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1954-09-14 第19回国会 衆議院 外務委員会 第58号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年九月十四日(火曜日)     午前十時十三分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 今村 忠助君 理事 富田 健治君    理事 福田 篤泰君 理事 野田 卯一君    理事 並木 芳雄君 理事 穗積 七郎君    理事 戸叶 里子君       北 れい吉君    福田 昌子君       細迫 兼光君    山花 秀雄君       中村 高一君    西尾 末廣君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  委員外出席者         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         外務事務官         (欧米局長)  武内 龍次君         外務事務官         (経済局長)  朝海浩一郎君         外務事務官         (経済局次長) 西山  昭君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (国際協力局         長)      湯川 盛夫君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 六月三日  委員河野密辞任につき、その補欠として山口  シヅエ君が議長指名委員に選任された。 同日  委員山口シヅエ辞任につき、その補欠として  河野密君が議長指名委員に選任された。 七月十二日  委員宮原幸三郎辞任につき、その補欠として  藤枝泉介君が議長指名委員に選任された。 同月十三日  委員藤枝泉介辞任につき、その補欠として宮  原幸三郎君が議長指名委員に選任された。 同月二十三日  委員宮原幸三郎辞任につき、その補欠として  山中貞則君が議長指名委員に選任された。 同月二十七日  委員並木芳雄辞任につき、その補欠として佐  藤芳男君が議長指名委員に選任された。 八月十一日  委員佐藤芳男辞任につき、その補欠として吉  川久衛君が議長指名委員に選任された。 同月十三日  委員吉川久衛辞任につき、その補欠として中  野四郎君が議長指名委員に選任された。 同月十七日  委員中野四郎辞任につき、その補欠として芦  田均君が議長指名委員に選任された。 同月二十三日  委員芦田均辞任につき、その補欠として三浦  一雄君が議長指名委員に選任された。 九月二日  委員山中貞則辞任につき、その補欠として池  田勇人君が議長指名委員に選任された。 同月九日  委員三浦一雄辞任につき、その補欠として並  木芳雄君が議長指名委員に選任された。 同日  委員並木芳雄辞任につき、その補欠として本  名武君が議長指名委員に選任された。 同月十日  委員福井勇辞任につき、その補欠として始関  伊平君が議長指名委員に選任された。 同月十三日  委員本名武辞任につき、その補欠として三木  武夫君が議長指名委員に選任された。 同日  委員三木武夫辞任につき、その補欠として並  木芳雄君が議長指名委員に選任された。 同月十四日  委員上林與市郎君及び加藤勘十君辞任につき、  その補欠として山花秀雄君及び中村高一君が議  長の指名委員会に選任された。 同日  並木芳雄君が理事補欠当選した。     ————————————— 六月三日  国際情勢に関する件  行政協定国連軍協定並びにM・S・A諸協定  の実施状況に関する件 の閉会中審査を本委員に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 上塚司

    上塚委員長 これより会議を開きます。  まず理事補欠選任についてお諮りいたします。理事並木芳雄君が去る七月二十七日委員辞任せられて、再び当委員に選任せられました。しかし理事が一名欠員となつております。この際その補欠選挙を行いたいと存じます。これは先例により度して委員長より指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 上塚司

    上塚委員長 御異議がなければ並木芳雄君を再び理事指名いたします。
  4. 上塚司

    上塚委員長 なおこの際御報告を申し上げ、御了承を得たいと存じます。  去る八月二十四日ブラジル大統領ジエトリオ・ヴアルガス氏逝去せられましたので、委員長衆議院外務委員長の名において弔電を発しましたところ、一作十二日新大統領ジヨアン・カフエ・フイリヨ氏より、ジエトリオ・ヴアルガス大統領の逝去に対し御丁重なる弔辞をかたじけのうし感謝にたえない旨の謝電が参りました。この段御報告を申し上げ、御了承をお願いいたしたいと思います。  本日は国際情勢等に関する件について外務当局質疑を行うことといたします。これより順次質疑を許します。
  5. 穗積七郎

    穗積委員 議事進行について。この休会中の外務委員会におきましては、伝えられております吉田総理外遊がもし確実であるといたしますならば、その前にぜひ本委員会出席されまして、外遊趣旨目的計画等について国民に向つて訴えられるのが当然だとわれわれ考えております。従つて先般の理事会におきまして吉田総理出席方委員長より交渉していただくよう強く要望して了承していただきましたが、その後の御交渉の経過をこの際明らかにしておいていただきたい。
  6. 上塚司

    上塚委員長 お答えいたします。吉田総理が本委員会出席をせられることについては、先日及び今日もそうですが、緒方総理に対して要請ををいたしておきました。それをぜひ実行せられたい旨を要請いたしておきました。しかし総理の御出席は非常に困難のようであります。もし困難であつたならば、緒方総理にかわつて出席されることを要請いたしておいた次第であります。
  7. 並木芳雄

    並木委員 吉田総理は十九国会を通じて外務委員会に一度も出席がなかつたのであります。しかし今までのところ、私どもも副総理、また所管岡崎外務大臣がいるのですから、それでどううやらがまんをして参りました。しかし今度は御自身外遊するということが伝えられており、その内容などについて私どもは全然知らないのであります。事外交に関しては所管岡崎大臣がやるべきものである建前をとつておる限りにおいては、私どもはそんなに無理な出席要求はいたしませんけれども岡崎さんをさしおいて、——岡崎さんはブラジルへ祝辞を述べに行くのだそうですが、そつちへ追いやつちやつて自分で出かけて行くという以上は、これは外務委員会としてはどうしても出発前に首相の出席を求めてその所信をただしたいということは当然だと思います。今日とか明日とか日は限りませんけれども、四日間外務委員会を用意したのですから、その間に必ず一日だけは出席する、それを委員長は約束してほしいと思うのです。
  8. 上塚司

    上塚委員長 並木君の御趣旨はさらに内閣にもお伝えするつもりでありますが、御出席の有無については私から確約するわけには参りません。
  9. 並木芳雄

    並木委員 もし出席がどうしてもなければ、私どもとしては外遊そのものについても民主主義を守る建前から、国会というものを擁護する建前から別途の決意を表明しなければならないものと考えております。その点はあらかじめ御了承おき願いたいと思います。  それからもう一言申し上げたいのは、委員長自身がこの閉会中とられた態度というものに対して私どもは満足ができないのであります。と申しますのは、六月に国会終つて、七月にはジユネーヴの会議がありまして、そうしてインドシナをめぐる休戦問題その他において、国際情勢に大きな変化をもたらしたという情勢下にあつて、私ども外務委員会をぜひ開いてもらいたい、そういう見解から八月の初め以来再三委員長外務委員会の招集を要請したのでありますけれども、これに対して委員長は州らの川等をいえてくれなかつた理事会すら聞いてくれなかつたのであります。ようやく七月、八月、九月、九月も半ばになつて今日外務委員会を開く段取りになつたのでありますけれども、これはまことに外務委員長として怠慢の至りであると私は思います。この点について委員長は何らか釈明する点があるならば、この際われわれに申開きをしいおいてもらいたいと思います。
  10. 上塚司

    上塚委員長 私が怠け者であるかどうかということについては、過去一箇年半の委員会の運営の行き方についてお考えくださつたらば御了承願い得ることと存じます。並木君の委員会開催してほしいという御要求は、八月の三日に出ておるそうでありますが、ちようど私は七月の末から八月の半ばごろまで、議会報告のために熊本の郷里に帰つてつたのでございます。従つて八月半ば過ぎに東京へ帰つた後に初めてその申入れを知つたのであります。しかし八月中は各委員とも多くは地方に帰つておられる。ことに暑い盛りでありますから九月早々に開きたい、こう考えておつたのであります。ところが九月の初めにおきましてはイギリスの労働党の人々が日本にやつて来るために、社会党の方々が九月の七日までは非常に忙しいので困るというようなことであつたために、九月の九日に理事会を開いたような次第であります。私は決して怠慢であつたとは考えておりません。しこうしてその理事会におきまして四日にわたる外務委員会開催を決定したような次第でありまして、決して委員会開催に不熱心であつたわけではないことを御了承願いたいと思います。
  11. 並木芳雄

    並木委員 もう一点お尋ねいたしますが、委員長は近くブラジルへ行かれるそうであります。それは外務委員会としては非常に重大なときであつて、私ども委員長が国を外にされるということに対してて賛成しがたいのであります。しかしどうしてもやむをを得ないということであるならば、どういう事情でどういうふうにして行かれるのか。ことに行政府公務員ナンバー・ワンであるところの岡崎外務大臣と同行して行くということは、どういう資格でどういう費用で行かれるのか、私はもし国会議員という立場で行かれるとするならば、国会行政府の対等であるべき建前をくずす委員長のやり方は、国会を軽視するということになるのではないかということを心配するのでありますが、どういう理由でどういう資格で、また費用などはどういうふうにして行くのですか。
  12. 上塚司

    上塚委員長 お答えいたします。ブラジル国サンパウロ市が建設せられてから今年は四百年であります。それでブラジル国では、その四百年を祝うために本年の一月一日から十二月までのお祭りを続けておるわけであります。わが日本ブラジルとは御案内のごとく移民問題その他で非常に関係の深いものでありまして、ことに移民問題等につきましては、現在日本国民として外国へ移民し得るのはブラジルだけであります。そういう密接なる関係を持つブラジルに対して、日本政府は四百年祭の慶祝親善使節を出すことに決定したのであります。そうしてこの国会を代表する一員として私を指名して来たのでありまして、たまたま岡崎外務大臣団長として向うに行かれる、これと同行することについては、岡崎外務大臣はわが自由党の出身の私どもの同僚あり、同僚の外務大臣外務委員長とが同行して行くことに何らさしつかえないと私は存ずるのであります。
  13. 並木芳雄

    並木委員 そうすると政府の職員として行くわけですから、費用日本政府の方から出るのですか。あわせて私は岡崎外務大臣だその点お伺いしたいのですが、今度の大臣ブラジル行きの使命日取り、人選のいきさつ、その他について委員長答弁があつた後われわれに知らしてもらいたいと思います。
  14. 上塚司

    上塚委員長 これは政府から派遣する親善使節でありますから、団長以下当然内閣からその辞令が出ると思います。金の出るところはどこから出るか、要するに政府から出ると私は存じております。
  15. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは今委員長が言われたように、政府慶祝意味使節であります。費用政府から出ます。予算はすでに可決されております。これは行政、立法の趣旨をもとるもののようにお話でありますが、こういう例はたくさんありまして、たとえば平和条約調印の際にも、改進党の苫米地氏は、日本政府全権として首席全権吉田総理のもとに出発されております。私ども先例もあり、一向おかしくないものと思います。
  16. 並木芳雄

    並木委員 今度のブラジル行きは慶祝だけですか。大統領も先般逝去されておりますし、その他岡崎外務大臣慶祝だけだと言いますと、委員長報告と多少そこに違いが出て来るのですけれども、そのほかにどういう使命を持つて行かれるのですか。日取りはどういうふうになつておりますか。
  17. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは慶祝使節であります。しかし慶祝使節をわざわざブラジルに出するいうのは、ブラジル日本との関係が非常に密接であり、将来もこの方面を開拓する必要炉あるから出かけるわけであります。日取りは、慶祝意味でありますから、ブラジルに大体六日くらい、つまりサンパウロに三日とすれば、リオデジャネイロに三日くらいを目標にしておりますが、そこでまだ最終的に決定しておりませんが、一応それで目的が達しますると、そのあとは各自それぞれ関係方面に、あるいは連絡のある方面に参りまして、慶祝を兼ねて将来の日本ブラジル関係とか、あるいはその他の南米諸国関係についても改善をするように努力をして来たいと考えております。
  18. 上塚司

