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1954-03-16 第19回国会 衆議院 外務委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十九年三月十六日(火曜日)     午前十時五十一分開議  出席委員    委員長 上塚  司君    理事 今村 忠助君 理事 富田 健治君    理事 福田 篤雄君 理事 野田 卯一君    理事 並木 芳雄君 理事 穗積 七郎君    理事 戸叶 里子君       麻生太賀吉君    大橋 忠一君       北 れい吉君    熊谷 憲一君       佐々木盛雄君    福井  勇君       喜多壯一郎君    須磨彌吉郎君       上林與市郎君    福田 昌子君       細迫 兼光君    加藤 勘十君       河野  密君    西尾 末廣君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         法制局参事官         (第一部長)  高辻 正己君         保安庁次長   増原 恵吉君         保安庁長官官房         長       上村健太郎君         外務事務官         (欧米局長)  土屋  隼君         外務事務官         (経済局長心         得)      小田部謙一君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (国際協力局         長)      伊関佑二郎君  委員外出席者         総理府事務官         (調達庁不動産         部連絡調査官) 松木 豊馬君         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 三月十六日  委員金光庸夫君辞任につき、その補欠として熊  谷憲一君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 三月十五日  海外抑留同胞完全救出及び戦犯者全面釈放  に関する陳情書  (第一八二九号)  韓国代表部閉鎖等に関する陳情書  (第  一八三〇号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  連合審査会開会に関する件  日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助  協定批准について承認を求めるの件(条約第  八号)  農産物の購入に関する日本国アメリカ合衆国  との間の協定締結について承認を求めるの件  (条約第九号)  経済的措置に関する日本国アメリカ合衆国と  の間の協定締結について承認を求めるの件  (条約第一〇号)  投資の保証に関する日本国アメリカ合衆国と  の間の協定締結について承認を求めるの件  (条約第一一号)     ―――――――――――――
  2. 上塚司

    上塚委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定批准について承認を求めるの件外三件を一括議題といたします。  質疑を許します。細迫兼光君。
  3. 細迫兼光

    細迫委員 先日承つておりますと、今の段階においては別に仮想敵国というものを想定しておらない、こういうような御返答でございましたが、私はこのMSA及び自衛隊の構想は、明らかに仮想敵国を想定しておると認めなければならぬと思うのでありまして、昨日の御答弁がはたしてそのまま維持できるかどうかという問題に進んで参りたいと思うのであります。すなわち自衛隊は外国の直接侵略に対処する役目を持つのでありますから、そこに戦闘行為を必然的に予想しております。すなわちわが国の青年の血を犠牲にし、また厖大な税金を投げ込んでの計画でございますので、何の目当もなく、こういうむだなことが行われようはずはない。よほど緊急差迫つた危険な感じておるという前提がなくては不合理だと思うのであります。のみならず非常に無責任なことだと思うのであります。無益なところに多大の犠牲を払うという政治が許されるものではございません。自衛隊法第三条によりますと、「わが国の平和と独立守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国防衛することを主たる任務」とする、主たる任務が直接侵略に対処する、直接侵略をして来るに違いないと思われる仮想敵国存在前提とせざるな得ません。またMSA協定前文を見ましても、直接侵略云々ということがうたわれてあること申すまでもありません。なお安全保障条約をこのMSAは思い起しておるのでありますが、安全保障条約によりますと、その前文におきましては、「無責任な軍国主義がまだ世界から駆逐されていないので、」云々、また「日本国に対する武力攻撃を阻止するため」云云ということをうたつておるのであります。そういうわけで、どうしても仮想敵国前提としておらなければならないと結論せられるのみならず、去年の七月十五日の岡崎外相あいさつにも、MSA計画の主要な目的は、自由世界安全保障の維持と増進、また、自由世界防衛力のためということを言つておられる。同日のアリソン大使あいさつにおきましても、合衆国のMSA共産主義者侵略脅威欧州で大問題となつた一九四七年にすでに始められたものである、こういうような発言がある。これらから推察いたしますれば、どうしてもいわゆる自由世界脅威する何ものかを予想しておらざるを得ないのであります。かように私どもはいろいろな事実から、仮想敵国存在結論せざるを得ないのでございますが、御意見いかがでございましようか。
  4. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の申すのは、仮想敵国というある国を目ざしてそれから侵略を受けたときに対抗する程度武力を今たくわえようとしておるのじやないということを申し上げたのであります。要するに今の保安隊増強計画等は、そういうようなある国を目ざして、この国なら攻めて来てもわれわれの方で守れるという程度のものは、まだそこの域に達してないということを申し上げたのであります。一般的に見て自由主義諸国から脅威を受けるということはあまり考えておりません。朝鮮等の事態から見まして、共産主義陣営からの攻撃ということが必ずしもないとは考えておりません。しかしそれはどの国からあるかというと、どの国ということを考えるところまで、まだわれわれの防衛力増強していないということを申し上げたのであります。ですからもし細迫君の、こうやつて自衛力増強して行くということは、共産主義陣営脅威ということを考えてやつておるのかという御質問なら、大体おもにそれを考えておるということは申し上げられると思います。
  5. 細迫兼光

    細迫委員 そこで第二段に入りますが、その御認識がわれわれとしては誤りであると確信をいたしておるのであります。これはあるいは水かけ論に終るかもしれませんが、いろいろなことの言われておることは御承知通りであります。最近の例といたしましては、たとえば三月十二日マレンコフ西欧諸国との平和的な経済競争をするのだといつて、同国の態度を鮮明にしておるのでありますし、また実際中国などを御視察なさつた保守党のお方なりでも、中国は現在非常に平和的建設に忙しい、この計画的の経済の進行を、戦争というがごときものによつて阻止中絶せられることを一番恐れておるというような御意見発表を見るのであります。一方自由世界と申すよりも、アメリカでございますが、御承知のように、世界各国ソ連中国を包囲するようにずつと軍事基地設定しております。アイスランドからあるいは北大西洋条約、あるいは欧州軍設定、トルコ、ギリシヤに対する態度、あるいはパキスタンに対する軍事援助日本に対する軍事基用設定というようにぐるつとソ連中国を包囲いたす態勢におるのであります。なおまたいわゆる経済封鎖をやつておること御承知通り。一時は中国沿岸に対する封鎖までもやつてのけた。アメリカ国内を見ますれば、いわゆるマッカーシー旋風が吹きまくりまして、戦前日本において貴族院菊池何某美濃部博士などをつるし上げたというような当時のことを思い起すような事柄が起つておる。そういう反動的な空気というものは、これはもう戦争を準備した時代に必ず起る一つの兆候であるのであります。そういうふうにソ連中国に対して包囲態勢をとり、しこうして経済封鎖を行つておるというような状態から見ますれば、私はちようど日本英米宣戦を布告いたしました当時のことを思い起すのであります。英米に対する宣戦詔勅、私もしばしば人に読んで聞かしたこともあるし、また読んで聞かされたこともあつて耳に残るのでありますが、いわく、「剰ヘ與國誘ヒ帝國周邊ニ於テ武備ヲ増張シテ我ニ挑戰シ更ニ帝國平和的通商ニ、有ラユル妨害ヲ與へ、遂ニ經済断交敢テシ帝國生存ニ重大ナル脅威加フ。」「事既ニ此ニ至ル帝國ハ、今ヤ自存自衞ノ爲、蹶然起ッテ、一切ノ障礙ヲ破砕スルノ外ナキナリ。」、かように申しておるのであります。私はこれの当否を申そうというのではありませんが、あたかも当時の日本に対するABCD包囲陣というようなことを思い起さざるを得ない。これと対比いたしまして とにかくに現在の世界態勢を客観的に、公平に見まして、むしろアメリカの方こそいわゆる巻き返し戦術によつて挑戦的ではないかということをわれわれとして結論せざるを得ないと思うのでありますが、外務大臣の御意見いかがでありましようか。
  6. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 細迫君のお話を伺つておりますと、共産陣営は何ら軍備もしなければ、すべて平和的に事を処理して行こうとしておるのに、アメリカ中心とする自由主義陣営の方で大いに挑戦的に出ておる、こういうようなお話のようにちよつと聞えるのでありますが、アメリカつて多大の金を使つていろいろのことをやつておるのは、やはりそれ相応の心配もあるからでありまして、私は別にアメリカ政策をここで弁護しようとしておるのではありませんが、共産陣営内において何ら軍備増強計画とか、原爆研究とか、そういうことにいそしんでいないという証拠はないように思います。今ちようど読み上げられました宣戦詔勅、あれはあとになりましては日本軍部がすすきを見て幽霊と思うか、あるいは幽霊を宣伝して、そしてまわりの状況を誇大に被害妄想狂のように言い放つて、とうとう戦争に持ち込んでしまつたということを言われておるように思いますが、ちようど今読み上げられたようなことを現在共産陣営側言つていると私は思います。われわれはおとなしくしているのに、まわりの国がみな集まつて軍事基地をつくつたり、与国をいざなつておどかしにかかつており、あまつさえ経済断交をしてけしからぬじやないか、ちようど当時の日本軍部言つてつたようなことを、今の共産陣営側では言つており、それをまた細迫君がここで繰返しておられるようなふうに思うのであります。結局これは見解の相違ではありますけれども共産主義そのもの考え方、つまり最終的には世界共産主義一色に塗りつぶさなければ平和は持ち来せられないのだ、また資本主義はその経済的欠陥によつて崩壊するであろうけれども、最後の一撃はやはり加えなければ、特権階級の打破はできないのだという根本理念においては、やはりスターリンからマレンコフになりましても、かわつていないように聞いております、それはともかくとしまして、私、これは意見相違になりますからいたし方ありませんが、共産陣営側はすべて平利的であり、自由諸国側は常に挑戦的である、こういうふうにはわれわれは考えておりませんで、むしろ逆なふうに思つております。
  7. 細迫兼光

    細迫委員 もちろんわれわれは人の言う言葉そのものを百パーセント信頼しなければならないというような甘い考えを持つておりません。われわれは具体的な事実を総合して結論を持つて来べきでありまして、なるほどソ連中国武備を持つております。これは脅威に対する防衛のため当然のことだと思うのでありますが、さつき申し上げましたように、アメリカ包囲陣営を着々と建設しつつあるに対しまして、ソ連に、アメリカの包囲したそうした軍事基地設定するというような事実を私どもは見ないのであります。また経済断交のことにいたしましても、アメリカがこれを率先してなしておるのに対しまして、ソ連中国はかえつていわゆる東西通商の拡大を希望しておるというような、こうした動かざる事実から私ども結論を出しておるのであります。いやしくも大きな人的、材的犠牲払つて自衛隊の創設ということでありますから、前提を見誤り、ケースを見誤つてむだなことをすることは、絶対に許すことができないのでありまして、根本的に政府のどこから脅威が来るかという認識が、完全に誤つておることを私は指摘せざるな得ないのであります。今かりに岡崎外務大臣の御認識共産主義国からの脅威なきにしもあらずと考えるという御意見に立ちまして論を進めますれば、今日直接の侵略あるかもしれないといういわゆる仮想敵国と申しますか、仮想敵国と申しては語弊があるかもしれませんが、危険のある方面が、いわゆる共産圏すなわちソ連中国方面だといたしますれば、これからの脅威は少々の軍備を整え、武力を持ちましても、自衛そのものを完全に遂行し、わが国の平和と安全を保つことはできないと私は思うのであります。その意味から申しましても、むだなことではないか。すなわち今日はシベリアからですら三十分か一時間でもつて日本の国土は寸断せられるのであります。原子爆弾の雨が降らされる危険性はあるのでありまして、これに対処するとしてもあまりにも無力な、むだなものであり、どぶに捨てるような人命、国民の血潮、税金犠牲ではないかと思うのでありますが、その点いかがでありましよう。
  8. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 どうも細迫君の論旨は非常に縦横無尽に飛躍されるので、捕捉できないのであります。少し前にはソ連共産側平和的意図をもつて建設に従事しておると言うし、今は原子爆弾の雨を降らして日本を寸断する、これではどつちがほんとうだか私にはわからないのであります。しかしそれはともかくといたしまして、私が最も細迫君のお考えに賛成のできない点は、独立国として必要なる国の守りをいたすのに、むだだとかよけいなことだとか言われる点であります。私が前から申しておる通り、なるほどただいまの日本防衛の力は、仮想敵国相手考えて、それと対抗し得るほどのものにはとうていなり得ないということは申しております。従つて仮想敵国ということを考慮するほどのところまで行つておらない、これは繰返して申す通りでありますが、そうかといつて、じやあソ連から攻めて来られたらとうていだめなのだから、むしろ何もしないで国の守りなんかほつたらかしておいたらいいということは、日本国民全体の考え方と私は非常に反するものだと考えておりますし、国際通念から申しましても、独立国としてどうせかなわないのだから、軍備なんか一つもいらないと言つている国は世界にどこにもないのであります。われわれとしても今十分ではないにしても、政治上、経済上の許す範囲内においてのでき得る限りのことをするのは、これは当然のことと考えておりますし、世界の常識でもあります。国民も一般にそういう考え方を持つておると思うのであつて、決してどぶに捨てる金などというお考えには私は承服できません。
  9. 上塚司

    上塚委員長 細迫君、持ち時間がすでに経過いたしましたが、保安庁長官がお見えになつたら暫時また発言を許すことといたしまして、この際一応次の発言者にお譲りを願いたい。   〔細迫委員 「ただいま岡崎外相は私の論が飛躍すると申されましたが……」。と呼ぶ〕
  10. 上塚司

    上塚委員長 細迫岩、発言を求めてください。今私の申したことはおわかりになりましたか。
  11. 細迫兼光

    細迫委員 わかりました。五分間ばかり発言をお許し願います。  ただいま岡崎外相の御答弁は、私の論が飛躍するということでありますが、これは飛躍するはずでありまして、私は岡崎外相の言をかりに肯定しての話をいたしたわけであります。しこうしてまたいかなる侵略がありそうでも、何もしないでおつてよろしいというようなことを私は予定してはいない、岡崎外相こそ飛躍した攻撃をなさるのでありまして、われわれはむだな軍備だけでもつて決してわが国の安全と平和な守ることはできないのだ、それに倍する努力をわれわれがしますれば、アメリカは必ずや友好関係をわれわれと将来も持続してくれるでありましようし、またわれわれは力を尽してソ連とも友好関係を取返し、中国とも友好関係な取返し、不可侵条約などを結びまして、ここに安全なる平和なる日本な安定したい、これには軍隊をつくるよりも数百倍の努力能力がいると思うのであります。不可侵条約は何の役にも立たないというようなことをよく反対論として聞くのであります。ソ連不可侵条約を破棄したではないかというような議論がなされます。しかしそれにつきましては、われわれは思い起さなくちやならぬ。ソ連をあの終戦直前日本攻撃に参戦させましたその扇動者は実にアメリカであつたということであります。アメリカ不可侵条約……(「中立条約だよ」と呼ぶ者あり)中立条約な破りました共犯者であります。これは扇動した。しこうしてまたソ連に対して一体日本はどうであつたかと申しますと、ソ連にすきあらば、折あらばソ連を討つべしということを日本は当時御前会議で決定しておる。このことは極東裁判の書類にもはつきり出ておる。一体罪ある者石をなげうてでありまして、決してソ連を非難することはできない。われわれは新たな観点からソ連とも友好な、中国とも友好な、そうして不可侵条約その他の条約等努力な傾けまして、ここに安全と平和の境地をつくらなければならぬ、かように考えておるのでありますが、一体この安全中立の道というものを選び得ないのであるか。私はイシドが歩んでいる道を日本がなぜ歩み得ないのか、その理由を発見し得ない。よそがやつていることを日本がようやれないというのは、その意思がないか、あるいはその能力がないか、二つに一つだと思うのであります。はたしてそういう道をとり得る可能性がちつともないのかどうか、岡崎外相の御意見を承りたいと思うのであります。
  12. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 細迫君のお話を承りますと、ソ連アメリカ使嗾扇動によりまして中立条約を廃棄したので、ソ連だけの罪ではない、こうおつしやるのでありますが、私はかりにそうであるとしますれば、今後かりにソ連中立条約なり不可侵条約なりを結んでも、またどこかの国が扇動したらソ連はこれを廃葉するかもしれない、そういう国とはあぶなくてとても中立条約は結べない。やはり条約は守るという、その圏にいかなる扇動があり、使嗾があつても、その国の立場からして条約は守る、こういう国でなければ、中立条約不可侵条約をいくら結んでも、それで国の安全を守れると申しがたい、こう私は考えます。
  13. 上塚司

  14. 穗積七郎

    穗積委員 私は政策または各条約の条文の内容につきましては、後に逐条審議のときにお尋ねいたしたいと思いますので、きようは総括的に、この協定によつて生ずる軍事的義務と憲法との関連について、他の委員からも御質問がありましたが、問題が重要でおりますから、関連して少しくお尋ねしておきたいと思います。  最初岡崎外相にお尋ねいたしますが、今度の協定の八条でございます。少しく字句にわたりますが、第八条に「自国防衛力及び自由世界防衛力の発展」云々というのと、それから「自由の防衛能力増強に必要となる」云々アメリカ側の文書な拝見いたしますと、デフエンシイヴ・ストレングスとデフエンス・キヤパシテイズと使いわけておりますが、この防衛力防衛能力とはどう違うのか、その内容を具体的に示しながら御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  15. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 防衛力と申しますと、これはいろいろな解釈もありましようけれども、われわれの見るところでは、防衛のために必要とされる具体的な自衛力でありまして、これに対しまする防衛能力と申しますと、その防衛力基礎となるべき一般的な国力、すなわち産業、金融、資源その他経済的ないろいろの力、そればかりでなく、防衛力を効果的に発揮するために必要な組織とか構成とか、あるいは国民精神と申しますか、そういうようなすべての防衛力基礎となるべきものを含んだものと考えております。
  16. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと、言葉をかえていえば、防衛能力総合戦力、かつて日本国民の間に使われました言葉でありますが、そういう概念であつて、さらに前の防衛力というのは、これは軍隊日本で申しますならば、今度名前のかわります自衛隊を具体的にこの中へ含んであるわけでございますか。
  17. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 日本の場合に例をとつて申しますならば、ただいまの保安隊、今度の自衛隊になりますが、これは防衛力考えております。それから保安隊なり自衛隊なりの基礎となる政治上、経済上あるいは国民精神まで含んだ広い意味の、それを可能ならしむるもの、これが防衛能力である、こう考えます。
  18. 穗積七郎

    穗積委員 そうしますと実は法律語といたしまして、自国防衛力と使い、それから自由世界防衛力と同じ概念規定になつておりますが、そうしますと今のお話によりますれば、自由主義諸国軍隊な保持する国々自衛力というのは、言うまでもなくおもに戦闘能力、具体的な戦闘能力を示します軍隊中心とする力、ストレングスであるわけでございますが、そうするとそれと同じものを日本で持つということに解釈すべきだと思うのです。もしこの具体的なストレングス内容がすなわち軍隊相手は対外的な戦争をいたします軍隊である、こちらは国際紛争に使わない保安隊であるということでございますならば、むしろここで用語上の形容詞または用語をかえるか、どちらかにいたさなければはなはだ不明確でございまして、言葉の上でいいますならば、しかもこれは法律語でございますから、そういうふうになりますならば、同じ内容、同じ概念のものなわれわれは持つように努力しなければばらない、寄与しなければならぬ、こういうことにたるわけでございますが、その間をもう少し具体的に、すなわちこの中に日本保安隊を含み、後の自由世界防衛力というのは、国際紛争のために使う軍隊を含んでおるのか、そのことをもう一度明確にしていただきたい。
  19. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 防衛力は、今申しました通り自分の国を守る力であります。これは国々によりまして――国々によりましてといつても、日本は特異の場合でありますが、しかしそれでも観念上は国によりましてこれを軍隊といたす場合もあり、日本のように保安隊なり自衛隊なりといたす場合もありますが、目的はやはり自分の国の安全を守るということであつて、どこの国でもよその国に向つて戦争をしかけるために、軍隊を持つているものはまずあまりないと考えております。従つておつしやるのは、よその国が軍隊であるならば、日本防衛力といえばやはり軍隊じやないかという御趣旨かと思いますが、われわれの考えておるのでは、それは各国の自由にまかすべきことであつて、要はその国の持つ国の安全と平和を維持せんがために必要とする力、これをその国が軍隊と呼ぶ場合もありましよう、われわれは保安隊と呼んでおる、これは一向さしつかえないのじやないか、こう考えております。
  20. 穗積七郎

    穗積委員 そこでもうちよつと明らかにいたしておきたいと思いますのは、きのうもお話が出ましたが、この文章の中で安保条約に基いて負つている軍事的義務云々、これな負うことを再確認するということを言われたわけでございます。そして問題は安保条約以上の軍事的義務な負うものではないということは一体どこに書いてあるのか。このMSA協定結びましてもそのときもう一ぺん安保条約軍事的義務を再確認するということなうたつておるだけでございまして、それの範囲内の義務、言うかえればそれ以上の義務は負わせないとはどこにも書いてございません、さらにこの調印の日におきますアリソン大使あいさつとして新聞発表になつておるところを見ますと、彼はアイゼンハウアーの言葉を引用いたしまして、巧みに説明して強調しておるわけですが、軍事力という言葉を明確に使つております。このMSAの法律自身が、言うまでもなく各国の被援助国の武力な強化することを目的とすることは明瞭であるし、それを日本との調印の場合におきましても、その一般的原則な、日本が特別の憲法を持つておるがゆえに、軍事力についてはこれな強要しないということを言うのではなくて、昨年の五月アイゼンハウアーが相互安全保障計画を議会に提出するときに、こういう言葉を使つておるという言葉を引用いたしまして、このMSA対日協定の場合におきましても、やはり軍事力な強化することが目的であるということをはつきり言つておりますし、同時に今の私が申しました八条の後段におきます自国防衛力または自国防衛能力増強する義務を負つておるわけでありまして、その点はもう少し具体的に説明していただきませんと、兵力増強義務の限界内容等につきまして、はなはだ不安を与えるのみならず、大臣は気軽に説明しておられますが、この文章は将来必ずこの内容があいまいなために、それは非常な恐るべき拡大解釈な行われまして、そうして日本防衛力すなわちアリソンの言葉を使えば軍事力でございますが、この軍事力増強義務をここではつきり負うわけであります。しかもそれは、今岡崎大臣は日本においては国際紛争を解決する目的のために使うのではない、保安隊であると言いましたが、外国の場合におきましてはそういう軍隊、しかもこの調印に当りましたアリソンの言葉は、アイゼンハウアーの言葉を使いまして、この場合にも軍事力増強のために云々言つておるのでありますが、その間のことがこの文章や調印前後のいきさつからいたしまして、はなはだ不明確でございますので、将来の日米間のこの協定の解釈のために、もう少し明確にしておいていただきたいのでございます。
  21. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 はなはだ失礼でありますが、穗積君のお話は何か因縁をつけるような文字な探し出して議論をされておるような気がいたすのであります。と申しますのは、初めにおつしやつたこの軍事的義務ということについては、ここに再確認ということがおるだけで、ほかに何も書いてない。それだから怪しげじやないか、こうおつしやいますが、書いてなければならないのであつて義務というものは書いてあるときにはつきりするのであつて、それじやここに書いてないことは、みんな何か義務として将来出て来るかもしれぬとおつしやられては、これは御説明のしようがないのであります。第二に、これはもうたびたび繰返して申しておりますが、相互安全保障法というのは世界の六十何箇国に適用しておつて、いわば世界の自由主義国全部に適用せんとする法律であります。そこで世界自由主義諸国の、日本を除いたほとんど全部というものは軍隊な持つておる。従つて日本だけが特殊の場合に、しかもこれは日本にまだ適用するかどうかきまらないような事態の場合に、日本のことも考えて特別例をこの法律の中に設けるということは、それはむしろおかしな話で、世界一般の軍隊を持つている国を対象としてこの法律はつくつてあるのであります。従つて軍事力という字も出て来れば、軍事的義務という字も出て来る。そこでわれわれの場合は、憲法で戦力保持ということを禁止されておる特殊の事態でありますから、日本の特殊事態に合うように、この協定をつくるために、八箇月も長くかかつてつたのであります。たとえば安保条約義務というものがこの軍事的義務に当るのであるとか、日本の場合に政治的、経済的にという特殊の字を入れまして、またさらに憲法の範囲内でという字を入れまして、日本の特殊の場合には、この軍事力というのはすなわち保安隊の力、これを考えておるのだということをはつきりいたしておるが実情でありまして、一般的に軍隊な持つている国に適用せんとする法律の中に書いてある軍事力をもつて日本もそれに入るのだという御議論は、今まで私の説明を十分お聞きくだされば出て来ないであろうと私は信ずるのであります。
  22. 穗積七郎

    穗積委員 その点は大事でありますからもう一言触れておきたいと思いますが、私が申しましたのは、実は一般的に書かれたMSA法、相互安全保障法の本本の文章を言つているのではない。この特殊な国である特殊な憲法な持つておる日本との防衛問題について、協定を調印したときに、その当事者であるアリソン大使が軍事力という言葉を使つておる。何もMSAの条文の中にある文章な私に言つているのではございません。  さらにもう一点私が言いましたのは、あなたは、安保条約に基いて負つておる軍事的義務、これはハズ・アシユームド云々という言葉でおつしやいました。こう現在完了になつておるので、過去で負つた以上のものを負うのではない。そのことはわかつておりますが、安全保障で負つている義務以上のものは負わないとは書いてない。安全保障で負つておる軍事的義務は、これはかわるのではない、再確認するということが書いてあるだけであつて安全保障で現在までに負つて来た軍事的義務以上のものは負わないでいいとはどこにも書いてございません。だから問題にしておる。あなたは軍事的義務ということがあると言う、これはこの文章だけでは安全保障条約で負つている軍事的義務でございます。私の言つているのは、そうじやなくて、調印全体にわたつて――安全条約の調印式じやございません。MSA協定調印式が完了いたしましたときに、アリソンが軍事力という言葉を使つておるわけです。そして一般的な言葉として、しかも第八条の後段を見ますと、自国防衛力、同じ言葉をもつて自由世界防衛力強化にわれわれが協力しなければならぬ、寄与しなければならないとある。これは一体どういうことなのか。おつしやる通り自由世界防衛力の中には軍隊が入つておる。その軍隊の発展と維持のために協力しなければならぬ、寄与しなければならぬとは一体どういうことなのか。その点の関連を、国際的義務をはつきりしていただきい。こういう趣旨でございますから、どうぞあなたはかつてに私の言葉をおとりになつて、お前かつてにこういうことを言つているという解釈をされないで、この文章に従つて、あなた自身の耳でもつてお聞きになったアリソンのあいさつ言葉の中から私は伺つておるのでございますから、どうぞそう偏見を持たれないで、正直にひとつ率直にお答えがいただきたいのでございます。何も私は今あなた方が調印なすつたこの条約にけちをつけて云々というような、そんな狭い根性ではない。そうじゃなくて、政策については反対するが、ここに出て来た条文そのものは客観的なものでございますから、この客観的な条文の解釈については、日米間に思い違いがあると将来必ず紛争が起りますし、今までのアングロサクソンの外交史を見ましても、すべてそういうことが拡大解釈されまして、法律の正当な権利主務によらずして、政治的圧力でもつて、その法律用語があいまいなるがゆえに拡大解釈されて行く場合を、われわれ多くの事例から危惧するわけでありますので、そういう将来をもおもんばかりながらここで伺つておるわけであります。どうぞあまりとらわれたいで、ひとつ率直にお答えがいただきたいのであります。
  23. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 率直にお答えいたしますが、第一にアングロサクソン側では、条文の拡大解釈をして政治的な圧力を加えて云々とおつしやいますが、私はその事例を不敏にしてまだ承知いたしておりませんが、そういう事例がありますならば、ひとつ御参考にお知らせ願いたいと思います。  そこでアリソン大使が大統領の言つたことをここに引用しまして、あいさつの中に入れましたのは、宴するに軍事力というものは健全な経済基礎の上に立つてのみ効果を発揮するのであつて、また現に維持し得るものである。要するに健全な経済的な基礎の上に立たなければ軍事力というものはできないものである。健全な経済基礎の上に立つということを強調しておるのであります。そこで軍事力というのは、日本に対することでアイゼンハウアー大統領が言つたのではなくして、一般的に言つておるのでありますし、これにつきましてアイゼンハウアー大統領の言葉をいろいろ引用したのでありますから、この軍事力という言葉を入れてもそれは少しもおかしくない、むしろそれをかえたら引用にならないのであります。そこでその言葉は一般的な問題でありますから、日本の場合には保安隊なり、自衛隊なりというものは健全な経済基礎の上に立つてのみ効果を発揮し得るのである。こういうことにおとりになつて少しもおかしくもなければ、またそれが正当なことであることは私がしばしば申し上げた通りであります。なお第八条の「自由世界防衛力の発展及び維持に寄与」する、これにつきましても、何か穗積君のお話だと、これがうつかりすると、日本日本国民をどつかの国の兵隊に差出す義務が出て来るように御心配のようでありますが、そういうことが義務としてこの文字から出て来るとは私はとうてい考えられない。またこれはどこの国際慣習なり、あるいは国際的の常識から申しましても、他国の防衛力の発展に得与するという意味は、その国に自分の国の国民を兵隊として差出すのだ、こういうことじやたいのであります。(穗積委員「そんなことは一言も言つてません」と呼ぶ)それでなければ意味をなさたいのでありまして、婆するに他国の防衛力を発展させるために寄与するといえば、これに対して防衛力の役に立つような兵器の生産をしてこれを供給するとか、その他工作機械とか、いろいろなものがありましようが、そういう意味であつて、人を差出すということは、これはどうもこれから出て来るとお考えになるならば、非常におかしいと思います。
  24. 穗積七郎

