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1954-04-22 第19回国会 衆議院 外務委員会 第39号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月二十二日(木曜日)   午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 今村 忠助君 理事 富田 健治君    理事 福田 篤泰君 理事 野田 卯一君    理事 並木 芳雄君 理事 穗積 七郎君    理事 戸叶 里子君       金光 庸夫君    北 れい吉君       佐々木盛雄君    福井  勇君       増田甲子七君    須磨彌吉郎君       上林與市郎君    河野  密君       西尾 末廣君  出席政府委員         外務政務次官  小滝  彬君         外務事務官         (アジア局長) 中川  融君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (経済局長心         得)      永井三樹三君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 四月二十一日  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国とアメリカ合衆国と  の間の条約批准について承認を求めるの件  (条約第一八号)  遺産、相続及び贈与に対する租税に関する二重  課税回避及び脱税防止のための日本国とア  メリカ合衆国との間の条約批准について承認  を求めるの件(条約第一九号)  第二次世界大戦の影響を受けた工業所有権の保  護に関する日本国とスウエーデンとの間の協定  の締結について承認を求めるの件(条約第二〇  号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  通商に関する日本国カナダとの間の協定批准  について承認を求めるの件(条約第一五号)  外交に関する件     —————————————
  2. 上塚司

    上塚委員長 これより会議を開きます。  通商に関する日本国カナダとの間の協定批准について承認を求めるの件を議題といたします。質疑を許します。戸叶里子君。
  3. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ここに提出されております日本カナダとの協定通商に関するものだけのようでありますけれども日本カナダとの間の全般通商航海条約というものはまだ結ばれていたいと思います。どうして通商だけに限つて全般通商航海条約というものを結ばなかつた、その理由を伺いたい。
  4. 永井三樹三

    永井政府委員 お答えいたします。お説の通り、この協定は、関税輸出入だけに限つております。私どもといたしましては、できるだけ早く日本カナダとの全般的な経済関係を規律する通商航海条約締結をいたしたいという希望は常に持つておるのでございます。それを希望して参つたのでありますが、さしあたり、カナダにおいて日本品が他の国よりも高い関税をかけられているというハンデイキヤツプがございまして、その点が最も急を要しますので、今回はこれから始めたわけでございます。一般的な通商航海条約のごときものは、今日までたとえばイギリスを初めとして英連邦諸国等日本締結をしないというような態度を示して参りました関係上、全般条約に持つて行くには、かなり時間がかかるというので、とりあえず急ぐ点だけを抜き出して協定を結んだという事情でございます。
  5. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ただいまの御答弁では、英連邦諸国との関係もありまして、近い将来に全般通商航海条約締結はなかなかむずかしい、こういうふうに考えられるのでございましようか、それともこの協定を結ぶことによつて、近い将来において全般のものを結ばれる、こういうふうに考えられるのでごいましようか。
  6. 永井三樹三

    永井政府委員 英連邦諸国は対日通商航海条約を困難としておつたのが今までの事情でございます。もちろんこの事情を好転させるように努力もしておりますし、徐々にその事情はかわりつつあると私どもは見ております。従つて将来長く見込みがないという考えではございません。この協定カナダと結びまして、引続いて一般的な協定を促進するという効果はあるものと私どもは確信しております。むしろその点の効果をねらつておるわけであります。
  7. 戸叶里子

    ○戸叶委員 カナダ日本に対する貿易の面におきまして非常に友好的であるという答弁を、私はおりませんでしたが、この前の前の委員会でなさつておるようでございます。それならばどうしてこの協定を結ばれる前に、日本に対して最高関税をかけていたのでしようか。何かそういうしきたりといいますか、締結されていない国には最高関税をかけるというようなとりきめのようなものがあるのでしようか。
  8. 永井三樹三

