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1954-09-15 第19回国会 衆議院 外務委員会 第59号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年九月十五日(水曜日)     午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 今村 忠助君 理事 宮田 健治君    理事 福田 篤泰君 理事 野田 卯一君    理事 並木 芳雄君 理事 穗積 七郎君    理事 戸叶 里子君       北 れい吉君    細迫 兼光君       福田 昌子君    山花 秀雄君       河野  密君    中村 高一君       西尾 末廣君    大橋 忠一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君         国 務 大 臣 安藤 正純君  委員外出席者         防衛庁次長   増原 恵吉君         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         外務事務官         (欧米局長)  武内 龍次君         外務事務官         (経済局長)  朝海浩一郎君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (国際協力局         長)      湯川 盛夫君         外務事務官         (国際協力局第         三課長)    安川  壯君         海上保安監         (警備救難部         長)      砂本 周一君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 本日の会議に付した事件  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 上塚司

    上塚委員長 これより会議を開きます。  国際情勢等に関する件について、質疑を継続いたします。穗積七郎君。
  3. 穗積七郎

    穗積委員 私はきのう質問ができませんでしたので、きよういたすつもりでしたが、大臣がお見えになつてからいたしますが、私どもの同僚の山花君が、全駐労の争議の問題について、協力局長ちよつとお尋ねしたいということですので、ひとつお願いいたします。
  4. 山花秀雄

    山花委員 協力局長が見えておられますので、一言質問をしたいと思います。基本的なことは、あす調達庁長官がいらつしやるそうですから、その際詳しくお尋ねしたいと思いますが、この機会に一言、二言だけ、協力局長の御答弁をお願いしたいと思います。十三日、十四日と二日間にわたつて駐留軍労働組合が、四十八時間ストをやつたことは御承知通りだと思いますが、このストライキ期間中に仙台の原町米軍キヤンプストライキをやつておりますときに、婦女子がとまり込んでおりますところに米軍が来て、この婦女子暴行したという事件が伝えられておるのであります。こういう場合に基地内における暴行事件ですが、従来の関係から言いますと、管轄権日本の方にないというようなことで取扱われておりますが、こういう問題に対して一体どういうようにお考えになつておるか、この際ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  5. 湯川盛夫

    湯川説明員 ただいまお尋ねの件につきましては、私どもとしては、まだそういつた情報承知しておりませんが、事実を調べた上で、必要があれば先方抗議をすることにいたしたいと思います。先方基地内の問題でありますが、こうした問題については公務遂行関連した問題とそうでない問題とがありますから、公務外の問題について違法行為があれば、それは日本の法令に従つて処罰されるということになります。
  6. 山花秀雄

    山花委員 ただいまの答弁の最後の点が、ちよつと言葉が小そうございましたから、聞き取りにくかつたのですが、尋ねる方も大きい声で聞えるように申し上げますから、これからもう少し大きい声で御答弁願いたい。  ただいまのところそういうことの報告がないので、はつきりしたことはわからないという答弁でありましたが、昨日岡崎外務大臣もやはりそういう意味答弁をなすつておられましたが、これははなはだけしからぬと思うのです。単なる国内における民間企業その他の労使関係の紛争ではないのであります。影響するところは、やはり国際外交にも影響するので、外務当局として、単なる一片の労使関係というふうに、この問題は見られない重要性を持つていると思うのです。ところがこの委員会で議員から質問があつて、初めてさようなことを知つたとか、あるいは調査段階であるということは、外務当局としての職責の上からいつても、非常にふまじめだという印象をわれわれは受けるのであります。私の質問いたしました諸点はつきりしておるのです。十三日の夜原町キヤンプの中において、——軍の階級は伍長でありますが、アーヴインという伍長、年齢も二十九才というようにはつきりしておる、暴行を受けた彼女は所轄警察に告訴をしておるというのが問題の真相であります。そこで私のお尋ねしたいことは、ただいまちよつと答弁が聞き取りにくかつたのでありますが、公務であればしかたがないが、私の関係であれば——私にはそう受け取れたのですが、この問題は公務から発生した暴行はわれわれは理解できないのであります。端的に申し上げますと、軍がストライキを破る一つの手段として、前夜からこの労務者にとまり込みを強要し、軍の施設内に監禁をして暴行をした。この点は前後のいきさつから見ても明らかになつておるのですが、こういう問題に関して一本側としてはどういう処置をとられるか、こういうことを聞いておりますので、もう少し明快に御答弁願いたいと思います。
  7. 下田武三

    下田説明員 在日米軍所属員が犯しました犯罪につきましては、御承知の新しい刑事裁判権に関する規定、つまり、国連軍協定と同町に日米行政協定の筋十七条と申します刑事裁判権規定の改訂が行われております。それによりますと、いわゆるNATO方式でございまして、先ほど国協局長が申しましたように公傷遂行中の犯罪を除きまして、これはすべて日本側刑事裁判権を持つておるわけであります。但し公務遂行中の犯罪でなくて、普通犯罪でありましても、基地内で犯されました犯罪につきましては、日本警察基地の中に踏み込んで行つてつかまえて処置するというわけには参りません。これは先方の同意があれば別でございますが、こちらから引渡しを要求いたしまして、そうしてわが方の手に入れてから取調べて、犯罪の容疑が顕著であれば起訴するという段取りになるわけであります。ただいまのお話によりますと、本人が出て参りまして日本側警察に告訴しているということでありますから、これは被害者の方の取調べはすでに可能であるわけであります。残る問題は、加害者に対する引渡しを要求しまして、そうして加害者の方も取調べて、犯罪事実を確認しました上で日本側日本の裁判所において起訴するという段階になるわけであります。
  8. 山花秀雄

    山花委員 ただいまの説明で大体内容自体はよくわかりましたが、かりに基地内における犯罪事項であつて、従来もどう考えてみても日本人側に不利益な取扱いを受けていたのですが、その被告人になる者の引渡しを拒否するというような場合が起きる可能性も往往あり得ると思いますが、そういうときの扱いは一体どういうふうにお考えになつておりますか。
  9. 下田武三

    下田説明員 その点は御心配ございませんで、ちやんと規定の中に、犯人引渡し及び証拠物件の収集について米軍協力しなくてはいかぬという規定がございますから、わが方が必要と認める犯人の身柄あるいは証拠物件等の提出は、わが方から要求いたしましたならば、当然先方から提供があるものと思つております。
  10. 山花秀雄

    山花委員 今までの例で、これは参考になると思いますが、わが方より引渡しを要求した場合、拒否されたという例は一件もない、こう了承してよろしゆうございますか。
  11. 下田武三

    下田説明員 新しい刑事裁判権規定が発効いたしましてからは、きわめてスムーズに実施されておるというように私ども報告を受けております。
  12. 山花秀雄

    山花委員 これはほかの場所で起きた問題でありますが、東京都下立川にフインカムという基地がございますが、ここの労働争議関係におきまして、米軍の方では、やはり裏切り者を前夜からとまり込みカン詰にしておる。そうして作業終つても門外に出さなかつた。このことは、日本人労務者米軍と、通称労管といつておりますが、特別調達庁との関係労務協約によつて、さようなことはできないことになつております。それをあえてしておる。これは明らかに労務協約違反になるのでありますが、たとい基地労働者といえども、三者によつてまとまりました労働協約というものは、双方がこれを履行するという義務づけがあるのでありますが、この問題に関して国際協力局関係においてはどういうようにお考えになつておるか、ひとつお考えをお示し願いたいと思います。
  13. 湯川盛夫

    湯川説明員 ただいまのような三者の協約があるというのは、私最近協力局長なつたばかりで承知しておりませんが、もしそういうことがあつて、軍の方でそれを了承しておる協約であれば、それに違反した事実があれば先方に交渉するということになると思います。
  14. 山花秀雄

