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1954-03-22 第19回国会 衆議院 外務委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月二十二日(月曜日)     午後五時五十八分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 今村 忠助君 理事 富田 健治君    理事 福田 篤泰君 理事 野田 卯一君    理事 並木 芳雄君 理事 穗積 七郎君    理事 戸叶 里子君       麻生太賀吉君    大橋 忠一君       北 れい吉君    佐々木盛雄君       福井  勇君    増田甲子七君       喜多壯一郎君    須磨彌吉郎君       上林與市郎君    福田 昌子君       細迫 兼光君    加藤 勘十君       河野  密君  出席政府委員         外務事務官         (欧米局長)  土屋  隼君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 三月二十二日  委員三浦寅之助君辞任につき、その補欠として  佐々木盛雄君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 三月二十日  国際砂糖協定批准について承認を求めるの件  (条約第一二号) 同日  在外未帰還同胞帰還促進等に関する請願(吉  川久衛紹介)(第三六六二号)  高須海岸米軍演習地設置反対に関する請願(  永田良吉紹介)(第三七七〇号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助  協定批准について承認を求めるの件(条約第  八号)  農産物の購入に関する日本国アメリカ合衆国  との間の協定締結について承認を求めるの件  (条約第九号)  経済的措置に関する日本国アメリカ合衆国と  の間の協定締結について承認を求めるの件(  条約第一〇号)  投資の保証に関する日本国アメリカ合衆国と  の間の協定締結について承認を求めるの件(  条約第一一号)     —————————————
  2. 上塚司

    上塚委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリ合衆国との間の相互防衛援助協定批准について承認を求めるの件外三件を一括議題といたします。これより各協定について逐条審議を行うことといたします。  この際、加藤勘十君より緊急問題について発言通告がありますから、これは許します。加藤勘十君。
  3. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 先般ビキニ島環礁において、原爆水爆かわりませんが、実験をせられて、その原子放射能被害日本漁民諸君に及び、さらに第五福竜丸その他の物質に大きな被害を与えたことはすでに明らかにされておるのであります。最近聞くところによると、アメリカ側からこの被害船舶である第五福竜丸横須賀に回航せよという要望でありますか、申入れであるかそれはわかりませんが、いずれにしてもアメリカ管理の下に置こうというような申入れがあつたということでありますが、これはとんでもない話でありまして、日本にとりましては原爆被害の第三次に当るものでありまして、その原子放射能のしみ込んだ船体は、今後の原子力研究にとつては大事な大事な資料であります。日本学者の言明するところによれば、日本原子力研究能力世界水準に達しておるということを、確信をもつて言明されておるのであります。その日本の学界の原子研究に関する世界的水準に達している能力を無視して、日本の貴重なる研究資料である被害船舶アメリカ側に渡すというようなことは、断じてあり得べからざることであるし、もしそういうことになれば、日本学者権威を、また学問権威を傷つけることになると思うのでありますが、この点に対して外務省アメリカ側からどのような申出を受けられたのか、まずこの点を明らかにしてもらいたいと思います。
  4. 土屋隼

    土屋政府委員 実はこのビキニ島の被害に関する関係アジア局の所管でございますので、詳細はそちらでお確かめいただきたいと思いますが、私もせつかく出席しておりますし、他にその関係政府委員もいませんので、私が承知しておる対アメリカとの関係についての御回答だけを申し上げまして、残りました点は後日アジア局長からまた補足的に御報告申し上げる機会があるかと思います。  実はただいま加藤さんからの御質問の件は、多少おつしやる内容と実際上と違つておる点もございますので、概略を申し上げますと、あの福竜丸が帰りましてから、福竜丸自体放射能をどの程度つているのか、どういう危険があるのかということにつきましては、実は日本側においてはかなり心配をいたしておりますし、特に現地では物見高いいろいろな人たちがあれを見に来るという関係もありまして、この取扱いについて、現地では確たる標準がございませんので、非常に困難を感じまして係の者また県の方も東京に見えまして、ああいう問題につきましての船の取扱い方をどうしたらいいか、またその危険防止についてはどういう措置をしたらいいかということについての相談がわれわれの方にもございました。そこで水産庁海上保安庁関係方面とも相談してみたのですが、当方では別段さしあたりの具体的な名案というものはなかつたわけであります。そこでアメリカ側の方でも調査をすでに申し込んで来たいきさつもございますので、私どもの方では、実は現地ではこういう心配を持つているのだがどうしたものだろうかというので、一応意見を聞くという意味で非公式に話してみました。これに対しましてアメリカ側から、たしか金曜日だつたと思いますが、これも非公式に、もしそういうことであれば実は横須賀海軍には、アメリカ海軍関係原子力専門家もいることだから、ここに船をまわしてもらつて、その船から放射能を全部とつたものにしてお返しするということはどうだろう、こういう話がありました。そこで現地意向を伝えましたところ、現地の方では場合によつてはそれも一つ方法だが、さてその間船も使えなくなるし、今おつしやつた日本側資料として見たいという関係もその後出て来たといういきさつもございまして、本件はまだ先方に渡してそれを見てもらう、あるいは放射能をとつていただくということについては、具体的な条件内容がはつきりいたしませんので、今話はそのままになつているというのが現状でございます。
  5. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 被害船舶はもとよりのこと、被害者につきましても、これは日本におきまして十分に研究調査し、さらに治療に当らなければならないのでありまして、これをアメリカ側に引渡すというようなことは、学問権威を失う大きな問題でありますから、この点については、もしそういうような交渉があつたにしましても、断固としてこれを拒否して、もしアメリカ側でも研究したいというならば、日本学者管理のもとにアメリカ側をこれに参加せしめるということは、これは学問世界的自由という点から許されることでありましようけれどもせつかく日本の貴重なる資料を向うの管理に移してしまうというようなことだけは、断じて阻止してもらわなければならぬから、この点については、交渉の直接の衝に当られる外務省としては十分に心得ておいて、そういうことのないようにしてもらいたいと思います。この点について、まず一応外務省当局の決意のほどを承りたい。
  6. 土屋隼

