしまして以来、何らそれに沿うような措置がとられておりませんのみならず、ただいま御指摘になりました公安調査庁の費用のごときは、第一査定ではございますかしりませんが、きわめて少額なものとなり、年間一億二千万円程度に削られておるような状態を見ますると、私はどこに国事の根本を置かれておるかと疑う次第でございます。かようなことはささたるものではございません。日本の国法をもゆるがす大問題であり、戦争の様式はすでに弾薬なき戦争にかわりつつある今日におきまして、これを軽視しておるというようなふうを認めざるを得ないのでございますが、さようなことについて、前の御答弁ともあわせお考えくださいまして、政府としてのおとりにならんとするお心持をお伺いいたしたいと思うのでございます。
  61. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 ラストボロフ事件の取調べによりまして、国の祕密がわれわれの全然関知しない間に漏れておるという事実が確かめられたわけでございます。そういうことから何らか祕密を保護する措置が必要ではないかということが考えられます。終戦に伴いまして、この種類の法律は十七種くらいあつたと思いますが、それをすべて一斉に廃棄いたしたのでありますが、どの独立国におきましても、一切の国の祕密を保護する法律がないという国は私はないだろうと思います。ただ憲法の精神もありますので、これをどう取扱うかということにつきましては十分慎重な考慮と検討が必要でありますので、今着手はいたしておりませんが、今質問にお述べになりましたようなことは政府としても深い関心を持つております。
  62. 須磨彌吉郎

    須磨委員 いま一つ念を押しておきたいのは、公安調査庁でございますが、その費用を削減されておるという事実を私は確かに聞いておるのでございますが、これに対して、政府としてはこれでは足らぬというようなお気持がおありになるのか、あるいはこの重大な時局にかんがみまして、心理戦術に対抗するところの公安調査庁とは別段の役所とか、あるいはそういう機関なりをおこしらえになるというお見込みが別におありでございますか、その点もお伺いをいたしたいと思うのでございます。
  63. 緒方竹虎

    緒方国務大臣 公安調査庁の費用あるいは要員が十分でないということは、私も承知いたしております。それには今後予算を編成する場合に相当考慮を払わなければならぬだろうと考えております。  それから第二の公安の保持に関して何らか新しい官庁あるいは機関をつくる考えを持つておるかというお尋ねでありますが、今のところ持つておりません。
  64. 上塚司

    上塚委員長 戸叶里子君。
  65. 戸叶里子

    ○戸叶委員 安藤国務大臣に先ほどの質問を続けさせていただきたいと思います。他の委員からも質問がありましたので、私は重複しないように簡単にしたいと思いますが、先ごろ久保山さんが非常に重態に陥りましたときに、久保山さんの奥さんが水爆という声を聞いただけでぞつとするというお話がありましたが、あの言葉は私どもの胸の底にこびりついておりまして、忘れることができません。おそらく安藤さんもそれに非常に心を動かされておると思いますが、先ほどからの御答弁を伺つておりますと、今日のこの内閣の中にありまして、ビキニの問題をめぐつて水爆、原爆反対の方向に何とか閣議を持つて行こうと努力せられておられます御努力のほどがうかがわれますが、ともかくきのうの岡崎外務大臣答弁のように、岡崎さんを初めといたしまして、非常にその問題はむずかしいと思います。しかし安藤さんのような方ががんばつていただかなければ、とうていその問題は片づかないと思いますので、どうか閣議におきましても一人々々の閣僚を説き伏せられて、水爆、原爆に対しての反対の方向にぜひ持つてつていただきたいと思うのでありまして、どうかその政治的生命をかけてもそういうふうにしたいというその御決意のほどをもう一度承らせていただきたいと思います。
  66. 安藤正純

    安藤国務大臣 私閣内にとどまつております間は自分の所信に向つて努力したいと思います。但しこれは非常に複雑な問題で、国際関係世界の大勢にも関係しますから、そこになかなか複雑微妙なものがあると思うんです。そこで要するに、これは国際連合原水爆国際管理、そこへ早く持つて行くことが一番必要なことだと思うのでありまして、それに向いましても努力をしたいと思います。先ほど申しましたが、吉田総理閣議の席上で私が話をし、希望したのも一その点であります。大いに努力はいたします。
  67. 戸叶里子

    ○戸叶委員 どうかその努力が報いられるように全力を尽していただきたいと思うのです。  それから日本から要求しております二十五億円というものは、そこへ来るまでに幾たびくらい要求額を出されたか、つまり水爆のあの悲劇を受けたあとすぐに幾らかのお金を要求し、またそのあとで要求するというような態度をとられたのか、それとも初めから二十五億という線を出されたのか、その点を承りたい。
  68. 安藤正純

    安藤国務大臣 大体におきまして、アメリカから全部のことを検討したいというので全部を提出したのであります。しかしながら全部といつてもこれは時間的にさらにあとからあとから追加されていますから、そういうのはあとからまた追加要求を提出しておるのです。現在でもまだあとからふえていますから、これはどうしてもあとからあとからと追認させなければならぬと思つております。
  69. 戸叶里子

    ○戸叶委員 アメリカから今大体この程度と言われておる額は、初めからそれを向うが申し出ているわけなんでしようか。
  70. 安藤正純

    安藤国務大臣 いや、今アメリカが言われておるのは、初めからそういうことを言つたのではないのです。初め言つて来たのはもつと少かつた、だんだん折衝の結果ただいまのところまで行つておりますが、今アメリカが言つておるその線でこちらが打切ろうとは思つておらないのです。そのために延びているということを御承知願いたい。
  71. 戸叶里子

    ○戸叶委員 日本要求しております二十五億の中には、直接間接被害に対する補償が入つている――アメリカは直接の被害と中間直接的な被害が入つていると言つているそうですが、それでは日本の直接の被害として要求しております金額と、アメリカが直接の被害として考えております全額の間にさえも差があるのではないか、その点を承りたい。
  72. 安藤正純

    安藤国務大臣 それは差額はありません。日本が直接被害と認定しておる額とアメリカ検討の結果まあ承知するだろうというところとはそう差異はありません。
  73. 戸叶里子

    ○戸叶委員 病院に入つております人たちの家族に対しての補償というものは、大体一家族どのくらいに見ていらつしやるのでしようか。
  74. 安藤正純

    安藤国務大臣 これは相当の額を出しております。その点はアメリカも承知するだろうと思います。相当の額という根拠は、日本で災害があつた場合に補償する慰藉料とかなんとかいつたような額をもつと上まわつています。それからアメリカ側の方でやつておるものよりも上まわつております。でありますからその点はそう差異はなかろうと思います。
  75. 戸叶里子

    ○戸叶委員 直接、間接被害に対する補償は、もう日本政府が立てかえてやつておるわけですか。まだ全然支払つておりませんですか。
  76. 安藤正純

    安藤国務大臣 ただいままで日本政府が、今おつしやつたように立てかえ払いといいますか、内払いといいますか、それはもう三度やりました。第一回、第二回、第三回と予備費の支出をいたしております。さらにその先のことも、今実は進んでやつておるのです。
  77. 戸叶里子

    ○戸叶委員 先ほどの最初の問題なんですが、もしも大臣のところに原水爆禁止反対の署名を頼んで来たといたしますならば、それには進んで署名していただけると思いますが、いかがでしようか、その点だけもう一度確かめておきたいと思います。
  78. 安藤正純

    安藤国務大臣 私は本心はもちろんさつきから言つておる通りなんです。しかし署名する、しないはもうちよつと考慮した方がよかろうと思います。必ずしも署名だけがこれをやめさせる唯一の阻止運動ではなかろう、それは署名運動がいけないということではありません。しかしそれが唯一の方法ではないと考えております。しかしある場合にはやるかもしれません。  それから先ほどのことをちよつとつけ加えておきますが、第一回に二千百万円の予備費を支出して内払いしております。第二回にもやはり二千百万円程度のまぐろの廃棄の内払いをしております。それからさらにその後に八百万円弱のまぐろ廃棄の第二回の内払いをしています。これは予備費ですでに三回出している。つまり五千万円内外です。さらに今こういうことをやつておるのです。今のアメリカ賠償というものはまだ時間がかかりますし、少しでも満足の方へ近寄ろうとするにはやはり日にちがかかるのです。そこで今あそこへ入つています患者慰藉料というものは、これはアメリカから必ず来ますし、それに満足すべき程度に必ずこちらはとろう、こういう確信を持つてつております。しかし時間がかかりますから一人五十万円ずつ、二十三人で千百五十万円になるのですが、それを日本政府で内払いしてあげよう、つまり慰藉料の内払い――もつと行くのですが、その中の内払いをして実際の家族の生活にも不自由のないように、もう一つ患者希望と慰安のためにそのとりはからいを今しております。あすあさつて閣議がありますからおそらくはそこで決定をすると思います。間に合わなければ持ちまわり閣議でもして一日も早くやりたいと実はあせつておる次第であります。
  79. 上塚司

    上塚委員長 次に外務省経済局長、通産省通商局長質問を許しますが、両君とも十二時半から会議があるそうでありますから、そのつもりで集約して御質問を願いたいと思います。
  80. 細迫兼光

    細迫委員 局長の御出席をお願いしましたのは数字その他を相当つつ込んで御質問いたしたいと思つて要求したのでありますが、それに対して時間がまことに少いのは遺憾千万で、後の機会にでもまた期待したいと思います。  国際収支の悲観的状態におきまして、貿易の拡大の努力せられておることに、これは当然なことで喜ぶべきことだと思いますが、これの可能な地域はしきりに東南アジア等をねらつておられるようでありますが、主としてアメリカ、イギリス、そういう方面との競争でこれはなかなか望み多いとは言われないのでありまして、われわれの目の前にはソ連、中国という厖大な市場及び原料産地があるのでありまして、これを除いてはわが国の貿易拡大の可能性に期待を持つことはできないと思のでありますと。中国及びソ連に対する貿易関係のことをお聞きいたしたいのでありますが、今新聞によりますと、大越に船が入ることが許されたということを承つておるのであります。これらに対する航海においては一一台湾政府の了解がいるというような事情でもあるのでございましようか。いつかたしか遺骨送還の船であつたかと思いますが、安全について台湾政府交渉したというようなことがあつたと思います。通商のために大連あるいは太沽、上海に行く商船について台湾政府の了解を得るというような事情にあるのでしようかどうでしようか、この点をまずお伺いしたい。
  81. 板垣修

