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1954-05-13 第19回国会 衆議院 外務委員会 第49号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年五月十三日(木曜日)     午前十一時十六分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 今村 忠助君 理事 富田 健治君    理事 福田 篤泰君 理事 野田 卯一君    理事 並木 芳雄君 理事 穗積 七郎君    理事 戸叶 里子君       大橋 忠一君    北 れい吉君       佐々木盛雄君    福井  勇君       須磨彌吉郎君  出席政府委員         保安庁次長   増原 恵吉君         外務政務次官  小滝  彬君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 五月十二日  委員越智茂君、庄司一郎君、山中貞則君及び櫻  内義雄君辞任につき、その補欠として福井勇君、  麻生太賀吉君、宮原幸三郎君及び喜多壯一郎君  が議長の指名で委員に選任された。 同月十三日  松平忠久君の補欠として戸叶里子君が理事に当  選した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事互選所得に対する租税に関する二重課税  の回避及び脱税防止のための日本国とアメリ  カ合衆国との間の条約批准について承認を求  めるの件(条約第一八号)  遺産相続及び贈与に対する租税に関する二重  課税回避及び脱税防止のための日本国とア  メリカ合衆国との間の条約批准について承認  を求めるの件(条約第一九号)  外交に関する件     —————————————
  2. 上塚司

    上塚委員長 これより会議を開きます。  所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国アメリカ合衆国との岡の条約批准について承認を求めるの件及び遺産相続及び贈与に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国アメリカ合衆国との間の条約批准について承認を求めるの件を一括議題といたします。福田篤泰君。
  3. 福田篤泰

    福田(篤)委員 私は一点政府所見を伺いたいと思います。先般締結せられました日米通商航海条約において、その第十一条で内国民待遇に関する規定が設けられたことは御承知通りであります。その規定があるにもかかわらず、特にまた今度の今議題になりましたような法案がなぜ必要であるか、その相関関係はどういうところに特色があるか、これについて政府の御答弁を願いたい。
  4. 小滝彬

    小滝政府委員 通商航海条約の第十一条では、原則的な規定を設けたものでありまして、内国民待遇や最忠国待遇を裸視についても適用する趣旨が盛られておるわけであります。しかるにこの租祝に関する条約は、両国の税制にかんがみて、実際この原則を適用する場合、いかなる調整をなすべきかということについての具体的な規定を設けたものでありまして、簡単に申しますならば、通商航海条約原則を定め、今度両国間についての特定の具体的な調整措置をきめたものが、現在御審議を願つておる条約であるというように御承知を願いたいと考えます。
  5. 上塚司

  6. 並木芳雄

    並木委員 私の質問福田委員質問と同じですからありません。
  7. 上塚司

    上塚委員長 もうありませんか。——それでは租税条約に関する質問は保留いたします。     —————————————
  8. 上塚司

    上塚委員長 外交に関する件について質疑を許します。福田篤泰君。
  9. 福田篤泰

    福田(篤)委員 外務大臣が午前中は御用があるとかで来られませんが、政務次官がおいでになりますので、二、三の点につきまして御所見を向いたいと思います。  新聞報道によりますと、昨日在京の外人記者との会見岡崎外務大臣行つた、その席上におきまして相当重要な内容のものを発表いたしております。これはむしろ外務委員会において吉田総理外遊前にこういうような構想をお聞きしたがつたの、であります。事実また各党委員からもいろいろ質問が出たのでありますが、はつきりしたお話を伺えなかつた。それが昨日の外人記者会見では相当具体的になつておりますので、これについて外務当局の明確な御所見を承りたいと思います。  まず第一に吉田総理は今度外遊するにつきまして、うわさによりますと、来月早々——会期の延長その他とのにらみ合せもありましようが出発ということになつており、またその準備は主として外務省が当つておられる。きのうの記者会見でも岡崎外務大臣はつきりつておりますが、一体いつごろ出発するのか、またどういう内容のものを外務当局準備されておるか、これについてまずお伺いしたいと思います。
  10. 小滝彬

    小滝政府委員 昨日の記者会見において大臣がどういうように説明したか、詳細は私存じません。しかし総理外遊は、できれば来月早々に行いたいという希望を持つておるのであります。しかし確定はいたしておりません。それから外務省の方がその準備に当つておるというお話でありますが、外務省といたしましてはいろいろとりまとめの役をいたしておりますし、事実旅行そのものにつきましては、外務省がこれをとりはからうべき立場におりますので、先方の都合などを問い合せるという処置はとつておりますけれども、今具体的にどのような準備と、どういう資料を集めたかというようなことは、申し上げるほどの段階に逃していないのであります。
  11. 福田篤泰

    福田(篤)委員 来月の上旬出発というお話でありますが、一説によると来月の四日に出発というので、いろいろな手順がすでに打たれておるといううわさがありますが、これについてお伺いいたします。
  12. 小滝彬

    小滝政府委員 確定いたしておる次第ではございません。
  13. 福田篤泰

    福田(篤)委員 外人記者会見で、大臣は十一日からいわゆる対米債務問題について話合いが始まるということを発表しておりますが、これについて御意見を承りたいと思います。
  14. 小滝彬

    小滝政府委員 外務省からすでに発表いたしました通り、十一日からこの会議を行うことになつたのでありますが、まず最初においては議事手続とかあるいは資料というような点についし話し合つたものでありまして、まだ具体的な話合いには入つておりません。その交渉におきまして、まず第一には、いかなる種類の義務が日本にあるかという点の資料をとりそろえなければならないし、またそれに対してどういう考え方をするか、それの支払いと申しますか、一体どの程度までを確定債務とすべきか、日本支払い能力はどうかという点などに関して考えなければなりませんので、相当時間も要することであろうと考えます。
  15. 福田篤泰