    上塚委員長 それでは国際情勢に関する質問に移ります。福田篤泰君。
  19. 福田篤泰

    福田(篤)委員 外務大臣にお伺いしますが、まず今行われてれるビルマとの賠償問題であります。一部報ぜられておりますところによると、非常に話合いが進んで、ここ数日間のうちに妥結を見るのではないか、その値段の開きもきわめて縮まつて来た、こまかい点についても話合いが大分遊んで来たといわれておりますが、現在の進行状況、それか見通しについてはつきりと御答弁いただきたいと思います。
  20. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ビルマとの話合いは今福田君が申されたようにかなり進行を見ております。しかしまだ重要な点で意見は一致しているとは申されませんが、その幅が非常に狭くなつて来ておるということはつきり言えると思います。ビルマ団長は当初の予定を延ばしまして、実は本日まで出発を延期することになつてつたのですが、さらに話合いが進む見込みが立ちましたものですから、本日の出発をさらに延ばしまして、大体今週一ぱい滞在する、その間に話合いをつけて行きたいという気持のようであります。われわれの方もぜひビルマとの脚に話合いをつけたい、こう思つて、今いろいろ努力をいたしております。一番難点は、日本の一兆予算に伴う緊縮財政のために、例の百五十億の平和回復処理費、これに限度があります。支払い能力の点で、一般の経済力というものはかなり強いものであると外国では考えておるにもかかわらず、予算上の支払い能力というものにきわめて限度がある。この点でなかなか困難な点もありますので、日本としても納税者の負担になることですから、そう無制限にどうということはできませんが、できるだけ犠牲を払つてこの問題を解決したいと思つて努力しております。幸いにその額の問題等以外に、たとえば経済協力の問題であるとか、それに伴う各種の送金の関係であるとか、いろいろ問題があるわけですが、これについては大体相互の了解がつきつつあります。お話のように何とか数日中には解決に至るのじやないかという期待のもとに、ただいま努力をいたしております。しばらくお待ち願えますればあるいは円満に解決しましたというところに行くかもしれません。われわれの希望といたしましては、できれば外務委員会の開会中にそういう報告のできるようにしたいと考え努力をいたしております。
  21. 福田篤泰

    福田(篤)委員 この前のフイリピンの賠償問題がああいうこじれ方をした後でありますので、今お話通りビルマとの話合いは、何とか円満に解決されることを心からわれわれは希望いたします。大体お話では今週中に解決見通しがつくという御答弁でありますが、総額は大体大ざつぱに言つてどのくらいのお見込みでありますか。
  22. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは今一番交渉の焦点でありますので、額を明示することは先方に対してもちよつといかがかと思いますので、これはお許し願いたいのでありますが、先方考え方も、決して非常に途方もないものを要求しているわけではない。われわれもできる範囲のことをやろうとしておりますから、額も非常にせばまつております。数日中には解決に行くのじやないかと思います。
  23. 福田篤泰

    福田(篤)委員 この間ダレス氏が日本にきわめて短期間でありますがおられまして、大臣もお会いになつたのでありますが、その際において韓国の問題について何らかのアメリカの好意的なあつせん、これについてお話合いをなされたかどうか。
  24. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 韓国の問題につきましても言及をいたしたのでありますが、アメリカ側といたしましても、もちろん何とかしてすぐに会談再開に至りたいという考えで、あつせんを続けておる。また今後ともあつせんする意向もあるようであります。今のところはなかなか会談再開に至ることも、そう容易にはできないような情勢で、われわれも失望おりますが、アメリカ側も失望しております。しかしそう言つてもおられないから、何とかさらに話合いを続けて行くことになつております。
  25. 福田篤泰

    福田(篤)委員 竹島問題でありますが、御承知通り韓国側はすでに燈台の設置、いわゆる水路の告示の通知もかつてに出しまして、今や日本からの侵略を守ると称して、近く相当の数の警官隊を派遣するということを韓国は発表しております。これについて外務省は従来通り一片抗議だけを繰返すおつもりであるか。あるいは国際裁判というようなきわめて悠長な手続をやはり御考慮になつておられるか。それともこういう無法な相手方に対しては、強固な決意のもとに、たとえば報復手段をとるとか、はつきりとした国民感情相手方に明示するような強硬手段をとる措置を御用意されているかどうか。三点についてお伺いいたしたいと思います。
  26. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 竹島の問題はまことに遺憾でありまして、われわれもはなはだどうもこれは当を得ない措置であると考えておりますが、われわれの憲法の趣旨に基きましても、また従来の政府方針から申しましても、これは非常に不当なことで、国民が憤慨されるのも無理はない。また韓国側態度について何ら弁護すべきものはないのであります。しかしそうかと言つて暴に報いるに暴をもつてするということは、今のところ政府としては考えておりません。平和的手段によつてこの問題を解決するという方針にはかわりがありません。ただ一片抗議をもつて足りません状況になつて来ておりますから、さしあたります国際司法裁判所に提訴するというようなことをすべきではないかと思つて今研究しておりますが、お話のようにそれもはなはだ手ぬるい手段ではありますし、また韓国側が提訴に応じなければ裁判の問題にならないのであります。しかしわれわれも堂々たる主張はこれを国際的に当然認めらるべきものでありますから、国際司法裁判所に提訴する等の問題は考慮するつもりで考えております。またその間のいろいろな事情は、友好国の代表者等には十分説明をいたします。かりに韓国側が既成事実というような種類のものをねらつてああいうことをいたしているとしましても、関係自由主義諸国の間には、よくこれらの事情がわかつておるという事態に持つて行きたいと思つております。いずれにしましてもできるだけまず平和的手段をもつて日本の正しき主張を貫徹するということにあらゆる努力を傾けたい、こう考えております。
  27. 福田篤泰

    福田(篤)委員 御答弁によりますと、あくまで外交手段平和手段解決したいという御趣旨のようであります、今暴をもつて暴に報いないと言われますが、韓国側竹島不法侵入は、明らかにわが領土に対する侵略であると思いますから、これに対してそういうお考えを持つておられるかどうか。直接のわが領土に対する侵略である場合には、自衛隊としてどういう法的立場に置かれるか、外務省見解を承りたい。
  28. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは考えようによる問題でありまして、私も日本領土に対する不当な侵害であるとは考えておりますけれども竹島自体が人の住み得ない岩でありまして、従つて日本国民生命なり財産なりに危害を及ぼすという種類のものには直接にはならないわけであります。それから韓国側も文勢いろいろ引用しまして、これは昔から韓国側領土であるという主張をいたしております。従つて韓国側から言えば、あるいは韓国側でなくしても、見方によつてはこれは一種の国際紛争であるという議論も立たないことはないような情勢になつておりますので、従いましてわれわれとしてはこういう問題については、まずでき得る限りの手段を尽すという意味で、平和的手段解決をいたしたい、こう考えております。
  29. 福田篤泰

    福田(篤)委員 ただいまの外相の御答弁によりますと竹島無人島である。そういう立場から、日本領土権に対する侵害という感じを薄く持たれておるような印象を受けておりますが、もしそうだとすれば重大なる問題であります。無人島であろうが、あるいは市街地であろうが、日本領土である以上は、これは一歩たりとも外国からの侵略を許すことはないと思うのでありますが、この点についてもう一度、無人島ならばわが方の領土主張はそう無理にしてもしようがないというお考えであるかどうか、その点はつきりお伺いしたい。
  30. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私はそういう意味で申しておるのではなくて、人が住んでおらないものですから、日本国民生命財産に直接の危害は現実のところ及ぼしていないということを申しておるのであります。しかしながら領土であることは何らかわりがない、また領土を守るべきことは当然のことであります。従つてその点において領土を守るという趣旨においては、無人島であろうといかなる場所であろうと同様なことはお話通りであります。そこでいかなる方法で領土を守るかということにつきましては、われわれはさしあたりあらゆる平和的手段を尽してこの領土権を維持することにまず努力をいたすべきものであると考えております。
  31. 福田篤泰

    福田(篤)委員 いずれこの問題は木村保安庁長官その他直接防衛の責任に当つておられる方に答弁を求めますが、外務省として平和的に解決したいという気持はわかりますけれども、もう少し独立国としてのわれわれの領土に対する熱烈な民族感情をしつかり頭に入れて置いていただきたいことを特につけ加えておきます。  それから今御承知のように金門島におきまして中共と国府軍の間にいろいろ戦闘行為が行われておりますが、これに対する見通し、それからもしこれが拡大された場合において日本国府との関係はどうなるかを伺いたい。
  32. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 見通しということは、現在のところはどうなるか、なかなか困難であります。しかし今のところのいろいろの材料とつてみますと、どうもこれは地方的な戦闘行為であると思われる。つまり台湾攻略の第一歩とは私は考えておりません。また台湾の防御につきましては、アメリカ側としてもすでに声明を発しておりまして、台湾攻略ということになれば大問題になろうかと思いますが、金門島についてはアメリカ側の将兵が防禦に参加しておることもないようであります、たた日本側漁船等が一部影響をこうむる場合はあろうかと思います。これもやむを得ませんので、できるだけ危険のないような措置をとるべきであろうと考えておりますが、今のところは幸いに非常に沿岸に近い小区域にとどまつておりますから、日本の漁業に非常に不利であるというほどではありません。ただうつかりして漂流したり何かして近くへ行きますと被害を受けるというような点も考えられるので、十分注意はいたさなければならぬと考えております。
  33. 福田篤泰

    福田(篤)委員 最近国内で騒いだラストボロフ事件でありますが、本人は今たしかアメリカにいるはずであります。御承知通り日米間には犯罪人引渡し条約があつて、この条約の精神、また規定からいたしまして、日本国内犯罪を犯したラストボロフアメリカにいれば、その引渡しアメリカ要求していいと思うのであります。これについてどういうお考えを持つておられるか。
  34. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはここに条約局長がおりますので、私よりももつと正確に御説明できると思いますが、犯罪人引渡し条約の範疇には本件犯罪はまだラストボロフ自身については起訴等は行われておりませんが、犯罪人引渡し条約の適用範囲ではないという解釈であります。従つて引渡し要求はできないという解釈になつておりますが、詳しくは条約局長から御説明をいたします。
  35. 下田武三

    ○下田説明員 日米犯罪人引渡し条約によりますと、日米いずれかが相手国に対して犯罪人の引渡し要求し得るためには二つの要件がございます。第一は裁判、手続上の要件でありまして、犯罪者が告訴、告発を受けているか、もしくは有罪の判決を受けている者であるということが必要であります。ラストボロフはそのいずれにも該当いたしておりません。第二の要件は犯罪種類に関するもので、条約の三条によりますと、犯罪の名を列挙いたしまして、殺人でございますとか、強姦でございますとか、放火でございまとか、たくさんの犯罪をあげまして、その犯罪に該当するものだけが引渡し要求し得るということになつております。ラストボロフにつきましては何ら具体的犯罪の証拠もないわけでありまして、いわんや確定した犯罪があるわけではございませんので、この犯罪種類からしてどの要件にも該当いたしておらないわけであります。
  36. 福田篤泰

