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1954-05-29 第19回国会 衆議院 外務委員会 第56号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月二十九日(土曜日)     午前十時五十九分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 富田 健治君 理事 福田 篤泰君    理事 野田 卯一君 理事 並木 芳雄君    理事 穗積 七郎君 理事 戸叶 里子君       宮原幸三郎君    須磨彌吉郎君       上林與市郎君    細迫 兼光君       加藤 勘十君    河野  密君  出席政府委員         外務政務次官  小滝  彬君         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         食糧庁長官   前谷 重夫君  委員外出席者         農林事務官         (食糧庁総務部         検査課長)   松岡寅治郎君         農 林 技 官         (食糧庁業務第         二部長)    桑原 信雄君         農 林 技 官         (食糧庁業務第         二部輸入業務課         長)      長尾  正君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 五月二十七日  委員宮原幸三郎辞任につき、その補欠として  坊秀男君が議長指名委員に選任された。 同月二十九日  委員坊秀男辞任につき、その補欠として宮原  幸三郎君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  外交に関する件     ―――――――――――――
  2. 上塚司

    上塚委員長 これより会議を開きます。  本日は外交に関する件について政府当局に質疑を行うことといたします。
  3. 戸叶里子

    ○戸叶委員 議事進行について。会期ももう終り少くなりました。この前艦艇貸与協定審議中におきまして、それに関連して吉田総理大臣に対して、いろいろ国政治担当者としての着任ある立場からの質問を、この委員会としてしたいという申入れに対しまして、委員長も入られました理事会におきまして、与党理事方々政治的責任においても、吉田さんをこの委員会に呼んで来るということをはつきり明言されまして、そうして理事会決定事項として書かれてあるのは委員岳承知通りであります。そのときに私どもは、重大な艦艇貸与協定審議中でありましたので、一体そんなことを言われて政治的責任をとるということはどういうことかと申し上げたのですが、それはもう政治的責任を必ずとる、議員をやめてもかまわない、やあても吉田さんは連れて来るというようなことをはつきりおつしやつたことは、理事会での決定事項として書かれ、記録にとどめてあるところと思います。そこで一体その交渉の結果がどうなつたか。きようもしいらつしやらないとすると、あと月曜日しかございませんので、月曜日の午前中に出席されるのか、午後に出席されるのか、私どもといたしましても、一応予定を立てる必要もございますので、はつきりとした御返事を伺つてからこの委員会を始めていただきたいと思います。
  4. 上塚司

    上塚委員長 ただいまの戸叶君の御質問に対してお答えをいたします。理事会決定は、総理大臣出席を極力要請して(「必ずだ」と呼ぶ者あり)もらいたいということであつたので、委員長は誠意をもつて、これに尽力をいたしたのです。緒方総理にも再度伺いまして、委員会の要求の模様をお伝えいたし、ぜひこの際出席をせられるようにあつせんを願いたい旨を申し出たのでございますが、緒方総理の方ではできるだけ努力はするけれども、非常にむずかしいだろうということで、今日も要求してみましたが、今日は出席困難であるということでありました。従つて他政府委員に対して御質問をお願いいたしたいと思います。
  5. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ただいまの委員長お話では、極力吉田さんの出席を求めるという理事会申合せであつたというようなお話でございましたが、そうではございません。必ず吉田さんを連れて来る。私たち政治的責任においても連れて来るという与党委員の強い発言がございました。私はあなた方の首をもらつてもしようがないし、それからあなた方がおやめになつてもしかたがないし、そんなことが決定されるよりも、はつきりいつ吉田さんがいらつしやるかということがきめられないならば、私どもとしては了承できないと申し上げたのですけれども、幾たびか私たちを信用してくれというお言葉でございましたので、一応あのときにはお譲りいたしました。そのお言葉を私どもは信用いたしましたから、今日までいつの日にか吉田さんにはつきりいろいろなことを伺う機会があるというふうに、確信を持つてこの委員会に御協力して来たはずでございます。そういうふうな立場から見ましても、またこの理事会の権威ということから考えてみましても、そういうことがやたらにかけひきとして使われて、うやむやにされるということは、はなはだ今後においての委員会審議上許すべからざることだと思いますので、その点をはつきりさせていただかないと困ると思います。  それからもう一点は、委員長の今の御答弁では緒方総理にもいろいろ努力したが、きようもお願いしたけれども、きようは出られぬというお話でございました。それでは最後の月曜日にいらつしやるとかなんとかいう確答を得てから、この委員会を始められることを、私は議事進行として申し入れたいと思います。
  6. 穗積七郎

    穗積委員 今の問題で関連して一言申し上げたいと思います。この間は、努力することを約束したのではなく、連れて来るという結果を約束したのです。もしそれができなければ政治的生命をかける、それは一体どういうことだ、脱党してもやるというのが自由党理事諸君のお言葉でした。あなたよりむしろ自由党理事福田君初めの発言でございましたので、それをわれわれは信用したのです。だから公党の理事が、われわれ野党といえども理事に対して約束されましたことを実行してもらいたいと思います。どつちでもけつこうです。来なければ来ないでその理由を伺いたい。理事諸君が脱党されてもけつこうです。どつちですか、はつきりしていただきたい。努力の途中を聞いたわけでなく、結果を約束したわけですから、その点委員長認識不足です。この点もう一ぺん再確認していただきたい。
  7. 上塚司

    上塚委員長 穗積君にお答えいたします。委員長はその叡知と良識によつて極力出席を要請するということに解釈いたしまして、そしてそのように努力したわけでありますから、さよう御了承願いたいと思います。
  8. 穗積七郎

    穗積委員 自由党委員諸君の御弁明を聞かしていただきたい。
  9. 富田健治

    富田委員 今議事進行に名をかりて……(「名をかりてじやない、ほんとうの議事進行だ」と呼ぶ者あり)名をかりてということだろうと思いますが、戸叶さんなりまた穗積君からお話があつたのでありますが、先般の理事会皆様お話通り、ああいうお申合せがありまして、われわれ全力を尽したのであります。ただ吉田総理が出られぬことにつきましては、私理由があると思うのであります。それは皆様承知通り、今日参議院において重要法案が非常に難航して、審議の途中であります。しかもその困難な理由といたしまして、私ひそかに考えますのに、中にはずいぶん無理解なと申しますか、理不尽な野党諸君審議妨害もあるように思うのです。先般の理事会の際には、さような理不尽な妨害野党によつて行われるとは私は考えていなかつた。そういう不意に申しますか、われわれ思い設けないような審議の停滞、妨害があつたために、吉田さんが今日外務委員会審議に出られないということもやむを得ないじやないか、かように私は思うのであります。そういうような申合せをいたしたことは私は十分これを認めるのでありますが、事態はかようにかわつているのであります。参議院審議がもつと遅滞なく進みますように、皆様こそ各党にお帰りになつていろいろお話合いくだされば、吉田総理をここへひつぱり出すことも容易になり、われわれお約束いたしたことも実現できるのではないか、かように思いますので、皆様こそひとつその点において御努力願うよう、この機会に私はお願いいたしたいと思うのであります。
  10. 穗積七郎

    穗積委員 富田さんはとんでもないことを言われる。それではお尋ねいたしますが、われわれが妨害した事実をはつきり示してもらいたい。これは不穏当なことだ思うのです。われわれは妨害した覚えはない。慎重審議努力はいたしましたが、妨害した覚えは一ぺんもございません。参議院においてもしかりと信じます。  ついでに伺いますが、向うへ出ておられるためにこつちへ出られないというならば、今日どこの委員会に出ているか、月曜日にはどこの委員会に何時から何時までということを調べて、はつきりしてもらいたい。――委員長、何とか言いなさいよ。福田委員が来たから福田委員弁明も聞きたい。
  11. 戸叶里子

