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1954-03-27 第19回国会 衆議院 外務委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月二十七日(土曜日)    午前十時四十分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 今村 忠助君 理事 富田 健治君    理事 福田 篤泰君 理事 野田 卯一君    理事 並木 芳雄君 理事 穗積 七郎君    理事 戸叶 里子君       北 れい吉君    佐々木盛雄君       岡田 勢一君    喜多壯一郎君       上林與市郎君    福田 昌子君       細迫 兼光君    河野  密君       西尾 末廣君  出席国務大臣         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         保安政務次官  前田 正男君         保安庁次長   増原 惠吉君         保安庁局長         (保安局長)  山田  誠君         外務政務次官  小滝  彬君         外務事務官         (欧米局長)  土屋  隼君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (経済局長心         得)      小田部謙一君  委員外出席者         通商産業技官         (鉱山局金属課         長)      木村  正君         通商産業技官         (工業技術院地         質調査所鉱床部         長)      佐藤 源郎君         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 三月二十七日  日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案(  内閣提出第一一四号) の審査を本委員会に付託された。 同月二十六日  南極シタワシ等一帯日本領土確認に関する  陳情書  (第二三八八号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助  協定批准について承認を求めるの件(条約第  八号)  農産物の購入に関する日本国アメリカ合衆国  との間の協定締結について承認を求めるの件  (条約第九号)  経済的措置に関する日本国アメリカ合衆国と  の間の協定締結について承認を求めるの件(  条約第一〇号)  投資の保証に関する日本国アメリカ合衆国と  の間の協定締結について承認を求めるの件(  条約第一一号)  日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案(  内閣提出第一一四号)     ―――――――――――――
  2. 上塚司

    上塚委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の相互防御援助協定批准について承認を求めるの件外三件を一括議題といたし、逐条審議を継続いたします。日米相互防衛援助協定第八条より審議いたします。政府側より説明を求めます。
  3. 土屋隼

    土屋政府委員 第八条はMSAの五百十一条(a)の関係で、すでに本委員会で大分御質問をいただいた点なのでありますが、五百十一条は御存じの通り六つ資格要件をこまかくあげているのであります。各国の例を見ますと、この六条件を五百十一条のままに並べた国が大部分でございますが、中には要約いたしました国もあるようであります。日本はいろいろの点から、本件については検討をしてみる必要があると思いましたので、五百十一条の(a)項をそのままとることをせず、一応まとめる考えから、本第八条が成立しているわけであります。  まず五百十一条との比較において御検討をいただきたいと思いますが、最初の五百十一条(a)項にございます二項、つまり「一、国際の理解及び善意の増進主びに世界平和の維持に協同すること。二、国際緊張の原因を除去するため相互間で合意することがある措置を執ること、」この二つ要件は、日本に関する限りこれは国連憲章原則によるものでございまして、日本はサンフフンシスコの平和条約によりまして、すでに国連憲章原則にうたわれているこういう原則をのむことを承認してありますので、この二つ要件日本にとつては新しい問題でないことがはつきりしたわけであります。  第五百十一条(a)項の第三に掲げてございます。アメリカが一方の当事者である条約についての軍事的義務の問題でございますが、この軍事的義務は、日本に関する限り何かあり得るかということを考えました結果、累次御説明申し上げましたように、安保条約ですでに日本が負つているところの義務でありまして、新しい義務はそれ以外に負わないということを確認いたしたわけであります。従いまして五百十一条の(a)項の一、二、三、という項目は、すでに日本があるいは平和条約により、あるいは安保条約により持つている義務を確認したにすぎませんのでこの三つを合せまして「軍事的義務を履行することの決意を再確認するとともに、」という言葉で表現したわけであります。  第五百十一条(a)項の第4項、第五項、第六項。これは日本側には新しいことになりますが、これも考えてみますと、日本はすでに国力の許す限りにおきまして、自衛力漸増をいたすという方針を決定しておりますので、第四項、第五項という五百十一条の(a)項は、ともに日本の政策と合致するものと認め、この義務を受ける、受けないということは実質において何らの差異がないと考えましたし、また第四項におきまして、日本自衛力増強なりあるいは自由諸国家に対する協力という問題は、日本の一般的な経済条件の許すわく内でというわくもございますし、その上に増強自体日本政治経済の安定を阻害しないという条件も取入れましたので、受けてさしつかえないという結論に達しまして、ここにうたつたわけであります。  第五項の、自国防衛能力増強に必要とする合理的な一切の措置という点につきましても考施を加えてみましたが、日本自衛力増強漸増ということを方針といたします限りにおいて、これに関連する、この防衛力の基礎となる防御能力増強に対して、でき得る限り合理的に考え措置日本がするということは、義務として受けて何らさしつかえないもの、こういう結論に達しましてこの条項も受けたわけであります。  最後の供与されました物資が有効に利用されるようにということは、五百十一条の(a)項の第六項目がきめておる問題でありますが、これは援助を受ける限りにおきまして当然のことと考えましたので、ここにうたつたのであります。従いまして五百十一条の(a)項を日本に当てはめました場合に、日本はこういう考えを打つておるから、従つてMSA援助を浸ける資格があり得るということをうたつたのが第八条の趣旨でございます。
  4. 上塚司

    上塚委員長 質疑の通告があります。ので順次これを許します。並木芳雄君。
  5. 並木芳雄

    並木委員 この八条には「人力資源施設」とありまして、「資源」という文字使つてございます。ところが第一条には「装備、資材、役務」といつて、「資材」という文字使つてございますが、この違いがあるのかないのか。私どもの常識としては大体同じものではないかとも思われます。ただ今問題になつております原子力ウラニウムと関連してお尋ねするのでありますが、あるいはウラニウムのようなものもこれに含まれるために、「資材」という文字を使わずに特に「資源」という文字使つたのではないかと思うのであります。その点と、ウラニウムのようなものもこれに当然含まれておるものと思われるが、その点はいかがでありますか。
  6. 下田武三

    下田政府委員 第八条はたびたび申し上げましたように、「一般的経済条件の許す限り」という大きなわくがあるわけでありますが、その経済条件を決定する主たる条件として人力資源施設とをあげただけの話でありまして何も人力を寄与する、資源を寄与する、施設を寄与するという問題ではございません。これに反して第一条は援助対象となるものを指定するのでありますから、それで「装、資材」という言葉使つたのでありまして第一条の言葉と第八条の言葉とは目的と意義がまるで違うわけでございます。  御指摘ウラニウムはどうかという点でございますが、これもウラニウムを直接寄与するという問題でなくして原子兵器をつくるためにもしその国にウラニウムがあつて、その結果その国の経済条件が許すということになれば初めて問題になり得るわけであります。そういうわけで第一条は援助対象となる直接の物品をさし、その物品がそのまま行くわけでありますが、第八条は経済条件を決定する一つの要因にしかすぎないわけであります。
  7. 並木芳雄

    並木委員 もしウラニウム日本から提供するような場合がありとすれば、第二条の「アメリカ合衆国自国資源において不足し、」云々というこの条項で適用される場合が考えられるわけでありますか。
  8. 土屋隼

    土屋政府委員 第二条の適用を受けまして、第二条によつてそういうことがありますれば寄与するだろうと思います。
  9. 並木芳雄

    並木委員 その点ははつきりいたしました。  そこで今問題になつておるから私聞くのですが、日本におけるウラニウム産出状況と申しますか、試掘と申しますか、そういうものに対して政府調査はどの程度に進んでおられるでしようか。
  10. 下田武三

    下田政府委員 鉱物資源通産省鉱山局の管轄でありまして、私どもはよく存じませんが、先日外務大臣が申し上げましたように、占領中から連合軍当局がこの問題について協議をしまして数十の調査をしたということでありますが、そのことは通産省鉱山局でも承知しておると思います。外務省では直接関与いたしておりません。
  11. 並木芳雄

    並木委員 それではその点はあと通産省が見えましたらお聞きすることにいたしますが、世界各国におけるウラニウム状況については、これは外務省として当然調査をされておると思います。その点をお伺いしたいと思います。
  12. 下田武三

    下田政府委員 これは在外公館から参ります情報中に、ウラニウム資源に言及してある情報は接受いたしております。
  13. 並木芳雄

    並木委員 それをこの機会にお伺いしたいのですが……。
  14. 下田武三

    下田政府委員 これは外務省一般政治経済に関する情報の中に、たとえていえばベルギーから参りますのはベルギー領コンゴーにおけるウラニウムの採掘が非常に盛んであつてベルギーウラニウム景気で繁栄しておるというようなことでありますとか、あるいはソ連圏の周囲にあります在外公館から、ソ連圏内ウラニウムの発掘についての情報等もあるのでありまして、ちよつと一口に申し上げるわけに行かないわけであります。並木委員 それならそれは後刻でけつこうですから、文書にしてわれわれに配付していただきたいと思います。日本原子力を持つてはいけないとか、持つてもかまわないというようなことについての関係各国意向はどのようになつておりますか。アメリカなどでももちろん日本原子力を保持し、これを利用することについて異存はないものと聞いておりますけれども、その通りでありますか。
  15. 下田武三

    下田政府委員 これは占領中に、御承知の極東委員会の決定、またそれに基きます連合軍の指令によりまして、核分裂に関する一切の研究をしてはならぬ、研究施設を持つてはならぬというような制限が課されておりました。しかしこれは占領の終止とともにすべて消えてなくなりました。そうして平利条約中におきましても核分裂研究及び施設について、何らの制限条項が設けられなかつたのであります。でありますから、日本はもしその能力があれば、やりましてもまつたく自由な立場に置かれてあるわけであります。
  16. 並木芳雄

    並木委員 最近アメリカビキニ原爆実験に関してわれわれの注意が集中されておるのでありますが、時あたかもソ連の方においてもかくのごとき実験が行われたのではないか。そしてある人のごときはその実験の灰がソ連からすでに日本上空に飛んで来ておるということを言明されておりますが、もしこういうことが事実であつたとしたならば、これは容易ならぬ事態であつて、しかもその距離は比較的日本に近い北方からといわれております。かりに単なるうわさとか個人意見とかそういう範囲を出ないものにしても、時が時だけに、当然外務省はこれについて的確なる調査を進めておるものと私どもは確信しておるのであります。そこでこの際お尋ねしますけれどもソ連の方においても同様の実験が行われ、その灰がすでに日本上空に飛んで来ておるというようなことについての外務省としての調査情報の結果について、御報告を願いたいのであります。
  17. 小滝彬

    小滝政府委員 ソ連の方でも研究は非常に進められておるような報道がございますけれども、灰が飛んで來たというようなことは在外公館からも全然あれがないし、こちらの方でもそういうことは承知いたしておりません。
  18. 並木芳雄

    並木委員 ある個人がそれをはつきり言明されておりますけれども、それに対して外務政務次官としては、はつきりこの席上で否定いたされますか。
  19. 小滝彬

    小滝政府委員 そのような的確な情報には接しておりません。
  20. 並木芳雄

    並木委員 私はなぜこの問題を八条に関連してお聞きするかといいますと、これは明後日二十九日の本会議で、衆議院原子力国際管理決議案を上程して、全会一致で可決する段取りになつておるからであります。私はもう今日原子力国際管理ということについて、日本人のだれ一人としてその熱意を持たざるものはないと思うのです。ただ問題は、せつかく国会決議をしても、その決議が有効適切に実施に移されなければ何にもならないのであります。特にこの決議案最後に、国際連合に対してただちに有効適切なる処置をとられるようにということが要望されておるのであります。そこで私はこの決議を明後日衆議院会議でいたしました場合に、どのような手続をもつて実施に移すことが一番よろしいかということについてお伺いしておきたいのです。これは国際連合への要望でありますから、当然この決議文というものは国際連合に提出されることになると思います。従来の例から見て、決議が行われた場合に、国際連合事務局長に対してこれはもたらされるものでありましようかどうか、どういうふうになつておりますか、まずこの点をお伺いしたいと思います。
  21. 小滝彬

    小滝政府委員 国連の方への通報は、ニユーヨークに事務所を持つております澤田大使の方から郵務総長の方へ提出することになると考えます。
  22. 並木芳雄

    並木委員 ただその点、これは日本政府に対する要望決議ではないのであります。要するに国会としての意思表示であつて国際連合に直接ぶつつかる要望決議なのです。そこでお伺いしてまるわけですが、できればわれわれ国会議員国際連合におもむいてこの決議文を直接手交して依頼をする、これが一番いいのではないかと思うのです。その場合にもただいま次官からお話のあつたように、事務局長のところへ打つて行けばいい、こういうことになりますか。
  23. 小滝彬

    小滝政府委員 もちろん国連関係輿論喚起のような意味で、これまでも日本国連協会から日本代表が出られて、関係主要国代表に会い、あるいは国連事務総長に会つたこともございますけれども、正式に政府決議を取次いで、できるだけ有効にこれを利用してもらおうということになれば、正式なチャネル、すなわち日本のオブザーヴアーとして向うも承認をいたしております日本代表である澤田大使から、そうした正式な機関である国連事務総長に出すということになります。
  24. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、次官はその方法が一番適当であるとお考えになりますか、これは私手続の問題で聞いておるわけであります。
  25. 小滝彬

    小滝政府委員 正式な手続としてはそうするのが至当であります。ただそのことについて別個の考えがある、さらに国際的な輿論を喚起するという意味におきましては、主要国、特に安保理事会理事国またはさらに原子力に関して最も重大なる関心を持っておるカナダ指導的立場をとっておるカナダというようなところに通報するということも、国際輿論を喚起する上に有効でありましようし、さらにまたパブリツク・リレーシヨンズの点については十分留意いたしたいと考えております。
  26. 並木芳雄

    並木委員 われわれは国会としての立場から決議いたしますが、ただいまははつきり次官答弁を聞いて気がついたのでありますけれども日本政府としてはそういう機関に対して訴えて行くおつもりはありますか。これもまた並行して必要ではないかと思うのですが、その点はいかがでしようか。
  27. 小滝彬

    小滝政府委員 これはまだ決議が出されたわけでもありませんし、決議が出されましたら、さつそくそれに対して最善の方法を講ずるよう――現にそうした点は決議がなされた場合にはいかがすべきかということについて十分検討いたしております。しかしただいま申しましたような方法もあり得るということを、私の意見として申し述べた次第であります。
  28. 並木芳雄

    並木委員 これは決議がもたらされた場合、また英国の議会においてもチヤーチル首相が沈黙を破つて原子力管理の問題を取上げております。これはおそらく世界輿論になるであろうと思うのです。そこでこういう輿論が出て来た場合に、国際連合として取扱う主管の理事会はどこでありましようか、ただいま次官お話でありました安保理事会になるのでしよううか、あるいは原子力管理委員会ですか原子力委員会ですか、正式の名前は知りませんが、その委員会で取扱うことになりますか、あるいはまたこういう大きな問題のときには、いきなり国際連合総会を開いて、総会で取扱うというよう段取りになるでしようか、お伺いをいたします。
  29. 小滝彬

    小滝政府委員 こういう書面を受取つた場合、国連がいかにとりはからうかということは、国連内部で決定せらるべきものでありまして、こちらとしては今からどういうふうにとりはからわれるということを申し上げるわけには参りません。御指摘になりました原子力委員会というものは、今休眠と申しますか、実は解消したようなかつこうで、現在原子力の問題を取扱つておるものは軍縮委員会であります。かつて軍縮委員会原子力委員会二つにわかれておりましたけれども、一九、五二年以来、軍縮委員会の方でこの問題を取扱うことになつております。しかし軍縮委員会に勧告をしました場合には、これは当然安保理事会の方に付託されるということになるでありましようが、現実の問題としては、いろいろ国際間に困難な問題がありますので、実情をいえば、この委員会行き詰まり状態にあります。しかしこういうように国際的な輿論がだんだん出て来るし、一方においては原子力の平和的利用ついて、ソ連と米国間にも話合いが進んでおるというような状態もございますので、この委員会も今後は活動を開始するかもしれない、われわれとしては開始してもらいたいということを熱望しておるものでございます。
  30. 並木芳雄

    並木委員 その点まつたく同感であります。ぜひ軍縮委員会に大いに活動を開始してもらいたいと思います。しかもこれは早急にやつてもらわないと間に合いません。  そこでお伺いしますが、この委員会は定期的に開かれるのでしようか。それともこういう問題のときには、緊急理事会を開く道が開かれておるのではないかと思われますが、この点はいかがでしようか。
  31. 小滝彬

    小滝政府委員 先ほど申しましたように、管理方法について、たとえばアメリカであれば、かつてバルカンにあつたように、まず国際監察というものを実行しなければならないと言うし、ソ連側の方で行けば、まず第一に原子力利用というものを全然さしとめてしまつて、そのあと国際監察というもの場考えようというように、根本的に行き方に対立がございますので、現在の実情としては、定期的に開かれてお、るというのではなくして、先ほど申し上げましたように、行き詰まりと申しますか、休眠状態にあるという状態であります。
  32. 並木芳雄

    並木委員 ですけれども、こういう声が高まつて参りますれば、緊急に理事会を開く、軍縮委員会を開くという道は開かれておるのではないか、こういうことをお尋ねしております。
  33. 小滝彬

    小滝政府委員 国連の第八回総会において、軍縮委員会のもとに下部委員会を設置するという決議もできておりますので、この下部委員会原子力問題を取扱うことになることは私ども期待してやまないところでありますし、こういう先ほど申しましたような情勢でありますので、この軍縮小委員会の方が軍縮委員会のもとで活動するようになることを希望するわけであります。
  34. 並木芳雄

    並木委員 政府としては、その後続続高まる原子力の脅威というものをお感じになつておられると思います。しかし岡崎外務大臣の今までの答弁では、日米協力関係からいたして、一方の自由主義陣営だけに、原子力実験を延期するようにとの申入れ片手落ちになるおそれがある。言いかえれば、ソ連陣営の方においては自由に実験を継続して、一方の自由主義陣営だけに申入れをするということは、日本政府立場としてはどうかと思うという見地から、いささか手をこまねいている状況でございます。しかし今日にあつては、われわれとしては自由主義陣営であろうと共産主義陣営であろうと、こういう実験が行われるような場合においては、どちらに対してもやめてほしいということを要求する権利があると思うのです。そこで、今まではそうでしようけれども、今日もう一度政府考え直して、さしあたりこの次の実験を無期延期してもらうようにアメリカ申入れをしていただきたいのでありますけれども、そのことを考慮されておるかどうか、お尋ねをいたします。
  35. 小滝彬

    小滝政府委員 岡崎大臣が言明しております通り、一方の側に対してのみそうしたものを停止しろと言うことは片手落ちであるし、しかも日本自由国家群協力しております。こうした意味国会において決議がなされる、だからこそ国際管理というようなことを提起せられるものと私は了解いたします。しかし昨日の参議院の本会議においても保利農林大臣が述べておられます通り、これは重大な、非常なる関係があるし、また日本人の人命その他航行にも重大なる支障を来すような点もあるので、その点は十分憤重に考慮して、適当な申入れをするということでありますが、政府としてはそういう考えで、現在時期の問題とか実験の問題についても、何らかの申入れをする意向を持つているものであります。
  36. 上塚司

    上塚委員長 並木君にちよつと申しますが、今日は逐条審議中ですから、明後日の決議案関係する点だけにとどめおかれんことをお願いいたします。
  37. 並木芳雄

    並木委員 それでは通産省鉱床部長佐藤さんが見えたようですから、先ほど私が賛同した点についての答弁佐藤鉱床部長、それから木村金属課長にお願いいたします。  私が先ほど質問いたしましたのは、MSA協定の第一条、第二条、第八条を一貫してながめますときに、将来日本ウラニウムが生産されるような状態なつた場合、アメリカとして日本ウラニウムを供出してもらいたいという申入れをする場合が考えられるわけであります。そこで先日来非常な問題を起しておりますビキニ原爆実験その他に関連して、私ども原子力の問題はおろそかにできないわけであります。ことに私の改進党では原子炉予算というものを計上して、積極的に原子力研究を進めるべきだという立場に置かれている関係上、日本国内におけるウラニウム産出状態あるいは今後の見込み、その品質、数量、そういうものについてぜひ的確なる知識を得ておきたいと思うのであります。そういう見地からいたしまして、担当の通産省政府委員として、ただいま申し上げました私の質問に対して、ウラニウム関係調査とか今後の状況を、わかつておりましたならば、世界各国におけるウラニウム関係についてもこの際明らかにしていただきたいのであります。
  38. 佐藤源郎

    佐藤説明員 私地質調査所鉱床部長佐藤でございます。ただいまの御質問に対しまして、私存じておりますことだけをお答え申し上げたいと存じます。  先般二十九年度の予算として千五百万円の追加をいただきまして、特別研究費として主として私どもの方で使つて国内ウラニウム資源調査探査をせよということになりまして、ただいま私ども調査探査の準備をいたしておる次第でございます。それ国内ウラニウム資源埋蔵量なり産出量なりあるいは見通しなんかにつきましては、ただいま準備中なのでございますが、現在申し上げられる点は、従、来私どもだけでなく、日本ウラニウム資源について行われました調査結果を一応総合して振り返つてみますと、埋蔵量も品位も数字的には計算しておりません。一口に言いますれば、加工価値のあるウラニウム資源というものはまだ認められておらないと私ども考えております。しかしながら、これは現在までの調査をした範囲内のことでございまして、今後はどうなるかということにつきましては、結局は調査してみなければわからないのでございますが、少し専門的な申し上げ方をいたしますと、従来調査いたしました対象は、花崗岩、俗にいう御影石でありますが、この中にペグマタイトと申します特殊の母岩になる石がございます。このペクマタイトの中にウラニウムを含む鉱物が含まれておる。従つてウラニウム調査いたしますには、花崗岩の中のペグマタイトを調べるというこの一点にほとんど尽きておつたのでございます。そのペグマタイトを調査いたしました範囲内では、少くとも現在までには加工価値のあるものは見つかつておらないと私ども考えております。この十年間、さらに最近の二、三年間の世界ウラニウム資源調査探査状況を、これも各方面からの資料を収集して目下勉強中でございますが、ただいままでにわかりましたことを、ざつと申し上げますと、調査方法探査の目標が、従来の私ども考えとは全然違つた状態に置かれております。と申しますのは、花崗岩の中のペグマタイトの中のウラニウム資源というものは、世界的に見てむしろ貧弱なものであつて、将来のウラニウム資源を背負うところの母岩というものはそんなものではないのじやないか、たとえて申しますと、銅鉱脈とか、あるいは亜鉛の鉱床とか、あるいは褐鉄鉱の鉱床とか、あるいはモリブデン、タングステン、コバルト、ニツケルとか、そういうほかの金属鉱床に伴つてウラニウムがついて出て来る、そういう実例が最近非常にたくさん発見されておりまして、その方面の将来性が非常に重要であるとの一応の専門家の見通し的な結論が出ておるようでございます。従つてどもとしても全然見方をかえまして、このペグマタイトももちろん再検討する必要がございますけれども、あらゆる金属鉱床、非金属鉱床につきましては、今後新しい目で見直さなければならぬ、もちろんそれには近ごろの新聞紙上にもよく出ておりますガイガー・カウンターあるいはミネラライトという一種の探索機と申しますか、放射能を感ずる機械、もしくはウラニウムを含む鉱物を浮きたしてわれわれの目に見せてくれるような特殊の機材がございますが、そういう近代的の機器を使いまして、一応国内のすべての地下資源についてその中にウラニウムがわずかでも含まれているかどうかということを、この一年間に大急ぎで探査してみなければならないと考えております。従つて現在では数学的には何も申し上げることができないのでございまして、またこの一年間にあらゆる手を尽しても、諸外国の例に見るようなものが出て来るか、来ないか、調査の結果によらなければまつたくわからない状態でございます。
  39. 並木芳雄

    並木委員 私の方の須磨委員が先日優秀なウラニウム日本で出る可能性があるということを政府質問をしておるのであります。今の佐藤部長の答弁によりますと、確かに望みなきにあらず、探索の方法がかわつて来たのであつて、今までの花崗岩の中にあつたペグマタイトですか、その調査ばかりしていた方法からずつとかわつて来たという点を考えてみますと、今後いかなる優秀なウラニウム日本で出るか、これは予測を許さない。あるいは出るかもしれない、また数量も相当多く出るという見通しも考えられるじやないかと思うのです。須磨委員は特に秋田県にこれが産するということを言明しておるのでありますが、その点について部長としての所見をこの際お伺いしておきたいと思います。
  40. 佐藤源郎

    佐藤説明員 ただいまの御質問でございますが、お言葉通りにそういう希望的な見通しもできる、こういうことが許されましようし、また反対に加工価値のあるものは何も出なかつたという結果が起るかもしれませんので、その点はどちらともただいまのところ申し上げられないと思います。ただこの際ちよつと諸外国の例を申し上げますと、これは最近のウラニウム資源産出状況なり埋蔵量などにつきましては、もちろん各国とも厳秘に付しておりますのでうかがい知る由もございません。ただ私の方の地質学の専門雑誌などに学術的な記載として出ております論文を通しましてこれを推察するほかないのでございますが、これは一九五〇年にまつたくフリーな立場で公表してありますある専門論文から見ますと――一九五〇年の発表でありますから大体その一年くらい前の数字だろうと考えておりますが、世界の三大産地は御承知のように南アフリカのベルギー領コンゴーカナダと北米合衆国、その三つでございまして、ソ連につきましてはほとんどわかつておりませんし、英国、ポルトガル、マダガスカル等も若干の数字は出ておりますが、一九四九年あたりまでに採掘されましたウラニウム資源の総量がここに出ておりますので、ちよつと御紹介いたしますと、ベルギー領コンゴーウラニウムの酸化物として換算いたしましたものが、これはU3O8という符号のものでありますが、四千四百四十二トン、カナダが千四百四十トン、北米合衆国が一千二百トン、ソ連が、これはきわめて不確かな数字と思いますが、四百七十二トンということになつております。それから英国本国が一三百トン、それからポルトガルが二百五十トン、マダガスカルが十八トン、オーストラリアが五トン、そのほかほとんど数字にならないものがいろいろあるのでありますが、総計いたしまして八千百トン余りということになつております。これはいかにもわずかな数字のようでございますけれどもウラニウム酸化物として換算しておりますから、考えようによつてはなかなか大きな数字と思います。これは今から数年前のことでございますが、このあとに、たとえて申しますと、西ドイツのある古い鉱山、十年も古い歴史を持つております古い鉱山から採掘されまして褐鉄鉱の貧鉱として捨てられておりましたものを、先ほどのガイガー・カウンターその他でもつて検査いたしましたところが、ウラン鉱が相当量入つておつた。それからアメリカのある亜鉛鉱山では、その捨てられておつたものの中からやはり続々と見つかつた、そういう例もございますので、日本国内でもそういつたような従来問題にされなかつた点を特にこの際力を入れてこの一年間に採掘してみたいと考えております。戦時中今から十年前後前に先ほどのペグマタイトを中心に調査いたしました結果につきましては、数学的な材料がほとんどないのでございますけれどもちようどこちらに参つております木村金属課長も当時実際の調査に従事しておりますから、もし何でございましたら、そちらの方から御答弁いたしたいと存じます。
  41. 並木芳雄

    並木委員 ありがとうございました。  それでもう一点伺いますが、今後日本政府としては、所管の官庁の中の人員、スタツフは現在の通りで間に合つて行くと思いますかどうか。こういうような状態になつて来ますと、何らか別に原子に関する特別の総合機関を設けてやつて行く方がいいのではないかとも思われます。従つて何らかこの点について計画がおありであるならば、この際明らかにしていただきたいと思います。
  42. 佐藤源郎

    佐藤説明員 調査のスタッフにつきましてはお話通り、私どもの今の陣容ではもちろん不足を感じております。増員をもちろん希望しておるのでありますけれども、公務員の定員等もありまして、にわかにふやしてもらうわけにも参りませんので、ただこの問題につきましては、かなり経験のある人を特に活用しないと思わしい結果も出ないかと考えられますので、各大学のこの方面での権威者を中心といたしまして、ある程度業界にも応援を求めまして、今のところ私どもの方が中心で、特別の措置なくしても何とかやつて行けるのではないかというようなことを現在では考えております。何かそれ以上に強力な措置がとられますれば、もちろんけつこうなことと考えております。
  43. 並木芳雄

    並木委員 木村さん、今の調査の話を……。
  44. 木村正

    木村説明員 私は戦時中に国内の主として稀有金属元素の調査に従事したことがありまして、そのときに一緒に出て参りましたウランあるいはトリウムというものについても一応調査に当つたわけであります。私が調査いたしましたのは岐阜県の苗木町村付近のペグマタイト及びこれから風化分解されて生成された漂砂鉱床でございます。この付近は、昔から日本の稀有元素鉱物の有名な産地でございまして、専門の人たちにおきましてはすでに知られた山でございます。こういう地域につきまして、実は戦事中にトリウムの資源及びセリウムの資源というものについていろいろ問題がございまして、埋蔵鉱量がどういうことになつておるかということで私が当つたのであります。実はその当時におきましては、技術上におきまして現在のようなガイガー計数管あるいはミネラライトというものがございませんでしたので、主としてわれわれの目だけを、あるいは経験だけを生かして、それで採集して参りましたサンプルを化学分析するというようなことにおきまして調査を行つたのであります。苗木におきましては、主としてペグマタイトから風化分解しまして沢の方に流れ出しました漂砂鉱木が主体でありまして、この中には、一番多いものとしましてはモナザイト……。
  45. 上塚司

    上塚委員長 木村君にちよつと御注意しますが、きようはちようど逐条審議中でありますから、できるだけ説明を簡単にしてください。
  46. 木村正

    木村説明員 これは実はモナズ石でありますが、モナザイト、それから、ベルグソナイト、こういうものが主体であります。この数量につきましては非常にわずかでございまして、その当事私ども調査したところを大体計算いたしますと、ほんの一地区にしか当らないのでございますが、大体千百トンぐらい、その品位を考えますと、多く見積つても一万分の一くらいということになるものですから、モナザイトといたしましても一トンに達することはない見込みでございました。  それから次に福島県の石川山付近のペグマタイトにおきましては、主としてペグマタイトそれ自身の中に入つて来るもの事でございまして、非常にたくさんのペクマタイトの中のほんのわずかなペグマタイトの中に入つておるのでございますが、これは数量を計算するほどのものではなかつたわけであります。  それから同じく福島県の飯坂村に水晶山というペグマタイトの山がございますが、その中にはやはり珪石、長石と一緒に出るのでありますが、これの中の黒雲母の中にトログマイトというウランを持つた鉱物がございます。これはやはり品位が非常に少いのでございますが、その当時におきましては肉眼鑑定だけでやりますと、ほとんど見つからないというような状況でございます。しかし最近におきましてガイガー計数管及びミネラライトを使いますと、今まで見つからないものも見つかるようになつたということで、こういうものについても一応はこれから調査して行かなければならないのではないかと考えております。このほかのペグマタイト脈につきましては、ほとんどこれを肉眼及び肉眼を主にして調査することにおきましてはなかなか調査が困難なようなものばかりであつたわけでありますから、これにつきましては調査が進んでおりません。大体戦時中において調べられました資料はこんなものでございます。
  47. 上塚司

  48. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私はきわめて簡単に承ります。第八条について字句について承りたいと思います。私はどうも第八条を日本語の条文通り読みまして、まことに難解な文章であると思います。何が何をするんだかさつぽり要領を得ないように私は考えるのであります。それで承りますが、第八条のまん中のところから申し上げますが、「自国の政治及び経済の安定と矛盾しない範囲でその人力資源施設」これは一体どこに通ずるのでありますか。それに続いて「及び一般的経済条件の許す限り自国防衛力及び自由世界防衛力の発展及び維持に寄与し、」というのは何が何に寄与いたすのでありますか。それからその後に続きます「自国の防備能力の増血に必要となることがあるすべての合理的な措置を執り、」これはどこに関連があるのでありますか。
  49. 土屋隼

    土屋政府委員 これは日本国政府に全部かかるわけでありまして、今のお取上げの節につきましては、日本国政府は、日本の政治及び経済と矛盾しない範囲で、日本人力資源施設及び一般的経済条件の許す限り日本防衛力及び自由世界防衛力の発展及び維持に自発的に日本が寄与するというふうに読みまして、あと自国防衛能力も、日本国政府日本防衛能力増強に必要となることがあるすべての合理的な措置日本がとる、こういうふうに前の日本国政府に全部かけていただくのが正しいと思います。
  50. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 もう一度承りますが、「自国の政治及び経済の安定と矛盾しない範囲でその人力資源施設」これはどこにかかるのですか。
  51. 土屋隼

    土屋政府委員 これは日本国自国並びに自由世界防衛力の発展、維持に寄与するというこの全体の文章の中にかかって来る条件と解釈いたしております。つまり一つは、自分の国の政治、経済の安定に矛盾しないとい前提がある、もう一つは人力資源等一般的な経済条件の許す、この二つ条件があつて初めて自分の防衛力と自由世界防衛力の発展、維持に寄与するのだという基準が出て来ると思います。
  52. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私はそういう解釈を承るのではないのであります。それではもう一度承りますが、「人力資源施設」、これはどこに寄与するのでありますか。
  53. 下田武三

    下田政府委員 「人力資源施設」は「許す限り」というところにつながるのです。
  54. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それでは一体これの主語はどれで、動詞がどこになつているのですか。
  55. 下田武三

    下田政府委員 これは日本国政府は何々の範囲でというのと、何々の許す限り寄与するということになるのです。
  56. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それではこうですか。この政治及び経済の安定と矛盾しない限りにおいて入力や資源施設、また一般的経済条件の許す限り自国防衛力や自由世界防衛力の発展、維持に寄与するというのですが、そうすると、この人力資源施設というものを提供するというようなことなのでありますか、そこの意味がわからないのです。
  57. 土屋隼