    穗積委員 実は大臣にはまだ次の機会にお尋ねする機会がございますので、この答弁は不十分でありますが、時間がありませんから、少し前に進みたいと思います、きようは法制局長官並びに高辻部長もお見えになつておられますので、お尋ねいたしたいと思いますが、実は私はお尋ねする前に、保安庁の防衛計画を少し伺つた後に、憲法との関連について御所見を伺いたいと思いましたが、まだお見えになりませんので、あと先いたしますがお伺いいたします。  まず第一にお尋ねいたしたいのは、実はかねて日本保安隊または自衛隊は、われわれは、名前は別として、国内の警察任務を主たる目的としないで、対外的な戦闘行為を主たる目的とするものでありますから、当然軍隊であると解釈いたしておりますが、このものが、おそらくはやがてMSA協定とともに外地に派兵させられる、またはする結果になることを憂えまして、予備的に、かつて下田条約局長にその問題に対してお尋ねいたしたことがございます。局長も御記憶だと思いますが、そのときにいかなる事態の場合においても、外国の領域内に日本の戦闘力、すなわち飛行機あるいは軍艦あるいは陸上部隊、こういうものが出て行くことはまつた考えられない、それは憲法違反であると解釈すると明確にお答えになりました。ところが昨日佐藤法制局長官は、私どもが最も心配したことに触れられまして、たとえば原子砲のようなものをもつて外国の領域内から日本に対して直接砲射が行われた場合には、その外国領域内の軍事基地に対して攻撃する場合があり得るであろうという御解釈のようでありますが、実はこれは初めて伺う政府の御解釈でございます。私はこの問題は、海外派兵の問題と関連いたしまして、実は重大な関心を持つて、将来のためにこれまた今日あらかじめ明らかにしておきたいと思いますので、両局長の御所見を承りたいのでございます。
  25. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私の昨日申し上げました趣旨をさらに言葉をかえて申し上げますと、要するに大前提として、日本の憲法第九条は、自衛権は絶対に否認しておらぬ。これは学者の大多数の方の容認せられておるところであつて、自衛権のあることは間違いのないことであろうと思うのであります、わが国が自衛権を持つております以上は、日本の国内に敵の弾丸が雨あられと降つて来る場合に、これをよける何らの措置を講ぜずして、甘んじてその爆撃のもとにじつとしておるということはあり得ないと思います。自衛権がある以上は、その降つて来る弾丸をとめろという当然の働きがそこに出て来なければならぬ。そのとめ方の問題、自衛権の限界がそこに出て来るわけてあります。われわれとしては、自衛権の厳格なる限界のもとにおいてそのとめ方を考えなければならない。これは申すまでもないところであろうと思います。従いまして、昨日の例に出ました敵の基地からの長距離砲の爆撃であるとか、攻撃があつた場合にどうなるかということについて考えますと、子供らしいことを申し上げてたいへん恐縮でありますけれども、かりに新しい兵器ができておつて、遠方から来た長距離砲のたまが、日本海のまん中あるいは太平洋のまん中、そういうところでまつすぐに海中に落ちるようなしかけを日本が持つておるという場合には、日本の領域内にそのしかけの兵器を持つておれば、必ず途中で落ちてしまうということになるわけであります。それならそれでいいわけであります。だんだんとそういうような手段を考えてみた場合に、必要やむを得ざる手段というものがどこにあるかというこになれば、そういう平気がなければ、あるいは公海まで出て行つてその根源に対してそれをとめる、実力行使をやるということは、私には自衛権の最も厳格なる範囲内において自衛権の発動であると考えられるわけであります。ただ具体的な個々の場合にどこへ行つてそれがどうなるかということは、これはきのうも申しましたように、私は軍事専門家ではありませんから、今のような幼稚なことを考えながら、しかし大原則はそうであろうということを申し上げたつもりであります。
  26. 穗積七郎

    穗積委員 それではついでにちよつとお尋ねいたしておきます。今バズーカ砲とかあるいは原子砲とかいうことが引例されたわけですが、近代戦におきましては言うまでもなく、特に日本のような海上に位している国に対しましては、そういう長距離砲だけでなしに、空軍の攻撃ということが、侵略または紛争が起きましたときはまつ先に行われるだろうと思うのです。そうなりますと、自国の安全を守るためには、今同じく、たとえば北鮮なりあるいは満州なりにおきます軍事基地、飛行機基地――空軍基地でございますが、これもやつぱり先制爆撃をしなければならない。これは自衛の当然のことでありまして、これをたとえば日本の領海または公海――朝鮮の領海直前のところまでこちらの戦闘機が行つてつて、そこで迎え撃つということではとても自国防衛は全うできないから、そこで満州なり北鮮なりの航空基地を殲滅する。これも自衛行為の中に入りましようかどうか。当然そういうことに解釈としてはなると思うのです。そうなりますと、自衛行為の名のもとに――交戦権はなくとも、自衛行為の名のもとに、あらゆる不法行為が国際的に是認される、正当防衛権としてそういう拡大解釈が行われる結果になるのでありますが、その点についてもつと明確にお答えをいただきたいのであります。
  27. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 今のような懸念がありますからこそ、きのうから私は厳格にこれを申し上げているので、満州に出て行かなければ日本の自衛が全うできないとか、そういうことが出て来るようでは、もう全然憲法の趣旨が没却されてしまうわけであります。そこで今大砲のたまの例を申し上げましたけれども――初め飛行機の例がございましたけれども、飛行機の例で申しましても、今の原則から申しますと、途中でこれを迎え撃てるということが考えられぬ以上は、その邀撃作戦と申しますか、海上において邀撃してこれをとめるというくふうが当然第一になさるべきことであり、これが原則であることは申すまでもないことであります。
  28. 穗積七郎

    穗積委員 私のお尋ねしているのは海上で邀撃し切れない場合のことです。そのときにおける長距離砲の基地と飛行基地とどう違うかとしうことをお尋ねしているのである。それをどういうように解釈しておられるのであるか伺つているのであります。邀撃の可能性のある場合のことを伺つておるのではありません。
  29. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これはおかしなことを申し上げますけれども、大砲のたまを途中で邀撃するということは、先ほど申し上げましたような新兵器でもない限りはできないわけであります。ところが飛行機の場合は、邀撃するということが可能なわけでありますから、そこが話が違うことになって来るわけで、あとは具体的に個々の事態に応じて考えていただかなければ、われわれにはとても一々の場合をあげての御返答はいたしかねるのであります。
  30. 穗積七郎

    穗積委員 佐藤法制局長官も、失礼でありますが、私と同様軍事的技術についてはしろうとだと思うのです。従つてあなたは、飛行機は邀撃できるが、飛行基地は爆撃できない、しかし大砲のたまは邀撃できないが、その大砲の基地を爆撃することはできる、その場合は自衛行動である、こういう御解釈のようでございます。あなたや私の技術知識の程度ではそういうことを言つて区別しておられますが、われわれ想像するのに、そういうような高度な科学武器ができました場合におきましては、そういう私たちの持つておる科学知識のものさしではもう判断ができない。従つてできない場合のことを言つている。できない場合には、今の空軍基地も爆撃することが自衛行動の中に当然入ると解釈すべきでございます。昨日来の御趣旨はそうである。法律の解釈の概念からいえば、そこに区別があろうはずはない。技術的に邀撃が不可能な場合には、やむを得ざる自衛行動として航空基地の爆撃ということが当然入らなければならぬと思うのです。そのことを言つているのでありまして、その点はどうぞ明確にしておいていただきたい。
  31. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 お互いにしろうとということでございますから原則はどうかと存じますけれども、とにかく途中で――根拠地まで行つて爆撃できるくらいなら途中で十分邀撃できそうな気がいたします。そういう具体的な例については、一々例をあげることは法律論として申し上げかねると考いますので、原則をあくまでも貫いて申し上げますならば、自衛権はある、そしてその自衛権の行使のために必要最小限度の防禦方法を講ずべきであり、それを越えることは許されない、これが鉄則であります。
  32. 穗積七郎

    穗積委員 飛行機の場合と大砲の場合と区別してお互いに議論のやりとりをするのでは時間がむだでありますから、お尋ねしますが、言いかえますと、きのうの解釈は、飛行機であろうと、大砲であろうと、細菌戦術であろうと、光線戦術であろうと、領海または公海内において自衛が困難になつた場合には、敵国の領土内に入つて戦闘ができるという解釈であるわけです。現憲法ではたしてそういう戦闘行動が許されておるであろうか、このことについて実はお尋ねしております。下田条約局長は、いかなる場合においても、外国の領域に入つて戦闘行為をやることは明らかに違憲であるとおつしやつた。このことは御記憶になつていらつしやるだろうと思いますが、その間の矛盾をどういうふうにされるか、どうぞ二人で問答をしていただきたいと思います。
  33. 上塚司

    上塚委員長 穗積君に御注意しますが、木村保安庁長官は渉外事務のため十二時から退席されることになつております。なお午後二時より再び出席される予定ですから、この際できるだけ保安庁長官に対して御質問を願います。
  34. 下田武三

    ○下田政府委員 憲法第九条にいいます交戦権は、これを一たび発動いたします場合には、いかなる対敵手段を発動しようとも無制限でございます。だから国際条約で毒ガスを使つてはいかぬとか、あるいは軽気球の使用制限というようなことがございますが、対敵手段自体に対する国際条約の規定に沿う範囲でありましたならば、いかなる対敵手段を用いようとも無制限であります。そういう手段を行使し得るのが交戦権であります。ところが自衛権によつて行使し得る対敵手段には制限がございます。御承知のように、国際法上自衛権を行使し得るのは、急迫した危害が国家に加えられるということ、そして危害除去に必要な限度でなければ行使し得ないということ、またその危害を除去するために他にとる手段がないということ、この三つの条件が必要でございます。そこでただいま法制局長官もお答えになりましたように、他にとる手段がないかどうかということが第一問題であります。法制局長官お話になりましたように、飛行機が飛んで来れば途中で邀撃し得る手段もあるわけであります。ところがドイツがやりましたように、ジエツトの誘導弾をやぶから棒に降らして来る、あるいは長距離砲が発達して、やぶから棒に長距離弾が飛んで来るということになると、現在までの兵器の進歩の段階では、これを除去するため他にとる手段がございません。そこで他にとる手段がないとすれば、その根源をついて除去するということは、私どもの解釈では自衛権の許す範囲内であると思うのであります。もとよりその前提として危害除去に必要な限度という大きな制約があるわけでございますから、その点でも、先ほどおつしやいましたような満州や北鮮を爆撃するというようなことは、自衛権の認める限度以上のものであろうと思います。厳格にこれを狭く解するということが必要であると思います。御承知のように、自衛権の行使については昔から紛争があります。これは自衛権の限界な越えておる、あるいは自衛権を行使した国は、いや越えていないということで、常に紛争が起つております。でありますから、ちよつとここで議論申し上げましても、現実の段階になりますと、私は必ず紛争が起り得ることだと思います。しかし日本の国柄といたしては、自衛権の行使の限度に対しましては、最も慎重にかつ制限的に解して行動すべきであると私は存じております。
  35. 穗積七郎

    穗積委員 今のお答えは良心的だと私は思うのです。しかしあなたはいかなる場合においても外国の領土内において戦闘行為を行うということについては、これは緊急事態の場合においても制限を加えらるべきであるという御解釈だと私は解釈いたしますか、そういたしますと、佐藤法制局長宮の御解釈と少しくどころか、根本的に大きな対立をする御意見だと思うのです。そのことにつきましては後にもう少し詳しくお尋ねいたしたいと思いますが、せつかく保安庁長官がお見えになつておられますのでちよつとお尋ねいたします。  伺いますと、MSAに法律的には関係はございませんが、日本の自主的な防衛計画をつくる予定であるということをおつしやいました。そうして目下研究中であるというお話であつた。ところがいまだにその長期の計画はなくて、ひとまず二十九年度の増強計画だけわれわれにお示しになりましたが、まだ未確定であつても、何か構想はあるわけでございます。この防衛計画は今年度、次年度だけのものが発表されましたが、およそこれは長官も長官になられてから久しくそういう問題について関係され、私も実は昭和六年に近衛の兵隊に徴集されまして、幹部候補生として、当時今に比べますれば幼稚なものでございますが、作戦計画についての教育を受けました。そういう当時の考え方から行きましても、どの程度が兵力量の必要度であるかということの前に、当然作戦計画が出て来なければなりません。そのことになれば一応仮想敵国がございます。国際情勢から判断いたしまして、仮想敵国考え、仮想の戦闘状態を考えて、そうしてこれに対して日本の自衛と治安を守るためにはこういう作戦が必要である。その作戦計画が立つて、初めてこの作戦計画を実行するにはこれだけの兵力量が必要だという計画が立つて来るわけです。そこで私がお尋ねいたしたいのは、日本の今置かれておる国際情勢――あるいはソ連が攻めるか、アメリカが理不尽に今後ますます日本を基地として、そうして対ソ戦争の中へわれわれを巻き込むような不法なことが行われるか、それはわかりません。わかりませんが、いずれにしても私はその判断を伺うのじやなくて、日本を守るという立場に立つて、私ども意見は異にいたしますが、長官は軍事力が必要だというお考えを持つておられるわけである。その軍事力は今言いましたように、軍事力としてだけのものではありませんが、軍事力の面における作戦計画というものがなければならぬと思います。その構想を、ごく簡潔でよろしゆうございますから、お伺いいたしたいのでございます。
  36. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいまの穗積君の御質問でありますが、穗積君の兵隊に行つてつた昔と今とは全然社会情勢を異にしております。穗積君が兵隊に行つておられた時分には、明らかにソビエトを日本仮想敵国として、それに対しての軍備並びに作戦を一に研究しておつた。今日本はどこも仮想敵国としておるわけじやありません。ただ日本は不当な外敵から侵入を受けた場合に、いわゆる自衛権を行使して日本の国の安全と独立を守つて行こうということにわれわれは頭がかかつておるのでありまして、そこを誤解のないように願いたい。そこでわれわれといたしましては、かような不当な外敵の侵入に対して、いかにしてこれを防衛して行くかということについては、御承知通り日本の独力でもつてはとうていこれを現段階ではやることができぬ。そこで御承知通りアメリカとの間に日米安全保障条約というものを設け、そうして不当な外敵の侵入に対しては、アメリカの駐留軍によつてこれを防ぎ、国内における大きな動乱、暴動に対しては、日本保安隊をもつてこれに当るという建前をとつて来たのであります。しかしながら、いつまでも日本独立国家としてアメリカばかりにたよつてつてはいけない。そこで日本の国力の許す範囲において自衛力を漸増して、だんだんと自前でもつて日本防衛計画を立てて行こうというこの建前をとつておるのでおります。そこで現段階においては、われわれは外敵の侵入に対して、全面的に日本が引受けてこれを防衛する、そういうような防衛計画というものは立ちません。われわれは立てたいのであります。私は常に言つておるのでありますが、一国の防衛計画を立てるのには、その国の財政力、その国の兵器生産能力、輸送能力、各般の事情を総合してこれを立てなければならぬ。しかも兵器の進歩が非常に著しい今日において、長期の防衛計画を立てることは私はなかなか容易なことではないと考える。さようなことは立てられない。そこで先ほど申し上げた通り日本がいわゆる自前でだんだん行き得るように財政力にマッチした計画、いわゆる自衛力の漸増計画を立てたい、こう考えて今やつておる次第であります。しかしこれにつきましても、御承知通り兵器の進歩は非常に著しいものがあります。アメリカにおいてもいわゆるニユー・ルック戦略と申しまして、だんだん作戦もかわつて来ておる。従つて日本では固定的な計画というものはなかなか立てる余地がないのであります。さしあたり二十九年度において、日本の財政力にマッチしたこういう計画を立てるかということを立てて、われわれは予算に盛り込んで御審議な願つておるのであります。大体におきまして三十年度においてはどの程度の数ということは今計画で筋は立つておりますが、その後におきまする計画というものは、われわれは確定的な計画は立てておりません。しかし私は今各方面から研究して一応の目途は立てるべきであるというので、部下を督励して今研究中であることを御了承願います。
  37. 穗積七郎

    穗積委員 いろいろ御講義は伺いましたが、私の質問には遂にお答えいただけなかつたので、はなはだ残念でございます。しかしすでに陸海空三軍の総合的な作戦体系、軍編成を考えておられるというのでありますから、その三軍の均衡のとれた――その均衡は何を対象とするかといえば、言うまでもなく防衛計画をものさしとして均衡のとれたということなのです。そこで長官がおつしやつた通り、私どもがかつて昭和六、七年に軍隊へ行つているときでも、日本の用兵作戦計画というものが、陸上部隊、歩兵を中心に、しかも足で歩く歩兵を中心にしておるということに、われわれは非常に矛盾と実はばかばかしさを感じたことがございますが、やはり今日におきましても、陸上常備軍をアメリカの要求するように三十二万、こういうようにして、そして空軍、海軍というものはつけたしである。しかもその兵力は陸軍の兵力の場合におきましても、私どもの当時において陸上常備軍は二十万から二十一万でございました。当時においては主力は陸軍であり、しかも日本の陸軍はソ連、ドイツとともに世界の三大陸軍国を誇つてつた。その当時においてなおかつこのバランスであつた。それを今おつしやつたように非常な科学兵器ができておるというような場合、さきに法制局長官も心配せられるように、日本においては歩兵の戦闘よりも、むしろ防衛の場合には――出て行くなら別であります。おそらくアメリカ考えているように、外に出そうというなら百万も二百万もいるでありましようが、そうでなくて自衛のためというならば、ある軍事専門家が指摘しておるように、古い軍事専門家でも指摘されておるように、空軍が第一の主力でなければならぬ。にもかかわらず、このMSA協定に法律的な関係はありませんが、政治的な関連において兵力の増強が実は出て来た。MSA協定につきまして予備的にお尋ねいたしたときには、兵力増強は絶対いたしませんと岡崎外務大臣並びに吉田総理がお答えになつたのに、これが出て来た。これは明らかにこれとの政治的な関連があると見なければなりません。そういうことで私は一体どういう作戦計画を立てておられるのか、用兵作戦の計画を伺わなければならぬというのでお尋ねしたのです。今お示しになつておりますこの二十九年度計画を見ましても、何ら自主性のないものである。むろんわれわれは国を守るには別に兵隊をもつてやろうなんということは考えておりません。一歩譲つてやると考え政府の論理に従つても、そこに大きな矛盾をわれわれは発見せざるを得ない。ですから実は今の問題を留保いたしまして、やがて自衛隊法が討議されます場合に、われわれとしてもこれとの関連において重要な関心がありますから、合同審査を希望し、その機会に続いてお尋ねすることにいたしたいと思つております。  きようは時間がありませんから、それは留保しまして次にお尋ねいたしたいのは、従来の保安隊による自衛行為と……。
  38. 上塚司

    上塚委員長 穗積君、木村長官の渉外関係で出かけられる時間が来たので、なるべく簡単に願います。
  39. 穗積七郎

    穗積委員 簡単にいたします。  もう一点だけ。それと今度の自衛隊法による自衛行為との間にどういう懸隔がございますか、御所見を承りたいのでございます。
  40. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 旧来の保安庁法による保安隊は、いわゆるわが国の平和と秩序を維持する、国内の秩序維持のために生として置いたものであります。従つてその行動も、国内におけるいわゆる大きな暴動とか反乱とかいう、警察力をもつてしてもとうてい退治することのできないような場合において行動することを任務とした。今後の自衛隊法による自衛隊は、いわゆる国の安全、外部からの不当な武力攻撃に対してこれを何とか阻止したい、その阻止することを任務としてやり、兼ねていわゆる国内の秩序維持の任に当るという建前をとつているのであります。そこに大きな差違があると思います。
  41. 穗積七郎

    穗積委員 私の質問に対してちよつとお答えがいただけません。私の質問したのは目的ではございません。隊の目的相違ではなく、その隊の行い得る、すなわち直接侵略に対して行い得る行動の範囲が、保安隊の場合と自衛隊の場合と相違が生ずるかどうかということなのです。その国際的な関係における、または憲法との関連における保安隊の自衛行為と自衛隊の自衛行為の間に開きがあるかどうか、相違があるかどうか。目的ではございません。誤解なくお答え願いたいと思います。
  42. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 自衛隊はいわゆる国を自衛するためであります。御承知通り、われわれ個人としても正当防衛権は行使できるのであります。国としても不当に外敵の侵入があつたときには当然防衛をすることができる。
  43. 穗積七郎

    穗積委員 保安隊でもできます。
  44. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 保安隊でもできます。それを明らかにしたわけであります。
  45. 穗積七郎

    穗積委員 その戦閥行為に相違がございますかどうか。その範囲限界です。
  46. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 むろん保安隊自衛隊もその点においてはかわりはない。われわれとしてもその場合にはいわゆる自衛力を行使できます。ですから保安隊においても自衛隊においてもその任務こそかわれ、いざという場合には自衛権を行使するのには何ら差違はないのであります。
  47. 穗積七郎

    穗積委員 はなはだ不十分でまだお尋ねいたしたいのでありますが、留保いたしまして次の機会にお尋ねいたします。どうぞそのようにお手配くださるようにお願いいたします。
  48. 上塚司

    上塚委員長 穗積君、時間はあと八分ぐらいしかありませんから御注意しておきます。
  49. 穗積七郎

    穗積委員 法制局長官並びに高辻部長にお尋ねいたします。実はかつて現在の憲法が制定されますとき、私はたまたま憲法委員でございましたが、当時提案者であつた吉田首相が、九条の解釈につきまして、二十一年七月であつたと記憶いたしますが、この憲法は国の自衛権そのものは否定しない、しかしながらそれを顕在的に行使する力並びに方法を禁止されているから、従つて自衛権の行使はできない、なきにひとしいというふうに解釈をなさいました。さらにマツカーサー元帥が後に国会におきます憲法制定当時の証言の言葉の中に、こういう言葉がございます。日本の主権の一部としての戦争は全廃される。全部廃止される。主権の行動として自然発生的なものではないということですが、云々と中を略しまして、重要な言葉がその次にあります。自国の安全を維持する手段としてさえも戦争を否定する。それから後の言葉に、かついかなる実力団体にも永遠に交戦の権利は許されない。こういう言葉を使つております。それときようこのごろ伺います、同じ憲法内におきまする自衛権の行動の限界並びに内容につきましては、非常に開きを生じているように思うのですが、まず第一にお尋ねいたしたいのは、このマツカーサーの日本憲法に対する解釈並びに吉田総理の第九条に対して国会において発言されましたこの解釈は、正当とお認めになるか、誤りとお考えになるか、そのことを最初にお尋ねいたしたいのでございます。
  50. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 高辻君の方を見ながらお尋ねでございますけれども、私は穗積先生とはやはり憲法制定の際に相棒を勤めたわけでありまして、その御縁故から私からお答えさせていただきます。今の御指摘のマッカーサー元帥がどうこうということは、これは私は外国人の言つたことで、日本国憲法の権威ある解釈にはならないと思いますから、これは黙殺いたします。  吉田首相の当時におけるお話は、たしか私吉田首相の御答弁を聞いておりまして、おつしやるような趣旨に聞き取れましたけれども、これは結局政治論を言つておられるということがはつきりしたわけでございます。その後における金森国務大臣その他の憲法審議の際における答弁は、みな自衛権はあるということははつきり速記録でも出ておるわけでありますが、私としては……(穗積委員「自衛権の行使を伺つております」と呼ぶ)自衛権はある。自衛権の行使は必要なる限度において、憲法の許す限度においてできるということも言つておるのであります。たとえばこの憲法はガンジーの言う無抵抗主義かという御質問があつて、金森さんは、いや、ガンジー自身が無抵抗主義とは思わぬけれども、いずれにせよこの憲法は無抵抗主義ではないということが、速記録にもはつきり載つておるように言つておるくらいでありますからして、その点の考え方は、憲法審議の際と一向かわつておりません。
  51. 穗積七郎

    穗積委員 潜在的な自衛権そのものについて私はお尋ねしておるのではない。今問題にしておりますのは、自衛権を行使する方法と限界でございます。そのことを伺つておる。従つてその場合におきましては、先ほど来のお話によれば、当時の解釈とは全然違つてMSA協定によつてできる日本自衛隊、二十万近くの兵隊は、近代的な武器を持ちましたおそらくは世界的な水準から行けば、上の方から数えられる順位になるでしよう。そういうことになりますから、そこでそれが問題になり、それを行使する限界は、先ほどのお話によれば、自衛に必要である場合には、外国の領域までこれを攻撃し、戦闘行為を行うことができるというような解釈になりますと、おそらくは私は格段の本質的な違いがあると思うのでございます。特に日本は由来政治的には程度が低いとかいろいろ言われておりますが、政治家の言必ずしも信用されておりませんが、しかしながら法律の解釈につきましては、一応の権威を持つて参りました。従つて私はあなたや高辻さんに期待いたしますのは、政治的考慮なしに、または政治情勢の判断いかんにかかわらず、情勢いかんにかかわらず、法の解釈というものは、制定当時の解釈と今日の情勢がたといかわつてつても、同じ条文の中から同じ解釈が出て来なければならぬ。その権威を私は伺つておる。もし政府がその法に反するようなことをやりたいというなら、政策の上でございますから、多数でもつておやりになるならやむを得ませんが、そうであるならば、憲法を改正しておやりになるべきだというように私は思います。そのことを私は憂えますので、私の憂いは、おそらくあなた方二人にとつては、法律家として、より以上の憂いであろうと思う。そういう意味でお尋ねするのですが、はなはだ私はおかしいと思うのです。  そこで私は続いてちよつとお尋ねいたしますが、第九条には、「陸海空軍その他の戦力」とございますが、この戦力というのは、実は当時の解釈におきましては、軍隊以上のものに解釈されておつたのではないのであつて、むしろ「その他の」というのは、さつきも岡崎大臣が言われたような、今度の九条でいわれておる自国の自衛の能力、デフエンス・キヤパシテイといいますか、そういう潜在的な戦力でございます。当時の解釈は、軍隊以外の総合戦力すら意味しておつたと私は理解しております。それを今日は軍隊以上のものが戦力である。戦力のない軍隊というようなことになつて来ておるのですが、そのことは対しまして、どういう一体御解釈を持つておられたのか、念のために伺つておきたいのでございます。
  52. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 当時の審議の経過を見ますと、確かに戦力そのものと、戦力を構成する個々の要素というものとの分析は、私は不足であつたと思います。それはなぜならば、あの当時の雰囲気におきまして、たとえば占領政策というものが非常に強く働いて、日本は完全に武装解除せられるという解釈がとられておつた。われわれの家々に代々伝え持つて来たところの伝家の刀でさえ、取上げられたという、そういう雰囲気でありますから、その実情というものは一概に非難できない。それは無理もないというふうに考えられます。しかしこれをきわめて法律的に潔癖に考えて行きますと、やはり戦力そのものとその構成要素というものとは、明らかに分解されて考えなければならぬということで、われわれは今日解釈を申し上げておるのであります。その根本の精神においては、前とは少しもかわつておらないということを申し上げ得るのであります。
  53. 穗積七郎