    ○戸叶委員 福田理事がお見えになつていらつしやいますから、福田理事態度はつきり伺いたいと思います。   〔「理事会でやつたらどうか」と呼ぶ者あり〕
  12. 上塚司

    上塚委員長 それじやただいまの問題はいずれ理事会を開いて、さらに検討することにいたしたいと思います。
  13. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それではこの委員会の終了後、ただちに理事会を開いて、はつきりきめていただきたいと思います。
  14. 上塚司

  15. 並木芳雄

    並木委員 私はアラフラ海の真珠貝採取に関する日濠間の暫定とりきめの点についてお尋ねをいたします。報道によりますと、三十一日調印の運びになつたとのことでありますが、その通りでございますか。
  16. 小滝彬

    小滝政府委員 日濠相互間で話合いをいたしましたが、大体双方の意見が一致いたしておりますので、御指摘のように五月三十一日に調印し、これを公表するという話合いになつております。
  17. 並木芳雄

    並木委員 その内容については今答弁してもらうわけには行きませんか。
  18. 小滝彬

    小滝政府委員 内容につきましては、濠州の方でこれが事前に漏れることを非常に好まないのでありまして、明後日の発表まで厳秘に付するようにということになつておりますので、外交上の関係からいたしまして、この際これを発表するわけには行かないのであります。しかし明後日発表になりますから、大体の筋を言う程度はさしつかえないと私考えますので、その筋を申しますならば、昨年程度の船及び漁獲を認める、そして双方からライセンスをもらつて双方話合いに基くような業務を行う、それには監視船もつけてあやまちなきを期するというのが、大体の筋合いでございまして、そのとりきめは、国際司法裁判所で判決が下りますまで実行されるものと解釈しておる次第であります。
  19. 並木芳雄

    並木委員 これははやはり協定ですから、当然国会承認を求めることになると思いますが、その通りですか。
  20. 小滝彬

    小滝政府委員 なるほど双方の間で妥当なところはどこであろうかということを話合いをして来たことは事実でございます。しかし新しく国民の権利義務を規定して、これを制限するという性質のものではなくて、現行の農林省主管漁業に関する取締り法規によつて、一方的に大体向うと合意したラインによつて実行し得るものでありますから、国会の方に御報告は申し上げますけれども国会承認をとるという手続は考えていない次第でございます。
  21. 並木芳雄

    並木委員 次に中共の紅十字社李徳全女史の招聘の問題でございます。これは衆議院で満場一致をもつて決議が行われたのでありますが、何ゆえか、岡崎外務大臣は特にあの決議に対して発言を求められなかつたのであります。たいていは、決議が可決されますと、所管の大臣発言を求めて、その御趣旨の線に沿つて努力するとか、御趣旨まことにけつこうですとか、発言があるのですけれども、特に岡崎大臣はそれをしなかつた。この理由はどこにあるのか私どもわからないわけです。政府としては国会決議を当然尊重すべきものと思いますので、この際あの決議に対して政府はどういうふうな処置をとるつもりであるか、はつきりしていただきたいと思います。
  22. 小滝彬

    小滝政府委員 衆議院の本会議におきまして、大臣発言しなかつたのは、いかなる理由に基くか、私は大臣に直接聞いておりません。しかしこの決議はもう事実行われたのでありますし、近く参議院においても同様な決議が行われるように承知いたしておりますので、外務大臣としては、この決議趣旨を十分に検討して、適当に善処せられるものと私確信いたしております。  なお、つけ加えて申し上げますが、過日の本委員会における質問並びに要望は、十分大臣の方にお伝えしておきましたから、その点は御了承願います。
  23. 並木芳雄

    並木委員 ただいまの次官の答弁によりますと、決議趣旨を尊重して善処されるであろうということは、従来の態度を緩和して、おそらくこれに対して許可を与えるであろう、こういうふうな見通しと了解できますけれども、そう了解してよろしゆうございますか。
  24. 小滝彬

    小滝政府委員 この問題は、最終的には外務大臣の方で決定せられることになりますので、私はそういう趣旨で申し上げたのではございません。従来も、この問題にはなるほどもつともな点もあり、あるいはそれによる弊害も一方にはありはしないかということで、いろいろ検討して来た問題でありますので、この決議があつたからというので、それではすぐ決定が行われるかどうかということにつきましては、私個人としては何ら確約することができないという立場にあるのでありまして、今の並木君の了解は、多少並木君自身のウイシユフル・シンキングを否んだものであると思いますので、その点を申し上げておきます。
  25. 並木芳雄

    並木委員 それは従来の態度から一武も前進しないということです。国会決議に対して一歩も前進しないということはあり得ないと思いますが、いかがですか。
  26. 小滝彬

    小滝政府委員 外務大臣といたしましては、国会決議を十分に考慮に入れて本件を処置せられるものと存じます。
  27. 並木芳雄

    並木委員 中共関係のこういう問題は、一切の政治的観念から離れてやつてくれということが決議に盛られてあるのでありまして趣旨弁明にもあるのでありますが、どうしてこだわるのか、はなはだ了解しがたいのであります。その反面においては、小瀧政務次官らが了承を与えて、例の神戸で起つた民戦議長李浩然氏の乗船問題については、あつさりと許可を与えておる。たとえばこんな記事があるのであります。「先日神戸で騒いだ民戦議長李浩然氏の乗船問題についても、去る二十五日民戦外務部長高成浩氏が記者会見の席上で、「李氏に対し法的根拠のない渡航許可書を与えたのは鈴木入管局長個人責任でなく、もし当局が彼個人を追究するなら近く犬養前法相、小満外務政務次官らが了承してくれていた経過を発表する」と言明したほどである。」こういう記事がある。一方においてはあつさりと許可を与えるような措置をとり、衆議院決議した本件のようなものには渋つておるというような、はなはだ片手落ちの感を免れないのでありますが、これはどういうわけですか。
  28. 小滝彬

    小滝政府委員 まず末段の点からお答えいたしますが、そういう了解を与えたことは絶対にございません。そういう声明書鈴木君が出すならば私は喜んでこれにチャレンジいたします。またこの問題と今の決議の問題とは全然別個のことでありまして、どういうわけでどこの新聞に出ておつたか知りませんが、全然事実無根のものであるということを御承知願いたいと思います。この決議に関する問題は、どういう点で外務省として慎重に考慮しなければならなかつたかとか、あるいはいかなる弊害が予想されるかというような点は、これまでも再三ここで申し上げましたので、過日戸叶委員から御質問の際にも、速記録に十分出ておりますから、反復することはいたしませんと申し上げた次第もございます。それで、感謝決議をするなら、中華民国政府はもつとたくさんに同胞を帰したではないか、その方は出さないで、一方的にやるということは均衡を失するのではないかという議論もあることや、またこれが他に悪用せられるおそれはないかとか、いろいろな方面から検討して来たのでありまして、今度の決議については、先ほど申しますように、十分これを考慮に入れて、尊重するようにいたしまして本件外務大臣考慮するであろうということを私申し上げたのは、並木君も御了承くださるだろうと思います。
  29. 並木芳雄

    並木委員 次にお伺いしたいのは、対米債務の返済の問題であります。聞きますと、本日第三回の会合が開かれておるそうでありますが、本日の会合段階においてはどういう点が取扱われておりますか。
  30. 小滝彬