    土屋政府委員 これはこう御解釈いただいたらよろしいかと思います。日本国政府が主語であります。それから寄与すというのが、その日本政府のする、つまり英語式に申しますと、ここでわが国が何をするかということを説明しております。そこでその寄与する目的は何か、それは自国と自由世界の発展と維持だ、こういう目的なのです。それで限定はどこにあるかというと、限定は二つある。一つは政治、経済の安定ということと矛盾してはいけない。もう一つは一般的経済条件が許す、これはつまり寄与するという限界をここで示しておるということであります。決して人力資源並びに施設の許す限り一生懸命努力をすのだという意味でなくして、そういうことを考慮に入れて、それがさしつかえになる場合においては、それをしなくていいという意味に御解釈いただく方が正しいと思います。というのは、原文をごらんになつていただきますと、許すならばという言葉使つているわけであります。ただ寄与というところに全面的寄与という言葉がありましたので、日本語ではその全面的と許すという限界とは一緒にいたしまして、いつか御説明がありましたように、許す限りという言葉を使いました。これは自分の経済的条件の許すぎりげり一ぱいのことを努けなければいけないように聞えますが、そうではなくして、寄与の条件というものは、一般的経済条件を考慮に入れてよいのだという意味に御解釈いただくのが、この文の解釈だと思います。
  58. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 いろいろ条件はあるでありましようが、要するに人力資源施設自国防衛力及び自由世界防衛力の発展や維持に寄与する、こういうことでございますね。
  59. 土屋隼

    土屋政府委員 それよりも、あらゆる観点から自由世界並びに自国防衛力増強と発展に日本は寄与するのだ、但し経済的の事情が許さないことがある。あるいは人力資源施設等の許さないというような事情があれば、これはいたし方ないのだ。それはここが限定されて限度になるから、それにひつかかることはやらなくてよいというふうに解釈すべきだと考えております。
  60. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 このことは大分問題にされておるところでありまして、私は明確にその点を知つておく必要があると思う。今のような御解釈だとすると、一部に伝えられておるような、人力の中に、かりに自衛隊というものを含めれば、これを海外派兵する必要等がありはせぬかという誤解も生まれて来るわけであります。そこでこの点を明確にしておきたいと思うのですが、人力資源施設をもつて自国防衛力や自由世界防衛力の発展に寄与するという義務は、この八条から生れて来ないのですか。
  61. 下田武三

    下田政府委員 全然生れて来ないのであります。つまり、人力の許す限り、資源の許す限り、施設の許す限り、一般的経済条件の許す限り、これらのものはすべて許さなければ寄与しなくてもよいわけであります。
  62. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 そうすると、寄与するという内容は、一体どういうことを寄与するのでありますか。
  63. 下田武三

    下田政府委員 私どもの実際なし得るところでは、せいぜい域外調達の注文を受けて、それで第三国向けの武器をつくつて送るというくらいしかできないと心得ております。
  64. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 そうすると、この第八条には、自由世界の発展や維持に寄与するという大きな政治的な目的あるいは軍事的な目的というものは全然ないのでありますか。今の御説明によると、ただ中に調達をするというような、まつたく事務的なものしか含まれていない。もしそういうような御答弁であるならば、こういういろいろな問題が出て来ないのです。私は、この八条は、日米両国間において相当広汎な意味において防衛力の発展や維持にお互いが手を握つて協力する、日本も事情の許す限りそれに寄与しよう、こういうとりきめであろうと考えます。それゆえにこそ私はこの八条を非常に重視しておるわけでありますが、いかがでございますか。
  65. 土屋隼

    土屋政府委員 MSAの五百十一条(a)項というのは、要するにMSA援助を受け得る国の資格アメリカ側がきめておるわけであります。ここの言葉は、さきに申し上ばましたように、その言葉を大部分においてとつておるわけであります。それで、この規定の中の解釈といたしまして、これを絶対の要件とされるということになると、今佐々木委員のおつしやつたように、一体どのくらい寄与してよいかということが、必ず限度として問題になるわけであります。そこで個々の条項につきまして、われわれが交渉する際に、会議の初めにずいぶん議論を闘わしたのですが、そのときにわかりましたことは、要するに一般的にその国が自由世界防衛力あるいは自国防衛能力を増進するという方針がきまつていれば、そこからその国のMSA援助を受ける資格が出て来るのだという話であります。そこでしからば自衛力増強というのは、何万にふやすということを条件とするのか、また憲法もあることだから、将来再軍備をするというようなことを本件から約束することになるのか、こういう点を確かめたのであります。この点につきましては経済の安定、政治の安定というかかり言葉がありますから、日本が急にふやすことが経済の安定を害するのだろうという判定を日本はつけるにきまつておるので、この条項からはそういう義務は出て来ない。またかりに憲法がそういうことになつておるとすれば、その憲法を無視した、あるいは憲法に違反するとおぼしきような増強の仕方をすれば、それは当然政治の安定を害することになるから、この条項に従つて日本はその義務は負わないのだ、こういうことになりまして、あくまで寄与というものは一般的な寄与、消極的な状態の寄与でもつてちつともさしつかえない問題である、しかも経済の安定並びに政治の安定というものは援助を受ける自国が決定をすべき問題で、アメリカからしいられる問題ではないのでありますから、その点から、私どもが非常に軽く考えておるようだという御非難はあるかもしれませんが、われわれは実際の交渉の途中におきまして、これは軽い意味の寄与であるということを十分認識してこの文書を書いたのであります。
  66. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は明確にこの点は確認をいたしておきたいと思いますので、もう一度伺つておきたいと思います。それでは八条からは、日本側人力資源施設を提供しなければならないという義務は、出て来ないという結論でございますか。
  67. 土屋隼

    土屋政府委員 この条文からそういう義務は全然ございません。日本が一般的に寄与する場合において、こういうことを考慮に入れていいということだけであります。
  68. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 その人力資源施設日本が提供しなくてもいい、そして日本防衛力増強に寄与しなければならぬ、そうなりますと入力や資源施設でないほかの面において日本が寄与する、こういうことのような論理になつて参るわけでありますが、そうですか。
  69. 下田武三

    下田政府委員 何を寄与するかということはこれには全然書いてないのでございます。ただ寄与すればいいのであります。そこで寄与する方法につきましてこういう制限を設けておるわけであります。それでありますから、カナダウラニウムという資源がありますからそれは資源を出しましようが、ここに資源と書いてあるからカナダウラニウムを寄与するのではないのであります。いかに寄与するかという方法を書いておりまして、何を寄与するということはここには全然書いてない。ただ目的が自国防衛力及び自由世界防衛力にコントリビユートすればいい、こういうわけであります。
  70. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 そうしますと、寄与するというのは具体的なものを寄与するのではなくして、観念的に、あるいは全面的にあらゆるその寄与をする、こういうことですか。そういたしますと、この八条の規定は読み方によればどうもナンセンスになつてしまう、そういうことを言われると前文に書いてあるのと同じことになる。この三条と八条は、私はこの法案で重要なものと思いますから、この点につきまして誤解のないように明確にいたしたいのでありまして、別に審議を遅らせるのではありませんから、私は重ねてお伺いいたします。
  71. 下田武三

    下田政府委員 これは今欧米局長が申されましたように援助を受ける資格の問題であります。ここで義務を掲げることを目的とした条文ではないのであります。でございますからやはり歯にきぬを着せないで申しますと、これはまつたく精神的なお念仏なのであります。国の向き方としてこういう国であればいいのであります。あれば援助を受けられるという資格だけ書いたのであります。だから八条の軍事義務、これはNATO条約でありますとか安保条約とか、それぞれそこできまるわけでございまして、ここできまるわけではないのでございます。でございますから日本の今度の域外調達に関する小麦の条約とか、そういうような具体的な条約で具体的な義務はきまつて来るわけであります。ただ国の向き方としてこういう方を向いておらないと、援助を受ける資格がないということだけであつて、ここで義務を課するのではないのであります。
  72. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は最後に伺つておきます。しからば七条からは何ら日本義務規定は出ないということですね。日本が具体的に八条によつて受けなければならぬという義務はないのですか。
  73. 下田武三

    下田政府委員 私は具体的な義務はここで規定することを目的としないということを申し上げたのであります。
  74. 上塚司

    上塚委員長 次は穗積七郎君、時間は二十分程度までにとどめてください。
  75. 穗積七郎

    穗積委員 最初に委員長に議事進行についてお尋ねいたします。きようは実は理事会を一ぺん開いていただきたいと思つていたのですが、やむを得ずお開きがございませんでしたので、この際ちよつとお許しを得て発言したいのです。再々申しましたように、このMSA協定は内外にわたしまして重要な運命を決する協定であるのでございます。従つて吉田総理の出席をぜひお願いしたい。これは国会の審議の良心的な権威のためにも、また政府の政治的良心のためもぜひ必要である、そういう原則がこの委員会でも確認されておりました。議運におきましても最初の説明のときにそのことを強く要望されたのでありますが、当時は一週間の休養を要するという医師の診断書が出ておりましたので、それを議運では一応尊重いたしまして、従つて委員会では少くとも総理に出てもらいたいという条件付でもって、本会議の討議は実は首相の欠席のままやつたわけです。その後われわれが要望いたして、しかも早くなおるように神経痛の名医まで送ろうと申し上げておつたのですが、きのうの福永長官の大磯から帰つての報告によりますと、できたらきよう来たいという気持も総理は持つておられる、できなくても来週初めには来られるということを言つておられますので、できれば来週の初めに出席されるなら、MSAの審議にあたりまして内閣の責任者であります総理が一度も顔を出さず、一言もものを言わないで説明もしないでこの審議を通すというようなことは、内外にわたりまして、はなはだ不可解なことでございます。ですから委員長におかれましては、今までの議運または本委員会のとりきめを再確認していただきまして、病状もすでに一週間も過ぎておりまして、来週初めには出て来られるという可能性があるようですから、そこで緒方副総理に対しまする一般質問の時間がまだ残つておりますし、各委員の持時間もございますのでそれを活用していただき、さらにでき得べくんばこの際党ごとに――各委員個人にしますと時間がふえますから、各党にわたつて一時間なり幾らなりを認められて、そうしてあとの時間割は委員の間で適当にあんばいをして総括質問をその際していただきたい、そういうふうにぜひお願いいたしたいと思いますので、よろしくひとつ御配慮をいただきたいのであります。  それから第二にお尋ねいたしますが、大蔵委員会から正式に当委員会にすでに早く連合審査の申入れがあつたということを昨日伺いましたが。それが真実でございますかどうか。  第三にお尋ねいたしたいのは、協定三条と関連を持ちまして、日本国内のこれからの言論、政治活動に重大な関連のあります秘密保護法、これがすでに議会に送付されておりますが、当委員会に付託されることになるのか、あるいは他の委員会になるのか。当委員会に付託されるとするならば、第三条の審議は留保されておりますから、従つて政府の秘密保護法に対する説明を聞いて、そうして三条とあわせて慎重に質疑を行つていただきたいと思うのでありますが、その三点についてひとつ委員長のおとりはからいをいただきたい。  第一の問題は、ぜひ一ぺん今日にでも緊急に理事会を開いていただいて、吉田総理の出席を求めて、それから大蔵委員会からの正式な連合審査の申入れがありましたならば、これをもう一ペん手続をやつておりますと時間を喰いますから、でき得べくんば向うが了承されるならば、委員外発言ということでやつてもよろしい。これはなぜ私がそういうことを申し上げるかといいますと、この協定の中で重要な点はこの八条を中心とする軍事的義務と、あとは経緯的利益でございます。こつちのとり分としての経経的利益につきましては、小麦協定に伴います特別会計あるいは投資保証等の重要な内容を持つておりますので、専門に勉張しておる大蔵委員諸君の意見、質疑を経てこの協定を審議されることが適当だと思いますので、さようにおとりはからいをいただきたいと思いますが、議事進行につきまして、最初に委員長にこの三点についてぜひお願いをいたす次第でございます。
  76. 上塚司

    上塚委員長 穗積君にお答えいたしますが、第一の総理大臣出席のことにつきましては、すでに早くより官房長官を通じ出席を求めております。しかし御案内の通り、ずつと病気でありまして今日まで出席がありませんでしたが、なお必要であれば、理事会を開いてこのことを御相談します。  第二の大蔵委員会からの連合審査の申出はまだ正式に来ておりません。それで何ともお答えのしようがございません。  第三の秘密保護法については、多分今日の議運において決定しまして、そうして午前中にも議運の決定次第、当委員会に付託せられることになつておると聞き及んでおります。もし付託されたらば、できるだけ早く、きよう中にも説明を求めたいと考えております。
  77. 穗積七郎

    穗積委員 さようお願いいたします。  それでは逐条審議質問に入りまして、第八条について両局長に蒙を開いて明確にしていただきたいと思いますので、お願いいたします。いろいろ順序がありますが、並木委員が最初に原子力の問題を出されましたので、それに関連してやることが整理上よかろうと思いますから、その問題について少しお尋ねをして質問を進めて参りたいと思います。
  78. 上塚司

    上塚委員長 穗積君、はなはだ中断して申訳ないですが、並木君のは、実は明後日の決議案に関連して特に申入れがありましたから、原子力について発言を許したのですけれども逐条審議で、ひとつ第八条について御質問を願いたいと思います。
  79. 穗積七郎

    穗積委員 それはよく承知いたしております。委員長は私が発言をすると、ときどき腰を折られますが、私の速記録を見ていただきましても、私はレールをはずれた発言はひとつもしておらぬ。きよう並木委員の発言はちよつと余分にそれたと思いますが、どういうわけで黙つておられたか実はわからなかつたのですが、私の質問原子力に関する問題でも、この条文を逸脱いたしませんからお尋ねするわけであります。この前ビキニの問題が起りましてから、実は原子力国際管理の問題についてわれわれが提案いたしましたところが、下田条約局長は、そういう動きは国際的にもあり、日本政府もその線に沿つて努力する覚悟であるということをおつしやいました。のみならず、先ほど並木委員からお話がありましたように、明後日予定されておりますところによると政府考えだけでなしに与党、保守党の諸君も全部賛成されまして、原子力国際管理またはこの戦争使用、軍事的使用の禁止の決議案に同調されるようでございます。われわれはそのことについて自由党、改進党の諸君がそこまででも一歩前進したことは、まことに敬意を表するわけです。ただ遺憾なことは、もう一歩前進して、原子力時代に無用な歩兵の兵隊をつくるという蒙をまだ開かれないことを残念に思いますが、一応そういうことが予定されております。そうなりますと、二条または八条の資源による協力、あるいはまたアメリカの不足物資の譲渡の義務などがございますが、それに対してアメリカがもし日本ウラニウム原子兵器に使う目的をもつて日本に譲渡または協力を求めました場合には、当然政府方針並びに国会の意思を尊重するならば、武器に使用する、武器生産のためのウラニウム資源、こういうものを要求することを拒否するのが当然だと思います。第二条によりますと、条件、数量、すなわち値段と数量でわれわれが話合いがつかなければ拒否することができるという御説明でございまして、その点はいささか取引における自主性は認められておりますが、私は数量、値段等につきましていかなる条件を提案されましても、少くとも日本ウラニウム資源原子兵器に使用するために日本に譲渡または寄与を求められた場合には、これを根本的に拒否すべきであるとわれわれは考えますが、その方針を堅持していただけますかどうか、そのことをまず第一にお尋ねいたしたいと思います。
  80. 下田武三

    下田政府委員 ベルギーとかカナダのようなウラニウム資源があり余つてる国ならばとにかく、日本としては、まだあるかないかわからない、たといわずかばかりのものが発見されたとしても、日本の政策としてそれをむざむざ他国にやることはとうてい考えられない。まず自国で大事にすべきものたろうと考えます。
  81. 穗積七郎

    穗積委員 いや、私の言うのは、多いとか少いとか、足りないからどうというような理由でなしに、原子兵器に使うという目的であるならば、多くあろうとあるまいと、たとえばあつたといたしましよう、あつた場合におきましても、今のお話だとたくさんあれば場合によつたらわけてやつたらいいというお話になるわけですが、たといふんだんにあつて、あり余つても、原子兵器生産のためにわれわれにそういうことを求めるならば、これは根本的に拒否するという態度を明示すべきだと思いますが、そのことを私はお尋ねしておる。私の質問に対してお答えをいただきたい。
  82. 土屋隼

    土屋政府委員 ただいまの御質問はこの条文を離れまして、やや政治的の御質問のように見受けられますので、私どもからその結論をお引出しになるのは少々御無理かと思います。
  83. 穗積七郎

    穗積委員 それでは時間が来ましたから、あとでお尋ねいたします。それから、これは両局長から答えていただければけつこうですし、いただけなかつたら大臣からいただきたいと思いますが、今のウラニウム資源の譲渡または売渡しを拒否するかどうかという点が一点、それからもう一つは、当然原子兵器国際管理を要求します以上は、戦争に原子兵器を使わないという考えを、政策の上に堅持しなければなりません。そうでありますならば日本の自衛隊が原子兵器を保持するということは、とうてい考えられないことでございますが、アメリカの駐留軍が原子兵器日本の基地へ持つて来て、もしそこで使うというような場合、それに対して日本側といたしましては――日本の基地に、原子兵器を使用する自的を持つて搬入することは当然拒否すべきだと私は思いますが、その点についてはお答えいただけましようか、どうでございましようか。
  84. 下田武三

    下田政府委員 行政協定によりますと、アメリカがどういう兵器をどこの基地に持つて来ようと、これはかつてでございます。でございますから、法律上の問題としては、米国は日本に持ち込む兵器の種類について制限がないわけでございます。でございますから、そういうことをしてもらいたくないかどうかということは、これはまつたく政治問題でありまして、私どもからお答えすべきものではないと思います。
  85. 穗積七郎

    穗積委員 それではそれも伝えて、大臣からお答えをいただくようにおとりはからい願いたいと思います。  続いてこの問題に関連してお尋ねいたしますが、原子兵器を持たないということを要望し、そうしてわれわれ自身も原子兵器を持たないということになりますと――近代的な軍隊というものは、近代戦を遂行するに足る戦力ということで、結局程度の違いだということで、憲法に違反するかしないかという話を今まで政府はやつて来られたのですが、私はこの解釈は誤つておると思います。たとえば、一歩譲つて政府の論理を借りたといたしました場合、日本自身も原子兵器は持たない、国際諸国に向いましても原子兵器は持たないようにしてもらいたいと言いますと、この近代的な戦闘力といいますか。軍隊の性能や程度というものの標準がずつと下るわけです。国際的な今のスタンダードに比べて、日本の自衛隊はまだ戦力になつておらぬという解釈をしておるわけでありますが、そうなると、ずつと下つて原子兵器を持たない、従つて原子兵器搭載の爆撃機もいらぬということになりましよう。そうなると、日本の自衛隊の、つまり軍隊であるかないかの程度が、これは相対的なものだというお話だつたのでございますから、相対的にかわつて来るでしよう。国際的に見ましても、原子兵器を持つておるような世の中に、日本の現在の保安隊なんかは戦力ではないというような説明だつたのですが、その原子兵器を否定し、みずからも持たない、諸外国にも永久にこれを放棄してもらいたいと言う。そうすると、戦力の標準が低下する。そうなると、日本の自衛隊が今度戦力に格上げになつて来あわけですか。その論理は一体どうなりましようか、これを政治的配慮をのけて、ひとつロジカルにお答え願いたいと思います。
  86. 下田武三

    下田政府委員 仰せの通り、戦力の観念は相対的なものである。その国の置かれたそのときの事情と、それから周囲の他の国々との相対的観念からということでございます。でございますから、かりに世界でどこの国も原子力を武器として使わないということになりますと、多少事情がかわりますが、だからといつて、いきなり日本の自衛隊が戦力になるということはないと思います。しかし、またかりに、どこの国も十万以上の兵力を持つのはもうやめようというような軍縮が達成されまして、十万を自衛の目的だけに使うものとして、十万食いとめようということになりますと、日本も十万で、各国と一緒になりますから、だから戦力になるかと申しますと、これはやはり戦力にはならないのでありまして、各国とも戦力を放棄して、自衛力だけを持つたということになる次第あります。
  87. 穗積七郎

    穗積委員 実はこの間私がお尋ねいたしました集団的自衛権の問題について、われわれはちよつと矛盾を感ぜざるを得ないのでございます。それは何かといいますと、この協定の中に、集団的自衛権または第八条によります国際的な防衛力強化への協力というようなことが強調されていることであります。ところがこの集団的自衛権の発動、また今の御説明によります第四項の点をとつてみましても、あるいは第二項の点をとつてみましても、具体的な義務を伴つているものではない。すなわち、外地派兵であるとか、あるいは戦争物資を外地、たとえば朝鮮なら朝鮮に冷戦が起きましたときに、日米間で協議をいたしまして、この協定による義務としてそれに譲渡または貸与、援助するというような問題でございますが、そういう問題については特別な協定を必要とする意味なのかどうなのか、その協定なくしてそういう義務がこの中から具体的に生ずるのかどうか、その点をお尋ねいたしたいと思います。
  88. 下田武三

    下田政府委員 これは条約でも国内法でも同じことでございますが、宣言的規定と法規的規定がございます。宣言的規定と申しますのは、政策なり方向なりを明確にいたす規定でございます。この第八条に書いてありますことは、すべて宣言的規定でありまして、国の政策、方向を明示するものであります。その方向、政策を明示しなければ援助がもらえないということであります。さてこの第八条で示しました政策なり方向なりを具体的に実施するにつきましては、これではあまりに漠然としておりまして、ちつとも実施できないのであります。でございますから、具体的問題につきましては、これはあらためてとりきめを必要とする問題であろうと思うのであります。
  89. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと、この協定を効力あらしめるためには、別個の具体的な行政協定または他の条約というものが必要になつて来ると思うのですが、それは一体どういう形でお結びになる予定でございますか。そうでないと、この中心であります義務と権利の規定がまるで空文ということになる。これではさらに問題が具体的になつていないのでございますが、そうであらば別にお結びになるつもりなのか、お結びになるならばどういう内容のものをいつから始められるのか、それをお伺いしたいのでございます。
  90. 下田武三

    下田政府委員 MSAの五百十一条は、個々の協定締結しなければならない、つまり個々の具体的なとりきめを締結しなければ援助を与えないとは規定していないのであります。つまり宣言的な方向さえはつきりさせれば援助を与えるということでございますから、これだけで足りるわけであります、これさえ書いておけば足りるわけであります。別にこれを具体的に実施するためのとりきめを結ぼうということは、援助をもらうについては必要ないのであります。
  91. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、これは一般的な抽象的な義務を負つただけで、具体的な義務ではないということですか。
  92. 下田武三

    下田政府委員 その通りであります。一部はもう具体的にとりきめができておるのもあります。第一と第二は、これは国連憲章の目的そのものであるのですが、国連憲章日本平和条約で受諾していることによつて達成されているということであります。第三は、安保条約義務だけでよいのだということも、これも確認済みであります。それで決意を再確認するという表現であつたわけであります。第四、五、六は、これは新しい政策の宣言ですが、日本としてはもう日本独自の考え方からやろうと思つておつたことでありまして、さしあたりこれを実施するために細目のとりきめを必要とするという事情はございません。
  93. 穗積七郎

    穗積委員 一体これが単なる宣言の規定にすぎないということは、どこに書いてあるのでしようか。
  94. 下田武三

    下田政府委員 それはMSA法自体、それから同種協定を結んでおります各国の先例から見まして、これで十分であるという国際先例がすでに確立しておる次第でございます。
  95. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと、ただこの規定によつてわれわれは具体的な問題が起きましたときには、具体的な協定に入る義務を持つておる、そう解釈していいわけでございますね。
  96. 下田武三

    下田政府委員 抽象的に政策的な方向に関する限りはそういう方向を明示さしたという点では、抽象的な義務を負つておると言えると思います。
  97. 穗積七郎

    穗積委員 それではそういう仮定に立つて、抽象的な義務について少しお尋ねいたします。そうしますと、実はわからぬところが非常に多いのでございますが、特に三項、四項でございますが、これは安保条約で負つている以上の義務を負つていないということですか。私は特にこの三項は安保条約で希望条項になつておるものが義務規定にここでかわつているのじやないかというふうに思いますが、その点はいかがでございますか。
  98. 土屋隼

    土屋政府委員 これはこの表現にもございますように、アメリカ合衆国との安全保障条約によつて、すでに日本が負つておる義務を再確認しただけであります。従つて安保条約の中にかりに期待権とも言えましようが、法律上の義務としては負つていない点があるとすれば、この協定条項からはここで新しく負うことにはなりません。おそらく穗積さんのお考えは、安保条約の前文の中に日本が自分の防衛力増強するということが期待になつておるということでしようが、今回のMSA協定のこの条項では負つていない。その次の条項義務として負つておるわけでございます。安保条約で期待であつたものが、今回の協定によつて義務になるわけです。
  99. 穗積七郎

    穗積委員 それからさらに今お話通り、四項は私は安保条約の期待条項、がここで義務規定にかわつたというだけでとどまらぬと思うのです。むしろ私は前項の第三項が、これは期待であつたものがこの条項によつて義務規定にかわつたのではないか。第四項におきましては、それ以上の範囲に出るもの、これは一見見ますと、無制限無定量の義務を負つておることになると思うのです。特に経済の安定が許す範囲、または人力資源施設等の一般的その他経済条件の許す限りということでございまして、これには必ずしも客観的な限度はない。アメリカとの間におきまして軍事予算これ以上の何パーセント、または国民所得の何パーセント以上は、これは限度を割るものだという客観的な基準はなくておるわけでございますから、いわば無制限である。そうしてさらに内容はどうかといいますと、内容はさらに驚くべきものであつて、この前私がお尋ねいたしまして、重要な点でまだ残つておりますから、ここではつきりお尋ねいたしますが、この四項の「自国防衛力及び自由世界防衛力」それから「自国防衛能力」とあります。このさきの防衛力は云うまでもない、あと防衛能力と書きかえて、違つて使つておりますから、軍事力を中心とした戦闘力を意味することは言うまでもありませんでしよう。従つて自国防衛力の中には、今度外国の軍隊と戦争することを宣言いたします自衛隊の強化がむろん入つていると見なければならない。その点が一点。  それからもう一つは、この「自国防衛力」という言葉と「自由世界防衛力の発展」という言葉をまつたく同じ言葉使つております。社会的にわれわれが論文を書くとか話をするというときには、同じような言葉を違つた内容で使うこともありますが、少くとも条約、法律の規定の中で「防衛力」という同じ言葉を続けて使つております以上は、その概念規定は同様の内容のものでなければならぬはずでございます。そういたしますと、日本の保安隊を中心とする戦闘防衛力、それから自由世界防衛力とは同様の内容を持つたものでなければならない。そうすると、あとの自由世界防衛力は、ほとんですべてが憲法におきまして軍隊と交戦権を放棄しておりませんから、当然交戦権を持つた軍隊というものの強化発展ということになりますと、それから今度返つて読めば、この日本防衛力というものも当然そういう一般的な義務を負う。あと問題は憲法の問題である。憲法の問題は、アメリカの知つたことではないのであつて、それは日本国民がかつてに処分したらよかろうという態度を、向うはとつておるわけでございますから、その意味におきましてアメリカ側からいえば、この条文によりまして、言うまでもなく防衛力はそういう防衛力、つまり他の自由主義諸国の軍隊と同様な性格、内容を持つた防衛力の強化を約束したものだといわざるを得ないのでございますが、その点はいかがでございましようか。この二点を、第四項についてもう少し具体的なお答えをいただきたいのであります。
  100. 土屋隼

    土屋政府委員 ただいまの第四項につきまして、自国防衛力と自由世界防衛力につきましての御意見は、穗積さんのお考えになつていらつしやるのは、世界各国、つまり自由世界の防御力は軍隊としての性格を備えておるのだから、日本の寄与する防備力も、すなわち軍隊の性格を備えた防衛力にほかならないという意味のように見受けられますが、それは少し議論がおかしいと思います。日本考えておりますのは、保安隊を中心にいたしまして、自国の防御力、つまり防衛的な面においての防衛に関する力を言つておるだけでありまして、それ以外に自由世界の持つておる自衛力に関しどうするかは、日本の関知するところでもありませんし、従つて日本自身がそれに寄与しなくても、ちつともさしつかえない面だと思います。日本が保安隊を持つておるのは、国内の治安に任じ、かつ外敵があつた場合には、二次的任務ではあるが、これにも対抗し得るという防衛力増強すること、これが日本方針でありますから、その意味においては、自由世界のそういつた力の増強日本が寄与することもあると思います。それがたまたま他の諸国では、防衛と攻撃と二者一つを兼ねておりますから、防衛面から見ただけの防衛力増強は自由世界の兵力の増強になるということも考え得ることでありましよう。しかしそれは間接的に来ることでございまして、日本の庶幾しておる目的そのものではないと思います。  それから限界がはつきりしないと言いますが、限界がはつきりしないところが、この規約の非常にたつといところだと思う。その理由は、その限界がはつきりしないのは、だれがはつきりさせるか、協定文に明らかなように、自国はつきりさせるわけであります。客観的な標準がないところを日本が主観的に解決できるというところに根本的なうまみがあるので、日本がこれによつて海外派兵ができるかというと、それは日本の政治の安定を害するからできないという断定を下すことが当然できるということになります。日本が二十五万の保安隊の増強を行うということは、一般的条件が許さないからできないということになるか、これはあくまで日本が自主的にきめられるので、ここにこの規定の長所がある。それでこそこの規定は生きるのだと思います。
  101. 穗積七郎

    穗積委員 仰せの通りだと私も思います。だからこそわれわれの側からいえば、重要だ、こういうことです。と申しますのは、平和条約、続いて安保条約、行政協定MSAと、こういうふうにやって参りましたが、アメリカの政策というものは、さすがに巧妙老獪でございまして、初めから――下世話の話で恐縮でございますが、人をねじ倒して強姦するようなことはしない。初めはちやんとかんざしを買つてやる。そのかわり、そのときには映画を一緒に見に行く約束だけはさせる。映画を見に行きますと手を握る。手を握ると、その次はまた一緒にどこかに一晩とまりで行こうじやないかという話になつて来る、そういうふうにみなだんだんとかぎがかかつておる。そこでそういうふうにかぎがかかつておりますことをきめますと、明かに日本に兵力増強義務を負わしめ、その軍隊に日本国内法の形をとつて、巧妙に、しかも外国の軍隊との戦闘を宣言せしめる、続いてこの集団的自衛権または自由諸国への協力、それから私はあとでお尋ねいたしますが、国際緊張の原因を除去するための相互的な合意云々と書いてある。合意による措置でございますが、これは一体何だというと、こういう言葉は非常にあつさり読めば簡単に読める。具体的に義務はなは、これがつまりさつきの言いがかりになるわけです。一緒に一晩とまりに行くという約束をしたじやないか、あとのことは約束しておらぬが、そこまでは約束しておるということで、だんだんとこういうふうに食い込んで来るのでございますから、従つて実はここが問題なんで、そういう意味で私はこの条文が非常に抽象的で、一般的で、あいまいであるというところに、あなたは日本の自主的な判断の余地が残つておると言う。ところが国際的に見ますならば、明らかに日本立場から見れば、それに抵抗することができない、言いががりの種が至るところにつくつてあるということだと私は思うのです。そういう意味でこの条約は判断していただきませんと、さつき言われたように、私は、国内法のように具体的に義務規定――権利と義務を明確に文章の上でうたつたものでございますならば、これは実は大して心配がない。それだけですからわかる。ところがさつき下田条約局長も言われたように、これは制限規定である、一般的な義務規定である。そういうことでありますから、具体的になると無定量、無制限ということになる危険があるのでございます。そういう意味で私は聞いておるのです。  そこでもつと具体的にお尋ねいたしますが、この四項について、それでは日本では自衛隊、外国では交戦権を持つた軍隊だ、防衛力はそういうふうに解釈してさしつかえないのだと言うが、その根拠は私ははなはだ疑わしいと思いますが、一歩しりぞきまして、その自由世界防衛力の発展維持に協力寄与するということは、具体的にどういうことでございましようか、どういうことが想定されましようか。
  102. 土屋隼

    土屋政府委員 この二国でいろいろのこういうふうな判定がきまることになりまして、客観的な義務規定その他がはつきりいたしませんから非常にこわいという、穗積さんは、日ごろの穗積さんにも非常に似合わない気の弱いことをおつしやつたのですが、私どもは、きらいでないからこそ、日本はおくまで言うことを聞かないでもいいので、映画に行くこともありましよう、かんざしをもらうこともありましようが、ほしいと思つたものをもらうので、それ以上のものをもらつても少しもさしつかえない。場合によつては、つき合つた結果よければ、結婚してもいいということを考えれば、あり得るわけなんで、そういう意味で私はそれだけでお考えになるのは少しお考えになり過ぎたのではないかと思うのであります。それはさておきまして、この自由世界防衛力でございますが、私どもはこのMSA考え方は、どうしてもやはり各援助を受けます。あるいは自由諸国の一国が自分の防衛力を増して行くということが、自由世界の一般的な防備力を増すことになりますし、アメリカ自身の安全保障に役立つことになるということを承知の上で受ける援助で、いつも申しておりますように、さしあたり日本のような段階におきましては、援助を受けまして日本の防御力を増せば、すなわち日本防衛力が増しましたが、自由世界防衛力も全般的に増したということにおいて、大いに寄与したということを考えたいとこう考えてあります。
  103. 穗積七郎

