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1954-05-15 第19回国会 衆議院 外務委員会 第50号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月十五日(土曜)     午前十時五十七分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 今村 忠助君 理事 福田 篤泰君    理事 野田 卯一君 理事 穗積 七郎君    理事 戸叶 里子君       大橋 忠一君    須磨彌吉郎君       上林與市郎君    福田 昌子君       細迫 兼光君    加藤 勘十君       河野  密君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         総理府技官         (調達庁次長) 堀井 啓治君         外務政務次官  小滝  彬君         大蔵事務官         (主税局長)  渡辺喜久造君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 五月十三日  委員木下郁君辞任につき、その補欠として西尾  末廣君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 五月十四日  日本国に対する合衆国艦艇貸与に関する協定  の批准について承認を求めるの件(条約第一二号) の審査を本委員会に付託された。 同月十三日  海外抑留同胞の引揚促進に関する陳情書  (  第三〇〇五号)  移民送出方策確立に関する陳情  書(第三〇〇六  号)  太平洋水域における原爆等実験反対等に関す  る陳情書  (第三〇  一六号)  太平洋水域における原爆等実験反対に関する  陳情書  (第三〇一七号)  同  (第三〇一八号)  太平洋水域における原爆等実験反対等に関す  る陳情書(  第三〇四一号)  北京メーデーへの代表派遣に関  する陳情書  (第三〇四三号)  沖繩在住奄美同胞居住権の  自由並びに既得権益保護等に関する陳情書  (第三〇七五号)  原爆実験反対等に関す  る陳情書  (第三〇七六  号)  同(第三〇七七  号)  渡米移民募集に関する陳情書  (第三  〇九一号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国とアメリカ合衆国と  の間の条約批准について承認を求めるの件(  条約第一八号)  遺産、相続及び贈与に対する租税に関する二重  課税回避及び脱税防止のための日本国とア  メリカ合衆国との間の条約批准について承認  を求めるの件(条約第一九号)  外務省関係法律の整理に関する法律案内閣提  出第一六九号)  日本国に対する合衆国艦艇の貸  与に関する協定批准についての承認を求める  の件(条約第二一号)  外交に関する件     ―――――――――――――
  2. 上塚司

    上塚委員長 これより会議を開きます。  日本国に対する合衆国艦艇貸与に関する協定批准について承認を求めるの件を議題といたします。政府側より提案理由説明を求めます。岡崎外務大臣
  3. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいま議題となりました、日本国に対する合衆国艦艇貸与に関する協定批准について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、本年三月、米国政府との間に相互防衛援助協定を締結いたしまして、わが国防衛力増強のために必要な援助の授受についてとりきめを行つた次第でありますが、この協定締結交渉と並行して政府は、かねてから昭和一十九年度防備力増強計画に基いて、米国政府に対し駆逐艦以下十七隻の供与を要請いたしておりましたところ、最近米国政府は、まず駆逐艦二隻護衛駆逐艦三隻合計四隻の貸与決定するに至りました。よつて、これらの艦艇貸与に関する協定締結方について在日米国大使館を通じて交渉の結果、両国政府に意見の一致を見るに至りましたので、五月十四日私とアリソン駐日大使との間で、日本国に対する合衆国艦艇貸与に関する協定に署名を行つた次第であります。  この協定は、日米間の相互防衛援助協定と密接な関連を有する協定でありまして、この協定に基いて貸与される艦艇は、相互防衛援助協定の規定に従つてわが国がこれを占有し、使用することになつております。協定内容は簡単でありまして、一昨年末に日米両国間に締結いたしました船舶貸借協定内容とほぼ同様であります。なお、わが国供与を要請いたしました艦艇中今般貸与決定を見ました四隻以外のものについては、今後の交渉つて貸与決定次第、順次附属書に載せられることになります。  この協定の成立によつてわが国海上防衛力増強のために必要な艦艇貸与を受ける道が開かれ、さきに締結された相互防衛援助協定に基いて供与される他の装備と相まちまして、均衡のとれたわが国防衛力の建設に資することと相なるわけであります。よつて、ここにこの協定批准について御承認を求める次第でありますが、協定交渉のために意外に時日が遷延いたしまして今日に至りました。会期中はなはだ急でありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  4. 上塚司

    上塚委員長 これにて提案理由説明は終りました。  本件に関し質疑を許します。
  5. 福田篤泰

    福田(篤)委員 一点だけお伺いします。きのうの発表によりますと、今般きまりました四隻以外の、特に大型艦艇については今後の交渉にまつというのでありますが、保安庁あたりも相当大型の、たとえば七千トン級の母艦的なものをほしいということは、かねがねこの三月あたりからこの委員会でも発表された次第でありますので、今後の大型艦艇貸与の見込みにつきまして、御所見を承りたいと思います。
  6. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいまのところ、先方に、保安庁希望する各種艦艇は申し入れておりますけれども、先方の都合もありますので、はたして希望通りになるかどうか、ちよつとここではまだ申し上げかねる段階でございます。ただ先方としても、大体トン数においては日本側希望に沿うべく努力しておりますが、その中の船が、こちらの希離するだけの船が来ないで、あるいは大きい船のかわりに小さい船が三隻来るとかいうようなこともあり得るのじやないかと思つております。大型の船がはたして希望通り参りますかどうか、これは今後の折衝にまつわけでありまして、ただいまちよつと正確に申し上げる段階にまだ来ておりません。できるだけ努力をいたすつもりであります。
  7. 福田篤泰

    福田(篤)委員 わが方から希望しておりまして向うに提案しております艦艇は、どういう種類とトン数のものか、さしつかえない範囲で御説明願いたい。
  8. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 大体こちらから申しておりますのは、駆逐艦三千四百トン程度のものが二隻、それから同様駆逐艦で千六百トん程度のものが三隻、それから駆逐艦の、護衛駆逐艦と申しますか、デストロイヤー・エスコート、千四百トン級のものが二隻。この、今申しました駆逐艦千六百トン級のもの、護衛駆逐艦千四百トン級のもの、初めは三隻、あとのものが二隻でありますが、このうちの四隻、つまり勧めのが三隻、次のが二隻、それだけが今度の協定で合意ができたわけであります。そのほかに潜水艦十六百トン級のものが三隻、掃海艇三百トン級のものが四隻、それから小さい掃海艇で三十トン級のものが一隻、それから上陸用艦艇、つまりいわゆるLSSL艇、これが千六百トン級のもので二隻、それから今御質問がありました駆逐母艦、これは七千トン級のものでありますが、これが一隻、これで合計十七隻、トン数にいたしまして二万七千トン余りという予定にいたしておりますが、これはこちらの希望だけでありまして、十分に話し合つてみないとまだ結果は申し上げられないのであります。
  9. 細迫兼光

    細迫委員 一つお伺いをいたしますが、新聞によることですから確かかどうかわかりませんが、この艦艇を借りましたあかつきにおいての海軍力東洋第一になるのだというようなことがいわれておりますが、東洋諸国における海軍力は今どういう状態になつておるか、御比較資料がございますればお示し願いたいと思います。
  10. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は、ちよつと今調べたものをここに持つておりませんが、後ほど資料を差上げたいと思います。
  11. 穗積七郎

    穗積委員 こまかいことはまた後にお尋ねをするとして、ちよつとお尋ねいたしますが、これは大体の第一期計画か何か知りませんが、これだけの、十七隻、二万七千トンの艦船を今までの状況において訓練操作するとして、年間予算は大体どれくらいになつておりますか。
  12. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは保安庁予算の中に予算も人員も計上してあるのでございますが、ちよつと私の管轄違いでありますので正確に申し上げかねる点がありますから、保安庁の係官を呼んでからにしてください。
  13. 穗積七郎

    穗積委員 それでは委員長にお願いしておきますが、月曜日に保安庁またい大蔵省の方々のお立会いの上でこれは御回答いただきたいと思います。  もう一点お尋ねいたしますが、再軍備計画、軍という言葉を使う使わぬは別として、要するに外国からの直接侵略に対応するものとしての実力組織、すなわち軍隊とわれわれは解釈いたしますが、こういうものの増強計画維持計画訓練計画というものが、国民経済、あるいは日本の立つている国際情勢から考えて、はたして合理的なものであるかどうかということは、何といいましても、そのときにおける日本を中、心とする国際情勢の動きと、それからその間におきます作戦計画というものがなくちやならぬ。作戦計画になりますとやはり仮想敵国というものが一応出て参りましようから、特に仮想敵国をどこどこに設定するということはなくても、一応防衛作戦計画というものがなくて、これがはたして合理的なものであるかどうかということはなかなか言いがたいと思うのです。今まで、一体どこの限度が合理的な規模であるかということについては、国民経済国民所得との比較において軍事予算を摘出して、そのパ一センテージについて、はたしてこれが合理的なものであるかどうかというようなことが一応の基準になりました。しかしながら、対外的な性格を自衛隊が持つて参りますと、これは戦時中にも議論されたことですが、その国の軍備がはたして合理的なものであるか、バランスのとれたものであるかどうかということは、その国の予算総額内におきます軍事費、または国民所得全額に対する軍事費パーセンテージというものでは必ずしも判断できないと思うのです。情勢いかんによりましては、そのパーセンテージ外国より高くなりましても、国際情勢上自衛を完遂するためには必要になつて来るという判断が出て参りますし、そういう考え方は、日本戦時中の軍事費がはたして安当なりやいなやということを議論いたします場合に、日本海軍英米海軍相手にして戦う、日本陸軍中国並びにソ連の陸軍相手にして戦う、そういう外交上、作戦上のバランス考えてみなければ、日本軍隊が多過ぎるとかいう判断にはならないというのが当時行われた所論でございます。ここで自衛隊が一人歩きをいたしまして、特に旧軍人がその首脳部にすわるようになつて参りまして、どういたしましても外交なり予算政策というものが、作戦計画を主軸として動くようになり、アメリカにおいても現にそういう傾向があるとわれわれは見受けおります。そうなりますと、これだけの軍備計画がはたして何を目標にして妥当だというのか。これが第一期計画ならば第二期、第三期計画があろうと思いますが、それとの関連において、やはりこの際予算とのバランスだけでなくて、対外的な作戦計画というものが国民に納得されなければ、どの程度のものを持つという基準にならないと私は思うのです。ですから私は、今予算の点を御質問いたしましたが、これは次にお答えいただくとして、軍事外交政策の一環でなくちやならぬ。外交軍事に引きずられるのではなくて、外交政策軍事作戦計画をリードしなければならない、これは前の戦争のわれわれに対する教訓だと思うのですが、そういう意味外務大臣としては一体どういう情勢判断で、こういうものを借入れるのかもらうのか知りませんが、どういう作戦計画を立て軍事計画を立てておられるのか。特に陸軍のことは前にいろいろ議論がありましたのできようはしぼつて海上防衛計画合理性について、少し対外的な関係から説明をしていただきたいと思います。
  14. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 われわれはただいまのところ外交政策というものは、こういう防衛力関係なく考えております。端的にいえば、要するに国際紛争等を武力で解決しないという憲法方針にのつとつて考えております。そこでこれらの船——これらの船といいましても、ただいま問題になつておりますのは、わずかに駆逐艦二隻、護衛駆逐艦二隻のごく小さいものでありまして、満州事変後は別といたしまして、その以前の、つまり日本が普通の独立国としての普通の状態における国防力を持つておなたと仮定されるその当時の海軍の力に比べますと、実はまだはなはだ問題にならないようなものでありまして、これだけあつても、実は日本の長い海岸線を警戒するだけでもとても十分でないことはおわかりになると思います。従いまして、作戦計画とか仮想敵国とか、こういうことを考えるほどのところまでまだ到達しておりません。たとえば密入国取締りは必ずしも保安庁等でやる仕事ではありませんけれども、とにかく海岸警備ということだけでもとうてい足りない、ごく少いものでありますから、ちよつとお話になるような段階には、まだとうては到達しておりません。
  15. 穗積七郎