    小滝政府委員 これまで第一回、第二回の会合に関しましては公表いたしておりますから、御承知と思いますが、米国側から資料を出して、これまでの援助内容等検討いたして来たのであります。近く小委員会も設けて詳細を検討いたそうとしておるのでありまして、本日の会合におきましては、大体従来提示せられました資料について検討が行われることと存じますけれども会議内容につきましては、会議双方が話し合つて、コミユニケにはどれだけのことを発表するかということを決定いたしますので、今ここでどういう進行ぶりをするだろうというようなことを予言するわけには参りませんし、また双方で合意いたしました発表程度以外は、現在の段階におきましては申し上げることはできないのであります。
  31. 並木芳雄

    並木委員 外電によりますと、大体二十億ドル見当のところにおちついて、その四分の一の五億ドルくらいが債務として確認されるのではないかという報道でありますが、そういうような下話が行われておるのですかどうか。この金額については、今まで船積みの関係やら受取りの関係やら調べてみると、ずいぶん、ずさんな点が多くて、日本側の計算したものとアメリカの計算したものでは差が多いということも聞いておるのですけれども、その金額などについてのことをお尋ねしておきたいと思います。
  32. 小滝彬

    小滝政府委員 先方の計算では、大体日本債務は二十億前後というように見られておることは事実であります。しかしながら過日の新聞に出ました、その四分の一、五億を日本が払うようになるであろうということは、これはまつた想像記事にすぎないもののようでございます。外務省といたしましては、こういう記事が出ましたので、さつそくワシントンの方へ問い合せたのでありますが、この記事はヘンスレー氏によつて書かれたもののようでありますけれども、しかし、国務省でそういうことを発表ないしはそういうインディケーシヨンすら与えたことはない、またそういうことはまだ全然きまつていない、それからこの二十億ドルについても検討しようという段階でありますから、そうした結論的なものがあろうはずもないのであります。
  33. 並木芳雄

    並木委員 われわれはある人の証言を聞いたのですけれども日本側で調べたのはせいぜい十六億くらいだろうということであつたのですけれども政府として今日まで調べてでき上つた数字は幾らなのですか。
  34. 小滝彬

    小滝政府委員 いろいろの説があるようでありますが、現に詳細検討中でありますので、最終的に何ドルになるかということは申し上げる段階に至つておりません。
  35. 並木芳雄

    並木委員 大よそわかりませんか。
  36. 小滝彬

    小滝政府委員 ただいま交渉中でもありますし、かつまたいろいろ資料を収集し、先方とも対照中でありますから、隠し立てするのでなしに、現在はまだ大よその点もはつきりしたことは申し上げられないというのが事実でございます。
  37. 並木芳雄

    並木委員 それでは時間もありませんから、次の問題を簡単にお尋ねいたします。  蒋介石ラインの問題であります。この前もちよつと聞いたのですけれども、まだはつきりいたしませんが、李承晩ライン向う張つて蒋介石国府ラインというか、蒋介石ライン台湾近海に設けたことなのです。これも日本としてはずいぶん迷惑をこうむる話でございますけれども、その後外務省としては蒋介石ラインに対してどういう措置をとられたか、お尋ねいたしたいと思います。
  38. 小滝彬

    小滝政府委員 日本漁船台湾近海に行くことを一方的にさしとめるというやり方は承服できないということは、芳沢大使を通じて申し入れておるのであります。なお漁業に関する協定というようなものもけつこうでありますけれども、ただ先方が主張している警備区域そのものを、事実上日本側が一方的に認めるような方向になつてはならないのであつて、そうした趣旨を了承せられるなら、日本としてもそうした協定をしてもいいという意向はすでに伝えてあるのでありますが、今後も日本として主張するものは十分主張すると同時に、何らか双方が協力して水産資源を開発するというような措置協定し得るならば、まことにけつこうなことでありますので、そうした点について考慮したいと考えます。しかし警備区域を一方的に設けて、そこへ入つてはいかぬということには、ただちにオーケーを与えることはできないという点は、先ほども申しましたように、よく向うに伝えております。これまでも不幸な事件も起りましたし、いろいろ聞くところによりますと、小さな海戦のようなものも行われておるようでありますから、あまり危険なところに出ることは実際問題として被害がありますために、水産庁においても日本漁船に対して個々に警告を与えておるというのが現在の状態でございます。
  39. 並木芳雄

    並木委員 フイリピンの賠償問題ですけれどもエルナンデス団長向うに帰国して、日本には四億ドル以上支払い能力があるという談話を発表しております。これに対して政府はどういう態度で今後フイリピンの賠償問題を打開して行くつもりでありますか、お尋ねしておきたいと思います。
  40. 小滝彬

    小滝政府委員 エルナンデス使節団の一行は非常によく勉強せられまして、いろいろ日本の事情を調べ、また資料などを収集せられたようであります。しかしその結論がどうなつたかはもちろん政府はまだ存じませんし、そうした交渉をする段階に至つておりませんが、政府といたしましては、できるだけ早くフィリピンとの関係をよくして行つて平和条約も批准せられるというような事態に立ち至ることを熱望いたしておりますので、相互にできるだけ早い機会話合いを始めまして、この問題を解決いたしたいという方向努力したいと考えております。
  41. 並木芳雄

    並木委員 できるだけ争い機会話合いを始めるというのは、また日本からフイリピン大使を派遣するのですか、それとも東京で話合いを始めるのですか。どういう形をとつて話会いを始めますか。
  42. 小滝彬

    小滝政府委員 フイリピン側でもフイリピン側代表部を解消していないようでありますので、日本側もこれまでの使節団方々の解職というような手続はとつておりません。でありますから、いつでも交渉は再開し得る形態にあるということが言えるだろうと考えます。がしかし、今後どこでどういう形式で開くかということは、先方の都合もございましようから、現在のところは何ら決定してないという次第であります。
  43. 並木芳雄

    並木委員 日本側から申し出ますか、それとも先方から申し出るのを待つていますか、どつちですか。
  44. 小滝彬

    小滝政府委員 この問題を早く片づけたいということは、マグサイサイ政府としても希望しておるところでありますからして、どちらから話を出すというのでなしに、エルナンデス使節団帰つてつたことでありますから、どつちが早く手を出すというようなことでなしに、これまでの会議の一つの継続として、話し合いが進められるであろうというように期待しております。
  45. 上塚司