    福田(篤)委員 また会見の中で、大臣は今問題になつております太平洋におけるアメリカ水爆実験の結果、日本漁業が開接的にこうむる被害についての補償は、わが方から要求するのはむずかしいのはでないかということも、あらためて言つておりますが、これについているく問題になつておりますので、この際明確にお伺いしておきたいと思います。
  16. 小滝彬

    小滝政府委員 間接被害の問題につきましては、外務委員会のみならず、水産委員会並びに厚生委員会、いろいろな関係委員会でも、これまで再三御質問があつたところであります。今安藤国務大臣を中心として、随時とり行われております打合会におきましても、この間接被害がどの程度のものであるかを取調べようという方針のもとに、各省でいろいろ取調べを進めておりますが、なかなかその限界もはつきりしないし、非常に調査は困難のようであります。それでは一体この間接被害について、賠償を要求するかしないかという点につきましては、その取調べたものを見まして、その結果を見て、さらに十分検討しなければならないと考えます。ただこれまでの国際間における損害補償というような場合の例から考えてみますと、間接被害というものは非常に範囲も不確定であり、事実このような問題が国際間に取上げられた際には、間接被害というものは補償の対象にせられなかつた場合が大部分のようでありますので、そうした点もあわせ考慮いたしまして、この結果が出ました上は適当に処置いたしたいと考えます。但し少くともどの程度間接被害があつたというような事実については、友好国であるアメリカに対して詳細これを通報するという考えを持つております。
  17. 福田篤泰

    福田(篤)委員 まい大臣アジアにおける反共諸国を組合した一つ安全保障同盟機構が、もし日本側に提案された場合には歓迎するということをはつきりつておる。これはこれまでの本委員会その他の答弁に比して、きわめて注目すべき発表でありまして、今までそういうはつきりしたことを大臣としては言われたことがなかつた。ただ今の憲法のもとでは無理だというような条件はつけておりますが、憲法改正も時間の問題でありますこの際、外務大臣としてはつきりアジアにおける反共安全保障同盟の提案があつた場合には、憲法改正条件としてでも歓迎すると言つた以上は、外務当局におきましても相当はつきりした見通しなり準備をされておると思いますので、この際もう一度あらためてこの点について、はつきり所見を伺いたいと思います。
  18. 小滝彬

    小滝政府委員 昨日大臣がどういう表現を用いましたか私は存じませんけれども大臣の言わんとする趣旨は、この東南アジアにおいて反共のための安全保障機構というものができることは、けつこうなことであるという趣旨を述べたものと考えます。但しそれに対しまして日本が参加するとか参加しないとかいう問題は別個でありまして、その意味憲法云々という言葉が出たのであろうと存じます。現在のところ何ら申入れがあつたわけでもないし、タイの外務大臣日本もこれに参加することが望ましいということを言つたというような新聞情報はありますけれども、公式には何ら日本政府としては意思表示を受けておりません。かつまた現在の日本経済政治情勢及び憲法というものをあわせ考えますときに、今こうしたことがただちに具体化するものとも考えられない。また事実申入れもないので、外務省といたしまして具体的にこの問題を検討しておるという段階には正していないのであります。
  19. 福田篤泰

    福田(篤)委員 日韓交渉再開について、約半年前、決裂直後、韓国側久保田発言を取消せということを要求して来たということを、私が外務大臣にお伺いしたところ、外務大臣はそういう申入れはありませんということを言われた。ところが昨日の記者会見においては、はつきりとそれを肯定いたしまして、久保田発言が悪いとなれば取消してもかまいませんということを言つております。これについて久保田発言を取消せば日韓交渉再開考えられるのかどうか、これについてお伺いしたいと思います。
  20. 小滝彬

    小滝政府委員 これも私が説明いたしましては不正確になるかもしれませんが、大臣の言わんとする趣旨は、もし日韓交渉再開のために取消すことを向うが要求するならば、これは個人的な意見を述べたものであつて正式な政府の見解でも何でもないけれども、これを取消すというような措置は十分考え得るということを言つたものと存じます。正式に日本政府はこれを取消してもらいたいということを今申入れを受けておるのではないことは、これまで大臣が本委員会でも申したそうでありますが、その通りでございます。ただ第三国のあつせんというようなことがありましたし、また現にこの日韓交渉再開に非常に重大なる関心を持つておる韓国側要人で、日本側に対し久保田発言を考慮する必要がありはしないか、そうなれば再開というものを促進するであろうというような意思表示があつたことは事実であります。おそらく大臣はそのことを心に持つて記者舎兄に臨んだものだと思いますが、外務省といたしましては、そうした私的な発育ではあるけれども、これについて政府の方はこれに関与しない、そうして取消しの措置というのも政府が行うのはおかしい話ではございますけれども、そうした何らかの意思表示をして、円満に日韓会談再開することができるのならば、そうした点は十分考慮しようという意向を持つておるのでありまして、昨日の会見においてどういう表現であつたか知りませんが、大臣から述べられたものと私は信じます。
  21. 福田篤泰

    福田(篤)委員 この日韓交渉再開は、全国民、特に致命的な打撃を受けておる漁業者にとりまして大きな関心の的であります。これも本委員会で取上げられてその節一体見通しはどうかということにつきまして、しよつちゆう御答弁が食い違つておるが、現在の段階においていつどうすればできるのか、これについてもう一度見通しをお伺いしたいこと、それからもう一つ、この前にお伺いしたときに、わが国の公船たる海上監視船韓国側によつて射撃をせられた、重大な侮辱を受けて逃げて帰つて来たのでありますが、その場合にわが方から当然韓国側李承晩政府に対して謝罪の要求をすべきであり、その責任を明らかにすべきであるということを申し上げた。これは当然申し入れたと思います。また申し入れたということをここではつきり外務当局は言われたのでありますが、それに対してどういう返事があつたのか、何ら報告がありませんので、あわせて御報告を願いたいと思います。
  22. 小滝彬