    福田(篤)委員 今条約局長の御説明で、私は明らかに法の盲点があると思います。東京都を中心として日本は今国際的なスパイの中心地であることは御承知通りであります、そういう列記したような犯罪でなければ、たといそれが日本の治安であるとかあるいは重大な安全問題について大きなスパイ行為がありましても、網にひつかからぬ。アメリカなりあるいは、その他の第三国がかつてにそれを処理するということになりますと、日本としましても重大な問題が起ると思うのでありますが、これについて政府は、いわば国家の安全を保つための有効な処置、はつきり言えば国際スパイ行為に対する取締りあるいはそれを対象とした的確な処置をお考えであるかどうか、これについてお伺いしたいと思います。
  37. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは私もどうも必要だと思うのでありますが、今の法律ではたとえば国家の重要な機密を他に漏らしたということがありとしましても、公務員でなければ、容易にこれは訴追する基礎法がないのであります。公務員の場合はただ公務員として職務上得た秘密を他に漏らしたということにおいて罰せられるのであります。その秘密が軽度のものであろうと、高度のものであろうと国家の重要な事項に関するものであろうと、大した区別がないということになつております。でありますからはなはだ不十分であろうと考えられるのであります。それで実は先般の国会におきましても、秘密保護法を制定する際に、防衛庁におきましては、日本自体の秘密も守るべきであるという考え方を持つてつたのでありますが、各党との間の話合いで、それも困難であつて、結局MSAに基く秘密だけを守るというようなことになつてしまつて、はなはだ不本意なのであります。これはどうも法律をつくりたいにも、政治情勢でできないものはやむを得ない、私自身もはなはだ不十分だと思つておりますが、これは何とか十分なる政治的環境ができた上でないとこれに対する手当はできないと考えております。
  38. 福田篤泰

    福田(篤)委員 この事件で不幸にして外務省から三人の容疑者を出した、今後外務省がこういうような容疑者を出さないようにするために、どういうふうなお考えを持つておるか、お伺いしたいと思います。
  39. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これにつきまして外務省関係者に——直接あるいは間接の場合もありますが、三名の者が容疑者になつておりますことは私も非常に恐縮しておりまして、まことに遺憾なことと考えております。それにつきましてどういう方法があるかいろいろ研究いたしましたが、結局ただいまのところ法律的には公務員注以外に何もない。従つて残る問題は道徳上の問題、規律上の問題あるいは制度上の問題ということになりまして、法律上の問題ではなくなります。先般私ども外務省の局課長全部を集めまして事態を説明して、外交問題についてはいろいろ国家的な機密もあるのでありますから、これが外部に漏れないようにすることは、従来から外務省員としては訓練されておるのでありますけれどもラストボロフ事件を見ると、必ずしも予期したような結果は出ていない。今後局長、課長において十分なる覚悟をもつて職務上の機密を保持するということ、及びこれについてはどういう手段をとつたらいいか、たとえば重要な文書は封筒に入れてまわすとか、あるいはタイプライターで写しをとる場合の措置等、こまかいことまで注意をいたさなければならないと思いますので、局課長に十分研究し具体策を練るように要請をいたしております。
  40. 福田篤泰

    福田(篤)委員 先般SEATOの調印を見たわけでありますが、あの規定を見ますと、御承知のように軍事的な処置とそれから経済的援助の問題をうたつております。軍事的な協力はもちろん日本の現在の憲法の制約からとうてい無理でありますが、しかし経済協力ないし援助の問題については、いわばアジア・マーシヤル・プラン的な立場から申しまして、日本が当然これに対して協力かあるいは話合いをして、何らかの形で結びついた方が賢明であろうと思うのでありますが、これについて外務省の御方針並びに今後のとるべき処置についてお伺いしたいと思います。
  41. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 締約国の約束は経済的措置と軍事的措置とが一つになりまして、アジア集団防衛条約ということになつております。この第三条は参加するが第二条は困るというような、分割しては私は条約上参加、不参加はきめられない問題であろうが、締約国相互間にできるだけ経済措置の促進をして、お互いに協力をするということをいたしておるのでありますが、何も経済的の協力なり技術援助なりというものはこの条約締約国のみがやることでありませんで、ほかにもエカフエの組織もあればコロンボ・プランもあればまたアメリカの例のポイント・フオアの計画もあります。われわれ自身も東南アジア諸国との経済協力ということは努力をいたしておるのであります。この条約に入らなければそういう目的は達成しないとは必ずしも考えておりませんし、この条約自身もこの経済協力はコロンボ・プランとかその他のものと並行し、かつ連携して行われるべきものだということでありますから、われわれとしてはこの条約自体には適用範囲から言いましても、また第二条の規定から言いましても、なかなか参加はむずかしいと思いますので、この条約に入らないでも、ほかの方法をもつて経済協力等は十分にやり得るし、またやるつもりで行くべきであろう、こう考えております。
  42. 福田篤泰

    福田(篤)委員 もちろんこのSEATOの参加のことについて私も外務大臣と同意見でありまして、現在の日本の条件から言つて参加し得ないと私は考えておる。問題は、具体的な経済援助の問題についてアジア・マーシャル・プラン的な立場から、たとい非参加国でありましても、具体的にいろいろな話合いがあつたのじやないか。あるいはまた近く考えられるのじやないかという点をお伺いしたわけでありますが、これについて何らかの御意見を承りたい。
  43. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは会議自体においてもいろいろ問題があつたようであります。初めはもつとはつきりといわゆるマーシャル・プラン的なものをここに打出そうという努力も行われたようでありますが、結局こんような非常にゼネラライズしたような条項になつております。いかなる援助をどういう方法でやるのだという具体的措置については今後話合いが行われるのであつて、今までのところはまだ決定はたしてないと私は了解しております。もしこういうアジア諸国の生活水準の向上ということに真に寄与するものでありますれば、われわれとしても喜んでこの部分には協力すべきだと考えておりますが、それは単に協力であつて、この条約に入る、入らぬという問題とは別問題であります。具体的の状況になりますれば、できる範囲での協力は惜しまないつもりでおりますが、まだはつきりしたところは申し上げられない段階だと考えております。
  44. 福田篤泰

    福田(篤)委員 先ほどの竹島とも関連するためにくどくお伺いしたわけでありますが、李ラインにおける漁区について、近くわが国の漁船が出漁する時期に入ります。この問題について従来通りのようななまぬるい態度外務省はとられるのか。あるいは平和的な解決であるとか、あるいはもんちやくを起したくないとかいう、きわめて消極的な態度で依然として臨まれるのか。あるいは今度こそは少くとも李ラインについて、わが国の正当なる漁業権を防衛するために有効な措置をとるという決意を持つておられるのか。この点重大でありますからはつきりとお伺いしたい。
  45. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 外務省といたしましても政府といたしましても、こういう問題について実力の行使もしくは武力による脅威を相手国に与えるつもりは持つておりません。あくまでも平和的手段に訴えるよりいたし方ないと考えております。またこれは憲法の第九条の趣旨からいつても当然なことだと思いますが、しかし片方においては日本の漁船を守らなければならぬという矛盾した二つの問題が出て来るわけであります。これについてはいかなる程度の保護を与えるか。これはすでに海上保安庁等で監視船を出して保護努力をしております。これをいかなる程度まで保護の措置を講ずるかということにつきましては、関係者と十分協議を行いたいと考えております。
  46. 福田篤泰

    福田(篤)委員 現在の憲法の第九条の精神が、わが国の正当な自衛権を無視したものでないことは、政府がMSAの論議を通じて幾たびか声明された通りであります。従つて第九条からいつて、われわれが他人から不法になぐられても泣寝入りすることとはとうてい解釈し得ないのでありまして、今度こそこの機会を逸せず、日本の正当なる漁業権の防衛のために、自衛の立場からいつても、はつきりと暴にはむしろ暴をもつてもこれを防ぐ。決して侵略ではありません。自己防衛でありますが、政府がそういう態度をとらなければ、日本の漁業者も国民政府を信用しなくなる、また重大なる外交問題の連続であります、平和的手段という気持はきわめて重大であり賛成ではありますが、相手方の出ようによつては、単なる平和手段というような手ぬるいことでは、日本の自衛権を守り抜くことはできないと思います、この点について外務当局の有効な、そして実際に基いた解決を強く要望いたします。  時間がありませんから最後に一点だけお伺いいたします、きようの閣議でたしか吉田総理外遊日取りを決定し、発表される予定と伺つておりますが、外務委員会を通じて吉田総理外遊について、日取り並びに、今他の委員からも御要求がありましたが、吉田総理外遊目的について、あなたが知つておられる点を御答弁いただきたい。
  47. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 きようの閣議は延期になりまして、閣議がありませんので自然この問題は討議されておりません。ただいまのところ大体本月の二十五日もしくは二十六日と出発の日をまず予定しまして、それに基いて計画を立てております。大体の順序はカナダに参つて、それからヨーロッパ、そしてアメリカにもどつて日本に帰るという筋道になつておりますが、まだ実は出発日取りも正確にきまつておりませんために、その先のたとえば船の予約等も決定をいたしておりません。これは最終的には閣議においてきめられることと考えておりますが、私の知つている範囲では、この日に出発すればこうなる、この日に出発すればこうなるという順序は一応整えて、ただあとはいつ出る、いつ帰るという、出る日と帰る日がはつきりきまれば、その中の日取りは適当に調整するような準備は整えております。そういう意味で、まだ決定はいたしておりません。
  48. 上塚司

    上塚委員長 次は並木芳雄君。
  49. 並木芳雄

    並木委員 なるべく福田委員と重複しないように質問をいたしたいと思います。  最初にMSAの援助の点についてお伺いいたしますが、この七月から始まる米国の本会計年度におけるMSA法によつて日本政府として期待し得る援助というものはどういうものでありますか、この点お調べがついていると思いますが……。
  50. 下田武三

    ○下田説明員 欧米局長が所用のため見えておりませんので、いずれ後日欧米局長から詳細御説明があると思いますが、私の承知しておりますところを簡単に申しますと、まだもとより日本向けに幾らというようなことは、将来の交渉できまることでございまして、これは率直に申しまして、全然見当がつきません。ただ一九五五年度のMS法の特徴といたしまして、昨年のMS法もすでにその傾向があつたのでございますが、ヨーロッパよりもアジア極東方面に重点を置くという点が大きな特徴になつております。従いまして軍事援助、技術援助等の予算費用もアジア極東向けに多く計上されておるように見受けられます。  そのほか日本として関心を持ちます点は、従来保安隊に事実上貸与されておりました装備を、正式に日本に譲渡し得るための規定が特に新MS法に設けられております。百八条という特別の規定を設けて、これを正式にわが国に譲渡することを可能ならしめております。  次に日本としてやはり関心を持つ点は、MSA協定の御審議のときに非常に問題になりました例の五百十一条の六条件の規定、この六条件の規定はやはりそのまま含まれておりますが、そのほかにECAの法律を初め、アメリカの対外援助に関する法律の要件を一つにまとめておりまして、これは実質的には援助を受ける国に対して条件を加重することには決してなつておりませんが、きわめて明確に一つの条文で規定したという点が一つの特徴と認められるのでございます。  もう一つの日本としての関心を持つ点は、余剰農産物の売却に関する条項をはつきりMS法の中に取入れまして、四百二条という条文にこのMSA援助と余剰農産物の売却との関係をはつきり掲げまして、そして余剰農産物の売却によつて米国が取得する見返りの現地の通貨を、MSAの軍事援助の品的に使用し得るという明確な法律的根拠を設けました点でございます。  いずれさらに詳細な説明が欧米局長からあると思いますが、とりあえずそれらの点を御説明いたしておきます。
  51. 並木芳雄

