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1954-04-20 第19回国会 衆議院 外務委員会 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年四月二十日(火曜日)    午前十時五十六分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 富田 健治君 理事 福田 篤泰君    理事 野田 卯一君 理事 並木 芳雄君    理事 穗積 七郎君       麻生太賀吉君    北 れい吉君       佐々木盛雄君    宮原幸三郎君       上林與市郎君    福田 昌子君       細迫 兼光君    河野  密君  出席政府委員         調達庁次長   堀井 啓治君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (国際協力局         長)      伊関佑二郎君         外務事務官         (経済局長心         得)      永井三樹三君  委員外出席者         総理府事務官         (調達庁不動産         部企画課長)  鈴木  昇君         総理府事務官         (調達庁労務部         労務管理課長) 近藤  浩君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 四月十九日  委員須磨彌吉郎君辞任につき、その補欠として  早稻田柳右エ門君が議長指名委員に選任さ  れた。 同月二十日  委員三浦寅之助辞任につき、その補欠として  宮原幸三郎君が議長指名委員に選任され  た。     ――――――――――――― 四月十七日  第五福龍丸事件関係者利益擁護に関する陳情  書(第二七九八  号)  岩国市沖合における外国軍隊砲爆撃演習停止  に関する陳情書  (第二八一三号)  太平洋水域における原爆等実験反対に関する  陳情書(第二八一  八号)  沖縄在住奄美同胞居住権の自由並びに既得権  益の保護等に関する陳情書  (第二八一九号)  北海道十勝大津村の米駐留軍演習地接収反対  に関する陳情書  (第二八三七号)  日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案に  関する陳情書  (第二八四二号)  北海道十勝大津村の米駐留軍演習地接収反対  に関する陳情書  (第二八七一号)  沖繩在住奄美同胞居住権の自由並びに既得権  益の保護等に関する陳情書  (第二八七六号)  沖繩及び小笠原諸島の復帰に関する陳情書  (第二  八七七号)  太平洋水域における原爆等実験反対に関する  陳情書(第二八  七八号)  同(第二八七九号)  同(第二八八〇  号)  在外資産の返遅促進に関する陳情書  (第二八八一  号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  参考人招致に関する件  通商に関する日本国とカナダとの間の協定の批  准について承認を求めるの件(条約第一五号)  日本国における国際連合軍隊地位に関する  協定締結について承認を求めるの件(条約第  一六号)  日本国における合衆国軍隊及び国際連合軍隊  の共同作為又は不作為から生する請求権に関  する議定書締結について承認を求めるの件  (条約第一七号)     ―――――――――――――
  2. 上塚司

    ○上塚委員長 これより会議を開きます。  日本国における国際連合軍隊地位に関する協定締結について承認を求めるの件及び日本国における合衆国軍隊及び国際連合軍隊共同作為又は下作為から生ずる請求権に関する議定番締結について承認を求めるの件を一括して議題といたします。  質疑を許します。宮原幸三郎君。
  3. 宮原幸三郎

    宮原委員 国際協力局長はお見えなつておりますか。——見えなつておらなければ、調達庁なり条約局長なりから御答弁をいただいてもよろしゆうございます。国連行政協定提案理由の御説明にもありましたし、また協定説明書という配付になりました書類の中にもあるのですが、呉、広地区における施設返還相当数あつたかのごとき表現があるように思うのですが、ただいままでに返還になりました呉、広地区における施設内容土地がどれくらい、建物がどれくらいということがおわかりになつておりましたら、これは根本の問題ですから一言これをお伺いしまして、それから質疑に移ります。
  4. 堀井啓治

    堀井政府委員 解除につきまして、具体的に、積極的に合同委員会相当する機関現地に設けまして、現地におきまして施設等提供につきまして折衝する考えでございますが、現在具体的に解除の通告を受けておりますものは、東洋パルプ四千坪、原村演習地二万四十坪でございます。その他につきましては、まだ今後の折衝にまつべきものと考えております。
  5. 宮原幸三郎

    宮原委員 ただいまの御答弁にもございますように、相当数施設返還というのは、まだにおいのしている程度であつて、一向具体化したものではございませんし、相手は何分手ごわい英連邦のことでありますから、この国連行政協定調印後の交渉では、ことにまた批准後になりますと、施設返還に大きな期待が持てないのではないかと、基地住民及び基地関係ございますわれわれ国会の同僚一同がまことに痛心いたしておるところでございます。国連側返還施設内容は私ども多少仄聞いたしておりますが、それは政府が誇示せられるような意味相当数にわたるものではなくて、まことに僅少な部分であり、ほとんど軽微なものにのみ限られ、しかも代地の提供移転費用負担または共同使用というような条件がつけられておるのであつて相当数というのは、施設の不返環を意味するというならわかるけれども、返還される施設相当数という表現を用いられることは、これは羊頭狗肉と申し上げては少し過言であるかもしれませんが、われわれとしてはまことに不満足に感じておるところでございます。講和発効一年有半の折衝がほとんど何ら効果を上げなかつたのを、協定調印直前外務省当局相当の努力を尽されまして、ようやくにして、ともかくも多少の施設返還の譲歩をさせ得たことの成果を認めるにもとよりやぶさかなものではありませんけれども、伝えられるがごとき程度返還では、とうてい満足し得ないどころではございません、地元においては不平不満が欝然としておるのでありまして、市民の間においては直接行動に出て、市民大会を開いて政府を、言葉は適当でないかもしれませんが、鞭撻して成果を上げたいという情勢まで出ておるのが事実であります。そこで、九年間の供与施設はまことに過大である——ただいま四千坪というような東洋パルプの一部返還の例があがりましたが、現在英連邦が呉、広地区使用いたしております土地は一百万坪、及び建物は十五万坪に達し、償却資産三十億円であります。しかもただに厖大施設というだけでなく、最も重要なる地域提供させられている実情であります。私ども同僚とともに昨年の秋現地を視察いたしました。その際に大蔵省出先機関から説明を聴取したところによりますれば、旧海兵団地区は僅々二、三万坪でありますが、戦前日本軍使用いたしておりましたときには一万名を収容していたということであります。しかるに英連邦は、僅々三、四千名の兵員でもって、実に百万坪という厖大土地、十五万坪というような建屋使用いたしておる。これは兵員の割に対してまことに過大な使用濫用ぶりであると断定するのも当然であると私は現在考えておるのであります。これらの余剰施設が現在なお返還にならないために、第一には地元呉市におきましては、旧軍港市転換法によりまする平和産業海湾都市の計画が画餅に帰しつつある実情であります。第二には、重要地域供与等によりまして、代替施設建設が必要となることは当然であります。その結果代替施設として基地において計上せられます予算はおよそ三十八億円になつているのでありまして、普通土木が十億円、港湾が二十七億円、農業土木が一千三百万円、水産が七千八百万円というような内訳になつております。第三には、農林水産業者の損害は九千万円に達しておるのであります。それから、これは直接施設そのものではありません、供与施設に関連して来るのでありますが、供与施設地方税非課税との関係であります。このたびの協定の第十二条では地方税非課税なつて、米軍均等待遇になされておりますために、基地は一億九千六百万円の地方財源を失う結果となるのであります、この地方税はもとより固定資産税市民税及び電気ガス税等であります。そのうち平衡交付金によつて国庫負担を受けることにきまつておるものがありますから、それを差引きますと五十九百万円の地方財源を失うという計算になつているのであります。こういうふうな実情である上に、このたびの協定承認いたし、このまま実施することになりますれば、基地といたしましては、以上のほかに駐留軍のために各種財政需要が起つて参ります。たとえば警察消防費保健衛生費渉外道路橋梁費、こういつたもので年間三十六百万円の財政負担がふえて来るのであるのであります。いささかくどくど申し上げましたが、このために基地は非常な被害者の立場に立つております。しかもこのたびの国連協定の対象となるのは呉、広地区が主であるが、呉、広地区以外も、基地被害補償は全国的にどうも不徹底に終つているような感を受けるので特に申し上げたのであります。従いまして、基地への補償代替施設建設ということが当然必要となつておるのでありますが、このまま予算措置もなく、立法措置もなく協定実施になれば、言葉はまことに過激かもしれませんが、基地に対して一種の切捨てごめんになります。国連軍は過大なトラツクとか戦車とかいろいろなものを縦横無尽に駆使いたしまして、道路橋梁等を損壊しているのでありますが、これをそのままにしておいて何らの補償もない、また代替施設建設もないということになれば切捨てごめんになるのと同様の感を基地住民が受けるのは、まことに同情に値することと思うのであります。それで中央政府とせられては国連軍特殊地位にかんがみられまして、このたびの協定ではこの防衛分担金負担をしていらつしやらない、そうしてその他の点においては米軍均等待遇を与えていらつしやる。中央政府はただ基地国有財産を無償で貸しつける、この使用料を免除するというこれくらいの程度の犠牲で、一面においては防衛分担金負担せずに間接防衛の目的を達している、こういう中央政府としてはまことに日米協定以上に御都合がいいことになつておるのでありますが、地元としましてはかかる国連軍というような、米軍のように直接防衛でない、性格の弱い、日本としては米軍ほど役に立つてくれないこの国連軍駐留のために、行政費で三千六百万円、地方税かわり財源の五千九百万円を失い、農業水産等においてはいかなる立法措置をなされるのかもまだあいまいだ、また代替施設を三十八億円も建設しなければならぬ、こういつたことになりますと、政府はまことに御都合がよろしかろうが、そのしわは地元に寄るという結果になるのでありまして、こういうことはこのままに放任せられるべきでない、だからこれに対する対策について政府にお伺いしたい。かかる補償責任というものは一種の防衛行動内容として、予算国連軍防衛費の中から国連軍負担するものであるか、あるいは日本政府において負担をせられようとするのであるか、日米行政協定の場合には防衛道路とかなんとか、あの防衛分担金の支出によりまして、ある程度道路とかそのほかの代替施設地元になされているようでありますが、この国連軍の場合においてはその点はいかがになるのでありますか。その協定の条文や議事録なんかを見てみましても、その点についてはあまり明確な規定申合せもなされておるように見えないのであります。これをこのまま地元責任に放任せられるということになれば、中央政府としてはまことにお気軽でありましようけれども、それは他人のふんどしで相撲をとるというか、地元負担がまことに過重になつて来て、地元はとうてい立ち行かないということになろうと思うのであります。この調印前の地元陳情に対しまして、当時外務省参与室において主として折衝に当られたのでありますが、参与の間におかれてはこういう問題については、実施面において善後措置として十分考慮をし、むしろ外務省はイニシアチーヴをとつて地方自治庁なり大蔵省なりに、あるいは必要あらば文書をもつてでもその間の国内措置はとりたい、こういうような強い言質を地元陳情に対して与えられた事実があるようにわれわれは伺つておるのでありますけれども、かかる問題について、この当時の参与室は解散になつたのかもしれませんが、ここに引続きその業務を御継承になつております国際協力局なりあるいは御関連があれば条約局長あたりに、また特調におかれてただいま私が疑問といたしております各種の点につきまして、率直な御答弁をお願い申し上げたいと思います。
  6. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 御質問の途中から伺いましたのでちよつとはつきりしない点がございましたが、米軍の場合と比べましてどこが違つておるかという点を申し上げますと、たとえば特別損失補償と申しますか、演習地以外等に被害が及ぶ、呉の場合は原村演習場があるわけであります。こういう場合に、米軍の場合は特損法というものによつて間接被害補償いたしておりますか、国連軍の場合にはこれがない、考え方といたしましては十八条三項、公務上に基いたものならば国連軍側負担させる、しかしそれ以外のものでありましたならば、大体特損法と同様な考え方をもちまして、何らかの予算的措置によつて適正な補償をしたいというふうな方針でもつて関係者協議をいたしております。  次にもう一つは、弾薬庫の周辺と一部の海面を制限いたしております。これは米軍の場合には漁業補償法律があるわけでありますが、国連軍の場合にはこれがございません。この点はこうした法律がやはりいるのじやないかというふうに考えております。但し施設提供に伴いましては財政負担日本側はいたしませんので、まず日本側でこういう法律をつくりまして、日本国民に対しては政府から払いましても、あとでこれを国連軍からリフアンドといいますか、要するに国連軍側に払わすというような考え方でおるわけであります。  それから代替施設お話がございましたが、これはただいままでのところ約十五施設を返すということに一応の話がつきまして、地元委員会でもつて逐次それの推進をいたしておるわけであります。今後とも施設余裕があるというふうに考えますれば、返還を促進させて行く考えでおります。一瞬かなりあいておりましたが、朝鮮休戦に伴いましてかなりこちらに物資を置いておりますので、私がかつて見ましたときほどは最近は余裕がないというふうに、見て来た者は申しておりまます。  それから行政協定の場合には安保諸費というものがございまして、道路等のいたみますもの、あるいは港湾等につきまして、米軍が使うために日本側が足らなくなつたというふうなものは、安保諸費でつくつて参つたわけであります。これにつきましては、こうした費用国連軍の場合にはございません。従つてこれをどうするかという問題があるわけでありますが、この点につきましてはまだ研究中であります。
  7. 宮原幸三郎