    穗積委員 戦時中の日本海軍力にはまだとうては至らぬとおつしやいますが、戦時中の日本海軍は、先ほど申しましたように、英米海軍相手にして太平洋防御戦争ができるということを目的にしてやつてつたのです。ロンドン会議以後の海軍部内の大体の考え方というものは、太平洋に引きつけて両国海軍相手にして一応防衛が立つということを目標にしたわけでございまして、そういうことが当時の日本海軍の国際対外的な一つ基準になつてつた考えます。ですからそれに比べて少いと言われるのは、同じことを考えて少いと言われるのか。すなわち英米海軍相手にして戦うことを目標にして日本海軍を建設されるおつもりでおられるから、少いという御論点になろうかと思うのですが、そういう意味でございますか。経済との関係においては、今まで何パーセントまでは可能な限界だと考える、すなわち二十九年度予算国民所得とのパーセンテージ限界だと考えるという御答弁がありました。しかし昨年からでもすでに半年の間にずつとかわつておるように、国際情勢に藉口されまして、国民所得とのパーセンテージというものはいつでも一定しないのが常でございます。ですから現に戦時中の日本海軍に比べれば、こんなものは少いものだとおつしやいます。が、今いいます通り日本海軍国民所得とのパーセンテージにおいては当時算定されたのではなくて、英米海軍太平洋戦争ができるということを基準にして算定されたのでありますから、その趣旨からそこまで行くというなら、その裏の言葉でいえば、日本海軍英米海軍相手にして防衛ができることを目標にして、今多いとか少いとか言つておられるのでありましようか。そういう意味でありますか。
  16. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 決して言葉じりを議論するわけではありませんが、戦時中などと言つたわけではないのであります。満州事変等が起る前の普通の海軍力としての状況に比べてもはとんど問題にならぬような、海岸警備にも足りない程度でありますから、英米海軍相手にするとか、どこの海軍相手にするということを考えておるわけではありません。
  17. 穗積七郎

    穗積委員 海岸警備という言葉が出ましたが、海岸線がいかに長くても、船舶の航行や海岸線が書かされるとか密入国その他の心配がなければ、防備的なまたは警備的な意味での艦船というものは必要ないわけです。それよりは経済的なものに振り向けた方がいいわけであります。ところが海岸警備が必要だという以上は、どういうところに必要があるのか、それを聞かせてもらいたい。アメリカと英国の海軍相手にして戦争するつもりの軍隊をつくるのではないとおつしやいます、それははつきりしましたからけつこうであります。そんなことではまさかあるまいと私も思つておりましたが、ただいま戦時中の話が出ましたからちよつと言つただけのことであつて、それではそれにかわるものとして、どういう観点に立つておられるか、海岸警備のために、具体的にどういうことでどういう必要がありますか。密入国とか密貿易を取締るなら、こんな千六百トンというような大きな巡洋艦みたようなものは必要ないのであります。もつとちつぽけな程度のもの、警備船で私は十分だと思う。何かそういう対外的な必要の状況が想定されておるから、これが多いとか少いとかいうことになるわけでありますから、その対外的に想定される必要はどこにどういう事情があるかということでお尋ねするわけであります。
  18. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは陸上部隊について議論されたことと同じでありまして、独立国として国を守る必要がないという御議論なら別でありますが、国を守る必要があるということであれば、一応の防衛力をつくるのはあたりまえであります。これは一つのたとえのようになりますが、自分の家は火事が起らないとか、火事心配がないといつても、保険料払つて保険にかかつておるのであります。もし焼けたあとでいくらほぞをかんでも間に合わないということがありますので、これは国として一種の保険料意味もあるのであります。どういう場合でもできるだけの備えをするというつもりでやつております。
  19. 穗積七郎

    穗積委員 保険料でもけつこうですよ。保険料一つの比喩でありますから……。たとえばあなたはどこに住んでおられるか知らぬが、あなたの住んでおられる地区には年間にどのくらい火災の被害があるという統計が出ておるわけであります。こういう状況だからこういう危険がある、だからそこから保険料が算定されるわけであります。ですからこの程度なら、一般的な平均統計からいつて保険料払つても損がないという計算が出て来るわけであります。一体日本もどの程度リスクの率か示してもらいたい。野中一軒家なら保険料を払う必要はありません。野中一軒家の農民で住宅を火災保険に入れておるというようなのは、ほとんどないのでございます。でございまますから、保険危険率を一応算定されて、それによつて多いか少いかということを主張されるのでございますから、そのリスク統計をどこで計算されたのか、その基礎説明してもらいたい、こう言つている。保険料に例をとられてもけつこうでございます。
  20. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 このリスクは、総理も言われましたように、天から降つて来るようなものもあり得るわけであります。従つてわれわれとしては、これに備えるためには、リスクはもつと大きい、保険料率はずつと高くてもいいくらいに思つている。これは非常に少い。
  21. 穗積七郎

    穗積委員 第一、保険に入ることが必要かどうかが問題だ。あなた方は保険に入つた方がいいと思つて、これに入つて、これは少い、これからふやすと言われるが、どのくらいのリスクに対して、その保険料を払うつもりであるか。そのリスクの算定の基礎を示してもらいたい。ぼくらは低く考えているが、政府は非常に高く考えている。賢明なる外務大臣はそういうことを判定されているはずだから、国際的リスク説明してもらいたい。
  22. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 国際的なリスクというものは、別に保険会社決定しておりませんから、申し上げるような材料はありませんが、一体穗積君は、日本防衛力はいらないとお考えになつておるのか、いるとお考えになつておるのか。いるというお考えならば、今度は程度の問題になります。ですから議論が成立するわけであります。いらないというお考えならば、これは程度の問題でないから、議論は成立しないのであります。そこで議論を簡単にするために、一体防衛力はいるとお考えになつておるかどうか、それをまず伺いたい。
  23. 穗積七郎

    穗積委員 私がそこへすわつてあなたがここへすわつているなら、その方針ちよつと説明してあげてもいいですが、あなたは何を私に聞くのですか。あなたはわれわれに、保険に入つた方がいいかどうか、すなわち無防備がいいかどうかということを聞いて、それでわれわれが無防備方針ならば、答える必要がない、そんなばかな話がありますか。そんなことなら国会なんかいりはしない。私たちは再軍備には賛成しておらぬが、百歩譲つて政治的論理を聞こうとしている。あなたがこういう方針を示して、われわれを納得させようというから、あなた方の根本でなく、あなた方の論理の過程に入つて政府政治的ロジックを聞いている。だからあなたは答える義務がございましよう。お前とおれとは認識が違うのだから、答える必要はない、国務大臣は議員の質問に対して答える必要がないということは、国会法のどこにそういうことが書いてありますか。根本的な認識の違い、思想の相違した者には答える必要はないということは、憲法にも国会法にもありませんよ。私が聞いているのは、あなた方の、再軍備が必要だ、防衛が必要だというその論理従つて、はたしてそれで納得できるかどうか、それが論理なのかどうかということをお尋ねしているわけです。だからいらぬことを言わぬでもいい。私がそこにすわつたときに、あなたは政府基本方針お尋ねになればいい。そういう他を顧みておかしなことを言うことはやめて、国際的なリスク説明してもらいたい、あなた方はどんな論理を持つているか、聞きたい。
  24. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私どもの論理は、まず独立国としては、当然国を守る力を打つべきである、この論理から出発している。そこでその程度につきましては、国の経済力あるいは国の憲法のこともありましようが、各種の制約のもとにできるだけのことをする。そこでただいまのところはまだできるだけのことをするところまでも行つていない。またできるだけのことを毎年やつても、長い間かからなければ、満足すべきところまでは到達しないので、到進すべき目標からいつたら、まだずつと下の方にある。従つて仮想敵国ということを考えて、これは多いとか少いとかいう議論をするところまではとうてい行つていない、こういうのが私の議論であります。
  25. 穗積七郎

    穗積委員 現にあなたは言つておられるじやありませんか。満足すべきところへ行つていないというその満足目標がある。陸、海、空がどれだけの内容を持ち、どれだけの量を持つた部隊が必要だという満足点があるわけだ。その満足点というものは、何によるかといえば、今言つた国際的なリスクの判定によつて、それならば安心だ、それでなければ安心でない、こういうことになるわけですね。国内で言うならば、警察の配置ということになる。ですから一体その満足点とは何を基準にして考えておられるかということと、同時に満足点とは、どこまで行つた満足点なのか、聞きたい。
  26. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 結局満足点というのは、日米安全保障条約に基く米駐留軍がいなくなつても、日本の守りは大丈夫だという点が満足点であります。それにはまだなかなか到達できません。
  27. 穗積七郎