    穗積委員 そこで問題がかわつて来るのです。
  104. 上塚司

    上塚委員長 穗積君、この辺のところでいかがでしよう。もう三十分経過しておりますが……。
  105. 穗積七郎

    穗積委員 MSAを審議するのに、この八条をやらぬと、ほかにやるところはない。
  106. 上塚司

    上塚委員長 最初の話合いによつて、二十分くらいのところでとめてもらいたい。
  107. 穗積七郎

    穗積委員 自由主義諸国の防衛力を強化することがすなはち日本の防御力を強化することだと、これはまさにそういう政治的な論理は成り立つと思う。そうなりますと、集団的自衛権は協定なくしては死文だと育つた。それでは日本の強いそういうものが、漠然と――自由主義諸国の兵力が強化した場合、そういう場合には漠然と日本の防御力を強化することになるのだということは言えましよう。とにかく敵ではない、味方側ですから……。ところがそれが一体具体的に日本防衛力に役立つか役立たぬかというときには、安保条約のようにアメリカ軍が日本に駐もするかわりに日本を防ぐという義務はつきり条約で結ばなければならない。そうなるというと、さきに集団的自衛権を認め、またここでは一般的義務を持たしめておるが、しかしそれにかわるこつちの権利、すなわち向う側の防御義務、そんなものはどこにも出ていない。私ども日本の保安隊のようなものをこの原子兵器の時代につくつて何になるか。ばかばかしくて話にならぬじやないかというと、これは実は論理は三つある。一つは、やがて大きなものにするための萌芽にすぎない、だから今をもつて断定されては困るということ、もう一つは、近代的防衛観念というものは、自国自国だけで守るという考え方ではなくて、地域的集団的保障という考え方だということを言つておるわけです。だからアメリカ軍隊との関連において、アメリカの軍隊の、編成部隊として日本防衛力考えれば、これは大きな防衛力になるのだという論理をつくつておるわけです。それはどこでそういう論理が出て来るのか。すなわち外地派兵の問題なり、あるいは日本の対外戦争の義務、こういうような協力義務というものが漠然とこういうふうに出て来ておつて、そうして言われるときには語るに落ちるで、日本の兵隊が弱いじやないか、こんなものは無意味じやないかと言えば、アメリカと一環だと言つておられる。そこに集団的自衛権の一つのからくり、または第四項の自由主義世界への無制限協力、こういうことが私は大きく意味を持つて来ると思うのです。そういうことは、私たちが臆測して言うのじやなくて、政府の論理の中にそういうことが出ておるじやございませんか。この点をもつと納得の行くように説明していただきたいのでございます。そうでないと、この協定なり集団的自衛権というものが、こういう条約を結んだらどういう結果になるかということ対して、われわれはあと状態を想定するわけに行かない。どういう結果になるかということをもつと私たちは突き詰めた上で、この協定に賛否の態度をきめなければならぬ、こういうことだと思うのです。
  108. 下田武三

    下田政府委員 穗積さんは無制限義務を負うと言つておられますが、これほど大きな制限を課しておる規定もないものでありまして、漠然たる政治及び経済の安定というような制限一般的経済条件の許す限りという制限、これの外国との実施ぶりを見ておりますと、アメリカはてこずつておるのです。実はオランダのような小国に対して、三千とか年に兵力を増すことを期待していますけれども、オランダでは経済の安定と矛盾するといつて応じません。そういう制限を課したために、アメリカではヨーロツパ諸国でも自分の期待がちつとも実現されていない。オランダやデンマークのよう小国でもしかりで、日本がいの制限をたてにとつたら、これはもうアメリカは弱るだろうと思うのです。でございますから、そういう無制限ということの制限なので、制限が大き過ぎて、援助を与える方の国が弱つておるというのが国際間の実情でございます。自国防衛力並びに自由世界の防御力との何を御質問でございましたが、欧米局長の申されますように自国防衛力を発展させることが即自由主義世界防衛力の発展になるという一面もございますが、他面フイリピンで機関銃ができないというなら、よろしい日本で発注を受けてフィリピンに機関銃をつくつてつてあげましようということも、自由主義世界防衛力の発展になるわけであります。さしあたり可能な事柄はそういうようなことではないかと思います。
  109. 穗積七郎

    穗積委員 私はちよつとお言葉を返すようでございますが申し上げておきます。これは制限規定が大きいからがんばつたのではないのであつて、その国々によつて違います。政治力なり独立の精神が強かつたからがんばつたのであつて、この規定でがんばつたのじやない。日本の場合におきましては、たとえば昨年の秋までは、来年度MSAを受けても兵隊はふやさない、軍事予算はふやさぬといつて明言しておきながら、同じ内閣が一月か二月しないうちにひつくり返つて、何万という兵隊をふやし、軍事予算をどんどんふやして来る。これは明らかに世界周知の事実ですが、アメリカの強要によるものだということは明瞭でございます。すなわち法律上一体どこで抵抗したかということです。抵抗できないじやございませんか。だからそれを私は言つておる。無制限だということはその規定に、相手がどうであろうと、あるいは他の周囲の状況がどうであろうと、その国の政治力なり政府の実体がどうであろうと、客観的にロジカルに権利義務が規定されておるなら、これではつきり明確になりますが、今言いました通りに、実は日本の経済力が弱いからこれ以上兵隊はふやさない、だからMSA援助を受けて兵力を強化するのだと、こう言つておる。そうしておいて、すぐ同じ内閣がそういうことをやるのです。だからさつぱりこれを使つていない。使うのはこの制限規定が強いからではなくて、これが抵抗力ではなくて、政治力が抵抗力でございます。ですから、そういう条約局長の御指摘は、私は実は私の心配をそのまま裏書きするものだと思うので、念のためにちよつと申し上げておきます。  そこで第二項でございますが、第二項の……。
  110. 上塚司

    上塚委員長 穗積君、もうすでに四十分を許しておりますが、あなたのあとになお三人発言君が残つております。これは本会議の始まる前に終りたいと思いますから、適当にひとつあなたの質問を整理してください。
  111. 穗積七郎

    穗積委員 わかりました。それでは委員長に提案いたしますが、あまり私が一ぺんに長くやつても何でございますから、他の方にやつていただいて、私の方は実は上林委員、福田委員の時間を私がもらうことにいたしましたから、そのときの時間をもらつてあとまた続けて八条の質問をいたします。そういうふうに御了解をいただきまして、ひとまず留保してあとの委員の方に質問をしていただくことにいたします。
  112. 上塚司

    上塚委員長 戸叶里子君。
  113. 戸叶里子

    戸叶委員 八条を伺います前に、ちよつと外務省に伺つておきたいことは、さきにこの委員会アメリカ原子力委員長のコール氏の発表に対しての御調査を願つておきましたが、それに対して御調査していただいたかどうか伺います。
  114. 土屋隼

    土屋政府委員 こちらから御要望がございます前に、あの記事を見まして、事務当局といたしましては、ワシントンにあのときの事情その他を聞いておりますが、今までのところコール氏のあの新聞で報道されましたところを確認したものはまだ聞いておりません。従つて事情もまだはつきりいたしませんですが、いずれ事情をよく調べました上で報告があるものと期待しております。
  115. 戸叶里子

    戸叶委員 確認したものが来ていないというだけでなしに何も来ていないのですか。何か来たのですか。
  116. 土屋隼

    土屋政府委員 本件については何も来ておりません。
  117. 戸叶里子

    戸叶委員 それは少し外務省のな怠慢ではないかと思います。MSA協定が最初に出ましたときに、たしか日曜日をはさんで三日間のうちに向うに問い合せて、その返事が公文書で来て、しかもそれが翻訳され、印刷されて、ずいぶん早く、外務省でもこんなに早くれ仕事ができるのかと思つたほど早くできたことがございますので、もうこういうことくらいできておるかと思いましたが、まだであるとしますと、重大なことですから、なるべく早くしていただきたいということをまず要望したいと思います。  次に八条の問題でございますが、まず八条の二項に当る「国際緊張の原因を除去するため相互聞で合意することがある措置を執ること」こう書いてございますが、これはMSA法によりますと、行動をとるというふうに書いてある。つまり原文を見ますと「テーク・サツチ・アクシヨン」と書いてあります。また日本アメリカの間のMSA協定の英文にも「ツー・テーク・サツチ・アクシヨン」と書いてあります。ただ日本文の場合だけ措置をとるというふうに書いたのはどういうわけでしようか。行動をとるということと違わないのでしようか。
  118. 下田武三

    下田政府委員 アクシヨンという言葉を行動と訳す場合も、措置という訳を使う場合もございますが、意味は同じことであります。
  119. 戸叶里子

    戸叶委員 私は行動の方が少し積極的じやないかと思つたのですが、それは同じになるといたしまして、次に先ほどから問題になつております四項百のことですが、もう一度はつきりさせていただきたいことは、人力資源施設が許す範囲内で「自国防衛力及び自由世界の防御力の発展」に寄与するのだ、こういうふうなことに先ほどの政府の御説明でございましたが、そうすると人力資源施設に寄与しないということは一体どこでわかるのでしようか。
  120. 土屋隼

    土屋政府委員 先ほどの御質問は、この規定から申しますと人力資源施設を出すという規定でないかという御質問でございましたから、そういう規定ではございません。これは自国で寄与する場合において、人力なり資源なり施設なりの面において寄与できない部面があれば、やめてもよいという意味制限規定でありまして、人力なり資源なり施設を出すという規定ではございませんとこう解釈申し上げたのであります。
  121. 戸叶里子

    戸叶委員 寄与できない面があればしなくてもよいということになりますと、寄与しないでもよいということにはならないと思うのですが、その点はどうでしようか。
  122. 土屋隼

    土屋政府委員 寄与しなければいけないということは規定してございませんし、寄与してもさしつかえないのであります。もちろんその場合には自国の経済、政治の安定と矛盾するかどうかということを自分できめてよいし、またそういうものが一般的経済状態として許すかどうかということを自分できめてよいのでありますから、寄与する場合も寄与しない場合もございましようが、自分できめてよろしい、こういうことでございます。
  123. 戸叶里子

    戸叶委員 そうするとやはりそこに寄与しないでもよいという、はつきりとした規定がない限り、寄与しなければならぬ場合も出て来るのではないかその点が一番大きな問題ではないかと私は思います。ことにこの中に「フル・コントリビユーシヨン」ということが書いてありますけれども、これは先ほど欧米局長が何とかおつしやつたのですが、ちよつとわかりませんでしたが、ここには「寄与し、」というだけで、フルという字が抜けている。そういう点を見ましても、全面的に寄与しなければならないというふうに考えられるのじやないかと思います。そこからやはり人力資源施設というものも寄与するということになつて来るのではないか、この点を気づかわれるのですが、その点を御説明願いたいと思います。
  124. 下田武三

    下田政府委員 字句の点でありますから、八条の点を御説明申し上げますと、これはこの前の御説明でも申し上げましたが、「パーミツテッド」ということと「フル」という字を総合しまして、「許す限り」と日本語では訳しておるわけであります。許す限りということは、許し得る最大限の範囲内でというわけでございますから、日本語の場合には全面的と書くとかえつて意味が誇張されて参りますので、許す限りといたしたのであります。
  125. 戸叶里子

    戸叶委員 そういたしますと、結局先ほどからの御答弁を聞いておりましても、これは日本が自主性を持つてそういうことをいろいろきめるのであつて、大して問題でないというふうにもとれました。そうしますとこのMSA協定の中での義務規定というものは、結局三条の秘密保護に対する義務規定と、顧問団を置かなければならないという義務規定、その二つだけであつて、この八条は義務規定ではない、こういうことが言えると思いますが、それでよいのでしようか。
  126. 土屋隼

    土屋政府委員 義務規定でないと戸叶さんのおつしやいます御質問が、おそらく義務の明確なる履行をきめてない規定であるから八条は義務規定でないので、ほかのこまかくきめてあるところがそうじやないかという御質問でありますとその通りであります。しかし八条がそれでは全然義務を規定していないかと申しますと、これはいつも申し上げますように、とにかく援助を受ける資格でございますから、場合によつて、それを裏返して、ある意味において少くとも義務があると考えざるを得ない部面があります。たとえば今おあげになりました「寄与し、」というのも、日本が寄与する内容ははつきりきまつておりませんけれども、やはり道義的には義務として考えなければいけないと思います。あと自国防衛力及び自由世界防衛能力増強のために、すべての必要なる措置というものも、全然とらないでほつておくというのではありませんで、これも自分できめる内容でありますが、当然義務があるだろうと思います。アメリカの提供したものを有効に使うというのも、これも適正な措置をとるのは、日本人が自主的にきめてよいのでありますが、措置をとることについては義務であることは問題ないと思うのです。従つてそんな点についてはこまかく義務規定がございますが、私ども考え方では、この八条は一般的に援助を受ける資格を述べてありますが、その中にすでに日本側がきめてある方針にしても、義務の内容をなすものはもちろんあり得るので、こまかく規定するところがございませんから、実際上の履行にあたりましては、十分に自国の裁量できめ得る面が多分にあるのだ。こういうことでありますし、他の規定は援助の具体的なものをきめる関係上、こまかい規定があるというので、三条に来たということだろうと思います。
  127. 戸叶里子

    戸叶委員 そういたしますとやはり八条は三条や七条と同列に並べての義務規定であると思わなければならないものであるということになるわけでありますか。
  128. 下田武三

    下田政府委員 全然その反対であります。八条は先ほど申しましたように制限的規定でございます。それに反して免税の義務のごときは何と何をどういう手続で免税しと、具体的にこまかく書いたのであります。でございますから、具体的な義務を規定した他の条項と比べますと、第八条はその正反対でございます。制限的な規定でございます。
  129. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、これは具体的な規定でなくて抽象的な規定、こういうことになるわけでございますね。そういうふうに了承してもいいわけでしようか。それが一点と、それから先ほど伺つておりますと、五百十一条の三項に軍事的義務を履行することとあるので、日本が負い得る軍事的義務は何かと考えてみたときに、安保条約に基いて負つているその軍事的義務を履行するのだというふうにおつしやいましたが、そうすると、ここでもしも「安保条約に基いて負つている義務を履行することの決意を再確認すること」と書いた場合と、「軍事的義務を履行することの決意を再確認すること、」こう書いた場合の違いはどういうことになるのでしようか。
  130. 下田武三

    下田政府委員 御質問意味がよくわかりませんが、五百十一条でも抽象的な軍事的義務を履行することを書いておるのでなくて、アメリカが一方の当事国となつてつて、しかも援助を受ける国も当事国である多数国間または二国間の条約上の軍事的義務を履行することと書いているわけでありまして、日本の場合にはもう安保条約しかないのでございますから、そこで安保条約に基いて負つておるというように抽象的な条約にしませんで、特定の条約を掲げた次第でございます。
  131. 戸叶里子

    戸叶委員 そうじやなくて、もし日米間のMSA協定の場合に、「安全保障条約に基いて負つている義務を履行することの決意を、再確認すること」とこういうふうに書いて、「軍事的」という字を抜かした場合にはどういうふうに違うかということです。
  132. 下田武三

    下田政府委員 「軍事的」という字を抜かしましても、まつたく同じでございます。
  133. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、どうしてそういうまぎらわしい言葉をそこにお入れになつたのですか。
  134. 下田武三

    下田政府委員 まぎらわしくございませんで、五百十一条で「軍事的義務」と書いてありますのをそのままとつたわけであります。
  135. 戸叶里子

    戸叶委員 しかし五百十一条に書いてある「軍事的義務」と、この場合の「軍事的義務」との内容が違つているはずでございます。それであるならば、何もここにわざわざ軍事的義務という、「軍事的」という字を使わなくてもいいのじやないかというふうに私ども思いますが、その点どうお考えですか。
  136. 下田武三

    下田政府委員 これはそれぞれの国が結んでおります条約の内容が違いますから、国々によつてみな違うわけであります。日本の場合は安保条約でちやんときまつておるのでありますから、安保条約義務と申しましても、安保条約で負つている軍事的義務と申しましても、全然同じでございます。
  137. 上塚司

    上塚委員長 細迫兼光君。
  138. 細迫兼光

    細迫委員 先ほど佐々木委員にお答えになりました御答弁は、少し第八条の読み違いではないかと思うのでお尋ねをいたします。日本国政府は自由世界防衛力の発展に寄与する、どういう範囲で寄与するかといえば、人力資源及び一般的経済条件の許す範囲で寄与する、これは範囲をきめておる制限規定だとおつしやいますが、しかし、これは人力条件の許す限り人力を寄与し、資源条件の許す限り、資限をもつて防衛力に寄与し、施設条件の許す限り防御力の発展に施設をもつて寄与する、こういうふうに読むのがほんとうじやないかと思うのでありますが、いかがでございましよう。
  139. 土屋隼

    土屋政府委員 お言葉でございますが、これはやはり自由世界の防御力に全面的に寄与するという精神をうたつてございますが、国によりまして資源の面で制約を受ける国もございましよう、施設の面でその制約を受ける国もございましよう、一般的に経済状態全体から制約を受ける国もあるのでございますから、そういう点を考慮して、あるいはその全体を考慮して、寄与の内容、範囲というものはおのずからかわつて来ているという精神をうたつたものだろうと思います。ですからその例外として、マンパーリーが許さないならやらなくてよろしいよ、資源が許さないならばやらなくてよろしいよ、施設が許さないならばやらなくてよろしいよ、経済的な安定を害する、あるいは政治的な安定を害するなら、それもやめてもよろしいよ、こういうことを言つておるので、決して人力なり何なりがあれば、それで行かなければならないという義務は出て来ないと思います。
  140. 細迫兼光

    細迫委員 これ以上は押問答になりましようからよしておきますが、率直な読み方は私が申した通りだと考えられるのであります。いま一応の御考慮が願いたいと存じますが、問題をかえまして、アメリカが、主体的にいえば、日本をして自由世界防衛力の発展に寄与せしめる、こういう約束をするということは――この自由世界というのをアメリカ及びその同調国と解すべきことは世界の通念だと思いますが、そういうふうに解釈しますと、日本国連憲章にいわゆる敵国であるのでありますが、その敵国をして世界のある一部の国の防衛力、すなわち武力に寄与させることを約束せしめることは、国連憲章百七条に違反するものではないかという疑問を持つのでありますが、いかがでありましようか。百七条がなかなか読みにくいのでありますが、御説明とともに御回答をお願いしたいと思います。
  141. 下田武三

    下田政府委員 国連憲章の百七条は、国連が現在の世界における唯一の普遍的な平和促進の機関であるという根本的建前に一つの汚点を残しておる規定でございまして、これは日独旧敵国に対する敵愾心の現われでございまして、日本といたしましては、このようら規定が一日も早く削除されることを希望しておるものでありますが、この規定の意味するところは、国連憲章の根本的建前と申しますか、前文にもうたつておりますように、人間の尊厳と価値とか、社会的正義とかいろいろけつこうなことを言つておりますが、第二次世界戦及びその戦後において、あるいは戦犯の処罰であるとかあるいは自国にある日独財産の没収であるとか、非人道的な行為、一見国連の根本精神に矛盾するような措置をとつております。しかしそういう旧敵国に対する措置は、国連憲章のゆえをもつて無効にされたりまたは排除されたりするものでないということを第百七条できめたのでございまして、従いましてこのMSA協定の八条で日本を自由世界に引込むという思想は、直接この百七条の規定と関連ございません。むしろ考え方といたしましては旧敵国に対する敵愾心が消滅いたしまして、日本を自由世界の仲間入りさせようという点で、反対の傾向の現れであると見ることができるのではないかと存ずるのであります。
  142. 細迫兼光

    細迫委員 私はこの国連憲章百七条及び国連憲齢五十三条但書を総合して考えますのに、アメリカは連合国の一箇国として日本の武装を解除いたしましたが、百七条にあります「責任を有する政府」などというのはそういうアメリカなどをさすのではないか、それが戦争の結果としてとつた行動、すなわち日本を武装解除したというその行為を、無にするようなことをしてはいけないというように、読むべきではないかと思うのでございますが、その点私の読み違いでございましようか。
  143. 下田武三

    下田政府委員 条五十三条の但書が敵国に対する敵愾心の現われであるという点は百七条の精神と同じことだと思います。つまりこの第八章の規定の考え方というものは、地域的集団安全保障とりきめは、安保理事会国連として有効な措置をとるまでのつなぎとして発動し得るのだ、安保理事会がアクシヨンを手取り早くとるわけに行きませんので、とりあえずそのつなぎとして許されるという考え方であります。ところが日本とかドイツとか旧敵国に対しては実はつなぎではなくて、まだ安心できないなら安保理事会措置をとつても、またその関係国は、地域的とりきめに基く措置をとつてもいいという旧敵国に対する例外を認めた規定でございまして、その点やはり日独に対する敵愾心を残滓でございます。でございますからちようどこのMSA協定と正反対の考え方でございまして、MSA協定は旧敵国から日本をやはり自由世界に包容して、日本も自由世界それ自体も安全になろうという考え方でございますから、国際情勢の変化によりまして、五十三条但書とちようど逆の思想になつておるというように見られると思うのであります。
  144. 細迫兼光

    細迫委員 どうも大きな精神、つまり今お答えのように一応は日本を味方に引入れて自国の防衛の一助にしようという考えは、国連憲章の基本的精神とはかわつておると思う。これは確かに日独、旧敵国をあくまで無力にさして、将来ともぐうの音も出ないようにして行こうということの現われであると思うのでありまして、大きな精神におきましては確かにMSA日本と結ぶことは矛盾しておると思うのであります。そうしますれば、アメリカ日本に対するこのMSA条約を結びたいという働きかけは、国連憲章の根本精神に反するという非難が、当つておるのだというように理解せざるを得ないと思いますが、いかがでありましようか。
  145. 下田武三

    下田政府委員 国連の一番大きな根本精神は、やはり国際平和の維持と安全の保障でございますので、それにはMSA協定は適合しておる。但し旧敵国に対する敵愾心の発露たる規定も確かにございます。しかしそれは同じ根本精神でも次元の低い建前でございまして、また日本としては早く消滅してもらいたいという次元の低い例外でございますので、この協定の第一条、前文その他で国連憲章の精神をうたつておりますのは、最も高い次元の国際安全保障、国際平和の維持ということをさしておるわけでありまして、そちらには矛盾していないものと思つております。
  146. 細迫兼光

    細迫委員 いろいろ言葉を尽されますけれども、やはり私の読み方が正しいことを確認せざるを得ないのであります。すなわち国連諸国からは日本は非難を受けないかもしれませんが、アメリカは確かに非難を受ける価値があると申しますか、責任があるものと私としては考えざるを得ないのでございます。これ以上の押問答はよしておきます。
  147. 上塚司

    上塚委員長 河野密君。
  148. 河野密

    ○河野(密)委員 簡単に伺います。最初に伺いたいのは、第八条は棒読みに書いてございますが、相互安全保障法五百十一条の(a)項を棒書きにしただけにすぎない、中は同じだ、こう解釈してよろしいのでしようか。
  149. 土屋隼

    土屋政府委員 さようでございます。
  150. 河野密

    ○河野(密)委員 全然両方とも同じものであるとしますと、その五百十一条で見た方が非常によくわかりやすい。こちらの方がわかりにくいので五百十一条で見て、第一項は国際間の理解親善云々という問題で、これは宣言と見てもよろしいでございましよう。モラル・オブリゲーシヨンでありましようが、その次の「国際の緊迫の原因を除去するために相互に合意される行動をとること。」こうなりますとこれは具体的になりますが、この国際緊張の原因を除去するため、相互で合意することがある措置というようなものは、具体的に申しますとどういうことになるでありましようか。
  151. 下田武三

    下田政府委員 これも国連憲章第一条に「平和に対する脅威の防止及び除去」とありますが、あれと同じことでございます。具体的には朝鮮動乱の場合に国連総会決議いたしました勧告に基いて、その勧告に応ずる国が措置をとるというふうなことでありまして、相互に合意されるということがある行動でありますから、日本が合意いたさなければいかなる行動にも出ないでいいわけでございます。
  152. 河野密

    ○河野(密)委員 かりに日本が合意することがある場合においては、たとえば南朝鮮における国連軍を助けるとか、そういうようなことも、これは国際間の緊張の原因を除去するためにとる行動ということになるわけだと思うのですが、日本が合意するかしないかは日本の自由であるとしても、日本が合意した場合においては、当然日本にそういう義務が生ずるということは間違いないと思うのですが、いかがでありましようか。
  153. 下田武三

    下田政府委員 合意すればその通りでございますが、その合意が、日本は特殊の国でありましてまず憲法の建前がございますので、憲法に反するような合意はいたそうといたしましてもいたし得ないわけでございます。
  154. 河野密

    ○河野(密)委員 憲法の解釈はわれわれの解釈からすればまさにその通りでありますが、政府は至つてルーズな解釈をしておるので、その点は保証にならないから伺うのです。  そこでその次に私はお尋ねしますが、その第三の、合衆国が一方の当事国である云々といういわゆる軍事的義務――日本政府としてはこれに対して安保条約に基いて負うておるという制限は加えておりますが、これは私が申し上げるように、ほんとうに狭い意味軍事的義務、軍に限つておるところの、軍の行動に関するいわゆる軍事的義務、こういうものであると解釈されるのですが、その通りでよろしいのですか。
  155. 土屋隼

    土屋政府委員 五百十一条が軍事的義務という言葉使つておりますことは、各国に対する協定のひな型でございますから、そうあつたということは前に申し上げたと思います。そこで私どもは、このMSA協定を結ぶにあたりまして、軍事的義務日本にはあり得ないという考えを初め持ちましたので、軍事的義務を履行できない日本は、五百十一条の第三項を受けるわけに行かぬという質問をしたのに対し、向うから、この軍事的義務というものはそう厳格に解するものでなくして、内容で軍事的な性資を帯びるというものがあれば、それでさしつかえない、さしあたり日本との問題は、安保条約以外にないのであるから、安保条約で負つている消極的義務が、この五百十一条でいうところの軍事的義務の内容と同じだということを受けました関係上、わざわざここで安保条約を引合いに出すことにし、日本は、合衆国が締約国の一である云々という五百十一条の条文の言葉を省いたわけであります。
  156. 河野密

    ○河野(密)委員 いろいろ注釈がありましても、各国によつてそれぞれアメリカとの間にあるのでしようが、この規定は要するに、もし日本の場合でなければ、安全保障条約という制限がなければ、相互安全保障協定というものは、この一項によつて一種の軍事同盟となるものである、こういうふうに解釈してさしつかえないものだと私は思うのですが、いかがですか。
  157. 土屋隼

    土屋政府委員 そうならないと思います。その理由は、この五百十一条の三項でもわかりますように、自国がすでに受諾した軍事的義務でありまして、この協定によつて新しく受ける軍事的義務のことを言つておりません。だからごの協定を結ぶときに、その国がすでにアメリカとの間に持つている軍事的義務のことを再確認するというのが第三項の要件でございまして、それから先の問題は全然別のものだと思います。
  158. 河野密

    ○河野(密)委員 私はその点承服できないのでありますが、各国アメリカとの間で結んでおる、いわゆる当事国である協定あるいは条約において軍事的義務を持つておるというような国を再確認するということは、私はこれは一種の軍事同盟と解する以外にはないと思うのであります。ただ日本では、なるほど安保条約という制限はあるけれども、一つの軍事的義務を負うという、そういう性質の規定であるということだけは、これは間違いないと思うのです。
  159. 下田武三

    下田政府委員 この第三項のほんとうの意味はこういうことだろうと思います。つまりこれは援助を受ける資格の問題でありますから、高い税金をアメリカ国民から取上げて、外国に援助をしようというのでありますから、こういうことを約束するから援助を上げますぞと言つてアメリカの国民に説明する必要があるのであります。ですから、自分が約束した条約を履行しないような国民にやらないということを言つているだけなのであります。ところがこれはすべての条約だつたらたいへんであります。いろいろな条約でも、それが不満で、協議して改正したり、あるいは廃棄することもあります。ですから、ここに合衆国と結んでおるすべての条約を履行すると書かれたのでは、これはやりきれないのであります。ところがアメリカ国民に対して、軍事的の義務を持つている条約だけを履行してくれれば、援助をやりましようというように説明するわけでありまして、むしろこの規定としては、私は軽い書き方じやないかと思つております。
  160. 河野密

    ○河野(密)委員 そういうふうに解釈することは非常に危険だと思うのです。そこが重点だと思うのです。ここで軍事的義務を履行するということを条件にしてあることは、相互防衛援助協定というものが、この一項によつて――日本の場合は安全保障条約というのがありますから、その制限がついておるという外務省の御見解をかりに尊重するとしても、そういうことでなく、諸国においては、この条項によつて一種の軍事同盟になるものだ、これは私は間違いがないと思うのであります。これは義務を軽くするのだとかいうように解釈することは、私は非常にあぶない解釈だと思うのであります。  なおこつちが資問をして、向うから答弁があつたというような、交換公文なりあるいはそういう議事録というものは、当然これは協定に付属して両方で確認して発表されるのですか。
  161. 土屋隼

    土屋政府委員 私はただいまのお話で、この義務をここでうたってあることによつて、軍事同盟ができるという考えはどうもよくわからないのであります。五百十一条にいつておりますように、大統領は、受領国が次のことに同意した場合でなければ、援助を与えてはいかぬ。それはすでにアメリカとの間に負つておる自国軍事的義務があるとすれば、それを履行するのは当然でありますから、そういうことはどうしたかといつて、もう一回いえば、精神は非常によくわかりますから、けつこうでございます。そういう意味で、私はここで新しい義務の履行、新しい条約の性格というものは出て来ないと思います。また日本の方の関係で私どもが申し上げております根拠は、昨年の六月二十四日に、先ほど戸叶さんのお話のございました、当方でこの条項につきまして疑問とする点をあげまして、アメリカ側に回答を求めました。これに対してアリソン大使から二十六日付をもちまして正確な返事が来ております。従つてこの中に軍事的義務の責任をうたつてございますので、私どもの解釈を堅持してさしつかえないと思います。(穗積委員「それだけですか」と呼ぶ)そうです。
  162. 河野密

    ○河野(密)委員 私の言いたいことは日本の場合は別として五百十一条をそのまま読めば、特に強調してこういう国でなければ援助を与えないぞということは、これは一種の軍事的義務を再確認せしむるのであつて、私は一種の軍事同盟である、こう解釈する。これが当然の解釈だと思うのであります。そこでこれは、三項は狭い意味の軍事的のもの、四項、五項というのは、先ほどからいろいろ問題になつておりますが、四項はいわゆる日本でいうならば、防衛力漸増というか、自衛力漸増というような問題に当てはめて、広い意味の広義国防というか、そういう意味のことを規定したものであつて、単なる現在負うておる軍事的義務を履行するだけでは足らないので、将来に対しても広い意味軍事的義務を履行しろということの要求である。こういうふうに解釈できるのでありますが、その通りでありますか。この五項はこれは防衛能力、デイフエンス・キヤパシテイの問題でありますが、デイフエンス・キヤパシテイを発展させるということは、軍需産業、むろんミリタリイ・パワーも入る意味における防衛能力を拡大するというための措置をとる。こういうので、いわゆる広義国防、昔の言葉でいえば広義国防を強化するという一つの約束である。こういうふうに解釈されると思いますが、その通りでよろしいのですか。
  163. 土屋隼

    土屋政府委員 将来のずつと先のことにつきまして、この条文は広義国防を意味するかといわれる御質問でございますが、現在の段階で日本が直面しておりますのは、広義国防どころではなくして、国内治安に現在当つておりますところの保安隊を幾らかでも増強するという方針だけでありまして、全般の問題、産業構造、動員計画なり何なり立てまして、日本がそれに対して防備体制の全きを期するということではございません理由は、この防衛力の発展ということは、先ほどから申し上げておりますように、自国の経済並びに政治の安定ということを前提としておるわけであります。ですから経済、政治の安定ということを前提にして、できるだけのことをするというだけの約束でありまして、広義に従来使われておりましたような大きなものをここで約束するということは考えられません。ただ精神におきましては相通ずるところがございましよう。自国防衛力をなるたけ進めて行こうという日本考え方があり、これをアメリカ側に表明した、それがすなわちMSAの受諾の資格になる、こういうことになるだろうと思います。第五項も同様に考えておりますので、防衛能力と申しますのは、いつか話がございましたように、日本防衛力の基礎になるものと考えますから、産業、金融、資源その他一般的な組織や法制をも含むこともちろんでありますが、それに対して日本がそのときにおいて必要とする合理的な措置をとるのでありますから、合理的な範囲を越える必要はございませんし、また必要な範囲を越える必要もないわけであります。従つて現在の段階におきましては、第五項は一応こういう題目をうたつたという効果しかないというふうに考えておるわけであります。
  164. 河野密

    ○河野(密)委員 次に第六項でありますが、原文を見ますと、「経済及び軍事援助が有効に利用されることを保証する」こう書いてありますが、今度の八条を見ますと、「アメリカ合衆国政府が提供するすべての援助」こう言つて、特にミリタリイという言葉を避けております。これはいろいろな考慮からこうしたのだろうと思いますが、しかし「すべての援助の効果的な利用を確保する」ということと、それから「経済及び軍事援助が有効に利用されることを保証するために適当な手段」、これは同じものだと思いますが、同じものと解釈してよろしいか、それだけお尋ねしましよう。
  165. 土屋隼

    土屋政府委員 同じものでございます。五百十一条からとりましたので、精神においてかわりはございません。ただ差加えますと、第六項において合衆国が供与する経済援助というのが出ております。日本には経済援助がないこともちろんでございましたので、私どもは実は五百十一条を第八条に書き直しますときに、原文のまま合衆国が供与する経済という点も入れてもよいという違憲を持つたのでありますが、この点は向うが経済援助ができない現在において、経済をうたいたくないので経済をとりましたというのが実際上の経過であります。
  166. 河野密

