運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1954-05-21 第19回国会 衆議院 外務委員会 第53号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月二十一日(金曜日)     午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 福田 篤泰君 理事 野田 卯一君    理事 並木 芳雄君 理事 穗積 七郎君    理事 戸叶 里子君       大橋 忠一君    佐々木盛雄君       須磨彌吉郎君    上林與市郎君       福田 昌子君    細迫 兼光君       加藤 勘十君    河野  密君       西尾 末廣君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         法務政務次官  三浦寅之助君         外務政務次官  小滝  彬君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君  委員外出席者         検     事         (入国管理局次         長)      宮下 明義君         農林事務官         (食糧庁総務部         検査課長)   松岡寅治郎君         農林事務官         (食糧庁業務第         二部輸入計画課         長)      羽場 光高君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 五月十九日  委員岸田正記島村一郎君及び苫米地英俊君辞  任につき、その補欠として北れい吉宮原幸三  郎君及び大橋忠一君が議長の指名で委員に選任  された。     ――――――――――――― 五月二十日  原子力国際管理並びに原爆、水爆等原子力  兵器製造禁止措置に関する請願(育柳一郎君紹  介)(第四九七一号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  外交に関する件     ―――――――――――――
  2. 上塚司

    ○上塚委員長 これより会議を開きます。  本日は外交に関する件について政府当局に質疑を行うことといたします。  なお議事整理の都合上、まずMSA協定による輸入小麦の問題に限定して質問を許しまして、そのあと他の問題に及びたいと思います。本問題については、説明員として食糧庁輸入計画課長羽場光高君、同検査課長松岡寅治郎君が出席しておられます。加藤勘十君。
  3. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 MSA援助協定に基く小麦供給といいますか、実際は買付になるわけですが、買付がなされてその第一船が一昨々日、十八日の日でしたか、横浜港に到着しまして、川崎の日清製粉倉庫に陸揚げされるということになつたわけでありまして、その際積んで来た大久丸荷役行つた労務者諸君や船に乗つておる船員の諸君が、おおわれておるおおい物をとつたときに、すぐに自に入つたのは、あまりにもひどい品物であるのにびつくりしてしまつたわけです。これはMSAによる小麦であるから、こんな悪い物を送つて来たんだろうというようなことでおりましたところが、そのうちに防疫関係官吏が出ばられて燻蒸をするという話が出たので、これは虫がおるのではないかということで、すぐに海員会館の方に連絡をとりましたので、海員会館館長林君から私の方の党に連絡がありましたから、その連絡に基いて十九日の午後四時ごろに、荷役をしておる船に実地視察に、私の方から私外二名さらに婦人部諸君が加わつて視察に参りました。そこで日清製粉の当事者並びに神奈川県食糧事務所検査官諸君からいろいろ話を聞き、現場を見たわけでありますが、そのときた私どもは、すでにヴアキユームで吸い上げて日清製粉倉庫に納めておる途中でありまして、第三船艇、第五船艙から吸い上げておる大体九割程度吸い上げた終りごろの状態を見ましてそこから流れておる小麦を一つかみ手にして、それをいただいて来たのでありますが、それによつて見ても相当――そこにも実物を持つて来ておりますが、相当來雑物がある。それから最初おおいをとつたときに見た状態とは比較にならないものでありますけれども、なぜ上の方にそういう悪いものが出ておつたかといえば、真空パイプ積荷をするのでありますから、どうしても船でゆれておる間に重量のある麦は下の方に沈むし、來雑物重量のないものは上の方に浮んで来る。従つて上の方には百も当てられないようなひどい性質の麦が入つておる、こういうことになるという説明を聞いたのであります。そこで問題は、そういうよううな來雑物が一体どの程度まじつておるのが許されるのかということを開いてみますと、この品棟ウエスタン・ホワイト・ナンバー・ツーという、いわゆる二等品に該当するものだそうでありまして、その二等品の規格としては異種麦、種類の違つた麦が一〇%、それから異種、つまり全然性質違つた雑草の実であるとか草の茎であるとかいうようなものが二%、一・九九%、それから被害粒、欠けたり虫食つたり、あるいは水に浸されたり、そういう被害粒が四%、合せて一五・九九%、約一六%までは二等品の規格に合うものである、こういうことが説明されたのであります。ところが一体どうして二八%の來雑物があるということを調べることができるか。問題はその点にあるわけでありますが、この点について食糧事務所の岡田という検査官は、それは全部の荷揚げをしました後に総合して分析してそれを調べるのです、こういう話でありました。それから調べる対象になる麦は一パーツから六回とつて、八つのパーツがありますから、結局四十八回とつて、それを総合して全部を揚げてしまつた後に検査をして、そのパーセンテージが規格に合うか合わぬかを調べるのだ、こういうことであります。しからば一体もし規格の一六%より以上あつたときにはどうするか、以下の場合は規格内であるからさしつかえないようなものであるが、もし以上あつたときは、どうするかということになると、いや、そういうことは従来の例にはなかつたから、まあ今度もないと思います、こういうわけでありましたが、あるかないかは検査してみなければわからぬわけであります。問題は買いつけるときにあるわけです。買いつけるときのことは、その日清製粉の人もまた食糧事務所検査官もわからない、そこできのう私どもの党では買付の当面の責任商社である日綿実業食糧部長上田という人ともう一人、二人来てもらいまして、いろいろ事情を聞きましたところが、聞いてみると、買いつけるときには、アメリカ政府手持品アメリカ商社が払い下げて、その払い下げた商社日本商社とが売買契約をする、その場合にはアメリカ農務省地方事務所検査官検査をして証明書を出す、証明書を出して、この証明書でよければ買つてくれ、もしいやなら買つてくれるな、こういうことであるから、結局ほしい量は買わざるを得ない、従つてアメリカ政府各校有官証明書一通だけで買わされておる、こういうことになつておるということを聞きました。それから輸送の途中は一体どちらに責任があるのか、実は日清製粉台庫に入れる場合にかんじん買付商社である日綿実業関係者はだれも来ていない。そうして荷揚げはそこにいる労務者日清製粉関係者それから食糧事務所監督官だけで揚げて、かんじん買付商社責任者はおらぬ、こういうような状態でありますから、輸送の途中の責任は一体政府にあるのか、買付した商社にあるのか、こういう点が疑問でありましたから聞いてみたところが、日綿実業上田という人の言うのには、それは買いつけた商社にあります、もし輸送の途中であるいは陸揚げのときに何か大きな変事が起つて損害が生じたとか、あるいは陸揚げしてみてあまりにひどいものである場合には、日本政府買付商社に対して損害賠償を求めることができる、こういう約束になつておる、こういうことでありますが、これも事実上いまだかつてそういうことがあつた前例はないということでありましたが、要するに輸送責任商社にある、買付責任商社にあるということではありますが、問題は全部を荷揚げした後に日本食糧事務所検査するが、検査した後の状態が実際に一六%以上の來雑物があつても泣き寝入りをしなければならぬ、事実上はそうなつてしまう。荷揚げをしたものを倉につけて向う不足を言うとか、あるいは外交交渉によつてこうだああだと言つたつて、こつちは証明書で売つたものじやないか、証明書を納得して買った以上は、お前の方の責任であると言われても、言もないから、外交交渉をする余地さえないということがわかるわけであります。そこでこれは第、船でありますから第一船において十分な注意を促しておくということが、アメリカに対しても私は道義上よいことだと思うのでありまして、ただ何でもかんでも一通の証明書だけで取引をしてしまつて受取つた後に悪かつたというても、文句の言いようが事実上ないということでは困ると思いますから、その点に対して政府は従来どういう態度をおとりになつてつたのか、また買付商社をどういう方法でお選びになるのか、金額は幾らで買いつけられて、幾らの手数を払つておるのか、そういうような点についてすべて詳しく御説明を願いたいと思います。
  4. 羽場光高

    羽場説明員 御説明申し上げます。従来の買付方法でございますが、これはたまたま今回MSA小麦が問題になりましたが、かりにMSAでありませんでも、現在アメリカから買います場合には同じ買い方で買うことになるわけであります。これはアメリカも、カナダも、アルゼンチンもそうでありますが、小麦輸出国はそれぞれ国営検査機関を持つておりまして、その検査が非常に正確なものであるというふうにこれまで考えて来られたわけであります。(「だれが買つた日本政府が……」と呼ぶ者あり)いえ、世界の取引上ですね、どこの国でも買う場合にはその検査フアイナルにして買つております。それでアメリカから一般に小麦を買う場合には、われわれもアメリカ証明書フアイナルとして買いまして、それでもしこちらへ来まして検査した結果その証明書よりも品質が悪いということであれば、これは商社から賠償をとるという、ただいま加藤先生のおつしやつたような買い方で買つているわけであります。それで、今まではアメリカ小麦につきましては、アメリカ検査機関の出しました証明書よりも、こちらで検査した結果が品質が悪いという事例はなかつたわけであります。これからもしそういう事例が出れば、これはまず第一段階としては、食糧庁商社との関係では商社から損害を受けた分だけは賠償させる、それだけの責任を持つて商社は買取りに当つているということになるわけであります。  それから買付商社の選び方でございますが、これは貿易商社が非常にたくさんございますが、穀物関係を取扱うということは、これは国民主要食糧で大事なものでございますから、なるべく従来から穀物取引に経験のあつた、信用のある、かつ海外にも手足を持つている商社を選んでいるわけであります。これはただいま四十社ほどございますが、毎年一回そういつた毎度で商社を選びまして、その商社がそれぞれアメリカカナダアルゼンチンから輸入計画の範囲内で小麦を買いつけて参る。その買いつけたものを食糧庁が買い上げるという形になつているわけであります。それで一定期日条件を発表しまして、品質、銘柄、そういつたものを公表いたしまして、入札の制度によりまして食糧庁としましては原則として円の建値の最も安いものから、それからまた外貨面でも安いものから、そういう条件で安いものから買うことを建前にしております。ただいま問題になつております第一船が幾らであつたかということは、今正確な資料は持つておりませんが、大体これは最初入札のときはFOBで六十八ドル前後だつたと思います。これは一ぱいだけでなく、このときは十ばいくらいとつていると思いますので、六千七ドルから六十ハドルぐらいの間でFOB建値がいろいろ出ていた存じております。それからそれに運賃が、この分は日本船でございますから大体七ドル前後の運賃がかかりますし それからそのほかに商社の手数料としてシー・アンド・エフの価格に、これは保険料も含めてございますが二%ぐらいなチヤージを認めております。大体そのような買い方で買つているわけであります。
  5. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 そこで問題は、今おつしやつた、ように一ぺん商社が買いつけたものを食糧庁で買い上げることになるというお話でありましたが、日清製粉倉庫ではすぐ日本政府に対して頂かり証を発行するということになつておるのだ子、うですね。そうすると一体いつその買上げ方式をとつておられるのか。買付アメリカ外地でやり、船で持つて来て日清製粉に預けたときにもう政府のものになつてしまつておる、商社のものではない、こういうことになつて、いつ食糧庁買上げ方法をおとりになるのか、入札買上げということになるのか、その点がどうもはつきりしないと思うのです。商社の方へ聞いてもその点がはつきりしない。その点はどうなつておるのか。
  6. 羽場光高

    羽場説明員 その点は具体的に申し上げますと、まず入札をいたしまして、それで採用になりましたものに対して、食糧庁商社からの納入申込書を受けまして、それに買入れの承諾書を与えるわけであります。買入れ承諾書を与えますと、この入札になりましたものが、今度は外貨関係から、通産省から別途外貨資金の割当を受けま恥してそれから輸入承認を受けるわけであります。このあたりまでは商社自分リスクでやるという形になるのであります。それからLCを開きまして向う側の輸出者荷物を出してそのBL、すなわち船積み書類ですが、船積み書類担保手形銀行に呈示するわけであります。そうするとLCに基いて、銀行がその船積み書類を買取りまして、ここで先方のシッパ一に外貨が入りまして、BLは一応日本側の手に移ることになるわけであります。それから荷物はまだ船の上にあるわけでありますが、BLが送られて奉りまして、これを食糧庁が、初めの買入れ承諾書に基いて、このBLを買い上げるという形をとるわけであります。
  7. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 そうしますと現物は船の上にあつて書類だけが日本政府の手に入つたときに、もう買い上げられたという形になるのですか。そうすると輸送中の荷物責任は一体商社にあるのか、日本政府側にあるのかわからないことになつてしまうのですが、その点はどうなのですか。
  8. 羽場光高