    穗積委員 今十一万何がしかのアメリカ陸上軍がおるようですが、それだけの兵数装備——装備アメリカ軍原子爆弾を持つて来ておるか持つて来ておらぬか知りませんが、そういう装備を一体満足点と見ておられるのでございますか。そうならば、日本の安全は大体それで安心だ、満足点だという御解釈でございますか。そういう解釈として理解いたさざるを得ませんが、そう理解してよろしゆうございますか。
  28. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは米駐留軍日本を徹退しましたそのときの国際情勢によるのであつてアメリカ駐留軍が今日本にこれだけいると仮定して、これだけいれば、永久に十分なのか、もつと多くなければならぬのか、あるいは少くてもさしつかえないか、これはやはりそのとき合\の国際情勢によるわけであります。従つてそれがどれだけの兵力であり、どれだけの装備であるかということはそのときの情勢でありますから、今からは言えません。しかし目標は、自分の国は自分で守るという点が目標であります。
  29. 上塚司

    上塚委員長 穗積君にちよつとお諮りしますが、外務大臣は十二時に米国要人とどうしても会われなくてはならぬ用事がありまして、十二時に退席せられるのですが、あとになお五人の質問通告者が残つております。それでできるだけ切り上げて、次の質問者に譲つていただきたい。
  30. 穗積七郎

    穗積委員 私が月曜日にやろうというのを、あなたが無理やりにやれと言うから、意見がなくても困るだろうから、意見を申し上げただけのことでありますのでいつでもやめます。だから月曜日からでもゆつくりやりましよう。それでは私の質問は留保しておきますから、そのつもりで……。
  31. 上塚司

    上塚委員長 河野密君。
  32. 河野密

    ○河野(密)委員 私はごく簡単にお伺いいたしますが、先ほど福田君の質問に対して外務大臣は十七隻ということであります。われわれどうも船の知識がないから、一向わかりませんが、駆逐艦千大百トン型と書いてありますが、これはアメリカにおいてきまつておるのですか。千六百トン型といつても、船の性能その他についていろいろ種類があるでしよう。まずお尋ねしたいのは、千六百トン型とありますが、どの程度の船なのか。建造の年数、性能についてまだ秘密保護法は通過しておりませんから、ひとつお答え願いたいと思います。
  33. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 千六群トン程度駆逐艦と申しますと、大体長さが三百五十フィート程度であります。そして速力が——これはアメリカの船を借りるのですから、アメリカ基準によつておりますので、世界中の船がみんな同じだというわけではありませんが、アメリカの船は、速力が大体三十ノット以上三十五、六ノットでありましよう。そして乗組員は約三百五十名くらい、こういう程度のものでありまして、(穗積委員「攻撃武器は何ですか」と呼ぶ)武器としましては五インチ砲が普通四門、それから魚雷発射管等が付属されておる、大体その程度のものであります。これに対して護衛駆逐艦になりますと、長さが三百フィート余りということになりまして、速力も従つて低くて二十ノット程度、乗組員も三百二十人程度、そして五インチ砲でなくて三インチ砲がついておる、こういう程度のものであります。今回借り受けようとしておりますのは、駆逐艦においては一九四二年の竣工であります。それから護衛駆逐艦の方は一九四三年ないし四四年の竣工になつております。
  34. 河野密

    ○河野(密)委員 これはアメリカのあれから見ると、アメリカの現役の船なのでしようか、それともアメリカの現役を離れている船でしようか。
  35. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはもちろん戦争中につくられた船でありまして、その当時現役、で活躍した船でありますが、終戦後は多数の船が繋留してありまして、現に活躍していない船がたくさんあります。その現に活躍していない方の船であります。
  36. 河野密

    ○河野(密)委員 先ほど福田君の質問に対して十七隻という御答弁でありましたが、その十七隻というのは日本側の要求によつて出たものでありますが、これはどういう計画に基いて十七隻という数字をお出しになつたのでしようか。
  37. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは保安庁の方で御説明する方が適当でありまして、外務大臣の所管ではありませんが、予算及び人員等に関連いたしまして、保安庁でこの程度のものが必要であるということで、予算も計上し人員も要求し、それに必要な艦艇を借り受ける、こういう計画でただいまやつておるわけであります。
  38. 河野密

    ○河野(密)委員 これは保安庁の方かもしれないのですが、そのあれに潜水艦とか上陸用舟艇とかいろいろなものがありますが、これもやはり防衛に——防衛にはもちろん必要かもしれないが、日本警備という観点からなのでしようか。これはどういう計画に基いておるのでしようか。
  39. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 上陸用舟艇というのはちよつと名前がそういうふうになつておりますから、どこかへ出て行くように誤解を受けやすいのでありますが、これはすでに、たとえば御承知のように終戦当時も引揚げ用としてちよつと借りて、海外からの引揚げにも使つておりますが、今上陸用舟艇というのは主として運搬等に使う意味で借り受けたいと思つています。
  40. 河野密

    ○河野(密)委員 現在駆逐艦護衛駆逐艦、これが一番差迫つてと申しますか、一番最初に来るやつで、そのあとこれからの協定は外務省が主として折衝に当られるのですか、保安庁でもつて直接向うとの話合いでおやりになるのでしようか、あと潜水艦だとか掃海艇だとか上陸用舟艇だとかはどういう計画でおやりになるのでしようか。
  41. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 交渉の主体は外務省でございます。しかしこれはもちろん保安庁と協力いたしまして、実質的には保安庁の使う船でありますから、保安庁の方でも、こういうふうに必要なのだ、こういうふうに使いたいというような実価的な説明もいたしまして、主体は外務省でありますが、保安庁の十分なる協力を得て交渉をいたしております。
  42. 河野密

    ○河野(密)委員 そういたしますと、昭和三十九年度の防衛計画というようなものは、大体アメリカ側にこちらからは、こういう計画であるということはお示しになつておるわけでしようか。
  43. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは主としてMSA関係の贈与を受けるために日本側計画説明いたしておりまして、それに基いてこれこれのものが必要である、こういうことを話しております。
  44. 河野密

    ○河野(密)委員 そうしますと、MSA協定に基いておつしやると、これは防衛計画という相当の計画をお示しになつておる。その防衛計画に基いて、日本もこれだけの——十七隻をまず第一次的に求めるのだ、こういうことだと、防衛計画というものは外務省の所管でないかもしれませんが、当然外務省も関知しておられ、これに基いて交渉をずつとしておられると思うのですが、その防衛計画の全貌なるものはいつになつたら御発表になるのでしようか。
  45. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 外務省として交渉いたしております計画は二十九年度の計画に限られておりまして、二十九年度以降のことについては、外務省としては日本自体の防衛計画がまだ完成いたしておるとは考えておりませんし、もちろんアメリカ側と話をいたしておることはありません。二十九年度の計画のみについて話しておるのであります。
  46. 河野密

    ○河野(密)委員 この日本が今艦船貸借協定で問題にしようという船で、とにかく一番性能の高いものは駆逐艦駆逐艦以上のものは交渉の対象にも何にもなつておらないのでしようか。駆逐艦以下のものについてはお話合いを進められておる、こういうふうなのでございましようか。
  47. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 性能と申しますとそれぞれ性能は別々になりますから、性能の高いものと言えるかどうか私はちよつとわかりませんが、常識的にいえば、駆逐艦及び駆逐艦以下のものでありまして、それ以上のものではありません。
  48. 河野密

    ○河野(密)委員 そうしますと、先ほど細迫君の尋ねられました問題に関係するのですが、駆逐艦を二万七千トン程度のものを借り受けて、東洋第一の、極東第一の海軍国になるのだというような点になりますと、どうもつじつまが少し合わないように私たち思うのですが、これは防衛計画の初年度はまあこの程度の貸借の問題なのだが、第二年度、第三年度になると、相当、巡洋艦であるとか航空母艦であるとかいうようなことの話合いも進み得る一これはMSA協定の建前からいえば、そういうものを話をしてもふしぎじやないのでしようね、どうなのでしようか。
  49. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 第一に誤解を避けるために念のために申し上げますが、われわれは東洋一の海軍国になろうなんという気は全然持つておりません。要するに国を守るに必要なもので、ほかの国とは何も関係せずに、自国のみの都合を考えております。これから将来どういう種類の艦船が必要になりますか、これは保安庁等計画と相まつてきめられることでありまして、理論的にはおつしやるように、いろいろのものが必要である場合もあろうと思いますが、まだどういうものが必要であるかということはわれわれも聞いておりません。保安庁でもまだ決定いたしておらぬのじやないかと思つております。
  50. 河野密

    ○河野(密)委員 私詳しいことは、また法文その他についてはあとからお尋ね申しますが、先ほど来の岡崎外務大臣のお話によると、これを借りて日本防衛計画を均衡のとれたものにするのだ、こういうようなお話でありますが、駆逐艦四隻借りて、それから日本計画によればいろいろなものがあるようですが、この均衡がとれるという意味はどういう意味なのか。私の解釈するところによると、海軍もふやして行き、空軍もふやして行き、陸軍もふやして行く。こういう均衡という言葉は非常に私には重要に響くのでありますが、均衡がとれたという趣旨は、どういう趣旨で解釈されているのですか。将来日本防衛力は、海軍力というものは、今申し上げたような巡洋艦とか、あるいは航空母艦とか——空軍が拡大されて行けば、航空母艦というものもまた対象になつて行くと思う。その大きな何か計画がおありになつて、その計画に基いて着々と進められておるという印象が強いのでありますが、均衡がとれているという意味はどういう趣旨でありましようか。
  51. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 どうも何か政府防衛計画を隠し持つて、それに基いてやつておるのじやないかというお疑いが晴れないようでありますが、これは正直なところ、ただいまのところは持つておりません。保安庁としては研究し、そういうものができた方がいいと考えておると思いますが、ただいまのところはできておりません。均衡がとれておるというのは、これは正確には保安庁の専門家にお答えさせなければできないと思います。たとえば陸上部隊がどれだけ、海上部隊どれだけが、日本の地理的その他の環境から見て均衡がとれていると言い得るかという議論になりますと、これはむずかしい問題でありますが、私どもがしろうととして常識的に申しておるのは、MSA協定を結んで援助を受ける場合に、ただ陸上部隊だけあればいい、こうも考えないし、それじや陸上はいらぬから海上だけあれはいい、そうも考えない。やはりこれは陸海空、これを一応適当な形をもつて整えるのがいい、そういう意味の均衡であります。
  52. 上塚司