    小滝政府委員 まず第一に日韓交渉再開見通しいかんという点でありますが、これは残念ながら、今はつきりいつごろ再開できるだろうということを申し上げ得ないのであります。しかしながら現にジュネーヴでインドシナ及び朝鮮に関する話合いも行われておりますので、この会議の結果がどうなるか知りませんが、どのみち現在会議が行われておる段階、その際においては再開ということにはならないではないかと存じますが、今ちよつと言及いたしましたように、韓国要人の中にも何とか再開するようにあつせんをいたしたいという気持を持つて、そうした行動に出ている向きもございますので、ジュネーヴ会議の結果にもよるでございましようが、そのあとにおいて再開可能性はあるやに私は期待いたしております。  それから海上監視船がつかまつたのに対して日本はどういう申入れをしたか、またそれに対して何らか回答があつたかという点でありますが、もちろん厳重な抗議をその都度いたし、またこうした事件が再発しないような申入れ、かつまた損害賠償の権利を要求するというような措置とつております。これに対しましてこれまで韓国側回答いたしましたところは、むしろ日本公船韓国の管擁している海域に入つているのが、不当であるというような反駁的な回答をよこしておるのでございまして、残念ながらこれまでのところ満足な回答は得ておりません。しかしこういうことがあります際に、日本側意向先方に十分伝えて抗議をするという措置とつておる次第であります。
  23. 福田篤泰

    福田(篤)委員 昨日参議院におきまして下田条約局長は相当重大な発言をしておるようであります。まだ速記録を調べているいとまもありませんので、政務次官から所見を伺いたいのでありますが、小笠原島は地政学的な意味から問題ではないが、沖繩はその位置から考えて、現在アメリカ軍事基地として、原爆基地なつておるということを答弁したということをいわれております。これについて外務当局の御所見を伺いたい。
  24. 小滝彬

    小滝政府委員 下田局長沖繩原爆基地なつておるというような答弁をしたはずは絶対にないと私は考えます。ただ下田君の答弁は、法律的にいえば安保条約においてもまた行政協定においても、いかなる武器は使用してはならないというような規定はないから、法律的な面だけからいえば、原爆を持つて来ることもあり得るという法律論をしたものと存じます。しかしながら、いろいろ政治的な立場から考えます際、私は米国がそのような措置とつているということは想像いたさないのであります。またそういうことはあり得ないというように考えておるのであります。
  25. 福田篤泰

    福田(篤)委員 もう一点伺います。主としてこれは保安庁次長にお伺いしたいのでありますが、外務にももちろん関係ありますので、外務当局意見を伺いたい。  それは本日の新聞報道によりますと、台湾の国民政府蒋介石総統から、終戦直後引渡されました日本新鋭駆逐艦日本に返してもいいということが、非公式に政府筋に申し入れられた、またそれに付随いたしまして増原次長——もうじき来られるようであります、来られたらお伺いしますが、これについての意見発表されております。これはMSAの協定をめぐりまして国内的にも自衛の必要がだんだんと認められ、同時にまた国民感情からも相当デリケートな問題を起しておりますが、日本側の持ておりました元海軍の所有しておつたわれわれでつくりました駆逐艦が、この手薄な日本海上自衛につきまして返されて強化されることは、国民感情から申しますと、きわめて歓迎すべきことであると思います。増原次長——これは確かめなければなりませんが、むしろ否定的な答弁でわれわれはびつくりしたのでありますが、外務省としてはこの問題に関しまして、もし申入れが非公式にあつたとすれば、いつあつたのであるか、またその内容はどういうものであつたのか、それに対する御意見を承りたい。
  26. 小滝彬

    小滝政府委員 現在までのところ、そういう申出もございませんし、外務省としては全然関知しておらないところでございます。
  27. 福田篤泰

    福田(篤)委員 全然ありませんか。
  28. 小滝彬

    小滝政府委員 ありません。
  29. 上塚司

  30. 並木芳雄

    並木委員 私の第一の緊急質問フイリピンのルバング島で、元日本の兵隊さんが殺傷されたというフィリピン陸軍当局発表でございます。九日のマニラ発の外電で入つて来ておりますが、これは実にわれわれとしては忍びがたい悲報であると思うのであります。これは読売新聞でございますけれども、ほかの新聞にも出ているでしよう。それによると一人は東京都、一人は和歌山出身、一人は埼玉出身なつております。東京都というのは小塚金七さん、それから和歌山県は小野田寛郎さん、埼玉県は島田庄一さん、こういうふうになつているのです。この消息をもたらしたのは東京の台東区の浅草向柳原町一の二千三百六十一番地元陸軍兵長赤津勇一さんという方でありますけれども新聞では家族の方がぼう然自失をしておるように報ぜられております。ごもつとものことと思いますが、この点について外務省としては今日までいかようなる調査をいたしましたか、その結果を知りたいのであります。
  31. 小滝彬