    宮原委員 どうも一番かんじんな点が盲点になつているようでまことに遺憾に思うのであります。研究中とおつしやられるその表現意味を非常に重要視するのであります。必ずその御研究成果あらしめるよう、お願いしたいと思うのであります。それでなおこの米軍日米行政協定の場合においては、法律第二百四十三号漁船操業制限等に関する法律、それから法律二百四十六号、日本国駐留するアメリカ合衆国軍隊の行為による特別損失補償に関する法律、こういつたような特別損失に伴う農林漁業等の方面の補償立法化されておりますが、国連行政協定の場合には、当然、この協定の第何条でしたかにありましたが、ただいま言つたような立法は引続きお考えなつておることでありますかどうでありますか、特にお伺いいたします。
  8. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 漁業補償につきましては、目下のところ関係省間の意見は大体こうした法律をつくろうという方向にまとまつて来ております。特別損失補償につきましては、今のところこれと同様の法律をつくる考えは持つておりません。何らかの予算措置を講じたい、こう考えております。
  9. 宮原幸三郎

    宮原委員 現地委員会のことについてお尋ねしたいのですが、現地委員会というのがすでに発足いたしておるようであります。このたびの行政協定のまず唯一の成果といつていいかと思うのですが、ぜひこの現地委員会の活動を期待するものであります。ところがこの三十条に合同委員会ですかの規定が出ておるようですが、この中なりまた会議録を見ても現地委員会のことは何も根拠が示されているように見えません。この根拠というものはどういうふうになつているものであるか、またこの現地委員会性格合同委員会下部組織なつておるのか、それとどういう関係なつているのか、そういつたような点についてお示しを願いたい。なお発足間もないことでありますが、現地委員会実情から申しますと、施設利用状況の調査というようなことが非常に重大な点にたつて来るのであります。こういつたようなことの権限は与えられているものでないようであつて、このたびの協定公式議事録には、主要施設に必要な最小限度に限るものとせられると書いてあり、必要な最小限度ということはまことに表現としては魅力のある表現でありますけれども、しかしその必要はあちらさんが一方的にきめ、そうして現地委員会というものがあつてもそれは実力はない、こういつたようなことになりますと、ほとんど有名無実委員会に終るのではないか。だからこの現地委員会権限の強化ということについて、政府はどういうこれに対するお考えを持つていられるか、この点をお伺いしたい。
  10. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 現地委員会は何ら法的根拠には基いておりません。先方との話合いによつてつくつたものでございます。合同委員会といたしましていろいろな意味補助機関を持ち得るわけでありまして、行政協定の場合にいたしましてもいろいろとつくつております。たとえば各地に主として風紀問題のための連絡協議会というようなものをつくつておりますが、これにつきましての法制的根拠は置いておりません。ただ今度できます中央における合同会議、この力でもつてこういうことは現地にまかせようということになりますれば、それは現地限りで処理し得るわけであります。ただ私たちが今考えておりますのは、十五施設返還するということになつておりますから、それを中心に現地で今やつてもらつておるわけでありますが、今後の問題といたしましては、いろいろとそれ以外に両君の関係現地でうまく行きますように、この問題に限定せずに、何でも取上げてもらう、そうして現地で事実上の話合いで解決するものはそれで非常にけつこうである。しかし現地で解決しないもの、あるいはどうしても中央措置を要するもの等については、それぞれの筋を通して中央に言つて来てもらうというふうに考えておるわけであります。現地委員会というものにはつきりした権限その他のものをきめておりませんが、むしろその方がどんな問題でも扱える、そして現地で話のつくものは現地でやる、現地で話のつかないものは、中央に言つて来てもらつて中央でやるというふうに考えております。また施設等利用状況現地が一番詳しいわけでありますから、現地からお話があれば、それを中央でもつて——現地限りで話しがつけばよろしいのでございますが、つきません場合には現地の情報に基いて中央で話をする。こういう考えでおります。
  11. 宮原幸三郎

    宮原委員 労務関係のことですが、主として調達庁関係になるかもしれません。日米の間においては労務基本契約があるように伺つておりますが、国連の場合においてこの労務基本契約締結をなさることにきまつておりますか。この点はただいまのところどうなつておりましようか、ちよつとお伺いをしておきます。
  12. 堀井啓治

    堀井政府委員 労務契約につきましては、日米間の労務契約と同様の内容をもつて協定をすることにお話合いをいたしております。
  13. 宮原幸三郎

    宮原委員 その国連軍労務者のうちには、非軍事的労務者が約二千人呉地区にあるようであります。これは他の労務者と同様に間接雇用に切りかえられるものでありますか、それともこれはいかが取扱われるものでありますか。
  14. 堀井啓治

    堀井政府委員 一応軍で雇用いたしますものは、全部一括いたしまして契約に入つて来ると思います。
  15. 宮原幸三郎

    宮原委員 この国連軍撤退の時期について外務省にお伺いしたいのですが、国連軍全体が朝鮮から引揚げた後九十日以内に——その九十日も次々に双方の協定で延期できるようなことがその第三十四条に示されておりますが、この撤退の問題について、地元との関係でもりますが、中央政府におかれては、国連軍駐留によつて地元が非常に利益を得て満足しているもののように誤解をされているような場面に、ときどき出会うのであります。この国連軍駐留によつて利益を得ている者も市民のうちには多数ありますが、それは市民全体から見れば一部分でありまして、市民の大多数というものは、物価騰貴といいますか、そういう意味の経済的な圧迫を非常に受けております。また風紀の上からも治安の上からも、あらゆる面から国連軍駐留によつて迷惑をこうむつている者の方が受益者よりもはるかに多いのであります。われわれは今ここで撤退を具体的にどうということを言うのではありませんが、この撤退の時期についてのおよそその見込み等な、ただいまのお見通しでわかるものならば、朝鮮動乱休戦等関係と照し合せて、外務当局としていかにお考えなつておるかということをここで御表明願いたいと思うのであります。  この御答弁を得まして一応私の質問は終りたいと存じます。
  16. 下田武三

    下田政府委員 中央におきましては地元実情がわからないというお話でございましたが、実は宮原先生初め地元の御熱心な御啓発によりまして、私ども非常に実情を教えていただきまして、この協定が曲りなりにも妥結いたしましたのは、地元の御熱心な御協力と御啓発のたまものでありまして、この点につきまして私ども深甚なる感謝の念を表したいと思います。  そこで撤退の問題でございますが、協定の方から御説明しますと、この二十四条に、朝鮮から撤退した日から九十日とは書いてございませんで、朝鮮から撤退すべきことになつた日から九十日と書いてあります。どういうときに撤退することになるかということを考えてみますと、第一に、あるいは国際連合撤退期日について決議いたすかもしれません。そうしますと、その決議で何月何日に撤退するときめられた日からということになりますし、あるいは派遣国同士協議で一定の期日をきめて撤退するということになるかもしれません。また第一に、これは足並のくずれたときでありますが、ある派遣国と韓国と話をして、統一司令部の了解のもとに撤退するということも理論的には考えられるわけであります。いずれにいたしましても、撤退することにきめられた日から九十日でございますから、現実にまた朝鮮に残つておりましても、きめた日から九十日たつてしまえば撤退するというのが、第二十四条の建前であります。規定建前がそうであるといたしまして、御指摘の撤退見通しでございますが、この点は御承知のようにジユネーヴ会議でまた朝鮮問題が取上げられるかもしれません。しかしながらジユネーヴ会議見通しについてすら、現在国際間にはむしろ悲観的な見通しが強うございまして、おそらくジユネーヴ会議でも大した成果には達しないであろうという見通しが、会議が開催される前から強いような状態でございます。これは朝鮮問題にいたしましても、仏印問題にいたしましても、世界全体の冷たい戦争の局地的な現われでございますから、この大きな両陣営対立の現勢が何らかの打開の見通しがつきますまでは、正直に申しまして、朝鮮問題だけ切り離して解決するということはなかなかむずかしいのではないかと思うのであります。でございますから、地元の方々に対しましては、ある見通しを申し上げられれば非常に幸いなのでありますが、かえつて地元の方々に誤解を与えるようなことを申し上げまして、幻滅の悲哀をお感じさせることは悪いと存じますので、率直に見通しは暗いということを申し上げた力が正直であると存じます。
  17. 上塚司

    ○上塚委員長 次は並木芳雄君。
  18. 並木芳雄

    ○並木委員 私は国連軍がどうして日本に支持されなければならないかということについて常々疑問を持つているのでございます。どういうわけで、陸軍にしても、海軍にしても、空軍にしても、日本を選ぶのか。そこで最近統一司令部たる国連軍の本部というのか、司令部というのか、それが韓国に移転するという話がございます。私はそれがしかるべきだと思うのです。日本統一司令部がある必要はないと思つておつたのでありますが、その話はどういうふうになつておりますか。
  19. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 国連軍の司令部でもありますし、在日米軍の司令部でもあるこの一つのものが、両方の資格を持つて日本におるわけでありまして、私どもの方がいろいろと米軍と話をしております限りについては、早急に国連軍の司令部が朝鮮あるいは沖繩に移るというふうなけはいは見えません。もう一つ考えなければなりませんことは、在日米軍が減るということは、いろいろと日本国民との間において摩擦を起さないという意味においては減ることがけつこうなのでありますが、現在のように日本側の自衛力が整いまして逐次減つて行くというふうなことでなく、ただ朝鮮に移れとか沖繩に移れというふうに申しましても、経済的な面に及ぼす影響というものも日本側としてはかなり考えなければならぬ。貿易が非常に逆調でありますので、そういう際にドル収入というものがかなり大きいわけであります。こちらからそれほど強く要求するというような際には、そういうドル収入という面も考慮しなければならぬと考えております。
  20. 並木芳雄

    ○並木委員 ただいまドル収入の話が出ましたが、それじやお伺いしますけれども、どれくらいのドル収入が上つているのですか、実績について……。
  21. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 在日米軍としまして、昨年の実績は約八億足らず、七億五、六千万だと思いますが、それを国連軍と在日米軍とに分析いたしまして、どこまでが国連軍であり、どこまでが在日米軍であるという点ははつきりいたしません。しかしその中のある部分は国連関係というふうに考えております。
  22. 並木芳雄

    ○並木委員 そういう理由から国連軍を支持することを合理づけるという話は、きよう初めて聞いたので、びつくりしたわけです。ずいぶん矛盾するわけです。一日も早く撤退してほしいというその気持が、ただいま伊関局長の話によりますと、政府としては最近かわつて来た。むしろ米軍にしても、国連軍にしても、外貨の不足から、今日はなるべくならば長くいてほしいと言わんばかり発言でございますが、そういうふうにかわつて来たという傾向は是認されるわけでございますか。
  23. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 私が申しておりますのは、政治的に見れば、なるべく早い方がいいということはよくわかつているのでありますが、特に無理をしてまで急がすというほど積極的にやらなければならぬかどうかという面でありまして、自然に逐次減つて行くものなのでありますが、それを特に強く要請して急激に減らさなければならぬかどうかという点になりますと、そういう経済面もありますから、これはプラス、マイナス両方あつて、自然に減つて行く点は、これは当然のことと考えております。また減るべきものと考えます。しかし特に急速に減らすべきかどうかということになりますと、そういう面も考慮しなければならぬ、こう申し上げているのであります。
  24. 並木芳雄

    ○並木委員 現在おります国連軍の数を知りたいのであります。これは第三条によつても、向うから通告することになっておりますから、政府はわかつていると思います。兵種別、地域別、駐屯別の数をなるべく詳しく……。
  25. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 出入国の際には通報することになつております。現在は大体——従来ともでありますが、約五、六千のものが、呉と広地区におるわけでもありまして、これは英濠軍でありますが、その他のものは朝鮮におるわけでありまして、これは毎月報告が参つております。どこのどういう軍隊朝鮮におるかということは報告が参つております。それからそれ以外に休暇で日本に来ておりますものがございますが、これは毎日のように参りまして、四、五日おつてつておりますから、そこまでの移動は私どもははつきりしたことはつかんでおりません。
  26. 並木芳雄

    ○並木委員 朝鮮におる者の数はわかりませんか。
  27. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 表を持つて参りませんでしたので、後ほど差上げてもいいのですが、大体英濠軍が一個師団、そのほかの各国軍、大体大きいところは連隊、小さいところで大隊というものを派遣しております。これは各国別にはつきり出ております。ちよつと表を持つて来たつもりでおりまして忘れておりましたので、御要望がありますれば提出いたします。
  28. 並木芳雄