  46. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 食糧庁長官にお伺いしますが、この前MSA援助協定に基く小麦買付で、日本に初めて輸送されて来た大久丸小麦が横浜港に上陸された問題についてお伺いしましたが、その際は害虫の所在につきまして不明確でありまして、害虫がおつたかおらぬかということもわからなかつた。それからどうして防疫事務が済まされたのか、それもはつきり答えがなかつた。また進んで日本におけるこれらの小麦払下げ方法価格等についてもお答えがなかつた。きようはそれのMSA関係小麦の第二船というか、氷川丸に積み込まれて神戸に陸揚げされた六千四百一トンの分について新聞紙の報ずるところによりますれば、五種の害虫が発見されておる。その害虫の名前は農林省から害虫として指定されておるグラナリヤコクゾウ、コクヌストモ、トキ、ノコギリコクヌスト、カクムネコクヌスト、コクゾウという名前があげられておるのでありまして、これによるとその結果この小麦は植物検疫で不合格品と決定しておる。この旨はただちに本省に連絡されておる。この小麦については三菱倉庫など十箇所に収容された上でメチルブロマイドで燻蒸されて再検査して食糧事務所に渡される、こういうことに報道されておるのでありますが、このてんまつはどういう事情であるか、詳細に報告していただきたいと思います。
  47. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 お答え申し上げます。ただいまの御指摘のように第二船といたしまして神戸に入港いたしました氷川丸の六千四百トンに五種類のコクゾウ虫系統の虫が入つてつたということは、これは事実でございます。これは申し上げますと植物検査といたしましては、これは食糧の保管あるいは生産というふうな面からいたしまして、一定の害虫が混入いたします場合には燻蒸することになつておりますが、われわれといたしましては外麦の場合におきまして、本件に限りませず従来から植物検査の場合あるいはまた食糧保管の建前上燻蒸いたしておりますので、昨年度におきましても輸入の場合におきまして、大体六、七割くらいのものは燻蒸をいたしておるわけであります。本件につきましても植物防疫所から虫の混入の通知ががございましたので、燻蒸する手配をいたしたわけでございます。これは御承知のように国内でもコクゾウ虫等がございますので、国内の米につきましてもやはり保管上燻蒸するのが建前になつておるのでございます。
  48. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 それで燻蒸すれば一切の害虫は除去されるのですか、それからこれは穀物にどういう影響を与えておるのか、その点をはつきりしてもらいたいと思います。
  49. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 燻蒸いたしますと、虫は全部死んでしまいます。燻蒸の穀類に及ぼします被害につきましては、従来から十分検討いたしておりますが、穀類そのものに対する影響はございません。
  50. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 川崎に揚つたのはどうですか。
  51. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 川崎に入りましたものにおきましても、コクゾウとコクヌストの二種類の虫を発見いたしましたので、これも燻蒸いたしておる次第であります。
  52. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 そうすると従来もそうであつたし、今度もそういう害虫がおつたのですが、そういう害虫がおつてもかまわないということが規格の中にあるのですか。
  53. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 規格はアメリカの場合でございますと、国営の非常に長い歴史を持ちました検定機関がありますし、またそうでない場合におきましては、国際的なスーパーでありますとか、デルパンでありますとか、そういう国際的な検定機関がありまして、その検定機関の検査に合格をいたしたものということによりまして取引をいたしておるわけであります。その場合におきます規格は、被害粒、異物、その他、異粒物、細粒、水分といつたような形で検定をいたしておるわけでございます。特に虫が入つておるか入つておらないかということを明記いたしておりませんが、おおむね異物というような意味で処理されるということになろうかと思います。
  54. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 この前お伺いしたところによれば、このウエスタン・ホワイト・ナン、バー・ツーという規格は、異種の麦が一〇%、異物が一・九九%、被害粒が四%、こういうのが規格であるということのお答えがありましたが、害虫についてのお答えはなかつた。一体、害虫が存在しておることがいいの悪いのか、規格にあるのかないのか、この点をはつきりしてもらいたい。
  55. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 ただいまの加藤委員の御指摘のようにウエスタン・ホワイトのナンバー・ツーの場合におきましては、被害粒四%、異物二%、その他、他品種の混入一〇%、砕粒七%、水分一四%というのが検定の規格になつておるわけであります。従いまして虫がこれに入るかどうかということは検査の規格自体にはございませんが、もちろんこれは異物でございますので、通常の穀物取引の常識上多量に入り、それが異物として二%以上を超過するという場合には、これに該当してクレームという問題が起るわけでございます。
  56. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 異物というのは、そんな虫まで異物というのではないでしよう。それは雑草の種であるとか、あるいは石ころであるとか、そういうものこそ異物というのであつて、虫まで異物の数の中に入れられたのではたまつたものではない。これは過去のアメリカの検査当時において、蓄積されておつたものの中に害虫等がおつて侵された率が、被害粒が四%、この虫の実質上の被害が四%であつて、それ以上に虫の損害があるかないかということが――大体検査するときに、虫のおるなんというものは、おそらく私は規格の合格品じやないと思うのです。であればこそ、日本においてもそういうものは不合格であるということになるわけなので、その虫の存在というものが、四%という被害粒の上を越しておるか、越さぬか、これが問題であると思う。さつきあなたは、虫がおつても実質上は何の被害もないとおつしやたけれども、そういう虫がおればこそ、こういう被害の率が四%と計上されておつて、それまでは合格品として許されるが、それ以上は許されぬ、こういうことになつて初めてこの虫の害毒というものが、実質的に与えられておるということになるわけなのです。今のあなたの答えは、虫までまるで異物のようにおつしやるのは、ちよつと見当違いではないかと思うのですが、どうですか。
  57. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 検査の規格におきましては、その虫の点の混入については全然規格がないわけでございます。私が申し上げましたのは、非常に虫の害によつて被害粒が出て来る。こ被害粒の範囲が検査以上に出ます場合においてはもちろんでございます。非常に多量の虫がおつて、それが異物のパーセンテージを非常に高めるというよう場合には、クレームの原因になり得るだろうというふうな意味で申し上げたわけでございまして、虫自体が規格に合う、規格に何はら規定はございませんので、虫があるなしということによつてクレームという問題は成立いたさない、こういう趣旨を申し上げたわけでございます。
  58. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 それで規格にない虫が存在しておるということのために、規格に合わないものであるから不合格、こういうことになるのでしよう。
  59. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 規格の点は、虫の存否の問題じやございませんで、その結果によりまする被害粒のパーセンテージの問題、その他きめられました検査の規格を超過いたしました場合におきまして、クレームの問題になるわけでございまして、この規格は国際的に従来から一定の基準のもとに各国ともに認められた規格において取引されておるわけでございまして、特にわが国がそれと別途の規格をとつておる、こういう事情ではないわけでございます。
  60. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 それはまるで私の聞いておることかをとんちかんに聞いておる。そんなばかなことは聞いてない。そんなことはこの間から聞いておるのであつてはつきりわかつておる。きよう聞いておるのは、虫がおつて不合格になつておる。その不合格になつておるということは、虫がおつたがために、それだけ実際に被害が与えられておるのか。規格によれば四%の規格であるが、四%以上の損害があつたのかないのか。一体どうしてそれが不合格になつたのか、これを聞いておるのです。
  61. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 あるいは私の思い違いかと思いますが、ただいまのお話の点でございますと、不合格というのは穀物の検定の不合格、穀物のわれわれの取引上の不合格の問題じやございませんで、植物防疫上燻蒸を要するという形においての問題なのでございます。従いましてそれに基きまして燻蒸をいたしておるわけでございます。ただいまの御指摘の被害粒その他の問題は、検査をいたしますと、大体被害粒は一・七%、異物は一・八%、他種銘柄が一・五%、砕粒が一%、水分が一二・四%、やはり規格内でございます。
  62. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 そこで植物防疫の点からいつて、不合品格とされるものが、実質的には規格内の四%の被害の範囲でとどまつてる。おだからその国際規格には合しておるが、問題はその点が合しておるとすれば。実際においては被害粒はなかつたのかどうかということが一つの問題になつて来るし、それから大体虫のおるということは好ましくないものであることはさまつておる。ただ単に植物検疫上不合格であつたというだけではなく、実際において虫がついておるようなものを、いくらその他の規格の点において合格であるからというて、これは好ましい品物であるということは言われないでしよう。これはどうですか。
  63. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 もちろん御指摘のように虫が全然おらないということが望ましいことは当然でございますが、われわれ大量の輸入の穀物を取扱つておりますので、この場合におきましては本件に限らず、植物防疫上燻蒸を要する場合のほかにまたわれわれの方の管理の面からいたしましても、従来とともに燻蒸をいたしておるわけでございまして、虫がおらないことはもちろん望ましいわけでございますが、しかしさればと申しまして、虫がおるためにこれが商品としての価値がどうなるかという点は、やはり被害粒なりその他のもので判断する以外には方法はないというような考え方をもちまして、従来ともにそういう考え方でやつておるわけでございます。