    土屋政府委員 お話の点は私どもも伺いまして、非常にもつともな点もあると思うのであります。現実日本側としてどういう調査をしておきますか、また今言つたアメリカ側の参加について、どういう具体的な点ができますか、これは厚生省その他関係方面もございますので、お話趣旨を十分に胸に体しまして、今後の折衝につきましては注意を払つて行きたいと考えております。
  7. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 これは直接外務省だけの問題ではなくして、本来は政府の仕事として総合的な調査研究機関を設けてもらいたいと思うのです。関係するところは厚生、文部、通産、農林各省広汎にわたつておりまして、どの一省においてもこれをどうするということはできぬ関係でありますから、政府においてそういうものを総合的に調査する機関を設けることが必要でないかと思いますが、これは外務省から御返事を聞くことは困難と思いますから、返事は聞こうと思いません。ただ問題は、聞くところによると、シベリアでも原子爆弾実験されておる。学者の説によりますれば、シベリアでもし今度のビキニ島における実験と同様の実験がなされるとするならば、原子放射能を含んだ灰塵芥等日本に三日目で来る、そしてその塵芥なり灰なりは世界を一週間で一周するそうです。そうしますと日本には三日目に一回来て、また一週間目に一回来て、結局一週間のうちに二度われわれは原子放射能を含んだ灰なりあるいは塵芥なりを浴びなければならぬ。こういうことになるとしますと、日本のようなこんな海洋の中の孤島で、シベリアからは三日目にその灰がまわつて来る、太平洋側からは、今度の場合は被害者が持ち来したものでありまして、一般には被害はないのでありますけれども、将来風の関係によつてどういうことになるかわからない。これはわれわれ日本人にとりましては非常な恐怖に値することなのです。従つてこういう点に関しましても、もちろん私どもも十分に研究をし、もしある一定の塵芥かあるいは灰が風の関係で参りましたときには、これが都市に降下したとかあるいは農村に降下したような場合には、その降下するについて、まず第一に、どういう方向にその灰なり塵芥なりが吹かけれて来るかという方向を察知しなければならないし、万一それが降下した場合には、これをどうすれば排除することができるか、そこから人々はどうすれば退避することができるか、こういうふうな問題を検討しなければならない必要に迫られているわけであります。こういうことも、もちろんこれは外務省だけではできることではありません。従つて私は外務省から聞こうとは思いませんが、政府に対してきよう実は私どもは党として申入れをいたしました。官房長官も、あしたの閣議に持ち出して何とか適切な方法を講じたいという返事をしておりましたけれども、私どもはこういう点についてはいたずらな恐怖心を抱くのでなく、十分に学問的な対応のできるような措置が講ぜられることが必要であると思うのです。そういう点から当然これについては、政府としては予備費の中から必要な経費を支出して、総合的な調査の対策を講ずる必要がある、こういうように思うのでありますが、外務省におかれましても、アメリカとの関係において、今後さまざまな損害賠償の問題であるとか、いろいろ問題は起るであろうが、その中で一つ見のがすことのできない重要な問題は、今度の——原爆水爆かはまだ学者でもわからぬそうでありますが、推定としては水爆と推定することができる。しかし分析の結果は非常に複雑であるから、水爆原爆両方の要素が含まれておるということも学者によつていわれております。いずれにしても、今度の実験は主として降灰の中の放射能反応調査するというところにあつたとしますれば、当然アメリカ政府としてはその危険区域と思われる区域ばかりでなく、もつと広い範囲にわたつて退避事前警告が発せられなければならなかつたはずでありますが、この点に対してどの程度範囲退避通告されて来ておるのか、その点明らかにしてもらいたいと思います。
  8. 土屋隼

    土屋政府委員 ただいまの退避の問題につきましては、当時アメリカ側とつ措置につきまして当方からも質問を出しました。これに対して、先方からの回答によりますと、危険区域指定された地域の上をB二九がまわりまして、いわば警戒を与えたというのが現実アメリカとつ措置のようでございます。ただいままでの調べによりますと、今回被害をこうむりました日本漁船は、その危険区域から大体十九マイルくらい離れていたものだというふうに見られますので、せつかく事前警告漁船に及ばなかつたのではないかということが考えられるわけであります。アメリカ側が今度危険地域拡大をいたしましたが、この危険地域につきましては、今後アメリカ側として、責任を持つてこうした実験なり何なりをする際に、当然予告を与える性質を帯びて、危険区域拡大をしたものと思われます。また今回そういう警告事前にしたにもかかわらず、その外にあつたものが被害をこうむつたというのは、明らかに危険地域指定自体が狭過ぎたのでありまして、従つて何らかの形でアメリカが予測なりあるいは観測を誤つて危険区域の狭い中で済むとこう安心していたところに誤差があつたのではないかというようにわれわれは考えます。従つてそういう点が確定しますと、アメリカ側十分責任をとるべき性質のところが出て来るのであります。こういう点を私どももよく見わめて、アメリカとの問題は今後本件の善処にあたつて交渉を続けて行きたいと考えております。
  9. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 一面から見ますと、こういうことも言われるのです。つまりアメリカが今度の実験で主として原子灰研究するということであるとすれば、その降灰危険区域と思われる範囲内に何らかの物体があることが必要だ。何にもなくて海上に落ちたのでは、反応を見ることはできない。物体があることによつてその反応を見ることができる。こういう点から意識的に警告範囲を狭めたのではないか。これは邪推といわれないこともないかもしれませんが、被害者側のわれわれの方からとしては、そういうことも言い得るわけです。もちろんアメリカでも実験でありますから、どの範囲まで危険を及ぼすかということはついては、わからなかつたということもありましようけれども、こういう場合には、普通から行くならば、かりに百マイルが危険区域とするならば、百二十マイルなり百五十マイルなりに範囲拡大して、警告を発することが常識ではないか。それが逆に、危険区域外にあつたものがその被害を受けておるということになりますと、そういう邪推といわれてもしかたのないような推測がしたくなる。これは人道上の大問題でありまして、今後アメリカ側と各般の折衝をなされる場合に、そういうようなことについても、おめず臆せず大胆に、われわれ日本国民としての感情をぶちまけて、そして向う側の注意なり反省なりを求められることが必要ではないか。このように思うが、外務当局はどのようにお考えになつておるか。
  10. 土屋隼

    土屋政府委員 ただいまのお話は、邪推かもしれないがという前提でございますが、かりにわれわれがそういう邪推をしやすいようなことをアメリカ考えていたということになりますと、今後話し合つても、アメリカとしてはそういう考え方を依然として捨てないということになつて、はなはだむずかしい問題になると思います。ただ私どもが今までこういう問題、あるいは類似の問題につきまして話をして参りました場合、アメリカ側態度を見まして、アメリカにそうした故意の考えから無辜人たちにも損害を及ぼして、それを調査しよう、つまり専門語で申しますギニア・ピツグに日本を使おうというような考えがあることは、私はちよつと想像が——想像するにしても、根拠が合理的ではないじやないかという気がいたすのであります。現にアメリカ側は、累次の公示の中で危険区域指定しておるわけで、現在まで何回も行つた実験の中で、こうした不幸は起らなかつたわけであります。今回使つた爆弾なりあるいはこのときの種々の状況なりが、従来使用しておるアメリカ側の用心を超えたものであつたということはまず想像できますが、それがこういうのであつたというふうに想像するのは、私どもから見まして、ふだんのアメリカ態度から見てちよつと当らないと思います。しかしながらそれはどちらも想像範囲だと思います。従つて今後調査の結果をまつて事実が確認されるわけであります。もしアメリカ側に、無辜の民にもなおかつそうした実験の効果を及ぼしてみたいという考えがあるというようなことがはつきりいたしますれば、当然日本としてはそれに対する責任を問わざるを得ない、私は万々一そういうことはあるまいと考えます。また現に従来の実験その他の報告が出ておる範囲から判断いたしますと、アメリカといたしましては、そういうものについて十分の手当をして、廃船なり何なりを使い動物をそこに置いてすでに実験しておるのが現状でございますから、今後こうした不測の事態が起らないように万全の措置をするだろうと考えております。
  11. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 そこでこういうような問題がわれわれ同胞の上に及んだということは、実に悲しむべきことでありますし、今後はこういう事態を一掃するということにお互いに努力しなければならないと思います。そういう点においてわれわれは原子爆弾三度、大小の被害を受けておるのでありますから、原子力使用の問題について、有力な発言者であるということは、世界すべての者が認めておるところであると思うのです。現在原子力国際管理の問題が議論されておるようでありますけれども、それはそれとして、原子力を保有した数箇国の間において、相互に自己の利益を中心として話合いがなされておる、こんな状態ではいつまでたつて原子力の問題について、話は容易につくまいと思います。そこで当然こういう問題に対しては、国際的な、ほんとう世界平和の機関でその役割を果たそうとするならば、国際連合こそは最も適当な機関でなければならないと思う。ゆえに日本としましては、原子爆弾被害者として、原子力国際管理の問題や、原子兵器使用禁止に関する問題や、原子兵器実験をする場合に、国際管理に移して、ほんとうに国際的な共管のもとに、人類被害を及ぼさないような方法によつて実験がなされるということがぜひ講ぜられなければならぬ、その場合に日本は有力な発言国一つとして、そういうことを国際連合に、たとい日本国際連合に入つていなくても、世界人類から災害を除くという意味において、積極的に申し入れるべきでないかと思いますが、外務省はこの点についてどのようなお考えをお持ちであるか、それを聞いておきたいと思います。
  12. 土屋隼