    ○並木委員 先ほど沖繩の話が出ましたけれども、私も日本における国連軍は、韓国の南の方とか沖繩あるいはハワイのようなところで待機しておればいいのじやないかという考えを持つておるのです。そういう話は全然出ておらないのですか、それとも計画はあるのですか、日本から駐屯を韓国自体に移すとかあるいは沖繩とかハワイとかいうところへ持つて行くという話はいかがですか。
  29. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 日本を視察いたしました米国の国会関係の人たちあるいは米側の評論家とかいうところあたりから、現在における日本の反米思想というふうなものを憂慮いたしまして、動いたらどうか。日本からこうした司令部を動かしたらどうかという意見は米本国では一部にあるようでありますが、東京におります司令部としましては、そうした計画は今のところ全然持つておらぬと私は見ております。と申しますのは、施設等につきましていろいろと話をしておりますので、もし司令部がよそへ移るということになりますれば、施設等の計画に変更が来るわけでありますから、そういう点は今のところ全然ございません。
  30. 並木芳雄

    ○並木委員 施設などについて、今後拡張とか新設とかいうお話があるのですか、今の答弁ですと目下進行中のものもあるやに承りましたが、もしありとすればどういうようなことが計画せられていますか。
  31. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 施設につきましては、演習場とかというふうな場合はまた懸案のものがございますが、いわゆる兵舎とか司令部の建物等につきましては、拡張するというふうな考えは全然ございません。私が申しておりますのは、ただいま建築中のものとか今後建築に着手するもの、計画はできておりまして、建築の設計もできておりますが、まだ現実に建築に着手していないというふうなものが相当ございます。もし移るのであれば、そうしたものの建築をとりやめるということもできるわけでございます。あるいは保安隊の拡充に伴いまして、米軍施設の一部返還を今交渉いたしております。そういう際に米軍が移るとなれば、保安隊か期待する以上のものが明き得るというふうな点もわかつて来るわけであります。そういうふうな交渉を通じまして、移るという点は全然見られないということでありまして、今以上にふやすというのではございません。
  32. 並木芳雄

    ○並木委員 その計画中のものをもう少し具体的にお示し願います。
  33. 伊関佑二郎

    伊関政府委員 資料を持つておりませんが、大体の計画は大都市の都心部から郊外に移るという計画でありまして、東京で申しますれば、空軍、司令部その他が明治ビルその他におります、それから独身宿舎等が相当ございます、こういうものを空軍は主として立川、陸軍の場合には座間並びに朝霞というようなところに移す、それから横浜の市内に相当まだおりますが、これが座間に移る、名古屋におります空軍が小牧並びに守山というところに移る、こういうのがおもな計画であります。
  34. 並木芳雄

    ○並木委員 私がかねがね心配しておるもう一つのことは、もし国連軍に対して攻撃が行われるようなことはないであろうか。日本で支持されておる国連軍に対して反撃をして来るようなことがありとすれば、日本としては危険にさらされるわけでございます。そういう心配があるかないか。もしそういうことがあった場合に、この攻撃は日本の国に対する侵略とみなすのかどうか。もし日本に対する攻撃であり、日本に対する侵略であるとみなされるならば、その場合には国連軍がこれを迎え撃つのみならず、駐留米軍も出動すべきでありましようし、今度できる自衛隊もぶつつかつて行かなければならぬ、こういう問題も出て来るのであります。いかがでありましよう。
  35. 下田武三

    下田政府委員 日本におります国連軍を目当として攻撃をしかけて来るということは想像できないことだと存じます。日本を攻めるならば国連軍目当でなしに、日本自体を制圧することが目的であることだろうと思います。日本自体を制圧することを目的として侵略が万一起つた場合に、在日米軍日本を守る任務を持つておりますから当然自衛隊とともに戦つてくるでありましよう。しかし国連軍は直接日本を守る任務を有していないからといつてそつぽを向いておるかどうかということは私は問題であろうと思います。なるほど吉田・アチソン交換公文の国連軍協定には、在日国連軍日本防備のために戦うという規定はどこにもございません。しかし全然これとかけ離れまして御承知のアンザス協定、アメリカ、オーストラリア、ニユージランドの三国間に締結されております相互防衛援助協定によりますと、濠軍、ニユージーランド軍に対する攻撃は、濠州、ニユージーランドの本国において、攻撃されたときだけでなく、太平洋の他の地域において攻撃されても援助の発動原因になるわけでありまして、そちらの方からやはり日本におる濠兵、ニユージーランド兵が攻撃されれば、三国間の相互援助義務が発生することになると考えるのであります。でございますから、結果におきまして間接的にやはり日本におる国連軍も戦うことがあり得るという結果に相なるわけでございます。
  36. 並木芳雄

    ○並木委員 日本で支持されておる国連軍を目当に攻撃することはない。もしありとするならば、日本国に対する侵略であり、攻撃である。こういうのであるならば、私が先ほど心配した点はないと見ていいわけですが、もしそうだといたしますれば、その根拠はどこに置かれますか。相当優秀な飛行場あるいは海軍基地というようなものを擁しておる国連軍の心臓とまでいわなくても、手足の一部を爆砕するために反撃がないということが、ただいまの局長のようにしつかり言える根拠はどこにございますか。
  37. 下田武三

    下田政府委員 それは法律根拠は何もないのでありますが、国際間の常識といたしまして、すでに朝鮮動乱が勃発いたしましたときに、目的は朝鮮でなくて日本だ、日本に行く橋渡しとして朝鮮に渡つているにすぎないというのが国際間の常識でございます。国連軍が憎いから、朝鮮におる国連軍をおつぱらつた余勢で日本を攻めるというのじやなくて、共産陣営の最後のねらいは日本なのであります。あくまで日本が目的である。その日本に、米軍と並んで国連軍が飛行場その他の施設を持つておるとすれば、この日本防衛力を減殺する意味で、その国連軍施設を爆撃することも考えられますけれども、これは国連が憎いからやるのじやなくて、あくまで日本がねらいであると思うのであります。
  38. 並木芳雄

    ○並木委員 そういたしますと、今日本国連協力の線でこの協定を結ぶことは、やはり国連憲章にいう一種の集団安全保障機構に入ることになるのだというふうに言えるのではないですか。日本自身も危険の中に含まれておる、よつて一種の集団安全保障体制に入るのではないかと思われますが、この点はいかがでしようか。なぜ私がお尋ねするかと申しますと、最近伝えられております太平洋同盟——PATOですか、そういうものの性格と今度の性格とがやはり似ているのではないかと思うのです。太平洋同盟のような場合に、日本の安全を守るためであるという見地から集団安全保障機構に入つて、もし他国に加えられた攻撃が日本に加えられた攻撃とみなし得るものであるということになりますと、NATOと同じような形式のものが生れて来ると思うのです。その場合に、日本が派兵をして軍事行動に出る義務を負うかどうかということは別問題といたしましても、今のような基地提供する、駐屯を許す、労務提供するという点から、集団安全保障体制に入り得るという一つの結論が出て参りますので、お尋ねをする次第です。
  39. 下田武三

    下田政府委員 国際連合との関係から見ますと、在日米軍の問題と国連軍の問題とは非常にはつきり区別することができるのでございます。在日米軍駐留することを許しました安保条約は、確かに国連憲章の五十二条に申します国際の平和及び安全を維持するための地域的とりきめの一種にほかなりません。なるほど日本は非常に消極的な義務しか負つておりませんが、これもやはり一種の集団安全保障の考えに出する地域的とりきめにほかならないのであります。しかし国連軍行動を容易ならしめ、これを支持することを許しました吉田・アチソン交換公文と申しますのは、これは地域的とりきめではございません。これは国連憲章の五十二条ではなくして、第二条の、いわゆる国連の精神に反する行動をする、侵略行動をとるものに対して防ぐための共同行為に参加しておる国を日本が援助するという問題でございます。この国連憲章二条の原則は、平和条約の第五条で、日本が独立いたしました際に義務として引受けておるわけであります。あらゆる援助を与えなければならないという義務を引受けておるわけでございます。でございますから、安保条約のように日米間の相互の合意でもつて安全を保つという考え方ではございませんで、日本関係なく、国連という機関が、その決議に基いて、朝鮮に起しておる行動日本において援助するという考え方でございます。でございますから、安保条約国連軍協定というものは全然異質の協定でございます。  そこでお話の仏印の情勢に関連いたしまして、PATOとかSEATOとかいう機構が新聞に出ておりますが、これはアメリカはもちろん関係国で正式に考えておるものは今のところ認められません。推測であると思うのでありますが、かりにそういうものができましても——朝鮮の場合には、ソ連がたまたま安保理事会を欠席いたしました間隙を縫つて一連の決議ができまして、それに基いて朝鮮における行動がとられたのでありますが、今度はソ連は二度とそういう愚は犯すまい、安保理事会を欠席して留守の間にそういう協定ができるのを避けるために、必ずがんばつてヴイトーを行使するでありましよう。そうであるといたしますと、決議によつて共同行動を仏印に対してとることは不可能になるであろう。従つてそうであるとすれば、どうしてもNATO条約式の国際間のとりきめで、共同行動をスタートするほかないのではないかというところから出た推測であると私は思うのであります。かりにそういう安全保障とりきめが仏印を対象としてできたといたしましても、日本といたしましては、現在の状況においてこれにアクテイヴな行動をすべく参加することはとうていできない話でありまして、しいて考えられますことは、朝鮮行動をする国連軍に対して後方で援助を与えたと同じように、仏印において国連と申しますか、そういう国際間の安全保障とりきめに基いて行動する軍隊に対して、後方の日本で援助を与えることを認めるかどうかという問題が、日本にとつて決定を迫られる問題になることがあり得るかと存ずるのであります。しかし現実の見通しでは、また差迫つた問題として日本に決定を迫つておるわけではございません。
  40. 並木芳雄

    ○並木委員 それに関連してお尋ねしたいのですけれども、NATOの第五条に、他国に加えられた攻撃は自国に加えられた攻撃とみなす、こういう条項がありますが、これはあまり無制限にそういう条項を入れることができないのではないかと思うのです。地域的集団安全保障というものが広がつてつて、かなり広い地域にわたる国々が参加した場合に、他国に加えられた攻撃を自国に加えられた攻撃とみなして自衛権に基いて出動するということになりますと、いわゆる集団自衛権の出動範囲が加減的に広まつて来るわけであります。そこで今もお話のございました、かりに太平洋同盟というようなものができたときに、仏印に加えられた攻撃を日本に加えられたものとみなすということが妥当であるかどうかということは、どういうところで判断すべきであるか、それをお尋ねしたいのです。あるいは私の聞いておることがおわかりになりにくいかもしれませんけれども、地域的集団安全保障のとりきめに限度があるのではないかということになりましよう。さらに言いかえれば、自衛権発動の限界がそこへ出て来なければならないのではないか。かなり遠くの方の国に加えられた攻撃をすら自分の方に加えられた攻撃とみなすという根拠は、どこから出て来るのであるか。国連憲章の第何条によつてそういう義務が課されておるのか、それを知りたいのであります。
  41. 下田武三

    下田政府委員 国連憲章にはその問題について何も規定がございません。五十一条の自衛権に関する規定があるのみでございます。  そこで御指摘のNATO協定の、他国に対する武力攻撃は自国に加えられた武力攻撃とみなすという条項でありますが、これは同盟条約や相互安全保障条約の常套文句でございます。これは一九三三年の侵略の定義に関する協約で非常に明確になつたのでありますが、軍隊のみならず軍艦、船に対する攻撃まで侵略と認めるということになつております。そうして自分の軍隊や船でなくても、他の締約国の軍隊や船に対する攻撃も侵略とみなす。そういたしませんことには、同盟なり相互援助の目的が達成せられないわけであります。アンザス条約も、アメリカ、濠州、ニユージーランドの軍隊が、そのいずれか一国の軍隊がどこにおつても、攻撃されれば、三国がみんな自分に対する攻撃を受けたとみなすというところから、相互援助の考えが発足しておるわけであります。ただ仏印の場合にNATO条約式なものができるかどうか、これは全然仮定の問題になりますが、北大西洋ではまだ侵略が起つておるのでないわけでございます。侵略を防止せんがために、もし侵略者がNATO条約当事国のどの軍隊、島まで書いてありますが、どの島を繋つても、NATO参加国は共同歩調をとつて対抗するぞということで侵略を防止しているわけであります。ところが仏印の場合には、すでに侵略が起つておるわけでありますから、いまさらそういうことをきめても始まりませんので、どういう形でできるか、全然私どもには見当がつかないのであります。仏印の侵略の事実を度外視して、十箇国なら十箇国で、それぞれの締約国の軍隊なり領域なり軍艦なりに対する攻撃は、すべて自国のそれらに対する攻撃と認めると言つて、相互援助の発動を許すような条約ということが一番高度の安全保障でありましようが、そこまで行き得るかどうかという点につきましては、まだ全然見通しがつきません。これはアジア地域各国あるいはこれに参加しようとする欧米の国々の立場や意見がまだ一致の段階に達しておりませんので、NATO条約式なものが仏印に関連してあるいは太平洋方面にできるかどうかということは、これはなかなか容易にはできないのではないかという感じを私は持つております。
  42. 上塚司