    ○板垣説明員 お答えいたします。前の遺骨送還のときは、特殊な事情で台湾政府の申入れがありましたので、交渉いたしましたが、一般の貿易関係日本船を出す場合には特に台湾政府の了解はいらないと思います。
  82. 細迫兼光

    細迫議員 時間がありませんから、まず特徴的に大豆のことを例にとつて御方針なり事情なりを承りたいと思うのですが、私の仄聞するところによれば、日本で必要な大豆の輸入状態は、ほとんどアメリカに依存しておるような状態で、アメリカの輸出大豆の四五%約半分が日本に来ておるというようなことで、だから実態を見ますれば、日本は目の前にある中国の大豆を拒否して、アメリカの余剰農産物大豆の処理所の役目を引受けておるというような状態であり、しかもそのアメリカから取寄せる大豆の値段は中国より取寄せる大豆の値段よりも高くついておる。これはFOBの標準でありますが、いわんや船賃なんかをこれに加えれば、たいへんな差額に相なると思うのであります。豆腐業者などももしも中国大豆が輸入せられるならば、一丁十円の豆腐を八円に売つてみせるといつておるそうであります。高いアメリカ大豆を優先して、安い満洲大豆に対して外貨割当のわくなんかも非常に狭いことにしておられるというのでありますが、一体どういう原因、理由によつてこういうことになつておるのでしようか、事情を承りたいと思います。
  83. 板垣修

    ○板垣説明員 お答えをいたします。従来日本が主としてアメリカからのみ大豆を入れておりましたのは、当時はまだ中共から大豆を入れる手段がなかつたからでございまして、昨年ごろから大分中共から大豆を入手する可能性がふえましたので、現在通産省といたしましては、中共から大豆を入れることにつきましてはむしろ奨励をいたしております。ただ見返り物資との関係で、なかなか話がつかないという場合もございますが、原則といたしまして、中共の大豆をよりたくさん入るということには異存はないのであります。ただ今お話のありました価格、品質の点につきましては、中共の大豆についてわけて考えなくちやなりませんのは、日本におきまする需要者のうちで、みそ、しようゆ等の原料として大豆を輸入するものと、搾油業者とで大分考えでが違うのございまして、従来の習慣もありまして、日本におけるみそ、しようゆの人たちは中共の大豆を非常に歓迎しおります。この関係は支障なく入つておると思いますが、もつと大きな部面を占める搾油業はその搾油率の関係におきまして、表面の値段はあるいに中共の方が安いかもしれませんが、搾油率を勘定に入れますと、まだまだ中共の方が高いのでございます。その点から搾油業者の方では中共の大豆を十分入れることに対しては躊躇しているという状態でございます。通産省としては特にこれをはばんでおるという事情はございません。
  84. 細迫兼光

    細迫委員 では問題を米の問題に移しますが、最近中国から米が、見本的にで刈るかどうか知りませんが、少し入つたということを聞いております。これは黄変米あるいは朝顔の種の入つている加州米よりも品質がよろしいという、値段もたしか安いという。その点の具体的な事実は私の理解に間違いないかどうか。
  85. 板垣修

    ○板垣説明員 私も今年になつて入りました二、三万トンの中共の北支の小站米、それから中支の常熟米は品質は非常に良好であると了解しております。
  86. 細迫兼光

    細迫委員 しからば安いよいものは、悪い高いものよりも優先して輸入に努力すべきが当然だと思いますが、通産省としてのご意見はいかがでございますか。その中国米の輸入に方針をかえることが当然だと思うのですが、
  87. 板垣修

    ○板垣説明員 通産省といたしましては、その良質の準内地米である中共米の輸入につきましては大いに賛成でございます。  ただ問題は、米の輸出につきまして中共側は硫安の見返り輸入を希望しております。この点について本年度はその見返りの硫安の確保に困難を感じておりますので、幾分輸入は遅れておりますが、来年度あたりはもう少し計画的にそういう方面の手配をいたしたいと存じます。  なお申し上げておきたいことは、中共におけるそういう内地米に準ずる良質のものはそう多量にはないのでありまして、どのくらいの量か私は存じませんが、ほかの地域からの米に全部完全に代替するほどの量にはならないと存じます。
  88. 細迫兼光

    細迫委員 時間がないから、他に譲ります。
  89. 上塚司

    上塚委員長 中村高一君。
  90. 中村高一

    ○中村(高)委員 引続いて中共貿易のことにつきましてお尋ねいたします。今大豆と米の問題について細迫君よりお聞きいたしましたが、それと同じように重要な輸入品である塩についてであります、日本の工業にとりまして中国の塩が入りますことは、非常に大きな影響があると思うのであります。特に従来日本内地で使つておりました海外から輸入して参りしました塩の中で、中国塩が占める比重は七割ないし多いときは九割にもなつてつたのでありますが、この中国塩の輸入について今日どういう状況にありますか。最近は非常にふえて来ているようでありますが、これはやはり見返品との関係もあると存じますけれども、おそらく通産省におきましては業者側からいろいろの要求が出ていると思うのでありますが、すでに輸入いたしました塩については、中国側の希望するものを見返りとして当然送るということであるのにもかかわらず、塩はすでに輸入されたけれども送るものがないというような実情にあるようでありますが、これに対しまして政府はどういう対策をお考えになつておられるか、御答弁願いたいと思います。
  91. 板垣修

    ○板垣説明員 塩の輸入につきましても、ただいま米についてお答えいたしましたと同様な方針で、通産省といたしましては大いに奨励をいたしておりますが、ちようど米と同じように、見返品の要求が硫安でございますので、これも本年度につきましては、その点の硫安の輸出力の関係から困難を感じておるわけでございます。塩はもうすでに本年度も相当入つておりますので、さしあたりこれの見返り輸出につきまして、まず第一義的には硫安以外のものでどうかということを、今業界を通じて、中国側と交渉しておりますし、来年になりまして硫安の輸出力の見通しがつきましたならば、向う希望する硫安も出すという考えで当面切り抜けたいというように考えております。
  92. 中村高一

    ○中村(高)委員 ただいま局長の御答弁通りに、中国から入つて来るものに対して、さしあたり向ふの註文するものであつて、しかも日本から見返品として出し得るものとしては、お説の通り硫安が最も適当なもののようであります。問題は硫安の輸出についてでありますが、日本の内地でこれをどう調整して輸出に持つて行くかにあると思うのであります。昨日われわれが農林委員の諸君と会合をいたしまして、硫安の輸出が一体可能かどうかということを農林省、通産省の方にも来ていただいていろいろ議論をして検討をしてみますと、大体硫安についての内地におきまする需要は百七十八万トンが予定をせられ、輸出のわくとして四十七万トン予定をされておりますが、この四十七万トンについてはもう長期計画で来年の春ごろまでそれぞれ輸出の計画が立つてつて、これはなかなか急に変更ができないという実情にあるようであります。ところが問題は内地の需要の調整用として保有をせられます十七万五千トンに帰するようであります。この内地の需要の調整用として保有されております十七万五千トンについて、これがもし何らかの操作ができるならば、これを見返りに出すことができるのだが、この点について農林委員の諸君などがいろいろ研究してみますと、この保有しておりますものの半分はメーカーが保有する。あとの半分は県農協と単協とで保有しておるというのでありますが、少くともメーカーの保有しております半分の八万トンないし七万トンというものは輸出が可能である。農林委員の諸君も大体これはさしつかえないということで、これは結局肥料審議会でも開いてもらつて、肥料審議会でよろしいということになれば、全部でなくともそのうちの何千トンなり、あるいは何万トンなりは輸出可能である。もしこれができるということになりますれば、今中国側が送つてくれようという米についても有望でありますし、大豆、塩についても相当有望になつて来ると思うのでありますが、通産省では農林省とひとつ至急連絡をとつて、肥料審議会を開いて、この対策をとられる御用意があるかどうかを、希望を申し上げるとともに御意見を承りたいのであります。
  93. 板垣修

    ○板垣説明員 ただいまのようなお話でもし動いておるといたしますれば、私ども通商局といたしましては、まことに歓迎するところでありまして、さつそく農林省と連絡をいたしてみたいと思います。
  94. 中村高一

    ○中村(高)委員 日本が中国に輸出します物の中で現在禁制品になつております鉄鋼製品であるとか、あるいは船舶であるとか、あるいは車両であるとか、あるいは亜鉛引き鉄板であるとか、こういうようなものが今日ココムの制限を受けておるのでありますが、順次解除をされて来て、現在ここでストツプの状況にあるようでありまして、むしろ対ソ貿易についての禁制の解除の方が、今日では緩和の速度が非常に早いようでありますが、これについてはわれわれも一日も早くこういうものに対してこそ解除すべきものだと思うのであります。政府では最近においてココムに対してこういうものに対して解除の交渉をするとかいうようなことが新聞などにも出ておるようであります。特に亜鉛引き鉄板などについても新聞に報道せられておりますが、こういう交渉をおやりになつておるかどうか、これもお答えを願いたいと存じます。
  95. 朝海浩一郎

    ○朝海説明員 ただいまお尋ねのありましたココムに対する交渉でありますが、これは御存じのように日本はココムに属しておりますほかの国と違いまして非常に差別約に、より苛酷な制限を受けておつたわけでありまして、それにつきましていろいろ努力をいたしまして逐次その差別品目を減らしまして最近は御承知のようにほとんどと申しますか、全然ココムと同じところまでこぎつけて参つたわけであります。そこで私どもといたしましても、先ほど通商局長から御説明がありましたように、できる限り貿易の規模は拡大いたしたいという気持ちは持つておりますので、努力をいたしておるのでありますが、ただ、この機会に申し上げたいと思いますのは、この間の各国の決定は、ただいま御指摘のございましたように、東西貿易の拡大――主としてソ連に対する貿易の拡大については触れておつたのでありますが、同時にまた各国がはつきり中共、北鮮に対する現有の統制は、これを厳重に維持するというもう一つの申合せをいたしております関係もございますので、日本といたしましても、その点に対しまする考慮はいたして行かなければならないという事情があるわけであります。
  96. 中村高一