    ○河野(密)委員 それでは同じものと解釈して申しますと、いわゆる軍事援助が有効に利用されることを確保するための適当な措置をとる、こういうことを日本政府は約束しているわけです。そうしますと、これが、今日本政府防衛力漸増というか、自衛隊というものを約束しておる、自衛隊というものをとらざるを得ない一つの大きな根拠になつておると思うのでありますが先般来私は二、三べん質問したのに対して、自衛隊とこの協定とはちつとも関係がないのだという、白々しいと申し上げては悪いのでありますが、いかにも白々しい御答弁をなさつておつたが、こういうところからのつぴきならない関係が出て来ておると思いますが、その通りだと思いますか。
  167. 土屋隼

    土屋政府委員 私どもは正真二銘、正直な御返事を申し上げておるつもりでございますから、さようお受取り願いたいと思います。五百十一条のあとに軍事援助と書きましたのを、第八条で軍事というものを抜かしましたところに多少の疑問が出て来たのではないかと思います。私どもはこの協定全体を通じまして、「軍事」という言葉を使うのをなるたけ避けたいという考えをもちまして初めから臨みました。遺憾ながら残りました項が一つだけございます。それはただいまお話がございました第八条の「軍事的義務」という言葉でございます。それ以外には事実という字はこの中にはないはずであります。その理由は、日本には軍事がないのでありますから、軍事援助という言葉を使うことが不適当だという単なる考えにすぎません。上の他意はないわけであります。ただ五百十一条の第三項は、軍事的義務というはつきりした義務をうたつておりましたので、その内容を確かめた結果、軍事的義務だといつているけれども日本では安保条約だということをうたえば、「軍事」という言葉使つてもさしつかえなかろうというので、これだけは例外として残したのであります。そこでこの第六の問題でございます。日本に対する援助は、アメリカはいわゆる範疇といたしましては軍事援助の範疇で日本にくれるわけで、日本はこれを覚悟で受けるのであります。しかし私どもはこれが、日本の保安隊の増強という、日本の経済のかなり難点になつております点において、非常に日本への援助になるという点から、経済的のうまみもございますという趣旨で受けたのでございますから、あえてここに「軍事」とうたう必要もありませんが、アメリカから受けるいかなる援助に対しましても、せつかく受けた援助でありますから有効に使いましようという意味で、「軍事」をとつた以外には別段他意はなかつたのであります。
  168. 河野密

    ○河野(密)委員 そこで、それから先は政治論になりますから事務当局に伺うことは避けますけれども、私はこの協定の全体を読んでみて、ああ言えばこう言う、こう言えばああ言うという、一応抜け道は上手につくつていると思うのです。それなるがゆえに、この協定全体の性格に対する疑問というものはますます深まらざるを得ない。しかしこれは吉田総理なり岡崎外相に伺わなければならないことなので、今事務当局にこれを伺つても無理だと思うのです。  そこで最後にひとつお尋ね申し上げたい。先ほどから、第八条というものは新しい義務をつくつたものでもないし、義務規定でもないということを繰返し繰返し言れている。細迫君が指摘された点について、まことに苦しい答弁をしておられるのであります。抽象的な一種のデクラレーシヨンにすぎないのだ、資格を得るためのデクラレーシヨンにすぎないのだというような、そういうお考えであるならば、私はこの協定に半年以上の歳月を何で費したか。何のためにそれほど慎重に構えて、右から左からつついたか。この協定を結ぶのに日にちがかかるはずがないじやないか。単に五百十一条を書き流しにするか横に並べるかというだけの違いであるならば、何も半年の歳月を要する必要はないはずだと思うのです。そこがわれわれの何とも疑問が解け得ない点なのでありまして、何ゆえにそう長くかかつたのか。そして第八条に最もこの協定の中心があるというので、ここに一番よけいの時日を費したものと考えるのでありますが、そういうような点について最後にお尋ねをしたいと思うのであります。
  169. 土屋隼

    土屋政府委員 歳月を費したことは、事務当局の私どもが交渉にあたりまして、はなはだ欲をかきましたのと、無能でありましたのと、そういうことがあつたためでありまして、ほかにはないのであります。第八条について時間がかかつたのかという御心配がございましたが、第八条での会合は一回か二回できまつた問題でありまして、最後に六箇条をばらばらに書き並べるか、それとも書き流しにするかという点につきましてはかなり話をいたしましたが、それ以外には、原則的に日本側も本件については何らの疑いもなく受けるつもりでございましたので、これについての時間は費しておりません。八箇月費したのは、さつき申しましたわれわれの能力が足りなかつた点にもあります。欲をかきました点は、さしあたりアメリカは現在においていわゆる軍事援助をするという方針をきめておりましたものの、日本の経済その他から考えて、まだ日本に経済的に援助する余地はないか、またこの軍事的援助日本の経済に大きく寄与するという方向に実施ができないものかどうか、また一年々々にアメリカ予算はきまるのでありますが、将来についてどこかで約束させることはできいか、こういう点にわれわれは交渉の主力を注ぎまして、それが遅れましたことも事実であります。それからあとにつきましては、顧問団その他につきまして、もちろん具体的にこまかい問題で多少紆余曲折は重ねたのでありますが、そういう点で、ごらんになりますと五百十一条を書き流しただけの簡単なものが、どうして八箇月かかつたかというおしかりのようでございますが、そうではございませんで、この一行々々書くのにも、われわれといたしましては足らぬ知恵をしぼりまして時間がかかりまして、申訳ないということであります。
  170. 河野密

    ○河野(密)委員 今の御答弁、はなはだ苦心の存するところは了といたします。けれども、私の疑問を解くことはできません。その点はもう一ぺん総理なり外相なりにお尋ねしますが、ただ私が事務当局の方々にはなはだ満足できない点は、今私が指摘いたしました五百十一条の六項にある、やはり日本がこの裏づけとしての防衛計画というものをどう立てるかということです。MSAの案文をどう書くかということでなく、この問題が交渉の過程において最も大きなひつかかりであつたということは、これは万人周知の事実です。昨年九月の吉田・重光会談は何のためにやつたのか、池田・ロバートソン共同声明は何のためにあつたのか、そういう議員をあまり子供扱いにするような答弁はなさらぬ方がいいと思うので、この問題は、第八条の裏づけとしての防衛計画というものが、今度の協定の主眼目であり、この交渉のためにすべての時日を費し、吉田総理が新しくアメリカへでも出かけて行かなければならぬという理由の根本をなしておる。私は事務当局を別に責めようというのではございませんが、この協定はそういうものであるということだけは、これを結んだ当事者として率直に国民に知らしておく必要があると思うのです。そういうことをごまかしておいて、ああ、そんなはずじやなかつたということは、私は国民に対してこういう重大な問題については、たいへん不親切だと思うのでありまして、そういう趣旨のものであるということだけは確認しておいていただかなければならぬ。それから先、外務大臣なり総理大臣がどういうふうにこれを政治的に取扱うかということは、それは政治問題だけれども、当局としては率直にMSAの条文を読み、今度の協定の条文を書いた者としては、そういう趣旨のものであるということだけは、はつきりあなた方の責任において明らかにしておいていただきたい、私はこう思うのです。
  171. 土屋隼

    土屋政府委員 もしそういういきさつがございますれば、私ども申し上げるのは当然でありますが、実際上私どもにないことだけは、私ども答弁がお気に召さないでも、事実としてお受取りをいただく以外に方法はないと思います。私はこの交渉を始める前に、アメリカ側にこういうMSA協定をつくるについて、日本の防衛計画が絶対に必要かという質問個人として出しておりますが、必要でないというのです。毎年これはかえるのだがら、そんなに長い計画をもらつても必要はない。さしあたりお前のやるのは協定をどう結ぶかということだけでいいじやないかということを、言うのです。たまたま昨年の九月、十月に池田さんもアメリカに行かれ、ちようど日本予算編成期にもなりまして、日本の防衛計画が立つことになつておりますので、予算面から見た防衛計画ができれば、この協定についても、場合によつて内容をかえる、あるいは交渉によつてかえ得る余地があるかということから、足踏みしたことは事実であります。しかしこれは足踏みでありまして、私ども交渉の当局といたしましては、防御計画が暗礁に乗り上げたから交渉が遅れたとは考えておりませんで、われわれとしては足踏みしておるときは、たまたま十二月近くでござましたから喜んで足踏みいたした、こういうことでございます。
  172. 上塚司

    上塚委員長 穗積七郎君。
  173. 穗積七郎

    穗積委員 先ほど私が留保しました質問で、その後他の委員の質問によつて明らかになつた点が数点ありますので、残つた点だけお尋ねしておきます。  第一はさつきから問題になつています第三項の「軍事的義務」でございますが、これが深刻な意味を持つていない、消極的な安保条約義務以上に出ないものだということを法律的に明らかにするものは、昨年六月二十六日の交換文書の本旨によつてであるということでございましたが、それだけでございますか、そのほか発表されない公式の議事録等にも、そのことが明らかになつておりましようか、そのことをお尋ねいたします。
  174. 土屋隼

    土屋政府委員 これは昨年の六月二十四日並びに二十六日の書簡、それからたしか七月十五日に第一回の事務当局の会合が開かれました節、出席されたアリソン大使の演説の中にもその趣旨はうたつてあるわけであります。従つてどもといたしましては、いくら考えましても、日本アメリカとの間の協定もしくは条約で、ここにいう「軍事的義務」と考えられるものはほかに見当りませんので、その点を確かめましたから、それ以外にないという安心を持つているわけであります。
  175. 穗積七郎

    穗積委員 公式議事録にはございませんか。
  176. 土屋隼

    土屋政府委員 公式議事録というものをつくりませんでしたから、議事録にあるかないかという御質問ですと、議事録にはないということになりましようが、初めから公式議事録はないのでありますから、記録としてそういう点はとどめておりません。
  177. 穗積七郎

    穗積委員 私は外交交渉の慣例について不案内でございますから、念のためにお尋ねいたします。これからMSA全体について話を進めようというときに、ああいう抽象的、一般的な質問書に対する答え、ああいう交換文書のレターが、やはりこの条約ができまして後においても、法律的な効力を持つているものでございましようか、その点が一点。もう一つは、アリソンの演説または交渉に入ります前のあいさつというものが、法律的な根拠を持つておるものでありましようか、その二点をお尋ねいたします。
  178. 下田武三

    下田政府委員 あの種の正式の交換書簡は重要な外交文書でありまして、条約の解釈を決定するには、解釈の基準という意味で法律的な意味はあるわけであります。
  179. 穗積七郎

    穗積委員 演説はどうですか。
  180. 下田武三

    下田政府委員 演説もまた解釈の重要な基準でございます。
  181. 穗積七郎

    穗積委員 こういう場合はいかがでございましようか。最初交渉してみたときはそういうことであつたが、その後の交渉の結果、外には現われていないが、軍事的義務は負わぬというつもりで初めは話を進めた。負わぬでも何とかしようという考えでやつたが、交渉した結果、この条文ができるときにはそれと原則がかわつて、実は日本側がそれを遂に説得させられた、くどき落されたという事実が他のところに残つておれば、前のやつは消えるわけでありまして、最初の予備交渉のときのものであつて、あれは解釈の参考資料ではございましようが、法律的な基準がはたしてあるものか。私は普通の民間の売買契約等の私契約の場合におきましてもそうだろうと思うのです。だんだん条件がかわつて来る。最後に残るものは契約書、すなわちこれだけだと私は思うのです。公式に認められた議事録というものがあればそれはまた別でございましようが、そうでなくて、予備交渉の時代の演説とかレターは、参考資料ではあるけれども、法律的な効力を持つているかということを、もつと正確にひとつ法律家としてお答え願いたい。
  182. 下田武三

    下田政府委員 あの文書はあの上によつてつてつて本交渉が発足いたしました重要な基本文書でございます。でございますから、もし仰せのようにかりにあとからぐるぐる考え方がかわつたといたしましたら、あれだけの重要な基礎条件でございますから、当然前のを取消すなり考えを明白にするために、新たな文書なり演説が行われなければなりません。しかし事実は全然そうでございませんから、交渉の当初に交換しました文書をそのまま生かしておるままで放置しておるわけでございます。
  183. 穗積七郎

    穗積委員 私はなぜそういうことをくどく聞くかというと、当時そのことが問題になりましたときに、岡崎外務大臣はこの委員会で言われたと記憶いたしますが、つまり六条項条件の中の「ミリタリイ・オブリゲーシヨンズ」というものが日本の憲法に反するから、そこでアメリカもそのことを知つているから、おそらくこれは免除して協定を結んでもらえるだろうということが一点。もう一つは中共との貿易制限については、これは日本の議会の声明等もあるから、それは条文の中には載せないということを当時断言せられております。そういう理解のもとにわれわれはこの六条項がのまれるであろうと、予備質問したときにはそういうふうに理解しておつた。ところがさつきからの河野さんとの問答に出ましたが、はつきりミリタリイ・オブリゲーシヨンズという言葉が出て来ておるわけです。ただ言うならば、安保条約に負つておるところの義務だけでよかろうと思うのですが、そうでなしに「軍事的」という言葉を入れて来ているのですから、岡崎外務大臣があのレターを交換した直後において理解しておつたものとはだんだんかわつて来ているのですから、レターに対する理解というものはかわつたのじやないかと思うのですが、どういうものでしようか。そういうことは悪くいえば、向うは言いがかりですし、こつちからいえば弱みですが、そういうことがあり得るのではないでしようか。法律的なあれもつけなければならないわけですね。法律的な効力があるなら、ちやんと条文の前に、前文にうたうか何か、あれは一緒のものでしよう。
  184. 下田武三

    下田政府委員 軍事的義務にもピンからキリまでございます。
  185. 穗積七郎

    穗積委員 私はレターと声明の法律的根拠を聞いておるのです。
  186. 下田武三

    下田政府委員 レターと声明は、この解釈の重要なる基準でありまして、解釈を定める点におきまして法律的効果があるわけであります。
  187. 穗積七郎

    穗積委員 次はちよつとさきに河野さんとの問答の中で、私がかつて質問いたしましたことが、あいまいになつて来たので、もう一ぺんお尋ねしますが、第四項の自国防衛力の中には自衛隊を含んでおるのでしよう。この防磁力が何かということになれば、その具体的な姿は自衛隊でございましようね。
  188. 土屋隼

    土屋政府委員 現在の段階におきましては保安隊であります。
  189. 穗積七郎

    穗積委員 よくわかりました。そこでもう一点これに関連して、私はこの前から二へんも聞いておるのですが、はつきりしないのだが、自由世界防衛力と前の自国防衛力と法律用語として同じ言葉使つてある。そうするとそれが内包するところの概念内容とうものは、同じ法律条文に出て来る言葉は同じでなければならない、そういうものだと思うのです。ここのところをもう一ぺんはつきりしておいてもらいたいのです。日本の場合においては、自衛隊であるが、自衛隊は外国の軍隊とは違う。交戦権を持つていない、まだ戦力にも至つていない。それはすなわち何かといえば、同じ言葉であるけれども憲法が違うから、相手が憲法を認めておるであろうから、従つてこの防衛力は自由世界防衛力とは内容が遣うのだ。それは当然認められておるのだというふうな理解でよろしいのでしようか。私はそれではどうも――違うなら違つたと言葉を使つたらよかろうと思うのですが、どういうものでしようか、その点はつきりしておいていただきたい。
  190. 下田武三

    下田政府委員 防衛力とは直接防衛の目的に供せられる人的、物的手段であります。つまり兵力と装備を意味するわけであります。その抽象的な防衛力日本の場合に当てはめれば保安隊というものになるでしよう。しかし自由世界防衛力と申します場合には、自衛隊などと言つておる国は一つもないのでありまして、あるいは軍隊と言つておるかもしれませんし、それぞれの国の名称で言つております。しかしとにかく自由世界の防御力の中に定められる人的、物的手段の増強に寄与するということでありますが、人間をそのまま外国に持つてつて、その兵力を寄与するということはどこからも出て来ないわけ6あります。従つて現在の憲法のもとにおいてどうということは、せいぜい装備の面で向うでできない装備を日本とつくつて送るということに考えられることになると思います。
  191. 穗積七郎

    穗積委員 せつかくのお答えでございますが、私の質問ちよつと違うのです。これによつて外国へ出兵する義務を負うのではないかということを私聞いておるのはでなくて、日本が軍隊をつくる義務がここで生じはしないかということなのです。それは何かじやまになるかといえば、経済がじやまになる。一つは憲法がじやまになる。そうであるならば、経済も憲法もこれにアダプトするように、かえるように努力したらいいだろうということであつて、私の言つておるのはこういうことなのです。つまり派兵ということではなくて、国際紛争を解決する手段として、国権の発動としての実力部隊としての防衛力というものが一つ、もう一つは交戦権を持つておる軍隊に仕立て上げるべき一般的義務をここで負つたのではないかということを開いておるのです。つまり戦力なり交戦権を持つようなものに仕立て上げろという国際法上の一般的な義務を負つた。あとそれをやるために第一にぶつかるのは、法律的にいえば憲法ですから、そうすると憲法を改正して――アメリカは、御承知の通り憲法は国内ののもであるから、MSA協定をつくるときにわれわれは憲法にとらわれる必要はない、日本国民の自主的に決定すべきものである、こういうことを言つて逃げておる。
  192. 下田武三

    下田政府委員 防衛力増強して戦力に達するものに仕上げる義務があるのではないかと仰せになりますが、まさに政治及び経済の安定と矛盾しない限度でやるのでありますから、ただいま国民が一致して憲法を改正すべしという議がまとまつておりましたらともかく、そうでなくて今から憲法を改正しようということは、政治的混乱を生ずることは確かだろうと思います。ですからこの条件でできないことだろうと思います。
  193. 穗積七郎

    穗積委員 あなたは非常に頭がいいくせに問題をそらして困るのです。私の聞いておるのはそうじやない。今言いましたように、経済条件が許すというのは自分の判断だということですが、そうではない。私の聞いておるのは、政治経済条件はこの際は除去して考えて、純法律的に考えまして、ここで防衛力を発展維持せしめる義務を負うわけです。その場合に、その防衛力の中身は何だといつたときには、つまり国際紛争を解決するための軍隊並びに交戦権を持つた軍隊、自由諸国の防衛力の内容、すなわち軍隊と同様の内容と性質のものに発展維持する義務を負うのではないかということを私は聞いておるのであつて、これは断られるということではなくて、法律的にはどうだということを聞いておるのです。
  194. 下田武三

    下田政府委員 法律的には全然そういう義務を満たす効果は、この規定は持つておりません。
  195. 穗積七郎

    穗積委員 どこでないのでしようか。
  196. 下田武三

    下田政府委員 これはつまりこの二重の制限がございますから、この制限のもとでできる限りということで、日本の場合はきわめて限られた範囲になります。
  197. 穗積七郎

    穗積委員 二重の制限とは今の経済的な制限でございますか。
  198. 下田武三

    下田政府委員 その前に政治及び経済の安定という、ひつかけようと思えば、何でもひつかけられる大きな条件があります。
  199. 穗積七郎

    穗積委員 それは客観的にあるものじやなくて、みずからが拒否するときの材料にはなるが、拒否する意思がない場合には、こんなものは抵抗線にはなりません。経済的な安定などというものは客観的なものじやなくて、非常に相対的なものでございますから、法律上は抵抗線にはなりませんよ。
  200. 土屋隼

    土屋政府委員 ただいまのお話を伺いますと、穗積さんのお考えは、自国防衛力はすなわち保安隊、自由世界防衛力はすなわち各国の軍隊、だからそれを平均する必要があるという御議論であろうと思います。これは原文にお当りいただくとよくわかります。防衛力とあるのは「デイフエンシヴ・ストレングス」という抽象的な字を使つております。先ほど穗積さんの問いに、日本防衛力とは保安隊をさすと言つたのは、問いに具体的に日本では何だとおつしやるから、具体的に探してみると、日本ではさしあたり保安隊ぐらいのものだろうということで申し上げたのでありますが、防衛力と一般に言つているのは保安隊だけでなく、日本としては人員だとか物質上の問題等の関連事項から防衛力を解さなければならないのです。自由世界防衛力もそういう意味考えて行けば、自由世界防衛力と保安隊と観念上の連繋を持つということは考えられないと思います。  それからもう一つは、ただいまの点につきまして、日本がやりたければ、これは自分でできる、これはこの協定関係がないわけであります。つまりこの協定で本件については何を約束しておるかといえば、この協定では本件についてはわれわれは何も約束いたしておりませんということを申し上げておきます。
  201. 穗積七郎

    穗積委員 その点は私はまだ納得できないのであります。(「吉田内閣が納得できないのだ」と呼ぶ者あり)そうではない。同じ言葉使つてあるところに問題があるので、「デイフエンシヴ・ストレングス」といえば、今までの国際法上の通念でいえば軍隊でございます。「アームド・ストレング」スならさらにはつきりいたしますが、そういう意味でございます。これは国際法上の通念は軍隊でございます。ただ一つ日本は憲法があるものだから、そこで特例になるだけでございまして、国際法上の通念から行けば、この防衛力とは明らかに軍隊のことを意味しておる。だからこそ「デイフエンス・キヤパシテイズ」という別の言葉使つてあるじやありませんか。総力です。戦力です。そういう抽象的なものではない。これは明らかに軍隊でございます。ただこれが憲法とひつかかつておるから、そこで保安隊といつておる。私の言うのは逆説的にここで押されて来る危険はないかということを聞いておるのであります。そういう意味ですから、これ以上お伺いいたしましても、前に進みませんから、最後に第六項についてお尋ねいたしますが、この「すべての援助」の中には域外買付は入りましようか。
  202. 土屋隼

    土屋政府委員 この八条で考えておりますのは、域外買付でなくて、直接日本援助される援助の内容を申しております。従つて域外買付はこの援助の中には入らないと思います。
  203. 穗積七郎

    穗積委員 日本の軍隊に援助すべき目的をもつて、将来日本国内において生産される援助はどうなりますか、完成武器でなしに……。
  204. 土屋隼

    土屋政府委員 そういう意味で、初めから日本防衛力増強ということを目的としての問題でありますと、それは援助に入つて来ると思います。
  205. 穗積七郎

    穗積委員 そういう場合が起きましたときに、その「効果的な利用を確保するための適当な措置」ということですが、この範囲が非常に広くなると思います。その場合におきます日本の軍隊に貸与することを目的として、日本国内において生産されるような場合に、その利用を確保するための適当な措置が非常に拡大されて、一例をいえば、たとえばその生産工場におきます労働組合の活動等につきまして、秘密保護法以外の制約を受けるというようなことは、この条文の中から出て来ないものでございましようか。
  206. 土屋隼

    土屋政府委員 今のお話につきましては、日本に対する援助というものは、最後にでき上つたものを受けるというところで初めて日本に対する援助でありまして、その間におきましては、いわゆる域外買付の形をとるわけでありまして、普遍一般のアメリカの注文と同じように取扱えばいいわけであります。その結果、契約の内容で日本の工業が負つている義務以外には負わないわけでありまして、今のような拡張解釈をされる危険はないと私どもは心得ております。
  207. 上塚司

    上塚委員長 第八条に関しましては、もはやほかに御質疑がないようでありますから、第八条に関する質疑を終ります。  次に、第九条以下十一条までは単なる事務的規定でございますから、一括政府より説明を求めます。    〔「休憩々々」と呼び、その他発言る者あり〕
  208. 上塚司

    上塚委員長 私語を禁じます。
  209. 下田武三

    下田政府委員 第九条以下は形式的条項でございまして、大部分は一般の条約の最終的条項とかわりはありません。  ただ第九条におきまして、既存条約関係と憲法との関係を明示しております。第一項におきまして、安保条約及び安保条約に基き締結されたとりきめを改変するものではないという点と、第二項におきまして、当然のことではございますが、それぞれの憲法上の規定に従つて実施をするという規定でございます。  第十条は協議条項でございます。第一項は、いずれか一方の政府から要請いたしますと、いかなる事項についても協議することができるということであります。第二項は協定のレヴエーに関する規定でございまして、同じく一方の政府の要請があつたときはレヴューする、そしてレヴューの結果、必要があると認めれば、合意によつて改正することができるということを規定しております。  第十一条以下は効力規定でございまして、この協定が発効いたしますのは、日本批准した旨の通告を受領した日に発する。ここで批准日本だけがいたすことになつておりますのは、米国はもう批准国会承認を求める必要がないからでございます。第二項は終了条項でございまして、特に御説明を要しません。第三項、第四項も特に御説明を要しません。
  210. 上塚司

    上塚委員長 第九条から十一条まで御質疑ありますか。   〔「あります」「ありません」と呼び、その他発言する者あり〕
  211. 上塚司

    上塚委員長 私言をやめてください。  それでは午後二時半から再開いたすことにし、この際暫時休憩いたします。    午後一時四十五分休憩      ――――◇―――――    午後三時四十九分開議
  212. 上塚司

    上塚委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  第九条より第十一条までを一括審議いたします。質疑を許します。御質疑はありませんか。
  213. 河野密

    ○河野(密)委員 この九条、十条、十一条は問題がないようですが、考えようによつては非常にこれは重要だと思うのですが、おそらく、憲法の範囲内でこれを実施するというようなことを特に断つて書いてある協定は、日本だけでしようね。
  214. 下田武三

    下田政府委員 MSA協定の例といたしましては、ほかの国にはこういうのはないと思います。
  215. 河野密

    ○河野(密)委員 その用意はわかりますが、そこで条約の中に、憲法の規定に従つて実施するものとするということを書いているその効果は、一体どういう効果を持つか。かりに日本の憲法とこの条約が矛盾するということが具体的に指摘された場合においては、この条約のこういう条文があつたとしても、これはその条約が合憲的なものであるという立証にならないと同時に、考えようによれば、条約の憲法に反する部分は無効である、こういうことに解釈できますか、これを承つておきたいと思います。
  216. 下田武三

    下田政府委員 この効果は、この協定は憲法に対して優位の立場に立たないということだと思います。でございますから、たとえて申しますと秘密保持の義務が両国にあるわけでありますが、刑罰を科するには法律をもつて定むる手続によらなければこれを科さないという憲法の三十一条の規定もあります。でございますから、法律なしに刑罰を科してはいけない。またいろいろな武器をもらいまして、倉庫や何かつくりますのには財政上の負担がいります。しかし憲法八十五条によりますと、国が債務を負担し支出をするには、国会承認を経なければならないと書いてございます。でございますから国会の御承認なしにやたらに物をもらつたり、倉庫を建てて、財政支出をしてはいけない。これら三十一条、八十五条のような、一切の憲法の規定は、この協定よりも健位の立場に立つということが、この効果だろうと思います。
  217. 河野密

    ○河野(密)委員 そういう点はきわめて明確でありますが、ここでわれわれが疑問とするのは、その前に書いてあります「日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約または同条約に基いて締結されたとりきめを何ら改変するものではない、こういうことなのですね。そうすると、この安保条約それから行政協定、これらのものもこの協定よりも優位に立つということなのでしようか。憲法も優位に立つが、それらの前に締結された二つ条約協定も優位に立つて、それらと相反するもの、相矛盾する点があつたならば、この協定はその部分においては有効でないというのですか、優位に立つというのは……。それらのものと相矛盾したものは当然ないはずだとおつしやつている。私は個々の具体的のものに入つて考えたらないとは言えないと思うのですが、それはしばらく別として、あつた場合においては無効である、この協定でどういうとりきめがあろうともそれは無効である、こういう解釈になるのでしようか。
  218. 下田武三

    下田政府委員 第一項と第二項では、第一項では改変するものと解してはならない。」と言つておりますので、第二項の場合と非常に意味が違うわけであります。つまりMSA協定安保条約や付属の行政協定を少しもかえるものではないということであります。それから第二項の方は、憲法をかえるものではないということでは全然ないのでありまして、この協定日本政府が一方の当事国として結びます以上は、まず前提として、これは憲法の範囲内で結べる、憲法を改正するような規定は何もないという確信がありましたから、その点はここには触れてないのであります。憲法と矛盾しない協定であると信じたからまず締結いたしました。そうして締結したものをこれから実施するにあたつては憲法の規定に従つて実施しなければいけないということになるわけであります。
  219. 河野密

    ○河野(密)委員 それでは具体的にお尋ねしますが、かりにこの協定にうたつてある防衛力――デイフエンシヴ・ストレングスは、憲法第九条にいうウオー・ポテンシヤルと同じものであるということで、かりに違憲の訴訟を起したとすれば、そうしてもし違憲の訴訟が日本の裁判所において通つたという場合を仮定すれば、その場合においてはこの第八条に書いてあるようなそういうものは無効になる、こういうふうに解釈できるのでしようか。
  220. 下田武三

    下田政府委員 裁判所がその訴訟を取上げますに際しましては、条約の解釈の第一の基準は条約の当事者の意思でありますが、そこで日本政府が一方の当事者としまして、日本政府の意思はきわめてはつきりいたしております。これは憲法に反しない、つまり憲法の禁ずるようなことを約束してないという意思が非常にはつきりしておりますので、まず裁判所としましては締結当事者の意思を解釈の基準といたすでありましようから、違憲の訴訟は、第三者が客観的に見てそういうおそれがあるというようなことでは、裁判では判決の下しようがないので、契約であれば契約当事者の意思、条約の場合は条約締結当事者の意思ということが、最も大きな要素をなすものでありますから、そういう違憲訴訟という場合にも、まず日本政府の意思ということが最大基準になるものであろうと思います。
  221. 河野密

    ○河野(密)委員 どうもそのところがわれわれには納得が行かないのですが、これはもう一ぺんお尋ねしますと、九条の憲法の範囲内で実施するものとするということは、日本の憲法に触れるものがあつたならば、この条約にどういうことがあつても、また将来条約の解釈上起つて来た場合でも、それが憲法に触れることがあつたならば、その部分はこの条約の範囲を越えるのだ、こう解釈してよろしいのかというのであります。その条約締結者の意思が憲法の範囲内で結んだのだという意思は、かりにこれをわれわれが是認したとしても、客観的に見てこれは憲法の範囲を逸脱するものであるということが立証された場合においては、その協定は効力を失うものだ、こう解釈してよろしいか、こういう意味であります。
  222. 下田武三

    下田政府委員 違憲の問題は、まずこのできた協定自体が憲法に矛盾するかどうかという点が一つありますが、その点は先ほどお答え申し上げました通りでございます。それから第二の違憲の問題として可能性のあるのは、できたものをこれから実施する過程において違憲を生じないかという問題でございます。これは今まで主として、自衛力増強して行く結果戦力に達して、その結果違憲になりはしないかという点ばかり論ぜられて参りましたが、先ほど申しましたように、国会承認なしに財政上の負担をするとか、支出をするとかいうこともいけませんし、秘密を守らんと欲するのあまり、法律以外のことで刑罰を科してもいけません。でございますから、できた協定実施する過程において、日本の憲法に反するような実施ぶりを政府がいたしましたら、これは当然違憲の問題を生ずると思います。
  223. 河野密

    ○河野(密)委員 私の聞こうとするころと少し食い違つているのですが、締結者としての趣旨は憲法の範囲内でやるということは、かりにわれわれがこれを容認したといたします。しかし主観的な解釈いかんは別として、客観的に見るならば、かりにこれは違憲なりということで、国会がそういう意思を表明をしたら、その部分は当然無効になるか、こういうわけなのです。
  224. 下田武三

    下田政府委員 それは当然無効にはなりませんで、政府の政治上の責任の問題を生ずるだけでございます。
  225. 河野密

    ○河野(密)委員 いよいよはつきりしたのですが、そうすればこの協定は規定に従つて実施するるものとする、こういう規定は単なるアクセサリーで、あつてもなくても同じことで、条約の性質上これは当然のものであるけれども、ただ一つのアクセサリーというか、国民に対する何かの言い訳にこれは書いたにすぎない、こういうことになるのですが、そういう意味ですか。
  226. 下田武三

    下田政府委員 これの意味はそうではございませんで、対外的に――こういうことは絶対にありませんけれどもアメリカ側が日本政府の意思に反して、たくさんの武器をやるから防衛力増強してくれと言いますと、日本側は武器をもらうだけでなくて、それを使う人数もふやさなければなりませんし、武器をしまつておく倉庫もつくらなけれなりません。そうしますと、財政上の負担を負います。その財政上の負担を国会承認なしに政府がやりますと、これは憲法上の違反の問題を生じます。ですから他方の当事国に対して、自分の憲法で許されている範囲はこれたけだ、だから憲法の認めない以上のことはできない。予算の問題で言いますならば、これだけの額は二十九年度予算に計上してあります。だからこの計上した予算の範囲内で受領できるものしか援助は受けられないのだ、いくらお前さんの方で援助を与えたくても、受けられないのだ、という一つのたてになつておるわけであります。特に条約の中で憲法に従つて行わなければならないと申しますことは、相手国に対して断る場合に、非常に有力な足がかりになるわけであります。アメリカとしても同じでありまして、アメリカ予算は毎年MSAに基く全額がはつきりきまりますが、日本が早くくれ、早くくれと申しましても、いやこれはアメリカ国会でまだ認められていないのだか、やりたくてもやるわけに行かぬ、とアメリカは申すでありましよう。でございますから、できたものを実施する過程においては、それぞれ自国の憲法で許される範囲内でしか物をやれず、また受ける方も受けられない。そういうことが一番大きな規定の意味だろうと思います。
  227. 河野密