  64. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 私がこの問題をお尋ねするのは、MSAの援助協定に基く初めての入荷であるという点に特に関心を持つておるわけなのです。ややもすれば横浜でも、MSAのこの小麦を見た瞬間に、荷役に従う人、船員の諸君は、どうせMSAのものだから悪いものをよこすのだろう。まるでもらうようなつもりでおる。アメリカの方はなるほど三十六億円分はやるというつもりでおるか知らぬが、日本国民から見ればただではないのです。どうせMSAだから悪いものでもしかたがない、悪いものをよこすのだろうという感じを国民に抱かせること自身がいけない。われわれはそのことから、不当な反米感情をそそり立てることがあつてはいかぬと思うからこそ、これを根掘り葉掘り尋ねて、ほんとうにやはり虫でもおるならば、将来虫のないものをよこすようにしてくれというように、向うに警告を発するぐらいの積極的な態度を、日本政府としてはとらなければならぬ。ただ規格に合つておればいいというような、そういう考え方では、私は国民に対して不親切であるし、またアメリカに対しても決して親切なゆえんではないと思う。そういう点についてどういよううに考えられるかと言うのです。
  65. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 MSAの問題は、いろいろ政治的な面、あるいは財政的な面その他の面は別にいたしまして、われわれといたしましては、穀物取引の通常の形態に従いましてこれを取引したい。これはわれわれが食糧を買い入れ、配給する場合の担当者といたしまして、MSAだからといつて特に他のものと区別する考えは全然ございません。と言いましても、またMSAだからといつて、特に他の通常取引よりも過重な条件で取引するということも考えておりません。通常の取引の状態においてわれわれは取引をする。従いまして国内におきます取扱いにおきましても、外貨の割当その他も通常取引をわれわれは主張し、その方法によつてつておるわけでございまして、あくまで食糧庁といたしましては、一般の小麦の取引と同様の方針でもつてつておるということを、御了解願いたいと思います。
  66. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 MSA小麦は、この第一船の分は協定発効前に買いつけられたものであるから、従つて普通の商業ベースで取引されておることは事実だと思うのです。今後この効力発生後に、特にMSA援助協定に基くという場合においては、なるほど日本は商業ベースで買うつもりでおるし、およそやられるであろうが、これには外貨の割当はないでしよう。日本一でこれは買うのでしよう。
  67. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 お答え申し上げますが、これはやはりわれわれといたしましては、既定の外貨の計画に従いまして、一応輸入商社といたしましては、外貨の割当を受けます。外貨の割当を受けまして、それでもつて取引をいたしまして、あとから日本政府あるいは日本銀行となりましようか、それに対して、それがレジスターされましたときに外貨の繰入れがある、こういう形になるわけであります。
  68. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 そうすると、われわれも思い違いをしておつたかもしれませんが、MSAの協定に基く小麦買付も、普通の小麦買付と同じように、まず外貨で買いつけるのですね。それから決済の場合に、初めてそれが外貨でなくて、日本円に組みかえられる、こういうことになるわけですか。
  69. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 外貨の取引がございまして、そしてこれがMSAであるというレジスターをいたしますと、同時にアメリカ側から日本側に対してその外貨が振り込まれる、こういう形になるわけであります。
  70. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 そこで引続いてお伺いしたいのですが、この前のお答えによると、今年の小麦の輸入計画は百九十六万トンですか。
  71. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 さようであります。
  72. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 このうち、国際小麦協定に参加したための義務買付の量はどれだけでしようか。
  73. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 国際小麦協定につきましては、御承知のように協定自体におきましては、最低価格と最高価格がございまして、最低価格の場合におきましては輸入国の義務数量になるわけでございます。それは現在百万トンになつております。市価は現在最低価格を上まわつておりますが、協定の規定上から申しますと、最低価格に価格が参つておりませんから、形式上義務数量というものは発生しないという形になりますが、実際の取引といたしましては、協定がございますので、その精神をくんで、大体百万トンという目安でわれわれは買付をいたしおります。
  74. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 国際小麦協定買付義務が、計画としては百万トン、そうすると九十六万トン分は、大体MSA援助協定に基く買付量と考えていいわけですね。それで国内の需給関係は、これは農林委員会等で聞かるべき問題だと思いますが、われわれも同時にこれは国際小麦協定に関連して、当然MSA小麦というものが国内の麦生産者にも影響を与えるし、また小麦粉の消費大衆にも影響を与えることであるから、お尋ねしておかなければならぬと思います。これが国内の生産とどういう関係になるか、これはこの間新聞等に現われているところから見ても、今度の政府小麦買上げ価格等にも相当関連しておるごとくに感じられるのですが、こういう点はどういうように影響を与えるか。
  75. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 お答え申し上げますが、実はわれわれといたしましては、御指摘のように、この小麦の輸入につきましては、国内の需要、生産というものも検討いたしまして、そうして輸入計画を立てるわけでございまして、本年度におきます輸入計画は、麦の消費の増、同時に米の不作からしまして、昨年が百九十七万トンでございましたが、大体本年は百九十六万トンということで、当初から輸入計画をいたしたわけででございます。輸入計画にあたりましては、ただいまの御指摘のように、国際小麦協定の厳格な意味におきます義務ではございませんけれども、従来の買付の実績からいたしまして、小麦協定でもつて百万トン程度買いつけたい。それからなおアルゼンチンにおきまして三十万トンの買付の契約がございますから、百三十万トンは一応既定の計画として考えておりました。国内の需給上不足いたしますので、あとのものをカナダなりアメリカなりからフリーに買付いたしたいという計画で、進んで参つたわけでございます。そこへMSAの問題が起りましたので、われわれといたしましては、通常の必要輸入量を、外貨を要せずして、一般にフリーに買付を予定しておりましたものを、これに振りかえるという形になるわけでございます。ただ御指摘の国内生産に対する影響は、もちろんわれわれとしても十分考えなければなりませんので、建前といたしまして、あくまで国内の生産、出まわりの状態、需要の状態を見まして、その不足分を輸入いたすという建前をとつておるわけでございます。また価格につまましても、国内の生産者に対します支持価格、それから消費者に対します抑制的な政府の原麦の売払に価格というものは、一つのパリテイによります算定方式によりまして、これを決定いたしまして、外麦は、その価格差において外麦価格を決定するという形において、価格の面におきましても、国内と輸入とは、食糧特別会計の内部において食糧管理の建前上、これを隔離と申しますか、遮断をいたしておるようなやり方によりまして、国内には影響を及ぼさないように措置いたしておるわけでございます。
  76. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 前に小麦買付価格について伺いましたが、輸送の船がアメリカの船と日本の船と、一トンについて三ドル違うということであつたのでありますが、日本の船で運ぶと幾らになりますか。
  77. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 これはわれわれといたしまして、輸送につきましてはそのときどきによつて違うと思います。トランパーの場合、ライナーの場合、いろいろ違いますが、邦船は一般の外船よりも、どうも今の状態では高いようでございます。ただアメリカの場合、ライナーの場合でございますと、これはまた少し高くなる場合がございます。この点につきましては、御承知のようにMSAにおきまして、米船五割という制限がございますので、この制限のもとでやるわけでございます。その他の面におきましては、つまり制限外の五〇%につきましては、大体そのときの運賃の市況、それから復航の関係で一概に標準が立て得ないのでございますので、これは全体としまして、商社の方の入札による範囲内において、商社がいかにうまい船を使えるかということによつて、入札の競争力を増す、こういう形になるわけでございます。現状からいたしますと、外船の方が――アメリカ以外の外船でございますが、日本船よりも安いようでございます。しかしこれは航路の関係、復航、ほかの積荷の関係等で非常にむずかしい問題だと思います。
  78. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 そうしますと、大体厳格な義務ではないけれども、国際小麦協定によるものが百万トン、アルゼンチンから三十万トン、それは今年の最初のMSAがないときの基本計画ですね。
  79. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 今年の麦の所要量としては、当初から百九十六万トンが大体必要であろうということを考えておつたのでございます。もちろんその数字につきましては、米の不作を途中で追加いたしましたが、最初から百三十万トンという予定ではございません。ただスタートいたしました途中におきまして、もつと厳密に申しますれば、大体小麦の出まわりの当初に考えましたときには、輸入はストックの関係とにらみ合せますと、大体百五十万程度でよかろうというふうな計画を立てておつたわけでございます。しかし昨年の九月に至りまして、国内の米の不作が相当ひどいだろう、こういうことでございまして、七月に立てました計画を、すぐ八月末に置いて改訂いたしたのでございます。この改訂に基きまして、百九十六万トンというものが、最終的にわれわれとしての計画になつたのでございます。その計画のもとに進行しておりまして、その当時におきましては、百三十万トンは大体国別に輸入の国の先がきまつておりましたが、あとはカナダなり、アルゼンチンなり、アメリカなり――濠州はちよつと輸出入の関係で手に入らぬようでございますが、その他の国から自由に買いつけるというつもりで、スタートいたしておつたのでございます。だんだん買付をいたしておりましたところへ、MSAが起りましたものですから、つまり自由買付をそつちの方に振りかえたというふうにいたしたわけでございます。