    上塚委員長 河野君、本問題については月曜日に夕方までやりますから、どうぞ次の方へお譲りを願いたいと思います。——須磨彌吉郎君。
  53. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 この協定はMSA協定に基くもので、大体においてさしつかえないと思いますが、ちよつと全般にも関しますし、伺いたいのでございますが、ここに侵略によるという言葉があるわけであります。侵略によつて損傷をこうむつたとかいうようなこともございますが、かよう侵略というような意味がはつきりいたしておりますものか、それが一点でございます。それからまず伺つておきたいと思います。
  54. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは実は想定でありますから、非常に正確にどうというふうにお答えはむずかしいのでありますが、要するに観念的に見ますと、直接、間接の侵略の危険があり、こう考えておりますから、こういう直接、間接の侵略によつて損傷を起された場合は別であつて、それ以外のたとえば過失によつて損傷が起るとか、あるいは天災によつて損傷が起るとか、そういう直接、間接の侵略以外の損傷と、そういう侵略による損傷ということをわけまして、そして補償の問題をきめたわけであります。要するに自己の過失によるとか、不可抗力の天災によるとか、こういうものについてはそれぞれ別の補償の考え方があります。それ以外のものについては別であります。こういう意味であります。
  55. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 念のために伺いたいのでございますが、そうすると、この侵略というものは、相当広い意味になるものでなかろうかと思われます。たとえて申せば、ほんとうに戦時状態が起つていわゆる侵略に当ることが起らなくても、竹島の場合に考えますと、竹島の防備に当るために行つておると、向うから砲撃を受けたというような、きわめて広い意味のものも、国際法上いわゆるはつきりした侵略でなくても、ここに含むものでないかというように思われますが、どうでしようか。
  56. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ちよつと私としては、竹島というような例をとるとどうかと思いますので、それは避けますが、要するにたとえばサボタージユと申しますか、何か港におつた場合でも過失でなく、この船をつぶしてやろうという考えで、火薬を仕込むとかなんとかいうことで、損傷を受ける場合もあり得ると思います。そういう場合は間接の侵略の一極であると考えられる場合もあろうと思います。それから何か日本の船を守つて海上におつた場合に、第三国の船から思わず砲撃を受けたという場合に、これは侵略行為であるか、あるいは何か不用意な処置によつて、そういう誤解のもとに砲撃を受けたというようなこともありましようから、その場合は現実の事態を一々見ないと、これは侵略行為であるか、あるいは一部は過失であるかということは、はつきりしないかと思いますが、要するに侵略によるということは、おつしやるような意味では、割に広く解釈できる、こう思つております。
  57. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 一般の問題でございますから、これもちよつと私は伺つておきたいと思うのでございますが、かような艦艇の貸付、貸出しに対しては、アメリカは一々大統領の令によつてきまつておるわけでありますから、日本のものもそういうことになるのでございましようか。すでにフランス、イタリア等にもそれは貸出しておる。ところが本協定の第五条に「日本国政府は、艦艇に自国の旗を掲げることができるが、」と書いてありますが、これはもちろん自明のことだと思うのでございますが、かような借り受けた艦船に借受国の自分の旗を掲げるというようなことが、ほかの国との協定にもこの通りのものがあるのでございましようか、それともこの協定に限りかようなことがあつたのでございましようか、その点をちよつと伺つておきたいと思います。
  58. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 こまかいほかの国の例は私自身は持つておりません。条約局長がここにおりますから申し上げますが、私の調べたところでは、ほかの国の協定にもあつたと記憶しております。
  59. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 あればよろしゆうございます。
  60. 上塚司

    上塚委員長 大橋忠一君。
  61. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 この船は繋留中の船とおつしやいましたが、しかも小さな船であります。陸上の戦車とかその他のものは、MSAの協定でこちらにくれることになります。ところがこれは貸与協定で、むろん他の国も艦船貸与協定だから、日本貸与協定だ、こういうことになるのでありましようが、しかし日本のような微弱な、独立かどうかはつきりしないような国において、アメリカから艦船を貸していただいて、そうしてようやく旗を掲げて運営するということで、いかにもアメリカの傭兵のようなぐあいになる。ぼくは軍隊を持つこことはある程度必要だと思う。けれども、その軍隊というものは、どこまでも日本の国家の軍隊という感じが出ぬことには、いざというときには何にもならない。私は満州国の軍隊をよく知つておりますから言うのでありますが、こういう繋留中のものだから日本に全部もらい受ける、そうしてわれわれが自由にこれを管理する、われわれのものとしてこれを運営するというふうにできないものでしようか。私はこれではいかにも自分の国の軍艦としてこれにたよるという気持が出ない。従つて、乗組員にいたしましてもやはり同様であつてアメリカにまるで雇われて手先になつておるというような感じが起つて非常にまずいだろうと思うのですが、そういう点について話してみる気持はないでしようか、その点についてお尋ねします。
  62. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはやはり私どもも同様の感じを持つておりますから、できるだけ話をいたしましたけれども、今のところ残念ながらアメリカの法律がそうなつておりますので、大統領としてもこれは貸与以外に方法がないのであります。もちろんこのMSA協定に基く船舶は贈与されることは御承知の通りであります。ただMSAの範囲にないものは今のところ貸与以外に方法がないので、やむを得ずこういうことにいたしました。将来そういう機会があれば、もちろん恵んでそういたしたいと存じますし、またできれば保安庁としては日本で船をつくりたいという気持も強く打つております。またほかの例を申しますと、これは戦時中でありますが、御承知のようにソ連も船舶貸与を受けております。フランスは現にやはり何様に船舶貸与を受けております。まあできればそういうことは避けたいとは思つておりますけれども、やむを得ざる今の際はこれで行きたい、こう考えております。
  63. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 この貸与をするという意味はどういう意味でありましようか。つまりその値打が非常にあるものだからやつてしまうのも惜しいという意味であるのか、あるいは権限を自分で留保しておいて、必要なとき、あるいは日本があぶなくなつた、日本そのものがたよりにならなくなつた際には、いつでも引揚げ得るという警戒的な意味でやつておるのでありますか。艦船貸与するというふうにアメリカがきめたその動機というか魂胆というか、それはどういうところにあるのでしようか、それに関する御観測を参考のためにひとつお聞かせ願いたいと思います。
  64. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはたとえば陸上部隊に対する装備とかあるいは飛行機等も同じことではありましようけれども、艦艇は使用年限がほかに比べると相当長いわけであります。アメリカ側の気持としましては、装備はできればその国で自力でできるだけまかなつてもらいたいという考えと私は見ております。本来からいえば、あらゆる装備は貸し与えて、そうして自国でまかなえるようになつたら引揚げるということが趣旨でありましようが、ただ陸上部隊の使うものとかあるいは飛行機なんというものは、使用年限が非常に短こうございますから、引揚げるといいましてもそのときはもう使用に耐えなくなつておる。ところが艦艇の方は相当長く三十年持つとか三十五年持つとか、役に立つ立たぬは別として持ちますものですから、そういつまでも支えるということでなくして、貸すということによつて、自国のそういう方の努力を促進したいという考えじやないか、こう非えております。
  65. 上塚司

    上塚委員長 福田昌子君。
  66. 福田昌子

    福田(昌)委員 この十七隻の貸与というものは、大体いつごろまでに交渉がお済みになる御予定でございましようか。
  67. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 最終的な目標は、われわれは本年度内と考えておりますが、本年度内では十分ではありませんから、それよりできるだけ早く、しかしいくら遅れても本年度内には片づけたい、こう者えております。
  68. 福田昌子

    福田(昌)委員 政府が十七隻の御予定のもとに、三十九年度の防衛力増強計陶に基いて早くから交渉しておられて、今日までの間にやつと四隻だけ御交渉が成つたというところにおいて、早くこういう協定をお結びになつて提出された。こういう協定に対しましては早く国会に御提出になりますが、私ども本日ここで初めて拝見させていただいたのでありますが、阿波丸請求権の処理のための日本国政府及び米国政府間の協定、こういう重大な協定をここで見せていただきまして初めて知りました。私どもは阿波丸の遭難に対しまする請求権を放棄したという問題は、三十四年の国会におきまして承知いたしておりましたが、米国政府との間にこういう協定を結んでおられたということは、まつたく関知しないことでありまして、しかも内容をざつと読んでみましても、日本の主権に関する大きな制約を受けることが平気できめられておりまして、今まで国会承認を求められていなかつたということは私ども解せないわけであります。なぜこれを今十日まで国会承認を求められなかつたかということが一点。  それとさらに読んでみますと、この今日問題になつておりますイロア、ガリオアのこの債務の問題につきましても、政府は今までアメリカ側との正式な、債務として認める何らの交渉をやつていない、そういう正式な交渉がなかつたということをぬけぬけとおつしやつておられましたが、これを読みますと、了解事項として政府はイロア、ガリオアの援助というものは、明らかに日本側の債務と認めておられるのであります。こういうことを認めておられながら、今日までこれをなぜ隠しておられたか、この三点についてお伺いいたします。
  69. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 岡田さんは、当時国会議員として出ておられたと記憶しておりますし、当時のことは御記憶だと思いますが、昭和三十四年の四月に阿波丸に関する決議案が出まして、その決議案に基いてその協定及び了解事項はできたのであります。当時それについてはただちに発表いたしまして、国会において種々の論議がとりかわされておりまして、これは速記録に明らかになつております。今発表したものではございません。昭和二十四年四月に発表いたしております。
  70. 福田昌子

    福田(昌)委員 それは私どもも理解いたしております。しかしそれは国会における阿波丸避難に対する請求権の放棄に関する決議案とかいうような形で出されておつたかと思うのであります。この協定そのものが国会承認を求めるものとして出された記憶はございません。なぜこの協定を今日まで国会において審議の対象にしなかつたかということをお尋ねしておるのでございます。
  71. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 それももう昭和二十四年の四月のことでございますから、あるいは御記憶が薄れておるかもしれませんが、その決議は、政府はすみやかにこの決議に基いて協定を締結して国会に報告せよ、こういうことになつております。国会承認を求めよという決議ではございません。私は当時外務委員長としてその決議を取扱つたのでありますから覚えておりますが、その決議に基いて協定を締結して国会に報告し、国会において論議がとりかわされておつたというのが実情でございます。
  72. 上塚司