    ○中村(高)委員 朝海局長にもう一つ伺いたい。ココムに対して交渉する前に、これはアメリカ側との事前の交渉をしてココムに臨むのだと思うのでありますが、そういうような方法でありますか、直接ココムに折衝せられるのでありますか。
  97. 朝海浩一郎

    ○朝海説明員 ただいま御質問アメリカに了解を求めてからココムに出すということは、必ずしも必要がないかけでございまして、ココムにはアメリカも当然代表がおるわけでありますから、各国の代表に対しまして日本希望を説明するという習慣をとつておりますし、たとえばご承知のソ連に対します船舶の輸出等に関しましても、日本の代表がココムにおきまして関係各国の同意を求めるということをいたしたわけでございます。但し時期といたしましてここで、あるいは同時に、あるいは必要によつて事前に話をした方が貫徹がしやすいという事情がございますならば、それはもちろんそういうことをやることも適当ではないかと思いますが、今まではおおむねココムにおきまして各国の了解を求めるという方法をとつております。
  98. 中村高一

    ○中村(高)委員 それではこの次にまた続いてやります。きようはこの程度にしておきます。
  99. 上塚司

    上塚委員長 なお調達庁長官に対する御質疑の方は残つていただきたいと思います。山花秀雄君。
  100. 山花秀雄

    ○山花委員 調達庁長官がおいでになりましたから、一言質問を申し上げたいと思いますが、十三日と十四日に御承知の、ように全駐労が全国的にストライキを行いました。このことについて直接の衝に当つておられる長官にお尋ねしたいと思いますが、去年も八月十一日と十二日に四十八時間のストライキを行いました。去年は初めてのストライキで、軍当局と労働組合との間にずいぶんいざこざがあつたというふうに見受けましたが、今年のストライキは二度目のストライキで、双方相当なれておると思いますが、それでも若干のいざこざがあつたというふうに聞いております。もはや調達庁におきましては各地から情勢をお聞きになつておると思いますので、去年と比べて今年のストライキはどういうような状況であつたかということをお聞きして、それから質問に入つて行きたいと思います。
  101. 福島慎太郎

    ○福島説明員 本年のストライキは、あまりなれられても困るのですけれども、去年に比べましていざこざが少いということは事実でございますが、各地におきますいろいろな事件については、まだ報告も十分に集まつていないわけであります。また私もこのストライキのもとになつております問題の取扱いに忙殺されておりまして、各地に起きましたいろいろないざこざの方にまで十分時間をかけてないというような状況でございまして、十分状況をつかんでおらないのでありまして、まことに申訳ないと思いますが、昨日市川執行委員長以下組合の諸君と会見いたしました際に、組合側でストライキ中のいろいろな事件について中央で取上げる問題があるかという質問をいたしましたのに対しまして、市川君からは、今回は中央の問題としてここで取上げて議論しなければならない、取上げてもらわなければならない問題はないと思う。地方的に全部片づくと思う、こういう趣旨の話でありましたので、大体今回のいざこざは昨年に比べてはるかに少いと考えております。
  102. 山花秀雄

    ○山花委員 全駐労の市川組合長が中央で取上げるようないざこざの問題はない、こういうふうに長官の方に言明をされたということにつきましては、私どもも非常に喜ばしいと考えております。ここで一つ問題になりますのは、昨日も外務当局に若干質問をいたしましたが、外務当局としは詳細に報告受けていないのではつきりしないということでございましたが、不祥事件の一つとしてわれわれの見のがす、ことのできない問題は、仙台の原町のキヤンプにおいて、前夜からとまり込みを行つた婦女子がアメリカ軍兵士から暴行々受けておる事件がわれわれの耳に入つて来たのであります。この問題につきまして、このストライキの衝に当つておられる調達庁の力に、何らかの報告があつたかどうかという点をお尋ねしたいと思います。
  103. 並木芳雄

    並木委員 今の山花委員質問、私はそういうことは大事だとは思うのですけれども、この種のことはやはり個人の名誉に関係する問題なんです。前にもこういうことが私の方の近くにもあつて、実は国会でこれを取上げようかなと思つたのですけれども、それが表面に出ることによつてかえつてその本人のことが大つぴらになつたりすると御迷惑じやないかと思つて、私は遠慮したことがあるのです。山花委員にお尋ねするのですけれども、今のことは特に本人の方からこういうことを国会で取上げて問題にしてくれという要請があつたのですか、ないのですか、もしないとすればもうしばらく時日をかしてお取上げになつた方がいいのじやないか、こういうようなことを私の経験から議事進行で申し上げたいと思う。
  104. 山花秀雄

    ○山花委員 並木委員からお尋ねがございましたが、別に本人から直接依頼を受けてここで問題にしておるわけでございません、それから氏名をあげて問題にしておるわけではございません。日本の婦女子が不当なる監禁の状態で暴行を受けておるという、こういう不当なる問題に対して私は若干抗議の意味を含めてここで問題にしておるのであります。これをやみからやみに葬るというような雅量は私は持ち合せてません。
  105. 福島慎太郎

    ○福島説明員 この仙台の事件につきましては開いておるのでございますが、私もスト以後走りまわりまして、ろくろく登庁もしてないような状態でありますので、事務的な始末につきましては明瞭な報告をまだ受けておりません。なおこれはストライキとはほとんど関係のない純然たる警察事案だと思いますので、その意味において警察事案として厳格に取扱われておる、処理されつつあるというふうには聞いております。
  106. 山花秀雄

    ○山花委員 ただいま長官はストライキと間内のない単なる警察事案だ、こういうように言明されましたが、これはストライキを行うことによつて労務の確保ために前夜からとまり込みというような形でこの問題が発生しておるのであります。私の聞くところによりますと、何か仙台の警察にも昨日外務委員会で問題になつたからといつて調査が政府の方から行てつおるというふうに私は聞いておるのであります。従つてこれは政府関係としても調査をしておると思うのであります。これは調進庁の方から調査されたか、労働省の方から調査されたか、あるいは昨日問題になりましたから外務省の方から調査されたかはわかりません。そこで私の問題としたい点は、これはいろいろ日米間の条約に基いてこういうような犯罪事項は、軍務と申しますか公務に付随する犯罪事項でない、しかしながら犯罪の行われた場所が基の地中において行なわておる。こういうような問題に対して日本の警察権を及ぼすことができるかどうか、昨日外務当局の御答弁はどうも少しあいまいなような点がございましたので、一応この問題をはつきりさせておきたいと思いまして、特に争議に関係の方にはしさいなる報告が入つておるのではないかと思つて再度今日お伺いしておるのであります。
  107. 安川壯

    ○安川説明員 昨日山花委員から御指摘がありましたので、私の方でさつそく警察庁を通じて調査いたしました結果が判明いたしましたので、それを御説明申し上げます。  最初にこの被害者は原町のキヤンプの下士官クラブのウエイトレスだそうでございます。これは調達庁の雇用しておるいわゆる駐留軍労務者ではなくて、軍が直接雇用しておる使用人だそうであります。従つて組合員ではないそうであります。それから十二日の日にキヤンプの中に宿泊しましたのは、本人が翌日のストライキで出勤に不安を感じましたので、自分から申し出て宿泊したので、その間軍部の方が抑制して監禁したという事実はないということであります。従いましてその点におきましては、軍側がストライキに不当に介入したという問題ではない、こう了解しております。  そこで、とまりましたあくる日に、クラブの曹長だそうでありますが、それが自室に連れ込んで強姦をした、これは事実でございます。これに基きまして被害者がただちに警察に訴え出ました。警察では翌日の朝さつそく犯人を逮捕するためにキヤンプに行つたそうでありますが、そこで若干ストライキ中の組合のピケ・ラインといざこざがあつたそうであります。結局警官が中に入つたそうでありますが、日本の警察が本人を逮捕した、こういう報告であります。従いまして、もちろんストライキ中の事件ではございますが、軍がストライキに不当に介入したというような問題ではなくて、これは純然たる曹長の私行上の問題でありまして、行政協定の定めるところによりまして、日本の裁判権によつてしかるべき方法により処断を受ける、こういうことであります。
  108. 山花秀雄

    ○山花委員 ただいまの説明で概略は判明をいたしました。最後にこれは日本の裁判権によりまして処断をする、こういうふうに言明がございましたが、きよう確認してよろしゆうございますか。
  109. 安川壯

    ○安川説明員 裁判管轄権は米側も日本側両方とも持つておりますが、私行上の犯罪については日本側は第一義的に裁判管轄権を打つておるわけであります。従いまして、日本側がその裁判権を放棄しない限りは、こちらが裁判を行うのであります。
  110. 山花秀雄

    ○山花委員 この問題は、ただいまの外務当局の急速なる調査によりまして事態が判明いたしましたので、私ども十分了承いたしました。  そこで長官に一つお尋ねしたいのでありますが、御承知のように、今度の争議の原因となつておりますのは、アメリカ軍の軍予算の削減から来る大量の首切り、その首切りに反対をして一応この争議が発生しておる。しかしながら、労働組合といたしましても、何でもかでも首切りに反対というふうにがむしやらな考えは持つていない。従つて付随的に退職手当の割増しというような形でこの問題を処理してもらいたい、こういう労働組合の意向のあることは御承知の通りであります。この問題に先だつて一つお尋ねを申し上げたいのは、去年労働組合と軍当局の間に基本的労務契約を締結されました。独立後非常におそきに失するとは思いましたが、一応これは日本政府も入り、三者が納得してできたのでございますから、われわれがとやかく言う問題ではございませんが、その細目協定がいまだに締結されてないというふうにも伺つておるのでございますけれども、細目協定ができておるのですか、まだできていないのですか、この点をひとつお答えを願いたいと思います。
  111. 福島慎太郎