    土屋政府委員 ただいまおつしやられました御趣旨には、私ども事務当局として全面的に賛成でございます。今後国際連合なり、あるいはそういつた機会をねらいまして、日本側意向なりあるいはわれわれの考えているところを十分に実現するようにということは、当然政府として考えなければならない問題のように考えられます。よく上司とも相談いたしますが、何らか適当な措置を講じたいと考えております。
  13. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 ただいまの欧米局長の御答弁で、大体外務当局の御趣旨はわかりましたが国際的な問題でありますから、相当政治的にも考慮しなければならぬところがありますので、外務大臣直接の言明を得たいと思いますから、外務大臣答弁に対しては保留をしておいて、私の質疑を終りたいと思います。
  14. 上塚司

  15. 並木芳雄

    並木委員 第五福竜丸の処理については外務省はどうお考えですか。アメリカの方の横須賀海軍基地へこれをまわして保護してもらうということをやらないならば、第五福竜丸現状通りですか。現状通りではあぶなくてしようがないということであるならば、どういう処置をとつてこれを保護しますか。
  16. 土屋隼

    土屋政府委員 ただいままでアメリカ側との話合いというのは、先ほど申し上げましたように、具体的に今後共同調査なり、あるいは先方人たち調査させるということについて、条件その他につき現地の方で意見がまちまちのようでありまして、具体的に交渉が妥結いたしません。その内容がはつきりいたしますれば、現地人たち、特に福竜丸関係、並びにこれを管理しております県、警察の関係人たちと十分に協議いたしまして、その受諾し得る条件で場合によつてアメリカとの共同調査ということもできるかもしれません。もしまたこの交渉が成立いたしませんことになり、どちらかの意向が相手方にいれられないということになりますと、本件措置につきましては、急遽やはり日本側として考えなければならない問題であろうと思います。従つて学者なり関係者なりの意見を聞いた上で、遺憾のないように、そうして関係者の利害も害さないようにということを考えて行かなければならぬと思つております。
  17. 並木芳雄

    並木委員 先日のビキニの爆発は、水爆であるか、原子爆弾であるかということについて議論がわかれておりますが、結果はわかりましたか。
  18. 土屋隼

    土屋政府委員 被害者に対する手当その他の関係もございますので、日本側関係者から、あの爆弾性質、もし性質が言いにくいならば、その手当についてどういう手当が必要であるかということについて正式に通報してほしいということを外務省からも申し入れてあります。現在までのところまだ確実な返事はございませんで、大体こういう手当がいいのじやないかというような、現地限りの、アメリカ原爆被害調査委員会が来ておりますので、これからの注意がございましたが、その程度でございまして、正式の返事はまだございません。
  19. 並木芳雄

    並木委員 この間の漁船区域外にあつたということは、アメリカ側によつて確認されましたか。
  20. 土屋隼

    土屋政府委員 これは日米両方が確認し合つたものを見せ合うということになりまして、日本側としてはその大体の確定をいたしましてアメリカ側に伝えてあります。アメリカ側は、まだワシントンの方からこれに対するアメリカ側の確実なる確定という返事が来ておりませんので、従つてアメリカ側確定はまだないものと存じております。
  21. 並木芳雄

    並木委員 日本側は何に基いて確定をいたしましたか大体航海日誌に基いてであろうということですが、その通りですか。
  22. 土屋隼

    土屋政府委員 航海日誌ももちろんでございますし、それから乗組員操業状態、それから従来の操業の実績、それから当時いたであろうと思われる、あるいはとつた魚についてのいろいろの研究、各方面から関係者が全般的に寄りまして、大体の地位を確定し得たというのが現在の状況ででございます。
  23. 並木芳雄

    並木委員 昨日アメリカ通告ですか何ですか、この次の実験に備えて危険水域拡大するということが発表になつております。これは外務省も入手されましたか。
  24. 土屋隼

    土屋政府委員 これはたしか土曜日だと思いますが、アメリカ大使館から書類が外務省に参りまして、あの地域につきまして本年の六月三十日まで危険地域指定をするという通告がございました。内容は新聞でごらんになつたところとかわりありません。
  25. 並木芳雄

    並木委員 そういたしますと、大分範囲拡大されれております。私は土曜日に外務大臣に対して、ぜひこの次の実験は延期してもらいたい、さしあたつてこの次のだけでも現在の調査が済むまでしばらく延期してもらいたいという要望をしたのでおります。ところがそのやさきに危険区域拡張通告参つて日本政府がそれを黙つて受取つておりますと、そのまま有効になるのじやないかと思います。私は報道にありましたように、ああいう広い地域危険区域にされるといういうことは、公海自由の原則からも認めがたいことであると思いますので、この際外務省としては、これを認めることができないということを、アメリカ通告する御意思はありませんか。私は当然あつていいと思うのですが、いかがですか。
  26. 土屋隼

    土屋政府委員 公海上に危険地域設定ということにつきまして、法律上また従来の慣習上についての御説明は、すでに下田局長からいつか申し上げたと思います。今回は範囲拡大されましたので、その点でまた一つの問題があるということにはなりますが、ただわれわれの結論から言いますと、危険地域であり、立入り禁止区域でございせんから、実験の前に当然事前予告があり、従つて危険が防止できるということを承知いたしますので、この危険地域につきましては、地域自体設定に抗議を申し込むということは、今のところ考えていないのであります。ただおつしやるように、長い間こういう地域危険地域として指定されますと、勢い日本の漁業その他に関係を持ちます。そこで私ども水産庁とも目下話合い中でございますが、日本漁船が行かない、行くことが非常に危険だということによつて、どのくらいの損害をこうむるか、またもし漁期があるならば、この漁期とのにらみ合せはどういうふうになるか、ここらの現実の点を調べております。従つて現在非常に活発な漁期であり、それがために日本の漁業の受ける被害が非常に多いということになりますと、これはアメリカ側話合いをいたしまして、実験その他にも十分考慮していただかなければならぬだろう、こう考えております。目下そういう研究をいたしておりますので、現在どういう申入れアメリカにするかということは、今のところまだ確定はいたしておりません。
  27. 並木芳雄

    並木委員 アメリカの方では今後事前通告をするということを約束したようであります。非常にけつこうだと思います。事前通告というのは実験の幾日前にやるということですか。
  28. 土屋隼

    土屋政府委員 これは実験自体が相当やはり機密を要するものでございますので、非常に早くから事前通告をするということが、向う側としてもしにくい事情もあるようであります。といつて、あれだけ大きい地域でありますから、危険地域内にあるものが、事前通告を受けてその外に出る時間がないということはあり得ないと思います。従つてそこからある意味の、事前通告すべき時間というものはきまつて来るだろうと思います。言いかえますと、危険地域日本漁船がいたとして、これが事前通告を受けて、その持つている自分の動力で危険地域を脱し去るだけの時間的余裕はあるように、事前通告は当然あるものと承知いたしております。
  29. 並木芳雄