    山花委員 一応ただいま申し上げましたような点は、協力局はつきりしないというような御答弁でございましたが、これは直接の衝に当られた調達庁長官がおいでになつたときになお詳しく聞いてみたいと思います。そこで問題になりますのは、その基地内に前夜からとめ置いた労働者を、作業が終了しても外に出さないばかりでなく、その基地内において何を食わしたかわりませんが、中毒事件を起しておるのであります。この中毒事件について、米軍に支給していたものと同じような食糧を支給したか、あるいはそれらの日本人労務者だけに別個の食事を支給していたか、それらのことについて全駐労の労働組合としては調査をしたい。それから先ほど申しました不当労働行為についても、これは日本政府を通じて善処方を要望しておると思うのです。これは多分調達庁の方へ来ておると思うのでありますが、日米行政協定第三条の基地管理権というような項目のもとに、ただいま申し上げました諸点を全部抹殺しておる、こういう形に現在のところなつておるのであります。これがはたして妥当かどうかということを、少くとも日米関係協力を親善的に進めて行くための労務あり方について、いま少し外務当局はお考えを願つたらいいと思うのでありますが、これらの点に関して協力局側としてはどうお考えになつているか、ひとつ明快にわれわれに納得の行く答弁をお願いするものであります。
  15. 下田武三

    下田説明員 御指摘行政協定第三条の基地管理権と申しますものは、これは軍隊が駐留いたしております以上は、やはりある程度は認めてやらなければならない当然の受入れ国側の義務だろうと思うのであります。ただその妥当な基地管理権の行使の範囲というものの認定が問題でございまして、ただいま問題として御提起になりましたような食事の問題が、基地管理権の問題として入るかどうかということは、これは非常に疑問だろうと思います。しかし新聞で報ぜられておりますように、施設の門の前にピケラインを張りまして、労組員出入を規制するならまだしもでありますが、駐留軍公務関係出入するジープとか、車とか、人間であるというものまでこれをストツプするということは、これは基地管理権及び行政協定で認められております施設に対する出入権の妨害でございまして、これらはやはり行き過ぎであると存ずるのであります。御指摘食事の点につきましては、これは詳しい事実の認定をまたないと何とも申し上げられないと思います。また基地内に残つているという人が、これが強制的に残されているのだつたら、これは遺憾でございますが、しかし本人が全然自由な意思に基きまして、これらの最小限度人間残つていないと、この基地施設の、あるエクイツプメントの活動が停止してしまうというような際に、自発的意思に基いて残つて引続きその施設の運行を可能ならしめるという意味のことをしたといたしましたならば、これは当然出入権の適当な範囲に入るものであると思うのであります。いずれにいたしましても、調達庁の受けております報告で事実の認定というものがまず先決問題であろうと思うのであります。
  16. 山花秀雄

    山花委員 ただいまの御答弁を聞いておりますと、何か労働組合がたいへん行き過ぎをやつたような感じをするような御答弁でございましたが、今度の労働争議は、軍当局とあらかじめ労働組合とがストライキあり方について話合いをいたしまして、非組合員に累を及ぼすようなことは絶対やつてない。一定の保安要員もりつぱに出しておるのです。こういうように双方紳士的に話合い行つてストライキを正正堂々と労働者基本権利として行使しておるのです。何かただいまの説明を聞いておると、労組員労働組合員にあらざる者までも強制的に基地出入りを抑えるような感じのするような御答弁でございました。たいへんそれは労働組合を無視した失礼な答弁だと思います。現地行つて一ぺん労働争議の実情をごらんなさい。どういう関係でやつているか。そこで私が現在聞いておりますことは、本人意思で残留しておるか、あるいは強制的に残留せしめられておるか、本人意思で残留しておれば、当然勤務が終れば出すべきであります。それを出さないというところに、問題である。そしてただいま申し上げましたように、集団中毒をしておる。家族の者も非常に安否を気づかつておる。何人が集団中毒したかわからぬ。こういうようなことを日本政府側として、もつとはつきりした態度米軍当局折衝をやるべきじやないかという点であります。何かその点がもやもやとして、独立国家になつて占領支配下と同じような態度でやつておるところに、大勢の人々が不満を持つておるのです。この点はやはりはつきりした態度で、独立国家日本にふさわしい態度で、これらの問題を善処していただきたいというのが、われわれの希望であります。こういう点について協力局としてはどうお考えになるかという点をお尋ねしておるのであります。
  17. 安川壯

    安川説明員 ただいまの御質問に対してお答えいたしますが、今度の争議は確かに組合の方も非常に自重してくれましたし、全般的には非常にお互いトラブルなしにスムーズに行われたと思つております。それからそのスムーズに行かせるためには、組合側にも政府としても自重を要望しますとともに、軍の方に対しましても不必要な刺激的な行為をしたり、あるいは不当に争議に介入するようなことがないようにということは、厳重に申し入れたわけであります。その結果私たちの知る限りにおいては、争議は非常に全般的にスムーズに行つたと思つております。ただ個々にはそういう軍側行き過ぎもあつたでありましようが、組合側にも実際に行き過ぎがあつたのは事実であります。われわれもその具体的例報告に接しております。しかしそれはお互いにごく局部的なトラブルでありまして、全般的には非常にスムーズに行つたというふうに考えております。
  18. 中村高一

    中村(高)委員 今の山花君の質問関連をいたしましてお尋ねしたいのですが、これは主として非常に大量に馘首されるという非常な不安が駐留軍関係にあることが、こういう争議が起る原因なのであります。どなたでもけつこうでありますが、現在米軍駐留関係ですが、今後一体どういう状況でこの米軍引揚げなどが行われるのでありますか。北海道のごときは米軍駐留しておりますものを引揚げるとか、あるいは順化方面に移駐するというようなことも伝えられておりますが、今後一体米軍引揚げはどういう状況に進行しつつあるのか、また進行せんとするのか、この状況がわかりますと、非常にこれは今後の労務関係にも影響して来ると思いますので、まずこの点をひとつ御説明願いたいと思うのであります。
  19. 増原恵吉

    増原説明員 米軍関係の動きにつきましては、先般米軍当局からも発表がありましたように、北海道駐留をしております陸上部隊を、北海道から引揚げるということを決定をいたして、現実に徐々に引揚げております。しかしこれは日本外引揚げるという意味ではなくて、北海道から引揚げるが、日本にその部隊駐留をするという建前であります。日本からどういうふうに引揚げて行くかということについては、まだ向うの方でも何らの意思表示をしておりません。
  20. 中村高一

    中村(高)委員 北海道から引揚げる軍が内地にそのまま移駐するというのでありますが、この数とか移駐する場所とかいうものは、もう公表されておりますか。
  21. 増原恵吉

    増原説明員 数なり場所なりは発表されておりません。
  22. 中村高一

    中村(高)委員 伝えられるところによりますと、駐留軍労務者の解雇されるのは、日本駐留関係米軍予算本国の方で縮小されるのだ。そうすると結局、今のように直傭になつておる限りは、本国の方の予算削減をされて来れば、これはどうしても縮小せざるを得ないことになつて来る。こういう関係であるから、組合が何と言つたつて予算削減されて来れば、これは減るのは当然だというのでありますが、米軍の方の日本駐留に関する予算削減がどういうふうに本国決定をされておるのか、御説明を願いたいと思うのであります。
  23. 安川壯

    安川説明員 米軍予算削減本国でどういうふうに削減しておるかというお話でありますが、今回の予算削減米軍日本側からの撤退を前提とした削減であるとは承知しておりません。これは全般的な予算経費節約ということでありまして、それによつて米軍がさらに日本から撤退するという前提における削減であるとは承知しておりません。
  24. 中村高一