    並木委員 ただいまの局長の説明によつて大臣としては、MSA援助は大まかに言つて、前年度よりも今度の方が期待できる、援助が増加されるというふうにお感じになりませんか。私はちよつとそんなふうに感じたのですが、何億ドルとかいう具体的の数字は別としても、そういうふうに期待しておられるのではないかと思いますが、お尋ねいたします。
  52. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それは今までの保安隊に貸与せられました武器が、今度MSAでもつて譲渡せられるということになりますれば、その意味においての総額は非常にふえると思います。しかしそれは別にしまして、本年度受けました援助と同じような種類のものがふえるかふえないかということは、日本における自衛隊の増強等のいかんにかかわるものであつて、これがふえれば当然援助額もふえるということになろうと思います。まだその点が決定いたしませんので、いかんとも私どもとしてはまだ申し上げることができないと思います。
  53. 並木芳雄

    並木委員 首相外遊目的が親善にあるということは、政府からしばしば非公式に説明しておるのですが、そうでなく、実質的に外務大臣所管にかかることで外務大臣承知をしておる内容について承りたいのです。佐藤氏が随行するというのですが、佐藤氏が随行するなら、岡崎大臣が行くのがほんとうだろうと私は思う。ましてや佐藤氏は起訴されておる身の上にあるのですから、これは外国に及ぼす影響も考えなければならぬと思います。この点外務大臣が行くべきだと思うのですけれども、それにしても外務大臣としては所管事項について承知しておるはずでありますが、特に首相としては実質的にどういうことに重点を置いてやつて来るつもりであるか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  54. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 国際親善ということも、いわば外務大臣所管の一つにはなるわけであります。また私は、総理が行かれますれば、当然各国の首脳者と話をされますから、大局に基いた世界観、また新しい現在の情勢のもとにおける世界の方向等を見きわめられるということは当然あろうかと思つております。従つてそういう点もいわば外務大臣所管でもあり決しようが、これは政府全体としての大きな問題でありますから、総理が行かれてやられることが一番適当であると思つております。ただ私の所管しておるいろいろの渉外事項の懸案問題について、特にこの問題を解決してもらいたいとか、この問題を総理は自分で行つて話すつもりだというようなことは、ただいまのところ別段何もございません。
  55. 並木芳雄

    並木委員 SEATOの問題が出ましたが、私はまだSEATOの発表された新聞の条文を検討してみただけで、十分確信があるわけではございませんけれども、その第四条によりますと、自国の憲法に従つて行動するということがあつたと思います。「各締約国は、いずれかの締約国又は締約国が全員一致の合意によつて指定することがある国若しくは領域に対する条約地域における武力攻撃による侵略は、自国の平和及び安全保障を危くするものと認め、且つ、各自の憲法上の手続に従つて共通の危険に対処するために行動することに同意する。」こうあるのです。従つて日本の憲法ではいろいろ禁止されておるから、このSEATO機構に入ることができないということは言えないのじやないか。ちようどMSAの協定のときに、自国の憲法に従つて云々という項目があつたのと同じように、この四条に各自の憲法上の手続に従つて共通の危険に対処するための行動とあるならば、日本としては何ら心配なく、この機構に求められれば入つてよろしいし、また進んで日本政府からもこの機構に入るべきではないかというふうに私は考えるのですけれども、この点はいかがでしようか。
  56. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私も、これは一つの考え方であつて、憲法の手続に従つた処置をとるだけであるからさしつかえないという議論も立ち得ないことはないと思いますが、しかしそれは、いずれにしましても、ある地域に対する武力攻撃による侵略を対象としておるのであつて、それに対抗する措置でありますから、憲法上の手続には従いますけれども、この武力侵略に対抗する措置を共同してとるというのでありますから、普通常識的に考えれば、やはりある程度武力を用いることもあり得るという前提のもとに立つていると思います。従つて、ただちにこういう条項があるから入り得るという断定は、実際上なかなかできないのじやないかと思います。それからもう一つ言い残しましたが、このSEATOという言葉は東北アジアを除いておるわけでありまして、東南アジア、その区域は、日本はこのSEATOという観念の地域には入つて来ていない、こうも考えられるのでありますが、いずれにしましても、これが厳重に国連憲章のもとに立つておる地域的の安全保障でありますれば、少くとも日本としてもこれにモーラル・サポートを与うべき程度のことはよかろうといつて、この前参議院の外務委員会でも申したのでありますが、これに対してはいろいろ新聞で意見が出ておるようであります。しかしお話のように、ただ憲法上の手続ということだけで、またこの締約国が日本はそういう場合に何もできないのだということで、一体加入することを再ぶかどうかという問題も出て来るのでありまして、こういう点はよほど慎重に考慮をいたすべき問題であろうかと思つております。
  57. 並木芳雄

    並木委員 ただいまの答弁の中に、どうしても二つ確かめなければならぬ点がございます、それは、もしそれならば、これが東南アジア機構でなく東北アジア機構であるならば——、これはかりにSEATOに対してNEATOといわれておりますが、NEATOの機構であるならば、大臣としては、このSEATOよりもつと関心も強く、その加入を考えてみたい、こういう心境にあるというふうに答弁を受取りましたけれども、そう考えてよろしゆうございますか。
  58. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 NEATOなんというものはまだできておりませんし、それがどういう機構になるかわかりませんから、加入したいとかしたくないとかいうことは私として申していません。ただ私の申しておるのは、このSEATOと申すのは、日本は当然その区域に入つていないということだけを申したのであります。
  59. 並木芳雄

    並木委員 それじやSEATOの場合に限定いたしますが、この場合に、もし日本が加入を求められたといたします。現にフイリピンは難色があつたというふうに一時伝えられておりましたけれども、マグナイサイ大統領日本の参加を希望するという言明をしておりますし、ダレス長官も、この機構の調印を見たときに、同じく将来は日本の参加を希望するという言明をしております。私どもは重大なる関心を持たざるを得ないわけです、そこでお伺いしますが、もし憲法改正ということが行われて障害が除かれたならば、そのあかつきは大臣としてはこれに対して加入をしたいという気持をお持ちでございますか、どうですか。
  60. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 憲法改正の後の問題を今からどうも私は申すわけに行かないと思います。やはりそのときの政治情勢等も考慮しなければならぬ問題でありますから、ちよつとどうも憲法改正を前提としてどうするという議論は、この際差控えたいと思つておるのであります。今のところは加入を求められても私はちよつとすぐには応じられない、こう考えております。
  61. 並木芳雄

    並木委員 すぐには応じられないということは、海外派兵とか、そういう問題で憲法と関連して来るという意味ではないでしようか。その、すぐには応ぜられないという理由は具体的にどういう点でありますか。
  62. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 われわれは今これに入つておりませんし、日本の憲法の制限は御承知通りであります。それでできたものでありますから、今後どういうふうにこれが運用されるものであるか、これが平和維持に大いに役に立つということになりますか、インドなどはそれに対して多少疑いを打つているようでありますが、こういう点もさらに見きわめたいとも考えております。まあ、せつかくできたこの条約に対してけちつける意向はわれわれは、全然ありません。むしろモーラル・サポート程度のものはわれわれも考えるべきであるくらいに思つておりますが、いかんせん、日本の国情からいうといろいろの制限がありますから、いましばらく状況を見て考慮してもおそくない、こう考えております。
  63. 並木芳雄

    並木委員 念のためにお伺いするのでけれども、そのいろいろの制限というのを具体的にあげていただきたいと思います。
  64. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 まず第一には憲法上の制限でありますが、一体日本の現状におきまして、そういう他国の侵略行為——これには、貧者の一燈ということもありますから応分の措置でいいかもしれませんが、他国のそういう侵略等に際して有効なる援助の手を差延べられるだけの経済上の状況にあるかどうか、われわれはまず現状においては、国民の生活水準の向上、輸出の増進というような点に主力を注いでいるわけであります。法律の制限以外に、日本の国力の回復ということが、やはり重要な要件になると考えております。
  65. 並木芳雄

    並木委員 東南アジア機構のできた直接の原因は、ゼネヴアにおける会議アメリカ側に有利でなかつた、こういうことがいわれております。そこで私は外務大臣にお伺いしたいのですけれども、ゼネヴア会議の結果、インドシナの休戦が曲りなりにも成立をいたしましたが、これは平和へ向つての休戦であるというふうに大臣はおとりになつているかどうか、少くとも、今までの冷たい戦いというものが冷たい平和の方へ向いて来たというふうにおとりになつているのか、それとも大臣としては、今まで通り冷たい戦いというものはちつともかわつていないのだというふうに考えておられるのか、その点をお尋ねいたします。
  66. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は、冷たい戦いと冷たい平和という、非常にむずかしい言葉のあやについては、ちよつとどう言つてよいかわかりませんが、少くとも、実際の砲火を交える戦闘行為が終つたのでありますから、その点、何といつても、戦争の危険を誘発するような事態が一つなくなつたという点では非常にけつこうなことだと考えておりますが、冷たい戦争といいますか、冷たい新といいますか、要するに双方の陣営の根本的の対立はこれによつて解消していない、従つて大まかに言いますれば、地方的な小ぜり合いは終つたけれども、それ以上のことではない、こう考えております。
  67. 並木芳雄

    並木委員 そういたしますと、最近ソ連、中共からいろいろ今まで見られなかつた呼びかけというものがなされておりますが、それに対して大臣は、やはりこれは平和攻勢の一環であると簡単に片づけてしまわれるのかどうか、その点を伺いたい。具体的に申しますれば、たとえば中共というものの国連加盟の問題が起つて来るでしようし、中共政府の承認という問題も、日本にとつてはあまり遠くない現実の問題となつて来るのではないかと思います。その場合、日本と中華民国との間に結ばれております平和条約の交換公文に、「中華民国政府の支配下に現にあり、又は今後入るすべての領域に適用がある旨」ということが了解事項で入つておりますが、これが問題になつて来ると思います、当時この日舞条約を審議する場合に、大臣と私どもの間で非常に議論を闘わしたのでございまして、私はあまりこれをきゆうくつに考えておくと、将来ひつ込みがつかなくなる心配が起るのではないか、だから余韻を残して、場合によつて台湾における蒋介石政権、中国本土における毛沢東政権、この二つが併立し得るような含みを残しておいた方がよいのではないかという提案もしたのでございます。幸か不幸か、今日だんだんそういう事態に近づいて来るように思われるのでありますが、中共の承認、国連加盟の問題が現実化した場合に、岡崎大臣としてはどういう態度をもつてこれに臨まれる方針でありましようか、この際お尋ねしておきたいと思います。
  68. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 中共承認ということは別に事新しい問題ではなく、すでに承認しておる国がたくさんあるのであります。同時に承認していない国もたくさんあるわけであります。何もこれから世界中が相談して、みんなが一致して承認しようとか承認すまいということは起らない従つて各自国の考え方で承認するかしないかきめるだけのことだと思います。国連加入の問題につきましては、私はここ当分そういう問題は起らないと思つております。しかしこれは日本の入つていない国連でありますから、かりに加入の問題が趣つたところで、われわれがどうするというわけには参らないと思いますが、私どもはむしろ何らかの機会があれば、日本の国連加入ということを促進したいと思つておるわけであります。いずれにしましても、われわれが中共を承認するかというお問合せでありますならば、国民政府条約関係を結んでおる現在。そういうことは考えていない、こう申し上げるよりしかたがないのであります。
  69. 並木芳雄

    並木委員 現在は考えておらなくとも、ただいまの答弁によりますと、日華条約のいかんにかかわらず、また交換公文のいかんにかかわらず、日本政府としてこれを承認しようと思えばできる、こういう答弁つたと思いますが、その通りと了解してよろしゆうございますか。
  70. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それも技術的にはちよつと問題があろうかと思つております。というのは、中華民国国民政府は、現在において統治権は及ばないが、しかし中国全体に対する政府であるという態度をとつております。従つて技術的にもどうかと思いますが、いずれにしましても政府としてはただいまのところ、中共を承認するという考えは持つておりません。
  71. 並木芳雄

