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小滝政府委員 実はこのほどゼネヴア
会議に関しましては
関係国に駐在いたしております大公使からもいろいろ報告が来ておるのであります。しかしこれは新聞などに出ておりまするところ、輿論などを要約したものであり、またときに要人と会談をいたしました際の印象というようなもので、きわめて断片的なものでありますので、非常に
はつきりした見解というようなものがもたらされておる次第ではございません。しかしこの
会議は
日本にとりましても非常に重要でありますので、
外務省では随時係官の間で打合会などをいたしております。そこで須磨
委員からの御要望もございましたので、係の方で打合会でいろいろ話し合
つている点をまとめさせましたところ、これはただ単に新聞などに出ているものを要約した経緯にすぎないものでございますので、
外交についての権威者のお集まりのこの
委員会でひろうするのはいかがかと思いますため、はなはだ僣越でありますけれ
ども、私個人のこれまでいろいろ新聞とかあるい在外公館からの電報を見まして得ました印象を、これは
政府の見解というわけではありませんが、私の観測を述べまして御批判を賜わりたいと考えます。
まず第一には、今度の、ゼネヴア
会議の討議の範囲がいかがなるであろうかということにつきましては、国会におきましてもしばしば御質問を受けたところであります。これに対しては、結局軍事行動をいかに終息せしめるか、朝鮮及びインドシナにおける軍事行動をどうして収めるかに局限したものであろうというような予想を、再三私答弁いたしておりますが、これまでのところを見ますと、事実予想の通り、できるだけ議題というものを局限してかかろうという態度のようでございます。もちろん共産諸国側におきましては、これを機会にいたしまして、中共
政府の国際的地位を確立しようとか、あるいはできるものならば、自由国家群間における意見の相違を拡大させようとかいうような考え方もあろうかとも思いますが、軍事的な措置だけでなしに、政治的な措置というものを考えて、初めて軍事的措置というものが決定するのだということを主張いたしておりますけれ
ども、しかし一面におきましては、これをあまりに固執いたしますと、今度は反対に自由国家群における協力
関係を強めはしないかとい思惑もあるのではないだろうかと存じます。それは議長の選挙の際とか、あるいはその後のソ連代表の行動ぶりを見ましても、私は
相当妥協的なところがあるのではないかというように、個人として観測いたしておるのであります。
この
会議に関連して、これは重要な
会議だから、
日本の
立場も
はつきりさせるような機会をとらえろということは、国会においても御希望がございましたし、私
どももさように考えてお
つたのでありますが、たとえば
関係国であるイギリスとかあるいは
カナダな
ども中共においてはいろいろまだまだ人がつかま
つておるとか、財産の問題が片づいていないという問題があるにもかかわらず、私
どものいろいろ調べましたところでは、まだそうした話は出ていない。むしろそういうものを持ち出すと、ゼネヴア
会議というものがますます紛糾するおそれがあるやにも考えられておるのかとも推察いたされますが、
相当日本に利害
関係があるような問題というものは、今のところは取上げられておらないし、またこの
会議で取上げられるということは期待しがたいだろうと存じます。但し間接的には今後極東の平和がどういうように持
つて行かれるかということは重大な問題でありますので、私
どもといたしましては今後とも十分注意をいたしまして、この推移をよく警戒的に見守
つて、必要の場合には適当の措置をとりたいと考える次第でございます。
そこで今議題とな
つておりますのは、一方には朝鮮の問題がありますし、一方にはインドシナの問題がありますが、朝鮮の問題につきましては、ずつと見て参りますと、各国とも、ルクセンブルグを除いては全部発言しておる。ことに南北朝鮮の両政権は、二度も発言をいたしております。そして北の政権と南の韓国とは、
相当主張がかけ離れておりますが、これに対しまして濠州が
最初提案し、またあとでイギリスが出て参りまして提案しておりますあの解決案というものは、私はあたかもドイツに関する議決案と同じようなものであ
つて、あの選挙というものは動かし得ないのじやないかというように考えます。すなわち選挙は北鮮だけでやるというようなことは、韓国の言い分も無理がありますから、全朝鮮を通じて行う、但しこれは南北の人口比例というものを考えて、比例によるものでなければならないという点、また一方北鮮あたりでは、独立の
管理機構を設けたいということを言
つておりますけれ
ども、これまで
アメリカあたりが常に国連中心ということを考えて来、それを主張して参りました経緯から考えてみますと、やはり監視機関というものは国連中心のものでなければならぬ、これ以上に譲歩することは、
アメリカのそういう強い主張もありましようから、むずかしいのじやなかろうかというふうに見ております。それじやそれを共産側の方で承認するかということになりますと、もちろんドイツと朝鮮とは地理的な
立場も違いますし、いろいろ重要性も異なるでありましようが、結局はドイツ式にな
つてなかなか
はつきりした結論に到達得ないのじやないか、ステールメートが続くのではないか、これは完全に私個人の見解でありますけれ
ども、こういうふうに見ておるのであります。
〔
委員長退席、野田
委員長代理着
席〕
次にインドシナの問題につきましては、これは今いろいろの国からいろいろの案が出ておりますけれ
ども、ヴエトミン側、ホー・チミン側の提案というものは、もちろんそのまま西欧側は賛成し得ないでありましようけれ
ども、たとえばフランスの経済的、文化的利益を認める用意があるとか、あるいはまた