    穗積委員 岡崎大臣にちよつと申し上げておきます。先ほども申したように、アメリカ人や英国人は、割合巧妙でずうずうしいところがあつて、法律なんかつくつても、かつてに解釈をかえる。今度の条約九条においては、日本国憲法の規定云々といつておる。しかも当時の事情は万人の認めるところ、強制されたものであつたかどうかは別として、この案そのものはアメリカの当時のGHQが草案をつくつた憲法でございます。従つて憲法の解釈につきましては、これはアメリカ日本と同様に良心的でなければならないのでありますが、それが当時の解釈におきましてはそういう解釈をしておりながら、今日はこういうものを結ばして、しかもなおかつ日本国の憲法の範囲内だというようなかつてな解釈をしておる。この調子で行くと、日本国憲法でおそらく保安隊の徴兵という言葉を使えば違憲になるから、保安隊のための徴用法というようなものが近くできて来る。そうして外地派兵もできるというような危険すら、われわれはすでに予感せざるを得なくなつて参りました。ですから後学のために外務大臣に、ほんの一例でございますが、いかに御都合主義で解釈をかえるかということを、深刻な例でございますから申し上げておきます。  そこで法制局にもう一点お尋ねいたしますが……。
  54. 上塚司

    上塚委員長 穗積君に注意しますが、もう時間が来ました。
  55. 穗積七郎

    穗積委員 来ておりません。私は時計を見ております。――この憲法の問題につきましては、第八条の解釈について逐条審議の場合に、長官並びに部長を煩わすことがあろうと思いますので、きようは時間もありませんから一般的な質問ちよつとお尋ねいたしておきます。  きのうの岡崎大臣のお話の中に、日本保安隊に対する指揮権の問題が出ました。いわば日本の総理大臣は、例をとればアイゼンハウアーと同じような立場に立つておる、こういうお話でございました。そこで、憲法は改正されておりません。しかしながら先ほど来明らかになりましたように、日本保安隊は当然外国の軍隊との戦闘行為を予定し、しかも場合によりましては、自衛の名のもとに外国の基地にまで出て行つて戦争をする場合もあるという御解釈になりました。そうなりますとこの指揮権というものは、かつての統帥権に相当するものでございます。日本言葉でいえば統帥権、今日のアメリカのアイゼンハウアー大統領の特つておる統帥権に匹敵すべきものになつて来た。これは単に警察の指揮権とはわけが違います。外国の軍隊戦争することを宣言し、しかも外国の領土へ行つて戦争することができるというふうな解釈になりますと、統帥権というものは、各国の憲法を見ますとこれは明らかにその国の元首にあります。皇帝のあるところは皇帝、皇帝のないところは大統領、日本の憲法並びに政治機構から行きますならば、内閣総理大臣は行政府の長官でございまして、決して国の元首ではない。その元首が今度は外国の軍隊戦争する統帥権、実質的には統帥権、そういう意味で私は統帥権という言葉を使うわけです。だから岡崎外務大臣アメリカの統帥権に当るものは吉旧総理である、だから日本にいるそこらの少将や中将に指揮はされないという説明をされた。語るに落ちるとはこのことであって、まさに実質的にそうなるのです。そうなると国の基本は革命に置かれるわけです。元首が持つべき、皇帝または大統領が持つばき統帥権を、内閣総理大臣が握るという法律が、憲法を改正せずして行われつつあるということになりますと、これは恐るべき革命でございます。従って各国の例で、内閣総理大臣がこんなものを持っておるかどうか。しかもこの統帥権は佐藤長官あるいは岡崎大臣のお話によれば、対外的な戦争になるものでございます。国際的な関係を持っております。この統帥権、政府言葉をかりれば総指揮権でございますが、これが一体内閣総理大臣に所属するというようなことは、これは実質的に憲法を侵犯するものであるとわれわれは解釈せざるを得ない、これは対する御所見を伺いたいのでございます。
  56. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 きのう私が申したことを非常にある部分を強調したりしてお話になっておりますが、これは国際関係もありますから、私の申したことは申した通りひとつ御引用願いたいと思います。  そこで穂積君のように、保安隊なり自衛隊なりというものの存在そのものが憲法違反であるという御議論では、実はいつまでたっても平行線になるわけでありますが、かりに今のお話は、自衛隊なり保安隊なりはあってもいいが、その指揮する権利というものがだれにあったらこれは憲法違反だ、こういう御議論のように思いますから、その前提のもとに申しますと、かりに――かりにと言ってはおかしいですが、保安隊といたしましよう。保安隊がここにありということが肯定されますならば、だれかがこれは指揮しなければならぬわけであります。だれも指揮しない保安隊というものはあり得ない。)穂積委員保安隊じゃない、自衛隊だ」と呼ぶ)自衛隊でけっこうです。自衛隊がありましたとき、だれも指揮しない自衛隊というものはないと思います。その一番最高の責任者はだれにいたすべきかという問題であります。内閣総理大臣では憲法違反だとおつしゃるなら、それは天皇に属するか、あるいは木村保安庁長官に属するか、あるいはだれに腐したら一番適当だとお考えになりますか。それがだれにも属さないというなら、それは結局自衛隊存在がけしからぬということになるわけでありますから、そこの指揮権の問題まで出て来ないわけであります。私は今の状況においては、とにかく自衛隊かありとすれば、その一番最高の責任者というものは内閣総理大臣が適当であろうと考えております。
  57. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 申すまでもなく、旧憲法における統帥権は議会はもちろんのこと、議会、内閣すべてから独立しておったわけであります。そういう意味のものとは別に、平たく今岡崎外務大臣が申しましたように、ある部隊についての最高指揮権というものを考えますと、これは現憲法のもとにおいても、それはだれかが持たなければならぬはずのものであるということは、はつきり言い得るわけであります。そこで現憲法の中でだれがこれを受持つかということを見ますと、現憲法は天皇の実体のある権限というものは認めておりません。どうなっておるかといいますと、行政権は内閣が持つ、立法権は国会というふうに三権分立でわかれております。そこで今の一つの部隊を指揮監督する仕事というものは、あたかも警察に対する指揮監督と同じ性質のものとして、行政部内の役割であるということは、これは何人も異存はないところであります。行政府の役割だ、そうなれば当然その最高責任者は内閣である。しかもその内閣は今後は国会のもとに立つ、議院内閣制のもとにおける内閣であるという形になつて参りまして、昔の統帥権と今度の最高指揮権というものは、全然性格が違うものであつて、しかもそれは行政権に属するものであり、内閣の責任事項に属するものである、これはもう論理上当然だと思います。
  58. 穗積七郎

    穗積委員 もう一点だけ。だから無理が出るのです。すなわち現在の憲法の中でこういう悪いことをしようとするから無理ができて、どこへもやりどころのないものが出て来る。やるなら憲法を改正してやれ。われわれは反対だけれども、おやりになるなら……。問題は政策上の問題と、この憲法を守るか守らぬかという問題があるわけなのです。そこで私は言つているのです。ですから日本の憲法は当然対外的な戦争をする軍隊なんというものは考えておらぬから、その所属がないのはあたりまえなのだ。ないところでこういう対外的な戦闘行為をするような保安隊の指揮権というものをつくつて来るから、そこで実はやりどころがなくなつて来て、しようがなしに内閣総理大臣へ持つて来る。内閣総理大臣へ持つて来れば、この指揮権というものは実質的には統帥権なのだ、そこで憲法は別といたしまして、国の政治構造の根本的な革命がこれで行われた。そういうことを私は憂えておるのです。しかも国会も見ず、何も見ないで、そうしてこれが指揮権な持つ。しかもその関係アメリカとの関係が非常にあいまいになつている。アメリカとの共同作戦の場合における指揮権の所在については、これは協議ということがあるだけであつて、さつぱりはつきりしておらない。こういうような状態でこのことなやることは、政策的にも法律的にもわれわれは認められないということを言つておるのですから、その点はどうぞひとつごまかさないで、問題をそらさないで、正確に受取つていていただいて、次の機会にお尋ねいたしますからよくお考え願います。  そこで最後に一点だけお尋ねいたしますが、これは前に下田条約局長にもちよつとお尋ねいたしましたが、第九条で「自国の憲法上の規定に従つて実施するものとする。」とございます、このことは実はこれが国際条約の文章の中に出て来たところに問題があると私は思うのです。自国の憲法の範囲内で条約を結び、あるいはまた法律をつくり、あるいは行政行為を行うということはあたりまえのことであります。それを条約の文章の中に書いたということになれば、そこで私がお尋ねいたしたいのは、こういう文章をアメリカとの、お互いに義務と権利を持ち合う条約文の中に書けば、どこまでが合憲的な法律であり行為であり、どこから先は違憲であるかという判断について、アメリカとの間に解釈の流一をする必要が生じて参ります。たとえばアメリカ側が共同作戦のために、日本の自衛のためだということで、そこでこの間の問題のように元山の上陸作戦、二十五年の上陸作戦に兵隊を出せという命令を出した。これは明らかに違憲だ。だから当時の良心的な指揮官の一人は辞職しておると聞いております。その程度ならまだしも、それがだんだん拡大して行つた場合にそれを要求する、そのときに日本は、これは憲法に反しますからこれ以上のことはできません。そこでアメリカは、そんなことはない、日本の憲法はかくかくであるから、まだこのことはできるはずである、お前は国際法上の義務を怠るものであるという要求が出される危険があるわけです。すなわち憲法の解釈に対して、もとより当然法理的にいえば、憲法の解釈は日本の自主的な国民の判断すべきものであつて、外国が関与すべきものではございません。しかしながらこの行動が合憲であるか違憲であるか、アメリカとの間に共同作戦でとる行動が――その他の場合でもよろしゆうございますが、アメリカとの間において話し合つた行為なり法律が合憲であるか違憲であるかについて、この九条をたてにとつてアメリカはこれは合憲の範囲だとわれわれは解釈するという、非常な政治的な――法律的には問題ですが、政治的なインフルエソスを持つし、同時に、国内渋としての憲法解釈にはアメリカは関与できませんが、国際条約上のこの条文に従つて、憲法の範囲内であるかないかについての判断に対して、発言をすることができるようにわれわれ解釈するのですが、そうなりますというと、これは恐るべき規定である。岡崎国務大臣はこういうものをつくつたから安心しろと言うが、とんでもないことであつて、裏をひつくり返せばそういう危険がある。しかもマッカーサーは終戦のときああいう解釈をした。しかも最高のものでありました当時の対日管理方針から行きましても、そういうことはないのに、かつてにこういうことをやらしておる。そういうことでございますから、その危険をわれわれは感じるのですが、この憲法の解釈権、この条文から生ずる憲法の解釈権について、並びにアメリカ発言権について、私は今言つたような恐れをなすものであります。そこでそれに対する御所見を承りたい。  次いで条約局長にお尋ねいたしますが、こんな条約がどこかに例がございますか、念のために伺つておきます。こんなばかな条約、条文があるはずがない。
  59. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 どうも今の解釈は、私にはどう考えてもふしぎな解釈で、おそらくいかなる学者も、穗積君のような御意見には同意できないだろうと思います。この文章をごろんになればわかりますように、各政府がそれぞれ自国の憲法上の規定に従つて実施するのであつて、各政府がお互いに自国の憲法の解釈を相談するわけじやないのであります。おのおのの政府自国の憲法上の規定に従つて実施するのであつて自国の憲法の規定に従つて実施することを、よその国の政府が、いや、それは違うとか違わないとか、これは言えるわけのものじやないし、文章からいつてもまたその通りであります。また条約局長からいろいろ例はあとで申しましようけれども、大体この条約の効力発生のときなんかは、おのおのの国の憲法の規定に従い、あるいは法律の規定に従つて手続を終つてそうして効力を発生する、こう言つておるときに、いまだかつて、お前の国の手続はこうじやない、こうだと、よその相手の国が言うことができるというような解釈は、私は国際法上行われたこともない、そんなことを言い出されたこともないと思います。これを日本の憲法の解釈は、ここにこういう文字があるからアメリカがああだこうだということになるのだというのは、どうしても御説明ができないのです。(「なくてもいいじやないか」と呼ぶ者あり)もちろんなくてもいいのです。これはたびたび申しておる。なくたつていいので、ただあなた方が以前に中間報告や何か求められて、私が中間報告をいたすと、やれ、それは憲法の規定に反するようなことをするのじやないか、というようなことをしきりにおつしやるから、そのときに申し上げたのです。こんなものは必要ないのだけれども、そんなにおつしやるならば、協定のどこかに憲法に従つてやるということを入れましようということを、皆さんがおつしやるから私は申し上げたのです。それは当時の速記録をごらんになればよくわかります。
  60. 上塚司

    上塚委員長 加藤勘十君。加藤君に申し上げますが、午後一時くらいまでで一応午前中の質問を打初りまして、午後二時半からまた再開して、そのときは保安庁長官もまた見えることになつておりますし、外務大臣もむろんお見えになりますから、さらに継続してやることにいたします。
  61. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 委員長がそうおつしやれば、これは互いに冷静に、真剣に検討しなければならぬ問題ですから、中断されようと何しようとそんなことはかまいませんが、しかし本来なら一応休憩してやるべきだと思います。けれども、そうおつしやるならば続いてやって、あとまた残つた分はやることにいたします。  そこで私の質問に入る前に、今の穂積君の質問に関連して、佐藤法制局長官にお伺いしたいと思います。  実はけさ私、新聞を見てびつくりしたのです。新聞によりますと「海外派兵の可能性、佐藤法制同長官が示唆」と四段抜きで出ておるのですね。これはこの新聞記事を見て、内容を見る前に、見出しだけで驚いた人は私一人でなかろうと思うのです。これはとんでもない誤解を招くおそれがあると思いますので、ぜひこの点だけは明確にしておいていただきたい。内容を見ればそれほど明確になつておりませんが、とにかくこういう大きな見出しで、実はびつくりしたわけなのです。そこで、先ほど来穗積君の質問に対してお答えになりました点で、きのうおつしやつたことの意図が大体わかりましたけれども、お伺いしておってどうしてもふに落ちない点は、国際紛争解決の手段として武力の行使は永久に放棄するという憲法九条の規定と、それから海の外から砲弾等が飛んで来ることがどういう場合にあり得るかというと、大体いろいろなじくざくな紛争の後に、あるいは威嚇のためかはんとうに攻撃するためか知りませんが、いずれにしても国際紛争の具体的現われとしてこうした行為がとられると思うのです。従つて法制局長官は、おつしやるように、海の外から砲弾が飛んで来るような事態を国際紛争とお認めになるのか、それとも単にどこかの国のいたずらと思われるのか、まずその点を明確にしていただきたい。
  62. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 新聞の見出しについてはまつたく御同感でございまして、私もけさ実は非常に驚いたのでおります。内容を見てまあ安心をしたということでございます。内容は正確に出ておりますから……。  そこで今のお尋ねの問題でありますけれども、申すまでもなく、この九条第一項の国際紛争解決の手段としてはという趣旨は、これはいまさら申し上げることもないとは思いますけれども日本の国とよその国との間に主張の対立があつて、どうもこのままでは解決がつかない、こつちから武力を持ちかけて、力をもつて解決に臨む、あるいはそれで威嚇するということを禁じておるものであることは当然であります。そこでこのお尋ねの場合、向うから日本に対して直接の侵害行為があるという場合に、それに対して日本が対応する措置をとるということは、これは国際紛争解決の手段でないことは明瞭なので、直接侵害を排除する行為そのものなのであります。学者が普通に、九条は自衛権は禁止しておらないと言っておるのは、そういう場合にこれを防ぐ道があるということを、言いかえれば言つておるのでありまして、自衛権があるということは、私はそういうことだろう、こう考えております。
  63. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 そうしますと、われわれも自衛権が独立国におるという前提に立つております。しかし問題は、自衛権の行使ということと交戦ということと――一体自衛権の行使ということと交戦権とどういう区別があるか、その点をはつきりさしておいていただきたい。
  64. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 自衛権の行使ということと、交戦権というものとは、クロスして両方考えなければ解決がつかないだろうと思います。すなわち、交戦権がかりに否認されおらなかつた、交戦権を持つてつた場合の自衛権の発動の形と、交戦権が否認されている場合においての自衛権の発動の形は、多少そこで違つて来るだろうと思います。そういうことが言えると思います。
  65. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 問題はその点にあると思うのです。たとえば昭和六年の満州事変の発端になりました柳条溝の鉄道爆破の問題に対して、日本は当時自衛のために積極的軍事行動に出た。また昭和十二年の北麦事変の発端となつた蘆溝橋の場合においても、相手方が実弾の行使をしたから、それに対応して自衛のために軍事力を行使したということをいわれておるのでありますが、当時日本には交戦権というものがありました。今日は、交戦権がないということはもう明確なのです。その交戦権がない場合においては――国際紛争の解決手段として武力行使をやらないということがはつきりきめられておるのでありますから、今法制局長官が例におとりになつたような場合においては、憲法解釈の上において、私は非常に疑義が出て来ると思います。この点、先ほどもお伺いしておれば、憲法制定当時に、戦力論であるとかその他の問題についての個々のつつ込み方、審議が足らなかつたとおつしやるけれども、しかし現われた法律の条章というものは、われわれはこれを遵守しなければならない。従つてわれわれは、立法の当時の審議が不十分であつたという理由をもつて、今日憲法の解釈をあいまいにしてはならないと思うのであります。この点に対して、私は法制局長官として責任のある将来疑義の生じないように、解釈を明確にしておいていただきたいと思います。
  66. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 今のお言葉結論は、御要望のように承りましたけれども、中に出て参りました、たとえば柳条溝の場合とかいうようなことになりますと、先ほども少し触れたのでございますけれども、やはり自衛権の限界そのものの力からも、それは話にならぬ問題であろうというふうに考えるわけであります。
  67. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 そういう問題ではなくて、憲法九条の解釈について、交戦権というものは、宣戦の布告がなされたときに、交戦権というものが発動されたということになるのか。現在は日本の国においては、交戦権を放棄しておるから、従つて宣戦の布告ということもないわけでありますけれども、さつき例にお引きになつたように、海外から砲弾でも飛んで来たときに、これに呼応して自衛という名によつて武力を行使する場合に、それが実際上の戦争状態に発展するのではないか、そういう場合にどうするか、この点をはつきりされる必要がある。これはひとり当局ばかりでなく、国民としてもはつきりしておかなければならない点だと思うのです。
  68. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これも先刻御承知のことと思いますけれども、交戦権そのもののについて二つの考えがあるわけで、交戦権というのは戦争そのものを行う権利、すなわち今の言葉でいえば、宣戦布告に始まる戦争行動一切をやる権利だという考え方と、戦争が始まつた場合において、交戦者としての立場上許されておるいろいろな権利という個々の権利をさすものだ、という二つの大前提がわかれ目になるわけでございますが、この点につきましては、この憲法の御審議の際から、政府は一貫して、これは戦争そのものをする権利ではなしに、戦争が始まつた場合において、戦争当事者として国際法上持つ個々の権利、これを言つておるのである。従つてそれを放棄しておるのだということで来ておるわけであります。今日われわれが御説明申し上げておりますのも、その筋から御説明申し上げておるわけでございます。まず前提を申し上げまして、さらにまたお尋ねをいただきたいと思います。
  69. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 この問題はおそらくは一挙にこの席上において将来疑義の生じないような見解をお述べになることも相当因難だと思います。従つて私はこの問題についての解釈上の問題はしばらく保留しまして、私の外務大臣に対する質問に入りたいと思います。  第一にお伺いしたいことは、われわれがこのMSA協定の審議に入りますためには、MSA協定というものがどういう環境のもとに、どういう必要によつて締結されるに至つたかというこの前提を明白にしておくことが、この問題に関する国民の疑義を明らかにすることになると思うのであります。従つて私は今日のこのMSA協定を必要とされるに至つた政府当局の現在の国際情勢に対する認識を、まずお伺いいたしたいと思います。われわれの見るところにおいては、今日の国際情勢は、一九四七年いわゆる冷たい戦争という言葉が国際間に用いられるようになつてから、幾多の変遷を経て、最近におきましては、ことに五箇国外務大臣会議を経まして、急速に平和の方向へ、これはしばしば外務大臣も言われる通り、米国の軍事力の充実がソビエトの軍事力に頡頏するに至つた。ことに近代兵器の頂点に立つ原子力においては、アメリカの方がすぐれておるから、戦略的にソビエトが平和の方向へ向つてつておるのであつて、本質的に平和の方向に向つてつているものであるとは思わない。こう言われましたが、われわれも、ソビエト政府というよりも、共産党の国際的な従来の戦略戦術は、戦術的には若干の変化を見ておるでしようが、基本的な戦略においてはかわつておるとは思いませんが、少くとも国として国際的な平和の方向に向つておるということだけは、これを認めないわけには行かないのであります、ことに米ソの武力の均衡による、武力による平和の維持あるいは平和の方向への転換ということを認めるにしましても、ともかくも平和の方向に向いておることだけは否定することのできない国際的な動きだと思うのでありますが、まずこの点に対して外務大臣はどのように見ておいでになりますか、この点を明らかにしておいていただきたいと思います。
  70. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 大体御説の通りだと私も考えております。言葉でしいて表現しますれば、平和の方向に向いているというよりは、むしろ戦争の危険が少しずつではあるが遠のきつつある程度認識を持つております。他はお考え通りであります。
  71. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 そういう国際情勢の動きの中におけるアメリカ世界政策というものが、私はアメリカ側から見てのMSA協定日本と結ぶ大きな理由の一つになつておると思います。ことにアメリカ世界政策の中でも、とりわけアジア政策が主要なる推進力になつておるということは、否定し得なかろうと思うのでありますが、アメリカのアジア政策というものが現在どのように展開されつつあるか。これは東南アジア諸国に対する見方もありましようし、また中国大陸に対する見方もありましようし、台湾に対する見力む、あるいは南北朝鮮に対する見方も、もた日本に対する見方もありましようが、私はそういう総合されたものが、アメリカのいわゆるアジア政策となつて現われ、その一環として日本MSA協定を結ぶ必要があるというところから、この協定が生れるに至つたものであると思うが、外務大臣はこの点に対してどのような御見解を持つておいでになるか、まずこれもお伺いしておきたいと思います。
  72. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいま御審議を願つております関係協定につきましては、これはいわゆるMSA関係でありますが、この問題につきましては、アメリカのアジアに対する政策、あるいはヨーロツパに対する政策において異なるところはないと考えております。要するに、先ほどもお話になりましたように、自由主義諸国防衛力増強が、一時的にもせよ平和の維持に貢献するという考えから、アメリカの平和と安全を守るためには、結局自由主義諸国防衛力が強化されることが必要である。そのために自由主義諸国の力の及ばない場合には、幸いにしてアメリカに十分なる力があるから、防衛力増強に役立つような援助をいたそう、この考え方においてはヨーロツパ、アジアを通じかわらないと思います。その意味から日本に対する援助も行われつつある、こう考えております。
  73. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 アメリカ側日本MSA協定締結するに至る理由については、外務大臣も大体私と同じような見解をお持ちのようでありますが、今度日本側がこの協定を結ぶことを必要とする理由、これについては憲法違反であるとか、あるいはどうであるとかいう法律上の解釈は別にしまして、MSA協定締結する必要が日本側にあるとすれば、一体どういう理由がこの協定を必要とするに至つたのか、これをまずお伺いしたいと思います。
  74. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 少し御質問よりも範囲が広くなるかもしれませんが、今の世界の情勢、つまり戦争の危機が少しでも遠ざかつておる、こういうときに、日本が本年新たにMSA援助を受けで、防衛力増強しようといたしておるのは、つまり日本としてある程度防衛力の飽和点に達しておると仮定しますれば、この世界情勢に見合つて、これ以上の増強が必要がないということも、議論としては言えるかもしれぬと考えております。しかしたとえば日本の場合は、八千七百万の人口と、非常に広い海岸線を持つてつて、現在は保安隊が十二万ということであります。イギリスのごときは、立場は違いましようが、四十数百万の人口で海岸線も比較的広くないが、八十数万の軍隊を持つており、フランスも御承知のような人口で七十数万の軍隊を持つておるような事情で、われわれの力の防衛力というものは、これは保安隊なり自衛隊なりのいろいろ議論はありましようが、独立国として最小限度のところにはまだとうてい到達しておらないと考えておりますので、その意味で、世界情勢のいかんにかかわらず、ある程度防衛力の漸増ということは行いたいというのが、政府考え方でもあります。もちろんこれは大筋にいえば、世界情勢に見合つてのことではありますけれども政府はまだ最小限度にはとうてい到達しないという考え方でありますので、防衛力増強したい、それについては、財政上の見地からいいまして、アメリカ側MSAの援助を受け得るものならば受けて、比較的負担の軽い方法で防衛力増強したい、これがただいまの考え方であります。
  75. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 日本が敗戦の結果として武力を行使するようなことをやらないとか、交戦権を放棄するという規定が生れましたことは、日本が永久に外国の占領下に置かれるというのでなく、日本独立国なつた場合に、当然その国の骨髄として憲法が制定されなければならないという理由によつて、この憲法は制定されたものであります。従つて今日の、独立国なつた後の防衛力云々というような問題は、当然この憲法制定のときに全部条件として織り込み済みであつたはずであります。従つて日本の海岸線が長いとかあるいは入口が過大であるから現在の防衛力では不足である、飽和点に達していないという御意見でありますけれども、われわれはそういう自衛権をほんとうに守つて行くためには、自衛権の行使としての武力を用いない、他の手段によることが第一に考えられなければならぬはずであります。これは日本憲法の明らかに命ずるところであり、また戦争に負けた日本の国が、今後ほんとうに平和国家として進んで行く道でなければならないと思います。従つてわれわれは、政治論としては今岡崎さんがおつしやつたようなことについて納得するわけには参りません。これはおそらく自由党と社会党との政治的立場の相違から来る見解の相違であるということになるから、いつまで議論してもまた果てしのないということになるでありましようから、私もこれらの点について深く触れようとはいたしませんが、今おつしやつたような海岸線が長いから、あるいは人口が英国に比べてはるかに多いものであるから、英国の軍事力に比べて日本防衛力は乏しいから、まだ防衛力を拡大させる余地があるというような見解は、少くともこういう政治意見は、日本の憲法の存在を非常に軽く見る意見でないかと思います。従つて、私はこれらの点については、他日機会がある場合に譲ることにいたしまして、ただちにこのMSA協定の法律論に入ることにいたしたいと思います。  MSAは、言うまでもなくアメリカMSA、すなわち相互安全保障法のもとに今度の協定が結ばれたものであるということはお認めになりますね。
  76. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 その通りであります。
  77. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 そうしますと、MSAはその五百十一条(a)項によりますと、アメリカの安全に役立ち、アメリカの外交政策を推進する上に役立ち、第三番目にアメリカと援助を受けた国と双力の安全に役立つことをアメリカの大統領が認めた場合に援助が行われる、こういう法律の性格が規定してあることも、もとより御承知であるわけであります。こういう牲格のMSA法の規定に従いますならば、MSA援助の協定によつて利益を受けるものはたれであるかということになれば、この法律の性格が規定している通り、第一にも第二にもアメリカ自身である。日本は――かりに日本以外でもそうですが、援助々受けた国は、第三番目にアメリカと共通して安全が守られるというわずかな利益しかないわけあります。こういうアメリカの利益を第一とする協定を結ぶことによつて日本の国の骨格、骨髄である憲法の解釈に疑義を生じ、国民的な賛否の対立する状態に陥らしめるということは、この協定によつて得られるわすかな利益と、それから憲法の解釈について国民がまつ二つに対立するような、国内混乱を見るような不利益と、はたしていずれが大であるかと外務大臣はお考えになりますか、この点に対する見解をお伺いしたいと思います。
  78. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 まず大前提におきまして、私どもはこの協定は憲法に違反していないと考えておりますから、憲法に違反するかしないかという問題が一つここにあつて、そしてその危険をも冒してこうするのだというようには考えておらないのであります。その点はどうも意見相違になろうかと思います。従つて憲法に違反しないという前提でわれわれはこれを見ております。  そこで、かりにそういう意見でものを見ますならば、アメリカの法律であり、アメリカの議会の制定したものでありますから、これはアメリカの安全に寄与し、アメリカの外交政策を推進し、そしてアメリカと被援助国の相互の安全にも寄与するのだ、こうなりますが、もしMSA法を受けるために、かりに日本でこれに対応するような法律ができて、アメリカMSA援助を受けてよろしいということになりますならば、これは日本の安全に寄与し、そして日本の外交政策を推進し、ついでにアメリカ日本との間の相互の安全に寄与するものである、こういうふうになるのは当然だと思います。ただ、それならばMSAの援助を受けたら、何かアメリカの安全のために積極的にわれわれがやらなければならぬ義務があるのか、何かアメリカのために大いに働いて、その副産物として日本も安全になるのだというふうに、ちよつとお話が聞き取れるのでありますが、そうじやなくして、先ほど申しましたように、日本自体の安全の保障ができればできるほど、アメリカとしては白国の安全に役に立つのであるし、またアメリカ世界の平和を維持しようとする外交方針の推進になるのでありますから、結局アメリカのためにももちろんなりますけれども日本防衛力増強に役に立つからわれわれは受けておるのでありますその意味においてはまた相互安全保障という言葉もそれから出て来るのでありますが、さらにもう一つつけ加えますれば、アメリカ側もそう言つておりますが、われわれもこれはアメリカの慈善事業だとは思つておりません。また慈善事業を受けるという気持もわれわれにはないのでありまして、無償でアメリカから兵器等相当厖大なものを贈与されることは、普通ならば独立国として考うべきことであります。しかしながらこれはアメリカのためにもなるのだから、われわれは何も無償で受けてもちつともおかしくない。もちろん日本のためになるが、間接にはアメリカのためにもなるのだ、こういう考えで援助を受けたい、こう思つておるわけであります。
  79. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 憲法に対する見解においては、昨年以来もう何十たびとなく意見が述べ合われまして、どうしてもこれは一致点に達しない。しかし少くとも政府はそういう見解の上にこの協定をお結びになつたのでありましようけれども国民多数の中にはひとり社会党関係ばかりでなく、多くの学者の間においても疑義があるということは、お認めにならなければならないと思うのであります。少くとも政治的な意図を持たず、純粋に日本の憲法を守つて行かなければならないという立場に立つ者をして、憲法の解釈に疑義を生ぜしめるようなことは、私は政府の一方的解釈だけでは解決のできない問題であると思います。従つてこれらの点については、あくまでも究明されなければならないと思いますが、これを具体的に見まして、なるほど協定第九条には、アメリカの憲法にも日本の憲法にも、相互の国の憲法の範囲内で憲法に抵触しないように、とこういう規定がございます。それは先ほど来の質疑においても本来ならばこんなものはよけいなものであつて、必要がないという意見もありました。われわれもほんとうにこれがどこに出しても何ら国民的の疑義の生じない条約であるならば、こういう規定はなくもがなであると思いますが、政府反対論者の点をいろいろ考慮されてこれをつけたと言われるのでありますけれども、そこで問題は、憲法九十八条第二項の条約は遵守されなければならぬという規定と、この脇定の内容になる事柄と矛盾したような場合に、はたしてこの九十八条の憲法の規定はどういうようになるか、この点に対してはつきりしたお答えを願いたいと思います。
  80. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 この条約内容と憲法との間に直接抵触関係のないことは、ただいま岡崎外務大臣からお答えした通りでございますけれども、今のお尋ねを一般的に受取りまして申し上けたいと思いますのは、結局は条約と憲法とどつちが優位であるかという問題に帰着すると思います。学説といたしましては、このただいま御指摘の条文を根拠にとつて、むしろ条約の方が憲法よりも優位であるというような立場の説もございますが、私どもとしては、どうも憲法と条約とを比べまして、たとえばその制定の手続を考えましたところで、憲法を直そうというためには、参議院、衆議院両方三分の二以上の多数で可決されて、それが国民に提案されて、そうして国民投票において過半数の賛成がなければ改正できないという、非常に厳格な手続ができているわけです。ところがその条約の手続によつて、本来ならばその重大なる手続を要する憲法がかつてにかえられるということは、これはどう考えても私どもとしては納得できない。いわんやただいま御指摘の九十八条の次には九十九条という条文がございまして、あなたの言う国会議員、国務大臣その他の公務員は憲法遵守の義務を負うということもございます。そういう点から見まして、私どもとしては条約といえども憲法にうちかつことはできないということを前提にすべてを考えているわけであります。
  81. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 憲法と条約との矛盾した場合に、憲法が守られなければならぬということは、憲法を国の根幹と考えている者は当然のことであります。もし一々外国と条約を結ぶために国の憲法が動揺するというようなことがあつては、まつた独立国の体形はなさぬのであります。いやしくも独立国として主権を持つている以上は、当然憲法が守られなければならぬわけであります。そこで問題は、MSA協定そのものの中に、憲法の範囲内であるという規定のある第九条と、第八条の日本の憲法に抵触するであろうと思われる条項とが、同時に並んで規定されている点であります。これは先ほど岡崎外務大臣も、自分たちは憲法に抵触しないと思うけれども国民の中にそういう疑いを持つ者があるから、念のために九条の規定を入れた、こうおつしゃいましたが、私どもはこの協定の第八条の六項目の規定、これは六項目の条件がなければ、どこの国にも援助を与えないというMSAの性格から来た当然の規定であると思います。この六項はMSAの性格を規定している六つの目的をそのまま書いたものでありまして、この中に、しばしば議論の対象となりました、ことに第三番目の「自国政府日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約に基いて負つている軍事的義務を履行することの決意を再確認する」ということ、この「再確認」ということに私は問題があると思うのですが、その次の「自国政治及び経済の安定と矛盾しない範囲でその人力、資源、施設及び一般的経済条件の許す限り自国防衛力及び自由世界防衛力の発展及び維持に寄与し、」、こういうことが私は日本憲法の九条の規定と抵触するものであるという見解が生れて来る点であると思います。そこで第九条では憲法の範囲内であるという断り書きがありますが、この第八条のこれらの六項目の中の今申しましたような点について、どうして軍事的義務を履行するという決意を再確認することができるのか。軍事的義務、これは自力とかあるいは防衛力とかいう言葉でごまかされようとするかもしれませんけれども条約には明確に軍事力としてありますし、MSAそのものが軍事援助を規定した性格の法律であります。従つてこれを私は日本の憲法の第九条の規定と合致せしむることが、この協定を結ばれた政府の当然の責任であると思います。ただ九条で憲法の範囲内と規定されただけでは、国民のこの点に対する疑惑を解明することにはならないと思いますが、外務大臣はどのようにお考えになつておりますか、お伺いしたいと思います。
  82. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 まず軍事的義務という点についての御疑念のようでありますが、軍事的義務というと、なるほどおつしやるように何か日本軍隊を持つ義務であるとか、あるいは海外に派兵する義務であるとかいうふうにおとりになるかもしれませんけれども、そういう心配もありましたので、まず昨年の六月二十四日に、ここにはつきり言つておる軍事的義務というのは、日本の場合には安全保障条約で負つておる義務をさすものであろうということを先方に念を押しまして、その通りであるという返事を六月二十六日に受取つたわけであります。そこでこの八条の中にも、MSAの法規の中では一般的に書いてありますものを、安全保障条約という特定のものについて言つておるわけでありまして、安全保障条約をごらんになれば一目瞭然でありますように、日本の負つておる軍事的義務と称せられるものは、アメリカの駐留軍の国内における駐留を認め、そして同時に第三国に対して軍事的な基地を与えない、この二つの義務を負つておるのでありまして、それ以外のものは何もないのであります。従いましてわれわれは何らこれは憲法に違反するものでない、こう考えております。
  83. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 そこで問題になりますのは、日米安全保障条約の五箇条から成りますこの条文のどこを見ましても、ここの第八条に規定されておりますような自由世界防衛力の発展であるとか、あるいは日本経済の安定と矛盾しない範囲で人力というようなことは、ひとつも規定されていないのであります。ただ安全保障条約によれば、基地の提供であるとか、便宜の供与であるとか、そういうことが規定されておるのでありまして、ここに日米安全保障条約の再確認とはなつておりますけれども、これらの安保条約に規定されていない多くの言葉が用いられておるところから、われわれは日米安保条約範囲をも逸脱しておる、こういうように見ないわけには行かないのであります。この点に対して外務大臣はどのようにお考えになつておりますか。
  84. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはつまり五百十一条の(a)項は六項目の規定があります。その中の第三項目をごらんになりますと、「軍事的義務」という字が出て来るのであります。そこで第三項目にある軍事的義務とは何ぞやということについて確かめまして、今のような安保条約において日本が負つておる義務、これが第三項にある軍事的義務である、こういうことをはつきりさせたわけであります。しかし第三項以外にたとえば国際紛争をどうするとか、国際緊張の緩和をどうするという約束もやはり同時にいたすので、この六項目は全部同時にいたすのであります。しかし第三項目と第四項目は違うものでありまして、第三項目の軍事的義務というのは、安保条約関係のものでありますけれども、そのほかのものは、これはまた別の問題であります。これはMSA援助を受ける限りにおきましては、こういうことをわれわれは約束するわけであります。
  85. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 そこで実際問題となることが第四項に現われて来るわけでありまして、第四項の「自国政治及び経済の安定と矛盾しない範囲でその人力、資源、施設及び一般的経済条件の許す限り自国防衛力及び自由世界防衛力の発展及び維持に寄与し、」この点でありますが、これは今おつしやるように安保条約に規定されておるのは第三項の点であつて、第四項は安保条約に規定のないことであるが、MSAの援助協定を結ぶ場合には、この六項目の目的は全部規定しなければならぬというところから規定されたものであつて、並び大名的なものであり、重きを置く必要はない、こういうようにおとりになつて協定をお結びになつたのか、それともやはりこれに対して重大な義務を感じ、実行しなければならぬという考えで、この条約をお結びになつたのか、いずれでありますか、お伺いしたいと思います。
  86. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはやはり協定等に書きます以上は、いいかげんなものではなく、やはりちやんと日本は誠実にやる、こういうつもりでおります。
  87. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 それは締結当事者の外務大臣としては当然のお心構えであると思います。そうでばなければ外国に対する不信が生れて来るわけです。それは当然でありますが、それであるだけにわれわれ国民としましては、これらの点に対して深い疑義を押えることができないのであります。一体自国とありますけれども、事実上は日本であります。日本政治及び経済の安定とありますが、政治の安定とは何であるか、経済の安定とは何であるか。政治の安定とは、当然時の政府に対して国民の全幅的信頼がなされるということでなければ、安定という文字は使われないと思います。単に現有議員の勢力が、数において多数であるからというて、それで国民がほんとうにその政府を信頼し、政局は安定しておると見ることは、あまりに形式的な見解であると思います。当然国民のほんとうの政府に対する信頼が具体的に表明されて、初めて政局の安定ということはできるのであります。形式的にはもちろん多数の議員を擁しておることは政局の安定と、しいて見れば見れぬこともありませんけれども、少くとも現在の状態において疑獄は相次いで発生しておる、政界に対する国民的不信はいやが上にも高まろうとしておる。こういう状態のもとに、これを政局の安定と見ることはできないと思います。またこれをいかにしたならば、政局の安定化をはかることができるようになるかというためには、私は国民的信頼が政府に集中して、そしてこの政府ならばまかしてもよろしいという意図が具体的に表明されて、初めて政局の安定が得られたと見てさしつかえないと思うのでありますが、今日の日本の政局は残念ながら自由流が多数を持つてつても、政局が安定しておるとは見られません。しかしこれはあるいは見解の相違であるということで逃げられるかもわかりません。また経済の安定とは何であるか。日本の国の経済は何かあればすぐ動揺する。終戦以来の日本経済は底の浅いこと、経済自立が達成されておらぬことから、経済界はあまりにも政府の財政措置に依存し、国としては外国の安易な特需その他の援助的な行動に依存しておる。こういうことであつては、私は経済の安定はあり得ないと思う。政治経済の安定と矛盾しない範囲でとありますが、いつになつたならば政局の安定や経済の安定がはかられると外務大臣は思われますか。経済政治の安定があつて初めて人力であるとか、資源であるとか、施設であるとかいうものを防衛力に使うことができると思うのでありますが、その安定する時期は一体いつと見ておいでになるのか、この点に対する見解をお伺いしたいと思います。
  88. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の考えでは、政治は現在安定しておると思いますが、しかしこの規定はそういう個々の日本の現在の政治の安定とか経済の安定とか、そういうことを言つておるのではなくて、日本自衛力増強やあるいは自由諸国に対する自衛力増強発展に寄与する手段を講ずる場合に、何か非常に妙なことをやつて日本経済の安定や政治的な安定をくつがえすようなことまてしてやるのじやない、こういう意味でありまして、現政府が安定しているかいないかとか、これをどういうふうに安定させるかということまで、MSAで規定しているわけではないのであります。
  89. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 われわれも今外務大臣がおつしやつたくらいのことはよくわかつておるのでありますが、問題は実際に行動に移される場合、これは義務ですから、ある時期が来てそういう条件が生れて来れば、実際に責任を持つて行動しなければならぬ。行動をするときに、ありのままのそのときの情勢、日本経済がどんなに不安定であつても、政治の状態が不安定であつても、その条件のもとにそういう義務を履行するようになるのか、それとも、義務を履行しなければならない条件が発生したときに、日本の国のそのときの政治あるいは経済の安定が得られないとするならば、その義務を行わないのか、問題はこの点にあると思います。この点に対して、将来のことだからわからぬとおつしやればそれまでかもしれませんけれども、少くとも私はこういう協定をお結びになるにあたつては、およその見通しというものをお持ちになつておいでになつたであろうと思います。またこれなくしてはならぬと思いますが、そのときの外務大臣としてのお心構えをお伺いしなければならないと思うのであります。
  90. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはもちろん自国防衛力の発展につきましても、あるいは自由主義諸国防衛力の発展に寄与する場合におきましても、そのときの自国政治上あるいは経済上の宏定を阻害しない範囲内でやるのであります。何が阻害するか、何が阻害しないかは、そのときの責任者が判断する問題になるのでございます。
  91. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 私はもう一つ顧問の問題について聞きたいのですが、一応これで中断しまして、休憩に入つていただきたいと思います。
  92. 上塚司