    並木委員 大体次回の実験は、報道にあります通り、二週間以内に予定通り行われるのでありましようか、それとも次回はいくらか延びるというようなことがありますか。この次の実験について今まで外務省に入手した情報はどうなつておりますか。
  30. 土屋隼

    土屋政府委員 次回の実験につきましては、遺憾ながら私どもは情報も何も持つておりません。
  31. 穗積七郎

    穗積委員 関連しまして最初に土屋さんにお伺いします。先ほど、今度の被害者の治療のために、アメリカ側に対して放射能性質、治療の対策等について、具体的に向う側に親切な資料の要求をされたということを伺いましたが、まだそれに対して返事がないということで済ましておられるようですが、もしアメリカが人道主義を主張しておられる国であるならば、私ははなはだ意外に思うのでございます。ただいま東大の清水外科に入つておられる増田さん外患者の方の治療につきましては、この原因、放射能性質がわからないので、それを探しておりますと、やはり一日でもおそくなればおそくなるほど、病原に対する対策が遅れて、実は被害がひどくなる。日本の医師の方々はその放射能性質並びにその対策に対して、具体的な資料を早く手に入れたいという焦燥を感じておられるようですが、にもかかわらずいまだに便々としてそういう返事がないということになりますと、先ほど加藤委員からお話がありましたように、多少ここでまた危惧を持たなければならない。それは何かといえば次の二点でございます。一つは、日本人というものを原子科学の試験用のモルモツトくらいに考えているのじやないか。ですから、これらの被害者に対しまして、肉親同胞の者が案ずるほど、それほど心の痛さも焦燥も感じていないから、これから調べるのじやなくて、使つた放射能なり原子の性質というものは、向うは万々承知の上で、こちらから電報をもつて聞けば、電報をもつて答えられるはずなのにかかわらず、それをやらない。しかもまた聞くところによりますと、アメリカの原子委員会からよこしました医者は、病理の医者であつて、治療に対しては必ずしも有能な医者ではないように聞いております。これらをよこすことによつて、治療並びに消毒、つまり原子放射線を早く撤去する、そして日本調査のいとまなからしめるというような意味で、言いかえますならば、一つは秘密のため、つまり日本人というものを信頼していないことの現われだと思いますが、秘密を保持するため、もう一つは、その犠牲のためには、日本人の財産または生命というようなものは、それほど重く見てないということの歴然たる証左ではないか。実はこれはさつき加藤さんも言われて、そういうことは毛頭想像がつかないというふうに局長はおつしやいましたが、この被害をこうむりましてから、今の治療の問題についての時日の経過を見ておりますと、そういう危惧すら私どもは感ぜざるを得ないのでございます。どういうわけで遅れておるのか、それに対して一体何回催促されておるのか、その間の事情についてもう少し責任をもつて、良心的に実情をお教えいただきたいと思います。
  32. 土屋隼

    土屋政府委員 実は私先ほど申し上げましたように、大体の経過は承知しておりますが、いつ何回催促したかという点につきましては、申し上げるだけの資格がございませんので、これは後刻調べますけれども、私の承知する限りにおきましては、当方から矢の催促をいたし、先方もこれを十分に了といたしまして、アメリカ側に電報を打つなり、連絡をしておると思いますが、何しろ兵器自体の性質というものが非常に極秘の性質のものでありまして、そういう関係上、当方にどういう爆弾だということをはつきり言つて来るということが、今のところ時間をとつておるというのが実情であろうと思います。この点について私の想像を入れませんので、よくあとで調べてみます。それからアメリカ側が、日本の人にそういつた被害を及ぼしておきながら、これを実験台にしておるのではないかという危惧、これは私は先ほど来常識的にそういう危惧は持たないでよいのではないかと申し上げましたが、しかし人の腹はわかりませんから、ここらについても、私らも十分に考えみなければならぬことだと思います。先方が今まで尽しておりますことで、特に穂積さんから原子爆弾調査に来ておる医者は、病理の方は承知しておるが、治療の方は心得ておらないという話でありますが、これは実は先方から初めからそういう話がありまして、広島などで原爆被害調査をしておりますのは、病理学の人ばかりで、実は治療の医者ではございません。これはいきさつがございまして、治療の医者を置こうかという話もありましたが、日本側にも来にくい事情がありまして、遂に治療の医者というものは来ていなかつたのであります。今回も治療の医者がもう間に合いませんが、アメリカ側から必要があればいつでも飛行機で送りますという申出がありまして、そこでもし当方で何か必要があり、非常に困難を感ずるということがあれば、アメリカの医者に来てもらうこともいいのではないかというようにわれわれも考えております。
  33. 穗積七郎

    穗積委員 その材料提供の交渉は、大使館を通じてやつておられるのでございましようか。
  34. 土屋隼

    土屋政府委員 さようでございます。大使館を通じてであります。実は先日も大臣から御報告がありましたように、ハル司令官から軍の中に専門家もおるから、共同の治療に当ることにわれわれの方としては喜んで応ずるからという話も、ございましたので、その人にも当りまして、その人からもいろいろ意見を聞いております。いろいろ施療上その他の手当について、その人たち考えておるという話はあるようでありますが、まだその人たち手当も特効は出て来ないというのが現状かと思います。
  35. 穗積七郎

    穗積委員 実はこれは私はどうも心外のことでありますから、ひとつ強硬な態度でやつてもらいたいと思います。人道上のことであります。秘密を保持するために放射能性質日本に知らすことができないということも考えられますが、それならそれでそのことを率直に言つて、そうして病人に対しましては、おれは金持ちだ、貧乏人の小せがれを自動車でひつかけて何でも補償してやるというような式のことを言つておいて、実際は何をやつておるかといえば、今おつしやつたように治療対策なんか大してできない。日本の医者より劣つた者をよこして、大したことのないような話をしておつて、何をしておるかといえば、さつぱりなおつておらない。そうして日本の医者と本人は非常な焦燥感にかられておる。このことは戦争が済みましたから、私は何も反米的なことを言うわけではありませんが、特にそういう点は改めてもらうように——アジア人を認識しておらないというところにアメリカの悲劇があるのです。戦争中は御承知の通り、アジアにおいてモンキー狩りをやるために、そのスリルを味わうために、飛行士になれという広告を出したことは御承知の通りであります。やがてまた朝鮮戦線で十何万か傷つきますと、アジアはアジア人同士で戦わせろというように、かつてなことを言つてみたり、今度の場合もそうです。そういう考え方が一貫して特にアメリカ人にはある。そういう点はこの際、こういう具体的な問題にぶつかつたときに、われわれとしてはやはりアジア人の自主性というものを主張する必要があると私は思います。それは何もわれわれの自尊心を傷つけるからというだけじやなくて、そういう考え方でやつておることはアメリカの悲劇だと思うのであります。従つて今度の場合については、あなたの直接の担当でないから何べんどういう交渉をし、催促をした、それに対してアメリカはどういう態度とつたかということは詳しい説明ができないから次の機会にかわつた者に答弁させるということでありますから、これ以上追究いたしません。次の機会に具体的に経過をお聞きしたいと思いますから、この問題はこれだけにいたしまして、その点はよくひとつわれわれの気持をおくみとりいただきたいということだけ申し添えておきます。  次に下田条約局長にお伺いいたしますが、第一、今度アメリカはかつて危険水域なるものを拡大されて、一方的な通報をもつて得意になつておるようであります。一九四七年の安全保障理事会の信託統治協定十三条によります通報は、これは正式通報であつたと存じますが、五三年の通報というものは正式通報の手続をとつておりますかどうか念のためにお尋ねいたします。
  36. 下田武三