    ○河野(密)委員 非常にはつきりしましたが、そこで私は二つのことをお尋ねしたいと思います。一つは、この間私がここで法制局長官にも質問したのですが、日本の憲法の範囲内で実施するというならば、その憲法の範囲内で実施するのだから、日本は海外派兵の義務を負うはずがないじやないか、なぜ答弁ができぬのか、と私はここで何べんか聞いたけれども、遂にこれに対して明確なる答弁をしないのです。これは非常な疑問を残すのですが、今のお話であると、当然下田条約局長は、憲法の範囲内で実施するのだから、日本の憲法をたてにとる以上は、海外派兵はでき得ないとここで明確にお答えできると思うので、それをお答え願いたい。これが一つであります。
  228. 下田武三

    下田政府委員 その点はまつたく仰せの通りであろうと思います。海外派兵ということは、他国の要請によつて日本人の部隊を派遣いたすことでありまして、これが想定されます場合は、一つは攻守同盟条約、他は相互防衛安全保障条約でありますが、そうなりますと、他国の要請に応じて部隊を出す場合に、おれの国は自衛権しか行使できないのだから、ここまでしかできないというようなことでは、どだい海外派遣部隊の意味がないわけでありまして、他国の要請によつて部隊を派遣する以上は、フルに交戦権を行使して戦える部隊を出すのでなければ、意味をなさないわけであります。従いまして海外派兵ということは、当然そこに交戦権の行使を前提といたします。でございますから、交戦権はこれを認めないという日本憲法のもとにおきましては、海外派兵ということは不可能であるというのが私の考えでございます。
  229. 河野密

    ○河野(密)委員 その点は了承いたします。  次にお尋ねしたいのは、昨年の十月三十日でしたか三十一日に池田・ロバートソン共同声明が発表されて、これは今回の協定の土台になつておるものであります。この池田・ロバートソン共同声明によりますと、アメリカの方は、国会承認するということを前提にして日本に対して供与するということで、明確に国会承認ということを前提としております。しかるに日本においては、この協定を結ぶに際して、憲法にこれだけの問題があるにかかわらず、なぜ国会承認を経て、しかる後に調印しないか。私はこの点について、憲法の範囲内において実施するというならば、当然その事前に、アメリカ国会がとつたと同じように、日本においてもまず国会承認を求めて、しかる後に調印をすべきものだ、こういうふうに思うのです。私はこの点非常に片手落ちだと思うがいかがですか。
  230. 下田武三

    下田政府委員 その点はこの十一条に書いてありますように、日本側だけが批准して、そうして批准したものを通告しなければ、この協定は全然生きて行かない建前になつております。そこで日本批准するためには、憲法第七十三条によりまして、当然国会の事前の御承認を経なければなりません。そこでこの協定が発効して日本国を拘束するに至ります前に、事前に国会の御承認を求めておるのがただいまの段階でございます。
  231. 上塚司

    上塚委員長 ほかに御質疑はございませんか。
  232. 穗積七郎

    穗積委員 ちよつとお尋ねいたしますが、九条の第二項について、軍事的な義務の範囲について憲法はどこまで許しておるかという政府の御解釈をこの際明確にしておいていただきたいと思うのです。さきに河野委員に対するお答えにおきまして、「憲法上の規定に従つて」と書いてあるから、外地派兵はできないのだということでございましたが、ここでもう一ぺん総ざらいをして確認をしておきたいと思いますことは、第一に、緊急にして不正な侵略がありました場合には、状況いかんによつては、外国の領域内にも戦闘行為を及ぼすことがあり得る、これは今までの質疑で政府の御解釈は明確になつたところでございます。第二は、現在の保安隊が部隊として国家機関のまま国連その他の自由主義諸国の義勇軍として参加することは、憲法違反であるという御解釈でありました。ところがきよう各隊員がこれからの自衛隊を脱退いたしまして、明日国連及び自由主義諸国の軍隊の義勇軍として参加して外地に出ましてかの地に渡りましてから、そこで向うの指揮のもとに部隊編成をして戦闘に参加することは憲法違反ではないという御解釈だと思いました。それから第三に問題になりますのは、後方勤務の部隊の出動でございます。これは日本国国家機関としての自衛隊、それをそのまましかも行政協定あるいはまた先ほどの第八条の第二条件の規定に従いまして協議の上、合意の上で共同作戦、または場合によりますればアメリカ側または国連軍司令官の指揮のもとに編成されて、そたで第一線の戦闘行為には参加しないが、後方の行動には協力、参加するということは憲法違反ではないと思うという御解釈であつたと思います。もう一つ極端な場合としてお尋ねいたしますが、日本の保安隊員が隊を脱退いたしまして、個人資格で義勇隊に応募することは、当然憲法の範囲内の行動であるということでありますから、極端な例を申しますれば、その隊員が隊を脱退するとともに日本の国籍を外国国籍に移す手続をとりまして、そうして外国軍隊に参加する、これはむろん日本の国籍のままで義勇隊参加が憲法違反ではないというわけですから、当然政府の御解釈では、合憲の行為と見ていいわけですが、ひとまずここで打切りますが、以上のように政府の御解釈を理解してよろしゆうございますか。一括してお答えいただきたい。もしどこかで違つておるところがございましたら、ひとつその違つておるところを明らかにしていただきたいと思います。
  233. 下田武三

    下田政府委員 第一の自衛権行使の結果として、海外に武力行動を及ぼす可能性があるという点は、大臣のいわれましたように、例外の例外のまた例外のごくわずかな可能性があるという点はその通りだろうと存じます。  第二の義勇軍の問題でございますが、これは憲法が禁じておりますことは、国家としてあるいは政府として国の意思によつて行動することを第九条で問題といたしておるのでありまして、個人が外国の軍隊に義勇軍となることはちつとも憲法上さしつかえないのみならず、憲法の第二十二条は、外国に移住しまたは国籍を離脱する自由すら個人の自由として認めておるのでおりますから、個人といたしましてこの自由を行使して外国の義勇軍に入りましても、これは一向かまわないことでございます。  第三に、後方勤務の問題でございますが、これは何の後方の勤務をするかということできまると思います。つまり明確に交戦権を行使しておる国際的な部軍の後方で、やはり日本も交戦権を行使しなければできないような勤務でありましたならば、これは私はできないだろうと思います。先ほどちよつと八条の第二条件を問題になさいましたが、この「国際緊張の原因を除去するため相互間で合意することがある措置を執ること」日本がこれに類することをやりました唯一の例は、古田・アチソン交換公文で、朝鮮で行動する国連軍を日本国内及びその付近において支持を許し、かつ容易にするということが唯一の例でありまして、この程度のものでございましたら、憲法上の問題を生ずることなしに現在でも許すことができるだろうと思います。
  234. 穗積七郎

    穗積委員 この前も私の方の下川委員がお尋ねいたしましたが、後方勤務の出動でございますが、これはたとえば元山の上陸作戦のときに、戦闘には参加した覚えはないが、掃海作業には参加した覚えがある。これは国家機関としての部隊が、または船が出動したわけでございますが、これは憲法違反ではないという解釈をしておられるわけですが、実は私は近代戦争が総合的な作戦に従つておるということでございますならば、当然その作戦は全体として見なければなりません。特に近代戦におきましては、第一線の歩兵部隊、または空中に戦闘を展開しております飛行機を撃墜するだけではなくて、むしろその基地、さらに奥へ足を踏み入れますならば、後方の生産力基地、軍需生産力基地、さらにはその基礎になつております一般の国民生活の無防備都市の爆撃、こういうふうにどんどんやつて来ておるわけでございますので、そういう点から見ますと、これは明らかに、近代戦争の場合におきましては、そういうような総合的な作戦として戦争の性格をきめなければならない。これは第一線の戦闘だけが戦争行為であつてあとの方はそうではないということは言い切れないのじやないかと思うのです。私はそういう元山の上陸作戦のときに掃海作業に勤務したということを一々ここでとらわれて言つておるわけじやございませんが、たとえば理解のために、一応参考のための例として引用したわけですが、そういう場合は明らかに私は日本の憲法違反だと思うのですが、政府の御解釈は、一体ああいうような場合でも憲法の範囲内の行動であるという御解釈だとすれば、どこに一体その基準をお求めになつたのか、そのことをはつきりしていただきたいのでございます。
  235. 下田武三

    下田政府委員 元山沖の掃海作戦につきましては、法律的にいいますと、性質の違う二つのことが行われておりました。一つは、アメリカのレーバー・デイヴイジヨンと申しますか、その労務の調達に応じましてアメリカの船が掃海をやるのについて、ただ労務の提供を行つて、そうしてアメリカの船が沈んで労務を提供しておる日本人が死んだというのが一つであります。これは個人が自由契約で労務の提供に応じたのでございますから、国家の問題は全然起りません。  第二の例は、当時占領下にありました海上保安庁に対しまして、連合軍司令部からサービスの提供として、これは個人に対してではなくて、日本政府機関である海上保安庁に対して機雷清掃のサービスを命ぜられたわけであります。これは占領中でなかつたら確かに問題になり得ることかと思いますが、何しろ平和条約の第十九条で、戦争中及び戦後連合国側の指令に基いて行われたことについて、日本側は責任を追究し得ないという条項がありますために、今日あれは国際法違反だなどという問題を提起する権利が日本に実はないのであります。そこで独立した今日、日本がこれと類似のことができるかどうかということになります。これは全然私は新たな角度からながめなければならないと思います。交戦権を持つておる国の艦隊と日本の警備隊との連合作戦行動に出るというようなことは、私は全的には決してできないと思います。交戦権を持つている国の船が中立国の船を拿捕しようというような場合に、いや日本の方はできないから拿捕できないというようなことじや、第一ばらばらで支離滅裂になつてしまいまして、連合艦隊という行動の統一性を欠くわけでありますから、まず日本はそういうようなことには参加できないというような結果になつて来やしないかと存じますが、いずれにいたしましても、占領中の掃海作業と今日の日本の船による共同作業とは、新たな角度から検討をし直さなければならない問題であるというふうに存じます。
  236. 穗積七郎

    穗積委員 今のお答えの中で問題がまだ二つ未解決でございます。一つは、これは私のきようのおもなる質問ではございませんが、あの行為は、今なら問題になるが、平和条約十九条で、今になつて占領中のことを追究することはできないと言われ、同時に占領中の向う側の要求に対しましては、憲法は死ぬのだという御解釈のようでございますが、これはそういうものでありましようか、私はいささか疑義を持つておるのでございます。もとよりアメリカ日本の憲法を無視いたしまして、いろいろな国際上の要求をすることがございましよう。ところが十九条はその国際上の権利義務を追究することを放棄するだけでございまして、私の言つておりますのは、日本人としてまたは日本政府として、憲法に違反する行為がはたしてできるかどうかということなのです。憲法は申すまでもなくそれより前に効力を発しております。従つてその時代におきましても、向う側からのデイレクテイヴは正式な、正当な命令ということが国際法上当然考えられるべきことだと思うのでございます。そういうことであるならば、たとえば向うの命令であるならば、非人道的なことでも何でもかでもしなければならぬ義務がはたしてあるのでありましようか、そういうふうに無制限な、絶対的な命令権というものがはたして認められておるのか、その点をまず第一にお尋ねいたします。  それからもう一つは、憲法は今日むろん生きておりますし、それから占領もなくなつたわけですけれども、今日以後におきまして、今言つたような後方勤務に参加することが問題にはなるでしようと言われましたが、局長の判断では、それは違憲であるか合憲であるか、それでその境はどこであるかということをお尋ねしたのですが、それに対するお答えがないわけですから、その二点について問題を整理してお答えをいただきたいのでございます。
  237. 下田武三

    下田政府委員 第一の点につきましては、これはやはり個人に対するサービスの要求でなくて、国家行政機関に対するサービスの提供を求められたのでありまして、私は憲法に違反しないと思つておりますが、もしかりに憲法に違反するようなことを命ぜられたらどうかという点でありますが、日本占領期間中は天皇、日本国日本国政府職員のすべてが連合軍最高司令官の権力に従属せしめられたものでございますので、日本は憲法違反をもつてこれを争い得ない地位にあつたわけであります。でございますから、連合国最高司令官の命令が、憲法を含むあらゆる日本の法律に優先しておつたわけであります。  第二の点につきましてはこれは一概には私は申せないと思います。そういうサービスの提供を求められまして、そのサービスを行う結果、交戦権の行使までも含むようなサービスは私は提供できないということが言えるだけだろうと思います。
  238. 穗積七郎

    穗積委員 私は第一の問題についても、ちよつと認識が違うのです。というのは、私たちが日本の主権を無視してアメリカの管理に従うということは、いわゆる無条件降伏によるのであつて、すなわちポツダム宣言を受諾したことです。しかしどんなことでも受諾したのじやございません。日本が軍国主義を放棄し、民主主義と平和主義を樹立するという、そういう大原則に立つてわれわれはこれに屈服しているのであり、向うはそういう建前で管理しているのでございまして、その平和主義、民主主義とはまつたく反するような、戦争に参加しろ、または原子爆弾の試験台になれというような命令を出したといたしましても受諾しなくてもいいので、当然進駐軍最高司令官の日本国に対する支配権というものは、これは初めからきまつている。それは日本を民主化し平和主義を徹底せしめるために管理するということなのです。そういう大前提、大条件がついております。それに違反するような無制限な命令というものが許諾されているわけじやございません。憲法の建前からいつてもそうだし、われわれが占領管理中にその命令に従うということを約しましたのは、そういうことです。向うの権限の性格もきまつております。それに反しまして、戦争に参加しろとか、あるいは非人道的の命令を出す権限というものはもとよりない。そういうものは無効だろうと私は解釈するが、その点もう一ぺんはつきりしておいていただきたい。従つて平和条約十九条の、管理中の命令に対して云々ということは、すなわち占領管理の大前提である平和主義と民主化という大前提以外の、そういうわく外に出たGHQの命令というようなものは、これはあり得べからざるものであります。大体それは国際法的に無効な命令だと私は思います。そういうものを何も訴追というか、あとから追究することができないというような性質のものじやなかろうと私は思います。それが一点。  それから、今交戦権に及ぶ程度の後方勤務はいかぬということですが、後方勤務であろうと前戦勤務でございましようとも、近代的作戦全体が戦闘を目的とし、武力によつて国際紛争を解決しようという建前に立つた戦争の体系の中に参加することは、明らかにこれは交戦権ではないでしようか。その点をはつきりしておきませんと、自衛権と交戦権の限界というものが不明瞭になる。ここに憲法の規定に従つて実施するなんというようなことをいいましても、一番大事な第九条との関連、あるいは前文との関連等におきまして、これは非常に危険なことでございますので、その点をはつきりしておいていただきたい。私は後方勤務であるから交戦権の行使にならぬというようなものじやないと思うのです。戦争体系そのものが、最高指揮官はもう戦争を宣言し、そして戦争武力によつて国際紛争を解決しようという建前で実行に入つている。その入つている体系の中へ参加することは、これはむろん交戦権の行使であるし、自衛権を逸脱するものであるというふうに解釈せざるを得ないのでございますが、いかがなものでございましよう。
  239. 下田武三

    下田政府委員 第一の点につきましては、占領外務省は、穗積さんのおつしやることと同じことを司令部に言つておつたのであります。司令部は無制限に命令権があるのじやないのだ、ポツダム宣言の降伏文書に書いてあるように、本降伏条項実施に必要な範囲で命令する権利があるのだということを言つておつたわけでございます。それは私当時正しいと思つておりました。しかしさて今日これを顧みて、たとい連合国最高司令官が、降伏条項実施条項の範囲外だと思う命令を出されたといたしましても、それを一体争つて反抗し得る地位に日本があつたかどうかという点でございます。これは私はなかつたのではないかと思います。はたせるかな平和条約において、日本政府が反抗し得る地位になかつたことを前提といたしまして、平和のあとになつてからそれを無効だ、あるいはそれに対して請求権を持ち出すことはできないように定められたのでありまして、りくつとしては成り立つだろうと思いますが、当時の地位は連合国最高司令官にさからい得る地位になかつたことは事実であろう。その事実が平和条約でそのまま認められたという――今日振り返つて客観的な結論を申し上げると、先ほど申し上げたことになるのでございます。  第一の交戦権の点でございますが、交戦権を持つていなくともサービスをし、後方勤務みたいなことをすることがあるのでございまして、戦時中の中立国には交戦権がないことは明白でありますが、中立国の船舶が一方の交戦国の貨物あるいは軍隊を輸送することはかまわないのであります。その半面一方の交戦国は拿捕、臨検し、抑留する権利が生じているわけでございます。でありますから日本が交戦権を持ちませんでも、輸送の面、あるいは現在やつておりますように日本を後方の給与基地、補給基地に利用させることは、私はなし得るのではないかと思います。これが交戦権の行使を含まなければできないもの、たとえばおれの方の飛行機が足らないから、ひとつ自衛隊の飛行機が一緒に出て来て敵地を爆撃するために協力してくれと言われましてもそういうことはできませんが、交戦権がなくともできる部面の協力ということは、いくらでもあると存ずるのであります。
  240. 穗積七郎

    穗積委員 私はその限界を伺つているのです。一言ついでですから申し上げておきますが、私が今提示している場合とは違うのですよ。中立国が輸送に協力するのは独立の意思または自由契約による行動でございますが、私の言つておるのはそういうことじやなくて、連合国またはアメリカの軍隊の指揮官の指揮下に入つておる後方勤務の場合をわけているのですから、区別していただかぬといかぬ。縦の区別と、横と申しますか、横に線を引いてみますと、いずれの場合におきましても一定のサービス行為の限度がございましよう。サービスと称してどんどん第一線へ行つて鉄砲の撃ち方を教えてやる。それはサービスだ。おれは撃つたことはないが、鉄砲の撃ち方を教えてやつただけだ。あるいは飛行機に一緒に乗つて操縦の仕方を教えてやつた。そういうことでサービス行為の限界がございましよう。だからこの憲法の規定に従つてやる行為について、縦と横に線を引いて、どこに限界を求めるか、その点をお尋ねしているのでございますから、その点は一応整理して、区別してお答えをいただきたいのでございます。
  241. 下田武三

    下田政府委員 日本の保安隊を外国の指揮下に置くことは、自衛権の行使の場合以外には私は全然考えられないと思います。日本が何ら危険を感じていないのに、他国の必要のために日本の軍隊を外国軍の指揮下に置くということは、これすなわち海外派兵にほかならないのであります。日本自体が急迫した危害に直面した場合に、日本を守るために共同作成をやるということは考えられます。つまり自衛権の行使の場面では考えられますけれども日本には何ら急迫した危害も及んでいないのにもかかわらず、日本の部隊を外国の指揮下に入れ、あるいはその指揮下にサービスされるということは全然考えられないと私は思います。
  242. 穗積七郎

    穗積委員 それからあとの場合どうですか。どの程度の行為が限界がございましよう。指揮下に入つた場合と、入らない場合とございましようし、それから今の自衛権行使の場合についてのみとおつしやいますが、ついでですからお尋ねしておきますが、制裁戦争の場合はどうでございますか。それもひとつ例として区別して、一つのケースとして考えていただきたい。ですから私の質問は今申しました通り制裁戦争の場合は、侵略戦争ということと区別してお考えになるかどうかということです。今の話は自衛権の行使の場合と侵略戦争の場合をお考えになつておるわけですが、制裁戦争の場合の今の共同行為というものあるいは協力行為というものがどうなるかということと、それからもう一つは自衛の戦争の場合でありましても、またはそうでない中立主義諸国に協力する場合におきましても、いずれでもけつこうですが、その行為がどこまで及んだらその自衛権行使の限界を割るか割らぬかということです。たとえば今輸送に協力する程度ならよろしようございますが、もう一歩先へ進んだ第一線の前線まで行くというようなことになりますと、直接鉄砲を撃つて殺傷はしないが、相当場合が違うと思います。あなたは一番遠い輸送の場合とかあるいは労カサービスのような場合だけを例としてお考えになりますが、それでは第一線まで行けば、これは中立を破るものであり、自衛権行使を逸脱するものであるというその限界は、どこのところであるかということを聞いておるわけであります。
  243. 下田武三

    下田政府委員 問題は交戦権の行使をインヴオルヴするかどうかということが境でありまして、それ以上の限界というのは個々の場合について御説明するほかないのでありますが、個々の場合というのは無数にございます。これは何日かかりましても御説明できませんので、抽象的な一線で御勘弁を願いたいと思います。それからもう一つ制裁戦争の場合でございますが、制裁戦争にも自衛の場合とそうでない場合がありますが、自衛権の行使として許される範囲の制裁戦争でなければ、私は今の憲法の建前では制裁戦争に参加できないと思います。
  244. 穗積七郎

    穗積委員 そうするとケース・バイ・ケースで考えて行くということになると、これは原則がないわけですね。後方のサービス行為なのか戦闘行為なのか、その点は今おつしやつたように結局幾千のケースがあり得るから、そういうことは具体的に説明ができないということですから、ケースによつて違うということであつて、従つて原則がないということですね。無原則だということですね。そういうことになると思います。そうなると後方勤務に名をかりて、あるいはまた後方協力に名をかりて、国家機関としての自衛隊の出動というものが可能になつて参ります。その点は非常にあいまいになりますがどういうものでございましよう。何かもう少し明確なものがないと改進党内閣が天下をとつたというようなことになると、何をおつぱじめるかわからない。やつぱり客観的な基準がなくては困ると思います。
  245. 下田武三

    下田政府委員 無原則と言われますが、交戦権をインヴオルヴしないという明確な原則があるわけでありまして、これが不明確だとおつしやいますのは、ちようど憲法の「交戦権は、これを認めない。」という規定が不明確だといつて御非難されることとまつたく同じことであります。
  246. 上塚司

    上塚委員長 北君から関連質問があるそうですからこれを許します。北れい吉君。
  247. 北昤吉

    ○北委員 さきの下田条約局長お話、私少し不満なところがあります。すなわち穗積君はポツダム宣君からして、連合国司令官の命令についても、憲法上受入れられぬことがあるというのでありますけれども、ポツダム宣言を逸脱した対日占領政策の初期の方針というものを御存じでありましようが日本が戦争に負けてポツダム宣言を受入れたのが八月十五日、八月のしまいごろにマッカーサーの命令が出て、発表になつたのは九月の初めです。すなわち大統領の名前でマッカーサーに来たのだが、それには少くも三箇条ポツダム宣言を逸脱した点があります。ポツダム宣言には侵略戦争を誘発した者を権力の地位から遠ざけるとあつたのを、対日占領政策初期の方針には、侵略戦争に協力した者を追放しろということがある。協力ということと誘発ということとは違うのです。それからもう一つは、日本に対して勝利をもたらしたる連合諸国の占領軍参加歓迎せらるべしということがある。すなわちロシアに北海道を占領してもらいたいという申込みがあつた。スターリンはマツカーサー総司令官のもとに自分の軍隊を置くことはできぬと断つた。それがポツダム宣言にないことです。もう一つは、不法に政治的理由をもつて監禁せられた者解放せらるべし、日本の法律によつて罰せられた者全部――徳田球一君、志賀義雄君、犬養健君のごときもスパイ事件で第一審に無罪になつたが、検事控訴中であつたのを全部清算してしまえということです。それで対日占領政策の初期の方針からいえば、マッカーサーは憲法を超越したことを何でもやれることになつていた。言いかえてみると、私は終戦後二度の総選挙をやつて、三度目はやれなかつた。私が議席を持つているときに追放せられた。片山内閣のときです。内閣総理大臣の名前で、議員の議席は奪えないのです。それをマッカーサーはやつたのです。(「それは民主化の原則に従つておるじやないか」と呼ぶ者あり)いや民主化の原則じやないのだ。マツカーサーの命令で来たのだ。(「マツカーサーの命令は民主主義と平和主義の原則じやないか」と呼ぶ者あり)しかし総理大臣は議員を免職する資格はないのです。言いかえてみると免職する場合においては、議会に諮つて、三分の二以上の議決を得なければならない。その手続を経なかつたのは、対日占領政策初期の方針から行つたものである。すなわちマッカーサーの命令は憲法を超越している。その実例として、現に終戦後二度の総選挙をやつて追放せられたのは、私と社会党の平野力三君、この二人だけです。それは総理大臣の命令で来ておる。議会で総理大臣が穗積七郎君はけしからぬといつて追放の指令は出し得ない。マッカーサーの代行機関として来た。(「取次いだだけだ」と呼ぶ者あり)いや代行機関として来た。そうしてみると、憲法違反になつておる。そうすると、憲法を超越したというのが私どもの解釈するところです。私は条約局長はもつと穗積君の態度にはつきり答えていただきたい。ポツダム宣言を逸脱した対日占領政策の初期の方針で、日本の法律で罰せられておる者は解放したのですが、ポツダム宣言にそんなものは何もない。ポツダム宣言違反のことは現に三つあるのです。私は原文を持つて来てもよろしいが、そういう事実がある。憲法は連合国司令官に優先するなどということは、今日こそ言えることであつて、当時は言えないことであつた、私はそうはつきりお答えになるべきだと思う。対日占領政策初期の方針をごらんになつてみればわかる。追放などはみなそれでやつた。ポツダム宣言には二十万追放しろなどということはない。すなわち国民を欺いて、侵略戦争の過誤に陥れた者を、権力の地位から遠ざけよという言葉はあるが、言論追放とかあらゆるわくをこしらえて二十万追放したことは、初期の対日占領政策であつて、これは憲法を超越したものであると私は考えておりますが、条約局長、いかがですか。
  248. 下田武三

    下田政府委員 ポツダム宣言、降伏文書はきわめて簡単な原則を羅列しておつたのでありますが、御指摘の初期の対日方針、さらにその方針をこまかく具体化しました指令が次々と来ておりまして、日本側としては、ポツダム宣言受諾当時まつたく予期しなかつた事態が起りましたのはお説の通りでございます。そこで当時占領下とは申すものの、連絡事務局でこれに対して反省を促したことはあるのでございますが、結局あるものはいれられましたし、あるものはいれられないで終つたというのが真相でございまして、今日振りかえつてみますれば、それはいたし方ないと申し上げるほかはないと思うのであります。
  249. 並木芳雄

    並木委員 MSA協定も審議がだんだん終りに近づいて来ましたが、私の方の党で今並行して協議しておるのですけれども、その中にこういう要望があつたのであります。MSA援助を受けている国によつては、装備に対して無償で供与を受けておるのみならず、その維持費をも供与を受けているところがあるのではないか。維持費と申しますと、それを操作する人に対する費用あるいは修理に要する費用、またいらなくなつた場合の保管の費用、あるいはまた返還の費用等いろいろ含んでおると思います。要するにまるがかえということなのです。MSA援助は、そういうものは一切保安隊の予算に計上されて、日本の方で負担することになつておると了承しております。そこでお伺いするのですけれども、そうでない国が他の国にありますでしようか。
  250. 土屋隼

    土屋政府委員 私どもMSA援助を受けるにあたりましては、日本の経済になるたけ負担の少いようにということを考えました。たとえばジエツトの練習機が来た場合において、もしその飛行機に何らかの形でガソリンがついて来ますれば、日本のためにはなはだ便利だということを考えたことはもちろんでございますが、交渉いたしました印象から申しますと、今回日本が受けます援助は、完成兵器で日本側に渡されまして、日本側にタイトルが移りますことで、純然たる日本機関、つまり日本の兵器になるわけであります。この点につきまして、維持費だとか、修理費だとか、おつしやつたような点がついて来ることは望めないということは、はつきりいたしております。各国の例では、私どもの承知いたします限り、そういう修理費なり何なりがついて来て援助を受けておる国はないようでございます。ただ艦艇貸与などにつきましては、実際上日本側なりあるいは援助を受ける国に渡すまでの間、修理費その他については持つて来ておる例もあります。また貸与中に修理の大きいものについてめんどうを見ておるようなこともあり得るかと思います。しかしこれはMSA援助とは直接の関係もございませんし、またこまかな材料として現在御報告申し上げる程度のものをまだ持つておりません。
  251. 並木芳雄

    並木委員 MSA関係でそういうことがはつきりいたしますれば、私の方はいいわけなのです。ただ今局長のお話の中に、艦艇費与の場合にはそういうことがあり得るかもしれないという言葉がありましたので、ちようど前田保安庁次官が見えておりますからお尋ねいたします。報道ではいわゆる艦艇貸与について、アメリカ側と正式の交渉を開始したといわれておりますが、その通りでおりますか。
  252. 前田正男

    ○前田政府委員 正式にということは――まだ外務省を通じておらないのでございますが、われわれの方では前から、貸与を受けたいという希望の艦艇については、われわれの方で希望を述べて交渉はいたしておりますけれども、正式の貸与協定というようなものにはまだ入つていないと思います。
  253. 並木芳雄

    並木委員 これは、正式でなくても話が進められることでありますし、またMSA協定とは別ですから、正式に話合いを進めて行つてもいいわけなのです。報道にあることは事実ですか、最近外務省はやつておるのですか。保安庁ですか。外務省が正式に取上げられてやれば、これは外交交渉だと思います。艦艇の方の申入れは、外務省として先方にしたのですか、その辺のところを伺いたい。
  254. 土屋隼

    土屋政府委員 実は艦艇貸与の問題は、たまたまMSA援助の内容の交渉と軌を一にいたしたような関係上、保安隊で希望し、日本側で希望するところの艦艇について、MSA援助を受けるものと、艦艇を貸与で貸し得られるかもしれないものとを合せて、日本側はこういうものを期待いたしますというものを、保安庁の方から直接先方に提示いたしまして、MSAの内容の交渉の過程で話し合つていたというのが現在までの情勢であります。アメリカ側といたしましてはこれに対しまして、MSAでどの船をどれだけということがまだきまりません関係上、あとに残ります艦船貸与についても まだ話合いをする段階に来ておりません。MSAで幾らの船が来るということがはつきりきまりますと、日本側がそれ以上借りたいという船がおのずからきまつて来、アメリカからどのくらい来るかということを話合いをしなければなりませんので、そのときに初めて艦艇貸与の協定をつくることになります。そういう意味で正式にまだ交渉しておるという段階には行つておりませんが、当方としては、わが方の意向を保安隊から米側に示した兵器援助の期待量の中に入れてありますし、従つて米側と交渉したというよりは、この期待量の交渉の前後にそのいきさつを説明したというのが実際の内容であります。
  255. 並木芳雄

    並木委員 その艦艇貸与の申入れの話合いの中に、先ほど局長の答弁にありました維持費というものをある程度先方で持つというようなことが出て参りましたか、また今後その点については期待することができますかどうか。
  256. 土屋隼

    土屋政府委員 実はわれわれとしてそういう希望なり、あるいはそういう方角に艦艇貸与を向けて行きたいという希望は持つているのでありますが、まだ交渉でこまかく話したことはございません。ただ先のことではありますが、私の方の見越しを申しますと、船も借りる、しかもガソリンと修理代まで借りて来て船を借りるというのは、少し虫がよ過ぎる話で無理でなかろうか、船を借りて来てあとは自分の方でみなめんどうを見なければいけないのではないかというふうに考えております。
  257. 並木芳雄

    並木委員 艦艇貸与の場合に、外国で維持費を援助されておる国はありますか。
  258. 土屋隼

    土屋政府委員 ただいままで私どもの調べた範囲内におきましては、維持費その他を受けておる国はございません。
  259. 並木芳雄

    並木委員 艦艇貸与の申入れと同時に、小麦の方の申入れ外務省としてはやつたそうでございますけれども、そうですか。
  260. 土屋隼

    土屋政府委員 ただいま経済局長がおりませんのではつきりしたことは確かめなければなりませんが、私ども方針として知つておりますのは、小麦は来年度どのくらい買う可能性があるか、日本としては希望量はどのくらいか、またかりにそれだけ買つたとして、積み立てた円賃をどういうふうに使うことが、日本の経済によかろうかということを関係各省で協議しておりまして、やや成案を得たように承知しておりますが、アメリカ側にまだ正式に申し入れたという段階ではないと思います。
  261. 穗積七郎

    穗積委員 私の関連質問の途中でとられてしまつたので……、(「まだ終らなかつたのか」と呼ぶ者あり)北さんは私の関連質問だから了承したのです。北さんがさきに年寄りのくせにいろいろなこと覚えておられて盛んに言われましたが、ちよつと誤解があるから後々のために申し上げておきます。私が申し上げましたのはそういうことではなくて、憲法との関連で質問したのですが、私がさきに申しましたのは、マツカーサーが日本を管理中の権限については無制限、無定量なものではない、ちやんとはつきりし制限なり条件がついておるということを言つたわけです。ですからたとえば日本を軍国主義化すような政策を気まぐれにやつたつて国際法上そんな命令はマツカーサーの命令権じやないと思うのです。明らかに日本の軍国主義を解体し、民主主義と平和主義を徹底せしめるための管理でございますから、その大原則に逸脱した権限というものがマツカーサーの命令の中に合法的に許されるはずはない、そのことを言つたのですから、北さんにも申し上げておきます。  そこで十一条についてお尋ねいたしますが、十一条は協定が終了したときの規定でございます。最後の二項の但書のところですが、大体この協定が終了いたしました場合には、原則としてこの武器は返還するのが建前だと思うのです。そこで返還はいたしましても、第三条一項、これはやなわち秘密保持の責任でございますが、こういうものは残りましよう。ところが転用を禁止し、または移転を禁止する義務または工業所有権、知識交換の問題ということがあとになつて残るという場合はどういう場合でございましようか。ちよつと様子がわかりませんので、少し具体的にお尋ねいたしておきたいと思います。
  262. 下田武三