    羽場説明員 BL商社から早く買う、ということは、これは実は商社が金繰りの関係から早く買い上げてほしいということがあつて買い上げるわけでありますが、実際にはこの責任は、たとえばFOBで買いました場合には、輸送上の責任輸入商社の手にあると思います。
  9. 並木芳雄

    並木委員 船会社に私いたものです。から、その手続をよく知つておるのですが、今のお答えの中で、食糧庁BLが行つてしまうということでは間が一つ抜けておるのじやないですか。向う輸出業者から輸入業転BLが来るのでしよう。輸入業者がそのBL荷物受取つて荷抜きがないか検査して、食糧庁に渡すのじやないですか。食糧庁BLが行つてしまうと言われたのは聞違いだと思うのです。
  10. 羽場光高

    羽場説明員 その点は私の説明が十分でなかつた点がございましたが、BL銀行に参ります。参りますと商社通知が来るわけであります。商社がそれを受取つて食糧庁に持つて参ります、こういうことになるわけであります。
  11. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 そうしますと最初食糧庁商社入札をさせるときには、現物はとらないで、単に国際価格だけを標準として入札をさせるわけでありますね。まだ品物見本は呈示しないのですね。
  12. 羽場光高

    羽場説明員 その点につきましては、たとえばトルコとか、そういう新しい市場から買います場合には、最初見本を取寄せまして、十分に検討するわけでありますが、アメリカの場合ですと、たとえば今のウエスタン・ホワイト・ナンバー・ツーということになりますと、今までにすでに大量に取引しておりますためにわかつておりますので、見本は一々とつておらないと思います。
  13. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 今度のものは、今のアメリカ証明書によると、むしろ品質は規定のものよりもよいものということになつておるようです。たとえば一ブッシェルの重量五十八ポンドというのが最低の規格のものであるのが、今度の証明通知によると、六十ポンド以上、六〇・二ポンドのものであるということになつておるから、実際においては規格品よりもよいものが日本に渡されておるということになつておるようであります。その日本に渡されたよいというものが、これは結果を見なければわかりませんが、しろうと目にも爽雑物が多い。來雑物というか、米でいうならば砕米のような、米として合格性質を持つていない、不合格品とも思われるような砕けたものが相当量つておるわけなのです。そういう点から、はたして重量の点においても、向う証明をそのまま一片証明番だけで信用できるものかどうか。われわれが現物を手にしないことには国営検査であるからこれを信用するということもできますが、現物を手にしてみて、そういう不信の感情を抱かせられる。とかく従来もこういう点が海外からの食糧買付においてあいまいであつたのではないかと思うのです。たとえばこの前のビルマの黄変米の問題なんかにしても、要するにその責任の所在が不明確である。買付が非常にルーズである。こういうところから巨額な損害は結局日本政府負担しなければならぬ。日本政府負担は結局国民負担しなければならぬ。こういうことになつてしまうので、今度のような場合でも、こういう点について、もつと国民手続等について納得の行くような方法はつきり示される必要があるではないかと思う。ただ単に政府商社だけの関係もしくは向うのの買付だけの関係ではなくして、そういう点に万一間違いがあつた場合にはどこが責任を買うか。形式上は一応はつきりしておるようでありますけれども、今の御説明を聞いても、実際の荷物の到着前にもうすでに一片通知買上げが済んでしまつておるというようなことであつて、これでは間違つたものがない場合はよいですけれども、万一間違つたものがあつた場合はうやむやになつて、それは結局国民が損をする。こういうことになつてしまうのですね。だからしてそういう点においてもはたして向う一片通知が全的に信用できぬと言えば、またいろいろな問題が起るでしようが、信用してよいものであろうかどうか、これに匹敵するような横溢方式が何かなければいけないのじやないか。こういうことも考えられるのですが、そういうことについてはお考えになつたことがあるかないか、それを聞かしていただきたい。
  14. 羽場光高

    羽場説明員 アメリカカナダなどにつきましては、向う検査機関が非常に発達しておりますし、われわれも従来これを信用して来ておるわけでありますが、ただいま御指摘の点につきましては、検査食糧庁がみずから食糧事務所検査機関でやるわけであります。検査した結果、向うのサーティフィケートよりも悪いものであるという場合には、別途入札のときに商社との間に食糧庁ととりかわします契約には、そういつた面損害を及ぼした場合には、違約金をとり、賠償をとるという形になつておるわけでありまして、その点につきましては食糧庁としましては、従来とも国内の検査最終のものとして買取りをしておるわけであります。それからこれはアメリカカナダにつきましては向う検査機関相当信用できますので、従来は輸入商社もそれでよかつたわけでありますが、あいまいな検査機関検査証を出してそれを最終のものとして買うというようなことがあるとしますと、商社としてはこちらへ着いた検査の結果で損害賠償をとられるのでは非常にリスクが大きいというようなこともございますので、もしそういうことであれば最初食糧庁納入契約をしますときに、それだけのリスクを込めた価格にしなければ、商社としてはやはり困るという問題が起るのではないかと思うのであります。アメリカカナダにつきましてはそういうことはまずないわけでありますが、そういつた面につきましては今後日本における検査最終のものとして買つたらどうかということを考えまして、目下その方面につきましても検討をしている状況でございます。
  15. 穗積七郎

    穗積委員 関連してちよつとお尋ねいたしますが、先ほどから伺つておりますと、日本に陸揚げされるときの検査がやはり急所の一つたと思のですが、その検査責任はどこにありますか、当然商社でございましようね。ただそれに食糧庁検査官が立ち会う、つまり向う証明書通り品物間違いがあるかないか、もしあれば日本商社向う商社に対してキャンセルするなり損害賠償請求をするなりということになると思うのです。だから、BLをもつて陸場げ品物受取つて検査をして、それで向う証明書通り間違いがないということがわかつて初めて政府に渡す、こういう順序になるべきだと思うのですが、そこをちよつとはつきりしていただきたい。一体どこの責任において検査をするのか、もとよりその場合においてわれわれの了解では、日本商社責任をもつて証明書通り品質であるということをはつきり確認して、しかる後に政府にその所有権なり管理を渡すというのが当然のことだと思うのです。その場合にただ商社責任であるが、商社責任検査官だけでなしに、食糧庁検査官も立ち合うということであろうと思うのですが、その場合に証明書通り品質であるかどうかの検査責任は一体どこにあるのですか。
  16. 羽場光高

    羽場説明員 商社は別に品質検査はいたしません。食糧庁自分検査をするわけであります。
  17. 穗積七郎

    穗積委員 そういたしますと、もし品質証明書間違つていた場合には一体だれが責任を持つのですか。だれにキャンセルをするなり損害賠償をとる権利があるのですか。日本商社は全然ないわけですか。日本商社は一ぺん買うわけでしよう。ですから日本商社責任負担においてやるべきだと私は思うのです。検査を実際にするのは食糧庁検査官であつても、それは検査業務商社に対してサービスするというのか、こちらが立ち会おうというのか、そういうことだけであつて、そのときはまだ権利義務関係商社にあると思うのです。当然なくてはおかしい。
  18. 羽場光高

    羽場説明員 先方の失敗に対してクレームを請求するのは商社だと思います。
  19. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 ただいまのお答えでも、食糧庁の方は商社向うクレームはつけられるようなお話でありましたけれども商社説明によると、一片証明書をもつて買うので、もうこれで文句は言われない、こういう約束で買つておるのだということで、今の御説明大分内容が違うようです。その点はきのうわれわれは日綿実業責任者から聞いたばかりなのですから、私はそういう点でまつた日本食糧不足だという絶対的な立場から買わされる場合に、いやおうなしにどんな悪いものでも買わなければならぬように押しつけられているような感じを受けるわけなのです。だからそういう点についても今後改善の余地がないかどうか、もう少し双方話合いの上で買うことができないかどうかということが、十分検討されなければならぬと思うのです。今までの言いなり次第、成行き次第ということでなく、やはり日本自主性でもつて売買についても、ほかの商品と同様な対等な立場においての売買がなされるように仕向けられるように、政府は検討されなければいけないのじやないか、こういうことを私はきのうも痛切に感じたのですが、その点についてもひとつ御意見を承りたいと思います。  それから私は外務省の方にちよつとお伺いしたいのです。それはこのMSA小麦買付の場合に積荷をする船ですね、船輸送条件としてアメリカの船を半分以上――正確にはどれだけかわかりませんが、半分以上アメリカの船を使用するという約束になつておりますのか、ただそれは商社の便宜上外船を選ぶか日本船を選ぶか自由なのか、それはどつちでしようか、それをひとつお伺いしたいと思うのです。
  20. 小滝彬

    小滝政府委員 外務省にお尋ねの点をお答えいたしておきます。これは日本側としての協定そのものにはございませんけれどもアメリカの基本法五百五十条に余剰農産物を売渡す、日本側からいえば買付の方ですが、その方に関する基本の規定に、半分以上はアメリカの船によるという規定がございますので、その基本法の規定に従つて買いつけておるということになつておりますので、そういう規定が実質的にはあるということに御了解願いたいと思います。
  21. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 そういう基本法に基いてやるということであれば、その最小限にとめられなければしかたがないでしようけれども輸送運賃は一トンについて三ドルの相違があるのです。そうするとこの全送量を輸送するについては、相当運賃の点において日本は高いものを買わなければならぬということになつて、本来ならばそれだけ国際価格よりは安くしてもらわなければ、実際において日本が高いものを買わなければならぬということになつて、非常に不利華受けると思うのですけれども、そういう基本法に基いてやられるというならばやむを得ません。きのう聞くところによると、半分以上ということであつて、半分となつていなかつたが、それははつきりしているのですか、半分以上か半分か、それで相当つて来ると思うのですが。
  22. 小滝彬

    小滝政府委員 半分はアメリカの船を使わなければならないのであります。
  23. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 半分ですれ。  それからもう一つ、第一船で入荷したものの買付は、MSA小麦であることは間違いありませんが、その買付MSAの協定が効力を発生する前に匿いつけられたものであるのですね。そこでこの小麦を買いつけたときとそれからMSAの効力を発生した日との間の国際小麦価格の変動があるわけです。この変動はどれだけありましたか、食糧庁の力にお伺いいたします。
  24. 羽場光高

    羽場説明員 価格の御説明を申し上げます。価格につきましては、第一船を買いましたときは、今御指摘の通りMSAの効力発生前でございますが、効力が発生したならば、MSAによる援助が受けられるという買い方でございまして、もし効力が発生しなければ、普通に商取引として貿易商社を通じて買つておるわけでありますから、普通の買い方になるわけであります。それでその当時買いました価格は、大体先ほども申しましたように、六十ハドル前後でございますが、現在も大体六十七ドルから六十ハドルくらいがFOB価格になつております。これはアメリカの市場価格はいろいろな変動がございまして、ブッシェル当りで二ドル二十セントから二ドル、あるいは二ドル切つたこともございますが、最近はシカゴ相場では二ドルくらいになつております。これを買いましたときには、おそらく二ドル十セント以上であつたと思いますが、アメリカは商品金融会社が売りました場合には、補助金をつけまして、国際小麦協定の価格と同様の価格にしているわけであります。それでありますから、実際アメリカからCCCのものを買います場合には、ここ一、二箇月の間にFOB建値にはさしたる変化はないはずでございます。
  25. 上塚司

    ○上塚委員長 加藤君、ちよつとお諮りいたしますが、ちようど質問の最中でありますけれども、岡崎外務大臣が十二時から参議院の本会議に出席されることになつております。時間がありませんから、もしさしつかえがなければ、この際暫時小麦問題をあとまわしにいたしまして、阿波丸問題に切りかえたいと思いますが、いかがですか。
  26. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 もう一つだけです。――ただいま相場の大した変動がないと言われましたが、商社責任者説明によつても若干の変化があるのです。つまり国際価格が下つておるのです。そうすると、MSAが効力を発生した後に買えば、それだけ安いものが買えたということになると思うのです。従つてこの点は変動がないとおつしやつたけれども商社説明によれば、変動があつたという。われわれは新聞を見ておつても、変動のあることを見ておつたわけです。変動がなかつたというのは、何を根拠にして変動がなかつたとおつしやるのですか。
  27. 羽場光高