    上塚委員長 これにて暫時休憩いたします。午後二時半より再開いたします。    午後一時二十三分休憩      ――――◇―――――    午後二時五十分開議
  93. 上塚司

    上塚委員長 休憩前に引続き会議な開きます。  質疑を継続いたします。加藤勘十君。
  94. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 MSAの援助な受ける協定については、MSAそのものが純粋の軍事援助の法律であります点から、援助を受ける国は、第一には軍事力があつて、その軍事力を増強するということが援助の目的にかなう道であると思います。日本のような場合においては軍事力がないのでありますから、この協定が結ばれるときには、当然日米安保条約基礎になつておると思うのであります。この点に対して外務大臣はどのようにお考えになつておるか、これをまず伺つておきたいと思います。
  95. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 先ほど申しましたように、MSA相互安全保障法の目的は、結局この個別的及び集団的な防衛を強化して、友好国の安全保障及び独立、そして合衆国の国家的利益のために資源開発とかあるいはその他の仕事をする、こういうことになつておりまして、その中に「友好国に対する軍事、経済及び技術援助を承認することによつて、」という宇があることは御承知通りであります。そこで日本の場合は先ほどから繰返して申しておりますように、世界中に軍備のないといいますか、戦力の保持を認めていないところは、日本がほとんど唯一の国でありますので、これは一般的に書いてあるのでありますから、日本の場合、日本の憲法の規定に従つて日本の現在の態勢防衛力増強をした場合に、援助が受け得るのかどうかということを確かめましたところが、受け得るという結論に達しましたので、日本の場合はやはりこの規定に基きますが、特殊の憲法の制限等を考慮した上で援助を受けることにいたしたわけであります。
  96. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 今お答えになりました点は、他の同僚の委員諸君からお尋ねした中にもお答えになつた点でありますが問題はMSA協定軍事援助協定という性格を越えて直接防衛相互義務を規定した、援助というよりも防衛協定になつておるのではないかと思われるのでありますが、この点に対しては外務大臣どのようにお考えですか。
  97. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはやはり外国にアメリカが援助を与えるということが根本でありまして、防衛をお互いにするというようなことではありません。そのある援助を与えた国の防衛を強固にするという意味なら、その通りでありますけれどもアメリカとその国との間に何か防衛協定を結ぶとかいうような、そういう種類のものではありません。
  98. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 私は外務大臣のお答えは、まさにその通りでなければならぬと思います。ところがこの協定の全部を通じて受ける印象は、いかにもアメリカが九なら日本は一というように、程度の差はありますけれども日本もまたアメリカのために役立つことが規定されておるわけであります。そういう点から、協定全体はいかにも共同防衛のような印象を受けるのでありますが、その点に対しては今までどういう機会にも当局の見解がまだはつきり示されておらぬようであります。はたして日米安保条約の制限内にとどまるように規定されておるそれでいいのか。それともこの協定条文の第二条には、明らかにどういう意味においてでも日本アメリカに資源の不足したものは供給するとか、あるいは必要な原材料であるとか、半加工品で日本で手に入るものは入れるとか、こういうアメリカの利益にもなるような規定がしてあるのでありまして、これは軍事援助の性格を持つたこの協定の中に規定されておることでありますから、当然相互防衛の役立ちをするのではないかという印象を受けるのでありますが、この点に対して明確に当局の見解を述べていただきたいと思います。
  99. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 この協定自体は、協定にも書いてあります通り相互防衛援助協定であります。お互いにその防衛に対する問題について援助する。日本の行います援助は、なるほど第二条に書いてあるようなものにすぎませんから、微々たるものではありますけれども、やはり二条に明らかになつておりますように、相互援助の原則に基いて、この程度のことをするということで、お互いに助け合うという問題であります。ただお互いに防ぎ合うという問題ではないのであります。つまり防衛同盟というような種類のものではなくして、相互防衛の援助であります。
  100. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 その点ははつきりわかりますが、そうしますとこの筋八条と第九条との間にはおのずから矛盾が生ずるのであります。この条文を見れば明白の通り、第八条の日米安保条約に規定されておる範囲内に従うということと、この八条に規定されておる六項目に従うということ、そして第九条には、日米安保条約範囲を越えるものでもなければ、またそれを改変するものでもないということが規定されております。表向きの第九条を読みますと、安保条約は少しも改変されるものでないということになつておりますけれども、第八条の義務を履行するということになれば、勢い安保条約範囲を逸脱するということになるわけであります。そうするとこの八条と九条との間には、はつきりと矛盾が現われるのでありまして、そういう協定上の矛盾は一体どういう機関において調整されようとするのか、そういうことはどのようにお考えになつておるか。
  101. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私はどうもおつしやることがよくわからないのでありますが、矛盾していないかというお尋ねでございますが、恐縮ですが、どこが矛盾しているか、それをお示し願つた上でお答えをいたします。
  102. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 日米安保条約によりますと、第一条から第五条までの規定のどこにも、第八条に規定されておるようなことは出て来ないのであります。わずかに基地の問題であるとか、あるいは軍の配置を承認するとかいうことだけでありまして、第八条に規定されておるような事柄は安保条約には規定されておりません。従つて安保条約を改変しないという建前に立つならば、第八条の規定は行われないことになるわけであります。第八条の規定を義務として行うということになれば、安保条約の条文外に出ることになると思うのであります。これは私は明らかに矛盾であると思います。この点に対してはどうお考えでありますか。
  103. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私どうもよくわかりませんが、そうすれば第八条に書いてあることは安保条約内容をかえなければならぬ、そういうふうにとれるのですが、私は安保条約以外の義務日本は負つてはいかぬという規定があれば別でありますが、安保条約義務は負い、それと全然関係のないほかの義務を負つたつて、それはいつこうさしつかえない、こう考えます。
  104. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 そこで問題になるのは、第九条に「この協定のいかなる規定も、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約又は同条約に基いて締結された取極をなんら改変するものと解してはならない。」こういう一項がございますね。この二項の条文解釈から見ますれば、安保条約はどういう意味においてでも――また安保条約に基いて結ばれた、たとえば行政協定のようなものも、どういう意味においてでも改変を意味するものでない、こういうことがはつきりしております。ところが第八条の規定にあるものは、この安保条約の規定にないものですね。そうすると第八条の義務を実際に履行しようという場合には、第九条の改変するものでないということと矛盾すると思われるのですが、どうでしよう。
  105. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 安保条約日本が負つている義務以外には、日本はほかの義務は負うことができないというような規定が安保条約にあれば別でありますが、私の考えでは安保条約で負つている義務がここに一つある、これと矛盾しないほかの義務日本がほかの協定で負うことについては何らさしつかえない、こう考えます。
  106. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 このMSA協定は先ほど来申し上げます通り軍事援助である。軍事援助で刈るから、本来ならば日本が軍事力を持つことが前提にならなければならないが、日本は軍事力を持つてはならぬという憲法の規定に従つて軍事力を持つていない。従つて援助の基礎となるものは安保条約でなければならぬと思う。安保条約に基いて日本防衛力の漸増ということをアメリカ側に期待されている、これがこの条約締結基礎であると思うのです。従つてこの安保条約範囲内においてどうすれば育てて行くことかできるかということこそ、日米両国が負わなければならぬ義務であると思います。しかるに安保条約ら逸腕して、安保条約に何らの規定がないから、どんな約束をしてもかまわないということであつては、安保条約の精神はくずれてしまうと思うのです。この点どのようにお考えでしようか。
  107. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 どうも私にはおつしやることがよくわからないのですが、安保条約にそういうふうにこだわる理由が私にはちつともわかりません。安保条約安保条約であり、またこの協定でなくたつて安保条約以外の義務をほかの協定で負うことは、将来いくらでもあり得ると思います。安保条約義務というのはきまつております。その義務以上に日本はいかなる義務も負うことができないという規定があれば別ですけれども安保条約にある義務は依然として日本は負うのであります、それ以上に別の義務日本が負つても、安保条約に違反しない限りにおいて一向さしつかえないと思います。
  108. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 その安保条約に規定する以上の義務を規定したところに、憲法違反の義務が生じて来るのです。問題はその点にあると思うのです。従つて第九条で「無渋上の規定に従つて実施する」ということになつておりまして、一見したところでは、いかにも日本憲法の範囲内ということになりますから、表面から見れば問題はないようでありますけれども、すでに日本は一応防衛問題については、日米安保条約義務を規定されておる。その安保条約義務以上により大きな義務を新たに背負うということになることが、一面から見れば安保条約を逸脱したものであり、安保条約以上に出たものであり、そのことが憲法違反の疑義を生んでおるわけですから、そこで第九条の憲法の規定の範囲内でということになつておりますけれども、憲法の規定の範囲内であれば、先ほど来しばしば問題になつているような第八条の憲法違反の疑義と、第九条の憲法の規定の範囲内でということの矛盾がまた起つて来るわけなのです。私の言うのは、第九条の前段の日米安保条約の改変を意味するものでないということと、それから第八条の安保条約以上に大きな義務を背負うということの矛盾、また今外務大臣が言われるように、安保条約以外にどんな義務も負つてはならぬという規定は一つもないからかまわぬとおつしやいますけれども日本防衛力漸増について規定しているものは、安保条約以外に何もないのです。その防衛力漸増を規定しておる安保条約範囲を越えての規定である。そうしてそれが一方においては明らかに憲法に抵触すると思われる義務を持つ場合に、次の条項で憲法の範囲内の問題でおる、こういうことになつているから、ちよつと見れば何でもないようでありますけれども、この両君の矛盾は何としても解決できぬと思うのです。従つてこの矛盾をどうしたならば解消することができるかという何らかのとりきめが別にあるのではないか、またもし、ないとするならば、一体そういう矛盾が現実に起つた場合に、どうしてこれを調整されようとするのか、この点をお伺いしておるのです。
  109. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 どうも私は頭が悪いせいか、御趣旨がよくわからないのです。しかし問題がごたごたしますから、憲法違反の問題と安全保障条約義務以上に出るか出ないかという問題と二つにわけて申します。  第一に安全保障条約における義務というのは、大きくいえば二つしかない。アメリカ軍を国内に置くということと、第三国に軍事的な基地を貸さないということ、この二つだけある。これ以上というのは何か程度の問題であろうと思いますが、この第八条に規定しているのは別の性質のものなのです。これ以上にというのじやなくて、これと別の性質の義務なのであります。たとえば国際緊張の原因を除去するために、両国でもつて合意する方法をとる、これは安保条約義務とは何ら関係のない別なものであつて安保条約義務の上に積み重なる義務ではないと思う。それで独立国として日本アメリカとのみならず、将来よその国ともいろいろの協定を結び、条約を結んで義務を負うこともあります。しかしそれも安保条約に矛盾しない範囲ならば一向さしつかえない。それで安保条約前文においては期待となつているのがここでは義務となつているのじやないか、それはおかしいと言われますが、むしろ安保条約アメリカだけが期待することになつておりますものを、これはインプレメントといいますか、実際上実規したのがこれであつて、何らその点もおかしいことはない。そういう義務を負うことがいい悪いということなら、これは政治的に見て別の問題でありますが、ただ法律的に見てそういうことができないということはないと思います。  それから憲法違反の疑い、これは意見相違で、われわれはこの協定の中にどこにも憲法違反の問題は出て来ないと確信をいたしておるのであります。
  110. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 この点についてもどうしても同じ見解には達しないようでちりますが、われわれは大臣の答弁をもつて満足することはできません。しかし時間の関係もありますから次に移ります。  もう一つは、この協定締結される場合に、政府としてはこういう軍事的な援助のほかに、経済的援助を期待されて、この協定の話合いに坂組まれたのではないかどうか、その点をまずお伺いしたい。
  111. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 その通りでありまして、軍事的といいますか、完成兵器等の援助以外に、できるだけ日本経済にも寄与するような方法を講じたいと思つて話をいたしたのであります
  112. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 その経済的援助を期待された点は、明らかにされました締結条文によりますれば、何らほとんど見るべきものがありません。わずかに五千万ドルという円貨による物賢の買付、その中で一千万ドル分の小麦の日本貨による日本へのグラント――贈呈といいますか、無償援助といいますか、それがあるのみでありますが、一方においてこういう程度の――これも援助といえば援助であるかれしれません。これが日本の兵器生産にどれだけ役立つかどうかということもわれわれにはよくわかりません。しかしながらそれならばこれによつて日本経済的にこの現実の五千万ドルの円貨による物資の買付、この中には今申しました一千万ドル分の小麦の贈呈、無償援助と円貨による域外買付等のものがありますが、それと、これによつていわゆる共産圏国内に対する貿易の制限を受けることによつて得られざる利益、すなわち不利益の面と差引きして、どのように利害得失があるとお考になつておりますか、その点を明らかにしていただきたい。
  113. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 共産圏とはつきりおつしやいましたが、共産圏でもいいでしよう、平和を脅威する国となつております。この約束は、かりにMSA援助を受けない場合といえども政府としては自由諸国の協調を保つ意味で、この程度の約束はいたすつもりでおりますし、現にこの程度のことはやつておるのであります。従いまして今御質問の農産物等の援助なら援助でよろしゆうございます、援助でも何でもいいのでありますが、そういうものを受取るか受取らないかということ、この共産圏の問題とは、交換条件に私どもはしておりません。農産物等を買わなくてもこの程度協定はいたすつもりでおります。
  114. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 その点は現在でも、少くともこの線までは西欧並にやりたいという考えを持つておられるが、実際問題としてはそこまで行つておらぬにしても、とにかく一応制限を約束しておる。ただ見方によれば交換ではないと言い得ないこともありませんけれども、実際にはこの協定全文並びに付属文書、また経済協定その他一切を通じて見ましたときに、やはり何というてもこの協定を結ぶことによつて共産圏――今私が共産圏という言葉を使つたのが悪いとすれば、平和を脅威する国々に対する貿易の制限ということが交換的に出されておるように見えるのでありますが、これは政府の方で交換でないと言われればやむを得ませんけれども、とにかくそういう点について、われわれはひとりいわゆる共産圏に対する貿易ばかりでなく、東南アジア諸国に対する貿易の問題も、日本がこのMSA協定を結ぶことによつて受ける心理的な影響を考えないわけには行かないのでありまして、この心理的影響はこれらの国々にどういう影響を与え、これが日本の貿易の実際の振興上にどういう打撃を与えるか、あるいは好影響を与えるか、それらの点についても当然この協定承認される場合にはおもんばかられなければならない心である私は思うのであります。こういう点についてどういうような考慮を払われておりますか、それもお伺いいたしたいのであります。
  115. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 戦後に憲法その他の規定もありまして、日本の国のあり方というものは非常にかわつて来てはおりますけれども戦争中あるいは戦前の日本各国に与えた印象は依然として残つておるわけでありますから、再び日本がそういう武力をもつて東南アジア諸国を脅威するような懸念が起らないようにということは、政府としてももちろん非常に慎重に考えております。この協定を結ぶにあたりましても、おつしやるような点はいろいろ考慮もいたし、また各圏の意向も打診をしてみたいのであります。私自身も現に昨年秋東南アジア諸国をまわりましたときに、同様の考えを持ちまして各政府要路あるいは民間の有力者の意向もたたいてみました。ただいまわれわれの持つております結論といたしましては、日本として防衛力増強するためにこの程度のことをいたすことについては、いずれの国といえども何ら疑惑を持つていない、のみならずむしろ何ゆえ日本がこういう点で躊躇しておるのであろうかというふうに、ふしぎに思つておる方が非常に多かつたという印象を持つておりますし、また各地からの報告も同様のことをその後も示しておりまして、ただいまのところ東南アジア諸国に脅威与えておるとか、あるいは将来脅威となるであろうという懸念を与えておような実情ではないと確信をいたしております。
  116. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 その点につきましても若干私どもは別な情報をとつておりますけれども、それはもう私の時間が大分参りましたので、それで時間の約束を破つてはいかぬと思いますから、他の機会にまたあらためてお伺いすることにしまして、最後に顧問団の問題について一言お伺いをしておきたいと存じます。  申し上げるまでもなく、MSAによる援助協定が結ばれた場合には、カントリー・チームと申します援助顧問団が設けられるわけでありますが、日本の場合は純粋な軍事援助でありますから、その点はきわめて津純に軍事援助顧問団の性格だけしか持つていないと思いますが、それはその通りでしようか、
  117. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは大体においてはおつしやる通りと思います。但しこの顧問団は域外買付等に関してもいろいろの――これはアメリカ合衆国政府との間でありますが、城外買付についてもある程度これに関与することになろうかと思いまして、その点はいわゆる軍事顧問団という性格と多少離れた部分があるかと思います。
  118. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 問題はその点にある思います。単純な軍事援助顧問団でありますならば、援助か受ける国の政府と協力して、完成兵器の援助の計画の実施とか、あるいは域外買付について、アメリカの陸海空三軍の調達官との連絡調整とか、軍事訓練の実施とか、こういうことに限定をされるわけでありますが、もう一歩進みますと、防衛生産及び金融計画あるいはその調達等についても意見を述べる性格を持つようになるのでありまして、問題はおのずから別個になると思います。純粋に軍事援助だけであれば、現在保安隊にある顧問団と大した性格のかわりはない思いますけれども、これが防衛生産等について意見を出し、その意見を実施、実行せしめようということになると、勢い日本政府の財政計画あるいは生産計画等にも意見を出し、それを実行せしめるようになるおそがあると思いますが、その点はどうでしようか。
  119. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 おつしやるような点は、協定の文面等からは出て来ないのでありますが、もしさようなことが協定を逸脱して行われるとするならば、これはもちろん非常によくないことでありまして、先方もそのような考えは全然持つておりませんが、われわれとしても、協定を逸脱しないことについては十分の意を用いまして、御心配のないようにいたしたいと考えております。
  120. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 そうしますと、この顧問団の権限等についての何か調整の機関、たとえば現在日米行政協定実施のために合同委員会が設けられておるように、何かそういうような特別な機関でもできて調整に当られるのですか、その点はどうなりますか。
  121. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは第一にアメリカ大使の統括のもとにおりまして、アメリカ大使はその任務といたしまして、日本の国情をよくアメリカに伝えることや、アメリカの事情をよく日本側に知らしめること、そうして両国の友好に資するようないろいろの措置を講ずることにいたしておりますが、内政に干渉するがごときおそれのあることについては、一切慎んでいたさないことになつております。これは日本アメリカにおける大使も、どこの大使も同じでありますが、その大使の統括の小とに立ちますので、われわれとしましては、米国大使のやり方を信用しないで、何か別の機関を設けなければならぬとは考えておりません。  また顧問団の性格、その任務等は先ほど申した通りで、協定文面からもちやんと規定がされておりますので、私どもは何ら別の機関でこれを抑制する措置等は必要がないと考えております。しかしながら、もしそういう実際の事態が――こんなことはありませんけれども、万一起るとすれば、これは特別の措置も講じなければならぬかもしれませんけれども、今のところ全然そういうことについては懸念がありませんし、また各国の状況を見ましても同様でありますので、特に何らか他の特別の措置は今のところ考えておりません。
  122. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 それでは最後に、そうしますと、現在ある安保条約の規定に基いて生れて来た合同委員会はどうなりますか。それはそのまま全然別個のものとして、従来通り存続されるのですか、これはどうなるわけですか。
  123. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 合同委員会アメリカの駐留軍に関する問題について、日米間に措置するためにつくられたものであります。従いまして、このMSA協定とか顧問団との関係とは全然別個でございますから、合同委員会はそのまま続けて職務を行うことになります。
  124. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 まだ実はいろいろな点についてたくさんお伺いしたい点がございますが、時間が多少延びておりますので、私は一応これで質問を打切りたいと存じます。後日保安庁長官に対してもお伺いしたい点がございますので、その点をひとつ留保して私の質問を打切りたいと思います。
  125. 上塚司