    小滝政府委員 御指摘のようにまことにわれわれとして悲報でありまして、さつそくマニラ事務所におきましては先方と連絡いたしまして真相を取調べたのであります。御承知のようにフイリピンには敗残の日本兵がまだおるという情報が前にもございましたので、日本側からはこれを説得するために、特定日本人向うへ派遣して、そうした措置に参加せしめたいということを申し入れておりましたが、それに対して確答がないうちにこういう事件が起つたので、非常に残念に思つております。そこで向うの軍の方について取調べたところによりますと、去る八日に武装した五名が突然山麓に現われたので、これに投降を勧告したところが、三名はいきなり発砲したために、やむなく守備隊側も発砲して一名が射殺され、他の二名は負傷したまま山中に逃亡したというのであります。なお死亡した一名は、守備隊においてとりあえず埋葬に付したが、氏名は不詳であるというふうな情報日本側によこしたのであります。しかし事は非常に重大でありますので、さらに軍の上層部マニラ在外事務所から申入れをいたしましたところ、先方ではさらに詳細を取調べてみたいが、しかしどうも氏名はつきりしないということであります。そこで日本側としては、従来から日本人を派遣してこれが説得に当らせようとしておつたのだが、これは人命尊重の見地から見ても重要なことなので、ぜひその点を再考してもらいたいということもあわせて申し入れましたところ、先方ではこれまで日本投降工作に来た方もあるけれども、これまでの経験では、この工作に来た人が成功していないので、このような人が入つて来るということは、いかがなものであろうかというように考えておつたけれども日本側でそれほど希望されるならば、そのラインに沿うて考慮してみることにしようという言明をいたしておるのであります。従いまして日本側といたしましては、大体その意向がわかりましたから、これについてもつと具体的な申入れをいたしまして、今後こういうことが再発しないようにとりはからいたいと考えております。なお仮埋葬をしてあるそうでありますが、さらに氏名が認知できるようにしてもらいたいということを申し入れておりますけれども、どうしても氏名はつきりしないということになりますれば、せめてからだの特徴であるとか、いろいろそのときの状況というものを記録して、そしてこれを荼毘に付して、遺骨を適当な木の箱にでも納めるというような、できるだけ手厚い措置をとるように、先方とせつかく連絡しておるところであります。
  32. 並木芳雄

    並木委員 今次官報告を聞いて、さらに私どもは愕然としたわけであります。今もつてフイリピンとの間には平和は回復しておらないといえばそれまでかもしれませんけれども平和条約批准をしようとしておる際でもありますし、賠償問題においても協定が行われようとしておる今日でございます。それがあたかも占領治下におけると同じような取扱いが死体に対して行われたということは、こういうことが考えられるでしようか。第一、投降を勧告したところが、先方が発砲したからこちらも発砲したといいますけれども、かりにそうであつたとしても、私は心あるフィリピンの官憲としては、空砲とか威嚇射撃とかで驚かすだけにしておくべきではなかつたかと思うのです。これは私は明らかに過剰防衛に相当するものではないかと思います。その点についての次官のお考えを承りたい。  それと、最初に申しました通り死体に対して、これは当然国際法上からも日本側に引渡すべきものじやないのですか。私はそう思うのです。あとから氏名すらわからないというような状態に埋葬をしてしまうということは、常識をもつて考えられらいことなのです。その辺国際法あるいは国際慣習、そういう点からもひとつはつきり次官の説明を願いたいと思います。
  33. 小滝彬

    小滝政府委員 措置が適当であつたかどうかということは、御指摘のようにもちろん問題がありますけれども、私どもがまずやらなければならないことは、これをできるだけ丁重に取扱つて、この現実にすでに起つたところの事件をいかがすべきかということを、第一段としてやらなければならないと存じます。でありますから、今最初に御指摘のような点は、今後の交渉もできることでありますし、幸い事務所もありますから、十二分に考慮のうちに置いて帯翻しなければならないと考えます。しかし現実の問題としては、仮埋葬したというのは、ちようどそこに引取人もいないからやつたことであつて、私はそれをただちに不当な措置であるとは考えません。また引渡しを拒んでおるのではなくして、もちろんそうした点については、向うの軍も十分協力して、いろいろ調べやまた引渡しについても協力しよう、丁重に取扱おうとしておりますから、この点は心配ないと思いますが、第一点については、今そうした原則論などをやるということになると、かえつて引渡しとかいろいろな問題がごたついて困りますから、先ほど御説明申し上げましたようにとりあえず三人に関する措置とつているわけであります。
  34. 並木芳雄

    並木委員 その埋葬したりする場合に、当然日本外務省出先機関があるのですから、そこへ連絡して立ち会つてもらうとかいうような措置をとるべきではないかと思うのです。実際日本人立ち会つておらないかどうか。それから投降工作のために日本からどういう人を派遣するように今段取りをつけておりますか。
  35. 小滝彬

    小滝政府委員 先ほども申し上げましたように、仮埋葬でありまして、八日になくなつたのをそのままにほつておくわけに行かない。暑いところでもありますから仮埋葬して、日本人は今非常に入国が制限されておりまして、その場にいないわけでありますから、当座の措置として死体を保護する意味とつ措置であつて、私はこれは不当な措置でなくて、今後在外事務所の方もいろいろ連絡をとつてできるだけのことをしようとしていることは、今申し上げた通りでありますので、これはそれほど追究すべきものではなかろうと存じます。まだ詳細はわかりませんけれども、今後も在外事務所と連絡をとりまして、できるだけのことをいたしたいと考えているようなわけであります。
  36. 並木芳雄

    並木委員 投降工作の点については……。
  37. 小滝彬

    小滝政府委員 今までの点は、ここで申し上げていいかどうかわかりませんけれども並木君も御承知の神保中佐あたりが行かれたこともありますが実際問題としては、フイリピンも相当地域が広いので、これまでのところは成果が上らなかつたというような事実があります。今後はどういうような人を派遣するかということにつきましては、先ほど申しますように、そういうものを派遣することを承知してもさしつかえないというような軍上層部意向もありますので、さつそくどういう人を送るかということについて、具体案を立てようと思つているところでありまして、今確定している次第ではありません。
  38. 並木芳雄

    並木委員 それではこれについては政府は万全の措置を講じていただきたい。また遺家族の援護というような問題も起つて来ます。万全の措置を講じていただきたいと思います。  もう一つの私の緊急質問は、MSAによらざるところの千五百トン以上の艦艇貸借協定話合いについてであります。話合いは順調に進んでおつて、十四日に調印されるということでありますが、その通りでありますか。
  39. 小滝彬