    羽場説明員 シカゴ相場には変動が若干ございます。ございますが、日本が普通に買います場合には、アメリカの西海岸から買つているわけであります。大体ポートランドの相場が建値になつております。ポートランドの相場は、その当時から見ましてもほとんどかわつていないと思います。それから実際MSAで買つております場合には、商量金融会社の手持ちを買つているわけでございますが、これは先ほど申し上げましたように、国際小麦協定並の価格になるまで、アメリカ政府が補助金を出しておるわけでありますから、この価格についても若干の変動はあつたかと存じますが、大したかわりはないと思います。  それからもう一つ、買付を少し早期に始めました理由の一つは、これは六月までに買付をしなければいけないという問題がございまして、これを短期間に大埴に買いますと、船賃が値上りするというような問題もございますし、またわれわれとしましてはMSAでまず買うというふうに考えておりましたために、国内の小麦関係からいいまして、少し早期に買わなければ需給上困るという問題があつたわけでございます。
  28. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 あとは保留しておきましよう。
  29. 上塚司

    ○上塚委員長 それではただいまの阿波丸に限定したことを取消しまして、これより外務大臣に対する一般質問を許します。福田篤泰君。
  30. 福田篤泰

    福田(篤)委員 時間がないようでありますから、質問の要点だけをお伺いいたします。吉田総理百が六月四日に出発することはすでに確定の事実であり、またワシントンにおけるブレア・ハウスの国賓としての待遇を受けることに大体内定したと承つておりますが、外国の首相と違いまして、日本ではきわめてまれにしか、こういう特殊な使命を帯びた首相の外遊はないので、国民が大きな関心を持つことは当然であります。これにつきまして出発の日取りが決定し、これを発表した直後におきまして、当然総理として、本委員会において、今般の外遊問題についての御意見を御発表されて、委員会を通じて全国民にその意思を告げるべきだと思いますが、その御用意があるかどうかをお伺いいたします。
  31. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは衆参両院議運等におきまして、官房長官が主として各方面にわたつていろいろ考慮しておられるようであります。倉房長官の決定にまかしております。
  32. 福田篤泰

    福田(篤)委員 官房長官が内閣としていろいろ事務に当っておることは当然でありますが、こういう重要な外交的要務を帯びて行かれるのでありますから、外務大臣としても当然お考えが、あるかと思いますが、いつ、どういうところにおいて出発前に御意見を発表せられるか、大臣の御意見を伺いたい。
  33. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 外務大魚として外交上の問題についてはもちろんお話のようでありますが、主として今のお話の国会その他国民に対して、どういうようなことをして行くかということについては、官房長官の決定にまかしておると思います。
  34. 福田篤泰

    福田(篤)委員 最近の新聞報道、特にUPのヘンスレーの特電を見ておりますと、いわゆる伝えられる一億二千万ドル対米借款問題につきましては、どうも真相はいわゆる対米借款ではないようでありますが、例の三箇年間に十億ドルの余剰農産物をさばきたいというあのアメリカの発表、これに関連して県側としてもいろいろ考えを持つておるのでありましようが、これについて正確な事実を御報告願いたいと思います。
  35. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはちようど新聞関係諸君もおられますので、特に申し上げておきますが、どの新聞でありましたか、一億二千万ドルの借款を交渉に行くのだということが数日前に出たわけであります。それがもとになつてアメリカからそれに対して交渉があつたとか、ないとか、一億二千万ドルじやない、一億ドルだとか、いろいろ報道があるわけであります。その根拠となる一億手万ドル交渉するといつて出ました事案は、全然間違いであります。そのような事実はないのであります。それが新聞にたまたま出たものでありますから、それが一犬虚にほういう万犬実を伝うといいますか、全然そういう事実のないことを想像してかつてに書いたわけであります。  それから総理の外遊につきましては、まだいろいろ決定されてない事項もあると思いますけれども、おそらく具体的にそういう話をすることはなかろうと私は考えております。少くとも政府として、そういう一億二千万ドルとか一億ドルとかいう借款の申込みとか交渉を、総理が行つた場合にしてもらうという考えは全然持つておりません。
  36. 福田篤泰

    福田(篤)委員 今御答弁の中の、全然そういう要請をしてないということは、ヘンスレー記者も、アメリカ政府側も否定しておりますから、これは了解いたしますが、やはり一応火のないところに煙は立たぬというか、一応具体性があるのではないか。すなわち御承知の通り、五百五十条による日本の余剰物資の使途につきましては、いろいろ不便もあり、外貨手持ちが少いという今後の日本の悲観的状況から見ても、今アメリカが発表した十億ドルの問題、これに関連して何らか技術的に両国間で下話くらいはやられたのではないか。やつておるといううわさも聞いておりますが、対米借款というものでなく、先ほども申しました通り、余剰物資に関する小麦、とうもろこし、その他農産物に関するアメリカの発表と何らかの関係があり、しかもその額がそれに近いので、そういううわさが出たのじやないか。これには一面の真理があると思いますが、これについてお伺いいたします。
  37. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 余剰農産物につきましては、ただいまもプリンクレー委員長初め多数の人が日本に来ておられます。われわれとしても将来のために、そういうことについてのいろいろな材料を研究するために話合いもいたしておりますけれども、まだ買うか買わないかということさえ決定いたしておりません。それはことしの麦、米の作柄にもよりましようし、またこれは通例の輸入を阻害しないという条件もあるわけでありますから、こういう点で考慮もいたさなければならない。また買うといたしましても、条件がよくなけれれば買えないわけであります。従つてただいまは、いろいろの条件その他考慮に入れるべき必要の点を研究しておる程度であります。おつしやるような一億ドル買うとか、八千万ドル買うとかいうことは、政府部内ではまだ全然具体的な話に乗つておりません。
  38. 福田篤泰

    福田(篤)委員 今おつしやつたプリンクレー氏が十九日の記者会見におきまして、MSAの第五百五十条の問題について、今後はこれを緩和して日本側に何か有利なことをしたい、それについての法案を今準備中だということを言つておりますが、これについて御答弁願いたい。
  39. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 どういうふうなことか、私も内容は知りません。条件を緩和するような法案を考慮中であるのか、提出したのか、はつきしりしませんが、とにかく出すことにしてやつておるようであります。しかしプリンクレー氏の場合は日本ばかりじやありません、要するにアメリカの余剰農産物を、できるだけはかしたいといえ、目的で来ておるのであつて、そのためには条件の緩和も必要でありましようし、またその売る国に対して、アメリカがその国の品物を買つて貿易じりを合せるように努力するために、たとえば日本なら、どんなものをアメリカはもつとよけいに買えるか、つまり余剰農産物と引きかえにアメリカはどういうものを買えるかという市場調査も兼ねて来ておられるようでありまして、今各方面の意見を聞いておるようであります。御質問の緩和する内容について私はまだ正確なことを知りませんけれども、要するに先方ではこれを考慮中であることは事実のようであります。
  40. 福田篤泰

    福田(篤)委員 これと間接の関係がございますが、十八日のロイター電によりますと、キーン議員が近く日米間で一種の関税交渉をして、貿易促進をやろうじやないかという、きわめて大事な提案をしておるようであります。これは御承知の通りガットの一環としてやるのか、あるいは日本だけ切り離して関税交渉をやろうとしているのか。おそらくこれは大使館側から正確な報告が来ていると思いますが、この問題は日本の貿易上大きな問題でありますので、これについて御答弁願いたい。
  41. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私もその報道は見たのですが、私の想像するところでは、ガットの例の関税交渉のことを意味しておられるのではないかと思います。ただそれにつきましては、特恵関税の延長が一年ずつになつておりますが、その一年ずつの延長の条件として、重要なる交渉はやらぬということになつて一年ずつ延長されておるようでありますから、はたしてその意見通りに関税交渉まで至るかどうか。われわれはジュネーヴ以来しばしばそういう希望を持つておりますが、実現されるかどうかは、ちよつと私にはまだ判明いたしません。
  42. 福田篤泰

    福田(篤)委員 提案者の立場から考えましても、私は相当具体化し得る見込みあるかと思うので、日本側はむしろこれを促進するように打診をし、かつ促進する方向べ御努力を願いたい。  それから今問題になつているSEATOの問題です。これは私見でありますが、おそらく仏印の問題を朝鮮の事件と分離させて、主として南太平洋における安全保障という考えで、アメリカがいろいろ働いているのではないかと思うのであります。そうなりますと日本、台湾、韓国は、当然SEATOから除外することを初めから考えてやつていると思いますが、これに対して御意見を伺いたいと思います。
  43. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 例のSEATOであるとかPATOであるとかいうものについては、具体的な内容、つまりどういう条件でどういうことをやるかということはなくて、ただ一般的にユニフアイド・アクシヨンとか、あるいはリジョナル・セキュリティとかいうようなことで表現されておりまして、はつきりしたことは、今後ジユネーヴ会議でもどもうまく行かぬというようなときになつて出て来るのではないかと思いますが、しかしいずれにしましても、常識的にいわれるSEATOであり、PATOであるとすれば、日本の憲法からいえば、かりに招待されても、日本はこれに参加できるかどうか、はなはだ疑問であると考えております。
  44. 福田篤泰

    福田(篤)委員 この問題は、法理的にはもちろんおつしやる通りで、初めから疑点がないので、問題は政治的に初めから日本の加入を考えてないと見ているのですが、これについて重ねて政府の御所見を伺いますが、時間がありませんので、一点だけお伺いいたします。これは十六日でありますが、韓国の白首相がやはり記者会見で、日本はいわば中間的商人の立場であるから、今後の韓国の復興についての対日買付は考える必要がない、これはアメリカのいろいろの負担を増すものである。こういう日本の韓国向け輸出に対して非常に大きな影響を及ぼす発言をしておりますが、これに対する正式な報告があつたかどうか、また何らか交渉の話があつたかどうか、この二点をお伺いいたします。
  45. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 それについては正式なものはありません。新聞の報道だけであります。新聞の報道としては、先方のいろいろな人が同趣旨の発言を過去においてもしたことがあるのでありまして、ことにただいま選挙を控えておるときでありますので、いろいろその方の考慮もあるかと考えております。われわれといたしましては、そんな中間商人的なことで韓国と貿易をやつておるわけではありません。この点は、実際上は十分理解があるものと考えておりまして、この発言に対しては、これをしいていろいろとりあつて議論するよりも、実際上貿易の増進がお互いの国の利益になるということを実地に示すように努力をいたしたい、こう思つております。
  46. 上塚司

    ○上塚委員長 並木芳雄君。
  47. 並木芳雄

    並木委員 私は吉田首相の外遊について、直接吉田首相に出てもらい、質問をしたいと思つておりますが、なかなか出て来ませんので、当然このことについて所管の大臣として知つておらなければならない岡崎大臣に質問をいたします。  今度の吉田首相の外遊というものは、外国から招請を受けて出かけるのですか、それとも吉田首相の自発的の気持から行こうということになつたのですか、どちらでありますか。
  48. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 こちらから出かけて行うという考えであります。
  49. 並木芳雄

    並木委員 それならばすでに御老体であり、国内の政局もまことに不安定の今日、爛頭の急務であるという状態から抜けて行こうというのですから、そこによくよくの使命がなければならないと思います。本来外交は岡崎外務大臣がやらなければならぬにもかかわらず、それを押しのけて、外務委員会には一回も出て来ない吉田首相が出かけて行くということについては、よくよくのことがなければならぬのであつて、それについては、当然岡崎さんは承知していなければならぬはずであります。そこでお伺いいたしますが、どういうことが今度の外遊の主眼でありますか、せめて項目だけでもわれわれに示してもらいたいのであります。
  50. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 よくよくのことと言われますが、総理大臣の外遊ということは、先般もカナダの総理大臣が日本に見えました。その他各国の総理大臣が各地に行つておるのは御承知の通りでありまして、セイロンの総理大臣もあるいは日本に最近見えるかもしれないというわけで、各国の交歓が行われておるのであつて、今の世の中ではそう珍しいことであるとは考えておりません。総理の外遊につきましては、とにかく国会の状況がはつきりしなければ行かれるか行かれないかわかりませんから最終的な決定はまだなされておりません。従いまして最終的に何をどういうことをするのだということは、われわれにもまだ申し上げ得ない段階でございます。ただ普通に考えられますことは、要するに各国との間の親養関係をできるだけ増進し、日本の理解を先方に深めさせるとともに、各国の理解を深めることによつて、さらに世界平和を維持するような親善関係を増進したい、こういう点にあると考えております。
  51. 並木芳雄