  80. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 さらに進んでお伺いしますが、今度のMSAの問題が起つて、最初の計画通り、順調に買付ができることになつたということになるわけですね。そうしますと、これは別な面からわれわれが聞いておるのですが、政府小麦買付――国内生産の状況と見合つてでしようけれども、この買付小麦の消費のために粉食奨励をされる。この粉食奨励は食糧改善の立場からわれわれもけつこうだと思いますが、それがために明治乳業であるとか、あるいは東洋製罐であるとかいうような企業体に製パン工場をつくらせて、そこで大量消費をやらせる。こういう計画が食糧庁や農林省の後援によつて重政君が社長になつてやることになつておるということですが、相当深い関係があるということを聞いておりますが、この点はどうですか。
  81. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 実はパンによる消費の問題につきましては、見返り資金の存在いたしましたたしか昭和二十六年かと思いますが、昭和二十六年ごろに安本を中心といたしまして、今後の国際収支あるいは栄養改善、こういう面から粉食を普及すべきではなかろうかということで、その場合におきますパンの質を良化するというふうな面、価格も低下することが望ましいというふうないろいろな面からいたしまして、機械製パンということを昭和三十六年から考えておつたわけでございます。その後資金その他の関係によりまして――これはいろいろ経緯がございましたが、実現の運びに至らなかつた、こういう事情にあつたわけでございます。本年御指摘のように明治乳業あるいは東洋製罐その他民間の発起によりまして会社が設立されておるわけでありまして、われわれは製パン工業の進歩という面からいたしまして望ましいことだと考えております。ただ御指摘のようにこの問題につきましては中小企業との問題がございますので、その場合におきましてもわれわれは当初から中小企業との調整、販路の調整なりあるいは中小企業の企業参加なり、種種の面におきます中小企業との連絡と申しますか、調整と申しますか、そういう面もはかる必要があるということは申しておつたわけでございます。その考え方は現在もかわらないわけでございます。これにつきましては一般的に民間の希望といたしましては――明治製パンもそうでございますが、これに対する政府資金の融資ということの希望があつたわけでございますが、われわれといたしましては政府資金をこれに融資する考えは現在持つておりません。
  82. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 私どももこの点については、粉食奨励が食糧改善の立場からけつこうであるとは考えておりますが、現在東京都において中小製パン業者の稼働能力は五〇%しか働いていない。あとの五〇%は遊休状態である。大資本による大工場が建設されなくとも、もし政府が少しく注意をしてこれら設備の改善等に当らしめるならば、中小企業は百パーセント稼働が可能である。そうなれば東京都民の食糧改善に基くパン需要に対して十分に供給を満たすことができる。それをそのままにしておいて、大資本大企業にそういう大きな工場をやらせるということは、明らかに中小企業を圧迫して、中小企業の職業を奪つてしまうということになる。幸い今お伺いすれば、政府資金の融資は計画していない、こういうことであるから、この会社がはたしてどういうぐあいに成り立つて行くかわからぬと思いますが、この会社が政府資金の開発銀行からの借入れを予定して計画されておる、さらに外貨の割当によつてアメリカから製パンの機械を輸入する、こういうことで中小企業を完全に圧迫してまで、乏しい乏しいという外貨の割当をやつて、今の段階において製パン工場をつくらなければならぬ道理はないではないか。こういうこともひつきようするにMSAによる小麦の大量輸入によつてその消費に困つて、その消費を促すためにやられるのではないか、そういう政治的意図がありはせぬかということが、多分に一般業者なり関係者によつて心配されておるわけです。そういうことについて、政府資金の融資はやらない、外貨の割当はこの際はやらないのだ、こういうことが明確になれば業者は安心すると思いますが、その点についてはつきりひとつお答えを願いたいと思います。
  83. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 ただいまの中小企業の能力の問題でございますが、これは実は加藤先生も御承知のように、非常につかみにくいわけでございます。これは三交代二十四時間ということでありますと今お話のような形になるかと思いますが、実態といたしまして三交代三十四時間という作業は、御承知のように基準法その他の関係で、現実問題として非常に困難な点もあるわけであります。また一面から申しますと、昨年から本年にかけましてのパンの消費は、東京都におきましても三割程度ふえておるわけでございます。従いまして相当消費がふえておることは事実でございます。そのふえた消費のうちのある部分が機械製パンにかわつて参るということでございまして、これによつて中小企業を壊滅せしめるとか、あるいは非常な打撃を与えるということは、そうないのじやなかろうかというふうにも考えられますが、われわれといたしましては、中小企業に対する点も十分に考慮しなければなりませんから、そのために販路の協定なりいろいろ提携をするよう、双方で協議するようにということを勧めておるわけでございます。御承知のように、パンにつきましては、いわゆる菓子パンの形態が多いのでございまして、食パン専門の工場というものは少いのであります。大体は菓子と食パンとがあわせてつくられておるという状態でありますので、中小企業といたしましても、他の菓子パンの面は十分に残つておるわけでございますし、また食パンは菓子パンに比べますと、利潤的に見まして非常に少いのでございます。そういう面、それから規格の齊一の面からいたしまして、やはり進歩した形態をとることが必要ではなかろうか。これは今回に始まつた考え方ではございませんで、先ほども申し上げましたように、たしか二十六年でございましたか、前からいろいろ検討されたておつたわけでございまして、各地にもいろいろそういつた計画があり、すでに大阪におきましてはできております。その初歩といたしましては、戦後すぐ名古屋にそういう形態の――これはアメリカ式そのままではありませんが、大企業製パンができておるわけでございます。われわれといたしては、ただいまも申し上げましたように、これに対して政府資金を融資しないという考え方を持つております。ただ機械の輸入につきましては、これは国内のパンの製造、パン機械の進歩発達というふうな面、一般的に合理化を促進する意味においての機械につきましては、これは食品工業、パン工業に限らず、いろいろ行われておるわけでございまして、食品工業を担当しておりますわれわれといたしましても、この面からいたしまして食品工業の発達に寄与するということで、全体的に中小企業はこれによりましてそのままの方式は採用できないかと思いますが、それぞれの部門々々につきましては、新しい機械が入つて来ればその機械に刺激されまして、部門々々の日本食品工業の機械部門が向上するという面もございますので、そういう考え方をいたしておるわけでございます。
  84. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 東京都における製パン業者の工場の数、従業員の数、機械設備の能力等について私の方にも業者の組合からの精細な表が来ております。また製パン機械製造業者の組合からも外貨割当に対する反対陳情が来ております。今二十四時間稼働ならば云云というお話がりあましたが、二十四時間稼働ではないのです。この点ははつきりしておきます。問題は要するによ製品が安くできるということであればこれは非常にけつこうなのです。これは現在の業態においても、少しく設備の改善さえすればでき得ることであつて、今度の明治製パンの計画案によるパンの質、量、すなわち一個当りの目方、それから価格等についても、現在の中小業者のやつておるものと、形の上では一斤で三円ほど安くなつておりますが、その目方においてはかえつてつておる。従つて、決してそれは実質的に安いものにはならなつておらぬ。ただ質をを悪くして価格を安くするという、世間をごますかすものである。そういうものを生産させるために、ざわざわ外貨を割当てなければならぬというのはどういうわけか、これが一つ。  それからもし業者の現在の設備の改善に若干の努力が払われるれるならば、現在でも十分需要を満たすことができる、そういう状態で、ここにおいてこそ――私は今ここですぐにあたなにどうこうということはないが、政府の総合的施設の一環として、中小業者に対する融資等が考慮されるならば、りつぱにその使命を果すことができる、政府の国策にも応ずることができる、こういうぐあいになると思うのですが、その点についてあなたはどのようにお考えになりますか。
  85. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 ただいまの中小企業を進めて参るということは、われわれはもちろんそういう考えでおるわけでございまして、中小企業等については中小企業金融公庫等でそういう場合におきまして援助することは当然であろうと考えております。しかしながら輸入の点につきましては、私たちといたしましては、これはいい機械であり、しかもそれによつて能率化され、またその反面におきまして、日本のパン製造の機械というものがやはりそれに刺激されまして進歩するという面もございますので、これはまだ決定いたしておりませんが、一般の産業におきます合理化機械の輸入と同様に考えてしかるべきではなかろうかと考えておる次第であります。  ただいまの品質の点は、御承知のように、これは一袋から何ぼとれるかという問題でございます。これは他のバターでございますとか、あるいはその他のものの混入状況によりましても割合が違つて参るかと思いますが、水分の問題につきましては、一定の規格をつくりまして、一定の規格以上に水分が入るということになりますと、お話のようなことにもなろうかと思いますが、規格の範囲内でございますと、そういうことにはならないのじやなかろうかと思います。ただ先般も東京都におきまして市販のパンの内容を調査いたしたわけでございますが、まだまだ品質の面におきまして向上せしむる余地は多々あるように報告が来ておるわけであります。
  86. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 私はこれ一点でやめますが、御承知のように、現在製パン業者は、もしこれが実現されるようならば、全国的に同業者に訴えて、明治乳業の商品がボイコットをやる、こういう計画までやつておるわけです。それほど深刻に中小業者には影響を与えておるし、しかも製パン機械製造業者の団体も、アメリカの機械に劣らないものが日本にできるのだ、ことに中小工場にふさわしいこういうパンのごときものは、日本のような国においては中小企業こそが適切な企業形態である。それを目標にして、優秀な機械――大量生産の機械は別として、中小企業に適当する優秀な機械は日本においてもできるのだ、それをことさらに排除して、大量生産――大量生産だから必ずしもいいものができるとは限らないのです。一方においては外貨の節約、外貨の獲得がやかましく言われておるときに、切実に必要でないものにやらなければならぬということはないではないか。こういう点でそこに何らかの政治的意図があるのではないかという疑惑を業者は非常に持つております。この問題については具体的な数字等をもつてあなたの方へも交渉に行くだろうし、農林大臣等にも行くことになつておりますけれども、そういう点を十分考慮されて今後慎重な配慮を願いたい。
  87. 上塚司