    ○福島説明員 労務基本契約の主文は御指摘の通り昨年の十月一日にでき上つたわけでございます。その後細目と申しますよりは付属書でございますが、付属書の作成にかかりましたわけであります。付属書と申しますと主文よりは落ちるような感じを受けるのでありますが、実際はこの力が論争点は多いのでありまして、主文はどちらかといいますれば、雇用関係権利義務関係を法律的に解明しておる。付属書の力では、給与に関する付属書においては職階表をつくるとか、あるいは人事管理に関する手続においては休暇制度をつくるとか、直接労務者の収入に数字をもつて関係のある部分が非常に多いものでございまして、これらの意見の調整に日時がかかつたわけでありますが、かかると申しましても一年ということでは私ども非常に不満足でもあるし、また申訳ないと思つておるわけでありますが、付属書四項とさらに労働政策指令と称します文書十ばかにつきまして、大部分でき上つておりますが、その付属書の中の一部分数点について意見がいまだに合わない。その一点に特別退職手当というのが初めからあつたわけでありまして、これについて軍側、日本政府側、組合側の意見が合わない。従つて全部の効力が発生しないということで今日に推移して参つたわけでございます。
  112. 山花秀雄

    ○山花委員 去年の十月一日に大体主文が決定され、その付属書がいまだに決定されてない。しかもその中心点は特別退職金の問題である。ところが今度ストライキが起きた原因はやはり特別退職金の問題が大体の中心だろうとわれわれは考えておるのであります。だからこの問題を早く解決しておればああいうストライキというような形――われわれはストライキは決していいとは考えておりません。ああいう不祥事態が今日起きたという原因は、やはり付属書が完成されてなかつたという点でありますが、そこでお尋ねしたい点は、日本が独立国家になりまして、私どもといたしましては当然国内法を適用すべきである。基本的にはそう考えておりますが、いろいろな関係で特別の労務契約ができ、そこから付属契約が生れて来るのはやむを得ないと考えるのもまたやむを得ないというふうに一歩譲歩をしておりますが、問題は長年の間雇用関係にあり、ただいまのデフレ状況下において首を切られるということは、これは大きな社会問題になると思いますが、そこで問題はたいていアメリカ側立場が雇用主になつておるとしたならば、解雇をする場合に当然解雇手当もしくは特別手当の考慮をアメリカ側においてなさなくちやならぬ、こう考えておりますが、雇用の形は独立後どういう形で扱われておるか、私も大体わかつておりますが、もし誤つた観念で議論を進めて行くといけませんから、一応直接の衝に当つておられる長官の方からお示しを願いたいと思います。
  113. 福島慎太郎

    ○福島説明員 この雇用の関係は、御承知の通り、講和発行以前は公務員特別職という関係でござしましたが、それ以後におきましては労務基本契約に基く一般の雇用関係と同じという処理の方法になりまして、日本の労働法規はすべてこれに適用があるわけであります。従いまして争議その他の関係が起つて来るわけであります。この際に整理になります者について解雇手当もしくは特別退職手当の制度があるかというお話でございましたが、これはもちろん日本の法規が適用になりますので、解雇予告もしくはこれにかわる解雇予告手当、これはなければならぬ、これは三十日中に必ずあることになつております。それから本人の意思によらないいわゆる行政理解雇に対しましては、希望退職の退職手当の十割増の退職手当制度がある、これはもう確かにあるわけでありまして、その意味におきまして米軍のやつておりますことに制度上は問題はないわけであります。問題はその退職手当の額が少いという組合の要求であります。それに対しましてアメリカ側は公務員との比較において決して少くないということを言つており、議論のわかれ目はその辺にあるわけでありまして、制度といたしまして解雇手当もしくは退職手当その他のものはすべて存在しているわけでございます。
  114. 山花秀雄

    ○山花委員 労働組合の要求を見ておりますと、今度の軍の都合による解雇に対しては一般公務員並に扱つてもらいたい、御承知のように政府が行政整理を行うときには定められた手当になお八割増しとか、二、三日前の新聞でありましたが、農林当局は何か十割増しというようなことが一部新聞に報道されておりましたが、そういう慣例、慣行をひとつ雇用主である軍に認めてもらいたい、これが必要なる要求項目になつておると思うのでありますが、これらの労組の要求に対して、仲介の労の立場に立つておられます長官といたしましては、妥当とお考えになりますか、それとも不当な要求を労組がしておるとお考えになられますか、この点長官のお考えをお示し願いたいと思います。
  115. 福島慎太郎

    ○福島説明員 いわゆる八割増しということで知られております八割増しの特別退職手当の要求、全駐労その他の組合の要求しております、現行の本人の意思によらない退職手当を、さらに八割増しせよという要求は、私といたしましては不当であると考えております。
  116. 山花秀雄

    ○山花委員 もう一点だけ……。ただいま長官は、現在の労働組合の考えておることは不当である、こう明らかにおつしやいました。われわれといたしましては、長年の間風俗、言語、人情、習慣の違う、しかも相手方が戦勝者という優位観念のもとに進駐して来ておりましたその間にあつて、日米外交の一つのくさびとなるような役割で今日まで働いて参り、独立後、われわれをして率直に言わしめるならば、日本の国内法さえ完全に適用できないような特別基本契約をつくり、そのもとになお忍従の生活状態で、今日まで御苦労をかけたこれらの労働者があすの失業に向うというときに、当然ある程度の手厚い保護――これは相手方はどうあろうとも、日本政府としては私は考えるべきだと思う。しかるにそういう一片の日本の労務者に対する同情心がなくて、アメリカ駐留軍と労務者の間が円満に行政的措置として行われるかどうかという点であります。まことに驚き入つた答弁でございますが、きようは質問でございまして意見はまた後日に譲りまして、私の質問はこれで終りたいと思います。
  117. 並木芳雄

    並木委員 関連して私は、私たちの党の立場から今山花委員の申された問題の解決策を長官にお尋ねしておきたいのです。これは現象をとらえてやろうと言つたつて無理なんです。金額は全部アメリカ持ちでしよう。それで臨時の働き場所だし、今山花委員は一生懸命労務者の立場を擁護しているけれども、実はそのもとをたどれば、アメリカよ帰れ、そんなところは働き場でないと言つておるのに、そこで働いている者に対して現象だけをとらえてやつているので、根本にさかのぼればずいぶん矛盾を感ずる。しかし日米安全補償条約を承認していうわれわれの立場からは、政府要求できる。問題は、前に公務員特別職となつたあのころにさかのぼるべきだと思うのです。向うの直傭にしないで、日本政府の責任で雇つてこれを国家公務員にする。そうしてこちらから供給する。だからそれをもう少し突き詰めれば、費用の出所をアメリカ様全部持つということにしないで、防衛分担金ですか、両方で出し合うやつがありますが、折半になつておるかどうなつておるか知らぬけれども、要するに労務者の賃金というものは、大部分日本政府が払うのだ、こういう建前に直して行くことが必要だと思う。そうすれば労務管理の指導権というものは日本政府に移る。そしてこれは国家公務員で警官だとか自衛隊員と同じように、特別職に置いて身分の保障が与えられるわけです。これは戦場の性質から言えばストライキなどやれる場所ではない。安保条約によつて直接侵略のためにとどまつているアメリカ軍の要員でありますから、その性質から言えば、ストライキなどは常識があればできないことなんだけれども、やむにやまれぬ気持からストライキをせざるを得なかつたという労務者の気持はわかる。従つてストライキなんかしないで済むように手当をしてやる。これが日本政府の解決策じやないかと思う。私はそう思う。だから一種の軍属といいますか、昔の言葉で言えば軍属でしようが、軍属に準ずべき者として身分の保障を与えて、かりに北海道の千歳の米軍が帰つてそこの職場がいらなくなつたら、これはほかの方へ配置転換をする、あるいはそこへ防衛庁の兵器をつくる軍需工場を緊急つくつて、そこで国家公務員として働かせるとか、そういう国家公務員の労務管理の一環としてやることが私は大事だと思うのですけれども、その点長官はどういうふうに考えておられますか。
  118. 福島慎太郎

    ○福島説明員 ただいまの御指摘は、駐留軍労務関係で最も重要な点に触れているわけなのでありますが、その前に一応御説明申し上げておかないと御了解願いがたい点があるのではないかと思いますけれども、先ほど山花委員の御質問の点もそれなのでありますが、現在の駐留軍労務者の待遇というものは、昭和二十三年に定めましたときに、この勤務が公務員その他と違つて臨時の、一時前の性質のものであるということ、公務員のように恩給その他の将来の保障がないものであるということ、それらの点を考えまして、賃金ベースにおいても公務員を上まわり、退職金の規定においても公務員を上まわるというところに定められたのであります。その後両方とも同時同率に数次のベース・アップを繰返しておりますので、基本数字そのものは違いますけれども、現在の関係では公務員の賃金ベースは一万五千円、駐留軍労務者が一万八千円となつておるわけであります。それからまた退職金におきましても、公務員より少い退職金を受ける駅留軍労務者は、失業保険その他の関係もございますが、一人もいないのであります。公務員並にするということでは話にならないのでありまして、組合の言つていることも、公務員並にしてくれということを言つているのではない。現在でも公務員より相当多いが、さらに御苦労賃としてもう一段ふやしてくれということを言つているので、公務員並にしてくれということを言つているのじやないのであります。従いまして、根本的に並木委員の御指摘になりましたような問題があることはわかりますけれども、私どもの現在の立場といたしましては、これを公務員並にするということでは、かえつて騒ぎが大きくなるわけであります。
  119. 並木芳雄