    並木委員 親善関係に重点があるということがただいまの答弁ではつきりいたしました。それならば吉田首相は参議院においてどうしてああいうもつたいをつけたような答弁をしておるのでしようか。今ここでどういうことで私が行くということを漏らすと、それは秘密漏洩になつて、諸外国に対して影響するところ甚大であるから言われない、こういうふうに害われておりますから、私ども国民としては、されば何かあるのであろうと思うのは当然なのです。また彼一流の秘密独善外交がここに現われておるというので、疑心暗鬼になつて来るのでありまして、何ゆえに吉田首相が参議院でただいまの大臣のように、主として親善であつて日本立場を理解させることが目的なのだ、こう言い切れないのですか。これは大臣はおわかりであろうと思います。
  52. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私は私なりの見方で、ここで申し上げておるのでありまして、それは別に国際関係にも何ら影響のないような基本的な考え方を申し上げておるのでありますが、私は総理がどういう考えで、参議院でどういう答弁をしたかということを、総理の代理としてここで御説明する立場にないのであります。またそういう委任を受けて出席したわけでもないのであります。従つて総理がどういう考えでおられるかということは申されませんが、ただ再三申しておるように、まだ決定しておらないのであつて、決定しておらないものを総理大臣として参議院の本会議説明するということは、これはちよつとできにくいものであろうと私は考えております。
  53. 並木芳雄

    並木委員 決定しておらないかもしれませんけれども、内定はしておるはずであります。今から手順を定めて手配をしておかなければ、外遊というものはなかなか予定通りでできないのですから、内定はしておると思います。だから第一の出発予定は六月四日だということには間違いないでしようか。それでただいま親善関係日本を理解させることが主たる目的であるというならば、これは一日、二日を争うことはありませんから、もし国会がさらに延長されて、六月四日以後になるようなことがあれば、それに伴つて出発も延期される、こういうふうに了解されますが、その通り了解してよろしゆうございますか。
  54. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 要するに出発は、たとえば四日に出れば幾日にはどこに行つて、幾日にはどこに行くという建前はとつておりますけれども、繰返して申すように決定しておるわけではないのであります。
  55. 並木芳雄

    並木委員 親善、理解と申しますけれども、特にその中で元の大蔵大臣の向井さんが一枚加わつておるということは、われわれやはり無視できないことであります。特に親善であり、日本を理解せしめるのであつたならば、あの向井さんのような本会議における答弁をわれわれ覚えておりますけれども、ああいう人を持つてつたらかえつて親善にならず、日本の理解を曲げてしまうのではないかとさえ思われるのです。特に向井氏を起用してお供に連れて行くということは、何かそこに特別の理由がなければならないと思うのであります。向井氏を連れて行くという理由はどこにあるのでございますか。
  56. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 向井さんに対する見解は、遺憾ながら並木君と私とは見方が違うようでありまして、向井さんは国会でもりつぱな答弁をし、りつばな大蔵大臣であつたと私は考えております。
  57. 並木芳雄

    並木委員 それならそこはよいけれども、向井さんを連れて行くのはどういうところに目的があるのですか、それをお尋ねしたい。
  58. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 向井さんはきわめて常識の発達した国際人でありますから、これを同行されることは、日本の理解を深める上において役立つだろうと思います。
  59. 並木芳雄

    並木委員 実際今の答弁を聞いておつて、これではほんとうに政府とともにわれわれ国民日本外交を憂えるという気持が起つて来ないのです。岡崎大臣自身も起らないのではありませんか。今度の場合大臣自身も、吉田さんから知らしむべからず、よらしむべしにされたか、先ほどから少しひねくれておるようなところも拝見される。これではともに心配し、ともに外交をやつて行こうという気魄が起らないことを遺憾といたします。その中で私はきようは議題にしようと思つていた例の対米債務の問題がございます。これは政府は、ガリオア、イロアは債務と心得ておるという。その心得ておるということの証拠はどこにあるか。私どもが開きましたところ、岡崎大臣は、それは阿波丸の請求権を放棄したときに、アメリカとの間で協定をとりかわしておる。こういうことでございました。その協定義がようやくわれわれの手元に渡つて来たのでありますけれども、その中で、おそらくここのところをさしておると私は思います。最後のところの了解事項に「本日署名された阿波丸請求権の処理のための協定の署名者は、各自国の政府のために、次の事項を確認した。」とあつて、その中で「占領費並びに日本国の降伏のときから米国政府によつて日本国に供与された借款及び信用は、日本国が米国政府に対して負つている有効な債務であり、これらの債務は、米国政府の決定によつてのみ、これを減額し得るものであると了解される。」こう書いてあります。この了解事項の中にある債務には、ガリオア、イロアは含まれないのではないか、こう私どもは思うのであります。占領費、借款、信用、この三つの中とは別のものであると思うのでありますけれども、もしこの中に含まれておるならば、初めからこれはもう債務であつて、その後われわれと政府との間でもんちゃくが起ろうはずはないのであります。ついこの間第一回の会合が附かれたと聞いておりますが、その席上でも、わが日本政府は債務ということを確認しておらない。向うに債務という言質を与えておらないということの報道がありましたので、この点はわれわれは意を強うしておるわけでございます。従つてお伺いしますが、そのどこにガリオア、イロアが入つて来るので、ありましようか。
  60. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 第一阿波丸の協定を今初めて手に入れたとおつしやいますが、昭和二十四年四月にこの協定を結んだとき、私はまだ当時は政府に入つておりませんでしたが、政府側から発表されて、この協定は私も見ております。並木君もおそらくその当時見ておられてお忘れになつたのかと思います。  そこで御質問の点でありますが、占領費の中にガリオア、イロアが入つておるという見解でありまして、当時の速記録をごらんになりますと、今ちよつと持つておりませんから正確には言えませんが、吉田当時の外務大臣が、ガリオア、イロア等は、とかく贈与であるというふうに言われておりますが、そうではなくて、これは債務でありますという趣旨の答弁をいたしておられます。また私は当時外務委員長として、この元になりました決議案の提案理由の説明及び質問に答弁をいたしておりますが、その中にもガリオア、イロア等を含めました対日援助は額はきまつていないから正確な債務ということは言えないかもしらぬが、日本の負うべき債務で、ただ額等がきまつていないものであるという趣旨の説明をいたしております。
  61. 並木芳雄

    並木委員 この占領費は、私どもが普通に考えるのは、占領のために要する軍隊の衣食住の費用とか、その他の通常必要とされる費用に限定さるべきものであると思うのです。そうでなければ特に占領地を救済するとかあるいは経済復興のためであるという別途の項目でアメリカが支出するはずもなければ、われわれが高にわたつているいるの感謝決議を国会でやるべきはずもなかつたのでございます。今の大臣のガリオア、イロアがこの占領費の中に含まれるということは、独断じやないのでしよか。われわれが国会議員としてそれに拘束される何か物的の証拠というものがあるのでしようか。ただいまの答弁されたとかなんとかというのは、ただ吉田首相として答弁された、意見を述べたというので、国会としては拘束されるものではないと思うのですけれども、その点はいかがなものでしよう。
  62. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 第一に占領費には直接の占領費と間接の占領費とありまして、この間接の占領費の中にはガリオア、イロア等が入るものと政府としては考えております。平和条約の規定によりますと、直接の占領費ということを断つて、これは請求しないということになつておりまして、それはいわば裏を返せば間接の占領費は請求しない方には入らないということになろうかと思うのであります。それから当時の政府の見解でありますが、その当時吉田兼任外務大臣がガリオア、イロア等は日本の負うべきものであるということを、これはとかく贈与と思われがちであるが、そうでない、こういうことを答弁いたしましたに対して、その当時国会のいずれの方面からも、それは違うというような発言はなかつたのでありまして、少くともそのときは国会としてはそうであろうといいますか、黙認といいますか、とにかくしからずという発言はなかつたと記憶しております。
  63. 並木芳雄

    並木委員 それは当時私どもとしては、ガリオア、イロアというものは返済などということをゆめにも考えておらなかつたためであろうと思います。そのときにすぐそれを反駁する言葉がなかつたといつても、その点は了解ができるのじやないかと思います。私は今日この問題に直面して、何も払うべきものをいやだから払わないという意味でこれるのではありません。今度の吉田外遊というものは、もし対米債権というものの交渉を第一クラスのものにあげて、重要事項の中にこれを入れて交渉して来るのだというのであれば、だんだんとその外遊の意味もわかつて来る、こういうところから今お尋ねしているのでありまして、今度の外遊の主要題目の一つにこれがあげられて来るのではないかと思いますが、その点いかがでしようか。それならば向井さんのような財界としての経験者を連れて行くということも、意味が初めて出て来るわけなのです。
  64. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ガリオア、イロアにつきましては、当時古田兼任外務大臣は、これは贈与と思われがちであるが、そうでないとはつきり申しておるのであります。それをどうも並木君のようにお聞きになるのはちよつと私は理解ができないので、速記録をごらんになればはつきりそう計いてあります。但し私の見ましたのは、その点は実は参議院の速記録じやなかつたかと思いますから、その点は違つていたらあるいは参議院の速記録かもしれません。しかしとにかく国会の速記録にそうはつきり言つております。それからガリオア、イロアの問題は、これは政府で発表いたしておりますように、東京において会談をするということになつて、ただいまやつております。それ以外には何ら政府の方針は変更いたしておりません。
  65. 並木芳雄

    並木委員 それではもう一つ、吉田首相の外遊の使命の中に、フイリッピンの賠償問題があるかどうか、これもずいぶん大きな問題であろうと思います。先般来私どもあるいは岡崎外務大臣を非難し、あるいはまた大臣を庇護し、こういうような形で今日まで来ておつて、あまりに微妙な問題でありますから、ただちに岡崎不信任案というところまではまだ来ておりませんけれども、これは見ようによれば、やはり大きな岡崎外交の失敗であり、吉田内閣の汚点であるといわざるを得ないのです。しかしいろいろと事情を聞いてみますと、必ずしも日本政府ばかりが責めらるべきではないので、フィリピンの方にも非難さるべき点があるようでありますから、目下われわれとしても静観中のものではあるのです。大野公使が辞表を出したということでございますけれども、その後大野公使の辞表などはどういうふうに処理されましたでしようか。そうして本件は吉田首相がアメリカに行つて何らかの交渉をしなくても、十分打開の道が見込みがあるのかどうか、それともやはり吉田首相の主要議題の一つになつておるのかどうか、その辺のところをお聞きしたいと思います。
  66. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 フィリピンとの賠償の話は、これはまだなかなか前途困難な点があろうと思います。しかしわれわれとしては誠意をもつてこの交渉に当りたい、こう考えております。但しこの問題は日本とフィリピンとの問の交渉案件でありまして、第三国の勧奨等をあるいは口添え等を依頼する考えは持つておりません。
  67. 上塚司

    ○上塚委員長 ちよつと速記をやめてください。   〔速記中止〕
  68. 上塚司

    ○上塚委員長 速記を始めて。――須磨彌吉郎君。
  69. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 他の問題に入る前に先般来の懸案でございますが、外務大臣に質問をいたしました外務省の諸情報を集めたゼネヴア会議に関する調査報告の要項があつたらこの際御報告を願います。
  70. 小滝彬