    上塚委員長 次は大橋忠一君。
  126. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 ただいま外務大臣は、本協定締結に対する外国の輿論というようなものは、きわめて平静であるとおつしやつた。しかしながら、十数年前の第二次世界大戦で世界を震憾いたしいました日本とドイツが再軍備をするということ、これは非常な大きな歴史的の事実でありまして、ヨーロツパにおいても、西ドイツが再軍備をし得るように憲法の改正をやる、フランスはこれに対して非常な脅威を感じておる。ロンテはもちろんのこと、フランスも脅威を感じておる。また東の方においても、一九五一年には中共がこのことあるを予知いたしまして、中ソ友好同盟条約を結んだ。さらに台湾あたりでも、日本がいよいよ再軍備を始める、いよいよわれわれの大陸反攻の時期は見込みができた、喜色ありというような台湾電報が入つたように思つておるのであります。国会などで、自衛権の範囲内でなければ武力は発動せぬとか、あるいは憲法の範囲内でやるとか、あるいは戦力に至らざる武力であるとか、いろいろ制限的の議論が行われましても、もう外国においては、日本はいよいよ再軍備にスタートしたというので、相当の注意を向けておることは事実であります。ただ、今日急に新聞論調その他で現われないのは、すでにこれは織込み済みであるからだけでありまして。MSA協定による日本の再武装というものが非常に大きなショックを各方面に与えておることは事実であります。アメリカなどにおいても、学生の詞論会においては、反対と賛成が五分々々であるというようなことを私は聞いておる。そこで、MSAの調印にあたつての新聞論調とかそういうものでなく、織込み済みのものも加えて、本件がいかなる反響を与えたかということについていま少し詳しく説明していただきたい。これは局長でもけつこうであります。
  127. 土屋隼

    ○土屋政府委員 先ほど大臣から御説明がありましたように、反響につきましては、必ずしも双手をあげて賛成している向きばかりではございませんので、器具の念を表明しておるものももちろん二、三あるのであります。ただ私どもは、反響を全般的に見まして、やはり当然日本が行くべき道に行つたのだという論評が、おそらく支配的になつていたと思います。従つて、外国につきましては日本の事情をよく存じませんから、日本防衛力増強につきましては、必ずしもわれわれの意図をくんでそれに賛成して来ているというふうに結論をつけるわけには参りません。多少誤解いたしまして、これがすなわち再軍備であるというように、早合点しておる向きもあるようでございます。しかしながら、多少の危惧を持ちますアジア諸国その他の国はありますものの、大体の反響といたしましては、日本自分自分自衛力増強して自己を守るような方向に行くということにつきましては、各国とも大体賛意を表しているというのが実情だと思います。従いまして、本件につきまして、ここで一々、どこの国はどうこうということを申し上げるのも時間をとりますので、もし御必要でございますれば、各国の反響な一応一括する予定でございますので、後日委員会に提出できるかと思つております。
  128. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 今度のMSA協定増強し得る日本の軍事力なんというものは小さなものでありまして、独立して侵略し得るようなものでも何でもないのであります。従いまして、きわめて小規模なもので大したものじやないという実体を広く外国に向つて宣伝する方法を考えておいていただきたい。特に、日本の征服を受けました東南アジアのごときにおいては、特にこの点を強調する必要があると思うのであります。しかしながら、日本アメリカの援助によつて再武装を始めるということは自由主義諸国はむろん一面危惧を持ちながらも、大体において非常に賛成しておるだろうと思うのであります。従つて、これによつて非常なシヨックを受け、内心困惑しておるのは共産圏諸国で、ことに長年日本によつて蹂躙されました中国、中共というものは、言論が統制されておるからかつてなことは言えぬでしようけれども、私は、一番強い危惧の念を抱いておるだろうと思うのであります。一九五一年の中ソ友好同盟条約ができたのも、少くとも日本が武装をするということを前提とした条約のように私は思つておるのでおります。そこで私は一つの心配があるのであります。どういう心配かと申しますと、アメリカの今の共和党政府考え方としては、共産陣営というものには力で対する以外に方法はない、強大なる武力を備えぬことには、彼らは何をしでかすかわからない、従つて世界平和のためには、どうしても強大なる武力をもつて臨むよりほかないというので、共産圏包囲陣型をつくり上げ、その包囲陣型に、MSA援助によつて、今度は日本も積極的に参加することになったのであります。これも一つの方法であり、一理はあります。ヨーロッパにおいても、ヨーロッパ統一軍というものをつくるべく今大わらわである。しかし、このヨーロッパにおいて統一軍をつくるというのは、ソ連とヨーロッパが陸続きでありますから、ソ連の大軍が一時にどつと押し寄せて来た場合に、少くとも一応これをチエツクするだけの軍事力が必要であるということはよく理解ができるのでありますが、極東の情勢はヨーロツパと違うであります。包囲の陣型といたしましても、ヨーロッパと極東を同一視しては間違いであります。アメリカが三十五万の陸上兵を日本に望んだという裏には、私は、ヨーロッパにおけるヨーロッパ統一軍というものと同じ思想がひそんでおるのじやないかと思う。ところが、だんだん政府の方で交渉された結果、その線が大分ひつ込んだということは、やはりその点について多少アメリカの方でも認識が改まつて来たように私は思うであります。中共というものとヨーロッパの国、ことに鉄のカーテンの中の国国とは全然趣きを異にしたものでありまして、これは単なる衛星国ではないのであります。ことに、世界第一の強い誇りを持ち、世界第一の強いインデイヴイデユアリテイを持つたところの中共というものを取扱うに、ヨーロッパの小国並に、あるいは東ドイツ並にこれを取扱つては、取返しがつかぬのじやないかと私は思う。そこで私がかねがね考えているのはむしろ中共というものをソ連から引離すという政策こそ、アメリカのとるべき政策として妥当な政策じやないかということを私は考える。引離すにはどうしたよいか、強大なる武力をもつてこれをおどしあげるというようなかつこうをとるよりも、むしろこれににこにこ顔を示して、なるたけ中共との関係を穏やかなかつこうにした方が引離せるのじやないか、こういうふうに私は常々考えておつたのであります。現に英国並びにヨーロッパの諸国が盛んに、中共を承認しよう、岡際連合に引入れようということを言つている裏には、そういう政治的の考慮というものがあるのじゃないかということを私は考えておつたのであります。しかるに、今度MSA協定日本がいよいよ再軍備を始めるということになりますと、ますます向ソ一辺倒政策を強くして、そうしてこれに対する対抗策を向うで講ずる、向うで講ずればこちらもまた対抗策を講じなくてはならぬ、互いに対抗策をやり合ううちに極東の情勢がつまり険悪になる。MSA協定の第八条には「国際緊張の原因を除去するため相互間で合意することがある措置を執ること」とありますが、その逆の現象になるということを私はおそれるのであります。その点に関する日本政府外務大臣の御見解を承りたいと私は思うのであります。
  129. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今のお話は、日本が何かすれば、中共もさらに何かするだろうというお考えであるようでありますが、今まで日本が特に何も――というか、大した努力をしておらないときでも、中共は、民兵を合すれば、四百五十万の部隊を持つておるといわれておりました。すでに日本が警察予備隊程度を持つているときでも、向う側は四百五十万を持つていた。これでは、日本が多少ふえたら向うもふやさなければならぬというりくつもないように思います。要するに、中共側が日本の力というものを常に対象に置いて自分防衛力、軍事力をふやしたり減らしたりしているとは私は考えておりません。  なおMSAの援助は、世界の非常に多くの国に対して行われておることでありまして、日本だけに特別行われておるならいざ知らず、世界の諸国が受けておる援助を日本も受けるということについて、特に中共側を刺激するとは思いません。また私は刺激するわけはないと思つて援助を受けておるのであります。これを無理にそういうふうにとられれば別でありますけれども、要するに、日本側の多少の措置に対抗して、さらに中共が四百五十万を五百万にしなければならぬ、六百万にしなければならぬというふうに勘定しているかどうか、これは私は疑わしいと思つております。
  130. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 むろん兵力をふやすとかふやさぬとかいう問題ではありませんけれども、ただ普通で置いたらば、内部から崩壊するというようなことがあつても、日本脅威というものがあるがために、よけいに団結して来る、あるいはロシヤといろいろな利害が衝突してわかれるような傾向があつても、いやロシヤとわかれてはたいへんだ、ますますこれと結びつかなくちやいかぬ――ダレス長官がかつて極東平和のがんは中ソ友好同盟条約だと言つたが、そういう極東平和のために害になるものが、弱くなるかわりに強くなる、そうしてそういう結果が具体的に現われて来るというふうなおそれがある、そういう点を私は言うのであります。またMSA協定日本ばかり受けておるのじやない、ほかの国も受けておるのだから、ほかの国の受けたのと同じだと言われるが、それは私は非常な見当違いだと思う。日本という国は支那とは特殊の関係にありまして、長年支那を征服して、中国人は日本に対して非常な恐怖心を持つておる。従つて日本が武装するということに、他の国が武装するのとは百倍、千倍、比べものにならぬほどの強い恐怖心を持つておる。そうしてその恐怖心は、中共の幹部ばかりではない、中国の人民全般にあるのであります。従いましてその点がかえつて逆効果を来しはせぬかというおそれを持つておりますが、それについての御所見をお伺いしたい。
  131. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 おつしゃるような過去の事例はまことに悲しむべきことであります。それでありますからわれわれは新しい憲法のもとに、新しい国のあり方を考えておるわけであります。この日本の新しい国のあり方については、もう各国ともこれを認識していると考えております。また現実に中国の民衆が非常に苦い経験をなめておることは事実であります。また中国のみならず、東南アジアでも同様の感じもあろうかと思いますから、われわれとしてはでき得るだけ慎重に、また誤解を招かないように今までも努力して来たわけであります。もちろん今後もこの方面努力を怠ることはいたしません。現実の問題といたしましては、彼我の武力の懸隔が今非常に大きいのでありますから、われわれがここで三万程度のものをふやすということが、ただちに中国民衆に非常な脅威を与えるとは、どうも考えられないのであります。
  132. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 どうも外務大臣中国に対する認識が少し足らないように思うのであります。私は十何年おつて、非常によく知つておるつもりであります。これ以上追究はいたしませんが、第八条の「国際緊張の原因を除去するため相互間で合意する」、私はこの点を非常に心配するのです。日本は十何万というわずかなものでありますけれども、向うの軍隊とこちらの軍隊は素質が違うのでありまして、非常に恐れております。その点の措置を今からよく考えられんことを希望しておきます。  それから第二にお尋ねしたいと思いますのは、いつかアリソン大使と会つたときに、軍隊をつくつたけれども、要はその魂である、かりに日本軍隊をつくつても、その軍隊アメリカに刃向うような軍隊つたらマイナスになる、魂のある軍隊をつくらぬことにはためじやないかということを私は言つたが、自分もそのスピリツトこそ大事だということを言つてつたのであります。保安庁長官は、日本保安隊は非常に士気旺盛だと言つておられますが、他の情報によりますと、そうでは次いような状態も相当出ている。そこで今度MSAの援助を受けて再軍備に乗り出す――政府は再軍備ではないと言つておられますが、それは言葉の争いであつて、外国ではもう再軍備と見ておりますが、再軍備にあたつて、いかにして軍隊の士気を旺盛にするか、この点が一番大事な問題であろうと思うのであります。今日まで士気が上らない一つの原因は、昨日も北君が、日本は日系官吏のおらない満洲国のようなものであると言われたのでありますが、そういうようなにおいを国民全般が持つておる。今なお占領行政と大して相違がない。ただ名目だけの独立国である。従つて自分の国であるかどうかわからぬというような意識があるのじやないか。そこでこの意識をいかにして取去るかということが、大きな問題であろうと思うのであります。大宅壯一という入が、今の東京や横浜はまるで上海の共同租界のようなものであるということを言つてつたのであります。こういう空気が瀰漫しているときに、軍隊をつくつて、はたして命を捨ててお国を防衛するところの軍隊ができるかどうか、この点を私は非常に危惧しておるのであります。  そこで外務省は独立を守る先端に立つている役所でありますが、私が非常に遺憾に思うことは、形式の問題でありますが、アメリカヘ行つても、日本の大使はダレス国務長官になかなか会えない、ほとんど会つたこともないというようなことで、交渉相手はロバートソンという向うの局長級の岩と交渉しておる。それから日本においてもいつであつたか、外務大臣アメリカ大使館を訪問してアリソン大使と会つたというような新聞記事が出ておつた。あれにしても官邸でアリソン大使とは会うというような特別扱いをしておる。私はまずそういう形式から対等の資格によつて、アリソンだろうが、何であろうがかまうことないから、ほかの大使と同様に呼びつけてどしどしやつたらいい、ワシントンにおいてもほかの国が、同じ大使がダレス炎官に会うならば、こつちもどんどん要求して会つたらいい、またアメリカの方も当然そういうような待遇をするのが当り前なのであります。しかしあるアメリカの有力な大官は、私に日本はまだ独立国じやないのだ、自分自分の国が守れぬようなものは、独立国とは言えないということを、私は直接聞いたことがある。こういう点について私は日本の力でもしつかりすると同時に、アメリカ側に対しても深甚なる注意を喚起して、やはり心から日本をあらゆる面に対等の独立国として待遇する、日本独立国のつもりで堂々と正面から五分と正分との立場においてやるという気魄でやつてもらいたい。これが私は日本独立国になるところの独立意識を高揚する最大の方法だと思いますが、そういう点について外務大臣はどういうふうにお考えになるか。
  133. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 まつたく同感でありまして、その通りつております。ただ一度大分前でありましたが、アリソン大使を私の官邸に呼ぶ約束をしておりましたところが、国会の都合上十五分以上ここを離れるわけに行かなかつたので、急に電話をして自分の方から大使館に行つて話をするからといつて私が行つたことがあるのです。それがつまり非常に珍しい事例として新聞に出たわけでありまして、御心配のようなことはないわけであります。アメリカにおきましても日本の大使はよその大使と同様の取扱いを受けて、何らその間に差別はございません。
  134. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 その点は追究いたしませんから、今後ますますしつかりやてついただきたい。  それからまだ日本アメリカの空気を悪化するような少くとも日米関係を悪くする道具に使われるような問題がたくさんある。たとえていえば基地の問題にいたしましても、何とか早くこれを合理的に解決して、そうして日本人とアメリカ人の接触する面を狭くして、何とかせぬことには日米関係が非常に悪くなる。きのうも福岡の婦人の方が陳情に来ておられたが、その前にもワシントンハイツの問題がある内灘問題とか妙義山の問題は一応声が小さくなつたのでありますが、そういうことがしよつちゆう非常に多いのであります。あるいは九十九里浜の漁業の問題にいたしましても、これもアリソン大使が、これは何とかしなければならぬということを、大使みずから私に話しておつたのでありますか、こういう日米関係を悪くするような原因となるものを至急解決しないと、今申しましたようなわが方でつくつた軍事力がマイナスになりはせぬか、こういうふうに思うのでありますが、本件に対すろ基地に関する処理については、いずれ交渉はしておられるのでありましようが、現在どんなふうになつておりますか、お尋ねします。
  135. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 われわれはアメリカ側に提供いたしております施設及び区域につきましては、できるだけ住民の被害の少いように、困難のないように努力をいたしております。ただアメリカ側日本の国の安全を守るためには、やはりその軍をここに置く以上は、必要な訓練はいたさなければならぬ、また必要な演習もしなければならぬ、必要な駐屯地域もなければならないわけであります。従いまして、これは国民の困難をできるだけ少くする方法で設定をいたすつもりでおりますが、狭い地域でありますから、多少の困難はどこへ設定しても出て来るわけであります。従いまして、その間の調整にはいろいろ苦心をいたしております。
  136. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 それからガリオアとかイロアというよりなものも二十億ドルからの額に上りまして、従つてこういうものがもし不安定のまま放置されておきましたならば、これは日本国民として非常不安であります。どんなに日本が勉強しても、二十億ドルも返さなければならぬということになると、日本経済自立も何もあつたものではないのであります。ある人は安これはアリカが日本をいざというときに首を締めるために特に持つておるのだというようなことさえ言う人がある。これまた日本国民の間に不安を醸成する一つの重大なる原因になつておる問題でありますが、この前の国会で問題になつて、その後一向どうなつておるかわかりませんが、この処置はどういうふうになつておるか、お尋ねしたいと思います。
  137. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これにつきましては、御承知のように日本としてはこれを債務と心得ておりまけすれども、これが債務となる場合には、その額も確定しなければならず、支払い方法その他いろいろな条件が確定して、国会の承認を得た上でなければ、岡の債務とはならないわけであります。そこでいろいろ調べて人ますと、終戦当時のころは、生活状況も非常に困難であつて、とにかくアメリカから何でもいいから物が来れば、それで一時の急場をしのぐというようなことで、書類も十分に整わないで、とにかく物を得るということに主力を置いた関係上、十分な資料がない場合もしばしばあるのでありまして、それらを当時の記憶を呼び起し、また関係書類を探し出して、できるだけ書類の整備をいたしたい、一応資料が整いましたならば、アメリカ側と今度は日本側の資料に基き、アメリカ側も資料を持つておりますが、これを突き合せつつ交渉を開始いたしまして、池田・ロバートソン会談にありますような東京における会談によつて、できるだけこれを確定いたしたいと思っておりますが、いつやるかということについては、日取り等はまだきまつておりません。
  138. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 さらに沖繩と小笠原の問題でありますが、大体アメリカはまだ日本に対してほんとうの信頼を置いていない。二面において日本の再軍備を非常に要望しておりますが、他面においてまだ非常に疑つている。疑ついればこそ沖繩や小笠原について、御承知のような態度をとつておると思うのであります。また彼らの側からいえば、疑うのも無理はない。日本において非常に強い反米思想があり、運動があるというのでありますが、もしも日本に対して、そういう疑つた気持でMAS援助を与えても、それはマイナスになりはせぬか。今後日本は完全に自由主義陣営に入る、これと心の底から協力して行かなければならなくなつた以上は、現在において疑いもなく日本の親国であるアメリカ側の方から日本を信頼して、そうして沖繩にしてもあるいは小笠原にしても、日本人を信じてあつさり返すというような態度アメリカ側からとつてもらいたい。そうすれば日本の方でもまたアメリカを信じて、これと心の底から協力することになると私は思う。これについてアメリカが今みたいな態度を続けておることは非常に遺憾である。過般も私はジヤツド下院議員に向つて、最近わが委員会で沖繩の人を呼んで聞いたところが、学校のごときはまるで馬小屋みたいなものだ、兄弟のようになぜもう少しお金を使つて彼らをかわいがらぬかという手紙をやつた。まだ返事は来ませんが、沖繩、小笠原なんかに対しても、私はアメリカ側の深甚なる考慮を促すべきでおると思うのでありますが、そういう点について外務大臣はどういうお考えを持つておられますか。
  139. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 われわれもこの問題につきましては、アメリカの当局といろいろ話をいたしたこともあるのであります。第一に今の住民の福祉ということについては、ダレス国務長官も昨年の終りに声明書を出しました中に、引続き住民の福祉について十分の考慮を払うということを言つております。一方日本防衛するという重大なる責任をアメリカ側としては負わされておりまして、アメリカの子弟が場合によつては、日本のために命を犠牲にしなければならぬという立場に置かれております。従いましてアメリカの軍当局としましては、その日本防衛の責任と、アメリカの子弟をできるだけ安全に守つて行かなければならぬという、両方の責任を負わされておるわけでありまして、そのためにアメリカ政府としては、生権は日本にあるということを声明しながら、いまだにこれらの地域の返還が実現せられずにおるのが実情でありますから、今後もわれわれとしては、できるだけ住民要望にこたえて、これに向つて努力をするつもりでおります、
  140. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 むろんアメリカのボーイズを日本防衛のために犠推にするということは、向う側からいえばそう言えます。しかし日本共産陣営から守るということは、これはアメリカのためなのです。アメリカの第一線なのです。従つてわれわれが今後自衛隊をつくつて守るということは、アメリカのためにわれわれのボーイズの血を流すということも言えるのでありまして、これは五分と五分であります。そこで私はそういう言い分に屈することなく、われわれを信ぜよ、信じないならMSAをよこすなというぐらいの勢いを持つて、もつと強く当られんことを希望するのであります。  それから最後に、こういうようないろいろな懸案が日米の間には横たわつておる。そうして常に日米関係を曇らしておる。この曇りを一日も早く取去らぬことには、MSAの援助によつて日本自衛隊をつくり上げても、その効果がないのであります。こういうものが積り積つて、逆に反米的の人らが日本の政権をとつたあかつきにはこれはどうなるか、事はきわめて重大なのであります。そこで私はこのMSAの協約を有効ならしめるために、ひとつ批准のときか何かをはかつて日米共同声明か何かをつくつて、この際少し大局的に歩み寄つて、そうして日米関係を暗くしておるような諸問題を、一気に解決するというような共同声明でも発せられたらいいと私は思うのでありますが、どういうお考えでありますか、お伺いします。
  141. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そういうことになれば非常にけつこうだと思いますが、声明だけで、中身の実現がこれに伴わなければまたこれはから声明に終つてしまいますので、いろいろの懸案事項をできるだけ一つ一つ解決するようにまず努力いたしまして――もちろんアメリカとしてもいろいろな問題を解決して、きれいさつぱりして日米友好関係を増進したいということについては問違いないと思いますが、これは日本ばかりが無理というわけでもなければ、アメリカだけが無理というわけでもないのであつて、その点はよく話し合つてみたいと思つております。
  142. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 大体アメリカのことは私は非常によく知つておるのでありますが、海外至るところに援助をしながら評判が悪い。この評判の悪い原因は非常にこまかいのであります。このこまかいのは、結局私は行政府のあとにコングレスという強大な力があつて監視しているために、コングレスに申訳のないことをしてはいかぬというところから来ておるのだろうと思いますが、非常にこまかしい小さなことがなかなか解決せぬ。そこでこれをもう少し大島的に、腰だめ式に思い切つてやらぬと、なかなか解決できぬと私は思います。そこでまず私は共同声明か何かで、もう互いに譲り合つて早く解決するという声明を出されれば、彼らは必ず実行するのであります。そこでこれはいい機会でありますから、まず共同声明を出すことを要求して、そうして私はこのMSAに魂を入れられんことを希望いたします。  最後に、実はこの協定が非常に重大なるものであることは言うまでもありません。これはまことに歴史的の協定であります。従つてその協定の趣旨というものは、日本国民に広く、深く浸透せしめる必要があると私は思う。それがためには実は調印する前に国会に諮られ、そして国会議員の意見をよく参酌された上に、もしももつともというところがあつたら、直し得る余地を与えられることが望ましかつたのであります。一旦調印をしてしまつたならば、もう反対するか賛成するか二つに一つしかない。そこでいろいろ議論してみてもむだであるという気持が非常に強いのであります。私はその挙に出られなかつたことは非常に遺憾と思いますが、理事会で決定された表によりますと、もう三月二十四日には討論採決ということになつております。質問がなければ別でありますか、ありましたらもう少し質疑応答をふやしまして――反対論もけつこうであります、いろいろの方面からいろいろな議論をして、そうして国民に渇透させる、そうしてこの重大法案にふさわしい慎重審議をされることが必要だろうと私は思う。それがためには、やむを得ずんば会期を延長してもけつこうであろうと私は思う。そういう点についてどういうお考えを持つておられるのかお伺いいたします。
  143. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは私の考えではありません。委員長及び委員諸君の決定によるわけであります。
  144. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 それでは委員長は私の意見に対してどういう御意見ですか。
  145. 上塚司