    上塚委員長 福田篤泰君。
  88. 福田篤泰

    福田(篤)委員 今加藤委員からMSAの小麦につきまして質問がありました。これは自由党としてもMSAに賛成したことは日本のためになるという確信を持つてつております。これを裏切るような事実がある場合には重大責任であります。これは超党派的な問題でありますから、当局におきましても十分御注意を願いたい。  これに関連しまして、最近濠州から輸入されましたバターであります、これには大腸菌がうじやうじやしておるという問題が非常に話題になつておりますが、一体どういう状況であるか。またそういう場合にはどういう処置をとられるか、この点についてお伺いいたします。
  89. 前谷重夫

    ○前谷政府委員 バターの輸入につきましては、われわれ粉食奨励の立場から、昨年でございましたか、相当、バターが不足しておるという事実もございますので、この輸入をいたしておるわけでありますが、この輸入につきましては国内の生産の面との調整をとりますために、一定の外貨の割当によりまして数量を制限いたしております。この輸入方式としましては、これは純粋の意味における民間貿易であります。政府はこれの輸入につきましては外貨の割当をしてやつておるのでありまして、その間に食糧特別会計が介在するということになつております。御指摘の濠州からのバターにつきましては、大腸菌の混入が食物衛生検査によりまして発見いたしましたので、現在横浜港におきましてこれを保管中でございます。これが食品衛生法の立場からいたしまして、市販することが不適当ということになりますれば、これは販売が禁止されるという形になるわけでございます。
  90. 福田篤泰

    福田(篤)委員 小瀧政務次官にお伺いしますが、最近日ソ間で領土権をお互いに主張し合つて相当有名になつております萠茂尻島、この島に二十三日にソ連の船舶が四隻近づいて、その中から七名が上陸したそうであります。これはノサツプ燈台からの第一管区海上保安本部あての報告、また外務省にもこういう重大なわが国領土に対する侵犯については報告が当然あつたと思います。また一部新聞報道によりますと、外務省の見解もあわせて載つておりますが、どういう正式の報告があつたか。またもし事実とするならば外務省としてこれに対してどういう態度をとられるか、この二点をお伺いいたします。
  91. 小滝彬

    小滝政府委員 歯舞、色丹に対する日本の領土権につきましては、平和条約成立の当時から日本側の主張して来ておるところであります。しかし今御指摘のような報告は、ここに中川局長も参つておりますけれども外務省の方にはまだ入手せられておらないようであります。ただこの問題は何分にもソ連の方が実力を行使して領土権を侵害しておるような関係もございますので、従来とも国際輿論に訴え、また友好国のあつせんを頼むというようなやり方はして参りましたけれども、実際の効果は収めてない。もちろん考え方といたしましてはこれは国連へ訴えるとか、またさらに進んだ考え方でいえば、国際司法裁判所というような問題も考え得られないわけではございませんけれども、結局この問題は今後ソ連が平和条約に参加して来るというような際に、はつきりとこれを確定するということ以外は、現在においてはむしろ輿論に訴えるというような方法以外は、現実の問題としてやり得ないのじやないかというように考えておるわけであります。なお御指摘の新聞にはいろいろ外務省が見解を発表したということでありますが、これは何かの誤報ではなかろうかと存じます。
  92. 福田篤泰

    福田(篤)委員 これは外務省としても政府としても萠茂尻島がわが国の領土であるということは正式に二回以上発表しております。そういうところに少くともそういう報道があれば、当然一刻も争つてその事実の有無を確かめる義務が外務省にあると思います。こういう事実を確かめたことがあるか、それをお伺いします。
  93. 小滝彬