    小滝政府委員 実はこのほどゼネヴア会議に関しましては関係国に駐在いたしております大公使からもいろいろ報告が来ておるのであります。しかしこれは新聞などに出ておりまするところ、輿論などを要約したものであり、またときに要人と会談をいたしました際の印象というようなもので、きわめて断片的なものでありますので、非常にはつきりした見解というようなものがもたらされておる次第ではございません。しかしこの会議日本にとりましても非常に重要でありますので、外務省では随時係官の間で打合会などをいたしております。そこで須磨委員からの御要望もございましたので、係の方で打合会でいろいろ話し合つている点をまとめさせましたところ、これはただ単に新聞などに出ているものを要約した経緯にすぎないものでございますので、外交についての権威者のお集まりのこの委員会でひろうするのはいかがかと思いますため、はなはだ僣越でありますけれども、私個人のこれまでいろいろ新聞とかあるい在外公館からの電報を見まして得ました印象を、これは政府の見解というわけではありませんが、私の観測を述べまして御批判を賜わりたいと考えます。  まず第一には、今度の、ゼネヴア会議の討議の範囲がいかがなるであろうかということにつきましては、国会におきましてもしばしば御質問を受けたところであります。これに対しては、結局軍事行動をいかに終息せしめるか、朝鮮及びインドシナにおける軍事行動をどうして収めるかに局限したものであろうというような予想を、再三私答弁いたしておりますが、これまでのところを見ますと、事実予想の通り、できるだけ議題というものを局限してかかろうという態度のようでございます。もちろん共産諸国側におきましては、これを機会にいたしまして、中共政府の国際的地位を確立しようとか、あるいはできるものならば、自由国家群間における意見の相違を拡大させようとかいうような考え方もあろうかとも思いますが、軍事的な措置だけでなしに、政治的な措置というものを考えて、初めて軍事的措置というものが決定するのだということを主張いたしておりますけれども、しかし一面におきましては、これをあまりに固執いたしますと、今度は反対に自由国家群における協力関係を強めはしないかとい思惑もあるのではないだろうかと存じます。それは議長の選挙の際とか、あるいはその後のソ連代表の行動ぶりを見ましても、私は相当妥協的なところがあるのではないかというように、個人として観測いたしておるのであります。  この会議に関連して、これは重要な会議だから、日本立場はつきりさせるような機会をとらえろということは、国会においても御希望がございましたし、私どももさように考えておつたのでありますが、たとえば関係国であるイギリスとかあるいはカナダども中共においてはいろいろまだまだ人がつかまつておるとか、財産の問題が片づいていないという問題があるにもかかわらず、私どものいろいろ調べましたところでは、まだそうした話は出ていない。むしろそういうものを持ち出すと、ゼネヴア会議というものがますます紛糾するおそれがあるやにも考えられておるのかとも推察いたされますが、相当日本に利害関係があるような問題というものは、今のところは取上げられておらないし、またこの会議で取上げられるということは期待しがたいだろうと存じます。但し間接的には今後極東の平和がどういうように持つて行かれるかということは重大な問題でありますので、私どもといたしましては今後とも十分注意をいたしまして、この推移をよく警戒的に見守つて、必要の場合には適当の措置をとりたいと考える次第でございます。  そこで今議題となつておりますのは、一方には朝鮮の問題がありますし、一方にはインドシナの問題がありますが、朝鮮の問題につきましては、ずつと見て参りますと、各国とも、ルクセンブルグを除いては全部発言しておる。ことに南北朝鮮の両政権は、二度も発言をいたしております。そして北の政権と南の韓国とは、相当主張がかけ離れておりますが、これに対しまして濠州が最初提案し、またあとでイギリスが出て参りまして提案しておりますあの解決案というものは、私はあたかもドイツに関する議決案と同じようなものであつて、あの選挙というものは動かし得ないのじやないかというように考えます。すなわち選挙は北鮮だけでやるというようなことは、韓国の言い分も無理がありますから、全朝鮮を通じて行う、但しこれは南北の人口比例というものを考えて、比例によるものでなければならないという点、また一方北鮮あたりでは、独立の管理機構を設けたいということを言つておりますけれども、これまでアメリカあたりが常に国連中心ということを考えて来、それを主張して参りました経緯から考えてみますと、やはり監視機関というものは国連中心のものでなければならぬ、これ以上に譲歩することは、アメリカのそういう強い主張もありましようから、むずかしいのじやなかろうかというふうに見ております。それじやそれを共産側の方で承認するかということになりますと、もちろんドイツと朝鮮とは地理的な立場も違いますし、いろいろ重要性も異なるでありましようが、結局はドイツ式になつてなかなかはつきりした結論に到達得ないのじやないか、ステールメートが続くのではないか、これは完全に私個人の見解でありますけれども、こういうふうに見ておるのであります。    〔委員長退席、野田委員長代理着   席〕  次にインドシナの問題につきましては、これは今いろいろの国からいろいろの案が出ておりますけれども、ヴエトミン側、ホー・チミン側の提案というものは、もちろんそのまま西欧側は賛成し得ないでありましようけれども、たとえばフランスの経済的、文化的利益を認める用意があるとか、あるいはまたはつきりは出ておりませんけれども、いよいよきちつとした独立政権を認めるなら、フランス政権に入つてもかまわないというようなニユアンスのあるものでございますので、私はこれはもう少し何と申しますか、フランス側で考えるという気持になれば、提案として全然これをむげにしりぞけるべき性質のものではない、どこか妥協の余地も多少あるのじやないかというように見られますし、ことにフランスの立場を考えてみますと、フランスの議会では政府は非常にわずかの差でようやく政権を維持しておる。しかもこの会議が始まります前に、今度のゼネヴア会議はあくまで休戦が成立するよう政府として最善の努力をすべきであるというような要求もつけられておりますから、フランス側も今のインドシナの戦況など考えまして、相当妥協的に出るのじやないかというように見ますので、私は朝鮮の問題よりもインドシナの問題については、これまでのところ今の直接の問題が、どう停戦するかという問題でありますために、どちらかというと楽観的に見ておるのであります。ことにソ連側の議場における発言ぶりなどについて、これは新聞報道でございますけれども、あつせん役みたいな態度を示しておる場合もあるやに伝えられておるところもありますので、ソ連の方もあまりにひつぱつてつて、SEAT〇とかPAT〇という方向に西欧陣営をひつばつて行くということも、好ましくないという考えを持つておりはしないかというふうにも見ておるのであります。しかしアメリカとしては、これまでいろいろ声明などして参りました立場もありますので、あまり大きな妥協というものは、これを牽制しようとしておるでありましようし、また十一日のダレスの新聞記者に対する談話など見ましても、そういうところがうかがわれますので、この中に立つてイギリスの外務大臣がどれだけの働きをするか、どうしてもイギリスという国は、コロンボ会議に首相が出席いたしました諸国との関係もございますので、何とかしてこれを、政治的解決はできないまでも、軍事的な面である程度のまとまりをつけたいということを熱望して、今秘密会議などでも努力しているのじやないかというように見ております。しかしこの会議は成功いたしましても、決裂いたしましても、いずれにいたしましても、会議がかりにある程度の結果を得ましても、インドシナの分裂と申しますか、あん玉のようなところが、ラオス、カンボジヤはいずれといたしましても、ヴエトナムの方には残るということは予期せざるを得ないだろうと思います。  しからばこの後における安全保障というものは、どうしても必要になつて来る。決裂した場合も必要になる。またそうでなく、何らかのかつこうをつけた場合も、何かの措置をとらなければならぬということになりますから、それでは一体どういう保障の措置をとるか、これにつきましては一方ロカルノ方式のようなものも考えられないわけではなかろうと存じます。特にイギリスあたりは、こうした方式にも興味がないわけではなかろうと存じます。ソ連側の中共とかいうようなものをできれば含め、またイギリスの自治領関係をも含めたものを考えたいのではないかと思いますが、しかし現実に、先ほどから御質問の中に出ましたSEATOとかPATOとかいうようなものが新聞でも喧伝せられておりますし、今の実情から考えますと、結論的にはなかなかソ連との話もつかない、アメリカもこの点は非常に重要視しておりますから、そうしたものに行かざるを得ないじやないかというように観測いたしております。がしかし、それも内容がどうなるかは会議の結果にもよりますし、また今後米国と英、仏との関係がどうなるかということにもよるでありましようが、現実には、結局英、米、仏、ニュージーランド、濠州というような程度、またそれに積極的に加わりたがつているタイとかフィリピンもございますので、その辺まで発展するかどうかわかりませんが、そうしたものになりはしないかというように存じます。アメリカとイギリスとの見解が非常に離れておるというように新聞でも相当大きく報じられておりますけれども、しかしあれは――先ほど大臣が引用しましたユニフアイド・アクシヨンというようなものも、会議の始まる前に一つの牽制的な意味、また警告的な意味で言われておりました。しかしだんだん掘り下げて問題が論じられて来ますと、結局アメリカの考え方、ダレスの考え方というものは、そういうアクシヨンを今起そうというのではなしに、ユニフアイ・オブ・ウイル、統一意識を持ちたいというところにあるのだというようにもいわれておりますし、その後イギリスに行きましているいろ話してみれば、イギリスの方は自治領との関係もありますので、おいそれと非常に進んだ結合体にはなかなか入りにくいというような点もあつたようでありますから、何としてもこの辺で米国としてもこれらの国の協力を得なければならないので、先ほどちよつと申しましたようなかつこうで、保障機構というものをだんだん築き上げて行こうという運動が、続けられるのじやないかと見ておるわけであります。  また福田委員が先ほど御質問になりました台湾とか、タイ国とかいうような問題もございますけれども、いろいろ政治的な面もあるので、とりあえずはそういう国、ことに憲法とか政治上でいろいろ困難がある日本なんかは、現実に問題にもなりませんから、先ほど申しました五国が中心になつて考えるというところに進んで行き面しないか。従いまして、私といたしまして、ゼネヴア会議の結論がどうなるかということは、もちろん何ともはつきり申し上げかねますが、しろうとといたしまして、これまでいろいろ海外などの報道も読みましての感想でございます。これにつきましては、外交界の先輩である須磨委員あたりからいろいろ御批判もあろうかと思いますが、率直に私個人の見解を述べまして、答弁にかえる次第であります。
  71. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 たつた二つばかりの点を補足的に御質問申し上げておきたい。周恩来氏の活躍が中で非常に目立つておるわけですが、これに関して一つの消息として、アメリカと周恩来、すなわち周恩来の代表する中共というものが相当近づくのではなかろうか、こういう見方がありましてそのために、たとえばダレス長官が帰つてベデル・スミス次官が出馬したのも、その理由の一つがそこにあるというのでありましてこれはわが日本にも非常に深い関係のあることであります。  いま一つは、かりに英本国が不賛成であつても、ニュージーランドあるいは濠州のことき、進んでこの安全保障機構に熱意を示しているということもございますから、私の伺いたいのは主としてアメリカでございますが、その他の関係国から日本政府に対して、さようなことについて、ゼネヴア会議に関連して何かの申入れのあつた事実がございますか、この二点をお答え願います。
  72. 小滝彬

    小滝政府委員 この会議関係いたしまして、英国側から申入れがあつたというよこ、なことは実は全然ございません。ただ日本といたしましては、この機会に何か解決できる問題でもあれば、ついでと言うと語弊がありますが、いろいろ関係国が来ているのであるから、この際友好国があつせんするということは希望いたしておりますけれども先方から、情勢が変化する点もあろうということを予測してのアドレス、あるいは会議に関連しての申入れは、全然ないというのが事実でございます。
  73. 穗積七郎

    穗積委員 きようは大事な問題がたくさん出ながら、時間が中途半端になりましたので、先ほど七塚委員長が言われましたように、明日続行するということですが、きようの委員会の成果として、小麦の問題について委員会として実地検査をするかどうか、そういうことの判断になる程度の締めくくりをつけていただきたい。  もう一つは、細迫委員から緊急質問を要求されておりますが、朝鮮の李浩然氏の渡航の問題について、これも政府の方針を明らかにしていただいて、これだけはきようの委員会でひとつ締めくくりをつけて散会していただき元いと思いますので、委員長においてさようおとりはからいを願いたいと思います。
  74. 福田篤泰

    福田(篤)委員 今の須磨委員の質問に関連しまして、一言政府の御意見を伺いたいと思います。  ジュネーヴ会議の最中、先般アメリカの国防省が、朝鮮動乱の原因について発表したことは相当興味ある事実でございますが、これについてアメリカの国防省の発表によりますと、ソ連の将校が北鮮軍に対して三十八度以南突破を命令したと伝えられております。これについて日本政府は、その正文を受取られているかどうか、またこれについての政府の御見解を承りたい。
  75. 小滝彬

    小滝政府委員 日本政府に対しては、何ら通報が、ございません。
  76. 福田篤泰

    福田(篤)委員 政府の意見は……。私がこれをお尋ねするのは、今共産党側では、南鮮の李承晩政権の方が挑発して朝鮮動乱が起つたと盛んに宣伝している。このジュネーヴ会議のときにアメリカの国防省が正式に、ソ連の命令した将校の名前まであげて、朝鮮動乱の発端はソ連の使嗾による北鮮軍の南鮮侵入からと発表しておりますから、これについて政府側の御意見を伺いたい。
  77. 小滝彬

    小滝政府委員 日本政府としては、これに判断を加える資料も持つておりませんりで、それの真偽について批判を加える立場にはございません。
  78. 並木芳雄

    並木委員 これは大臣にお尋ねするまでもなく、次官と条約局長で答えられると思いますから、一つだけ、先ほど大臣のときにお尋ねしようと思つた残りのやつを簡単に聞いてみたいと思うのです。それは四月三十日の未明に、富山県の伏木という港に外国の船舶が入つて参りました。その船はパナマの船で、船名はアンドレアスというのであります。ところが入つて来て、あの伏木港の中瀬にある網をひつかきまわして、多大の損害を与えて暗いうちにどこかへ行つちやつた、こういうのです。その後被害をこうむつた――富山県の尾山さんという人ですが、船会社とも交渉し、船長とも会つたのですけれども、どうしても言を左右にして、この損害賠償には応じられないということなのです。それで私のお尋ねしたいのはこのことがどちらに責任があるかどうかということではない。その方の問題は、当事者同士今後も交渉を続けて行くと思いますが、その交渉がうまくはかどらなかつた場合、そうして責任日本側になくて外国の船舶にあるということがきまつた場合に、それでもなおかつ向う賠償の責めに応じないときに、外務省としてはどよ、いう措置をとつてくれるか、また当事者としては、その場合にどういう措置をとつたら一番手取り早く損害賠償を得ることができるか、一般の原則でけつこうですから、これをお聞きした
  79. 小滝彬