    ○上塚委員長 並木君、時間が経過いたしましたから……。
  43. 並木芳雄

    ○並木委員 それでは最後にお伺いいたします。なおまたあとで質問者がなかつた場合には、時間をいただきたいと思います。  政府は仏印に対する攻撃について、危険性をどういうふうに感じておられますか。アメリカ方面では、極東の平和はますます悪くなる、挑戦から舞台が移つただけの話で、質はもつと悪くなつている、共産主義の脅威というものは日本に対して重圧を加えて来つつある、こう言つております。政府としてはこれに対してどういうふうにお考えなつていますか。朝鮮動乱と同じような程度日本にも危険がある、日本としても大いに警戒すべきものである、こういうふうにお感じになつていますかどうか。
  44. 下田武三

    下田政府委員 これは私どもから御答弁すべき問題ではないと思いますが、アメリカその他の国の考えを御紹介するにとどめたいと思うのでございます。アメリカ人は、太平洋戦争で日本軍で仏印まで制圧して来たときに、非常な危険を感じて、逐に立つたということをよく申しております。同様に、仏印の資源、それから地理的にあの出ばつたところに共産勢力に攻めて来られるということは、東南アジア諸国を制圧する道を開くものであり、それが完成した場合には、東南アジア諸国に対する貿易をし、資源の供給を受けておる日本としては、非常にあぶない苦しい地位に立つということを心配している意見がたくさん見られるわけであります。  そこで日本はどうかという点でございますが、これは朝鮮とは違いまして、確かに地理的の距離もあるのでありますが、しかし資源の供給源を絶たれ、貿易の相手国をなくすという点は、万一そういうような場面が起りましたら、脅威であることは、確かに違いないと存じます。しかし法律的に現在の事態を見ますれば、朝鮮の場合には、国連がはつきり侵略であると定義づけたわけでありますが、仏印におきましては、二つの政権が相闘つておるのであつて、まだホー・チミン側が侵略者なりとして国連等の機関で定義づけられたわけではないのであります。でございますから、侵略者の烙印を押された朝鮮の侵略勢力と、仏印におけるホー・チミン軍とは、法律的にはまだ区別すべき段階であると存ずるのであります。
  45. 上塚司

    ○上塚委員長 次は穗積七郎君。
  46. 穗積七郎

    穗積委員 私は簡単に政治目的の問題に関連してお尋ねをしたいと思います。われわれは、昨年十月でございましたか、国連軍との裁判権の問題の協定について論じましたように、日本における国連軍の駐屯を実は迷惑に思つているわけです。朝鮮戦争は、言うまでもなく、その後世界の人々の認めるところは、これはむだな失敗であつたということが明瞭になつて来ているし、あと残る問題はアメリカの面子だけだと思うのです。先ほど局長は、ジユネーヴ会談においても、朝鮮問題の平和的解決は、見通しとしては困難ではないかということを言つておられますが、それは欧州諸国もこれを希望している、アジアの人々はももちろんございます。にもかかわらずその困難な原因というものは、アメリカの武力政策といいますか、アジアにおける作戦計画の無理じいによるものだとわれわれには認められるわけであります。  そこでそういう観点に立つて第一にお尋ねいたしたいのは、国連軍の駐屯するかしないかということ。これはもしこの協定を結べば、日本側に拒否権はなかろうと思うのです。  そこで第三に問題になりますのは、その兵数、その地域、その使用せんとする施設、これらに対しまして日本側に拒否権がどの程度あるか。拒否権という言葉ちよつと不適当であるかもしれませんが、第五条によりますと、合同会議の合意によるとなつておりますが、その合意の交渉をいたします場合に、現在の戦局からながめまして、国連軍の駐屯を必要としないという判断をした場合、向うが言つて参りました兵数について、少くとも今決定されている朝鮮における援助活動をするための兵数としては不適当であると思う、さらに要求する地域については日本の立場としては困る、またその範囲あるいは使用せんとする施設等について一括して日本側は拒否する、つまり日本の自主的意思を通す必要が生じて来ると思うのですが、外交上あるいは国内の経済上その他民心から考えまして、理由はいろいろあろうと思いますが、それは一体どういうことになりますか。最初にそのことをお尋ねいたしておきたいと思う。
  47. 下田武三

    下田政府委員 日本国連軍駐留することをこの協定によつて認めるわけではございません。穗積さんのお言葉で言いますと、日本の拒否権がなくなるということは、この協定によつてではございませんで、平和条約と同時に交換されました吉田・アチソン交換公文におきまして、朝鮮における行動に従事する国連軍日本国及びその近傍において支持することを容易にするということを認めておりますので、すでに駐留すること自体は国連軍側は権利として持つているわけでございます。そこで次に兵数や施設を無制限に向うの要求に応じて認めなければならないのかどうかという点でございますが、これは純粋の法律論といたしますと、兵数の方は第三条の一項で入国は日本が許可するということになつておりまして、許可を与えなければ入れないのでありますから人間もふえない。それから施設の点は第五条第一項で合同会議協議して使用させるということになつております。でございますから、合同会議でがんばつて協議を成立させなければ使用できなくなるわけであります。これはしかし純法律論でありまして、実際問題といたしましては、吉田・アソチンの協力建前からいつて日本が許可権を持つているが、しかし許可権を持つているからといつて、それをヴイトーのように行使することは、吉田・アチソン交換公文の大精神及び平和条約第五条の大精神からいたしまして、政治的にできない問題であると存じます。
  48. 穗積七郎

    穗積委員 ですから実は私はお尋ねしたわけです。たとえばこの間のビキニ環礁の水爆実験に対しましても、友好国であるアメリカが自由主義諸国の防衛のために日本を含む実験をするということであるならば、これに協力しなければならないというようなことを岡崎さんは政府の方針として言われた。基本方針でこれは動かすべからざるものだということで言われたわけです。そして一方その必要をどう日本が認定するか、そのことに伴います被害をどこまで忍ぶかということでございますが、こうなりますと無制限になる。ですから私は伺つているわけですが、吉田・アチソン交換公文というものは国連側が一方的に決定したものの、しかもそれは客観的にながめまして、または日本の主観的判断からいたしまして、非常に不合理な要求であるということまで、われわれはその向うの要求に協力しなければならぬ義務を打つたものでないと思うのです。合理的な範囲内においてのみわれわれはそれに協力する義務を負つている、こう見なければならぬと思うのであります。そのことについて私はお尋ねしているわけです。先ほど言いましたようにアジアにおける情勢からながめて、日本の安全あるいは経済的な観点からながめまして、これ以上継続してこのような多数の兵力を日本に駐屯せしめて、しかも期限を切らずに、その判断は向うの一方的な判断によるというようなことでは、これは私ははなはだしく吉田・アチソン交換公文というものは、少くともこれを認める認めないは別といたしまして、締結されました吉田さん自身にされましても、そういう趣旨でこの無制限なる要求を受諾するという意味で交換公文をかわされたわけではなかろうかと思います。そういう場合のことを私は伺つているわけです。そうなりますと、日本の方はいろいろな負担や義務を負わなければならないが、相手に対しましてはそれに対して何らそういう行動またはその範囲等について何らの発言権がないということでありますか。
  49. 下田武三

    下田政府委員 吉田・アチソン交換公文で国連軍駐留を認めておりますが、これは決して無制限と申しますか、兵数においても、またその軍隊行動範囲においても、無制限というわけではございません。彼らの行動国連の決議で発足するものでありますから、国連の決議を逸脱するような行動はできないことは当然でございますが、しかし兵数の問題につきましても、施設の問題につきましても、その行動の問題につきましても、これは日本と十分に協議してやつているのでありまして、この協定ができますれば、合同会議も正式に発足いたしまして、むしろ国連側から言わせれば非常に日本側の渋い態度に参つているくらいでありまして、決して無制限に日本負担を多くするような協力をする意思もまた義務もないわけでございます。
  50. 穗積七郎

    穗積委員 ですから伺つているわけです。そういう場合は一体どういう方法でその意思を表明されるのか。国連そのものに対して吉田・アチソンの交換公文というものがある。そういたしますと、このことによつて同時に国連そのものに対して一つの義務を負つている。国連もそれを了承していると解釈していいと思うのですが、そうでありますならば、アメリカだけでなくて国連軍そのものに対して、国連の軍事行動に対して協力するということですから、相手はすでに国連にも同時に移つているわけです。従つて国連軍そのものの日本に対する駐屯またはその兵数あるいは行動内容について、日本がこれは不適当なものである、あるいはまた適当以上に範囲を逸脱するものである、これは期間についても言つていいと思うのですが、そういう場合には国連に対してそのことを意見を述べて交渉する道が開けているかどうかということを伺つているわけです。その判断は別ですよ。それが適当であるか適当でないかは別として、適当でないと認めた場合のことを伺つているわけです。
  51. 下田武三

    下田政府委員 この協定の二十四条に、先ほど申しましたように朝鮮から撤退することにきめられたその日から九十日ということで、つまり朝鮮にいる目的がなくなれば、日本近傍でこれに支持を与えるという必要もないわけでありますから、まず期間の点でその目的の消滅と関連して日本駐留期限を……。
  52. 穗積七郎

    穗積委員 いや、期間決定に対して日本の意思は表明できるかということを聞いているわけです。期間決定したものを自動的に九十日以後に撤退するということでなくして、ここで朝鮮撤退するということを決定するその意思の決定に、日本の意思が加わり得るかということを聞いているわけです。
  53. 下田武三

    下田政府委員 その点につきましては、日本国連の加盟国ではございませんが、国連との直接交渉で国連軍の問題を処理しているのではございませんで、国連の決議に基きまして設置されました統一司令部日本側折衝いたしているのであります。この統一司令部を通じて日本側の希望なり要請なりは十分に達し得るわけであります。その具体的の現われはこの合同会議でございまして、合同会議でこの協定実施に関するあらゆる問題につきまして協議いたすことができるわけであります。
  54. 穗積七郎

    穗積委員 統一司令部なるものはアメリカ軍隊とは違い、アメリカ政府とは違うわけですね。アメリカが有力なる参加国として加わつておりますが、そうではないと思う。従つてこの場合におきます権利義務は国連が相手ではございませんか。
  55. 下田武三

    下田政府委員 国連自体が朝鮮における行動に関する限りの一切の指揮権を統一司令部というものに授けているのでございますから、国連からその権限を授けられました統一司令部日本政府折衝いたせばよろしいわけです。
  56. 穗積七郎

    穗積委員 私の申しますのはそうじゃないので、進駐いたしました軍隊行動来たはそれに対する権利義務、これは統一司令部と交渉すればいいのですが、統一司令部そのものの成立する以前である国連軍そのものの駐屯そのもの、またはその兵数等についてのことを私は言つているわけです。そうなりますと、何もアメリカに対して義務を負つたことが国連軍に対する義務ではないのであつて、そんなことは契約上成り立たぬことだと思うのです。従つて国連軍そのもののに対しても、国連軍そのものの進駐または兵量、期間、その行動の範囲、これらについて話合いをする。駐屯しました後の軍隊行動や範囲や施設等については、これは統一司令部と交渉するということになりましよう、それは合同会議を通じてということになるでしようが、そうなりますと、われわれはかつてに一方的に国連に対して義務だけ負つているということになつて、その義務に対する反対的なものとして、われわれの要求の意思を表明できないというのは、これは独立外交としてはおかしなことではないかと思いますが、その間は一体どうなつているかということです。もう一歩前のことでありますから、ちよつと、誤解のないようにはつきりしておいていただきたい。
  57. 下田武三

    下田政府委員 これはもう実は歴史的事実に御説明させるほかないのでございますが、朝鮮の動乱が起りましたのがまだ日本の占領中のことでございまして、その動乱に対処するために国連共同行動をとろうということをきめましたのもまだ日本の占領中のことであります。従つて日本は独立国としてこの決定には参加し得なかつたことは、これは時期的に見て何ともいたし方がないことであります。そこで平和条約の第五条で、例の国連行動に対してあらゆる援助を与えなければならぬという国連憲章第二条の義務を日本が受諾いたしておるのでありますから、その当然の帰結といたしまして、国連が始めました朝鮮における行動に対して協力するという吉田・アチソン交換公文が生れ、その交換公文によつて駐留を認められました国連軍地位なり、待遇なりをきめようというのが今度の協定でございます。
  58. 穗積七郎