はつきりは出ておりませんけれ
ども、いよいよきちつとした独立政権を認めるなら、フランス政権に入
つてもかまわないというようなニユアンスのあるものでございますので、私はこれはもう少し何と申しますか、フランス側で考えるという気持になれば、提案として全然これをむげにしりぞけるべき
性質のものではない、どこか妥協の
余地も多少あるのじやないかというように見られますし、ことにフランスの
立場を考えてみますと、フランスの議会では
政府は非常にわずかの差でようやく政権を維持しておる。しかもこの
会議が始まります前に、今度のゼネヴア
会議はあくまで休戦が成立するよう
政府として最善の努力をすべきであるというような要求もつけられておりますから、フランス側も今のインドシナの戦況など考えまして、
相当妥協的に出るのじやないかというように見ますので、私は朝鮮の問題よりもインドシナの問題については、これまでのところ今の直接の問題が、どう停戦するかという問題でありますために、どちらかというと楽観的に見ておるのであります。ことにソ連側の議場における発言ぶりなどについて、これは新聞報道でございますけれ
ども、あつせん役みたいな態度を示しておる場合もあるやに伝えられておるところもありますので、ソ連の方もあまりにひつぱ
つて行
つて、SEAT〇とかPAT〇という方向に西欧陣営をひつば
つて行くということも、好ましくないという考えを持
つておりはしないかというふうにも見ておるのであります。しかし
アメリカとしては、これまでいろいろ声明などして参りました
立場もありますので、あまり大きな妥協というものは、これを牽制しようとしておるでありましようし、また十一日のダレスの新聞記者に対する談話など見ましても、そういうところがうかがわれますので、この中に立
つてイギリスの外務大臣がどれだけの働きをするか、どうしてもイギリスという国は、コロンボ
会議に首相が出席いたしました諸国との
関係もございますので、何とかしてこれを、政治的解決はできないまでも、軍事的な面である程度のまとまりをつけたいということを熱望して、今秘密
会議などでも努力しているのじやないかというように見ております。しかしこの
会議は成功いたしましても、決裂いたしましても、いずれにいたしましても、
会議がかりにある程度の結果を得ましても、インドシナの分裂と申しますか、あん玉のようなところが、ラオス、カンボジヤはいずれといたしましても、ヴエトナムの方には残るということは予期せざるを得ないだろうと思います。
しからばこの後における安全保障というものは、どうしても必要にな
つて来る。決裂した場合も必要になる。またそうでなく、何らかのかつこうをつけた場合も、何かの措置をとらなければならぬということになりますから、それでは一体どういう保障の措置をとるか、これにつきましては一方ロカルノ
方式のようなものも考えられないわけではなかろうと存じます。特にイギリスあたりは、こうした
方式にも興味がないわけではなかろうと存じます。ソ連側の中共とかいうようなものをできれば含め、またイギリスの自治領
関係をも含めたものを考えたいのではないかと思いますが、しかし現実に、先ほどから御質問の中に出ましたSEATOとかPATOとかいうようなものが新聞でも喧伝せられておりますし、今の実情から考えますと、結論的にはなかなかソ連との話もつかない、
アメリカもこの点は非常に重要視しておりますから、そうしたものに行かざるを得ないじやないかというように観測いたしております。がしかし、それも内容がどうなるかは
会議の結果にもよりますし、また今後米国と英、仏との
関係がどうなるかということにもよるでありましようが、現実には、結局英、米、仏、ニュージーランド、濠州というような程度、またそれに積極的に加わりたが
つているタイとかフィリピンもございますので、その辺まで発展するかどうかわかりませんが、そうしたものになりはしないかというように存じます。
アメリカとイギリスとの見解が非常に離れておるというように新聞でも
相当大きく報じられておりますけれ
ども、しかしあれは――先ほど大臣が引用しましたユニフアイド・アクシヨンというようなものも、
会議の始まる前に一つの牽制的な意味、また警告的な意味で言われておりました。しかしだんだん掘り下げて問題が論じられて来ますと、結局
アメリカの考え方、ダレスの考え方というものは、そういうアクシヨンを今起そうというのではなしに、ユニフアイ・オブ・ウイル、統一意識を持ちたいというところにあるのだというようにもいわれておりますし、その後イギリスに行きましているいろ話してみれば、イギリスの方は自治領との
関係もありますので、おいそれと非常に進んだ結合体にはなかなか入りにくいというような点もあ
つたようでありますから、何としてもこの辺で米国としてもこれらの国の協力を得なければならないので、先ほど
ちよつと申しましたようなかつこうで、保障機構というものをだんだん築き上げて行こうという運動が、続けられるのじやないかと見ておるわけであります。
また
福田委員が先ほど御質問になりました台湾とか、タイ国とかいうような問題もございますけれ
ども、いろいろ政治的な面もあるので、とりあえずはそういう国、ことに憲法とか政治上でいろいろ困難がある
日本なんかは、現実に問題にもなりませんから、先ほど申しました五国が中心にな
つて考えるというところに進んで行き面しないか。従いまして、私といたしまして、ゼネヴア
会議の結論がどうなるかということは、もちろん何とも
はつきり申し上げかねますが、しろうとといたしまして、これまでいろいろ
海外などの報道も読みましての感想でございます。これにつきましては、
外交界の先輩である須磨
委員あたりからいろいろ御批判もあろうかと思いますが、率直に私個人の見解を述べまして、答弁にかえる次第であります。