    下田政府委員 この協定が終了したら、引続きもう援助が来なくなるだけの話でありまして、今までもらつておつた装備を返さなくちやならぬということには全然なりません。むしろその反対でありまして、特別の約束をしなければ今までもらつておつたものはそのまま持つておるということでございます。でございますから、ここにあげましたように今までもらつていたものは引続き有効に使用しなければならない、それから他人に譲渡してはいかぬということが第一条の二項、三項で生きて参りますし、それから不用になつた場合は協定終了後といえども返さなければならぬという規定も、また秘密保持の規定も、工業所有権の規定も、協定終了までもらつたものがある限りはやはり続くわけでございます。
  263. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと、たとえばこつちから協定の打切りを申し出て打切る、打切つた後に転用もしない、移転もしない、使用もしないということになると、やはりそのときに返還にでも入るわけでございますか。
  264. 下田武三

    下田政府委員 仰せの通りもう使いもしないということは、まさに不用になつた場合でございますから、そこで返還の問題を生ずると思うのでございます。
  265. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、そういう場合には工業所有権並びに知識交換の問題もそこで終止するわけですね。
  266. 下田武三

    下田政府委員 工業所有権や知識交換の問題は終止いたしますが、同時に工業所有権などにつきまして、秘密を漏らしてはならぬというような技術上の秘密は、引続き漏らさないようにしなければならないことになると思います。
  267. 並木芳雄

    並木委員 経済局長が来ましたから、小麦協定について伺いたいのですが、小麦協定についての日本政府の間の受入れ態勢について成案ができたとのことであります。土屋局長の答弁の中にそうありました。それで先方にもう申入れをしたと思いますが、その成案について、どういうふうにできたのか、明らかにしていただきたい。
  268. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 あの問題は、実はアメリカ国会におきましてわかつておりますことは、MSA五百五十条というのはことし限りのものであつて、来年は別わくである、別の問題であるということでございます。ですからアメリカの立法としてどういうふうな立法ができるかということがまだわからないわけでございます。しかしことしの経験からいろいろなことがわれわれの方でわかつたものでございますから、その立法をする上において、いくらでもわが方の意向が向うに反映するようにとういわけで各省で寄り寄り協議をしておりまして、このたびは小麦とか大麦などに限らずして、綿花とかその他のものをやつたらどうかということ、それからまた贈与の使用の方法につきましても、防衛並びに防衛支持産業というふうでなくて、もつと広い範囲に使いたいというような、ごく事務レベルの方の希望もあります。ただ今のところはわずかに事務レベルでもつて一応検討しておるという段階でございまして、いずれ正式にアメリカに内々サウンドするとか非公式の話をするというまでには、まだ相当の時間があるだろうと思います。
  269. 並木芳雄

    並木委員 その事務レベルの成案はどういうのですか。
  270. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 これはいつかの新聞に大体出ていた案と同じでございますが、まだほんとうに事務レベルで、まだこれが相当修正されるということをお含みの上お聞き願いたいと思います。今ちよつとここに持つて来ておりませんが、小麦につきましては今のところ話しておりますのは五十万トン前後くらいはどうかとか、それから大麦に関しましては十万トン前後くらい、とうもろこしは五万トン、大豆は十五万トン、それから綿花は二十五万俵、それから葉タバコが約五百五十万キロですか、そのくらいということの話が出た程度でございます。これはもちろんまだほんとうに事務レベルで、話が出たというだけで、まだきまつておるわけでも何でもございません。それからその他いろいろ事務レベルで話し合つたところは、たとえば贈与はできるだけ多い方がいいとか、必ず日本の円でやるけれども、その円は長期払いの円にできないかとか、それからその使用方法としては現在よりももつと広く日本の一般産業に使えないかとか、そういうような話が一応出ただけでございます。これはまだほんとうの事務レベルで話し合つたという程度でございます。その点で御了承願います。
  271. 穗積七郎

    穗積委員 付属害について二、三お尋ねいたしますが、今の私が質問をいたしました十一条の二項ですね。終了した場合附属書Cの規格の標準化について規定いたしておりませんが、そこでお尋ねいたしますが、日本政府が今までアメリカの武器援助を受けておつたのを打切りまして、これから独自の軍隊をつくりたい。その軍隊は独立国の軍隊である以上は秘密を要しましよう。それで、秘密のことについては第三条でお尋ねをいたしますが、そういうわけで独立国ということについては、アメリカからも独立しなければならぬわけでありますから、ここで規格についても独自のものを考えていいわけだと思うのです。またアメリカの技術より日本の軍需生産技術が進んで参りまして、そうしてその科学的な研究の結果、アメリカの規格とは全然別のものをつくつた方がいいというようなことが出て来ました場合には、一体この付属書Cの義務規定というものは、協定終了解除とともにそれも消えるわけでございますかどうか、その点をお尋ねしたいと思います。
  272. 土屋隼

    土屋政府委員 これは協定が終了いたしましたときに消えることは当然で、付属書Cはそこでも御存じの通り、両方の希望があるということで、ここに同意したという程度でございまして、両方を約束づけるものではございません。
  273. 穗積七郎

    穗積委員 そこで付属書Dについてちよつとお尋ねいたします。これは特に最近欧州諸国が禁止品目の解除について非常な動きを示して参つておりますが、そうするとどういうことになりましようか。アメリカ合衆国その他の平和愛好国の政府協力するということになりますが、そうなると欧州の諸国と日本との間において、禁止品目その他の制限わくが必ずしも同一でない場合が出て参りましよう。そうして同時にその義務アメリカ合衆国に対する協力義務だけではなしに、その他の平和愛好国すなわち英国なりフランスなり西ドイツなりとも同様の協力義務を持つておりますが、その場合におきます制限の差別といいますか不統一については、一体どういうように理解いたしてよろしいのでしようか、どうでしようか。
  274. 土屋隼

    土屋政府委員 この付属書だけから申し上げますと、欧州諸国なり平和愛好国一般のレベルと日本とが同じレベルにあればいいので、それ以上の厳格な統制その他は必要がないというようにこの規定は読めるわけであります。私たちも実はそれがねらいで、この規定の文章をかえてこういうふうに書きましたわけなので、アメリカ合衆国だけとの協力でございますと、アメリカが中共にといつておる程度の統制のきびしさがございますので、日本でも当然これに同調しなければいけないという立場になるわけであります。アメリカだけでなく、ほかの平和愛好国という言葉を入れることによつて、なるべく国際的な線に近いところへ行こうという趣旨をここに盛つたわけであります。とはいえ、しからばココムの線にすぐ翌日からもどるかということになると、これは多少そこに紆余曲折があろうと思いますが、日本は中共に対して特殊な地位にありますし、アメリカ自身が中共に統制しておる程度のことは、アメリカとの協力関係で従来から協力はして来たわけでありまして、今後国際緊張の緩和とともにアメリカでも下げて参りましようし、日本でもさらに欧州にならつて下げるということも可能でございますが、すぐほかの平和愛好国と同じ段階になるというところまでは、まだ現実は行かないと思います。しかしこの規定はなり得ると考えております。
  275. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと、非常にあいまいな規定になりますね。つまりアメリカでなく、欧州諸国並に日本も緩和するところまで持つて行こうということのきつかけができる、という軽い意味でございますか。アメリカ並びにアメリカとその制限の範囲の違う他の平和愛好国との間との協力ということはそういうことですか。
  276. 土屋隼

    土屋政府委員 私どもは、この協定アメリカとだけで結んでいるわけなので、ほかの平和愛好国と協力するかしないかということは実は日本のかつてでもあり、必ずしも日本側でも義務がないということに普通なつてしまうわけなのですが、ここに平和愛好国の政府との協力とうたいました関係上、かりにアメリカが十の制限をする、そこで日本でも十の制限をして、この規定によつて協力してもらいたいといつて来たら、いやわれわれは、アメリカは十の規定を持つておられますが、カナダは八つではございませんか、欧州諸国は六つではございませんか、そうすると日本は必ずしもアメリカと同じように十の歩調には合せられません。ほかの平和愛好国の政府との協力の精神をうたいました以上、われわれはそのしかるべきところをうたいますというきつかけになりますので、その点は私どもは、付属書Dというものは、今後そういう意味で一つの標準をつくり得る基礎になるもの、こう考えております。
  277. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、この規定からは出て来ないわけですね。当然六のところまで、ミニマムまでの協力義務でいいということにはなりませんね。
  278. 土屋隼

    土屋政府委員 アメリカがかりに十の制限をしておるということになりますと、アメリカとも協力する義務がございますので、六までにはなりません。
  279. 並木芳雄

    並木委員 経済局長に先ほどの来年度の計画、小麦五十万トン、大麦十万トン、その他の数量をお聞きしましたが、これは金額にして大体幾らぐらいと踏んでおりますか。
  280. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 現在のところでは、これは金額に直しますと、小麦などの値段も、大麦などの値段もときによつてかわりますから、必ずしも正確なことは言えませんけれども、普通で計算しまして約一億ドル見当にはなるのじやないかと思つております。
  281. 並木芳雄

    並木委員 そういたしますとこれは来年度ですが、今度の援助農産物、あれについていつか局長は五百万ドルか六百万ドルくらいは余るだろうという答弁でしたが、その数字ははつきりいたしましたか。そうしてその用途はもうそろそろはつきりして来ていると思います。
  282. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 この計算ははつきりはしておらないわけで、といいますのはそのときの状況によりまして船賃がかわりますし、それから小麦の値段は御承知の通り毎日かわつておりますから、大麦の値段もかわつておりますから、正確には計算できないわけであります。しかし五百五十万ドルから六百万ドルまでは行きませんが、そのまん中くらいの額は残るだろう、今のところで計算していればそうなります。これをどう使うかということに関しましては、まだ各省の間で話合いが行われておりまして、必ずしもきまつておりません。まあ話題に出ておりますものは、小麦などが出ておりますけれども、まだきまつておりません。
  283. 上塚司

    上塚委員長 並木君に申しますが、今の御質問のことは、次の農産物購入に関する協定がありますから、それを論議するときにお尋ねになつてください。この際戸叶君に発言を許します。戸叶里子君。
  284. 戸叶里子

    戸叶委員 私ちよつと中座いたしましたので、たいへん済みませんですが、十条のことで簡単ですからお答え願いたいのです。この十条に相当する条項MSA法の中にございますか。
  285. 下田武三

    下田政府委員 これはMSA法にはございません。日本側の希望によつて挿入された条項でございます。
  286. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、特にこれをお入れになつた理由はどうなんですか、何か早く改正しなければならぬときが起りそうだ、再検討しなければならなそうだというお気持でお入れになつたのですか、そうじやないのですか。と申しますのはMSA法が大体あと二年か三年で一応転換期にあるということを聞いておりますから、そうしますと、当然それに従つて何とか直される、再検討されるのじやないかと思うのでありますが、それにもかかわらず、特にこの条項日本だけ入れられた理由はどういうわけでございますか。
  287. 下田武三

    下田政府委員 MSA法にはございませんが、この種の条項は、ヨーロツパ諸国とアメリカと結んでいる協定にはみんな入つております。特に日本の場合には、まだ不確定要素が非常に多いのでございますから、こういう協議条項を設けることは非常に便利であろうと思いまして入れた次第でございます。
  288. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、ヨーロツパとアメリカの場合には、これと同じ内容のものが書かれているわけなんでしようか。
  289. 土屋隼

    土屋政府委員 各国の例を一応参照いたしまして、実はこの十条というものは考えたのであります。言葉に多少の違いはございますが、趣旨とするところは各国とも同じでございます。私の考えますのは、MSA協定というのはあんまり無理じいをせず、いやになつたらいつでも断るようにしたいというのが両方の考えのようでありますから、そこで十条などもそのような意味で、今後協議したり何かする条項を設けているのだろうと思います。
  290. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、この一項と二項との関係ですけれども、二項に再検討することができ、」と書いてありますが、一項だけではそういうことはできないのですか。一項と二項の関係を承りたいのです。
  291. 下田武三

    下田政府委員 一項はいわゆる協議条項でありまして、その実施についてコンサルテーシヨンをやるということでございます。でございますから、協定自体をかえるのでなくて、できておる協定をかえないで、実施する場合のコンサルテーシヨンであります。二項はいわゆる改正条項でありまして、改正とその前提となる再検討を規定したのでありまして、両方ともこの協定をかえようという法に目の向いた規定でございます。
  292. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、一つの事項で、一項だけの場合には改訂したいということを協議するだけであつて、それをかえるということはできないわけですか。
  293. 下田武三

    下田政府委員 一項の目的はそういうところにございません。
  294. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私ちよつと承つておきますが、第九条の規定で先ほどずいぶん論議されておりましたが、下田さんにお聞きします。この「協定は各政府がそれぞれ自国の憲法上の規定に従つて実施する」ということでございますが、これは政府の見解を明らかにしなかつたのでありますが、かりに日本国の憲法に抵触するようなことであつたならば、それの実施をしない、こういうことであろうと私は思いますが、これと第三条と私は非常に関係があると思います。第三条によりますと、日本が秘密保護のために何らか措置をしなければならぬ。秘密保護の措置をとろうと考えますと、どうしてもこれは日本国国内においては、立法的な措置をとる以外にありません。それ以外の有効な秘密保護の措置をとることはできません。立法措置をとろうとしますと、私は憲法にありますところの言論、表現の自由ということと当然抵触して来ると思います。そうしますと、明らかに憲法の条項に抵触するようなことでも。今度の三条によつてはとりきめをしなければならぬ、こういうことになると思うのですが、そういうことについてはどういう見解をお持ちでありますか。
  295. 下田武三

    下田政府委員 九条二項の問題は仰せの通りでございます。今まで戦力との関係だけで問題とされましたが、実は刑罰を科するには、憲法三十一条によりますと、法律に定める手続によるにあらずんば刑罰を科し得ない。また憲法八十五条によりますと、国が債務を負担しまたは支出をするには国会承認を経なければならないと書いてあります。これを国会承認を経ないで武器をたくさんもらうのだからといつて、かつてに債務を負担したら、これもいけません。そういうことはすべて憲法の条章に従つてやる。手続の場合も同じでございます。そこで御指摘の秘密保護法でございますが、この秘密保護法の御審議が終りまして、国会の御承認を得ましたならば、秘密保護法という法律は憲法に即応した法律であるという大前提のもとに国会の御承認を仰ぐわけでありますから、そうしましたら、従つて第三条に伴つて行われる法律も憲法に即応しているし、従つて第九条の第二項の規定も満足されるという結果に相なると思うのであります。
  296. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 今のお話でもわかるようなわからぬような気がするのですが、たとえば秘密保護法につきましても、表現、言論の自由という憲法の鉄則に抵触する法律をつくらなければならなくなつて来ているのです。でありますから、その点について憲法の鉄則に抵触するようなものを――今われわれがここで日米相互防衛援助協定締結する場合においては、国内法的措置をとつてそういうことをしなければならないのです。そういたしますと、この憲法の規定に従つて行うという条項は、どういうことを意味するか。これは今言つた第三条のことと言論、表現の問題に関連した憲法との関係について明らかにしていただきたい。
  297. 下田武三

    下田政府委員 憲法に違反するような法律を制定してまで、秘密保護法をつくる必要はないということでございます。つまり憲法の規定に従つて実施されるべしということは、法律も憲法に従つて、憲法に違反しないような法律をつくつておけばいいのだ、そういうことに相なるわけでございます。
  298. 上塚司

    上塚委員長 よろしゆうございますか。  今の問題は第三条が留保されておりますから、もし御質疑があればそのときにまた御質問ください。ほかに御質疑がなければこれにて相互防衛援助協定並びに附属書AよりGまでに関しましては、第三条を留保いたしまして、逐条審議を終りました。  次に、農産物の購入に関する協定について審議をいたします。本協定につきましては、審査の都合上、各条項を一括審議いたします。政府側より説明を求めます。小田部政府委員
  299. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 農産物の購入に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定は、全部で七条から成つておりまして、要旨は今年の六月三十日に終るアメリカの現会計年度におきまして、総額五千万ドルの取引を行うように行政府は努力するということと、それからその次には、日本側が余剰農産物を買う場合におきましては、アメリカ並びに友好国の通常の取引を阻害するような方法ではやらない、つまりその通常の取引の上積みになるものであるという規定と、それからアメリカがドルを支出した場合は、日本国はそれに公定相場をもちまして、日本銀行内に設けられました特別勘定に日本円によつて積み立てるということと、それから第五条はそのときの積立てのレートは、いわゆる公定平価で三百六十円であるということ、それからもしこの協定実施する上において必要ならば、細則を両政府で合意してきめると、そのことが書いてあります。  それからこの交換公文がこの協定にはございまして、その交換公文によりますと、小麦を早く買いたいという関係各庁の意向でございましたために、買う方は議会の御承認をまたずして行政権の範囲内で買うことは買う、それ以上のことはこれはあるいは行政権の範囲であることでございますが、非常に疑いもある点もございますので、これは国会の御承認を得てからする、そういうような交換公文が出ております。
  300. 上塚司

    上塚委員長 御質疑はございませんか。
  301. 並木芳雄

    並木委員 先ほど私の質問が途中で切れましたから、それについて簡単にお尋ねをいたしますが、本年度の五千万ドルの中で約五百五十万ドルから六百万ドルの間で余剰が出て来る予定である、それは今のところの話合いでは、小麦の追加買入れに充てられるであろうという局長の答弁がありましたが、数量にすると何万トンくらいになりますか。
  302. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 今申しましたのは小麦などが話題に出ておるということでございますが、もし小麦にいたしますれば、大体七万トンちよつと越えるという程度の小麦が買えるだろうと思います。
  303. 並木芳雄

    並木委員 過剰農産物については、アメリカの過剰農産物だけに限らずに、これを他の第三国に振りかえて三角防衛援助という形はこの協定からは出て来ないでしようか、たとえば濠州の羊毛を日本がほしい、そうするとアメリカ日本、濠州という三角関係をとつて、うまく調節をして行くという方法なんです。
  304. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 もともとこの五百五十五条ができました目的は、アメリカの余剰農産物を売るということが目的でございまして、第三国の余剰の――余剰かどうかわかりませんが、第三国のものを売るということが目的になつておりません。それでございますから、たとえばカナダなどと――カナダ代表が今アメリカに行つて多分話をしていると思いますが、アメリカが余剰農産物を売ればカナダに影響を受けるということで一応問題になつておるわけでございますように、ほかの国のものを売るということにはなつておりません。それからまた五百五十条の条文を見ますと、合衆国で生産される余剰農産物と書いてありますから、この点は明らかに合衆国以外でできる余剰農産物を含むことはできないと思います。
  305. 並木芳雄

    並木委員 それではもう一点お尋ねをしますが、向うで余つた農産物を日本に譲渡する、そういうことはアメリカの方では盛んに考えるのですけれども、反対に日本から持つて行く、たとえば繊維品に対して燃えやすいものであるからといつて、何か法律をつくつてアメリカでこれを禁止しようというようなことがもくろまれているのです。外務省の経済局長としてはこの点について調べておられると思いますが、この機会に伺つておきます。
  306. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 可燃性の衣料織物等の禁止に関する法律は、実は日本にとりまして非常な経済的打撃を与えるので、今大いに向うとも折衝しております。問題はこの法律の趣旨は、単に日本からのみの輸入ということではありませんので、国内における製造も禁止しております。それでもともと起りは子供たちが焼け死んでしまうというようなことであつたのでありまして、日本だけを目当にしたものではないということでございます。それでこれが対策としまては、もともとこの法律にはある程度例外というのが付されておりまして、たとえば帽子とか、くつ下とか手袋等は一定の規格のものはこれは例外になつております。という意味は、これらのものは身につけていても火がつけばすぐとりはずしかできるから焼け死ぬに至らないという程度でございます。それを類推してみますと、日本から行つておりますものはハンカチーフとか、それから絹スカーフが綿製品では相当多くを占めております。ネツカチーフのようなものはそれが焼ければとりはずしが可能でありますし、スカーフは向うではよく女と女の子供が首や顔に巻いておるのでございますけれども、この点少し問題はあることはございますが、容易にとりはずしができるだろうというので、今交渉の最中でございます。
  307. 戸叶里子

    戸叶委員 米国の余剰農産物というのはどういうものを言うのですか。
  308. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 米国の余剰農産物というのは、必ずしも確定的にきまつておるわけではございませんで、農務長官がそのときの需給状態を見てきめるわけでございます。現在余剰農産物として考えられておりますものは、小麦だとか、綿花だとか、植物性油、葉タバコ、とうもろこし、バター、チーズ、玉ねぎ、乾燥豆類、果実等、その他のものがなつております。しかしこれはときどきかわるのでございまして、実は当初は、今度の交渉をやりますときにも、日本としましては大豆をこの方式で買えたらよいのではないかと思つて申込んだのでございますが、そのときはすでに手持ちのものがなくなつておりまして、余剰農産物ではなかつたわけでございます。そういうわけでこの点は毎年かわるわけでございます。そのときどきによつてかるわわけでございます。
  309. 戸叶里子

    戸叶委員 私のちよつと席をはずしたときに聞かれたもしれませんが、来年度はどういうものとどういうものを予定されておるかお尋ねいたします。
  310. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 新聞等に出ておりますのは、実は各省の間でまだ事務レベルで話合いをした程度でございまして、必ずしもきまつておるわけではありません。まだこれから大いに考究しなければならぬものでございますが、今考えられておりますものは小麦とか、大麦、とうもろこし、綿花、それから葉タバコ等であります。大豆ももしあればよいというわけで、大豆等も考えられております。しかしこれはまだ最後的にきまたものでも何でもなくて、事務当局の間で大体取上げられておるものでございます。
  311. 戸叶里子

    戸叶委員 そういう余剰農産物を運搬するためには日本の船を使うのですか、アメリカの船を使うのですか。
  312. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 これは現在のMSAの多分予算に関する規定だと思いますが、それには五〇%だけはアメリカの船その他はどこの船でもよいということになつております。ただ今度のランドール委員会の報告を見ますと、その点につきましては日本の五〇%、五〇%という政策はよくないということが勧告の中に出されておりますので、この点はアメリカ国会等においてもおそらく取上げられ、制限緩和の方に向つて来るのではないかと思われます。
  313. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると今度の小麦はどういうふうになつておりますか。
  314. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 今度の小麦は現在のMSA法の予算の規定によりまして、五〇%はアメリカ船で運ぶということになつております。
  315. 戸叶里子

    戸叶委員 来年度はまだ全然わからないのですか。
  316. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 まだわかつておりません。しかし今度は、もし相手に交渉いたします場合は、これはもちろんアメリカの立法でできておるわけでございますから、そしてランドール委員会の報告がそういうことはよくないということをレコメンドしております関係からも、もし日本がそういうことを取上げる場合は、この点も緩和するようにという希望は付したいとは思つております。
  317. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと日本の船を使つた場合と、アメリカの船を使つた場合と、運賃はどのくらいの差がありますか。
  318. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 これはそのときの情勢によつて必ずしもわかりません。アメリカの船でやりますと大体十一ドルくらいでございますが、日本船でやるとこれより少し安いと思われます。八ドルか九ドルくらいのところであります。ところがこの点に関しましては、実はアメリカにウエイヴアーという制度がございまして、アメリカ船が、日本船その他を使つた場合よりも、つまり国際市場よりも高かつたという場合におきましては、その分だけは円を積み立てなくてもいいというような制度がございます。但しこれは条件がついておりまして、そのために日本政府の払う食糧に対する補助が少くなるとか、それから消費にあたつて消費の値段が安くなるとか、そういうような条件があれば、アメリカ船に比べて日本船が安い、しかもそのアメリカ船のフレートが国際価格に比べてもばかばかしく高いという場合においては、その差額だけは円き積み立てなくてもいいという制度がありますので、この点は一部はこれを利用すべく今交渉中でございます。
  319. 戸叶里子

    戸叶委員 円が積み立てられました場合に、それに対しては利子がつくのでしようか、つかないのでしようか。
  320. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 この点は利子はつかないことになつております。それで実は交渉のときにおきまして、わが方としましても利子がつかないということを条文にうたおうと思つたのですが、アメリカとしては、利子がつかないことはさしつかえないけれども、これが第三国に及ぼす影響があるから、それはひとつ話合いだけにしておいてくれということで利子がつかないことになつております。
  321. 戸叶里子

    戸叶委員 贈与された一千万ドルの使用計画はもうできておるのでしようか。
  322. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 これは現在のところ、まだ必ずしもできていないわけです。これは関係各省の間におきましてまだ討議中でございまして、一応防衛並びに防御支持産業ということでは考えておりますが、その防衛支持産業というものが範囲が相当広汎でございまして、その範囲がどの程度まで及ぶかというようなことに関して、関係各省の意見がまだ必ずしも一致していないというようなありさまでございますので、日本側としてはまだ一致した意見はできておりません。
  323. 戸叶里子

    戸叶委員 防衛支持産業をきめる場合に、アメリカ側の顧問団の意見ども入るのでしようか。
  324. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 顧問団の関係はわかりませんが、私たちが今対象として考えておりますのはアメリカ大使館の人でございまして、顧問団とは全然関係がございません。
  325. 戸叶里子

    戸叶委員 日本側だけできめていいわけですか。
  326. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 これは経済措置に関する協定の中に入つておりますが、その中には双方で合意する条件というような文句があり、双方で合意するようなことでございますと、それで問題はごくアウト・ライン――アウト・ラインと申しますと、たとえば航空産業に使うのか、それとももつと基礎産業に使うのかという、そういうゼネラルなアウト・ラインについてアメリカ側と話し合つてきめるということになるだろうと思われます。
  327. 細迫兼光

    細迫委員 この五千ドルという中には船賃なんかは含まつておるのですか。すなわちこれの受渡し場所といいますか、値段をきめる場合はどの状態においてきめるのですか。
  328. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 これはアメリカ船を用いる場合におきましては、アメリカ政府はこれを全部払つてくれることになっておりますから、その五〇%に関するアメリカだけの船賃はこの中に入つております。日本船の場合には、これは円でよろしゆうございますから入つておりません。
  329. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私はこのMSA協定の公聴会のときに家に聞き捨てならないことを聞いたのです。それは一橋大学の都留重人君はこんな農産物の供与を受けたところが、アメリカで余つておるもので、カナダから買つた方がずつと安い、こういうことを言つておりました。私は与党の立場から質問いたしたいと思つたのですが、質問できなかつたのです。私はこの機会に政府は明らかにしてほしいと思いますが、これはまことに有利な協定であるというふうに考えるわけであります。ところが都留君の話では、カナダなどから買つた方がずつと安いのだから、アメリカの余つたものを買う必要はない、こういうふうな話をしておつたのでありますが、私はこの際政府においてはこれらの点を明らかにして、これは大いに有益なものであるということを政府自身も認めていただきたいと思います。
  330. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 都留さんが言われたことは、大麦に関して言われたことと承知しておりますが、大麦に関しましては、これは品質の問題でございまして、米国の品質とカナダの品質と同じものをとれば値段は大体同じでありまして、今両方ともトン当り二十三ドルでございます。これは食糧庁に聞いたのでありますが、それは同じものと申しますと、ウエスタン・バレーのナンバー・ツーの方が米国で、カナダの方はウエスタン・シックスのナンバー・スリーというのがございます。これだと同じ値段でございます。ただカナダの方にはナンバー・ワンのホイートというのがございまして、これは通常は動物のえさ用に使つておるものでございます。もつとも動物のえさ用に使うと申しましても、必ずしも人間が食べられないほどではないと思いますが、これだと安くなります。それでございますから、都留さんが御比較になつたのは、アメリカのいい品質のものとカナダの悪い品質のものと比べて、アメリカの方が高い、こうおつしやつたのではないかと思います。  それから小麦に関しましては、実はアメリカの小麦とカナダの小麦とは質が達うのでございまして、カナダの小麦はハードといつてパンなどによく、味の素にもいいのでございます。それからアメリカの小麦は、むしろうどんとかそういうものにいいのでありまして、ソフトでございます。これはカナダ側は自国のものが一番安いと言つておりますが、値段を比較してみますと、カナダアメリカもほとんど差異がない。むしろアメリカの方が安い状態でございます。ただこれはアメリカの方が安いといつても、アメリカだけの小麦を買いつけるということはできないので、カナダ側のパン用の小麦もある程度買いつけなければならぬ。ことに味の素にはカナダの小麦でなければいかぬということになつておりますが、そういうわけであります。
  331. 細迫兼光

    細迫委員 品質などについての話合いはできるのですか、こちらから検査するような権利がございますか。
  332. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 この取引にあたりましては通常の輸入の方法と同じでございます。もちろんとつてみまして品質が悪ければ、クレームも申し立てることができることになつております。その点に関しましては、通常の輸入の手続とそつくり同じでございます。
  333. 穗積七郎

    穗積委員 ちよつとお尋ねしますが、小麦買入れの船の輸送のことはわかりましたが、買入れ期間はどういうふうになつているのですか。
  334. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 これの買付期間は一応六月三十日となつておりますが、この意味は必ずしも六月三十日までに契約をしなければならぬということでございませんので、アメリカ政府がパーチエス・オーソライゼーシヨンというのを出します。それを六月三十日までにすればいいということになつているのであります。
  335. 穗積七郎

    穗積委員 それからもう一つは買付の機関でございますが、日本ではむろん民間の商社が取扱うわけでございますか。
  336. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 民間の商社が取扱うのですが、日本では御承知の通り食糧庁が民間の商社にテンダーを行つて買付の方法をとつて参ります。その方法は普通の方法と同じであります。
  337. 穗積七郎

    穗積委員 それでは買付の場合、たとえばタイあたりから米を買いつける場合と同じでございますか。
  338. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 まつたく同一でございます。
  339. 穗積七郎

    穗積委員 それからこの四十万ドルは域外買付になるわけでございますが、これはドル建の中の買付に割込むのですか、除外されておりますか。
  340. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 日本でこの種の域外買付に予定されておるものは、もしこの協定がなければ、ことしは六千万ドルで終るわけでございます。別に四千万ドルの円に対する発注はないはずでございます。もしこの協定がなければアメリカのこの種の域外買付は六千万ドル、つまり四千万ドルは上積みでございます。
  341. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると割込むわけですか。
  342. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 もしこの協定がなければアメリカの今年度の域外買付は六千ドルということでございます。それからこの協定がありますために四千万ドル加わりまして、一億ドルということになるわけでございます。
  343. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと、それは話合いの上だけのことですね。協定の文書の上にははつきり出ておらぬわけですね。
  344. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 これははつきり現われておりません。話合いのところでございます。
  345. 穗積七郎

    穗積委員 さつき戸叶さんがお尋ねになつた問題と関連しますが、三十六億円には日本からその倍額を追加する約束になつておるのですか。
  346. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 三十六億円に対しまして、日本からどういう場合に倍にするとか、何にするとかいう条件は何らついておりません。
  347. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、特別会計は三十六億だけでございますか。
  348. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 三十六億プラス三十六億に対して貸しつけた利息ともいうようなものを含んだものと想像しております。
  349. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、フアンドは三十六億だけで特別会計をつくるわけですね。日本政府からの融資はございませんか、これにプラス融資は……。
  350. 下田武三

    下田政府委員 ただいま国会に出ております特別会計設置法案によりますと、この特別会計の収入の部は、三十六億円の元金とその運用によつて得ました収入を計上することになつております。
  351. 穗積七郎

    穗積委員 三十六億円を使用する計画は昨今の新聞でだんだん報道されておりますが、大体あの線に近づきますか。
  352. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 現在のところどういうふうにおちつくかはわかつておりませんけれども、ただ現在の傾向を申しますと、どちらかというと特需とかそういうものに片寄らないで、もう少し基礎産業――基礎産業と申しましても、もちろん関連産業でございますが、関連産業の方にも相当重きを置いたらいいじやないか、そういうふうな傾向になりつつございますが、まだ関係各省の話がどの程度で話がまとまるかということはわかりません。
  353. 戸叶里子

    戸叶委員 ちよつと関連して。その関連産業というのはいつごろきまるのですか。
  354. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 この点はできるだけ早くした方がいいのだろうと思いますが、今のところ見通しがつきません。四月上旬くらいにでもなりましたらきまるのじやないかと思います。
  355. 上塚司

    上塚委員長 御質疑はありませんか。――御質疑がなければ、これにて農産物の購入に関する協定についての逐条審議は終りました。  次に済経的措置に関する協定について審議いたします。本協定につきましては、審査の都合上各条項を一括審議いたします。政府側より説明を求めます。
  356. 穗積七郎

    穗積委員 議事進行について。きようの大体の予定はどういうふうにしますか。
  357. 上塚司

    上塚委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕
  358. 上塚司

    上塚委員長 速記を始めて。
  359. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 次に経済措置に関する協定を御説明いたします。この協定は五条から成つておりますごく簡単な協定でございまして、農産物の購入協定の中で積み立てました円資金を(1)、(2)の目的に使うということが書いてあります。(1)の目的は、日本の工業の援助のため、及び日本国の経済力の増強に資する目的のために、相互の合意する条件によりまして、それを日本政府に贈与するということになつております。この贈与の額は積立金総額の二〇%、つまり一千万ドルに相当する額であります。それから残りの額つまり残りの四十万ドルは物資及び役務の調達、アメリカが軍事援助計画を支持するための域外調達のために使われることになつております。  その次に日本は一千万ドルの贈与を受けます会計として、特別勘定を設けることとするという規定がございます。この規定をもちまして、現在特別会計に関する法律が本国会に御審議を願つていることと存じます。  それから第三条の規定は、投資保証協定というものは別にございますが、そういう投資保証協定をやることがいいことだということをただ書いてあるだけでございまして、ここに置きましたのは別に深い意味はございませんで、スペインとアメリカ協定にこういうような条文があるために置いたのでございます。  それからこの協定実施するため、必要があらば細目協定をするということが書いてあります。大体以上でございます。
  360. 上塚司