    上塚委員長 福田委員にお諮りいたしますが、外務大臣は十二時に出かけられることになつておりますし、艦艇の問題の質疑を許しておるということですから、ガリオアの問題ならば他日にお願いいたしたいと思います。
  73. 福田昌子

    福田(昌)委員 承知しております。私はきようはいろいろ質問をしたいと思つてつたのですが、委員長の一方的な非常に不公平な裁量によりまして制限を受けましたが、私はこれの取扱いの問題をお尋ねしておるのであります。この重大なる阿波丸請求権の処理のための協定に対しましても、岡崎外務大臣のお考えと私どもが承知いたしております事項とは大いに開きがあるのでありまして、国会に御報告になつたという御発言でありますが、私は国会の議員の関心を呼ぶ形で御報告になつたということを記憶いたしていないのでありまして、またイリア、ガリオアの問題にいたしましても同じような形で疑念がありますが、時間の制約を受けましたから、月曜日にこれについて質問を続けます。     —————————————
  74. 上塚司

    上塚委員長 次に所得に対する和税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国とアメリカ合衆国との間の条約批准について承認を求め・るの件、及び遺産、相続及び贈与に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国とアメリカ合衆国との間の条約批准について承認を求めるの件を一括議題といたします。この両案につきまして大蔵省十税局長渡辺喜久造君より説明を聴取いたします。
  75. 渡辺喜久造