    下田政府委員 初めおつしやいました通報は、閉鎖区域に関する通報でございます。つまり閉鎖区域と申しますのは、債託統治地域自体並びに領海だけに限つて、そこは戦略上の理由から立入り禁止だという建前のものでございます。御指摘の一九五三年のは閉鎖区域ではございません。危険区域でございまして、これは立入り禁止とは全然違います。つまり何もそこに入るのに許可がいるというような、あるいはそこは米国の領分だと主張するような、そういう意味は全然持たないわけであります。ただ一定の線を画しまして、その線の中はあぶないぞというウアーニングの意味であります。そこでこの通報は国際水路協定に従つた慣例によりまして、これも米国の多分水路部の告示だろうと思いますが、その水路部の告示を国際水路会議の決定事項に基きまして、先日申し上げましたブユレタンに載せまして、そうして日本の海上保安庁の水路部に通報があつたのでございます。ですから政府から政府への通報ではございませんで、国際水路協定に基く各国の水路担当官の経路を経た通報でございます。
  37. 穗積七郎

    穗積委員 これは重要な点でございましてありがとうございました。岡崎国務大臣並びにあなたは、この前のわれわれの質問に対しまして、一九四七年の通報と五三年の通報は同じく信託統治協定の十三条による同様性質のものであつて、似通つたものであるという御答弁であつた。今伺いますと、クローズド・エリアとデンジヤラス・エリアといいますか、つまり危険区域というものは法的根拠を異にしております。その点を明らかにしていただいた点はありがとうございますが、この際お願いしておきますが、アメリカ側からの両通報の全文を資料として文書で御提出していただきたいと思いますが、よろしゆうございましようか。これは秘密ではないと思います。
  38. 下田武三

    下田政府委員 これは別に秘密の書類じやなかつたと思つておりますが、念のために確かめて、秘密でないものでございましたら、本委員会に提出させていただきたいと思います。
  39. 穗積七郎

    穗積委員 ありがとうございました。そうするとあとの一九五三年の危険区域の通報というのは、信託統治協定十三条による正式正当な通報ではなくて、国際海上のお互いの何といいますか信義のために、道路でかつてに何か危険なしかけをやつて何かやりたい、だから通行人をしばらくどかしてもらいたい、お互いのためにちよつと遠慮してもらいたいという意味の通報であつて、信託統治協定十三条に、よります立入り禁止の法的なものとは全然通うと思いますがそう解釈すべきものであることは疑うまでもない。ところでそういうものが無期限に無制限に、公海の自由すなわち航行の自由、漁業の自由を禁止するような法的根拠をいつまでも継続せしめることは、はたして国際法上の慣例、通念といたしまして妥当でございましようか、われわれ多くの疑念を持つておるわけでありますが、御所見を承りたい。
  40. 下田武三

    下田政府委員 実は類似の例はほかにもあるのでございまして、公海上でよその国の船舶に影響を及ぼすような行動は、たとえて申しますと日本自身にもあつたのでございます。戦前日本海軍がございましたときには、公海で実弾射撃演習をずいぶんやつたことがあります。そういう際どうしておつたかと申しますと、当時軍艦の大砲のたまの飛び得る範囲は大体三万メートルでございますから、従いまして大体艦を中心といたしまして六十キロの円の中が危険区域になるわけでございますが、その場合には、東京におります外国の海軍武官を通じて、日本海軍はどこどこの公海で演習をやるから危険であるという通告をいたしたのであります。ちようど性質においてはそれと同じであります。ただ艦隊は動きますけれども、島は動かないという差異がございますので、艦隊の場合にはコンスタントなラインが引けないのでありますが、信託統治の場合にはコンスタントなラインが引けるだけの差でございます。そこでアメリカの告示でも、ただこれがあぶない区域であるというだけにとどめまして、そこに入つちやいかんとかいうことはは全然言つておりません。そして危険区域内で万一人命、財産に対する損害が起らないために、あらゆる可能な予防手段がとられるであろうということも言つておるのでございます。そうして事実その実験のある都度、その前に先ほど欧米局長が申しましたB二九による空からの警告等も行われておつたのでありまして、その点は今までのところ何らの事故なく行われておつたわけでございます。   〔委員長退席、富田委員長代理着席〕 ただ一回、この危険区域日本漁船が入つて来たことがございまして、聞いてみましたら、危険区域であるということをその日本漁船は全然知らなかつたいうことがわかりまして、これは日本の水路部からも告示されておるので、知らないはずはない、知らないで入つて来ることがあるとあぶないからというので、連絡があつたことがあるそうであります。そのときは実験をやつてつたときでないので、何ら損害はなかつたのでございますが、要するに艦隊のときにも危険区域現実にあるのですが、それが艦隊とともに動いて行く、コンスタントな線が引けない、信託統治の場合にはコンスタントな線が引けるという差異であつて、その法律的効果は私は同じことだろうと思うのであります。
  41. 穗積七郎

    穗積委員 先ほど言いましたように、信託統治協定十三条によりましてクローズド・エリアとして指定しますものは、領土並びに領海に限る、これはこういうことでございますならば、ある意味でそれを撤回するまではそれが有効であるということを考えてもよろしゆうございますが、今御引例になりましたような、かつて日本の艦隊が実弾射撃の演習をする場合に、その海上において他の通行人に対して信義上遠慮してもらいたいというようなこと、今度の水爆実験もそうでございますが、そういう性質のことか信託統治協定の十三条の除外規定と同様に取扱われて、しかも永久無制限に、内容的にも非常に危険の伴いますものが許されるということは、これは国際社会の通信念上考えられない。これは釈迦に説法でございますが、局長は言うまでもなく信託統治——われわれの市民生活におきましても、所有権絶対の考え方がございまして、使用、処分、収益はかつてだ、こう思うのでありますが、それにいたしましても、やはり公共の福祉に著しく反するような行為の場合には、そういう使用、収益、処分の権能というものは実は認められていないのでございまして、社会全体の立場というものが常に考えられなければならない。国際法におきます権利義務なんというものは、ましてそういうものでなければならないと思います。太平洋のどまん中へ入つて行きまして、そうしてそこで交通漁業の自由、それをしかも期限付なしで、しかも危険きわまることをやるというようなことは常識上考えられない。社会通念上考えられない。私が申し上げるまでもないことで、当然下田局長はそういうふうに法理的にもお考えになるだろうと思いますが、いかがなものでございましようか、ちよつとおかしいと思うのです。どう考えましても、こういうものが無制限に一方的通告で成り立つということになりますと、公海の自由の原則というのは現政府の唯一の金看板で、ばかの一つ覚えみたいに公海自由の原則、公海自由の原則で、李承晩ラインの問題でも、アラフラ海の問題でも言つておるのが、相手が強いと思うと、無鉄砲なことをされて、それに被害もこうむつておるにもかかわらず、それに対して一言の発言もできないというのは、法的根拠もないものに対して、おかしな話だと思う。あなたが今御引例になりました、かつて日本艦隊が演習するときに、それを危険区域として指定して、他のものの協力を求めたという場合と、わけが違います。だからもし原子兵器の試験をされるなら、そのときだけの相手の承諾を条件として、そういう公海を使用することの自由、これも根拠は信託統治協定じやなくて、むしろ公海使用の自由の原則によつて、それはお互いに譲り合う、こういうことが当然の通念だと思う。そこで使用の都度やつて使用が済めば、ただちにその権利は消滅する、こういうのが当然だと私は思うのです。こんな無鉄砲なことを今度また水域を拡張しやるそうでありますが、そういうことは私は許されざることだと思うのですが、いかがなものでしようか。ひとつ率直に言つていただきたい。私はどうしても承服できないのです。
  42. 下田武三