    並木委員 しかし大事な点ですからお尋ねしますが、将来の問題としては、私がかつて申し上げましたような中国の中に二つの政権というものが考えられる。それを日本政府として必要ならば承認するという場合が考えられる、これは概念の問題でありますが、こういうふうに考えてよろしゆうございますか。
  72. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は必ずしもそうは考えられないと思つております。
  73. 並木芳雄

    並木委員 それはどういうわけですか。
  74. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 国民政府条約を結びました理由は、国民政府が国連にも中華民国の代表機関として参加しておりまして、しかも重要な安全保障理事会にも入つておる。従いまして争う政権がありとしても、ただいまわれわれが条約を結びましたのは、中華民国における勢力関係は別として、法律的に見れば正統政府である、こう考え条約を結んだのであります。
  75. 並木芳雄

    並木委員 それはわかつているのですけれども、中共の方では台湾を解放してやる、こういう例の手を用いると言つております。台湾の方では、国民政府は大陸に反攻して行く、こう育つているのです。だからこれが激化して来ると、とどのつまりは正面衝突が起つて来るおそれがあるわけなのです。その場合に日本として、今の大臣のような建前を固執して行きますと、こういう事態に対して、のつぴきならない状態に追い込まれて来るのではないか、むしろその対立を激化して行く役割を果すようになつて行くのじやないかということを心配するわけです。ですから日華条約、交換公文があつても、情勢の変化によつて、将来毛沢東政権というものを、日本政府が承認してやることがあり得るのだ、それは可能である、こういうふうに考えてよいのじやありませんか。その場合に何も今承認している締約国である国民政府を抹殺するわけではないのですから、それはそれとして認めて、別途に一つの主権国ができるというふうに認めてやつたならば、そこに割合に穏便な解決の方途が見出されるのではないかと思うのです。それで私は聞いておるのですが、いかがですか。
  76. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私はどうもそれは中国を三つにわける方法で、実は中国の内政干渉にもひとしい問題になろうかと思つております。しかし並木君などのお説によりますと、われわれの地位もそう長くないようでありますから、並木外務大臣になりましたならば、十分な御考慮を願いたいと思います。
  77. 並木芳雄

    並木委員 それでは私が外務大臣なつたならば、その点を大いに推進して行きたいと思います。時間がもう幾らもありませんから、最後に同じような見解からお尋ねしたい。中共とソ連との間ですが、大臣は前に中共問題の解決の方がむずかしくて、それよりはまだソ連との間の方がやさしいのではないかという言明をされたと私記憶しております。それはおそらく日本と各国との平和条約第二十六条に基いて、ソ連との間に二国間の平和条約が結ばれる可能性が残つておる、その点に準拠しておるのではないかと思います。最近の平和攻勢の一環でありますかどうか、これは大臣にお尋ねしたいのですけれども、ソ連の方ではモロトフ外相などが、もし日本に用意があるならば、二国間で条約を結んでもよろしいという意思表示をしておる模様であります。これはもし先方がそういう意思表示をしておるならばなおさらのこと、かりにそうでなくとも、来年の四月には、もう平和条約にある三箇年の余裕の期限が切れてしまいますので、政府としてはこの際、ソ連がほんとうに真剣に言つておるのかどうか、それをサウンドする意味もありますから、こちらから何らかの方法で聞いてみたらいかがでしようか。ソ連に対して、犬の遠ぼえのように日本と国交を回復してもよいと言うけれども、それはほんとうなのかと聞いてやつたらいかがでしようか。三年前に平和条約調印のときに出されたあのソ連の条件というものは、当時われわれは問題にならないということで一蹴してしまつたわけです。だから今度本気にそういうことを言つているならば、前に提案した条件というものを修正して言つているのか、それとも従来の通りあの条件には変更がないのか、そういうことを日本政府から積極的に聞いてやるのも一つの方法ではないかと思うのです。そうしないで、こちらから何もやらないでおくと、もし大臣の言うこれは共産陣営の平和攻勢であるということがほんとうだとするならば、まんまと日本はこの平和攻勢にひかかつて行く。これは決して日本のためにならないと思うのです、従つて先方でそういう意思表示をしているのはいい機会ですから、大臣として、この際ただいま私が申しましたように、日ソがほんとうに国交回復ができるのかどうか、そういう道があるのかどうか、また今後そのためにどうして行くつもりであるか、決意のほどを披瀝していただきたい。
  78. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ソ連側としては、いろいろの機会にいろいろの機関を通じてこの種のことは言つておるのでありまして、私どもから見て別に目新しいこととは考えない。ただ、しいて目新しいと言えば、モロトフ外相の名前で新聞社の質問に答えたという点と、通商代表のようなものを交換してみたらどうかという点が二つ新しいだけであつて、他の点は、たとえば平和条約の問題にしましても、国交回復のことをうたいながら、何かアメリカの従属的立場とかなんとかという言葉を入れておるようでありまして、あまり新しいこととは考えておりません。そこで、モロトフ外相がこう言うから、それに乗つて何かやつてみるという方法もありましようし、向うは何も言わなくたつて、こつちからこちらの独自の考えだけで付か措置をとつてみようという場合もあり得るのであつて、何もモロトフ外相が何か言つたから、それにあわてて飛びつくかどうかということは、ただちにそれだけできめ得ないと思つております。しかしただいまこういう発表がありましたから、新聞の報道で明らかにはなりませんが、外務省においていろいろの角度から研究させております。まだ結論は出ていないのでありますが、とにかくこういう声明に対しては十分研究はいたしてみるべきものである、またこれが平和攻勢であろうとなかろうと、日本に利益のあることであるならば、それに乗つたつて一向さしつかえはないわけであります。しかし利益のないことなら、ばからしいことでありますから、十分研究をいたします。
  79. 上塚司

    上塚委員長 福田昌子君。
  80. 福田昌子

    福田(昌)委員 金門島の攻略問題で、せつかくインドネシアの戦争が片づいてやれやれと思つておりました私どもアジアの大衆に、また何らかの非常なそれぞれの心配を与えておりますが、この金門島の攻略事件というものは、これは国際的に見ました場合、支那の一つの国内問題でしようか、それとも国際問題として考えて行くべきでしようか。
  81. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは法律的に言えば、国内問題でありましよう。しかしやつぱりこれは将来むずかしい問題にならぬとも限りませんから、別に定義で、これは国際問題だ、これは国内問題だというようなことにはつきり区別はつかないだろうと思います。
  82. 福田昌子

    福田(昌)委員 私どももそのように考えておるのでございますが、それにもかかわらずアメリカの首脳部の間におきましては、金門島の攻略に対してはアメリカの第七艦隊は出さないとか出すとかいうような問題を取上げまして、第七艦隊はこれに不干渉であり、艦隊を出さないということをきめたというふうな記事が出ておつたのでございます、これは私どもとしては少し内政干渉に過ぎるのではないかという気がするのでございますが、大臣の御見解はいかがでございますか。
  83. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 アメリカの船を出さないというなら、別に内政干渉じやないように思つております。
  84. 福田昌子

    福田(昌)委員 結果的には内政干渉にならずに済みましたが、そういうことを現段階において問題にするということは、いささか行き過ぎだと思うのですが、その意味合いにおきまして、国際関係で内政干渉とは一体どういう範囲のものであるかということをこの際伺いたい。
  85. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはむずかしい試験問題で、私より条約局長からお答えした方がいいと思います。
  86. 下田武三

    ○下田説明員 国連憲章にも、御承知のように、第二条の第七項で、本質上いずれかの国の国内管轄権内にある事項に干渉する権能は国連といえども持たないという意味の規定があります。そこで本質上国内専管事項とは何であるかということが問題になつて参りすが、ただいま御提起になりました金門島の問題でございますが、これは従来の国際法上の観念だけでは割切れないのではないかと思うのでございます。先ほど来問題になつておりますSEATOの第四条の規定を見ますと、第四条の二項に初めて間接侵略、武力以外による攻撃ということを言つております。昔でございましたならば、一国内で二つの派がわかれて戦うということは、純然たる内政問題であつたでありましようが、今日間接侵略侵略手段として採用されております場合に、こういうSEATOのごとき国際条約でも取上げておるということは、すなわち純然たる内政事項でないというように、どうも国際法の見方がかわりつつあるのではないかと思うのでございます。そういう見地から申しますと、金門島と中共大陸との間の戦闘も、昔でありましたならば、純然たる内政問題と言い得たであろうと思いますが、それが間接侵略の一つの現われであるというような観点から見ますと、これはやはり純然たる内政事項とは、現代の国際通念からいつて言い切れないのではないかという疑いを私は持つております。しかしこれは、将来現実の国際事態と相まつて国際法理がどういうように進んで行くかということは、もう少し年月を経ないと決定的な結論は申せないと思います。少くともそういう疑念を持たざるを得ないという事実だけは私は申し上げ得ると思います。
  87. 福田昌子

    福田(昌)委員 三年前に台湾政府との平和条約を結びましたその当時の中国政府に対する考え方、また国際的な地位、そういうものと、今日中国の国際的に置かれている立場というものとを考えました場合、岡崎外務大臣とされては、台湾政府条約を結んだその当時のお見通しと大体一致しておられたどうか、御見解を伺いたいと思います。
  88. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私に御質問になれば、やはり見通しと一致しておるとお答えする以外に方法はない。
  89. 福田昌子

    福田(昌)委員 九月十一日でしたか、安保理事会で、今月初めにウラジオストック近海でアメリカの海軍機がソ連の戦闘機から撃墜された事件を提訴いたしておりました。アメリカ側の御説明によりますと、この海軍機は日米安全保障条約の義務を遂行する上において飛んでおつたのだという記事でございましたが、安全保障条約建前から、ソ連側が一応ソ連の領海だというような見解をとるような、そういうとこまろで飛ばなければならないような約束と申しますか、条約から生れて来る規定があるのでございましようかどうか。
  90. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 条約はもうガラス張りではつきりしておりまして、ごらんの通りであります。それから直接にはそういうことは別に出て来ておりません。
  91. 福田昌子

    福田(昌)委員 とすると、ソ連側からいいますと、ソ連の領海を侵した、何のためにそういうところまでアメリカの飛行機が飛んで行かなければならないかということを詰問いたしております。私どもも日米安全保障条約建前からそれほどの危険を冒してまでアメリカの飛行機に飛んでいただかなければならないという理由がよくわからない。それほど日本の近海に危険が迫つておるのかどうか、あるいは危険とまでは言わないまでも、そういう偵察を必要とする事態があるのかどうかということを具体的に御説明願いたい。
  92. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 領海は飛んでいかぬということはきまつておりますが、領海でなければ飛んでさしつかえないのであります。それは軍の方で訓練のために必要な場合もありましようし、偵察のために必要な場合もありましよう。いろいろなことがありましようが、要するに領海外は自由に飛べるのであります。問題は領海を飛んだか飛ばないかという争いになるのだと思います。
  93. 福田昌子