    永井政府委員 カナダの法律上、条約のない国に対しましては最高関税がかかるということになつております。その点でいかんともいたしがたい状況にあつたわけでございます。カナダ日本に対して非常に輸出をしておしまして、日本との貿易関係カナダにとつてみますと非常に重要でありますので、わが方が条約締結を提議いたしました際に、この関税の問題について交渉に応ずることをただちに向うが受諾したわけであります。そういう関係最高税率がこの条約ができるまではかかるという状況にあるわけであります。
  9. 戸叶里子

    ○戸叶委員 日本からカナダへの輸出のおもなものは雑貨と綿布というお話でございますが、しかし今度それらのものがこの協定を結ぶことによつてどれだけ拡大されるか、日本カナダとの貿易がどの程度拡大されるお見通しを持つているか、その点をお伺いしたい。
  10. 永井三樹三

    永井政府委員 先般並木委員からの御質問の際にもお答えいたしたのでございますが、この協定ができますと、関税上現在よりも非常に日本にとつて楽になりますので、私どもといたしましては、かなり著しい輸出の増進が見られると考えております。もつともこれは日本品の今後の価格関係というものが非常に重要なエレメントでありますので、はつきりとした予想はむずかしいのでありますが、当面私どものいろいろなカナダ貿易状況考えてみまして、現在千五百万ドル程度輸出でございますが、さしあたり二千五百万ドル程度輸出までは伸びるであろうという期待を持つております。それから関税関係がかわりますと、輸出品も今まで出なかつたものも出る可能性も出て参ります。これにつきましてははつきりした見通しはむずかしいのでありますが、カナダからの報告によりますと、今まで出ておりませんでしたが、カナダ西部地区開発事業が行なわれるに従つて建設材料とかセメントとかそういつた新しい輸出品が非常に有望であるという情報も来ておりますので、おそらく今申しました程度までは、行き得るのではないかと考えております。
  11. 戸叶里子

    ○戸叶委員 交換公文関税評価に関するところでありますが、カナダ品物日本にたくさん売る方であつて日本は買う方のお客さんだと思うのです。そこでこの協定では最恵国待遇をするということを言つておりながら、この点は非常に不平等だと思います。こういうふうなことが実行されますと、ガツト税率をこわすようなことになるのではないかと思いますが、そういうおそれがないかどうか、それをお伺いいたします。
  12. 永井三樹三

    永井政府委員 この交換公文関税評価に関する点はこれはガツトにおきましても、カナダのこの取扱いは認められた特殊なダンピングの場合に処する規定でございまして、この交換公文がなくても、カナダとしてはあらゆる国に対して、これに相当する事態が起きましたときは課し得るのでございます。日本も同じように不当廉売の場合には、関税を増徴し得るという規定がありまして、これは一般にガツト規定でも認められ、かつ最恵国待遇とは関連のないものとして認められている慣行でございます。この交換公文ではダンピング規定が発動される場合をある程度制限しておりまして、すなわち特殊な予見されざる事情が起きる、そしてカナダ競争産業に重大な損害を及ぼすという特殊な場合に限られる、かつその場合はあらかじめ日本政府協議をするという条件を加えて、ある意味におきましてはカナダが自由に発動し得る、そういう規定をむしろ友好的に日本側協議をし、対策を講ずる余地をつくるという意味で、カナダ法規の適用をやや日本側に有利にとりきめたとも言えるのであります。カナダのことだけを書いてございますので、不平等という感じをお持ちになるかもしれませんが、これに相当する日本ダンピング法規についてはここでは何も書いてありませんので、法規従つて日本は発動し得るわけでございます。むしろ日本としては条約によつてある制限を課せられていないという点においては、必ずしも日本に不利な不平等というのでなくして、日本としてはむしろその点は有利ではないかと考えております。
  13. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今のお答えでちよつとわからなかつたのですが、これに対応するダンピング防止については、日本側にとつては何も書いてないけれども有利であるという意味は、どういう意味ですか。
  14. 永井三樹三