    上塚委員長 大橋君の御要望に対しましては、いずれ理事会を開いて相談をいたすつもりであります。
  146. 大橋忠一

    ○大橋(忠)委員 それではこれで私の質問を終ります。
  147. 上塚司

    上塚委員長 並木芳雄君。
  148. 並木芳雄

    ○並木委員 先ほどお許しを得まして、ごく簡単に緊急質問をやらせていたたきたいと思います。  一つはフイリピンに対する賠償の問題であります。きようの外電ではガルシア・フィリピン外相がフイリピン議会における言明として、対日平和条約は五月の議会が終るまでには上院で批准されるであろう、但し日本からの賠償の問題が解決をしない場合には、また別途の方途をたどるであろう、こういうような注目すべき発言があつたのです。そしてこの賠償について日本政府に対して最後の通告をした、一種の最後の通牒を発したという報道がございます。その外電は、おそらくこの最後の通牒というのは、かねてフイリピンが日本に対して請求をしている二十億ドルの賠償について、日本政府から最後のかつ確たる回答を要求しておるものと思われる、こういうのでありますが、大臣としてこれに対する心当りがございませんか。どういうようなことになつておりますか。
  149. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 別に心当りはありませんか、平和条約が五月ごろまでに批准されるというなら非常にけつこうだと思います。
  150. 並木芳雄

    ○並木委員 賠償額の方についてはいかがですか。二十億ドルの先方からの賠償額要求が政府に来ておるのですか。もしそうだとすれば、日本の方で何とか解決しなければ批准の力もできないであろうということになると、問題でございますが、その点については御所見いかがでございますか。
  151. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 そういう額については心当りはありません。
  152. 並木芳雄

    ○並木委員 それではもう一つの方の質問をさしていただきます。それはきようの報道でありますが、ここにはただいま読売新聞の記事がございます。それを見ますと、ビキニの原爆実験において、日本人の漁船の乗組員がたまたまその集験に遭遇して、原子病というような病気にとつつかれた、こういう記事でございます。ごく簡単でございますので、一部を読んで見ますと、「三月初めからマーシャル群島で行われているアメリカ原子力委員の一連の水爆、原爆実験の、その第一日目の去る一日にまたまた日本の漁船がそばにいて、爆発による降灰を受け、その放射能によつて全員火傷したまま大して重くも見ず十四日帰国、うち二名の船員か東大の精密診断を受けるために、灰をもつて十五日上京、清水外科の診断を受けたが、一名は生命も危ぶまれる重症としてただちに入院手当を受けることになつたが、他の船員は事の重大なのを気づかず、灰のついた服のまま、同夜は焼津市内を遊び歩いている。この一日の爆発実験はアメリカの公式発表によつてもビキニ環礁で行われたもので、日本漁夫の申立てとも一致しており、しかもこの日の実験では二十八名の米人と二百三十六名の現地人がある種の放射能によつて火傷したと報告されているが、今までの原爆実験ではこの種事府が報告されていないところから見て、あるいは水爆かとも見られ、その強力な放射能をもつた死の灰が国内に持ち込まれて不用意に運ばれているとすれば危険なことである。」これが一部でございます。もしこういうことが事実だといたしますれば、これは相当戦慓すべき事柄で、ございますが、当然外務大臣としてもこういう報道については深い関心を寄せられたことと思います。それでただいままで外務大臣としては、これについてどういう調査をされましたか、その点をお尋ねいたします。
  153. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 エニウエトクとかビキニという地点につきましては、そういう種類の爆弾の実験が行われていることは、これは周知の事実であります。アメリカ国務省は一昨年九月十八日の口上書をもつて、在米の日本大使館に対しまして、アメリカは太平洋信託統治協定の条項に基いて、エニウエトク環礁とその領海をクローズド・エリアと規定する。またその周囲海域――この環礁を中心とする東西約二百海里、南北約百五十海里の区域の海域たということでありますが、これを危険区域と指定する。こういうことを申し込んで、さらにその当時日本の漁船が一隻この事情を知らずに入つて来たので、この事情を知らしてくれという通報が参り、そこで外務省は、同年の十月十四日付文書で運輸省、海上保安庁、水産庁に対して、この危険区域であることについて周知徹底力を通告いたしました。これはエニウエトクでありますが、それと並んでおりますビキニにつきましては、昨年の十月、米海軍から直接海上保安庁に対する連絡に基きまして、運輸省は昨年の十月十日に航路告示第八百三十一号をもちまして、この地域を危険区域として追加指定しております。そうしてこれを各船等に周知徹底させたわけであります。ところが今度の漁船の遭難地域は、漁船の申立てでは、その危険区域から少し東側であるように言つておりますが、これは実情を調査しなければなりませんので、ただいま取調べ中であります。以上がわれわれの知つているところであります。
  154. 並木芳雄

    ○並木委員 実情を調査して、もしその危険区域の外においてこういうことが起つたとすれば、これは将来の問題としても捨ておけない重要な問題だと思うのです。それでそういう場合には当然大臣としてはアメリカ側に申し入れて、こういう危険が再発しないように注意を促すべきであると思いますが、その点いかがであるかということと、もしそうだつたとすれば、これに対してやはり損害の賠償その他の手配もすべきものであると考えられます。この点いかがでございましようか。
  155. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 実情調査の結果によりましては、国際法、国際慣習等で認められているような適当の措置をとるつもりでおりますが、まだ調査が済んでおりませんから、今どうするかということはきまっておりません。
  156. 上塚司

    上塚委員長 外務大臣h、海外同胞引揚特別委員会の方から要求がありまして、十五分間くらい向う行かれることになりますから……。  佐々木盛雄君。
  157. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は保安庁長官に承りたいと思います。私がただいま承りますことは、直接にはMSA協定そのものではございません。しかしながらMSA協定と、それから今日月本が防衛力を強化しようとしておりますところのいろいろな措置というものは、私の見解によりますと、これは表裏一体をなすものであるという、私の良心と良識に基いてそういうふうに判断しておりますから、そういう観点から私は承るわけであります。MSA協定にあまりとらわれないで御回答を願いたいと思います。  私は昨日法制局長官に承りましたが、自衛行動に対する解釈であります。本日また外務省の下田条約局長からも答弁がありまして、社会党の諸君など、その間に意見の食い違いがあるというようなことを穗積君自身がきよう言つてつたようなわけであります。私はこれを承つておりまして、決して法制局長官と外務省の条約局長との間に解釈の相違はないと承つたのであります。念のために承つておきますが、こういうことのように判断してよろしいでしようか。それは外国から日本の国に対して非常に不正な危害とか攻撃が加えられたというような緊急事態におきまして、その外国の不正な侵略行為、攻撃を排除する他に有効な手段方法がとり得ない場合には、その危害や攻撃の根源に対して日本側が武力行使をするということは、自衛権の範疇に属するものであつて従つて決してこれは憲法に違反するものでない、そうしてその日本に対する不正な攻撃が、たとえて申しますと、長距離砲や原子砲というようなものによつて、公海上の軍艦から、あるいはそれが外国の領海や領域内から直接日本に加えられる、こういうような場合におきましては、その外国の領海や領域内にあるところの不正な攻撃の根源に対して、日本側が武力を行使するということは自衛権の範囲に属するものである。従つてこれは憲法に禁ずるところではない、こういう解釈である、私はこう思うのですが、その通りでございましようか、いかがですか。まずこの点は私は下田条約局長に承つておきたい。
  158. 下田武三

    ○下田政府委員 私も法制局長官の申されましたこととまつたく同意見でございます。先ほど私が申しました通り、自衛権の行使は、急迫した危害が現実に存して、その危害を除去するために他に手段がなくて、そうしてその危害を除去するに必要な限度で行使するという限りにおいては、これは国際法上完全に認められた自衛の権利と解しまして、憲法の規定に反せずしてそういう自衛措置がとれるということを信じております。
  159. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 ついでにもう一点承つておきます。従つてその自衛行動をとり得るところは、日本の領土や領海外、場合によつては公海、場合によつては敵国の、あるいは外国の領域においても、この自衛権を行使することは決して禁止せられるところではございませんね。
  160. 下田武三

    ○下田政府委員 その急迫な危害を除去するに必要な限度におきましては仰せの通りであります。
  161. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 了承しました。  それでは今度は保安大臣に承りたいと思います。ただいま上程されております自衛隊法案によりますと、第七十六条に自衛隊の行動として、外部からの武力攻撃があつた場合、この場合はもとよりわが国防衛する必要があると認めた場合におきましては国会の承認を得て――これは場合によつては事後でもよろしいのですが、自衛隊の出動を命ずることができるということになつております。その同じ七十六条に「外部からの武力攻撃(外部からの武力攻撃のおそれのある場合を含む。)」と書いてあります。武力攻撃のおそれがある場合におきましては、この自衛隊を出動させることができるという法律であります。しかもそのあとの方の条項におきまして、自衛隊を出動せしめたならば、その自衛隊武力行使をするということが八十八条の規定で明らかでございます。従いまして先ほどの日本の自衛権は、場合によつては、ほかに道がない場合におきましは、外国の領域においても発動ができるというのであります。それでは外部からの武力攻撃のおそれのある場合におきましても自衛隊が出動し、それが武力行使をすることができる、こういうふうに私は思うのであります。それが日本の領土外、領域外、場合によつては公海において、あるいは外国の領域において、武力攻撃のおそれがある場合に、その武力攻撃のおそれのある根源地に対して、武力行使をすることが可能であると私は思いますが、こういうことでありますか。
  162. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 現実に武力行為がなされた場合はもとより出動命令でやるわけであります。これはお説の通りであります。「おそれのある場合」、これは現実には武力攻撃は行われておりませんが、すでに武力攻撃が目睫の間に迫つておる、客観的にてどうしても武力攻撃があるものだ、こう判断された場合には、これはやはり出動命令を出し得る。その場合においては国会の承認を得る、こういう意味であります。要はそのときの客観情勢によります。下田条約局長の言われたように、急迫やむを得ない場合をすべて想定しておるのであります。現実に起つた場合と、現実にもう目睫の間に起る可能性があるという、二つの場合なさしておるわけであります。
  163. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 その場合に、現実に日本武力攻撃がまさに加えられるというおそれのある場合におきまして、その根源に対して武力行使をすることが可能である、こういうことになりますと、言葉をかえて申しますと、先制的に、敵に先んじて、機先を制して攻撃をするということもできると思うのでありますが、いかがでありますか。
  164. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 実はわれわれはそこまで考えていないのであります。少くともこの自衛権の発動をする場合は、急迫やむを得ない場合でありまして、先制攻撃ということは考えておりません。目睫の間に危険が切迫している、この判断に基いてやるので、危険が迫つているか迫つていないかということは、やはり客観的に判断するよりほかはいたし方ありませんが、ただそういうおそれがあるからということで先制攻撃するということは考えておりません。
  165. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 もとより私の申しましたのは、もうほつとけば当然日本に対して危害が加えられるという、やむを得ない場合を申しているのであります。そういうやむを得ない、しかもそれよりほかに方法がないという場合におきましては、その危険のある場合におきましては、その根源に対して武力行使を行うことができるのではないか、こういうふうに思うわけでありますが、重ねて承つておきます。
  166. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 今申し上げました通り、先制攻撃ということは考えていないのであります。これは自衛権の範囲内において、緊急やむを得ない場合においてやるのであります。この法文の建前はもうすでに現実に侵略行為が始まる、また目睫の間に侵略行為が迫つて来る、客観情勢から判断してやむを得ない、こういう立場を考えているのであります。
  167. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は次に条約局長から専門的に承つておきたいと思うのであります。きのう法制局長官にこれをお聞きしたのでありますが、明確な回答を得られなかつたのであります。かりに日本と外国との間に、二国間あるいは多数国間において軍事同盟を結ぶ、防衛同盟を結ぶ、今できるかできないか知りませんが、予想されるところの太平洋の集団防衛体制でありますか、そういった場合におきまして、日本がそれに参加することは決して憲法の違反でも何でもないと思うのでありますが、これは何か憲法に牴触するようなことがあるのでありましようか。
  168. 下田武三

    ○下田政府委員 かりに、安保条約のように消極的な軍事義務を負うにとどまる条約から飛躍いたしまして、攻守同盟条約というような軍事同盟まで発展するということを考えますと、同盟条約では、交戦権の発動を来すような原因が起りますと、日本はただちに交戦権をフルに行使した戦争に巷き込まれることになるわけであります。交戦権の行使を認めておりません現憲法のもとでは、私はかかる軍事的な攻守同盟というようなことは、とうてい考えられないことであると存じます。
  169. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それでよくわかりましたが、そういたしますと、たとえば今予想されておりますところの太平洋地域の集団安全条約、それはどういう内容になるかはもとより予測するところでございませんが、かりにそういつた場合に、共同でお互いに軍事力を提供し合う、こういつた同盟ができるというときに、それに参加しようという場合におきましては、憲法の改正という問題が先行すべきである、こういうふうにお考えでありますか。
  170. 下田武三

    ○下田政府委員 仰せのような同盟条約をかりにやるといたしますならば、当然憲法改正が前提となる問題であろうと存じます。
  171. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は、これは保安庁大臣に承りたいと思いますが、これはまつた政策論でありまして、むずかしい憲法論を言りわけではございませんが、今まで政府のとって参りました自衛力増強力針というものは、増強増強し、そして次第にこれが戦力の段階に達したならば、そのときに国民の総意によつて憲法改正はどうかということを決定するのだ、こういうふうな御意見であつたように思うのであります。私はそうではなくして、一歩前進をいたしまして、われわれの目標はもつと完全な交戦権もあり、あるいは動員権もある、そういつたふうなほかの国とも対等の立場に立つことができるような軍隊をつくることが終局的な目的であるのだ、こういうふうに私は考えるわけでございますが、漸増し漸増しといつて、事前にもしそれが戦力になつたならば、そのときに国民の意思をまつてきめるというのではなくして、MSAを通じてアメリカ日本に期待しておることも、自由諸国家陣営が日本に期待しておりますことも、畸型児のようなものから、もつとほんとうの軍隊のようなものに日本が切りかえて行って、そして防衛力をだんだん大きくすることを期待しておる、またそういうようにしなければならぬという、少くとも一方では道義的な義務があるのではないか、私はこういふうにも考えるわけでございますが、最終の目標というものは、やはり完全な軍備を持ち交戦権を持つ、こういうふうに私は考えたいのでありますが、保安庁長官の御所見はいかがでございましようか。
  172. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 もとより独立国家としては、みずからの手によつてみずからの国を守る体制は一日も早く整えて行きたいと考えております。しかし現段階においては、日本の財政力の面から申しましても、憲法の制約の面から申しましても、それはできかねるのであります。かりに憲法が改正されて再軍備が可能になるといたしましても、国家財政力から考えてみまして、なかなか一国が完全な軍備を持つということは私はできかねるのではないかと考えております。そこでわれわれといたしましては、やむを得ず御承知通り日米安全保障条約によつて、外敵の侵入に対してはアメリカの手にゆだねておつたのであります。しかしながらいつまでもさようなことであつては、日本独立国家としての体面上も、国民感情からも、またアメリカの方にとつても、徐々にアメリカの駐留軍は撤退して行きたいという希望もあるから、日本の財政力にマツチしたいわゆる漸増方針というものをとつてわれわれはやつておるのであります。最終の目標といたしましては、今お話通り日本国民が、真に日本の国家は日本みずからの手で守つて行かなければならぬのだということで、財政力も回復して、やがてその時期が来なければならぬと私は考えております。しかし現段階におきましては今申し上げた通りできません。憲法改正の問題は口には容易でありますが、実際問題として容易じゃない、かたがたわれわれといたしましては、いわゆる漸増方針をとつてこれは徐々にやつて行きたい、こういう考えでもつて今方策を進めている次第であります。
  173. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 独立国なつ日本自分自分の国を守るだけの力を持つということはもとより当然のことであります。しかるに独立国でありながら、今日国際的に対等の条約が結び得ない、先ほども条約局長みずからがおっしゃいましたが、対等の立場に立つたところの防衛同盟だとか、対等の立場に立つた攻守同盟条約というものができないという、日本はまだ完全な独立国としての国防体制というものを持つていないわけであります。これはわれわれにとつて非常に大きな悩みであるわけであります。そこで私は自衛力増強の方式といたしましては、どうしても国力の関係からいつて漸増方式をとる以外に、だれが政局を担当しようともそれ以外に道がないことは千万承知をいたしております。しかし今日その盛り上る国民の意識ということから考えましても、独立を回復した日本の立場から申しましても、当然私たちは為政者が一歩進んで、今はやむを得ないからこういう漸増方式で行くのだけれども、やがては世界に仲間入りのできる独立国家となるだけの防衛力を持つ、つまり交戦権も、その他一切のものも備えた、りつぱな軍隊というものをつくるのだという最終目標というものを、今日のこの段階に立つて――憲法の解釈をすることよりも、むしろ私はそういつたことを国民に訴えることが、為政者としてなすべきことじやなかろうかと考えるのです。これに対する見解を、くどいようでありますが、もう一度私は承つておきたいのであります。
  174. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私も佐々木岩の仰せのごとくしばしば委員会を通じて申しております。今も重ねて申すのでありますが、日本独立国家となつた以上は、ぜひともみずからの手によつてみずからの国を守る体制をとつて行くべきである、とつて行きたい、こう言つておるのであります。しかし憲法問題についてはなかなか口では容易に言えますが、実際憲法を改正するという問題になつて来ると容易ではないと考えております。そこで憲法改正の時期でありますが、これは私も私見は持つておりますが、ここでははばかりますから申しません。ただ国民がこの世界情勢並びに日本の機かれておる地位を十分自覚して、ぜひとも憲法は改正して、独立国家となる以上は再軍備すべきだという機運が出て来れば、そのときこそ初めて私は憲法の改正問題を取上げるべきものであろう、こう考えておる。しかし国民の指導者であらせられる国会議員は、これは堂々とおやりになつてくださつてさしつかえないものだ、私はこう考えております。
  175. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 もう一つだけ申し上げておきますが、私は一歩さらに進んで、あなたは日本防衛というものの一切の責任を負つておられるのです。しかしながらその防衛というものはまだ幼稚なものであつて、法律上考えましても国際的にまだ対等の立場に立つていないのです。従つてこれをどうしても対等な立場に立てるように育て上げたいということが、国防を祖当しておられますあなたの寝ても起きても忘れることのできぬ念願でなければならぬと私は考える。そういう立場から申しますと、人にまかせたような、国民がそのときになつたならばというような考え方から一歩進んで、もう少し今日こういう事態に置かれているのだということから、日本の本格的な再軍備防衛体制の確立に力を注がれることを私はお願いをいたしておきます。別に答弁はよろしい。  私は最後に一点だけ。実は昨日も外務大臣ちよつと承つたのでありますが、私、特に保安庁長官に承つておきたいと思いますことは、今度自衛隊というものが設置され、防衛協定というものができ、陸海空三軍の均衡方式によつてこれだけのものができますと、これによつて国内の治安、万一の場合の内乱や騒擾は鎮圧できるという確信はございませんか。
  176. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 御承知通り、国内の治安の責任は別に警察力があるのでありますから、第一段としてはこれにまかしております。しかし大きな力を持つところの内乱とか暴動とか起つた場合、警察力をもつてしてはとうてい鎮圧のできないような場合においては、むろんこの自衛隊が出動するのでおります。自衛隊におきましては直接侵略に対してもまた間接侵略――裏を返せば今申しました通り国内の大きな反乱とか、暴動とか起つた場合、これに対する国内秩序を維持するために対処し得るのであります。いわゆる両面を持つておるわけであります。これについてふだんから双方の訓練をさせております。その全きを期しておりますから、われわれの現在予想できるような反乱とか、暴動とかいうものに対しましては、十分に手当ができるものと確信いたしておる次第であります。
  177. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は保安大臣から非常に力強い言葉を聞いたのであります。国内に発生した内乱であるとか擾乱、つまり間接侵略、こういう事態には今度できるであろうこの自衛隊をもつて十分これを、鎮圧し、国内の治安を確保することができるとの力強い御答弁であります。私はそれに意を強うするわけであります。従つて私はこれから保安大臣にお願いをしたい、そしてあなたの心中をたたきたいと思うことは、実は日米安全保障条約によりますと、遺憾ながら日本は今日まだ完全な防衛力を持つていない、国内の治安の確保も十分でないというので、駐留軍が日本にとどまることになつています。その駐留軍がいかなる場合に日本において行動を行うかという規定、これは日米安全保障条約の第一条において、「この軍隊は、極東における国際の平和と安全の維持に寄与」する、これはもとより当然のことでございます。その次のところでありますが、「極東における国際の平和と安全の維持に寄与し、並びに、一文は二以上の外部の国による教唆又は干渉によつて引き起された日本国における大規模な内乱及び騒じようを、鎮圧するため」行動するということが書いてあるのです。見方によつては、日米安全保障条約のこの項目のこの箇所に関する限りは、私はまことに屈辱的な不平等条約であるという印象を持つておるのです。ところが最初おつしやるように、もしもほんとうに内乱や騒擾を鎮圧するだけの実力があるというならば、私はこの日米安全保障条約そのもの全部がいけないというわけではありませんが、少くともこれくらいな項目は、今日この自衛隊の創設の機会において削るべきであると思う。その削ることを政府で真剣に考えて、そうしてアメリカにもこのことは申し出るべきであると考える。今日自衛隊を創設し、そして日本の国防体制というものを強化して行く、これに対して国民はほんとうは非常な期待を持つている。でありますから、この段階におきましては、こういう屈辱的な条項だけは削除したい、ひとつお考えを願いたい。おそらくこれは日本の津々浦々におりますところの心ある憂国の士のほんとうの心中であると考えるわけでありますが、あなたはこれに対して一体どういうふうにお考えになるか、また私の説に同感ならば、ひとつそういうふうにいたしたいという考えがあるかどうか、この点についてあなたの御答弁を求めたいと思います。
  178. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいままことに烈烈たる憂圏の至惰に燃えた御意見を承りました。この条文の改正問題は別といたしまして、まつたく同感であります。従いましてかりに内地で大きな反乱、擾乱があつた場合に、われわれもこれは断じてアメリカ軍の手によるべきではないと考えております。日本人の動乱を他国の手によつて鎮圧してもらう、そういうことは考えておりません。日本のことは日本人で始末して行く、われわれはこの建前を堅持して行きたい、断じてさようなことがないことを確信いたします。ただこういうことを改正問題ということは別であります。どんなことがあつても、私は断じてこの自衛隊をもつてやります。
  179. 北昤吉

    ○北委員 関連して。保安庁長官質問したいことが三つあります。簡単な質問です。実は岡崎外務大臣質問したのですが、私は十六万くらいのちつぽけな兵隊じやだめだ、ことに内部の共産党の暴動など恐れてはだめだ。私の考えでは金はよけいいらぬ、今一人七十万も金を使つておるのであるから、その金があつたら三十万でも四十万でも集めて、そうして勤労させる。勤労というても、私は具体的に言いますが、まずダムの建設隊、道路改築隊、農地整備隊、植林隊、港湾整備隊、この五つくらいを置いて、複雑な機械をあやつる者は朝から晩までやらなければならぬでしようが、普通の兵隊は二時間くらい働けばよろしい。そうしてほかは組織的な勤労をやつて国民を錬成する。この八千七百万くらいおる人口のところに十六万くらいのちつぽけな兵隊がおつても、まさかの場合何も役に立たない。だから三十万でも五十万でも集めて、日に三百円くらいの給料をくれる。そうして半ばは国で押えておいて、帰るときに十万円くらいそろえてやれば、農村の次三男対策にもよろしい。これは私一個の考えじやなくて、ことに陸軍中将の有力なる人々の相談した結果、そこまでやらなければ今の日本の青年は戦後八、九年の間に非常に惰弱になつておる。青年はひまがあつてもダンスをやつたりジヤズをやつたり、そんなことで魂がなくなつておるから、もう少し勤労で養う。しかも憲法第二十七に――原文の二十五条には、「すべて国民は、勤労の権利を有する。」ということになつてつた。ところが社会党の諸君が、小委員会で修正案を出した。それが二十七条になつて、「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。」となつておる。「勤労の義務を負ふ」というならば、勤労隊として招集してもよい。これを三十万くらい置いて、二年後にどんどん交代すれば、私は百万、二百万の訓練を積んだものができると思う。これをやる意思がないか。またこれをやらなければ辻政信君の民兵なども意義がないのですから、金がよけいいるわけじやなし、もしあなたが養えなければ、七十万あれば私は三人養つてみせる。お考えを承りたい。岡崎外務大臣は木村君に伝えますということですが、本人から聞くのが一番いいので伺います。
  180. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 近ごろの青年が惰弱に過ぎておる、まことに同感であります。これを鍛え直してほんとうに勤労青年を養うということは必要なことであります。しかしこれをどういうぐあいにして持つて行くかという方法論であります。これはなかなか容易なことではないと考えております。ただいまの御議論は理想論としてはまことにけつこうでありますが、これを現実に運営して行くにはどうして行くか、御承知通り憲法が改正されまして徴兵制度でとり得るならば別でありますが、これを志願制度にしてどれだけの応募があるかということになると、これはなかなか容易じやない。今申した通り、惰弱に過ぎた青年がはたしてこれにどれだけ応募して行くかということも、私はここで考えなければならぬと思う、それで徐々にわれわれはそういう方向に持つて行くということで研究して行きたい、こういうふうに考えております。
  181. 北昤吉

    ○北委員 もう一つ承りたい。池田君は昨年ロバートソン会談でアメリカに参つたときに、アメリカ日本に対するソ連の兵力の脅威を力説したそうです。驚くくらいな力説の仕方をした。これは国会図書館から出しておるレフアレンスでたくさん例が載つておりますが、陸上共産軍は五十万の兵力を日本本土への上陸兵力として保持している。海上、ソ連海軍を中心として、右の陸上兵力を一週間で上陸させる艦隊が極東にある。そのほか海南島に潜水艦の基地もあるそうです。航空軍は極東の共産空軍はざつと五、六千機と見られる。そこで日本の国防を急いでやれといつて激励したそうですが、保安庁長官のようなお考えでは、まだ国際緊張に対して認識が不足だと私は思うのです。あなたはこの池田君の話を承つたろうと思いますが、いかがですか。
  182. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私は池田君からそういう話は聞いておりませんが、自分の研究したところによつて、多少資料は持つております。相当な数字に上つておることは事実であります。しかしこれに対処して行くのにどうするかという問題ありますが、今お話のように一時に三十万、四十万集めよう、こういつたところで、口では言えるが、なかなか容易ではありません。徴兵制度をとつて行くなら格別、それにも限度はある。いわんや憲法が改正されておりません現段階において、志願制度によつてこれを募集するには数において限度があります。そこでわれわれといたしましては、今の段階においては十分なりつばな幹部を養成して行きたい、これであります。筋金の入つたりつぱな幹部を養成したい。これがやがて日本自衛力に物を言うだろう、こう考えております。急いでは事をし損じるので、徐々に持つて参りたい、こう私は考えております。
  183. 北昤吉

