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岡崎国務大臣 まず公海の自由の
原則ですが、これは、実は理論的に言うと多少矛盾のある
原則なのです。というのは、どこの国も公海は自由に使い得る、こういうことなのですから、たとえば
日本の船が公海は自由だからとい
つてまつすぐこの道を通
つて行く、よその船も同じ道を、公海は自由だからとい
つて逆の方から来れば一体どうなるかということになるので、これは常識的に見てお互いにぶつからないように避けて公海を自由に使うという
趣旨であ
つて、もちろん排他的に使うのじやないというのでありますが、実は
自分の船が通
つている航路は、現在のところこれは排他的にならざるを得ないのです。ほかの船が入
つて来ればぶつかりますから。
従つてそうむずかしいことではなくて、これは常識的に、お互いに公海が自由に使えるように、航路もなるべくぶつからないようにする。漁船についても、人が漁をしているところへあえて入
つて来て、公海は自由だからここはおれがやると
言つてその上に綱を張
つてもよくないので、要するに、そういう意味で公海の自由というものは排他的でない、
趣旨はもちろんそうでありますが、しかしある程度排他的になり得る場合が当然あるのであります。そこで
アメリカの
原爆の
実験につきましても、
アメリカ側は、特にそこに主権があると
言つているわけでもなければ、管轄権があると
言つているわけでもない。また排他的に
使用するということを主張しているわけでもない。先ほど申したように、
日本の船が公海を歩いているとその場所は排他的に使うのであります。そこで
アメリカ側が何を
言つているのかというと、それは危険な場所を指定して、危険であるということを指示して、なるべくこれに入
つてくれるな、もしそれがために
漁業者が
損失をこうむるならばまた別途相談に乗りましよう、こういう
趣旨のことであ
つて、われわれの方から
言つて、
漁業以外に、特にほかの商船なり貨物船に影響を及ぼされるようなことがあればまたこれは問題になりましようけれども、ただいまは
漁業関係が主でありますから、
漁業に対しての必要なる
補償ということを述べておるわけであります。われわれとしても公海の自由ということは当然主張すべきであり、またこれは太平洋において主張するのみならず、朝鮮海峡においても、どこにおいても主張しておるわけであります。
それから第二の御質問の賠償の額、これは実は早くきめたいのでありますが、船の買上げ価格というのも最終的にはまだ決定しておらぬ、それから患者たちも、一体今後どのくらいたてばなおるのか、あるいは相当期間不自由であるかというようなことがまだ見当がついておりません。
従つて賠償の額というものが算定される段階にな
つておらないのであります。もつとも
アメリカ側としては、それはそれとして、さしあたり算定のできる範囲のもの、たとえば家族に対する一月分の
補償は幾らであるとか、ただいま入院している患者の一月分の入院料は幾らであるとか、そういう算定できるものについてだけでもとりあえず
補償をいたしたいということを申し出ておりますが、これは
政府としてはさらに考慮をいたしております。というのは、毎月々々
アメリカ側からそういう現金を受領することは国としてどうであろうか、むしろこの際はそういう毎月の費用等は
政府で一時立てかえておいて、まとま
つて計算ができたときに要求する方が国としては適当ではないか、こういう点もありまして考慮中でありますが、先方は今申した
通り、毎月々々算定できたものについてだけでも、とりあえず払
つて行くということに異存がないということは申しております。