    永井政府委員 説明が少し足りなかつたかもしれませんが、日本関税定率法におきましても、ダンピングが行われた場合に、その国の商品に対して関税を増徴し得るという規定がございます。これはガツトでも各国に対して認められた権利でございます。その意味におきましてここに規定がないということは、日本はこれに該当する事態が起きた場合には、その条項を発動し得るわけです。要するに束縛されていないという意味であります。一方カナダ関税評価規定につきましては、向う法規のほかに日本協議をするというような意味交換公文でいわば条件をつけておりますので、その点でむしろわが方としては、この規定があるので、ある程度安心ができるということでございます。
  15. 戸叶里子

    ○戸叶委員 問題が起きた場合に仲裁手段として、あるいはまた両方の間に合意が成立しなかつたような場合には、どういうような手段を講じられるのですか。
  16. 永井三樹三

    永井政府委員 これは個々の場合によつて、たとえば現実に日本綿布が非常に殺到いたしまして、カナダ紡績工業が閉鎖されなければならぬというような事態になりますれば、おそらくカナダでこの規定を発動しようという運動が強くなるでありましよう。その場合に協議をした結果、あるいは日本側においてカナダと競争的になるような品物輸出は、ある程度自制するというような措置を講ずることもありましようし、また何らか数量的にあるいは価格的にカナダ側協議して、輸出をかげんするというようなことも考えられるわけです。一概にいかなる措置をとるかということは、この協定でもきめてありませんし、各商品の特殊の事情によつて、それぞれ違うと思います。もし極端な場合を考えますれば、日本側が何らの措置もとらないで放置すれば、もちろんカナダといたしましてはダンピング法規を発動することはできるわけであります。従つて仲裁その他とかいうことは、これは一種の国際紛争というわけではございませんので、そういう点は考えることなく、できるだけ妥協によつて問題を回避して行くという方向に向うと私ども考えております。
  17. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、政府としては大体においてそういう紛争が起きることはない、こういう見通しの上に、もしそれがあつてもお互いに話合いがつく、こういう見通しを立てていらつしやるわけで、そういうような場合は絶対ないという想像の上に立つてつていらつしやるのでしょうか。
  18. 永井三樹三

    永井政府委員 絶対ないという想像の上に立つてつておるわけではございませんので、従来からも関税の問題につきましては、アメリカ日本品関税を上げるというような運動がある場合に、業界同士でよく了解をして問題を解決するというような例がはなはだ多かつたのであります。確かにカナダ生産されますある種の綿布その他については、カナダ側業界から、こういうダンピング法規をかけろという動きが出て来る可能性はあると私どもは存じております。むしろそういう可能性をあらかじめないようにして行くというふうにとりはからつて行くことが必要ではないかと考えておりますが、もしそういう問題が起きましても、業界同士了解によりまして、今までの多くの例にありましたように解決がつくことを、私どもは期待しておるわけであります。
  19. 戸叶里子

    ○戸叶委員 御答弁ではどうも私は安心ができないような気がいたしますけれども、これ以上追究してもしかたがないと思いますので、不安ながらもそういうお考えであるということだけ了承したいと思います。  もう一つの方の九品目の非差別的待遇に関する交換公文ですけれどもカナダの方の九品目を決定しておいて、日本の方から輸出するような品物に対しての同様の保護を与えておらないという点はどういうわけでしようか、非常にここもまた相互互恵ということに反するのではないかというふうに思われますけれども、その点承りたい。
  20. 永井三樹三

    永井政府委員 カナダにおきましては、輸入制限ということをやつておりません。従つてこの一部の品目でなくて、カナダ関税だけが輸入をコントロールする手段でありまして、ほかは為替の統制とかいうことがありませんので自由でございます。従いまして、その点では日本だけが輸入制限をやつておるために、ここに九品目だけについては自由にするという趣旨を設けたのでありまして、実際におきましては輸入制限に関する限りは、カナダの方が門戸を開いておるというふうに御了解を、願いたいと思います。
  21. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今年のMSA余剰農産物協定アメリカから小麦を買いましたけれども、そのときにもカナダとの間に少し問題が起きたようでございました。それは解決したのでありますが、今後、もしもあのMSAの五百五十条によつて日本側余剰農作物小麦を買うというようなことになりますと、もつと大きなカナダとの何か意見の齟齬といいますか、カナダの方で喜ばしからざるような意見を持つて来るのではないかと思いますが、その点はどうでしようか。今後も余剰農作物小麦アメリカから買うというようなことがあつても、この交換公文に矛盾するようなことは起きないのでしようか。
  22. 永井三樹三