    小滝政府委員 事務的にどういう措置をとつておるかわかりませんが、御指摘の次第もありますので、さつそく関係局課に注意を喚起いたしまして調査させたいと考えます。
  94. 福田篤泰

    福田(篤)委員 そして、これが事実でなければまことにけつこうでありますが、もし事実とすれば先ほどの御答弁によると、結局長いものには巻かれろ、強い者の実力行為の前には何ら手はないということになりますと、これはえらいことになりますから、あらゆる手段を尽しまして日本の領土権は当然主張されなければならないと私は思うのであります。さつそく御調査願いまして、委員会に正式に御報告を要求いたします。  それから最近韓国の対日貿易根本審議会において京城で再三会議の結果、七月からいわゆるドル・ローンによる対日買付に関しては特定の品種を選定して、それについては従来の態度をかえてどんどん許可する、一時国内的な選挙の関係もありましようが、日本から買わぬというような乱暴なことを言つておりましたが、最近の情報によりますと、買付はやはりやる、品目は近くきめる、実施は大体七月ということが伝えられておりますが、これにつきましての正式の何らかお話があつたか、あるいは何らかの確実な情報がありますか、御報告を願いたい。
  95. 小滝彬

    小滝政府委員 ドル・ローンによる買付につきましては、米国と韓国との間に協定とりきめがありまして、アメリカの資金を使つて買付については、あくまでコマーシャル・ベースでこれを行うということになつておるようであります。従いまして普通の場合はこれはビツドによつて、入札によつて、どこの国から買いつけるということが決定されるわけであります。この国際ビツドにも日本は当然参加し得る、すなわち自由国家群の諸国であれば当然これに参加し得るのでありまして、いつごろでありましたか、前に韓国側で日本の品物は買わないというようなことが報道せられましたについては、米国側もこれを意外としたようであります。その後米国側からも韓国側へ注意を喚起するというような措置がとられたはずでありますから、当然米国のローンによる買付については、日本もこの物資の供給に参加し得るという立場にあるわけでありまして、また万が一そういうようなやり方をするということがあれば、政府といたしましては当然米国側に十分注意を喚起いたしたいと考えておる次第であります。
  96. 上塚司

    上塚委員長 穗積七郎君。
  97. 穗積七郎

    穗積委員 私はいずれ自由党理事諸君が公約を実行されまして、本委員会吉田総理が月曜日出席されましたときに、一般外交問題に対して少しく質問をいたしたいと思います。その質問を留保いたしておきます。そこできようは一点だけちよつと外務次官にお尋ねいたしておきます。実は法制局の長官と条約局長をお願いしたのですが、お見えになりませんので、これも十分な御答弁がいただけなければ、月曜日の吉田さんの出席される委員会のときに、続けて質問させていただくように留保させていただきまして、予備的にお尋ねいたします。これは二十七日付の中部日本新聞の掲載するところでございますが、今度吉田さんがアメリカへ行かれましたときに、われわれもそのことを想定してかねて申し上げておりましたが、PATOとか、SEATOに対する協力がアメリカ側から要請されるであろうということを予測して、そうしてまた吉田総理も二十七日の目黒の公邸におきまして、自由党、改進党の議員諸君を招待されて、アメリカへ出発する壮行会をおやりになつてつたようですが、その席上においても吉田総理が、このSEATOに協力する向きの何か話をされたということが伝えられております。そこでそれを裏づけするものとして、アメリカがそういう意図を持つて吉田さんもそれに場合によれば参加協力する意図を持つたということのために、外務事務当局がこういう機構に、いわば軍事同盟機構ですが、こういうものに参加することが憲法に違反するやいなやということを研究された結果、憲法違反にはならないという法律上の結論を出されたということが、信ずべき新聞報道として載つておりますが、そういう事実がございますかどうか、まず第一にお尋ねいたします。
  98. 小滝彬

    小滝政府委員 そういう事実はございません。
  99. 穗積七郎

    穗積委員 あなたは寡聞にしてお聞きにならなくても、事務当局がそういうことをやつたことがあるかもしれませんが、ないと断言できますかどうか。
  100. 小滝彬

    小滝政府委員 断言できます。まず第一その前提において、壮行会とおつしやいましたが、私も二十七日には目黒へ参りました。あれは壮行会でもなしにかねがね平素から親しくしている者の会合であつたのであります。しかも私は個人的に総理をよく知つております関係上、ほとんどあのとき一緒におりましたのですが、そういう重大な話合いが行われたとは私は想像いたしません。またSEATOとかなんとか申しましても、これは今固まつた考えがあるわけでもないし、そうしたものについてその会合話合いがもとになつて、そうしてこれは憲法違反になるかならないかということについて、調査を命ぜられるというようなことはないということを先ほど申し上げたのでありますが、その通りであります。
  101. 穗積七郎

    穗積委員 あなたはつまらぬことをおつしやつてはいかぬです。私は二十七日のガーデン・パーテイで吉田総理がそういうことを口にして、そういうことの命令が出、または命令の出ることを予想して事務当局がそういう調査、準備を始めたと言つておりはしない。ただ問題はアメリカがそういうことを言うであろう、吉田総理もそれに応諾する可能性があるであろうということは、世間の見ておるところでございます。のみならずわれわれが客観的に判断をいたしましても、安保条約、MSA協定と続きましたそのつながりは、当然PATOなり、SEATOなりをアメリカは意図し、受ける日本の方もいくらその都度外交でも、そのくらいのことは予測しておられるだろう、こういうふうに客観的にも判断ができますからそういうことを言つたので、その出たところはどうでもよろしい。ただ事務当局がそういうことに対して調査をされ、何らかの結論をお持ちになつたかどうかを聞いておるのです。その事実がないとすればあらかじめお尋ねしておきますが、あなたのお考えとしては、PATOまたはSEATOに参加すれば、憲法に違反するとお思いになりますか。お思いになりませんか。あなた個人の御意見でもよろしいからお伺いしておきます。
  102. 小滝彬

    小滝政府委員 事務当局はいろいろな調査などをして勉強いたしておるでありましよう。しかし総理が外遊するについてそういう調査をしたいというような事実はないということは、私が先ほど申し上げた通りであります。また私に対しての質問は、そういうものができたらどうかということでありますが、その内容いかんにもよるものでありましようから、ここでお答えするわけに参りません。
  103. 穗積七郎

    穗積委員 あなたは大体誠意を持つてお答えになつていないし、見識をお持ちにならぬようですが、実はこのことをわれわれは心配いたしましたので、MSA協定その他の問題を討議いたします場合に、岡崎外務大臣にお尋ねいたしましたら、それは内容にもよるが、大体憲法違反であろうという判断をしておられる、だから、いずれにしても憲法違反であろうとあるまいと、そういうものには大体参加する意思は持つていない。そういう御心配はいらぬという御答弁があつたわけです。そうすると新聞報道というものは事実無根であるわけでございますね。
  104. 小滝彬

    小滝政府委員 その通りでございます。
  105. 穗積七郎

    穗積委員 私は信ずべき日本新聞が、多少書くことの内容についての誤解なり不十分な点はあつたといたしましても、そういうことを三文新聞のようにでたらめを書くとは考えられないので、一応新聞記事から関連してお尋ねしたわけです。しかしそのことに関しましては、直接の関係者はおそらく条約局長あたりであろうかと推測いたしますし、同時にまた法制局のお考えも聞きたいと思いますので、あなたとここで押問答しましても無益なことだと思いますから、きようはその問題を取上げるだけにいたしまして、あらためて総理大臣と法制局長官と条約局長に直接お尋ねいたしたいと思います。
  106. 上塚司

    上塚委員長 本日はこれをもつて散会いたします。    午後零時三十四分散会