    ○渡辺政府委員 二重課税防止条約につきまして簡単に御説明申し上げることにいたします。  最初の段階から申し上げまして非常に恐縮でありますが、まずもつてどういう点で二重課税の問題が起るかという点をごく簡単に申し上げます。日本所得税法によりますと、御承知のように日本に住所を持ち、一年以上居所を持つ人は、個人はその人の持つている全部の所得について所得税が課せられる、こういうことであります。同時に日本に住所または一年以上居所を持つておりませんでも、たとえば日本で商売をしている場合におきましては、その商売をしていることによつて得た所得に対しては日本所得税がかかります。ところが同じような考え方ははかの国も持つておりまして、問題になつておりますアメリカの例をとつて言いますと、アメリカではアメリカの市民——シティズンであればその人の全部の所得に税金がかかります。またたとえばたまたま品本人がアメリカへ行つて支店でも持つて商売をしている、そうしますと、向うの支店の所得に対してはアメリカ所得税がかかるわけであります。従いましてこういうふうな建前になつております上から、日本に住所を持つて商売をしている人がアメリカのニューヨークに支店を持つて商売をしている。そうすると、日本所得税は全部の所得についてかかるから、アメリカの支店の所得も込めまして全部所得税がかかる。ところがアメリカの支店における所得に対しましては、アメリカ所得税がかかるわけであります。すなわちニユ一ヨークに支店を持つて商売しておりますと、その所得に対しましては日本所得税もかかりますし、アメリカ所得税もかかる、こういう問題が起るわけであります。このことは法人税でも同じわけでありまして、本店が日本にございますと、どこの国で商売をしておりましても、得た所得の全部に日本の法人税がかかる。ニューヨークの支店の所得に対しましても法人税がかかる。ところがニューヨークの支店の所得に対しましてはアメリカ所得税もかかる。ここに二重課税の問題が出て参ります。その意味の二重課税は各国ともぜひ避けるべきであるというふうな考え方になつておりまして、これはある程度国内法でも実は処置できるわけでございます。アメリカでは古くから歳入法の百三十一条という規定がございまして、アメリカのたとえばナシヨナル・シティがニューヨークに本店を持つておりまして、東京に支店を持つている。東京の支店の所得に対しましては日本の法人税がかかります。アメリカの方では日本の東京の支店の利益も込めまして全部の所得に対して、アメリカ所得税を課しているのでございますが、東京の支店においてもうけた利益に対して日本の法人税がかかつた分は、税額でこれを差引くということにしまして、結局会社としましては日本に納めるかアメリカに納めるかの違いはございますが、負担する所得税は同じだ、こういう規定がございます。日本にはそのような規定が実は従前なかつたのでございまして、日本の法人がニューヨークに支店を持つていて、ニューヨークの支店において利益があり、それに対してアメリカ所得税を納める。これは実は単に経費にだけしか見ておりませんでした。経費に見たということでも完全な二重課税にはなりませんが、相当な三重課税になつていたのであります。この点につきましては、実は昨年法律を改正していただきまして、所得税法、法人税法におきまして、ちようどアメリカの歳入法百三十一条と同じような意味の規定を置きまして、二重課税防止の措置を——実はこれはアメリカだけではありません。どこのよその国でも全部同じですが、措置をとつたわけでございます。そういうような意味におきまして、二重課税ということがそこでよく起きる。同時にそれに対する関係からしますと、二重課税防止は国内法でも一応はできるのでございますが、ただ国内法だけでやりますと、いろいろな意味において不十分な点が実は出て来るわけであります。と申しますのは、これはもう各囲いずれも同じようにやつておりますが、日本の法人がニユーヨークに支店を持つておりますと、ニューヨークの支店の利益に対して課税せられたアメリカの税金は、今の国内法で控除はいたしますが、その控除する限度が実はあるわけであります。アメリカの方の税金が安く、日本の税金が高い場合におきましては、アメリカにおきましての税額を全額控除いたします。アメリカの方の税金が高くて日本の税金が安い場合、こういう場合にアメリカにおいて納めた税金を全額控除いたしますと、考えようによりますが、日本において得た利益の税金が安くなる。それに食い込むといいますか、アメリカの方でもつて高い税金のかかつているところで商売して得た利益、それで税金がかかつたのを全額控除しまして、そうして結局その全部の所得に対しまして安い国の安い税金で納めたと同じ結果に持つて行くということは、これは国内の利益に対する税金まで食い込む、こういう考え方ができるのでございますから、そういうように支店の所在地の国の税金が高い場合におきましては、ちようど全体の利益に対する支店の利益の割合、たとえば全体が一〇〇でありまして、支店の利益が二〇だ、そうしますとこれは二割分だけは負けますけれども、税率が向いために税金として比較すると三割五分になつたというその五分だけは負けないというのが、これは各国いずれもが考えておるやり方であります。そこでどうしてもできるだけ国内で得た利益と国外で得た利益を二重課税にしないということをとつておりますが、今のようなことになるので、たとえばナシヨナル・シティの支店がこちらにある場合、あるいは日本の伊藤忠なら伊藤忠の支店がニューヨークにある場合におきまして、アメリカ日本のニューヨークの支店にかける税金、あるいは日本がナシヨナル・シティの支店にかける税金、これをどの程度にかけるかということについて、ある程度やはり話合いを進めて行くことが、両国の負担を調整するゆえんである、こういうふうに考えられるわけでございますが、この点になりますと、どうしてもやはり一つ条約を結びまして、お互いの負担を一応制限のもとに赴くということが必要になつて来るわけでございます。それともう一つ、納税者におきましては、たとえば今の例でいいますと、ニューヨークの支店で納めた税金は、全部日本の本店で納める税金から差引かれますから、その意味からしますと、お互いの税金が同じであつた場合におきましては負担にはかわりがないわけでございますが、両国課税権の上から行きますと、どの分をどの程度アメリカがとり、どの程度日本がとるか。アメリカの方でたくさんとり過ぎますと日本の取り分がそれだけで少くなり、アメリカの方の取り分が少ければ日本の取り分がそれだけ多くなる。納税者としては負担は同じでありましても、両国課税権の問題になりますと、本店がアメリカにあり、支店が日本にある場合、あるいは本店が日本にあり、支店がアメリカにある場合——われわれ制限納税義務者と呼んでおりますが、制限納税義務者に対する課税をどの程度にやるか、これは納税者にとつては結局負担が同じであるとしましても、課税権の問題におきましては、お互いに制約し合うということになるわけでございまして、この点もどうしても条約におきましてお互いに交渉し、適当なるところでそれをきめることにする必要が出て来るわけであります。それで、第二次戦争以前におきましては、各国はそれほどたくさんこういう国際的な租税協定を結んでおりませんでしたが、しかし第二次戦争後におきまして、アメリカは特に非常に熱心に各国と結んでおりまして、もう二十数箇国と結んでいるようであります。日本におきましては、実はこういう意味条約は今度初めてでございまして、二重課税防止関係は、いろいろ議論がありましたが、具体的に国際的なとりきめとしておりますのは、船舶関係のものがただ一つございます。それは条約というかつこうをとつておりませんで、船舶に対する課税の相互免除に関する法律という大正十三年の法律がございます。それはどういう点かと申しますと、たとえば日本郵船がアメリカ航路を持つており、シャトルとかサンフランシスコとかニューヨークに支店を持つておる。そこで利益が出る。逆に向うのプレジデントラインが横浜なら横浜に支店を持つておる。こういう関係のものを一々支店のものは支店に課税をし、そこで先ほど言つたような控除をするというのはややこしいから、お互いに負け合つてしまおうじやないかという考え方に基きまして、もし相手国が同じような条件でもつて免除するならば、日本も免除してよろしいこういう広い、権限を与えていただいておる法律がございます。それに基きまして外務省で交渉しまして、交換公文をとりかわしまして、それによつて相手国も同じ条件で日本船舶所得に対して免税する場合には、日本もその国の船舶所得に対して免税する。同時に交換公文のとりかわしができますと勅令——その当時は勅令でございましたが、今でしたら政令で、ございますが、政令でそれをはつきりしまして、一応免除のところへ移す。従来やつた例はそれだけでございます。今度初めて一応租税協定を結ぼう——どうも税のことて大分ややこしいものでございますから、業者の方々におきましても、やはりこうした関係両国間の租税関係をできるだけはつきりしてほしいという希望が多分にございまして、両国の通商関係におきましても、租税のためにそれが阻止されておることがあるのは、はなはだ遺憾でございます。こういうような協定によりましてその間の関係が明らかになるということは、両国の通商関係を促進するゆえんではないかとわれわれも考えております。  そこでこの条約の形式でございますが、ごく簡単に御説明いたしますと、今言つたような関係になつておりますので、まず第一に並べてございますのは第三条以下でございます。ここで先ほど言いました本店が日本にあつて支店がアメリカにある場合といつたような事例でございます。それはそれだけに限りませんで、たとえば日本に住所を持つている人がたまたま向う摘めていた場合どうなるとか、勤務関係でもつて向うへ行つていた場合に一体その課税をどうするかとか、いわゆる制限納税義務者に対する課税関係をまず列挙しまして、その上で最後に、先ほど言いましたアメリカでいえば歳入法の百三十一条、日本にはそれと同じような規定が所得税法、法人税法にございますので、それの関係を最後に締めくくることによりまして、二重課税防止の形態をはつきりさせよう、こういうことの形で条約ができております。全体の形としましては、できるだけ対等な立場に立つて、双務的な関係でものを考えて行きたいということでずつとやつて参りましたが、ただ何分日本の税法とアメリカの税法との間にはある程度の違いがございます。この違いはどうしてもやはりやむを得ないと思うのでありますので、その違いをできるだけ双務的な立場をくずさない範囲において、どう調整するかというところに大分議論が集中したのでありますが、一応目的が達し得たものと考えております。  簡単に条文についてごくあらまし申しますと、一条は特に申し上げることもありませんが、結局アメリカでは連邦所得税、日本では所得税及び法人税であります。地方税の関係は一応入りません。地方税の関係は御承知のようにアメリカはステートの税とかいろいろございますが、ちよつと中央政府相手交渉する対象になりませんし、お互いの持つている税の種類も違いますので、地方税の関係は入りません。連邦所得税と所得税、法人税だけでございます。  れから第二条で一応の定義をいたしまして、第三条で、これが普通出て参ります支店、本店の関係でございます。それでどういう場合において支店として制限納税義務者の課税をし、どういう場合には課税をしないか、日本に本店のある商社がニューヨークにおいて商売をしております場合においても、どういう姿をとつたらば課税をし、どういう姿をとつた課税しないか、たとえばたまたまセールスマンが向うへ行つたというような場合にはアメリカ課税しない、しかし向うに支店を持つたといつた場合には課税する、まあこういつたような関係てもつて、「恒久的施設」と呼んでいますが、これを中心にやつております。  それから四条は特に申し上げることもないこれは技術的な問題でございます。  それで五条でもつて航空機の関係、これは先ほど申しました船舶関係と同じでございますが、相互に免除し合おうというので、五条の二項は船舶関係で、もうすでに生じているものはそのままである。  それから六条以下におきまして利子、アメリカではこういう場合におきまして百分の十五を越えてはならないと書いてありますが、普通ならば三割の税金で課税しております。それを百分の十五までにしよう、日本ではこれが二十といつたような、税率がいろいろございますが、もつとも措置法で十五以下に負けておるものもありますが、それはそのまま考えております。  こういうふうに六条、七条、八条、九条、十条、十一条、十二条みな同じような考え方で二心十三条までは特定の所得がありましたときに、制限納税義務者に対してどういう課税をするか、こういう場合には課税しない、こういつたものを列挙して、最後に十四条におきまして、今度は全然逆の立場でございますが——十三条までは日本に本店を持つておる会社がアメリカで商売した場合にはアメリカではどういう課税をするか、それと類似の事例でございます。十四条におきましては、アメリカ課税を受けた場合に、日本の方ではそれを受けてどういう課税をするか、この規定でございます。要するに先ほど言いましたように、向うで納めた税金は日本の方で差引くということであります。十四条でちよつと特色のある規定はその(a)、(b)、(c)の(c)の規定であります。御承知のように、日本で、ございますと、配当について二割、五分控除という制度がございます。これは法人税は所得税の前取りであるというイギリス的な考え方をとつているところからでございます。ところがアメリカにおきましては、法人税は個人の所得税と全然別である、向うでは両方とも所得税と呼んでおりますが、従つて二割五分というようなことは全然考えておりません。そこで日本の法人税をどう考えるかという点で、向うの方としましては、たとえば向うの法人が日本に支店を持つていて、その法人税を納めた場合に、その法人税を差引く、これは一番のみやすかつたのですが、配当を受けた人に対しまして日本の法人税を控除する、これは向うの方ですと、法人税と個人の所得税と全然違いますから、向うの方としてはそれはちよつと考えられないというので受付けにくかつたようであります。しかし、この点は——他の点になりますと大体が国と国との課税権のやりとりの問題になりますが、この点はさらに納税者の負担に響くものでございますから、これはぜひとも日本側の主張を通したい、こういう考え方で折衝を重ねまして、結局向うも納得してくれて二割五分控除しよう——従つて日本の方でもらつた三割の配当は、アメリカの中でもらつた三割の配当に比べまして、あとで二割五分控除の恩典がくつついて参りますから、日本でもらつた三割の方が、税を入れると税引きでははるかに有利な配当になる、こういう結論になるわけでありまして、これは外資導入とかいろいろやかましくいわれておる時期におきましては、相当効果のある条文になり得るのじやないかと考えております。そういうふうにアメリカの方で課税権をある程度放棄してもらいますので、その代償といつては語弊がございますが、日本の方では法人税もとり、さらに普通の場合ですと配当所得に対して所得税で源泉課税しますが、この源泉課税の分はもう日本はやめよう、それはアメリカ政府の方に一応課税権を譲渡しよう、これが(c)の一と二であります。  大体そういう考え方に基いて全部できておりまして、あと特に御説明を申し上げる点はないと思います。なお両国間の課税当局はそれぞれの情報交換等によりまして、脱税防止等についても大いに協力できるという規定をいただいて入つております。  次に遺産、相続及び贈与税の関係ですが、これは考え方は大体前と同じでございます。ただちよつと申し上げますと、向うとこちらと建前が大分違つております。相続税におきましては、——向うは遺産税といつていますが、被相続人の残した資産に対して課税になる、日本の方では御承知のように相続を受けた人が課税になる。従つて、一千万円なら一千万円の資産が残りました場合に、向うではその一千万円に課税になりますが、日本ではこれを五人なら五人の人が相続すると、二百万円ずつで税金を納めて行く、相続人が納税者になります。贈与の関係が一番顕著に違いまして、向うの方では相続税の補完税という考え方でございますので、贈与がありますと、贈与をした人に税金を納める義務を与えております。一時日本でもこんなかつこうをとつたことがございましたが贈与した人に税金を納めてもらう。こちらの方では贈与を受けた人に税金を納めてもらう建前になつております。大分両国の建前は違うのでございますが、しかし考え方としましては、一つの相続があり、贈与があつた場合に、その機会において納める税金は二重課税にならぬようにしようじやないか、相続なら相続、贈与なら贈与という一つの事実がございますので、そこで調整できるのじやないかというので、この全体の考え方をまとめております。両国の建前が違うだけに法文が相当複雑な過程にならざるを得なかつたわけです。考え方としましては先ほど申したように制限納税義務者の課税という問題がまず起つて参りますが、これについて、結局相続財産の所在地がどこにあるか、この点がまず問題になるわけでございます。これは動産とか不動産とかそうした有体財産の場合においてはあまり議論はないのでございますが、たとえば債権の所在地はどこにあるか、債務者の住所地にあるか債権者の住所地にあるか、あるいは株式の所在地はどこにあるか、こういうように、そういう一種の無体財産権的なものになりますと、各国相当税制が違いましていろいろな建前をとつておりますが、大体最近におきましては、国内法的にも日本考え方アメリカ考え方とは非常に近くなつておりまして、それほど大きく調整するところはございません。しかしなお幾つかの点ではそれぞれ歴史的な背景を持つておりますために、調節でき得ない分もございます。そこで、まず一応条約において債権所在地を中心に考えまして、お互いが話合いできる限りは話合いして、一応の線をきめております。第三条がそれでございます。ただこれもまだ話合いきれないというか、両方とも譲りきれない分につきましては、両国とも自分の国にあるとして見ることも一応認めまして、それぞれの国内法によりまして、それはあとで別途調節する、先ほどの所得税、法人税等の場合における十四条の規定と同じような考え方で、五条におきまして、それをあとで調節するというような考え方になつております。  申し落しましたが、相続税の場合においても、日本の税法で、ございますと、相続人が日本に住所を持つていれば、その受けたものに対して全部課税になります。相続人が日本におりませんでも、日本にある財産について相続をした場合においては課税になる、こういう建前をとつております。アメリカにおきましては、被相続人がアメリカに住所を持つているアメリカのシテイズンであれば、その遺産について全部課税になります。そうでなくても、アメリカにある財産について相続が起きた場合には課税になります。無制限納税義務者と制限納税義務者との関係は、ちようど所得税、法人税の場合と同じような建前になつておりますので、その間の二重課税については、まずもつて財産がどこにあるかということに両国が一致した見解を持つということにできるだけ努めると同時に、その、他国の方で払つた税金についてはもう一つの国の方ではこれを差引く、こういうことで調節をとる。  条文がかなり複雑なので御了解しにくいと思いますが、ものの考え方を簡一単に御説明申しまして、あと何か御質問がございましたら、随時お答えしたいと思います。
  76. 上塚司