    福田(昌)委員 その領海の問題では、またアメリカ側とソ連とは見解を異にいたしておりましようし、日本人のわれわれがとやかくこの外務委員会の席上で申したつてしかたがないので直接の問題にはならないと思いますが、ただ私どもその日米安全保障条約建前からいたしますと、日本区域の安全保障という場合の、この日本区域という意味がよくわからないのでございますが、日本区域というのはどういう範囲をさすのかあらためて御説明いただきたいと思います。
  94. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは当時しばしば御説明したのでありますが、日本区域といいますのは、一つはたとえば当時は奄美大島は日本のはつきりした領域ではなかつたわけでありますが、今ははつきりした領域であります。つまり日本が主権を持つておるが、条約で一時主権を行つておらぬ土地は、いずれは日本の主権にもどるという意味で、日本区域という観念も使つておりますが、それ以外に、たとえば——そういうことはないでしようが、かりに日本に武力で侵略をして来た部隊があるという場合に、日本の領海に入るまでは、つまり三海里なら三海里の領海に入るまでは日本領土ではないのだから、何にも措置をしない。あるいは日本の領空に入るまでは何にも措置をしないということであつては、日本を守れない場合があります。目の前に大砲を持つた軍艦が来ても、あるいは爆弾を持つた飛行機が来ても、日本領土なり領空なりに入つて来なければ何にも措置をしないのだということでは、実際日本の守りはできませんので、常識上日本を守るに必要な範囲のことを日本区域と申したのであります。
  95. 福田昌子

    福田(昌)委員 竹島の問題でございますが、これは明らかに日本領土であり、日本区域であるというのでありますが、これに対しまして韓国が直接侵略に訴えております。この竹島の問題は当然日米安全保障条約の観点において取上げらるべき問題だと思うのでありますが、この点につきまして日米安全保障条約建前から見ました場合、アメリカ態度というものを、私どもはいささか了解に苦しむのであります。この点について政府当局は、安全保障条約建前からいたしましても、アメリカ側の意図というものをお確かめになり、その行動についてもう少し義務履行を迫る必要があると思うのでありますが、こういう交渉をなさつたことがあるかどうか伺いたい。
  96. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 日米安保障条約は、日本侵略する目的をもつて行動したものに対する措置考えておる。竹島の問題は繰返して申しますように、日本としてはもちろん領土権侵害ではありますけれども韓国側がその一部の竹島を除きまして日本国を侵略しようという意図のもとにやつておるとは考えておりません。要するにこの竹島という領土の争い問題になつておると考えております。従つて日米安全保障条約の問題にはならない、こう考えております。
  97. 福田昌子

    福田(昌)委員 私どもは鳥であろうと半島であろうと、やはり日本領土と言われたものに侵略行為がある場合には、それを守つてくれるのが安全保障条約であると思つてつたのでありますが、こういう小さな島であれば、いくら侵略されてもかまわないのだ、こういうふうに大臣の御見解は解釈されるのでございますが、小さい島であれば問題はないのだというふうに解釈してよろしいのでございますか。
  98. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それは失礼ながら非常にひねくれたお考えでありまして、私はそう申しておるのではないのであります。ただ日本侵略するのだということと、あの鳥に対する領土権の争いを持つておるということとは別問題であります。これは私は正当とは思いませんけれども韓国側はいろいろな文献を示して、昔からこれは韓国領土である、こう言つておるのであります。竹島を取つてさらに島根県に入つて来るとか、どこを侵略しようとか、そういう考えではないのでありますから、日本侵略しようとしておるのではない、こう私は思つております。
  99. 福田昌子

    福田(昌)委員 この文献上の領土権の問題ということになりますと私どもは調べておりませんが、韓国竹島もさることながら、壱岐、対馬も韓国領土であるというようなことを主張したことがありますが、そうういような観点から、壱岐、対馬に竹島と同じような状態が起つたといたしましても、これは領土に対する侵略ではないという御見解をおとりになるような心配があるのですが、そういう御態度をおとりになりますか。
  100. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 壱岐、対馬のごときはいかにしても日本領土であることは私は間違いないと思いますが、実際問題としてこういうところにまさかいかなる場合でも韓国の部隊が入つて来るとは私にはとうてい考えられません。従つてそういうことを仮定していろいろ申し上げるのはどうかと思います。さなきだに韓国との間には非常に友好的な関係が成立しておるとも思いませんので、これをさらに悪化すようなことは私は言いたくないのであります。私は壱岐、対馬等にそういうような事態が起ることは決してないと確信しておることを申し上げます。
  101. 福田昌子

    福田(昌)委員 私ども韓国といたずらに事を構えることを非常に警戒しておりますし、そういうことを絶対にしたくないという考え方においてはまつたく一致しておりますが、外務大臣大臣としての外交政策ということに対しましては、私どもそのとつておられる措置におきまして、非常な矛盾と毅然たる態度がないということにおいて、非常に遺憾の気持を持つております。結論的に大臣の御答弁から伺いますと、竹島領土権に対する問題においては、日本国側の領土として考えるには多小疑義があるということを、大臣自身がお認めになつておるというように感じられるのでございますが、そのように解釈してよろしいのでございますか。
  102. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それもはなはだひねくれたことでありまして、私は一言もそんなことは申したことはありません。繰返して申しますれば、韓国側ではいろいろな文献があつて、昔から韓国領土であると主張しておるが、それは何ら根拠のないことである、こういうことを申しておるのであります。
  103. 福田昌子

    福田(昌)委員 私どももすなおに解釈したいのでありますが、大臣の御答弁からそういう解釈が生れて来るのであります。竹島日本領土である上いうことを確信しておいでになれば、たとえば壱岐、対馬に韓国竹島と類似の行動をもつて起して参つたと仮定いたします場合において、とり得る処置というものは断固とれるはずであると思うのであります。そういう意味で、その他の問題もありますが、大臣がとつておられる処置について、竹島問題に関する限りわれわれとしては非常に不満足である。もう少し断固たる処置をおとりいただくことを要望いたします。  新聞には、竹島問題に関しまして、国際司法裁判所に提訴するということが出ておりました。はなはだまどろかしい措置だと思いましたが、それでもさつそくこの国際司法裁判所に提訴なさつたのであるかどうか、この点を伺いたいと思います。
  104. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 竹島につきましては、国際司法裁判所に提訴することをただいま研究中でありまして、これは日ならずして決定するつもりでおります。  なお私どもはあくまでも平和的手段によつて本問題を解決したいと思つておるのでありまして、この点でもし福田さんなり福田さんの属する党が、力をもつて争え、こうおつしやるならば、われわれとは少し見解が違うのであります。
  105. 福田昌子

    福田(昌)委員 私どもはいかなる場合においても、力をもつて争えということを主張した覚えはございませんし、自由党の力をもつて争うかもしれない対策に対してブレーキをかけておるのが、われわれの政党の政策であるということを御説明申し上げておきます。  次にお伺いいたしたいのは、中共及びソ連の残留者の引揚げの問題でございますが、その前にお伺いさせていただきたいのは、李健全女史が来月日本に来られるということがきまつたそうでございますが、その日程に関しましては、大体どういう日程であるか、お示しいただきたいと思います。
  106. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは日本赤十字社が他の団体に関係なく赤十字社自身で招待し、一切のプログラム等は赤十字社自身できめるということでありましたので、この招待を承認したのであります。従つて他のいかなる団体もこれに干渉しないと同様に、外務省もこれに干渉しない、従つてわれわれは、事務の方では知つておるかもしれませんが、その日程等は承知しておりません。
  107. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういたしますと、李徳全女史が日本に来朝されまして、日本に滞在されておいでになる間の日程というものは、ただいまの御答弁では、日赤だけのプランによるのか、日赤を中心とした他の二団体、三団体のプランによるのかはつきりいたしませんでしたので、重ねてこの点をお伺いしておきますが、その日赤を中心とした団体の計画によるのだ、外務省は関知しない、こういうことでございましようか。
  108. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私が李徳全女史の招待を認めましたのは、日赤だけがやるのであつて、他の二団体も他の幾団体も全然関係をしない、こういう了解のもとにやつております。
  109. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういたしますと、李徳全女史の日本国内における計画というものは、この日赤の御計画による、それが決定権を持つておるのだということだと解釈させていただけると思うのでございますが、そのように解釈してよろしいのでございましようか。
  110. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 その通りでありまして、外務省としてはこれが一切の政治的な利用をされないように、純然たる人道的な引揚げの問題に限る、こういう条件のもとに日赤にすべてをまかしております。
  111. 福田昌子

    福田(昌)委員 ところが私どももさような御見解かと思いまして、外務省は李徳全女史に入国の査証を与えるというだけにとどまるのかと思つておりましたら、その後事徳全女史の日本国内における滞在期間の行動ということに対しましてのプログラムに、いろいろと外務省がとやかく干渉しておられる。日本国民の要望に対しても、何らそれは思想的な関係のない優雅に対しましても、いろいろと外務省官がこれに干渉しておられるという事態があるのでございますが、今後一切そういう外務省の干渉は改めて、なさらない御意思があるかどうか、この点付いたい。
  112. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それは福田さんの誤解でありまして、外務省は一切干渉しておりません。
  113. 福田昌子

    福田(昌)委員 九月の六日だつたでしようか、国連で捕虜特別委員会がございましたが、それに日本側からこの引揚げの問題に関して代表者が参つておられるようでございますが、この引揚特別委員会にどういうことを要望なすつたのでございましようか。そして今後どういうことを政府御当局としては引揚げの問題に対してなさりたい、しようという、これまでとは違つた新しい方法をお持ちであるかどうか伺いたいと思います。
  114. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 捕虜特別委員会の今回の仕事は、主として従来の資料をまとめまして、また新たな資料を加えてこれを報告書に作成するということが主眼のようであります。従いまして公開の演説等は行わないように聞いております。そういう関係でありますから、今回は日本側からも引揚げの事務に従事しておりました者たちを差出して、いわゆる代表というような形をとらないでやつております。われわれの希望としては、捕虜特別委員会が今後も引続き存続して引揚げのために努力してもらうつもりでおりまして、これに関してはドイツ、イタリア等とも連絡して、国連に適当に要望をいたすつもりであります。
  115. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういたしますと中共、ソ連におります引揚げ希望者に対する政府の御処置というものは、従来と同じような処罰であつて、従来とつて来たところを一歩も出ないというように私ども感じとれるのでございますが、従来通りの政策の範囲内において引揚げ促進をなさるのかどうか、この点を伺いたい。
  116. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは従来も手を尽しておりますが、今後も一層強力にこれらの手を打ちたいと考えております。しかし外務省だけが全部を知つておるわけじやありませんから、さらに名案がありますれば、いつでも虚心坦懐に伺つて名案を採用いたします。
  117. 福田昌子

    福田(昌)委員 国民がみんな心配しておる問題でございますから、いろいろな名案があるかと思いますが、たとえば政府がおとりになつております中国の紅十字あるいはまたソ連赤十字等と、この問題に関して日本の赤十字を通して御交渉なさるというような従来の方法も当然必要であり、それを強化なさることを私ども国民として希望しておりますが、さらにもつと抜本的な交渉、この発展と成果を期待し得るものは、この両国に対する国交の調整であり、回復であると思うのであります。これに対しましては、先ほど並木委員からの御質問もございましたが、中部日本の編集部からの質問に対して、モロトフ外相の答弁も出ておりますが、日本政府はやはりある程度虚心坦懐にソ連との国交、中共との国交調整に対して積極的な態度をおとりになるという気持が、まず第一に必要だと思うのですが、そういう点に関しては従来と同じ御意思でああかどうか。どうも相かわらずの御意思に承つたのでありますが、そのように解釈してよろしゆうございますか。
  118. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 国交調整という問題になりますと、いろいろの観点から考慮しなければなりません。引揚げ促進のためには、なるほど国交調整は非常に役に立つでありましよう。そういう意味ではぜひやりたいと思いますが、しかし国交調整の問題は、引揚げ促進だけではないのでありまして、他にいろいろ関連する問題がありますから、十分な考慮を要する問題であります、これについては今までの考えにかわりはありません。
  119. 福田昌子