    小滝政府委員 協定の案につきましては、大体合意ができておりますので、今のところアメリカ大統領の承認を待つているのであります。御指摘のように、できれば十四日にこれを行いたいという希望でいる次第であります。
  40. 並木芳雄

    並木委員 その中にやはり秘密保護の条項があると思いますが、ありますか。
  41. 小滝彬

    小滝政府委員 大体双方で話し合つて合意に煙しました案文には、そのような規定が設けられることになると考えます。
  42. 並木芳雄

    並木委員 私はなぜお伺いするかといいますと、もしあれば、ただいま出ている秘密保護法の改正案を、この調印の批准を国会に求めるとともに、急いで出すようになるのではないかと思うのでお尋ねするのです。もし出さないと千五百トン以上の今度の協定で供与される大型艦船には、秘密保護の法的措置がとられないということになるのです。それでは政府が法律をつくらなければ艦艇が来ないと言つているのと矛旧して来ますので、その点をお尋ねしたのであります。
  43. 小滝彬

    小滝政府委員 御指摘のように秘密保持の帯解をとるためには、これまで議会に御審議を願つておりました法案を修正するとか、あるいは適当な国内的措置をとらなければならないだろうと考えております。
  44. 並木芳雄

    並木委員 というと、法律の改正案を迫つかけて出すのですか、それともフリゲート艦のような行政的措置で間に合せるというのですか。
  45. 小滝彬

    小滝政府委員 その点につきましては、まだはつきりとした具体的な考えはございませんが、これが調印になりましたら、早急にどういう措置をとるか、修正でするかあるいは別個のものにするか、そうした点を考慮して、政府として決定いたしたいと考えております。
  46. 並木芳雄

    並木委員 今度のはもちろん譲渡でなしに貸借、この前のフリゲート艦の場合と同じでありますか。
  47. 小滝彬

    小滝政府委員 今度の協定では大体貸与というようになると思います。
  48. 並木芳雄

    並木委員 年限は何年ですか。
  49. 小滝彬

    小滝政府委員 今度の協定におきましては、いずれ成案を得ました上御審議を願いますけれども、大体五年ということで更新し得るというふうな規定になるだろうと思います。
  50. 並木芳雄

    並木委員 艦艇の名称は例の附属表につくと思いますが、さしあたり今度つくのはどれとどれとどれですか。
  51. 小滝彬

    小滝政府委員 これは附表につけられることになつておりまして、この点は保安庁長官も議会で述べていると思いますが、大体これまでも発表せられている四隻になるだろうと考えています。しかしそれ以後につきましては、随時追加せられることもあり得ると思います。
  52. 並木芳雄

    並木委員 四隻というのは千四百トンというのが入つていると思いますが、千四百トンだとMSAの本協定で行けるのに、どうしてこれが別の協定に入るのか、それをふしぎに思うのです。千五百トン以上が全部四隻ですか、トン数と艦の種類を言つていただきたいと思います。
  53. 小滝彬

    小滝政府委員 貸与せられるのはMSAの協定によるものと、今度できるであろう協定によるものと両方になるだろうと考えます。艦の大きさに応じてそういうように切られるものだろうと思います。今ちようど具体的なそれの内容を持つて来ておりませんし、まだアメリカの大統領の承認を得ておらないのですから、きわめて近いうちに詳細を具して御審議をお願いすることになるだろうと思います。
  54. 並木芳雄

    並木委員 千五百トン以下でもこの協定に含まれるということがあり得るということですか、アメリカのMSA法では千五百トンを越えるものはということになつておるのは御承知通りなのですが……。
  55. 小滝彬

    小滝政府委員 ちようど資料を持つて来ておりませんので、はつきり申し上げられませんが、この貸与の方法とか義務の関係で、小さい型のものでも、今度の貸与協定の条項によつてつた方が、都合がいいということになれば、艦の型は小さくても、この協定に理論上は含ませてさしつかえないということになるだろうと思います。
  56. 並木芳雄

    並木委員 それならそれでいいのです。その引渡しは大体いつごろですか。
  57. 小滝彬

    小滝政府委員 なるべく早く引渡しを受けたいのですが、協定もできておりませんので、これを早く御審議を願つて、そして批准をいたしましたら、できるだけ早くこれを借り受けるという方法をとりたいと思つております。今その時日は確定いたしておりません。
  58. 並木芳雄

    並木委員 大体わかつておりませんか。
  59. 小滝彬

    小滝政府委員 大体の予定もまだ確定いたしておりません。
  60. 並木芳雄

    並木委員 今国会中に出して批准を受けないと、この次はいつ臨時国会が開かれるかわかりません。国会を延長してでも出した方がいいのではないですか。
  61. 小滝彬

    小滝政府委員 御指摘のように、この次の国会にかけるということになりましたら、いつになるかもわからないし、できるだけ早く貸与を受けたいのでありますから、今国会中に調印を了しまして、できるだけ早い機会に上程いたしまして、皆さんの御審議を仰ぎたいと考えております。
  62. 並木芳雄

    並木委員 私はこれで終ります。
  63. 福田篤泰

    福田(篤)委員 増原次長にお伺いしますが、けさの新聞報道によりますと、蒋介石総統から非公式にわが政府にあてまして、終戦直後引渡しましたわが海軍の持つておりました新鋭駆逐艦、これを返してもいいという話があつたと伝えられております。それにつきまして、また次長の談話の発表が出ておりましたが、まずそういうお話がいつごろあつたかお伺いいたします。
  64. 増原恵吉