    穗積委員 ちよつと問題の焦点をはずされて御答弁になりますので、はなはだ遺憾でございます。しかしきようは申合せによつて時間も制限がありますので、はなはだ残念です。私ども吉田・アチソンの交換公文とか、本協定そのものの根本について疑問を持つておるわけですから、そこでお尋ねしているわけです。ですから時間を節約するために一問一答でお尋ねいたしますが、もし日本が現在朝鮮の戦局、並びにアジアの情勢を日本利益から判断をいたしまして、国連軍日本に対する駐屯に対して必要を認めないという判断をいたしました場合に、日本政府国連またはアメリカに対して国連軍の進駐をやめてもらう、撤退してもらうことを要求することができますかどうですか、それをまずお答えいただきたい。
  59. 下田武三

    下田政府委員 その点につきましては、日本の一国の政府考え方よりも、国連の意思が尊重されるということを前提として平和条約第五条の規定ができておりますので、日本がいくら朝鮮駐留することがもはや不必要であると言つておりましても、それはむろんほんとうにそう認めるならば、そういう意思を述べることはちよつともさしつかえないのでございますが、現実の問題としましては、これは国連というものに何が侵略であり、危険な事態であり、これに対処するために何をするかということの決定をまかしておるのでございますから、やはり国連の意思がプリヴエイルすることになると思います。
  60. 穗積七郎

    穗積委員 今の話は明確にしておきたいと思いますが、意思は合法的に述べられる。しかしその決定は国連の多数決によつてきめる、こういうことだと思うのです。  次にお尋ねしますが、日本に駐屯いたします英国、濠州その他の政府に対して個別に撤退を交渉することができますかどうか。
  61. 下田武三

    下田政府委員 これも政治的にはできないことはないかもしれませんが、そういうことを言つてみましても、これらの国々は国連の決議を受諾してそれに縛られておるのでございますから、日本からそういうことを個別的に言つてみましても、無効であろうと存じます。
  62. 穗積七郎

    穗積委員 私の聞いておるのは、そういう撤退を求めるような個別交捗をすることは、吉田・アチソン交換公文の違反になるかどうかということを聞いておるのです。政治的効果を聞いておるのではない。
  63. 下田武三

    下田政府委員 違反にはならないと思います。吉田・アチソン交換公文の出ます、つまり前提の問題になるわけであります。
  64. 穗積七郎

    穗積委員 次にお尋ねいたしますが、国連軍日本に駐屯いたしまして、日本側は多くの負担と義務を負つておるわけですが、国連側日本側に対してどういう負担と義務を負つておることになりますか。
  65. 下田武三

    下田政府委員 これは米軍と違いましで、国連軍はそれぞれ貧乏国の代表でありまして、地球の反対側から莫大な経費を国民の血税からわざわざとつて来ておるのでありまして、これはもう私どもヨーロツパにおりましてもよく見ておりますが、非常な負担であります。オランダのごとき小国が泣く泣く高い飛行機賃を出して兵隊を出しておるのでありまして、この負担はとうてい日本から想像できない大きな負担だろうと思います。
  66. 穗積七郎

    穗積委員 いや、日本に対する義務はどうなりますか。
  67. 下田武三

    下田政府委員 日本に対する直接の義務はございません。それは彼らは国連に対する、国連憲章からの義務に基いて行動しておるのでありまして、日本はこの国連憲章に基く行動によつて間接の安全と平和の維持という大きな効果を得ておるわけであります。
  68. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと、やはり日本国連軍関係は、われわれの方が一方的な負担であり、協力の義務を負つているだけであつて、向うは日本に対する直接の負担ではございません。アメリカ、英国の兵隊が来ていることは非常に負担だと言つておきますが、それは日本のためではなく、国連に対する英国側、アメリカ側の負担である。そんなことはわれわれが関知する必要はないし、そんなものでありがたがることはない。それによつて相殺されるということを宣伝されるのは、われわれありがた迷惑です。言い変れば日本に対する経済的な何らの負担も、または義務もないということだと思います。  次にお尋ねいたしますが、先ほど並木委員の御質問がありましたが、実は私もお尋ねしたいと思つておつたので、途中で大分不明確になつたように思いますので、念のためにもう一回お尋ねしております。国連軍基地、たとえば呉市に対しまして、北鮮軍または北鮮軍に対する義勇軍が、アジアにおける国連軍行動を封殺するためには、その後方基地である呉の国連軍基地を爆撃しなければならないという作戦判断に立ちましてその行動に出ましたときに、その場合に日本政府としてはその行動——あなたはないとおつしやいましたが、それは日本に対する攻撃だという判断ですべて判断して、その後いろいろなことをお考えになろうとしておりますが、そういうこともあるかもしれませんが、そういうことでない場合、日本を対象としないで、国連軍基地なるがゆえにこれを爆撃する、攻撃するということがあり得ると思うのです。その場合の関係を先ほどの並木委員質問に関連いたしまして、もう少しはつきりしておいていただきたいのです。私はそのことはあり得ると思うのです。
  69. 下田武三

    下田政府委員 ソ連のハバロフスクの放送や、中共の北京放送はまさに日本国民にそういう宣伝をいたしております。決して日本国民が敵ではないのだ、日本米軍基地や、国連軍基地を置かせていることがいけないのだということを言つて日本は敵でなくて、そこにおるやつがいかぬのだ、外国がいかぬのだ(「その通り」と呼ぶ者あり)という宣伝をやつておりますが、しかしこれは非常な欺瞞でありまして、過去の歴史がその虚偽であることを証明しております。   〔「その通り」と呼ぶ者あり〕
  70. 穗積七郎

    穗積委員 いや、そういう政治的判断を聞いておるのではない。そういうことでなく、そういうことがあつた場合を聞いておる。
  71. 下田武三

    下田政府委員 法律的な問題としてお答えいたします。沖繩は行政、司法、立法の三権を米軍が行使しておりますから、潜在的主権が日本にありといたしましても、沖繩に対する攻撃に対しては、日本はこれは無関心と申しますか、法律的にはどうということはただちに起らないと思います。しかし日本の意思に基いて発した日本におる米軍なり、国連軍基地に対する攻撃は、これはやはり日本の主権下にある一つの場所に対する攻撃でありまして、当然日本としては無関心たり得ない問題であると思います。
  72. 穗積七郎

    穗積委員 無関心たり得ないというような漠然たる話でなく、先刻並木委員質問された通り、それは日本に対する領土侵略と認められるのか、その防衛行動に対して日本国連軍に対して協力の軍事的義務を負うのかどうかというかとをお尋ねしておるのです。
  73. 下田武三

    下田政府委員 そこがいわゆる基地と租界の違う点でございまして、外国に与えてしまいました租界であるとしましたならば、それはおれの領分ではないから、そこに何が起ろうと知つたことじやないと言うことができますけれども、基地はあくまで租界ではないのでありまして、れつきとした日本の領土であります。でありますから、これに対する攻撃は、やはり日本に対する攻撃とみなさざるを得ません。
  74. 穗積七郎

    穗積委員 すべて向う側がその目的、方針を明らかにして、国連軍基地なるがゆえに遺憾ながら攻撃するということを宣明し、事実客観的にもそういう判断がなされる場合におきましても、政府はそれはすべて日本に対する——それもあるかもしれぬが、その行為は同時に日本に対する領土侵略だ、直接侵略だとお認めになるのでございますか、もう一ぺんはつきりしておいていただきたい。
  75. 下田武三

    下田政府委員 米軍国連軍に貸しておる基地は、米軍は面接に、国連軍は間接にやはり日本を含む極東の平和と安全の保持のために貸しておるのでありまして、むしろその点からいいますと、日本にとつての重要性は、日本自身の基地とかわりないと少くとも私は思います。従いまして外国軍に貸しておる基地に対する攻撃は、やはりひとしく日本自身の領土に対する攻撃と同一視すべきものだと思います。
  76. 穗積七郎

    穗積委員 そういう解釈はどこを根拠にしてなされるのか知りませんが、われわれはかつてな解釈だと思うのです。日本は憲法によりまして無防備であり、平和主義でございますから、いわば中立で、一方の側に立ちて戦闘に参加するということはあり得ない、ソ連に対しても敵ではないとともにアメリカに対しても敵ではない、こういうことだと思うのです。従つて向う側も日本に対する攻撃ではないと言つている。そうなりますと、日本がそういうカムフラージユをしながら、実際はどんどん一方の側の軍事行動協力しておる、そしてその戦力を増強させておるということになれば、やる方はやつておいて、攻撃力はこつちはどんどん増しておいて、そうしてこちら側はおれは戦争をしない、向う側からは宣戦布告はあり得ないということになるとどういうことになりますか。その間のことが国際法的に少しおかしくなりますが、憲法との関係でどういう解釈でそういうことをおつしやるのか、その間をちよつと説明していただきたい。
  77. 下田武三

    下田政府委員 一国の領土に対する直接の攻撃は最も明白な侵略でありまして、そのような侵略に対して自衛権を行使することは当然でございまして、憲法は国家の基本的権利としてそれを認めておると思います。
  78. 穗積七郎

    穗積委員 攻撃するとは向うは言つておらぬのです。
  79. 下田武三

    下田政府委員 言わなくてもそれは詭弁でございまして、そういう詭弁をまともに受けて、自国の領土をまざまざ攻撃にさらすということはとうていできないことであります。
  80. 穗積七郎

    穗積委員 はなはだどうもでたらめな解釈で、かつてにけんかを売つておるような感じを持つので、私はいずれまたこの協定の審議のときに外務大臣もお見えでありましようから、その間のことはあらためてお尋ねしたいと思います。その趣旨はひとつ局長から大臣にもお伝えください。  時間がありませんから、あとちよつとお尋ねいたします。これは調達庁にお尋ねすべきことだと思いますが、従来の国連軍日本労務者との労務関係でございます。これが今度この協定によりまして間接雇用になる。それで日本労務者日本政府労務契約を結くようなかっこうになるわけですが、従来のやつが雇用、解雇並びに労働条件等につきまして非常に無協定状態であり、しかも一方的に日本の労働者が泣寝入りさせられており、しかも契約の性質から行きましても、当然いろいろな請求権もまた未解決のものがあるやに伺つております。今度これを米軍の場合と同じように切りかえて、基本的な契約を結ばれる御方針だということですが、そうなりますと従来の未解決の問題、不合理な問題に対しては、どういう御処理をなさるおつもりでございますか、この際お尋ねいたしておきたいと思います。
  81. 堀井啓治

    堀井政府委員 日米間の基本契約と同様の契約国連軍関係につきましてもいたしますと同時に、すべての取扱い、たとえば給与その他につきましても、一切を日米間の労務者と同じようにいたして行きたいと考えております。
  82. 穗積七郎

    穗積委員 従来のものはどういうふうにされるか、つまり大体の予定は六月一日からというふうに漏れ承つておりますが、それ以前の非常に不合理な、あるいは不当な日本労務者側のいろいろな被害、これを一体どういうふうに処理されるつもりか、または当然のあれとして契約上認められておつた請求権すら必ずしもその通り実行されていない、そういう未解決の問題があろうと思いますが、その未解決の問題はどうされるおつもりか、あるいは遡及して新しくできた協定と同様にお取扱いになるつもりなのかどうされるのか。勤続期間あるいは請求権等も遡及してやるか、あるいはそれは別にしてとにかく合理的に処理されるつもりなのか、政府の御方針を伺つておきたい。
  83. 堀井啓治

    堀井政府委員 国連軍から切りかえました以後の事案につきましては、ただいま申し上げました通りでございますが、それ以前の事案につきましては、これは時代が直接雇用の状態にあつたのでありまして、政府といたしまして援助はいたしますが、切りかえられた後と同様に扱うということは困難かと考えます。
  84. 上塚司

    ○上塚委員長 穗積君、もう時間が来ましたから……。
  85. 穗積七郎

    穗積委員 もうこれで終りますが、四十分まで私の時間があるのですよ。ちよつとお尋ねしますが、その新しくできる基本契約は遡及はしない、遡及せしめないで締結後に効力を発するようにしたい。そこでお尋ねしたいのは遡及しないなら前に残つております未解決のもの、また不当な被害がありますが、それはこの際政府があつせんをされて——契約上は政府関係ありませんが、日本人民の利益でございますから政府がその利益を代表し、またはあつせんをされる、どちらの形でもけつこうだが、国連軍側にそういうことをちやんと請求して正当に処理されるおつもりかどうか、あるいはあとはかつてに処理しろと捨子にされるつもりか、あるいは第三の場合はそうでなくて、向うと交渉してらちが明がなかつた、向うが応じないということになつた場合に、日本政府が肩がわりしてそれを補償してやるのか、その三つのうちのどれで行かれるのか。遡及しないならしないで、その三つの方法があとに残ると思いますが、それはどういう方法で処理されるおつもりか伺つておきたいと思います。
  86. 堀井啓治