    永井政府委員 その点は当初本年度のときに、カナダで若干心配したということを伺つておりますが、元来余剰農産物の購入はコマーシヤル・ベースのものと全然違いまして、円貨で日本側に入り、その一部がグラントになるというものでありますので、普通の意味輸入と違うという点と、もう一つの点は、これを輸入するからといつて、他のカナダその他の地域からコマーシヤルに、あるいはノーマルに輸入しておる小麦を減らす意向はない、これはMSA協定にもあります通り、ノーマルな輸入を阻害したいという条件MSA小麦を買い入れておりますので、その点を説明いたしまして、カナダもその点は了承し、納得したという経緯がございますが、今後も同様な問題は起きない、かつこの協定に違反するという問題は生じないものと考えております。
  23. 上塚司

    上塚委員長 これにて本件に関する質疑は終了いたしました。  これより討論に入ります。討論の通告がありますので、順次これを許します。福田篤泰君。
  24. 福田篤泰

    福田(篤)委員 私は本件に対し、自由党を代表いたしまして全面的に賛成の意を表します。もともと片貿易が修正されまして、わが方といたしましては、きわめて有利でありますので、当然本件賛成すべきものと考えます。
  25. 上塚司

  26. 並木芳雄

    並木委員 改進党も賛成であります。
  27. 上塚司

  28. 穗積七郎

    穗積委員 私は最初に政府側ちよつと希望を申し述べておきます。こういう条約が採決されるときに外務大臣がおらぬというのは、どうも心がけが悪い。お忙しい事情がおありになるようでありますが、ぜひこれからは出席されるように希望いたします。しかし、格別に急いでおられるようですから、特に譲歩いたしまして採決に臨みたいと思います。  私どもはこの条約日カ通商または投資の問題をすべて解決するのに非常に不十分なものだと考えます。今まで非常に不当な不利な立場におりましたものを、当然の関係にやや回復しただけでございます。そういう点については、政府におかれまして今後全面的な通商並びに投資に関しまする協定を早く促進締結されんことを希望いたしまして賛成いたします。
  29. 上塚司

  30. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私も日本社会党を代表いたしましてこの協定賛意を表しますが、ただ一、二の要望を付しておきたいと思います。  この協定によつて日本輸出品最高関税率が付されていたことが是正され、そうして最恵国待遇を受けることにより、日本カナダとの間の片貿易が是正されるということでございますが、この協定締結によつて、さらに日本からの貿易の促進がはかられるようにとりはからつていただきたいことが第一の条件であり、二番目には、この交換公文を読んでみまして、必ずしも日本にとつて相互互恵であると思われない節もたくさんございますので、そういう点をよくお考えの上、相互互恵であるように努力せられることを要望いたしまして、この協定賛意を表します。
  31. 上塚司

    上塚委員長 これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。通商に関する日本国カナダとの間の協定批准について承認を求めるの件を承認すべきものと議決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  32. 上塚司

    上塚委員長 御異議なしと認めます。よつて本件承認すべきものと決しました。  なお本件に関する報告書の作成は委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  33. 上塚司