    中村(高)委員 それはわかるのです。それはさつきの説明で、米軍が撤退するからということだとは私は言つておるのではないのです。おそらくいろいろの駐留に要する経費削減されるのだろうと思うのですが、そういう事実があるかどうかもわからないのです。そういうことであれば、もうこれはしかたがない。実際において予算削減するのですから……。けれどもそれが実際であるかどうか。そうすると、削減されていないならば、首切りをしなくてもいいじやないか。それから退職金の問題などにもからんで来るのであります。ほんとうに予算削減されるということであるならば、これはある点まではどうもしかたがないということになると思うのですが、そのくらいのことは外務省でおわかりになつておると思うのですが、いかがですか。
  25. 安川壯

    安川説明員 軍の駐留に要する予算の全額、それからそのこまかい内訳というものは承知しておりません。しかし今回の削減本国政府決定によるものだということは間違いございません。
  26. 中村高一

    中村(高)委員 その額は……。
  27. 安川壯

    安川説明員 大体三割と開いております。
  28. 中村高一

    中村(高)委員 大体三割から逆算されて来るのかどうかわかりませんが、近いうちに全国で二万五千人ぐらいの整理があるということです。そうしますと、非常に多数の者になつて来るのでありますが、政府の方では二万五千の馘首というようなものが大体おわかりになつておるのだろうと思うのでありますが、その数というようなものは、大体米軍から指示されておるのかどうか。さらにその数というようなものに対しては、日本側政府からそういうことに対して今まで折衝が行われているかどうか、おわかりでしたらお答え願います。
  29. 安川壯

    安川説明員 駐留軍の移動、それから予算削減に伴います大量の人員の整理を行います場合に、現在調達庁軍側との間に結ばれております労務基本契約条項によりまして、事前に日本政府と協議するということになつております。その条項に基きまして先般来軍が二割の削減決定しまして以来、これは基本契約のこれらの当事者であります調達庁軍側が直接折衝しておりまして、何人の整理になるかという折衝は引続き行われておるのであります。まだ最終的には決定しておらないと思います。
  30. 中村高一

    中村(高)委員 あしたまた聞きますから、それでよろしゆうございます。
  31. 上塚司

  32. 福田篤泰

    福田(篤)委員 それでは今の基地問題に関連がありますので、主として国際協力局長に対してお伺いしたいと思います。横田基地朝鮮動乱を初めといたしまして大きな軍事基地であつたことは御承知通りでありますが、最近あの滑走路拡張につきまして、現地では非常に騒いでおります。これについて外務当局国際協力局の担当の局長並びに課長の御答弁によりまして、将来必ず実行せざるを得ないであろうという見通しのもとに確実な情報を得るまでというのが地元の了解でありますが、困つたことに、外務省は一貫しておりますが、アメリカ側が非常に支離滅裂であります。たとえば約一月前は、いきなりアメリカ本国拡張計画発表してしまつた。しかも予算額まで発表しまして、これが新聞に出ている。今度はまた最近一週間ほど前に現地ステイヴアーズ大佐という司令官が、あの工事中止だ。今中村委員からも御指摘がありましたが、アメリカ予算が今度削減されたので、あの工事中止だろうというようなことを発表してしまつた。これではアメリカ側本国におきましても現地におきましても、われわれ日本にとりまして重大な問題をかつてな、ばらばらの意見を出しまして、非常に迷惑をしているのがわが方の立場であります。ついてはこの際国際協力局において、はたしてそういうアメリカ本田並びに米軍現地の出先の者が不統一の発表をするような場合、抗議をされたかどうか。またこの問題はどういう見通しを持つておられるか、責任ある御答弁をいただきたいと思います。
  33. 湯川盛夫

    湯川説明員 ただいま御質問の点については、当初の予定通り計画がちつとも変更されておらないと了解しております。現地司令官中止をするだろうということを言つたという記事が地方の新聞に出ましたときにも、さつそく米軍責任者にその点を確認しましたところが、従来の計画に全然変更はないということでありましたから、当初の予定通り進んで行くものと考えております。
  34. 福田篤泰

    福田(篤)委員 そうすると今の局長の御答弁で、うわさされている通りあの基地拡張は実施されるようでありますが、うわさによりますと、今週の閣議でこれが予算額並びにその実施の期間等につきまして基本的な決定を見るということでありますが、これについてどういう御所見でありますか。
  35. 湯川盛夫

    湯川説明員 日本政府の正式の決定はもちろん閣議においてなされるわけでありますが、まだ決定されたということを聞いておりません。
  36. 福田篤泰

    福田(篤)委員 今週やりますか。
  37. 湯川盛夫

    湯川説明員 私としては今週やるかどうか、はつきりわかりません。
  38. 福田篤泰

    福田(篤)委員 それでは近く決定を見るということではつきり了解をしたと私は一応考えます。  第二は、防衛庁にお伺いしますが、今月の十日に立川陸上自衛隊部隊におきまして、木村長官はこういう訓辞をされております。隊員に対しまして、外部不当侵略に対し敢然として立ち向わねばならないが、自衛隊はこの大きな任務を負わされている云々。また日本国防の第一線に立つているのだという自覚と矜恃を持つてもらいたい。私は個人としてきわめて適切なる訓辞と思うのであります。ついては具体的に、われわれが当面しておる大きな外部からの侵略について防衛庁の御意見はつきりお伺いしたいのでありますが、たとえば二つ問題がある。一つは例の懸案である竹島の問題であります。これは韓国側があそこに燈台をもうすでに建てた。これは情報によりますと、近く相当の数の警官隊竹島に派遣して日本侵略から守るのだという宣伝までしておるという現状であります。しかるにわが方の監視船が銃撃を受けて逃げ帰つたりなんかしておる。これにつきましては昨日も外務大臣にただしましたが、依然として平和的な方針によつて何とかいたしたいということで、外務大臣としては無理からぬことでありますが、同時にまた差迫つた、こういう緊迫したわが領土の侵略に対しましては、国民として納得できないようななまぬるい御答弁であります。ついては、木村長官みずからこういうはつきりした訓辞をなし、その心構えを語つておるのはわれわれ同感でありますが、はたして防衛庁長官——ここには増原次長その他海上責任者もおられますので、その決意を伺いたいと思いますが、どういう決意をもつて、またどういう具体的な処置をもつて、かかる韓国側のわが領土の侵略に対処されるか、これについて具体的にはつきりと御方針を伺いたいと思います。
  39. 増原恵吉

    増原説明員 竹島の問題は外務大臣からもお答えがあつたのでありますが、現在の段階をいわゆる武力による攻撃と見るか、あるいは不法入国というような形で見るか、大体は不法入国という形に見ることが適当ではないかというふうな考え方であります。外部からの武力攻撃と見ました場合でも、外部からの武力攻撃と見るならば、いわゆる防衛出動を発動するという条件が整つたわけでありますが、しかしその場合におきましても、現実に防衛出動ができるかどうかということは、いろいろ周囲の事情その他を考慮して慎重に決定すべきものであります。現在の段階において防衛出動をかけることが適当であるとは政府としては考えていない。外務大臣からも申されましたように、平和的手段によつてこの問題を極力解決して行きたいというふうに考えております。
  40. 福田篤泰

    福田(篤)委員 それではこれは国民が納得しないきわめて失望すべき御答弁でありますが、この際私はつきりお尋ねしたいことは、二つの問題がある。一つは現在は不法入国という見解をとつておられるのでありますが、たとえば近い将来韓国側が軍隊でも何でもよろしい、武力を派遣して、そうしてあそこを不法占拠した場合に、今の既成事実をつくろうとするうわさが実現した場合に、これは明瞭に不法入国ではなくて、武力によるわが領土の侵略ではないかと思いますが、そういう場合にはどういう決意をもつてこれに対処されますか、まずそれを第一点としてお伺いいたしたい。
  41. 増原恵吉