    並木委員 身分の保障が与えられるように……。
  120. 福島慎太郎

    ○福島説明員 身分の保障という問題その他の点もございますが、待遇が非常に違い過ぎる。アメリカ側の金をとつてつておりますから問題がありませんが、これが日本の一般会計その他らの金をとつて払うということになりますと、やはり公務員との振合いということも当然問題になつて来るのではないか、現在の水準を維持することも、かなり困難ではないかというふうにも考えられますので、組合が将来の保障ということのみを希望して、公務員扱いでもあるいは公務員に準ずる待遇でもいいということになろうとも、ちよつと考えられない節もありますので、確かに御指摘の点は、この駐留軍労務に関連する最も大きな問題でもあり、またアメリカ側も、そういう点について、もうちよつと注意を深めないで、現在のまま、いわゆる労働三法による一般労務関係と同じということにしておいて、やれストライキをやつたらけしからぬとかなんとか言つてつたのじや、いつまでにたつても問題の解決がつかない。その根本問題を掘り下げなければならぬというところに問題が存在することはよくわかるのでありますが、いかにも公務員の待遇関係と離れております。たとえば、現在駐留軍労務者の言つております八割増しの退職金をもらいたいということは、五年、六年の勤続者に例をとつて申しますと、単純に申せば、公務員の退職金の三倍もらいたいということであります。われわれは現在の公務員の退職金というものが一般に妥当と考えられるかどうかは別問題といたしまして、あるいはこれは妥当でないという意見もあるかもしれませんが、さりとて駐留軍労務者が、この三倍をとらなければならぬということは、ちよつと承服しかねる。その意味におきまして、先ほど不当ではないかと申し上げた次第でございます。
  121. 並木芳雄

    並木委員 今の長官の答弁で大体わかるのですが、私の質問の要点は、今交渉している退職手当を、公務員並に下げろというところに重点があつたのじやないのです。そうでなくて、私は個々の駐留軍要員と当つているのですけれども、もらうものは国家公務員よりもそんなに多くなくてもいいから、ただ一生働く場所というものを保障されることが大切なんだ、こういう声が非常に最近多くなつて来ておる。従つて私はそこに重点を赴いて質問したわけなんです。前には首になりましてもすぐほかに転職もできましたし、転職ができますと、腰かけ的に働いてかなりいい給料がもらえるし、退職手当ももらえるものだからということで、割に有利な働き場所であつたのです。だからみんなそこに働いている人は、これに特殊な働き場所だということを覚悟していたのです。ところが最近は非常に就職難の時代ですから、もしこの職場を離れますと次の職場につくことができない。そういう情勢下においては、たとい国家公務員並の待遇になろうとも一生職場の保障が与えられる方がいい、こういう意味で要望が多い。それを私はきよう代表して申し上げたわけであります。従つてこの間のストライキなどでも、一部の人はストライキに突入していますけれども、ストライキはやらずに、むしろ今私が申しましたような線に政府努力を払つていただく力がいいのだという声もずいぶんある。これはおそらく半々でございます。そういう声もあるということをあわせて長官にお伝えをして、もう一度この問題ととつ組んでいただくということを御答弁願いたい。
  122. 福島慎太郎

    ○福島説明員 駐留軍労務者の雇用関係につきましては、公務員特別職というかつての制度に返つたらどうかという問題はきわめて重要な問題でもあり、また考えなければならない問題であるということはお説の通りだと思います。私どももこれに基本的に安定感を与える問題は、金の面もあるわけでありましようが、はたして労務者全体の要求しているものは何であるかということになりますと、公務員特別職というこの考え方も相当に重要性を持つて考えなければならないということは痛感いたしておる次第でありまして、おそらくはそういう問題を取上げざるを得ない時期が近づきつつあるのではないかというふうに考えておりますが、当面の問題といたしましては、今この争議に関連いたしましてそこまで考えておる次第でないわけでございまして、それを申し上げたつもりでございます。
  123. 上塚司

    上塚委員長 戸叶里子君。
  124. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私質問に入ります前に、今のに関連して、一点伺いたいのですが、問題はストライキをいかにして早くしないで済むようにするかということだろうと思いますけれども調達庁長官として一体どういうふうな案をもつて臨まれているかということ、そしてまたその解決の方の見通しは大体どうかということから伺いたいと思います。
  125. 福島慎太郎

    ○福島説明員 このストライキの原因はもちろん八割増しの退職金の要求にあるわけであります。アメリカ側はこれを承諾しないと言つておる。そこでストライキということになつておりますので、われわれもわれわれなりに日本政府として、組合の言うほどの数字というものは過大であると思うけれども、また現在の実績というものは公務員より多いということは数字の示すところではあるけれども、しかしやはり勤務がいかにも、特殊なものでもあり、また一朝にしてなくなつてしまうという性質のものでもあるので、退職手当の制度は改善を要すべき面はあると考えておりまして、いわゆる調達庁案というものを持つておるわけです。それで組合の諸君に、組合の諸君は八割増し案を否決されれば何が何でもストライキをやるのかどうか、われわれはわれわれの案というもの、日本政府案、調達庁案というものをアメリカ軍と交渉しておりましたのですが、アメリカ側に、組合の八割増し案は無理だと思う、これは、だれが考えても無理だ、日本政府もそう思うだろうと思う、われわれもそう思う、その場合に調達庁案というものは出ておりますが、調達庁案をアメリカ側が採用すればはたして組合側の方は納得するのか、ストライキをやらないのかということを聞かれるわけです。その際に一方組合は、組合の八割増し案以外の何ものも承認しない、こう言つておるわけでありまして、アメリカ側立場で言えば、調達庁案を採用いたしましてもかれこれ五億円ばかり金がかかるわけであります。組合案を採用いたしますと六億円ばかり金がかかるわけであります。ですからアメリカ側の心境といたしましては、組合案も調達庁案も両方つてもストライキ、調進庁案を採用してもストライキ、それなら両方けるということを言つておるわけであります。  そこで私どもは組合に頼んでおりますのは、組合の八割増しというのは、かつて官吏の退職金制度の改善に際して八割増しという名称のもとに考えられたことはあるけれども、あれはその書いてあることをしさいに計算してみれば二割増しという意味でできておるのである。官吏の退職金制度は今日二割増しになつておる、それにならえというのであれば八割ということは言えないのではないか、従つてどうしても八割は無理であるが、それをあくまで八割というのならば、せつかくの調達庁案も、言葉がきたなくて恐縮ですが、そのあおりを食つてしまつてともに討死してしまう。われわれはわれわれの案でこれだけの努力をしている、だから、何とかわれわれの案自体のメリツトによつてアメリカとできるだけ交渉したい。組合は八割以外の何ものも容認しないというので、たまたま八割だけは少くともおろしてみないかというふうにつて押し問答しているのが現状ということになります。
  126. 山花秀雄

    ○山花委員 関連して。ただいまの長官の御答弁を聞いておりますと、調達庁としては一つの解決案を持つておるのですが、組合でも了承されない。それで金額の説明がございましたが、調進庁の案では五億円、それから組合側の案では六億円、こういうように私聞きましたが、これは間違いございませんか。
  127. 福島慎太郎

    ○福島説明員 間違いありません。
  128. 山花秀雄

    ○山花委員 そうするとその差額は一億円と理解してよろしゆうございますか。
  129. 福島慎太郎

    ○福島説明員 さようでございます。
  130. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、今のストライキの解決の見通しは非常に困難だという結論に達すると思いますが、そうでございましようか。
  131. 福島慎太郎

    ○福島説明員 ストライキの解決といいますか、この特別退職手当の問題の解決の見通しは困難だと思います。それは何も組合が八割を固執して一歩もおりて来ないからというて組合のみを責めているわけではありません。組合もやはりいろいろ関係もあるのでありましようから、一ぺんくらいストライキをやらなければ八割をおりて来るわけにも行くまいと私も思いまして、ストライキの済むまで今日までしんぼうしておつたわけであります。今日においては八割でなくてもいいという線は出ておるわけですが、理論的にはこういう点の問題に難関があるわけでございます。駐留軍総務者と官公吏の待遇の比例は、二十三年当時に一定の幅を開かせて、駐留軍労務者を上、公務員を下にきめたものがあるのであります。その後ベース・アツプその他の場合には両方とも同時同率でベース・アツプをしておりますからいいけれども、退職手当の率に関しては、公務員の方に累次その後改良が加えられたので、当時できておつた幅が今日その当時と同じ幅でなくて詰まつておる、そういうことは言えるわけであります。従つていまだに公務員の方が駐留軍労務者より悪いのでありますけれども、元の幅が任務の差によつて承認された差であるならば、元の幅に直せという議論は成り立つわけです。そこで調達庁の考えておりますのは、公務員の退職手当のかわりました最も顕著な部分は、御承知と思いますが、最低保障という関係、三年以下四年以下になりますと率が非常に多くなつておるという点。そこで私どもは、調達庁労務者といいますか、駐留軍労務者の退職手当の制度の中に、公務員と同じように最低保障の思想を導き入れようというのをわれわれの議論の骨子にしております。従いましてこれを採用いたしましても、最低保障でございますから、四年以下の者しか潤つて来ない。四年以上の者は前と同じ、前と同じでも現在の公務員よりはるかに多いならいいじやないかというのがわれわれの考えであります。しかももう一つ考えておかなければならないのは、駐留軍労務者は、二年半前退職金を一ペん全部とつてしまつた。講和発効のときに清算をいたしまして退職金を全部もらつてしまつて、今月は二年半以上の勤務者は一人もいないということです。従いまして最低保障の制度で四年以下の者の利益を擁護すれば、まだ一年半は間に合うじやないかということなのです。五年も六年も先の問題で、現在該当者が一人もいない問題で、しかもその辺になりますと率が高くなつて三年だの四年だのということになる。そういうむずかしい問題を持ち出しては、おそらくアメリカとの話合いもつかない。しかも該当者がいないという問題で、汗をかいて全部討死にするよりも、四年以下の問題だけ解決さしてくれぬか。九月十六日までに解決せねば間に合いやせぬのだということが私どもの思想の根本になつておるわけです。
  132. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私はその問題はまたあとの機会に譲つて質問に入りたいと思います。  朝鮮事変が起りましてから、日本のいろいろの施設が駐留軍なりあるいは国連軍に使われて来たと思いますが、それを借りる場合には、挑戦事変が終るまでというふうな形で借りられたと思います。ところが朝鮮事変が一応休戦というふうな形になりましても、なおそのまま駐留軍が肩がわりに使用しているというようなケースもあるわけじやないかと思いますが、そういうケースがたくさんあるかということが一点と、それからそういうことはどういう話合いなり協定なりによつてそれができるかということをまず伺いたい。
  133. 福島慎太郎

