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1954-03-24 第19回国会 衆議院 外務委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月二十四日(水曜日)    午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 今村 忠助君 理事 富田 健治君    理事 福田 篤泰君 理事 野田 卯一君    理事 並木 芳雄君 理事 穗積 七郎君    理事 戸叶 里子君       麻生太賀吉君    大橋 忠一君       北 れい吉君    佐々木盛雄君       喜多壯一郎君    須磨彌吉郎君       上林與市郎君    福田 昌子君       細迫 兼光君    加藤 勘十君       河野  密君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         内閣官房長官  福永 健司君         保安庁局長         (保安局長)  山田  誠君         外務事務官         (欧米局長)  土屋  隼君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (経済局長心         得)      小田部謙一君         大蔵事務官         (財務参事官) 鈴木 源吾君         建設技官         (営繕局長)  木村 恵一君  委員外出席者         議     員 下川儀太郎君         議     員 加藤 清二君         議     員 加藤 鐐造君         総理府事務官         (調達庁不動産         部次長)    大石 孝章君         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 三月二十二日  在外未帰還同胞帰還促進等に関する請願(舘  林三喜男紹介)(第三八四九号)  亡命中国人保護に関する請願(西尾末廣君外  七名紹介)(第三八八三号) の審査を本委員会に付託された。 同日  抑留同胞完全救出及び戦犯者全面釈放に関  する陳情書  (第二  一五二号) 同月二十三日  海外抑留同胞完全帰環戦争受刑者全面釈  放等に関する陳情書  (第ニ二九四号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助  協定批准について承認を求めるの件(条約第  八号)  農産物の購入に関する日本国アメリカ合衆国  との間の協定締結について承認を求めるの件  (条約第九号)  経済的措置に関する日本国アメリカ合衆国と  の間の協定締結について承認を求めるの件(  条約第一〇号)  投資の保証に関する日本国アメリカ合衆国と  の間の協定締結について承認を求めるの件(  条約第一一号)     ―――――――――――――
  2. 上塚司

    上塚委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定批准について承認を求めるの件外三件を一括議題といたします。本日は各協定について逐条審議を続けます。  まず日米相互防衛援助協定前文について質疑を許します。佐々木盛雄君。
  3. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 外務省の方に承りますが、この前文について質問をいたします前に、まずこのMSA関係協定と不加分関係になつております。ただいまも問題になつておりました秘密保護に対する措置の問題があります。日本が何らかアメリカから提供される武器に対して秘密を守らなければならぬということは、MSA協定によつて厳格に命ぜられておると私は思うのです。そういう意味におきまして、まだ国会には上程されておりませんけれども、だたいまMSA協定に伴うところの秘密保護法律を用意いたしておられるように思うのでありますが、まずこれは日本国内における一般軍機保護ではなくして、MSA協定による限定されたものである。従つてMSA協定を受けるからには、当然裏づけとして、日本において成立させなければならぬ義務法律であると私は考えるわけでありますが、この点をまず最初に承つておきたいと思うのであります。
  4. 下田武三

    下田政府委員 秘密保護の点につきましては、MSA協定の明文上は立法措置義務を負つておるわけではございません。ただ秘密保持を有効になし得るための措置をとると書いておりますので、その措置をとらんとすれば、日本側の現在の法制のもとでは完全な措置がとれませんので、そこで協定には立法とは書いてないけれども日本政府の自主的の見地から、立法措置とつた上で秘密保持の全きを期する、そういう間接の関係になつてつておるわけでございます。
  5. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 そういたしますと、今度のMSA協定をわれわれが審議いたします場合におきまして、ただいまの御説明から考えますと、当然私は、まだ成案を上程されておりませんから詳しくはわかりませんが、大体の輪郭くらいはわれわれがこれを知つておかなければならぬということを痛感するわけであります。従いまして私は本日、これから上程されるであろう法案について一々申し上げるわけではありませんが、大体の輪郭を知つておきたい、かような見地から関係の方々に私は承りたいと思うわけであります。  私はどうしてもMSA協定審議と、この秘密保護法案審議というものは不可分の関係にある、私は私の良心と良識に従つてさように考えるわけであります。従つてそういう見地から承るわけでありますから、こまごましたことを私は承ろうとは思いません、それはいずれあらためて法案がかかりました際に承ります。そこで外務省に承りますが、今度の、ただいま政府法律的措置をとろうという秘密保護法というものは、アメリカから貸与される武器、これだけに限るものとただいまの御答弁からは判断されるわけでありますが、そうではなくして、一般日本軍機保護をしようというのとは、根本的に性質が私は異なるように考えるわけであります。この点についてはいかがでございましよう。
  6. 下田武三

    下田政府委員 仰せの通り、この協定に基く秘密保持措置は、協定に基いてアメリカから援助を受けるところの物件役務または情報だけについての秘密を保持することを目的とするものでございます。なお保安庁保安局長が来ておられますので、御希望でございましたら、私よりもつと具体的に御説明申し上げられると思います。
  7. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 ただいまの条約局長の御答弁に関連して保安庁保安局長も、もし補足することがございましたならば、この際補足していただきたいと思います。
  8. 山田誠

    山田政府委員 ただいま外務省条約局長の御説明で大体その要旨は尽きるのでございます。今回上程いたします予定になつております秘密保護法は、あくまでも日米相互防衛援助協定に基きます条約上の最小限度の必要を満たすための措置でございまして、日本独事自衛隊秘密を保持するという性質のものは何ら包含されておりません。
  9. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 ただいまの御答弁によつて日本独自の保安隊軍機保護するものではないということは明らかになりましたが、そうするとこの法案の作成にあたりましては、アメリカ側と連絡したり、相談をしたりしてできたものか、アメリカの要求によつて、かようにしてくれというようなことでできたものか、それとも日本保安隊あるいは自衛隊軍機保護法ではない、独自のものではないけれども、この立案にあたつて日本が独自の立場をとつたものかどうか、この点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  10. 下田武三

    下田政府委員 この秘密保護法立案にあたりましては、外務当局も御相談を受けておりますので、協定との関係でさしつかえないかどうかという点を主として外務省から意見を申し上げたわけでありますが、米国相談して立法措置をとるということは全然いたしませんでした。まつたく日本側自主的見地からのみ立法いたしました。
  11. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 私は私見をあまり交えないで承りますが、このたびの保護法によつて守ろうという秘密なるものは、一体どういうものでありますか、いかなる定義を持つものでありますか、この点を明らかにしていただきたい。
  12. 山田誠

    山田政府委員 お答えいたします。今回保護しようとする秘密は、あくまでも日米相互防衛援助協定によりまして、アメリカから供与さるる装備品等物件役務または情報に関するものに限られておるのでございまして、それはあくまでも公になつておらないもの、こういうしぼりがかかつておるのであります。
  13. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 山田局長に承りますが、それでは秘密というのは日本考えてこれは秘密であるということを規定するのか、アメリカがこれは秘密にしてくれということをアメリカ規定をするのか、どちらでございますか。
  14. 山田誠

    山田政府委員 本法に申しますところの日米相互防衛援助協定などにより供与さるる装備品または情報などは、日本自衛のためのものでございまして、その秘密保護することは日本自衛上必要でございます。その意味におきましては本法保護される秘密は、第一次的にはわが国自衛上の秘密でございます。しかしながら当該装備品または情報等秘密は、同時にアメリカ国防のために必要な秘密であることも明らかでありますから、その意味におきましては米国国防上の秘密でもございます。
  15. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 さらに承りますが、そういたしますとアメリカから日本秘密だといつて通告するもの以外に、日本独自で規定する秘密というものはあるでございましようか。
  16. 山田誠

    山田政府委員 その点はまだはつきりいたしておりませんが、おそらくこの条約が発効になりましたあかつきにおきましては、アメリカ大使館側日本政府側との間におきまして合同委員会的なものができるだろう、かように予測せられておりまして、この合同委員会を通じましてアメリカ側からこの援助に関して秘密とされるものが何らかの通知を受けるだろうと思います。それによつて日本政府としては実質的に措置をいたしますので、それ以外の日本の独自の秘密というものは、この法案においては予想いたしておりません。
  17. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 条約局長のおつしやるのは私はこういうふうに解釈するのです。秘密かどうかということは日本が自主的に決定するのであるけれども、これが秘密であるということは、アメリカ側の方からこれを秘密にしてほしいというようなことを言つて来るのだ、こういうふうに私は解釈したのでございますが、間違いございませんか。
  18. 下田武三

    下田政府委員 先ほど申し上げましたのは、日本法律である今度の秘密保護法、その立法自体が自主的の見地から行われたということでございます。それでこの協定並びに秘密保護法適用するにあたりまして、どういうものが秘密として指定せられるであろうかという点は、協定の第三条に書いてございますように、「両政府の間で合意する秘密保持措置」ということでございまして、元来が米国からもらう物件役務情報でございますから、先方がこれは米国では秘密となつておるということを日本側に通知することになると思います。しからばそのものが一体アメリカのための秘密保護であるか、あるいは日本のための秘密保護であるかという点につきましては、先ほど保安局長がお答えになりましたように、これは第一次的には日本自身のためである、つまり今までは日米行政協定に伴う刑事特別法にも機密保護規定がございます。これは米軍日本を守るためにおるものではございますが、やはり米軍自身の持つておる武器なり何なりの秘密を保持する、つまり高性能の高射砲の機能を無効ならしめる措置というものが秘密であるといたしますと、その無効ならしめられた結果、今までは直接の被害をこうむつたのは米軍であつたわけであります。ところが今度は日本保安隊員自身が、その高射砲の性能を無効ならしめる措置を盗まれたといたしましたならば、けがをし、あるいは死ぬのは日本保安隊員自身であります。でございますから、物件自体先方秘密であると指定せられましても、その指定された物件保護する目的というものは、第一次的にはその物件を持つておる保安隊員の安全なり何なりということになつて参りますので、やはり第一次的にはこれは日本自身のためであるというように考えておる次第でございます。
  19. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 私はなぜこれを今度のMSA協定逐条審議に入る前に承るかと申しますと、これはわれわれ国民の基本的な人権に関する重大な問題でありますから、これを承つておるわけであります。そこで、私は今度のこの法案内容は知りませんが、ただいまの御説明によりますと、公にならないものに対しての秘密を守らなければならないということでありますが、公にならないということは、政府公表でもするのでありますか、これは秘密のものであるということを指定をするのでありますか、指定をすれば、そこに秘密があるということを、みずから秘密の所在を明らかにするということになりはせぬかと思いますが、どういうふうにして公のものである、公のものでないということを区別するのでありますか。
  20. 山田誠

    山田政府委員 お答えいたします。その点はいずれ法案が提出された際に逐条約に御説明いたしたいと思いますが、でき得る限り標記、掲示などをしまして、あらかじめ一般国民にその機密のものに近づいてはならないような予防的な措置が講ぜられる。あわせて関係官吏、業者に対しては、事前にその秘密の漏泄を防止する措置をとるようになつておるのでございます。しかしながら必ずしも全部の物件情報について、さような国民に周知徹底するというような予防措置がとり得ませんので、この点を事前に十分に国民に知らせるということは、この法律立案の建前から不可能であります。しかしながら何も知らない善意の国民をこれによつて取締ろうという意図は毛頭ないのでございまして、知らない者はこの法案対象にならない、さように御了承願いたいと思います。
  21. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 私は委員長並びに委員にお願いしておきますが、もう、五分間くらいで終りますから、重大なことでありますので、五分間許していただきたいと思います。  国民に周知徹底させるという方法は具体的にどういうことをおやりになるのでありますか。
  22. 山田誠

    山田政府委員 具体的に官報に掲載するとか、あるいは新聞に発表いたすというようなことは、事柄性質上不可能でございますので、当該物件あるいは文書、図画というものに関しましては、できるだけそれが防衛秘密なる旨の標記をいたします。あるいはまたさような秘密兵器使つて演習をするというような場合には、できるだけその演習に近寄らないように、歩哨を立てるなり何なりそういうような警戒予防措置を講じましてその万全をはかりたい、かように考えております。
  23. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 簡単に承りますが、政府公表とは違うのでございますね。  それからもう一つ、この秘密防衛をつかさどるところの行政庁というのは一体どこなのでありますか。
  24. 山田誠

    山田政府委員 この公になつておるというものは、これは日米両国を問わず公表なつたもの一切、及び日米両国並びに第三国を含みまして、一切不特定多数人に知らされたもの、つまり新聞、雑誌に公表せられたものはすべて公になつておる。従つて秘密から排除されるというように御了承を願いたいと思います。  なおその行政機関の庁と申しますのは、国家行政組織法第三条に規定する庁でございまして、府、省、庁、あるいは委員会というものがこれに該当すると思いますが、当面考えられますのは、たとえば保安庁あるいは通産省あるいは特許庁というところが、この行政機関の庁に該当して来るかと考えます。
  25. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 ただいまの御説明であります。と、この兵器に対して標記をつけるということ、それによつて秘密のものであるということを明らかにするということでありますが、念のために承つておきますが、たとえばそういう兵器使つて訓練をいたしておるというようなところを、早い話が新聞写真をとるとか、あるいはそういう事柄について報道するというようなことは、やはりこれの適用を受けないものである、私はこういうふうに考えますが、いかがでございましよう。
  26. 山田誠

    山田政府委員 さようでございます。
  27. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 それにによつてもう開くまでもないことでありますが、日本の独自の軍需工場であるとか日本の持つております独自の、日本で将来発明することのあるべき科学兵器等については今度の法律適用を受けない、こういうふうに解釈をするわけであります。  ついでに承つておきますが、私は日本独自の工場秘密保護の必要があると考えますが、承るところによりますと、一般的な軍機保護法の形においてその中にアメリカから貸与される武器をも含んだ立法措置をとろう、こういうふうなお考えであつたものが、今度はMSA協定に関連したアメリカから貸与される武器装備等についてのみの軍機保護に切りかえられたということは、どういうところにその根拠があるのでございますか。
  28. 山田誠

    山田政府委員 最初の御質問につきましては御説の通りでございます。  なおこの秘密保護法日本独自の全般的な機密を網羅する法律にするのか、あるいはまた今回御提案になりましたようなMSA協定に伴う最小限度秘密保持法案をつくるかという点につきましては、上局におかれまして種々慎重に御検討になつており、全般的な秘密保護必要性は将来ますます強くなつて来る、かようなお考えでその必要は十分に認めておるのでございますが、その内容あるいは時期等につきましては、なお今後慎重研究を要しますので、今回はこの法案範囲にとどめることといたし、将来研究いたすことといたした次第であります。
  29. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 下田条約局長に承りますが、今度のMSA協定に基いて日本に参ります顧問団にもこの秘密保護法適用さるものである、かように考えますが、そうではございませんか。一般的な外交官並の待遇を受けるということでありますが、この軍機保護に関しては顧問団はどうなりますか、あるいは日本におります駐留軍はどういうことになりますか、並びに一般外人はもとより今度できる日本国内法に従うべきであると思いますが、顧問団駐留軍一般外人、この三つに対して、この法との関係を明らかにしていただきたいと思います。
  30. 下田武三

    下田政府委員 第一に顧問団につきましては、これは外交官の特権を認めておりますので、法権免除の結果、日本側裁判権かございません。第二に駐留軍の軍人につきましては、これは日米行政協定適用の結果、日米行政協定先方の国または軍の安全に関するようなものは駐留軍側裁判権に属しておりますので、これも米側が裁判することになります。第三の一般外人のみが日本裁判権に属するわけであります。
  31. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 私はこれ一つ質問を打切りますが、今度の法によりまして、憲法規定した二十一条の結社、言論、出版の表現の自由、通信の秘密、これと私は関係するものではないかと思います。もしこれに関係があるというならば、憲法第九十八条でありましたかにも関係のある問題でありますが、ややもすると一般的にはこれが非常な言論の抑圧になりはせぬかとおそれている向きもある。また現に今までの過去の経験から申しますと、これがだんだんと拡張解釈される危険性がないとは言えません。われわれの基本的人権につながつた重大な問題でありますので、私は日本国防秘密を守る必要があるということも十分認めるわけでありますが、この際これを明確にしておきませんと、将来これが拡張解釈されたり、しまいには自衛隊の内部からだんだんと外部に向つて手を差延べて来るということになりますと、かつての憲兵的な存在のようなものができないとも保証はできないわけでございますが、そういつたおそれがないように十分これでできるかどうかという懸念が第一点と、もう一つは、先ほど申しました憲法二十一条の言論表現の自由ということの関係、これに抵触しはせぬかということについて承つておいて私の質問を打切ります。
  32. 山田誠

    山田政府委員 本法案憲法第二十一条の規定に違反するものとは考えませんし、また言論の自由を無用に圧迫するものとも私ども考えないのであります。これは第一には、秘密範囲は今回最大限にしぼつて規定されておるのでございます。すなわち供与される装備品または情報等のうち、第一条第三項の各号に掲げるものに限定いたしております。しかも公になつているものを除外しておりますから、一旦公になつたものの報道などはまつたく自由でございます。また第二に秘密として秘匿されておるものが、そうたやすく一般的な取材活動範囲内に飛び込んで来るものとは考えられないのみならず、言論界がその常識で報道する限り、この規定に触れるようなことは考えられませんし、かつそのような報道をすぐ問うような運用がなされるとは考えておりません。また第三に漏泄の罪につきましても、通常不当な方法によらなければ探知または収集することができないような秘密に限定いたしておるのでございます。不当な方法を用いなくても知り得るようなたやすい事項は、もちろんこの罪の対象にはなつておりません。また漏泄罪成立のためには、その秘密が通常不当な方法によらなければ探知しまたは収集することができないようなものということの認識がなければ、たとい不注意で認識しなかつたといたしましても処罰されることはないのでございます。最後に、憲法第十二条の規定によりますれば、国民の権利、自由は、これを濫用してはならず、常に公共の福祉のために利用しなければならないのでございまして、この法律規定による制限は、事ある場合におきまして自衛隊の行動に支障を生ぜしめないため、ひいてはわが国の安全を守るために、必要最少限度の制約と考えられます。従つて法案憲法十二条の趣旨から申しましても、憲法二十一条のあれに抵触するものとは考えません。なお検閲はこれを行いません。
  33. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 今の検閲制度の問題ですが、検閲制度というものはこれによつて復活するというようなことはないでしような。たとえばラジオであるとか、新聞であるとか、写真であるとか、先ほど私は公のものではないということは政府公表とは違うということを承つたのですが、政府公表する以外のものを取締るということになりますれば、それは検閲制度を復活することになるわけですが、それが絶対にないということを私は希望するわけですが、これはいかがでしよう。
  34. 山田誠

    山田政府委員 検閲は絶対に行いません。
  35. 上塚司

  36. 並木芳雄

    並木委員 委員長秘密保護法案について与党に質問を許しましたから、私もそれに関して一問だけ質問しますが、今の答弁検閲を全然やらないということになれば、秘密を漏らしているかどうかということはどういうふうに調査しますか。言葉では検閲制度はとりませんといつても、実際は検閲に相当するものをやらなければ調べることはできないじやないですか。どういうふうにしてお調べになりますか。
  37. 山田誠

    山田政府委員 検閲という言葉定義の問題でありますが、検閲ということは事前に、その記事を掲載する前にさしとめることを主として私ども検閲と申します。事後に、出たものを調べるということをも検閲という言葉に含むとしますれば、事後審査は場合によつては行われる場合があると思います。私が先ほど申し上げました検閲と申しますのは、事前検閲という意味でございます。
  38. 並木芳雄

    並木委員 先ほどの局長答弁ですと、どの官庁がこれを主管するかということはまたきまつておらないようでありますが、これはごく狭い範囲考えるべき問題であつて、私どもとしては当然保安庁でやるべきだ、こういうふうに思つておりますが、まだ決定しないのですか。
  39. 山田誠

    山田政府委員 大部分は実体的に保安庁が一番関係いたしますので、保安庁が多くの場合主管行政官庁になりますけれども、たとえば防衛生産問題等が発展して参りますと、その主管庁通産大臣ということになりましよう。また特許の申請等関係になりますと、それは特許庁長官行政機関の長ということに相なりますし、その事柄事項によりまして、それぞれ主管庁がかわつて参ります。
  40. 並木芳雄

    並木委員 それからわれわれこういう秘密保護の問題が出て来ると非常に神経質にならざるを得ません。どこかに標記がされているのではないか。先ほどの局長のお話ですと、なるべく標記をしたい。官報や新聞などには発表できないと思うから、なるべく標記をしたいというけれども、そうすると、われわれがものを話したりする場合にも、どつかに標記されているのではないかということを一々気にとめてやらなければならないという問題が起つて来るのです。ちようど今問題になつている教育二法案において、先生が何かしよつちゆう頭の中に、こういうことを言うとひつかかりはしないかという心配があるのと同じようなことが、日常の生活においてつきまとつて来る、こういうおそれがございます。そこで私は、この点は非常に大事な点であると思いますが、もう少しはつきりこういうものはみなこれで網羅されているのだとか、こういうところを聞けばこれで網羅されているのだとか、定期的に何かを刊行するとか何かを発表するとか、そういことを考えておらなければいけないと思うのです。その点についてはつきりしたお考え、計画はございませんか。
  41. 山田誠

    山田政府委員 お答えいたします。その点につきましては、私ども国民の権利、自由の保護という見地からいろいろと研究をいたしてみたのでございますが、どうしても妙案を得るということに至りませんでした。従いましてでき得る限り第二条の措置によりまして、先ほど先生からお話のあつたような、文書、図画、物件にはそういう標記をするなり、あるいは事前のいろいろな予防措置を行いまして、無用にこの機密に触れるということのないようにしたいと思います。なお先ほど私の御説明にありましたのですが、全然知らないでさような秘密のものを他に対して話したということは、その本人に認識がございませんから、その者がたとい話したといたしましても、法に触れるということはありませんので、その心配はきわあてわずかな場合に限られて来るのではなかろうか、かように考えております。
  42. 上塚司

    上塚委員長 並木君、秘密保護法については、佐々木君と政府側との問答においても一応明らかにされておりますし、きようは逐条審議に入りたいのですから、なるべく本論に入つていただきたいと思います。
  43. 並木芳雄

    並木委員 せつかくさつき質問が出ましたから、関連的に今お聞きしているのです。もう一点お聞きしたいのは、ただいまの答弁でも妙案か得られなかつたということで、この点は非常に私ども今失望したわけです。妙案が得られるように努力してもらわなければならない、こう思います。そこで内閣としては、何か考えておるのじやないでしようか。たとえば過日来問題となつておりましたところの情報活動について、一つ情報機関を統一して設けるという案、昔の情報局というところまで行かなくても、何か一つのこういう公衆に間知せしめるための情報機関というものを設けて、専門的にこれに当らせるような案があるのじやないかと思うのです。これはどなたでもけつこうですがお等え願いたい。たとえば内閣調査室を中心として情報を提供するとか、あるいは内閣の審議室、そういうものを利用するとか、そういう点はこの第百二条の第二にもひつかかつて来るわけなので、「各政府は、この協定に基く活動について公衆に周知させるため、秘密保持と矛盾しない適当な措置を執るものとする。」この条項からいつてもあるいは考えられるのじやないかと思いますけれども、その点の計画はどうなつておりますか。
  44. 山田誠

    山田政府委員 十分に関係各省と協議はととのつておりませんが、いまださような話は話題に上つて来ておりません。
  45. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 議事進行について。私は自分で口火を切つたのでありますが、率直に申しましてこの秘密保護法というものとMSAとは切つても切れないものだと私は考えます。そこで私は、政府がこれを上程されるのが非常に遅れておりますが、これをすみやかに上程していただくという必要があると思うのであります。委員長においては政府側にひとつそのことを要求して、すみやかに上程していただくようにとりはからつていただきたいと思うのです。
  46. 上塚司

    上塚委員長 秘密保護法は昨日議院に提案されております。それできよう、多分議運においてその処置を決定することであろうと存じます。
  47. 並木芳雄

    並木委員 この前文では、サンフンシスコで署名された平和条約などが引用されておりますが、その中で例の平和条約第五条(C)の個別的集団的自衛権というものは日本にあるということを確認されております。その確認されておることが、昨年六月二十四日、二十六日の岡崎・アリソン大使の交換公文で引用されておるのです。それは政府の方から、MSA協定によつて日本国政府としては、この援助により国内の治安と防衛とを確保することを得るに至れば、基本目的が十分達せられるのじやないかという質問に対して、アメリカの返事は、「国内の治安を維持し」というところまでは語調が合つておりますけれども、そのあと「平和条約第五条(C)項において保障されている自発的な個別的または集団的自衛の固有の権利を一層有効に行使することを可能ならしめることにより、その計画の主要目的を達成しようとするものである。」こう言つて来ております。従つて自衛権があるということを確認されておつた段階から、今度のMSA協定によつてその自衛権を有効に行使する段階に一歩一前進して来たといわざるを得ないのであります。これがつまり日米安全保障条約によつて「期待」となつておつた自衛力漸増が、今度は「義務」となつて来たというふりに考えられるのでありまして、私はこの前文を見て、第八条の「自由世界の防衛力の発展及び維持に寄与し」という文字を見ますと、今度のMSA協定によつていよいよ日本は、かつては確認されておつた自衛権というものを、今度は有効に行使する能動的な段階に来た、こういうふうに感ずるものであります。「自由世界の防衛力の発展及び維持に寄与し」は、まさしくこのことをさすのだと思うのでありますけれども、その点について政府はどういうふうにお考えになりますか。
  48. 下田武三

    下田政府委員 この協定の裏には、自衛権を持つておるということをただ確認するにとどまらず、その自衛権を行使する手段を増強しようという根本的の考え方があるわけであります。しかしこの協定自体は、その有効になつた手段を行使することに関する何らの協定ではございません。あくまでこの協定のねらいとするところは、手段そのものの増強、その増強のための援助の授受ということに限定されておるわけであります。
  49. 並木芳雄

    並木委員 そういたしますと、やはり日米安全保障条約には何ら変更を来しておらない、こういうふうに局長はお考えになるのですか。私は今の局長の解釈というものはややしやくし定規であつて、あまりに文字に拘泥しておるのではないかと思うのです。防衛力を増幅するという単なる手段であつてそれを行使するということとは別であるということは、あまりに単純な考え方ではないかと思うのです。なぜ手段を強化するか、自衛力を強めるかといえば、必要な場合には行使するということが前提になつておるので、これは表裏一体をなすものであると考えるのです。そういう見地からいたしますと、やはり安保条約というものはかわつて来ておる、こういうふうに感ずるのであります。ですから協定の第九条で「安全保障条約又は条約に基いて締結された取極をなんら改変するものと解してはならない。」と書いてありますけれども、実際はこれは安保条約に変更を加えたものと解さざるを得ないと思いますが、いかがでございますか。
  50. 下田武三

    下田政府委員 第九条で述べておりますように、安保条約に対して何らの改変を加えておりません、御指摘の安保条約前文に、日本は自国の防衛について責任をとるために、自衛力を漸増することを期待すると書いてありますが、この協定締結した結果、アメリカは満足して期待をやめたのかと申しますと、決してそうではございませんで、安保条約前文通り、依然としてアメリカ日本自衛力のさらに増加せんことを期存し続けておるのであります。でありますから安保条約前文はちつともかわりません。
  51. 並木芳雄