    増原政府委員 けさの毎日新聞に出ておる記事でありますが、実はゆうべ毎日の記者から電話がありまして、何か国府の方から、昔の日本の海軍の軍艦で国府軍で持つておるものを返すという話があるそうだが、どうだという問合せがありました。そういう話は今全然聞いておらぬ。ただ相当昔に非公式——といつてもほんとうの非公式、うわさ話ぐらいですが、何か向うで昔の優秀な日本軍艦を話の模様によつては、日本へ渡してもいいというふうなことを言つておる向きがあるという程度の話——これはもう一年近くになりましよう、前に、これはうわさ話と受取つてもらう方がいい程度のことを聞いたことがあります。それでそのうわさ程度のものを、少し内容を聞いてみると、ほとんどいわゆる軍艦としての装備艤装品というものは全然ないというふうなもので、とても簡単に使いものにはならないようなものであるようであつて、そのときには、とてもそれではどうもならぬという強度で話を聞き流したということが相当前にあつたということでございます。今の話は全然聞いておりません。
  65. 福田篤泰

    福田(篤)委員 うわさはあつたということは、はつきりしたわけですが、御承知通り今MSA協定が結ばれて、アメリカから武器を借り受けておりますが、秘密保護保護法なりいろいろ問題があつて、きのう委員会を通過したわけ場であります。もし日本の海軍が昔持つておりました艦艇を、相手国の好意によつて返されるということになれば、私は非常にいいことだと思います。国民感情からいつてもすなおに受けられると思います。新聞発表によりますと、今魚雷発射管だとか、機関銃もないということはお話通りだと思いますが、これはやはり今駆逐艦一隻つくるのにも非常に金がかかります。装備の変更なりあるいは修理によつて、あるいはすぐ使えるかもしれません。あのリストを見ましても二、三千トンの相当いいものであります。一体終戦の当時外国に日本の海軍から引渡された艦艇はどれくらいあるか、そうしてどういう国に持つて行かれたか、御存じの範囲でけつこうですから、伺いたいと思います。
  66. 増原恵吉

    増原政府委員 さつき申したうわさ話を聞いたというのは一そうです。きようの新聞に出ておるようにたくさんのものではなく、宵月でしたか何かたつた一そうの話でした。それで今仰せになつたどういう軍艦がどこの国に行つたかということは、私今承知しておりません。調べてみないと内容はよくわかりません。
  67. 福田篤泰

    福田(篤)委員 たというわさでも、もしそういうものが返れば、私は非常に喜びべきことだろうと思います。ことにいろいろの注文をつけられる心配もなし、先ほど申しましたように国民感情からいつて、非常に喜ぶべきことだと思つて、私はむしろこういう日本の防衛力の強化という立場から申しまして、うわさはほつておくというような消極的な態度でなく、アメリカとあれだけ苦心して話し合つてやつとあれだけのものしかもらえないのですから、私はむしろこの際日本の国策から申しましても、堂々と日本がとられました旧海軍の艦艇はその返還を要求する、要求といつては強くなるかもしれませんが、話合いをして返してもらう、これは日本の財政上にも非常に寄与するところが大きいし、いろいろな意味合いでも納得の行く筋だと思う。そういう努力をされる熱意があるかどうか、またやるとすればどういう方法でおやりになるか、その心構えについてお伺いしたいと思います。
  68. 増原恵吉

    増原政府委員 非公式にしろ何にしろ、筋のある方からまだ全然話を聞いておりませんので、今何とも申し上げかねます。うわさ話を聞いた時分のことは、いわゆる無償で何らの条件なしにもらえるというようなことではなくして、相当にのつぺらぼうみたいになつておるので、使えるようにするために相当莫大な経費がいるほかに、いろいろとひつかかりがあるようなうわさ話であつた新聞に出ておるような、元のやつを返すというふうな筋の話は当時としてはうわさ話ではなかつたのであります。しかし仰せの通り基本的には、そういうものでりつぱに使えるものがわが方に返つて来る道があるとするならば、いいことであると思いますから、今の話の内容を確かめてみましたその上で、どうせ相当の経費を要するものであることは間違いありませんから、経費の問題その他について、これはさらに来年度の予算になると思いますが、そういう措置とつて国会にお願いするということになろうと思います。まず話の実体を確かめてみたい、こういうように思います。
  69. 上塚司

    上塚委員長 須磨彌吉郎君。
  70. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 この前岡崎外務大臣に対して、ジユネーヴ会議に関しますわが国の関心は非常に大きなものである。従つてわれわれの方としましても、いろいろなことを知るための情熱もありますが、同時に注文等については、随時その国々を通して行くことが必要であるという趣旨を、私は御質疑いたしまして御賛成を得ておつたわけでありますが、ために萩原公使その他の人たちに対して、必要な訓令を出されたということを聞き及んだのでございますが、その復そういう手順によつて得られました同会議の進展について、何らか新しい展開の情報等がございましたら、おさしつかえない限り、ごひろう願いたいと思うのでございます。
  71. 小滝彬