    上塚委員長 御異議がなければさよう決定いたします。     —————————————
  34. 上塚司

    上塚委員長 次に外交に関する件について質疑を許します。並木芳雄君。
  35. 並木芳雄

    並木委員 私はフイリピンとの賠償について政府質問をいたしたいと思います。昨日フイリピンマグサイサイ大統領村田全権大使に対して、日本との賠償協定案文を見たけれども、これに役務賠償だけが規定されておつて資本財というものの規定がないことに対しては意外の感を抱いた。今までガルシア外相から資本財も含むものと聞いておつたから、予備協定賛成をしておいたのであるけれども、この協定案文を見ると違うので賛成できないという、われわれにとつても意外な発言をしておるのでございます。そこでお尋ねいたしますけれども、はたしてマグサイサイ大統領の言うように、日本政府フイリピン政府との間で資本財も提供するという約束をしておつたのであるかどうか。あるいは資本財という定義に対して双方解釈が食い違つておるために、こういう誤解を生じて来ておるやとも思われます。資本財という意味はどういう意味で使われたのでありましようか。たとえばどういうものであるという例をあげて説明願うとともに、何ゆえにこういう誤解が生じたのであるか、答弁していただきたいと思います。どなたでもけつこうです。一番わかつている方から……。
  36. 中川融

    中川(融)政府委員 フイリピンに対しまして村田全権から手交いたしました協定草案の中には、日本側の提供する義務としてサービスという字が使つてあるのであります。これは御承知のように桑港条約十四条におきまして、日本側の提供する賠償というものがサービスという字句で表されておる関係上、日本側といたしましてはその条項にのつとりまして、サービスという字を使いながらその内容をできるだけ拡張いたしまして、その一部としてサービスの結果としての資本財というものをそのまま提供し得る道を開こうという考えから、さような書き方にしてあるのであります。しかし協定草案には、はつきり資本財生産に関するサービスという場合には、日比両国協議の上日本側で提供し得る原材料をもフイリピン側に提供してよろしいということを、書いてあるのでありまして、この規定を読み合してみますれば、日本側としてはサービスという字句は使つておりますが、その内容としては資本財をも出し得るということが明らかになつておるのであります。おそらくマグサイサイ大統領協定案文をさつとお読みになつただけで、従つてサービスという字句が表面に出ておりますので、資本財があるいはそのままの形で来ないのではないかという誤解をされたのではないかと思います。おそらくこれは村田全権から詳細その間の説明はいたしまして、大統領誤解を解くような措置をとつておることと考えております。
  37. 並木芳雄

    並木委員 原材料の中はどういうものを予定しておられますか、この際われわれとしても承つておきたいと思います。
  38. 中川融

    中川(融)政府委員 協定ができました上でどのようなものをどのくらいの分量いつ提供するかというような詳細は、もつぱらさらに日比両国担当機関の間で協議されるところにまつわけでございますが、われわれが今考えておりますところとして一例をあげれば、フイリピンの方で何か機械がほしいという場合に、機械はもとより主として鉄が原料でございますが、その鉄というものは、日本では御承知のように必ずしも鉄鉱石は十分には出ないのでありまして、外国から輸入しなければならぬものが多いのであります。しかしこれとても日本ではそれらの輸入鉄鉱石を使いまして鋼鉄を相当つくつております。従つて鉄板でありますとかその他の鋼鉄材料は相当日本にもあるわけでありまして、これを使つて機械をつくつたという場合には、われわれとしては機械そのものをその原料をも含めてフイリピンに提供し得る、かように考えております。しかし、もとよりその分量その他については、さらに個々の場合におきまして日比双方協議した上できめたいと考えております。
  39. 並木芳雄