    並木委員 この際お尋ねしておきたいのですが、日本にも国連軍が駐もしております。これは朝鮮の動乱と見合つて、いつまでいるかわかりませんけれども、もし国連軍が日本に駐もしている間に緊急の事態が起つた場合、日本政府としては国連軍に出動を求めるようなことがあるのではないか、こういう場合について何らの協定ができてございません。そこでもし極東の平和が乱され、日本に緊急な自態が起つた場合には、日米安保条約米軍は出動いたしますけれども、同じく駐もしている英国や濠州その他の国連軍というものは、手をこまぬいておられるものであろうか。またそれに対して日本としては当然応援を求めることが出て来るのではないかと思うのです。その点について何ら協定がございませんけれども、もしありましたら説明していただきたい。そういう急場に国連軍の応援を求めることができるかどうかという点です。
  52. 下田武三

    下田政府委員 日本がもし攻撃を受けた場合に、駐留米軍は安保条約に基きまして、当然日本防御のために立つでありましよう。しかし国連軍は法律的にはかかる際に日本防衛する何らの義務を持つておりません。そこで完全に政治問題になるわけでありますが、これはその際になつてみないと何とも言えないことでありますが、ただ御承知のアンザス条約というのがございます。アメリカと濠州、ニユージーランドに結びました相互防衛援助協定でございますが、これによりますと、濠州兵なりニユージーランド兵が濠州、ニユージーランドにいる場合に限らず、日本におる濠州、ニユージーランド兵が攻撃を受けた場合にもアメリカ援助に向う、つまり攻撃の対象となる濠州兵なりニユージーランド兵たりの所在は彼らの本国に限つておらないのであります。そういう場合にはアンザス協定つまり日本との関係のないアンザス協定の結果、やはり米軍のアンザス協定に基く援助義務というものが発動することになると考えております。
  53. 並木芳雄

    並木委員 その発動する場合の手続というか、段取りは、どういうふうにして行われますか。
  54. 下田武三

    下田政府委員 ただいまアンザス協定のテキストを持つておりませんが、米国の伝統的な考え方として、自動的、機械的に援助義務が発生するという規定のいたし方ではないのでありまて、おのおの自国の憲法上の手続に従つて、共通の危険に対処するように行動することを宣言する、でございますから、憲法上の手続、つまり米国ございましたら、やはり国会の承認を得た上で初めて行動に入るというような建前になつておると思います。
  55. 並木芳雄

    並木委員 ただいま局長の御答弁にありました通り、国連軍との関係は、政治問題である。それはその通りです。そこでお伺いしますが、政府としては国連軍との協定に何らかの一箇条を設けて、緊急の場合にはやはり出動してもらうような余地を設けておくことが適当であるとお考えであるかどうか、もしお考えであるならば、それをやる御意思があるかどうか伺いたいと思います。
  56. 下田武三

    下田政府委員 国連軍に対して日本攻撃の際に日本援助義務を負わせることの可否につきましては、これはそういうことをやろうということを考えたことは全然ございません、濠州なり、ニユージーランドなりの現在の対日感情から見まして、濠州兵、ニユージーランド丘が日本のために戦つて死ぬというような義務を負うような国情にございませんのが一つと、もう一つは国連軍協定の交渉の当初から、米軍並の待遇はなるべく与えないという建前でございましたから、もし濠州、ニユージーラソドにそうような義務を負わすことを日本側から要求いたしますならば、防御分担金の負担を初め非常に日本側の負担を多くするということを覚悟してからでなければかかれない問題でございます。従いましてそういう要請は全然いたしたことがございません。
  57. 細迫兼光

    細迫委員 局長にお尋ねいたしますが、前文にはごらんのように「国際連合憲章の目的及び原則に従つて」ということことがうたつてありまして、大きくMSA協定は、国連憲章のわくでしぼられておるわけでございます。この国連憲章の目的及び原則に反する部分は、従つて無効と申しますか、活動しないという関係に立つと思うのでございますが、いかがでございましようか。
  58. 下田武三

    下田政府委員 仰せのように前文で「国際連合憲章の原則及び目的従つて」というわくをはめております。但し、このわくは安保条約を引用いたしました結果、安保条約にくつついて引用されたわけでございまして、安保条約のこの前文は、一方に日本自衛力の増強を期待しつつ、なおかつかつて日本の軍国主義的な軍事力というものが出ることを防ごうというところからはめられたわくであります。それにいたしましても、仰せのようにこのわくが安保条約とともに入つて来ておるわけであります。従いしまして、この第一条の最も基本的な援助の授受に関する規定の中におきましても、第一条一項に「いかなる援助の供与及び使用も、国際連合憲章と矛盾するものであつてはならない」ということをはつきり規定いたしまして、ただいま御指摘のようにこの援助の供与なり使用なりが、国連憲章と反するようなことがあつてはならないということを、第一条の最も重要な規定中にも繰返して入れておるような次第であります。
  59. 細迫兼光

    細迫委員 御承知のように国連憲章は、一九四五年十月二十四日にその効力を発生しておるものでございます。当時はいわゆる冷たい戦争のない当時でございまして、日本に対する政策も非常によく一致した態度がとられており、いわんや、いわゆる米ソの対立という国際情勢のなかつたときでありまして、従つて、そういう観点から見ましても、また具体的に国連憲章の文字そのものから見ましても、「寛容を実行し、且つ、善良な隣人として互に共存し、国際の平和及び安全を維持するためにわれらの力を合わせ、」ということがあります。この意味は決していわゆる自由諸国の安全、平和ということで、はなくて、ソ連及びアメリカを大きく含めた意味であつたと思うのでございますが、この国連憲章のそれらの意味についての私の考えは間違いでございましようか、お尋ねをいたします。
  60. 下田武三

    下田政府委員 国連撮憲章ができましたと当時の当自国の考えは、まさに仰せの通り考えであつたと存じております。
  61. 細迫兼光

    細迫委員 しかるに、このMSA協定を見ますと、岡崎外相のあいさつ等にはより多く出ておりますが、自由諸国の安全防御能力の増進に寄与するというような、そういう文句がありまして、MSA協定そのものが、根本的に、いわゆる自由諸国家の安全、平和ということを目ざしておるものであることは、これは一見して明瞭だと思うのでありますが、そうしますと、国連憲章の目的及び原則というものとは全然その観念を異にしまして、これは世界の半分のための協定であるということにならざるを得ない、そうすれば、基本的にこのMSA協定そのものの精神が、国連憲章に反するものであると断ぜざるを得ない結果になりはしないかと思うのでありますが、御意見いかがでありましようか。
  62. 下田武三

    下田政府委員 今から九年前にできました国連憲章の前文に掲げられました人類の理想は、その後の国際情勢によつて裏切られておりますことは、今から八年前にできました日本国憲法前文にうたわれた理想が、やはりその後の国際情勢によつて、遺憾ながら裏切られておると同じことであると存じます。そこで、国連憲章の大目的は、先ほど仰せになりましたところにあるのでございますが、結局現在主として働いておりますのが、国連憲章中の他のアイデア、つまり当時は実際に適用されることを欲しなかつたところの侵略に対処する措置というところが、遺憾ながらその後の国際情勢によつて主として適用されることになつたわけでございます。でございますから、そういう事態の責任は、これを自由主義諸国側に押しつけるというとは、これは私はできないことだろうと思います。国際情勢がそういうことになりました結果、大目的よりも一段下のアイデアであるところの侵略に対処しようという部面の国連憲章の規定が前面に発効されて来た。日本としましては、その国際情勢の移りかわりのさ中に平和条約締結し、平和条約の発効によつて独立国になつた。その日本が独立を回復したときが、遺憾ながら国連憲章の当初の目的から大分かわつて来たときに独立を回復したわけであります。そこで、集団的あるいは個別的の自衛権でございますとか、また自衛力の漸増を期待するとか、あるいは平和を脅威するいかなる国にも援助を与えない、また平和の脅威に対処する国にはあらゆる援助を与えるというような、国連憲章の第二次的な方規定が、日本の平和条約あるいは安保条約前文に導入されたということは、まことにこれは遺憾なことでありますが、日本が独立を回復したときがちようどそういう国際情勢の波に際会しておつたということ、これは日本の責任でも何でもない、やむを得ざる結果であつたと思うのでございます。でございますから、この協定自体も、このようなときに際会して独立を回復した日本が、結ばれた安保条約、平和条約の思想を継承して、そうして日本自衛力を漸増しようというところをねらいとするような協定になつて来ておるような次第でございます。
  63. 細迫兼光

    細迫委員 局長の御答弁は、その限りにおいて正しいと思います。遺憾なことだとおつしやいます。その通りまことに遺憾でありますが、それは遺憾にとどまらない、MSA協定の根本的な有効無効にかかわる問題だと思います。これ以上は議論になりますからやめておきますが、このことに関しまして、国際連合憲章に対する日本義務というものはどいうふうな関係になつておりましようか。まだ国際連合に加わつてはいないのでありますが、その点私が不案内でございますから、ひとつ教えを願いたいと思うのでございます。
  64. 下田武三

    下田政府委員 ただいま仰せの国連憲章と日本との関係でございますが、御承知のように、平和条約締結の際に、平和条約の第五条で、国連懸憲章の義務、なかんずく憲章第二条に掲げる義務を、受諾いたしておるのであります。その受諾いたしました義務と申しますのは、先ほど申し上げましたように、世界の隣人愛と申しましようか、ハイレベルの義務でなくて、むしろ、「憲章に従つてとるいかなる行動についても国際連合にあらゆる援助を与え、且つ、国際連合の防止行動又は強制行動の対象となつているいかなる国に対しても援助の供与を慎まなければならない。」というような、第二次的なレベルの国連の義務を特に引用いたしまして、その義務日本は平和条約で受諾しているという関係になつております。
  65. 細迫兼光

    細迫委員 国際連合は、言うまでもなく、アメリカ圏及びこれに同調する国々だけのものではなくて、基本的に大きな理事国、すなわちソ連、中国を含めた組織であることは言うまでもありません。だから、国際連合憲章はこれら全加盟国のものでございまして、この全加盟国と条約なりその他の約束をして初めて全面的な義務が生ずるりくつになると思うのでありますが、今のお話によりますと、国際連合憲章を守る義務日本が負いますのは、ただあの平和条約に調印した国々、すなわちアメリカその他の国々に対してのみ日本義務を負うのであつて、ソ連やその他の平和条約に調印しない国には義務を負わない、こういうふうな関係になるのでございましようか。
  66. 下田武三

    下田政府委員 その関係はまつたく仰せの通りでございます。
  67. 並木芳雄

    並木委員 先ほど私の質問の中で、官房長官にお答えを願いたい点が残つておりましたから、質問をいたしますが、きよう問題になりましたのは、MSA協定に基いて秘密の保持ということを日本政府がやらなければならない、こういう点でございます。ただいままで関係局長答弁を聞いておりますと、どういうことが秘密であるかということの公衆への周知については、結論としてまだ妙案がないとのことであります。われわれの側から言うと、いかなることが機密に属するか、それを的確に知る必要がございます。そうでないと、うつかり漏洩して法に問われることになるとたいへんなのであります。そのことはちようどただいま問題になつております教育二法案関係して、学校の先生方がものを言うときに、一々頭の中で注意して言わなければならない、うつかりするとひつかかるのではないかという懸念と同じことになつて来ると思うのであります。そこで政府としてはどうしても簡単にかつ明瞭に、いかなるものが機密であるということを国民に知らしめる必要があると思います。それと同時に、このMSA協定によつても約束されておりますように、MSA活動については、今度は秘密保持とは逆に、秘密保持と矛盾しないような範囲で適当に公衆に周知さぜる、いわゆる広報活動をしなければならないということがうたつてあるのであります。そこで私ども考えるのに、政府としては内閣の中に何らか統一されたところの情報機関を設ける階段がいよいよ来たのではないか。このことは前からもときどき問題にはされておつたのでございますが、いよいよMSA協定をきつかけとして内閣の調査室を拡充するとか、何らかの方法によつて一本にした、そうして統制をするところの情報局のようなものを設けるのではないかと思うのでありますけれども、その点どうなつておりますか、福永長官にお尋ねしたいと思います。
  68. 福永健司

    ○福永政府委員 ただいま並木さんの御指摘の点は、相当考慮を要する点だと政府考えておるわけでございます。機構的にはまだ国会に提出はいたしておりませんが、すでに閣議の決定を終えました総理府設置法の一部を改正する法律案の中に、ごく若干の機構改革を示しておるのでございますが、これは国立世論調査所を廃止する方向へ持つて行く、その他の点もございますが、ただいま並木さんの御質問と関連いたしましては、廃止する方向に持つて行く内容のことが示されておるわけでございます。この限りにおきましてはむしろ一本にした、大きな情報局のような組織を持つということは逆でございまして、ただいまのような点から申しますならば、政府といたしましては、もちろん周知せしめる方途を講ずるためには、何らかの方法考えなければいけない。ただいま研究はいたしておりますけれども、今立法措置として考えておりますことにはそのことはただちに含まれていないわけでございます。もつともただいま御指摘のような点は、具体的にいかなるものが機密であるかというようなことにつきましては、外務省なり保安庁ないし法律改正によれば防衛庁という方面で、具体的にそれぞれ配意することをもつて足る面も相当多からうと思うのでございますが、そのほかに政府として、並木さんのおつしやるような意味における広報機関というものをどうするかということを、まだ研究中でございます。別にそのために機関を設けるというような結論にはただいまのところ到達いたしておりません。むしろ先ほど申しました一般論から申しますと、かつてのような情報局というようなものと間違われるような機関を置くということとは逆の考えを持つております。そういうことに誤解されるような意味の機関は置きたくない、世論調査所も今申しましたようなぐあいで、これは一年に全部やるのではございませんで、二年計画で廃止する方向へ行つております。ただ世論調査所の立案調査というようなものについての事務を扱う若干の職員を残しまして、これは今でもあります内閣の審議室の方に属せしめよう、こういうふうな考え方にただいまはあるのであります。
  69. 並木芳雄

    並木委員 それならば非常にけつこうであります。私どもが心配しておるのは、要するに、言論の統制でありまして、たとえばこの間問題になりましたNHKのユーモア劇場でありますけれども、私など国会議員でありますけれども、あれは大すきで、あの諷刺を受ける、あれでまた自分たちも反省するところが出て来る、ああいうものを政府が統制して行くという点が現われると、われわれが戦後獲得した唯一最大の言論の自由、こういうものの一角がくずれて来るのでありますから、これは何としてでもそういう傾向に逆もどりしないようにぜひお願いしたいのであります。  特に検閲の問題につきましては、先ほど保安局長が、検閲はしないけれども、それは事前検閲意味であつて、場合によつて事後検閲はするようになるであろう、こういう注目すべき答弁をしておるのです。事前であろうと事後であろうと、検閲というものは実に不愉快なものである。たとい事前でなくても、事後にやられるということがありますと、そのことをしよつちゆう心にかけながら計画をし、発表しなければなりませんから、結局言論の自由というものに制限が加えられて来るわけであります。そこで官房長官においては検閲というものは事前たると事後たるとを問わず、一切やらないということをここで言明を願いたいのでありますが、いかがでございますか。
  70. 福永健司

    ○福永政府委員 ただいま御指摘の点は、具体的には相当検討を要するところであろうと思います。従いまして一切やりませんと私がここで言い切ることは、それぞれのことを所掌いたしております大臣等とも打合せを了しておるわけではございませんから、ちよつと差控えたいと思いますが、かつてのように、非常にいろいろなことでかましく言うような検閲制度を復活しよという考えは、もちろんないわけでございます。最小限度の何らかのことが必要かどうかということにつきましては、なお今後若干の研究をする余地を与えていただきたいと思いますが、別段急に厳重なる検閲制度を復活しようということを、ただちに考えているようなことがないことは御了承いただきたいと思います。
  71. 並木芳雄

    並木委員 それではその点十分考慮してやつていただきたいと思います。  せつかく長官においで願いましたから、この機会に一言吉田首相の外遊についてお尋ねをしておきたいと思います。それは最近MSAの経済援助の問題やあるいはまた突発事故として起つた原子力問題、ビキニの問題など、われわれ野党としてもこの機会に吉田さんに行つてもらつて、いろいろ交渉してもらう方がいいのじやないかという点もございます。野党攻勢という見地からいえば、何も今ごろ好んで行く必要はないじやないかという議論もありましようけれども、広い国民的立場に立つて考えますと、老首相を煩わして外遊をしてもらつてけつこうだ、またその必要があるという問題がかなり多いのであります。ですから私はあえてそれに対して反対をするものではございませんが、昨今のこんとんたる政局のもとにおいて、なおかつ首相は外遊の計画を捨てておられないかどうか、また聞ところによると、からだの方もあまりよくないそうです。この外務委員会でもMSAの審議に一日出て来てもらつて、質疑をやることになつておつたのですけれども、それもできないとのことです。吉田総理はそんなに病状が悪いのかどうか。またそういう情勢のもとにおいて予定通り外遊をされるのであるか。それに変更がなくて外遊されるとするならば、どういう点に重点を置いて外国で交渉または話合いをされて来るつもりであるか、日程の大要とともにこの際御説明をいただきたいと思います。
  72. 福永健司

    ○福永政府委員 吉田総理の病気は、ただいまのところ今ただちに国会へ出るというのはちよつと困難なような状況でございます。実は神経痛で初めのうち相当痛んでおりましたわけでございますが、大分よくなつては来ておりましたのですが、ぜひ早くよくしたいというのできのうですか、けさですか、注射をいたしました。そうしましたら、またただいまのところ相当痛んでおります。注射がかえつていけなかつたのかと思つてつておりますが、これはまあもう少し時間がたてばさらにその後の経過がわかると思うわけでございます。いずれにいたしましても、本人といたしましては一刻も早く国会に出ていろいろ御質疑等にも応じたいと考えておるわけでありますが、いかんせんかつて経験しなかつた神経痛で弱つております。この点はひとつごかんべんをいたたぎたいと思います。  さような次第でありまして、相当神経痛等がひどいというような状況のままでは旅行等につきましては、これはまあ場合によつて考えなければならぬかと思いますが、しかしまだ外遊をいたそうというように考えておりますまでには相当の日数もございますので、おそらく病気もだんだんよくなつて来ておるのでありますから、そのころまでには全快するであろうというように私どもは期待しておるわけであります。  そこで、日程等につきまして並木さんの御質問もあるわけでございますが、実は私どもが外遊につきまして五月中旬以降ということを申しましたのは、一部で四月の中ごろに、国会開会中に外遊する云々というようなことが報ぜられましたので、さようなことはいたすつもりはないという意味で私から発表いたしましたわけでございます。従いまして、実際に何日にどうというような日程はまだできていないのでございます。これらにつきましては、国会が終りに近づくころある程度の計画等もいたしまして、それぞれ相手国の方へも通告等もしなければならないと思つておるわけでございます。さような次第でございますから、また現実にいつから参りますということが確定いたしておりますわけではないのでございます。少くとも四月の中旬、国会開会中等には出かけるようなことはないという意味の発表をいたしたのでございます。ただそうすると、その裏を返せば、五月中旬ないし中旬以降に出発することになるであろうというように、こう伝わつておるわけでございます。従つて旅行の目的等につきましては、これはもとより国際親善等を主として考えておるわけでございますが、一国の総理が参りまして、あちこちいろいろ折衝いたします場合に、どういうことを目的とし、どういう成果をあげて来ようと考えているかということにつきましては、まあ国民の皆さんにも御納得していただけるようにある時期には申し上げたいと思つておりますが、ただいま申し上げましたような事情でございますので、どういう目的のためにどういう日程でどういう国に行くということをまだ確定的に申し上げられる段階でもございませんし、今申し上げることは、むしろいろいろ妙な臆測も生ずるので、私ども申し上げることを差控えたいと思うわけでございます。  右のような事情でございますから、せつかく御質問の渡米の目的、渡欧の目的等につきまして、的確に申し上げられないことにつきまして御了承願いたいと思います。
  73. 穗積七郎

    穗積委員 ちよつと議事進行に関して一言だけ……。福永官房長官に議事進行に関連いたしますので、お尋ねしておきたいと思うのです。私はあなたに対してはまだあとお尋ねしたいことがありますが、戸叶委員がこの次質問なさいまして、そのあとで私お尋ねをいたしたいと思いますから、そのことは後にいたしますから、お残りを願いたいと思いますが、実は今並木委員が御質問なさいましたが、あなたも御承知の通り、MSAは日本憲法にも関連する重要な、さらにある意味ではそれより大きな国際的、国内的な影響を持つような条約文でございます。従つてこれの審議にあたりましては、提出の責任者であります吉田総理が国会へ出て来られまして、質問に答え、あるいは御説明いただくのがわれわれは当然だと存じておりましたが、遺憾ながら衆議院本会議における提案理由の御説明、これに対する一般質問におきましても、参議院におきましても、この委員会におきましても、実は一度も顔を出していただけないで、われわれ心外に思つておるわけでございます。それで御病気だということでございましたが、実は私はほんとうの病気ではなくて、国会軽視病じやないかというふうに推測しておつたのですが、(笑声)今伺いますと、ほんとうの神経痛のようでございますので、官房長官のお言葉を信用いたしまして、そこでお尋ねいたしますが、実はこの審議は、委員長を中心にいたしまして、本委員会におきましては吉田総理に対して各委員持事間三十分見当でお尋ねをしたいということを申合せとして決定いたしております。ところで予定日はきようであつたわけですが、それがだんだん延びて来ておりまして、危うくするならば、総理がおいでいただけないので、緒方副総理にかわつてもらつてどうであろうかというお諮りが委員長からもあるような事情でございます。今伺いますと、神経痛程度だそうでございますが、神経痛でございますならば、私実は神経痛の名医を存じておりますので、ひとつ差向けて、(「あぶないぞ」、「一服盛られるぞ」と呼ぶ者あり、笑声)立ちどころにしてなおして、こちらへおいでいただくようにしたいと思つております。のみならず、吉田総理は、このMSA協定その他のうるさい法案が通らぬ間は神経痛で、それが通れば立ちどころになおつて外遊されるということでは――神経痛でございますと、あまりいじくりまわしますと、国会の審議が済んで外遊をするというときに、なおるものがなおらないということがございますし、早くなおす必要がございますので、吉田総理にあなたからぜひお伝え願いたいのですが、上杉謙信が甲州軍に塩を送つたような気持で、(笑声)実は私は名医をほんとうに存じておりますから、一日にしてなおす名医でございますから、ひとつそのことをきようぜひ電話で大磯の御殿へお伝えただいて、そのの結果よくなりましたら、すわつたままで御答弁いただいてもけつこうですし、あるいはソフアーを特つて来て、そこでお答えいただいてもわれわれは了承いたしますから、MSAの審議には、三十分づつでございますから、しごく簡単ですから、ぜひとも出ていただくようにお願いいたしたいと思いますが、いかがでありましようか。もしそれができないようでございますならば、実はわれわれとしてはMSAの審議に一ぺんも総理が出られないで、この先ほど申しましたような重要な法案審議するということは、国会としてもはなはだ遺憾でございますから、私の今申した名医の診断を受けて早くおなおしになる御所存がないというのならば、毛ぎらいされるならば遺憾のことですから、それならおなおりになるまで持ちたいとも思つておるわけでございます。ですから、そのおつもりをあなたが即答していただくわけに行かぬなら、私はそういうことを提案いたしますから、きようあなたがあそこにいらつしやるなり、あるいは電話で御連絡になるなりして、あしたこの委員会へ出て来てお答えをいただきたい。それによつて委員長並びに理事を中心にして、この審議の運営をはかりたいと存じておりますので、そのことをひとつ提案申し上げるとともに、お尋ねするわけでございますが、いかがなものでございましよう。
  74. 福永健司

    ○福永政府委員 御親切に医者の御心配までいただきまして恐縮に存じますが、実は吉田総理自身は、また私どもも同時にできるだけ早くなおしまして、できるだけ国会に出て来たいということは、もとよりそれが希望なのでございます。神経痛にもいろいろあるわけでございますが、決して穂積さんのおつしやるような意味の神経痛ではないのでございまして、正真正銘の神経痛でございます。ただ医者が心配いたしまして、いろいろに手当をいたしておるわけでございますが、先ほども申し上げましたように、できるだけ早く出るという意味において、大分よくなつたところへ、念のためにというので注射をしたのが、かえつて痛んだ。そういうようなことでございますので、医者についての穂積さんのお申入れは、これはまたよく相談いたしまして、場合によつてはお願いすることになるかもしれませんが、せつかく今専門医当も見ておりますので、急に今の医者に、お前じやだめだと言うこともいかがかと思いますが、よく相談をさせていただきたいと存じます。そういうような次第でございますから、いずれにいたしましても、できるだけすみやかにとは考えておるわけで、決して国会を回避しておるわけでわないわけであります。但し神経痛というものは、穂積さんのおつしやるように、一日にして、一瞬になおるというようなことにもなかなか行かないかとも思いますので、この委員会における審議につきましては、もちろん総理が出て来るということになれば一番いいわけであります。ただいまのところはなかなかそれが困難な状況にありますので、この点につきましてはぜひ御考慮をいただきたいと存じます。副総理はもとより総理のもとにおきまして内閣一体の考えのもとに、総理の意図を受けて、それぞれ意思の表明もし、善処いたしておりますので、さような点につきましては御了解をいただきたいと存じます。
  75. 上塚司

    上塚委員長 戸叶里子君。
  76. 戸叶里子

    戸叶委員 ただいま穗積委員からの御発言がありましたように、このMSA協定わが国にとりまして非常に重要な協定でございまして、私どもはもちろん総理大臣の御出席を得て、そうして十分に審議した上でなければ、なかなかこの法案に対する態度も決しかねるものでございますが、ただいま穗積委員が御親切にいろいろ御忠告をなさいましたのも、すなわちいかにこの法案が重大であるか、なおかつそれであるがゆえに、吉田総理大臣にぜひ出席してほしいという希望を述べられたと思いますので、なるべくこの協定審議しております間に、なおられまして、私どもの不審を抱いております点についての回答を与えられることを、私もまず希望する次第でございます。  そこで先ほどから防衛秘密保護法の問題がここに提示されましたが、その法案が私どもの手元に参りましてから私は審議したいと思いますが、先ほどの質疑の中でどうしてもわかりませんでした点を一、二点だけお伺いしたいと思います。  その一点は、たとえばアメリカでこの兵器とこの兵器、こういうものは秘密である、そうなつておりますものが、日本へ持つて来られました場合に、同じようにこれが秘密である、こういうことになる兵器指定されているのかどうか、それをお伺いしたい。
  77. 福永健司

    ○福永政府委員 この点は外務大臣とかあるいは木村国務大臣からお答えするのが適当であろうと思いままが、私は直接その方を担当いたしておりませんので、十分打合せの上ではございませんが、私の聞いておるところでは、ただいま戸叶さんのおつしやる通りであろうと存じます。
  78. 上塚司

    上塚委員長 戸叶君、秘密保護法案については、今日提出されておりますから、いずれ本会議または議運を経て、いずれかの委員会に付議せられることになつておりますから、その上でひとつこれについての詳細なる質問を続けていただきたいと思うのです。今日はその前文について質問を願いたいと思います。
  79. 戸叶里子