    堀井政府委員 政府が肩がわりする等の措置でなくて、やはりあつせんをする限界におらざるを得ないと考えております。
  87. 上塚司

    ○上塚委員長 次は河野密君。
  88. 河野密

    ○河野(密)委員 私はごく簡単に二、三の点で伺いたいと思いますが、主として労務関係の問題をお尋ねするのです。その前に先ほど来問題になつておりましたが、念のためにお尋ねいたします。先ほど来質疑応答を承つておりまして、非常に疑問が出るのであります。それと申しますのは、国連軍協定の正確の問題に関することであります。私の理解するところによれば、外国に軍隊駐留するかということは、今度の大戦以来起つた新しい事実であつて、その新しい国際法の傾向に応じて、外国に駐留する軍隊地位の問題を定めるというのが日米行政協定であり、国連協定であると存ずるのであります。そこでたとえばNATOの場合におきましては、基本条約があり、その条約に基いて他国の軍隊駐留をするその地位を定める、こういうのでありますが、わが国の国連軍の場合においては、これは基本の条約というものがきわめて不明確であり、吉田・アチソン交換公文というようなものになるのであります。根本的なものを定めるものがそういう吉田・アチソン交換公文というようなものであつて軍隊地位を定める、言いかえるならば、普通治外法権とかいつておりますそういう問題だけを定めるための協定を国会の承認を求めるということ自体が、私は非常な矛盾であろうと思うのであります。何ゆえに国連軍日本駐留するのであるか、何の目的で駐留するのであるか、この基本的な問題はまず国会の承認を求めて定むべきものである、こういうふうに私は考えるのでありますが、この点についての見解を承りたいと思います。これは先ほど来問題になつておる国連軍基地に対する爆撃とかいうような問題と関連して、この基地に対する攻撃がかりにあつた場合において、国民は、知らざる間に、日本の国に対する侵略なりと規定されるということを甘受しなければならない。国連軍駐留せしめた基本は一体どこにあるのか。それは何ら国会の承認を求めておらぬじやないかということになると私は思うのであります。これは非常に重大な矛盾であると思いますが、これを外務当局はどう考えておられるか、私はこの点はきわめて重大だと思うので御説明願いたいと思います。
  89. 下田武三

    下田政府委員 御指摘の点につきましてはこういうように考えておるのでございます。仰せのように外国に軍隊がずいぶん出るようになつたのは、第二次大戦後の一つの特徴でございます。従いまして国際法にもいろいろな問題を提供いたしましたが、これは結局いかなる国も一国では自国の安全を保持し得ないということが、第二次大戦の経験で明らかになりましたためにとられました国連憲章を中心とする集団安全保障によつて自国の安全を維持しようという考えから、すべてが発足いたしておると思うのでございます。  そこで日本の場合はどうかと申しますと、先ほど申し上げましたように、平和条約におきまして国連憲章の集団安全保障の根本規定の一つである第二条の原則を、日本は引受けておるわけであります。つまり侵略者側に対してはいかなる援助も与えないとともに、侵略者側に対抗する勢力にはあらゆる援助を与えるという国連憲章二条の原則を平和条約第五条で引受けておるわけであります。この平和条約につきましては、国会の御承認を経ておりますし、平和条約と同時に行いました吉田・アチソン交換公文につきましても、国会の御承認を得ております。でございますから、今度の国連軍協定の基本条約は何かという御質問に対しましては、平和条約及び吉田・アチソン交換公文が基本条約であるとお答えいたすほかないのであります。
  90. 河野密

    ○河野(密)委員 今のお話で平和条約第五条というものがそこまでのことを言つておるとするならば、これは憲法との関係においてさらに検討しなければならない問題じなやいかと私は思うのであります。しかし私はそうは考えないのであります。国連憲章の第二条を承認するということは一般的な問題であつて、それに基いてどこの国の軍隊あるいは国連軍がいかなる行動をとるときに、その軍隊に対してどういう支持を与えるかということは、個々の条約なり協定なりによつて締結されるべきものであると思うのであります。それなしにただ駐留することを前提として、その軍隊地位だけをきめるという協定を国会の承認を求めるということ自身に、私は非常な矛盾があると思うのであります。これは言いかえるならば、すでに国連軍というものがその占領当時におけるいわゆる進駐軍の変形であるということを、ずるずるべつたりにやつて来たことが非常な誤りじやないか。けじめをつけなかつたことが誤りじやなかつたか。日本の占領下と独立後とのけじめをつけなかつたことが一つの大きな点になつておる。こういうふうに考えられるのであります。この点はさらに私はもう少し検討をしなければ、今の外務省の御説明では納得することができないのであります。  次にお尋ねを申したいのは、もし外務省の解釈するように、平和条約第五条によつて国連憲章第二条の義務を負うのである、それに応じて国連軍日本に駐屯せしめ、あらゆる支持を与える、こういうことが外務省の御説明通りであるとするならば、私はこの二十六日から開かれるジユネーヴの国際会議に、日本は当然出席を要求する権利がある。しかるに日本政府はこれに対して、アジアの平和を論議する国際会議に出席する権利はないといつて頭からきめてかかる、この態度にも非常な矛盾があると思います。これは条約局長にお尋ねするのは無理かもしれませんけれども、なぜ日本政府はジユネーヴの国際会議にせめてオブザーヴアーとしてなりとも出席する権利を要求しないのか、これは日本政府の屈辱的な態度であると思いますが、いかがでありますか。
  91. 下田武三

    下田政府委員 この点につきましては、ジユネーヴ会議は御承知のように、朝鮮休戦会議の延長でございまして、もともと休戦会議の当時国というのは、朝鮮における敵対行動に従事した双方の当事国が参加するということで、日本はなるほどうしろで支持を与えることを許してはおりますが、直接の敵対行動の当事国でないので、ジユネーヴ会議の前身である休戦会議に、すでに法律上参加し得る地位になかつたわけであります。その継続のジユネーヴ会議にも従つて法律上の権利として参加する地位にはないわけであります。しかし日本政府としては、もちろん非常な重要な関心を持つておるのでありまして、その成行きにつきましては、現地出先機関もおりますので、適宜な方法で会議をフオローすることに相なるであろうと思います。
  92. 河野密

    ○河野(密)委員 私はその点についても外務省の態度というものがきわめて屈辱的と申しましようか、また卑屈であつて、とうてい納得することができないのであります。これはなお別の機会にお尋ねしたいと思います。  次に少し事務的なことになりますが、この協定の当時国のことについては第一条に書いてございますが、相手国というのはこれに署名をした国のみに限られると解釈してよろしいのですか。それともその相手国というものは、自動的に朝鮮に対する国連行動に参加した国というものは、なおこの協定に参加し得る資格を持つものでありますか。
  93. 下田武三

    下田政府委員 現在朝鮮の軍事行動に参加している国はたくさんございますが、この協定に署名して、署名だけで効力を発生し得る国は署名、また受諾を条件として署名しました国につきましては、その受諾のあつたときに効力を発生するわけでありますが、いずれにしましてもこの協定に参加した国だけしかこの協定上の権利、特典、地位に均霑し得ないわけでございます。
  94. 河野密

    ○河野(密)委員 そこで今度はこまかいことを少しお尋ねします。労務関係ですが、現在の国連軍に雇用されておる日本側労務者の数はどのくらいになつておりますか。
  95. 近藤浩

    ○近藤説明員 約一万二千名であります。
  96. 河野密

    ○河野(密)委員 どことどこですか。
  97. 近藤浩

    ○近藤説明員 現在は呉、広地区、それから山口県の岩国に約九百名、東京の目黒エビス・キヤンプに干名おります。それを全部合せまして約一万二千名おります。
  98. 河野密

    ○河野(密)委員 この労務関係の人々は、大体において当分の間この数はずつと増減なしに行く見込みでありますか、それとも急速に減るというような関係に立つのでございますか。
  99. 堀井啓治

    堀井政府委員 今まで予備交渉的な段階にございますが、国連側として現在私どものキヤツチしておる範囲では、減少するようには聞いておりません。但し日米労務基本契約と同様な契約によりまして、事態がわが方から申しますれば改善されますれば、予算的に相当従来よりも大きくなることが予想されますので、わが方から推測するのはいかがかと思いますが、私どもの交渉の態度といたしましては、できるだけ減少をされないで事態の改善されることを希望いたしております。
  100. 河野密

    ○河野(密)委員 たいへん苦しそうな御答弁ですけれども、率直に申しますと、現在の国連軍に従事しておる労務者の待遇が、在日米軍に雇用されておる労務者よりも悪い。その待遇が日米労務基本契約に基くような線で改善されると予算が非常に膨脹するから、その膨脹した予算に応じて、あるいは人員が減るかもしれない、こういうふうに考えておられるのですが、それらの点は、待遇が改善されても、現在の人員は減らさないという線において調達庁では交渉になつておられるのであるか、その点を明確にひとつ御答弁願いたいと思います。
  101. 堀井啓治

    堀井政府委員 まだその辺のところは、もちろん私どもキヤツチいたしておりませんか、いろいろの場合といたしまして、そういうことも考えられるということを申し上げたのです。
  102. 河野密

    ○河野(密)委員 私は調達庁に希望しておくのですが、そこらのところは十分考えていただかないと、いろいろな問題が起ると思います。  ついでにお尋ねいたしますが、現在在日米軍に雇用されておる労務者はどういう数字になつておりますか。同時にその在日米軍に雇用されておる労務者の趨勢であります。至るところで今解雇のことで問題を起しておりますが、それらの見通しはどうなつておりますか。これが急速にそういう変動を生ずるということになりますと、非常な不安動揺を起すと思うのですが、それらについて調連庁としての見通し並びにそれに対処する方針をひとつ明確にしておいていただきたいと思います。
  103. 堀井啓治

    堀井政府委員 ただいま米軍に雇用されております労務者数は約十七万五千人でございます。御指摘のように予算上等の問題から人員を減少せしめる傾向が多少看取されるところがあります。それらに対しましては、できるだけ配置転換あるいは軍との摩擦を起さないような措置をとることによりまして、労務者諸君をカバーするよう適宜処置をとつておる現状であります。
  104. 河野密

    ○河野(密)委員 私の承るところによりますと、アメリカの予算は七月一日から一九五五年度の予算実施になると思うのですが、そういうことになりましたら、一九五五年度の予算がどうなるかということは、しばらくおくといたしましても、少くとも新しい予算が決定に至るまでは現状には何らの変更がないものである、現在の予算の実行される範囲内においては、かりに労務基本契約実施されても、また日本側に移管された結果、待遇が改善されたことになつたとしても、人数その他において大いなる変動はないものである、こういうふうに調達庁は十分見通しておられると思うのですが、そこらのところについての見通しと、それから調達庁のそれに対処する方針をひとつ承つておきたい。
  105. 堀井啓治

    堀井政府委員 御指摘の点につきましては、私どもが従来心配をいたしておるところでございまして、自然減もございますし、従つてかりに減らすといたしましても、きわめて摩擦の起らないように、出先はもちろん、中央におきましてもできるだけ摩擦の起らないような方途を講ずることを、常に交渉の基本的な考え方といたしております。
  106. 河野密

    ○河野(密)委員 重ねて希望も一緒に申し上げますが、少くとも六月三十日までは現状を動かさないものである、こういうことは私は日本側としても主張してよろしいのじやないかと思う。年度がかわれば新しい予算関係が生ずることも十分考えられますけれども、しかし年度の改まらざる限りにおいては、現状を動かさないものである、日本側としてもそういう線でアメリカと交渉し得るのだ、これだけの線は調達庁として確約されるべき十分の根拠があると思うのであります。またそういう線で交渉なさつておるとは思いますけれども、その点をもう少し明確にしておいていただきたいと思います。
  107. 堀井啓治

    堀井政府委員 現在私どもの見通しでは、大した異動はないというふうに見込んでおります。また御指摘のような点は、申し上げるまでもなく私も交渉の際の基本的態度でございます。また一方見通しから申しましても、おそらく異動はないものと推測いたしております。
  108. 河野密

    ○河野(密)委員 私はこれで終ります。
  109. 上塚司

    ○上塚委員長 午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時一分休憩      ————◇—————    午後二時五十分開議
  110. 上塚司

    ○上塚委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  この際参考人招致の件についてお諮りいたします。目下本委員会において審議いたしております秘密保護法案について、来る四月二十四日に新聞界その他の各界より参考人を招致いたし、その意見聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  111. 上塚司

    ○上塚委員長 御異議がなければさよう決定いたします。  なお参考人の選定については、委員長及び理事に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  112. 上塚司