    小滝政府委員 御指摘のように萩原公使は向うへ出張させましたし、のみならず関係各国へは、日本の重大関心があるという次第を述べまして、随時友好国である日本の大使の方へ接触いたしておりますが、現在のところは主としてインドシナの問題に注意が向けられておりまして、朝鮮の選挙の問題なども演説ではいろいろ出ておりますけれども、事実そうした問題についての具体的な話は進んでいないようであります。そこでこれという特別な情報が参つておる次第ではございませんが、しかし外務省といたしましては十分いろいろな問題に注意いたしまして、在外公館の方からできるだけ正確な情報を集めるように努めておる次第でございます。
  72. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 インドシナのデイエンビエンフーの陥落前後におきますアメリカの国策が、だんだん注目の的となつて来ておるのでありますが、私どもはダレス長官の政策が失敗に帰したとかいうような、いわゆるうわさは信ずるものではありませんが、これに伴つてつて参ります一つの大きなことは、東南アジアにおける防衛機構というものをこしらえて行くという機運が相当濃厚になつて来ておること、これは争うことのできない事実であります。昨日私が聴取いたしましたラジオの放送によりましても、アメリカの上院においてすでに、いかなる場合においても東恥における防衛機構については、日本一つの中心とすることが必要である、というような議論が述べられておるようなことでございますが、かような情勢は非常に注意すべきことであり・ただその情勢についての情報を集めるというばかりでなくて、早きにわれわれとしては対策を練ることが、国家として必要ではなかろうかということを考えておる次第でございますが、このような情勢について御研究、御検討になりますような御意図を持つて何かしておられるのでございますか、私はそういうことに関しますいろいろな情報とともに伺えれば、非常に幸いだと思うのでございます。
  73. 小滝彬

    小滝政府委員 東洋における防衛機構の問題は、アメリカのみならず、関係諸国でいろいろ論じられおるようであります。しかし日本を中心としてとか、あるいは日本をこれに参加させるというような問題については、先ほど福田委員からの質問にもお答えいたしましたように、外務大臣がこれについての意見新聞記者会見で述べたとか、あるいは新閥でそうした問題はときどき取上げられておりますけれども、現在までのところは何ら申入れがあつたわけでもございませんし、ことに日本とかあるいは台湾、韓国というようなものは、一応除外して考えざる参を得ないであろうというような情報が主になつておるわけであります。今後のインドシナ問題の解決いかんとかまたはジユネーヴ会議のいかんによつては、あるいはもつと進んだ展開をするかもしれない点は、須磨委員の御指摘通りであります。でありますから、そうなりましたときには、あるいは日本に対しても何らかの申入れがあるかもしれないが、しかし現状において日本の政治経済また憲法というようなものを考えました際に、防衛機構といえばすでに軍事的な機構であろうと存じますので、今ただちに日本の方でいかなる措置をとるかということは、私は言い得ないのではないかと思う。もちろん反共の防衛機構ができるということは、昨日外務大臣記者会見で述べておりますよう、けつこうなことでありますが、日本がその間においてどれだけのパートを演じ得るかということについては、現状においては疑問がありますので、私どもは現段階においては、十分各国の動きあるいは情報を注意いたしまして、今後の事態に処したいというふうに考えておる次第でございます。
  74. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 関連いたしましてこれは賠償の問題になるのでございますが、フイリピンとの賠償関係の交渉が一時停頓を来したということが、外国の論調を見ておりますと、相当の刺激を与えておるようでございまして、このことはインドネシア、ビルマ等の賠償にも大きな影響を及ぼしますことは言うまでもないことだと思うのでございます。すなわちこのフィリピンに対する賠償のパターンがこれからのいろいろな賠償一つの模型となるのではなかろうかというようなことも考え合せられて、各国の非常な注意の的となつて来ておるのであります。同時に一つ考え方は、かような機会をもちまして元に返つて政府がこの三つの国全部のものを一体として考えて、この一体の債権国がお互いに寄つて、ひとつ相談してみてくれぬかというようなことを申し出るのも、一つ考え方ではなかろうか。たとえば昔のヴエルサイユー条約の対独平和条約のごときがしかりでありまして、この債権国が一堂に集まつて債権額を協定し、またそれが払い得るかどうかのことについても協定をするということもあつたわけでありますが、さような意味からいたしまして、新規巻直し、元に返つてやるのではかなろうかという考え方が外国にもある様子でございますが、政府においてはさような御考慮をなさつておられるのでございますか。またこれが他の国にどういう影響を及ぼすかという考え方から、何かほかの考案等もおありかと思うのでございますが、その点を伺いたいと思うのでございます。
  75. 小滝彬

    小滝政府委員 賠償問題を取上げられました最初から、全般的な会合のようなものになるか、あるいは個別的にやるかということはいろいろ検討されたのでありますが、何分三国は事情もいろいろ異なつておりますし、被害程度も異なつておるのみならず、政治的にもフイリピンとかインドネシアなどは相当異なつたものがございます。でありますから、これらの国個々に交渉してまとめて行こうという方針をとつて来たのでありまして、現在もこうした方針で進んでおるのであります。  三国間にあるいは内々話合いがあるかもしれませんが、現在のところは、個個に先方の方もいろいろの申入れをいたしておるのであります。でありますから、かりにフィリピンの方で相当具体的に話が進んだということがありましても、それをもつてただちにこれがサンプルになるというようには、これまでの交渉経過から考えますと、他の国も考えていないようでありまして、現在も倭島公使はインドネシアから帰つて、国内での話をまとめるようにいろいろ努力いたしておりますし、ビルマにつきましても、きわめて最近にも小長谷総領事がいろいろと交渉を継続いたしておるのであります。もちろんフィリピン賠償交渉が頓挫したということは遺憾でありますけれども、まだ幸いにして交渉は依然として継続しておるのでありますから、外務省としては従来の方針によりまして、個々の国に当つて、できるだけ早くまとまるようならまとめて行きたいという考えで進んでおるのであります。  もちろん三国一体になるというような場合には、それに対する処置も考えなければなりませんが、結局は日本の経済力というものが重要な考慮のフアクターになるわけでありまして、それは三国別々にやる場合においても、一体としてやる場合においても、総量においてはかわりがないのでありますから、今御指摘のような事態がありましても、政府としての方針はかえる必要はなかろうかと考えております。
  76. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 ジユネーヴ会議というものはアジアに対してきわめて微妙な動きをなすものであります。考えてみますと、第二次大戦が終りましてからの過去十年間というものは、兵戦を交えたのはアジアだけであります。アジアは昔のバルカンのごとく、まさに世界の渦巻となつているわけであります。その一つの結末をつけようとするのが今回のことだと思うのでありますが、この会議一つの契機となりまして、アジア全体の問題が考えられるという一つ考え方がだんだんできて来たように私は思うのでございます。われわれといたしましてはフィリピンとインドネシアとビルマとは、賠償問題に関する限り一視同仁と申しますが、払わなければならぬものは払うという考え方は、一つの誠意としてわれわれにはあるのであります。わが国といたしましてはかような機会をとらえて、アジア全体のフレンドシップというものを獲得するという点から申しましても、ジュネーヴ会議等の機会を一つの契機といたしまして、さような政策を新たに樹立するということも、私は一つの行き方じやなかろうか、こういうように考えますので、今御質問をいたしたわけでありますから、さような点も御考慮になつて、こういう機会にそういう考え方をなさるということは一つの行き方じやないか。また今お話のように日本支払い能力が足らぬと申しますが、支払い能力が足らぬということが、三者一体となつ考えてもらえばもらうほど、わかつて来るのではなかろうかと思う点もありますから、かような点については、経済関係について特に明るい小滝次官においては御同感くださると思いますが、そういう点をもあわせ考えて今私の申したような大きな見地から、賠償政策の再検討ということが私は今求められている一つの課題でないかと思うのでありますから、これについてのお考えをちよつと伺つておきたいと思うのであります。
  77. 小滝彬