    ○北委員 私どもと根本的な認識相違しております。ドイツでは十万の幹部がおつて、二十万を毎年招集したことはあなたたちも御存じでありましよう。いわゆる保安隊というものでたくさんの兵隊ができた。ただこれの使い方が悪かつた侵略戦争に使つただけです。私が憲法を改正しなくてもやれると言うのはさつき二十七条を読んだ通りです。あなた方いなかで百姓の人たちに聞いてごらんなさい。次男坊、三男坊が失業して困つておるから、勤労奉仕隊で、日に三百円、四百円も金をくれるならやりたい人がたくさんおります。あなたができなければ三十万や四十万は私はすぐ集めてみせます。一月で九千円です。半分使わせて半分は残しておく。今これくらいのことは、日本人はみんな困つておるからやれると思う。これは認識相違ですから深く追究いたしませんが、しかしこれは私はたくさんの専門家の意見を聞いたのです。あなたは剣道の大家ですが、二年間毎日二時間くらい練習すれば五段くらいにはだれでもなれます。私は二時間くらいあればたくさんだと思う。これはこれだけにしておきます。  その次に軍事顧問のことについて、朝日新聞に詳しく出ておつたから研究したのでありますが、軍事顧問は保安隊の顧問の引継ぎのような形であるが、現在はほとんど無用だそうです。たとえば主力の部隊は東京麻布の三連隊である。一部は各地に派遣されておつて、学校関係で訓練に当つておるのは約三十人、特科すなわち砲兵、特車、戦車部隊に配属されておる者七、八十、そのほか各普通科部隊に対して将校一、下士官、兵など三名、そういう割であるが、アメリカの教官は武器の使用法をならつた後は無用であるという説が出ておる。ちようど英語の字引を引くようなもので、初めわからぬときには字引をしよつちゆう引かなければならぬが、わかるようになれば字引はそばに置いておくだけでよい。アメリカの顧問団はそういう関係になつておると思う。これは保安隊の人の言葉が出ておるのである。それであるから日本は元来兵器が悪いのに、無名の戦いをやつたから負けたけれども、ほんとうは尚武の気性があるから最初七百人、あと一年のうちに三百五十ぐらいにするというがそれほどの顧問はいらぬと思う。それは軍事干渉、指揮をするもとになりますから、私は日本人の名誉にかけても五十名か百名でよかろうと思う。新しい武器の使用法を教わる程度でよろしい。ひとつ保安庁長官はがんばつてほしい。まだきまつておらぬらしいのだからなるべく少くしてもらいたい。日本人の名誉にかけてやつてもらいたい。日本人の国土は日本人が守るが当然です。参考のために新しい兵器の使用方法を教わる。これはやむを得ない。それくらいの程度にしないとアメリカの傭兵だと社会党の諸君が言うのです。そしてその宣伝があればいくら国防軍を設けてもだめでありますフランスにはアメリカが莫大な援助をやつておる。今までの全部の援助が百億ドル以上であります。ところが共産党の党員は二割五分、第一党であります。イタリアは三割五分二厘です。日本でも憲法改正、再軍備というときに賛成する者はおそらく三分の二です。三分の一は反対しておる。この現実を見ると、もう少し日本国民多数の賛成を得るには考えなければならぬ。漸増というて、三万、五万だとぼつぼつやつておるうちに、世界の強勢は日に日に回転します。私は木村長官の気性はもつとはげしいところにあるだろうと思う。吉田内閣にやさしい諸君がよけいおるから、あなたは調子を合せるためにやつておられるのだと思うが、私は憲法改正、再軍備の方向にどんどん進んで行くべきだと思う。そうしなければ三分の一は反対であります。そうすれば自衛隊を設けても自衛隊にも右翼思想が入るかもしれない、左翼の思想も入るかもしれない。現に入り込んでおる事実はたくさんあります。私はこの軍事顧問の数をうんと減らすことを希望いたしますが、保安長官の御意見を伺います。
  184. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 顧問団はなるべく少いことを希望いたしております。御希望の点につきましては十分検討いたします。しかし何分御承知通り部隊が各所に離れておるわけです。そこで新しい武器が取入れられる場合、顧問団もそれの操作とか、保管について必要なだけは置かなければならぬ。それで各所にばらまかれておりますから、多少の数字になりますが、しかし現在おります顧問団の数より大きく減つて来ることは事実であります。これは数年ならすして全部日本でまかない得ると考えます。     ―――――――――――――
  185. 上塚司

    上塚委員長 この際連合審査会開会の件についてお諮りいたします。ただいま本委員会において審査いたしております日米相互防衛援助協定批准について承認を求めるの件外三件につきまして、内閣委員会並びに農林委員会及び通商産業委員会より連合審査会開会の申入れがあります。この際この申入れを受諾いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  186. 上塚司

    上塚委員長 御異議がなければさよう決定いたします。なおただいまの連合審査会は明十七日午前十時より開会いたしますから、さよう御了承を願います。     ―――――――――――――
  187. 上塚司

    上塚委員長 なおこの際日米行政協定に基く駐留軍に提供する施設及び区域に関する件について質疑の通告があります。これを許します。熊谷憲一君。
  188. 熊谷憲一

    ○熊谷委員 時間がおそくなりましたからごくかいつまんで御質問をいたしたいと思います。御質問をいたします一つは古賀の演習堀の問題であります。他の一つは小倉のRRセンターの問題であります。  その前の方の問題で質問いたしたいと思いますが、行政協定に基きまして、駐留軍に基地を与える、これにつきましては慎重なる考慮のもとに外務省がやつておられることと存ずるのであります。そこで日本の領土は狭い、人口は非常に多い。だから基地を与えられる場合におきましては、駐留軍の最小限度を認めて行くのだろうと思います。また駐留軍で不必要になればすぐ接収を解除するということについて、常に注点しておられると思いますが、その点局長の御意見はいかがでございましよう。
  189. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 原則といたしまして、ただいま仰せられた通りの方針でやつております。
  190. 熊谷憲一

    ○熊谷委員 そこで私は具体的に新雷、古賀の演習地の問題についてお尋ねいたします。あれは終戦後演習地になつたのでありますが、ただいままで駐留軍によつて何回使用されたでありましうか。その目的は何でありましようか。
  191. 松木豊馬

    ○松木説明員 古賀の演習地は、われわれの調べでは今まで演習に使用したことはございません。
  192. 熊谷憲一

    ○熊谷委員 そうしますと、ただいま局長は原則として私の意見承認されたのでありますが、終戦後現在まで一回も使用していない、五十五万坪の大きな土地を接収したままでよろしゆうございましようか。
  193. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 ひとつお断りいたしますが、個々の施設につきましては、昨年十二月から調速庁の方にその所管を移しておりますので、私は個々の施設についての詳しい現状は最近は存じておりませんが、古賀についてはほとんど使つておりませんでしたが、これはあそこにおりました兵隊が朝鮮に出ておるという関係で使つておらない、朝鮮から帰つて参りましたならば使うという意味において、米軍は手放さずにおるわけであります。
  194. 熊谷憲一

    ○熊谷委員 もう一つ質問いたしますが、今のように長い関接収いたしまして一回も使用してない、そういう場合、住民としては相当いろいろな制限を受けておるのでありますが、それに対して政府として適当なる賠償といいますか、手当をするようなことはないのでありますか。
  195. 松木豊馬

    ○松木説明員 接収の区域となつております範囲内のところにつきましては、民有地についてそれぞれ定められた基準によります借料の形で政府としては金を払つております。
  196. 熊谷憲一

    ○熊谷委員 ただいまの御答弁はほんとうでしようか。私どもは一回もそういうものをもらつたことはないということを、町長からも町会議長からも聞いておりますが……。
  197. 松木豊馬

    ○松木説明員 この古賀の演習地につきましては、熊谷先生御存じの通り、従来あそこは農耕も居住も交通も自由になつておりまして、具体的に損害がない、普通の接収しておらないところと大体条件が同様であるということから、そういうところに対しましては、国費の節約という建前から借料を払つておらないわけであります。
  198. 熊谷憲一

    ○熊谷委員 実際使用しないから払わない、その点は一つのりくつかと思いますが、使わないにしろ、そのなわ張りの地域内が接収地になつておりますと、住宅を建てるにいたしましても何にいたしましても非常に消極的である、それらに対して町としては相当損害を受けておるわけであります。従つて、一度も使用しないから一文もやれないということは、少し酷のように考えますが、いかがでございますか。
  199. 松木豊馬

    ○松木説明員 この点についてはお尋ねの通り一面酷といいますか、ある程の制限を受けることは事実でございますので、幾ばくなりと、非常に低い率であろうとも払うべさであるという議論も聞いてはおりまして、われわれ事務当局としてはいろいろ研究はいたしておりますが、今のところそれに対して支払いをするというような結論にはまだ至つておらないのでございます。
  200. 熊谷憲一

    ○熊谷委員 たとい使用しないにしろ、なわ張りがきまつておれば、いろいろな点で不便をこうむつております。これは実情であります。また町の発展も期せられないような状態でありまして、これについては何とか近い将来にお考え願いたい。具体的にはまたあなたのところに行きましてお願いしたいと考えております。  元に帰りますが、この演習地につきましては協力局長も御承知のように、私も何回か陳情に参りました。また昨年は外務委員長も他の同僚と一緒に現地をごらんになつたのであります。そしてだんだんと一時は、その一部でありますけれども解決しかけたような模様が見えたのであります。そして今年の一月二十七日に、外務省からと農林省からと、それから駐留軍の力からはマレー中佐その他の関係の入が現地に行かれまして、ある条件が設定になつて、地元民といたしましても、これで大体大丈夫だということで非常に喜んでおつたところが、最近聞きますと、これがまるきりひつくり返つて、今よりもむしろひどくなるのじやないか、少くともそのときにできました条件を越えて、土地をさらに接収するような希望も出ておるやに聞いております。どういうわけでそういうふうになつたのか、ここは終戦後八年間も一回も使つてない、朝鮮との戦争が済んでもうすでに長い年月を経過しておるのでありますが、今に使つておりません。そういうところなら、この狭い国土で、人口も多いのでありますから、何とかもう少ししつかりしていただいて、この接収の解除ができますようにひとつお骨折り願いたい、かようなことについて局長の御意見を拝聴したいのであります。
  201. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 一月二十七日にどういうお話になりましたか、先ほど申し上げましたように、私の方は係官も出してはおりますが、これは調達庁のお手伝いをしている意味で出しているのでありまして、私に報告がありませんので詳しいことは存じませんが、使つておらないものは返せ、これはその通りでございますが、将来使う予定がある、しかし、将来使うにしても、まだ兵隊は朝鮮におるのであつて、今使わないなら今返したらどうかという原則論は成り立つと思うのでありますが、今使わぬから今返す、将来必要なときはいつでも提供するという地元の約束でもあれば、それは可能かと思いますけれども、一ぺん返すと、各地でわれわれ苦労しておりますので、現在実際にあそこで生活するのに不自由がないならば、すぐ必要なときにもらえるというのでなければそのままにしておこうか、われわれとしては、過去の非常な苦労があるものですから、そう思うのもこれまた無理もないのじやないか、こうも考えます。
  202. 熊谷憲一

    ○熊谷委員 五十五万坪といえば、そう広い土地でないかもしれませんが、あの近所の町村民にとりましては非常に大事な土地でありまして、八年間も一回も使わない、朝鮮から兵隊が帰つたならば使うかもしれない、そういうことでは困るのじやないかと私は思うのです。年に一回かあるいは数年に一回ぐらい使うのだつたら、その都度町村役場とか責任者と相談してそのときに使つたらよいと思う。長い間使わぬのになわ張りしておくというのは、少し外務省の腰が弱いのじやないかと考えますが、いかがでしようか。
  203. 松木豊馬

    ○松木説明員 ちよつと速記をとめていただきたいと思います。
  204. 上塚司

    上塚委員長 速記々とめてください。   〔速記中止〕
  205. 上塚司

    上塚委員長 速記を始めて。
  206. 熊谷憲一

    ○熊谷委員 いろいろとお話があるようですが、私はどこから考えてみても駐留軍に話すればわかると思う。日本が狭くなつた、人口がたくさんある。八年間に一回も使わぬのに――使つたことは一回あります。数人の兵隊が来まして、数千発の実弾を非常に家に近いところで撃つた。それ一回きりです。それは遊びに来て撃つたのです。使わないのにとつておくということは、よく話すれば私はわかるのではないかと思う。全国七百か八百の基地があるという話でありますが、これに類するような事例はありませんか。演習基地とか、基地になつたが、今まで一回も使わぬとか、あるいは一年に一回か二回しか使わないで、住民に非常に迷惑をかけておるという例があるのじやないですか。
  207. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 これなどは最も使わない例だと私は思つております。それで、今おつしやるようにこういう使うところにいたしましても、その程度がございます。月に一回とか、あるいは週に一回とか、使わぬときは施設、区域でないのと同じなのでありますから、これな区域からはずしまして、使用権だけな認めるという考え方はあるのでございます。行政協定、それからこれに基ざます国内の補償関係の法令等が、すべて施設に指定いたしまして、補償なするというふうな建前でできておるものですから、その建前な大分直さないと、使用だけを認めるとか、ふだんは施設でも区域でも何でもない、月に一回とかあるいは一週間に一回とか、条件な区切つて使用だけを認めるというやり方も考えられるのであります。われわれ内部でもずいぶん議論したのであります。ただそういたしましても、その使用地域には演習にさしつかえるような建物は建てられぬとかいう制限がつくのでありますが、これを施設にいたしませんと、そういう制限をつけた際も補償ができぬという不便が伴うのであります。施設にいたしておきましても、現実に使わなければそこに自由に出入りしておるわけでありますが、気持の上では何らか物がかぶさつたような気はいたしましようが、現実には心配はない。ですから使用条件さえはつきりいたしますれば、私は施設であろうがなかろうが、必要のないときは、実質の上では同じだ、ただ気持の上では違う、気持の上では施設からはずして、時間を限つての使用権を認めた力がいいにきまつておりますが、現在の法制の建前はそうやるといろいろと保障の面で困難を生ずる、そういうのが実情であります。
  208. 熊谷憲一

    ○熊谷委員 最後に質問しました全国にこういう例が幾つくらいありますか、御存じでしたら、その箇所をおつしやつていただきたい。
  209. 松木豊馬

    ○松木説明員 ただいまここに資料を持つておりませんので、あとから取調べまして、お答え申し上げます。
  210. 熊谷憲一

    ○熊谷委員 ただいまのお答えは、あるけれども資料がないからという意味ですか。
  211. 松木豊馬

    ○松木説明員 一つか二つかあるかと思います。たしか奈良県にあつたかと思いますが、はつきり調べてお答え申し上げます。
  212. 今村忠助

    ○今村委員 関連して。局長さんか、課長さんか、どちらがそういうことを担当されておるか、ただちにお答え願えなければ、資料として出していただきたいのであります。すなわち安全保障条約に基いて日本が貸与しておる基地、この数と、その種類並びに元日本の陸海空軍等のあつた時代に使つてつたものとの比較、つまり日本が戦時中陸海空軍が使つてつたものより場所が多くなつたのか、少くなつたのか、面積は広くなつたのか、このくらいのことは相手国と折衝する際に当然用意されたと思うのでありますが、それな示してもらいたい。ただちにお答え願えなければ、資料としてそれだけのものを書いていただきたいと思います。もしおわかりでしたらこの際お答え願います。
  213. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 詳細な点は資料として提出いたしますが、私がうろ覚えの点で申し上げますと、たとえば飛行場等は百くらいあつたものが、今は三十幾つになつておるとか、演習場の数も減っております。但し面積において、個々のものでふえておる点がございます。と申しますのは、飛行場にしますれば、日本軍時代には、せいぜい五千フイートも滑走路があれば十分でありました。今は九千か二万フイートなければ、ジエツトの飛行機は飛べないというふうに事情がかわつております。火器にしましても、射程が非常にかわつております。訓練の仕方も、従来は撃たずに、歩くことを主にしておりました。このごろは実弾を撃ちながらする訓練の方が、主になつて来たというふうに、質がかわつております。数においては減つておりますが、面積においてはふえました。詳細は覚えておりませんが、そういうふうに比較しにくい面が出ております。
  214. 今村忠助

    ○今村委員 今の答弁では、不十分でありますから、資料として、全部の方には必要ないかと思いますが、私多少必要があるのでありまして、ぜひ資料としていただきたい。
  215. 松木豊馬

    ○松木説明員 現在の軍の施設の数等につきましては、すぐ資料をととのえて、お届けできると思います。ただ旧軍時代にどれくらいあつて、それとの比較となりますと、私そういう資料が見つかるか、どうか自信がございませんけれども、多分旧軍時代の資料はないのじやなかろうかという気もいたしましが、探してみます。
  216. 今村忠助

    ○今村委員 国家の仕事なやつておる者が、その資料がないというようなことで答弁は済んだとは思えない。陸海空軍は自分の資料は焼いてしまつたからとといつても、これはわかることだし、調査ぐらいしておかなければならぬと思う。それでなければアメリカとの折衝などできないと思います。根拠のないことでアメリカと折衝することは不可能だし思う。私はアメリカと折衝する必要上、その資料を必要とする。この国会にそういう国がやつておることの資料が出せぬというなら、大問題だと思う。これは保安庁とも連絡して得られることと思いますが、機密に属するのだということで、どうしても国会に出せぬというならいたし方ない。私は出し得るものと思う。そしてまたアメリカとの折衝には、それぐらいな資料を持つておらなければ折衝にならぬと思う。ぜひひとつ出してもらいたい。出せぬものなら出せぬで、文書なり、この席で答えてもらいたい。
  217. 松木豊馬

    ○松木説明員 よく調査ないたしまして……。
  218. 熊谷憲一

    ○熊谷委員 この問題について、私の最後の要望を申し上げておきたいのでありますが、とにかく八年間一回も使用していない。今後駐留軍が帰つて来たならば使うかもしれないから、残しておいてくれという注文を、唯々諾々と受けておられるのではないかと思いますけれども、こういうことは私は話せばよくわかると思うのです。また場合によりまして、行政協定でいつもお逃げになりますけれども、そういう点ばかりに徒歩練習のために使うのであれば、その必要なときにちやんと話合いをして使うことは私はできると思う。そうむずかしことじやないと思う。地元ではおととしから相当の金を使いまして、局長なり、局長の部下の課長のところにも、私はお供したことも四回も五回あります。そして一時は解決するやに見受けておつたのであります。また一月二十七日の現地調査でも、大体町村民が納得するような条件もできて、これならいい、マレー中佐も立ち会つて、現地の軍ではそれでよろしいということであつたのに、それが全然ひつくり返つた。どうしても私は納得行かぬのであります。何とかひとつお考えを願いまして、しつかりと腰をきめて御相談な願いたい。また調達庁にもお願いしておきますが、もし万やむを得ぬで、引続いて使うということならば、たとい実際に使用せぬでも、精神的の打撃、また経済的の利用価値というものが非常に減るのであります。その点につきまして適当なお考えを持つていただきたいと思つております。  それからRRセンターの問題でありますが、駐留軍の所在地並びにその附近のいろいろな風紀問題につきまして、外務省が非常に御苦労になつておるということは承知しております。外務省の御心配でだんだんうまく行きつつあるやにも聞いておるのでありますが、これは一つは、地元の駐留軍とその土地とのいろいろな話合いや何かでうまく行つておるのでありまして、その状態をできるだけ改善しておくということが必要であろうと思う。みだりにRRセンターのごときものを他の土地に移すという場合におきましては、よほど慎重な考えを持つて行かなければ困ると思う。これについての局長ので御意見を拝聴したい。
  219. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 私は何も聞いておりませんので、具体的な事例は、小倉のが福岡に移つたというようなことな今ちよつと聞いたのでありますが、全然存じませんでしたので、どういう事情でそうなつたのか存じませんが、大体地方で連絡協議会をつくるようににさせまして、できまして、勉方的には打合せておるのであります。この点は私の方にはどこからも報告がまだなかつたので、ちよつと事情がわからないでおります。
  220. 熊谷憲一

    ○熊谷委員 どうも局長はお忙しいとは思いますが、少し不熱心じやないかと思います。この駐留軍と周囲の関係については、今までいずれの土地においても相当の問題が起つております。それでせつかくおちついたのに、他に移すという場合におきましては、これはよほど慎重に考えなければならぬと思います。小倉のRRセンターの問題でありますが、これは一月十五日に西戸崎でありますか、あそこに移りまして、入所式をやることに決定したとか聞いております。そういうことを二人ともただいま顔を見ますと御存じないようでありますが、いかがでございますか、お聞きになつておりますか。
  221. 松木豊馬

    ○松木説明員 的確なことはちよつとわかりませんが、三月十五日でございますか、小倉のRRセンターが西戸崎の方に移るらしいという情報程度の報告が、部下の方から参つております。
  222. 熊谷憲一

    ○熊谷委員 この小倉から西戸崎に移るということにつきましては、小倉市におきましては、一部の人でありましようが、猛烈な引きとめ運動を起しております。これに対しまして、西戸崎近くの福岡市におきましては、ことに教育家あるいは婦人団体の間におきまして、RRセンターが西戸崎に来て、そうして駐留軍を相手とする特殊の婦人が大勢移動されてはどうもこうもならぬということで、非常に心配されておるのであります。先ほど申し上げたように、せつかく小倉でおちついておるのに、どういう理由でこれを西戸崎に移さねばならぬか、その理由を私はお聞きたいと思つておりましたが、御存じないようですね。御存じだつたらお答えを願います。
  223. 松木豊馬

    ○松木説明員 はなはだ申訳ありませんが、軍に聞き合せてみます。照会しまして、どういうわけでそういうふうになつたかということを確かめてから、お答えいたします。
  224. 熊谷憲一

    ○熊谷委員 こういう問題を関係のあなた方が御存じないということは、私にはどうもわからぬのであります。非常な大きな問題になつておる。御承知のように、福岡市と西戸崎の間に女子大学もあります。九州大学もあります。西南学院もあります。多くの学校がありまして、文教の土弛でございます。そこで今ちようど春休みで、学校の生徒がみな国に帰つておる。その明いておる部屋に特殊婦人がどんどん侵入して来つつある。これが学生等に及ぼす影響を非常に憂慮しておる。そうして婦人団体が現地の駐留軍の責任者にお会いしたところが、この問題について福岡市の関係の人の意見を聞かなかつたことは自分たちの手落ちだつた、十分福岡市の関係者の意見を聞いて動かすべきであつたということを言つております。もう手遅れかもしれません。しかしそんなことはわからぬから、座間に行つて相談せよということで、昨日から福岡の婦人団体も上京して運動をしておるようなわけであります。私は、こううい非常に問題を起したことでありますから、小倉はおちついておりますから、やはりなるべくならば新しいところに移さぬ方がいいのではないか、こう思うのであります。できるなら中止してもらいたい、どうしても移さねばならぬような事情がある場合におきましては、できるだけ新しく移る土地の有識者なり、関係者の意見を聞いて、納得ずくでやつたらどうか。また移すにいたしましてもいろいろな仕力があると思います。春休みで学生が帰郷しておるそのすきをねらつて、特殊婦人が部屋を借りるというようなことがあつてはたいへんであります。そういう特殊婦人のためには特別の宿舎をつくるとか、害毒を流さないという見きわめがついたときに移るか、そういうことを考えて移すべきでないかと私は思う。ところがあなた方はその事実がつたことすら御存じない、こうおつしやるのでありますが、どうも私はわからぬのであります。私の言うことが間違いでありましたらお直しを願います。
  225. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 ただいまは調達庁の方に現業が移つておりますが、調達庁の方でも何も聞いておらなかつたようであります。まだ外務省でこういう問題をやつておりますときに、一度奈良から神戸へ移す問題がありました。このときには事前に向うから通知をして参りまして、どうしても第三海兵師団が来るのでやむ々得ないので神戸へ移すから、ひとつよろしく頼むということを言つて来たのであります。このたびは私の方へ何も言つて参りません。もちろん調達庁の方へ言うべきかもしれませんが、調達庁も聞いておりません。そうすると軍の方は前の例と違つて、何も言わずにやつたということになるので、これは向うの方でうつかりしたのか、従来ばそういう例でありまして、奈良から神戸へ移すときには、私の方へちやんと文書をもつて言つて来たのでありますが、今度はそういうことがないわけでありますから、その点軍の方へどういう事情でそんなことをしたのか確かめてみないとわかりません。私は本日初めて伺つたような次第であります。
  226. 熊谷憲一

    ○熊谷委員 私はこの前から、駐留軍の基地と周囲の町村住民との争いが深刻であつたことな承知しておりますが、協定の中に、そういう場合には外務省なり調達庁とも相談をするというような規定はないのでございますか。
  227. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 協定の文面からそういうことは出ませんけれども、施設の用途な著しくかえる場合には、相談することにいたしております。もちろん西戸崎の場合は兵舎の中に兵隊が入るのであつて、駐留しておる兵隊か、朝鮮から帰る兵隊かということで、数の点であつて質的に違いがないということことを向うは考えたかもしれませんが、ただRRセンターというものは従来からも問題を起しておる特殊のもので、神戸の際は相談して来ておる。それから今まで私が一番問題にしておりますのは、たとえば普通の倉庫のようなものを、火薬庫や弾薬庫等にかえるというような場合は、これは万一事故がありますと非常にあぶない、辺周に民家のないとろこでなければ、弾薬庫にできないという場合には、これは当然相談すべきものであります。普通には、大体同じような兵舎のような用途に使います場合は、協定から見ますれば、向うが自由に使い得るようにはなつておりますが、しかし従来問題な起したものにつきまして、また起しそうなものについては、相談しようということに話がなつております。
  228. 熊谷憲一

    ○熊谷委員 その点私よくわからないのでありますが、どうもこれはうかつなことじゃないかと思います。今までたびたびそういう問題が方々で起つておるようであります。そのRRセンターが移れば、それに伴つて特殊婦人が移動することは、すぐ考え得ることであります。そのためにまた新しい土地に複雑な問題な起すというのでありますから、一応関係市町村の意向を聞くとか、あなた方と相談をして意見な聞く――今度はそういう反対が起るかもしれないというわけで抜打ち的にやつたのかもしれませんが、そういうやり方は少しまずいのじやないかと思います。三月の十五日に入所式をやるとかいうような話を私は聞いたのでありますが、駐留軍の責任者は婦人団体の責任者に対しまして、もう一ぺん東京に行つて座間の責任者と相談をせいということを言われたそうでありますが、まだ多少何か考える余地があるのかもしれ次いとも思うのです。中止ができれば中止してもらいたいし、もし中止ができなければ、そういう点に対して問題が起らないようにあらかじめ適当な方策を考えた後に、RRセンターが移つてはどうかというふうに私は考えておるのであります。局長なり調達庁の御意見をお伺いし、なるべく納得の行く善処方をお願い申し上げる次第でございます。
  229. 松木豊馬

    ○松木説明員 さつそく向うと折衝したいと思います。
  230. 熊谷憲一

    ○熊谷委員 私はきようはこの程度にしておきまして、また報告を受けましてお聞きいたします。
  231. 上塚司

    上塚委員長 福田昌子君。
  232. 福田昌子

    福田(昌)委員 今RRセンターのお話が出ましたが、この小倉からRRセンターの移転につきまして、伊関局長がお聞きになつたのはいつでありますか。
  233. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 この席に来てからでございます。私の方はただいま主管でありませんから聞かないかもしれません。
  234. 福田昌子

    福田(昌)委員 特調にこういう所管が移つたのはいつでありましたか。
  235. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 昨年の十二月一日からであります。
  236. 福田昌子