    上塚委員長 御質問はありませんか。
  361. 戸叶里子

    戸叶委員 どこかの国で余剰農産物を買つて、そのうち日本と同じようにその何パーセントかを贈与の形にしたという例があるかどうかを承りたいと思います。それから来年度、つまり七月から始まる新会計年度で、日本にどのくらいこれと同じような形の援助があるか、きまつていましたらそれを伺いたいと思います。
  362. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 第一の質問に関しましては、他国の例は必ずしもよくわからないのであります。たとえばユーゴ向けの一部は贈りものであるとか、あるいは英国のも贈与という形になつております。その他の国は域外買付、一部を贈与でデイフエンス・サポートということになつております。しかしこの詳細はまだはつきりわかりません。それからイタリア及びオランダ向けについては、贈与にするかいなか使途は未定ということになつております。  それから来年度のことに関しましては、実はアメリカの大統領が三億ドルを対外援助に使いたいということを言つておるわけでございますが、アメリカの議会にそれが予算として計上され、承認を受けてから初めて問題が起るのでございます。従つて日本はどれだけのものを受けられるかきまつておりませんし、また日本の方でこれをどのくらい受けようかというような話もまだきまつておりません。
  363. 戸叶里子

    戸叶委員 ユーゴや英国等の例をお引きになりましたが、まだはつきりしないとおつしやいました。そうすると全体はおわかりにならないのですね。それが第一点。もう一つは来年度は日本に予想としては一千万ドルよりも多そうになりますか、それとも少くなるかということです。
  364. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 実は第一の点に関しましてわからないと申し上げましたのは、日本アメリカとの間はこういうような協定の形になつておりますが、その他の国は協定の形になつていない、単なる交換公文や何かでやつておるということが向うの情報でございますので、その話合いというものは必ずしもはつきりわからないわけであります。それから来年度の贈与の率が多くなるか少くなるかということは、これは個々別々の交渉をしてみないとわからないので、一概に多くなるだろうとか、少くなるだろうとかいう予想は、今の段階ではつけがたいと思われます。
  365. 戸叶里子

    戸叶委員 よその国が文換公文の形で結ばれているのに、日本だけこの協定にして、しかも余剰農産物買入れに関する協定と、経済的措置に関する協定二つにわけておりますが、これはたいへん煩わしいことだと思います。岡崎さんに聞きましたら、かつこうが悪かつたからわけたとおつしやいましたし、条約局長も自分もわける方を支持したとおつしやいました。経済局長は専門的な立場から、これはわけない方がよかつたのじやないかとお思いになりませんかどうでしようか。
  366. 下田武三

    下田政府委員 第一点にお答え申し上げますが、これは日本の新憲法におきます憲法慣習がまだ確立しておりません。外国ではすでに憲法慣習として確立いたしておりまして、政府の権限内で締結し得るとりきめの範囲が広いわけであります。日本は現在までのところ非常に狭くて、政府は非常に広範囲のとりきめを国会の御承認のために提出いたしております。従いまして大体立法事項を含むような内容がありますとすべて国会の御承認を求めております。特別勘定のようにまさに立法事項でございますので、よその国は政府限りで締結いたしましても、日本ではやはり国会の御承認を求めた方が至当だと存じまして、従いまして同会に提出いたします以上は協定という正規の形にいたした次第でございます。
  367. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 今条約局長が御説明なつたと同じでございます。ただ私はこの二つにわけましたのは、一つはただ購入に関することでありまして、もう一つの方は購入した代金をどうするかというふうなことが書いてありますので、条約の体裁上から考えましても、そういういろいろなことがごちやごちやまじつているより、二つにした方がかえつてすつきりしておるのではないか、そう思われる次第であります。
  368. 戸叶里子

    戸叶委員 将来もこういういうふうな経済措置に関する協定の内容と同じようなものが望まれるとお思いになりますか、もしもそれと同じようなものが望まれなかつた場合には、余剰農産物買付協定だけ残るわけだと思うのですが、その点はどういうことになりますか。
  369. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 来年度の米国の予算その他を見なければわかりませんけれども、ランドール委員会の勧告その他から見まして、おそらく同様の、もしくはこれよりもつと有利な条件のものが予想されておる次第でございます。
  370. 穗積七郎

    穗積委員 三条を少し説明していただきたいと思います。
  371. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 この三条は詳細は投資の保証に関する日本国アメリカ合衆国との協定の中に盛られておるのでありまして、ただそういうことをやることがいいということをここに書いておるだけでございまして、詳細は投資の保証に関する日本国アメリカ合衆国との協定の中に入つております。それで実はスペインとアメリカの経済援助協定の中には、投資の保証に関する協定自体が入つておるのでございますが、それはこの経済措置に関する協定の中では少し長過ぎるし、体裁が悪いというような関係もありまして、別に項を起しまして、投資の保証に関する日本国アメリカ合衆国協定にしたわけでございます。ですから内容はそつくり同じでございます。
  372. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと、さつき戸叶さんが質問されておりましたが、農産物の購入に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定、それから経済措置に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定、投資保証に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定、これも非常に錯綜しているのです。さつきの下田条約局長説明を伺いましても、どうもまだ十分納得が行かないのです。どういうわけでこんなに混雑した協定にされたのか、従つて少くともこの三条は投資の保証に関する協定の中に入れて、そうして一条、二条は当然農産物の購入に関する日米間の協定の中に入れるべきだと思うのです。そうじやなくて三つにも四つにもわけたというのは、特別に農産物の購入に関する、または投資に関する協定のほかに、つまりこういう協定をこの際結ぶということは、農産物の購入に関する経済的メリット、または民間投資による利益、それ以外に何か経済的な特別な援助とか措置とか何ものかあるがごときごまかしだと思うのです。そして中身を開いてみれば、こわそもいかに、あけてびつくり玉手箱で何も出ない。協定の農産物の特別会計のことがちよつと書いてあるだけで、国民を欺瞞するものははなはだしいと思う。どういうわけでこういう協定にしたのか。さつき下田条約局長は法律的なことを説明されましたが、何だかわけがわからないのでもう一ぺん法律的な理由と、経済的な理由をちやんともつと納得行くように説明してもらいたい。
  373. 下田武三

    下田政府委員 先ほど反対の趣旨の御質問もあつたのでありますが、MS協定の八条で、六条件を一緒のところに書いたので、非常にわかりにくいという御質問でありましたが、ごもつともな御意見でありますが、この協定は本来カテゴリーの違うことを、独立したことを規定しておるのでありますから、わかりやすいためにも協定別にした方がいいわけであります。また必ずしもこれは一蓮托生の運命にあるわけでございませんので、かりにアメリカの余剰農産物の売りつけということが行われなくなつたといたしましても、投資の保証の協定は引続き残りまして、そして米国の民間投資を誘致しやすいようにするということだけは生かして残すという実益もあるわけであります。従いましてそれぞれ関連はありますが、事柄が本来違うことでありますし、独立に生かす実益のあることでありますから三つの協定にわけた次第でございます。
  374. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 農産物の購入に関する規定の方は、ただ農産物の隣人ということだけが規定してあるのでありまして、長い間に積み立てられた円をどうするかということが経済措置の方の役割に入つておるのでございます。それから投資の保証というのは、実はアメリカMSA法におきましても五百五十条もございますし、また投資の保証に関するようなものもありますので、いろいろごちやごちやしておるのでございまして、これを全部一つの条約にいたしますれば、性質のかわつたものが幾つも出て来る、そしてことに投資の保証の方に関しましては、農産物の購入に関するものとは違いまして、違うカテゴリーに属する、そういうようなことがありましたので、これを別々にしたわけでありまして、それ以外に何らの意味もございません。
  375. 穗積七郎

    穗積委員 お二人の局長は明敏なくせに私の言うことに逆に答えておられる。いいですか、この経済措置というのは、国民をごまかすためには実は経済援助という言葉がほしかつたと思うのですが、そこで中身を開いてみれば何かというと、第二条までで打切つておけば、農産物の購入に関する日米間の協定だけでいいじやないかと言われる。しかし経済という言葉を農産物のところに持つて来るわけに行かない。経済という言葉を使うためには何か別な協定にしなければならない。二条で打切れば前の小麦協定にくつつけたらよかろうと言われるので、そこで三条もくつつけているのでしよう。違うのを使うのはなぜかというと、こまかいことは投資協定に書いてあるからという。そんなら二条から三条をぽつとわけて、前はこつちへつけ、あとはこつちへつける、一本で行けばきれいに行くじやないか。そんなものは独立した協定にして錯綜させない方がいい。経済という言葉を何とかして使いたいために、二条までは理由にならぬから三条を持つて来て、内容は何かというと投資保証に関する協定の前置みたいなものをここへ持つて来て、それでやつておる。そういう目的であつて、何ら説明にならぬじやないか、そんなことは初めからわかつておるのですよ。だからこの協定をわけると小麦協定で買付をやめた場合でも二条から前はなくなるが、あとは残る、すなわち独立の協定にするために両方から持つて来たもので、独立したものではない、どちらも付随したものをここへ寄せ集めて一つの協定にしたので、これははなはだ煩わしいと思う。今からでもいいから、二条と三条を境にして切つて、前の二つにつけたらいいと思うがどうです。さつぱり私の質問に対して答えになつておらぬ。どういう必要があつて、こういうことをやつたらどういう得があるかということを聞いておるのです。またはそれをやらなければならない法律技術上の何か障害があつたかどうかということを聞いておるのです。
  376. 下田武三

    下田政府委員 これは十分な実益があつてなしましたことでありまして、これを全部一本の協定にいたしますと、余剰農産物というものがアメリカからなくなつてしまいましたときには、一蓮托生でみんなの事項が死んでしまうわけであります。ところがたとい余剰農産物がなくなりましたところで、米国の民間投資を誘致する必要があります。そのためには民間投資協定が独立に残らなければなりません。また経済措置協定の第二条に申します特別勘定、これもここに書いてありますのは、余剰農産物から生じただけに限つてないのであります。日本国に対して行う贈与から生ずるということに書いてありまして、これがただいま御承認を仰いでおります法律による特別勘定の設置の根拠法になるわけであります。こういう特別勘定というものが日本政府に設置されます以上は、その根拠法となるべきこの協定も死なないで残しておく必要がございます。でございますから、年々の購入自体に関する農産物の購入協定というものがたとい死にましても、特別勘定の根拠法は残り、かつ投資の保証を誘致するための投資保証協定は残るという十分な実益があるわけでございます。
  377. 穗積七郎

    穗積委員 語るに落ちるとはこのことで、それじや伺いますよ、いいですか。この本協定の、日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定の十一条、これをなぜ別協定にしないのですか、これはやめても残るのですか、同じことですよ。それは小麦協定の中に入れて、特別勘定に関する限りはこの協定を廃棄し、また日本が買付をやめてもそれは残るとしておけばいい。この十一条は、この協定を打切つても、その打切られてから一年もその効力が残るということで、そういう義務が一つの協定の中に入つているじやないですか、局長さんどうですか。
  378. 下田武三

    下田政府委員 農産物の購入に関する協定は、第一条にうたつておりますように、「千九百五十四年六月三十日に終るつまりことしの六月三十日に終る購入で、きわめて一時的なものでございます。これに反しまして、御指摘MSA協定は、インデフイニツト・ピリオツド、つまりインデツイニツトな期間、どちらか先に廃棄の通告をしてから一年たつまでは継続するというインデフイニツトの性質を持つ長い協定でありますから、ああいう特例を一緒に設けても一向さしなかえないのでありますが、これは事の起りである購入ということが三箇月しかないということでございますから、実益を含む協定はなるべくこれを独立の協定にして、命を長くしておく必要があるわけであります。
  379. 穗積七郎

    穗積委員 しかし来年も小麦の買付をするとこの間言つたじやないか。日本の食糧が足らない以上は、でき得べくんばこの協定に従つて買付をするつもりだ、国際小麦協定以外、またはフリー・マーケツト以外からこれを買うつもりだということを言つておる。継続するつもりでしよう。
  380. 下田武三

    下田政府委員 来年度はおそらくまた六百三十日に終る会計年度を目的とする別の協定をつくらなくちやならぬと思います。
  381. 穗積七郎

    穗積委員 それだつたらそれをくつつけておけばいいじやないか。MSAのもとの法律だつてそういうことになつておるのですから。しかも恒久的な規定というものはMSA法の中にあるわけですから、そんなことは同じですよ、これをやつたつて……。従つて今までの説明を聞いてみて、世間のうわさのように、やはり国民を欺瞞するためには何か経済的な援助があるかのごとき錯覚を起させるために、農産物を買うとか投資のほかに経済的措置に関するという何かかんばんがほしかつたということでもつてやつたという、まさにその通りの裏づけになるような御答弁で、私は別に独立協定にする理由を何ら発見することができない。だから今は下田条約局長のお答えですが、小田部局長、何か経済的ないわれがあつたら、言い分があつたら言つてみてください。
  382. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 これは別に経済的の理由とかなんとかいうことでありませんので、まつたく条約の体裁上その方がいいのじやないかということでこういうふうにしたのであります。
  383. 穗積七郎

    穗積委員 しかしこれは……(「自由党はこれでいいんだ」と呼ぶ者あり)自由党はいいじやない。問題は、いいようだけれども、国民にMSA協定に対する錯覚を起させる、こういうことをやると……。
  384. 上塚司

    上塚委員長 穗積君、質問してください。
  385. 穗積七郎

    穗積委員 質問している。だから言つておるのです。だからさつきも言つたように――河野さんも指摘しておられるが、特にMSA協定に需要な点は、第一は第八条をもととする軍事援助、第二は経済的な利益です。経済的利益があるのだからわれわれはこのMSAを受けるのだ、受けるのだといつて、そこであけてみたところが中身はなかつたから、御丁寧に二つのものをつくつて国民をごまかそうというのはけしからぬ。らつきようの皮をむいたら、しんがなかつたということをはつきりするためには、事をはつきりさせなければならぬ。こんな協定は国民を欺瞞するものだ。
  386. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 経済的な利益は私の方ではあるだろうと思います。それは日本は外貨が少いのでございまして、しかもアメリカではあるいは余剰と思われますが、日本にとつてはどうしても輸入計画の中に入れなければならない小麦を、とにかく外貨を使わないで買えて、しかもそれを円貨として積み立てる……。
  387. 穗積七郎

    穗積委員 そんなことを聞いていない。協定二つになぜわけるか、私の聞いているのはそこだ。
  388. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 それで三つの協定にしたからといいましても、これが二つ協定にしたからという理由だけで、別に経済的利益が多くなるとか、一つの協定にしたら経済的利益が少くなるとかいうことはないのでございまして、ただ二つにした方が条約の体裁上都合がいいということでこうしたのであります。
  389. 穗積七郎

    穗積委員 体裁とは何ですか。実質的な便宜または利益もないのに、体裁ということはどういうことですか。
  390. 下田武三

    下田政府委員 体裁と申しますのは、別個のことはなるべく別個の文書で規定して、命を長くする、実益のあるものは、もとの購入協定が死んでも生かす必要がある、という体裁と実益の問題でございます。
  391. 穗積七郎

    穗積委員 その体裁なら、本協定の十一条をなぜ独立協定にしなかつたかということを聞きます。
  392. 下田武三

    下田政府委員 本協定は一方の政府が廃棄の通告をしてから一年続くものでございますが、こちらの購入ということは、目の前に迫つております六月三十日限りという臨時的なものでございますから、臨時的なものに他のものの生命をすべて託するわけに参りません。でございますから、臨時的のものは切り離して、死んでもいいようにいたしたのでございます。
  393. 穗積七郎

    穗積委員 今の点はあくまで私は納得できない。今の御説明はまさに国民をして経済的利益があるかのごとき錯覚を持たしめるためのごまかしであることを指摘しておきます。今後こういう不心得な協定を結ばないように、もし結んだときには、そういうつもりだということを国民に発表するように願いたい。MSAとは何ぞやということを書いたものの中には何も書いてないこういう協定を結ぶときのいろいろなさもしい根性やいきさつをちやんと書いて、国民に知らしめておく必要があると思う。その実体はあくまで四番目の投資保証に関する協定の中ではつきり出て来ると思うのでございます。そこでお尋ねいたしますが、この第三条ですが、今の第二条までは、小麦協定をやめても特別会計というものは残るから云々ということですが、それでは条三条は第四番目の投資協定との関連はどういうことになりますか、それをひとつ説明していただきたいと思います。
  394. 下田武三

    下田政府委員 これは一番最近の例でありますスペインの協定の例によつたのでありまして、つまり第三条の最後に「この協定の目的の達成に寄与するもの、であることが合意される」この協定の目的は日本国の工業の援助日本国の経済力の増強ということでございます。そこでこの協定の目的に寄与するものであるということをうたいまして、投資保証協定がそういう目的上の連関があるということを明らかにいたした次第でございます。
  395. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと、第三条というのは投資保証に関する協定の中へ入れると、どういうさしつかえができましようか。
  396. 下田武三

    下田政府委員 投資保証協定に移しましても、一向さしつかえございません。
  397. 穗積七郎

    穗積委員 これはまつたく小麦協定の特別会計のものをこつちから切り離すためにこんな違つたものをつけただけであつて、アクセサリーという言葉をさつき河野さんが言われたが、アクセサリーどころか、欺瞞の手品の種みたいなものです。こういうものはまつたく無意味なものです。これは自由党の諸君もそういうふうに認めておられますが、どういうわけでそういうことになつておりますか、ひとつ納得の行くような説明をしてもらいたい。
  398. 下田武三

    下田政府委員 決して無意味ではございませんので、この協定の目的との連関をここでつけるという大きな意義があるわけでございます。
  399. 上塚司

    上塚委員長 ほかに御質疑がなければ、これにて経済的措置に関する協定についての逐条審議を終了いたしました。  次に投資の保証に関する協定について審議いたします。各条項一括して政府側より説明を求めます。
  400. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 投資の保証に関する協定は、全文で三条でございます。これは、ある事業がございまして、その事業が日本において承認されるということがまず第一でございますが、日本において承認されているその計画に基きまして日本で投資いたしましても、それが後日になりまして、あるいは国際収支の関係上から、あるいは収用されたとかなんとかいう関係があります場合におきまして、アメリカ政府とその投資者が一種の契約をつくつておりますれば、アメリカ政府が、投資しただけの額プラス相当の利潤額というものを投資者に払う。そうして払つた結果の円というものは、アメリカ政府が非軍事的行政的目的に使うということが規定してございます。それからもしこのために紛争が起りました場合においては、両政府間の直接交渉の主題とし、もしそれがある一定期間に合意がつかない場合においては、これを仲裁に持つて行くということが規定してございます。
  401. 上塚司

    上塚委員長 御質疑はございませんか。
  402. 細迫兼光

    細迫委員 これほど外資を優遇して導入を容易にしなくてはならないという根本的な、経済的な必要はどこにございますか。
  403. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 これは私どもの仄聞いたします限りにおきましては、現政府のもとにおいて外資導入が必要であるということでございますが、これをもつと平たく申しますと、日本の工場の機械とかその他におきましては、必ずしも合理化されていない。戦時中のあるいは古いものであるとか、その他合理化されてない部分が多いのでございまして、たとえて申しますれば、火力借款におきましていつぞや購入しました機械も、日本の技術水準においてはまだできない。しかも電力開発ということは絶対的に必要である。そういうような場合に外資の導入ということをいろいろとはかつておるのでございます。そういうような必要に基きまして外資導入の必要があるのでございますから、もしこの外資が、国際収支の関係で利潤が送れなくなつた場合において、アメリカ政府がこれをドルで投資者に返してやるということでございますから、投資者としては安心して投資ができる。こういう関係になるのでございます。
  404. 上塚司

    上塚委員長 ほかに御質疑はございませんか。
  405. 穗積七郎

    穗積委員 ちよつとお尋ねいたしますが、第一には、投資の対象になる業種ですが、これはこの前の通商航海条約の規定との関係はどういうふうになりますか。
  406. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 通商航海条約には、七条の二項だと思いますが、そこにある一定の制限業種は、外国人がこれに参加することを制限し、または禁止することができることになつております。それでこの協定との関係を申しますと、これはたとえばアメリカ人が日本にある投資をする場合におきまして、アメリカ政府に保証してもらうということがいいか悪いかということを日本政府に一々聞いて来るのでございます。もちろん日本政府におきまして、それが制限業種の範囲であり、しかもこれは困るというような場合においては断ることができるのでございます。それでありますから、日米通商航海条約制限業種を設けましたのも、その限度においては制限できるという範囲でございまして、それはそのときいろいろ考えた末に制限する場合もあるし、制限しない場合もございましようが、制限しようと思うときはこの協定は一向さしつかえなく制限できるものでございます。
  407. 穗積七郎

    穗積委員 この投資の場合に、通商航海条約によつて制限されております制限業種には日本政府が民間投資を許諾することはできないわけでございますね。むろんここの場合におきましても日米通商航海条約制限業種というものの規定は生きておると思うのですが、どうでしようか。
  408. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 日米通商航海条約の規定には、別に日本国政府が禁止または制限しなければならぬということは書いてありませんで、制限または禁止できるというふうに書いてございます。それでありますから、法律をつくりまして――今外貨審議会でこういうことをやつておりますが、外資審議会におきまして制限することが至当であると思われた場合においては、いつでも日米通商航海条約制限業種の範囲内においては制限できるのでございます。
  409. 穗積七郎

    穗積委員 この場合の投資契約は、民間企業間の投資契約といいますか、それのほかにどういうふうな形式になりますか。これはむろん民間投資でございますから、アメリカのある個別企業の企業体が日本の企業体に投資をする場合には、この両者の民間会社間における投資契約というものがございましよう。そうするとこの協定によると、向う側の投資に対してアメリカ政府が保証契約をするわけですね。だからこつちの政府は、それに対する「請求権又は訴訟の原因」云々と書いてございますが、こういうようなものに対しての責任を負う契約をするということになりますか。その契約の形は、つまり日米両国政府間と、それから民間会社同士と、それから今度は日本政府日本の民間会社と、アメリカ政府アメリカの民間会社との間の契約の形は一体どういうことになりましようか、それをちよつとお尋ねいたします。
  410. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 それはもしアメリカのある企業家が日本に投資するといたします場合におきまして、これをアメリカ政府に持つて行きまして、はたして保証の対象にしてくれるかどうかということを聞くわけでございます。その場合におきましてアメリカ政府としましてはそれを保証の対象にしていいと思います場合には、アメリカ政府から日本国政府の方に聞いて参りまして、自分の方としてはこの投資を保証の対象にしたいけれども日本国政府は同意しないかということを聞いて来るわけでございます。そこで日本国政府としましては、これが正当であると思うときはいいということを言いますし、もしこういうものを保証の対象にされては困るというときには、これを拒否するということになるのでございます。
  411. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと、この協定さすあれば、個々の企業間の投資契約に対して、日本国政府アメリカ政府との間において、その個別のケースの場合には特別な協定なり申合せというか、そういうことをしなくてもいいわけですね。
  412. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 これは特別にしないのでございますが、ただその場合におきましては、日本政府がこれを許すか許さないかという意思表示を、アメリカ政府にしなければならないわけでございます。それをしました場合における効果はどうなるかと申しますと、この投資保証協定に現われておるところとなります。
  413. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると契約書は、民間会社同士の契約書と、それに対するアメリカ政府アメリカ民間会社に対する保証契約書と、これは別々になりますね。
  414. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 別々でございます。
  415. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと、日本政府がその投資に対して許諾し、そうしてまたあと損失が起きた場合には、アメリカ政府並びに向うの民間会社に対しまして日本政府がかわつて権利を行使するということの契約書というか、承諾書というようなものは、どういう形式になりましようか。民間会社にも出しますか、アメリカ政府に出すわけですか、どういうことになりますか。
  416. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 日本政府としましては、アメリカ政府がある企業を保証するということを同意するという以外においては何もいたしません。ただ実際問題といたしましては、現在外資に関する法律によりますと、ある一定の企業を日本の経済に貢献し、かつ外貨の国際収支に役立つと思うときには一定の保証をしております。それは株式の場合ですと、利潤は二年間すえ置いてあと二年ずつ五回にわけて、元本ももし必要なら送らせるというような保証を実は外資法で与えておるわけでございます。それ以上は日本政府は何も与えないでいいわけでございます。ただ外資法である企業に対して許し、そのことを、日本国際収支が悪化したためか何かでこれが実現できなかつたというときにだけ、アメリカ政府がドルを個人の企業家に払う、こういう関係だけでございます。
  417. 穗積七郎

    穗積委員 どうも委員長がさつぱり休憩をさしてくれないから非常に疲れまして、心身ともにもうろうとして来ましたので、愚問を発するかもしれませんが御了承をいただきたい。この文章を私はずいぶん前に読んだから中にあるかもしれぬが、たとえばその民間投資をいたしました日本側の会社がつぶれた場合、またはその会社に対する他の日本国政府または民間会社個人の債権のあつた場合に、それを優先的に差押えをする、税金の滞納の差押えをする、または他の債権のために差押えをするということになりますと、アメリカ政府は、その場合におきましては、アメリカの民間会社に対して補償をしなければならないことになつておりますね。そうすると、その場合における日本国政府か、または日本国の投資された会社が、アメリカ政府または会社に対して負うべき義務はどういうことになつておりますか。
  418. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 この協定によりますと、あるアメリカ人が日本の会社に投資しまして損失したという場合は何ら義務は生じないのでございまして、ただ利益は円の形で出るけれども国際収支の関係でドルで送金できないというときだけをカバーすることになつております。それですから、それ以外のときに日本政府が何をするという義務は何も書いてございません。
  419. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと、その投資されました日本国名の会社に対しまする日本国政府並びに民間会社並びに民間個人のその会社に対する債権の請求権といいますか、その順位は日本国内の民法または商法の平等の取扱いを受けるわけですか。何か優先的な保護がございますか。
  420. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 何も優先的な保護はございません。
  421. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと、その場合になると、アメリカ政府が一方的に損失をすることになりますね。
  422. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 その場合におきましては、企業家が一方的に損失することになりまして、アメリカ政府はこれに対して企業家に金を払わないわけでございます。
  423. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと、どういうことになるのですか。投資保証がない場合と同じですね。送金の場合だけですか。
  424. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 これは送金の場合とある企業が収用された場合と、二つの場合だけでございます。
  425. 穗積七郎

    穗積委員 送金の場合と、それからたとえば社会主義政権ができて、その会社を国有化した場合にはどうなりますか。そうするとアメリカ政府アメリカの民間会社に対して補償しますね。そういうことですか。
  426. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 収用された場合に、その個人アメリカ政府に肩がわりしてくれということを、言いますれば、アメリカ政府が肩がわりするということになります。
  427. 穗積七郎

    穗積委員 その場合に、日本国内でその国有化政策をやりました時の政府が、有償で行つた場合と無償で行つた場合とありましよう。さらに極端なことをいえば、革命的なことが日本国内に行われましたときはむろん無償でありますが、そうでない場合でも、国際市場の資産評価から見れば、マーケツト・プライスよりははるかに安い、不当な廉価でもつて国有化をやる場合がございます。そういういろいろな場合が想定せられるのですが、そういう場合には、日本国政府アメリカ合衆国並びに向うの会社に対する責任はございませんか。
  428. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 これは日米の通商航海条約におきましても、そのような収用をする場合には正当の補償がなければならず、かつ、その正当の補償の定義をいろいろ書いてあるわけでございます。それでそのとき問題になりましたのは、この正当の補償というのは、多分憲法の私有財産のところに何か規定があると思いますが、そこでその正当の補償をしなければならないという規定に基いたわけでございます。その点はこの協定によつて少しもかわつておりません。
  429. 穗積七郎

    穗積委員 私の聞いておるのはその次なので、それは日本国内のことでございます。それはそのときの政権のでき方の状況でいろいろあると思うのです。憲法の通りが行われるか、あるいは憲法を無視されて行われるか、そんなことはわからない。わかりませんが、私の聞いているのは、条約上のことですから、日本国政府アメリカ合衆国政府並びにアメリカの投資会社に対する責任を聞いているのです。
  430. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 その場合におきましては、アメリカ政府が一応肩がわりいたしまして、そしてアメリカ政府としましては、これを外交交渉によりまして日本国に請求する場合もあり得るわけであります。
  431. 穗積七郎

    穗積委員 請求し得る場合と請求し得ない場合とはどういうことでありますか、それを具体的に説明してください。
  432. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 ある一つのものが収用されましても、日本においてこれをある価格に見積る場合と、アメリカにおいてある価格に見積る場合とにおいて差異があるのでございます。その日本国が見積つた差異が、たとえば日本人よりもアメリカ人の企業に対して少い額を査定したというような場合においては、当然外交交渉としてこれを持ち込んで来ることでございましようし、また日本国として現在の情勢ではこれもやむを得ない、アメリカで同じことが起つたならば、もう少し多いであろうにというような場合においては、その部分については請求して来ない場合もあり得るということでございます。
  433. 穗積七郎

    穗積委員 その規定は通商航海条約の規定じやないですか。そういう言葉がこの規定のどこにございますか。その原則は、通商航海条約で、国有化が行われた場合でもフエア・プライスでやるということは、そういう規定があつたと思うのですが、この規定のどこにございますか。私は非常に意識もうろうとして疲れておりますから、具体的に教えてください。請求権のある場合は……。
  434. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 その問題は相当重要なことでございましたから、通商航海条約との関連性におきまして、この協定締結するときに、向うと相当詳しくつつ込んで話をしたわけであります。
  435. 穗積七郎

    穗積委員 私の聞いているのは、その結果を聞いているのじやなくて、この条約文のどこにそういうことがあるのかということです。それは通商航海条約の例の原則に従つて、それがアメリカ日本国間の交渉の法律上の根拠になるのか、この協定がまた別にそういうことを規定しているのかと言つて聞いているのです。法律上の根拠はどつちだということです。
  436. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 別にここに規定が特別にない場合は、日米通商航海条約によつてやることになります。
  437. 穗積七郎

    穗積委員 この協定の中に、それがあるですかないですかと聞いているのです。
  438. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 別にどれだけの額を要求するとか、どういうことをするとかいうことは、ここには書いてございません。
  439. 穗積七郎

    穗積委員 もう一つお尋ねいたしますが、この二条の中で、これを施行する場合に、日本国内におきまして、別に国内法をつくる必要はございませんでしようか。
  440. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 これは非居住者の関係になるのです。非居住者に対して、特別の個々のケースで許可するとか、包括的に許可するということは、大蔵大臣の権限になつております。これは為替管理法でなつてありますので、別に法律をつくる必要はないと解しております。
  441. 穗積七郎

    穗積委員 たとえばこの第一項の、アメリカ政府による代位を承認する。または日本国政府の与える補償額が当該保証に基きアメリカ合衆国政府に移転することを承認するというふうに、普通の単なる民間投資の場合と違いまして、国家が代位者になるいろいろな規定がございますが、この場合においても、やはり必要ございませんか。
  442. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 これは法務省やその他関係当局とも相談いたしました結果、ないという結論に到達しております。
  443. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと、日本国内の私企業間の権利義務の履行またはその他の決済に、この条約が生のまま国内法として生きるわけですね。
  444. 下田武三

    下田政府委員 仰せの通りでございまして、この場合アメリカ政府が入つて参りますが、アメリカ政府は、ちよりど私法上の代位と同じ関係で入つて来るのでありまして、ことにその第二項で、私人の資金に与えられる待遇よりも不利でない待遇さえ、アメリカ政府の代位した者に与えればいいわけでありますので、何ら特別の待遇を与えるわけではないのであります。完全に私法上の地位さえ認めればいいことになつておりますので、従つて特別の立法措置を要しない次第であります。
  445. 穗積七郎

    穗積委員 第三項の請求権でございますが、これに日本国政府に対する請求権の限界というものはございますか。
  446. 下田武三

    下田政府委員 これは事項的には当然限界がございまして、アメリカ政府が代位する原因が収用の場合、もう一つは外貨にコンヴアートすることができないという二つの原因に限られているわけでありまして、金額的の限界は、その私人が受けることができなかつた補償金額、あるいは私人が送金することを許されなかつた外貨の送金額によつて制限されるわけでございます。
  447. 穗積七郎

    穗積委員 続いてお尋ねいたしますが、今度の経済関係協定の交渉のうちに、工作機械をアメリカに向つて求めた事実がございましようか。
  448. 下田武三

    下田政府委員 工作機械を直接求めたことはございません。
  449. 穗積七郎

    穗積委員 これから求められる意思がございますか。
  450. 下田武三

    下田政府委員 これは経済措置協定の運用によりまして、あるいは工作機械としてものをよこすのではなくて、それに対する融資の形ということでやることがあり得るかと思います。
  451. 穗積七郎