    戸叶委員 私はその点了承しておりますから、最初の発言ではつきりお断りしております。けれども先ほどの与党の委員との間の質疑応答の中でわからない点だけはやはりはつきりさせておいていただきたい、そういう意味質問しておりますので、それ以上のことはお聞きしませんから、どうか発言に制限を加えないでいただきたいということをお願いいたしておきます。
  80. 上塚司

    上塚委員長 続けてください。
  81. 戸叶里子

    戸叶委員 今の問題ですが、そうなつて来ますと、当然この兵器とこの兵器というように、秘密保護法の中にあるいはあとから細目協定というものが出て来るのではないかと思いますが、その点はどうなつておるのでしよう。条約局長でけつこうです。
  82. 下田武三

    下田政府委員 ただいまの点は協定の第三条ではつきり書いておりますように、「両政府の間で合意する秘密保持措置を執るものとする。」ということになつておりますので、この合意というのは、文章になりましたとりきめを意味いたしません、これは先ほど官房長官のお答えになりました何が秘密物件であるかということの指定も合意の中に入るのでありますが、そのほかに、合意の内容というのは、その秘密の程度でございます。これは付属書でまた同等の保護を加えるということになつておりますので、先方が極秘扱いにしておるものはわが方でも極秘、先方がただ秘扱いならわが方でも秘、その保護の程度につきましても合意の対象となるわけでございます。
  83. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと極秘、秘というふうにその階級がわかれるわけですが、アメリカの方でわけられてあるその等級に応じて日本の方もわけるのだというふうに了承していいかどうか、これが一点。  それから、これも条約局長でけつこうですが、そうなつて来ますと、秘密を守らなければならない兵器を使つております自衛隊、その自衛隊演習とか、そこで何があるとか、そこでこういうことをしたとかいうようなことは全然報道されないで、その地域に対しては絶対にもう立入り禁止というふうに非常に制限されるのではないかと思いますが、その点を伺いたいと思います。
  84. 下田武三

    下田政府委員 第一点は仰せの通りでございます。  第二点は、これはもうきわめて狭いのでありまして、かつて軍機保護法考え方と全然逆でございまして、具体的に指定されたものであるとか、あるいは技術上の情報であるとかいう、きわめて具体化された物件情報についてのみの秘密でございます。でございますから、秘密物件を持つておる保安隊の隊員が演習したからと申しまして、その演習自体、その行動自体が秘密になるわけでは毛頭ございません。もとよりその秘密物件自体は、演習で持つて行けば、たまたまその秘密物件が宿屋に置かれてあるのを利用して、その秘密を暴露せんがためにこれをとつて行くとなんとかいうことは、その物件についての秘密保持の観点から制限されますが、たまたま秘密物件を持つておる隊員であるからといつて、それの行動であるとか、演習であるとかいうものが秘密になるということは毛頭ございません。
  85. 戸叶里子

    戸叶委員 その点についてもいろいろ議論がございますが、これはあとにまわしたいと思います。  そこでMSAの協定前文についてお伺いしたいのです。ほかの国のMSA協定前文を読んでおりませんから私はわからないのですが、ほかの国の、前文があるといたしましたならば、前文と、それから日本の場合に書かれております前文とは違つていると思いますが、ほかの国のどこにも見られない、特に日本の国の前文はこういうところが違つているという点をお示し願いたいと思います。
  86. 下田武三

    下田政府委員 この協定は、各国がアメリカと結びました協定と、大部分の規定は共通いたしておるのでありますが、最も大きな相違はこの前文でございます。これは日本の特殊性、つまり日本憲法の制約から来る特殊性が大なるものでありますが、もう一つは、戦後の再建途上にある日本の経済力が決してまだ強くないということから来る特殊性、その二つの特殊性から非常によその国と違つたものになつております。つまりよその国でありましたならば、NATO条約ということが必ずうたわれております。あるいはアメリカの国でありましたら、汎米相互援助条約というものが協定の背後に参りますが、日本の場合は国連憲章と、平和条約と、安保条約というものが、思想的の理念のつながりを特つてこの協定の背後に来ておるわけであります。もう一つ、どこの国にもない特殊性は、第四項で「経済の安定が日本国防衛能力の発展のために欠くことができない要素」であるということを明記いたしまして、経済安定を阻害してまで自衛力を漸増するというようなことは、ちつとも考えていないという点をはつきりいたしました点が、最もよその国と違う点でございます。
  87. 戸叶里子

    戸叶委員 経済安定が日本の国においては最も重大であるということを書き入れたことが、よその国と違うというお話でございますが、これは日本の方が望んで書き入れたのか、それとも先方側が望んで入れたのか。おそらく日本の方が望んで入れたのであろうと思いますが、その点を承りたい思います。
  88. 下田武三

    下田政府委員 これはもちろん日本側から主張いたしまして挿入された字句であります。
  89. 戸叶里子

    戸叶委員 MSAの協定と、それから日本防衛力漸増計画との関係は、表裏一体であると私ども考えておりますが、ここにおきましての答弁を聞いておりますと、防衛計画があればいいけれども、なくてもこれは別個のものである、こういう御答弁を幾たびか聞いております。そうであるといたしましたならば、その答弁によるといたしましたならば、何もこういうことを別に書かないで、日本が独自の形で、経済力がまだ足りないのだから、まだ防御力の漸増は差控えた方がいいとか、あるいはこれだけの経済力ができたのたから、防衛力をこの程度に増してもいいとかいうことは、日本の国自体がきめていいのであつて、わざわざそういうことを言う必要がないと思うのですけれども、その点の関係を承りたい。
  90. 土屋隼

    ○土屋政府委員 これは二つの目的のためにわれわれは主張したわけであります。一つは、今後日本自衛力の増強をいたしますが、経済的の安定ということをわれわれとして十分に考慮に入れて、今後の発展ということを考えて行かなければならないわけであります。従つて日本に経済的な安定ということを常に考慮に入れておきますということをアメリカ側にも知らせる必要があつたろう、こう考えましたので、これを主張しましたのが一つ。もう一つは、今後アメリカから援助を受けるにあたりまして、実際上軍事援助という形にかわりつつあるアメリカの政策に対して、常に日本については経済の安定ということを考える段階にまだあつたということを意識してもらうことが必要だと思いましたので、アメリカ側に忘れないようにという意味も含めた、この二つの理由で主張したわけであります。
  91. 戸叶里子

    戸叶委員 そういうことでありますならば、その言葉ももう少し強い言葉を使えばいいのであつて、「欠くことができない要索であり、」というよりも、もつと積極的な言葉を使えばよかつたのじやないかと思いますが、その点についての御答弁と、もう一つは、また四番目のところで、「また、日本国の寄与がその経済の一般的な条件及び能力の許す範囲においてのみ行うことができることを承認し、」とありますが、日本国の寄与というのは何に寄与するのか、その点を承りたい。
  92. 土屋隼

    ○土屋政府委員 私どももこの経済安定という言葉よりは強い言葉を出した方が、われわれの目的を達するいう考えを持ちましたので、経済安定だけでなく、経済の発展と、それから今後の進展とに寄与するという意味に書きかえて初めの案を出しまして、アメリカ側と話をしました。この点についてはアメリカ側の方も当方の意向の趣旨のあるところはわかつておるのでありますが、協定文自体の中に経済発展までうたうことは、MSA援助日本経済の発展のために与えられるような印象をアメリカ国内で与えるという点において非常な困難を感じまして、現在のアメリカの対外援助の方針から申しますと、今経済援助を主にし、あるいはそれを先決問題とするのだという書き方は困るというので、その折衝を重ねました。実はここにあります簡単な経済の安定という言葉だけの字でございますが、交渉の初めからしまいまで、確定を見なかつた言葉で、いろいろ考えた結果、他の点に経済安定という点をうたい、さらに付属書におきまして、今後日本経済に寄与をするということを考えながら、アメリカ援助するという点を一応描き出すことにいたしまして、前文におきましては、経済の安定というしごく穏やかな言葉で双方が話し合つたというのが、実際上の結論でございます。  それから「日本国防衛能力の発展のため」云々の日本国の寄与という点でありますが、これはあとにございます第八条の日本側の受けます資格要件の中に、一般経済条件の許す範囲内において日本が人的あるいは物的施設その他の寄与をするという点、全幅的な寄与をするという言葉が消えております。これらについてはかなり厳格に各方面で規定する必要がありましたので、私どもはここに日本の経済安定ということが防衛能力発展のための基礎であるということをまずうたつて、しかしながらその基礎であるがゆえに、今後日本がその上に幾らかの余力を出して防衛能力の増強ということに、日本だけでなく、自由諸国間に寄与できるという場合においても、日本一般的な条件及び能力というものがいつもその限度になります。そのわくになりますということを重ねてここにうたつたというのが、ここへ文字に書きました趣旨でございます。
  93. 戸叶里子

    戸叶委員 私も先ほど欧米局長が言われましたように、経済の発展についてもつと強力に主張されたことがそのまま現われて来ることを望んでいたのですけれども、そういうふうな気持から折衝されたけれども、向うが了解しなかつたという点は、まことに将来において問題が残りはしないかということを非常に憂うるものございます。  次にもう一点お伺いしたいことは「個別的及び集団的自衛のための効果ある方策を推進する能力を高めるべき自発的措置によつて、」こう書いてございます。先ほど細迫委員の御質問にもありましたように、はつきりとこの前文で、日本は国連憲章のわくにはめられておりますけれども、こういうことの書いてあるこの意味はどういうふうにとつたらいいか、お伺いしたいと思います。
  94. 下田武三

    下田政府委員 この国連憲章のわく内と申しますことは、つまり国連憲章にはいろいろのことが規定されておりますが、この自衛のための防衛手段を増強することについて、その限りにおいて国連憲章のわく内から踏み出さないというだけの意味でございます。決して無関係の点まで国連憲章のわくをひつかぶるという趣旨ではないわけでございます。
  95. 戸叶里子

    戸叶委員 「個別的及び集団的自衛のための効果ある方策を推進する能力を高めるべき自発的措置」というのは、具体的にどういうことを意味するのでしようか。
  96. 下田武三

    下田政府委員 これは安保条約以来用いられております慣用句でございまして、日本自衛力の漸増をいたすとしても、その目的は何かということをはつきり書いておるわけでありまして、それはつまり昔でありましたら直接侵略だけが問題になつたのでありますけれども、一または二以上の国の外部の教唆または干渉による間接侵略をも含めて、防衛のための責任を漸増的にみずから負うという点、つまり往昔と違つて、直接後略だけでなくて、間接侵略にも対処するという点が、しいて意味があると言えばあると言えると存じております。
  97. 戸叶里子

    戸叶委員 この「集団的自衛のための効果ある方策」ということを書いてありますのは、何かそこに集団安全保障機構への参加を要求するものではないかというふうなことも考えられます。そういうことの裏づけのようにも思いますが、その点はどうなんでしようか。
  98. 下田武三

    下田政府委員 これは国連憲章の建前からいいますと、日本のような特殊の国を目的として規定したのではないのでありまして、こういう書き方をいたしております。そこで特定の日本の場合におきましては、またまた本来の意味の集団的自衛ということは問題にならない段階でございます。ただ集団的自衛という言葉を広く解しますと、安保条約のように、日本は何ら積極的な義務を持たないで、ただ米駐留軍の駐留を許し、第三国には基地を貸さないというような、きわめて消極的な義務だけ負つたものでも、なおかつ集団的自衛の中に含めようと思えば含め得ないことはないと思いますが、国連憲章でいつておる集団的自衛というのは、そういうような特異な安保条約式のものを意味しておるわけではないわけであります。これはむしろ日本のような特異な国を度外視して、大多数の国に共通に当てはまるような表現を国連憲章ではとつておる、そういう解釈するのが正しいと思うのでございます。
  99. 上塚司

    上塚委員長 もう、二十分になりますから……。
  100. 戸叶里子

    戸叶委員 そこに私は問題があるのではないかと思います。たとえばヨーロツパにおいてのNATO協定とか、アメリカMSA協定を結んでいるほかの国には、そういうふうな体制にありますためにその言葉を入れましても何も問題がない。しかし日本の場合にもそういう例にならつてこういう言葉を入れますと、結局将来において集団安全保障機構も予想されるのではないかということが、私どもといたしましては非常に気になりますけれども、集団安全保障機構などに入りましても、この文句がある限りは日本が何とも言えないということになりはしないか。この点についてどう思いますか。たとえば――もちろんこれは私は憲法を改正しなければならない問題だと思うのですけれども、この間いろいろな公述人からお話を聞きますと、ずいぶん人々の解釈によつてつておりまして、国際法学者などは、集団的自衛体制というものは、今の憲法でもできるのだというようなことまで、はつきり言つておりますので、こういう点を私ども非常に心配いたしますけれども、そういうふうなことになりはしないかどうか、お伺いいたします。
  101. 下田武三

    下田政府委員 仰せの通りヨーロツパのNATO条約当事国等につきましては、この「個別的及び集団的自衛のための効果ある方策」というものは、そのまま全的に当てはまるわけでございます。しかし日本の場合には、先ほど申しましたように、この集団的自衛という意味をきわめて広く解さない限りは、このままで日本に当てはまるということは条理上ないわけであります。しかし念のため第八条におきまして、軍事上の義務は安保条約に基く義務にほかならないことを明らかにし、第九条におきまして、安保条約を何ら改変するものではない、第三の制約といたしまして筋九条第二項におきまして、憲法のわく内で実施されるということを明記いたしましたのも、この一般的な規定で国連憲章等を引用しております関係から、御指摘のような疑問が出ますので、その疑問を明らかにするために、第八条、第九条等のような規定を設けたのでございます。
  102. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと条約局長は、決してそういうような事態は起らないということを、ここで明言できるわけでございますか。
  103. 下田武三

    下田政府委員 この第八条、第九条が厳存いたします限りは、やろうと思つてもできなくなるわけであります。
  104. 上塚司

    上塚委員長 穗積七郎君。
  105. 穗積七郎

    穗積委員 自由党の、与党の委員佐々木君が秘密保護法の問題についてさきに提案されまして、私も重大な関心がありますのでお尋ねしたいのですが、委員会の運営上委員長に協力いたしまして、発言を放棄するわけじやございませんが、第三条審議のときに譲りまして、まず前文について二、三重要な問題についてお尋ねいたしたいと思います。  その前にちよつと福永官房長官にもう一ぺん、吉田さんプライヴエートのことを忠言申し上げておきます。私の推薦申し上げるお医者さんというのは、吉田さんを殺すために差向けるのではないので、実はそのお医者さんは多くの治療のケースを持つているわけで、ここにおられる富田さんもよく御承知で信頼しておられる方なのです。一例を申しますと、かつて戦争中に代代木で正月の観兵式がございましたときに、あなたも御承知の植田という大将が総司令官に任命されておつたのですが、その数日前から神経痛を起して馬にも乗れない、指揮刀も抜けないという七転八倒の苦しみをされたのを、その前の日になつて立ちどころになおして、あくる日はりつぱに馬に乗つて指揮刀を抜いて、やあやあというわけで観兵式をやつた。それらはほんの一例でございまして、ほかに枚挙にいとまありません。きよう電話をかけてあした行つていただけば、あさつてはここへ出て来ていただけるのでございまして、わけはないのですから、これはぜひ――あなたは若気の至りで、西洋の医者しか医者でないように思つていられると、とんでもないことでございますから、ぜひひとつお伝え願いたい。証言は富田さんにしていただきますから念のために申し上げておきます。あなた一存でおとめにならぬで、ぜひ大磯のおやじさんにお伝えが願いたい。  まず字句の解釈につきましては、条約局長関係局長にお尋ねいたしますが、この前文が国の方針の根本問題にかかつておりますので、そのことにつきましては内閣を代表している官房長官にお尋ねいたします。実は私の方の細迫委員が先ほど重大な問題について発言をされて、御答弁を伺つておりますとどうも納得が行きませんので、足を伸ばして続いてお尋ねいたします。あなたが細迫委員の発言中においでになつたかどうか、多分おられなかつたのじやないかと思いますが、簡潔に申しますと、こういう趣旨なのです。この協定は国連憲章の体制内においてやるという大原則がうたわれている。ところがその国連憲章の大方針というものは、米ソの両陣営、すべての世界の国国を含む友愛信義の憲章でございまして、一方的なアメリカ陣営だけの安全と利益のための憲章ではないことは明瞭である。ところがこの協定文を見ますと、至るところに、アメリカを中心とするいわゆる、自由主義国だけの安全と利益を主張しておるだけならまだよろしゆうございますが、中共、ソ連を中心といたします国々というものを明らかに仮想敵国として考えております。たとえば第八条においてしかり、付属書Dにおいてしかりでございまして、しかもこれらを規定いたしまして、戦争の脅威を持つ国だという断定をして、明らかにこれを仮想敵国として考えておる。そうなりますと、そういう考え方を貫いておるこの協定から見ますならば、国連憲章の大方針というものは実はもうすでに無視されている。またそういうことが、その後の一九五〇年以後の情勢変化によるものだということに籍口されますならば、そういう情勢であるからこそ、国連憲章の大方針というものを維持するように、実現するように、一層の努力をしなければならないにかかわらず、それに籍口いたしまして、下田条約局長言葉をかりるならば、まことに望むべきではない不幸なる情勢を、肯定するだけでなしに、むしろそれを利用いたしまして、二つの世界の対立を激化するような政策がとられつつあるのであります。そこで、文章の上では国連憲章の体制内といつておるのでございますが、それに続きますあとの各条並びにその政治的なねらいというものは、国連の対立を、肯定するだけでなしに激化する、そういう精神に立つておるのがこの協定でございますから、国連憲章の体制内という大前提の金看板を掲げながら、実はそれをくずす協定をここで強要しておるわけなのです。これは私ははなはだしき矛盾だと思うのであります。そこで、そういうことでありますならば、一体われわれは国連憲章をあくまで貫くという精神によつて臨むべきであるか、あるいは遺憾ながらそれがくずれ出した朝鮮戦争以後の事態を肯定して、その線に沿つてこれからの国際条約または外交政策をとろうとするのか、政府の基本方針を承りたいのでございます。
  106. 福永健司

    ○福永政府委員 非常に大きな問題でございますが、むしろこれは面接担当いたします大臣から答えてもらうのがいいかとも思うのでございますが、もとより御指摘のごとく、国連憲章の精神というものに十分沿つた方向へ持つて行かせたいということは日本も異議のないところでございますが、国際情勢の現実というものの中には、いろいろな事態もあり、従つて理想と現実の調和というところに苦心の存するところもあるという次第でございまして、さようなことが錯綜いたしておりますところに、ただいまのような御議論も出ると思うのでございます。現実の事態をどう見、それによつてどう批判するかということは、それぞれの立場で違うわけでございます。ただいま穂積さんは、明らかに矛盾しているというように御表現になるのでございますが、若干そう見えるところもあろうかと思いますが、この矛盾と見えるようなところを調和して行こうというところに、日本の非常に芳しい立場もあり、これからの実際の政治はそういうところに重点が幾つもあるのではなかろうか、こう考えます。
  107. 穗積七郎

    穗積委員 ところが、特に一昨年の秋以後でございますか、そのアメリカ並びに日本政府が、常に、戦争の危険があると国民に恐怖を持たしめて虚偽の宣伝をし、そうして再軍備をのませようとするようなことをされて来ました。そうしてその一昨年の秋までの情勢の中には当面なるほどそういうような情勢もなきにしもあらずでございました。しかし、今言われるのは、国連憲章の理想と現実とを調和する間に立つて、われわれは苦慮しているという話でございましたが、その現実は、実は、朝鮮戦争が勃発いたしましてから一昨年の秋までのことを現実として言つておられるのでありまして、一昨年の秋以後の情勢というものは、われわれだけが言つているのではありません。もうすでに吉田総理みずからもこの国会において発言をしておりますし、また外務大臣もそのことを指摘せられておるが、特に顕著に現われました問題はバーミユーダ会談、続いて今年の正月のベルリンの四箇国外相会談、それらに関連いたしまして四月に予定されているジユネーヴ会議、これらは、特にわれわれが住んでおりますアジア地域における冷戦を話合いのうちに、しかも中共のみならずヴエトナム関係諸国も加えて話合いのうちにこれを解決しようとしている空気になつている。そうしてそのことを通じてわれわれが予見しますものは、少くとも、アジアの冷戦というものが再び拡大するということは考えられません。一ぺんに解決しないまでも解決の方向に向うということと、さらに大きなことは、世界が軍縮の方向に向いつつあるということ。御承知の通り、ベルリン会議におきましては、アジアの問題を話合いをしようという点と、もう一つは、軍縮問題を国連会議にかけようということだけは決定いたしております。しかもその予定されますジユネーヴ会談を通じまして、中北の承認はもう時間の問題になつて来たとわれわれは想定する。最近の緊張緩和の国際情勢に対しましては、吉田総理も外務大臣もこれを認めておられるところでございます。そういう情勢をまつたく没却されまして、そうして一昨年の秋までのほんの短かいイレギユラーなアブノーマルな状態というものを、あくまでもこれは動かすべからざる国際情勢の現実なんだ、戦争の危機なんだということを呼号されまして、こういう誤つた国連憲章の利用の仕方を具体的な政策とし、この中へ織り込んで行くということになりますと、今あなたがおつしやる理想と現実ということに対しては――政府みずからも一昨年秋以後の国際情勢の緊張緩和ということを認めておられる、その間に立つて考えるならば、日本こそ国連憲章の理想へ向つてやる義務があるし、またその可能性が特にアジアにおいては十分あると思うのであります。そういう認識に、私が立つのではなく、吉田内閣自身が立つておられるにかかわらず、この説明によるというと、日本の内閣の判断ではなくて、アメリカの軍部の判断に従つてここでこういうことを説明されるということだが、われわれははなはだ心外に思うのでございます。われわれの一方的な考え方が戦争緩和の可能性があるという情勢判断ではないのでございまして、政府みずからそういう判断をしておられる。その情勢と、この国連憲章の理想との間に立つて一体これは矛盾するものだと思うのでありますが、その点について明確なお答えをいただきたいのでございます。
  108. 福永健司

    ○福永政府委員 現状分析、事実の認識等は、どの瞬間をとらえるかによつて、必ずしも同じ判断のみができないと思うのでございますが、少くとも、ただいま御指摘のような点につきましては、長い目で、一貫した洞察のもとに誤りなきことを期して行かなければならないと存ずるわけでございます。さような事態からいたしまして、もとよりこれは見方はいろいろございますが、冷戦は続いているとも見られましようし、侵略の脅威は完全に去つたと言い切ることもなかなかできないだろうと思うわけでございます。ヨーロツパに比較いたしまして、アジアの自由主義諸国の防衛体制がまだ弱いという見方もあろうかと思います。これは見方によつていろいろ違うわけでございます。こういうような点も考慮して、平和を維持する方向へ持つて行くための努力ということが、日本も必要ではなかろうかと存ずる次第でございます。
  109. 穗積七郎

    穗積委員 どうも納得の行く御説明でないので、先に結論を出しておられて、それに従つてつて行こうとしておられるので、これ以上議論いたしましても、むだだと思いますが、私は客観的に申しまして、政府の最近の国際情勢の判断とこの政策との間には、現実の情勢から見ましても明らかに矛盾するものがあるということを指摘しておきたいと思います。  そこでこまかい問題についてちよつと局長に念のためにお尋ねいたします。個別的及び集団的自衛権の問題でございますが、これはあなたもお聞きの通り、公聴会におきましても、安井国際法の教授は、特別の軍事的な協定なくしては、集団的自衛権の自発的な発動はできないという解釈をされておる。それから大平教授はそれはできるという解釈をされております。御承知の通り国際法学界におきましても、東大の横田教授あたりもこの集団的自衛権というものは固有の権利であつて、特別の軍事的とりきめを必要としない権利行使だというような解釈をしておられるのであります。従つてそうなりますと、先ほど戸叶委員も指摘され、その他の委員も指摘されたように、集団的自衛権というものはアメリカは実は交渉の初めから常に強調している点でございまして、これは一方においては戸叶委員の言うように、アジアの軍事同盟の中に引き込んで行くきつかけにもなる。それどころか解釈のしようによりましては、実はこのままで、憲法さえ適当にいじくつてしまえば、国内的に処理すれば、国際的には少くとも日本は集団的自衛権行使の権利が現にあるのだという解釈で、実は第一、派兵なり、戦争参加の方に持つて行かれる危険すらあると思う。そこで念のために学界にありますこの二つの意見に対して、政府は一体どういう考えを持つておられるか。第二に、この政府自身の態度をこの際もう一ぺん明確にしておいていただきたいと思うのでございます。
  110. 下田武三

    下田政府委員 集団的自衛の、つまり完全な体制と申しますことは、相互援助条約とか、あるいは同盟条約にまで発展しないと、完全な自衛体制ではないわけでありますが、そういうことは日本憲法のもとにできないことは、これはきわめて明白でございます。従いまして日米安保条約のような、米国は積極的な軍事的義務を負うが、日本はきわめて消極的な軍事的義務しか負わないというような、かたわの条約をも集団安全保障体制の一種であるというように引きくるめて申しますならば、これは日本も集団的安全保障として参加し得ると言えるでありましよう。しかし従来の国際通念と申しますか、国際法上の常識上考えておりますような意味の集団自衛体制には、現在の日本というものは入ることは不可能である、そういうように考えております。
  111. 穗積七郎

    穗積委員 その点は速記録に残りましたし、政府の見解として明確にしていただいて感謝いたします。当然そうあるべきだと思いますが、それに関連してまだお尋ねしたいことがありますが、それは第八条の審議のときにお尋ねいたしたいと思いますので、委員長の御希望に従つて私は次に進みます。  そこでもう一点お尋ねいたしたいのは、この協定の大目的自衛権の手段の強化にある、自衛権の行使の権利義務規定したものでなくして、少くとも自衛権の手段を強化するための援助協定である、こういうようにおつしやつておられるわけです。ところがこれは実は再々申しますように、日本国憲法は軍隊を放棄し、交戦権を放棄したということは、これは潜在的な自衛権というものは否定はしていないが、それを行使する手段方法をみずから放棄した、こう解釈するのが法解釈の通念だと私は思います。そうなりますと、ここでもすでに軍備という言葉を使つてもおりますし、それから防御力しかもそれは防衛武装能力というふうな解釈になつて来ておつて、ミリタリイまたはアームという言葉が盛んにあつちこつちで濫発されるようになつて来ておりまして、それをも内容とする防衛、事衛の手段ということになりますと、明らかにこれはその規模の大小いかんにかかわらず、今度自衛隊は対外戦争に応ずるということになりますならば、これは明らかに憲法第九条の放棄いたしております自衛の手段、その手段の内容に抵触するものであると私は考えるのですが、その間の防衛の手段というものは一体どういう内容のものでございますか。第九条との関連において、もう一ぺん明確にしておいていただきたいのでございます。
  112. 下田武三