    下田政府委員 国際法上のいろいろ原則がございますが、なかんずくこの公海自由の原則は、日本にとつて最も重要な原則でありますことは、申すまでもないことでございます。そこでアメリカがこういうことをやる権利があるかどうかということで、ございますが、これはやはりしいて法律的根拠を求むれば、穂積さんの御指摘になりますように、ちようど軍艦で実弾射撃演習や艦隊演習を公海でやつていいと同じ意味で、公海使用の自由——ただ実験自体に公海でやるのではなくし、環礁の上でやるのでございますけれども、影響が公海に及ぶ点で、やはり公海使用の自由の一形態になると思います。そこで国際社会でも国内社会と同じように、権利というものは、なるべく他人に迷惑を及ぼさないように使わるべきだという大原則がございます。しかし今日の段階におきましては、原子力管理が米ソの対立によつてできません以上は、そうして両方とも原爆実験というものに邁進いたしております現状におきましては、原子爆弾実験をやめろということは言えないだろうと思います。これはアメリカもソ連も両方とも、それじや実験はやめようじやないかという話が幸いに成立しますれば、まことにけつこうなことでございますが、今日両方とも実験をやつて、ますます威力のある兵器をつくろうと思つて、夢中になつておる悲しむべき事態でございますので、片一方に向つてやめろとは言えないだろうと思います。要するにアメリカといたしましては、世界で一番大きな大洋のまん中で、一番人間や財産の少いところを選んだつもりでございましようが、日本といたしましては、おそらく世界の中で一番影響をこうむる国でございますから、日本の漁民なり船舶なりに影響を及ぼさないように話すことは、十分いたさなければならないと思いますが、やめろというようなこと、お前の方は権利の不当行使だというようなことは、現段階においては言えない、つまり問題は、日本船、日本漁民に被害が全然及ばないようにやつてもらうという以外しか、ないのではないかというふうに存じております。
  43. 穗積七郎

    穗積委員 今度の水域拡張のアメリカの通報は、どういう手続根拠によつてつたのでありますか。
  44. 下田武三

    下田政府委員 これは原文がどういう書類だつたか、それを見ておりませんから、内容はわかつておりませんけれども、おそらく今までの例と同じように、米国の水路部の告示か何かでやるのではないかと思います。それが国際水路協定に基きまして、日本にも通報されることになると思います。
  45. 穗積七郎

    穗積委員 これはしかしかつてに期限をつけてやるということが、私はどうも考えられないので、その権利行使そのものが、少し権利の濫用じやないかと思うのです。ですからそれを行使する場合に、われわれの方の船舶または人員に危険がないようにやつてもらいたいという方法論について、要望を申し述べられるだけでなしに、これは公海使用の自由に対していささか権利の濫用だと思うのです。それはお互いでございますから、相手の自由を認めないで、自分だけ自由を認めることは独善でございまして、自由でもなんでもない。ですからどうもおかしいと思う。その点は岡崎さんはあまり当てにならぬかもしれないから、吉田さんにわれわれの意図も報告されて、この公海自由の原則の一方的濫用というものは、この際一本やつておきませんと、特に島国に住んでおるわれわれとしては、公海に多くの生活の基礎を求めようとする民族にとつて、ゆゆしい問題だと思うのです。公海自由の原則はどんどん消滅しておる。ごく最近の傾向はみんなそうです。実質的な領海の拡張である。こういうことになつて来ております。しかも法的根拠のない、一方的な水路協定により、水路部の通報で各国に知らせるだけのことで事足れり、そんなばかな話は決制下においては考えられないことでございます。ですからこれ以上私は申し上げませんが、その点をひとつよくやつていただきたいと思います。  続いてあと一点まだ残つております。それはこの前の一九五三年の通報と、それから五二年にあつたとも伺いましたが、そのときの漁民に対する通達の方法、経過、これをこの前お尋ねいたしまして、よく調べて後にお答えをするというお約束でわかれておりまして、まだお答えをいただきませんが、事のついででございますから、この機会にお尋ねいたしておきたい。それが一点。  第二点は補償問題でございます。これは大体先ほど来のお話によりまして日本船が危険区域外にあつて日本の船は無責任、無過失であつたということはわかつたわけでございます。そうでありますならば、アメカは包み金でやろうとしておるようですが、それが包み金でも満足なものでありますならば、これは何も事荒立てて損害賠償請求権を行使して損害補償料としてとらなくてもいいと思います。しかしもしそれが足りないような場合におきましては、当然司法裁判所に提訴するなり、あるいはその前に単独交渉によつて日本政府が向うの政府に要求しなければならぬと思いますが、補償に対する標準、範囲——範囲と申しますのは、これは重要でございます。今申しました通りに、まだおそらくは直接被害者以外の間接被害者というものは出ておらぬと思いますが、たとえば放射能を持つたまぐろを食つた者もあるかもしれません。それを食いましても、きよう食つて、あした反応が出るわけじやない。恐るべきものが十数年の後に出るようなものもあろうと思います。それが後にわかつた場合に——直接被害者に対する補償金を払いますときはまだわからないが、後にそういう形で間接被害をこうむつた者、これに対する補償の問題も一本入れていただきたいと思います。補償の範囲というのはそういうことでございます。  さらにもう一つは、今お話にあるように、無制限、無期限にどんどん危険水域拡大して参りますれば、漁業権の侵害になると思います。公海自由の原則、漁業権の侵害になる。そうなりますと、その漁業権の行使の損害賠償請求というものは当然できるわけでございまして、そういうことも一体損害賠償請求の範囲としてお考えになつておるかどうか。それを直接被害者に対する損害賠償の問題を話をされるときに、事前に同時にそれを一本入れておくべきだと思います。それらのことについて一体どういうふうにお考えになつておるか。  それから基準と申しましたのは、この前お尋ねいたしましたように、国際的に見ても、国内的な補償の基準から見ても、十分な場合はこれでよろしいが、不十分な場合、そのときは、アメリカが国内ではこういうことをやつておるのだ、だからおれの方の法律通りにやるのだというようなことが万一起りましたならば、そういう場合においては、むろんわれわれはこういう国際的な事件につきましては、アメリカ国内法による補償でなくて、国際主義によつて、やはり国際的な通念、標準によつて補償基準をきめるべきだと思います。この補償基準と補償の範囲、これらについて一体どういう考えを持つておられるか、今まで何か交渉があつたのか。これから直接被害者に対する補償決定をする場合に当然申し込むべきだと思つておりますが、それに対して一体どういうお考えを持つておられるか、あらかじめ承つておきたいと存じます。  最後にもう一つお尋ねしたいのは、原始力の使用等の国際管理についての問題であります。だんだん被害が大きくなり、また近く水爆実験があるというようなことになりますと、やはり第一の関係国は日本になるので、しかもその日本人だけが世界に先んじて不幸にして水爆の洗礼を受けている国でございますから、率先して世界の人々に向つて、この原子兵器または原子力利用について国際管理をし、人類の平和と福祉のために原子力を使うような憲章をつくるように唱道する、主張する。これは当然の権利であると同時に、義務でもあると私は思いますが、それについて政府はそういうお考えを持つておられないかどうか。実は去る十九日に大阪におきまして憲法擁護国民連合の大会がございましたが、異口同音に、この案が出まして、実はこの国民連合といたしましては、国連加盟各国と赤十字社に向つてそのことをアツピールいたしまして手続をとつたわけでございますが、これは政府がおやりいただければ、さらに国際的な影響も強かろうと思いますので、重ねてこの点の決意を促しながら、その決意を伺うわけでございます。以上三点についてお尋ねいたします。
  46. 下田武三