    ○上塚委員長 御異議がなければさよう決定いたします。     —————————————
  113. 上塚司

    ○上塚委員長 次に通商に関する日本国とカナダとの間の協定の批准について承認を求めるの件を議題といたします。質疑を許します。並木芳雄君。
  114. 並木芳雄

    ○並木委員 日米友好通商航海条約と、このカナダとの協定との間の相違について、おもなる点をあげていただきたいのであります。日米の方には投資とか、事業活動などの点にまで触れて相当広範囲にわたつておると思いますが、カナダの場合には比較的簡単な協定なつておるようであります。まずお尋ねいたします。   〔委員長退席、野田委員長代理着   席〕
  115. 永井三樹三

    ○永井政府委員 お答えいたします。日米友好通商航海条約は、広い意味の通商航海関係を全部規律するものでありまして、従つて入国、事業活動から貿易、航海全般にわたつて規定を設けております。このたびの日本とカナダとの条約は、そのうちの貿易、特に関税に関する点だけを抜き出して協定したものであります。その点がまず第一の相違であります。これは関税上は日本とカナダとの間に一番問題がありましたために、その問題だけを取上げて、アメリカとの間に行いましたような航海、入国、事業活動その他を含めたものを将来締結することがあれば、これを含めて同様な形の通商航海条約ができると私どもは考えております。従いまして日本とアメリカとの通商航海条約は、パーマネントな日本とアメリカとの経済関係を規律したものでありますが、そのために有効期限も十箇年、その後もさらに延長されることになつております。日本とカナダのこのたびの条約は、有効期限一箇年として非常に短期の条約なつております。これはこの条約内容をごらんくださればわかります通り、貿易、特に輸出入制限というような具体的な点をきめておりますので、時々刻々変動して行く貿易状況に応ずるためにこういう短期の協定なつておるわけであります。おもな相違はそういうところにあると考えております。
  116. 並木芳雄

    ○並木委員 最恵国待遇に関する規定の中で、「カナダが英連邦の構成国及びアイルランド共和国に与える排他的利益については、適用しない。」ということになつております。これはどういうわけですか。
  117. 永井三樹三

    ○永井政府委員 お答えいたします。これは英連邦諸国はお互いに特恵関税を持つております。すなわちカナダで申しますと、条約のない国に適用する関税が一般関税と申しますか、そういうのと、それからさらに外国に対して最恵国待遇を持つている国に適用する最恵国税、それよりさらに物品によつては区々きめてありますのは、英連邦特恵関税であります。こういう三本建になつております。この英連邦特恵関税というのは、ガツトでも承認されましたように、一般最恵国待遇の例外としてその相互間だけに適用されるということになつておりますので、今度の日本とカナダとの協定におきましても最恵国待遇が適用され、従つて特恵関税は適用されないということを明らかにしたわけであります。
  118. 並木芳雄

    ○並木委員 将来の問題として英連邦の構成国やアイルランドと同じように扱われる見通しはございませんか。
  119. 永井三樹三

    ○永井政府委員 目下のところ、ガツトにおいても英連邦の特恵関税は将来増加するということは、現在のガツトでもとめられておりますので、特恵が広くなるということはないのでありますが、これが近い将来において全部廃止されるということはなかろうとわれわれは考えております。
  120. 並木芳雄

    ○並木委員 説明書によりますと、カナダはこのたびこの協定を結ぶことに賛成をしましたけれども、他の英連邦諸国とは態度を異にしておるという説明がついております。そこで他の英連邦諸国との間の通商協定についての見通しはどういうふうになつておりますか、それとともに今後続いてそれらの国々と通商協定を結んで行く予定についてこの際承つておきたいと思います。
  121. 永井三樹三

    ○永井政府委員 私どもは平和条約実施されまして、同時にすぐにでも各国と通商航海条約を結びたいという希望を持つておりまして、今日まで努力して参つておるのでありますが、現在までのところ、英連邦の諸国はすべて英国初め、ただちに日本とそういう恒久的な経済関係を規律するような通商航海条約を結ぶという意向を示すまでに至つておりません。ただその中でカナダだけが日本とこういう条約を結ぶことに同意をしたわけであります。この点が説明書は書いてありますように、カナダとの条約英連邦諸国との間に行われた最初の条約でありますために、他の英連邦諸国と態度を異にしておる。こういうふうに書いてある次第でございます。  御質問の第二の今後の予定の問題でございますが、私どもといたしましては、イギリスを初め、できるだけ早く日本と通商航海条約を結びたいと考えております。そうしてイギリス以外、あるいは英連邦諸国でこれに応ずる国があればいつでも交渉を開始する考えでありますが、どの国から交渉するという予定はまだ立つておりません。
  122. 並木芳雄

    ○並木委員 カナダが特に日本に対して関係がよろしいということについては何か特別の理由がありますか。
  123. 永井三樹三

    ○永井政府委員 これは想像でございますが、カナダと日本との貿易関係を見ますと、日本はカナダにとつては第三番目の顧客でございまして、カナダが日本との貿易関係を重視するという点において、特に態度が他の英連邦諸国と違つておるのじやないか。第二に、英連邦諸国の内部におきましてカナダはいわゆるスターリングの地域に入つておりませんので、むしろアメリカ・ドルと近い関係にありますので、そういうカナダの経済の特質から、他の英連邦諸国とおのずからかわつた考え方をして、今日の協定に応じたのではないかと想像いたしております。
  124. 並木芳雄

    ○並木委員 貿易関係で、日本が第三のお得意であるということでありますが、この協定が結ばれて、これからも貿易はさらに伸びると思います。また伸びなければ協定を結ぶ意味もないわけでありますが、今後の貿易の伸びぐあいについて、外務省としても政府としても大体の見込みはついておるのではないかと思います。この際それを明らかにしていただきたいと思います。
  125. 永井三樹三

    ○永井政府委員 お答えいたします。カナダからわが国が輸入しておりますのは、小麦を初めといたしまして、大麦それからパルプその他の欠くことのできない食糧または原料でございますまして、現在までの日本とカナダとの貿易関係を、昨年を例にとつて見ますと、輸入が約一億ドルに対し、輸出が千五百万ドル程度にとどまつております。輸入につきましては、この協定によつて特に目立つてふえるということは必ずしも予想されません。それは現在まですでに必要なだけカナダから買つているわけであります。もちろんある品目について無差別待遇を与えておりますますので、国際的に見て非常にカナダの産物が安い、良質であるということでありますれば、日本に輸入が増加する余地もあります。一方輸出でございますが、これは私どもの今度の協定を急いだ、一番重要視した理由でございます。現在まで日本の輸出が千五百万ドル程度にしか達しなかつたのは、主として日本の輸出する物が製造品でございまして綿布並びに雑貨、あるいは若干の鉄鋼産品でありますが、今まで条約がありませんために、カナダにおいて最高関税がかけられておつたという点が非常に輸出の障害となつておつたと思うのでありますが、このたびの条約によりまして、これが一般最恵国関税をかけられ、すなわちガツト税率がかけられることになりまして、カナダの市場においてわが国の産品が他の諸外国と競争し得る状況になりますので、その結果輸出の増進はかなり見るべきものがあろうと想像いたしております。もつとも今後の予想を数字で表わすということは、日本の今後の輸出品の価格その他に関連いたしまして、必ずしも容易じやありませんけれども、現在のところ輸出品の価格があまりに割高とならないといたしますれば、今の千五百万ドルの輸出が三千五百万ドルになることは、おそらく容易であろうと私どもは考えております。
  126. 並木芳雄

    ○並木委員 交換公文についてお尋ねいたします。三つの交換公文がありますが、そのうちの第二の関税評価に関する交換公文、これは「事情の予見されない発展と前記の協定に基いてカナダが負う義務の効果とにより、いずれかの産品が、カナダの領域における同様の産品又は直接の競争関係にある産品の国内生産者に重大な損害を与えるような又は与える虞があるような増加した数量及びそのような条件で、カナダの領域に輸入されるときは、カナダは、その産品については、その損害を防止し、又は救済するため必要な限度で及び必要な期間、普通の及び特別の関税上の価額を定めることができる。」こういうのと、あと2、3とあります。この趣旨を説明していだきたい。そしてこれはどのように日本の商品について影響を及ぼして来るか。これがあるためにただいま局長からの答弁にあつた明るい見通しについても、暗い影がさすのではないかと心配もされますので、お尋ねをいたします。
  127. 永井三樹三

    ○永井政府委員 お答えいたします。これはカナダの関税法に規定がございまして、一種のダンピングを防遏する規定から出て来た交換公文であります。カナダにおきましては、外国品の輸入が激増した結果、カナダの産品に損害を与えるというような場合には、その外国品の価格の査定を高くいたしまして、それに税金をかける、すなわち間接の方法によつて関税が引上げられるようなダンピング防遏の法規があるのであります。これは一般の最恵国待遇に対する一種の例外的規定として、これは、どこまでも自由にそういうものが課せられるような——自由と申しますと語弊がございますが、ある特定の条件のもとにおいては、そういう法規を発動することが例になつているわけであります。この点につきましては、本条約の本文におきまして最恵国待遇が定めてありますが、念のためにカナダのダンピング課税の法規を発動し得ることを明らかにしたいというカナダの希望から出て来たわけであります。そこでこの交換公文におきましては、どうせ何ら言及しないでおいてもそういう法規が発動されるという事態でありますので、それをさらに条件を明確にいたしまして、「事情の予見されない発展と前記の協定に基いてカナダが負う義務の効果とにより、」という、すなわち現在予見されない事情ができて来た場合に、次のような条件のときに発動してよろしいというふうな条件が一種加つたわけであります。これはガツトの第十九条にありますエスケープ・クローズと申しますか、関税を下げた結果予見されない事態が生じて、当該国の産業が重大な損害を与えられるような場合には、関税を下げたのを撤回するという規定がガツトの第十九条にあります。それの条件、文句をここに取上げて、そこで第二、第三項におきましては、その場合に関税の評価をかえるような場合にも、カナダとしては日本から入る物の価格ばかりではなくて、第三国から入る同様な産品の価格も考慮に入れてきめるということ、それからさらにこういう措置をとる場合には日本側と早目に協議をする、これは第三項でありますが、こういう第二、第三の条項をつけまして交換公文ができました結果、カナダが自由に、自分の恣意をもつてこの規定を発動するという可能性を減少いたしまして、わが国と協議のできるような建前にいたして本協定をいたしたのであります。
  128. 並木芳雄

    ○並木委員 これと同様のことを日本でもやり得るという一筆を入れる必要はなかつたのですか。形からいうと何ですか対等でなく、不平等のようにも思われるのですが、その必要はなかつたかどうか。
  129. 永井三樹三

    ○永井政府委員 日本の関税定率法におきましては、こういう制度がとられておらないのであります。日本では端的に、一般的の場合に自由に関税をかけてよろしいということになつておりますから、その点におきましては、この文面においてはカナダの法規だけが適用があるようでございますが、このバツク・グラウンドにおきましては、お互いにダンピング法規を発動することは、最恵国待遇とは関連ないのだということがあります。従つてこの交換公文では、むしろカナダのダンピング法規発動を一種の条件をつけて縛つたかっこうになつております。日本についてここに入れなかつたのは、日本のダンピング法規をもし発動する場合には、こういう束縛を受けない方が有利であるという見地からであつたわけであります。
  130. 並木芳雄

    ○並木委員 日本の商品がはたしてダンピングされているかどうかという判定をするのは、どういうふうにしてなされるでしようか。
  131. 永井三樹三

    ○永井政府委員 この場合には重要な指標になるのが、ガツトの第十九条の前文をとりました結果、ガツトの十九条のように、予想されない輸入が行われ、輸入の増加がはげしくあり、かつそれに競争するところのカナダの国内生産に重大な損害を与える、または与えるおそれがあるというところが、ダンピング法規の発動の条件になつております。これの判断は、何もなければもちろんカナダ政府が自由に判断し発動するわけでありますが、これによつてわが国と協議をするということになつておりますので、個々別々の場合にわが国としては発言する機会があるわけでございます。
  132. 並木芳雄

    ○並木委員 それではもう一つの交換公文についてお尋ねをいたします。それは、「本日署名された通商に関する日本国とカナダとの間の協定に関し、一時的に第三条1及び2の規定によらないことを認める同条3の規定にかかわらず、日本国政府が、次の九商品に対しては、日本国政府とカナダ政府との間で合意される例外を除く外、無条件の非差別的待遇を与えることを約束す旨るを述べる光栄を有します。」とあつて、九品目についての非差別的待遇に関する交換公文が記載されてあります。その品物は、小麦、大麦、木材パルプ、亜麻仁種子、銅地金、鉛地金、亜鉛地金、合成樹脂、粉乳の九つが書いてあるのです。ここにこういう規定を設けましたのはどういうわけなのかちよつとわれわれにはわからないのですが、それで、まずどういうわけでこれが設けられたか説明してもらいたい。
  133. 永井三樹三