    小滝政府委員 仰せごもつともでありまして、現にフィリピンからも調査団が来て周密なる調査をいたしております。これにつきましては日本も協力いたしまして、ほんとうに日本の実際を見てもらう、そして提供し得る資料は提供いたしまして、結局賠償に関連する相互間の経済提携の余地というような点も、向うから参つております大蔵大臣あたりもわかつてくれると考えますので、今御指摘のような考え方でぜひ進んで行きたいというように考えている次第でございます。
  78. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 ちよつと増原次長にお尋ねしたいと思いますが、このMSAの協定ができましたことは御同慶にたえないわけでありますが、それに基きまして、あの基本協定によります武器の贈与の全部の御検討をお済みになりましたでしようか、その点をまず承りたい。
  79. 増原恵吉

    増原政府委員 MSAに基きます武器のうちで、陸上の武器は現在十一万という現勢力に対して全部に渡つていないわけですが、この足りない分はMSA協定によるという形でなしに今どんどん入りつつあります。ところが今度予算は通りましたが、まだ法律は通つておりませんが、陸について制服二万、平服八千七百ふえまして、実勢は制服がふえた形に持つて行きたいと思いますが、その分大ざつぱに見まして二個師団分の武器につきましては、詳細なるものについて今事務的な内容折衝をいたしております。包括的に二個師団分というものは差上げるということを向うは言つておりますが、さらば大砲が何門でタンクが何台で、機関銃が何ちようということは今折衝中でありまして、今事実上の細目の決定に至つておりません。着々と進んでおります。もう一つの飛行機でありますが、飛行機につきましては百四十三機というものを一応本年度分として予算にも計上し、これを向うに申上込んでおりますが、これについては向う側でいわゆる防衛力の増強上のテクニカルな問題として、われわれの要望しております機種、機数について、向うの見解でもつとこれを有力なものにするという意味において多少違う見解がありまして、これを今調節中でございます。これを調節できますと、私どもの方で予算のやりくりが可能な許される範囲であれば増強されるという方向のことに同意をして、その方向で援助を受けよう、そういうふうな話合いの進行中でございます。海の方は大体において艦船貸借協定といいますか、艦艇貸借協定というか、そういうようなものをつくる必要があるということにつきまして折衝をいたし、大体内容が事務的にはほぼ意見の一致を見たという段階でありまして、これに基きましてさしあたり千六百トン見当の駆逐艦二隻、千四百トン見当の駆逐艦二隻、これはアメリカ側としては六月までの現会計年度におきまして予算的には処理し得るものというふうに一応申しております。それを大体借り受けることにしようという話になつております。
  80. 須磨彌吉郎

    ○須磨委員 きわめてはつきりわかりましたが、さような御交渉の間に、日本の中でこれからいたします防衛生産ということも御勘案になつて、お進めになつておられるだろうかと思うのでございますが、言いかえますと、ただもらうばかりでなくして、それに類似のものを日本がこれから防衛生産ができるというようなこの考慮も入れつつ、お選びになつたり御注文になつたりしているのではなかろうかと思うのでありますが、またそうすることは私としては必要だと思うのでありますが、さような点において御検討を願いたいと思います。
  81. 増原恵吉

    増原政府委員 非常にごもつともなお尋ねでございまして、ぜひそうしなければならぬという心持は持つておりますが、具体的に申しまして本年度もらいますたとえば陸の兵器の中で、あるいは空の飛行機について、どういうものを日本で生産することとにらみ合せるかということになりますと、残念ながら二十九年度の予算というものが、非常に切り詰めましてストック等を全部食つてやつと漸増の線を出したということでありますために、防衛生産ということを具体的ににらんだ計画にまだ実はなつておりません。これは三十年度を考えます際には、やはりこれも見通しとして予算が非常にきゆうくつで、しかもある程度の増強をしなければなるまいという見通しを持つているので相当困難ではありますが、具体的に関係省と相談しまして、防御生産とにらみ合つた供与を受けるようにしたいと考えます。
  82. 上塚司

    上塚委員長 この際理事補欠選任についてお諮りいたします。理事松平忠久君が委員を辞任せられ、戸叶里子君が再び本委員に選任されました。理事が一名欠員となつております。それゆえ引続き戸叶里子君を理事に選任いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  83. 上塚司

    上塚委員長 御異議がなければさように決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十九分散会