    下田政府委員 第一点だけ私からお答えさせていただきたいのですが、閉鎖区域通告は、これは国連にやればいいのでありますが、日本政府はその写しもらつております。それから危険区域の方は、先ほど申しました全然日本船が知らないで入つてつたときに、面接日本側に連絡して来たことがございますが、これは国際慣例によりまして、米国の水路局が国際水路協定に基く事務局を経由して、日本の海上保安庁水路部に来ておると承知しております。
  47. 土屋隼

    土屋政府委員 補償の額等につきましては、まだアメリカ側の方からはつきりした通告は受けておりません。従つて見舞金のような包み金であるのか、それとも実際上の被害を算定して、その基礎の上に立つて、こまかく計算したものであるのか、ここらはもちろんわかりませんが、ただ私どもとして考えておりますのは、あらゆる被害を総括いたしまして、日本側にとつて十分であるという額でなければならないし、日本側はそういうものでなければ受けられないことは当然でありまして、従いましてその額その他について、話合いができないということになりますと、今後交渉をさらに重ねるという必要が出て来ます。その交渉がいかなければ、さらにその他の方法を講ずるということも考えなければならないわけであります。いずれにしましても将来起り得る問題として——ただいま特異な例としておあげになりました何年かたつて起るという問題も、直接の原因が今回の水爆実験あるいは原子爆弾実験にあつたとすれば、その帰属するものについてはアメリカ側責任を持つてもらうのは当然だと思います。  漁業の点については全面的な禁止ではありません。現在の段階は一応危険地域としての立入りについて注意してほしい。それから実験をします場合につきましては、事前通告をいたしますということでありますが、これが現在の漁区と見比べて、どの線になり、どうなるかということは、よほど考えてみないと、当方としては急には言えなのであります。従つてこれらの点は、今回あるいは今後の問題につきまして十分考慮に入れて、アメリカ側と話をしなければならない問題であろうと考えております。  最後に国連その他に対して、日本側の決意を訴えるという点につきまてしは、先ほど加藤さんの質問のときに申し上げましたが、事務当局といたしまして、その案と御趣旨のあるところには十分賛成であります。これが実行方法につきましては、今後十分に政府といたしましても考えた上で措置されるようにわれわれとしても努力するつもりでおります。
  48. 戸叶里子

    戸叶委員 私もクローズド・エリア、セキユリテイゾーンの問題について承りたいと思いましたが、穗積委員からの御質疑がありましたので私はやめますけれども、ただ私がどうしてもふしぎに思いますのは、危険区域というものが、今度の場合にとつて考えてみましても、当然日本に大きな影響があるにもかかわらず、一方的な考え方で、一片の通告でそういうものを決定する。しかも政府の方は、アメリカが今度は危険区域を広めて来たようですというふうな、軽い気持で受け流していられるという態度に、どうしても疑惑を抱くものでございます。こういうようなことが許されて参りますと、先ほども加藤委員が言われましたように、シベリア原爆実験なり何なりをして危険区域がだんだんだんだんと広められて行くということになりますと、日本の存在は非常に危険な方向に押しやられるのでありまして、今回のアメリカがかつて危険区域を広めて行くというようなあり方は、どう見ても国際法の通念から見ても許されるものではないということを私ども考えるのでございます。この点少し外務省のお考えが弱いように思いますので、国民が非常に心配をしております。お魚を食べられるとか食べられないとかいう問題も大切ですけれども、それよりもつと根本的な問題として、あるいは気圧の関係で爆風が日本の方に来て、危険区域が広められて来るのではないかというようなことさえも考えておりますので、こういうふうな点についても、十分にお考えの上、危険区域指定する場合、広げる場合には当然日本には影響が多いのですから、そういう国には一応了解を求めるなり、話合いをしなければ、そういうふうな危険区域設定することができないというふうな原則なりは、日本側としては固持していいのではないかと思うのですが、条約局長のお考えをもう一度伺いたいと思います。
  49. 下田武三

    下田政府委員 戸叶さんの御意見、まつたく同感なのでございます。ただ先ほど申しましたように根本問題は原子力管理の問題でありまして、これを管理し、できれば原子力を武力に使うことを全廃するということが、最も根本的な解決方法だと思います。それが遺憾ながら冷たい戦争のために実現されないために、これは実は日本だけでなくて、世界各国みんな脅威にさらされておるわけでありまして、人類がみずからの生命財産をこんなに大きく脅威するという事態に直面しながら、なおかつ今日の各国の政治家が集まつても、それをやめることができないということは、現代の悲劇であろうと思います。その点で日本は第一の被害者でございますから、各委員から仰せになりましたように日本が率先して取上げかつ最も熱心にこの国際的規制ということに努力すべき立場にあると思います。ただ純粋の法律問題といたしましては、同様の事態は先ほど申しましたように他にもあるのでございまして、先ほどは申しません例といたしましては、各国とも海岸に要塞を持つております。この要塞砲の実験をする場合にはやはりウアーニングを与える、いやしくも国際的通路に危害を及ぼすようなおそれがあれば、これは事前に通報しなければならないように国際水路協定がなつておりますので、そういう場合にも行われておるのであります。信託統治協定でクローズド・エリアにするということは、実はあれは要塞に指定したようなものでありまして、その要塞で実験するものが要塞砲でなくて、原爆なり水爆なりであるということから非常に大きな影響を及ぼすのでありまして、国際法の観点から申しますと、これは新たなる一つの問題を提供するものだろうと思います。やはりいかに自国の領地であり、自国の信託統治地域でありましても、あまりに広汎な公海の部分に影響を及ぼすという事態に対しまして、国際法は今後どういうように対処し、どういうふうに規制してくかという新たな問題を提供されたわけでございまして、これは先日も申し上げました原爆投下を含むブラインド・ボンビングの規制に関する条約、その他そういう国際条約によつてこれを規制しようという試みが、必ず国際赤十字その他でやはりテーク・アツプされるのではないかと私は思います。またそれがテーク・アツプされるように、またそれがされた場合には促進するようにということが、日本政府の立場であるべきであろうと信じております。
  50. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 関連して。新聞によりますと、またアメリカではこの間の三月一日の原爆よりもなお何層倍と大きい原爆実験をやる、それがために危険水域も広げた、こういうような報道があるのであります。この間の原爆被害が意外に大きかつたのも、専門家が予想したよりも以上の威力を持つてつたがためだ、こういうことも新聞に出ておるのでありますから、私はまた大きなやつをやつて、この次は何が起るかということについて、子供くさいかも知らぬが実は心配でたまらぬ。前にアインシユタイン博士でありましたか、水爆などで戦争をやると大気が濁つて人類のみならず地球上の生物がみんな死んでしまうということを言つたこともあります。また連鎖反応を起して、地球の表面が全部太陽のようにきららになるということを言つた学者がありまして、しかもこの間の爆発というものが当局者の予期以上の力を持つてつた、そうしてみると計算ができないものと思われる。まことにこれ世界は実に不安のどん底でありまして、これはかりにテストの爆発といえども、私は容易ならぬものだと思つておるのであります。そこでどうしても、テストといえどもこれはやはり管理しなければならぬと思うのでありますが、現在アメリカなどがやつておるテストは、ただ単なるテストではなくして、冷たい戦争の一つの手段として、力をデモンストレートするというような意味が、あまりしばしばやるのものだからあるのではないかと、実は私ちよつと疑いを持つて来たのでありますが、そういうような点は当局者はどうお考えでありますか、ちよつとお尋ねします。
  51. 土屋隼