    ○永井政府委員 これは非常にまわりまわつて書いてありますのでおわかりにくいかと思いますが、これは本文の第三条の第三項の例外であるということを明らかにしたわけであります。第三条は、初めに第一項、第二項におきまして、原則として輸出または輸入の制限をしないという一般の原則規定が書いてございます。これはガツトその他におけるのと同じ趣旨の規定でございますが、その例外として、国際収支上の困難がある場合、すなわち国際収支を擁護するために必要のある場合には、輸入制限において差別待遇をしてよろしいという規定が第三項であります。これも現行のガツトの規定の趣旨にのつとつた規定であります。この第三項の輸入制限における差別待遇をしてよろしいという規定に対する例外として、この交換公文におきまして、この九品目だけは差別待遇しない。すなわち、現在日本の貿易、為替管理から申しますと、ドル地域、ポンド地域、オープン・アカウント地域といふうに、三つに大さく区わけして、それぞれ輸入が規制されております。従つて、その地域相互の間では差別があるわけであります。あるいは、ドル地域から輸入が許されなくて、ポンド地域から輸入が許されるというような差別が行われておりますが、この九品目につきましては、今後各地域を通じて差別をしない、すなわち、価格、品質、その他の取引条件において最も有利なところから日本は買うという政策をこの交換公文において表わしたわけであります。従つて具体的には、この九品目につきましては、政府は、たとえばカナダから買わずにある別な国から買うというような指示をしないで、一切商業的考慮によつて輸入するということをきめたわけであります。
  134. 並木芳雄

    ○並木委員 今まではそういう他の考慮が払われて、輸入についてはこれらの品目にかなりでこぼこがあつたということが言えるのですか。どんなふうに行われて来たか、その実情について伺いたい。
  135. 永井三樹三

    ○永井政府委員 今申しました通り、原則として、日本の輸入制限の方法は、通貨の地域によつて差異を設けておりました。従つて、たとえば昨年来、ドル地域からの輸入はやや制限して、これを累次オープン・アカウント地域の方からの輸入に振りかえる、輸入を認めるというようなことが行われておりました。一々の実例と申しますと、これは日本のすべての為替予算をごらんくださればわかると思いますが、今までの方式によりますと、かりにアメリカの産品が良質で安いといたしましても、為替予算がドルを幾らと制限しておりまして、それを食つてしまいますと、あとはいやでもオープン・アカウントまたはポンドから輸入しなければならぬというようなふうに数量的に制限されて来る、そのことをでこぼこがあるというふうに申し上げた次第であります。
  136. 並木芳雄

    ○並木委員 実際問題として、しからばカナダはこれによつて有利になるのですか、それとも、品物によつては不利になるものも具体的にはあるのですか。
  137. 永井三樹三

    ○永井政府委員 実際問題といたしますと、そのときどきの市況の変動によるわけでありまして、たとえば昨年来、大体の傾向といたしまして、小麦などはカナダがほかの地域に比べて比較的割安であつたという状況がございますが、現在はアメリカの小麦もカナダの小麦もほとんど差異がございません。そういうふうに一概に申せないのです。ただ、伝統的には、カナダの産物は世界的に見ても比較的割安であつたということだけは申せるかと思います。従つて、純粋に商業的な考慮に基けば、カナダ政府といたしましては、自分の国の産物が他の国に負けないという自信をおそらく持つておると思います。もちろん、同じ小麦でありましても、カナダの小麦とその他の小麦と用途が違いますので、日本の小麦は全部カナダの輸入で行くというわけには行きません。これは価格並びに品質によつて限度がありますのでそうは参りませんけれども、たとえば小麦についてはそういう事態であります。
  138. 並木芳雄

    ○並木委員 これはカナダの申出でそういうものが入つたのですか。
  139. 永井三樹三

    ○永井政府委員 これはカナダが非常に希望したところであります。大体カナダの考えはアメリカとほぼ同じでございまして、世界の貿易を自由にして行くべきである、これはそれぞれアメリカと同様に通貨の地位が強いからそういう主張をするのでありますが、元来カナダもアメリカも輸入制限という方法はとつておりません。単に関税で貿易を規制するという政策をとつております。その他の国々は現在のところむしろ貿易の規制を輸入制限によつてつておるという実情でございます。カナダはアメリカとともに、世界の貿易を拡大するためには、輸入制限を少しずつ減らすべきであるという主張は、ガツトにおきましても従来からしておるのであります。そういうカナダの抱懐するプリンシブルからも、こういう点を考えなければならぬのであります。ただ日本といたしましても従来のように日本の貿易全部が、輸入先の規制を加えられて、たとえば高い物資を使つて高く売りつけるということを全部やつておりましたならば、現在のようにだんだん貿易輸入の制限を減少しようという世界の態勢の中にあつて、非常に遅れるのみならず、かえつて日本の輸出品のコストを高くするというような点から、そういうプリンシプルは日本で実行できる限り少しずつでも実行することが、この際望ましいという考慮もありまして、両国の意見が一致したわけであります。
  140. 並木芳雄

    ○並木委員 それならば品目を特に九つに限定する根拠は薄弱なのじやないかと思うのです。一般論としてそういう規定を設けてもよかつたのではないかと思いますが、特に九品目に限つた理由をお聞きしたいのです。それからこの交換公文を設けることによつて、他のカナダと競争の立場に立つ国々、ちよつと考えるとアルゼンチンとか濠州、そういうような国でまずいことが起らないかどうかという点であります。
  141. 永井三樹三

    ○永井政府委員 通商政策としてはまさにお説の通りでありますが、実際問題として日本の外貨事情その他を見ますと、一挙にこういう理想的な政策を採用するということはあまりに危険が多いという点から、いわば少しずつならすと申しますか、少しずつ実験してみるという考えで品目を限ることになつたのであります。もちろんカナダも全部についてそういうことを向うがやつてくれればけつこうなのでありますけれども、日本の経済としてそういう試練に耐えることはおそらくできなかろうというので、特にカナダのインテレストのある品目で満足するという態度でございましたので、品目を限ることになつたわけでございます。この程度ならば日本の為替制度の崩壊の危険なくして実行し得るし、かつ日本経済のためにも有利であろうと考えた次第であります。  それから第二の、他の諸国についての御説明はまことにごもつともでありますが、ここに両国の間で合意される例外を除くほかというふうに書いてあります通り、現在どうしても輸出と組み合つて、多少高くても買うというようなコミツトメントを持つておりますものにつきましては、カナダと合意いたしましてこれを適用しないという了解を遂げておりますので、現在そういう危険はないと確信しております。
  142. 並木芳雄

    ○並木委員 カナダとの貿易は片貿易になつております。そこでカナダの方はこれを多としておるのでありますから、日本が必要とする外貨を手に入れるために、日本に対してクレジツトを設定する、こういうふうな話は今まで出ておらないでしようか。要するにわれわれはアメリカのみならず、カナダから金な借りてもいいわけなのですが、いわゆる外資の導入についてカナダに関する限りどのようになつておりますか、今後の見通しとともにお尋ねをしておきたいと思います。
  143. 永井三樹三

    ○永井政府委員 現在までのところ、カナダからの外資導入という点があまり表面に出ませんので、問題になつたことがあるとは聞いておりません。ただ最近カナダも農産物の輸出について、従来とは違つたある程度のクレジツト・キヤパシテイを考えておるというような情報はございますが、特に大規模な外資導入という案件は存在しておりません。ただ若干のカナダの事業と日本の事業との提携というようなものは、現在までごく小規模でございますが行われております。カナダの国籍を有する人のわが国に対する現在までの投資は、技術援助が十三件、株式投資が三件で、金額が七億四千五百万円、ただ市場で株を取得したものが約九万八千株、その他貸付金を受けておりますのが約六億円ございますが、この程度の非常に小規模な投資関係なつておるにすぎないのであります。
  144. 並木芳雄

    ○並木委員 将来は……。
  145. 永井三樹三

    ○永井政府委員 将来につきましては、今のところ、私も案件があるということは聞いておりませんので、何とも申し上げられません。
  146. 並木芳雄

    ○並木委員 よろしゆうございます。
  147. 野田卯一

    ○野田委員長代理 穗積七郎君。
  148. 穗積七郎

    穗積委員 実はきよう私は国連軍協定だと思つて来たら委員長がこれをやれというから、あとまたこまかいことをお尋ねするかもわかりません。ちよつと事前に政府委員にお聞きしておきたいと思いますが、この協定前のカナダから日本に入ります輸入品に対するわが方の税率その他の取扱いはどういうふうにやつておられたか、これを結べばどういう変化が生ずるか、その点をまずお聞きしたいと思います。
  149. 永井三樹三

    ○永井政府委員 御質問はカナダの輸入品に対する日本における関税ということだと存じますが、御承知の通り、日本の関税は一本の関税がきまつておるだけでございまして、従つてカナダで日本の商品が最高税率をかけられておりましても、日本では同じ関税がかかつております。従つてこの条約ができましても、カナダから入つて来るものにつきましては、関税については何らの変化はございません。
  150. 穗積七郎

    穗積委員 もう一点お尋ねいたします。この協定を結ぶことによつて、対加輸出が非常に伸びることを期待しておられるようです。それは一般税率が最恵国待遇、ガツト並の税率にかわるということが主たる理由でございますが、輸出が非常に伸びることを期待しておられる商品は、一体どういうものを予定せられておるのか、その点お伺いします。
  151. 永井三樹三

    ○永井政府委員 日本から現在輸出しておりますもの全般について関税が下るわけでございますので、今般についての希望が持てると存じますが、なかんずく私どもとして有望ではないかと思うものは綿織物、特に高級な加工綿織物でございます。たとえばこれは綿織物一種類をとつてみますと、普通の綿織物ですと、今まで関税が二五%のが今度は一五%になるというような結果になつております。それから従来かなりな輸出を見ておるみかんだとか茶だとかそういう農産物、これも生のみかんは一立方フイート三十五セントの関税がかかつておりましたが、これは今後無税になります。茶につきましては一ポンド八セントの税金がかかつておりましたのが三セントになります。こういうわけで価格上対加輸出がかなり伸びるのではないかと思つております。それから最近カナダから、これも目下来朝しております実業家のミツシヨンの話などを総合しましても、カメラ、陶磁器、ミシン、手袋、 ハンカチ、造花、おもちや、ある種の鉄鋼製品というようなものは、いずれも関税上相当有利になりますので、見込みが有望であるというように考えております。
  152. 穗積七郎

    穗積委員 それからもう一点、この協定には投資に対する特別の規定がないようでございますが、将来かの国からわが国、わが国からかの国に対する投資または合弁の計画等かあり得ると思うのですが、そういう場合はどういうふうになさるおつもりなのか、その取扱いの方法をお尋ねいたしたいと思います。
  153. 永井三樹三

    ○永井政府委員 先ほど並木委員に申し上げました通り、今度の協定は貿易、特に関税についてだけを規定いたしましたので、もつと広い経済関係に属しまする投資その他については将来に譲つてございます。私どもとしては将来さらに広い通商航海条約というようなものを締結いたしたいと考えております。それまで、現在のところではカナダの投資につきましては、日本の外資法によつて取扱つて行くわけでございます。条約上の規定はございませんが、われわれとしては外資法によつて公正な取扱いをして行くという考えでございます。
  154. 穗積七郎

    穗積委員 それに関連してちよつとお尋ねしておきますが、そういう向うからの日本に対する投資、または合弁の申入れの具体的に進んでおる、また近く進み得る可能性のものがございますかどうか、その点が一点。それからもう一つは、今投資その他に対してのもつと広汎な協定を結びたいという御趣旨でありますが、この協定を結ぶときにそういうものの予備的な話合いがございましたか、もしあつたとすればそれがいつごろまでに結ばれるのであるのであるか、その三点についてお答えを願いたいと思います。
  155. 永井三樹三

    ○永井政府委員 私寡聞にして具体的にどういうような案件があるかということは存じておりませんが、先ほど申しましたように、現在数件の株式取得その他の件がございます。たとえばカナダの大きなアルミ会社が日本のアルミの加工業者との間に提携をすでにいたしておると確かに記憶いたしておりますが、その他の具体的な案件については申し上げる材料を持つておりません。  それから将来広汎な協定を結ぶにつきましては、とりあえず最も早く措置を要する貿易の問題についてカナダ側も条約を結ぼうという意向を表明して参りましたので、われわれとしては急ぐ問題から片づけるというつもりでございます。もつともさらに広汎なものを結ぶという点につきましては、今日までまだ話合いはしておりません。適当な機会を求めて、今後そういうふうに進みたいという考えでおります。
  156. 野田卯一

    ○野田委員長代理 本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十六分散会