    下田政府委員 穂積さんは規模の大小にかかわらずとおつしやるのでありますが、実はその点が問題でございまして、政府当局に従来の御説明でもたびたび申し上げておりますように、いかに防衛手段であつても戦力になるような規模の手段は、「戦力は、これを保持しない。」という憲法規定に従いまして持つことができない、従つて近代戦争を有効適切に遂行し得るような大きな規模の手段は、これはたといこの協定に基きまして援助を受けて行きましても、そのような段階になることは憲法上許されないという解釈でございます。
  113. 穗積七郎

    穗積委員 その点は見解が私は違いまして、それは第九条の審議のときに重ねて憲法そのものについては御意見を承りたいと思つておりますが、もう一点関連してお尋ねしておきたいのは、あなたの言われる自衛権を強化する手段の中には、武装されたる部隊を含んでおられるわけですね。
  114. 下田武三

    下田政府委員 むろん部隊を構成する人員、装備を含んでおるわけでありますが、ただこの協定関係におきましては、人員のことは直接出て参りませんで、装備が主として取上げられるわけでございます。
  115. 穗積七郎

    穗積委員 それでは第九条、これは第八条と関連いたしますから、これから質疑をいたしますための必要な局長のお考えの概念だけ伺うことにきようはとどめておきます。  続いてお尋ねしたいのは、先に土屋欧米局長にお尋ねいたしますが、戸叶委員質問と同じ題目ですが、少し角度をかえてもう一ぺんお尋ねしたいのは、パラグラフ第四のところに「経済の安定」云々と書いてございますが、これは政府MSA協定の交渉にあたつて最初から主張しておるのは先決条件、経済自立は自衛の先決条件であるという言葉を使つておるのに、アメリカは初めからそれを繰返しておりません。先決条件という言葉を実に意識的にあらゆる機会に――八月二十四日以降におきましてあらゆる機会に先決条件という言葉は常に抜かしております。にもかかわらず、さきにおつしやつたような御説明でございますが、これは実はこうなりますと、文章の問題ではなくて、あとのアメリカの態度並びに今後の成行きが問題でございます。そうなりますと、どういうわけでそういうことが認められなかつたかということ、すなわちアメリカの腹はどこにあるかということが問題でございます。すなわちこれは昨年の夏からの予備交渉のときに、先決条件という言葉を抜いておつただけでなしに、特に昨年の秋小笠原大蔵大臣が経済援助を求めながら、日本の経済の貧乏なことを説明に行つたときに、援助に対してはこれを与えないと言つた、その上にダレスが日本人はもつと貧乏に耐えて軍隊をつくらなければいかぬという実に重大な発言をいたしております。従つてそれとこれとは関連しておるわけなのです。そういうアメリカ考え方で行きますならば、先決条件という言葉を抜いて、経済の安定という言葉だけに切りかえられておるという、いわば非常に軟化されているというか、肩すかしを食つているということは重大なことでありまして、単なる字句の解釈、用語の問題ではございません。こういうことによつて、われわれは軍備の強化の内容と規模につきまして、経済の自立というところで抵抗線を引こうとしましても、これはできない、そういう見通しになりますが、それが今後そういうことにどんどん突破口を築かれて入つて来られることに対して、政府は一体どういう責任を感じておられるか、どういう対策をお考えになつておられるか。そのことを彼とわれとの今までの交渉の経過から、特にアメリカの腹の中を推測しながら、この際先ほどよりもつとはつきりしたお見通しなり、責任のある御方針を伺つておきたいのであります。
  116. 土屋隼

    ○土屋政府委員 わが国といたしまして、経済の優先もしくは経済を先決要件とすることを主張するのは当然だつたというお話で、それを私どもも初めからしまいまで主張して来たわけであります。ただそうすることをアメリカ承認させることによつて、この援助が経済的な援助に切りかわるから主張するという意味ではなくして、日本の経済に関するアメリカ日本との考え方の違いに多少の原因があつたと思います。つまりわれわれからいいますと、現在防衛力の増強あるいは国力の増強と申しましても、今おつしやつたように、経済の安定あるいは経済の自立を先決要件にするということを非常な急務と感じまして、それが今のところ全きを得ていない、従つてアメリカに全きを得ていない点について十分の認識を持つてもらつて防衛力増強はあとにして、さしあたり経済の援助をしてほしいというのが、本来から申しますと、われわれのものの考え方なのであります。ところがアメリカの方は、この経済の安定を先決といたしまして、日本に経済的の援助を与えるという段階が、遺憾ながらアメリカの対外援助の方策からもはや時期を過ぎておる、かつ国民所得であるとか、あるいは予算面だとか、その他いろいろの日本の経済状態を見て、必ずしも日本の言うような経済自立ということを先決にして援助与えるという段階は、もう過ぎているのじやないかというのがアメリカ考え方でありまして、この点については遺憾ながらアメリカと必ずしも意見の一致を見なかつたわけであります。ただこういう字を挿入することによりまして、われわれは何を庶幾したかと申しますと、経済の安定ということは一体だれが決定するのか、これは当然日本であります。日本が経済の安定を得ているか得ていないかということを決定する最後的な判定者だと思います。あとにあります経済の一般的な条件及び能力の範囲というのは、アメリカにはアメリカの意見がありましよう。しかしながら実際上自国の経済の一般的な条件が許すか能力が許すかという最後的決定は日本にあると思います。そういう観点から見まして、私はこの言葉をここに入れることによつて、わが経済の安定なり経済能力というものを十分に考えて、今後防衛力の増強ということを進めて行く日本の趣旨を十分にここに立ててあり、アメリカ側もこれに基いて十分日本の意のあるところを認めておると思いますので、今後この問題につきまして、私は、日本の主張が弱かつた、あるいはアメリカの主張が非常に強い、だからこれによつて日本防衛力の増強がしいられるとか、あるいは義務づけられるということにはなつて来ないと思います。
  117. 上塚司

    上塚委員長 穂積君にちよつと申し上げますが、官房長官に対する質疑から先にやつていただきたい。  なおあなたにはもうすでに二十七分以上を与えておりますから、あとの質問者の都合もありますので、できるだけまとめて、あまり説明を長くせずに簡略に質問してください。
  118. 穗積七郎

    穗積委員 委員長にちよつと申し上げておきますが、あなたは質疑応答の内容を聞いておられますか。
  119. 上塚司

    上塚委員長 聞いております。
  120. 穗積七郎

    穗積委員 聞いておればそんなむだな言葉は差控えていただきたい、あなたは時計ばかりを見ておるじやないか、議論の内容を知らないで、やつは何分使つたかということを考えて時計の針ばかり見ておる。議論の内容を聞いておらぬから、この重大な審議をおろそかにして打切ろうという悪いりようけんを起すじやないかと思うので、ちよつと御注意を申し上げておきたいと思うのです。  事のついででございますので、福永官房長官に、実はこの前文と関連いたしませんが、緊急を要することですからちよつと質問させていただきたい。それはもうすでにお聞き及びだと思いますが、代々木練兵場のすみのところへ持つてつて、ワシントンハイツというのですか、あそこへアメリカ車の独身兵舎をつくつて何千名かの独身者を入れようとしているので、地元の人たちがあそこは学校を建てるために必要だ、第二の附随的な理由として、風教上の問題、神域に近いということで反対しておつた。実はハンロンという少将ですか、これに地元の方がお会いになつたら、われわれはあそこを固執しておるのでなくて、日本政府が与えてくれるところならどこでもよろしい、特に義務教育のためにどうしてもあそこへ中学校、小学校を建てなければならぬというなら、それを無視してわれわれがあそこへ割込もうという考えは毛頭ないので、これに対してはどうぞ政府自身によく聞いてもらつて政府がかえていいというならわれわれはどこへでも行く、固執はしないという御答弁をいただいたようであります。そこで伊関国際協力局長にその会見の後にお尋ねいたしましたら、アメリカはそう言つてつても、実はもうおれの手を離れて特別調達庁に行つておるから特別調達庁へ行けという。特別調達庁に三月十六日に行つてお話をいたしますと、どういうことを福島長官が言われたかというと、どうしてもやらなければならぬという確定的な理由はほとんどないのであります。ここにその問答の概要をしるしたものがございますが、民有地を買うのが困難だというだけが理由になつておるようでありまして、もしかえ地があるならばいい。そこで地元の人たちはかえ地がありさえすれば移つてもらえるのなら、ひとつ地元の者がかえ地を探すことに協力しようということを言つておるわけであります。もし政府が民主的に政策を実行しようとされるならば、こういう態勢に来ておりますので、この民意を無視してあそこへ割込まれるというのは、はなはだよろしくないと思うのでございますが、これに対しては最後的には内閣できめていただかなければならぬと思いますので、特にお忙しいところを足をとめまして恐縮でしたが、お尋ねしたいのであります。
  121. 福永健司

    ○福永政府委員 お尋ねの点は直接私が所管をいたしてはおりませんので、きわめて詳細には申し上げがたいところでございますが、大体聞き及んでおりますところを申し上げますと、御承知のように今度いろいろの施設を相当まとめて一方において返還しようというような話もあり、また一方において今御指摘の場所を独身兵舎にという話もあるわけでございますが、その点につきましてはいろいろ文教上の見地その他からいたしまして、地元等にも意見が起つておるわけでございます。これにつきましてはもとより政府も関心を払つておるわけでございますが、同時にほかへということになりますと、また新たなる施設をつくるなどということにつきましては、相当費用もかかる問題でございます。そこででき得るだけ国費も節約しなければならないというような点もございます。そういつた点を総合的によく判断いたしまして、地元の声につきましても、よく耳を傾けまして、さらに一層研究をいたしたいと存じております。今穂積さんの御指摘のようなことにつきましては、一層検討し、さらにやつて参りたい、こう思つております。
  122. 穗積七郎

    穗積委員 ありがとうございました。理解のある御答弁でございましたが、それでは至急地元の方とも一ぺん御懇談をいただきたいのであります。  もう一点だけこれは緊急なことですから、土屋欧米局長にお尋ねしたいのですが、実は四月四日にコペンハーゲンで国際農村青年会議準備会が行われるので、日本の青年が三人ばかりぜひ渡航したいというのでお願いしておるようであります。もう一つは世界民主青年連盟のデンマーク支部から、日本青年に対しまして招聘があつて、二名ばかりの日本青年が渡航したいというような希望である。特にデンマークの方につきましては在日公使館からギヤランテイも来ておるように承つております。これの渡航についてなかなか簡単には旅券がいただけないようでありますが、どういうわけで旅券をおろしていただけないのか、非常に期日が迫つておりますので、この時間をかりまして恐縮ですが、お尋ねをし、お願いするわけであります。
  123. 土屋隼

    ○土屋政府委員 ただいまの渡航の問題は、私もこまかくは知つておりませんが、ギヤランテイ・レターが来ておりますと言われたところに、少し事実と違うところがありまして、ただ電報で来ていいということである。それからサスの方で飛行機の片道の払込みがあつたということでありますから、渡航課といたしましては、行きはよいよい帰りはこわいでは困りますから、帰りも保証してもらい、向うに滞在中の滞在費その他も保証してもらうということが必用でございますので、この書類が来ますと出すというので、その書類を持つておりますのが現在の情勢であります。ただ一般外貨を買います必用がありましたかどうか、これは知りませんが、もしありとすれば今一般外貨は非常に苦しい関係上、ほかとのつり合いで準備その他で、それだけの数が行つていいかどうかということは、渡航審議会で問題になると思いますが、ギヤランテイ・レターの方が確実だといたしますれば、われわれの方では内容に確信を持つ限り旅券をおろすことを断ることはなかろうと思います。
  124. 福田昌子

    福田(昌)委員 一点だけお伺いしたいのです。ビキニ環礁の例の被爆漁船第五福龍丸の問題ですが、アメリカ側から譲渡の申入れがあつて政府が交渉にあたつておられるということを新聞で見たのでございますが、その後の交渉、また外務省はどういう御返答をなさつたか伺いたいと思います。
  125. 土屋隼

    ○土屋政府委員 アメリカから譲渡してくれという話で、その後のことはどうなつておるかという御質問には、ちよつと御説明を加える要があると思いますが、アメリカから譲渡してくれという交渉を今までして来たわけではないのであります。ちよつとこまかくなりますが、事の起りは、あそこに船が入つて来て、ああいう状態になりました。ところが物見高いものですから、全国から毎日学者だけでも百人ぐらいの者があの船を見に来るという現在の情勢であります。ところが放射能を持つております船にやたらに人を乗せるということが、はたして危険であるかないか、これも地元としては非常に心配しておるところでありますし、また船は多少水が中に漏れて来るのですが、その水をかい出して、さて大海に捨ててよいものかどうかもはつきりしない。こんな事情でありますので、地元では非常に困りまして、こういうやつかいなものを地元に置くのは困るので、どこかに持つてつてくれないかという話がわれわれの方にありました。それでこの問題につきましては、アメリカ側も事情を知つておるだろうと思いましたから、アメリカ側に一体こういう船をどうしたらよいだろうと問いましたところが、アメリカの方から、アメリカ海軍には実はその問題について多少専門的に知つておる人があるし、設備もあるから、横須賀に持つて来れば清掃してあげてお返しいたしましよう、こういう申出がありました。われわれ宙に考えましてけつこうな申出だと孝えましたので、現地に伝えましたところが、現地では必ずしもその話には応ぜられないような機運も出て来たわけであります。その理由は日本に唯一のいわば貴重な材料であるので、この研究の材料を清掃してしまつてわからなくなることは、はなはだおもしろくない。あのままに置いて、今後長年にわたつてそれがどういう反応を示すか、どういう効果を及ぼしたかという点も研究したい。こういう熱心な学者その他の向きもあつたわけであります。それで地元では、一方これを非常に危険視する人たちと、それから資料として貴重であるからとどめておきたいという人たちと、そこに持つて来てアメリカ側としては場合によつては自分の方で引受けてきれいにしてお返しいたしましようという、三つの話があつて、今のところどうもはつきりきまつていないというのが現在の情勢であります。外務省といたしましては、いずれにいたしましても、他に危害が及ばないような方法と、将来研究の材料になるという点を主眼とし、特にアメリカにそういう施設があるならば、何らかの方法によつてこれを清掃してもらうことも必要ではないか、もしあの船が全然使えないということになりますと、これは当然賠償、補償の問題も起つて来るわけであります。そういう点を考えまして、現在はこういう三つの関係者の意向をくみまして、現地の人たちが考えるように、外務省はこれについては一応口をきいて、現地の考えのまとまるのを待つておるというのが現在の情勢であります。
  126. 福田昌子

    福田(昌)委員 時間がありませんで、御迷惑かと存じますが、もう一点だけ承らしていただきたいと思います。  日米合同でこの被爆漁民に対する治療上の問題の話合いをし、そしてまた治療をするというようなことも伺いましたが、その日米合同の措置はどういうことになつておりますか。  もう一つアメリカの第五福龍丸を消毒して、また日本に返してあげようというような交渉を、外務省が心配してなすつたという点においては了といたすのございますが、私どもが多少遺憾に存じますことは、放射能を持つておる船がこういうところにあつて、はなはだ困つておるという問題であれば、これはもう日本のそういう学者なり、あるいはまた他の部署に御相談なされば、日本の国内においてもできたことであつたろうと思うのであります。それをいきなり外務省からアメリカ側に御折衝なすつたという点におきまして、その御努力はわかりますが、日本の国内においてもう少し処置すべきではなかつたかと思います。私どもは原爆を見舞われました世界最初国民といたしまして、御承知のように広島にABCCの研究所ができましたが、あの研究所におきます貴重なデータというものは大部分アメリカに握られておつたのでございます。私ども学問の分野にそういつた国境というものはあり得ないと思います。従いまして何もアメリカが広島に原爆を落したから、けしからぬということをとがめておるのではないのであります。そういうことを抜きにいたしましても、医学上の見地から研究したもの、特に広島で研究したものというものは、日本の学界でも堂々と発表させ、堂々と進んだ研究がなされるように、自由な天地を学問の分野で広げなければならぬと思います。広島のABCCという今までの形から見まして、学問上からも貴重な第五福龍丸は、学問的な見地から日本の学界においてこれを研究の資料にするという形に、外務省が御配慮いただくのが当然だと思うのであります。従いまして外務省当局が日本のそれぞれの分野の方と御相談していただきますれば、これを消毒するにいたしましても、放射能の消毒くらい、日本の現実の放射能学界の能力において十分にできると思うのです。従いましてそういう学問的な見地から、この第五福龍丸の措置をおとりはからい願いたいと思います。これは日本国内において十分協議して処分していただきたい問題であるわけであります。  第二番目は要望になりましたが、最初の日米合同の措置についての現段階における状況を御報告いただきたいと思います。
  127. 土屋隼

    ○土屋政府委員 この日米合同の治療の問題につきましては、ABCCのモートン博士が東京に出て来まして日本側と話をいたしましたが、モートン博士が立ち入つてこういう治療に当ることについては、必ずしも日本の学者側あるいは医師側において、好意を示す向きばかりでもなかつたいきさつもございましたので、急には日米合同の治療というところに進まなかつたわけであります。モートン博士は、福田さんもよく御存じだと思うのですが、医者というよりは病理学の御専門の方で、治療の方についてはもともと専門家ではあられなかつたわけであります。いずれにいたしましても、そういう出足が遅れました関係上、私どもも早く専門家が来てほしいという要望をアメリカにいたしておりましたが、たしか一昨日の夜でありましたか、原子力委員会の保健局長をしておりますドクター・アイゼンバツドが着きまして、日本側の各方面と連絡をしたいという意向を外務省に言つて参りましたので、われわれはあつせんの労をとりまして、本日外務省におきまして、関係者医師あるいは文部省、厚生省の人たちも入れまして、今後の治療の方法、対策等につきまして協議をいたしております。これは私どもの聞き及びます限り、こういう治療についてはアメリカにおける最高の権威のように承知しておりますので、この人は日本側に多大の支持を片えるものだろうと思いますので、今後を期待しているわけであります。  それから先ほどのお話で、たとえば船を片づけるとかその他の問題について、アメリカに話す前に日本側で当然やるべきだという御意見、これは福田さんのおつしやるところは、私決して反対するわけではございません。ただ福田さんの御質問が、外務省は何をしているかということですから、こういうことをいたしましたということを申し上げたので、本件については決して外務省が主導ではございません。厚生省、海上保安庁、県の警察、こういうものが中心になりましていたしておるのであります。これがもてあましまして、何とかならないか、アメリカ側はどう考えているか聞いてくれというので、外務省が使い走りしたというのが現状でありまして、外務省日本側の調査なり何なりを考えずして、対アメリカと協同で行こうという考えを持つておるというふうにお考えいただくことは、少し事情からはずれると思います。日本側で安全な措置ができればそれに越したことはありません。また今後の資料として十分活用すべきであるという考えを持つておるのは当然だと思います。
  128. 福田昌子

    福田(昌)委員 外務省は私が申し上げたことを少し誤解なすつたような感じもいたしますが、私は外務省かとられた措置をなじつたわけでは決してないのでございます。ただ学問的な見地から、第五福龍丸というものは日本の学界においても研究をすれば貴重な資料になる、そういう意味日本のいろいろな――厚生当局に御相談いただくのもけつこうだし、放射能学会の方々に御相談いただくのもけつこうだし、その処置の予算的な部面に対しては、それぞれの部門と御折衝いただくのもけつこうです。外務当局は処分する場合においても十分御配慮いただきたいという希望があつて申し上げたわけでございます。従つて、この船の処置は、地元の意向と日本の学界の方々の意向を聞いてきめていただきたいわけです。
  129. 上塚司

    上塚委員長 これにて相互防衛援助協定前文についての質疑を終ります。  午後二時半より再開することといたしまして、暫時休憩いたします。    午後一時二十四分休憩      ――――◇―――――     午後三時九分開議
  130. 上塚司

    上塚委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  これより第一条について審議いたします。政府側より説明を求めます。下田条約局長
  131. 下田武三

    下田政府委員 第一条を簡単に御説明申し上げます。  第一条は四項目ございまして、第一項が基本的原則で、これによつて援助を供与するということを定めておるわけでおりますが、特に御説明申し上げるべき点は、ここにもまた「経済の安定が国際の平和及び安全保障に欠くことができないという原則と矛盾しない限り、」というまくら言葉で経済の安定を無視してやるのじやないということを明らかにした点が、特に注目すべき点だと思うのでございます。何が供与されるかという点につきましては、「細目取極に従つて、」と書いてありまして、これその都度両国で相談してきめるわけであります。それから第二の文章で「国際連合憲章と矛盾するものであつてはならない。」という点を入れました点は、先ほど申し上げた通りでございます。第三は米国政府が供与する援助は、相互防御援助法、相互安全保障法あるいはそれらの法律の改正法等に従つて供与するものとすると、当然のことを書いておるだけであります。  第二項が、援助の効果的使用及び他目的に使用することの禁止に関する規定でございます。  第三項は返還に関する規定でありまして、返還は両国政府で「合意する条件及び手続に従い、」行われるいうことになつております。なおお手元に返還に関する取極というものをお配りしてございますが、これはここにいう「合意する条件及び手続に従い、」というものの一部でございまして、大体おもな点は含まれておりますが、今後とも合意することがあり得るかもしれないと存じております。  第四項目は、譲渡禁止に関する条項でございまして、相手国「政府事前の同意を得ないで、自国政府の職員若しくは委託を受けた者以外の者又は他の政府に移転しない」ということを相互に約束しておる次第でございます。
  132. 上塚司

    上塚委員長 第一条に対する御質疑はございませんか。
  133. 並木芳雄

    並木委員 第四項に「装備、資材又は役務の所有権又は占有権を、」と書いてありますが、役務に対して「所有権又は占有権」というのはおかしいのであります。役務に対しては使用権とか別の言葉でないとおかしいようです。「所有権又は占有権」というのは物件だと思いますが、いかがでしようか。
  134. 下田武三

    下田政府委員 なるほど御指摘の通り多少奇妙の感はいたしますが、これは装備の所有権または占有権と一々わけて書きますと長くなりますので、一まとめに「装備、資材又は役務の所有権又は占有権」と書いてあります。この役務、サービスには非常に広い意味が含まれておりますので、サービスではございましても、たとえば特許権に至らない技術的の考案でございますとか、くふうでありますとか、そういう点になりますと、やはり所有権の問題を生ずるのではないかということから、一まとめにいたしましてこういう言葉を使つておる次第でございます。
  135. 並木芳雄

    並木委員 それは少しおかしいじやないでしようか、そういうことになると第四条に「工業所有権及び技術上の知識の交換の方法及び条件を規定する適当な取極」というようなことがあつて、そこまで含ませるのはこの役務としてはおかしいのじやないかと思います。言葉が足りないならば足りないと言つていただけば、これは大して深くとがめるべきものでもないと思う。おかしいならおかしいというふうに言つてもらつた方がいいのじやないでしようか。
  136. 下田武三

    下田政府委員 MSA法によりますと、「役務とは、この法律目的を実効的にするために必要とするすべての役務、修理、人員の訓練または技術的もしくは他の援助もしくは情報を含むものとする。」と非常に広いわけでありまして、なるほど工業所有権になつてしまえばほかの条の目的になつてしまいますが、技術的の提携でありますとか情報とかになりますと、やはりタイトルの問題を生じて来るわけであります。
  137. 並木芳雄

    並木委員 その次に「これらの援助を供与する政府事前の同意を得ないで、自国政府の職員若しくは委託を受けた者以外の者又は他の政府に移転しないことを約束する。」とあります。他の政府に移転しないことを約束されておりますけれども、他の政府以外の他の国の国民ならどうかという問題が出て来るのです。他の政府というのは第三国をさすのでしようが、第三国の政府には移転してはいけないというのですけれども、第三国人に対してならば移転してもいいということになりますか。
  138. 下田武三

    下田政府委員 第三国人につきましては、前の方の「自国政府の職員若しくは委託を受た者以外の者」の中に、つまり自国人以外の者、外国人も入るわけであります。
  139. 並木芳雄

    並木委員 よろしゆうございます。
  140. 上塚司

    上塚委員長 ほかに第一条に対する御質疑はございませんか。
  141. 細迫兼光

    細迫委員 ここでもさきに私がお尋ねしましたことの問題が具体化して来ておるのでありますが、例の国連憲章の問題でございまして、しつこいようでありますが、この供与は国連憲章と矛盾するものであつてはならないということになると、この供与の具体的な意味は、何としても国連憲章の目的と矛盾というよりも、むしろ反する具体的な効用をなすものと見なければならないと思うのであります。これは先ほどの局長の御答弁によつて明らかに裏づけられておることだと確信をいたすのであります。そういう解釈になると、この供与は政府の目ざすところからすれば、まつたくナンセンスだということにならざるを得ないのであります。これもやはり、国連憲章と矛盾するものであつてはならないということは、政府の御解釈によれば、自由主義国家の利益と矛盾するものであつてはならないというふうに読みかえるように御解釈になつて立案されたものでございましようか、お尋ねいたしたいと思うのであります。
  142. 下田武三

    下田政府委員 これは前文とは違いまして 国連憲章のどの部分かということはここでは書いていないのでありますが、一般的に申しまして、国連憲章の中の平和の維持及び国際協力の原則に合致するという、漠然たる意味だろうと存じておるのであります。でございますから、侵略目的に使つてはいけないということも含まれておる意味の平和の維持と国際協力いうのが主たる国連憲章のねらいでございますから、広くそういう目的と矛盾しないように行われなければならぬ、そういうように解すべきだと存じております。
  143. 細迫兼光

    細迫委員 世界情勢の変化というようなことによつて、国連憲章の目的等をいろいろに内容をすりかえるような御解釈が先ほどからなされておることを承つて、実は驚いておるのでありますが、内容がかわつたにしましても、とにかくその文字の意味するものというのは、当時の立法したときのあるいは条約締結し、憲章を発布したときの国際情勢そのものの意味づけるそのことによつて確定せられておるものだと思うのであります。それでどうしても現在このMSAによる供与というものは、いわゆる自由諸国家の防衛力の強化、それに対するお互いの寄与というような実質上の意味を持つておることは、これはもう否認すべからざる問題であるのでありまして、そうだとしますれば、いかに一般的とおつしやつても、一般的というのはつまり原則なのでありまして、ソ連をも含めた全世界の国々の平和と友好とを目ざしておるのでありますから、どうしても矛盾すると解釈せざるを得ないのでありまして、これは結局ナンセンスに陥るのではないかと思うのでありますが、私のねらう質問に対しての御回答でなかつたように思いますので、いま一応の御回答を願いたいと思います。
  144. 下田武三

    下田政府委員 これは先ほども申し上げましたように、国連憲章のいかなる部分の規定が、今日おもに問題となつておるかということは、憲章自体の罪ではないのでございまして、一に国際情勢のしからしむるところでございます。また日本が独立を回復するにあたりまして、国際連合が国際情勢によつて発揮する機能が、ある部分に片寄つておるということに際会いたしましたのも、これもまた国連憲章の罪でもたいわけで、一に国際情勢の流れのしからしむるところであります。そうであるといたしますと、ここに無色透明の、国際連合憲章と矛盾するものであつてはならないと書きましても、国際連合そのものがどういうように運用されておるかということは、ここには実は何とも書いてないわけで、ありまして、それが細迫さんの御意見によりますと、国連憲章そのものの根本精神と反しておるとおつしやいますが、私どもの見るところによりますと、これはやはり侵略に対する平和愛好国の防衛ということは、これもまた憲章の重要なる部分であるわけであります。なるほど憲章をつくつたときは、世界諸国がみなよき隣人となつて、平和が保たれるような理想を持つておつたのでありますが、現実はそうではなくて、憲章にいつている平和の脅威に対する対抗手段という面が、遺憾ながら最も多く適用を見るはめに陥つたわけでありまして、その点で、なるほどこの協定も思想的には平和条約、安保条約の流れをくむものでありますから、そういうように運命づけられておるということは、これはいたし方ないと思います。しかしだからといつてこの協定が、国連憲章と矛盾するということは私は考えられないのであります。
  145. 細迫兼光