    並木委員 そういたしますと、資本財に関する限りはマグサイサイ大統領誤解が解ける、こういうふうに政府は確信しておりますか。
  40. 中川融

    中川(融)政府委員 お説の通りマグサイサイ大統領誤解は解けるものと考えております。
  41. 並木芳雄

    並木委員 もう一つマグサイサイ大統領のあげた点というのは、労務というものをフイリピン解釈する場合には、日本人労務者フイリピンに多数連れて来る、持ち込むことである、こういうふうに考えられる。従つてただいまの局長のようた解釈向うとしてはとつておらぬわけです。この労務に関して日本から相当大勢の労務者が行かなければ、実際に向うでは仕事ができないのではないかと思う。もし日本から大量の労務者を連れて来られては困るのだという向う意向であるならば、せっかく役務によるところの賠償をやろうと思つても実際問題としてできない、こういうことになるのじやないかと思います。それとも政府としては、フイリピン人だけを使つて現地労務はまかない得る、こういう見通しが立つておるのですか、全然日本人を使わないのであるかどうか、この点をはつきりしていただきたいと思います。
  42. 中川融

    中川(融)政府委員 賠償の対象となりますサービスの一部といたしまして、労働力といいますか人間の力でするものが入ることは、その文字からいえば当然でございます。従つて日本人の、たとえば技師が行きまして、向うでいろいろ生産のことをお手伝いするということがありましようが、その場合もこれはある意味では労務とも言い得ると思うのであります。こういうある程度の高度の技術者労務といいますか役務というものは、もちろんフイリピン側でも歓迎すると思うのでありますが、まつたく単純な労力につきましては、フイリピンの場合におきましては、戦争中及び戦前からのいろいろの事情によりまして、日本人単純労務者フイリピンに入つて行くことについては、普通の場合においても非常な反対があるわけであります。従つて日本が今回賠償の形でそういうことをやるのではないかという心配が相当あるのではないかということは、われわれも前から考えておつたことでありまして、フイリピンの場合におきましては、このような単純労務者日本からは送らないということを考えております。従つて、全然われわれの考えにないことでございまして、この点も村田全権から説明いたしまして、おそらく大統領誤解は解けるのではなかろうか、あるいは解けておるのではなかろうかと考えます。従つて日本から向うに行きましていろいろ仕事をする者は、結局ある程度の高度の技術者であると御了解いただけばけつこうだと思います。
  43. 並木芳雄

    並木委員 ただいまの局長答弁でわれわれもやや安堵したのでありますが、そういたしますと、二十三日または二十四日ごろ交渉再開のめどが立つ、こういうふうに政府は見ておりますかどうか。
  44. 中川融

    中川(融)政府委員 日本の全権団が参りまして向うガルシア外相と最初に話しました際に、先方としては大体今週の水曜日に——昨日でございますが、第二回の会議をしたいという予定であつたのであります。その後先方のいろいろ国内の事情から、その会合は一両日延期してくれということを言つて来ております。はたして一両日延期の結果が、今日になりますか明日になりますか、あるいはさらにもう少し遅れますか、そこらのことは、まだ現地から報告が参つておりませんので、こちらとしてはわかりかねておるところでございます。しかしわれわれとしては、おそらくフイリピン政府が、反対をしておるいろいろの人たちに十分説明をして、その結果先方の誤解も解けまして、会談が早く再開するに至るのではないかと期待いたしております。
  45. 並木芳雄

    並木委員 それならけつこうでございます。ただレクト上院議員のごときは、千億ドル五箇年というような案を提案しておるという報道もございますので、この案のごときは問題にならないと思いますが、そういうものに対してもフイリピン大統領あるいは外務大臣は説得をして、賠償交渉を軌道に乗せることができる、こういうふうにわれわれは了解してよろしゆうございますか。
  46. 中川融

    中川(融)政府委員 大統領初め政府の当局は、これら反対をしておる議員の人たちに対して、いろいろ説得をしておるようであります。新聞の報道によりますれば、昨日の晩、マグサイサイ大統領は反対をしておる与党の議員十九名を招きまして、相当長く会議をしておるということでありまして、その内容は秘密になつておるようでわれわれもわかりませんが、しかし政府当局が非常な努力をしておるということは事実と思われます。その努力が功を奏しまして、会談再開に至るものとわれわれは期待いたしております。
  47. 並木芳雄