    増原説明員 非常に重大な問題でありますので、私から仮定に基いてまだどうこうということを申し上げる時期ではないと考えるのであります。
  42. 福田篤泰

    福田(篤)委員 それでは先般あそこに燈台を建てて国際水路を通達したことは、あなたも御承知通りでありますが、燈台を韓国側がわが国にもちろん何らの連絡もなく、わが領土内に不法に建設した場合におきましては——燈台を建てることは建物を建てるのでありまして、人が入ることではないのでありますが、これに対して不法入国とあなたは観察しますか。これについて伺います。
  43. 増原恵吉

    増原説明員 この問題は、現在の事態は、燈台を建てたということも私ども承知をいたしております。しかし数名の警官が来てこの鳥に上陸していても、自国の領土であるということを主張している程度と了承しておるのであります。従いましてわが方の主張から言いますならば、これは領土権の侵害であると思います。しかしそれに対処する方法として、ただちに防衛出動をかけるということが妥当であるとは考えないということであります。
  44. 福田篤泰

    福田(篤)委員 不法に入国してわが領土内に燈台を建てた、これは明らかにわが領土権に対する侵害であるとあなたははつきり明言された。侵害であるならばこれをどうして防衛しないか。私はなぜ立川における木村長官訓辞を先ほど申し上げたかといいますと、これは内地でいくらからいばりをしてもしようがない、現実に、目の前にわが領土権が侵害された場合に、これに対してなまぬるい見解をもつて、しばらく事態を見なければならないとか、あるいは不法入国の観点に立つて手をこまぬいているとか、紛争を起したくないというのでは、いくら内輪で、陰弁慶で威勢のいいことを訓辞しましても、国民は納得しないのであります。その意味で防衛措置を当然講ずる事態が発生したと私は見ておりますが、やはり増原次長はこれはまだ不法入国の段階であつて、わが領土権は侵害されているけれども、平和的になしのつぶてと申しますか、無意義な、そしてまた向うの嘲笑を買うしか効果のない抗議を繰返すだけであるか、もう一度御見解を伺いたいと思います。
  45. 増原恵吉

    増原説明員 ただいま申し上げましたように、現在政府としては外交的折衝によりましてこの問題を平和的に解決をしたいということであります。
  46. 福田篤泰

    福田(篤)委員 それでは一応これでその点は保留しますが、不幸にして伝えられるごとく、韓国側警官隊その他の武力をわが領土内の竹島に派遣し、駐屯せしめたときに、しかもその口実は自分の領土内を日本侵略から守るためだという口実で侵入せしめた場合に、これは明らかに防衛措置を講ぜらるべきだと思います。これは仮定の問題でありまして、仮定で答えられないと言つたらそれまででありますが、現実にそうなつた場合に、防衛庁としてどういう御処置をとられるか、やはりこれは不法入国の程度の濃くなつたものだというくらいで黙つておられますか、あるいは平和交渉でやはりやるつもりですか、もう一度その点を承つておきたい。
  47. 増原恵吉

    増原説明員 非常に微妙な、重要な問題でありまして、具体的事実に応じて政府としては適切な判断をしなければならぬと思います。現在のところは外交折衝によつて解決するということであります。
  48. 福田篤泰

    福田(篤)委員 それではもしそういうことが起つた場合には決意ありと好意的に私は判断いたします。  これに関連してもう一点伺います。李承晩ラインは不幸にしてまだ今日解決しません。不法な相手方のやり方につきまして反省を促しても無駄であることは残念でありますが、困つたことに漁期が近づきまして、近くわが漁船が再び李ラインの漁場に出ることになりますが、この場合現地の漁民の声を聞きますと、一体日本政府はどうするのか、われわれの正当な漁業権を実際守つてくれるのかどうか、あるいは、単なる見舞金くらいでごまかして、あとはめいめいの危険負担で行けというのか、これでは独立国ではないじやないかという声が非常に強い。これはもつともな意見だと思う。この漁船の保護について従来通りのなまぬるい態度で行くのか、あるいは安心して行けるようにこの漁業権を擁護するだけの準備と決意があられるかどうか、これについてもはつきり答弁をいただきたいと思います。
  49. 砂本周一

    ○砂本説明員 李ラインの問題につきまして海上保安庁の立場をお答えしたいと思います。現在の情勢におきましては十分な保護措置ではございませんが、やはり今までやつて参りました措置を継続する考えでございます。今申しましたように完全ではございませんが、保護の立場におきまして相当効果があると考えておりますので、やる必要があるように考える次第でございます。これは閣議決定の線もございますが、出漁の状態と先方の船の出方によりまして、必要に応じて増減をやつております。現在東支那海の問題とあわせまして四隻あるいは六隻、これは常時海上におる勢力でございまして、これを保護しますには相当の船をその方に向けておるわけであります。距離とか行動の事情によりまして、常時海上におります船艇の二倍ないし三倍の船がいるわけであります。大体そういう配置でやつております。
  50. 福田篤泰

    福田(篤)委員 もう少し具体的に何トン級のどういう装備を持つたのが常時何隻、いざという場合にどのくらいのものを派遣する用意があるか、具体的にお伺いしたい。
  51. 砂本周一

    ○砂本説明員 現在海上保安庁が持つております巡視船は、千トン級もございますし七百トン級もございます。それから四百五十トン、二百七十トン、これがこの目的に使用し得るのでございますが、いろいろのことを考えまして四百五十トンが一番適当だと思います。今申しました、東支那海の方面は四百五十トンを与えております。それから朝鮮近海は距離の関係もございまして、四百五十トンと三百七十トンをあわせ行動さしております。  次にお尋ねの武器の問題でございますが、これはたびたび国会でも申し述べておるのでありますが、予定といたしましては外洋に使います巡視船の全船艇に装備する計画を持つております。現在装備されましたのは二十八年度で八隻でございます。それに本年度に入りましてほぼ三隻が完成に近づいております。本年度の計画は、予算関係もございますが、大体十五隻を予定しております。その武器の威力でございますが、これはもちろん非常事態と申しましようか、不法侵略とか、そういうものに対する目的で装備する計画ではなかつたのでございまして、海上保安庁の当然の業務をやる範囲において必要な武器としての装備でございます。それで今申しました四百五十トン以上の船艇につきましては三インチ一門、あと四十ミリ機銃と二十ミリ機銃を適当にコンバインして装備いたします。それから二百七十トンは四十ミリ機銃でございます。そういつた程度でございます。
  52. 福田篤泰

    福田(篤)委員 きわめて貧弱な装備でありますが、何とかしようという御誠意はわかります。この冬の漁期に海上監視の飛行機が間に合いますか。
  53. 砂本周一

    ○砂本説明員 ただいま海上保安庁が持つておりますのはすでに御承知と思いますがヘリコプターでございます。海上保安庁の計画といたしましては、最初から普通の飛行機とヘリコプターをあわせ装備することが必要だということを考えましたし、現在もそう考えております。毎毎飛行機の予算も請求はしておりますが、まだ認めてもらつておりません。今のヘリコプターもきわめて私どもの業務に必要な性能を持つておりますが、それにさらに普通のスピードも早いし、また行動圏の広い航空機が必要だと考えます。
  54. 上塚司