    細迫委員 この国連憲章をMSA協定の各所に持ち出して来ておる意味は、仰せの通り具体的な適用をうつかり考えずに、国連憲章なるものを人類の一つの理想的な、崇高なものとして考えておつて、それをそのまま政府としてはおそらく不用意に持つて来られたのじやないかと思うのでありまして、これはいろいろ御説明を聞きまして、またこの上押問答しましても決して御答弁は進歩しないと思いますからこの程度でおきますが、私といたしましてはこの供与は想像せられる、夢かもしれませんが、夢見ておられるこの国連憲章とは、どうしても矛盾するものだという結論的な私の考えをかえるわけには参りません。そういう私の考えから私の結論は出したいと思いますが、質問はこれで終ります。
  146. 戸叶里子

    戸叶委員 私、たいへん申訳ないのは、ちよつと遅れて参りましたので、もしかしましたら並木委員の御質問と重なるかもしれませんけれども、お答えがよくわからなかつたものですから、もう一度聞かしていただきたいのですが、一条の初めの方に両締約国以外の第三国に対して援助するものがあるようでございますが、それはどういうものであるかということ、たとえばアメリカから来た装備だけか、それとも援助を与える国の同意さえあれば、どんな資材でも、あるいはまた日本でつくつたものでも第三国にやれるかどうか、まずその点を承りたいと思います。
  147. 下田武三

    下田政府委員 第一条第一項に基きまして援助が参りますあて先は、一つは相手国政府である。もう一つ日米両国政府が各場合に合意する政府、たとえばフイリピンならフイリピンという国に援助をやろうということに日米間で合意いたしましたならば、フイリピンにやるということになるわけであります。
  148. 戸叶里子

    戸叶委員 そのものの内容はどういうようなものなのですか、たとえば日本でつくつたものでもいいわけですか。それともアメリカならアメリカから日本援助されたそのまた古いものとか、そういうふうに限られておりましようか。
  149. 下田武三

    下田政府委員 これは返還とりきめに予想しておりますように、日本で不要となつたものをフイリピンにやる場合もございましようし、また日本で域外発注を受けまして、日本で調達したものを日本からフイリピンにやる、この場合はむろん有償になりますが、やるということもあるわけでございます。
  150. 上塚司

    上塚委員長 ほかに第一条に対する御質疑はありませんか。
  151. 穗積七郎

    穗積委員 基本的なことで大事なことがありますので最初にちよつとお尋ねいたしておきます。このMSA協定の基本に流れますものは、世界を、平和を愛好する国々と、それから世界の平和の維持を脅かす国と二つにわけておるのですが、これは一体何を基準にしていずれの国を平和を愛する国といい、いずれの国を平和を脅かす国と判定されるのか、具体的にお尋ねしておく必要があると思います。
  152. 下田武三

    下田政府委員 この協定の中では、何国が平和を脅威する国だというようなことはどこにも言つておりません。でございますからどこにも当てはまり得るわけなのでありますが、御質問の点はそういうことではなくして、現実にどこの国だということを言えという御質問のように承つたのであります。これは第二次大戦終了後に国連総会または安全保障理事会等で平和維持上の見地から協議の対象になり、あるいは措置をとられる対象なつた国は、くしくもいずれも共産圏の国ばかりでございます。
  153. 穗積七郎

    穗積委員 それではお尋ねいたしますが、この平和を脅かす国と規定いたしましたものは、情勢の変化によりましても永久に平和を脅威する国であるのか、たとえば一例でお尋ねしますが、中共が平和を脅かす国として、侵略国として取扱われておりますが、朝鮮戦争の休戦協定ができまして、その後ジユネーヴ会談でもつて中共を承認するような情勢になり、さらにそれが政治的にも終結したような場合におきましても、平和を脅威する国として取扱われるのかどうか、その点をお尋ねしておきます。
  154. 下田武三

    下田政府委員 これは必ずしも法律問題ではございませんので、お答えできる範囲を逸脱しておるかもしれませんが、この協定ではどこの国が平和の維持を脅かしましても適用になる建前になつております。そこで今の中共の問題でございますが、最近のジユネーヴ会議をやろうということにきまります過程においての列国の考え方は、中共はまだ五大国として主催者側の地位には立てない。それはなぜかというと、自分で北鮮等において侵略行動に出ておきながら、その跡始末をするための会議をやるというところに侵略者が出て来るのはよくない。むしろ招請される方の国というような建前になつてジユネーヴ会議が開催されることにきまつたようでございます。でございますからこの朝鮮問題が解決し、あるいはインドシナ問題が解決したあかつきにおきましては、あるいは中共のような国も侵略者という烙印を取去られる日がないとも限らないと思います。そういたしましたら、中共目当の現実の措置ということも終止し得る日がないとも限らないのであります。また日本側としてはそういう日が来ることを希望する次第であります。
  155. 穗積七郎

    穗積委員 大体局長のお答えは岡崎外務大臣より誠意をもつて、しかも割合公平な御見解であつたのでありますが、不十分な点がありますので、今の問題に関連してもう一ぺんお尋ねいたします。平和を愛好する国と平和を脅かす国との判定は国連会議において決定せられるのかどうか、その点が一点。私が先ほどお尋ねいたしましたのは、中共が今度ジユネーヴ会議に出ます。というのは中共政権が承認されたものとして出るということを私は言つたのではない。その結果として二つのことが予想されます。一つは朝鮮戦争か最終的に終結されるとりきめ、話合いができるかもしれない。もう一つは中共が国連加盟国になる前提として、その政権が承認せられるかもわからない。この二つのことでございます。中共政権が承認され、また国連加盟が承諾されないといたしましても、話合いの結果といたしまして、朝鮮戦争そのものが最終的た終結がなされますならば、中共に対して行われました侵略国としての取扱いは、その瞬間に当然消滅すべきものだと思うのです。そこで私がお尋ねいたしますのは、国連憲章ということを、この協定では常に金看板に使つて、そしてそれさえかぶつており、そしてまた第九条において憲法規定に従うとかぶつてさえおれば、言葉を使つておりさえすれば、常に国連憲章の精神に合致するものであり、国内の憲法の精神に合致するものであるというような、まことに頭隠してしり隠さずの条文になつております。そこではつきりしていただきたいのは、その平和を愛好する国であるか、平和を脅かす国であるかの判定は、一体何を基準にして、だれがきめるのかということなのです。それから侵略国と国連が決定いたしました国を、侵略国でなくなつたということを判定するのは、何を基準にしてだれがきめるかということです。それをこの際はつきりしておいていただきたい。
  156. 下田武三

    下田政府委員 これは朝鮮事変勃発後国連で幾多の決議が出ておりますので、その決議で国連としては侵略者であるということの烙印を押したわけでありますが、将来朝鮮問題が解決いたしますれば、当然国連の決議なるものは効力を中止されますか、あるいはまた新たな別の決議ができるか存じませんが、やはり国連がこの判定を下すのに今日最も適当な機関であると存じております。
  157. 穗積七郎

    穗積委員 委員長にちよつとお諮りいたしますが、第一条についての質問がまだ残つておりますが、岡崎外務大臣が見えたので……。
  158. 上塚司

    上塚委員長 第一条についの質問を続行していただきたい。
  159. 穗積七郎

    穗積委員 それでは続けます。  供与される役務とは具体的に一体どういうものでありますか。
  160. 下田武三

    下田政府委員 役務とは原語はサービスでございまして、先ほどMSA法の条文を読みました通り、技術情報あるいは訓練等も含まれて、非常に幅の広い言葉でございます。
  161. 穗積七郎

    穗積委員 これはすでに具体的に話合いを進められておりますかどうか。
  162. 土屋隼

    ○土屋政府委員 目下具体的に話を進めている最中でございますが、日本側でも新しい兵器の訓練などは受けた方がよいのではないか、その意味でこのサービスを受けられるだろうと思います。
  163. 穗積七郎

    穗積委員 次にお尋ねいたしますが、第三項のところに「有償で供与される装備及び資材を除く」とあります。そうすると有償、無償の区別をむろん想定されておるわけですが、有償のものとは、たとえばどういうものを想定しておられるのか、そしてまたどういう話合いになつておるのか、今後想定されるものも加えてお答えをいただきたい。
  164. 土屋隼

    ○土屋政府委員 これは規定でございまして、第一条は原則をうたつておるのでありますから、有償、無償両方ひつくるめた条文だと御解釈いただきたいわけであります。そこで返還の問題は、お金を出して自分の方で買つてしまつた後に返還というのはおかしいですから、それを除くという意味で入れた以外に、大した意味はありません。つまりお金を出して自分の方に買つたものを、あとから向うが返してくれといつてつて行くのはおかしいので、この返還の規定には入らない、こういうことであります。現実に日本側が話しておりますのでは、有償になるものはございません。ほかの国の例で見ますと、飛行機とか特殊の兵器で、自分の国で買いたいと思つたから、MSAの協定を結んでそれによつて有償で買つたという例が北欧などにはあるようでございますが、わが国はさしあたり具体的にはそういうものを考えておりません。
  165. 穗積七郎

    穗積委員 次にお尋ねいたしますが、供与される装備、資材とは一体どういう性質のものですか、返還の義務があるわけですし、いわば使用権がこちらに供与されるのか、物の所有権が期限付、条件付で、供与されるのか、どういう法律的な性質のものでございますか。
  166. 土屋隼

    ○土屋政府委員 この第一条をごらんいただきますと、「装備、資材、役務その他の援助を、両署名政府の間で行うべき細目取極に従つて、使用に供する」という字があります。この「使用に供する」という中には、令言つたように貸せる場合もあります。金を出して買いとる場合もあります。さらにまた金を出さずにただで贈与される場合もあります。日本の場合は現実に今話を進めていまして、贈与を受けるものであり、従つで、所有権は日本に移るということは間違いないのでありますが、ただかりにこの受けました兵器なり、あるいはその他のものが日本側で不必要になつた場合を想定いたしまして、われわれには不必要になつたけれども、第三国で使うことが可能だということが日米の間で話合いがつき、また日本でもこれ以上役に立たないということがわかりますれば、いたずらにこれを持つている必要もございませんので、両者合意の上で、これを使用する適当な国があり、そういう現実の問題があれば、日本側からそれを返してやる、これは特例として返す場合であります。従つて、そのほかの場合には返還等も要求しておりませんから、返還に関する規定は欠いておるのであります。要するに返還いたしますのは贈与を受けたものに限るということでございます。
  167. 上塚司

    上塚委員長 これにて第一条についての質疑を終ります。  この際加藤勘十君より緊急質問の申出がありますが、これを許すに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  168. 上塚司

    上塚委員長 御異議なしと認めます。加藤勘十君。
  169. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 私は一昨日のこの委員会において、お伺いをいたしましたが、その際は外務大臣がおいでにならぬで、欧米局長から御返事をいただいたのであります。これは大臣からも当然聞かなければならぬことでありますが、それよりもまず第一にお伺いしたいことは、きようの夕刊によりますと、アメリカの上下両院合同原子力委員長コール氏が、われわれ日本人にとつては、ほとんど聞きのがすことのできない重要な発言をされておるのであります。この電文によりますれば、ビキニ水爆実験で被爆した第五福龍丸の補償問題について、次のように語つておる。「現在被爆当時の状況調査が行われているが、この調査は二週間くらいでは終らないだろう、また政府のいかなる機関といえども議会の承認なくして損害補償は行えない、米政府が補償するかどうか、あるいはいつ補償を支払うかを決定するのは議会の権限である、日本人漁船及び漁夫が受けた損害についての報道は誇張されているし、これら日本人が漁業以外の目的(スパイ行動を意味する)で実験区域に来たとも考えられないことはない」。何ということでありましようか。もしこれがこの電文通りコール合同原子力委員長が語つたとしますれば、一体アメリカの議会人といいますか、アメリカ人は日本人を何と心得ておるのか。おそらく私はこの記事を見て憤慨しない日本人は一人もないと思うのです。私どもどうすれば日米両国間の親善を保ち得るか、太平洋の平和を維持するためには、ほんとうに理解ある親善関係が結ばれて、それが増進されて行かなければならぬということを心から念願しておる一人であります。しかしながらこういう言葉アメリカの有力なる指導者によつて述べられるということは、いかに日米親善を心から念願しておる私どもにとりましても、非常に大きな憤りを感じないわけには参りません。この点は、私は日本政府としても確かにこういうことが述べられておるかどうかということを確かめられると同時に、もし事実であつたとするならば、これに対してどういう措置をおとりになるお考えであるか、まずこの点をお伺いしたいと思います。
  170. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 アメリカにおきましては、政府が議会人の言動をコントロールするなんということは、とうていできないことでありまして、そのためにいろいろ政府と違うような意見を議会人が述べていることもしばしばあるのであります。しかしながら、われわれはアメリカ政府――行政府を相手にいたしておりまして、アメリカの国内の調整等は行政府にまかせておるようなわけであります。行政府におきましての態度は、もうすでに御承知だと思いますが、今回のことにつきましては深甚なる考慮を払つておりまして、できるだけのことをいたそうといたしておるようであります。しかしながら、お話のようにこういう種類の発言がもし事実であるとしますれば、日米関係につきましても決していいことではないのでありますから、政府としてはさつそくその実情を調べまして、適当な措置を講じたいと考えております。
  171. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 アメリカにおいては原爆の実験はなされておりますけれども、その爆弾による被害を受けた経験はないのであります。私ども日本人は戦争中にその被害を受けておる、さらに今度は爆弾の実験による被害を受けておる。原子爆弾――これは水素爆弾かもしれませんが、原子爆弾に対する感じ方というものはまつたく違うのであります。もしこういうことが平然とアメリカの議会で指導者によつて述べられておるとしますれば、日本人が原爆に対する鋭敏にして恐怖的な感じを持つておる立場から見ましたならば、どういう言葉をもつて返したらいいのか、それすら私は判断に困るのであります。それほどに私はこの新聞を見まして、私みずからも一つは非常に悲痛な感じを受けました。現在一方においてはアメリカ日本武器まで供給して、そうして太平洋に平和を武力によつて維持しようとしておる。それがためには日本を仲間にしなければならぬという考え方で動いておる。その反面まことに日本人をして憤らざるを得ないような発言が平然としてなされておつて、たといこれは政府当局の言葉でないにしましても、ここの電文にものります通り政府が損害賠償を払おうとしても、どんな種類の損害賠償でも議会の承認がなければ行われない、その議会の、しかも重要なる原子力の上下両院の合同委員会委員長が今のような言明をしておるとしますれば、いかに政府日本と仲よくやつて行こうという考えを持つたにいたしましても、一々議会においてこれが阻害されたならばどうなるか。自分の都合のよいことだけは言いたいことをかつてに言う、相手がどういう感じを持とうが全然それをしんしやくしない。言葉ばかりではない、具体的な行動において損害賠償のことにまで――このときこの人が、まことに遺憾であつた、政府がすみやかに日本政府相談をして、損害賠償なりその他適当な方法を講ずるというならば、議会はあげて政府のこういう方針に協力するであろう、こういうことを述べてごらんなさい、日本人はアメリカにどんな悪い感情を持つている人でも、このアメリカ人の言うことに対しては敬意を表します。もしこの人の言葉がほんとうであるとしますならば、これではまるで強盗に入つておいて、そうして入られるようなすきを与えた人が悪い、これと同じではないですか。よほど強固な決意を持つて外務大臣もアメリカ側に折衝をされないと、それこそ、外務大臣がなめられるばかりで済むならけつこうですが、日本人全体がなめられる。そうなつたならば、ただでさえもアメリカに対して反米的な感情を持つておる者がある、そういうものをして一層刺激することになるし、善良なる親愛関係を結んで行こうとするものにとつても憤りを感ぜしめる。でありますからよほど外務大臣もしつかりして、MSAの交渉に当られるような考え方でなく――MSAは何といつて日本がもらう方だから、もらう方がいいとお考えになる方々は、どうしても頭を一つでもよけい下げられるでしようけれども、この問題はそういう問題でなく、まつたく人道上の問題で、これはほんとうに許すことのできない発言であると私は思いますから、その点は特に外務大臣は力を入れて、ほんとうに冷静にして公平、しかも日本人全体の権威を確保して交渉に当られるようにしていただきたいと思います。
  172. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 MSAとこの交渉と別とおつしやいますが、MSAでもそう別に頭を下げておるわけではありません。しかしお話の趣旨はよくわかりました。
  173. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 さらに次の電報記事は、パストアという上院議員がこの間太平洋諸国を訪問して帰つて、やはり日本人の水爆被害の問題を語つております。そのものによりますと、アメリカの水爆実験による日本人漁夫の放射能被害事件に関する最初の声明は、きわめて誇張されたものであつたと言明しておる。この言明は今申しましたコール米国上下両院合同原子力委員長によつて公表せられたものであるが、パストア議員はさらに、日本人漁夫の傷害は、実際の被害状況以上に深刻に思わせるよう誇張されて発表された、彼らの皮膚に火傷は生じたが、それは決して不治の火傷でないことを知つた、こう述べておるのであります。パストアという人はお医者さんかどうか私はよく知りませんが、日本においてはこの道の権威者である医学者が実際治療に当つてつて、これら被害者の中には生命の危険さえ訴えている者がある状態であります。ほんとうに治療に当つて、医学的な立場から不治でないと断定されるならば何をか言わんやでありますけれども、ただ一まわりずつとまわつて、うわさ話を聞いただけで、そうして日本の発表が誇張して発表されておると言うようなことは、私は日本の医学に対する冒涜であると思います。こんな無謀な言葉アメリカの上院議員によつて発せられておる、これについても外務省としましては、当然こういういたずらに日本人の感情を刺激するようなことは言わぬようにさせ、そしてあくまでも冷静にこういうものは研究をし、また諸般の材料を調査して、実際の被害者の調査に当つてみれば結果はすぐわかることなのであります。そういう結果の出るまでは、しろうとがよけいなことを言うべきでないと思う。われわれもこういう問題についてはきわめて冷静の上にも冷静にかまえて、いやしくも人に不当な恐怖を与えるようなことを言うてはならぬと思つております。従つてどもの党におきましてもいろいろなものを発表したいと思うけれども、それらのものは一々専門学者に聞いて、妥当性があると思われたものしか発表しないというほどに大事をとつております。ここに私どもの同僚の専門家の松前君も来ておりますが、それほど大事をとつておるのであります。それを加害者側に立つ人々がこういう不用意な暴言を吐かれるということは、われわれのこの考え方、冷静にしよう、恐怖心を与えないようにしようという、それをむしろかき立てるようなものなのです。こういうことによつても、私は当然一昨日私がここで質問しましたことに対して、この機会にその荒筋だけを申し上げて大臣のお答えを願いたいと思いますが、ちようどこれに関連するのです。第五福龍丸は、アメリカ側は横須賀に回航して自分たちの管理のもとに、自分たちの放射能の反応を調査研究しようとすることが伝えられた。これに対して、日本の学者は、とうとい研究資材であるから、それをアメリカ側に引渡すことはやめてほしいという申入れが外務省にあつたということを聞いております。われわれもこれは被害者の立場からばかりでなく、ほんとうに世界に研究は公開されることが必要であると思いますが、少くとも日本の学者の管理下に、アメリカなりその他の希望があればその他の国の学者も加わつて、合同研究をするということは妥当であると思います。学問に国境の障壁を設けてしまつてはいけないと思いますけれども、しかしこれをアメリカ側に渡してしまつてアメリカの管理下に調査研究をされるということになれば、現在原爆の性能がどういう程度のものであるかということを、実際の爆弾を持つたアメリカだけが知ることになつて、被害を受けた日本側がそれを十分に知ることができないという結果を生み出すと思います。従つてこれらのものは決してアメリカ側に引渡してしまうべき性質のものでなくて、日本の管理下に合同調査、研究をすべきものであると私ども考えておりますが、この点に対して外務大臣はどのようにお考えになつておるか、それをお伺いしたいと思います。
  174. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 先ほどのアメリカの議員の発言につきましても、これはどういう意味で、どういうふうに言つたかは調査してみます。日米関係に悪影響を及ぼすようなことは、これはまつたくおもしろくないことは御同感であります。ただ日本の方でもわれわれ非常に困つておりますのは、たとえばまぐろは食べてもよいと言う学者があり、とんでもない、まぐろなんか食べられるものかと言う学者もある。それから大体被害者の症状は思つたより軽いと言う人もあり、そうじやない、一〇%は死んでしまうかも知れないと言う人もあるので、学者自身の意見が非常にまちまちなのであります。これはやはり学者の間でもつてしつかりした意見を統一して出してもらわなけれぱ、まちまちに、そうして自分の思いつきのようなことを言われたのでは、国民一同迷惑して、まぐろを食べていいかどうかわからぬということになつてしまう。これはわれわれも注意しなければならぬと思います。  それから今のお話ですが、われわれといたしましては、そういうことについてまだ別段何も問題はできておりません。ただいま政府考えておりますのは、あの船をいかに処理すべきかという問題でありまして、これは船を持つている人にとつては、この船が役に立たなければそれだけ損害になるのであつて、これを救済しなければならぬということもあります。また船をあそこに置いておくために、そんなことはないと思いますが、焼津の人たちは、風が船の方から吹いて来ると逃げて歩くというようなことをいわれているので、そんなものをあそこに置いておいてよいかどうかという問題もあります。また一方にアメリカの方で非常に重大視している爆弾につきましての機密保持につきましては、日本としてもできるだけ協力しなければならぬと考えておりますが、その意味で一体この船をどういうふうに処理するかということについては、政府側でもつて研究中でありますが、これも学者等の意見を聞かなければ、しろうとだけの判断でやるわけにも参りませんので、主として文部省、運輸省等で学者の御意見を聞きつつあります。従つてそういう問題についてはまだ別段何も意見等は出ておりません。
  175. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 そこで一昨日私の質問の中にも申し上げておきましたが、この問題は、治療についても、各大学が競争的に治療を担任するとか、調査についても、各学者が競争的に調査研究するとか、そういうことのないように、統一した調査研究の機関、統一した治療方法が講ぜられることが必要だと思います。そこで政府においては、当然そういう関連各方面の事柄について、今おつしやる通り、農林にも、厚生にも、運輸にも、文部にも関係することでありますし、外務はもちろん外国との関係においても関連しますから、そういう各官庁に利害関係調査項目等がわたつておりますから、統合された合同の研究機関なり調査機関なりを設けられる必要があると思うのであります。治療についても、私は患者を特定の一箇所の病院に収容して、軽ければ軽いなりに、重ければ重いなりに、とにかく統一した治療方法が講ぜられなければならないと思うのであります。こういうことは経費が伴うのでありまして、その経費はどこからも出る道はない。先日来、漁夫については船員保険が適用されるということでありますけれども、それらのわずかの費用では、とうてい治療も完全にできないのでありましようしするから、治療についての費用のさしあたつての負担としては、やはり政府が負担しなければならないだろうと思います。やがてアメリカから賠償がとれるようになれば別でありますが、少くともその間急を要する治療については、政府から費用が支出されなければならぬと思うし、合同調査研究の機関を設ける必要があつて、それを設けられるということになれば、当然この費用も政府が負担されなければならない。そこで私どもは、政府はそういう現実の各方面にわたる利害を統一して、調査研究の機関をつくりたいという御希望があるかどうか。その機関ができるとするならば、これに対しては当然学術会議のその専門部会に協議相談されることと思いますが、学術会議から要求があつた場合には、その研究調査のための費用を予備費から支出される意図があるかどうか。これはあるいは大蔵大臣でなければわからぬとおつしやるかもしれぬが、少くとも外務大臣としてこれらの問題に関連して熱意を持つてそれらの問題についての努力をしようというお考をお持ちであるかどうか。それをはつきり伺つておきたいと思います。
  176. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 漁夫につきましては急を要しますから、私どもも予備金支出なり何なりして、適当な応急措置を講じて、治療なり、あるいはその家族の生活なりを保護して行かなければならぬということは考えております。調査研究の方につきましては、これは国内各関係官庁で調べることでありまして、これを学術会議にまかせるか、学術会議に金を出すかというようなことは、私からお答えできません。
  177. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 そうしますと、私どもはしろうとだからわかりませんが、聞くところによれば、船体にしみている放射能は、日がたつたり、雨がかかつたりすると漸次薄くなつて行く。これをほんとうに学問的に研究しようとすれば、保護しなければならぬ必要があるそうです。従つてそういうものを保存するためにどうして保護するか、こういうことも急速になされなければならないと思います。原子爆弾による被害を最小限度に防止するばかりでなく、将来に向つてこういう被害を再び繰返さないということのためには、私どもは慎重の上にも慎重に、厳粛の上にも厳粛に調査研究が進められて行かなければならない。それがためには放射能が漸次薄くなるような状態に放置して、知らぬ顔をしているということは許されないと思いますから、当然第五福龍丸についても、所有者に対しては適当に他の方法によつて補償をして、その被害を受けた船は、放射能が稀薄にならないように適当な保護を加える。たとえば雨がかからないようにおおいをするとか、何らかの方法で特定の場所に収容してやはり保存する必要があると思いますので、そういうことに対して一昨日私どもは官房長官に申入れをしたのですが、官房長官は閣議にも諮つてみるということを言つておりましたが、きのうの閣議にそういうことが出たでしようか、出なかつたでしようか、お伺いしたいと思います。
  178. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今の船をどうするかという問題につきましては、政府でも考えておりますし、私の所属しております自由党におきましても、船主に対する補償もやり、船を保存する方法も考慮すべきであるというような具体的な提案を政府に出して来ております。今研究しておりますが、しろうとがこんな議論をしてもしかたがございませんが、私の気持では、一番大事なことは、あの船の放射能を長く保存して研究材料とするということも一つ方法でありましようが、しかしこの船の放射能をいかにすれば即座にでも除去できるか、その放射能を除去する研究をやつてもらいたいのであります。それが将来何かの被害があつたときに一番重要なことでないかと思つておりますが、こういうことは専門家やることですから、私は別に容喙するわけではありません。
  179. 並木芳雄