    並木委員 現地の日本側のスポークスマンは、場合によつては全権団が引揚げることもあり得るということを発表しております。日本の外務省の方に、そういう請訓と申しますか、情報というものはむろんあつたろうと思いますが、その点について御答弁願いたいとともに、はたして全権団が引揚げないで、このままで話合いを進めて行くということになるのか、あるいは一応引揚げるようになるのか、どんなふうになつておりますか伺いたい。
  48. 中川融

    中川(融)政府委員 現地におきましての日本側の全権団のスポークスマンが、全権団は場合によつては帰るかもしれぬというようなことを言つたというこことは、われわれ開いておりません。新聞でも私自身としては見ておりませんし、公電も来ておりません。
  49. 並木芳雄

    並木委員 それでは私の了解違いであつたかもしれません。あるいは大野公使から外務省にそういう請訓というか打電をした、そういうことであつたかもしれません。それはあつたのですかなかつたのですか、あつたとしても、その心配はもうないということですか。
  50. 中川融

    中川(融)政府委員 そのような請訓は来ておりません。
  51. 並木芳雄

    並木委員 われわれは、フイリピン政府は国会に案を示して非常に民主的なやり方をとつたということに対して、一つ条約審議のあり方として敬意を表するとともに、日本政府は今までわれわれには厳秘に付して来たということに対しては、非常な不満を持つているわけなのです。これはどういうわけでこういうふうな違つた取扱いが出て来たのか、もしこういうことが出て来ると、今後の条約の審議に対しても、われわれは、日本政府は調印をする前に国会に示してもらうように約束をしてもらわないと困ると思うのです。今度の案に対しても、向うの国会だけが不満を持つているのではなくて、われわれだつてずいぶん不満があるわけなのです。その点について、どうしてこのたびこういう間違いが起つたのか、今後どうするのかという点をお尋ねいたしたいと思います。
  52. 小滝彬

    ○小滝政府委員 フイリピンの方で関係の議員に内示いたしましたのは、正式の承認を得るためという趣旨でなしに、いろいろ先方の内部にも議論があつたようでありますから、特に了解を得るために内示したものが、偶然反対の議員の方の手から世間へ漏れたというような関係のように了解いたしております。日本といたしましても、もちろん条約文そのものとしてはお見せしておりませんけれども、大体の交渉の方針なり、先ほど中川局長が申し上げましたような点は、これまでも委員会等において大体の趣旨をお話申し上げておるのでありまして、全然極秘にして取扱つたというのではなくして、賠償問題のような重要問題については、随時この国会でも報告しておるわけであります。ただフイリピンの方は、非常なまぎわに至つて困難があつたから、ああいう措置とつたものと考えますか、日本政府としては、決して全部を隠し立てをして、でき上つてからお見せするというのではなくして、重要性に応じましては随時大綱をお示ししていること、従来の通りであります。
  53. 並木芳雄

    並木委員 大綱を示すこと従来の通りと言われるけれども、私たちがいつも聞きてたがつてつたその額については、全然政府は示さなかつたのであります。この前の一億五千万ドルの際も、うやむやのうちに葬られておつたのであります。今度の四億ドルだつて、ふたをあけてみて初めてわれわれは正式に知つた。ですから、フイリピンの国会が文句を言いたいとともに、われわれとしても日本政府に文句を言いたい。二億五千万ドルだつてつらいと思つてつたのに、なぜ四億ドルに大譲歩したのか、こういうことも聞きたいわけです。これはどういうわけですか。なぜ二億五千万ドルから四億ドルに大きな譲歩をしなければならなかつたのでしようか。
  54. 小滝彬

    ○小滝政府委員 これは申し上げるまでもなく、双方の歩み寄りをしなければ、皆様常にこの委員会でも発言せられております通り、日比関係を正常状態に返すことができないから、歩み寄りの結果であることは、いまさらここで説明申し上げるまでもないところであります。途中においていろいろ交渉の過程における総額などというものをここで公表いたしますことは、いたずらに交渉を紛糾せしめ、でき上る交渉もできない結果に陥るおそれもありますので、そうした点を差控えるということは、外交上やむを得ないことであろうと私は考えます。
  55. 並木芳雄