    上塚委員長 質疑を許します。
  77. 穗積七郎

    穗積委員 一括してちよつと簡単にお尋ねします。まず第一は三条の「恒久的施設」すなわち事務所を持つているかいないかでございますが、事務所の限界というのは、これはまたややこしいかと思うのです。たとえばちやんとしたオフィスなんかと認定できないような形で、実際上は大きな商売をしておる場合もございましよう。長期滞在のような形で、相手取引商社を実際は事務所に使つていて、それで事務所としての届出は必ずしもしてないというような場合もございましようし、いろいろこれを恒久施設、事務所として認めるか、認めないか、その限界の線の引き方が非常にむずかしくはないかと思いますが、その点、どういうふうにお話合いになつておるのか、これが第一点。  それから第二には、先ほどお話がありました課税権の限界でございますが、この支店での所得として認めるべきものと、日本またはアメリカにある本国の本店においての所得と認めるべきものとの限界、必ずしもこれまた明確ではないと思います。従つてその所得をどちらの課税権の対象にするかというその限界をどういうふうにしてきめられたのか。または場合によりますれば、その三条によります税務署当事者間のケース・バイ・ケースで細目の話合いをされて決定されたのかどうか、それが第二でございます。  それから第三点は、税率差の調整でございますが、かの国とわが国とにおきます税率差のために、場合によりますと、商売の関係が、たとえばアメリカへ持つてつておいた方が、税率は高いけれども、商売は有利だというようなものもございましよう。ところがあまり大した商売もないから、または商売の利益、市況は同じであるなら、税率の低い方へ多くの商売の主体を移した方が有利だというようなことで、すなわちある意味におきます資産または商行為の移動が税率差によつて行われることもありはしないかと思いますが、この税率差に伴います彼我対等の調整は、どういうふうな——これは両国の税率の細目によつて相当違うと思いますが、これについては、大体十分なる調節が対等にできておるかどうか、その点が第三点でございます。  第四点は、本店の所得外国にある支店の所得とわけますと、その法人なり個人なりの総合所得判断において、相当違いはせぬか。同じような商売をしておる法人または個人が、Aの商売人は本国だけで商売をしておる。それからBの商売人は日本アメリカとの間で商売をしておる。そうすると、分割して課税されますと、総合所得の判定において両者の間に同じ程度の商売であつても、課税の不均衡がそこに出て来ようかと思いますが、その総合所得の判定といいますか、今申しましたAの商売人とBの商売人との間におきまする不均衡ですね。これは日本人の商売人です。その問題をどういうふうに御処理なさつて、これを協定されたか、それが第四点でございます。  最後にもう一点お尋ねしておきたいのは、今度はアメリカとの間において初めてこういう二重課税または脱税防止協定ができましたが、そのほかの国との間におきましても、こういう協定を結ぶべき必要があろうかと思います。先ほどの話によりますと、アメリカはすでに二十数箇国との間において同様趣旨の協定を結んでおる。これは当然のことかと思いますが、それがありませんというと、日本の同性質の商社であつて、この協定ができました後に、アメリカに支店を打つている商社と、それから英国に支店を持つている商社との間において非常な違いが出て参ろうと思いますが、そういう意味アメリカ以外の他の各国、特に取引の多い各国との同種協定についてこれを今後促進されるおつもりであるか、あるいはすでに何らかの準備を始めておられるのか、その実情と御方針を伺つておきたいと思います。以上五点を一括してお尋ねいたします。
  78. 渡辺喜久造

    ○渡辺政府委員 お答えいたします。第一の「恒久的施設」の問題でございますが、これは条約の中の第二条第一項の(c)のところに一応書いてあるところでございます。そこで一応字句の上では御了承願えると思いますが、問題はどういう姿をとつた場合に、この事務所とか支店に該当するかといつたような問題になつて来るのではないか、穗積委員の御疑問もそうだろうと思います。われわれお互いに話し合つておりますところでは、たとえばホテルの一室を借りまして、そこでずつと引続いて滞在し、これがごく短期間にどんどん移つてつてしまうような場合ですと事情は迷いますが、相当長期間そこに滞在して、そこを日本における商売の中心として利用しておるということであれば、たとえばそれがホテルの一室のようなものでございましても、やはり事務所と見る。従いまして、あるいは他の商社の一角を借りて事務所としておる、こういう場合におきましても、やはり事務所と見る。ただセールスマンなどが来まして、たまたまこちらに宣伝的にくるくるまわつて歩いたというだけでは、ちよつと事務所とは見切れないではないか、こういうふうに考えておりますが、現実の問題としましては、いろいろなヴアライエテイが出て来ると思いますので、相当ニユアンスのある問題でございますし、どの程度まで——どの程度までということになりますと、具体的な事実をやはり判定する以外にはないと思つておりますが……。
  79. 穗積七郎

    穗積委員 判定権はどちらにございますか。日本にございますか、両国政府にあるのですか。
  80. 渡辺喜久造

    ○渡辺政府委員 その関係につきまして申しますと、判定権は課税国の方に一応ございます。ただ課税を受けた納税者の方でこの条約に違反しているというふうに考えました場合におきましては、納税者の方は納税者の自国、まあ今の例でいいますと、一応の判定権は日本側にあるわけでございます。それでアメリカの方の商社でもつてその日本の判差した判定はどうも条約に違反している、こういうふうに認めましたら、これは十八条に一応ございますが、アメリカならアメリカの国の当局にそれを訴えることができます。アメリカの当局といたしましては、日本の当局とお互いに話し合つて、そうしてそれが条約違反であるかないか、妥当な結論を出そう。同じことは、日本の商社がアメリカへ行つて商売しておるときも同じ問題が起き得るわけでございまして、アメリカの方ではこれは恒久的施設だとして一応課税すると主張した場合に、日本の商社が、いやこれは恒久的施設は無理だというようなことが起き得ること、これは両方にあることであります。その場合におきましては、日本の商社は日本の当局に、アメリカとしてはこういう課税のやり方をしていて、これは条約に違反しているからけしからぬことと思うがということを言つて来るわけであります。その場合におきましては日本当局がアメリカ当局と相談して、もしその主張が正しいと思えば相談してみまして、そこでアメリカの言い分も聞き、適当な妥結に到達しよう、こういうところで問題を片づけて行きたい、こういうふうに思つております。  それから第二の本店と支店との所得、要するに商社の支店が日本にありまして、その場合にその支店の所得をどういうふうに見るか、これは実際お話のように非常にむずかしい問題でございます。条約としましては一応十三条にこの関係の規定がございます。特に今お話になりました商売人の関係につきましては(b)の条項にございます。考え方といたしましては、その支店が独立して常業をしたとした場合にどれほどの所得を得べきか、この額を想定するということを考え方の中心にしております。本店との関係がございまして、本店との勘定の決済は他の会社と決済するのとはちよつと違いますから、そこにいろいろなややこしい計算も出て来ましようし、あるいは総掛費のようなものを、どういうふうにかけ合うかといつたような問題も出て参りますが、やむを得なけれぱ売上高あるいは資産高で配分する、細目につきましては両国の税務当局同士でよく相談しよう、こういうふうな考え方で、基本的な方針は一応ここにきめてございます。  それから第三に御質問になりました両国の税率が洗うということによつてそこにアメリカの方の税金が高いから、あるいは日本の方の税金が高いから、それでアメリカの方へ持つてつてつたらどうか、日本の方へ持つてつてつたら利益があるか、そのような関係につきましては結局利益の問題、税率の問題いずれも結びついているわけでございまして、特にこの二重課税防止条約の問題としましてその点を検討の対象にして議論しているということはしてございません。結局通商航海条約とか、そういつた一般的なものにまかしてあるわけでありまして、アメリカに売ればもうかるとか、そのかわり税金が高いとかなんとか、そういつたような問題を二重課税防止条約の問題としては特に取扱つておりません。御承知のように現在輸出奨励がずいぶんやかましく言われておりますが、それはむしろわれわれの考え方としましては、こういう条約関係とは離れまして、国内的な措置として、たとえば輸出物資については免税するといつたようなことで、措置して行くべきではないかと思います。  それから分割課税、支店がアメリカにあつた場合に、日本だけで商売している人と不公平ではないかというお話がございましたが、先ほども冒頭に申し上げましたように、支店がアメリカにありましても全部の所得に対して一応課税になるわけでございまして、従つて日本だけで商売している場合と、アメリカに支店を設けて商売している場合におきましても、両方とも全部の所得について課税になるわけであります。事実問題としてはアメリカの支店で商売をしている者の所得がなかなかつかみにくいという問題がございますが、今度この条約ができますと、両国の情報交換が相当自由にできるようになりますので、その点から行きますと、むしろずつと改善されるということが期待されるわけであります。その間で不公平ということは考えられないのではないかと思つております。  それから他の国との関係でございますが、これはあるいは外務省の方からお答え願つた方がいいのかと思います。いずれ外務省の方から御答弁願うことにします。われわれの方でイギリスとの関係などもいろいろ考えてはおるのでございますが、御承知のように通商航海条約がまだなかなか締結のところまで行き着かないようでありますので、租税協定だけですと、イギリスの方では締結してもいいようなことを言つているらしいのですが、通商航海条約等の関係もございますので、どういうふうに進めて行くかということにつきましては、さらに外務省とも十分連絡をとつて考えて行きたいというふうに思つております。われわれの希梁としましては、できれば英米くらいとまず結んで、順次他国へ及ぼして行つたらどうだろうか。それから実際的の必要から申しますと、実は東南アジアとかいろいろな問題があるかと思うのでございますが、ただこれらの国々におきましては、税制がまだかなりブリミティヅと言つては失礼かもしれませんが、いわゆるわれわれの普通に租税協定が結ばれている国々の税制に比べますと、十分にできていない税制、あるいはできていましてもその執行において非常にルーズな執行になつているような国がありまして、実際ちよつと表面的に考えますと、そうした国と租税協定を結ぶのが必要ではないかとわれわれ考えたのでありますが、調べて行きますと、どうもなかなか締結がしにくいような関係から、もう少し情勢を見習つてつた方がいいのではないか。それから具体的な例としましては最近スウェーデンから人が見えましてぜひ協定を結びたい、現在におきましてはスウェーデンとの関係はそれほど緊密なわけではございませんが、先方としましては租税協定——これは所得税、法人税だけでありますが、租税協定を糾ぶことによりまして通商関係をより促進したい、そういう意味におきまして向うからぜひ租税協定を結びたい、本年の初めに専門家が見えまして外務省のごあつせんによりましてわれわれお目にかかりまして、一応向うからドラフトのようなものを逆つて来ておりますが、もう少し検討して結論を出したいと思つております。それが現状でございます。
  81. 上塚司

    上塚委員長 ほかに御質疑もないようでありますから、これにてただいまの二件に関する質疑は終了いたしました。  両件につきましては討論もないようでありますので、ただちに採決いたします。所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国とアメリカ合衆国との間の条約批准について承認を求めるの件及び遺産、相続及び贈与に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国とアメリカ合衆国との間の条約批准について承認を求めるの件を承認すべきものと議決いたすに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  82. 上塚司