    ○福島説明員 御指摘のような事例が、実を申し上げますと、かなり多いということは事実でございます。朝鮮事変に関連して、急速に軍の需要がふえて提供し、その後朝鮮事変が休戦になると同時に相当に解除いたされるのでありますが、解除残りがなお相当あるということも事実でございます。
  134. 戸叶里子

    ○戸叶委員 何個所ぐらいありますか。
  135. 福島慎太郎

    ○福島説明員 詳しくは存じません、が相当にあることはほんとうに間違いのないところであります。従いまして、私どもといたしましては、朝鮮事変は済んだはずだかということで強硬に交渉はしておるのでありますが、朝鮮で鉄砲を撃ち合わなくなつたからといつて、それですぐ朝鮮の事態が安泰になつたというわけには参らぬとかいろいろなことで、今日までは大分、これは軍事上の問題もありますので、私どもの見解通りにも押し切れない傾きもありましたが、相当強硬な議論を重ねておりましたが、いよいよ朝鮮のアメリカ兵もぼつぼつは減つて参るという段階になりましたので、これからはその面の交渉は相当進捗させてやつて行くことができるのではないか。現に日赤の病院その他の朝鮮事変中はというような問題につきましては、若干解決を見つつある点もありますので、実態をなおよく調べまして交渉するつもりでございます。  最後に御指摘になりましたそういう場合交渉形式と申しますか、これは日米合同委員会の分科会の形になつております施設特別委員会に提案して何らか交渉する。先方からは極東軍の施設担当の参謀次長等が出席し、われわれの方は、日本政府に関します限りは私が代表してこれを勤めるということになりまして、ここで相談いたしましてから日米合同委員会に持ち上げて来るという手続をとることになります。
  136. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、そういうケースは一々施設特別委員会にかけて行くわけなんですね。そうしてそこで了承を得た上でなければ使えないことになつているのですか。
  137. 福島慎太郎

    ○福島説明員 その通りでございます。
  138. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、その場合に借りた現地の人の了解はどういうふうになつておりますか。
  139. 福島慎太郎

    ○福島説明員 現地の人の了解ということでございますが、これは現地でその不動産等を借りますときには、朝鮮事変といつたような説明をしておるかどうか知りませんけれども、その借上げというものは別にそういうことに関係なく、一般の賃貸借契約で借りましたり、あるいは場合によつては買収したりするというようなことで借りておりますので、現地の方々に朝鮮事変が終つたとか終らないとかいうことです相談をいたしているわけではありませんが、ただほとんど全部の場合、現地の諸君は朝鮮事変は終つたはずだということ、でお話においでになりますので、それはもちろんわれわれとしては受付けまして、朝鮮事変が終つたのにこれがまだ返つていないということで施設委員会に次々に提案している状況でございます。
  140. 戸叶里子

    ○戸叶委員 施設委員会に提案いたしまして、その効果が上つた例がたくさんございますか。
  141. 福島慎太郎

    ○福島説明員 施設委員会の全責任は私が持つているので、ここで効果がなかつたと言うわけにも参らないのでございますが、それにつけやきばでなく、施設委員会は施設委員会なりの成績を、十分とは申しかねますけれども、上げつつあるように考えております。
  142. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは私はここ一つの例を出しますから、ぜひ早急にその効果を上げていただきたい、こう思う次第でございます。それはすなわち佐世保の例なんでございますけれども、佐世保は戦争直後から駐留軍に施設をとられておりましたけれども、その後朝鮮事変が始まりましていろいろな岸壁をとられ、そうしてまた倉庫の使用を命ぜられております。ことにこの朝鮮事変が始まりまして立神岸壁というところを初めとして、各地の臨港地区の使用を日本側禁止を命ぜられて来ております。それでそのときの交渉に当つた人の感じから言いますならば、そのときのポート・オーペレーシヨン・コマンダーとかいうのですが、そいうう役にあつた人が、朝鮮事変が終るまで使用させてもらいたい、終つたならばこれを返すという口調なりそういつた感じを与えたのだそうでございます。ところが今日なおそこを接収しておりまして、しかも立神地区などにおいてはそこを何ら使用しないであけたままになつておる。もしもこれを日本側に返してもらえるならば非常に利用するところも多いし、また佐世保が塩、米、麦などの輸入港として利用価値が非常にあるのに、このままにして置かれるということは非常に困るのだというふうな陳情を私どもは受けておりますが、多分これは調達庁長官の方にも行つておると思いますし、あるいはこの施設委員会に出ておるのじやないかとも思いますが、その辺のことを承りたいと思います。
  143. 福島慎太郎

    ○福島説明員 佐世保市の問題は承知いたしております。何と申しますか軍港都市転換法というふうなものもございましたし、その適用を受けて商港都市になつて行かなければならぬという佐世保市の事情もよく承知いたしております。また米軍が基地として使用している部分が、ほかと比べて割合に大きいということも事実でございます。また朝鮮事変のために市の重要部分である臨港岸壁、倉庫等を使用しているそういう言いぐさで借りたということも事実でございます。しかしながら佐世保は横須賀とともに米国の海軍に関します限りは大きな基地でございますので、ある程度の活動をどうしてもここで続けて行かなければならぬ。朝鮮事変の終末その他に関係なく、佐世保がいるということもまた了解せざるを得ないことなのでございます。朝鮮事変が済んで、少くとも戦闘的な活動が済んだということは事実でありますので、アメリカ側と、佐世保の方からももちろんお話がありましたので、岸壁、倉庫の利用度が減少しているのであるからこれを返せという交渉は現在いたしております。正式に施設委員会できめるという段階まで来ておりませんので、成規の方法はとつておりませんが、非公式の交渉をかなり熱心にやつておりまして、何とかこれはらちが明くのではないか。少くとも本式にらちの明くまで岸壁の共同使用とか倉庫の一部返還とか、そういう点で暫定的のらちでも明けようということでやつておりますので、近く根本的な面まで参りますかどうかわかりませんが、少くとも暫定的な解決といたしましては相当な程度にまで進展すると考えております。
  144. 戸叶里子

    ○戸叶委員 この立神地区を使わなくても、ほかに移しても施設として設けらるべき地域があるように聞いておりますので、何とかして、この立神地区は佐世保にとつて大事なところですから、移すなり何なりという方法で、一日も早く解決されたいというふうに希望するわけでございますが、このことは単に佐世保のためばかりでなくて、日本の貿易ということから考えても必要なことだと私は思います。そこで今の福島長官のお話を承つておりますと、まだ施設委員会にかけるまで行つていないとおつしやいますが、委員会にかける前にいろいろな工作をなさつてからこの委員会にかけて、一気にそれはきめられるというふうに了承してもいいのでございますか。
  145. 福島慎太郎

    ○福島説明員 その通りでございます。委員会にかけてないという意味は、書き物としては委員会の議事としてどうのこうのということになつていないのでございますが、実質上の交渉をしたしまして、それで見通しがつき次第成規の要求になるということになりますので、むしろその方が効果が早いと考えてやつておるわけでございまして、通り一片の書類として送還して、向うから簡単に拒否されるといつたような始末にしたくないという考えでやつておる次第でございますので、御了承いただきたいと思います。
  146. 戸叶里子

    ○戸叶委員 これは大体見通しとしていつごろ解決がつきそうでございますか。
  147. 福島慎太郎

    ○福島説明員 今月中に何とか適当な解決の見通しのつくところへ持つて行ける考えでおります。
  148. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、それは黒み通りの解決と認めてよろしゆうございますか。
  149. 福島慎太郎

    ○福島説明員 それは委員会で拒否されることも結着ではありますが、少くとも解決とは考えておりませんので御了承願います。
  150. 戸叶里子

    ○戸叶委員 長官もこのことはたいへん重大なことであるということをお認めになつていらつしやいますので、私は今月中に何とか解決するというような福島長官のお言葉を信じまして、一日も早く効果の上るようにしていただきたいということを希望として申し述べたいと思います。
  151. 上塚司

    上塚委員長 福田昌子君。
  152. 福田昌子

    福田(昌)委員 駐留軍労務者のストライキの問題に関連してでございますが、調達庁案というのはどういう案でございますか。
  153. 福島慎太郎

    ○福島説明員 調達庁案と申しますのは、公務員の退職金の支給率のカーブが、最低保障制度の採用によりまして、下の方が高くなつておるかつこうになつておるわけで、駐留軍労務者の退職金制度のカーブは一本の斜線になつておる、従つて少くともそのカーブのかつこうを同じ形式のものにしなければいけないじやないか、多いとか少いとかいうような議論を離れて、制度そのものが似通つていなければならぬじやないか、公務員に採用されておるところの最低保障制度を駐留軍労務者にも適用せよというのが、調達庁の考え方の骨子でございます。
  154. 福田昌子

    福田(昌)委員 それは駐留軍労務の労組に何回となく話合いになつても、のめないということになつておることを了解しておるのですが、そうでございますか。――そういたしますと、ここで私ちよつとお尋ねさしていただきたいことは、今ストをやつております組合は全員じやないわけでございまして、残つている連中がいるのでありますが、その残つている連中、ストをやつていない連中に、こういうことを話してみようというお考えが長官にあるかどうか、この点だけ承りたいと思います。
  155. 福島慎太郎