    小滝政府委員 今の事件は私は承知いたしておりませんが、その際網などに対して標識があつたとかないとか、どちらの方に過失があつたとか、いろいろ込み入つた問題があるのだろうと思います。でありますから、この問題は、直接に交渉せられるべきものであり、また相互の話合いで片づかないということになりますれば、裁判所の問題として取上げられなければならないと考えます。ただ民間におけるいろいろな事件を外務省が、ただちに全部取上げることにいたしますと、商業上におけるクレームなどというものは、毎日のように発生いたしておりまして、これはただちにそうした措置はとれないのであります。しかしいろいろ費用もかかるので裁判することもむずかしい、あるいは全般的にはその地域に被害が大きいというような問題でありますれば、外務省といたしましては、その申出に十分な理由がある場合におきましては、外交的なチャンネルを通じまして、先方の国の注意を喚起し、適当な措置をとらせるようにあつせんをすることは当然であります。
  80. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 先ほどの続きとしてあと三点だけお伺いします。  その一つは、先ほど六月までに買いつけないと国内需給の関係に支障を生ずるというお答えでありましたが、一体どのような支障を生ずるのか、その点を明らかにしてもらいたいと思います、もしここに数字等の資料をお持ちでなければあとからでもいいから、数字によつて明確に需給に支障を生ずるということを示してもらいたいと思います。ここでお返事ができなければ、あとからでもいいから文書をもつて正確に数字上の支障を生ずるという理由を明らかにしてもらいたい。  第二の点は、今度買いつけたウエスタン・ホワイト・ナンバー・ツー規格が、小麦以外の來雑物、中には小麦以外の麦もありますが、要するに小麦以外の來雑物二八%が加わつたものが基準であるとすれば、小麦の純度から行くと、一六%だけは小麦でないものを小麦の値段で買うことになるわけですが、これは国内の小麦相場、国内において取引される場合には、そんな不純なものは国内価格には対象にならぬと思いますから、その点国内小麦価格の上にどういう影響を来すか、日本としては実際に小麦でないものを小麦の値段で一六%も買つておる。こういうことになるわけでありますが、国際商習慣上そういうものが基準であるから、国際価格としてはやむを得ないとされるかもしれませんが、これが一体国内においてどういうように価格に影響を及ぼすか、これが第二点。  第三点としましては、政府はこれを国内の製粉業者に払い下げる場合に、どういう方法で払い下げられるのか、並びにその価格をお伺いしたいと思います。
  81. 羽場光高

    羽場説明員 最初の国内需給の問題でございますが、御承知のように今年の小麦の輸入量は百九十六万トンとされております。おおむね二百万トンに近いわけであります。それでこの小麦の到着が大体平均して毎月あることが望ましいわけであります。買付もまたできれば平均して毎月買付をした方が望ましいと思つております。それで四月、五月に――大きくれけまして小麦にはソフト系とハード系と品質が一通りあるれけでありますが、最近の売却と申しますか、政府が払い下げております数量は、おおむね二十万トンから二十二、三万トンになつております。そのうちハード系、ソフト系がほぼ半々くらいになつております。それでこの二百万トン近くの小麦買付をいたします場合に、四月から六月までに買付を全然しないということになりますと、あとでまた非常によけい買うということにもなるわけであります。それで四月、六月の間にアメリカ小麦、これは大体ソフト系でございますが、これを三十万トンなり四十万トンなりは、どうしても買うことが望ましいということが言えるわけであります。かりにMSAがなくとも、アメリカ小麦を四月から六月までには買うという計画があつたわけでございます。かりにMSAの協定の効力が発生しまして、援助を受けられるということになりましたならば、この援助も受け入れたいというような買付手続で、われわれとしては普通の買い方としてアメリカ小麦買つたという形に相なつているわけであります。  それからただいまの來雑物一六%あれは、実際の純度からいうと落ちるという点でございますが、これは国内の小麦価格と正確に比較しませんと結論が出て参りませんので、ちよつとここで計算することは私……。一六%のうち一〇%までは他の銘柄の小麦ということになつております。それでありますから実際いわゆる異物が六%だということになるわけだと思いますが、そうしますとただいまの国際価格は、これは国際小麦協定の価格及びアメリカの今の商品金融会社の売つております価格は、こちらに到着いたしまして大体七十七、八ドルでございますから、国内の生産者価格に比較しましても――ちよつと価格の点は後ほどお答さえせていただきます。  それから払い下げの方法でございますが、これは毎月の払下げ量というものを、大体小麦の売却の伸びぐあいから推定して大体の数量をきめておるわけであります。それで製粉関係の払下げ申請に基いて食糧庁で払下げをいたしているわけであります。それからその価格は、これは食糧庁がそれぞれ銘柄別に払下価格を決定いたしております。
  82. 穗積七郎

    穗積委員 これは入札ですか。
  83. 羽場光高

    羽場説明員 入札ではありません。
  84. 穗積七郎

    穗積委員 何ですか、随意契約ですか。
  85. 羽場光高

    羽場説明員 随意契約です。
  86. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 ただいまの国内需給関係に支障を生ずるという点の御説明は、ただ単に小麦の市場における需給の関係が主になつてお話があつたようでありますが、小麦は言うまでもなく国内食糧の主要な一役を演じておるものでありますから、われわれ国内の需給の関係に支障を生ずるというような言葉を聞きますと、食糧関係に需給の支障が生ずるのではないか、こういうように憂うるのであります。今のお話ですと、ただ単に市場における小麦の需給の問題だけに限定されておるようでありますが、その点がまだはつきりせぬということと、それからもう一つは、純度の点につきましても、一〇%は異種麦ということであつて小麦以外の――同じ小麦の中でも、ホワイトとかレッドとか、あるいは二等品とか三等品とかいう同じ小麦の中の異種ならばいいのですけれども異種麦ということになりますと、あるいはそこにはからす麦もはだか麦もあるかもわからぬし、大麦もあるかもわからぬ、そういうものがまじつておるのではないか、こういう点を言うのか、それとも純粋に小麦の形で銘柄だけが違うものが一〇%であるのか、この点がはつきりしないのであります。  それからもう一つは、払下価格の点でありますが、たとえばウエスタン・ホワイト・ナンバー・ツーというのを今度買つたものの払下価格幾らできめられるのか。この銘柄で、買つたのは七十八ドルですが、今度は製粉会社に払い下げるのは幾らであるか、この点をはつきもさしてもらわなければいけないと思います。  それからもう一つは、今年の小麦輸入計画は百九十六万トンというお話でございましたが、この百九十六万トンという中には、最初からMSAによる小麦買付量が加わつておるのか、あるいは国際小麦協定に参加したことによつて義務として生ずる百万トンも加わつて、ほかにそれ以外の九十何万トンが加わつて百九十六万トンというのか。MSA関係のものが五千万ドルの農産物になつて、その中に小麦がどれだけあるかわかりませんが、とにかくそのMSA関係小麦量を加えて百九十六万トンなのか、それはどちらであるのか、この点ももう少しはつきりしておいてもらいたいと思います。
  87. 羽場光高

    羽場説明員 ただいまの一番最後の百九十六万トンの内訳にMSA小麦が含まれるかという御質問につきましては、百九十六万トンの小麦カナダアメリカアルゼンチン、主としてこの三国から買う計画になつております。そうしてこのアメリカから買う数量については、場合によつてMSAによつて買う、もしMSA援助が受けられないということになれば、アメリカにドルを払つて買うということになつております。  それから払下価格の問題でありますが、小麦につきましては、これは最近の国際市場価格から比べますと、国内相場は割高なのであります。それで非常に安い小麦が大量に入つて参りますれば、国内の生産者価格を圧迫するということがございますが、これはただいまの管理制度のもとにおきましては、価格につきましては国内価格海外価格とを遮断いたしまして、たとい安く買いましても、国内で払い下げますときには、国内の小麦に格差をつけまして、それによつて格付の上で外国の小麦の払下価格というものをきめておるわけであります。ですから、買いつけました価格と払い下げる価格との間には、安く買つたから安く払い下げるという関係はございません。  それから先ほどの一〇%は小麦であるかいなかという点でございますが、これはわれわれは小麦であると了解しております。
  88. 福田篤泰

    福田(篤)委員 先ほどからの御質問に対する御答弁を伺つておりますと、どうもあいまいな点が多過ぎるので、われわれとしてもあいまいな点の二部について、はつきもお伺いしたいと思うのです。これは商社がもし政府損害を与えた場合には賠償の責めを負わなければならぬと言われましたが、賠償責任がある以上は、当然権利として検査をする権利がなければこの義務の裏づけがないわけであります。ところがその検査になりますと、お話によると食糧庁食糧事務所検査官がやつていると言われております。どうも責任の所在がきわめて不明確であり、また検査についてもわれわれは納得いたしかねるのであります。結局先ほどもお話の一部にありました通り、あまり商社責任を負わせればよほど高く買わないと困るというのですが、これはとんでもない話でありまして、結局迷惑をこうむるのは日本国民全部であります。これはずいぶん政府も無責任でありまして、われわれがMSAに賛成いたしましたのも、こういうものは利益があるものと思つて私は確信を持つてMSAに賛成したわけでありまして、今のような政府側の極端にいえば怠慢あるいは不注意によつて国家が損失をする、全国民が損失を受けた場合は、これは無視するわけには参りません。そこで具体的に伺いますが、こういう種類のMSA余剰物資の検査について一体どういう段階で、どういう場所で、どのように検査しておるか、これをもう一度はつきり伺いたい。
  89. 松岡寅治郎

    ○松岡説明員 今の検査の点につきまして具体的にお話申し上げますと、先ほど羽場説明員から申し上げましたように、米国におきますところの規格、ここにこいう規格がきまつておりまして、この規祐に基きまして向う政府検査機関検査したものを一応フアイナルなもの、それを最終のものとして一応政府が買うわけであります。これをこつちに持つて参りまして、横浜なら横浜の港において、港に船が着きますとすぐに食糧事務所検査官が船に乗つて参りまして、そうして各ハツチごとにQMCという今の検査方法でまんべんなく検査するわけであります。今度のようにばら積みで来ますとばらで向うのサイドからだあつと船船に入るわけでございますから、どうしても、ばら積みの場合には表面にダストがずつと浮いて来るわけです。そこでハッチをあけた場合に、その麦を見ました者が――内地ですと食糧を非常に大事にしまして、米、麦を非常に大事に調製いたしますけれども、米国のように大仕掛で、コンバインでああいうふうにずつと大量的に生産しているものですから、調製がうまく行つていないものですから、ダストが非常に多い。日本の内地の麦はああいうふうに非常にきれいな俵に入つておりますので、見た目から見ると、これは非常にひどいじやないかという感じも受けますけれども、今度の麦にいたしましても、今まで来ておりましたものを横浜の税関で見ますと、大体夾雑物も四%以下でありますし、それから麦そのものの品質におきましても、分析の結果からいたしますと、水分におきましても、普通は一一%くらいありますが、これが一〇%八になつております。灰分におきましても一・五%、蛋白が、普通は八・五%程度のものでありますが、これが八・八%というように、品質そのものにおきましても、大体普通程度、それ以上の分析の結果が出ておりますから、見た日にはダストが多いようでありますが、物そのものといたしましては、この十七日に入りました大久丸のウェスタン・ホワイト・ナンバー・ツーは、規格といたしましては十分合格しておるものでございます。
  90. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 今のお答えについて、現地で食糧事務所の岡田という検査官は、今おつしやつたように一パーツから六回とつて、全部揚げてしまつたあとでこれを総合的に分析してみるということであつたが、あれを全部荷揚げするのにはおととい、きあう二日かかつておると思うのです。そうすると今おつしやつた検査表というのは、どこから出て来たのですか。
  91. 松岡寅治郎