    福田(昌)委員 ダレス氏が短時間日本に御来朝になりまして、そのときいろいろな問題についてお話し合いになられたようでございます、その中でことに米国の極東政策というようなものについての詳しいお話があつたと思いますが、SEATOに対して調印されましたダレス氏の御意向であつたといしたしますれば、米国の極東政策の上から日本に要望された事項も多々あつたと思いますが、どういう事項があつたか、もしおさしつかえなければ伺つておきたいと思います。
  120. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ダレス氏がごく短時間日本に来られました。よく私などのことを向米一辺倒と言われるのでありますが、同じくSEATOの会議出席した、日本と非常に東亜において関係の深いパキスタンの外務大臣が、この間において日本に来られたのでありますが、パキスタンの外務大臣とは長く会談しました。その御質問が一向なくて、ダレスさんばかり御質問があるのは、どうも向米一辺倒はどつちの方にあるか、はなはだ疑問のように思いますが、ダレスさんとのお話は約一時間ばかり、ごく短時間であります。その中では一般的な意見の交換はありましたが、具体的な要望事項等は一つもありませんでした。
  121. 福田昌子

    福田(昌)委員 そのパキスタンの外務大臣お話は次にお伺いするつもりだつたのですが、その点を詳しく説明願いたいと思います。
  122. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 パキスタンとの間には貿易関係でも非常に密接なものがありますが、主としてこれは日本の輸入超過といいますか、綿花をよけい買うような状況になつております、これに対して日本の輸出貿易の増進ということが一つの大きな題目になつて、ただいまパキスタンとも交渉いたしております。その他、パキスタンとしましては、農業の技術または工業の技術等についても、日本にいろいろな点で援助といつてはおかしいですが、日本の技術導入についても考えておるようであります。ことに束パキスタンのダツカを中心とするジユートの工場とその他お茶の栽培ということについては、日本との貿易促進も非常に希望しておるようであります。またパキスタンとしては、コロンボ諸国の中の唯一のSEATO会議参加国でありまして、いわば非常に独立独歩の外交を行つております。パキスタンは従来から日本のガツト加入につきましても、エカフェの加入につきましてもその他あらゆる機会に日本の国際機関進出について惜しみなき援助を与えております。また日本のコロンボ会議参加についても、非常な賛意を表しておられます。日本としては特に友好的な関係にある国と思つて、これを非常に重要に考えております。
  123. 福田昌子

    福田(昌)委員 時間がないのにたいへん御迷惑をおかけして恐縮ですけれども、もう一点だけお尋ねいたします。あとは今度の機会にお願いしたいと思います。  ラストボロフ事件日本の外務官僚に三人ほど犠牲者が出たと出ておりましたが、この犠牲者の三人はどうして新聞に載るような容疑者としてあがつたのでございますか。これは日本の官憲自身がそういう疑惑をもつて調べておつて問題になつた人物でありますか。それともラストボロンがアメリカでしやべつたことによつて日本外務省にこういう連中がいるのだということからあげられた事件でございますか、その摘発になりました経過をお知らせ願いたいと思います。
  124. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは私の役割でありませんし、また現に逮捕されておる人でありますから、検察庁なり法務省なりでどの程度申し上げていいかということは判断しなければなりません。私が判断すべき問題ではないのでありますが、まあさしつかえないと思われることだけを申しますと、ラストボロフの供述に塞ぎまして、関係係官がアメリカに行つて取調べた結果、これらの三人の人に疑いがあるという結果になり、逮捕になつたものと了解しております。
  125. 福田昌子

    福田(昌)委員 私一人で時間をとると恐縮ですから、この点については保留さしていただきまして、後にお尋ねさしていただきます。
  126. 上塚司

    上塚委員長 穗積七郎君。
  127. 穗積七郎

    穗積委員 時間が来ましたから、申合せを尊重してあしたにまわします。
  128. 上塚司

    上塚委員長 戸叶里子君。
  129. 戸叶里子

    戸叶委員 今伺いましたところ、理事会の中合せで十二時半まで続けるという御意向でございましたので、十二時半までやらせていただきたいと思います。  私は旅券の問題について伺いたいのでありますが、先ごろ中共から両派の社会党に招待状が参りましたときに、岡崎外務大臣は旅券をなかなか下付しようとせられなかつたのでございますが、その理由は一体どこにあるか、伺いたいと思います。
  130. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私はこれは何べんも申したように、超党派的なものであれば非常に考えやすいが、ある党派の人だけということになりますと、どうも日本の国の利益に合わない、これは社会党であろうと自由党であろうと、同じでありまして、社会党だからいかぬという意味じやありませんが、一党一派に偏するということは日本の利益に合致せぬ、こう思いまして、渋つてつたのであります。
  131. 戸叶里子

    戸叶委員 ただいまの岡崎大臣お話を承つておりますと、むしろ私どもをして言わしむるならば、岡崎さんは党というものには忠実であるけれども、国というものに対しては少しも忠実でない、こういうふうにしか考えられないのでございます。右会党にはどうしても出せないけれども、超党派なら出せる、そういう理由をもつとはつきりとわかるように説明していただきたいと思います。
  132. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は党に忠実なのは、すなわち国に忠実なゆえんだと考えております。そこで社会党に出せないと言つてはおりません。自由党が自分だけで行きたいと言えば、やはり私はそれはおもしろくないと言つて、旅券を拒否したでありましよう。社会党だから悪い、こう申すのではありません。超党派的なら考えやすいと申すのは、前例があるのでありまして、先般議員団が超党派的な組織をもつて中共に出かけられたことがあります。われわれもやはり前例ということも重きを置くものでありまして、そういうことなら非常に考えやすい、こう申したのであります。
  133. 戸叶里子

    戸叶委員 そういうふうなりくつは私は成り立たないと思うのです、旅券法によつてそういうふうなことが一体どういうふうに説明されているか、それをまず伺いたいと思います。
  134. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 旅券法の第十三条の第五項品におきましては、「外務大臣において、著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由がある者」要するに私が認めるかどうかという問題になつて来るのでありまして、私はこれは国交のない国でありまして、しかもよく平和攻勢などといわれておる国でありますから、超党派的に行かれることが一番よろしいのであつて、そうでなければおもしろくない、こう考えておるのであります。
  135. 戸叶里子

    戸叶委員 社会党だけ行けば日本の利益、公安を害するということは、一体どういうことなんでしよう。具体的に御説明願いたい。
  136. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 だから繰返して申すように、社会党だからというのではない、自由党だけが行つてもやはりよろしくない、こう言つておるのであります。
  137. 戸叶里子

    戸叶委員 それはどういうわけですか。
  138. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 要するにこれは国交のない国でありますから、普通の場合には行かないのであります。国交がないのでありますから、普通は国民は往復しないのが建前であります。従つて特別の場合のみに往復の場合があるのであつて、たとえば李徳全女史が来るというようなこと、あるいは島津社長が向うへ行くとか、あるいは超党派的に議員団が向うへ出かけたとか、こういう特別な場合のみわれわれは考慮しておるのであります。そこでよく言う平和攻勢というようなこともありますから、一党一派の見方で中共の状況を伝えられることは、自由党であつてもこれは国民に誤解を与えるおそれがあるから、賛成できない。あちらのいいという面もあり、悪いという面もありましようが、これをいろいろの党派がいろいろの見地から見て来られるならば、それが調整されて正確な見方になろうかと考えております。
  139. 戸叶里子

    戸叶委員 私は岡崎外務大臣の御答弁を聞いておりまして、満足まできません。ただ何かしらりくつをこじつけようとしているだけにしか思われませんが、この問題にこだわつていると先に進みませんから、一応打切りまして、それではこの間から超党派ならば旅券を許すという態度に出て来られたようでありますが、いつごろ大体旅券を許されるのでしようか。
  140. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 超派党なら考慮しやすいということを、繰返して申しておるのであります。そこであとは各党の問題でありまして、政府としてはそれがどういうふうな形になつて来るか、それを見ておるのであります。
  141. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、各党で話合いで代表者がまとまりますと、すぐに旅券を交付なされるおつもりでしようか。
  142. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 できるだけ早く御要望に沿いたいと考えます。
  143. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは伺いますけれども、今後におきましても、またすでに問題になつておりますが、ソ連なり中共から、いろいろな文化人を招待するる、あるいは商売関係の人を招待するというふうなことを申し入れられて来ておりますが、そういう人たちに対しましてはどういう態度をおとりになるか、それを承りたいと思います。
  144. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは原則的には、旧交のない国には国民が往復しないという原則であります。それの例外としてどういう場合にどうするかということは、その事態を見まして、個々の事例によつてきめたいと考えます。
  145. 戸叶里子

    戸叶委員 それではこの間日本に文化使節の招待状が来ておりますが、それに対しまして岡崎さんはどうなさるでしようか。
  146. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは私の方には何もまだ連絡がありませんので、念のため新聞に出ました翌日文部大臣に聞いてみましたが、文部大臣もまだ知らないということであります。従いましてまだ知りませんが、早晩何か申入れ、説明等があるものと考えております。その説明によつて今後考えて行きたいと思つております。
  147. 戸叶里子

    戸叶委員 それによつて交付なさるのですか、なさらないのですか。
  148. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 説明を聞いてから考えます。
  149. 戸叶里子

    戸叶委員 これからも私はこういう例がたびたびあると思うのですが、その都度岡崎さんの考え方で、これはどうもやりたくない、あるいはこれならやつてもいいだろうというような考え方でおやりになるということは非常に危険だと思うのですが、もつと公平を期するというような何らかの方法をお考えになるおつもりはないかどうか、お伺いいたします。
  150. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私も自分一人が責められるのはいやでありますから、何か公平な機関でもつてこれを協議決定するということにいたしたいとも考えておりますが、これは法律を要することでありますから、どうしますか、まだ研究中でありますが、私だけが悪者になつているのはどうもちよつとかなわないような気がいたします。
  151. 戸叶里子

    戸叶委員 どうも岡崎さんの御答弁を聞いておりますと、私どもは納得のできないことだらけで、そして御自分だけで自分だけ悪者になるのはいやだとおつしやりながら悪い政治をやつているとしか私どもには考えられないのです。何か中共なりソ連に対して、日本の方からわざわざ一つのカーテンをかけてしまうというようなことをしないで、もつと堂々とだれにでも見せてやるというような、おおらかな気持にならないと、かえつて私は国民感情というものが岡崎さんに対してさらに悪くなりますし、あるいはまたみんなが、伺かそこにアメリカに対する遠慮があるのではないかというようなことまで考えて、アメリカにまで迷惑をかけるというようなことになると思うのですが、その点をよくお考えになつて、そしてもつと自由な形でそういう招待に応じられるようなふうに心を開いていただきたいと思いますが、その点はいかがでございますか。
  152. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私自身はもうかなり評判も悪いようでありますから、この上悪くなるかどうかわかりませんから、それほど驚きませんが、お話の点は十分考慮してみたいと思います。
  153. 戸叶里子