    ○福島説明員 現在ストをやつていない組合も三、四あるわけでありますが、そのうち二組合は、全日海、日駐労は全駐労と同じように、要求内枠は八割といつたような同じ案を出しておるわけでございます。従つてただストをやつていないというだけでありまして、要求はほとんどかわりがない。関西駐労というのは、今もちよつと申し上げました調達庁案と同じような方式を考えての要求を出しておるということであります。これはしかし昨日来一応ストも済んだのでございますから、全駐労の諸君とも、まあおろすのおろさないのということでなく、行くところに自然に流れて行つた結果――どうせ交渉事なんだから、流れて行つた結果、それが組合の八割増し案におちつかなくても、それはいたし方ないのだという線を了承してもらうように努力し、またわれわれも頭から八割案を否定して行くという考え方でなく、現実にその中に含まれております一つ一つの原則論、たとえば失業保険給付の取扱い、あるいは解雇手当の取扱い、あるいは官吏の恩給の制度をどう見るか、あるいは官吏の待命制度をどう見るかといつたような一つ一つの原則論について意見を闘わせて行けば、自然にどの辺が、妥当であるという線は必ず出て来ると思う。しばらくは八割とかあるいは三割とかという議論を離れて、原則論で押問答しようじやないかという提案をしておりまして、組合の諸君もそういうことで話合いに乗つて来ると思います。全然とりつく島がないというわけでもなく、組合の諸君も、八割以外の何物も容認しないと一応表面には言つておりますが、最後までそれでがんばるとは考えておりません。ただ問題は二十三年当時の、初めに妥当と考えられた当時の駐留軍労務者と国家公務員との待遇の開きというものは、今日なお維持されているというアメリカ側の主張にも、まんざら論拠がないわけではないということがありまして、その点が非常にむずかしいのであります。公務員より待遇が悪いから公務員並にしてくれというならば話はわけないが、そうでなくて公務員より相当上だけれども、もう一段上にしてくれというところに問題の困難性があるのであります。
  156. 福田昌子

    福田(昌)委員 労務基本契約が昨年十月にできて、あとの付属書の問題がかれこれ一年になるわけでありますが、まだ成立しないということで、そういうような点も今度のストライキが醸成されたことに多少関係があると思うのですが、この付属書を早く成立させることが必要だと思うのでありますが、今度のストライキが契機になつて早くなるということがあるのじやないかと思いますが、大体いつごろ成立する見通しであるかお伺いしたい。
  157. 福島慎太郎

    ○福島説明員 その付属書の全部が全部進捗していないというわけではないのでありまして、大部分議論の少いところはでき上つているのでありますが、今申し上げました付属書の第三の中に含まれております特別退職手当のところへ来てひつかかつておるわけでありまして、従つてこの特別退職手当の問題がいつ片づくかということで、付属書がいつでき上るかということがきまるわけであります。それが今日まで長い間かかつて片づかないということについては、かつこうの悪い話でもありますし、おかしな話でもありますが、同時にその特別退職の問題はさよう簡単に片づく筋合いの問題ではないというわけでございます。それとこれとほとんど同じわけになるのであります。従いまして付属書の全部が完成するのはいつかということになりますと、特別退職院手当の問題がいつ片づくかということになるのでありますが、問題は、議論の根拠が公務員に比べて駐留軍労務者は何倍の退職金をもらえば、大体社会的に妥当と考えられるであろうかということでそれがどこにおちつくかということにかかつて来るわけであります。だれも公務員以下の退職金を払おうという議論をしている人は一人もないのであります。
  158. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういたしますと、ただいまの御答弁から、このストの解決ができたら付属書の中において懸案になつている特別退職手当の問題も解決されるのであるから、付属書も間もなく成立する、こういうふうに解釈してよろしいのでございますか。
  159. 福島慎太郎

    ○福島説明員 さようにお考えいただいてけつこうだと思います。
  160. 福田昌子

    福田(昌)委員 北海道の駐留軍が移動いたしますことによつて、駅留軍労務者が北海道だけ特別に非常な生活権の問題で動揺いたしましたが、今後駐留軍の北海道のあの移動と同じような形が早急に起るように推定されると申しますか、そういうような予定の空気があるのでございましようか。
  161. 福島慎太郎

    ○福島説明員 北海道の整理問題の次には、いわゆる二五%の予算節約によります全面的な整理問題が起つたわけでありますが、それ以外には今後予算削減に伴う整理というものは、そう再三あるわけではありません。また移動というものについても具体的な計画はないと承知しております。
  162. 福田昌子

    福田(昌)委員 北海道の駐留軍労務者で、駐留軍の移動によりまして失職するような人もたくさん出て参つたわけであります。あの駐留軍労務者の交渉と申しますか、それはどういうふうな形で片づいておりますか。
  163. 福島慎太郎

    ○福島説明員 北海道の駐留軍労務者でこの際整理の対象になりますのは四千三百でございますが、そのうち今日までに解雇通知の出ましたのはまだ半数にならないのでありまして、二千にならないと考えておりますが、解雇の効力の発生いたしましたものは五百足らずではないかと思います。従いまして、だんだんに解雇の効力が発生して来ることになりますが、全部が完了いたしますのは相当あとのことになると思います。一ぺんに四千三百人の失業者が町にほうり出されるというわけではないと思います。それは陸軍関係でありますので、空軍の関係で相当に採用の余地があるということになつておりますので、この方面の交渉をいたしております。それからまた自衛隊関係、防衛庁の職員という関係になりますが、これらへやはり数百人の採用の余地はあるというふうに考えておりますので、大体私どもの直接関係のあります面で、四千何百のうち千五百くらいがどうにかこうにかかつこうがついて来るのではないか。空軍の関係の新規採用というようなものにつきましては、空軍との話合いその他も満足に行つてない面もありますけれども、いささか非常手段ではありますけれども、労務管理事務所その他で新規採用の募集をいたします際に、陸軍で今度やめたという前歴のある人々を優先的に手続をするようにいたしておりますので、大体空軍のあきのあり次第、これらの人々は採用されて行くだろうと考えております。なお四千数百の整理にまで達しますのはおそらく本年一ぱいかかると思いますが、もつと有効な措置をそれまでに間に合うように考えてみたいと思つております。
  164. 福田昌子

    福田(昌)委員 駐留軍が借用しております家屋、土地なんかの問題は、先ほど戸叶さんから御質問があつたようでありましたが、この家屋の返還の問題をめぐりまして、いかにも今すぐ返還されそうな声を聞きながら、なかなか返還されないという家屋がまだ相当あるのでございますが、これの大体の概数、内訳と申しますか、公的な不動産、私的な不動産というような形で、大体の内訳を教えていただきたいと思います。
  165. 福島慎太郎

    ○福島説明員 まことに申訳ないのですが、その数字等につきましては、今のところ私かいもく見当がつきません、駐留軍のいわゆる接収という関係で使つております民有、公有の財産で、まだ解除できないものが相当あることは事実でございます。それからまた、解除寸前になつたようなことをいわれながら、どうもはつきりしないというものもあることも事実でございます。特に代替建造物をつくつてアメリカ軍を動かして、その上で解除するというたちの問題は、必ずしもアメリカ側の責任でない事情で解除が遅れておるといつたようなものもありまして、われわれの方、日本側での努力を今後ますますやらなければならない面が非常にたくさんあるわけでありますが、純然たる民有物件につきましては、できるだけこれを解除して、国有、公有の負担に乗りかえて行くという方針で、解除の仕事はいたしておりますが、なお努力を要する状況であるということは事実でございます。ただこれが全部が全部アメリカ側の責任とばかりも言えない節もありまして、また一方われわれの方の能率の悪い点もあるのでありまして、その点今後さらに努力して参りたいと思います。はなはだ申しかねるのですが、その全体の数量その他につきましては、どうもそこまでつつ込んでおりませんので、調べましてからお知らせ申し上げたいと思います。
  166. 福田昌子

    福田(昌)委員 私どもの一番気がかりになりますのは、いかにも今にも解除されるというようなうわさが立つておりながら、なかなか解除されない。しかもむしろ解除が困難の方向に変転して行くというような事件が間々あるわけでありますが、そういうような場合に、どういうわけでそうなつたかということは、はなはだ了解できなくて苦しむことが多いわけであります。そういう場合の理由を伺いに参りましてもなかなか聞かせていただけない。日米合同委員会の動きにおきましても、私ども第三者が見ておりますと、御努力いただいておるにもかかわらず、国民の輿論というものをあまり考えていないというような形に動いておる点も考えられるのであります。地方に今、日米合同委員会じやございませんが、何かそういう日米の懇談会ができておりますが、それもこの中央にある合同委員会意見が反映するのでもないというような状態にありまして、地元民の輿論というものをどういう形で反映させたらよいかということで非常に疑惑を持つておるのであります。従いまして、長官におかれては、いかにも返りそうになつてかえつて返還が困難になつた事件、あるいはまたその他の問題におきましても、地元の大衆が要求しておりますことを、日米合同委員会に強く反映させていただくというような機構におきまして、今よりももつと進んだ施策を私どもはとつていただきたいのでありますが、それに対する何らかのお考えがあるかどうか承りたいと思います。
  167. 福島慎太郎

    ○福島説明員 もろちんだれしも接収というようなことを希望しておるわけでもございませんし、それからまた個人としては、接収されておつてもされてなくても、その町の機能なり様相なりから言つて、いかにも不適当なものがあるところもありますし、また産業その他の復興の面から言つて非常に困るというような問題もありますし、また必ずしも産業なり経済の面からはそう言えなくとも、町として公園として維持したいという住民の感情なども尊重しなければならないというような事例などのあることもありますし、そういうものを一切私どもの方としては公平に取上げもし、また熱心に交渉どもしておるわけでございます。アメリカの学校を開校させて公園にしたというような事例もあるわけでありまして、必ずしも一つ一つそれが役に立つ、役に立たないということのみにとらわれないで、そこに住んでおる方々の感情的な面も相当重視しなければならないということで仕事をしておるつもりでございまして、なお今後努力するつもりでございますが、その点につきましては御了解いただきたいと思います。
  168. 福田昌子