    並木委員 ただいまの加藤委員質問に関連してごく簡単に二、三お尋ねをいたします。
  180. 上塚司

    上塚委員長 ニ、三ですか。一つだつたでしよう。
  181. 並木芳雄

    並木委員 大臣はアメリカの議員の発言に対して、行政府と明らかにわけてお考えになつております。おそらくそれは正しいでしよう。そこで大臣が折衝されているアメリカ政府当局は、閣議に報告されたところによりましても、誠意をもつて事の処理に当つていると岡崎大臣から発表されております。そこで大臣にお尋ねしますが、アメリカ政府が誠意をもつて事に当つておる、そのことはただいままでどういう話合いになつて来ておるのでありましようか、この際お尋ねをしたいと思うのであります。特に補償の点などにつきまして誠意をもつて対処するというならば、どういう話合いになつて来ておりますか。
  182. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはすべての問題について、たとえば病人を焼津から東京に持つて来る、汽車で運ぶとかいうことになる、あるいは自動車で停車場まで行くということになると、その自動車なり汽車なりが放射能を持ちはせぬかという心配も起るかもしれないという場合には、日本の要請があれば飛行機を出して、飛行機で送つてよろしいというようなことで、補償につきましても、まだ日本もこれは事実今後のことでありまして、病人がどうなるかということにもよるのでありますから、日本としても具体的な数字を出すわけに行かない。しかしこれについても十分の考慮をするし、またまぐろのアメリカに対する輸出等についてもできるだけ協力をして、心配のないものについてはアメリカ人が心配しないでまぐろが食べられるように、つまり輸出が阻害されないような努力もいたし、その他日本側から言つて来ることは、何事によらず十分の考慮をいたすということを言つております。
  183. 上塚司

    上塚委員長 並木君、一点だけいう申出があつたから、許すことにお約束したのですが……。
  184. 並木芳雄

    並木委員 それでは一点に集中してお尋ねしますから……。アメリカのコール両院合同原子力委員長が言つているように、補償の額というものは、結局アメリカの議会が承認をしなければ、今度のような場合出せないのでしようか、そうなつているのでしようか。私は今度の場合なんか、緊急の事態に対処するための予備金のようなものがあるのではないかと思います。その点をお尋ねいたしたい。  それから日本アメリカと、こちらの現地で共同の機関を設けて、そこで急速に調査を進める、このことが必要ではないかと思いますけれども、その段取りはいかがになつておりましようか。  それから危険区域の拡張の問題であります。土曜日、二十日に、アメリカの方から通告を受けましたものに対して、政府はこれを黙認をすることに決定したのでありますかどうか。あるいは黙認をしないで、これに対してはこの前私から要望いたしました通り、こういう問題が片づくまでは危険区域の拡張も待つてもらいたいし、次の実験も待つてもらいたい、そういう申入れをする御意思はないかどうか。ぜひそうしてもらいたい。これは要望的の私の質問であります。もしそうでないとするならば、だんだん危険区域が拡張されて、一種の領土の拡張というようなことになりますと、公海自由の原則にも反して来ると思う。その場合は政府としても、国際司法裁判所に提訴するということをまじめにお考え願いたいのでありますけれども、そういうお考えはありますかどうか。以上まとめて一点だけ質問いたします。
  185. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 アメリカ側でも補償については行政府限りでできるものもあるはずだと思いますが、今度は行政府限りでできるかどうかは、アメリカ政府の判定をまたなければならない。アメリカ政府というのは、議会をまぜてのことですが、議会の人々の発言につきましては、御承知のように日本のこの国益会におきしても、共産党の諸君の発言などはかなり日米関係に対してひどいことであるのは、速記録等でよくおわかりのことと思います。しかしこれもやはりアメリカ側としては、日本政府が適当の調整をすることと思つて、何ら申入れ等は今までした例はないのであります。これはお互いのことかと考えております。  それから第二の点は、共同調査ということが必要かどうか、これは学者の意見も聞いてみなければ私はわからないのであります。外務省でただいまやつておりますのは、共同で連絡をいたしまして、お互いの連絡を密にして、適当な措置をお互いに講ずるという程度でありますが、これが共同調査という方に発展するかどうかは、いましばらく状況を見てみないとはつきりいたしません。必要があれば別にさしつかえはないと考えております。  それから危険区域の問題でありますが、これは国際法上からいうと、例はしばしばあるのであります。ただ今までのは、艦砲射撃等の例がおもでございまして、こういう非常に大がかりなものはないので、国際法上の前例等からは判断できない大きな問題になつて来ておりますから、新たなる国際慣例ができるまでは、ちよつと今までの尺度では判断できないと考えております。そこで私としましては、日米間の協力関係、従来のやり方から考えましても、できるだけアメリカ側に協力いたして行きたいと思つております。従いましてさしつかえなければ危険区域等も容認すべきものと思つておりますが、もしそれがために日本の漁業に対して非常な悪影響を及ぼしたり、あるいは漁獲物が放射性能を持つというようなことになりますれば、これは日本の水産業にとつてゆゆしき大事でありますから、この点を至急専門家等に調査を依頼しております。その結果によつて善処いたしたいと思つております。つまり国際司法裁判所等の問題は、私はアメリカとの関係においてはそういうことはやりたくないと考えております。そこでお互いが話合いで、もし漁獲物に非常な影響があるならば、その補償の問題が出て来る。その漁獲物の補償の問題が片づけば、ある程度危険区域というものはわれわれとしても認めてもいいのじやないか。日本に特別な大損害があれば別であります。その点はどれだけ過去の実績があり、また今後どういう心配があるかということは、専門家でないとわからない点がありますので、至急調べてみて、その結果によつて善処したい、こう考えております。
  186. 上塚司

    上塚委員長 穗積七郎君。
  187. 穗積七郎

    穗積委員 MSA審議中に発言いたしますことは、何もMSAの審議を妨害する目的ではなくて、緊急必要なことが生じたので、質問いたしておるわけでありますが、委員長が非常にMSAの審議の進行を気にしておられますので、できるだけ協力する意味で、一括してお尋ねいたします。  都築博士が今一番の責任者になつて、被害漁民の治療に当つておられるようですが、都築博士が今当面希望しておるのは、被害漁民の治療をできるだけ早く最も有効な方法でやらなければならないが、そのためには東京の病院に移して、そこで一括して管理治療することを希望しておる。そのためには、被害漁民並びにその家族の生活の補償をだれかがしなければならないということで、それを最も強く希望しておられます。先ほどの大臣のお答えによりますと、その治療のために、漁民に対して政府は何らかの措置をとるということでございますので、私安心をいたしておりますが、今申しました通り、それに関連してお尋ねいたしたいのは、被害漁民並びにその家族が安心をして治療のできる程度の補償をされるつもりであるかどうか、先ほどのお答えに関連して、具体的にお答えをいただきたいのであります。  その次には、再々この委員会において、私がこの問題に関してお尋ねいたしましたが、治療のために必要なことは、放射能の性質がどういうものであるかということを日本の治療医学者が知る必要があるので、それを早くアメリカからこちらに知らしてもらうようにという要望があつて、それをお尋ねいたしましたら、外務省を通じて向うへ要求しておるが、なかなか来ないということでございましたが、その後来ましたかどうか、その後どういう交渉をしておられるかどうか、そうしてその見通しについて、第二点としてお尋ねいたします。  その次には、船の問題でございますが、船は考慮中だということでございますが、あなたの属せられる自由党の方も、おそらくは日本の科学者の要望を強く反映されて、そういう意見を持たれたと思いますが、考慮中であつて、さつきのお考えでは、アメリカ側へ渡すか、こつち側で保存をするか、その根本方針について考慮中なのか。大体日本の科学者の言うことを信じて、そしてそれに益するために、今後の原子科学の研究と国際的な奉仕のために、日本政府の力でもつて、それをこちら側で保護するという根本方針でいろいろな交渉をやり、考慮されておるのか。その根本方針について、われわれは、言うまでもなく、あなたの自由党の方々と同じく、日本の信頼すべき科学者の要望に従つて、これはぜひ保存して、世界の科学のために、日本の民族の安寧のために、また将来のためにも、ぜひこれはやるべきだ。都築博士の意見を申しますと、まず第一はこの被害漁民の治療のために、第二には魚類の放射能の研究のために、第三は将来原子爆弾の被害が起きた場合にその被害都市の清掃のために、さらに第四には日本の学界の自主性のために、どうしてもこれは日本側で確保しておく必要があるということを強く熱心に要望されております。これは単に都築博士個人の要望ではなく、日本の学界全体の要望であると思いますので、これらのことはすでに大臣のお耳に入つておると思いますが、その線で考慮し、交渉されるようにお願いしたいと思います。しきりに考慮中と言われたのはどういう意味なのか、その点も明らかにしていただきたい。第三点は、聞き及ぶところによりますと、アメリカの学者が参りまして、今度の被害に伴うもろもろの調査研究を日本の学者と合同してやりたいと言う。日本はむろん緊密な連絡、提携はするが、勉強のスケジユール、方法論等については、日本の学者の自主的なスケジユール、方法論でやりたいという意向を持つておられるようですが、この問題に対しましては、言うまでもなく、外務省がそれをいずれかに決定するわけではありませんが、アメリカ側の要望を日本側に伝え、日本側の要望を向うに伝えるのは、外務省の当面の任務に当りますので、その問題に対するかじのとりようというものは非常に大事な影響を持つと思います。これまた日本の学界の発展のために、日本の学者の要望を聞かれて、どうぞそういうふうに処置していただきたいと思いますが、御所見はいかがでございましようか。  第四点にお尋ねいたしたいのは、聞き及ぶところによりますと、すでにアメリカは危険水域の拡大をいたしました。それは近く次の原子兵器の実験をするためだということを聞いておりますが、これは今の実情から申しまして、また人心の動向から申しましても、他の場所でやつてもらうか、太平洋でやられるならば当分延期してもらわなければなるまいと思いますが、この太平洋におきます次の原子兵器の実験を延期すること、中止することを申し入れるべきだと思いますが、そのお考えはあるかどうか、それをお尋ねいたしたい。  最後に、この前ここで、条約局長でありましたか、欧米局長でありましたかに、私見を申し述べまして、三たび世界の民族に先んじて原子爆弾の被害を受けました日本人は、それであるからこそ、世界に向つて発言する権利と義務があるが、この原子兵器の国際管理並びに平和利用の憲章設置について協力すべきであるし、みずからそれに対して率先して提唱べきである。これを議会でやるのも一つ方法でしよう。各政党その他の団体がやるのも一つ方法ではございましようが、政府が国際的にそのことを強く要望されることが、さらにまた一層有効であろうと存じますので、現内閣は、原子兵器の国際管理、原子力の平和利用憲章設置の問題についての要望を世界に向つてされるつもりがあるかどうか。それはまことにけつこうなことであるからそういうふうにしたいという局長のお答えでございましたが、きようは幸いにして大臣がおられますので、それに対する御所見をあわせて承つておきたい。  以上五点について一括してお答えをいただきたいと思います。
  188. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 被害者や家族に対する金銭上の手当、その他の精神上の問題、これは外務大臣の所管ではございませんが、関係大臣と相談して手落ちのないように、つまりそれらの人々が安心して治療に当れるようにいたす方針であります。  それから治療については、放射性能がどういうものであるかということを聞かなければできないということを言われておりますが、私は治療はぜひ必要だと思うが、しかし同時にどういう爆発物を使つたかということは、大事な機密でありますし、これはできるだけ発表はしたくない、治療にさしつかえない程度のものにとどめたいと思つております。現に各種の人々が各種の策動をして、この機密をとらえて反対側の方に提供せんとせられるような策動がなかなか盛んであります。従いまして、アイゼンバツド等の専門家はこの症状でもつて治療のやり方は判断できるということで――私ども専門家ではありませんから、それがどの程度ほんとうであるかわかりませんけれども、趣旨としてはできるだけこの機密を保持しつつ治療を行つて参りたいと思つております。船の処置につきましても同様でありまして、政府の考慮のやり方というものは、ただ放射能がいつまでたつたらなくなるかという実験のために船をとつておくのではなくて、船の放射能を最も短時間に除去し得るような研究をしてもらいたい、その意味で使いたいと思つております。同時にその船から機密が漏れないように十分なる注意をいたしたいと考えております。  それから、アメリカ日本と両方の学者で共同して研究するか、自主的にやるかという問題でありますが、これはできるだけ学者間の話合いにまかせたいと思つております。  それから、次の実験ということについては、先ほど並木君にお答えした通りでありまして、政府はあのように考えております。  それから原力の国際管理、これは原則としてまことに御同感でありまして、政府としてもできるだけこの方向にいろいろなものを推進したいと思います。よく伝えられるように政府がそれについて声明を出すとか、国連に対して何か発表をするとか要請するとかいうことについては、だれでもそうでありますが、政府といたしましても、言つただけで何の効果もないようなことはいたしたくないと思いまして、適当な機会をとらえ、適当な方法によつて、これを推進して行くという方針にはかわりがありませんが、今何をやるかということについては、さらに考慮いたしたいと思つております。
  189. 佐々木盛雄

    佐々木(盛)委員 関連して。一分間で私は終ります。このたびの福龍丸事件をながめておりましてまことにふに落ちないものがあることを私は痛感するのであります。というのは、この福龍丸をとらまえてあらゆる学者が放射性能の実体が何であるかということにつきまして、あたかも群盲象をなでるような状態でいろいろな推測をし、それに基いて療法を考えて病人の手当をして行き、その他の善後措置を講ずるというような状態であります。もとより恒久的だ措置といたしまして、この原子力に対する科学的な研究が必要であるということは十分に認めます。その意味において日本の学界が自主性を持つて、あるいは時にはアメリカと合同でこの調査に当たるということも大賛成でありますが、とりあえずの善後措置として、応急対策としてやらなければならないことは、対症療法であります。この対症療法をとるときには、放射能というものがいかなるものであるかという実体を正しく把握することが最もかんじんなことである。そのためにはアメリカみずからが責任を持つて、少くともこの福龍丸によつて起されたいろいろの悲劇、病人等につきましては、アメリカ人の、この放射能が何であるかということを最もよく知つた者がこれに対する善後措置を講ずる、病人をなおす。こういうことをやることが最も人道的なことである、また最も効果的なことである、私はかように考えておるわけであります。またそのことの方が、日米両国間におきまする機密保持という立場からも望ましいことではなかろうか、かように私は考えるわけであります。これに対して外務大臣はどのようにお考えになつているかということが第一点。  もう一つは、先ほど大臣も指摘された言葉の中で私の聞きのがすことのできなかつた重大な問題がございます。機密保持については今後とも日米両国防衛のためにあくまでも必要である。このゆえにこそ今日MSA協定に基く機密保持の法律的措置も用意されておるような状態であります。従つてわれわれといたしましてはアメリカ機密を保持するために協力をいたしたいのでございますが、伝え聞くところによりますと早くもこの福龍丸によつてもたらされた原子灰というものが、一部の分子の手を通じてソ連側に持ち去られてしまつた、少くとも日本の領土外に持ち去られたという重大なニユースも私は承つておるようなわけであります。このようなことがはたしてあつたのかどうか。これも私たち重大な関心を持つておることでありますから、この点をもあわせてこの際承つておきたいと思います。
  190. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 お話の第一点は私もそういうふうにも考えておりまして、現にアメリカの唯一の専門家であるアイセンバツト氏が見えておるわけでありますが、これは日本側のお医者さんの気持もありますので、そう無理にお医者さんの意向を押えつけておることもどうかと考え、ただいまできるだけお互いの意思を疏通させて、治療に手落ちのないようにということで努力いたしております。  第二の、原子灰と申しますか、この灰を持ち去られたといううわさはわれわれも耳にしておりまして、警察等に調べてもらつております。またたとえば最近焼津の被害者の家へ行きまして、その当時着ておつたシヤツでも着物でも、何でも買い取るからといつて申入れをしておる一部の人もあるようであります。こういうものにつきましても十分警戒をする必要があると思いまして、ただいま手配を依頼いたしております。
  191. 並木芳雄

    並木委員 ちよつと議事進行。大臣の御答弁を聞いておりますと、政府の大臣として当然苦しいところがうかがわれるのです。これは委員長に要望するのですけれども、私ども政府とは別に国会独自の立場から、やはりこの問題は取上げて行かなければいけないと思うのです。大臣の答弁にありました通り、危険区域の拡張ということは国際法上新しい問題であつて、まだ学説もわかれておるようであります。政府の見解もこれに対してはつきり確立されておらないのは無理もないと思うのです。そこで当外務委員会としては、至急に権威ある国際法の学者に来てもらつて、参考の意見を聞きたいと思うのです。今後こういう問題はどうあるべきかということをわれわれとしても急いでかつ的確に把握して、まじめな日米協力の線において何らかの打開策を講じたいと思うのであります。アメリカでは政府が国会をコントロールできないということでありますが、それは日本においても同じでなければならぬと思うのです。岡崎さんはわれわれ国会をコントロールできるような口ぶりであつたが、あれは私ども納得が行かないので、それよりも岡崎外務大臣がアメリカをコントロールするくらいの気位を持つてもらいたい。これは気持なんです。それはともかくといたしまして、ただいま申し上げました国際法上の問題でありますから、ぜひ委員長におかれては権威ある学者をお呼びくださつて、参考意見を聴取されますように段取りをつけていただきたい。これが私の議事進行についての発言であります。
  192. 上塚司

    上塚委員長 ただいまの並木芳雄君の御発言に対しましては、理事会を開いて御相談をいたして処置したいと存じます。  なおこの際議員加藤鐐造君及び下川儀太郎君より発言を求められておりますので、順次これを許したいと思います。御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  193. 上塚司

    上塚委員長 御異議がないようでありますから順次発言を許します。加藤鐐造君。
  194. 加藤鐐造

    加藤鐐造君 委員外質問がなお多数あられるようでございますので、私はなるべく簡略に質問をいたしまして、外務委員会委員諸君のおじやまにならないように気をつけたいと思います。私は通産委員でございますので、主として経済問題について質問いたしたいと思います。  最初に一点だけきわめて重大な根本的な問題についてお伺いいたします。過般来本委員会においていろいろな質疑応答が重ねられて来ておりますのは、日本自衛権の限界についてであります。独立国家として自衛権を持つことは、憲法規定がどうであろうと、われわれは観念的には一応明確に認めるところでありますが、自衛権の発動という問題につきましては、やはり憲法の条項が明確にその限界を示すものでなければならないと思うのであります。先般外国から直接侵略を受けた場合に、外国の領土から攻撃を受けたときに、その基地に対して攻撃を加えることはどうかというような質問に対しまして、たしか法制局長官であつたと思いますが、外国の領土に対しても自己防衛上これに対して攻撃することは、自衛権の範囲に属するというような御答弁があつたと思います。これは実に重大な問題であると考えるのであります。私はくどくどしく申しませんけれども、この憲法第九条に明確になつておると考える。従つて自衛権の限界が国外にまで及ぶということは、だれが考えても、三歳の童子が考えても明白なことでありますが、そこまでこの自衛権の範囲を広げて解釈するというに至りましては、もはや憲法は完全に無視されたものであると考えるのであります。そういうことになりますと、権力が憲法をまつたく蹂躙することになると思うのでありますが、岡崎外務大臣ははたしてこういう解釈をとられるのかどうか、まずその点について伺いたいと思います。
  195. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 自衛権というものは国内のものであると同時に国際間に認められておるものでありまして、国際間の通念というものがあります。平和条約等で日本自衛権を確認いたしておりますのは、日本自衛権があるということが国際的に認められておるわけでありまして、その限りにおきましては、従来の国際法、国際慣例の認める範囲内の自衛権は日本にある。これを行使するかどうかは日本のかつてでありますが、その意味で、法制局長官が答えられたのは、従来の国際法、国際慣例から自衛権というものはこういうものである、こういう御説明をいたしたのであります。
  196. 加藤鐐造

    加藤鐐造君 私はこの問題についていろいろ押問答をしても、時間をとるばかりですから、これ以上質問いたしませんが、私はただこの際、岡崎外務大臣が国際法上の常識に基いて外地に対する日本の攻撃も、自衛権の範囲であるという解釈をとられるということは、重大な問題であると考える。今申し上げましたように、憲法というものは権力の前には非常に弱いものである、私はこういう考えを持つものでございます。そうなりますと、一体国家が憲法を重視しない、こういう場合において、その国はどういうことになるかということは、お互いに十分考えてみなければならないと私は考えるのでございます。今日政府憲法改正の必要を感じながらその困難を知つて、便宜上こうした、いわゆる憲法を権力の前に屈服させて、あくまでも便宜主義で行こうとするこの考え方は、私は重大な問題であるということだけをこの際申し上げまして、私の質問の本論に移りたいと思います。  従来私どもは、アメリカの国会におきましてMSAの援助日本にも与えるであろうという声明を発表いたしまして以来、国会においてしばしばこの論議を重ねて参りましたが、その都度岡崎外務大臣その他の政府当局から、MSAの援助は、いわゆる経済援助を伴うものである、こういう意味の御答弁がありました。そうして朝鮮停戦協定の成立以来、日本の特需の減少をこれによつてカバーし得るものであるというような意見を述べて来られました。また実際MSAの交渉過程を見ましても、私どもが仄聞するところによりますと、十月に締結されるべくして今日まで交渉が難航を続けて延び延びになつて参りましたのは、やはり政府ができるだけ経済援助目的を達するための交渉を行われたものであるというふうに聞いて参りました。協定前文の中にも「日本国のための防衛援助計画の策定に当つては経済の安定が日本国防衛能力の発展のために欠くことができない要素であり、」というふうにしるされております。この文句を承認させたのは、政府の苦心の存するところであるというふうに聞いておりますが、しからば一体いかなる種類の援助があるか、政府は直接援助はないと言つております。もちろんこの協定を見ましても、直接援助がないことは明確になつております。しかしながら、従来の政府答弁から見ましても、間接にか日本の経済の発展に役立つところの種類のものが何であるか、こういう点についてお伺いいたしたい。
  197. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 先ほど政府が何か憲法をかつてに解釈して権力のもとにどうとかするというお話でありましたが、それはどうも困りますから、一言だけ申しておきますが、憲法では自衛の権利というものを認めておるのであつて、決して否定しておりません。否定しておりませんから、当然国として自衛権はあるわけであります。これでは自衛権というものの内容は何かといえば、これは国際間に認められたものでありまして、日本だけできめるわけには参りません。従つて憲法で禁止していない日本の持つておる自衛権の内容は、国際法、国際慣例によつてきまつておる、世界中が認めておる自衛権でなければらぬ、これは何ら日本憲法を無視したり、無理にその解釈を曲げておるわけではないのであります。  経済援助につきましては、これは経済的援助と申した方が正当でありましよう。加藤君は外務委員会においでになりませんでしたからでありますが、これは再三再四にわたり詳しく申しておりまして、速記録をごらんくださればよくわかります。ごく簡単に申しますと、たとえば特需の増大あるいは小麦を円で買うということもその一種でありましよう。あるいは規格の統一をすること、またこれは将来のことでありましようが、投資保証協定によつてアメリカ側から投資がよけい入つて来る。もちろん経済的利益ということだけをいいますれば、日本でつくつた自衛力を増強すべき兵器武器装備等アメリカからもらうということも、財政的には非常な援助になるわけであります。
  198. 加藤鐐造

    加藤鐐造君 私は外務委員会にあまり出なくても、今外務大臣のおつしやつた程度の御答弁があつたことは承知いたしております。ただ私がこの際伺いたいのは、従来朝鮮動乱の終息によるところの特需の減退をカバーし得るかのごとく言つて来られた政府が、一体どの程度の特需の収入をこのMSA援助に関連して期待しておられるか、いわゆるわが国の国際収支の改善にどれだけ役に立つか、その具体的な数字をお示し願いたいと思うのでございます。たとえば、東南アジア諸国に対するアメリカの後進国開発計画に基くところの日本に対する特需の買付というようなもの、あるいは朝鮮復興計画に基くところの日本に対する買付というものから、実際にどれくらいの収入があるという見通しをつけておられるか、その点の見通しあるいは話合いがなくて、このMSAの協定を行われたということになりますと、またそこに私どもはいろいろと議論しなければならない問題がございますので、その点をごめんどうでございますが、明確にお示しを願いたい。
  199. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 それはMSAの関係でありますから、朝鮮の復興に関する特別の需要等は考慮に入れておりません。また後進国開発計画に基く注文等もこれには直接入つて参りません。ただいまのところ、この特需の増大は約四、五千万ドルと考えております。これは今までの特需がありますから合計して申しますれば、この六月までにうまくこちらの受入れ態勢ができますれば、約一億ドル、こう考えております。
  200. 加藤鐐造

    加藤鐐造君 うまく行つて最高一億ドルのいわゆる特需的収入ということでございますが、それでは昨年以来言つて来られた政府説明と大分違うと思うわけでございます。その点詳しく申しませんけれども、思い起していただけばわかることでございます。そうすると、さしあたつて五千万ドルのいわゆる経済的な援助に類するものがある、この中で実際の援助は一億ドルということでございますが、そういうことになりますと、MSAの援助というものは、やはり日本防衛力の強化が必要なために援助を受けられる、いわゆる経済的な援助とか、あるいは日本の自立経済、工業生産の発展に寄与し得るという、そうした利益が一方にあるということを考え援助を受けたものではない、すなわち軍事援助一本で十分だ、こう考えてお受けになつたものであるとわれわれは判断せざるを得ない、その点を承つておきたい。
  201. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これもしばしば申す通り、MSAの援助というものは、日本防衛力増強のために受けるものでありますから、それだけで十分なわけであります。ただ間接に日本の経済に寄与し得る点が非常にありますので、ますますこれはけつこうであると思つております。それで、五千万ドルの総額では大したことじやないとおつしやいますが、これは念のため申しておきますが、六月までの話でありまして、六月以降はまた別なのであります。六月までに総計一億程度の特需というものを日本の工業でほんとうに受けられるかどうか、実は疑問の点もなきにしもあらずでありまして、いわば精一ぱいという程度であります。
  202. 加藤鐐造

    加藤鐐造君 私はこれは岡崎外務大臣の一種の食言であると思うのであります。岡崎外務大臣は、今になつて軍事援助一本でいいのだ、ほかの援助はまつたく拾いもので、日本防衛力を強化するために援助を受けなければならないのだ、こういう御答弁であります。私はえげつない言葉を使いますならば、居直り強盗のような感じがするのでございます。繰返して申し上げることを省略いたしますし、また速記録をお示しすることを省略いたしますが、従来はそういうことをおつしやらなかつた。あなたは、繰返して答弁しておるから、お前は委員外から来てよけいなこと、くどいことを言うなというような御答弁でありましたが、私がはつきりお聞きいたしたいことは、その点なのです。岡崎外務大臣は、経済的な援助はあるのだ、あるいはまただんだんと言葉をごまかして参りましたけれども日本の自立経済に役立つところの経済的な援助に類するものが相当あるのだということを答弁して来られた。ところが今や、軍事援助一本でけつこうだ、こういうお言葉でございます。それでは、政府は従来長い間かかつて経済的な援助を受けるための折衝に苦心を重ねて来られたということであるが、そういうことではなかつたのか。十月以来協定を結ぶことがそのたびに延期されて今日まで来たのは、そういうことではなかつたのか。どういう点にあつたのか、その点を承りたいと思います。
  203. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 食言々々と言われますが、私は食言した覚えはない。このMSAの関係で公式に発言を求めて申し上げたのは、昨年の六月の二十六日の予算委員会においてであります。そのときの私の速記をごらんくださると、このMSAが日本防衛に役立ち、かつ経済に寄与するものならば受けてさしつかえないと思う、こういうふうに、特に経済援助という字を避けて、経済に寄与するものであれば、こういうふうにはつきり申しておりますから、当日の速記をごらんくださればよくわかります。これが初めての公式の発言であります。そうしてわれわれはその交渉にあたつては、できるだけ日本の経済に寄与しようとしていろいろ交渉いたしたのは事実であります。その結果が、先ほど申したようないろいろなものになつて現われた、こういうことであります。
  204. 加藤鐐造