    上塚委員長 御異議なしと認めます。よつて両件は承認すべきものと決定いたしました。     —————————————
  83. 上塚司

    上塚委員長 次に外務省関係法律の整理に関する法律案議題といたします。質疑を許します。  ほかに御質疑もないようでありますから、これにて本案に関する質疑を終了いたします。  本案につきましては討論はないようでありますから、ただちに採決いたします。外務省関係法律の整理に関する法律案を可決するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  84. 上塚司

    上塚委員長 御異議なければさよう決定いたします。  なお本自採決いたしました三件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任に願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  85. 上塚司

    上塚委員長 御異議なければさよう決定いたします。     —————————————
  86. 上塚司

    上塚委員長 次に外交に関する件について質疑を許します。須磨彌吉郎君。
  87. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 外務次官にちよつと伺いたい。先日も私は伺つたのでありますが、例のジユネーヴの会議についての情報が何かないか私はしつこく申しておるのでありますが、きようはひとつごひろうを願いたいと思います。
  88. 小滝彬

    ○小滝政府委員 関係の在外公館の方から電報は受取つておりますけれども、ちようど今ここに打ち合せておりませんから、この月曜の際にでも外務省の在外公館から報告をとりまとめたものにいたしましてごひろうした方が適当かと思いますので、そのように御了承願いたいと思います。
  89. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 きようは福島長官がお見えになつておりまんけれども、関係のお方がおられるようでありまするから、ちよつとお尋ねをいたしたいのでございます。青山にございます旧陸軍大学の件でございます。これは現在また駅留軍の使用に充てられておりますが、これの引渡しにつきましては、いろいろな経緯を経ましてグリーンパークというものを向うにつくつて、それができ上つてその引渡しを受けてから百三十日間にこれを明けるということになつてつたのでありますが、そのグリーンパ一クの引渡しが十二月二十二日になつておるようでございますから、それから百二十日と申しますと四月末ごろにはもう全部旧陸軍大学の建物からグリーン・パークの方に移つていなければならぬはずでございます。これについての最近までの経過、並びにどういうような交渉になつておりますか。これは教育上の問題でありまして、この学校の校舎は東京都の方からいろいろ大蔵省と掛け合つて、青山の中学校の方で使用することに決定いたしておる様子でございますが、私はその経過並びに現状、お見込み等を承りたいと思うのであります。
  90. 堀井啓治

    ○堀井政府委員 ただいまお尋ねのグリーン・パークの建設につきましては、本施設は大体七百六十世帯を収容するような施設でありまして、小学校を除きましては、建設はほとんど完了いたしました。ただいま御指摘のありましたように、昨年の十二月には仮引渡しをいたしました。なお工事中ものが残つておりまして、正式には五月十二日に引渡しを了しております。移転の状況は、漸次移転をしております。また移転の促進を委員会におきましてもいたしておりますが、最終的に申しますれば、七月の末日までには全部移転をいたすことになつております。なお当施設に移転いたすために返還されますものは、ただいまお話のありました陸軍大学、海軍大学、島津邸、服部邸等がございます。個々につきまして、島津邸、服部邸につきましては、すでにこの五月十九日に解除したいという申出がありましたが、なおこれは持主の関係で遅延しているような状況であります。また陸軍大学、海軍大学につきましては、すでに近く返還をする旨の予告もございまして、最終は七月末と申しますが、それより以前に当方に解除されるのものと存じております。
  91. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 ただいまはつきりしませんでしたが、この問題、私が質疑いたしました旧陸軍大学の建物は、アメリカ側はいつまでに返すと、はつきり申しておりますか。その見込みをもう一ぺん伺いたい。
  92. 堀井啓治

    ○堀井政府委員 全般的には、先ほど申しました通り、グリーン・パークの引当てにいたしました施設の返還は、最終的には七月の末日であります。但し陸軍大学、海軍大学につきましては、それより以前に、向うも優先的にこれを解除するように考慮を払いたいと申しております。明確にいつ幾日までとは申しておりませんが、十分当方の希望も考慮いたしまして、おそらく六月末日までには私は解除になるのではないかと期待しております。
  93. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 それでは今までの向うの約束であります百三十日を数えますと三月末日になりますが、それよりも遅れておるわけでございますから、そのことをさらに御督促になつて、このことは教育上の問題であり、東京都庁においても非常に苦労をしておる、港区役所においても苦労をしておる。また校舎の足らないために非常な不便を感じておる状態でありますから、向うは三月末日くらいまでに明ける約束をかつてしたわけでありますから、この点を御指摘に相なつて、あるいは合同委員会等の問題とされて促進をされるおつもりがないのでございましようか、もう一ぺん伺いたい。
  94. 堀井啓治

    ○堀井政府委員 ほとんど隔週に開いております施設特別委員会におきましても、また調達庁といたしまして、本問題につきしては、たびたび陳情も伺つておりますし、さらに合同委員会を通じまして促進をいたしたいと考えております。
  95. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 仄聞するところによりますれば、すでに向うでは移ることにはさまつているのであるけれども、実は中央から、グリーン・パークは郊外に近いところに行くのですから非常に不便であるというような、私生活上の不便を理由として動かない様子でございますから、少し教育上の重要性を御説明になりますれば、早く明けることができるのではないかと思うのでございます。これはよけいなことのようでございますが、私は各方面から、調達庁ではどうも仕事がのろくて困るということを常に耳にするのでございますが、この件のごときも、りくつはちやんと通つているのですから、隔週に開かれる日米合同委員会で、もう少しせつついて、しつこくおやりになることがきわめて緊切であると思います。この問題ばかりでなく、ほかの問題についてもよく聞くのでございますから、もう一ぺん念を押して御善処願いたいと思うのでございます。  これに関連いたしますが、もう一つは、離れたところでありますが、秋田県に駐留軍の特別な施設があるのでありますが、その施設に関連いたしまして給水あるいは水の補給について問題が起つている。それはすでに調達庁あるいは協力局にも通じていると思います。そういうお願いが秋田県知事からも出ていると思いますが、その経過をまず伺いたいと思います。
  96. 堀井啓治

    ○堀井政府委員 ただいま御指摘の秋田県の軍の施設と申しますのは、北浦町加茂に建設いたしております軍の通信施設のことだと思いますが、ただいま御指摘のありました通り、本施設の建設に伴いまして、第一には給水に関しまして上流区域の提供されております結果、その森林の伐採及び軍の使います水量のために、水源が不足を来すのではないかという点と、第三点は、軍の使用によつての汚水が下流に流れまして、飲料水等に適しないような状況になるのではないかという、この一点につきまして陳情を伺つたのでございます。去る三月にも地元から陳情を伺いまして、本件につきましては、私ども早くから、陳情もあり、調査をいたしておりますが、工事自体は軍におきまして直接いたしております。従つて軍自体の設計が確定しない分もございまして、いまだその結論は得ておりませんが、両問題につきまして共同で調査をして、軍におきましても考慮をするし、また本問題についての解決につきまして、もし陳情のごとく支障を来すという場合には、これについて何らかの措置をとろうという話合いにつきましては、先方からもすでに君簡も来ておりまして、ただいま本問題につきましても、はなはだ長くなつておりますけれども、軍の直接の工事の関係がございましてまだ結論に至つていない次第でございます。もちろん両問題につきまして当然支障を来さないような措置をする考えでやつております。
  97. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 ただいま共同調査というお言葉がございましたが、さようなアメリカ側と日本側との共同調査をいつ御実施になるというようなお見込みでもありますれば、この際承つておきたいと思います。
  98. 堀井啓治

    ○堀井政府委員 実は現場における軍の担当官がかわりまして、従つて書簡も来ながら、まだその期日が明確になつておりませんが、直接名古屋——本件は名古屋の空軍にへおいて担当いたしておりますので、直接名古屋におきまして、軍とも折衝いたしまして共同調査を促進いたしたいと考えております。
  99. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 もう一ぺん念を押しておきたいのですが、前の方の青山の旧大学校舎のことでございます。七月末日というお話でございましたが、学校のことでございますから、かりに百歩を譲つても七月末日ならば夏休みのまん中にかかるので、すぐ新学期からも使えることになるのでありますから、最小限度七月末日は遅れないように、これはひとつぜひ御尽力をこの際お願申しまして私の質疑を打切りたいと思います。
  100. 穗積七郎

    穗積委員 これは大蔵省の御所管かと思いますが、調達庁次長でおわかりになるかと思いますのでお尋ねしたい。今の陸軍大学の問題ですが、われわれの仄聞しておるところによりますと、あそこが明けばあそこを払い下げて、中学校の使用に充てるような内諾を与えておられるかに伺つておりますが、その通りでございますか。
  101. 堀井啓治

    ○堀井政府委員 これは調達庁の所管ではございませんが、私どもはそういうふうに事務的に進行しておるように間いております。
  102. 穗積七郎

    穗積委員 今須磨さんからもお話がありましたが、グリーン・パークへ全部移る、グリーン・パークヘ移るためには陸軍大学におる連中だけでなく、ほかの君も移るのを完了するのが七月末でありますから、従つて陸軍大学の連中に早く行つてもらえば、それより早く済む。今須磨さんからお話がありましたが、払い下げることがきまつておりましても、おそらくあと多少内部の改進または補修等をしなければ、学校の使用にはたえないかと思うのであります。そうなりますと八月一ぱいだけでは、工事その他も不十分だろうと思うので、少くともその工事改装の期間を見込んで、九月の新学期からは必ず使えるような、そういう含みで向うへ強く要望されて、そこでできますならば——代々木の問題でもそうでございまして、教育の問題ですから、相当強い理由があるのです。従つて親心で、所管もあなたの方であるかあるいは文部省に属するかあるいは大蔵省に属するかしりませんが、大体内部の改造または改装の期間はこつちで測定されて、九月から使うためには大月末とかあるいは七月中旬までにやつてもらわなければこれができないということで、最もおそい場合におきましても、九月の新学期からは使えるというふうな含みで、向うへ御交渉いただきたいとわれわれは要望するわけですが、そういうおつもりはございませんでしようか。そういうふうに期待してよろしゆうございましようか。
  103. 堀井啓治

    ○堀井政府委員 私どももそういうつもりで実は交渉しております。先ほど六月末までにはと申し上げましたのは、実はそういう期待を持つて申し上げたのであります。
  104. 上塚司

    上塚委員長 次会は明後十七日午前十時三十分より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時四分散会