    上塚委員長 並木芳雄君。
  55. 並木芳雄

    ○並木委員 大臣が来ましたからさつそく大臣質問をいたします。実は駐留米軍労務者が一部ストライキに入つております。これは私は非常に重要な問題だと思つて、今後主として政府にこういうふうにやつてもらいたいという要望的質問になるのでございますが、大臣はどういうふうにお考えになつていましようか。私はだんだんと米軍が撤退して参りますと、当然そこに残されるものは、駐留米軍あるいは国連軍に働いている日本人の要員の失業という問題だと思うのです。これは初めからそういう事態が起ることを覚悟して勤めているのだから、しかたがないではないかと言つてつつぱねてしまうならば、しかたがありませんけれども、それではやはり失業対策、労務管理としては正当な方法ではない、こういうふうに考えているのです。そこで私は、政府としては、だんだんと米軍が撤退して、それに伴つて出て来る労務者の配置転換を考えてやる必要があると思います。それには、今のようにアメリカの方からだけ全額を支払わせないで、防衛分担金その他によつて日本政府の正式の国家公務員とする、そしてかりに駐留米軍の職場の用事がなくなつたならば、政府の責任でほかへこれを配置転換をするというふうに考えてやることが必要ではないかと思います。これは現に岡崎外務大臣の選挙区である神奈川なんかでも、あそこでは相模ベースがあつて非常に問題を起しているようであります。大臣はお考えになつていることと思いますが、臨時雇いのようなかつこうで、しかも全額は向うから支給されている、そうすると、もういらなくなれば国へ帰つてくれ、ちようど女中さんと同じような地位に置かれている駐留軍要員の地位を引上げる、これが大事ではないかと思いますが、まずこの点、大臣はどういうふうにお考えになつているか、お尋ねしたいのであります。
  56. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私も駐留軍に働いておる人たちの心配をできるだけ除く必要はあると思うし、またかりに不幸にしてやめなければならぬ場合の跡始末は十分考慮しなければならぬと原則的には考えておりますが、これは私からとやかく言うべきものではなく、労働大臣等にその趣旨で具体案を十分考慮してもらうよりいたし方がない、かように思います。
  57. 上塚司

    上塚委員長 並木君にちよつと注意しますが、外務大臣は十三時半にここを出られなければなりませんし、ほかにまだ三人ありますから、十五分程度で終つていただきたい。
  58. 並木芳雄

    ○並木委員 十分考慮しておるという御答弁でありますから、ぜひその点をお願いしたい。それにはただいま申しましたように、これを国家公務員に持つて行くという線にしていただかないと、この問題は解決つかない。そうでないとすぐストライキという伝家の宝刀を抜き、一部政党の利用などにも乗ぜられるわけなんです。私は実際駐留米軍要員のストライキというものは、ほとんど意味をなさないと思うのです。向つて行くべき相手がないわけですから、それは先ほど来議論が尽きていることです。私は、軍に働く人々ですから非常に大事なものであつて、昔で言えば、日本軍の軍属に相当するものだと思う。従つて今後米軍要員、国連軍要員というものは一種の軍属というふうにして、当然ストライキなんかできないものだ、警官とか自衛隊員に準ずる特別職にあるものである、それだけの重要な地位を与えて行くべきものである、こんなふうに考えておりますが、大臣もそうお考えになりませんか。
  59. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 具体的の取扱いになりますと、私からこの際思いつきのことを申し上げるよりも、主管大臣に十分研究してもらわないと、的確なことは申し上げられません。
  60. 並木芳雄

    ○並木委員 それではその点は、私がただいま申しましたような点でぜひ御善処願いたいと思います。ストライキをやつておるのは全部じやないのです。むしろ私の知つておる範囲では、もうストライキもやらずに、ストライキをやると収入も減つて来るし、またアメリカの感情も害する、これは百害あつて一利なし、だからストライキなんかやらずに働かせてくれ、こういうまじめな声が多いのです。それが今言つた非常に立場の弱い者であるために、普通の労働組合の、日本の国内における資本家と労働者との関係におけるストライキと同じようにみなされておる状態というものは、労務者諸君に対してむしろ気の毒であり、どうしても政府にめんどうを見てもらわなければならぬと私は考えるのであります。  それからもう一つの問題は、先般来原子炉の問題がございます。原子炉をつくるということで、原子核研究所というものが設置されることが決定したのですが、この原子核研究所は、目下のところ大学方面でやられるようでありますが、この原子核研究所というものが将来原子力の研究に発展して行く可能性があるかどうか。この問題については大臣は御存じのはずだと思いますが、もし原子核の研究所の範囲にとどまるものであるならば、これは心配はないのでありますが、これが原子炉を設置し、原子力の研究ということまで発展するとなりますと、相当の重大問題を起しますので、この点はどういうふうになつておりましようか、御報告を願いたいと思います。
  61. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今のところは単なる研究にとどまつておるのでありますが、将来どうなりますか、私は主管でありませんから、責任を持つたお答えはできません。
  62. 並木芳雄

    ○並木委員 それでは増原次長の方は、その点は御承知でしようか。防衛庁としては、誘導弾というものをつくるために、近く研究の委員会防衛庁の中に設けることを決定したやに聞いておりますが、誘導弾とか、原子力の研究、そういうものについてはどうなつておりましようか。そうしてその場合に、ただいま申しました大学の方の原子核研究所と原子力研究所、これはもし原子力ならば、行く行くは原子炉をつくつてやることになるですが、それとの関係はどうなつておりますか。
  63. 増原恵吉

    増原説明員 ただいま防衛庁として、原子核研究なり原子力研究なりをやろうという考えは持つておりません。誘導弾につきましては、ただいま資料を集めて研究をするという段階であります。これは経費その他が許すならば、誘導弾についての研究は、防衛庁として民間その他の協力を得てやりたいという希望を持つています。
  64. 並木芳雄

    ○並木委員 それでは私、外務大臣には昨日お約束通り質問いたしましたから、きようは後ほど木村長官、安康国務大臣に質閲することを留保いたしまして、これで一時やめておきます。
  65. 上塚司

  66. 穗積七郎

    穗積委員 外務大臣がお見えになりましたからちよつとお尋ねいたしますが、きようは十時からの委員会でありますのに遅刻なすつたのは、閣議に御出席の結果だと思いますが、さようでございますか。
  67. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 その通りであります。
  68. 穗積七郎

    穗積委員 きようの閣議では、伝うるところによりますと、吉田さんの外遊が正式に諮られて決定せられるという報道になつておりますが、その問題に関する閣議状況お話くだされば幸いだと思います。
  69. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 閣議後における発表については官房長官に一任してありまして、私が出るときはまだ一般の案件をやつておりましたから、まだ済まないかもしれませんが、閣議終了後官房長官から発表することになつております。閣議において吉田総理の外遊を決定いたしましたが、大体の趣旨は、二十六日に出発しまして十一月十四日ごろに帰つて来るという予定であります。まわる国は、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、イギリス、アメリカということになつております。前にはインドその他東南アジア諸国にもまわる予定でありましたが、今度は日程の関係上そういう方面に行かれないのはななはだ残念でありますが、臨時国会等の関係もあり、急いて帰つて来る、こういうことになつております。
  70. 穗積七郎

    穗積委員 外遊の目的は、閣議お話になりましたところでは、どういうことになつておりますか。
  71. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これも正確には官房長官から発表することになつておりますから、私の言うのは全部尽きているかどうか、ちよつと書きものがここにありませんからはつきり申し上げられませんが、主としてポイントは、各国との間の親書関係を増進する、終戦以来各国が寄せられた好意に対して謝意を表する、国際情勢の新しい事態に処して各国主脳部と意見を交換する、こういうことであろうと考えております。
  72. 穗積七郎

    穗積委員 今の旅行日程の中で、当初新聞等の報ずるところでは、吉田総理はインドその他アジア地域にも帰りにぜひ立ち寄りたいという意向を示されたようですが、今のお話ですと、臨時国会の都合で日程が不十分であるからあとは端折つて欧州からすぐ帰るというのですが、臨時国会はそれではいつごろ開く御予定を持つておりますか。
  73. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはまだ閣議ではきめておりませんが、そういうことじやないかと私は思つております。いずれ臨時国会は必ず開くわけでありますから、できるだけ早く帰つて来て開く、こういう意思だと思います。
  74. 穗積七郎