    ○松岡説明員 先ほどお答えいたしましたように、まだ全部の数字が出ていないのですが、きようまでわかつておるところではそういう数字が出ておるということであります。まだ全部の数字が出ておりませんから、全部分析した結果、各区分のものを最初のものと最後のもの――これは荷役を非常に急ぎますから、荷役の途中々々にサンプルはとりますが、そのサンプルをとつてすぐそこで完成しないものですから、その見本を入れまして、一々一つずつ見ておるわけでございまして、その結果の集計をいたしまして、その平均を出さないとその船のものが合格かどうかわからない。まだ最終の結果は出ておりませんが、最終の結果が出ましたらまた御報告いたします。
  92. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 最終の結果が出ていないというなら、ばまだ話がわかりますが、今お尋ねになつた点の検査責任の所在が、私どもはきのうも業者にも言つたし、現場でも食糧事務所の人にも言うたのだけれども、実際の責任が業者にあつて検査の場合には政府だけでやる、責任を負うべき業者が検査に立ち会わぬ、こういうことでは無責任になつてしまう。だから数字の上から行けば、アメリカ証明書が物を言うから、買わなければならぬ、ほかに方法がないということで、無理やり押しつけられて買わされておるという感じを受ける。そういう点についてはもう少し検査制度が明確になり、責任の所在が明確になるということが必要だと思うのです。この点について将来私どもは、今後の問題もあるから、大量百九十六万トン、二百万トン近い小麦がこういうような方法で買われるのに――きのうもまた説明によると、アルゼンチンからの場合はアメリカカナダのようなわけには行かぬ、何らかの方法でもつと検査を厳格にやらなければならぬ、品質についてもアメリカほどには信用ができぬ、こういこうような言葉も申しておられた。今聞くと三国からこれだけのものを買われる方針のようでありますが、これを同じような形式でやられるということになると、より一層悪いものが来るという心配がある。この点については食糧庁はもう少し熱心に真剣に国民の利害の上に立つてつてもらわなければ困るということです。
  93. 福田篤泰

    福田(篤)委員 やつぱり私どもはつきりわからないのですが、今加藤委員の御指摘になつたように、責任の問題と検査関係が少しも明確でありません。はつきり申しますと、商社損害賠償政府から請求された場合、契約によつて当然支払う義務を負つているわけです。そういう場合に商社自身が検査する権能もなければ何もないとすると、この契約自体が非常に一方的、な不利な契約であります。結果的に見ておそらく政府損害賠償を請求しないし、適当に何とかしてもらうという非常にルーズな考えになることは常識上考えられる。こういうことは、数百億のきわめて多量な物資を買いつけますので、食糧庁がこういうことを不明確な法的関係にこのまま置いておくことは、全国民の重大な問題だと思う。いい機会でありますから、今御指摘になつた点、検査に対するもう少しはつきりした組織化並びに責任の所在について、政府側のお考えをぜひとも立てていただきたい。今お考えがあると言つておられましたが、現在考えておられるとすれば、どういうようにお考えになつておりますか、御意見を承りたいと思います。
  94. 松岡寅治郎

    ○松岡説明員 ただいまの検査の問題ですが、検査はどこまでも政府責任検査をいたしております。その場合に輸入商社責任がありますから、すべてそれに立ち会う。内地の米、麦を買います場合と同じように、どこまでも政府検査をする責任がある。検査政府責任でやるわけであつてその結果につきまして商社においても異議がありましようから、そういう場合に検査商社が立ち会う、こういう線になつておりますが、一番公平な立場からいえば、政府は全体の立場からいえば公平な立場にありますが、しかし具体的な場合におきましては、政府が買いつけなければならないのですから、できれば商社政府との間に、公平なる第三者の立場に立つたところの検定機関――スーパーとかあるいはIITCというような世界的な検査機関があるのでありますから、日本といたしましても――日本なら日本商社政府の間に公平な第三者でありますところの検定機関、現在港で政府が使つておりますが、穀物検定協会、これは第三者の立場政府検査のお手伝いをしております。また産地におきましても、米国では米国政の検査機関検査フアイナルといたしておりますが、その場合に日本からその検査の能力のある者が立ち会うとか、何らかの方法がもう少しあると思います。そういう方法はいろいろ考えられますが、予算の関係その他でそういう人員も派遣できないので、現在といたしましては、先ほど申しましたように、港におきまして政府責任をもつて検査し、それに輸入商社が立ち会う、こういう措置になつております。
  95. 福田篤泰

    福田(篤)委員 われわれはこういう食糧を輸入するのに、何百億という予算を使つておるのでありまして、この検査の出張のための予算がないということは、決して言い訳にならない。  もう一点伺いますが、もし不幸にして政府損害を受けた場合に、商社が払うことになつておりますが、その場合にはアメリカ側の荷主の方で責任を負うような協定を結んでおるのか。あるいはまたこれは政府同士のとりきめでありますから、日米の政府間で、もし日本商社の取扱い業者に損害を与えた場合には、当然アメリカ側がそれに対して補償をするとか、そういう補償のとりきめはございますか。
  96. 羽場光高

    羽場説明員 日本政府アメリカ政府との間で、損害賠償についてアメリカ政府が何かするというとりきめはございません。それから食糧庁はインポーターとの間に契約はいたしておりますが、インポー・ターがアメリカのシツパーとの間にどういう契約をしておるかということについては、実は詳細に立ち入つて調べてはおりません。
  97. 福田篤泰

    福田(篤)委員 今政府の間には裏づけがない、しかしインポーターと向うとの間に何らかのとりきめはあるが、その内容はあまり知らぬということですが、これは無責任です。重大な問題です。どういう契約の内容で取扱い業者が輸入を取扱つておるか。かりにもし損害を与えた場合には当然商社に支払わすのですから、その場合に日本商社はどういう損害の補償を求めるか。その根拠についてもう少し明確にしておかなければ、日本政府としてはきわめて怠慢であります。
  98. 羽場光高

    羽場説明員 私どももそれは普通の貿易の商慣習ではないかと思つておるわけであります。それはインポーターが向うのシツパーと契約を結ぶ場合には、どの商社も、穀物に限らず何を取引いたします場合にもおそらくクレームの条項はつけておるものと存じております。それで私どもは普通の商取引商社を通じて賢い上げておるわけでありますから、その点は商社向うのシツパーに対して契約をいたしますときに、はつきりといたしておるものというふうに了解しております。
  99. 福田篤泰

    福田(篤)委員 先ほど加藤委員からお話がありましたが、今のお話とは少し違うのです。クレームできないのです。向う検査官がやつたことは、フアイナルのものとして、シツパーとインポーターとの間でどういう契約をしておるかということは、あなたはよく知らないという。これは大きな問題です。実際にこれがクレームし得るものなら心配しません。取扱い業者に対しても利益を考えてやらなければならぬ。同時に悪い場合には、損害賠償をさせる場合にびしびしとやつて行かなければならぬ。ところが内容についてはよく知らない。何かクレームがあるとかないとかいうようなあいまいな御答弁をされておりますが、これでは私どもは納得できません。やはり具体的にその契約についてはつきりと内容をお調べになつて、そうしてクレーム権利があるかどうかお調べを願いたい。そうしてこれについて正式の御報告をいただきたい。
  100. 並木芳雄

    並木委員 これはやはりたいへんな問題です。今まで食糧庁の方から答弁を得たわれわれの感じでは、これは相当に大きな問題を起すのではないかと思う。私は現場のやり方いかんによつては、大きな汚職というような問題もそこに出て来るのではないか。少くとも大きな過失が出て来る、そういうことを直感いたしました。幸いにここに小龍外務次官がいるのでありますから、私は至急この問題を次官会議にかけてもらいたい。そうして各関係各省の次官の間でこの対策を協議してもらいたいのです。
  101. 小滝彬

    小滝政府委員 私は福田君や並木君のおつしやる気持は十分わかるし、これは重大問題でありますが、しかし筋道は、食糧庁の係官の人が申された通りであります。今度のMSA買付はコマーシャル・ベースでやるということになつておる。そこで普通の買付と同じ方法をとるわけであります。しかりとすれば、最終の買手は食糧庁であるけれども、その取引は個人取引、普通の自由貿易における取引でありまして、商法が責任負担して、そうしてコントラクトをつくる。そのコントラクトの条項を一々見なければ、積地フアイナルとなつてつても、どういうようにクレームをするようになつておるか、これは御説の通り調べなければわからないわけであります。積地フアイナルになりましても船の中で目減りをしたとかいうようなことは、またクレームすることができるとか、契約書にはいろいろな種類があります。しかし私は食糧に関する詳細の契約を知りませんが、これは大体アメリカとしては一つのタイプの契約があるので、それによつてつておるものと考えます。なるほどそれは非常に詳細な点を食糧庁へ報告してもらつた方が、食糧庁としては完全な措置ではありましようけれども、しかしながらとにかくこれは買いつけて、そうして陸揚げのときた食糧庁が受けるので、それまでの出員任は、向う商社が十分長い経験を持つた連中がやつておることでありますから、それを必ず食糧庁がデイクテートしなければならぬ、こういう契約買付をしろということを命ずるということは、今の機構におきましては食糧庁としてもできしかねるところだろうと存じます。もちろんその辺検査によつてどういうように要求するとか、あるいは今後どういう警告を輸入する業務負担しておる者に言いつけるかということは、お説のように重要な点でありますから、その辺は私の方からもよく農林省の方にも連絡をいたしておこうと考えます。
  102. 並木芳雄

    並木委員 これは至急やつていただきたい。  それから問題は、陸揚げをしてこれを日本食糧庁検査をする。そこが山なのです。そこで厳重な検査を今までしていないようだ。何となれば、今までの答弁ですと、事故が起つたものは小麦に関する限りありません、こういう報告だつたのです。しかし小麦にはなかつたかもしれませんけれども、あのビルマでしたかタイでしたかの黄変米にはあつた。あれは非常に極端な、例だつたから表面化した。しかし極端な例でなくて、少しぐらいの違いだつたら、おそらくこれはフリーパスしておるのではないかと思う。ましてやこのMSAで来る小麦は、ただでもらうんだというような印象が前提となつておりますから、この検査に当る者もひけ目を感じて来る。それで少しぐらいこれは違つていても、いや通してやれということで、結局は日本国民負担する。なぜ負担するかといえば、御承知の通りただでもらうわけでないので、これは五千万ドルを四千万ドルに負けてもらつて、それに見合う円は積み立てなければなりませんから、結局負担なんだ。安かろう悪かろうでは困るのです。それが今問題でありますから、至急次官会議を開いて検査をやる。今予算もないということを現に食糧庁は言つておる。そういう声を聞く以上は、こういう大事なものに必要な予算というものは急遽上程をして、水も漏らさぬ検査をやる。そのかわりそこの検査でパスしなかつたら、外務省アメリカに対して厳重に抗議する。人をばかにするな、いくらわれわれが貧したからといつて貧していないんだ、豚に食わしても食わぬようなものをよこすとは何事だ、こういうところまで、行かなければ、これはやはりガリオア、イロアの問題が起つたときと同じようなあいまいなことになると思います。その点、次官ひとつしつかりふんどしを締めてやつていただきたいと思うが、決意のほどを伺いたい。
  103. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 今の問題に関連いたしまして、これは小瀧次官に特に御注意していただきたいと思うのですが、形式はなるほどコマーシャル・ベースで行われる。その通りです。けれども実質はアメリカ政府の所有しておるものを日本政府が買うのだ。だけれどもその政府政府との圏の商売はできないし、また政府は何も手足を持つていないから、そこで入札という形で商社に扱わしておるわけだ。たから本質的な責任はやはり政府が持たなければならぬ。そういう点からいつて、ただコマーシャル・ベースでやられておるから政府は関与する限りでないといへのは、私は無責任だと思う。だからこの実質をつかんで私は関与してもらいたいと思う。そういうところから責任の問題も起つて来ると思います。だからその点十分にひとつ今度の、ことにMSAの一問題はガリオア、イロアの問題、それから黄変米等の問題があつて、私は国民的にも関心を高めておる思うのです。だからわれわれは国民の不安を除くということが主眼であつて、決して政府とつちめて、どうこうというような感じでやつておるのではないのですから、その点はあなた方の方においても、どうすれば日本国民が損をしないでやつて行けるか、こういう観点に立つて、十分考慮していただきたいと思います。
  104. 小滝彬

    小滝政府委員 お説ごもつともと思いますが、ただ穀物取引というものは、政府貿易でやらない時代から非常に困難でして、だから特別な経験を持つた商社をしてやらせております。なおかつこういう問題が起り、ことに東南諸国からの買付については非常に苦労をしておるわけであります。それで十分注意をするように連絡いたしますが、ただ並木さんがおつしやるように、これをただちに外交交渉へ持つて行くということになりますと、先般も申しましたように、何か一つシングルーケースにおいてクレームを起さなければならぬような問題があつたからというので、そういうとりはからいをすべきかどうかということについては、よく考えなければならぬと思います。それがリピートされ、再発のおそれがあるというような場合には、もちろんこれは国民感情にも関係することでありますので、十分注意しなければならないと考えます。御趣旨によりまして、さつそく関係省とも連絡をいたしまして警告を発したいと思つております。
  105. 野田卯一