    加藤鐐造君 時間がございませんから先に進みますが、そこで進んで具体的にお伺いしたいことは、経済的措置に関する協定前文の中に「日本国の工業生産及び潜在的経済力の発展を援助する目的で、前記の農産物の購入の結果として生ずる円資金を、この協定に基いて利用する用意を有する」というようなことが述べられております。そこで、この小麦買付の際贈与を受ける一千万ドルの資金を、日本の工業生産の発展のために使つてもいいということでありますが、しかしこれはいわゆる軍需兵器生産でなければ使つてはいけないという条件がついております。この援助を受ける際になぜこういう条件をつけなければならなかつたか。日本の工業を堅実にするためには、やはり基本的な工業生産に対して根底から力を与えなければならない。兵器生産のみに力を入れるということになりますと、そこに非常に頭でつかちな、畸型的な産業構造が生れて来るというふうに考えるのでございますが、なぜこの際軍需生産にのみ限るというようなことに反対して、そして日本の産業構造を根本的に育て上げるために、一般的に日本の工業生産並びに潜在的経済力の発展に資するためには自由に、どこに使つてもいいというようなふうに規定せられなかつたか、その点について承りたいと思います。
  205. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは先般連合審査会のときも、加藤君の属せられる党の方からは、三十六億円ばかり一体何の役に立つのだという御議論があつたくらいであります。三十六億円はそう多いものじやないことはこれは実でありますが、しかしこれは何がしかにはもちろんなる。そこでこれは協定の文面からは、おつしやるように軍需産業ということはどこにも出て参りません。しかし先ほど申した通り、一億ドルの域外買付を六月までに引受けようとすれば、日本の工業としては相当無理なくらいの産業構造なのでありまして、将来外貨を獲得するために域外買付を続けようとすれば、どうしてもこの方面の産業を整備しなければいかぬ。またこのもとの協定が元来日本防衛力増強という点にありますから、この金はそちらの方に振り向けて、それでもまた足りないでしよう。それは三十六億円が入つて来たからその産業だけが頭でつかちになるというほどのものでないことは確かでありす。ただその方面にできるだけ整備を加えようというのが、ただいま政府考えているところであります。
  206. 加藤鐐造

    加藤鐐造君 私は三十六億ばかりは目くそ金とは申しません。そこでこの金の使い方というものが相当重要になつて来ると思います。三十六億の金はわずかだから、それだけをいわゆる兵器生産にのみ使つても、別に日本の産業構造は畸型にならないとおつしやいますけれども、私はこれに付随するいろいろな問題がさらにあると思います。そこでこの残余の額の使途はどうなりますか。残余の四千万ドルという額は、これを日本で処分した場合に、その金は一体いかなる方面に使われるかということについて承りたい。
  207. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはアメリカから小麦を買つて、それをドルで払わないで円で払うのでありますから、アメリカの金であります。われわれの何ら関知しないアメリカの金であります。従つて日本で何を買おうと、実は筋道からいえばかつてなわけでありますが、これについては、域外買付という種類のものに限定する。同時に、この協定の議事録にありますが、日本の産業に特別のシヨツクを与えたり、時にへんぱな衝動を与えないように、その買い方その他については政府と十分協議をして、域外買付にこれを使う、こういうふうに考えます。
  208. 上塚司

    上塚委員長 加藤君に申し上げますが、あなたの持ち時間はあと五分ですから、集約してお尋ねを願います。
  209. 加藤鐐造

    加藤鐐造君 それではいろいろお聞きしたいことがあるのでありますが、できるだけ要約しまして御質問申し上げます。私は域外買付等についてもいろいろ承りたいことがありますが、これは通産委員会においてもお開きすることになると思いますので、次に進みます。  アメリカは、従来他の町に対してアメリカの持つておりますところのいわゆるお古の艦船を供与する場合には、大体スクラツプの価格で計算しておる、こういうことを聞いておりますが、日本に対してはそうであるか、そうでないのか、承りたい。
  210. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私はアメリカの艦船かスクラツプで換算されておるという話は聞いたことはありません。どこからそういう材料をおとりになつたか伺いたいと思いますが、大体この供与すべき武器につきましては、新しいものは原価で計算いたします。それから使用したことのあるものについては、その使用の程度及びそれが製造された年月等を勘案して、七割で勘定するものもあり、五割で勘定するものもあり、もつと低く勘定するものもあるようであります。
  211. 加藤鐐造

    加藤鐐造君 外務大臣は専門家で私はしろうとだから、どこから聞いたかとおつしやられれば、私はまたあらためてその出所を申し上げますが、そういうことは相当常識的に喧伝されておることですから私はお伺いしたわけであります。  次にもう一つ承りたいことは、この秘密保護法は、先ほどもどなたかから御質問がありました通り、MSAの援助と切り離すことのできない問題でございます。これは外務委員会審議されることと思いますから、その先をつまむことは失礼でございますから、なるべくいたしませんが、この秘密保護法米国秘密日本保護してやることなのでありまして、このやり方は独立国と言われないのではないかという感じを持つものでございます。それからまたアメリカにおいては、新しい兵器が次から次へと生産される。それについて秘密保護法範囲アメリカにおいて広げられる。それが自動的に日本に持ち込まれるということが考えられる、その点はどうなるか。それからまたこの第二条を見ますと、きわめて抽象的な言葉で書いてありますが、いろいろ解釈を広げて、いわゆる秘密兵器の所在地であるところの場所の立入り禁止というようなことが、再び要塞地帯というような不愉快なものになつて、そこまで広げられて来るのではないか、こういうようなことについて承りたい。
  212. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 どうも加藤君とはその点は根本的に意見が違うようでありますからいたし方ないと思い出すが、われわれは日本の国を守る以上は、自衛隊にしましても、自衛隊の組織なり自衛隊の行動なりは相当機密を要するものであつて、これはどこから見てもまる見えだということでは、日本の守りはできないとさえ思つております。しかしこの場合、秘密保護というのは独立国の体面を汚すから、そんなものはやらぬ方がいいとおつしやられれば、つまりアメリカからそういう機密の新しい兵器の供給は受けられないということになるのであります。それでは日本の守りが十分でなかろうと思います。私はアメリカ機密兵器をよこした場合には、アメリカで守つている程度の機密は守るのが当然であつて、これはちつとも独立国の体面を汚すものでも何でもない。それがいやならその兵器をもらわないだけだ、こう考えております。
  213. 加藤鐐造

    加藤鐐造君 私はアメリカ兵器秘密の保持だけを日本がやつてやるというようなことが、いわゆる独立国としてどんなものであるかということを申したのでございます。そこでそのことの解釈はとにかくとして、今申し上げました第二条の解釈がいろいろと広がり、またこれに追加されて、いろいろな要塞地帯というような形のもので出て来るのではないかという点についての御答弁がありません。それからまた国会に対しても、秘密保護法の名のもとに兵器内容等についても明らかにされないというようなことになるのではないか、そういう点について承りたい。
  214. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 国内の秘密保護法律、今般提出いたしてもうお手元に行つておるのじやないかと思いますが、それをごらんくださればわかる通りであつて、要塞地帯等はただいまのところ何ら載つておりません。それからアメリカ機密武器等については、それの援助を受ける以上は、アメリカのやつておる程度の機密を守つて、その武器機密が外へ出ないような措置は、これはどうしても私は必要だと考えます。国会に対してどうなるか、これは機密の事情にもよりましようし、概括的にはお答えができません。
  215. 加藤鐐造

    加藤鐐造君 時間が来たようでございますから、この問題についてはまた後ほど機会があれば質問いたすことにいたしまして、最後に聞きたいことは、これも質問の繰返しだと外務大臣はおつしやると思います。私は昨年の夏の国会におきましても、この点は予算委員会において質問いたしております。しかし私どもが依然として不安を感じますのは、いわゆる近き将来において太平洋軍事同盟が結ばれる場合のことでございます。このMSAの法律アメリカにおきまして一九五二年改正された場合に、二条の(b)項にいわゆるヨーロツパ地域の集団的な相互援助の機構に対して、いわゆる地域的集団防衛機構に対して援助することが不可決の要件であるというようなことが明記されて、現在北大西洋条約機構であるとか、あるいは欧州防衛共同体の機構等について、そこに参加しておる国々に援助を与えられております。そで吉田総理大臣も岡崎外務大臣も、そんなものができたつて参加はしないのだ、参加しなければそれだけのものだという答弁でございましたが、しかく簡単に行くものであるかどうか、いろいろな援助を重ねて承りまして、そのときになつてそんなものは困ると岡崎外務大臣が言われても、はたして断り切れるかどうかということを心配するのでございます。そこで私は簡単にお伺いいたします。今東南アジア諸国におきましてもすでに輿論が高まつておるようでございますが、アジア地域におきますところのいわゆる共同防衛機構すなわち太平洋第事同盟が結ばれたときに、アメリカ日本に対してそれに加入することを求めた場合に、吉田内閣は断固として断られるか、その際にMSAに関する一切の協定を破棄して断られるかどうか、この点をひとつ明確に御答弁を願いたい。
  216. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 太平洋同盟と称するものは、今もちろん何も形ができておりません。将来三年、五年置いたうちにできるかもしれません。そのときまで吉田内閣が存続して断れるかどうかという御質問でありますから、これはまことに御親切な御質問でありますが、その場合にどうするかは、一に日本憲法及び諸法律並びに国民の気持によつて定まる問題でありまして、ただいまそのときのことを予想して何とかいうことは申されませんが、現行の憲法のもとに、現存の政府考え方は軍事同盟等には加入すべきものではないと考えます。
  217. 加藤鐐造

    加藤鐐造君 もう質問いたしませんが、岡崎外務大臣の言葉が、昨年以来だんだんかわつて来ておる。御本はかわつておらぬと考えておいでになるもしれませんが、聞いておるわれわれの方ではかわつていることがはつきりわかります。今の言葉でも昨年おつしやつた旨葉とは大分かわつて来ております。すなわち調子が非常にやわらかくなり、あるいはあいまいになつて来ております。その点を私どもは心配する。昨年断固とおつしやつたことが、今日は断固と言えない情勢にたつて来ておるということを、私は心配するのでございます。これ以上は質問いたしません。
  218. 上塚司

  219. 下川儀太郎

    下川儀太郎君 先ほど来ビキニの被害の問題で質疑が行われましたが、政府はこの直接被害者に対して、あるいは家族に対して十分なる補償をするというようなことをいろいろ言われて、これは当然のことでありますが、ただ私は間接的な、いわゆる経済的な被害者に対して、どのような補償をするか、その点をお聞きしたい、御承知の通り、現地の焼津はまぐろあるいはカン詰等々によつてほとんど市が成り立つており、市内にカン詰業者あるいは製造業者あるいは漁民その他の人々が、これによつて生活しておる。これらがこのビキニ被害によつて現在は非常な衰退を来しておる。その中にはたくさんの未亡人がおる、いわゆるまぐろをカンに詰めて行商をしておる人もずいぶんある。これは非常な被害でございます。こういう際にただ単に個人的な被害者あるいは家族のみに補償をするのか、それとも間接的な被害者、経済的な被害者に対してどのように政府措置をとられるか、その点をひとつ明確にしていただきたいと思います。
  220. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは外務大臣の所管でありませんので、責任をもつてのお答えはできません。しかしながら普通被害と申しますと、間接被害はなかなか入りにくいものでありまして、間接被害というものの測定も非常に困難であります。しかし、こういう点は水産庁、厚生省等で十分研究中のことと考えております。
  221. 下川儀太郎

    下川儀太郎君 たた問題はこれをアメリカ側にどのように経済的な補償をさせるか、今後外務大臣が、これらの間接的な経済的な被害者の補償を、アメリカ側からどのようにとるかということにかかつて来ると思います。従いましてこれらの調査の結果、もし間接的な被害が非常に甚大であるという場合においては、政府並びに外務大臣は、アメリカ側に強い要求をされるかどうか、その点をひとつお聞きしておきたいと思います。
  222. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 外務大臣といたしましては損害の査定を各関係省に依頼しております。その中に間接的な損害がどれくらい入るかは、各関係省で決定するのでありまして、政府としてこれだけの被害があるということが確定しますれば、それをアメリカ側に十分徹底させるつもりでおります。
  223. 下川儀太郎

    下川儀太郎君 その点は、よくわかりましたが、次にお伺いしておきたいことは、これは去る十三日に私が本会議でMSA並びに自衛隊法案に関連して、海外派兵の問題を追求いたしました。そのときにその一例とし、昭和二十五年の元山上陸作戦に日本の海上保安庁の掃海艇が出動したという問題をお聞きしたところが、掃海作業には従事したけれども、参戦をしておらないということを答弁されておる。しかしその掃海作業といり掃海作業が問題なのでありまして、大体掃海作業をするのには二通りある。いわゆる戦争のときと平時のとき。平時のときにおいては、これは浮遊する機雷等を掃海する。それから戦争当時においては敵前上陸を容易ならしむるためにこの機雷を掃海する。昭和二十五年のいわゆるマッカーサーの指令に基いて出動した掃海作業というものは、元山に敵前上陸を容易ならしめるための掃海作業であつたと私は考えております。従いましてこれは明らかに参戦であります。単なる掃海作業ではない。朝鮮戦乱におけるアメリカ軍の敵前上陸を容易ならしめるための掃海作業を、これを単なる掃海作業のごとく心得て、そうして違憲ではないという考え方でおるあなたの御所見をお伺いしたい。
  224. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私は機雷等が青森その他日本海に浮遊して来るのは、あちらの方面から来ることははつきりしておりますので、その掃海をやることは何らさしつかえないものと考えております。
  225. 下川儀太郎

    下川儀太郎君 ところがそれはただ青森とかその方面の掃海ならいい。これは明らかに元山敵前上陸に参戦しておる。しかも一月の十八日から五日間産業経済に、「元山上陸作戦に参加、海上保安庁掃海艇」という見出しのもとに、これが掲載されている。しかもマツカーサー元帥の要請でこれをやつておるということが明らかにされておるのです。しかもその中には遺族の名前まで出ておる。中谷坂太郎という当時二十五歳の青年が、この機雷に触れて戦死したことが出ておる。しかもその戦死者の墓が四国の金刀比羅宮に祭られておつて、その記念碑には吉田総理が揮毫しておるという事実までが明確にされておる。しかも当時海上保安庁、長官付であつた奥三二氏という人が、違憲よりも国際法の問題といつて、この問題を産業経済に書いておる。なおニユーヨーク・タイムスにもやはりマツカーサーのその声明が、これは参戦とは言わないけれども、昭和二十五年の十月の作戦、これにはいわゆる掃海作業として日本の海上保安庁の掃海艇を利用したことが明らかにされておる。そうなつて来ると、この産業経済の記事、あるいはまたニユーヨーク・タイムス等々のそううマッカーサーの言を推してみると、明らかにこれは朝鮮戦乱に対して、日本の掃海艇が出動しておる。これをどのようにお考えでしようか。つまりあなたのお考えは、単に北海道とか青森とかいう掃海作業に従事したように言つておられるが、これは朝鮮戦乱に日本の掃海艇が明らかに出動しておる。これは憲法違反であるとともに、国際上の大きな問題になつて来る。十三日に私がこれを明らかにせよと言つたところが、あなたはそういう事実なしと一挙にこれを否定しておられた。しかしもしその事実がないとするならば、今日までどうして産業経済が五日にわたつて掲載しておることに対して抗議しないのか、今日までほうりつぱなしになつておる。もつと明らかなのは、これはすこぶる大衆的な講談社の雑誌にまで読みものとしてそれが載つておる。雑誌にも載り、あるいはまたこういう天下の五大新聞一つの中にも載つておるこの事実に、何らの抗議もせずにそのままにしておくということは、これは明らかにやつておるからそのままにしておるだろうと私は考える。この点どのようにお考えですか。
  226. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 掃海作業をして人が死んだということは、これは非常に不幸なことであるが、珍しくはないのであつて、瀬戸内海で掃海事業をしたときもしばしば死傷者は出ておるのであります。掃海事業の危険なことであることは認めておりますが、人が死んだからいくさに参加したのだという証拠にはなりません。あなたはお聞き違いをしておられるようであります。青森その他日本海に流れる機雷があの方面から来るからあの方面を掃海したのだと言つたので、青森や北海道を掃海したのだと言つておるのじやありません。そこでスキヤツプから命令があつて、その当時は出ることはありますが、それでも国際法なり、日本憲法なりに違反するようなことは政府としてはいたしません。従つていくら何べん申し立てられても、あれは戦闘に従事したのではなくて、掃海に従事したのであります。
  227. 上塚司

    上塚委員長 下川君、MSAの審議中ですから、これに関連することについての質疑を願います。  〔「海外派兵だよ」と呼ぶ者あり〕
  228. 下川儀太郎

    下川儀太郎君 あなたが今おつしやつた各地で機雷に触れて青年が戦死するとか、船が沈没するとかということのあることは私たちも承知しておるのです。これは瀬戸内海とかあるいは青森とか、あるいはまた近海においての犠牲ならわかる。しかし明らかに朝鮮戦乱当時において敵前上陸に参加して犠牲になつているということが問題である。犠牲になつた場所が問題だ。もしこれがそういう掃海に従事して、そうして犠牲をしたのであるならば、今日までなぜ堂々と発表しない。堂々と発表して、全国民の名においてこれを葬つてもいいじやないか。ところが遺族の口を封じて、絶対に言つてはならないと箝口令をしく。そうしてまたその当時参加を拒んだ人々がいろいろな形において辞職しておる。そういう事実を見て参りますと、これは明らかに憲法違反の参戦をやつておる。参戦をやつておりながら遺族の口を封じ、そうして今日までそのままそういうことがなかつたというように、いわゆる食言的な立場でやつて来た、そういうようにわれわれは考えなければならぬ。あなたにお開きすると、いつもこれを否定する。いつもそんなことはないと言つている。しかし今日もしかりに事実の証人が出た場合、その遺族あるいは戦闘に参加した人々が出て、あなたの前で明らかに元山上陸に参加して自分の弟は戦死したのだ、あるいはわれわれはあれに参加したのだ、そういう実証者が出たような場合には、あなたはどのような責任をとるか、それをお聞きしたい。
  229. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 敵前上陸したことがないというのだからないのです。
  230. 下川儀太郎

    下川儀太郎君 敵前上陸を容易ならしめるために掃海作業をやつておることは、私は先ほどから言つておる。明らかにこれは総合作戦の中の一環を占めておる。これは時間がありませんから追究いたしませんが、今後MSA並びに自衛隊の活動に関して重大な問題になりますので、私はこの問題を明らかにしたい。今後遺族並びにその当時の人々を外務委員会に呼んでいただいて、あなたの前で十分黒白を争い、この真実をはつきりと社会にお知らせしたいと思うのであります。それなくんば、今後たとえばMSAの問題あるいは自衛隊の問題、これに関連していつ海外派兵をされるかわからない。それが派兵されてもそれはされないのだ、近海の掃海作業に従事したのだというふうに逃げられるおそれがあるので、私はこの外務委員会に真相を明らかにすることを委託いたしまして、あとの加藤清二君に引継ぎます。
  231. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 事の性質からはつきりしておきますが、掃海作業と海外派兵とは全然別でありまして、国際法の観念からいつてもまつたく別であります。掃海作業をしたから海外派兵になるということはこれはこじつけにすぎないと思います。
  232. 上塚司

    上塚委員長 議員加藤清二君より外務大臣に対し二分間の質問を許していただきたいとの申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  233. 上塚司

    上塚委員長 御異議なければさようとりはからいます。加藤清二君。
  234. 加藤清二

    加藤清二君 貴重な時間をお与えいただきました委員長にまず感謝をいたします。お尋ねしたいことがたくさんありますけども、時間がないようでございますから、簡単にピツク・アツプして一点だけお尋ねいたします。  まずこの協定によりまして日米の投資は保証されるようになつておるのでございますが、私が調べたところによりますると、日本の投資は必ずしも保証されていないといことがあります。そこでこのMSAの協定から生ずる域外買付、これは日本兵器メーカーがのどから手の出るほど要望しているものであり、おぼれんとする者がわらをもつかむ気持で、これに飛びついて来ることは事実でございます。そこで武器等製造法なるものをつくつて、これをふるいにかけることまでは、すでに行われておりますが、せつかくふるいに通つて、そして入札、契約をしたものが、その次のキヤンセルから生ずる損害の補償については、日本側工場にとつては何ら保証されていないのが事実であります。この点大臣は先般日本の商法が適用されているとおつしやいましたけれども、私の調べたところによりますと、遺憾ながらこのキヤンセルに対する保証はできておらないようでありまして、日本の商法は適用されていない。依然としてアメリカの会計法が行われている。これが行われているのはイギリス、ドイツ、フランスその他の国々であります。この点、はたして大臣のおつしやいましたように、キヤンセルから生ずるところの賠償は、ほんとうに日本商法が適用されているのかいないのか、もう一度承りたいのでございます。  次にもう一つ業界がひとしく心配しております点は、将来性があるかないかということでございます。なぜそういうことが生じて来るかというと、御承知の通り工場でMSAから生ずるところの域外買付の注文を受けようとするには、手ぶらでは受けられないわけであります。工場の設備をしなければならないわけであります。設備に対してたつた一回注文して、あとはさよならと、こうやられますと、減価償却の面からしてペイしない。減価償却が行われずして、その設備がほごになつている例が、過去においてもたくさんあるわけでございます。これに対する保証も何らないわけなのです。これとさつきの入札、契約、その次に生ずるところのキヤンセルです。この一方的な先方のキヤンセルからして、日本の業界は過去において経済的な苦杯を非常になめさせられたのです。きようも、きようの三時に、これがその重大な原因の一つとなつて、手形交換所で、赤紙の不渡り処分を受けた会社がある。すなわち日平産業であります。それから日本冶金も過去においてこれと同様なことが行われておる。もちろんこれらは別な原因もございますけれども、入札々々と、入札が何回か切りかえられ、切りかえられして出血輸出をやむなくさせられた。ところがその前に契約破棄になつたところに対しては、何らの補償の手だてもとられておりません。そこでこれに対して私は同じ日本政府の通産省に、昨日も、きようも問いただしてみましたが、私の工場その他における調査と同じ答えを得ているのでありますが、それにもかかわりませず、岡崎大臣だけは依然として日本商法が適用されているというお答えでございました。一体いずれがほんとうでございましようか。業界としては、この協定が結ばれれば当然受けなければならないこの域外買付で、直接生じて来る利害関係でございますので、この点をひとつここではつきりと、この協定を結ばれました責任者のあなたからお答えが願いたいのでございます。もしあなたが日本商法が適用できるとお答えになれば、これは通産大臣が間違つておるということで、業界は通産大臣に対して賠償を訴えることも可能になるわけであります。そこでこの点いずれでありますか、先般のお答えは何かの行き違いではなかつたか、かように思うわけでございますが、この点いかがでございましよう。
  235. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 日本商法は日本国内でははつきりと完全に適用されます。  それから第二の問題については、これは商法や国内法の問題ではないので、私は通産大臣ではありませんから、その点はここで申し上げるのもどうかと思いますが、ねがわくは兵器産業等も全部が兵器産業でなくして、一部が兵器産業、他は別の産業というふうになつておれば、そういう場合の影響が非常に少いと思うのです。しかしながら法律上は、一ぺん注文して、もう注文しなかつたといつても、これの持つて行きどころはないので、いたし方はない、しかしこれはできるだけアメリカ側相談して、継続して特需が行われるようにし、工場等も十分確かなものを選択し、損害のないようには、通産大臣としても考慮それておると了解しております。
  236. 加藤清二

    加藤清二君 確かにこの入札、契約、キヤンセル、ここまでの間日本商法が適用できるとおつしやいますが、これは国内産業のことではなくてアメリカとの契約の上における問題でございますが、そうおつしやつてよろしゆうございますか。それから免ずる責任は負つていただけますね。
  237. 上塚司

    上塚委員長 これより逐条審議に入ります。第二条に対する説明政府側にお願いします。――ちよつと速記をやめてください。   〔速記中止〕
  238. 上塚司

    上塚委員長 それでは速記を始めてください。それでは政府側より説明を求めます。土屋欧米局長
  239. 土屋隼

    ○土屋政府委員 第二条はいわゆる戦略資材と申しますが、稀少物資に限るのでございまして、これはMSA法の五百十四条にも規定がございますことと大体趣旨を同じくするものでございます。両国の政府で相互援助をするという原則から、日本側にはありますが、アメリカが何かの事情で不足している原材料もしくは半加品で、もし日本国内にはある。そうして日本国内には余裕があるというものを、両者の間で話合いをする期間、数量及び条件また価格に従つて――しかしその場合には、国内的に日本自身が困るということになつては困りますから、国内使用、また商業輸出をするということになりますと、この輸出の価格バランスというものも十分考えて行かなければならぬということでありまして、現実の問題として私どもこの交渉をいたしますときに、どういうものがあるかということを考えてみたのですが、さしあたり現在においてこういうものがあるということは考えられませんが、かりに考えますれば、たとえば日本で真鍮のインゴツトがたくさんとれる。アメリカがこれを使いたいとする。その際に日本がほかの国にも売つていたが、アメリカにも日米双方の合意する期間、数量、条件に従つて売ると約束する。そうすることによつてアメリカ日本から買つているほかの国に均霑できるということになるのをこの規定の特徴としているのであります。(「ウラニウムはどうだ」と呼ぶ者あり)ウラニウムなんかもございますということになりますと、こういう項目の中に入ります。ただ国内使用、商業輸出ということもありますから、両者の話合いがどうなるか、それらはもちろん条件になりましようが、問題になるような点だと思います。いつか須磨委員からもお話がありましたが、その後われわれの調べたところでは、さしあたりウラニウムが問題になるということはないように考えております。
  240. 上塚司

    上塚委員長 第二条に対する御質問はございませんか。
  241. 並木芳雄

    並木委員 有償か無償かというのは、これにははつきりしていないのですが。
  242. 土屋隼

    ○土屋政府委員 はつきりしてございません。「合意される期間、数量及び条件」の中に、アメリカに売るときには有料にすることは、ほかの点から見て明らかだとわれわれは思いましたので、そういうことを先方に伝えて先方もこれは了といたしました。
  243. 細迫兼光

    細迫委員 いろいろな物資の譲渡につきまして、ユーゴ、イタリアあるいはスペインあたりまでがMSA協定におきましてこの条項を排除しておるということを聞くのであります。私たちも資料をいただいておりながら、実は勉強するひまがなくてはつきりしないのでありますが、ほんとうにスペイン、イタリア、ユーゴなどが排除しておりますかどうか。排除しておるとすれば、MSA法にあるのをわざわざ排除しておるのですから、特殊な意味があるに違いないと思うのでありますが、どういう意味があるのか。MSAの審議の参考に資したいと思いますのでお尋ねいたします。
  244. 土屋隼