    戸叶委員 先ほどからSEATOの問題が大分出ておりましたが、それにつきまして私も二、三点伺いたいと思います。このSEATOの問題は、十九国会のときに私どもがMSAの審議を終つたころからそろそろアメリカで話が出ていたようでございましたが、それに対して外務委員会ではつきりその問題を伺いましたときにも、岡崎さんはそういうものに対しては関知しないというふうな非常に消極的であつたように思います。ところが最近に至りまして、これはモーラル・サポートを与えるというようなことを言われましたが、これは消極的な態度から一歩進んだように思いますが、その大きな理由は何であるかを承りたい。
  154. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 参議院でも社会党の委員から同じような御質問がありましたので、念のため速記録を調べてみましたが、私はやはりこう申しておりました。この機構はまだはつきりできていないからわからないが、国連憲章のもとにおける地域的安全保障条約のようなもののように認められる、はたしてしからばこれはけつこうなことである、ただ日本は憲法上あるいは経済上の制限があつてこれに加入はできないと思う。思うが、それ自体はけつこうなことである、こう私は思いますと答弁をいたしておりまして、今のこととあまりかわりがありません。念のため速記録をひとつお調べ願いたいと思います。
  155. 戸叶里子

    戸叶委員 ダレスさんが日本に来られて日本に対して何かSEATOへの準加盟国としたい、日本が加盟国となることを望むというようなことを言われたと聞いておりますが、はたしてそうであるかどうか、そうであるとすればこの準加盟国という意味と、それからモーラル・サポートという意味との関係はどうであるか、伺いたいと思います。
  156. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今ダレスさんが準加盟国となるように要望したということを聞かれたとおつしやいましたが、それは流言飛語であります。そういうことはございません。先ほど福田委員にお答えしたように、要望事項は一つもありませんでした。
  157. 戸叶里子

    戸叶委員 それが私にはわからないのですが、モーラル・サポートというのは一体どういう程度のことを言われるのでしようか。
  158. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 まあ平たく言えば、けつこうなことであるといつて遠くの方から声援をするということになります。
  159. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと今度SEATOの調印ということによつて、それに参加した国と、これに参加しなかつたコロンボ会議の四箇国、それから韓国台湾——日本はどこへ入るか知りませんが、とにかくそういうふうにわかれたと思いますが、そうなりますと、アジアの状態を平和からむしろ非常に遠ざかるような三つのブロックにわけるような形になつたとしか思えないのですけれども、それに対してその一つにモーラル・サポートを与える、つまり遠くの方から、たいへんいいことだというような声援を送ることになりますと、このSEATOに対して非常に批判的であるアジアの、しかも大きな国々の日本に対する見方というものが、友好関係から非常に遠ざかつて行くように考えられますが、その点に対してはどうお考えになりますか。
  160. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは各国それぞれ考え方があるのでありまして、アジアの大国が賛成しないからわれわれもそれに追随しろということもおかしいのであります。われわれはわれわれの考えで適当なことを言うべきであろうと思つております。そこでSEATOの考え方は、今は入つておちぬにしても、よその国もだんだん理解を深めてこれに入つてもらうようにするつもりであるようであります。アジアを幾つかのブロックにわけようというような考えでやつておるのではないと思います。従つてその点はそう懸念にも及ばないし、またある国が反対しておるのに日本が賛成しておるということは、国交に大いに関係があるかというと、私はそうも思つておりません。やはり国はそれぞれ国としての考えがあるわけでありますから、それにもかかわらず話合いは幾らでもできるし、友好関係の維持はできると考えております。
  161. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、そのねらいは、各国にこのSEATOに対する理解を深めてだんだんに入つてもらうようにするというふうにおつしやいましたが、そうであるとするならば、この間ダレスさんがいらつしやいましたときにも、日本に対しても相当理解を深めてもらつて将来は参加してもらいたいというふうな意をほのめかされたと思います。そこで結局準加盟国になつてもらいたいというようなことになつたのだと思いまして、これは決して流言飛語ではないと思うのでありますが、その点のことを承りたいと思います。
  162. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そういう話は全然ありません。
  163. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、ダレスさんがSEATOに対して話されたことはどういうことだつたのでしようか。
  164. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 SEATO成立に至る経緯、会議の中の模様、アメリカのこれに対する考え方というようなことを育つておりましたが、アメリカ考え方としては、SEATOは純然たる平等の立場において締結した条約であつて、いやしくも西欧と東亜といいますか、何らか植民地的の色が残つているような条約とは全然違う、まつたく平等の立場でお互いに胸襟を開いて話合いをしたのだ、またアメリカとしてはまつたく平等な立場で各国と対し、条約を結んだ、こういう点を非常に明らかにされております。
  165. 戸叶里子

    戸叶委員 古田さんがアメリカへ行かれたときにSEATOに対して、モーラル・サポートよりも、どういう形か知りませんが、もう一歩積極的に出ざるを得なくなるというようなことはないでしようか。
  166. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 先ほども申しましたように、総理アメリカ等に行かれますと、おそらく大局から見た世界情勢の観察、これに基く日本の将来の行くべき道というようなことは考慮されるでありましようけれども、具体的な問題について話合いをされるとは今のところ想像しておりません。またこういう問題については、もうすでに日本態度はきまつておるのでありますから、それ以上のことはないと信じております。
  167. 戸叶里子

    戸叶委員 先ほど中共承認の問題が出ましたし、この間の自由党の外交政策を拝見しましても、アメリカの方へさらに一段と友好的な方向に行つて、中共は承認しないというようなことが出ておりましたが、先ほど並木さんの質問の中でも、中共を承認するのは各国のかつてであるというふうに言われておりますが、そういうふうに外務大臣がおつしやいまして、なぜ中共を承認しないかという具体的な説明を私は聞き落したように思いますので、中共を承認されないその的確な理由を承りたいと思います。私どもはむしろ何かアメリカに気がねをして、承認しないのじやないか、そうであるとするならば、イギリスのように毅然たる態度をもつて承認したらいいのではないかと思いますが、その点を伺いたい。  それから時間の関係でもう一つ伺いたいのですが、先ほどソ連のモロトフ外相の声明に対して、外務省を通してソ連との国交調整のことも考えているという御発言でございましたが、もしも中共からもそういうふうな考え方の意思表示があつた場合に、岡崎外務大臣はどういう態度をおとりになるか、この二点を承りたいと思います。
  168. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 中共を承認している国もたくさんありますが、承認していない国もたくさんあります。これらがみなアメリカの島忠をうかがつて承認してないのだとは私は思つておりません。日本も同様であります。ただ中共の問題につきましては、ただいま引揚げも行われるところでありまして、いろいろこれをつつ込んで話をいたしまして両国民感情を不必要にいらだたせるようなことは、私はしたくないと思つております。主たる理由は、やはり依然として国連の侵略者という決議は消えておりません。そういう点も考慮しなければならぬかと考えております。  モロトフ外相の声明については、私が申したのは、この内容とそしてそのいかなる意味を持つかということを外務当局に研究さしておるということであつて、国交調整を考えているとは申しておらないのであります。これは速記録におそらく明らかになつていると思います。  ただいま、どういう意味であるかということを研究さしておる、その程度にとどまつております。
  169. 戸叶里子

    戸叶委員 三番目の質問に対してお答えがございませんでしたが、中共からのそういうふうな申出に対してはどういうふうにお考えですか。
  170. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 こういり点については、なるべく私は、ただいま引揚げの最中でもあり、詳しいことは言いたくないのでありますが、先ほどの国連の決議がまだ取消されておらぬという点から御推察を願いたいと思います。
  171. 戸叶里子

    戸叶委員 少し時間がありますので、中村福二氏に譲りたいと思います。
  172. 上塚司

  173. 中村高一

    中村(高)委員 昨日から駐留軍の労務者の争議が起つておりまして、昨日ときよう、全国的に争議をやつておるはずでありますが、昨日の報告を調べてみますと、全国で十二万七千人が参加をいたしまして、参加をしないところは山口県の岩国の一部と鳥取県の美保の一部だけでありまして、全部これに参加をいたしておりますが、この争議について外務省に何か報告が来ておるはずでありますが、どんなふうな報告が来ておりますか。一応御報告を願いたいと思います。
  174. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私はまた争議の報告は見ておりませんが、おそらく来ておることは来ておると思います。しかしこれは主として特別調達庁の関連事項であつて外務省としては全般に、できるだけこういう争議のないように、合同委員公等を通じて双方の話合いを進めるように努力はいたしております。あるいはもう来ていると思いますが、まだ私は争議の実情については見ておりません。
  175. 中村高一

    中村(高)委員 それはとにかく全国的に米軍の基地で——私もきのう一部見て参りましたが、至るところの基地の正門でああいう争議をやつておるのでありますが、いやしくも外務大臣ともあろうものが、全国の基地で一斉にストライキが起きておるのにその報告も見ておらぬというのは、これはそれほどあなたが労務行政に対してもきわめて不熱心でありまして、そういう点についても、労働者は日本の外務者が腰抜けだと憤慨しておるのでありますが、もう報告もろくに聞いておらぬという態度を見ても、外務省がこの問題に対していかに不熱心であるかということがわかるのであります。そうすると、アメリカから要請があつたものだと思うのでありますが、今度近いうちに全国的に二万五千人の整理があるということがほとんど既定の事実のようでありますが、順次こういうふうに解雇の問題が起きて来ますと、大きな労働問題にもなりますし、その退職金の問題についても非常な問題になつて来ると思うのであります。退職金の要求が主として起つて今度の争議になつておるのであります。むろん解雇に反対でもありましようが、国際的にいろいろの関係があつて解雇せられることについては、これはどうも必ずしも反対のできないようないろいろの事情もあるのであります。しかし、解雇手当については、これは当然政府アメリカに対して要求をして、問題を解決せなければならぬ問題であると思うのでありますが、その解雇手当についても今のところではあまり報告を受けておらぬようであります、基本契約についてはできておりながら、細目の協定ができておらぬというようなことも一つの欠陥でありますけれども、一体この解雇手当の問題について、今後外務大臣アメリカに対してどういう折衝をする腹構えでありますか。そのぐらいのことはあなたの腹でお答えができると存じますから、お答えを願います。
  176. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 政府の組織はおのおの分担事項があります。外務大臣政府のあらゆることをやるのではありません。労働大臣が労務関係の主管大臣であります。そうして労働大臣は同時に特別調達庁長官を指揮しております。従つて私が何でもしなければならぬとか、私が報告を受けなければ怠慢であるとかそういうことは見当違いと私は考えます、しかしながらわれわれも政府の一員として、こういう問題が起ることについては極力防止しなければならぬと思つておりまして、合同委員会等、適当な機関を通じての調整は努力をいたしております。なお駐留軍の日本に駐在することについては、社会党の諸君の反対でありますから、駐留軍が引揚げる、従つて解雇されるということについては、これはどうもやむを得ないことだと思います。これはだんだん引揚げてしまうので、これはだんだん人が減ります。それであとは解雇手当等の問題だと思いますが、政府としてはできるだけこれは公務員並に努力をするつもりでおります。
  177. 中村高一

    中村(高)委員 引揚げること、むろんわれわれは賛成でありますけれども、そのことについてはいろいろのむずかしい問題があるから、われわれは引揚げ自体について解雇の伴うというようなことにやむを得ないことだと思ううのでありますが、私が外務大臣に聞いておりますのは、その際における退職金というようなものは、あなた方がアメリカに折衝してとつてやることが、日本の労働者に対する当然の責務だ。これは労働大臣ばかりがやる仕事でも何でもないのであつて、現にあなたの方の調達庁で折衝をしておるのであります。あなたは自分が報告を受けておらぬものですから、受けてないことを合理化しようと思つて、何でもかんでも知つておるわけのものじやないというようなことを言つておるが、私は必ずしも何でもかんでも報告を聞かなければならぬとは言つていない。これからもそういう問題に対しては、日本の労働者のためにアメリカに対して強硬な態度で臨んでくれよということを言つておるのでありますから、希望だけを申し上げて私の質問をこれで終ります。
  178. 上塚司

    上塚委員長 明日引続き外務当局、防衛当局に質疑を行うことといたします。   本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十一分散会