    穗積委員 臨時国会は実はもうすでに早く開く必要が諸般の情勢からあるわけであります。むしろ外遊は、臨時国会を開きたくないから、それを延ばす意思すら含んでおると見るのが客観的判断だと思うのです。初めインドその他へ寄りたいということであつたようですが、かの地におき場まして現政府の外交方針に対しまして非常に不快な感を持つておるのです。そういう吉田が米州でも話すべき何ものもないという空気が非常にアジア諸地域において強い。そういう情勢のもとに、つい招かれざる客であるから寄るわけには行かぬというので、おやめになつたのではありませんか。
  75. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そのような御意見は、この間のイギリス労働党の人の言葉を引用すれば、目印関係をそこなうものであります。さような事実は何にもありません。
  76. 穗積七郎

    穗積委員 それは日印関係ではなくて、古田政府または吉田さん個人のワン・マン的な外交方針——日本の国民とインドの国民は非常に仲よくしようと一つております。ですから吉田さんの態度によりまして、日印関係がそこなわれたり、あるいはよくなつたりするものではないとわれわれは確信しております。吉田さんを迎えないということは日本国民との友好関係を歓迎しないということではもとよりないと思います。その点はあまり思い上つて吉田さんが日本国民の意向を代表しておるというふうに思われるのは思い過ぎだと思うのです。  それはまあその程度にいたしまして、時間がありませんから一問だけお尋ねしたいのです。昨日から他の委員の諸君からもお話がありましたが、一歩前進してお尋ねしたいのは両陣営の平和共存の問題でございます。これは岡崎さんも両陣営の平和的共存は可能なりという判断に立つておられると思うのですが、それにつきまして、日本におきます有力な新聞である中部日本新聞社が、しかも編集局長の立場から社を代表してモロトフ外相に質問をいたしました。それに対する答え、しかも具体的な竹岡に対して具体的な答えがあるわけですが、これを今までとかわつた何ら新しいものはないとし、悪意に満ちた平和攻勢であるかのごとき取扱いをされようとすることは、非常に国民の意思に反するものだと私は思うのです。そこで具体的にお尋ねいたしたいと思いますのは、暫定的にはサンフランシスコ条約の状態はそのままでよろしいというような見地に立つてかの方から国交回復の中入れがありました場合、そういうような可能性が出て来た場合には、日本政府としてはどういう態度でこれに処せられるつもりであるか、具体的に御所見を伺つておきたいと思います。
  77. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 穗積君はとかく国民の意思に反するとか、国民の考えと違うとかおつしやいますが、それはどういう測量をなさつたのか、私には了解ができない。そうおつしやれば、われわれは自由党は少くとも国会において多数を占めておる、国民の意思の多数を代表しておると言わざるを得ない。(「このごろは怪しいぞ」と呼ぶ者あり)社会党左派よりは少くとも次は多い。どういう測定かはなはだどうも理解に苦しむ。まあそれは別としまして、今のは仮定の御質問でありますが、暫定的にというのは私にはよくわかりません。それでもう少し暫定的という意味はつきりされないと御返事のしようがありません。
  78. 穗積七郎

    穗積委員 向うの理解がそうであるかどうかは別としまして、少くとも現在の状況においてサンフランシスコ条約をそのままうのみにする、これに対して変更または改廃を要求しないで向うが国交回復の意思表示をされた場合のこととしてお話いただきたい。
  79. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは平和条約から申しましても、サンフランシスコ条約に参加するということであるならば、当然日本としても応ずる建前になつております。
  80. 穗積七郎

    穗積委員 二十六条によりまして条約に参加、追加署名するという形でなくて、それとは別個な二箇国におきます平和条約の申入れの場合はどうでございますか。
  81. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それもサンフランシスコ条約と同様か、実質的に同様の場合にということは二十六条に書いてありますが、その通りども考えております。
  82. 穗積七郎

    穗積委員 続いてお尋ねいたしますが、その問題とは別個にもう一つの場合が想定されますのは、ソ連側から日本との関係につきまして戦争状態終結の宣言をした場合、そうして事実上日ソ間におきます経済的、文化的な交流を一歩前進せしめたい、または平和共存の実をあげたいという意思表示のありました場合には、どういうふうにお考えになりますか。
  83. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 戦争終了の宣言は先方が行うことであつて日本はそれによつて何ら義務を負うものではありませんから、それはソ連側がやられることはけつこうであろうと思います。そのあとの問題になりますと、これは相互的の問題になりますから、一々のメリットを考えてみないと今原則的なお答えはできません。
  84. 穗積七郎

    穗積委員 もとより戦争状態終結の宣言というものは、言うまでもなく両国間におきます今の戦争状態継続の関係では、相互の国民にとつて必要である経済的、文化的交流ができない。のみならず外交上も敵対関係にあるかのごとき印象を持ち続けることになるから、それが望ましくないから戦争状態終結の宣言を次善の策としてとつて、そして実際問題といたしましては、直接侵略可能性あるかのごとき妄想を打消すこと、続いて日ソ間におきまする、特に経済的な交流を促進せしめる、そういう目的をもつて行われることは当然だと思うのです。そういうことの基本的なメリットを目標にして、岡崎外務大臣はそういう事態に対してどういう方針でもつて臨まれるつもりなのか、それを無視されるつもりなのか、あるいはまたそういう機会をつかんで日ソ間の経済交流を一歩促進されるつもりであるか、その基本的なお考えを伺つておるわけです。
  85. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはしばしば言う通り、経済とイデオロギーとはわれわれは別だと考えておつて、イデオロギーは違つても、経済の交流ということはでき得るものだと考えております。従つて、原則的に言えばそれはできることであります。しかしイデオロギーが同じであり、そして国交が回復している国でも、たとえば通商航海条約をつくるとか、支払協定を行うというとずいぶん意見が食い違うものでありまして、できるかできないかはそのときの条件次第で、イギリスとも話をしているがなかなかむずかしいし、カナダともいろいろ議論があるというようなわけでありますから、具体的な問題になるとどうなるか、そのときの条件……(発言する者あり)それは、仮定の問題には答えられません。どこの国とだつて、イギリスとだつて、支払協定をやるにさえ半年くらいかからなければ話がまとまらない。従つて具体的な条件がなければ、原則的なことを言つたつて何にもならぬわけであつて、それは実際の申出を見て返事をするよりいたし方がない、こういうことであります。
  86. 穗積七郎

    穗積委員 あなたは問題をあえてそらされて、そしてはなはだ不誠意な答弁をもつて終始されようとしておりますが、私の伺つておることはそういうことではございません。個々の通商条約でありますとか、漁業協定の条約でありますとか、あるいは経済取引等につきましては、これはもとよりお互いの利益に立ちました主張がありますから、それが合わなければ話ができないことは当然なのである。私の言つていることはそうではなくて、今の行き詰まりました日本経済そのものを打開して、自立と、国民生活を引上げる条件をつくるために、日ソ間の貿易、経済交流を促進せしめる必要があると考えておられるか、これは望ましくないと考えておられるのか、その基本的なことを伺つておるわけです。
  87. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 条件次第で促進することはけつこうであります。しかしそれは条件がいろいろあるのであつて、現にわれわれは日ソ間のそういう意味の交流も認めてやつておる。それをよけいやれるかどうかは一に条件次第であります。
  88. 穗積七郎