    土屋政府委員 ただいま仰せになりました前半につきまして、こうしたいわば測定し得ないような爆弾なりあるいは武器というものを試験することによつて、ほかの人が受ける迷惑が非常に大きくなるのではないかという心配——杞憂かもしれないとおつしやいましたが、私も杞憂かもしれないが、これはわれわれとして十分に考えなければならない問題で、それがために特にわれわれが犠牲になり、われわれが損害を受けるということは、どうしても何らかの方法をもつて避けなければならない問題だと思いますので、私どもとしても十分に考えて行かなければいけない問題だろうと思います。  それからこういう実験を、いわば冷たい戦争における宣伝的な、あるいは勢力誇示の材料として使うかという問題でありますが、私どもはそういう気持を持つて今の実験をしているとは思いませんが、ただかりにそういうことを一部で考える人があれば、これはゆゆしきことであると思いますので、そういう点につきましては私どもも慎重にその事情、よつて来る原因、また意図するところというものを研究してみたいと思います。
  52. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 いま一つ心配になるのは日本に持つて来た有毒な原子まぐろ、あれはどうしてあの原子まぐろになつたのでありますか。ただ上から降つて来たレデイオアクテイヴの灰のためになつたのでありますか、あるいはその辺に泳いでいたのをとつたまぐろそのものがレデイオアクテイヴになつてつたのでありますか。またあの爆発によつてその付近の一面のまぐろなり魚なりが全部レデイオアクテイヴになつて死んでしまいはせぬか。もしそういうことになると、日本の生命線の一つである水産事業に対する非常に大きな損害であります。大洋漁業によつて食糧の相当重要な部分を補つている日本として容易ならぬものだと思います。そういう問題についてわかつた点がありますかどうか、ちよつと尋ねます。
  53. 土屋隼

    土屋政府委員 御質問の点は実にまだ私から御回答申し上げるような材料が整つておりません。現在調査中の結果が一応整いますと、御質問のような点について御回答を与えるような点があると思います。
  54. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 そこで本件はきわめて重大でありまして、いろいろな疑問がたくさんあるであります。また日本として非常な大きな危惧がたくさんあるのであります。そこでひとつこういういろ!いろなクエスチヨネア、疑問と、日本の危惧を列挙して正式にアメリカ政府に一ペん照会をされて、その回答ぶりによつて今後の原爆のテスイのコントロール、管理という問題を世界に向つて訴えたらどうか。外国においてはそういう問題を世界に訴えるときには、大体総理大臣とかあるいは大統領、国務長官が演説によつてやるのであります。マーシヤル・プランごときもマーシヤルがボストンの大学における演説で提示した。それからこの間の原子力の平和的利用もアイゼンハウアーが国連における演説によつて提示した。外交文書で提示するよりも、今の民主的の時代においては、演によつて世界に向つて広く呼びかけて提示する。吉田総理大臣が陣頭に立つて、どこかの機会をとらえて、世界中にそのニースがキヤリーし得るような方法でひとつ大きく提示するような方法とつたらどうかと思うのですが、当局のお考えはいかがですか。
  55. 土屋隼

    土屋政府委員 こういう問題に対する措置というものは、お話のようにいろいろあるようでございます。従いまして、日本政府として特にいろいろ考慮を加えた結果適当と思われる措置を講ずべきで、その措置の中に今大橋さんから申されたような点も考えることは当然だろうと思います。     —————————————
  56. 富田健治

    ○富田委員長代理 これより日米相互防衛援助協定逐条審議をいたしますす。まず前文について条約局長の説明を求めます。下田条約局長
  57. 下田武三

    下田政府委員 前文につきまして簡単に御説明申し上げます。外務大臣から、この相互防衛援助協定は大体各国との先例があつて、それらの先例と大差ないということを申し上げましたが各国の協定日本協定とを比べて一番大きく違うのが、実はこの前文でございます。これはまた当然のことでありまして、日本の憲法あるいは平和条約以来の日本の置かれた立場から申しまして、どうしても特異性を持たざるを得ないわけでございます。そこでどの条約の前文も、この協定締結の背景と申しますか、経緯を述べたり、あるいは協定の根本思想となるようなアイデアを述べるのが通例でございますが、この協定の前文も同様の意味で書かれております。  第一項は、国際連合憲章との関係でございまして、この協定が国連憲章の体制内で行われるものである。そうしてこの協定の目的は、三行目にあります「国際の平和及び安全保障を育成することを希望し、」防衛力を増強するための協定でございますが、大目的は国際の平和及び安全保障を育成することを希望するからであるということを明らかにいたしております。  第二は、平和条約との関係でございまして、平和条約で個別的または集団的自衛の固有の権利を有するということをうたつておりますのを、あらためてここでひつぱりまして、再確認いたしたのでございます。  その次が、安全保障条約との関連でございますが、そこで安保条約の前文で、米国側が日本の自衛力の漸増を期待しておるということが言つてございます。ただそのことをいうときに、日本が、攻撃的な脅威となり、または国連憲章の目的及び原則に従つて、平和及び安全保障を増進すること以外の他の目的に使われるような軍備を持つようになることを常に避けつつ——これは安保条約ではつきり書かれたことなのであります。つまり自衛力の漸増は期待するが、といつて昔の軍国日本のような軍事力を持つことは法に避けつつということが書かれてありまして、この点もやはり今度の協定に入れたわけでございます。今日国際輿論は非常にかわつておりますが、なお少数ながら日本の軍国主義復活等の杞憂を抱く向きがごく一部にありますので、それらに対しまして、この自衛力増強ということは、決して再び軍国主義を目的とする防衛力の増強にはならないということを、安保条約の前文を引くことによつて明らかにしたわけでございます。  その次は経済安定、これも各国との協定の前文には全然ないことでありますが、日本が最も力を入れた点でございまして、経済安定が日本の防衛能力の発展のために、欠くことのできない要素であるということと、日本がなします寄与は、日本の一般的な経済条件及び経済的能力の許す範囲内においてのみ行うということ。これはMSA協定を始めます当初におきまして、外務大臣が特にあいさつの中で繰返されまして、日本がMSA協定を結びます決心をいたしました際に念を押して、アメリカ側からはつきり日本の見解に同意であるということをとりつけました最も大きな点の一つでございます。その最も大きな経済安定を乱さないという原則を前文ではつきり規定いたしたわけでございます。  最後の項は、これは当然のことでございまして、法MSA法及びMSAの改正法とをアメリカが制定したことをうたつて、おるだけでございます。簡単でございますが、以上であります。
  58. 富田健治

    ○富田委員長代理 それでは条約局長の説明はこれで終りました。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時二十七分散会