    ○土屋政府委員 後刻確実にはいたしますが、私が今まで調べてあります結論から申しますと、MSAの五百十四条にあり、また私どもがこの第二条にうたいました半加工品もしくは原材料は、ユーゴの協定にもスペインの協定にもございます。
  245. 戸叶里子

    戸叶委員 ここに該当する品として、将来日本から絹がパラシユートの材料として行くというようなことはないでしようか、どうでしようか。  それから先ほど有償だとおつしやいましたが、向うからの支払いの形はどういうふうな形で来るか、ドルで払つて来るわけですか。
  246. 土屋隼

    ○土屋政府委員 ただいままでのところ、絹の話はございませんでした。絹が出るようになれば、現在の状態でけつこうだとわれわれは考えておりますが、その話はございませんでした。  それから支払いの点でございますが、これはあとにございます国内使用及び商業輸出の必要量について十分な考慮を加えて行くという文句等から推定するわけでありますが、話の中では通常の輸出として、アメリカにはもちろんドル勘定で日本から売りつける、その際に、ほかの国より悪いような条件ということをしないでやるだけの好意は示しましようというのが、第二条の趣旨のように了承しております。
  247. 穗積七郎

    穗積委員 ちよつとお尋ねしますが、これは相互援助協定であるのに、日本の国だけがアメリカが不足するものを提供する義務を負うというのは一体どういう趣旨なのか。ギヴ・アンド・テークで行くならば一体何のためにこんなものがあるのか。両国で必要とするものをお互いに譲り合うという協定なり条文ならまた読めるのですが、これは一体どういう意味でございますか。さつばりわけがわからないのですが、この条文の性格、目的をもつとはつきり説明していただきたいのでございます。
  248. 土屋隼

    ○土屋政府委員 第一条でお互いに援助すると一応の原則はございますものの、あとからごらんになりますと、ただいまも御指摘がございましたように、大体アメリカからもらうという形、先日ちよつと話が出ましたが、ギヴ・アンド・ギヴという原則をそこにうたつてあるわけなのでありまして、第二条で「相互援助の原則に従い、」というところに――実は第一条でもらい勘定が非常に多い形になりますから、平たく申しますと、私の力も多少そちら側を御援助申し上げるという原則に従いたいと思いますので、考えてみますと、原料、半加工品ならば場合によつて援助し得るものもあり得るから、そのときにはほかの商売と同じようにお買いになるなら差上げましようという、いわば手続につきましては、純然たる普通の輸出と同じような径路を経ることになつておりすから、当方がアメリカ援助するといいましても、ほかの国に与えた条件より悪くない条件で売りつけるというだけのことになつて来ると思います。「相互援助の原則に従い、」というところでいろいろ考えましたのは、一条がどうも日本は受方だけだという形になりますので、二条においては当方からもやるものがあるということになるのでありますが、ただこれは一応文書の上で、町から来るものに対してこちらからもやるものがあるという原則をうたつただけで、こちらが純然たる普通の商業取引と同じように取扱うということを考えております関係上、相互的な意味でこちらからアメリカに与えるものは非常に少いということになります。それでは日本のほしいものはどうなるかということになりますれば、日本のほしいものは第一条によつて無償提供を受けるのだろうと思います。
  249. 穗積七郎

    穗積委員 これは一条がギヴ・アンド・ギヴだとおつしやいますが、これこそお互いであつて、これに即応すべきわれわれの義務というものは、第八条で重大な義務を負つておるわけです。のみならず、あなたはもらうもらうとおつしやいますが、武器日本に与えて日本の陸上兵をたくさんつくるということは、この間のアリソンの調印式のあいさつの中にもありますように、アメリカのアジアにおける陸上軍の肩がわりをさせるという、向うにも非常なテークがあるわけなのです。従つて、こういうものもあるから、そこでアメリカが必要とする物資で日本の国内にあるものは何でも向うに供与する義務があるとおつしやつて、有償であるというが、それなら普通の貿易取引をもつて十分お買いになつたらよろしい。そうでなしに、こういうふうな一方的な義務を負つている。しかもけしからぬことは、最後に持つて来てこういうふうなオブラートをかけて、「日本国政府が決定する国内使用及び商業輸出の必要量について十分な考慮を払わなければならない。」いかにも民主的で相手の立場を認めておるようでございますが、この最後の一行半で前の譲渡の義務というものは解除されていないのでございます。そこで、そうであるならばこの最後の一行半の文句が生きるためには、一体何を限界としてこういうことをやるのか、これは日本が、国内使用及び商業輸出の必要量は上げることができないと、一方的に通告すれば、前の譲渡の義務は解除されるのかどうか。
  250. 土屋隼

    ○土屋政府委員 ただいま御指摘の、これは一方的の義務ではないかということでございますが、アメリカにないもので日本で入手できるということから、アメリカから来るのではなくて日本から行くという一方的な意味に見えるかもしれないのでありますが、ここでごらんになりますと、合意される期間、数量、条件で、日本が合意しなければ初めから問題にはならないわけで、日本としては合意ということを前提としておりますから、日本がしいられるということはここからは私は出て来ないのではないかと思います。従つてアメリカ側日本側の意見の相違があれば、その商談は成立せずということになるわけであります。それから最後の「国内使用及び商業輸出の必要量について十分な考慮を払わなければならない。」という点についてお話がございましたが、これはほかの各国との協定をごらんになりますと、「日本国政府が決定する」という字がないはずであります。つまり、国内使用及び商業輸出の必要量について十分なる考慮を加えると書きつぱなしにしてございまして、「日本国が決定する」という字がほかの国の協定にはないのであります。そこが問題になりましたので、私どもは、国内使用と商業輸出とは一体だれが必要量を決定するのか、それは日本政府が決定するということで、初めて「日本国政府が決定する」という言葉で断定したわけであります。この点はほかの国とはいささか違つてはつきりしているというふうに考えますので、せつかくのお言葉ではございますが、これは義務で売らなければならないということになりませんし、こちらも合意いたしますという意思は一応見せてもいいのじやないか。相互の原則といつております通り、あまり一方的にもしない方がよかろうということが多少あつたので、念のための規定だと考えます。
  251. 穗積七郎

    穗積委員 軽くおつしやいますが、そうではない。この「合意される」というのは譲渡を合意するのではないですよ。譲渡そのものについて拒否するならば拒否することができるのではなくして、期間、数量、条件について合意するということなんですよ。譲渡そのものの基本については、アメリカが要求するならば、これは明らかに応ずる義務があるという文章か、そこのところをはつきりしていただきたい。合意ということは、譲渡そのものについて、日本国が一方的に拒否するならばこれは拒否することができるのかどうか、これは期間、数量、条件でございます。その点をはつきりしていただきたい。  それから第二は、今の御説明の中でございますが、もう一ぺんはつきりしておいていただきたいのは、「日本国政府が決定する国内使用及び商業輸出の必要量」ということで、これは決定する必要量でございますが、それをこれ以上は応ぜられぬと日本が一方的に通告すれば、それで譲渡の義務は解除されますかと開いておるのであります。一方的通告でもつて足りるかということを聞いておるのですから、その二点をまず明らかにしていただきたいのであります。
  252. 土屋隼

    ○土屋政府委員 その条文をごらんいただきますと「アメリカ合衆国政府に譲渡することを容易にすることに同意する。」つまり英語で申し上げますと、エキスペダイテイング、便宜を供与してやろうということだろうと思います。その便宜を供与するときに両者が話し合おうじやないか、それと、期間をきめましよう、きまるなら。数量もきめましよう、きまるなら。条件もきめましよう、きまるなら、きまらなければ同意しないことは当然であります。従つて譲渡に同意しないことは当然でありますから、日本側がこれに同意するという義務は出て来ないと思います。  それからあとの方で「日本国政府が決定する国内使用及び商業輸出の必要量について」は、日本国政府として応ぜられない場合はこれを通告する必要があるか、また一方的な通告をもつて足りるのかということでございますが、私は通告する必要はないと思います。国内使用上必要でありますからあなたに上げませんと言えばそれでけつこうなので、話はそれから先へは進みませんから、日本からアメリカ側に対して義務を負つて売り渡すことは必要ないと思います。
  253. 穗積七郎

    穗積委員 そういうふうに非常に平易に御解釈になるとすれば、この条文はいらぬではないのですか。普通貿易取引でもつて日本アメリカとの間にちやんと経済協定ができておる。ですからそれで向こうの欲する条件、数量でお買いになつたらよろしい、それであるならば、こういう一つの非常に一方的な日本義務協定というものを、今解釈されるように軽く解釈されるなら、向うから買いに来て値段が折り合はなかつたから断る、あるいは日本に必要だから売るわけに行かぬということで断れるなら、日本が欲するから売つてやつた方がいいというときに売るなら、経済協定、普通の貿易取引で行けばいいのであつて、こういうふうに一方的な義務規定を入れることはどういうものですか、さつぱり意味がわからない。
  254. 土屋隼

    ○土屋政府委員 本質的に商業取引で行きますのが、通商航海条約もあり、問題ないということは私も全然同意でございます。ただここにございますように、半加工品なりあるいは原材料というものは、アメリカ合衆国が自己の資源において不足するもの、または不足する憂いがあるもので、日本側で入手できるという一つの特殊な原材料なりあるいは半加工品であるという点が一つの点でございます。  また第二の点といたしましては、相互援助の原則ということから見て、日本側もこういうものについては、アメリカ側に協力してもいいという考え方がもともとございます。従つてMSAの五百十四条の中に、こういうことも考慮して、大統領がMSAの協定一つつくれという原則がございますから、日本側といたしましても、こういう現実にできることがあり得るならば、これに対して双務的に、当方はアメリカに対しては特に売ることを考えるということをいたしましようと言つてみたところで、私は決してこれがむだなことであるとは思いせん。ただこれがなければ全然そういうものを売らないのかと申しますと、これは国によつて売ることもございましよう。また日本としてはアメリカに売ることも売らぬことも商業上あり得るはずであります。ただここにこれだけの原則がうたつてありますれば、自由国家の防衛力増強ということに協力するからこそアメリカから援助を受け、日本も少くともこういう精神をうたつて、こちらからも先方の好意に報いましようということでありますので、なきにまよさると思います。
  255. 上塚司

    上塚委員長 穂積君、まだですか。
  256. 穗積七郎

    穗積委員 まだです。大事なことです。そうであるなら相互の双務協定にすべきだと思うのです。アメリカが自国の資源において不足して、日本にそれがあるというのは特殊なものでございまして、たとえばさつきも言われたようなもの、あるいはまた――今局長は御存じないということでしたが、須磨委員もせんだつて指摘され、われわれも学者の諸君から聞いておるところによると、北海道なりあるいは東北なりにおきまして、原子力の生産のためのウラニウムで相当優秀なものがあるようであります。これはこの間も湯川博士から直接聞いたのでございますが、まだ正確な調査はしていないが、非常にあり得るということを盛んに言つておられた。そういうことであるなら、そういうものをねらつてやるのはちよつとおかしいと思うのです。政府の論理によれば、日本が再軍備をするのは決してアメリカの従属軍ではない、独立軍である、そしてしかも独立国たることをはつきりさせ、アメリカの駐兵をおつぱらうためには、日本防衛は自分でやるような体制に持つて行かなければならぬので、昨日の公聴会において遠藤元中将は、日本の独立軍たることは油その他の資源において不可能だという場合に、真に独立軍であるというならばアメリカに対しても独立でなければならない。そうであるなら、たとえば今言いましたのは、例でございますが、ウラニウムなんかをアメリカが不足して、たくさんつくるために必要だから、さあよこせというそういう協定を結ぶことは明らかに片務的であつて、不合理なものだと私は思うのです。もし虚心に日本アメリカ防衛上もあるいは経済上もやるなら、どちらかといえば日本の経済の方がより多くのものをもらわなければならぬから、ここに譲渡の義務を負つても通商航海条約以外、一般協定以外にこういう特殊協定を結ぶなら、日本側からもその不足物資に対してアメリカに、譲渡することを要求する権利を確保する双務協定にすべきだとあくまで私は思うのですが、その点もう一ぺんお尋ねしたい。  それからもう一つ、ついででありますからお尋ねいたしますが、今申しましたようなたとえばウラニウムというようなもの――アメリカはみずからを平和を愛好する国だと言つておる。あるいは国連も多数決をもつてアメリカ側にくつついて、アメリカは平和を愛好する国だと規定している。ところがアメリカの最近の政策は、アジアを戦争に巻き込ませるような危険がある。武力政策がかち過ぎておるからこれをチエツクしなければならない。そういうことのためには、アメリカの軍人が戦争政策を強化するために必要とするような戦略物資を日本にどんどん要求して来る、そういう場合にこの規定が一体どういう役割を果すか、私は多くの疑問を持つのでございます。その二点についてもう少し納得の行くような御説明をいただきたいのであります。第一条ではわれわれがテークであるから第二条でギヴするのである、そんなばかな引きかえのような協定として、こんなものを私どもは了承するわけに行かないと思う。第二条においては向うにギヴするのだと言うが、ギヴ・アンド・テーク――そしてしかも第八条において大きな義務を負つているわけです。第二条が、第一条の振りかえとして向うに渡すところのギヴである、そういう解釈でこの第二条を読むことは私にはとうていできない。ですから特に今私が提起しました二点を説明されながら、想定されながら、もう一ぺん納得の行くような御説明をいただきたいのでございます。
  257. 土屋隼

    ○土屋政府委員 まずこの二点につきまして、最初の点だけを御返事を申し上げます。これは日本アメリカだけの協定でございますので、これによりますとアメリカの不足しているもので日本にあつたものを、日本からアメリカだけにやるというふうに見えます。しかしながら御存じの通り、このアメリカとの協定アメリカのMSA法を根拠に、その条件に従い、その精神をくむということは前文にすでにうたつてあるところであります。そういう考えから第二条をお読みいただきますと、MSAの五百十四条の中に「合衆国資源の涸渇を防ぎ、自由世界の集団防衛上欠くべからざる原材料の適当な供給量の生産を確保する」ということが趣旨になつているわけであります。つまりアメリカ自身が五十何箇国に対して協定を結んでいるわけでありますから、そのうちのどこかで、アメリカが自由世界の防衛上必要であるという資源であつて、そしてある一国にはそれが余り得る、そこから買い得るというものをアメリカは買つて、そうしてほかの自由諸国には足りないものを自分が供約する立場に立つと思います。そういう見地からこれは結ばれたものでございまして、そこにある相互援助の原則ということは、あくまでアメリカからよこすからこちらからやるというのではなくて、相互援助協定を結ぶような相互援助の原則に従つてという意味に解釈すべきであろうと思うのであります。従つて五百十四条とこの二条をあわせ読んでいただく必要がありましようと思いますし、また繰返すようでございますが、アメリカ側から要求されたものを決して日本側として出すという義務はございません。従つてそのときには、日本は自分の都合を考えてやらなくてもいいのでございますが、ただ自由諸国家群の一員として日本が今後自国の防衛を進める、そうしてそれが間接には自由諸国家群の防衛を進めるのだという考え方からいえば、日本に余つたもので、よその国も売つておるものであれば、アメリカが特によその国の援助でほしい、あるいは自国の方でほしいというものは、日本はほかとあまり違わない条件で売つてつてもちつともさしつかえないという精神をここにうたうべきだ、こう考えてこの条項はうたわれたものだと思います。第一条が当方に対する援助で、しかもそれは義務を第八条において負つておるじやないか、第二条でまたことさらにその義務を負うようなことを書く必要はないじやないかというお話のようでございますが、あくまでもこれはその精神において、相互援助の精神をこちらも持つておりますということをいうので、商業その他の点につきましては、向うに与えるということは売りらけることでありますから、私はそこに法律関係はすでに解消しているので、それ以上の義務というものを日本考える必要はない、こう考えております。
  258. 穗積七郎

    穗積委員 そこでもう一点明確にするためにお尋ねいたしますが、一例を申しますと、アメリカが韓国と、同じような防衛協定、安保条約と似たようなものを結んでおりますが、それが将来強化される場合がありましよう。その場合に、韓国で食糧が非常に不足しておる、特に米が不足しているというような一例を考えます。そのときに、アメリカから米をやりたいのだが、小麦はあるけれども、米はない。そこでその付割かを米でやりたい。そうすると、日本の米と小麦の消費量のパーセンテージから見て、日本の米の消費量の方が比重が多いとすれば、少し日本協定従つて譲渡するというような場合もこの中に入りますか。
  259. 土屋隼

    ○土屋政府委員 ただいまのお話は、まわりくどく実はアメリカを間に立てて韓国と米について話すよりは、おそらく韓国と日本で直接話合いをして、おたくで食べる米が、日本で余つております。いかがしますということになると思います。それから米の例をあげられましたので、米の例から思いついたのですが、そういうことから申しますと、相互援助の原則と申しましても、この協定を結ぶ相互援助の原則ということが原則になると思います。単に一般に消費物あるいは食糧がないという問題と、このMSA協定にうたつておる第二条を援用して日本から買いつける、よそから買いつけるということとは、少々内容が違うのじやないかと思います。従つて、ほかの例ですと別でございますが、ただいまの食糧品その他の問題ではこの第二条に該当するものと考えません。
  260. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと、自国の資源において不足しておる資源というのは、いわば防衛力を強化するための、言葉をあえて局限していえば、戦略物資に限るわけですか。
  261. 土屋隼

    ○土屋政府委員 大体さよう心得えております。
  262. 並木芳雄

    並木委員 私今までのお話を聞いていると、穗積委員の言うことにも一理あるのです。ですからお聞きしたいのですが、今までMSA協定を結んでいる国との館で実際にこのとりきめが適用された例はありますか。あるとすればどういう国から、どういう稀少物資がアメリカに譲渡されたか。そういう実例を知ることが、一番この条項の解釈に役立つのじゃないかと思います。
  263. 土屋隼

    ○土屋政府委員 二、三の例を、ただいま手元に参りました資料で調べてみますと、グリーンランドからは鉛、イタリアからはやはり鉛とか、すず、それからコバルトなどが出ております。ドイツからはアルミニウム、それからベルギー・コンゴーからはすずが出ております。大体数量もごく少いようでありますが、例をいいますと、こういうところが最近の例のようでございます。
  264. 上塚司

    上塚委員長 これにて第二条についての質問を終ります。  次に第三条に移ります。
  265. 土屋隼

    ○土屋政府委員 第三条につきましては、すでに大分活発にここで御議論をいただきましたので、私からいまさら説明ということは、ちょっとおもはゆい感じがいたします。 第一項の方では、秘密保持につきまして、アメリカから供与される、あるいは日本から供与するということも考えられますが、そういう兵器につきしましての物件役務情報について、危険を防止するために、両国政府の間で合意する秘密保持措置をとる。これは付属書のBとあわせて読んでいただく必要があると思います。と申しますのは、両国政府の間で合意する秘密保持措置という問題でありますが、その措置の大体の概要を示しましたものが付属書のBでございます。付属書のBで述べておりますのは、アメリカ指定したところの秘密のものにつきましては、「等級と同等のもの」というのですから、アメリカが極秘にすれば、日本も極秘にする。アメリカが秘という程度なら、日本も秘という程度で、取扱う、こういうことになるわけで、これから御質問があるいはございますかもしれませんが、秘密漏洩の場合、アメリカが十年問の懲役にするという場合に、日本も十年問にするかという問題が出て来ますが、われわれはそう解釈しておりませんし、また交渉の段階においては、日本にはほかにもいろいろな刑罰もあるのでありますから、日本の刑罰上均衡をとるべきで、アメリカが十年であるから、日本も十年という意味の、秘密保持の等級と同等という意味ではございません,その取扱いが同等になるということであつて、それから派生するものはおのずから別になつて来ると思います。  第一項は秘宿保持の原則をうたいましたが、こういう秘密保持をうたいますと、何となくMSA協定が万事が秘密裡に受理、されるように考えられますので、これはどこの国にも例がございますが、秘密にわたる部分を除いてはできるだけ一般に知つてもらつて、本協定目的とするところ、MSA援助の実効を期そうじゃないかというので、第二項をうたつているわけでありまして、活動について書いて、おりますのは、実施の状況について、一般に知つてもらうために、前一項と矛盾しない程度においては、できるだけ一般に知らして行こうという考え方を、両方で約束したというのが第二項であります。
  266. 上塚司

    上塚委員長 御質問ありませんか。
  267. 穗積七郎

    穗積委員 委員長に議事進行でお諮りいたしますが、この文書を読んだだけで、今の御説明だけでは、一応無理からぬところも何パーセントかあるわけですが、この文書だけでなく、すでに昨日本院に提出されているという政府提案の秘密保護法案たるものがあるわけでありまして、その内容を見ないと、このむのは討議できない。しかもわれわれは昭和の初め以来この問題については苦い経験を持っております。たとえば治安維持法なるものがあつた、これは天皇制と私有権をひっくりかえそうというものだけを、取締るというので、文章の上ではしごくもつとものようでございましたが、後にこれが一人歩きを始めまして、ときの政府にいささかといえども気に食わぬものは全部ひつぱる。何で一体ひつぱつたかと言つてわれわれが警視庁の特高に聞くと、治安維持法でひつぱつた。どこの条文でひつぱつたかと言うと、わけがわからぬ。こういう苦い経験をわれわれは持つておりますので、従つてこの第三条の審議は、秘密保護法案と一体にして審議されんことを私は強く要望いたします。それなくしては、理論が空転いたしまして、審議がさらに当を得ないそうしてわれわれは審議を尽したという責任を果すわけには行きませんので、委員長におかれましても、あなたは、私が申し上げるまでもなく、リベラリストをもつて自負しておられるのでありますから、そのくらいのことは言わずしておわかりになつていると思いますから、秘密保護法案が当委員会に付託されるか、内閣委員会か法務委員会か存じませんが、それが付託されまして、その具体的な構想を承つた上でこれは一括して審議されんことを強く要望いたしたいと思います。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  268. 上塚司

    上塚委員長 第三条についてほかに御質疑はございませんか。
  269. 戸叶里子

    戸叶委員 ただいまの穗積委員のおつしやることは、まことにごもつともですから、それを取上げていただきたいと思います。そてれでこの二項の場合だけをちよつと伺いたいのですが、先ほど実施の状況などについてよく知つてもらうためにこういうことを加えたとおつしやいますが、具体的に実施の状況を知つてもらうとかいうのは、どういうことをさすものか、その点たけお伺いします。  二項のことに関しては、穗積委員のおつしゃつたことに全面的に賛成いたします。
  270. 土屋隼

    ○土屋政府委員 MSAの援助の実際の状況でございますが、顧問団がいつ着いたとか、何人くらいがどこで働いておるとか、それからどういう武器を持つて来てそれがどういうところに配置されている――もちろん秘密の必要なものはいけませんが――それから訓練はどういう訓練をし、それから実際それがどういうふうに進んで来ているか、MSA援助による武器の受入れ状態はどうだろうか、こういうことについてさしつかえない限度におきまして、一般に随時発表して知つていただくということを、この協定目的としていると思います。
  271. 上塚司

    上塚委員長 それでは三条に対する質疑は留保いたしまして、第四条に移ります。第四条の説明を求めます。
  272. 土屋隼

    ○土屋政府委員 第四条は工業所有権と技術上の知識の交換の方法及び条件を規定したものでございまして、「適当な収極」とございますか、まだ適当なとりきめをつくつたわけではございません、必要ができました際に将来適当なとりきめをいたしましようという原則だけをうたつたものだと御承知をいただきます。あとの方に「私人の利益を保護し及び秘密の保持を図るものを作成するものとする。」とございますが、この秘密の保持と申しますのは、ただいま問題になりました第三条の第二項でいうところの秘密の保持とは違います。第三条の方は与えられた物件なり情報なり役務なりについての一般的な秘密日本側も守るということを規定したものでございますが、第四条の方は工業所有権について、もしくは技術上の知識につきましで、特許法で出願中の特許に与えられている秘密の保持のごときにものを言つているのでありまして、第三条でいうような特定なものを今から予定しで、いるものではございません。
  273. 上塚司

    上塚委員長 第四条に対する御質問はありませんか。
  274. 穗積七郎

    穗積委員 これは両国政府から双務的にこの工業所有権及び技術上の知識の交換をとりきめることができるということなのですか。たとえば軍事顧問団の中には相当防衛上の必要のある技術者が入つておると思うのですが、それとは全然別にやるのか、それを通じてやるのか、具体的にはどういうことでございましようか。
  275. 土屋隼

    ○土屋政府委員 一般的にここに書いてございますので、具体的な例として顧問団に今申されましたような特殊の知識なり何なり持つてる人を通ずるということもあるかもしれませんし、それ以外に政府自体で工業所有権でどつちか一方の使うものを相手方の承認を得てとりきめをつくつて、それによつて交換するということもあると思いますので、軍事顧問団に限るということには解釈できないと思います。
  276. 穗積七郎

    穗積委員 軍事顧問団を通じないでこの技術援助等をやる場合には、そうしますというとアメリカ大使館を通じてそれを要請する――一般的なとりきめとして要請するわけでございますか。
  277. 土屋隼

    ○土屋政府委員 私の言葉があるいは足らなかつたかもしれませんが、軍事顧問団を通じてという点は、私が申しましたのは、軍事顧問団が発意してこういうとりきめなり何なりをするということでなく、この両国政府の間で、向うの代表として実施に来ておりますのは、もちろん軍事顧問団でございますが、これが大使館に入つて大使館員として働きますので、これを受ける機関が外務省あるいは合同の機関なりできると思いますので、そこで話を進めて行くというのが、表向きの話合いの順序だろうと思います。
  278. 上塚司

    上塚委員長 第四条に対する御資疑はございませんか。  それでは第五条に移ります。政府説明を求めます。
  279. 土屋隼

    ○土屋政府委員 第五条はMSAの五百十五条に規定してあるところでございまして、MSAの援助の差抑え禁止措置とでも申したらよろしいかと思います。要するに内容といたしますところは、援助計画において割当てた資金というようなものがございまして、この資金をせつかく相手の方に渡しまして、これで物を買う、物をつくるという場合におきまして、相手国がこれを特別に取扱つておきませんと、ほかの仕事から生じます損害によつてこれが差押えを食う、あるいはほかから取立てを食うとか減るとかいろいろなことがございますので、その目的のために資金を積み立てておいて、他の資金から分離する、従つてこれに対する、権原を確保するための手続などについては、両当事者で協議をするという規定になつております。これは先ほど申しましたMSAの五百十五条から当然に来るところでありまして、日本などでかりに今後発注を受けて、向うから材料が来るとか、あるいはその金が来るというときに、その金は前渡しがあるというようなときに、初めて問題になり得る問題だと思いますが、さしあたり私どもは前渡金を受けるというようなことも、最初の一年間の援助では予期いたしませんから、この規定はさしあたりの実効はあるいはないかもしれません。ただ今後そういう場合を予測いたしまして、各国の例もございますので、差押えの禁止に対する規定をここにうたつたのが実際であります。従いまして実際問題が起つたということになりますと、おそらくそのために特別勘定を設けて資金を保護するということになろうと考えます。
  280. 上塚司

    上塚委員長 第五条に対する御質疑はございませんか。――第五条に対する質疑は終了いたしました。  本日はこれをもつて散会いたします。    午後六時二十二分散会