    穗積委員 続いて具体的にお尋ねいたします。御案内の通りに、日本の特に造船界、漁業界等におきましては、日ソ間の調整に伴います経済的促進が非常に要望されておるわけで、彼の国からももとよりそういう意味で造船に対します発注の意図すら具体的に持ち進んで来ておるわけであります。そこで今申しました国交回復でありますとか中立条約、不可侵条約またはソ連側から戦争状態終結宣言をして、そういう具体的な方法によつて国交そのものを改善せしめる——そういうことは望ましいことであつてもすぐはできない。しかし経済上の問題は、眼前の要求からもすでに相互におきまして強い要望になつて現われておるわけでございますから、そういう見通しを持たれるのならそういう希望を持たれるなら、今度の回答の中に具体的にあります経済使節団——これはオフィシャルなものでありましようともあるいは民間のプライベートのものであろうと問いませんが、その両方の場合をわけて、政府は一体そういう問題に対して具体的にどういう態度をとられるのか、経済交流を促進せしめるために民間で経済的な使節団をつくつて、そうしてかの地に渡航いたしまして向うとの話合い——一般的な協定もありましようし、あるいはまた取引の協定もありましよう、あるいは個々の売買契約もございましよう、そういうような要求が具体化しましたとき、現にもうすでに具体化せんとして、御承知通り財界等におきましても相当な動きがあるわけでございます。さらにまた、向うからもそういうわけで具体的に、民間または官の編成いたします経済使節を日本に送つて、経済交流について一歩前進をしたいという動きがあるので、それが具体化しました場合には一体どういう態度をおとりになる方針であるか、この際それもあわせて伺つておきたいと思います。
  89. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 目下慎重研究中であります。
  90. 穗積七郎

    穗積委員 目下研究中ということですが、それはどちらへ向つて研究中でございますか、もうすでに経済問題が具体化しておりますから、もう少し誠意のある、まじめな御答弁をいただきたい。
  91. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは外務省だけで決定される問題ではないのでありまして、通産省にも関係あり、大蔵省にも関係あり、場合によつたら農林省にも関係あり、経済審議庁にも関係あり……(穗積委員外務省意見を聞いている」と呼ぶ)外務省だけできめられないのです。各省で相談してきめるのです。
  92. 穗積七郎

    穗積委員 それでは民間からも強い要望が起き、それから関係各省、今言われた大蔵、通産、経審等におきましてそれを促進することを妥当なりとした場合におきましては、外務省としてはこれを理由なくして今までのように妨害されたり、あるいはまた非常にサボタージユするような御所存は毛頭ございませんでしようね。
  93. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 外務省は、これまでも理由なくして妨害したりサボタージユしたことは一回もありません。
  94. 穗積七郎

    穗積委員 ついでにお尋ねいたします。お尋ねする前に、今の場合におきましては、アメリカの気息をうかがうことなしに、日本経済の将来を考えましてぜひとも思いを翻されんことを要望しておきます。  もう一つお尋ねしたいことは、最近牛場局長がかの地に行つておられて、いわゆる経済使節の一つのケースとしてお互いの間に了解されておるようですが、これは一体どういう資格、どういう目的、どういう話合いの上において行かれたのか、その後の状況はどうなのか、この問題をこの際お尋ねしておきたいと思います。
  95. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 先般東京でエカフエの会議を開きましたときに、エカフエのメンバーとしてソ連の代表も東京に来たことがあります。エカフエのような国際機関でありますと、国連のもとにありますから、ソ連も国連に加入している以上、ソ連の代表も入るのは当然でありまして、これは外務省としても喜んで迎えたわけであります。今回はソ連側からエカフェのメンバーに対しまして、先方で費用を持つからソ連の内部の事情を見てもらいたいという申出があつて、エカフエの事務局長から日本政府にもその旨の通達がありました。たまたま参加しない国も二、三ありますが、大部分の国は参加しておるようでありますから、エカフエのメンバーとして日本側からも人を派してこれに参加した、こういうことでございます。
  96. 上塚司

    上塚委員長 穗積君時間のなにがありますし、あとに三人残つておりまして、十二時半までに三人をやりたいと思いますから、この程度にとどめていただきたいと思います。
  97. 穗積七郎

    穗積委員 中途半端になりまして残念でございますが、まだあと二日ありますから、どうぞ忠実に御出席いただいて、われわれの討議を継続していただきますことを希望いたしまして、きようは途中でございますが打切つておきます。
  98. 上塚司