    並木委員 四億ドルの支払い方法ですが、「四億米ドルと等価の円貨量を越えないものとする。」ということになつております。これは実際問題として全部円払いということになるのでしようか、それともその円のうちで一部は、フイリピンならフイリピンのペソにかえられる、あるいは、アメリカ・ドルにかえられて、外貨で支払うようになるのか、要するに、役務賠償役務賠償といつても、結局まわりまわつてこれは現金賠償と同じになるのじやないかと私は思うのです。結局日本政府が支出するのでしよう。それに相当する額を何らかの形で支出する、ですから、名前は役務でありましても、ただその役務を無償で政府が調達するわけじやありませんから、日本政府は四億ドル分はどうしても払つて行くというふうになると思うのです。その場合に外貨と円貨との関係はどういうふうになつて行きますか、お尋ねをしておきたいと思います。
  56. 中川融

    中川(融)政府委員 日比賠償が成立いたしました際に日本から先方に渡します賠償は、先方に渡ります際には、現金という形ではなく、あるいは物、あるいは人間の役務というかっこうで行くわけであります。日本側におきましては、やはり政府が予算を組みまして、その予算の中から必要な代価を支払つて行くということになるわけであります。従つて日本政府としての支払いの大部分は、政府から見ますれば、国内における円による支払いということになろうと思うのであります。若干例外といたしまして、たとえば日本からある数の技術の人をフイリピンに派遣する、その場合に、技師の人の俸給と申しますか、生活費と申しますか、そのようなものの中には、これを現地で支払わなければならないものが若干出て参ります。さようなものは結局現地の通貨による支払いということになろうかと思います。そのような意味で若干外貨の負担というものも入つて来るかと思いますが、なお詳細なことは、全部協定ができましたあとの具体的の打合せによらなければきまらないことでございます。その割合がどれくらいというようなことは、今ちよつと申し上げられる段階まで至つておりません。
  57. 並木芳雄

    並木委員 四億ドルにかわりますと、三億五千万ドルを予定しておつたところからほぼ二倍になつたのでありますが、二十九年度の予算においては、予定されたフイリピン賠償に充てられる円予算というものは、これは変更する必要が起つて来るのじやありませんか。今どれくらいを予定しておつて、今度の四億ドルで協定が成立した場合に、従つて二十九年度は予算の変更を来すのではないかというような点についてお尋ねいたします。
  58. 中川融

    中川(融)政府委員 御承知のように、今年度の予算においては、平和回復善後処理費といたしまして百五十億円が計上されているのであります。これ全部が賠償に充当されるということでは必ずしもないわけでございますが、この中から必要な経費は充当したいという考えでおります。しかしながら、日比賠償が成立したといたしまして、それでは具体的にどの程度今年中に支払わなければならないかということになりますと、全然まだその点の計算は不可能といわざるを得ないのでありますが、われわれの大まかな見通しといたしましては、これから条約が成立いたしまして、さらにいろいろの計画につきましての調査その他をいたしまして、その上から契約をいたしまして、それで物ができてから支払いをするということになりますので、結局今年度中には予算の組みかえはいらないのではなかろうかというふうに一応算定いたしております。
  59. 並木芳雄

    並木委員 大体百五十億円の中のどれくらいがフイリピンに振り向けられる予定であるか、その予定がなければ百五十億円というものも出て来ないのですから、大ざつぱなところでいいのですが……。
  60. 中川融

    中川(融)政府委員 百五十億円の中でまかない得るという一応の見通しを持つておる程度でありまして、具体的に幾らということは、大蔵当局でもまだ算定いたしておらないところでございます。従つてここで申し上げる段階に至つておりませんので、御了承願いたいと思います。
  61. 上塚司

    上塚委員長 それでは本日はこれをもつて散会いたします。    午前十一時三十七分散会