    福田(昌)委員 いろいろな点で御努力いただいておることは、私どもも非常に感謝しておるのでありますが、欲には欲がございまして、いろいろ要望事項が多いわけであります。  たくさんお尋ねしたいことがあるのですが、時間もございませんからただ一つだけお尋ねさせていただきたいことは、ことに特定の事件についてお尋ねいたしたいのです。福岡の市内にアメリカの第百十八ですか、病院があるのですが、この建物は逓信省の建物であつたわけですが、それが接収されまして、朝鮮事変が済んでから解除になるというようなことを聞いておつたのであります。その直後いかにも返りそうになつてつたのでありますが、それがまたいろいろ変転いたしまして、結局これはアメリカの駐留軍にとつて必要なものであるから解除できないということになつて、いまなお解除にならない。これは福岡県あげての返還の要望なのでございますが、それに対する理由がはつきりわからないのでありますしアメリカの軍当局に伺いましても、地元民がそれほど要求しておるとは知らなかつたということをつい最近になつて申しておるというようなことで私ども非常に遺憾に思つておるのでありますが、これに対するお見通し、御処置を伺いたいと思います。
  169. 福島慎太郎

    ○福島説明員 福岡の元逓信局のあの病院の問題はよく承知しております。非常に大きな建物で、しかも場所場所でありますので、そこにアメリカが入つていることは、福岡に行つてみればはなはだ目ざわりであることもよくわかつておるのであります。この関係は、これはかなり前から問題にもなつて討議はされておるのでありますが、福岡地区に今一応あれだけの部隊の存続を認めております限り、軍用病院の存在を認めないわけにも行きませんし、またあれだけのものをよそへ持つて行かせることになりますと、またかわりの施設に問題が起りますので、いろいろ苦心はいたしておりますが、あの病院をそのまま――病院は部隊がいなくなるまではやめさせるというわけには参りませんので、かわりの問題というところになりますと、今のところあるいは事務当局でどういうふうな案でやつておりますか知りませんが、私自身といたしましては、あの病院の処置についてはさしたり見通しとしては申し上げかねる状況でございます。
  170. 福田昌子

    福田(昌)委員 かわりの場所検討されていないのでありましようか。
  171. 福島慎太郎

    ○福島説明員 かわりの場所と申しますけれども、あれだけのかわりの場所を今日よそへとりに行くというわけにはとうてい行かないのでありまして、かわりの場所という問題は、あれだけのものを建てる以外には方法はない、よそをとつてあれを返せばそれは逓信局の方は非常に都合がいいでしようが、あらためてとられる方が恐るのはあたりまえのことなんで、どうしてもこれを建てるという問題以外に解決の方法はない。そこに軍隊がいなくなるかそれともかわりの病院を建てるかいずれかでないと解決しないのではないか。そうなりますと予算とかいろいろな問題があると思うのでございまして、問題がまだごたごたするということになるわけであります。
  172. 上塚司

    上塚委員長 福田篤泰君。
  173. 福田篤泰

    福田(篤)委員 時間もありませんから、問題の要点だまをとらえまして長官の具体的な御回答をいただきたいと思います。調達庁は国内では大蔵省、対外的にはアメリカその他の不手ぎわによりまして非常に苦しい立場にありまして、日夜奮闘されておることにつきましては心から敬意を表します、ただ問題はアメリカの明瞭な過失によつて日本側が非常な迷惑を受けている場合、これはほつておくことができないので、私どもは一日もすみやかな解決を当然要求するわけであります。  そこで、まずお伺いしますが、現在立川市は米軍の過失によつて井戸水が汚染されて、この残暑の炎天下でもいまなお――たとえば羽衣町という町名を申し上げますが、一部ではバケツ一ぱい、二はいで主婦がしのいで、非常な苦しさをなめているという事実を長官は御存じでしようか。
  174. 福島慎太郎

    ○福島説明員 よく承知しております。
  175. 福田篤泰

    福田(篤)委員 この原因は立川の空軍基地のガソリンの輸送管の腐蝕によるものでありますことは、昭和二十七年の七月一日、ハル司令官から立川市長に対する公文書によつて明らかでございます。その後日米双方の合同科学的調査いたしましたその結果が出たのでありますが、その結果を見ましても米軍のガソリンであるということがほとんど科学的に実証せられたわけでありますが、この科学的に実証されて、米軍の過失であることが明瞭であるということを長官はお認めになりますか。
  176. 福島慎太郎

    ○福島説明員 確かに御指摘の通りでありまして、立川一帯の井戸水に出て参りますガソリンは、日本政府に関します限り科学的な根拠をもつても米軍のガソリンによつて生じた被害であると考えております。
  177. 福田篤泰

    福田(篤)委員 きわめてはつきりした御回答を得まして満足でありますが、しからば日本政府はその立場からすでに補償総額約一億のうち三〇%に当る二千九百万円、これはすでに立川市に対して支払い済みであります。そうしますとあと約七割の補償額が当然支払われなければならないと思うのでありますが、このお支払いに対してどういう処置がとられ、また支払い時期はいつごろのお見通しであるか、具体的に御回答をいただきたいと思います。
  178. 福島慎太郎

    ○福島説明員 支払いの残りがあることは万々申訳ないのでありますが、その手続を完了いたしますためには、私の了解いたしますところでは、アメリカ側の方の承認を必要とする。確かにその被害はわれわれはアメリカのせいだと考えておるのでありますが、アメリカ側でも、これを米国のガソリンに原因したものであるという承認が必要である。その上で行政協定その他一連の関係から定めておりますところの日米両国政府の分担という問題が生ずるわけでありまして、アメリカ側の分担分につきましては、向うの承認という点がはつきりいたさなければならないというこうが残つておりますので、私どもといたしましては当面アメリカ軍にその事実を承認させるということに全力をあげておる状況でございまして、支払いの点につきまして事務的の面につきましては、あるいは私の了解している以上に進んだりその他の関係があるのかと思いますが、私の承知いたしております限り、利自身は米軍当局に直接厳重な交渉をして米軍をしてこれを認証せしめろ、そうすればすぐ支払いの方面も好転するのだからというふうに説明を受けておりまして、アメリカ側に対して交渉をしておるというのが現状でございます。どうもそこまで申しますと、いささか役人の説明としてはくあいが悪い面があるかもしれませんが、先般極東空軍の司令部に参りまして参謀長に会い、このお話を実はしたのでありますが、意外なことに参謀長が知らない、こういうわけなんでありまして、どうもはなはだ弱りまして、一応引返し、調達庁にあるすべての書類の写しを、事務的には先方にもあるのだと思いますけれども、作成いたしまして、私から参謀長に直接全部あらためて手渡しいたしまして、これと同じ書類が空軍の中にあるはずで、どこかでひつかかつているか、だれかがいまだに考えているかのことなんだから、早急に参謀長の手元において考究して承認してくれるようにという請求をしておきましたので、おそらく遠からず極東空軍側の態度をきめて来るのではないか。それに関連いたしましてアメリカ側も専門家を呼んで、もう一ぺん見てみたいなどともいつておりますけれども、なるべくそういう手間を省いて、極東空軍の最高首脳部に一種の責任をとらせたいと考えておりまして、それが済めばおそらく日本側の支払いの問題も促進されるのではないかと考えております。
  179. 福田篤泰

    福田(篤)委員 この問題は責任者の市長また市議会におきましても、市民側の日常の生活に深刻な影響がありますので、非常な苦境に立つておる、いわば政府アメリカ側の板ばさみ、ちようど長官の言われたような立場と同じように、理事者側も日夜苦慮しておりますので――私も昔からの外務省の同僚としてあなたの対外折衝力も高く買つておる一人であります。どうも日米間の友好のためにもこの問題を具体的に、一日も早く解決されることを切に要望して私の質問を終ります。
  180. 並木芳雄

    並木委員 関連して。長官、今のお話ですが、それほどはつきりしておるものならば、安保諸費か何かから、とにかく立川へ払つたらどうですか。日本政府の責任で、これは被害を受けた方は――福田さんも真の気持はそこにあるのだろうと思います。何も生れた子供には罪がないのです。ところがあれはおれの子じやないとかと、子供の認知をしているようなもので、生れた子供に対して飯も食わせない、病気になつても医者にかけないということはあり得ないので、被害をこうむつた立川には、政府が何らか――地元では大きな額ですが、政府から見れば大した額じやない。何百億とか何千億とかいう額じやありませんから、これを立てかえ払い、仮払いということで、即刻処理していただきたい。安保諸費か何かの余りがあるでしようし、なければ防衛分担金から出してもいいし、それかなければ政府に予備金というものもあるのです、これは台風による災害と同じですから、そういう処置をとつていただけませんか。
  181. 福島慎太郎

    ○福島説明員 私はそういう方面になりますと至つて暗いのでございますか、今安保諸費その他というお話もございましたが、そうやたらに当節あつちこつちに金が余つておりませんので、どういうことになつておりますか、何とも答弁にならないような答弁ではなはだ恐縮なんですけれども、ちよつとその辺の見当はつきかねるのであります。よく専務当局にも研究してもらいまして、方法がないかどうか考えてみたいと思いますが、さしあたり今ここでお答えいたします御答弁としましては、どうもはなはだその辺よくわかりませんので、なおよく研究させていただきたいと思います。
  182. 福田篤泰

    福田(篤)委員 長官が非常に苦慮されていることも大いに多としますが、大体今までのあなたの豊富な体験上、  こういうような首脳部との話合いには大体どのくらいの日にちで見通しがつきますか。
  183. 福島慎太郎

    ○福島説明員 空軍の司令官、参謀長あたりは割合に早く納得するだろうと思うのです。その場合に問題は、アメカリの専門家を呼んで来るとか来ないとかいう方に、なるべく巻添えを食わないできめてしまうことができるかどうかという点が時期的な問題のかぎになる。事務的に今日まで運んで来ました段階では、アメリカのその道の専門家を呼ぶという準備がそこら辺まて来ているときに、いくら参謀長、司令官でも、これに対して来るに及ばないという処置をさせるのには、なかなか骨が折れると思いますけれども、その方面が進捗していないようでしたら、いまさらアメリカの専門家ということでなくて、日本の科学技術陣容を十分信頼したらどうかという話ができることと思います。私自身としましては司令官なり参謀長なりに理解させることには困難を感じていないのであります。  一応先方の下つぱが考えておつたと言われます向うの専門家を呼ぶということの進捗状況とからみ合せ、関連の問題だと思いまして、できるだけ早目に処置したいと考えておるわけであります。
  184. 上塚司

    上塚委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十二分散会