    福田(昌)委員 奈良のRRセンターが神戸に移転するということで、たしかこれは昨年の九月の二日かに決定をして、十五日に移転したかと思いますが、この移転決定の前どれくらいのときに伊関局長は御相談をお受けになりましたか。
  237. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 何日前でありましたかよく覚えておりませんが、非常に時間が差迫つてつたようであります。あのころには、特に差迫つた軍の移動でありまして、まことに申訳ないがこういうことで承諾してほしいという通知が参りました。
  238. 福田昌子

    福田(昌)委員 その移動の理由はどういうことだつたのですか。差迫つた軍の移動というその具体的の内容と、それに対して伊関局長はどういうふうな御答弁をなさいましたか。
  239. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 軍の移動と申しますのは、新たに第三海兵師団が参つたわけであります。これをあるところにまとめて入れなければならないという理由から奈良の兵舎な明けたわけであります。以前兵舎であつたものがRRセンターになつた、それなまた兵舎にもどしたという事情でありまして、いろいろと話をいたしまして、事情やむを得ないから、それでは過渡的に認めようということで過渡的に認めまして、神戸の方もお見えになり、いろいろ話を聞きまして、その後おちついておりますから、そのままになつております。
  240. 福田昌子

    福田(昌)委員 これはRRセンターの問題でありますから、それに関係のある業者の側に立てば賛成する人もありましようし、いろいろ利害関係も伴うと思うのですが、ごく普通の場合、客観的な第三者から見ました場合、RRセンターというもうは好ましくありません。従いまして奈良の場合におきましても、まじめな婦人団体というものは、このRRセンターの廃止というものに対しまして、絶えず関心を持ち運動しておつたわけでありますが、神戸の移転ということを聞きまして、神戸の婦人団体を初めとして地元の善良な市民というものは相当反対をしたのでありますが、そういう反対運動に対しまして、伊関局長は前から聞いておられたでしようか。それともその反対運動に対してどの程度の関心をお持ちになり、そして米軍と、その反対運動に対する問題を中心として話し合われたか、その点伺いたいと思います。
  241. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 当時は盛んに皆さんお見えになりましたから、いろいろとお話は伺いました。ただ奈良に置く方が適当か神戸が適当かということになりますと、これはいろいろと問題があると思います。奈良の方がむしろ古都、文化都市としては修学旅行の学生もよけい行くが、神戸というところは大体外国人の出入りも多いし、従来奈良に行つても神戸にも行つてつた。神戸のような大都市の方が目立たないという関係もございましようし、どちらの方がプラスやマイナスが多いかという点になりますと、これは公平に判断して、必ずしも神戸に移した方が悪いという結論は出て来ない。むしろ神戸に移した力が被害が少いという面があるかとも思います。ともかく、おちついでおるものをほかに移すということは問題な起すわけでありますから、まあ気の毒でありますが、奈良なら奈良で一応折れたという前提のもとに事態も改善しつつあつたわけでありますから、むしろその方が問題を起さないわけでありますけれども、しかしこれはどうしても必要だ、兵力の移動の関係でどうしても必要だというのでやむを得ない。そしてどつちに持つて行きましても大体同じよなうことだというふうに考えたわけであります。
  242. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういうわけで伊関局長となすつては事後承諾をなすつたのだと了承いたします。その結果、これの運営にあたりまして連絡会議を持たれて、それに対して外務省は多少あつせんされておるということを私は伺つたのでありますが、その点について詳しい御説明をいただきたいと思います。
  243. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 地力の連絡協議会からは逐次報告が参つております。問題が起きませんと私の耳まで入つて参りません。何か大きな問題が起きれば私のところに参りますが、そうでない限りは順調に行つておるものと心得ておるわけであります。
  244. 福田昌子

    福田(昌)委員 この日米合同の連絡会議というのは、地方ではどういうメンバーで持たれておるわけですか。
  245. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 普通ですと米軍側のキヤンプならキヤンプの司令官、それから憲兵隊、それから牧師などがおりますから、そういう者が入るとか、あるいは医者も入りましよう。月本側は普通その市長とか町村長、警察署長あるいけPTAの会長とか民間団体も入つて――これは各地によつて違います。私の方から指令な出しますときは、なるべく広くつくるようにということで指令を出しております。関係団体を網羅するように指令を出しておりますが、現地によりましてそのつくり方は自由にしております。これは訓令できる筋のものでもないし、こういうものなつつた方がすべての問題が円満に行くならなるべく現地で解決してほしい、解決しないものは東京へ持つて来てもらう。こういうことで、指令は出しませんが、勧奨しているわけであります。各地によつて違いますが、広く関係団体、民間団体を含めてつくるようにという勧奨もいたしております。
  246. 福田昌子

    福田(昌)委員 これは行政協定の二十六条による合同委員会の末端機関になるわけでございますか。
  247. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 合同委員会の末端機関にはなりません。
  248. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういたしますと、この連絡会議なるものは、そういうアリメカがすでに接収しておる基地の使用変更、あるいはまた内部の極端な設備の変更というような場合にあたりましては、事前に連絡会議に諮つていただける権能があるわけでございますか。
  249. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 そういうふうに、どの問題はこの会議にかけなければならぬというようなかた苦しいものではありませんで、月に一回とか、あるいはもつと頻繁に、なるべく両岩が寄り合いまして、そうしてどんな題目でもいいから忌憚なく――風紀問題が発火点というか原因になつてつくつたものではありますが、しかし、問題を限定しないで、何でもいいから地方でお互いによく話し合つて入ろ、そうすればすべて円満に行くのではないかというように、そういうふうにきわめて非公式なものとしてつくつたのであります。
  250. 福田昌子

    福田(昌)委員 そういうものをいつからおつくりになつたのでございましようか。
  251. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 おととしぐらいからこういうものをつくろうという話を米側といたしておりまして、昨年半年ぐらい関係各省と協議いたしましたが、なかなか関係各省が同意いたしません。と申しますのは、府県並びに市町村等におきましては、占領中に呼びつけられていろいろと命令された苦い経験があるものですから、そういうものをつくると、自分の方のプラスになるよりも、何のかんのと言われてマイナスになるのではないかという懸念があつたようでありまして、そういう声が中央の官庁に反映いたしまして、なかなか中央官庁がまとまりません。結局指令を出しましたのは、よく覚えておりませんが、去年の春か夏ぐらいになるかと思います。
  252. 福田昌子

    福田(昌)委員 その指令をお出しいただきました場合に、これはごく友好的に話し合つて、日米間に起る摩擦を防いで行こうというような意思でおっくりになつたわけでございますから、その運営の方法については何か注文をおつけになつたかと思うのでありますが、その点詳しくお知らせいただきたいと思います。
  253. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 きわめて非公式でありますから、運営方式等につきましてはそれほどこまかいことは申しません。地方で解決できるものは地方で解決する、地方で解決できない問題は話し合つて、それぞれ主管官庁を通して中央へ持つて来る。写しをつけて参りますからいずれ参りますが、調達庁に参ります場合、あるいは直接外務省に行く場合、米側は米側の筋を通しまして、日本側は県等を通しましていたします。そういうふうにやつております。その後、報告をとりまして、あるいはこの運営をいたしまして、こういうふうにつくつたとか、こういうふうな運営をしようと思うがこれでいいかというふうなことを県等から聞いて参りましたものについては、よそのうまく行つている例等を引いて返事をしてやつたり、係官をまわして現実にうまく行つている事例を話して、こういうふうにすればこういうふうに行くのだというように指導しております。なかなかみな遠慮しておりますから、どこの協議会ではこういう問題を取上げてこういうふうに解決したというふうに、文書でなく直接係官なやつたり、あるいは、地方におけるブロックごとの府県の会議等に係官を出したりして指導はいたしております。
  254. 福田昌子

    福田(昌)委員 ごく非公式な機関であるというお話でございますから、その運営の内容明細にわたりましての御指示等はなかつたかと思いますが、しかしそれにいたしましても、日米間に起るところの摩擦を未然に防ぎたいという御意思でおつくりになつたものでありましたならば――たとえばRRセンターの移転の問題等につきましては、毎月何かの議題を持ち合つて集まつておるということでありますならば、やはり移転の問題なども早急に協議会に持ち出して諮るべき性質のものだと思うのでございますが、そういう意味合いの要請をなさつたことがございますか。
  255. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 特にそういう要請をいたしたことはございません。というのは奈良の場合はおそらくできてないか、できたてであつたと思いますが、問題はできたてで中央で扱いました。今度の小倉の場合は初めてのケースだと思います。これは現地でどういう話があつたか、あるいは米軍の中央が知つておるのかどうか、現地はどういうふうに考えてやつたか、これは調査してみませんとちよつと今のところはわかりません。
  256. 福田昌子

    福田(昌)委員 今まで連絡会議に日米間の不必要な摩擦々避ける意味で事前に諮つてもらいたいとお考えになつて、このことを米軍に申し入れようとお考えなつたことはございませんか。
  257. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 それはあらゆる問題で、すべて地方で話し合つて、まず日本側から米軍施設があることについていろいろ、たとえば汚水が流れるとか、やかましいとか、兵隊の外出時間はどうしてもらいたいとか、学校の地域には立ち入らぬようにしてもらいたいとか、日本側の慣習はこうだからこういうようにやつてもらいたいとか、あらゆる問題があると思う。これは日本側から言うと思うからその点をよく軍の方は聞いて、できることはできるだけやれ、こういうふうに話しております。
  258. 福田昌子

    福田(昌)委員 その点はよくわかりますし、御注意をいただいたことは非常にけつこうだと思いますが、私のお伺いしたいのは、少くとも日本という国は、政府のお考えによりますと、独立国という立場において安保条約をお結びになるし、行政協定も結ばれたという話でありますから、独立国でありますならば、米軍の接収地等についての軍事的な機密にわたりますことは、当然秘密にしてしかるべきでありますが、ある程度現地の住民、と申しましても地元の大衆に影響が及ぼされるということに対しましては、当然アメリカ側もこの協議会に一応前もつて諮る筋合いのものであろうと私は思うのであります。それでこそ民主的に運営する方法であり、そしていたずらにむだな日米間の摩擦を避ける方法だと思うのでありますが、こういう点に対して、米軍側においても軍の機密に関すること以外のもので、地元の大衆に多少とも迷惑が及ぼされるようなことについては、この協議会に諮つてもらいたいという申入れをなさつたことはございますか。
  259. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 先ほどから申す上げておりますように、個々の問題についてどうということは――問題が起きますれば申しますが、全般的に向うも十分承知しております。日本側との間に摩擦な起さぬように事態を改善したい、むしろ向うの方は進んで早くこれをつくつてくれぬかと盛んに言つております。日本側の方が先ほど申しましたような事情で遅れたような次第でありまして、先力も非常に乗気でおるわけでありますから、何を言えとおつしやるのかわかりませんが、私の方は全般的にやつているわけであります。この小倉の場合に、向うが相談したかしないかわかりませんが、私は相談すべきものだと思います。ただ兵力の移動計画というものはこれは言えませんから、何かそこのところは上手な話し力があるだろうと思います。
  260. 福田昌子

    福田(昌)委員 それでは伊関局長のお考えからいたしますれば、そしてまた連絡会議に期待いたしておられるお考え方からいたしますれば、たとえば小倉のRRセンターを博多キヤンプに移転するというような問題は、当然事前に日米合同連絡会議に持ち出して、議題としてもらえる筋合いのものだとお考えになつていらつしやる、かように解釈してよろしゆうございますか。
  261. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 特殊な軍の機密保持上、特殊な事情がありますれば別であります。この点は調査しなければわかりませんが、そういうものがなければ、これは相談すべきものと私は考えます。また中央においても特調が私の方に当然に言つて来るべきものと思います。この前に言つて来て、今度は言つて来ないというのは不可解であります。
  262. 福田昌子

    福田(昌)委員 私どもも当然そのようにあるべきだと思つておりますし、そのようであれば私も何もこのようなくどい質問をする意思は全然ないわけであります。ところが事態はすでに逆でありまして、御承知ように三月十五日に発会式が行われましてすでに移動が始まつております。地元におきます日米合同連絡会議というものはあす開かれることになつておりまして、初めてあすの連絡会議にこの問題が持ち出されるというような事態はまさに逆の姿なとつておるのでございます。従いまして私どもといたしましては、こういうような一方的なアメリカのRRセンターというような、私たちから見ますと、軍の機密にさほど重大な影響を持たないと思います。こういうRRセンターの移転に対して、この会議に何らの連絡がなくして事がきまつてしまつて、移転が始まつて決定済みの後にこういうものを持ち出されるということに対して、非常に残念なものな感ぜられるのです。日本側が対等の独立国であると政府がお考えであると政府がお考えであるならば、こういう点に対して、さつそく異議を申し入れていただきたいと思いますが、これに対する伊関局長のお考えを承りたと思います。
  263. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 もちろん独立国でありますし、私たちの任務は始終こういうことで米軍に交句を言っておるのが私の仕事でありますから、御注意があるまでもなく、当然やろうと考えておる次第であります。
  264. 福田昌子

    福田(昌)委員 そのお言葉な聞きましてたいへん安心したのでございます。どうかこういう問題に関しましては、小倉の場合におきましては時すでにおそい感がありますが、将来再びこういう轍な踏むところが起らないように、どうかこういうRRセンターの移転に関しまする問題、あるいは設備に関する問題に関しましては、ぜひ事前に日米合同連絡会に諮つていただいて、地元の意向というものをしんしやくした形において運んでいただきたいと思うわけであります。この点な早急に米軍側に申し入れていただきたいと思います。そのことをお約束願えますかどうか。
  265. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 先ほど申し上げた通りに、さつそくやろうと思つております。
  266. 福田昌子

    福田(昌)委員 小倉のキヤンプからRRセンターを博多キヤンプに移転する問題でありますが、これはいろいろ私ども軍側の理由も十分伺つて存じておりますし、すでに設備が成りまして昨日から移転いたしておるわけでございます。伊関局長は御多忙のために、その点まだお聞きになつていらつしやらない、調査しておられないということでありますから、そしてまた所管が違うということでありますので、この点を私どもが追究するということは、多少筋違いで御惑迷かと思いますからその点控えますが、何らかの関連において所管違いでありましても、おついでがあつたときには、その理由な聞いておいていただきたいと思うわけであります。私たちが考えますことは、このRRセンターそのものは、軍の作戦上から見ますと、決して重大な問題と思いませんが、その重大でない問題なめぐつて日本国民に及ぼす影響というものは重大なものが生れて来るのでございます。こういうことのために日米間に不必要な、そしてまた避け得るところの悪い感情をもたらすことは、厳に避けなければならないと思います。ところが残念ながらRRセンターの問題といいますものは、これはまじめに考えますと、売春の方面からの問題な取上げましても、また治安上の問題から見ましても、あるいはまた教育上の問題から見ましても、あるいはまたヒロポン中毒その他覚醒剤な中心とした中毒の問題から見ましても、RRセンターに付随して起る一連の集団的な行動というものがこれに関連を持つてつておるのでございます。かようなことは結局直接の原因がアメリカ軍ではないにいたしましても、素朴な大衆というものは、飛び越えましてアメリカ軍に対する反米的な感情というものをつのらせて来るわけでございます。かような状態のもとで私たちは日本国民大衆の中に、相当不必要な反米感情が起つておるということな心配いたします。こういうことを考えて行きます場合に、外務当局におかれましては、どうかもつと積極的な――大衆に関連があることに対しましては、積極的な関心を持つていただきまして、こういう問題につきましても、小倉の問題は初めてお聞きになつた問題でおりましたでしようけれども、御所管の当時においては、昨年の九月には奈良から神戸にRRセンターが移転する問題も起つてつたわけでありますから、そういう事態をとらえられまして、万全の措置をとつておいていただきたかつたと私ども思うわけでございます。この点はなはだ遺憾でありますが、どうか局長も、そのポストの御関係上、この点につきまして今後は積極的な一層の措置をおとりいただきまして、むだな摩擦が起きないようにやつていただきたいと思うのでございます。  これに関連して一点お伺いいたしておきたいことは、国際協力局長といたしまして、これは所管からずれると思うのでありますが、私どもは今日売春国という汚名を着ております。日本のこの汚名な返上する意味におきましても、売春取締法というものを早急に出したいと思つております。こういうやさきにRRセンターが、日本政府には一言半句の通知もなくて、かつてに移動されるということになりますと、私どもが国内立法として考えております売春取締りの法規というものも、いろいろな形において効力を上げがたいという感じもいたすのでございます。従いまして、伊関国際協力局長といたしまして、この売春問題に対して、特にパンパン・ガールをめぐつての対策は、どういう対策をおとりになつたらいいと考えているか、私的なお考えでけつこうですから、お述べいただきたいと思います。
  267. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 先ほどRRセンターは必要でないと考えるとおつしやいまして、私はどう考えるかということですが、もちろんこれがありますことによつて、風紀問題を起していることは遺憾でありますが、在日米将兵というものは少くとも十万から十五万くらいはおるのであります。このシステムで、RRという制度でもつてつて参ります人間は、ときによつて違いますが、ただいまは大体日に五千人、これが五日間おる、あくる日も五千人来ますから、そういうふうに考えて来ますと、大体一日に日本におるのが五千人というふりな数であります。全体から見ますれば、十万以上おる者の中から五千人くらいでありますから、それほど大きな問題じやない。ただもつぱら遊ぶために帰つて来るというところで、多少集中的になるということがありますが、朝鮮では、写真等で御承知のように、第一線の塹壕の中におるわけでありますから、やはり年に一回か二回こうした慰安を与えるということは、朝鮮を守るということがただちに日本を守ることでもありますので、私はこういう制度というものは続けて行きたい、向うが必要だと言いますし、私もこれをやめろというようなことは、日本側として言うべきではない、ただ問題を起さぬようにしたい、こう考えておるわけであります。  それから売笑婦の問題につきましては、これは何度も福田委員から御質問がございまして、私の方も根本的な解決については案は持たない、しかし事態な改善するしかない、何かよりよくしたい、目立たぬようにしたいと考えておると前にも申し上けたのでありますが、私どもとしては、それほど根本的な妙案というものは持ち合せないのであります。
  268. 福田昌子

    福田(昌)委員 伊関局長に対しましては、パンパン・ガールの問題、ハウス・メイド問題につきまして、私も絶えず御迷惑をおかけいたしておりますし、何らかの対策を早く見出していただくようにお願いいたしておりますが、これは私自身といたしましてもお願いを申し上げながら、その抜本的な対策を早急にきめていただくということが、いかに困難であるかということを承知の上でお願い申し上げておるようなことで、非常に伊関局長も御迷惑だと思いますが、しかし私たちが日本の婦人の立場を考えますときに、一方的にアメリカ側がRRセンターのような日本の風紀に関連する施設というものを、かつてに移動されるということに対しては、非常に私どもは遺憾だと思うわけでありますから、この点についてぜひ伊関国際協力局長の立場において、アメリカ側に強い申入れをしていただくということをお願いしておきたいと思います。  それから私どもがぜひお願いいたしたことは、御承知のように、朝鮮から帰休されますアメリカの兵隊、それは国際的、思想的な立場からいろいろ異議はありましようが、兵隊個人の立場に立つて考えてみますれば、その兵隊というものな何らかの形で慰労するということは、人情において当然なことであると思うのでありますそういう意味で、私ども兵隊に対する何らの感情もありません。むしろその労をねぎらう人道的なものの考え方をしたいと思つておりますが、それにいたしましても、そのねぎらう一つの方法として、日本の女性がいけにえになるということにおいては――これはアメリカが要求した制度じやありません。間接に生れて来る、必然的に起つて参りましたいわば日本側にも責任がある制度でありますが、そういう形でねぎらわれるということにおいて、いささか遺憾なきを得ないのであります。従ってアメリカが、日本の土地でアメリカの朝鮮から帰られる帰休兵を慰安したいというのであるならば、アメリカ日本と国情が違いまして、いろいろな形においてアメリカの兵隊もまたアメリカの女性のそういつたいたわりを希望するでありましようから、そういう観点に立つてアメリカの女性側からの慰安というものをアメリカ側の兵隊も求めると思いますので、そういつた意味合いにおいて、この朝鮮からの帰休兵に対する何らかの慰安の施設は、アメリカ人をもつて充てていただくという観点から、そういう交渉をアメリカ側になさつていただいたことがこざいましようか。
  269. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 アメリカ側はもちろん売春を禁止しておりますから、そういう制度はできないと思います。
  270. 福田昌子

    福田(昌)委員 アメリカは禁止しておりますから、当然できない。しかしその裏を返せば、日本は売春を黙認しているから、日本ならけつこうだ、こういうことになりますが、その点私どもきわめて遺憾に思うわけでございます。これは日本が伝統的な、封建的な、間違つた制度のもとに売春ということが黙認されておりますが、日本におきましてもこれは許さるべきものではないのでありして、かような意味において、売春が許容されていない国であるから、アメリカにそういうことは要請できないというお考えであるなら、これは私いささかお考えを改めていただきたいと思うのでございます。日本の国に対して、アメリカが少くとも対等な民主的な立場をもつて臨もう、人道的な立場をもつて臨もうとされるならば、アメリカの兵隊に対する何らかの慰安施設というものは、当然アメリカの婦人なもつてすべきである、それがパンパン的な行為とは決して申していないのであります。慰安というものがパンパン的な行動につながるとは決て言いません。それと切り離した形においても、アメリカの兵隊を慰安するにはアメリカ婦人をもつよするのが最も適当だと私は考えます。とような意味で、そういう交渉をなさる意志があるかどうか、この点な承りたい。
  271. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 日本側でもつて完全に売春を禁止いたしますれば、私の方はすぐアメリカと交渉いたしまして、もちろん行政協定の十七条も改訂になつているのでありますから、そういうことをやるアメリカ将兵は取締りもできますので、これは実行させ得ると思います。しかしながら日本側で日本相手の売笑が盛んに行われているという現状においては、なかなかそういう交渉はむずかしいじやなかと思います。
  272. 福田昌子

    福田(昌)委員 日本の今日の現状からいたしますと、遺憾ながら売春は黙認されております。そういう日本人同士の姿をそのままに残しておきながら、アメリカ人の場合のみ私たちがとやかく言うことは間違いであろうかとも思うのでございます。しかしながらアメリカ日本の立場というものを考え、そして日本人に対する人権の尊重というものを人道的に考え、そしてまた日米間の円満な今後の協力ということな望むならば、私はアメリカ軍に対しますそういつたRRセンター全体に対してはアメリカ人をもつてする、そういう設備に対しての聞入れというものがアメリカ側になされるであろう、アメリカ側も聞き入れてくれるであろうということな確信いたします。この点につきまして、伊関局長はもう少し勇敢に当つていただきたいと思うのでございます。そういう点で、私どもどうも外務省の方はあまりにも紳士的であり、非常におとなしくおいでになるという点で遺憾に思うのであります。どうか積極的にそういう点をアメリカ側に申し入れていただきたいと思います。  次にお尋ねいたしたいことは、昨年の九月に奈良から神戸にRRセンターの移転があつた。今度は小倉のキヤンプから博多キヤンプヘのRRセンターの移転があつた。今後またこういうような移転か行われないとも限らないと思います。あるいはまた新しくRRセンターの設置なアメリカ側考えているかもしれないと思うのでありますが、現在RRセンターなるものは日本の基地周辺においてどのくらいあるか、まづこの点を承りたいと思います。
  273. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 私が知つておりますのは、小倉と神戸と横浜と東京、この四箇所でございます。
  274. 福田昌子

    福田(昌)委員 東北、北海道にはないのですか。
  275. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 ないと思います。
  276. 福田昌子

    福田(昌)委員 もうすでにその四つある中で、二箇所にこういう移転の問題が起りましたが、現在までにある他の残されたRRセンターがさらにどこかに移転問題を起さないとも限りません。あるいはまたほかにRRセンターの要求の問題が起つて来るかとも思いますが、これに対して伊関局長は今後どういう対策をとろうとなさつておられるか、その点承りたいと思います。
  277. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 横浜にあります分を東京の方と一緒にしようかという案はございましたが、まだこれは決定しておりません。これはむしろ日本側の立場から、横浜の市内にありますのでこれを明けて、東京はキヤンプ・ドレークでありますから、目立たたないのでこつちに移そうかという考え日本側にあります。それから朝鮮が休戦になりまして、アメリカヘ帰る兵隊の数がふえましたが、現在はあそこにおりますのが二個師団ほど本国へ帰るというようなことで減りつつありますから、これ以上にRRセンターをふやす必要はなかろうと考えております。
  278. 福田昌子

    福田(昌)委員 私どももふやしていただきたくないわけでございまして、たまたまアメリカの極東軍自体もふやす必要のない事態にあるということは、非常に喜ばしいことだと思うのであります。聞くところによりますと、朝鮮の女の人は日本の女みたいにRRセンターの周辺に集まつて来ない、日本の女性より貞操観念が高いのだというような話も承るのであります。その真偽は存じませんが、かような点から考えましても、日本の女性のRRセンターの周辺をめぐつてのパンパン的行為というものは許しがたいものがあるわけでございます。従いまして、そういう箇所がこれ以上つくられるということに対しては、われわれとしては絶対反対をいたしております。政府の当局としては前もつて、RRセンターをこれ以上つくることがないように、RRセンターの移転の場合においては、必ず事前に政府に諮つていただくということを申し入れていただく御意思があるかどうか、承りたいと思います。
  279. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 当然そのつもりでおります。
  280. 上塚司

    上塚委員長 福田さんにお諮りいたします。大分同じ質問を繰返してなさるようですが、時間も相当たちましたから、できるだけ簡略にお願いいたします。
  281. 福田昌子

    福田(昌)委員 同じことを何べんも私自身考えて聞いているわれでございますが、それはぜひ確認しておきたいと思いましてお伺いいたしているわけであります。その点ぜひお許しをいただきたいと思います。  このRRセンターの移転問題、奈良から神戸、小倉から博多というような問題が起ると同時に、一つは駐留軍の兵舎の問題でございます。あのワシントンハイッの兵隊の独身寮の設置の問題なんかも、最近外務委員会で陳情をお聞取りいただきましたが、そういう問題は結局事前に地元の人々と納得ができる交渉がなされてないから起る問題であります。こういう問題を決定後に聞き伝えまして地元民が盛んに騒ぐということになつておりますが、これを防ぐためには外務当局としては何らかの措置をとつていただきたいと思いますが、これに対して今後どういう措置をおとりになろうとしておるか、この点を伺いたいと存じます。
  282. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 ワシントンハイツにあれを移しましたのは、もつぱら日本側の決定でありまして、米側はあの決定に何ら関与いたしておりません。  それからあの問題は目下調達庁の方で扱つておりますので、調速庁の方からお答え願います。
  283. 福田昌子

    福田(昌)委員 同じような問題ですからまた折を見てお伺いいたしたいと思いますが、もしワシントンハイツにおける米軍の独身寮の問題を日本側だけで決定したというのであれば、これは米軍には関係のないわけでありますが、日本政府としていささかお考えいただきたいと思うわけであります。地元の婦人会の連中は相当に反対しております。学校の敷地にさえ困つておるというようなあの地域において、ああいう独身寮をさらにお建てになるということに対しては、事前にもう少しやはり地元の婦人会あるいはその他第三者的な立場にある人の御意見を十分しんしやくなさつて、民主的にやる必要があると思うのです、今後そういう問題が起ります場合に、同じことが起らないように御注意いただきたいと思います。  ただ一点、お引きとめして恐縮ですが、お伺いしておきたいのは、熊谷委員から演習地に対するお尋ねがありまして、演習地の接収状況について十分伺いましたから、重ねて質問を申し上げるのは御逆惑と思いますが、これは一応そこをある程度利用できるから接収しておるけれども、それに対する補償をやつていないのだということを当然のことのようにお話でありました。これはどう考えても少々政府側のごかつてな解釈のように承るわけです。これに対して特調側に伊関局長からお話いただきまして、これに対して当然の補償をするというように交渉していただく意思があるかどうか承りたい。
  284. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 特別調達庁と私の方とは決して上下の関係にこざいませんから、よその官庁に命令はいたしませんが、話はいたします。
  285. 上塚司

    上塚委員長 今日は渉外関係でこれから出かけるということですから、またの時期にお願いいたします。  それでは本日はこれをもつて散会いたします。    午後六時十七分散会