    穗積委員 これで経済関係協定は大体終りになりますが、きようは通産省のお役人がおられますか。――必ずしも通産省でなくても保安庁、外務省の方でけつこうですが、ここで大体内容が明瞭になりました。つまり軍事的援助の内容とそれから二十九年度におきます防衛計画拡張計画の内容がこの協定に付随いたしましてだんだん明らかになつて参りました。逆にその裏づけとしてくれると言つておりました経済的援助の内容というものが実に貧弱なものであるということも明瞭になりました。そういうことになりますと、ここで最後に一つだけ大きく残る問題は、自衛隊に切りかえられる、拡張される軍隊、それの兵器は日本側の計画に従つてアメリカから武器援助をするということがこの協定の全部を通じて明瞭になりました。ところがその軍隊の維持費または演習費等も含めましたそういうものは、これはアメリカ側から何ら援助がないということが明瞭になりましたので、そこでその拡張の分につきましては、しかもこれは日本政府MSAを受けますにあたつて何ら欲しない拡張分でございましたが、その欲しない拡張分を日本の国民が負担いたしまして、軍事費としてこれをまかなわなければならぬということも明瞭になりました。予算の面で軍事予算がふえただけではこれは動きません。また戦闘行為の目的も逃しません。そこで問題になりますのは、財政金融上の計画だけでなしに、かつての戦争中の言葉考えますならば、いわゆる物動計画でございます。これが即応してなければ日本の軍隊というものは動かない、たとえば先般の公聴会におきましても遠藤三耶元中将が指摘された一例でございますが、たとえば油はどうか、油なくしてタンクも動かない、ジーゾも動かない、あるいはまた飛行機も動かない、船も動かないという状況であつて、その物動計画は一体どいうふうなものかということでございます。これは遠藤元中将は自分が航空総監をしておられましたので、そこで油のことだけで非常に苦労して、油の一滴は血の一滴だというふうに苦労して来たものだから、油のことだけを気にされたようでありますが、ここで問題になりますのは、実はこのMSAに伴います軍備拡張と、それから一方においては経済援助じやなくて、拡張される軍隊全体の規模を見ますと、われわれは小麦をもらつたくらいで、もちろんこれはもらつたのじやない、買つたのですが、それくらいの利益で持ち出しの方が多いのです。  そこでお尋ねいたしたいのは、軍隊を動かすべき予算は二十九年度予算としてすでに本院を通つたのでありますが、物動計画がさらに示されておらぬと思う。そこでこの軍隊を動かすための物動計画をどういうふうに考えておられるか、それをひとつお答えをお願いしたいのでございます。
  452. 木村篤太郎

    木村国務大臣 今穗積君の言われるような物動計画というものは立てておりません。二十九年度予算に盛つております範囲においてわれわれは自衛隊の運営をやつて行こうとしておるのであります。
  453. 穗積七郎

    穗積委員 それでははなはだ心もとないことでございまして、私は小田部経済局長に専門的な立場から当然こういう協定を結んでおやりになる以上は、先に言つた第八条の義務を負い、それから、この三つに御丁寧にもわけた経済協定で何ものも得ないことになると、今の予算の面はわかつておりますが、問題は軍隊を動かすべき物動計画でございます。それについては一体どういうように計算されておるのか、その点が出ませんと、これは金額と兵数だけではわれわれは判断するわけには行かないので、そこで物の裏づけを、日本の経済の実情から見ましてお尋ねをいたしたわけでございます。
  454. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 経済関係の方ではまたそういう物動計画というようなものを別にやつておりません。
  455. 穗積七郎

    穗積委員 それで一体木村保安庁長官は、これはアメリカの傭兵ではない、将来は独立国の独立軍隊だと言うけれども、そういうことは兵隊だけできましても物動計画でこの前は負けたんだ。そこに問題がある。ですから当然物動計画の独立性がなくては、私は独立だの自衛軍だということは言えないと思うのです。その点をお伺いしたいのですがいかがですか。
  456. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私からお答えいたします。御承知の通り自衛隊は不当なる外部の侵略に対して対処するものであるのであります。今穗積君が言われるような、外国と故意に戦争をするような目的でつくるものではないのでありまして、外国と戦争をするという目的でつくるものであれば、あるいは昔のような物動計画を立てて行かなければならぬでありましようが、われわれはさような考えは持つていないのであります。とりあえず外部からの不当な侵略に対処して行こうという目的で立てた以上は、二十九年度予算で盛りましたわれわれの計画において十分まかなつて行ける、こう考えております。
  457. 穗積七郎

    穗積委員 私は予算面の話を言つているのではありません……。
  458. 上塚司

    上塚委員長 穗積君にはもう四十分以上の時間を与えておる。今の御質問は他の機会においてできるのです。またいずれ、保安庁法等の改正案が出ておるのですから、その際にしてください。この際は投資の保証に関する協定についてやつてください。
  459. 穗積七郎

    穗積委員 保安庁長官に申し上げますが、私は、侵略戦争の場合には物動計画が必要である、しかし自衛の戦争の場合には物動計画は必要でないということは、初めて聞くのです。いやしくも戦闘行為をやります以上、しかも仮想敵国は言うまでもなく、この協定の中でもはつきりいたしておりまして、世界の平和の維持を脅かす国はどこかと聞くと、ソ連中共だ、とこういう。こういうものを相手にした自衛戦争、自衛行動というものを考えますならば、相当大規模な戦闘行為になる。それからかつて歩兵戦争時代におきまして常備軍二十万というようなときにおいても、それを越えるような兵隊をつくろうということになつておるわけです。そういうことになりますと、しかも装備その他が高度化しておりますから、やはり物動計画というものは、相当高度なものが立てられなければならぬと思う。しかもかつての場合においては、アジアの経済地域の中におりましたけれども、今日の物動計画は、すなわち物資の点から見ますと、この四つの島にまつたくないわけです。ですからそういうふうに物動計画をひとつはつきりしなければ、今言われたような自衛行動すら私はできないと思うのでありますが、いかがなものでしようか。木村長官のお言葉としては、どうも受取りがたいように思うのです。
  460. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私の申すのは、昔のような物動計画は立てないということであります。いわゆる自衛隊として行動を起すについては、相当の物資もいるだろうし、あなたの言われるような油もいります。それらについては、二十九年度予算について一応の手当はできる、また三十年度は、三十年度が来れば、そのときにそれだけの手当はするということであります。あなたのおつしやるような物動計画は立てない。
  461. 穗積七郎

    穗積委員 小田部局長にお尋ねいたしますが、経済専門家としてそういうことは当然お考えになるでしよう。今は立てておられなくても必要だと思うのですが、どういうものでしよう。
  462. 下田武三

    下田政府委員 それでは私からお答えいたします。この四つの協定をごらんになりますとおわかりになります通り、物動計画という大それたようなものを立てるくらいでしたら、こういう協定はいらないのであります。小麦を買いまして、それによつて域外調達をしてもらいたい、またわずか三十六億の金で工業を発展させようという、まだ物動計画よりはるかはるか前のところをやつとこれでやろうということで、それをやるためにこの協定を結んでおるわけであります。
  463. 穗積七郎

    穗積委員 そういうことを言われるから、これで終ろうと思つても終れなくなる。これは大事な点ですよ。MSAを受けるには一体日本の兵力をふやすのかということを昨年来われわれが言つたら、日本の経済は貧弱であるから兵力はふやしません、軍事予算もふやしませんと言われた。それでは何のためにMSA援助を受けるのかと言つたら、今保安隊の持つておる武器はちやちであるから、装備をかえて増力するのだと言われた。この間も副総理が出て来たから、どういうわけでそう言つたのか、内閣を代表してはつきり答えてもらいたいと言つたら、経済の状況がかわつたのではない、しかし吉田・重光会談の結果そういう話合いになつたので、そこで、と言つて、そのときに国際情勢がかわつたということを言われようとしたが、それで口をとめられてしまつた。その理由は何かといえば、吉田・重光会談で日本の経済の底が深くなつたのでしようか。それほど外国から援助を受けてやらなければならぬ、そういうことであるのに、古田・重光会談だけで兵力をこんなにふやす、そういう経済の認識の上に立つておるのに、なぜそれでは物動計画を立てられないか。立てるような力があるならば、受ける必要はないと言うけれども、私の言うのは逆なんだ。力がないから――アメリカのような自由市場で、金さえ出せばあらゆるものが買えるところならばいいけれども、今の軍事予算を通じてものを買えば、国際的な貿易関係は楽観を許さない情勢の中で、民需に軍需が手をつければ、立ちどころに予算に影響します。そこでこの間の公聴会においても言つたごとく、この軍事予算が動き出せば、本年度は規模は小さいが傾斜生産になつて、軍需と民需とのアンバランスが出て来ることが憂えられておる。だからこそ言つておる。だから、自由市場で、ほしいものは金さえ出せば何でも得られるような広大な底の深い経済であれば、物動計画は必要ないのであつて、今下田局長のおつしやつたように、これだけの兵隊をふやすのに援助を受けなければならない経済である。だからこそ物動が必要だ。そうでないと、これが本年度は三十六億でありましても、来年度からこれが拡大されて行つて、民需に手をつける。貿易はどうかといえば、自由市場で、外貨がなければ、日本の金を持つてつても外国のものは買えない。日本国内のものしか買えない。それならば、どうしても日本の国民経済の規模の中において、軍需と民需の関係で、そういう物資計画が必要になつて来る。この点もう一度下田局長の答弁を伺いたい。
  464. 下田武三

    下田政府委員 穗積委員が遠藤三郎中将の言を引用されて、物動計画とおつしやいますから、これは大東亜戦争という大戦争を遂行している際の物動計画を意味すると私はとつたのであります。そういうようなものは全然考慮の範囲外でございますが、ただいまのお話にあります意味でしたら、これは経済審議庁が、乏しい財政、乏しい物資を勘案して、ちやんと計画を立てておるのであります。
  465. 穗積七郎

    穗積委員 これは実は非常に重要なことでございます。これで一括して本協定の第八条を中心とする軍事的義務と、あとの三協定に伴います経済的利益を、一応検討したわけです。検討してみてその結果、法律上第八条から出る出ぬは別として、現実の問題として自衛隊の拡張計画はもうすでに予算を通じて出ておるわけです。そこでその裏づけになるべき経済的利益は、この協定を通じて見ると、それをまかなうべき裏づけができておらぬ。そこで来年度から問題になりますのは、底の浅い日本国内経済の中で、民需と軍需とのアンバランスが起るから、その間において、予算上の問題はもとよりでございますが、それ以外に物資の面においても、特に計画が必要だということを私は強調しておるわけなのです。これは問題になると思う。今木村長官も、外務省の経済局長も、思い至らずして、そういうことはまだ計画しておらぬ、経済審議庁のやるべきことだということでございます。  そこできようはこれで打切つて、月曜日に経済審議庁の長官を呼んでいただいて、その点を明らかにして、ここで逐条審議のけじめをつけたいと思う。ですから質問を留保いたしまして、きようはこれで打切ります。
  466. 戸叶里子

    戸叶委員 今のことに関連いたしまして、簡単に一、二点伺いたいと思います。日本の保安庁の方から、大体こういうような武器、装備がほしいという要望を先ごろ出されておられる。それに対してアメリカの方から、その援助MSAによつて参ります。それに対する維持費がかる。ところが今、その維持費は来年度の予算にもう盛つてある範囲内ですからよい、こう木村保安庁長官がお答えになりました。そうしますと保安隊員をふやす予算を抜いて、燃料とか維持費とかいうものだけに、大体どのくらい見ていらつしやるか。もう一つは、近く船舶協定が結ばれるようでございますが、そうするとそれに要する維持費も出て来ると思います。それはすでに今度の予算に盛つてあるか、それとも補正予算で組もうとなさるのか、その点承りたい。
  467. 増原惠吉

    ○増原政府委員 実は本日は私の方は秘密保護法の関係で、その方の資料を持つて参りませんでしたので、数字についてのお答えは、漠然としてできかねるのであります。大体において維持関係は、陸の自衛隊におきましては、一人当りが三十万少々、これは俸給、給与等も合せまして、あと演習その他を行いますそのすべてを含めて三十万少々、海の方が一人当りが五十数万という見当に相なります。空の方はまだ始めておりません関係で一人頭、一機当りということがうまく数字が出て参りません。大体そういうふうな見当であります。
  468. 戸叶里子

    戸叶委員 アメリカからの援助を受けた場合に、それを維持したり燃料費等に使う費用が大体どのくらいかということを私承つたのですが、今おわかりにならなかつたらあとでけつこうです。  それからあとの方の問題が今お答えをいただかなかつたのですが、船舶協定を結んだ場合に、維持費や燃料費に対する費用がすでに組んであるか、それとも補正予算で新しく組まなければならないかということです。
  469. 増原惠吉

    ○増原政府委員 船舶協定に基きますものは、二十九年度は一年間くんでございます。
  470. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、一万五千トン以上の船舶は、もうすでにどのくらい借りようとするかということはきまつておるわけなんですね。
  471. 増原惠吉

    ○増原政府委員 船舶協定によりますものは、例のPF、LSでありまして、これは二十九年度一年分組んでございますが、二十九年度に期待をいたします二万七千トンばかりのもの、これは通年ではございませんで、ちよつと今資料を持ちませんが、ならして四箇月分くらいでありましたか、一部を組んでおるにとどまります。
  472. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは保安庁関係につきましては月曜日にお伺いしたいと思います。  この投資保証協定で一、二点ですからお尋ねしたいのですが、先ほど統済局長の御答弁で、ある企業にアメリカが投資保証をしようとした場合に、日本政府にこれに保証してもいいかどうか問い合せて来て、日本政府でよろしいと言えばそれに対して保証を与える、こういうお話でございましたが、アメリカ自体でこの企業には保証したくないというものがあるかどうか、これを聞いておきたい。
  473. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 これはこの経済援助に関する法律のところでありまして、その法律の目的を促進するためということでございますから、たとえて申しますれば、日本で消費産業、アイスクリームをするのがもうかるから、アイスクリームの販売でもしたいということになつて、こういうことを保証してもらおうということでアメリカ政府に持つて行けば、アメリカ政府としてはこれを拒否するわけでございます。すなわち自由世界の経済を強力にするということに主眼点がございますから、消費産業とか、そういうような点については当然向は拒否するだろうと思われます。
  474. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、消費産業はアメリカ政府制限を与える、その点はわかりました。今この協定を結びましてすぐに日本にある企業でアメリカが保証しようというふうなものがあるかどうか。またもう一点は、時間の関係で続けて伺いますが、この協定を結んですぐ日本にとつてこれこれこういう有利な点がありますということがあるかどうか、それを伺いたい。
  475. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 第一点の質問に関しては、まだそういうふうな話があることも聞いておりません。  第二の点に関しましては、実はどこの国の人でも他国に投資しようというときには、特に現下の経済情勢のもとにおきましては、あるいはその元本がとれないのじやないというようなある一種の不安を抱くものでございます。ことにアメリカのような為替管理をしていない国は、日本国のような為替管理をしている国がいつ為替管理を強化するかわからないということに関しまして、投資家が不安を持つのでございます。それでその不安がやわらげられて、日本に投資が増して来るということが期待できるのでございます。ではこの協定を結んだら一年間に幾らそれだけのものを増すかというようなことは、現在のところまだわかりません。
  476. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、今のところこの協定を結んでも、将来日本アメリカからのそういうふうな資本が入つて来るかもしれないという期待だけであつて、それは入つて来ない、期待に終るかもしれない、こう了承していいわけですか。
  477. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 これは期待と申しましたが、それは実現するだろうと思います。と思しますのはランドール委員会からも勧告が出ておりますが、このアメリカの資本は――資本というものはどこでもそうでございますが、第一番に安全性があるということが大事なのでございまして、日本のたとえば国際収支などを見ておりますと、日本におりますればあるいは非常に安全だと思うかもしれませんが、ある場合には利潤の送金を制限するかもしれない、元来の送金を制限するかもしれないという不安がアメリカにおいてあるのは当然だろうと思うのであります。この当然の一部分というものはこの協定によつて保証されるわけでございますから、当然この協定を結び、かつ日本国アメリカから問い合せて来た場合にそれを承諾する場合においては、増大するだろうと思われます。
  478. 戸叶里子

    戸叶委員 今ある企業で、これは保証されそうだというのがあるかどうかということ。それから日本側からアメリカにこの企業に対して保証してもらえるかどうかということは聞かれるのでしようか。
  479. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 この協定の目的は今後拡張するとか新企業をするということに適用されるのでありまして、現在ある企業について適用されるものではございません。現在あるのはすでに投資があるのでございますから、これを別に奨励する必要はないのでございまして、今後入つて来るのを奨励する目的ですから、現在に対して保証するというようなことはございません。また日本国政府がこれを保証してくれというようなことをアメリカに申し出るということはありません。
  480. 戸叶里子

    戸叶委員 できないのですか、できますか。
  481. 小田部謙一

    ○小田部政府委員 これはできません。
  482. 上塚司

    上塚委員長 これにて投資の保証に関する協定についての逐条審議は終了いたしました。     ―――――――――――――
  483. 上塚司

    上塚委員長 この際日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案を議題といたします。政府側より提案理由の説明を求めます。木村国務大臣。
  484. 木村篤太郎

    木村国務大臣 今回提出いたしました日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法案につきまして、提案の理由並びにその内容の概略を御説明申し上げます。  御承知のごとく、日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定は、本年三月八日調印を完了いたしまして、目下国会の審議をお願いいたしている次第でありますが、同協定の第三条第一項及び附属書Bの規定に基き、アメリカ合衆国政府から供与される秘密の装備品または情報等について、その秘密の漏洩または漏洩の危険を防止するため必要な措置を講ずる必要があり、かつまた、過般締結いたしました日本国アメリカ合衆国との間の船舶貸借協定第七条により、アメリカ合衆国から貸与される船舶についても、同様その秘密を休講する必要がありますので、これをあわせて規定し、この法律案を提出することといたしたのであります。  申すまでもなく、アメリカ合衆国は、他の諸外国との間におきましても右面協定とおおむね同様な性格、内容を有する協定締結しているわけでありまして、これらの諸外国においてもまた、これらの協定に掲げられている秘密保護のための所要の措置を講ずる必要があるわけでありまするが、諸外国におきましては、それぞれこの種の秘密保護に関する既存の取締り法令によつて十分にこれをまかなうことができますので、これらの協定締結にあたり、新たに立法措置を講ずる必要はないのでありますが、わが国の場合においては、在日米軍の機密を保護するためのいわゆる刑事特別法のほかには、この種の秘密を保護するための一般的な取締り法令は存在しないのでありますから、現状におきましては、これらの協定に基いて供与される秘密の装備品または情報等について、その秘密を十分に保護することはできない状況にあります。  このため、政府といたしましては、この際、その秘密を保護するために若干の規定を設ける必要がありますので、この法律案を提出いたした次第であります。  しかしながら、この種の法律は、国民の権利に重大な影響を及ぼすおそれがあることにかんがみ、以下において申し述べますように、必要最小限度の事項を規定するにとどめた次第であります。  次に、この法律案の内容の概略について申し述べます。  この法律案は、六箇条と附則一項からなつておりまして、第一条は、この法律において使用する言葉の定義を定めたものであります。特に、この法律において保護において保護する秘密については、前に申し述べました両協定によつて供与された装備品または情報等のうち特定事項に限り、しかも公になつていないものと規定して、その範囲をできる限り明確ならしめるよう考慮いたしました。  第二条は、さらに、国民が秘密事項を具体的に認識し得るよう、またあわせて秘密の漏洩を阯止するため、政令で定めるところにより、標記その他の措置を講ずることといたしました。  次に、第三条から第五条までは罰則でありまして、秘密を探知または収集する罪、秘密を漏らす罪、業務上の秘密を漏らす罪、過失により業務上の秘密を漏らす罪等を規定したものであります。また、これらの規定について定められている法定刑につきましては、前に申し述べました刑事特別法等を参酌し、妥当を期したものであります。  第六条は、自首減免についての規定であります。  以上、この法律案につきまして概略御説明申し上げたのでありますが、何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
  485. 上塚司

    上塚委員長 これにて提案理由の説明は終了いたしました。     ―――――――――――――
  486. 上塚司

    上塚委員長 この際かねてより留保されていました日米相互防衛援助協定第三条について審議いたします。質疑を許します。
  487. 穗積七郎

    穗積委員 議事逆行。一ぺん休憩をして理事会をお開き願います。
  488. 上塚司

    上塚委員長 並木芳雄君。   〔「休憩々々」「必要なし」「続行」と呼ぶ者あり〕
  489. 並木芳雄

    並木委員 ぼくだけ少し……。   〔「休憩々々」と呼び、その他発言する者多し〕
  490. 上塚司

    上塚委員長 ちよつと速記をとめて。   〔速記中止〕
  491. 上塚司

    上塚委員長 速記再開。並木芳雄君。
  492. 並木芳雄

    並木委員 保安庁長官にお尋ねをいたします。今度秘密保護法案通りますと、今の保安隊、これからの自防衛の運営が非常に神経質になつて行くのではないかということを心配しております。まだ緒についたばかりの保安隊でありまして、これは広く国民に知らしめることが必要かと思うのでございます。民主主義の今日におきましては、昔の軍隊と違つて、主人公である国民によく知らして、いわゆる愛される保安隊、愛される自衛隊でなければならないと思つております。これが今度の秘密保護の法律を契機として、一躍愛される保安隊からきらわれる保安隊にかわつて行くのではないかという心配をいたすのでありますけれども、そういう心配はないかどうか。保安庁官はだんだん一般に保安隊の公表なり、内部の見学なりを制限して行くのではないか。われわれ国会議員などに対しても、そういうふうに制限して行くのではないかと心配しておりますが、その点についてどういう方針、臨まれますか、お尋ねをいたしたいと思います。
  493. 木村篤太郎

    木村国務大臣 お答えいたします。その御心配は絶対に御無用だと私は考えております。と申しますのは、この秘密保護法において秘密を保護しようとするのは、アメリカからもらい受ける装備品――装備品のうちでもこの条文においてきわめて明瞭にしております「構造又は性能」「製作、保管、又は修理に関する技術」「使用の方法」「品目及び数量」これに限定しているのであります。そこで一般の隊員のうちでも、構造とか性能とかいうことについて知得することはまず数が少かろうと考えております。しかもこれらにつきましては、一々秘密の事項であるということをよく明瞭に標記をするなり、立入り禁止するなりしておくようにしております。従いまして一般隊員におきましても、十分それらについては注意をいたしております。よつて秘密のことをほかに故意に漏らそうという気持でない限りにおきましては、一般隊員について決して警戒を要するようなことはないわけであります。従いまして一般隊員からこういう秘密が漏れるという懸念はありません。と同時に保安隊員――今後は自衛隊ですが、自衛隊員と一般の人との関係において、そういう秘密事項について云々されることはまずないと考えてよかううと考えます。
  494. 並木芳雄

    並木委員 公になつているかいないかということが非常な問題になると思います。防衛秘密がどこで線を引くか、これがわれわれ国民にとつて非常に心配になる点であります。防術秘密の対象となりますものは、アメリカ合衆国政府から供与される装備品等についてでありますので、これに対する情報なり問題というものは常に日本国内だけでなく、外国にもあるわけであります。たとえば外囲のラジオを聞き、新聞を見、雑誌を見る。それには案外公表になつているようなものがあります。それと日本のこれを取扱う官庁において防衛秘密であるとしている点との歩調の合わない点があると思うのであります。こういう場合に、どこで公である、公でないという一線を引かれる御所見であるか、承りたいと思うのであります。
  495. 木村篤太郎

    木村国務大臣 これを逆に読んでもらえばいいわけでありまして、すでに公になつたものについてはこの罰則の規定の適用はない。従いまして、もうすでにアメリカにおいてラジオで放送されたり、あるいは新聞、雑誌に記載されたりするようなものは公になつたものでありますから、従つてそういうものについては日本で知らなくても罰則の適用はないのであります。とにかくどんな方法でも一たび公になつたものについては、この法律の罰則に触れないということに御了解を願えばよかろうと思います。
  496. 並木芳雄

    並木委員 公になつているかどうかを確かめる責任は、これを主管する当局にもあるわけでございます。怠けておればいつでも一日遅れ、月遅れというような、あと追つかけるような場合がないとも限りません。私はこの防衛秘密を扱う当局は、どこかで公になつていないかということを探求するのに急でなければならないと思うのです。そうでないと、今日は通信網あるいは報道網が発進して、一日はおろか、一時間をも争うような状態であつて日本はそういう情報をキャッチすることにおそいために、当然国民の間に知らされていいものが三日も遅れる、あるいは一月も遅れるようなことがないとも限らないのであります。当局において公であるかないかということを早くキヤツチするために、今後どのような措置を講ぜられて行くつもりでありますか。
  497. 木村篤太郎

    木村国務大臣 向うから持つて参ります装備品について、特に秘密を要するものについてこの法律で保護をせんとするものについては、特別の記号なり、いろいろ特別の処置をとつて、秘密保護法の対象となるものであるということを明らかにするのであります。その以外において公にされたものであれば、これは秘密保護法の対象にならないわけであります。その問題は私は出て来ないであろうと思います。
  498. 並木芳雄

    並木委員 「防衛秘密について、標記を附し、関係者に通知する等防衛秘密の保護上必要な措置を講ずる」とありますが、関係者というのはどういう範囲をさして言われますか。
  499. 木村篤太郎

    木村国務大臣 それは御承知の通り装備品を修繕するとか、あるいは保管させるとかいう場合がありますから、それを修繕させる工場あるいは保管する者とかに対して、これは秘密のものであるからということをよくわからせるようにすることがすなわち通知であります。
  500. 並木芳雄

    並木委員 「わが国の安全を害すべき用途に供する目的をもつて、又は不当な方法で防衛秘密を探知し、又は収集した者」にはこの法律に抵触して参ります。この「安全を害すべき用途に供する目的をもつて」というのはどういうことをさすのでありますか、これがいわゆるスパイ行為ということになりますか、それともあるいは破壊活動防止法などに適用して来る破壊的な行動ということでありますか、どういう点をさしますか。
  501. 木村篤太郎

    木村国務大臣 いやしくも日本の安全を啓する、つまりこれは外国に対してかようなことを通告するということはむろんのことでありますが、また今仰せになります。内部において日本に大きな反乱とか、擾乱とかを起すような場合も、これは当然含むものであると解釈しております。
  502. 並木芳雄

    並木委員 「不当な方法で」とあります。「不当な方法で」ということはどういうことでありますか。
  503. 木村篤太郎

    木村国務大臣 これはいわゆる社会通念に基きまして、妥当でない方法あるいは金をやつて誘惑するとか、あるいは色じかけでやるとかいうようなことは、むろんこのうちに入るわけでございます。
  504. 並木芳雄

    並木委員 不当な方法ということはもう少し具体化して、たとえば政令とか規則とか何かでもつて公布するお考えはございませんか。今の長官の御答弁ですと、かなり抽象的であつて、これは当局の判断ではかなり幅の広いものが出て来るのではないかと心配されるのであります。
  505. 木村篤太郎

    木村国務大臣 これは別に政令で定めるということは今考えておりませんが、不当な方法といえば、これは社会通年から見て、われわれ常識で考えて判断願えば私はよいのではないかと考えております。今申し上げましたように、あるいは脅迫したりあるいは誘惑したりというような、普通われわれの考えてから見て妥当でないような方法でもって、さようなことを探知収集するわけでございます。
  506. 並木芳雄

    並木委員 「不当な方法で、防衛秘密を探知し、又は収集した者」とあつて、これは別に他の行為を必要といたしません。ただ探知し収集した者は、それ自体法に触れて参るようになつおりますが、次のところへ持つてつて、「防衛秘密で、通常不当な方法によらなければ探知し、又は収集することができないようなものを他人に漏らした者」ということが書いてあるのです。これは字句の配置がちよつと違うだけで内容は同じでございます。そうすると、前の方は一不当な方法で、防衛秘密を探知し、又は収集した者」だけに適用するのに、あとのところでは探知しまたは収集してこれを他人に漏らした者というふうになつてつてあとの方が軽いのじやないか、前の方は重いのじやないか、この条文から見ますと、少し均衡が保たれておらないのですけれども、この関係はいかがですか。
  507. 木村篤太郎

    木村国務大臣 おつしやる通りこの第一号の方は、不当な方法で、防備秘密を探知収集した者自体であります。第二号の方はほかに漏らした者であります。その漏らした者はどういうことかといいますと、どうしてもこれは妥当でない、今申し上げましたように、いろいろな不当な方法でこれは得たのでなければ知り得ないことだ、そういうことの認識を持つて知つたものを他に漏らした者であります。その他に漏らす者がこういうような認識を持つて知つたことをさすのでありますから、一号と二号とは対象が違いますので、結局この不当な方法によらなければ探知または収集することができないようなものを他に漏らした、この漏らす者の認識をうたつておるわけであります。
  508. 並木芳雄

    並木委員 長官のお言葉ですけれども、少しそれはおかしいのじやないでしようか、不当な方法によらなければ探知できないようなものをかつ他人に漏らした場合に罰せられる、前の方は、簡単に不当な方法で探知しまたは収集した者、それだけで罰せられる、これは逆じやないでしようか。不当な方法によらなければ探知または収集することができないようなものを、探知しまたは収集した者とそう行くべきで、無理に前の方の不当な方法で探知しまたは収集しこれを他人に漏らした者というならば、まだ程度はわかるのですけれども、どうも私にはこれが反対のように思われます。少くともダブつておるように思われますけれども、もう一度説明をいただきたいと思います。
  509. 増原惠吉

    ○増原政府委員 三条の一号の場合の不当な方法で探知をするというのは長官から申しましたように、いろいろ脅迫をしたり、欺罔をしたり、色じかけもありましよう。いろいろなことで、これは社会通念上不当な方法でこの収集をした者は収集しただけで、他に漏らさなくて罪になるというのが一号であります。それで二号の方は、その不当な方法で探知収集した者と別の者が漏らしたというようなことを大体考えておるのであります。その秘密は、一般人がたとえば飛行場のそばで見ておつて見えるようなことであれば、たといそれが防御秘密であつてもこれは一向さしつかえない、私は飛行場で見ておつたら、ジェット機が何十機新しい型のものがおつたというようなことを言つたとしても、それが防衛秘密によし該当しておつても、この二号には該当しない、すなわち罪にはならない、その人がこの情報を得た場合の状態は、たとい不当な方法でなくとも、しかしその秘密の内容というのは高度のものであつて、通常不当な方法によらなければ探知のできないようなものという認識があることが必要である。そういうふうな高度の秘密をその人が漏らされた場合には、比較的平穏な方法であつても、そういう高度の秘密を他に漏らした場合にはこの二号にかかる、しかもその場合には、通常不当な方法によらなければ収集できないという認識が必要である。一号と二号とは原則としては同じ人でないというような立場において考えるという規定の仕方であります。
  510. 上塚司

    上塚委員長 並木君にお諮りしますが、この法律的ないろいろの疑点については、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法に関する委員会がずつと継続されて開かれますから、そのときにおいてゆつくり質疑せられて、きようは三条との関連において、ひとつ必要な点だけを聞いておいていただきたいと思います。
  511. 並木芳雄

    並木委員 委員長、この点は一番の骨子であつて大事な点ですから今聞いたのですけれども、それではもう一点だけ質問して、私はきようは終つておきたいと思います。  それではその次に、「業務により知得し、又は領有した防衛秘密を過失により他人に漏らした者」ということが規定されております。「業務により」ということはどういう範囲をさすのでございましようか。そうしてこれは目的が書いてないのであります。いかなる目的で他人に漏らしたというようなことは書いてないので非常にこれは広くなると思うのです。たとえばかつて保安隊に勤めておつた者がやめて、そして何らかの話をしている途中にふいとそのことが出て来る、これはまた間々あり得べきことであつて、そこに特にわが国の安全を害すべき用途に供する目的をもつてとか、何らか別の目的が条件となつて参りますれば、これは非常に狭いところへ限られるのですけれども、目的が書いてないために、この業務の解釈いかんによつては非常に幅が広くなると思います。たとえば報道機関にある者が、その業務によつて知得しまたは領有した防衛秘密、こういうようなふうにまで業務の範囲が広がつて行くのかどうか。またわれわれ国会議員としてはどうか。国会議員として知得しまたは領有した防衛秘密というようなものを他人に漏らしただけで、これにひつかかつて来るのかどうか、これは非常に多大の心配と疑問を抱くのでございまして、この機会にはつきりさしていただきたいと思います。
  512. 増原惠吉

    ○増原政府委員 業務といいますのは、いわゆる通常業としてということでありまして、これは公務たると、また公務以外の普通のいわゆる営業行為等の場合も含むわけであります。たとえば私ども保安庁の職員がその所管として防衛秘密を知るというふうものは業務としてこれを知得したものであつて、漏らせばこの罪に当ります。しかし保安庁の職員であつても、職務としてはこれを知る地位にない者、そういう者が何らか偶然の機会等によつて得たものはこの業務のうちには入りません。そうしてこういう装備品等をそれぞれの会社、工場等に修繕等に出します。その場合にはこれは防衛秘密であるということを明瞭にして、秘密を厳守すべきことを申し渡して出すわけであります。その会社でこれを修繕するという職にあつて内容を知る者、これはやはり業務によつて知つた者であります。そうしてこれは会社の工員でありましても、その修繕に職として関係がなく偶然に知得した者は、やはりこれは入りません。報道人等が承知をしますのは、それを知つている公務員の業務上のいわゆる漏洩罪がそこで成り立つと思うのであります。その場合に、報道人の方でこれをさらに次に漏らされるという場合は、いわゆる業務上ということにはならないと解釈いたします。防衛秘密を業として知得するわけではありませんで、報道ということが業であるにすぎないのでありまして、これは業として知得したものではない。しかしその人が知得しました防衛秘密の知り方が、たといそのとき一応平凡な形でありましても、これは通常不当な方法によらなければ知得できないようなものだという認識があつた場合に他にこれを漏らしますと、第二号に該当するようになるわけであります。  国会議員の場合には、一応想像されますのは、こうした事項を審議する委員会であつて、特に審議の必要上防衛秘密を承知をしなければならぬということで、これは秘密会となるものと考えるのでありますが、秘密会において防衛秘密の説明を受けて資料をもらつた、そういうものを漏らされる場合にはこの業務上に該当すると思いますが、その他の場合においてはいわゆる業務上には該当しない、こういうふうに解釈をしております。
  513. 上塚司

    上塚委員長 それでは本日はこれにて散会いたします。    午後七時五十四分散会