    上塚委員長 大橋忠一君。
  99. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 第一に、岡崎外相が、さきに日吉米協会の演説で、ビキニにおける水爆実験に協力するというようなことを言われましたその協力ということは、どういう意味協力でありますか。こういうことを意味されておるのでありますか。その点をひとつお尋ねします。それから岡崎外相がこれに協力すると占われたことは、広島、長崎に原爆攻撃を受けた日本人の民族感情を非常に傷つけておるのみならず、わが国の公海漁業にも非常な打撃を受ける。従つて、これはもうどこに行つてみても非常に評判悪いのでありまして、吉田内閣の非常に大きなマイナスになつておるのでありますが、一体いかなる必要によつて協力するというようなことを積極的に言われる必要があつたのか。今回さらにそれをコンフアームされておるのでありますが、どうしてそういうことを言う必要があつたか。その点をひとつお尋ねしたいと思います。
  100. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは、私はしばしば言つおるのですが、原子力とか水爆とかいう大量殺りく兵器、こういう種類のものは国際管理に移すべきが望ましいことでありまして、これに向つてまず各国とも努力をしなければいかぬ、これは当然のことであります。しかしながら、もしそれができない場合にはどうするか。それは、今不幸ながら国際間の平和は力の均衡の上において保たれておる。少くとも私はそう思つておる。従つて、共産陣営側で原爆なり水爆なりの実験をしておるときに、自由主義陣営の方でこれができないということであるならば、力の均衡が破れるおそれがある。しからばその場合には、むしろ力の均衡が破れる結果、戦争の危険も起らないことはない。しからば、非常な災害を世界に及ぼす心配もあり得るわけであるので、国際管理のできない場合で、しかも一方の陣営がかかる実験を行つている限りにおいては、他方の陣営もこれを行うことが力の均衡を保ち、そしてこういう殺りく兵器の使用を阻止できる唯一の方法であると思いますから、私は、その意味では原子爆弾等の実験を阻止することは適当でない、こう考えております。
  101. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 阻止することはできぬということは認めますが、日本の方で進んでこれに協力するということはどういう意味でありますか。何がゆえにまたそういうことを言わなければならぬのですか。
  102. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は専門家でありませんからはつきりしたことはわからないけれども、大体の意見を聞くと、あの方面がほかのところよりは人よりも少いし、適当なところといわれております。従つて、もしあそこでやることがどうしても必要であるということであるならば、日本としては、漁業に対する損害とか人命に対する損害はもちろん防止しなければなりませんが、こういう点についての保証があるならば、あえてこれを阻止しないのであつて、それがつまり協力と一般にいわれておるのであります。
  103. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 そういう事情ならば、やむを得ぬという程度ならば必ずしも異議はないのですが、進んでこれに協力するということになると、これは非常に国民に悪い印象を与えて、かえつて日米の親善を害する、いわゆる対米一辺倒の外交の模範のように言われまして非常に不利であると思うのであります。進んで協力するというような言葉は取消していただきたいと私は思つておるのであります。  時間がありませんからさらに次に移ります。それは、現在の台湾の対岸の金門島の攻防戦の問題でありますが、せつかく仏印の戦火が収まりまして、再び台湾海峡が戦火におおわれるということは、極東平和のためにまことに悲しむべきことであります。ことに平和主義を堅持している日本としては、これほど悲しいことはないのであります。台湾問題の処理という問題は、おそらく現在、朝鮮の問題とともに極東平和のために非常な暗影であります。これについて政府は、仏印の問題あるいは朝鮮の問題について黙つてただ傍観している、成行きにまかせて傍観をしているというような、そういう消極的な態度で過されるつもりでありますか。あるいは、何か積極的な意思表示をして、そうしてこの極東平和のためにやつてみようというような意図がありますかどうか。その点についてお尋ねいたします。
  104. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは私どもも非常に注意して見ておりますが、今のところは、台湾自体に対する進攻の手始めとはわれわれは考えおりません。これは地方的の小ぜり合いといつてはおかしいですが、争いであろうと考えております。従つてこれが台湾に波及するということになりますと、アメリカの第七艦隊との問題もあり、国際問題化するおそれがあるのでありまして、この場合にはわれわれも十分考慮しなければならぬ点がたくさんあると思います。ただいまのところは、金門島の事態が大きく発展しないことを希望している、それには米国の海軍等が介入しないことが一番適切であろうかと思つておりますが、今はまだ事態を注視している程度であります。
  105. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 この台湾の問題は、悪くいたしますと非常に大きな問題になる。ラドフオード統合参謀本部議長は、機会があつたならば中共に全面的に原子攻撃を加えるという強い主張を持つていると伝えられているのでありますが、もしも中共がこれを力をもつて奪取するというようなことになりますと、極東の平和のみならず世界の平和にまで及ぼす大問題である。そこで、これが大きくならないうちに円満に収めるということこそ、世界の政治家が今日最も注意を払わなくちやならぬ問題である。さきに労働党の議員団が参りましたが、アトリー前首相のごときは、これを国際連合の管理にまかせて中立化すべきであるというような意見を出しておるのでありますが、日本においても芦田均氏のごときはそういうような意見発表したことがあるのであります。私もこれには賛成でありまして、元来台湾の本島人というものは蒋介石政権に対しても好感を持つていない、中共政権に対しても好感を持つていない、実は五百万内外の民族が長い間支那本国から独立して住んでおる、違つた環境のもとに住んでおるがために、民族的な関係は福建人と同じでありましても、やはり自分らだけで自治でやつて行きたいという希望が非常に強いのであります。従つてそこの民族の意見も聞かずにカイロ宣言でかつてに支那に返すという宣言をしたのが誤りである、私はより根本的の大西洋憲章の規定に基きまして、やはり台湾の民族は自分で自治をして、少くとも支那の政権のもとにおいて、自治の形で進むのが一番本島人のためにもよろしいし、極東の平和のためにもいいと私は思うのであります。従つて私は、さしあたりこれは国際連合の管理のもとに移して中立化して、将来は島民の意思によつてそのステータスをきめるということが最も合理的であろうと思うのであります。しこうして日本は現在武力もなく、非常に無力ではありますが、長年台湾の本島人との間には同胞の関係を結んだ関係もあり、また極東平和という大局的に非常に重大な問題でありますから、われわれの力の及ぶ限りにおいて、私はそういう方向に努力すべきものだと確信しておるのであります。従つてできてもできなくても、極東平和の非常な責任者である日本といたしましては、そういう意思を何らかの方法において世界的に知らせる。そうしてこの台湾問題が平和裡に解決する方向に向つて積極的にやるべきものであろうと思うのでありますが、こういう根本問題について岡崎外相はどういうお考えを持つておられるのか、この機会にお伺いしたいと思います。
  106. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 われわれももとより自国のすぐ横にあります台湾の平和ということについては、どこの国よりも一番重要な問題と考えておることは当然であります。しかしながら今お話のような点は、少くとも国民政府と平和条約を締結いたしておるものでありまして、日本としては国民政府との間の友好関係を保持しつつあるものであつて、その外務大臣お話のようなことについて意見を開陳することは、決して適当でないと思つております。
  107. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 この問題は終りまして、最後に吉田外遊問題でありますが、本日の新聞によりますと、芦田均君が吉田総理と会つた結果、外遊後にはやめるような話がある、そういう印象を受けたということを新聞記者に発表しておるのでありますが、吉田総理が外遊をされる場合、帰つたらやめるという場合と、帰つても引続いて政局を担当してやつて行くのだという場合においては、外国側の吉田総理の取扱いぶりにも非常に大きな差異を来すだろうと思うのであります。もしも何らその点をはつきりせずに行かれまして、向うの首脳といろいろの話合いをされて帰られる、帰るとぼこつとやめてしまうというようなことになつては、ある意味において外国の首脳者を欺くような結果になり、私は国際親善上はなはだこの点は遺憾だと思うのであります。そこで私は外遊に出られる前に、帰られたならばやめられるのか、あるいは帰られた後も引続いて万難を排してやつて行かれるのか、この点をはつきりして行かれることが適当じやないかと思うのであります。この点について岡崎外相はどういうふうにお考えでしようか、お尋ねします。
  108. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは非常にデリケートな御質問であつて、また外務委員会でお答えする範囲を逸脱をする場合もずいぶんあろうかと思いますが、私はとにかく現職の内閣総理大臣が外遊——外遊というのはおかしいかもしれませんが、とにかく外国へ行つて、今までの終戦以来の各国の援助について謝意を表したり、あるいは各国の首脳部と意見の交換をしたりすることについては、何らおかしいことはないし、また政治情勢というものはいくらがんばつてもその通り行かない場合もあるし、やめたいと思つてもなかなかやめられない場合もあつて、これはだれの意思ということにはなかなかなりませんから、私は現職の総理大臣が外国に行つて首脳部と話をするということで十分であろうかと考えます。
  109. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 もしも帰つてからやめられるというならば、先方の首脳者もこれは一種のお礼参りであるというので、軽い意味で接待をして、重要な問題をそういう人と話をしてもしようがないというので軽く扱つて済むだろうと私は思うのであります。だが現職の総理大臣として帰つたらやるというかたい意思を持つて行かれる場合ならば向うもそのつもりで話し、相当つつ込んで実のある話もできるだろうと思うのでありますが、この点がわからないと外国の政府としても吉田総理の接待のしようがないだろうと思う。ことに現在の政局は非常な不安定であります。どうなるやらわからぬというような状態でありますから、その点がさらに重要だろうと思うのであります。現在行かれるならば、帰つたら当然やめるのだという意思表示をしてから行かれるのが私は当然だと思う。何となれば現在のような政局をあとにして行くことになつては外国としても話のしようがない。そこで吉田さんが帰つてもまたやるという固い決心をして行かれるものとすれば、当然行かれる前に日本の政局の安定を一応やり遂げてから行かれるということじやないと、チャーチル首相にしてもアイゼンハウアーにしても話のしようがないと私は思うのであります。そこで私としては、第一に外遊をもつと延ばされて政局の安定をしてから行かれるべきだと思うのでありますが、この点岡崎外相はどうお考えでありましようか。もしも安定し得る見込みがないとすれば、外遊から帰つて来たらやめるのだということを今日はつきり天下に声明してから行かれれば、外国としては吉田さんの待遇がやりよいと思う。こういうことが私は筋道であり、国際儀礼だと思うのでありますが、この二点についての外相の御答弁をお願いします。
  110. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 いろいろ御注意はありがとうございますが、私の承知しておるところでは吉田総理大臣が現在の形で行かれることについて、各国は待遇に戸惑つておるということはないと理解しております。喜んでこれを迎え、喜んで意見の交換をしたいと待つておられるようであります。従つて御親切な御注意ではありますが、私の考えでは今の状況で行かれて何ら外国が困ることはないと確信をいたしております。
  111. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 待遇については向うは困らぬかもしれぬが、吉田さんとつつ込んで話すことができるかできぬかという点について非常に問題がある。つまり外遊されてもはたして何らかの効果かあるかないかということについて非常に問題があるので、私は今の二つのコースをとられるのが当然だろうと思うのでありますが、しかしこれを論戦しても意見の相違でありますから、私はこのくらいで質問を打切ります。
  112. 上塚司

    上塚委員長 安藤国務大臣はせつかく御来席を得たのでありますが、やはり十三時半から外へ行かれなくちやならぬ用事があつたので、先ほど退席いたしました。六人ほど質問の通告がありますから、明日午前十時から出席していただきまして、安藤国務大臣に対する質問を許すことにいたします。  本日はこれをもつて散会いたします。    午後零時三十二分散会