    ○野田委員長代理 細迫君。
  106. 細迫兼光

    細迫委員 私は外務次官並びに法務次官、入国管理局次長、これらの方々に質問をいたしたいのでありますが、二十一日すなわち今日、在日朝鮮人統一民主戦線の議長団の一人であります李浩然氏が、管理局長の出入国許可証を得まして神戸港からスウェーデンの船バーマ号に乗つて出国しようとしておるのに対しまして、管理局からこの許可を取消して船に乗せないでこれを引きとめるということに相なつて、そこに紛糾が起きておるという事実がありますが、これに関する質問を試みたいと思うのであります。この問題は根本的には朝鮮への在日朝鮮人の引揚げ問題について、政府が基本的にどういう方針を持つておられるかという基本方針に関連するのでありますから、この点を頭の半分に置きながら、御答弁を願いたいと思うのであります。  すなわち現在在日朝鮮人は失業に苦しんでおる状態であります。朝鮮内地もずいぶんと戦争の被害が多くて生活も楽ではあるまいかと想像もできますが、しかし郷里に帰りたい気持はだれも同じでありまして、南鮮、北鮮を問わず、帰国希望者が相当あるようであります。北鮮への帰国希望者も相当に確定数がありまして待機しておるにかかわらず、韓国李承晩政府はこれの引取りを拒んでおるという事情もあるやに聞いております。これは一種の人道問題でありますから、韓国李承晩がこれを拒否するといたしましても、北鮮への帰国希望者は、日本の内地におきまして失業に苦しんでおる事情をも考慮しまして、どしどし帰国希望沿う処置をとつてしかるべきものではないかと私は思うのでございますが、この基本方針におきましてはいかように相なつておりますか。出入国管理局の手続等につきましては、後に町問いたしますが、まずこの基本方針につきまして、おわかりでありますならば、両政務次官から御答弁を願いたいと思います。
  107. 小滝彬

    小滝政府委員 在本邦朝鮮人の引揚げにつきましては、引揚げを希望するなら、日本政府といたしましては何ら反対いたしません。ただ実際問題として、先年南朝鮮、韓国に対しまして送りましたときには、向うが引取らないで、結局帰つて来て、大村収容所に入れたというような問題もあります。これが根本的に解決いたしますのには、日韓会談というものが再照せられまして、もつと根本的な話合いがつかなければいけないだろうと思います。特殊の要務がある人が向うへ帰ることは認めております。しかしそういう場合はたいがい日本へ帰るということを条件としております。今おつしやるように引揚げたら向うが受取る限りそれに反対いたすものではございません。北鮮の例をお出しになりましたが、なるほど北鮮へ帰りたいという人には私もお会いしております。しかし決して帰り切りにするとは言わない、もし帰り切りにするということであれば、私は特別の船を仕立ててもかまわないとさえ考えておつたのでありますが、皆帰つて来ようとするのであります。今の班実の事情を見ますと、これは出入国管理局の方で説明されると思いますが、たしか収容所では何百人も密入国者がおるというような現実であります。日本品物を持つて北鮮へ帰つて、高く売つてこつちへ帰つて来るということになれば、悪く考えれば密出入国を援助するというようなことにもなるおそれがあるだろうと考えます。でありますから行つたり来たりということは、私は今のところはこれを認めたくない、これは日本の治安にも関することでありますし、またいろいろな観点からいたしましてそういうことはいたしたくないのであります。しかし御指摘のように帰りたいという人があつたら、一応まとまつた数であれば特別の措置をとつてもいいというくらいにさえ考えておるということを申し上げておきます。
  108. 三浦寅之助

    ○三浦政府委員 法律の建前から申しますれ、ば、御承知の通り帰る場合には、正式の旅券なり渡航証明書なりいるわけでありますが、現在の場合におきましては南鮮並びに北鮮等については、まだ正式な外交交渉が始まつておりません。しかしながら今お話のように、また小瀧外務政務次官が触れましたように、帰国希望者があつて、しかも日本に帰つて来ないで、ほんとうに向うへ帰るのだというはつきしりした意思のものであれば、何らかの処置をもつて、便宜の方法で帰る方法を考えなければならないし、また考えた方がよろしいと思います。要は一度向うへ帰つてもすぐ帰つて来るといえような、同時にまたせつかくこちらで甘を折つて莫大な費用を使つて向うにやつたが受取らないために、またすぐもどつて来るというようなことがあるので、それが実現しないのであります。要はほんとうに帰る、向うもそれを受付けるというようなことであれば、何らかの処置をもつて帰るような方法を十分考えることができると思うのです。
  109. 細迫兼光

    細迫委員 仄聞するところによると、この李浩然氏の帰国希望は、引揚げという性質の希望を含んでおる。という意味は、李浩然氏自身はどうか知りませんが、お話のように北鮮において引受けてくれなくては道が開かないのでありますから、その交渉などの使命を帯びておるようであります。あちらから、多くの人々、ことに技術ある人々などの帰国を希望しておるという情報なども含んで、それの引受け方に関する準備の使命をも帯びておるやに聞くのであります。これはそれの実現をはかる一つの方法でございますので、便宜をはかつてあげたらよかろうと思うのでありますが、さてこの具体的な今日に迫つております問題におきまして、李浩然氏に一応出入国許可証、これはどういう性質のものでありますか、私、法的な性質を知りませんが、一応局長名によつて発行せられたようでありますが、これが急に取消されたという事情の経過並びに理由を御説明願いたい。
  110. 宮下明義

    ○宮下説明員 昨年の九月ごろであつたと承知いたしておりますが、李浩然君が入国管理局に参りまして、ただいまお話のございましたように、在日朝鮮人の北鮮帰還の問題、あるいは日本に在留いたしております朝鮮人学生の教育費の問題等について、北鮮側と話をしに行つてみたいが、何とか行ける方法はないだろ、かという相談があつたと聞いております。当時私まだ入国管理局には参つておらなかつたわけでございますが、その後入国管理局の次長になつたわけでございます。私の就任いたす前のことでございます。入国管理局は日本に在留いたしております外国人の公正な管理ということを職責にいたしております関係上、ただいまお話のございましたような日本に在留する朝鮮人の生活状態等もいろいろ承知をいたしておりますので、もし北鮮に帰ることを希望する人が北鮮に帰れるということは、入国管理局としても、またこれを希望いたしておるわけでございます。そのような関係で入国管理局におきましては、その後李浩然君この問題についていろいろ相談をいたしておつたわけでございます。しかしながら入国管理令の建前から申しますと、ただいまお話のございましたような帰国のための出国、本国に引揚げるという出国は別問題でございますが、一時的の旅行の出国の場合でございますと、日本政府あるいは日本が承認いたしております各国政府の旅券あるいはこれにかわる渡航証明書を持つておりませんければ、日本の港においてその正式出国を許可することができないわけでございます。それで入国管理局におきましても、あるいは香港政庁その他適当なところで渡航証明書がとれないかというような話をしておつたように聞いておりますが、なかなか実現いたされなかつたわけでございます。その後今月の十一日の日本経済に、民戦側の記者会見の発表という記事で、入国管理局が李浩然君に対して、今言葉ははつきり覚えておりませんが、お話のような出入国許可証を発給して、これに基いて二十一日、スウェーデンの船で神戸から北鮮に向けて出国をするという発表をしたという記事が載つてつたのでございます。私承知しておる限りにおきましては、入国管理局において李浩然君に出入国許可証を発給したという事実も承知いたしておりませんので、さつそく李浩然君に来てもらいまして、ただいま申し上げましたように、引揚げあるいは帰国の出国以外の場合には、正式な旅券あるいは渡航証明書がなければ、正式に港から出ることはできないのだ、この場合においてはそのような渡航文書を持つておらないので、正式出国は認められないということを通告いたしまして、その後数回にわたつていろいろ同趣旨のことを申しまして、今回の本人の計画をとどまるように申し伝えておつたのでございます。その際李浩然君が鈴木局長から、ただいまお話のような証明書をもらつておるということで、私もその文書を見たのでございますが、入国管理局におきましては法務大臣が正式の旅券あるいは渡航文書をもつて外国へ出ます者に対して、別個に法務大臣名義の再入国許可証というものを出すことができるのでありますが、入国管理局独自に出入国許可証というようなものを発給する権限はないのであります。日本においては外務大臣が旅券の発給権を持つておるのでありまして、かようなものは入国管理局で出せるはずはないのだ、李浩然君の誤解だということで説明をいたしまして、いろいろ説得をいたしておるのでありますが、本人はどうしても出るのだということで、お話のように本日神戸に参つております。なお私の方といたしましては、神戸の事務所を通じまして、現在もなお本人に出国は認められないということを通告いたしまして、本人が翻意することを説得しておるような実情でございます。
  111. 細迫兼光

    細迫委員 御説明によりまして経過は理解できるのであります。この御説明を聞きますまで、私はこれは外務省においていわゆるなわ張り争いというような感情からも、あるいはまた一つには、いつも外務省の口癖の、国交の回復していない地域への渡航は絶対に断るという基本的な、感情的な御方針から横やりを入れられたのではないか、かように邪推しておつたのであります。そういう事情は外務省の方としてはございませんでしようか。
  112. 小滝彬

    小滝政府委員 この問題は全然関知いたしておりません。
  113. 細迫兼光

    細迫委員 では法的には、出入国許可証というものが局長の権限を越えた処置によつて発行せられたものであつて、それは無効のものである、従つて出国を思いとどまるように手配をしておる、こういう筋合いになるのでありますか。
  114. 宮下明義

    ○宮下説明員 先ほども申しあげましたように、入国管理局長におきまして、出入国許可証というものを発給する権限はございませんので、私はただ単なる局長名義の個人的の証明書にすぎないというふうに考えております。局長がどういうお考えでその証明書を李浩然君にお渡しになつたか、その真意は、ただいまアメリカ旅行中でございますので、つまびらかにいたしませんが、推察するところでは、スウェーデンその他日本に駐在いたしております領事館等で、渡航証明書等が発給される便宜のために、お出しになつたのではないかというふうに想像いたしておりますが、い参ずれにいたしましても、権限ある政府機関でもございませんので、出入国許可証というようなものを発給できません。私どもの方といたしましてはそのようなものは認め得ない。正式の旅券、あるいはこれにかわる渡航文書というものは今李浩然君は持つていない。そういたしますれば、公然と港から出国するということは認めることはできない。他にも、不法出国を企てます者を警察その他の機関が検挙いたしまして、起訴されて裁判にまわした者もあるのでありまして、このような公然とした管理令違反の措置を容認することはできないという態度をとつておるわけでござ一います。
  115. 細迫兼光

    細迫委員 これは入国管理局側の御処置としては、あるいは当然だとも考えられますが、この許可証を手に入れております李浩然氏としましては、政府の権限ある人が有効なる証助言を出してくれたものだと確信をいたしまして行動をとつておることには、重大な根拠ありと理解もしてあげなくては相ならぬと思うのであります。ただいまの次長からの御説明、御答弁、現に入国管理局がとつております李浩然氏に対する処置は、もちろん次官の御答弁も何ですが、法務大臣としてももちろん責任ある御処置であろうと思いますが、さようでございますか。
  116. 三浦寅之助

    ○三浦政府委員 今次長から申し上げたことは、もちろんこれは法務省の処置としてさようであり、大臣ももちろんそうであります。
  117. 細迫兼光

    細迫委員 これは不在の局長の私は相当責任問題に相なると思いますが、この問題は後日に保留しておきます。  それから外務次官に要請をいたしておきますが、さきの御答弁のような、引揚者に対しましては船を仕立ててでもそれの実現をはかりたいというような基本方針でおられる限り、そういう多くの帰国希望者をまとめ、それの帰国の道を開く使命をも含んでおるというような、このたびの李浩然氏の行動については、極力ひとつ便宜をはかつていただきたいと存ずるのでございます。これはただここでの要望にとどめておきまして、後刻またひとつお話合いの機会を得たいと思いますから、私の質問といたしましてはこれで打切ります。
  118. 野田卯一

    ○野田委員長代理 本日はこれをもちまして散会いたします。    午後一時三十四分散会